本発明に係る有機光電変換素子は、請求項1〜7のいずれか1項に記載される構成により、長期にわたる屋外設置などによる性能劣化を防止し、耐久性に優れた有機光電変換素子を得ることができた。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、基板の少なくとも一方にポリシラザン含有液の塗布膜に改質処理を施して作製されたガスバリア層を設け、該ガスバリア層を有する基板の片側に紫外線遮蔽層を設け、かつ他方に透明電極と対極の間に少なくともp型有機半導体材料とn型有機半導体材料とを含有する有機光電変換部を設けることにより、屋外に使用しても長期に渡って十分な耐候性を有する有機光電変換素子が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明では、ポリシラザン含有液の塗布膜に改質処理を施して作製されたガスバリア層を有することで、有機光電変換部の外部の水分、ガス等による劣化を抑制することができるが、更に外気との間に紫外線遮蔽層を有することで、有機光電変換部の紫外線による劣化のみならず、ガスバリア層部分の紫外線の長期照射による劣化を防ぐことができ、その結果、長期にわたる有機光電変換素子の劣化を抑制できることを見いだした。
本発明で規定する構成を採ることにより、本願発明の目的効果が得られる理由については、本発明者らは以下のように推測している。
本発明の構成のようにポリシラザン含有液の塗布膜に改質処理を行うことで、緻密な酸化ケイ素膜が形成され、高いバリア能が得られるが、末端に水酸基を有する未反応部分が一部残存してしまい、該未反応部分が光連続照射による温度上昇などで変質してしまうといった問題を防ぐことができるためではないかと考えられる。
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明に係る有機光電変換素子は、樹脂基板の少なくとも一方にポリシラザン含有液の塗布膜に改質処理を施して作製されたガスバリア層を有し、該ガスバリア層を有する基板の片側に紫外線遮蔽層を有し、かつ他方に透明電極と対極の間に少なくともp型有機半導体材料とn型有機半導体材料とを含有する有機光電変換部を有することを特徴とする。
《ガスバリア層》
本発明に係るガスバリア層について説明する。
本発明に係る「ガスバリア層」とは、ポリシラザン含有液を塗布して作製されて一層以上のポリシラザン膜に改質処理を施して作製された二酸化珪素等の珪素酸化物からなる層をいう。
本発明に係るガスバリア層は、樹脂基板(樹脂基材、樹脂フィルム等ともいう)、例えばポリエチレンテレフタレート上に、一層以上のポリシラザン膜に改質処理を施して作製され、ガスバリア層は、単層でも複数の同様な膜を積層してもよく、複数の層で、更にガスバリア性を向上させることもできる。
本発明に係るガスバリア層は、当該ガスバリア層の相対する二表面の内側領域のうち、一方の改質処理を施された側の表面の内側領域の膜密度d1と、他方の基材側の表面の内側領域の膜密度d2との差Δd(=d1−d2)が0.1g/cm3以上であることが好ましいが、膜密度については、下記で詳細に説明する。
(膜密度)
本発明においては、ガスバリア層が珪素酸化物の膜から作製されており、当該ガスバリア層の相対する二表面の内側領域のうち、一方の改質処理を施された側の表面の内側領域の膜密度d1と、他方の基材側の表面の内側領域の膜密度d2との差Δd(=d1−d2)が0.1g/cm3以上であることが好ましい。
本発明に係る膜密度の分布はX線反射率測定を行い算出することができる。
X線反射率測定装置:理学電気製薄膜構造評価装置ATX−G
X線源ターゲット:銅(1.2kW)
測定:4結晶モノクロメータを用いてX線反射率曲線を測定し、密度分布プロファイルのモデルを作成、フィッティングを行い、膜厚方向の密度分布を算出する。
本発明における膜密度差のΔdは、好ましくは0.10g/cm3以上、より好ましくは0.15g/cm3以上、更に好ましくは0.2g/cm3以上である。
尚、Δd値の上限は、酸化ケイ素(石英ガラス)密度の2.2g/cm3とポリシラザン液の塗膜作製時の密度1.3g/cm3より求まり、上限は0.9g/cm3とすることができる。
Δdを上記範囲内に調整する方法としては、ポリシラザン膜の(平均)膜厚、改質処理をする際の処理強度、照射雰囲気の酸素濃度、処理時間等の条件の調整により行うことができる。
真空紫外光による改質処理においては、ポリシラザン膜の膜厚を薄く、真空紫外光強度を高く、かつ処理時間を短くする条件に制御することでΔdは高めに変更することができ、例えば、ポリシラザン膜厚が50nmから1000nmにおいては、真空紫外照度10mJ/cm2〜100mJ/cm2、酸素濃度0%〜5%、処理時間0.1秒〜150秒から選択できる。
(ガスバリア層の表面粗さ(Ra))
本発明に係る実施態様としては、本発明に係る効果発現の観点から、前記ガスバリア層の改質処理を施された側の表面粗さ(Ra)が、2nm以下であることが好ましい。
ここで、上記の表面粗さ(Ra)は、JIS B 0601−2001(ISO4287−1997準拠)に記載の方法を参照することにより規定される表面粗さで表現される値であり、更に、下記で詳細に説明する。
(表面粗さ:平滑性)
本発明に係るガスバリア層の改質処理側の表面の表面粗さ(Ra)は、2nm以下が好ましく、更に好ましくは1nm以下である。
表面粗さが、本発明に係る上記範囲にあることで有機光電変換素子用の樹脂基板として使用する際に、凹凸が少ない平滑な膜面により光透過効率の向上と、電極間リーク電流の低減によりエネルギー変換効率が向上するので好ましい。
本発明に係るガスバリア層の表面粗さ(Ra)は以下の方法で測定する。
(表面粗さ測定の方法:AFM測定)
本発明に係るガスバリア層の表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)、例えば、Digital Instruments社製DI3100で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が数十μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する粗さである。
また、当該ガスバリア層の改質処理を施された側の表面の膜密度d1を有する内側領域の平均膜厚が、30nm以上であることが好ましい。本発明においては、前記改質処理が、180nm以下の波長成分を有する真空紫外線を照射する処理であることが好ましい。
尚、上記の膜密度については、後に詳細に説明する。
(ガスバリア層の作製方法)
本発明に係るガスバリア層の作製方法としては、樹脂基板上に少なくとも一層のポリシラザン化合物を含有する塗布液を塗布後、改質処理することにより、ケイ素酸化物を含有するガスバリア層を作製する方法が挙げられる。
ケイ素酸化物のガスバリア層を作製するためのケイ素化合物の供給は、CVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法)のようにガスとして供給されるよりも、バリアフィルム基材表面に塗布したほうがより均一で、平滑なガスバリア層を作製することができる。
CVD法などの場合は気相で反応性が増した原料物質が基材表面に堆積する工程と同時に、気相中で不必要なパーティクルとよばれる異物が生成することは、よく知られているが、原料を気相反応空間に存在させないことで、これらパーティクルの発生を抑制することが可能になる。
本発明に係るガスバリア層は膜厚方向に膜密度が異なる領域が存在するのが好ましく、更に以下の特性を有するのが好ましい。
(1)本発明に係るガスバリア層は、その断面の超高解像透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)による転位線観察において、性質が異なる領域の明確な界面が観察されない。
一方、性質の異なる領域を蒸着法により積層しようとすると、その性質上必ず界面が存在する。そして界面でおきる微小な不均一が原因で、積層方向における気相分子の堆積時にらせん転位、刃状転位、などの転位線が発生し、超高解像TEMにより観察される。
本発明に係るガスバリア層は塗布膜の改質処理なので、気相分子の堆積時に発生しやすい転位線を発生させることなく、無界面で性質の異なる領域を作製できると推察される。
(2)本発明に係るガスバリア層のうち、改質処理側には密度の高い領域が作製されるが、更に、深さ方向のFT−IR分析から表面近傍の膜厚30nm領域のSi−O原子間距離を測定すると、微結晶領域が確認され、また、表面近傍の3nm領域には結晶化領域が確認される。
SiO2は、通常では、1000℃以上の熱処理で結晶化が確認されるのに対し、本発明に係るガスバリア層の表面領域SiO2は、樹脂基板上で200度以下の低温処理でも結晶化が達成できる。
明確な理由は不明であるが、本発明者らは、ポリシラザンに含まれる3〜5の環状構造が、結晶構造を作製するのに有利な原子間距離をとっているためで、通常の1000℃以上での溶解・再配列・結晶化のプロセスが不要で、すでにある短距離秩序に改質処理が関与し、少ないエネルギーで秩序化できるためと推察している。
特に真空紫外線を照射する処理においては、真空紫外線照射によるSi−OH等の化学結合の切断と照射空間で生成されるオゾンによる酸化処理とが併用するために効率的な処理ができるために好ましい。
(ポリシラザン膜)
本発明に係るガスバリア層の作製に用いられるポリシラザン膜の塗布、成膜方法について説明する。
ポリシラザン膜(ポリシラザンを含有する塗布膜ともいう)は、樹脂基板上に少なくとも1層のポリシラザン化合物を含有する塗布液を塗布することにより作製される。
塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。
具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
塗布厚さは、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、塗布厚さは、乾燥後の厚さが好ましくは1nm〜100μm程度、更に好ましくは10nm〜10μm程度、最も好ましくは10nm〜1μm程度となるように設定され得る。
本発明で用いられる「ポリシラザン」とは、珪素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO2、Si3N4及び両方の中間固溶体SiOxNy等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
本発明に係る樹脂基板を損なわないように塗布するためには、特開平8−112879号公報に記載されているように比較的低温でセラミック化してシリカに変性するものがよい。
式中、R1、R2、及びR3は、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基またはアルコキシ基を表す。
本発明では、得られるガスバリア層(単に、バリア膜ともいう)としての緻密性の観点からは、R1、R2及びR3のすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザン(PHPSともいう)が特に好ましい。
一方、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より(平均)膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。
用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは直鎖構造と6及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体または固体の物質であり、分子量により異なる。
これらは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。
低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、上記化1のポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
ポリシラザンを含有する液体を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有しないものが好ましい。
具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリコロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。
これらの溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度、等目的にあわせて選択し、複数の溶剤を混合しても良い。
ポリシラザンを含有する塗布液中のポリシラザン濃度は目的とするシリカ膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2質量%〜35質量%程度が好ましい。
有機ポリシラザンは、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体であってもよい。アルキル基、特にもっとも分子量の少ないメチル基を有することにより下地基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいシリカ膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる。
酸化珪素化合物への転化を促進するために、アミンや金属の触媒を添加することもできる。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140などが挙げられる。
(ポリシラザン膜の作製工程)
本発明に係るポリシラザン含有液の塗布膜は、改質処理前または処理中に水分が除去されていることが好ましい。そのために、ポリシラザン膜中の溶媒を取り除く目的の第一工程と、それに続くポリシラザン膜中の水分を取り除く目的の第二工程に分かれていることが好ましい。
第一工程においては、主に溶媒を取り除くための乾燥条件を、熱処理などの方法で適宜決めることができるがこのときに水分が除去される条件にあってもよい。熱処理温度は迅速処理の観点から高い温度が好ましいが、樹脂基板への熱ダメージを考慮し温度と処理時間を決めることができる。
例えば、樹脂基板にガラス転位温度(Tg)が70℃のPET基材を用いる場合には熱処理温度は140℃以下を設定することができる。処理時間は溶媒が除去され、かつ基材への熱ダメージがすくなくなるように短時間に設定することが好ましく、熱処理温度が140℃以下であれば30分以内に設定することができる。
第二工程は、ポリシラザン膜中の水分を取り除くための工程で、水分を除去する方法としては低湿度環境に維持される形態が好ましい。低湿度環境における湿度は、温度により変化するので温度と湿度の関係は露点温度の規定により好ましい形態が示される。
好ましい露点温度は4度以下(温度25度/湿度25%)であり、より好ましい露点温度は−8度(温度25度/湿度10%)以下、更に好ましい露点温度は(温度25度/湿度1%)−31度以下であり、維持される時間はポリシラザン膜の膜厚によって適宜変わる。
ポリシラザン膜厚1μm以下の条件においては、好ましい露点温度は−8度以下で、維持される時間は5分以上である。また、水分を取り除きやすくするために減圧乾燥してもよい。減圧乾燥における圧力は常圧〜0.1MPaを選ぶことができる。
第一工程の条件に対する第二工程の好ましい条件としては、例えば第一工程で温度60℃〜150℃、処理時間1分〜30分間で溶媒を除去したときには、第二工程の露点は4度以下で処理時間は5分〜120分により水分を除去する条件を選ぶことができる。
第一工程と第二工程の区分は露点の変化で区別することができ、工程環境の露点の差が10度以上変わることで区分ができる。
本発明に係るポリシラザン膜は第二工程により水分が取り除かれた後も、その状態を維持されて改質処理されることが好ましい。
(ポリシラザン膜の含水量)
本発明に係るポリシラザン膜の含水率は以下の分析方法で検出できる。
ヘッドスペース−ガスクロマトグラフ/質量分析法
装置:HP6890GC/HP5973MSD
オーブン:40℃(2分)→10℃/分→150℃
カラム:DB−624(0.25mmid*30m)
注入口:230℃
検出器:SIM m/z=18
HS条件:190℃、30分
本発明に係るポリシラザン膜中の含水率は、上記の分析方法により得られる含水量からポリシラザン膜の体積で除した値と定義され、第二工程により水分が取り除かれた状態において、好ましくは0.1%以下である。更に好ましい含水率は0.01%以下(検出限界以下)である。
(改質処理)
本発明に係る改質処理について説明する。
本発明に係るように改質処理前、または改質中に水分が除去されることで、ポリシラザン膜中のポリシラザンの脱水反応によりシラノールへの転化を促進する観点から好ましい態様である。
本発明に係る改質処理は、ポリシラザン膜の転化反応に関連する公知の方法を選ぶことができる。シラザン化合物の置換反応による酸化ケイ素膜の作製には450℃以上の高温が必要であり、プラスチック等のフレキシブル基板においては適応が難しい。
本発明においてはプラスチック基板への適応のためにより低温で転化反応が可能なプラズマやオゾンや紫外線を使う転化反応が好ましい。
〈プラズマ処理〉
本発明において、改質処理に用いるプラズマ処理は、公知の方法を用いることができるが、大気圧プラズマ処理が好ましい。
大気圧プラズマ処理の場合は、放電ガスとしては窒素ガス及び/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
《異なる周波数の電界を二つ以上形成した大気圧プラズマ》
次に、前記大気圧プラズマについて好ましい態様を説明する。大気圧プラズマは、具体的には、国際公開第2007/026545号パンフレットに記載される様に、放電空間に異なる周波数の電界を2つ以上形成したもので、第1の高周波電界と第2の高周波電界とを重畳した電界を形成することが好ましい。
前記第1の高周波電界の周波数ω1より前記第2の高周波電界の周波数ω2が高く、且つ、前記第1の高周波電界の強さV1と、前記第2の高周波電界の強さV2と、放電開始電界の強さIVとの関係が、
V1≧IV>V2 または V1>IV≧V2
を満たし、前記第2の高周波電界の出力密度が、1W/cm2以上である。
この様な放電条件をとることにより、例えば窒素ガスのように放電開始電界強度が高い放電ガスでも、放電を開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持でき、高性能な薄膜作製を行うことができる。
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電界強度IV(1/2Vp−p)は3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の印加電界強度を、V1≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
ここで、第1電源の周波数としては、200kHz以下が好ましく用いることができる。またこの電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。下限は1kHz程度が望ましい。
一方、第2電源の周波数としては、800kHz以上が好ましく用いられる。この第2電源の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な薄膜が得られる。上限は200MHz程度が望ましい。
このような2つの電源から高周波電界を形成することは、第1の高周波電界によって高い放電開始電界強度を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の高周波電界の高い周波数及び高い出力密度によりプラズマ密度を高くして緻密で良質な薄膜を作製することができる。
(紫外線照射処理)
本発明において、改質処理の方法としては、紫外線照射による処理も好ましく適用することができる。
紫外線(紫外光と同義)によって生成されるオゾンや活性酸素原子は高い酸化能力を有しており、低温で高い緻密性と絶縁性を有する酸化ケイ素膜を作製することが可能である。
この紫外線照射により、基材が加熱され、セラミックス化(シリカ転化)に寄与するO2とH2Oや、紫外線吸収剤、ポリシラザン自身が励起、活性化されるため、ポリシラザンが励起し、ポリシラザンのセラミックス化が促進され、また得られるセラミックス膜が一層緻密になる。紫外線照射は、塗膜作製後であればいずれの時点で実施しても有効である。
本発明では、常用されているいずれの紫外線発生装置も使用することが可能である。
尚、本願において、「紫外線」とは、一般には、10nm〜400nmの波長を有する電磁波をいうが、後述する真空紫外線(10nm〜200nm)処理以外の紫外線照射処理の場合は、210nm〜350nmの波長の紫外線を用いることが好ましい。
紫外線の照射は、照射される塗膜を担持している基材がダメージを受けない範囲で照射強度または照射時間を設定すべきである。
基材としてプラスチックフィルムを用いた場合を例にとると、例えば、2kW(80W/cm×25cm)のランプを用い、基材表面の強度が20mW/cm2〜300mW/cm2、好ましくは50mW/cm2〜200mW/cm2になるように基材−ランプ間距離を設定し、0.1秒〜10分間の照射を行うことができる。
一般に、紫外線照射処理時の基材温度が150℃以上になると、樹脂基板が変形し、その強度が劣化するなど、樹脂基板が損なわれる可能性もあるが、ポリイミド等の耐熱性の高いフィルムでは、より高温での処理が可能である。従って、この紫外線照射時の樹脂基板の温度に一般的な上限はなく、樹脂基板の種類によって当業者が適宜設定することができる。また、紫外線照射雰囲気に特に制限はなく、空気中で実施すればよい。
このような紫外線の発生方法としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ(172nm、222nm、308nmの単一波長、例えば、ウシオ電機(株)製)、UV光レーザー、等が挙げられるが、エキシマーランプ(172nm)が特に好ましい。
また、発生させた紫外線をポリシラザン塗膜に照射する際には、効率の向上のため均一な照射を達成するためにも、発生源からの紫外線を反射板で反射させてから塗膜に当てることが望ましい。
紫外線照射は、バッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、被塗布基材の形状によって適宜選定することができる。例えば、バッチ処理の場合には、ポリシラザン塗膜を表面に有する基材(例、シリコンウェハー)を上記のような紫外線発生源を具備した紫外線焼成炉で処理することができる。紫外線焼成炉自体は一般に知られており、例えば、アイグラフィクス(株)製を使用することができる。
また、ポリシラザン塗膜を表面に有する基材が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら上記のような紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に紫外線を照射することによりセラミックス化することができる。
紫外線照射に要する時間は、塗布される基材やコーティング組成物の組成、濃度にもよるが、一般に0.1秒〜10分、好ましくは0.5秒〜3分である。
〈真空紫外線照射処理〉
本発明において、更に好ましい改質処理の方法として、真空紫外線照射による処理が挙げられる。真空紫外線照射による処理は、シラザン化合物内の原子間結合力より大きい100nm〜200nm、好ましくは100nm〜180nmの波長の光のエネルギーを用い、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみによる作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温で、酸化シリコン膜の作製を行う方法である。
これに必要な真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
1.エキシマ発光とは、Xe,Kr,Ar.Neなどの希ガスの原子は化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。しかし,放電などによりエネルギーを得た希ガスの原子(励起原子)は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には
e+Xe→Xe*
Xe*+2Xe→Xe2 *+Xe
Xe2 *→Xe+Xe+hν(172nm)
となり、励起されたエキシマ分子であるXe2 *が基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光を発光する。エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。
また、余分な光が放射されないので、対象物の温度を低く保つことができる。更には始動・再始動に時間を要さないので、瞬時の点灯点滅が可能である。
エキシマ発光を得るには誘電体バリア放電を用いる方法が知られている。誘電体バリア放電とは両電極間に誘電体(エキシマランプの場合は透明石英)を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加することによりガス空間に生じる、雷に似た非常に細いmicro dischargeと呼ばれる放電で、micro dischargeのストリーマが管壁(誘電体)に達すると誘電体表面に電荷が溜まるため、micro dischargeは消滅する。
このmicro dischargeが管壁全体に広がり、生成・消滅を繰り返している放電である。このため肉眼でも分る光のチラツキを生じる。
また、非常に温度の高いストリーマが局所的に直接管壁に達するため、管壁の劣化を早める可能性もある。
効率よくエキシマ発光を得る方法としては、誘電体バリア放電以外に無電極電界放電でも可能である。容量性結合による無電極電界放電で、別名RF放電とも呼ばれる。ランプと電極及びその配置は基本的には誘電体バリア放電と同じで良いが、両極間に印加される高周波は数MHzで点灯される。
無電極電界放電はこのように空間的にまた時間的に一様な放電が得られるため、チラツキが無い長寿命のランプが得られる。
誘電体バリア放電の場合はmicro dischargeが電極間のみで生じるため、放電空間全体で放電を行わせるには外側の電極は外表面全体を覆い、かつ外部に光を取り出すために光を透過するものでなければならない。
このため細い金属線を網状にした電極が用いられる。この電極は光を遮らないようにできるだけ細い線が用いられるため、酸素雰囲気中では真空紫外光により発生するオゾンなどにより損傷しやすい。
これを防ぐためにはランプの周囲、すなわち照射装置内を窒素などの不活性ガスの雰囲気にし、合成石英の窓を設けて照射光を取り出す必要が生じる。合成石英の窓は高価な消耗品であるばかりでなく、光の損失も生じる。
二重円筒型ランプは外径が25mm程度であるため、ランプ軸の直下とランプ側面では照射面までの距離の差が無視できず、照度に大きな差を生じる。
従って、仮にランプを密着して並べても、一様な照度分布が得られない。合成石英の窓を設けた照射装置にすれば酸素雰囲気中の距離を一様にでき、一様な照度分布が得られる。
無電極電界放電を用いた場合には外部電極を網状にする必要は無い。ランプ外面の一部に外部電極を設けるだけでグロー放電は放電空間全体に広がる。外部電極には通常アルミのブロックで作られた光の反射板を兼ねた電極がランプ背面に使用される。
しかし、ランプの外径は誘電体バリア放電の場合と同様に大きいため一様な照度分布にするためには合成石英が必要となる。
細管エキシマランプの最大の特徴は構造がシンプルなことである。石英管の両端を閉じ、内部にエキシマ発光を行うためのガスを封入しているだけである。したがって、非常に安価な光源を提供できる。
二重円筒型ランプは内外管の両端を接続して閉じる加工をしているため、細管ランプに比べ取り扱いや輸送で破損しやすい。
細管ランプの管の外径は、始動時の電圧が高電圧になるのを防ぐ観点から、6mm〜12mmの範囲が好ましい。
放電の形態は誘電体バリア放電でも無電極電界放電のいずれでも使用できる。電極の形状はランプに接する面が平面であっても良いが、ランプの曲面に合わせた形状にすればランプをしっかり固定できるとともに、電極がランプに密着することにより放電がより安定する。また、アルミで曲面を鏡面にすれば光の反射板にもなる。
Xeエキシマランプは波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから発光効率に優れている。
この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。また、有機物の結合を解離させる波長の短い172nmの光のエネルギーは能力が高いことが知られている。
この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン膜の改質を実現できる。
従って、波長185nm、254nmの発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べて高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によるダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基板などへの照射を可能としている。
エキシマランプは光の発生効率が高いため低い電力の投入で点灯させることが可能である。
また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で単一波長でエネルギーを照射するため、解射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を持っている。
このため、熱の影響を受けやすいとされるPETなどのフレシキブルフィルム材料に適している。
(改質層の厚さ測定)
本発明に係るガスバリア層は、膜厚方向に密度が異なる領域が存在することが好ましい。
本発明における改質処理を施された側の表面の内側領域の膜密度d1を有する領域の平均膜厚の算出は以下のようにして行うことができる。尚、平均膜厚は、下記方法によりガスバリア層の10個所について測定の測定値の算術平均の値とする。この改質膜厚の平均は好ましくは30nm以上であり、より好ましくは60nm以上である。
尚、改質膜厚の上限値は、塗布膜のクラック発生防止の観点から、ポリシラザン含有液の塗布膜における改質膜厚の比率が80%を超えない範囲で設定することができる。
膜厚方向の断面のTEM画像観察:
観察試料を以下のFIB加工装置により薄片作製後、TEM観察を行う。このとき試料に電子線を照射し続けると電子線ダメージを受ける部分とそうでない部分にコントラスト差が現れるため、その領域を測定することで算出できる。改質処理側で密度が高い領域は電子線ダメージを受けにくいが、そうでない部分は電子線ダメージを受け変質が確認される。
(FIB加工)
装置:SII製SMI2050
加工イオン:(Ga 30kV)
試料厚さ:100nm〜200nm
(TEM観察)
装置:日本電子製JEM2000FX(加速電圧:200kV)
電子線照射時間:5秒から60秒
該ガスバリア層の処理側とその反対側の膜密度が異なると、その差Δdと(平均)膜厚を上記の範囲にすることで応力集中による割れを防ぐことができ、高いバリア性と応力緩和機能を両立できる。特にガスバリア層を真空紫外処理すると、真空紫外光で短時間に効率よく表面処理ができるため好ましい。
《紫外線遮蔽層》
本発明において、紫外線遮蔽層とは、紫外線を吸収もしくは反射することで、有機光電変換素子内部への紫外線の侵入を抑える層のことを表し、具体的には、紫外線吸収層、紫外線反射層のことを表し、好ましくは紫外線反射層を表す。
《紫外線吸収層》
本発明に係る紫外線吸収層は、基材上に紫外線吸収性化合物を含有する樹脂層として作製される。該紫外吸収性化合物は、少なくとも波長400nm以下の光エネルギーを吸収し、熱エネルギー、燐光、蛍光に変換する機能を有する化合物である。
紫外線吸収性化合物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、カーボンブラック等の無機系のものと、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、修酸アニリド系、シアノアクリレート系、トリアジン系、ベンゾエート系等の有機系のものが挙げられ、本発明では耐久性の面から、好ましくは無機系の紫外線吸収性化合物が含有される。これらの中でも酸化亜鉛及び酸化チタンは比較的安価で好ましく、更に酸化亜鉛は酸化チタンと比べて紫外線の吸収端が380nmと高く、屈折率も小さいことから透明性に優れている。紫外線吸収層は、基材の光照射面側に塗設されていることが望ましい。
また、紫外線吸収層は、紫外線吸収性能が高いこと、長時間使用の場合に紫外線吸収性化合物のブリードアウトが起こりにくいなどの特徴から、紫外線吸収性化合物が付加された(メタ)アクリル系モノマーが共重合された(メタ)アクリル系共重合体を主成分とし、その他の成分として、水酸基を含有する(メタ)アクリル系モノマーを有する紫外線吸収性化合物を含有する樹脂層をコーティングにより、基材シートに、塗布、乾燥することにより塗布厚み3g/m2〜10g/m2程度塗設することが好ましい。
紫外線吸収層の構成成分として適宜、架橋性化合物を使用することにより、共重合体中の水酸基と架橋性化合物の熱架橋反応によって、三次元網状構造を作製することができる。架橋性化合物は、基材シートとの密着性、強靱性、耐溶剤性、耐水性等を向上するために加えるものである。
紫外線吸収層の構成成分として使用する架橋性化合物としては、例えば、イソシアネート系化合物、メラミン系化合物、尿素系化合物、エポキシ系化合物、アミノ系化合物、アミド系化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、シランカップリング剤等、また、それらの変性体を適宜使用することができる。
中でも、紫外線吸収性化合物を含有する層の架橋性、強靱性等からイソシアネート系化合物及びその変性体を用いることが好ましい。
《紫外線反射層》
本発明に係る紫外線反射層は、基材の光入射側に複数の異なる屈折率を有する材料から構成される。該紫外線反射層は屈折率の異なる材料から成る層を交互に積層して、紫外線を反射できるように光学設計された積層体が代表的な構成であるが、積層体に限られるものではない。
屈折率の異なる材料が均一または主成分の割合を膜厚方向に傾斜させた場合でも、紫外線反射効果が発揮できる。屈折率の異なる複数の材料の混合割合を膜厚方向で傾斜させて紫外線を反射できるようにしてもよい。
本発明に係る紫外線反射層は、透明な誘電体材料(屈折率:n)を、地球上に到達する紫外線の波長:290nm〜400nm範囲内の特定の波長λに対して、例えばλ/2n(nm)の厚さでコーティングすることにより、波長λの近傍の紫外光に対して、コーティング層の上下の界面からの反射光の位相を揃えることで、反射率を高めたものなどをいう。
例えば、高屈折率膜と低屈折率膜の屈折率の異なる誘電体材料の膜を交互に多層コーティングすることで、反射率を上げたり、反射波長域を広げたりすることができる。例えば、一例として、透明フィルム上に高屈折率膜(酸化チタン(TiO2):n=2.3、厚み35nm)、低屈折率膜(酸化珪素(SiO2)、n=1.46、厚み55nm)を順次設けた15層(合計膜厚:685nm)の紫外線反射膜は、特に樹脂基板に悪影響を及ぼす300〜360nmの紫外線の95%程度を反射する。
そのような紫外線反射層を設けることで、樹脂基板を透過する紫外線をカットすることができる。
前記紫外線反射層の誘電体材料としては、金属酸化物、窒酸化物、窒化物を主成分とする材料を好適に使用できる。屈折率1.8〜2.4の高屈折率膜としては、少なくとも亜鉛、チタン、錫、インジウム、ニオブ、珪素またはアルミニウムを含む酸化物、窒酸化物、窒化物を主成分とする少なくとも1層以上からなることが好ましい。
また、屈折率1.4〜1.8の低屈折率膜は、少なくともSiまたはAlを含む酸化物、窒酸化物、窒化物を主成分とし、特に、酸化珪素から構成されることが好ましい。その誘電体材料の作製方法としては気相成長法が好ましく、更に真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、触媒化学気相成長(Cat−CVD)法、またはプラズマCVD法が好ましい。
特に、大気圧もしくはその近傍の圧力下、放電空間に薄膜作製ガス及び放電ガスを含有するガスを供給し、該放電空間に高周波電界を印加することにより該ガスを励起し、樹脂基板を励起したガスに晒すことにより、該樹脂基板上に薄膜を作製する薄膜作製方法により形成される、所謂大気圧プラズマCVD法により作製される膜が低残留応力であり好ましい。
低屈折率膜には、カルシウム、バリウム、リチウム、マグネシウムのフッ化物を主成分とする材料も用いることができる。また、本発明において、屈折率の異なる層のうち、少なくとも1層は主成分の割合を膜厚方向に傾斜させた構成とすることができる。
前記紫外線反射層は、基材の十分な紫外線遮蔽性を得るために、屈折率1.4〜1.8の厚み5nm〜1000nmの低屈折率層、及び屈折率1.8〜2.4の厚み5nm〜400nmの高屈折率膜層を交互に、少なくとも3層以上積層されていることが好ましく、更に好ましくは、5層以上、特に好ましくは7層以上である。
《樹脂基板(樹脂基材ともいう)》
本発明に係る樹脂基板は、後述のガスバリア層や紫外線遮蔽層を保持することができる樹脂フィルムであれば特に限定されるものではない。
例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、更には前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。
コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられ、また、光学的透明性、耐熱性、無機層、ガスバリア層との密着性の点においては、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムが好ましく用いることができる。
本発明に係る樹脂基板の厚さは5μm〜500μm程度が好ましく、更に好ましくは25μm〜250μmである。
また、上記に挙げた樹脂基板は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
本発明に係る樹脂基板は、紫外線吸収性化合物を樹脂基板に練り込んで紫外線遮断機能を持たせることもできる。その際、紫外線吸収性化合物としては、前述の紫外吸収層で例として挙げた化合物が挙げられる。
また、本発明に係る樹脂基板は光入射側に用いる場合には透明であり、樹脂基板上に作製する層も透明であることにより、光電変換部に効率よく太陽光を入射させることができる。
ここで、『透明』とは、可視光(400nm〜700nm)の光透過率が80%以上であることを意味する。
本発明に係る樹脂基板(樹脂基材)は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。
例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の支持体を製造することができる。
また、未延伸の支持体を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、支持体の流れ(縦軸)方向、または支持体の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸支持体を製造することができる。
この場合の延伸倍率は、支持体の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。また、本発明に係る樹脂基板においては、蒸着膜を作製する前にコロナ処理してもよい。
更に、本発明に係る樹脂基板の表面には、蒸着膜との密着性の向上を目的としてアンカーコート剤層を作製してもよい。
このアンカーコート剤層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、及びアルキルチタネート等を、1または2種以上併せて使用することができる。
これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により支持体上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。
アンカーコート剤の塗布量としては、0.1g/m2〜5g/m2(乾燥状態)程度が好ましい。
(平滑層)
本発明に係る樹脂基板は、平滑層を有してもよい。平滑層は突起等が存在する透明樹脂フィルム支持体の粗面を平坦化し、あるいは、透明樹脂フィルム支持体に存在する突起により透明無機化合物層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。
このような平滑層は、基本的には感光性樹脂を硬化させて作製される。
平滑層の感光性樹脂としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。
また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−デシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトリキエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタンジオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及び、上記のアクリレートをメタクリレートに換えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。上記の反応性モノマーは、1種または2種以上の混合物として、あるいは、その他の化合物との混合物として使用することができる。
感光性樹脂の組成物は光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−プロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられ、これらの光重合開始剤を1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
平滑層の作製方法は特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法、あるいは、蒸着法等のドライコーティング法により作製することが好ましい。
平滑層の作製では、上述の感光性樹脂に、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、平滑層の積層位置に関係なく、いずれの平滑層においても、成膜性向上及び膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
感光性樹脂を溶媒に溶解または分散させた塗布液を用いて平滑層を作製する際に使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等の酢酸エステル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、安息香酸メチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
平滑層の平滑性は、JIS B 0601−2001(ISO4287−1997準拠)で規定される表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。この範囲よりも値が小さい場合には、後述のケイ素化合物を塗布する段階で、ワイヤーバー、ワイヤレスバーなどの塗布方式で、平滑層表面に塗工手段が接触する場合に、塗布性が損なわれる場合がある。また、この範囲よりも大きい場合には、ケイ素化合物を塗布した後の、凹凸を平滑化することが難しくなる場合がある。
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が数十μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する粗さである。
(平滑層への添加剤)
好ましい態様のひとつは、前述の感光性樹脂中に表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」ともいう)を含むものである。ここで、光重合性を有する感光性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基などを挙げることができる。
また、感光性樹脂は、この反応性シリカ粒子の表面に導入された光重合反応性を有する感光性基と光重合反応可能な化合物、例えば、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物を含むものであってもよい。
感光性樹脂としては、このような反応性シリカ粒子や重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物に適宜汎用の希釈溶剤を混合することによって固形分を調整したものを用いることができる。
ここで、反応性シリカ粒子の平均粒子径としては、0.001μm〜0.1μmの平均粒子径であることが好ましい。平均粒子径をこのような範囲にすることにより、後述する平均粒子径1μm〜10μmの無機粒子からなるマット剤と組合せて用いることによって、本発明に係る効果である防眩性と解像性とをバランス良く満たす光学特性と、ハードコート性とを兼ね備えた平滑層を作製し易くなる。
尚、このような効果をより得易くする観点からは、更に平均粒子径として0.001μm〜0.01μmのものを用いることがより好ましい。
本発明に用いられる平滑層中には、ガスバリア層との密着性を向上させ、フィルムを湾曲させたり、加熱処理を行った場合におけるクラックの発生を防止し、且つ、ガスバリア層を有する樹脂基板の透明性や屈折率などの光学的物性を向上させる観点から、上述の様な無機粒子を質量比として20%〜60%の範囲で含有することが好ましい。
本発明では、重合性不飽和基修飾加水分解性シランが、加水分解性シリル基の加水分解反応によって、シリカ粒子との間に、シリルオキシ基を生成して化学的に結合しているようなものを、反応性シリカ粒子として用いることができる。
加水分解性シリル基としては、例えば、アルコキシシリル基、アセトキシシリル基等のカルボキシリレートシリル基、クロロシリル基等のハロゲン化シリル基、アミノシリル基、オキシムシリル基、ヒドリドシリル基等が挙げられる。
重合性不飽和基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニイル基、シンナモイル基、マレート基、アクリルアミド基等が挙げられる。
本発明に係る平滑層の厚さとしては、1μm〜10μmの範囲が好ましく、更に好ましくは2μm〜7μmの範囲である。
1μm以上にすることにより、平滑層を有するフィルムとしての平滑性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、平滑フィルムの光学特性のバランスを調整し易くなると共に、平滑層を透明高分子フィルムの一方の面にのみ設けた場合における平滑フィルムのカールを抑え易くすることができるようになる。
(ブリードアウト防止層)
本発明に係る樹脂基板は、ブリードアウト防止層を有していてもよい。
ブリードアウト防止層は、平滑層を有するフィルムを加熱した際に、フィルム支持体中から未反応のオリゴマーなどが表面へ移行して、接触する面を汚染してしまう現象を抑制する目的で、平滑層を有する基材の反対面に設けられる。
ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的に平滑層と同じ構成をとっても構わない。
ブリードアウト防止層に含ませることが可能な、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、あるいは分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができる。
ここで、多価不飽和有機化合物としては、例え、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、単価不飽和有機化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他の添加剤として、マット剤を含有しても良い。マット剤としては、平均粒子径が0.1μm〜5μm程度の無機粒子が好ましい。
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の1種または2種以上を併せて使用することができる。
無機粒子からなるマット剤は、ハードコート剤の固形分100質量部に対して2質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは6質量部以上、20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは16質量部以下の割合で混合されていることが望ましい。
また、ブリードアウト防止層には、ハードコート剤及びマット剤の他の成分として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、光重合開始剤等を含有させてもよい。
このような熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル及びその共重合体、塩化ビニル及びその共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂、アクリル樹脂及びその共重合体、メタクリル樹脂及びその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
また、熱硬化性樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
また、電離放射線硬化性樹脂としては、光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマーなどの1種または2種以上を混合した電離放射線硬化塗料に電離放射線(紫外線又は電子線)を照射することで硬化するものを使用することができる。ここで光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート等が使用できる。また光重合性モノマーとしては、上記に記載した多価不飽和有機化合物等が使用できる。
また、光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾインベンゾエート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパン、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。
ブリードアウト防止層は、ハードコート剤、マット剤、及び必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、当該塗布液を支持体フィルム表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより作製することができる。
尚、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100nm〜400nm、好ましくは200nm〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、または走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
ブリードアウト防止層の厚さとしては、1μm〜10μmの範囲が好ましく、更に好ましくは2〜7μmである。
1μm以上にすることにより、フィルムとしての耐熱性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、平滑フィルムの光学特性のバランスを調整し易くなると共に、平滑層を透明高分子フィルムの一方の面に設けた場合における基板のカールを抑え易くすることができるようになる。
《有機光電変換素子》
本発明に係る有機光電変換素子について説明する。
本発明に係る有機光電変換素子においては、前述のガスバリア層と紫外線遮蔽層を有する樹脂基板の上に、例えば、ITO等の透明導電性薄膜を透明電極として設けて、有機光電変換素子の支持体を構成する。
透明導電膜の作製は、真空蒸着法やスパッタリング法等を用いることにより、また、インジウム、スズ等の金属アルコキシド等を用いたゾルゲル法等塗布法によっても製造できる。透明導電膜の(平均)膜厚としては、0.1nm〜1000nmの範囲の透明導電膜が好ましい。
次いで、有機光電変換素子を構成する有機光電変換素子材料各層(構成層)について説明する。
(有機光電変換素子の構成)
本発明に係る有機光電変換素子の好ましい態様を説明するが、これらに限定されない。
有機光電変換素子としては特に制限がなく、陽極と陰極と、両者に挟まれた発電層(p型半導体とn型半導体が混合された層、バルクヘテロジャンクション層、i層ともいう。)が少なくとも1層以上あり、光を照射すると電流を発生する素子であればよい。
有機光電変換素子の層構成の好ましい具体例を以下に示す。
(i)陽極/発電層(光電変換層)/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発電層(光電変換層)/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発電層(光電変換層)/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/p型半導体層/発電層(光電変換層)/n型半導体層/電子輸送層/陰極
(v)陽極/正孔輸送層/第1発電層(光電変換層)/電子輸送層/中間電極/正孔輸送層/第1発電層(光電変換層)/電子輸送層/陰極
《発電層(光電変換層ともいう)》
本発明に係る有機光電変換素子の発電層について説明する。
発電層は、正孔を輸送できるp型半導体材料と電子を輸送できるn型半導体材料を含有していることが必要であり、これらは実質2層でヘテロジャンクションを形成していても良いし、1層の内部で混合された状態となっているバルクヘテロジャンクションを形成しても良いが、バルクヘテロジャンクション構成のほうが光電変換効率が高いため、好ましい。
発電層に用いられるp型半導体材料、n型半導体材料については後述する。
有機EL素子同様、発電層を正孔輸送層、電子輸送層で挟み込むことで、正孔及び電子の陽極・陰極への取り出し効率を高めることができるため、それらを有する構成((ii)、(iii))の方が好ましい。また、発電層自体も正孔と電子の整流性(キャリア取り出しの選択性)を高めるため、(iv)のようにp型半導体材料とn型半導体材料単体からなる層で発電層を挟み込むような構成(p−i−n構成ともいう)であっても良い。
また、太陽光の利用効率を高めるため、異なる波長の太陽光をそれぞれの発電層で吸収するような、タンデム構成((v)の構成)であっても良い。
太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、図1に示す有機光電変換素子10におけるサンドイッチ構造に替わって、一対の櫛歯状電極上にそれぞれ正孔輸送層14、電子輸送層16を作製し、その上に発電層15を配置するといった、バックコンタクト型の有機光電変換素子を構成とすることもできる。
更に、詳細な本発明に係る有機光電変換素子の好ましい態様を下記に説明する。
図1は、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子の一例を示す断面図である。図1において、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10は、紫外線遮蔽層11a、基板11b及びポリシラザン含有液の塗布膜にエキシマ光で照射処理を施して作製されたガスバリア層11cから構成される支持体11の上に、陽極12、正孔輸送層17、バルクヘテロジャンクション層の発電層14、電子輸送層18及び陰極13が順次積層されている。
支持体11は、順次積層された陽極12、発電層14及び陰極13を保持する部材である。本発明において支持体11は紫外線遮蔽層11a(図示せず)、樹脂基板11b(図示せず)及びポリシラザン含有液の塗布膜にエキシマ光で照射処理を施して作製されたガスバリア層11c(図示せず)から構成されることが特徴である。
本発明に係る実施形態では、支持体11側から光電変換される光が入射するので、支持体11は、この光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材である。基板11bは樹脂基板等が用いられる。
発電層14は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能する。
図1において、支持体11を介して陽極12から入射された光は、発電層14のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。
発生した電荷は、内部電界、例えば、陽極12と陰極13の仕事関数が異なる場合では陽極12と陰極13との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。
例えば、陽極12の仕事関数が陰極13の仕事関数よりも大きい場合では、電子は、陽極12へ、正孔は、陰極13へ輸送される。
なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、陽極12と陰極13との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
なお、図1には記載していないが、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、あるいは平滑化層等の他の層を有していてもよい。
更に好ましい構成としては、前記発電層14が、いわゆるp−i−nの三層構成となっている構成(図2)である。通常のバルクヘテロジャンクション層は、p型半導体材料とn型半導体層が混合した、i層単体であるが、p型半導体材料単体からなるp層、及びn型半導体材料単体からなるn層で挟むことにより、正孔及び電子の整流性がより高くなり、電荷分離した正孔・電子の再結合等によるロスが低減され、一層高い光電変換効率を得ることができる。
さらに、太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような光電変換素子を積層した、タンデム型の構成としてもよい。
図3は、タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
タンデム型構成の場合、支持体11上に、順次透明電極12、第1の発電層14′を積層した後、電荷再結合層15を積層した後、第2の発電層16、次いで対電極13を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。
第2の発電層16は、第1の発電層14′の吸収スペクトルと同じスペクトルを吸収する層でもよいし、異なるスペクトルを吸収する層でもよいが、好ましくは異なるスペクトルを吸収する層である。また第1の発電層14′、第2の発電層16がともに前述のp−i−nの三層構成であってもよい。
以下に、これらの層を構成する材料について述べる。
《有機光電変換素子の構成材料》
(p型半導体材料)
本発明に係る有機光電変換素子の発電層として好ましく用いられるバルクヘテロジャンクション層の形成に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマー・オリゴマーが挙げられる。
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン(BEDT−TTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
また、上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、又はTechnical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka, Japan, 2007, P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、国際公開2008/000664号に記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を作製し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。
また、発電層上に電子輸送層を塗布で製膜する場合、電子輸送層溶液が発電層を溶かしてしまうという課題があるため、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料を用いても良い。
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、又は米国特許出願公開第2003/136964号明細書、及び特開2008−16834号公報等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料などを挙げることができる。
《n型半導体材料》
本発明に係るバルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料としては、特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
しかし、各種のp型半導体材料と高速(〜50fs)かつ効率的に電荷分離を行うことができる、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、及びこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
中でも[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7329709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基を有してより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
(正孔輸送層・電子ブロック層)
本発明に係る有機光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション層と陽極との中間には正孔輸送層17を、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層17としては、スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、国際公開第06019270号パンフレット等に記載のシアン化合物、などを用いることができる。
尚、バルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した電子を陽極側には流さないような整流効果を有する、電子ブロック機能が付与される。
このような正孔輸送層は、電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用するほうが好ましい。
このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。
また、バルクヘテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を作製する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
バルクヘテロジャンクション層を作製する前に、下層に塗布膜を作製すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
(電子輸送層・正孔ブロック層)
本発明に係る有機光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション層と陰極との中間には電子輸送層18を作製することで、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
また電子輸送層18としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様に、バルクヘテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する、正孔ブロック機能が付与される。このような電子輸送層は、正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用するほうが好ましい。
このような材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。
また、バルクヘテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。
これらの層を作製する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
(その他の層)
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層などを挙げることができる。
(透明電極(第1電極))
本発明に係る透明電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができるが、好ましくは透明電極を陽極として用いることである。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは380〜800nmの光を透過する電極である。
材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ用いることができる。
またポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて透明電極とすることもできる。
(対電極(第2電極))
対電極は導電材単独層であっても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用しても良い。対電極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。
このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
これらの中で、電子の取り出し性能及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
対電極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を作製させることにより、作製することができる。また、(平均)膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50nm〜200nmの範囲で選ばれる。
対電極の導電材として金属材料を用いれば対電極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
また、対電極13は、金属(例えば金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤーの分散物であれば、透明で導電性の高い対電極を塗布法により作製でき好ましい。
また、対電極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の対電極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の(平均)膜厚で作製した後、上記透明電極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性対電極とすることができる。
(中間電極)
また、前記(v)(又は図3)のようなタンデム構成の場合に必要となる中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、前記透明電極で用いたような材料(ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層又はナノ粒子・ナノワイヤーを含有する層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等)を用いることができる。
なお前述した正孔輸送層と電子輸送層の中には、適切に組み合わせて積層することで中間電極(電荷再結合層)として働く組み合わせもあり、このような構成とすると一層作製する工程を省くことができ好ましい。
(金属ナノワイヤ)
本発明に用いられる導電性繊維としては、金属でコーティングした有機繊維や無機繊維、導電性金属酸化物繊維、金属ナノワイヤ、炭素繊維、カーボンナノチューブ等を用いることができるが、金属ナノワイヤが好ましい。
一般に、金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする線状構造体のことをいう。特に、本発明における金属ナノワイヤとはnmサイズの直径を有する線状構造体を意味する。
本発明に係る金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、また、適度な光散乱性を発現するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3μm〜500μmが好ましく、特に3〜300μmであることが好ましい。
併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均直径は、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。本発明においては、金属ナノワイヤの平均直径として10nm〜300nmが好ましく、更に好ましくは30nm〜200nmである。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
本発明に用いられる金属ナノワイヤの金属組成としては特に制限はなく、貴金属元素や卑金属元素の1種又は複数の金属から構成することができるが、貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)及び鉄、コバルト、銅、錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から少なくとも銀を含むことがより好ましい。
また、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマイグレーション耐性)を両立するために、銀と、銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含むことも好ましい。
本発明に係る金属ナノワイヤが2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤの表面と内部で金属組成が異なっていてもよいし、金属ナノワイヤ全体が同一の金属組成を有していてもよい。
本発明において金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。
また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、Agナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745等、Auナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、Cuナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、Coナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。
特に、上述した、Adv.Mater.及びChem.Mater.で報告されたAgナノワイヤの製造方法は、水系で簡便にAgナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に係る金属ナノワイヤの製造方法として好ましく適用することができる。
本発明においては、金属ナノワイヤが互いに接触し合うことにより3次元的な導電ネットワークを形成し、高い導電性を発現するとともに、金属ナノワイヤが存在しない導電ネットワークの窓部を光が透過することが可能となり、さらに、金属ナノワイヤの散乱効果によって、有機発電層部からの発電を効率的に行うことが可能となる。
第1電極において金属ナノワイヤを有機発電層部に近い側に設置すれば、この散乱効果がより有効に利用できるのでより好ましい実施形態である。
(光学機能層)
本発明に係る有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していて良い。光学機能層としては、たとえば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層などを設けても良い。
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。
これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚さが厚くなり好ましくない。
また、光散乱層としては、各種のアンチグレア層、金属又は各種無機酸化物などのナノ粒子・ナノワイヤー等を無色透明なポリマーに分散した層などを挙げることができる。
(製膜方法・表面処理方法)
(各種の層の作製方法)
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層、及び輸送層・電極の作製方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、バルクヘテロジャンクション層の作製方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。
このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また塗布法は、製造速度にも優れている。
この際に使用する塗布方法に制限は無いが、例えば、スピンコート法、溶液からのキャスト法、ディップコート法、ブレードコート法、ワイヤバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等が挙げられる。さらには、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法でパターニングすることもできる。
塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。
製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集又は結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクヘテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
発電層(バルクヘテロジャンクション層)14は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。この場合、前述したような塗布後に不溶化できるような材料を用いることで作製することが可能となる。
(パターニング)
本発明に係る電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
バルクヘテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取っても良いし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしても良い。
電極材料などの不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチング又はリフトオフ等の公知の方法によってパターニングすることができる。また、別の基板上に作製したパターンを転写することによってパターンを作製しても良い。
(封止とその製造方法)
本発明では、紫外線遮蔽層とガスバリア層を設けた樹脂基板のガスバリア層上に、更に透明導電膜を作製し、これを陽極としてこの上に、有機光電変換素子を構成する層、陰極となる層とを積層し、この上にガスバリア性フィルムを封止フィルムとして、重ね接着することで封止することが好ましい。
また、特に、樹脂ラミネート(ポリマー膜)された金属箔は、低コストで更に透湿性の低い封止材料であり、封止フィルムとして好ましい。
本発明において金属箔とは、スパッタや蒸着等で作製された金属薄膜や、導電性ペースト等の流動性電極材料から作製された導電膜と異なり、圧延等で作製された金属の箔又はフィルムを指す。
金属箔としては、金属の種類に特に限定はなく、例えば銅(Cu)箔、アルミニウム(Al)箔、金(Au)箔、黄銅箔、ニッケル(Ni)箔、チタン(Ti)箔、銅合金箔、ステンレス箔、スズ(Sn)箔、高ニッケル合金箔等が挙げられる。これらの各種の金属箔の中で特に好ましい金属箔としてはAl箔が挙げられる。
金属箔の厚さは、金属箔に用いる材料により使用時にピンホールが空くことを防止し、必要とするバリア性(透湿度、酸素透過率)を確保する観点から、また、生産コストを低減する観点から、6μm〜50μmの範囲に調整することが好ましい。
樹脂フィルム(ポリマー膜)がラミネートされた金属箔の形成に用いられる樹脂フィルムとしては、機能性包装材料の新展開(株式会社 東レリサーチセンター)に記載の各種材料を使用することが可能であり、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体系樹脂、セロハン系樹脂、ビニロン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂、ナイロン系樹脂等の樹脂は、延伸されていてもよく、さらに塩化ビニリデン系樹脂をコートされていてもよい。また、ポリエチレン系樹脂は、低密度あるいは高密度のものも用いることができる。
(有機光電変換素子の封止)
本発明に係る有機光電変換素子では、本発明に係る前記紫外線遮蔽層とガスバリア層を設けた樹脂基板のガスバリア層上に透明導電膜を作製し、作製した有機光電変換素子用樹脂支持体上に、有機光電変換素子各層を作製した後、封止フィルムを用いて、不活性ガスによりパージされた環境下で、封止フィルムで陰極面を覆うようにして、有機光電変換素子を封止することができる。
不活性ガスとしては、N2の他、He、Ar等の希ガスが好ましく用いられるが、HeとArを混合した希ガスも好ましく、気体中に占める不活性ガスの割合は、90体積%〜99.9体積%であることが好ましい。不活性ガスによりパージされた環境下で封止することにより、保存性が改良される。
また、前記の樹脂フィルム(ポリマー膜)がラミネートされた金属箔を用いて、有機光電変換素子を封止するにあたっては、ラミネートされた樹脂フィルム面ではなく、金属箔上にセラミック層を作製し、このセラミック層面を有機光電変換素子の陰極に貼り合わせることが好ましい。封止フィルムのポリマー膜面を有機光電変換素子の陰極に貼り合わせると、部分的に導通が発生することがある。
封止フィルムを有機光電変換素子の陰極に貼り合わせる封止方法としては、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルム、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等の熱融着性フィルムを積層して、インパルスシーラーで融着させ封止する方法がある。
接着方法としてはドライラミネート方式が作業性の面で優れている。この方法は一般には1.0μm〜2.5μm程度の硬化性の接着剤層を使用する。ただし接着剤の塗設量が多すぎる場合には、トンネル、浸み出し、縮緬皺等が発生することがあるため、好ましくは接着剤量を乾燥(平均)膜厚で3μm〜5μmになるように調節することが好ましい。
ホットメルトラミネーションとはホットメルト接着剤を溶融し支持体に接着層を塗設する方法であるが、接着剤層の厚さは一般に1μm〜50μmと広い範囲で設定可能な方法である。
一般に使用されるホットメルト接着剤のベースレジンとしては、EVA、EEA、ポリエチレン、ブチルラバー等が使用され、ロジン、キシレン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂等が粘着付与剤として、ワックス等が可塑剤として添加される。
エクストルージョンラミネート法とは高温で溶融した樹脂をダイスにより支持体上に塗設する方法であり、樹脂層の厚さは一般に10μm〜50μmと広い範囲で設定可能である。
エクストルージョンラミネートに使用される樹脂としては一般に、LDPE、EVA、PP等が使用される。
(セラミック層)
本発明においては、上述のように、有機光電変換素子を封止するにあたって、ガスバリア性を一層高める等のため、無機酸化物、窒化物、炭化物、等による化合物により作製されるセラミック層を設けることができる。
具体的には、SiOx、Al2O3、In2O3、TiOx、ITO(スズ・インジウム酸化物)、AlN、Si3N4、SiOxN、TiOxN、SiC等により作製することができる。
当該セラミック層は、ゾルゲル法、蒸着法、CVD、PVD、スパッタリング法、等の公知な手法により積層されていて構わない。
例えば、ポリシラザンを用いて、ポリシラザン膜と同様の方法により作製することもできる。この場合、ポリシラザンを含有する組成物を塗布し、ポリシラザン被膜を作製した後、セラミックに転化させることにより作製することができる。
また、本発明に用いられるセラミック層は、大気圧プラズマ法において、原料(原材料ともいう。)である有機金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力などの条件を選ぶことで、酸化珪素、また酸化珪素を主体とした金属酸化物、また、金属炭化物、金属窒化物、金属硫化物、金属ハロゲン化物等との混合物(金属酸窒化物、金属酸化ハロゲン化物など)等の組成を作り分けることができる。
例えば、珪素化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いれば、珪素酸化物が生成する。また、シラザン等を原料化合物として用いれば、酸化窒化珪素が生成する。
これはプラズマ空間内では非常に活性な荷電粒子・活性ラジカルが高密度で存在するため、プラズマ空間内では多段階の化学反応が非常に高速に促進され、プラズマ空間内に存在する元素は熱力学的に安定な化合物へと非常な短時間で変換されるためである。
このようなセラミック層の作製原料としては、珪素化合物であれば、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合にはそのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用する。又、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用できる。
尚、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解されるため、影響は殆ど無視することができる。
このような珪素化合物としては、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキスジメチルアミノシラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、Mシリケート51等が挙げられる。
また、これら珪素を含む原料ガスを分解してセラミック層を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気、フッ素ガス、フッ化水素、トリフルオロアルコール、トリフルオロトルエン、硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素、塩素ガスなどが挙げられる。
珪素を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで、酸化珪素、また、窒化物、炭化物等を含有するセラミック層を得ることができる。
大気圧プラズマ法においては、これらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合し、プラズマ放電発生装置にガスを送りこむ。このような放電ガスとしては、窒素ガスおよび/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも特に、窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられる。
上記放電ガスと反応性ガスを混合し、薄膜作製(混合)ガスとして大気圧プラズマ放電発生装置(プラズマ発生装置)に供給することで膜作製を行う。放電ガスと反応性ガスの割合は、得ようとする膜の性質によって異なるが、混合ガス全体に対し、放電ガスの割合を50%以上として反応性ガスを供給する。
本発明に係るセラミック層においては、例えば、上記有機珪素化合物に、更に酸素ガスや窒素ガスを所定割合で組み合わせて、O原子とN原子の少なくともいずれかと、Si原子とを含む本発明に係る酸化珪素を主体としたセラミック層を得ることができる。
本発明に係るセラミック層の厚さとしては、ガスバリア性と光透過性とを考慮すれば、10nm〜2000nmの範囲内であることが望ましいが、さらに可撓性も考慮し、全てにおいてバランス良く好適な性能を発揮するためには、10nm〜200nmであることが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
下記に記載のようにして、支持体1〜8を各々作製し、次いで、該支持体1〜8を用いて有機光電変換素子1〜8を各々作製した。
《支持体1の作製》
(樹脂基板の作製)
熱可塑性樹脂基板として、両面に易接着加工された125μmの厚さのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テトロンO3)を、170℃で30分アニール加熱処理したものを樹脂基板として作製した。
(ブリードアウト防止層の作製)
上記樹脂基板の片面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7535を塗布、乾燥後の(平均)膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、硬化条件;1.0J/cm2空気下、高圧水銀ランプ使用、乾燥条件;80℃、3分で硬化を行い、ブリードアウト防止層を作製した。
(平滑層の作製)
続けて、ブリードアウト防止層を有する樹脂基板の反対面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7501を塗布、乾燥後の(平均)膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件;80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;1.0J/cm2硬化を行い、平滑層を作製した。
(紫外線遮蔽層UV−1の作製)
次に、樹脂基板上に設けた平滑層の上に、アクリルゴム(日本カーバイド(株)製,Q−1851(EA/2−EHA/HEMA))85部、超微粒子酸化亜鉛(住友セメント(株)製,ZnO−100粒径0.005〜0.015μm)20部、3官能脂肪族イソシアネート(住友バイウレタン(株)製,スミジュールN)1部からなる組成物10質量%のトルエン溶液を塗布、熱乾燥し、紫外線遮蔽層UV−1を作製した。この時の塗布厚みは1μmであった。
(ガスバリア層1の作製)
次に、樹脂基板の上に設けたブリードアウト防止層の上にガスバリア層1を以下に示す条件で、作製した。
パーヒドロポリシラザン(PHPS)の20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ NN320)をワイヤレスバーにて、乾燥後の(平均)膜厚が、0.30μmとなるように塗布し、塗布試料を得た後、以下に示す第1工程(乾燥処理)、第二工程(除湿処理)ついで、改質処理を行い、支持体1を得た。
(第一工程:乾燥処理)
得られた塗布試料を温度85℃、湿度55%RHの雰囲気下で1分処理し、乾燥試料を得た。
(第二工程:除湿処理)
乾燥試料を更に温度25℃、湿度10%RH(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行った。
(改質処理A)
除湿処理を行った試料を下記の条件でエキシマ光照射処理を行い、バリア層1を作製した。照射処理時の露点温度は−8℃で実施した。
(改質処理装置)
株式会社 エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200、波長172nm、ランプ封入ガス Xe稼動ステージ上に固定した試料を以下の条件で改質処理を行った。
(改質処理条件)
エキシマ光強度 60mW/cm2(172nm)
試料と光源の距離 1mm
ステージ加熱温度 70℃
照射装置内の酸素濃度 1%
エキシマ照射時間 3秒
《支持体2の作製》
支持体1の作製において、以下に記載の紫外線遮蔽層UV−2を作製した以外は支持体1と同様にして支持体2を作製した。
(紫外線遮蔽層UV−2の作製)
樹脂基板上に設けた平滑層の上に、下記条件で高屈折率層(厚み:15nm、屈折率:2.3)、低屈折率層(厚み:60nm、屈折率1.46)、を交互に9層設け、9層からなる紫外線反射層を作製した。
(高屈折率層の作製)
〈高屈折率層作製混合ガス組成物〉
放電ガス:窒素 97.9体積%
薄膜作製ガス:テトライソプロポキシチタン 0.1体積%
添加ガス:水素 2.0体積%
(高屈折率層成膜条件)
第1電極側
電源種類 ハイデン研究所 100kHz(連続モード) PHF−6k
周波数 100kHz
出力密度 10W/cm2(この時の電圧Vpは7kVであった)
電極温度 120℃
第2電極側
電源種類 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
周波数 13.56MHz
出力密度 5W/cm2(この時の電圧Vpは1kVであった)
電極温度 90℃
(低屈折率層の作製)
〈低屈折率層混合ガス組成物〉
放電ガス:窒素 98.9体積%
薄膜作製ガス:テトラエトキシシラン 0.1体積%
添加ガス:酸素 1.0体積%
(低屈折率層成膜条件)
第1電極側
電源種類 ハイデン研究所 100kHz(連続モード) PHF−6k
周波数 100kHz
出力密度 10W/cm2(この時の電圧Vpは7kVであった)
電極温度 120℃
第2電極側
電源種類 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
周波数 13.56MHz
出力密度 10W/cm2(この時の電圧Vpは2kVであった)
電極温度 90℃
《支持体3の作製》
支持体1の作製において、ガスバリア層を下記のバリア層2に変更した以外は同様にして支持体3を作製した。
(バリア層2の作製)
特表2009−503157号公報の[実施例]の欄における例2にあるポリシラザン膜のエキシマ照射処理によるバリア作製方法に準じた方法により作製した。
《支持体4の作製》
支持体1の作製において、ガスバリア層を作製しない以外は同様にして支持体4を作製した。
《支持体5の作製》
支持体3の作製において、紫外線遮蔽層を作製しない以外は同様にして、支持体5を作製した。
《支持体6の作製》
支持体1の作製において、紫外線遮蔽層を作製しない以外は同様にして、支持体6を作製した。
《支持体7の作製》
支持体1の作製において、紫外線遮蔽層を以下に記載の紫外線遮蔽層UV−3を作製した以外は同様にして、支持体7を作製した。
(紫外線遮蔽層UV−3の作製)
次に、樹脂基板上に設けた平滑層の上に、ベンゾトリアゾール系紫外吸収剤(ユーダブル UV−G13:日本触媒社製)50部、熱架橋剤(“スミジュール”(登録商標)N3200:バイエル社製)5部、及びトルエン45部からなる溶液を塗布、熱乾燥し、紫外線遮蔽層UV−3を作製した。
《支持体8の作製》
支持体1の作製において、紫外線遮蔽層を作製しないで、ガスバリア層を下記のバリア層3に変更した以外は同様にして、支持体8を作製した。
(バリア層3の作製)
特開2001−111076号公報の[実施例1]の欄の[0064]行目〜[0066]にあるポリシラザン膜の熱処理によるバリア作製方法に準じた方法により作製した。
《有機光電変換素子1〜8の作製》
上記で作製された支持体1〜6の上に、各々、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗10Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィ技術と湿式エッチングとを用いて2mm幅にパターニングし第1の電極を作製した。
パターン形成した第1の電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を(平均)膜厚が30nmになるように塗布乾燥した後、150℃で30分間熱処理させ正孔輸送層を製膜した。
これ以降は、支持体1〜8を各々窒素チャンバー中に持ち込み、窒素雰囲気下で作製を継続した。
まず、窒素雰囲気下で上記基板を150℃で10分間加熱処理した。次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクトロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)とPCBM(フロンティアカーボン社製:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を3.0質量%になるように1:0.8で混合した液を調製し、フィルタでろ過しながら(平均)膜厚が100nmになるように塗布を行い、室温で放置して乾燥させた。
続けて、150℃で15分間加熱処理を行い、発電層(光電変換層)を製膜した。
次に、上記一連の機能層を製膜した支持体を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、1×10−4Pa以下まで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.01nm/秒でフッ化リチウムを0.6nm積層し、更に続けて、2mm幅のシャドウマスクを通して(受光部が2×2mmに成るように直行させて蒸着)、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを100nm積層することで第2の電極を作製した。
得られた第二電極まで形成した有機光電変換素子1〜8を各々を窒素チャンバーに移動し、下記に記載のようにして封止処理を行い、受光部が2×2mmサイズの有機光電変換素子1〜8を各々作製した。
(封止処理)
第二電極まで形成した有機光電変換素子1〜8を規定の大きさに裁断し、電極リードを接続後、市販のロールラミネート装置を用いて封止部材を接着し、有機光電変換素子1〜8を作製した。
尚、封止部材として、30μm厚のアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製)に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(12μm厚)をドライラミネーション用の接着剤(2液反応型のウレタン系接着剤)を用いラミネートした(接着剤層の厚み1.5μm)ものを用いた。
アルミニウム面に熱硬化性接着剤を、ディスペンサを使用してアルミ箔の接着面(つや面)に沿って厚み20μmで均一に塗布した。
熱硬化接着剤としては以下のエポキシ系接着剤を用いた。
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)
ジシアンジアミド(DICY)
エポキシアダクト系硬化促進剤
しかる後、封止基板を、取り出し電極が及び電極リードの接合部を覆うようにして密着・配置して、圧着ロールを用いて厚着条件、圧着ロール温度120℃、圧力0.5MPa、装置速度0.3m/分で密着封止した。
《エネルギー変換効率の評価》
得られた有機光電変換素子1〜8の各々について、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cm2の強度の光を照射し、有効面積を4.0mm2にしたマスクを受光部に重ね、IV特性を評価することで、短絡電流密度Jsc(mA/cm2)、開放電圧Voc(V)及びフィルファクターFF(%)を、同素子上に作製した4箇所の受光部をそれぞれ測定し、下記式1に従って求めたエネルギー変換効率PCE(%)の4点平均値を測定し、有機光電変換素子1〜8の初期の変換効率を求めた。
(式1)
PCE(%)=〔Jsc(mA/cm2)×Voc(V)×FF(%)〕/100mW/cm2
《暗所保存性》
性能の経時的低下の度合いを、温度65℃、湿度90%RH環境で1000時間保存した加速試験後の変換効率残存率を下記の式2により求め、有機光電変換素子1の変換効率残存率を100としたときの相対値を求めた。
(式2)
変換効率残存率(%)=(1000時間保存後の変換効率/初期変換効率)×100
《明所保存性》
性能の経時的低下の度合いを、温度40度、湿度80%RH環境で、陽極と陰極の間に抵抗を接続したまま、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の200mW/cm2の照射強度で1500時間照射し続けた後の変換効率を評価し、下記の式3により変換効率残存率を求め、有機光電変換素子1の変換効率残存率を100としたときの相対値を求めた。
(式3)
変換効率残存率(%)=(1500時間保存後の変換効率/初期変換効率)×100
評価結果を表1に示す。
表1から、比較の有機光電変換素子4〜6、8に比べて、本発明に係る有機光電変換素子1〜3、7は、各々、暗所保存性、明所保存性共に良好であり、過酷な環境下でも性能劣化が発生し難いことが分かる。
実施例2
下記に記載のようにして、支持体2−1〜2−7を各々作製し、次いで、該支持体2−1〜2−7を用いて有機光電変換素子2−1〜2−7を各々作製した。
《支持体2−1の作製》
実施例1の支持体2の作製と同様にして、支持体2−1を作製した。
《支持体2−2の作製》
支持体2−1の作製と同様に紫外線遮蔽層UV−2を設けた樹脂基板に、ガスバリア層を以下に示す条件で形成し、支持体2−2を作製した。
パーヒドロポリシラザン(PHPS)の20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ NAX120(アミン触媒入り))を、ワイヤレスバーにて、乾燥後の(平均)膜厚が、0.30μmとなるように塗布し、塗布試料を得た後、以下に示す第1工程(乾燥処理)、第二工程(除湿処理)ついで、改質処理Bを行い、支持体2−2を得た。
(第一工程:乾燥処理)
得られた塗布試料を温度85℃、湿度55%RHの雰囲気下で1分処理し、乾燥試料を得た。
(第二工程:除湿処理)
乾燥試料を更に温度25℃、湿度10%RH(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行った。
(改質処理B)
除湿処理を行った試料を下記の条件で改質処理Bを行い、ガスバリア層を作製した。改質処理時の露点温度は−8℃で実施した。
(改質処理装置)
株式会社 エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200、波長 172nm、ランプ封入ガス Xe
稼動ステージ上に固定した試料を以下の条件で改質処理を行った。
(改質処理条件)
エキシマ光強度 150mW/cm2(172nm)
試料と光源の距離 1mm
ステージ加熱温度 70℃
照射装置内の酸素濃度 0.5%
エキシマ照射時間 3秒
《支持体2−3の作製》
支持体2−1の作製において、改質処理Aを以下の改質処理Cに変更した以外は同様にして支持体2−3を得た。
(改質処理C)
除湿処理を行った試料を下記の条件でプラズマ処理を行いガスバリア層を作製した。
また、製膜時の支持体保持温度は、120℃とした。
ロール電極型放電処理装置を用いて処理を実施した。ロール電極に対向する棒状電極を複数個フィルムの搬送方向に対し平行に設置し、各電極部にガス及び電力を投入し以下のように、塗工面が20秒間プラズマ照射されるように適宜処理を行った。
尚、プラズマ放電処理装置の上記の各電極を被覆する誘電体は、対向する両電極共に、セラミック溶射加工により片肉で1mm厚のアルミナを被覆したものを使用した。
また、被覆後の電極間隙は、0.5mmに設定した。また誘電体を被覆した金属母材は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケット仕様であり、放電中は冷却水による電極温度コントロールを行いながら実施した。ここで使用する電源は、応用電機製高周波電源(100kHz)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)を使用した。
放電ガス:N2ガス
反応ガス:酸素ガスを全ガスに対し7%
低周波側電源電力:100kHzを6W/cm2
高周波側電源電力:13.56MHzを10W/cm2
《支持体2−4の作製》
支持体2−2の作製において、改質処理時間を0.5秒にした以外は同様にして支持体2−4を作製した。
《支持体2−5の作製》
支持体2−1の作製において、改質処理Aを以下の改質処理Dにした以外は同様にして支持体2−5を得た。
(改質処理D)
除湿処理を行った試料を下記の条件で改質処理を行い、ガスバリア層を作製した。改質処理時の露点温度は−8℃で実施した。
(改質処理装置)
株式会社 ウシオ製:紫外照射装置 型式UVH−0252C
稼動ステージ上に固定した試料を以下の条件で改質処理を行った。
(改質処理条件)
UV光強度: 2000mW/cm2
試料と光源の距離: 30mm
ステージ加熱温度: 40℃
照射装置内の酸素濃度: 5%
UV照射時間: 180秒
《支持体2−6の作製》(ポリシラザン膜の常圧プラズマ処理)
支持体2−1の作製において、ガスバリア層の作製を以下のように変えた以外は同様にして支持体2−6を得た。
(ガスバリア層の作製)
特開2007−237588号公報の〔実施例〕の欄にある実施例11にあるポリシラザン膜の常圧プラズマ処理によるバリア作製方法に準じた方法により作製した。
《支持体2−7の作製》(ポリシラザン膜のエキシマ処理)
支持体2−1の作製において、ガスバリア層の作製を以下のように変えた以外は同様にして支持体2−7を得た。
(ガスバリア層の作製)
特表2009−503157号公報の〔実施例〕の欄における例2にあるポリシラザン膜のエキシマ照射処理によるバリア作製方法に準じた方法により作製した。
得られた支持体2−1〜2−7の膜密度と(平均)膜厚を以下の方法で測定した。
(膜密度測定)
X線反射率測定装置:理学電気製薄膜構造評価装置ATX−G
X線源ターゲット:銅(1.2kW)
測定:4結晶モノクロメータを用いてX線反射率曲線を測定し、密度分布プロファイルのモデルを作成、フィッティングを行い、膜厚方向の密度分布を算出した。
(膜厚:膜厚方向の断面のTEM画像観察)
観察試料を以下のFIB加工装置により薄片作製後、TEM観察を行った。このとき試料に電子線を照射し続けると電子線ダメージを受ける部分とそうでない部分にコントラスト差が現れるため、その領域を測定することで改質膜厚を算出した。
尚、膜厚は、下記方法によりガスバリア層の10個所について測定の測定値の算術平均の値とした。
(FIB加工)
装置:SII製SMI2050
加工イオン:(Ga 30kV)
試料厚さ:200nm
(TEM観察)
装置:日本電子製JEM2000FX(加速電圧:200kV)
電子線照射時間:30秒
表面粗さRaは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が30μmの区間内を10回測定し、微細な凹凸の振幅に関する平均の粗さから求めた。
《有機光電変換素子2−1〜2−7の作製》
上記で作製された支持体2−1〜2−7の上に、各々、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗10Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィ技術と湿式エッチングとを用いて2mm幅にパターニングし第1の電極を作製した。
パターン形成した第1の電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を(平均)膜厚が20nmになるように塗布乾燥した後、150℃で30分間熱処理させ正孔輸送層を製膜した。
これ以降は、支持体2−1〜2−7を各々窒素チャンバー中に持ち込み、窒素雰囲気下で作製を継続した。
まず、窒素雰囲気下で上記基板を150℃で10分間加熱処理した。次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクトロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)とPCBM(フロンティアカーボン社製:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を3.0質量%になるように1:0.8で混合した液を調製し、フィルタでろ過しながら(平均)膜厚が80nmになるように塗布を行い、室温で放置して乾燥させた。
続けて、150℃で15分間加熱処理を行い、発電層(光電変換層)を製膜した。
次に、上記一連の機能層を製膜した支持体を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、1×10−4Pa以下まで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.01nm/秒でフッ化リチウムを0.6nm積層し、更に続けて、2mm幅のシャドウマスクを通して(受光部が2×2mmに成るように直行させて蒸着)、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを100nm積層することで第2の電極を作製した。
得られた第二電極まで形成した有機光電変換素子2−1〜2−7を各々を窒素チャンバーに移動し、下記に記載のようにして封止処理を行い、受光部が2×2mmサイズの有機光電変換素子2−1〜2−7を各々作製した。
(封止処理)
第二電極まで形成した有機光電変換素子2−1〜2−7を規定の大きさに裁断し、電極リードを接続後、市販のロールラミネート装置を用いて封止部材を接着し、有機光電変換素子2−1〜2−7を作製した。
なお、封止部材として、30μm厚のアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製)に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(12μm厚)をドライラミネーション用の接着剤(2液反応型のウレタン系接着剤)を用いラミネートした(接着剤層の厚み1.5μm)ものを用いた。
アルミニウム面に熱硬化性接着剤を、ディスペンサを使用してアルミ箔の接着面(つや面)に沿って厚み20μmで均一に塗布した。
熱硬化接着剤としては以下のエポキシ系接着剤を用いた。
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)
ジシアンジアミド(DICY)
エポキシアダクト系硬化促進剤
しかる後、封止基板を、取り出し電極がおよび電極リードの接合部を覆うようにして密着・配置して、圧着ロールを用いて厚着条件、圧着ロール温度120℃、圧力0.5MPa、装置速度0.3m/分で密着封止した。
《明所保存性の評価》
得られた有機光電変換素子2−1〜2−7の各々について、性能の経時的低下の度合いを温度40度、湿度80%RH環境で、陽極と陰極の間に抵抗を接続したまま、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の200mW/cm2の照射強度で1500時間照射し続けた後の変換効率を評価し、実施例1と同様に変換効率残存率を求め、各有機光電変換素子の明所保存性を評価した。尚、明所保存性の評価は、有機光電変換素子2−1の変換効率残存率を100としたときの相対値で表した。
評価結果を表2に示す。
表2より、本発明の有機光電変換素子2−1〜2−7は、いずれも明所保存性が良好であることが分かる。
本発明の有機光電変換素子の特に好ましい態様としては、表2の有機光電変換素子2−1、2−2のように、ポリシラザン膜の改質処理をしたガスバリア層のΔdは0.1g/cm3以上であり、ガスバリア層のRaが2nm以下であり、ガスバリア層の膜密度d1を有する内側領域の平均膜厚は30nm以上であり、且つ、ガスバリア層の改質処理として、180nm以下の波長成分を有する真空紫外線を照射処理された場合が好ましいことが分かった。