JPWO2011074440A1 - ガスバリアフィルム、ガスバリアフィルムの製造方法及び有機光電変換素子 - Google Patents

ガスバリアフィルム、ガスバリアフィルムの製造方法及び有機光電変換素子 Download PDF

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Abstract

高いガスバリア性能と、ヒビ割れ(屈曲)耐性を両立したガスバリアフィルム、具体的には、基材上に少なくとも1層のシラノール含有層と、ケイ素原子及び酸素原子を含有する少なくとも1層のガスバリア層をこの順に有するガスバリアフィルムにおいて、該シラノール含有層の膜深さ方向における膜中央部から飛行時間型二次イオン質量分析法(Tof−SIMS)によって検出される相対SiOHイオン強度が、相対Siイオン強度を1としたときに、0.02〜1.0であることを特徴とするガスバリアフィルム提供する。また、該ガスバリアフィルムを有する有機光電変換素子を提供する。

Description

本発明は、主に電子デバイス等のパッケージ、または有機光電変換素子(有機太陽電池)や有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)、液晶等のプラスチック基板といったディスプレイ材料に用いられるガスバリアフィルム、ガスバリアフィルムの製造方法及び該ガスバリアフィルムを有する有機光電変換素子に関する。
従来から、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物の薄膜を形成したガスバリアフィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。
また、包装用途以外にも液晶表示素子、光電変換素子(太陽電池)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)基板等で使用されている。
この様な分野での包装材料としてアルミ箔等が広く用いられているが、使用後の廃棄処理が問題となっているほか、基本的には不透明であり、外から内容物を確認することができないという課題を抱えており、更に、太陽電池用材料では透明性が求められており、適用することができない。
特に、液晶表示素子、有機EL素子、光電変換素子などへの応用が進んでいる透明基材には、近年、軽量化、大型化という要求に加え、ロール・トゥ・ロールでの生産が可能であること、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わり、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって透明プラスチック等のフィルム基材が採用され始めている。
しかしながら、透明プラスチック等のフィルム基材はガラスに対しガスバリア性が劣るという問題がある。例えば、有機光電変換素子用の材料として用いた場合、ガスバリア性が劣る基材を用いると、水蒸気や空気が浸透して有機膜が劣化し、光電変換効率あるいは耐久性等を損なう要因となる。
また、電子デバイス用基板として高分子基板を用いた場合には、酸素が高分子基板を透過して電子デバイス内に浸透、拡散し、デバイスを劣化させてしまうことや、電子デバイス内で求められる真空度を維持できないといった問題を引き起こす。
この様な問題を解決するためにフィルム基板上に金属酸化物薄膜を形成してガスバリアフィルム基材とすることが知られている。包装材や液晶表示素子に使用されるガスバリアフィルムとしてはプラスチックフィルム上に酸化珪素を蒸着したもの(例えば、特許文献1参照)や酸化アルミニウムを蒸着したもの(例えば、特許文献2参照)が知られている。
また、真空プロセスが必要な蒸着法ではなく、簡便な塗布プロセスで成膜が可能な方法として、ポリシラザン等の珪素化合物の塗布液を基材上に塗布した膜に転化処理を施すことで、転化したシリカ膜からなるガスバリア層を形成する方法もいくつか知られている(例えば、特許文献3、特許文献4及び特許文献5参照)。
中でも、特許文献4では、ポリシラザン塗布膜を大気圧下における酸素プラズマ放電処理によりシリカ膜に転化するプロセスの開示があり、真空プロセスを必要とせずにガスバリア層の形成が可能である。
しかしながら、得られた膜の水蒸気透過率は、0.35g/(m・24h)と、前述したようなデバイスに適用が可能なガスバリア層とはとても言えない。一般的に、有機光電変換素子に適用するために求められるガスバリア層の水蒸気透過率は、1×10−2g/(m・24h)を大きく下回る必要があると言われている。
また、大気圧プラズマによりガスバリア層を形成する方法として、高いエネルギー密度で安定なプラズマ放電が可能な成膜方法も提案されている(例えば、特許文献6及び特許文献7参照)。
上記の特許文献6、7では、高いバリア性を有するシリカ膜をポリエチレンテレフタレート(PET)等のフレキシビリティを有するプラスチックフィルム上に形成した時のヒビ割れを防止するため、バリア層の膜厚方向の炭素成分に分布を持たせ、基材側ほど膜の硬度が低くなる応力緩和設計を行っている。
しかし、CVD成膜方式であるために、プラズマ空間での副生成物として気相中パーティクルが発生し、基材へ付着することにより、均一な膜形成が阻害される場合があることが分かってきた。このように発生したパーティクルは、バリア欠陥の起点となる可能性が高く、安定的に均一なガスバリア層を形成する方法としては、十分な方法とは言い難いのが実状である。
プラスチックフィルム上にある程度以上の膜厚でガスバリア層を形成する場合、膜厚方向に均一な密度(あるいは硬度)で高密度シリカ膜を形成すると、屈曲性に対して非常に脆く、ヒビ割れが多発する問題点があり、ガスバリア層の形成手段として、ロール・トゥ・ロールプロセスが選択できないだけでなく、ロール形態での出荷搬送や、更には有機光電変換素子として用いる場合に曲面へ設置ができない等、取り扱い方法や使用方法に大きな制限を与え、大きな障害であり、このことが、現在まで大気圧下のロール・トゥ・ロール法を用いてのガスバリアフィルムの製造における問題点であった。
しかしながら、現在、高いガスバリア性能と、ヒビ割れ(屈曲)耐性を両立し、有機光電変換素子用基材などに適用可能で、安定的かつ均一に、大気圧下のロール・トゥ・ロール法を用いてのガスバリアフィルムの製造の実現が当業界において期待されている。
特開平2−251429号公報 特開平6−124785号公報 特開2000−246830号公報 特開2007−237588号公報 特開平8−281861号公報 特開2004−84027号公報 特開2008−56967号公報
本発明の目的は、高いガスバリア性能と、ヒビ割れ(屈曲)耐性を両立したガスバリアフィルム、大気圧下で安定かつ均一にロール・トゥ・ロール法を用いたガスバリアフィルムの製造方法を提供し、且つ、該ガスバリアフィルムを有する有機光電変換素子を提供することである。
本発明の目的は、下記の構成により達成された。
1.基材上に少なくとも1層のシラノール含有層と、ケイ素原子及び酸素原子を含有する少なくとも1層のガスバリア層をこの順に有するガスバリアフィルムにおいて、
該シラノール含有層の膜深さ方向における膜中央部から飛行時間型二次イオン質量分析法(Tof−SIMS)によって検出される相対SiOHイオン強度が、相対Siイオン強度を1としたときに、0.02〜1.0であることを特徴とするガスバリアフィルム。
2.前記相対SiOHイオン強度が、0.2〜0.8であることを特徴とする前記1に記載のガスバリアフィルム。
3.前記相対SiOHイオン強度が、0.3〜0.6であることを特徴とする前記1に記載のガスバリアフィルム。
4.前記基材とシラノール含有層との間に、第2のガスバリア層を有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
5.前記基材がプラスチックフィルムからなることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
6.前記1〜5のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを製造するにあたり、シラノール含有層がケイ素化合物を含有する液を塗布する工程を経て作製されることを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
7.前記1〜5のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを製造するにあたり、ガスバリア層がケイ素化合物を含有する液を塗布する工程を経て作製されることを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
8.前記1〜5のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを製造するにあたり、シラノール含有層またはガスバリア層が、ケイ素化合物を含有する液を塗布する工程を経て作製されることを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
9.前記1〜5のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを製造するにあたり、シラノール含有層またはガスバリア層が、ケイ素化合物を含有する液を塗布して得られた膜の表面側からの紫外線照射処理によって作製されることを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
10.前記1〜5のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを有することを特徴とする有機光電変換素子。
本発明により、高いガスバリア性能と、ヒビ割れ(屈曲)耐性を両立したガスバリアフィルム、大気圧下で安定かつ均一にロール・トゥ・ロール法を用いたガスバリアフィルムの製造方法を提供し、且つ、該ガスバリアフィルムを有する有機光電変換素子を提供することができた。
バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。 p−i−nの三層構成の光電変換層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。 タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。 本発明のガスバリアフィルム1の概略断面図である。 本発明のガスバリアフィルム2の概略断面図である。 本発明のガスバリアフィルム3の概略断面図である。 本発明のガスバリアフィルム4の概略断面図である。 本発明のガスバリアフィルム5、6、7、8の概略断面図である。 本発明のガスバリアフィルム9の概略断面図である。 本発明のガスバリアフィルム10及び17の概略断面図である。 本発明のガスバリアフィルム11、12及び13の概略断面図である。 比較のガスバリアフィルム14及び15の概略断面図である。 比較のガスバリアフィルム16の概略断面図である。
本発明のガスバリアフィルムは、請求項1〜5のいずれか1項に記載される構成により、高いガスバリア性能とヒビ割れ(屈曲)耐性を両立したガスバリアフィルムを得ることができ、また、請求項6〜8のいずれかに記載される構成により、大気圧下で安定かつ均一にロール・トゥ・ロール法を用い、連続生産性に優れたガスバリアフィルムの製造方法を提供し、且つ、該ガスバリアフィルムを有する有機光電変換素子を提供することができた。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
《ガスバリアフィルム(ガスバリア性フィルムともいう)》
本発明のガスバリアフィルムについて説明する。
本発明のガスバリアフィルムは、基材上に少なくとも1層のシラノール含有層と、ケイ素原子及び酸素原子を含有する少なくとも1層のガスバリア層をこの順に有する構成を有し、該シラノール含有層の膜深さ方向における膜中央部から、飛行時間型二次イオン質量分析法(Tof−SIMS)によって検出される相対SiOHイオン強度が、相対Siイオン強度を1としたときに、0.02〜1.0の範囲に調整することにより、高いガスバリア性能とヒビ割れ(屈曲)耐性を両立したガスバリアフィルムを提供するものである。
本発明のガスバリアフィルムのガスバリア性としては、JIS K 7129B法に従って測定した水蒸気透過率(水蒸気透過度:25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、10−3g/(m・24h)以下であることが好ましく、更に好ましくは10−4g/(m・24h)以下であり、特に好ましくは10−5g/(m・24h)である。
また、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過率(酸素透過度)が0.01ml/(m・0.1MPa/day)以下であることが好ましく、より好ましくは0.001ml/(m・0.1MPa/day)以下である。
続いて、本発明のガスバリアフィルムを構成する各要素について説明する。
初めに、本発明におけるシラノール含有層について説明する。
《シラノール含有層》
本発明に係るシラノール含有層について説明する。
本発明に係るシラノール含有層は、膜深さ方向における飛行時間型二次イオン質量分析法(Tof−SIMS)によって検出される相対SiOHイオン強度が、相対Siイオン強度を1としたときに、0.02〜1.0であり、好ましくは、好ましくは、SiOHイオン強度が、0.2〜0.8であり、更に好ましくは相対SiOHイオン強度が、0.3〜0.6である。
尚、本発明に係るシラノール含有層とは、上記の相対SiOHイオン強度が少なくとも0.02以上であることが必要条件であり、0.02未満の層は、本願では、シラノール含有層とは定義されない。
シラノール含有層中の相対SiOHイオン強度を0.02〜1.0の範囲に調整するためには、後述するシラノール含有層中のシラノール基の含有率の調整方法を適用することにより達成できる。
(シラノール層中のシラノール基の含有率の勾配)
シラノール層中のシラノール基の含有率の勾配とは、シラノール含有層中に存在するシラノール基の含有率が、膜深さ方向で規則性(増加する又は減少する等)を持って変化している状態を言う。
ここで、シラノール基の含有率の変化は、連続的に変化していても良いし、ステップ上に変化していても良い。また、シラノール含有層において、全膜厚で一定の含有比率勾配を持たせても良いし、含有比率が一定な部分と勾配を持つ部分を併せて持たせても良い。
含有比率勾配を持たせるためには、膜形成時の処理方法を適切に選択することで、調整可能である。
含有比率の勾配を持たせる膜厚範囲は、少なくとも1回の塗布で形成するシラノール含有層の膜厚の20%以上の膜厚範囲で含有比率勾配を形成することが好ましく、更に好ましくは30%以上の膜厚範囲であり、特に好ましくは40%以上の膜厚範囲で含有比率勾配を形成することである。
(シラノール層中のシラノール基の含有率の調整方法)
本発明においては、シラノール含有層中に含有するシラノール基の含有率は、塗布膜を形成する材料や、形成した塗布膜の後処理あるいは転化処理(酸化処理ともいう)等を適切に選択することによって調整可能である。
例えば、ポリシラザン塗布膜を高湿度環境下に一定時間保持することで、意図的にシラノール化を促進させ、均一な組成、且つ、含有率の高いシラノール含有層としたり、ポリシラザン塗布膜の表面側からの光照射処理または大気圧プラズマ処理などによって、膜深さ方向にシラノール基含有率の勾配を有する構成とすることが可能となる。
あるいは、ポリシラザンに含有する触媒種や触媒量を適切に調整することで、シリカ転化反応における反応性を調整できるため、前述した処理と組み合わせ、所望のシラノール基含有率に調整することが可能となる。
ここで、飛行時間型二次イオン質量分析法について、説明する。
(飛行時間型二次イオン質量分析法:Tof−SIMS)
飛行時間型二次イオン質量分析法は、Tof−SIMS(トフシムス:Time−Of−Flight Secondary Ion Spectrometry)と一般的に呼ばれる。原理としては、高真空中で試料にパルス状のイオンを照射し、スパッタリング現象により表面からはぎ取られたイオンを重さ(原子量、分子量)で分けて検出する。そして、重さとその検出量のパターン(質量スペクトル)から試料最表面に存在する化学種(原子、分子)を推定することができる。
より詳細には、下記2つの段階を経て、分析を行うものである。
(1)二次イオン放出:固体試料表面にパルス状にイオン(一次イオン)を照射し、イオン衝撃を受けた試料表面からは、スパッタリング現象により試料表面から様々な粒子が放出される。
特に、Tof−SIMSでは、一次イオンの電流密度を低く抑え(staticモード)、できるだけ試料表面を破壊せずスパッタを行う。
(2)質量分離、検出:スパッタリングにより放出された粒子中に存在するイオン(二次イオン)を取り出し、その重さ(質量)で分けて検出することにより、試料表面〜内部の組成分析を行う方法が、二次イオン質量分析法である。
Tof−SIMSでは、質量分離に飛行時間型の分析装置を採用している。電場で飛行管に引き込まれたイオンは、軽いものが早く、重いものは遅く飛行管内を飛行し、検出器に到達する。
この飛行時間を質量に換算し、質量分離を行う。飛行時間型を用いることで、高感度、高質量分解能、高質量物質の検出が可能である。
これにより、表面に存在する化学種の二次元分布が分かるだけでなく、イオンビームで表面を削り測定、を繰り返すことによって、浅い領域での深さ方向の元素組成分析が可能となる。また、検出した化学種の相対的な存在量も求めることができる。
続いて、本発明に係る相対SiOHイオン強度の求め方について、説明する。
(相対SiOHイオン強度の求め方)
前述したように、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いることで、本発明の相対SiOHイオン強度を求めることができる。
本発明に係るSiOHイオン強度あるいはSiイオン強度は、シラノール含有層の膜深さ方向において、二次元的にランダムに2箇所測定し、そこで検出された各強度の平均値として求めている。
更に、本発明に係る相対SiOHイオン強度は、相対Siイオン強度を1に規格化したときの、相対SiOHイオン強度の値として得られたものである。
前述したように、Tof−SIMSでは、イオン(Ar、Xe)照射によるスパッタリングを併用することにより、表面から深さ方向への分析が可能である。
シラノール含有層の膜深さ方向の測定は、汚れや異物の付着の無い状態の最表面を基点として、シラノール含有層と隣接する基材、あるいはシラノール含有層と基材側で隣接する層が露出するまで、一定間隔にスパッタリング、測定を繰り返すことで行う。
測定間隔は、スパッタリング時間で30秒〜3分間隔で行うが、可能な限り短い間隔であることが好ましいため、30秒〜1分間隔で行うことが好ましい。
層最表面は吸着水やその他吸着物の影響で正しい結果が得られないため、スパッタリング開始から2分後の値を最表面で得られた値とみなし、シラノール含有層の基材側終点(すなわち、基材との界面あるいは、基材側で隣接する層との界面)は、シラノール含有層と隣接する基材、あるいはシラノール含有層と基材側で隣接する層に由来する成分(例えば、プラスチック基材であれば、Cイオン)が急激に(桁違いで)検出され始めた測定点のひとつ前の測定点とみなす。
前記最表面と、シラノール含有層の基材側終点の測定点を、シラノール含有層の膜深さ方向において検出された値とし、この点におけるイオン強度を本発明に係るイオン強度値として用いる。
本発明においては、シラノール含有層の膜深さ方向における膜中央部から飛行時間型二次イオン質量分析法(Tof−SIMS)によって検出される相対SiOHイオン強度を求めるが、ここで、『膜中央部から』とは、具体的には、厚さ200nmのシラノール層ならば、シラノール層の表面から100nm±10nm(膜厚に対して±5%を表す。)での膜深さでの測定を行うことを表す。
膜成分が膜深さ方向に分布を有する場合など、組成が均一でない場合、スパッタリングレート(すなわち、単位時間当たりのスパッタリングされる膜厚)は正確には一定ではないが、本発明においては、膜中央部を正確に特定する必要はないため、前述した求め方で問題になることはない。
本発明に係るシラノール含有層を基材とガスバリア層との間に設けることによって、本発明のガスバリアフィルムの屈曲耐性を大幅に改良することができる。
即ち、ロール・トゥ・ロールで製造し、ロール形態で出荷、搬送しても、高いガスバリア性を維持することができ、また、有機光電変換素子などのデバイス用基材に適用した場合においても、曲面へ設置できるなど、優れた効果を発揮することが可能となる。
また、シラノール含有層中に含有するシラノール基の含有率は、層中の含有率を均一にすることもできるし、また、膜深さ方向に勾配を有するよう構成することもできる。
特に、基材側に近い程、シラノール基の含有率を高く、表面側で隣接するガスバリア層に近い程、シラノール基の含有率を低く設定することで、応力緩和機能がより強調され、屈曲耐性が向上すると予想できる。
次に、本発明に係るガスバリア層について説明する。
《ガスバリア層(ガスバリア性を有する層)》
本発明に係るガスバリア層とは、ケイ素原子及び酸素原子を構成原子として含有し、酸素または水蒸気の透過を阻止する層(膜ともいう)である。
ガスバリア層を構成する材料としては、具体的には、ケイ素を有する無機酸化物が好ましく、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素等を有する層を挙げることができる。
初めに、本発明に係るガスバリア層の作製方法について説明する。
(ガスバリア層の作製方法)
本発明に係るガスバリア層の作製方法としては、膜形成面にケイ素化合物を含有する溶液を塗布後、酸化性ガス雰囲気下で光照射処理またはプラズマ処理することで、ケイ素酸化物を含有するガスバリア層を作製することが好ましい。
また、酸化性ガス雰囲気下での光照射処理またはプラズマ処理は、加熱処理と組み合わせて行うことがより好ましい。
本発明における酸化性ガス雰囲気下でのプラズマ処理は、真空酸素プラズマ処理など公知の方法を用いることができるが、大気圧プラズマ法を用いるのが好ましい。
以下、ケイ素化合物を含有する溶液の塗布による層形成、該層の酸化処理(転化処理ともいう)によるガスバリア層の形成、次いで、得られたガスバリア層の特徴について順番に説明する。
(ケイ素化合物を含有する溶液の調製及び塗布による塗膜(塗布膜)の形成))
本発明に係るケイ素化合物を含有する溶液の調製及び塗布による塗膜形成について説明する。
本発明に係るケイ素化合物を含有する溶液の調製には、塗布時に塗布液と水分が反応するのを抑制するため、溶媒としてキシレン、ジブチルエーテル、ソルベッソ、ターペン等、水分を含有しにくいものを用いることが好ましい。
ケイ素化合物を含有する溶液の塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
また、ケイ素化合物を含有する溶液の塗布により形成された塗膜(塗布膜)は、後述する転化処理(酸化処理ともいう)を施され、ケイ素化合物が二酸化珪素に変換され、ガスバリア層が形成される。
具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NN120、NN110、NAX120、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140などが挙げられる。
また、塗布された膜は溶媒が除去された均一な乾燥膜を得る上で、アニールする態様が好ましい。アニール温度は、好ましくは60℃〜200℃、更に好ましくは70℃〜160℃である。アニール時間は、好ましくは5秒〜24時間程度、更に好ましくは10秒〜2時間程度である。
このように、次工程に続く転化処理前に、前述した範囲でアニールを行うことにより、均一な塗布膜を安定に得ることができる。
尚、アニールは、一定温度で行ってもよく、段階的に温度を変化させてもよく、連続的に温度を変化(昇温および/または降温)させてもよい。アニールの際には、反応を安定化するために湿度を調節することが好ましく、通常30%RHから90%RH、より好ましくは40%RHから80%RHである。
続いて、ケイ素化合物について説明する。
(ケイ素化合物)
本発明に係るケイ素化合物について説明する。
本発明に係るケイ素化合物としては、該ケイ素化合物を含有する塗布液の調製が可能であれば特に限定はされないが、ポリシラザン化合物、ポリシロキサン等が好ましい。
尚、本発明に係る珪素化合物には、二酸化珪素(SiO(シリカともいう))は含まれない。
本発明に係るケイ素化合物としては、好ましいものとして、パーヒドロポリシラザン、シルセスキオキサン、テトラメチルシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、1,1−ジメチル−1−シラシクロブタン、トリメチルビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメチルジビニルシラン、ジメチルエトキシエチニルシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、アリールトリメトキシシラン、エトキシジメチルビニルシラン、アリールアミノトリメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアセトアミド、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリビニルシラン、ジアセトキシメチルビニルシラン、メチルトリアセトキシシラン、アリールオキシジメチルビニルシラン、ジエチルビニルシラン、ブチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、テトラビニルシラン、トリアセトキシビニルシラン、テトラアセトキシシラン、3−トリフルオロアセトキシプロピルトリメトキシシラン、ジアリールジメトキシシラン、ブチルジメトキシビニルシラン、トリメチル−3−ビニルチオプロピルシラン、フェニルトリメチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルイソペンチロキシビニルシラン、2−アリールオキシエチルチオメトキシトリメチルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アリールアミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ジメチルエチキシフェニルシラン、ベンゾイロキシトリメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ジメチルエトキシ−3−グリシドキシプロピルシラン、ジブトキシジメチルシラン、3−ブチルアミノプロピルトリメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、ビス(ブチルアミノ)ジメチルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、ジアセトキシメチルフェニルシラン、ジメチル−p−トリルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ジエチルメチルフェニルシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、デシルメチルジメトキシシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、オクチロキシトリメチルシラン、フェニルトリビニルシラン、テトラアリールオキシシラン、ドデシルトリメチルシラン、ジアリールメチルフェニルシラン、ジフェニルメチルビニルシラン、ジフェニルエトキシメチルシラン、ジアセトキシジフェニルシラン、ジベンジルジメチルシラン、ジアリールジフェニルシラン、オクタデシルトリメチルシラン、メチルオクタデシルジメチルシラン、ドコシルメチルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,4−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アセトキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5−トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラエトキシ−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等を挙げることができる。
中でも、常温で固体であるケイ素化合物が好ましく、パーヒドロポリシラザン(PHPS)、シルセスキオキサン等がより好ましく用いられる。
シルセスキオキサンとしては、Mayaterials社製Q8シリーズのOctakis(tetramethylammonium)pentacyclo−octasiloxane−octakis(yloxide)hydrate;Octa(tetramethylammonium)silsesquioxane、Octakis(dimethylsiloxy)octasilsesquioxane、Octa[[3−[(3−ethyl−3−oxetanyl)methoxy]propyl]dimethylsiloxy)]octasilsesquioxane;Octaallyloxetane silsesquioxane、Octa[(3−Propylglycidylether)Dimethylsiloxy]Silsesquioxane;Octakis[[3−(2,3−epoxypropoxy)propyl]dimethylsiloxy]octasilsesquioxane、Octakis[[2−(3,4−epoxycyclohexyl)ethyl]dimethylsiloxy]octasilsesquioxane、Octakis[2−(vinyl)dimethylsiloxy]silsesquioxane;Octakis(dimethylvinylsiloxy)octasilsesquioxane、Octakis[(3−hydroxypropyl)dimethylsiloxy]octasilsesquioxane、Octa[(methacryloylpropyl)dimethylsilyloxy]silsesquioxane Octakis[(3−methacryloxypropyl)dimethylsiloxy]octasilsesquioxane、また下記構造式の化合物が挙げられる。
(ガスバリア層の形成)
本発明に係るガスバリア層は、上記のケイ素化合物を含有する塗布膜を転化処理(酸化処理)することで形成される。尚、転化処理には、上記のように酸化性ガス雰囲気下で光照射処理またはプラズマ処理することが好ましい方法として用いられる。
以下、転化処理(酸化処理)に適用されるプラズマ処理の中でも好ましい態様である大気圧プラズマ処理について説明し、次いで、光照射処理について説明する。
(大気圧プラズマ処理))
本発明に係るガスバリア層の形成に好ましく用いられる大気圧プラズマ処理について説明する。
大気圧プラズマ処理の場合は、放電ガスとしては窒素ガス及び/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも、窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
大気圧プラズマに用いる反応ガスとしては目的に応じて選択可能であるが、水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、水蒸気ガスを用いる事が好ましく、更に好ましくは、水素ガス、酸素ガスを用いることが好ましい。
本発明における大気圧プラズマ処理は、具体的には国際公開第07/26545号パンフレットに記載されるように、放電空間に異なる周波数の電界を2つ以上印加したもので、第1の高周波電界と第2の高周波電界とを重畳した電界を印加することが好ましい。
前記第1の高周波電界の周波数ω1より前記第2の高周波電界の周波数ω2が高く、且つ前記第1の高周波電界の強さV1と、前記第2の高周波電界の強さV2と、放電開始電界の強さIVとの関係がV1≧IV>V2、またはV1>IV≧V2を満たし、前記第2の高周波電界の出力密度が1W/cm以上である。
このような放電条件をとることにより、例えば、窒素ガスのように放電開始電界強度が高い放電ガスでも、放電を開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持でき、高性能な薄膜形成を行うことができる。
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電界強度IV(1/2Vp−p)は3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の印加電界強度を、V1≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
ここで、第1電源の周波数としては、200kHz以下が好ましく用いることができる。また、この電界波形としては連続波でもパルス波でもよい。下限は1kHz程度が望ましい。
一方、第2電源の周波数としては、800kHz以上が好ましく用いられる。この第2電源の周波数が高い程プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な薄膜が得られる。上限は200MHz程度が望ましい。
このような2つの電源から高周波電界を印加することは、第1の高周波電界によって高い放電開始電界強度を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の高周波電界の高い周波数及び高い出力密度により、プラズマ密度を高くして緻密で良質な薄膜を形成することができる。
次いで、光照射処理について好ましい形態を説明する。
《光照射処理》
本発明に係る光照射処理としては、酸化性ガス雰囲気下での光照射処理における光が、紫外光であることがより好ましい。紫外光を照射することで活性酸素やオゾンが発生し、酸化反応がより進行する。
この活性酸素やオゾンは非常に反応性が高く、例えば、ケイ素化合物としてポリシラザンを選択した場合、ケイ素酸化物の前駆体であるポリシラザン塗布膜は、シラノールを経由することなく直接酸化されることで、より高密度で欠陥の少ないケイ素酸化物膜が形成される。
更に反応性オゾンの不足分を光照射部とは異なる部分で、放電法などの公知の方法により酸素からオゾンを生成し、紫外線照射部に導入しても良い。
このときに照射する紫外線の波長は特に限定されるところではないが、紫外光の波長は100nm〜450nmが好ましく、150nm〜300nm程度の真空紫外光を照射することがより好ましい。
光源は、低圧水銀灯、重水素ランプ、キセノンエキシマランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザーなどを用いることができる。ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては100mW/cm〜100kW/cm、照射エネルギーとしては10mJ/cm〜5000mJ/cmが好ましく、100mJ/cm〜2000mJ/cmがより好ましい。また、紫外線照射の際の照度は1mW/cm〜10W/cmが好ましい。
上記の中でも、波長としては、100nm〜200nmの真空紫外光が最も好ましく、酸化反応をより低温、短時間で進めることが可能となる。また、光源としては、キセノンエキシマランプなどの希ガスエキシマランプが最も好ましく用いられる。
ポリシラザン塗布膜に酸化性ガス雰囲気下で紫外線を照射することにより、ポリシラザンが高密度のケイ素酸化物膜、すなわち高密度シリカ膜に転化するが、該シリカ膜の膜厚や密度は紫外線の強度、照射時間、波長(光のエネルギー密度)により制御が可能であり、所望の膜構造を得るためにランプの種類を使い分ける等、適宜選択することが可能である。また、連続的に照射するだけでなく複数回の照射を行ってもよく、複数回の照射が短時間ないわゆるパルス照射で有っても良い。
また、紫外線照射と同時に該塗膜を加熱することも、反応(酸化反応、転化処理ともいう)を促進するために好ましく用いられる。加熱の方法は、ヒートブロック等の発熱体に基板を接触させ熱伝導により塗膜を加熱する方法、抵抗線等による外部ヒーターにより雰囲気を加熱する方法、IRヒーターの様な赤外領域の光を用いた方法等が挙げられるが、特に限定はされない。塗膜の平滑性を維持できる方法を適宜選択してよい。
加熱する温度としては、50℃〜200℃の範囲が好ましく、更に好ましくは80℃〜150℃の範囲であり、加熱時間としては、1秒〜10時間の範囲が好ましく、更に好ましくは10秒〜1時間の範囲で加熱することである。
(ガスバリア層の特徴)
本発明に係るガスバリア層の特徴について説明する。
形成されるガスバリア層の膜厚は、膜形成面の異物や突起によりバリア性の劣化、亀裂発生を効果的に防止し、且つ、製造コストや生産性向上の観点から、30nm〜2000nmの範囲が好ましく、更に好ましくは40nm〜500nmの範囲であり、特に好ましくは40nm〜300nmの範囲である。
本発明に係るガスバリア層は、単層でも、複数の同様な層を積層してもよく、複数の層を設けることにより更にガスバリア性を向上させることも出来る。
また、ガスバリア層とシラノール含有層は、例えば、ケイ素化合物を含有する溶液を一層塗布し、表面のみガスバリア層に転化処理(酸化処理)するような処理を施す一方で、膜内部は、シラノール基が残存するように調整すれば、一回の膜形成でガスバリア層とシラノール含有層を同時に形成することも可能である。
更に、ガスバリア層とシラノール含有層が交互に積層した構成をとることもできる。
中でも、本発明のガスバリアフィルムは、基材とシラノール含有層との間に、第2のガスバリア層を有する構成が好ましい。
ここで、第2のガスバリア層について説明する。
《第2のガスバリア層》
本発明に係る第2のガスバリア層について説明する。
本発明に係る第2のガスバリア層とは、基材とシラノール含有層との間に少なくとも1層設けられる層である。
本発明に係る第2のガスバリア層は、前述したガスバリア層と同様の材料、構成、形成方法で形成することができる。
第2のガスバリア層を設けることにより、シラノール含有層がガスバリア性(水蒸気また酸素等へのバリア性である)の高い2つの膜で挟み込まれるため、例えば、高温下での経時劣化を妨げる効果があり、耐久性が向上する。
高温下での経時劣化としては、例えば、シラノール含有層中のシラノール基は、脱水縮合しやすいため、高温下での経時劣化が懸念される。特に、触媒を添加したポリシラザンをケイ素化合物として用いた場合、高温下で脱水縮合が進行し、シラノール基の含有率が低下することで、屈曲性が低下し、ひび割れなどが発生することでガスバリア性が大きく劣化する等の問題が発生しやすい。
また一方で、無触媒タイプのポリシラザンをケイ素化合物として用いた場合は、シラノール基が脱水縮合するためには、450℃以上の熱エネルギーが必要と言われており、反応はほとんど進行しないため、シラノール基の含有率低下を比較的抑えることはできるが、第2のガスバリア層を設けることで、高温下での経時劣化を更に効果的に抑制することができる。
また、基材表面の表面エネルギーによっては、塗膜性が問題になることがあり、塗膜性の悪さがガスバリア性にも大きく影響するため、基材表面とその上に形成する膜の密着性、塗膜性は重要である。第2のガスバリア層を形成した面であれば、例えば、無触媒タイプのポリシラザンの密着性、塗膜性を改善する効果も期待でき、好ましい。
《基材》
本発明のガスバリアフィルムに係る基材について説明する。
本発明のガスバリアフィルムに係る基材は、前述したシラノール含有層、あるいは第2のガスバリア層を保持することができる材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。また、本発明の基材は平滑層を有する有機基材、すなわちプラスチックフィルムが好ましい。
プラスチックフィルムとしては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、更には前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。
コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられ、また、光学的透明性、耐熱性、無機層、ガスバリア層との密着性の点においては、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムが好ましく用いることができる。
本発明に係る基材の厚みとして、5μm〜500μmの範囲が好ましく、更に好ましくは25μm〜250μmの範囲である。
また、本発明に係る基材は透明であることが好ましい。基材が透明であり、基材上に形成する層も透明であることにより、透明なガスバリアフィルムとすることが可能となるため、光電変換素子(太陽電池)等の透明基板とすることも可能となるからである。
ここで、基材が透明とは、可視光(400nm〜700nm)の光透過率が80%以上であることを示す。
また、上記に挙げた樹脂等を用いたプラスチックフィルムは、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
本発明に用いられるプラスチックフィルム基材としては、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の支持体を製造することができる。
また、未延伸の支持体を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、支持体の流れ(縦軸)方向、または支持体の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸支持体を製造することができる。この場合の延伸倍率は、支持体の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2倍〜10倍が好ましい。
また、本発明に係るプラスチックフィルム基材においては、膜形成前にコロナ放電処理、あるいは、UVオゾン処理を行い、表面洗浄及び親水化処理を施すことによって、形成する膜の基材表面に対する密着性、塗膜性を向上させることは好ましい。
更に、本発明に係る基材表面には、シラノール含有層、あるいは第2のガスバリア層との密着性の向上を目的としてアンカーコート剤層を形成してもよい。
このアンカーコート剤層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、及びアルキルチタネート等を、1または2種以上併せて使用することができる。
これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により支持体上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。
上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1g/m〜5g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
また、本発明に用いられる基材は、ガスバリア性のフィルム(例えば、アルミ箔、極薄膜のフレキシブル性ガラスなど)でもよく、このような基材を用いることで、第2のガスバリア層の機能を基材自身で担うことも可能である。
(平滑層)
基材上の平滑層は、突起等が存在する透明樹脂フィルム基材の粗面を平坦化し、あるいは、透明樹脂フィルム基材に存在する突起により透明無機化合物層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。このような平滑層は、基本的には感光性樹脂を硬化させて形成される。
平滑層の感光性樹脂としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
感光性樹脂の組成物は光重合開始剤を含有してもよい。
平滑層の形成方法は特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法、あるいは、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
平滑層の形成では、上述の感光性樹脂に、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、平滑層の積層位置に関係なく、いずれの平滑層においても、成膜性向上及び膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
平滑層の平滑性は、表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。この範囲よりも値が小さい場合には、後述の珪素化合物を塗布する段階で、ワイヤーバー、ワイヤレスバーなどの塗布方式で、平滑層表面に塗工手段が接触する場合に、塗布性が損なわれる場合がある。また、この範囲よりも大きい場合には、珪素化合物を塗布した後の、凹凸を平滑化することが難しくなる場合がある。
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が数十μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する粗さである。
(平滑層への添加剤)
好ましい態様の一つは、前述の感光性樹脂中に表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」ともいう)を含むものである。
ここで光重合性を有する感光性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基などを挙げることができる。また感光性樹脂は、この反応性シリカ粒子の表面に導入された光重合反応性を有する感光性基と光重合反応可能な化合物、例えば、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物を含むものであってもよい。
また、感光性樹脂としては、このような反応性シリカ粒子や重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物に適宜汎用の希釈溶剤を混合することによって固形分を調整したものを用いることができる。
ここで反応性シリカ粒子の平均粒子径としては、0.001μm〜0.1μmの平均粒子径であることが好ましい。平均粒子径をこのような範囲にすることにより、後述する平均粒子径1μm〜10μmの無機粒子からなるマット剤と組合せて用いることによって、本発明の効果である防眩性と解像性とをバランス良く満たす光学特性と、ハードコート性とを兼ね備えた平滑層を形成し易くなる。
尚、このような効果をより得易くする観点からは、更に平均粒子径として0.001μm〜0.01μmのものを用いることがより好ましい。
平滑層のガスバリア層との密着性が向上させ、また、基材を湾曲させたり、加熱処理を行った場合にクラックの発生を防止し、ガスバリアフィルムの透明性や屈折率などの光学的物性を良好に保持する観点から、平滑層中には、上述の様な無機粒子を質量比として20%〜60%の範囲で含有することが好ましい。
本発明では、重合性不飽和基修飾加水分解性シランが、加水分解性シリル基の加水分解反応によって、シリカ粒子との間に、シリルオキシ基を生成して化学的に結合しているようなものを、反応性シリカ粒子として用いることができる。
加水分解性シリル基としては、例えば、アルコキシシリル基、アセトキシシリル基等のカルボキシリレートシリル基、クロルシリル基等のハロゲン化シリル基、アミノシリル基、オキシムシリル基、ヒドリドシリル基等が挙げられる。
重合性不飽和基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニイル基、シンナモイル基、マレート基、アクリルアミド基等が挙げられる。
本発明に用いられる平滑層の厚みとしては、基材の平滑性を向上し、更に、基材の光学特性のバランスを調整し易くなると共に、平滑層を基材の一方の面にのみ設けた場合における平滑フィルムのカールを防止する観点から、1μm〜10μmの範囲が好ましく、更に好ましくは2μm〜7μmの範囲である。
また、本発明に係る基材にはブリードアウト防止層を設けることができる。
(ブリードアウト防止層)
ブリードアウト防止層は、平滑層を有するフィルムを加熱した際に、フィルム基材中から未反応のオリゴマーなどが表面へ移行して、接触する面を汚染してしまう現象を抑制する目的で、平滑層を有する基材の反対面に設けられる。ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的に平滑層と同じ構成をとっても構わない。
ブリードアウト防止層に含ませることが可能な、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、あるいは分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができる。
その他の添加剤として、マット剤を含有しても良い。マット剤としては、平均粒子径が0.1μm〜5μm程度の無機粒子が好ましい。
このような無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の1種又は2種以上を併せて使用することができる。
ここで無機粒子からなるマット剤は、ブリードアウト防止層の固形分100質量部に対して2質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは6質量部以上、20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは16質量部以下の割合で混合されていることが望ましい。
またブリードアウト防止層には、ハードコート剤及びマット剤の他の成分として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、光重合開始剤等を含有させてもよい。
以上のようなブリードアウト防止層は、ハードコート剤、マット剤、及び必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、当該塗布液を支持体フィルム表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。
尚、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100nm〜400nm、好ましくは200nm〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、又は走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
ブリードアウト防止層の厚みとしては、基材の耐熱性を向上させ、更に、基材の光学特性のバランスを調整し易くなると共に、ブリードアウト防止層を基材の一方の面にのみ設けた場合における基材のカールを防止する観点から、1μm〜10μmの範囲が好ましく、更に好ましくは2μm〜7μmの範囲である。
《ガスバリアフィルムの用途》
本発明のガスバリア性フィルムの用途について説明する。
本発明のガスバリアフィルムは、種々の封止用材料、フィルムとして用いることができる。
本発明のガスバリアフィルムは、光電変換素子に特に有用に用いることができる。光電変換素子に用いる際に、本発明のガスバリアフィルムは透明であるため、このガスバリアフィルムを支持体として用いてこの側から太陽光の受光を行うように構成できる。即ち、このガスバリアフィルム上に、例えば、ITO等の透明導電性薄膜を透明電極として設け、光電変換素子用樹脂支持体を構成することができる。
そして、支持体上に設けられたITO透明導電膜を電極としてこの上に半導体層を設け、更に金属膜からなる電極を形成して光電変換素子を形成することができる。この上に別の封止材料を(同じでもよいが)重ねて前記ガスバリアフィルム支持体と周囲を接着、素子を封じ込めることで光電変換素子を封止することができ、これにより外気の湿気や酸素等のガスによる光電変換素子への影響を封じることができる。
光電変換素子用樹脂支持体は、本発明のガスバリアフィルムの珪素及び酸素を含有するセラミックからなるガスバリア層上に、透明導電性膜を作製することにより得られる。
また、透明導電膜の形成は、真空蒸着法やスパッタリング法等を用いることにより、また、インジウム、スズ等の金属アルコキシド等を用いたゾルゲル法等塗布法によっても製造できる。尚、透明導電膜の膜厚としては、0.1nm〜1000nmの範囲の透明導電膜が好ましい。
次いで、本発明のガスバリアフィルムの好ましい用途の1つである有機光電変換素子について説明する。
《有機光電変換素子》
本発明の有機光電変換素子について説明する。
(封止フィルムとその製造方法)
本発明のガスバリアフィルムにおいて、最表面のガスバリア層上に、更に透明導電膜を形成し、これを陽極としてこの上に、有機光電変換素子を構成する層、陰極となる層とを積層し、この上に更にもう一つのガスバリアフィルムを封止フィルムとして、重ね接着することで封止することができる。
用いられるもう一つの封止材料(封止フィルム)としては、本発明に係わる前記緻密な構造を有するガスバリア層を有するガスバリアフィルムを用いることができる。また、例えば、包装材等に使用される公知のガスバリアフィルム、例えばプラスチックフィルム上に酸化ケイ素や、酸化アルミニウムを蒸着したもの、緻密なセラミック層と、柔軟性を有する衝撃緩和ポリマー層を交互に積層した構成のガスバリアフィルム等を封止フィルムとして用いることができる。
また特に、樹脂ラミネート(ポリマー膜)された金属箔は、光取りだし側のガスバリアフィルムとして用いることはできないが、低コストで更に透湿性の低い封止材料であり光取り出しを意図しない(透明性を要求されない)場合封止フィルムとして好ましい。
本発明において金属箔とはスパッタや蒸着等で形成された金属薄膜や、導電性ペースト等の流動性電極材料から形成された導電膜と異なり、圧延等で形成された金属の箔またはフィルムを指す。
金属箔としては、金属の種類に特に限定はなく、例えば銅(Cu)箔、アルミニウム(Al)箔、金(Au)箔、黄銅箔、ニッケル(Ni)箔、チタン(Ti)箔、銅合金箔、ステンレス箔、スズ(Sn)箔、高ニッケル合金箔等が挙げられる。これらの各種の金属箔の中で特に好ましい金属箔としてはAl箔が挙げられる。
金属箔の厚さは、金属箔に用いる材料による使用時のピンホール発生を防止し、ガスバリア性(透湿度、酸素透過率)を向上させ、且つ、生産性を向上させる等の観点から、6μm〜50μmの範囲に調整することが好ましい。
樹脂フィルム(ポリマー膜)がラミネートされた金属箔では、該樹脂フィルムとしては、機能性包装材料の新展開(株式会社 東レリサーチセンター)に記載の各種材料を使用することが可能であり、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体系樹脂、セロハン系樹脂、ビニロン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂、ナイロン系樹脂等の樹脂は、延伸されていてもよく、更に塩化ビニリデン系樹脂をコートされていてもよい。また、ポリエチレン系樹脂は、低密度あるいは高密度のものも用いることができる。
後述するが、2つのフィルムの封止方法としては、例えば、一般に使用されるインパルスシーラー熱融着性の樹脂層をラミネートして、インパルスシーラーで融着させ、封止する方法が好ましく、この場合、ガスバリアフィルム同士の封止は、封止作業時のフィルムの取り扱い性の向上と、インパルスシーラー等による熱融着を容易に実施可能にさせる観点から膜厚としては300μm以下が望ましい。
(有機光電変換素子の封止)
本発明の有機光電変換素子では、本発明のガスバリアフィルム上に透明導電膜を形成して得られた有機光電変換素子用樹脂基材上に、有機光電変換素子を構成する各層を形成した後、上記の封止フィルムを用いて、不活性ガスによりパージされた環境下で、上記封止フィルムで陰極面を覆うようにして、有機光電変換素子を封止することができる。
不活性ガスとしては、Nの他、He、Ar等の希ガスが好ましく用いられるが、HeとArを混合した希ガスも好ましく、気体中に占める不活性ガスの割合は、90体積%〜99.9体積%であることが好ましい。不活性ガスによりパージされた環境下で封止することにより、保存性が改良される。
また、前記の樹脂フィルム(ポリマー膜)がラミネートされた金属箔を用いて、有機光電変換素子を封止するにあたっては、ラミネートされた樹脂フィルム面ではなく、金属箔上にセラミック層を形成し、このセラミック層面を有機光電変換素子の陰極に貼合することが好ましい。
封止フィルムのポリマー膜面を有機光電変換素子の陰極に貼合すると、部分的に導通が発生することがある。
封止フィルムを有機光電変換素子の陰極に貼り合わせる封止方法としては、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルム、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等の熱融着性フィルムを積層して、インパルスシーラーで融着させ封止する方法がある。
接着方法としてはドライラミネート方式が作業性の面で優れている。この方法は一般には1.0μm〜2.5μm程度の硬化性の接着剤層を使用する。
但し、接着剤の塗設量が多すぎる場合には、トンネル、浸み出し、縮緬皺等が発生することがあるため、好ましくは接着剤量を乾燥膜厚で3μm〜5μmになるように調節することが好ましい。
ホットメルトラミネーションとはホットメルト接着剤を溶融し支持体に接着層を塗設する方法であるが、接着剤層の厚さは一般に1μm〜50μmと広い範囲で設定可能な方法である。一般に使用されるホットメルト接着剤のベースレジンとしては、EVA、EEA、ポリエチレン、ブチルラバー等が使用され、ロジン、キシレン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂等が粘着付与剤として、ワックス等が可塑剤として添加される。
エクストルージョンラミネート法とは高温で溶融した樹脂をダイスにより支持体上に塗設する方法であり、樹脂層の厚さは一般に10μm〜50μmと広い範囲で設定可能である。
エクストルージョンラミネートに使用される樹脂としては一般に、LDPE、EVA、PP等が使用される。
次いで、本発明の有機光電変換素子の構成層について説明する。
《有機光電変換素子の構成》
本発明に係る有機光電変換素子の好ましい態様を説明するが、これらに限定されない。
本発明の有機光電変換素子の構成としては特に制限がなく、陽極と陰極と、両者に挟まれた発電層(p型半導体とn型半導体が混合された層、バルクへテロジャンクション層、i層とも言う)が少なくとも1層以上あり、光を照射すると電流を発生する素子であることが好ましい。
有機光電変換素子の層構成の好ましい具体例を以下に示す。
(i)陽極/発電層(光電変換層ともいう)/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発電層(光電変換層)/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発電層(光電変換層)/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/p型半導体層/発電層(光電変換層)/n型半導体層/電子輸送層/陰極
(v)陽極/正孔輸送層/第1発電層(光電変換層ともいう)/電子輸送層/中間電極/正孔輸送層/第2発電層(光電変換層ともいう)/電子輸送層/陰極。
《発電層(光電変換層ともいう)》
本発明の有機光電変換素子の発電層について説明する。
本発明の有機光電変換素子の発電層は、正孔を輸送できるp型半導体材料と電子を輸送できるn型半導体材料を含有していることが必要であり、これらは実質2層でヘテロジャンクション層を形成していてもよいし、1層の内部で混合された状態となっているバルクへテロジャンクション層を形成してもよいが、バルクへテロジャンクション層のほうが光電変換効率の向上の観点からより好ましい構成である。
発電層に用いられるp型半導体材料、n型半導体材料については後述する。
本発明の有機光電変換素子の発電層は、有機EL素子の発光層と同様に、発電層を正孔輸送層、電子輸送層で挟み込むことで、正孔及び電子の陽極・陰極への取り出し効率を高めることができるため、それらを有する構成((ii)、(iii))のが好ましく用いられる。
また、発電層自体も正孔と電子の整流性(キャリア取り出しの選択性)を高めるため、(iv)のようにp型半導体材料とn型半導体材料単体からなる層で発電層を挟み込むような構成(p−i−n構成とも言う)であってもよい。
また、太陽光の利用効率を高めるため、異なる波長の太陽光をそれぞれの発電層で吸収するような、タンデム構成((v)の構成)であってもよい。
太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、図1に示す有機光電変換素子10におけるサンドイッチ構造に代わって、一対の櫛歯状電極上にそれぞれ正孔輸送層14、電子輸送層16を形成し、その上に光電変換部15を配置するといった、バックコンタクト型の有機光電変換素子が構成とすることもできる。
更に、詳細な本発明に係る有機光電変換素子の好ましい態様を図1〜図3を用いて説明する。
図1は、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池の一例を示す断面図である。図1において、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10は、基板11の一方面上に、陽極12、正孔輸送層17、バルクヘテロジャンクション層の発電層14、電子輸送層18及び陰極13が順次積層されている。
基板11は、順次積層された陽極12、発電層14及び陰極13を保持する部材である。本実施形態では、基板11側から光電変換される光が入射するので、基板11は、この光電変換される光を透過させることが可能な、即ち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材である。
基板11は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が用いられる。この基板11は、必須ではなく、例えば、発電層14の両面に陽極12及び陰極13を形成することでバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10が構成されてもよい。
発電層14は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型半導体材料は相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能する。
図1において、基板11を介して陽極12から入射された光は、発電層14のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。
発生した電荷は、内部電界、例えば、陽極12と陰極13の仕事関数が異なる場合では陽極12と陰極13との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。
例えば、陽極12の仕事関数が陰極13の仕事関数よりも大きい場合では、電子は陽極12へ、正孔は陰極13へ輸送される。
尚、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、陽極12と陰極13との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
尚、図1には記載していないが、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、あるいは平滑化層等の他の層を有していてもよい。
更に好ましい構成としては、前記発電層14が、所謂p−i−nの三層構成となっている構成(図2)である。通常のバルクへテロジャンクション層は、p型半導体材料とn型半導体層が混合したi層単体であるが、p型半導体材料単体からなるp層、及びn型半導体材料単体からなるn層で挟むことにより、正孔及び電子の整流性がより高くなり、電荷分離した正孔・電子の再結合等によるロスが低減され、一層高い光電変換効率を得ることができる。
更に、太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような光電変換素子を積層したタンデム型の構成としてもよい。
図3は、タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。タンデム型構成の場合、基板11上に、順次透明電極12、第1の発電層14′を積層した後、電荷再結合層15を積層した後、第2の発電層16、次いで対電極13を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。第2の発電層16は、第1の発電層14′の吸収スペクトルと同じスペクトルを吸収する層でもよいし、異なるスペクトルを吸収する層でもよいが、好ましくは異なるスペクトルを吸収する層である。また、第1の発電層14′、第2の発電層16がともに前述のp−i−nの三層構成であってもよい。
《p型半導体材料、n型半導体材料》
本発明の有機光電変換素子の発電層(光電変換層ともいう)の形成に用いられる材料について説明する。
(p型半導体材料)
本発明の有機光電変換素子の発電層として好ましく用いられるバルクへテロジャンクション層の形成に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマー・オリゴマーが挙げられる。
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、へプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
また、上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号、国際公開第03/28125号、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、国際公開第08/000664号パンフレットに記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、且つ乾燥後は、結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成可能な化合物が好ましい。
また、発電層上に電子輸送層を塗布で成膜する場合、電子輸送層溶液が発電層を溶かしてしまうという課題があるため、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料を用いてもよい。
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、または米国特許出願公開第2003/136964号明細書、及び特開2008−16834号公報等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって、可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料等を挙げることができる。
(n型半導体材料)
本発明に係るバルクへテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料としては特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物や、そのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
しかし、各種のp型半導体材料と高速(〜50fs)、且つ効率的に電荷分離を行うことができる、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、及びこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
中でも、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7,329,709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基を有してより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
(正孔輸送層、電子ブロック層)
本発明の有機光電変換素子10は、バルクへテロジャンクション層と陽極との中間には正孔輸送層17を、バルクへテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層17としては、スタルクヴイテック製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、国際公開第06/19270号パンフレット等に記載のシアン化合物、等を用いることができる。
尚、バルクへテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、バルクへテロジャンクション層で生成した電子を陽極側には流さないような整流効果を有する電子ブロック機能が付与される。
このような正孔輸送層は電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用するほうが好ましい。このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。
また、バルクへテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。バルクヘテロジャンクション層を形成する前に、下層に塗布膜を形成すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
(電子輸送層・正孔ブロック層)
本発明の有機光電変換素子10は、バルクへテロジャンクション層と陰極との中間には電子輸送層18を形成することで、バルクへテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
また、電子輸送層18としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様にバルクへテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、バルクへテロジャンクション層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する正孔ブロック機能が付与される。
このような電子輸送層は正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用するほうが好ましい。
このような材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。
また、バルクへテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
(その他の層)
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層等を挙げることができる。
(透明電極(第1電極))
本発明に係る透明電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができるが、好ましくは透明電極を陽極として用いることである。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは380nm〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ用いることができる。
また、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて透明電極とすることもできる。
(対電極(第2電極))
対電極は導電材単独層であってもよいが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。対電極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。
このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
これらの中で、電子の取り出し性能及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
対電極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50nm〜200nmの範囲で選ばれる。
対電極の導電材として金属材料を用いれば、対電極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
また、対電極13は、金属(例えば、金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤーの分散物であれば、透明で導電性の高い対電極を塗布法により形成でき好ましい。
また、対電極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の対電極に適した導電性材料を薄く1nm〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記透明電極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性対電極とすることができる。
(中間電極)
また、前記(v)(または図3)のようなタンデム構成の場合に必要となる中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、前記透明電極で用いたような材料(ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層またはナノ粒子・ナノワイヤーを含有する層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等)を用いることができる。
尚、前述した正孔輸送層と電子輸送層の中には、適切に組み合わせて積層することで中間電極(電荷再結合層)として働く組み合わせもあり、このような構成とすると1層形成する工程を省くことができ好ましい。
(金属ナノワイヤー)
本発明に係る導電性繊維としては、金属でコーティングした有機繊維や無機繊維、導電性金属酸化物繊維、金属ナノワイヤー、炭素繊維、カーボンナノチューブ等を用いることができるが、金属ナノワイヤーが好ましい。
一般に、金属ナノワイヤーとは、金属元素を主要な構成要素とする線状構造体のことを言う。特に、本発明における金属ナノワイヤーとはnmサイズの直径を有する線状構造体を意味する。
本発明に係る金属ナノワイヤーとしては、1つの金属ナノワイヤーで長い導電パスを形成するために、また、適度な光散乱性を発現するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、更には3μm〜500μmが好ましく、特に3μm〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。
また、平均直径は、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。本発明においては、金属ナノワイヤーの平均直径として10nm〜300nmが好ましく、30nm〜200nmであることがより好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
本発明に係る金属ナノワイヤーの金属組成としては特に制限はなく、貴金属元素や卑金属元素の1種または複数の金属から構成することができるが、貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)及び鉄、コバルト、銅、錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から少なくとも銀を含むことがより好ましい。
また、導電性と安定性(金属ナノワイヤーの硫化や酸化耐性、及びマイグレーション耐性)を両立するために、銀と、銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含むことも好ましい。本発明に係る金属ナノワイヤーが2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤーの表面と内部で金属組成が異なっていてもよいし、金属ナノワイヤー全体が同一の金属組成を有していてもよい。
本発明において金属ナノワイヤーの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。
例えば、Agナノワイヤーの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745等、Auナノワイヤーの製造方法としては特開2006−233252号公報等、Cuナノワイヤーの製造方法としては特開2002−266007号公報等、Coナノワイヤーの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。
特に、上述した、Adv.Mater.及びChem.Mater.で報告されたAgナノワイヤーの製造方法は、水系で簡便にAgナノワイヤーを製造することができ、また、銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に用いられる金属ナノワイヤーの製造方法として好ましく適用することができる。
本発明においては、金属ナノワイヤーが互いに接触し合うことにより3次元的な導電ネットワークを形成し、高い導電性を発現するとともに、金属ナノワイヤーが存在しない導電ネットワークの窓部を光が透過することが可能となり、更に金属ナノワイヤーの散乱効果によって、有機発電層部からの発電を効率的に行うことが可能となる。第1電極において金属ナノワイヤーを有機発電層部に近い側に設置すれば、この散乱効果がより有効に利用できるのでより好ましい実施形態である。
(光学機能層)
本発明の有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてもよい。光学機能層としては、例えば、反射防止層、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層等を設けてもよい。
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。
屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10μm〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
また、光拡散層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物等のナノ粒子・ナノワイヤー等を無色透明なポリマーに分散した層等を挙げることができる。
(成膜方法・表面処理方法)
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層、及び輸送層・電極の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、バルクへテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。
このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また、塗布法は製造速度にも優れている。
この際に使用する塗布方法に制限はないが、例えば、スピンコート法、溶液からのキャスト法、ディップコート法、ブレードコート法、ワイヤバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等が挙げられる。更には、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法でパターニングすることもできる。
塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために、加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクへテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
発電層(バルクヘテロジャンクション層)14は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。この場合、前述したような塗布後に不溶化できるような材料を用いることで形成することが可能となる。
(パターニング)
本発明に係る電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
バルクへテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取ってもよいし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしてもよい。
電極材料等の不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチングまたはリフトオフ等の公知の方法によってパターニングすることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成してもよい。
そこで、このワイヤの傾斜特性および銅−亜鉛−ニッケル三元合金めっき層の存在を確認すべく、以下の測定を実施した。
XPS(X−ray photoelectron microscopy)による測定銅−亜鉛−ニッケル三元めっきワイヤを、最終湿式伸線前後について、本装置を用いて深さ方向での元素分布(濃度勾配)を調査した(本装置は、試料の測定面における元素濃度を測定、Arガスで試料表面を削り、また、削ったことでできた試料表面の新生面の元素濃度を測定するというルーチンを繰り返し、試料の深さ方向での元素の濃度勾配を分析するものである)。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
まず、基材1及び基材1aを各々作製した。
《基材1の作製》:ポリエステルフィルムの一方の面にブリードアウト防止層、もう一方の面に平滑層が設けられている。
熱可塑性樹脂支持体として、両面に易接着加工された125μm厚みの、ポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テトロンO3)を、170℃で30分アニール加熱処理したものを用いた。
上記ポリエステルフィルムを30m/分の速度で搬送しながら、片面にブリードアウト防止層、反対面に平滑層を作製後に、粘着性保護フィルムを貼合し、ロール状の基材を得た。
(ブリードアウト防止層の作製)
ポリエステルフィルムの片面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7535を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、硬化条件;1.0J/cm空気下、高圧水銀ランプ使用、乾燥条件;80℃、3分で硬化を行い、ブリードアウト防止層を作製した。
(平滑層の作製)
続けて、上記ポリエステルフィルムのもう一方の片面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7501を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件;80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;1.0J/cm硬化を行い、平滑層を作製した。
《基材1aの作製》
基材1の作製において、ポリエステルフィルムの代わりに、アルミ箔(アルミホイルともいい、膜厚20μmのものを用いた)とポリエステルフィルムを貼り合わせた複合フィルム(膜厚145μm)を用いた以外は同様にして基材1aを作製した。
次いで、下記に示すように、得られた基材1を用いて、本発明のガスバリアフィルム1、3〜13及び17、比較のガスバリアフィルム14〜16を各々製造し、また、基材1a(尚、基材1aは、アルミ箔とポリエステルフィルムを貼り合わせた複合フィルムである)を用いて本発明のガスバリアフィルム2を製造した。
尚、本発明のガスバリアフィルム1の構成は図4、本発明のガスバリアフィルム2については図5、本発明のガスバリアフィルム3については図6、本発明のガスバリアフィルム4については図7、本発明のガスバリアフィルム5〜8については図8、本発明のガスバリアフィルム9については図9、本発明のガスバリアフィルム10、17については図10、本発明のガスバリアフィルム11、12、13については図11、比較のガスバリアフィルム14、15については図12、比較のガスバリアフィルム16については図13に各々ガスバリアフィルムの概略の断面図を示す。
尚、図4〜図13に各々示されるガスバリアフィルムの概略の断面図において、基材1は、片面にブリードアウト防止層、もう一方の片面に平滑層を有するが、図4〜図13においては図示していない。
《ガスバリアフィルム1の製造》
本発明のガスバリアフィルム1の製造を図4に示す本発明のガスバリアフィルム1の概略の断面図を基に説明する。
工程1:PHPS塗布膜の作製
基材1の平滑層上に、下記のPHPS(パーヒドロポリシラザン)溶液を、スピンコート(2000rpm、60秒)にて塗布し、80℃にて10分間乾燥し、PHPS塗布膜(単に、PHPS塗膜ともいう)を得た。
尚、得られたPHPS塗膜(塗布膜ともいう)は、この段階ではまだ、シラノール含有層2ではなく、前記PHPS塗膜を、工程3で記載する処理(60℃、90%RHの環境下、3時間経時する)を経てシラノール含有層2が形成される。
(PHPS塗布液の調製)
パーヒドロポリシラザン(PHPS)の20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NN120−20 無触媒タイプ)をジブチルエーテルを用いて10質量%になるように希釈した。
工程2:ガスバリア層3の作製
得られたPHPS塗布膜上に、前述したNN120−20(無触媒タイプ)をジブチルエーテルを用いて4質量%になるように希釈したPHPS液を、スピンコート(5000rpm、60秒)にて、PHPS塗布膜上に積層塗布し、80℃にて10分間乾燥後、150℃にて30分間、UVオゾン酸化処理(光源として低圧水銀灯を用いた)を行った。
これにより、ポリシラザンから転化(酸化処理されたともいう)した酸化ケイ素膜からなるガスバリア層3(膜厚60nm)を作製した。
工程3:シラノール含有層2の作製
上記のガスバリア層3を形成した基材1を加熱処理(60℃、90%RHの環境下に、3時間保持)することにより、工程1で作製したPHPS(パーヒドロポリシラザン)塗膜からシラノール含有層2(膜厚200nm)が作製された。
ここで、ガスバリア層3、シラノール含有層2の各膜厚は、フィルム作製後のTEM(Transmission Electron Microscope:透過電子顕微鏡)の断面写真を用いて測定した。
また、ガスバリアフィルム1作製後のシラノール含有層2をTof−SIMS測定にかけて検出された相対SiOHイオン強度は1.0を示した(但し、相対Siイオン強度を1とする。)。
《ガスバリアフィルム2の製造》
本発明のガスバリアフィルム2の製造を図5に示す本発明のガスバリアフィルム2の概略の断面図を基に説明する。
ガスバリアフィルム1の製造において、基材1の代わりに、基材1a(アルミ箔とポリエステルフィルムを貼り合わせた複合フィルム)を用いた以外は同様にして、ガスバリアフィルム2を製造した。
《ガスバリアフィルム3の製造》
本発明のガスバリアフィルム3の製造を図6に示す本発明のガスバリアフィルム3の概略の断面図を基に説明する。
ガスバリアフィルム1の製造において、PHPS塗布膜の作製前に、第2のガスバリア層としてガスバリア層3a(膜厚60nm)を基材1上に作製し、次いで、PHPS塗布膜上にガスバリア層3(膜厚60nm)を作製した後、基材1aを加熱処理(60℃、90%RHの環境下に3時間保持)して、シラノール含有層2(膜厚200nm)を作製した以外は同様にして、ガスバリアフィルム3を製造した。
得られたガスバリアフィルム3のシラノール含有層2のTof−SIMS測定によって検出された相対SiOHイオン強度は、0.8(相対Siイオン強度を1とする)であった。
(ガスバリア層3aの形成)
パーヒドロポリシラザン(PHPS)の20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NAX120−20 アミン触媒タイプ)を、前述したNN120−20(無触媒タイプ)と質量比で1:4になるように混合した後、ジブチルエーテルを用いて4質量%になるように希釈した。
この希釈したPHPS液を、スピンコート(5000rpm、60秒)にて基材上に塗布し、80℃にて10分間乾燥後、下記のプラズマ放電処理を行った。これにより、ポリシラザンから転化(酸化処理された)した酸化ケイ素膜からなる第2のガスバリア層としてガスバリア層3a(膜厚60nm)を作製した。
(プラズマ放電処理)
第2ガスバリア層3aの作製に用いたプラズマ放電処理の条件を下記に示す。
また製膜時の支持体保持温度は、120℃とした。
ロール電極型放電処理装置を用いて処理を実施。ロール電極に対向する棒状電極複数個をロール状フィルム支持体の幅手方向に設置し、各電極部に原料及び電力を投入し以下のように、塗工面をプラズマ処理した。
ここで誘電体は対向する電極共に、セラミック溶射加工のものに片肉で1mm被覆した。また、被覆後の電極間隙は、1mmに設定した。
また、誘電体を被覆した金属母材は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケット仕様であり、放電中は冷却水による電極温度コントロールを行いながら実施した。
ここで使用する電源は、応用電機製高周波電源(80kHz)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)を使用した。
放電ガス:Nガス
反応ガス:酸素ガス
低周波側電源電力:80kHzを3W/cm
高周波側電源電力:13.56MHzを11W/cm
になるよう搬送速度を調整した。また、塗布乾燥後プラズマ処理までの間は、試料を23℃、20%RH雰囲気下で約1時間〜5時間保管した。
《ガスバリアフィルム4の製造》
本発明のガスバリアフィルム4の製造を図7に示す本発明のガスバリアフィルム4の概略の断面図を基に説明する。
ガスバリアフィルム1の製造において、シラノール含有層2を形成するために施す処理を、加熱処理(60℃、90%RHの環境下に3時間投入)する代わりに、ガスバリアフィルム3の第2のガスバリア層として作製されたガスバリア層3aの作製時に施したのと同様のプラズマ放電処理を行ない、シラノール含有層2aを作製した以外は同様にして、ガスバリアフィルム4を作製した。
但し、プラズマ放電処理を施すのは、PHPS塗布膜形成後、ガスバリア層3を作製する前である。
得られたシラノール含有層2aのTof−SIMS測定時に検出された相対SiOHイオン強度は、0.55(相対Siイオン強度を1としたとき、)であった。
また、Tof−SIMSより、シラノール含有層2a中に存在するシラノール基の含有率は、膜深さ方向に濃度勾配を示し、ガスバリア層3側〜基材1側にかけて、シラノール基の含有率が大きくなっていることが分かった。
《ガスバリアフィルム5の製造》
本発明のガスバリアフィルム5の製造を図8に示す本発明のガスバリアフィルム5の概略の断面図を基に説明する。
ガスバリアフィルム4の製造において、ガスバリアフィルム3の製造と同様に第2のガスバリア層としてガスバリア層3aを基材1上に作製した以外は同様にして、ガスバリアフィルム5を製造した。
得られたシラノール含有層2aのTof−SIMS測定時に検出された相対SiOHイオン強度は、0.55(相対Siイオン強度を1としたとき、)であった。
また、Tof−SIMSより、シラノール含有層2a中に存在するシラノール基の含有率は、膜深さ方向に濃度勾配を示し、ガスバリア層3側〜基材1側にかけて、シラノール基の含有率が大きくなっていることが分かった。
《ガスバリアフィルム6の製造》
本発明のガスバリアフィルム6の製造を図8に示す本発明のガスバリアフィルム6の概略の断面図を基に説明する。
ガスバリアフィルム5の製造において、シラノール含有層を形成するために用いるPHPS液を、NN120−20(無触媒タイプ)の代わりに、NAX120−20(アミン触媒タイプ)とNN120−20(無触媒タイプ)を質量比で1:4になるように混合した液を用いた以外は同様にして、ガスバリアフィルム6を製造した。
得られたシラノール含有層2aのTof−SIMS測定時に検出された相対SiOHイオン強度は、0.4(相対Siイオン強度を1としたとき、)であった。
また、Tof−SIMSより、シラノール含有層2a中に存在するシラノール基の含有率は、膜深さ方向に濃度勾配を示し、ガスバリア層3側〜基材1側にかけて、シラノール基の含有率が大きくなっていることが分かった。
《ガスバリアフィルム7の製造》
本発明のガスバリアフィルム7の製造を図8に示す本発明のガスバリアフィルム7の概略の断面図を基に説明する。
ガスバリアフィルム6の製造において、シラノール含有層2aを作製するために施すプラズマ放電処理の反応ガスを酸素ガスの代わりに、水素ガスを用いた以外は同様にしてガスバリアフィルム7を製造した。
得られたシラノール含有層2aのTof−SIMS測定時に検出された相対SiOHイオン強度は、0.7(相対Siイオン強度を1としたとき、)であった。
また、Tof−SIMSより、シラノール含有層2a中に存在するシラノール基の含有率は、膜深さ方向に濃度勾配を示し、ガスバリア層3側〜基材1側にかけて、シラノール基の含有率が大きくなっていることが分かった。
《ガスバリアフィルム8の製造》
本発明のガスバリアフィルム8の製造を図8に示す本発明のガスバリアフィルム8の概略の断面図を基に説明する。
ガスバリアフィルム6の製造において、シラノール含有層2aを作製するために用いるPHPS液を、NAX120−20(アミン触媒タイプ)とNN120−20(無触媒タイプ)を質量比で1:4になるように混合した液の代わりに、NAX120−20(アミン触媒タイプ)を用いた以外は同様にしてガスバリアフィルム8を製造した。
得られたシラノール含有層2aのTof−SIMS測定時に検出された相対SiOHイオン強度は、0.02(相対Siイオン強度を1としたとき、)であった。
また、Tof−SIMSより、シラノール含有層2a中に存在するシラノール基の含有率は、膜深さ方向に濃度勾配を示し、ガスバリア層3側〜基材1側にかけて、シラノール基の含有率が大きくなっていることが分かった。
《ガスバリアフィルム9の製造》
本発明のガスバリアフィルム9の製造を図9に示す本発明のガスバリアフィルム9の概略の断面図を基に説明する。
(ガスバリア層3aの作製)
ガスバリアフィルム3の製造時に第2のガスバリア層として作製されたガスバリア層3aの作製と同様にして、ガスバリア層3aを基材1上に作製した。
(シラノール含有層2aとガスバリア層3の二層同時作製)
得られたガスバリア層3a上にPHPS塗布膜を1層作製(NN120−20(無触媒タイプ)をジブチルエーテルを用いて10質量%になるように希釈した液をスピンコート(2000rpm、60秒)にて塗布し、80℃にて10分間乾燥)後、得られたPHPS塗布膜に対して、150℃にて30分間、UVオゾン酸化処理(光源として低圧水銀灯を用いた)を行ない、シラノール含有層2aを作製すると同時に、該シラノール含有層2aの表層部分をPHPS膜(ポリシラザン層)から転化した酸化ケイ素膜からなるガスバリア層3(膜厚60nm)を作製した。尚、得られたシラノール含有層2aの膜厚は140nmであった。
得られたシラノール含有層2aのTof−SIMS測定時に検出された相対SiOHイオン強度は、0.35(相対Siイオン強度を1としたとき、)であった。
また、Tof−SIMSより、シラノール含有層2aの膜深さ方向におけるシラノール基の濃度勾配(シラノール含有層の表面からガスバリア層3a側にかけてシラノール基の含有率が大きくなるような濃度勾配を示すことがわかった。
ここで、シラノール含有層2aの表層部分が酸化ケイ素(SiO)を含有する膜に転化し、シラノール含有層2aの表面層(表面部分ともいう)にガスバリア層3が付与されたことについては、スパッタ法とXPS表面分析を組み合わせて確認した。
スパッタ法を用いて表面から深さ方向へエッチングを行い、XPS表面分析装置を用いて、最表面を0nmとして、0.5nm/分の速度でスパッタし、原子組成比を測定したところ、表層から60nm付近までは、Si:Oの比率がほぼ1:2(二酸化珪素膜:SiO膜)となっていることが分かった。
表面分析に用いるXPS表面分析装置としては、特に限定なく、いかなる機種も使用することができるが、本実施例においてはVGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。
《ガスバリアフィルム10の製造》
本発明のガスバリアフィルム10の製造を図10に示す本発明のガスバリアフィルム10の概略の断面図を基に説明する。
ガスバリアフィルム9の製造において、基材1上に第2のガスバリア層であるガスバリア層3aを作製せず、シラノール含有層2a層とガスバリア層3の二層を同時作製後、更にガスバリア層3上にガスバリア層3bを作製した以外は同様にして、ガスバリアフィルム10を製造した。ガスバリア層3bの作製は、ガスバリアフィルム1のガスバリア層3と同様の方法で作製した。
得られたシラノール含有層2aのTof−SIMS測定時に検出された相対SiOHイオン強度は、0.45(相対Siイオン強度を1としたとき、)であった。
《ガスバリアフィルム11の製造》
本発明のガスバリアフィルム11の製造を図11に示す本発明のガスバリアフィルム11の概略の断面図を基に説明する。
ガスバリアフィルム10の製造において、ガスバリアフィルム9に記載のガスバリア層3aを基材1上に設けた以外は同様にしてガスバリアフィルム11を製造した。
得られたシラノール含有層2aのTof−SIMS測定時に検出された相対SiOHイオン強度は、0.35(相対Siイオン強度を1としたとき、)であった。
《ガスバリアフィルム12の製造》
本発明のガスバリアフィルム12の製造を図11に示す本発明のガスバリアフィルム12の概略の断面図を基に説明する。
ガスバリアフィルム11の製造において、シラノール含有層2の酸化処理をUVオゾン処理からXeエキシマランプ(波長172nm)を用いて行った(基材1及びガスバリア層3a全体を100℃に加熱しながら、Xeエキシマランプを10秒照射)以外は同様にしてガスバリアフィルム12を製造した。
《ガスバリアフィルム13の製造》
本発明のガスバリアフィルム13の製造を図11に示す本発明のガスバリアフィルム13の概略の断面図を基に説明する。
ガスバリアフィルム11の製造において、ガスバリア層3bの処理を、UVオゾン酸化処理の代わりに、ガスバリアフィルム3の製造時に用いたプラズマ放電処理(反応ガス:酸素ガス)に変えて、ガスバリア層3bの形成を行った以外は同様にして、ガスバリアフィルム13を製造した。
《ガスバリアフィルム14の製造》:比較例
比較のガスバリアフィルム14の製造を図12に示す比較のガスバリアフィルム14の概略の断面図を基に説明する。
基材1上に、NAX120−20(触媒タイプ)をジブチルエーテルを用いて10質量%になるように希釈した液を、スピンコート(2000rpm、60秒)にて塗布し、80℃にて10分間乾燥後、150℃にて30分間、UVオゾン酸化処理を行うことで、基材1上にガスバリア層3を有する、比較のガスバリアフィルム14を製造した。
前述したXPS表面分析により、全てのポリシラザンが酸化ケイ素膜に転化していることを確認した。
《ガスバリアフィルム15の製造》:比較例
比較のガスバリアフィルム15の製造を図12に示す比較のガスバリアフィルム15の概略の断面図を基に説明する。
ガスバリアフィルム14の製造において、ガスバリア層3の処理をUVオゾン酸化処理の代わりに、ホットプレート上、大気中150℃にて30分間加熱する以外は同様にして、基材1上にガスバリア層3を有するガスバリアフィルム15を製造した。
前述したXPS表面分析により、全てのポリシラザンが酸化ケイ素膜に転化していることを確認した。
《ガスバリアフィルム16の製造》:比較例
ガスバリアフィルム16の製造を図13に示す、比較のガスバリアフィルム16の概略の断面図を基に説明する。
ガスバリアフィルム1の製造において、工程3に記載したPHPS塗布膜からシラノール含有層2の作製時の条件(60℃、90%RHの環境下に3時間保持)を15時間保持に変更した以外は同様にして比較のガスバリアフィルム16を製造した。
得られたシラノール含有層2のTof−SIMS測定により検出された相対SiOHイオン強度は、相対Siイオン強度は1.4であった(但し、相対Siイオン強度を1とする。)。
《ガスバリアフィルム17の製造》
本発明のガスバリアフィルム17の製造を図10に示す本発明のガスバリアフィルム17の概略の断面図を基に説明する。
ガスバリアフィルム10の製造において、シラノール含有層2a及びガスバリア層3、ガスバリア層3bを作製するために用いるPHPS液を、NAX120−20(アミン触媒タイプ)とNN120−20(無触媒タイプ)を質量比で1:4になるように混合した液とし、シラノール含有層2a上のガスバリア層3、及びガスバリア層3上のガスバリア層3bの形成をUVオゾン処理の代わりにXeエキシマランプ(波長172nm)を用いて行った以外は同様にしてガスバリアフィルム17を製造した。
このときのエキシマランプ照射条件は以下の通りである。ステージ可動型キセノンエキシマ照射装置(MDエキシマ社製、MECL−M−1−200)を用いて、エキシマ光強度:130mW/cm(172nm)、エキシマ光源ランプと基材との距離:3mm、ステージ温度:100℃、処理環境:ドライ窒素雰囲気下、処理環境の酸素濃度:0.1%、ステージ可動速度10mm/秒で10回搬送、の条件にて照射を行った。
得られた本発明のガスバリアフィルム1〜13及び17、比較のガスバリアフィルム14〜16の各々について、下記のように水蒸気透過率及び屈曲性試験を行った。
《水蒸気透過率の測定及び評価》
ガスバリア性の指標である水蒸気透過率については下記にようにして測定した。
(装置)
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
レーザー顕微鏡:KEYENCE VK−8500
原子間力顕微鏡(AFM):Digital Instrments社製DI3100
(原材料)
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
(水蒸気バリア性評価用セルの作製)
あらかじめ、半径10mmの曲率になるように、180度の角度で100回屈曲を繰り返したガスバリアフィルム1〜17のガスバリア層面(セラミック層面ともいう)に、真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のガスバリアフィルム試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。
その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製、)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
また、屈曲前後のガスバリア性の変化を確認するために、上記屈曲の処理を行わなかったガスバリアフィルムについても同様に、水蒸気バリア性評価用セルを作製した。
得られた両面を封止したガスバリアフィルムを60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報に記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐蝕量からセル内に透過した水分量を計算した。
尚、ガスバリアフィルムのガスバリア層の表面から以外の水蒸気の透過が無いことを確認する為、比較試料としてガスバリアフィルムの代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、同様な60℃、90%RHの高温高湿下保存を行い、1000時間経過後でも金属カルシウム腐蝕が発生しないことを確認した。
ガスバリア性フィルム1〜17について各々測定された水蒸気透過率については、下記のように5段階のランク評価を行った。
以下の5段階で評価した。得られた結果は表2に示す。
5: 5×10−5g/(m・24h)未満
4: 5×10−5g/(m・24h)以上、1×10−4g/(m・24h)未満
3: 1×10−4g/(m・24h)以上、1×10−3g/(m・24h)未満
2: 1×10−3g/(m・24h)以上、1×10−2g/(m・24h)未満
1: 1×10−2g/(m・24h)以上
尚、上記のランク評価においては、ランク2以上が実用可能レベルであり、ランク1が実用不能レベルである。
《屈曲性試験》
ガスバリア性フィルム1〜17の各ガスバリア層の表面を外側にして、各々のガスバリア性フィルムを20mmφの曲率になるように、180度の角度で100回屈曲を繰り返した。
その後、後述する水蒸気透過率の測定時に、金属カルシウムの腐食状況から、クラックの発生の有無を目視観察し、下記のような3段階のランク評価を行った。
○:亀裂の様な腐食状態が全く無い。
△:微小な亀裂状の腐食状態が観察される。(実用上の最低レベル)
×:明らかに亀裂状で、面積が大きな腐食状態が観察される。
以下、ガスバリアフィルム1〜17のガスバリア層、シラノール含有層の作製については表1、表2に、次いで、得られたガスバリアフィルム1〜17のガスバリア性(水蒸気透過率)の評価、屈曲性(ヒビ割れ耐性ともいう)の評価については、下記の表2に示す。
表1及び表2から、比較のガスバリアフィルム14〜16に比べて、本発明のガスバリアフィルム1〜13及び17は、各々、ガスバリア性(水蒸気透過率が低い)が高く、且つ、屈曲性(ヒビ割れ耐性)が優れていることが明らかである。
実施例2
あらかじめ、半径10mmの曲率になるように、180度の角度で50回屈曲を繰り返したガスバリアフィルム1〜17と、屈曲を行わなかったガスバリアフィルム1〜17との各々を準備し、各々下記の透明導電膜を有するガスバリアフィルム1〜17の作製を行ない、次いで、透明導電膜を有する、屈曲を繰り返したガスバリアフィルム1〜17、屈曲を行わなかったガスバリアフィルム1〜17を各々用いて、屈曲有りと屈曲無しの有機光電変換素子1〜17のセットを各々作製した。
《透明導電膜を有する、屈曲有及び屈曲無のガスバリアフィルム1〜17の作製》
プラズマ放電装置としては、電極が平行平板型のものを用い、この電極間に上記透明フィルムを載置し、且つ、混合ガスを導入して薄膜形成を行った。
尚、アース(接地)電極としては、200mm×200mm×2mmのステンレス板に高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行い、このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmax;5μmとなるように加工した電極を用いた。
また、印加電極としては、中空の角型の純チタンパイプに対し、アース電極と同様の条件にて誘電体を被覆した電極を用いた。印加電極は複数作製し、アース電極に対向して設け放電空間を形成した。
また、プラズマ発生に用いる電源としては、パール工業(株)製高周波電源CF−5000−13Mを用い、周波数13.56MHzで、5W/cmの電力を供給した。
電極間に以下の組成の混合ガスを流し、プラズマ状態とし、実施例1で得られた、屈曲有及び屈曲無のガスバリアフィルム1〜17のセット各々を大気圧プラズマ処理し、各々のガスバリア層上に、錫ドープ酸化インジウム(ITO)膜を150nmの厚さで成膜し、透明導電膜付のガスバリアフィルム1〜17(屈曲有及び屈曲無のセットである)を各々作製した。
(プラズマ発生条件)
放電ガス:ヘリウム 98.5体積%
反応性ガス1:酸素 0.25体積%
反応性ガス2:インジウムアセチルアセトナート 1.2体積%
反応性ガス3:ジブチル錫ジアセテート 0.05体積%
《有機光電変換素子1〜17の作製》
得られた透明導電膜(150nm、シート抵抗10Ω/□)付のガスバリアフィルム1〜17(屈曲有及び屈曲無のセット)に、各々フォトリソグラフィ技術と湿式エッチングとを用いて2mm幅にパターニングし第1の電極を形成した。
パターン形成した第1の電極(陽極)を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行ない、透明基板1〜17を各々得た。
得られた透明基板1〜17の各々の表面上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を膜厚が30nmになるように塗布乾燥した後、150℃で30分間熱処理させ正孔輸送層を製膜した。
これ以降は、各透明基板を窒素チャンバー中に持ち込み、窒素雰囲気下で作製した。
まず、窒素雰囲気下で上記基板を150℃で10分間加熱処理した。次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクトロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)とPCBM(フロンティアカーボン社製:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を3.0質量%になるように1:0.8で混合した液を調製し、フィルタでろ過しながら膜厚が100nmになるように塗布を行い、室温で放置して乾燥させた。続けて、150℃で15分間加熱処理を行い、光電変換層を製膜した。
次に、上記一連の機能層を製膜した透明基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、1×10−4Pa以下にまでに真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.01nm/秒でフッ化リチウムを0.6nm積層し、更に続けて、2mm幅のシャドウマスクを通して(受光部が2×2mmに成るように直行させて蒸着)、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを100nm積層することで第2の電極を形成した。
得られた有機光電変換素子1〜17の各々を窒素チャンバーに移動し、以下の、封止用フィルムとUV硬化樹脂を用いて封止を行って、受光部が2×2mmサイズの有機光電変換素子試料1〜17を作製した。
(有機光電変換素子1〜17の封止)
窒素ガス(不活性ガス)によりパージされた環境下で、基板に用いたものと同じ2枚のガスバリアフィルムのガスバリア層を設けた面を内側にして、シール材としてエポキシ系光硬化型接着剤をガスバリア層に塗布し、上記有機光電変換素子をガスバリアフィルム間に挟み込んで密着させた後、片側の基板側からUV光を照射して硬化させた。
こうして両面封止済みの有機光電変換素子1〜17(屈曲有と屈曲無のセットである)が得られた。
《有機光電変換素子1〜17の耐久性評価》
(エネルギー変換効率の評価)
上記作製した光電変換素子試料1〜17について、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、IV特性を評価することで、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)及びフィルファクターFF(%)を、同素子上に形成した4箇所の受光部をそれぞれ測定し、下記式1に従って求めたエネルギー変換効率PCE(%)の4点平均値を見積もった。
(式1)
PCE(%)=〔Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF(%)〕/100mW/cm
初期電池特性としての変換効率を測定し、性能の経時的低下の度合いを温度60℃、湿度90%RH環境で1000時間保存した加速試験後の変換効率残存率により評価した。
加速試験後の変換効率/初期変換効率
の比をとることで評価した。尚、光電変換素子については、上記屈曲の処理を行ったバリアフィルムを用いたもので評価した。
5:80%以上
4:70%以上、80%未満
3:40%以上、70%未満
2:20%以上、40%未満
1:20%未満
得られた結果を表3に示す。
表3から、比較の有機光電変換素子14〜16に比べて、本発明の有機光電変換素子1〜13及び17は、各々有機光電変換素子の耐久性が著しく優れていることが明らかである。
1 基材
1a アルミ箔とポリエステルとが貼合された複合フィルムである基材
2 シラノール含有層
2a 層中のシラノール基が濃度勾配を有するシラノール層
3 シラノール含有層上に設けられたガスバリア層
3a 基材とシラノール含有層との間に設けられた第2のガスバリア層
3b ガスバリア層3上に設けられたガスバリア層
10 バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子
11 基板
12 陽極
13 陰極
14 発電層(バルクヘテロジャンクション層)
14p p層
14i i層
14n n層
14′ 第1の発電層
15 電荷再結合層
16 第2の発電層
17 正孔輸送層
18 電子輸送層

Claims (10)

  1. 基材上に少なくとも1層のシラノール含有層と、ケイ素原子及び酸素原子を含有する少なくとも1層のガスバリア層をこの順に有するガスバリアフィルムにおいて、
    該シラノール含有層の膜深さ方向における膜中央部から飛行時間型二次イオン質量分析法(Tof−SIMS)によって検出される相対SiOHイオン強度が、相対Siイオン強度を1としたときに、0.02〜1.0であることを特徴とするガスバリアフィルム。
  2. 前記相対SiOHイオン強度が、0.2〜0.8であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアフィルム。
  3. 前記相対SiOHイオン強度が、0.3〜0.6であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアフィルム。
  4. 前記基材とシラノール含有層との間に、第2のガスバリア層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
  5. 前記基材がプラスチックフィルムからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを製造するにあたり、シラノール含有層がケイ素化合物を含有する液を塗布する工程を経て作製されることを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを製造するにあたり、ガスバリア層がケイ素化合物を含有する液を塗布する工程を経て作製されることを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを製造するにあたり、シラノール含有層またはガスバリア層が、ケイ素化合物を含有する液を塗布する工程を経て作製されることを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
  9. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを製造するにあたり、シラノール含有層またはガスバリア層が、ケイ素化合物を含有する液を塗布して得られた膜の表面側からの紫外線照射処理によって作製されることを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
  10. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを有することを特徴とする有機光電変換素子。
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