JPWO2012108510A1 - 所望の分岐化度を有する分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents

所望の分岐化度を有する分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2012108510A1
JPWO2012108510A1 JP2012556931A JP2012556931A JPWO2012108510A1 JP WO2012108510 A1 JPWO2012108510 A1 JP WO2012108510A1 JP 2012556931 A JP2012556931 A JP 2012556931A JP 2012556931 A JP2012556931 A JP 2012556931A JP WO2012108510 A1 JPWO2012108510 A1 JP WO2012108510A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
aromatic polycarbonate
group
molecular weight
value
branching
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012556931A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5804387B2 (ja
Inventor
伊佐早 禎則
禎則 伊佐早
敦 平島
敦 平島
英文 原田
英文 原田
伊藤 真樹
真樹 伊藤
淳也 早川
淳也 早川
磯部 剛彦
剛彦 磯部
大地 徳竹
大地 徳竹
洋介 新開
洋介 新開
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Gas Chemical Co Inc
Original Assignee
Mitsubishi Gas Chemical Co Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Gas Chemical Co Inc filed Critical Mitsubishi Gas Chemical Co Inc
Priority to JP2012556931A priority Critical patent/JP5804387B2/ja
Publication of JPWO2012108510A1 publication Critical patent/JPWO2012108510A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5804387B2 publication Critical patent/JP5804387B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G64/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a carbonic ester link in the main chain of the macromolecule
    • C08G64/04Aromatic polycarbonates
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G64/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a carbonic ester link in the main chain of the macromolecule
    • C08G64/42Chemical after-treatment
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G64/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a carbonic ester link in the main chain of the macromolecule
    • C08G64/16Aliphatic-aromatic or araliphatic polycarbonates
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G64/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a carbonic ester link in the main chain of the macromolecule
    • C08G64/16Aliphatic-aromatic or araliphatic polycarbonates
    • C08G64/1608Aliphatic-aromatic or araliphatic polycarbonates saturated
    • C08G64/1616Aliphatic-aromatic or araliphatic polycarbonates saturated containing a chain-terminating or -crosslinking agent
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G64/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a carbonic ester link in the main chain of the macromolecule
    • C08G64/20General preparatory processes
    • C08G64/30General preparatory processes using carbonates
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08LCOMPOSITIONS OF MACROMOLECULAR COMPOUNDS
    • C08L69/00Compositions of polycarbonates; Compositions of derivatives of polycarbonates

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Polyesters Or Polycarbonates (AREA)

Abstract

【課題】十分に高い分子量を有し、かつ一般的な分岐化剤の使用により所望の分岐化度を有する分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂を簡便に製造しうる方法を提供する。【解決手段】所定量の分岐化剤を使用して分岐構造を導入した芳香族ポリカーボネートプレポリマーと脂肪族ジオール化合物とを、エステル交換触媒の存在下、減圧条件で連結高分子量化反応させ、前記分岐化剤の使用量(A)と分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の分岐化度(N値)との相関関係に基づいて該分岐化剤の使用量(A)を調整することによってN値が所定範囲内に制御された分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する。【選択図】図1

Description

本発明は、所望の分岐化度を有する分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法に関する。詳しくは、本発明は、分岐化剤の使用量に応じて分岐化度が調整された高重合度の分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂を、エステル交換法を用いて製造する方法に関するものである。
ポリカーボネート(PC)は耐熱性、耐衝撃性、透明性に優れるため、近年、多くの分野において幅広く用いられている。このポリカーボネートの製造方法においては、従来多くの検討がなされている。その中で、芳香族ジヒドロキシ化合物、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という)から誘導されるポリカーボネートは、界面重合法あるいは溶融重合法のいずれかの製造方法によって工業化されている。
界面重合法から製造されるポリカーボネートは、ビスフェノールAとp−tert−ブチルフェノール等の芳香族モノヒドロキシ化合物及びホスゲンとから製造されるが、比較的低温条件にて製造することが可能であるため、通常、得られるポリカーボネートは直鎖状ポリマーであり、溶融時にはニュートン性を示す。即ち、せん断流動性については溶融粘度のせん断速度依存性が小さく、また、伸長流動性については極めて低い粘性を示す為、大型押出成形やブロー成形を行う際には、自重による樹脂だれが起こり易く、大型製品の成形は困難である。
ポリカーボネート樹脂の溶融特性は、Q=K・P(式中、Qは溶融樹脂の流出量(ml/sec)、Kは回帰式の切片で独立変数(ポリカーボネート樹脂の分子量や構造に由来する)、Pは高化式フローテスターを用い280℃で測定した圧力(荷重:10〜160kgf)(kg/cm2)、Nは構造粘性指数)により表示することができる。この式において、N=1のときはニュートン性流動挙動を示し、N値が大きくなるにつれて流動性の圧力依存性が大きくなり非ニュートン流動挙動を示す。大容量の中空成形品、大型押出成形品、ブロー成形品等の用途に用いられるポリカーボネート樹脂は、このN値によって溶融流動特性が評価されており、一般には圧力依存性が大きい非ニュートン性流動挙動を示す方が、押出時や成形時のタレやドローダウンが防止できるため好ましい。よって、このN値が適正な範囲に入るような好適な溶融流動特性を有するポリカーボネート樹脂を任意に製造することが望まれている。
そこで一般的に界面重合法では、分子量の極めて高いポリカーボネート樹脂成分を加えたり、任意に分岐化剤を分子内に取り込み、分岐化構造を形成させたりすることによって、溶融時の非ニュートン性を制御している。即ち、低せん断速度域での溶融粘度や伸長粘度を任意に増大させ、ブロー成形性、ドリップ防止性及び難燃性等の改良を行っている。
このようなことが可能なのは、界面重合法では分岐化剤の使用量と分岐化度との間にある程度の相関関係があり、任意量の分岐化剤の使用により任意に分岐化度を制御することができるからである。しかしながら、界面重合法では、製法上有毒なホスゲンを用いなければならない。また、副生する塩化水素や塩化ナトリウム及び溶媒として大量に使用する塩化メチレンなどの含塩素化合物により装置が腐食することや、ポリマー物性に影響を与える塩化ナトリウムなどの不純物や残留塩化メチレンの除去が困難なことなどが、課題として残る。
一方、ポリカーボネート樹脂のもう一つの製造方法として古くから知られている溶融重合法は、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとからポリカーボネートを製造する方法であり、例えばビスフェノールA(BPA)とジフェニルカーボネート(DPC)とを溶融状態でエステル交換反応させ、副生する芳香族モノヒドロキシ化合物を除去しながら重合する。
溶融重合法は界面重合法と異なり溶媒を使用しない等の利点を有しているが、その製造工程において、高粘度のポリカーボネート溶融物中の芳香族モノヒドロキシ化合物や炭酸ジエステルを留去するために、高温度かつ高真空下において長時間の反応を行う必要がある。したがって、製造装置として、高温高真空下での長時間の反応に耐えうる特殊な装置と、生成物が高粘性であることから強力な攪拌装置を必要とする。
また、非特許文献1〜3に見られるように、従来のエステル交換法で製造された高分子量ポリカーボネートは、製造時に不特定量の分岐構造が発生するため、その分岐化度は溶融時に予測不可能である。また、界面重合法で製造した場合に比べてより大きな非ニュートン性を示す。この分岐構造は、非特許文献4及び5に見られるように、ポリカーボネートがアルカリの作用をうけてKolbe−Schmitt反応に類似した反応をすることによって生成したエステル結合による分岐構造や架橋構造によるものであり、分岐構造量を制御することは困難であることが知られている。即ち、装置及び運転条件に依存して増減する可能性があり、各種成形に合わせて溶融時の流動挙動を制御することは極めて難しい。
また、従来のエステル交換法で製造される高分子量ポリカーボネートは色相が低下する傾向にあり、工業的には黄味を帯びたものしか得られていない。さらに強度が劣る(脆性破壊性が大)という欠点を有していることも知られている。
この色相低下の問題を解決するための従来公知の方法として、重合原料仕込みモル比を制御し、重合速度を高めて反応に要する時間を短縮する試みがある。具体的には重合反応仕込み時のDPC類/BPA類のモル比を調整し、化学量論的に最大重合速度を得るものである。その仕込み比は重合反応装置の特徴にも影響を受けるが、たとえば1.03から1.10の間に設定することにより、比較的高速な重合速度を得ることが可能である。
しかしながら、この方法では低分子量域における有効性は確認できるものの、高分子量域において重合反応物は非常に高粘性な流体となり極端に重合速度が遅くなるため、重合中の長時間の熱滞留等により架橋・分岐化或いは色相低下等の樹脂劣化が顕著に見られるようになる。このため実質上、重合原料仕込みモル比の制御により、任意な量で分岐化構造量を制御した高分子量ポリカーボネートを得ることは極めて困難であった。即ち、界面重合法と同様に低せん断速度域での溶融粘度や伸長粘度を制御し、分岐化剤の添加量のみでブロー成形性、ドリップ防止性及び難燃性等を定量的に改良することは、溶融重合法を用いてポリカーボネート樹脂を製造する場合、極めて困難であった。
ポリカーボネートの構造的改良手法として、エステル交換法ポリカーボネートにおいて自然発生する分岐構造を低減する試みがなされている。例えば、分岐構造を持たないか、もしくは極力なくしたエステル交換法ポリカーボネートが特許文献1及び2で提案されている。また、特許文献3では、上記Kolbe−Schmitt型の分岐構造物が300ppm以下のポリカーボネートを製造する方法が提案されている。
さらに特許文献4及び5では、制御が極めて困難な副反応による分岐構造の生成を、特定の触媒を用いることによって無くし、色調を向上するとともに、多官能化合物を用いて積極的に特定の分岐構造を導入することが提案されており、流動挙動の非ニュートン性を増大させることによって中空成形性を改良したエステル交換法ポリカーボネートが開示されている。
しかしながら、これらの方法は、特殊な化合物を触媒として用いたり、特定の触媒を選択・組み合わせて使用したりするものであり、一般的とは言えず、さらに得られたポリカーボネートの使用の際には、触媒の人体や環境への影響が懸念されるものである。
また、特許文献6には、分岐化剤として5−(ジメチル−p−ヒドロキシベンジル)サリチル酸を用いて成形流動性を改良する試みがなされている。しかしながら、この多官能化合物の使用は、架橋によりゲルが生成しやすいという問題を有している。特許文献7及び8では特定の装置、温度範囲および滞留条件を用いることにより上記Kolbe−Schmitt型の熱劣化由来の分岐構造を一定範囲内に制御することを提案している。しかし、この制御方法では分岐構造の自然発生を根本的に抑制することは困難である上、自然発生的な熱劣化反応による異種構造のため、分岐構造の発生量を任意に制御するには、特定の装置における特定の運転条件を用いる必要がある。特許文献9では分岐化剤として酸無水物を使用しているが、製造時の酸発生やエステル結合の導入等による物性や色調への影響は無視できない。特許文献10には、分岐化剤を用いて得られる構造粘性指数が1.36以上のポリカーボネートが記載されているが、分岐化剤と分岐化度との関係は見出されない。
従って、色調や機械的物性に優れ、かつ界面重合法によるポリカーボネートと同様に流動挙動、非ニュートン性及び成形流動性を制御できるポリカーボネートを、一般的なエステル交換法で簡便に製造する方法、あるいは分岐化度を任意に制御でき所望の分岐化度を有するポリカーボネートを簡便に取得できるエステル交換法ポリカーボネートの製造方法の開発が望まれていた。
またプロセス面からの改良手法として、特許文献11ではいくつかの重合器を連結した連続製造法において、最終重合器として特殊な横型攪拌重合器を用いる製造方法が、また特許文献12及び13では二軸ベント押出機を用いる方法が提案されている。しかしながら、これらは、フェノールの脱離を促進することを目指しており、高分子量のポリカーボネートは得られるものの、その物性は、機械的物性と成形流動性の両方を満足できるものではなかった。
このように、従来の高分子量芳香族ポリカーボネートの製造方法では、任意に且つ安定的に分岐構造を制御するには多くの課題を有している。
本発明者らは先に、芳香族ポリカーボネート樹脂の良好な品質を保持し、かつ十分な高分子量化を達成しうる高分子量芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法を提案した(特許文献14)。これは、末端水酸基濃度が極めて低い芳香族ポリカーボネートプレポリマーと特定の脂肪族ジオール化合物からなる連結剤とをエステル交換触媒の存在下、減圧条件でエステル交換(共重合反応)させて連結し、高分子量化する方法であり、これによって芳香族ポリカーボネート樹脂本来の物性を備え、かつ十分に高分子量化されたポリカーボネート樹脂を得ることができる。脂肪族ジオール化合物による連結高分子量化反応を具体的な反応スキームで例示すると以下のとおりである。
Figure 2012108510
この方法によれば、芳香族ポリカーボネートの封止末端を脂肪族ジオール化合物により連結して鎖延長することにより、Mwが30,000〜100,000程度の高重合度の芳香族ポリカーボネート樹脂を短時間に製造することができる。この方法は、高速な重合反応によってポリカーボネートを製造するため、長時間の熱滞留等により生じる分岐・架橋化反応を抑制、色相等の樹脂劣化を回避することができる。
エステル交換反応の後段で二価ジオールを添加してポリカーボネートを製造する方法は特許文献15及び16に記載されているが、分岐化剤の添加量により分岐度が制御できることは示されておらず、また得られるポリカーボネートの品質は十分満足できるものではない。
ポリカーボネート本来の良好な品質を保持した上で十分な高分子量化を達成しうる上記高分子量化技術を応用し、さらに所望の分岐化度を容易に達成しうるポリカーボネート製造方法の開発が期待されている。
特許3102927号公報 特開平5−202180号公報 特開平7−18069号公報 特開平5−271400号公報 特開平5−295101号公報 米国特許第4,562,242号公報 特許3249825号公報 特許3997424号公報 特許4598958号公報 特開平11−302370号公報 特許2674813号公報 特公昭52−36159号公報 特公平06−099552号公報 国際公開WO/2011/062220 特開平7−26009号公報 特開平7−53708号公報
"プラスチック材料講座ポリカーボネート樹脂" "日本国日刊工業新聞社"、昭和56年発行、p.66 "高分子"、27巻、1978年7月号、p.521 "プラスチック材料講座ポリカーボネート樹脂"、日本国日刊工業新聞社、昭和56年発行、p.64 "ポリカーボネート樹脂ハンドブック"、日本国日刊工業新聞社、1992年発行、p.49
本発明が解決しようとする課題は、十分に高い分子量を有し、かつ一般的な分岐化剤の使用により所望の分岐化度を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を簡便に製造しうる方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、所定量の分岐化剤を使用して分岐構造を導入した芳香族ポリカーボネートプレポリマーを、エステル交換触媒の存在下に脂肪族ジオール化合物と反応させて連結すると、分岐化剤の使用量と得られる高分子量分岐化芳香族ポリカーボネートの分岐化度との間にある程度の相関関係が成り立つことを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下に示す分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法に関するものである。
(1)所定量の分岐化剤を使用して分岐構造を導入した芳香族ポリカーボネートプレポリマーと末端OH基に結合する脂肪族炭化水素基を有する脂肪族ジオール化合物とを減圧条件で連結高分子量化反応させる工程を含む、所望の分岐化度を有する分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
(2)前記分岐化剤の使用量(A;単位:モル%)と、分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の分岐化度(下記数式(I)で表されるN値;構造粘性指数)との相関関係に基づき、前記分岐化剤の使用量(A)を調整することによって前記分岐化度(N値)を所定範囲内とすることを特徴とする、(1)記載の製造方法。
[数1]
N値=(log(Q160値)-log(Q10値))/(log160―log10) ・・・(I)
(数式(I)中、Q160値は280℃、荷重160kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積(ml/sec)を表し、Q10値は280℃、荷重10kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積(ml/sec)を表す。)
(3)前記分岐化剤の使用量(A)と分岐化度(N値)とが、下記数式(II)を満たす相関関係を有することを特徴とする、(2)記載の製造方法。
[数2]
N値=KA+K・・・(II)
(数式(II)中、Kは0.1〜1.0の定数、Kは1.1〜1.4の定数である。)
(4)前記分岐化剤の使用量(A)が、芳香族ポリカーボネートプレポリマーのカーボネート構成単位全量(総モル数)に対し、0.01〜1モル%である、(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)前記分岐化度(N値)が1.1〜2.2である、(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)前記脂肪族ジオール化合物が下記一般式(I)で表される化合物である、(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
Figure 2012108510
(式(I)中、Qは異種原子を含んでも良い炭素数3以上の炭化水素基を表す。R〜Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、及び炭素数1〜30の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基を表す。n及びmはそれぞれ独立して0〜10の整数を表す。ただし、Qが末端OH基に結合する脂肪族炭化水素基を含まない場合、nは及びmはそれぞれ独立して1〜10の整数を表す。また、R及びRの少なくとも一方と、R及びRの少なくとも一方は、各々水素原子及び脂肪族炭化水素基からなる群から選択される。)
(7)脂肪族ジオール化合物の沸点が240℃以上である、(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)前記芳香族ポリカーボネートプレポリマーの水酸基末端濃度が1,500ppm以下であることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法。
(9)前記分岐化芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)が、前記芳香族ポリカーボネートプレポリマーの重量平均分子量(Mw)よりも5,000以上高いことを特徴とする、(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10)脂肪族ジオール化合物の添加量が、前記芳香族ポリカーボネートプレポリマーの全末端量1モルに対して0.01〜1.0モルである、(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
(11)前記連結高分子量化反応を減圧下に240℃〜320℃の温度にて実施することを特徴とする、(1)〜(10)のいずれかに請求項1記載の製造方法。
(12)連結高分子量化反応を13kPa(100torr)〜0.01kPa(0.01torr)の減圧下にて実施することを特徴とする、(1)〜(11)のいずれかに記載の製造方法。
(13)前記芳香族ポリカーボネートプレポリマーの重量平均分子量(Mw)が5,000〜60,000であることを特徴とする、(1)〜(12)のいずれかに記載の製造方法。
(14)上記(1)〜(13)のいずれかに記載の製造方法で得られる、分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂。
(15)重量平均分子量(Mw)が30,000〜100,000である、(14)記載の分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂。
本発明によれば、所定量の分岐化剤を使用して分岐構造を導入した芳香族ポリカーボネートプレポリマーに、特定の脂肪族ジオール化合物を減圧条件で連結高分子量化反応させるという簡素な工程により、所望の分岐化度を有する高分子量の分岐化芳香族ポリカーボネートを温和な条件下、短時間に得ることが可能になる。これは、分岐化剤の使用量と得られる高分子量分岐化芳香族ポリカーボネートの分岐化度との間にある程度の相関関係が成り立つことを見出したことによるものであり、これにより溶融重合法において任意に芳香族ポリカーボネートの分岐化構造量を制御することができる。
また、本発明によれば、ポリカーボネート製造に要する時間を短くできること、及び温和な条件にて実施できること(反応の低温化・高速化)から、従来の方法に比べ高温・高剪断条件を避けることが可能となり、樹脂中に着色・架橋・ゲル化などが生じないため、色相や想定されない分岐構造を含まない品質に優れた分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる。
本発明の実施例1〜4、比較例1〜4、及び参考例1〜4における、分岐化剤量とN値との関係を示すグラフである。 本発明の実施例5〜7及び比較例5における、分岐化剤量とN値との関係を示すグラフである。 本発明の実施例8〜10及び比較例6における、分岐化剤量とN値との関係を示すグラフである。 本発明の実施例11〜13及び比較例7における、分岐化剤量とN値との関係を示すグラフである。
本発明の製造方法は、所定量の分岐化剤を使用して分岐構造を導入した芳香族ポリカーボネートプレポリマーと脂肪族ジオール化合物とを、エステル交換触媒の存在下、減圧条件で連結高分子量化反応させる工程を含む。
(1)芳香族ポリカーボネートプレポリマー
本発明の芳香族ポリカーボネートプレポリマーは、下記一般式(1)で表される構造単位(カーボネート構造単位)を主たる繰り返し単位とする重縮合ポリマーであって、さらに後述する分岐化剤の使用によってその分子鎖内に分岐構造を導入したものである。
Figure 2012108510
上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のシクロアルコキシル基、又は炭素数6〜20のアリールオキシ基を表す。p及びqは、0〜4の整数を表す。また、Xは下記一般式(1’)で表される二価の有機基群から選択される基を表す。
Figure 2012108510
上記一般式(1’)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基を表し、RとRとが結合して脂肪族環を形成していても良い。
上記芳香族ポリカーボネートプレポリマーは、界面重合法で合成したものであっても溶融重合法で合成したものであってもよく、また、固相重合法や薄膜重合法などの方法で合成したものであってもよい。また、使用済みディスク成形品等の使用済み製品から回収されたポリカーボネート(製品PCのリサイクル品)などを用いることも可能である。また、上記芳香族ポリカーボネートプレポリマーとして用いられるポリカーボネートは、複数種を混合したものであっても差し支えない。たとえば界面重合法で重合したポリカーボネートと溶融重合法で重合したポリカーボネートとを混合したものであってもよく、また、溶融重合法あるいは界面重合法で重合したポリカーボネートとリサイクル品のポリカーボネートとを混合したものであってもよい。
このような本発明の芳香族ポリカーボネートプレポリマーは、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート結合形成性化合物との反応生成物を主たる繰り返し単位とする重縮合体と言うこともできる。すなわち、本発明の芳香族ポリカーボネートプレポリマーは、それぞれの構造を誘導する芳香族ジヒドロキシ化合物を、塩基性触媒の存在下、炭酸ジエステルと反応させる公知のエステル交換法、あるいは芳香族ジヒドロキシ化合物を酸結合剤の存在下にホスゲン等と反応させる公知の界面重縮合法により得ることができる。
(2)芳香族ジヒドロキシ化合物
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2012108510
上記一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のシクロアルコキシル基、又は炭素数6〜20のアリールオキシ基を表す。p及びqは、0〜4の整数を表す。また、Xは下記一般式(2’)で表される二価の有機基群から選択される基を表す。
Figure 2012108510
上記一般式(2’)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基を表し、RとRとが結合して脂肪族環を形成していても良い。
このような芳香族ジヒドロキシ化合物としては、具体的にはビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等が挙げられる。
中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンがモノマーとしての安定性、更にはそれに含まれる不純物の量が少ないものの入手が容易である点、等より好ましいものとして挙げられる。
本発明の芳香族ポリカーボネートプレポリマー中には、ガラス転移温度の制御、あるいは流動性の向上、あるいは、屈折率の向上、あるいは複屈折の低減等、光学的性質の制御等を目的として上記各種モノマー(芳香族ジヒドロキシ化合物)のうち複数種を必要に応じて組み合わせて用いることも可能である。
(3)分岐化剤
本発明で用いられる芳香族ポリカーボネートプレポリマーは、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート結合形成性化合物との反応時に分岐化剤を使用することによって、その分子鎖内に分岐構造が任意の量で導入されている。分岐化剤としては、一分子中に3個以上、好ましくは3〜6の官能基を有する多官能化合物が用いられる。このような多官能化合物としてはフェノール性水酸基、カルボキシル基を有する化合物が好ましく使用される。
3官能化合物の具体例としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(1,1,1−トリスフェノールエタン;TPA)、α,α,α’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン、α−メチル−α,α’,α"−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジエチルベンゼン、α,α’,α"−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,2−ビス〔4,4−(4、4'−ジヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル〕−プロパン、トリメリット酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,5−ペンタトリオール、3,4−ジヒドロキシベンジルアルコール、1,2,6−ヘキサトリオール、1,3,5−アダマンタントリオールなどが挙げられる。
4官能以上の化合物の具体例としては、プルプロガリン、2,3,4,4’−テロラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テロラヒドロキシジフェニルメタン、ガレイン、2,3,3’,4,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(下記化学式(1))、α,α,α’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン(下記化学式(2))、及びトリメチロールプロパン(下記化学式(3))からなる群から選択される分岐化剤が、モノマーとしての安定性、更にはそれに含まれる不純物の量が少ないものの入手が容易である点、等より好ましいものとして挙げられる。特に好ましいものは、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンである。
Figure 2012108510
分岐化剤の使用量(分岐構造の導入量)は、ブロー成形性、ドリップ防止性及び難燃性等の改善目的に応じて変動させることができるが、芳香族ポリカーボネートプレポリマー中の上記一般式(1)で表されるカーボネート構造単位全量(総モル数)に対し好ましくは0.01〜1モル%、より好ましくは0.1〜0.9モル%、特に好ましくは0.2〜0.8モル%とするのが望ましい。あるいは、使用する芳香族ジヒドロキシ化合物全量と分岐化剤との合計モル数に対し好ましくは0.01〜1モル%、より好ましくは0.1〜0.9モル%、特に好ましくは0.2〜0.8モル%とするのが望ましい。
(4)芳香族ポリカーボネートプレポリマーの製造方法
本発明の芳香族ポリカーボネートプレポリマーは、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート結合形成性化合物とを、分岐化剤とともに反応させることによって製造することができる。
界面重合法においては、カーボネート結合形成性化合物としては、ホスゲンなどのハロゲン化カルボニル、ハロホーメート化合物などが挙げられる。
カーボネート結合形成性化合物として、例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物が用いられる。溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。
また溶融重合法では、カーボネート結合形成性化合物としては炭酸ジエステルが用いられ、具体的にはジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、m−クレシルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(4−フェニルフェニル)カーボネート等の芳香族炭酸ジエステルが挙げられる。その他、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等も所望により使用することができる。これらのうち、ジフェニルカーボネートが、反応性、得られる樹脂の着色に対する安定性、更にはコストの点より、好ましい。これらの炭酸ジエステルは、芳香族ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して0.95〜1.30モルの比率で用いられることが好ましく、更に好ましくは0.98〜1.20モルの比率である。
カーボネート結合形成性化合物として炭酸ジエステルを用いる溶融重合法は、不活性ガス雰囲気下、所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また、反応を促進するために、通常使用される塩基性化合物あるいはエステル交換触媒を使用することもできる。
さらに本発明の芳香族ポリカーボネートプレポリマーを製造するとき、上記芳香族ジヒドロキシ化合物とともに、ジカルボン酸化合物を併用し、ポリエステルカーボネートとしても構わない。
前記ジカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が好ましく、これらのジカルボン酸は酸クロライドまたはエステル化合物として反応させることが好ましく採用される。また、ポリエステルカーボネート樹脂を製造する際に、ジカルボン酸は、前記ジヒドロキシ成分とジカルボン酸成分との合計を100モル%とした時に、0.5〜45モル%の範囲で使用することが好ましく、1〜40モル%の範囲で使用することがより好ましい。
上記芳香族ポリカーボネートプレポリマーは、少なくとも一部の末端基が封止されていることが好ましい。
上記芳香族ポリカーボネートプレポリマーの末端基としては、全末端に占める芳香族モノヒドロキシ化合物で構成される封止末端量の割合が60%以上の場合に、特に効果が著しい。ポリマーの全末端量に対する封止末端量の割合は、ポリマーのH−NMR解析により分析することができる。また、Ti複合体による分光測定またはH−NMR解析により水酸基末端濃度を測定することによって求めることも可能であり、同評価による水酸基末端濃度としては1,500ppm以下が好ましく、さらに好ましくは1,000ppm以下のものが好適である。
本発明の芳香族ポリカーボネートプレポリマーと脂肪族ジオール化合物との反応(連結高分子量化反応)は、該プレポリマーの封止末端基と脂肪族ジオール化合物とのエステル交換反応であるから、上記範囲を超える水酸基末端量あるいは上記範囲未満の封止末端量では、連結高分子量化反応による十分な高分子量化の効果が得られない場合がある。また、分岐化剤使用量と得られる高分子量分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の分岐化度との間に十分な相関関係が成り立たない場合がある。
封止末端基の具体例としては、フェニル末端、クレジル末端、o−トリル末端、p−トリル末端、p−t−ブチルフェニル末端、ビフェニル末端、o−メトキシカルボニルフェニル末端、p−クミルフェニル末端などの末端基を挙げることができる。
これらの中では、後に述べる連結反応で反応系より除去されやすい低沸点の芳香族モノヒドロキシ化合物で構成される末端基が好ましく、フェニル末端、p−tert−ブチルフェニル末端などがよい。
このような封止末端基は、界面法においては芳香族ポリカーボネートプレポリマー製造時に末端停止剤を用いることにより導入することができる。末端停止剤の具体例としては、p−tert−ブチルフェノールが挙げられる。末端停止剤の使用量は、所望する芳香族ポリカーボネートの末端量(すなわち所望する芳香族ポリカーボネートの分子量)や反応装置、反応条件等に応じて適宜決定することができる。
溶融法においては、芳香族ポリカーボネートプレポリマー製造時にジフェニルカーボネート等の炭酸ジエステルを芳香族ジヒドロキシ化合物に対して過剰に使用することにより、封止末端基を導入することができる。
本発明の芳香族ポリカーボネートプレポリマーの分子量としては、重量平均分子量(Mw)が好ましくは5,000〜60,000、より好ましくは10,000〜50,000、さらに好ましくは10,000〜40,000である。
芳香族ポリカーボネートプレポリマーの分子量が低すぎると、共重合の物性影響が大きくなる。これにより物性改良を行うことは可能であるが、分岐構造が導入された芳香族ポリカーボネートプレポリマーの高分子量化の効果としては好ましくない場合があり、また分岐化剤使用量と得られる高分子量分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の分岐化度との間に十分な相関関係が成り立たない場合がある。
芳香族ポリカーボネートプレポリマーの分子量が高すぎると、活性末端の濃度が低下し、高分子量化の効果が少ない場合がある。またプレポリマー自体が高粘度のため、反応条件として高温・高剪断・長時間にて実施する必要があり、プレポリマー自体に予期せぬ分岐・架橋構造が自然発生するため、目的とする高品質の分岐化芳香族ポリカーボネートを得るには好ましくない。また、分岐化剤使用量と得られる高分子量分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の分岐化度との間に十分な相関関係が成り立たない場合がある。
(5)脂肪族ジオール化合物
本発明の製造方法は、上記芳香族ポリカーボネートプレポリマーに、脂肪族ジオール化合物をエステル交換触媒存在下、減圧条件にて連結高分子量化反応させる工程を含む。すなわち、上記芳香族ポリカーボネートプレポリマーに脂肪族ジオール化合物を作用させて、該芳香族ポリカーボネートプレポリマー中に存在する芳香族ヒドロキシ化合物で構成される封止末端基をアルコール性水酸基と入れ替えることによって、分岐構造が導入された芳香族ポリカーボネートプレポリマー同士を連結し分子量を増大させる。
このような方法で高分子量化された分岐化芳香族ポリカーボネートにおいては、その分岐化度が芳香族ポリカーボネートプレポリマーへの分岐構造導入時の分岐化剤使用量と一定の相関関係を示す。よって、分岐化剤使用量に応じて分岐化度を調整することが溶融法において可能となるため、任意の分岐化度を有する高分子量の分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂を、特殊な装置や操作条件を探索しなくても、一般的なエステル交換法の条件を用いた溶融重合法により容易に取得することができる。
本発明に使用される脂肪族ジオール化合物は、末端OH基に結合する脂肪族炭化水素基を有する化合物である。脂肪族炭化水素基としては、アルキレン基及びシクロアルキレン基が挙げられるが、これらは一部が芳香族基、複素環含有基等で置換されていても良い。
より具体的には、下記一般式(I)で表される2価のアルコール性水酸基を有する化合物が挙げられる。
Figure 2012108510
上記一般式(I)中、Qは異種原子を含んでも良い炭素数3以上の炭化水素基を表し、好ましくは異種原子を含んでも良い炭素数6〜40の炭化水素基、特に好ましくは異種原子を含んでも良い炭素数6〜30の炭化水素基である。
該異種原子としては、酸素原子(O)、硫黄原子(S)、窒素原子(N)、フッ素原子(F)及びケイ素原子(Si)が挙げられる。これらのうちで特に好ましいものは酸素原子(O)及び硫黄原子(S)である。
該炭化水素基は直鎖状であっても分岐状であっても、環状構造であってもよい。またQは芳香環、複素環等の環状構造を含んでいてもよい。
上記一般式(I)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、及び炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基を表す。
脂肪族炭化水素基としては、具体的には直鎖又は分岐のアルキル基、シクロヘキシル基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
ただし、R及びRの少なくとも一方と、R及びRの少なくとも一方は、各々水素原子及び脂肪族炭化水素基からなる群から選択される。
n及びmはそれぞれ独立して0〜10、好ましくは1〜4の整数を表す。ただし、Qが末端OH基に結合する脂肪族炭化水素基を含まない場合、n及びmはそれぞれ独立して1〜10、好ましくは1〜4の整数を表す。
上記末端構造「HO−(CR1−」及び「−(CRm−OH」の具体例としては、以下の構造が挙げられる。
Figure 2012108510
Figure 2012108510
なお、R〜Rはいずれも水素原子であることが好ましい。すなわち、本発明で用いられる脂肪族ジオール化合物は、好ましくは1級ジオール化合物であり、さらに好ましくは直鎖状脂肪族ジオールを除く1級ジオール化合物である。
脂肪族ジオール化合物として、より好ましくは下記一般式(i)〜(iii)のいずれかで表される2価のアルコール性水酸基を有する化合物が挙げられる。
Figure 2012108510
上記一般式(i)中、Qは芳香環を含む炭素数6〜40の炭化水素基、好ましくは芳香環を含む炭素数6〜30の炭化水素基を表す。また、Qは酸素原子(O)、硫黄原子(S)、窒素原子(N)、フッ素原子(F)及びケイ素原子(Si)からなる群から選択される少なくとも一種の異種原子を含んでいてもよい。
n1は1〜10の整数を表し、好ましくは1〜4の整数である。芳香環としては、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基等が挙げられる。
上記一般式(ii)中、Qは複素環を含んでも良い直鎖状又は分岐状の炭素数3〜40の炭化水素基、好ましくは複素環を含んでも良い直鎖状又は分岐状の炭素数5〜30の炭化水素基、より好ましくは複素環を含んでも良い直鎖状又は分岐状の炭素数7〜20の炭化水素基を表す。
また、Q2は酸素原子(O)、硫黄原子(S)、窒素原子(N)、フッ素原子(F)及びケイ素原子(Si)からなる群から選択される少なくとも一種の異種原子を含んでいてもよい。n2は1〜10の整数を表し、好ましくは1〜4の整数である。
上記一般式(iii)中、Qは炭素数6〜40の環状炭化水素基(シクロアルキレン基)、好ましくは炭素数6〜30の環状炭化水素基を含む基を表す。n3は0〜10、好ましくは1〜4の整数を表す。シクロアルキレン基としては、シクロヘキシル基、ビシクロデカニル、トリシクロデカニル等が挙げられる。
上記一般式(i)〜(iii)中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、及び炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基を表す。その具体例は上記一般式(I)におけるのと同様である。
上記一般式(i)〜(iii)のいずれかで表される化合物のうち、より好ましいものは、一般式(i)及び(iii)で表される化合物であり、特に好ましいものは一般式(iii)で表される化合物である。
また、芳香族ポリカーボネートプレポリマーと脂肪族ジオール化合物との反応に伴って副生される芳香族モノヒドロキシ化合物を留去することを考慮すると、使用する脂肪族ジオール化合物は、該芳香族モノヒドロキシ化合物よりも高い沸点を有するものであることが好ましい。また一定の温度及び圧力の下で揮発させずに確実に反応を進行させる必要があるため、より高い沸点を有する脂肪族ジオール化合物を使用することが望ましい。よって、本発明で使用する脂肪族ジオールとして具体的には、常圧における沸点が240℃以上、好ましくは250℃以上、特に好ましくは350℃以上のものが用いられる。上限については特に制限されないが、500℃以下で十分である。
沸点の比較的高い脂肪族ジオール化合物を用いることは、本発明の方法(すなわち脂肪族ジオール化合物を連結高分子量化反応器に10torr以下の減圧条件下で連続供給する工程を含む方法)を採用することに加え、さらに製造工程中の脂肪族ジオール化合物の揮発を抑制することを可能にする。これにより、連結高分子量化反応に寄与する脂肪族ジオール化合物の割合を更に高めることができるため、脂肪族ジオール化合物を過剰に添加する必要がなくなり、経済性を高めることができる。
本発明の脂肪族ジオール化合物として使用可能なものの具体例としては、以下に示す構造の化合物が挙げられる。
(i)1級ジオール:2−ヒドロキシエトキシ基含有化合物
本発明の脂肪族ジオール化合物として好ましくは、「HO-(CH2)2-O-Y-O-(CH2)2-OH」で表される2−ヒドロキシエトキシ基含有化合物が挙げられる。ここで、Yとしては、以下に示す構造を有する有機基(A)、有機基(B)、二価のフェニレン基もしくはナフチレン基から選択される有機基(C)、又は下記構造式から選択されるシクロアルキレン基(D)が挙げられる。
Figure 2012108510
ここで、Xは単結合又は下記構造の基を表す。R及びRは各々独立して炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基又はシクロヘキシル基を表し、それらはフッ素原子を含んでも良い。R及びRは好ましくは水素原子又はメチル基である。p及びqは各々独立して0〜4(好ましくは0〜3)の整数を表す。
Figure 2012108510
上記構造中、Ra及びRbは各々独立して、水素原子、炭素数1〜30,好ましくは1〜12、さらに好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、もしくは炭素数6〜12のシクロアルキル基を表すか、又は相互に結合して環を形成してもよい。環としては、芳香環、脂環、複素環(O及び/又はSを含む)、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。Ra、Rbがアルキル基又は相互に環を形成している場合、それらはフッ素原子を含んでも良い。Rc及びRdは各々独立して炭素数1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4のアルキル基(特に好ましくはメチル基又はエチル基)を表し、それらはフッ素原子を含んでも良い。eは1〜20、好ましくは1〜12の整数を表す。
より具体的な脂肪族ジオール化合物の例を以下に示す。下記式中、n及びmは各々独立して0〜4の整数を表す。R及びRは各々独立して水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、フェニル基、シクロヘキシル基を表す。
<Yが有機基(A)の場合>
Figure 2012108510
<Yが有機基(B)の場合>
Yが有機基(B)の場合、Xは好ましくは−CRaRb−(Ra及びRbは各々独立して、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、好ましくはメチル基である)を表す。具体的には以下に示す化合物が挙げられる。
Figure 2012108510
<Yが有機基(C)の場合>
好ましい化合物を以下に示す。
Figure 2012108510
上記2−ヒドロキシエトキシ基含有化合物のうちで、特に好ましいものを以下に示す。
Figure 2012108510

(ii)1級ジオール:ヒドロキシアルキル基含有化合物
本発明の脂肪族ジオール化合物として好ましくは、「HO-(CH2)-Z-(CH2)-OH」で表されるヒドロキシアルキル基含有化合物が挙げられる。ここで、rは1又は2である。すなわち、ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基及びヒドロキシエチル基である。
Zとしては、以下に示す有機基が挙げられる。
Figure 2012108510

好ましいヒドロキシアルキル基含有化合物を以下に示す。下記式中、n及びmは各々独立して0〜4の整数を表す。
Figure 2012108510

(iii)1級ジオール:カーボネートジオール系化合物
本発明の脂肪族ジオール化合物の好ましいものとして、下記式で表されるカーボネートジオール系化合物が挙げられる。ここで、Rとしては、以下に示す構造を有する有機基が挙げられる。下記式中、nは1〜20、好ましくは1〜2の整数である。mは3〜20、好ましくは3〜10の整数である。
Figure 2012108510
上記ポリカーボネートジオール系化合物として、好ましくは以下に示すジオール(シクロヘキサンジメタノール又はネオペンチルグリコールのダイマー)又はこれらを主成分とするものが挙げられる。
Figure 2012108510

本発明の脂肪族ジオール化合物としては、上記の(i)2−ヒドロキシエトキシ基含有化合物、(ii)ヒドロキシアルキル基含有化合物、及び(iii)カーボネートジオール系化合物から選択される1級ジオールを用いることが好ましい。
なお、本発明の脂肪族ジオール化合物は、上述した特定の1級ジオールに特に限定されるものではなく、上記1級ジオール以外の1級ジオール化合物、あるいは2級ジオール化合物のなかにも使用可能なものが存在する。使用可能なその他の1級ジオール化合物又は2級ジオール化合物の例を以下に示す。なお、下記式においてR、R、R、Rは水素原子、または炭素数1〜10の1価のアルキル基である。R及びR10は、各々独立して炭素数1〜8、好ましくは1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基である。Ra及びRbは上記と同じである。R’は炭素数1〜10,好ましくは1〜8のアルキレン基である。Re及びRfは各々独立して水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基又はフェニル基である。m”は1〜10、好ましくは1〜5の整数である。eは1〜10の整数である。
<その他の1級ジオール>
Figure 2012108510
Figure 2012108510
<2級ジオール>
Figure 2012108510
上記脂肪族ジオール化合物は、単独または二種以上の組み合わせにて用いても構わない。なお、実際に用いる脂肪族ジオール化合物は、反応条件等により使用可能な化合物種が異なる場合があり、採用する反応条件等によって適宜選択することができる。
上記脂肪族ジオール化合物のなかでは、デカリン−2,6−ジメタノール(DDM)、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、2,2’−ビス[(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン(BPA−2EO)、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF)、フルオレングリコール、フルオレンジエタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)が最も好ましく用いられる。
本発明における脂肪族ジオール化合物の使用量としては、芳香族ポリカーボネートプレポリマーの全末端基量1モルに対して0.01〜1.0モルであるのが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0モルであり、さらに好ましくは0.2〜0.7モル、特に好ましくは0.2〜0.4モルである。
脂肪族ジオール化合物の使用量が上記範囲を超えて多いと、脂肪族ジオール化合物が共重合成分として分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の主鎖中へ挿入される挿入反応が発生し、共重合割合が上昇するため共重合の物性影響が大きくなる。これにより物性改良を行うことは可能であるが、分岐構造が導入された芳香族ポリカーボネートプレポリマーの高分子量化の効果としては好ましくなく、また上記範囲を超える使用量では高分子量化の効果が少なく、結果として分岐化剤使用量と得られる高分子量分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の分岐化度との間に十分な相関関係が成り立たない場合がある。
本願明細書において「ポリカーボネートの全末端基量」または「ポリマーの全末端基量」は、例えば分岐の無いポリカーボネート(または鎖状ポリマー)の場合は1分子当たりの末端基数は2であるから、分岐の無いポリカーボネートの量が0.5モルであれば、全末端基量は1モルであるとして計算される。分岐を有するポリカーボネートの場合は、その分岐鎖の末端基も全末端基量に含まれる。このような分岐鎖の末端基を含む全末端量は、H−NMR測定あるいは分子量からの計算及び分岐化剤の使用量等により算出される。
これら脂肪族ジオール化合物に不純物として含まれる塩素量、窒素量、アルカリ金属量、重金属量は低いことが好ましい。アルカリ金属とはナトリウム、カリウム及びこれらの塩や誘導体であり、重金属とは具体的には鉄、ニッケル、クロムのことをいう。
これらの不純物の含有量は、塩素としては1000ppm以下、窒素としては100ppm以下、アルカリ金属としては10ppm以下、重金属の中で、鉄としては3ppm以下、ニッケルとしては2ppm以下、クロムとしては1ppm以下が好ましい。
(6)脂肪族ジオール化合物との連結高分子量化反応
本発明では、分岐構造を導入した芳香族ポリカーボネートプレポリマーと末端OH基に結合する脂肪族炭化水素基を有する上記脂肪族ジオール化合物とを、エステル交換触媒の存在下、減圧条件で連結高分子量化反応させる。この連結高分子量化反応に使用される触媒としては、通常のポリカーボネート製造用触媒として用いられる塩基性化合物触媒や、エステル交換触媒を用いることができる。
塩基性化合物触媒としては、特にアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物、含窒素化合物等があげられる。
アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物あるいはアルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシドおよびそれらの塩、アミン類等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
アルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が用いられる。
アルカリ土類金属化合物の具体例としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が用いられる。
含窒素化合物の具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル基および/またはアリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類、プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、あるいは、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が用いられる。
エステル交換触媒としては、亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛の塩が好ましく用いられ、これらは単独もしくは組み合わせて用いることができる。
エステル交換触媒としては、具体的には、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)等が用いられる。
これらの触媒は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、1×10−9〜1×10−3モルの比率で、好ましくは1×10−7〜1×10−5モルの比率で用いられる。
上記脂肪族ジオール化合物による高分子量化反応(連結反応)における反応温度としては、240℃〜320℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは260℃〜310℃、特に好ましくは270℃〜300℃である。
また、減圧度としては13kPaA(100torr)以下が好ましく、さらに好ましくは1.3kPaA(10torr)以下、より好ましくは0.67〜0.013kPaA(5〜0.1torr)である。高分子量化反応を常圧で行うと、ポリマーの低分子量化を誘起する可能性がある。
これら脂肪族ジオール化合物の使用により、分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、芳香族ポリカーボネートプレポリマーの重量平均分子量(Mw)よりも5,000以上増加する。より好ましくは、10,000以上、さらに好ましくは15,000以上増加する。
本発明の分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、好ましくは30,000〜100,000、より好ましくは30,000〜80,000である。
本発明における分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の分岐化度の評価は、構造粘性指数N値で表わされる。N値は、280℃、荷重160kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積Q160値と、同様に280℃、荷重10kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積Q10値とを用いて、下記数式(I)で求めた値である。Qは、溶融樹脂の流出量(ml/sec)である。
[数3]
N値=(log(Q160値)-log(Q10値))/(log160―log10) ・・・(I)
上記数式(I)中、Q160値は280℃、荷重160kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積(ml/sec)((株)島津製作所製:CFT-500D型を用いて測定(以下同様)し、ストローク=7.0〜10.0mmより算出)を表し、Q10値は280℃、荷重10kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積(ml/sec)(ストローク=7.0〜10.0mmより算出)を表す。(なお、ノズル径1mm×ノズル長10mm)
通常、界面重合法によって得られる直鎖状芳香族ポリカーボネートは、N値としては1.1〜1.4を示すが、溶融重合法によって得られる芳香族ポリカーボネートの高分子量体は製造過程での熱劣化等による品質の低下により、分岐化剤を使用しなくともN値としては1.3〜2.0を示す。この場合のN値は制御されたN値ではなく、溶融重合法の製造過程における樹脂の劣化度合いにより上昇し制御は不可能である。しかしながら本発明により得られる分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂のN値は、芳香族ポリカーボネートプレポリマー製造時に使用する分岐化剤の使用量とおおよそ比例関係にあり、具体的には以下の数式(II)に示す相関関係を有する。
[数4]
N=KA+K・・・(II)
上記数式(I)中、Kは0.1〜2.0、好ましくは0.3〜1.6の定数(単位無し)であり、Kは1.05〜1.5、好ましくは1.1〜1.4の定数(単位無し)である。
このように本発明の方法によれば、芳香族ポリカーボネートプレポリマー製造時に使用する分岐化剤の使用量と分岐化度(N値)は一定の相関関係を示すため、分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の分岐化度は、芳香族ポリカーボネートプレポリマー製造時の分岐化剤使用量により制御することが可能となる。
具体的には、本発明の方法では、得られる分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の分岐化度(N値)を1.1〜2.2の範囲、より好ましくは1.2〜2.0の範囲、さらに好ましくは1.2〜1.9、特に好ましくは1.26〜1.9の範囲において、意図した値に制御することができる。
芳香族ポリカーボネートの色相評価は一般にΔYI値にて表わされる。通常、界面重合法から得られる分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂のΔYI値としては0.8〜1.0を示す。一方、溶融重合法により得られる芳香族ポリカーボネートの高分子量体は製造工程に伴う品質の低下により、ΔYI値は1.7〜2.0を示す。しかしながら本発明により得られる分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂のΔYI値は界面重合法により得られる芳香族ポリカーボネートと同等のΔYI値を示し、色相の悪化は見られない。
高分子量化反応における装置の種類や釜の材質などは公知のいかなるものを用いても良く、連続式で行っても良くまたバッチ式で行ってもよい。上記の反応を行うに際して用いられる反応装置は、錨型攪拌翼、マックスブレンド攪拌翼、ヘリカルリボン型攪拌翼等を装備した縦型であっても、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型であってもスクリューを装備した押出機型であってもよく、また、これらを重合物の粘度を勘案して適宜組み合わせた反応装置を使用することが好適に実施される。好ましくは横型撹拌効率の良いスクリューを有し、減圧条件にできるユニットをもつものがよい。
さらに好ましくは、ポリマーシールを有し、ベント構造をもつ2軸押出機あるいは横型反応機が好適である。
装置の材質としては、SUS310、SUS316やSUS304等のステンレスや、ニッケル、窒化鉄などポリマーの色調に影響のない材質が好ましい。また装置の内側(ポリマーと接触する部分)には、バフ加工あるいは電解研磨加工を施したり、クロムなどの金属メッキ処理を行っても良い。
本発明においては、上記高分子量化反応で分子量が高められたポリマーに触媒の失活剤を用いることができる。一般的には、公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法が好適に実施される。これらの物質としては、具体的にはp-トルエンスルホン酸のごとき芳香族スルホン酸、パラトルエンスルホン酸ブチル等の芳香族スルホン酸エステル類、ステアリン酸クロライド、酪酸クロライド、塩化ベンゾイル、トルエンスルホン酸クロライドのような有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸のごときアルキル硫酸塩、塩化ベンジルのごとき有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を0.013〜0.13kPaA(0.1〜1torr)の圧力、200〜350℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良く、このためには、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新能の優れた攪拌翼を備えた横型装置、あるいは薄膜蒸発器が好適に用いられる。
さらに本発明においては、上記熱安定化剤の他に、酸化防止剤、顔料、染料強化剤や充填剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、可塑剤、流動性改良材、帯電防止剤等を添加することができる。
これらの添加剤は、従来から公知の方法で各成分をポリカーボネート樹脂に混合することができる。例えば、各成分をターンブルミキサーやヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサーで代表される高速ミキサーで分散混合した後、押出器、バンバリーミキサー、ロール等で溶融混練する方法が適宜選択される。
本発明により開示されている分岐化ポリカーボネートは特に大型の押出成形や各種ブロー成形、などに向いており、様々な成形品、シート、フィルムなどの用途に好ましく利用することができる。これらの用途に用いるときは、本発明で得られる分岐化ポリカーボネート単品であっても他のポリマーとのブレンド品であっても差し支えない。用途に応じてハードコートやラミネートなどの加工も好ましく使用しうる。
成形品の具体例としては、車などのヘッドランプレンズやカメラなどのレンズ体などの光学部品、サイレンライトカバー、照明ランプカバーなどの光学機器部品、電車や自動車などの車両用窓ガラス代替品、家庭の窓ガラス代替品、サンルーフや温室の屋根などの採光部品、ゴーグルやサングラス、眼鏡のレンズや筐体、コピー機やファクシミリ、パソコンなどOA機器の筐体、テレビや電子レンジなど家電製品の筐体、コネクターやICトレイなどの電子部品用途、ヘルメット、プロテクター、保護面などの保護具、トレイなどの食器類、人工透析ケースや義歯などの医用品などをあげる事ができるがこれらに限定されない。
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何らの制限を受けるものではない。なお、実施例中の測定値は、以下の方法あるいは装置を用いて測定した。
1)ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw):GPCを用い、クロロホルムを展開溶媒として、既知の分子量(分子量分布=1)の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。この検量線に基づいて、GPCのリテンションタイムから算出した。
2)ガラス転移温度(Tg):示差熱走査熱量分析計(DSC)により測定した。
3)ポリマーの全末端基量(モル数):樹脂サンプル0.25gを、5mlの重水素置換クロロホルムに溶解し、23℃で核磁気共鳴分析装置H−NMR(日本分光社製、商品名「LA−500」)を用いて末端基を測定し、ポリマー1ton当たりのモル数で表わした。
4)水酸基末端濃度(ppm):塩化メチレン溶液中でポリマーと四塩化チタンとから形成される複合体のUV/可視分光分析(546nm)によって測定した。または、NMRにより末端水酸基を観測することによって測定した。
5)樹脂色相(YI値):樹脂サンプル6gを60mlの塩化メチレンに溶解し、分光式色差計(日本電色工業社製、商品名「SE−2000」)を用いてYI値を測定した。
6)N値:分析装置には、高化式フローテスターCFT-500D(島津製作所(株)製)を用いて、130℃で5時間乾燥した芳香族ポリカーボネート(試料)について、280℃、荷重160kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積Q160値と、同様に280℃、荷重10kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積Q10値とを用いて、下式で求めた。Qは、溶融樹脂の流出量(ml/sec)である。
[数5]
N値=(log(Q160値)-log(Q10値))/(log160―log10)
<実施例1>
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「BPA」と略す場合がある)45.5g(0.20mol)、ジフェニルカーボネート46.0g(0.21mol)、1,1,1−トリスフェノールエタン(以下、「TPE」と略す場合がある)0.15g(0.49mmol)、及び触媒として炭酸水素ナトリウム1μmol/mol(「BPAとTPEの合計1モルに対し1μmol」の意。)を、攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下180℃に加熱し、30分間攪拌した。
その後、減圧度を20kPa(150torr)に調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行い、40分間その温度に保持しエステル交換反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で225℃まで昇温し、10分間その温度で保持した。引き続き、65℃/hrの速度で260℃まで昇温し、1時間かけて減圧度を0.13kPaA(1torr)以下とした。重量平均分子量(Mw):33,200の芳香族ポリカーボネートプレポリマー40gを得た。
得られた芳香族ポリカーボネートプレポリマー30gを攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、290℃にて真空下、加熱溶融させた。続いて9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン0.91g(2.1mmol)を投入し、ジャケット温度290℃、圧力0.04kPa(0.3torr)で30分間攪拌混練した。反応系より留出するフェノールは冷却管にて凝集し、反応系より除去した。その結果、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、61,000であった。得られたポリマーの物性値を表1に示す。
<実施例2>
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン45.5g(0.20mol)、ジフェニルカーボネート46.0g(0.21mol)、1,1,1−トリスフェノールエタン(以下、「TPE」と略す場合がある)0.30g(0.96mmol)、及び触媒として炭酸水素ナトリウム1μmol/mol(「BPAとTPEの合計1モルに対し1μmol」の意。)を、攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下180℃に加熱し、30分間攪拌した。
その後、減圧度を20kPa(150torr)に調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行い、40分間その温度に保持しエステル交換反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で225℃まで昇温し、10分間その温度で保持した。引き続き、65℃/hrの速度で260℃まで昇温し、1時間かけて減圧度を0.13kPaA(1torr)以下とした。重量平均分子量(Mw):33,100の芳香族ポリカーボネートプレポリマー40gを得た。
得られた芳香族ポリカーボネートプレポリマー30gを攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、290℃にて真空下、加熱溶融させた。続いて9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン0.90g(2.0mmol)を投入し、ジャケット温度290℃、圧力0.04kPa(0.3torr)で30分間攪拌混練した。反応系より留出するフェノールは冷却管にて凝集し、反応系より除去した。その結果、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、62,000であった。得られたポリマーの物性値を表1に示す。
<実施例3>
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン45.6g(0.20mol)、ジフェニルカーボネート50.1g(0.22mol)、1,1,1−トリスフェノールエタン0.31g(1.00mmol)及び触媒として炭酸水素ナトリウム1μmol/mol(「BPAとTPEの合計1モルに対し1μmol」の意。)を、攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下180℃に加熱し、30分間攪拌した。その後、減圧度を20kPa(150torr)に調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行い、40分間その温度に保持しエステル交換反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で225℃まで昇温し、10分間その温度で保持した。引き続き、65℃/hrの速度で260℃まで昇温し、45分かけて減圧度を0.13kPa(1torr)以下とした。重量平均分子量(Mw):27,000の芳香族ポリカーボネートプレポリマー40gを得た。
得られた芳香族ポリカーボネートプレポリマー30gを攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、290℃にて真空下、加熱溶融させた。続いて9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン1.21g(2.8mmol)を投入し、ジャケット温度290℃、圧力0.04kPa(0.3torr)で30分間攪拌混練した。反応系より留出するフェノールは冷却管にて凝集し、反応系より除去した。その結果、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、45,000であった。得られたポリマーの物性値を表1に示す。
<実施例4>
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン35.9g(0.16mol)、ジフェニルカーボネート36.8g(0.18mol)、1,1,1−トリスフェノールエタン0.42g(1.37mmol)及び触媒として炭酸水素ナトリウム1μmol/mol(「BPAとTPEの合計1モルに対し1μmol」の意。)を攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下180℃に加熱し、30分間攪拌した。その後、減圧度を20kPa(150torr)に調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行い、40分間その温度に保持しエステル交換反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で225℃まで昇温し、10分間その温度で保持した。引き続き、65℃/hrの速度で260℃まで昇温し、1時間かけて減圧度を0.13kPaA(1torr)以下とした。重量平均分子量(Mw):32,100の芳香族ポリカーボネートプレポリマー38gを得た。
得られた芳香族ポリカーボネートプレポリマー30gを攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、290℃にて真空下、加熱溶融させた。続いて9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン1.09g(2.5mmol)を投入し、ジャケット温度290℃、圧力0.04kPaA(0.3torr)で30分間攪拌混練した。反応系より留出するフェノールは冷却管にて凝集し、反応系より除去した。その結果、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)65,000であった。得られたポリマーの物性値を表1に示す。
<比較例1>
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン45.6g(0.20mol)、ジフェニルカーボネート46.1g(0.22mol)及び触媒として炭酸水素ナトリウムを1μmol/mol(「BPA1モルに対し1μmol」の意。)を、攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下180℃に加熱し、30分間攪拌した。その後、減圧度を20kPa(150torr)に調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行い、40分間その温度に保持しエステル交換反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で225℃まで昇温し、10分間その温度で保持した。引き続き、65℃/hrの速度で260℃まで昇温し、1時間かけて減圧度を0.13kPa(1torr)以下とした。重量平均分子量(Mw):31,300の芳香族ポリカーボネートプレポリマー39gを得た。
得られた芳香族ポリカーボネートプレポリマー30gを攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、290℃にて真空下、加熱溶融させた。続いて9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン1.00g(2.3mmol)を投入し、ジャケット温度290℃、圧力0.04kPa(0.3torr)で30分間攪拌混練した。反応系より留出するフェノールは冷却管にて凝集し、反応系より除去した。その結果、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、61,000であった。得られたポリマーの物性値を表2に示す。
<比較例2>
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン45.6g(0.20mol)、ジフェニルカーボネート44.5g(0.21mol)、及び触媒として炭酸水素ナトリウム1μmol/mol(「BPA1モルに対し1μmol」の意。)を攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下180℃に加熱し、30分間攪拌した。その後、減圧度を20kPaA(150torr)に調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行い、40分間その温度に保持しエステル交換反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で225℃まで昇温し、10分間その温度で保持した。引き続き、65℃/hrの速度で290℃まで昇温し、1時間かけて減圧度を0.13kPaA(1torr)以下とした。合計7時間攪拌下で重合反応を行ない、重量平均分子量(Mw):69,000の芳香族ポリカーボネート36gを得た。得られたポリマーの物性値を表2に示す。
<比較例3>
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン45.6g(0.20mol)、ジフェニルカーボネート44.4g(0.21mol)、1,1,1−トリスフェノールエタン0.33g(1.08mmol)、及び触媒として炭酸水素ナトリウム1μmol/mol(「BPAとTPEの合計1モルに対し1μmol」の意。)を、攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下180℃に加熱し、30分間攪拌した。その後、減圧度を20kPa(150torr)に調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行い、40分間その温度に保持しエステル交換反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で225℃まで昇温し、10分間その温度で保持した。引き続き、65℃/hrの速度で290℃まで昇温し、1時間かけて減圧度を0.13kPa(1torr)以下とした。合計7時間半攪拌下で重合反応を行ない、重量平均分子量(Mw):95,000の一部ゲル化した芳香族ポリカーボネート35gを得た。得られたポリマーの物性値を表2に示す。
<比較例4>
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン45.6g(0.20mol)、ジフェニルカーボネート44.3g(0.21mol)、1,1,1−トリスフェノールエタン0.49g(1.58mmol)、及び触媒として炭酸水素ナトリウム1μmol/mol(「BPAとTPEの合計1モルに対し1μmol」の意。)を、攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下180℃に加熱し、30分間攪拌した。その後、減圧度を20kPa(150torr)に調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行い、40分間その温度に保持しエステル交換反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で225℃まで昇温し、10分間その温度で保持した。引き続き、65℃/hrの速度で290℃まで昇温し、1時間かけて減圧度を0.13kPa(1torr)以下とした。合計6時間40分攪拌下で重合反応を行ない、重量平均分子量(Mw):125,000のゲル状の芳香族ポリカーボネート30gを得た。得られたポリマーの物性値を表2に示す。
<参考例1>
ビスフェノールA125.0g(0.55mol)、ホスゲン70.5g(0.71mol)、1,1,1−トリスフェノールエタン0.50g(1.6mmol)及びp−t−ブチルフェノール4.15g(27.7mmol)より界面重合法により得られた芳香族ポリカーボネートポリマーの物性を表3に示す。
<参考例2>
ビスフェノールA125.0g(0.55mol)、ホスゲン70.5g(0.71mol)、1,1,1−トリスフェノールエタン0.84g(2.7mmol)及びp−t−ブチルフェノール3.40g(22.7mmol)より界面重合法により得られた芳香族ポリカーボネートポリマーの物性を表3に示す。
<参考例3>
ビスフェノールA125.0g(0.55mol)、ホスゲン70.5g(0.71mol)、1,1,1−トリスフェノールエタン0.84g(2.7mmol)及びp−t−ブチルフェノール4.38g(29.2mmol)より界面重合法により得られた芳香族ポリカーボネートポリマーの物性を表3に示す。
<参考例4>
ビビスフェノールA125.0g(0.55mol)、ホスゲン70.5g(0.71mol)、1,1,1−トリスフェノールエタン1.20g(3.9mmol)及びp−t−ブチルフェノール3.46g(23.1mmol)界面重合法により得られた芳香族ポリカーボネートポリマーの物性を表3に示す。
Figure 2012108510
Figure 2012108510
Figure 2012108510
上記実施例1〜4、比較例1〜4、及び参考例1〜4における、分岐化剤量(分岐化剤添加率;モル%)とN値との関係を表したグラフを図1に示す。図1のグラフから分かるように、実施例1〜3では、TPEの添加率の増加に比例してN値が上昇している。図1に示す分岐化剤(TPE)の添加率とN値の回帰曲線の傾きと切片より、測定値のぶれも考慮した上で、N値と分岐化剤使用量Aとの関係を表す上記数式(II)におけるK及びKを求めると、この場合のKの値は約0.6であり、Kの値は約1.2である。
また、界面重合法を用いた参考例1〜2によって得られる分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂においても、N値とTPE添加率はほぼ実施例1〜3の場合と近似している。
一方、実施例と同様の溶融重合法を用いながら、脂肪族ジオール化合物を用いなかった比較例2〜4では、分岐化剤の添加率とN値との間に直線的な相関関係がないため、分岐化剤の使用量によって分岐化度を制御することができないことがわかる。
このことから明らかなように、本発明の方法によれば、製造工程上の安全性や環境問題に課題を有する界面重合法を用いることなく、溶融重合法によって任意のN値を有する分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂を製造することが可能であり、これは従来の溶融重合法では達成し得なかったことである。
<実施例5>
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン42.0g、ジフェニルカーボネート43.0g、分岐化剤としてα,α,α’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン0.15g、及び触媒としてフェニルリン酸二ナトリウム(PhNaPO)2μmol/molを、攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下180℃に加熱し、30分間攪拌した。
その後、減圧度を20kPa(150torr)に調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行い、40分間その温度に保持しエステル交換反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で225℃まで昇温し、10分間その温度で保持した。引き続き、65℃/hrの速度で260℃まで昇温し、1時間かけて減圧度を0.13kPaA(1torr)以下とした。重量平均分子量(Mw):30,000の芳香族ポリカーボネートプレポリマー40gを得た。
得られた芳香族ポリカーボネートプレポリマー30gを、攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、290℃にて真空下、加熱溶融させた。続いて2,2’−ビス[(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン(BPA-2EO)0.47g(1.5mmol)を投入し、ジャケット温度290℃、圧力0.04kPa(0.3torr)で30分間攪拌混練した。反応系より留出するフェノールは冷却管にて凝集し、反応系より除去した。その結果、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、58,000であった。得られたポリマーの物性値を表4に示す。
<実施例6〜7>
分岐化剤の使用量及び脂肪族ジオール化合物の使用量を表4に示すように代えた以外は、実施例5と同様に行った。結果を表4に示す。
<比較例5>
分岐化剤を使用しないほかは、実施例5と同様にして芳香族ポリカーボネートプレポリマー(重量平均分子量(Mw)=30,000)を得た。
得られた芳香族ポリカーボネートプレポリマー30gを、実施例5と同様に、攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、290℃にて真空下、加熱溶融させた。続いて2,2’−ビス[(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン(BPA-2EO)0.47g(1.5mmol)を投入し、ジャケット温度290℃、圧力0.04kPa(0.3torr)で30分間攪拌混練した。反応系より留出するフェノールは冷却管にて凝集し、反応系より除去した。その結果、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、59,000であった。得られたポリマーの物性値を表4に示す。
Figure 2012108510
上記実施例5〜7及び比較例5における、分岐化剤量(分岐化剤添加率;モル%)とN値との関係を表したグラフを図2に示す。参考として、従来の溶融法を用いた比較例2〜4及び界面法を用いた参考例1〜4の結果も併記する。
図2のグラフから分かるように、実施例5〜7では、分岐化剤の添加率の増加に比例してN値が上昇している。図2に示す分岐化剤の添加率とN値の回帰曲線の傾きと切片より、測定値のぶれも考慮した上で、N値と分岐化剤使用量Aとの関係を表す上記数式(II)におけるK及びKを求めると、この場合のKの値は約0.6であり、Kの値は約1.2である。
また、界面重合法を用いた参考例1〜4によって得られる分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂においても、N値と分岐化剤添加率はほぼ実施例5〜7の場合と近似している。
<実施例8>
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン45.0g、ジフェニルカーボネート46.5g、分岐化剤としてトリメチロールプロパン0.08g、及び触媒として炭酸セシウム(CsCO)0.5μmol/molを、攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下180℃に加熱し、30分間攪拌した。
その後、減圧度を20kPa(150torr)に調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行い、40分間その温度に保持しエステル交換反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で225℃まで昇温し、10分間その温度で保持した。引き続き、65℃/hrの速度で260℃まで昇温し、1時間かけて減圧度を0.13kPaA(1torr)以下とした。重量平均分子量(Mw):30,000の芳香族ポリカーボネートプレポリマー40gを得た。
得られた芳香族ポリカーボネートプレポリマー30gを、攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、290℃にて真空下、加熱溶融させた。続いて1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)0.19g(1.3mmol)を投入し、ジャケット温度290℃、圧力0.04kPa(0.3torr)で30分間攪拌混練した。反応系より留出するフェノールは冷却管にて凝集し、反応系より除去した。その結果、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、57,000であった。得られたポリマーの物性値を表5に示す。
<実施例9〜10>
分岐化剤の使用量及び脂肪族ジオール化合物の使用量を表5に示すように代えた以外は、実施例8と同様に行った。結果を表5に示す。
<比較例6>
分岐化剤を使用しないほかは、実施例8と同様にして芳香族ポリカーボネートプレポリマー(重量平均分子量(Mw)=31,000)を得た。
得られた芳香族ポリカーボネートプレポリマー30gを、実施例8と同様に、攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、290℃にて真空下、加熱溶融させた。続いて1,4−シクロヘキサンジメタノール0.20g(1.4mmol)を投入し、ジャケット温度290℃、圧力0.04kPa(0.3torr)で30分間攪拌混練した。反応系より留出するフェノールは冷却管にて凝集し、反応系より除去した。その結果、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、58,000であった。得られたポリマーの物性値を表5に示す。
Figure 2012108510
上記実施例8〜10及び比較例6における、分岐化剤量とN値との関係を表したグラフを図3に示す。参考として、従来の溶融法を用いた比較例2〜4及び界面法を用いた参考例1〜4の結果も併記する。
図3のグラフから分かるように、実施例8〜10では、分岐化剤の添加率の増加に比例してN値が上昇している。図3に示す分岐化剤の添加率とN値の回帰曲線の傾きと切片より、測定値のぶれも考慮した上で、N値と分岐化剤使用量Aとの関係を表す上記数式(II)におけるK及びKを求めると、この場合のKの値は約0.7であり、Kの値は約1.1である。
また、界面重合法を用いた参考例1〜4によって得られる分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂においても、N値と分岐化剤添加率はほぼ実施例8〜10の場合と近似している。
<実施例11>
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン41.5g、ジフェニルカーボネート43.0g、分岐化剤として1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(TPA)0.10g、及び触媒としてテトラフェニルホウ素ナトリウム(PhBNa)1μmol/molを、攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下180℃に加熱し、30分間攪拌した。
その後、減圧度を20kPa(150torr)に調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行い、40分間その温度に保持しエステル交換反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で225℃まで昇温し、10分間その温度で保持した。引き続き、65℃/hrの速度で260℃まで昇温し、1時間かけて減圧度を0.13kPaA(1torr)以下とした。重量平均分子量(Mw):28,000の芳香族ポリカーボネートプレポリマー40gを得た。
得られた芳香族ポリカーボネートプレポリマー30gを、攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、290℃にて真空下、加熱溶融させた。続いてデカリンジメタノール(DDM)0.30g(1.5mmol)を投入し、ジャケット温度290℃、圧力0.04kPa(0.3torr)で30分間攪拌混練した。反応系より留出するフェノールは冷却管にて凝集し、反応系より除去した。その結果、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、59,000であった。得られたポリマーの物性値を表6に示す。
<実施例12〜13>
分岐化剤の使用量及び脂肪族ジオール化合物の使用量を表6に示すように代えた以外は、実施例11と同様に行った。結果を表6に示す。
<比較例7>
分岐化剤を使用しないほかは、実施例11と同様にして芳香族ポリカーボネートプレポリマー(重量平均分子量(Mw)=28,000)を得た。
得られた芳香族ポリカーボネートプレポリマー30gを、実施例11と同様に、攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、290℃にて真空下、加熱溶融させた。続いてデカリンジメタノール(DDM)0.30g(1.5mmol)を投入し、ジャケット温度290℃、圧力0.04kPa(0.3torr)で30分間攪拌混練した。反応系より留出するフェノールは冷却管にて凝集し、反応系より除去した。その結果、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、57,000であった。得られたポリマーの物性値を表6に示す。
Figure 2012108510
上記実施例11〜13及び比較例7における、分岐化剤量とN値との関係を表したグラフを図4に示す。参考として、従来の溶融法を用いた比較例2〜4及び界面法を用いた参考例1〜4の結果も併記する。
図4のグラフから分かるように、実施例11〜13では、分岐化剤の添加率の増加に比例してN値が上昇している。図4に示す分岐化剤の添加率とN値の回帰曲線の傾きと切片より、測定値のぶれも考慮した上で、N値と分岐化剤使用量Aとの関係を表す上記数式(II)におけるK及びKを求めると、この場合のKの値は約0.6であり、Kの値は約1.2である。
また、界面重合法を用いた参考例1〜4によって得られる分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂においても、N値と分岐化剤添加率はほぼ実施例11〜13の場合と近似している。
本発明により、一般的な分岐化剤を使用し温和な条件及び短い処理時間で、色相良好・高品質、かつ任意な分岐化構造量(N値)に制御された高分子量分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂を製造することが可能となる。
このようにして得られる高分子量分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂は、N値が適正な範囲に入るよう制御された好適な溶融流動特性を有するポリカーボネート樹脂であり、特に大容量の中空成形品、大型押出成形品、ブロー成形品等の用途に好適に用いることができる。

Claims (15)

  1. 所定量の分岐化剤を使用して分岐構造を導入した芳香族ポリカーボネートプレポリマーと末端OH基に結合する脂肪族炭化水素基を有する脂肪族ジオール化合物とを、減圧条件で連結高分子量化反応させる工程を含む、所望の分岐化度を有する分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
  2. 前記分岐化剤の使用量(A;単位:モル%)と、分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の分岐化度(下記数式(I)で表されるN値;構造粘性指数)との相関関係に基づき、前記分岐化剤の使用量(A)を調整することによって前記分岐化度(N値)を所定範囲内とすることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
    [数1]
    N値=(log(Q160値)-log(Q10値))/(log160―log10) ・・・(I)
    (数式(I)中、Q160値は280℃、荷重160kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積(ml/sec)を表し、Q10値は280℃、荷重10kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積(ml/sec)を表す。)
  3. 前記分岐化剤の使用量(A)と分岐化度(N値)とが、下記数式(II)を満たす相関関係を有することを特徴とする、請求項2記載の製造方法。
    [数2]
    N値=KA+K・・・(II)
    (数式(II)中、Kは0.1〜1.0の定数、Kは1.1〜1.4の定数である。)
  4. 前記分岐化剤の使用量(A)が、芳香族ポリカーボネートプレポリマーのカーボネート構成単位全量と分岐化剤の使用量との合計モル数に対し、0.01〜1モル%である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記分岐化度(N値)が1.1〜2である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記脂肪族ジオール化合物が下記一般式(I)で表される化合物である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
    Figure 2012108510
    (式(I)中、Qは異種原子を含んでも良い炭素数3以上の炭化水素基を表す。R〜Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、及び炭素数1〜30の芳香族炭化水素基からなる群から選択される基を表す。n及びmはそれぞれ独立して0〜10の整数を表す。ただし、Qが末端OH基に結合する脂肪族炭化水素基を含まない場合、nは及びmはそれぞれ独立して1〜10の整数を表す。また、R及びRの少なくとも一方と、R及びRの少なくとも一方は、各々水素原子及び脂肪族炭化水素基からなる群から選択される。)
  7. 前記脂肪族ジオール化合物の沸点が240℃以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 前記芳香族ポリカーボネートプレポリマーの水酸基末端濃度が1,500ppm以下であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 前記分岐化芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)が、前記芳香族ポリカーボネートプレポリマーの重量平均分子量(Mw)よりも5,000以上高いことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
  10. 脂肪族ジオール化合物の添加量が、前記芳香族ポリカーボネートプレポリマーの全末端量1モルに対して0.01〜1.0モルである、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
  11. 前記連結高分子量化反応を減圧下に240℃〜320℃の温度にて実施することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
  12. 連結高分子量化反応を13kPa(100torr)〜0.01kPa(0.01torr)の減圧下にて実施することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 前記芳香族ポリカーボネートプレポリマーの重量平均分子量(Mw)が5,000〜60,000であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
  14. 上記請求項1〜13のいずれかに記載の製造方法で得られる、分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂。
  15. 重量平均分子量(Mw)が30,000〜100,000である、請求項14記載の分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂。
JP2012556931A 2011-02-11 2012-02-09 所望の分岐化度を有する分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法 Active JP5804387B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012556931A JP5804387B2 (ja) 2011-02-11 2012-02-09 所望の分岐化度を有する分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011028011 2011-02-11
JP2011028011 2011-02-11
PCT/JP2012/052988 WO2012108510A1 (ja) 2011-02-11 2012-02-09 所望の分岐化度を有する分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法
JP2012556931A JP5804387B2 (ja) 2011-02-11 2012-02-09 所望の分岐化度を有する分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2012108510A1 true JPWO2012108510A1 (ja) 2014-07-03
JP5804387B2 JP5804387B2 (ja) 2015-11-04

Family

ID=46638722

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012556931A Active JP5804387B2 (ja) 2011-02-11 2012-02-09 所望の分岐化度を有する分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法

Country Status (11)

Country Link
US (1) US8969505B2 (ja)
EP (1) EP2674445B1 (ja)
JP (1) JP5804387B2 (ja)
KR (1) KR101808370B1 (ja)
CN (1) CN103502304B (ja)
ES (1) ES2653853T3 (ja)
HK (1) HK1190744A1 (ja)
MY (1) MY159293A (ja)
RU (1) RU2591189C2 (ja)
TW (1) TWI557153B (ja)
WO (1) WO2012108510A1 (ja)

Families Citing this family (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
TWI549986B (zh) 2011-05-19 2016-09-21 Mitsubishi Gas Chemical Co A high-flow polycarbonate copolymer, a method for producing a high molecular weight aromatic polycarbonate resin, and an aromatic polycarbonate compound
TW201341424A (zh) * 2011-12-28 2013-10-16 Mitsubishi Gas Chemical Co 高分子量聚碳酸酯樹脂之連續製造方法
US9243106B2 (en) * 2012-05-18 2016-01-26 Mitsubishi Gas Chemical Company, Inc. Method for continuous production of high molecular weight polycarbonate resin
EP2883899B1 (en) 2012-08-10 2016-12-28 Mitsubishi Gas Chemical Company, Inc. Method for producing branched aromatic polycarbonate resin
BR112015011060A2 (pt) * 2012-11-17 2017-07-11 Mitsubishi Gas Chemical Co processo para a preparação de resina de policarbonato aromático altamente polimerizado
WO2014077350A1 (ja) 2012-11-17 2014-05-22 三菱瓦斯化学株式会社 高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法
JP6131961B2 (ja) * 2012-11-17 2017-05-24 三菱瓦斯化学株式会社 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物
EP2921517B1 (en) 2012-11-17 2018-02-28 Mitsubishi Gas Chemical Company, Inc. Production method for aromatic polycarbonate resin having increased molecular weight
TWI794172B (zh) * 2016-05-25 2023-03-01 日商三菱鉛筆股份有限公司 氟系樹脂之非水系分散體、使用其之含氟系樹脂之熱硬化樹脂組成物及其硬化物、聚醯亞胺前驅物溶液組成物
CN115651149A (zh) * 2018-01-17 2023-01-31 Ube株式会社 高支化聚碳酸酯多元醇组合物
US20220181632A1 (en) * 2019-03-29 2022-06-09 Teijin Limited Polymeric binder and all-solid-state secondary battery
CN116063672B (zh) * 2023-02-08 2024-04-12 四川轻化工大学 三酚a型聚碳酸酯及其制备方法

Family Cites Families (28)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5236159B2 (ja) 1972-12-13 1977-09-13
JPS5825096B2 (ja) 1975-09-18 1983-05-25 積水化成品工業株式会社 ポリオレフイン系樹脂発泡体の製造方法
US4562242A (en) 1984-12-24 1985-12-31 General Electric Company Branched polycarbonate from carboxy containing diphenol
JPH0699552B2 (ja) 1986-07-16 1994-12-07 ダイセル化学工業株式会社 カ−ボネ−ト結合含有重合物の製造方法
JP2674813B2 (ja) 1988-12-06 1997-11-12 日本ジーイープラスチックス 株式会社 ポリカーボネートの製造方法
SG52381A1 (en) * 1988-12-27 1998-09-28 Asahi Chemical Ind A porous crystallized aromatic polycarbonate prepolymer a porous crystallized aromatic polycarbonate and production method
JPH03102927A (ja) 1989-09-18 1991-04-30 Toshiba Corp 路側放送システム
JP3000608B2 (ja) 1990-02-27 2000-01-17 日本電気株式会社 衛星通信方式
JP3102927B2 (ja) 1991-10-18 2000-10-23 ダイセル化学工業株式会社 直鎖状ポリカーボネート及びその製造法
JPH05295101A (ja) 1992-01-29 1993-11-09 Daicel Chem Ind Ltd 分岐状ポリカーボネート及びその製造法
JPH05202180A (ja) 1992-01-29 1993-08-10 Daicel Chem Ind Ltd 直鎖状ポリカーボネート及びその製造法
JPH05271400A (ja) 1992-01-29 1993-10-19 Daicel Chem Ind Ltd 分岐状ポリカーボネート及びその製造法
DE4301466C2 (de) 1993-01-21 2002-01-24 Zeiss Carl Endoskopischer Vorsatz für ein stereoskopisches Beobachtungssystem
JP3098113B2 (ja) 1992-09-21 2000-10-16 積水化学工業株式会社 耐食性繊維強化樹脂管
JPH0770304A (ja) * 1993-04-28 1995-03-14 Daicel Chem Ind Ltd 分岐状ポリカーボネート及びその製造法
DE4320156A1 (de) 1993-06-18 1994-12-22 Bayer Ag Verfahren zur Herstellung von thermoplastischen Polycarbonaten
JP3301453B2 (ja) 1993-07-13 2002-07-15 出光石油化学株式会社 ポリカーボネートの製造方法
JP3317555B2 (ja) 1993-08-09 2002-08-26 出光石油化学株式会社 ポリカーボネートの製造方法
USRE38050E1 (en) 1996-03-05 2003-03-25 Asahi Kasei Kabushiki Kaisha Polycarbonate comprising different kinds of bonding units and process for the preparation thereof
JPH11302370A (ja) 1998-04-27 1999-11-02 Teijin Chem Ltd ポリカーボネート樹脂および中空成形容器
JP4195145B2 (ja) * 1999-04-01 2008-12-10 出光興産株式会社 ポリカーボネートの製造方法
WO2000063275A1 (fr) 1999-04-19 2000-10-26 Teijin Limited Polycarbonate aromatique ramifie, son procede d'obtention et article moule par soufflage obtenu a partir de ce polycarbonate
CN1206278C (zh) * 2001-07-23 2005-06-15 帝人化成株式会社 热塑性树脂组合物、成形品及其制造方法
US6437083B1 (en) * 2001-12-06 2002-08-20 General Electric Company Process for preparing branched aromatic polycarbonates
CA2532081A1 (en) * 2003-07-23 2005-02-03 Dow Global Technologies Inc. Process for preparing branched polycarbonate
RU2407757C2 (ru) * 2006-06-15 2010-12-27 Мицубиси Кемикал Корпорейшн Способ получения поликарбонатной смолы
JP5668408B2 (ja) * 2009-10-22 2015-02-12 三菱化学株式会社 ポリカーボネート樹脂
US8674053B2 (en) 2009-11-20 2014-03-18 Mitsubishi Gas Chemical Company, Inc. Process for production of highly polymerized aromatic polycarbonate resin

Also Published As

Publication number Publication date
ES2653853T3 (es) 2018-02-09
CN103502304B (zh) 2015-12-02
US20130317182A1 (en) 2013-11-28
CN103502304A (zh) 2014-01-08
JP5804387B2 (ja) 2015-11-04
RU2013141545A (ru) 2015-03-20
MY159293A (en) 2016-12-30
TWI557153B (zh) 2016-11-11
TW201245276A (en) 2012-11-16
EP2674445B1 (en) 2017-10-11
HK1190744A1 (zh) 2014-07-11
KR20140024282A (ko) 2014-02-28
RU2591189C2 (ru) 2016-07-10
EP2674445A1 (en) 2013-12-18
EP2674445A4 (en) 2017-01-04
KR101808370B1 (ko) 2017-12-12
WO2012108510A1 (ja) 2012-08-16
US8969505B2 (en) 2015-03-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5804387B2 (ja) 所望の分岐化度を有する分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法
JP6037075B2 (ja) 高流動性ポリカーボネート共重合体、高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法、及び芳香族ポリカーボネート化合物
JP5857744B2 (ja) 高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法
JP6131961B2 (ja) 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物
WO2014077351A1 (ja) 高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法
JP6212854B2 (ja) ポリカーボネート共重合体
JP6137183B2 (ja) 分岐化芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20141024

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150520

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150714

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20150807

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20150820

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5804387

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151