JP5808961B2 - 光学レンズ用ポリカーボネート共重合体及び該ポリカーボネートからなる光学レンズ - Google Patents

光学レンズ用ポリカーボネート共重合体及び該ポリカーボネートからなる光学レンズ Download PDF

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Description

本発明は、特定のジヒドロキシ化合物を特定割合含有する光学レンズ用ポリカーボネート共重合体及び該ポリカーボネートからなる光学レンズに関する。
カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種カメラの光学系に使用される光学レンズの材料として、光学ガラスあるいは光学用透明樹脂が使用されている。光学ガラスは、耐熱性や透明性、寸法安定性、耐薬品性等に優れ、様々な屈折率やアッベ数を有する多種類の材料が存在しているが、材料コストが高い上、成形加工性が悪く、また生産性が低いという問題点を有している。
一方、光学用透明樹脂、中でも熱可塑性透明樹脂は、射出成形により大量生産が可能であるという利点を有しており、現在カメラ用レンズの材料としてポリカーボネート樹脂等が使用されている。しかしながら、近年、製品の軽薄短小化やカメラの高画素化により、レンズ用樹脂に求められる光学性能はより高くなっている。特に近年、画素数の向上による解像度のアップに伴い結像性能の高い、より低複屈折の光学レンズが求められている。
一般に、複屈折を小さくする方法として、符号の異なる正負の複屈折を持つ組成同士で、互いの複屈折を打ち消しあう手法が挙げられる。そのため、これら異符号の複屈折を持つ材料組成の構成比率は非常に重要となる。さらに、射出成形の際に生じる光学歪みを小さくするために樹脂の成形流動性も重要である。加えて、レンズの小型薄膜化に伴い、成形流動性と高強度を兼ね備える必要性がある。
例えば、フルオレン構造を有するポリカーボネート共重合体が開示されている(特許文献1)。しかし、該特許文献はレンズにとって重要な光学物性である屈折率ならびにアッベ数、複屈折に関して調べられておらず、発明の効果として光ディスクといった光学材料基盤用途を想定しているに過ぎない。また、フルオレン構造を有するポリカーボネート共重合体からなる光学レンズが開示されている(特許文献2)。しかし、該特許文献は成形加工性の指標となり得る比粘度とガラス転移点(以下、Tgと省略することがある)が高く成形加工性が良いとは言えない。又、屈折率、複屈折、強度等の物性を十分に満たしているとは言えず、未だ改善の余地がある。
特開平10−101786号公報 WO2007/142149号公報
本発明は上記課題を解決しようとするものであり、特定のヒドロキシ化合物を特定割合含有するポリカーボネート共重合体及び該ポリカーボネート共重合体から形成された光学レンズに関する。さらに詳しくは特定のポリカーボネート樹脂から形成された低複屈折性、高屈折率、かつ高強度で成形流動性に優れた光学レンズに関する。
本発明者らはこの目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた結果、特定のフルオレン含有ジヒドロキシ化合物及び4,4−ビフェノール誘導体を特定割合で共重合することで、上記目的を達成することを見出し本発明に到達した。
1.全ヒドロキシ化合物中の一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物及び一般式(2)
で表されるジヒドロキシ化合物の合計の割合が100〜70%であり、且つ一般式(1)
:一般式(2)の割合がモル比で50%〜98%:50%〜2%の範囲で構成されたポリカーボネート共重合体であり、且つ、そのポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.12〜0.35であるポリカーボネート共重合体からなる光学レンズ
Figure 0005808961
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の
アルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭
素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜2
0のアリールオキシ基である。Xは炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数5〜12のシク
ロアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基である。nおよびmは1〜10の整
数である。)
Figure 0005808961
(式中、R5、R6、R7、R8は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアル
キル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数
5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20の
アリールオキシ基である。)
2.一般式(1)で表される化合物において、R1、R2、R3およびR4が水素原子、Xがエチレン基、n=1およびm=1である前記1に記載のポリカーボネート共重合体からなる光学レンズ
3.一般式(2)で表される化合物が、4,4−ビフェノールである前記1または2記載のポリカーボネート共重合体からなる光学レンズ
4.屈折率が1.63〜1.65、かつガラス転移温度が140℃〜160℃である前記1〜3のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体からなる光学レンズ
本発明により、低複屈折性で高屈折率、且つ、高強度で成形流動性に優れたポリカーボネート共重合体を得ることができ、該ポリカーボネート共重合体から形成された光学レンズは、射出成形可能で生産性が高く安価であるため、カメラ、望遠鏡、双眼鏡、テレビプロジェクター等、従来、高価なガラスレンズが用いられていた分野に用いることができ極めて有用である。また、本発明により、ガラスレンズでは技術的に加工の困難な低複屈折非球面レンズを射出成形により簡便に得ることができ極めて有用である。
実施例2のプロトンNMRである。
本発明のポリカーボネート共重合体における一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物が98モル%を超える場合、該ポリカーボネート共重合体から得られる光学部材の負の複屈折が大きくなり好ましくない。
本発明のポリカーボネート共重合体における一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物が50モル%未満の場合、光学歪が大きくなりレンズ材料として不満足となり好ましくなく、溶融時の流動性が劣り成形加工性が低下するため好ましくない。また、場合によっては、重合時に重合物が析出しポリカーボネート共重合体が得られない。
本発明のポリカーボネート共重合体における一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、ジヒドロキシ化合物としては、具体的には、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン等があげられ、中でも9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが好ましい。これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明のポリカーボネート共重合体における一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物である4,4−ビフェノール誘導体を単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
一般式(1):一般式(2)の割合がモル比で50%〜98%:50%〜2%の範囲であり、60%〜95%:40%〜5%の範囲が更に好ましく、70%〜90%:30%〜10%の範囲がより一層好ましい。一般式(1)で表されるジヒドロキシ誘導体が上記範囲以上の割合であると、負の複屈折が大きくなり好ましくない。また、上記範囲以下であると、一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物である4,4−ビフェノール誘導体により正の複屈折が大きくなり、更に、成形加工性に劣る、共重合体を製造するのが困難な場合があり好ましくない。上記の範囲内であると、優れた光学特性を有し、成形加工性と強度を併せ持つことができる。
本発明のポリカーボネート共重合体は、通常のポリカーボネート共重合体を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジヒドロキシ化合物にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。
カーボネート前駆物質として、例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては、例えばピリジンなどのアミン化合物が用いられる。溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、2種以上のジヒドロキシ化合物を炭酸ジエステルと塩基性化合物触媒、エステル交換触媒もしくはその双方からなる混合触媒の存在下、反応させる公知の溶融重縮合法により製造することができる。炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも特にジフェニルカーボネートが好ましい。炭酸ジエステルは、ジオール成分1モルに対して0.97〜1.20モルの比率で用いられることが好ましく、更に好ましくは0.98〜1.10モルの比率である。
塩基性化合物触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、および含窒素化合物等があげられる。
このような化合物としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属化合物等の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物あるいはアルコキシド、または4級アンモニウムヒドロキシドおよびそれらの塩、アミン類等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
本願発明に使用されるアルカリ金属化合物としては、例えばアルカリ金属の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が用いられる。
アルカリ土類金属化合物としては、例えばアルカリ土類金属化合物の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が用いられる。
含窒素化合物としては、例えば4級アンモニウムヒドロキシドおよびそれらの塩、アミン類等が挙げられる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール、基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類、プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、あるいは、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が用いられる。
エステル交換触媒としては、亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛の塩が好ましく用いられ、これらは単独もしくは組み合わせて用いることができる。
エステル交換触媒としては、具体的には、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)等が用いられる。
これらの触媒は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、10−9〜10−3モルの比率で、好ましくは10−7〜10−4モルの比率で用いられる。
本発明にかかわる溶融重縮合法は、前記の原料、および触媒を用いて、加熱下に常圧または減圧下にエステル交換反応により副生成物を除去しながら溶融重縮合を行うものである。反応は、一般には二段以上の多段行程で実施される。
具体的には、第一段目の反応を120〜260℃、好ましくは180〜240℃の温度で0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間反応させる。次いで反応系の減圧度を上げながら反応温度を高めてジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの反応を行い、最終的には1mmHg以下の減圧下、200〜350℃の温度で0.05〜2時間重縮合反応を行う。このような反応は、連続式で行っても良くまたバッチ式で行ってもよい。上記の反応を行うに際して用いられる反応装置は、錨型攪拌翼、マックスブレンド攪拌翼、ヘリカルリボン型攪拌翼等を装備した縦型であっても、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型であってもスクリューを装備した押出機型であってもよく、また、これらを重合物の粘度を勘案して適宜組み合わせた反応装置を使用することが好適に実施される。
本発明にかかわるポリカーボネート樹脂は、重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させる。一般的には、公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法が好適に実施される。これらの物質としては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類、亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn−プロピル、亜リン酸ジn−ブチル、亜リン酸ジn−ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類、ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類、フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類、トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類、ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p−トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸等のアルキル硫酸、塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。これらの失活剤は、触媒量に対して0.01〜50倍モル、好ましくは0.3〜20倍モル使用される。触媒量に対して0.01倍モルより少ないと、失活効果が不充分となり好ましくない。また、触媒量に対して50倍モルより多いと、耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなるため好ましくない。
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を0.1〜1mmHgの圧力、200〜350℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良く、このためには、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新能の優れた攪拌翼を備えた横型装置、あるいは薄膜蒸発器が好適に用いられる。
本発明におけるポリカーボネート共重合体はそのポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.12〜0.35の範囲のものが好ましく、0.15〜0.30の範囲のものがより好ましい。比粘度が0.12未満では強度に劣り成形品が脆くなり、0.35より高くなると溶融粘度および溶液粘度が高くなり、取扱いが困難になるので好ましくない。
本発明におけるポリカーボネート共重合体は、昇温速度20℃/minにて測定したガラス転移温度(Tg)が110〜150℃であることが好ましく、120〜150℃であることがより好ましく、130〜150℃であることがさらに好ましい。Tgが110℃未満では、該共重合体を用いて形成した光学部品の使用する用途によっては耐熱性が十分でなく、一方Tgが150℃より高い場合では溶融粘度が高くなり、成形体を形成する上での取扱いが困難となるので好ましくない。
本発明におけるポリカーボネート共重合体は、熱安定性の指標として、昇温速度20℃/minにて測定した5%重量減少温度が350℃以上であることが好ましい。さらには400℃以上であることが好ましい。5%重量減少温度が350℃より低い場合は、成形の際の熱分解が激しく、良好な成形体を得ることが困難となるため好ましくない。
本発明におけるポリカーボネート樹脂は、25℃、波長587nmにおける屈折率が好ましくは1.61〜1.66、より好ましくは1.62〜1.66、さらに好ましくは1.63〜1.66であることが好ましい。
本発明におけるポリカーボネート共重合体からなる光学レンズは、例えば射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法など任意の方法により成形される。
本発明のポリカーボネート共重合体から形成された光学レンズには、本発明の目的を損なわない範囲で各種特性を付与する為に、各種添加剤を使用することができる。添加剤としては離型剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、帯電防止剤、難燃剤、熱線遮蔽剤、蛍光染料(蛍光増白剤含む)、顔料、光拡散剤、強化充填剤、他の樹脂やエラストマー等を配合することができる。
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸のエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸のエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸のエステルおよび/または多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。前記一価アルコールと脂肪酸のエステルとは、炭素原子数1〜20の一価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。また、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルとは、炭素原子数1〜25の多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。
具体的に一価アルコールと飽和脂肪酸とエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等があげられ、ステアリルステアレートが好ましい。
具体的に多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。これらのエステルのなかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートの混合物が好ましく用いられる。
離型剤中の前記エステルの量は、離型剤を100重量%とした時、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましい。
ポリカーボネート共重合体粉粒体中の離型剤の含有量としては、ポリカーボネート共重合体粉粒体100重量部に対して0.005〜2.0重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.6重量部の範囲がより好ましく、0.02〜0.5重量部の範囲がさらに好ましい。
熱安定剤としては、リン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤およびヒンダードフェノール系熱安定剤が挙げられる。
リン系熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられる。なかでも、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイトが使用され、特に好ましくはテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトが使用される。
ポリカーボネート共重合体粉粒体中のリン系熱安定剤の含有量としては、ポリカーボネート共重合体粉粒体100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
硫黄系熱安定剤としては、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)、ジラウリル−3、3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3、3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3、3’−チオジプロピオネート等が挙げられ、なかでもペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ジラウリル−3、3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3、3’−チオジプロピオネートが好ましい。特に好ましくはペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)である。該チオエーテル系化合物は住友化学工業(株)からスミライザーTP−D(商品名)およびスミライザーTPM(商品名)等として市販されており、容易に利用できる。
ポリカーボネート共重合体粉粒体中の硫黄系熱安定剤の含有量としては、ポリカーボネート共重合体粉粒体100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートおよび3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられ、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが特に好ましく用いられる。
ポリカーボネート共重合体粉粒体中のヒンダードフェノール系熱安定剤の含有量としては、ポリカーボネート共重合体粉粒体100重量部に対して0.001〜0.3重量部が好ましい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系からなる群より選ばれた少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ルが挙げられ、これらを単独あるいは2種以上の混合物で用いることができる。好ましくは、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ルであり、より好ましくは、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]である。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンソフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−(4,6−ビス(2.4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(オクチル)オキシ]−フェノール等が挙げられる。
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが例示される。なかでも2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適であり、特に2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適である。かかる化合物は竹本油脂(株)からCEi−P(商品名)として市販されており、容易に利用できる。
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、1,3−ビス−[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3−ビス−[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが例示される。
紫外線吸収剤の配合量は、ポリカーボネート共重合体粉粒体100重量部に対して好ましくは0.01〜3.0重量部であり、より好ましくは0.02〜1.0重量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.8重量部である。かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、ポリカーボネート共重合体成形品に十分な耐候性を付与することが可能である。
ブルーイング剤としては、バイエル社のマクロレックスバイオレットBおよびマクロレックスブルーRR並びにクラリアント社のポリシンスレンブル−RLS等が挙げられる。ブルーイング剤は、ポリカーボネート共重合体粉粒体の黄色味を消すために有効である。特に耐候性を付与したポリカーボネート共重合体粉粒体の場合は、一定量の紫外線吸収剤が配合されているため「紫外線吸収剤の作用や色」によってポリカーボネート樹脂成形品が黄色味を帯びやすい現実があり、特にシートやレンズに自然な透明感を付与するためにはブルーイング剤の配合は非常に有効である。
ブルーイング剤の配合量は、ポリカーボネート共重合体粉粒体に対して好ましくは0.05〜1.5ppmであり、より好ましくは0.1〜1.2ppmである。
本発明におけるポリカーボネート共重合体から形成された光学レンズは、成形片の550nmにおける透過率が80%以上であることが好ましい。更には85%以上であることが好ましい。透過率が80%より低いと、光学レンズとして使用することは困難である。
また、本発明の光学レンズは、光学歪みが小さいことが好ましい。一般的なビスフェノールAタイプのポリカーボネート樹脂からなる光学レンズは光学歪みが大きく、成形条件によりその値を低減することは可能である場合もあるが、通常その条件幅は非常に小さく、したがって成形が非常に困難である。本発明のポリカーボネート共重合体は、樹脂の配向により生じる光学歪みが小さく、また成形歪みも小さいため、成形条件を厳密に設定しなくても良好な光学素子を得ることができる。
本発明のポリカーボネート共重合体からなる光学レンズは、例えば射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法、キャスティング法など任意の方法により成形される。
本発明におけるポリカーボネート共重合体から形成される光学レンズを射出成形で製造する場合、シリンダー温度230〜300℃、金型温度90〜150℃の条件にて成形することが好ましい。さらに好ましくは、シリンダー温度240〜280℃、金型温度100〜140℃の条件にて成形することが好ましい。シリンダー温度が300℃以上では、樹脂が分解着色し、230℃以下では、溶融粘度が高く成形できない。また金型温度が150℃以上では、樹脂が硬化せず金型から成形片を取り出せない。更には、90℃以下では、成形時に金型内で樹脂が早く固まり成形片を得ることができない、もしくは、金型賦型を転写できない。
また、本発明のポリカーボネート共重合体からなる光学レンズは、強度が高く、成形加工性に優れる為、薄肉小型で複雑な形状である光学レンズの材料として特に有用である。具体的なレンズサイズとして、中心部の厚みが0.05〜3.0mm、より好ましくは0.05〜2.0mm、さらに好ましくは0.1〜2.0mmである。また、直径が1.0mm〜20.0mm、より好ましくは1.0〜10.0mm、さらに好ましくは3.0〜10.0mmである。また、その形状として片面が凸、片面が凹であるメニスカスレンズであることが好ましい。
さらに、本発明の光学レンズにおけるポリカーボネート共重合体からなる非球面レンズには、メニスカスレンズ以外に、回折レンズ、フレネルレンズ、fθレンズ、シリンダーレンズ、コリメータレンズ等にも好適である。
本発明におけるポリカーボネート共重合体から形成された光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形で用いることが好適に実施される。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
本発明におけるポリカーボネート共重合体から形成された光学レンズの表面には、必要に応じ、反射防止層あるいはハードコート層といったコート層が設けられていても良い。反射防止層は、単層であっても多層であっても良く、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が例示される。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。なお、評価は下記の方法によった。
(1)比粘度:重合終了後に得られたポリカーボネート共重合体ペレットを120℃で4時間乾燥し、該ペレット0.35gを塩化メチレン50ccに溶解した溶液を測定サンプルとした。測定は20±0.01℃の恒温槽中でオスワルト粘度管の標線間の通過時間を計測し、下記式からその溶液の20℃における比粘度(ηsp)を求めた。
ηsp=(t−t)/t
ここで比粘度のt:ポリマー溶液の標線間通過時間、t:塩化メチレンの標線間通過時間である。
(2)共重合比:日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRを用いて測定した。7.85〜7.60ppmの9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンに起因するピークと7.60〜7.45ppmの4,4―ビフェノールに起因するピークの積分比から求めた。
(3)ガラス転移点(Tg):デュポン社製910型DSCにより測定した。
(4)溶融粘度:重合終了後に得られたポリカーボネート共重合体ペレットを120℃で4時間乾燥した後、東洋精機(株)製キャピログラフ1Dにより、280℃、せん断速度1000/secにおける溶融粘度を測定した。
(5)曲げ強度:厚さ4mmの成形片を島津製作所製オートグラフAG500B型を使用してISO178に準拠して、室温で曲げ速度2mm/minで曲げ試験を行い、曲げ強度を求めた。
(6)屈折率(n)、アッベ数(ν):厚さ100μmのフィルムをATAGO製DR−M2のアッベ屈折計を用いて測定した。
(7)光学歪み:成形したレンズを二枚の偏光板の間に挟み直行ニコル法で後ろからの光漏れを目視することにより評価した。
ポリカーボネート共重合体の合成
実施例1
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(以下“BPEF”と省略することがある)39.47重量部、4、4−ビフェノール(以下”BP”と省略することがある)1.86重量部、ジフェニルカーボネート(以下”DPC”と省略することがある)22.06重量部、水酸化ナトリウム4.0×10−6重量部及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシド9.12×10−4重量部を攪拌機および留出装置付きの10リットル反応器に入れ、窒素雰囲気101kPaの下15分かけて180℃に加熱し撹拌した。
その後、20分かけて減圧度を20kPaに調整し、60℃/hrの速度で260℃まで昇温、エステル交換反応を行った。その後、260℃に保持したまま、120分かけて0.13kPa以下まで減圧し、260℃、0.1kPa以下の条件下で1時間攪拌下重合反応を行った。その後、生成したポリカーボネート共重合体を抜き出した。該ポリカーボネート共重合体はBPEFとBPとの構成単位の比がモル比で90:10であり、比粘度は0.28、Tgは145℃であった。
また、該ペレットを塩化メチレンに溶解させた後、ガラスシャーレ上にキャストし、厚さ100μmのフィルムを得た。
実施例2
実施例1のBPEFの使用量を37.27重量部、BPの使用量を2.79重量部、DPC22.06重量部、水酸化ナトリウム4.0×10−6重量部及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシド9.12×10−4重量部とする以外は実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を合成した。該ポリカーボネート共重合体はBPEFとBPの比がモル比で85:15であり、比粘度は0.23、Tgは147℃であった。また、実施例1と同様の方法で、キャストフィルムを得た。
実施例3
BPEF22.36重量部、BP9.12重量部、DPC22.49重量部、水酸化ナトリウム4.0×10−6重量部及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシド9.12×10−4重量部を攪拌機および留出装置付きの10リットル反応器に入れ、窒素雰囲気101kPaの下15分かけて200℃に加熱し撹拌した。
その後、60分かけて280℃まで昇温し、昇温後、60分かけて減圧度を15kPaに調整した。そして、10℃/hrの速度で290℃まで昇温後、60分反応させてエステル交換反応を行った。その後、290℃に保持したまま、60分かけて0.13kPa以下まで減圧し、290℃、0.13kPa以下の条件下で1時間攪拌下重合反応を行った。その後、生成したポリカーボネート共重合体を抜き出した。該ポリカーボネート共重合体はBPEFとBPとの構成単位の比がモル比で51:49であり、比粘度は0.24、Tgは149℃であった。
また、該ペレットを塩化メチレンに溶解させた後、ガラスシャーレ上にキャストし、厚さ100μmのフィルムを得た。
実施例4
実施例1のBPEFの使用量を35.08重量部、BPの使用量を1.86重量部、DPC22.06重量部、水酸化ナトリウム4.0×10−6重量部及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシド9.12×10−4重量部、さらに2,2―ビス(4―ヒドロキシフェニル)プロパン2.28重量部(以下“BPA”と省略することがある)とする以外は実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を合成した。該ポリカーボネート共重合体はBPEFとBP、BPAの比がモル比で80:10:10であり、比粘度は0.25、Tgは146℃であった。また、実施例1と同様の方法で、キャストフィルムを得た。
比較例1
実施例3のBPEFの使用量を17.54重量部、BPの使用量を11.17重量部、DPC22.49重量部とする以外は実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を合成した。該ポリカーボネート共重合体はBPEFとBPの比がモル比で40:60であり、比粘度は0.250、Tgは153℃であった。また、実施例1と同様の方法で、キャストフィルムを得た。
比較例2
BPEF43.85重量部、DPC22.49重量部、炭酸水素ナトリウム5.04×10−5重量部及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシド5.52×10−3重量部を攪拌機および留出装置付きの10リットル反応器に入れ、窒素雰囲気101kPaの下1時間かけて215℃に加熱し撹拌した。
その後、15分かけて減圧度を20kPaに調整し、215℃、20kPaの条件下で20分間保持しエステル交換反応を行った。さらに37.5℃/hrの速度で240℃まで昇温氏、240℃、20kPaで10分間保持した。その後、10分かけて16kPaに調整し、240℃、16kPaで70分間保持した。その後、10分かけて13.4kPaに調整し、240℃、100kPaで10分間保持した。更に40分かけて0.13kPa以下とし、240℃、0.13kPa以下の条件下で10分間撹拌下重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にした後、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムを7.01×10−4重量部添加し触媒を失活させた。その後、生成したポリカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出し、BPEFホモポリマーを得た。得られたポリマーの比粘度は0.50、Tgは147℃であった。
また、該ペレットを塩化メチレンに溶解させた後、ガラスシャーレ上にキャストし、厚さ100μmのフィルムを得た。
比較例3
BPA11.42重量部、BPEF21.93重量部とDPC21.82重量部およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド9.1×10-4重量部、水酸化ナトリウム4.0×10-5重量部を、攪拌装置、蒸留器および減圧装置を備えた反応層に仕込み、窒素置換をした後140℃で溶融した。30分攪拌後、内温を180℃に上昇しつつ徐々に減圧し13.4kPaで30分間反応させ生成するフェノールを留去した。次に200℃に昇温しつつ徐々に減圧し、6.5kPaで30分間フェノールを留出せしめ反応させた。さらに220℃/4kPaまで除々に昇温、減圧し、同温、同圧で30分、さらに240℃/1.30kPa、260℃/0.13kPaまで上記と同じ手順で昇温、減圧を繰り返して反応を続行し、最終的に260℃/0.13kPa以下で1時間反応せしめた。その後装置内を窒素置換し、末端封止剤としてビス(2―メトキシカルボニルフェニル)カーボネート10.3重量部を添加して5分間攪拌したのち徐々に減圧し、最終的に260℃/1mmHgで30分間攪拌した。その後装置内を窒素置換し、中和剤としてドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩1.2×10-3重量部を添加し攪拌した。その後、生成したポリカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出し、ポリカーボネート共重合体を得た。得られたポリマーの比粘度は0.54、Tgは153℃であった。
また、該ペレットを塩化メチレンに溶解させた後、ガラスシャーレ上にキャストし、厚さ100μmのフィルムを得た。
比較例4
比較例3の260℃/0.13kPa以下での反応時間を1時間から30分に変更する以外は比較例3と同様にしてポリカーボネート共重合体を合成した。該ポリカーボネート共重合体はBPEFとBPAの比がモル比で50:50であり、比粘度は0.250、Tgは151℃であった。また、実施例1と同様の方法で、キャストフィルムを得た。
比較例5
BPEF38.15g、BPA2.97g、ジフェニルカーボネート;22.06g、および炭酸水素ナトリウム5.04×10−5gを攪拌機および留出装置付きの50リットル反応器に入れ、窒素雰囲気101kPaの下1時間かけて215℃に加熱し撹拌した。その後、15分かけて減圧度を20kPaに調整し、215℃、20kPaの条件下で20分間保持しエステル交換反応を行った。さらに37.5℃/hrの速度で240℃まで昇温し、240℃、16kPPaで10分間保持した。その後、10分かけて16kPaに調整し、240℃、16kPaで70分間保持した。その後、10分かけて13kPaに調整し、240℃、13kPaで10分間保持した。更に40分かけて0.13kPa以下とし、240℃、0.13kPa以下の条件下で10分間撹拌下重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にし、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズしながら抜き出した。該ポリカーボネート共重合体はBPEFとBPAの比がモル比で87:13であり、比粘度は0.57、Tgは158℃であった。また、実施例1と同様の方法で、キャストフィルムを得た。
実施例1〜4、比較例1〜5
作成したポリカーボネート共重合体を120℃で24時間真空乾燥した後、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ15mm単軸押出機を用いてペレット化した。その後、下記成形条件にて、住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用いて厚さ0.3mm、凸面曲率半径5mm、凹面曲率半径4mm、φ5mmのレンズ及びJSW(株)製N−20C射出成形機を用いて厚さ1.0mm、幅1.0cm、長さ2.0cmの成形片および、幅1cm、長さ8cm、厚み3mmの成形片を射出成形した。上記レンズを二枚の偏光板の間に挟み直行ニコル法で後ろからの光漏れを目視することにより評価した。評価は、◎:殆ど光漏れがない、○:僅かに光漏れが認められる、△:少し光漏れが認められる、×:光漏れが顕著である とした。また、上記成形片を用いて全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0005808961
BPEF:9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン成分
BP:4,4−ビフェノール成分
BP−A:ビスフェノールA成分
実施例1〜4はTgが適度な範囲であり得られた成形品は加工性に優れる。また、光学歪みも小さく、屈折率も高い事からレンズとして適している。さらに詳しくは、実施例2が最も光学歪が少なく優れている。これに対して、比較例1〜4は光学歪が大きい。さらに詳しくは、比較例2は強度に劣り、比較例3は溶融粘度が高く、成形加工性に劣り、比較例3と同一組成の比較例4は成形加工性十分であるが、強度の劣る。比較例5は、Tg、溶融粘度が高くなることから比較例1〜5は、レンズとしての使用範囲が限定される。
本発明のポリカーボネート共重合体からなる光学レンズはカメラ、望遠鏡、双眼鏡、テレビプロジェクター等、従来、高価なガラスレンズが用いられていた分野に用いることができ極めて有用である。

Claims (4)

  1. 全ヒドロキシ化合物中の一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物及び一般式(2)
    で表されるジヒドロキシ化合物の合計の割合が100〜70%であり、且つ一般式(1)
    :一般式(2)の割合がモル比で50%〜98%:50%〜2%の範囲で構成されたポリカーボネート共重合体であり、且つ、そのポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.12〜0.35であるポリカーボネート共重合体からなる光学レンズ
    Figure 0005808961
    (式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の
    アルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭
    素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜2
    0のアリールオキシ基である。Xは炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数5〜12のシク
    ロアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基である。nおよびmは1〜10の整
    数である。)
    Figure 0005808961
    (式中、R5、R6、R7、R8は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアル
    キル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数
    5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20の
    アリールオキシ基である。)
  2. 一般式(1)で表される化合物において、R1、R2、R3およびR4が水素原子、X
    がエチレン基、n=1およびm=1である請求項1に記載のポリカーボネート共重合体からなる光学レンズ。
  3. 一般式(2)で表される化合物が、4,4−ビフェノールである請求項1または2記載
    のポリカーボネート共重合体からなる光学レンズ
  4. 屈折率が1.63〜1.65、かつガラス転移温度が140℃〜160℃である請求項
    1〜3のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体からなる光学レンズ
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