JP2023179809A - 変性ビニルアルコール系重合体 - Google Patents

変性ビニルアルコール系重合体 Download PDF

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啓之 小西
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    • C08L29/04Polyvinyl alcohol; Partially hydrolysed homopolymers or copolymers of esters of unsaturated alcohols with saturated carboxylic acids

Abstract

【課題】酸素ガスバリア性、粘度安定性及び生分解性に優れた変性ビニルアルコール系重合体を提供する。【解決手段】式(I)で表され、全単量体単位に対する各単位の含有率a、b及びc(モル%)が式1~3を満足する、変性ビニルアルコール系重合体。1≦a<10(1)3≦c≦15(2)[100-(a+c)]×0.9≦b≦[100-(a+c)](3)TIFF2023179809000009.tif58166X、Y、Zは、独立に、H、ホルミル基又は炭素数2~10のアルカノイル基を表す。【選択図】なし

Description

本発明は粘度安定性、生分解性及び酸素ガスバリア性に優れる変性ビニルアルコール系重合体に関する。
ビニルアルコール系重合体(以下、「PVA」と略記することがある)は、数少ない結晶性を有する水溶性高分子である。その優れた水溶性、皮膜特性(強度、耐油性、造膜性、酸素ガスバリア性等)を利用し、PVAは、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、繊維加工剤、各種バインダー、紙加工剤、接着剤、フィルム等に広く用いられている。
従来のPVAは、熱安定性に問題があるために、水溶液の形態で使用されていた。しかしながら、けん化度が98モル%以上で結晶性が高い、いわゆる「完全けん化PVA」はPVA間の水素結合の影響により水溶液の粘度安定性が悪く、長時間低温で保管すると増粘したり、ゲル化したりすることがある。水溶液の粘度安定性は、けん化度を88モル%程度まで下げることで向上することが知られている。
完全けん化PVAは、融点と熱分解温度が非常に近いため、当該PVAを熱溶融成形することは不可能であった。一方、部分けん化PVAは完全けん化PVAより融点が低いため、部分けん化PVAは、完全けん化PVAよりも熱溶融成形性に優れる。しかしながら、部分けん化PVAは、熱安定性が悪いために、熱溶融成形時に酢酸臭が発生するという問題があった。上記のような理由から水溶性と溶融成形性の両立は難しく、これまでに可塑剤を添加する方法や、PVAを変性することで融点を下げる試みがなされてきた。
また、PVAの特徴の1つとして挙げられる酸素ガスバリア性は、PVAの結晶性と大きく関係しており、完全けん化PVAは優れた酸素ガスバリア性を示す。しかしながら、PVAは、乾燥した雰囲気では高いバリア性を有するものの、相対湿度が70%程度以上になると激しく吸湿してバリア性は低下する傾向にあることが知られている。PVAの吸湿性を低下させる方法として、エチレン単位の含有量が20モル%以上であるエチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」と略記することがある)を用いる方法が採用されている。しかしながら、このようなEVOHは水に不溶性であり、溶液として取り扱う場合には有機溶剤が用いられるため、作業環境が著しく悪化するという問題点を有している。また架橋性を有する変性ビニルアルコール系重合体を用いたり、PVAをカップリング剤や他の重合体と反応させたりすることにより架橋構造を導入する方法が提案されている。しかしながら、架橋構造が導入されたPVAは、高湿度下での酸素ガスバリア性が依然として不十分であった。この理由は明らかではないが、架橋構造が導入されることによって空隙が形成されることなどが影響していると考えられる。
特許文献1にはエチレン単位を2~19モル%含有するPVAが記載され、当該PVAは、熱安定性、耐水性、ガスバリア性、水蒸気バリア性、水溶液の低温放置安定性および生分解性に優れると記載されている。エチレン単位を比較的少量含有させることにより、水溶性を担保しつつ結晶性が低下し、その結果、前記効果が得られるものと考えられる。しかしながら、エチレン含有量が増えると水溶性及び粘度安定性が悪化する。そのため、当該PVAを冬場に保管した場合や長期間保管した場合には、ゲル化が見られた。さらに、PVAの生分解性は水溶性と相関があり、エチレン含有量が多いPVAは生分解性も低かった。
特許文献2には、酢酸ビニル、エチレンと、所定のコモノマーを共重合した後、けん化して得られる変性ビニルアルコール系重合体が提案されている。主鎖に1,3-ジオール構造を有する当該変性ビニルアルコール系重合体は皮膜の水溶性及び耐水性に優れ、熱成形性にも優れていたと記載されている。しかしながら、当該重合体は、溶融成形性、酸素ガスバリア性、水溶性のいずれかが不十分であり、全てを満足することは困難であったうえに、コーティング剤として用いた場合に、固形分濃度を高めることが難しい場合もあった。
特許文献3には、側鎖に1,2-ジオール構造単位を有する変性ビニルアルコール系重合体とε-カプロラクトン等のヘテロ官能基を有する化合物を溶融混練して得られる変性ビニルアルコール系樹脂が記載され、当該樹脂はバリア性、水溶性、生分解性に優れると記載されている。しかしながら、変性ビニルアルコール系重合体とへテロ官能基を有する化合物とを溶融混練する必要があるため、前記樹脂を製造する際の工程数が増えてしまう上に、前記樹脂はバリア性も不十分であった。
特開2000-309607 特開2015-34262 特開2020-90583
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、酸素ガスバリア性、粘度安定性及び生分解性に優れた変性ビニルアルコール系重合体を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、以下に記載する態様によって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
上記課題は、下記式(I)で表され、全単量体単位に対する各単量体単位の含有率a(モル%)、b(モル%)及びc(モル%)が下記式(1)~(3)を満足する、変性ビニルアルコール系重合体を提供することによって解決される。
1≦a<10 (1)
3≦c≦15 (2)
[100-(a+c)]×0.9≦b≦[100-(a+c)] (3)
Figure 2023179809000001
[式(I)中、X、Y及びZは、それぞれ独立に水素原子、ホルミル基又は炭素数2~10のアルカノイル基を表す。]
前記変性ビニルアルコール系重合体の数平均重合度が200~5000であることが好ましい。
aおよびcが下記式(4)を満たすことも好ましい。
a+5c≧18 (4)
X、Y及びZが、それぞれ独立に水素原子又はアセチル基であることも好ましい。
前記変性ビニルアルコール系重合体のけん化度が80~99.99モル%であることも好ましい。
上記課題は、変性ビニルアルコール系重合体と、酢酸ナトリウム0.01~2質量%とを含有する組成物を提供することによっても解決される。
本発明の変性ビニルアルコール系重合体は、酸素ガスバリア性、粘度安定性及び生分解性に優れる。当該変性ビニルアルコール系重合体を用いたコーティング剤は塗工時の生産性に優れるうえに、形成されるフィルムは高い酸素ガスバリア性を維持する。
本発明の変性ビニルアルコール系重合体は下記式(I)で表される。
Figure 2023179809000002
[式(I)において、X、Y及びZは、それぞれ独立に水素原子、ホルミル基又は炭素数2~10のアルカノイル基を表す。]
本発明の変性ビニルアルコール系重合体は、エチレン単位[式(I)左端に示す単位]を含有する。エチレン単位によって当該重合体に高い酸素ガスバリア性を付与でき、特に高湿度下でも高い酸素ガスバリア性を付与できる。
本発明の変性ビニルアルコール系重合体は、側鎖にXを含有する単量体単位[式(I)中央に示す単位](以下、「Xを含む単量体単位」と称することがある)を含有する。Xを含む単量体単位によって当該重合体に水溶性と酸素ガスバリア性を付与できる。
本発明の変性ビニルアルコール系重合体は、側鎖にY及びZを含有する単量体単位[式(I)右端に示す単位](以下、「Y及びZを含む単量体単位」と称することがある)を含有する。Y及びZを含む単量体単位を含有することによって当該重合体の結晶性が低下するため、水溶性、粘度安定性及び溶融成形性などの取り扱い性が向上する。一方、通常、結晶性が低下するとビニルアルコール系重合体の酸素ガスバリア性が低下するが、驚くべきことに、本発明の変性ビニルアルコール系重合体では酸素ガスバリア性を維持でき、特に高湿度下でも高い酸素ガスバリア性を維持する。当該効果は、Y及びZを含む単量体単位が変性ビニルアルコール系重合体の主鎖を構成する4級炭素を1つ含むため運動性が低いことや、当該単量体単位中のY及びZに由来する高い水素結合力に起因するものと考えられる。
式(I)において、X、Y及びZは、それぞれ独立に水素原子、ホルミル基又は炭素数2~10のアルカノイル基を表す。X、Y又はZが水素原子である場合には、式(I)が水酸基を有し、X、Y又はZがホルミル基又はアルカノイル基である場合には、式(I)がエステル基を有する。当該アルカノイル基としては、炭素数が2~5のアルカノイル基であることが好ましく、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基などが好適なものとして例示される。これらの中でも、アセチル基が特に好適である。X、Y及びZは、いずれも、水素原子であること、又は水素原子を含むことが好ましい。
Xを含む単量体単位は、通常、重合体中のビニルエステル単位をけん化することによって得られる。前記変性ビニルアルコール系重合体がXを含む単量体単位として、Xが水素原子であるビニルアルコール単位を含むことが好ましい。また、前記変性ビニルアルコール系重合体がXを含む単量体単位として、Xがホルミル基又は炭素数2~10のアルカノイル基であるビニルエステル単位を含むことも好ましい。さらに、前記変性ビニルアルコール系重合体がXを含む単量体単位として、Xが水素原子であるビニルアルコール単位とXがホルミル基又は炭素数2~10のアルカノイル基であるビニルエステル単位の双方を含むことがより好ましい。
けん化を経てXを含む単量体単位を得る場合、ビニルエステル単位としては、単量体の入手のし易さや製造コストを考慮すれば、酢酸ビニル単位が好ましい。例えば、酢酸ビニル単位を有する重合体を部分けん化した場合、Xを含む単量体単位として、Xが水素原子であるビニルアルコール単位と、Xがアセチル基である酢酸ビニル単位との双方を含む重合体を得ることができる。
前記変性ビニルアルコール系重合体における、Xを含む単量体単位の全量に対する、ビニルアルコール単位の含有量は、80~99.99モル%が好ましい。前記含有量は90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましい。一方、前記含有量は、99.95モル%以下がより好ましく、99.90モル%以下がさらに好ましい。
前記変性ビニルアルコール系重合体における、Xを含む単量体単位の全量に対する、ビニルエステル単位の含有量は、0.01~20モル%が好ましい。前記含有量は0.05モル%以上がより好ましく、0.10モル%以上がさらに好ましい。一方、前記含有量は、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下がさらに好ましい。
Y及びZを含む単量体単位は、1,3-ジエステル構造を有する不飽和単量体を共重合してからけん化することによっても製造できるし、1,3-ジオール構造を有する不飽和単量体を共重合することによっても製造できる。前記変性ビニルアルコール系重合体がY及びZを含む単量体単位として、Y及びZが水素原子の単位を含むことが好ましい。前記変性ビニルアルコール系重合体がY及びZを含む単量体単位として、Yが水素原子で、Zがホルミル基又は炭素数2~10のアルカノイル基である単位を含むことが好ましい。また、前記変性ビニルアルコール系重合体がY及びZを含む単量体単位として、Y及びZがホルミル基又は炭素数2~10のアルカノイル基である単位を含むことが好ましい。さらに、前記変性ビニルアルコール系重合体が、Y及びZを含む単量体単位として、Y及びZが水素原子の単位、Yが水素原子で、Zがホルミル基又は炭素数2~10のアルカノイル基である単位、及びY及びZがホルミル基又は炭素数2~10のアルカノイル基である単位を全て含むことがより好ましい。
けん化を経てY及びZを含む単量体単位を得る場合、例えば、1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン(DAMP)単位を有する重合体を部分けん化した場合、Y及びZを含む単量体単位として、Y及びZが水素原子である単位と、Yが水素原子でかつZがアセチル基である単位と、Y及びZがホルミル基又は炭素数2~10のアルカノイル基である単位を含む重合体を得ることができる。
前記変性ビニルアルコール系重合体における、Y及びZの全量に対する、Y及びZのうち水素原子であるものの含有量は、80~99.99モル%が好ましい。前記含有量は90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましい。一方、前記含有量は、99.95モル%以下がより好ましく、99.90モル%以下がさらに好ましい。
前記変性ビニルアルコール系重合体における、Y及びZの全量に対する、Y及びZのうちホルミル基であるもの及び炭素数2~10のアルカノイル基であるものの合計含有量は、0.01~20モル%が好ましい。前記含有量は0.05モル%以上がより好ましく、0.10モル%以上がさらに好ましい。一方、前記含有量は、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下がさらに好ましい。
式(I)で示される各単量体単位の結合形式に特に制限は無く、本発明の変性ビニルアルコール系重合体はランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよいが、製造が容易である観点からランダム共重合体であることが好ましい。
本発明において、変性ビニルアルコール系重合体中の全単量体単位に対する各単量体単位の含有率a(モル%)、b(モル%)及びc(モル%)が下記式(1)~(3)を満足する必要がある。
1≦a<10 (1)
3≦c≦15 (2)
[100-(a+c)]×0.9≦b≦[100-(a+c)] (3)
上記式(1)及び(3)におけるaは、全単量体単位に対するエチレン単位の含有率(モル%)である。含有率aは1モル%以上10モル%未満である。含有率aが1モル%以上であることによって酸素ガスバリア性が向上するため、酸素ガスバリア性と水溶性の両立が可能となる。この観点から、含有率aは好ましくは2モル%以上であり、より好ましくは3モル%以上であり、さらに好ましくは4モル%以上であり、特に好ましくは5モル%以上であり、最も好ましくは6モル%以上である。一方、エチレン単位の含有率aが10モル%未満であることにより水溶性が高まり生分解性が向上する。含有率aは好ましくは9.9モル%以下であり、より好ましくは9.7モル%以下であり、特に好ましくは9.5モル%以下である。含有率a、b及びcは核磁気共鳴(NMR)法によって求めることができる。
上記式(2)及び式(3)におけるcは、全単量体単位に対する、Y及びZを含む単量体単位の含有率(モル%)である。含有率cは3~15モル%である。含有率cが3モル%以上であることにより、前記変性ビニルアルコール系重合体の水溶性及び生分解性が高まる。また、前記変性ビニルアルコール系重合体を含む水溶液の粘度安定性が高まるとともに、当該水溶液が発泡し難くなる。さらに、前記変性ビニルアルコール系重合体が低温で溶融成形可能となるため、熱成形時の分解を抑制しやすい。さらにまた、得られるフィルムの高湿度下における強度が向上する。これらの観点から、含有率cは好ましくは3.2モル%以上であり、より好ましくは3.5モル%以上であり、さらに好ましくは3.7モル%以上であり、特に好ましくは4モル%以上であり、最も好ましくは4.2モル%以上である。一方、含有率cが15モル%を超えると、重合速度が著しく低下するため、工業的に合成することが困難となる傾向がある。含有率cは好ましくは12モル%以下であり、より好ましくは10モル%以下である。
上記式(3)におけるbは、全単量体単位に対するXを含む単量体単位の含有率(モル%)である。すなわち、上記式(3)によれば、本発明の変性ビニルアルコール系重合体においては、エチレン単位とY及びZを含む単量体単位以外の単量体単位のうちの90モル%以上がXを含む単量体単位となる。Xを含む単量体単位としては例えば、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位などが挙げられる。式(3)を満足しない場合、水溶性及び酸素ガスバリア性が不十分となる。好適には下記式(3’)を満足し、より好適には下記式(3”)を満足する。
[100-(a+c)]×0.95≦b≦[100-(a+c)] (3’)
[100-(a+c)]×0.98≦b≦[100-(a+c)] (3”)
本発明において、aおよびcが下記式(4)を満たすことが好ましい。これにより、前記変性ビニルアルコール系重合体の溶融成形性がさらに高まる。これは、式(4)を満たしている場合、変性ビニルアルコール系共重合体の融点が十分に低下しており、より低温で溶融成形が可能となるためである。
a+5c≧18 (4)
本発明の変性ビニルアルコール系重合体の数平均重合度が200~5000であることが好ましい。数平均重合度が200以上であることによって本発明の変性ビニルアルコール系重合体、前記重合体を用いて得られるフィルムの強度が向上する。数平均重合度はより好ましくは300以上であり、さらに好ましくは350以上である。一方、数平均重合度が5000以下である場合、変性ビニルアルコール系重合体の溶液の粘度が高くなり過ぎないため、取り扱い性が向上する。数平均重合度はより好ましくは4000以下であり、さらに好ましくは3000以下である。数平均重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。具体的には実施例に記載された方法により数平均重合度が求められる。このとき、単分散ポリメチルメタクリレート(PMMA)を標品とし、移動相として20ミリモル/リットルのトリフルオロ酢酸ナトリウムを加えたヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、40℃で測定を行う。数平均重合度は例えばラジカル重合により重合体を作製する場合の溶媒量や、連鎖移動剤の添加により調整できる。
本発明の変性ビニルアルコール系重合体のけん化度は特に限定されないが、80~99.99モル%であることが好ましい。けん化度が80モル%未満の場合には十分な酸素ガスバリア性は得られないおそれがある。けん化度は90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましい。一方、けん化度が99.99モル%を越えるものは工業的に得ることが困難である場合がある。けん化度は99.95モル%以下がより好ましく、99.90モル%以下がさらに好ましい。本発明においてけん化度は、下記式(5)に示すDSで定義され、具体的には、NMRの測定結果から算出される。
DS=[(X、Y及びZのうち水素原子であるものの合計モル数)/(X、Y及びZの合計モル数)]×100 (5)
ここで、「X、Y及びZのうち水素原子であるものの合計モル数」は、水酸基のモル数を示し、「X、Y及びZの合計モル数」は、水酸基とエステル基の合計モル数を示す。
本発明の変性ビニルアルコール系重合体の製造方法は特に制限はない。例えば、エチレン、下記式(II)で示されるビニルエステル、及び下記式(III)で示される不飽和単量体をラジカル重合させて下記式(IV)で示される変性エチレン-ビニルエステル共重合体を得た後に、それをけん化する方法が挙げられる。下記式(IV)で示される変性エチレン-ビニルエステル共重合体における各単量体単位の結合形式に特に制限は無く、当該共重合体はランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよいが、製造が容易である観点からランダム共重合体であることが好ましい。
Figure 2023179809000003
式(II)中、Rは、水素原子又は炭素数1~9のアルキル基を表す。当該アルキル基の炭素数は、好適には1~4である。式(II)で示されるビニルエステルとしては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニルなどが例示される。経済的観点からは酢酸ビニルが特に好ましい。
Figure 2023179809000004
式(III)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~9のアルキル基を表す。当該アルキル基の炭素数は、好適には1~4である。式(III)で示される不飽和単量体としては、1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン(DAMP)、1,3-ジプロピオニルオキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジブチロニルオキシ-2-メチレンプロパンなどが挙げられる。中でも、1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン(DAMP)が、製造が容易な点から好ましく用いられる。
Figure 2023179809000005
式(IV)中、R、R及びRは、式(II)及び(III)に同じである。式(IV)中、aはエチレン単位の含有率(モル%)を示し、bは式(II)で示されるビニルエステル由来の単位の含有率(モル%)を示し、cは式(III)で示される不飽和単量体由来の単位の含有率(モル%)を示す。
エチレンと、上記式(II)で示されるビニルエステルと、上記式(III)で示される不飽和単量体とを共重合して、式(IV)で示される変性エチレン-ビニルエステル共重合体を製造する際の重合方式は、回分重合、半回分重合、連続重合、半連続重合のいずれでもよい。また、重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法を採用できる。無溶媒又はアルコールなどの溶媒中で重合を進行させる塊状重合法又は溶液重合法が、通常採用される。高重合度の変性エチレン-ビニルエステル共重合体を得る場合には、乳化重合法の採用が選択肢の一つとなる。
溶液重合法において用いられる溶媒は特に限定されないが、アルコールが好適に用いられ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコールがより好適に用いられる。重合反応液における溶媒の使用量は、目的とする変性ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度や、溶媒の連鎖移動を考慮して選択すればよく、反応液に含まれる溶媒と全単量体との質量比(溶媒/全単量体)は、0.01~10の範囲、好ましくは0.05~3の範囲から選択される。
エチレンと、上記式(II)で示されるビニルエステルと、上記式(III)で示される不飽和単量体とを共重合する際に使用される重合開始剤は、公知の重合開始剤、例えばアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤から重合方法に応じて選択される。アゾ系開始剤としては、例えば2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)が挙げられる。過酸化物系開始剤としては、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのパーカーボネート系化合物;t-ブチルパーオキシネオデカネート、α-クミルパーオキシネオデカネート、過酸化アセチルなどのパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;2,4,4-トリメチルペンチル-2-パーオキシフェノキシアセテートなどが挙げられる。過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などを上記開始剤に組み合わせて使用してもよい。レドックス系開始剤は、例えば上記の過酸化物系開始剤と亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L-アスコルビン酸、ロンガリットなどの還元剤とを組み合わせた重合開始剤である。重合開始剤の使用量は、重合触媒により異なるために一概には決められないが、重合速度に応じて調整される。重合開始剤の使用量は、上記式(II)で示されるビニルエステルに対して0.01~0.2モル%が好ましく、0.02~0.15モル%がより好ましい。重合温度は特に限定されないが、室温~150℃程度が適当であり、好ましくは40℃以上かつ使用する溶媒の沸点以下である。
エチレンと、上記式(II)で示されるビニルエステルと、上記式(III)で示される不飽和単量体とを共重合する際には、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、連鎖移動剤の存在下で共重合してもよい。連鎖移動剤としては、例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどのアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;2-ヒドロキシエタンチオールなどのメルカプタン類;ホスフィン酸ナトリウム一水和物などのホスフィン酸塩類などが挙げられる。なかでも、アルデヒド類及びケトン類が好適に用いられる。重合反応液への連鎖移動剤の添加量は、連鎖移動剤の連鎖移動係数及び目的とする変性エチレン-ビニルエステル共重合体の重合度に応じて決定されるが、一般に上記式(II)で示されるビニルエステル100質量部に対して0.1~10質量部が好ましい。
こうして得られた変性エチレン-ビニルエステル共重合体をけん化して、本発明の変性ビニルアルコール系重合体を得ることができる。このとき、共重合体中の式(II)で示されるビニルエステルに由来するビニルエステル単位はビニルアルコール単位に変換される。また、式(III)で示される不飽和単量体に由来するエステル結合も同時に加水分解され、1,3-ジオール構造に変換される。このように、一度のけん化反応によって種類の異なるエステル基を同時に加水分解することができる。
変性エチレン-ビニルエステル共重合体のけん化方法としては、公知の方法を採用できる。けん化反応は、通常、アルコール又は含水アルコールの溶液中で行われる。このとき好適に使用されるアルコールは、メタノール、エタノールなどの低級アルコールであり、特に好ましくはメタノールである。けん化反応に使用されるアルコール又は含水アルコールは、その質量の40質量%以下であれば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ベンゼンなどの他の溶媒を含んでもよい。けん化に使用される触媒は、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物や、ナトリウムメチラートなどのアルカリ触媒、鉱酸などの酸触媒である。けん化を行う温度は限定されないが、20~120℃の範囲が好適である。けん化の進行に従ってゲル状の生成物が析出してくる場合には、生成物を粉砕した後、洗浄、乾燥して、変性ビニルアルコール系重合体を得ることができる。
本発明の変性ビニルアルコール系重合体は、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、エチレン、上記式(II)で示されるビニルエステル、及び上記式(III)で示される不飽和単量体と共重合可能な、他のエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含んでもよい。このようなエチレン性不飽和単量体としては、例えば、プロピレン、n-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセンなどのα-オレフィン類;アクリル酸及びその塩;アクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;メタクリル酸及びその塩;メタクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3-ジアセトキシ-1-ビニルオキシプロパンなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、2,3-ジアセトキシ-1-アリルオキシプロパン、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びその塩又はエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン化合物;酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。
本発明の変性ビニルアルコール系重合体は、本発明の性能を損なわない範囲であれば、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基またはこれらの塩を側鎖または分子末端に有しても良い。その変性量は通常、本発明の変性ビニルアルコール系重合体の全単量体単位に対して0.05~10モル%である。
本発明の変性ビニルアルコール系重合体は単独で用いても良いが、他の共重合体や添加剤を配合して組成物として用いることもできる。他の共重合体としては、例えばY及びZを含む単量体単位を含まないポリビニルアルコール及びエチレン-ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。他の添加剤としては例えば無機塩、有機塩、架橋剤、溶媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、防黴剤、防腐剤などが挙げられる。これらを2種以上併用してもよい。
組成物としては例えば、本発明の変性ビニルアルコール系重合体と酢酸ナトリウムとを含有する組成物が挙げられる。このときの前記組成物中の酢酸ナトリウムの含有量は好ましくは0.01~2質量%であり、より好ましくは0.02~1質量%、さらに好ましくは0.03~0.5質量%、最も好ましくは0.35~0.45質量%である。当該含有量がこのような範囲であることにより酸素ガスバリア性がさらに向上する。本発明の変性ビニルアルコール系重合体と酢酸ナトリウムを混合して組成物としても良いし、本発明の変性ビニルアルコール系重合体の製造時のけん化工程で生じる酢酸ナトリウムを残存させて用いてもよい。
組成物としては例えば、本発明の変性ビニルアルコール系重合体と公知の架橋剤とを含有する組成物も挙げられる。架橋剤を含むことで組成物に耐水性を付与することができる。架橋剤としては、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アルデヒド化合物、シリカ化合物、アルミ化合物、硼素化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられるが、コロイダルシリカ、アルキルシリケート等シリカ化合物、ジルコニウム化合物が好適に用いられる。前記組成物中の架橋剤の含有量は、本発明の特徴を損なわない程度であれば特に制限はないが、変性ポリビニルアルコール系重合体100質量部に対して通常1~60質量部である。架橋剤の含有量が60質量部を越える場合は、酸素ガスバリア性に悪影響を与えることがある。架橋剤は、前述の酢酸ナトリウムと併存してもよい。
前記組成物中の前記変性ビニルアルコール系重合体の含有量は5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、60質量%以上が特に好ましい。
組成物の別の好適な実施態様として、コーティング剤が挙げられる。コーティング剤は、本発明の変性ビニルアルコール系重合体及び溶媒を含むコーティング剤であって、前記溶媒が水又は炭素数1~4の脂肪族アルコールの少なくとも1つからなるものである。
前記コーティング剤中の前記変性ビニルアルコール系重合体の濃度は特に制限はないが、5~50質量%が好ましい。前記濃度が5質量%未満では乾燥負荷が大きくなることがある。前記濃度は8質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。一方、前記濃度が50質量%を越える場合には粘度が高くなりすぎて取り扱い性が問題となることがある。
前記脂肪族アルコールは水溶性であれば特に制限はないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール等が好適に用いられる。前記変性ビニルアルコール系重合体の溶解度をさらに高める点から、前記コーティング剤に用いられる溶媒が水、又は水と前記脂肪族アルコールとの混合液であることが好ましい。同様の観点から、前記コーティング剤中の全溶媒に占める前記脂肪族アルコールの割合の上限は好ましくは50質量%であり、より好ましくは40質量%であり、さらに好ましくは20質量%であり、特に好ましくは10質量%である。一方、前記コーティング剤が前記脂肪族アルコールを含む場合、その含有量の下限は特に制限されないが、好ましくは0.5質量%であり、より好ましくは1質量%であり、さらに好ましくは2質量%である。
前記コーティング剤は、前記変性ビニルアルコール系重合体及び溶媒以外の他の添加剤を含有していてもよい。他の添加剤の好ましい例としては、界面活性剤、レベリング剤等が挙げられる。前記コーティング剤中の変性ビニルアルコール系重合体及び溶媒以外の成分の含有量は通常30質量%以下であり、好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
塗工時の前記コーティング剤の温度は20℃~80℃が好適である。塗工方法としては、グラビアロールコーティング法、リバースグラビアコーティング法、リバースロールコーティング法、マイヤーバーコーティング法等の公知の方法が好適に用いられる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「%」及び「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」及び「質量部」を表す。
[各単量体単位の含有率a、b及びcの算出]
日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「LAMBDA 500」を用い、実施例1~6、比較例1~5で得られた変性ビニルアルコール系重合体のH-NMRを、重水素化ジメチルスルホキシド中、80℃で測定し、当該重合体における各単量体単位の含有率a(モル%)、b(モル%)、c(モル%)を定量した。
[けん化度]
H-NMRの測定結果から、下記式(5)に示すDSで定義されるけん化度を算出した。
DS=[(X、Y及びZのうち水素原子であるものの合計モル数)/(X、Y及びZの合計モル数)]×100 (5)
ここで、「X、Y及びZのうち水素原子であるものの合計モル数」は、変性ビニルアルコール系重合体中の水酸基のモル数を示し、「X、Y及びZの合計モル数」は、当該重合体中の水酸基とエステル基の合計モル数を示す。
[数平均重合度]
東ソー株式会社製サイズ排除高速液体クロマトグラフィー装置「HLC-8320GPC」を用い、重合体の数平均分子量(Mn)を測定した。測定条件は以下の通りである。
カラム:東ソー株式会社製HFIP系カラム「GMHHR-H(S)」2本直列接続
標準試料:ポリメチルメタクリレート
溶媒及び移動相:トリフルオロ酢酸ナトリウム-HFIP溶液(濃度20mM)
流量:0.2mL/min
温度:40℃
試料溶液濃度:0.1質量%(開口径0.45μmフィルターでろ過)
注入量:10μL
検出器:RI
重合体の数平均重合度Pnは以下の式により求めた。
Pn=Mn×100/(28×a+44×b+88×c)
[酸素ガスバリア性]
濃度10質量%の変性ビニルアルコール系重合体水溶液を調製し、濾過及び遠心分離を行い異物や気泡を除いた。バーコーターを用いて、厚み12μmの基材PETフィルムの表面に、上記で得られた変性ビニルアルコール系重合体水溶液を室温でコートし、60℃の熱風乾燥機で乾燥させることにより、基材PETフィルム(12μm)及び変性ビニルアルコール系重合体層(約20μm)からなる多層フィルムを得た。得られた多層フィルムを温度20℃、相対湿度85%の状態で5日間調湿した後、酸素ガス透過量測定装置OX-TRAN 2/21(モコン社製)を用いて当該多層フィルムの酸素透過量(OTR)として値A[cc/(m・day・atm)]を測定した。
測定後の多層フィルムの膜厚を株式会社サンコウ電子研究所製の電磁式膜厚計SAMAC-PRоを用いて測定し、得られた厚みをT(μm)とした。下記式(6)からF1を求めた後、式(7)を用いて、変性ビニルアルコール系重合体層の厚みが20μmである場合の当該層の酸素透過量(OTR)として値B[cc/(m・day・atm)]を求めた。
以下の式(6)と(7)における各記号の意味は以下の通りである。
・変性ビニルアルコール系重合体層の厚み:T-12(μm)
・多層フィルム全体のOTR実測値:A[cc/(m・day・atm)]
・変性ビニルアルコール系重合体層のOTR:F1[cc/(m・day・atm)]
・基材PETフィルムのOTR実測値:F2[cc/(m・day・atm)]
・変性ビニルアルコール系重合体層の厚み20μm換算後のOTR:B[cc/(m・day・atm)]

(1/A)=(1/F1)+(1/F2) (6)
B=F1×(T-12)/20 (7)
[生分解性]
粉砕及び分級(目開き300μmの篩を使用)を行うことにより粒度を揃えた変性ビニルアルコール系重合体の粉末を用いて、ISO14851に記載された生分解性試験の方法に準拠し、生分解性の評価を行った。試験条件を下記に示す。ポリマー組成より算出された理論的酸素要求量に基づいて、生分解率(質量%)を算出した。生分解率の値が大きいほど、生分解性が高いと言える。
装置:OXI TOP(WTW社製)
使用汚泥:一般下水処理場の返送汚泥
試験培地:200mL
サンプル濃度:100mg/L
温度:22℃
期間:38日間
生分解率(%)={(実際に消費された酸素量)/(理論的酸素要求量)}×100
[フィルムの水溶性]
濃度10質量%の変性ビニルアルコール系重合体水溶液を調製し、それをPETフィルム上に流延した後20℃で1週間乾燥させ、さらに真空乾燥機で16時間乾燥させ、PETフィルムから剥離することで、厚み100μmの単層フィルムを得た。100mLのイオン交換水を100mLのビーカーに加え60℃に温度制御した。前記イオン交換水に無攪拌で上記フィルム(サイズ:30mm×40mm、厚み100μm)を1時間浸漬した後の水への変性ビニルアルコール系重合体の溶出率を測定し、以下の3段階で評価した。Aが最も水溶性が高いと言える。
A:溶出率が70%以上であった。
B:溶出率が30%以上70%未満であった。
C:溶出率が30%未満であった。
[水溶液の粘度安定性]
濃度10質量%の変性ビニルアルコール系重合体水溶液を調整し、調整直後に、ブルックフィールド製の回転粘度計LVDVII・Proを用い、5℃での粘度(η)を測定した(スピンドルNо34)。その後5℃で30日間静置し、30日後の粘度(η30)を測定し、増粘倍率(η30/η)を算出した。増粘倍率(η30/η)が低いほど、粘度安定性が高いと言える。
[酢酸ナトリウムの含有量]
各実施例及び比較例で得られた変性ビニルアルコール系重合体を乾燥させた後、0.1gをステンレス容器に添加した。さらに、水20mLを添加して90℃以上で2時間かけて前記重合体を加熱溶解した。得られた水溶液を最大100倍の範囲でイオン交換水を用いて希釈した。ICP発光分光分析装置(Thermo Fischer Scientific社の「iCAP6500」)を用い、上記水溶液をNaの波長818.326nmで定量分析することで、Na元素の濃度を測定した。得られた値から、変性ビニルアルコール系重合体に含まれるNa元素の含有量を算出した後、酢酸ナトリウム含有量に変換した。ここで得られた値から、変性ビニルアルコール系重合体と、酢酸ナトリウムを含有する組成物における、酢酸ナトリウムの含有量を求めた。
[溶融成形性]
下記の条件で押出しすることにより重合体ペレットを製造し、下記の基準で重合体の溶融成形が可能な最低温度及びその温度における耐分解性を評価した。なお、設定温度(シリンダー部)は、重合体の種類に応じて180~240℃の範囲で調整を行い、当該範囲内で溶融成形が可能な最低温度を成形温度として採用した。
・ペレット化条件
押出機:株式会社東洋精機製作所製 ラボプラストミル
スクリュー:2軸同方向、25mmφ、L/D=26
吐出量:3.0kg/hr
設定温度(シリンダー部):180~240℃
設定温度(ダイ部):130℃
A:成形中に全く発煙せず、分解臭も発生しなかった。
B:成形にさしつかえない程度に発煙したが、分解臭は発生しなかった。
C:成形中に発煙し、分解臭も発生した。
[実施例1]
(変性ビニルアルコール系重合体の製造)
撹拌機、窒素導入口、エチレン導入口、開始剤添加口及び溶液フィード口を備えた5L加圧反応槽に酢酸ビニル1.2kg、メタノール1.4kg及び1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン(DAMP)0.049kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。
別途フィード溶液用にDAMPをメタノールに溶解した濃度42g/L溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングを行った。さらに別途ラジカル重合開始剤として2,2-アゾビス(イソブチロニトリル)をメタノールに溶解した濃度20g/Lの開始剤溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。
次いで上記加圧反応槽に、反応槽圧力が0.3MPaとなるようにエチレンを導入した。上記の加圧反応槽の内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液120mLを注入し重合を開始した。重合中は重合温度を60℃に維持し、DAMPのメタノール溶液をフィードして重合を実施した。重合率が40%となったことを確認した後、冷却して重合を停止した。重合停止までのDAMPのメタノール溶液(濃度42g/L)のフィード量は計860mLであった。
加圧反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全
に行った。次いで減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去し変性エチレン-酢酸ビニル共重合体(以下、「変性PVAc」ともいう。)のメタノール溶液とした。次に、これにメタノールを加えて調製した変性PVAcのメタノール溶液438質量部(溶液中の変性PVAc100質量部)に、62.0質量部の水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度15.0%)を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液の変性PVAc濃度20%、変性PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比0.2)。アルカリ添加後約1分で系がゲル化したものを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するアルカリを中和した。
フェノールフタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認後、濾別して得られた白色固体のけん化物にメタノール900gと水100gの混合溶媒を加えて室温で3時間放置し、洗浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られたけん化物を乾燥機中70℃で2日間放置して乾燥された変性ビニルアルコール系重合体を得た。
得られた変性ビニルアルコール系重合体の数平均重合度Pnは420、けん化度は99.0モル%、エチレン単位の含有率aは3.2モル%、DAMP由来の単位(Y及びZを含む単量体単位)の含有率cは6.5モル%、酢酸ナトリウムの含有量は0.028質量%であった。また、酢酸ビニル単位(Xを含む単量体単位)とビニルアルコール単位(Xを含む単量体単位)の合計の含有率bは83.2モル%であった。当該変性ビニルアルコール系重合体の酸素ガスバリア性、生分解性、水溶性、水溶液の粘度安定性及び溶融成形性を評価した。結果を表2に示す。
[実施例2~6、比較例1~5]
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、重合時のエチレン圧、重合時に使用するコモノマーの添加量等の重合条件、けん化時における酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により各種変性ビニルアルコール系重合体を製造した。
Figure 2023179809000006
Figure 2023179809000007
エチレン単位の含有率aが1~10モル%未満の範囲内であり、Y及びZを含む単量体単位(DAMP由来の単位)の含有率cの含有量が3~15モル%の範囲内である本発明の変性ビニルアルコール系重合体(実施例1~6)は水溶性及び粘度安定性が高く、得られたフィルムは優れた酸素ガスバリア性、生分解性を示した。また、変性ビニルアルコール系重合体は低温での溶融成形が可能であるとともに、分解の問題もなかった。
一方、未変性ポリビニルアルコール(比較例1)は酸素ガスバリア性が低いうえに、溶融成形可能な温度が高く、分解が生じた。さらに、未変性ポリビニルアルコールを含む水溶液は粘度安定性も低かった。エチレン単位の含有率aが9.1モル%であり、Y及びZを含む単量体単位(DAMP由来の単位)を含まないエチレン-ビニルアルコール共重合体(比較例2)は、フィルムの水溶性が比較例1に比べて劣化したが、比較例1に比べて酸素ガスバリア性と溶融成形性は向上した。
エチレン単位が含まれず、Y及びZを含む単量体単位(DAMP由来の単位)は含まれるが3モル%未満である変性ビニルアルコール系重合体(比較例3)は、酸素ガスバリア性が低かった。また、溶融成形可能な温度が高く、分解が生じた。また、水溶性は低くはないものの、水溶液の粘度安定性が低く、低温で保管すると増粘が見られた。エチレン単位の含有率aが1~10モル%未満の範囲内であるが、DAMP由来の単位が3モル%未満である変性ビニルアルコール系重合体(比較例4)は、酸素ガスバリア性には優れるが、粘度安定性が低くゲル化が見られた。DAMP由来の単位の含有率cは3~15モル%の範囲内であるが、エチレン単位の含有率aが10モル%以上である変性ビニルアルコール系重合体(比較例5)は、酸素ガスバリア性には優れるが、生分解性が低かった。

Claims (6)

  1. 下記式(I)で表され、全単量体単位に対する各単量体単位の含有率a(モル%)、b(モル%)及びc(モル%)が下記式(1)~(3)を満足する、変性ビニルアルコール系重合体。
    1≦a<10 (1)
    3≦c≦15 (2)
    [100-(a+c)]×0.9≦b≦[100-(a+c)] (3)
    Figure 2023179809000008
    [式(I)中、X、Y及びZは、それぞれ独立に水素原子、ホルミル基又は炭素数2~10のアルカノイル基を表す。]
  2. 数平均重合度が200~5000である請求項1に記載の変性ビニルアルコール系重合体。
  3. aおよびcが下記式(4)を満たす、請求項1又は2に記載の変性ビニルアルコール系共重合体。
    a+5c≧18 (4)
  4. X、Y及びZが、それぞれ独立に水素原子又はアセチル基である、請求項1~3のいずれかに記載の変性ポリビニルアルコール系重合体。
  5. けん化度が80~99.99モル%である、請求項1~4のいずれかに記載の変性ビニルアルコール系重合体。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載の変性ビニルアルコール系重合体と、酢酸ナトリウム0.01~2質量%とを含有する、組成物。
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