JPWO2012099020A1 - 自動車の車体前部構造 - Google Patents

Abstract

自動車の車体前部構造において、自動車が障害物に前面衝突すると、衝撃吸収部材（２０）が前後方向に潰れて衝突エネルギーを吸収する。その際に、衝撃吸収部材（２０）の下面部（２０ｄ，２０ｅ）の折曲部（ｄ）が折れ曲がって前部下面部（２０ｄ）が下向きに張り出すことで障害物が車体下面に巻き込まれるのを防止することができる。衝突荷重の入力によって衝撃吸収部材（２０）が変形するとき、その下面に対向するスキッドガード（２１）と干渉して衝撃吸収部材（２０）の自由な変形が阻害される可能性があるが、スキッドガード（２１）は変形する衝撃吸収部材（２０）に押されて変形可能あるいは移動可能に構成されるので、スキッドガードを設けた場合でも衝撃吸収部材（２０）の自由な変形が可能になって衝撃吸収性能が確保される。

Description

本発明は、前輪の前方に左右方向に配置されたバンパービームと、前記バンパービームの下方に配置された車体部材と、前記バンパービームおよび前記車体部材を接続する衝撃吸収部材と、前記衝撃吸収部材を覆うバンパーフェースとを備える自動車の車体前部構造に関する。

かかる自動車の車体前部構造は、下記特許文献１により公知である。

この自動車の車体前部構造は、障害物が自動車が前面に衝突した場合に、金属板を複数の折曲部で前方に突出する方向に折りまげて構成した衝撃吸収部材が衝突荷重で潰れるように変形して衝突エネルギーを吸収するようになっており、その際に衝撃吸収部材が潰れて受圧面積が増加することで障害物に加わる衝撃を吸収するとともに、衝撃吸収部材が下方に張り出すように変形することで障害物が車体下面に巻き込まれるのを防止することができる。

日本特開２０１０−１６２９４９号公報

ところで、不整地を走行する機会が多いＳＵＶ（スポーツ・ユーティリティ・ビークル）のような自動車では、フロントバンパーのバンパーフェースの下面に金属板や樹脂部品よりなるスキッドガードが装着される場合があり、このスキッドガードで路面の突起物や小石等によるラジエータやエンジンの損傷を防止することができる。

しかしながら、スキッドガードは前記衝撃吸収部材の下面に沿うように配置されるため、障害物との前面衝突時に衝撃吸収部材が下方に張り出すように変形しようとしても、スキッドガードと干渉して自由に変形することができず、所望の衝撃吸収性能が発揮されない可能性がある。

本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、スキッドガードを設けた場合でも衝撃吸収部材が所望の衝撃吸収性能を発揮できるようにすることを目的とする。

上記目的を達成するために、本発明によれば、前輪の前方に左右方向に配置されたバンパービームと、前記バンパービームの下方に配置された車体部材と、前記バンパービームおよび前記車体部材を接続する衝撃吸収部材と、前記衝撃吸収部材を覆うバンパーフェースとを備え、前記衝撃吸収部材は、前記バンパービームに固定される上端取付部と、前記上端取付部から前方に延びる上面部と、前記上面部から下方に延びる前面部と、前記前面部から後方に延びる下面部と、前記下面部の後端を前記車体部材に固定する下端取付部とを備え、前記前輪から前記バンパーフェースの下面に延びるアプローチ傾斜線の上方に沿って配置される前記下面部は、左右方向に延びて下向きに屈曲する折曲部で前部下面部および後部下面部に分けられており、車両の前面衝突時に前記折曲部が折り曲げられることで前記前部下面部が下向きに張り出す自動車の車体前部構造において、前記バンパーフェースの下面に固定されて前記衝撃吸収部材の下面部に対向するスキッドガードを備え、前記スキッドガードは車両の前面衝突時に変形する前記衝撃吸収部材に押されて変形可能あるいは移動可能に構成されることを第１の特徴とする自動車の車体前部構造が提案される。

また本発明によれば、前記第１の構成に加えて、前記スキッドガードは左右の側縁に形成された側部フランジに切欠きを有することを第２の特徴とする自動車の車体前部構造が提案される。

また本発明によれば、前記第２の構成に加えて、前記スキッドガードは前記左右の切欠きを結ぶ薄肉部を有することを第３の特徴とする自動車の車体前部構造が提案される。

また本発明によれば、前記第１の構成に加えて、前記スキッドガードは前縁および左右の側縁においてバンパーフェースに固定されており、前記前縁の固定強度は前記左右の側縁の固定強度よりも高いことを第４の特徴とする自動車の車体前部構が提案される。

また本発明によれば、前記第１〜第４の何れか１つの構成に加えて、前記前部下面部および前記後部下面部は、前記折曲部に沿って配置された補強部を備えることを第５の特徴とする自動車の車体前部構造が提案される。

尚、実施の形態のアンダーメンバ１７は本発明の車体部材に対応し、実施の形態の前部下面部２０ｄおよび後部下面部２０ｅは本発明の下面部に対応する。

本発明の第１の構成によれば、自動車が障害物に前面衝突してバンパーフェースから衝撃吸収部材に衝突荷重が入力すると、衝撃吸収部材が前後方向に潰れて衝突エネルギーを吸収する。その際に、衝撃吸収部材の上面、前面および前部下面部が上下方向に延びる一つの面を構成するように変形することで受圧面積が増加して障害物に加わる衝撃を軽減することができ、また下面部の折曲部が折れ曲がって前部下面部が下向きに張り出すことで障害物が車体下面に巻き込まれるのを防止することができる。

衝突荷重の入力によって衝撃吸収部材が変形するとき、その下面に対向するスキッドガードと干渉して衝撃吸収部材の自由な変形が阻害される可能性があるが、スキッドガードは変形する衝撃吸収部材に押されて変形可能あるいは移動可能に構成されるので、衝撃吸収部材の自由な変形が可能になって衝撃吸収性能が確保される。

また本発明の第２の構成によれば、スキッドガードは左右の側縁に形成された側部フランジに切欠きを有するので、変形する衝撃吸収部材に押されたときに脆弱な左右の切欠きを結ぶ線でスキッドガードが折れ曲がって前方に変形し易くなり、衝撃吸収部材の自由な変形が保証される。

また本発明の第３の構成によれば、スキッドガードは左右の切欠きを結ぶ薄肉部を有するので、この薄肉部に沿ってスキッドガードが更に折れ曲がり易くなる。

また本発明の第４の構成によれば、スキッドガードは前縁および左右の側縁においてバンパーフェースに固定されており、前縁の固定強度は左右の側縁の固定強度よりも高いので、変形する衝撃吸収部材に押されたときにスキッドガードは左右の側縁の固定が外れて前縁まわりに前方に揺動し易くなり、衝撃吸収部材の自由な移動が保証される。

また本発明の第５の構成によれば、衝撃吸収部材の前部下面部および後部下面部は折曲部に沿って配置された補強部を備えるので、折曲部に応力を集中させて確実に折り曲げることができる。

図１は自動車の車体前部の斜視図である。（第１の実施の形態） 図２は図１の２−２線断面図である。（第１の実施の形態） 図３は図１の要部の分解斜視図である。（第１の実施の形態） 図４は図２の４方向矢視図である。（第１の実施の形態） 図５は自動車の前面衝突時の作用説明図である。（第１の実施の形態） 図６はスキッドガードの斜視図である。（第２および第３の実施の形態） 図７は衝撃吸収部材の斜視図である。（第４の実施の形態）

１３ バンパーフェース
１７ アンダーメンバ（車体部材）
１９ バンパービーム
２０ 衝撃吸収部材
２０ａ 上端取付部
２０ｂ 上面部
２０ｃ 前面部
２０ｄ 前部下面部（下面部）
２０ｅ 後部下面部（下面部）
２０ｆ 下端取付部
２０ｇ ビード（補強部）
２１ スキッドガード
２１ｄ 側部フランジ
２１ｅ 切欠き
２１ｆ 薄肉部
２２ 前輪
Ａ アプローチ傾斜線
ｄ 折曲部

以下、図１〜図５に基づいて本発明の第１の実施の形態を説明する。尚、本明細書における前後方向および左右方向とは、運転席に着座した乗員を基準として定義される。

第１の実施の形態

図１および図２に示すように、ＳＵＶ（スポーツ・ユーティリティ・ビークル）型の自動車の車体前部には、フロントグリル１１および左右のフロントフェンダー１２，１２の前方に連なるように、薄肉の合成樹脂で一体に形成されたバンパーフェース１３が配置される。車体前部に配置されて図示せぬラジエータを支持する枠状のバルクヘッド１４は、左右のフロントサイドフレーム１５，１５の前端に接続されて上下方向に延びる左右のステー１６，１６と、左右のステー１６，１６の下端間を接続して左右方向に延びるアンダーメンバ１７とを備える。

バルクヘッド１４の左右のステー１６，１６の前面に左右のブラケット１８，１８を介してバンパービーム１９が支持される。左右方向に延びるバンパービーム１９と左右方向に延びるアンダーメンバ１７とに、金属板を折り曲げて形成した衝撃吸収部材２０が支持される。そして衝撃吸収部材２０およびバンパービーム１９の下方、前方および上方が前記バンパーフェース１３で覆われる。バンパーフェース１３の下面には、衝撃吸収部材２０の下面に僅かな隙間を介して対向する金属板や樹脂部品よりなるスキッドガード２１が設けられる。スキッドガード２１は、自動車が不整地等を走行する際にエンジンやラジエータを保護するためのもので、左右の前輪２２，２２からバンパーフェース１３の下面に対して引いた接線（アプローチ傾斜線Ａ）に沿うように配置される。

図２および図３に示すように、衝撃吸収部材２０は、左右方向に相互に平行に延びる５本の折曲部ａ，ｂ，ｃ，ｄ，ｅによって折り曲げられることで、各々が長方形の６個の面、即ち、上端取付部２０ａと、上面部２０ｂと、前面部２０ｃと、前部下面部２０ｄと、後部下面部２０ｅと下端取付部２０ｆとに分けられており、上端取付部２０ａがボルト２３…およびナット２４…でバンパービーム１９の前面に固定され、下端取付部２０ｆがボルト２５…およびナット２６…でバンパービーム１９よりも下方かつ後方に位置するアンダーメンバ１７の上面に設けたブラケット２７に固定される。

上面部２０ｂは上下方向に延びる上端取付部２０ａの下端の折曲部ａから前下方に延び、前面部２０は上面部２０ｂの前端の折曲部ｂから略下方に延び、前部下面部２０ｄは前面部２０の下端の折曲部ｃから後下方に延び、後部下面部２０ｅは前部下面部２０ｄの後端の折曲部ｄからより水平に近い角度で後下方に延び、下端取付部２０ｆは後部下面部２０ｅの後端の折曲部ｅから上下方向に下側に延びている。衝撃吸収部材２０の上面部２０ｂ、前面部２０、前部下面部２０ｄおよび後部下面部２０ｅは、折曲部ｂ，ｃ，ｄにおいて外側に凸に屈曲している。そしてスキッドガード２１の寸法は、その上面に僅かな距離を介して対向する衝撃吸収部材２０の前部下面部２０ｄおよび後部下面部２０ｅよりも僅かに大きく形成される。

図２〜図４に示すように、スキッドガード２１は金属板をプレス成形したもので、矩形状の本体部２１ａの外周から上方に突出する前部フランジ２１ｂ、後部フランジ２１ｃおよび左右の側部フランジ２１ｄ，２１ｄを備える。左右の側部フランジ２１ｄ，２１ｄの長手方向中央部には、その強度を局部的に低下させるための切欠き２１ｅ，２１ｅが形成される。バンパーフェース１３の下面には「コ」字状の切欠き１３ａが形成されており、この切欠き１３ａの縁部にスキッドガード２１の前側および左右の縁部が重ね合わされ、複数のタッピングネジ２８…で固定される。

次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。

図５に示すように、自動車が歩行者等の障害物に前面衝突すると、薄い合成樹脂製のバンパーフェース１３は衝突荷重によって容易に座屈し、衝突荷重が衝撃吸収部材２０の前面部２０に入力する。前部下面部２０ｄおよび後部下面部２０ｅは脆弱な折曲部ｄを介して接続されており、かつ前部下面部２０ｄおよび後部下面部２０ｅの前後方向長さは上面部２０ｂの前後方向長さよりも長くて座屈し易いため、上側の三つの折曲部ａ，ｂ，ｃは角度が増加するように変形し、下側の二つの折曲部ｄ，ｅは角度が減少するように変形することで、中間の三つの折曲部ｂ，ｃ，ｄの位置は後方かつ下方に移動する。

その結果、上面部２０ｂ、前面部２０および前部下面部２０ｄは略上下方向に延びる平面状に展開しながら後方に移動するため、衝突荷重を吸収するストロークを確保し、かつ衝突荷重を受け止める広い受圧面積を確保することで、歩行者に加わる衝撃を軽減することができる。また前部下面部２０ｄは起立しながら下方に移動するため、前部下面部２０ｄの下端の折曲部ｄと路面との間の隙間を小さくし、歩行者の身体が車体下面に巻き込まれるのを防止することができる。

ところで、衝撃吸収部材２０が下方に変形するとき、その下方にスキッドガード２１が近接して位置しているため、衝撃吸収部材２０の折曲部ｄがスキッドガード２１の裏面と干渉してしまい、衝撃吸収部材２０の自由な変形が阻害されて衝撃吸収効果が充分に発揮されない可能性がある。

しかしながら本実施の形態によれば、前面衝突の衝突荷重で衝撃吸収部材２０が下向きに変形すると、その折曲部ｄによって裏面を下向きに押されたスキッドガード２１が、左右の側部フランジ２１ｄ，２１ｄの切欠き２１ｅ，２１ｅを結ぶ脆弱な折れ線Ｌで下方に向かって「く」字状に屈曲する。このとき、スキッドガード２１をバンパーフェース１３の切欠き１３ａに固定するタッピングネジ２８…の一部が抜け落ちることで、スキッドガード２１の自由な屈曲が促進される。

このように、車両が歩行者に前面衝突したとき、スキッドガード２１が折れ線Ｌにおいて下向きに「く」字状に屈曲するため、その上方に配置した衝撃吸収部材２０がスキッドガード２１に邪魔されずに下向きに変形することが可能となり、衝撃吸収部材２０の衝撃吸収性能を最大限に発揮させることができる。

次に、図６に基づいて本発明の第２および第３の実施の形態を説明する。
[第２及び第３の実施の形態]
図６（Ａ）は本発明の第２の実施の形態を示すもので、スキッドガード２１の裏面に前記折れ線Ｌに沿って薄肉部２１ｆを形成したものである。この薄肉部２１ｆによってスキッドガード２１の曲げ剛性が局部的に低下するため、スキッドガード２１を折れ線Ｌに沿って確実に折り曲げることができる。

図６（Ｂ）は本発明の第３の実施の形態を示すもので、スキッドガード２１の前端に左右方向に延びる一対の支軸２９，２９を突設し、この支軸２９，２９をバンパーフェース１３に回転自在に支持したものである。スキッドガード２１の前部は支軸２９，２９によって支持されるため、その前部の支持剛性はタッピングネジ２８…で支持されたスキッドガード２１の他の部分の支持剛性よりも高くなる。よって、車両の前面衝突時に衝撃吸収部材２０が下方に変形してスキッドガード２１の裏面を押したとき、スキッドガード２１は後部のタッピングネジ２８…が分離して前部の支軸２９，２９まわりに下向きに揺動することで、衝撃吸収部材２０の下向きの変形を許容することができる。

次に、図７に基づいて本発明の第４の実施の形態を説明する。
[第４の実施の形態]
第４の実施の形態は、折曲部ｄの前側の前部下面部２０ｄおよび折曲部ｄの後側の後部下面部２０ｅに、折曲部ｄに沿って配置された多数のビード２０ｇ…を形成したものである。このビード２０ｇ…を形成したことで、前部下面部２０ｄおよび後部下面部２０ｅの面剛性が増加して折曲部ｄに応力が集中し易くし、衝撃吸収部材２０を折曲部ｄにおいて確実に折り曲げて前部下面部２０ｄを下方に移動させることができる。

以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。

例えば、実施の形態ではスキッドガード２１をバンパーフェース１３の切欠き１３ａに取り付けているが、バンパーフェース１３の一部を薄肉にした脆弱部にスキッドガード２１を重ね合わせるように取り付けても良い。

またスキッドガード２１の固定手段は、実施の形態のタッピングネジ２８…に限定されるものではない。

また衝撃吸収部材２０の下端取付部２０ｆを固定する車体部材は、実施の形態のバルクヘッド１４のアンダーメンバ１７に限定されるものではない。

Claims (5)

1. 前輪（２２）の前方に左右方向に配置されたバンパービーム（１９）と、前記バンパービーム（１９）の下方に配置された車体部材（１７）と、前記バンパービーム（１９）および前記車体部材（１７）を接続する衝撃吸収部材（２０）と、前記衝撃吸収部材（２０）を覆うバンパーフェース（１３）とを備え、
   前記衝撃吸収部材（２０）は、前記バンパービーム（１９）に固定される上端取付部（２０ａ）と、前記上端取付部（２０ａ）から前方に延びる上面部（２０ｂ）と、前記上面部（２０ｂ）から下方に延びる前面部（２０ｃ）と、前記前面部（２０ｃ）から後方に延びる下面部（２０ｄ，２０ｅ）と、前記下面部（２０ｄ，２０ｅ）の後端を前記車体部材（１７）に固定する下端取付部（２０ｆ）とを備え、
   前記前輪（２２）から前記バンパーフェース（１３）の下面に延びるアプローチ傾斜線（Ａ）の上方に沿って配置される前記下面部（２０ｄ，２０ｅ）は、左右方向に延びて下向きに屈曲する折曲部（ｄ）で前部下面部（２０ｄ）および後部下面部（２０ｅ）に分けられており、車両の前面衝突時に前記折曲部（ｄ）が折り曲げられることで前記前部下面部（２０ｄ）が下向きに張り出す自動車の車体前部構造において、
   前記バンパーフェース（１３）の下面に固定されて前記衝撃吸収部材（２０）の下面部（２０ｄ，２０ｅ）に対向するスキッドガード（２１）を備え、前記スキッドガード（２１）は車両の前面衝突時に変形する前記衝撃吸収部材（２０）に押されて変形可能あるいは移動可能に構成されることを特徴とする自動車の車体前部構造。
2. 前記スキッドガード（２１）は左右の側縁に形成された側部フランジ（２１ｄ）に切欠き（２１ｅ）を有することを特徴とする、請求項１に記載の自動車の車体前部構造。
3. 前記スキッドガード（２１）は前記左右の切欠き（２１ｅ）を結ぶ薄肉部（２１ｆ）を有することを特徴とする、請求項２に記載の自動車の車体前部構造。
4. 前記スキッドガード（２１）は前縁および左右の側縁においてバンパーフェース（１３）に固定されており、前記前縁の固定強度は前記左右の側縁の固定強度よりも高いことを特徴とする、請求項１に記載の自動車の車体前部構造。
5. 前記前部下面部（２０ｄ）および前記後部下面部（２０ｅ）は、前記折曲部（ｄ）に沿って配置された補強部（２０ｇ）を備えることを特徴とする、請求項１〜請求項４の何れか１項に記載の自動車の車体前部構造。

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