JP6750148B2 - 糖鎖切断抗体の製造方法及び均一糖鎖抗体 - Google Patents

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Description

クロスリファレンス
本願全体を通して引用される全文献は参照によりそのまま本願に組み込まれる。また、本願は2014年4月25日に出願された日本国特許出願第2014−091157号及び2014年10月31日に出願された日本国特許出願第2014−222191号からの優先権を主張する。本願が優先権を主張するこれらの出願に記載の内容は全て参照によりそのまま本願に組み込まれる。
本発明は均一な糖鎖構造を持つ糖タンパク質合成に関するものである。より具体的には、本発明は、新たに開発された抗体の糖鎖リモデリング法のためのアクセプターを調製するための方法に関する。
いわゆるバイオ医薬品として、エリスロポエチン、あるいはインフリキシマブ、ベバシズマブ、トラスツズマブ、アダリムバブ等に代表されるモノクローナル抗体が認可されているが、いずれもタンパク質に糖鎖が結合した糖タンパク質である。特に癌治療に用いられている抗体はイムノグロブリンクラスがIgGである。癌細胞に発現している抗原に上記IgGが結合すると様々なカスケードにスィッチが入り、たとえば1)抗体依存性細胞傷害(ADCC);2)補体依存性細胞傷害(CDC);3)シグナル伝達の変化により抗癌活性を発揮する。
インタクトなIg抗体のFc領域のCH2ドメインに位置する297番目のアスパラギン(N297)には不均一なN型糖鎖が付加されている。付加される糖鎖は多数の糖鎖構造を持つ二本鎖複合型糖鎖がメインである。この糖鎖は免疫複合体によるエフェクター機能の活性化に必須であり、付加される糖鎖によりその活性が変化することが知られている。たとえば、α1−6結合フコース(以下、「コアフコース」と呼ぶことがある)が欠落すると、FcγRIIIaを介するADCC活性が高まることが知られている(非特許文献1)。フコース欠損トラスツズマブは、フコースが付加されたトラスツズマブの少なくとも50倍のADCC活性を有することが報告されており、同様な結果が、リツキシマブ、抗CCR4抗体等(非特許文献2)においても報告されている。
一般にバイオ医薬品の生産手段として汎用される大腸菌は糖鎖付加機能がない為、抗体の生産は酵母などにより試みられてきた。しかし、酵母はヒトと同じ糖鎖を付加せず、いわゆる高マンノース型の糖鎖を付加すること、及び酵母が付加する糖鎖に含まれるαGalが抗原性を提示すること等の問題が指摘されている。昆虫細胞を用いる方法も提案されているが、酵母と同様の問題が指摘されている。このため、現在、抗体医薬の多くはヒト型の糖鎖を付加する哺乳動物細胞(CHO細胞、NSO細胞等)により製造されている。CHO細胞等により産生された抗体の糖鎖は、糖鎖転移酵素により生合成されるため、糖鎖構造や糖鎖付加の量が、同じ細胞株であっても継代が異なることで変化することが知られている。このように、CHO細胞等で製造された糖タンパク質は、アミノ酸配列レベルでは均一であっても、糖鎖レベルでは不均一となるとの問題があった。また、ヒト血清中IgGのFcに付加している糖鎖構造とCHOで作成したFcの糖鎖構造は種類も存在比も全く異なっていることが報告されていた(非特許文献3)。
抗体のN結合型糖鎖には、いわゆるhigh mannose型、2本鎖複合型、及びcomplex型が存在し、さらにシアル酸(Sia)の有無、結合様式の違い、コアフコースの有無、分岐N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)の有無等の違いがあり、これらの組み合わせで様々な種類の糖鎖が存在し得る。したがって、現在市販されている抗体医薬はいずれも多数の糖鎖構造を含んでおり、その品質維持が問題となっている。また、バイオシミラーの認可においても糖鎖構造の不均一さに基づき同一成分としての認可が困難となっており、例えば、エリスロポエチンはエポエチンカッパ等の異なる成分名で認可される等の措置が取られている。
抗体に付加された糖鎖の長さとそれが活性や安定性に与える影響が検討されており、糖鎖を短縮化した抗体を用いて、糖鎖の長さがCH2ドメインの構造安定化と活性に影響を与えることが示されている(非特許文献4、非特許文献5)。また、医薬品として好ましい糖鎖構造の特性として、例えば、分岐GlcNAcを含むN型糖鎖や、脱コアフコースが知られているが、現在市販されている抗体医薬の多くはこれらの糖鎖を数%程度しか含んでいない。
このように、抗体における糖鎖構造の機能について解析結果から、医薬品として好ましい特性を抗体に付与することができる均質な糖鎖構造を持つ抗体を製造することが望まれている。また、医薬品として十分な品質管理を達成するためにも、均質な糖鎖構造を持つ抗体を製造することが望まれている。
また、FcγRの遺伝子多形がADCC活性に影響を与えることが報告されている。リツキシマブを投与された患者のうち、FcγRIIIaの176番目のアミノ酸がV/Vホモ接合体である場合、F/Fホモ接合体と比較して、IgG1及びIgG3との結合力が強いことが報告されている(非特許文献6)。また、FcγRIIIaの158V/158Vの相同染色体をもつ患者、及び、FcγRIIaの131H/131Hの相同染色体を持つ患者は、FcγRIIIaの158F遺伝子を持つ患者やFcγRIIaの131R遺伝子をもつ患者と比較して、リツキシマブへの反応性が高いことが報告されている(非特許文献7)。また、抗イディオタイプ抗体によるワクチン療法においても、FcγRIIIaの158V/V遺伝子型は、V/F及びF/F遺伝子型と比較して無増悪生存率が高いことが報告されている(非特許文献8)。このように、抗体医薬の効果は患者のFcγRの遺伝子多形に依存することが知られているが、FcγR遺伝子多形に応じて最適な効果を奏し得る糖鎖構造に関する報告はない。
このように、好ましい糖鎖構造を解析する上でも、均一の糖鎖構造を有する抗体の製造が必要とされていた。
これまで、抗体への糖鎖付与の制御のための検討が種々行われてきた。例えば、抗体の短縮化がN297への糖鎖付加や付加される糖鎖構造に与える影響が調べられている(非特許文献9)。また、抗体を産生させる細胞の種類によって付加される糖鎖が異なることが報告されている(非特許文献10)。
また、分岐GlcNAcの形成を触媒するβ(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)に関する検討が行われており、抗体のADCC活性に対して至適GnTIII発現量が存在すること(非特許文献11)、抗体を大量に生産する生産株において、GnTIIIを共発現させることで分岐GlcNAcの付加された抗体の割合を高め、共発現させない場合と比較して10〜20倍低い濃度で標的細胞を殺傷すること(非特許文献12)が報告されている。
また、脱コアフコースの方法として、FUT8等のα−フコシルトランスフェラーゼをノックアウトする方法が開示されている(非特許文献3)。しかし、この方法はコアフコースのみをコントロールするものであり、糖鎖構造が均一な抗体を取得することはできなかった。また、抗体の糖鎖を切断するエンドグリコシダーゼとして、エンドグリコシダーゼS(EndoS、Endo−S、endo−S)(非特許文献13)及びその改変体(非特許文献14、特許文献1)が報告されている。しかし、これらのエンドグリコシダーゼには糖鎖構造を認識し、特定の構造に対する特異性があることが知られている。このため、EndoSを用いたとしても、CHO細胞で産生させた抗体に付加するあらゆる糖鎖構造を持つ糖鎖を認識し切断することはできず、不純物として未切断の糖鎖が付加された抗体が残存するという問題があった。また、非特許文献13ではコアフコースを除去する為に、CHO細胞から製造されたリツキサンをEndoSで加水分解し、さらにウシからのα−フコシダーゼを20日反応させアクセプターのGlcNAc−Asn−リツキサンを調製しているが、このような煩雑な方法は工業化には適さないという問題があった。
一方で、抗体以外のタンパク質の糖鎖エンジニアリングに関しては、種々の報告が行われている。非特許文献3には、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼM(エンドグリコシダーゼM、Endo−M、endo−M)を用いてin vitroで糖鎖が付加されていないインスリンにフコースが付加されていないN−グリカンを結合させたことや、N−グリコプロテインである単球走化性タンパク質3(MCP−3)を合成したことが記載されている。しかし、糖タンパク質として抗体を用いる場合には、Fcドメインの内側に糖鎖が位置することから、他の糖タンパク質とは異なりEndo−Mによって完全に糖鎖を切断することは難しいと考えられていた。あるいは、抗体以外のタンパク質の糖鎖エンジニアリング手法としてエンドグリコシダーゼのトランスグリコシレーション反応を利用し、糖タンパク質の糖鎖を還元末端のGlcNAcを残して切断してアクセプタータンパク質を生成させた後、付加する目的糖鎖ドナーを残存GlcNAcに転移させることにより目的の糖鎖を有する糖タンパク質を製造する方法が報告されている。本方法は、糖鎖ドナーとして均一糖鎖構造を有する糖鎖を用いることにより、任意の均一糖鎖構造を持つ糖タンパク質を合成する方法が開示されている(特許文献2。糖鎖リモデリング法を用いて均一糖鎖構造を有する糖タンパク質を合成するために、少なくとも、エンドグリコシダーゼ(改変Endo−M等)、オキサゾリン誘導体、ドナー基質の3つの技術が必要だと考えられている。既に、これらの技術を用いて、RNaseBタンパク質に結合するhigh Manを2本鎖複合型に変えた、均一糖鎖構造を持つ糖タンパク質の合成に成功していることが報告されている(非特許文献15)。
しかし、アクセプタータンパク質として抗体を用いる場合には、上述の通りN297が立体構造上Fcドメインの内側に存在するためエンドグリコシダーゼが近寄れないという問題があり、また、GlcNAcにα1−6フコースが付加している場合には、Endo−M等では水解できないという問題から、上述の抗体以外のタンパク質の糖鎖エンジニアリング手法をそのまま適用できないという問題があった。その他、抗体の糖鎖エンジニアリングに関して若干の報告があるものの(非特許文献16)、目的とする糖鎖のみが付いた均一糖鎖構造を持つ抗体の製品としての生産に利用可能な製造方法に関する報告はこれまでにない。
国際特許公開公報WO2013/120066号 国際特許公開公報WO2007/133855号
Shinkawa, Toyohide, et al., J. Biol. Chem., Jan 2003; 278: 3466−3473 Niwa, Rinpei, et al., Cancer Res. 64: 2127−2133(2004) Yamane−Ohnuki, N., et al., Biotechnol Bioeng 87:614−622(2004) Mimura, Y., et al., MoI Immunol 37:697−706(2000) Krapp, S., et al., J MoI Biol 325:979−989(2003) Wu, J., et al., J Clin Invest, 100(5): p. 1059−70(1997) Weng, W.K. and R. Levy, J Clin Oncol, 21(21): p. 3940−7(2003) Weng, W.K., et al., J Clin Oncol, 22(23): p. 4717−24(2004) Lund, J., et al., Eur J Biochem 267:7246−7257(2000) Lifely, M. R., et al., Glycobiology 5:813−822(1995) Umana, P., et al., Nat Biotechnol 17:176−180(1999) Davies, J., et al., Biotechnol Bioeng 74:288−294(2001) J.J.Goodfellow,B.G.Davis et al. J.Am.Chem.Soc.,134,8030−8033(2012) W.Huang,Lai−Xi Wang et al, J.Am.Chem.Soc.,134,12308−12318(2012) W.Huang,Cishan Li et al, J.Am.Chem.Soc.,131,2214−2223(2009) Roy Jefferis,Nature Review 8:226−234(2009)
本発明は長年求められていた均一な糖鎖構造を持つ抗体を高純度で製造することを目的とする。一つの側面において、本発明は均一な糖鎖構造を持つ抗体を製造するための糖鎖切断抗体又はそのFc断片(アクセプター)、例えば、297番目のアスパラギンに結合する糖鎖のうち、アスパラギンに直接結合するN−アセチルグルコサミン以外の糖鎖が切断されたIgG抗体又はそのFc断片を簡便に調製する方法を提供することを目的とする。特に、本発明は、均一な糖鎖構造を持つ抗体を製造するためのアクセプターであって、コアフコースの付加されていない抗体を簡便に調製する方法を提供することを目的とする。また、ある側面において、本発明は均一なヒト型糖鎖構造を持つ糖タンパク質を製造することを可能とすることにより、真に有効な糖鎖構造に関するスクリーニングを可能とすることを目的とする。このような目的を達成するため、本発明は、複数のエンドグリコシダーゼを組み合わせて抗体又はそのFc断片(例えば、動物(細胞)、酵母、昆虫(細胞)により産生させた抗体又はそのFc断片)を処理することにより、アクセプターを簡便に調製する方法を提供するものである。
従来の動物細胞を用いたタンパク質の製造方法により製造された糖タンパク質は、いわゆるコンセンサス配列Asn・X・Ser/Thrを持つタンパク質であっても、Asnに糖鎖が必ず付加するとは限らず、付加する糖鎖の種類や付加される割合等が様々となることから、糖鎖構造を考慮に入れれば数100にも及ぶ化合物の混合物となっていた。これに対し、Chemoenzymaticな手法が提案されており、均一糖鎖構造を持つ抗体の取得が試みられてきた。従来の手法においては、抗体結合糖鎖は基質特異性よりもむしろその立体的な障壁が効率的な切断を阻害する要因であると考えられてきたことから、複数の酵素を用いた切断効率向上の試みは行われてこなかった。Kavitha Baruahら、J.Mol.Biol.(2012)420:1−7においては、血清中のIgGがモノクローナル抗体の細胞表面のFcγレセプターへの結合を阻害することを抑制する目的として、血清中の抗体をエンドグリコシダーゼで処理しており、この中でEndoSとEndoHの2種類のエンドグリコシダーゼを併用しているが、これは、糖鎖切断抗体(アクセプター)の製造を目的としたものではなく、これらによる糖鎖切断効率等の検討もされていない。しかし、本発明者らは、均質なアクセプターを提供するための方法を種々検討した結果、2種類以上の適切なエンドグリコシダーゼの組み合わせを選択して使用することにより、様々な構造を有する糖鎖を極めて効率的に切断することができることを初めて見出した。
よって、一態様において、本発明は、糖鎖が切断された抗体又はそのFc断片(アクセプター)の製造方法であって、該抗体またはそのFcと複数のエンドグリコシダーゼとを反応させることを備える方法に関する。例えば、本発明は、タイプの異なる2種類以上のN結合型糖鎖が不均一に結合した抗体又はそのFc断片(不均一糖鎖結合抗体又はそのFc断片)からアクセプターを製造する方法であって、当該不均一糖鎖結合抗体又はそのFc断片と複数のエンドグリコシダーゼを反応させることを備える方法に関する。
また、本発明者らは、効率的な糖鎖切断のためのエンドグリコシダーゼの組み合わせを決定する方法について様々な検討を行った。これまで、エンドグリコシダーゼによる抗体結合糖鎖の切断特性の解析は、IgGのFc領域をエンドグリコシダーゼで処理した後、そのままLC−ESI MSによって検出する方法(Guozhang Zou et al, J.Am.Chem.Soc.,133,18975−18991(2011);Shu−Quan Fan et al, J.Biol.Chem.,287,11272−11281(2012))、インタクトな抗体をエンドグリコシダーゼで処理した後、抗体の重鎖と軽鎖を分離して、重鎖をLC−ESI MSによって検出する方法(W.Huang,Lai−Xi Wang et al., J.Am.Chem.Soc.,134,12308−12318(2012)、WO2013/12006)等により行われていた。しかし、この方法では検出しているタンパク質の分子量が大きすぎるため、糖鎖(分子量162〜1500)程度の分子量の差がある分子を正確に定量的に識別することはできなかった。また、その他の方法として、抗体に結合した糖鎖をエンドグリコシダーゼによって切断した後に蛍光標識して、切断された糖鎖を検出する方法が知られていた(Kavitha Baruah et al.,J.Mol.Biol.,420:1−7(2012))。この方法は切断された糖鎖を正確に定量的に測定することができるが、抗体に結合(残存)した糖鎖を検出するものではないことから、切断効率の正確な測定には不向きであった。
本発明者らは、より正確な抗体又はそのFc断片への糖鎖結合量の測定方法について鋭意検討した結果、抗体をタンパク質分解酵素で処理して糖ペプチドを生じさせ、当該糖ペプチドを解析することにより、抗体に結合した糖鎖を定量的かつ簡便に解析することができることを見出した。即ち、一態様において本発明は、抗体又はFcに結合する所望の糖鎖構造を有する糖鎖(対象糖鎖)の定量的情報を決定する方法であって、(a)当該抗体又はそのFcをプロテアーゼで処理することを備える、プロテアーゼ処理ステップ、(b)前記プロテアーゼ処理ステップにより得られた糖ペプチドのうち、前記対象糖鎖が結合した糖ペプチドを測定する測定ステップを備える方法に関する。
更に本発明者らは、上記方法により製造した様々な種類の均一な糖鎖構造を持つ抗体について、FcγRIIIaへの結合を測定した結果、糖鎖構造と結合活性には相関性があり、特定の糖鎖構造が優れた結合活性を示すことを見出した。よって、一態様において本発明は、均一な糖鎖構造を持つ抗体、及び当該抗体を有効成分として含有する、ADCC活性により治療可能な疾患を治療するための医薬組成物に関する。または、本発明は、ADCC活性により治療可能な疾患を治療又は予防するための、均一な糖鎖構造を持つ抗体に関する。
本明細書において、「抗体」とは、特定のタンパク質などの分子(抗原)を認識して結合する働きをもつ、リンパ球のうちB細胞の産生する糖タンパク分子であり、物質としては免疫グロブリン(immunoglobulin)(Ig)と呼ばれ、血漿中のγ(ガンマ)グロブリンにあたる。抗体は定常領域の構造の違いにより、いくつかのクラス(アイソタイプ)に分けられる。哺乳類では、定常領域の構造の違いによりIgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類のクラスに分類されるが、本発明の抗体はこれらのいずれの免疫グロブリンクラスであってもよいが、好ましくは、IgGである。ヒトの場合、IgGにはIgG1〜IgG4の4つのサブクラスが、IgAにはIgA1とIgA2の2つのサブクラスがあり、本発明の抗体はこれらのいずれのサブクラスであってもよい。本明細書において「抗体」とは、上述のクラス・サブクラスの総称を意味し、さらに非ヒト抗体(例えば、マウス、ラット、ウサギ等の哺乳動物抗体等)、キメラ抗体(例えば、マウス−ヒトキメラ抗体)、ヒト化抗体、及びヒト型抗体などを含む。また、抗体はモノクローナルであっても、ポリクローナルであってもよい。好ましくは、本明細書における抗体は、高マンノース型、パウチマンノース型、複合型、または混合型でありコアフコースのない、タイプの異なる2種以上のN結合型糖鎖が不均一に結合したIgG抗体である。あるいは、本明細書における抗体は、IgG抗体をコードする遺伝子を導入したカイコにより生産されたIgG抗体であってもよい。例えば、抗体としては、トラスツズマブ及びリツキサンを挙げることができる。
本明細書において抗体の「Fc断片」又は「Fc」とは、抗体の定常領域(Fragment, crystallizable)を意味し、好ましくはジスルフィド結合などにより結合した二量体のFcである。
本明細書において、抗体におけるアミノ酸の番号は、KabatらによるEUインデックス(Kabat et.al.,Sequences of proteins of Immunological Interest,1991 Fifth edition)により示される番号を意味する。
本明細書において「糖鎖」とは、特にそのように解することが不整合である場合を除き、抗体に結合している糖鎖を意味する。抗体には、通常、糖鎖が結合している(抗体結合糖鎖という。抗体に結合している糖鎖を構成する糖の種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルノイラミン酸、及びキシロースを挙げることができる。IgG抗体の場合、297番目のアスパラギンにN−アセチルグルコサミンを介して糖鎖が結合している(N−グリコシド結合糖鎖)。また、哺乳動物細胞などで調製されたIgG抗体の場合、297番目のアスパラギンに結合するN−アセチルグルコサミンにはフコースが結合しており、コアフコースと呼ばれている。糖鎖の構造はある程度限られており、その中のわずかな構造の違いが識別され、精密に認識されて様々な生命現象が制御されている。抗体結合糖鎖は、様々な構造を有しているが(例えば、生物化学実験法23−糖タンパク質糖鎖研究法(学会出版センター)高橋禮子編(1989年)参照)、いずれの場合も下記に示す基本となる共通のコア構造を有する。抗体と結合する糖鎖の末端(下記の構造における右端)を還元末端、反対側(下記の構造における左端)を非還元末端という。還元末端のN−アセチルグルコサミンへのフコースの結合としては、α1,3結合、α1,6結合などがあげられる。
抗体結合糖鎖には、コア構造の非還元末端にマンノースのみが結合するハイマンノース型;コア構造の非還元末端側にガラクトース−N−アセチルグルコサミン(以下、Gal−GlcNAcと称す。)の枝を並行して1ないしは複数本有し、更にGal−GlcNAcの非還元末端側にシアル酸、バイセクティングのN−アセチルグルコサミンなどの構造を有するコンプレックス型;コア構造の非還元末端側にハイマンノース型とコンプレックス型の両方の枝を持つハイブリッド型などが含まれる。具体的な抗体結合糖鎖の糖鎖構造の例を図1に示す。本明細書において、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、GN1、GN2(=G0)、G1a、G1b、G2及びA2とは、図1に示す糖鎖構造を有する糖鎖又は当該糖鎖が結合した抗体を意味する。なお、図1に示す糖鎖構造にはコアフコースが結合していないが、特にそのように解釈することが不整合な場合を除き、本明細書において、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、GN1、GN2(=G0)、G1a、G1b、G2及びA2で示される糖鎖はコアフコースが結合していてもよい。
本明細書において「不均一の糖鎖構造を有する抗体」とは、2種類以上の異なる構造の糖鎖が不均一に結合した抗体を意味する。このような不均一糖鎖結合抗体は、結合する糖鎖が不均一であれば、前述の「抗体」の定義に含まれるいかなる抗体であってもよい。
本明細書において、「均一の糖鎖構造を持つ抗体」又は「均一糖鎖抗体」とは、同義であり、結合している糖鎖構造が同一である抗体を意味する。均一の糖鎖構造を持つ抗体には糖鎖結合部位が2箇所あり、両方に糖鎖が結合したfully glycosylated型、片方に糖鎖が結合したhemi−glycosylated型と糖鎖が結合していないaglycosylated型が存在し(Shiyi Wangら、J.Chromatogr.A1217(2010)6496−6502)、均一(homo)とは、2箇所の糖鎖が同じ糖鎖構造であることを意味する。このような糖鎖構造としては、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9、GN1、GN2(=G0)、G1a、G1b、G2及びA2を挙げることができ、好ましくは、均一の糖鎖構造を持つ抗体は、A2、G2、G0、G1a、G1b、及びM3から選択される1種類の糖鎖が結合した均一糖鎖構造を持つ単離された抗体であり、最も好ましくは、均一の糖鎖構造を持つ抗体は、A2、G2、又はG0の糖鎖が結合した均一糖鎖構造を持つ抗体である。また、均一の糖鎖構造を持つ抗体として、好ましくは、A2、G2、又はG0の糖鎖が結合した均一糖鎖構造を持つトラスツズマブである。また、本発明における抗体としては、実質的に均一の糖鎖構造を持つ抗体からなる複数の抗体(antibodies)を含む。ここで、実質的に均一の糖鎖構造を持つとは、該複数の抗体の糖鎖構造の80%以上(好ましくは、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、99.9%以上)が同一の糖鎖構造であることを意味する。
別の態様において、本発明は、複数の(1を超える分子の)抗体を含有する組成物であって、当該抗体が実質的に同一の糖鎖構造を有する組成物に関する。当該組成物において、抗体はfully glycosylated型とhemi−glycosylated型のいずれでもよく、好ましくは、fully glycosylated型である。実質的に同一の糖鎖構造を有するとは、他の糖鎖構造がまったく存在しないことを必要とするものではなく、目的(例えば、医薬品としての利用など)を達成するために影響を与えない程度の他の糖鎖構造が混入していることを除外するものではない。よって、実質的に同一の糖鎖構造を有するとは、例えば、当該組成物に含まれる目的の抗体に結合する糖鎖のうち、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%の糖鎖が同一であることを含んでいてもよい。
本明細書において、「アクセプター」とは、抗体又はそのFc断片に結合していた糖鎖の一部が切断された抗体又はそのFc断片、あるいは、抗体又はそのFc断片に直接結合するN−アセチルグルコサミン以外の糖鎖が切断された抗体又はそのFc断片(N−アセチルグルコサミンのみが結合した抗体又はそのFc断片)を意味する。特に、抗体がIgGの場合、アクセプターは、297番目のアスパラギンに結合する糖鎖のうち、アスパラギンに直接結合するN−アセチルグルコサミン以外の糖鎖が切断された抗体、又は、297番目のアスパラギンにN−アセチルグルコサミンのみが付加された抗体を意味する。ここで、「N−アセチルグルコサミンのみ」とは、糖鎖の主構造上の糖が結合していないことを意味し、通常、コアフコースの結合の有無は問わない。よって、特に、そのように解釈することが不整合である場合を除き、「アクセプター」は、抗体又はそのFc断片に直接結合するN−アセチルグルコサミンにコアフコースが結合していてもよい。好ましくは、アクセプターは、抗体又はそのFc断片に直接結合するN−アセチルグルコサミンにコアフコースが結合していない。
本発明において、「エンドグリコシダーゼ」とは、グリコシド結合を内側から加水分解する酵素を意味する。すなわち、エンドグリコシダーゼは糖鎖をその内部において切断する酵素を意味する。エンドグリコシダーゼは抗体の糖鎖を切断することができる酵素であれば特に限定されない。好ましくは、本発明のエンドグリコシダーゼは、EC3.2.1.96に分類されるエンドグリコシダーゼである。本発明のエンドグリコシダーゼは、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼD(エンドグリコシダーゼD、Endo−D、endo−D)、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼH(エンドグリコシダーゼH、Endo−H、endo−H)、エンドグリコシダーゼS(EndoS、Endo−S、endo−S)、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼM(エンドグリコシダーゼM、Endo−M、endo−M)、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼLL(エンドグリコシダーゼLL、EndoLL、Endo−LL、endo−LL)、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼF1(エンドグリコシダーゼF1、Endo−F1、endo−F1)、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼF2(エンドグリコシダーゼF2、Endo−F2、endo−F2)、及びエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼF3(エンドグリコシダーゼF3、Endo−F3、endo−F3)を含む。
「ADCC」とは、抗体に覆われた標的が、結合抗体のFc部分を認識するFc受容体を有する細胞により傷害される機構を意味する。「ADCC活性」とは、標的に結合した際にADCCによる細胞障害を引き起こす抗体の持つ能力(活性)を意味する。ADCC活性は、主には抗体のFc領域とFc受容体との結合活性に依存すると考えられている。
「Fc受容体」とは、抗体のFc領域に特異的な受容体であり、FcγRI(CD64)、FcγRII−A(CD32)、FcγRII−B2(CD32)、FcγRII−B1(CD32)、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRIIIb(CD16b)、FcεRI、及びFcαRI(CD89)を含む。Fc受容体は、そのリガンドとなる抗体の種類が知られており、FcγRIは、IgG3、IgG1、及びIgG4と結合し、FcγRIIは、IgG3、IgG1、及びIgG2と結合し、FcγRIIIは、IgG1及びIgG3とほとんどのADCCは細胞表面にFc受容体としてFcγRIIIを有するナチュラルキラー細胞により媒介されることが知られていることから、好ましくは、FcγRIIIである。また、上述のとおり、FcγRIIIaには、複数のバリアントが存在することが知られているが、本明細書におけるFcγRIIIaはこれらのバリアントのいずれであっても良いが、好ましくは、158番目のアミノ酸がバリンであるFcγRIIIa(FcγRIIIa−V158)である。
「ADCC活性により治療可能な疾患」とは、標的に対して抗体が結合し、抗体により被覆された標的細胞をナチュラルキラー細胞等の細胞傷害性細胞が破壊することが治療に利用できる疾患であれば特に限定されるものではなく、利用する抗体の標的に応じて適宜選択することができる。このような疾患としては、例えば、原虫、細菌又はウイルス感染症、がん、寄生虫感染などが挙げられる。抗体がトラスツズマブの場合、対象疾患は、乳癌又は胃癌である。
また別の態様において、本発明は、前記抗体を有効成分として含有する医薬組成物に関する。医薬組成物は、その種類が特に限定されるものではなく、剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、懸濁剤、座剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、吸入剤、注射剤等が挙げられる。これらの製剤は常法に従って調製することができる。また、液体製剤にあっては、用時、水又は他の適当な溶媒に溶解又は懸濁する形であってもよい。また錠剤、顆粒剤は周知の方法でコーティングしてもよい。注射剤の場合には、本発明の化合物を水に溶解させて調製されるが、必要に応じて生理食塩水或いはブドウ糖溶液に溶解させてもよく、また緩衝剤や保存剤を添加してもよい。経口投与用又は非経口投与用の任意の製剤形態で提供される。例えば、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤又は液剤等の形態の経口投与用医薬組成物、静脈内投与用、筋肉内投与用、若しくは皮下投与用などの注射剤、点滴剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、点鼻剤、吸入剤、坐剤などの形態の非経口投与用医薬組成物として調製することができる。注射剤や点滴剤などは、凍結乾燥形態などの粉末状の剤形として調製し、用時に生理食塩水などの適宜の水性媒体に溶解して用いることもできる。
本発明の製造方法によれば、アクセプター抗体を効率的に調製することができる。また、本発明の方法によれば、効率的に糖鎖を切断することができるエンドグリコシダーゼの組み合わせが得られることから、効率的かつ低コストでアクセプター抗体を製造する事ができる。また、本発明の均一糖鎖構造を有する抗体は、Fc受容体との結合能力に優れることから、ADCC活性により治療可能な疾患に対する優れた治療薬を提供することができる。
糖鎖構造の例を示す模式図である。各略号が示す糖は次のとおりである。GlcNAc:N−アセチルグルコサミン、Man:マンノース、Gal:ガラクトース、Sia:シアル酸。 プラスミドEndoLL/pGEX−6P−1の模式図である。 エンドグリコシダーゼ未処理、またはEndoS、EndoLLおよびEndo−Dによるトリプルダイジェスチョン処理後のカイコ絹糸腺産生マウスIgG1のSDS−PAGEの結果を示す写真である。 各種エンドグリコシダーゼによる加水分解反応を行ったカイコ絹糸腺産生マウスIgG1のSDS−PAGEの結果を示す写真である。 カイコ絹糸腺から産生されたマウスIgG1の糖ペプチド断片(Bz−Glu−Glu−Gln−Phe−Asn(Glycan)−Ser−Thr−Phe−Arg)のMSスペクトルを示す。縦軸は強度比、横軸はm/z値を示す。「M2」、「M3」及び「M4」は、それぞれ、パウチマンノース型M2、M3及びM4の糖鎖が結合した、m/z=1992.19、2154.28、及び2316.36を示す。「GN1」及び「GN2」は、それぞれ、複合型GN1及びGN2の糖鎖が結合した、m/z=2357.39及び2560.51を示す。「M5」、「M6」、「M7」、「M8」及び「M9」は、それぞれ、ハイマンノース型M5、M6、M7、M8及びM9の糖鎖が結合した、m/z=2478.44、2640.53、2802.63、2964.72及び3126.84を示す。 種々のエンド酵素(Endo−M,EndoLL,Endo−H,Endo−D,EndoS)処理又は未処理のカイコ絹糸腺産生マウスIgG1の糖ペプチド断片(Bz−Glu−Glu−Gln−Phe−Asn(Glycan)−Ser−Thr−Phe−Arg)のMSスペクトルを示す。 種々のエンド酵素、又はその組み合わせ(Endo−D+EndoS,Endo−D,EndoS)処理又は未処理のカイコ絹糸腺産生マウスIgG1の糖ペプチド断片(Bz−Glu−Glu−Gln−Phe−Asn(Glycan)−Ser−Thr−Phe−Arg)のMSスペクトルを示す。 種々のエンド酵素、又はその組み合わせ(Endo−M+Endo−D,Endo−M+EndoS,Endo−D+Endo−H,EndoS+Endo−H,Endo−D+EndoLL,EndoS+EndoLL)処理又は未処理のカイコ絹糸腺産生マウスIgG1の糖ペプチド断片(Bz−Glu−Glu−Gln−Phe−Asn(Glycan)−Ser−Thr−Phe−Arg)のMSスペクトルを示す。 種々のエンド酵素、又はその組み合わせ(Endo−F1,Endo−F2,Endo−F3,Endo−F1+Endo−F2,Endo−F1+Endo−F3,Endo−F2+Endo−F3)処理又は未処理のカイコ絹糸腺産生マウスIgG1の糖ペプチド断片(Bz−Glu−Glu−Gln−Phe−Asn(Glycan)−Ser−Thr−Phe−Arg)のMSスペクトルを示す。 種々のエンド酵素、又はその組み合わせ(EndoS,Endo−H,Endo−M,EndoLL,Endo−D,及びEndo−D+EndoS)処理又は未処理のカイコ絹糸腺産生マウスIgG1 10μg当たりの各糖鎖構造の抗体結合糖鎖の量(pmol)を示すグラフである。黒色の棒グラフは、エンドグリコシターゼ処理前の各糖鎖構造の糖鎖量を示し、灰色の棒グラフは各エンドガグリコシダーゼ処理後の各糖鎖構造の糖鎖量を示す。縦軸は、pmol/10μgIgG1を示し、横軸は糖鎖構造を示す。表内のパーセンテージは、残存する糖鎖量を示す。 種々のエンド酵素、又はその組み合わせ(EndoS+EndoLL,Endo−D+EndoLL,Endo−D+Endo−H,EndoS+Endo−H,EndoS+Endo−M,Endo−D+Endo−M,Endo−F1,及びEndo−F2)処理又は未処理のカイコ絹糸腺産生マウスIgG1 10μg当たりの各糖鎖構造の抗体結合糖鎖の量(pmol)を示すグラフである。黒色の棒グラフは、エンドグリコシターゼ処理前の各糖鎖構造の糖鎖量を示し、灰色の棒グラフはエンドグリコシダーゼ処理後の各糖鎖構造の糖鎖量を示す。縦軸は、pmol/10μgIgG1を示し、横軸は糖鎖構造を示す。表内のパーセンテージは、残存する糖鎖量を示す。 種々のエンド酵素、又はその組み合わせ(Endo−F3,Endo−F1+Endo−F2,Endo−F1+Endo−F3,及びEndo−F2+Endo−F3)処理又は未処理のカイコ絹糸腺産生マウスIgG1 10μg当たりの各糖鎖構造の抗体結合糖鎖の量(pmol)を示すグラフである。黒色の棒グラフは、エンドグリコトシターゼ処理前の各糖鎖構造の糖鎖量を示し、灰色の棒グラフはエンドグリコシダーゼ処理後の各糖鎖構造の糖鎖量を示す。縦軸は、pmol/10μgIgG1を示し、横軸は糖鎖構造を示す。表内のパーセンテージは、残存する糖鎖量を示す。 エンドグリコシダーゼ未処理、またはEndoS、EndoLLおよびEndo−Dによるトリプルダイジェスチョン処理を行ったカイコ絹糸腺産生マウストラスツズマブのSDS−PAGEの結果を示す写真である。 エンドグリコシダーゼ各種による加水分解反応を行ったカイコ絹糸腺産生トラスツズマブのSDS−PAGEの結果を示す写真である。 カイコ絹糸腺から産生されるトラスツズマブの糖ペプチド(Bz−Glu−Glu−Gln−Tyr−Asn(Glycan)−Ser−Thr−Tyr−Arg)のMSスペクトルを示す。 種々のエンド酵素又はその組み合わせ(EndoS,Endo−D,Endo−H,Endo−M,及びEndo−D+EndoS)処理又は未処理のカイコ絹糸腺産生トラスツズマブのMSスペクトルを示す。 種々のエンド酵素又はその組み合わせ(EndoS,Endo−D,Endo−H,Endo−M,及びEndo−D+EndoS)処理又は未処理のカイコ絹糸腺産生トラスツズマブ10μg当たりの各糖鎖構造の抗体結合糖鎖の量(pmol)を示すグラフである。黒色の棒グラフは、エンドグリコシターゼ処理前の各糖鎖構造の糖鎖量を示し、灰色の棒グラフはエンドグリコシダーゼ処理後の各糖鎖構造の糖鎖量を示す。縦軸は、pmol/10μgIgG1を示し、横軸は糖鎖構造を示す。表内のパーセンテージは、残存する糖鎖量を示す。 糖鎖を改変したカイコ絹糸腺産生トラスツズマブのSDS−PAGE像の写真である。 AKTA−FPLCシステムで分離精製したカイコ絹糸腺産生トラスツズマブのSDS−PAGE像の写真である。 カイコ絹糸腺産生したトラスツズマブにA2糖鎖を付加させた糖鎖改変抗体の精製のクロマトグラムを示す。縦軸は、UV吸収強度を示す。点線は、塩のグラジェントを示す。 カイコ絹糸腺産生したトラスツズマブにA2糖鎖を付加させた糖鎖改変抗体の精製前と精製後のHPLCプロファイルを示す。 精製後の糖鎖改変抗体(A2体、G2体、G0体、M3体)とカイコ絹糸腺産生トラスツズマブ由来の糖ペプチドのMSスペクトルを示す。 糖鎖改変抗体(A2体、G2体、G0体、及びM3体)、糖鎖改変していない抗体(Intact体)、糖鎖切断した抗体(aglycon体)、並びに、CHO細胞で作成されたトラスツズマブ(CHO体)とFcγRIIIa−V158との結合試験の結果を示すグラフである。(縦軸:OD450nm、横軸:タンパク濃度(μg/ml)) 糖鎖改変抗体(A2体、G2体、G0体、及びM3体)並びに改変していない抗体(Intact体)、糖鎖切断した抗体(aglycon体)、CHO細胞で作成されたトラスツズマブ(CHO体)のSKBR−3をターゲット細胞とした時のADCCリポーター試験の結果を示すグラフである。(縦軸:ルシフェラーゼ活性:発光量(RLU)、横軸:タンパク濃度(μg/ml)) 糖鎖改変抗体(A2体、G2体、G0体、及びM3体)並びに改変していない抗体(Intact体)、糖鎖切断した抗体(aglycon体)、CHO細胞で作成されたトラスツズマブ(CHO体)のBT−474をターゲット細胞とした時のADCCリポーター試験の結果を示すグラフである。(縦軸:ルシフェラーゼ活性:発光量(RLU)、横軸:タンパク濃度(μg/ml))
<抗体の製造方法>
抗体は、当業者周知の遺伝子組換え技術により作製することができる。すなわち、抗体遺伝子を挿入した抗体発現ベクターを、カイコ、酵母等へ導入することにより取得することができる。例えば、抗体は次の方法で得ることができる。抗体の重鎖および軽鎖のcDNAを単離し、BmNPVポリヘドリンの5’非翻訳領域配列(特開2008−125366)を含むプライマーを用いたPCRを行うことにより、重鎖および軽鎖cDNAの5′末端にBmNPVポリヘドリンの5’非翻訳領域配列を付加する。得られた抗体の重鎖cDNAを、カイコ形質転換用ベクターpMSG3.1MG(特開2012−182995)のNruIサイトに挿入し、次いで、Eco47IIIサイトに軽鎖cDNAを挿入して、抗体cDNAをカイコに組み込むためのプラスミドベクターを完成させる。
得られたプラスミドベクターをPlasmid Midi Kit(QIAGEN)で精製した後、ヘルパープラスミドであるpHA3PIG(Nat.Biotechnol.18,81−84(2000))とプラスミド量が1:1になるように混合し、さらにエタノール沈殿を行った後、DNA濃度が10〜1000μg/mlなるようにインジェクションバッファー(0.5mMリン酸バッファーpH7.0,5mM KCl)に溶解する。このベクター混合液を、産卵後2〜8時間の前胚盤葉期のカイコ卵(カイコ胚)に、一つの卵あたり約1〜200nlの液量で微量注入する。ベクターDNAを微量注入した卵を約25℃でインキュベートし、孵化したカイコを飼育し、得られた生殖可能な成虫を交配し、F1世代の卵塊を得る。産卵日から3〜10日目のF1卵塊のうち、眼や神経系から緑色蛍光を発するトランスジェニックカイコの卵を選択して孵化させ、抗体cDNAが組み込まれたトランスジェニックカイコを樹立する。
得られたトランスジェニックカイコを、BmNPV由来のトランスアクチベーターであるIE1遺伝子を発現するカイコ(特開2012−182995)と交配し、得られたF2世代のカイコから、抗体cDNAとIE1遺伝子の両方を有するカイコを選別し、これらのカイコを飼育して繭を作らせる。抗体cDNAとIE1遺伝子を有するカイコの繭を、抽出バッファー(PBS,0.1% TritonX−100,0.5M NaCl)に浸漬し、30分間室温で撹拌して繭抽出液を調製する。抽出液を0.45μmのフィルターで濾過し、プロテインGカラム(ProteinG Sepharose4 Fast Flow,GEヘルスケア)に供する。0.1Mグリシン(pH2.7)で溶出させ、溶液に1M Tris(pH9.0)を加えて中和し、最後にPBSに対して透析する。
また、抗体のFc断片は、当業者周知の様々な方法で調製することができ、例えば、上述の方法により得られた抗体をパパイン処理することにより、得ることができる。
<抗体結合糖鎖の定量方法>
一態様において、本発明は、抗体又はそのFc断片に結合する所望の糖鎖構造を有する糖鎖(対象糖鎖)の定量的情報を決定する方法であって、(a)当該抗体又はそのFc断片をプロテアーゼで処理することを備える、プロテアーゼ処理ステップ、及び、(b)前記プロテアーゼ処理ステップにより得られた糖ペプチドのうち、前記対象糖鎖が結合した糖ペプチドを測定することを備える、測定ステップを備える方法に関する。
本発明の方法は、特に、エンドグリコシダーゼによる糖鎖切断後に残存する抗体結合糖鎖の定量的な情報を得る目的で用いることができる。すなわち、本発明は、所望のエンドグリコシダーゼで処理された抗体又はそのFc断片に結合する所望の糖鎖構造を有する糖鎖(対象糖鎖)の定量的情報を決定する方法であって、(a)前記抗体又はそのFc断片をエンドグリコシダーゼと反応させることを備える、反応ステップ、(b)反応ステップ後の前記抗体又はそのFc断片をプロテアーゼで処理することを備える、プロテアーゼ処理ステップ、(c)前記プロテアーゼ処理ステップにより得られた糖ペプチドのうち、前記対象糖鎖が結合した糖ペプチドを測定することを備える、測定ステップ、及び、対象糖鎖を有する糖ペプチドの測定値から前記エンドグリコシダーゼで処理された抗体又はそのFcに結合する対象糖鎖の定量的情報を決定することを備える、決定ステップを備える方法に関する。
前記抗体結合糖鎖の定量方法において、「対象糖鎖」とは、抗体又はそのFc断片に結合する所望の糖鎖構造を有する糖鎖であって、その定量的情報を取得する対象となる糖鎖を意味する。対象糖鎖は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。対象糖鎖が2種類以上の場合、異なる構造の糖鎖を同時に又は別々に測定してその定量的情報を決定することができる。また、前記抗体結合糖鎖の定量方法において、「定量的情報」とは、抗体に結合(又はエンドグリコシダーゼにより切断されずに残存)している糖鎖の量に関する情報を意味する。「定量的情報」は、量の指標となり得る情報であれば特に制限されず、(絶対的な)量を意味してもよいし、閾値やコントロールに基づく数値や割合などの相対的な数値、又は段階的評価(多い〜少ないに関する)を意味してもよい。「定量的情報」は通常、1種類の対象糖鎖に関する量に関する情報を意味するが、対象糖鎖が2種類以上の場合には、それぞれの糖鎖に関する定量的情報であってもよいし、当該2種類以上の全ての糖鎖に関する定量的情報であってもよい(例えば、総抗体結合糖鎖量等)。
前記「プロテアーゼ処理ステップ」で用いるプロテアーゼとしては、抗体を切断可能でかつ抗体に結合する糖鎖構造に影響を与えないプロテアーゼであれば特に限定されない。例えば、プロテアーゼとしては、トリプシンを挙げることができる。プロテアーゼによる処理は、使用するプロテアーゼの種類、至適条件(pH、温度など)に応じて、当業者周知の方法により適宜行うことができる。また、抗体又はそのFc断片エンドグリコシダーゼと反応させる「反応ステップ」は、使用するエンドグリコシダーゼの種類、至適条件(pH、温度など)に応じて、当業者周知の方法により適宜行うことができる。たとえば、エンドグリコシダーゼによる処理は、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0〜8.0)中の抗体又はそのFc断片にエンドグリコシダーゼを加え、37℃で1〜30時間静置することで行うことができる。「反応ステップ」では、1種類のエンドグリコシダーゼを使用することもできるし、2種類以上のエンドグリコシダーゼを組み合わせて使用することもできる。また、前記「測定ステップ」における糖ペプチドの測定は、後述の方法により行うことができる。
また、抗体又はそのFc断片に結合する所望の糖鎖構造を有する糖鎖(対象糖鎖)の定量的情報の決定は、定量的情報の性質及び測定ステップで用いる測定方法に応じて、測定ステップにより得られた測定値を基にして定量的情報を決定することにより行うことができる。例えば、定量的情報の決定は、測定ステップにより得られた測定値(蛍光強度等の測定値そのもの、又は、測定の結果算出された糖鎖結合抗体量)をそのまま定量的情報として決定することにより行うことができる。あるいは、定量的情報の決定は、測定ステップにより得られた測定値を基にして、適宜計算、あるいは評価又は分類することにより行うことができる。例えば、定量的情報の決定は、使用した総抗体量に占める、対象糖鎖結合抗体量の割合として決定してもよいし、対象糖鎖結合抗体量が特定の閾値を超える/越えない量であるか否かとして決定してもよい。あるいは、定量的情報の決定は、コントロール抗体又はそのFc断片における糖鎖結合量に対する評価抗体の糖鎖結合量の割合や、コントロール抗体又はそのFc断片における糖鎖結合量と、評価抗体の糖鎖結合量との差としてもよい。
対象糖鎖を有する糖ペプチドは、前記エンドグリコシダーゼで処理された抗体又はそのFcに由来することから、当該抗体又はそのFcに結合する糖鎖をそのまま有する。よって、対象糖鎖を有する糖ペプチドの量は、対象糖鎖を有する前記エンドグリコシダーゼで処理された抗体又はそのFcの量を反映している。対象糖鎖を有する糖ペプチドの測定値から前記エンドグリコシダーゼで処理された抗体又はそのFcに結合する対象糖鎖の定量的情報を決定することを備える、決定ステップは、対象糖鎖を有する糖ペプチドの測定値をそのまま前記エンドグリコシダーゼで処理された抗体又はそのFcに結合する対象糖鎖の定量的情報としてもよいし、対象糖鎖を有する糖ペプチドの測定値を基に、前記エンドグリコシダーゼで処理された抗体又はそのFcに結合する対象糖鎖の定量的情報を計算により求めてもよい。例えば、対象糖鎖を有する糖ペプチドの測定値が量である場合、当該量はそのまま前記エンドグリコシダーゼで処理された抗体又はそのFcに結合する対象糖鎖の量として決定することができる。
<抗体結合糖鎖の切断量に関する情報の決定方法>
一態様において、本発明はエンドグリコシダーゼによる抗体結合糖鎖の切断量に関する情報を決定する方法に関する。具体的には、本発明は、
抗体又はFcに結合する糖鎖であって、所望の糖鎖構造を有する1種類の糖鎖である対象糖鎖の、エンドグリコシダーゼ処理による、切断量に関する情報を決定する方法であって、
(a)前記抗体又はそのFcをエンドグリコシダーゼと反応させることを備える、反応ステップ、
(b)エンドグリコシダーゼと反応させた前記抗体又はそのFcをプロテアーゼで処理して糖ペプチドを生成させることを備える、プロテアーゼ処理ステップ
(c)エンドグリコシダーゼと反応させていない前記抗体又はそのFcをプロテアーゼで処理して糖ペプチドを生成させることを備える、プロテアーゼ処理ステップ、
(d)前記プロテアーゼ処理ステップにおいて、エンドグリコシダーゼと反応させた前記抗体又はそのFcをプロテアーゼで処理することにより得られた糖ペプチドであって、前記対象糖鎖が結合した糖ペプチドを定量することを備える、定量ステップ、
(e)前記プロテアーゼ処理ステップにおいて、エンドグリコシダーゼと反応させていない前記抗体又はそのFcをプロテアーゼで処理することにより得られた糖ペプチドであって、前記対象糖鎖が結合した糖ペプチドを定量することを備える、定量ステップ、及び、
(f)エンドグリコシダーゼと反応させた前記抗体又はそのFcについて前記定量ステップで得られた定量値、及びエンドグリコシダーゼと反応させていない前記抗体又はそのFcについて前記定量ステップで得られた定量値から、前記エンドグリコシダーゼ処理による前記対象糖鎖の切断量に関する情報を決定することを備える、決定ステップを備える方法に関する。
別の態様において、本発明の抗体結合糖鎖の切断量に関する情報の決定方法は、不均一の糖鎖構造を有する抗体における2種類以上の対象糖鎖に関する切断量に関する情報を決定する方法であってもよい。よって、本発明は、
エンドグリコシダーゼ処理による、不均一の糖鎖構造を有する抗体又はそのFcに結合する糖鎖であって、所望の糖鎖構造を有する糖鎖である2種類以上の対象糖鎖のそれぞれの切断量に関する情報を決定する方法であって、
(a)前記抗体又はそのFcをエンドグリコシダーゼと反応させることを備える、反応ステップ、
(b)エンドグリコシダーゼと反応させた前記抗体又はそのFcをプロテアーゼで処理して糖ペプチドを生成させることを備える、プロテアーゼ処理ステップ、
(c)エンドグリコシダーゼと反応させていない前記抗体又はそのFcをプロテアーゼで処理して糖ペプチドを生成させることを備える、プロテアーゼ処理ステップ、
(d)前記プロテアーゼ処理ステップにおいて、エンドグリコシダーゼと反応させた前記抗体又はそのFcをプロテアーゼで処理することにより得られた糖ペプチドであって、前記対象糖鎖が結合した糖ペプチドを定量することを備える、定量ステップ、
(e)前記プロテアーゼ処理ステップにおいて、エンドグリコシダーゼと反応させていない前記抗体又はそのFcをプロテアーゼで処理することにより得られた糖ペプチドであって、前記対象糖鎖が結合した糖ペプチドを定量することを備える、定量ステップ、
(f)それぞれの対象糖鎖について、エンドグリコシダーゼと反応させた前記抗体又はそのFcについて前記定量ステップ得られた定量値、及びエンドグリコシダーゼと反応させていない前記抗体又はそのFcについて前記定量ステップで得られた定量値から、前記エンドグリコシダーゼによるそれぞれの対象糖鎖の切断量に関する情報を決定することを備える、決定ステップを備える方法。
を含む。
前記抗体結合糖鎖の切断量に関する情報の決定方法において、「エンドグリコシダーゼによる抗体結合糖鎖の切断量に関する情報」とは、抗体結合糖鎖のエンドグリコシダーゼにより切断された量の指標となり得る情報であれば特に限定されず、(絶対的な)切断量を意味してもよいし、閾値やコントロールに基づく数値や割合などの相対的な数値、又は段階的評価(多い〜少ないに関する)を意味してもよい。対象糖鎖が2種類以上の場合には、「定量的情報」はそれぞれの糖鎖に関する定量的情報であってもよいし、当該2種類以上の全ての糖鎖に関する定量的情報であってもよい(例えば、総切断量等)。あるいは、「定量的情報」は、2種類以上の糖鎖構造を有する糖鎖について、それぞれの糖鎖の切断量に関する定量的情報の集合である「糖鎖切断パターン」としてもよい。
上述の「抗体結合糖鎖の定量方法」における「プロテアーゼ処理ステップ」、「反応ステップ」、及び「測定ステップ」に関する説明は、そのまま「抗体結合糖鎖の切断量に関する情報の決定方法」にも適用される。なお、「抗体結合糖鎖の切断量に関する情報の決定方法」における、エンドグリコシダーゼと反応させていない前記抗体又はそのFcの「プロテアーゼ処理ステップ」及び/又は「測定ステップ」とエンドグリコシダーゼと反応させていない前記抗体又はそのFcの「プロテアーゼ処理ステップ」及び/又は「測定ステップ」は同時に行っても良いし、異なるタイミングで別々に行っても良い。また、上述の「抗体結合糖鎖の定量方法」は、エンドグリコシダーゼと反応させていない前記抗体又はそのFcの「プロテアーゼ処理ステップ」及び/又は「測定ステップ」を含んでいなくても良く、その代わりに、既に得られている「エンドグリコシダーゼと反応させていない前記抗体又はそのFcについて前記定量ステップで得られた定量値」を決定ステップにおいて用いても良い。
また、抗体又はそのFc断片に結合する所望の糖鎖構造を有する糖鎖(対象糖鎖)のエンドグリコシダーゼによる切断量に関する情報の決定は、切断量に関する情報の性質及び測定ステップで用いる測定方法に応じて、測定ステップにより得られた測定値を基にして切断量を算出することにより決定することができる。例えば、切断量に関する情報の決定は、測定ステップにより得られた測定値(蛍光強度等の測定値そのもの、又は、測定の結果算出された糖鎖結合抗体量)を基に、エンドグリコシダーゼ処理/未処理の割合又は差((エンドグリコシダーゼ未処理群で得られた測定値)−(エンドグリコシダーゼ処理群で得られた測定値))として計算して決定することができる。あるいは、切断量に関する情報の決定は、測定ステップにより得られた測定値を基にして、評価又は分類することにより行うことができる。例えば、切断量に関する情報の決定は、対象糖鎖切断のエンドグリコシダーゼ処理/未処理の割合又は差が特定の閾値を超える/越えない量であるか否かとして決定してもよい。
特に、2種類以上の糖鎖構造を有する糖鎖を対象糖鎖とする場合、各々の糖鎖構造を有する糖鎖について、エンドグリコシダーゼ処理/未処理の割合又は差((エンドグリコシダーゼ未処理群で得られた測定値)−(エンドグリコシダーゼ処理群で得られた測定値))を計算し、これらの情報の集合としてエンドグリコシダーゼによる切断量に関する情報(切断パターン)を決定することができる。
<アクセプターの調製に用いるエンドグリコシダーゼの組み合わせの決定方法>
更なる態様において、本発明は、アクセプターの調製方法に使用するための、2種類以上のエンドグリコシダーゼの組み合わせを決定する方法に関する。具体的には、本発明は、 抗体に結合した糖鎖を切断するために使用するのに適した2種類以上のエンドグリコシダーゼの組み合わせを決定する方法であって、
上述の抗体結合糖鎖の切断量に関する情報の決定方法を用いて不均一の糖鎖構造を有する抗体又はそのFcに結合する糖鎖であって、所望の糖鎖構造を有する2種類以上の対象糖鎖のエンドグリコシダーゼによる切断量に関する情報を決定するステップ、
得られた対象糖鎖のエンドグリコシダーゼによる切断量に関する情報から、相補的な糖鎖切断を示す2種類以上のエンドグリコシダーゼの組み合わせを選択するステップ、及び、
選択された2種類以上のエンドグリコシダーゼを前記抗体に結合した糖鎖を切断するために使用するのに適したエンドグリコシダーゼの組み合わせとして決定するステップを備える方法に関する。
アクセプターの調製に用いるエンドグリコシダーゼの組み合わせの決定方法において、「相補的な糖鎖切断を示す2種類以上のエンドグリコシダーゼの組み合わせを選択するステップ」は、ある1種類以上の糖鎖構造を有する糖鎖(「候補切断糖鎖」という)の切断量が多く、別の1種類以上の糖鎖構造を有する糖鎖(「候補非切断糖鎖」という)の切断量が少ない候補エンドグリコシダーゼに対し、候補非切断糖鎖の切断量が多いエンドグリコシダーゼを相補的エンドグリコシダーゼとして選択し、該候補エンドグリコシダーゼと該相補的エンドグリコシダーゼとの組み合わせを「相補的な糖鎖切断を示す2種類以上のエンドグリコシダーゼの組み合わせ」として選択することにより行うことができる。また、「選択された2種類以上のエンドグリコシダーゼを前記抗体に結合した糖鎖を切断するために使用するのに適したエンドグリコシダーゼの組み合わせとして決定するステップ」は、前記候補エンドグリコシダーゼと相補的エンドグリコシダーゼの組み合わせを前記抗体に結合した糖鎖を切断するために使用するのに適した組み合わせとして決定することにより行うことができる。エンドグリコシダーゼの選択及び組み合わせの決定において、候補エンドグリコシダーゼとして複数のエンドグリコシダーゼを選択するか、あるいは、相補的エンドグリコシダーゼとして複数のエンドグリコシダーゼを選択することにより、3種類以上のエンドグリコシダーゼの組み合わせを決定することもできる。また、候補エンドグリコシダーゼと相補的エンドグリコシダーゼの組み合わせとして、2通り以上の組み合わせを決定してもよい。最初に選択する候補エンドグリコシダーゼは、所望のエンドグリコシダーゼを選択することができるが、好ましくは、抗体結合糖鎖の切断量が多いエンドグリコシダーゼである。エンドグリコシダーゼによる抗体結合糖鎖の切断量は、上述の抗体結合糖鎖の切断量に関する情報の決定方法に記載された方法により決定することができる。
あるいは、「相補的な糖鎖切断を示す2種類以上のエンドグリコシダーゼの組み合わせを選択するステップ」は、各々のエンドグリコシダーゼについて得られた複数の糖鎖構造に関する糖鎖切断パターンを比較し、糖鎖切断パターンが相補的となるようなエンドグリコシダーゼの組み合わせを決定することにより行ってもよい。
また、アクセプターの調製に用いるエンドグリコシダーゼの組み合わせの決定方法は、更に、相補的な糖鎖切断を示す2種類以上のエンドグリコシダーゼの2通り以上の組み合わせを決定し、その後、当該エンドグリコシダーゼの2通り以上の組み合わせのそれぞれをエンドグリコシダーゼとして用いて上述の「抗体結合糖鎖の切断量に関する情報の決定方法」を行うことで、当該エンドグリコシダーゼの2通り以上の組み合わせのそれぞれについて所望の種類の糖鎖構造を持つ糖鎖の糖鎖切断量に関する情報を決定し、決定された踏査切断料に関する情報を比較することにより、アクセプターの調製に用いるエンドグリコシダーゼの組み合わせを決定してもよい。すなわち、前記方法は、更に、前記相補的な糖鎖切断を示す2種類以上のエンドグリコシダーゼによる対象糖鎖の糖鎖切断量に関する情報を決定するステップ(本ステップは、必要に応じて、前記相補的な糖鎖切断を示す2種類以上のエンドグリコシダーゼを用いた反応ステップ、プロテアーゼ処理ステップ、及び/又は定量ステップを含む)、及び、前記相補的な糖鎖切断を示す2種類以上のエンドグリコシダーゼの2通り以上の組み合わせのうち、対象糖鎖の糖鎖切断量が多い組み合わせをアクセプターの調製に用いるエンドグリコシダーゼの組み合わせとして決定するステップを備える方法であってもよい。ここで、「対象糖鎖の糖鎖切断量が多い」とは、1種類以上の対象糖鎖の総切断量又は全ての結合糖鎖の総切断量が多いことを意味する。
より具体的には、本発明のアクセプターの調製に用いるエンドグリコシダーゼの組み合わせの決定方法は、次の方法であってもよい。抗体に結合した糖鎖を切断するために使用するのに適した2種類以上のエンドグリコシダーゼの組み合わせを決定する方法であって、
上述の抗体結合糖鎖の切断量に関する情報の決定方法を用いて不均一の糖鎖構造を有する抗体又はそのFcに結合する糖鎖であって、所望の糖鎖構造を有する2種類以上の対象糖鎖のエンドグリコシダーゼによる切断量に関する情報を決定するステップ、
得られた対象糖鎖のエンドグリコシダーゼによる切断量に関する情報から、相補的な糖鎖切断を示す2種類以上のエンドグリコシダーゼの2通り以上の組み合わせを選択するステップ、及び、
選択された2種類以上のエンドグリコシダーゼの2通り以上の組み合わせのそれぞれについて、上述の抗体結合糖鎖の切断量に関する情報の決定方法を用いて対象糖鎖の切断量に関する情報を決定するステップ、及び、
前記対象糖鎖の切断量に関する情報を比較することにより、抗体に結合した糖鎖を切断するために使用するのに適した2種類以上のエンドグリコシダーゼの組み合わせを決定するステップを備える方法であってもよい。
上述において「対象糖鎖の切断量に関する情報」は、切断パターンとすることもできるし、1種類以上の対象糖鎖の総切断量又は全ての結合糖鎖の総切断量とすることもできる。この場合、抗体に結合した糖鎖を切断するために使用するのに適した2種類以上のエンドグリコシダーゼの組み合わせを決定するステップは、例えば、本方法を行った2種類以上のエンドグリコシダーゼの組み合わせのそれぞれから得られた、全ての糖鎖の総切断量、エンドグリコシダーゼ未処理抗体又はそのFc断片において結合量の多い(1種類以上の)糖鎖の総切断量、あるいは、目的とする特定の(1種類以上の)標的糖鎖の総切断量を比較し、前記総切断量が多い組み合わせ、エンドグリコシダーゼ未処理抗体又はそのFc断片において結合量の多い(1種類以上の)糖鎖の総切断量が多い組み合わせ、あるいは、目的とする特定の(1種類以上の)標的糖鎖の総切断量が多い組み合わせを抗体に結合した糖鎖を切断するために使用するのに適した2種類以上のエンドグリコシダーゼの組み合わせとして決定することにより行うことができる。
特に、前記決定ステップが総切断量を指標とする場合、本発明の方法は、更に、前記相補的な糖鎖切断を示す2種類以上のエンドグリコシダーゼによる全ての糖鎖の/1種類以上の対象糖鎖の/エンドグリコシダーゼ未処理抗体又はそのFc断片において結合量の多い(1種類以上の)糖鎖の切断量に関する情報を決定するステップ、及び、前記相補的な糖鎖切断を示す2種類以上のエンドグリコシダーゼによる総切断量が多い2種類以上のエンドグリコシダーゼの組み合わせを前記抗体に結合した糖鎖を切断するためのエンドグリコシダーゼの組み合わせとして決定するステップを備えることができる。
<糖ペプチドの測定方法>
前記プロテアーゼ処理ステップにより得られた糖ペプチドのうち、各糖鎖構造を有する糖ペプチドを定量する定量ステップは、マススペクトルにより行うことができる。
抗体結合糖鎖の組成は、トリフルオロ酢酸等で、糖鎖の酸加水分解を行うことにより、中性糖またはアミノ糖を遊離し、その組成比を分析することもできる。具体的な方法として、Dionex社製糖組成分析装置(BioLC)を用いる方法が挙げられる。BioLCはHPAEC−PAD(high performance anion−exchange chromatography−pulsed amperometricdetection)法[ジャーナル・オブ・リキッド・クロマトグラフィー(J.Liq.Chromatogr.),6,1577(1983)]によって糖組成を分析する装置である。また、2−アミノピリジンによる蛍光標識化法でも組成比を分析することができる。具体的には、公知の方法[アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agric.Biol.Chem.),55(1),283−284(1991)]に従って酸加水分解した試料を2−アミノピリジル化で蛍光ラベル化し、HPLC分析して組成比を算出することができる。
また、抗体の糖鎖の構造解析は、2次元糖鎖マップ法[アナリティカル・バイオケミストリー(Anal.Biochem.),171,73(1988)、生物化学実験法23−糖タンパク質糖鎖研究法(学会出版センター)高橋禮子編(1989年)]により行うこともできる。2次元糖鎖マップ法は、例えば、X軸には逆相クロマトグラフィー糖鎖の保持時間または溶出位置を、Y軸には順相クロマトグラフィーによる糖鎖の保持時間または溶出位置を、それぞれプロットし、既知糖鎖のそれらの結果と比較することにより、糖鎖構造を推定する方法である。
具体的には、抗体をヒドラジン分解して、抗体から糖鎖を遊離し、2−アミノピリジン(以下、PAと略記する)による糖鎖の蛍光標識[ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J.Biochem.),95,197(1984)]を行った後、ゲルろ過により糖鎖を過剰のPA化試薬などと分離し、逆相クロマトグラフィーを行う。次いで、分取した糖鎖の各ピークについて順相クロマトグラフィーを行う。これらの結果をもとに、2次元糖鎖マップ上にプロットし、糖鎖スタンダード(TaKaRa社製)、文献[アナリティカル・バイオケミストリー(Anal.Biochem.),171,73(1988)]とのスポットの比較より糖鎖構造を推定することができる。さらに各糖鎖のMALDI−TOF−MSなどの質量分析を行い、2次元糖鎖マップ法により推定される構造を確
認することができる。
<アクセプターの調製方法>
別の態様において、本発明は、抗体に結合した糖鎖を切断してアクセプターを製造する方法に関する。具体的には、本発明は、糖鎖が切断された抗体(例えば、IgG抗体の場合、297番目のアスパラギンに結合する糖鎖のうち、N−アセチルグルコサミン以外の糖鎖が切断された抗体)の製造方法であって、抗体と複数のエンドグリコシダーゼとを反応させることを備える方法に関する。ここで、複数のエンドグリコシダーゼは、エンドグリコシダーゼD,エンドグリコシダーゼH,エンドグリコシダーゼS、エンドグリコシダーゼM、エンドグリコシダーゼLL、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、及びエンドグリコシダーゼF3からなる群から選択される2種類以上のエンドグリコシダーゼであってもよい。
本発明の方法において用いる2種類以上のエンドグリコシダーゼの組み合わせは、エンドグリコシダーゼの所望の組み合わせを含むことができる。例えば、複数のエンドグリコシダーゼが、EC3.2.1.96に分類される基質特異性の異なるエンドグリコシダーゼの組み合わせとすることができる。好ましくは、エンドグリコシダーゼの組み合わせは後述の方法によって決定される組み合わせである。例えば、本発明の方法において用いる2種類以上のエンドグリコシダーゼの組み合わせとしては、以下の組み合わせを挙げることができる:
(i)エンドグリコシダーゼDとエンドグリコシダーゼS
(ii)エンドグリコシダーゼSとエンドグリコシダーゼLL
(iii)エンドグリコシダーゼDとエンドグリコシダーゼLL
(iv)エンドグリコシダーゼDとエンドグリコシダーゼH
(v)エンドグリコシダーゼSとエンドグリコシダーゼH
(vi)エンドグリコシダーゼF1とエンドグリコシダーゼF2
(vii)エンドグリコシダーゼF1とエンドグリコシダーゼF3
(viii)エンドグリコシダーゼF2とエンドグリコシダーゼF3
(iX)エンドグリコシダーゼDとエンドグリコシダーゼSとエンドグリコシダーゼLL
(X)エンドグリコシダーゼDとエンドグリコシダーゼSとエンドグリコシダーゼH
(Xi)エンドグリコシダーゼDとエンドグリコシダーゼSとエンドグリコシダーゼF1
一態様において、本発明は、タイプの異なる2種類以上のN結合型糖鎖が不均一に結合した抗体(不均一糖鎖結合抗体)又はそのFc断片から、アクセプター(好ましくは、N−アセチルグルコサミンのみが付加された抗体(例えば、IgG抗体なら297番目のアスパラギンにN−アセチルグルコサミンのみが付加された抗体)又はそのFc断片)を製造する方法であって、当該不均一糖鎖結合抗体(例えば、IgG抗体)又はそのFc断片と複数のエンドグリコシダーゼを反応させることを備える方法であって、当該複数のエンドグリコシダーゼが上述のアクセプターの調製に用いるエンドグリコシダーゼの組み合わせの決定方法により決定されたエンドグリコシダーゼである方法に関する。すなわち、本発明は、アクセプター(好ましくは、N−アセチルグルコサミン以外の糖鎖が切断された抗体又はそのFc断片)の製造方法であって、抗体と上述の方法により決定された複数のエンドグリコシダーゼとを反応させることを備える方法に関する。
抗体の糖鎖エンジニアリングの重要な課題として、CHO細胞で抗体を作成した場合、80%以上がコアフコースを含んでおり、エンドグリコシダーゼで消化してもアクセプターが作製できないという問題があった。この問題を解決するため、好ましくは、酵母またはカイコにより産生された抗体を原料として用いて、上述の方法を適用することにより、より簡便かつ安価にコアフコースの結合していないアクセプター(例えば、297番目のアスパラギンにN−アセチルグルコサミンのみが付加されたIgG抗体又はそのFc断片n)を製造することができる。即ち、本発明は、均一な糖鎖構造を持つ糖タンパク質生産用のアクセプターの製造方法であって、酵母又はカイコにより産生された抗体又はそのFc断片と複数のエンドグリコシダーゼとを反応させることを備える方法に関する。特に、本発明によれば、複数のエンドグリコシダーゼを用いて、酵母又はカイコ特有のハイマンノース型糖鎖付加抗体又はそのFc断片から、アクセプターを調製することができる。
<均一糖鎖結合抗体の製造方法>
更に本発明は、前記方法により調製されたアクセプターを用いた均一糖鎖抗体又はそのFc断片の調製方法を提供する。すなわち、本発明は、所望の均一な糖鎖構造を有する糖鎖が結合した抗体(均一糖鎖結合抗体)又はそのFc断片を製造する方法であって、
上述の方法によりアクセプターを調製する、アクセプター調製ステップ、及び、
該アクセプターと糖鎖ドナーとをグライコシンターゼを用いて反応させて、前記所望の均一な糖鎖構造を有する糖鎖が結合された抗体又はそのFc断片を生成させる抗体生成ステップを備える方法に関する。
あるいは、本発明は、上述の方法により調製されたアクセプター(下記式中のGlcNAc−抗体)と、均一な糖鎖(A−GlcNAc−OH)をオキサゾリンで誘導させた糖鎖ドナー(下記式中のA−GlcNAc−Oxa)とを、グライコシンターゼを用いて酵素的糖鎖転移反応(下記式)を行い、当該均一な糖鎖が導入された抗体又はそのFc断片(下記式中のA−GlcNAc−抗体)を製造する方法に関する。ここでは、「抗体」の用語は抗体のFc断片を含む。
式:
A−GlcNAc−Oxa+GlcNAc−抗体→A−GlcNAc−抗体+H
(式中、Aは糖質を示す、GlcNAc−OxaとはGlcNAcのオキサゾリン誘導体を示す。)
前記均一糖鎖結合抗体に結合する糖鎖は、所望の糖鎖構造であることができ、例えば、高マンノース型糖鎖(M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9のいずれか)、または複合型糖鎖(A2、G2、G1a、G1b、G0(=GN2)のいずれか)であってもよい。
前記抗体生成ステップは、当業者周知の方法で行うことができ、例えば、酸補足材存在下、糖鎖ドナーに脱水縮合材を添加した後に、アクセプター抗体を添加してグライコシンターゼを作用させることにより行うことができる。
本発明の医薬組成物は、経口投与形態、又は注射剤、点滴剤等の非経口投与形態で用いることができる。本化合物を哺乳動物等に投与する場合、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤等として経口投与してもよいし、又は、注射剤、点滴剤として非経口的に投与してもよい。
本発明の医薬組成物は、通常の薬学的に許容される担体を用いて、常法により製剤化することができる。経口用固形製剤を調製する場合は、主薬に賦形剤、更に必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を加えた後、常法により溶剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等とする。注射剤を調製する場合には、主薬に必要によりpH調整剤、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤等を添加し、常法により皮下又は静脈内用注射剤とすることができる。
別の態様において、本発明は、それを必要とする患者に有効量の本発明の抗体を投与することを備える、ADCC活性により治療可能な疾患の治療方法又は予防方法に関する。あるいは、本発明は、ADCC活性により治療可能な疾患の治療薬又は予防薬を製造するための、本発明の抗体の使用に関する。例えば、本発明の抗体を治療又は予防目的で使用する場合、本発明の抗体を、経口投与形態、又は注射剤、点滴剤等の非経口投与形態で投与することができる。本発明の抗体を哺乳動物等に投与する場合の投与量は、症状、年齢、性別、体重、投与形態等により異なるが、例えば成人に経口的に投与する場合には、通常1日量は0.1〜1000mgとすることができ、1日1〜5回投与することができる。
以下、本発明をより詳細に説明するため実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
<実施例1>EndoLLの調製
(1)EndoLLのDNAのクローニング
既知のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの部分アミノ酸配列と相同性の高いアミノ酸配列をもつタンパク質を産生するラクトコッカス・ラクティスの該アミノ酸配列をNCBI blastpにて検索し、相当するゲノム配列を元にプライマーを設計した。以下にセンス、アンチセンスのプライマー配列を記す。
EndoLL−12F(センスプライマー)
5’ ttggaggattttatgaaaaaatcg 3’ (配列番号3)
EndoLL stopR(アンチセンスプライマー)
5’ tcagctatttttttgtcctaatacttg 3’ (配列番号4)
農業生物資源研究所(茨城県つくば市観音台2丁目1−2)に寄託されているラクトコッカス・ラクティス(受託番号MAFF516032)から抽出したgDNAをテンプレートにして上記プライマーでPCRを行い、増幅された2.8kbpsの断片を0.8%アガロースゲル電気泳動にて分離して切り出した後、Wizard SV Gel and PCR Clean−up System(Promega)を用いて精製した。このDNA断片をテンプレートとしてさらに以下のセンス、アンチセンスのプライマーでPCRを行った。
6P1−EndoLL−F(センスプライマー)
5’ gggcccctgggatccaaaaaatcgaaaaaa 3’ (配列番号5)
6P1−EndoLL−R(アンチセンスプライマー)
5’ atgcggccgctcgagttagctatttttttg 3’ (配列番号6)
増幅された2.8kbpsの断片を0.8%アガロースゲル電気泳動にて分離して切り出した後、Wizard SV Gel and PCR Clean−up System(Promega)を用いて精製した。この断片とBamHIおよびXhoIで切断した線状のpGEX−6P−1ベクターでIn−Fusion HD Cloning Kit(Clontech)にてプラスミドEndoLL/pGEX−6P−1を構築した(図2)。
作成されたEndoLLは、自動塩基配列決定機(Applied Biosystems社製3730x1 DNA analyzer)を用いて配列決定を行い、その核酸配列を配列番号1に示す。
(2)EndoLLの大腸菌での発現
宿主としては大腸菌BL−21(DE3)株を用いた。形質転換はInoue H,et al., Gene, 96, 23−28(1990)の方法に従った。選抜はカルベニシリンを50μg/mlとなるよう添加したLB寒天培地上で行い、生育したコロニーをカルベニシリンを50μg/mlとなるよう添加したLB液体培地に植菌して37℃で培養して、OD600が0.8に達した時点で培養液を急冷しIPTGを終濃度50μg/mlとなるよう加えた。培養液は20℃で一晩回転振盪培養を行った後に集菌した。
集金した菌体をNETN緩衝液(50mMトリス緩衝液 pH8.0、150mM塩化ナトリウム、1mM EDTA、1% NP−40)に懸濁し、QSonica社 Q125(ワケンビーテック)にて超音波破砕した。破砕液を遠心分離し分離上清にGST−Accept(ナカライテスク)ゲルを加え、4℃で2時間回転振盪培養してアフィニティークロマトグラフィーによりGST融合EndoLLを回収した。GST融合EndoLLが吸着したゲルをNETN緩衝液で洗浄した後、NET緩衝液(50mMトリス緩衝液 pH8.0、150mM塩化ナトリウム、1mM EDTA)でさらに洗浄した。NET緩衝液を等量加えた洗浄後のゲルにTurbo3C proteaseを添加して4℃で一晩回転振盪培養し、樹脂に吸着させたまま酵素消化を行った。酵素消化後の上清を回収して精製EndoLLとした。
得られたEndoLLをコードする核酸配列を配列番号1に、アミノ酸配列を配列番号2に示す。
<実施例2>マウスIgG1のカイコ絹糸腺による産生
(1)ベクターの作製
マウスハイブリドーマcDNAより、マウスIgG1の重鎖および軽鎖のcDNAを単離した。次に、BmNPVポリヘドリンの5′非翻訳領域配列(特開2008−125366)を含むプライマーを用いたPCRを行うことにより、重鎖および軽鎖cDNAの5′末端にBmNPVポリヘドリンの5′非翻訳領域配列を付加した。得られたマウスIgG1の重鎖cDNAを、カイコ形質転換用ベクターpMSG3.1MG(特開2012−182995)のNruIサイトに挿入し、次いで、Eco47IIIサイトに軽鎖cDNAを挿入して、マウスIgG1cDNAをカイコに組み込むためのプラスミドベクターを完成させた。
(2)トランスジェニックカイコの作製
上記のプラスミドベクターをPlasmid Midi Kit(QIAGEN)で精製した後、ヘルパープラスミドであるpHA3PIG(Nat.Biotechnol.18,81−84(2000))とプラスミド量が1:1になるように混合し、さらにエタノール沈殿を行った後、DNA濃度が200μg/mlなるようにインジェクションバッファー(0.5mMリン酸バッファーpH7.0,5mM KCl)に溶解した。このベクター混合液を、産卵後2〜8時間の前胚盤葉期のカイコ卵(カイコ胚)に、一つの卵あたり約15〜20nlの液量で微量注入した。
ベクターDNAを微量注入した卵を25℃でインキュベートし、孵化したカイコを飼育した。得られた生殖可能な成虫を交配し、F1世代の卵塊を得た。産卵日から5〜6日目のF1卵塊を蛍光実体顕微鏡で観察することにより、眼や神経系から緑色蛍光を発するトランスジェニックカイコの卵をスクリーニングした。緑色蛍光を発する卵から孵化したカイコを飼育して、マウスIgG1cDNAが組み込まれたトランスジェニックカイコを樹立した。
上記のトランスジェニックカイコを、BmNPV由来のトランスアクチベーターであるIE1遺伝子を発現するカイコ(特開2012−182995)と交配した。IE1遺伝子から合成されるIE1タンパク質は、pMSG3.1MGに含まれるBmNPV由来のhr3エンハンサーや、セリシン1プロモーターに作用し、中部絹糸腺における組換えタンパク質の発現量を増加させることが知られている(Biotechnol. Bioeng. 106,860−870(2010))。交配して得られたF2世代のカイコから、マウスIgG1cDNAとIE1遺伝子の両方を有するカイコを選別し、これらのカイコを飼育して繭を作らせた。
(3)マウスIgG1の精製
マウスIgG1cDNAとIE1遺伝子を有するカイコの繭を、抽出バッファー(PBS,0.1% TritonX−100,0.5M NaCl)に浸漬し、30分間室温で撹拌して繭抽出液を調製した。抽出液を0.45μmのフィルターで濾過し、プロテインGカラム(ProteinG Sepharose4 Fast Flow,GEヘルスケア)に供した。カラムからのIgG1の溶出には、0.1Mグリシン塩酸緩衝液(pH2.7)を使用した。溶出したIgG1溶液に1M Tris(pH9.0)を加えて中和し、最後にPBSに対して透析した。
<実施例3>EndoS、EndoLLおよびEndoDの同時加水分解によるカイコ絹糸腺産生マウスIgG1アクセプターの調製とSDS−PAGEによる確認
カイコ絹糸腺から産生されるマウスIgG1(1mg)とEndoS(2μg)、EndoLL(2μg)およびRemove−iT Endo−D((NEB社)150ユニット)を50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)中に加え、総量500μlとして37℃で17時間静置した。この反応液に50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)で平衡化したAb−Capcher ExTra(プロテノバ社)75μlを加えて室温で3時間回転振盪し、ゲル担体に抗体を吸着させた。450μlのPBSで5分間洗浄する作業を計3回行った担体に150μlの0.1Mグリシン塩酸緩衝液(pH2.7)を加え室温で5分間振盪し、溶出させ、溶出液に1Mトリス塩酸緩衝液(pH9.0)を2.5μl加えて中和した。この溶出作業を計3回行い、その溶出液をまとめてアミコンウルトラ−0.5(NMWL30kDa)で濃縮しPBSに置換した。得られた965μgのマウスIgG1アクセプターのうち0.5μgを同時加水分解前のマウスIgG1同量と並べて10%SDS−PAGEにて泳動して分子量を確認した。
アクセプターは糖鎖が切断されたために低分子側にシフトし、また切れ残った糖鎖がほとんど無いことが確認された(図3)。
<実施例4>エンドグリコシダーゼによるマウスIgG1の加水分解のSDS−PAGEによる確認
カイコ絹糸腺から産生されるマウスIgG1(4μg)およびEndoS、EndoLL、Remove−iT Endo−D、Endo−H(NEB)またはEndo−M(東京化成)単体(1μg)を緩衝液中に加え、総量20μlとして37℃で6時間静置した。緩衝液はEndoS、EndoLLまたはRemove−iT Endo−Dの場合、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)を、Endo−Hの場合50mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を、Endo−Mの場合、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を用いた。反応後のマウスIgG1(0.5μg)を10%SDS−PAGEにて泳動して分子量を確認した。
エンドグリコシダーゼを酵素は単体で加水分解を行った場合はどの酵素についても切れ残りが存在することが確認された(図4)。一方、コントロールとして並べたEndoS、EndoLLおよびEndoDの同時加水分解産物は切れ残りがなく全てが低分子側にシフトしていた。
<実施例5>マウスIgG1糖ペプチドGlu−Glu−Gln−Phe−Asn(Glycan)−Ser−Thr−Phe−Argの解析
カイコ絹糸腺から産生されるマウスIgG1(15μg)を100mM炭酸水素アンモニウム水溶液(30μL)に溶かし、1.0%(w/v)RapiGest水溶液(3μL)、を加え、90℃で15分間加熱し、室温で30分間静置する。この溶液にシークエンスグレードのトリプシン(0.25mg/ml,5μL)を加え、37℃で12時間反応させる。反応溶液を90℃30分間、加熱する事により酵素を失活させ、G−25カラム(0.8×6cm,3mL)で脱塩し、濃縮する。これにDMF(5μL)を加え、60℃5分間、加熱し、200mM無水安息香酸−メタノール溶液(100μL)を加え、超音波洗浄機を用いて30分間超音波しながら反応を行い、0.5M水酸化ナトリウム水溶液(60μL)を加え、室温にて30分間撹拌した。その後、水(200μL)を加え、EtOAc(400μL)にて3回洗浄した後に減圧濃縮を行った。この反応物をG−25カラム(0.8×6cm,3mL)で脱塩し、C18 Spinカラム(10mg)にロードし、水(2mL)で十分洗浄した後に、25%アセトニトリル水溶液(650μL)、50%アセトニトリル水溶液 (650μL)で回収し、減圧濃縮を行った。この試料に水(20μL)、Sepharose4B(wet50μL)、エタノール(100μL)、n−ブタノール(400μL)の順番で加え、室温で1時間、撹拌する。その後、溶液をエンプティカラムに移してn−ブタノール:エタノール:水=8:2:1(v/v/v)(2mL)で洗浄し、エタノール:水=1:2(v/v)(2mL)でマウスIgG1糖ペプチドを回収し、減圧濃縮した。
この試料を水(10μL)に溶かし、MALDIターゲットプレート上に0.5μL添加し、DHBA溶液(10mg/ml of 50%アセトニトリル水溶液)(1μL)と混合し、乾固させた。島津製作所製MALDI−QIT−TOF MS装置(AXIMA−Resonance)を用いてpositive modeでMS測定を行った。
結果を図5に示す。MS測定により、Bz−Glu−Glu−Gln−Phe−Asn−Ser−Thr−Phe−Argにパウチマンノース型M2、M3、M4の糖鎖が結合したm/z=1992.19、2154.28、2316.36と複合型GN1、GN2の糖鎖が結合したm/z=2357.39、2560.51とハイマンノース型M5、M6、M7、M8、M9の糖鎖が結合したm/z=2478.44、2640.53、2802.63、2964.72、3126.84を検出した。
<実施例6>カイコ絹糸腺産生マウスIgG1のエンド酵素による消化の解析
種々のエンド酵素(Endo−M,EndoLL,Endo−H,Endo−D,EndoS,Endo−D+EndoS, Endo−M+Endo−D,Endo−M+EndoS,Endo−D+Endo−H,EndoS+Endo−H,Endo−D+EndoLL,EndoS+EndoLL,Endo−F1,Endo−F2,Endo−F3,Endo−F1+Endo−F2,Endo−F1+Endo−F3,Endo−F2+Endo−F3)によって処理が施されたカイコ絹糸腺産生マウスIgG1(15μg)をそれぞれ100mM炭酸水素アンモニウム水溶液(30μL)に溶かし、1.0%(w/v)RapiGest水溶液(3μL)、を加え、90℃で15分間加熱し、室温で30分間静置する。この溶液にシークエンスグレードのトリプシン(0.25mg/ml,5μL)を加え、37℃で12時間反応させる。反応溶液を90℃30分間、加熱する事により酵素を失活させ、G−25カラム(0.8×6cm,3mL)で脱塩し、濃縮する。これにDMF(5μL)を加え、60℃5分間、加熱し、200mM無水安息香酸−メタノール溶液(100μL)を加え、超音波洗浄機を用いて30分間室温で超音波しながら反応を行い、0.5M水酸化ナトリウム水溶液(60μL)を加え、室温にて30分間撹拌した。その後、水(200μL)を加え、EtOAc(400μL)にて3回洗浄した後に減圧濃縮を行った。この反応物をG−25カラム(0.8×6cm,3mL)で脱塩し、C18 Spinカラム(10mg)にロードし、水(2mL)で十分洗浄した後に、25%アセトニトリル水溶液(650μL)、50%アセトニトリル水溶液 (650μL)で回収し、減圧濃縮を行った。この試料に水(20μL)、Sepharose4B(wet50μL)、エタノール(100μL)、n−ブタノール(400μL)の順番で加え、室温で1時間、撹拌する。その後、溶液をエンプティカラムに移してn−ブタノール:エタノール:水=8:2:1(v/v/v)(2mL)で洗浄し、エタノール:水=1:2(v/v)(2mL)でマウスIgG1糖ペプチドを回収し、減圧濃縮した。
この試料を水(10μL)に溶かし、MALDIターゲットプレート上に0.5μL添加し、DHBA溶液(10mg/ml of 50%アセトニトリル水溶液)(1μL)と混合し、乾固させた。島津製作所製MALDI−QIT−TOF MS装置(AXIMA−Resonance)を用いてpositive modeでMS測定を行った。
MS測定では、Bz−Glu−Glu−Gln−Phe−Asn−Ser−Thr−Phe−Argにパウチマンノース型M2、M3、M4の糖鎖が結合したm/z=1992.19、2154.28、2316.36と複合型GN1、GN2の糖鎖が結合したm/z=2357.39、2560.51とハイマンノース型M5、M6、M7、M8、M9の糖鎖が結合したm/z=2478.44、2640.53、2802.63、2964.72、3126.8を検出した。
結果を図6A〜図6Dに示す。また、各エンドグリコシダーゼ処理により得られた各糖鎖の強度比をエンドグリコシダーゼ処理していない抗体の糖鎖の強度比と重ね合わせて棒グラフを作成し、当該エンドグリコシダーゼによりどの糖鎖が切断できたかを分析した。分析の結果を図7A〜図7Cに示す。
<実施例7>トラスツズマブのカイコ絹糸腺による産生
5′末端にBmNPVポリヘドリンの5′非翻訳領域配列を付加したトラスツズマブ重鎖および軽鎖の遺伝子を人工合成した。これら合成遺伝子を、実施例2に記載した方法によりカイコ形質転換用ベクターpMSG3.1MGに挿入した後、カイコ卵に微量注入することにより、トラスツズマブ遺伝子が組み込まれたトランスジェニックカイコを作製した。さらに、IE1遺伝子を発現するカイコと交配して、トラスツズマブ遺伝子とIE1遺伝子の両方を有するカイコを作製し、これらのカイコを飼育して繭を作らせた。得られた繭から、実施例2に記載した方法により、カイコ絹糸腺で産生されたトラスツズマブを精製した。
<実施例8>EndoS、EndoLLおよびEndoDの同時加水分解によるカイコ絹糸腺産生トラスツズマブアクセプターの調製
カイコ絹糸腺から産生されるトラスツズマブ(500μg)とEndoS(1μg)、EndoLL(1μg)およびRemove−iT Endo−D((NEB社)100ユニット)を50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)中に加え、総量200μlとして37℃で22時間静置した。この反応液に50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)で平衡化したAb−Capcher ExTra(プロテノバ社)10μlを加えて室温で30分回転振盪し、ゲル担体に抗体を吸着させた。500μlのPBSで室温、5分間洗浄した担体に100μlの0.1Mグリシン塩酸緩衝液(pH2.7)を加え、溶出させ、溶出液に1Mトリス塩酸緩衝液(pH9.0)を0.3μl加えて中和した。この溶出作業を計2回行い、溶出液をまとめてアミコンウルトラ−0.5(NMWL30kDa)で濃縮しながらPBSにバッファー置換した。得られた438μgのトラスツズマブアクセプターのうち0.5μgを同時加水分解前のマウスIgG1同量と並べて10%SDS−PAGEにて泳動した。
アクセプターは糖鎖が切断されたために低分子側にシフトし、また切れ残りは無いことが確認できた(図8)。
<実施例9>エンドグリコシダーゼ各種を単体で用いたカイコ絹糸腺産生トラスツズマブの加水分解
カイコ絹糸腺から産生されるトラスツズマブ(4μg)とEndoS、EndoLL、Remove−iT Endo−D(NEB)、Endo−H(NEB)またはEndo−M(東京化成)のいずれか単体(1μg)、またはカイコ絹糸腺から産生されるトラスツズマブ(4μg)とRemove−iT Endo−D(1μg)およびEndoS(1μg)を緩衝液中に加え、総量20μlとして37℃で6時間静置した。緩衝液はEndoS、EndoLL、Remove−iT Endo−DまたはEndoSとRemove−iT Endo−Dの同時加水分解の場合、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)を、Endo−Hの場合50mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を、Endo−Mの場合、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を用いた。反応後のトラスツズマブ(0.5μg)を10%SDS−PAGEにて泳動した。
結果を図9に示す。酵素を単体で用いた加水分解ではいずれも切れ残りが存在すると確認された。一方、コントロールとして並べたEndoS、EndoLLおよびRemove−iT Endo−Dの同時加水分解産物では切れ残りは無く、全てが低分子側にシフトしていた。EndoSおよびRemove−iT Endo−Dのダブルダイジェスチョンでも見かけ上切れ残りは確認されなかった。
<実施例10>
カイコ絹糸腺から産生されるトラスツズマブ糖ペプチドGlu−Glu−Gln−Tyr−Asn(Glycan)−Ser−Thr−Tyr−Argの解析
カイコ絹糸腺から産生されるトラスツズマブ(20μg)を100mM炭酸水素アンモニウム水溶液(50μL)に溶かし、1.0%(w/v)RapiGest水溶液(5μL)、を加え、90℃で15分間加熱し、室温で30分間静置する。この溶液にシークエンスグレードのトリプシン(0.25mg/ml,5μL)を加え、37℃で30時間反応させる。反応溶液を90℃30分間、加熱する事により酵素を失活させ、G−25カラム(0.8×6cm,3mL)で脱塩し、濃縮する。これに水(20μL)とピリジン(10μL)を加え、200mM安息香酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ジメチルホルムアミド溶液(20μL)を加え、57℃で12時間反応を行い、0.5M水酸化ナトリウム水溶液(60μL)を加え、室温にて30分間撹拌した。その後、水(200μL)を加え、EtOAc(400μL)にて3回洗浄した後に減圧濃縮を行った。この反応物をG−25カラム(0.8×6cm,3mL)で脱塩し、C18 Spinカラム(10mg)にロードし、水(2mL)で十分洗浄した後に、25%アセトニトリル水溶液(650μL)、50%アセトニトリル水溶液 (650μL)で回収し、減圧濃縮を行った。この試料に水(20μL)、Sepharose4B(wet50μL)、エタノール(100μL)、n−ブタノール(400μL)の順番で加え、室温で1時間、撹拌する。その後、溶液をエンプティカラムに移してn−ブタノール:エタノール:水=8:2:1(v/v/v)(2mL)で洗浄し、エタノール:水=1:2(v/v)(2mL)でトラスツズマブ糖ペプチドを回収し、減圧濃縮した。
この試料を水(10μL)に溶かし、MALDIターゲットプレート上に0.5μL添加し、DHBA溶液(10mg/ml of 50%アセトニトリル水溶液)(1μL)と混合し、乾固させた。島津製作所製MALDI−QIT−TOF MS装置(AXIMA−Resonance)を用いてpositive modeでMS測定を行った。
結果を図10に示す。MS測定では、Bz−Glu−Glu−Gln−Tyr−Asn−Ser−Thr−Tyr−Argにパウチマンノース型M2、M3、M4の糖鎖が結合したm/z=2025.40、2186.46、2348.56と複合型GN1、GN2の糖鎖が結合したm/z=2389.58、2592.74とハイマンノース型M5、M6、M7、M8、M9の糖鎖が結合したm/z=2510.65、2672.79、2834.09、2997.06、3158.54が検出できた。
<実施例11>
カイコ絹糸腺産生トラスツズマブのエンド酵素による消化の解析
種々のエンド酵素(Endo−M,Endo−H,Endo−D,EndoS,Endo−D+EndoS)によって処理が施されたカイコ絹糸腺産生トラスツズマブ(20μg)をそれぞれ100mM炭酸水素アンモニウム水溶液(50μL)に溶かし、1.0%(w/v)RapiGest水溶液(5μL)、を加え、90℃で15分間加熱し、室温で30分間静置する。この溶液にシークエンスグレードのトリプシン(0.25mg/ml,5μL)を加え、37℃で30時間反応させる。反応溶液を90℃30分間、加熱する事により酵素を失活させ、G−25カラム(0.8×6cm,3mL)で脱塩し、濃縮する。これに水(20μL)とピリジン(10μL)を加え、200mM安息香酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ジメチルホルムアミド溶液(20μL)を加え、57℃で12時間反応を行い、0.5M水酸化ナトリウム水溶液(60μL)を加え、室温にて30分間撹拌した。その後、水(200μL)を加え、EtOAc(400μL)にて3回洗浄した後に減圧濃縮を行った。この反応物をG−25カラム(0.8×6cm,3mL)で脱塩し、C18 Spinカラム(10mg)にロードし、水(2mL)で十分洗浄した後に、25%アセトニトリル水溶液(650μL)、50%アセトニトリル水溶液(650μL)で回収し、減圧濃縮を行った。この試料に水(20μL)、Sepharose4B(wet50μL)、エタノール(100μL)、n−ブタノール(400μL)の順番で加え、室温で1時間、撹拌する。その後、溶液をエンプティカラムに移してn−ブタノール:エタノール:水=8:2:1(v/v/v)(2mL)で洗浄し、エタノール:水=1:2(v/v)(2mL)でトラスツズマブ糖ペプチドを回収し、減圧濃縮した。
この試料を水(10μL)に溶かし、MALDIターゲットプレート上に0.5μL添加し、DHBA溶液(10mg/ml of 50%アセトニトリル水溶液)(1μL)と混合し、乾固させた。島津製作所製MALDI−QIT−TOF MS装置(AXIMA−Resonance)を用いてpositive modeでMS測定を行った。
MS測定では、Bz−Glu−Glu−Gln−Tyr−Asn−Ser−Thr−Tyr−Argにパウチマンノース型M2、M3、M4の糖鎖が結合したm/z=2025.40、2186.46、2348.56と複合型GN1、GN2の糖鎖が結合したm/z=2389.58、2592.74とハイマンノース型M5、M6、M7、M8、M9の糖鎖が結合したm/z=2510.65、2672.79、2834.09、2997.06、3158.54が検出できた。
結果を図11に示す。また、各エンドグリコシダーゼ処理により得られた各糖鎖の強度比をエンドグリコシダーゼ処理していない抗体の糖鎖の強度比と重ね合わせて棒グラフを作成し、当該エンドグリコシダーゼによりどの糖鎖が切断できたかを分析した。分析の結果を図12に示す。
<実施例12>
カイコ絹糸腺産生トラスツズマブの糖鎖改変
実施例8で調製したカイコ絹糸腺産生トラスツズマブアクセプター(2mg)、糖供与体として糖オキサゾリン(1.875μmol、A2またはG2またはG0またはM3)および糖転移酵素としてGST−EndoS D233Q(200μg)を50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)中に加え、総量500μlとして37℃で3時間静置した。この反応液に同緩衝液で平衡化したCOSMOGEL GST−Accept(ナカライテスク社)をベッドボリューム50μl加えて室温で30分回転振盪を行いGST−EndoS D233Qを吸着させた。このゲル担体を除いた液に同じく50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したAb−Capcher ExTra(プロテノバ社)ベッドボリューム30μlを加えて室温で1時間回転振盪し、ゲル担体に抗体を吸着させた。ゲル担体は500μlのNETNバッファー(50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、150mM塩化ナトリウム、1mMEDTAおよび0.1%(w/w)NP−40)で5分間回転振盪して洗浄する作業を2回行った後、500μlのPBSでリンスした。洗浄した担体に10ベッドボリュームの0.1Mグリシン塩酸(pH2.7)を加え室温で15分間回転振盪し、フロースルーに1Mトリス塩酸緩衝液(pH9.0)を1/30ボリューム加えて中和した。中和した溶出液はビバスピン−500(NMWL30kDa)(ザルトリウス社)で濃縮した後PBSに溶液置換した。得られた1.3mgの糖鎖改変抗体のうち1μgを10%SDS−PAGEにかけたところ、糖オキサゾリン4種ともに糖受容体に転移されたために高分子側にシフトしたことが確認された(図13及び図14)。
<実施例13>
糖鎖改変した抗体の精製とHPLC分析
カイコ絹糸腺から産生したトラスツズマブを糖鎖改変した抗体(A2体、G2体、G0体、M3体)(500μg)を4℃条件下で設置したAKTA−FPLCシステムを用いて、MonoSカラム(GE healthcare社製、4.6×100mm)を使用して、流速1.35ml/minで20mM酢酸ナトリウム水溶液(pH4.15)と20mM酢酸ナトリウム+500mM塩化ナトリウム水溶液の2液によるステップワイズのグラジェント溶出により、分離し、Amicon Ultra−15−10k(Millipore社製)の限外濾過フィルターを用いて濃縮した。分離精製の確認は、HPLCシステム(島津社製)を用いたPropac WCX−10(4.0×250mm)と280nmのUV検出を使用して、流速1.0ml/minで10mM酢酸ナトリウム水溶液(pH4.15)と10mM酢酸ナトリウム+1000mM塩化ナトリウム水溶液の2液によるグラジェント溶出により行った。その結果、糖鎖改変した抗体(A2体、G2体、G0体、M3体)をすべて分離精製できている事を確認した(代表的な例として、A2体のデータを図15及び図16に示す)。
<実施例14>
糖鎖改変した抗体のMS分析
精製した糖鎖改変した抗体(A2体、G2体、G0体、M3体)(20μg)をそれぞれ100mM炭酸水素アンモニウム水溶液(50μL)に溶かし、1.0%(w/v)RapiGest水溶液(5μL)、を加え、90℃で15分間加熱し、室温で30分間静置する。この溶液にシークエンスグレードのトリプシン(0.25mg/ml,5μL)を加え、37℃で30時間反応させる。反応溶液を90℃30分間、加熱する事により酵素を失活させ、G−25カラム(0.8×6cm,3mL)で脱塩し、濃縮する。これに水(20μL)とピリジン(10μL)を加え、200mM安息香酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ジメチルホルムアミド溶液(20μL)を加え、57℃で12時間反応を行い、0.5M水酸化ナトリウム水溶液(60μL)を加え、室温にて30分間撹拌した。その後、水(200μL)を加え、EtOAc(400μL)にて3回洗浄した後に減圧濃縮を行った。この反応物をG−25カラム(0.8×6cm,3mL)で脱塩し、C18 Spinカラム(10mg)にロードし、水(2mL)で十分洗浄した後に、25%アセトニトリル水溶液(650μL)、50%アセトニトリル水溶液 (650μL)で回収し、減圧濃縮を行った。この試料に水(20μL)、Sepharose4B(wet50μL)、エタノール(100μL)、n−ブタノール(400μL)の順番で加え、室温で1時間、撹拌する。その後、溶液をエンプティカラムに移してn−ブタノール:エタノール:水=8:2:1(v/v/v)(2mL)で洗浄し、エタノール:水=1:2(v/v)(2mL)でトラスツズマブ糖ペプチドを回収し、減圧濃縮した。
この試料を水(10μL)に溶かし、MALDIターゲットプレート上に0.5μL添加し、DHBA溶液(10mg/ml of 50%アセトニトリル水溶液)(1μL)と混合し、乾固させた。島津製作所製MALDI−TOF MS装置(AXIMA−TOF2)を用いてLinearモードのpositiveでMS測定を行った。
精製後のトラスツズマブ−A2のMS測定では、Bz−Glu−Glu−Gln−Tyr−Asn−Ser−Thr−Tyr−Argにシアル酸含有複合型糖鎖のA2糖鎖が結合したm/z=3498.7とMS測定上でシアル酸が1つ切断されたフラグメントイオンm/z=3207.7が検出された。精製後のトラスツズマブ−G2のMS測定では、Bz−Glu−Glu−Gln−Tyr−Asn−Ser−Thr−Tyr−Argに複合型糖鎖のG2糖鎖が結合したm/z=2916.7が検出された。精製後のトラスツズマブ−G0のMS測定では、Bz−Glu−Glu−Gln−Tyr−Asn−Ser−Thr−Tyr−Argに複合型糖鎖のG0(GN2)糖鎖が結合したm/z=2592.7が検出された。精製後のトラスツズマブ−M3のMS測定では、Bz−Glu−Glu−Gln−Tyr−Asn−Ser−Thr−Tyr−Argに複合型糖鎖のM3糖鎖が結合したm/z=2186.5が検出された(図17)。この結果より、均一の糖鎖(A2体、G2体、G0体、M3体)を持った糖鎖改変抗体が調製できている事を確認した。
<実施例15>
糖鎖改変した抗体とFcγRIIIa−V158の結合試験
LG.Prestaらの報告(J.Biol.Chem.(2001)276,6591−6604)を参考にして、糖鎖改変したトラスツズマブ(A2体、G2体、G0体、M3体)のFcγRIIIa−V158に対する結合試験を行った。ヒト型FcγRIIIa−V158溶液(novoprotein社製、10μg/ml of PBS、100μl)をELISA用マイクロプレート(Thermoscienfitic社製)に加えて4℃で一晩固定化した後に、0.14M食塩、1%BSA、及び0.05%Tween20含有50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)でブロッキングを行った。各ステップ間に0.14M食塩及び0.05%Tween20含有50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で5回洗浄を行った。次に、精製した糖鎖改変したトラスツズマブ(A2体、G2体、G0体、及びM3体)、改変していないトラスツズマブ(Intact体)、PNGaseFを用いて糖鎖切断した抗体(aglycon体)、並びに、CHO細胞で作成されたトラスツズマブ(CHO体、F.Hoffmann−La Roche社製)をそれぞれ0.14M食塩、1%BSA及び0.05%Tween20含有50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で希釈した。各希釈溶液(100μl)は、ヒト型FcγRIIIa−V158を固定化したプレートウェルに加えて、27℃で2時間結合させた。プレートから抗体溶液を取り除き、十分に洗浄した後、プレートに結合している抗体の量をHRPコンジュゲートproteinG(Bio−rad社製)を用いて検出した。発色試薬としてTMB溶液(eBioscience社製)を反応させ、0.18M硫酸水溶液でクエンチした後にプレートリーダーで450nmの波長を検出した。
結果を図18に示す。この結果より、抗体の糖鎖の有無又は種類がFcγRIIIa−V158に対する結合に大きく関与している事が分かった。また、糖鎖改変したフコースが無いトラスツズマブは、CHO細胞で作成されたトラスツズマブ(CHO体)よりも強くFcγRIIIa−V158に対して結合する事が分かった。更に、またフコースの有無以外の糖鎖変化も、FcγRIIIa−V158に対する結合活性への影響が大きい事が分かった。特に、G2又はA2の糖付加体による結合活性は、フコースが結合していないIntactと比較しても優れており、これらの結合活性は単にフコースが存在しないことによるものではなく、これらの糖鎖構造そのものがヒト型FcγRIIIa−V158との結合活性に直接寄与していることが示された。
<実施例16>
糖鎖改変した抗体のADCCリポーター試験
Promega社製のADCCreporterBioassayキットを用いて糖鎖改変したトラスツズマブ(A2体、G2体、G0体、M3体)に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を測定した。
ターゲット細胞には、Her2レセプターが高発現のヒト乳癌細胞(SKBR−3)とヌードマウス可移植性ヒト乳癌細胞(BT−474)を、エフェクタ細胞としてFc−γ受容体IIIaのV158バリアントを安定に発現し、ホタルルシフェラーゼの発現を駆動するNFAT応答配列を安定に保持する遺伝子組換えJurkat細胞を用いて行った。
SKBR−3細胞とBT−474細胞は、10%FBSを含有するRPMI培地で培養し、96穴プレートに1ウェル当たり1,500個の細胞を継代した。これを100μLの無血清RPMI1640培地で洗浄し、50μLのADCCアッセイ培地(RPMI1640+MEM−NEAA(必須アミノ酸)+4%Super−low IgG FBS(Hyclone社製))に交換し、一晩培養した。次に、精製した糖鎖改変したトラスツズマブ(A2体、G2体、G0体、M3体)並びに改変していないトラスツズマブ(Intact体)、PNGaseFを用いて糖鎖切断した抗体(aglycon体)、CHO細胞で作成されたトラスツズマブ(CHO体、F.Hoffmann−La Roche社製)をADCCアッセイ培地で希釈した様々な濃度溶液(25μl)をターゲット細胞が入ったウェルに加えて、37℃で30分静置した。エフェクタ細胞:ターゲット細胞の比率を50:1にする為にJurkat ADCCリポーター細胞をADCCアッセイ培地で懸濁した溶液(25μl)を1ウェル当たり75,000個になるように加えて、37℃、5%CO2インキュベータ内で20時間静置した。その後、培養液に等量のBio−Gloルシフェラーゼ反応液(Promega社製)を加えて15分間室温で反応させた後にルシフェラーゼの化学発光を検出した。その結果を図19及び図20に示す。
解析の結果、コアフコースの無い糖鎖を持つ抗体はCHO細胞で作成されたトラスツズマブ(CHO体)よりも非常に高いADCCを示した。非還元末端にマンノースを持つ抗体と複合型の糖鎖を持つ抗体を比べると複合型糖鎖を持つ抗体の方が強いADCCを示した。SKBR−3とBT−474とで微妙にADCCの活性の応答に違いが出ている事が分かった。

Claims (12)

  1. 糖鎖が切断された抗体又はそのFcの製造方法であって、該抗体又はそのFcを複数のエンドグリコシダーゼと反応させて該糖鎖を切断することを備える方法であって、
    前記複数のエンドグリコシダーゼが、エンドグリコシダーゼD及びエンドグリコシダーゼSを含む方法。
  2. 前記複数のエンドグリコシダーゼが、以下の(iX)〜(Xi)のいずれか一つの組み合わせである、請求項1に記載の方法:
    (iX)エンドグリコシダーゼDとエンドグリコシダーゼSとエンドグリコシダーゼLL(X)エンドグリコシダーゼDとエンドグリコシダーゼSとエンドグリコシダーゼH
    (Xi)エンドグリコシダーゼDとエンドグリコシダーゼSとエンドグリコシダーゼF1。
  3. 糖鎖が切断された抗体又はそのFcが、抗体又はそのFcと直接結合するN−アセチルグルコサミン以外の糖鎖が切断された抗体又はそのFcである、請求項1又は請求項2に記載の方法。
  4. 糖鎖が切断された抗体又はそのFcが、IgG抗体又はそのFcの297番目のアスパラギンと直接結合するN−アセチルグルコサミン以外の糖鎖が切断された抗体又はそのFcである、請求項3に記載の方法。
  5. 所望の複数のエンドグリコシダーゼで処理された抗体又はそのFcに結合する所望の糖鎖構造を有する対象糖鎖の定量的情報を決定する方法であって、(a)前記抗体又はそのFcを前記複数のエンドグリコシダーゼと反応させることを備える、反応ステップ、ここで、前記複数のエンドグリコシダーゼが、エンドグリコシダーゼD及びエンドグリコシダーゼSを含み、(b)反応ステップ後の前記抗体又はそのFcをプロテアーゼで処理することを備える、プロテアーゼ処理ステップ、(c)前記プロテアーゼ処理ステップにより得られた糖ペプチドのうち、前記対象糖鎖を有する糖ペプチドを測定することを備える、測定ステップ、及び、対象糖鎖を有する糖ペプチドの測定値から前記エンドグリコシダーゼで処理された抗体又はそのFcに結合する対象糖鎖の定量的情報を決定することを備える、決定ステップを備える方法。
  6. 前記定量的情報が、前記所望の糖鎖構造を有する糖鎖の量である、請求項5に記載の方法。
  7. 抗体又はFcに結合する糖鎖であって、所望の糖鎖構造を有する1種類の糖鎖である対象糖鎖の、複数のエンドグリコシダーゼ処理による、切断量に関する情報を決定する方法であって、
    (a)前記抗体又はそのFcを前記複数のエンドグリコシダーゼと反応させることを備える、反応ステップ、ここで、前記複数のエンドグリコシダーゼが、エンドグリコシダーゼD及びエンドグリコシダーゼSを含み、
    (b)エンドグリコシダーゼと反応させた前記抗体又はそのFcをプロテアーゼで処理して糖ペプチドを生成させることを備える、プロテアーゼ処理ステップ
    (c)エンドグリコシダーゼと反応させていない前記抗体又はそのFcをプロテアーゼで処理して糖ペプチドを生成させることを備える、プロテアーゼ処理ステップ、
    (d)前記プロテアーゼ処理ステップにおいて、エンドグリコシダーゼと反応させた前記抗体又はそのFcをプロテアーゼで処理することにより得られた糖ペプチドであって、前記対象糖鎖が結合した糖ペプチドを定量することを備える、定量ステップ、
    (e)前記プロテアーゼ処理ステップにおいて、エンドグリコシダーゼと反応させていない前記抗体又はそのFcをプロテアーゼで処理することにより得られた糖ペプチドであって、前記対象糖鎖が結合した糖ペプチドを定量することを備える、定量ステップ、及び、
    (f)エンドグリコシダーゼと反応させた前記抗体又はそのFcについて前記定量ステップで得られた定量値、及びエンドグリコシダーゼと反応させていない前記抗体又はそのFcについて前記定量ステップで得られた定量値から、前記エンドグリコシダーゼ処理による前記対象糖鎖の切断量に関する情報を決定することを備える、決定ステップを備える方法。
  8. 複数のエンドグリコシダーゼ処理による、不均一の糖鎖構造を有する抗体又はそのFcに結合する糖鎖であって、所望の糖鎖構造を有する糖鎖である2種類以上の対象糖鎖のそれぞれの切断量に関する情報を決定する方法であって、
    (a)前記抗体又はそのFcを前記複数のエンドグリコシダーゼと反応させることを備える、反応ステップ、ここで、前記複数のエンドグリコシダーゼが、エンドグリコシダーゼD及びエンドグリコシダーゼSを含み、
    (b)エンドグリコシダーゼと反応させた前記抗体又はそのFcをプロテアーゼで処理して糖ペプチドを生成させることを備える、プロテアーゼ処理ステップ、
    (c)エンドグリコシダーゼと反応させていない前記抗体又はそのFcをプロテアーゼで処理して糖ペプチドを生成させることを備える、プロテアーゼ処理ステップ、
    (d)前記プロテアーゼ処理ステップにおいて、エンドグリコシダーゼと反応させた前記抗体又はそのFcをプロテアーゼで処理することにより得られた糖ペプチドであって、前記対象糖鎖が結合した糖ペプチドを定量することを備える、定量ステップ、
    (e)前記プロテアーゼ処理ステップにおいて、エンドグリコシダーゼと反応させていない前記抗体又はそのFcをプロテアーゼで処理することにより得られた糖ペプチドであって、前記対象糖鎖が結合した糖ペプチドを定量することを備える、定量ステップ、
    (f)それぞれの対象糖鎖について、エンドグリコシダーゼと反応させた前記抗体又はそのFcについて前記定量ステップ得られた定量値、及びエンドグリコシダーゼと反応させていない前記抗体又はそのFcについて前記定量ステップで得られた定量値から、前記エンドグリコシダーゼによるそれぞれの対象糖鎖の切断量に関する情報を決定することを備える、決定ステップを備える方法。
  9. 抗体がカイコにより産生された抗体である、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 抗体が、非ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は、ヒト抗体である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 所望の均一な糖鎖構造を有する糖鎖が結合した抗体又はそのFcを製造する方法であって、
    請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の方法により糖鎖が切断された抗体又はそのFcであるアクセプター抗体又はアクセプターFcを調製することを備える、アクセプター調製ステップ、及び、
    該アクセプター抗体又はアクセプターFcと糖鎖ドナーをグライコシンターゼを用いて反応させて、前記所望の均一な糖鎖構造を有する糖鎖が結合された抗体又はそのFcを生成させることを備える、抗体生成ステップを備える方法。
  12. 前記所望の均一な糖鎖構造を有する糖鎖が、高マンノース型糖鎖、または複合型糖鎖である、請求項11に記載の方法。
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