JPWO2012046678A1 - ガス発生器、ガス発生器用ホルダおよびガス発生器用ホルダの製造方法 - Google Patents

ガス発生器、ガス発生器用ホルダおよびガス発生器用ホルダの製造方法 Download PDF

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Abstract

ガス発生器は、ガス発生剤が装填されたカップおよびガス発生剤を燃焼させる点火器が組付けられた金属製のホルダ(10)を備える。ホルダ(10)は、胴部(11)と、胴部(11)から突出する点火器固定用係止部(15)およびカップ固定用係止部(16)とを含み、点火器およびカップは、これら係止部(15,16)が折り曲げられることでホルダ(10)にかしめ固定されている。係止部(15,16)は、いずれも鍛造加工によって仕上げ成形されており、係止部(15,16)の表層に現れる鍛流線が、係止部(15,16)の表面において分断されずかつ胴部(11)から係止部(15,16)を経て胴部(11)に戻るように連続して延びている。

Description

本発明は、ガス発生器およびこれに具備されるガス発生器用ホルダ(以下、単に「ホルダ」とも称する)ならびに当該ガス発生器用ホルダの製造方法に関し、特に、シートベルトプリテンショナ装置に組み込まれるガス発生器およびこれに具備されるガス発生器用ホルダならびに当該ガス発生器用ホルダの製造方法に関する。
従来、自動車等の乗員の保護の観点からシートベルト装置やエアバッグ装置が普及している。このうち、シートベルト装置は、車両等衝突時に生じる衝撃により乗員が車内または車外に投げ出されることを防止する目的で装備されるものであり、乗員の身体にベルトを巻き付けることによって乗員を座席に拘束して固定するものである。
近年においては、乗員保護機能の向上のためにプリテンショナ機能を備えたシートベルト装置が急速に普及している。このプリテンショナ機能とは、衣服の厚み等によって生じるシートベルトの弛みを衝突時あるいは衝突の直前において瞬時に巻き上げるものであり、乗員の拘束効果を高めるものである。このプリテンショナ機能は、マイクロガスジェネレータ(MGG)と称されるガス発生器から出力されるガスの圧力によってシートベルトが強く引き込まれることによって実現される。
この種のガス発生器としては、たとえば特開2008−37389号公報(特許文献1)に開示のものがある。上記特開2008−37389号公報に開示のガス発生器は、燃焼することでガスを発生するガス発生剤が装填された有底略円筒状のカップと、ガス発生剤を燃焼させるための点火器と、カップの開口端を閉塞するように同軸上にカップに組付けられるとともに、ガス発生剤に面するように点火器を保持してなる有底略円筒状のホルダとを備えている。
ここで、上記特開2008−37389号公報に開示のガス発生器にあっては、点火器を固定するための点火器固定用係止部とカップを固定するためのカップ固定用係止部とがホルダの胴部から突出して設けられており、点火器およびカップは、それぞれ点火器固定用係止部およびカップ固定用係止部が折り曲げられることによりこれら係止部と胴部とによってその一部が挟持されることでホルダにかしめ固定されている。当該構成を採用することにより、点火器およびカップをホルダに生産性よく容易に固定することができるとともに、固定後におけるこれら部材間の組付け強度を高く維持することができる。
特開2008−37389号公報
通常、ホルダは、金属製のブロックを材料として、当該ブロックに鍛造加工や切削加工、打抜き加工等を段階的に組み合わせて実施することで成形される。ここで、鍛造加工は、ホルダの形状出しの際の粗加工として実施され、切削加工や打抜き加工は、ホルダの形状出しの際の細部の仕上げ成形加工として実施される。そのため、上述した点火器固定用係止部およびカップ固定用係止部の形状出しには、これら部位が比較的細かな形状を有していることに鑑み、一般的に仕上げ成形加工として切削加工が利用される。
しかしながら、点火器固定用係止部およびカップ固定用係止部を切削加工を利用して仕上げ成形した場合には、点火器およびカップをホルダにかしめ固定する工程において、これら係止部が折り曲げられることにより、その一部が剥がれ落ちたりあるいは捲れたりすることでバリが発生し易くなってしまう問題がある。バリの発生は、その後に実施される各種の工程において様々な不具合を生じさせる原因となるおそれがあり、特に大きなバリが発生した場合には、当該バリが点火器の端子ピンに付着することで回路を短絡させてしまうおそれもある。そのため、ガス発生器の製造に際しては、点火器およびカップをそれぞれホルダにかしめ固定した後に、発生したバリを入念に除去するための作業が実施されている。
したがって、本発明は、上述した問題点を解決すべくなされたものであり、点火器および/またはカップのホルダに対するかしめ固定の際に、バリが生じることが効果的に抑制できるガス発生器およびこれに具備されるガス発生器用ホルダならびにガス発生器用ホルダの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の局面に基づくガス発生器は、燃焼することでガスを発生するガス発生剤が装填されたカップと、上記ガス発生剤に面するように配置され、作動時において着火することで上記ガス発生剤を燃焼させる点火器と、上記カップおよび上記点火器が組付けられた金属製のホルダとを備えている。上記ホルダは、胴部と、上記胴部から突出する点火器固定用係止部とを含んでいる。上記点火器は、上記点火器固定用係止部が折り曲げられることにより上記点火器の一部が上記点火器固定用係止部と上記胴部とによって挟持されることで上記ホルダにかしめ固定されている。ここで、本発明の第1の局面に基づくガス発生器においては、上記点火器固定用係止部が鍛造加工によって仕上げ成形されることにより、上記点火器固定用係止部の表層に現れる鍛流線が、上記点火器固定用係止部の表面において分断されずかつ上記胴部から上記点火器固定用係止部を経て上記胴部に戻るように連続して延びている。
上記本発明の第1の局面に基づくガス発生器においては、上記ホルダが、上記胴部から突出するカップ固定用係止部をさらに含んでいてもよく、その場合には、上記カップが、上記カップ固定用係止部が折り曲げられることにより上記カップの一部が上記カップ固定用係止部と上記胴部とによって挟持されることで上記ホルダにかしめ固定されていることが好ましい。ここで、上記本発明の第1の局面に基づくガス発生器においては、上記カップ固定用係止部が鍛造加工によって仕上げ成形されることにより、上記カップ固定用係止部の表層に現れる鍛流線が、上記カップ固定用係止部の表面において分断されずかつ上記胴部から上記カップ固定用係止部を経て上記胴部に戻るように連続して延びていることが好ましい。
本発明の第2の局面に基づくガス発生器は、燃焼することでガスを発生するガス発生剤が装填されたカップと、上記ガス発生剤に面するように配置され、作動時において着火することで上記ガス発生剤を燃焼させる点火器と、上記カップおよび上記点火器が組付けられた金属製のホルダとを備えている。上記ホルダは、胴部と、上記胴部から突出するカップ固定用係止部とを含んでいる。上記カップは、上記カップ固定用係止部が折り曲げられることにより上記カップの一部が上記カップ固定用係止部と上記胴部とによって挟持されることで上記ホルダにかしめ固定されている。ここで、本発明の第2の局面に基づくガス発生器においては、上記カップ固定用係止部が鍛造加工によって仕上げ成形されることにより、上記カップ固定用係止部の表層に現れる鍛流線が、上記カップ固定用係止部の表面において分断されずかつ上記胴部から上記カップ固定用係止部を経て上記胴部に戻るように連続して延びている。
本発明の第1の局面に基づくガス発生器用ホルダは、ガス発生剤が装填されたカップおよびガス発生剤を燃焼させるための点火器が組付けられて使用される金属製のガス発生器用ホルダであって、胴部と、上記胴部から突出し、折り曲げられることにより点火器の一部を上記胴部との間で挟持することで点火器をかしめ固定するための点火器固定用係止部とを有している。ここで、本発明の第1の局面に基づくガス発生器用ホルダにおいては、上記点火器固定用係止部が鍛造加工によって仕上げ成形されることにより、上記点火器固定用係止部の表層に現れる鍛流線が、上記点火器固定用係止部の表面において分断されずかつ上記胴部から上記点火器固定用係止部を経て上記胴部に戻るように連続して延びている。
上記本発明の第1の局面に基づくガス発生器用ホルダは、上記胴部から突出し、折り曲げられることによりカップの一部を上記胴部との間で挟持することでカップをかしめ固定するためのカップ固定用係止部をさらに有していることが好ましい。ここで、上記本発明の第1の局面に基づくガス発生器用ホルダにあっては、上記カップ固定用係止部が鍛造加工によって仕上げ成形されることにより、上記カップ固定用係止部の表層に現れる鍛流線が、上記カップ固定用係止部の表面において分断されずかつ上記胴部から上記カップ固定用係止部を経て上記胴部に戻るように連続して延びていることが好ましい。
本発明の第2の局面に基づくガス発生器用ホルダは、ガス発生剤が装填されたカップおよびガス発生剤を燃焼させるための点火器が組付けられて使用される金属製のガス発生器用ホルダであって、胴部と、上記胴部から突出し、折り曲げられることによりカップの一部を上記胴部との間で挟持することでカップをかしめ固定するためのカップ固定用係止部とを有している。ここで、上記本発明の第2の局面に基づくガス発生器用ホルダにおいては、上記カップ固定用係止部が鍛造加工によって仕上げ成形されることにより、上記カップ固定用係止部の表層に現れる鍛流線が、上記カップ固定用係止部の表面において分断されずかつ上記胴部から上記カップ固定用係止部を経て上記胴部に戻るように連続して延びている。
本発明の第1の局面に基づくガス発生器用ホルダの製造方法は、上記本発明の第1の局面に基づくガス発生器用ホルダを製造するための方法であって、金属製の圧延材を打ち抜くことでスラグを形成する工程と、上記スラグまたは当該スラグの加工品を鍛造加工することで上記点火器固定用係止部を仕上げ成形する工程とを備えている。
本発明の第2の局面に基づくガス発生器用ホルダの製造方法は、上記本発明の第1の局面に基づくガス発生器用ホルダであってかつ上記カップ固定用係止部をさらに有しているガス発生器用ホルダを製造するための方法であって、金属製の圧延材を打ち抜くことでスラグを形成する工程と、上記スラグまたは当該スラグの加工品を鍛造加工することで上記点火器固定用係止部および上記カップ固定用係止部を仕上げ成形する工程とを備えている。
本発明の第3の局面に基づくガス発生器用ホルダの製造方法は、上記本発明の第2の局面に基づくガス発生器用ホルダを製造するための方法であって、金属製の圧延材を打ち抜くことでスラグを形成する工程と、上記スラグまたは当該スラグの加工品を鍛造加工することで上記カップ固定用係止部を仕上げ成形する工程とを備えている。
本発明によれば、点火器および/またはカップのホルダに対するかしめ固定の際に、バリが生じることが効果的に抑制できるガス発生器およびこれに具備されるガス発生器用ホルダならびにガス発生器用ホルダの製造方法とすることができる。
本発明の実施の形態におけるガス発生器の模式断面図である。 本発明の実施の形態におけるガス発生器用ホルダの組付け前の模式断面図である。 本発明の実施の形態におけるガス発生器用ホルダの製造方法に従った製造フローにおける鍛造処理(2回目)を具体的に説明するための模式断面図である。 本発明の実施の形態におけるガス発生器用ホルダの製造方法に従った製造フローにおける打抜き処理を具体的に説明するための模式断面図である。 本発明の実施の形態におけるガス発生器用ホルダの製造方法に従った製造フローにおける切削処理を具体的に説明するための模式断面図である。 本発明の実施の形態におけるガス発生器用ホルダの鍛流線を模式的に表わした断面図である。 従来例におけるガス発生器用ホルダの鍛流線を模式的に表わした断面図である。 実施例および比較例に係るガス発生器用ホルダを用いた検証試験における、ガス発生器用ホルダに対するバリの付着状況を観察した結果を示す表である。 実施例および比較例に係るガス発生器用ホルダを用いた検証試験における、押し型に対するバリの付着状況を観察した結果を示す表である。 実施例に係るガス発生器用ホルダのかしめ加工後におけるバリの付着状況を示す代表的な写真であり、点火器固定用係止部を用いて点火器をホルダにかしめ固定した後の写真である。 実施例に係るガス発生器用ホルダのかしめ加工後におけるバリの付着状況を示す代表的な写真であり、カップ固定用係止部を用いてカップをホルダにかしめ固定した後の写真である。 比較例に係るガス発生器用ホルダのかしめ加工後におけるバリの付着状況を示す代表的な写真であり、点火器固定用係止部を用いて点火器をホルダにかしめ固定した後の写真である。 比較例に係るガス発生器用ホルダのかしめ加工後におけるバリの付着状況を示す代表的な写真であり、カップ固定用係止部を用いてカップをホルダにかしめ固定した後の写真である。 実施例に係るガス発生器用ホルダのかしめ加工後における押し型に対するバリの付着状況を示す写真であり、点火器固定用係止部を用いて点火器をホルダにかしめ固定した後の写真である。 実施例に係るガス発生器用ホルダのかしめ加工後における押し型に対するバリの付着状況を示す写真であり、カップ固定用係止部を用いてカップをホルダにかしめ固定した後の写真である。 比較例に係るガス発生器用ホルダのかしめ加工後における押し型に対するバリの付着状況を示す写真であり、点火器固定用係止部を用いて点火器をホルダにかしめ固定した後の写真である。 比較例に係るガス発生器用ホルダのかしめ加工後における押し型に対するバリの付着状況を示す写真であり、カップ固定用係止部を用いてカップをホルダにかしめ固定した後の写真である。
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態におけるガス発生器は、シートベルト装置に組み込まれるプリテンショナモジュールに組付けられて使用されるマイクロガスジェネレータである。
図1は、本発明の実施の形態におけるガス発生器の模式断面図であり、図2は、図1に示すガス発生器用ホルダの組付け前の模式断面図である。まず、これら図1および図2を参照して、本実施の形態におけるガス発生器およびこれに具備されるガス発生器用ホルダの構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1は、主として、ホルダ10と、点火器20と、カップ30と、ガス発生剤35とを備えている。点火器20およびカップ30は、いずれもホルダ10によって保持されており、より詳細には、ホルダ10に点火器20が組付けられた状態において当該点火器20を覆うようにカップ30がホルダ10に組付けられている。ホルダ10およびカップ30は、これらが組み合わされることでガス発生器1の外殻となるハウジングを構成している。また、カップ30に装填されたガス発生剤35は、組付け後において、ホルダ10、点火器20およびカップ30によって規定される収容空間34に収容されている。これにより、ホルダ10に組付けられた点火器20は、その一部(後述する点火部21)がガス発生剤35に面した状態とされている。なお、点火器20は、スクイブとも称される。
図1に示すように、点火器20は、火炎を発生させるための装置であり、作動時において着火することでガス発生剤35を燃焼させる点火薬が収容された点火部21と、点火薬を着火させるために点火部21に接続された一対の端子ピン22と、一対の端子ピン22を保持する基部(ヘッダ)23とを含んでいる。より詳細には、点火部21は、点火薬に接触するように設けられた電橋線(ブリッジワイヤ)と、点火薬および電橋線を内部に収容すべく基部23に取付けられたスクイブカップとを有しており、電橋線の両端は、基部23によって保持された一対の端子ピン22の先端にスクイブカップの内部においてそれぞれ接続されている。
電橋線としては、一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては、一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)等が利用される。また、スクイブカップとしては、一般に金属製またはプラスチック製の部材が使用される。なお、点火部21内には、点火薬に加えて伝火薬が装填されていてもよい。
衝突を検知した際には、端子ピン22を介して電橋線に所定量の電流が流れる。電橋線に所定量の電流が流れることにより、電橋線においてジュール熱が発生し、これにより点火薬が着火されて燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎(ガスおよび熱粒子)は、点火薬を収容しているスクイブカップを破裂させ、ガス発生剤35を点火する。電橋線に電流が流れてから点火器20が作動するまでの時間は、電橋線にニクロム線を利用した場合に一般に3ミリ秒以下である。
図1に示すように、カップ30は、軸方向の一端が開口した有底円筒状の部材からなり、内部にガス発生剤35が装填されている。カップ30は、ハウジングの一部を構成する部材でもあり、たとえばアルミニウムやアルミニウム合金等の金属材料からなる成形品にて構成される。なお、カップ30の成形には、一般に金型を用いたプレス加工等が利用される。
より詳細には、カップ30は、側壁部31と底壁部32とを有しており、これら側壁部31および底壁部32によって規定される収容空間34にガス発生剤35が収容されている。また、カップ30の開口縁には、側壁部31の先端から連続して外側に向かって延びるフランジ部33が設けられている。当該フランジ部33を含むカップ30の開口縁は、当該カップ30をホルダ10に固定するための部位である。
ガス発生剤35は、点火器20によって着火されて燃焼することで多量のガスを発生するものである。ガス発生剤35としては、無煙火薬(ニトロセルロース)の成形体や、有機窒素化合物と酸化剤とからなる非アジ化系組成物の成形体等が利用される。なお、近年においては、ガス発生剤35として、一酸化炭素等の有害物質の生成量が極めて少ない非ニトロセルロース系ガス発生剤を利用することが注目されている。
ガス発生剤35の成形体としては、顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状のものが利用できる。また、貫通孔を有する有孔状(たとえばマカロニ状や蓮根状等)のものもガス発生剤35の成形体として利用できる。これらの形状は、ガス発生器1が組付けられるプリテンショナモジュールの仕様に応じて最適のものが選択される。また、形状の他にも、線燃焼速度、圧力指数等を考慮に入れてガス発生剤35の成形体のサイズ等が選択される。なお、ガス発生剤35の充填量は、組付けられるプリテンショナモジュールの仕様に応じて適宜変更され得るが、無煙火薬を使用した場合には、概ね0.2g〜2.0g程度とされることが一般的である。
図1に示すように、ホルダ10は、点火器20およびカップ30を保持するための部材であり、有底略円筒状の形状を有している。ホルダ10は、ハウジングの一部を構成する部材でもあり、たとえばアルミニウムやアルミニウム合金、ステンレス鋼を含む鉄系材料等の金属材料からなる成形品にて構成される。なお、ホルダ10は、後述する、複数の鍛造加工、打抜き加工および切削加工が段階的に組み合わせて実施されることで成形され、より詳細には、これら段階的な加工による加圧流動の繰り返し等によって所望の形状に成形される。
図1および図2に示すように、ホルダ10は、略円筒状に形成された筒状部11aおよび当該筒状部11aのカップ30に面する側の軸方向端部を閉塞するように略円板状に形成された隔壁部11bを含む胴部11と、当該胴部11のカップ30に面する側の軸方向端面からカップ30側に向けて突出するように設けられた点火器固定用係止部15およびカップ固定用係止部16とを主として有している。
点火器固定用係止部15およびカップ固定用係止部16は、いずれも環状の形状を有しており、上記軸方向端面を軸方向に沿って平面視した場合に同心円上に位置するように設けられている。点火器固定用係止部15は、点火器20の一部である基部23をかしめ固定するための部位であり、カップ固定用係止部16は、カップ30の一部であるフランジ部33をかしめ固定するための部位である。なお、点火器固定用係止部15は、ホルダ10の径方向に沿ってホルダ10の内側の位置に設けられており、カップ固定用係止部16は、ホルダ10の径方向に沿って点火器固定用係止部15よりも外側の位置に設けられている。
ホルダ10は、カップ30に面する側の軸方向端面に設けられた第1凹部12と、カップ30に面しない側の軸方向端面に設けられた第2凹部13とを有している。上記隔壁部11bは、これら第1凹部12と第2凹部13との間に位置しており、その径方向の端部において筒状部11aに連続している。また、隔壁部11bの所定位置には、第1凹部12と第2凹部13とを連通する一対の貫通孔14が設けられている。
第1凹部12は、点火器20を受け入れ保持するための部位であり、上述した隔壁部11bによって規定される底面と、点火器固定用係止部15によって規定される周面とを有している。
第2凹部13は、点火器20の端子ピン22が配置されるとともに当該端子ピン22を介した点火器20の外部接続のためのコネクタ(不図示)を受け入れ保持するための部位であり、上述した隔壁部11bによって規定される底面と、筒状部11aによって規定される周面とを有している。また、第2凹部13の周面の所定位置には、周方向に沿って環状に延びる係合溝13aが設けられている。当該係合溝13aは、第2凹部13に挿入されたコネクタに設けられている突起に係合することにより、当該コネクタを第2凹部13内において保持するための部位である。
ホルダ10は、カップ30に面する側の軸方向端面に溝部17をさらに有している。溝部17は、環状の形状を有しており、点火器固定用係止部15およびカップ固定用係止部16の間に位置している。溝部17は、軸方向に沿って挿入されるカップ30の開口縁を受け入れるための部位であり、筒状部11aによって規定される底面と、点火器固定用係止部15によって規定される内周面と、カップ固定用係止部16によって規定される外周面とを有している。
また、ホルダ10の外周面には、筒状部11aの軸方向の一部を径方向外側に向かって張り出させることで形成された被固定部18が設けられている。当該被固定部18は、ガス発生器1をプリテンショナモジュールに組付ける際に使用される部位であり、プリテンショナモジュールに設けられた固定部によってこの被固定部18が軸方向に挟持されることにより、ガス発生器1がプリテンショナモジュールに組付けられる。なお、当該被固定部18のカップ30側の端部は、上述したカップ固定用係止部16によって構成されている。
図1に示すように、点火器20は、端子ピン22が隔壁部11bに設けられた貫通孔14を挿通するように、ホルダ10の第1凹部12が設けられた側の軸方向端面から当該第1凹部12内に挿入される。これにより、点火器20の基部23が第1凹部12内に収容されるとともに、端子ピン22が第2凹部13内に配置される。この状態において、ホルダ10の点火器固定用係止部15の先端が点火器20の基部23側に向けて折り曲げられることにより、基部23が胴部11の一部分である隔壁部11bと上記点火器固定用係止部15とによって挟持されることで点火器20がホルダ10にかしめ固定される。
ここで、ホルダ10の第1凹部12内には、予めOリング等からなるシール部材28が収容されており、当該シール部材28によってホルダ10と点火器20との間に生じる隙間が封止されている。より詳細には、シール部材28は、ホルダ10の隔壁部11bおよび点火器固定用係止部15と点火器20の基部23との間に介在しており、このシール部材28によって当該部分においてガス発生器1の内部が気密に封止されることになる。なお、シール部材28としては、十分な耐熱性および耐久性を有する部材を使用することが好ましく、たとえばエチレンプロピレンゴムの一種であるEPDM製の部材が好適に利用される。
また、点火器20の点火部21と基部23の上部部分とには、予め有底略円筒状のカバー部材25が被せられており、ホルダ10の点火器固定用係止部15は、このカバー部材25ごと点火器20をかしめ固定している。カバー部材25の底壁部25aには、点火器20の点火部21に収容された点火薬が燃焼することによって生じる高温の火炎をガス発生剤35に向けて噴出するための導火孔26が設けられている。なお、カバー部材25は、たとえばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼を含む鉄系材料等の金属材料からなる成形品にて構成される。
カバー部材25は、点火器20の作動時において、スクイブカップの内圧が十分に高まる前にスクイブカップが破裂してしまうことを防止するためのものである。したがって、カバー部材25を設けることにより、点火薬を確実に高圧力下において燃焼させることが可能となり、その結果、点火薬の燃焼速度を速めてガス発生剤35の着火遅れを防止することが可能になる。
一方、カップ30は、内部にガス発生剤35が装填された状態において、その開口縁がホルダ10の溝部17に軸方向に沿って挿入される。これにより、カップ30の開口縁に設けられたフランジ部33が溝部17内に配置され、この状態においてホルダ10のカップ固定用係止部16の先端がフランジ部33を覆うように内側に向けて折り曲げられることにより、フランジ部33が胴部11の一部分である筒状部11aと上記カップ固定用係止部16とによって挟持されることでカップ30がホルダ10にかしめ固定される。このかしめ固定により、ホルダ10とカップ30との間に生じる隙間が封止され、当該部分においてガス発生器1の内部が気密に封止されることになる。
次に、図1を参照して、本実施の形態におけるガス発生器の作動時の動作について説明する。
本実施の形態におけるガス発生器1が搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて点火器20が作動する。点火器20が作動することにより、点火部21に収容された点火薬が着火されて燃焼し、これによってスクイブカップが破裂する。
点火薬が燃焼することで生じた火炎は、スクイブカップが破裂することによってカバー部材25の導火孔26を介してガス発生剤35が収容された収容空間34に向けて噴出する。この火炎により、ガス発生剤35が着火されて燃焼し、収容空間34において多量のガスが発生する。このガス発生剤35の燃焼により、収容空間34の内圧が急速に上昇し、これによりカップ30が開口し、発生した多量のガスがガス発生器1の外部へと導出されることになる。
その後、ガス発生器1から導出された多量のガスは、プリテンショナモジュールの作動空間へと導かれることでプリテンショナモジュールを駆動し、これによりシートベルトが強く引き込まれることになる。
次に、本発明の実施の形態におけるガス発生器用ホルダの製造方法に従った製造フローについて説明する。図3は、本実施の形態におけるガス発生器用ホルダの製造方法に従った製造フローにおける鍛造処理(2回目)を具体的に説明するための模式断面図であり、図4は、打抜き処理を具体的に説明するための模式断面図であり、図5は、切削処理を具体的に説明するための模式断面図である。
上述したように、本実施の形態におけるガス発生器用ホルダ10は、複数の鍛造加工、打抜き加工および切削加工が段階的に組み合わされて実施されることで成形される。具体的には、ホルダ10をたとえばアルミニウム合金を用いて製造する場合には、以下の如くの処理が順次実施される。
まず、スラグ(金属小塊)が形成される。具体的には、アルミニウム合金製の圧延材が準備され、これが所定の大きさおよび形状に打ち抜かれることにより、アルミニウム合金製のスラグが形成される。
次に、1回目の鍛造処理が実施される。具体的には、上記スラグに所定の型を用いて鍛造加工が施され、これによりホルダ10の形状出しの粗加工が実施される。当該1回目の鍛造処理としては、好ましくは冷間鍛造が利用される。
次に、1回目の熱処理が実施される。具体的には、スラグに上記1回目の鍛造処理が施されることで形成されたアルミニウム合金塊が所定温度にまで加熱され、当該高温状態が一定時間保持された後に当該アルミニウム合金塊が急速に冷却される熱処理が実施される。当該熱処理は、溶体化処理と呼ばれるものであり、過飽和の固溶状態を常温において維持させるための熱処理である。
次に、2回目の鍛造処理が実施される。具体的には、上記熱処理後のアルミニウム合金塊に所定の型を用いて鍛造加工が施され、これによりホルダ10の大部分の仕上げ成形加工が実施される。より詳細には、図3に示すように、複数の型41〜45を用いて、ホルダ10の係合溝13aおよび貫通孔14を除く部分の仕上げ成形が行なわれる。すなわち、当該2回目の鍛造処理により、係合溝13aが形成される部分を除く筒状部11a、貫通孔14が形成される部分を除く隔壁部11b、第1凹部12、第2凹部13、点火器固定用係止部15、カップ固定用係止部16、溝部17および被固定部18が仕上げ成形される。当該2回目の鍛造処理としては、好ましくは冷間鍛造が利用される。
なお、図3に示すように、型41〜45のうちの所定位置には、鍛造処理を施すアルミニウム合金塊の量に製造上の理由から僅かなばらつきが生じてしまう可能性があることを考慮し、鍛造処理に伴う加圧流動の際に余剰の材料の流れ込みを可能にするバッファ(いわゆる逃がし部分)が設けられていることが好ましく、図3に示す型41〜45においては、型45の、点火器固定用係止部15が形成される位置に対応する部分に当該バッファが設けられている。ここで、上記アルミニウム合金塊の量のばらつきが非常に僅少であるため、このようにすることで点火器固定用係止部15に生じる寸法ばらつきは、設計上の許容範囲内に収まることになる。
次に、打抜き処理が実施される。具体的には、大部分の仕上げ成形がなされた上記ホルダ10に所定の型を用いて打抜き加工が施され、これによりホルダ10の隔壁部11bの所定位置の仕上げ成形加工が実施される。より詳細には、図4に示すように、型51および打抜き型52を用いて、ホルダ10の隔壁部11bに一対の貫通孔14が形成される。
次に、2回目の熱処理が実施される。具体的には、上記打抜き処理が実施された後のホルダ10が所定温度にまで加熱され、その後冷却される熱処理が実施される。当該熱処理は、人工時効処理と呼ばれるものであり、上記溶体化処理が実施されることで常温において過飽和の固溶状態が維持されている過飽和固溶体を常温以上に加熱することにより、当該過飽和固溶体から微細な二次相を析出させるための熱処理である。
次に、洗浄処理が実施される。当該洗浄処理は、上記2回目の熱処理が実施された後のホルダの表面に付着している異物を除去するための処理である。
次に、切削処理が実施される。具体的には、上記打抜き処理が実施された後のホルダ10の所定位置に切削工具を用いて切削加工が施され、これによりホルダ10の筒状部11aの所定位置の仕上げ成形加工が実施される。より詳細には、図5に示すホルダ10の領域P1が切削工具を用いて除去されることにより、第2凹部13の周面を規定する筒状部11aに係合溝13aが形成される。
以上により、図2に示した本実施の形態におけるガス発生器用ホルダ10の製造が完了する。なお、アルミニウム合金以外の金属材料を用いてホルダ10を製造する場合であっても、基本的には同様の製造フローが採用される。
図6は、本実施の形態におけるガス発生器用ホルダの鍛流線を模式的に表わした断面図であり、図7は、従来例におけるガス発生器用ホルダの鍛流線を模式的に表わした断面図である。次に、これら図6および図7を参照して、本実施の形態におけるガス発生器用ホルダに現れる特徴的な構造について、従来例におけるガス発生器用ホルダの構造と比較しつつ詳細に説明する。
一般に、金属材料に鍛造処理を施した場合には、当該金属材料の加圧流動に伴って内部組織に一定の方向性が生じ、これが鍛流線(メタルフローとも称される)となって現れる。ここで、鍛造処理が施された成形品においては、鍛流線に対して垂直な方向において剪断強度に優れ、鍛流線に対して平行な方向において引張強度に優れることが知られており、また鍛流線に途切れが生じている場合には、当該途切れが生じている部分において機械的強度に劣ることが知られている。
図6に示すように、上述した本実施の形態におけるガス発生器用ホルダの製造方法に従って製造されたホルダ10は、上述した2回目の鍛造処理によって点火器固定用係止部15およびカップ固定用係止部16の仕上げ成形がなされているため、これら点火器固定用係止部15およびカップ固定用係止部16の表面はいずれもすべて鍛造肌となっており、当該点火器固定用係止部15およびカップ固定用係止部16の表層において当該鍛造肌である表面に沿った形状の鍛流線Mが生じることになる。
より詳細には、本実施の形態におけるホルダ10にあっては、点火器固定用係止部15の表層に現れる鍛流線Mが、点火器固定用係止部15の表面において分断されずかつ胴部11から点火器固定用係止部15を経て胴部11に戻るように連続して延びるように形成されることになり、またカップ固定用係止部16の表層に現れる鍛流線Mが、カップ固定用係止部16の表面において分断されずかつ胴部11からカップ固定用係止部16を経て胴部11に戻るように連続して延びるように形成されることになる。
そのため、本実施の形態におけるホルダ10にあっては、点火器固定用係止部15およびカップ固定用係止部16の表層においていずれにも鍛流線Mが分断されることがなくなり、当該部分において高い機械的強度が確保されることになる。したがって、点火器20およびカップ30をホルダ10にかしめ固定する工程において、これら係止部15,16が折り曲げられた際に、その一部が剥がれ落ちたりあるいは捲れたりすることを回避することが可能となり、結果としてバリの発生を抑制することができる。
一方、図7に示すように、従来例におけるガス発生器用ホルダ10Xにおいては、係合溝13aのみならず、点火器固定用係止部15およびカップ固定用係止部16についても図中に示す領域P2が切削処理によって除去されてその仕上げ成形がなされている。そのため、これら点火器固定用係止部15およびカップ固定用係止部16の表面は、点火器固定用係止部15の内周面およびカップ固定用係止部16の外周面を除き、いずれも切削肌となっており、当該点火器固定用係止部15およびカップ固定用係止部16の切削肌である表面において鍛流線Mが分断された状態になることになる。
そのため、従来例におけるホルダ10Xにあっては、当該鍛流線Mが分断された部分において機械的強度が劣ることとなってしまい、点火器20およびカップ30をホルダ10にかしめ固定する工程において、これら係止部15,16の先端にかしめ加工用の押し型が押し付けられて係止部15,16が折り曲げられることにより、その一部が剥がれ落ちたりあるいは捲れたりすることでバリが発生し易くなってしまうことになる。
このように、以上において説明した本実施の形態におけるガス発生器1およびこれに具備されるガス発生器用ホルダ10とすることにより、また以上において説明した本実施の形態におけるガス発生器用ホルダの製造方法を採用することにより、点火器20およびカップ30のホルダ10に対するかしめ固定の際にバリが生じることが効果的に抑制できることになる。したがって、かしめ加工後に実施される各種の工程において不具合が発生するおそれを低減することができ、また従来において入念に行なっていたバリの除去作業の負担を軽減することもでき、生産性の向上や歩留まりの向上、信頼性の向上、製造コストの削減等、多くの効果を得ることが可能になる。
加えて、以上において説明した本実施の形態におけるガス発生器1およびこれに具備されるガス発生器用ホルダ10とすることにより、また以上において説明した本実施の形態におけるガス発生器用ホルダの製造方法を採用することにより、点火器固定用係止部15およびカップ固定用係止部16の機械的強度を従来に比して増すことができるため、点火器20およびカップ30のホルダ10に対する組付け強度が向上する効果も得られる。
図8は、実施例および比較例に係るガス発生器用ホルダを用いた検証試験における、ガス発生器用ホルダに対するバリの付着状況を観察した結果を示す表であり、図9は、当該検証試験おける、押し型に対するバリの付着状況を観察した結果を示す表である。以下においては、これら図8および図9を参照して、実施例および比較例に係るガス発生器用ホルダを用いた検証試験の結果について説明する。
検証試験においては、実施例に係るガス発生器用ホルダとして上述した本発明の実施の形態に基づいたもの(図6に示すガス発生器用ホルダ10)を実際に5個製作し、比較例に係るガス発生器用ホルダとして上述した図7に示す従来例におけるガス発生器用ホルダ10Xと近似の構造を有するものを実際に5個製作し、これら実施例および比較例に係るガス発生器用ホルダに点火器およびカップを実際にかしめ固定し、その際のバリの発生状況を詳細に観察した。
なお、比較例に係るガス発生器用ホルダは、図6に示すガス発生器用ホルダ10の点火器固定用係止部15およびカップ固定用係止部16の各々の先端部分を切削することでこれを除去し、これにより当該先端部分において鍛流線Mが分断されるようにしたものである。そのため、厳密な意味において、比較例に係るガス発生器用ホルダと図7に示すガス発生器用ホルダ10Xとではその構造において相違することになるが、比較例に係るガス発生器用ホルダにおいては、点火器固定用係止部15およびカップ固定用係止部16の各々の先端部分においてのみ鍛流線Mが分断されているのみであるため、図7に示す従来例におけるガス発生器用ホルダ10Xよりも鍛流線Mが分断された箇所が少ない分、バリの発生は抑制できることになる。したがって、バリの発生のし難さの観点においては、比較例に係るガス発生器用ホルダは、図7に示す従来例におけるガス発生器用ホルダ10Xよりも有利な条件にあるものと言える。
図8に示すように、実施例に係るガス発生器用ホルダにあっては、点火器固定用係止部のかしめ加工によってホルダに付着したバリの数が、0.2mm以上のバリについて最小で0個、最大で2個であり、そのうち2.1mm以上のバリについてはいずれも0個であった。また、実施例に係るガス発生器用ホルダにあっては、カップ固定用係止部のかしめ加工によってホルダに付着したバリの数が、0.2mm以上のバリについていずれも0個であった。
一方、比較例に係るガス発生器用ホルダにあっては、点火器固定用係止部のかしめ加工によってホルダに付着したバリの数が、0.2mm以上のバリについて最小で2個、最大で5個であり、そのうち2.1mm以上のバリについては最大で2個のものがあった。また、比較例に係るガス発生器用ホルダにあっては、カップ固定用係止部のかしめ加工によってホルダに付着したバリの数が、0.2mm以上のバリについて最小で0個、最大で1個であり、そのうち2.1mm以上のバリについては最大で1個のものがあった。
また、図9に示すように、実施例に係るガス発生器用ホルダの点火器固定用係止部を連続して5個かしめ加工した後に、当該かしめ加工に使用したかしめ加工用押し型に付着していたバリとしては、0.6mmの大きさのものが3個あった。また、実施例に係るガス発生器用ホルダのカップ固定用係止部を連続して5個かしめ加工した後に、当該かしめ加工に使用したかしめ加工用押し型に付着していたバリとしては、0.2mm以上の大きさのものは0個であった。
一方、比較例に係るガス発生器用ホルダの点火器固定用係止部を連続して5個かしめ加工した後に、当該かしめ加工に使用したかしめ加工用押し型に付着していたバリとしては、5.0mmの大きさのものが1個であり、13.0mmの大きさのものが1個であった。また、比較例に係るガス発生器用ホルダのカップ固定用係止部を連続して5個かしめ加工した後に、当該かしめ加工に使用したかしめ加工用押し型に付着していたバリとしては、0.3mmものが1個であり、0.6mmのものが1個であり、0.9mmのものが1個であり、2.1mmのものが1個であった。
ここで、ガス発生器に具備される点火器の端子ピン間の距離は、仕様により2.1mmとされている場合が多く、そのため、上述したかしめ加工によって生じたバリの大きさが2.1mm以上である場合には、当該バリがこれら端子ピン間を橋渡すように付着することで回路が短絡するおそれがあることになる。一方で、上述したかしめ加工によって生じたバリの大きさが0.2mm以下である場合には、簡単な洗浄作業によってその除去が十分に可能であり、また上述した回路の短絡といった重大な問題を引き起こすほどのものでもない。したがって、上述した0.2mmおよび2.1mmを基準にとって実施例および比較例に係るガス発生器用ホルダにおけるバリの発生状況を評価した場合には、当該評価結果は、図8および図9に示す如くとなる。
なお、図10Aおよび図10Bは、上述した検証試験における、実施例に係るガス発生器用ホルダのかしめ加工後におけるバリの付着状況を示す代表的な写真であり、図11Aおよび図11Bは、比較例に係るガス発生器用ホルダのかしめ加工後におけるバリの付着状況を示す代表的な写真である。ここで、図10Aおよび図11Aは、いずれも点火器固定用係止部を用いて点火器をホルダにかしめ固定した後のものであり、図10Bおよび図11Bは、いずれもカップ固定用係止部を用いてカップをホルダにかしめ固定した後のものである。
また、図12Aおよび図12Bは、上述した検証試験における、実施例に係るガス発生器用ホルダのかしめ加工後における押し型に対するバリの付着状況を示す写真であり、図13Aおよび図13Bは、比較例に係るガス発生器用ホルダのかしめ加工後における押し型に対するバリの付着状況を示す写真である。ここで、図12Aおよび図13Aは、いずれも点火器固定用係止部をかしめ加工するためのかしめ加工用押し型の写真であり、図12Bおよび図13Bは、いずれもカップ固定用係止部をかしめ加工するためのかしめ加工用押し型の写真である。なお、図12Aないし図13Bにおいて符号60,70で示す部分が、それぞれかしめ加工用押し型の、点火器固定用係止部15およびカップ固定用係止部16に接触する部分である。
これら写真からも理解されるように、以上の検証試験の結果より、実施例に係るガス発生器において十分に良好な結果(すなわち、バリの発生が従来に比して効果的に抑制できる結果)が得られていることが確認できた。
なお、上述した本発明の実施の形態においては、点火器20およびカップ30のいずれもがかしめ加工を利用してホルダ10に固定されるように構成された場合を例示して説明を行なったが、点火器20およびカップ30のいずれか一方がかしめ加工を利用してホルダ10に固定され、残る他方が他の固定方法を利用してホルダ10に固定されるように構成された場合にも、当然にその一方については、本発明の適用が可能である。
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は請求の範囲によって画定され、また請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
1 ガス発生器、10 ホルダ、11 胴部、11a 筒状部、11b 隔壁部、12 第1凹部、13a 係合溝、13 第2凹部、14 貫通孔、15 点火器固定用係止部、16 カップ固定用係止部、17 溝部、18 被固定部、20 点火器、21 点火部、22 端子ピン、23 基部、25 カバー部材、25a 底壁部、26 導火孔、28 シール部材、30 カップ、31 側壁部、32 底壁部、33 フランジ部、34 収容空間、35 ガス発生剤、41〜45,51 型、52 打抜き型、M 鍛流線。

Claims (9)

  1. 燃焼することでガスを発生するガス発生剤(35)が装填されたカップ(30)と、
    前記ガス発生剤(35)に面するように配置され、作動時において着火することで前記ガス発生剤(35)を燃焼させる点火器(20)と、
    前記カップ(30)および前記点火器(20)が組付けられた金属製のホルダ(10)とを備え、
    前記ホルダ(10)は、胴部(11)と、前記胴部(11)から突出する点火器固定用係止部(15)とを含み、
    前記点火器(20)は、前記点火器固定用係止部(15)が折り曲げられることにより前記点火器(20)の一部が前記点火器固定用係止部(15)と前記胴部(11)とによって挟持されることで前記ホルダ(10)にかしめ固定され、
    前記点火器固定用係止部(15)が鍛造加工によって仕上げ成形されることにより、前記点火器固定用係止部(15)の表層に現れる鍛流線(M)が、前記点火器固定用係止部(15)の表面において分断されずかつ前記胴部(11)から前記点火器固定用係止部(15)を経て前記胴部(11)に戻るように連続して延びている、ガス発生器。
  2. 前記ホルダ(10)は、前記胴部(11)から突出するカップ固定用係止部(16)をさらに含み、
    前記カップ(30)は、前記カップ固定用係止部(16)が折り曲げられることにより前記カップ(30)の一部が前記カップ固定用係止部(16)と前記胴部(11)とによって挟持されることで前記ホルダ(10)にかしめ固定され、
    前記カップ固定用係止部(16)が鍛造加工によって仕上げ成形されることにより、前記カップ固定用係止部(16)の表層に現れる鍛流線(M)が、前記カップ固定用係止部(16)の表面において分断されずかつ前記胴部(11)から前記カップ固定用係止部(16)を経て前記胴部(11)に戻るように連続して延びている、請求項1に記載のガス発生器。
  3. 燃焼することでガスを発生するガス発生剤(35)が装填されたカップ(30)と、
    前記ガス発生剤(35)に面するように配置され、作動時において着火することで前記ガス発生剤(35)を燃焼させる点火器(20)と、
    前記カップ(30)および前記点火器(20)が組付けられた金属製のホルダ(10)とを備え、
    前記ホルダ(10)は、胴部(11)と、前記胴部(11)から突出するカップ固定用係止部(16)とを含み、
    前記カップ(30)は、前記カップ固定用係止部(16)が折り曲げられることにより前記カップ(30)の一部が前記カップ固定用係止部(16)と前記胴部(11)とによって挟持されることで前記ホルダ(10)にかしめ固定され、
    前記カップ固定用係止部(16)が鍛造加工によって仕上げ成形されることにより、前記カップ固定用係止部(16)の表層に現れる鍛流線(M)が、前記カップ固定用係止部(16)の表面において分断されずかつ前記胴部(11)から前記カップ固定用係止部(16)を経て前記胴部(11)に戻るように連続して延びている、ガス発生器。
  4. ガス発生剤が装填されたカップおよびガス発生剤を燃焼させるための点火器が組付けられて使用される金属製のガス発生器用ホルダであって、
    胴部(11)と、
    前記胴部(11)から突出し、折り曲げられることにより点火器の一部を前記胴部(11)との間で挟持することで点火器をかしめ固定するための点火器固定用係止部(15)とを有し、
    前記点火器固定用係止部(15)が鍛造加工によって仕上げ成形されることにより、前記点火器固定用係止部(15)の表層に現れる鍛流線(M)が、前記点火器固定用係止部(15)の表面において分断されずかつ前記胴部(11)から前記点火器固定用係止部(15)を経て前記胴部(11)に戻るように連続して延びている、ガス発生器用ホルダ。
  5. 前記胴部(11)から突出し、折り曲げられることによりカップの一部を前記胴部(11)との間で挟持することでカップをかしめ固定するためのカップ固定用係止部(16)をさらに有し、
    前記カップ固定用係止部(16)が鍛造加工によって仕上げ成形されることにより、前記カップ固定用係止部(16)の表層に現れる鍛流線(M)が、前記カップ固定用係止部(16)の表面において分断されずかつ前記胴部(11)から前記カップ固定用係止部(16)を経て前記胴部(11)に戻るように連続して延びている、請求項4に記載のガス発生器用ホルダ。
  6. ガス発生剤が装填されたカップおよびガス発生剤を燃焼させるための点火器が組付けられて使用される金属製のガス発生器用ホルダであって、
    胴部(11)と、
    前記胴部(11)から突出し、折り曲げられることによりカップの一部を前記胴部(11)との間で挟持することでカップをかしめ固定するためのカップ固定用係止部(16)とを有し、
    前記カップ固定用係止部(16)が鍛造加工によって仕上げ成形されることにより、前記カップ固定用係止部(16)の表層に現れる鍛流線(M)が、前記カップ固定用係止部(16)の表面において分断されずかつ前記胴部(11)から前記カップ固定用係止部(16)を経て前記胴部(11)に戻るように連続して延びている、ガス発生器用ホルダ。
  7. 請求項4に記載のガス発生器用ホルダを製造するための方法であって、
    金属製の圧延材を打ち抜くことでスラグを形成する工程と、
    前記スラグまたは当該スラグの加工品を鍛造加工することで前記点火器固定用係止部(15)を仕上げ成形する工程とを備えた、ガス発生器用ホルダの製造方法。
  8. 請求項5に記載のガス発生器用ホルダを製造するための方法であって、
    金属製の圧延材を打ち抜くことでスラグを形成する工程と、
    前記スラグまたは当該スラグの加工品を鍛造加工することで前記点火器固定用係止部(15)および前記カップ固定用係止部(16)を仕上げ成形する工程とを備えた、ガス発生器用ホルダの製造方法。
  9. 請求項6に記載のガス発生器用ホルダを製造するための方法であって、
    金属製の圧延材を打ち抜くことでスラグを形成する工程と、
    前記スラグまたは当該スラグの加工品を鍛造加工することで前記カップ固定用係止部(16)を仕上げ成形する工程とを備えた、ガス発生器用ホルダの製造方法。
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