JPWO2010032583A1 - 表面保護フィルム及び積層体 - Google Patents

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Abstract

本発明の表面保護フィルムは、基材の一方の面に粘着層を有する表面保護フィルムであって、前記粘着層は150℃における貯蔵弾性率と20℃における貯蔵弾性率との差が所定の関係を満たし、かつtanδ極大温度が−5℃以下である。この発明によると、金属板、化粧板、プラスチック板、ガラス板等の被保護物表面に対する初期粘着性に優れ、かつ加熱処理、特に高温加熱を伴う用途に用いられる場合、加熱処理後も粘着力の上昇が少なく、被保護物からの剥離の際に被保護物の表面への糊残りがしにくく、かつ浮きなどの剥離現象を生じない表面保護フィルムを提供できる。

Description

本発明は、金属板、化粧板、プラスチック板、ガラス板などの加工、運搬、貯蔵などに際し一時的にその表面を保護するために使用する表面保護フィルムと、この表面保護フィルムを貼着した積層体に関する。
一般に金属板、化粧板、プラスチック板、ガラス板などの加工、運搬、貯蔵などに際し一時的にその表面を保護するために使用する表面保護フィルムとして、プラスチックフィルムなどの基材上に、合成樹脂系粘着剤を主成分として架橋剤を添加し架橋処理してなる粘着層を設けたものが知られている。(特許文献1参照)。
特開昭63−225677号公報(実施例)
しかしながら、このような表面保護フィルムは、貼付初期の粘着性は良好であるが、貼付後の経時粘着性は上昇する傾向にある。そのため使用済後の表面保護フィルムを被保護物から容易に剥離できず、剥離作業に手間を要し、また、場合によっては被保護物の表面に表面保護フィルムの粘着層の一部が糊残りしたり、表面保護フィルムが伸びて破断する等の問題点があった。
特に、表面保護フィルムが貼付された被保護物が、例えば熱成型加工や塗装後の乾燥工程等において100〜150℃程度の高温状態にさらされたり、40〜60℃程度の中温状態で長期間保存された場合に、経時で粘着性は著しく上昇する。
また、このような熱成型加工時や塗装後の乾燥工程における加熱処理(特に上記のような高温状態の場合)などにより、浮きなどの剥離現象を生じるという問題もある。
そこで本発明は、金属板、化粧板、プラスチック板、ガラス板等の被保護物表面に対する初期粘着性に優れ、かつ加熱処理、特に高温加熱を伴う用途に用いられる場合、加熱処理後も粘着力の上昇が少なく、被保護物からの剥離の際に被保護物の表面への糊残りがしにくく、かつ浮きなどの剥離現象を生じない表面保護フィルムと、この表面保護フィルムを貼着した積層体を提供することを目的とする。
本発明の表面保護フィルムは、基材の一方の面に粘着層を有する表面保護フィルムであって、前記粘着層は150℃における貯蔵弾性率と20℃における貯蔵弾性率との差が(1)式を満たし、かつtanδ極大温度が−5℃以下であることを特徴とするものである。
[数1] G’(150)−G’(20)≧0 …(1)
[式中、G’(150)は、150℃における貯蔵弾性率であり、G’(20)は20℃における貯蔵弾性率である。また、tanδは、損失弾性率を貯蔵弾性率で除した値である。]
また、好ましくは、前記粘着層は100℃〜150℃におけるtanδが0.1以下であることを特徴とするものである。
また、好ましくは、本発明の表面保護フィルムは、前記表面保護フィルムの粘着層を有する面とステンレス板(JIS G4305に規定するSUS304鋼板)とを貼合し、150℃の環境に、30分間放置した後、表面保護フィルムのステンレス板に対する粘着力(JIS Z0237:2000における180度引きはがし粘着力)が、0.1N/50mm〜1N/50mmであることを特徴とするものである。
なお、粘弾性体の正弦波状ひずみに対する応力の応答を複素数表示にした場合、(2)式のように定義され、G'を貯蔵弾性率、G''を損失弾性率、Gを複素弾性率という。
[数2] G=G’+iG” …(2)
[式中、G'はGの弾性成分を、G''はGの粘性成分を表す。]
また、本発明でいう貯蔵弾性率は、粘弾性体にひずみを与えた時のエネルギーの貯蔵分に関係し、損失弾性率はそのエネルギーの熱などによる損失分と関係する。複素弾性率とは、粘弾性体における応力とひずみの関係を表す物性値である。これらは動的粘弾性を測定することで求められる。なお、ここでいう動的粘弾性とは、正弦的変化を持つ規則的な振動を与えた時に現れる粘弾性挙動のことである。
また、tanδとは、損失弾性率の貯蔵弾性率に対する比で、損失弾性率/貯蔵弾性率で表した値である。また、tanδ極大温度とは、tanδが極大値をとるときの温度(℃)である。
本発明の積層体は、上記表面保護フィルムの粘着層を有する面が、ハードコート層上に貼着されていることを特徴とするものである。また、前記ハードコート層は、水に対する接触角が110度以下であり、椿油に対する接触角が50度以下であることを特徴とするものである。また、前記ハードコート層は、水に対する接触角が50度以上であり、ぬれ張力が27〜45mN/mであることを特徴とするものである。
本発明によれば、基材の一方の面に特定の物性を示す粘着層を有する表面保護フィルムであるため、金属板、化粧板、プラスチック板、ガラス板等の被保護物表面に対する初期粘着性に優れ、かつ加熱処理、特に高温加熱を伴う用途に用いられる場合、加熱処理後も粘着力の上昇が少なく、被保護物からの剥離の際に被保護物の表面への糊残りがしにくく、かつ浮きなどの剥離現象を生じない表面保護フィルムを提供することができる。特にハードコート層、さらには特定の表面物性を持つハードコート層に貼着した場合にも、初期粘着性に優れ、加熱処理後においてもハードコート層に糊残りが生じ難い表面保護フィルムを提供することができる。
以下、各構成要素の実施の形態について説明する。
本発明で用いる基材としては、特に透明・不透明は問わず、用途に応じて適宜選択すれば良いが、材質としては、透明なものであれば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、アクリル、ポリ塩化ビニル、ノルボルネン化合物などのプラスチックフィルムがあげられる。不透明なものとしては、紙、合成紙などの不透明基材、上記のプラスチックフィルムの内部に顔料などを含有させて不透明化させたもの、上記のプラスチックフィルムに隠蔽性を有する着色層を設けたものなどがあげられる。
基材の厚みは、用途によって異なるので一概にいえないが、取り扱いの容易性などを考慮すると、下限として2μm以上、好ましくは10μm以上、上限としては300μm以下、好ましくは125μm以下程度が一般的と考えられる。
このような基材は、後述する粘着層との接着性を向上させるために、プラズマ処理、コロナ放電処理、遠紫外線照射処理、サンドブラスト処理などの易接着処理を施したり、下引易接着処理層を設けたものであっても良い。
次に、粘着層について説明する。粘着層は150℃における貯蔵弾性率と20℃における貯蔵弾性率との差が上記(1)式を満たし、かつtanδ極大温度が−5℃以下、好ましくは−10℃以下、さらには−20℃以下である。
このように粘着層は、150℃における貯蔵弾性率と20℃における貯蔵弾性率との差が上記(1)式を満たし、かつtanδ極大温度が−5℃以下であるとき、加熱処理、特に高温加熱を伴う用途に用いられる場合、加熱処理後も粘着性の上昇が少なく、被保護物からの剥離の際に被保護物の表面への糊残りがしにくく、かつ浮きなどの剥離現象を生じない表面保護フィルムとすることができる。
すなわち、粘着層は150℃における貯蔵弾性率と20℃における貯蔵弾性率との差が、上記(1)式を満たすものとすることにより、高温時に粘着層が軟らかくなりすぎて被保護物表面と馴染みやすくなりすぎることを防止できるため、加熱処理、特に100℃〜150℃程度の高温加熱を伴う用途に用いられる場合にも、加熱処理後も粘着力の上昇が少なく、被保護物からの剥離の際に被保護物表面への糊残りがしにくいものとすることができる。
さらに粘着層はtanδ極大温度を−5℃以下とすることにより、適度なタックが得られるため、初期粘着性に優れ、100℃〜150℃程度の高温状態にさらされても浮きなどの剥離現象を生じ難くすることができる。
また、粘着層は100℃〜150℃におけるtanδが0.1以下であることが好ましい。100℃〜150℃におけるtanδを0.1以下とすることにより、粘着層における弾性成分の挙動が粘性成分の挙動よりも強く現れるため、被保護物表面と馴染みやすくなりすぎず、被保護物からの剥離の際に被保護物表面への糊残りがよりしにくいものとすることができる。また、被保護物の材料や形状によって異なってくるが、初期の粘着力が高くなりすぎるのを防止することができる傾向にある。
また、粘着層は150℃の環境に、30分間放置した後のステンレス板に対する粘着力が、0.1N/50mm〜1N/50mmとすることが好ましい。150℃の環境に、30分間放置した後のステンレス板に対する粘着力が、0.1N/50mm以上とすることにより、熱成型加工時や塗装後の乾燥工程における加熱処理などにより、浮きなどの剥離現象をより生じにくくすることができ、1N/50mm以下とすることにより、剥離性が良好であり、作業性、取扱い性を向上させることができる。
このような粘着層を構成する粘着剤としては、天然樹脂系粘着剤、合成樹脂系粘着剤等が使用され、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等の合成樹脂系粘着剤が好ましく使用される。なかでも、耐候性を有し凝集破壊を起こしにくく、また粘着力の制御が容易に行え、再剥離性、再貼着性の性能を調整することができるため、架橋性の粘着剤が好ましく、取り扱いの容易性から架橋性のアクリル系粘着剤が特に好ましく用いられる。粘着層に用いる架橋剤については、特に限定されず、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤、および金属キレート等を用いることができる。
粘着層の厚みは特に限定されないが、初期および加熱後のタック性、粘着力、取り扱い性、経済性等を考慮すると、1μm〜30μm、好ましくは2μm〜10μmである。
粘着層には、粘着性剤および架橋剤の他、顔料、染料、着色剤、マット剤、帯電防止剤、難燃剤、防カビ剤、防錆剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤、分散剤、蛍光増白剤、貯蔵安定剤、シランカップリング剤等の添加剤を添加してもよい。ただし、これら添加剤の添加量は粘着層の効果を阻害しない範囲であることが望ましい。
以上のような本発明の表面保護フィルムは、上述した粘着性剤、架橋剤、および必要に応じて加えた添加剤を、溶剤に溶解または分散して粘着層用塗布液を調製し、従来公知のコーティング方法、例えば、バーコーター、ダイコーター、ブレードコーター、スピンコーター、ロールコーター、グラビアコーター、フローコーター、スプレー、スクリーン印刷等によって、上述した基材上に塗布し、加熱によって乾燥、硬化させて粘着層を形成して得ることができる。また、取扱い性の観点から、基材上に塗布、乾燥した後、露出した粘着層の表面にセパレータを設けた後、加熱により硬化させて作製してもよい。
また、本発明の表面保護フィルムは、上述の粘着層用塗布液を上述と同様にしてセパレータ上に塗布、乾燥し、基材と貼り合せた後、加熱により硬化させることにより得ることもできる。
本発明の表面保護フィルムの使用方法の一例としては、例えば、偏光板などの光学部材の製造時、印刷工程時、電子回路基板の製造時、セラミックコンデンサのような電子部品製造時の保護などがあげられる。
以上のように、本発明の表面保護フィルムは、基材の一方の面に粘着層を有する表面保護フィルムであって、前記粘着層は150℃における貯蔵弾性率と20℃における貯蔵弾性率との差が上記(1)式を満たし、かつtanδ極大温度が−5℃以下であるため、金属板、化粧板、プラスチック板、ガラス板等の被保護物表面に対する初期粘着性に優れ、かつ加熱処理、特に高温加熱を伴う用途に用いられる場合、加熱処理後も粘着力の上昇が少なく、被保護物からの剥離の際に被保護物の表面への糊残りがしにくく、かつ浮きなどの剥離現象を生じにくくすることができる。
本発明の積層体は、上記表面保護フィルムの粘着層を有する面が、貼着対象に貼着されてなるものである。
以下、貼着対象として、様々な分野で使用されるハードコート層を例示して説明するものとする。一例としてのハードコート層は、硬化性組成物(塗料)を調製し、これを所望の被塗布対象に塗布し、硬化させることにより得ることができる。
本例で用いることのできる硬化性組成物は、樹脂成分を含有する。樹脂成分は、熱硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂の一方又は双方を含む。熱硬化型樹脂及び電離放射線硬化型樹脂は、例えばポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などで構成される。
特に硬化後の被膜硬度(ハードコート性)に優れるとの観点から、樹脂成分は、少なくとも電離放射線硬化型樹脂を含有することが好ましい。電離放射線硬化型樹脂としては、電離放射線(紫外線または電子線)の照射によって架橋硬化する光重合性プレポリマーを用いることができる。本例では、後述の光重合性プレポリマーを単独で使用してもよく、また2種以上を組合せて使用することもできる。
光重合性プレポリマーには、カチオン重合型とラジカル重合型とがある。カチオン重合型光重合性プレポリマーとしては、エポキシ系樹脂やビニルエーテル系樹脂などが挙げられる。エポキシ系樹脂としては、例えばビスフェノール系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。ラジカル重合型光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマー(硬質プレポリマー)が、ハードコート性の観点から特に好ましく使用される。
アクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、ポリフルオロアルキルアクリレート、シリコーンアクリレート等が挙げられる。ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えばポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸との反応でエステル化することにより得ることができる。ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、又は、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラックエポキシ樹脂のオキシラン環と、(メタ)アクリル酸との反応でエステル化することにより得ることができる。
アクリル系プレポリマーは、被塗布部材の種類や用途等に応じて適宜選択することができる。また、アクリル系プレポリマーは単独でも使用可能であるが、架橋硬化性の向上や、硬化収縮の調整等、種々の性能を付与するために、光重合性モノマーを加えることが好ましい。
光重合性モノマーとしては、単官能アクリルモノマー(例えば2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート等)、2官能アクリルモノマー(例えば1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート等)、3官能以上のアクリルモノマー(例えばジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等)が挙げられる。なお、「アクリレート」には、文字通りのアクリレートの他、メタクリレートも含む。これらの光重合性モノマーは単独で使用してもよく、また2種以上を組合せて使用することもできる。
硬化性組成物における光重合性プレポリマー及び光重合性モノマーの合計含有量(固形分換算)は、全樹脂成分において、好ましくは40〜99重量%であり、より好ましくは60〜95重量%、さらに好ましくは80〜90重量%である。
上述したハードコート層を形成する際に、紫外線照射によって硬化させて使用する場合には、硬化性組成物中に、光重合開始剤、光重合促進剤、紫外線増感剤等の添加剤を配合することが好ましい。これら添加剤の配合量は、上述した光重合性プレポリマー及び光重合性モノマーの合計100重量部に対して、通常0.2〜10重量部の範囲で選ばれる。
なお、樹脂成分として、電離放射線硬化型樹脂に代えて、あるいはこれとともに熱硬化型樹脂を樹脂成分に含有させてもよい。樹脂成分に熱硬化型樹脂を含有させる場合、熱重合性モノマーやプレポリマーを単独又は併用し、所望により、熱重合開始剤、すなわち加熱により活性ラジカル種を発生させる化合物等を含有させる。
また、樹脂成分として、上述した熱硬化型樹脂や電離放射線硬化型樹脂の他、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、熱可塑性樹脂等の他の樹脂を含有させてもよい。
また、硬化性組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、必要に応じて、添加成分を適宜配合してもよい。添加成分としては、例えば、無機微粒子、樹脂微粒子、表面調整剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、蛍光増白剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤、分散剤、貯蔵安定剤、架橋剤等が挙げられる。特に、所望の大きさの無機微粒子や樹脂微粒子を添加することにより、所望の形状のマットハードコート層を形成することができる。このようなハードコート層は、例えば残留モノマー成分や上述した種々の添加成分の影響により、表面保護フィルムを貼着し加熱処理(例えば、150℃、90分)等を施すと、他の被保護物に貼着した場合よりも、より糊残りしやすい傾向にある。
特に、マットハードコート層については、マットハードコート層の凹凸に対し粘着層の密着性が高い場合には、マットハードコート層は接触する粘着層との表面積が大きくなるため、加熱処理等を施すとクリアハードコート層より糊残りしやすい傾向にある。また、マットハードコート層の凹凸に対し粘着層の密着性が低い場合には、マットハードコート層は接触する粘着層との表面積が小さくなるため、クリアハードコート層よりも浮きが生じやすくなる傾向にある。しかし、本発明の表面保護フィルムは、粘着層が特定の物性であるため、マットハードコート層に貼着したものであっても、加熱処理後も糊残りしにくく、浮きも生じにくいものとすることができる。
また、本発明の表面保護フィルムは、貼着対象の一例としてのハードコート層の表面特性が特定のものであったとしても、加熱処理後も糊残りが生じにくいものとすることができる。具体的には、ハードコート層としては、水に対する接触角が特定の値より小さく、椿油に対する接触角が特定の値よりも小さく調整されている。
例えばハードコート層の表面に指紋が付着した場合に、その付着した指紋を目立ち難くする(指紋視認困難度の向上)には、被膜表面に撥水性と撥油性を強く付与するのではなく、適度な親水性と親油性を付与することが有効である。そして、水に対する接触角と椿油に対する接触角のそれぞれが特定の値よりも小さく調整されるように、ハードコート層の表面特性を調整することで、適度な親水性と親油性を発現させることができる。ハードコート層の表面に適度な親水性と親油性を発現させることができると、被膜表面に対する指紋成分(水性成分と油性成分からなる)の接触面積が小さくなり過ぎることがなく、指紋成分を被膜表面で適度に濡れ広がらせることができる。その結果、ハードコート層の表面に指紋が付着した場合でも、その付着した指紋を目立ち難くすることができる(指紋視認困難度の向上)。
また、上述した調整に加えて、水に対する接触角を所定角以上に調整するとともに、ぬれ張力を所定範囲に調整することで、指紋視認困難度の向上とハードコート性の低下防止の作用を備えるほかに、指紋付着後の当該指紋の拭き取り性が良好となり、しかも拭き取り後の指紋成分も目立ち難くすることができる。
本例では、ハードコート層の水に対する接触角が、110°以下に調整されていることが好ましい。より好ましくは100°以下に調整してある。水に対する接触角が110°以下に調整されることにより、水との接触面積が小さくなり過ぎず、付着した指紋を目立ち難くすることができる(指紋視認困難度の向上)。
本例では、ハードコート層の椿油に対する接触角が、50°以下に調整されていることが好ましい。より好ましくは40°以下に調整してある。椿油に対する接触角を50°以下に調整することにより、指紋における油性成分が濡れ拡がる。このため、付着した指紋が目立ち難くなり(指紋視認困難度の向上)、さらに拭き取り後の指紋成分も目立ち難くすることができる。
本例では、ハードコート層の水に対する接触角が、50°以上に調整されていることが好ましい。より好ましくは60°以上、さらに好ましくは70°以上、特に好ましくは80°以上に調整してある。水に対する接触角が50°以上に調整されることにより、水との接触面積が大きくなり過ぎない。その結果、指紋における水性成分が離れやすくなり、指紋の拭き取り性が向上する。すなわち本例では、ハードコート層の水に対する接触角を所定範囲に調整することで、指紋視認困難度の向上の他に、指紋の拭き取り性も高められる。
なお、水に対する接触角及び椿油に対する接触角の値は、いずれも、JIS−R3257(1999)に準拠した方法で測定した値である。
本例では、ハードコート層のぬれ張力が、27mN/m以上に調整されていることが好ましい。より好ましくは30mN/m以上に調整してある。また、ハードコート層のぬれ張力が、45mN/m以下に調整されていることが好ましい。より好ましくは40mN/m以下、さらに好ましくは38mN/m以下に調整してある。ハードコート層のぬれ張力を所定範囲に調整することで、指紋の拭き取り性が高められる。
なお、ぬれ張力の値は、JIS−K6768(1999)に準拠した方法で測定した値である。
このような表面物性を持つハードコート層は、上述したハードコート層の硬化性組成物に添加成分として、グリフィン法によるHLB値が指定範囲の化合物(非イオン系化合物)を配合することにより得ることができる。このような化合物としては、グリフィン法によるHLB値が例えば2以上、好ましくは5以上、より好ましく10以上であって、例えば18以下、好ましくは15以下の非イオン系化合物などが挙げられる。HLB値が適切に調整された非イオン系化合物を配合することで、ハードコート層の水に対する接触角、椿油に対する接触角及びぬれ張力を上述した所定範囲に調整しやすくなる。
非イオン系化合物は水に溶けてイオン性を示さない化合物を総称するが、疎水基(親油基)と親水基との組合せ結合で構成される。
このような化合物としては、親水基(例えばポリアルキレンオキシド、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホニル基、燐酸塩、アミノ基、イソシアネート基、グリシジル基、アルコキシシリル基、アンモニウム塩、各種金属塩など)を少なくとも1種以上を有する化合物であり、例えば、エトキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエーテル変性アクリレートおよびポリヒドロキシ変性アクリレートなどが挙げられる。中でも、溶媒への溶解性や取扱い性の観点から、ポリエチレングリコールジアクリレートを用いることが好ましい。
また、非イオン系化合物としては、脂肪酸エステルやポリエーテルなども使用することができる。
脂肪酸エステルとしては、1価アルコール又は2価以上の多価アルコールと脂肪酸との縮合による脂肪酸エステルが挙げられ、例えば、プロピレングリコールモノステアリン酸エステル、プロピレングリコールモノラウリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリン酸エステル、ジエチレングリコールモノラウリン酸エステル、グリセロールモノステアリン酸エステル、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、ソルビタンモノオレイン酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタンモノパルミチン酸エステル、ソルビタンモノラウリン酸エステル等である。また、脂肪酸エステルとしては、ポリオキシアルキレン付加脂肪酸エステルも挙げられる。
なお、脂肪酸エステルに酸化アルキレンを付加重合させた非イオン系の化合物を配合しても良い。付加重合させる酸化アルキレンとしては、酸化エチレン又は酸化プロピレンが好適である。酸化エチレン又は酸化プロピレンは、それぞれ単独で付加重合させてもよく、共重合付加させたものでもよい。
ポリオキシアルキレン付加脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(4)ソルビタントリステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレイン酸エステル、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレングリコール400モノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレングリコール400モノモノステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール400モノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウリン酸エステル等である。
なお、本例では、脂肪酸エステルやポリエーテル以外の化合物として、ポリオキシエチレンコレステリルエーテルやポリオキシエチレンデシルテトラデシルエーテルなどを使用しても良い。
グリフィン法によるHLB値が所定範囲の化合物の含有量は、樹脂成分100重量部に対し、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上であって、好ましくは60重量部以下、より好ましくは15重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。この化合物の含有量の下限を0.1重量部とすることで、ハードコート層の水に対する接触角、椿油に対する接触角及びぬれ張力を上述した所定範囲に調整しやすくなる。また、この化合物の含有量の上限を60重量部とすることで、ハードコート層の表面の硬度(ハードコート性)が低下することを防止することができる。適量を配合することで、ハードコート層の指紋の拭き取り性がさらに向上することが期待される。
ハードコート層は、さらに、鉛筆引っかき値が、H以上に調整されていることが好ましい。より好ましくは2H以上に調整されている。鉛筆引っかき値が所定値以上に調整されることにより、指紋視認困難度の向上や指紋拭き取り性を低下させずに、ハードコート層の表面がキズつくことを効果的に防止することができる。なお、鉛筆引っかき値は、JIS−K5600−5−4(1999)に準拠した方法で測定した値である。
ハードコート層は、さらに、屈折率の値が、1.45〜1.65に調整されていることは好ましい。より好ましくは1.46〜1.52に調整されている。屈折率の値が所定範囲に調整されることにより、ハードコート層の屈折率と指紋成分の屈折率との差を小さくすることができる。その結果、ハードコート層に指紋が付着した場合、その付着した指紋がより一層目立ち難くなり(指紋視認困難度のさらなる向上)、さらに拭き取り後の指紋成分も目立ち難くすることができる。
ハードコート層は、その厚みが、0.1μm以上30μm以下程度であることが好ましい。ハードコート層の厚みを0.1μm以上とすることにより、十分な硬度を有する被膜とすることができる。一方で、ハードコート層の厚みを30μm超としても、被膜硬度がさらに向上するわけではない。またハードコート層の厚みが厚くなると、被膜の収縮によるカールが発生しやすくなる傾向がある。従って、経済性やカール防止性の観点から30μm以下の厚みとすることが好ましい。なお、本例では、ハードコート層の厚みを、10μm以下、さらには5μm以下程度の薄膜とすることも可能である。薄膜にしても必要十分な性能が確保される。
なお、上述の表面特性を得るために、ハードコート層の表面に、プラズマ処理、コロナ放電処理、遠紫外線照射処理等の表面処理を施してもよい。
このような表面物性を持つハードコート層は、上述したハードコート層よりも添加成分や、表面処理等の影響を受けやすいため、加熱処理等を施すと上述したハードコート層と比べて、糊残りしやすい傾向にある。しかし、本発明の表面保護フィルムは、粘着層が特定の物性であるため、このような特定の表面物性を持つハードコート層に貼着したものであっても、加熱処理後も糊残りしにくいものとすることができる。
硬化性組成物は、通常は塗料の形態で実現される。有機溶剤系塗料とする場合は、樹脂成分の種類によって適宜選択すればよいが、上述した樹脂成分(必要に応じてさらに添加成分)を、有機溶剤等の希釈溶媒で溶解または分散させた後、必要に応じて添加剤を加えることで、硬化性組成物を製造することができる。
被塗布対象としては、ハードコート性(耐擦傷性)と指紋視認困難度の向上効果の付与が望まれる基材である。本例で用いることのできる基材の態様は、特に限定されず、フィルム状、シート状またはプレート状など、いかなる厚みを有するものであってもよい。また、基材は、その表面が、例えば凸凹形状であってもよく、あるいは三次元曲面を有する立体的な形状であってもよい。
基材の材質にも特に制限はなく、ガラス板などの硬質基材であってもよいが、本例では、可撓性を持つ樹脂基材であることが好ましい。樹脂基材を構成する樹脂の種類は特に限定されない。例えばフィルム状やシート状で樹脂基材を形成する場合の樹脂としては、例えばアクリル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、アセチルセルロース、シクロオレフィン等が挙げられる。その一方で、例えばプレート状で樹脂基材を形成する場合の樹脂としては、例えばアクリル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
なお、硬化性組成物の硬化物で構成されるハードコート層との接着性を向上させる目的で、基材表面に易接着処理が施してあってもよい。易接着処理としては、例えばプラズマ処理、コロナ放電処理、遠紫外線照射処理、下引き易接着層の形成等が挙げられる。
被塗布対象に対する硬化性組成物の塗布(コーティング)は、常法によって行えばよく、例えばバーコート、ダイコート、ブレードコート、スピンコート、ロールコート、グラビアコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、スクリーン印刷、刷毛塗りなどを挙げることができる。塗布後の塗膜の厚みが、後述の乾燥、硬化後に、好ましくは0.1μm以上30μm以下程度となるように塗布する。硬化性組成物を被塗布対象に塗布したら、塗布後の塗膜を50〜120℃程度で乾燥させることが好ましい。
硬化性組成物の硬化は、塗布後の塗膜に対して、熱によるキュアリングおよび/または電離放射線(光)を照射することによって行うことができる。
熱による場合、その熱源としては、例えば、電気ヒーター、赤外線ランプ、熱風等を用いることができる。電離放射線(光)による場合、その線源としては、基材に塗布された硬化性組成物を短時間で硬化可能なものである限り特に制限はない。例えば、赤外線の線源として、ランプ、抵抗加熱板、レーザー等が挙げられる。可視光線の線源として、日光、ランプ、蛍光灯、レーザー等が挙げられる。紫外線(電離放射線)の線源として、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどが挙げられる。こうした紫外線の線源から発せられる100nm〜400nm、好ましくは200nm〜400nmの波長領域の紫外線を照射する。電子線(電離放射線)の線源として、走査型やカーテン型の電子線加速器などが挙げられる。こうした電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射する。
電離放射線の照射量は、電離放射線の種類によって異なるが、例えば紫外線の場合には、光量で100〜500mJ/cm程度が好ましく、電子線の場合には、10〜1000krad程度が好ましい。
以上のようにして製造されるハードコート層は、ハードコート性(耐擦傷性)と指紋視認困難度の向上効果の付与が要求される用途、特に各種ディスプレイ(例えばプラズマディスプレイパネルPDP、ブラウン管CRT、液晶ディスプレイLCD、エレクトロルミネッセンスディスプレイELDなど)用;ショーケース、時計や計器のカバーガラス用;銀行のATMや切符の券売機等に代表されるタッチパネル方式の電子機器のタッチ面用;などのハードコートとして好適に用いられる。
なお、電子機器には、上記各種ディスプレイを持つ携帯電話(例えば、PDA(Personal Digital Assistants)機能を盛り込んだ個人用の携帯情報端末も含む)やパーソナルコンピュータなどの情報処理装置を含むことは勿論である。
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
[実施例1〜3および比較例1〜4]
基材として、厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーS28:東レ社)の一方の面に、表1の処方の粘接層用塗布液(実施例1〜3、比較例1〜4)をバーコーター法によりそれぞれ塗布し、90℃、1.5分間乾燥することにより乾燥膜厚2.5μmの粘着層を形成し、取り扱い性を良くするためセパレータ(MRF:三菱化学ポリエステルフィルム社)と貼り合せた。次いで、60℃の環境で、48時間キュアリングを行い、実施例1〜4および比較例1〜4の表面保護フィルムを作製した。
Figure 2010032583
表1の実施例および比較例で得られた粘着層について、(1)150℃、20℃の貯蔵弾性率、tanδ極大温度、100℃〜150℃におけるtanδについて測定した。また、実施例および比較例で得られた表面保護フィルムについて、(2)初期の粘着力、(3)加熱後の粘着力、(4)糊残り、(5)浮きについて評価を行った。結果を表2に示す。
(1)150℃、20℃の貯蔵弾性率、tanδ極大温度、100℃〜150℃におけるtanδ
表1の処方の粘着剤、硬化剤および溶剤を所定量秤量後、混合し十分に攪拌した。乾燥後の塗膜厚みが1mm程度になるように、他の容器に移し替え40℃で4日間、乾燥・キュアリングを行った。その後容器から塗膜のみを取り出し、測定試料を作製した。
粘弾性測定装置(PhysicaMCR301:Anton Paar社)を用いて、測定試料の動的粘弾性測定を行うことにより、150℃、20℃の貯蔵弾性率、tanδ極大温度、100℃〜150℃におけるtanδを求めた。測定条件はひずみ0.1%、周波数1Hz、温度範囲−30℃〜160℃とした。
(2)初期の粘着力
実施例、および比較例の表面保護フィルムを長さ方向が塗布方向となるように、幅50mm×長さ約200mmの大きさに切り試験片を作製した。次いで、試験片をステンレス板(JIS G4305に規定するSUS304鋼板)に貼り付け、23℃、50%RHの環境下に1時間放置した後、JIS Z0237:2000に準じ、テンシロン万能引張試験機(テンシロンHTM-100:オリエンテック社)を用いて、180度引きはがし粘着力を測定した。
(3)加熱後の粘着力
(2)と同様にして試験片を作製しステンレス板に貼り付け、23℃、50%RHの環境下に30分間放置した後、150℃の環境で30分間放置し、さらに23℃、50%RHの環境下に30分間放置した後、(2)と同様にして180度引きはがし粘着力を測定した。
(4)糊残り
(3)の加熱後の粘着力を測定した後、ステンレス板の状態を目視にて観察することで、糊残りを評価した。評価は、ステンレス板にまったく糊残りのなかったものを「○」、ステンレス板の一部に糊残りがあったものを「△」、ステンレス板と基材との間で凝集破壊を起こしてステンレス板のほぼ全面に糊残りしてしまったものを「×」とした。
(5)浮き
(3)の加熱後の粘着力を測定において、試験片を貼着したステンレス板を150℃の環境で30分間放置した後、23℃、50%RHの環境下に30分間放置している際に、ステンレス板から浮きが発生しているかどうかを目視にて評価した。試験片とステンレス板が貼合されまったく浮きが生じていないものを「○」、試験片がステンレス板に密着している面積が、剥がれた面積よりも大きいものを「△」、試験片がステンレス板から剥がれた面積が、密着している面積よりも大きいものを「×」とした。
Figure 2010032583
表2より、実施例の表面保護フィルムは、粘着層の150℃における貯蔵弾性率と20℃における貯蔵弾性率との差が0より大きく、上記(1)式を満たし、かつtanδ極大温度が−5℃以下であった。このため、初期粘着性に優れ、150℃、30分間の加熱処理後も粘着力の上昇が少なく、ステンレス板からの剥離の際に表面への糊残りがなく、かつ浮きも生じにくいものとなった。また、加熱後の粘着力(JIS Z0237:2000における180度引きはがし粘着力)が、0.1N/50mm〜1N/50mmであったため、剥離性が良好であった。
比較例1、2の表面保護フィルムは、粘着層のtanδ極大温度が−5℃以下であったが、100℃〜150℃におけるtanδが0.1より大きくなり、かつ150℃における貯蔵弾性率と20℃における貯蔵弾性率との差が0より小さく、上記(1)式を満たすものではなかったため、浮きは生じないものの、初期粘着性が高く、150℃、30分間の加熱処理後も粘着力が上昇し、ステンレス板からの剥離の際に表面への糊残りするものとなった。また、加熱後の粘着力(JIS Z0237:2000における180度引きはがし粘着力)、1N/50mm以上であったため、剥離性が悪いものとなった。
比較例3の表面保護フィルムは、150℃における貯蔵弾性率と20℃における貯蔵弾性率との差が0より小さくなったが、粘着層のtanδ極大温度が−5℃より高いため、浮きが生じてしまった。このため糊残りのないものとなった。
比較例4の表面保護フィルムは、粘着層のtanδ極大温度が−5℃以下で、かつ100℃〜150℃におけるtanδが0.1以下であったため、浮きは生じず、初期粘着性が高くなりすぎず良好な結果が得られた。しかしながら、150℃における貯蔵弾性率と20℃における貯蔵弾性率との差が0より小さく、上記(1)式を満たすものではなかったため、加熱処理後の粘着力が上昇し、ステンレス板からの剥離の際に表面への糊残りするものとなった。
[実施例4]
基材の一方の面に電離放射線硬化型樹脂からなるクリアハードコート層と、もう一方の面にシリカ微粒子と電離放射線硬化型樹脂とからなるマットハードコート層を有するハードコートフィルム(KBフィルムGN7B:きもと社)を準備した。次に、準備したハードコートフィルムのクリアハードコート層上に、実施例1の表面保護フィルムの粘着層を有する面を貼着し、実施例4の積層体を作製した。なお、クリアハードコート層は、水に対する接触角が62度、椿油に対する接触角が31度、ぬれ張力が23mN/m以下であった。
[実施例5]
実施例4のハードコートフィルムのマットハードコート層上に、実施例1の表面保護フィルムの粘着層を有する面を貼着し、実施例5の積層体を作製した。なお、マットハードコート層は、水に対する接触角が79度、椿油に対する接触角が34度、ぬれ張力が23mN/m以下であり、JIS B0601:2001における算術平均粗さは0.12±0.04μmであった。
[実施例6]
基材の一方の面に、水に対する接触角が76度、椿油に対する接触角が36度、ぬれ張力が32mN/mであるハードコート層を有するハードコートフィルム(KBフィルムAFP:きもと社)を準備した。次に、準備したハードコートフィルムのハードコート層上に、実施例1の表面保護フィルムの粘着層を有する面を貼着し、実施例6の積層体を作製した。
[比較例5〜7]
実施例4〜6の積層体で、実施例1の表面保護フィルムの代わりに、比較例4の表面保護フィルムに変更した以外は、実施例4〜6と同様にして、比較例5〜7の積層体を作製した。
実施例4〜6および比較例5〜7で得られた積層体について、ハードコート層から表面保護フィルムを剥離した際の、(6)初期の粘着力、(7)加熱後の粘着力、(8)糊残り、(9)浮きについて評価を行った。結果を表3に示す。
(6)初期の粘着力
実施例4〜6および比較例5〜7で得られた積層体について、幅50mm×長さ約200mmの大きさに切り試験片を作製し、23℃、50%RHの環境下に1時間放置した後、JIS Z0237:2000に準じ、テンシロン万能引張試験機(テンシロンHTM-100:オリエンテック社)を用いて、ハードコート層から表面保護フィルムを引きはがし、180度引きはがし粘着力を測定した。
(7)加熱後の粘着力
(6)と同様にして試験片を作製し、23℃、50%RHの環境下に30分間放置した後、150℃の環境で30分間放置し、さらに23℃、50%RHの環境下に30分間放置した後、(6)と同様にして180度引きはがし粘着力を測定した。
(8)糊残り
実施例4〜6および比較例5〜7の積層体について、A−4の大きさに切って試験片を作製し、23℃、50%RHの環境下に30分間放置した後、150℃の環境で90分間放置し、さらに23℃、50%RHの環境下に30分間放置した後、手でハードコート層から表面保護フィルムを引きはがした。評価は、目視にて観察し、ハードコート層上の全面に糊残りしてしまったものを「××」、ハードコート層上の所々に糊残りしてしまったものを「×」、目視では分かりにくいが、ルーペ(25×25倍)で観察し、ハードコート層上に点状(約10μm×20μm程度の大きさ)の微細な糊残りがあるものを「△」、点状の微細な糊残りがほとんどないものを「○」とした。
(9)浮き
(7)の加熱後粘着力の測定において、試験片を150℃の環境で30分間放置した後、23℃、50%RHの環境下に30分間放置している際に、ハードコート層から浮きが発生しているかどうかを目視にて評価した。試験片とハードコート層が貼合されまったく浮きが生じていないものを「○」、試験片がハードコート層に密着している面積が、剥がれた面積よりも大きいものを「△」、試験片がハードコート層から剥がれた面積が、密着している面積よりも大きいものを「×」とした。
Figure 2010032583
表3より、実施例の積層体はいずれもハードコート層に対し、初期粘着性に優れ、150℃、30分の加熱処理後も粘着力の上昇が少なく、また浮きの生じないものとなった。
また、実施例4、5の積層体は、150℃、90分の加熱処理後にハードコート層から表面保護フィルムを剥離した際に、ハードコート層は目視では糊残りが分からず、ルーペで見ても微細な糊残りもほとんどないものとなった。
また実施例6の積層体は、150℃、90分の加熱処理後にハードコート層から表面保護フィルムを剥離した際に、ハードコート層が特定の物性のものであったため、実施例4、5の積層体のハードコート層と比較すると糊残りの評価が劣るものの、目視では糊残りが分からず、ルーペで見て微細な糊残りが確認できる程度のものとなった。
一方、比較例の積層体は、粘着層のtanδ極大温度が−5℃以下で、かつ100℃〜150℃におけるtanδが0.1以下であったため、浮きは生じず初期粘着性が高くなりすぎず、良好な結果が得られた。しかし、表面保護フィルムの粘着層が、150℃における貯蔵弾性率と20℃における貯蔵弾性率との差が0より小さく、上記(1)式を満たすものではなかったため、比較例5、6の積層体は、150℃、90分の加熱処理後にハードコート層から表面保護フィルムを剥離した際に、目視であきらかにわかる糊残りがハードコート層上の所々に生じるものとなった。
また、比較例7の積層体は、ハードコート層が特定の物性のものであったため、150℃、90分の加熱処理後にハードコート層から表面保護フィルムを剥離した際に、目視であきらかにわかる糊残りがハードコート層上の全面に生じるものとなった。
このように実施例の積層体に用いられている表面保護フィルムは、比較例の積層体に用いられている表面保護フィルムと比べて、被保護物が種々のハードコート層である場合にも、適度な初期粘着性、加熱処理後の粘着力上昇の抑制、浮き防止性、糊残り防止性等、極めて優れた性能を示している。

Claims (6)

  1. 基材の一方の面に粘着層を有する表面保護フィルムであって、前記粘着層は150℃における貯蔵弾性率と20℃における貯蔵弾性率との差が(1)式を満たし、かつtanδ極大温度が−5℃以下であることを特徴とする表面保護フィルム。
    [数1] G’(150)−G’(20)≧0 …(1)
    [式中、G'(150)は、150℃における貯蔵弾性率であり、G'(20)は20℃における貯蔵弾性率である。また、tanδは、損失弾性率を貯蔵弾性率で除した値である。]
  2. 請求項1記載の表面保護フィルムであって、前記粘着層は100℃〜150℃におけるtanδが0.1以下であることを特徴とする表面保護フィルム。
  3. 請求項1または2に記載の表面保護フィルムであって、前記表面保護フィルムの粘着層を有する面とステンレス板(JIS G4305に規定するSUS304鋼板)とを貼合し、150℃の環境に、30分間放置した後、表面保護フィルムのステンレス板に対する粘着力(JIS Z0237:2000における180度引きはがし粘着力)が、0.1N/50mm〜1N/50mmであることを特徴とする表面保護フィルム。
  4. 請求項1から3いずれか1項記載の表面保護フィルムの粘着層を有する面が、ハードコート層上に貼着されていることを特徴とする積層体。
  5. 前記ハードコート層は、水に対する接触角が110度以下であり、椿油に対する接触角が50度以下であることを特徴とする請求項4記載の積層体。
  6. 前記ハードコート層は、水に対する接触角が50度以上であり、ぬれ張力が27〜45mN/mであることを特徴とする請求項5記載の積層体。
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