JP5796424B2 - ポリカーボネート樹脂積層体及びその製造方法 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂積層体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、表面硬度に優れると共に、色調に優れ、かつ耐衝撃性に優れたポリカーボネート樹脂積層体と、このポリカーボネート樹脂積層体の製造方法に関する。
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性等の機械的特性、耐熱性、成形性、透明性等に優れ、各種機械部品、光学用ディスク、自動車部品、建材等の用途に広く用いられている。
この中でも、建材用途においては、軽量で透明な構造要素を要求され、ポリカーボネート樹脂を用いたシートがよく用いられており、その際に多層シートとしたり、ハードコート処理を施したりと付加的な処理を施すことがしばしば行われる。
特許文献1には、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン骨格を有するポリカーボネート樹脂の単層シートが報告されている。このポリカーボネート樹脂シートは、後掲の比較例3に示されるように、表面硬度が鉛筆硬度として2Hで、表面硬度は高いものの、シートの色調が悪く、黄色みを帯びているため、色調が重視される用途には使用し得ない。また、耐衝撃性も劣るものである。
また、特許文献2には、表層に2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン骨格を有するポリカーボネート樹脂層を、コア層に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)骨格を有するポリカーボネート樹脂層を用いた積層シートが報告されている。即ち、この特許文献2では、ビスフェノールA骨格のポリカーボネート樹脂は鉛筆硬度が2Bであり、表面が傷付き易いため、このコア層に対して表面硬度の高い表層を設けた積層体とすることで表面硬度を向上させているが、このものは、後掲の比較例2に示されるように、表面硬度は高いが、耐衝撃性が非常に悪い。
特許文献3には、表層に鉛筆硬度HB以上のポリカーボネート樹脂層を用い、コア層にビスフェノールA骨格を有するポリカーボネート樹脂層を用い、更に、表層をハードコートしたポリカーボネート樹脂積層体が報告されているが、表層に2種以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いる旨の記載はなく、しかも、この積層体では、ハードコートを必須とする。
また、特許文献4には、高表面硬度のポリカーボネート樹脂シートとして、シクロドデカンビスクレゾールとビスフェノールAとを共重合させたポリカーボネート樹脂のシートが報告されているが、積層体とすることについての記載はなされていない。
特開昭64−69625号公報 特開2010−188719号公報 特開2011−88402号公報 特開2010−126594号公報
ポリカーボネート樹脂の用途のうち、携帯電話、PDA(パーソナルデジタルアシスタント)、携帯型DVD(デジタルビデオディスク)プレイヤー、携帯型ゲーム機、携帯型パソコン・ディスプレイ、各種携帯型タッチパネルなどの携帯型表示体の保護窓、タッチパネルの下部電極用の支持基板等の電気・電子機器、プリンターやコピー機などの情報表示窓等のOA関連製品、ヘッドランプレンズ、車両用窓等の自動車分野、照明保護板や反射板等の照明機器、看板、表示板や窓などの建材分野、特に、電子機器、タッチパネル、照明機器などの用途においては、表面硬度が高く、色調が良好であり、かつ耐衝撃性に優れることが要求されるが、従来法では、シートの厚さによらず、表面硬度が高く、且つ、色調、耐衝撃性に優れたポリカーボネート樹脂シートやポリカーボネート樹脂積層体を得ることはできなかった。
本発明は、シートの厚さによらず、表面硬度が高く、且つ、色調、耐衝撃性に優れたポリカーボネート樹脂積層体を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の構成が、本発明の目的に合致することを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、下記[1]から[15]に係る発明に関するものである。
[1] ポリカーボネート樹脂(a)と、ポリカーボネート樹脂(a)とは異なる構造単位を有するポリカーボネート樹脂(b)とを含む樹脂層(A層)と、A層とは異なる樹脂層(B層)とからなる積層体であって、ポリカーボネート樹脂(a)が、下記式(1a)で表される化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂であり、ポリカーボネート樹脂(b)が、下記式(2)で表される化合物に由来する構造単位を主として含むポリカーボネート樹脂であり、ポリカーボネート樹脂(a)のISO 15184で規定される鉛筆硬度が、ポリカーボネート樹脂(b)のISO 15184で規定される鉛筆硬度より高く、且つA層におけるポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)との重量比が1:99〜45:55の範囲である、ポリカーボネート樹脂積層体。
Figure 0005796424
Figure 0005796424
[2] 前記B層が、ポリカーボネート樹脂(b)を主として含む、[1]に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
[3] 前記ポリカーボネート樹脂(a)のISO 15184で規定される鉛筆硬度が、F以上である、[1]又は[2]に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
[4] 前記A層のISO 15184で規定される鉛筆硬度が、HB以上である、[1]から[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
Figure 0005796424
] 前記ポリカーボネート樹脂(a)が、溶融重合法により製造されたポリカーボネート樹脂である、[1]から[]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
] ポリカーボネート樹脂積層体の厚さが、1〜2000μmである、[1]から[]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
] 7重量%塩化メチレン溶液を光路長50mmで測定した際のイエローインデックスが4.0以下である、[1]から[]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
] デュポン衝撃強度が10J以上である、[1]から[]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
] 電子機器の一部として使用される、[1]から[]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
10] タッチパネルとして使用される、[1]から[]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
11] 照明機器の一部として使用される、[1]から[]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体。
12] [1]から[11]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂積層体を、射出成形又は共押出成形にて成形する工程を含む、ポリカーボネート樹脂積層体の製造方法。
13] 成形されたポリカーボネート樹脂積層体の端面を切断する工程を含む、[12]に記載のポリカーボネート樹脂積層体の製造方法。
14] ポリカーボネート樹脂積層体の端面を切断した際の切断部分を、A層の成形材料に混合する工程を含む、[13]に記載のポリカーボネート樹脂積層体の製造方法。
15] ポリカーボネート樹脂積層体の端面を切断した際の切断部分を、B層の成形材料に混合する工程を含む、[13]に記載のポリカーボネート樹脂積層体の製造方法。
本発明のポリカーボネート樹脂積層体は、表面硬度に優れ且つ色調も良好であり、さらに耐衝撃性にも優れていることから、携帯型表示体の保護窓、タッチパネルなどの電気電子機器、OA関連製品、照明機器用部材、自動車、建材、看板・表示板などに有用である。
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されるものではない。
〔ポリカーボネート樹脂積層体〕
本発明のポリカーボネート樹脂積層体は、ポリカーボネート樹脂(a)と、ポリカーボネート樹脂(a)とは異なる構造単位を有するポリカーボネート樹脂(b)とを含む樹脂層(A層)(以下、「表層」と称す場合がある。)と、A層とは異なる樹脂層(B層)(以下、「コア層」と称す場合がある。)とからなる積層体であって、ポリカーボネート樹脂(a)のISO 15184で規定される鉛筆硬度が、ポリカーボネート樹脂(b)のISO 15184で規定される鉛筆硬度より高く、且つA層におけるポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)との重量比が1:99〜45:55の範囲であることを特徴とする。
本発明のポリカーボネート樹脂積層体の表層は、少なくとも上記ポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)とを上記重量比で含むことにより、表面硬度が高く、色調が優れ、さらに耐衝撃性に優れたものとなる。
また、このような表層に対して、異なる樹脂層のコア層が積層されることにより、表層のみの場合に比べて、表面硬度、色調、耐衝撃性のバランスがより優れたものとなる。
本発明の効果として、得られるポリカーボネート樹脂積層体の表層のISO 15184で規定される鉛筆硬度はHB以上が好ましく、より好ましくはF以上、更に好ましくはH以上である。鉛筆硬度が低いと、製品とした場合、ポリカーボネート樹脂積層体が傷つきやすくなるので好ましくない。なお、鉛筆硬度はランクが低い方から、2B、B、HB、F、H、2H、3H、4Hである。ポリカーボネート樹脂積層体の表層の鉛筆硬度は、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
加えて、本発明の効果として、ポリカーボネート樹脂積層体の7重量%塩化メチレン溶液を光路長50mmで測定したイエローインデックスは4.0以下が好ましく、より好ましくは3.8以下であり、更に好ましくは3.5以下である。前記イエローインデックスが大きいと色調が悪くなり、ポリカーボネート樹脂積層体としての商品価値が低下する可能性がある。ポリカーボネート樹脂積層体のイエローインデックスは、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
また、本発明の効果として、得られるポリカーボネート樹脂積層体のデュポン衝撃強度は10J以上が好ましく、より好ましくは12J以上、更に好ましくは15J以上、最も好ましくは18J以上である。前記デュポン衝撃強度が小さいとポリカーボネート樹脂積層体の耐衝撃性が低下し、衝撃に由来する割れが発生しやすくなるので好ましくない。ポリカーボネート樹脂積層体のデュポン衝撃強度は、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
[表層(A層)]
本発明のポリカーボネート樹脂積層体の表層(A層)は、ポリカーボネート樹脂(a)と、ポリカーボネート樹脂(a)とは異なる構造単位を有するポリカーボネート樹脂(b)とを含む。
<ポリカーボネート樹脂(a)>
ポリカーボネート樹脂(a)としては、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂が好適な例として挙げられる。
Figure 0005796424
(式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、Xは、単結合、カルボニル基、置換若しくは無置換のアルキリデン基、置換若しくは無置換の硫黄原子、又は酸素原子を示す。)
ここで、式(1)において、R1及びR2の、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられ、置換若しくは無置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
3及びR4の、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられ、置換若しくは無置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
これらの中でも、R1及びR2は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、4−メチルフェニル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。R3及びR4は、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、4−メチルフェニル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
ここで、式(1)におけるR1、R2、R3、R4の結合位置は、それぞれのベンゼン環上のXの結合位置に対して2位、3位、5位及び6位から選ばれる任意の位置であり、好ましくは3位、5位である。
また、式(1)において、Xが、置換若しくは無置換のアルキリデン基の場合は、下記の構造式で表される。Xが、置換若しくは無置換の硫黄原子としては、例えば、−S−、−SO2−が挙げられる。カルボニル基は−CO−である。
Figure 0005796424
ここで、R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、nは正の整数を示し、Zは、置換若しくは無置換の炭素数4〜炭素数20のアルキレン基又はポリメチレン基を示す。
5及びR6の、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられ、置換若しくは無置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
これらの中でも、R5及びR6は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、4−メチルフェニル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
Zは、式(1)において、2個のフェニル基と結合する炭素原子と結合して、置換若しくは無置換の二価の脂環式炭化水素基を形成する。二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチリデン基、シキロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基又はアダマンチリデン基等のシクロアルキリデン基(好ましくは炭素数4〜炭素数12)が挙げられ、置換されたものとしては、これらのメチル置換基、エチル置換基を有するもの等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シクロヘキシリデン基のメチル置換体、シクロドデシリデン基が好ましい。
上記式(1)で表される化合物に由来する構造単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂(a)の中でも、下記式(1a)〜(1i)からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂が好適に用いられる。
Figure 0005796424
上記の化合物の中でも、特に上記式(1a)〜(1c)からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂がより好適に用いられる。
なお、ポリカーボネート樹脂(a)は、その性能を損なわない範囲で上記式(1)で表される化合物に由来する構造単位以外の構造単位を含んでいてもよい。
そのような構造単位としては、特に制限はないが、具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」又は「BPA」と称する場合がある。)、無水糖アルコール等の脂環式ジヒドロキシ化合物、スピログリコール等の環状エーテル化合物に由来する構造単位が挙げられる。この中でもビスフェノールAに由来する構造単位が特に好ましい。
ただし、ポリカーボネート樹脂(a)中の上記式(1)で表される化合物に由来する構造単位以外の構造単位の含有量が多過ぎると、得られるポリカーボネート樹脂積層体の表面硬度が低下する傾向にあることから、ポリカーボネート樹脂(a)が上記式(1)で表される化合物に由来する構造単位以外の構造単位を含む場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(a)中の全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位中、10重量%以下、例えば0.1〜10重量%程度であることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂(a)の粘度平均分子量であるMv(a)は好ましくは1,000以上50,000以下であり、上限はより好ましくは45,000、更に好ましくは40,000、最も好ましくは35,000であり、下限はより好ましくは5,000、更に好ましくは7,000、最も好ましくは10,000である。Mv(a)が高すぎると、ポリカーボネート樹脂(a)を含む組成物の溶融粘度が高くなり、ポリカーボネート樹脂積層体の表面硬度向上効果が小さくなる可能性がある。一方、Mv(a)が低すぎると、ポリカーボネート樹脂積層体の成形が困難になる場合があり、ポリカーボネート樹脂積層体にワレが生じる可能性がある。
<ポリカーボネート樹脂(b)>
ポリカーボネート樹脂(b)としては、下記式(2)〜(13)からなる群より選ばれた少なくとも1種のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂が好適に用いられ、下記式(2)で示されるビスフェノールAに由来する構造単位を主として含むビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂がより好適に用いられる。
Figure 0005796424
Figure 0005796424
ここで、「ビスフェノールAに由来する構造単位を主として含む」とは、ポリカーボネート樹脂(b)を構成する全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位のうち、50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上が、ビスフェノールAに由来する構造単位であることを意味する。
なお、前述のポリカーボネート樹脂(a)及びポリカーボネート樹脂(b)中の構造単位の含有量は、NMR法により求めることができる。具体的には、核磁気共鳴装置(NMR装置)を使用し、ポリカーボネート樹脂の重クロロホルム溶液を1H−NMR測定した際に観測される、ポリカーボネート樹脂を合成する際に使用したジヒドロキシ化合物に依存した特徴的なシグナルの面積強度比により、各構造単位のモル組成を求めることができる。この得られたモル組成と、各構造単位の式量より、各構造単位の重量比が求まる。
ポリカーボネート樹脂(b)の粘度平均分子量であるMv(b)は好ましくは5,000以上45,000以下であり、上限はより好ましくは40,000、更に好ましくは35,000、最も好ましくは30,000であり、下限はより好ましくは10,000、更に好ましくは15,000、最も好ましくは20,000である。Mv(b)が高すぎると、ポリカーボネート樹脂(b)を含む組成物の溶融粘度が高くなり、ポリカーボネート樹脂積層体の成形が困難になる場合がある。一方、Mv(b)が低すぎると、ポリカーボネート樹脂積層体の成形が困難になる場合があり、ポリカーボネート樹脂積層体にワレが生じる可能性がある。
<鉛筆硬度>
本発明において、表層(A層)を構成するポリカーボネート樹脂(a)は、ポリカーボネート樹脂(b)よりも、ISO 15184で規定される鉛筆硬度が高いものであるが、ポリカーボネート樹脂(a)のISO 15184で規定される鉛筆硬度は、F以上であることが好ましく、より好ましくはH以上、特に好ましくは2H以上である。ポリカーボネート樹脂(a)の鉛筆硬度がF未満であると、表面硬度の高いポリカーボネート樹脂積層体を得ることが難しくなる。
一方、ポリカーボネート樹脂(a)よりも表面硬度の低いポリカーボネート樹脂(b)のISO 15184で規定される鉛筆硬度は、ポリカーボネート樹脂(a)のISO 15184で規定される鉛筆硬度よりも低い範囲、例えば、ISO 15184で規定される鉛筆硬度として1段階以上低い範囲おいて、3B以上、特に2B以上であることが好ましい。ただし、ポリカーボネート樹脂(b)の鉛筆硬度が過度に低いと得られるポリカーボネート樹脂積層体の表面硬度が低下するため、上記下限以上であることが好ましい。
なお、ポリカーボネート樹脂(a)、ポリカーボネート樹脂(b)のISO 15184で規定される鉛筆硬度は、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
<ポリカーボネート樹脂の製造方法>
次に、本発明に係る上記ポリカーボネート樹脂(a)及びポリカーボネート樹脂(b)の製造方法について説明する。(以下、「ポリカーボネート樹脂(a)及びポリカーボネート樹脂(b)」を「ポリカーボネート樹脂」と総称する場合がある。)
本発明に係るポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物とカルボニル化合物とを用いて重合することにより得られる。具体的には、ジヒドロキシ化合物と塩化カルボニル(以下「CDC」もしくは「ホスゲン」と称することがある。)とを、任意に混合しない有機相と水相との界面にて反応させることによりポリカーボネート樹脂を製造する界面重縮合法(以下、「界面法」と称することがある。)と、ジヒドロキシ化合物とカルボニル化合物とをエステル交換反応触媒存在下、溶融状態にてエステル交換反応させることによりポリカーボネート樹脂を製造する溶融重縮合法(以下、「溶融法」と称することがある。)がある。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂の製造方法に特に制限はないが、有毒な塩化カルボニルを使用しないという点で、溶融重縮合法により製造されたものであることが好ましい。
以下、界面法および溶融法のそれぞれについて、具体的に説明する。
<界面法>
界面法によるポリカーボネート樹脂の製造方法では、通常ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液を調製し、縮合触媒として、例えばアミン化合物の存在下で、ジヒドロキシ化合物とホスゲンとの界面重縮合反応を行い、次いで、中和、水洗、乾燥工程を経てポリカーボネート樹脂が得られる。具体的には、界面法によるポリカーボネート樹脂製造プロセスは、モノマー成分等の原料調製を行う原調工程、オリゴマー化反応が行われるオリゴマー化工程、オリゴマーを用いた重縮合反応が行われる重縮合工程、重縮合反応後の反応液をアルカリ洗浄、酸洗浄、水洗浄により洗浄する洗浄工程、洗浄された反応液を濃縮しポリカーボネート樹脂を造粒後に単離するポリカーボネート樹脂単離工程、単離されたポリカーボネート樹脂の粒子を乾燥する乾燥工程を、少なくとも有している。
以下、各工程について説明する。
(原調工程)
原調工程では、原調タンクに、ジヒドロキシ化合物と、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ金属化合物の水溶液及び/又は水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物の水溶液と、脱塩水(以下、「DMW」と称することがある)と、さらに必要に応じてハイドロサルファイト等の還元剤を含むジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液等の原料が調製される。
(ジヒドロキシ化合物)
本発明に係るポリカーボネート樹脂の原料であるジヒドロキシ化合物としては、具体的には前記式(1)から(13)で表されるジヒドロキシ化合物等の1種又は2種以上が挙げられる。
(アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物)
アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物としては、通常水酸化物が好ましく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウムが特に好ましい。ジヒドロキシ化合物に対するアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の割合は、通常1.0〜1.5(当量比)、好ましくは1.02〜1.04(当量比)である。アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の割合が過度に多い又は過度に少ない場合は、後述するオリゴマー化工程において得られるカーボネートオリゴマーの末端基に影響し、その結果、重縮合反応が異常となる傾向がある。
(オリゴマー化工程)
オリゴマー化工程では、まず、所定の反応器において、原調工程で調製されたジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液とホスゲン(CDC)とを用い、塩化メチレン(CH2Cl2)等の有機溶媒の存在下で、ジヒドロキシ化合物のホスゲン化反応が行われる。
続いて、ジヒドロキシ化合物のホスゲン化反応が行われた混合液に、トリエチルアミン(以下、「TEA」と称することがある)等の縮合触媒と、p−t−ブチルフェノール等の連鎖停止剤が添加され、ジヒドロキシ化合物のオリゴマー化反応が行われる。
次に、ジヒドロキシ化合物のオリゴマー化反応液は、さらにオリゴマー化反応が進められた後、所定の静置分離槽に導入され、カーボネートオリゴマーを含有する有機相と水相とが分離され、分離された有機相は、重縮合工程に供給される。
ここで、ジヒドロキシ化合物のホスゲン化反応が行われる反応器にジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液が供給されてから静置分離槽に入るまでのオリゴマー化工程における滞留時間は、通常120分以下、好ましくは30分〜60分である。
(ホスゲン)
オリゴマー化工程で使用するホスゲンは、通常液状又はガス状で使用される。オリゴマー化工程におけるCDCの好ましい使用量は、反応条件、特に、反応温度及び水相中のジヒドロキシ化合物の濃度によって適宜選択され、特に限定されない。通常ジヒドロキシ化合物の1モルに対し、CDC1モル〜2モル、好ましくは1.05モル〜1.5モルである。CDCの使用量が過度に多いと、未反応CDCが多くなり原単位が極端に悪化する傾向がある。また、CDCの使用量が過度に少ないと、クロロフォルメート基量が不足し、適切な分子量伸長が行われなくなる傾向がある。
(有機溶媒)
オリゴマー化工程では、通常有機溶媒を使用する。有機溶媒としては、オリゴマー化工程における反応温度及び反応圧力において、ホスゲン及びカーボネートオリゴマー、ポリカーボネート樹脂等の反応生成物を溶解し、水と相溶しない(又は、水と溶液を形成しない)任意の不活性有機溶媒が挙げられる。
このような不活性有機溶媒として、例えば、ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン、1,2−ジクロロエチレン等の塩素化脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン及びクロロトルエン等の塩素化芳香族炭化水素;その他、ニトロベンゼン及びアセトフェノン等の置換芳香族炭化水素等が挙げられる。
これらの中でも、ジクロロメタン又はクロロベンゼン等の塩素化された炭化水素が好適
に使用される。
これらの不活性有機溶媒は、単独であるいは他の溶媒との混合物として使用することができる。
(縮合触媒)
オリゴマー化反応は、縮合触媒の存在下で行うことができる。縮合触媒の添加時期は、CDCを消費した後が好ましい。縮合触媒としては、二相界面縮合法に使用されている多くの縮合触媒の中から、任意に選択することができる。例えば、トリアルキルアミン、N−エチルピロリドン、N−エチルピペリジン、N−エチルモルホリン、N−イソプロピルピペリジン、N−イソプロピルモルホリン等の1種又は2種以上が挙げられる。中でも、トリエチルアミン、N−エチルピペリジンが好ましい。
(連鎖停止剤)
オリゴマー化工程では、通常連鎖停止剤としてモノフェノールを使用する。モノフェノールとしては、例えば、フェノール;p−t−ブチルフェノール、p−クレゾール等のアルキルフェノール(アルキル基の炭素数は1〜20);p−クロロフェノール、2,4,6−トリブロモフェノール等のハロゲン化フェノールの1種又は2種以上が挙げられる。モノフェノールの使用量は、得られるカーボネートオリゴマーの分子量に応じ適宜選択され、通常ジヒドロキシ化合物に対して、0.5モル%〜10モル%である。
界面法において、ポリカーボネート樹脂の分子量は、モノフェノール等の連鎖停止剤の添加量で決定される。このため、ポリカーボネート樹脂の分子量を制御する観点から、連鎖停止剤の添加時期は、カーボネート形成性化合物の消費が終了した直後から、分子量伸長が始まる前での間が好ましい。
カーボネート形成性化合物の共存下でモノフェノールを添加すると、モノフェノール同士の縮合物(炭酸ジフェニル類)が多く生成し、目標とする分子量のポリカーボネート樹脂が得られにくい傾向がある。モノフェノールの添加時期が極端に遅れると、分子量制御が困難となり、さらに、分子量分布の低分子側に特異な肩を有する樹脂となり、成形時には垂れを生じる等の弊害が生じる傾向がある。
(分岐剤)
オリゴマー化工程では、任意の分岐剤を使用することができる。このような分岐剤としては、例えば、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(4,4’−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン等の1種又は2種以上が挙げられる。また、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌル等も使用しうる。これらの中でも、少なくとも3個のフェノール性ヒドロキシル基を有する分岐剤が好適である。
分岐剤の使用量は、得られるカーボネートオリゴマーの分岐度に応じ適宜選択され、通常ジヒドロキシ化合物に対し、0.05モル%〜2モル%である。
オリゴマー化工程では、二相界面縮合法を採用した場合、ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属化合物水溶液及び/又はアルカリ土類金属化合物水溶液とホスゲンとの接触に先立ち、ジヒドロキシ化合物を含む有機相とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を含む水相と、水と任意に混合しない有機相とを接触させ、乳濁液を形成させることが特に好ましい。
このような乳濁液を形成する手段としては、例えば、所定の撹拌翼を有する撹拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル、フロージェットミキサー、超音波乳化機等の動的ミキサー、静的ミキサー等の混合機を使用するのが好ましい。乳濁液は、通常0.01μm〜10μmの液滴径を有し、乳化安定性を有する。
乳濁液の乳化状態は、通常ウェーバー数又はP/q(単位容積当たりの負荷動力値)で表される。ウェーバー数としては、好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上、最も好ましくは35,000以上である。また、上限としては1,000,000以下程度で十分である。また、P/qとしては、好ましくは200kg・m/L以上、さらに好ましくは500kg・m/L以上、最も好ましくは1,000kg・m/L以上である。
乳濁液とCDCとの接触は、前述した乳化条件よりも弱い混合条件下で行うのがCDCの有機相への溶解を抑制する意味で好ましい。その際のウェーバー数としては、10,000未満、好ましくは5,000未満、さらに好ましくは2,000未満である。また、P/qとしては、200kg・m/L未満、好ましくは100kg・m/L未満、さらに好ましくは50kg・m/L未満である。CDCの接触は、管型反応器や槽型反応器にCDCを導入することによって達成することができる。
オリゴマー化工程における反応温度は、通常80℃以下、好ましくは60℃以下、さらに好ましくは10℃〜50℃の範囲である。反応時間は反応温度によって適宜選択され、通常0.5分〜10時間、好ましくは1分〜2時間である。反応温度が過度に高いと、副反応の制御ができず、CDC原単位が悪化する傾向がある。反応温度が過度に低いと、反応制御上は好ましい状況ではあるが、冷凍負荷が増大し、コストアップとなる傾向がある。
有機相中のカーボネートオリゴマー濃度は、得られるカーボネートオリゴマーが可溶な範囲であればよく、具体的には、10重量%〜40重量%程度である。有機相の割合はジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液又はアルカリ土類金属塩水溶液を含む水相に対し、0.2〜1.0の容積比であることが好ましい。
(重縮合工程)
重縮合工程では、静置分離槽で水相と分離されたカーボネートオリゴマーを含有する有機相は、撹拌機を有するオリゴマー貯槽に移送される。オリゴマー貯槽には、トリエチルアミン(TEA)等の縮合触媒がさらに添加される。
続いて、オリゴマー貯槽内で撹拌された有機相は所定の重縮合反応槽に導入され、続いて、重縮合反応槽に、脱塩水(DMW)、塩化メチレン(CH2Cl2)等の有機溶媒及び水酸化ナトリウム水溶液等が供給され、撹拌混合されてカーボネートオリゴマーの重縮合反応が行われる。
重縮合反応槽中の重縮合反応液は、その後、複数の重縮合反応槽に連続的に順次導入され、カーボネートオリゴマーの重縮合反応が完結される。
ここで、重縮合工程において、連続的にカーボネートオリゴマーの重縮合反応が行われる重縮合反応槽における滞留時間は、通常12時間以下、好ましくは0.5時間〜5時間である。
重縮合工程の好ましい態様としては、先ず、カーボネートオリゴマーを含む有機相と水相とを分離し、分離した有機相に必要に応じて不活性有機溶媒を追加し、カーボネートオリゴマーの濃度を調整する。この場合、重縮合反応によって得られる有機相中のポリカーボネート樹脂の濃度が5重量%〜30重量%となるように、不活性有機溶媒の量を調整する。次に、新たに水及びアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を含む水溶液を加え、さらに、重縮合条件を整えるために、好ましくは縮合触媒を添加し、界面重縮合法に従い重縮合反応を行う。重縮合反応における有機相と水相との割合は、容積比で有機相:水相=1:0.2〜1:1程度が好ましい。
アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物としては、前述したオリゴマー化工程において使用するものと同様な化合物が挙げられる。中でも、工業的に水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の使用量は、重縮合反応中、反応系が常にアルカリ性に保たれる量以上であればよく、重縮合反応の開始時に、全量を一括して添加してもよく、また、重縮合反応中に適宜分割して添加してもよい。
アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の使用量が過度に多いと、副反応である加水分解反応が進む傾向がある。そのため、重縮合反応終了後における水相に含まれるアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の濃度が0.05N以上、好ましくは0.05N〜0.3N程度となるようにするのがよい。
重縮合工程における重縮合反応の温度は、通常常温付近である。反応時間は0.5時間〜5時間、好ましくは1時間〜3時間程度である。
(洗浄工程)
重縮合反応槽における重縮合反応が完結した後、重縮合反応液は、公知の方法により、アルカリ洗浄液によるアルカリ洗浄、酸洗浄液による酸洗浄及び洗浄水による水洗浄が行われる。なお、洗浄工程の全滞留時間は、通常12時間以下、好ましくは0.5時間〜6時間である。
(ポリカーボネート樹脂単離工程)
ポリカーボネート樹脂単離工程では、先ず、洗浄工程において洗浄されたポリカーボネート樹脂を含む重縮合反応液は、所定の固形分濃度に濃縮された濃縮液として調製される。濃縮液におけるポリカーボネート樹脂の固形分濃度は、通常5重量%〜35重量%、好ましくは10重量%〜30重量%である。
次に、濃縮液は、所定の造粒槽に連続的に供給され、所定の温度の脱塩水(DMW)と撹拌混合される。そして、水中で懸濁状態を保ちながら有機溶媒を蒸発させる造粒処理が行われ、ポリカーボネート樹脂粒状体を含む水スラリーが形成される。
ここで、脱塩水(DMW)の温度は、通常37℃〜67℃、好ましくは40℃〜50℃である。また、造粒槽内で行われる造粒処理によりポリカーボネート樹脂の固形化温度は、通常37℃〜67℃、好ましくは40℃〜50℃である。
造粒槽から連続的に排出されるポリカーボネート樹脂粉状体を含む水スラリーは、その後、所定の分離器に連続的に導入され、水スラリーから水が分離される。
(乾燥工程)
乾燥工程では、分離器において、水スラリーから水が分離されたポリカーボネート樹脂粉状体が、所定の乾燥機に連続的に供給され、所定の滞留時間で滞留させた後、連続的に抜き出される。乾燥機としては、例えば流動床型乾燥機が挙げられる。なお、複数の流動床型乾燥機を直列につなぎ、連続的に乾燥処理を行ってもよい。
ここで、乾燥機は、通常熱媒ジャケット等の加熱手段を有し、例えば、水蒸気にて、通常0.1MPa−G〜1.0MPa−G、好ましくは0.2MPa−G〜0.6MPa−Gに保持されている。これにより、乾燥機の中を流通する窒素(N2)の温度は、通常100℃〜200℃、好ましくは120℃〜180℃に保持されている。
<溶融法>
溶融法によるポリカーボネート樹脂の製造方法では、ジヒドロキシ化合物とカルボニル化合物とをエステル交換反応触媒存在下、溶融状態にてエステル交換反応させることによりポリカーボネート樹脂を製造する。
(ジヒドロキシ化合物)
ポリカーボネート樹脂の原料であるジヒドロキシ化合物としては、具体的には前記式(1)から(13)で表されるジヒドロキシ化合物等の1種又は2種以上が挙げられる。
(炭酸ジエステル)
ポリカーボネート樹脂の原料である炭酸ジエステルとしては、下記式(14)で示される化合物が挙げられる。
Figure 0005796424
ここで、式(14)中、Aは、置換されていてもよい炭素数1〜炭素数10の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基である。2つのAは、同一でも相互に異なるものでもよい。
なお、A上の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜炭素数10のアルキル基、炭素数1〜炭素数10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基等が例示される。
炭酸ジエステルの具体例としては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネートが挙げられる。
これらの中でも、ジフェニルカーボネート(以下、「DPC」と称する場合がある。)、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステルは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
また、上記の炭酸ジエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。 代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
ポリカーボネート樹脂の溶融法による製造方法において、これらの炭酸ジエステル(上記の置換したジカルボン酸又はジカルボン酸エステルを含む。以下同じ。)の使用量は、通常ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルが1.01モル〜1.30モル、好ましくは1.02モル〜1.20モルの比で用いられる。前記炭酸ジエステルのモル比が過度に小さいと、エステル交換反応速度が低下し、所望の分子量を有するポリカーボネート樹脂の生産が困難となったり、得られるポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度が高くなり、熱安定性が悪化したりする傾向にある。また、前記炭酸ジエステルのモル比が過度に大きいと、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有するポリカーボネート樹脂の生産が困難となる傾向となる他、樹脂中の炭酸ジエステルの残存量が多くなり、成形加工時や成形品としたときの臭気の原因となることがあり、好ましくない。
(エステル交換触媒)
ポリカーボネート樹脂の溶融法による製造方法において使用されるエステル交換触媒としては、通常エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を製造する際に用いられる触媒が挙げられ、特に限定されない。
一般的には、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、ベリリウム化合物、マグネシウム化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。これらの中でも、実用的にはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物が好ましい。これらのエステル交換触媒は、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
エステル交換触媒の使用量は、通常全ジヒドロキシ化合物1モルに対して1×10-9モル〜1×10-3モルの範囲で用いられるが、成形特性や色相に優れたポリカーボネート樹脂を得るためには、エステル交換触媒の量は、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いる場合、全ジヒドロキシ化合物1モルに対して、好ましくは1.0×10-8モル〜1×10-4モルの範囲内、より好ましくは1.0×10-8モル〜1×10-5モルの範囲内であり、特に好ましくは1.0×10-7モル〜5.0×10-6モルの範囲内である。エステル交換触媒の使用量が上記下限量より少なければ、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性が得られず、上記上限量より多い場合は、ポリマー色相が悪化し、分岐成分量が多すぎて流動性が低下し、目標とする溶融特性の優れたポリカーボネート樹脂が製造できない。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素化合物等の無機アルカリ金属化合物;アルカリ金属のアルコール類、フェノール類、有機カルボン酸類との塩等の有機アルカリ金属化合物等が挙げられる。ここで、アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が挙げられる。
これらのアルカリ金属化合物の中でも、セシウム化合物が好ましく、特に、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウムが好ましい。
アルカリ土類金属化合物としては、例えば、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩等の無機アルカリ土類金属化合物;アルカリ土類金属のアルコール類、フェノール類、有機カルボン酸類との塩等が挙げられる。ここで、アルカリ土類金属としては、例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
また、ベリリウム化合物及びマグネシウム化合物としては、例えば、当該金属の水酸化物、炭酸塩等の無機金属化合物;前記金属のアルコール類、フェノール類、有機カルボン酸類との塩等が挙げられる。
塩基性ホウ素化合物としては、ホウ素化合物のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、ストロンチウム塩等が挙げられる。ここで、ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等が挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の3価のリン化合物、又はこれらの化合物から誘導される4級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
(触媒失活剤)
溶融法においては、エステル交換反応終了後に、エステル交換触媒を中和失活させるための触媒失活剤を添加しても良く、このような処理により、得られたポリカーボネート樹脂の耐熱性、耐加水分解性が向上する。
このような触媒失活剤としては、スルホン酸やスルホン酸エステルのようなpKaが3以下の酸性化合物が好ましく、具体的にはベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸プロピル、ベンゼンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸プロピル、並びにp−トルエンスルホン酸ブチルなどの1種又は2種以上が挙げられる。
これらの中でも、p−トルエンスルホン酸並びにp−トルエンスルホン酸ブチルが好適に用いられる。
溶融法によるポリカーボネート樹脂の製造方法は、原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの原料混合溶融液を調製し(原調工程)、前記原料混合溶融液を、エステル交換反応触媒の存在下、溶融状態で複数の反応槽を用いて多段階で重縮合反応をさせる(重縮合工程)ことによって行われる。反応方式は、バッチ式、連続式、又はバッチ式と連続式の組合せのいずれでもよい。反応槽は、複数基の竪型撹拌反応槽、及び必要に応じてこれに続く少なくとも1基の横型撹拌反応槽が用いられる。通常これらの反応槽は直列に設置され、連続的に処理が行われる。
重縮合工程後、反応を停止させ、重縮合反応液中の未反応原料や反応副生物を脱揮除去する工程や、熱安定剤、離型剤、色剤等を添加する工程、ポリカーボネート樹脂を所定の粒径に形成する工程等を適宜追加してもよい。
以下、各工程について説明する。
(原調工程)
ポリカーボネート樹脂の原料として使用するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとは、通常窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、バッチ式、半回分式又は連続式の撹拌槽型の装置を用いて、原料混合溶融液として調製される。溶融混合の温度は、例えば、ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを用い、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いる場合は、通常120℃〜180℃、好ましくは125℃〜160℃の範囲から選択される。
以下、ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールA、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを原料として用いる場合を例として説明する。
この際、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの割合は、炭酸ジエステルが過剰になるように調整され、前述の如く、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルは、通常1.01モル〜1.30モル、好ましくは1.02モル〜1.20モルの割合になるように調整される。
(重縮合工程)
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応による重縮合は、通常2段階以上、好ましくは3段階〜7段階の多段方式で連続的に行われる。各段階の具体的な反応条件としては、温度:150℃〜320℃、圧力:常圧〜0.01Torr(1.3Pa)、平均滞留時間:5分〜150分の範囲である。
多段方式の各反応槽においては、エステル交換反応の進行とともに副生するフェノール等のモノヒドロキシ化合物をより効果的に系外に除去するために、上記の反応条件内で、段階的により高温、より高真空に設定する。
重縮合工程を多段方式で行う場合は、通常竪型撹拌反応槽を含む複数基の反応槽を設けて、ポリカーボネート樹脂の平均分子量を増大させる。反応槽は通常2基〜6基、好ましくは4基〜5基設置される。
ここで、反応槽としては、例えば、撹拌槽型反応槽、薄膜反応槽、遠心式薄膜蒸発反応槽、表面更新型二軸混練反応槽、二軸横型撹拌反応槽、濡れ壁式反応槽、自由落下させながら重縮合する多孔板型反応槽、ワイヤーに沿わせて落下させながら重縮合するワイヤー付き多孔板型反応槽等が用いられる。
竪型撹拌反応槽の撹拌翼の形式としては、例えば、タービン翼、パドル翼、ファウドラー翼、アンカー翼、フルゾーン翼((株)神鋼環境ソリューション製)、サンメラー翼(三菱重工業(株)製)、マックスブレンド翼(住友重機械工業(株)製)、ヘリカルリボン翼、ねじり格子翼((株)日立プラントテクノロジー製)等が挙げられる。
また、横型撹拌反応槽とは、撹拌翼の回転軸が横型(水平方向)であるものをいう。横型撹拌反応槽の撹拌翼としては、例えば、円板型、パドル型等の一軸タイプの撹拌翼やHVR、SCR、N−SCR(三菱重工業(株)製)、バイボラック(住友重機械工業(株)製)、あるいはメガネ翼、格子翼((株)日立プラントテクノロジー製)等の二軸タイプの撹拌翼が挙げられる。
なお、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの重縮合に使用するエステル交換触媒は、通常予め溶液として準備されていてもよい。触媒溶液の濃度は特に限定されず、触媒の溶媒に対する溶解度に応じて任意の濃度に調整される。溶媒としては、アセトン、アルコール、トルエン、フェノール、水等を適宜選択することができる。
触媒の溶媒として水を選択した場合、水の性状は、含有される不純物の種類ならびに濃度が一定であれば特に限定されないが、通常蒸留水や脱イオン水等が好ましく用いられる。
<ポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物>
本発明のポリカーボネート樹脂積層体の表層(A層)は、ポリカーボネート樹脂(a)と、ポリカーボネート樹脂(a)とは異なる構造単位を有するポリカーボネート樹脂(b)を少なくとも含む。すなわち、表層(A層)は、ポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)を含むポリカーボネート樹脂組成物(以下、「ポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物」と称す場合がある。)を用いて形成される。
このポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物とする手法は、
1)ポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)とを溶融混練する方法;
2)溶融状態のポリカーボネート樹脂(a)と溶融状態のポリカーボネート樹脂(b)とを溶融混練する方法;
3)ポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)とを溶液状態で混合する
方法;
4)ポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)とをドライブレンドする
方法;
等が挙げられる。
以下、各方法について説明する。
1)ポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)とを溶融混練する方法;
ポリカーボネート樹脂(a)のペレットもしくは粉粒体とポリカーボネート樹脂(b)のペレットもしくは粉粒体とを、例えばニーダーや二軸押出機、単軸押出機等の混合装置を用いて溶融混練する。ポリカーボネート樹脂(a)のペレットもしくは粉粒体とポリカーボネート樹脂(b)のペレットもしくは粉粒体は予め固体状態で混合し、その後混練されても良いし、又はどちらか一方を先に前記混合装置で溶融させ、そこへもう一方のポリカーボネート樹脂を添加し、混練しても良い。混練させる温度に特に規定はないが、240℃以上が好ましく、260℃以上より好ましく、280℃以上がさらに好ましい。また、350℃以下が好ましく、320℃以下が特に好ましい。混練させる温度が低いとポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)の混合が完全ではなく、ポリカーボネート樹脂積層体を製造した際に、表層の鉛筆硬度等にばらつきが出る虞があり、好ましくない。また、混練する温度が高すぎると、ポリカーボネート樹脂積層体の色調が悪化する可能性があり、好ましくない。
2)溶融状態のポリカーボネート樹脂(a)と溶融状態のポリカーボネート樹脂(b)とを溶融混練する方法;
溶融状態のポリカーボネート樹脂(a)と溶融状態のポリカーボネート樹脂(b)とを、例えば攪拌槽やスタティックミキサー、ニーダー、二軸押出機、単軸押出機等の混合装置を用いて混合する。このとき、例えば溶融重合法で得られたポリカーボネート樹脂であれば、冷却・固化することなく溶融状態で上記混合装置に導入しても良い。混合する温度としては特に規定はないが、150℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましい。また、300℃以下が好ましく、250℃以下が特に好ましい。混合させる温度が低いとポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)の混合が完全ではなく、ポリカーボネート樹脂積層体を製造した際に、表層の鉛筆硬度等にばらつきが出る虞があり、好ましくない。また、混合する温度が高すぎると、ポリカーボネート樹脂積層体の色調が悪化する可能性があり、好ましくない。
3)ポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)とを溶液状態で混合する
方法;
ポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)とを適当な溶媒に溶解して溶液とし、溶液状態で混合し、その後、ポリカーボネート樹脂組成物として単離する方法である。適当な溶媒としては、例えば、ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン及び1,2−ジクロロエチレン等の塩素化脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素;その他、ニトロベンゼン及びアセトフェノン等の置換芳香族炭化水素が挙げられる。これらの中でも、例えば、ジクロロメタン又はクロロベンゼン等の塩素化された炭化水素が好適に使用される。これらの溶媒は、単独であるいは他の溶媒との混合物として使用することができる。
混合装置としては、攪拌槽やスタティックミキサー等が挙げられる。また、混合温度としてはポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)とが溶解する条件であれば特に規定はなく、通常使用する溶媒の沸点以下で実施される。
4)ポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)とをドライブレンドする
方法;
ポリカーボネート樹脂(a)のペレットもしくは粉粒体とポリカーボネート樹脂(b)のペレットもしくは粉粒体とをタンブラー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサーやナウターミキサー等を用いてドライブレンドする方法である。
上記1)〜4)の方法の中でも、ポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)とを溶融混練する1)及び2)の方法、ポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)とをドライブレンドする4)の方法が好ましい。
なお、ポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物を製造するにあたり、上記いずれの方法においても、ポリカーボネート樹脂に一般的な各種の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲において適宜添加することができる。このような添加剤としては、例えば、高分子改質剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、光安定剤、顔料、染料等の着色剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、無機フィラー、光拡散剤、防曇剤、流動性改良剤、分散剤、防菌剤などが挙げられる。
また、本発明の効果を損なうことのない範囲で、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂成分、例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂、SAN樹脂、液晶ポリマー等の1種又は2種以上を添加混合することもできるが、ポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)とを所定の割合で用いることによる本発明の効果を有効に得るために、これらの他の樹脂成分を用いる場合、ポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)との合計に対して10重量%以下、特に5重量%以下とすることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂積層体の表層(A層)を形成するポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物におけるポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)との重量比は、1:99〜45:55の範囲であり、好ましくは3:97〜45:55、より好ましくは5:95〜40:60、更に好ましくは10:90〜30:70である。ポリカーボネート樹脂(a)の割合が上記上限よりも多すぎる場合は、得られるポリカーボネート樹脂積層体の色調が悪化する傾向があり、ポリカーボネート樹脂(a)の割合が上記下限よりも少なすぎるとポリカーボネート樹脂積層体の表層の表面硬度が不十分になる可能性がある。
なお、ポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物のポリカーボネート樹脂(a)としては、1種のみを用いてもよく、原料ジヒドロキシ化合物や製造法、粘度平均分子量等の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
同様に、ポリカーボネート樹脂(b)についても、1種のみを用いてもよく、原料ジヒドロキシ化合物や製造法、粘度平均分子量等の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
[コア層(B層)]
本発明のポリカーボネート樹脂積層体のコア層(B層)は、A層とは異なる樹脂層である。
ここで、A層とは異なる樹脂層とは、A層を構成するポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物とは異なる樹脂で構成される層であればよく、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂、例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂、SAN樹脂、液晶ポリマー等で構成される層、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネート樹脂(a)、ポリカーボネート樹脂(b)を含む)と上記ポリカーボネート樹脂以外の樹脂とを含む層、ポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)とをA層とは異なる混合比で含む層、ポリカーボネート樹脂(a)のみからなる層、ポリカーボネート樹脂(b)のみからなる層などが挙げられるが、特にポリカーボネート樹脂(b)を主として含む層であることが好ましい。
ここで、「ポリカーボネート樹脂(b)を主として含む」とは、全樹脂成分中の50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95〜100重量%がポリカーボネート樹脂(b)であることをさす。
また、コア層(B層)がポリカーボネート樹脂(b)以外の樹脂成分を含む場合、他の樹脂成分としては、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂、SAN樹脂、液晶ポリマーの1種又は2種以上が好ましい。
なお、ポリカーボネート樹脂(b)としては、前述の表層(A層)に用いられるポリカーボネート樹脂(b)を用いることができ、その好適なポリカーボネート樹脂、好適な粘度平均分子量、鉛筆硬度についても同様である。
コア層(B層)においても、ポリカーボネート樹脂(b)は、1種のみを用いてもよく、原料ジヒドロキシ化合物や製造法、粘度平均分子量等の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
また、コア層(B層)を形成するポリカーボネート樹脂(b)等の原料樹脂(以下、「原料樹脂B」と称す場合がある。)にも、前述のポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物と同様、ポリカーボネート樹脂に一般的な各種の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲において適宜添加することができる。このような添加剤としては、例えば、高分子改質剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、光安定剤、顔料、染料等の着色剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、無機フィラー、光拡散剤、防曇剤、流動性改良剤、分散剤、防菌剤などが挙げられる。
[厚さ]
本発明のポリカーボネート樹脂積層体の厚さは好ましくは1μm〜2000μmであり、上限はより好ましくは1800μm、更に好ましくは1500μm、又、下限はより好ましくは10μm、更に好ましくは50μm、特に好ましくは100μm、最も好ましくは200μmである。ポリカーボネート樹脂積層体が厚すぎると、例えば共押出による積層体の製造時に、冷却ロール上で積層体表面は冷却されても積層体内部が後から冷却されてしまい、内部が収縮して積層体の表面平滑性が悪くなる。ポリカーボネート樹脂積層体が薄すぎると破れやすくなり、実用に適さない。
また、本発明のポリカーボネート樹脂積層体の表層(A層)の厚さとコア層(B層)の厚さ比は、表層(A層)が過度に厚く、コア層(B層)が過度に薄いと、コア層(B層)を設けることによる本発明の効果、即ち、表面硬度、色調、耐衝撃性のバランスの一層の向上効果を得ることができず、逆に表層(A層)が過度に薄く、コア層(B層)が過度に厚いと表層(A層)による高い表面硬度を十分に得ることができない。
このため、本発明のポリカーボネート樹脂積層体の表層(A層)とコア層(B層)の厚さ比は、表層(A層):コア層(B層)=1:1〜100、特に1:2〜10とすることが好ましく、具体的には、表層(A層)の厚さは0.1〜1000μm、特に1〜500μmで、コア層(B層)の厚さは1〜1999.9μm、特に10〜1500μmであることが好ましい。
なお、本発明のポリカーボネート樹脂積層体は、通常、表層(A層)とコア層(B層)との2層積層構造とされるが、必要に応じて、表層(A層)とコア層(B層)との間に接着層、その他の機能層等が設けられていてもよく、また、コア層の表層と反対側の面に粘着剤層、その他の機能層等が設けられていてもよい。
〔ポリカーボネート樹脂積層体の製造方法〕
本発明のポリカーボネート樹脂積層体は、前述のポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物と、コア層(B層)形成用の原料樹脂Bを用いて製造される。
本発明のポリカーボネート樹脂積層体の製造方法としては特に制限はなく、例えば、次のような方法が挙げられる。
共押出成形法:ポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物を、当該ポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物のガラス転移温度(以下Tg)に対して好ましくは100〜200℃高い温度で、原料樹脂Bを当該原料樹脂BのTgに対して100〜200℃高い温度でそれぞれ溶融共押出し、80〜160℃の冷却ロールにて冷却する。
射出成形法:ポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物を、当該ポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物のTgに対して100〜200℃高い温度で、原料樹脂Bを当該原料樹脂BのTgに対して100〜200℃高い温度でそれぞれ二色成形する。或いは、予め押出成形、あるいは射出成形等により成形したポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物及び原料樹脂Bのうちの一方の成形シートを型内に配置した後、他方を射出成形して一体化する。
熱圧着法:予め押出成形又は射出成形等により成形したポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物の成形シートと原料樹脂Bの成形シートをラミネート機やプレス機で熱圧着する。或いは、押出し直後のポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物及び原料樹脂Bのうちの一方のシートに予め成形した他方のシートを熱圧着する。この場合、熱圧着の温度としては、ポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物及び原料樹脂BのうちTgの高い方のTgに対して100〜200℃高い温度とすることが好ましい。
その他、予め成形したポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物の成形シートと原料樹脂Bの成形シートを接着剤等を用いて接着することにより、本発明のポリカーボネート樹脂積層体とすることもできる。
このような本発明のポリカーボネート樹脂積層体の製造工程では、例えば、押出成形又は共押出成形により得られた積層体又はシートの端面をそろえるために端面を切断加工した際の切断片や、バリ等の廃材が排出される。
本発明において、これらの廃材は、適宜、ポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物又は原料樹脂Bに混合して次の成形に用いることができる。
ただし、このような廃材をリサイクルする場合、その使用量が過度に多く、バージン樹脂の割合が少ないと、得られるポリカーボネート樹脂積層体の表面硬度や色調、耐衝撃性等の機械的特性が損なわれる場合があるため、これらの廃材の使用量は、原料全体に対して30重量%以下、特に20重量%以下、例えば0.1〜10重量%程度とすることが好ましい。
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例で使用したポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂積層体及びポリカーボネート樹脂シートの物性は、下記の方法により評価した。
(1)プレート鉛筆硬度(ポリカーボネート樹脂の鉛筆硬度)
ポリカーボネート樹脂を、射出成形機(株式会社日本製鋼所製J50E2)により、バレル温度280℃、金型温度90℃の条件下にて、厚さ3mm、縦60mm、横60mmの成形体に射出成形し、この成形体について、ISO15184に準拠し、鉛筆硬度試験機(東洋精機株式会社製)を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。
(2)ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)
ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
(3)ポリカーボネート樹脂積層体又はポリカーボネート樹脂シートの鉛筆硬度
ポリカーボネート樹脂積層体の表層(A層)面又はポリカーボネート樹脂シートの表面について、ISO15184に準拠し、鉛筆硬度試験機(東洋精機株式会社製)を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。
(4)ポリカーボネート樹脂積層体又はポリカーボネート樹脂シートの塩化メチレン溶液のイエローインデックス(YI)
ポリカーボネート樹脂積層体又はポリカーボネート樹脂シートを塩化メチレン(林純薬工業株式会社製 試薬特級 塩化メチレン)に溶解し、7重量%の塩化メチレン溶液とした。次いで容器内幅50mmの石英セルに該塩化メチレン溶液を入れ、色差計(スガ試験機株式会社製 SMカラーコンピューター SM−4−2)によりイエローインデックス(溶液YI)を測定した。数値が小さいほど色調が良好であることを示す。
(5)ポリカーボネート樹脂積層体又はポリカーボネート樹脂シートのデュポン衝撃試験評価
ポリカーボネート樹脂積層体又はポリカーボネート樹脂シートについてデュポン衝撃試験によって耐衝撃性を測定した。使用した機器は東洋精機製作所製「デュポン衝撃試験機(参考規格:ASTM D2794−64)」である。使用した撃心のRは1/4インチ、受台には外径70mm、内径50mmの円筒形の受台を使用した。重りは100g、300g、500g、1000g、2000gから各積層体又はシートの耐衝撃性に応じた適当な重りを選択して使用した。試験のn数は10で、50%破壊高さと重りを測定し、そこから衝撃強度を算出した。
[合成例:ポリカーボネート樹脂(a1)(BPCホモポリマー)の合成(溶融法)]
2,2−ビス(4−ヒドロキシ-3−メチルフェニル)プロパン(以下、「BPC」と略記する場合がある。)(本州化学社製)37.60kg(約147mol)とジフェニルカーボネート(以下、「DPC」と略記する場合がある。)32.20kg(約150mol)に、炭酸セシウムの水溶液を、炭酸セシウムがジヒドロキシ化合物1mol当たり2μmolとなるように添加して混合物を調製した。次に、該混合物を、攪拌機、熱媒ジャケット、真空ポンプ、還流冷却器を具備した内容量200Lの第1反応器に投入した。
次に、第1反応器内を1.33kPa(10Torr)に減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を5回繰り返し、第1反応器の内部を窒素置換した。窒素置換後、熱媒ジャケットに温度230℃の熱媒を通じて第1反応器の内温を徐々に昇温させ、混合物を溶解させた。その後、55rpmで撹拌機を回転させ、熱媒ジャケット内の温度をコントロールして、第1反応器の内温を220℃に保った。そして、第1反応器の内部で行われるBPCとDPCのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて第1反応器内の圧力を絶対圧で101.3kPa(760Torr)から13.3kPa(100Torr)まで減圧した。
続いて、第1反応器内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールをさらに留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。
その後、系内を窒素で絶対圧で101.3kPaに復圧の上、ゲージ圧で0.2MPaまで昇圧し、予め200℃以上に加熱した移送配管を経由して、第1反応器内のオリゴマーを、第2反応器に圧送した。尚、第2反応器は内容量200Lであり、攪拌機、熱媒ジャケット、真空ポンプ並びに還流冷却管を具備しており、内圧は大気圧、内温は240℃に制御していた。
次に、第2反応器内に圧送したオリゴマーを16rpmで攪拌し、熱媒ジャケットにて内温を昇温し、第2反応器内を40分かけて絶対圧で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。その後、昇温を継続し、さらに40分かけて、内圧を絶対圧で13.3kPaから399Pa(3Torr)まで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。さらに、昇温を続け、第2反応器内の絶対圧が70Pa(約0.5Torr)に到達後、70Paを保持し、重縮合反応を行った。第2反応器内の最終的な内部温度は285℃であった。第2反応器の攪拌機が予め定めた所定の攪拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。
次いで、第2反応器内を、窒素により絶対圧で101.3kPaに復圧の上、ゲージ圧で0.2MPaまで昇圧し、第2反応器の槽底からポリカーボネート樹脂をストランド状で抜き出し、水槽で冷却しながら、回転式カッターを使用してペレット化した。得られたポリカーボネート樹脂(a1)のBPCホモポリマーの粘度平均分子量(Mv)は31,800であり、プレート鉛筆硬度は2Hであった。
ポリカーボネート樹脂(b1)として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)に由来するモノマー単位のみで構成された溶融法による市販のポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製「M7027J」)を準備した。このポリカーボネート樹脂(b1)のBPAホモポリマーの粘度平均分子量(Mv)は25,600であり、プレート鉛筆硬度はBであった。
[実施例1]
ポリカーボネート樹脂(a)、ポリカーボネート樹脂(b)として、それぞれ上記ポリカーボネート樹脂(a1)のBPCホモポリマーとポリカーボネート樹脂(b1)のBPAホモポリマーを表1記載の割合で1つのベント口を有する日本製鋼所製2軸押出機(LABOTEX30HSS−32)にて、溶融混練し、該2軸押出機の出口からストランド状に押し出し、水で冷却固化させた後、回転式カッターで切断してペレット化し、ポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物ペレットを得た。このとき、該2軸押出機のバレル温度は280℃、該2軸押出機の出口におけるポリカーボネート樹脂温度は300℃であった。なお、溶融混練時は、該2軸押出機のベント口は真空ポンプの連結し、該ベント口での圧力が500Paになるように制御した。
次いで、得られたポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物ペレットを表層用のφ25mm単軸押出機(創研社製)で、BPAホモポリマーをコア層用のφ30mm単軸押出機(創研社製)でそれぞれ溶融させ、両単軸押出機の先端に取り付けられた二層Tダイから押し出し、ロールで冷却することにより、表1の表層・コア層厚さの、幅300±10mmのポリカーボネート樹脂積層体を得た。その後、このポリカーボネート樹脂積層体の押出方向の両端辺部を切断して端面をそろえたポリカーボネート樹脂積層体を得た。尚、押出成形時の成形温度、冷却ロール温度は表1に記載の通りであった。
得られたポリカーボネート樹脂積層体について、前記評価項目に記載の方法に準じて、表層(A層)面鉛筆硬度、溶液YI、デュポン衝撃強度を評価した。その結果を表1に示した。
[実施例2,3、比較例1,2]
表層(A層)の原料を表1に示すポリカーボネート樹脂配合に変更したこと、表層・コア層の厚さを表1記載の厚さとしたこと以外は実施例1と同様に実施し、ポリカーボネート樹脂積層体を得た。
得られたポリカーボネート樹脂積層体について、前記評価項目に記載の方法に準じて、表層(A層)面鉛筆硬度、溶液YI、デュポン衝撃強度を評価した。その結果を表1に示した。
[比較例3,4]
表1の表層(A層)欄に示す1種のポリカーボネート樹脂原料のみを用い、Tダイ押出成形機(創研社製)を用いて、表1に記載の成形条件(表1の表層成形温度欄に記載の温度を成形温度とする)にて、表層(A層)のみを押出成形することにより、厚さ500μmで、幅300±10mmの単層ポリカーボネート樹脂シートを得た。その後、このポリカーボネート樹脂シートの押出方向の両端辺部を切断して端面をそろえたポリカーボネート樹脂シートを得た。
得られたポリカーボネート樹脂シートについて、前記評価項目に記載の方法に準じて、鉛筆硬度、溶液YI、デュポン衝撃強度を評価した。その結果を表1に示した。
[比較例5]
実施例1におけると同様にして製造したポリカーボネート樹脂(a)/(b)組成物ペレットのみを用い、Tダイ押出成形機(創研社製)を用いて、表1に記載の成形条件(表1の表層成形温度欄に記載の温度を成形温度とする)にて、表層(A層)のみを押出成形することにより、厚さ500μmで、幅300±10mmの単層ポリカーボネート樹脂シートを得た。その後、このポリカーボネート樹脂シートの押出方向の両端辺部を切断して端面をそろえたポリカーボネート樹脂シートを得た。
得られたポリカーボネート樹脂シートについて、前記評価項目に記載の方法に準じて、鉛筆硬度、溶液YI、デュポン衝撃強度を評価した。その結果を表1に示した。
Figure 0005796424
表1より、本発明によれば、
・表層鉛筆硬度:HB以上
・溶液YI :4.0以下
・デュポン衝撃強度;10以上
の条件を全て満たす、表面硬度に優れると共に、色調に優れ、かつ耐衝撃性に優れたポリカーボネート樹脂積層体が提供されることが分かる。
これに対して、表層(A層)原料において、ポリカーボネート樹脂(a)の配合割合が多く、ポリカーボネート樹脂(b)の配合割合が少ない比較例1では、鉛筆硬度は高いが、溶液YIが大きく、色調が劣り、また、衝撃強度も劣る。
表層(A層)にポリカーボネート樹脂(b)を含まない比較例2もまた、鉛筆硬度は高いが色調が悪く、特に衝撃強度が著しく劣る。
単層のポリカーボネート樹脂のシートとした比較例3〜5のうち、ポリカーボネート樹脂(a)のみの比較例3は、鉛筆硬度は高いが色調及び衝撃強度が大きく損なわれる。
一方、ポリカーボネート樹脂(b)のみの比較例4では、衝撃強度は高いが鉛筆硬度は著しく劣り、色調も悪い。
ポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)との混合ポリカーボネート樹脂シートである比較例5は、実施例1における表層(A層)のみの厚さを厚くしたものに相当し、全体の厚さは実施例1の積層体と同一であるが、表面硬度、色調、耐衝撃性のすべてにおいて実施例1より劣る。
なお、上記の実施例において、ポリカーボネート樹脂積層体の端面をそろえるために切り落とした積層体の切断部分を、表層(A層)又はコア層(B層)の原料の一部として用いて同様にポリカーボネート樹脂積層体を製造しても、同様に表面硬度に優れると共に、色調に優れ、かつ耐衝撃性に優れたポリカーボネート樹脂積層体を製造することができた。
本発明によれば、表面硬度が大幅に向上し、且つ色調が良好で、かつ耐衝撃性に優れたポリカーボネート樹脂積層体を得ることができる。また、本発明により得られたポリカーボネート樹脂積層体は、表面硬度、色調に優れ且つ耐衝撃性も良好であることから、携帯電話、PDA(パーソナルデジタルアシスタント)、携帯型DVD(デジタルビデオディスク)プレイヤー、携帯型ゲーム機、携帯型パソコン・ディスプレイ、各種携帯型タッチパネルなどの携帯型表示体の保護窓、タッチパネルの下部電極用の支持基板等の電気・電子機器、プリンターやコピー機などの情報表示窓等のOA関連製品、ヘッドランプレンズ、車両用窓等の自動車分野、照明保護板や反射板等の照明機器、看板、表示板や窓などの建材分野、表面硬度を要求される各種用途などに特に有用である。特に、本発明のポリカーボネート樹脂積層体は、適当な形状に成形して、建築物、車両、電気・電子機器、機械その他の各種分野で使用でき、とりわけ携帯型表示体の保護窓、タッチパネル、照明機器用部材として好適に使用できる。

Claims (15)

  1. ポリカーボネート樹脂(a)と、ポリカーボネート樹脂(a)とは異なる構造単位を有するポリカーボネート樹脂(b)とを含む樹脂層(A層)と、A層とは異なる樹脂層(B層)とからなる積層体であって、
    ポリカーボネート樹脂(a)が、下記式(1a)で表される化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂であり、
    ポリカーボネート樹脂(b)が、下記式(2)で表される化合物に由来する構造単位を主として含むポリカーボネート樹脂であり、
    ポリカーボネート樹脂(a)のISO 15184で規定される鉛筆硬度が、ポリカーボネート樹脂(b)のISO 15184で規定される鉛筆硬度より高く、且つA層におけるポリカーボネート樹脂(a)とポリカーボネート樹脂(b)との重量比が1:99〜45:55の範囲である、ポリカーボネート樹脂積層体。
    Figure 0005796424
    Figure 0005796424
  2. 前記B層が、ポリカーボネート樹脂(b)を主として含む、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  3. 前記ポリカーボネート樹脂(a)のISO 15184で規定される鉛筆硬度が、F以上である、請求項1又は請求項2に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  4. 前記A層のISO 15184で規定される鉛筆硬度が、HB以上である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  5. 前記ポリカーボネート樹脂(a)が、溶融重合法により製造されたポリカーボネート樹脂である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  6. ポリカーボネート樹脂積層体の厚さが、1〜2000μmである、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  7. 7重量%塩化メチレン溶液を光路長50mmで測定した際のイエローインデックスが4.0以下である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  8. デュポン衝撃強度が10J以上である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  9. 電子機器の一部として使用される、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  10. タッチパネルとして使用される、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  11. 照明機器の一部として使用される、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂積層体。
  12. 請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂積層体を、射出成形又は共押出成形にて成形する工程を含む、ポリカーボネート樹脂積層体の製造方法。
  13. 成形されたポリカーボネート樹脂積層体の端面を切断する工程を含む、請求項12に記載のポリカーボネート樹脂積層体の製造方法。
  14. ポリカーボネート樹脂積層体の端面を切断した際の切断部分を、A層の成形材料に混合する工程を含む、請求項13に記載のポリカーボネート樹脂積層体の製造方法。
  15. ポリカーボネート樹脂積層体の端面を切断した際の切断部分を、B層の成形材料に混合する工程を含む、請求項13に記載のポリカーボネート樹脂積層体の製造方法。
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