JP2012000828A - ガスバリア性部材、ガスバリア性部材の製造方法及び該ガスバリア性部材を有する有機光電変換素子 - Google Patents

ガスバリア性部材、ガスバリア性部材の製造方法及び該ガスバリア性部材を有する有機光電変換素子 Download PDF

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Abstract

【課題】フレキシブル性のある薄膜ガラスからなるガスバリア性部材において、ガスバリア性が高く、屈曲後も高いガスバリア性を維持する、安定性の高いガスバリア性部材及びその製造方法を提供し、かつ、該ガスバリア性部材を有する有機光電変換素子を提供する。
【解決手段】薄膜ガラス3の少なくとも片面に、パーヒドロポリシラザンを含有する組成物から形成された保護層を有するガスバリア性部材において、該保護層が、1)二酸化ケイ素層1、及び2)1)とは組成の異なるケイ素化合物層2の少なくとも2層以上の層からなることを特徴とするガスバリア性部材。
【選択図】図4

Description

本発明は、主に電子デバイス等のパッケージ、または有機光電変換素子(有機太陽電池)や有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)、液晶等のプラスチック基板といった、ディスプレイ材料に用いられるガスバリア部材、ガスバリア部材の製造方法、及び該ガスバリア部材を有する有機光電変換素子に関する。
従来から、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物の薄膜を形成したガスバリアフィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。
また、包装用途以外にも液晶表示素子、光電変換素子(太陽電池)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)基板等で使用されている。
このような分野での包装材料としてアルミ箔等が広く用いられているが、使用後の廃棄処理が問題となっているほか、基本的には不透明であり、外から内容物を確認することができないという課題を抱えており、さらに、太陽電池用材料では透明性が求められており、適用することができない。
特に、液晶表示素子、有機EL素子、光電変換素子等への応用が進んでいる透明基材には、近年、軽量化、大型化という要求に加え、ロール・トゥ・ロールでの生産が可能であること、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わり、重くて割れやすく大面積化が困難な厚膜のガラス基板に代わって透明プラスチック等のフィルム基材が採用され始めている。
しかしながら、透明プラスチック等のフィルム基材はガラスに対しガスバリア性が劣るという問題がある。例えば、有機光電変換素子用の材料として用いた場合、ガスバリア性が劣る基材を用いると、水蒸気や空気が浸透して有機膜が劣化し、光電変換効率あるいは耐久性等を損なう要因となる。
また、電子デバイス用基板としてプラスチック等のフィルム基板を用いた場合には、酸素が基板を透過して電子デバイス内に浸透、拡散し、デバイスを劣化させてしまうことや、電子デバイス内で求められる真空度を維持できないといった問題を引き起こす。
このような問題を解決するためにフィルム基板上に金属酸化物薄膜を形成してガスバリアフィルム基材とすることが知られている。包装材や液晶表示素子に使用されるガスバリアフィルムとしては、プラスチックフィルム上に酸化珪素を蒸着したものや酸化アルミニウムを蒸着したものが知られている。
また、真空プロセスが必要な蒸着法ではなく、簡便な塗布プロセスで成膜が可能な方法として、ポリシラザン等の珪素化合物の塗布液を基材上に塗布した膜に転化処理を施すことで、転化したシリカ膜からなるガスバリア層を形成する方法もいくつか知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4参照)。
特許文献2では、ポリシラザン塗布膜を大気圧下における酸素プラズマ放電処理によりシリカ膜に転化するプロセスの開示があり、真空プロセスを必要とせずにガスバリア層の形成が可能である。
しかしながら、得られた膜の水蒸気透過率は、0.35g/(m・24h)と、前述したようなデバイスに適用が可能なガスバリア層とはとても言えない。一般的に、有機光電変換素子に適用するために求められるガスバリア層の水蒸気透過率は、1×10−2g/(m・24h)を大きく下回る必要があると言われている。
一方、特許文献3、特許文献4では、ポリシラザンを転化して緻密なシリカ膜を形成する方法として、ポリシラザン塗布膜に紫外線を照射する方法が開示されている。この方法によれば、脱水縮合を経由しない直接酸化により反応が進行すると考えられているため、より低温でのシリカ転化が可能となり、樹脂フィルム上にガスバリア層を形成する上で、大変有効な方法と言える。
しかし、このようにポリシラザン塗布膜から1回のプロセスで転化形成できる緻密なシリカ膜の膜厚は30〜60nm程度に限られており、緻密なシリカ膜を厚膜で得るためには、繰り返し積層及び転化処理を繰り返す必要があるため、多大な時間と労力を要し、コストアップに繋がってしまう。
また、基材としてプラスチックフィルムを用いた場合、耐熱性、耐光性、耐水性等の保存安定性に懸念があり、長期にわたって安定性を保証できるとは言い難いのが実状である。
このような中で、フレキシブル性を有する基材として、30〜150μm程度の厚みを有する薄膜ガラスが注目されてきている。薄膜ガラスは、ガスバリア性、耐熱性、耐溶媒性が高く、フレキシブル性も有するため、ガスバリア性部材としては優れている。薄膜ガラスは、前述したような電子デバイス用の基材あるいはガスバリア性部材として優位な性質を備えた上に、薄膜ならではのフレキシブル性も有するため、ロール・トゥ・ロールでの大量生産に適用することも可能である。
一方で、表面に傷(グリフィス傷と言われている)が発生すると、理論強度に対して極端に破壊強度が低下するというガラス特有の問題があり、ハンドリング性、屈曲耐性は、プラスチックフィルムに比べるとやはり劣ると言わざるを得ない。
これらの課題を解決するために、例えば、特許文献5では、10〜70μmの薄膜ガラスに透明樹脂層を貼着したガスバリア性部材が、特許文献6では、薄膜ガラスに透明架橋フィルムが積層された積層シートが開示されている。いずれも、薄膜ガラス単体で課題となる、ハンドリング性やロール・トゥ・ロール等の生産適性の改良を目的としている。
さらに、特許文献7では、薄膜ガラスにケイ素酸化物ポリマー層が積層された薄膜シート状基板の開示があり、有機樹脂層との積層体に比べ、耐熱性が向上できるメリットがあるとしている。
しかし、特許文献5あるいは特許文献6のように薄膜ガラスに樹脂層を貼着あるいは積層する構成では、薄膜ガラス表面に傷をつけないようにする保護機能は見込めるが、1)樹脂層自身の機械的強度が弱いために厚膜化する必要があること、2)樹脂層は耐熱性、耐光性、耐水性が十分でないため、樹脂層自身に劣化の懸念があり、保護機能が大幅に低下する恐れがあること、3)樹脂層自身に十分なガスバリア性はなく、また有機成分の流出等による素子性能劣化の懸念があることから、電子デバイスの素子側には樹脂層で保護した面を適用することはできないという制約があること、等の課題がある。
また、特許文献7のように、ケイ素酸化物ポリマー層を積層した構成では、前述した樹脂層に比べれば機械的強度は高いものの、電子デバイスの素子側に用いるとガスバリア性部材サイドからの水分を防ぐことはできず、3)同様にガスバリア性は不十分であるため、樹脂層の場合と同様、素子側にケイ素酸化物ポリマー層を積層した面を適用することはできない、という課題がある。
このように、薄膜ガラスのロール搬送時や長尺でのハンドリング時に懸念される薄膜ガラス表面への傷つきを防ぐことで優れた屈曲耐性を有し、耐熱性、耐光性、耐水性に優れるだけでなく、電子デバイスの素子側に保護層を有する面を用いてもガスバリア性部材サイドからの水分を防ぐことができる、表面に保護層を有する薄膜ガラスはこれまで知られていないのが現状である。
特開2000−246830号公報 特開2007−237588号公報 特開平10−279362号公報 特開2008−159824号公報 特開2004−79432号公報 特開2009−202456号公報 特開2004−50565号公報
本発明の目的は、フレキシブル性のある薄膜ガラスからなるガスバリア性部材において、薄膜ガラス表面の傷つきを防ぐことで、屈曲後も高いガスバリア性を維持する、安定性の高いガスバリア性部材及びその製造方法を提供し、かつ、該ガスバリア性部材を有する有機光電変換素子を提供することである。
本発明の上記課題は、以下の構成により達成された。
1.薄膜ガラスの少なくとも片面に、パーヒドロポリシラザンを含有する組成物から形成された保護層を有するガスバリア性部材において、該保護層が、1)二酸化ケイ素層、及び2)1)とは組成の異なるケイ素化合物層の少なくとも2層以上の層からなることを特徴とするガスバリア性部材。
2.前記保護層が、表面側から1)二酸化ケイ素層、2)1)とは組成の異なるケイ素化合物層の層順であることを特徴とする前記1に記載のガスバリア性部材。
3.前記1または2に記載のガスバリア性部材の製造方法において、薄膜ガラス上にパーヒドロポリシラザンを含有する組成物の塗布液を塗布した後、転化処理することを特徴とするガスバリア性部材の製造方法。
4.前記転化処理が酸化性ガス雰囲気下での紫外線照射であることを特徴とする前記3に記載のガスバリア性部材の製造方法。
5.前記1または2に記載のガスバリア性部材を有することを特徴とする有機光電変換素子。
本発明により、フレキシブル性のある薄膜ガラスからなるガスバリア性部材において、薄膜ガラス表面の傷つきを防ぐことで、屈曲後も高いガスバリア性を維持する、安定性の高いガスバリア性部材及びその製造方法を提供し、かつ、該ガスバリア性部材を有する有機光電変換素子を提供することができた。
バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。 p−i−nの三層構成の光電変換層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。 タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。 本発明のガスバリア性部材の概略断面図である。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
初めに、本発明のガスバリア性部材について説明する。
〈ガスバリア性部材〉
本発明のガスバリア性部材は、薄膜ガラスの少なくとも片面にパーヒドロポリシラザンを含有する組成物から形成した保護層を有することを特徴とする。
本発明のガスバリア性部材のガスバリア性としては、JIS K 7129B法に従って測定した水蒸気透過率(水蒸気透過度:25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、10−3g/(m・24h)以下であることが好ましく、さらに好ましくは10−4g/(m・24h)以下であり、特に好ましくは10−5g/(m・24h)以下である。
また、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過率(酸素透過度)が0.01ml/(m・0.1MPa/day)以下であることが好ましく、より好ましくは0.001ml/(m・0.1MPa/day)以下である。
続いて、本発明のガスバリア性部材を構成する各要素について説明する。
〈薄膜ガラス〉
初めに、本発明における薄膜ガラスについて説明する。
本発明における薄膜ガラスは、フレキシブル性を有するものであれば特に限定されるものではないが、10〜150μmのフレキシブル性を有する薄膜ガラスが好ましく、ハンドリング性、十分なフレキシブル性、機械的強度の観点から、50〜100μm程度の薄膜ガラスがより好ましい。薄膜ガラスの成分・組成においても特に限定はないが、より安定なフレキシブル性が得られる点で、無アルカリのホウケイ酸ガラスが好ましい。
また、本発明における薄膜ガラスは、薄膜ガラスを単体として用いてもよいが、アルミ箔等の金属箔や樹脂フィルムを、薄膜ガラスに積層あるいはラミネートしたものを用いてもよい。本発明においては、薄膜ガラスの少なくとも片面にパーヒドロポリシラザンを含有する組成物から形成した保護層を有していれば、パーヒドロポリシラザンを含有する組成物から形成した層を介して、金属箔や樹脂フィルムを積層あるいはラミネートしてもよい。
ラミネートする樹脂フィルムとしては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、さらには前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。
コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等が好ましく用いられ、また、光学的透明性、耐熱性、薄膜ガラスとの密着性の点においては、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムを好ましく用いることができる。
これらの樹脂フィルムの厚みとしては、5〜500μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜250μmの範囲である。
また、これらの樹脂フィルムは透明であることが好ましい。すべての層に透明な部材を用いることにより、透明なガスバリア性部材とすることが可能となるため、光電変換素子(太陽電池)等の透明基板とすることも可能となるからである。
ここで、部材が透明とは、可視光(400〜700nm)の光透過率が80%以上であることをいう。
また、積層する樹脂フィルムとしては、薄膜ガラスとの密着性を向上する目的で、アンカーコート剤層を形成してもよい。
このアンカーコート剤層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、及びアルキルチタネート等を、1または2種以上併せて使用することができる。
これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により支持体上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。
上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1g/m〜5g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
また、積層する樹脂フィルムとして、感光性樹脂を用いてもよい。感光性樹脂としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
感光性樹脂の組成物は光重合開始剤を含有してもよい。
感光性樹脂層の形成方法は特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法、あるいは、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
感光性樹脂層の形成では、上述の感光性樹脂に、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。
また、添加剤として、表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」ともいう)を用いてもよい。
ここで光重合性を有する感光性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基等を挙げることができる。また感光性樹脂は、この反応性シリカ粒子の表面に導入された光重合反応性を有する感光性基と光重合反応可能な化合物、例えば、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物を含むものであってもよい。
また、感光性樹脂としては、このような反応性シリカ粒子や重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物に適宜汎用の希釈溶剤を混合することによって固形分を調整したものを用いることができる。
ここで反応性シリカ粒子の平均粒子径としては、0.001〜0.1μmの平均粒子径であることが好ましく、添加量としては、質量比として20〜60%の範囲で含有させることが好ましい。
さらに、重合性不飽和基修飾加水分解性シランが、加水分解性シリル基の加水分解反応によって、シリカ粒子との間に、シリルオキシ基を生成して化学的に結合しているようなものを、反応性シリカ粒子として用いることができる。
加水分解性シリル基としては、例えば、アルコキシシリル基、アセトキシシリル基等のカルボキシリレートシリル基、クロルシリル基等のハロゲン化シリル基、アミノシリル基、オキシムシリル基、ヒドリドシリル基等が挙げられる。
重合性不飽和基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニイル基、シンナモイル基、マレート基、アクリルアミド基等が挙げられる。
感光性樹脂層の厚みとしては、1〜10μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは2〜7μmの範囲である。
続いて、本発明におけるパーヒドロポリシラザンを含有する組成物について説明する。
〈パーヒドロポリシラザンを含有する組成物〉
本発明におけるパーヒドロポリシラザンを含有する組成物としては、パーヒドロポリシラザンを含有していれば特に制限はなく、組成物中のパーヒドロポリシラザン以外の材料としては、パーヒドロポリシラザン及びその溶媒と塗布可能な程度の相溶性を有していれば、いかなる材料を用いてもよい。
また、組成物中には、パーヒドロポリシラザンに対し、0.1〜10質量%程度で酸化反応を促進するために添加されるアミンや金属等の触媒を含んでもよく、特にアミン触媒を0.5〜5質量%含むことが反応を短時間化できる上で好ましい。
組成物中の溶媒を除いたパーヒドロポリシラザンの含有率としては、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%、すなわち、パーヒドロポリシラザンのみからなることが最も好ましい。パーヒドロポリシラザンの含有率が50質量%以上だと薄膜ガラスとの密着性が高くなる点で好ましく、80質量%以上だと機械的強度が高くなる点で好ましく、100質量%だと単層塗布膜(この場合の単層とは、組成が単一という意味ではなく、組成物の塗布液を1回塗布して得られた膜のことを指す)で、少なくとも2層以上の組成の異なる層を有する本発明の構成とすることが簡単にできる点で好ましい。
本発明におけるパーヒドロポリシラザンとして入手可能な材料は、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NN120、NN110、NAX120、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140等が挙げられる。
〈保護層〉
本発明における保護層は、薄膜ガラスの少なくとも片面に設けることを特徴としているが、薄膜ガラスの両面に本発明の保護層を設けてもよい。薄膜ガラスの両面に本発明の保護層を設けることで、薄膜ガラスのどちらの面もハンドリング時等の傷つきから守ることができる。
さらに、電子デバイスの素子と接する面とは反対側の面であれば、本発明の保護層の上に、さらに前述したような金属箔や樹脂フィルムを重ねて設けてもよい。
本発明における保護層は、1)二酸化ケイ素層、2)1)とは組成の異なるケイ素化合物層の少なくとも2層以上の組成の異なる層からなることを特徴としている。
本発明の層構成を得るためには、後述する転化処理を適切な条件にて塗布膜に施せばよい。すなわち、組成の異なる2層以上の層構成とするためには、膜厚と転化処理条件を最適に組み合わせればよい。転化処理条件を膜厚に合わせて最適化することで、塗布膜の表層部に二酸化ケイ素層が形成され、二酸化ケイ素層の下に表層の二酸化ケイ素層とは組成の異なるケイ素酸化物層が形成される。
単層塗布膜の転化処理で2層以上の組成の異なる層を簡単に形成できる理由としては、下記のような機構を考えている。すなわち、ポリシラザンから二酸化ケイ素への転化反応は塗布膜の表層部分から進行していくため、表層部に密度の高い二酸化ケイ素層がいったん形成されると、酸化処理に必要な活性酸素種が膜厚深さ方向に侵入していくことができなくなってしまう。このように、酸化反応による二酸化ケイ素層の形成が阻害されてしまうことで、二酸化ケイ素層の下層に組成の異なるケイ素酸化物層が形成されると考えられる。
具体的には、酸素の供給が不十分な状態で、例えば紫外線等のエネルギー線を照射した場合、ポリシラザンは例えば、酸窒化ケイ素化合物に構造変化し、膜中である程度安定に存在させることが可能となる。このように形成された酸窒化ケイ素化合物は、さらに構造変化が可能な中間体とも言えるが、薄膜ガラスと二酸化ケイ素層に挟まれて存在するため、構造を維持することができると考えている。
また、本発明における2)のケイ素化合物としては、酸窒化ケイ素化合物のほかに、原料のポリシラザン、シリカ転化反応の中間体であるシラザン化合物やシリカ化合物、シラノール基を有するシリカ化合物等が考えられる。特に、原料や中間体のケイ素化合物は、酸素や水と接触することで、さらに反応する余地を持っている。ある程度安定な酸窒化ケイ素化合物やシラノール化合物だけでなく、大気中では安定に存在できないケイ素化合物までもが膜中で安定に存在できるのは、バリア性の高い薄膜ガラスと二酸化ケイ素層にこれらの層が挟まれているという、本発明特有の構成だからこそであると言える。
このような反応性を有する層が存在することで、表層の二酸化ケイ素層に微細なクラックが発生したとしても、その下に露出した反応性の酸窒化ケイ素化合物層の酸化反応が進行するため、保護膜自身に自己補修機能が期待できると考えている。
また、二酸化ケイ素層とは組成が異なることで、二酸化ケイ素層に入ったクラックが、例えば下層の酸窒化ケイ素化合物層で食い止められ、バリア機能を担う薄膜ガラスまでクラックが進行することを阻止する働きを期待できると考えている。
これらの働きが加わることで、本発明の保護層が予想をはるかに超える保護機能を発揮するものと考えている。
薄膜ガラス上ではないが、ガラスの保護膜としてポリシラザン転化膜を用いる方法は、例えば、特許第3059453号明細書等で知られている。しかし、特許第3059453号明細書では、置換基を有するポリシラザン化合物の塗布膜を600℃もの高温で処理している。
一方、ガラス基板の平滑化膜としてではあるが、特許第3262815号明細書では、ポリシラザン塗布膜の紫外線照射によって転化反応を行っている。しかし、紫外線照射後に350℃の高温処理を追加している。
このように、前述した特許文献では、いずれも高温処理で転化反応を行っていることから、シリカ膜への転化反応を完全に終結させていると考えられる。よって、少なくとも2層以上の組成の異なる層を有する本発明とは、層構成において異なると言える。
ガラス上にポリシラザンから転化した二酸化ケイ素層を積層するだけでは、ガラス表面に直接物理的な傷がつくことを防ぐ効果はあっても、保護膜である二酸化ケイ素層にクラックが入ることは避けられず、その場合、その下のガラスまでクラックは進行してしまう懸念がある。
また、厚膜ガラス基材では屈曲耐性は問題とならないが、薄膜ガラスでは、ハンドリング時や搬送時、あるいは、素子のバリア性部材として用いた場合の最終製品形態において、繰り返し曲げられることが考えられるため、薄膜ガラス特有の屈曲耐性という課題を解決する必要がある。
本発明のように、組成が異なる2層以上の層構成を有する保護膜を薄膜ガラス上に設けることで、初めて、薄膜ガラス表面の傷つきを単純に防ぐだけでなく、保護膜の表面が傷ついた後に折り曲げを繰り返しても、薄膜ガラスのバリア性能及び強度を、予想をはるかに超えるレベルで維持することができるものと考えている。
〈転化処理〉
本発明においては、薄膜ガラス上にパーヒドロポリシラザンを含有する組成物の塗布液を塗布した後、転化処理(酸化処理、改質処理ともいう)を行う。転化処理を行うことで、前述したように、表面に硬く緻密な二酸化ケイ素層を形成することができるため、その下に反応性のケイ素化合物層を安定に存在させることができる。
パーヒドロポリシラザンを含有する組成物の塗布液は、塗布時に塗布液と水分が反応するのを抑制するため、溶媒としてキシレン、ジブチルエーテル、ソルベッソ、ターペン等、水分を含有しにくいものを用いることが好ましい。
パーヒドロポリシラザンを含有する組成物の塗布液の塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
薄膜ガラス上に設けるパーヒドロポリシラザンを含有する組成物から形成した保護層の膜厚は、30〜2000nmの範囲が好ましく、さらに好ましくは40〜500nmの範囲であり、特に好ましくは40〜300nmの範囲である。
パーヒドロポリシラザンを含有する組成物から形成した保護層は、単層でも十分効果があるが、複数の同様な層を積層してもよい。また、さらにその上に、組成物中に含まれるパーヒドロポリシラザン以外の材料として先に挙げたような、有機ポリシロキサンや有機樹脂層等を1層、あるいは複数層設けてもよい。
パーヒドロポリシラザンを含有する組成物の塗布液の塗布により形成された塗布膜(塗膜)は、転化処理を施され、組成物中に含有するパーヒドロポリシラザンが二酸化ケイ素や酸窒化ケイ素に転化される。
保護層の表面に1)二酸化ケイ素層を、その下に2)の1)とは組成の異なるケイ素化合物(例えば、酸窒化ケイ素、シラノール基を有するシリカ化合物、ポリシラザン転化中間体等)層を形成する方法としては、ある程度の膜厚(触媒の有無により最適値は異なるが、例えば50nm以上等)の塗布膜を設ければ、80〜200℃程度の低温加熱処理(ホットプレートやオーブン、電気炉等)でも目的の構成を得ることは可能である。しかし、より緻密な二酸化ケイ素層を形成できる転化処理方法を選択すれば、処理条件を調整するだけで、膜厚範囲の選択幅が広がるだけでなく、大気中では不安定な2)のケイ素化合物層も確実に薄膜ガラスと二酸化ケイ素層間に閉じ込めることができる上で、大変好ましい。
塗布された膜は、溶媒が除去された均一な乾燥膜を得る上で、アニールする態様が好ましい。アニール温度は、好ましくは60〜200℃、さらに好ましくは70〜160℃である。アニール時間は、好ましくは5秒〜24時間程度、さらに好ましくは10秒〜2時間程度である。
このように、次工程に続く転化処理前に、前述した範囲でアニールを行うことにより、均一な塗布膜を安定に得ることができる。
なお、アニールは、一定温度で行ってもよく、段階的に温度を変化させてもよく、連続的に温度を変化(昇温及び/または降温)させてもよい。アニールの際には、反応を安定化するために湿度を調節することが好ましく、通常30〜90%RH、より好ましくは40〜80%RHである。
パーヒドロポリシラザンを含有する組成物に施す本発明における転化処理は、酸化性ガス雰囲気下で光照射処理またはプラズマ照射処理することが好ましい。
さらに、酸化性ガス雰囲気下での光照射処理またはプラズマ照射処理は、加熱処理と組み合わせて行うことがより好ましい。
本発明における転化処理は、短時間に、より緻密な膜を形成することができる点で、酸化性ガス雰囲気下での光照射処理が最も好ましい。
光照射処理としては、酸化性ガス雰囲気下での光照射処理における光が、紫外光であることがより好ましい。紫外光を照射することで活性酸素やオゾンが発生し、酸化反応がより進行する。
この活性酸素やオゾンは非常に反応性が高いため、パーヒドロポリシラザンを含有する組成物から形成した塗布膜中のポリシラザンは、シラノールを経由することなく直接酸化されることで、より高密度で欠陥の少ない酸化ケイ素あるいは酸窒化ケイ素膜が形成される。
さらに反応性オゾンの不足分を光照射部とは異なる部分で、放電法等の公知の方法により酸素からオゾンを生成し、紫外線照射部に導入してもよい。
このときに照射する紫外線の波長は特に限定されるところではないが、紫外光の波長は100〜450nmが好ましく、150〜300nm程度の真空紫外光を照射することがより好ましい。
光源は、低圧水銀灯、重水素ランプ、キセノンエキシマランプ、メタルハライドランプ、エキシマレーザー等を用いることができる。ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては100mW/cm〜100kW/cm、照射エネルギーとしては10〜5000mJ/cmが好ましく、100〜2000mJ/cmがより好ましい。また、紫外線照射の際の照度は1mW/cm〜10W/cmが好ましい。
上記の中でも、波長としては、100〜200nmの真空紫外光が最も好ましく、酸化反応をより低温、短時間で進めることが可能となる。また、光源としては、キセノンエキシマランプ等の希ガスエキシマランプが最も好ましく用いられる。
パーヒドロポリシラザンを含有する組成物から形成した塗布膜中のポリシラザンに、酸化性ガス雰囲気下で紫外線を照射することにより、ポリシラザンが高密度のケイ素酸化物膜、すなわち高密度シリカ膜に転化するが、該シリカ膜の膜厚や密度は紫外線の強度、照射時間、波長(光のエネルギー密度)により制御が可能であり、所望の膜構造を得るためにランプの種類を使い分ける等、適宜選択することが可能である。また、連続的に照射するだけでなく複数回の照射を行ってもよく、複数回の照射が短時間ないわゆるパルス照射で有ってもよい。
また、紫外線照射と同時に該塗膜を加熱することも、反応(酸化反応、転化処理、改質処理ともいう)を促進するために好ましく用いられる。加熱の方法は、ヒートブロック等の発熱体に基板を接触させ熱伝導により塗膜を加熱する方法、抵抗線等による外部ヒーターにより雰囲気を加熱する方法、IRヒーターの様な赤外領域の光を用いた方法等が挙げられるが、特に限定はされない。塗膜の平滑性を維持できる方法を適宜選択してよい。
加熱する温度としては、50〜200℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは80〜150℃の範囲であり、加熱時間としては1秒〜10時間の範囲が好ましく、さらに好ましくは10秒〜1時間の範囲で加熱することである。
光照射処理の中でもより好ましいのは、真空紫外線(VUV光)処理である。
本発明では、パーヒドロポリシラザンを含有する組成物の塗布液を薄膜ガラス上に塗布、乾燥した後、真空紫外線を照射する方法で転化処理する事が好ましい。この真空紫外線(VUV光)照射により、ポリシラザンの分子結合を切断し、また膜内若しくは雰囲気内に微量に存在する酸素でも効率的にオゾン若しくは活性酸素に変換することが可能であり、塗膜表面のセラミックス化(シリカ改質)が促進され、また得られるセラミックス膜が一層緻密になる。VUV光照射は、塗膜形成後であればいずれの時点で実施しても有効である。
本発明における真空紫外線とは、具体的には100〜200nmの真空紫外線(VUV光)が用いられる。真空紫外線の照射強度及び/または照射時間は、適宜設定することが可能である。真空紫外線照射装置は、市販のランプ(例えば、ウシオ電機製)を使用することが可能である。
VUV光照射はバッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、被塗布基材の形状によって適宜選定することができる。例えば、バッチ処理の場合には、パーヒドロポリシラザンを含有する組成物から形成した塗布膜を設けた薄膜ガラスを、真空紫外線発生源を具備した真空紫外線焼成炉で処理することができる。真空紫外線焼成炉自体は一般に知られており、例えば、ウシオ電機(株)製を使用することができる。また、パーヒドロポリシラザンを含有する組成物から形成した塗布膜を設けた薄膜ガラスが長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら上記のような真空紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に真空紫外線を照射することにより、表面をセラミックス化することができる。
該真空紫外光は、ほとんどの物質の原子間結合力より大きいため、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみによる作用により、直接切断することが可能であるため好ましく用いることができる。この作用を用いることにより、加水分解を必要とせず低温でかつ効率的に改質処理が可能となる。
これに必要な真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
Xe、Kr、Ar、Ne等の希ガスの原子は化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電等によりエネルギーを得た希ガスの原子(励起原子)は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には
e+Xe→e+Xe
Xe+Xe+Xe→Xe +Xe
となり、励起されたエキシマ分子であるXe が基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光を発光する。エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。また、余分な光が放射されないので、対象物の温度を低く保つことができる。さらには始動・再始動に時間を要さないので、瞬時の点灯点滅が可能である。
エキシマ発光を得るには誘電体バリア放電を用いる方法が知られている。誘電体バリア放電とは両電極間に誘電体(エキシマランプの場合は透明石英)を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加することによりガス空間に生じる、雷に似た非常に細いmicro dischargeと呼ばれる放電で、micro dischargeのストリーマが管壁(誘電体)に達すると誘電体表面に電荷が溜まるため、micro dischargeは消滅する。誘電体バリア放電は、このmicro dischargeが管壁全体に広がり、生成・消滅を繰り返している放電である。このため肉眼でも分る光のチラツキを生じる。また、非常に温度の高いストリーマが局所的に直接管壁に達するため、管壁の劣化を早める可能性もある。
効率よくエキシマ発光を得る方法としては、誘電体バリア放電以外に無電極電界放電でも可能である。容量性結合による無電極電界放電で、別名RF放電とも呼ばれる。ランプと電極及びその配置は基本的には誘電体バリア放電と同じでよいが、両極間に印加される高周波は数MHzで点灯される。無電極電界放電はこのように空間的にまた時間的に一様な放電が得られるため、チラツキが無い長寿命のランプが得られる。
誘電体バリア放電の場合はmicro dischargeが電極間のみで生じるため、放電空間全体で放電を行わせるには外側の電極は外表面全体を覆い、かつ外部に光を取り出すために光を透過するものでなければならない。このため細い金属線を網状にした電極が用いられる。この電極は光を遮らないようにできるだけ細い線が用いられるため、酸素雰囲気中では真空紫外光により発生するオゾン等により損傷しやすい。
これを防ぐためにはランプの周囲、すなわち照射装置内を窒素等の不活性ガスの雰囲気にし、合成石英の窓を設けて照射光を取り出す必要が生じる。合成石英の窓は高価な消耗品であるばかりでなく、光の損失も生じる。
二重円筒型ランプは外径が25mm程度であるため、ランプ軸の直下とランプ側面では照射面までの距離の差が無視できず、照度に大きな差を生じる。したがって仮にランプを密着して並べても、一様な照度分布が得られない。合成石英の窓を設けた照射装置にすれば酸素雰囲気中の距離を一様にでき、一様な照度分布が得られる。
無電極電界放電を用いた場合には外部電極を網状にする必要はない。ランプ外面の一部に外部電極を設けるだけでグロー放電は放電空間全体に広がる。外部電極には通常アルミのブロックで作られた光の反射板を兼ねた電極がランプ背面に使用される。しかし、ランプの外径は誘電体バリア放電の場合と同様に大きいため、一様な照度分布にするためには合成石英が必要となる。
細管エキシマランプの最大の特徴は構造がシンプルなことである。石英管の両端を閉じ、内部にエキシマ発光を行うためのガスを封入しているだけである。
細管ランプの管の外径は6〜12mm程度で、あまり太いと始動に高い電圧が必要になる。
放電の形態は誘電体バリア放電でも無電極電界放電のいずれでも使用できる。電極の形状はランプに接する面が平面であってもよいが、ランプの曲面に合わせた形状にすればランプをしっかり固定できるとともに、電極がランプに密着することにより放電がより安定する。またアルミで曲面を鏡面にすれば光の反射板にもなる。
Xeエキシマランプは波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。また、有機物の結合を解離させる波長の短い172nmの光のエネルギーは能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン層の改質を実現できる。したがって、波長185nm、254nmの発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べて高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によるダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基板等への照射を可能としている。
エキシマランプは光の発生効率が高いため低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で短い波長でエネルギーを照射するため、照射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を持っている。
また、真空紫外線の照射強度が高ければ、光子とポリシラザン内の化学結合が衝突する確率が増え、改質反応を短時間化することができる。また、内部まで侵入する光子の数も増加するため改質膜厚も増加及び/または膜質の良化(高密度化)が可能である。但し、照射時間が長すぎると平面性の劣化やガスバリア性部材の他の材料にダメージを与える場合がある。一般的には、照射強度と照射時間の積で表される積算光量で反応進行具合を考えるが、酸化シリコンの様に組成は同一でも、様々な構造形態をとること材料においては、照射強度の絶対値が重要になる場合もある。
従って、本発明ではVUV照射工程において、少なくとも1回は100〜200mW/cmの最大照射強度を与える改質処理を行うことが好ましい。この強度以下だと急激に改質効率が劣化し、処理に時間を要することになり、照射強度をこれより高くすると、ランプやランプユニットのその他の部材へのダメージが大きくなり、ランプ自体の劣化を早めることになってしまう。
VUV光の照射時間は、任意に設定可能であるが、高照度工程での照射時間は0.1秒〜3分間が好ましい。より好ましくは0.5秒〜1分である。
VUV光照射時の酸素濃度は500〜10000ppm(1%)とすることが好ましい。より好ましくは、1000〜5000ppmである。前記の濃度範囲より酸素濃度が高いと改質効率が低くなり、また前記範囲より低い酸素濃度の場合、大気との置換時間が長くなるのと同時に、ロール・トゥ・ロールの様な連続生産を行う場合はウエッブ搬送によってVUV照射庫内に巻き込む空気量(酸素を含む)が多くなり、多大な流量のガスを流さないと酸素濃度を調整できなくなってくる。
ポリシラザン含有塗膜中には、塗布時に酸素及び微量の水分が混入し、さらにはポリシラザン含有塗膜以外でも、薄膜ガラスや樹脂層等に吸着酸素や吸着水があり、照射庫内に敢えて酸素を導入しなくとも、改質反応に要する酸素を供給する酸素源は十分にあることが分かった。また、前述した様に172nmのVUV光が酸素により吸収され、膜面に到達する172nmの光量が減少してしまい、光による処理の効率を低下することになる。すなわち、VUV光照射時には、できるだけ酸素濃度の低い状態で、VUV光が効率よく塗膜まで到達する状態で改質処理することが好ましい。
VUV光照射時にこれら酸素以外のガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
酸化性ガス雰囲気下でのプラズマ照射処理としては、一般的な真空酸素プラズマ法等を用いることができるが、大気圧プロセスが可能な点で、大気圧プラズマ法を用いるのが好ましい。大気圧プラズマ法では、酸素ガス、あるいは水素ガスを反応ガスとして用い、パーヒドロポリシラザンを含有する組成物の塗布液から形成した塗布膜に対して酸化処理を施すことで、膜の表面に本発明の1)二酸化ケイ素層、及び、2)1)とは組成の異なるケイ素化合物層を形成することができる。
〈ガスバリア性部材の用途〉
本発明のガスバリア性部材は、種々の封止用材料、基材として用いることができる。
本発明のガスバリア性部材は、光電変換素子に特に有用に用いることができる。光電変換素子に用いる際に、本発明のガスバリア性部材は透明であるため、このガスバリア性部材を基材として用いてこの側から太陽光の受光を行うように構成できる。即ち、このガスバリア性部材上に、例えば、ITO等の透明導電性薄膜を透明電極として設け、光電変換素子用基材を構成することができる。
そして、支持体上に設けられたITO透明導電膜を電極としてこの上に半導体層を設け、さらに金属膜からなる電極を形成して光電変換素子を形成することができる。この上に別の封止材料を(同じでもよいが)重ねて前記ガスバリア性部材基材と周囲を接着、素子を封じ込めることで光電変換素子を封止することができ、これにより外気の湿気や酸素等のガスによる光電変換素子への影響を封じることができる。
光電変換素子用基材は、本発明のガスバリア性部材上に、透明導電性膜を作製することにより得られる。
また、透明導電膜の形成は、真空蒸着法やスパッタリング法等を用いることにより、また、インジウム、スズ等の金属アルコキシド等を用いたゾルゲル法等塗布法によっても製造できる。なお、透明導電膜の膜厚としては、0.1〜1000nmの範囲の透明導電膜が好ましい。
次いで、本発明のガスバリア性部材の好ましい用途の1つである有機光電変換素子について説明する。
〈有機光電変換素子〉
(封止基材とその製造方法)
本発明のガスバリア性部材において、ガスバリア性部材上に、さらに透明導電膜を形成し、これを陽極として、この上に有機光電変換素子を構成する層、陰極となる層とを積層し、この上にさらにもう一つのガスバリア性部材を封止基材として、重ね接着することで封止することができる。
用いられるもう一つの封止材料(封止基材)としては、本発明のガスバリア性部材を用いることができる。また、例えば、包装材等に使用される公知のガスバリアフィルム、例えばプラスチックフィルム上に酸化ケイ素や、酸化アルミニウムを蒸着したもの、緻密なセラミック層と、柔軟性を有する衝撃緩和ポリマー層を交互に積層した構成のガスバリアフィルム等を封止フィルムとして用いることができる。
また特に、樹脂ラミネート(ポリマー膜)された金属箔は、光取り出し側のガスバリアフィルムとして用いることはできないが、低コストでさらに透湿性の低い封止材料であり光取り出しを意図しない(透明性を要求されない)場合、封止フィルムとして好ましい。
本発明において金属箔とはスパッタや蒸着等で形成された金属薄膜や、導電性ペースト等の流動性電極材料から形成された導電膜と異なり、圧延等で形成された金属の箔またはフィルムを指す。
金属箔としては、金属の種類に特に限定はなく、例えば銅(Cu)箔、アルミニウム(Al)箔、金(Au)箔、黄銅箔、ニッケル(Ni)箔、チタン(Ti)箔、銅合金箔、ステンレス箔、スズ(Sn)箔、高ニッケル合金箔等が挙げられる。これらの各種の金属箔の中で特に好ましい金属箔としてはAl箔が挙げられる。
金属箔の厚さは、金属箔に用いる材料による使用時のピンホール発生を防止し、ガスバリア性(透湿度、酸素透過率)を向上させ、かつ、生産性を向上させる等の観点から、6〜50μmの範囲に調整することが好ましい。
樹脂フィルム(ポリマー膜)がラミネートされた金属箔では、該樹脂フィルムとしては、機能性包装材料の新展開(株式会社 東レリサーチセンター)に記載の各種材料を使用することが可能であり、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体系樹脂、セロハン系樹脂、ビニロン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂、ナイロン系樹脂等の樹脂は、延伸されていてもよく、さらに塩化ビニリデン系樹脂をコートされていてもよい。また、ポリエチレン系樹脂は、低密度あるいは高密度のものも用いることができる。
後述するが、2つのフィルムの封止方法としては、例えば、一般に使用されるインパルスシーラー熱融着性の樹脂層をラミネートして、インパルスシーラーで融着させ、封止する方法が好ましく、この場合、ガスバリア性部材同士の封止は、封止作業時のフィルムの取り扱い性の向上と、インパルスシーラー等による熱融着を容易に実施可能にさせる観点から膜厚としては300μm以下が望ましい。
(有機光電変換素子の封止)
本発明の有機光電変換素子では、本発明のガスバリア性部材上に透明導電膜を形成して得られた有機光電変換素子用基材上に、有機光電変換素子を構成する各層を形成した後、上記の封止基材を用いて、不活性ガスによりパージされた環境下で、上記封止基材で陰極面を覆うようにして、有機光電変換素子を封止することができる。
不活性ガスとしては、Nの他、He、Ar等の希ガスが好ましく用いられるが、HeとArを混合した希ガスも好ましく、気体中に占める不活性ガスの割合は、90〜99.9体積%であることが好ましい。不活性ガスによりパージされた環境下で封止することにより、保存性が改良される。
また、前記の樹脂フィルム(ポリマー膜)がラミネートされた金属箔を用いて、有機光電変換素子を封止するにあたっては、ラミネートされた樹脂フィルム面ではなく、金属箔上にセラミック層を形成し、このセラミック層面を有機光電変換素子の陰極に貼合することが好ましい。
封止フィルムのポリマー膜面を有機光電変換素子の陰極に貼合すると、部分的に導通が発生することがある。
封止フィルムを有機光電変換素子の陰極に貼り合わせる封止方法としては、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルム、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等の熱融着性フィルムを積層して、インパルスシーラーで融着させ封止する方法がある。
接着方法としてはドライラミネート方式が作業性の面で優れている。この方法は一般には1.0〜2.5μm程度の硬化性の接着剤層を使用する。
但し、接着剤の塗設量が多すぎる場合には、トンネル、浸み出し、縮緬皺等が発生することがあるため、好ましくは接着剤量を乾燥膜厚で3〜5μmになるように調節することが好ましい。
ホットメルトラミネーションとはホットメルト接着剤を溶融し支持体に接着層を塗設する方法であるが、接着剤層の厚さは一般に1〜50μmと広い範囲で設定可能な方法である。一般に使用されるホットメルト接着剤のベースレジンとしては、EVA、EEA、ポリエチレン、ブチルラバー等が使用され、ロジン、キシレン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂等が粘着付与剤として、ワックス等が可塑剤として添加される。
エクストルージョンラミネート法とは高温で溶融した樹脂をダイスにより支持体上に塗設する方法であり、樹脂層の厚さは一般に10〜50μmと広い範囲で設定可能である。
エクストルージョンラミネートに使用される樹脂としては一般に、LDPE、EVA、PP等が使用される。
次いで、本発明の有機光電変換素子の構成層について説明する。
(有機光電変換素子の構成)
本発明に係る有機光電変換素子の好ましい態様を説明するが、これらに限定されない。
本発明の有機光電変換素子の構成としては特に制限がなく、陽極と陰極と、両者に挟まれた発電層(p型半導体とn型半導体が混合された層、バルクヘテロジャンクション層、i層ともいう)が少なくとも1層以上あり、光を照射すると電流を発生する素子であることが好ましい。
有機光電変換素子の層構成の好ましい具体例を以下に示す。
(i)陽極/発電層(光電変換層ともいう)/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発電層(光電変換層)/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発電層(光電変換層)/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/p型半導体層/発電層(光電変換層)/n型半導体層/電子輸送層/陰極
(v)陽極/正孔輸送層/第1発電層(光電変換層ともいう)/電子輸送層/中間電極/正孔輸送層/第2発電層(光電変換層ともいう)/電子輸送層/陰極。
(発電層(光電変換層ともいう))
本発明の有機光電変換素子の発電層について説明する。
本発明の有機光電変換素子の発電層は、正孔を輸送できるp型半導体材料と電子を輸送できるn型半導体材料を含有していることが必要であり、これらは実質2層でヘテロジャンクション層を形成していてもよいし、1層の内部で混合された状態となっているバルクヘテロジャンクション層を形成してもよいが、バルクヘテロジャンクション層のほうが光電変換効率の向上の観点からより好ましい構成である。
発電層に用いられるp型半導体材料、n型半導体材料については後述する。
本発明の有機光電変換素子の発電層は、有機EL素子の発光層と同様に、発電層を正孔輸送層、電子輸送層で挟み込むことで、正孔及び電子の陽極・陰極への取り出し効率を高めることができるため、それらを有する構成((ii)、(iii))のが好ましく用いられる。
また、発電層自体も正孔と電子の整流性(キャリア取り出しの選択性)を高めるため、(iv)のようにp型半導体材料とn型半導体材料単体からなる層で発電層を挟み込むような構成(p−i−n構成ともいう)であってもよい。
また、太陽光の利用効率を高めるため、異なる波長の太陽光をそれぞれの発電層で吸収するような、タンデム構成((v)の構成)であってもよい。
太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、図1に示す有機光電変換素子10におけるサンドイッチ構造に代わって、一対の櫛歯状電極上にそれぞれ正孔輸送層14、電子輸送層16を形成し、その上に光電変換部15を配置するといった、バックコンタクト型の有機光電変換素子が構成とすることもできる。
さらに、詳細な本発明に係る有機光電変換素子の好ましい態様を図1〜図3を用いて説明する。
図1は、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池の一例を示す断面図である。図1において、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10は、基板11の一方面上に、陽極12、正孔輸送層17、バルクヘテロジャンクション層の発電層14、電子輸送層18及び陰極13が順次積層されている。
基板11は、順次積層された陽極12、発電層14及び陰極13を保持する部材である。本実施形態では、基板11側から光電変換される光が入射するので、基板11は、この光電変換される光を透過させることが可能な、即ち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材である。
基板11は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が用いられる。この基板11は、必須ではなく、例えば、発電層14の両面に陽極12及び陰極13を形成することでバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10が構成されてもよい。
発電層14は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型半導体材料は相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能する。
図1において、基板11を介して陽極12から入射された光は、発電層14のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。
発生した電荷は、内部電界、例えば、陽極12と陰極13の仕事関数が異なる場合では陽極12と陰極13との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。
例えば、陽極12の仕事関数が陰極13の仕事関数よりも大きい場合では、電子は陽極12へ、正孔は陰極13へ輸送される。
なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、陽極12と陰極13との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
なお、図1には記載していないが、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、あるいは平滑化層等の他の層を有していてもよい。
さらに好ましい構成としては、前記発電層14が、所謂p−i−nの三層構成となっている構成(図2)である。通常のバルクヘテロジャンクション層は、p型半導体材料とn型半導体層が混合したi層単体であるが、p型半導体材料単体からなるp層、及びn型半導体材料単体からなるn層で挟むことにより、正孔及び電子の整流性がより高くなり、電荷分離した正孔・電子の再結合等によるロスが低減され、一層高い光電変換効率を得ることができる。
さらに、太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような光電変換素子を積層したタンデム型の構成としてもよい。
図3は、タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。タンデム型構成の場合、基板11上に、順次透明電極12、第1の発電層14′を積層した後、電荷再結合層15を積層した後、第2の発電層16、次いで対電極13を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。第2の発電層16は、第1の発電層14′の吸収スペクトルと同じスペクトルを吸収する層でもよいし、異なるスペクトルを吸収する層でもよいが、好ましくは異なるスペクトルを吸収する層である。また、第1の発電層14′、第2の発電層16がともに前述のp−i−nの三層構成であってもよい。
(p型半導体材料、n型半導体材料)
本発明の有機光電変換素子の発電層(光電変換層ともいう)の形成に用いられる材料について説明する。
(p型半導体材料)
本発明の有機光電変換素子の発電層として好ましく用いられるバルクヘテロジャンクション層の形成に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマー・オリゴマーが挙げられる。
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
また、上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号、国際公開第03/28125号、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127,No14,4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123,p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008),No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、国際公開第08/000664号に記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体、Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は、結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成可能な化合物が好ましい。
また、発電層上に電子輸送層を塗布で成膜する場合、電子輸送層溶液が発電層を溶かしてしまうという課題があるため、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料を用いてもよい。
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、または米国特許出願公開第2003/136964号明細書、及び特開2008−16834号公報等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって、可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料等を挙げることができる。
(n型半導体材料)
本発明に係るバルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料としては特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物や、そのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
しかし、各種のp型半導体材料と高速(〜50fs)、かつ効率的に電荷分離を行うことができる、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、及びこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
中でも、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7,329,709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基を有してより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
(正孔輸送層、電子ブロック層)
本発明の有機光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション層と陽極との中間には正孔輸送層17を、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層17としては、スタルクヴイテック製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、国際公開第06/19270号パンフレット等に記載のシアン化合物、等を用いることができる。
なお、バルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した電子を陽極側には流さないような整流効果を有する電子ブロック機能が付与される。
このような正孔輸送層は電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用するほうが好ましい。このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。
また、バルクヘテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。バルクヘテロジャンクション層を形成する前に、下層に塗布膜を形成すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
(電子輸送層・正孔ブロック層)
本発明の有機光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション層と陰極との中間には電子輸送層18を形成することで、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
また、電子輸送層18としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様にバルクヘテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する正孔ブロック機能が付与される。
このような電子輸送層は正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用する方が好ましい。
このような材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。
また、バルクヘテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
(その他の層)
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層等を挙げることができる。
(透明電極(第1電極))
本発明に係る透明電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができるが、好ましくは透明電極を陽極として用いることである。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブ用いることができる。
また、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて透明電極とすることもできる。
(対電極(第2電極))
対電極は導電材単独層であってもよいが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。対電極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。
このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
これらの中で、電子の取り出し性能及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
対電極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
対電極の導電材として金属材料を用いれば、対電極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
また、対電極13は、金属(例えば、金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤ、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤの分散物であれば、透明で導電性の高い対電極を塗布法により形成でき好ましい。
また、対電極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の対電極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記透明電極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性対電極とすることができる。
(中間電極)
また、前記(v)(または図3)のようなタンデム構成の場合に必要となる中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、前記透明電極で用いたような材料(ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層またはナノ粒子・ナノワイヤを含有する層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等)を用いることができる。
なお、前述した正孔輸送層と電子輸送層の中には、適切に組み合わせて積層することで中間電極(電荷再結合層)として働く組み合わせもあり、このような構成とすると1層形成する工程を省くことができ好ましい。
(金属ナノワイヤ)
本発明に係る導電性繊維としては、金属でコーティングした有機繊維や無機繊維、導電性金属酸化物繊維、金属ナノワイヤ、炭素繊維、カーボンナノチューブ等を用いることができるが、金属ナノワイヤが好ましい。
一般に、金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする線状構造体のことを言う。特に、本発明における金属ナノワイヤとはnmサイズの直径を有する線状構造体を意味する。
本発明に係る金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、また、適度な光散乱性を発現するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。
また、平均直径は、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。本発明においては、金属ナノワイヤの平均直径として10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
本発明に係る金属ナノワイヤの金属組成としては特に制限はなく、貴金属元素や卑金属元素の1種または複数の金属から構成することができるが、貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)及び鉄、コバルト、銅、錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から少なくとも銀を含むことがより好ましい。
また、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマイグレーション耐性)を両立するために、銀と、銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含むことも好ましい。本発明に係る金属ナノワイヤが2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤの表面と内部で金属組成が異なっていてもよいし、金属ナノワイヤ全体が同一の金属組成を有していてもよい。
本発明において金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。
例えば、Agナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745等、Auナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、Cuナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、Coナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。
特に、上述した、Adv.Mater.及びChem.Mater.で報告されたAgナノワイヤの製造方法は、水系で簡便にAgナノワイヤを製造することができ、また、銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に用いられる金属ナノワイヤの製造方法として好ましく適用することができる。
本発明においては、金属ナノワイヤが互いに接触し合うことにより3次元的な導電ネットワークを形成し、高い導電性を発現するとともに、金属ナノワイヤが存在しない導電ネットワークの窓部を光が透過することが可能となり、さらに金属ナノワイヤの散乱効果によって、有機発電層部からの発電を効率的に行うことが可能となる。第1電極において金属ナノワイヤを有機発電層部に近い側に設置すれば、この散乱効果がより有効に利用できるのでより好ましい実施形態である。
(光学機能層)
本発明に係る有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてもよい。光学機能層としては、例えば、反射防止層、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層等を設けてもよい。
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。
屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
また、光拡散層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物等のナノ粒子・ナノワイヤ等を無色透明なポリマーに分散した層等を挙げることができる。
(成膜方法・表面処理方法)
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層、及び輸送層・電極の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、バルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。
このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また、塗布法は製造速度にも優れている。
この際に使用する塗布方法に制限はないが、例えば、スピンコート法、溶液からのキャスト法、ディップコート法、ブレードコート法、ワイヤバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等が挙げられる。さらには、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法でパターニングすることもできる。
塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために、加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクヘテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
発電層(バルクヘテロジャンクション層)14は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。この場合、前述したような塗布後に不溶化できるような材料を用いることで形成することが可能となる。
(パターニング)
本発明に係る電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
バルクヘテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取ってもよいし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしてもよい。
電極材料等の不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチングまたはリフトオフ等の公知の方法によってパターニングしたりすることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成してもよい。
そこで、このワイヤの傾斜特性及び銅−亜鉛−ニッケル三元合金めっき層の存在を確認すべく、以下の測定を実施した。
XPS(X−ray photoelectron microscopy)による測定銅−亜鉛−ニッケル三元めっきワイヤを、最終湿式伸線前後について、本装置を用いて深さ方向での元素分布(濃度勾配)を調査した。本装置は、試料の測定面における元素濃度を測定、Arガスで試料表面を削り、また、削ったことでできた試料表面の新生面の元素濃度を測定するというルーチンを繰り返し、試料の深さ方向での元素の濃度勾配を分析するものである。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
《ガスバリア性部材の作製》
〈ガスバリア性部材1−1の作製〉
ガスバリア性を有する基材として、厚さ100μmの薄膜ガラスを用いた。この薄膜ガラスの表面を、UVオゾン装置(SAMCO社製、UV−1)を用いて、酸素流量を0.5L/分に調整し、5分間ドライ洗浄を行った。
続いて、薄膜ガラスの洗浄した面上に、本発明のパーヒドロポリシラザンを含有する組成物の塗布液として、パーヒドロポリシラザンの10質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、アクアミカNN120−10、無触媒タイプ)を用い、スピンコート(5000rpm、60秒)にて塗布後、150℃にて10分間乾燥することで、パーヒドロポリシラザンを含有する組成物の塗布膜を形成した。
ここで、乾燥後の塗布膜の膜厚は、TEM(Transmission Electron Microscope:透過電子顕微鏡)の断面写真より、150nmであることを確認した。
さらに、ステージ可動型キセノンエキシマ照射装置(MDエキシマ社製、MECL−M−1−200)を用いて、エキシマランプを照射(エキシマ光源ランプと基材との距離:1mm、ステージ温度:100℃、処理環境の酸素濃度:0.1%、ステージ可動速度10mm/秒で10回搬送)することで、膜の表面およそ10nmが二酸化ケイ素層1に、その下のおよそ120nmがケイ素化合物層2に転化された、本発明のガスバリア性部材1−1を作製した。
ここで、二酸化ケイ素層1、ケイ素化合物層2の各膜厚は、ガスバリア性部材作製後のTEM(Transmission Electron Microscope:透過電子顕微鏡)の断面写真より、明確な界面が見られることで確認できた。
また、各層の組成については、スパッタ法とXPS表面分析を組み合わせて確認した。
スパッタ法を用いて表面から深さ方向へエッチングを行い、XPS表面分析装置を用いて、最表面を0nmとして、0.5nm/分の速度でスパッタし、原子組成比を測定したところ、表層からおよそ10nm付近までは、Si:Oの比率がほぼ1:2(二酸化ケイ素層)、その下から薄膜ガラスまでのおよそ120nm付近までは、Si:O:Nの比率がほぼ均一に1:0.25:0.75(酸窒化ケイ素化合物層)となっていることが分かった。
表面分析に用いるXPS表面分析装置としては、特に限定はなく、いかなる機種も使用することができるが、本実施例においてはVGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。
〈ガスバリア性部材1−2の作製〉
ガスバリア性部材1−1の作製において、ガスバリア性を有する基材として用いた厚さ100μmの薄膜ガラスの裏面に、接着剤を介してPETフィルムを張り付けた基材を用いた以外は同様にして、本発明のガスバリア性部材1−2を作製した。
ガスバリア性部材1−1と同様に、TEMの断面写真、及びXPS表面分析から、表層からおよそ10nmが二酸化ケイ素層、そこから薄膜ガラスまでのおよそ120nmが酸窒化ケイ素化合物層となっていることが分かった。
〈ガスバリア性部材1−3の作製〉
ガスバリア性部材1−1の作製において、ガスバリア性を有する基材として用いた厚さ100μmの薄膜ガラスの裏面に、アクリル樹脂を塗布(膜厚4μm)した基材を用いた以外は同様にして、本発明のガスバリア性部材1−3を作製した。
ガスバリア性部材1−1と同様に、TEMの断面写真、及びXPS表面分析から、表層からおよそ10nmが二酸化ケイ素層、そこから薄膜ガラスまでのおよそ120nmが酸窒化ケイ素化合物層となっていることが分かった。
〈ガスバリア性部材1−4の作製〉
ガスバリア性部材1−1の作製において、パーヒドロポリシラザンの10質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、アクアミカNN120−10、無触媒タイプ)を、パーヒドロポリシラザンの20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、アクアミカNAX120−20、アミン触媒タイプ)とメチルヒドロポリシラザンの20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、アクアミカMHPS−20DB)を4:1の質量比率で混合した溶液に換えた以外は同様にして、まず、ケイ素化合物層2を薄膜ガラス上に300nm形成した。続いて、ガスバリア性部材1−1の作製において、パーヒドロポリシラザンの10質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、アクアミカNN120−10、無触媒タイプ)の代わりに、2質量%になるようにジブチルエーテルで希釈した液を用いた以外は同様にして、ケイ素化合物層2の上に二酸化ケイ素層1を10nm形成することで、本発明のガスバリア性部材1−4を作製した。
ガスバリア性部材1−1と同様に、TEMの断面写真、及びXPS表面分析を行ったところ、表層からおよそ10nmが二酸化ケイ素層、そこから薄膜ガラスまでのおよそ300nmが、Si原子の一部にOH基が置換したSiOH(シラノール)が含まれるシリカ層(シラノール含有シリカ層)となっていることが分かった。シラノール含有シリカ層は、Si:Oの比率がほぼ均一に1:2.2となっていること、及び、シラノール基の存在がTof−SIMS(Time−Of−Flight Secondary Ion Spectrometry:飛行時間型二次イオン質量分析法)により確認できたことから推定した。
〈ガスバリア性部材1−5の作製〉
ガスバリア性部材1−1の作製において、パーヒドロポリシラザンの10質量%ジブチルエーテル溶液を、アクアミカNN120−10(無触媒タイプ)の代わりに、アクアミカNN120−10(無触媒タイプ):アクアミカNAX120−10(アミン触媒タイプ)=1:4の質量比率で混合した溶液に換え、さらにエキシマランプ照射時のステージ可動速度を10mm/秒で10回搬送に換えた以外は同様にして、本発明のガスバリア性部材1−5を作製した。
ガスバリア性部材1−1と同様に、TEMの断面写真、及びXPS表面分析から、表層からおよそ10nmが二酸化ケイ素層、そこから薄膜ガラスまでのおよそ120nmが酸窒化ケイ素化合物層となっていることが分かった。
〈ガスバリア性部材1−6の作製〉
ガスバリア性部材1−6として、厚さ100μmの薄膜ガラスを用いた。
〈ガスバリア性部材1−7の作製〉
ガスバリア性部材1−7として、ガスバリア性部材1−2の基材として用いた厚さ100μmの薄膜ガラスの裏面に接着剤を介して厚さ50μmのPETフィルムを張り付けた部材を用いた。
〈ガスバリア性部材1−8の作製〉
ガスバリア性部材1−8として、ガスバリア性部材1−3の基材として用いた厚さ100μmの薄膜ガラスの裏面にアクリル樹脂を塗布(膜厚4μm)した部材を用いた。
〈ガスバリア性部材1−9の作製〉
ガスバリア性部材1−1の作製において、基材として用いた厚さ100μmの薄膜ガラスの代わりに厚さ125μmのPETフィルムを用いた以外は同様にして、ガスバリア性部材1−9を作製した。
ガスバリア性部材1−1と同様に、TEMの断面写真、及びXPS表面分析を行ったところ、表層からおよそ150nmがほぼ均一にシラノール含有シリカ層となっていることが分かった。これは、基材がバリア性のないPETフィルムであるために、基材側から水分が多く供給されることで、本発明における表層の二酸化ケイ素層が形成される前にシラノール化が進行してしまうためと推測している。
〈ガスバリア性部材1−10の作製〉
ガスバリア性部材1−1の作製において、パーヒドロポリシラザンの10質量%ジブチルエーテル溶液を、フェニルトリメトキシシラン加水分解縮合ポリマーの10質量%トルエン溶液に換え、塗布膜を80℃のオーブンで3時間乾燥後、300℃で30分熱処理した以外は同様にして、ガスバリア性部材1−10を作製した。
ガスバリア性部材1−1と同様に、TEMの断面写真、及びXPS表面分析を行ったところ、表層からおよそ150nmがほぼ均一にシラノール含有シリカ層となっていることが分かった。
〈ガスバリア性部材1−11の作製〉
ガスバリア性部材1−10の作製において、フェニルトリメトキシシランをテトラエトキシシランに換えた以外は同様にして、ガスバリア性部材1−11を作製した。
ガスバリア性部材1−1と同様に、TEMの断面写真、及びXPS表面分析を行ったところ、表層からおよそ150nmがほぼ均一にシラノール含有シリカ層となっていることが分かった。
〈ガスバリア性部材1−12の作製〉
ガスバリア性部材1−1の作製において、パーヒドロポリシラザンの10質量%ジブチルエーテル溶液から形成した塗布膜を同様に乾燥後(TEMの断面写真より、乾燥後の塗布膜の膜厚は150nmであることを確認)、高圧水銀ランプとオゾナイザーを備えた紫外線照射装置で紫外線を5分間照射した後、350℃で30分、酸素濃度1%の窒素中で加熱した以外は同様にして、ガスバリア性部材1−12を作製した。
XPS表面分析にて、表面から約300nm付近までの膜厚深さ方向の原子組成比を測定したところ、ほぼ均一にSi:Oの比率が1:2(二酸化ケイ素層)であり、また、TEMの断面写真からも、ポリシラザンから転化した二酸化ケイ素層の一層であった。
《ガスバリア性部材の評価》
得られたガスバリア性部材について、下記にようにしてウェットサーモ(60℃、90%RH)処理後の密着性、及び強制劣化(傷の付与+屈曲処理)後のガスバリア性(水蒸気透過率)の評価を行った。
〈密着性の評価〉
JIS K5400に準拠した碁盤目試験を行った。作製したガスバリア性部材をウェットサーモ(60℃、90%RH)下に3日保存後、保護膜が形成された側の表面に、片刃のカミソリの刃を面に対して90°の角度で切り込みを1mm間隔で縦横に11本入れ、1mm角の碁盤目を100個作製した。この上に市販のセロファンテープを張り付け、その一端を手で持って垂直に力強く引っ張って剥がし、切り込み線からの貼られたテープ面積に対する薄膜が剥がされた面積の割合(剥離面積/テープ面積×100(%))を、下記基準で評価した。
◎:0%
○:0%を超え〜10%
△:10%を超え〜20%
×:20%を超え〜100%
〈ガスバリア性の評価〉
ガスバリア性の指標として水蒸気透過率(WVTR(g/m・day))について、下記にようにして測定した。
評価用セルを作製する前に、まず、各々作製したガスバリア性部材に対し、保護膜を形成した面に強制的に下記の方法で傷を付与した。
なお、強制劣化を施していない薄膜ガラス自身のバリア性については問題ないことを前もって評価している。すなわち、薄膜ガラス単体からなるWVTR測定用の試料を用いて、60℃、90%RHの高温高湿下保存後、後述するカルシウム法により求めたWVTRは、9×10−6以下であることを確認した。
(傷の付与)
保護膜を形成した表面を#0000のスチールウールに荷重500gをかけて、ストローク幅25mm、速度30mm/secで20回復摩擦した。スチールウールは約10mmφにまとめ、表面が均一になるようにカット、摩擦して均したものを使用した。
さらに、このように傷を付与した部材に対し、屈曲を下記の方法で繰り返すことで、強制的に劣化させた部材を準備した。この強制劣化させた各部材を用いて、下記のようにバリア性の評価を行った。
(屈曲処理)
ガスバリア性部材の保護層の面を外側にして、ガスバリア性部材を20mmφの曲率になるように、180度の角度で50回屈曲を繰り返した。
(装置)
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
レーザー顕微鏡:KEYENCE VK−8500
原子間力顕微鏡(AFM):Digital Instruments社製DI3100
(原材料)
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
(評価用セルの作製)
ガスバリア性部材(ガスバリアフィルム)のガスバリア層面(セラミック層面ともいう)に、真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のガスバリア性部材試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。
その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
得られた両面を封止したガスバリア性部材を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報に記載の方法(カルシウム法)に基づき、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量を計算した。
密着性及びガスバリア性の評価の結果を表1に示す。
Figure 2012000828
表1より、比較のガスバリア性部材に比べて、本発明のガスバリア性部材は、ウェットサーモ(60℃、90%RH)処理後の密着性、及び強制劣化(傷の付与+屈曲処理)後のガスバリア性(水蒸気透過率)において、全く劣化が見られないことが分かった。
一方、薄膜ガラス部材上に樹脂保護膜を設けたガスバリア性部材1−7、1−8は、サイドからの水分侵入により、むしろ水蒸気透過率は大幅に劣化する結果となった。また、無機保護膜を設けた1−10、1−11においても、保護膜のバリア性が不十分なため、同様にサイドからの水分侵入により、水蒸気透過率は劣化したと考えられる。さらに、1−12では、保護層が均一な二酸化ケイ素層であるために本発明の効果は得られず、薄膜ガラス基材のみの1−5と比較して、効果が見られない結果となった。
実施例2
実施例1で作製した強制劣化させたガスバリア性部材を用いて、下記の透明導電膜を有するガスバリア性部材の作製を行った。次いで、透明導電膜を有するガスバリア性部材を用いて、有機光電変換素子を作製した。ガスバリア性部材1−1〜1−12を用いて、それぞれ有機光電変換素子2−1〜2−12を作製した。
《透明導電膜を有するガスバリア性部材の作製》
プラズマ放電装置としては、電極が平行平板型のものを用い、この電極間に実施例1で作製した強制劣化させたガスバリア性部材を載置し、かつ、混合ガスを導入して薄膜形成を行った。
なお、アース(接地)電極としては、200mm×200mm×2mmのステンレス板に高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行い、このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmax;5μmとなるように加工した電極を用いた。
また、印加電極としては、中空の角型の純チタンパイプに対し、アース電極と同様の条件にて誘電体を被覆した電極を用いた。印加電極は複数作製し、アース電極に対向して設け放電空間を形成した。
また、プラズマ発生に用いる電源としては、パール工業(株)製高周波電源CF−5000−13Mを用い、周波数13.56MHzで、5W/cmの電力を供給した。
電極間に以下の組成の混合ガスを流し、プラズマ状態とし、ガスバリア性部材を大気圧プラズマ処理し、各ガスバリア層上に、錫ドープ酸化インジウム(ITO)膜を150nmの厚さで成膜することで、透明導電膜付のガスバリア性部材を作製した。
(プラズマ発生条件)
放電ガス:ヘリウム 98.5体積%
反応性ガス1:酸素 0.25体積%
反応性ガス2:インジウムアセチルアセトナート 1.2体積%
反応性ガス3:ジブチル錫ジアセテート 0.05体積%
《有機光電変換素子の作製》
得られた透明導電膜(150nm、シート抵抗10Ω/□)付のガスバリア性部材に、各々フォトリソグラフィ技術と湿式エッチングとを用いて2mm幅にパターニングし第1の電極を形成した。
パターン形成した第1の電極(陽極)を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行い、透明基板を得た。
得られた透明基板の表面上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を膜厚が30nmになるように塗布乾燥した後、150℃で30分間熱処理させ正孔輸送層を製膜した。
これ以降は、各透明基板を窒素チャンバー中に持ち込み、窒素雰囲気下で作製した。
まず、窒素雰囲気下で上記基板を150℃で10分間加熱処理した。次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクトロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)とPCBM(フロンティアカーボン社製:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を3.0質量%になるように1:0.8で混合した液を調製し、フィルタでろ過しながら、膜厚が100nmになるように塗布を行い、室温で放置して乾燥させた。続けて、150℃で15分間加熱処理を行い、光電変換層を製膜した。
次に、上記一連の機能層を製膜した透明基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、1×10−4Pa以下まで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.01nm/秒でフッ化リチウムを0.6nm積層し、さらに続けて、2mm幅のシャドウマスクを通して(受光部が2×2mmに成るように直行させて蒸着)、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを100nm積層することで第2の電極を形成した。
得られた有機光電変換素子を窒素チャンバーに移動し、以下の、封止用フィルムとUV硬化樹脂を用いて封止を行って、受光部が2×2mmサイズの有機光電変換素子試料を作製した。
(有機光電変換素子の封止)
窒素ガス(不活性ガス)によりパージされた環境下で、基板に用いたものと同じ2枚のガスバリア性部材のガスバリア層を設けた面を内側にして、シール材としてエポキシ系光硬化型接着剤をガスバリア層に塗布し、上記有機光電変換素子をガスバリア性部材間に挟み込んで密着させた後、片側の基板側からUV光を照射して硬化させた。
こうして両面封止済みの有機光電変換素子を得た。
《有機光電変換素子の評価》
(耐久性の評価)
上記作製した光電変換素子について、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、IV特性を評価することで、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)及びフィルファクターFF(%)を、同素子上に形成した4箇所の受光部をそれぞれ測定し、下記式1に従って求めたエネルギー変換効率PCE(%)の4点平均値を算出した。
(式1)
PCE(%)=〔Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF(%)〕/100mW/cm
初期電池特性としての変換効率を測定し、性能の経時的低下の度合いを、温度60℃、湿度90%RH環境で1000時間保存した加速試験後の変換効率残存率(変換効率/初期変換効率×100(%))により、下記基準で評価した。
◎:70%以上
○:40%以上、70%未満
△:20%以上、40%未満
×:20%未満
評価の結果を表2に示す。
Figure 2012000828
表2より、比較の有機光電変換素子に比べて、本発明の有機光電変換素子は、耐久性が著しく優れていることが分かった。
一方、薄膜ガラス部材上に樹脂保護膜を設けたガスバリア性部材1−7、1−8を用いた比較の有機光電変換素子2−7、2−8は、水蒸気透過率の低下と同様にサイドからの水分侵入の影響で、大幅に耐久性が劣化する結果となった。また、薄膜ガラス部材上に無機保護膜を設けたガスバリア性部材1−10、1−11を用いた比較の有機光電変換素子2−10、2−11においても、同様に十分な耐久性は得られなかった。
1 二酸化ケイ素層
2 1とは組成の異なるケイ素化合物層
3 薄膜ガラス
10 バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子
11 基板
12 陽極
13 陰極
14 発電層(バルクヘテロジャンクション層)
14p p層
14i i層
14n n層
14′ 第1の発電層
15 電荷再結合層
16 第2の発電層
17 正孔輸送層
18 電子輸送層

Claims (5)

  1. 薄膜ガラスの少なくとも片面に、パーヒドロポリシラザンを含有する組成物から形成された保護層を有するガスバリア性部材において、該保護層が、1)二酸化ケイ素層、及び2)1)とは組成の異なるケイ素化合物層の少なくとも2層以上の層からなることを特徴とするガスバリア性部材。
  2. 前記保護層が、表面側から1)二酸化ケイ素層、2)1)とは組成の異なるケイ素化合物層の層順であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性部材。
  3. 請求項1または2に記載のガスバリア性部材の製造方法において、薄膜ガラス上にパーヒドロポリシラザンを含有する組成物の塗布液を塗布した後、転化処理することを特徴とするガスバリア性部材の製造方法。
  4. 前記転化処理が酸化性ガス雰囲気下での紫外線照射であることを特徴とする請求項3に記載のガスバリア性部材の製造方法。
  5. 請求項1または2に記載のガスバリア性部材を有することを特徴とする有機光電変換素子。
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