JP5989358B2 - ポリカーボネート樹脂成形体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂成形体及びその製造方法に関する。より詳しくは、構造単位の異なる少なくとも2種のポリカーボネート樹脂を含むポリカーボネート樹脂からなる成形体及びその製造方法に関するものである。
ポリカーボネート樹脂は、機械的強度、電気特性、透明性などに優れ、エンジニアリングプラスチックとして、電気・電子機器分野、自動車分野等様々な分野において幅広く利用されている。近年、これら用途分野においては、成形加工品の薄肉化、小型化、軽量化が進展し、成形素材のさらなる性能向上が要求されている。しかしながら、ビスフェノールAを原料とする従来のポリカーボネート樹脂は、表面硬度が充分に優れているとはいえなかった。そこで、高強度で、表面硬度が高いポリカーボネート樹脂の開発が望まれるようになり、いくつかの提案がなされている。
例えば、特許文献1や特許文献2には、ビスフェノールAとは異なるビスフェノール類をモノマーに用いて表面硬度に優れたポリカーボネート・コポリカーボネートを製造する方法が提案されている。しかしながら、この方法では表面硬度に優れたポリカーボネート樹脂組成物を得られたとしてもその他物性を犠牲にせざるを得なかった。
また、特許文献3には、ハードコート処理のような成形片上に異なる種類のポリマーを貼り付け、多層構造とする方法が提案されている。しかしながら、この方法では、シート状などに成形体の形状が限定されるという問題があり、使用される用途が限られていた。
また、多層構造とするために工程が増え、成形時に煩雑な処理をしなければならず、ハードコート時に不良品が発生するなど、生産性が低い欠点を有していた。
特開昭64−69625号公報 特開平8−6183852号公報 特開2010−188719号公報
このように従来の方法では、薄肉でも高強度で、耐熱性、成形性に優れる、表面硬度が高く、且つ色調の優れるポリカーボネート樹脂成形体を得ることができなかった。
かかる状況下、本発明の目的は、ポリカーボネート樹脂成形体において、表面ハードコートや異なるポリカーボネート樹脂からなる積層構造によることなく、表面硬度に優れ、耐衝撃性に優れるポリカーボネート樹脂成形体を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に到達した。
本発明の要旨は以下の<1>から<14>に存する。
<1> 下記一般式(1)で表される化合物に由来する構造単位(a)と、前記構造単位(a)とは異なる構造単位(b)とを含むポリカーボネート樹脂成形体であって、
ポリカーボネート樹脂成形体表面における該構造単位(a)の含有率[S]と該ポリカーボネート樹脂成形体全体の該構造単位(a)の含有率[T]との比(S/T)が、1.00より大きく、2.00以下であるポリカーボネート樹脂成形体。
Figure 0005989358
(一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、Xは、単結合、カルボニル基、置換若しくは無置換のアルキリデン基、置換若しくは無置換の硫黄原子、又は酸素原子を示す。)
<2> 当該ポリカーボネート樹脂成形体が、射出成形体である前記<1>に記載のポリカーボネート樹脂成形体。
<3> ポリカーボネート樹脂成形体表面における該構造単位(a)の含有率[S]と該ポリカーボネート樹脂成形体全体の該構造単位(a)の含有率[T]の比(S/T)が、1.01以上1.50以下である前記<1>又は<2>に記載のポリカーボネート樹脂成形体。
<4> ポリカーボネート樹脂成形体表面のISO 15184で規定される鉛筆硬度が、HB以上である前記<1>乃至<3>のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂成形体。
<5> 前記構造単位(a)が、下記一般式(1a)〜(1c)からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物に由来する構造単位である前記<1>乃至<4>のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂成形体。
Figure 0005989358

Figure 0005989358

Figure 0005989358

<6> 前記構造単位(b)が、主として下記一般式(2)の化合物に由来する構造単位である前記<1>乃至<5>のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂成形体。
Figure 0005989358
<7> 前記一般式(1)で表される化合物に由来する構造単位(a)を含むポリカーボネート樹脂(A)と、
前記構造単位(a)とは異なる構造単位(b)とを含み、且つ、前記ポリカーボネート樹脂(A)とは異なる構造を有するポリカーボネート樹脂(B)と、を少なくとも含有する前記<1>乃至<6>のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂成形体。
<8> 前記ポリカーボネート樹脂(A)のISO 15184で規定される鉛筆硬度が、前記ポリカーボネート樹脂(B)のISO 15184で規定される鉛筆硬度より高い前記<7>に記載のポリカーボネート樹脂成形体。
<9> 前記ポリカーボネート樹脂(A)のISO 15184で規定される鉛筆硬度が、F以上である前記<7>又は<8>に記載のポリカーボネート樹脂成形体。
<10> 前記ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が、前記ポリカーボネート樹脂(B)の粘度平均分子量よりも小さい前記<7>乃至<9>のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂成形体。
<11> 下記一般式(1)で表される化合物に由来する構造単位(a)を含むポリカーボネート樹脂(A)と、前記構造単位(a)とは異なる構造単位(b)を含むポリカーボネート樹脂(B)とを少なくとも含有し、該ポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)と溶融混練あるいはドライブレンドした後に成形する前記<7>乃至<10>のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂成形体の製造方法であって、
前記ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が、前記ポリカーボネート樹脂(B)の粘度平均分子量よりも小さいポリカーボネート樹脂成形体の製造方法。
Figure 0005989358
(一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、Xは、単結合、カルボニル基、置換若しくは無置換のアルキリデン基、置換若しくは無置換の硫黄原子、又は酸素原子を示す。)
<12> 前記構造単位(a)が、下記一般式(1a)〜(1c)からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物に由来する構造単位である前記<11>に記載のポリカーボネート樹脂成形体の製造方法。
Figure 0005989358
Figure 0005989358

Figure 0005989358
<13> 前記構造単位(b)が、主として下記一般式(2)の化合物に由来する構造単位である前記<11>又は<12>に記載のポリカーボネート樹脂成形体の製造方法。
Figure 0005989358
<14> 前記成形が、射出成形である前記<11>乃至<13>のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂成形体の製造方法。
本発明によれば、表面硬度に優れたポリカーボネート樹脂成形体が提供される。
本発明は、下記一般式(1)で表される化合物に由来する構造単位(a)と、前記構造単位(a)とは異なる構造単位(b)とを含むポリカーボネート樹脂成形体であって、ポリカーボネート樹脂成形体表面における該構造単位(a)の含有率[S]と該ポリカーボネート樹脂成形体全体の該構造単位(a)の含有率[T]との比(S/T)が、1.00より大きく、2.00以下であるポリカーボネート樹脂成形体に関する。
Figure 0005989358
(一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、Xは、単結合、カルボニル基、置換若しくは無置換のアルキリデン基、置換若しくは無置換の硫黄原子、又は酸素原子を示す。)
本発明の特徴は、上記2種類の構造単位を含むポリカーボネート樹脂成形体において、ポリカーボネート樹脂成形体表面における該構造単位(a)の含有率[S]と該ポリカーボネート樹脂成形体全体の該構造単位(a)の含有率[T]の比(S/T)が、1.00より大きく、2.00以下であり、好ましくは、S/Tが1.01以上1.50以下、さらに好ましくは1.10以上1.20以下であることである。
すなわち、本発明のポリカーボネート樹脂成形体は、該ポリカーボネート樹脂成形体表面における構造単位(a)の含有率が該ポリカーボネート樹脂成形体全体の構造単位(a)の含有率より大きい。
このように、ポリカーボネート樹脂成形体表面に構造単位(a)をより多く含有するポリカーボネート樹脂成形体であると、表面硬度が大幅に向上し、且つ色調が良好であり、耐衝撃性が改良されたポリカーボネート樹脂成形体が得られる。
特に上記S/Tが、1.01以上1.50以下であると、表面硬度、耐衝撃性がより優れたポリカーボネート樹脂成形体が得られる。
なお、ポリカーボネート樹脂成形体表面における該構造単位(a)の含有率[S]と、該ポリカーボネート樹脂成形体全体の該構造単位(a)の含有率[T]は、NMR法により求めることができる。より詳しくは、核磁気共鳴装置(NMR装置)を使用し、ポリカーボネート樹脂成形体の重クロロホルム溶液を1H−NMR測定した際に観測される、ジヒドロキシ化合物に依存した特徴的なシグナルの面積強度比により、各構造単位のモル組成を求めることができる。この得られたモル組成と、各構造単位の式量より、各構造単位の重量比が求まる。
ポリカーボネート樹脂成形体表面における該構造単位(a)の含有率[S]、該ポリカーボネート樹脂成形体全体の該構造単位(a)の含有率[T]のそれぞれの具体的な求め方は以下の通りである。
(I)ポリカーボネート樹脂成形体表面における構造単位(a)の含有率[S]
室温(25℃)にて塩化メチレン中にポリカーボネート樹脂成形体全体を浸漬する。浸漬開始から、5秒経過後に該ポリカーボネート樹脂成形体を塩化メチレンから取り出して、塩化メチレン溶液を得る。該塩化メチレン溶液から塩化メチレンを除去し、残渣を得る。該残渣を重クロロホルムに溶解させ、該溶液を1H−NMR法を用いて測定する。
得られた1H−NMRスペクトルの構造単位(a)のシグナル強度とその他の構造単位のシグナル強度から、得られるすべての構造単位の合計に対する構造単位(a)の割合を算出し、ポリカーボネート樹脂成型体表面における構造単位(a)の含有率[S](wt%)とする。
(II)ポリカーボネート樹脂成形体全体の構造単位(a)の含有率[T]
室温(25℃)にて塩化メチレン中にポリカーボネート樹脂成形体全体を浸漬させ完全溶解し、塩化メチレン溶液を得る。該塩化メチレン溶液のうち約50gを分取し、塩化メチレンを除去し、残渣を得る。該残渣を重クロロホルムに溶解させ、該溶液を1H−NMR法を用いて測定する。
得られた1H−NMRスペクトルの構造単位(a)のシグナル強度とその他の構造単位のシグナル強度から、得られるすべての構造単位の合計に対する構造単位(a)の割合を算出し、成形体全体の構造単位(a)の含有率[T](wt%)とする。
本発明のポリカーボネート樹脂成形体は、射出成形体であることが好ましい。
射出成形体であると、複雑な形状の成形体を高サイクルで成形できるなどの利点がある。
本発明のポリカーボネート樹脂成形体表面のISO 15184で規定される鉛筆硬度は、通常HB以上、好ましくはF以上、さらに好ましくはH以上である。ポリカーボネート樹脂成形体表面の鉛筆硬度が低いと、成形体が傷つきやすい場合がある。なお、鉛筆硬度はランクが低い方から、2B、B、HB、F、H、2H、3H、4Hである。
なお、表面の鉛筆硬度を評価する際のポリカーボネート樹脂成形体の成形条件は、特に限定されず、任意の成形方法でよい。
また、ポリカーボネート樹脂成形体のシャルピー衝撃強度は、最終製品の形態、用途等により適宜決定されるが、通常、8kJ/m2以上、好ましくは10kJ/m2以上である。シャルピー衝撃強度値が、8kJ/m2未満の場合はポリカーボネート樹脂成形体が割れやすくなる虞がある。ポリカーボネート樹脂成形体のシャルピー衝撃強度は、JIS K−7111に基づく測定法で求めることができる。具体的な測定法は、実施例にて詳述する。
本発明のポリカーボネート樹脂成形体のイエローインデックス(YI)は、通常4.0以下、好ましくは3.5以下、更に好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.5以下である。YIが高すぎると、色調が悪くなり、成形品として意匠性が乏しくなり、とりわけ着色が必要な成形体商品においては明度が十分でなくなり、くすんだ色となる可能性がある。
以下、本発明のポリカーボネート樹脂成形体を構成するポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート樹脂組成物における構造単位について説明する。
<構造単位(a)>
構造単位(a)は、上述の一般式(1)で表される化合物に由来する構造単位である。
一般式(1)において、R1及びR2の、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられ、置換若しくは無置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
3及びR4の、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられ、置換若しくは無置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
これらの中でも、R1及びR2は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、4−メチルフェニル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。R3及びR4は、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、4−メチルフェニル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。ここで、一般式(1)におけるR1、R2、R3、R4の結合位置は、それぞれのフェニル環上のXに対して2位、3位、5位及び6位から選ばれる任意の位置であり、好ましくは3位、5位である。
また、一般式(1)において、Xが、置換若しくは無置換のアルキリデン基の場合は、下記の構造式で表される。Xが、置換若しくは無置換の硫黄原子としては、例えば、−S−、−SO2−が挙げられる。
Figure 0005989358
ここで、R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、Zは、置換若しくは無置換の炭素数4〜炭素数20のアルキレン基又はポリメチレン基を示す。
5及びR6の、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられ、置換若しくは無置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
これらの中でも、R5及びR6は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、4−メチルフェニル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
Zは一般式(1)において、2個のフェニル基と結合する炭素と結合して、置換若しくは無置換の二価の炭素環を形成する。二価の炭素環としては、例えば、シクロペンチリデン基、シキロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基又はアダマンチリデン基等のシクロアルキリデン基(好ましくは炭素数4〜炭素数12)が挙げられ、置換されたものとしては、これらのメチル置換基、エチル置換基を有するもの等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シクロヘキシリデン基のメチル置換体、シクロドデシリデン基が好ましい。
構造単位(a)の中でも、下記一般式(1a)〜(1i)からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物に由来する構造単位が好ましい。
Figure 0005989358

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上記の化合物の中でも、特に上記一般式(1a)〜(1c)からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物に由来する構造単位がより好適である。
<構成単位(b)>
構造単位(b)は、上述の構造単位(a)以外の構造単位であればよく、複数種類の構成単位であってもよい。
好適な具体的としては、下記一般式(2)〜(13)からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物に由来する構造単位が挙げられる。
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構造単位(b)として、上記一般式(2)で示されるビスフェノールAに由来する構造単位が含まれることが好ましく、構造単位(b)が、主として一般式(2)で示される構造単位であることがより好ましく、一般式(2)で示される構造単位のみであることが特に好ましい。
ここで、「主として」とは、構造単位(b)のうち、80重量%以上が一般式(2)で示される構造単位であることを意味する。
<ポリカーボネート樹脂成形体における構成単位の含有割合>
本発明のポリカーボネート樹脂成形体における、構造単位(a)の含有率(平均含有率)は特に限定はないが、該ポリカーボネート樹脂の構成単位全量(構造単位(a)、構造単位(b)及びその他の構造単位の合計)を100重量%として、通常、50重量%未満であり、20重量%以下が好ましい。
なお、ポリカーボネート樹脂成形体中の構造単位の含有率は、NMR法により求めることができる。
なお、本発明のポリカーボネート樹脂成形体は、製造が容易になるという点で、前記一般式(1)で表される化合物に由来する構造単位(a)を含むポリカーボネート樹脂(A)と、前記構造単位(a)とは異なる構造単位(b)を含み、且つ、前記ポリカーボネート樹脂(A)とは異なる構造を有するポリカーボネート樹脂(B)と、を少なくとも含有するポリカーボネート樹脂成形体であることが好ましい。
なお、上記ポリカーボネート樹脂(B)は、構造単位(a)とは異なる構造単位(b)を含み、且つ、ポリカーボネート樹脂(A)と異なる構造を有するポリカーボネート樹脂である。すなわち、ポリカーボネート樹脂(A)が構造単位(a)からなるホモポリマーであり、ポリカーボネート樹脂(B)が構造単位(b)からなるホモポリマーである場合のみならず、ポリカーボネート樹脂(B)が、構造単位(b)以外の構造単位として構造単位(a)を含む共重合体(コポリマー)である場合でも、ポリカーボネート樹脂(A)と「異なる構造」である。
ここで、「異なる構造」とは、ポリカーボネート樹脂を構成する、
(I)構造単位の種類が異なること、
及び
(II)構造単位の種類が同一で、その構造単位の組成比が異なること、
を含む概念である。
上記(I)の具体例は、ポリカーボネート樹脂(A)が構造単位(a)と構造単位(c)とからなるコポリマーであり、ポリカーボネート樹脂(B)が構造単位(b)と構造単位(d)とからなるコポリマーである場合である。
上記(II)の具体例は、ポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)のそれぞれが構造単位(a)及び構造単位(b)とからなり、ポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)における構造単位(a)と構造単位(b)との比率が相違する場合である。
なお、本発明のポリカーボネート樹脂成形体が上記ポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)を含む場合、ポリカーボネート樹脂(A)のISO 15184で規定される鉛筆硬度が、ポリカーボネート樹脂(B)のISO 15184で規定される鉛筆硬度より高いことが望ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)の鉛筆硬度がポリカーボネート樹脂(B)の鉛筆硬度と同じかあるいは低い場合には、ポリカーボネート樹脂成形体の鉛筆硬度が低くなる可能性があり、ポリカーボネート樹脂成形体表面が傷つきやすい。
ポリカーボネート樹脂(A)の好適な鉛筆硬度は、ISO 15184で規定される鉛筆硬度でF以上である。ポリカーボネート樹脂(A)の鉛筆硬度がF未満であると、ポリカーボネート樹脂成形体の鉛筆硬度を十分に向上できない場合がある。
なお、上記ポリカーボネート樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)の鉛筆硬度は、実施例にて後述するポリカーボネート樹脂成形体表面の鉛筆硬度にて記載した方法で得られるポリカーボネート樹脂成形体の表面強度をもって、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)それぞれの鉛筆硬度とする。
更に、本発明のポリカーボネート樹脂成形体が上記ポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)を含む場合、ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が、前記ポリカーボネート樹脂(B)の粘度平均分子量よりも小さいことが好ましい。かかる粘度平均分子量の相違によりポリカーボネート樹脂成形体表面とポリカーボネート樹脂成形体内部で構造単位の含有量が異なるポリカーボネート樹脂成形体を得ることができると推定される。
以下、本発明のポリカーボネート樹脂成形体を構成するポリカーボネート樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)について詳細に説明する。
<ポリカーボネート樹脂(A)>
ポリカーボネート樹脂(A)は、上述の構造単位(a)を含んでいればよく、その性能を損なわない範囲で構造単位(a)以外の構造単位を含んでいてもよい。
構造単位(a)以外の構造単位としては、特に制限はないが、具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」と称する場合がある。)、無水糖アルコール等の脂環式ジヒドロキシ化合物、スピログリコール等の環状エーテル化合物に由来する構造単位が挙げられる。この中でもビスフェノールAに由来する構造単位が特に好ましい。
なお、本発明のポリカーボネート樹脂成形体の製造の容易性の観点から、ポリカーボネート樹脂(A)における構造単位(a)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)を構成単位全量を100重量%として、50重量%以上が好ましく、75重量%以上がより好ましく、95重量%以上(100重量%含む)が特に好ましい。
なお、ポリカーボネート樹脂(A)中の構造単位の含有量は、上述のポリカーボネート樹脂成形体にて説明したNMR法により求めることができる。
前記ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量であるMv(a)は、通常、1,000〜100,000の範囲であり、好ましくは3,000〜50,000、より好ましくは5,000〜30,000、さらに好ましくは6,000〜25,000の範囲である。Mv(a)が高すぎると、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度が高くなり、また表面硬度向上効果が小さくなる可能性があり好ましくない。また、Mv(a)が低すぎると、最終製品であるポリカーボネート樹脂成形体の表面硬度向上効果が小さくなり、また耐衝撃性、強度なども低くなる場合があるため好ましくない。
<ポリカーボネート樹脂(B)>
ポリカーボネート樹脂(B)の具体的としては、上述した一般式(2)〜(13)からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂が挙げられる。
特に、構造単位(b)として、下記一般式(2)で示されるビスフェノールAに由来する構造単位が好適である。
なお、ポリカーボネート樹脂(B)は、構造単位(a)以外の構造単位である構造単位(b)を含めばよく、構造単位(b)以外の構造単位を含んでいてもよい。従って、ポリカーボネート樹脂(B)は、構造単位(a)を含んでいてもよい(すなわち、ポリカーボネート樹脂(B)が、構造単位(a)と構造単位(b)を含むコポリマー)。
一方で、ポリカーボネート樹脂(B)が、構造単位(a)を多く含むと、色調が悪化したり、耐衝撃性が低下したりする虞があるため、ポリカーボネート樹脂(B)に含まれる構造単位(a)の割合は、ポリカーボネート樹脂(B)を構成単位全量を100重量%として、50重量%未満が好ましく、25重量%未満がより好ましく、5重量%未満(0重量%含む)が好ましい。
特にポリカーボネート樹脂(B)が、構造単位(b)として、上記一般式(2)で示される構造単位を主として含むビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂であることが好ましい。ここで、「ビスフェノールAに由来する構造単位を主として含む」とは、ポリカーボネート樹脂(B)を構成する構造単位のうち、50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上が、ビスフェノールAに由来する構造単位であることを意味する。
なお、ポリカーボネート樹脂(B)中の構造単位の含有量は、上述のポリカーボネート樹脂成形体にて説明したNMR法により求めることができる。
前記ポリカーボネート樹脂(B)の粘度平均分子量であるMv(b)は、通常、1,000〜100,000の範囲であり、好ましくは5,000〜50,000、より好ましくは10,000〜40,000、さらに好ましくは20,000〜30,000の範囲である。Mv(b)が高すぎると、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度が高くなり、流動性が低下する可能性があるため好ましくない。また、Mv(b)が低すぎると、樹脂組成物の表面硬度向上効果が小さくなり、また耐衝撃性、強度なども低くなる場合があるため好ましくない。
<ポリカーボネート樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)の製造方法>
次に、本発明のポリカーボネート樹脂成形体の原料である、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)の製造方法について説明する。(以下、「ポリカーボネート樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)」を「ポリカーボネート樹脂」と総称する場合がある。)
本発明のポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物とカルボニル化合物とを用いて重合することにより得られる。具体的には、ジヒドロキシ化合物と塩化カルボニル(以下「CDC」もしくは「ホスゲン」と称することがある。)とを、任意に混合しない有機相と水相との界面にて反応させることによりポリカーボネート樹脂を製造する界面重縮合法(以下、「界面法」と称することがある。)と、ジヒドロキシ化合物とカルボニル化合物とをエステル交換反応触媒存在下、溶融状態にてエステル交換反応させることによりポリカーボネート樹脂を製造する溶融重縮合法(以下、「溶融法」と称することがある。)がある。
以下、界面法および溶融法のそれぞれについて、具体的に説明する。
<界面法>
界面法による本発明のポリカーボネート樹脂は、通常、ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液を調製し、縮合触媒として、例えばアミン化合物の存在下で、ジヒドロキシ化合物とホスゲンとの界面重縮合反応を行い、次いで、中和、水洗、乾燥工程を経てポリカーボネート樹脂が得られる。具体的には、界面法によるポリカーボネート樹脂製造プロセスは、モノマー成分等の原料調製を行う原調工程、オリゴマー化反応が行われるオリゴマー化工程、オリゴマーを用いた重縮合反応が行われる重縮合工程、重縮合反応後の反応液をアルカリ洗浄、酸洗浄、水洗浄により洗浄する洗浄工程、洗浄された反応液を予濃縮しポリカーボネート樹脂を造粒後に単離するポリカーボネート樹脂単離工程、単離されたポリカーボネート樹脂の粒子を乾燥する乾燥工程を、少なくとも有している。以下、各工程について説明する。
(原調工程)
原調工程では、原調タンクに、ジヒドロキシ化合物と、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ金属化合物の水溶液又は水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物の水溶液と、脱塩水(DMW)と、さらに必要に応じてハイドロサルファイト(HS)等の還元剤を含むジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液等の原料が調製される。
(ジヒドロキシ化合物)
本発明に係るポリカーボネート樹脂の原料であるジヒドロキシ化合物としては、具体的には前記一般式(1)から(13)で表されるジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
(金属化合物)
金属化合物としてはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物又はマグネシウム化合物が挙げられ、通常、水酸化物が好ましく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等がより好ましい。これらの中でも、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
ジヒドロキシ化合物に対するアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物又はマグネシウム化合物の割合は、通常、1.0〜1.5(当量比)、好ましくは、1.02〜1.04(当量比)である。アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の割合が過度に多い又は過度に少ない場合は、後述するオリゴマー化工程において得られるカーボネートオリゴマーの末端基に影響し、その結果、重縮合反応が異常となる傾向がある。
(オリゴマー化工程)
次に、オリゴマー化工程では、所定の反応器において、原調工程で調製されたジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液とホスゲン(CDC)とを、塩化メチレン(CH2Cl2)等の有機溶媒の存在下で、ジヒドロキシ化合物のホスゲン化反応が行われる。
続いて、ジヒドロキシ化合物のホスゲン化反応が行われた混合液に、トリエチルアミン(TEA)等の縮合触媒と、p−t−ブチルフェノール(pTBP)等の連鎖停止剤が添加され、ジヒドロキシ化合物のオリゴマー化反応が行われる。
次に、ジヒドロキシ化合物のオリゴマー化反応液は、さらにオリゴマー化反応が進められた後、所定の静置分離槽に導入され、カーボネートオリゴマーを含有する有機相と水相とが分離され、分離された有機相は、重縮合工程に供給される。
ここで、ジヒドロキシ化合物のホスゲン化反応が行われる反応器にジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液が供給されてから静置分離槽に入るまでのオリゴマー化工程における滞留時間は、通常、120分以下、好ましくは、30分〜60分である。
(ホスゲン)
オリゴマー化工程で使用するホスゲンは、通常、液状又はガス状で使用される。オリゴマー化工程におけるCDCの好ましい使用量は、反応条件、特に、反応温度及び水相中のジヒドロキシ化合物の濃度によって適宜選択され、特に限定されない。通常、ジヒドロキシ化合物の1モルに対し、CDC1モル〜2モル、好ましくは1.05モル〜1.5モルである。CDCの使用量が過度に多いと、未反応CDCが多くなり原単位が極端に悪化する傾向がある。また、CDCの使用量が過度に少ないと、クロロフォルメート基量が不足し、適切な分子量伸長が行われなくなる傾向がある。
(有機溶媒)
オリゴマー化工程では、通常、有機溶媒を使用する。有機溶媒としては、オリゴマー化工程における反応温度及び反応圧力において、ホスゲン及びカーボネートオリゴマー、ポリカーボネート樹脂等の反応生成物を溶解し、水と相溶しない(または、水と溶液を形成しない)任意の不活性有機溶媒が挙げられる。
このような不活性有機溶媒として、例えば、ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン及び1,2−ジクロロエチレン等の塩素化脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン及びクロロトルエン等の塩素化芳香族炭化水素;その他、ニトロベンゼン及びアセトフェノン等の置換芳香族炭化水素等が挙げられる。
これらの中でも、ジクロロメタン又はクロロベンゼン等の塩素化された炭化水素が好適に使用される。これらの不活性有機溶媒は、単独であるいは他の溶媒との混合物として使用することができる。
(縮合触媒)
オリゴマー化反応は、縮合触媒の存在下で行うことができる。縮合触媒の添加時期は、CDCを消費した後が好ましい。縮合触媒としては、二相界面縮合法に使用されている多くの縮合触媒の中から、任意に選択することができる。例えば、トリアルキルアミン、N−エチルピロリドン、N−エチルピペリジン、N−エチルモルホリン、N−イソプロピルピペリジン、N−イソプロピルモルホリン等が挙げられる。中でも、トリエチルアミン、N−エチルピペリジンが好ましい。
(連鎖停止剤)
本実施の形態において、オリゴマー化工程では、通常、連鎖停止剤としてモノフェノールを使用する。モノフェノールとしては、例えば、フェノール;p−t−ブチルフェノール、p−クレゾール等の炭素数1〜炭素数20のアルキルフェノール;p−クロロフェノール、2,4,6−トリブロモフェノール等のハロゲン化フェノールが挙げられる。モノフェノールの使用量は、得られるカーボネートオリゴマーの分子量に応じ適宜選択され、通常、ジヒドロキシ化合物に対して、0.5モル%〜10モル%である。
界面法において、ポリカーボネート樹脂の分子量は、モノフェノール等の連鎖停止剤の添加量で決定される。このため、ポリカーボネート樹脂の分子量を制御する観点から、連鎖停止剤の添加時期は、カーボネート形成性化合物の消費が終了した直後から、分子量伸長が始まる前での間が好ましい。
カーボネート形成性化合物の共存下でモノフェノールを添加すると、モノフェノール同士の縮合物(炭酸ジフェニル類)が多く生成し、目標とする分子量のポリカーボネート樹脂が得られにくい傾向がある。モノフェノールの添加時期が極端に遅れると、分子量制御が困難となり、さらに、分子量分布の低分子側に特異な肩を有する樹脂となり、成形時には垂れを生じる等の弊害が生じる傾向がある。
(分岐剤)
また、オリゴマー化工程では、任意の分岐剤を使用することができる。このような分岐剤としては、たとえば、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(4,4’−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン等が挙げられる。また、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌル等も使用しうる。これらの中でも、少なくとも3個のフェノール性ヒドロキシル基を有する分岐剤が好適である。分岐剤の使用量は、得られるカーボネートオリゴマーの分岐度に応じ適宜選択され、通常、ジヒドロキシ化合物に対し、0.05モル%〜2モル%である。
オリゴマー化工程では、二相界面縮合法を採用した場合、ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属化合物水溶液又はアルカリ土類金属化合物水溶液とホスゲンとの接触に先立ち、ジヒドロキシ化合物を含む有機相とアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含む水相と、水と任意に混合しない有機相とを接触させ、乳濁液を形成させることが特に好ましい。
このような乳濁液を形成する手段としては、例えば、所定の撹拌翼を有する撹拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル、フロージェットミキサー、超音波乳化機等の動的ミキサー、静的ミキサー等の混合機を使用するのが好ましい。乳濁液は、通常、0.01μm〜10μmの液滴径を有し、乳化安定性を有する。
乳濁液の乳化状態は、通常、ウェーバー数又はP/q(単位容積当たりの負荷動力値)で表される。ウェーバー数としては、好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上、最も好ましくは35,000以上である。また、上限としては1,000,000以下程度で十分である。また、P/qとしては、好ましくは200kg・m/L以上、さらに好ましくは500kg・m/L以上、最も好ましくは1,000kg・m/L以上である。
乳濁液とCDCとの接触は、前述した乳化条件よりも弱い混合条件下で行うのがCDCの有機相への溶解を抑制する意味で好ましい。ウェーバー数としては、10,000未満、好ましくは5,000未満、さらに好ましくは2,000未満である。また、P/qとしては、200kg・m/L未満、好ましくは100kg・m/L未満、さらに好ましくは50kg・m/L未満である。CDCの接触は、管型反応器や槽型反応器にCDCを導入することによって達成することができる。
オリゴマー化工程における反応温度は、通常、80℃以下、好ましくは60℃以下、さらに好ましくは10℃〜50℃の範囲である。反応時間は反応温度によって適宜選択され、通常、0.5分〜10時間、好ましくは1分〜2時間である。反応温度が過度に高いと、副反応の制御ができず、CDC原単位が悪化する傾向がある。反応温度が過度に低いと、反応制御上は好ましい状況ではあるが、冷凍負荷が増大し、コストアップとなる傾向がある。
有機相中のカーボネートオリゴマー濃度は、得られるカーボネートオリゴマーが可溶な範囲であればよく、具体的には、10重量%〜40重量%程度である。有機相の割合はジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液又はアルカリ土類金属塩水溶液を含む水相に対し、0.2〜1.0の容積比であることが好ましい。
(重縮合工程)
次に、重縮合工程では、静置分離槽で水相と分離されたカーボネートオリゴマーを含有する有機相は、撹拌機を有するオリゴマー貯槽に移送される。オリゴマー貯槽には、トリエチルアミン(TEA)等の縮合触媒がさらに添加される。
続いて、オリゴマー貯槽内で撹拌された有機相は所定の重縮合反応槽に導入され、続いて、重縮合反応槽に、脱塩水(DMW)、塩化メチレン(CH2Cl2)等の有機溶媒及び水酸化ナトリウム水溶液が供給され、撹拌混合されてカーボネートオリゴマーの重縮合反応が行われる。
重縮合反応槽中の重縮合反応液は、その後、複数の重縮合反応槽に連続的に順次導入され、カーボネートオリゴマーの重縮合反応が完結される。
ここで、重縮合工程において、連続的にカーボネートオリゴマーの重縮合反応が行われる重縮合反応槽における滞留時間は、通常、12時間以下、好ましくは、0.5時間〜5時間である。
重縮合工程の好ましい態様としては、先ず、カーボネートオリゴマーを含む有機相と水相とを分離し、分離した有機相に必要に応じて不活性有機溶媒を追加し、カーボネートオリゴマーの濃度を調整する。この場合、重縮合反応によって得られる有機相中のポリカーボネート樹脂の濃度が5重量%〜30重量%となるように、不活性有機溶媒の量を調整する。次に、新たに水及びアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含む水溶液を加え、さらに、重縮合条件を整えるために、好ましくは縮合触媒を添加し、界面重縮合法に従い重縮合反応を行う。重縮合反応における有機相と水相との割合は、容積比で有機相:水相=1:0.2〜1:1程度が好ましい。
アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物としては、前述したオリゴマー化工程において使用するものと同様な化合物が挙げられる。中でも、工業的に水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の使用量は、重縮合反応中、反応系が常にアルカリ性に保たれる量以上であればよく、重縮合反応の開始時に、全量を一括して添加してもよく、また、重縮合反応中に適宜分割して添加してもよい。
アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の使用量が過度に多いと、副反応である加水分解反応が進む傾向がある。そのため、重縮合反応終了後における水相に含まれるアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の濃度が0.05N以上、好ましくは0.05N〜0.3N程度となるようにするのがよい。
重縮合工程における重縮合反応の温度は、通常、常温付近である。反応時間は0.5時間〜5時間、好ましくは1時間〜3時間程度である。
(洗浄工程)
次に、重縮合反応槽における重縮合反応が完結した後、重縮合反応液は、公知の方法により、アルカリ洗浄液によるアルカリ洗浄、酸洗浄液による酸洗浄及び洗浄水による水洗浄が行われる。なお、洗浄工程の全滞留時間は、通常、12時間以下、好ましくは、0.5時間〜6時間である。
(ポリカーボネート樹脂単離工程)
ポリカーボネート樹脂単離工程では、先ず、洗浄工程において洗浄されたポリカーボネート樹脂を含む重縮合反応液は、所定の固形分濃度に濃縮された濃縮液として調製される。濃縮液におけるポリカーボネート樹脂の固形分濃度は、通常、5重量%〜35重量%、好ましくは、10重量%〜30重量%である。
次に、濃縮液は、所定の造粒槽に連続的に供給され、所定の温度の脱塩水(DMW)と撹拌混合される。そして、水中で懸濁状態を保ちながら有機溶媒を蒸発させる造粒処理が行われ、ポリカーボネート樹脂粒状体を含む水スラリーが形成される。
ここで、脱塩水(DMW)の温度は、通常、37℃〜67℃、好ましくは、40℃〜50℃である。また、造粒槽内で行われる造粒処理によりポリカーボネート樹脂の固形化温度は、通常、37℃〜67℃、好ましくは、40℃〜50℃である。
造粒槽から連続的に排出されるポリカーボネート樹脂粉状体を含む水スラリーは、その後、所定の分離器に連続的に導入され、水スラリーから水が分離される。
(乾燥工程)
乾燥工程では、分離器において、水スラリーから水が分離されたポリカーボネート樹脂粉状体が、所定の乾燥機に連続的に供給され、所定の滞留時間で滞留させた後、連続的に抜き出される。乾燥機としては、例えば流動床型乾燥機が挙げられる。なお、複数の流動床型乾燥機を直列につなぎ、連続的に乾燥処理を行ってもよい。
ここで、乾燥機は、通常、熱媒ジャケット等の加熱手段を有し、例えば、水蒸気にて、通常、0.1MPa−G〜1.0MPa−G、好ましくは、0.2MPa−G〜0.6MPa−Gに保持されている。これにより、乾燥機の中を流通する窒素(N2)の温度は、通常、100℃〜200℃、好ましくは、120℃〜180℃に保持されている。
<溶融法>
次に、溶融法について説明する。
(ジヒドロキシ化合物)
本発明に係るポリカーボネート樹脂の原料であるジヒドロキシ化合物としては、具体的には前記一般式(1)から(13)で表されるジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
(炭酸ジエステル)
本発明に係るポリカーボネート樹脂の原料である炭酸ジエステルとしては、下記一般式(14)で示される化合物が挙げられる。
Figure 0005989358
ここで、一般式(14)中、A’は、置換されていてもよい炭素数1〜炭素数10の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基である。2つのA’は、同一でも相互に異なるものでもよい。
なお、A’上の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜炭素数10のアルキル基、炭素数1〜炭素数10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基等が例示される。
炭酸ジエステル化合物の具体例としては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネートが挙げられる。
これらの中でも、ジフェニルカーボネート(以下、「DPC」と称する場合がある。)、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステルは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
また、上記の炭酸ジエステル化合物は、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。
代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
本発明のポリカーボネート樹脂の溶融法による製造方法において、これらの炭酸ジエステル(上記の置換したジカルボン酸又はジカルボン酸エステルを含む。以下同じ。)の使用量は、通常、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステル化合物が1.01モル〜1.30モル、好ましくは1.02モル〜1.20モルの比で用いられる。前記炭酸ジエステルのモル比が過度に小さいと、エステル交換反応速度が低下し、所望の分子量を有するポリカーボネート樹脂の生産が困難となったり、得られるポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度が高くなり、熱安定性が悪化したりする傾向にある。また、前記炭酸ジエステルのモル比が過度に大きいと、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有するポリカーボネート樹脂の生産が困難となる傾向となる他、樹脂中の炭酸ジエステル化合物の残存量が多くなり、成形加工時や成形体としたときの臭気の原因となることがあり、好ましくない。
(エステル交換触媒)
本発明のポリカーボネート樹脂の溶融法による製造方法において使用されるエステル交換触媒としては、通常、エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を製造する際に用いられる触媒が挙げられ、特に限定されない。
一般的には、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、ベリリウム化合物、マグネシウム化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。これらの中でも、実用的にはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物が好ましい。これらのエステル交換触媒は、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
エステル交換触媒の使用量は、通常、全ジヒドロキシ化合物1モルに対して1×10-9モル〜1×10-3モルの範囲で用いられるが、成形特性や色相に優れたポリカーボネート樹脂を得るためには、エステル交換触媒の量は、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いる場合、全ジヒドロキシ化合物1モルに対して、好ましくは1.0×10-8モル〜1×10-4モルの範囲内、より好ましくは1.0×10-8モル〜1×10-5モルの範囲内であり、特に好ましくは1.0×10-7モル〜5.0×10-6モルの範囲内である。上記下限量より少なければ、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性が得られず、上記上限量より多い場合は、ポリマー色相が悪化し、分岐成分量が多すぎて流動性が低下し、目標とする溶融特性の優れたポリカーボネート樹脂が製造できない。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素化合物等の無機アルカリ金属化合物;アルカリ金属のアルコール類、フェノール類、有機カルボン酸類との塩等の有機アルカリ金属化合物等が挙げられる。ここで、アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が挙げられる。
これらのアルカリ金属化合物の中でも、セシウム化合物が好ましく、特に、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウムが好ましい。
アルカリ土類金属化合物としては、例えば、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩等の無機アルカリ土類金属化合物;アルカリ土類金属のアルコール類、フェノール類、有機カルボン酸類との塩等が挙げられる。ここで、アルカリ土類金属としては、例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
また、ベリリウム化合物及びマグネシウム化合物としては、例えば、当該金属の水酸化物、炭酸塩等の無機金属化合物;前記金属のアルコール類、フェノール類、有機カルボン酸類との塩等が挙げられる。
塩基性ホウ素化合物としては、ホウ素化合物のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、ストロンチウム塩等が挙げられる。ここで、ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等が挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の3価のリン化合物、又はこれらの化合物から誘導される4級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
(触媒失活剤)
本発明に於いては、エステル交換反応終了後に、エステル交換触媒を中和失活させるための触媒失活剤を添加しても良い。このような処理により得られたポリカーボネート樹脂の耐熱性、耐加水分解性が向上する。
このような触媒失活剤としては、スルホン酸やスルホン酸エステルのようなpKaが3以下の酸性化合物が好ましく、具体的にはベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸プロピル、ベンゼンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸プロピル、並びにp−トルエンスルホン酸ブチルなどが挙げられる。
これらの中でも、p−トルエンスルホン酸並びにp−トルエンスルホン酸ブチルが好適に用いられる。
溶融法によるポリカーボネート樹脂の製造方法は、原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの原料混合溶融液を調製し(原調工程)、前記原料混合溶融液を、エステル交換反応触媒の存在下、溶融状態で複数の反応槽を用いて多段階で重縮合反応をさせる(重縮合工程)ことによって行われる。反応方式は、バッチ式、連続式、又はバッチ式と連続式の組合せのいずれでもよい。反応槽は、複数基の竪型撹拌反応槽、及び必要に応じてこれに続く少なくとも1基の横型撹拌反応槽が用いられる。通常、これらの反応槽は直列に設置され、連続的に処理が行われる。
重縮合工程後、反応を停止させ、重縮合反応液中の未反応原料や反応副生物を脱揮除去する工程や、熱安定剤、離型剤、色剤等を添加する工程、ポリカーボネート樹脂を所定の粒径に形成する工程等を適宜追加してもよい。
次に、製造方法の各工程について説明する。
(原調工程)
ポリカーボネート樹脂の原料として使用するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とは、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、バッチ式、半回分式又は連続式の撹拌槽型の装置を用いて、原料混合溶融液として調製される。溶融混合の温度は、例えば、ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを用い、炭酸ジエステル化合物としてジフェニルカーボネートを用いる場合は、通常120℃〜180℃、好ましくは125℃〜160℃の範囲から選択される。
以下、ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールA、炭酸ジエステル化合物としてジフェニルカーボネートを原料として用いる場合を例として説明する。
この際、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物との割合は、炭酸ジエステル化合物が過剰になるように調整され、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステル化合物は、通常1.01モル〜1.30モル、好ましくは1.02モル〜1.20モルの割合になるように調整される。
(重縮合工程)
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とのエステル交換反応による重縮合は、通常、2段階以上、好ましくは3段階〜7段階の多段方式で連続的に行われる。各段階の具体的な反応条件としては、温度:150℃〜320℃、圧力:常圧〜0.01Torr(1.3Pa)、平均滞留時間:5分〜150分の範囲である。
多段方式の各反応槽においては、エステル交換反応の進行とともに副生するフェノール等のモノヒドロキシ化合物をより効果的に系外に除去するために、上記の反応条件内で、段階的により高温、より高真空に設定する。
重縮合工程を多段方式で行う場合は、通常、竪型撹拌反応槽を含む複数基の反応槽を設けて、ポリカーボネート樹脂の平均分子量を増大させる。反応槽は通常2基〜6基、好ましくは4基〜5基設置される。
ここで、反応槽としては、例えば、撹拌槽型反応槽、薄膜反応槽、遠心式薄膜蒸発反応槽、表面更新型二軸混練反応槽、二軸横型撹拌反応槽、濡れ壁式反応槽、自由落下させながら重縮合する多孔板型反応槽、ワイヤーに沿わせて落下させながら重縮合するワイヤー付き多孔板型反応槽等が用いられる。
竪型撹拌反応槽の撹拌翼の形式としては、例えば、タービン翼、パドル翼、ファウドラー翼、アンカー翼、フルゾーン翼((株)神鋼環境ソリューション製)、サンメラー翼(三菱重工業(株)製)、マックスブレンド翼(住友重機械工業(株)製)、ヘリカルリボン翼、ねじり格子翼((株)日立プラントテクノロジー製)等が挙げられる。
また、横型撹拌反応槽とは、撹拌翼の回転軸が横型(水平方向)であるものをいう。横型撹拌反応槽の撹拌翼としては、例えば、円板型、パドル型等の一軸タイプの撹拌翼やHVR、SCR、N−SCR(三菱重工業(株)製)、バイボラック(住友重機械工業(株)製)、あるいはメガネ翼、格子翼((株)日立プラントテクノロジー製)等の二軸タイプの撹拌翼が挙げられる。
なお、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物との重縮合に使用するエステル交換触媒は、通常、予め溶液として準備されていてもよい。触媒溶液の濃度は特に限定されず、触媒の溶媒に対する溶解度に応じて任意の濃度に調整される。溶媒としては、アセトン、アルコール、トルエン、フェノール、水等を適宜選択することができる。
触媒の溶媒として水を選択した場合、水の性状は、含有される不純物の種類ならびに濃度が一定であれば特に限定されないが、通常、蒸留水や脱イオン水等が好ましく用いられる。
「ポリカーボネート樹脂成形体の製造方法」
上記本発明のポリカーボネート樹脂成形体の製造方法は特に限定されないが、特定の粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)を用いて製造する方法を採用することがポリカーボネート樹脂成形体の表面硬度を向上させるために好適である。
すなわち、本発明の製造方法は、上記一般式(1)で表される化合物に由来する構造単位(a)を含むポリカーボネート樹脂(A)と、前記構造単位(a)とは異なる構造単位(b)を含むポリカーボネート樹脂(B)とを少なくとも含有し、該ポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)と溶融混練あるいはドライブレンドした後に成形するポリカーボネート樹脂成形体の製造方法であって、前記ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv(a))が、前記ポリカーボネート樹脂(B)の粘度平均分子量(Mv(b))よりも小さいことを特徴とする。
以下、詳細に説明する。
<(成形前)ポリカーボネート樹脂組成物の製法>
本発明の製造方法において、ポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)とを含有するポリカーボネート樹脂組成物(以下、「成形前ポリカーボネート樹脂組成物」と称す場合がある。)を製造する方法については特に制限がないが、
1)ポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)とを溶融混練する方法;2)溶融状態のポリカーボネート樹脂(A)と溶融状態のポリカーボネート樹脂(B)とを溶融混練する方法;
3)ポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)とを溶液状態で混合する方法;
4)ポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)とをドライブレンドする方法;
等が挙げられる。
なお、ポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)との重量比は、1:99〜45:55の範囲、より好ましくは3:97〜45:55、さらに好ましくは5:95〜40:60、特に好ましくは10:90〜30:70の範囲である。ポリカーボネート樹脂(A)の割合が多い場合は、ポリカーボネート樹脂成形体の耐衝撃性の低下や耐熱性の低下、色調の悪化が起こる可能性があり、ポリカーボネート樹脂(A)の割合が少ない場合はポリカーボネート樹脂成形体表面の鉛筆硬度が低下する虞がある。
以下、各方法について説明する。
1)ポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)とを溶融混練する方法;
ポリカーボネート樹脂(A)のペレットもしくは粉粒体とポリカーボネート樹脂(B)のペレットもしくは粉粒体とを、例えばニーダーや二軸押出機、単軸押出機等の混合装置を用いて溶融混練する。ポリカーボネート樹脂(A)のペレットもしくは粉粒体とポリカーボネート樹脂(B)のペレットもしくは粉粒体は予め固体状態で混合し、その後混練されても良いし、またはどちらか一方を先に前記混合装置で溶融させ、そこへもう一方のポリカーボネート樹脂を添加し、混練しても良い。混練させる温度に特に規定はないが、240℃以上が好ましく、260℃以上がより好ましく、280℃以上がさらに好ましい。
また、350℃以下が好ましく、320℃以下が特に好ましい。混練させる温度が低いとポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)の混合が完全ではなく、ポリカーボネート樹脂成形体を製造した際に、硬度や耐衝撃性にばらつきが出る虞があり、好ましくない。また、混練する温度が高すぎると、ポリカーボネート樹脂成形体を製造した際に、ポリカーボネート樹脂成形体の色調が悪化する可能性があり、好ましくない。
2)溶融状態のポリカーボネート樹脂(A)と溶融状態のポリカーボネート樹脂(B)とを溶融混練する方法;
溶融状態のポリカーボネート樹脂(A)と溶融状態のポリカーボネート樹脂(B)とを、例えば攪拌槽やスタティックミキサー、ニーダー、二軸押出機、単軸押出機等の混合装置を用いて混合する。このとき、例えば溶融重合法で得られたポリカーボネート樹脂であれば、冷却・固化することなく溶融状態で上記混合装置に導入しても良い。混合する温度としては特に規定はないが、150℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましい。また、300℃以下が好ましく、250℃以下が特に好ましい。混合させる温度が低いとポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)の混合が完全ではなく、ポリカーボネート樹脂成形体を製造した際に、硬度や耐衝撃性にばらつきが出る虞があり、好ましくない。また、混合する温度が高すぎると、ポリカーボネート樹脂成形体の色調が悪化する可能性があり、好ましくない。
3)ポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)とを溶液状態で混合する方法;
ポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)とを適当な溶媒に溶解して溶液とし、溶液状態で混合し、その後、ポリカーボネート樹脂組成物として単離する方法である。適当な溶媒としては、例えば、ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン及び1,2−ジクロロエチレン等の塩素化脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素;その他、ニトロベンゼン及びアセトフェノン等の置換芳香族炭化水素が挙げられる。これらの中でも、例えば、ジクロロメタン又はクロロベンゼン等の塩素化された炭化水素が好適に使用される。これらの溶媒は、単独であるいは他の溶媒との混合物として使用することができる。
混合装置としては、攪拌槽やスタティックミキサー等が挙げられる。また、混合温度としてはポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)とが溶解する条件であれば特に規定はなく、通常、使用する溶媒の沸点以下で実施される。
4)ポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)とをドライブレンドする方法;
ポリカーボネート樹脂(A)のペレットもしくは粉粒体とポリカーボネート樹脂(B)のペレットもしくは粉粒体とをタンブラー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサーやナウターミキサー等を用いてドライブレンドする方法である。
上記1)〜4)の方法の中でも、ポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)とを溶融混練する1)及び2)の方法、ポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)とをドライブレンドする4)の方法が好ましい。
なお、前記ポリカーボネート樹脂組成物を製造するにあたり、上記いずれの方法においても、顔料、染料、離型剤、熱安定剤等を本発明の目的を損なわない範囲において適宜添加することができる。
以下、上述のポリカーボネート樹脂組成物からポリカーボネート樹脂成形体を製造するには、通常の押出成形機や射出成形機が使用される。
複雑な形状なポリカーボネート樹脂成形体を高サイクルで成形できるなどの利点があることから、本発明のポリカーボネート樹脂成形体は、射出成形機を用いて、射出成形にて成形されることが好ましい。
射出成形機等を使用する場合の金型温度は、特に制限はないが、150℃以下が好ましく、120℃以下がさらに好ましく、100℃以下が最も好ましい。また、30℃以上が好ましく、50℃以上が特に好ましい。金型温度が高すぎると、成形時の冷却時間を長くする必要があり、ポリカーボネート樹脂成形体の製造サイクルが長くなり、生産性が低下する場合がある。金型温度が低すぎると、ポリカーボネート樹脂組成物の溶融粘度が高くなりすぎ、均一なポリカーボネート樹脂成形体を得ることができない可能性があり、成形体表面にムラができるなどの問題が生じ、好ましくない。
また、射出成形を行うにあたり、顔料、染料、離型剤、熱安定剤等を本発明の目的を損なわない範囲において適宜添加することができる。
上記、ポリカーボネート樹脂成形体は、建築物、車両、電気・電子機器、機械その他の各種分野で使用できる。
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例で使用したポリカーボネート樹脂成形体の物性は、下記の方法により評価した。
(1)ポリカーボネート樹脂成形体表面の鉛筆硬度
ポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート樹脂組成物を射出成形機(株式会社日本製鋼所製J50E2)により、バレル温度280℃、金型温度90℃の条件下にて、厚み3mm、縦60mm、横60mmのポリカーボネート樹脂成形体を成形した。該ポリカーボネート樹脂成形体について、ISO15184に準拠し、鉛筆硬度試験機(東洋精機株式会社製)を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。
(2)ポリカーボネート樹脂成形体のシャルピー衝撃強度
ポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート樹脂組成物を射出成形機(株式会社日本製鋼所製J50E2)により、バレル温度280℃、金型温度90℃の条件下にて、JIS K−7111に基づいた形状のポリカーボネート樹脂成形体を成形した。該ポリカーボネート樹脂成形体を用い、JIS K−7111に基づいて、ノッチ0.25mmRでシャルピー衝撃強度を測定した。
(3)ポリカーボネート樹脂成形体のイエローインデックス(YI)
前記(1)で成形したポリカーボネート樹脂成形体を用いて分光測色計(ミノルタ株式会社製CM−3700d)によりイエローインデックス(YI)を測定した。数値が小さいほど色調が良好であることを示す。
(4)ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)
ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
(5)ポリカーボネート樹脂の極限粘度[η]
ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し溶液とした(6.0g/L)。次いで、該溶液をウベローデ粘度管により20℃の温度で極限粘度を測定した。
(6)ポリカーボネート樹脂成形体表面における構造単位(a)の含有率[S]
ポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート樹脂組成物を射出成形機(株式会社日本製鋼所製J50E2)により、バレル温度280℃、金型温度90℃の条件下にて、厚み3mm、縦60mm、横60mmのポリカーボネート樹脂成形体を成形した。次いで室温(25℃)にて塩化メチレン(約400g)中に該ポリカーボネート樹脂成形体を浸漬させた。浸漬開始から、5秒経過後に該ポリカーボネート樹脂成形体を塩化メチレンから取り出して、塩化メチレン溶液を得た。エバポレーターにより、該塩化メチレン溶液から塩化メチレンを減圧除去し、残渣を得た。該残渣を重クロロホルムに溶解させ、該溶液を1H−NMR法を用いて測定した。得られた1H−NMRスペクトルの構造単位(a)のシグナル強度とその他の構造単位のシグナル強度から、ポリカーボネート樹脂成型体表面における構造単位(a)の含有率[S](wt%)を算出した。
(7)ポリカーボネート樹脂成形体全体の構造単位(a)の含有率[T]
前記(6)と同様にして厚み3mm、縦60mm、横60mmのポリカーボネート樹脂成形体を成形した。次いで室温(25℃)にて塩化メチレン(約400g)中に該ポリカーボネート樹脂成形体を浸漬させ完全溶解し、塩化メチレン溶液を得た。該塩化メチレン溶液のうち約50gを分取し、エバポレーターにより塩化メチレンを減圧除去し、残渣を得た。該残渣を重クロロホルムに溶解させ、該溶液を1H−NMR法を用いて測定した。得られた1H−NMRスペクトルの構造単位(a)のシグナル強度とその他の構造単位のシグナル強度から、成形体全体の構造単位(a)の含有率[T](wt%)を算出した。
なお、実施例、比較例で使用したポリカーボネート樹脂は、次の通りである。
(参考例1)PC(a1)の合成:BPCホモポリマーの合成(溶融法)
原料ジヒドロキシ化合物として、2,2−ビス(4−ヒドロキシ-3−メチルフェニル)プロパン(以下、「BPC」と略記する場合がある。)(本州化学社製)37.60kg(約147mol)とジフェニルカーボネート(DPC)32.20kg(約150mol)に、炭酸セシウムの水溶液を、炭酸セシウムがジヒドロキシ化合物1mol当たり2μmolとなるように添加して混合物を調整した。次に該混合物を、攪拌機、熱媒ジャケット、真空ポンプ、還流冷却器を具備した内容量200Lの第1反応器に投入した。
次に、第1反応器内を1.33kPa(10Torr)に減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を5回繰り返し、第1反応器の内部を窒素置換した。窒素置換後、熱媒ジャケットに温度230℃の熱媒を通じて第1反応器の内温を徐々に昇温させ、混合物を溶解させた。その後、55rpmで撹拌機を回転させ、熱媒ジャケット内の温度をコントロールして、第1反応器の内温を220℃に保った。そして、第1反応器の内部で行われるBPCとDPCのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて第1反応器内の圧力を絶対圧で101.3kPa(760Torr)から13.3kPa(100Torr)まで減圧した。
続いて、第1反応器内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールをさらに留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。
その後、系内を窒素で絶対圧で101.3kPaに復圧の上、ゲージ圧で0.2MPaまで昇圧し、予め200℃以上に加熱した移送配管を経由して、第1反応器内のオリゴマーを、第2反応器に圧送した。なお、第2反応器は内容量200Lであり、攪拌機、熱媒ジャケット、真空ポンプ並びに還流冷却管を具備しており、内圧は大気圧、内温は240℃に制御していた。
次に、第2反応器内に圧送したオリゴマーを16rpmで攪拌し、熱媒ジャケットにて内温を昇温し、第2反応器内を40分かけて絶対圧で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。その後、昇温を継続し、さらに40分かけて、内圧を絶対圧で13.3kPaから399Pa(3Torr)まで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。さらに、昇温を続け、第2反応器内の絶対圧が70Pa(約0.5Torr)に到達後、70Paを保持し、重縮合反応を行った。第2反応器内の最終的な内部温度は285℃であった。第2反応器の攪拌機が予め定めた所定の攪拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。
次いで、第2反応器内を、窒素により絶対圧で101.3kPaに復圧の上、ゲージ圧で0.2MPaまで昇圧し、第2反応器の槽底からポリカーボネート樹脂をストランド状で抜き出し、水槽で冷却しながら、回転式カッターを使用してペレット化した。得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は17,200であった。
このポリカーボネート樹脂を、前記項目に従い評価した。
その結果を表1に示した。
(参考例2)PC(a2)の合成:BPCホモポリマーの合成(溶融法)
第2反応器の攪拌機が予め定めた所定の攪拌動力を変更した以外は参考例1と同様にして実施した。得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は18,500であった。また参考例1と同様の方法にて評価した。結果を表1に示した。
(参考例3)PC(a3)の合成:BPCホモポリマーの合成(溶融法)
第2反応器の攪拌機が予め定めた所定の攪拌動力を変更した以外は参考例1と同様にして実施した。得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は30,300であった。また参考例1と同様の方法にて評価した。結果を表1に示した。
(参考例4)PC(a4)の合成:Bis−OCZホモポリマーの合成(溶融法)
原料ジヒドロキシ化合物としてBPCの代わりに1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(以下、「Bis−OCZ」と略記する場合がある。)(本州化学製)43.48kgを使用し、炭酸セシウムの水溶液を、炭酸セシウムがジヒドロキシ化合物1mol当たり5μmolとなるように添加した以外は参考例1と同様にして実施した。得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は10,200であった。また参考例1と同様の方法にて評価した。結果を表1に示した。
(参考例5)PC(a5)の合成:BPC/BPA(30/70wt%)コポリマーの合成(溶融法)
原料ジヒドロキシ化合物としてBPCの代わりに、BPC(本州化学製)10.05kg、BPA(三菱化学(株)製)23.45kgを使用した以外は参考例1と同様にして実施し、ポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は25,200であった。また参考例1と同様の方法にて評価した。結果を表1に示した。
(参考例6)PC(a6)の合成:BPC/BPA(10/90wt%)コポリマーの合成(溶融法)
原料ジヒドロキシ化合物としてBPC(本州化学製)3.35kg、BPA(三菱化学(株)製)30.15kgを使用した以外は参考例1と同様にして実施し、ポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は24,700であった。また参考例1と同様の方法にて評価した。結果を表1に示した。
(参考例7)PC(b1):BPAホモポリマー(溶融法)
PC(b1)として、BPAに由来する構造単位のみで構成された溶融法による市販のポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製 M7022J)を用いた。該PC(1)の粘度平均分子量は20,000であった。また参考例1と同様の方法にて評価した。結果を表1に示した。
(参考例8)PC(b2):BPAホモポリマー(溶融法)
PC(b2)として、BPAに由来する構造単位のみで構成された溶融法による市販のポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製 M7022J)を用いた。該PC(1)の粘度平均分子量は20,600であった。また参考例1と同様の方法にて評価した。結果を表1に示した。
(参考例9)PC(b3):BPAホモポリマー(溶融法)
PC(b3)として、BPAに由来する構造単位のみで構成された溶融法による市販のポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製 M7027J)を用いた。該PC(1)の粘度平均分子量は25,600であった。また参考例1と同様の方法にて評価した。結果を表1に示した。
Figure 0005989358
「実施例1」
ポリカーボネート樹脂(A),ポリカーボネート樹脂(B)として、それぞれPC(a1)とPC(b1)を表2に示す割合で1つのベント口を有する日本製鋼所製2軸押出機(LABOTEX30HSS−32)にて溶融混練し、該2軸押出機の出口からストランド状に押し出し、水で冷却固化させた後、回転式カッターでペレット化し、ポリカーボネート樹脂成形体を得た。このとき、該2軸押出機のバレル温度は280℃、該2軸押出機の出口におけるポリカーボネート樹脂温度は300℃であった。なお、溶融混練時は、該2軸押出機のベント口は真空ポンプに連結し、該ベント口での圧力が500Paになるように制御した。
このポリカーボネート樹脂成形体は前記評価項目に記載の方法に準じて表面硬度、シャルピー衝撃強度、イエローインデックス(YI)、ポリカーボネート樹脂成形体表面の構造単位(a)の含有率、ポリカーボネート樹脂成形体全体の構造単位(a)の含有率を評価した。
その結果を表2に示した。なお、実施例1において、構造単位(a)は、BPCに由来する構造単位である。
「実施例2〜4」
表2に示す2種類のポリカーボネート樹脂とした以外は実施例1と同様に実施し、実施例2〜4のポリカーボネート樹脂成形体を得た。更に、実施例1と同様の方法にて各種評価した。その結果を表2に示した。なお、実施例2及び3において、構造単位(a)はBPCに由来する構造単位であり、実施例4において、構造単位(a)はBis−OCZに由来する構造単位である。
「比較例1〜4」
表2に示す2種類のポリカーボネート樹脂とした以外は実施例1と同様に実施し、比較例1〜4のポリカーボネート樹脂成形体を得た。更に実施例1と同様の方法にて各種評価した。その結果を表2に示した。なお、比較例1〜4において、構造単位(a)はBPCに由来する構造単位である。
「比較例5〜8」
表2に示したように、比較例5としてPC(a2)、比較例6としてPC(b2)、比較例7としてPC(a5)、比較例8としてPC(a6)を、それぞれ単独で用いた、比較例5〜8のポリカーボネート樹脂成形体を得た。更に実施例1と同様の方法にて各種評価した。その結果を表2に示した。なお、比較例5,7,8において、構造単位(a)はBPCに由来する構造単位であり、比較例6において、構造単位(a)はBPAに由来する構造単位である。
Figure 0005989358
実施例1と比較例2とを比較するとポリカーボネート樹脂成形体全体の構造単位(a)(BPC由来の構造単位)の含有率が同じであるにも関わらず、実施例1はポリカーボネート樹脂成形体表面の構造単位(a)の含有率が高く、実施例1におけるISO 15184で規定される鉛筆硬度が比較例2の鉛筆硬度よりも高いことがわかる。
同様に、実施例2と比較例3及び比較例8とを対比すると、これらのポリカーボネート樹脂成形体全体の構造単位(a)(BPC由来の構造単位)の含有率が同じであるにも関わらず、実施例2は、比較例3及び比較例8と比較して、ポリカーボネート樹脂成形体表面において構造単位(a)(BPC由来の構造単位)の含有率が高く、ISO 15184で規定される鉛筆硬度が高いことがわかる。
本発明によれば、表面硬度が大幅に向上し、且つ色調が良好であり、耐衝撃性と成形性がバランスしたポリカーボネート樹脂成形体を得ることができる。該ポリカーボネート樹脂成形体は、携帯電話・パソコン等の電気・電子機器分野、ヘッドランプレンズ・車両用窓等の自動車分野、照明・エクステリア等の建材分野等の、特には表面硬度を要求される用途への利用分野の拡大が可能となる。

Claims (14)

  1. 下記一般式(1a)で表される化合物に由来する構造単位(a)と、前記構造単位(a)とは異なる構造単位(b)とを含むポリカーボネート樹脂成形体であって、
    ポリカーボネート樹脂成形体表面における該構造単位(a)の含有率[S]と該ポリカーボネート樹脂成形体全体の該構造単位(a)の含有率[T]との比(S/T)が、1.00より大きく、2.00以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂成形体。
    Figure 0005989358
  2. 当該ポリカーボネート樹脂成形体が、射出成形体であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂成形体。
  3. ポリカーボネート樹脂成形体表面における該構造単位(a)の含有率[S]と該ポリカーボネート樹脂成形体全体の該構造単位(a)の含有率[T]の比(S/T)が、1.01以上1.50以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂成形体。
  4. ポリカーボネート樹脂成形体表面のISO 15184で規定される鉛筆硬度が、HB以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂成形体。
  5. 前記構造単位(b)が、主として下記一般式(2)の化合物に由来する構造単位であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂成形体。
    Figure 0005989358
  6. 前記一般式(1a)で表される化合物に由来する構造単位(a)を含むポリカーボネート樹脂(A)と、
    前記構造単位(a)とは異なる構造単位(b)とを含み、且つ、前記ポリカーボネート樹脂(A)とは異なる構造を有するポリカーボネート樹脂(B)と、を少なくとも含有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂成形体。
  7. 前記ポリカーボネート樹脂(A)と前記ポリカーボネート樹脂(B)との重量比が1:99〜45:55であることを特徴とする請求項6に記載のポリカーボネート樹脂成形体。
  8. 前記ポリカーボネート樹脂(A)のISO 15184で規定される鉛筆硬度が、前記ポリカーボネート樹脂(B)のISO 15184で規定される鉛筆硬度より高いことを特徴とする請求項6又は7に記載のポリカーボネート樹脂成形体。
  9. 前記ポリカーボネート樹脂(A)のISO 15184で規定される鉛筆硬度が、F以上であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂成形体。
  10. 前記ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が、前記ポリカーボネート樹脂(B)の粘度平均分子量よりも小さいことを特徴とする請求項乃至9のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂成形体。
  11. 下記一般式(1a)で表される化合物に由来する構造単位(a)を含むポリカーボネート樹脂(A)と、前記構造単位(a)とは異なる構造単位(b)を含むポリカーボネート樹脂(B)とを少なくとも含有し、該ポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)と溶融混練あるいはドライブレンドした後に成形する請求項7乃至10のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂成形体の製造方法であって、
    前記ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が、前記ポリカーボネート樹脂(B)の粘度平均分子量よりも小さいことを特徴とするポリカーボネート樹脂成形体の製造方法。
    Figure 0005989358
  12. 前記ポリカーボネート樹脂(A)と前記ポリカーボネート樹脂(B)との重量比が1:99〜45:55であることを特徴とする請求項11に記載のポリカーボネート樹脂成形体の製造方法。
  13. 前記構造単位(b)が、主として下記一般式(2)の化合物に由来する構造単位であることを特徴とする請求項11又は12に記載のポリカーボネート樹脂成形体の製造方法。
    Figure 0005989358
  14. 前記成形が、射出成形であることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂成形体の製造方法。
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