JP5935263B2 - ガスバリア性フィルム、ガスバリア性フィルムの製造方法、及びガスバリア性フィルムを有する有機電子デバイス - Google Patents

ガスバリア性フィルム、ガスバリア性フィルムの製造方法、及びガスバリア性フィルムを有する有機電子デバイス Download PDF

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Description

本発明は、主に電子デバイス等のパッケージ、または有機エレクトロルミネッセンス素子や太陽電池、液晶等のプラスチック基板といったディスプレイ材料に用いられるガスバリア性フィルムとその製造方法、及び該ガスバリア性フィルムを用いた有機電子デバイスに関するものである。
従来、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物の薄膜を作製したガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。
また、包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス(EL)基板等で使用されている。
この様なガスバリア性フィルムを作製する方法として、テトラエトキシシラン(TEOS)に代表される有機珪素化合物を用いて、減圧下の酸素プラズマで酸化しながら基板上に成膜する化学堆積法(プラズマCVD)や半導体レーザーを用いて金属Siを蒸発させ酸素の存在下で基板上に堆積するスパッタ法が知られている。
これらの方法は、正確な組成の薄膜を基板上に作製できるため、SiOをはじめとする金属酸化物薄膜の作製に好ましく使われてきたが、減圧下での成膜となるため、減圧及び大気開放に時間を要すること、連続生産が難しいこと、設備が大型化することなど著しく生産性が悪いという問題点があった。
かかる問題を解決するため、生産性の向上を目的に、珪素含有化合物を塗布し、その塗膜を改質することで酸化シリコン薄膜を作製する方法、及び化学気相成長法(CVD法)でも、大気圧下でプラズマを発生し大気圧下で成膜する試みが行われており、ガスバリア性フィルムにおいても検討されている。
一般的に溶液プロセスで作製可能な酸化ケイ素膜としては、アルコキシド化合物を原料として、ゾル−ゲル法と呼ばれる方法で作製する技術が知られている。
このゾル−ゲル法は一般的に高温に加熱する必要があり、更に脱水縮合反応の過程で大きな体積収縮が起こり、膜中に多数の欠陥が生じやすいという問題がある。
これを防ぐために原料溶液に酸化物の作製に直接関与しない有機物などを混合する手法なども見いだされてはいるが、これらの有機物が膜中に残存することによって膜全体のバリア性の低下が懸念されている。
これらのことから、ゾル−ゲル法で作製する酸化膜をそのままフレキシブル電子デバイスの保護膜として用いるのは困難であった。
その他の方法としては原料にシラザン構造(Si−N)を基本構造とするシラザン化合物を用いて酸化ケイ素を作製することが提案されており、この場合の反応は脱水縮重合ではなく窒素から酸素への直接的な置換反応であるため、反応前後の質量収率が80%から100%以上と大きく、体積収縮による膜中欠陥が少ない緻密な膜が得られることが知られている。
しかしながら、シラザン化合物の置換反応による酸化シリコン薄膜の作製には450℃以上の高温が必要であり、プラスチック等のフレキシブル基板に適応することは不可能である。
昨今では、シラザン化合物内の原子間結合力より大きい真空紫外光(VUV光)と呼ばれる100nm〜200nmの光エネルギーを用いて、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみによる作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温で、酸化シリコン膜の作製をおこなう方法が提案されている。
例えば、特許文献1においては、ポリシラザン膜を湿式法で形成し、真空紫外線処理を施すことでポリシラザン膜の一部をシリカに転化しガスバリア層を形成する技術が開示されている。しかしながら、開示されている作成方法では真空紫外線を1分〜5分もの長時間照射しており、例えばロール・トゥ・ロールの様な連続生産を考えた場合、非常に長い照射ラインが必要になり生産性が高いとは言えない。
また、特許文献2においては、ポリシラザン膜を湿式法で形成し、水蒸気を含む雰囲気においてUV光を照射することによりガスバリア層を形成する技術が開示されている。
しかしながら、水蒸気を含む雰囲気によりシラノール形成後の脱水反応が十分に進まず、そのために得られる膜密度が低く、ガスバリア性能としては十分でなかった。残存シラノールを脱水縮合するためには、300℃〜400℃程度の熱若しくはそれに類するエネルギーを与える必要があり、特にフレキシブルな樹脂基板で高いガスバリア性を発現させることは困難であった。
そこで、本発明者らが先に鋭意検討した結果、ポリシラザンの改質を効率的に進めるには適度な酸素源の存在とポリシラザン結合を活性化するための適度な光エネルギーの存在が必要であることが判明した。特にエキシマ光を用いて改質を行う場合、雰囲気の酸素濃度によって膜面へ届くエキシマ光の光量が大きく変化するため、効率的な処理を行うには酸素濃度が高くなりすぎないように制御することが必要である。また、酸素源としての過剰な水分の存在は、前述したようなシラノール形成を助長してしまい、バリア性の大幅な劣化を引き起こす。
よって、ポリシラザン塗布膜を0.1%以下の低酸素濃度雰囲気下、かつ、低湿度下でVUV照射して転化したバリア層は、緻密で高いバリア性を有する上、CVD等で形成した膜より欠陥が少なく平坦化できるため、優れたバリア性フィルムを形成することができる。
しかしながら、加熱・加湿環境下での加速劣化性能評価において、水蒸気を透過し始めてから、ある点で急激にバリア性が劣化してしまい、バリア性を失ってしまうことが、Ca法によるバリア性評価や有機デバイス素子評価で確認されており、安定なガスバリア性フィルムを得る上での大きな課題となっている。
また、樹脂基材とバリア層間に層を設けることについては、主に樹脂基材とバリア層間の密着性改良のために、基材・バリア層間にプライマー層を設けることが特許文献3あるいは、特許文献4に開示されている。
特開2009−255040号公報 特表2009−503157号公報 特開2009−101620号公報 特開2011−718号公報
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、生産性が高く、高いガスバリア性能と高いガスバリア性能安定性(湿熱耐性、屈曲耐性)を達成できるガスバリア性フィルムと、ガスバリア性フィルムの製造方法、及び該ガスバリア性フィルムを用いた電子デバイスを提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.樹脂基材と、少なくとも1層のバリア層と、少なくとも基材側で前記バリア層に隣接する隣接層1を有するガスバリア性フィルムにおいて、
屈曲後の1%水蒸気透過率及び高温高湿耐性の100%水蒸気透過率が、3×10 −3 g/m /day未満であり、かつ、
下記(1)及び(2)を満たすことを特徴とするガスバリア性フィルム。
(1)前記隣接層1が少なくとも、M原子(MはSiを表す。)、O原子、C原子を同時に含む領域を有し、原子組成比で、C/Mが0.2〜2.2、かつ、O/Mが1.0〜2.0である。
(2)前記バリア層が少なくとも、Si原子及びN原子を同時に含む領域を有し、原子組成比で、N/Siが0.3〜0.8、C/Si<0.1である。
2.前記1に記載のガスバリア性フィルムにおいて、前記バリア層が更にO原子を含み、原子組成比でO/Siが0.2〜1.3であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
3.前記1または2に記載のガスバリア性フィルムにおいて、基材側で前記バリア層に隣接する隣接層1に加えて、基材とは反対側で前記バリア層に隣接する隣接層2を更に有することを特徴とするガスバリア性フィルム。
.前記1〜のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムを製造するガスバリア性フィルムの製造方法であって、パーヒドロポリシラザンを含有する組成物の塗布液を前記隣接層1上に塗布した後、転化処理を施すことで無機物を含むバリア層を形成することを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
.前記に記載のガスバリア性フィルムの製造方法において、前記転化処理が紫外線照射処理であることを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
6.前記1〜3のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムで封止したことを特徴とする有機電子デバイス。
本発明により、生産性が高く、高いガスバリア性能と高いガスバリア性能安定性を達成できるガスバリア性フィルム、ガスバリア性フィルムの製造方法、及び該ガスバリア性フィルムを用いた電子デバイスを提供することができた。
バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子を有する本発明の太陽電池の一例を示す断面図である。 タンデム型のバルクへテロジャンクション層を備える有機光電変換素子を有する太陽電池の一例を示す断面図である。 タンデム型のバルクへテロジャンクション層を備える有機光電変換素子を有する太陽電池の一例を示す断面図である。 作成したガスバリア性フィルムの構成を示す断面図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
上記の様な、ガスバリア性フィルムの、加熱・加湿環境下での性能劣化、即ち、水蒸気を透過し始めてから、ある点で急激にバリア性が劣化してしまう現象については、これまで急激劣化の原因が全く掴めず、改良手段へと結びつけることができなかった。
発明者は、検討を進めていくうちに、バリア性が急激に劣化し、安定なバリア性フィルムが得られない原因が、主に以下の3点によるものではないかという推測に至った。
1)湿熱により樹脂基材とバリア層間の密着性が急激に劣化し、バリアフィルムが破壊
2)塗布型バリア層転化形成時に蓄積される内部応力によるバリア層の破壊
3)基材側からの水分によるポリシラザン改質膜の膜質低下
よって、急激にバリア性が劣化しない安定なバリア性フィルムを得るためには、柔軟な樹脂基材上に良好な膜質で改質されたポリシラザン転化バリア層を安定に保持するようなバリア層下層を開発することが最も重要であると考えられた。
主に樹脂基材とバリア層間の密着性改良のために、基材・バリア層間にプライマー層を設けたバリアフィルムについては、前記のように、特許文献3或いは特許文献4に開示されている。
しかしながら、ポリシラザン改質膜の膜質が、バリア層下層の組成によって大きく異なり、適切なバリア層下層を選択すれば、改質効率及び性能安定性を大幅に向上させることが可能であることに関しては、これまで全く知られてこなかったのが現状である。
このように、バリア層であるポリシラザン改質膜のバリア性の急激な劣化をなくし、湿熱下でも基材との密着性劣化がなく、バリア層に蓄積された内部応力を緩和するためには、バリア層形成時に基材側からの酸素源として水分の供給を抑えるため、バリア層下層(隣接層1)として、原子組成比が、本発明の範囲である隣接層1を形成すればよい。
また、プロセス耐性等も含め、より安定性を高めるためには、更にバリア層上層に同様の層(隣接層2)を設けることが好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
《ガスバリア性フィルム及びガスバリア性フィルムの製造方法》
本発明のガスバリア性フィルム及びガスバリア性フィルムの製造方法について説明する。
本発明のガスバリア性フィルムは、樹脂基材と、少なくとも1層のバリア層と、少なくとも基材側で前記バリア層に隣接する少なくとも1層の隣接層1からなることを特徴とし、さらに、前記隣接層1と前記バリア層が、下記(1)及び(2)を満たすことを特徴とする。
(1)前記隣接層1が少なくとも、M原子(MはSi、Ti、Zr、Al、Znを表す)、O原子、C原子を同時に含む領域を有し、C/Mが0.2〜2.2、かつ、O/Mが1.0〜2.0である。
(2)前記バリア層が少なくとも、Si原子、N原子を同時に含む領域を有し、N/Siが0.3〜0.8、C/Si<0.1である。
また、前記バリア層については、Si原子、N原子に加え、さらにO原子を同時に含む領域を有し、O/Siが0.2〜1.3を満たすことがより好ましい。C/Siについては、好ましくは0.1未満であり、検出限界以下が最も好ましい。0.1以上ではガスバリア性が劣化する。
また、基材側で前記バリア層に隣接する隣接層1に加えて、基材とは反対側で前記バリア層に隣接する隣接層2を更に有する構成であることがより好ましい。
さらに、前記隣接層1に含まれるM原子は、Si、Ti、Zr、Al、Znを表すが、Si原子であることが最も好ましい。
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法としては、ガスバリア層の形成において、パーヒドロポリシラザンを含有する組成物の塗布液を前記隣接層1上に塗布した後、転化処理(改質処理ともいう)を施すことで無機物を含むバリア層を形成することを特徴とする。
さらに、前記転化処理は、紫外線照射処理であることを特徴とする。
パーヒドロポリシラザンを含む溶液を塗布して塗膜を形成する工程後から該塗膜を改質処理する工程については、後に詳細に説明する。
〔ガスバリア性〕
また、本発明でいうガスバリア性とは、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(60±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下であり、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−3ml/m・24h・atm以下(1atmとは、1.01325×10Paである)であると定義する。
〔ガスバリア性フィルムの構成〕
尚、ガスバリア層(単に、バリア層、バリア膜ともいう)は、単層(1塗布で作製可能な層)でも複数の同様な層を積層してもよい。複数の層を設けることで、更にガスバリア性を向上させることができる。また、基材の片面のみにガスバリア層を設けてもよいが、基材を挟んで両面に同様のガスバリア層を設けてもよい。
また、隣接層1と同様の層を、基材上の隣接層1及びバリア層を設けた側とは反対側の基材の裏面側にも設けることで、基材変形を抑えることが可能となり、カールバランスを保てるだけでなく、デバイス作製プロセス耐性やハンドリング適性も向上する点で、より好ましい。このようなカールバランスの調整は、裏面側に設ける層(バックコート層ともいう)の膜厚、硬化条件等を最適化することで可能となる。
また、複数のバリア層を設ける場合、前述したようにバリア層の上に更にバリア層を積層してもよいが、バリア層の上に設けた隣接層2の上に、更にバリア層を設けることも好ましく用いられる。このようにバリア層とバリア層の間に隣接層1と同様の原子組成比からなる隣接層2を設けることで、2層目のバリア層も1層目のバリア層と同様の効果が期待できることから、より望ましい改質状態のバリア層を2層形成することができると考えられる。
〔ガスバリア層の形成〕
本発明のガスバリア層は、ポリシラザン、好ましくはパーヒドロポリシラザンを含有する組成物の塗布液を隣接層1上に塗布した後、真空紫外線(VUV光)照射による改質処理を施すことで、無機物を含むバリア層を形成することを特徴とする。
本発明における無機物を含むバリア層は、少なくとも、Si原子、N原子を同時に含む領域を有し、より好ましくは、Si原子、N原子、O原子を同時に含む領域を有することを特徴としている。
具体的な無機物としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素などが挙げられる。
また、本発明におけるバリア層の原子組成比としては、N/Siが0.3〜0.8であることを特徴としており、さらにO/Siが0.2〜1.3を満たすことがより好ましい。C/Siについては、0.1未満であり、検出限界以下が最も好ましい。0.1以上ではガスバリア性がなくなる。
Si原子、N原子、O原子、またC原子の各原子組成比については、XPS表面分析によって求める。
表面分析に用いるXPS表面分析装置としては、特に限定はなく、いかなる機種も使用することができるが、本実施例においてはVGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。
本発明の原子組成比からなるバリア層は、パーヒドロポリシラザンの塗布膜を後述するような適度な酸化性ガス雰囲気下と低湿度環境下で真空紫外線照射を行うことと、後述する隣接層1を下層に設けた構成とすることの2つを揃えることで、効率的に形成することが可能となる。
〔ポリシラザンを含有する塗膜の形成〕
(塗布方法)
本発明に係るポリシラザンを含有する塗膜は、基材上に少なくとも1層のポリシラザン化合物を含有する塗布液を湿式塗布することにより作製される。
塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布厚さは、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、塗布厚さは、乾燥後の厚さが好ましくは1nm〜100μm程度、さらに好ましくは10nm〜10μm程度、最も好ましくは10nm〜1μm程度となるように設定され得る。
塗布された膜は、溶媒が除去された均一な乾燥膜を得る上で、アニールする態様が好ましい。アニール温度は、好ましくは60〜200℃、さらに好ましくは70〜160℃である。アニール時間は、好ましくは5秒〜24時間程度、さらに好ましくは10秒〜2時間程度である。
このように、次工程に続く転化処理前に、前述した範囲でアニールを行うことにより、均一な塗布膜を安定に得ることができる。
なお、アニールは、一定温度で行ってもよく、段階的に温度を変化させてもよく、連続的に温度を変化(昇温及び/または降温)させてもよい。
また、ポリシラザンを含有する塗布液及び塗膜を一旦、湿度の高い状態に晒してしまうと、その塗布液や塗膜から脱水するのは困難なこと、更には加水分解反応が進行をはじめてしまうことから、塗布液の調製段階から改質処理が終わるまでの間を露点10℃(25℃39%RH)以下の雰囲気、更に好ましくは露点8℃(25℃10%RH)以下の雰囲気で保管若しくは取り扱うことで膜内のSi−OH生成を抑制することが可能となる。より好ましくは露点−31度(25℃1%RH)以下である。また、薄膜が形成されると塗膜体積あたりの表面積が増えて水蒸気の影響が大きくなることから、特に、ポリシラザン含有溶液塗布からVUV光照射による改質処理までの間は雰囲気湿度の制御が重要である。
尚、露点温度とは雰囲気中の水分量を表す指標であり、露点温度とは、水蒸気を含む空気を冷却したとき、凝結が始まる温度をいう。
露点温度計により直接測定を行うか、気温と相対湿度から水蒸気圧を求め、その水蒸気圧を飽和水蒸気圧とする温度を求めることにより得ることができる。相対湿度が100%の場合は現在の温度がそのまま露点温度にある。
(ポリシラザンを含有する組成物の塗布液)
本発明で用いられる「ポリシラザン」とは、珪素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Si及び両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
フィルム基材を損なわないように塗布するためには、特開平8−112879号公報に記載されている下記の一般式(1)で表されるような比較的低温でセラミック化してシリカに変性する化合物が好ましい。
一般式(1)
−Si(R)(R)−N(R)−
式中、R、R、Rは、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基またはアルコキシ基を表す。
本発明では、得られるガスバリア層(単に、バリア層ともいう)としての緻密性の観点からは、R、R及びRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザン(PHPSともいう)が特に好ましい。
一方、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは直鎖構造と6及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体又は固体の物質であり、分子量により異なる。これらは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままパーヒドロポリシラザン含有塗布液として使用することができる。
低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、上記一般式(1)で表されるポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(例えば、特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(例えば、特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(例えば、特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(例えば、特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
ポリシラザンを含有する液体を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは好ましくない。具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリコロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。これらの溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度、等目的にあわせて選択し、複数の溶剤を混合しても良い。
ポリシラザン含有塗布液中のポリシラザン濃度は目的とするシリカ膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2質量%〜35質量%程度である。
(パーヒドロポリシラザンを含有する組成物)
本発明におけるパーヒドロポリシラザンを含有する組成物としては、パーヒドロポリシラザンを含有していれば特に制限はなく、組成物中のパーヒドロポリシラザン以外の材料としては、パーヒドロポリシラザン及びその溶媒と塗布可能な程度の相溶性を有していれば、いかなる材料を用いてもよい。
また、組成物中には、パーヒドロポリシラザンに対し、0.1〜10質量%程度で酸化反応を促進するために添加されるアミンや金属等の触媒を含んでもよく、特にアミン触媒を0.5〜5質量%含むことが、塗布性及び反応の短時間化の点で好ましい。
組成物中の溶媒、添加剤を除いたパーヒドロポリシラザンの含有率としては、80質量%以上であることがバリア性の観点から好ましく、100質量%、すなわち、パーヒドロポリシラザンのみからなることが、緻密で高いバリア性を有する膜を形成できる点で最も好ましい。
本発明におけるパーヒドロポリシラザンとして入手可能な材料は、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NN120、NN110、NAX120、NAX110、NL120A、NL110A、NL150A、NP110、NP140等が挙げられる。
〔パーヒドロポリシラザンの転化処理〕
(紫外線照射による転化処理)
パーヒドロポリシラザンを含有する組成物に施す本発明における転化処理(改質処理)は、適度な酸化性ガス雰囲気下と低湿度環境下で紫外線を照射することにより行う。
紫外光を照射することで活性酸素やオゾンが発生し、酸化反応が進行することで、所望の組成を有する無機膜を得ることができる。
この活性酸素やオゾンは非常に反応性が高いため、パーヒドロポリシラザンを含有する組成物から形成した塗布膜中のポリシラザンは、シラノールを経由することなく直接酸化されることで、より高密度で欠陥の少ない酸化ケイ素あるいは酸窒化ケイ素膜が形成される。
本発明における転化処理は、加熱処理と組み合わせて行うことがより好ましい。
さらに反応性オゾンの不足分を光照射部とは異なる部分で、放電法等の公知の方法により酸素からオゾンを生成し、紫外線照射部に導入してもよい。
このときに照射する紫外線の波長は特に限定されるところではないが、紫外光の波長は100〜450nmが好ましく、100〜300nm程度の真空紫外線(VUV光)を照射することがより好ましい。
光源は、低圧水銀灯、重水素ランプ、キセノンエキシマランプ、メタルハライドランプ、エキシマレーザー等を用いることができる。ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては100mW/cm〜100kW/cm、照射エネルギーとしては10〜5000mJ/cmが好ましく、100〜2000mJ/cmがより好ましい。また、紫外線照射の際の照度は1mW/cm〜10W/cmが好ましい。
上記の中でも、波長としては、100〜200nmの真空紫外線(VUV光)が最も好ましく、酸化反応をより低温、短時間で進めることが可能となる。また、光源としては、キセノンエキシマランプ等の希ガスエキシマランプが最も好ましく用いられる。
パーヒドロポリシラザンを含有する組成物から形成した塗布膜中のポリシラザンに、酸化性ガス雰囲気下で紫外線を照射することにより、ポリシラザンが高密度のケイ素酸化物膜、すなわち高密度シリカ膜に転化するが、該シリカ膜の膜厚や密度は紫外線の強度、照射時間、波長(光のエネルギー密度)により制御が可能であり、所望の膜構造を得るためにランプの種類を使い分ける等、適宜選択することが可能である。また、連続的に照射するだけでなく複数回の照射を行ってもよく、複数回の照射が短時間ないわゆるパルス照射であってもよい。
また、紫外線照射と同時に該塗膜を加熱することも、反応(酸化反応、転化処理、改質処理ともいう)を促進するために好ましく用いられる。加熱の方法は、ヒートブロック等の発熱体に基板を接触させ熱伝導により塗膜を加熱する方法、抵抗線等による外部ヒーターにより雰囲気を加熱する方法、IRヒーターの様な赤外領域の光を用いた方法等が挙げられるが、特に限定はされない。塗膜の平滑性を維持できる方法を適宜選択してよい。
加熱する温度としては、50〜200℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは80〜150℃の範囲であり、加熱時間としては1秒〜10時間の範囲が好ましく、さらに好ましくは10秒〜1時間の範囲で加熱することである。
(真空紫外線(VUV)照射による転化処理)
光照射処理の中でもより好ましいのは、真空紫外線(VUV光)処理である。
この真空紫外線(VUV光)照射により、ポリシラザンの分子結合を切断し、また膜内若しくは雰囲気内に微量に存在する酸素でも効率的にオゾン若しくは活性酸素に変換することが可能であり、塗膜表面のセラミックス化(シリカ改質)が促進され、また得られるセラミックス膜が一層緻密になる。VUV光照射は、塗膜形成後であればいずれの時点で実施しても有効である。
本発明における真空紫外線とは、具体的には100〜200nmの真空紫外線(VUV光)が用いられる。真空紫外線の照射強度及び/または照射時間は、適宜設定することが可能である。真空紫外線照射装置は、市販のランプ(例えば、ウシオ電機製)を使用することが可能である。
VUV光照射はバッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、被塗布基材の形状によって適宜選定することができる。例えば、バッチ処理の場合には、パーヒドロポリシラザンを含有する組成物から形成した塗布膜を設けた基材を、真空紫外線発生源を具備した真空紫外線焼成炉で処理することができる。真空紫外線焼成炉自体は一般に知られており、例えば、ウシオ電機(株)製を使用することができる。また、パーヒドロポリシラザンを含有する組成物から形成した塗布膜を設けた基材が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら上記のような真空紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に真空紫外線を照射することにより、表面をセラミックス化することができる。
該真空紫外光は、ほとんどの物質の原子間結合力より大きいため、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみによる作用により、直接切断することが可能であるため好ましく用いることができる。この作用を用いることにより、加水分解を必要とせず低温でかつ効率的に改質処理が可能となる。
これに必要な真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
Xe、Kr、Ar、Ne等の希ガスの原子は化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電等によりエネルギーを得た希ガスの原子(励起原子)は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には
e+Xe→Xe
Xe+2Xe→Xe +Xe
Xe →Xe+Xe+hν(172nm)
となり、励起されたエキシマ分子であるXe が基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光を発光する。エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。また、余分な光が放射されないので、対象物の温度を低く保つことができる。さらには始動・再始動に時間を要さないので、瞬時の点灯点滅が可能である。
エキシマ発光を得るには誘電体バリア放電を用いる方法が知られている。誘電体バリア放電とは両電極間に誘電体(エキシマランプの場合は透明石英)を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加することによりガス空間に生じる、雷に似た非常に細いmicro dischargeと呼ばれる放電で、micro dischargeのストリーマが管壁(誘電体)に達すると誘電体表面に電荷が溜まるため、micro dischargeは消滅する。誘電体バリア放電は、このmicro dischargeが管壁全体に広がり、生成・消滅を繰り返している放電である。このため肉眼でも分る光のチラツキを生じる。また、非常に温度の高いストリーマが局所的に直接管壁に達するため、管壁の劣化を早める可能性もある。
効率よくエキシマ発光を得る方法としては、誘電体バリア放電以外に無電極電界放電でも可能である。容量性結合による無電極電界放電で、別名RF放電とも呼ばれる。ランプと電極及びその配置は基本的には誘電体バリア放電と同じでよいが、両極間に印加される高周波は数MHzで点灯される。無電極電界放電はこのように空間的にまた時間的に一様な放電が得られるため、チラツキが無い長寿命のランプが得られる。
誘電体バリア放電の場合はmicro dischargeが電極間のみで生じるため、放電空間全体で放電を行なわせるには外側の電極は外表面全体を覆い、かつ外部に光を取り出すために光を透過するものでなければならない。このため細い金属線を網状にした電極が用いられる。この電極は光を遮らないようにできるだけ細い線が用いられるため、酸素雰囲気中では真空紫外光により発生するオゾン等により損傷しやすい。
これを防ぐためにはランプの周囲、すなわち照射装置内を窒素等の不活性ガスの雰囲気にし、合成石英の窓を設けて照射光を取り出す必要が生じる。合成石英の窓は高価な消耗品であるばかりでなく、光の損失も生じる。
二重円筒型ランプは外径が25mm程度であるため、ランプ軸の直下とランプ側面では照射面までの距離の差が無視できず、照度に大きな差を生じる。したがって仮にランプを密着して並べても、一様な照度分布が得られない。合成石英の窓を設けた照射装置にすれば酸素雰囲気中の距離を一様にでき、一様な照度分布が得られる。
無電極電界放電を用いた場合には外部電極を網状にする必要はない。ランプ外面の一部に外部電極を設けるだけでグロー放電は放電空間全体に広がる。外部電極には通常アルミのブロックで作られた光の反射板を兼ねた電極がランプ背面に使用される。しかし、ランプの外径は誘電体バリア放電の場合と同様に大きいため、一様な照度分布にするためには合成石英が必要となる。
細管エキシマランプの最大の特徴は構造がシンプルなことである。石英管の両端を閉じ、内部にエキシマ発光を行なうためのガスを封入しているだけである。
細管ランプの管の外径は6〜12mm程度で、あまり太いと始動に高い電圧が必要になる。
放電の形態は誘電体バリア放電でも無電極電界放電のいずれでも使用できる。電極の形状はランプに接する面が平面であってもよいが、ランプの曲面に合わせた形状にすればランプをしっかり固定できるとともに、電極がランプに密着することにより放電がより安定する。またアルミで曲面を鏡面にすれば光の反射板にもなる。
Xeエキシマランプは波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。また、有機物の結合を解離させる波長の短い172nmの光のエネルギーは能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン層の改質を実現できる。したがって、波長185nm、254nmの発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べて高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によるダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基板等への照射を可能としている。
エキシマランプは光の発生効率が高いため低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で短い波長でエネルギーを照射するため、照射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を持っている。
また、真空紫外線の照射強度が高ければ、光子とポリシラザン内の化学結合が衝突する確率が増え、改質反応を短時間化することができる。また、内部まで侵入する光子の数も増加するため改質膜厚も増加及び/または膜質の良化(高密度化)が可能である。但し、照射時間が長すぎると平面性の劣化やガスバリア性フィルムの他の材料にダメージを与える場合がある。一般的には、照射強度と照射時間の積で表される積算光量で反応進行具合を考えるが、酸化シリコンの様に組成は同一でも、様々な構造形態をとる材料においては、照射強度の絶対値が重要になる場合もある。
従って、本発明ではVUV光照射工程において、少なくとも1回は100〜200mW/cmの最大照射強度を与える改質処理を行うことが好ましい。この強度以下だと急激に改質効率が劣化し、処理に時間を要することになり、照射強度をこれより高くすると、ランプやランプユニットのその他の部材へのダメージが大きくなり、ランプ自体の劣化を早めることになってしまう。
VUV光の照射時間は、任意に設定可能であるが、高照度工程での照射時間は0.1秒〜3分間が好ましい。より好ましくは0.5秒〜1分である。
VUV光照射時の酸素濃度は500〜10000ppm(1%)とすることが好ましい。より好ましくは、1000〜5000ppmである。前記の濃度範囲より酸素濃度が高いと改質効率が低くなり、また前記範囲より低い酸素濃度の場合、大気との置換時間が長くなるのと同時に、ロール・トゥ・ロールの様な連続生産を行う場合はウエッブ搬送によってVUV光照射庫内に巻き込む空気量(酸素を含む)が多くなり、多大な流量のガスを流さないと酸素濃度を調整できなくなってくる。
ポリシラザン含有塗膜中には、塗布時に酸素及び微量の水分が混入し、さらにはポリシラザン含有塗膜以外でも、基材や隣接する樹脂層等に吸着酸素や吸着水があり、照射庫内に敢えて酸素を導入しなくとも、改質反応に要する酸素を供給する酸素源は十分にあることが分かった。また、前述した様に172nmのVUV光が酸素により吸収され、膜面に到達する172nmの光量が減少してしまい、光による処理の効率を低下することになる。すなわち、VUV光照射時には、できるだけ酸素濃度の低い状態で、VUV光が効率よく塗膜まで到達する状態で改質処理することが好ましい。
VUV光照射時にこれら酸素以外のガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
〔隣接層1〕
本発明のガスバリア性フィルムは、樹脂基材と、少なくとも1層のバリア層と、少なくとも基材側で前記バリア層に隣接する少なくとも1層の隣接層1からなることを特徴とする。
本発明における隣接層1は、少なくとも、M原子(MはSi、Ti、Zr、Al、Znを表す)、O原子、C原子を同時に含む領域を有し、C/Mが0.2〜2.2、かつ、O/Mが1.0〜2.0を満たすことを特徴とし、有機基に由来する炭素原子を所定の比率で有する。
M原子(MはSi、Ti、Zr、Al、Znを表す)、O原子、C原子の各原子組成比については、XPS表面分析によって求める。
表面分析に用いるXPS表面分析装置としては、特に限定はなく、いかなる機種も使用することができるが、本実施例においてはVGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。
(隣接層1の形成方法)
本発明における隣接層1は、塗布形成することが好ましい。
塗布膜厚は、材料や基材に応じて適切に設定され得るが、乾燥後の厚さが10nm〜100μm程度が好ましく、100nm〜10μm程度がより好ましく、基材の表面を平坦化するための平坦化層や、応力緩和層としての機能も兼ねることができる点で、1μm〜6μm程度が最も好ましい。
(隣接層1を形成するための材料)
本発明における隣接層1を形成するための材料としては、最終的に得られた膜がM原子(MはSi、Ti、Zr、Al、Zn等金属を表す)、O原子、C原子を同時に含む領域を有し、その領域内の原子組成比において、C/Mが0.2〜2.2、かつ、O/Mが1.0〜2.0の関係が成り立っていれば、特に限定されるものではない。
上記原子組成比が成り立つ領域は、形成した膜全領域である必要はないが、少なくとも膜厚方向に連続して1nm以上有していることが好ましく、10nm以上有していることがより好ましい。
隣接層1を形成するための材料としては、有機・無機ハイブリッド材料である有機基を有する金属酸ポリマー、金属酸オリゴマーの縮合体及び、それらの混合物(金属はSi、Ti、Zr、Al、Zn)等を用い層形成することが好ましく、異なる2種以上の金属酸ユニットからなるコポリマーあるいはそれらの混合物でもよい。
また、本発明において、隣接層1に含まれるC原子は、添加剤に由来するものでも構わないが、金属酸ポリマー、金属酸オリゴマーの金属に置換する有機基に由来するものであることがより好ましい。
さらに、Mで表される金属原子としては、Si原子であることが、バリア層に含まれるSi原子との親和性の観点からより好ましい。
具体的な材料としては、有機基を有するポリシロキサン(有機ポリシロキサンともいう)、有機基を有するポリチタン酸などが挙げられるが、有機ポリシロキサンが好ましい。
有機ポリシロキサンはシロキサン結合で主鎖が構成される含珪素ポリマーにおいて珪素原子に有機基の数が珪素1個につき1〜2個有する構成単位を有するシロキサンの総称であり、T単位(ポリシロキサンの基本構成単位のうち、ケイ素原子に結合する有機基の数が1つで、残りの3つが酸素と結合しているもの)を有する有機ポリシロキサンすなわちシルセスキオキサンを含むことがより好ましい。
有機基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、2,2−ジエチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、エチニル基などのアルキニル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、ベンジル基、フェニチル基などのアラルキル基、その他の非置換1価炭化水素基が挙げられ、フッ素等の置換基を有していてもよい。また、アルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基等も挙げられる。
隣接層1を形成するための原料として用いることができる具体的な化合物としては、例えば、メチル・ヒドロポリシロキサン、メチルシルセスキオキサン、ヒドロシルセスキオキサン(小西化学社製)、テトラシラノフェニルPOSSなど籠状の有機シルセスキオキサン、ポリジエトキシシロキサン、ジエトキシシロキサン−エチルチタネートコポリマー、ポリジブチルチタネート、有機ポリシラザンなどを挙げることができる。
隣接層1を形成する有機ポリシロキサンとして、市販の材料を適用することも可能である。
前記メチルシルセスキオキサンとヒドロシルセスキオキサン(小西化学社製)のほか、日東紡社製の無機・有機ナノコンポジット材料SSGコート(SSGコートHB21BN、SSGコートHB31BN)、JSR株式会社製のセラミックコーティング材グラスカ(グラスカHPC7003)、Gelest社製のジエトキシシラン−エチルチタネートコポリマーPSITI−019、等が挙げられる。
また、本発明において、有機ポリシロキサン膜を形成するためには、T単位(ポリシロキサンの基本構成単位のうち、ケイ素原子に結合する有機基の数が1つで、残りの3つが酸素と結合しているもの)を有するシルセスキオキサンを含有する溶液を用いても良いが、塗布溶媒に対する溶解性が高く、塗布性、平滑性の良好な膜を形成できる点で、D単位(ポリシロキサンの基本構成単位のうち、ケイ素原子に結合する有機基の数が2つで、残りの2つが酸素と結合しているもの)の有機ポリシロキサンを含有する溶液を用いて、有機ポリシロキサン膜を形成してもよい。このとき、D単位の有機ポリシロキサンの少なくとも一部が熱処理などによって架橋し、T単位のシルセスキオキサンを形成することが好ましい。これにより、適度な硬さを有する安定性の高い隣接層1を形成することができる。
有機ポリシロキサン膜の硬化(縮合反応)を促進する目的で、アミン触媒や、パラジウム、スズ等を有する有機金属触媒、あるいは、テトラエトキシシランなどのアルコキシシランなどを材料液に添加してもよく、また、基材あるいはバリア層との密着性を向上する目的で、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランや3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのシランカップリング剤などを添加することも好ましく用いられる。また、塗布性を向上する目的で樹脂などのバインダーを少量添加してもよい。また、紫外線による硬化反応を用いてもよい。
隣接層1を形成する有機・無機ハイブリッド材料として、市販の熱硬化ハードコート剤などを適用することも可能である。
例えば、クラリアント社製のトゥットプロムシリーズ(有機ポリシラザン)、セラミックコート株式会社製のSP COAT耐熱クリアー塗料、アデカ社製のナノハイブリッドシリコーン、信越化学社製の各種シリコーン樹脂等が挙げられる。
(隣接層1の機能)
従来技術では、バリア層においては、ポリシラザンの加水分解及び脱水縮合反応をいかに進行させるかが主眼であったのに対し、本発明では真空紫外線(VUV光)照射による改質処理前、処理中、処理後に、ポリシラザンの加水分解反応をいかに起こさせないかが、効率的な改質を行う上で最も重要と考えている。
いったん、改質処理前に加水分解反応が進行し、膜内に多量のSi−OHが形成されてしまうと、その後VUV光を照射して改質処理を進めようとしても、バリア層において、本発明のSi原子、N原子、O原子を同時に含む領域を有するバリア性を発現する層を形成することは困難となる。
よって、本発明においては、前述したように最適な低酸素濃度雰囲気下、かつ、低湿度環境下においてVUV光を照射し、活性酸素による直接酸化のみを進行させることで、本発明の原子組成比を有するようなSi、N、Oからなるバリア層を形成することが重要となる。
また、前述したように改質時の環境を最適化するだけでは、安定したバリア性能を得るには不十分であることも分かってきており、これは、基材(支持体ともいう)やハードコート層、平坦化層、密着層などの下引き層から侵入する水分によっても、ポリシラザン改質膜の膜質が低下してしまうためではないかと推測されている。
そこで、ポリシラザン改質膜を形成する下層に、予め本発明の原子組成を有するような隣接層1を設けておくと、シラノール基等が生成せず、ポリシラザンの改質を効率化できることを見出し、本発明に至った。
実際にポリシラザン改質膜の原子組成は、下層の状態によって異なり、これがバリア性能に影響することは、前述したXPS表面分析及び後述するCa法によるバリア性能評価によって確認することができる。
〔隣接層2〕
本発明においては、基材側でバリア層に隣接する隣接層1に加えて、基材とは反対側で前記バリア層に隣接する隣接層2を更に有する構成であることがより好ましい。
本発明における隣接層2は、バリア層の上層に設けることで、デバイス作製プロセス耐性や搬送、巻き取り工程適性等を向上させるような保護層としての役割だけでなく、急激にバリア性が劣化しないような安定なバリア性フィルムを得るためにもたいへん有効であることが、本発明者らの検討により分かってきた。このことは、バリア層が湿熱による加速劣化時に急激に破壊することで起こると考えられるバリア性の劣化をナノレベルで抑制することができるためではないかと推測しているが、その機構に関して今のところ詳細は不明である。
隣接層2に好ましく用いることができる材料としては、隣接するバリア層との接着性が保たれるのであれば特に制限はないが、隣接層1を形成するために先に挙げたようなポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン等を主成分として含む材料等が接着性、応力緩和性、耐熱性等の観点から好ましく用いられる。
また、隣接層2の形成方法についても、隣接層1の方法と同様に塗布を初めとするウェットプロセスが好ましく用いられる。
隣接層2の膜厚は、特に制限はないが、乾燥後の厚さが10nm〜100μm程度が好ましく、100nm〜10μm程度がより好ましい。
〔基材(支持体ともいう)〕
本発明における基材(支持体)としては、本発明の隣接層1及びガスバリア層を保持することができるものであれば特に限定はされないが、ロール・トゥ・ロールなどの大量生産に適用可能で、取り扱い易く、低コスト化が可能な点で、プラスチックフィルムが好ましい。
プラスチックフィルムとしては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、更には前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。
コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられ、また、光学的透明性、耐熱性等の観点から、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムも好ましく用いることができる。
本発明に係る支持体の厚みとして、5μm〜500μmの範囲が好ましく、更に好ましくは25μm〜250μmの範囲である。
また、本発明に係る支持体は透明であることが好ましい。支持体が透明であり、支持体上に形成する層も透明であることにより、透明なガスバリアフィルムとすることが可能となるため、光電変換素子(太陽電池)等の透明基板とすることも可能となるからである。
ここで、支持体が透明とは、可視光(400nm〜700nm)の光透過率が80%以上であることを示す。
また、上記に挙げた樹脂等を用いたプラスチックフィルムは、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
本発明に用いられるプラスチックフィルム支持体としては、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の支持体を製造することができる。
また、未延伸の支持体を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、支持体の流れ(縦軸)方向、または支持体の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸支持体を製造することができる。この場合の延伸倍率は、支持体の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2倍〜10倍が好ましい。
また、本発明に係るプラスチックフィルムにおいては、隣接層1を形成する前にコロナ処理を施してもよい。
また、本発明における支持体上に、隣接層1の支持体表面に対する密着性を向上する目的で、アンカーコート層を形成してもよい。
このアンカーコート層としては、プラスチックフィルムと隣接層1の接着性を高めるものであれば特に制限はないが、例えば、隣接層1が無機性の高いポリシロキサンであった場合、有機−無機ハイブリッド材料のように有機性と無機性を併せ持つような材料が好ましく用いられる。
また、シランカップリング剤のように単分子レベル〜ナノレベルの薄膜を形成し、層界面で分子結合を形成できるような材料でアンカーコート層を設けることも、より高い密着性が期待できる点で好ましく用いることができる。
因みに、このようなシランカップリング剤を隣接層1に添加することで、密着性を高める方法も好ましく用いることができる。
本発明において、ガスバリア層にかかる応力を緩和するための応力緩和層、樹脂支持体の表面を平滑化するための平滑層、樹脂支持体からのブリードアウトを防止するためのブリードアウト防止層などを別途設けてもよい。
《ガスバリア性フィルムの用途》
本発明のガスバリア性フィルムの用途としては、主に電子デバイス等のパッケージ、または有機EL素子や太陽電池、液晶といったディスプレイ材料等、各種電子デバイス用樹脂基材としての用途が挙げられる。
本発明のガスバリア性フィルムは、種々の封止用材料、封止用フィルムとして用いることができる。
上記の中でも、本発明のガスバリア性フィルムは、電子デバイスに用いることが好ましい。
以下、本発明のガスバリア性フィルムを有する電子デバイスの一例として、有機光電変換素子、該素子を有する太陽電池について説明する。
〔有機光電変換素子〕
本発明に係る有機光電変換素子は、本発明のガスバリア性フィルムを構成として有するが、有機光電変換素子に用いる際に、本発明のガスバリア性フィルムは透明であることが好ましく、具体的には、透明であるガスバリア性フィルムを有機光電変換素子の支持体の構成部材として用い、ガスバリア性フィルムの側から太陽光の受光を行うように構成することが好ましい。
ここで、『透明』とは、可視光(400nm〜700nm)の光透過率が80%以上であることを意味する。
即ち、このガスバリア性フィルム上に、例えば、ITO等の透明導電性薄膜を透明電極として設け、有機光電変換素子用樹脂支持体を構成することができる。そして、支持体上に設けられたITO透明導電膜を陽極としてこの上に多孔質半導体層を設け、更に金属膜からなる陰極を作製して有機光電変換素子を作製し、この上に別の封止材料を(同じでもよいが)重ねて、前記ガスバリア性フィルム支持体と周囲を接着、素子を封じ込めることで有機光電変換素子を封止することができ、これにより外気の湿気や酸素等のガスによる素子への影響を封じることができる。
有機光電変換素子用樹脂支持体は、このようにして作製されたガスバリア性フィルムのガスバリア層(単にバリア層ともいう)上に、透明導電性膜を作製することによって得られる。透明導電膜の作製は、真空蒸着法やスパッタリング法等を用いることにより、またインジウム、スズ等の金属アルコキシド等を用いたゾルゲル法等塗布法によっても製造できる。
透明導電膜の膜厚としては、0.1nm〜1000nmの範囲が好ましい。
次いで、これらガスバリア性フィルム、またこれに透明導電膜が作製された有機光電変換素子用樹脂支持体を用いた有機光電変換素子について説明する。
〔封止フィルムとその製造方法〕
本発明では、前記ガスバリア層(単にバリア層ともいう)を有するガスバリア性フィルムを基板として用いることが好ましい。
前記バリア層を有するガスバリア性フィルムにおいて、バリア層上に更に透明導電膜を作製し、これを陽極としてこの上に有機光電変換素子を構成する層、陰極となる層とを積層し、この上に更にもう一つのガスバリア性フィルムを封止フィルムとして重ね接着することで封止する。
用いられるもう一つの封止材料(封止フィルム)としては、本発明のガスバリア性フィルムを用いることができる。また、例えば、包装材等に使用される公知のガスバリア性フィルム、例えば、プラスチックフィルム上に酸化ケイ素や、酸化アルミニウムを蒸着したもの、緻密なセラミック層と、柔軟性を有する衝撃緩和ポリマー層を交互に積層した構成のガスバリア性フィルム等を封止フィルムとして用いることができる。
また、特に樹脂ラミネート(ポリマー膜)された金属箔は、光取り出し側のガスバリア性フィルムとして用いることはできないが、低コストで更に透湿性の低い封止材料であり、光取り出しを意図しない(透明性を要求されない)場合、封止フィルムとして好ましい。
本発明において、金属箔とはスパッタや蒸着等で作製された金属薄膜や、導電性ペースト等の流動性電極材料から作製された導電膜と異なり、圧延等で作製された金属の箔またはフィルムを指す。
金属箔としては金属の種類に特に限定はなく、例えば、銅(Cu)箔、アルミニウム(Al)箔、金(Au)箔、黄銅箔、ニッケル(Ni)箔、チタン(Ti)箔、銅合金箔、ステンレス箔、スズ(Sn)箔、高ニッケル合金箔等が挙げられる。これらの各種の金属箔の中で特に好ましい金属箔としてはAl箔が挙げられる。
金属箔の厚さは6〜50μmが好ましい。6μm未満の場合は、金属箔に用いる材料によっては使用時にピンホールが空き、必要とするバリア性(透湿度、酸素透過率)が得られなくなる場合がある。50μmを越えた場合は、金属箔に用いる材料によってはコストが高くなり、有機光電変換素子が厚くなりフィルムのメリットが少なくなる場合がある。
樹脂フィルム(ポリマー膜)がラミネートされた金属箔において、樹脂フィルムとしては機能性包装材料の新展開(株式会社東レリサーチセンター)に記載の各種材料を使用することが可能であり、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体系樹脂、セロハン系樹脂、ビニロン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂、ナイロン系樹脂等の樹脂は延伸されていてもよく、更に塩化ビニリデン系樹脂をコートされていてもよい。また、ポリエチレン系樹脂は低密度あるいは高密度のものも用いることができる。
後述するが、2つのフィルムの封止方法としては、例えば、一般に使用されるインパルスシーラー熱融着性の樹脂層をラミネートして、インパルスシーラーで融着させ、封止する方法が好ましく、この場合、ガスバリア性フィルム同士の封止は、フィルム膜厚が300μmを超えると封止作業時のフィルムの取り扱い性が悪化するのとインパルスシーラー等による熱融着が困難となるため膜厚としては300μm以下が望ましい。
〔有機光電変換素子の封止の好ましい態様〕
本発明の有機電子デバイスの一つである有機光電変換素子に用いられる封止の好ましい態様について説明する。
本発明に係る有機光電変換素子の作製の一例としては、バリア層を有する本発明のガスバリア性フィルム上に透明導電膜を形成し、有機光電変換素子用樹脂支持体上に有機光電変換素子各層を形成した後、上記封止フィルムを用いて、不活性ガスによりパージされた環境下で、上記封止フィルムで陰極面を覆うようにして、有機光電変換素子を封止することができる。
不活性ガスとしては、Nの他、He、Ar等の希ガスが好ましく用いられるが、HeとArを混合した希ガスも好ましく、気体中に占める不活性ガスの割合は90体積%〜99.9体積%であることが好ましい。不活性ガスによりパージされた環境下で封止することにより、保存性が改良される。
また、前記の樹脂フィルム(ポリマー膜)がラミネートされた金属箔を用いて、有機光電変換素子を封止するにあたっては、ラミネートされた樹脂フィルム面ではなく、金属箔上にセラミック層を作製し、このセラミック層面を有機光電変換素子の陰極に貼り合わせることが好ましい。封止フィルムのポリマー膜面を有機光電変換素子の陰極に貼り合わせると、部分的に導通が発生することがある。
封止フィルムを有機光電変換素子の陰極に貼り合わせる封止方法としては、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルム、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等の熱融着性フィルムを積層して、インパルスシーラーで融着させ封止する方法がある。
接着方法としてはドライラミネート方式が作業性の面で優れている。この方法は、一般には1.0μm〜2.5μm程度の硬化性の接着剤層を使用する。但し、接着剤の塗設量が多すぎる場合には、トンネル、浸み出し、縮緬皺等が発生することがあるため、好ましくは接着剤量を乾燥膜厚で3μm〜5μmになるように調節することが好ましい。
ホットメルトラミネーションとは、ホットメルト接着剤を溶融し支持体に接着層を塗設する方法であるが、接着剤層の厚さは一般に1μm〜50μmと広い範囲で設定可能な方法である。一般に使用されるホットメルト接着剤のベースレジンとしては、EVA、EEA、ポリエチレン、ブチルラバー等が使用され、ロジン、キシレン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂等が粘着付与剤として、ワックス等が可塑剤として添加される。
エクストルージョンラミネート法とは、高温で溶融した樹脂をダイスにより支持体上に塗設する方法であり、樹脂層の厚さは一般に10μm〜50μmと広い範囲で設定可能である。エクストルージョンラミネートに使用される樹脂としては、一般にLDPE、EVA、PP等が使用される。
次いで、有機光電変換素子を構成する有機光電変換素子材料各層(構成層)について説明する。
〔有機光電変換素子及び太陽電池の構成〕
本発明に係る電子デバイスの一例として、有機光電変換素子及び太陽電池の好ましい態様を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
尚、以下、本発明に係る有機光電変換素子の好ましい態様について詳細に説明するが、本発明に係る太陽電池は本発明に係る有機光電変換素子をその構成として有するものであり、太陽電池の好ましい構成も同様に記載することができる。
有機光電変換素子としては、特に制限がなく、陽極と陰極と、両者に挟まれた発電層(p型半導体とn型半導体が混合された層、バルクヘテロジャンクション層、i層とも言う)が少なくとも1層以上あり、光を照射すると電流を発生する素子であればよい。
有機光電変換素子の層構成(太陽電池の好ましい層構成も同様である)の好ましい具体例を以下に示す。
(i)陽極/発電層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発電層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発電層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/p型半導体層/発電層/n型半導体層/電子輸送層/陰極
(v)陽極/正孔輸送層/第1発電層/電子輸送層/中間電極/正孔輸送層/第2発電層/電子輸送層/陰極。
ここで、発電層は、正孔を輸送できるp型半導体材料と電子を輸送できるn型半導体材料を含有していることが必要であり、これらは実質2層でヘテロジャンクションを作製していてもよいし、1層の内部で混合された状態となっているバルクヘテロジャンクションを作製してもよいが、バルクヘテロジャンクション構成のほうが、光電変換効率が高いため好ましい。発電層に用いられるp型半導体材料、n型半導体材料については後述する。
有機EL素子同様、発電層を正孔輸送層、電子輸送層で挟み込むことで、正孔及び電子の陽極・陰極への取り出し効率を高めることができるため、それらを有する構成((ii)、(iii))の方が好ましい。また、発電層自体も正孔と電子の整流性(キャリア取り出しの選択性)を高めるため、(iv)のようにp型半導体材料とn型半導体材料単体からなる層で発電層を挟み込むような構成(p−i−n構成とも言う)であってもよい。また、太陽光の利用効率を高めるため、異なる波長の太陽光をそれぞれの発電層で吸収するような、タンデム構成((v)の構成)であってもよい。
太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、以下に説明する図1に示す有機光電変換素子10におけるサンドイッチ構造に代わって、一対の櫛歯状電極上にそれぞれ正孔輸送層14、電子輸送層16を作製し、その上に光電変換部15を配置するといった、バックコンタクト型の有機光電変換素子が構成とすることもできる。
更に、詳細な本発明に係る有機光電変換素子の好ましい態様を下記に説明する。
図1は、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池の一例を示す断面図である。
図1において、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10は、基板11の一方の面上に、陽極12、正孔輸送層17、バルクヘテロジャンクション層の発電層14、電子輸送層18及び陰極13が順次積層されている。
基板11は、順次積層された陽極12、正孔輸送層17、発電層14、電子輸送層18及び陰極13を保持する部材である。本実施形態では、基板11側から光電変換される光が入射するので、基板11は、この光電変換される光を透過させることが可能な、即ち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材である。基板11は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が用いられる。この基板11は、必須ではなく、例えば、発電層14の両面に陽極12及び陰極13を作製することでバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10が構成されてもよい。
発電層14は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型半導体材料は相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能する。
図1において、基板11を介して陽極12から入射された光は、発電層14のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が作製される。発生した電荷は、内部電界、例えば、陽極12と陰極13の仕事関数が異なる場合では陽極12と陰極13との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。
例えば、陽極12の仕事関数が陰極13の仕事関数よりも大きい場合では、電子は陽極12へ、正孔は陰極13へ輸送される。なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、陽極12と陰極13との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
なお、図1には記載していないが、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、あるいは平滑化層等の他の層を有していてもよい。
更に好ましい構成としては、前記発電層14が、所謂p−i−nの三層構成となっている構成(図2)である。通常のバルクヘテロジャンクション層は、p型半導体材料とn型半導体層が混合したi層(14i)単体であるが、p型半導体材料単体からなるp層(14p)、及びn型半導体材料単体からなるn層(14n)で挟むことにより、正孔及び電子の整流性がより高くなり、電荷分離した正孔・電子の再結合等によるロスが低減され、一層高い光電変換効率を得ることができる。
更に、太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような光電変換素子を積層したタンデム型の構成としてもよい。
図3は、タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。タンデム型構成の場合、基板11上に、順次透明電極12、第1の発電層14′を積層した後、電荷再結合層15を積層した後、第2の発電層16、次いで対電極13を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。第2の発電層16は、第1の発電層14′の吸収スペクトルと同じスペクトルを吸収する層でもよいし、異なるスペクトルを吸収する層でもよいが、好ましくは異なるスペクトルを吸収する層である。また、第1の発電層14′、第2の発電層16がともに前述のp−i−nの三層構成であってもよい。
以下に、これらの層を構成する材料について述べる。
〔有機光電変換素子材料〕
本発明に係る有機光電変換素子の発電層(光電変換層ともいう)の形成に用いられる材料について説明する。
(p型半導体材料)
本発明に係る有機光電変換素子の発電層(バルクヘテロジャンクション層)として好ましく用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマー・オリゴマーが挙げられる。
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
また、上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号、国際公開第03/28125号、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、WO2008000664に記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、且つ乾燥後は、結晶性薄膜を作製し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。
また、発電層上に電子輸送層を塗布で成膜する場合、電子輸送層溶液が発電層を溶かしてしまうという課題があるため、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料を用いてもよい。
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、または米国特許第2003/136964号明細書、及び特開2008−16834号公報等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって、可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料等を挙げることができる。
(n型半導体材料)
本発明に係るバルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料としては特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物や、そのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
しかし、各種のp型半導体材料と高速(〜50fs)、且つ効率的に電荷分離を行うことができる、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、及びこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
中でも、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7,329,709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基を有してより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
(正孔輸送層・電子ブロック層)
本発明の有機光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション層と陽極との中間には正孔輸送層17を、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層17としては、スタルクヴイテック製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、国際公開第06/19270号パンフレット等に記載のシアン化合物、等を用いることができる。
なお、バルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した電子を陽極側には流さないような整流効果を有する電子ブロック機能が付与される。
このような正孔輸送層は電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用するほうが好ましい。このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。
また、バルクヘテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を作製する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。バルクヘテロジャンクション層を作製する前に、下層に塗布膜を作製すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
(電子輸送層・正孔ブロック層)
有機光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション層と陰極との中間には電子輸送層18を作製することで、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
また、電子輸送層18としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様にバルクヘテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する正孔ブロック機能が付与される。
このような電子輸送層は正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用するほうが好ましい。
このような材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。
また、バルクヘテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を作製する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
(その他の層)
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層等を挙げることができる。
(透明電極(第1電極))
本発明に係る透明電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができるが、好ましくは透明電極を陽極として用いることである。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは380nm〜800nmの光を透過する電極である。
材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブ用いることができる。
また、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて透明電極とすることもできる。
(対電極(第2電極))
対電極は導電材単独層であってもよいが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。対電極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。
このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
これらの中で、電子の取り出し性能及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
対電極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を作製させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50nm〜200nmの範囲で選ばれる。
対電極の導電材として金属材料を用いれば、対電極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
また、対電極13は、金属(例えば、金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、導電性繊維、ナノワイヤ、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤの分散物であれば、透明で導電性の高い対電極を塗布法により作製でき好ましい。
また、対電極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の対電極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記透明電極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性対電極とすることができる。
(中間電極)
また、前記(v)(または図3)のようなタンデム構成の場合に必要となる中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、前記透明電極で用いたような材料(ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層またはナノ粒子・ナノワイヤ、導電性繊維を含有する層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等)を用いることができる。
なお、前述した正孔輸送層と電子輸送層の中には、適切に組み合わせて積層することで中間電極(電荷再結合層)として働く組み合わせもあり、このような構成とすると1層作製する工程を省くことができ好ましい。
(金属ナノワイヤ)
本発明において、導電性繊維としては、金属でコーティングした有機繊維や無機繊維、導電性金属酸化物繊維、金属ナノワイヤ、炭素繊維、カーボンナノチューブ等を用いることができるが、金属ナノワイヤが好ましい。
一般に、金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする線状構造体のことを言う。特に、本発明における金属ナノワイヤとはnmサイズの直径を有する線状構造体を意味する。
金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを作製するために、また、適度な光散乱性を発現するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、更には3μm〜500μmが好ましく、特に3μm〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。
また、平均直径は、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。本発明においては、金属ナノワイヤの平均直径として10nm〜300nmが好ましく、30nm〜200nmであることがより好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
金属ナノワイヤの金属組成としては特に制限はなく、貴金属元素や卑金属元素の1種または複数の金属から構成することができるが、貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)及び鉄、コバルト、銅、錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から少なくとも銀を含むことがより好ましい。
また、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマイグレーション耐性)を両立するために、銀と、銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含むことも好ましい。本発明において、金属ナノワイヤが2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤの表面と内部で金属組成が異なっていてもよいし、金属ナノワイヤ全体が同一の金属組成を有していてもよい。
金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。
例えば、Agナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745等、Auナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、Cuナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、Coナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した、Adv.Mater.及びChem.Mater.で報告されたAgナノワイヤの製造方法は、水系で簡便にAgナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に係る金属ナノワイヤの製造方法として好ましく適用することができる。
金属ナノワイヤが互いに接触し合うことにより3次元的な導電ネットワークを作製し、高い導電性を発現するとともに、金属ナノワイヤが存在しない導電ネットワークの窓部を光が透過することが可能となり、更に金属ナノワイヤの散乱効果によって、有機発電層部からの発電を効率的に行うことが可能となる。第1電極において金属ナノワイヤを有機発電層部に近い側に設置すれば、この散乱効果がより有効に利用できるのでより好ましい実施形態である。
(光学機能層)
本発明に係る有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてもよい。光学機能層としては、例えば、反射防止層、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層等を設けてもよい。
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10μm〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
また、光拡散層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物等のナノ粒子・ナノワイヤ等を無色透明なポリマーに分散した層等を挙げることができる。
(成膜方法・表面処理方法)
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層、及び輸送層・電極の作製方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、バルクヘテロジャンクション層の作製方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。
このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また、塗布法は製造速度にも優れている。
この際に使用する塗布方法に制限はないが、例えば、スピンコート法、溶液からのキャスト法、ディップコート法、ブレードコート法、ワイヤバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等が挙げられる。更には、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法でパターニングすることもできる。
塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために、加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクヘテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
発電層(バルクヘテロジャンクション層)14は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。この場合、前述したような塗布後に不溶化できるような材料を用いることで作製することが可能となる。
(パターニング)
本発明において、電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
バルクヘテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取ってもよいし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしてもよい。
電極材料等の不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行う方法、エッチングまたはリフトオフ等の公知の方法によってパターニングすることができる。また、別の基板上に作製したパターンを転写することによってパターンを作製してもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
実施例1
以下に記載のように、基材上に隣接層1を形成し、さらにその上にバリア層を形成(さらにその上に隣接層2を形成)することで、本発明のガスバリア性フィルム1〜7を作製した。図4に構成を断面図にて示した。図において4は支持体、3が隣接層1を、2がバリア層を、1は隣接層2を示す。
《ガスバリア性フィルム1の作製》
〔基材の作製〕
(支持体)
本発明では、支持体として、両面に易接着加工を施した厚さ125μmのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テトロンO3)を、170℃で30分アニール加熱処理した後、裏面側に下記ブリードアウト防止層(図4では省略)を作製したものを用いた。
(ブリードアウト防止層の作製)
ポリエステルフィルムの裏面側に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7535を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、硬化条件;1.0J/cm、空気下、高圧水銀ランプ使用、乾燥条件;80℃、3分で硬化を行い、ブリードアウト防止層を作製した。
〔隣接層1〕
(隣接層1の形成)
上記基材の表面(ブリードアウト防止層が形成されていない)側に、無機・有機ナノコンポジット材料SSGコートHB21BN(日東紡社製)を、乾燥後の膜厚が4.0μmとなる条件で塗布した後、80℃で10分間乾燥することで、ガスバリア性フィルム1における隣接層1を形成した。
(隣接層1の原子組成比)
隣接層1におけるM原子(MはSi、Ti、Zr、Al、Znを表す)、O原子、C原子の各原子組成比については、スパッタ法とXPS表面分析を組み合わせて確認した。
スパッタ法を用いて表面から深さ方向へエッチングを行い、XPS表面分析装置を用いて、最表面を0nmとして、SiO熱酸化膜換算で5nm/分の速度でスパッタし、各原子組成比を測定した。表層からおよそ150〜200nm(SiO熱酸化膜換算値)程度の領域で、Si、O、C原子の比率がほぼ一定となり、およそC/Si=2.0、O/Si=1.2であることが確認できた。
表面分析に用いるXPS表面分析装置としては、特に限定はなく、いかなる機種も使用することができるが、本実施例においてはVGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。
〔バリア層〕
(バリア層の形成)
次に、基材の隣接層1上に、下記の工程(a)、(b)によりバリア層を形成した。
工程(a):パーヒドロポリシラザン層の形成
パーヒドロポリシラザン(PHPS)を含有する溶液として、20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ NN120−20(PHPS)、アミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン)を5質量%含有するNAX120−20)を混合することで、パーヒドロポリシラザン(PHPS)濃度に対してアミン触媒の含有量が1.0質量%になるように調整した後、ジブチルエーテル溶媒にて10質量%に希釈した液を用いてスピンコート法により塗布後、得られた塗膜を80℃、1分で乾燥し、乾燥後膜厚150nmのパーヒドロポリシラザン含有層を作製した。膜厚は、TEM(Transmission Electron Microscope:透過電子顕微鏡)の断面写真より、明確な界面が見られることで確認できた。
工程(b):パーヒドロポリシラザン層の改質処理(酸化)によるバリア層の作製
上記の工程(a)で得られたパーヒドロポリシラザン層を有するフィルム基材に対して、下記に記載の真空紫外線(VUV)照射を行い、バリア層を形成することで、本発明のガスバリア性フィルム1を作製した。
〈真空紫外線(VUV光)照射処理条件〉
真空紫外線(VUV光)の照射条件は下記の装置を用いランプと試料との間隔(Gapともいう)を3mmとなるように試料を設置し、照射した。照射時間は、可動ステージの可動速度を調整して変化した。
また、真空紫外線(VUV光)照射時の酸素濃度の調整は、照射庫内に導入する窒素ガス、及び酸素ガスの流量をフローメーターにより測定し、庫内に導入するガスの窒素ガス/酸素ガス流量比により調整した。
真空紫外線照射装置:ステージ可動型キセノンエキシマ照射装置(MDエキシマ社製、MECL−M−1−200)
照度:140mW/cm
ステージ温度:100℃
処理環境:ドライ窒素ガス雰囲気下
処理環境の酸素濃度:0.1%
ステージ可動速度:10mm/秒で8回搬送
(バリア層の原子組成比)
隣接層1における原子組成比の測定方法と同様にして、バリア層における各原子組成比をスパッタ法とXPS表面分析を組み合わせて確認した。
スパッタ法を用いて表面から深さ方向へエッチングを行い、XPS表面分析装置を用いて、最表面を0nmとして、SiO熱酸化膜換算で1nm/分の速度でスパッタし、各原子組成比を測定した。最表層領域を除いた表層からおよそ5〜100nm(SiO熱酸化膜換算値)程度の領域で、Si、N、O原子の比率がほぼ一定となる連続領域が深さ方向に2nm以上存在し、およそN/Si=0.6、O/Si=0.6であることが確認できた。C/Siについては、0.1未満であった。
《ガスバリア性フィルム2の作製》
上記ガスバリア性フィルム1の作製において、隣接層1を形成する材料をジエトキシシラン−エチルチタネートコポリマーPSITI−019(Gelest社製)に変更した以外は同様にして、本発明のガスバリア性フィルム2を作製した。
(隣接層1、バリア層の原子組成比)
ガスバリア性フィルム1の場合と同様に、ガスバリア性フィルム2の各層の原子組成比を求めたところ、隣接層1は、およそC/Si=2.1、O/Si=1.9、バリア層は、およそN/Si=0.5、O/Si=0.9であることが確認できた。またC/Siについて0.1未満であった。
《ガスバリア性フィルム3の作製》
上記ガスバリア性フィルム1の作製において、隣接層1を形成する材料をSSGコートHB31BN(日東紡社製)に変更した以外は同様にして、本発明のガスバリア性フィルム3を作製した。
(隣接層1、バリア層の原子組成比)
ガスバリア性フィルム1の場合と同様に、ガスバリア性フィルム3の各層の原子組成比を求めたところ、隣接層1は、およそC/Si=2.2、O/Si=1.0、バリア層は、およそN/Si=0.8、O/Si=0.2であることが確認できた。またC/Siについては0.1未満であった。
《ガスバリア性フィルム4の作製》
上記ガスバリア性フィルム1の作製において、隣接層1を形成する材料をメチルシルセスキオキサンとヒドロシルセスキオキサン(小西化学社製)の9:1混合物に変更した以外は同様にして、本発明のガスバリア性フィルム4を作製した。
(隣接層1、バリア層の原子組成比)
ガスバリア性フィルム1の場合と同様に、ガスバリア性フィルム4の各層の原子組成比を求めたところ、隣接層1は、およそC/Si=0.2、O/Si=2.0、バリア層は、およそN/Si=0.3、O/Si=1.3であることが確認できた。またC/Siについては0.1未満であった。
《ガスバリア性フィルム5の作製》
上記ガスバリア性フィルム1の作製において、隣接層1を形成する材料をグラスカHPC7003(主剤)とHPC404H(硬化促進剤)(JSR社製)の10:1混合物に変更し、さらに隣接層2を下記のように設けた以外は同様にして、本発明のガスバリア性フィルム5を作製した。
(隣接層2の形成)
基材のバリア層上に、乾燥後の膜厚がおよそ600nmとなる条件にて隣接層1と同じ材料であるグラスカを主剤とした層を塗布した後、80℃で10分間乾燥後、バリア層形成と同様のVUV照射処理(ステージ可動速度:10mm/秒で3回搬送)を行うことで、ガスバリア性フィルム5における隣接層2を形成した。
(隣接層1、バリア層、隣接層2の原子組成比)
ガスバリア性フィルム1の場合と同様に、ガスバリア性フィルム5において各層の原子組成比を求めたところ、隣接層1及び隣接層2は、およそC/Si=0.5、O/Si=1.6、バリア層は、およそN/Si=0.6、O/Si=0.7であることが確認できた。またC/Siについては0.1未満であった。
《ガスバリア性フィルム6の作製》
ガスバリア性フィルム5の作製において、隣接層1、隣接層2を形成する材料をメチルシルセスキオキサン(小西化学社製)に変更(ただし、バリア層の形成に用いたポリシラザンに添加したものと同じアミン触媒を1%添加)した以外は同様にして、本発明のガスバリア性フィルム6を作製した。
(隣接層1、バリア層、隣接層2の原子組成比)
ガスバリア性フィルム1の場合と同様に、ガスバリア性フィルム6において各層の原子組成比を求めたところ、隣接層1及び隣接層2は、およそC/Si=0.5、O/Si=1.7、バリア層は、およそN/Si=0.6、O/Si=0.7であることが確認できた。またC/Siについては0.1未満であった。
《ガスバリア性フィルム7の作製》
ガスバリア性フィルム5の作製において、隣接層1を形成する材料をSSGコートHB21BN(日東紡社製)に変更した以外は同様にして(隣接層2はグラスカのままとした)、本発明のガスバリア性フィルム7を作製した。
(隣接層1、バリア層、隣接層2の原子組成比)
ガスバリア性フィルム1の場合と同様に、ガスバリア性フィルム7において各層の原子組成比を求めたところ、隣接層1は、およそC/Si=2.0、O/Si=1.2、バリア層は、およそN/Si=0.6、O/Si=0.6、隣接層2は、およそC/Si=0.5、O/Si=1.6であることが確認できた。またC/Siについては0.1未満であった。
続いて、比較のフィルム8〜13を作製した。
《比較のフィルム8の作製》
本発明のガスバリア性フィルム1の作製と同様に、SSGコートHB21BN(日東紡社製)を用いて隣接層1に相当する層を形成した後、同様にパーヒドロポリシラザン含有層を形成し、さらにポリシラザンの改質処理を以下のように行うことで、比較のフィルム8を作製した。
(バリア層の形成)
乾燥後のパーヒドロポリシラザン含有層を湿度90%RH下、80℃にて5分間加熱することで、ポリシラザンが無機膜に転化された層を形成した。
(隣接層1に相当する層、バリア層の原子組成比)
本発明のガスバリア性フィルム1の場合と同様に、比較のフィルム8の各層の原子組成比を求めたところ、隣接層1に相当する層は、およそC/Si=2.0、O/Si=1.2、バリア層は、およそN/Si=0.1以下、O/Si=2.3であることが確認できた。またC/Siについては0.1未満であった。
《比較のフィルム9の作製》
上記比較のフィルム8の作製において、パーヒドロポリシラザン含有層の改質処理を酸素プラズマ処理(SAMCO社製・酸素プラズマ装置、PC−300)によって行った以外は同様にして、比較のフィルム9を作製した。
(隣接層1に相当する層、バリア層の原子組成比)
比較のフィルム8の場合と同様に、比較のフィルム9の各層の原子組成比を求めたところ、隣接層1に相当する層は、およそC/Si=2.0、O/Si=1.2、バリア層は、およそN/Si=0.1以下、O/Si=2.1であることが確認できた。またC/Siについては0.1未満であった。
《比較のフィルム10の作製》
本発明のガスバリア性フィルム1の作製において、隣接層1を形成しない以外は同様にして、比較のフィルム10を作製した。
(バリア層の原子組成比)
比較のフィルム8の場合と同様に、比較のフィルム10のバリア層の原子組成比を求めたところ、およそN/Si=0.1以下、O/Si=2.2であることが確認できた。またC/Siについては0.1未満であった。
《比較のフィルム11の作製》
上記ガスバリア性フィルム1の作製において、隣接層1を形成する材料の代わりにパーヒドロポリシラザンのアミン触媒タイプ(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、アクアミカNAX120−20)を用いて隣接層1に相当する層を形成することで、比較のフィルム11を作製した。隣接層1に相当する層のパーヒドロポリシラザン含有層は、湿度90%RH下、80℃にて5分間加熱することで、ポリシラザンが無機膜に転化された層を形成した。
(隣接層1に相当する層、バリア層の原子組成比)
ガスバリア性フィルム1の場合と同様に、比較のフィルム11において各層の原子組成比を求めたところ、隣接層1に相当する層は、およそC/Si=0.1以下、O/Si=2.3、バリア層は、およそN/Si=0.1以下、O/Si=2.2、であることが確認できた。またC/Siについては0.1未満であった。
《比較のフィルム12の作製》
比較のフィルム11の作製において、隣接層1に相当する層を下記のハードコート層に変更した以外は同様にして、比較のフィルム12を作製した。
(隣接層1に相当する層の形成)
ブリードアウト防止層を裏面に設けたポリエステルフィルム基材の表面側に、UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材、OPSTAR Z7501(JSR株式会社製)を乾燥後の膜厚が4μmになるように塗布した後、80℃で3分乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプにて、1.0J/cmで硬化することで、隣接層1に相当する層を形成した。
(隣接層1に相当する層、バリア層の原子組成比)
比較のフィルム11の場合と同様に、比較のフィルム12の各層の原子組成比を求めたところ、隣接層1に相当する層は、およそC/Si=5.6、O/Si=1.5、バリア層は、およそN/Si=0.5、O/Si=1.0、であることが確認できた。またC/Siについては0.1未満であった。
《比較のフィルム13の作製》
比較のフィルム11の作製において、隣接層1に相当する層を、特開2009−101620を参考に、水酸基・メタクリル基含有の芳香族系アクリル樹脂にシランカップリング剤KBM903(信越シリコーン)を1%添加し、脂肪族系イソシアネートをさらに加えた溶液を塗布して形成したアクリル樹脂層に変更し、かつ、バリア層を蒸着により形成することで、比較のフィルム13を作製した。
(隣接層1に相当する層、バリア層の原子組成比)
比較のフィルム11の場合と同様に、比較のフィルム13の各層の原子組成比を求めたところ、隣接層1に相当する層は、およそC/Si=20、O/Si=8、バリア層は、およそN/Si=0.1以下、O/Si=2.1であることが確認できた。またC/Siについては0.1未満であった。
《ガスバリア性フィルムの水蒸気透過率(WVTR)特性の評価》
〔評価1:屈曲耐性(60℃、90%RH)の評価〕
本発明のガスバリア性フィルム1〜7及び比較のフィルム8〜13について、屈曲前後のガスバリア性の変化を確認するために、あらかじめ、半径10mmの曲率になるように、180度の角度で100回屈曲を繰り返す処理を施したガスバリア性フィルムと、上記屈曲の処理を行わなかったガスバリア性フィルムについて、以下に示す方法に従って水蒸気透過率(WVTR)を測定し、下記に示すように4段階のランク評価を行い、ガスバリア性を評価した。
(水蒸気透過率の測定装置)
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
(原材料)
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
(蒸気バリア性評価用セルの作製)
真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、各フィルム(ガスバリア性フィルム1〜7、比較のフィルム8〜13)試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。
その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
得られた両面を封止した試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量を計算した。
このとき、本発明においては、セルの腐食面積が1%になるまでの腐食速度から求めたWVTRを1%WVTR、腐食面積が100%、すなわち全面腐食になるまでの腐食速度から求めたWVTRを100%WVTR(平均WVTRともいう)と呼ぶことにする。
(ランク評価)
4: 1×10−3g/m/day未満
3: 1×10−3g/m/day以上、3×10−3g/m/day未満
2: 3×10−3g/m/day以上、1×10−1g/m/day未満
1: 1×10−1g/m/day以上
〔評価2:高温高湿耐性の評価〕
得られたフィルム1〜13について、屈曲させず、60℃、90%RHに調整した高温高湿槽(恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M)内に、100時間連続で保管した後、上記評価1と同様にして、100%WVTRにて水蒸気透過率を測定し、同様のランク評価を行った。
〔評価3:急激腐食度の評価〕
本発明における急激腐食度とは、あるレベル以上のガスバリア性を有し、かつ、水蒸気がガスバリアフィルムへの透過を始めてから透過速度(腐食速度)が急激に増加していないか(100%WVTR/30%WVTRが小さい程、急激劣化が少ない、すなわち安定であると判断できる)を評価するものであり、ガスバリアフィルム自体の安定性の指標とする。
評価1、2と同様にして、下記の3段階のランク評価を行った。
ただし、本発明においては、セルの腐食面積が30%になるまでの腐食速度から求めたWVTRを30%WVTRと呼ぶことにする。
(ランク評価)
3: 1%WVTRが3×10−3g/m/day未満、かつ、100%WVTR/30%WVTRが10未満
2: 1%WVTRが3×10−3g/m/day未満、かつ、100%WVTR/30%WVTRが10以上100以下
1: 1%WVTRが3×10−3g/m/day以上、かつ、100%WVTR/30%WVTRが100以上
以上により得られた結果を、表1に示す。
Figure 0005935263
表1に記載の結果より明らかなように、比較のガスバリアフィルム8〜13に比べて、本発明のガスバリアフィルム1〜7は、各々、ガスバリア性(水蒸気透過率が低い)が高く、また、高温高湿化であっても、さらに幅広い温度帯域で保存しても、優れたバリア性を示し、屈曲性(ヒビ割れ耐性)も優れていることが明らかである。
実施例2
《有機光電変換素子1〜13の作製》
実施例1で作製した本発明のガスバリア性フィルム1〜7、比較のフィルム8〜13に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗10Ω/□)(導電膜形成前に加熱処理したもの)を、通常のフォトリソグラフィ技術と湿式エッチングとを用いて2mm幅にパターニングして、第1の電極を作製した。
パターン形成した第1の電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を膜厚が30nmになるように塗布乾燥した後、150℃で30分間熱処理させ正孔輸送層を製膜した。
これ以降は、基板を窒素チャンバー中に持ち込み、窒素雰囲気下で作製した。
まず、窒素雰囲気下で上記基板を150℃で10分間加熱処理した。次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクトロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)とPCBM(フロンティアカーボン社製:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を3.0質量%になるように1:0.8で混合した液を調製し、フィルタでろ過しながら膜厚が100nmになるように塗布を行い、室温で放置して乾燥させた。続けて、150℃で15分間加熱処理を行い、光電変換層を製膜した。
次に、上記一連の機能層を製膜した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、1×10−4Pa以下に真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.01nm/秒でフッ化リチウムを0.6nm積層し、更に続けて、2mm幅のシャドウマスクを通して(受光部が2×2mmに成るように直行させて蒸着)、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを100nm積層することで第2の電極を形成した。
得られた各々の有機光電変換素子を窒素チャンバーに移動し、封止用キャップとUV硬化樹脂を用いて封止を行って、受光部が2×2mmサイズの有機光電変換素子1〜13を作製した。
次いで、下記の方法に従って封止用のガスバリアフィルム試料の作製及び有機光電変換素子の封止を行った。
窒素ガス(不活性ガス)によりパージされた環境下で、ガスバリアフィルム1〜13の各二枚を用い、ガスバリア層を設けた面に、シール材としてエポキシ系光硬化型接着剤を塗布したものを、各々対応する有機光電変換素子1〜13の各々の封止用フィルム1〜13として作製した。
次いで、上記の有機光電変換素子1〜13を、上記接着剤を塗布した二枚のガスバリアフィルム試料の接着剤塗布面の間に挟み込んで密着させた後、片側の基板側からUV光を照射して硬化させ、有機光電変換素子1〜13の封止処理を行い、本発明の有機光電変換素子1〜7と、比較の有機光電変換素子8〜13を得た。
《太陽電池の作製及びエネルギー変換効率の評価》
上記で得られた有機光電変換素子1〜7、比較の有機光電変換素子8〜13の評価は、各々の素子を用いて、太陽電池1〜7、比較の太陽電池8〜13を各々作製し、エネルギー変換効率を求め、各々に素子としての耐久性を評価した。
尚、有機光電変換素子1〜7、比較の有機光電変換素子8〜13の各々の評価は、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、太陽電池1〜7、比較の太陽電池8〜13としてのIV特性を各々評価した。
具体的には、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)及びフィルファクターFF(%)を、素子上に形成した4箇所の受光部をそれぞれ測定し、下記式1に従って求めたエネルギー変換効率PCE(%)の4点平均値を見積もった。
式1
PCE(%)=〔Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF(%)〕/100mW/cm
得られた初期電池特性としての変換効率を測定し、性能の経時的低下の度合いを、温度60℃、湿度90%RH環境で2000時間保存した強制劣化試験後の変換効率残存率として、強制劣化試験後の変換効率/初期変換効率の比として求め、下記の基準に従って、耐久性の評価を行った(OPV素子性能)。
3:変換効率残存率が、70%以上
2:変換効率残存率が、40%以上、70%未満
1:変換効率残存率が、40%未満
尚、実用上に耐えうるのはランク2以上である。
得られた結果を表1に合わせて示した。
表1に記載の結果より明らかなように、比較のフィルムを用い作成した有機光電変換素子8〜13を備えた比較太陽電池8〜13に対し、本発明のガスバリア性フィルムを用い作成した有機光電変換素子1〜7を備えた本発明の太陽電池1〜7は、60℃、90%RHという極めて過酷な環境(高温高湿条件下)においても極めて高い耐久性を示すことが分かった。
1 隣接層2
2 バリア層
3 隣接層1
4 支持体

Claims (6)

  1. 樹脂基材と、少なくとも1層のバリア層と、少なくとも基材側で前記バリア層に隣接する隣接層1を有するガスバリア性フィルムにおいて、
    屈曲後の1%水蒸気透過率及び高温高湿耐性の100%水蒸気透過率が、3×10 −3 g/m /day未満であり、かつ、
    下記(1)及び(2)を満たすことを特徴とするガスバリア性フィルム。
    (1)前記隣接層1が少なくとも、M原子(MはSiを表す。)、O原子、C原子を同時に含む領域を有し、原子組成比で、C/Mが0.2〜2.2、かつ、O/Mが1.0〜2.0である。
    (2)前記バリア層が少なくとも、Si原子及びN原子を同時に含む領域を有し、原子組成比で、N/Siが0.3〜0.8、C/Si<0.1である。
  2. 請求項1に記載のガスバリア性フィルムにおいて、前記バリア層が更にO原子を含み、原子組成比で、O/Siが0.2〜1.3であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
  3. 請求項1または2に記載のガスバリア性フィルムにおいて、基材側で前記バリア層に隣接する隣接層1に加えて、基材とは反対側で前記バリア層に隣接する隣接層2を更に有することを特徴とするガスバリア性フィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムを製造するガスバリア性フィルムの製造方法であって、パーヒドロポリシラザンを含有する組成物の塗布液を前記隣接層1上に塗布した後、転化処理を施すことで無機物を含むバリア層を形成することを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
  5. 請求項4に記載のガスバリア性フィルムの製造方法において、前記転化処理が紫外線照射処理であることを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムで封止したことを特徴とする有機電子デバイス。
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