JP5668408B2 - ポリカーボネート樹脂 - Google Patents
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[1]分子中に少なくとも下記一般式(1)で表される繰返し単位を含有し、且つ、下記(a)から(d)の条件を満たすことを特徴とするポリカーボネート樹脂。
(a)塩化メチレン溶媒中、20℃における極限粘度[η](dl/g)が、0.40以上2.0以下の範囲である。
(b)分岐パラメーターG=[η]/[η]linが、0.1以上0.9以下の範囲である。但し、[η]linは、光散乱法又は汎用較正曲線を用いたGPC法で測定される重量平均分子量が前記ポリカーボネート樹脂と同一の直鎖状ポリカーボネートの、塩化メチレン溶媒中、20℃における極限粘度である。
(c)キャピラリーレオメーターで測定した、300℃、剪断速度10sec−1における溶融粘度(Pa・s)の対数値lnη* 10を、塩化メチレン溶媒中、20℃における極限粘度[η](dl/g)で除した数値lnη* 10/[η]が、14.0以下であり且つ、300℃、剪断速度1000sec−1における溶融粘度(Pa・s)の対数値lnη* 1000を、塩化メチレン溶媒中、20℃における極限粘度[η](dl/g)で除した数値lnη* 1000/[η]が11.0以下である。
(d)JIS K5400に準拠した鉛筆硬度が、HB以上である。
(R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、Zは、置換若しくは無置換の炭素数4〜炭素数20のアルキレン基を示す。)
[3]ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が、3.0以上5.0以下の範囲であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のポリカーボネート樹脂。
[4]芳香族ジヒドロキシ化合物と塩化カルボニルとの界面重合法により得られ、当該芳香族ジヒドロキシ化合物が、下記一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[5]芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換法により得られ、当該芳香族ジヒドロキシ化合物が、下記一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[6]前記一般式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物が、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、及び1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンからなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする[4]又は[5]に記載のポリカーボネート樹脂。
[7]ポリカーボネート樹脂をアルカリ加水分解することにより得られる下記一般式(3)で表される化合物の含有量が、100ppm〜10,000ppmの範囲であることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[8]ポリカーボネート樹脂をアルカリ加水分解することにより得られる下記一般式(4)で表される化合物の含有量が、10ppm〜1,000ppmの範囲であることを特徴とする[1]乃至[7]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[9]ポリカーボネート樹脂をアルカリ加水分解することにより得られる下記一般式(5)で表される化合物の含有量が、5ppm〜500ppmの範囲であることを特徴とする[1]乃至[8]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[10]末端水酸基濃度が、100ppm〜2,000ppmの範囲であることを特徴とする[1]乃至[9]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[11]モノヒドロキシ化合物とジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを、合計量で10ppm〜500ppmの範囲で含有することを特徴とする[1]乃至[10]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂は、分子中に少なくとも下記一般式(1)で表される繰返し単位を含有するものが挙げられる。
R1及びR2の、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられ、置換若しくは無置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
R3及びR4の、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられ、置換若しくは無置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
これらの中でも、R1及びR2は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、4−メチルフェニル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。R3及びR4は、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、4−メチルフェニル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
ここで、一般式(1)におけるR1、R2、R3、R4の結合位置は、それぞれのフェニル環上のXに対して2位,3位,5位及び6位から選ばれる任意の位置である。これらの中でも、好ましくは3位、5位である。
R5及びR6の、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。置換若しくは無置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
これらの中でも、R5及びR6は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、4−メチルフェニル基が好ましく、特に、メチル基が好ましい。
Zは、一般式(1)において、2個のフェニル基を結合する炭素と結合して、置換若しくは無置換の二価の炭素環を形成する。二価の炭素環としては、例えば、シクロペンチリデン基、シキロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基等のシクロアルキリデン基(好ましくは、炭素数5〜炭素数8)が挙げられる。置換されたものとしては、これらのメチル置換基、エチル置換基を有するもの等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シキロヘキシリデン基のメチル置換体が好ましい。
ポリカーボネート樹脂が、一般式(1)で表される繰り返し単位を含有する方法としては、少なくとも一般式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物を出発原料として界面重合法やエステル交換法によりポリカーボネート樹脂を得ることにより達成できる。一般式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独又は2種類以上含有していても良い。また、一般式(2)以外の、例えば、ビスフェノールA等の芳香族ジヒドロキシ化合物を含有していても良い。
ポリカーボネート樹脂の形態としては、例えば、ホモポリマー、共重合体、ポリマーブレンドの何れであっても良い。
(a)塩化メチレン溶媒中、20℃における極限粘度[η](dl/g)が、0.40以上2.0以下の範囲である。さらに、極限粘度[η](dl/g)が、0.50〜1.00が好ましく、0.50〜0.80が特に好ましい。極限粘度[η]が過度に小さいと、機械的強度が劣る傾向があり、極限粘度[η]が過度に大きいと、溶融流動性が悪化し成形性が劣る傾向がある。ポリカーボネート樹脂の極限粘度[η]を上記範囲内とする方法は以下の例が挙げられる。例えば、エステル交換法の場合、原料の炭酸ジエステルの量が芳香族ジヒドロキシ化合物に対し、1.01〜1.30のモル比になるように調整し、目標の極限粘度[η]となるように、触媒添加量、反応温度、反応圧力、反応時間を調整する。また、末端停止剤等を添加し重縮合することでも調整出来る。一方、界面重縮合法の場合、通常、末端停止剤等を適宜添加することで、目標の極限粘度とすることが可能である。
ここで、[η]linは、光散乱法又は汎用較正曲線を用いたGPC法で測定される重量平均分子量が同一の直鎖状ポリカーボネートの、塩化メチレン溶媒中、20℃における極限粘度である。本実施の形態では、分岐剤を使用せずに芳香族ジヒドロキシ化合物と塩化カルボニルとの界面重合法により得られたポリカーボネート樹脂(直鎖状ポリカーボネート)の極限粘度と重量平均分子量とから粘度式を求め、それをもとにして算出した値である。
分岐パラメーターGを調整する方法としては以下の例が挙げられる。例えば、エステル交換法の場合、触媒の種類や触媒量の調整が挙げられる。また、界面重合法の場合は、分岐剤を添加する等の方法が挙げられる。何れの場合も、特に、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物を2種類以上使用する場合、原料の組成比が分岐パラメーターGに影響を与えるため、組成比が変動しないようにする必要がある。
lnη* 10/[η]及びlnη* 1000/[η]は、ともに下限値は特に制約はないが、実用上、lnη* 10/[η]は、11.0〜14.0の範囲がより好ましく、lnη* 1000/[η]についても、8.0〜11.0の範囲がより好ましい。
界面重合法の場合、例えば、分岐剤を添加する等の方法が採用される。エステル交換法の場合、使用する芳香族ジヒドロキシ化合物の種類により、触媒の種類やその量、重縮合反応条件等(反応温度、圧力、滞留時間)の影響が異なるため、これらのバランスを調整しながら上記範囲内とすることが必要となる。
具体的には、一般式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物として、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンが挙げられる。そして、これら一般式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物を1種用いた単独重合、これら一般式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物を2種類以上用いた共重合、これら一般式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の1種または2種以上とビスフェノールAとの共重合が採用される。共重合の場合、得られるポリカーボネート樹脂の鉛筆硬度がHB以上になるように、これらの芳香族ジヒドロキシ化合物の組成比を調整する。
例えば、エステル交換法では、共重合する場合、芳香族ジヒドロキシ化合物の種類だけでなく、その組成比によっても、得られるポリカーボネート樹脂の硬度や分岐パラメーターG、lnη* 10/[η]、lnη* 1000/[η]のそれぞれが変動する可能性がある。そのため、これらのパラメーターを前述した条件の範囲内にするために、触媒種、触媒添加量、反応温度、反応圧力、反応時間等の複数のパラメーターを、それぞれを最適化する必要がある。特に、モノマー種が異なると、反応性が異なる場合があるため、同じ触媒種、触媒量であっても、反応速度や得られるポリマー物性も異なるため、本願発明を達成することが困難となる場合がある。
一方、界面重合法においても、分岐剤を添加し、溶融粘度を調整することは可能ではある。しかし、上記反応においては反応条件の範囲が溶融重合法に比べ狭い上、ポリマー物性、例えば極限粘度(分子量)が一定しない等の問題が発生する。このため、触媒種、分岐剤種の添加量や添加時期、重合後の洗浄方法を適宜選択する必要がある。
Mw/Mnを上記範囲内にする方法としては、界面重合法の場合、例えば、分岐剤の添加、分子量調節剤や触媒の添加時期の調整等が挙げられる。エステル交換法の場合、例えば、反応温度の調整、触媒選定、触媒添加量の調整等が挙げられる。
上記一般式(3)〜(5)において、R1、R2、R3、R4、Xの好ましい構造及びフェニル環上のXに対するR1、R2、R3、R4の好ましい結合位置は、一般式(1)におけるのと同様である。これらのR1、R2、R3、R4、Xの構造や結合位置は、一般式(1)と同じであることが好ましい。
上記一般式(3)〜(5)で表される化合物の含有量を上記の好ましい範囲にする方法としては、例えば、特定の触媒を用いて触媒添加量を調整する方法、更に、反応温度、反応圧力、反応時間を、それぞれ特定範囲に制御する方法等が採用される。
次に、本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂の製造方法について説明する。
本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂の製造方法には、芳香族ジヒドロキシ化合物と塩化カルボニルとの界面重縮合による界面重合法(界面法)、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応に基づくエステル交換法(溶融法)が挙げられる。以下、これらの製造方法について説明する。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、界面法、溶融法ともに下記一般式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物を含有することが好ましい。
界面法によるポリカーボネート樹脂の製造方法は、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液を調製し、重合触媒として使用するアミン化合物の存在下で、芳香族ジヒドロキシ化合物と塩化カルボニルとの界面重縮合反応を行い、次いで、中和、水洗、乾燥工程を経てポリカーボネート樹脂が得られる。具体的には、界面法によるポリカーボネート樹脂製造プロセスは、モノマー成分等の原料調製を行う原調工程、オリゴマー化反応が行われるオリゴマー化工程、オリゴマーを用いた重縮合反応が行われる重縮合工程、重縮合反応後の反応液をアルカリ洗浄、酸洗浄、水洗浄により洗浄する洗浄工程、洗浄された反応液を予濃縮しポリカーボネート樹脂を造粒後に単離する樹脂単離工程、単離されたポリカーボネート樹脂の粒子を乾燥する乾燥工程を、少なくとも有している。以下、各工程について説明する。
原調工程では、原調タンクに、前記一般式(2)の芳香族ジヒドロキシ化合物と、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ金属化合物の水溶液又は水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物の水溶液と、脱塩水(DMW)と、さらに必要に応じてハイドロサルファイト(HS)等の還元剤を含む芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液(BPAアルカリ水溶液)等の原料が調製される。
このようなジヒドロキシ化合物は芳香族ジヒドロキシ化合物、脂肪族ジヒドロキシ化合物等、如何なるジヒドロキシ化合物でもかまわない。別のジヒドロキシ化合物としては、好ましくはビスフェノールAである。
芳香族ジヒドロキシ化合物中における一般式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量が過度に少ないと、生成ポリマーの流動性、成形性、表面硬度、色相等のバランスが劣る傾向にあるため好ましくない。
アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物としては、通常、水酸化物が好ましく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
芳香族ジヒドロキシ化合物に対するアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の割合は、通常、1.0〜1.5(当量比)、好ましくは、1.02〜1.04(当量比)である。アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の割合が過度に多い又は過度に少ない場合は、後述するオリゴマー化工程において得られるカーボネートオリゴマーの末端基に影響し、その結果、重縮合反応が異常となる傾向がある。
次に、オリゴマー化工程では、原調工程で調製されたBPAアルカリ水溶液は、所定の反応器において、塩化カルボニル(COCl2)及び塩化メチレン(CH2Cl2)等の有機溶媒の存在下で、芳香族ジヒドロキシ化合物のホスゲン化反応が行われる。
続いて、芳香族ジヒドロキシ化合物のホスゲン化反応が行われた混合液に、トリエチルアミン(TEA)等の縮合触媒と、p−t−ブチルフェノール(pTBP)等の連鎖停止剤が添加され、芳香族ジヒドロキシ化合物のオリゴマー化反応が行われる。
次に、芳香族ジヒドロキシ化合物のオリゴマー化反応液は、さらにオリゴマー化反応が進められた後、所定の静置分離槽に導入され、カーボネートオリゴマーを含有する有機相と水相とが分離され、分離された有機相は、重縮合工程に供給される。
ここで、芳香族ジヒドロキシ化合物のホスゲン化反応が行われる反応器に芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液が供給されてから静置分離槽に入るまでのオリゴマー化工程における滞留時間は、通常、120分以下、好ましくは、30分〜60分である。
オリゴマー化工程で使用する塩化カルボニル(以下、CDCと記すことがある。)は、通常、液状又はガス状で使用される。温度管理の観点から、CDCは液状であることが好ましく、反応温度において液状を保ち得る反応圧力が選択される。
オリゴマー化工程におけるCDCの好ましい使用量は、反応条件、特に、反応温度及び水相中の芳香族ジヒドロキシ化合物の金属塩の濃度によって適宜選択され、特に限定されない。通常、芳香族ジヒドロキシ化合物の1モルに対し、CDC1モル〜2モル、好ましくは1.05モル〜1.5モルである。CDCの使用量が過度に多いと、未反応CDCが多くなり原単位が極端に悪化する傾向がある。また、CDCの使用量が過度に少ないと、クロロフォルメート基量が不足し、適切な分子量伸長が行われなくなる傾向がある。
オリゴマー化工程では、通常、有機溶媒を使用する。有機溶媒としては、オリゴマー化工程における反応温度及び反応圧力において、塩化カルボニル及びカーボネートオリゴマー、ポリカーボネート樹脂等の反応生成物を溶解し、水と相溶しない(または、水と溶液を形成しない)任意の不活性有機溶媒が挙げられる。
このような不活性有機溶媒として、例えば、ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン及び1,2−ジクロロエチレン等の塩素化脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン及びクロロトルエン等の塩素化芳香族炭化水素;その他、ニトロベンゼン及びアセトフェノン等の置換芳香族炭化水素等が挙げられる。
これらの中でも、例えば、ジクロロメタン又はクロロベンゼン等の塩素化された炭化水素が好適に使用される。これらの不活性有機溶媒は、単独であるいは他の溶媒との混合物として使用することができる。
オリゴマー化反応は、縮合触媒の存在下で行うことができる。縮合触媒の添加時期は、CDCを消費した後が好ましい。縮合触媒としては、二相界面縮合法に使用されている多くの縮合触媒の中から、任意に選択することができる。例えば、トリアルキルアミン、N−エチルピロリドン、N−エチルピペリジン、N−エチルモルホリン、N−イソプロピルピペリジン、N−イソプロピルモルホリン等が挙げられる。中でも、トリエチルアミン、N−エチルピペリジンが好ましい。
本実施の形態において、オリゴマー化工程では、通常、連鎖停止剤としてモノフェノールを使用する。モノフェノールとしては、例えば、フェノール;p−t−ブチルフェノール、p−クレゾール等の炭素数1〜炭素数20のアルキルフェノール;p−クロロフェノール、2,4,6−トリブロモフェノール等のハロゲン化フェノールが挙げられる。モノフェノールの使用量は、得られるカーボネートオリゴマーの分子量に応じ適宜選択され、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、0.5モル%〜10モル%である。
カーボネート形成性化合物の共存下でモノフェノールを添加すると、モノフェノール同士の縮合物(炭酸ジフェニル類)が多く生成し、目標とする分子量のポリカーボネート樹脂が得られにくい傾向がある。モノフェノールの添加時期が極端に遅れると、分子量制御が困難となり、さらに、分子量分布の低分子側に特異な肩を有する樹脂となり、成型時には垂れを生じる等の弊害が生じる傾向がある。
また、オリゴマー化工程では、任意の分岐剤を使用することができる。このような分岐剤としては、たとえば、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(4,4’−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン等が挙げられる。また、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌル等も使用しうる。これらの中でも、少なくとも3個のフェノール性ヒドロキシル基を有する分岐剤が好適である。分岐剤の使用量は、得られるカーボネートオリゴマーの分岐度に応じ適宜選択され、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物に対し、0.05モル%〜2モル%である。
このような乳濁液を形成する手段としては、例えば、所定の撹拌翼を有する撹拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル、フロージェットミキサー、超音波乳化機等の動的ミキサー、静的ミキサー等の混合機を使用するのが好ましい。乳濁液は、通常、0.01μm〜10μmの液滴径を有し、乳化安定性を有する。
乳濁液の乳化状態は、通常、ウェーバー数又はP/q(単位容積当たりの付加動力値)で表される。ウェーバー数としては、好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上、最も好ましくは35,000以上である。また、上限としては1,000,000以下程度で十分である。また、P/qとしては、好ましくは200kg・m/リットル以上、さらに好ましくは500kg・m/リットル以上、最も好ましくは1,000kg・m/リットル以上である。
次に、重縮合工程では、静置分離槽で水相と分離されたカーボネートオリゴマーを含有する有機相は、撹拌機を有するオリゴマー貯槽に移送される。オリゴマー貯槽には、トリエチルアミン(TEA)等の縮合触媒がさらに添加される。
続いて、オリゴマー貯槽内で撹拌された有機相は所定の重縮合反応槽に導入され、続いて、重縮合反応槽に、脱塩水(DMW)、塩化メチレン(CH2Cl2)等の有機溶媒及び水酸化ナトリウム水溶液が供給され、撹拌混合されてカーボネートオリゴマーの重縮合反応が行われる。
ここで、重縮合工程において、連続的にカーボネートオリゴマーの重縮合反応が行われる重縮合反応槽における滞留時間は、通常、12時間以下、好ましくは、0.5時間〜5時間である。
重縮合工程の好ましい態様としては、先ず、カーボネートオリゴマーを含む有機相と水相とを分離し、分離した有機相に必要に応じて不活性有機溶媒を追加し、カーボネートオリゴマーの濃度を調整する。この場合、重縮合反応によって得られる有機相中のポリカーボネート樹脂の濃度が5重量%〜30重量%となるように、不活性有機溶媒の量を調整する。次に、新たに水及びアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含む水溶液を加え、さらに、重縮合条件を整えるために、好ましくは縮合触媒を添加し、界面重縮合法に従い重縮合反応を行う。重縮合反応における有機相と水相との割合は、容積比で有機相:水相=1:(0.2〜1)程度が好ましい。
アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の使用量が過度に多いと、副反応である加水分解反応が進む傾向がある。そのため、重縮合反応終了後における水相に含まれるアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の濃度が0.05N以上、好ましくは0.05N〜0.3N程度となるようにするのがよい。
重縮合工程における重縮合反応の温度は、通常、常温付近である。反応時間は0.5時間〜5時間、好ましくは1時間〜3時間程度である。
次に、重縮合反応槽における重縮合反応が完結した後、重縮合反応液は、公知の方法により、アルカリ洗浄液によるアルカリ洗浄、酸洗浄液による酸洗浄及び洗浄水による水洗浄が行われる。尚、洗浄工程の全滞留時間は、通常、12時間以下、好ましくは、0.5時間〜6時間である。
樹脂単離工程では、先ず、洗浄工程において洗浄されたポリカーボネート樹脂を含む有機溶媒溶液は、所定の固形分濃度に濃縮された濃縮液として調製される。濃縮液におけるポリカーボネート樹脂の固形分濃度は、通常、5重量%〜35重量%、好ましくは、10重量%〜30重量%である。
次に、濃縮液は、所定の造粒槽に連続的に供給され、所定の温度の脱塩水(DMW)と撹拌混合される。そして、水中で懸濁状態を保ちながら有機溶媒を蒸発させる造粒処理が行われ、ポリカーボネート樹脂粒状体を含む水スラリーが形成される。
ここで、脱塩水(DMW)の温度は、通常、37℃〜67℃、好ましくは、40℃〜50℃である。また、造粒槽内で行われる造粒処理によりポリカーボネート樹脂の固形化温度は、通常、37℃〜67℃、好ましくは、40℃〜50℃である。
造粒槽から連続的に排出されるポリカーボネート樹脂粉状体を含む水スラリーは、その後、所定の分離器に連続的に導入され、水スラリーから水が分離される。
乾燥工程では、分離器において、水スラリーから水が分離されたポリカーボネート樹脂粉状体が、所定の乾燥機に連続的に供給され、所定の滞留時間で滞留させた後、連続的に抜き出される。乾燥機としては、例えば流動床型乾燥機が挙げられる。尚、複数の流動床型乾燥機を直列につなぎ、連続的に乾燥処理を行ってもよい。
ここで、乾燥機は、通常、熱媒ジャケット等の加熱手段を有し、例えば、水蒸気にて、通常、0.1MPa−G〜1.0MPa−G、好ましくは、0.2MPa−G〜0.6MPa−Gに保持されている。これにより、乾燥機の中を流通する窒素(N2)の温度は、通常、100℃〜200℃、好ましくは、120℃〜180℃に保持されている。
次に、溶融法について説明する。溶融法においては、原料として芳香族ジヒドロキシ化合物及びカルボニル化合物を用い、エステル交換触媒の存在下、連続的に溶融重縮合反応を行うことによりポリカーボネート樹脂を製造する。
本実施の形態で使用するカルボニル化合物としては、炭酸ジエステル化合物が挙げられる。炭酸ジエステル化合物としては、下記一般式(6)で示される化合物が挙げられる。
なお、A’上の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜炭素数10のアルキル基、炭素数1〜炭素数10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基等が例示される。
これらの中でも、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと略記することがある。)、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステルは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
即ち、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常、炭酸ジエステル化合物が1.01〜1.30のモル比、好ましくは1.02〜1.20のモル比で用いられる。前記モル比が過度に小さいと、得られるポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度が高くなり、熱安定性が悪化する傾向となる。また、前記モル比が過度に大きいと、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有するポリカーボネート樹脂の生産が困難となる傾向となる他、樹脂中の炭酸ジエステル化合物の残存量が多くなり、成形加工時や成形品としたときの臭気の原因となることがあり、好ましくない。
本実施の形態において使用するエステル交換触媒としては、通常、エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を製造する際に用いられる触媒が挙げられ、特に限定されない。一般的には、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。これらの中でも、実用的にはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物が望ましい。これらのエステル交換触媒は、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
これらのアルカリ金属化合物の中でも、セシウム化合物が好ましく、特に、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウムが好ましい。
次に、本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂の具体的な製造工程について説明する。
ポリカーボネート樹脂の製造工程は、原料である芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物の原料混合溶融液を調製し(原調工程)、これらの化合物を、エステル交換反応触媒の存在下、溶融状態で複数の反応器を用いて多段階で重縮合反応をさせる(重縮合工程)ことによって行われる。反応方式は、バッチ式、連続式、又はバッチ式と連続式の組合せのいずれでもよい。反応器は、複数基の竪型撹拌反応器及びこれに続く少なくとも1基の横型撹拌反応器が用いられる。通常、これらの反応器は直列に設置され、連続的に処理が行われる。
重縮合工程後、反応を停止させ、重縮合反応液中の未反応原料や反応副生物を脱揮除去する工程や、熱安定剤、離型剤、色剤等を添加する工程、ポリカーボネート樹脂を所定の粒径のペレットに形成する工程等を適宜追加してもよい。
次に、製造方法の各工程について説明する。
ポリカーボネート樹脂の原料として使用する芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とは、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、バッチ式、半回分式または連続式の撹拌槽型の装置を用いて、原料混合溶融液として調製される。溶融混合の温度は、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを用い、炭酸ジエステル化合物としてジフェニルカーボネートを用いる場合は、通常20℃〜180℃、好ましくは125℃〜160℃の範囲から選択される。
以下、芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールA、炭酸ジエステル化合物としてジフェニルカーボネートを原料として用いる場合を例として説明する。
この際、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物との割合は、炭酸ジエステル化合物が過剰になるように調整され、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステル化合物は、通常1.01モル〜1.30モル、好ましくは1.02モル〜1.20モルの割合になるように調整される。
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とのエステル交換反応による重縮合は、通常、2段階以上、好ましくは3段階〜7段階の多段方式で連続的に行われる。各段階の具体的な反応条件としては、温度:150℃〜320℃、圧力:常圧〜0.01Torr(1.3Pa)、平均滞留時間:5分〜150分の範囲である。
多段方式の各反応器においては、重縮合反応の進行とともに副生するフェノール等の芳香族モノヒドロキシ化合物をより効果的に系外に除去するために、上記の反応条件内で、段階的により高温、より高真空に設定する。尚、得られるポリカーボネート樹脂の色相等の品質低下を防止するためには、できるだけ低温、短滞留時間の設定が好ましい。
ここで、反応器としては、例えば、撹拌槽型反応器、薄膜反応器、遠心式薄膜蒸発反応器、表面更新型二軸混練反応器、二軸横型撹拌反応器、濡れ壁式反応器、自由落下させながら重縮合する多孔板型反応器、ワイヤーに沿わせて落下させながら重縮合するワイヤー付き多孔板型反応器等が用いられる。
ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃の温度でポリカーボネート樹脂の極限粘度[η]を測定した(単位:dl/g)。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置を使用し、以下の条件でポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)と(Mw/Mn)を測定した。
GPC装置:東ソー株式会社製HLC−8020
カラム:(充填剤)TSK−5000HLX、TSK−4000HLX、TSK−3000HLX、TSK−2000HLXを直列に接続(東ソー株式会社製;カラム径7.8mmφ、カラム長さ300mm)
カラム温度:40℃
検出器:屈折率計
溶離液;テトラヒドロフラン
溶離液流量:0.8ml/分
ポリカーボネート樹脂のGPC装置による測定結果を、予め標準ポリスチレンにより作成した検量線(汎用較正曲線)を用い、ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)をポリスチレン換算として求め、(Mw/Mn)を算出した。
分子量; 761(Mw/Mn≦1.14)
2,000(Mw/Mn≦1.20)
4,000(Mw/Mn≦1.06)
9,000(Mw/Mn≦1.04)
17,500(Mw/Mn≦1.03)
50,000(Mw/Mn≦1.03)
233,000(Mw/Mn≦1.05)
600,000(Mw/Mn≦1.05)
900,000(Mw/Mn≦1.05)
前述した方法で測定したポリカーボネート樹脂の極限粘度〔η〕を、それと同じ重量平均分子量(Mw)を有する直鎖状ポリカーボネートの極限粘度〔η〕linとで除してポリカーボネート樹脂の分岐パラメーターGを算出した。
尚、前記直鎖状ポリカーボネートは、分岐剤を使用せず、界面重合法により製造され、GPC測定より前記ポリカーボネート樹脂と同じ重量平均分子量(Mw)であることが確かめられたものである。
130℃で5時間乾燥したポリカーボネート樹脂を、ダイス径1mmφ×30mmLを具備したキャピラリーレオメーター(東洋精機株式会社製)を用い、300℃に加熱して剪断速度γ=9.12〜1824(sec−1)間で測定し、剪断速度10sec−1における溶融粘度η* 10と剪断速度1000sec−1における溶融粘度η* 1000をそれぞれ読み取り、予め測定した極限粘度[η]との比(lnη* 10/[η]、lnη* 1000/[η])をそれぞれ算出した。
射出成型機(株式会社日本製鋼所製J100SS−2)を用い、バレル温度280℃、金型温度90℃の条件下にて、厚み3mm、縦100mm、横100mmのポリカーボネート樹脂のプレートを射出成形した。この射出成形により得られたプレートについて、ISO15184に準拠し、鉛筆硬度試験機(東洋精機株式会社製)を用い、750g荷重にて鉛筆硬度を測定した。
ポリカーボネート樹脂0.5gを塩化メチレン5mlに溶解した後、メタノール45mlおよび25重量%水酸化ナトリウム水溶液5mlを加え、70℃で30分間撹拌して加水分解した(塩化メチレン溶液)。その後、この塩化メチレン溶液に6規定の塩酸を加え、溶液のpHを2程度とし、純水にて100mlとなるように調整した。
次に、調整した塩化メチレン溶液20μlを液体クロマトグラフィーに注入し、一般式(3)、(4)及び(5)で表される化合物の含有量を測定した(単位:ppm)。
液体クロマトグラフィー:株式会社島津製作所製LC−10AD
カラム:YMC PACK ODS−AM M−307−3
4.6mmID×75mmL
検出器:UV280nm
溶離液:(A)0.05%トリフルオロ酢酸水溶液 (B)メタノール
グラジェント条件:0分(B=40%)、25分(B−95%)
四塩化チタン/酢酸法(ディー・マクロモレキュラー・ヘミー(Makromol.Chem.)、第88巻、第215頁、1965年発行参照)に基づき比色定量を行い、ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度を測定した(単位:ppm)。
ポリカーボネート樹脂1.2gを塩化メチレン7mlに溶解し、ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を調製した。次に、この塩化メチレン溶液にアセトン23mlを加え、ポリカーボネート樹脂を再沈殿させた。続いて、ポリカーボネート樹脂を再沈殿させた溶液の上澄み液を回収し、この上澄み液を液体クロマトグラフィーに注入し、ポリカーボネート樹脂中の残存モノマーを測定した(単位:ppm)。
液体クロマトグラフィー:株式会社島津製作所製LC−10AD
カラム:MCI GEL ODS 5μm 4.6mmID×150mmL
検出器:UV219nm
溶離液:アセトニトリル/水=4/6体積比
ポリカーボネート樹脂を120℃、5時間乾燥した後、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、製品名FS80S−12ASE)を用い、300℃で可塑化後、シリンダー内で15秒滞留させ、厚さ3.2mm、60mm角の見本板を成形した。また、可塑化後、シリンダー内で5分間滞留させ、見本板も成形した。
上述したポリカーボネート樹脂の見本板について、色差計(スガ試験機株式会社製、製品名SM−4−CH)を用い、色相(YI値)を測定した。測定値のうち、15秒滞留のYI値が小さいのは、定常成型時の色調が良好であることを示し、15秒滞留と5分滞留のYI値の差(ΔYI)が小さいのは、高温における熱安定性が良好であることを示す。
実施例及び比較例で使用したポリカーボネート樹脂中の一般式(1)で表される繰り返し単位は、ポリマー0.1gを重クロロホルム1mlに溶解し、1H−NMR(日本電子株式会社製JNM−ECS400)にて、積算回数500回で測定し、同定した。
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「BPC」と記す。)6.55モル(1.68kg)と、ジフェニルカーボネート6.73モル(1.44kg)を、撹拌機および溜出凝縮装置付きのSUS製反応器(内容積10リットル)内に入れ、反応器内を窒素ガスで置換後、窒素ガス雰囲気下で220℃まで30分間かけて昇温した。
次いで、反応器内の反応液を撹拌し、溶融状態下の反応液にエステル交換反応触媒として炭酸セシウム(Cs2CO3)を、BPC1モルに対し1.5×10−6モルとなるように加え(Cs2CO3として3.20mg)、窒素ガス雰囲気下、220℃で30分、反応液を撹拌醸成した。次に、同温度下で反応器内の圧力を40分かけて100Torrに減圧し、さらに、100分間反応させ、フェノールを溜出させた。
次に、溶融状態のままの反応液を2軸押出機に送入し、炭酸セシウムに対して4倍モル量のp−トルエンスルホン酸ブチルを2軸押出機の第1供給口から供給し、反応液と混練し、その後、反応液を2軸押出機のダイを通してストランド状に押し出し、カッターで切断してカーボネート樹脂のペレットを得た。
実施例1において、BPC6.59モル(1.69kg)に変更し反応器内の温度を最終的に284℃とした以外は実施例1と同様の条件でポリカーボネート樹脂を製造した。得られたポリカーボネート樹脂(PC−2)の物性値を表1に示す。
BPC13.80kg/時、水酸化ナトリウム(NaOH)5.8kg/時及び水93.5kg/時を、ハイドロサルファイト0.017kg/時の存在下に、35℃で溶解した後、25℃に冷却した水相と5℃に冷却した塩化メチレン61.9kg/時の有機相とを、各々内径6mm、外径8mmのテフロン製配管に供給し、これに接続する内径6mm、長さ34mのテフロン製パイプリアクターにおいて、ここに別途導入される0℃に冷却した液化ホスゲン7.2kg/時と接触させた。
実施例1において、BPC100%の使用に変え、ビスフェノールA(BPAと略す)0.84kgおよびBPC0.84kgを併用し、炭酸セシウム(Cs2CO3)を全ジヒドロキシ化合物(BPA+BPC)1モルに対し、1.0×10−6モルとなるように変更し、それ以外は実施例1と同様の条件でポリカーボネート樹脂を製造した。
図1は、得られた共重合ポリカーボネート樹脂(PC−4)の1H−NMR測定チャートである。図1に示したポリカーボネート樹脂の1H−NMRチャートにおける各プロトン(下線部)を以下のように帰属した。
δ1.6−1.8:BPA由来(a)のCH3+BPC由来(a)のCH3
δ2.2−2.4:BPC由来(b)のCH3
それぞれの積分値から、BPAカーボネート部とBPCカーボネート部とのモル比を算出した後、質量換算し、算出した。
δ1.6−1.8の積分値が12.34、δ2.2−2.4の積分値が6.00のとき、下記の計算によりBPAカーボネート部が51.5mol%、BPCカーボネート部が48.5mol%となる。
BPA:BPC=(12.34−6.00)/6H:6.00/6H=1.0:0.94
BPA=1.0/(1.0+0.94)×100=51.5mol%
BPC=0.94/(1.0+0.94)×100=48.5mol%
従って、質量%は、BPAカーボネート部が48.9質量%、BPCカーボネート部が51.1質量%となる。
BPA=51.5×254/(51.5×254+48.5×282)×100=48.9質量%
BPC=48.5×282/(51.5×254+48.5×282)×100=51.1質量%
その他、物性測定値を表1に示す。
実施例3において、BPC100%の使用に変え、BPA6.1kg/時およびBPC7.7kg/時を併用し、分子量調節剤としてp−t−ブチルフェノールを0.22kg/時に変更し、それ以外は実施例3と同様の条件でポリカーボネート樹脂を製造した。得られたポリカーボネート樹脂(PC−5)の組成を1H−NMRで測定した結果、BPAカーボネート部が44.8質量%、BPCカーボネート部が54.2質量%であった。物性測定値を表1に示す。
実施例1において、BPC100%の使用に変え、BPA0.34kgと2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(Tm−BPAと略す)1.34kgを併用し、Cs2CO3をBPAとTm−BPAの合計量の1モルに対し、5.0×10−6モルに変更し、THPEをBPAとTm−BPAの合計量の1モルに対し3.5×10−3モル添加した以外は、実施例1と同様の条件でポリカーボネート樹脂を製造した。
図2は、得られた共重合ポリカーボネート樹脂(PC−6)の1H−NMR測定チャートである。図2に示したポリカーボネート樹脂の1H−NMRの測定した結果により、樹脂中のBPAカーボネート部が20.4質量%、Tm−BPAカーボネート部が79.6質量%であった。物性を表1に示す。
実施例3において、BPC100%の使用に変え、BPC6.9kg/時と1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(Bis−OCZと略す)6.9kg/時を併用し、それ以外は実施例3と同様の条件でポリカーボネート樹脂を製造した。得られたポリカーボネート樹脂(PC−7)の、組成を1H−NMRで測定した結果、BPCカーボネート部が50.4質量%、Bis−OCZカーボネート部が49.6質量%であった。物性測定値を表1に示す。
実施例1において、BPCに変えて、BPA1.44kgを使用した以外は実施例1と同様に実施した。得られたポリカーボネート樹脂(PC−8)の測定値を表2に示した。
実施例5において、BPAとBPCに変えてBPA15.09kg/時を使用した以外は実施例5と同様にして行った。得られたポリカーボネート樹脂(PC−9)の測定値を表2に示した。
実施例3において、分岐化剤を使用しない以外は実施例3と同様にして行った。得られたポリカーボネート樹脂(PC−10)の測定値を表2に示した。
実施例7において、BPCおよびBisOCZに変えてBPA6.9kg/時とBisOCZ6.9kg/時を使用した以外は実施例7と同様にして行った。得られたポリカーボネート樹脂(PC−11)の組成を1H−NMRで測定した結果、BPAカーボネート部が50.5質量%、Bis−OCZカーボネート部が49.5質量%であった。物性測定値を表2に示した。
実施例1において、BPCに変えてBPA0.83kgとBisOCZ0.83kgを使用しCs2CO3を全ビスフェノール1モルに対して5.0×10−6モルに変更した以外は実施例1と同様に行った。得られたポリカーボネート樹脂(PC−12)の組成を1H−NMRで測定した結果、BPAカーボネート部が50.2質量%、Bis−OCZカーボネート部が49.8質量%であった。物性測定値を表2に示した。
特開昭64−69625号公報の実施例1に従い、以下の操作によりポリカーボネート樹脂を合成した。BPC6.54モル(1.675kg)とジフェニルカーボネート6.73モル(1.440kg)を内容積が10リットルの撹拌機および溜出凝縮装置付きのSUS製反応器内に入れ、脱気、窒素パージを5回繰り返した後、160℃で窒素を導入しながら溶融させた。その後、触媒として水素化ホウ素カリウムを予めフェノールに溶かした溶液(仕込んだビスフェノール全量に対して10−3モル%の量)を加え、160℃、窒素下、30分間撹拌醸成した。次に、同温度下100Torrに減圧し、60分反応させた。次に徐々に温度を220℃まで上げ60分反応させ、ここまでの反応でフェノール留出理論量のほぼ80%を留出させた。しかる後、同温度下で10Torrに減圧し30分反応させ温度を徐々に270℃に上げ、30分反応させた。さらに同温度下で5Torrに減圧し30分反応させ、フェノール留出理論量のほぼ全量を留出させ前縮合を終えた。次に同温度下で0.1〜0.3Torrで2時間縮合させた。窒素下にて生成物のポリカーボネート樹脂を取り出した。得られたポリカーボネート樹脂(PC−13)の測定値を表2に示した。
特開平8−183852号公報の実施例4に従い、以下の操作によりポリカーボネート樹脂を合成した。Tm−BPAを4.5モル(1.28kg)、BPAを1.5モル(0.34kg)と、ジフェニルカーボネート6.7モル(1.435kg)と内容積が10リットルの撹拌機および溜出凝縮装置付きのSUS製反応器内に入れ、N2雰囲気下、180℃で30分間撹拌した。その後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの15%水溶液を、芳香族ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対してテトラメチルアンモニウムヒドロキシドが2.5×10−4モルになる量で、また水酸化ナトリウムを芳香族ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して1×10−6モルの量で加え、N2雰囲気下、180℃で30分間、エステル交換反応を行なった。その後、210℃に昇温して、圧力を徐々に200Torrまで減圧して1時間、さらに240℃まで昇温して200Torrで20分間、圧力を徐々に150Torrまで減圧して20分間、さらに100Torrまで減圧し20分間、15Torrまで減圧して15分間反応させた後、280℃に昇温し、最終的に0.5Torrまで減圧して1.5時間反応させた。さらに反応器からポリマーを取り出す前に、p−トルエンスルホン酸ブチルを、添加した水酸化ナトリウムの2倍モル量加えて、15分間撹拌してポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂(PC−14)の組成を1H−NMRで測定した結果、BPAカーボネート部が21.2質量%、Tm−BPAカーボネート部が78.8質量%であった。物性の測定値を表2に示す。
Claims (11)
- 分子中に少なくとも下記一般式(1)で表される繰返し単位を含有し、且つ、下記(a)から(d)の条件を満たすことを特徴とするポリカーボネート樹脂。
(一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、Xは、単結合、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のアルキリデン基、置換若しくは無置換の硫黄原子、又は酸素原子を示す。)
(a)塩化メチレン溶媒中、20℃における極限粘度[η](dl/g)が、0.40以上2.0以下の範囲である。
(b)分岐パラメーターG=[η]/[η]linが、0.1以上0.9以下の範囲である。但し、[η]linは、光散乱法又は汎用較正曲線を用いたGPC法で測定される重量平均分子量が前記ポリカーボネート樹脂と同一の直鎖状ポリカーボネートの、塩化メチレン溶媒中、20℃における極限粘度である。
(c)キャピラリーレオメーターで測定した、300℃、剪断速度10sec−1における溶融粘度(Pa・s)の対数値lnη* 10を、塩化メチレン溶媒中、20℃における極限粘度[η](dl/g)で除した数値lnη* 10/[η]が、14.0以下であり且つ、300℃、剪断速度1000sec−1における溶融粘度(Pa・s)の対数値lnη* 1000を、塩化メチレン溶媒中、20℃における極限粘度[η](dl/g)で除した数値lnη* 1000/[η]が11.0以下である。
(d)JIS K5400に準拠した鉛筆硬度が、HB以上である。 - ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が、3.0以上5.0以下の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂。
- 前記一般式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物が、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、及び1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンからなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項4又は5に記載のポリカーボネート樹脂。
- 末端水酸基濃度が、100ppm〜2,000ppmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂。
- モノヒドロキシ化合物とジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを、合計量で10ppm〜500ppmの範囲で含有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂。
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