JPWO2011010741A1 - 光学レンズ用ポリエステルカーボネート共重合体および光学レンズ - Google Patents

光学レンズ用ポリエステルカーボネート共重合体および光学レンズ Download PDF

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Abstract

本発明の目的は、屈折率および透明性が高く、複屈折が低く光学歪みの少ない光学レンズに適したポリエステルカーボネート共重合体およびそれを用いた光学レンズを提供することにある。本発明は、67〜95モル%の下記式(I)で表される単位および33〜5モル%の下記式(II)で表される単位を含有し、比粘度が0.12〜0.30である光学レンズ用ポリエステルカーボネート共重合体である。(式(II)中Yは、フェニレン基またはナフタレンジイル基である。)

Description

本発明はポリエステルカーボネート共重合体およびそれからなる光学レンズに関する。更に詳しくは、屈折率および透明性が高く、複屈折の低いポリエステルカーボネート共重合体およびそれからなる光学レンズに関する。
カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種カメラの光学系に使用される光学レンズの材料として、光学ガラスあるいは光学用樹脂が使用されている。光学ガラスは、耐熱性、透明性、寸法安定性、耐薬品性等に優れるが、材料コストが高く、成形加工性が悪く、生産性が低いという問題点を有している。
一方、光学用樹脂からなる光学レンズは、射出成形により大量生産が可能であるという利点を有している。カメラレンズ用としてポリカーボネート樹脂等が使用されている。しかしながら、近年、製品の軽薄短小化により、高い屈折率の樹脂の開発が求められている。一般に光学材料の屈折率が高いと、同一の屈折率を有するレンズエレメントを、より曲率の小さい面で実現できるため、この面で発生する収差量を小さくでき、レンズの枚数を減らしたり、レンズの偏心感度を低減したり、レンズ厚みを薄くして軽量化することが可能になる。
また、光学用樹脂を光学レンズとして用いる場合、屈折率やアッベ数以外にも、耐熱性、透明性、低吸水性、耐薬品性、耐光性、低複屈折性、耐湿熱性が求められる。そのため、樹脂の特性バランスによって使用箇所が限定されるという弱点がある。特に近年、画素数の向上による解像度のアップに伴い結像性能の高い、より複屈折の低いカメラレンズが求められている。一般に、複屈折を小さくする方法として、符号の異なる正負の複屈折を持つ組成同士で、互いの複屈折を打ち消し合う手法が挙げられる。そのため、これら異符号の複屈折を持つ材料の構成比率は非常に重要となる。また、鮮明な画像を映し出すためには、可視光領域の全ての波長において高い透過率を維持する必要がある。
そこで、屈折率が高く、複屈折が低く、かつ物性バランスに優れた光学レンズ向け樹脂の開発が行われてきた。例えば、フルオレン含有ジヒドロキシ化合物とナフタレンジカルボン酸からなるポリエステルが提案されている(特許文献1)。しかし、該ポリエステルは高屈折率ではあるものの、正負の複屈折が打ち消されておらず、複屈折が大きいという問題があった。さらに、ナフタレン成分を多く含むため、380〜400nmにナフタレン環由来の吸収があり、可視光透過率が大きく低下することがあった。
また、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンと芳香族ジカルボン酸からなるポリエステルカーボネートが提案されている(特許文献2、3)。しかしこの提案は、芳香族ジカルボン酸の種類が特定されておらず、使用する芳香族ジカルボン酸の種類によっては屈折率が不十分である。さらに、複屈折および可視光透過率についての検討はなされていないため、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンと芳香族ジカルボン酸の組成比によっては複屈折が大きくなり、また可視光透過率が低下することがある。
また、光学レンズは様々な用途に使用されているが、その用途により形状やサイズが大きく異なる。例えば、携帯電話用カメラレンズは、φ5mm、厚み0.3mm程度と非常に小型、薄肉であり、近年、さらに小型化、薄肉化が進んでいる。このような小型薄肉レンズを射出成形する場合、樹脂の流動性が不十分であると、目的とする形状のレンズが得られないことがあった。樹脂の流動性は、その分子量、分子構造、共重合組成等によって決まるため、特許文献2、3のような分子量や共重合組成の樹脂では、流動性が不十分であり、小型薄肉光学レンズ用途に用いるのは困難であった。
また、ポリエステルカーボネートを製造するにあたり、減圧度の制御は非常に重要である。ポリエステルやポリカーボネートとは異なり、ポリエステルカーボネートの製造では、沸点の異なるモノヒドロキシ化合物が2種副生するため、製造時の減圧度により、副生物の留去速度を制御することが非常に重要である。特許文献2、3に記載の製造方法では、反応初期に減圧を行わないため、フェノールが留去せず、反応時間が非常に長いという課題があった。
特開2006−335974号公報 特開平10−87800号公報 特開2002−309015号公報
そこで本発明の目的は、屈折率および透明性が高く、複屈折が低く光学歪みの少ない小型薄肉光学レンズに適したポリエステルカーボネート共重合体およびそれを用いた光学レンズを提供することにある。
本発明者らはこの目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた。その結果、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンとジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とを特定割合で共重合すると、上記目的を達成できることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明は、67〜95モル%の下記式(I)で表される単位および33〜5モル%の下記式(II)で表される単位を含有し、比粘度が0.12〜0.30である光学レンズ用ポリエステルカーボネート共重合体である。
Figure 2011010741
Figure 2011010741
(式(II)中Yは、フェニレン基またはナフタレンジイル基である。)
また本発明は、(i)9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体および炭酸ジエステルを第1反応槽中で溶融し(工程1)、
(ii)第1反応槽中で,温度120〜300℃、20〜90kPaの減圧下で、副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の50〜90%に到達するまで反応させ(工程2)、
(iii)反応溶液を第1反応槽から第2反応槽へ移し(工程3)、並びに
(iv)第2反応槽で、温度150〜320℃で最終内圧が1〜500Paとなるまで反応を行う(工程4)、
各工程を含む上記光学レンズ用ポリエステルカーボネート共重合体の製造方法を包含する。
図1は、実施例1で得られたポリエステルカーボネート共重合体のプロトンNMRである。
図2は、実施例4で得られたポリエステルカーボネート共重合体のプロトンNMRである。
図3は、実施例8で得られたポリエステルカーボネート共重合体のプロトンNMRである。
図4は、実施例11で得られたポリエステルカーボネート共重合体のプロトンNMRである。
〈ポリエステルカーボネート共重合体〉
本発明のポリエステルカーボネート共重合体(以下、共重合体と略することがある)は、下記式(I)で表されるカーボネート単位を含有する。式(I)の単位の含有量は、67〜95モル%、好ましくは70〜95モル%である。
Figure 2011010741
本発明の共重合体は、下記式(II)で表されるエステル単位を含有する。式(II)の単位の含有量は、33〜5モル%、好ましくは30〜5モル%である。
Figure 2011010741
式(II)中、Yはフェニレン基またはナフタレンジイル基である。Yは、1,4−フェニレン基、1、3−フェニレン基または2,6−ナフタレンジイル基であることが好ましい。
式(II)中、Yが2,6−ナフタレンジイル基の場合、式(I)の単位の含有量は82〜95モル%、式(II)の単位の含有量は18〜5モル%であることが好ましい。
式(II)中、Yが1,4−フェニレン基、1、3−フェニレン基の場合、式(I)の単位の含有量は、好ましくは67〜89モル%、より好ましくは75〜82モル%、式(II)の単位の含有量は、好ましくは33〜11モル%、より好ましくは25〜18モル%である。
本発明の共重合体の比粘度は、0.12〜0.30、好ましくは0.15〜0.25、さらに好ましくは0.18〜0.23の範囲である。比粘度は、0.7gの共重合体を100mlの塩化メチレンに溶解し20℃で測定する。比粘度が0.12未満では成形体が脆くなり、0.30より高くなると溶融粘度および溶液粘度が高くなり、取扱いが困難になる。
本発明の共重合体の屈折率は、好ましくは1.635〜1.650、より好ましくは1.636〜1.650、さらに好ましくは1.637〜1.650の範囲である。屈折率は25℃、波長589nmにおいて測定する。
本発明の共重合体のアッベ数(ν)は、好ましくは20〜27、より好ましくは21〜27、さらに好ましくは21〜25の範囲である。アッベ数は25℃、波長486nm、589nm、656nmの屈折率から下記式を用いて算出する。
ν=(nD−1)/(nF−nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nF:波長656nmでの屈折率
nC:波長486nmでの屈折率
本発明の共重合体の配向複屈折(Δn)は、好ましくは0〜6×10−3、より好ましくは0〜4×10−3、さらに好ましくは0〜1×10−3の範囲である。配向複屈折(Δn)は、該共重合体より得られる厚さ100μmのキャストフィルムをTg+10℃で2倍延伸した時、波長589nmにおいて測定する。
本発明の共重合体の分光透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは81%以上、さらに好ましくは82%以上である。透過率は、厚さ0.1mmの成形板を波長395nmにおいて測定する。
本発明の共重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは130〜160℃、より好ましくは135〜155℃、さらに好ましくは140〜155℃である。ガラス転移温度(Tg)は昇温速度20℃/minにて測定する。Tgが130℃未満では、該共重合体を用いて形成した光学部品を使用する用途によっては耐熱性が十分でなく、一方Tgが160℃より高い場合では溶融粘度が高くなり、成形体を形成する上での取扱いが困難となる。
本発明の共重合体は、熱安定性の指標として、昇温速度20℃/minにて測定した5%重量減少温度が350℃以上であることが好ましく、380℃以上であることがより好ましい。5%重量減少温度が350℃より低い場合は、成形の際の熱分解が激しく、良好な成形体を得ることが困難となるため好ましくない。
本発明の共重合体の280℃、せん断速度1,000/secにおける溶融粘度は、好ましくは30〜300Pa・s、より好ましくは30〜200Pa・s、さらに好ましくは50〜160Pa・sである。
本発明の共重合体のフェノール含有量は、好ましくは1〜100ppm、より好ましくは1〜50ppm、さらに好ましくは1〜10ppmである。
〈共重合体の製造方法〉
本発明の共重合体は、ジオール成分、ジカルボン酸成分およびカーボネート前駆体を反応させることにより製造することができる。
(ジオール成分)
ジオール成分は、主として下記式(a)で表される9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下、BPEFと略すことがある。)である。
Figure 2011010741
ジオール成分中のBPEFの含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。
他のジオールとして、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、デカリン−2,6−ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、シクロペンタン−1,3−ジメタノール、スピログリコール等の脂環式ジオール、ビスフェノールA等の芳香族ジオール等が挙げられる。
(ジカルボン酸成分)
ジカルボン酸成分は主として、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体である。
ジカルボン酸成分は、得られる共重合体の特性を損なわない程度に他のジカルボン酸成分を含有していても良い。この場合、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸の含有量は、ジカルボン酸成分100モル%に対し、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。
他のジカルボン酸として、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。また、フタル酸等の単環式芳香族ジカルボン酸や、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸等の多環式芳香族ジカルボン酸が挙げられる。また、2,2’−ビフェニルジカルボン酸等のビフェニルジカルボン酸や、1,4−シクロジカルボン酸、2,6−デカリンジカルボン酸等の脂還族ジカルボン酸が挙げられる。これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。また、これらの誘導体としては酸クロライドやエステル類が用いられる。
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン成分とジカルボン酸成分とのモル比は、75:25〜95:5が好ましい。9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン成分の割合が大きくなり過ぎると、共重合体からなる光学レンズの負の複屈折が大きくなり、屈折率も小さくなるため好ましくない。またジカルボン酸成分の割合が大きくなり過ぎると、共重合体からなる光学レンズの正の複屈折が大きくなり好ましくない。また、ジカルボン酸成分が多いため、可視光透過率が低下する。
また、ジカルボン酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の場合、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン成分とジカルボン酸成分とのモル比は、85:15〜95:5の範囲であると共重合体からなる光学レンズの複屈折が特に小さくなり好ましい。
また、ジカルボン酸成分がテレフタル酸、イソフタル酸成分の場合、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン成分とジカルボン酸成分とのモル比は、80:20〜85:15の範囲であると共重合体からなる光学レンズの複屈折が特に小さくなり好ましい。
(カーボネート前駆体)
カーボネート前駆体として、ホスゲンや、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンのビスクロロホーメートや、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等の炭酸ジエステルが挙げられる。なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
(エステル交換法)
本発明の共重合体は、ジオール成分、ジカルボン酸成分および炭酸ジエステルをエステル交換させ製造することができる(エステル交換法)。
エステル交換法は、不活性ガス存在下にジオール成分と、ジカルボン酸成分またはそのジエステルと、ビスアリールカーボネートを混合し、減圧下、通常、120〜350℃、好ましくは150〜300℃で反応させることが好ましい。減圧度は段階的に変化させ、最終的には1mmHg以下にして生成したアルコール類を系外に留去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。エステル交換法は、以下の工程1〜工程4で行うことが好ましい。
(工程1)
工程1は、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF)、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体および炭酸ジエステルを第1反応槽中で溶融する工程である。
芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体である。炭酸ジエステルは、ジフェニルカーボネートが好ましい。
第1反応槽は未反応の炭酸ジエステルやモノマーと副生するモノヒドロキシ化合物とを分離し、反応系内に未反応の炭酸ジエステルやモノマーを還流するための精留塔を備えた竪型撹拌槽を使用することが好ましい。第1反応槽では、所定量のモノマーを仕込み、窒素置換した後、不活性ガス存在下に、BPEFと芳香族ジカルボン酸と炭酸ジエステルとを混合し溶融させる。
(工程2)
工程2は、第1反応槽中で、温度120〜300℃、20〜90kPaの減圧下で、副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の50〜90%に到達するまで反応させる工程である。
溶融後、20〜90kPa、好ましくは40〜80kPaの弱減圧下、120〜300℃、好ましくは150〜280℃、さらに好ましくは180〜280℃で反応を行い、副生するモノヒドロキシ化合物を系外に留去させる。ポリエステルやポリカーボネートのように、副生するモノヒドロキシ化合物が1種の場合、減圧度を厳密に制御する必要はないが、本ポリエステルカーボネートのように、副生するモノヒドロキシ化合物が2種以上の場合、減圧度は反応速度制御のために非常に重要である。常圧で反応を行う場合、溶融物が酸化されたり、反応終了後の残存フェノールが多くなり色相が低下するため好ましくない。また、フェノールの留出速度が遅くなり、BPEFとジフェニルカーボネートの反応時間を多く要すため好ましくない。減圧度が20kPaより小さい場合、未反応炭酸ジエステルやモノマーが留去することがあり好ましくない。また、フェノールの留出速度が速くなり、BPEFとジフェニルカーボネートの反応が優先され、BPEFとジカルボン酸の反応が進行しないため好ましくない。
反応は、副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の50〜90%、好ましくは60〜80%に到達するまで行うことが好ましい。留出量が50%より小さい場合、未反応の炭酸ジエステルやモノマーが多く、第2反応槽で原料のモルバランス崩れが生じることがあるため好ましくない。留出量が90%より大きい場合、樹脂の粘度が高くなり、第1反応槽から第2反応槽への送液に長時間を要するため好ましくない。
上記モノヒドロキシ化合物とは、BPEFと炭酸ジエステルとの反応で副生するフェノール及びBPEFと芳香族ジカルボン酸との反応で副生するメタノール等のアルキルアルコール類や水である。また、モノヒドロキシ化合物の理論留出量(A)は、仕込んだBPEF、芳香族ジカルボン酸および炭酸ジエステルが全て反応したときに留出されるモノヒドロキシ化合物の量の体積である。
第1反応槽に使用する撹拌機の撹拌速度は、反応混合物の粘度が低いこと、生成したモノヒドロキシ化合物の蒸発のために大きなエネルギーが必要であることから、比較的高速の攪拌速度、例えば、数十〜200rpmであることが好ましい。
(工程3)
工程3は、反応溶液を第1反応槽から第2反応槽へ移す工程である。本発明の方法では、エステル交換反応の進行に伴って反応系の粘度が大きく変化し、また反応で副生するモノヒドロキシ化合物の発生量が大きく変化するので、第1反応槽および第2反応槽を使用することが好ましい。反応溶液を第1反応槽から第2反応槽へ移す際、第1反応槽と第2反応槽との間で異物除去を目的とした濾過を行うこともできる。この様な濾過フィルターとしては10μm以下の目開きを有するフィルターが良く使用される。
(工程4)
工程4は、温度150〜320℃で最終内圧が1〜500Paとなるまで減圧して反応を行う工程である。工程4は第2反応槽で行う。
第2反応槽は竪型や横形の撹拌槽が使用されるが、反応圧力が高真空度となる場合が多く、かつ原料のモルバランスに影響を与えるほどの未反応の炭酸ジエステルが存在しないため、一般に精留塔は設置せず、蒸発物はそのまま系外に取り出される。第2反応槽に使用される撹拌翼は、高粘度で優れた性能を発揮するヘリカルリボン翼やアンカー翼等、反応混合物の表面更新性や発生する気泡を押し潰す能力に優れたものを使用すると良い。第2反応槽では、樹脂の受け入れ後、150〜320℃、好ましくは180〜300℃、さらに好ましくは200〜280℃で減圧度を段階的に変化させ、最終的には1〜500Paとなるまで減圧することにより生成したモノヒドロキシ化合物を系外に留去させつつ縮合反応を行う。
第2反応槽に使用する撹拌機の撹拌速度は、反応混合物の粘度が高いことから、第1反応槽よりも低い攪拌速度、例えば、数〜数十rpmであることが好ましい。
第2反応槽で生成したポリエステルカーボネート重合体は、第2反応槽の内部を加圧することによって外部にシートまたはストランドとして取り出し、これを水等で冷却し、ペレットとして製品化する。なお、第2反応槽で反応の途中または反応終了後の加圧前あるいは加圧時に失活剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤等の各種添加物を添加しても良い。
本発明の共重合体を製造する際に使用する芳香族炭酸ジエステルの使用量は、モル割合で下記式を満足することが好ましい。
1.0≦(C)/{(A)−(B)}≦1.5 (III)
(A):ジオール成分の仕込量
(B):ジカルボン酸成分の仕込量
(C):芳香族炭酸ジエステルの使用量
芳香族炭酸ジエステルの使用量が式(III)の範囲を満たさず少ない場合、目的とする分子量まで重合反応が進行しないため好ましくない。芳香族炭酸ジエステルの使用量が式(III)の範囲を満たさず多い場合、残存フェノールが多くなるため好ましくない。
本発明の製造方法によれば、フェノール含有量が好ましくは1〜100ppm、より好ましくは1〜50ppm、さらに好ましくは1〜10ppmのポリエステルカーボネート共重合体を製造することができる。
エステル交換反応では反応促進のために重合触媒を用いることができる。このような重合触媒としてはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物または重金属化合物を主成分として用い、必要に応じて更に含窒素塩基性化合物を従成分として用いるのが好ましい。
アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ビスフェノールAのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属化合物としては、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。
含窒素塩基性化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
その他のエステル交換触媒としては亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、オスミウムの塩が挙げられる。例えば、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)、チタンテトラブトキシド(IV)、チタンテトライソプロポキシド、チタン(IV)=テトラキス(2−エチル−1−ヘキサノラート)、酸化チタン、トリス(2,4−ペンタジオネート)アルミニウム(III)等が用いられる。
これらの触媒は単独で用いても、二種以上併用してもよい。これらの触媒の使用量はジオールとジカルボン酸の合計1モルに対して、好ましくは1×10−9〜1×10−3モル、より好ましくは1×10−7〜1×10−3モルの比率で用いられる。これらは単独で用いても二種以上併用してもよい。また、エステル交換反応ではヒドロキシ末端基を減少するために重縮合反応の後期または終了後に電子吸引性の置換基を持ったジアリールカーボネートを加えても良い。更に、色相改善のために酸化防止剤や熱安定剤等を加えてもよい。
重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させてもよい。一般的には、公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法が好適に実施される。これらの物質として、安息香酸ブチル等のエステル類、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類、亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn−プロピル、亜リン酸ジn−ブチル、亜リン酸ジn−ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類、ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類、フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類、トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類、ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p−トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸等のアルキル硫酸、塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が挙げられる。これらの失活剤は、触媒量に対して好ましくは0.01〜50倍モル、より好ましくは0.3〜20倍モル使用される。触媒量に対して0.01倍モルより少ないと、失活効果が不充分となり好ましくない。また、触媒量に対して50倍モルより多いと、耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなるため好ましくない。触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を0.1〜1mmHgの圧力、200〜320℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良い。
〈光学レンズ〉
本発明の光学レンズは、本発明の共重合体を例えば、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、キャスティングして成形することができる。
本発明の光学レンズには、本発明の目的を損なわない範囲で各種特性を付与するために、各種添加剤を含有してもよい。添加剤として、離型剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、帯電防止剤、難燃剤、熱線遮蔽剤、蛍光染料(蛍光増白剤を含む)、顔料、光拡散剤、強化充填剤、他の樹脂やエラストマー等を配合することができる。
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸のエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸のエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸のエステルや、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。前記一価アルコールと脂肪酸のエステルとは、炭素原子数1〜20の一価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。また、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルとは、炭素原子数1〜25の多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。
具体的に一価アルコールと飽和脂肪酸のエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等が挙げられる。ステアリルステアレートが好ましい。
多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。これらのエステルのなかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートの混合物が好ましく用いられる。
離型剤中の前記エステルの量は、離型剤を100重量%とした時、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましい。
本発明の光学レンズ中の離型剤の含有量は、共重合体100重量部に対して0.005〜2.0重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.6重量部の範囲がより好ましく、0.02〜0.5重量部の範囲がさらに好ましい。
熱安定剤としては、リン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤およびヒンダードフェノール系熱安定剤が挙げられる。
リン系熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられる。
なかでも、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイトが使用される。特に好ましくはテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトが使用される。
共重合体中のリン系熱安定剤の含有量は、共重合体100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
硫黄系熱安定剤としては、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。なかでもペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネートが好ましい。特に好ましくはペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)である。該チオエーテル系化合物は住友化学工業(株)からスミライザーTP−D(商品名)およびスミライザーTPM(商品名)等として市販されており、容易に利用できる。
共重合体中の硫黄系熱安定剤の含有量は、共重合体100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートおよび3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが特に好ましく用いられる。
共重合体中のヒンダードフェノール系熱安定剤の含有量は、共重合体100重量部に対して0.001〜0.3重量部であることが好ましい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系からなる群より選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ルが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上の混合物で用いることができる。
好ましくは、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ルであり、より好ましくは、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]である。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−(4,6−ビス(2.4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(オクチル)オキシ]−フェノール等が挙げられる。
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが例示される。
なかでも2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適である。特に2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適である。かかる化合物は竹本油脂(株)からCEi−P(商品名)として市販されており、容易に利用できる。
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、1,3−ビス−[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3−ビス−[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが例示される。
紫外線吸収剤の含有量は、共重合体100重量部に対して、好ましくは0.01〜3.0重量部であり、より好ましくは0.02〜1.0重量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.8重量部である。かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、共重合体成形体に十分な耐候性を付与することが可能である。
ブルーイング剤としては、バイエル社のマクロレックスバイオレットBおよびマクロレックスブルーRR並びにクラリアント社のポリシンスレンブル−RLS等が挙げられる。ブルーイング剤は、共重合体の黄色味を消すために有効である。特に耐候性を付与した共重合体の場合は、一定量の紫外線吸収剤が配合されているため紫外線吸収剤の作用や色によって成形体が黄色味を帯びやすい現実があり、特にシートやレンズに自然な透明感を付与するためにはブルーイング剤の配合は非常に有効である。
ブルーイング剤の配合量は、共重合体に対して好ましくは0.05〜1.5ppmであり、より好ましくは0.1〜1.2ppmである。
また、本発明の光学レンズは、光学歪みが小さいことを特徴とする。一般的なビスフェノールAタイプのポリカーボネート樹脂からなる光学レンズは光学歪みが大きい。成形条件によりその値を低減することも不可能ではないが、その条件幅は非常に小さく成形が非常に困難となる。本発明のポリエステルカーボネート共重合体は、樹脂の配向により生じる光学歪みが極めて小さく、また成形歪みも小さいため、成形条件を厳密に設定しなくても良好な光学素子を得ることができる。
本発明の光学レンズを射出成形で製造する場合、シリンダー温度260〜300℃、金型温度100〜140℃の条件にて成形することが好ましい。
本発明の光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形で用いることが好適に実施される。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
また、本発明の共重合体は、流動性が高いため、薄肉小型で複雑な形状である光学レンズの材料として特に有用である。具体的なレンズサイズとして、中心部の厚みが0.05〜3.0mm、より好ましくは0.05〜2.0mm、さらに好ましくは0.1〜2.0mmである。また、直径が1.0mm〜20.0mm、より好ましくは1.0〜10.0mm、さらに好ましくは3.0〜10.0mmである。また、その形状として片面が凸、片面が凹であるメニスカスレンズであることが好ましい。
本発明の光学レンズの表面には、必要に応じ、反射防止層あるいはハードコート層といったコート層が設けられていても良い。反射防止層は、単層であっても多層であっても良く、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が例示される。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。
実施例1〜3、比較例1〜2
評価は下記の方法によった。
(1)比粘度:重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットを十分に乾燥し、該ペレット0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定した。
(2)共重合比:日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRを用いて測定した。図1に示すように7.6〜7.8ppmの9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンに起因するピークと8.6ppm付近のナフタレンジカルボン酸に起因するピークの積分比から求めた。
(3)ガラス転移点(Tg):重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットをデュポン社製910型DSCにより、昇温速度20℃/minで測定した。
(4)溶融粘度:重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットを東洋精機(株)製キャピログラフ1Dにより、280℃、せん断速度1000/secにおける溶融粘度を測定した。
(5)屈折率(nd)、アッベ数(ν):射出成形により得られた厚さ0.3mmの円板をATAGO製DR−M2のアッベ屈折計を用いて、25℃における屈折率(波長:589nm)及びアッベ数を測定した。
(6)配向複屈折(Δn):厚さ100μmのキャストフィルムをTg+10℃で2倍延伸し、日本分光(株)製エリプソメーターM−220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定し、下記式より配向複屈折(Δn)を求めた。
Δn=Re/d
Δn:配向複屈折
Re:位相差
d:厚さ
(7)光学歪み:成形したレンズを二枚の偏光板の間に挟み直交ニコル法で後ろからの光漏れを目視することにより光学歪み評価した。評価は以下の基準で行った。
◎:殆ど光漏れがない。
○:僅かに光漏れが認められる。
×:光漏れが顕著である。
(8)分光透過率:射出成形により得られた厚さ0.1mmの円板を、日立(株)製分光光度計U−3310を用いて測定した。評価は以下のようにした。
395nmにおける透過率が80%以上:○
395nmにおける透過率が80%より低い:×
(9)湿熱試験:厚さ1mmの角板を85℃、85%RHの条件下で400時間放置した後、外観を目視評価した。また、該成形片0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定し、湿熱試験後の比粘度保持率(分子量保持率)を求めた。
Δηsp=(ηsp1/ηsp0)×100
Δηsp:比粘度保持率
ηsp0:試験前の比粘度
ηsp1:試験後の比粘度
実施例1
(合成)
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)157.86重量部、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分(以下“NDCM”と省略することがある)9.77重量部、ジフェニルカーボネート(以下“DPC”と省略することがある)71.98重量部、水酸化ナトリウム8×10−6重量部およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド3.65×10−3重量部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気760Torrの下、180℃に加熱し、20分間撹拌した。その後、20分かけて減圧度を20kPaに調整し、60℃/hrの速度で250℃まで昇温しエステル交換反応を行った。その後、250℃に保持したまま、60分かけて1Torr以下まで減圧し、250℃、1Torr以下の条件下で1時間攪拌下重合反応を行った。
反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み、加圧にした後、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムを1.54×10−4重量部添加し触媒を失活させた。その後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとNDCMとのモル比が90:10であり、比粘度は0.193、Tgは151℃、溶融粘度は90Pa・sであった。
作成したポリマーを120℃で4時間、真空乾燥した後、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。
(キャストフィルム)
該ペレットを塩化メチレンに溶解させた後、ガラスシャーレ上にキャストし、乾燥させて厚さ100μmのキャストフィルムを得た。配向複屈折(Δn)の評価結果を表1に示す。
(厚さ0.3mmの円板)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用い、シリンダ温度280℃、金型温度100℃で厚さ0.3mm、φ5mmの円板を射出成形した。屈折率(nd)およびアッベ数(ν)の評価結果を表1に示す。
(レンズ)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用い、シリンダ温度280℃、金型温度100℃で厚さ0.3mm、凸面曲率半径5mm、凹面曲率半径4mm、φ5mmのレンズを射出成形した。光学歪みの評価結果を表1に示す。
(厚さ0.1mmの円板)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用い、シリンダ温度280℃、金型温度100℃で厚さ0.1mm、φ5mmの円板を射出成形した。分光透過率の評価結果を表1に示す。
(厚さ1mmの角板)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用い、シリンダ温度280℃、金型温度100℃で厚さ1mm、幅2.5cm、長さ5cmの角板を射出成形した。得られた角板は、Δηsp保持率が99%であり、湿熱試験後の外観変化が全くなかった。
実施例2
実施例1のBPEFの使用量を149.09重量部、NDCMの使用量を14.66重量部、DPC63.41重量部とする以外は実施例1と同様にしてポリエステルカーボネート共重合体を合成した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとNDCMのモル比が85:15であり、比粘度は0.184、Tgは151℃、溶融粘度は96Pa・sであった。
実施例1と同様の方法で、キャストフィルム、厚さ0.3mmの円板、レンズ、厚さ1mmの角板を得た。配向複屈折(Δn)、屈折率(nd)、アッベ数(ν)、光学歪み、分光透過率の測定結果を表1に示す。厚さ1mmの角板は、Δηspが98%であり、湿熱試験後の外観変化が全くなかった。
実施例3
実施例1のBPEFの使用量を166.63重量部、NDCMの使用量を4.89重量部、DPC77.12重量部とする以外は実施例1と同様にしてポリエステルカーボネート共重合体を合成した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとNDCMのモル比が95:5であり、比粘度は0.197、Tgは149℃、溶融粘度は84Pa・sであった。
実施例1と同様の方法で、キャストフィルム、厚さ0.3mmの円板、レンズ、厚さ1mmの角板を得た。配向複屈折(Δn)、屈折率(nd)、アッベ数(ν)、光学歪み、分光透過率の測定結果を表1に示す。厚さ1mmの角板は、、Δηsp保持率が98%であり、湿熱試験後の外観変化が全くなかった。
比較例1
実施例1のBPEFの使用量を105.24重量部、NDCMの使用量を39.08重量部、DPC21.42重量部とする以外は実施例1と同様にしてポリエステルカーボネート共重合体を合成した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとNDCMのモル比が60:40であり、比粘度は0.280、Tgは160℃、溶融粘度は306Pa・sであった。
実施例1と同様の方法で、キャストフィルム、厚さ0.3mmの円板、レンズ、厚さ1mmの角板を得た。配向複屈折(Δn)、屈折率(nd)、アッベ数(ν)、光学歪み、分光透過率の測定結果を表1に示す。
比較例2
BPEF43.85重量部、ジフェニルカーボネート11.27重量部、炭酸水素ナトリウム5.04×10−5重量部およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド5.52×10−3重量部を攪拌機および留出装置付きの10リットル反応器に入れ、窒素雰囲気760Torrの下1時間かけて215℃に加熱し撹拌した。
その後、15分かけて減圧度を150Torrに調整し、215℃、150Torrの条件下で20分間保持しエステル交換反応を行った。さらに37.5℃/hrの速度で240℃まで昇温し、240℃、150Torrで10分間保持した。その後、10分かけて120Torrに調整し、240℃、120Torrで70分間保持した。その後、10分かけて100Torrに調整し、240℃、100Torrで10分間保持した。更に40分かけて1Torr以下とし、240℃、1Torr以下の条件下で10分間撹拌下重合反応を行った。
反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にした後、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムを7.01×10−4重量部添加し触媒を失活させた。その後、生成したポリカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出し、BPEFホモポリマーを得た。得られたポリマーの比粘度は0.200、Tgは149℃、溶融粘度は81Pa・sであった。
実施例1と同様の方法で、キャストフィルム、厚さ0.3mmの円板、レンズ、厚さ1mmの角板を得た。配向複屈折(Δn)、屈折率(nd)、アッベ数(ν)、光学歪み、分光透過率の測定結果を表1に示す。厚さ1mmの円板は、湿熱試験後の外観変化が全くなかった。
実施例1〜3で得られたポリエステルカーボネート共重合体は、1,775cm−1付近にカーボネート結合由来の吸収および1,740cm−1付近にエステル結合由来の吸収を有することがIR測定より確認された。また、DSC測定より得られるTgに起因するピークが1つであることからランダム共重合体であることが確認できた。また、実施例1で得られたポリマーは、図1のプロトンNMRからBPEFとNDCMとのポリエステルカーボネート共重合体であることを示している。
Figure 2011010741
BPEF:9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン成分
NDCM:2,6−ナフタレンジカルボン酸成分
Figure 2011010741
実施例1〜3で得られたポリエステルカーボネート共重合体は、射出成形時に分子配向しても固有複屈折(Δn)が極めて小さいため、得られるレンズの光学歪みが小さい。さらに、溶融粘度が低く、成形温度を低くできるため、樹脂の熱分解、色相変化がなく、良好なレンズが得られる。また、ナフタレンジカルボン酸の導入量が少量でも高屈折率性を達成しているため、透過率の低下が少ない。よって、得られる光学レンズは屈折率および透明性が高く、光学歪みが小さく、耐湿熱性も良好であるため光学レンズとして優れる。
これに対して、比較例1〜2で得られたポリマーは、固有複屈折(Δn)が大きいため、得られるレンズの光学歪みが大きい。さらに、比較例1で得られたポリマーは溶融粘度が高いため、高温で成形しなければいけないため、良好なレンズを得ることが困難である。また、ナフタレン環を多く含むため、可視光透過率が低い。そのため比較例1〜2で得られたポリマーは、光学レンズとしての使用範囲が限定される。
実施例4〜6、比較例3〜5
実施例4〜6、比較例3〜5における評価は下記の方法によった。
(1)比粘度:重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットを120℃で4時間乾燥し、該ペレット0.35gを塩化メチレン50ccに溶解した溶液を測定サンプルとした。測定は20±0.01℃の恒温槽中でオスワルト粘度管の標線間の通過時間を計測し、下記式からその溶液の20℃における比粘度(ηsp)を求めた。
ηsp=(t−t)/t
:ポリマー溶液の標線間通過時間
:塩化メチレンの標線間通過時間
(2)共重合比:日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRを用いて測定した。図2に示すように7.65〜7.85ppmの9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンに起因するピークと7.98〜8.18ppmのテレフタル酸に起因するピークの積分比から求めた。
(3)ガラス転移点(Tg):重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットをデュポン社製910型DSCにより、昇温速度20℃/minで測定した。
(4)溶融粘度:重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットを120℃で4時間乾燥した後、東洋精機(株)製キャピログラフ1Dにより、280℃、せん断速度1,000/secにおける溶融粘度を測定した。
(5)屈折率(n)、アッベ数(ν):厚さ0.1mmの円板をATAGO製DR−M2のアッベ屈折計を用いて、中間液として1−ブロモナフタレンを使用し、25℃における屈折率(波長:589nm)およびアッベ数を測定した。
(6)配向複屈折(Δn):厚さ100μmのキャストフィルムをキャスト方向に7cm、キャスト方向に直交する方向(巾方向)に1.5cmにカットした後、長手方向の両端をチャックに挟み(チャック間4.5cm)、ポリエステルカーボネート樹脂のTg+10℃でキャスト方向に2倍延伸し、日本分光(株)製エリプソメーターM−220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定し、下記式より配向複屈折(Δn)を求めた。
Δn=Re/d
Δn:配向複屈折
Re:位相差
d:厚さ
(7)光学歪み:成形した厚さ0.3mmのレンズを二枚の偏光板の間に挟み直交ニコル法で後ろからの光漏れを目視することにより光学歪みを評価した。評価は、以下の基準で行なった。
◎:殆ど光漏れがない。
○:僅かに光漏れが認められる。
△:光漏れが認められる。
×:光漏れが顕著である。
(8)分光透過率:厚さ0.1mmの角板を日立(株)製分光光度計U−3310を用いて、365nmにおける分光透過率を測定した。
(9)耐湿熱性:厚さ1mmの角板を85℃、85%RHの条件下で400時間放置した後、外観を目視評価した。また、該成形片0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定し、湿熱試験後の比粘度保持率(分子量保持率)を求めた。
Δηsp=(ηsp1/ηsp0)×100
Δηsp:比粘度保持率
ηsp0:試験前の比粘度
ηsp1:試験後の比粘度
(10)吸水率:厚さ1mmの角板を23℃の水中に28日間放置した後、成形片の表面の水分を拭きとり、試験前後の重量変化を測定し、飽和吸水率を求めた。
C={(w−w)/w}×100
C:飽和吸水率
:試験前重量
:試験後重量
実施例4
(合成)
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)157.86重量部、テレフタル酸ジメチル(以下“TPAM”と省略することがある)7.77重量部、ジフェニルカーボネート(DPC)71.98重量部、チタンテトラブトキシド13.6×10−3重量部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気常圧下、180℃に加熱し、20分間撹拌した。その後、20分かけて減圧度を20〜30kPaに調整し、60℃/hrの速度で250℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。その後、250℃に保持したまま、120分かけて0.13kPa以下まで減圧し、250℃、0.13kPa以下の条件下で1時間攪拌下重合反応を行った。
その後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとテレフタル酸(TPA)とのモル比が90:10であり、比粘度は0.192、Tgは147℃、溶融粘度は88Pa・sであった。
作成したポリマーを120℃で4時間真空乾燥した後、得られる樹脂組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。
(キャストフィルム)
該ペレットを塩化メチレンに溶解させた後、ガラスシャーレ上にキャストし、乾燥させて厚さ100μmのキャストフィルムを得た。配向複屈折(Δn)の測定結果を表2に示す。
(レンズ)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用いシリンダー温度270℃、金型温度140℃で、厚さ0.3mm、凸面曲率半径5mm、凹面曲率半径4mm、φ5mmのレンズを射出成形した。光学歪みの評価結果を表2に示す。
(円板)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用いシリンダー温度270℃、金型温度140℃で、厚さ0.1mm、φ30mmの円板を射出成形した。屈折率(n)およびアッベ数(ν)の測定結果を表2に示す。
(角板)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用いシリンダー温度270℃、金型温度140℃で、厚さ1mm、幅2.5cm、長さ5cmの角板を射出成形した。得られた成形片は湿熱試験後のΔηsp保持率(分子量保持率)が100%であり、色相変化も全くなかった。また、得られた角板の吸水率は0.48%であった。
実施例5
実施例4のBPEFの使用量を140.32重量部、TPAMの使用量を15.54重量部、DPC54.84重量部とする以外は実施例4と同様にしてポリエステルカーボネート共重合体を合成した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとTPAのモル比が80:20であり、比粘度は0.201、Tgは148℃、溶融粘度は96Pa・sであった。
実施例4と同様の方法で、キャストフィルム、レンズ、円板および角板を得た。配向複屈折(Δn)、光学歪み、屈折率(n)、アッベ数(ν)、分光透過率の測定結果を表2に示す。角板は、湿熱試験後のΔηsp保持率(分子量保持率)が99%であり、色相変化も全くなかった。また角板の吸水率は0.51%であった。
実施例6
実施例4のBPEFの使用量を131.55重量部、TPAMの使用量を19.42重量部、DPC54.84重量部とする以外は実施例4と同様にしてポリエステルカーボネート共重合体を合成した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとTPAのモル比が75:25であり、比粘度は0.197、Tgは149℃、溶融粘度は155Pa・sであった。
実施例4と同様の方法で、キャストフィルム、レンズ、円板および角板を得た。配向複屈折(Δn)、光学歪み、屈折率(n)、アッベ数(ν)、分光透過率の測定結果を表2に示す。得られた成形片は湿熱試験後のΔηsp保持率が100%であり、色相変化も全くなかった。また、得られた角板の吸水率は0.51%であった。
比較例3
実施例4のBPEFの使用量を122.78重量部、TPAMの使用量を23.30重量部、DPC35.99重量部とする以外は実施例4と同様にしてポリエステルカーボネート共重合体を合成した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとTPAのモル比が70:30であり、比粘度は0.201、Tgは151℃、溶融粘度は252Pa・sであった。
実施例4と同様の方法で、キャストフィルム、レンズ、円板および成形片を得た。配向複屈折(Δn)、光学歪み、屈折率(n)、アッベ数(ν)、分光透過率の測定結果を表2に示す。得られた成形片は湿熱試験後のΔηsp保持率が97%であり、色相変化も全くなかった。また、得られた角板の吸水率は0.51%であった。
比較例4
温度計、撹拌機、滴下漏斗付き反応器に、ピリジン38部および塩化メチレン360部を仕込み、これに9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン48.4部を溶解し、撹拌下15〜25℃でホスゲン9.6部を25分を要して吹込んだ。同時にテレフタル酸クロライド10.4部(ジオールと芳香族ジカルボン酸成分の合計モル数に対して30モル%)およびp−tert−ブチルフェノール0.54部を塩化メチレン100部に溶解して滴下した。ホスゲン吹込み終了後更に28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで塩化メチレンを蒸発させて無色のポリエステルカーボネート樹脂55.3部(収率95%)を得た。このポリマーのエステル基の割合は30モル%、比粘度は0.381、ガラス転移温度は162℃、溶融粘度は630Pa・sであった。
実施例4と同様の方法で、キャストフィルム、レンズ、円板および成形片を得た。配向複屈折(Δn)、光学歪み、屈折率(n)、アッベ数(ν)、分光透過率の測定結果を表2に示す。得られた成形片は湿熱試験後のΔηsp保持率が90%であり、黄褐色に着色した。また、得られた角板の吸水率は0.53%であった。
比較例5
BPEF175.40重量部、DPC87.40重量部、水酸化ナトリウム1.60×10−5重量部およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド3.65×10−3重量部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気常圧下、180℃に加熱し、20分間撹拌した。その後、20分かけて減圧度を20〜30kPaに調整し、60℃/hrの速度で250℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。その後、250℃に保持したまま、120分かけて0.13kPa以下まで減圧し、250℃、0.13kPa以下の条件下で1時間攪拌下重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にした後、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムを4.67×10−4重量部添加し触媒を失活させた。その後、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズしながら抜き出し、BPEFホモポリマーを得た。得られたポリマーの比粘度は0.200、Tgは145℃、溶融粘度は81Pa・sであった。
実施例4と同様の方法で、キャストフィルム、レンズ、円板および成形片を得た。配向複屈折(Δn)、光学歪み、屈折率(n)、アッベ数(ν)、分光透過率の測定結果を表2に示す。得られた成形片は湿熱試験後のΔηsp保持率が99%であり、色相変化も全くなかった。また、得られた角板の吸水率は0.55%であった。
実施例4〜6で得られたポリマーは、1,775cm−1付近にカーボネート結合由来の吸収および1,740cm−1付近にエステル結合由来の吸収を有することがIR測定より確認された。また、DSC測定より得られるTgに起因するピークが1つであることからランダム共重合体であることが確認できた。また、実施例4で得られたポリマーは、図2のプロトンNMRからBPEFとTPAとのポリエステルカーボネート共重合体であることを示している。
Figure 2011010741
BPEF:9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン成分
TPA:テレフタル酸成分
Figure 2011010741
実施例4〜6のポリエステルカーボネート共重合体はその複屈折が極めて小さく、成形流動性が良好であるため、射出成形により得られる光学レンズの光学歪みが小さい。さらに、高透明性、高屈折率性であり、湿熱試験後の分子量低下および色相変化がなく、吸水率も低いため光学レンズとして優れる。
これに対して、比較例3〜5のポリマーは正負の固有複屈折が十分に打ち消されていないため、該ポリマーより得られる光学レンズの光学歪みが大きい。さらに、比較例4のポリマーは、分子量が大きく、溶融粘度が高いため、樹脂が十分に金型内に入らず、目的とする形状の成形片を得られなかった。
実施例7〜9、比較例6〜8
評価は下記の方法によった。
(1)比粘度:重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットを120℃で4時間乾燥し、該ペレット0.35gを塩化メチレン50ccに溶解した溶液を測定サンプルとした。測定は20±0.01℃の恒温槽中でオスワルト粘度管の標線間の通過時間を計測し、下記式からその溶液の20℃における比粘度(ηsp)を求めた。
ηsp=(t−t)/t
:ポリマー溶液の標線間通過時間
:塩化メチレンの標線間通過時間
(2)共重合比:日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRを用いて測定した。図3に示すように7.65〜7.85ppmの9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンに起因するピークと8.06〜8.40ppmのイソフタル酸に起因するピークの積分比から求めた。
(3)ガラス転移点(Tg):重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットをデュポン社製910型DSCにより、昇温速度20℃/minで測定した。
(4)溶融粘度:重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットを120℃で4時間乾燥した後、東洋精機(株)製キャピログラフ1Dにより、280℃、せん断速度1,000/secにおける溶融粘度を測定した。
(5)屈折率(n)、アッベ数(ν):厚さ0.1mmの円板をATAGO製DR−M2のアッベ屈折計を用いて、中間液として1−ブロモナフタレンを使用し、25℃における屈折率(波長:589nm)およびアッベ数を測定した。
(6)配向複屈折(Δn):厚さ100μmのキャストフィルムをキャスト方向に7cm、キャスト方向に直交する方向(巾方向)に1.5cmにカットした後、長手方向の両端をチャックに挟み(チャック間4.5cm)、ポリエステルカーボネート樹脂のTg+10℃でキャスト方向に2倍延伸し、日本分光(株)製エリプソメーターM−220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定し、下記式より配向複屈折(Δn)を求めた。
Δn=Re/d
Δn:配向複屈折
Re:位相差
d:厚さ
(7)光学歪み:成形したレンズを二枚の偏光板の間に挟み直交ニコル法で後ろからの光漏れを目視することにより光学歪みを評価した。評価は以下の基準で行った。
◎:殆ど光漏れがない。
○:僅かに光漏れが認められる。
△:光漏れが認められる。
×:光漏れが顕著である。
(8)耐湿熱性:1mm厚の成形片を85℃、85%RHの条件下で400時間放置した後、外観を目視評価した。また、該成形片0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定し、湿熱試験後の比粘度保持率(分子量保持率)を求めた。
Δηsp=(ηsp1/ηsp0)×100
Δηsp:比粘度保持率
ηsp0:試験前の比粘度
ηsp1:試験後の比粘度
実施例7
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)157.86重量部、イソフタル酸ジメチル(以下“IPAM”と省略することがある)7.77重量部、ジフェニルカーボネート(DPC)71.98重量部、チタンテトラブトキシド20.42×10−3重量部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気常圧下、180℃に加熱し、20分間撹拌した。その後、20分かけて減圧度を40kPaに調整し、60℃/hrの速度で250℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。その後、250℃に保持したまま、120分かけて0.13kPa以下まで減圧し、250℃、0.13kPa以下の条件下で1時間攪拌下重合反応を行った。その後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとイソフタル酸(IPA)とのモル比が90:10であり、比粘度は0.192、Tgは146℃、溶融粘度は88Pa・sであった。
作成したポリマーを120℃で4時間真空乾燥した後、得られる樹脂組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。
(キャストフィルム)
該ペレットを塩化メチレンに溶解させた後、ガラスシャーレ上にキャストし、乾燥させて厚さ100μmのキャストフィルムを得た。配向複屈折(Δn)の評価結果を表3に示す。
(円板)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用い、シリンダー温度270℃、金型温度140℃で、厚さ0.1mm、φ30mmの円板を射出成形した。屈折率(n)およびアッベ数(ν)の評価結果を表3に示す。
(レンズ)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用い、シリンダー温度270℃、金型温度140℃で、厚さ0.3mm、凸面曲率半径5mm、凹面曲率半径4mm、φ5mmのレンズを射出成形した。光学歪みの評価結果を表3に示す。
(角板)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用い、シリンダー温度270℃、金型温度140℃で、厚さ1mm、幅2.5cm、長さ5cmの角板を射出成形した。得られた成形片は湿熱試験後のΔηsp保持率(分子量保持率)が100%であり、色相変化も全くなかった。
実施例8
実施例7のBPEFの使用量を140.32重量部、IPAMの使用量を15.54重量部、DPC54.84重量部とする以外は実施例7と同様にしてポリエステルカーボネート共重合体を合成した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとIPAのモル比が80:20であり、比粘度は0.180、Tgは145℃、溶融粘度は96Pa・sであった。
実施例7と同様の方法で、キャストフィルム、円板、レンズおよび角板を得た。配向複屈折(Δn)、屈折率(n)、アッベ数(ν)、光学歪みの評価結果を表3に示す。得られた角板は湿熱試験後のΔηsp保持率が99%であり、色相変化も全くなかった。
実施例9
実施例7のBPEFの使用量を131.55重量部、IPAMの使用量を19.42重量部、DPC46.27重量部とする以外は実施例7と同様にしてポリエステルカーボネート共重合体を合成した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとIPAのモル比が75:25であり、比粘度は0.190、Tgは146℃、溶融粘度は155Pa・sであった。
実施例7と同様の方法で、キャストフィルム、円板、レンズおよび角板を得た。配向複屈折(Δn)、屈折率(n)、アッベ数(ν)、光学歪みの評価結果を表3に示す。得られた角板は湿熱試験後のΔηsp保持率が100%であり、色相変化も全くなかった。
比較例6
実施例7のBPEFの使用量を122.78重量部、IPAMの使用量を23.30重量部、DPC35.99重量部とする以外は実施例7と同様にしてポリエステルカーボネート共重合体を合成した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとIPAのモル比が70:30であり、比粘度は0.201、Tgは146℃、溶融粘度は252Pa・sであった。
実施例7と同様の方法で、キャストフィルム、円板、レンズおよび角板を得た。配向複屈折(Δn)、屈折率(n)、アッベ数(ν)、光学歪みの評価結果を表3に示す。得られた成形片は湿熱試験後のΔηsp保持率が97%であり、色相変化も全くなかった。
比較例7
温度計、撹拌機、滴下漏斗付き反応器に、ピリジン38部および塩化メチレン360部を仕込み、これに9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン48.4部を溶解し、撹拌下15〜25℃でホスゲン9.6部を25分を要して吹込んだ。同時にテレフタル酸クロライド10.4部(ジオールと芳香族ジカルボン酸成分の合計モル数に対して30モル%)およびp−tert−ブチルフェノール0.54部を塩化メチレン100部に溶解して滴下した。ホスゲン吹込み終了後更に28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで塩化メチレンを蒸発させて無色のポリエステルカーボネート55.3部(収率95%)を得た。このポリマーのエステル基の割合は30モル%、比粘度は0.381、ガラス転移温度は162℃、溶融粘度は630Pa・sであった。
実施例7と同様の方法で、キャストフィルム、円板、レンズおよび角板を得た。配向複屈折(Δn)、屈折率(n)、アッベ数(ν)、光学歪みの評価結果を表3に示す。得られた角板は湿熱試験後のΔηsp保持率が90%であり、黄褐色に着色した。
比較例8
BPEF175.40重量部、DPC87.40重量部、水酸化ナトリウム1.60×10−5重量部およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド3.65×10−3重量部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気常圧下、180℃に加熱し、20分間撹拌した。その後、20分かけて減圧度を20〜30kPaに調整し、60℃/hrの速度で250℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。その後、250℃に保持したまま、120分かけて0.13kPa以下まで減圧し、250℃、0.13kPa以下の条件下で1時間攪拌下重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にした後、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムを4.67×10−4重量部添加し触媒を失活させた。その後、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズしながら抜き出し、BPEFホモポリマーを得た。得られたポリマーの比粘度は0.200、Tgは145℃、溶融粘度は81Pa・sであった。
実施例7と同様の方法で、キャストフィルム、円板、レンズおよび角板を得た。配向複屈折(Δn)、屈折率(n)、アッベ数(ν)、光学歪みの評価結果を表3に示す。得られた成形片は湿熱試験後のΔηsp保持率が99%であり、色相変化も全くなかった。
実施例7〜9で得られたポリマーは、1,750cm−1付近にカーボネート結合由来の吸収および1,740cm−1付近にエステル結合由来の吸収を有することがIR測定より確認された。また、DSC測定より得られるTgに起因するピークが1つであることからランダム共重合体であることが確認できた。また、実施例8で得られたポリマーは、図3のプロトンNMRからBPEFとIPAとのポリエステルカーボネート共重合体であることを示している。
Figure 2011010741
BPEF:9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン成分
IPA:イソフタル酸成分
TPA:テレフタル酸成分
Figure 2011010741
実施例7〜9で得られたポリエステルカーボネート共重合体はその複屈折が極めて小さく、成形流動性が良好であるため、射出成形により得られる光学レンズの光学歪みが小さい。さらに、屈折率が高く、湿熱試験後の分子量低下および色相変化がないため光学レンズとして優れる。
これに対して、比較例6〜8で得られたポリマーは正負の固有複屈折が十分に打ち消されていないため、該ポリマーより得られる光学レンズの光学歪みが大きい。比較例7で得られたポリマーは比粘度が0.381と大きいため、溶融粘度が高くなり、該ポリマーより得られる光学レンズの光学歪みが大きい。
実施例10〜13、比較例9〜11
評価は下記の方法によった。
(1)共重合比:日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRを用いて各構成成分に起因するピークの積分比から求めた。
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン及び9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシネオペントキシ)フェニル)フルオレン成分:7.7ppm、ナフタレンジカルボン酸成分:8.6ppm、テレフタル酸成分:8.1ppm、イソフタル酸成分:7.9ppm、ビスフェノールA成分:1.6ppm
(2)残存フェノール量:野村化学(株)製Develosil ODS−7のカラムにて溶離液アセトニトリル/0.2%酢酸水とアセトニトリルとの混合液を用いて、カラム温度30℃、検出器277nmでグラジエントプログラムにてHPLC分析した。測定は、ポリエステルカーボネート共重合体ペレット1.5gを塩化メチレン15mlに溶解させた後、アセトニトリル135mlを加え攪拌し、エバポレーターで濃縮した後、0.2μmフィルターでろ過し、この測定溶液10μlを注入して行った。得られたフェノールの重量を、測定に用いた重合体の重量で割ったものを残存フェノール量とした。
(3)ペレットb値:重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレット(ペレット形状は長さ4mm且つ直径1〜2mm程度)をガラスセルに入れ、日本電色社製色差計SE−2000を用いてペレット色相を測定した。
(4)比粘度:重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットを120℃で4時間乾燥し、該ペレット0.35gを塩化メチレン50ccに溶解した溶液を測定サンプルとした。測定は20±0.01℃の恒温槽中でオスワルト粘度管の標線間の通過時間を計測し、下記式からその溶液の20℃における比粘度(ηsp)を求めた。
ηsp=(t−t)/t
:ポリマー溶液の標線間通過時間
:塩化メチレンの標線間通過時間
実施例10
(工程1)
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)30.00kg、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル(NDCM)1.86kg、ジフェニルカーボネート(DPC)13.68kg、水酸化ナトリウム3mg及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.7gを精留塔付き撹拌槽(第1槽)に投入した。その後、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。
(工程2)
完全溶解後、20分かけて40kPaまで減圧すると同時に、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が8L(理論量の71%)に到達したところで、窒素を徐々に封入し、0.15MPaまで加圧した。
(工程3)
その後、プレポリマーを第1槽から精留塔なしの撹拌槽(第2槽)へ送液した。
(工程4)
第2槽において、ジャケットを260℃に保持したまま、20分かけて40kPa、さらに、100分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で30分重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にした後、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムを1.54×10−4重量部添加し触媒を失活させた。その後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。ポリエステルカーボネート共重合体の評価結果を表4に示す。
実施例11
(工程1)
BPEF30.00kg、テレフタル酸ジメチル(DMT)3.32kg、DPC11.72kg、チタンテトラブトキシド2.9gを精留塔付き撹拌槽(第1槽)に投入した。その後、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。
(工程2)
完全溶解後、20分かけて80kPaまで減圧すると同時に、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が7L(理論量の67%)に到達したところで、窒素を徐々に封入し、0.15MPaまで加圧した。
(工程3)
その後、プレポリマーを第1槽から精留塔なしの撹拌槽(第2槽)へ送液した。
(工程4)
第2槽において、ジャケットを260℃に保持したまま、20分かけて40kPa、さらに、100分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で30分重合反応を行った。反応終了後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。ポリエステルカーボネート共重合体の評価結果を表4に示す。
実施例12
(工程1)
BPEF30.00kg、DMT2.49kg、イソフタル酸ジメチル(以下“DMI”と省略することがある)0.83kg、DPC11.72kg、チタンテトラブトキシド2.9gを精留塔付き撹拌槽(第1槽)に投入した。その後、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。
(工程2)
完全溶解後、20分かけて80kPaまで減圧すると同時に、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が7L(理論量の67%)に到達したところで、窒素を徐々に封入し、0.15MPaまで加圧した。
(工程3)
その後、プレポリマーを第1槽から精留塔なしの撹拌槽(第2槽)へ送液した。
(工程4)
第2槽において、ジャケットを260℃に保持したまま、20分かけて40kPa、さらに、100分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で30分重合反応を行った。反応終了後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。ポリエステルカーボネート共重合体の評価結果を表4に示す。
実施例13
(工程1)
BPEF30.00kg、DMT3.32kg、DPC12.82kg、チタンテトラブトキシド2.9gを精留塔付き撹拌槽(第1槽)に投入した。その後、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。
(工程2)
完全溶解後、20分かけて80kPaまで減圧すると同時に、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が7L(理論量の67%)に到達したところで、窒素を徐々に封入し、0.15MPaまで加圧した。
(工程3)
その後、プレポリマーを第1槽から精留塔なしの撹拌槽(第2槽)へ送液した。
(工程4)
第2槽において、ジャケットを260℃に保持したまま、20分かけて40kPa、さらに、100分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で30分重合反応を行った。反応終了後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。
比較例9
ビスフェノールA(以下“BPA”と省略することがある)15.00kg、DMT3.19kg、DPC11.27kg、チタンテトラブトキシド2.8gを精留塔付き撹拌槽(第1槽)に投入した。
その後、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。完全溶解後、20分かけて80kPaまで減圧すると同時に、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が7L(理論量の70%)に到達したところで、窒素を徐々に封入し、0.15MPaまで加圧した。
その後、プレポリマーを第1槽から精留塔なしの撹拌槽(第2槽)へ送液した。
第2槽において、ジャケットを260℃に保持したまま、20分かけて40kPa、さらに、100分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で30分重合反応を行った。反応終了後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。ポリエステルカーボネート共重合体の評価結果を表4に示す。
比較例10
(工程1)
BPEF30.00kg、DMT5.69kg、DPC9.00kg、チタンテトラブトキシド3.3gを精留塔付き撹拌槽(第1槽)に投入した。その後、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。
(工程2)
完全溶解後、常圧下、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。副生するモノヒドロキシ化合物の留出量は3L(理論量の29%)で止まった。窒素を徐々に封入し、0.15MPaまで加圧した。
(工程3)
その後、プレポリマーを第1槽から精留塔なしの撹拌槽(第2槽)へ送液した。
(工程4)
第2槽において、ジャケットを260℃に保持したまま、20分かけて40kPa、さらに、100分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で60分重合反応を行った。反応終了後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。得られたペレットは黄褐色に着色していた。ポリエステルカーボネート共重合体の評価結果を表4に示す。
比較例11
(工程1)
BPEF30.00kg、DMT14.66kg、DPC9.00kg、チタンテトラブトキシド3.3gを精留塔付き撹拌槽(第1槽)に投入した。その後、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。
(工程2)
完全溶解後、20分かけて5kPaまで減圧すると同時に、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。昇温が完了し1時間放置しても副生するモノヒドロキシ化合物の留出量は3L(理論量の30%)しか留出しなかったため、反応を終了し、窒素を徐々に封入し、0.15MPaまで加圧した。
(工程3)
その後、プレポリマーを第1槽から精留塔なしの撹拌槽(第2槽)へ送液した。
(工程4)
第2槽において、ジャケットを260℃に保持したまま、20分かけて5kPa、さらに、100分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で30分重合反応を行った。反応終了後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。ポリエステルカーボネート共重合体の評価結果を表4に示す。
Figure 2011010741
実施例10〜13で得られたポリエステルカーボネート共重合体は、芳香族ヒドロキシ末端がなく、残存フェノール量が極めて少ないため、重合後の色相が極めて良い。これに対して、比較例9で得られたポリマーは、芳香族ヒドロキシ末端を含むため、重合後の色相に劣る。比較例10の製造方法では、重合初期での減圧度が低く、フェノールが留出しないため、重合時間が長くなり、重合後の色相に劣る。比較例11の製造方法では、ジフェニルカーボネートの仕込み量が多く、残存フェノール量が多いため、重合後の色相に劣る。また、実施例11で得られたポリマーは、図4のプロトンNMRからBPEFとDMTとのポリエステルカーボネート共重合体であることを示している。
発明の効果
本発明のポリエステルカーボネート共重合体およびそれを用いた光学レンズは、屈折率および透明性が高く、複屈折が低く光学歪みが少ない。本発明のポリエステルカーボネート共重合体およびそれを用いた光学レンズは、耐湿熱性にも優れる。本発明の製造方法によれば、フェノール含有量が1〜100ppmであるポリエステルカーボネート共重合体を製造することができる。
本発明の共重合体およびそれからなる光学レンズはデジタルビデオカメラ等の各種カメラ、望遠鏡、双眼鏡、テレビプロジェクター、プリズム等、従来、高価な高屈折率ガラスレンズが用いられていた分野に用いることができる。特に、携帯電話用カメラレンズ、デジタルカメラレンズ、車載カメラレンズ、ウェブカメラレンズ等、薄肉小型レンズとして有効である。
本発明はポリエステルカーボネート共重合体およびそれからなる光学レンズに関する。更に詳しくは、屈折率および透明性が高く、複屈折の低いポリエステルカーボネート共重合体およびそれからなる光学レンズに関する。
カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種カメラの光学系に使用される光学レンズの材料として、光学ガラスあるいは光学用樹脂が使用されている。光学ガラスは、耐熱性、透明性、寸法安定性、耐薬品性等に優れるが、材料コストが高く、成形加工性が悪く、生産性が低いという問題点を有している。
一方、光学用樹脂からなる光学レンズは、射出成形により大量生産が可能であるという利点を有している。カメラレンズ用としてポリカーボネート樹脂等が使用されている。しかしながら、近年、製品の軽薄短小化により、高い屈折率の樹脂の開発が求められている。一般に光学材料の屈折率が高いと、同一の屈折率を有するレンズエレメントを、より曲率の小さい面で実現できるため、この面で発生する収差量を小さくでき、レンズの枚数を減らしたり、レンズの偏心感度を低減したり、レンズ厚みを薄くして軽量化することが可能になる。
また、光学用樹脂を光学レンズとして用いる場合、屈折率やアッベ数以外にも、耐熱性、透明性、低吸水性、耐薬品性、耐光性、低複屈折性、耐湿熱性が求められる。そのため、樹脂の特性バランスによって使用箇所が限定されるという弱点がある。特に近年、画素数の向上による解像度のアップに伴い結像性能の高い、より複屈折の低いカメラレンズが求められている。一般に、複屈折を小さくする方法として、符号の異なる正負の複屈折を持つ組成同士で、互いの複屈折を打ち消し合う手法が挙げられる。そのため、これら異符号の複屈折を持つ材料の構成比率は非常に重要となる。また、鮮明な画像を映し出すためには、可視光領域の全ての波長において高い透過率を維持する必要がある。
そこで、屈折率が高く、複屈折が低く、かつ物性バランスに優れた光学レンズ向け樹脂の開発が行われてきた。例えば、フルオレン含有ジヒドロキシ化合物とナフタレンジカルボン酸からなるポリエステルが提案されている(特許文献1)。しかし、該ポリエステルは高屈折率ではあるものの、正負の複屈折が打ち消されておらず、複屈折が大きいという問題があった。さらに、ナフタレン成分を多く含むため、380〜400nmにナフタレン環由来の吸収があり、可視光透過率が大きく低下することがあった。
また、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンと芳香族ジカルボン酸からなるポリエステルカーボネートが提案されている(特許文献2、3)。しかしこの提案は、芳香族ジカルボン酸の種類が特定されておらず、使用する芳香族ジカルボン酸の種類によっては屈折率が不十分である。さらに、複屈折および可視光透過率についての検討はなされていないため、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンと芳香族ジカルボン酸の組成比によっては複屈折が大きくなり、また可視光透過率が低下することがある。
また、光学レンズは様々な用途に使用されているが、その用途により形状やサイズが大きく異なる。例えば、携帯電話用カメラレンズは、φ5mm、厚み0.3mm程度と非常に小型、薄肉であり、近年、さらに小型化、薄肉化が進んでいる。このような小型薄肉レンズを射出成形する場合、樹脂の流動性が不十分であると、目的とする形状のレンズが得られないことがあった。樹脂の流動性は、その分子量、分子構造、共重合組成等によって決まるため、特許文献2、3のような分子量や共重合組成の樹脂では、流動性が不十分であり、小型薄肉光学レンズ用途に用いるのは困難であった。
また、ポリエステルカーボネートを製造するにあたり、減圧度の制御は非常に重要である。ポリエステルやポリカーボネートとは異なり、ポリエステルカーボネートの製造では、沸点の異なるモノヒドロキシ化合物が2種副生するため、製造時の減圧度により、副生物の留去速度を制御することが非常に重要である。特許文献2、3に記載の製造方法では、反応初期に減圧を行わないため、フェノールが留去せず、反応時間が非常に長いという課題があった。
特開2006−335974号公報 特開平10−87800号公報 特開2002−309015号公報
そこで本発明の目的は、屈折率および透明性が高く、複屈折が低く光学歪みの少ない小型薄肉光学レンズに適したポリエステルカーボネート共重合体およびそれを用いた光学レンズを提供することにある。
本発明者らはこの目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた。その結果、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンとジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とを特定割合で共重合すると、上記目的を達成できることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記式(I)で表される単位および下記式(II)で表される単位を含有し、
Figure 2011010741
(式(II)中、Yは2,6−ナフタレンジイル基、1,4−フェニレン基または1,3−フェニレン基である。)
(i)式(II)中、Yが2,6−ナフタレンジイル基のとき、82〜95モル%の式(I)で表される単位および18〜5モル%の式(II)で表される単位を含有し、
(ii)式(II)中、Yが1,4−フェニレン基または1,3−フェニレン基のとき、75〜82モル%の式(I)で表される単位および25〜18モル%の式(II)で表される単位を含有し、
(iii)比粘度が0.12〜0.30である、
光学レンズ用ポリエステルカーボネート共重合体である。
また本発明は、(i)9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体および炭酸ジエステルを第1反応槽中で溶融し(工程1)、
(ii)第1反応槽中で,温度120〜300℃、20〜90kPaの減圧下で、副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の50〜90%に到達するまで反応させ(工程2)、
(iii)反応溶液を第1反応槽から第2反応槽へ移し(工程3)、並びに
(iv)第2反応槽で、温度150〜320℃で最終内圧が1〜500Paとなるまで反応を行う(工程4)、
各工程を含む上記光学レンズ用ポリエステルカーボネート共重合体の製造方法を包含する。
本発明のポリエステルカーボネート共重合体およびそれを用いた光学レンズは、屈折率および透明性が高く、複屈折が低く光学歪みが少ない。本発明のポリエステルカーボネート共重合体およびそれを用いた光学レンズは、耐湿熱性にも優れる。本発明の製造方法によれば、フェノール含有量が1〜100ppmであるポリエステルカーボネート共重合体を製造することができる。
実施例1で得られたポリエステルカーボネート共重合体のプロトンNMRである。 実施例4で得られたポリエステルカーボネート共重合体のプロトンNMRである。 実施例8で得られたポリエステルカーボネート共重合体のプロトンNMRである。 実施例11で得られたポリエステルカーボネート共重合体のプロトンNMRである。
<ポリエステルカーボネート共重合体>
本発明のポリエステルカーボネート共重合体(以下、共重合体と略することがある)は、下記式(I)で表されるカーボネート単位を含有する。
Figure 2011010741
本発明の共重合体は、下記式(II)で表されるエステル単位を含有する。
Figure 2011010741
式(II)中、Yは、1,4−フェニレン基、1、3−フェニレン基または2,6−ナフタレンジイル基である。
式(II)中、Yが2,6−ナフタレンジイル基の場合、式(I)の単位の含有量は82〜95モル%、式(II)の単位の含有量は18〜5モル%である。
式(II)中、Yが1,4−フェニレン基、1、3−フェニレン基の場合、式(I)の単位の含有量は、75〜82モル%、式(II)の単位の含有量は、25〜18モル%である。
本発明の共重合体の比粘度は、0.12〜0.30、好ましくは0.15〜0.25、さらに好ましくは0.18〜0.23の範囲である。比粘度は、0.7gの共重合体を100mlの塩化メチレンに溶解し20℃で測定する。比粘度が0.12未満では成形体が脆くなり、0.30より高くなると溶融粘度および溶液粘度が高くなり、取扱いが困難になる。
本発明の共重合体の屈折率は、好ましくは1.635〜1.650、より好ましくは1.636〜1.650、さらに好ましくは1.637〜1.650の範囲である。屈折率は25℃、波長589nmにおいて測定する。
本発明の共重合体のアッベ数(ν)は、好ましくは20〜27、より好ましくは21〜27、さらに好ましくは21〜25の範囲である。アッベ数は25℃、波長486nm、589nm、656nmの屈折率から下記式を用いて算出する。
ν=(nD−1)/(nF−nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nF:波長656nmでの屈折率
nC:波長486nmでの屈折率
本発明の共重合体の配向複屈折(Δn)は、好ましくは0〜6×10−3、より好ましくは0〜4×10−3、さらに好ましくは0〜1×10−3の範囲である。配向複屈折(Δn)は、該共重合体より得られる厚さ100μmのキャストフィルムをTg+10℃で2倍延伸した時、波長589nmにおいて測定する。
本発明の共重合体の分光透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは81%以上、さらに好ましくは82%以上である。透過率は、厚さ0.1mmの成形板を波長395nmにおいて測定する。
本発明の共重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは130〜160℃、より好ましくは135〜155℃、さらに好ましくは140〜155℃である。ガラス転移温度(Tg)は昇温速度20℃/minにて測定する。Tgが130℃未満では、該共重合体を用いて形成した光学部品を使用する用途によっては耐熱性が十分でなく、一方Tgが160℃より高い場合では溶融粘度が高くなり、成形体を形成する上での取扱いが困難となる。
本発明の共重合体は、熱安定性の指標として、昇温速度20℃/minにて測定した5%重量減少温度が350℃以上であることが好ましく、380℃以上であることがより好ましい。5%重量減少温度が350℃より低い場合は、成形の際の熱分解が激しく、良好な成形体を得ることが困難となるため好ましくない。
本発明の共重合体の280℃、せん断速度1,000/secにおける溶融粘度は、好ましくは30〜300Pa・s、より好ましくは30〜200Pa・s、さらに好ましくは50〜160Pa・sである。
本発明の共重合体のフェノール含有量は、好ましくは1〜100ppm、より好ましくは1〜50ppm、さらに好ましくは1〜10ppmである。
<共重合体の製造方法>
本発明の共重合体は、ジオール成分、ジカルボン酸成分およびカーボネート前駆体を反応させることにより製造することができる。
(ジオール成分)
ジオール成分は、主として下記式(a)で表される9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下、BPEFと略すことがある。)である。
Figure 2011010741
ジオール成分中のBPEFの含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。
他のジオールとして、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、デカリン−2,6−ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、シクロペンタン−1,3−ジメタノール、スピログリコール等の脂環式ジオール、ビスフェノールA等の芳香族ジオール等が挙げられる。
(ジカルボン酸成分)
ジカルボン酸成分は主として、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体である。
ジカルボン酸成分は、得られる共重合体の特性を損なわない程度に他のジカルボン酸成分を含有していても良い。この場合、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸の含有量は、ジカルボン酸成分100モル%に対し、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。
他のジカルボン酸として、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。また、フタル酸等の単環式芳香族ジカルボン酸や、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸等の多環式芳香族ジカルボン酸が挙げられる。また、2,2’−ビフェニルジカルボン酸等のビフェニルジカルボン酸や、1,4−シクロジカルボン酸、2,6−デカリンジカルボン酸等の脂還族ジカルボン酸が挙げられる。これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。また、これらの誘導体としては酸クロライドやエステル類が用いられる。
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン成分とジカルボン酸成分とのモル比は、75:25〜95:5が好ましい。9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン成分の割合が大きくなり過ぎると、共重合体からなる光学レンズの負の複屈折が大きくなり、屈折率も小さくなるため好ましくない。またジカルボン酸成分の割合が大きくなり過ぎると、共重合体からなる光学レンズの正の複屈折が大きくなり好ましくない。また、ジカルボン酸成分が多いため、可視光透過率が低下する。
また、ジカルボン酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の場合、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン成分とジカルボン酸成分とのモル比は、85:15〜95:5の範囲であると共重合体からなる光学レンズの複屈折が特に小さくなり好ましい。
また、ジカルボン酸成分がテレフタル酸、イソフタル酸成分の場合、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン成分とジカルボン酸成分とのモル比は、80:20〜85:15の範囲であると共重合体からなる光学レンズの複屈折が特に小さくなり好ましい。
(カーボネート前駆体)
カーボネート前駆体として、ホスゲンや、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンのビスクロロホーメートや、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等の炭酸ジエステルが挙げられる。なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
(エステル交換法)
本発明の共重合体は、ジオール成分、ジカルボン酸成分および炭酸ジエステルをエステル交換させ製造することができる(エステル交換法)。
エステル交換法は、不活性ガス存在下にジオール成分と、ジカルボン酸成分またはそのジエステルと、ビスアリールカーボネートを混合し、減圧下、通常、120〜350℃、好ましくは150〜300℃で反応させることが好ましい。減圧度は段階的に変化させ、最終的には1mmHg以下にして生成したアルコール類を系外に留去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。エステル交換法は、以下の工程1〜工程4で行うことが好ましい。
(工程1)
工程1は、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF)、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体および炭酸ジエステルを第1反応槽中で溶融する工程である。
芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体である。炭酸ジエステルは、ジフェニルカーボネートが好ましい。
第1反応槽は未反応の炭酸ジエステルやモノマーと副生するモノヒドロキシ化合物とを分離し、反応系内に未反応の炭酸ジエステルやモノマーを還流するための精留塔を備えた竪型撹拌槽を使用することが好ましい。第1反応槽では、所定量のモノマーを仕込み、窒素置換した後、不活性ガス存在下に、BPEFと芳香族ジカルボン酸と炭酸ジエステルとを混合し溶融させる。
(工程2)
工程2は、第1反応槽中で、温度120〜300℃、20〜90kPaの減圧下で、副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の50〜90%に到達するまで反応させる工程である。
溶融後、20〜90kPa、好ましくは40〜80kPaの弱減圧下、120〜300℃、好ましくは150〜280℃、さらに好ましくは180〜280℃で反応を行い、副生するモノヒドロキシ化合物を系外に留去させる。ポリエステルやポリカーボネートのように、副生するモノヒドロキシ化合物が1種の場合、減圧度を厳密に制御する必要はないが、本ポリエステルカーボネートのように、副生するモノヒドロキシ化合物が2種以上の場合、減圧度は反応速度制御のために非常に重要である。常圧で反応を行う場合、溶融物が酸化されたり、反応終了後の残存フェノールが多くなり色相が低下するため好ましくない。また、フェノールの留出速度が遅くなり、BPEFとジフェニルカーボネートの反応時間を多く要すため好ましくない。減圧度が20kPaより小さい場合、未反応炭酸ジエステルやモノマーが留去することがあり好ましくない。また、フェノールの留出速度が速くなり、BPEFとジフェニルカーボネートの反応が優先され、BPEFとジカルボン酸の反応が進行しないため好ましくない。
反応は、副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の50〜90%、好ましくは60〜80%に到達するまで行うことが好ましい。留出量が50%より小さい場合、未反応の炭酸ジエステルやモノマーが多く、第2反応槽で原料のモルバランス崩れが生じることがあるため好ましくない。留出量が90%より大きい場合、樹脂の粘度が高くなり、第1反応槽から第2反応槽への送液に長時間を要するため好ましくない。
上記モノヒドロキシ化合物とは、BPEFと炭酸ジエステルとの反応で副生するフェノール及びBPEFと芳香族ジカルボン酸との反応で副生するメタノール等のアルキルアルコール類や水である。また、モノヒドロキシ化合物の理論留出量(A)は、仕込んだBPEF、芳香族ジカルボン酸および炭酸ジエステルが全て反応したときに留出されるモノヒドロキシ化合物の量の体積である。
第1反応槽に使用する撹拌機の撹拌速度は、反応混合物の粘度が低いこと、生成したモノヒドロキシ化合物の蒸発のために大きなエネルギーが必要であることから、比較的高速の攪拌速度、例えば、数十〜200rpmであることが好ましい。
(工程3)
工程3は、反応溶液を第1反応槽から第2反応槽へ移す工程である。本発明の方法では、エステル交換反応の進行に伴って反応系の粘度が大きく変化し、また反応で副生するモノヒドロキシ化合物の発生量が大きく変化するので、第1反応槽および第2反応槽を使用することが好ましい。反応溶液を第1反応槽から第2反応槽へ移す際、第1反応槽と第2反応槽との間で異物除去を目的とした濾過を行うこともできる。この様な濾過フィルターとしては10μm以下の目開きを有するフィルターが良く使用される。
(工程4)
工程4は、温度150〜320℃で最終内圧が1〜500Paとなるまで減圧して反応を行う工程である。工程4は第2反応槽で行う。
第2反応槽は竪型や横形の撹拌槽が使用されるが、反応圧力が高真空度となる場合が多く、かつ原料のモルバランスに影響を与えるほどの未反応の炭酸ジエステルが存在しないため、一般に精留塔は設置せず、蒸発物はそのまま系外に取り出される。第2反応槽に使用される撹拌翼は、高粘度で優れた性能を発揮するヘリカルリボン翼やアンカー翼等、反応混合物の表面更新性や発生する気泡を押し潰す能力に優れたものを使用すると良い。第2反応槽では、樹脂の受け入れ後、150〜320℃、好ましくは180〜300℃、さらに好ましくは200〜280℃で減圧度を段階的に変化させ、最終的には1〜500Paとなるまで減圧することにより生成したモノヒドロキシ化合物を系外に留去させつつ縮合反応を行う。
第2反応槽に使用する撹拌機の撹拌速度は、反応混合物の粘度が高いことから、第1反応槽よりも低い攪拌速度、例えば、数〜数十rpmであることが好ましい。
第2反応槽で生成したポリエステルカーボネート重合体は、第2反応槽の内部を加圧することによって外部にシートまたはストランドとして取り出し、これを水等で冷却し、ペレットとして製品化する。なお、第2反応槽で反応の途中または反応終了後の加圧前あるいは加圧時に失活剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤等の各種添加物を添加しても良い。
本発明の共重合体を製造する際に使用する芳香族炭酸ジエステルの使用量は、モル割合で下記式を満足することが好ましい。
1.0≦(C)/{(A)−(B)}≦1.5 (III)
(A):ジオール成分の仕込量
(B):ジカルボン酸成分の仕込量
(C):芳香族炭酸ジエステルの使用量
芳香族炭酸ジエステルの使用量が式(III)の範囲を満たさず少ない場合、目的とする分子量まで重合反応が進行しないため好ましくない。芳香族炭酸ジエステルの使用量が式(III)の範囲を満たさず多い場合、残存フェノールが多くなるため好ましくない。
本発明の製造方法によれば、フェノール含有量が好ましくは1〜100ppm、より好ましくは1〜50ppm、さらに好ましくは1〜10ppmのポリエステルカーボネート共重合体を製造することができる。
エステル交換反応では反応促進のために重合触媒を用いることができる。このような重合触媒としてはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物または重金属化合物を主成分として用い、必要に応じて更に含窒素塩基性化合物を従成分として用いるのが好ましい。
アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ビスフェノールAのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属化合物としては、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。
含窒素塩基性化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
その他のエステル交換触媒としては亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、オスミウムの塩が挙げられる。例えば、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)、チタンテトラブトキシド(IV)、チタンテトライソプロポキシド、チタン(IV)=テトラキス(2−エチル−1−ヘキサノラート)、酸化チタン、トリス(2,4−ペンタジオネート)アルミニウム(III)等が用いられる。
これらの触媒は単独で用いても、二種以上併用してもよい。これらの触媒の使用量はジオールとジカルボン酸の合計1モルに対して、好ましくは1×10−9〜1×10−3モル、より好ましくは1×10−7〜1×10−3モルの比率で用いられる。これらは単独で用いても二種以上併用してもよい。また、エステル交換反応ではヒドロキシ末端基を減少するために重縮合反応の後期または終了後に電子吸引性の置換基を持ったジアリールカーボネートを加えても良い。更に、色相改善のために酸化防止剤や熱安定剤等を加えてもよい。
重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させてもよい。一般的には、公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法が好適に実施される。これらの物質として、安息香酸ブチル等のエステル類、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類、亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn−プロピル、亜リン酸ジn−ブチル、亜リン酸ジn−ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類、ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類、フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類、トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類、ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p−トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸等のアルキル硫酸、塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が挙げられる。これらの失活剤は、触媒量に対して好ましくは0.01〜50倍モル、より好ましくは0.3〜20倍モル使用される。触媒量に対して0.01倍モルより少ないと、失活効果が不充分となり好ましくない。また、触媒量に対して50倍モルより多いと、耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなるため好ましくない。触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を0.1〜1mmHgの圧力、200〜320℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良い。
<光学レンズ>
本発明の光学レンズは、本発明の共重合体を例えば、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、キャスティングして成形することができる。
本発明の光学レンズには、本発明の目的を損なわない範囲で各種特性を付与するために、各種添加剤を含有してもよい。添加剤として、離型剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、帯電防止剤、難燃剤、熱線遮蔽剤、蛍光染料(蛍光増白剤を含む)、顔料、光拡散剤、強化充填剤、他の樹脂やエラストマー等を配合することができる。
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸のエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸のエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸のエステルや、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。前記一価アルコールと脂肪酸のエステルとは、炭素原子数1〜20の一価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。また、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルとは、炭素原子数1〜25の多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。
具体的に一価アルコールと飽和脂肪酸のエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等が挙げられる。ステアリルステアレートが好ましい。
多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。これらのエステルのなかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートの混合物が好ましく用いられる。
離型剤中の前記エステルの量は、離型剤を100重量%とした時、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましい。
本発明の光学レンズ中の離型剤の含有量は、共重合体100重量部に対して0.005〜2.0重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.6重量部の範囲がより好ましく、0.02〜0.5重量部の範囲がさらに好ましい。
熱安定剤としては、リン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤およびヒンダードフェノール系熱安定剤が挙げられる。
リン系熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられる。
なかでも、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイトが使用される。特に好ましくはテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトが使用される。
共重合体中のリン系熱安定剤の含有量は、共重合体100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
硫黄系熱安定剤としては、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。なかでもペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネートが好ましい。特に好ましくはペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)である。該チオエーテル系化合物は住友化学工業(株)からスミライザーTP−D(商品名)およびスミライザーTPM(商品名)等として市販されており、容易に利用できる。
共重合体中の硫黄系熱安定剤の含有量は、共重合体100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートおよび3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが特に好ましく用いられる。
共重合体中のヒンダードフェノール系熱安定剤の含有量は、共重合体100重量部に対して0.001〜0.3重量部であることが好ましい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系からなる群より選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ルが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上の混合物で用いることができる。
好ましくは、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ルであり、より好ましくは、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]である。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−(4,6−ビス(2.4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(オクチル)オキシ]−フェノール等が挙げられる。
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが例示される。
なかでも2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適である。特に2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適である。かかる化合物は竹本油脂(株)からCEi−P(商品名)として市販されており、容易に利用できる。
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、1,3−ビス−[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3−ビス−[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが例示される。
紫外線吸収剤の含有量は、共重合体100重量部に対して、好ましくは0.01〜3.0重量部であり、より好ましくは0.02〜1.0重量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.8重量部である。かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、共重合体成形体に十分な耐候性を付与することが可能である。
ブルーイング剤としては、バイエル社のマクロレックスバイオレットBおよびマクロレックスブルーRR並びにクラリアント社のポリシンスレンブル−RLS等が挙げられる。ブルーイング剤は、共重合体の黄色味を消すために有効である。特に耐候性を付与した共重合体の場合は、一定量の紫外線吸収剤が配合されているため紫外線吸収剤の作用や色によって成形体が黄色味を帯びやすい現実があり、特にシートやレンズに自然な透明感を付与するためにはブルーイング剤の配合は非常に有効である。
ブルーイング剤の配合量は、共重合体に対して好ましくは0.05〜1.5ppmであり、より好ましくは0.1〜1.2ppmである。
また、本発明の光学レンズは、光学歪みが小さいことを特徴とする。一般的なビスフェノールAタイプのポリカーボネート樹脂からなる光学レンズは光学歪みが大きい。成形条件によりその値を低減することも不可能ではないが、その条件幅は非常に小さく成形が非常に困難となる。本発明のポリエステルカーボネート共重合体は、樹脂の配向により生じる光学歪みが極めて小さく、また成形歪みも小さいため、成形条件を厳密に設定しなくても良好な光学素子を得ることができる。
本発明の光学レンズを射出成形で製造する場合、シリンダー温度260〜300℃、金型温度100〜140℃の条件にて成形することが好ましい。
本発明の光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形で用いることが好適に実施される。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
また、本発明の共重合体は、流動性が高いため、薄肉小型で複雑な形状である光学レンズの材料として特に有用である。具体的なレンズサイズとして、中心部の厚みが0.05〜3.0mm、より好ましくは0.05〜2.0mm、さらに好ましくは0.1〜2.0mmである。また、直径が1.0mm〜20.0mm、より好ましくは1.0〜10.0mm、さらに好ましくは3.0〜10.0mmである。また、その形状として片面が凸、片面が凹であるメニスカスレンズであることが好ましい。
本発明の光学レンズの表面には、必要に応じ、反射防止層あるいはハードコート層といったコート層が設けられていても良い。反射防止層は、単層であっても多層であっても良く、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が例示される。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。
実施例1〜3、比較例1〜2
評価は下記の方法によった。
(1)比粘度:重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットを十分に乾燥し、該ペレット0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定した。
(2)共重合比:日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRを用いて測定した。図1に示すように7.6〜7.8ppmの9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンに起因するピークと8.6ppm付近のナフタレンジカルボン酸に起因するピークの積分比から求めた。
(3)ガラス転移点(Tg):重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットをデュポン社製910型DSCにより、昇温速度20℃/minで測定した。
(4)溶融粘度:重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットを東洋精機(株)製キャピログラフ1Dにより、280℃、せん断速度1000/secにおける溶融粘度を測定した。
(5)屈折率(nd)、アッベ数(ν):射出成形により得られた厚さ0.3mmの円板をATAGO製DR−M2のアッベ屈折計を用いて、25℃における屈折率(波長:589nm)及びアッベ数を測定した。
(6)配向複屈折(Δn):厚さ100μmのキャストフィルムをTg+10℃で2倍延伸し、日本分光(株)製エリプソメーターM−220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定し、下記式より配向複屈折(Δn)を求めた。
Δn=Re/d
Δn:配向複屈折
Re:位相差
d:厚さ
(7)光学歪み:成形したレンズを二枚の偏光板の間に挟み直交ニコル法で後ろからの光漏れを目視することにより光学歪み評価した。評価は以下の基準で行った。
◎:殆ど光漏れがない。
○:僅かに光漏れが認められる。
×:光漏れが顕著である。
(8)分光透過率:射出成形により得られた厚さ0.1mmの円板を、日立(株)製分光光度計U−3310を用いて測定した。評価は以下のようにした。
395nmにおける透過率が80%以上:○
395nmにおける透過率が80%より低い:×
(9)湿熱試験:厚さ1mmの角板を85℃、85%RHの条件下で400時間放置した後、外観を目視評価した。また、該成形片0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定し、湿熱試験後の比粘度保持率(分子量保持率)を求めた。
Δηsp=(ηsp1/ηsp0)×100
Δηsp:比粘度保持率
ηsp0:試験前の比粘度 ηsp1:試験後の比粘度
実施例1
(合成)
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)157.86重量部、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分(以下“NDCM”と省略することがある)9.77重量部、ジフェニルカーボネート(以下“DPC”と省略することがある)71.98重量部、水酸化ナトリウム8×10−6重量部およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド3.65×10−3重量部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気760Torrの下、180℃に加熱し、20分間撹拌した。その後、20分かけて減圧度を20kPaに調整し、60℃/hrの速度で250℃まで昇温しエステル交換反応を行った。その後、250℃に保持したまま、60分かけて1Torr以下まで減圧し、250℃、1Torr以下の条件下で1時間攪拌下重合反応を行った。
反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み、加圧にした後、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムを1.54×10−4重量部添加し触媒を失活させた。その後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとNDCMとのモル比が90:10であり、比粘度は0.193、Tgは151℃、溶融粘度は90Pa・sであった。
作成したポリマーを120℃で4時間、真空乾燥した後、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。
(キャストフィルム)
該ペレットを塩化メチレンに溶解させた後、ガラスシャーレ上にキャストし、乾燥させて厚さ100μmのキャストフィルムを得た。配向複屈折(Δn)の評価結果を表1に示す。
(厚さ0.3mmの円板)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用い、シリンダ温度280℃、金型温度100℃で厚さ0.3mm、φ5mmの円板を射出成形した。屈折率(nd)およびアッベ数(ν)の評価結果を表1に示す。
(レンズ)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用い、シリンダ温度280℃、金型温度100℃で厚さ0.3mm、凸面曲率半径5mm、凹面曲率半径4mm、φ5mmのレンズを射出成形した。光学歪みの評価結果を表1に示す。
(厚さ0.1mmの円板)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用い、シリンダ温度280℃、金型温度100℃で厚さ0.1mm、φ5mmの円板を射出成形した。分光透過率の評価結果を表1に示す。
(厚さ1mmの角板)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用い、シリンダ温度280℃、金型温度100℃で厚さ1mm、幅2.5cm、長さ5cmの角板を射出成形した。得られた角板は、Δηsp保持率が99%であり、湿熱試験後の外観変化が全くなかった。
実施例2
実施例1のBPEFの使用量を149.09重量部、NDCMの使用量を14.66重量部、DPC63.41重量部とする以外は実施例1と同様にしてポリエステルカーボネート共重合体を合成した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとNDCMのモル比が85:15であり、比粘度は0.184、Tgは151℃、溶融粘度は96Pa・sであった。
実施例1と同様の方法で、キャストフィルム、厚さ0.3mmの円板、レンズ、厚さ1mmの角板を得た。配向複屈折(Δn)、屈折率(nd)、アッベ数(ν)、光学歪み、分光透過率の測定結果を表1に示す。厚さ1mmの角板は、Δηspが98%であり、湿熱試験後の外観変化が全くなかった。
実施例3
実施例1のBPEFの使用量を166.63重量部、NDCMの使用量を4.89重量部、DPC77.12重量部とする以外は実施例1と同様にしてポリエステルカーボネート共重合体を合成した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとNDCMのモル比が95:5であり、比粘度は0.197、Tgは149℃、溶融粘度は84Pa・sであった。
実施例1と同様の方法で、キャストフィルム、厚さ0.3mmの円板、レンズ、厚さ1mmの角板を得た。配向複屈折(Δn)、屈折率(nd)、アッベ数(ν)、光学歪み、分光透過率の測定結果を表1に示す。厚さ1mmの角板は、、Δηsp保持率が98%であり、湿熱試験後の外観変化が全くなかった。
比較例1
実施例1のBPEFの使用量を105.24重量部、NDCMの使用量を39.08重量部、DPC21.42重量部とする以外は実施例1と同様にしてポリエステルカーボネート共重合体を合成した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとNDCMのモル比が60:40であり、比粘度は0.280、Tgは160℃、溶融粘度は306Pa・sであった。
実施例1と同様の方法で、キャストフィルム、厚さ0.3mmの円板、レンズ、厚さ1mmの角板を得た。配向複屈折(Δn)、屈折率(nd)、アッベ数(ν)、光学歪み、分光透過率の測定結果を表1に示す。
比較例2
BPEF43.85重量部、ジフェニルカーボネート11.27重量部、炭酸水素ナトリウム5.04×10−5重量部およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド5.52×10−3重量部を攪拌機および留出装置付きの10リットル反応器に入れ、窒素雰囲気760Torrの下1時間かけて215℃に加熱し撹拌した。
その後、15分かけて減圧度を150Torrに調整し、215℃、150Torrの条件下で20分間保持しエステル交換反応を行った。さらに37.5℃/hrの速度で240℃まで昇温し、240℃、150Torrで10分間保持した。その後、10分かけて120Torrに調整し、240℃、120Torrで70分間保持した。その後、10分かけて100Torrに調整し、240℃、100Torrで10分間保持した。更に40分かけて1Torr以下とし、240℃、1Torr以下の条件下で10分間撹拌下重合反応を行った。
反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にした後、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムを7.01×10−4重量部添加し触媒を失活させた。その後、生成したポリカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出し、BPEFホモポリマーを得た。得られたポリマーの比粘度は0.200、Tgは149℃、溶融粘度は81Pa・sであった。
実施例1と同様の方法で、キャストフィルム、厚さ0.3mmの円板、レンズ、厚さ1mmの角板を得た。配向複屈折(Δn)、屈折率(nd)、アッベ数(ν)、光学歪み、分光透過率の測定結果を表1に示す。厚さ1mmの円板は、湿熱試験後の外観変化が全くなかった。
実施例1〜3で得られたポリエステルカーボネート共重合体は、1,775cm−1付近にカーボネート結合由来の吸収および1,740cm−1付近にエステル結合由来の吸収を有することがIR測定より確認された。また、DSC測定より得られるTgに起因するピークが1つであることからランダム共重合体であることが確認できた。また、実施例1で得られたポリマーは、図1のプロトンNMRからBPEFとNDCMとのポリエステルカーボネート共重合体であることを示している。
Figure 2011010741
Figure 2011010741
実施例1〜3で得られたポリエステルカーボネート共重合体は、射出成形時に分子配向しても固有複屈折(Δn)が極めて小さいため、得られるレンズの光学歪みが小さい。さらに、溶融粘度が低く、成形温度を低くできるため、樹脂の熱分解、色相変化がなく、良好なレンズが得られる。また、ナフタレンジカルボン酸の導入量が少量でも高屈折率性を達成しているため、透過率の低下が少ない。よって、得られる光学レンズは屈折率および透明性が高く、光学歪みが小さく、耐湿熱性も良好であるため光学レンズとして優れる。
これに対して、比較例1〜2で得られたポリマーは、固有複屈折(Δn)が大きいため、得られるレンズの光学歪みが大きい。さらに、比較例1で得られたポリマーは溶融粘度が高いため、高温で成形しなければいけないため、良好なレンズを得ることが困難である。また、ナフタレン環を多く含むため、可視光透過率が低い。そのため比較例1〜2で得られたポリマーは、光学レンズとしての使用範囲が限定される。
実施例4〜6、比較例3〜5
実施例4〜6、比較例3〜5における評価は下記の方法によった。
(1)比粘度:重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットを120℃で4時間乾燥し、該ペレット0.35gを塩化メチレン50ccに溶解した溶液を測定サンプルとした。測定は20±0.01℃の恒温槽中でオスワルト粘度管の標線間の通過時間を計測し、下記式からその溶液の20℃における比粘度(ηsp)を求めた。
ηsp=(t−t)/t
:ポリマー溶液の標線間通過時間
:塩化メチレンの標線間通過時間
(2)共重合比:日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRを用いて測定した。図2に示すように7.65〜7.85ppmの9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンに起因するピークと7.98〜8.18ppmのテレフタル酸に起因するピークの積分比から求めた。
(3)ガラス転移点(Tg):重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットをデュポン社製910型DSCにより、昇温速度20℃/minで測定した。
(4)溶融粘度:重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットを120℃で4時間乾燥した後、東洋精機(株)製キャピログラフ1Dにより、280℃、せん断速度1,000/secにおける溶融粘度を測定した。
(5)屈折率(n)、アッベ数(ν):厚さ0.1mmの円板をATAGO製DR−M2のアッベ屈折計を用いて、中間液として1−ブロモナフタレンを使用し、25℃における屈折率(波長:589nm)およびアッベ数を測定した。
(6)配向複屈折(Δn):厚さ100μmのキャストフィルムをキャスト方向に7cm、キャスト方向に直交する方向(巾方向)に1.5cmにカットした後、長手方向の両端をチャックに挟み(チャック間4.5cm)、ポリエステルカーボネート樹脂のTg+10℃でキャスト方向に2倍延伸し、日本分光(株)製エリプソメーターM−220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定し、下記式より配向複屈折(Δn)を求めた。
Δn=Re/d
Δn:配向複屈折
Re:位相差
d:厚さ
(7)光学歪み:成形した厚さ0.3mmのレンズを二枚の偏光板の間に挟み直交ニコル法で後ろからの光漏れを目視することにより光学歪みを評価した。評価は、以下の基準で行なった。
◎:殆ど光漏れがない。
○:僅かに光漏れが認められる。
△:光漏れが認められる。
×:光漏れが顕著である。
(8)分光透過率:厚さ0.1mmの角板を日立(株)製分光光度計U−3310を用いて、365nmにおける分光透過率を測定した。
(9)耐湿熱性:厚さ1mmの角板を85℃、85%RHの条件下で400時間放置した後、外観を目視評価した。また、該成形片0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定し、湿熱試験後の比粘度保持率(分子量保持率)を求めた。
Δηsp=(ηsp1/ηsp0)×100
Δηsp:比粘度保持率
ηsp0:試験前の比粘度
ηsp1:試験後の比粘度
(10)吸水率:厚さ1mmの角板を23℃の水中に28日間放置した後、成形片の表面の水分を拭きとり、試験前後の重量変化を測定し、飽和吸水率を求めた。
C={(w−w)/w}×100
C:飽和吸水率
:試験前重量
:試験後重量
実施例4
(合成)
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)157.86重量部、テレフタル酸ジメチル(以下“TPAM”と省略することがある)7.77重量部、ジフェニルカーボネート(DPC)71.98重量部、チタンテトラブトキシド13.6×10−3重量部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気常圧下、180℃に加熱し、20分間撹拌した。その後、20分かけて減圧度を20〜30kPaに調整し、60℃/hrの速度で250℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。その後、250℃に保持したまま、120分かけて0.13kPa以下まで減圧し、250℃、0.13kPa以下の条件下で1時間攪拌下重合反応を行った。
その後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとテレフタル酸(TPA)とのモル比が90:10であり、比粘度は0.192、Tgは147℃、溶融粘度は88Pa・sであった。
作成したポリマーを120℃で4時間真空乾燥した後、得られる樹脂組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。
(キャストフィルム)
該ペレットを塩化メチレンに溶解させた後、ガラスシャーレ上にキャストし、乾燥させて厚さ100μmのキャストフィルムを得た。配向複屈折(Δn)の測定結果を表2に示す。
(レンズ)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用いシリンダー温度270℃、金型温度140℃で、厚さ0.3mm、凸面曲率半径5mm、凹面曲率半径4mm、φ5mmのレンズを射出成形した。光学歪みの評価結果を表2に示す。
(円板)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用いシリンダー温度270℃、金型温度140℃で、厚さ0.1mm、φ30mmの円板を射出成形した。屈折率(n)およびアッベ数(ν)の測定結果を表2に示す。
(角板)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用いシリンダー温度270℃、金型温度140℃で、厚さ1mm、幅2.5cm、長さ5cmの角板を射出成形した。得られた成形片は湿熱試験後のΔηsp保持率(分子量保持率)が100%であり、色相変化も全くなかった。また、得られた角板の吸水率は0.48%であった。
実施例5
実施例4のBPEFの使用量を140.32重量部、TPAMの使用量を15.54重量部、DPC54.84重量部とする以外は実施例4と同様にしてポリエステルカーボネート共重合体を合成した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとTPAのモル比が80:20であり、比粘度は0.201、Tgは148℃、溶融粘度は96Pa・sであった。
実施例4と同様の方法で、キャストフィルム、レンズ、円板および角板を得た。配向複屈折(Δn)、光学歪み、屈折率(n)、アッベ数(ν)、分光透過率の測定結果を表2に示す。角板は、湿熱試験後のΔηsp保持率(分子量保持率)が99%であり、色相変化も全くなかった。また角板の吸水率は0.51%であった。
実施例6
実施例4のBPEFの使用量を131.55重量部、TPAMの使用量を19.42重量部、DPC54.84重量部とする以外は実施例4と同様にしてポリエステルカーボネート共重合体を合成した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとTPAのモル比が75:25であり、比粘度は0.197、Tgは149℃、溶融粘度は155Pa・sであった。
実施例4と同様の方法で、キャストフィルム、レンズ、円板および角板を得た。配向複屈折(Δn)、光学歪み、屈折率(n)、アッベ数(ν)、分光透過率の測定結果を表2に示す。得られた成形片は湿熱試験後のΔηsp保持率が100%であり、色相変化も全くなかった。また、得られた角板の吸水率は0.51%であった。
比較例3
実施例4のBPEFの使用量を122.78重量部、TPAMの使用量を23.30重量部、DPC35.99重量部とする以外は実施例4と同様にしてポリエステルカーボネート共重合体を合成した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとTPAのモル比が70:30であり、比粘度は0.201、Tgは151℃、溶融粘度は252Pa・sであった。
実施例4と同様の方法で、キャストフィルム、レンズ、円板および成形片を得た。配向複屈折(Δn)、光学歪み、屈折率(n)、アッベ数(ν)、分光透過率の測定結果を表2に示す。得られた成形片は湿熱試験後のΔηsp保持率が97%であり、色相変化も全くなかった。また、得られた角板の吸水率は0.51%であった。
比較例4
温度計、撹拌機、滴下漏斗付き反応器に、ピリジン38部および塩化メチレン360部を仕込み、これに9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン48.4部を溶解し、撹拌下15〜25℃でホスゲン9.6部を25分を要して吹込んだ。同時にテレフタル酸クロライド10.4部(ジオールと芳香族ジカルボン酸成分の合計モル数に対して30モル%)およびp−tert−ブチルフェノール0.54部を塩化メチレン100部に溶解して滴下した。ホスゲン吹込み終了後更に28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで塩化メチレンを蒸発させて無色のポリエステルカーボネート樹脂55.3部(収率95%)を得た。このポリマーのエステル基の割合は30モル%、比粘度は0.381、ガラス転移温度は162℃、溶融粘度は630Pa・sであった。
実施例4と同様の方法で、キャストフィルム、レンズ、円板および成形片を得た。配向複屈折(Δn)、光学歪み、屈折率(n)、アッベ数(ν)、分光透過率の測定結果を表2に示す。得られた成形片は湿熱試験後のΔηsp保持率が90%であり、黄褐色に着色した。また、得られた角板の吸水率は0.53%であった。
比較例5
BPEF175.40重量部、DPC87.40重量部、水酸化ナトリウム1.60×10−5重量部およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド3.65×10−3重量部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気常圧下、180℃に加熱し、20分間撹拌した。その後、20分かけて減圧度を20〜30kPaに調整し、60℃/hrの速度で250℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。その後、250℃に保持したまま、120分かけて0.13kPa以下まで減圧し、250℃、0.13kPa以下の条件下で1時間攪拌下重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にした後、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムを4.67×10−4重量部添加し触媒を失活させた。その後、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズしながら抜き出し、BPEFホモポリマーを得た。得られたポリマーの比粘度は0.200、Tgは145℃、溶融粘度は81Pa・sであった。
実施例4と同様の方法で、キャストフィルム、レンズ、円板および成形片を得た。配向複屈折(Δn)、光学歪み、屈折率(n)、アッベ数(ν)、分光透過率の測定結果を表2に示す。得られた成形片は湿熱試験後のΔηsp保持率が99%であり、色相変化も全くなかった。また、得られた角板の吸水率は0.55%であった。 実施例4〜6で得られたポリマーは、1,775cm−1付近にカーボネート結合由来の吸収および1,740cm−1付近にエステル結合由来の吸収を有することがIR測定より確認された。また、DSC測定より得られるTgに起因するピークが1つであることからランダム共重合体であることが確認できた。また、実施例4で得られたポリマーは、図2のプロトンNMRからBPEFとTPAとのポリエステルカーボネート共重合体であることを示している。
Figure 2011010741
Figure 2011010741
実施例4〜6のポリエステルカーボネート共重合体はその複屈折が極めて小さく、成形流動性が良好であるため、射出成形により得られる光学レンズの光学歪みが小さい。さらに、高透明性、高屈折率性であり、湿熱試験後の分子量低下および色相変化がなく、吸水率も低いため光学レンズとして優れる。
これに対して、比較例3〜5のポリマーは正負の固有複屈折が十分に打ち消されていないため、該ポリマーより得られる光学レンズの光学歪みが大きい。さらに、比較例4のポリマーは、分子量が大きく、溶融粘度が高いため、樹脂が十分に金型内に入らず、目的とする形状の成形片を得られなかった。
実施例7〜9、比較例6〜8
評価は下記の方法によった。
(1)比粘度:重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットを120℃で4時間乾燥し、該ペレット0.35gを塩化メチレン50ccに溶解した溶液を測定サンプルとした。測定は20±0.01℃の恒温槽中でオスワルト粘度管の標線間の通過時間を計測し、下記式からその溶液の20℃における比粘度(ηsp)を求めた。
ηsp=(t−t)/t
:ポリマー溶液の標線間通過時間
:塩化メチレンの標線間通過時間
(2)共重合比:日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRを用いて測定した。図3に示すように7.65〜7.85ppmの9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンに起因するピークと8.06〜8.40ppmのイソフタル酸に起因するピークの積分比から求めた。
(3)ガラス転移点(Tg):重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットをデュポン社製910型DSCにより、昇温速度20℃/minで測定した。
(4)溶融粘度:重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットを120℃で4時間乾燥した後、東洋精機(株)製キャピログラフ1Dにより、280℃、せん断速度1,000/secにおける溶融粘度を測定した。
(5)屈折率(n)、アッベ数(ν):厚さ0.1mmの円板をATAGO製DR−M2のアッベ屈折計を用いて、中間液として1−ブロモナフタレンを使用し、25℃における屈折率(波長:589nm)およびアッベ数を測定した。
(6)配向複屈折(Δn):厚さ100μmのキャストフィルムをキャスト方向に7cm、キャスト方向に直交する方向(巾方向)に1.5cmにカットした後、長手方向の両端をチャックに挟み(チャック間4.5cm)、ポリエステルカーボネート樹脂のTg+10℃でキャスト方向に2倍延伸し、日本分光(株)製エリプソメーターM−220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定し、下記式より配向複屈折(Δn)を求めた。
Δn=Re/d
Δn:配向複屈折
Re:位相差
d:厚さ
(7)光学歪み:成形したレンズを二枚の偏光板の間に挟み直交ニコル法で後ろからの光漏れを目視することにより光学歪みを評価した。評価は以下の基準で行った。
◎:殆ど光漏れがない。
○:僅かに光漏れが認められる。
△:光漏れが認められる。
×:光漏れが顕著である。
(8)耐湿熱性:1mm厚の成形片を85℃、85%RHの条件下で400時間放置した後、外観を目視評価した。また、該成形片0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定し、湿熱試験後の比粘度保持率(分子量保持率)を求めた。
Δηsp=(ηsp1/ηsp0)×100
Δηsp:比粘度保持率
ηsp0:試験前の比粘度
ηsp1:試験後の比粘度
実施例7
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)157.86重量部、イソフタル酸ジメチル(以下“IPAM”と省略することがある)7.77重量部、ジフェニルカーボネート(DPC)71.98重量部、チタンテトラブトキシド20.42×10−3重量部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気常圧下、180℃に加熱し、20分間撹拌した。その後、20分かけて減圧度を40kPaに調整し、60℃/hrの速度で250℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。その後、250℃に保持したまま、120分かけて0.13kPa以下まで減圧し、250℃、0.13kPa以下の条件下で1時間攪拌下重合反応を行った。その後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとイソフタル酸(IPA)とのモル比が90:10であり、比粘度は0.192、Tgは146℃、溶融粘度は88Pa・sであった。
作成したポリマーを120℃で4時間真空乾燥した後、得られる樹脂組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。
(キャストフィルム)
該ペレットを塩化メチレンに溶解させた後、ガラスシャーレ上にキャストし、乾燥させて厚さ100μmのキャストフィルムを得た。配向複屈折(Δn)の評価結果を表3に示す。
(円板)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用い、シリンダー温度270℃、金型温度140℃で、厚さ0.1mm、φ30mmの円板を射出成形した。屈折率(n)およびアッベ数(ν)の評価結果を表3に示す。
(レンズ)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用い、シリンダー温度270℃、金型温度140℃で、厚さ0.3mm、凸面曲率半径5mm、凹面曲率半径4mm、φ5mmのレンズを射出成形した。光学歪みの評価結果を表3に示す。
(角板)
住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用い、シリンダー温度270℃、金型温度140℃で、厚さ1mm、幅2.5cm、長さ5cmの角板を射出成形した。得られた成形片は湿熱試験後のΔηsp保持率(分子量保持率)が100%であり、色相変化も全くなかった。
実施例8
実施例7のBPEFの使用量を140.32重量部、IPAMの使用量を15.54重量部、DPC54.84重量部とする以外は実施例7と同様にしてポリエステルカーボネート共重合体を合成した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとIPAのモル比が80:20であり、比粘度は0.180、Tgは145℃、溶融粘度は96Pa・sであった。
実施例7と同様の方法で、キャストフィルム、円板、レンズおよび角板を得た。配向複屈折(Δn)、屈折率(n)、アッベ数(ν)、光学歪みの評価結果を表3に示す。得られた角板は湿熱試験後のΔηsp保持率が99%であり、色相変化も全くなかった。
実施例9
実施例7のBPEFの使用量を131.55重量部、IPAMの使用量を19.42重量部、DPC46.27重量部とする以外は実施例7と同様にしてポリエステルカーボネート共重合体を合成した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとIPAのモル比が75:25であり、比粘度は0.190、Tgは146℃、溶融粘度は155Pa・sであった。
実施例7と同様の方法で、キャストフィルム、円板、レンズおよび角板を得た。配向複屈折(Δn)、屈折率(n)、アッベ数(ν)、光学歪みの評価結果を表3に示す。得られた角板は湿熱試験後のΔηsp保持率が100%であり、色相変化も全くなかった。
比較例6
実施例7のBPEFの使用量を122.78重量部、IPAMの使用量を23.30重量部、DPC35.99重量部とする以外は実施例7と同様にしてポリエステルカーボネート共重合体を合成した。該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとIPAのモル比が70:30であり、比粘度は0.201、Tgは146℃、溶融粘度は252Pa・sであった。
実施例7と同様の方法で、キャストフィルム、円板、レンズおよび角板を得た。配向複屈折(Δn)、屈折率(n)、アッベ数(ν)、光学歪みの評価結果を表3に示す。得られた成形片は湿熱試験後のΔηsp保持率が97%であり、色相変化も全くなかった。
比較例7
温度計、撹拌機、滴下漏斗付き反応器に、ピリジン38部および塩化メチレン360部を仕込み、これに9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン48.4部を溶解し、撹拌下15〜25℃でホスゲン9.6部を25分を要して吹込んだ。同時にテレフタル酸クロライド10.4部(ジオールと芳香族ジカルボン酸成分の合計モル数に対して30モル%)およびp−tert−ブチルフェノール0.54部を塩化メチレン100部に溶解して滴下した。ホスゲン吹込み終了後更に28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで塩化メチレンを蒸発させて無色のポリエステルカーボネート55.3部(収率95%)を得た。このポリマーのエステル基の割合は30モル%、比粘度は0.381、ガラス転移温度は162℃、溶融粘度は630Pa・sであった。
実施例7と同様の方法で、キャストフィルム、円板、レンズおよび角板を得た。配向複屈折(Δn)、屈折率(n)、アッベ数(ν)、光学歪みの評価結果を表3に示す。得られた角板は湿熱試験後のΔηsp保持率が90%であり、黄褐色に着色した。
比較例8
BPEF175.40重量部、DPC87.40重量部、水酸化ナトリウム1.60×10−5重量部およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド3.65×10−3重量部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気常圧下、180℃に加熱し、20分間撹拌した。その後、20分かけて減圧度を20〜30kPaに調整し、60℃/hrの速度で250℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。その後、250℃に保持したまま、120分かけて0.13kPa以下まで減圧し、250℃、0.13kPa以下の条件下で1時間攪拌下重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にした後、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムを4.67×10−4重量部添加し触媒を失活させた。その後、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズしながら抜き出し、BPEFホモポリマーを得た。得られたポリマーの比粘度は0.200、Tgは145℃、溶融粘度は81Pa・sであった。
実施例7と同様の方法で、キャストフィルム、円板、レンズおよび角板を得た。配向複屈折(Δn)、屈折率(n)、アッベ数(ν)、光学歪みの評価結果を表3に示す。得られた成形片は湿熱試験後のΔηsp保持率が99%であり、色相変化も全くなかった。
実施例7〜9で得られたポリマーは、1,750cm−1付近にカーボネート結合由来の吸収および1,740cm−1付近にエステル結合由来の吸収を有することがIR測定より確認された。また、DSC測定より得られるTgに起因するピークが1つであることからランダム共重合体であることが確認できた。また、実施例8で得られたポリマーは、図3のプロトンNMRからBPEFとIPAとのポリエステルカーボネート共重合体であることを示している。
Figure 2011010741

Figure 2011010741
実施例7〜9で得られたポリエステルカーボネート共重合体はその複屈折が極めて小さく、成形流動性が良好であるため、射出成形により得られる光学レンズの光学歪みが小さい。さらに、屈折率が高く、湿熱試験後の分子量低下および色相変化がないため光学レンズとして優れる。
これに対して、比較例6〜8で得られたポリマーは正負の固有複屈折が十分に打ち消されていないため、該ポリマーより得られる光学レンズの光学歪みが大きい。比較例7で得られたポリマーは比粘度が0.381と大きいため、溶融粘度が高くなり、該ポリマーより得られる光学レンズの光学歪みが大きい。
実施例10〜13、比較例9〜11
評価は下記の方法によった。
(1)共重合比:日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRを用いて各構成成分に起因するピークの積分比から求めた。
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン及び9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシネオペントキシ)フェニル)フルオレン成分:7.7ppm、ナフタレンジカルボン酸成分:8.6ppm、テレフタル酸成分:8.1ppm、イソフタル酸成分:7.9ppm、ビスフェノールA成分:1.6ppm
(2)残存フェノール量:野村化学(株)製Develosil ODS−7のカラムにて溶離液アセトニトリル/0.2%酢酸水とアセトニトリルとの混合液を用いて、カラム温度30℃、検出器277nmでグラジエントプログラムにてHPLC分析した。測定は、ポリエステルカーボネート共重合体ペレット1.5gを塩化メチレン15mlに溶解させた後、アセトニトリル135mlを加え攪拌し、エバポレーターで濃縮した後、0.2μmフィルターでろ過し、この測定溶液10μlを注入して行った。得られたフェノールの重量を、測定に用いた重合体の重量で割ったものを残存フェノール量とした。
(3)ペレットb値:重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレット(ペレット形状は長さ4mm且つ直径1〜2mm程度)をガラスセルに入れ、日本電色社製色差計SE−2000を用いてペレット色相を測定した。
(4)比粘度:重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットを120℃で4時間乾燥し、該ペレット0.35gを塩化メチレン50ccに溶解した溶液を測定サンプルとした。測定は20±0.01℃の恒温槽中でオスワルト粘度管の標線間の通過時間を計測し、下記式からその溶液の20℃における比粘度(ηsp)を求めた。
ηsp=(t−t)/t
:ポリマー溶液の標線間通過時間
:塩化メチレンの標線間通過時間
実施例10
(工程1)
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)30.00kg、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル(NDCM)1.86kg、ジフェニルカーボネート(DPC)13.68kg、水酸化ナトリウム3mg及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.7gを精留塔付き撹拌槽(第1槽)に投入した。その後、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。
(工程2)
完全溶解後、20分かけて40kPaまで減圧すると同時に、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が8L(理論量の71%)に到達したところで、窒素を徐々に封入し、0.15MPaまで加圧した。
(工程3)
その後、プレポリマーを第1槽から精留塔なしの撹拌槽(第2槽)へ送液した。
(工程4)
第2槽において、ジャケットを260℃に保持したまま、20分かけて40kPa、さらに、100分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で30分重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にした後、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムを1.54×10−4重量部添加し触媒を失活させた。その後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。ポリエステルカーボネート共重合体の評価結果を表4に示す。
実施例11
(工程1)
BPEF30.00kg、テレフタル酸ジメチル(DMT)3.32kg、DPC11.72kg、チタンテトラブトキシド2.9gを精留塔付き撹拌槽(第1槽)に投入した。その後、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。
(工程2)
完全溶解後、20分かけて80kPaまで減圧すると同時に、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が7L(理論量の67%)に到達したところで、窒素を徐々に封入し、0.15MPaまで加圧した。
(工程3)
その後、プレポリマーを第1槽から精留塔なしの撹拌槽(第2槽)へ送液した。
(工程4)
第2槽において、ジャケットを260℃に保持したまま、20分かけて40kPa、さらに、100分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で30分重合反応を行った。反応終了後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。ポリエステルカーボネート共重合体の評価結果を表4に示す。
実施例12
(工程1)
BPEF30.00kg、DMT2.49kg、イソフタル酸ジメチル(以下“DMI”と省略することがある)0.83kg、DPC11.72kg、チタンテトラブトキシド2.9gを精留塔付き撹拌槽(第1槽)に投入した。その後、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。
(工程2)
完全溶解後、20分かけて80kPaまで減圧すると同時に、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が7L(理論量の67%)に到達したところで、窒素を徐々に封入し、0.15MPaまで加圧した。
(工程3)
その後、プレポリマーを第1槽から精留塔なしの撹拌槽(第2槽)へ送液した。
(工程4)
第2槽において、ジャケットを260℃に保持したまま、20分かけて40kPa、さらに、100分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で30分重合反応を行った。反応終了後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。ポリエステルカーボネート共重合体の評価結果を表4に示す。
実施例13
(工程1)
BPEF30.00kg、DMT3.32kg、DPC12.82kg、チタンテトラブトキシド2.9gを精留塔付き撹拌槽(第1槽)に投入した。その後、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。
(工程2)
完全溶解後、20分かけて80kPaまで減圧すると同時に、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が7L(理論量の67%)に到達したところで、窒素を徐々に封入し、0.15MPaまで加圧した。
(工程3)
その後、プレポリマーを第1槽から精留塔なしの撹拌槽(第2槽)へ送液した。
(工程4)
第2槽において、ジャケットを260℃に保持したまま、20分かけて40kPa、さらに、100分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で30分重合反応を行った。反応終了後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。
比較例9
ビスフェノールA(以下“BPA”と省略することがある)15.00kg、DMT3.19kg、DPC11.27kg、チタンテトラブトキシド2.8gを精留塔付き撹拌槽(第1槽)に投入した。
その後、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。完全溶解後、20分かけて80kPaまで減圧すると同時に、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が7L(理論量の70%)に到達したところで、窒素を徐々に封入し、0.15MPaまで加圧した。
その後、プレポリマーを第1槽から精留塔なしの撹拌槽(第2槽)へ送液した。
第2槽において、ジャケットを260℃に保持したまま、20分かけて40kPa、さらに、100分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で30分重合反応を行った。反応終了後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。ポリエステルカーボネート共重合体の評価結果を表4に示す。
比較例10
(工程1) BPEF30.00kg、DMT5.69kg、DPC9.00kg、チタンテトラブトキシド3.3gを精留塔付き撹拌槽(第1槽)に投入した。その後、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。
(工程2)
完全溶解後、常圧下、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。副生するモノヒドロキシ化合物の留出量は3L(理論量の29%)で止まった。窒素を徐々に封入し、0.15MPaまで加圧した。
(工程3)
その後、プレポリマーを第1槽から精留塔なしの撹拌槽(第2槽)へ送液した。
(工程4)
第2槽において、ジャケットを260℃に保持したまま、20分かけて40kPa、さらに、100分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で60分重合反応を行った。反応終了後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。得られたペレットは黄褐色に着色していた。ポリエステルカーボネート共重合体の評価結果を表4に示す。
比較例11
(工程1)
BPEF30.00kg、DMT14.66kg、DPC9.00kg、チタンテトラブトキシド3.3gを精留塔付き撹拌槽(第1槽)に投入した。その後、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。
(工程2)
完全溶解後、20分かけて5kPaまで減圧すると同時に、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。昇温が完了し1時間放置しても副生するモノヒドロキシ化合物の留出量は3L(理論量の30%)しか留出しなかったため、反応を終了し、窒素を徐々に封入し、0.15MPaまで加圧した。
(工程3)
その後、プレポリマーを第1槽から精留塔なしの撹拌槽(第2槽)へ送液した。
(工程4)
第2槽において、ジャケットを260℃に保持したまま、20分かけて5kPa、さらに、100分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で30分重合反応を行った。反応終了後、生成したポリエステルカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。ポリエステルカーボネート共重合体の評価結果を表4に示す。

Figure 2011010741
実施例10〜13で得られたポリエステルカーボネート共重合体は、芳香族ヒドロキシ末端がなく、残存フェノール量が極めて少ないため、重合後の色相が極めて良い。これに対して、比較例9で得られたポリマーは、芳香族ヒドロキシ末端を含むため、重合後の色相に劣る。比較例10の製造方法では、重合初期での減圧度が低く、フェノールが留出しないため、重合時間が長くなり、重合後の色相に劣る。比較例11の製造方法では、ジフェニルカーボネートの仕込み量が多く、残存フェノール量が多いため、重合後の色相に劣る。また、実施例11で得られたポリマーは、図4のプロトンNMRからBPEFとDMTとのポリエステルカーボネート共重合体であることを示している。
本発明の共重合体およびそれからなる光学レンズはデジタルビデオカメラ等の各種カメラ、望遠鏡、双眼鏡、テレビプロジェクター、プリズム等、従来、高価な高屈折率ガラスレンズが用いられていた分野に用いることができる。特に、携帯電話用カメラレンズ、デジタルカメラレンズ、車載カメラレンズ、ウェブカメラレンズ等、薄肉小型レンズとして有効である。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。以下の実施例4、実施例6、実施例7、実施例9は、各々参考例4、参考例6、参考例7、参考例9と読み替える。

Claims (13)

  1. 67〜95モル%の下記式(I)で表される単位および33〜5モル%の下記式(II)で表される単位を含有し、比粘度が0.12〜0.30である光学レンズ用ポリエステルカーボネート共重合体。
    Figure 2011010741
    (式(II)中Yは、フェニレン基またはナフタレンジイル基である。)
  2. 式(II)中のYは、2,6−ナフタレンジイル基であり、82〜95モル%の式(I)で表される単位および18〜5モル%の式(II)で表される単位を含有する請求項1に記載の共重合体。
  3. 式(II)中のYは、1,4−フェニレン基または1,3−フェニレン基であり、67〜89モル%の式(I)で表される単位および33〜11モル%の式(II)で表される単位を含有する請求項1に記載の共重合体。
  4. 屈折率が1.635〜1.650である請求項1〜3のいずれか一項に記載の共重合体。
  5. 配向複屈折が0〜6×10−3である請求項1〜4のいずれか一項に記載の共重合体。
  6. 厚さ0.1mmの成形板の状態での波長395nmにおける分光透過率が80%以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載の共重合体。
  7. 280℃、せん断速度1,000/secにおける溶融粘度が30〜300Pa・sである請求項1〜6のいずれか一項に記載の共重合体。
  8. フェノール含有量が1〜100ppmである請求項1〜7のいずれか一項に記載の共重合体。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリエステルカーボネート共重合体からなる光学レンズ。
  10. 中心部の厚みが0.05〜3.0mm、レンズ部の直径が1.0mm〜20.0mmの請求項9に記載の光学レンズ。
  11. (i)9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体および炭酸ジエステルを第1反応槽中で溶融し(工程1)、
    (ii)第1反応槽中で,温度120〜300℃、20〜90kPaの減圧下で、副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論留出量の50〜90%に到達するまで反応させ(工程2)、
    (iii)反応溶液を第1反応槽から第2反応槽へ移し(工程3)、並びに
    (iv)第2反応槽で、温度150〜320℃で最終内圧が1〜500Paとなるまで反応を行う(工程4)、
    各工程を含む請求項1記載の光学レンズ用ポリエステルカーボネート共重合体の製造方法。
  12. 第1反応槽が精留塔を有する請求項11記載の製造方法。
  13. 芳香族炭酸ジエステルの使用量(モル割合)が下記式を満足する請求項11に記載の製造方法。
    1.0≦(C)/{(A)−(B)}≦1.5 (III)
    (式中、(A)は9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンの仕込量、(B)は芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体の仕込量、(C)は芳香族炭酸ジエステルの使用量である。)
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