JP5504282B2 - Maldi質量分析法 - Google Patents

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Description

本発明は、MALDI質量分析法におけるスイートスポットの予測方法に関するものである。
「質量分析法(mass spectrometry)」(以下、「MS」と略記することがある)とは、測定対象分子を含む試料をイオン化し、測定対象分子由来のイオンを質量電荷比(質量/電荷(m/z))によって分離し検出することによって、その測定対象分子の化学構造に関する情報を得る方法である。
MSにおいて、試料のイオン化は、分析の可否や得られるスペクトルの質を左右する重要な過程であり、試料を効率よくイオンにするためにこれまで多くのイオン化法が開発されてきた。現在のところ、生体高分子のイオン化には、ソフトイオン化であるマトリックス支援レーザー脱離イオン化(matrix−assisted laser desorption/ionization)(以下、「MALDI」と略記することがある)法やエレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization)(以下、「ESI」と略記することがある)法が主に用いられている。これらのイオン化法を用いた質量分析計は、NMR等に比べて測定試料量が少なくても測定が可能であることから、バイオ分野でも広く用いられている。
MALDIでは、マトリックスと呼ばれる光吸収を持つ物質の中に、分析対象となる分子(例えば、タンパク質、ペプチド、糖類等がある)を分散させ、そこにパルスレーザーを照射することでマトリックスと共に分析対象となる分子をイオン化する技術である。
使用するレーザーの波長は紫外領域の波長を有する場合が多く、赤外領域の波長を使用する場合もあるが、マトリックスの光吸収特性に合わせたレーザーを用いるのが一般的である。現在、最も多用されるレーザーは窒素レーザーであり、波長337nmを有する。
一方、使用するマトリックスの選択が分析の成否を決めるため、これまでに多くのマトリックスが開発され、実際にMALDIに用いられてきた。一般的に、マトリックスは結晶性の有機分子であり、分析試料との共結晶を生成した上で、上記パルスレーザーを照射しイオン化する。近年は様々な液体マトリックスも開発されてきており、分析対象の試料に応じ様々な選択肢がある。
実際に用いられているマトリックスの中でも汎用性があり、標準的なマトリックスは、CHCA(a−cyano−hydroxycinnamic acid)、SA(sinapic acid)、DHBA(2,5−dihydroxybenzoic acid)等であり、特にDHBAは、低分子量有機化合物、ペプチド、糖類、タンパク質等のイオン化に適する優れたマトリックスである。
一般に、マトリックスと試料は良く混ざり、混合結晶又は混合物となる必要があると考えられている。この試料とマトリックスの混合結晶又は混合物の善し悪しが感度及び質の良いスペクトルに影響を与える。更に、一見同質の混合物に見えても実際には不均一で、特に固体結晶の場合には、結晶が生成した場所すべてから測定対象分子由来のイオンが得られるわけでもなく、生成した結晶のごく一部分にレーザーを照射した場合のみ測定対象分子由来のイオンが得られる。
この部分は、「スイートスポット(sweet spot)」と呼ばれ、MALDIにおける測定の際は、まずスイートスポットを探すことが質の高いマススペクトルを得るために必要となるが、スイートスポットが結晶のどの部分であるかは経験によって探す他ない。
特に、DHBAは比較的大きな針状の結晶を生成するため、スイートスポットとそうでない場所でのイオン生成量の差が著しく異なる。結晶の不均一性がこの現象の大きな原因であると考えられており、これを示した例として、非特許文献1や非特許文献2がある。
更に、DHBAは2種類の結晶多形を持つことが知られており、それぞれの結晶は異なる融点を持つと報告されている。これを示した例として、非特許文献3及び非特許文献4がある。2種類の多形は溶媒を変えて異なる結晶化の条件で作り出された。また、独立行政法人産業技術総合研究所の有機化合物のスペクトルデータベースには、1種類のラマンスペクトルとIRスペクトルのみが掲載されている。しかしながら、MALDIにおける標準的な試料調製法の条件下でどのような結晶形が生成しているのかについて研究されたことはなかったばかりでなく、その結晶形とMALDIにおけるシグナルの関係、特に結晶形とスイートスポットの関係については全く知られていなかった。
DHBAは、糖鎖や糖ペプチドの測定に汎用されるが、糖鎖や糖ペプチドはイオン化効率が悪いので、スイートスポットを見つけることが必須である。質の高い良いマススペクトルを得るには、経験によって手動でスイートスポットを探し出し、レーザー照射を行うといった時間のかかる作業や、試料が消費されるプレスキャンが必要となり、特に自動分析には適さないのが現状であった。
この問題の解決には、マトリックス溶液を迅速に乾燥させる等して、強制的に微結晶を生成させ、スイートスポットの生成を妨げる手法や、結晶化しない液体マトリックスを使用する手法があるが、イオン生成量の低下を招いたり、夾雑塩等の付加イオンの生成を促進したりする場合があり、スイートスポットの高いイオン生成量を生かしたまま用いることのできる手法ではなかった。液体マトリックスにおいても、固体マトリックスほどのばらつきはないが、夾雑塩等の影響でスペクトルの再現性が劣る場合もあり、根本的な解決にはならなかった。
スイートスポットを特定するのを容易にする目的でいくつかの技術が開発されており、例として特許文献1や特許文献2があるが、これらは単に結晶化の起点を制御するという発想に基づいており、本発明の趣旨である質量分析以外の方法を用いてスイートスポットを予測するという発想とは根本的に異なるものであった。
特開2003−098115号公報 特開2003−098149号公報
Revecca W. et al., Anal. Chem.72(18), 30-36 (2000) Luxembourg S.L. et al.,Anal. Chem. 75(10), 2333-2341 (2003) Haisa M. et al., Acta. Cryst. B38,1480-1485(1982) Cohen D.E. et al., CrystalGrowth&Design 7(3), 492-495(2007)
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、MALDI質量分析法において、高いイオン生成量を提供する測定試料混合物の判定及びスイートスポットを正確に予測することで、短時間で効率良く質の高いMSスペクトルを得ることのできる方法を提供することにある。
また、構造同定に必要な高感度MS(2≦n)解析が可能となり、また、自動分析への応用が可能となり、高スループットのMALDI質量分析法の実現が可能になる方法を提供することにある。
本発明者は、マトリックス単独の結晶の物理化学的性質を調べるために、様々な局所的な分析を行った結果、意外にも既知の分析結果とは異なる分析結果を呈する別種のマトリックス結晶が存在することを発見した。このことから、測定対象分子を含む試料とマトリックスの混合結晶においても、スイートスポットにならない該混合結晶の部分は、既知の分析結果と同様の分析結果を呈する結晶であり、スイートスポットを創出する該混合結晶の部分は、既知の分析結果とは異なる分析結果を呈する当該別種のマトリックス結晶と同様の結晶であるかもしれないと着想して、鋭意検討を重ねた結果、上記の課題を解決できることを見出した。
すなわち、驚くべきことに、上記のスイートスポットを創出する「測定対象分子を含む試料とマトリックスの混合結晶」の部分は、スイートスポットにならない混合結晶の部分とは異なる分析結果を示すことを初めて見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1] MALDI質量分析法において、測定対象分子を含む試料とマトリックスの混合結晶を析出させた後、質量分析法以外の分析方法を用いて、該混合結晶の局所的な分析をしてからMALDI質量分析をして、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果、及び/又はスイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果を予め特定しておき、
次に、測定対象分子を含む試料と該マトリックスの混合結晶を析出させた後、該質量分析法以外の分析方法を用いて、該混合結晶の局所的な分析をし、スイートスポットになる該混合結晶の部分の該分析結果を呈する混合結晶の部分を検出して、その部分がスイートスポットであると予測する、及び/又はスイートスポットにならない該混合結晶の部分の該分析結果を呈する混合結晶の部分を検出して、その部分がスイートスポットでないと予測することを特徴とするスイートスポットの予測方法を提供するものである。
更に、本発明は、以下のスイートスポットの予測方法を提供するものである。
[2] MALDI質量分析法において、試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後にマトリックスの溶液を載置し、又は試料支持部材上に測定対象分子を含む試料とマトリックスの溶液を同時に載置し、該溶液を乾燥させて該試料とマトリックスの混合結晶を析出させた後、質量分析法以外の分析方法を用いて、該混合結晶の局所的な分析をしてからMALDI質量分析をして、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果、及び/又はスイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果を予め特定しておき、
次に、試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後に該マトリックスの溶液を載置し、又は試料支持部材上に測定対象分子を含む試料と該マトリックスの溶液を同時に載置し、該溶液を乾燥させて、該試料と該マトリックスの混合結晶を析出させた後、該質量分析法以外の分析方法を用いて、該混合結晶の局所的な分析をし、スイートスポットになる該混合結晶の部分の該分析結果を呈する混合結晶の部分を検出して、その部分がスイートスポットであると予測する、及び/又はスイートスポットにならない該混合結晶の部分の該分析結果を呈する混合結晶の部分を検出して、その部分がスイートスポットでないと予測することを特徴とする[1]記載のスイートスポットの予測方法。
[3] 該局所的な分析を、該混合結晶の全域又は一定の範囲に対して、繰り返し行い若しくはスキャンして、その分析結果をマッピングすることにより、スイートスポットとなる領域を予測することを特徴とする[1]又は[2]記載のスイートスポットの予測方法。
[4] 該質量分析法以外の分析方法が、結晶多形を識別する分析方法である[1]ないし[3]の何れかに記載のスイートスポットの予測方法。
[5] 該質量分析法以外の分析方法が、分光スペクトル測定による分析方法である[1]ないし[3]の何れかに記載のスイートスポットの予測方法。
[6] 該分光スペクトル測定が、ラマン分光スペクトル測定又は赤外分光スペクトル測定である[5]記載のスイートスポットの予測方法。
[7] 該質量分析法以外の分析方法が、X線回折測定による分析方法である[1]ないし[3]の何れかに記載のスイートスポットの予測方法。
[8] 該質量分析法以外の分析方法が、光学顕微鏡法による結晶表面の構造色の検出による分析方法である[1]ないし[3]の何れかに記載のスイートスポットの予測方法。
[9]
該質量分析法以外の分析方法が結晶表面の周期1μm以上10μm以下の周期的な凹凸状態の検出である[1]ないし[3]の何れかに記載のスイートスポットの予測方法。
[10] 該マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、該分光スペクトル測定がラマン分光スペクトル測定であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、376cm−1付近にシグナルを実質的に有さない、又は1199cm−1付近にシグナルを実質的に有さない、又は1307cm−1付近にシグナルを実質的に有さないラマン分光スペクトルである、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、376cm−1付近にシグナルを有する、又は1199cm−1付近にシグナルを有する、又は1307cm−1付近にシグナルを有するラマン分光スペクトルである[6]記載のスイートスポットの予測方法。
[11]
該マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、該分光スペクトル測定が赤外分光スペクトル測定であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、1200cm−1付近にシグナルを実質的に有さない、又は1300cm−1付近にシグナルを有する赤外分光スペクトルである、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、1200cm−1付近にシグナルを有する、又は1300cm−1付近にシグナルを実質的に有さない赤外分光スペクトルである[6]記載のスイートスポットの予測方法。
[12] 該マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、該分光スペクトル測定がラマン分光スペクトル測定又は赤外分光スペクトル測定であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、3265cm−1付近にシグナルを有するラマン分光スペクトル又は赤外分光スペクトルである、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、3265cm−1付近にシグナルを実質的に有さないラマン分光スペクトル又は赤外分光スペクトルである[6]記載のスイートスポットの予測方法。
[13] 該質量分析法以外の分析方法が光学顕微鏡法による結晶表面の構造色の検出であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が構造色を示さない、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が構造色を示す、光学顕微鏡による分析結果である[8]記載のスイートスポットの予測方法。
[14] 該マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、結晶表面に周期1μm以上10μm以下の周期的な凹凸状態が検出されない、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、結晶表面に周期1μm以上10μm以下の周期的な凹凸状態が検出される、共焦点レーザー顕微鏡による分析結果である[9]記載のスイートスポットの予測方法。
[15] 試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後であって、マトリックスの溶液を載置する前に、測定対象分子と反応することによってイオン化効率を高める誘導体化剤の溶液を該試料支持部材上に滴下して乾燥する工程を挿入する[2]ないし[14]の何れかに記載のスイートスポットの予測方法。
また、本発明は、
[16] 試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後にマトリックスの溶液を載置し、又は試料支持部材上に測定対象分子を含む試料とマトリックスの溶液を同時に載置し、該溶液を乾燥させて、該試料とマトリックスの混合結晶を析出させた後、質量分析法以外の分析方法を用いて、該混合結晶の局所的な分析をしてからMALDI質量分析をして、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果を予め特定しておき、
次に、試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後に該マトリックスの溶液を載置し、又は試料支持部材上に測定対象分子を含む試料と該マトリックスの溶液を同時に載置し、該溶液を乾燥させて、該試料と該マトリックスの混合結晶を析出させた後、該質量分析法以外の分析方法を用いて、該混合結晶の局所的な分析をし、スイートスポットになる該混合結晶の部分の該分析結果を呈する混合結晶の部分を検出して、該検出された混合結晶の部分を対象としてレーザー脱離イオン化する、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の該分析結果を呈する混合結晶の部分を検出して、該検出された混合結晶の部分を対象としてレーザー脱離イオン化しないことを特徴とするMALDI質量分析法を提供するものである。
更に、本発明は以下のMALDI質量分析法を提供するものである。
[17] 該局所的な分析を、該混合結晶の全域又は一定の範囲に対して、繰り返し行い若しくはスキャンして、その分析結果をマッピングすることにより、スイートスポットになる該混合結晶の部分の該分析結果を呈する混合結晶の部分、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の該分析結果を呈する混合結晶の部分を検出することを特徴とする[16]記載のMALDI質量分析法。
[18] 該質量分析法以外の分析方法が、結晶多形を識別する分析方法である[16]又は[17]記載のMALDI質量分析法。
[19] 該質量分析法以外の分析方法が、分光スペクトル測定による分析方法である[16]又は[17]記載のスイートスポットの予測方法。
[20] 該分光スペクトル測定が、ラマン分光スペクトル測定又は赤外分光スペクトル測定である[19]記載のMALDI質量分析法。
[21] 該質量分析法以外の分析方法が、X線回折測定による分析方法である[16]又は[17]記載のMALDI質量分析法。
[22]
該質量分析法以外の分析方法が、光学顕微鏡法による結晶表面の構造色の検出による分析方法である[16]又は[17]記載のMALDI質量分析法。
[23]
該質量分析法以外の分析方法が結晶表面の周期1μm以上10μm以下の周期的な凹凸状態の検出である[16]又は[17]記載のMALDI質量分析法。
[24] 該マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、該分光スペクトル測定がラマン分光スペクトル測定であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、376cm−1付近にシグナルを実質的に有さない、又は1199cm−1付近にシグナルを実質的に有さない、又は1307cm−1付近にシグナルを実質的に有さないラマン分光スペクトルである、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、376cm−1付近にシグナルを有する、又は1199cm−1付近にシグナルを有する、又は1307cm−1付近にシグナルを有するラマン分光スペクトルである[20]記載のMALDI質量分析法。
[25] 該マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、該分光スペクトル測定が赤外分光スペクトル測定であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、1200cm−1付近にシグナルを実質的に有さない、又は1300cm−1付近にシグナルを有する赤外分光スペクトルである、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、1200cm−1付近にシグナルを有する、又は1300cm−1付近にシグナルを実質的に有さない赤外分光スペクトルである[20]記載のMALDI質量分析法。
[26] 該マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、該分光スペクトル測定がラマン分光スペクトル測定又は赤外分光スペクトル測定であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、3265cm−1付近にシグナルを有するラマン分光スペクトル又は赤外分光スペクトルである、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、3265cm−1付近にシグナルを実質的に有さないラマン分光スペクトル又は赤外分光スペクトルである[20]記載のMALDI質量分析法。
[27]
該質量分析法以外の分析方法が光学顕微鏡法による結晶表面の構造色の検出であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が構造色を示さない、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が構造色を示す、光学顕微鏡による分析結果である[22]記載のMALDI質量分析法。
[28]
該マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、結晶表面に周期1μm以上10μm以下の周期的な凹凸状態が検出されない、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、結晶表面に周期1μm以上10μm以下の周期的な凹凸状態が検出される、共焦点レーザー顕微鏡による分析結果である[23]記載のMALDI質量分析法。
[29] 試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後であって、マトリックスの溶液を載置する前に、測定対象分子と反応することによってイオン化効率を高める誘導体化剤の溶液を該試料支持部材上に滴下して乾燥する工程を挿入する[16]ないし[28]の何れかに記載のMALDI質量分析法。
本発明によれば、前記問題点と課題を解決し、測定試料の善し悪しやスイートスポットがMALDI質量分析法用の試料支持部材上のどの部分にあるかを経験によって探し出す必要がなくなり、誰でも短時間で効率良く質の高いMSスペクトルを得ることができる。それによって、自動分析への応用が可能となり、高スループットのMS分析手法を提供することができる。
特に、構造同定に必要な高感度MS(2≦n)解析を可能にし、測定対象分子を含む試料の量が少ない、測定対象分子のイオン化効率が低い等の理由で従来は測定できなかった試料であっても、誰でも短時間で効率良く化学構造の決定が可能になる。
実施例で用いられた測定対象分子である糖ペプチドの化学構造を示す図である。 試料支持部材上の析出物の共焦点レーザー顕微鏡写真を示す図である。 2種類のラマン分光スペクトルを示す図である。 (a)標準品の「DHBA粉末」と、プレート(試料支持部材)上の結晶Aで測定されたラマン分光スペクトルである。 (b)プレート(試料支持部材)上の結晶Bで測定された標準品の「DHBA粉末」又は結晶Aとは異なるラマン分光スペクトルである。 1199cm−1付近に強いシグナルをもつ結晶Aを白く表し、1199cm−1付近に強いシグナルをもたない結晶Bを黒く表した分析結果であるラマンイメージング画像である。 図4で黒く表された部分(結晶B)のマススペクトルを示す図である。 試料支持部材上をMSシグナルでスキャンした画像であり、イオン化効率が高い部分を示す図である。 図4で白く表された部分(結晶A)のマススペクトルを示す図である。 2種類の赤外分光スペクトルを示す図である。 (a)標準品の「DHBA粉末」と、プレート(試料支持部材)上の結晶Aで測定された赤外分光スペクトルである。 (b)プレート(試料支持部材)上の結晶Bで測定された標準品の「DHBA粉末」又は結晶Aとは異なる赤外分光スペクトルである。 2種類のX線回折を示す図である。 上のチャート:標準品の「DHBA粉末」と、プレート(試料支持部材)上の結晶Aで測定されたX線回折である。 下のチャート:プレート(試料支持部材)上の結晶Bで測定された標準品の「DHBA粉末」又は結晶Aとは異なるX線回折である。 実施例4で得た試料支持部材上の析出物の分析結果であるラマンイメージング画像と試料支持部材上をMSシグナルでスキャンした画像を示す図である。 (a)ラマン分光スペクトル測定の結果、1199cm−1付近に強いシグナルをもつ結晶Aは緑色で表されたのでその部分を実線の楕円で囲み、1199cm−1付近に強いシグナルをもたない結晶Bは赤色で表されたのでその部分を破線の楕円で囲んで示したラマンイメージング画像である。 (b)この試料支持部材上をMSシグナルでスキャンした画像であり、イオン化効率が高い部分を濃い灰色から黒で示す図である。 参考例1で得た「高純度DHBA粉末」の光学顕微鏡像、及びラマンスペクトル取得後、3076cm−1、1203cm−1、3269cm−1のシグナルの強弱のラマンイメージング画像を示す図である。 (a)光学顕微鏡像 (b)3076cm−1の強弱のラマンイメージング画像 (c)1203cm−1の強弱のラマンイメージング画像 (d)3269cm−1の強弱のラマンイメージング画像 参考例2で得た「高純度DHBA粉末」を水で溶解後析出した結晶の光学顕微鏡像、及びラマンスペクトル取得後、3076cm−1、1203cm−1、3269cm−1のシグナルの強弱のラマンイメージング画像を示す図である。 (a)光学顕微鏡像 (b)3076cm−1の強弱のラマンイメージング画像 (c)1203cm−1の強弱のラマンイメージング画像 (d)3269cm−1の強弱のラマンイメージング画像 実施例5で得た測定試料の光学顕微鏡像である。 実施例6で得た測定試料の共焦点レーザー顕微鏡像と試料支持部材上をMSシグナルでスキャンした画像である。 (a)測定試料の共焦点レーザー顕微鏡像 (b)試料支持部材上をMSシグナルでスキャンした画像であり、イオン化効率が高い部分を示す図
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の具体的態様に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
マトリックスはレーザーの光エネルギーを吸収して、共存する分析対象分子の脱離及びイオン化を達成する物質であれば液体及び固体を問わず種類は限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
1,8−ジアミノナフタレン(1,8-Diaminonaphthalene)(1,8−DAN)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(2,5-Dihydroxybenzoic acid)(以下、「DHBA」と略記する場合がある)、1,8−アントラセンジカルボン酸ジメチルエステル(1,8-Anthracenedicarboxylic Acid Dimethyl ester)、ロイコキニザリン(Leucoquinizarin)、アントラロビン(Anthrarobin)、1,5−ジアミノナフタレン(1,5-Diaminonaphthalene)(1,5−DAN)、6−アザ−2−チオチミン(6-Aza-2-thiothymine)、1,5−ジアミノアントラキノン(1,5-Diaminoanthraquinone)、1,6−ジアミノピレン(1,6-Diaminopyrene)、3,6−ジアミノカルバゾール(3,6-Diaminocarbazole)、1,8−アントラセンジカルボン酸(1,8-Anthracenedicarboxylic Acid)、ノルハルマン(Norharmane)、1−ピレンプロピルアミンハイドロクロライド(1-Pyrenepropylamine
hydrochloride)、9−アミノフルオレンハイドロクロライド(9-Aminofluorene
Hydrochloride)、フェルラ酸(Ferulic acid)、ジトラノール(Dithranol)、2−(4−ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸(2-(4-Hydroxyphenylazo)benzoic acid)(HABA)、trans−2−[3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチル−2−プロペニリデン]マロンニトリル(trans-2-[3-(4-tert-Butylphenyl)-2-methyl-2-propenylidene]malononitrile)(DCTB)、trans−4−フェニル−3−ブテン−2−オン(trans-4-Phenyl-3-buten-2-one)(TPBO)、trans−3−インドールアクリル酸(trans-3-Indoleacrylic
acid)(IAA)、1,10−フェナントロリン(1,10-Phenanthroline)、5−ニトロー1,10−フェナントロリン(5-Nitro-1,10-phenanthroline)、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(α-Cyano-4-hydroxycinnamic acid)(CHCA)、シナピン酸(Sinapic acid)(SA)、2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノン(2,4,6-Trihydroxyacetophenone)(THAP)、3−ヒドロキシピコリン酸(3-Hydroxypicolinic acid)(HPA)、アントラニル酸(Anthranilic acid)、ニコチン酸(Nicotinic
acid)、3−アミノキノリン(3-Aminoquinoline)、2−ヒドロキシ−5−メトキシ安息香酸(2-Hydroxy-5-methoxybenzoic acid)、2,5−ジメトキシ安息香酸(2,5-Dimethoxybenzoic acid)、4,7−フェナントロリン(4,7-Phenanthroline)、p−クマル酸(p-Coumaric acid)、1−イソキノリノール(1-Isoquinolinol)、2−ピコリン酸(2-Picolinic acid)、1−ピレンブタン酸ヒドラジド(1-Pyrenebutanoic acid, hydrazide)(PBH)、1−ピレンブタン酸(1-Pyrenebutyric acid)(PBA)、1−ピレンメチルアミンハイドロクロライド(1-Pyrenemethylamine hydrochloride)(PMA)、3−AC(アミノキノリン)−CHCA(3-AC(aminoquinoline)-CHCA)。
3−AC−CHCA等の液体マトリックスを用いた場合は、溶媒を揮発させても混合結晶ではなく混合物になるが、質量分析法以外の分析方法を用いて、該測定分子とマトリックス混合物の分析をし、該マトリックスの標準品とは異なる分析結果を呈する混合物の部分を検出して、混合物の善し悪しやその部分がスイートスポットであると予測することもできる。
本発明においては、「MALDI質量分析法において、測定対象分子を含む試料とマトリックスの混合結晶を析出させた後、質量分析法以外の分析方法を用いて、該混合結晶の局所的な分析をしてからMALDI質量分析をして、スイートスポットにならない分析結果を与える該混合結晶と同じ結晶構造を有するマトリックスの結晶品」を、便宜上、「マトリックスの標準品」又は単に「標準品」と略記する。例えば、DHBAをマトリックスとして用いて、測定対象分子を含む試料とマトリックスの混合結晶を析出させた後、質量分析法以外の分析方法を用いて、該混合結晶の局所的な分析をしてからMALDI質量分析をして、スイートスポットにならない分析結果を与える該混合結晶と同じ結晶構造を有するDHBAの結晶品を、便宜上、「DHBAの標準品」又は単に「標準品」と略記する。また、「DHBAの標準品」を、単に「DHBA粉末」と略記する場合がある。
<試料とマトリックス混合結晶の析出又は混合物の生成>
本発明のスイートスポットの予測方法は、まず、MALDI質量分析法における測定対象分子を含む試料とマトリックスの混合結晶を析出させる。該混合結晶を析出させる方法は特に限定はないが、例えば、好ましい方法として、以下の(1)〜(3)が挙げられる。
(1)試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後に、乾燥後又は乾燥する前にマトリックスの溶液を載置し、次いで、該溶液を乾燥させて、該混合結晶を析出させる方法。
(2)試料支持部材上に測定対象分子を含む試料とマトリックスの溶液を同時に載置し、次いで、該溶液を乾燥させて、該混合結晶を析出させる方法。
(3)試料支持部材上に該マトリックスの溶液を載置し、次いで該溶液を乾燥させ該マトリックスの結晶を析出させた後、同一又は異なる化学構造を有するマトリックスと測定対象分子を含む溶液を重層し、次いで該溶液を乾燥させて混合物を生成させる方法。
液体マトリックスの場合は例えば以下のようになる。
(1)試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後に、乾燥後又は乾燥する前にマトリックスの溶液を載置し、次いで、該混合溶液の溶媒を揮発させて、該混合物を生成させる方法。
(2)試料支持部材上に測定対象分子を含む試料とマトリックスの溶液を同時に載置し、次いで、該混合溶液の溶媒を揮発させて、該混合物を生成させる方法。
試料とマトリックスの混合結晶を析出させる方法として、特に好ましくは上記(1)又は(2)である。すなわち、
(1)試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後にマトリックスの溶液を載置し、又は、
(2)試料支持部材上に測定対象分子を含む試料とマトリックスの溶液を同時に載置し、
次いで、該溶液を乾燥させて、該混合結晶を析出させる方法
<<(1)法>>
上記(1)法は、本発明において特に好適な方法であり、測定対象分子を含む試料を先に試料支持部材上に存在させ、次いで、マトリックスの溶液(好ましくは実質的にマトリックスのみの溶液)を、該試料に重層し、試料を溶解させながら、試料支持部材(以下、「プレート」と略記することがある)上で乾燥させて、結晶を析出させる測定試料の調製方法である。
上記(1)においては、マトリックス溶液をプレート上で乾燥する工程を、プレート上に物質を供給する工程の中では最終の工程とする。一般に、高いイオン生成量を得るためには試料とマトリックスがよく混合されなければならないにもかかわらず、最終の工程でプレートに供給する溶液の中に測定対象分子が溶解(含有)されていなくてもよいことを本発明者は見出した。
そして、かかる(1)法によれば、質量分析法以外の分析方法を用いて該混合結晶の局所的な分析をした際に、該マトリックスの標準品とは異なる分析結果を呈する「測定対象分子を含む試料とマトリックスの混合結晶」を試料支持部材上に好適に現出させることが可能である。「異なる分析結果」とは、分析パターン全体を多変量解析してパターンが一致しない場合や、後述のように、特定の波数に着目して、その波数若しくは回折角でのシグナルピークの有無又はその相対的高低が異なる場合等がある。
上記「測定対象分子を含む試料とマトリックスの混合結晶」が呈する、後記する質量分析法以外の分析方法による分析結果は、測定対象分子を含まないマトリックスの結晶(すなわち、マトリックスのみの結晶)でも呈する場合がある。従って、「測定対象分子を含む試料とマトリックス」と「マトリックス単独」では、物が異なるので、異なる分析結果が得られて当然という訳ではない。本発明は、マトリックスの標準品とは異なる分析結果を呈する「測定対象分子を含む試料とマトリックスの混合結晶」の部分が、スイートスポットになることを見出してなされたものであるが、マトリックスの標準品とは異なる分析結果は、マトリックス単独でも呈する場合があるので、測定対象分子を、直接「質量分析法以外の分析方法」によって分析することによって、「異なる分析結果」としている訳ではない。
物質をプレート上に載置するための実質的な最終工程に、マトリックスのみの溶液を用いる場合、該溶液の溶媒は、測定対象分子と該マトリックスの何れをも溶解できる溶媒であることが好ましい。下層に既にある測定対象分子を溶解して、マトリックスと混合させることができるからである。
上記(1)法は、以下の、工程(A)及び工程(B)を必須の工程として含むことが好ましい。
(A)測定対象分子を含む試料の溶液をプレート上で乾燥する工程と、その後に、
(B)マトリックスのみを溶媒に溶解した溶液を、上記プレートに滴下する工程
工程(A)では、測定対象分子を含む試料の溶液をプレート上で乾燥する。このときの溶液は、測定対象分子を含有してさえいればよく、マトリックスは含有されていてもいなくてもよい。ただし、測定対象分子を含む試料が極微量の場合、測定対象分子を含む試料の良溶媒がマトリックスの貧溶媒であり、そのマトリックスや溶媒を用いたい場合、マトリックスが溶解した溶媒に対して試料が不安定でありストック溶液として保管若しくは使用ができない又は取り扱いが難しくなる場合等には、測定試料の調製が容易である点、溶媒の選択幅が広がる点、試料の分解や容器への吸着を抑制できる点等のため、このときの溶液中にはマトリクスが溶解されておらず、測定対象分子を含む試料のみが溶解されている方が好ましい。
その際の溶媒としては、測定対象分子を含む試料を溶解しさえすれば特に限定はなく、マトリックスを溶解させる性質は有していなくてもよいし、常圧における沸点が高く、蒸発(乾燥)速度は遅くてもよい。測定対象分子又は測定対象分子を含む試料が水溶性であるならば、工程(A)で用いる溶媒は水単独が特に好ましい。測定対象分子を含む試料が糖であるならば、工程(A)で用いる溶媒は水単独が最も好ましい。マトリックスを溶解させないので、マトリックスに対する溶解度は低くてもよく、そのため測定対象分子又は測定対象分子を含む試料に最も好適な溶媒が選択できる。
工程(A)における上記溶液中における測定対象分子の濃度は特に限定はないが、1amol/μL〜1μmol/μLが好ましく、100amol/μL〜1nmol/μLが特に好ましい。工程(A)終了後に(乾燥後に)、プレート上に存在する測定対象分子を含有する層の厚さは特に限定はないが、5μm以下が好ましく、1μm以下が特に好ましい。かかる層の厚さが厚すぎると、マトリックス溶液を滴下した場合にマトリックス分子とうまく混和しない可能性があり、MSシグナル強度が低下する場合がある。
(1)法は、「測定対象分子を含む試料」の溶液をまずプレートに滴下するので、測定対象分子を含む試料が極めて微量である場合に、別の容器でマトリックス溶液と混合しその一部をプレートに滴下することなく、微量試料のほとんど全量を分析に供することができるため特に有用である。測定対象分子を含む試料が1000fmol以下の場合により有用であり、300fmol以下の場合に特に有用であり、100fmol(例えば、100fmol/μLに溶解した水溶液を1μL滴下する等によりプレート上に100fmol載せる)以下の場合に更に有用である。
(1)法においては、工程(A)の後に、(B)マトリックスのみを溶媒に溶解した溶液を上記プレートに滴下する工程を有する。「工程(A)の後に」の意味は、「工程(A)の直後に」には限定されず、工程(A)と工程(B)の間に、他の工程が挿入されていてもよい。「他の工程」としては、例えば、後述する工程(C)が挙げられる。
工程(B)では、実質的にマトリックスのみを溶媒に溶解した溶液を上記プレートに滴下するが、測定対象分子と該マトリックスの何れをも溶解できる溶媒を用いることによって、下層の測定対象分子がマトリックス分子と混和し、マトリックスの標準品とは異なる分析結果を呈する混合結晶が現出し、そこが優れたスイートスポットになり得る。
<<<誘導体化>>>
(1)法においては、上記工程(A)と工程(B)の間に、
(C)測定対象分子と反応することによってイオン化効率を高める誘導体化剤の溶液を、上記プレートに滴下して乾燥する工程
を含むことが、イオン化効率を更に高めるために好ましい。
すなわち、(A)試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後であって、(B)マトリックスの溶液を載置する前に、(C)測定対象分子と反応することによってイオン化効率を高める誘導体化剤の溶液を該試料支持部材上に滴下して乾燥する工程を挿入するMALDI質量分析法は、イオン化効率が更に高くなるために好ましい。
測定対象分子と反応することによってイオン化効率を高める誘導体化剤(以下、単に「誘導体化剤」と略記する)を、予め測定対象分子と反応させてから、プレートに供給すると、測定試料のロスに繋がる場合がある。従って、糖、糖タンパク質、糖ペプチド等の微量な「生体由来の分子又は生体試料中の分子」に質量分析法を適用する場合、工程(A)と工程(B)の間に工程(C)を挿入することが特に好ましい。
誘導体化剤は、誘導体化された測定対象分子すなわち質量分析に供される分子のイオン化効率を高めるものであれば特に限定はない。誘導体化剤は、MALDI質量分析法におけるマトリックスとしての効果を有する化合物、又はそれらに後記する反応性官能基やスペーサ部分を更に有する化合物も好ましい。
かかる誘導体化剤の化学構造は上記効果を奏するものであれば特に限定はないが、その分子内にナフタレン、アントラセン、ピレン等の縮合多環を有する縮合多環化合物等が上記効果を好適に奏するので特に好ましい。ここで「縮合多環化合物」とは、窒素、硫黄又は酸素分子を含む複素環を一部に含んでいてもよい縮合多環部分と、測定対象分子とを結合することが可能である反応性官能基と、要すれば、該縮合多環部分と該反応性官能基とを連結するスぺーサー部分とを有する化合物をいう。特に、芳香族環を有する化合物であることが好ましい。
誘導体化剤は、測定対象分子に反応することによって、誘導体化された分子すなわち質量分析に供される分子の、イオン化切断位置を制御できるようにするものであることが特に好ましい。
誘導体化剤は、アミノ基、ヒドラジド基、ジアゾメチル基、スクシニミジルエステル基、塩化スルホニル基、ヨード基(−I)等の反応性官能基を有することが好ましい。特に好ましい誘導体化剤としては、具体的には、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環等の縮合多環に、上記基が直接若しくは他の基(スペーサ部分)を介して結合した縮合多環誘導体化合物;ヨウ化メチル;ジアゾメタン;トリメチルシリルジアゾメタン等が挙げられる。
このうち、誘導体化された分子すなわち質量分析に供される分子のイオン化効率を高めたり、イオン化切断位置を制御できるようにしたりする点等で、ピレン環化合物が特に好ましい。ここで「ピレン環化合物」とは、ピレン環と、「測定対象分子」に結合することが可能である反応性官能基と、要すれば該ピレン環と該反応性官能基とを連結するスペーサ部分とを有する化合物をいう。
具体的には、1−ピレンブタン酸ヒドラジド(1-pyrenebutanoic acid, hydrazide)(以下、「PBH」と略記する)、1−ピレン酢酸ヒドラジド(1-pyreneacetic acid, hydrazide)、1−ピレンプロピオン酸ヒドラジド(1-pyrenepropionic acid, hydrazide)、1−ピレン酢酸スクシニミジルエステル(1-pyreneacetic acid, succinimidyl ester)、1−ピレンプロピオン酸スクシニミジルエステル(1-pyrenepropionic acid, succinimidyl ester)、1−ピレンブタン酸スクシニミジルエステル(1-pyrenebutanoic acid, succinimidyl ester)、N−(1−ピレンブタノイル)システイン酸スクシニミジルエステル(N-(1-pyrenebutanoyl)cysteic acid, succinimidyl ester)、N−(1−ピレン)ヨードアセトアミド(N-(1-pyrene) iodoacetamide)、N−(1−ピレン)ヨードマレイミド(N-(1-pyrene) maleimide)、N−(1−ピレンメチル)ヨードアセトアミド(N-(1-pyrenemethyl) iodoacetamide)、1−ピレンメチルヨードアセテート(1-pyrenemethyl iodoacetate)、アミノピレン(aminopyrene)、1−ピレンメチルアミン(1-pyrenemethyl amine)、1−ピレンプロピルアミン(3-(1-pyrenyl)propylamine)、1−ピレンブチルアミン(4-(1-pyrenyl)butylamine)、1−ピレンスルホン酸クロリド(1-pyrenesμLfonyl chloride)、1−ピレニルジアゾメタン(1-pyrenyldiazomethane)(以下、「PDAM」と略記する)、1−ピレンカルバルデヒド ヒドラゾン(1-pyrenecarbaldehyde hydrazone)、1−ピレニルチオシアネート(1-pyrenylthiocyanate)、1−ピレニルイソチオシアネート(1-pyrenylisothiocyanate)等が好ましいものとして挙げられる。このうち最も好ましくはPBH又はPDAMである。
誘導体化剤としては、上記具体的化合物において、ピレン環を、ナフタレン環又はアントラセン環に代えたものも好ましいものとして挙げられる。また、ヨウ化メチル、ジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンも好ましい。
好ましい「測定対象分子と誘導体化剤との組み合わせ」としては、測定対象分子がアルデヒド基を含有する糖鎖を有する分子であり、誘導体化剤がアミノ基又はヒドラジド基等を有するものである場合が挙げられる。また、好ましい組み合わせとしては、測定対象分子が、カルボキシル基、アミノ基又はメルカプト基を有するタンパク質若しくは糖タンパク質であり、誘導体化剤が、アミノ基、ヒドラジド基又はジアゾメチル基等を有するものである場合が挙げられ、更に、測定対象分子が、カルボキシル基を有するタンパク質若しくは糖タンパク質であり、誘導体化剤がヨウ化メチル又はトリメチルシリルジアゾメタンである場合が挙げられる。これらの組み合わせは、測定対象分子及び誘導体化剤を、容易にプレート上で反応させることができる点、イオン化を阻害しない点、反応が選択的である点、一般に微量での分析の必要性が高いので、前記効果を奏し易い点等から好ましい。
<<(2)法>>
(2)試料支持部材上に測定対象分子を含む試料とマトリックスの溶液を同時に載置し、該溶液を乾燥させて、試料支持部材上に該混合結晶を析出させる方法も好ましい。かかる(2)の測定試料の調製方法は、「Dried Droplet法」として知られているものである。(1)の調製方法で、試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後に、乾燥する前にマトリックスの溶液を載置する方法も同様である。
この(2)法によっても、試料支持部材上に、質量分析法以外の分析方法を用いて、該混合結晶の局所的な分析をした際に、該マトリックスの標準品とは異なる分析結果を呈する「測定対象分子を含む試料とマトリックスの混合結晶」を現出させ得る。また、(2)法においても測定対象分子の誘導体化を行ってもよい。
<質量分析法以外の分析方法による局所的な分析>
本発明のスイートスポットの予測方法においては、MALDI質量分析法において、測定対象分子を含む試料とマトリックスの混合結晶を析出させた後、質量分析法以外の分析方法を用いて、該混合結晶の局所的な分析をしてからMALDI質量分析をして、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果を予め特定しておき、
次に、測定対象分子を含む試料と該マトリックスの混合結晶を析出させた後、該質量分析法以外の分析方法を用いて、該混合結晶の局所的な分析をし、該「スイートスポットになる該混合結晶の部分の該分析結果」を呈する混合結晶の部分を検出して、その部分がスイートスポットであると予測する、及び/又は、該「スイートスポットにならない該混合結晶の部分の該分析結果」を呈する混合結晶の部分を検出して、その部分がスイートスポットでないと予測することを特徴とする。
本発明の「スイートスポットの予測方法」には、「ある部分がスイートスポットであると予測すること」及び/又は「ある部分がスイートスポットでないと予測すること」を含む。
また、本発明のMALDI質量分析法においては、該検出された「測定対象分子を含む試料とマトリックスの混合結晶」の部分を対象としてレーザー脱離イオン化することを特徴とする。すなわち、本発明のMALDI質量分析法においては、スイートスポットになる「該混合結晶の部分の該分析結果を呈する混合結晶の部分」を検出して、該検出された混合結晶の部分を対象としてレーザー脱離イオン化する、及び/又は、スイートスポットにならない「該混合結晶の部分の該分析結果を呈する混合結晶の部分」を検出して、該検出された混合結晶の部分を対象としてレーザー脱離イオン化しないことを特徴とする。
従来、図6に示したように、試料支持部材上の混合物である測定試料の全域に対して、質量分析法を用いて、該混合物の局所的な分析をして、イオン化効率の高い場所を探索する手法はあった。例えば、イオン化のためのレーザーパワーを測定対象分子のイオンのシグナルがではじめる閾値に最適化した後、試料支持部材上の測定試料の全域に対して、レーザーのスキャニング照射を行い、スイートスポットをマッピングする方法はあった。
しかしながら、質量分析法を用いてスイートスポットを見付け出す方法は、そのために一旦試料をイオン化させてしまうので、そもそも、その試料支持部材上の測定試料をフレッシュの状態で、本番のMSスペクトルがとれない場合があり、更には、特に極微量の試料を扱う場合は、スイートスポットの探索時に試料のほとんどが消費されてしまい、それ以降のMSスペクトルの取得や、構造情報取得のためのMS(2≦n)スペクトルの取得が不可能な場合もある。
本発明における「質量分析法以外の分析方法」は、特に限定はないが非破壊の分析方法であることが、分析された試料が載っているプレートそのままをMALDI質量分析に供することができる点で好ましい。上記「非破壊」とは、形状のみならず、物性等も実質的に変質させないことを意味する。
「質量分析法以外の分析方法」によって、「スイートスポットにはなり得ない又はスイートスポットである可能性が極めて低い」と判断されたマトリックスの結晶部分については、MSスペクトルを取得する場所として除外し、「スイートスポットにはなり得る又はスイートスポットである可能性が高い」と判断されたマトリックスの結晶部分についてのみレーザーを照射してレーザー脱離イオン化すれば、効率よく良好なMSスペクトルを得ることが可能となる。
本発明における「質量分析法以外の分析方法」は特に限定はないが、「結晶多形を識別する分析方法」;「分光スペクトル測定による分析方法」;「X線回折測定による分析方法」;「光学顕微鏡法による結晶表面の構造色の検出による分析方法」、「結晶表面の周期1μm以上10μm以下の周期的な凹凸状態の検出による分析方法」等の「顕微鏡法による結晶表面の規則的構造を検出する分析方法」;等が、MALDI質量分析法におけるスイートスポットがあった場合、その部分で、マトリックスの標準品とは異なる分析結果を呈し易く、スイートスポットを見つけ易い点で好ましい。すなわち、上記の分析方法を用いて、試料支持部材上をスキャンさせた場合に、マトリックスの標準品とは異なる分析結果を呈する場所を特定することができ、その場所がMALDI質量分析法におけるスイートスポットになっている場合が多いために上記の分析方法が好ましい。上記の分析方法は、具体的には重複している場合がある。
ここで、「異なる分析結果」とは、分光スペクトル全体やX線回折パターン全体を多変量解析してパターンが一致しない場合や、後述のように、ある特定の(1つ又は複数の)波数に着目して、その波数若しくは回折角でのシグナルピーク有無又はその相対的高低が異なる場合、結晶表面における構造色の検出の有無、結晶表面の周期1μm以上10μm以下の周期的な凹凸状態の検出の有無等がある。
また、これらの「質量分析法以外の分析方法」は、形状、物性等を実質的に変化させないので、分析後の「試料支持部材上の試料」を、そのままMALDI質量分析に供することができるので好ましい。
上記の「結晶多形を識別する分析方法」には、分光スペクトル測定(ラマン分光、赤外分光等)、X線回折測定、中性子回折測定、電子線回折測定、顕微鏡法、複屈折測定、熱分析、水蒸気吸着測定等による分析方法がある。
上記の「分光スペクトル測定」としては、ラマン分光スペクトル測定又は赤外分光スペクトル測定であることが、上記した理由で特に好ましい。
<<ラマン分光スペクトル測定>>
ラマン分光スペクトル測定の具体的測定方法は特に限定はなく、公知の方法が用いられるが、本発明においては、一箇所の局所的なラマンスペクトルのみを取得するのではなく、複数の結晶を局所的にラマン測定しつつ走査し、ラマンイメージングを行うことがより明確にスイートスポットを予測できる点で好ましい。
本発明のスイートスポットの予測方法においては、ラマン分光スペクトル測定を用いて、該混合結晶の局所的な分析をし、該マトリックスの標準品の結晶(以下、「結晶A」と略記する場合がある)とは異なる分析結果を呈する「測定対象分子を含む試料とマトリックスの混合結晶」(以下、「結晶B」と略記する場合がある)の部分を検出して、その部分をスイートスポットであると予測することが好ましい。
又は、ラマン分光スペクトル測定を用いて、該混合結晶の局所的な分析をし、複数の結晶のパターンが確認された場合、他の結晶とは異なる分析結果を呈する「測定対象分子を含む試料とマトリックスの混合結晶」(以下、「結晶B」と略記する場合がある)の部分を検出して、その部分をスイートスポットであると予測することが好ましい。
その後、その部分をレーザー脱離イオン化してMALDI質量分析をすることが好ましい。具体的には、試料支持部材上のマトリックス結晶の全域にわたり、局所的にラマン分光スペクトルを測定し、例えば、異なる波数にシグナルピークを有する等、結晶Aとは異なる分析結果を呈する「測定対象分子を含む試料とマトリックスの混合結晶」の部分(結晶B)を検出して、(好ましくは、結晶Bの部分をマッピングして又は両方の結晶の部分を分けてマッピングして、イメージ画像を作成して)、結晶Bの部分をレーザー脱離イオン化することが特に好ましい。
試料支持部材上のマトリックス結晶のいくつかの場所についてラマン分光スペクトルを測定し、その中に、「標準品(結晶A)」とは異なる波数にシグナルピークを有する場所があった場合、かかる「異なる波数」に着目し、「異なる波数」にシグナルピークを有する部分(結晶Bの部分)のラマンイメージング画像を得て、該ラマンイメージング画像に表された結晶Bの部分をスイートスポットであると予測することが好ましい。そして、その中の適当な場所にレーザーを照射してレーザー脱離イオン化して質量分析することが好ましい。
また、それとは逆に、「標準品(結晶A)」の示すシグナルピークの波数にシグナルピークを有さない場所があった場合、かかる「異なる波数」に着目し、「異なる波数」にシグナルピークを有さない部分(結晶Bの部分)のラマンイメージング画像を得て、該ラマンイメージング画像に表された結晶Bの部分をスイートスポットであると予測することが好ましい。そして、その中の適当な場所にレーザーを照射してレーザー脱離イオン化して質量分析することが好ましい。
ラマンイメージング画像の例として、マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)の場合について、1199cm−1付近に強いシグナルをもたない結晶Bを黒く表したラマンイメージング画像を図4に示す。図4では、スイートスポットが存在する結晶Bの部分が、黒く明確に示されている。一方、1199cm−1付近に強いシグナルをもつ結晶Aの部分は白く明確に示されており、そこにはスイートスポットが存在しないので、その部分を測定することは無駄であることが分かる。MALDI質量分析法においては、まずスイートスポットを探すことが質の高いマススペクトルを得るために必要となるが、本発明によれば、スイートスポットが結晶のどの部分であるかを経験に頼って試行錯誤的に探すという操作から脱却することができる。
ここで、「付近」とは、測定機器の分解能や波数にもよるが、±5〜±10cm−1の範囲を示す。
本発明で用いられるマトリックスの種類は特に限定はなく、MALDI質量分析法に用いられるマトリックスならば何れも用いられるが、好ましくは2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)である。
本発明の特に好ましい態様は、該マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、該質量分析法以外の分析方法がラマン分光スペクトル測定による分析方法であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、376cm−1付近にシグナルを実質的に有さない、又は1199cm−1付近にシグナルを実質的に有さない、又は1307cm−1付近にシグナルを実質的に有さないラマン分光スペクトルである上記のスイートスポットの予測方法である。
また、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、376cm−1付近にシグナルを有する、又は1199cm−1付近にシグナルを有する、又は1307cm−1付近にシグナルを有するラマン分光スペクトルである上記のスイートスポットの予測方法である。
また、本発明の特に好ましい態様は、用いるマトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であるMALDI質量分析法であって、ラマン分光スペクトル測定で得られたラマン分光スペクトルにおいて、376cm−1付近にシグナルを実質的に有さない、又は1199cm−1付近にシグナルを実質的に有さない、又は1307cm−1付近にシグナルを実質的に有さない試料支持部材上の結晶部分を対象としてレーザー脱離イオン化するMALDI質量分析法である。
また、376cm−1付近にシグナルを有する、又は1199cm−1付近にシグナルを有する、又は1307cm−1付近にシグナルを実質的に有する試料支持部材上の結晶部分を対象としてレーザー脱離イオン化しないMALDI質量分析法である。
DHBAの結晶Bの部分のラマン分光スペクトルでは、376cm−1付近にシグナルを実質的に示さないか、又は1199cm−1付近にシグナルを実質的に示さないか、又は1307cm−1付近に実質的にシグナルを示さない。従って、376cm−1付近に実質的にシグナルを示さない部分のラマンイメージング画像を得たり、1199cm−1付近に実質的にシグナルを示さない部分のラマンイメージング画像を得たり、1307cm−1付近に実質的にシグナルを示さない部分のラマンイメージング画像を得たりすれば、示された部分にスイートスポットがある。
逆に、DHBAの結晶Aの部分のラマン分光スペクトルでは、376cm−1付近にシグナルを有するか、又は1199cm−1付近にシグナルを有するか、又は1307cm−1付近にシグナルを有する。従って、376cm−1付近にシグナルを示す部分のラマンイメージング画像を得たり、1199cm−1付近にシグナルを示す部分のラマンイメージング画像を得たり、1307cm−1付近にシグナルを示す部分のラマンイメージング画像を得たりすれば、示された部分にはスイートスポットがない。
更に、本発明の特に好ましい態様は、該マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、該質量分析法以外の分析方法がラマン分光スペクトル測定による分析方法であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、3265cm−1付近にシグナルを有する赤外分光スペクトルである上記のスイートスポットの予測方法である。
また、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、3265cm−1付近にシグナルを実質的に有さないラマン分光スペクトルである上記のスイートスポットの予測方法である。
また、用いるマトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であるMALDI質量分析法であって、ラマン分光スペクトル測定で得られたラマン分光スペクトルにおいて、3265cm−1付近にシグナルを有する試料支持部材上の結晶部分を対象としてレーザー脱離イオン化するMALDI質量分析法である。
また、3265cm−1付近にシグナルを実質的に有さない試料支持部材上の結晶部分を対象としてレーザー脱離イオン化しないMALDI質量分析法である。
DHBAの結晶Bの部分のラマン分光スペクトルでは、3265cm−1付近に強いシグナルを示す。従って、3265cm−1付近にシグナルを示す部分のラマンイメージング画像を得れば、その示された部分にスイートスポットがある。また、逆に、3265cm−1付近にシグナルを実質的に示さない部分のラマンイメージング画像を得れば、その示された部分にはスイートスポットがない。
<<赤外分光スペクトル測定>>
「分光スペクトル測定」としては、上記したラマン分光スペクトル測定に代えて、赤外分光スペクトル測定を行ってもよい。
赤外分光スペクトル測定の具体的方法は特に限定はなく、公知の方法が用いられるが、FT−IR(Fourier transform infrared spectroscopy)が好ましい。また、顕微赤外分光スペクトル測定が、混合結晶の局所的な分析のために必要である。また、一箇所の局所的なFT−IRスペクトルのみを取得するのではなく、複数の結晶をFT−IR測定で走査し、IRイメージングを行うことが、より明確にスイートスポットを予測できる点で好ましい。
本発明の特に好ましい態様は、用いるマトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、該分光スペクトル測定が赤外分光スペクトル測定であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、1200cm−1付近にシグナルを実質的に有さない、又は1300cm−1付近にシグナルを有する赤外分光スペクトルである上記のスイートスポットの予測方法である。
また、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、1200cm−1付近にシグナルを有する、又は1300cm−1付近にシグナルを実質的に有さない赤外分光スペクトルである上記のスイートスポットの予測方法である。
ここで、「付近」とは、測定機器の分解能や波数にもよるが、±5〜±10cm−1の範囲を示す。
また、用いるマトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であるMALDI質量分析法であって、赤外分光スペクトル測定で得られた赤外分光スペクトルにおいて、1200cm−1付近にシグナルを実質的に有さない、又は1300cm−1付近にシグナルを有する試料支持部材上の結晶部分を対象としてレーザー脱離イオン化する上記のMALDI質量分析法である。
また、1200cm−1付近にシグナルを有する、又は1300cm−1付近にシグナルを実質的に有さない試料支持部材上の結晶部分を対象としてレーザー脱離イオン化しないMALDI質量分析法である。
結晶Bの部分は、赤外分光スペクトルにおいて、1200cm−1付近にシグナルを実質的に有さないか、又は1300cm−1付近にシグナルを有し、一方、結晶Aの部分は、赤外分光スペクトルにおいて、1200cm−1付近にシグナルを有するか、又は1300cm−1付近にシグナルを実質的に有さないからである。
更に、本発明の特に好ましい態様は、該マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、該質量分析法以外の分析方法が赤外分光スペクトル測定による分析方法であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、3265cm−1付近にシグナルを有する赤外分光スペクトルである上記のスイートスポットの予測方法である。
また、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、3265cm−1付近にシグナルを実質的に有さない赤外分光スペクトルである上記のスイートスポットの予測方法である。
また、用いるマトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であるMALDI質量分析法であって、赤外分光スペクトル測定で得られた赤外分光スペクトルにおいて、3265cm−1付近にシグナルを有する試料支持部材上の結晶部分を対象としてレーザー脱離イオン化するMALDI質量分析法である。
また、3265cm−1付近にシグナルを実質的に有さない試料支持部材上の結晶部分を対象としてレーザー脱離イオン化しないMALDI質量分析法である。
結晶Bの部分は、赤外分光スペクトルにおいて、3265cm−1付近にシグナルを有し、一方、結晶Aの部分は、赤外分光スペクトルにおいて、3265cm−1付近にシグナルを実質的に有さないからである。
<<X線回折測定>>
本発明においては、上記したラマン分光スペクトル測定による分析や、赤外分光スペクトル測定による分析に代えて、X線回折測定による分析方法を用いてもよい。
X線回折測定による分析方法の具体的方法は特に限定はなく、公知の方法が用いられるが、本発明においては、一箇所の局所的なX線回折スペクトルのみを取得するのではなく、複数の結晶をX線回折測定で走査し、X線イメージングを行うことがより明確にスイートスポットを予測できる点で好ましい。
CuKα線を照射してX線回折を測定したとき、例えば、用いるマトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)の場合、MSシグナルが良好な結晶部分には、MSシグナルが乏しい結晶部分にはない、2θ=25.5°、19.7°、17.5°、16.3°、15.8°付近に回折ピークが見られた。従って、2θ=25.5°、19.7°、17.5°、16.3°又は15.8°付近に回折ピークを有する結晶部分に、MSのスイートスポットがあることが、MS測定の前に予め予想できる。その結晶部分を対象としてレーザー脱離イオン化すれば、良好なMSスペクトルが容易にとれる。ここで、「付近」とは、2θで、測定機器の分解能にもよるが、±3°の範囲を示す。
<<光学顕微鏡法による結晶表面の構造色の検出による分析方法>>
本発明においては、光学顕微鏡法を使用して、結晶表面の構造色の検出する分析方法を用いてもよい。本発明における「構造色」とは、色素等の色のような光の吸収による色ではなく、結晶表面のnmレベルの凹凸、nmレベルの多層構造等、周期的な構造に照射された光の屈折、回折、散乱、干渉等の光学現象が原因となって発現される色のことをいう。
本発明における該混合結晶は、光の吸収という点からは実質的には無彩色であるが、スイートスポットにならない該混合結晶の部分は、結晶表面の微細な(nmレベルの)周期的な構造により、上記の光学現象を引き起こし、光学顕微鏡法により、青色、緑色、赤色、黄色又はそれらの中間色の色彩若しくは色彩模様を、視覚的に認識することが可能である。一方、スイートスポットになる該混合結晶の部分は、結晶表面の微細な(nmレベルの)周期的な構造による上記の光学現象が起こらず、光学顕微鏡法により、色彩若しくは色彩模様がないことを、視覚的に認識することが可能である。
すなわち、本発明において、「該質量分析法以外の分析方法」が光学顕微鏡法による結晶表面の構造色の検出であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が構造色を示さない、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が構造色を示す、というようにして、スイートスポットを予測することが好ましい。
光学顕微鏡法による結晶表面の構造色の検出の手法には特に限定はなく、公知の方法が用いられるが、本発明においては、反射型の光学顕微鏡を使用して構造色の有無を観測することが好ましい。また、偏光フィルター等を内蔵する偏光顕微鏡を用い、照射光及び/又は測定光を偏光とすることも、正反射光を遮断して構造色を検出し易くするために好ましく、クロスニコル偏光条件での観察が、極めて構造色の有無を判定し易くするために特に好ましい。
マトリックスの種類は特に限定はなく、MALDI質量分析法に用いられるマトリックスならば何れも用いられるが、好ましくは2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)である。
この方法は、結晶表面の規則的な構造によって生じる反射光の干渉、すなわち結晶表面のnmレベルの微細構造に基づく構造色の変化若しくは有無を利用して、スイートスポットを、簡便、迅速、明確に予測できる点で特に好ましい。
光学顕微鏡による分析結果が構造色を示さない部分を、スイートスポットになる混合結晶の部分であると予測し、光学顕微鏡による分析結果が構造色を示す部分を、スイートスポットにならない混合結晶の部分であると予測することが好ましい。
すなわち、スイートスポットになる混合結晶の部分の分析結果が、構造色を示さない光学顕微鏡による分析結果であるスイートスポットの予測方法が好ましく、スイートスポットにならない混合結晶の部分の分析結果が、構造色を示す光学顕微鏡による分析結果であるスイートスポットの予測方法が好ましい。
<<結晶表面における、「周期1μm以上10μm以下の周期的な凹凸状態」の検出による分析方法>>
また、本発明では、「該質量分析法以外の分析方法」が、結晶表面の「周期1μm以上10μm以下の周期的な凹凸状態」(以下、括弧内を単に、「凹凸状態」と略記する場合がある)の検出であることが好ましい。
スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、結晶表面に凹凸状態が検出されない、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、結晶表面に凹凸状態が検出される、スイートスポットの予測方法が好ましい。すなわち、結晶表面に凹凸状態が検出されない部分をスイートスポットになると予想し、結晶表面に凹凸状態が検出される部分をスイートスポットにならないと予想して、スイートスポットにのみレーザーを照射してレーザー脱離イオン化すれば、効率よく良好なMSスペクトルを得ることが可能となる。この方法は、結晶表面の規則的な構造を観測して、スイートスポットを、簡便、迅速、明確に予測できる点で特に好ましい。
「凹凸状態」、すなわち「周期1μm以上10μm以下の周期的な凹凸状態」は、結晶表面の規則的な構造であることが好ましい。また、凸部の高さは特に限定はないが、1μm〜10μmが好ましく、2μm〜5μmが特に好ましい。また、「凹凸状態」の凹凸の周期は、2μm〜5μmが好ましい。
結晶表面の凹凸状態の検出は、10μm以下の周期的な凹凸が識別できればその検出方法には特に限定はないが、顕微鏡を用いて行うことが好ましく、光学顕微鏡を用いて行うことがより好ましく、共焦点レーザー顕微鏡を用いて行うことが特に好ましい。共焦点レーザー顕微鏡を使用して、結晶表面の立体的な観察を行なえば、規則的な凹凸状態を直接観測することができるために特に好ましい。
マトリックスの種類は特に限定はなく、MALDI質量分析法に用いられるマトリックスならば何れも用いられるが、好ましくは2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)である。
<測定対象分子>
本発明のスイートスポットの予測方法及びMALDI質量分析法が適用される測定対象分子は特に限定はないが、生体由来の分子又は生体試料中の分子であることが好ましく、具体的には、糖、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、核酸、糖脂質等であることが、本発明の効果をより発揮できるので好ましい。「測定対象分子」としては、天然物から調製されるもの、天然物を化学的又は酵素学的に一部改変して調製されるものの他、化学的又は酵素学的に調製されるものも好ましい。また、生体に含まれる分子の部分構造を有するものや生体に含まれる分子を模倣して作製されたものも好ましい。
また、質量分析法に用いるプレート上に載せる試料、すなわち、測定対象分子を含む試料としては、「測定対象分子」そのものだけでもよいし、「測定対象分子」を含むもの、例えば、生体の組織、細胞、体液や分泌物(例えば、血液、血清、尿、精液、唾液、涙液、汗、糞便等)等でもよい。すなわち、直接生体試料を用いてもよい。また、試料をプレート上に載せ、酵素処理等を行なって、測定対象分子を調製してもよい。
上記した分子は、分析に供される試料が少量である場合が多く、また特に、糖、糖タンパク質、糖脂質等の複合糖質等又はそれらから化学的若しくは酵素学的に遊離させて得たものは、分子量や組成が同一の異性体が複数存在するので、スイートスポットが容易に見つからずに測定を断念していた場合も多く、本発明のスイートスポットの予測方法及びMALDI質量分析法は、それら分子の化学構造解析に対して特に上記効果を奏するので好ましい。
<質量分析装置>
イオン化に用いられるレーザーとしては、窒素レーザー(337nm)、YAGレーザー3倍波(355nm)、NdYAGレーザー(256nm)、炭酸ガスレーザー(2940nm)等が挙げられるが、窒素レーザーが好ましい。イオンの分離検出方法は特に限定はなく、二重収束法、四重極集束法(四重極(Q)フィルター法)、タンデム型四重極(QQ)法、イオントラップ法、飛行時間(TOF)法等を用いて、イオン化した分子を質量/電荷比(m/z)に従って分離し検出する。好ましくは、QIT−TOFである。
糖、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、核酸、糖脂質等の分子は、分子量や組成が同じ異性体を多く含むので、イオンの生成効率を向上させ、分子のフラグメント化をn回繰り返す方法(MS法)が好ましい。本発明は、検出された「測定対象分子を含む試料とマトリックスの混合結晶」の部分に対し、フラグメント化をn回繰り返すMS法(2≦n)を適用することが好ましい。MS法により、例えば分子中の結合位置等を決定できる。
<作用・原理>
本発明における結晶Bの部分に優れたスイートスポットが存在する作用・原理は明確ではないが、以下のようにも考えられる。ただし、本発明は、以下の作用・原理の及ぶ範囲に限定されるものではない。すなわち、マトリックスの再結晶精製された、測定対象分子が含まれない粉末(マトリックスの標準品)とは異なる分析結果を呈する「測定対象分子を含む試料とマトリックスの混合結晶」(結晶B)の部分は、マトリックス結晶の中で測定対象分子の存在に影響を与えているということであり、その結晶内にはマトリックスの標準品と同様の分析結果を呈するマトリックス結晶よりもより多くの試料対象分子を含んでいると考えられる。そのために、その結晶は測定対象分子の効率的なイオン化がなされるスイートスポットになり得ると考えられる。又は、結晶Bの部分は、マトリックスの標準品と同様の分析結果を呈するマトリックス結晶と比べ、結晶の構造が粗雑であり、マトリックス結晶化の際により多くの試料対象分子を含有し易く、結果としてスイートスポットになり得ると考えられる。
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
まず、シリコン基板に金を蒸着させた金基板(試料支持部材)に、測定対象分子である糖ペプチド1(化学構造を図1に示す)を水に溶解して、500fmol/μLにした水溶液を1μL滴下し、室温(23℃)、大気圧下で放置し乾燥させた。
次に、標識試薬であるPDAM(1−pyrenyldiazomethan;Molecular Probes社製)をDMSO(dimethyl sulfoxide;SIGMA社製)に溶解させ、2nmol/μLにした溶液を0.25μL滴下し、ヒートブロック上で、80℃、大気圧下に放置し乾燥させた。余剰標識試薬を除くため、トルエン(SIGMA社製)に浸し余剰のPDAMを除去し十分に乾燥させた。
次に、マトリックスの再結晶精製された粉末であるDHBAの標準品(DHBA粉末)である、高純度DHBA(Shimadzu Biotech社製)を水に溶解して10mg/mLにした水溶液を0.75μL滴下し、室温(23℃)大気圧下で放置し乾燥させた。この測定試料析出物の共焦点レーザー顕微鏡写真を図2に示す。
このプレート(試料支持部材)上の物質のラマンイメージング画像を取得するため、inViaラマンマイクロスコープ(株式会社レニショー社製)を用い、波長532nmの励起レーザー条件下でラマン測定を行った。比較として、「DHBA粉末」も同様にラマン測定を行った。「DHBA粉末」のラマンスペクトルを図3(a)に示す。
上記「DHBA粉末」のラマンスペクトルと、上記「測定試料析出物」のラマンスペクトルを、まず、多変量解析によってスペクトルのパターンを比較したところ、「測定試料析出物」では、プレート(試料支持部材)上での測定場所が異なると異なるラマンスペクトルが得られる場合があった。すなわち、プレート(試料支持部材)上で析出したDHBAの結晶ごとに特有のラマンスペクトルが得られた。そして、「測定試料析出物」においては、参考例に示したように大部分の「DHBA粉末」のラマンスペクトルと同一のラマンスペクトルが得られる結晶Aと、「DHBA粉末」とは異なるラマンスペクトルが得られる結晶Bの少なくとも2種類に分けられることが判明した。測定試料析出物の結晶Bから得られた、「DHBA粉末」とは異なるラマンスペクトルを図3(b)に示す。
両スペクトル中に観測されたラマンスペクトルのシグナルの波長のリストを表1に示した。結晶Bのラマンスペクトルは、「DHBA粉末」のラマンスペクトルで観測されていた1199cm−1付近、1307cm−1付近、376cm−1付近等の強いシグナルが消滅していた。逆に、3265cm−1付近にブロードなシグナルが観察された。
1199cm−1付近に強いシグナルをもつ結晶Aを白く表し、1199cm−1付近に強いシグナルをもたない結晶Bを黒く表したラマンイメージング画像を図4に示す。すなわち、図4において、白く表された結晶は、「DHBA粉末」と同じラマンスペクトル(図3(a))が得られた結晶Aであり、黒く表された結晶は、「DHBA粉末」とは異なるラマンスペクトル(図3(b))が得られた結晶Bである。
この測定試料析出物について、MALDI質量分析法によってマススペクトルを取得した。測定は、質量分析計としてMALDI−QIT−TOF型質量分析計(AXIMA−QIT、Shimadzu Biotech社製)を用いて行った。測定は正イオンモードで行った。その結果、白く表されず黒く表された(1199cm−1付近に強いシグナルを有しない)結晶Bからのみ強いシグナルを検出することができた。また、結晶Bの円周上の根元から特に強いシグナルを検出することができた。
一方、白く表された(1199cm−1付近に強いシグナルを有する)結晶A内のどこからも強いシグナルを検出することができなかった。すなわち、「DHBA粉末」と同一のラマンスペクトルを示す結晶Aの部分にはスイートスポットがなかった。
結晶Bの円周上の根元から得られたマススペクトルを図5に示す。図5に示すように、極めて良好なマススペクトルを得ることができた。MS測定に先立って、質量分析法以外の分析方法であるラマン分光スペクトル測定を用いて、混合結晶の局所的な分析をすることにより、良好なMSシグナルが得られる測定点(スイートスポット)が判明し、効率よく測定できた。
比較例1
実施例1の測定試料の全域に対して、レーザーパワーを測定対象分子のイオンのシグナルがではじめる閾値に最適化した後、40μm間隔でレーザー照射を行い、自動で測定した。図6に、測定試料析出物において糖ペプチド1イオンが検出された位置を示す。なお、このように質量分析法を用いて該マトリックス結晶の局所的な分析をしてしまった場合、スイートスポットの場所の予測はできるが、マトリックスはレーザー照射によって消耗されるため、次回測定時も同じ場所にスイートスポットが存在する確証はなく、場合によってはマトリックスが消耗され尽くしてしまうため、次回測定時はMSシグナルが全く得られない場合もある。
図6に示したように、図2に示した「結晶があるところ全て」からシグナルが検出できたわけでないことが示された。実施例1と同様に、よいスペクトルが得られた測定点もあったが、図7に示したようにシグナルの検出が容易ではない、プレート(試料支持部材)上の測定点も存在した。
<実施例1と比較例1の結果>
更に、図4と図6を比較すると、ラマンイメージング画像とスイートスポットの位置の相関がより明白になった。すなわち、図4で黒く表示されている、「DHBA粉末」とは異なるラマンスペクトルを生ずる結晶Bの根元(結晶化の起点部位)では、「DHBA粉末」と同じラマンスペクトルを生じる結晶A(白く表示されている)と比べて格段にイオン生成量が高く、優れたスイートスポットとなっていることが示された。これは、質量分析の前にラマンイメージング画像を取得することで、質の高いマススペクトルが得られる優れたスイートスポットを予測できることを示している。
実施例2
実施例1と同様に測定試料を作製し、FT−IRを測定した。その結果、測定箇所によって、ラマンスペクトルと同様に、1200〜1300cm−1付近や3265cm−1付近に相違が見られるスペクトルが得られた(図8(a)、(b))。すなわち、1200cm−1付近にシグナルを実質的に有さない、又は1300cm−1付近にシグナルを有する試料支持部材上の結晶部分にスイートスポットがあり、逆に、1200cm−1付近にシグナルを有し、又は1300cm−1付近にシグナルを実質的に有さない試料支持部材上の結晶部分にスイートスポットがなかった。また、3265cm−1付近にシグナルを有する試料支持部材上の結晶部分にスイートスポットがあり、逆に、3265cm−1付近にシグナルを実質的に有さない試料支持部材上の結晶部分にスイートスポットがなかった。
このことから、赤外分光スペクトルによっても、MSシグナル検出の予測が可能であることが分かった。すなわち、予めプレート(試料支持部材)上のスイートスポットの場所の予測が可能であることが分かった。
実施例3
実施例1と同様に測定試料を作製し、CuKα線を照射して、微小部X線回折(μXRD)を測定した。45kV、110mA、測定時間2分であった。その結果、測定箇所によって異なる回折データが得られた(図9)。この場合、MSシグナルが良好な結晶部分には、MSシグナルが乏しい結晶部分にはない、2θ=25.5°,19.7°,17.5°,16.3°,15.8°付近の回折ピークが見られた。従って、2θ=25.5°,19.7°,17.5°,16.3°,15.8°付近に回折ピークを有する結晶部分に、MSのスイートスポットがあることが、MS測定の前に予め予想できることが分かった。
実施例4
測定対象分子である糖ペプチド1(化学構造を図1に示す)を水に溶解して、100fmol/μLにした水溶液を1μL滴下し、実施例1と同様に混合結晶を作成した。このプレート(試料支持部材)上の物質のラマンイメージング画像を取得するため、inViaラマンマイクロスコープ(株式会社レニショー社製)を用い、波長532nmの励起レーザー条件下でラマン測定を行った。実施例1と同様に、プレート(試料支持部材)上の物質は、結晶Aのラマンスペクトルを有する領域と結晶Bのラマンスペクトルを有する領域に分けることができた。
1199cm−1付近に強いシグナルをもつ結晶Aの部分は実際には緑色で明確に表されたので、その部分を実線の楕円で囲み、1199cm−1付近に強いシグナルをもたない結晶Bは実際には赤色で明確に表されたのでその部分を破線の楕円で囲んで示したラマンイメージング画像を図10(a)に示す。すなわち、図10(a)において、実線の楕円で囲んだ結晶は、既知の分析結果と同じラマンスペクトル(図3(a))が得られた結晶Aであり、破線の楕円で囲んだ結晶は、既知の分析結果とは異なるラマンスペクトル(図3(b))が得られた結晶Bである。
それぞれの結晶は、同一起点から発生した結晶と推定される結晶群として、実線で囲まれた領域の結晶群A1〜A4、及び、破線で囲まれた領域の結晶群B1〜B7に分けることができた。
この測定試料析出物について、MALDI質量分析法によってマススペクトルを取得した。測定は、質量分析計としてMALDI−QIT−TOF型質量分析計(AXIMA−QIT、Shimadzu Biotech社製)を用いて行った。測定は正イオンモードで行った。測定試料の全域に対して、レーザーパワーを測定対象分子のイオンのシグナルが出始める閾値に最適化した後、40μm間隔でレーザー照射を行い、自動で測定した。
図10(b)に、測定試料析出物において糖ペプチド1イオンが検出された位置を色の濃い正方形のピクセルで示す。図10の下部に示したように、領域B(B1〜B7)においては、高い確率で強いシグナルが得られ、スイートスポットが存在していることが明らかとなった。一方で領域Aからは、まれにシグナルが得られる程度であり、この部分にレーザー照射して質量分析することは効率が良くないことが証明された。すなわち、スイートスポットとして不適であることが予め判断できた。従って、本発明は、100fmol以下というより微量な測定分子を検出するのに有効であることが分かった。
参考例1
高純度DHBA(Shimadzu Biotech社製)を粉末のままスライドグラス上に置き、NRS−3200顕微ラマンシステム(日本分光)によりラマンイメージを取得した。図11に示したように、結晶AおよびBに共通に存在する3076cm−1のシグナルは光学顕微鏡像の分布と一致した(図11(b))。更に、結晶Aに特徴的な1203cm−1のシグナルは大部分から検出されたが(図11(c))、結晶Bに特徴的な3269cm−1のシグナルはほとんど検出されなかった(図11(d))。
図11に示した矢印Aの部分のスペクトルは、図3(a)のスペクトルと同じで、これは独立行政法人産業技術総合研究所スペクトルデータベースにあるDHBAのラマンスペクトルと一致した。図11に示した矢印Bの部分のスペクトルは、図3(b)のスペクトルと同じで、データベースのDHBAのスペクトルとは異なった。この結果から、高純度DHBA粉末はほぼ1種類の結晶形からなることが分かった。
なお、図11においては、実際の測定画像写真では、強度が弱い部分から強い部分に向けて、黒→紫→濃い青→明るい青→緑→黄色→橙色→赤、というように色分けされており、「黒→紫→濃い青→明るい青→緑」あたりまでは、願書に添付した白黒の図面では、強度が強い方が薄くなる傾向にほぼあるが、「黄色→橙色→赤」では、強度が強い方が濃くなる傾向にほぼある。従って、薄い部分の外側にある濃い部分はシグナル強度が弱いが、薄い部分の内側にある濃い部分はシグナル強度が強い。
参考例2
参考例1で用いたスライドグラス上の高純度DHBA(Shimadzu Biotech社製)の粉末に水を1滴滴下し静置して乾かしたところ、図12に示したように、針状結晶が生じた。参考例1と同様にラマンイメージを取得した。結晶Aに特徴的な1203cm−1のシグナルを持つ結晶と、結晶Bに特徴的な3269cm−1のシグナルを持つ結晶のそれぞれが新たに生じることが判明した(図12(c)、(d))。
更に、図12に示した矢印Aの部分のスペクトルは、図3(a)のスペクトルと同じで、これは独立行政法人産業技術総合研究所スペクトルデータベースにあるDHBAのスペクトルと一致した。図12に示した矢印Bの部分のスペクトルは、図3(b)のスペクトルと同じで、データベースのDHBAのスペクトルとは異なった。
同一の箇所のIRスペクトルを取得すると、矢印Aの部分のスペクトルは、図8(a)のスペクトルと類似しており、これは独立行政法人産業技術総合研究所スペクトルデータベースにあるDHBAのIRスペクトルと一致した。矢印Bの部分のスペクトルは、図8(b)のスペクトルと類似していたが、データベースのDHBAのスペクトルとは異なった。これらのことから、測定対象分子の存在に関わらず、特定の条件で高純度DHBA粉末から2種の多形結晶が生じること、そのうちの1種の多形は通常ではあまり存在しないが、その多形がMALDIに極めて効果を発揮することが明確になった。
なお、図11においても、上記した図12における「実際の画像写真と願書に添付した白黒の図面との関係」がある。
NRS−3200顕微ラマンシステム(日本分光)でのラマンイメージング画像は、ある特定の波数のシグナルの強度が弱い部分から強い部分までを段階的に色分けして表現することができる。実際の図11(b)、図11(c)、図11(d)、図12(b)、図12(c)及び図12(d)に対応する測定画像写真は、強度が弱い部分から強い部分に向けて、黒→紫→濃い青→明るい青→緑→黄色→橙色→赤、というようにくっきり色分けされている。実際に測定されたカラー画像については、優先権主張の基礎出願では、物件提出書で日本国の特許庁に提出されている。
実施例5
市販のステンレスプレートを用いて実施例1と同様に測定試料を作製し、反射型光学顕微鏡を使用して結晶を観察した。光学顕微鏡は、株式会社キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX−1000(VH−Z100Rレンズ、光源:ハロゲンランプ100W/12V)を用いて、倍率150倍、クロスニコルによる偏光条件に設定した状態で観察した。
結果を図13に示す。図13に示したように、構造色を示す結晶と、無彩色の結晶に分けられた。構造色を発現させるのは、結晶表面の微細な(nmレベルの)周期的な構造であった。
このうち、構造色を示す結晶からは良好なMSシグナルが得られず、そこにはスイートスポットが存在しておらず、MSシグナルが良好でスイートスポットになる結晶は構造色を示さないことが判明した。
また、構造色を示さない結晶からは良好なMSシグナルが得られ、そこにはスイートスポットが存在しており、MSシグナルが良好ではなくスイートスポットにならない結晶は構造色を示すことが判明した。
従って、MS測定試料中の構造色を示す結晶と示さない結晶を予め識別することによって、極めて簡便にスイートスポットの場所を予測することが可能であることが分かった。
実施例6
市販のステンレスプレートを用いて実施例1と同様に測定試料を作製し、共焦点レーザー顕微鏡を使用して結晶を立体的に観察した。共焦点レーザー顕微鏡は、オリンパス株式会社製、走査型共焦点レーザー顕微鏡LEXT OLS3100を用いて、倍率5倍〜50倍の範囲で共焦点観察を行った。
結果を図14に示す。図14(a)に示したように、表面の規則的な凹凸が明確に検出できる結晶と、規則的な凹凸は検出されない結晶に分けられた。該結晶表面の規則的な凹凸の周期は1μm〜5μmの範囲であり、実施例5に記載の、構造色を発現させる「微細な(nmレベルの)周期的な構造」とは異なっていた。
このうち、図14(b)に示したように、表面の規則的な凹凸を有する結晶(表面が凹凸状態の結晶)からは良好なMSシグナルが得られず、そこにはスイートスポットが存在しておらず、MSシグナルが良好でスイートスポットになる結晶は、表面に規則的な凹凸構造を有さない(表面が凹凸状態でない)ことが判明した。
また、表面の規則的な凹凸を有さない結晶からは良好なMSシグナルが得られ、そこにはスイートスポットが存在しており、MSシグナルが良好ではなくスイートスポットにならない結晶は、表面の規則的な凹凸構造を示すことが判明した。
従って、MS測定試料中のマトリックス結晶の規則的な凹凸構造、すなわち、結晶表面の「周期1μm以上10μm以下の周期的な凹凸状態」が検出されるか検出されないかを予め識別することによって、極めて簡便にスイートスポットの場所を予測することが可能であることが分かった。
本発明の質量分析法以外の分析方法を用いて、スイートスポットの場所を予測するMALDI質量分析法は、短時間で効率良く質の高いMSスペクトルを得ることが可能であり、構造同定で必要な高感度MS(n>1)解析を可能にし、更には自動分析への応用が可能となるので、MSスペクトルを使用する全ての分析分野に、特に、微量試料しか入手できない場合がある生体分析の分野等に広く利用されるものである。
本願は、2009年12月30日に出願した日本の特許出願である「特願2009−299303」、及び、2010年2月24日に出願した日本の特許出願である「特願2010−038230」に基づくものであり、これらの出願の全ての内容はここに引用し、本発明の明細書の開示として取り込まれるものである。

Claims (29)

  1. MALDI質量分析法において、測定対象分子を含む試料とマトリックスの混合結晶を析出させた後、質量分析法以外の分析方法を用いて、該混合結晶の局所的な分析をしてからMALDI質量分析をして、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果、及び/又はスイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果を予め特定しておき、
    次に、測定対象分子を含む試料と該マトリックスの混合結晶を析出させた後、該質量分析法以外の分析方法を用いて、該混合結晶の局所的な分析をし、スイートスポットになる該混合結晶の部分の該分析結果を呈する混合結晶の部分を検出して、その部分がスイートスポットであると予測する、及び/又はスイートスポットにならない該混合結晶の部分の該分析結果を呈する混合結晶の部分を検出して、その部分がスイートスポットでないと予測することを特徴とするスイートスポットの予測方法。
  2. MALDI質量分析法において、試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後にマトリックスの溶液を載置し、又は試料支持部材上に測定対象分子を含む試料とマトリックスの溶液を同時に載置し、該溶液を乾燥させて該試料とマトリックスの混合結晶を析出させた後、質量分析法以外の分析方法を用いて、該混合結晶の局所的な分析をしてからMALDI質量分析をして、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果、及び/又はスイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果を予め特定しておき、
    次に、試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後に該マトリックスの溶液を載置し、又は試料支持部材上に測定対象分子を含む試料と該マトリックスの溶液を同時に載置し、該溶液を乾燥させて、該試料と該マトリックスの混合結晶を析出させた後、該質量分析法以外の分析方法を用いて、該混合結晶の局所的な分析をし、スイートスポットになる該混合結晶の部分の該分析結果を呈する混合結晶の部分を検出して、その部分がスイートスポットであると予測する、及び/又はスイートスポットにならない該混合結晶の部分の該分析結果を呈する混合結晶の部分を検出して、その部分がスイートスポットでないと予測することを特徴とする請求項1記載のスイートスポットの予測方法。
  3. 該局所的な分析を、該混合結晶の全域又は一定の範囲に対して、繰り返し行い若しくはスキャンして、その分析結果をマッピングすることにより、スイートスポットとなる領域を予測することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスイートスポットの予測方法。
  4. 該質量分析法以外の分析方法が、結晶多形を識別する分析方法である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項記載のスイートスポットの予測方法。
  5. 該質量分析法以外の分析方法が、分光スペクトル測定による分析方法である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項記載のスイートスポットの予測方法。
  6. 該分光スペクトル測定が、ラマン分光スペクトル測定又は赤外分光スペクトル測定である請求項5記載のスイートスポットの予測方法。
  7. 該質量分析法以外の分析方法が、X線回折測定による分析方法である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項記載のスイートスポットの予測方法。
  8. 該質量分析法以外の分析方法が、光学顕微鏡法による結晶表面の構造色の検出による分析方法である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項記載のスイートスポットの予測方法。
  9. 該質量分析法以外の分析方法が結晶表面の周期1μm以上10μm以下の周期的な凹凸状態の検出である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項記載のスイートスポットの予測方法。
  10. 該マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、該分光スペクトル測定がラマン分光スペクトル測定であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、376cm−1付近にシグナルを実質的に有さない、又は1199cm−1付近にシグナルを実質的に有さない、又は1307cm−1付近にシグナルを実質的に有さないラマン分光スペクトルである、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、376cm−1付近にシグナルを有する、又は1199cm−1付近にシグナルを有する、又は1307cm−1付近にシグナルを有するラマン分光スペクトルである請求項6記載のスイートスポットの予測方法。
  11. 該マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、該分光スペクトル測定が赤外分光スペクトル測定であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、1200cm−1付近にシグナルを実質的に有さない、又は1300cm−1付近にシグナルを有する赤外分光スペクトルである、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、1200cm−1付近にシグナルを有する、又は1300cm−1付近にシグナルを実質的に有さない赤外分光スペクトルである請求項6記載のスイートスポットの予測方法。
  12. 該マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、該分光スペクトル測定がラマン分光スペクトル測定又は赤外分光スペクトル測定であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、3265cm−1付近にシグナルを有するラマン分光スペクトル又は赤外分光スペクトルである、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、3265cm−1付近にシグナルを実質的に有さないラマン分光スペクトル又は赤外分光スペクトルである請求項6記載のスイートスポットの予測方法。
  13. 該質量分析法以外の分析方法が光学顕微鏡法による結晶表面の構造色の検出であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が構造色を示さない、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が構造色を示す、光学顕微鏡による分析結果である請求項8記載のスイートスポットの予測方法。
  14. 該マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、結晶表面に周期1μm以上10μm以下の周期的な凹凸状態が検出されない、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、結晶表面に周期1μm以上10μm以下の周期的な凹凸状態が検出される、共焦点レーザー顕微鏡による分析結果である請求項9記載のスイートスポットの予測方法。
  15. 試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後であって、マトリックスの溶液を載置する前に、測定対象分子と反応することによってイオン化効率を高める誘導体化剤の溶液を該試料支持部材上に滴下して乾燥する工程を挿入する請求項2ないし請求項14の何れかの請求項記載のスイートスポットの予測方法。
  16. 試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後にマトリックスの溶液を載置し、又は試料支持部材上に測定対象分子を含む試料とマトリックスの溶液を同時に載置し、該溶液を乾燥させて、該試料とマトリックスの混合結晶を析出させた後、質量分析法以外の分析方法を用いて、該混合結晶の局所的な分析をしてからMALDI質量分析をして、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果、及び/又はスイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果を予め特定しておき、
    次に、試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後に該マトリックスの溶液を載置し、又は試料支持部材上に測定対象分子を含む試料と該マトリックスの溶液を同時に載置し、該溶液を乾燥させて、該試料と該マトリックスの混合結晶を析出させた後、該質量分析法以外の分析方法を用いて、該混合結晶の局所的な分析をし、スイートスポットになる該混合結晶の部分の該分析結果を呈する混合結晶の部分を検出して、該検出された混合結晶の部分を対象としてレーザー脱離イオン化する、及び/又はスイートスポットにならない該混合結晶の部分の該分析結果を呈する混合結晶の部分を検出して、該検出された混合結晶の部分を対象としてレーザー脱離イオン化しないことを特徴とするMALDI質量分析法。
  17. 該局所的な分析を、該混合結晶の全域又は一定の範囲に対して、繰り返し行い若しくはスキャンして、その分析結果をマッピングすることにより、スイートスポットになる該混合結晶の部分の該分析結果を呈する混合結晶の部分、及び/又はスイートスポットにならない該混合結晶の部分の該分析結果を呈する混合結晶の部分を検出することを特徴とする請求項16記載のMALDI質量分析法。
  18. 該質量分析法以外の分析方法が、結晶多形を識別する分析方法である請求項16又は請求項17記載のMALDI質量分析法。
  19. 該質量分析法以外の分析方法が、分光スペクトル測定による分析方法である請求項16又は請求項17記載のMALDI質量分析法。
  20. 該分光スペクトル測定が、ラマン分光スペクトル測定又は赤外分光スペクトル測定である請求項19記載のMALDI質量分析法。
  21. 該質量分析法以外の分析方法が、X線回折測定による分析方法である請求項16又は請求項17記載のMALDI質量分析法。
  22. 該質量分析法以外の分析方法が、光学顕微鏡法による結晶表面の構造色の検出による分析方法である請求項16又は請求項17の何れかの請求項記載のMALDI質量分析法。
  23. 該質量分析法以外の分析方法が結晶表面の周期1μm以上10μm以下の周期的な凹凸状態の検出である請求項16又は請求項17の何れかの請求項記載のMALDI質量分析法。
  24. 該マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、該分光スペクトル測定がラマン分光スペクトル測定であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、376cm−1付近にシグナルを実質的に有さない、又は1199cm−1付近にシグナルを実質的に有さない、又は1307cm−1付近にシグナルを実質的に有さないラマン分光スペクトルである、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、376cm−1付近にシグナルを有する、又は1199cm−1付近にシグナルを有する、又は1307cm−1付近にシグナルを有するラマン分光スペクトルである請求項20記載のMALDI質量分析法。
  25. 該マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、該分光スペクトル測定が赤外分光スペクトル測定であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、1200cm−1付近にシグナルを実質的に有さない、又は1300cm−1付近にシグナルを有する赤外分光スペクトルである、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、1200cm−1付近にシグナルを有する、又は1300cm−1付近にシグナルを実質的に有さない赤外分光スペクトルである請求項20記載のMALDI質量分析法。
  26. 該マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、該分光スペクトル測定がラマン分光スペクトル測定又は赤外分光スペクトル測定であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、3265cm−1付近にシグナルを有するラマン分光スペクトル又は赤外分光スペクトルである、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、3265cm−1付近にシグナルを実質的に有さないラマン分光スペクトル又は赤外分光スペクトルである請求項20記載のMALDI質量分析法。
  27. 該質量分析法以外の分析方法が光学顕微鏡法による結晶表面の構造色の検出であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が構造色を示さない、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が構造色を示す、光学顕微鏡による分析結果である請求項22記載のMALDI質量分析法。
  28. 該マトリックスが2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)であり、スイートスポットになる該混合結晶の部分の分析結果が、結晶表面に周期1μm以上10μm以下の周期的な凹凸状態が検出されない、及び/又は、スイートスポットにならない該混合結晶の部分の分析結果が、結晶表面に周期1μm以上10μm以下の周期的な凹凸状態が検出される、共焦点レーザー顕微鏡による分析結果である請求項23記載のMALDI質量分析法。
  29. 試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後であって、マトリックスの溶液を載置する前に、測定対象分子と反応することによってイオン化効率を高める誘導体化剤の溶液を該試料支持部材上に滴下して乾燥する工程を挿入する請求項16ないし請求項28の何れかの請求項記載のMALDI質量分析法。
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