以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態においては、シートベルト装置に組み込まれるシートベルトプリテンショナモジュールに具備されるマイクロガスジェネレータの一構成部品としての点火器組立体に本発明を適用した場合を例示して説明を行なう。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における点火器組立体の製造方法に従って製造された点火器組立体の断面図であり、図2は、図1に示す点火器組立体の底面図である。まず、これら図1および図2を参照して、本実施の形態における点火器組立体の製造方法に従って製造された点火器組立体1Aの構成について説明する。
図1および図2に示すように、点火器組立体1Aは、ホルダ10と点火器20とを備えている。ホルダ10は、たとえば金属製の板状部11を有しており、板状部11には、貫通孔11aが設けられている。点火器20は、点火薬が装填された点火部21と、点火部21に接続された一対の端子ピン22と、樹脂製の部分である樹脂部としての基部23と有している。なお、点火器20は、スクイブとも称される。
点火器20は、ホルダ10に対して固定されている。より詳細には、ホルダ10の板状部11が基部23によって挟み込まれて保持されることにより、点火器20がホルダ10に対して固定されている。ここで、点火器20は、その一対の端子ピン22がホルダ10の板状部11に設けられた貫通孔11aに挿通されている。
点火器組立体1Aは、シートベルト装置に組み込まれるシートベルトプリテンショナモジュールに具備されるマイクロガスジェネレータの一構成部品であり、ガス発生剤が収容された有底略円筒状の金属製のカップの開口端を閉塞するように当該カップに組付けられることにより、上述しマイクロガスジェネレータを構成することになる。ここで、点火器組立体1Aのカップへの組付け後においては、点火器20の点火部21の頂面(破裂面)21aがカップに収容されたガス発生剤(不図示)に面することになり、点火器20の一対の端子ピンが外部に向けて露出することになる。
ホルダ10は、点火器20がこれに固定されることによって当該点火器20を支持するための部材であり、上述した貫通孔11aが設けられた板状部11にて構成されている。板状部11は、ガス発生剤が燃焼する際に生じる圧力に耐え得る機械的強度を有しており、たとえばアルミニウム、アルミニウム合金、またはステンレス鋼に代表される鉄系材料にて構成されている。
点火器20は、火炎を発生させるための装置であり、作動時において着火することでガス発生剤を燃焼させるためのものである。点火部21は、有底略円筒状のスクイブカップと、スクイブカップの開口端を閉塞する塞栓と、スクイブカップと塞栓とによって規定される空間に収容された点火薬とを含んでいる。一対の端子ピン22は、上述した塞栓によって保持されており、一対の端子ピン22の各々の点火部21の内部に位置する端部には、電橋線(ブリッジワイヤ)が接続されている。電橋線は、点火薬に接触するようにまたは点火薬に近接するように設けられている。
電橋線としては、一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては、ジルコニウムやアルミニウム等の金属粉末ならびに塩基性硝酸銅や過塩素酸カリウム等の酸化剤の組成物が用いられ、一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)等が利用される。これらの点火薬は、電橋線に塗布させたいわゆる点火玉の態様にて用いられてもよい。また、スクイブカップとしては、一般に金属製またはプラスチック製の部材が使用される。なお、点火部21内には、点火薬に加えて伝火薬が装填されていてもよい。
衝突を検知した際には、端子ピン22を介して電橋線に所定量の電流が流れる。電橋線に所定量の電流が流れることにより、電橋線においてジュール熱が発生し、これにより点火薬が着火されて燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎(ガスおよび熱粒子)は、点火薬を収容しているスクイブカップを破裂させ、ガス発生剤を点火する。電橋線に電流が流れてから点火器20が作動するまでの時間は、電橋線にニクロム線を利用した場合に一般に2ミリ秒以下である。
樹脂部としての基部23は、点火部21と端子ピン22との接続部を覆うように設けられている。基部23は、熱可塑性樹脂にて構成されており、たとえばポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン6やナイロン66等)またはポリフェニレンサルファイド樹脂にて構成されている。
ここで、基部23の機械的強度を高めるために、当該熱可塑性樹脂にガラス繊維等からなるフィラーを含有させることとしてもよい。ただし、熱可塑性樹脂のみで機械的強度が確保できる場合には、上述のフィラーを添加する必要はない。
上述したように、基部23は、ホルダ10の板状部11を挟み込んで保持している。より詳細には、基部23には、点火器20の軸方向(すなわち貫通孔11aの軸方向)に沿って板状部11を挟み込むように変形部23aが形成されている。変形部23aは、貫通孔11aの内部に挿入された部分の基部23の下面から点火器20の径方向に沿って外側に向けて延びるように設けられており、貫通孔11aの周縁に沿って環状に延在している。
上述した変形部23aは、樹脂製の部分である樹脂部としての基部23の所定部位に熱および圧力が加えられることにより、当該所定部位の形状を当初のものから意図的に変形させることで形成された部位である。
ここで、点火器組立体1Aにおいては、上記所定部位が、熱および圧力が加えられる前の状態において基部23の下端側(すなわち、一対の端子ピン22が位置する側)の部分から下方に向けて突出するように形成された環状の部位23a’(図3参照)によって構成されている。環状の部位23a’に熱および圧力が加えられることにより、当該環状の部位23a’が点火器20の径方向外側に向かって押し曲げられ、これにより上記変形部23aが形成されることになる。
当該変形部23aが設けられることにより、点火器組立体1Aにおいては、貫通孔11aが設けられた部分近傍の板状部11が基部23によって挟み込まれて保持されており、その結果、点火器20がホルダ10に対して固定されている。なお、図2においては、基部23によって点火器20の軸方向に挟み込まれた部分に該当する板状部11の領域を斜線部にて表わしている。
図3は、本実施の形態における点火器組立体の製造方法を説明するための断面図である。次に、この図3を参照して、本実施の形態における点火器組立体の製造方法について説明する。
図3を参照して、上述した点火器組立体1Aを製造するに際しては、まず、点火部21および一対の端子ピン22を有するとともに、樹脂部としての基部23が含まれてなる点火器20が準備されるとともに、貫通孔11aが設けられた金属製の板状部11からなるホルダ10が準備される。ここで、準備される点火器20は、上述した変形部23aが形成される前のものであるため、当該点火器20の基部23は、上述した環状の部位23a’をその下端に有している。
次に、一対の端子ピン22が貫通孔11aに挿入されるように、点火器20およびホルダ10が位置決めして配置される。具体的には、図3に示す如くの所定形状の保持治具100が予め準備され、当該保持治具100に点火器20およびホルダ10がセットされることにより、上述した点火器20およびホルダ10の位置決めが行なわれる。
次に、基部23の所定部位に熱および圧力が加えられることによって基部23に変形部23aが形成されることにより、点火器20がホルダ10に対して固定される。具体的には、図3に示す如くの所定形状の加熱加圧治具200が用いられ、予め所定の温度に加熱された加熱加圧治具200の先端が基部23の環状の部位23a’に押し付けられることにより、当該環状の部位23a’が点火器20の径方向外側に向かって押し曲げられ、これにより変形部23aが形成されることによって点火器20がホルダ10に対して固定される。なお、当該固定方法は、一般に樹脂かしめと称される加工方法であり、より特定的には、樹脂かしめのうちの熱かしめと称される加工方法である。
ここで、加熱加圧治具200の温度は、基部23を構成する樹脂種に応じた温度に加熱されていることが必要であるが、たとえば基部23がポリブチレンテレフタレート樹脂やナイロン6にて構成されている場合には、これを230℃〜280℃に保つことが好ましい。加熱加圧治具200を基部23の環状の部位23a’に押し付ける力は、10N〜1000N程度の比較的弱い加圧力とすることが好ましく、また、加熱加圧治具200を基部23の環状の部位23a’に押し付ける時間は、1秒〜15秒程度の比較的短時間とすることが好ましい。
上記条件にて熱かしめを行なうことにより、基部23の環状の部位23a’が溶融または軟化することで変形し、当該変形によって基部23に変形部23aが形成されることで点火器20がホルダ10に対して固定される。
なお、上述した加熱加圧治具200に代えて、赤外線照射装置や超音波発生装置等に代表される他の加熱源を用いて基部23の環状の部位23a’を溶融または軟化させるとともに、当該環状の部位23a’に冷却兼成形用の治具を押し付けて変形部23aを形成することとしてもよい。その場合にも、冷却兼成形用の治具を基部23の環状の部位23a’に押し付ける力は、10N〜1000N程度の比較的弱い加圧力とすることが好ましく、また、当該治具を基部23の環状の部位23a’に押し付ける時間は、1秒〜15秒程度の比較的短時間とすることが好ましい。
以上において説明した本実施の形態における点火器組立体の製造方法を用いて点火器20をホルダ10に固定することにより、前述した射出成形を利用した場合に比べ、点火器20が高温高圧環境下に曝されてしまうことがなく、また、ホルダ10を複雑な形状に構成する必要もなく、さらには、小規模な製造設備にて製造ができるばかりでなく、点火器20をホルダ10に固定するために要するタクトも短くなる。
また、本実施の形態における点火器組立体の製造方法を用いて点火器20をホルダ10に固定することにより、前述したかしめ加工を利用した場合に比べ、ホルダ10を複雑な形状に構成する必要がなく、また、導電材料からなるバリが発生することもないため、点火器20の起動用の回路を短絡させてしまうこともない。
したがって、本実施の形態における点火器組立体の製造方法を用いることにより、従来に比して容易にかつ安価に点火器20をホルダ10に対して固定することが可能になる。
なお、本実施の形態においては、貫通孔11aの周縁に沿って環状に延在するように変形部23aを基部23に設けた場合を例示して説明を行なったが、必ずしもこのように構成する必要はなく、点火器20をホルダ10に対して十分な保持力をもって固定できるのであれば、貫通孔11aの周縁に沿って位置するように爪状の変形部を基部23に設けるように構成してもよい。ただし、その場合には、爪状の変形部は、貫通孔11aの周縁に沿って点列状に複数設けられることが好ましく、また、複数の爪状の変形部は、貫通孔11aの中心軸を基準として対称の位置に設けられることが好ましい。
(第1変形例)
図4は、上述した実施の形態1に基づいた第1変形例に係る点火器組立体の製造方法に従って製造された点火器組立体の断面図である。
図4に示すように、本変形例に係る点火器組立体1A1にあっては、ホルダ10を構成する金属製の板状部11に環状の立壁部11bが設けられており、当該立壁部11bが設けられることによって形成されたホルダ10の凹部内に点火器20の基部23の下端が収容されている。
また、点火器20の基部23とホルダ10の板状部11との間には、たとえばOリング等からなる環状のシール部材30が配置されている。当該シール部材30は、基部23および板状部11に密着することでこれらの間に生じ得る隙間を封止するための部材である。ここで、シール部材30の材質は、十分な耐熱性および耐久性を有するものを使用することが好ましく、たとえばエチレンプロピレンゴムの一種であるEPDMを用いることが好適である。
このように構成された本変形例に係る点火器組立体1A1は、上述した実施の形態1において説明した点火器組立体の製造方法に準じた製造方法に基づいて製造されるものであり、具体的には、保持治具100に点火器20およびホルダ10をセットする際に、これら点火器20とホルダ10との間に介在するようにシール部材30を配置することで実現できる。
なお、当該シール部材30は、加熱加圧治具200を点火器20の基部23に押し付ける際に圧縮されるため、点火器20のホルダ10に対する固定後において、当該シール部材30によって高いシール性が発揮されることになる。
(第2変形例)
図5は、上述した実施の形態1に基づいた第2変形例に係る点火器組立体の製造方法に従って製造された点火器組立体の断面図であり、図6は、図5に示す点火器組立体の底面図である。また、図7は、本変形例に係る点火器組立体の製造方法を説明するための断面図である。
図5および図6に示すように、本変形例に係る点火器組立体1A2にあっては、ホルダ10を構成する金属製の板状部11に貫通孔11aに加えて一対の固定用孔部11cが設けられている。また、点火器20の基部23には、上述した変形部23a(図1等参照)は設けられておらず、これに代えて、基部23の上記一対の固定用孔部11cの各々に面する部分に変形部23bが設けられている。
一対の固定用孔部11cの各々は、板状部11の上面(すなわち、点火器20の点火部21が位置する側の面)側の開口面積よりも板状部11の下面側(すなわち、上記上面とは反対側の面)側の開口面積が大きく形成された貫通孔からなる。一対の変形部23bの各々は、一対の固定用孔部11cの各々に挿通しており、その下端(すなわち、板状部11の下面側に位置する端部)が径方向に拡径したテーパ形状を有している。
上述した変形部23bは、樹脂製の部分である樹脂部としての基部23の所定部位に熱および圧力が加えられることにより、当該所定部位の形状を当初のものから意図的に変形させることで形成された部位である。
ここで、点火器組立体1A2においては、上記所定部位が、熱および圧力が加えられる前の状態において基部23の下端側の部分から下方に向けて突出するように形成された円柱状の部位23b’(図7参照)によって構成されている。円柱状の部位23b’に熱および圧力が加えられることにより、当該円柱状の部位23b’の下端が押し広げられ、これにより上記変形部23bが形成されることになる。
当該変形部23bが設けられることにより、点火器組立体1A2においては、固定用孔部11cが設けられた部分近傍の板状部11が基部23によって挟み込まれて保持されており、その結果、点火器20がホルダ10に対して固定されている。なお、図6においては、基部23によって点火器20の軸方向に挟み込まれた部分に該当する板状部11の領域を斜線部にて表わしている。
図7を参照して、上述した点火器組立体1A2を製造するに際しては、まず、点火部21および一対の端子ピン22を有するとともに、樹脂部としての基部23が含まれてなる点火器20が準備されるとともに、貫通孔11aおよび固定用孔部11cが設けられた金属製の板状部11からなるホルダ10が準備される。ここで、準備される点火器20は、上述した変形部23bが形成される前のものであるため、当該点火器20の基部23は、上述した円柱状の部位23b’をその下端に有している。
次に、一対の端子ピン22が貫通孔11aに挿入されるとともに、一対の円柱状の部位23b’がそれぞれ対応する固定用孔部11cに挿入されるように、点火器20およびホルダ10が保持治具100にセットされることで位置決めして配置される。
次に、基部23の所定部位に熱および圧力が加えられることによって基部23に一対の変形部23bが形成されることにより、点火器20がホルダ10に対して固定される。具体的には、図7に示す如くの所定形状の加熱加圧治具200が用いられ、加熱加圧治具200の先端が基部23の円柱状の部位23b’のそれぞれに押し付けられることにより、当該円柱状の部位23b’が押し広げられ、これにより変形部23bが形成されることによって点火器20がホルダ10に対して固定される。
このように本変形例に係る点火器組立体の製造方法を用いた場合にも、従来に比して容易にかつ安価に点火器20をホルダ10に対して固定することが可能になる。
なお、本変形例においては、板状部11に一対の固定用孔部11cを設けるとともに、当該一対の固定用孔部11cに対応するように基部23に一対の変形部23bを設けた場合を例示して説明を行なったが、これら固定用孔部11cおよび変形部23bは、必ずしも一対である必要はなく、点火器20をホルダ10に対して十分な保持力をもって固定できるのであれば、固定用孔部11cおよび変形部23bは、それぞれ1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、固定用孔部11cおよび変形部23bの配設位置についても、それらの数に応じて適宜調整すればよい。
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2における点火器組立体の製造方法に従って製造された点火器組立体の断面図であり、図9は、図8に示す点火器組立体の平面図である。まず、これら図8および図9を参照して、本実施の形態における点火器組立体の製造方法に従って製造された点火器組立体1Bの構成について説明する。
図8および図9に示すように、点火器組立体1Bは、上述した点火器組立体1Aと比較した場合に、ホルダ10の板状部11の構成と、点火器20の基部23との構成において相違している。
点火器組立体1Bにあっては、ホルダ10を構成する金属製の板状部11に環状の立壁部11bが設けられており、当該立壁部11bが設けられることによって形成されたホルダ10の凹部内に点火器20の基部23の下端が収容されている。ここで、立壁部11bの内周面は、上部側に向かうにつれて立壁部11bの内径が縮径する傾斜面にて構成されており、これにより当該立壁部11bの内縁には、環状の係止部11dが設けられている。
一方、点火器20の基部23には、変形部23a(図1等参照)は設けられておらず、これに代えて、ホルダ10の凹部内に収容された基部23の下端側の外縁には、上述した係止部11dに係止された変形部23cが形成されている。変形部23cは、点火器20の径方向に沿って外側に向けて延びるように設けられており、基部23の外縁に沿って環状に延在している。
上述した変形部23cは、樹脂製の部分である樹脂部としての基部23の所定部位に熱および圧力が加えられることにより、当該所定部位の形状を当初のものから意図的に変形させることで形成された部位である。
ここで、点火器組立体1Bにおいては、上記所定部位が、熱および圧力が加えられる前の状態において基部23の下端側の部分から点火器20の径方向外側に向けて突出するように形成された環状の部位23c’(図10参照)によって構成されている。環状の部位23c’に熱および圧力が加えられることにより、当該環状の部位23c’が径方向外側に向けて押し広げられ、これにより上記変形部23cが形成されることになる。
変形部23cが設けられることにより、点火器組立体1Bにおいては、当該変形部23cが上述した係止部11dを含む板状部11によって挟み込まれて保持されており、その結果、点火器20がホルダ10に対して固定されている。なお、図9においては、板状部11によって点火器20の軸方向に挟み込まれた部分に該当する基部23の領域を斜線部にて表わしている。
図10は、本実施の形態における点火器組立体の製造方法を説明するための断面図である。次に、この図10を参照して、本実施の形態における点火器組立体の製造方法について説明する。
図10を参照して、上述した点火器組立体1Bを製造するに際しては、まず、点火部21および一対の端子ピン22を有するとともに、樹脂部としての基部23が含まれてなる点火器20が準備されるとともに、貫通孔11aおよび係止部11dが設けられた金属製の板状部11からなるホルダ10が準備される。ここで、準備される点火器20は、上述した変形部23aが形成される前のものであるため、当該点火器20の基部23は、上述した環状の部位23c’をその下端に有している。
次に、一対の端子ピン22が貫通孔11aに挿入されるように、点火器20およびホルダ10が位置決めして配置される。具体的には、図10に示す如くの所定形状の保持治具100が予め準備され、当該保持治具100に点火器20およびホルダ10がセットされることにより、上述した点火器20およびホルダ10の位置決めが行なわれる。
次に、基部23の所定部位に熱および圧力が加えられることによって基部23に変形部23cが形成されることにより、点火器20がホルダ10に対して固定される。具体的には、図10に示す如くの所定形状の加熱加圧治具200が用いられ、予め所定の温度に加熱された加熱加圧治具200の先端が基部23の環状の部位23c’に押し付けられることにより、当該環状の部位23c’が点火器20の径方向外側に向かって押し曲げられ、これにより係止部11dに係止されることとなる変形部23cが形成されることによって点火器20がホルダ10に対して固定される。なお、その際、加熱加圧治具200の環状の部位23c’に対する押し付け速度を十分に遅くすることにより、溶融または軟化した樹脂材料の移動方向を制御することができる。
このように本実施の形態における点火器組立体の製造方法を用いた場合にも、従来に比して容易にかつ安価に点火器20をホルダ10に対して固定することが可能になる。
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3における点火器組立体の製造方法に従って製造された点火器組立体の断面図であり、図12は、図11に示す点火器組立体の平面図である。まず、これら図11および図12を参照して、本実施の形態における点火器組立体の製造方法に従って製造された点火器組立体1Cの構成について説明する。
図11および図12に示すように、点火器組立体1Cは、上述した点火器組立体1Aと比較した場合に、ホルダ10の板状部11の構成と、点火器20の基部23との構成において主として相違している。
点火器組立体1Cにあっては、ホルダ10が、金属製の板状部11に加えて、当該板状部11を覆うように設けられた樹脂製の部分である樹脂部としての筒状部12を有している。板状部11および筒状部12を含むホルダ10には、貫通孔11aが設けられている。一方、点火器20には、樹脂製の基部23が設けらているものの、当該基部23には、変形部23a(図1参照)等は一切設けられていない。
筒状部12のうちの点火器20の点火部21が位置する側の部分である上部には、凹部12aが設けられている。当該凹部12aには、点火器20の基部23が収容されるとともに、当該凹部12aの底面と基部23との間には、上述した第1変形例の場合と同様に、シール部材30が配置されている。
また、点火器20の点火部21には、これを覆うように金属製の燃焼制御カバー40が配置されている。燃焼制御カバー40は、点火部21の側面を主として覆うカップ部41と、点火部21の頂面21aを覆う部分のカップ部41に設けられた開口部42と、カップ部41の下端側の開口端から延設されたフランジ部43とを有している。
燃焼制御カバー40は、点火器20の作動時においてスクイブカップに生じる開口部の形成位置が、点火部21の頂面21aに制限されることとなるように、点火部21を覆う部材であり、これにより点火器20による点火方向に指向性をもたせるための部材である。なお、燃焼制御カバー40のフランジ部43は、基部23の上面を覆っている。
ここで、筒状部12は、点火器20の基部23を挟み込んで保持している。より詳細には、筒状部12の上端には、点火器20の軸方向に沿って基部23を挟み込むように一対の爪状の変形部12bが形成されている。一対の爪状の変形部12bの各々は、筒状部12の上端から点火器20の軸方向に沿って突出するとともに、点火器20の径方向内側に向けて倒れ込むように傾斜して設けられており、これにより凹部12aの底面との間で点火器20の基部23を挟み込んでいる。なお、筒状部12は、上述した点火器20に加え、シール部材30および燃焼制御カバー40も挟み込んで保持している。
上述した変形部12bは、樹脂製の部分である樹脂部としての筒状部12の所定部位に熱および圧力が加えられることにより、当該所定部位の形状を当初のものから意図的に変形させることで形成された部位である。
ここで、点火器組立体1Cにおいては、上記所定部位が、熱および圧力が加えられる前の状態において筒状部12の上端側の部分から上方に向けて突出するように形成された突片状の部位12b’(図13参照)によって構成されている。突片状の部位12b’に熱および圧力が加えられることにより、当該突片状の部位12b’が点火器20の径方向内側に向かって押し曲げられ、これにより上記変形部12bが形成されることになる。
当該変形部12bが設けられることにより、点火器組立体1Cにおいては、点火器20の基部23の外縁部が筒状部12によって挟み込まれて保持されており、その結果、点火器20がホルダ10に対して固定されている。なお、図12においては、筒状部12によって点火器20の軸方向に挟み込まれた部分に該当する基部23の領域を斜線部にて表わしている。
図13は、本実施の形態における点火器組立体の製造方法を説明するための断面図である。次に、この図13を参照して、本実施の形態における点火器組立体の製造方法について説明する。
図13を参照して、上述した点火器組立体1Cを製造するに際しては、まず、点火部21、一対の端子ピン22および基部23を有する点火器20が準備されるとともに、貫通孔11aを有するとともに、金属製の板状部11および樹脂部としての筒状部12が含まれてなるホルダ10が準備される。ここで、準備されるホルダ10は、上述した変形部12bが形成される前のものであるため、当該ホルダ10の筒状部12は、上述した突片状の部位12b’をその上端に有している。
次に、一対の端子ピン22が貫通孔11aに挿入されるように、点火器20およびホルダ10が位置決めして配置される。具体的には、図13に示す如くの所定形状の保持治具100が予め準備され、当該保持治具100に点火器20およびホルダ10がセットされることにより、上述した点火器20およびホルダ10の位置決めが行なわれる。なお、その際、シール部材30および燃焼制御カバー40も同時に位置決めしてセットされる。
次に、筒状部12の所定部位に熱および圧力が加えられることによって筒状部12に変形部12bが形成されることにより、点火器20がホルダ10に対して固定される。具体的には、図13に示す如くの所定形状の加熱加圧治具200が用いられ、予め所定の温度に加熱された加熱加圧治具200の先端近傍が筒状部12の突片状の部位12b’に押し付けられることにより、当該突片状の部位12b’が点火器20の径方向内側に向かって押し曲げられ、これにより変形部12bが形成されることによって点火器20がホルダ10に対して固定される。
このように本実施の形態における点火器組立体の製造方法を用いた場合にも、従来に比して容易にかつ安価に点火器20をホルダ10に対して固定することが可能になる。
なお、本実施の形態においては、筒状部12に一対の爪状の変形部12bを設けた場合を例示して説明を行なったが、爪状の変形部12bは、必ずしも一対である必要はなく、点火器20をホルダ10に対して十分な保持力をもって固定できるのであれば、爪状の変形部12bは、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、組付け後において点火器20の基部23が露出しないように、環状の変形部にて当該基部23が覆われるように構成してもよい。
(第3変形例)
図14は、上述した実施の形態3に基づいた第3変形例に係る点火器組立体の製造方法に従って製造された点火器組立体の断面図であり、図15は、図14に示す点火器組立体の平面図である。また、図16は、本変形例に係る点火器組立体の製造方法を説明するための断面図である。
図14および図15に示すように、本変形例に係る点火器組立体1C1にあっては、燃焼制御カバー40(図11等参照)が設けられておらず、また、筒状部12の上端には、一対の爪状の変形部12b(図11等参照)に代えて、環状の変形部12cが設けられている。
環状の変形部12cは、筒状部12の上端から点火器20の軸方向に沿って突出するとともに、点火器20の径方向内側に向けて倒れ込むように傾斜して設けられている。これにより、環状の変形部12cと凹部12aの底面との間で点火器20の基部23が挟み込まれることになり、点火器20がホルダ10に対して固定されている。
また、環状の変形部12cは、上述した点火器20を固定する機能のみならず、上述した燃焼制御カバー40の機能をも兼ね備えている。すなわち、環状の変形部12cは、点火器20の点火部21の側面の全面と頂面21aの外縁部とを覆うように形成されており、また、点火器20の基部23の上面を覆うように形成されている。これにより、点火器20の作動時においてスクイブカップに生じる開口部の形成位置が、点火部21の頂面21aに制限されることになり、点火器20による点火方向に指向性が与えられることになる。
上述した変形部12cは、樹脂製の部分である樹脂部としての筒状部12の所定部位に熱および圧力が加えられることにより、当該所定部位の形状を当初のものから意図的に変形させることで形成された部位である。
ここで、点火器組立体1C1においては、上記所定部位が、熱および圧力が加えられる前の状態において筒状部12の上端側の部分から上方に向けて突出するように形成された円筒状の部位12c’(図16参照)によって構成されている。円筒状の部位12c’に熱および圧力が加えられることにより、当該円筒状の部位12c’が点火器20の径方向内側に向かって押し曲げられ、これにより上記変形部12cが形成されることになる。
当該変形部12cが設けられることにより、点火器組立体1C1においては、点火器20の基部23の外縁部が筒状部12によって挟み込まれて保持されており、その結果、点火器20がホルダ10に対して固定されている。なお、図16においては、筒状部12によって点火器20の軸方向に挟み込まれた部分に該当する基部23の領域を斜線部にて表わしている。
図16を参照して、上述した点火器組立体1C1を製造するに際しては、まず、点火部21、一対の端子ピン22および基部23を有する点火器20が準備されるとともに、貫通孔11aを有するとともに、金属製の板状部11および樹脂部としての筒状部12が含まれてなるホルダ10が準備される。ここで、準備されるホルダ10は、上述した変形部12bが形成される前のものであるため、当該ホルダ10の筒状部12は、上述した円筒状の部位12c’をその上端に有している。
次に、一対の端子ピン22が貫通孔11aに挿入されるように、点火器20およびホルダ10が保持治具100にセットされることで位置決めして配置される。なお、その際、シール部材30も同時に位置決めしてセットされる。
次に、筒状部12の所定部位に熱および圧力が加えられることによって筒状部12に変形部12cが形成されることにより、点火器20がホルダ10に対して固定される。具体的には、図13に示す如くの所定形状の加熱加圧治具200が用いられ、加熱加圧治具200の先端近傍が筒状部12の円筒状の部位12c’に押し付けられることにより、当該円筒状の部位12c’が点火器20の径方向内側に向かって押し曲げられ、これにより変形部12cが形成されることによって点火器20がホルダ10に対して固定される。
このように本変形例に係る点火器組立体の製造方法を用いた場合にも、従来に比して容易にかつ安価に点火器20をホルダ10に対して固定することが可能になる。
(実施の形態4)
図17は、本発明の実施の形態4における点火器組立体の製造方法に従って製造された点火器組立体の断面図であり、図18は、図17に示す点火器組立体の平面図である。まず、これら図17および図18を参照して、本実施の形態における点火器組立体の製造方法に従って製造された点火器組立体1Dの構成について説明する。
図17および図18に示すように、点火器組立体1Dは、上述した点火器組立体1Cと比較した場合に、ホルダ10の筒状部12の構成と、点火器20の基部23との構成において相違している。
点火器組立体1Dにあっては、筒状部12の上端に一対の爪状の変形部12b(図11等参照)が設けられておらず、これに代えて、環状の変形部12dが設けられている。環状の変形部12dは、筒状部12の上端から点火器20の径方向内側に向けて延設されている。
また、点火器20の基部23の外周面には、周方向に沿って延びる環状の溝部23eが設けられている。当該環状の溝部23eには、上述した環状の変形部12dが収容されており、これにより、環状の変形部12dと凹部12aの底面との間で点火器20の基部23の下端が挟み込まれることになり、点火器20がホルダ10に対して固定されている。
上述した変形部12dは、樹脂製の部分である樹脂部としての筒状部12の所定部位に熱および圧力が加えられることにより、当該所定部位の形状を当初のものから意図的に変形させることで形成された部位である。
ここで、点火器組立体1Dにおいては、上記所定部位が、熱および圧力が加えられる前の状態において筒状部12の上端側の部分から上方に向けて突出するように形成された円筒状の部位12d’(図19参照)によって構成されている。円筒状の部位12d’に熱および圧力が加えられることにより、当該円筒状の部位12d’が点火器20の径方向内側に向かって押し曲げられ、これにより上記変形部12dが形成されることになる。
当該変形部12dが設けられることにより、点火器組立体1Dにおいては、点火器20の基部23の下端が筒状部12によって挟み込まれて保持されており、その結果、点火器20がホルダ10に対して固定されている。なお、図18においては、筒状部12によって点火器20の軸方向に挟み込まれた部分に該当する基部23の領域を斜線部にて表わしている。
図19は、本実施の形態における点火器組立体の製造方法を説明するための断面図である。次に、この図19を参照して、本実施の形態における点火器組立体の製造方法について説明する。
図19を参照して、上述した点火器組立体1Dを製造するに際しては、まず、点火部21、一対の端子ピン22および基部23を有する点火器20が準備されるとともに、貫通孔11aを有するとともに、金属製の板状部11および樹脂部としての筒状部12が含まれてなるホルダ10が準備される。ここで、準備されるホルダ10は、上述した変形部12dが形成される前のものであるため、当該ホルダ10の筒状部12は、上述した円筒状の部位12d’をその上端に有している。
次に、一対の端子ピン22が貫通孔11aに挿入されるように、点火器20およびホルダ10が位置決めして配置される。具体的には、図19に示す如くの所定形状の保持治具100が予め準備され、当該保持治具100に点火器20およびホルダ10がセットされることにより、上述した点火器20およびホルダ10の位置決めが行なわれる。なお、その際、シール部材30も同時に位置決めしてセットされる。
次に、筒状部12の所定部位に熱および圧力が加えられることによって筒状部12に変形部12dが形成されることにより、点火器20がホルダ10に対して固定される。具体的には、図19に示す如くの所定形状の加熱加圧治具200が用いられ、予め所定の温度に加熱された加熱加圧治具200の先端近傍が筒状部12の円筒状の部位12d’に押し付けられることにより、当該円筒状の部位12d’が点火器20の径方向内側に向かって押し曲げられ、これにより基部23の溝部23eの内部に変形部12dが形成されることによって点火器20がホルダ10に対して固定される。なお、その際、加熱加圧治具200の環状の部位23c’に対する押し付け速度を十分に遅くすることにより、溶融または軟化した樹脂材料の移動方向を制御することができる。
このように本実施の形態における点火器組立体の製造方法を用いた場合にも、従来に比して容易にかつ安価に点火器20をホルダ10に対して固定することが可能になる。
(実施の形態5)
図20は、本発明の実施の形態5における点火器組立体の製造方法に従って製造された点火器組立体の断面図であり、図21は、図20に示す点火器組立体の底面図である。まず、これら図20および図21を参照して、本実施の形態における点火器組立体の製造方法に従って製造された点火器組立体1Eの構成について説明する。
図20および図21に示すように、点火器組立体1Eは、ホルダ10と点火器20とを備えている。ホルダ10は、金属製の板状部11と、樹脂製または金属製の雌型コネクタ部13とを有している。点火器20は、点火部21および端子ピン22と、樹脂製の部分である樹脂部としての基部23とを有している。なお、点火器20の基部23の周面には、後述するカップ体60(図23参照)を点火器組立体1Eに固定するための係止凹部23fが設けられている。
金属製の板状部11には、環状の立壁部11eが設けられている。雌型コネクタ部13は、有底筒状の形状を有しており、上述した立壁部11eが設けられることによって形成された金属製の板状部11の凹部内に収容されている。これにより、金属製の板状部11の立壁部11eを除く部分と、雌型コネクタ部13の底部とが、互いに重なるように配置されている。
雌型コネクタ部13は、ホルダ10の外部に露出する窪み部13dを有している。窪み部13dは、点火器20とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの雄型コネクタ(図示せず)を受け入れる部位であり、当該窪み部13d内には、点火器20の端子ピン22の先端寄りの部分が露出して位置している。雌型コネクタ部13の窪み部13dには、雄型コネクタが挿し込まれ、これによりハーネスの芯線と端子ピン22との電気的導通が実現される。
金属製の板状部11には、貫通孔11aと、一対の固定用孔部11cが設けられている。雌型コネクタ部13の底部には、貫通孔13aと、一対の固定用孔部13cが設けられている。金属製の板状部11に設けられた貫通孔11aと、雌型コネクタ部13に設けられた貫通孔13aとは、互いに重なるように位置しており、金属製の板状部11に設けられた一対の固定用孔部11cと、雌型コネクタ部13に設けられた一対の固定用孔部13cとは、互いに重なるように位置している。
点火器20の基部23には、金属製の板状部11に設けられた一対の固定用孔部11cの各々に面する部分に変形部23bが設けられており、これら変形部23bの各々は、雌型コネクタ部13に設けられた一対の固定用孔部13cに面している。
金属製の板状部11に設けられた一対の固定用孔部11cの各々は、板状部11の上面(すなわち、点火器20の点火部21が位置する側の面)から板状部11の下面(すなわち、上記上面とは反対側の面)に達する円柱状の貫通孔からなる。一方、雌型コネクタ部13に設けられた一対の固定用孔部11cの各々は、上述した底部の上面(すなわち、点火器20の点火部21が位置する側の面)側の開口面積よりも上述した底部の下面側(すなわち、上記上面とは反対側の面)側の開口面積が大きく形成された貫通孔からなる。
一対の変形部23bの各々は、金属製の板状部11に設けられた一対の固定用孔部11cの一方と、雌型コネクタ部13に設けられた一対の固定用孔部11cの一方とにそれぞれ挿通しており、その下端(すなわち、上述した底部の下面側に位置する端部)が径方向に拡径したテーパ形状を有している。
上述した変形部23bは、樹脂製の部分である樹脂部としての基部23の所定部位に熱および圧力が加えられることにより、当該所定部位の形状を当初のものから意図的に変形させることで形成された部位である。
ここで、点火器組立体1Eにおいては、上記所定部位が、熱および圧力が加えられる前の状態において基部23の下端側の部分から下方に向けて突出するように形成された円柱状の部位23b’(図22参照)によって構成されている。円柱状の部位23b’に熱および圧力が加えられることにより、当該円柱状の部位23b’の下端が押し広げられ、これにより上記変形部23bが形成されることになる。
当該変形部23bが設けられることにより、点火器組立体1Eにおいては、固定用孔部11cが設けられた部分近傍の板状部11ならびに固定用孔部13cが設けられた部分近傍の雌型コネクタ部13が基部23によって挟み込まれて保持されており、その結果、点火器20が板状部11および雌型コネクタ部13からなるホルダ10に対して固定されている。なお、図21においては、基部23によって点火器20の軸方向に挟み込まれた部分に該当する板状部11および雌型コネクタ部13の領域を斜線部にて表わしている。
図22は、本実施の形態における点火器組立体の製造方法を説明するための断面図である。次に、この図22を参照して、本実施の形態における点火器組立体の製造方法について説明する。
図22を参照して、上述した点火器組立体1Eを製造するに際しては、まず、点火部21および一対の端子ピン22を有するとともに、樹脂部としての基部23が含まれてなる点火器20が準備されるとともに、貫通孔11aおよび固定用孔部11cが設けられた金属製の板状部11ならびに貫通孔13aおよび固定用孔部13cが設けられた樹脂製または金属製の雌型コネクタ部13からなるホルダ10が準備される。ここで、準備される点火器20は、上述した変形部23bが形成される前のものであるため、当該点火器20の基部23は、上述した円柱状の部位23b’をその下端に有している。また、樹脂製または金属製の雌型コネクタ部13は、金属製の板状部11の上述した凹部に予め嵌め込まれた状態とする。
次に、一対の端子ピン22が貫通孔11aに挿入されるとともに、一対の円柱状の部位23b’がそれぞれ対応する固定用孔部11c,13cに挿入されるように、点火器20およびホルダ10が保持治具100にセットされることで位置決めして配置される。これにより、一対の端子ピン22は、雌型コネクタ部13に設けられた窪み部13dの内部に位置することになる。
次に、基部23の所定部位に熱および圧力が加えられることによって基部23に一対の変形部23bが形成されることにより、点火器20がホルダ10に対して固定される。具体的には、図22に示す如くの所定形状の加熱加圧治具200が用いられ、加熱加圧治具200の先端が基部23の円柱状の部位23b’のそれぞれに押し付けられることにより、当該円柱状の部位23b’が押し広げられ、これにより変形部23bが形成されることによって点火器20がホルダ10に対して固定される。その際、金属製の板状部11と、当該板状部11の凹部に嵌め込まれた状態にある雌型コネクタ部13とが、変形部23bを除く部分の基部23と変形部23bとによって挟み込まれることで分離不能に一体化される。
このように本実施の形態における点火器組立体の製造方法を用いた場合にも、従来に比して容易にかつ安価に点火器20をホルダ10に対して固定することが可能になる。
図23は、図20に示す点火器組立体を具備したマイクロガスジェネレータの一構成例を示す断面図である。次に、この図23を参照して、本実施の形態における点火器組立体の製造方法に従って製造された点火器組立体1Eを具備してなるマイクロガスジェネレータ50の一構成例について説明する。
図23に示すように、マイクロガスジェネレータ50は、上述した点火器組立体1Eと、カップ体60と、ガス発生剤70と、シール部材80とを備えている。
カップ体60は、一端が閉塞された筒状の形状を有しており、頂壁部61と、側壁部62とを有している。カップ体60の内部には、ガス発生剤70が収容された燃焼室63が設けられており、当該燃焼室63が点火器20の点火部21の頂面21aに面するように、カップ体60が点火器組立体1Eに組付けられている。
より詳細には、カップ体60の開口端側の端部は、点火器20の外形にあわせた形状に曲げ加工が施されており、その内周面の所定位置には、内側に向かって突出する係止爪部62aが設けられている。当該係止爪部62aが、点火器20の基部23の外周面に設けられた係止凹部23fに係合することにより、カップ体60が点火器組立体1Eに固定されている。
カップ体60の外表面には、必要に応じて脆弱部としてのスコアが形成される。当該スコアを設けることにより、ガス発生剤70の燃焼時において、カップ体60を所望のタイミング(すなわち、燃焼室63が所定の内圧に達した時点)で確実に開裂させることができる。なお、カップ体60は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成される。
また、点火器20とカップ体60との間の所定位置には、たとえばOリング等からなる環状のシール部材80が配置されており、これによりシール部材80が点火器20およびカップ体60に密着している。当該シール部材80は、燃焼室63を外部から気密に封止するためのものであり、たとえばエチレンプロピレンゴムの一種であるEPDMからなるものを用いることができる。
ガス発生剤70は、点火器20によって着火されて燃焼することで多量のガスを発生するものである。ガス発生剤70としては、無煙火薬(ニトロセルロース)の成形体や、有機窒素化合物と酸化剤とからなる非アジ化系組成物の成形体等が利用される。なお、ガス発生剤70としては、一酸化炭素等の有害物質の生成量が極めて少ない非ニトロセルロース系ガス発生剤を利用することがより好ましい。
ガス発生剤70の成形体としては、顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状のものが利用できる。また、貫通孔を有する有孔状(たとえばマカロニ状や蓮根状等)のものもガス発生剤70の成形体として利用できる。これらの形状は、マイクロガスジェネレータ50が組付けられるプリテンショナモジュールの仕様に応じて最適のものが選択される。
上記構成のマイクロガスジェネレータ50は、点火器組立体1Eに組付けられた点火器20が作動することによってガスを発生させる。具体的には、点火器20が作動することによって生じた火炎によって燃焼室63に収容されたガス発生剤70が点火されて燃焼し、多量の作動ガスを発生させる。燃焼室63にて発生した作動ガスは、カップ体60を開裂させてマイクロガスジェネレータ50の外部へと噴出する。噴出したガスは、マイクロガスジェネレータ50が組み込まれたシートベルトプリテンショナの作動空間に導入され、シートベルトの巻き取り動作に利用される。
以上において説明したマイクロガスジェネレータ50は、上述した点火器組立体1Eを具備したものであるため、このように構成することにより、従来に比してより安価にマイクロガスジェネレータを製造することができる。
なお、上述した本発明の実施の形態ならびにそれらの変形例において示したホルダおよび点火器の具体的な形状はあくまでも例示であって、これらに本発明が制限されるものではない。本発明は、ホルダおよび点火器の少なくともいずれか一方に樹脂製の部分である樹脂部を設け、当該樹脂部の少なくとも一部に熱および圧力を加えることで点火器をホルダに対して固定することを特徴とするものであり、ホルダおよび点火器の具体的な形状は、適宜その変更が可能である。
また、上述した本発明の実施の形態ならびにそれらの変形例においては、シートベルト装置に組み込まれるシートベルトプリテンショナモジュールに具備されるマイクロガスジェネレータの一構成部品としての点火器組立体に本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、エアバッグ装置に組み込まれるガス発生器の一構成部品としての点火器組立体にも当然にその適用が可能である。
加えて、上述した本発明の実施の形態ならびにそれらの変形例において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当然に相互に組み合わせることができる。
このように、今回開示した上記実施の形態ならびにそれらの変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。