JPWO2010113565A1 - 水性接着剤 - Google Patents

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Abstract

下記一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基を側鎖に含有するビニルアルコール系重合体であり、ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度が200〜3000であり、けん化度が80〜99.99モル%であり、ポリオキシアルキレン基変性量が0.1〜10モル%であるポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体を水相に含有する水性接着剤とする。式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。mとnはそれぞれのオキシアルキレンユニットの繰り返し単位数を表し、1≦m≦10、3≦n≦20である。

Description

本発明は、特定の官能基を有するビニルアルコール系重合体を水相に含有する水性接着剤に関する。
従来、水性接着剤は澱粉、カゼイン、ゼラチン、グアーガム、アラビアガム、アルギン酸ソーダ類などの天然糊剤;CMC、酸化澱粉、メチルセルロースなどの加工天然糊剤;アクリルエマルジョン、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンなどの合成樹脂系エマルジョン;SBRラテックスなどのゴムラテックス;ビニルアルコール系重合体(以下「PVA」と略記することがある)を主成分としたものが単独またはこれらを組み合わせて広く用いられている。
しかし、天然糊剤やその加工糊剤には接着力不足や接着剤溶液の粘度安定性に欠けることや腐敗するなどの問題があるうえに、品質の一定したものを長期間継続的に得ることが難しいなどの欠点がある。一方、エマルジョンやラテックスは接着力には優れているものの、機械安定性に欠ける、表面の皮張りが激しいなどの問題点を抱えているものが多い。
一方、PVA系の水性接着剤はコスト的に安価で優れた接着性を有しており、板紙の接着、段ボールの接着、紙管の接着、襖や壁紙の接着に使用されたり、各種エマルジョンと混合したものは木工用、繊維加工用、紙用の接着などに使用されている。このようにPVA系の水性接着剤は広く使用されており、バランスの取れた接着剤として賞用されてきた。しかしながらPVA系の水性接着剤においても、近年は特にコストダウンや生産性の向上を目指した水性接着剤の高速塗工化が進み、また、ハンドリング性(塗布量の安定化、粘度安定性、沈降安定性など)の向上による作業効率の改善を目指した水性接着剤の要求も増えているのが現状である。
これらの要求に対する改善策として、例えば特開昭62−195070号(特許文献1)で提案されているPVA、クレーおよび水溶性ホウ素化合物を主成分とする接着剤がある。この種の接着剤は、高速接着性、初期接着性が改善でき、これまで段ボールの製造などで工業的に広く使用されてきた。しかし、環境への影響が懸念されるホウ酸の使用は近年制限される流れにあり、その代替品が強く求められている。また、同様に、PVAの架橋剤となるような化合物(例えば、尿素−ホルマリン系樹脂等)を使用し、初期接着性を改善する試みが多数なされているが、実質的に架橋剤として使用する化合物の安全性に問題があるケースが多く、また、組成物の粘度安定性にも問題がある場合が多かったのが現状である。
特開平04−239085号(特許文献2)では、特定の金属塩を含有する接着剤が提案されているが、高速塗工性や初期接着力は改善されるものの、溶液の安定性に問題があり、工業的に十分満足するものではなかった。さらに、特開平11−021530号(特許文献3)には、エチレン単位を1〜20モル%含有する変性ポリビニルアルコール(A)、澱粉(B)および糖類(C)からなる接着剤が提案されており、接着力、耐水接着力および保存安定性が改良されているが、高速塗工性や耐熱性、耐クリープ性という観点で不十分な場合があった。また、特開2001−164219号(特許文献4)には、分子中に1,2−グリコール結合を1.8〜3.5モル%含有し、かつけん化度が90モル%以上のビニルアルコール系重合体(a)および無機充填剤(b)を必須成分とする接着剤が提案されており、粘度安定性、高速塗工性および初期接着力は改良されてはいるものの、無機充填剤の長期保存における沈降などの問題があった。
特開昭59−155408号(特許文献5)には、オキシアルキレン基を含有する不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することを特徴とする変性PVAの製造方法が開示されている。該変性PVAの製造に用いる不飽和単量体中のオキシアルキレン基としては、、繰り返し単位数が1〜50程度のポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等が例示されている。また、該変性PVAの用途として多数例示されているものなかに、接着剤が記載されている。
また、上記の水性接着剤は、各種の被着体に対する接着性改善や固形分濃度増加よる初期接着性向上の目的で各種の水性エマルジョンと混合使用されるケースがあるが、その場合でも上記の問題点は十分に解決されるものではなかった。
特開昭62−195070号公報 特開平04−239085号公報 特開平11−021530号公報 特開2001−164219号公報 特開昭59−155408号公報
本発明は、上記従来の技術における問題点を解消し、水性接着剤として使用する場合に重要な性能の一つである初期接着性が高く、高速生産が可能で、しかも保存安定性(粘度安定性、沈降安定性)に優れる水性接着剤を提供するものである。
本発明者らは、“高い安全性”と“環境にやさしい”という水性接着剤の特徴を損なうことなく、初期接着性が高く高速生産が可能であり、しかも保存安定性(粘度安定性、沈降安定性)に優れた水性接着剤を工業的な規模で得ることについて鋭意検討した結果、下記一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン(以下、POAと略すことがある)基を側鎖に含有するビニルアルコール系重合体であり、ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度が200〜3000であり、けん化度が80〜99.99モル%であり、POA基変性量が0.1〜10モル%であるポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体(以下、POA変性PVAと略すことがある)を水相に含有する水性接着剤が、目的の水性接着剤として適していることを見出し、本発明を完成するに至った。
Figure 2010113565
式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。mとnはそれぞれのオキシアルキレンユニットの繰り返し単位数を表し、1≦m≦10、3≦n≦20である。ここで、繰り返し単位数mで表されるユニットをユニット1と呼び、繰り返し単位数nで表されるユニットをユニット2と呼ぶことにする。ユニット1とユニット2の配置は、ランダム状、ブロック状のどちらの形態になっても良い。
前記ポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体が、下記一般式(II)で示されるポリオキシアルキレン基を有するマクロモノマーとビニルエステルとを共重合した後、けん化することによって得られたものであることが好ましい。
Figure 2010113565
式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。mとnはそれぞれのオキシアルキレンユニットの繰り返し単位数を表し、1≦m≦10、3≦n≦20である。R3は水素原子または−COOM基を表し、ここでMは水素原子、アルカリ金属またはアンモニウム基を表す。R4は水素原子、メチル基または−CH−COOM基を示し、ここでMは前記定義どおりである。Xは−O−、−CH−O−、−(CH−、−CO−、−CO−O−または−CO−NR5−を表す。ここでR5は水素原子または炭素数1〜4の飽和アルキル基を表す。kはメチレンユニットの繰り返し単位数を表し、1≦k≦15である。
前記ポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体が、下記一般式(III)で示されるポリオキシアルキレン基を有するマクロモノマーとビニルエステルとを共重合した後、けん化することによって得られたものであることがより好ましい。
Figure 2010113565
式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。mとnはそれぞれのオキシアルキレンユニットの繰り返し単位数を表し、1≦m≦10、3≦n≦20である。R4は水素原子、メチル基または−CH−COOM基を示し、ここでMは水素原子、アルカリ金属またはアンモニウム基を表す。R5は水素原子または炭素数1〜4の飽和アルキル基を表す。
本発明の水性接着剤は、さらにエチレン系不飽和単量体およびジエン系単量体から選ばれる一種以上の単量体からなる(共)重合体エマルジョンを含有することが好ましく、さらに無機系あるいは有機系のフィラーを含有することも好ましい。
また、紙用又は木工用接着剤が本発明の水性接着剤の好適な実施態様である。
本発明の水性接着剤は、従来の水性接着剤に比べて、初期接着性が高いため、高速生産が可能である。さらに、本発明の水性接着剤は、従来の水性接着剤に比べて、保存安定性にも優れる。
以下、本発明について詳しく説明する。本発明は、上記の一般式(I)で示されるPOA基を側鎖に含有するPVAであり、該PVAの粘度平均重合度が200〜3000であり、けん化度が80〜99.99モル%であり、POA基変性量が0.1〜10モル%であるPOA変性PVAを水相に含有する水性接着剤である。本発明において、水性接着剤の水相に含有されるPVAの側鎖に存在するPOA基のユニット1の繰り返し単位数mは1≦m≦10であり、ユニット2の繰り返し単位数nは3≦n≦20である必要がある。m及びnがこのような範囲であることで水性接着剤の優れた接着力、特に初期接着力が発現する。mは2以上であることが好ましい。mは5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。nは5以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。nは18以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましい。
上記の一般式(I)で示されるPOA基を側鎖に含有するPVAにおいて、POA基変性量は0.1〜10モル%であることが必要であり、好ましくは0.15〜8モル%、より好ましくは0.2〜6モル%である。POA基の変性量が0.1モル%よりも小さい場合には、本発明の目的である該POA変性PVAを水相に含有する水性接着剤の初期接着性が発現しない。一方、10モル%を超える場合には、該POA変性PVAの疎水性が増加し、保存安定性の低下や水溶性の低下が起こることがあるため不適である。
POA基変性量とは、PVAの主鎖メチレン基に対するPOA基のモル分率で表される。POA変性PVAのPOA基変性量は、例えば、該PVAの前駆体であるPOA変性ポリビニルエステル、具体的な一例としては、POA変性ポリ酢酸ビニル(以下、ポリ酢酸ビニルをPVAcと略記することがある)のプロトンNMRから求めることができる。具体的には、n−ヘキサン/アセトンでPOA変性PVAcの再沈精製を3回以上十分に行った後、50℃の減圧下で乾燥を2日間行い、分析用のPOA変性PVAcを作成する。該PVAcをCDClに溶解させ、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を室温で測定する。ビニルエステルの主鎖メチンに由来するピークα(4.7〜5.2ppm)とユニット2の末端メチル基に由来するピークβ(0.8〜1.0ppm)から下記式を用いてPOA基変性量Sを算出する。
S(モル%)={(βのプロトン数/3n)/(αのプロトン数+(βのプロトン数/3n))}×100
nはユニット2の繰り返し単位数を表す。
また、本発明において、POA変性PVA中のPOA基の含有量は、2.0〜50重量部であることが好ましく、この範囲内において、本発明の水性接着剤の初期接着性が特に良好となる。ここで、POA基の含有量とは、PVAの主鎖100重量部に対するPOA基の重量部(重量分率)で表される。POA基の含有量はPOA基変性量S、ユニット1の繰り返し単位数m、ユニット2の繰り返し単位数n、POA変性PVAのけん化度を用いて計算される値である。前述のPOA基変性量Sが同等であっても、けん化度が高くなるにつれ、あるいはm又はnが大きくなるにつれ、POA変性PVA中のPOA基の含有量は大きくなる。
上記の一般式(I)で示されるPOA基を側鎖に含有するPVAの粘度平均重合度は、200〜3000であることが必要であり、250〜2800が好ましく、300〜2600がより好ましい。ここで、粘度平均重合度Pは、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、該POA変性PVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から次式により求められる。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
なお、粘度平均重合度は、単に重合度と呼ぶことがある。
重合度が200より小さい場合には、該PVAを含有する水性接着剤が十分な初期接着力を発現しない。また、重合度が3000よりも大きい場合には、水性接着剤の保存安定性が悪化することがあるので不適である。
上記の一般式(I)で示されるPOA基を側鎖に含有するPVAのけん化度は80〜99.99モル%であることが必要であり、83〜99.5モル%が好ましく、85〜99モル%がより好ましい。けん化度が80よりも小さい場合には該PVAの水溶性が失われるため保存安定性に問題が生じる場合がある上、初期接着力が低下する問題がある。一方、けん化度が99.99モル%を超える場合には、保存安定性が悪化することがある。
上記一般式(I)で示されるPOA基を側鎖に含有するPVAは、各種の方法により製造される。一般式(I)で表されるPOA基とPVAの水酸基などと反応しうる官能基(カルボキシル基、イソシアネート基など)とを有する化合物とPVAとを反応させることにより得ることも可能であるが、一般的および工業的には、一般式(I)で示されるPOA基を含有する不飽和単量体(マクロモノマー)とビニルエステルとを共重合した後、けん化することにより得られる。ここで、POA基を有するマクロモノマーとしては、上記の一般式(II)で示されるものが好ましい。
例えば、一般式(II)のR1が水素原子、R2が水素原子、R3が水素原子の場合、一般式(II)で示されるマクロモノマーとして具体的には、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノアクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノアクリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタクリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノビニルエーテルなどが挙げられる。なかでも、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノアクリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタクリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノビニルエーテルが好適に用いられ、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタクリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノビニルエーテルが特に好適に用いられる。
一般式(II)のR2が炭素数1〜8のアルキル基の場合、具体的には、一般式(II)のR1が水素原子、R2が水素原子、R3が水素原子の場合の例として上記に例示したマクロモノマーの末端のOH基が炭素数1〜8のアルコキシ基に置換されたものが挙げられる。なかでも、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタクリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノビニルエーテルの末端のOH基がメトキシ基に置換されたマクロモノマーが好適に用いられ、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタクリル酸アミドの末端のOH基がメトキシ基に置換されたマクロモノマーが特に好適に用いられる。
また、本発明の水性接着剤の水相に含有されるPOA変性PVAを、上記の一般式(II)で示されるマクロモノマーとビニルエステルとの共重合体をけん化して得る場合には、共重合性を考慮して、Xが−CO−NR5−である上記の一般式(III)で示されるマクロモノマーを用いることがさらに好適である。
上記の一般式(III)で示されるマクロモノマーとしては、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノアクリル酸アミド、およびその末端のOH基がメトキシ基に置換された不飽和単量体、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタクリル酸アミド、およびその末端のOH基がメトキシ基に置換された不飽和単量体が代表的である。
本発明で使用するPOA変性PVAを製造するには、POA基を有するマクロモノマーとビニルエステル系単量体との共重合をアルコール系溶媒中または無溶媒で行い、得られたPOA変性ビニルエステル系共重合体をけん化する方法が好ましい。POA基を有するマクロモノマーとビニルエステル系単量体との共重合を行う際に採用される温度は0〜200℃が好ましく、30〜140℃がより好ましい。共重合を行う温度が0℃より低い場合は、十分な重合速度が得られにくい。また、重合を行う温度が200℃より高い場合、本発明で規定するPOA基変性量を有するPOA変性PVAを得られにくい。共重合を行う際に採用される温度を0〜200℃に制御する方法としては、例えば、重合速度を制御することで、重合により生成する発熱と反応器の表面からの放熱とのバランスをとる方法や、適当な熱媒を用いた外部ジャケットにより制御する方法等があげられるが、安全性の面からは後者の方法が好ましい。
POA基を有するマクロモノマーとビニルエステル系単量体との共重合を行うのに用いられる重合方式としては、回分重合、半回分重合、連続重合、半連続重合のいずれでもよい。重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法など公知の任意の方法を用いることができる。その中でも、無溶媒またはアルコール系溶媒中で重合を行う塊状重合法や溶液重合法が好適に採用され、高重合度の共重合体の製造を目的とする場合は乳化重合法が採用される。アルコール系溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。またこれらの溶媒は2種類以上を混合して用いることができる。
共重合に使用される開始剤としては、重合方法に応じて従来公知のアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤などが適宜選ばれる。アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などが挙げられ、過酸化物系開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシデカネートなどのパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテートなどが挙げられる。さらには、上記開始剤に過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などを組み合わせて開始剤とすることもできる。また、レドックス系開始剤としては、上記の過酸化物と亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリットなどの還元剤とを組み合わせたものが挙げられる。
また、POA基を有するマクロモノマーとビニルエステル系単量体との共重合を高い温度で行った場合、ビニルエステル系単量体の分解に起因するPVAの着色等が見られることがあるため、その場合には着色防止の目的で重合系に酒石酸のような酸化防止剤を1〜100ppm(ビニルエステル系単量体に対して)程度添加することはなんら差し支えない。
ビニルエステル系単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられるが、中でも酢酸ビニルが最も好ましい。
POA基を有するマクロモノマーとビニルエステル系単量体との共重合に際して、本発明の主旨を損なわない範囲で他の単量体を共重合しても差し支えない。使用しうる単量体として、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレンなどのα−オレフィン;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体などのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体などのメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。
また、POA基を有するマクロモノマーとビニルエステル系単量体との共重合に際し、得られる共重合体の重合度を調節することなどを目的として、本発明の主旨を損なわない範囲で連鎖移動剤の存在下で共重合を行っても差し支えない。連鎖移動剤としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、などのアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;2−ヒドロキシエタンチオールなどのメルカプタン類;トリクロロエチレン、パークロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類が挙げられ、中でもアルデヒド類およびケトン類が好適に用いられる。連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数および目的とするビニルエステル系重合体の重合度に応じて決定されるが、一般にビニルエステル系単量体に対して0.1〜10重量%が望ましい。
POA変性ビニルエステル系共重合体のけん化反応には、従来公知の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドなどの塩基性触媒またはP−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いた加アルコール分解反応ないし加水分解反応を適用することができる。この反応に使用しうる溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でもメタノールまたはメタノール/酢酸メチル混合溶液を溶媒とし、水酸化ナトリウムを触媒に用いてけん化反応を行うのが簡便であり好ましい。
本発明の水性接着剤に含有されるPOA変性PVAは、水溶性を維持し、かつ、本発明の効果を損なわない範囲であれば、従来公知の方法でPOA変性PVAをさらに変性したPOA変性PVAを用いることも可能である。このようなPOA変性PVAは、例えば、POA変性PVAをブチルアルデヒド等のアルデヒドで変性したり、ジケテンで変性したりして得られたものが挙げられる。
本発明の水性接着剤は、基本的に上記のPOA変性PVAを水相中に有するものであれば良いが、各種基材への接着性や固形分増加による乾燥負荷低減などを目的に、エチレン系不飽和単量体およびジエン系単量体から選ばれる一種以上の単量体からなる(共)重合体エマルジョンを含有することができる。該エマルジョンとしては、酢酸ビニル系エマルジョン(酢酸ビニル重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等)、(メタ)アクリル酸エステル系エマルジョン、スチレン系エマルジョン、ブタジエン系エマルジョン(スチレン−ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチルーブタジエン共重合体等)等が使用できる。このとき、エマルジョンの分散安定剤としては、ビニルアルコール系重合体、ヒドロキシエチルセルロースなどの水溶性セルロース誘導体、各種の界面活性剤などが使用できる。中でも分散安定剤としてビニルアルコール系重合体を使用した酢酸ビニル系エマルジョン又は(メタ)アクリル酸エステル系エマルジョンが本発明の水性接着剤の初期接着性および保存安定性の観点から好ましい。これらのエマルジョンは、固形分基準でPOA変性PVA100重量部に対し、通常、500重量部以下、好ましくは300重量部以下、さらに好ましくは250重量部以下使用することができる。
また、本発明の水性接着剤は、固形分増加による乾燥負荷低減や形成される接着層の強度および硬度の上昇を目的に、無機系あるいは有機系のフィラーを含有することができる。無機系のフィラーとしては、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフェライトまたはセリサイトなどのクレー、重質、軽質、または表面処理された炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、石膏類、タルク、酸化チタン等があげられる。有機系フィラーとしては、澱粉、酸化澱粉、小麦粉、木紛等があげられる。なかでも、各種クレーと各種澱粉が好適に使用できる。これらのフィラーは、固形分基準で水性接着剤中のPOA変性PVA100重量部に対して1000重量部以下、好ましくは、500重量部以下、より好ましくは400重量部以下使用することができる。1000重量部よりもフィラーが多い場合には、保存中にフィラーの沈降などの問題が起こることがある。
本発明の水性接着剤には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、各種添加剤を加えても差し支えない。これら添加剤の例としては、ポリリン酸ソーダやヘキサメタリン酸ソーダなどのリン酸化合物の金属塩や水ガラスなどの無機物の分散剤、ポリアクリル酸およびその塩、アルギン酸ソーダ、α−オレフィン−無水マレイン酸共重合物などのアニオン性高分子化合物とその金属塩、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体などのノニオン界面活性剤、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ソーダ、ポリエチレンオキサイド、各種消泡剤、防腐剤、防黴剤、着色顔料、消臭剤、香料などが挙げられる。
本発明の水性接着剤の調製方法としては特に制限はない。例えば、POA変性PVAとフィラーなどの他の添加剤を予め混合したものを水中に撹拌しながら投入するか、または、各種添加剤、フィラー、POA変性PVAを逐次水中に撹拌しながら投入してスラリー液を調製した後、加熱溶解する等の方法があげられる。このときの加熱方法としては、スラリー液に蒸気を直接吹き込む加熱方式、あるいはジャケットによる間接加熱方式のような任意の加熱方式が採用される。この調製はバッチ方式あるいは連続方式のどちらで行ってもよい。
本発明の水性接着剤は、初期接着性が高く、高速生産が可能であり、しかも保存安定性(粘度安定性、沈降安定性)に優れる。そのため、このような水性接着剤は段ボール、紙袋、紙箱、紙管、壁紙等の製造時又は使用時などに用いる紙用接着剤、木材同士、木材と繊維、木材と紙、木材とプラスチックスを接着する木工用接着剤として好適に使用される。また、布や不職布などの繊維、コンクリートなどのセメント成形物、各種プラスチックス、アルミ箔等を被着材とする用途にも使用できる。しかしながら、本発明の水性接着剤の用途は、これらに限定されるものではない。
本発明の水性接着剤の粘度は、用途によって任意に選ぶことができる。高速塗工性を意図した場合には、その貼り合わせ温度での粘度は、B型粘度で100〜10000mPa・Sが多く用いられる。本発明の水性接着剤に含有されるPOA変性PVAは、水中において、特定のPOA基間の疎水性相互作用により擬似会合体を形成し、それにより高粘度で、濃度上昇に対する大きい粘度上昇を示すという初期接着力発現に重要な特性を発現するものと考えられる。さらに、POA変性PVAはPOA基の温度上昇による脱水に起因して疎水性相互作用が増加することによる感温増粘性を有する。そのため、通常温度上昇により低下する系粘度の低下が抑えられ、分離安定性、フィラーの沈降安定性等の保存安定性がよくなるものと考えられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。なお、実施例中の「%」および「部」は特に断りのない限り、それぞれ「重量%」および「重量部」を表す。
[POA変性PVAの製造]
製造例1(PVA1の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、コモノマー滴下口および開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル750g、メタノール250g、POA基を有するマクロモノマー(単量体A)17.6gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また、ディレー溶液としてPOA基を有するマクロモノマー(単量体A)をメタノールに溶解して濃度20%としたコモノマー溶液を調製し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25gを添加し重合を開始した。ディレー溶液を滴下して重合溶液中のモノマー組成(酢酸ビニルと単量体Aの比率)が一定となるようにしながら、60℃で3時間重合した後冷却して重合を停止した。重合を停止するまで加えたコモノマー溶液の総量は75mlであった。また重合停止時の固形分濃度は24.4%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、POA変性PVAcのメタノール溶液(濃度35%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したPOA変性PVAcのメタノール溶液453.4g(溶液中のPOA変性PVAc100.0g)に、55.6gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った(けん化溶液のPOA変性PVAc濃度20%、POA変性PVAc中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比0.1モル%)。アルカリ溶液を添加後約1分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置してPOA変性PVA(PVA1)を得た。PVA1の重合度は1760、けん化度は98.7モル%、POA基変性量(S)は0.4モル%であった。
製造例2〜22(PVA2〜22の製造)
酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、重合時に使用するPOA基を有する不飽和単量体の種類(表2)や添加量等の重合条件、けん化時におけるPOA変性PVAcの濃度、酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1および表2に示すように変更した以外は、製造例1と同様の方法により各種のPOA変性PVA(PVA2〜22)を製造した。
製造例23(PVA23の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル700g、メタノール300gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25gを添加し重合を開始し、60℃で3時間重合した後冷却して重合を停止した。重合停止時の固形分濃度は17.0%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、ポリ酢酸ビニル(PVAc)のメタノール溶液(濃度30%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したPVAcのメタノール溶液544.1g(溶液中のPVAc120.0g)に、55.8gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った(けん化溶液のPVAc濃度20%、PVAc中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比0.1)。アルカリ溶液を添加後約1分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置して無変性PVA(PVA23)を得た。PVA23の重合度は1700、けん化度は98.5モル%であった。
製造例24〜26(PVA24〜26の製造)
酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、けん化時におけるPVAcの濃度、酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように変更した以外は、製造例23と同様の方法により各種の無変性PVA(PVA24〜26)を製造した。
Figure 2010113565
Figure 2010113565
実施例および比較例において、各種のPVAを用いて調製された水性接着剤について、以下の方法にしたがって評価した。
[保存安定性]
水性接着剤溶液を40℃で7日間放置した場合の状態を観察し、保存前後の状態変化を以下の指標で評価した。
○;分離、沈降なく、粘度変化もなし。
△;分離、沈降がわずかに認められるが、流動性はあり。
×;分離、沈降が認められる。あるいは、流動性がない。
[初期接着性]
日本たばこ産業社製の初期接着試験機を用いて、以下の条件で初期接着力を測定した。
条件;クラフト紙/クラフト紙接着
塗布速度 0.5m/秒
せん断速度 300mm/秒
オープンタイム 1秒
圧着時間 2秒
養生時間 1秒、3秒、5秒、10秒
接着面積 1mm×25mm×8ヶ所(計2cm
温湿度20℃、65%RH
実施例1
769部のイオン交換水に100部のPVA1を常温で添加し、攪拌しながら1時間で95℃まで昇温した。95℃で2時間保持した後、攪拌しながら常温まで冷却し、13%のPVA1水溶液を得た。これを接着剤とし、前記の方法に従い、保存安定性および初期接着性の評価を行った。結果を表3に示す。
実施例2〜12、比較例1〜14
実施例1のPVA1に代えて製造例2〜26で得られたPVA2〜26を用いる以外は実施例1と同様にして接着剤を得た。これらを用い、前記の方法に従い、保存安定性および初期接着性を評価した。結果を表3に示す。
実施例13
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口、イカリ型攪拌翼を備えたガラス製重合容器に、イオン交換水450部と製造例23で得られたPVA23を32部仕込み、95℃で溶解した。次に、このPVA23の水溶液を冷却、窒素置換後、140rpmで撹拌しながら酢酸ビニル40部を仕込み、60℃に昇温した後、過酸化水素/酒石酸のレドックス開始剤系の存在下で重合を開始した。重合開始15分後から酢酸ビニル360部を3時間にわたって連続的に添加し、重合を完結させた。使用した開始剤は、1%過酸化水素水30g、5%酒石酸水溶液10gであった。得られたPVAcエマルジョンは、固形分濃度46.8%であった。実施例1で得られた13%のPVA1水溶液100部とPVAcエマルジョン27.7部とを混合し接着剤を調製した(固形分20.3%:PVA1とPVAcの固形分重量比は100:100)。これを用い、前記の方法に従い、保存安定性および初期接着性を評価した。結果を表4に示す。
比較例15
実施例13においてPVA1水溶液に代えて比較例11で得られたPVA23水溶液を用いる以外は実施例13と同様にPVAcエマルジョンと混合し接着剤を調製した(固形分20.3%:PVA23とPVAcの固形分重量比は100:100)。これを用い、前記の方法に従い、保存安定性および初期接着性を評価した。結果を表4に示す。
実施例14
実施例1で得られた13%のPVA1水溶液100部に対しクレー(Huber−900:カオリナイト系クレー、平均粒径0.6μm、Huber社製)26部を添加・攪拌し、クレーを十分分散させて接着剤を調製した(固形分31.0%:PVA1とクレーの固形分重量比は100:200)。これを用い、前記の方法に従い、保存安定性および初期接着性を評価した。結果を表4に示す。
比較例16
実施例14においてPVA1水溶液に代えて比較例11で得られたPVA23水溶液を用いる以外は実施例14と同様にクレーを添加し接着剤を調製した(固形分31.0%:PVA23とクレーの固形分重量比は100:200)。これを用い、前記の方法に従い、保存安定性および初期接着性を評価した。結果を表4に示す。
実施例15
実施例1で得られたPVA1水溶液100部にクレー(Huber−900:カオリナイト系クレー、平均粒径0.6μm、Huber社製)26部を添加・攪拌し、クレーを十分分散させ、それに実施例13で得られたPVAcエマルジョン27.7部を添加混合し接着剤を調製した(固形分33.8%:PVA1とPVAcとクレーの固形分重量比は100:100:200)。これを用い、前記の方法に従い、保存安定性および初期接着性を評価した。結果を表4に示す。
比較例17
実施例15において、PVA1水溶液に代えて比較例11で得られたPVA23水溶液を用いる以外は実施例15と同様にクレーとPVAcエマルジョンを混合し接着剤を調製した(固形分33.8%:PVA23とPVAcとクレーの固形分重量比は100:100:200)。これを用い、前記の方法に従い、保存安定性および初期接着性を評価した。結果を表4に示す。
実施例16、17
実施例15のクレーに代えて炭酸カルシウム(実施例16、ホワイトンP−30、重質炭酸カルシウム、平均粒径1.75μm、白石工業社製)および酸化澱粉(実施例17、MS−3800、日本食品加工製)をそれぞれ用いる以外は実施例15と同様にして接着剤を得た。これらを用い、前記の方法に従い、保存安定性および初期接着性を評価した。結果を表4に示す。
実施例18
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えたガラス製重合容器に、イオン交換水500部、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール(M−205:重合度550、けん化度88.2モル%、(株)クラレ製)28部を仕込み、95℃で溶解した。次に、メタクリル酸メチル20gとアクリル酸n−ブチル20gを添加し、窒素置換後65℃まで昇温し、1%過硫酸カリウム水溶液12gを添加して重合を開始し、さらに2時間かけてメタクリル酸メチル180g、アクリル酸n−ブチル180gを連続的に添加した。重合は4時間で完結し、固形分濃度45.1%、粘度2800mPa.sのメタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル共重合体(ACR)エマルジョンを得た。実施例1で得られたPVA1水溶液100部にクレー(Huber−900:カオリナイト系クレー、平均粒径0.6μm、Huber社製)26部を添加・攪拌し、クレーを十分分散させ、それにACRエマルジョン28.2部を添加混合し接着剤を調製した(固形分33.7%:PVA1とACRとクレーの固形分重量比は100:100:200)。これを用い、前記の方法に従い、保存安定性および初期接着性を評価した。結果を表4に示す。
実施例19
実施例18のメタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル共重合体(ACR)エマルジョンに代えて、エチレン−酢酸ビニル共重合体(VAE)エマルジョン(OM−4200NT、固形分濃度55.0%、(株)クラレ製)を23.6部用いる以外は実施例18と同様にして接着剤を調製した(固形分34.8%:PVA1とVAEとクレーの固形分重量比は100:100:200)。これを用い、前記の方法に従い、保存安定性および初期接着性を評価した。結果を表4に示す。
実施例20
実施例18のメタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル共重合体(ACR)エマルジョンに代えて、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)エマルジョン(ナルスターSR−107、固形分濃度48.0%、日本エイアンドエル(株)製)を27.1部用いる以外は実施例19と同様にして接着剤を調製した(固形分34.0%:PVA1とSBRとクレーの固形分重量比は100:100:200)。これを用い、前記の方法に従い、保存安定性および初期接着性を評価した。結果を表4に示す。
Figure 2010113565
Figure 2010113565
実施例において示されているように、本発明の水性接着剤は、初期接着性が高く、高速生産が可能であり、しかも保存安定性(粘度安定性、沈降安定性)に優れるため、段ボール、紙袋、紙箱、紙管、壁紙等の製造時又は使用時などに用いる紙用接着剤、木材同士、木材と繊維、木材と紙、木材とプラスチックスを接着する木工用接着剤として好適に使用される。また、布や不職布などの繊維、コンクリートなどのセメント成形物、各種プラスチックス、アルミ箔等を被着材とする用途にも使用でき、工業的な利用価値が極めて高い。

Claims (6)

  1. 下記一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基を側鎖に含有するビニルアルコール系重合体であり、ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度が200〜3000であり、けん化度が80〜99.99モル%であり、ポリオキシアルキレン変性量が0.1〜10モル%であるポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体を水相に含有する水性接着剤。
    Figure 2010113565
    (式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。mとnはそれぞれのオキシアルキレンユニットの繰り返し単位数を表し、1≦m≦10、3≦n≦20である。)
  2. 該ポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体が、下記一般式(II)で示されるポリオキシアルキレン基を有するマクロモノマーとビニルエステルとを共重合した後、けん化することによって得られたものである請求項1に記載の水性接着剤。
    Figure 2010113565
    (式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。mとnはそれぞれのオキシアルキレンユニットの繰り返し単位数を表し、1≦m≦10、3≦n≦20である。R3は水素原子または−COOM基を表し、ここでMは水素原子、アルカリ金属またはアンモニウム基を表す。R4は水素原子、メチル基または−CH−COOM基を示し、ここでMは前記定義どおりである。Xは−O−、−CH−O−、−(CH−、−CO−、−CO−O−または−CO−NR5−を表す。ここでR5は水素原子または炭素数1〜4の飽和アルキル基を表す。kはメチレンユニットの繰り返し単位数を表し、1≦k≦15である。)
  3. 該ポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体が、下記一般式(III)で示されるポリオキシアルキレン基を有するマクロモノマーとビニルエステルとを共重合した後、けん化することによって得られたものである請求項2に記載の水性接着剤。
    Figure 2010113565
    (式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。mとnはそれぞれのオキシアルキレンユニットの繰り返し単位数を表し、1≦m≦10、3≦n≦20である。R4は水素原子、メチル基または−CH−COOM基を示し、ここでMは水素原子、アルカリ金属またはアンモニウム基を表す。R5は水素原子または炭素数1〜4の飽和アルキル基を表す。)
  4. さらにエチレン系不飽和単量体およびジエン系単量体から選ばれる一種以上の単量体からなる(共)重合体エマルジョンを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の水性接着剤。
  5. さらに無機系あるいは有機系のフィラーを含有する請求項1〜4のいずれかに記載の水性接着剤。
  6. 該水性接着剤が、紙用あるいは木工用接着剤である請求項1〜5のいずれかに記載の水性接着剤。
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