JPWO2013022070A1 - 連続培養によるイソプロピルアルコール製造方法 - Google Patents

連続培養によるイソプロピルアルコール製造方法 Download PDF

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Abstract

植物由来原料を含有する基質液を培養槽に連続的に供給し且つ生産物を含む培養液を該培養槽から連続的に抜き取りながら、遺伝子組換えにより導入又は改変したイソプロピルアルコール生産能力を保有するイソプロピルアルコール生産大腸菌を、イソプロピルアルコール生産期に該大腸菌が安定的に増殖する菌体増殖条件で、且つ前記培養槽内の菌体数を維持して、培養することと、前記培養槽内で前記イソプロピルアルコール生産大腸菌と植物由来原料とを接触させて、イソプロピルアルコールを生産することと、前記培養槽から抜き取られた前記生産物を含む培養液から、イソプロピルアルコール生産大腸菌により生産されたイソプロピルアルコールを回収することと、を含むイソプロピルアルコール製造方法。

Description

本発明は、イソプロピルアルコール製造方法に関する。
プロピレンは、ポリプロピレンなどの合成樹脂や石油化学製品の重要な基礎原料であり、自動車用バンパーや食品容器、フィルム、医療機器などに幅広く使われている。
植物由来原料から製造されたイソプロピルアルコールは、脱水工程を経てプロピレンに変換できることから、カーボンニュートラルなプロピレンの原料として有望である。京都議定書によって2008年から2012年の間に先進国全体で温室効果ガス排出量を1990年比で5%削減することが義務付けられている現在、カーボンニュートラルなプロピレンはその汎用性から地球環境上極めて重要である。
植物由来原料を資化してイソプロピルアルコールを生産する微生物は既に知られている。
例えば国際公開2009/008377号には、グルコースを原料としてイソプロピルアルコールを生産するように改変された大腸菌を用いて、基質液の逐次添加による半回分式培養を行いながらイソプロピルアルコールを生産することが開示されている。このイソプロピルアルコール生産大腸菌は、イソプロピルアルコールの選択性が高いことから工業生産用生体触媒として優れた性質を持つと記載されている。
イソプロピルアルコールを培養法により工業レベルで生産するには、長時間の連続的な培養により効率的に生産することが求められている。
このために、例えば、生物化学工学会誌,71(1),pp.9−14,(1993)には、土壌から分離したClostridium属に属する微生物を用いたブタノール・イソプロピルアルコールの連続培養が報告されている。ここでは、30日間の連続培養を行っているが、本微生物は遺伝子組換えによる改変を行っておらず、イソプロピルアルコールの選択率は約25%と低い。
J.Biosci.Bioeng.,110(6),pp.696−701,(2010)には、イソプロピルアルコールを生産するように改変された大腸菌を用いた長時間の半回分培養によるイソプロピルアルコールの生産が報告されている。ここでは、生成したイソプロピルアルコールをガスストリッピングにより培養液中からガス中へ追い出し、ガスに含まれるイソプロピルアルコールは水を捕捉液として回収している。培養槽には三角フラスコを使用し、フラスコ容量の1/10以下のごく少量の培養液を仕込むことで比表面積を大きくしており、逐次添加による半回分式培養でありながら、生成イソプロピルアルコールに加え培養液も蒸散させているため培養液量は低下しており240時間と長い運転時間が可能となっている。
一方、J.Ind.Microbiol.Biotechnol,33,pp.834−844,(2006)では、生産物はエタノールを生産するための遺伝子組換え大腸菌を用いた無通気によるエタノール連続培養が報告されている。ここでは、液循環型固定床による連続培養で、滅菌培地の培養槽へのフィード、培養槽からの培養液の抜き取りという一般的な連続培養に加え、培養槽内の液を循環させる連続培養が実施されている。
大腸菌を用いた酸素ガス又は酸素を含むガスを通気する好気培養では、酢酸が副生することが知られているが、酢酸の蓄積濃度が高くなると、大腸菌の増殖阻害や目的物の生産効率低下を招く。そこで、酢酸の高蓄積を抑制するため、通気または攪拌速度をコントロールし、培養槽内の溶存酸素濃度が枯渇しないよう、数ppmに制御するDO−Stat法がよく知られている。Biotech.Bioeng.,36,pp.750−758,(1990)では、酢酸の蓄積は、通常の半回分培養では48時間目における酢酸濃度が35g/L、DO−Stat法による制御では36時間目における酢酸濃度が17g/L、溶存酸素濃度の制御に加え、半回分培養における基質液の添加速度のコントロールにより培養槽中のグルコースの濃度も制御するBalanced DO−Stat法では酢酸が生成しないと報告されている。
しかしながら、長期間の培養のために比表面積を大きくする方法は、過大な培養槽を使用することにつながり、工業レベルの規模では現実的ではない。また、通常の半回分式培養では、運転時間が長くなるほどイソプロピルアルコールの生産量は多くなるが、培養液量は増加し続けるため大型培養槽が必要となり、工業化した場合設備費、維持費、運転費が著しく高くなるため、汎用化学品の製造には向かない。
菌体増殖の観点においても、半回分培養では16時間から48時間程度で菌体の増殖がほとんど停止し、培養時間が更に長くなるとイソプロピルアルコールの生産速度は低下することが知られている。J.Biosci.Bioeng.,110(6),pp.696−701,(2010)に記載された技術においても、240時間以降は濃縮栄養培地を添加してもイソプロピルアルコールの生産が停止することが報告されている。
一方、イソプロピルアルコールの生産には、酸素が必要であるが、J.Ind.Microbiol.Biotechnol,33,pp.834−844,(2006)に記載された技術では、液循環ラインに使用するチューブからの酸素透過により菌体の酸素摂取速度が1mmol/L/hになると、固定化されていない遊離菌体が保有するプラスミドは培養2日目以降脱落し始めることが記載されている。プラスミドが脱落し始めると、プラスミドを保有しない菌体の増殖が優位となることが一般的に知られており、増殖を長時間伴う培養には向いていない。また、酢酸の副生を抑制するためにDO−stat法やBalanced DO−Stat法で制御することは、複雑な制御のプログラムを組まなければならず、また、多くの場合にはコストの高い純酸素を使用しなければならない。
このように、経済的に有利となる連続培養による効率の良いイソプロピルアルコールの製造が依然として望まれている。
本発明は、連続培養によってイソプロピルアルコールを簡便にかつ長時間安定的に高い生産性で製造するイソプロピルアルコールの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の各態様は、以下のイソプロピルアルコール製造方法を提供する。
〔1〕 植物由来原料を含有する基質液を培養槽に連続的に供給し且つ生産物を含む培養液を該培養槽から連続的に抜き取りながら、遺伝子組換えにより導入又は改変したイソプロピルアルコール生産能力を保有するイソプロピルアルコール生産大腸菌を、イソプロピルアルコール生産期に該大腸菌が安定的に増殖する菌体増殖条件で、且つ前記培養槽内の菌体数を維持して、培養することと、前記培養槽内で前記イソプロピルアルコール生産大腸菌と植物由来原料とを接触させて、イソプロピルアルコールを生産することと、前記培養槽から抜き取られた前記生産物を含む培養液から、前記イソプロピルアルコール生産大腸菌により生産されたイソプロピルアルコールを回収することと、を含むイソプロピルアルコール製造方法。
〔2〕 前記菌体増殖条件が、比増殖速度0.015/h以上となる条件である〔1〕記載の製造方法。
〔3〕 前記培養を、10mmol/L/h〜250mmol/L/hの酸素摂取速度で行う〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕 前記菌体増殖条件が、比増殖速度0.02/h以上となる条件である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、連続培養によってイソプロピルアルコールを簡便にかつ長時間安定的に高い生産性で製造するイソプロピルアルコールの製造方法を提供することができる。
本発明に使用可能な連続培養槽の一例の概略構成図である。 本発明の実施例1及び比較例1における培養槽内培養液中の菌体質量の経時変化を示すグラフである。 本発明の実施例1及び比較例1におけるイソプロピルアルコール生産質量の経時変化を示すグラフである。 本発明の実施例2〜実施例4及び比較例2における培養槽内培養液中の菌体質量の経時変化を示すグラフである。 本発明の実施例2〜実施例4及び比較例2におけるイソプロピルアルコール生産質量の経時変化を示すグラフである。 本発明の実施例2〜実施例4及び比較例2におけるプラスミド脱落率の経時変化を示すグラフである。 本発明の実施例5〜実施例10におけるOURとイソプロピルアルコール収率の相関関係を示すグラフである。 本発明の実施例5〜実施例10におけるOURとイソプロピルアルコール生産速度の相関関係を示すグラフである。 本発明の実施例5、実施例7及び実施例9におけるイソプロピルアルコール生産質量の経時変化を示すグラフである。 本発明の実施例5における培養槽内の溶存酸素の経時変化を示すグラフである。 本発明の実施例7における培養槽内の溶存酸素の経時変化を示すグラフである。 本発明の実施例9における培養槽内の溶存酸素の経時変化を示すグラフである。 本発明の実施例11における培養槽内培養液中の菌体質量の経時変化を示すグラフである。 本発明の実施例11におけるイソプロピルアルコール生産質量の経時変化を示すグラフである。 本発明の実施例11におけるプラスミド脱落率の経時変化を示すグラフである。
本発明のイソプロピルアルコール製造方法は、植物由来原料を含有する基質液を培養槽に連続的に供給し且つ生産物を含む培養液を該培養槽から連続的に抜き取りながら、遺伝子組換えにより導入又は改変したイソプロピルアルコール生産能力を保有するイソプロピルアルコール生産大腸菌を、イソプロピルアルコール生産期に該大腸菌が安定的に増殖する菌体増殖条件で、且つ前記培養槽内の菌体数を維持して、培養することと、前記培養槽内で前記イソプロピルアルコール生産大腸菌と植物由来原料とを接触させて、イソプロピルアルコールを生産することと、前記培養槽から抜き取られた前記生産物を含む培養液から、前記イソプロピルアルコール生産大腸菌により生産されたイソプロピルアルコールを回収することと、を含むイソプロピルアルコール製造方法である。
本発明によれば、培養槽内への基質液の供給及び培養槽内からの生産物を含む培養液の抜き取りを連続的に行いながら、遺伝子組換えにより導入又は改変したイソプロピルアルコール生産能力を保有するイソプロピルアルコール生産大腸菌の菌体数を維持し、且つイソプロピルアルコール生産期に該大腸菌が安定的に増殖する菌体増殖条件で、且つ前記培養槽内の菌体数を維持して、前記イソプロピルアルコール生産大腸菌を培養する。即ち、菌体数を維持しつつ、所定の菌体増殖条件でイソプロピルアルコール生産大腸菌を連続培養しながら、イソプロピルアルコールを生産するので、イソプロピルアルコール生産大腸菌を用いた連続培養であっても、簡便に且つ長時間安定的に高い生産性でイソプロピルアルコールを製造することができる。
これを更に説明すれば、例えば、J.Ind.Microbiol.Biotechnol,33,pp.834−844,(2006)に開示された技術では、大腸菌の安定的なプラスミド保持には、酸素摂取速度を0.6mmol/L/h以下に抑制しなければならないことと記載されており、また、大腸菌を用いた酸素摂取速度が高い好気培養による長期連続培養は、これまでに報告例がない。これらのことから、酸素を供給する好気培養で遺伝子組み換え大腸菌を用いると、固定化しない場合、プラスミドの脱落した菌体が経時的に増えるため、長時間の連続培養では目的物の生産速度が低下していくことが示唆される。また固定化した菌体を使用する場合は、酸素と菌体との接触性が低下するため、酸素を必要とするような好気培養では目的物の生産速度が低下することが示唆される。
また、例えば、Biotech.Bioeng.,36,pp.750−758,(1990)に開示された技術では、大腸菌を用いた運転時間2日の好気による半回分培養が行われている。酸素摂取速度に関する記載はないものの、ファーメンターを用いて空気又は純酸素を1vvmで通気、攪拌回転数は最大1350rpmであり、酸素摂取速度が高いことは当該業者であれば、容易に推測できる。培養2日程度ではプラスミドの脱落の影響はほとんどないものの、好気培養では酢酸の高蓄積による増殖阻害や目的物の生産速度が低下するため、DO−Stat法やBalanced DO−stat法などにより溶存酸素濃度を制御しなければならないことが記載されている。
これに対して、本発明では、培養槽へのイソプロピルアルコール生産大腸菌の投入当初ではなく、培養開始からの所定時間後のイソプロピルアルコール生産期でのイソプロピルアルコール生産大腸菌の挙動に着目し、この時期の培養条件を、菌体が安定的に増殖する条件に調整するものである。これによりDO−Stat法やBalanced DO−stat法による培養槽内の溶存酸素濃度やグルコース濃度の複雑な制御を行わなくても、好気培養においてイソプロピルアルコール生産大腸菌のイソプロピルアルコールの生産性を低下させることなく、簡便な培養方法で長期間にわたってイソプロピルアルコールを製造することができる。
更に通気・攪拌条件をイソプロピルアルコール生産に適した範囲内に調整することによって、より効率よくイソプロピルアルコールを製造することができる。
本発明において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
また、本発明において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
以下、本発明について説明する。
本発明におけるイソプロピルアルコール生産大腸菌は、イソプロピルアルコールを生産するためのイソプロピルアルコール生産系を備えた大腸菌である。大腸菌は本来イソプロピルアルコールを生産する系を有していないため、本発明におけるイソプロピルアルコール生産大腸菌は、遺伝子組換えにより導入又は改変したイソプロピルアルコール生産能力を保有する大腸菌である。このようなイソプロピルアルコール生産系は、対象となる大腸菌にイソプロピルアルコールを生産させるものであればいずれのものであってもよい。また、イソプロピルアルコール生産系の少なくとも一部が、遺伝子組み換えによる導入又は改変されていればよい。遺伝子組換えによる導入又は改変には公知の方法を用いることができ、例えばゲノムへの相同組換え、プラスミドによる導入等が挙げられる。
本発明におけるイソプロピルアルコール生産大腸菌は、好ましくは、イソプロピルアルコールの生産に関与する酵素活性を強化した大腸菌である。「遺伝子組換えにより」とは、生来の遺伝子の塩基配列に対して異なる配列を有する外来の塩基配列の挿入、あるいは遺伝子のある部分の置換、欠失又はこれらの組み合わせによって塩基配列上の変更が生じているものであれば全て包含し、例えば、突然変異が生じた結果得られたものであってもよい。
本発明におけるイソプロピルアルコール生産大腸菌は、アセト酢酸デカルボキシラーゼ活性、イソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ活性、CoAトランスフェラーゼ活性及びチオラーゼ活性の4種類の酵素活性が、菌体外から付与され若しくは菌体内において発現増強され、又はこれら双方がなされていることが更に好ましい。
本発明におけるチオラーゼとは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号2.3.1.9に分類され、アセチルCoAからアセトアセチルCoAを生成する反応を触媒する酵素の総称を指す。
本発明におけるアセト酢酸デカルボキシラーゼとは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号4.1.1.4に分類され、アセト酢酸からアセトンを生成する反応を触媒する酵素の総称を指す。
本発明におけるイソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼとは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号1.1.1.80に分類され、アセトンからイソプロピルアルコールを生成する反応を触媒する酵素の総称を指す。
本発明におけるCoAトランスフェラーゼとは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号2.8.3.8に分類され、アセトアセチルCoAからアセト酢酸を生成する反応を触媒する酵素の総称を指す。
本発明におけるイソプロピルアルコール生産系を備えているイソプロピルアルコール生産大腸菌の例として、WO2009/008377号に記載のpIPA/B株又はpIaaa/B株を例示できる。また、該大腸菌には、イソプロピルアルコールの生産に関与する酵素のうち、CoAトランスフェラーゼ活性とチオラーゼ活性の増強は該大腸菌のゲノム上の各遺伝子の発現を強化することで行い、イソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ活性とアセト酢酸デカルボキシラーゼ活性の増強は各遺伝子の発現をプラスミドで強化した株(pIa/B::atoDAB株と呼ぶことがある)を含む。
更に効果的にイソプロピルアルコール生産性を向上させた組換え大腸菌を使用してもよく、そのような例として不活化されたGntR活性、不活化されたグルコース−6−リン酸イソメラーゼ(Pgi)活性、不活化されたホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(Gnd)活性と強化されたグルコース−6−リン酸−1−デヒドロゲナーゼ(Zwf)活性が挙げられる。これらの組み合わせにより、これ以外の各因子又は酵素の組み合わせと比してイソプロピルアルコールの生産性を驚異的に向上させることできる。
本発明におけるグルコース−6−リン酸イソメラーゼ(Pgi)とは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号5.3.1.9に分類され、D−グルコース−6−リン酸からD−フルクトース−6−リン酸を生成する反応を触媒する酵素の総称を指す。
本発明におけるグルコース−6−リン酸−1−デヒドロゲナーゼ(Zwf)とは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号1.1.1.49に分類され、D−グルコース−6−リン酸からD−グルコノ−1,5−ラクトン−6−リン酸を生成する反応を触媒する酵素の総称を指す。
本発明において用いられるグルコース−6−リン酸−1−デヒドロゲナーゼ(Zwf)の遺伝子としては、上述した各由来生物から得られるチオラーゼをコードする遺伝子の塩基配列を有するDNA又はその公知の塩基配列に基づいて合成された合成DNA配列を利用することができる。
本発明におけるホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(Gnd)とは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号1.1.1.44に分類され、6−ホスホ−D−グルコン酸からD−リブロース−5−リン酸とCOを生成する反応を触媒する酵素の総称を指す。
このようなイソプロピルアルコール生産大腸菌の好ましい態様としては、上記pIPA/B株、pIaaa/B株又はpIa/B::atoDAB株のGntR活性を不活化した株又はpIa/B::atoDAB株のGntR活性とグルコース−6−リン酸イソメラーゼ(Pgi)活性を不活化し、グルコース−6−リン酸−1−デヒドロゲナーゼ(Zwf)活性を強化した株又はpIa/B::atoDAB株のGntR活性とグルコース−6−リン酸イソメラーゼ(Pgi)活性とホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(Gnd)活性を不活化し、グルコース−6−リン酸−1−デヒドロゲナーゼ(Zwf)活性を強化した株などが挙げられる。
本発明のイソプロピルアルコール製造方法は、上記イソプロピルアルコール生産大腸菌を用いた連続培養により植物由来原料からイソプロピルアルコールを生産させるものである。
前記イソプロピルアルコール製造方法は、具体的には、植物由来原料を含有する基質液を培養槽に連続的に供給し且つ生産物を含む培養液を該培養槽から連続的に抜き取りながら、前記イソプロピルアルコール生産大腸菌を、イソプロピルアルコール生産期に該大腸菌が安定的に増殖する菌体増殖条件で、且つ前記培養槽内の菌体数を維持して、培養すること(以下、培養工程という)と、前記培養槽内で前記イソプロピルアルコール生産大腸菌と植物由来原料とを接触させて、イソプロピルアルコールを生産すること(以下、「生産工程」という)と、前記培養槽から抜き取られた前記生産物を含む培養液から、前記イソプロピルアルコール生産大腸菌により生産されたイソプロピルアルコールを回収すること(以下、回収工程という)と、を含む。
前記製造方法におけるイソプロピルアルコール生産大腸菌の培養は、前記イソプロピルアルコール生産大腸菌を、菌体数を維持しつつ、安定的に増殖させる菌体増殖条件で行われる。菌体数の維持は、基質液の供給及び培養液の抜き取りと、菌体増殖条件下での培養とにより達成される。これにより、イソプロピルアルコール生産期でも前記大腸菌の増殖能が維持され、結果的に、連続培養であってもイソプロピルアルコールの生産を維持することができる。
前記製造方法では、イソプロピルアルコールの生産を連続培養によって行うため、培養槽内で前記イソプロピルアルコール生産大腸菌と植物由来原料とを接触させてイソプロピルアルコールを生産する前記生産工程は、前記培養工程と同時に進行する。ただし、前記菌体増殖条件によらないイソプロピルアルコール生産大腸菌の成育又は維持のための単なる培養は、前記生産工程と同時に行われなくてもよい。
また、前記回収工程は、前記培養槽から抜き取られた前記生産物を含む培養液から、イソプロピルアルコール生産大腸菌により生産されたイソプロピルアルコールを回収するものであるため、前記培養工程及び生産工程と同時に行ってもよく、培養工程及び生産工程と同時でなくてもよい。
前記培養工程は、培養初期の菌体濃度が、安定的に菌体数を維持できる菌体濃度に達した後に行われる。
培養初期の「安定的に菌体数を維持できる菌体濃度」とは、連続培養開始後に前記大腸菌の増殖が維持できる菌体濃度であれば特に制限は無いが、例えば、乾燥質量として2.4g−dry cell/Lに相当する菌体濃度であれば十分である。
本発明における「連続培養」とは、「発酵工学の基礎」(P.F.Stanbury著、学会出版センター、1988年、p14〜p15、[Principles of Fermentation Technology (Stanbury,Peter F.;Whitaker,Allan)])に記載されているように、上記基質液を培養槽へ連続的に供給(以下、「フィード」ということがある)し、生産物を含む培養液を連続的に抜取る方法により、菌体を培養し、該菌体により目的物を生産することを意味する。このとき、供給された基質液と等量の培養液を培養槽から抜取ることにより、培養槽内で液量はほぼ一定となる。
フィードの方法は、特に限定されるものではなく、一定速度でフィードするchemo stat法や、炭素源(植物由来原料)のロスを少なくするために断続的にフィードする方法などが挙げられる。断続的にフィードする方法としては、例えば、pHstat法が挙げられる。このpHstat法は、炭素源(植物由来原料)をフィードして一旦停止したときに培養槽内の炭素源(植物由来原料)が枯渇すると生ずるpHの上昇及び溶存酸素濃度の上昇、排気二酸化炭素濃度の低下を指標として、フィードを再開する方法である。
本発明における「連続的な供給」又は「連続的な抜き取り」との用語には、培養槽内の液量がほぼ一定に維持されている限り、如何なる態様のフィード方法も包含される。なお、「培養槽内の液量がほぼ一定」とは、イソプロピルアルコール製造開始における培養槽内の液量と比較したときの液量の変動が0容量%〜10容量%の範囲内を意味し、連続運転の安定性の観点から好ましくは0容量%〜5容量%の範囲内を意味する。
ここで、「イソプロピルアルコール生産期」とは、菌体増殖が定常状態に達した後にイソプロピルアルコールが生産される期間を指す。前記培養工程では、菌体の増殖状況に応じて、製造開始直後の菌体がほとんど生育しない誘導期と、その後の対数増殖期とに分けられる。本発明において「菌体増殖が定常状態に達する」とは、前記対数増殖期において、前記培養液の抜き取りに伴って抜取られる菌体量と新しく増殖した菌体量とがつりあった状態を意味する。このような菌体増殖が定常状態に達したときには、培養槽内の菌体濃度が一定となる。菌体増殖が定常状態に達するまでの時間は、培養開始時の菌体濃度及び菌の状態、培養液の容量並びに供給される炭素源の濃度によって異なるが、培養開始時の菌体濃度が0.08g−dry cell/L、炭素源の濃度が2g/L、培養液の容量を0.5Lとしたとき、一般には培養開始後24〜48時間となるため、イソプロピルアルコール生産期は培養開始後24時間以降とすることができ、好ましくは48時間以降とすることができる。
菌体増殖条件とは、対数増殖期に達した後に菌体を増殖させるための条件を意味する。即ち、培養槽内の培養系において、少なくとも、前記イソプロピルアルコール生産大腸菌の菌体密度、前記基質液濃度、及び前記生産物濃度のいずれもが、イソプロピルアルコール生産大腸菌の増殖を阻害しない範囲に維持することが必要である。イソプロピルアルコール生産大腸菌の菌体密度の過剰若しくは死滅数の増大、基質液濃度の過剰、及び生産物濃度の過剰の少なくとも1つが生じた場合には、イソプロピルアルコール生産大腸菌の増殖が停滞又は阻害されるため、イソプロピルアルコール生産大腸菌の増殖を維持することができない。この結果、培養系全体におけるイソプロピルアルコールの生産能が損なわれる。
前記菌体増殖条件としては、定常状態を維持する観点から、比増殖速度0.015/h以上となる条件であることが好ましい。比増殖速度が0.015/h以上であれば、イソプロピルアルコール生産大腸菌の菌体密度、基質液濃度及び生産物濃度を簡便に且つ効果的に調整して、培養系内のイソプロピルアルコール生産大腸菌の増殖能を維持できる傾向がある。前記比増殖速度としては、イソプロピルアルコールの生産速度を高める観点から、0.02/h以上であることがより好ましく、0.025/h以上であることが更に好ましく、0.03/h以上であることが特に好ましい。い。また、比増殖速度の上限値はとくに制限されないが、大腸菌の世代時間を考慮すると4/h以下であることが好ましく、1/h以下であることがより好ましく、0.5/h以下であることが更により好ましく、0.2/h以下であることが特に好ましい。なお、上述した好ましい上限値及び好ましい下限値から構成される数値範囲としては、上述したいずれかの上限値と、いずれかの下限値とを組み合わせがものであればよい。
前記比増殖速度とは、菌体あたりの増殖速度(=単位菌体質量、単位時間あたりに菌体が増える質量)であり、「発酵工学の基礎」(P.F.Stanbury著、1988年、p14〜p15)に記載されているように定常状態においては式1で表される。本発明における比増殖速度には、この式1を適用する。
(式1)
μ=F/V
μ:比増殖速度(h−1
F:基質液の供給速度(L/h)≒培養液の抜き取り速度(L/h)
V:培養槽中の液量(L)
式1により、前記基質液の供給速度及び前記培養液の抜き取り速度としては、培養槽中の液量によって異なるが、例えば培養槽中の液量が1Lである場合には、0.015L/h〜4L/hとすることができ、イソプロピルアルコールの生産速度を高める観点から0.02L/h〜4L/hであることが好ましく、0.025L/h〜1L/hであることがより好ましい。同様に、例えば培養槽中の液量が1mである場合には、0.015m/h〜4m/hとすることができ、イソプロピルアルコールの生産速度を高める観点から0.02m/h〜4m/hであることが好ましく、0.025m/h〜1m/hであることがより好ましい。
前記培養槽の容量(大きさ)としては、特に制限はなく、物質生産に通常用いられる培養槽が適用可能である。また、培養槽に充填される液の液量は、用いられる培養槽の容量に応じて適宜設定可能である。
なお、比増殖速度は、イソプロピルアルコール生産期において上記範囲内になっていればよい。イソプロピルアルコール生産期以外の時期における比増殖速度は特に制限されず、上述した範囲と同一であってもよく、異なっていてもよい。上述した範囲と異なる範囲とする場合には、例えば、0.015/h以下とすることができる。
また、定常状態を保つ比増殖速度以外の条件としては、基質液の糖濃度や培養槽内の温度、pHなど挙げられるが、定常状態が維持できれば特に制限はなく、当該業者が容易に類推できる条件でよい。
本発明において、イソプロピルアルコールの生産期における菌体数に特に制限はないが、イソプロピルアルコールを効率よく生産する観点から、培養槽内での菌総質量は1g−dry cell/L〜30g−dry cell/Lが好ましく、3g−dry cell/L〜20g−dry cell/Lがより好ましい。「菌体数の維持」とは、所定の菌体数となる定常状態に達した後において、菌体数の変動率が30%以内であることを意味し、好ましくは20%以内の変動率であることを意味する。菌体数は、後述するように、分光光度計で660nmの波長で測定し、1 OD660=0.3g−drycell/Lとして算出する菌体濃度を用いることができる。
本発明に製造方法では、イソプロピルアルコールを生産効率の観点から、好気培養であることが好ましい。本発明において好気培養とは、空気または酸素がある状態で行う培養を意味し、菌体の酸素摂取速度が1mmol/L/h以上となる酸素がある状態を指す。酸素摂取速度(oxygen uptake rate:OUR)とは、単位時間、単位培養液あたりに菌体が消費する酸素の量を示す。OURは排ガス分析法によって以下の式2から求めたものを用いる。
(式2)
OUR=7.22×10/V×(Q/T−Q/T
V:培養槽中の液量(L)
及びQ:空気入り口及び出口における空気流量(L/min)
及びP:空気入り口及び出口における空気圧(MPa)
及びT:空気入り口及び出口における絶対温度(K)
及びy:空気入り口及び出口における酸素のモル分率
なお上記式2に基づいてOURを求める際に、空気流量、空気圧、絶対温度の値が空気入り口及び出口で無視できる程度の差しかないときには1カ所での測定値を適用してもよい。また、本発明でいう圧力及び空気圧は、絶対圧力を指す。
OURは、菌体量や菌体あたりの酸素消費量が培養期間において変化するため、通気量、攪拌回転速度、温度、圧力、pHなどによって変動する。従って、OURを上述した範囲内に調整するには、空気流量、空気圧等を適宜調整すればよい。当業者であれば、上記式2に基づいて目的とするOURとなるように適宜調整可能である。
本発明において、OURは10mmol/L/h〜250mmol/L/hであることが好ましく、20mmol/L/h〜200mmol/L/hであることがより好ましく、50mmol/L/h〜200mmol/L/hであることがより好ましく、100mmol/L/h〜180mmol/L/hであることが更に好ましい。OURが10mmol/L/h以上であれば、乳酸や有機酸などの有機酸やエタノールなどの副生物をより少なくでき、250mmol/L/h以下であれば、二酸化炭素などの副生物をより少なくできる傾向がある。結果として、OURが10mmol/L/h以上、250mmol/L/h以下の範囲であれば、副生物の生成量の低減により、イソプロピルアルコール収率やイソプロピルアルコール生産速度が向上する傾向がある。
前記本発明では、イソプロピルアルコールをより効率よく生産するために、培養時のおける各条件を以下の条件とすることが好ましい:
(1) 培養槽中の液量を1Lとしたときに、基質液の供給速度及び培養液の抜き取り速度が0.02L/h〜4L/hであり、前記比増殖速度が0.02/h以上4/h以下であり、OURが20mmol/L/h〜200mmol/L/hである。
(2) 培養槽中の液量を1Lとしたときに、基質液の供給速度及び培養液の抜き取り速度が0.02L/h〜1L/hであり、前記比増殖速度が0.02/h以上1/h以下であり、OURが20mmol/L/h〜200mmol/L/hである。
(3) 培養槽中の液量を1Lとしたときに、基質液の供給速度及び培養液の抜き取り速度が0.02L/h〜0.5L/hであり、前記比増殖速度が0.02/h以上0.5/h以下であり、OURが20mmol/L/h〜200mmol/L/hである
(4) 培養槽中の液量を1Lとしたときに、基質液の供給速度及び培養液の抜き取り速度が0.02L/h〜0.5L/hであり、前記比増殖速度が0.02/h以上0.5/h以下であり、OURが50mmol/L/h〜200mmol/L/hである
(5) 培養槽中の液量を1Lとしたときに、基質液の供給速度及び培養液の抜き取り速度が0.02L/h〜0.5L/hであり、前記比増殖速度が0.02/h以上0.5/h以下であり、OURが100mmol/L/h〜180mmol/L/hである
(6) 培養槽中の液量を1Lとしたときに、基質液の供給速度及び培養液の抜き取り速度が0.02L/h〜0.2L/hであり、前記比増殖速度が0.02/h以上0.2/h以下であり、OURが20mmol/L/h〜200mmol/L/hである
(7) 培養槽中の液量を1Lとしたときに、基質液の供給速度及び培養液の抜き取り速度が0.02L/h〜0.2L/hであり、前記比増殖速度が0.02/h以上0.2/h以下であり、OURが50mmol/L/h〜200mmol/L/hである
(8) 培養槽中の液量を1Lとしたときに、基質液の供給速度及び培養液の抜き取り速度が0.02L/h〜0.2L/hであり、前記比増殖速度が0.02/h以上0.2/h以下であり、OURが100mmol/L/h〜180mmol/L/hである
(9) 培養槽中の液量を1Lとしたときに、基質液の供給速度及び培養液の抜き取り速度が0.025L/h〜1L/hであり、前記比増殖速度が0.025/h以上0.2/h以下であり、OURが20mmol/L/h〜200mmol/L/hである
(10) 培養槽中の液量を1Lとしたときに、基質液の供給速度及び培養液の抜き取り速度が0.025L/h〜1L/hであり、前記比増殖速度が0.025/h以上0.2/h以下であり、OURが50mmol/L/h〜200mmol/L/hである
(11) 培養槽中の液量を1Lとしたときに、基質液の供給速度及び培養液の抜き取り速度が0.025L/h〜1L/hであり、前記比増殖速度が0.025/h以上0.2/h以下であり、OURが100mmol/L/h〜180mmol/L/hである
上記(1)の培養条件を、以下のいずれかのイソプロピルアルコール生産大腸菌を用いたイソプロピルアルコール生産に適用することができる:
(a)pIPA/B株、pIaaa/B株、
(b)pIa/B::atoDAB株のGntR活性を不活化した株、
(c)pIa/B::atoDAB株のGntR活性とグルコース−6−リン酸イソメラーゼ(Pgi)活性を不活化し、グルコース−6−リン酸−1−デヒドロゲナーゼ(Zwf)活性を強化した株、及び
(d)pIa/B::atoDAB株のGntR活性とグルコース−6−リン酸イソメラーゼ(Pgi)活性とホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(Gnd)活性を不活化し、グルコース−6−リン酸−1−デヒドロゲナーゼ(Zwf)活性を強化した株。
また同様に、上記(2)の培養条件を、上記(a)〜(d)のいずれかのイソプロピルアルコール生産大腸菌を用いたイソプロピルアルコール生産に適用することができ、上記(3)の培養条件を、上記(a)〜(d)のいずれかのイソプロピルアルコール生産大腸菌を用いたイソプロピルアルコール生産に適用することができ、上記(4)の培養条件を、上記(a)〜(d)のいずれかのイソプロピルアルコール生産大腸菌を用いたイソプロピルアルコール生産に適用することができ、上記(5)の培養条件を、上記(a)〜(d)のいずれかのイソプロピルアルコール生産大腸菌を用いたイソプロピルアルコール生産に適用することができる。
また同様に、(6)の培養条件を、上記(a)〜(d)のいずれかのイソプロピルアルコール生産大腸菌を用いたイソプロピルアルコール生産に適用することができ、上記(7)の培養条件を、上記(a)〜(d)のいずれかのイソプロピルアルコール生産大腸菌を用いたイソプロピルアルコール生産に適用することができ、上記(8)の培養条件を、上記(a)〜(d)のいずれかのイソプロピルアルコール生産大腸菌を用いたイソプロピルアルコール生産に適用することができ、(9)の培養条件を、上記(a)〜(d)のいずれかのイソプロピルアルコール生産大腸菌を用いたイソプロピルアルコール生産に適用することができ、上記(10)の培養条件を、上記(a)〜(d)のいずれかのイソプロピルアルコール生産大腸菌を用いたイソプロピルアルコール生産に適用することができ、上記(11)の培養条件を、上記(a)〜(d)のいずれかのイソプロピルアルコール生産大腸菌を用いたイソプロピルアルコール生産に適用することができる。
前記生産工程で用いられる前記植物由来原料は、植物から得られる炭素源であり、植物由来原料であれば特に制限されない。本発明においては、根、茎、幹、枝、葉、花、種子等の器官、それらを含む植物体、それら植物器官の分解産物を指し、更に植物体、植物器官、またはそれらの分解産物から得られる炭素源のうち、微生物が培養において炭素源として利用し得るものも、植物由来原料に包含される。
このような植物由来原料に包含される炭素源には、一般的なものとしてデンプン、スクロース、グルコース、フルクトース、キシロース、アラビノース等の糖類、及びこれら成分を多く含む草木質分解産物、セルロース加水分解物など、並びに、これらの組み合わせを挙げることができ、更には植物油由来のグリセリン又は脂肪酸も、本発明における炭素源に含んでもよい。
本発明における植物由来原料の例示としては、穀物等の農作物、トウモロコシ、米、小麦、大豆、サトウキビ、ビート、綿等、及びこれらの組み合わせを好ましく挙げることができ、その原料としての使用形態は、未加工品、絞り汁、粉砕物等、特に限定されない。また、上記の炭素源のみの形態であってもよい。
イソプロピルアルコール生産大腸菌の培養に用いられる培地としては、炭素源、窒素源、無機イオン、及びイソプロピルアルコールを生産するために微生物が要求する有機微量元素、核酸、ビタミン類等が含まれた通常用いられる培地であれば特に制限はない。
本発明の培養に際して、pH、温度条件は特別の制限はなく、例えばpH4〜9、好ましくはpH6〜8、温度20℃〜50℃、好ましくは25℃〜42℃、圧力0〜5MPa、好ましくは0〜3MPaの範囲内でpHと温度を適切に制御しながら培養することができる。
培養槽へ供給される基質液は、炭素源となる植物由来原料を含む溶液のみであってもよく、また、炭素源となる植物由来原料を含む溶液と前記培地との混合液であってもよい。より効率的な培養を行うためには、前記植物由来原料を含む培地を基質液として供することが好ましい。本発明では、連続培養が行われる培養槽内の溶液を、単に「培養液」と総称する場合がある。
培養槽へ供給される場合、基質液における植物由来原料の量は、該原料の溶解度の観点から、炭素源として60質量%以下とすることができ、イソプロピルアルコール生産性の観点から5質量%〜50質量%とすることができる。
前記培養液中への気体の通気量は、特に制限はないが、通気攪拌槽で培養し、気体として空気のみを用いる場合には、一般的に0.02vvm〜3.0vvm(vvm;通気容量〔mL〕/液容量〔mL〕/時間〔分〕)であり、好ましくは0.1vvm〜2.0vvmである。培養装置の種類により、適したOURに調整するための通気量は異なるが、例えば気泡塔で培養する場合の通気量の一例として、0.02vvm〜10.0vvmに調整することが挙げられる。
なお、本発明のイソプロピルアルコールの製造方法は、イソプロピルアルコール生産のための培養工程の前に、使用するイソプロピルアルコール生産大腸菌を適切な菌数又は適度な活性状態とするための前培養工程を含んでいてもよい。前培養工程は、イソプロピルアルコール生産細菌の種類に応じた通常用いられる培養条件による培養であればよい。
前記回収工程では、前記培養槽から抜き取られた前記生産物を含む培養液(以下、「抜取り液」ともいう)から、イソプロピルアルコール生産大腸菌により生産されたイソプロピルアルコールを回収する。これにより、抜き取り後の前記生産物を含む培養液から、生産物であるイソプロピルアルコールを回収することができる。
前記抜取り液中に含まれるイソプロピルアルコールを回収する方法としては、特に制限はないが、例えば、前記抜取り液から菌体を遠心分離などで除去した後、蒸留や膜分離等通常の分離方法でイソプロピルアルコールを分離する方法が採用できる。回収されたイソプロピルアルコールが水溶液の状態である場合には、本イソプロピルアルコールの製造方法は、回収工程に加えて、脱水工程を更に含んでいてもよい。イソプロピルアルコールの脱水は、常法により行なうことができる。
また、前記培養工程は、前記イソプロピルアルコール生産細菌及び植物由来原料を含む混合物中に気体を供給しながら、イソプロピルアルコール生産大腸菌を培養し、該大腸菌を用いてイソプロピルアルコールを生成する工程であってもよい。この場合の回収工程は、気体の供給により前記培養液から揮発したガス中のイソプロピルアルコールを収集するガス状イソプロピルアルコール収集工程と、収集されたガス状イソプロピルアルコールからイソプロピルアルコールを単離する回収工程と、の双方を含む。
ガス状イソプロピルアルコールの収集方法の例としては、コンデンサーによる冷却凝縮やスクラバーやトラップ管での捕捉、イソプロピルアルコールの吸着能の高いフィルター、例えば活性繊維フィルターなどによる吸着などが挙げられる。収集後にイソプロピルアルコールを単離する回収方法の例としては、前述した回収方法をそのまま利用することができ、収集方法に基づいて適宜選択することができる。
なお、この形態においては、ガス状イソプロピルアルコールを収集工程と共に、液状イソプロピルアルコールを収集する工程を含めてもよい。この場合には、前記回収工程は、ガス状イソプロピルアルコールのみならず液状イソプロピルアルコールを回収することを含むものであってもよい。
前記混合物に気体を供給しながらイソプロピルアルコール生産大腸菌を培養するために適用可能な装置としては、培養槽と、培養槽に連結されて培養槽内の混合液の内部に気体を供給する供給路と、前記培養槽に連結されて培養槽内の気体を回収する回収路を備えてものを挙げることができる。
このような装置としては、例えば、国際公開第2009/008377号パンフレットの図1に示される生産装置を挙げることができる。
この生産装置では、イソプロピルアルコール生産細菌と植物由来原料とを含む培地が収容された培養槽に、装置外部から気体を注入するための注入管が連結され、培地に対してエアレーションが可能となっている。
また、培養槽には、連結管を介して、捕捉液としてのトラップ液が収容されたトラップ槽が連結されている。このとき、トラップ槽へ移動した気体又は液体がトラップ液と接触してバブリングが生じる。
これにより、培養槽で通気培養により生成したイソプロピルアルコールは、エアレーションによって蒸散して培地から容易に分離される共に、トラップ槽においてトラップ液に捕捉される。この結果、イソプロピルアルコールを、より精製された形態で連続的に且つ簡便に生産することができる。
また、本発明のイソプロピルアルコール生産大腸菌では、イソプロピルアルコールの前駆体であるアセトンも同時に生産される。得られたアセトンは、公知の方法で精製後に、公知の方法(例えば特許第2786272号公報記載の方法)を用いることによって、イソプロピルアルコールに変換することが好ましい。これにより、糖原料からイソプロピルアルコールへの変換効率を更に高めることができる。
図1には、本発明に適用可能な製造装置の一例を示す。なお、図1において、10は製造装置、12は発酵槽、48は基質液槽、50はポンプ、54はコントローラ、56は抜取り液槽、58はポンプ、62はトラップ槽である。
製造装置10には、菌体及び植物由来原料を収容してイソプロピルアルコールの生産を行うための、通気攪拌槽としての培養槽12が備えられている。製造装置10には、空気入り口から空気を培養槽12の内部に供給するためのマスフローメータ14と、槽内の空気を排気口から排出するためのコンデンサ16が備えられている。コンデンサ16と排気口との間には、槽内圧力計18及び排ガス分析計20が連結され、槽内の圧力及び出口の酸素モル分圧をそれぞれ測定可能になっている。また、排気口は、トラップ槽62の内部に誘導されて、トラップ槽62の内部に収容されたトラップ液中で開口している。培養槽12には、温度センサ22、溶存酸素センサ24及びpHセンサ26がそれぞれ配置されている。また、培養槽12には、攪拌機としてのディスクタービン翼28が配置されており、ディスクタービン翼28はマグネッティックスターラ44で攪拌・制御される。
また、培養槽12の周囲にはバンドヒータ38、内部には冷却棒36が備えられており、冷却棒36には循環冷却装置40、冷却水路制御用電磁弁42が接続されている。培養槽12の外側には、pH調整剤を充填した中和剤槽30が設けられている。中和剤槽30には天秤34が備えられている。中和剤槽30は、ポンプ32を介して培養槽12へpH調整剤を供給可能となっている。
培養槽12には、全体を制御するコントローラ54が備えられている。コンロトーラ54は、温度センサ22、溶存酸素センサ24及びpHセンサ26に連結されて、それぞれのセンサから、培養槽12内の反応液中の温度、DO(溶存酸素)及びpHの各情報が入力可能になっている。また、コントローラ54は、バンドヒータ38と冷却水路制御用電磁弁42に連結されている。コントローラ54は、各種センサからの情報に応じて、バンドヒータ38、冷却水路制御用電磁弁42を作動させて温度を制御すると共に、ポンプ32を作動によりpH制御するようになっている。
また製造装置10には、基質液槽48及び抜取り液槽56が備えられている。基質液槽48及び抜取り液槽56にはそれぞれ天秤52、60が備えられている。基質液槽48には、基質液が収容されており、ポンプ50を介して基質液槽48が培養槽12に連結されている。基質液は基質液槽48からポンプ50を介して培養槽12へフィードされる。フィードの方法はコントローラ54の設定により、chemo stat、pH statなど各種フィード制御が可能であり、コントローラ54からの信号により、ポンプ50が作動する。
抜取り液槽56は、ポンプ58を介して培養槽12に連結されており、ポンプ58の作動によって、培養槽12から培養液が抜き取られ、抜取り液槽56へ誘導されて収容される。抜取り口は培養槽内で定位置に固定されており、培養槽内の液面が一定となるように制御されている。
トラップ槽62には水(トラップ液)が充填されており、気化したイソプロピルアルコールが液化するための所定の温度、例えば5℃に維持されている。通気・攪拌により培養槽12内に揮発するイソプロピルアルコールは、コンデンサ16が作動することにより培養槽12からトラップ槽62に誘導されて、トラップ槽62でトラップされる。
本発明では、イソプロピルアルコール生産期に菌体を安定的に増殖させる条件下で且つ菌体数を維持して連続培養するので、長時間でのイソプロピルアルコールの生産が可能となり、半回分式培養によるイソプロピルアルコールの生産よりも効率よくイソプロピルアルコールを生産することができる。本発明のイソプロピルアルコールの生産性は、例えば、240h以上の連続培養が可能となる。この場合、例えば、0.7g/L/h以上の生産速度が可能であり、好ましくは1.0g/L/h以上の生産速度が可能となる。
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。イソプロピルアルコールを生産する大腸菌についても実施例に使用した菌体に限定されず、イソプロピルアルコールを生産する大腸菌であれば、特に制限はない。
なお、記載中の「%」は特に断らない限り、質量基準である。
[イソプロピルアルコール生産大腸菌の作製]
<B::atoDAB株の作製>
エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number U00096)、エシェリヒア・コリMG1655株のCoAトランスフェラーゼ αサブユニットをコードする遺伝子(以下、atoDと略することがある)の塩基配列も報告されている。すなわちatoDはGenBank accession number U00096に記載のエシェリヒア・コリMG1655株ゲノム配列の2321469〜2322131に記載されている。
上記の遺伝子を発現させるために必要なプロモーターの塩基配列として、GenBank accession number X02662の塩基配列情報において、397−440に記されているエシェリヒア・コリ由来のグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(以下GAPDHと呼ぶことがある)のプロモーター配列を使用することができる。GAPDHプロモーターを取得するためエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用いてcgctcaattgcaatgattgacacgattccg(配列番号1)、及びacagaattcgctatttgttagtgaataaaagg(配列番号2)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素MfeI及びEcoRIで消化することで約100bpのGAPDHプロモーターをコードするDNAフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントとプラスミドpUC19(GenBank accession number X02514)を制限酵素EcoRIで消化し、さらにアルカリフォスファターゼ処理したものとを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。
得られたコロニー10個をそれぞれアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃で一晩培養し、プラスミドを回収し、制限酵素EcoRI及びKpnIで消化した際、GAPDHプロモーターが切り出されないものを選抜し、さらに、DNA配列を確認しGAPDHプロモーターが正しく挿入されたものをpUCgapPとした。得られたpUCgapPを制限酵素EcoRI及びKpnIで消化した。
さらにatoDを取得するために、エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用いてcgaattcgctggtggaacatatgaaaacaaaattgatgacattacaagac(配列番号3)、及びgcggtaccttatttgctctcctgtgaaacg(配列番号4)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素EcoRI及びKpnIで消化することで約690bpのatoDフラグメントを得た。このDNAフラグメントを先に制限酵素EcoRI及びKpnIで消化したpUCgapPと混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られた菌体からプラスミドを回収し、atoDが正しく挿入されていることを確認し、このプラスミドをpGAPatoDと命名した。
なおエシェリヒア・コリMG1655株はアメリカンタイプカルチャーコレクションより入手することができる。
上述した通り、エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAにおけるatoDの塩基配列も報告されている。エシェリヒア・コリMG1655株のatoDの5’近傍領域の遺伝子情報に基づいて作製された、gctctagatgctgaaatccactagtcttgtc(配列番号5)とtactgcagcgttccagcaccttatcaacc(配列番号6)を用いて、エシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAを鋳型としてPCRを行うことにより約1.1kbpのDNA断片を増幅した。
また、エシェリヒア・コリMG1655株のGAPDHプロモーターの配列情報に基づいて作製されたggtctagagcaatgattgacacgattccg(配列番号7)とエシェリヒア・コリMG1655株のatoDの配列情報に基づいて作製された配列番号4のプライマーを用いて、先に作製した発現ベクターpGAPatoDを鋳型としてPCRを行い、GAPDHプロモーターとatoDからなる約790bpのDNAフラグメントを得た。
上記により得られたフラグメントをそれぞれ、制限酵素PstIとXbaI、XbaIとKpnIで消化し、このフラグメントを温度感受性プラスミドpTH18cs1(GenBank accession number AB019610)〔Hashimoto-Gotoh, T., Gene, 241, 185-191 (2000)〕をPstIとKpnIで消化して得られるフラグメントと混合し、リガーゼを用いて結合した後、DH5α株に形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB液体培地で30℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収した。このプラスミドをエシェリヒア・コリB株(ATCC11303)に形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で一晩培養し、形質転換体を得た。得られた形質転換体をクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB液体培地に接種し、30℃で一晩培養した。得られた培養菌体をクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で培養しコロニーを得た。得られたコロニーを抗生物質を含まないLB液体培地で30℃で2時間培養し、抗生物質を含まないLB寒天プレートに塗布して42℃で生育するコロニーを得た。
出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップしてそれぞれを、抗生物質を含まないLB寒天プレートとクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、クロラムフェニコール感受性のクローンを選んだ。さらにはこれらのクローンの染色体DNAからPCRによりGAPDHプロモーターとatoDを含む約790bp断片を増幅させ、atoDプロモーター領域がGAPDHプロモーターに置換されている株を選抜し、以上を満足するクローンをエシェリヒア・コリ、B::atoDABと命名した。
なお、エシェリシア・コリB株(ATCC11303)は細胞・微生物・遺伝子バンクであるアメリカンタイプカルチャーコレクションより入手することができる。
<プラスミドpIzの作製>
クロストリジウム属細菌のアセト酢酸デカルボキシラーゼ遺伝子(adc)はGenBank accession number M55392に、イソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(IPAdh)はGenBank accession number AF157307に記載されている。
上記の遺伝子群を発現させるために必要なプロモーターの塩基配列として、GenBank accession number X02662の塩基配列情報において、397−440に記されているエシェリヒア・コリ由来のグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(以下GAPDHと呼ぶことがある)のプロモーター配列を使用することができる。
GAPDHプロモーターを取得するためエシェリヒア・コリMG1655株のゲノムDNAをテンプレートに用いてcgagctacatatgcaatgattgacacgattccg(配列番号8)、及びcgcgcgcatgctatttgttagtgaataaaagg(配列番号9)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素NdeI、SphIで消化することで約110bpのGAPDHプロモーターにあたるDNAフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントとプラスミドpBR322(GenBank accession number J01749)を制限酵素NdeI及びSphIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpBRgapPを回収した。
コドン改変したイソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(IPAdh)を取得するために、Clostridium beijerinckii NRRL B−593のイソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のアミノ酸配列をもとにコドン改変したイソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子を設計し、DNA合成により以下のDNAフラグメント(配列番号10)を作成した。配列を以下に記す。
ATGAAAGGTTTTGCAATGCTGGGTATTAATAAGCTGGGCTGGATCGAAAAAGAGCGCCCGGTTGCGGGTTCGTATGATGCGATTGTGCGCCCACTGGCCGTATCTCCGTGTACCTCAGATATCCATACCGTTTTTGAGGGAGCTCTTGGCGACCGCAAGAATATGATTTTAGGGCATGAAGCGGTGGGTGAAGTTGTGGAGGTAGGCAGTGAAGTGAAGGATTTCAAACCTGGTGACCGTGTTATCGTCCCTTGCACAACCCCGGATTGGCGGTCTTTGGAAGTTCAGGCTGGTTTTCAACAGCACTCAAACGGTATGCTCGCAGGATGGAAATTTTCCAACTTCAAGGATGGCGTCTTTGGTGAGTATTTTCATGTGAATGATGCGGATATGAATCTTGCGATTCTGCCTAAAGACATGCCCCTGGAAAACGCTGTTATGATCACAGATATGATGACTACGGGCTTCCACGGAGCCGAACTTGCAGATATTCAGATGGGTTCAAGTGTAGTGGTCATTGGCATTGGCGCGGTTGGCCTGATGGGGATAGCCGGTGCTAAATTACGTGGAGCAGGTCGGATCATTGGCGTGGGGAGCCGCCCGATTTGTGTCGAGGCTGCCAAATTTTACGGGGCCACCGACATTTTGAATTATAAAAATGGTCATATCGTTGATCAAGTCATGAAACTGACGAACGGAAAAGGCGTTGACCGCGTGATTATGGCAGGCGGTGGTAGCGAAACACTGTCCCAGGCCGTATCTATGGTCAAACCAGGCGGGATCATTTCGAATATAAATTATCATGGAAGTGGCGATGCGTTATTGATCCCGCGTGTGGAATGGGGGTGCGGAATGGCTCACAAGACTATCAAAGGCGGTCTTTGTCCCGGGGGACGTTTGAGAGCAGAGATGCTGCGAGATATGGTAGTGTACAACCGTGTTGATCTCAGCAAACTGGTCACGCATGTATATCATGGGTTCGATCACATCGAAGAAGCCCTGTTACTGATGAAAGACAAGCCAAAAGACCTGATTAAAGCAGTAGTTATATTATAA
作成したDNAフラグメントをテンプレートに用いて、acatgcatgcatgaaaggttttgcaatgctg(配列番号11)、及びacgcgtcgacttataatataactactgctttaa(配列番号12)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素SphI、SalIで消化することで約1.1kbpのコドン改変イソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントとプラスミドpUC119を制限酵素SphI及びSalIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収して、コドン改変したIPAdhが正しく挿入されていることを確認し、このプラスミドをpUC−Iと命名した。
プラスミドpUC−Iを制限酵素SphI及びEcoRIで消化することで得られるIPAdhを含むフラグメント、とプラスミドpBRgapPを制限酵素SphI及びEcoRIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収しコドン改変したIPAdhが正しく挿入されていることを確認し、このプラスミドをpGAP-Iと命名した。
コドン改変したアセト酢酸デカルボキシラーゼ遺伝子(adc)を取得するために、Clostridium acetobutylicum ATCC824のアセト酢酸デカルボキシラーゼ遺伝子のアミノ酸配列をもとにコドン改変したアセト酢酸デカルボキシラーゼ遺伝子を設計し、DNA合成により以下のDNAフラグメント(配列番号13)を作成した。配列を以下に記す。
ATGCTGAAAGATGAAGTGATTAAACAGATTAGCACGCCATTAACTTCGCCTGCATTTCCGCGCGGTCCGTATAAATTTCATAATCGTGAATATTTTAACATTGTATACCGTACCGATATGGACGCCCTGCGTAAAGTTGTGCCAGAGCCTCTGGAAATTGATGAGCCCTTAGTCCGGTTCGAAATCATGGCAATGCATGATACGAGTGGCCTGGGTTGCTATACAGAATCAGGTCAGGCTATTCCCGTGAGCTTTAATGGTGTTAAGGGCGACTACCTTCACATGATGTATCTGGATAACGAGCCGGCAATTGCCGTAGGTCGGGAATTAAGTGCATACCCTAAAAAGCTCGGGTATCCAAAGCTGTTTGTGGATTCAGACACTCTGGTGGGCACGTTAGACTATGGAAAACTGCGTGTTGCGACCGCGACAATGGGGTACAAACATAAAGCCCTGGATGCTAATGAAGCAAAGGATCAAATTTGTCGCCCGAACTATATGTTGAAAATCATCCCCAATTATGACGGCTCCCCTCGCATATGCGAGCTTATCAACGCGAAAATCACCGATGTTACCGTACATGAAGCTTGGACAGGACCGACTCGACTGCAGTTATTCGATCACGCTATGGCGCCACTGAATGACTTGCCGGTCAAAGAGATTGTTTCTAGCTCTCACATTCTTGCCGATATAATCTTGCCGCGCGCGGAAGTCATATACGATTATCTCAAGTAA
作成したDNAフラグメントをテンプレートに用いて、acgcgtcgacgctggttggtggaacatatgctgaaagatgaagtgatta(配列番号14)、及びgctctagattacttgagataatcgtatatga(配列番号15)によりPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素SalI、XbaIで消化することで約700bpのコドン改変したアセト酢酸デカルボキシラーゼフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントと先に作成したプラスミドpGAP-Iを制限酵素SalI及びXbaIで消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地で37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドを回収し、adcが正しく挿入されていることを確認し、このプラスミドをpIと命名した。
グルコース6リン酸−1−デヒドロゲナーゼ遺伝子(zwf)を取得するためにエシェリヒア・コリB株のゲノムDNA(GenBank accession No.CP000819)をテンプレートに用いてgctctagacggagaaagtcttatggcggtaacgcaaacagcccagg(配列番号16)、及びcgggatccttactcaaactcattccaggaacgac(配列番号17)を用いてPCR法で増幅し、得られたDNAフラグメントを制限酵素BamHI、XbaIで消化することで約1500bpのグルコース6リン酸1−デヒドロゲナーゼフラグメントを得た。得られたDNAフラグメントと先に作成したプラスミドpIを制限酵素XbaI及びBamHI消化することで得られるフラグメントを混合し、リガーゼを用いて結合した後、エシェリヒア・コリDH5α株コンピテントセル(東洋紡績株式会社 DNA−903)に形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天プレートに生育する形質転換体を得た。得られたコロニーをアンピシリン50μg/mLを含むLB液体培地にて37℃で一晩培養し、得られた菌体からプラスミドpIzを回収した。
<プラスミドpTH18cs1−pgiの作製>
エシェリヒア・コリMG1655のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession number U00096)、エシェリヒア・コリのホスホグルコースイソメラーゼ(以下pgiと呼ぶことがある)をコードする遺伝子の塩基配列も報告されている(GenBank accession number X15196)。pgiをコードする遺伝子(1,650bp)の塩基配列近傍領域をクローニングするため、caggaattcgctatatctggctctgcacg(配列番号18)、cagtctagagcaatactcttctgattttgag(配列番号19)、cagtctagatcatcgtcgatatgtaggcc(配列番号20)及びgacctgcagatcatccgtcagctgtacgc(配列番号21)に示すオリゴヌクレオチドプライマーを4種合成した。配列番号18のプライマーは5’末端側にEcoRI認識部位を、配列番号19および20のプライマーは5’末端側にXbaI認識部位を、配列番号21のプライマーは5’末端側にPstI認識部位をそれぞれ有している。
エシェリヒア・コリMG1655株(ATCC700926)のゲノムDNAを調製し、得られたゲノムDNAを鋳型とし、配列番号18と配列番号19のプライマーペアで、PCRを行うことにより約1.0kbのDNA断片を増幅した(以下pgi−L断片と呼ぶことがある)。また、配列番号20と配列番号21のプライマーペアで、PCRを行うことにより約1.0kbのDNA断片を増幅した(以下pgi−R断片と呼ぶことがある)。これらのDNA断片をアガロース電気泳動にて分離、回収し、pgi−L断片をEcoRI及びXbaIで、pgi−R断片をXbaI及びPstIでそれぞれ消化した。この消化断片2種と、温度感受性プラスミドpTH18cs1(GenBank accession number AB019610)のEcoRI及びPstI消化物とを混合し、T4DNAリガーゼで反応した後、エシェリヒア・コリDH5αコンピテントセル(東洋紡績社製)に形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で生育する形質転換体を得た。得られた形質転換体からプラスミドを回収し、pgiをコードする遺伝子の5’上流近傍断片と3’下流近傍断片の2つの断片がpTH18cs1に正しく挿入されていることを確認した。得られたプラスミドをXbaIで消化した後、T4DNAポリメラーゼにより平滑末端化処理を行った。本DNA断片と、pUC4Kプラスミド(GenBank accession number X06404)(Pharmacia)をEcoRIで消化することで得られるカナマイシン耐性遺伝子をさらにT4DNAポリメラーゼにより平滑末端化処理を行ったDNA断片とをT4DNAリガーゼを用いて連結した。その後、エシェリヒア・コリDH5αコンピテントセルに形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlとカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で生育する形質転換体を得た。得られた形質転換体からプラスミドを回収し、pgiをコードする遺伝子の5’上流近傍断片と3’下流近傍断片の間にカナマイシン耐性遺伝子が正しく挿入されていることを確認し、pTH18cs1−pgiとした。
<B::atoDABΔpgi株の作製>
作製したエシェリヒア・コリB株、B::atoDABにプラスミドpTH18cs1−pgiを形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlとカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で一晩培養し、形質転換体を得た。得られた形質転換体をカナマイシン50μg/mlを含むLB液体培地に接種し、30℃で一晩培養した。次にこの培養液の一部をカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。得られたコロニーをカナマイシン50μg/mlを含むLB液体培地で、30℃で24時間培養し、更にカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布して42℃で生育するコロニーを得た。
出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップして、それぞれをカナマイシン50μg/mlを含むLB寒天プレートと、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、カナマイシンを含むLB寒天プレートにのみ生育するクロラムフェニコール感受性のクローンを選んだ。更にこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRにより、pgi遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子に置換されていることで約3.3kbp断片の増幅が得られる株を選抜し、得られた株をB株atoDゲノム強化、pgi遺伝子欠失株(以下B::atoDAB△pgi株と略することがある)と命名した。
なおエシェリヒア・コリMG1655株およびエシェリヒア・コリB株はアメリカンタイプカルチャーコレクションより入手することができる。
<プラスミドpTH18cs1−gntRの作製>
エシェリヒア・コリB株のゲノムDNAの全塩基配列は公知であり(GenBank accession No.CP000819)、GntRをコードする塩基配列はGenBank accession No.CP000819に記載のエシェリヒア・コリB株ゲノム配列の3509184〜3510179に記載されている。GntRをコードする塩基配列(gntR)の近傍領域をクローニングするため、ggaattcgggtcaattttcaccctctatc(配列番号22)、gtgggccgtcctgaaggtacaaaagagatagattctc(配列番号23)、ctcttttgtaccttcaggacggcccacaaatttgaag(配列番号24)、ggaattcccagccccgcaaggccgatggc(配列番号25)に示すオリゴヌクレオチドプライマーを4種合成した。配列番号22および25のプライマーは5’末端側にEcoRI認識部位をそれぞれ有している。
エシェリヒア・コリB株のゲノムDNA(GenBank accession No.CP000819)を調製し、得られたゲノムDNAを鋳型とし、配列番号22と配列番号23のプライマーペアで、PCRを行うことにより約1.0kbのDNA断片を増幅した(以下gntR−L断片と呼ぶことがある)。また、配列番号24と配列番号25のプライマーペアで、PCRを行うことにより約1.0kbのDNA断片を増幅した(以下gntR−R断片と呼ぶことがある)。これらのDNA断片をアガロース電気泳動にて分離、回収し、gntR−LとgntR−R断片を鋳型に配列番号22と配列番号25のプライマーペアで、PCRを行うことにより約2.0kbのDNA断片を増幅した(以下gntR−LR断片と呼ぶことがある)。このgntR−LR断片をアガロース電気泳動にて分離、回収し、EcoRIで消化し、温度感受性プラスミドpTH18cs1(GenBank accession number AB019610)のEcoRI消化物とを混合し、T4DNAリガーゼで反応した後、エシェリヒア・コリDH5αコンピテントセル(東洋紡績社製)に形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で生育する形質転換体を得た。得られた形質転換体からプラスミドを回収し、gntLR断片がpTH18cs1に正しく挿入されていることを確認し、このプラスミドをpTH18cs1−gntRとした。
<プラスミドpTH18cs1−gndの作製>
ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(gnd)の塩基配列近傍領域をクローニングするため、cgccatatgaatggcgcggcggggccggtgg(配列番号26)、tggagctctgtttactcctgtcaggggg(配列番号27)、tggagctctctgatttaatcaacaataaaattg(配列番号28)、cgggatccaccaccataaccaaacgacgg(配列番号29)に示すオリゴヌクレオチドプライマーを4種合成した。配列番号26のプライマーは5’末端側にNdeI認識部位を有し、配列番号27および配列番号28のプライマーは5’末端側にSacI認識部位を有している。また、配列番号29のプライマーは5’末端側にBamHI認識部位を有している。
エシェリヒア・コリB株のゲノムDNA(GenBank accession No.CP000819)を調製し、配列番号26と配列番号27のプライマーペアで、PCRを行うことにより約1.0kbのDNA断片を増幅した(以下gnd−L断片と呼ぶことがある)。また、配列番号28と配列番号29のプライマーペアで、PCRを行うことにより約1.0kbのDNA断片を増幅した(以下gnd−R断片と呼ぶことがある)。これらのDNA断片をアガロース電気泳動にて分離、回収し、gnd−L断片をNdeI及びSacIで、gnd−R断片をSacI及びBamHIでそれぞれ消化した。この消化断片2種と、温度感受性プラスミドpTH18cs1(GenBank accession number AB019610)のNdeI及びBamHI消化物とを混合し、T4DNAリガーゼで反応した後、エシェリヒア・コリDH5αコンピテントセル(東洋紡績社製)に形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で生育する形質転換体を得た。得られた形質転換体からプラスミドを回収し、gndをコードする遺伝子の5’上流近傍断片と3’下流近傍断片の2つの断片がpTH18cs1に正しく挿入されていることを確認し、pTH18cs1−gndとした。
<B::atoDAB△pgi△gnd株の作製>
作製したエシェリヒア・コリB株、B::atoDAB△pgi株にプラスミドpTH18cs1−gndを形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で一晩培養し、形質転換体を得た。得られた形質転換体をクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB液体培地に接種し、30℃で一晩培養した。次にこの培養液の一部をカナマイシンクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。得られたコロニーをLB液体培地で、30℃で24時間培養し、更にLB寒天プレートに塗布して42℃で生育するコロニーを得た。
出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップして、それぞれをLB寒天プレートと、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、クロラムフェニコール感受性のクローンを選んだ。更にこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRにより、gnd遺伝子が欠失していることで約2.0kbp断片の増幅がえられる株を選抜し、得られた株をB::atoDAB△pgi△gnd株と命名した。
<B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株の作製>
作製したB::atoDAB△pgi△gnd株コンピテントセルにプラスミドpTH18cs1−gntRを形質転換し、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに30℃で一晩培養し、形質転換体を得た。得られた形質転換体をクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB液体培地に接種し、30℃で一晩培養した。次にこの培養液の一部をカナマイシンクロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに塗布し、42℃で生育するコロニーを得た。得られたコロニーをLB液体培地で、30℃で24時間培養し、更にLB寒天プレートに塗布して42℃で生育するコロニーを得た。
出現したコロニーの中から無作為に100コロニーをピックアップして、それぞれをLB寒天プレートと、クロラムフェニコール10μg/mlを含むLB寒天プレートに生育させ、クロラムフェニコール感受性のクローンを選んだ。更にこれらの目的クローンの染色体DNAからPCRにより、gntR遺伝子が欠失していることで約2.0kbp断片の増幅が得られる株を選抜し、得られた株をB::atoDAB△pgi△gnd△gntR株と命名した。
<pIz/B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株の作製>
作製したエシェリヒア・コリB株、B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株コンピテントセルにプラスミドpIzを形質転換し、アンピシリン50μg/mLを含むLB Broth,Miller寒天プレートで37℃で一晩培養することにより、エシェリヒア・コリB株 pIz/B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株を得た。
[実施例1]イソプロピルアルコールの連続培養
<前培養>
LB培地(DifcoTM LB Broth Miller)を、三角フラスコにフラスコ容量の1/5量入れ、121℃、15分間オートクレーブ殺菌を行った。オートクレーブ殺菌後の培地に、WO2009/008377に記載のエシェリヒア・コリ pGAPIaaa/B株を0.1vol%接種した。35℃の恒温室にて16hr振盪培養を行い、種菌体を増殖させた。
<培養>
次いで、図1に示される製造装置10を用いてイソプロピルアルコールの生産を行った。培養槽12は5L容のものを、基質液槽48、抜取り液槽56は20L容のものを使用した。トラップ槽62には、20Lの水を充填し、5℃に保温した。
表1に示す組成でオートクレーブ殺菌済みの培地750mLが入った培養槽に、上記の前培養液38mLを接種した。培養は常圧、攪拌回転速度700rpm、空気通気量1.0vvm、培養温度30℃、pH=7.0(アンモニア水で調整)に制御した。
表2に示す組成の基質液を培養開始後8時間目までは11g/hでフィードし、それ以降はフィード速度22.5g/hでフィードした。培養槽12内の培養液の抜き取り速度はフィード速度と同一とし、培養槽12内の培養液量は750mLに制御した。基質液の比重は1g/cmであり、定常状態の比増殖速度は0.03/hである。
なお、培養開始後48時間目は、菌数をOD660による濁度に基づいて測定した場合に菌数が一定状態となったことから、イソプロピルアルコール生産期であると判断された時間である。


得られた培養液中のイソプロピルアルコール濃度をガスクロマトグラフィーで定法に従って測定した。菌体濃度は分光光度計で660nmの波長で測定し、1 OD660=0.3g−dry cell/Lとして菌体濃度を算出し、これに培養槽内の液量[L]を積した値を菌体質量[g−dry cell]として算出した。結果を図2、図3、表3に示す。
<ガスクロマトグラフィー分析条件>
カラム温度:35℃7分、12℃/minで昇温、240℃5分、インジェクション温度:220℃、検出器温度:240℃、検出器:FID、キャリアーガス:窒素、流速:6mL/min、スプリットレス
[比較例1] イソプロピルアルコールの半回分培養
図1のポンプ58を停止して抜取らないようにし、それ以外は実施例1と同様に培養を行った。144時間目の培養液量は3.8Lであった。実施例1と同様にして、培養液中のイソプロピルアルコール濃度と菌体質量を得た。結果を図2、図3、表3に示す。

図2及び図3において、黒丸は実施例1、白丸は比較例1を示す。図2より、半回分培養(比較例1)では48時間目以降、培養槽内の菌体質量は一定であり菌体は増殖していないことがわかる。一方、連続培養(実施例1)では連続的に培養液を抜き取っているにも関わらず48時間目以降槽内の培養槽内の菌体質量は一定であり、菌体増殖が定常状態に達していることが明らかである。その結果、図3より、半回分培養(比較例1)ではイソプロピルアルコールの生産が96時間でほぼ止まり、イソプロピルアルコール生産量は55g/96hであるのに対し、連続培養(実施例1)では、イソプロピルアルコール生産量は76.6g/96hと半回分培養より生産量が高く、174時間でもイソプロピルアルコールを生産し続け、イソプロピルアルコール生産量は125g/174hであった。以上より、半回分培養と比較して連続培養の方が長時間安定的にイソプロピルアルコールを生産できることが明らかである。
[実施例2]
上記[イソプロピルアルコール生産大腸菌の作製]pIz/B::atoDAB△pgi△gnd△gntR株を用いて、実施例1と同様に前培養を行った。次いで、図1に示される製造装置10を用いてイソプロピルアルコールの生産を行った。培養槽12は1L容のものを、基質液槽48、抜取り液槽56は4L容のものを使用した。トラップ槽62には、4Lの水を充填し、5℃に維持した。
表1に示す組成でオートクレーブ殺菌済みの培地500mLが入った培養槽に、上記の前培養液25mLを接種した。培養は常圧、攪拌回転速度900rpm、空気通気量2.0vvm、培養温度30℃、pH=7.0(アンモニア水で調整)に制御した。ここでは、培養液量が500mLとなるよう制御した。
表4に示す組成の基質液を培養開始後8時間目までは5g/hでフィードし、それ以降はフィード速度60.6g/hでフィードした。基質液の比重は1g/cmであり、定常状態の比増殖速度は0.1212/hであった。実施例1と同様にして、培養液中のイソプロピルアルコール濃度と菌体質量を得た。結果を図4、図5、及び表5、表6に示す。
また、プラスミドの脱落率を調べるため、LB Broth寒天培地1と、100μL/mL アンピシリンを含むLB Broth寒天培地2を作製し、希釈した培養槽内培養液を塗布し、30℃にて保温した。24時間後のコロニー数をカウントした。アンピシリン耐性を持つプラスミドを保持した大腸菌はアンピシリン含有寒天培地でも生育できるが、プラスミドが脱落した大腸菌はアンピシリン含有寒天培地では生育できないことが知られている。これより、各寒天培地におけるコロニー数から、プラスミド脱落率を下記の式3に従って算出した。結果を図6に示す。
(式3)
プラスミド脱落率=[(寒天培地1でのコロニー数)−(寒天培地2でのコロニー数)]/(寒天培地1でのコロニー数)

[実施例3]
8時間目以降のフィード速度を23.5g/hに変更する以外は実施例2と同様に連続培養を行った。このとき定常状態の比増殖速度は0.0470/hであった。実施例1と同様にして、培養液中のイソプロピルアルコール濃度と菌体質量を得て、また実施例2と同様にしてプラスミド脱落率を得た。結果を図4、図5、図6、表5及び表6に示す。
[実施例4]
8時間目以降のフィード速度を12.4g/hに変更する以外は実施例2と同様に連続培養を行った。このとき定常状態の比増殖速度は0.0247/hであった。実施例1と同様にして、培養液中のイソプロピルアルコール濃度と菌体質量を得て、また実施例2と同様にしてプラスミド脱落率を得た。結果を図4、図5、図6、表5及び表6に示す。
[比較例2]
8時間目以降のフィード速度を7.4g/hに変更する以外は実施例2と同様に連続培養を行った。このとき式1から算出される比増殖速度は0.0147/hであった。実施例1と同様にして、培養液中のイソプロピルアルコール濃度と菌体質量を得て、また実施例2と同様にしてプラスミド脱落率を得た。結果を図4、図5、図6、表5及び表6に示す。
なお表6中、イソプロピルアルコール積算質量とは、記載の運転時間までの単位液量あたりのイソプロピルアルコールの生産量の総和、つまり培養槽内の培養液、抜取られた培養液、トラップ槽に含まれる全イソプロピルアルコール質量の総和を該運転時間における培養槽内の培養液量(ここでは0.5L)で除した値である。生産速度は、イソプロピルアルコール積算質量から算出した平均イソプロピルアルコール生産速度であり、以下、同様である。

図4、及び図5及び図6において、黒丸は実施例2、白丸は実施例3、黒三角は実施例4、及び白三角は比較例2を示す。
比較例2(比増殖速度0.0147[h−1])では48時間目以降、培養槽内の菌体数は維持又は増殖されておらず(図4)、定常状態には至らなかった。また、イソプロピルアルコールの生産は96時間で停止することが判明した(図5)。このときのプラスミドの脱落率が80%以上であることが、図6より明らかである(図6参照)。
一方、比増殖速度が0.0147[h−1]より高い条件で培養を行った実施例2〜実施例4では、菌体増殖は定常状態に至り、長時間の連続運転が可能であり、イソプロピルアルコールは安定的に生産できた。
[実施例5]
表7に示す基質液組成に変更、攪拌回転速度を500rpmに変更し、それ以外は実施例2と同様に連続培養を行った。
OURの算出には、空気入り口の空気流量はマスフローメータ14の値を、また出口の空気流量も、酸素消費による減少分は無視できる範囲としてマスフローメータ14の値を採用した。同様に空気入り口及び出口の空気圧は共に槽内圧力計18の値を採用した。また空気入り口及び出口における絶対温度は共に槽内の温度センサ22の値を採用した。空気入り口の酸素モル分率は0.209とし、出口の酸素モル分率は排ガス分析計20の値を採用した。溶存酸素濃度は、槽内の溶存酸素センサ24の値を採用した。
本実施例では、空気入り口及び出口の空気流量は1.0L/min、空気入り口及び出口の空気圧は常圧、空気入り口及び出口の温度は30℃とした。ここでは1分ごとに記録した各値を用いて、上述した式2に従って算出した値の24時間目以降の定常状態の平均値をOURとした。本実施例の算出OURは50mmol/L/hであった。また実施例1と同様にして、培養液中のイソプロピルアルコール濃度を得て、算出OURに対するイソプロピルアルコール収率、イソプロピルアルコール生産速度を求めた。結果を図7、図8、図9、図10、表8及び表9に示す。比増殖速度は0.1200/hであった。

[実施例6]
攪拌回転速度を600rpmに変更し、それ以外は実施例5と同様に連続培養を行った。
このとき算出OURは107mmol/L/hであった。また実施例5と同様にして、培養液中のイソプロピルアルコール濃度を得て、算出OURに対するイソプロピルアルコール収率、イソプロピルアルコール生産速度を求めた。結果を図7、図8及び表8に示す。定常状態の比増殖速度は0.1203/hであった。
[実施例7]
攪拌回転速度700rpmで、それ以外は実施例5と同様に連続培養を行った。このとき算出OURは153mmol/L/hであった。また実施例5と同様にして、培養液中のイソプロピルアルコール濃度を得て、算出OURに対するイソプロピルアルコール収率、イソプロピルアルコール生産速度を求め、また溶存酸素濃度を得た。結果を図7、図8、図9、図11、表8及び表9に示す。定常状態の比増殖速度は0.1200/hであった。
[実施例8]
攪拌回転速度800rpmで、それ以外は実施例5と同様に連続培養を行った。このとき算出OURは187mmol/L/hであった。また実施例5と同様にして、培養液中のイソプロピルアルコール濃度を得て、算出OURに対するイソプロピルアルコール収率、イソプロピルアルコール生産速度を求めた。結果を図7、図8、表8に示す。定常状態の比増殖速度は0.1210/hであった。
[実施例9]
攪拌回転速度900rpmで、それ以外は実施例5と同様に連続培養を行った。このとき算出OURは196mmol/L/hであった。また実施例5と同様にして、培養液中のイソプロピルアルコール濃度を得て、算出OURに対するイソプロピルアルコール収率、イソプロピルアルコール生産速度を求め、また溶存酸素濃度を得た。結果を図7、図8、図9、図12及び表8及び表9に示す。定常状態の比増殖速度は0.1210/hであった。
[実施例10]
攪拌回転速度400rpmで、それ以外は実施例5と同様に連続培養を行った。このとき算出OURは20mmol/L/hであった。また実施例5と同様にして、培養液中のイソプロピルアルコール濃度を得て、算出OURに対するイソプロピルアルコール収率、イソプロピルアルコール生産速度を求めた。結果を図7、図8、及び表8に示す。定常状態の比増殖速度は0.1200/hであった。

低いOURでは副生物である乳酸が生成する傾向にあるため、イソプロピルアルコール生産速度が低下する傾向にある。また高いOURでは、グルコースは完全酸化に利用される割合が高くなる傾向にあるため、イソプロピルアルコール収率は低下する傾向にある。
図7及び表8より、OURを20mmol/L/h〜200mmol/L/hの範囲に制御することにより、イソプロピルアルコール収率がより一層高くなることがわかる。また、図8及び表8よりOURを20mmol/L/h〜200mmol/L/hの範囲に制御することにより、イソプロピルアルコール生産速度もより一層高くなることが判明した。
また、図には示さないものの、実施例5〜10のいずれにおいても酢酸生産速度は0.6g/L/h以下、エタノール生産速度は0.1g/L/h以下であった。
また、イソプロピルアルコールの積算質量の経時変化を図9に示す。図9において黒丸は実施例5、黒菱形は実施例7、黒三角は実施例9を示す。
いずれの実施例の結果から明らかなように、11日間の連続運転でも、生産速度は低下することなく連続的にイソプロピルアルコールを生産できることがわかる。
培養槽内の溶存酸素濃度の経時変化を実施例5は図10に、実施例7は図11に、実施例9は図12に各々示す。これにより、培養槽内の溶存酸素濃度が0ppmであっても、また、溶存酸素濃度が0〜1ppm付近で変動していても、酢酸生産速度は低く、かつ、イソプロピルアルコールの生産速度は高く維持されており、特に溶存酸素濃度を制御するDO−Stat法やBalanced DO−stat法などの複雑な制御方法を採らなくても副生物の生成を抑制できることが分かった。
また、図には示さないものの、実施例5〜実施例10において、培養槽内の菌体質量は24時間目以降一定であり、定常状態に達していた。
[実施例11]
基質液の組成を表10に変更し、基質液を培養開始後8時間目までは5g/hでフィードし、それ以降は平均フィード速度42g/hでフィードした。ここでは基質が抜取り液へ流出するのを最小限にするため、pHstat法を採用した。それ以外は実施例2と同様に連続培養を実施した。このときOURは200mmol/L/hであった。また実施例1と同様にして、培養液中のイソプロピルアルコール濃度及び菌体質量を得て、また、実施例2と同様にプラスミド脱落率を得た。結果を図13、図14、表11及び表12に示す。比増殖速度は0.083/hであった。


図13より、培養槽内の菌体質量は24時間以降一定であり、24時間目〜840時間目までの平均菌体濃度は12g−dry cell/Lであった。図14より、発酵条件を最適化することにより35日間の連続運転が可能となることがわかる。このとき、表11より、イソプロピルアルコール積算質量は1315g/L/840h、生産速度は1.57g/L/hであった。更に6日目までにおいては2.40g/L/h、10日目までにおいては、2.15g/L/hという高い生産速度であった。また、図15より組換え大腸菌のプラスミド脱落率は27日目までは20%以下という低い値で、29日目で47%、35日目で77%であり、長時間プラスミドが保持されていることが判明した。
このように本発明によれば、イソプロピルアルコール生産大腸菌を用いて連続培養により、簡便に且つ長時間安定的に高い生産効率でイソプロピルアルコールを製造することができる。
2011年8月11日に出願された日本国特許出願第2011−176402号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。

Claims (4)

  1. 植物由来原料を含有する基質液を培養槽に連続的に供給し且つ生産物を含む培養液を該培養槽から連続的に抜き取りながら、遺伝子組換えにより導入又は改変したイソプロピルアルコール生産能力を保有するイソプロピルアルコール生産大腸菌を、イソプロピルアルコール生産期に該大腸菌が安定的に増殖する菌体増殖条件で、且つ前記培養槽内の菌体数を維持して、培養することと、
    前記培養槽内で前記イソプロピルアルコール生産大腸菌と植物由来原料とを接触させて、イソプロピルアルコールを生産することと、
    前記培養槽から抜き取られた前記生産物を含む培養液から、イソプロピルアルコール生産大腸菌により生産されたイソプロピルアルコールを回収することと、
    を含むイソプロピルアルコール製造方法。
  2. 前記菌体増殖条件が、比増殖速度0.015/h以上となる条件である請求項1記載のイソプロピルアルコール製造方法。
  3. 前記培養を、10mmol/L/h〜250mmol/L/hの酸素摂取速度で行う請求項1又は請求項2記載のイソプロピルアルコール製造方法。
  4. 前記菌体増殖条件が、比増殖速度0.02/h以上となる条件である請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のイソプロピルアルコール製造方法。
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