JPWO2013002277A1 - 酵素機能改変方法及びその変異体 - Google Patents
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Abstract
本発明は、中鎖脱水素酵素/還元酵素(MDR)ファミリー酵素の補酵素依存性を変換する酵素改変方法の提供を課題とする。また本発明は、該改変方法により補酵素依存性が転換されたMDRファミリー酵素変異体の提供、および、該酵素を応用して酵素的に光学活性アルコールの製造方法を提供することを課題とする。MDRファミリー酵素の補酵素依存性を変換する酵素改変方法を新たに開発し、該酵素改変方法により、NADHを補酵素として利用する有用なMDRファミリー酵素から、NADPHを補酵素として利用する酵素変異体を論理的に設計し、実際にそのような機能を有する変異体を提供する。
Description
本発明は、アルコール脱水素酵素の補酵素依存性の改変法、特に中鎖脱水素酵素/還元酵素(MDR:Medium−chain Dehyrdrogenase/Reductase)の補酵素依存性の改変法に関する。
一般的に、酸化還元酵素を用いた光学活性アルコール類の製造においては補酵素を必要とするので、反応の進行による補酵素の枯渇を回避するために、酸化還元と並行して補酵素の効率的な再生を行うことが重要な課題である。光学活性アルコール類の製造において必要となる補酵素としては、還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH、なお、酸化型をNADP+と記す)、または、還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH、なお、酸化型をNAD+と記す)などの、ピリジンヌクレオチド補酵素が挙げられる。これらの補酵素を再生する方法として、例えば、グルコース脱水素酵素(GDH)、ギ酸脱水素酵素(FDH)などを用いる方法が知られている。
従来、優れた物性(安定性、溶剤耐性、酸化耐性)や比活性を有するアルコール脱水素酵素は存在したが、補酵素依存性が最適化されておらず、NADPH或いはNADHのいずれを再生しても、光学活性アルコール類の生産性が制限されていた。アルコール脱水素酵素の補酵素依存性を、補酵素再生酵素の補酵素依存性、すなわちNADPH型かNADH型のいずれか、に最適化することが可能となれば、光学活性アルコール等の製造におけるプロセスの最適化が容易となり、より効率的な製造方法を提供し得ると考えられる。
補酵素依存性が転換された酵素を変異スクリーニングで取得することは、膨大な労力を要するため、補酵素依存性が転換された酵素変異体を、酵素の立体構造情報を考慮して、論理的に設計する試みがなされてきた(特許文献1、非特許文献1)。
アルコール脱水素酵素(ADH)も、この論理的設計によって、補酵素依存性が転換された変異体が取得されている代表的な酵素ファミリーと言える。このうち、アミノ酸残基数が250程度の短鎖脱水素酵素/還元酵素(SDR:Short−chain Dehydrogenase/Reductase)ファミリーの酵素については、補酵素依存性の転換に成功した例が近年報告されている(非特許文献2、非特許文献3)。しかしながら、アミノ酸残基数350程度の中鎖脱水素酵素/還元酵素(MDR)ファミリーについては、同様の報告例はない。
Penning T.M.他 著、「Chem.Rev.」、2001年、101巻、3027−3046頁
Machielsen R.他 著、「Eng.Life Sci.」、2008年、9巻、38−44頁
Zhang R.他 著、「Appl.Environ.Microbiol.」、2009年、2176−2183頁
アルコール脱水素酵素の、NADPH又はNADHのいずれかに対する依存性を最適化し、補酵素再生系を共役させた場合の光学活性アルコール類の生産性を向上させることを課題とする。
しかし、種類や相同性が異なる酵素の論理的設計を、MDRにそのまま適応することは不可能であった。さらに、アルコール脱水素酵素として、約350アミノ酸残基からなるMDR(中鎖脱水素酵素/還元酵素)ファミリー酵素を使用する場合、変異を導入する位置の候補は、1個の変異を導入する場合でも350箇所存在し、変異を複数個導入する場合には膨大な数の候補が存在することになる。さらに、それぞれの位置において、少なくとも19種類のアミノ酸への置換が可能となり、これらの無数の候補から補酵素への依存性を転換させた変異体を同定することは極めて困難であった。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、MDR(中鎖脱水素酵素/還元酵素)ファミリーに属する酵素の補酵素依存性を変換する酵素改変方法を新たに開発し、350箇所もの候補から変異を導入する位置を4箇所に絞込み、かつ、変異後のアミノ酸として、19種類存在する天然アミノ酸の中から、最適なアミノ酸を決定することに成功した。これにより、NADH/NAD+依存性MDR(中鎖脱水素酵素/還元酵素)ファミリー酵素からNADPH/NADP+依存性酵素変異体を取得し、NADPH/NADP+依存性MDR(中鎖脱水素酵素/還元酵素)ファミリー酵素からNADH/NAD+依存性酵素変異体を取得することに成功した。
すなわち、本発明は、
[1]中鎖酸化還元酵素ファミリーに属し、下記の(a)〜(d):
(a)配列番号1のAsp−201と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Ala、又はSerである、
(b)配列番号1のLys−202と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Argである、
(c)配列番号1のLys−203と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Serである、及び、
(d)配列番号1のAla−206と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Lysである、
から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を有するタンパク質、
[2]配列番号1に示されるアミノ酸配列と85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、[1]に記載のタンパク質、
[3]配列番号1に示すアミノ酸配列において、下記の(e)〜(h):
(e)Asp−201を、Ala、又はSerに置換、
(f)Lys−202を、Argに置換、
(g)Lys−203を、Serに置換、及び、
(h)Ala−206を、Lysに置換、
から選択される少なくとも1つの変異が導入されたアミノ酸配列からなる、[1]又は[2]に記載のタンパク質、
[4]配列番号2〜8のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる、[1]〜[3]のいずれかに記載のタンパク質、
[5][1]〜[4]のいずれかに記載のタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA、
[6]以下の(A)、(B)及び(C):
(A)配列番号25〜31のいずれかに記載の塩基配列からなるDNA:
(B)配列番号25〜31のいずれかに記載の塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、酸化還元酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA:
(C)配列番号25〜31のいずれかに記載の塩基配列と85%以上の配列同一性を有し、かつ、酸化還元酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA、
からなる群から選択されるDNA、
[7][6]に記載のDNAを含むベクター、
[8][7]に記載のベクターを用いて宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体、
[9][8]に記載の形質転換体の培養物、
[10][1]〜[5]のいずれかに記載のタンパク質を用いて、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を変換させて、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を得る工程を含む、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の製造方法、
[11][1]又は[2]に記載のタンパク質を用いて、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を変換させて、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を得る工程を含む、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の製造方法、
[12][10]に記載の方法で得られる酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸に、還元酵素を作用させることによる、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の製造方法、
[13][11]に記載の方法で得られる還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸に、酸化酵素を作用させることによる、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の製造方法、
[14][8]に記載の形質転換体、または、[9]に記載の培養物を利用することを特徴とする、[10]〜[13]のいずれかに記載の製造方法、
[15][10]〜[14]のいずれかに記載の製造方法によって製造された化合物、
に関する。
[1]中鎖酸化還元酵素ファミリーに属し、下記の(a)〜(d):
(a)配列番号1のAsp−201と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Ala、又はSerである、
(b)配列番号1のLys−202と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Argである、
(c)配列番号1のLys−203と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Serである、及び、
(d)配列番号1のAla−206と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Lysである、
から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を有するタンパク質、
[2]配列番号1に示されるアミノ酸配列と85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、[1]に記載のタンパク質、
[3]配列番号1に示すアミノ酸配列において、下記の(e)〜(h):
(e)Asp−201を、Ala、又はSerに置換、
(f)Lys−202を、Argに置換、
(g)Lys−203を、Serに置換、及び、
(h)Ala−206を、Lysに置換、
から選択される少なくとも1つの変異が導入されたアミノ酸配列からなる、[1]又は[2]に記載のタンパク質、
[4]配列番号2〜8のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる、[1]〜[3]のいずれかに記載のタンパク質、
[5][1]〜[4]のいずれかに記載のタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA、
[6]以下の(A)、(B)及び(C):
(A)配列番号25〜31のいずれかに記載の塩基配列からなるDNA:
(B)配列番号25〜31のいずれかに記載の塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、酸化還元酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA:
(C)配列番号25〜31のいずれかに記載の塩基配列と85%以上の配列同一性を有し、かつ、酸化還元酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA、
からなる群から選択されるDNA、
[7][6]に記載のDNAを含むベクター、
[8][7]に記載のベクターを用いて宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体、
[9][8]に記載の形質転換体の培養物、
[10][1]〜[5]のいずれかに記載のタンパク質を用いて、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を変換させて、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を得る工程を含む、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の製造方法、
[11][1]又は[2]に記載のタンパク質を用いて、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を変換させて、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を得る工程を含む、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の製造方法、
[12][10]に記載の方法で得られる酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸に、還元酵素を作用させることによる、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の製造方法、
[13][11]に記載の方法で得られる還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸に、酸化酵素を作用させることによる、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の製造方法、
[14][8]に記載の形質転換体、または、[9]に記載の培養物を利用することを特徴とする、[10]〜[13]のいずれかに記載の製造方法、
[15][10]〜[14]のいずれかに記載の製造方法によって製造された化合物、
に関する。
アルコール脱水素酵素(ADH)、特に中鎖脱水素酵素/還元酵素(MDR)ファミリーの補酵素依存性が最適化されるので、補酵素再生系を共役させた場合の、光学活性アルコール類の生産性を向上させることができる。
NADP+還元酵素として、物性に優れる乳酸菌由来GDHが近年発見されている(国際公開第09/041415号パンフレット)。しかし、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)由来のMDRファミリー酵素RMAは、野生型ではNADH依存性であるため、補酵素再生酵素として、NADP+還元酵素である乳酸菌由来GDHを用いることは難しい。これに対し、補酵素依存性の転換によって得られた本発明のタンパク質であれば、乳酸菌由来の、NADP+還元酵素であるGDHを補酵素再生酵素として用いることができ、製造プロセス構築上のメリットは極めて大きい。
また、NADPH/NADP+依存性酵素を利用する反応と、NADH/NAD+依存性酵素を利用する反応を、一つの反応溶液中で実施する多段階反応の場合において、補酵素依存性を変えることができるので、本技術が反応プロセス最適化に及ぼすメリットは大きい。
本明細書において、「タンパク質」という用語は、ポリペプチド構造を有するあらゆる分子を含むものであって、断片化された、または、ペプチド結合によって連結されたポリペプチド鎖も、「タンパク質」という用語に包含される。
本発明のタンパク質は、中鎖脱水素酵素/還元酵素ファミリーに属するタンパク質にアミノ酸置換変異を導入して得られる。中鎖脱水素酵素/還元酵素(Medium−chain Dehydrogenase/Reductase、MDR)ファミリーは、アルコール脱水素酵素(ADH、EC1.1.1.1.)に属するファミリーの1つであり、350〜375残基からなり、ほとんどが亜鉛(Zn)を含有する。中鎖脱水素酵素/還元酵素ファミリーは、各種バイオインフォマティクス・データーベースで登録・分類・定義付けされている。例えば、Pfam(http://pfam.sanger.ac.uk/)のファミリーID「PF00107」と関連付けられる酵素は、すべて中鎖脱水素酵素/還元酵素ファミリーに属し、2011年4月時点で、20,000を超える配列が登録されている。中鎖脱水素酵素/還元酵素ファミリーに属する酵素は、アルコール発酵、アルデヒド解毒、リグニンの生合成、脂肪酸の生合成、または、酸化ダメージからの保護、などの幅広い生理的機能に関与する。
中鎖脱水素酵素/還元酵素ファミリーに属するタンパク質は、補酵素としてピリジンヌクレオチドを必要とする。ピリジンヌクレオチドとは、β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(還元型をNADPH、酸化型をNADP+と記す)、または、β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(還元型をNADH、酸化型をNAD+と記す)のことを指す。
また、新規に発見された未登録の配列であっても、中鎖脱水素酵素/還元酵素ファミリー酵素と配列相同性が高ければ、中鎖脱水素酵素/還元酵素ファミリー酵素に分類される。「配列相同性」は、先述のプログラムBLASTを用いたアミノ酸配列相同性解析により、決定することができる。BLAST分析において相同性を評価する際には、E−valueという統計値を用いるのが良く、相同性が高ければ高い程、限りなくこの値が0に近くなる。配列相同性からMDRファミリー酵素であるかどうかを判断するには、公知のMDRファミリー酵素に対して、E−valueが1×10−5以下であることが好ましく、1×10−10以下であることがより好ましく、1×10−15以下であることがさらに好ましい。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通して、利用可能である。
アミノ酸置換変異を導入する対象となる中鎖脱水素酵素/還元酵素ファミリー酵素として、プロテイン配列データベースUniProtKB(http://www.uniprot.org/)収載の酵素であることが好ましい。NADPH/NADP+依存性に変換する技術を応用できるNADH/NAD+依存性中鎖脱水素酵素/還元酵素ファミリー酵素としては、例えば、酵母由来ADH1(P00330)、バチルス由来ADH−HT(P42328)、および、ヒト由来ADH1β(P00325)などが挙げられる。同様に、NADH/NAD+依存性に変換する技術を応用できるNADPH/NADP+依存性MDRファミリー酵素としては、例えば、酵母由来ADH6(Q04894)、アメリカヤマナラシ由来シナピルADH(Q94G59)、および、ヒト由来PIG3(Q53FA7)などが挙げられる。なお、括弧内は前記データベース中のコード番号である。
変異導入前のタンパク質は、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)由来のMDRファミリーに含まれる酵素(国際公開第08/066018号パンフレット、以下RMAと略す)に対して、高い配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であることが好ましい。「配列同一性」は、相同な領域の中で完全に一致しているアミノ酸残基の数が占める割合であり、先述のBLAST分析で求めることができ、「Identities」で表記される。
変異導入前のタンパク質の、配列番号1のアミノ酸配列に対する配列同一性は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。変異導入前のタンパク質は、最も好ましくは配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、このタンパク質は、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)由来のMDRファミリー酵素(国際公開第08/066018号パンフレット、以下RMAと略す)である。RMAは、例えば、NADHを補酵素として、ケトンを還元して、光学活性アルコールを生成する反応を触媒する。配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質(RMA)にアミノ酸置換変異を導入して本発明のタンパク質を設計した場合、補酵素依存性をNADH依存性から、NADPH依存性に転換することが可能である。本発明はこのRMA(配列番号1)のモデリング立体構造を利用することにより達成されている。
立体構造上同等な位置のアミノ酸残基とは、アミノ酸配列情報をもとに変異導入前のタンパク質の立体構造を予測して、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質の立体構造と比較した場合に、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質においてと同等の位置に存在するアミノ酸残基のことを指す。
以下に、変異導入前のタンパク質として配列番号1を使用した場合の、アミノ酸置換変異の論理的設計方法を例示する。RMAの立体構造の論理的設計は、RMAのモデリング立体構造を利用することにより、達成可能である。なお、配列番号1で示される野生型RMAに関して、X線結晶構造解析をはじめとする構造解析等の実験は行われておらず、その立体構造は未知である。
RMAのアミノ酸配列情報に基づき、プログラムClustalX(Thompson、J.D.他 著、「Nucleic Acid Res.」1994年、22巻、4673−80頁)により、アミノ酸配列ホモロジーを有しかつ立体構造がプロテインデータバンク(PDB)に登録されている酵素との多重アミノ酸配列アラインメントを作成する。RMAとアミノ酸配列ホモロジーを有するタンパク質は、PDBに登録されたタンパク質のアミノ酸配列を対象に、プログラムBLAST(Altschul、S.F.他 著、「Nucleic Acid Res.」1997年、25巻、3389−3402頁)、または、PSI−BLAST(Shaffer A.A.他 著、「Bioinfomatics」、2000年、164巻、88−489頁)を用いたアミノ酸配列ホモロジーの検索を行うことで選択し得る。
次に、これら立体構造既知のタンパク質の三次元立体構造アラインメントを、Swiss−PDBViewer(Guex N.他 著、 「Electrophoresis」、1997年、18巻、2714−2723)などの三次元グラフィックス・プログラムや、VAST Search(Gibrat J.F.他 著、「Curr.Opin.Struct.Biol.」1996年、6巻、377−)などの立体構造比較・類似構造検索サーバにより行う。先にアミノ酸配列のみから得られた多重アラインメントを立体構造の類似性に基づいて修正し、得られた配列アラインメントに基づいて、立体構造の類似性が高いと推定されるタンパク質の立体構造(PDBコード:1LLU)を分子モデリングの雛形タンパク質として選択する。この雛形タンパク質をプログラムSwiss PDB−Viewerで表示させ、配列アラインメントに従って、RMAのアミノ酸配列(配列番号1)に適合するようアミノ酸残基の置換を行う。挿入、欠失部位については、PDBから最適な類似部分構造を検索し、その部分構造に置換することにより立体構造モデルを構築する。
この立体構造モデルを基に、補酵素結合ポケット周辺を中心に、補酵素との結合に大きく影響を与え、かつ、補酵素結合性以外の機能への影響がほとんどないと予測される部位(残基)を特定する。次に、NADHおよびNADPHをバーチャルにドッキングさせた立体構造モデル構築、および、そのドッキング構造を利用した計算化学手法による自由エネルギー計算によって、NADHへの親和性が低くなり、かつ、NADPHへの親和性が高くなる変異を設計する。一般的に、酵素(タンパク質)と補酵素(基質)複合体の安定性については、自由エネルギーによって議論することが可能である(A.R.リーチ 著、「分子モデリング概説」、2004年、第11章)。
分子モデリング構造(主鎖のフレームワーク)を利用すれば、分子力場法を利用した分子シミュレーション計算(エネルギー極小化計算)によって、補酵素が結合していない状態(apo)と補酵素が結合している状態(holo)の自由エネルギー差分値を算出することができる。この論理の詳細は、目的タンパク質に結合するドラッグをデザインする手法の応用と言える。LBDDリガンド・ベースこの自由エネルギー差が、野生型と比べて、NADHの場合にはapoに有利で、かつ、NADPHの場合にはholoに有利である、という傾向が特に強くなる変異が、補酵素依存性を転換するのに有用であると言える。具体的には、プログラムShrike(特許公開第2001−184381号公報)を用いた計算機スクリーニングにより、アミノ酸変異候補の絞込みを行う。
上記の方法により、350残基程度からなるMDR(中鎖脱水素酵素/還元酵素)ファミリー酵素における補酵素の認識に重要な部位を抽出し、かつ、目的とする補酵素依存性を獲得するために最適な各部位のアミノ酸の種類(および、その組み合わせ)を見出すことができる。MDR(中鎖脱水素酵素/還元酵素)ファミリー酵素において、配列番号1における201位、202位、203位、または、206位と、立体構造上同等な位置を同定することは、容易である。立体構造上同等な位置は、先述のVAST Searchなどの立体構造比較・類似構造検索サーバを利用し、立体構造既知のアミノ酸配列(例えば、今回の発明に用いたPDBコード:1LLUのアミノ酸配列)と、立体構造をベースにしたアミノ酸配列のアラインメントを行うことで容易に同定することができる。このVAST SearchもNational Center for Biotechnology Informationを通して利用可能である。
本発明のタンパク質は、中鎖脱水素酵素/還元酵素ファミリーに属し、下記(a)〜(d):
(a)配列番号1のAsp−201と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Ala、又はSerである、
(b)配列番号1のLys−202と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Argである、
(c)配列番号1のLys−203と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Serである、及び、
(d)配列番号1のAla−206と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Lysである、
から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を有することが好ましい。
(a)配列番号1のAsp−201と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Ala、又はSerである、
(b)配列番号1のLys−202と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Argである、
(c)配列番号1のLys−203と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Serである、及び、
(d)配列番号1のAla−206と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Lysである、
から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を有することが好ましい。
さらに、中鎖脱水素酵素/還元酵素ファミリーに属し、下記(e)〜(g):
(e)配列番号1のAsp−201と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Serである、
(f)配列番号1のLys−202と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Argである、及び、
(g)配列番号1のAla−206と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Lysである、
のアミノ酸残基を全て含むことがより好ましい。
(e)配列番号1のAsp−201と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Serである、
(f)配列番号1のLys−202と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Argである、及び、
(g)配列番号1のAla−206と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Lysである、
のアミノ酸残基を全て含むことがより好ましい。
上記(a)〜(d)、又は(e)〜(g)の変異導入により、補酵素依存性がNADH(またはNAD+)依存性であるアルコール脱水素酵素を、NADPH(またはNADP+)依存性に転換することが可能である。
変異導入後のタンパク質の、配列番号1のアミノ酸配列に対する配列同一性は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。変異導入後のタンパク質は、具体的には、配列番号2〜8に示すアミノ酸配列を有することが好ましく、配列番号2〜3に示すアミノ酸配列を有することがより好ましい。
また、本発明のタンパク質は、アルコール脱水素活性を有し、下記(i)〜(l):
(i)配列番号1のAsp−201と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基がAspである、
(j)配列番号1のLys−202と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基がLysである、
(k)配列番号1のLys−203と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基がLysである、及び、
(l)配列番号1のAla−206と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基がAlaである、
から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を有することが好ましい。
(i)配列番号1のAsp−201と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基がAspである、
(j)配列番号1のLys−202と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基がLysである、
(k)配列番号1のLys−203と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基がLysである、及び、
(l)配列番号1のAla−206と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基がAlaである、
から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を有することが好ましい。
上記(i)〜(l)の変異導入により、補酵素依存性がNADPH(またはNADP+)依存性であるアルコール脱水素酵素を、NADH(またはNAD+)依存性に転換することが可能である。
本発明のタンパク質は、変異導入前に高い酸化(または還元、以後「酸化/還元」と略す)活性を示していた補酵素に対する酸化/還元活性が低下することが好ましい。或いは、変異導入前に低い酸化/還元活性を示していた(または全く示さなかった)補酵素に対する酸化/還元活性が向上することが好ましい。さらに、本発明のタンパク質は、これらの両方の特徴を有することがより好ましい。
補酵素酸化/還元活性比とは、変異導入後に依存性を示した補酵素の酸化/還元活性を、変異導入前に依存性を示したもう一方の補酵素の酸化/還元活性で割った値のことをいう。例えば、RMAの場合には、補酵素酸化/還元活性比は、酸化活性比(NADPH/NADH)で表される。補酵素酸化/還元活性比は、1以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。変異導入後に依存性を示す補酵素のみを選択的に酸化/還元したい場合、厳密な補酵素選択性を求められるので、20以上であることがさらにより好ましく、より厳密な補酵素選択性を求める場合には、30以上であることが最も好ましい。例えば、ニコチンアミド補酵素依存性の酵素を利用する2つの反応を同時に行うときに、お互いの酵素の補酵素依存性が違う場合には、通常は厳密な選択性が求められる。なお、変異導入前の補酵素酸化/還元活性比は高くても0.1程度であり、これより大きければ、そもそも両方に依存性を示す酵素である。
補酵素酸化/還元活性は、RMAの場合、1分間に1μmolのNADPH(またはNADH)をNADP+(NAD+)に酸化する酵素活性を1Unitと定義して算出する。変異導入前後で、補酵素酸化/還元活性を算出するための反応液組成や酵素濃度は同一条件とする。補酵素酸化/還元活性の測定条件は、RMAの場合、pH4.0〜10.0、温度4℃〜80℃の一定温度下で、一定時間の通気攪拌処理する条件であることが好ましいが、組み合わせる補酵素再生酵素の物性を考慮して設定しても良く、これらに限定されるものではない。本発明のタンパク質は、補酵素依存性が転換されるという特徴を除けば、例えば基質特異性などの、本来の機能を維持している。
本発明のDNAは、本発明のタンパク質をコードする塩基配列からなる。後述する方法に従って、導入された宿主細胞内で本発明のタンパク質を発現し得るものであればいかなるものでもよく、任意の非翻訳領域を含んでいてもよい。タンパク質を設計できれば、変異を導入する前のタンパク質の起源となる生物より、当業者に公知の方法で変異を導入する前のDNAを取得し、変異を導入することにより、本発明のDNAを取得できる。
野生型MDRファミリー酵素をコードするDNAへの部位特異的な変異の導入は、組換えDNA技術、PCR法等を用いて行うことができる。組換えDNA技術による変異の導入は、野生型酵素遺伝子中の変異導入を希望する目的の部位の両側に適当な制限酵素認識配列が存在する場合に、そこを前記制限酵素で切断し、変異導入を希望する部位を含む領域を除去した後、化学合成等によって目的の部位のみに変異導入したDNA断片を挿入するカセット変異法によって行うことができる。また、PCRによる部位特異的変異の導入は、野生型コード遺伝子中の変異導入を希望する目的の部位に目的の変異を導入した変異プライマーと前記遺伝子の一方の末端部位の配列を含む変異を有しない増幅用プライマーとで前記遺伝子の片側を増幅し、前記変異用プライマーに対して相補的な配列を有する変異用プライマーと前記遺伝子のもう一方の末端部位の配列を含む変異を有しない増幅用プライマーでもう片側を増幅し、得られた2つの増幅断片をアニーリング操作後、さらに前記2種類の増幅用プライマーでPCR操作することにより、行うことができる。これらの組換えDNA技術、PCR法の他に、変異を導入したアミノ酸配列をコードするDNAを化学合成して取得してもよい。
このようにして得られる本発明のタンパク質をコードするDNAとして、例えば、配列番号25〜31のいずれかに記載の塩基配列からなるDNAが挙げられる。
また、本発明のDNAとして、配列番号25〜31のいずれかに記載の塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ酸化還元酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNAが挙げられる。
また、本発明のDNAとして、配列番号25〜31のいずれかに記載の塩基配列と85%以上の配列同一性を有し、かつ、酸化還元酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNAが挙げられる。
ここで、「配列番号25〜31のいずれかに記載の塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、酸化還元酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA」とは、配列番号25〜31のいずれかに記載の塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAをプローブとして、ストリンジェントな条件下にコロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、あるいはサザンハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAで、かつ酸化還元酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを意味する。
ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning,A laboratory manual,second edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)等に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」とは、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃の条件下でフィルターを洗浄することにより取得できるDNAを挙げることができる。好ましくは65℃で0.5倍濃度のSSC溶液で洗浄、より好ましくは65℃で0.2倍濃度のSSC溶液で洗浄、更に好ましくは65℃で0.1倍濃度のSSC溶液で洗浄することにより取得できるDNAである。
以上のようにハイブリダイゼーション条件を記載したが、これらの条件に特に制限されない。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで最適なストリンジェンシーを実現することが可能である。
上記の条件にてハイブリダイズ可能なDNAとしては、配列番号25〜31のいずれかに記載の塩基配列と、配列同一性が85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上のDNAを挙げることができ、コードされるポリペプチドが、酸化還元酵素活性を有する限り、上記DNAに包含される。
ここで、「配列同一性(%)」とは、対比される2つのDNAを最適に整列させ、核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、またはI)が両方の配列で一致した位置の数を比較塩基総数で除し、そして、この結果に100を乗じた数値で表される。
本発明のベクターは、本発明のDNAを適当なベクターに挿入することにより得ることができる。DNAを挿入するための空ベクターは、宿主細胞中で自律複製可能なものであれば特に限定されず、プラスミドDNAやファージDNAをベクターとして用いることができる。例えば、大腸菌を宿主細胞として用いる場合には、pBR322、pUC18、pBluescript II等のプラスミドDNAや、EMBL3、M13、λgt11等のファージDNA等を使用可能である。酵母を宿主細胞として用いる場合は、YEp13、YCp50等を使用可能である。植物細胞を宿主細胞として用いる場合には、pBI121、pBI101等を使用可能であり、動物細胞を宿主細胞として用いる場合は、pcDNAI等をベクターとして使用可能である。
本発明の形質転換体は上記ベクターを用いて宿主細胞を形質転換することにより得られる。宿主生物は、コードDNAを含む発現ベクターにより形質転換され、導入したDNAがコードするタンパク質を発現することができる生物であれば、特に制限はされない。利用可能な微生物としては、例えば、エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、セラチア(Serratia)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリイウム(Corynebacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、及びラクトバチルス(Lactobacillus)属など宿主ベクター系の開発されている細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属及びストレプトマイセス(Streptomyces)属など宿主ベクター系の開発されている放線菌、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クライベロマイセス(Kluyveromyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、ピキア(Pichia)属、及びキャンディダ(Candida)属などの宿主ベクター系の開発されている酵母、ノイロスポラ(Neurospora)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、及びトリコデルマ(Trichoderma)属などの宿主ベクター系の開発されているカビ、などが挙げられる。また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が開発されており、特に蚕を用いた昆虫や菜種、トウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に大量に異種タンパク質を発現させる系が開発されており、好適に利用できる。これらのうち、導入及び発現効率の点で細菌が好ましく、大腸菌がより好ましい。
形質転換する方法としては、細菌へ組換え体DNAを導入する場合、例えばカルシウムイオンを用いる方法やエレクトロポレーション法等が挙げられる。酵母への組換え体DNAの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等が挙げられる。植物細胞への組換え体DNAの導入方法としては、アグロバクテリウム感染法、パーティクルガン法、ポリエチレングリコール法等が挙げられる。動物細胞への組換え体DNAの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法等が挙げられる。
本発明の培養物は、上記形質転換体を培地で培養することで得られる。形質転換体を培地で培養し、培養菌体中または培養上清中にタンパク質を生成蓄積させ、前記酵素変異体を採取することにより、本発明のタンパク質を含む培養物を得ることができる。
形質転換体の培養は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。大腸菌等の細菌を宿主として得られた形質転換細胞を培養する培地としては、完全培地又は合成培地、例えばLB培地、TB培地、M9培地等が挙げられる。また、培養温度20〜40℃で好気的に培養することにより本発明の酵素変異体を菌体内に蓄積させ、回収する。酵素変異体の精製は、前述した培養法により得られる培養物を遠心分離して回収し、細胞についてはソニケーター等にて破砕し、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過等を単独でまたは適宜組み合わせることによって行うことができる。得られた精製物質が目的の酵素であることの確認は、通常の方法、例えばSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、ウエスタンブロッティング等により行うことができる。形質転換体の培養物の精製処理とは、酵素活性を失うことなく、目的の酵素以外の不純物を除くことであり、精製処理物とは、前記の処理によって得られた酵素含有物である。精製処理物としては、例えば、細胞を破砕することで得られる無細胞抽出液や、精製して得られた酵素溶液、あるいは、酵素溶液の凍結乾燥物が挙げられる。
アルコール脱水素酵素活性を有するタンパク質に上記(a)〜(d)から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換変異を導入して得られるタンパク質は、置換変異導入前のタンパク質と比較して、NADPHに対する依存性が向上し、NADHに対する依存性が低下する。従って、このタンパク質を用いて還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)を変換させて、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)を得ることができる。
また、この反応は平衡反応であることから、このタンパク質を用いて、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)を変換させて、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)を得ることもできる。
アルコール脱水素酵素活性を有するタンパク質に上記(i)〜(l)から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換変異を導入して得られるタンパク質は、置換変異導入前のタンパク質と比較して、NADHに対する依存性が向上し、NADPHに対する依存性が低下する。従って、本発明のタンパク質を用いて還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)を変換させて、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を得ることができる。
また、この反応は平衡反応であることから、このタンパク質を用いて、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を変換させて、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)を得ることもできる。
本発明のタンパク質の反応系において補酵素再生系を共役させることにより、光学活性アルコールの生産性を向上させることが可能である。
本発明のタンパク質を用いて製造した酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)、又は酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)に、補酵素再生系を作用させることにより、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、又は還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)を製造することが可能である。このような補酵素再生系は、酸化型補酵素を還元する活性を有する酵素であり、具体例として、グルコース脱水素酵素(GDH)、ギ酸脱水素酵素(FDH)、乳酸脱水素酵素(LDH)、及びリンゴ酸脱水素酵素(MDH)が挙げられる。
本発明のタンパク質を用いて製造した酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)、又は酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)に、補酵素再生系を作用させることにより、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、又は還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)を製造することが可能である。このような補酵素再生系は、酸化型補酵素を還元する活性を有する酵素であり、具体例として、グルコース脱水素酵素(GDH)、ギ酸脱水素酵素(FDH)、乳酸脱水素酵素(LDH)、及びリンゴ酸脱水素酵素(MDH)が挙げられる。
また、本発明のタンパク質を用いて製造した還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、又は還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)に、補酵素再生系を作用させることにより、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)、又は酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を製造することが可能である。このような補酵素再生系は、還元型補酵素を酸化する活性を有する酵素であり、具体例として、グルコース脱水素酵素(GDH)、ギ酸脱水素酵素(FDH)、乳酸脱水素酵素(LDH)、及びリンゴ酸脱水素酵素(MDH)が挙げられる。
これらの還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、又は還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、或いは酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)、又は酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の製造は、上述の形質転換体及びその培養物を使用して行うことができる。
アミノ酸を置換する変異の表記について、置換位置の番号の前に、野生型、または、非変異型のアミノ酸を付し、置換位置の番号の後に、変異したアミノ酸を付して表記する。例えば、201位のAspをAlaに置換する変異は、D201Aと記載する。
(実施例1)RMA変異体遺伝子を含む組換えベクターの作製、および、組換え大腸菌の作製
キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)由来のMDR(中鎖脱水素酵素/還元酵素)ファミリー酵素(国際公開第08/066018号パンフレット、以下RMAと略す)の変異体を大腸菌において発現させるために、同文献に記載のpNCMベクター(RMA野生型発現プラスミド)を用いて、各種変異体の発現プラスミドを調製した。
キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)由来のMDR(中鎖脱水素酵素/還元酵素)ファミリー酵素(国際公開第08/066018号パンフレット、以下RMAと略す)の変異体を大腸菌において発現させるために、同文献に記載のpNCMベクター(RMA野生型発現プラスミド)を用いて、各種変異体の発現プラスミドを調製した。
変異の導入については、pNCMベクターを鋳型として、意図した部位に変異を導入できるよう設計した2種の合成プライマーを用いるクイックチェンジ法にて、各種RMA変異体遺伝子を含む組換えプラスミドを得た。クイックチェンジ法に関しては、QuickChange Site−Directed Mutagenesis Kit(Stratagene社製)を用い、添付のプロトコルに従って行った。まず、pNCM(配列番号9)を鋳型DNAとして、配列番号10〜11で示した用いた2種の合成プライマーを用いて、クイックチェンジ法を実施し、変異A206Kが導入されたRMA変異体発現プラスミドを調製した。得られた発現プラスミドのコードDNA配列を配列番号12に示す。なお、クイックチェンジ法は、形質転換もプロトコルに含む変異導入法であり、本実施例では、大腸菌HB101(Takara社製)を形質転換し、組換え大腸菌を作製した。配列番号9(野生型)、または、配列番号12(変異体K206R)のコードDNAを含む発現プラスミドを鋳型として、配列番号13〜22の合成プライマーを、上記と同様の手法にて2種類だけ利用したクイックチェンジ法を実施して、配列番号2〜8のアミノ酸配列をコードする各々の発現プラスミド、および、形質転換した組換え大腸菌を調製した(各々の発現プラスミドのコードDNA配列は、配列番号25〜31に示す)。この実験における、各種変異体発現プラスミドのアミノ酸/コードDNA配列、および、調製時に用いた鋳型DNAプラスミド/変異導入プライマーの配列番号の対応付けを表1にまとめた。
(実施例2)組換え大腸菌によるRMA変異体の発現・無細胞抽出液の調製
実施例1で得たそれぞれの組換え大腸菌HB101を、半合成培地(グリセリン1.5%(w/v)、イーストエキス 0.3%(w/v)、Na2HPO4 0.6%(w/v)、KH2HPO4 0.3%(w/v)、NaCl 0.2%(w/v)、MgSO4・7H2O 0.5%(w/v)、100μg/ml アンピシリン、pH7.2)に植菌し、30℃にて60時間培養し、それぞれの培養液を集菌し培養上清を除いた後、培地と等量の緩衝液(100mM リン酸カリウム、pH7.0)に懸濁し、超音波破砕法により破砕し、再度遠心によって上清を回収することで、無細胞抽出液を得た。
実施例1で得たそれぞれの組換え大腸菌HB101を、半合成培地(グリセリン1.5%(w/v)、イーストエキス 0.3%(w/v)、Na2HPO4 0.6%(w/v)、KH2HPO4 0.3%(w/v)、NaCl 0.2%(w/v)、MgSO4・7H2O 0.5%(w/v)、100μg/ml アンピシリン、pH7.2)に植菌し、30℃にて60時間培養し、それぞれの培養液を集菌し培養上清を除いた後、培地と等量の緩衝液(100mM リン酸カリウム、pH7.0)に懸濁し、超音波破砕法により破砕し、再度遠心によって上清を回収することで、無細胞抽出液を得た。
(実施例3)ピリジンヌクレオチドの酸化活性測定
反応基質としてケトン化合物を加えた下記の溶液に、実施例2で得られた各種RMA変異体含有無細胞抽出液を添加し、それらのNADPH酸化活性、および、NADH酸化活性を測定した。
反応基質としてケトン化合物を加えた下記の溶液に、実施例2で得られた各種RMA変異体含有無細胞抽出液を添加し、それらのNADPH酸化活性、および、NADH酸化活性を測定した。
100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、5mM NADPH、0.6M 2−ブタノン(メチルエチルケトン、MEK)からなる反応溶液0.95mLに、酵素溶液0.05mLを添加し、一定温度(25℃)での波長340nmの吸光度の減少を測定した。この反応条件において、1分間に1μmolのNADPHをNADP+に酸化する酵素活性を1Unitと定義した。なお、測定の便宜上、必要に応じて、1分間に340nmの吸光度の減少が0.1〜0.4程度になるように、無細胞抽出液を上記リン酸カリウム緩衝液にて希釈したものを、酵素溶液として用い、希釈倍率を考慮して酵素活性を算出した。また、上記反応において、反応溶液のNADPHをNADHに変えるだけで、後は同様の測定にて、NADHをNAD+に酸化する酵素活性も求めた。
これらの測定結果を表2に示す。なお、酸化活性値は、野生型RMAとの相対値(%)で表記した。各種RMA変異体は、変異導入前に高い酸化活性を示していたNADHに対する酸化活性が50分の1〜500分の1程度に低下し、かつ、変異導入前に低い酸化活性を示していたNADPHに対する酸化活性が10倍〜50倍程度増加した。変異導入前は0.003程度であった酸化活性比(NADPH/NADH)が、変異導入後は100〜2000倍程度上がった。
(実施例4)RMA変異体によるケトン還元反応におけるNADPH再生サイクルの構築
RMA変異体(D201S/K202R/A206K、配列番号2)を用いて、2−ブタノンを(S)−2−ブタノール(S−MEH)へ還元する反応を行った。この反応系では、NADPHがNADP+に酸化されるが、この反応系に、乳酸菌由来NADP+依存性GDH(GDHLP、国際公開第09/041415号パンフレット)とその基質であるグルコースを加え、NADPHを再生するサイクルを同時に反応させた。この素反応の反応式(NADPH再生サイクル)を、図1に示した。乳酸菌由来NADP+依存性GDHの酵素液は、国際公開第09/041415号パンフレットに記載されている手法と同様の手法にて調製した。
RMA変異体(D201S/K202R/A206K、配列番号2)を用いて、2−ブタノンを(S)−2−ブタノール(S−MEH)へ還元する反応を行った。この反応系では、NADPHがNADP+に酸化されるが、この反応系に、乳酸菌由来NADP+依存性GDH(GDHLP、国際公開第09/041415号パンフレット)とその基質であるグルコースを加え、NADPHを再生するサイクルを同時に反応させた。この素反応の反応式(NADPH再生サイクル)を、図1に示した。乳酸菌由来NADP+依存性GDHの酵素液は、国際公開第09/041415号パンフレットに記載されている手法と同様の手法にて調製した。
上記に記載の順に添加し、30℃、pH5.5(NaOHを用いて下限をスタット)で35時間反応させた。反応産物の分析はガスクロマトグラフィーの手法を用いて実施した。ガスクロマトグラフィー装置としては、SIMAZU GC−14B(株式会社島津製作所製)を利用した。S−MEHへの変換率は、TC−WAX(ジーエルサイエンス株式会社製)を用いて分析し、S−MEHの光学純度はCyclodex−β(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いて分析した。
分析系の条件は以下の通りである。
[S−MEHへの変換率:ガスクロマトグラフィー分析条件]
カラム:TC−WAX(60m×0.25mm)
検出:FID
水素:50kPa
カラム温度:50℃
注入温度:200℃
検出温度:200℃
キャリアーガス:ヘリウム(300kPa)
溶出時間:2−ブタノン(MEK) 4.8分
2−ブタノール(MEH) 7.1分
[S−MEHへの変換率:ガスクロマトグラフィー分析条件]
カラム:TC−WAX(60m×0.25mm)
検出:FID
水素:50kPa
カラム温度:50℃
注入温度:200℃
検出温度:200℃
キャリアーガス:ヘリウム(300kPa)
溶出時間:2−ブタノン(MEK) 4.8分
2−ブタノール(MEH) 7.1分
[S−MEHの光学純度:ガスクロマトグラフィー分析条件]
カラム:Cyclodex−β(60m×0.25mm)
検出:FID
水素:50kPa
カラム温度:35℃
注入温度:150℃
検出温度:150℃
キャリアーガス:ヘリウム(300kPa)
溶出時間: 2−ブタノンMEK 6.5分
(R)−2−ブタノール(R−MEH) 11.0分
(S)−2−ブタノール(S−MEH) 11.4分
カラム:Cyclodex−β(60m×0.25mm)
検出:FID
水素:50kPa
カラム温度:35℃
注入温度:150℃
検出温度:150℃
キャリアーガス:ヘリウム(300kPa)
溶出時間: 2−ブタノンMEK 6.5分
(R)−2−ブタノール(R−MEH) 11.0分
(S)−2−ブタノール(S−MEH) 11.4分
図2に分析結果を示した。反応開始から4時間で変換率97.1%を達成し、その時の光学純度は99.7%であった。本発明で得られたRMA変異体を利用することで、物性に優れた乳酸菌由来NADP+依存性GDHを補酵素再生系として利用することができ、実際に、高価なNADPHを触媒量加えるだけで目的の光学活性アルコールを生産することが可能であることが、この結果から示された。
(比較例1)野生型RMA
野生型RMA(配列番号1)については、鋳型に用いた発現プラスミド(pNCMベクター)を用いて、大腸菌HB101(Takara社製)を形質転換し、組換え大腸菌を作製した。実施例2と同様の手法にて無細胞抽出液を調製し、実施例3に倣って、ピリジンヌクレオチドの酸化活性測定を実施した。測定結果については、表2に併せて記載している。
野生型RMA(配列番号1)については、鋳型に用いた発現プラスミド(pNCMベクター)を用いて、大腸菌HB101(Takara社製)を形質転換し、組換え大腸菌を作製した。実施例2と同様の手法にて無細胞抽出液を調製し、実施例3に倣って、ピリジンヌクレオチドの酸化活性測定を実施した。測定結果については、表2に併せて記載している。
Claims (15)
- 中鎖脱水素酵素/還元酵素ファミリーに属し、下記の(a)〜(d):
(a)配列番号1のAsp−201と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Ala、又はSerである、
(b)配列番号1のLys−202と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Argである、
(c)配列番号1のLys−203と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Serである、及び、
(d)配列番号1のAla−206と立体構造上同等な位置のアミノ酸残基が、Lysである、
から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を有するタンパク質。 - 配列番号1に示されるアミノ酸配列と85%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、請求項1に記載のタンパク質。
- 配列番号1に示すアミノ酸配列において、下記の(e)〜(h):
(e)Asp−201を、Ala、又はSerに置換、
(f)Lys−202を、Argに置換、
(g)Lys−203を、Serに置換、及び、
(h)Ala−206を、Lysに置換、
から選択される少なくとも1つの変異が導入されたアミノ酸配列からなる、請求項1又は2に記載のタンパク質。 - 配列番号2〜8のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる、請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA。
- 以下の(A)、(B)及び(C):
(A)配列番号25〜31のいずれかに記載の塩基配列からなるDNA:
(B)配列番号25〜31のいずれかに記載の塩基配列と相補的な塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、酸化還元酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA:
(C)配列番号25〜31のいずれかに記載の塩基配列と85%以上の配列同一性を有し、かつ、酸化還元酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA、
からなる群から選択されるDNA。 - 請求項5又は6に記載のDNAを含むベクター。
- 請求項7に記載のベクターを用いて宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体。
- 請求項8に記載の形質転換体の培養物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質を用いて、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を変換させて、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を得る工程を含む、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の製造方法。
- 請求項1又は2に記載のタンパク質を用いて、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を変換させて、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を得る工程を含む、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の製造方法。
- 請求項10に記載の方法で得られる酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸に、還元酵素を作用させることによる、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の製造方法。
- 請求項11に記載の方法で得られる還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸に、酸化酵素を作用させることによる、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の製造方法。
- 請求項8に記載の形質転換体、または、請求項9に記載の培養物を利用することを特徴とする、請求項10〜13のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項10〜14のいずれかに記載の製造方法によって製造された化合物。
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