JP5952121B2 - 車両前部構造 - Google Patents
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Description
このような車両用バンパ構造に関する従来技術として、例えば特許文献1には、バンパフェイスの下部(エアダム部)の内側に、水平に配置された上面部から下方に複数の前後方向リブ、車幅方向リブを下垂させたエネルギ吸収ブラケットを配置することが記載されている。
しかし、バンパフェイスの下端部に設けられるエアダム部の高さは、車両の地上高や意匠、アプローチアングル等に起因する制約によって、必ずしも歩行者脚部保護に適した高さに設定可能であるとは限らない。
本発明の課題は、歩行者脚部との衝突時に未衝突時におけるエアダム部位置よりも低い位置で荷重を受けることが可能な車両前部構造を提供することである。
請求項1に係る発明は、左右のサイドフレーム前端部にわたして設けられたバンパビームと、前記バンパビームの前方側に設けられた本体部、前記本体部の下方に設けられた開口、及び、前記開口の下方に配置されたエアダム部を有するバンパフェイスと、前記本体部と前記バンパビームとの間に設けられ前方側が後方側に対して下方となるよう傾斜して配置されるとともに、前端部への車両後方側への荷重入力に応じて該前端部が下降する方向に回動する回動部材と、前記回動部材と前記エアダム部とを連結するとともに前記回動部材の回動に応じて前記エアダム部を下方へ押圧する連結部材とを備えることを特徴とする車両前部構造である。
これによれば、歩行者脚部との衝突によって車両前方側からの荷重が入力されると、回動部材が回動して前端部が連結部材を下方へ押し下げ、エアダム部は連結部材に押されて下方へ変位する。
これによって、エアダム部の高さが衝突前に対して低くなり、歩行者脚部からの荷重をより低い位置で受けることが可能となり、歩行者脚部を跳ね上げ、転ばせて傷害値を軽減する効果が向上する。特に、エアダム部がバンパフェイスの本体部に対して後退して配置される車両の場合には、歩行者脚部との衝突前にエアダム部を下げることが可能となり、歩行者保護性能が向上する。
これによれば、エアダム部を実質的に閉断面とすることによって、エアダム部が圧壊する際に必要とされるエネルギを大きくし、エアダム部のバンパフェイス自体によって良好なエネルギ吸収(EA)効果を得ることができる。
これによれば、回動部材が回動時にバンパビームに対して上方にずれることを防止し、上述した効果をより確実に得ることができる。
これによれば、エアダム部の車体との固定箇所がエアダム部の下方への変位を妨げることがなく、上述した効果を確実に得ることができる。
これによれば、部品点数を低減するとともに、車両組み立て時の工程を簡素化することができる。
これによれば、開口の内部に設けられる外装部材を連結部材の少なくとも一部として利用することによって、本発明の適用による構造の複雑化や重量増を抑制することができる。
実施例の車両前部構造は、例えば乗用車等の自動車に設けられるものである。
図1は、実施例の車両前部構造を車幅方向中央部で切って見た断面図である。
車両前部構造は、ラジエータパネルロワ10、バンパビーム20、アンダーカバー30、バンパフェイス100、衝撃吸収(EA)部材200等を備えて構成されている。
ラジエータパネルロワ10は、図示しないラジエータコア、エアコンディショナのコンデンサの下端部を保持するものである。
ラジエータパネルロワ10は、例えば鋼板をプレス成型した複数のパネルを集成し、スポット溶接して構成されており、閉断面を有し、アンダーカバー30、バンパフェイス100、EA部材200に対して比較的強固に形成されている。
ラジエータパネルロワ10は、ホワイトボディ(未艤装車体)の一部を構成している。
バンパビーム20は、ラジエータパネルロワ10よりも高くかつ車両前方側へ突き出した位置に配置されている。
バンパビーム20は、正面衝突時に衝突対象物からの荷重を受けて車体後方側へ伝達する部材である。
バンパビーム20は、例えば、鋼板をロール成形するなどして形成され、上下方向に離間して形成された閉断面部21,22を、前面部23で連結した断面形状となっている。
前面部23の高さ方向における中央部には、段状に凹ませて形成された凹部24が設けられている。
アンダーカバー30の前側固定箇所31は、ラジエータパネルロワ10の下部に固定されている。
アンダーカバー30の前側固定箇所31の前方側には、前下がりの斜面部32が設けられている。
アンダーカバー30の前端部33は、実質的に水平に配置された平板状に形成され、斜面部32の前部に接続されている。
バンパフェイス100は、バンパビーム20の前方側に配置された本体部110、及び、本体部110の下方に配置されたエアダム部120等を備えて構成されている。
本体部110とエアダム部120との間には、ラジエータコア等に走行風を導入するための開口Oが設けられている。
上面部111は、バンパフェイス100の上部に設けられるグリルGの下端部と隣接して配置されている。
前面部112は、上面部111の前端部から下方に延びて配置されている。
下面部113は、前面部112の下端部から後方に延びて配置されている。
下面部113は、開口Oの上辺部を構成している。
上面部121は、開口Oの下辺部を構成している。
前面部122は、上面部121の前端部から下方に延びて形成され、車両側面視における断面形状は前方が凸となるように湾曲して形成されている。
下面部123は、前面部122の下端部から後方に延びて、実質的に水平に配置されている。
下面部123の後端部は、アンダーカバー30の前端部33の下方に、図示しない樹脂ファスナ等を用いて固定されている。
EA部材200は、例えば、PP等の樹脂系材料をインジェクション成形することによって、一体に形成されている。
EA部材200は、上方側から順に、グリル係合部210、上面部220、基部230、回動部240、連結部250、エアダム後面部260、下面部270等を有して構成されている。
上面部220の後端部は、バンパビーム20の前面部23と隣接して配置されている。
上面部220は、後端部が前端部に対して低くなるように、水平面に対して傾斜して配置されている。
また、基部230の下部には、車両後方側に突き出した凸部231が形成されている。
凸部231は、バンパビーム20の前面部23における凹部24の上部近傍に配置され、凹部24内に挿入されている。
凸部231は、衝突時に凹部24と係合して、EA部材200の基部230がバンパビーム20に対して上方側へ変位することを規制する。
回動部240の前端部には、下方に突き出して形成された前面部241、前面部241の下端部から後方側かつ斜め下方側へ突き出して形成された斜面部242が形成されている。斜面部242の後端部(下端部)は、バンパフェイス100の本体部110の下面部113の後端部近傍に配置されている。
回動部240は、歩行者脚部等との衝突時に、バンパフェイス100の本体部110から車両後方側への荷重が入力されると、基部230との連結箇所近傍を中心として、前端部が下降する方向へ回動する。
連結部250は、その一部に開口O内に嵌め込まれて車両外部に露出する開口カバー、グリル等の外装部品を含んでいる。
連結部250の上端部、下端部は、バンパフェイス100の本体部110の下面部113、及び、エアダム部120の上面部121の後端部にそれぞれ形成された爪部113a,121aと係合して固定されている。
エアダム後面部260の上端部は、連結部250の下端部と接続されている。
エアダム後面部260は、連結部250の下端部から車両後方側の斜め下方へ突き出した上面部261、及び、上面部261の後端部から下方へ突き出した後面部262等を備えている。
また、後面部262の車両前方側には、必要に応じてEAフォームFが取り付けられる。
下面部270は、バンパフェイス100のエアダム部120の下面部123の下方に配置され、アンダーカバー30の前端部33と協働してエアダム部120の下面部123を挟持している。
図2は、歩行者脚部との衝突時における実施例の車両前部構造の挙動を時系列に示した模式図である。
図2(a)は衝突直前、図2(b)は衝突によるEA部材の変形中、図2(c)は衝突によるEA部材の変形終了後の状態を示している。
図2(a)に示すように、歩行者脚部Lが車両前方側から衝突した場合、バンパフェイス100の本体部110が変形して車両後方側へ変位し、図2(b)に示すように、EA部材200の回動部240の先端部に車両後方側への荷重を負荷する。
回動部240は、図2(b)及び図2(c)に示すように、基部230との接続部近傍を回動中心として、先端部が降下する方向に回動し、連結部250を下方へ押し下げる。
(1)衝突時に回動部240の回動によって、連結部250を介してエアダム部120を下方へ押し下げることによって、エアダム部120の高さが衝突前に対して低くなり、歩行者脚部Lからの荷重をより低い位置で受けることが可能となり、歩行者脚部Lを跳ね上げて傷害値を軽減する効果が向上する。特に、エアダム部120が本体部110に対して後退して配置される車両の場合、歩行者脚部Lとの衝突に先立ってエアダム部120を下げることが可能となり、歩行者保護性能が向上する。
(2)バンパフェイス100のエアダム部120の後方側にEA部材200のエアダム後面部260を設けて、実質的に閉断面とすることによって、エアダム部120が圧壊する際に必要とされるエネルギを大きくし、エアダム部120の表皮自体によって良好なエネルギ吸収(EA)効果を得ることができる。
(3)EA部材200の基部230に形成した凸部231をバンパビーム20の凹部24と係合させることによって、回動部240が回動時にバンパビーム20に対して上方にずれることを防止し、上述した効果をより確実に得ることができる。
(4)バンパフェイス100のエアダム部120が可撓性を有するアンダーカバー30を介してラジエータパネルロワ10に取付けられることによって、エアダム部120の下方への変位が妨げられることがなく、上述した効果を確実に得ることができる。
(5)回動部240及び連結部250を有するEA部材200を一体成型することによって、部品点数を低減するとともに、車両組み立て時の工程を簡素化することができる。
(6)バンパフェイス100に設けられる開口Oの内部に設けられる外装部材を連結部250の一部として利用することによって、本発明の適用による構造の複雑化や重量増を抑制することができる。
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
各部材の形状、構造、材質、製法、配置等は上述した実施例に限定されず、適宜変更することができる。
例えば、実施例においては、回動部材と連結部材とを一体に形成しているが、これらをそれぞれ別部品として形成し、連結してもよい。
また、実施例では、エアダム部を可撓性を有するアンダーカバーを介して車体構造部材であるラジエータパネルロワに取付けているが、可撓性を有するエアダム部の下面部を後方に延長して車体構造部材に取付け、下面部の撓みによってエアダム部の下降を許容するようにしてもよい。
21,22 閉断面部 23 前面部
24 凹部 30 アンダーカバー
31 前側固定箇所 32 斜面部
33 前端部
100 バンパフェイス 110 本体部
111 上面部 112 前面部
113 下面部 113a 爪部
120 エアダム部 121 上面部
121a 爪部 122 前面部
123 下面部
O 開口 G グリル
200 EA部材 210 グリル係合部
220 上面部 230 基部
231 凸部 240 回動部
241 前面部 242 斜面部
250 連結部 260 エアダム後面部
261 上面部 262 後面部
270 下面部
F EAフォーム
Claims (6)
- 左右のサイドフレーム前端部にわたして設けられたバンパビームと、
前記バンパビームの前方側に設けられた本体部、前記本体部の下方に設けられた開口、及び、前記開口の下方に配置されたエアダム部を有するバンパフェイスと、
前記本体部と前記バンパビームとの間に設けられ前方側が後方側に対して下方となるよう傾斜して配置されるとともに、前端部への車両後方側への荷重入力に応じて該前端部が下降する方向に回動する回動部材と、
前記回動部材と前記エアダム部とを連結するとともに前記回動部材の回動に応じて前記エアダム部を下方へ押圧する連結部材と
を備えることを特徴とする車両前部構造。 - 前記バンパフェイスの前記エアダム部は、車両側面視において前方側に凸となる断面形状を有し、
前記エアダム部の上端部と下端部とを連結したこと
を特徴とする請求項1に記載の車両前部構造。 - 前記回動部材の後端部と前記バンパビームとの上下方向相対変位を拘束する上下変位規制手段を有すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両前部構造。 - 前記バンパフェイスの前記エアダム部は、可撓性を有する部材を介して車体の構造部材に対して下方へ変位可能に取り付けられること
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両前部構造。 - 前記回動部材及び前記連結部材を一体に形成したこと
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車両前部構造。 - 前記連結部材は、前記開口の内部に設けられる外装部材を含むこと
を特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の車両前部構造。
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