[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1にかかるD級電力増幅器のブロック回路図を示す。とりわけ、1つの信号出力端子に1つのスピーカを接続するいわゆるシングルエンド形式のD級電力増幅器を示す。D級電力増幅器100は、アナログ入力信号Sin1が入力される信号入力端子120、アナログ信号が処理されるアナログ信号処理部130、積分回路140、PWM回路150、VCO160、デューティ比調整回路200、第1のドライバー170、第2のドライバー180、パワートランジスタTR1,TR2及び信号出力端子190を有する。さらに信号出力端子190にはインダクタL1、キャパシタC1、カップリングキャパシタC0及びスピーカRLが接続されている。インダクタL1及びキャパシタC1はローパスフィルタを構成し、カップリングキャパシタC0は直流成分を阻止するために設けられている。インダクタL1のインダクタンスのオーダーは数十μH、キャパシタC1の容量値は1μF前後、カップリングキャパシタC0の容量は数百μFから数千μFに選ばれている。さらに本発明にかかるD級電力増幅器100は、切換制御信号発生回路137を有する。
アナログ信号処理部130は、アンプ132,134,136及び信号切換回路135を有する。これらの3つのアンプには同じ大きさの電源電圧E1が供給されている。アナログ入力信号Sin1が信号入力端子120に入力されると、アナログ入力信号Sin1は抵抗131を介してアンプ132の反転入力端子(−)に入力される。アンプ132の非反転入力端子(+)には電源電圧E1の1/2の大きさであるE1/2の直流電圧が供給されている。アンプ132は、抵抗131と133とによって増幅度が定まる負帰還形式の反転増幅回路を構成する。アンプ132の出力端子は信号切換回路135の第1端子135aに接続されている。これにより、アナログ信号は信号切換回路135のオン又はオフの作動状態に関わらず常に第1端子135aに供給されることになる。アナログ信号が音声信号である場合、その周波数はほぼ20Hzから20KHzである。
アンプ134は信号切換回路135のオン又はオフの作動状態に関わらずボルテージフォロワとして作動し、アンプ134の出力端子は信号切換回路135の第2端子135bに接続されている。これにより、信号切換回路135の第2端子135bには信号切換回路135のオン又はオフの作動状態に関わらず、直流電圧である基準電圧E1rが常時供給されることになる。基準電圧E1rは電源電圧E1に等しく、すなわちE1r=E1に選ばれている。すなわち、アンプ134から第2端子135bに供給される電圧の大きさはアンプ134,132の電源電圧E1と同じ大きさに選ばれている。
信号切換回路135の制御端子135cには切換制御信号発生回路137から信号導出線138を介して切換制御信号Sm12,Sm34が印加される。切換制御信号Sm12,Sm34は、ミュートオンからミュートオフに、ミュートオフからミュートオンにそれぞれ回路動作を切換える信号である。出力端子135dは第1端子135aに供給されるアナログ信号又は第2端子135bに供給される直流電圧E1rのいずれかを出力する。すなわち、出力端子135dが第1端子135aを選択しているときにはアンプ136の出力端子に表れるアナログ信号Sin2はアンプ136を介して後段のスピーカRLまで伝達される。一方、出力端子135dが第2端子135bを選択しているときにはアナログ入力信号Sin1はアンプ136にも供給されることはない。したがって後段のスピーカRLまでの信号伝達が遮断される。このときがミュートオンの動作モードに入っているときである。
信号切換回路135の出力端子135dが第1端子135aから第2端子135bに切換えられると、ミュートオフからミュートオンの動作モードに切換る。逆に、第2端子135bから第1端子135aに切換えられたときには、ミュートオンからミュートオフの動作モードに切換る。
信号切換回路135を制御するのは切換制御信号発生回路137から印加される切換制御信号Sm12,Sm34である。制御端子135cには切換制御信号発生回路137より信号導出線138を介して切換制御信号Sm12及びSm34が所定の時間印加される。切換制御信号Sm12,Sm34はミュートオンからミュートオフに、ミュートオフからミュートオンにそれぞれ回路動作を切換える。又、ミュートオンからミュートオフ及びミュートオフからミュートオンにそれぞれ移行するときのモード切換は急峻に行うのではなく設定された所定の時間でゆるやかに行うようにしている。この所定の時間がモード切換時間tm12,tm34に相当する。モード切換時間tm12,tm34は通常数十ms〜数百msの時間に設定されている。モード切換時間tm12,tm34に所定の長さをもたせることによって、モード切換時、たとえばミュートオン/オフの切換時に生じ易いとされる異常音、すなわちポップノイズの発生を防止することができる。
信号切換回路135の出力端子135dに出力されるアナログ信号又は直流電圧は、アンプ136に伝達される。上述から明らかなように、アナログ信号がアンプ136に伝達されている状態がミュートオフの動作モードであり、直流電圧E1r(=E1)がアンプ136に伝達されている状態がミュートオンの動作モードである。なお、アンプ136の電源電圧E1はアンプ132,134に供給される電源電圧E1と等しく設定されている。アンプ136は前段の信号切換回路135と後段の積分回路140との間のバッファとしての機能も有する。
ミュートオフの動作モードの場合、アンプ136から出力されるアナログ信号は積分回路140を構成する抵抗144の一端に入力される。抵抗144の他端はアンプ142の反転入力端子(−)に接続される。抵抗144とキャパシタ146はアナログ信号を積分するために用意され、これらの定数の積によって積分時定数が決定される。アンプ142の非反転入力端子(+)には信号出力端子190の直流電圧がVcc/2の大きさになるよう調整された電圧を印加する。これによって、信号出力端子190の直流電圧はVcc/2になるように保持される。
積分回路140の出力、すなわちアンプ142から出力される積分信号S50はPWM回路150に入力される。PWM回路150はいわゆる他励発振型PWM方式で構成されている。他励発振型PWM方式に用いるPWM回路には三角波信号が必要であるため三角波信号Psを生成するVCO160を用意する。本来、PWM回路150には矩形波信号は必ずしも必要とはしないが、本発明においては後述のデューティ比調整回路200に供給するためにVCO160では三角波信号Psの他に矩形波信号であるVCOクロック信号CKvcoも生成している。VCOクロック信号CKvcoの立上りエッジ及び立下りエッジは三角波信号Psのそれぞれ最大値と最小値に同期し、かつ、デューティ比はほぼ50%の矩形波信号である。
PWM回路150には2つの信号が入力され1つの信号が出力される。1つは積分回路140側から入力される積分信号S50であり、もう1つは三角波信号Psである。これら両者の信号レベルが、PWM回路150に設けた図示しないコンパレータにおいて、比較され、その比較結果が2値化信号にパルス幅変調されPWM信号P50として出力される。
PWM回路150から出力されるPWM信号P50はデューティ比調整回路200の入力端子202に入力される。デューティ比調整回路200は本発明にかかる特徴の1つであり、2つの信号が入力され、1つの信号が出力される回路構成を成す。
デューティ比調整回路200の入力端子202にはPWM回路150の出力信号、すなわちPWM信号P50が入力され、もう一方の入力端子252にはVCO160で生成されるVCOクロック信号CKvcoが入力される。VCOクロック信号CKvcoは三角波信号Psに同期した矩形波状の信号である。デューティ比調整回路200の出力信号は出力端子290から取り出される。出力端子290から取り出される出力信号は入力端子202に入力されるPWM信号P50とほぼ同じではあるが、デューティ比が0%及び100%の近傍である場合、PWM信号P50は所定のデューティの大きさに調整される。PWM信号P50のデューティ比がたとえば3%以下すなわち、0%〜3%のPWM信号P50は一様にデューティ比がほぼ3%のPWM信号に補正される。同様に、デューティ比が97%以上、すなわちデューティ比が97%〜100%のPWM信号P50は一様にデューティ比がほぼ97%のPWM信号に補正される。しかし、デューティ比がたとえば3%〜97%のPWM信号P50に対してはデューティ比の調整は実行されない。なお、デューティ比が0%及び100%のPWM信号P50のデューティ比はそれぞれ、3%及び97%に調整される。
デューティ比調整回路200がPWM信号のデューティ比を調整する範囲は0%〜100%の全範囲ではなく所定の範囲であることは前述のとおりである。又、デューティ比の調整が実行されるのはミュートがオフの動作モードのときである。したがって、デューティ比調整回路200は前に述べたアンプ134及び信号切換回路135を設けない、すなわち、第1端子135aと出力端子136とを短絡された回路構成下にも適用することができる。すなわちミュートオン/オフ機能をもたないD級電力増幅器にも適用することが可能である。なお、ミュートオン時及びミュートの切り換え時は、デューティ比調整回路200は作動している。ミュートオン時は、デューティ比は3%に調整されるが第1のドライバー170及び第2のドライバー180でパワートランジスタTR1,TR2の動作は遮断される。ミュートの切り換え時は、PWM信号P50のデューティ比は3%から50%に、又、50%から3%にそれぞれ調整される。
デューティ比調整回路200がPWM信号のデューティ比を調整する範囲は入力端子252に入力するVCOクロック信号CKvcoの信号処理及び論理処理によって調整することができる。詳細は後述の図4,図5の説明によって明らかになろう。
デューティ比調整回路200の出力端子290から出力されデューティ比が調整されたPWM信号は第1のドライバー170及び第2のドライバー180に入力される。出力端子290と第2のドライバー180の信号経路にはインバータ152を設け第1のドライバー170に入力されるPWM信号とは極性が反転されたPWM信号が入力される。
第1のドライバー170及び第2のドライバー180は本発明の技術的思想には直接的に関与しないので説明の便宜上極めて簡易に示している。当業者には第1のドライバー170には図示しない、デッドタイム生成回路、レベルシフト回路、ハイサイドゲートドライバーが含まれていることは容易に類推することができる。同様に第2のドライバー180にはデッドタイム生成回路、ローサイドゲートドライバーが含まれていることも比較的容易に類推することができる。いずれにしても本発明の実施の形態1においては、この種のドライバーは従前よく知られたものを採用することができる。
第1のドライバー170及び第2のドライバー180から出力されるPWM信号はパワートランジスタTR1,TR2に各別に入力される。パワートランジスタTR1のたとえばドレイン電極には電源電圧Vccが供給され、そのソース電極はパワートランジスタTR2のたとえばドレイン電極に接続され、そのソース電極は接地電位(GND)に接続されている。両者のパワートランジスタは縦続接続すなわち直列接続されそれらの共通接続点は信号出力端子190に接続される。
信号出力端子190にはパルス幅変調されたPWM出力信号P190が出力される。このPWM出力信号P190は帰還抵抗182を介してPWM回路150の入力側に帰還される。D級電力増幅器の出力側から入力側に負帰還を施すことでD級電力増幅器全体の歪の低減化が図れる。
信号出力端子190と接地電位GNDとの間には、ローパスフィルタ、スピーカ及びカップリングキャパシタが直列に接続されている。ローパスフィルタを構成するインダクタL1及びキャパシタC1が接続されている。ローパスフィルタは信号出力端子190に出力されるPWM信号を元のアナログ信号すなわち変調される前の状態の信号に復調するために用意されている。インダクタL1のインダクタンスはたとえば数十μHであり、キャパシタC1の容量値は1μF前後である。スピーカRLのインピーダンスはたとえば4Ω,6Ω,8Ω及び16Ωの1つを選ぶことができる。又、直流成分を阻止するためのカップリングキャパシタC0の容量値は数百μF〜数千μFに選ばれている。インダクタL1及びキャパシタC1の共通接続点にはスピーカRLの一端が接続され、その他端はカップリングキャパシタC0の一端に接続され、その他端は接地電位(GND)に接続されている。
信号出力端子190にはPWM出力信号P190が生じ、スピーカRLの一端すなわち信号導出線194にはアナログ信号SRLが、その他端すなわちカップリングキャパシタC0の一端(信号導出線196)には信号SC0がそれぞれ生じる。
図2は本発明の実施の形態1にかかる図1の要部の信号波形図である。とりわけD級電力増幅器100のアナログ信号処理部130,積分回路140及びVCO160の一部の各ノードに生じる信号の経時変化を模式的に示す。図2(a)は、ミュートオンからミュートオフに移行し、さらにミュートオフ、すなわち通常の動作状態から再びミュートオンに移行したときにアナログ信号処理部130の出力端子すなわちアンプ136の出力端子に生じるアナログ信号Sin2の変化を示す。
時刻t0からt1まではミュートオンの状態を示す。この期間にアンプ136の出力端子に生じるアナログ信号Sin2は直流電圧のみとなり電源電圧E1にほぼ等しくなる。時刻t1からt2はミュートオンを解除するための移行期間である。この期間はミュートオンの働きは徐々に弱くなるためにソフトミュートの期間ともいえる。この期間においてミュートの働きは徐々に解除されるため、アナログ信号Sin2には直流電圧に交流成分の信号が重畳された信号が徐々に表れる。このとき、直流電圧は電源電圧E1の大きさからその1/2の大きさまで徐々に減少していく。時刻t2に達するとミュートは完全に解除され通常の受信状態に移行する。時刻t2からt3までの期間ミュートは完全に解除され通常の受信状態に入っている。この期間に表れるアナログ信号Sin2は、直流電圧がE1/2となり、そのE1/2の直流電圧に交流成分の信号が重畳されたものとなる。時刻t3からt4の期間はミュートオフ、すなわち通常の受信状態から再びミュートオンに入るための移行期間である。時刻t3からt4までの期間は先の時刻t1からt2までの期間とほぼ同じ時間に設定される。この期間、アナログ信号Sin2の交流成分の振幅値は徐々に減少し、時刻t4に達すると再び時刻t0からt1までに表れた同じ直流電圧E1が表れる。時刻t4以降はミュートオンの継続期間である。なお、時刻t1からt2までの期間及び時刻t3からt4までのいわゆるソフトミュートの時間は切換制御信号発生回路137で設定される。
ミュートのオン/オフを制御する切換制御信号138は切換制御信号発生回路137で生成される。切換制御信号発生回路137はたとえばラダー抵抗とカウンターを組み合わせて構成してもよく又、チャージポンプ回路を用いて切換制御信号138を生成することもできる。又、のこぎり波状や三角波状の切換制御信号はキャパシタを充放電するかあるいはオペアンプを用いたミラー積分回路によって比較的容易に生成することができる。
図2(b)は、積分回路140の出力に生じる積分信号S50とVCO160から出力される三角波信号Psの経時変化を模式的に示す。なお、図2(b)に示す積分信号S50は必ずしも実体の積分信号を示すものではない。説明の便宜上デューティ比が50%のPWM信号の平均電圧を模式的に表している。
図2(b)に示す三角波信号Psはアナログ信号処理部130及び積分回路140とは電気的には分離されたVCO160で生成されるので、ミュートオン及びミュートオフの影響を直接受けない。このため、時間tの経時変化に依存することがなく、常に一定の三角波信号Psを連続的に発生する。一方、積分信号S50は、ミュートのオン/オフに依存するアナログ信号処理部130及び積分回路140の回路動作状態に左右されるので、ミュートオンからミュートオフに遷移するときには、積分信号S50はローレベルから時刻t1から徐々に増加し続け、時刻t2でほぼ所定のレベルに達する。積分信号S50が所定のレベルに達すると、PWM回路150は正常作動期間に入る。こうした回路構成と回路動作によって、時刻t1からt2のいわゆるソフトミュート期間を設けない回路構成のものに比べてデューティ比を0%からゆるやかに50%に到達させることができるので、ミュートオンからミュートオフの動作モード切換時に発生し易いポップノイズの発生を排除することができる。
また、ミュートオフ、すなわち通常の受信状態からミュートオンに動作モードを切換るときにも同様である。すなわち、ミュートオフからミュートオンに動作モードを切換える時刻t3からt4において、積分信号S50はゆるやかに減少し最終的にはローレベルに収束するので、PWM信号のデューティ比を50%からゆるやかに0%に変化させることができる。これによってミュートオン/オフ時に生じ易いとされるポップノイズの発生を排除することができる。
以上説明したように本発明において、ミュートオンからミュートオフ及びこの逆の動作モード切換えにおいてはこれらの動作を急峻に行うのではなくゆるやかに所定の動作に移行させるので急峻な切換時に生じ易いとされるポップノイズの発生を排除することができる。
図3A,図3Bもミュートオン/オフの回路動作を説明するために用意した図面である。特にミュートオン/オフ時に、スピーカRLの両端に生じる信号波形を模式的に示す。図3Aは、図1においてミュートオンからミュートオフに、図3Bはミュートオフからミュートオンにそれぞれ動作モードが切換えられたときの信号波形図を示す。
図3A(a)は、切換制御信号発生回路137より信号導出線138を介して信号切換回路135の制御端子135cに印加される切換制御信号Sm12を、図3A(b)はスピーカRLの両端に生じる信号をそれぞれ模式的に示す。ミュートオンの動作モードにおいては当然のことではあるが、スピーカRLの一端に生じる信号SRL及びスピーカRLの他端すなわちカップリングキャパシタC0の一端に生じる信号SC0はいずれもローレベルである。前述のとおりミュートオンからミュートオフに動作モードを切換えるときには、信号切換回路135を急峻に切換えずに所定の時間すなわちモード切換時間tm12の期間でゆるやかに切換えるようにしている。モード切換時間tm12は図2に示した時刻t1からt2の期間に相当する。又、モード切換時間tm12は数十msから数百msの範囲で設定する。この時間をあまり短くするとポップノイズの発生を完全に排除することができなくなる。又、ミュートオン/オフの動作切換時間が長くなると回路動作全体に対し不自然さを感じるようになるので好ましくない。本発明の実施の形態1ではモード切換時間tm12は50ms〜150msであり、さらに好ましくは90ms程度であることを知見した。
モード切換時間tm12は前に述べたように50ms〜150msとし、かつ、この時間内でたとえば2の11乗、すなわち2048ステップにレベルが遷移する信号を信号切換回路135に印加させるという回路構成を採用してみた。切換制御信号Sm12の信号形状はモード切換時間tm12の期間で信号レベルがゆるやかに変化させるものとした。
図3A(a)に示すような切換制御信号Sm12を信号切換回路135に印加すると、スピーカRLの両端には図3A(b)に示す信号が生じることが確認できた。図3A(b)において、スピーカRLの一端すなわち信号導出線194には信号SRLが、スピーカRLの他端であり信号導出線196でもあるカップリングキャパシタC0の一端には信号SC0が生じていることも確認することができた。特にカップリングキャパシタC0の一端に生じる信号SC0はモード切換時間tm12の期間においてゆるやかに増加するので、カップリングキャパシタC0の急峻な電位変動によって生じるポップノイズの発生が大幅に減少することを知見した。
図3Bはミュートオフからミュートオンに動作モードを切換えたときのスピーカRLの両端に生じる信号波形を示す。図3Bに示す信号波形は本質的には図3Aに示したものと同じことが言える。すなわち、信号SRL,SC0は切換制御信号Sm34の切換とともにモード切換時間tm34においてゆるやかに信号を減少させ、最終的にはローレベルに収束するようにしている。なお、モード切換時間tm34は図2に示した時刻t3からt4の期間に相当する。こうしたことによってミュートオン/オフ時に発生し易いとされるポップノイズの発生を抑制することができる。又、こうした回路動作はミュートオン/オフ時だけではなく電源電圧のソフトスターティング動作も奏することにもなるので、電源電圧投入及び遮断時に発生し易いポップノイズも排除することができる。なお、モード切換時間tm34は図3A(a)に示したモード切換時間tm12と同じで50ms〜150msの大きさに設定するとよい。
上述がミュートオン/オフ時に発生し易いとされるポップノイズを排除する回路機能に関する説明である。次に、本発明者が知見したPWM信号のデューティ比が0%及び100%の近傍で発生するポップノイズを排除する回路機能について説明する。
図4は本発明にかかるデューティ比調整回路200のブロック回路図を示す。デューティ比調整回路200は信号成分が異なる2種類の信号が各別に入力され、1つの信号が出力される回路構成を成す。2つの入力信号の1つは入力端子202に入力されデューティ比が0%〜100%のPWM信号P50である。PWM信号P50はデューティ比の調整対象となるPWM信号及びデューティ比の調整対象外のPWM信号を含むPWM信号の全信号である。もう1つの入力信号はVCOクロック信号入力端子252に入力されるVCOクロック信号CKvcoである。1つの出力信号は出力端子290から出力される。出力端子290から出力されるPWM信号P290は、アナログ信号がパルス幅変調された2値化信号ではあるがデューティ比が0%の近傍ではたとえば3%程度に、デューティ比が100%の近傍ではたとえば97%程度にそれぞれデューティ比が調整されたPWM信号である。又、PWM信号P50のデューティ比がたとえば3%〜97%の範囲のPWM信号P50はそのまま出力端子290に出力される。したがって、たとえばデューティ比が50%のPWM信号はデューティ比の調整を受けずに入力端子202に入力された状態のPWM信号P50が出力端子290にそのまま出力される。なお、前にも述べたように、デューティ比が0%及び100%のPWM信号P50のデューティ比は3%及び97%にそれぞれ調整される。
入力端子202に入力されるPWM信号P50はラッチ回路210に入力される。ラッチ回路210はPWM信号P50を一時的に記憶する回路機能を有する。ラッチ回路210の回路動作は第1のスイッチ制御信号Csw及び第2のスイッチ制御信号XCswによって、オン/オフが制御される。ラッチ回路210は第1のスイッチ制御信号Cswがたとえばローレベルからハイレベルに遷移するときにオンし、この逆のタイミングでオフするよう構成されている。ラッチ回路210はトランスファーゲートを用いる回路方式や、NAND回路やNOR回路を、たすきがけで構成する回路方式などを用いることができる。こうしたいくつかの方式のラッチ回路は当業者には公知である。たとえば、ラッチ回路210をMOSFETから成る1つのトランスファーゲートと、データ(PWM信号)を一時的に記憶するキャパシタを用いて構成することができる。又、2つのトランスファーゲートと2つのインバータを用いてラッチ回路を構成することもできる。本発明の実施の形態1においては後者のラッチ回路を採用してみた。詳細な回路動作は後述で明らかになろう。
ラッチ回路210から取り出されるラッチ出力信号はインバータ215に入力され信号極性が反転される。否定論理積(NAND)回路216の第1の入力端子にはラッチ出力信号の反転信号が入力される。否定論理積(NAND)回路216の第2の入力端子には、入力端子252に入力されるVCOクロック信号CKvcoがインバータ254で極性が反転されたすなわち反転信号が入力される。否定論理積(NAND)回路216の出力には、入力端子202に入力されるPWM信号P50と入力端子252に入力されるVCOクロック信号CKvcoとの論理積出力が取り出され、取り出された論理積出力信号はRSフリップフロップ220のセット端子Sに入力される。なお、否定論理積(NAND)回路216,226は論理積(AND)回路とインバータで構成することもできる。また、否定論理積(NAND)回路216,226の前段又は後段に数段のインバータを設けてもよい。
ラッチ回路210から取り出されるラッチ出力信号はインバータ215の他には否定論理積(NAND)回路226の第1の入力端子に入力される。すなわち、否定論理積(NAND)回路226の第1の入力端子にはラッチ出力信号と同じ極性である、いわゆる正転信号が入力される。否定論理積(NAND)回路226の第2の入力端子は入力端子252に接続されているので、VCOクロック信号CKvcoと同極性、すなわち正転信号が入力される。したがって、否定論理積(NAND)回路226の出力には、ラッチ回路210から出力されるPWM信号とVCOクロック信号CKvcoとの否定論理積出力信号が出力される。否定論理積(NAND)回路226の出力信号はRSフリップフロップ220のリセット端子Rに入力される。
前述のように否定論理積(NAND)回路216,226の出力信号はRSフリップフロップ220のそれぞれセット端子S及びリセット端子Rに各別に入力される。すなわち、否定論理積(NAND)回路216,226は、RSフリップフロップ220を駆動するために用意されたものである。こうした回路構成によって、RSフリップフロップ220の出力にはラッチ回路210から出力されたPWM出力信号をVCOクロック信号CKvcoに同期させて出力することができる。
入力端子252に入力されるVCOクロック信号CKvcoは図1に示すVCO160で生成され三角波信号Psに同期している。VCOクロック信号CKvcoを元にして三角波信号Psを生成すること、又、この逆の波形整形を行い、三角波信号Psを元にして波形整形を行いVCOクロック信号CKvcoを生成することは当業者には自明である。VCOクロック信号CKvcoをPWM回路150に用いるために用意した三角波信号Psを元にして生成する場合には、VCOクロック信号CKvcoの周波数は一義的に決定される。ここで「一義的」なる意味はVCOクロック信号CKvcoの周波数は三角波信号Psのそれと別の大きさには設定できないと言うことである。これらの周波数は一般的に数百KHzから数MHzの範囲に選ばれており、本発明の実施の形態1では周波数fはf=500KHzのときに、その周期T1はT1=2μsであり、デューティ比は50%である。
入力端子252に入力されるVCOクロック信号CKvcoはインバータ254に入力される。インバータ254はVCOクロック信号CKvcoの信号極性を反転させるとともに次段との回路接続のバッファとしての機能を有する。なお、デューティ比調整回路200にはインバータ254の他にもいくつかのインバータを採用しているが、これらのインバータは上述の目的で用意され、又、信号を所定の時間遅延させるためにも用意されている。インバータ254の出力信号は第1の最小パルス幅信号生成回路260に入力される。なお、インバータ254は単独ではなく複数のインバータを直列接続して構成してもよい。
第1の最小パルス幅信号生成回路260は入力端子252に入力されるVCOクロック信号CKvcoの周期T1との関係において所定の調整率に保持された最小パルス幅の信号を生成する。所定の調整率とは数パーセントのオーダーであり、たとえば0%〜5%の範囲である。所定の調整率に保持されたパルス幅を有する信号すなわち第1の最小パルス幅信号は、PWM信号のデューティ比を調整し又制御するために生成される。所定の調整率をたとえば3%に設定する場合には、VCOクロック信号CKvcoの周期の3%に相当するパルス幅の信号を生成することになる。たとえば、VCOクロック信号CKvcoの周波数を500KHzとしたときにはその周期T1はT1=2μsとなり、その3%は、2μs×3%=60nsとなる。したがって、パルス幅が60nsの信号を生成することが所定の調整率に保持されたパルス幅の信号を生成することになる。最小パルス幅の大きさは、とりもなおさず、デューティ比の調整率を決定する。いま、デューティ比の調整率を仮に3%とすると、デューティ比が0%〜3%及び97%〜100%のPWM信号P50が調整の対象になる。言い換えると、3%〜97%のデューティ比をもったPWM信号P50は調整の対象外となる。
否定論理積(NAND)回路272の第1の入力端子及び第2の入力端子には第1の最小パルス幅信号生成回路260の出力信号及びVCOクロック信号CKvcoが各別に入力され、これら両者の信号の否定論理積信号が否定論理積(NAND)回路272の出力端子から出力される。否定論理積(NAND)回路272の出力信号はインバータ273に入力され、インバータ273の出力信号は否定論理和(NOR)回路228の第2の入力端子に入力される。又、インバータ273の出力信号は否定論理和(NOR)回路274の第1の入力端子にも入力される。
第2の最小パルス幅信号生成回路280の入力端子には入力端子252に入力されたVCOクロック信号CKvcoが入力される。第2の最小パルス幅信号生成回路280は第1の最小パルス幅信号生成回路260とほぼ同じ回路構成に設定されている。第2の最小パルス幅信号生成回路280の入力にはVCOクロック信号CKvcoが直接入力されるのに対し、第1の最小パルス幅信号生成回路260にはインバータ254を介して入力されていることで両者は互いに相違する。第1,第2の最小パルス幅信号生成回路260,280のいずれか一方がVCOクロック信号CKvcoの立上りエッジtrに同期して最小パルス幅の信号を生成するとき、他方はその立下りエッジtfに同期して最小パルス幅の信号を生成するよう回路構成が成されている。
第1,第2の最小パルス幅信号生成回路260,280は、抵抗とキャパシタによる積分回路とシュミットトリガ回路の組み合わせで構成することができる。又、単安定マルチバイブレータを用いて所定の最小パルス幅の信号を生成することもできる。
否定論理積(NAND)回路292の第1,第2の入力端子には第2の最小パルス幅信号生成回路280で生成される信号及びVCOクロック信号CKvcoがインバータ254によって極性が反転された信号が各別に入力される。こうした回路構成によって、否定論理積(NAND)回路292にはこれら両者の信号の否定論理積信号が出力される。実質的には第2の最小パルス幅信号生成回路280で生成される信号と同じ信号が出力される。否定論理積(NAND)回路292の出力信号はインバータ293によって信号極性が反転されたのち、否定論理和(NOR)回路274の第2の入力端子に入力される。又、否定論理積(NAND)回路292の出力信号は否定論理積(NAND)回路295の第2の入力端子にも入力される。
否定論理和(NOR)回路274の第1,第2の入力端子に第1,第2の最小パルス幅信号生成回路260,280で各別に生成された信号が入力されると、否定論理和(NOR)回路274の出力端子には両者の信号が合成された信号が出力される。この信号はラッチ回路210のオン/オフを制御する第1のスイッチ制御信号Cswとして生成される。また、第1のスイッチ制御信号Cswはインバータ275で信号の極性が反転され第2のスイッチ制御信号XCswが生成される。すなわち、第2のスイッチ制御信号XCswは第1のスイッチ制御信号Cswの極性が反転された相補関係を有し、第1のスイッチ制御信号Cswと同様にラッチ回路210のオン/オフを制御する信号として用いられる。なお、当業者には自明なことではあるが否定論理和(NOR)回路274の回路機能は論理和(OR)回路とインバータの組み合わせで構成することもできる。
第1,第2のスイッチ制御信号Csw,XCswはラッチ回路210を制御するために用意され、その信号成分はともに入力端子252に入力されるVCOクロック信号CKvcoの信号成分のみを有し、それぞれのパルス幅はVCOクロック信号CKvcoの数パーセントのオーダーに設定される。第1,第2のスイッチ制御信号Csw,XCswのパルス幅Wsw1,Wsw2はデューティ比調整回路200においてデューティ比の調整率を決定する。なお、パルス幅Wsw1,Wsw2は第1,第2の最小パルス幅信号生成回路260,280で設定されたものである。
否定論理和(NOR)回路228の第1及び第2の入力端子にはRSフリップフロップ220のQ出力信号及び第1の最小パルス幅信号生成回路260で生成される信号が否定論理積(NAND)回路272及びインバータ273を介して各別に入力される。これによって否定論理和(NOR)回路228の出力には両者の信号の否定論理和信号が出力される。RSフリップフロップ220から出力されるQ出力信号は、PWM信号P50とVCOクロック信号CKvcoの2つの信号の論理処理される信号である。一方、第1の最小パルス幅信号生成回路260で生成される信号はVCOクロック信号CKvcoの信号成分のみを有する。したがって、否定論理和(NOR)回路228の出力にはPWM信号P50がVCOクロック信号CKvcoに同期したタイミングで出力されることになる。
否定論理積(NAND)回路295の第1の入力端子及び第2の入力端子には、否定論理和(NOR)回路228の出力信号及び否定論理積(NAND)回路292の出力信号が各別に入力される。否定論理和(NOR)回路228の出力信号は前に述べたようにPWM信号P50とVCOクロック信号CKvcoの2つの信号が論理処理された、いわゆる2つの信号が互いに反映された信号である。一方、否定論理積(NAND)回路292の出力信号は、VCOクロック信号CKvcoの信号成分を有するだけで、PWM信号P50の信号成分は含んでいない。否定論理積(NAND)回路295においては、PWM信号P50と第2の最小パルス幅信号生成回路280で生成される信号の論理積処理が施され、出力端子290に出力される。なお、否定論理積(NAND)回路295の第1の入力端子には否定論理和(NOR)回路228の出力信号が入力され、その出力信号は、第1の最小パルス幅信号生成回路260で生成された信号が反転されたものであるから、出力端子290に出力されるPWM信号P290はPWM信号P50の信号はもちろんのこと、第1,第2の最小パルス幅信号生成回路260,280で合成された、いわゆる最小パルス幅に調整された、すなわち、所定のデューティ比に調整されるVCOクロック信号CKvcoの信号が反映されたものとなる。出力端子290から出力されるPWM信号P290は図1に示す第1のドライバー170及び第2のドライバー180に供給される。
図4に示すデューティ比調整回路200には2つの最小パルス幅信号生成回路を設けたが1つだけでもよい。たとえば、第2の最小パルス幅信号生成回路280は用意しなくともよい。第2の最小パルス幅信号生成回路280を用意しない場合には否定論理積(NAND)回路292には第1の最小パルス幅信号生成回路260で生成した信号の反転信号及びVCOクロック信号のCKvcoの反転信号を入力するとよい。しかし、本発明の実施の形態1では、2つの最小パルス幅信号生成回路を設けた。この理由は回路動作の安定性を確保するためである。
図5は本発明にかかるデューティ比調整回路200の具体的な回路図を示す。すなわち、図4に示したデューティ比調整回路200をさらに具体的に示したものである。本発明にかかるデューティ比調整回路200はラッチ回路210を有する。ラッチ回路210は、入力端子202に入力されるPWM信号P50を反転させるインバータ204と、インバータ204の出力信号が入力され第1のスイッチ制御信号Csw及び第2のスイッチ制御信号XCswでオン/オフが制御される第1のトランスファーゲート206と、第1のトランスファーゲート206の出力信号を保持するために直列に接続されたインバータ211,212と、インバータ212の出力信号が入力され出力端子がインバータ211の入力端子に接続されるとともに第1及び第2のスイッチ制御信号Csw,XCswでオン/オフが制御される第2のトランスファーゲート208を有する。
入力端子202には図1に示すPWM回路150から出力されるPWM信号P50が入力される。PWM信号P50はアナログ信号が時間とともにパルス幅が変化し、かつハイレベル及びローレベルの2つのレベルを有する2値化信号であり、PWM信号P50のデューティ比は0%〜100%の範囲である。
ラッチ回路210は入力端子202に接続され、入力端子202に入力されるPWM信号P50はインバータ204でPWM信号Pn1に信号極性が反転され第1のトランスファーゲート206に入力される。なお、インバータ204はその前段のPWM回路150とその後段のトランスファーゲート206との間のバッファとしての回路機能も併せ有する。第1のトランスファーゲート206は入力端子,出力端子及び制御端子を有し、それぞれの端子はノードN1,N2及びN3a,N3bに各別に接続される。ノードN3a,N3bには第1のスイッチ制御信号Csw及び第2のスイッチ制御信号XCswが各別に入力される。第1のトランスファーゲート206の回路動作は第1のスイッチ制御信号Csw及び第2のスイッチ制御信号XCswでオン/オフが制御される。第1のスイッチ制御信号Cswと第2のスイッチ制御信号XCswは互いに信号極性が反転されたいわゆる相補の関係を有する。
第1のトランスファーゲート206はたとえば第1のスイッチ制御信号Cswがローレベルからハイレベルに遷移するときにオンするよう回路が構成されている。第1のスイッチ制御信号Cswがハイレベルのとき、入力端子202に入力されるPWM信号P50はノードN1,N2を介してノードN4に伝達され、ノードN4にPWM信号P50が書き込まれる。このとき、第2のトランスファーゲート208はオフ状態である。第2のトランスファーゲート208は第1のトランスファーゲート206と同様に入力端子,出力端子及び制御端子を有し、それぞれの端子はノードN5,N2及びN6a,N6bに各別に接続される。第2のトランスファーゲート208は第1のスイッチ制御信号Cswがハイレベルからローレベルに遷移するときにオンするよう回路構成が成されている。すなわち、第2のトランスファーゲート208は第1のトランスファーゲート206のオン/オフとは相補の関係に置かれている。したがって、第1のトランスファーゲート206がオンの時にラッチ回路210の出力端子であるノードN4に生じるラッチ出力信号Pn4はノードN2まで帰還されることはない。
第1のトランスファーゲート206は、第1のスイッチ制御信号Cswがローレベルになるとオフする。このとき、第2のトランスファーゲート208がオンするのでノードN4に書き込まれたラッチ出力信号Pn4はノードN5を介してノードN2に帰還され、PWM信号が保持される。このようにして、ラッチ回路210は第1のスイッチ制御信号Csw及び第2のスイッチ制御信号XCswによってPWM信号P50を伝達(書き込み)するか保持するかを決定する。
ラッチ回路210の出力端子はインバータ211とインバータ212との共通接続点すなわちノードN4に接続される。ラッチ回路210でラッチされるPWM信号がノードN4に出力されると、インバータ213,214及び215を介して否定論理積(NAND)回路216の第1の入力端子に入力される。インバータ213はノードN4に出力されるラッチ出力信号Pn4を反転させるとともにラッチ回路210の外部に導出するためのいわゆるバッファとしての機能を有する。インバータ213の出力端子はノードN7に接続される。インバータ214,215は直列に接続され、それらの共通接続点すなわちノードN8は否定論理積(NAND)回路226の第2の入力端子に接続される。
否定論理積(NAND)回路216の第1の入力端子には入力端子202に入力されるPWM信号P50がラッチ回路210、インバータ213〜215を介して入力される。否定論理積(NAND)回路216の第2の入力端子には入力端子252に入力されるVCOクロック信号CKvcoがインバータ254,217及び218を介して入力される。すなわち、否定論理積(NAND)回路216の第1の入力端子にはラッチ回路210の出力端子に相当するノードN4に生じるラッチ出力信号Pn4の信号極性が反転されたPWM信号が入力され、その第2の入力端子にはVCOクロック信号CKvcoが反転された信号が入力される。これにより否定論理積(NAND)回路216の出力端子すなわちノードN9にはPWM信号とVCOクロック信号CKvcoとの論理積された信号が出力される。
否定論理積(NAND)回路226は否定論理積(NAND)回路216とほぼ同じ目的で設けられ、ほぼ同様の回路構成を有する。すなわち、否定論理積(NAND)回路226もラッチ出力信号Pn4とVCOクロック信号CKvcoとの論理積処理を施すために用意されている。2つの否定論理積(NAND)回路は、これらの入力端子に入力される入力信号が、互いに極性が反転されていることで相違する。すなわち、否定論理積(NAND)回路226の第1の入力端子にはラッチ回路210の出力端子に相当するノードN4に生じるラッチ出力信号Pn4と同極性すなわち正転信号が入力され、その第2の入力端子にはVCOクロック信号CKvcoと同じ極性である、すなわち正転信号が入力されている。いずれにしても否定論理積(NAND)回路216,226は後段のRSフリップフロップ220のセットパルス及びリセットパルスを生成するために用意される。又、否定論理積(NAND)回路216,226はラッチ出力信号Pn4及びVCOクロック信号CKvcoの2つの信号を論理処理するために用意されている。したがって、否定論理積(NAND)回路216,226の出力、すなわちノードN9,N10には両者の信号が所定の論理処理されたのち各別に出力される。
RSフリップフロップ220のセット端子S及びリセット端子RのそれぞれはノードN9及びノードN10に接続される。RSフリップフロップ220はノードN9及びノードN10に出力される信号の立下りエッジに同期して作動する。RSフリップフロップ220の出力、すなわちノードN11には、ノードN4に出力されるラッチ出力信号Pn4とほぼ同じPWM信号Pn11が出力される。
RSフリップフロップ220の出力、すなわちノードN11に出力されるPWM信号Pn11は、論理和回路228の第1の入力端子に入力される。論理和回路228の出力端子はインバータ232の入力端子に接続され、インバータ232の出力端子はノードN12に接続される。ここで、ノードN11から出力端子290までの信号の流れに関する説明は一時中断し、入力端子252に入力されるVCOクロック信号CKvcoの信号経路について説明する。
入力端子252に入力されるVCOクロック信号CKvcoは、インバータ254に入力される。インバータ254はVCOクロック信号の極性を反転させるとともに次段の回路接続のバッファとしての回路機能も有する。インバータ254の出力端子はノードN21に接続される。インバータ254の出力信号はインバータ256,258を介して第1の最小パルス幅信号生成回路260に入力される。ノードN21にはインバータ217,218の直列接続体が接続され、インバータ218の出力信号は否定論理積(NAND)回路216の第2の入力端子に入力される。
第1の最小パルス幅信号生成回路260の入力端子はノードN22に接続される。ノードN22には抵抗262及びキャパシタ264で構成された積分回路が接続されている。この積分回路は次段のシュミットトリガ回路268で第1の最小パルス幅を有する所定の信号を生成するために設けられている。すなわち、抵抗262とキャパシタ264による積分回路によって所定の立上り,立下り時間に設定された三角波状又はのこぎり波状の信号を生成する。シュミットトリガ回路268はノードN23とノードN24の間に接続され、抵抗262及びキャパシタ264によって生成される積分信号を所定のパルス幅を有する矩形波信号に生成する。ここで、所定のパルス幅に設定される矩形波信号は本書において「第1の最小幅パルス」と定義され、この信号を生成する回路部を「第1の最小パルス幅信号生成回路」として定義している。第1の最小パルス幅信号生成回路260及び後述の第2の最小パルス幅信号生成回路280で生成される第2の最初幅パルスは本発明のデューティ比調整回路200のデューティ比の調整率を一義的に決定する。第1の最小パルス幅信号生成回路260は本発明の実施の形態1では積分回路とシュミット回路との組み合わせで構成したが、単安定マルチバイブレータを用いて、所定のパルス幅を有する信号を生成してもよい。
否定論理積(NAND)回路272の第1の入力端子はノードN24に接続される。ノードN24にはシュミット回路268の出力端子が接続されているので第1の最小パルス幅信号生成回路260で生成される比較的パルス幅の小さな第1の最小幅パルスが生じる。ノードN24に生じる第1の最小幅パルスのパルス幅はVCOクロック信号CKvcoの周期T1に比例するが、概括的な大きさは数十ns〜数百nsであり、その周波数はVCOクロック信号CKvcoのそれと同じである。否定論理積(NAND)回路272の第2の入力端子は、インバータ256とインバータ258の共通接続点に接続される。これらの共通接続点に生じる信号はVCOクロック信号CKvcoと実質的に同じ信号である。否定論理積(NAND)回路272の出力端子はノードN25に接続され、ノードN25には第1の最小パルス幅信号生成回路260の出力信号とVCOクロック信号CKvcoとの論理積された信号が出力される。否定論理積(NAND)回路272の出力信号はインバータ273に入力され、インバータ273の出力端子はノードN26に接続される。ノードN26に生じる信号は、第1の最小パルス幅信号生成回路260の出力信号にほぼ等しい。ノードN26に生じる信号は否定論理和(NOR)回路274の第1の入力端子に入力される。
第2の最小パルス幅信号生成回路280の入力端子はノードN27に接続される。入力端子252とノードN27との間にはインバータ254,286の直列接続体が接続される。したがって、第2の最小パルス幅信号生成回路280の入力端子、すなわちノードN27にはVCOクロック信号CKvcoと実質的に同じ信号が入力される。ノードN27には抵抗282及びキャパシタ284で構成された積分回路が接続される。この積分回路は次段のシュミットトリガ回路288で第2の最小パルス幅を有する所定の信号を生成するために用意されている。すなわち、抵抗282とキャパシタ284による積分回路によって所定の立上り,立下り時間に設定された三角波状又はのこぎり波状の信号を生成する。すなわち抵抗282とキャパシタ284のCR時定数の設定によって所定のパルス幅を有する信号を生成する。シュミットトリガ回路288の入力端子はノードN28に接続される。シュミットトリガ回路288の出力端子はノードN29に接続される。第2の最小パルス幅信号生成回路280で生成される信号はデューティ比調整回路200のデューティ比の調整率を一義的に決定する。第2の最小パルス幅信号生成回路280は本発明の実施の形態1では積分回路とシュミット回路との組み合わせで構成したが、単安定マルチバイブレータを用いて、所定のパルス幅を有する信号を生成することもできる。
否定論理積(NAND)回路292の第2の入力端子はノードN29に接続される。ノードN29はシュミット回路288の出力端子に接続されているので第2の最小パルス幅信号生成回路280で生成される比較的パルス幅の小さな信号が生じる。ノードN29に生じる信号のパルス幅はVCOクロック信号CKvcoの周期T1に比例するが、概括的な大きさは数十ns〜数百nsであり、その周波数はVCOクロック信号CKvcoのそれと同じである。否定論理積(NAND)回路292の第1の入力端子は、インバータ254とインバータ256の共通接続点に接続される。これらの共通接続点にはノードN21に接続され、ノードN21に生じる信号はVCOクロック信号CKvcoの反転信号と実質的に同じである。
否定論理積(NAND)回路292の出力端子はノードN30に接続される。ノードN30には第2の最小パルス幅信号生成回路280の出力信号とVCOクロック信号CKvcoとの論理積される信号が出力される。否定論理積(NAND)回路292の出力信号はインバータ293に入力され、インバータ293の出力端子はインバータ294の入力端子及びノードN31に接続される。ノードN31に生じる信号は、第2の最小パルス幅信号生成回路280の出力信号にほぼ等しい。
否定論理積(NAND)回路295の第1の入力端子はノードN12に接続される。第2の入力端子はノードN32に接続される。ノードN32には否定論理積(NAND)回路292から出力される信号が入力されているので、ノードN32にはインバータ293,294で極性が反転された、すなわち、ノードN30に生じる信号とほぼ等しい信号が表れることになる。
否定論理積(NAND)回路295の出力端子はノードN33に接続される。ノードN33に生じる信号はインバータ296,297を介して出力端子290に導出される。
否定論理和(NOR)回路274の第1の入力端子すなわちノードN26には第1の最小パルス幅信号生成回路260で生成される信号が入力される。第2の入力端子すなわちノードN31には第2の最小パルス幅信号生成回路280で生成される信号が入力される。こうした回路構成によって、否定論理和(NOR)回路274の出力端子が接続されるノードN34には両者の最小パルス幅信号生成回路で生成される2つの信号が合成され第1のスイッチ制御信号Cswが出力される。第1のスイッチ制御信号Cswはインバータ275で極性が反転されて第2のスイッチ制御信号XCswと成し、第1,第2のトランスファーゲート206,208の第1のスイッチ制御信号として印加される。インバータ275の出力端子はノードN35に接続される。ノードN35に生じる第2のスイッチ制御信号XCswはラッチ回路210のノードN3b,N6bに、ノードN34に生じる第1のスイッチ制御信号CswはノードN3a,N6aに各別に供給される。
ここでRSフリップフロップ220の出力端子に接続されるノードN11から出力端子290までの信号の流れについて説明する。
否定論理和(NOR)回路228の第1の入力端子はノードN11に接続される。ノードN11にはRSフリップフロップ220の出力信号が取り出される。ノードN11に取り出されるPWM信号Pn11はラッチ回路210の出力端子であるノードN4に生じるラッチ出力信号Pn4とほぼ同じである。ラッチ出力信号Pn4はパルス幅がすでに調整された、すなわちデューティ比が調整された第1,第2のスイッチ制御信号Csw,XCswによって書き込まれているために、ノードN11にはデューティ比が調整されたPWM信号が生じる。
否定論理和(NOR)回路228の第2の入力端子はノードN26に接続される。否定論理和(NOR)回路228の第1及び第2の入力端子にはRSフリップフロップ220の出力信号及び第1の最小パルス幅信号生成回路260で生成される信号が各別に入力される。これによって否定論理和(NOR)回路228の出力端子には両者の信号の否定論理和信号が出力される。RSフリップフロップ220の出力信号は、ラッチ出力信号Pn4とVCOクロック信号CKvcoの2つの信号が論理処理された信号である。一方、最小パルス幅信号生成回路260で生成される信号はVCOクロック信号CKvcoのみの信号成分のみを有する。したがって、否定論理和(NOR)回路228の出力にはラッチ出力信号Pn4がVCOクロック信号CKvcoに同期されて出力される。
否定論理和(NOR)回路228の出力信号はインバータ232を介して否定論理積(NAND)回路295の第1の入力端子に入力される。インバータ232の出力端子はノードN12に接続される。否定論理積(NAND)回路295の第1の入力端子及び第2の入力端子には、否定論理和(NOR)回路228の出力信号及び否定論理積(NAND)回路292の出力信号が各別に入力される。否定論理積(NAND)回路295の第1の入力端子,第2の入力端子及び出力端子はノードN12,ノードN32及びノードN33に各別に接続される。又、否定論理和(NOR)回路228の出力信号は前に述べたようにPWM信号P50とVCOクロック信号CKvcoの2つの信号が論理処理された信号である。一方、否定論理積(NAND)回路292の出力信号は、VCOクロック信号CKvcoの信号を有するだけで、PWM信号P50の信号は反映されていない。否定論理積(NAND)回路295においては、PWM信号P50と第2の最小パルス幅信号生成回路280で生成される信号の論理積処理が実行され、インバータ296,297を介して出力端子290に出力される。なお、否定論理積(NAND)回路295の第1の入力端子には第1の否定論理和(NOR)回路228の出力信号が入力され、その出力信号には、第1の最小パルス幅信号生成回路260で生成される信号が反映されているので、出力端子290に出力されるPWM信号P290はPWM信号P50の信号はもちろんのこと、第1,第2の最小パルス幅信号生成回路260,280で生成された、いわゆる最小パルス幅に調整された、すなわち、所定のデューティ比に調整されたVCOクロック信号CKvcoの信号が反映されたものである。出力端子290から出力されるPWM信号P290は図1に示す第1のドライバー170及び第2のドライバー180に供給される。出力端子290から出力されるPWM信号290はラッチ回路210の出力端子すなわちノードN4に出力されるラッチ出力信号Pn4とほぼ等価である。
なお、デューティ比調整回路200には否定論理積(NAND)回路216,226,272,292,295及び否定論理和(NOR)回路228,274を用いた。しかしこれらは1つの実施の形態であってこれらのものに限定されるものではない。たとえば否定論理積(NAND)回路は、論理積(AND)回路とインバータの組み合わせで構成してもよい。又、否定論理和(NOR)回路は、論理和(OR)回路とインバータの組み合わせで構成してもよい。いずれにしても論理積(AND)回路,否定論理積(AND)回路,論理和(OR)回路,
否定論理和(NOR)回路を総称して「論理回路」と定義するならば当業者にはこれらの論理回路の組み合わせによって本発明に開示した技術的思想を比較的容易に実現することができる。
図6Aは、PWM信号のデューティ比が50%近傍時においてPWM回路150及びその周辺の回路部に表れる信号波形を示す。図6Aの上段には図1のVCO160で生成され、矩形波信号であるVCOクロック信号CKvcoを示す。VCOクロック信号CKvcoは立上りエッジtr及び立下りエッジtfを有し、その周期は参照符号T1で表されている。
図6Aの中段にはVCOクロック信号CKvcoの立上りエッジtr及び立下りエッジtfに三角波信号Psの最小値PsL及び最大値PsHがそれぞれ同期している状態及び積分信号S50を示す。三角波信号PsはVCOクロク信号CKvcoと同様にVCO160で生成される。積分信号S50は図1に示した積分回路140の出力信号であると同時にPWM回路150の入力信号でもある。積分信号S50と三角波信号PsはPWM回路150に内蔵されたコンパレータでそのレベル同士が比較される。図6Aの下段にはPWM回路150の出力端子及び入力端子202に出力されるPWM信号P202を示す。PWM信号P202は積分信号S50と三角波信号Psとの交わったタイミングで生成されるので、三角波信号Psが積分信号S50よりもたとえば高いレベルでハイレベルとなり、低いレベルでローレベルとなる極性で出力される。
図6Bは、PWM信号のデューティ比が0%近傍時においてPWM回路150及びその周辺の回路部に表れる信号波形を示す。図6Bの上段には図1のVCO160で生成され、矩形波信号であるVCOクロク信号CKvcoを示す。すなわち、図6Aの上段に示したVCOクロック信号CKvcoとまったく同じものを示している。図6Bの中段にはVCOクロック信号CKvcoの立上りエッジtr及び立下りエッジtfに三角波信号Psの最大値PsH及び最小値PsLがそれぞれ同期している状態及び積分信号S0を示す。三角波信号PsはVCOクロク信号CKvcoと同様にVCO160で生成される。積分信号S0は図1に示した積分回路140の出力信号であると同時にPWM回路150の入力信号でもある。積分信号S0と三角波信号PsはPWM回路150に内蔵されたコンパレータでそのレベル同士が比較される。図6Bの下段にはPWM回路150の出力端子及び入力端子202に出力されるPWM信号P202を示す。PWM信号P202は、三角波信号Psが積分信号S0よりも高いレベルでハイレベルとなり、低いレベルでローレベルとなる極性で出力される。
図6Bの中段に示すようにPWM信号P0のデューティ比が0%の近傍時においては、積分信号S0の最大値S0Hと三角波信号Psの最大値PsHとは極めて接近したレベルに置かれ両者の差分電圧が極めて小さいことを示している。この差分電圧が小さくなればなるほど、PWM回路150に内蔵されるコンパレータの回路機能は低下する。すなわち、コンパレータのオン/オフ動作の境界が不明確となってPWM信号が周期的に出力されなくなりポップノイズの発生が出易くなることを知見した。
図6Bの下段にはデューティ比が0%近傍時のときにPWM回路150の出力端子及び入力端子202に出力されるPWM信号P0を模式的に示す。PWM信号P0は積分信号S0と三角波信号Psと交わったタイミングで生成されるので、三角波信号Psが積分信号S0よりもたとえば高いレベルでハイレベルとなり、低いレベルでローレベルとなる信号極性で出力される。
図6Cは、PWM信号のデューティ比が100%近傍時においてPWM回路150及びその周辺の回路部に表れる信号波形を示す。図6Cの上段には図1のVCO160で生成され、矩形波信号であるVCOクロク信号CKvcoを示す。すなわち、図6A,図6Bの各上段に示したVCOクロック信号CKvcoとまったく同じものを示している。図6Cの中段にはVCOクロック信号CKvcoの立上りエッジtr及び立下りエッジtfに三角波信号Psの最大値PsH及び最小値PsLがそれぞれ同期している状態及び積分信号S100を示す。三角波信号PsはVCOクロク信号CKvcoと同様にVCO160で生成される。積分信号S100は図1に示す積分回路140の出力信号であると同時にPWM回路150の入力信号でもある。積分信号S100と三角波信号PsはPWM回路150に内蔵されたコンパレータでそのレベル同士が比較される。図6Bの下段にはPWM回路150の出力端子及び入力端子202に出力されるPWM信号P202を示す。PWM信号P202は、三角波信号Psが積分信号S50よりも高いレベルでハイレベルとなり、低いレベルでローレベルとなる極性で出力される。
図6Cの中段に示すようにPWM信号のデューティ比が100%近傍時においては、積分信号S100の最小値S100Lと三角波信号Psの最小値PsLとは極めて接近したレベルに置かれ両者の差分電圧が極めて小さいことを示す。この差分電圧が小さくなればなるほど、PWM回路150に内蔵されるコンパレータの回路機能が低下すると言う不具合が生じ得る。こうした不具合はデューティ比が0%の場合と同じである。
図6Cの下段にはデューティ比が100%近傍時のときにPWM回路150の出力端子及び入力端子202に出力されるPWM信号P202を模式的に示す。
図7は、図4,図5に示すデューティ比調整回路200の回路動作の基本概念を説明するために用意した図面である。すなわち、入力端子202及び出力端子290にそれぞれ入力及び出力されるPWM信号のタイミングと信号波形をデューティ比が50%、0%及び100%の近傍を例に取り上げそれぞれ図示したものである。
図7(a)に示す三角波信号Psは、図6A〜図6Cの各中段に示す三角波信号Psと同じものを示す。すなわち、三角波信号Psは図1においてVCO160で生成され、その大きさは最大値PsH及び最小値PsLを有する。
図7(b)に示すVCOクロック信号CKvcoは、図6A〜図6Cの各上段に示すVCOクロック信号CKvcoのものと同じであり、立上りエッジtr,立下りエッジtf及び周期T1を有する。VCOクロック信号CKvcoも三角波信号Psと同様にVCO160で生成される。VCOクロック信号CKvcoの周波数は数百KHzから数MHzに設定され、実施の形態1ではVCOクロック信号CKvcoの周波数はたとえば500KHzである。周波数がたとえば500KHzであるならばその周期T1の大きさは2μsとなる。
図7(c)は、第1の最小幅パルスPm1を示す。第1の最小幅パルスPm1は、図5示のデューティ比調整回路200のノードN26に取り出され、VCOクロック信号CKvcoの立上りエッジtr及び三角波信号Psの最小値PsLに同期し、かつVCOクロック信号CKvcoとの間で所定の調整率に設定されたパルス幅Wpm1を有する。ここで所定の調整率とはVCOクロック信号CKvcoの周期T1のたとえば0%〜5%の範囲であり、さらに好ましくは周期T1の3%の大きさである。VCOクロック信号CKvcoの周期T1=2μsとし、パルス幅の調整率を仮に3%とすると、Wpm1=2μs×0.03=60nsとなる。本発明において、第1の最小幅パルスPm1は後述の第2の最小幅パルスPm2ととともにデューティ比の調整率を一義的に決定する。ここで、「一義的」なる意味合いは、本発明の実施の形態1においては、第1,第2の最小幅パルスPm1,Pm2を所定の大きさに設定すると、その大きさに基づきデューティ比の調整率が必然的に決定されるということである。言い換えればデューティ比の調整は第1,第2の最小幅パルスPm1,Pm2によって決定するものであって他の回路部によっては決定していないということである。なお、第1の最小幅パルスPm1は最終的にはノードN26から取り出されるが、元々は第1の最小幅信号生成回路260で生成されるものである。
図7(d)は、第2の最小幅パルスPm2を示す。第2の最小幅パルスPm2は、図5示のデューティ比調整回路200のノードN31に取り出され、VCOクロック信号CKvcoの立下りエッジtf及び三角波信号Psの最大値PsHに同期し、かつVCOクロック信号CKvcoとの間で所定の調整率に設定されるパルス幅Wpm2を有する。ここで所定の調整率は第1の最小幅パルスPm1に適用したものと同じである。すなわち、所定の調整率はVCOクロック信号CKvcoの周期T1のたとえば0%〜5%の範囲であり、さらに好ましくは周期T1の3%の大きさである。VCOクロック信号CKvcoの周期T1=2μsとし、パルス幅の調整率を仮に3%とすると、Wpm2=2μs×0.03=60nsとなる。本発明において、第2の最小幅パルスPm2のパルス幅Wpm2は、第1の最小幅パルスPm1のパルス幅Wpm1と同様にデューティ比の調整率を一義的に決定する。第2の最小幅パルスPm2は最終的にはノードN31から取り出されるが、元々は第2の最小幅信号生成回路280で生成されたものである。通常、第2の最小幅パルスPm2は第1の最小幅パルスPm1とほぼ同じ回路で生成するようにしているのでこれらのパルス幅にはWpm2=Wpm1=Wpmの関係が成立する。
図7(e)は第1のスイッチ制御信号Cswを示す。第1のスイッチ制御信号Cswは、図5示のデューティ比調整回路200のノードN34に取り出される。ノードN34は否定論理和(NOR)回路274の出力端子に接続されている。否定論理和(NOR)回路274の2つの入力端子はノードN26,N31に接続され、それらのノードには図7(c),(d)示す第1,第2の最小幅パルスPm1,Pm2が各別に入力されているので、これらの2つのパルスを否定論理和(NOR)処理した信号がノードN34に導出される。したがって、ノードN34に導出される第1のスイッチ制御信号Cswは図7(c),(d)に示す信号波形を合成し、その合成した波形を反転させた信号に等しくなるので、図7(e)に示すような信号波形となる。又、第1のスイッチ制御信号Cswのパルス幅WswはWpmにほぼ等しい。すなわち、Wsw=Wpm=Wpm1=Wpm2の関係を有する。なお、第1のスイッチ制御信号Cswの周期T2はVCOクロック信号CKvcoの周期T1の1/2の大きさ、すなわち、T2=T1/2の大きさである。
第1のスイッチ制御信号Cswはトランスファーゲート206,208の制御端子であるノードN3a,N6aに入力される。なお、トランスファーゲート206,208の制御端子N3b,N6bには第2のスイッチ制御信号XCswが入力される。第2のスイッチ制御信号XCswは第1のスイッチ制御信号Cswの極性が反転されたものであるので図7には示していないことを理解されたい。
図7(f)は、入力端子202に入力されるデューティ比が50%の近傍のPWM信号P50を模式的に示す。デューティ比が50%の場合は、図7(b)に示すVCOクロック信号CKvcoとほぼ同じ信号波形を示すことになる。
図7(g)は、入力端子202にデューティ比が50%の近傍のPWM信号P50が入力されたとき、出力端子290に出力されるPWM信号P290を示す。すなわち、出力端子290に出力されるPWM信号P290はデューティ比調整回路200で信号処理される最終的なPWM信号であるが、デューティ比が50%の近傍のPWM信号P50の場合には入力端子202に入力されるPWM信号P50とほぼ同じPWM信号P290が出力される。
図7(h)は、入力端子202に入力されるデューティ比が0%の近傍のPWM信号P0を模式的に示す。デューティ比が0%の近傍の場合、PWM信号P0は図7(a)に示す三角波信号Psの最大値PsH及び図7(b)に示すVCOクロック信号CKvcoの立下りエッジtfに同期したタイミングで表れる。このとき、立上りエッジtr0及び立下りエッジtf0は互いに極めて近接した状態に置かれる。
図7(i)は、入力端子202にデューティ比が0%の近傍のPWM信号P0が入力されたときに出力端子290に出力されるPWM信号P290を模式的に示す。図7(i)に示すPWM信号P290は、図7(h)に示すものとは異なり、パルス幅Wpm0がパルス幅Wp0よりも大きくなっていることが分かる。すなわち、パルス幅Wpm0は図7(d)に示す第2の最小幅パルスPm2のパルス幅Wpm2の大きさまで拡張される。正確にはPWM信号P290のパルス幅Wpm0は第2の最小幅パルスPm2のパルス幅Wpm2よりも少し大きくなる。なぜならば、PWM信号P0のパルス幅Wp0の1/2の大きさの分だけ広くなるからである。なお、広がる幅の大きさはPWM回路150及びデューティ比調整回路200の能力にも依存する。いずれにしてもこの広がるパルス幅の差分を考慮してデューティ比の調整範囲を決めるとよい。
図7(j)は入力端子202に入力されるデューティ比が100%の近傍のPWM信号P100を模式的に示す。デューティ比が100%の近傍の場合、PWM信号P100は図7(a)に示す三角波信号Psの最小値PsL及び図7(b)に示すVCOクロック信号CKvcoの立上りエッジtrに同期したタイミングで表れる。このとき、立上りエッジtf100及び立下りエッジtf100は互いに近接した状態に置かれる。こうした状態は図7(h)に示すデューティ比が0%の近傍の場合とほぼ同じである。
図7(k)は入力端子202にデューティ比が100%の近傍のPWM信号P100が入力されたときに、出力端子290に出力されるPWM信号P290を模式的に示す。図7(k)に示すPWM信号P290は図7(j)に示すものとは異なり、パルス幅Wpm100がパルス幅Wp100に比べて小さくなっていることが分かる。このことは入力端子202に入力されるPWM信号P100のデューティ比が出力端子290から出力されるときには小さくなっていることを意味する。両者のパルス幅の差、すなわち、(Wp100−Wpm100)の大きさは図7(c)に示す第1の最小幅パルスPm1のパルス幅Wpm1にほぼ等しい。両者のパルス幅の差、(Wp100−Wpm100)がデューティ比が調整された大きさに相当する
図8は、図5に示すデューティ比調整回路200のタイミングチャートを示す。図8に示す各ノードの信号は図7に示したものと一部重複する。図7はデューティ比が50%,0%及び100%の近傍を取り上げデューティ比が調整される回路動作の基本概念を説明するものであった。図8はデューティ比が100%の近傍だけを取り上げて説明するものではあるが、先の図7の説明を参照すれば、デューティ比が50%,0%の近傍の回路動作も当業者には容易に推察できるものと思料する。なお、デューティ比調整回路200に供給する電源電圧はたとえば5Vである。したがって、各種の信号、矩形波信号及び各種のパルス信号の振幅値は三角波信号Psを除いてほぼ5Vである。
図8(a)は三角波信号Psを示し、図1示のVCO160において生成される。三角波信号Psの周波数は他励発振型PWM方式では一般的に数百KHzから数MHzに選ばれる。本発明の実施の形態1においては周波数は500KHzである。三角波信号Psの最大値PsHと最小値PsLとの振幅の差、すなわち三角波信号Psの振幅値はたとえば3V前後に選ばれている。
図8(b)は、VCOクロック信号CKvcoを示す。VCOクロック信号CKvcoは三角波信号Psと同様にVCO160で生成される。VCOクロック信号CKvcoはデューティ比調整回路200の各種信号を生成するための基本信号となり、また、各論理回路の入力信号として用いられる。VCOクロック信号CKvcoの周波数は、三角波信号Psのそれと同じ大きさに選ばれ、たとえば周波数f,周期T1はそれぞれf=500KHz,T1=2μsである。VCOクロック信号CKvcoの立上りエッジtr及び立下りエッジtfは図8(a)に示した三角波信号Psの最小値PsL及び最大値PsHにそれぞれ同期している。
図8(c)は、第1の最小幅パルスPm1を示す。第1の最小幅パルスPm1は図4,図5に示した第1の最小パルス幅信号生成回路260において、VCOクロック信号CKvcoを元にして生成される。第1の最小幅パルスPm1の立上りエッジtrPm1はVCOクロック信号CKvcoの立上りエッジtr及び三角波信号Psの最小値PsLに同期している。
VCOクロック信号CKvcoの立上りエッジtrは図7(j)で説明したように、デューティ比が100%の近傍に関与している。したがって、VCOクロック信号CKvcoの立上りエッジtrに同期させて第1の最小幅パルスPm1を生成すればデューティ比が100%の近傍のPWM信号を制御し調整することができる。第1の最小幅パルスPm1は図5に示す抵抗262及びキャパシタ264によってVCOクロック信号CKvcoをたとえば三角波状の信号に波形整形し、その後、波形整形した信号を後段のシュミットトリガ回路268で生成される。第1の最小パルス幅Wpm1の具体的な大きさはVCOクロック信号CKvcoの周期T1の大きさの数パーセントであり、好ましくは0%〜5%であって、さらに好ましくは3%である。第1の最小パルス幅Wpm1の大きさによって本発明にかかるデューティ比の調整率が一義的に決定される。
デューティ比の調整率を上限値及び下限値に対してそれぞれ3%に設定する場合、すなわち、デューティ比の調整範囲を0%〜3%及び97%〜100%に設定する場合であって、VCOクロック信号CKvcoの周波数f,周期T1をそれぞれf=500KHz,T1=2μsに設定した場合には、第1の最小幅パルスPm1の最小パルス幅Wpm1は、Wpm1=T1×3%=2μs×0.03=60nsに設定されることになる。
図8(d)は、第2の最小幅パルスPm2を示す。第2の最小幅パルスPm2は図4,図5に示した第2の最小パルス幅信号生成回路280で、VCOクロック信号CKvcoを元にして生成される。第2の最小幅パルスPm2の立上りエッジtrPm2はVCOクロック信号CKvcoの立下りエッジtf及び三角波信号Psの最大値PsHに同期している。第2の最小幅パルスPm2は図5に示す抵抗282及びキャパシタ284によってVCOクロック信号CKvcoをたとえば三角波状の信号に波形整形し、その後、波形整形した信号を後段のシュミットトリガ回路288で生成される。第2の最小幅パルスPm2の最小パルス幅Wpm2は抵抗282及びキャパシタ284のいわゆるCR時定数の大きさによって決定される。最小パルス幅Wpm2の大きさによって本発明にかかるデューティ比の調整率及び調整範囲が一義的に決定される。
VCOクロック信号CKvcoの立下りエッジtfの近傍は、図7(h)で説明したように、デューティ比が0%の近傍のPWM信号に関与している。したがって、VCOクロック信号CKvcoの立下りエッジtfに同期して生成される第2の最小幅パルスPm2はデューティ比が0%の近傍のPWM信号を制御し調整するために生成されるものである。第2の最小幅パルスPm2は図5に示す抵抗282及びキャパシタ284によってVCOクロック信号CKvcoを三角波状の信号に波形整形し、その後、波形整形された信号を後段のシュミットトリガ回路288で生成される。第2の最小パルス幅Wpm2の具体的な大きさは最小パルス幅Wpm1と同じであるので説明は割愛する。いずれにしても第2の最小パルス幅Wpm2も第1の最小パルス幅Wpm1と同様にその大きさによって本発明にかかるデューティ比の調整率及び調整範囲を一義的に決定することになる。なお、第1の最小パルス幅のWpm1と第2の最小パルス幅Wpm2を同じ大きさWpmに設定し、VCOクロック信号CKvcoの周期をT1とするとデューティ比の調整率Dcontはほぼ、Dcont=(Wpm/T1)×100%で表すことができる。このとき、デューティ比の調整範囲Drange1,Drange2は、それぞれ、Drange1=(0〜Dcont)%、Drange2=((100−Dcont)〜100)%で表せれる。たとえば、調整率Dcont=3%に設定した場合、調整範囲Drange1は0%〜3%となり、調整範囲Drange2は97%〜100%となる。すなわち、デューティ比が0%〜3%及び97%〜100%の範囲のPWM信号がデューティ比の調整対象となる。
図8(e)は、ラッチ回路210を駆動する第1のスイッチ制御信号Cswを示す。第1のスイッチ制御信号Cswは図5に示すノードN34すなわち否定論理和(NOR)回路274の出力端子から取り出される。第1のスイッチ制御信号Cswは図8(c),(d)に示す第1の最小幅パルスPm1と第2の最小幅パルスPm2を否定論理和処理することによって生成される。第1のスイッチ制御信号Cswのパルス幅Wswは第1の最小幅パルスのパルス幅Wpm1にほぼ等しい。第1のスイッチ制御信号Cswがローレベルからハイレベルに遷移するときにラッチ回路210はデータすなわちPWM信号を書き込み、ハイレベルからロレベルに遷移するときにPWM信号を保持するよう回路構成が成されている。もちろん、この逆の遷移でラッチ回路210を駆動させてもよい。
図8(f)は、ラッチ回路210を駆動する第2のスイッチ制御信号XCswを示す。第2のスイッチ制御信号XCswは図5に示すノードN34すなわち否定論理和(NOR)回路274の出力端子から取り出される。第2のスイッチ制御信号XCswのパルス幅Wsw2は第2の最小幅パルスのパルス幅Wpm2にほぼ等しい。第2のスイッチ制御信号XCswは図8(e)に示す第1のスイッチ制御信号Cswとは極性が反転されており、これら両者は互い相補の関係を有する。第2のスイッチ制御信号XCswがハイレベルからローレベルに遷移するときにラッチ回路210はデータすなわちPWM信号を書き込み、ハイレベルからローレベルに遷移するときにPWM信号を保持する。なお、第1,第2のスイッチ制御信号Csw,XCswのどのタイミングでラッチ回路210を制御するかについては当業者には設計的事項の1つである。
図8(g)は、図5に示すデューティ比調整回路200の入力端子202に入力されるPWM信号P100を模式的に示す。説明及び作図の便宜上、図8(g)に示したPWM信号P100はデューティ比が100%の近傍のPWM信号であるとして模式的に示している。PWM信号P100はVCOクロック信号CKvcoの立上りエッジtrに同期している。
図8(h)は図5において、入力端子202に接続されるインバータ204の出力、すなわちノードN1に生じるPWM信号Pn1を示す。すなわち、図8(g)に示したすなわちデューティ比が100%の近傍のPWM信号の極性が反転されたものを示している。図8(h)に示される信号波形はパルス幅が極めて小さいので一見するとデューティ比が0%の近傍ではないかと思われるかも知れないが、実体は図8(g)に示した、すなわちデューティ比が100%の近傍のPWM信号の極性を反転したものであることを理解されたい。
図8(i)は、ラッチ回路210の出力信号であるラッチ出力信号Pn4を示す。図8(h)にパルス幅をWpm1として示すように比較的パルス幅の小さなPWM信号Pn1がラッチ回路210の出力端子に相当するノードN4に取り出されるときには図8(i)に示すようにパルス幅Wpn4まで拡張されて出力される状態を示している。拡張されたパルス幅、すなわち、(Wpn4−Wpn1)の大きさは、ほぼ第1,第2の最小幅パルスの最小パルス幅Wpm1,Wpm2に等しい。言い換えれば、最小パルス幅Wpm1,Wpm2よりも小さなデューティ比を有するPWM信号は最小パルス幅Wpm1,Wpm2の大きさまで拡張されることを示している。図8(i)に示すラッチ出力信号Pn4は前述のとおりデューティ比が100%の近傍のPWM信号である。したがって、パルス幅Wpn4の大きさが大きくなればなるほどデューティ比は小さくなるのだが、図8(h),(i)の両者を比較して明らかなようにパルス幅WPn4はパルス幅WPn1よりも大きくなっていることが分かる。このことは当初100%の近傍であったデューティ比が調整されて小さくなったことを意味する。そして、小さくなったパルス幅の大きさは最小パルス幅Wpm1,Wpm2にほぼ等しい。前述のとおり第1,第2の最小パルス幅Wpm1,Wpm2の大きさが、VCOクロック信号CKvcoの周期T1の大きさのたとえば3%に設定されるとすれば、100%近傍のデューティ比をもったPWM信号はデューティ比が3%程度減じられる結果デューティ比が97%程度まで調整されることになる
図8(g),(h)及び(i)はPWM信号のデューティ比が100%の近傍を模式的示したものであることは前述のとおりである。これらの信号波形は、図8(b)に示したVCOクロック信号CKvcoの立上りエッジtrに関与している。
PWM信号のデューティ比が0%の近傍についてもデューティ比が100%の近傍のときと同じことが言える。すなわち、デューティ比が0%の近傍の場合は、図8(h),(i)の信号波形を図8(b)に示すVCOクロック信号CKvcoの立下りエッジtfに同期するようシフトさせることによってデューティ比が100%の場合と同様に考えることができる。この場合、デューティ比が0%〜3%までのPWM信号は一義的にデューティ比が3%のPWM信号に調整されることになる。
図8(j)に示すVCOクロック信号XCKvcoは、図8(b)に示したVCOクロック信号CKvcoの極性が反転された信号である。VCOクロック信号XCKvcoは、図5において、VCOクロック信号CKvcoが入力される入力端子252に接続されたインバータ254の出力すなわちノードN21に生じる信号とほぼ等しくて、かつ、否定論理積(NAND)回路216の第2の入力端子に入力される信号と等しい。VCOクロック信号XCKvcoは、RSフリップフロップ220のセットパルスPset及びリセットパルスPresetを生成するために用意されている。
図8(k)に示すセットパルスPsetはRSフリップフロップ220の回路動作をセットするために用意される。セットパルスPsetは、否定論理積(NAND)回路216において、図8(i)及び(j)に示したラッチ出力信号Pn4及びVCOクロック信号XCKvcoの両者を否定論理積処理することで生成される。セットパルスPsetの立上りエッジtfn9に同期してRSフリップフロップ220が作動する。
図8(l)に示すリセットパルスPresetはRSフリップフロップ220の回路動作をリセットするために用意される。リセットパルスPresetは、否定論理積(NAND)回路226において、図8(i)及び(j)に示すラッチ出力信号Pn4及びVCOクロック信号XCKvcoの両者の反転信号同士を否定論理積処理することで生成される。実質的にラッチ出力信号Pn4及びVCOクロック信号XCKvcoを論理和(OR)処理したものに等しいので図8(l)に示すような信号となる。リセットパルスPresetの立下りエッジtfn10に同期してRSフリップフロップ220が作動する。
図8(m)に示すPWM信号Pn11は、図5に示すRSフリップフロップ220の出力、すなわち、ノードN11に出力されるPWM信号である。RSフリップフロップ220に出力されるPWM信号Pn11は図8(k)及び(l)に示したセットパルスPset及びリセットパルスPresetでそれぞれセット及びリセットされることによって生成されるために図8(m)に示すPWM信号が取り出される。なお、図8(n)に示すPWM信号Pn11は信号の極性は反転されているが図8(i)に示すラッチ出力信号Pn4とほぼ同じである。
図8(n)に示す第2の最小幅パルス信号Pn32はノードN32に生じる信号を示し、この信号は図8(d)に示す第2の最小幅パルスPm2の極性が反転されたものにほぼ等しい。
図8(o)に示すPWM信号Pn12はノードN12すなわちインバータ232の出力端子に出力される信号であり、PWM信号Pn12はRSフリップフロップ220の出力端子すなわちノードN11に取り出され図8(m)に示すPWM信号Pn11とほぼ等しい。
図8(p)に示すPWM信号P290は、出力端子290に出力されるデューティ比調整回路200の出力信号である。出力端子290にはデューティ比が調整されたPWM信号及び調整されなかったPWM信号のすべてが出力されることになる。
図8(p)に示すPWM信号P290のデューティ比がどの程度調整されたかについては、図8(g)と比較すれば容易に理解することができる。すなわち、図8(g)に示すPWM信号P100はデューティ比が100%の近傍のものを模式的に示すものであり、その信号のパルス幅はWp100で示されるものであった。このPWM信号P100はデューティ比が調整された後は図9(p)に示すようにパルス幅Wpm100で示すようにデューティ比が調整される前のパルス幅Wp100よりも小さく(狭く)なっていることが分かる。このことはデューティ比が調整されたことを意味する。小さくなった差分パルス幅ΔWpはΔWp=(Wp100−Wpm100)となる。そして差分パルス幅ΔWpは、図8(c)に示す第1の最小幅パルスP1の最小パルス幅Wpm1に等しい。ここで、第1の最小幅パルスP1の最小パルス幅Wpm1はVCOクロック信号CKvcoの周期T1の0%〜5%の範囲であり好ましくは3%程度である、したがって、デューティ比の調整率は3%となり、デューティ比の調整範囲は97%〜100%となるのである。
前述のとおり図8はデューティ比が100%の近傍のものを例示したものであったが、デューティ比が0%の近傍の場合も同様に考えることができる。すなわち、デューティ比が0%の近傍のPWM信号のデューティ比の調整範囲は0%〜3%となる。なお、デューティ比が第1,第2の最小幅パルスWpm1,Wpm2を超えるPWM信号の場合はデューティ比の調整は実行されずに入力端子202に入力された元来のデューティ比のPWM信号がそのまま出力端子290に出力されることになる。
以上説明したように、PWM回路150が0%〜100%の第1のデューティ比の範囲のPWM信号を処理するのに対してデューティ比調整回路200は第1のデューティ比の範囲よりも狭いたとえば、3%(又は5%)〜97%(又は95%)の範囲でデューティ比を調整する。
図9はデューティ比調整回路によって生成される最小パルス幅の大きさとVCOクロック信号CKvcoの周波数との関係を表した図である。すなわち、デューティ比調整回路200に設けた第1の最小パルス幅信号生成回路260及び第2の最小パルス幅信号生成回路280で生成される第1の最小パルス幅Wpm1及び第2の最小パルス幅Wpm2の大きさを、VCOクロック信号CKvcoの周波数fの大きさに応じてどの程度の大きさに調整すべきかを表す図である。特にデューティ比の調整率が3%及び5%のときを表している。第1の最小パルス幅Wpm1及び第2の最小パルス幅Wpm2は、VCOクロック信号CKvcoの周波数をf、周期をT1とすると、第1,第2の最小幅Wp1,Wp2は、Wp1=Wp2=T1×デューティ比の調整率=(1/f)×デューティ比の調整率、で決定される。したがって、VCOクロック信号CKvcoの周波数fがf=500KHzのときにデューティ比の調整率をそれぞれ3%,5%とすると、第1,第2の最小幅Wp1,Wp2は60ns,100nsとなる。又、VCOクロック信号CKvcoの周波数fが1MHz(1000KHz)のときの第1,第2の最小幅Wp1,Wp2はそれぞれ30ns,50nsとなる。
図10はデューティ比調整回路200によって調整されるデューティ比の範囲を示す。図10はデューティ比の100%の近傍の範囲を95%〜100%、0%の近傍の範囲を0%〜5%と看做した場合を示す。横軸はPWM回路150の出力信号、すなわち、デューティ比調整回路200の入力端子202に入力されるPWM信号を示し、縦軸の左側にはデューティ比調整回路200の出力端子290に出力される、いわゆるデューティ比が調整された後のPWM信号P290を表す。デューティ比の調整率が3%の場合には参照符号C1で示すようにPWM信号のデューティ比が0%〜3%のPWM信号は一様にデューティ比が3%のPWM信号に調整され、又、デューティ比が97%〜100%のPWM信号は一様にデューティ比が97%のPWM信号P290に調整される状態を示している。同様にデューティ比の調整率が5%の場合には参照符号C2で示すようにPWM信号のデューティ比が0%〜5%のPWM信号は一様にデューティ比が5%のPWM信号に調整され、又、デューティ比が95%〜100%のPWM信号は一様にデューティ比が95%のPWM信号に調整される状態を模式的に示している。
又、図10の縦軸の右側には、デューティ比の調整によってD級電力増幅器100全体のダイナミックレンジが変化することを模式的に示す。すなわち、デューティ比の調整がまったく施されない場合のダイナミックレンジDy0はデューティ比調整回路200を設けないときと等価であるのでダイナミックレンジはDy0=100%となる。デューティ比の調整率を大きくするにつれてダイナミックレンジは狭くなっていく。デューティ比の調整率が3%のときのダイナミックレンジDy3は調整率が0%のそれに比べて狭まくなり、さらにデューティ比の調整率が5%のときのダイナミックレンジDy5は調整率3%のそれよりもさらに狭くなる状態を模式的に示している。端的に言えば、調整率が0%のときの最大出力信号が仮に10Vppであるとき、デューティ比調整率5%に設定すると最大出力信号は10%程度少なくなり最大出力信号の振幅値は9Vppとなる。デューティ比の調整率が3%の場合には最大出力信号は6%程度少なくなり最大出力信号の振幅は9.4Vppまで減衰することになる。したがって、本発明にかかるデューティ比調整回路200を採用する場合にはD級電力増幅器100の用途及び出力すべき最大出力を考慮してデューティ比の調整率を決定することになる。
[実施の形態2]
図11は、本願発明の実施の形態2によるD級電力増幅器101の構成を示す回路ブロック図であって、図1と対比される図である。また、図12(a)〜(d)は、D級電力増幅器101の動作を示す信号波形図である。図11を参照して、このD級電力増幅器101が図1のD級電力増幅器100と異なる点は、アナログ信号処理部130がアナログ信号処理部102で置換され、電流源103,104およびキャパシタ105が追加され、デューティ比調整回路200がデューティ比調整回路106で置換されている点である。
アナログ信号処理部102は、アナログ信号処理部130からアンプ134を除去したものである。信号切換回路135の第2端子135bには、電源電圧E1の1/2の直流電圧E1/2が印加される。信号切換回路135は、たとえば可変分圧回路で構成される。図12(a)(d)に示すように、制御信号MUがローレベルの場合は(時刻t0〜t3)、信号切換回路135の分圧比は0に設定され、直流電圧E1/2が信号切換回路135を介してアンプ136に直接与えられ、アンプ136の出力電圧Sin2は直流電圧E1/2に固定される。
制御信号MUは、ミュートオン時にローレベルにされ、ミュートオフ時にハイレベルにされる信号である。制御信号MUがローレベルからハイレベルに立ち上げられると(時刻t3)、信号Sm12によって信号切換回路135の分圧比が0から1まで所定時間TAをかけて徐々に増大される(時刻t3〜t4)。これにより、アンプ136の出力電圧Sin2は、直流電圧E1/2から、直流電圧E1/2にアナログ信号Sin1が重畳した波形に徐々に変化する。ミュートオフ時は、信号切換回路135の分圧比は1に固定される。
制御信号MUがハイレベルからローレベルに立ち下げられると(時刻t5)、信号Sm34によって信号切換回路135の分圧比が1から0まで所定時間TAをかけて徐々に減少される(時刻t5〜t6)。これにより、アンプ136の出力電圧Sin2は、直流電圧E1/2にアナログ信号Sin1が重畳した波形から、直流電圧E1/2に徐々に変化する。ミュートオン時は、信号切換回路135の分圧比は0に固定される。
また、電流源103は、直流電圧E1/2のノードとアンプ142の非反転入力端子(+)との間に接続され、制御信号SDがハイレベルの場合は所定値の電流を流し、制御信号SDがローレベルの場合は電流を遮断する。電流源104は、アンプ142の非反転入力端子(+)と接地電位GND(0V)のノードとの間に接続され、制御信号SDがハイレベルの場合は電流を遮断し、制御信号SDがローレベルの場合は所定値の電流を流す。キャパシタ105は、アンプ142の非反転入力端子(+)と接地電位GND(0V)のノードとの間に接続される。
制御信号SDは、ミュートオン時はローレベルにされ、ミュートオンからミュートオフに切換える場合は、制御信号MUがハイレベルに立ち上げられる時刻(たとえばt3)よりも所定時間(TB+TC)だけ早い時刻(たとえばt1)にハイレベルに立ち上げられる信号である。また、制御信号SDは、ミュートオフ時はハイレベルにされ、ミュートオフからミュートオンに切換える場合は、制御信号MUがローレベルに立ち下げられた時刻(たとえばt5)よりも所定時間(TA+TC)だけ遅い時刻(たとえばt7)にローレベルに立ち下げられる信号である。
ミュートオン時は(時刻t0〜t1)、制御信号SDがローレベルにされ、電流源103が電流を遮断し、電流源104が電流を流し、キャパシタ105の端子間電圧V105は0Vになっている。次に、制御信号SDがローレベルからハイレベルに立ち上げられると(時刻t1)、電流源103が電流を流し、電流源104が電流を遮断し、キャパシタ105の端子間電圧V105は徐々に上昇し、所定時間TBの経過後に直流電圧E1/2に到達する。ミュートオフ時は、キャパシタ105の端子間電圧V105は直流電圧E1/2に維持される。ミュートオフからミュートオンに切換えられてから所定時間(TA+TC)の経過後に(時刻t7)、制御信号SDがローレベルに立ち下げられる。これにより、電流源103が電流を遮断し、電流源104が電流を流し、キャパシタ105の端子間電圧V105は徐々に下降し、所定時間TBの経過後に0Vに到達する(時刻t8)。
なお、アンプ142の非反転入力端子(+)と反転入力端子(−)は同じ電圧に維持されるので、スピーカRLに与えられるアナログ信号SRLの直流成分はキャパシタ105の端子間電圧V105と同じになる。
デューティ比調整回路106は、常時、デューティ比を1.5%以上に維持する。たとえば、PWM回路150から出力されるPWM信号P50の1周期を2μsecとすると、PWM信号P50の各パルスのパルス幅はデューティ比調整回路106によって少なくとも30nsecに調整される。なお、デューティ比調整回路106がない場合は、回路遅延があった場合、キャパシタ105の端子間電圧V105を0Vから直流電圧E1/2に徐々に上昇させている期間(時刻t1〜t2)において、PWM信号P50のパルスが周期的に出力されなくなり、ポップノイズが発生する。また、ミュートオフ時においては、デューティ比調整回路106がデューティ比調整回路200と同じ機能を有していてもよい。
次に、このD級電力増幅器101の動作について説明する。ミュートオン時は、制御信号SD,MUがともにローレベルに固定され、アンプ136の出力電圧Sin2は直流電圧E1/2に固定され、キャパシタ105の端子間電圧V105は0Vに固定されている。この期間(時刻t0〜t1)では、アナログ信号SRLは0Vに固定され、スピーカRLで音声は発生しない。
D級電力増幅器101のユーザによってミュートオフが指示されると、まず制御信号SDがローレベルからハイレベルに立ち上げられる(時刻t1)。制御信号SDがハイレベルにされると、電流源103が電流を流し、電流源104が電流を遮断し、キャパシタ105の端子間電圧V105が0Vから直流電圧E1/2まで所定時間TBをかけて徐々に上昇する。このとき、アナログ信号SRLは電圧V105に従って徐々に上昇するので、スピーカRLでポップノイズは発生しない。
電圧V105が一定電圧E1/2に到達してから所定時間TC経過後に(時刻t3)、制御信号MUがローレベルからハイレベルに立ち上げられる。制御信号MUがハイレベルにされると、信号切換回路135の分圧比が0から1まで所定時間TAをかけて徐々に増大し、アンプ136の出力電圧Sin2の交流成分が徐々に増大する。電圧Sin2は、PWM信号に変換されて出力端子190に出力され、さらに、インダクタL1およびキャパシタC1からなるローパスフィルタによってアナログ信号SRLに変換される。ミュートオフ時は、アナログ信号SRLの波形は、アンプ136の出力電圧Sin2の波形と同じになる。このとき、アンプ136の出力電圧Sin2の直流成分は固定されているので、交流成分の波形は歪まず、音声は劣化しない。
D級電力増幅器101のユーザによってミュートオンが指示されると、まず制御信号MUがハイレベルからローレベルに立ち下げられる(時刻t5)。制御信号MUがローレベルにされると、信号切換回路135の分圧比が1から0まで所定時間TAをかけて徐々に減少し、アンプ136の出力電圧Sin2の交流成分が徐々に減衰し、電圧Sin2は一定の電圧E1/2となる(時刻t6)。このとき、アンプ136の出力電圧Sin2の直流成分は固定されているので、交流成分の波形は歪まず、音声は劣化しない。
電圧Sin2が直流電圧E1/2になってから所定時間TC経過後に、制御信号SDがハイレベルからローレベルに立ち下げられる(時刻t7)。制御信号SDがローレベルにされると、電流源103が電流を遮断し、電流源104が電流を流し、キャパシタ105の端子間電圧V105が直流電圧E1/2から0Vまで所定時間TBをかけて徐々に下降する。このとき、アナログ信号SRLは電圧V105に従って徐々に下降するので、スピーカRLでポップノイズは発生しない。
また、デューティ比調整回路106によって、PWM信号のデューティ比が1.5%以上に維持されるので、PWM回路150からPWM信号P50のパルスが周期的に出力されなくなることに起因してポップノイズが発生することもない。
この実施の形態2では、実施の形態1と同じ効果が得られるほか、アナログ電圧Sin2の波形の歪みを小さくすることができ、音声の劣化を低減することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。