以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
本発明の液晶表示装置は、視認側から、偏光板保護フィルムT1/偏光子1/偏光板保護フィルムT2/液晶セル/偏光板保護フィルムT3/偏光子2/偏光板保護フィルムT4/バックライトという構成をとり、偏光板保護フィルムT1/偏光子1/偏光板保護フィルムT2は偏光板1、偏光板保護フィルムT3/偏光子2/偏光板保護フィルムT4は偏光板2を構成する。偏光板1および2は、液晶セルに、それぞれ粘着剤を介して貼られている。
本発明において、液晶セルから離れた位置に配された2枚の偏光板保護フィルムとは、偏光板保護フィルムT1(以下、T1と略す)と偏光板保護フィルムT4(以下、T4と略す)のことをいい、T1に対向する偏光板保護フィルムとはT2であり、T4に対向する偏光板保護フィルムとはT3をいう。
本発明の液晶表示装置において、偏光板が、いずれも偏光子と該偏光子を挟む2枚の偏光板保護フィルムからなり、該4枚の偏光板保護フィルムのうち、液晶セルから離れた位置に配された2枚の偏光板保護フィルムの60℃における製膜方向および幅手方向の音速の平均値が、そのそれぞれの偏光板の対向する偏光板保護フィルムの60℃における製膜方向および幅手方向の音速の平均値よりも小さいことを特徴とする。
つまり、本発明の液晶表示に使用されている4枚の偏光板保護フィルムの60℃における製膜方向および幅手方向の音速の平均値の関係は、T1<T2かつT4<T3となることである。
従来は、特許文献1に代表されるように技術思想としてT4の強度アップを図り、T4を応力によって変化しないようにするものであったが、本発明はその全く逆となるようにT4の強度を下げ、さらにその性質を視認側とバックライト側偏光板の両方に付与することにより本発明の課題を解決した。
本発明では、熱による寸法変化によって発生した応力を、強度を下げたT4によって解放し、さらに視認側偏光板の変化もT1によって解放することを技術的思想とする。
<偏光板保護フィルムT1、T4>
本発明のT1およびT4は、下記式(A1)および(A2)を同時に満足し、含有溶媒量が0.01質量%以下、60℃における製膜方向および幅手方向の音速の平均値が、1.80〜2.01km/sであるセルロースエステルフィルムであることが好ましい。
式(A1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(A2) 1.0≦Y≦2.5
(式中、Xはセルロースエステルのアセチル基の置換度、Yはプロピオニル基またはブチリル基の置換度を表す。)
本発明のT1、T4は、上記式(A1)および(A2)を同時に満足するセルロースエステル、および添加剤を含む組成物を溶融流延製膜することにより得ることができる。
具体的には、流動性を示す温度まで上記組成物を加熱溶融して溶融物とし、該溶融物を流延し冷却したあと、少なくともフィルムの製膜方向に下記式(1)で表される延伸速度が100%/min〜10000%/minで延伸し、好ましくはさらに幅手方向に延伸速度が50%/min〜1000%/minで延伸することで、60℃における製膜方向および幅手方向の音速の平均値が、1.80〜2.01km/sであるセルロースエステルフィルムを得ることができる。
式(1)
延伸速度(%/min)={(延伸後寸法/延伸前寸法)−1}×100(%)/延伸に要する時間(min)
本発明のセルロースエステルフィルムの音速は、SONIC SHEET TESTER(SST−110型、野村商事(株)製)を用いて、60℃55%RHの環境下1時間放置したフィルムにおいて、同環境下で測定することができる。
製膜方向および幅手方向の音速の平均値が、1.80〜2.01km/sであればよいが、幅手方向の音速が製膜方向の音速よりも大きいことが好ましい。
なお、本発明における音速は、膜厚を相違するフィルム同士であっても、膜厚に依存することなくそのまま比較することができる。
本発明での音速を制御する方法としては、材料による制御を製造方法による制御に大別される。材料による制御は、一般にセルロースエステルの側鎖の炭素数を増加、あるいは可塑効果を有する添加剤量を増加することで低下させることが出来、置換度低下によって増加させることが出来る。
また、添加剤の種類によっては上昇させることも出来、具体的には、位相差発現性が増す材料で増加する傾向が見られるが、例外も多い。
製造方法での制御は、通常、延伸温度、延伸倍率によって制御することが出来る。延伸温度を上げる、あるいは延伸倍率を下げることで音速は上昇させることができるため、製造方法による調整が有利である。
本発明者は、コーナームラは、含有溶媒のあるフィルムの場合セルロースエステルの置換基に非常に強く依存することをつきとめた。
即ち、炭素数3以上に置換基が長くなると熱に対して分子内で置換基が傾き易くなってしまう。従って、炭素数3以上の置換基の数が増すと、フィルムの各々の微小領域内でバラツキが発生してしまうことに起因していると考えられる。
溶融製膜法によれば、流延製膜のための溶媒を使用しないことから、製膜乾燥後の残留溶媒量(フィルム中に最終的に含有される含有溶媒量)をセルロースエステルフィルム全体の0.01質量%とすることができる。
ここで含有溶媒とは、流延製膜において使用した沸点120℃以下の有機溶媒であって、製膜終了後のフィルムの状態にあってもフィルム中に残留している溶媒をいう。含有溶媒量は、以下のようにして測定することができる。
各試料を20mlの密閉ガラス容器に入れ、下記ヘッドスペース加熱条件にて処理したあと、下記ガスクロマトグラフィーにてあらかじめ使用した溶媒について検量線を作成し測定を行った。含有溶媒量は、偏光板保護フィルム1の全体の質量に対する質量部で表した。
機器:HP社 5890SERIES II
カラム:J&W社 DB−WAX(内径0.32mm、長さ30m)
検出:FID
GC昇温条件:40℃で5分間保持したあと、80℃/分で100℃まで昇温
ヘッドスペース加熱条件:120℃で20min
本発明のセルロースエステルフィルムは、セルロースエステルおよび添加剤とからなる。
《セルロースエステル》
本発明に用いるセルロースエステルは、炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルであり、芳香族カルボン酸のエステルでもよく、特にセルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。
セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味している。水酸基に結合するアシル基は、直鎖であっても分岐してもよく、また環を形成してもよい。さらに別の置換基が置換してもよい。
同じ置換度である場合、前記炭素数が多いとフィルムの腰がなくなるため、炭素数としては炭素数2〜6のアシル基の中で選択することが好ましい。
本発明のセルロースエステルとしては、前記(A1)および(A2)を同時に満足するものが必要となるが、Yがプロピオニル基であって、1.1≦Y≦2.0が好ましく、さらに1.1≦Y≦1.5が特に光漏れに対し好ましい。
本発明における置換度範囲は、延伸速度を上げることができ、さらに音速も本発明の範囲を達成することができる。
アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
セルロースエステルの分子量は数平均分子量(Mn)で60000〜300000のものが好ましく、70000〜200000のものがさらに好ましい。本さらに用いられるセルロースエステルは重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比が4.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.4〜2.3である。
セルロースエステルの平均分子量および分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い測定できるので、これを用いて数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を算出し、その比を計算することができる。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1,000,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
本発明のセルロースエステル中の残留硫酸含有量は、硫黄元素換算で0.1〜45ppmの範囲であることが好ましい。これらは塩の形で含有していると考えられる。残留硫酸含有量が45ppmを超えると熱溶融時のダイリップ部の付着物が増加する傾向がある。
また、熱延伸時や熱延伸後でのスリッティングの際に破断しやすくなる傾向がある。従って1〜30ppmの範囲がより好ましい。残留硫酸含有量は、ASTM D817−96に規定の方法により測定することができる。
本発明のセルロースエステル中の遊離酸含有量は、1〜500ppmであることが好ましい。上記の範囲であると、ダイリップ部の付着物の増加がなく、また破断しにくい。
さらに、本発明については、1〜100ppmの範囲であることが好ましく、さらに破断しにくくなる。特に1〜70ppmの範囲が好ましい。遊離酸含有量はASTM D817−96に規定の方法により測定することができる。
合成したセルロースエステルの洗浄を、溶液流延法に用いられる場合に比べて、さらに十分に行うことによって、残留アルカリ土類金属含有量、残留硫酸含有量、および残留酸含有量を上記の範囲とすることができ好ましい。
また、セルロースエステルの洗浄は、水に加えて、メタノール、エタノールのような貧溶媒、あるいは結果として貧溶媒であれば貧溶媒と良溶媒の混合溶媒を用いることができ、残留酸以外の無機物、低分子の有機不純物を除去することができる。
また、本発明のセルロースエステルはフィルムにした時の輝点異物が少ないものであることが好ましい。輝点異物は、輝点の直径0.01mm以上が200個/cm2以下であることが好ましく、さらに100個/cm2以下であることが好ましく、50個/cm2以下であることが好ましく、30個/cm2以下であることが好ましく、10個/cm2以下であることが好ましいが、皆無であることが最も好ましい。
また、0.005〜0.01mm以下の輝点についても200個/cm2以下であることが好ましく、さらに100個/cm2以下であることが好ましく、50個/cm2以下であることが好ましく、30個/cm2以下であることが好ましく、10個/cm2以下であることが好ましいが、皆無であることが最も好ましい。
《添加剤》
本発明におけるセルロースエステルフィルムには、フィルムに加工性を付与する可塑剤、フィルムの劣化を防止する酸化防止剤、紫外線吸収機能を付与する紫外線吸収剤、フィルムに滑り性を付与する微粒子(マット剤)、フィルムのレターデーションを調整するレターデーション調整剤等の添加剤を含有させても良い。
(可塑剤)
本発明に係るセルロースエステルフィルムの製造においては、フィルム形成材料中に少なくとも1種の可塑剤を含有することが好ましい。
本発明では、可塑剤は単独あるいは2種以上混合して用いることができるが、少なくとも1種は有機酸と3価以上のアルコールが縮合した構造を有する分子量350〜1500の多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
使用することができるその他の可塑剤としては特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、ポリマー可塑剤、糖エステル可塑剤等から選択される。
可塑剤の使用量は、セルロース誘導体に対して1質量%未満ではフィルムの透湿度を低減させる効果が少ないため好ましくなく、20質量%を越えると高温耐久時のフィルムの物性が劣化するため、1〜20質量%が好ましい。
(多価アルコールエステル系可塑剤)
本発明の多価アルコールエステル系可塑剤は、有機酸と多価アルコールとのエステルでありその有機酸は、下記一般式(1)で表される。
式中、R1〜R5は水素原子またはシクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基を表し、これらはさらに置換基を有していてよい。Lは連結基を表し、置換または無置換のアルキレン基、酸素原子、または直接結合を表す。
R1〜R5で表されるシクロアルキル基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、具体的にはシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の基である。これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アラルキル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によってさらに置換されていてもよい)、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によってさらに置換されていてもよい)、フェノキシ基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によってさらに置換されていてもよい)、アセチル基、プロピオニル基等の炭素数2〜8のアシル基、またアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜8の無置換のカルボニルオキシ基等が挙げられる。
R1〜R5で表されるアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、γ−フェニルプロピル基等の基を表し、また、これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
R1〜R5で表されるアルコキシ基としては、炭素数1〜8のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−オクチルオキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、2−エチルヘキシルオキシ、もしくはt−ブトキシ等の各アルコキシ基である。
また、これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アラルキル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等を置換していてもよい)、アルケニル基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によってさらに置換されていてもよい)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によってさらに置換されていてもよい))、アセチル基、プロピオニル基等のアシル基が、またアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜8の無置換のアシルオキシ基、またベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基が挙げられる。
R1〜R5で表されるシクロアルコキシ基としては、無置換のシクロアルコキシ基としては炭素数1〜8のシクロアルコキシ基が挙げられ、具体的には、シクロプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等の基が挙げられる。
また、これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
R1〜R5で表されるアリールオキシ基としては、フェノキシ基が挙げられるが、このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等前記シクロアルキル基に置換してもよい基として挙げられた置換基で置換されていてもよい。
R1〜R5で表されるアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等が挙げられ、これらの置換基はさらに置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
R1〜R5で表されるアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基等の炭素数2〜8の無置換のアシル基が挙げられ(アシル基の炭化水素基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル基を含む。)、これらの置換基はさらに置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
R1〜R5で表されるカルボニルオキシ基としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜8の無置換のアシルオキシ基(アシル基の炭化水素基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル基を含む。)、またベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基が挙げられるが、これらの基はさらに前記シクロアルキル基に置換してもよい基と同様の基により置換されていてもよい。
R1〜R5で表されるオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、またフェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基を表す。
これらの置換基はさらに置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
R1〜R5で表されるオキシカルボニルオキシ基としては、メトキシカルボニルオキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシカルボニルオキシ基を表し、これらの置換基はさらに置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
R1〜R5のうちのいずれか同士で互いに連結し、環構造を形成していてもよい。
また、Lで表される連結基としては、置換または無置換のアルキレン基、酸素原子、または直接結合を表すが、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の基であり、これらの基は、さらに前記のR1〜R5で表される基に置換してもよい基としてあげられた基で置換されていてもよい。
中でも、Lで表される連結基として特に好ましいのは直接結合であり芳香族カルボン酸である。
また、これら本発明において可塑剤となるエステル化合物を構成する、前記一般式(1)で表される有機酸としては、少なくともR1またはR2に前記アルコキシ基、アシル基、オキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニルオキシ基を有するものが好ましい。また複数の置換基を有する化合物も好ましい。
なお本発明においては3価以上のアルコールの水酸基を置換する有機酸は単一種であっても複数種であってもよい。
本発明における、前記一般式(1)で表される有機酸と反応して多価アルコールエステル化合物を形成する3価以上のアルコール化合物としては、好ましくは3〜20価の脂肪族多価アルコールであり、本発明おいて3価以上のアルコールは下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
一般式(2) R′−(OH)m
式中、R′はm価の有機基、mは3以上の正の整数、OH基はアルコール性水酸基を表す。特に好ましいのは、mとしては3または4の多価アルコールである。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、ジグリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ガラクチトール、イノシトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。
特に、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。
一般式(1)で表される有機酸と一般式(2)で表される3価以上の多価アルコールのエステルは、公知の方法により合成できる。実施例に代表的合成例を示したが、前記一般式(1)で表される有機酸と、一般式(2)で表される多価アルコールを例えば、酸の存在下縮合させエステル化する方法、また、有機酸をあらかじめ酸クロライドあるいは酸無水物としておき、多価アルコールと反応させる方法、有機酸のフェニルエステルと多価アルコールを反応させる方法等があり、目的とするエステル化合物により、適宜、収率のよい方法を選択することが好ましい。
一般式(1)で表される有機酸と一般式(2)で表される3価以上の多価アルコールのエステルからなる可塑剤としては、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
式中、R6〜R20は水素原子またはシクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基を表し、これらはさらに置換基を有していてよい。R21は水素原子またはアルキル基を表す。
R6〜R20のシクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基については、前記一般式(1)のR1〜R5と同様の基が挙げられる。
以下に、本発明に係わる多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
(糖エステル可塑剤)
本発明のセルロースエステルフィルムは、フラノース構造およびピラノース構造から選ばれる少なくとも一種の構造が1〜12個結合した糖化合物の水酸基をエステル化した糖エステル可塑剤を使用することも好ましい。
本発明に用いられる糖エステル化合物としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ラクトース、スクロース、セロビオース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースなどが挙げられるが、特にフラノース構造とピラノース構造を両方有するものが好ましい。例としてはスクロースが挙げられる。
本発明に用いられる糖エステル可塑剤は、糖化合物の有する水酸基の一部または全部がエステル化されているものまたはその混合物である。
市販品としては、例えばモノペットSB(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
(ポリマー可塑剤)
本発明のセルロースエステルフィルムはポリマー可塑剤を使用することも好ましい。
その中でも特にアクリル系ポリマーが好ましい。具体的には、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの共重合体(例えば、共重合比1:99〜99:1の間の任意の比率)等のアクリル系ポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、メタクリル酸メチルとN−ビニルピロリドンの共重合体(例えば、共重合比1:99〜99:1の間の任意の比率)、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、メタクリル酸メチルと4−ヒドロキシスチレンの共重合体(例えば、共重合比1:99〜99:1の間の任意の比率)、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア等が挙げられる。
数平均分子量は1,000〜500,000程度が好ましく、特に好ましくは、5000〜200000である。1,000以下では揮発性が大きくなり、500,000を超えると可塑化能力が低下する傾向があり、セルロースエステル光学フィルムの機械的性質に悪影響を及ぼす可能性がある。
これらポリマー可塑剤は1種のモノマーの繰り返し単位からなる単独重合体でも、複数のモノマーの繰り返し構造体を有する共重合体でもよい。また、上記ポリマーを2種以上併用して用いてもよい。
また表面の可塑剤量の測定法は特に限定されないが、例えば、ナイフなどを用いて、フィルムの表面から20nmほど削って定量分析する方法やフィルムの厚さ方向の可塑剤量をIRや原子吸光などでスキャンする方法などを用いて定量したものである。
〈酸化防止剤〉
本発明では、酸化防止剤としては、通常知られているものを使用することができる。
特に、ラクトン系、イオウ系、フェノール系、二重結合系、ヒンダードアミン系、リン系化合物のものを好ましく用いることができる。
例えば、チバ・ジャパン株式会社から、“IrgafosXP40”、“IrgafosXP60”という商品名で市販されているものを含むものが好ましい。
上記フェノール系化合物としては、2,6−ジアルキルフェノールの構造を有するものが好ましく、例えば、チバ・ジャパン株式会社、“Irganox1076”、“Irganox1010”、(株)ADEKA“アデカスタブAO−50”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記リン系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、“SumilizerGP”(AO2)、株式会社ADEKAから“ADK STAB PEP−24G”、“ADK STAB PEP−36”(AO1)および“ADK STAB 3010”、チバ・ジャパン株式会社から“IRGAFOS P−EPQ”(AO4)、堺化学工業株式会社から“GSY−P101”(AO3)という商品名で市販されているものが好ましい。
上記ヒンダードアミン系化合物は、例えば、チバ・ジャパン株式会社から、“Tinuvin144(AO2)”および“Tinuvin770”、株式会社ADEKAから“ADK STAB LA−52”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記イオウ系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、“Sumilizer TPL−R”および“Sumilizer TP−D”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記二重結合系化合物は、住友化学株式会社から、“Sumilizer GM”(AO5)および“Sumilizer GS”(AO3)という商品名で市販されているものが好ましい。
さらに、酸捕捉剤として米国特許第4,137,201号明細書に記載されているような、エポキシ基を有する化合物を含有させることも可能である。
これらの酸化防止剤等は、再生使用される際の工程に合わせて適宜添加する量が決められるが、一般には、フィルムの主原料である樹脂に対して、0.05〜20質量%、好ましくは0.1〜1質量%の範囲で添加される。
これらの酸化防止剤は、一種のみを用いるよりも数種の異なった系の化合物を併用することで相乗効果を得ることができる。例えば、ラクトン系、リン系、フェノール系および二重結合系化合物の併用は好ましい。
〈レターデーション調整剤〉
本発明のセルロースエステルフィルムにおいてレターデーションを調整するための化合物を含有させてもよい。
レターデーションを調整するために添加する化合物は、欧州特許第911,656A2号明細書に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物を使用することもできる。
また2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。該芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に不飽和ヘテロ環である。中でも1,3,5−トリアジン環を有する化合物が特に好ましい。
〈着色剤〉
本発明においては、着色剤を使用することが好ましい。着色剤と言うのは染料や顔料を意味するが、本発明では、液晶画面の色調を青色調にする効果またはイエローインデックスの調整、ヘイズの低減を有するものを指す。
着色剤としては各種の染料、顔料が使用可能だが、アントラキノン染料、アゾ染料、フタロシアニン顔料などが有効である。
〈紫外線吸収剤〉
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。高分子型の紫外線吸収剤としてもよい。
〈マット剤〉
本発明では、フィルムの滑り性を付与するためにマット剤を添加することが好ましい。
本発明で用いられるマット剤としては、得られるフィルムの透明性を損なうことがなく、溶融時の耐熱性があれば無機化合物または有機化合物どちらでもよく、例えば、タルク、マイカ、ゼオライト、ケイソウ土、焼成珪成土、カオリン、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト、クレー、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ガラスフレーク、ミルドファイバー、ワラストナイト、窒化ホウ素、炭化ホウ素、ホウ化チタン、炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、アルミノ珪酸マグネシウム、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭化ケイ素、炭化アルミニウム、炭化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、ホワイトカーボンなどが挙げられる。
これらのマット剤は、単独でも二種以上併用しても使用できる。粒径や形状(例えば針状と球状など)の異なる粒子を併用することで高度に透明性と滑り性を両立させることもできる。
これらの中でも、セルロースエステルと屈折率が近いので透明性(ヘイズ)に優れる二酸化珪素が特に好ましく用いられる。二酸化珪素の具体例としては、アエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKEP−10、シーホスターKEP−30、シーホスターKEP−50(以上、株式会社日本触媒製)、サイロホービック100(富士シリシア製)、ニップシールE220A(日本シリカ工業製)、アドマファインSO(アドマテックス製)等の商品名を有する市販品などが好ましく使用できる。
粒子の形状としては、不定形、針状、扁平、球状等特に制限なく使用できるが、特に球状の粒子を用いると得られるフィルムの透明性が良好にできるので好ましい。粒子の大きさは、可視光の波長に近いと光が散乱し、透明性が悪くなるので、可視光の波長より小さいことが好ましく、さらに可視光の波長の1/2以下であることが好ましい。
粒子の大きさが小さすぎると滑り性が改善されない場合があるので、80nmから180nmの範囲であることが特に好ましい。
なお、粒子の大きさとは、粒子が1次粒子の凝集体の場合は凝集体の大きさを意味する。また、粒子が球状でない場合は、その投影面積に相当する円の直径を意味する。
〈粘度低下剤〉
本発明において、溶融粘度を低減する目的として、水素結合性溶媒を添加することができる。水素結合性溶媒とは、J.N.イスラエルアチビリ著、「分子間力と表面力」(近藤保、大島広行訳、マグロウヒル出版、1991年)に記載されるように、電気的に陰性な原子(酸素、窒素、フッ素、塩素)と電気的に陰性な原子と共有結合した水素原子間に生ずる、水素原子媒介「結合」を生ずることができるような有機溶媒、すなわち、結合モーメントが大きく、かつ水素を含む結合、例えば、O−H(酸素水素結合)、N−H(窒素水素結合)、F−H(フッ素水素結合)を含むことで近接した分子同士が配列できるような有機溶媒をいう。
これらは、セルロース樹脂の分子間水素結合よりもセルロースとの間で強い水素結合を形成する能力を有するもので、本発明で行う溶融流延法においては、用いるセルロース樹脂単独のガラス転移温度よりも、水素結合性溶媒の添加によりセルロース樹脂組成物の溶融温度を低下することができる。
または同じ溶融温度においてセルロース樹脂よりも水素結合性溶媒を含むセルロース樹脂組成物の溶融粘度を低下することができる。
水素結合性溶媒としては、例えば、アルコール類:例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、ドデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、グリセリン等、ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン等、カルボン酸類:例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等、エーテル類:例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等、ピロリドン類:例えば、N−メチルピロリドン等、アミン類:例えば、トリメチルアミン、ピリジン等、等を例示することができる。
これら水素結合性溶媒は、単独で、または2種以上混合して用いることができる。これらのうちでも、アルコール、ケトン、エーテル類が好ましく、特にメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、オクタノール、ドデカノール、エチレングリコール、グリセリン、アセトン、テトラヒドロフランが好ましい。
さらに、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン、アセトン、テトラヒドロフランのような水溶性溶媒が特に好ましい。ここで水溶性とは、水100gに対する溶解度が10g以上のものをいう。
これらの溶媒は、溶融製膜時に揮発し、最終的には含有溶媒量として0.01質量%以下とされる。
<溶融流延製膜法>
本発明における溶融流延製膜とは、セルロースエステルおよび可塑剤などの添加剤を含む組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性のセルロースエステルを含む溶融物を流延することを溶融製膜として定義する。
加熱溶融する成形法は、さらに詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの中で、機械的強度および表面精度などに優れるセルロースエステルフィルムを得るためには、溶融押し出し法が優れている。
〈製膜方法〉
以下、フィルムの製膜方法について説明する。
(セルロースエステルと添加剤の溶融ペレット製造工程)
溶融押出に用いる複数の原材料は、通常あらかじめ混錬してペレット化しておくことが好ましい。
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥セルロースエステルや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出機に供給し1軸や二軸の押出機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押し出し、水冷または空冷し、カッティングすることでできる。
原材料は、押出する前に乾燥しておくことが原材料の分解を防止する上で重要である。特にセルロースエステルは吸湿しやすいので、除湿熱風乾燥機や真空乾燥機で70〜140℃で3時間以上乾燥し、水分率を200ppm以下、さらに100ppm以下にしておくことが好ましい。
添加剤は、押出機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。酸化防止剤等少量の添加剤さらに均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
酸化防止剤の混合は、固体同士で混合してもよいし、必要により、酸化防止剤を溶剤に溶解しておき、セルロースエステルに含浸させて混合してもよく、あるいは噴霧して混合してもよい。
真空ナウターミキサーなどが乾燥と混合を同時にできるので好ましい。また、フィーダー部やダイからの出口など空気と触れる場合は、除湿空気や除湿したN2ガスなどの雰囲気下にすることが好ましい。
また、押出機への供給ホッパー等は保温しておくことが吸湿防止できるので好ましい。
マット剤やUV吸収剤などは、得られたペレットにまぶしたり、フィルム製膜時に押出機中で添加したりしてもよい。
押出機は、せん断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、二軸押出機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
ニーダーディスクは、混錬性を向上できるが、せん断発熱に注意が必要である。ニーダーディスクを用いなくても混合性は十分である。ベント孔からの吸引は必要に応じて行えばよい。低温であれば揮発成分はほとんど発生しないのでベント孔なしでもよい。
ペレットの色は、黄味の指標であるb*値が−5〜10の範囲にあることが好ましく、−1〜8の範囲にあることがさらに好ましく、−1〜5の範囲にあることがより好ましい。
b*値は分光測色計CM−3700d(コニカミノルタセンシング(株)製)で、光源をD65(色温度6504K)とし、視野角10°で測定することができる。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
(セルロースエステルと添加剤の溶融物をダイから押し出す工程)
除湿熱風や真空または減圧下で乾燥したポリマーを1軸や二軸タイプの押出し機を用いて、押し出す際の溶融温度を200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどで濾過し異物を除去したあと、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ロール上で固化させる。
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
押し出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。
ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
濾過精度を粗、密と連続的に複数回繰り返した多層体としたものが好ましい。また、濾過精度を順次上げていく構成としたり、濾過精度の粗、密を繰り返す方法をとることで、フィルターの濾過寿命が延び、異物やゲルなどの補足精度も向上できるので好ましい。
ダイに傷や異物が付着するとスジ状の欠陥が発生する場合がある。このような欠陥をダイラインとも呼ぶが、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押出機からダイまでの配管には樹脂の滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力ないものを用いることが好ましい。
押出機やダイなどの溶融樹脂と接触する内面は、表面粗さを小さくしたり、表面エネルギーの低い材質を用いるなどして、溶融樹脂が付着し難い表面加工が施されていることが好ましい。具体的には、ハードクロムメッキやセラミック溶射したものを表面粗さ0.2S以下となるように研磨したものが挙げられる。
可塑剤などの添加剤は、あらかじめ樹脂と混合しておいてもよいし、押出機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するためにあらかじめタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
(ダイから押し出された溶融物を冷却ロールと弾性タッチロールとの間に押圧しながら流延する工程)
冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップする際のタッチロール側のフィルム温度はフィルムのTg以上Tg+110℃以下にすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するロールは、公知のロールが使用できる。
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
(延伸工程)
本発明では、上記のようにして得られたフィルムは冷却ロールに接する工程を通過後、フィルムをフィルム製膜方向に下記式(1)で表される延伸速度が100%/min〜10000%/minで延伸することが、フィルムの音速を所望の音速に制御する上で好ましい方法である。
延伸に要する時間は延伸工程の距離とフィルム搬送速度から算出し、延伸後寸法は延伸前に決まった長さでしるしをつけておき、延伸後の長さを測定することで求めた。
式(1)
延伸速度(%/min)={(延伸後寸法/延伸前寸法)−1}×100(%)/延伸に要する時間(min)
さらに、前記フィルムの幅手方向に前記式(1)で表される延伸速度が50%/min〜1000%/minで延伸すること、前記フィルムを少なくとも製膜方向か幅手方向のどちらか一方に50%〜200%延伸することが好ましい。
延伸倍率が小さすぎると、好ましい音速値をもつセルロースエステルフィルムを得ることが困さらになり、逆に大きすぎると、フィルムが破断したり、自重に耐え切れず、フィルムがたるんでしまう。
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを好ましく用いることができる。
延伸温度は、通常フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+60℃の温度範囲で行われることが好ましい。
フィルム構成材料のガラス転移温度Tgはフィルムを構成する材料種および構成する材料の比率を異ならしめることにより制御できる。光学フィルムを作製する場合、Tgは110℃以上、好ましくは125℃以上とすることが好ましい。液晶表示装置においては、画像の表示状態において、装置自身の温度上昇、例えば光源由来の温度上昇によってフィルムの温度環境が変化する。
このときフィルムの使用環境温度よりもフィルムのTgが低いと、延伸によってフィルム内部に固定された分子の配向状態に由来するレターデーション値およびフィルムとしての寸法形状に大きな変化を与えることとなる。
フィルムのTgが高過ぎると、フィルム構成材料をフィルム化するとき温度が高くなるために加熱するエネルギー消費が高くなり、またフィルム化するときの材料自身の分解、それによる着色が生じることがあり、従って、Tgは250℃以下が好ましい。
また延伸工程には公知の熱固定条件、冷却、緩和処理を行ってもよく、目的とする光学フィルムに要求される特性を有するように適宜調整すればよい。
延伸温度が低すぎると破断してしまう場合があり、高すぎると所望のレターデーションが得られない場合がある。
延伸は、幅手方向で制御された均一な温度分布下で行うことが好ましい。好ましくは±2℃以内、さらに好ましくは±1℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内である。
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きやすり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。
なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、再利用される。
以下、その延伸方法について説明する。
延伸は製膜方向(MD)の延伸(縦延伸ともいう)、幅手方向(TD)の延伸(横延伸ともいう)、およびこれらの組み合わせによって実施される。縦延伸は、ロール延伸(出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて製膜方向に延伸)や固定端延伸(フィルムの両端を把持しこれを製膜方向に次第に早く搬送して製膜方向に延伸)等により行うことができる。
また横延伸は、テンター延伸{フィルムの両端をチャックで把持しこれを横方向(製膜方向と直角方向)に広げて延伸}等により行うことができる。
本発明において延伸倍率としては、少なくとも一方に1%〜250%、より好ましくは2%〜200%、さらに好ましくは3%〜150%である。縦、横均等に延伸してもよいが、一方の延伸倍率を他方より大きくし不均等に延伸するほうがより好ましい。
縦(MD)、横(TD)いずれを大きくしてもよいが、小さい方の延伸倍率は0%〜30%が好ましく、より好ましくは0%〜25%であり、さらに好ましくは0%〜20%である。大きいほうの延伸倍率は1%〜250%であり、より好ましくは10%〜200%、さらに好ましくは30%〜150%である。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/(延伸前の長さ)
これらの縦延伸と横延伸は、それぞれ単独で行ってもよく(一軸延伸)、組み合わせて行ってもよい(二軸延伸)。二軸延伸の場合、縦、横逐次で実施してもよく(逐次延伸)、同時に実施してもよい(同時延伸)。
多段延伸の場合、延伸速度は各段の延伸速度の平均値を指す。
このような延伸に引き続き、縦または横方向に0%〜10%緩和することが好ましい。さらに、延伸に引き続き、150℃〜250℃で1秒〜3分熱固定することも好ましい。
ここで、Roとは面内レターデーションを示し、面内の製膜方向MDの屈折率と幅手方向TDの屈折率との差に厚みを乗じたもの、Rtとは厚み方向レターデーションを示し、面内の屈折率(製膜方向MDと幅方向TDの平均)と厚み方向の屈折率との差に厚みを乗じたものである。
延伸は、例えばフィルムの製膜方向および幅手方向に対して、逐次または同時に行うことができる。このとき少なくとも1方向に対しての延伸倍率が小さ過ぎると十分な位相差が得られず、大き過ぎると延伸が困難となりフィルム破断が発生してしまう場合がある。
互いに直交する二軸方向に延伸することは、フィルムの屈折率nx、ny、nzを所定の範囲に入れるために有効な方法である。
ここで、nxとはフィルムMD方向の屈折率、nyとはTD方向の屈折率、nzとは厚み方向の屈折率である。
例えばフィルム製膜方向に延伸した場合、幅手方向の収縮が大き過ぎると、nzの値が大きくなり過ぎてしまう。この場合、フィルムの幅収縮を抑制、あるいは幅手方向にも延伸することで改善できる。幅手方向に延伸する場合、幅手方向で屈折率に分布が生じることがある。
この分布は、テンター法を用いた場合に現れることがあり、フィルムを幅手方向に延伸したことで、フィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、いわゆるボーイング現象と呼ばれるものと考えられる。
この場合でも、フィルム製膜方向に延伸することで、ボーイング現象を抑制でき、幅手方向の位相差の分布を少なくできる。
互いに直交する二軸方向に延伸することにより、得られるフィルムの膜厚変動が減少できる。膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなり、液晶ディスプレイに用いたとき着色等のむらが問題となることがある。
本発明のセルロースエステルフィルムの膜厚変動は、±3%、さらに±1%の範囲とすることが好ましい。
延伸後、フィルムの端部をスリッターにより製品となる幅にスリットして裁ち落としたあと、エンボスリングおよびバックロールよりなるナール加工装置によりナール加工(エンボッシング加工)をフィルム両端部に施し、巻取り機によって巻き取ることにより、セルロースエステルフィルム(元巻き)の貼り付きや、すり傷の発生を防止する。
ナール加工の方法は、凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。
なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、変形しており、フィルム製品として使用できないので、切除されて、原料として再利用される。
一般的に、溶融押し出しでは流延ダイの形状により、端部側の滞留時間が長くなる傾向が知られており、それによりフィルム端部の着色が促進されると考えられる。本発明では溶融押し出し直後のフィルム幅手方向の端部のイエローインデックスYeと、フィルム中央部分のイエローインデックスYcは下式を満たすことが好ましく、より好ましくはYe/Ycが3.0以下である。
Ye/Ycが5.0より大きいと、フィルム端部を切除して、原料として再利用した際に、生産したフィルムの着色が増加する。なお、本発明で端部のイエローインデックスとはフィルム幅手方向の両端部から30mm以内での最大値と定義する。
式 1.0≦Ye/Yc≦5.0
光学フィルムの場合、該フィルムの厚さは、10〜500μmが好ましい。特に、下限は20μm以上、好ましくは30μm以上である。上限は150μm以下、好ましくは120μm以下である。特に好ましい範囲は25以上〜90μmである。
フィルムが厚いと、偏光板加工後の偏光板が厚くなり過ぎ、ノート型パソコンやモバイル型電子機器に用いる液晶表示においては、特に薄型軽量の目的に適さなくなる。一方、フィルムが薄いと、フィルムの透湿性が高くなり、偏光子を湿度から保護する能力が低下する傾向がある。
(機能性層の形成)
本発明のセルロースエステルフィルム製造に際し、延伸の前および/または後で透明導電層、ハードコート層、反射防止層、易滑性層、易接着層、防眩層、バリアー層、光学補償層等の機能性層を塗設してもよい。
特に、透明導電層、ハードコート層、反射防止層、易接着層、防眩層および光学補償層から選ばれる少なくとも1層を設けることが好ましい。この際、コロナ放電処理、プラズマ処理、薬液処理等の各および面処理を必要に応じて施すことができる。
<偏光板保護フィルムT2、T3>
偏光板保護フィルムT2およびT3は、その厚み方向のレターデーションRtのばらつきが10nm以下である光学異方性フィルムであることが好ましく、60℃における製膜方向および幅手方向の音速の平均値が、2.00〜2.25km/sであることが好ましい。
この光学異方性フィルムにおいて、波長550nmにおける正面方向のレターデーションを、自動複屈折計(王子計測器社製、KOBRA−21)を用いて測定した。
このとき、光学異方性フィルムの幅方向に10mm間隔で正面方向のレターデーションを測定し、その測定値の算術平均値を面内レターデーションRo、厚さ方向レターデーションRtとし、一方で前記幅方向に10mm間隔で測定した値の内、Rt最大値とRt最小値との差を厚さ方向レターデーションRtのばらつきとした。
本発明に用いられる光学異方性フィルムは、色補償、視野角補償等の光学補償の機能を備え、液晶表示装置の視認性を向上させる効果を有する。
さらに幅方向および製膜方向で複屈折性が制御されたフィルムであり、その厚み方向のレターデーションRtが30〜500nmであるフィルムである。
このような光学異方性フィルムとしては、一軸性を有するフィルム、二軸性を有するフィルム、およびこれらの積層体を挙げることができ、使用する液晶セルのモードに応じて適宜選択される。
本発明の光学異方性フィルムは、下記のレターデーションを有することを特徴とする。
0≦Ro≦300
30≦Rt≦500
好ましくは、
1.1≦Rt/Ro
10≦Ro≦250
50≦Rt≦400
さらに好ましくは、
1.2≦Rt/Ro
20≦Ro≦200
80≦Rt≦350
である。
なお、面内レターデーションRo、厚さ方向のレターデーションRtは、該フィルムの面内の主屈折率をnx(MD方向)、ny(TD方向)とし、該フィルムの厚さ方向の屈折率をnzとし、該フィルムの厚さをd(nm)とした際に、Ro=(nx−ny)×d、Rt=((nx+ny)/2−nz)×dで示される値である。
光学異方性フィルムとしては、熱可塑性樹脂を含有するフィルムを延伸したもの、無延伸の熱可塑性樹脂フィルム上に光学異方性層を形成したもの、熱可塑性樹脂を含有するフィルム上に光学異方性層を形成したあと、さらに延伸したもの等を用いることができる。延伸フィルムは、単層の形態であっても、複数積層した形態であってもよい。
これらの熱可塑性樹脂としては、透明性、低複屈折性、寸法安定性等に優れることから、特にセルロースエステル、脂環式オレフィンポリマー、ポリカーボネート系樹脂が好ましく用いられる。
熱可塑性樹脂には、必要に応じてレターデーション上昇剤を添加したり、特許文献1カラム0034〜0043に記載の液晶層を設けることにより位相差を調整することができる。
レターデーション上昇剤とは、熱可塑性樹脂に添加した際に、無添加の場合に比べてレターデーションを上昇させる化合物のことである。
セルロースエステルにレターデーション上昇剤を添加する場合には、セルロースアセテート100質量%に対して、0.01〜20質量%の範囲で使用することが好ましく、0.1〜10質量%の範囲で使用することがより好ましく、0.2〜5質量%の範囲で使用することがさらに好ましく、0.5〜2質量%の範囲で使用することが最も好ましい。
二種類以上のレターデーション上昇剤を併用してもよい。レターデーション上昇剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましい。レターデーション上昇剤は、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
また、レターデーション上昇剤としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることが好ましい。
なお、本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は、一般に、不飽和ヘテロ環である。
芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。
芳香族性ヘテロ環は、一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1、3、5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1、3、5−トリアジン環が好ましい。
レターデーション上昇剤が有する芳香族環の数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
前記熱可塑性樹脂を含むフィルムを延伸する方法としては、テンターを用いて横方向に一軸延伸する方法等の一軸延伸法;固定するクリップの間隔が開かれて縦方向の延伸と同時にガイドレールの広がり角度により横方向に延伸する同時二軸延伸法や、ロール間の周速の差を利用して縦方向に延伸したあとにその両端部をクリップ把持してテンターを用いて横方向に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法;横または縦方向に左右異なる速度の送り力もしくは引張り力または引取り力を付加できるようにしたテンター延伸機や、横または縦方向に左右等速度の送り力もしくは引張り力または引取り力を付加できるようにして、移動する距離が同じで延伸角度θを固定できるようにしたもしくは移動する距離が異なるようにしたテンター延伸機を用いて斜め延伸する方法:が挙げられる。
延伸温度としては、光学異方性フィルムを形成する材料、特に樹脂の中で、ガラス転移温度が最も低い樹脂のガラス転移温度をTgとすると、通常Tg〜Tg+50℃の範囲で行うことができる。
また、前記光学異方性フィルムの形成には、支持体上に高分子化合物や液晶性化合物を用いて異方性層を形成し光学異方性フィルムとすることができる。これらは、単独で使用してもよいし併用してもよい。
前記高分子化合物としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン等を使用できる。
具体的には、特表平8−511812号(国際公開番号 WO94/24191号)、同2000−511296号(国際公開番号 WO97/44704号)等記載の化合物が挙げることができる。
前記液晶性化合物としては、棒状液晶でも、ディスコティック液晶でも良く、またそれらが高分子液晶、もしくは低分子液晶、さらには、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
棒状液晶の好ましい例としては、特開2000−304932号公報に記載のものが挙げられる。
ディスコティック液晶の好ましい例としては、特開平8−50206号公報に記載のものが挙げることができる。
また、前記光学異方性層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましく、0.7〜5μmであることが最も好ましい。
ただし、液晶セルのモードによっては、高い光学的異方性を得るために、3〜10μmとする場合もある。
光学異方性層を含む光学異方性フィルムの製造方法は、特に限定されず、例えば、前記高分子化合物および/または液晶性化合物を熱可塑性樹脂を含むフィルム等に塗工して塗工膜を製造し、その塗工膜をさらに延伸や収縮させることにより製造できる。
液晶層の設け方は、特許文献1を参考にすることができる。
<偏光板>
本発明の偏光板について述べる。
偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明のセルロースエステルフィルムをアルカリ鹸化処理し、処理したフィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
セルロースエステルフィルム以外の光学異方性フィルムの場合は、アクリル系またはウレタン系接着剤を使用することが好ましい。
本発明の偏光子としては、ポリビニルアルコール系偏光フィルムであって、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
該偏光子の面上に、本発明のセルロースエステルフィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
本発明に従い溶融流延製膜方法により製造される長尺状セルロースエステルフィルムは、長尺状の偏光子(偏光フィルム)とアルカリケン化処理を施して貼合することができるため、特に100m以上の長尺で生産的効果が得られ、1500m、2500m、10000mとより長尺化する程偏光板製造の生産的効果が高まる。
また、本発明のセルロースエステルフィルムを用いた偏光板はリワーク性に優れるため、偏光板収率が向上するという効果も得ることができる。
<液晶表示装置>
本発明の偏光板は、MVA(Multi−domain Vertical Alignment)方式、TN(twisted nematic)方式、PVA(Patterned Vertical Alignment)方式、CPA(Continuous Pinwheel Alignment)方式、OCB(Optical Compensated Bend)方式、IPS(In−Plane Switching)方式等に用いることができる。
液晶表示装置はカラー化および動画表示用の装置として応用され、本発明により表示品質が改良され、コントラストの改善や偏光板の耐性が向上したことにより、疲れにくく忠実な動画像表示が可能となる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
<セルロースエステルの合成>
特表平6−501040号公報の例Bを参考にして、プロピオン酸、酪酸、酢酸の添加量を調整して、アセチル基置換度、プロピオニル基置換度、ブチリル基置換度を表1のように変化させた3種類のセルロースエステルを合成した。
得られたセルロースエステルの置換度は、ASTM−D817−96に基づいて算出した。
セルロースエステルフィルム試料101には、コニカミノルタタックKC8UYを使用した。試料102〜105は下記によって作製した。
<溶融法によるT1、T4用偏光板保護フィルム102〜105の作製>
80℃で6時間乾燥済み(水分率200ppm)のセルロースエステルC−1、100質量部、一般式(3)の可塑剤No.64を4質量部、モノペットSB(第一工業製薬(株)製)4質量部、紫外線吸収剤LA−31(ADEKA(株)製)1.05質量部、Irganox1010(チバ・ジャパン(株)製)0.5質量部、アデカスタブPEP−36(ADEKA(株)製)0.08質量部、SumilizerGS(住友化学(株)製)0.2質量部、シーホスターKEP−30(日本触媒(株)製)0.1質量部を真空ナウターミキサーで80℃、1Torrで3時間混合しながらさらに乾燥した。
得られた混合物を、二軸式押出機を用いて235℃で溶融混合しペレット化した。
セルロースエステルフィルムの製膜は図2に示す製造装置で行った。
ペレット(水分率50ppm)を、1軸押出機を用いてTダイから表面温度が100℃の第1冷却ロール上に溶融温度245℃でフィルム状に溶融押し出し、初期膜厚128μm、幅1.0mのキャストフィルムを毎分35mの長さで得た。
この際第1冷却ロール上でフィルムを2mm厚の金属表面を有する弾性タッチロールで押圧した。
得られたフィルムを、まずロール周速差を利用した延伸機によって195℃で製膜方向に60%で延伸速度500%/minで延伸し、膜厚80μmの保護フィルム102を得た。
次に、延伸速度、延伸倍率を調整し本発明のセルロースエステルフィルム102と同様にして、膜厚80μmのフィルム試料103〜105を得た。いずれの試料も溶媒含有量が、0.01質量%以下であった。
このとき幅手方向の延伸は、製膜方向に延伸したあと、予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有するテンターにて延伸ゾーンにおいて165℃で行い、その後30℃まで冷却し、クリップから開放し、クリップ把持部を裁ち落としてフィルムを得た。
また、比較T1、T4用偏光板保護フィルムとして特開2005−99191号公報実施例1に記載の光学フィルムCAF−01に準じて試料106を作製した。
<T2、T3用偏光板保護フィルム201〜204の作製>
試料201は、下記のようにして作製した。試料202は、試料201に液晶層を設けたものである。
(アクリル系重合体X1の合成)
特開2000−344823号公報に記載の重合方法により塊状重合を行った。すなわち、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計、投入口および環流冷却管を備えたフラスコに下記メチルアクリレートとルテノセンを導入しながら内容物を70℃に加熱した。
次いで、充分に窒素ガス置換した下記β−メルカプトプロピオン酸の半分を攪拌下フラスコ内に添加した。β−メルカプトプロピオン酸添加後、攪拌中のフラスコ内の内容物を70℃に維持し2時間重合を行った。
さらに、窒素ガス置換したβ−メルカプトプロピオン酸の残りの半分を追加添加後、さらに攪拌中の内容物の温度が70℃に維持し重合を4時間行った。反応物の温度を室温に戻し、反応物に5質量%ベンゾキノンのテトラヒドロフラン溶液を20質量部添加して重合を停止させた。
重合物をエバポレーターで減圧下80℃まで徐々に加熱しながらテトラヒドロフラン、残存モノマーおよび残存チオール化合物を除去してアクリル系重合体X1を得た。重量平均分子量Mwは1000であった。
メチルアクリレート 100質量部
ルテノセン(金属触媒) 0.05質量部
β−メルカプトプロピオン酸 12質量部
(添加液A)
アエロジルR972V(日本アエロジル(株)製) 2質量部
(一次粒子の平均径12nm、見掛け比重100g/リットル)
エタノール 18質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。分散後の液濁度は100ppmであった。この二酸化珪素分散液に18質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、添加液Aを作製した。
(セルロースエステル用ドープ液)
セルロースエステル(総置換度2.48,プロピオニル置換度0.82)
100質量部
下記の化合物(A−1) 0.35質量部
アクリル系重合体X1 2.5質量部
モノペットSB(第一工業製薬(株)製) 10質量部
メチレンクロライド 400質量部
エタノール 62質量部
添加液A 2質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ液Aを調製した。製膜ライン中で日本精線(株)製のファインメットNFでドープ液を濾過した。
化合物(A−1)
33℃に温度調整したドープ液を、ダイに送液して、ダイスリットからステンレスベルト上に均一に流延した。ステンレスベルトの流延部は裏面から37℃の温水で加熱した。流延後、金属支持体上のドープ膜(ステンレスベルトに流延以降はウェブという)に44℃の温風をあてて乾燥させ、剥離の残留溶媒量が120質量%で剥離した。
剥離の際の張力をかけて流延方向に1.1倍の延伸倍率となるように延伸した。
なお、フィルムの膜厚はドープの流量を調整し、剥離残溶はステンレスベルト上での風量コントロールにて全て120質量%となるようにしてある。
ドープ流量調整後上記と同様に作成し剥離したフィルムを、155℃2秒の予熱後163℃にて1.41倍の延伸処理を行い、延伸後その幅を維持したまま5秒間保持した後、幅方向の張力を緩和させて幅保持を解放し120℃で乾燥させた。
以上のようにして膜厚60μm、幅1.5mの光学的に二軸性の試料201を作製した。
ついで、試料202を下記のようにして作製した。
(中間層塗布液)
ウレタンアクリレートオリゴマー 25質量部
(UV−7510B 日本合成化学(株))
プロピレングリコールモノメチルエーテル 290質量部
イソプロピルアルコール 685質量部
光重合開始剤 0.05質量部
(ルシリンTPO バスフ(株)製)
この塗布液を、透明フィルム100にワイヤーバー#3で塗布し80℃で30秒乾燥後、紫外線を120mJ/mmを10秒照射して硬化した。乾燥後の中間層の膜厚は、0.5μmであった。
この中間層上に第2の中間層として市販の垂直配向膜(JALS−204R、日本合成ゴム(株)製)をメチルエチルケトンで1:1に希釈したのち、ワイヤーバーコーターで2.4ml/m2塗布した。直ちに、120℃の温風で120秒乾燥した。
(異方性層塗布液)
紫外線重合性液晶材料 20質量部
(UCL−018 大日本インキ化学工業(株)製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 80質量部
光重合開始剤 0.04質量部
(ルシリンTPO(BASF(株)製))
ヒンダードアミン 0.02質量部
LS−765(三共ライフテック株式会社製)
増感剤 0.10質量部
(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)
空気界面側垂直配向剤1 0.01質量部
この異方性層塗布液をダイコータにより前記素直配向膜上にウェット12μmの厚みで塗布した。その後100℃の恒温槽中で2分間加熱し、棒状液晶化合物を配向させた。
次にコートしたフィルムに酸素濃度0.2%、温度28℃にて250mJ/mmの紫外線を10秒照射して、重合性液晶組成物を硬化させ、試料202を得た。異方性層の厚みは、1.8μmであった。
試料203は、特開2005−99191号公報実施例1記載のセルロースアシレートフィルム(1)に準じて作製した。
試料204は、以下のようにして作製した。
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水152400部、25%水酸化ナトリウム水溶液84320部を入れ、HPLC分析で純度99.8%の9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“ビスクレゾールフルオレン”と略称することがある)34848部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン9008部(以下“ビスフェノールA”と略称することがある)およびハイドロサルファイト88部を溶解した後、塩化メチレン178400部を加えた後撹拌下15〜25℃でホスゲン18248部を60分かけて吹き込んだ。
ホスゲン吹き込み終了後、p−tert−ブチルフェノール177.8部を塩化メチレン2640部に溶解した溶液および25%水酸化ナトリウム水溶液10560部を加え、乳化後、トリエチルアミン32部を加えて28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。
反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、塩化メチレン相を濃縮、脱水してポリカーボネート濃度が20%の溶液を得た。
この溶液から溶媒を除去して得たポリカーボネート(共重合体A)はビスクレゾールフルオレンとビスフェノールAとの構成単位の比がモル比で70:30であった(ポリマー収率97%)。また、このポリマーの極限粘度は0.674、Tgは226℃であった。
エタノールを4質量部含む、メチレンクロライドとエタノール混合溶媒75質量部に対して、前記ポリカーボネート25質量部を25℃で攪拌しながら溶解して、透明で粘ちょうなドープを得た。
このドープを、乾燥空気を送風して露点を12℃以下に制御した100mステンレスベルト上に流延し、剥離した。その時の残留溶媒濃度は35%だった。剥離性は良好であり帯電も少ないことより目視観察ではフィルム表面に剥離段や剥離筋等は見られなかった。
その後、残留溶媒濃度が2%のとき、幅保持をして乾燥させた。その後、残留溶媒濃度が1%以下になるまで乾燥し芳香族ポリカーボネートフィルムを得た。
Ro=28nmであり、フィルムの遅相軸は流延方向に対する角度である配向角は0°であった。表面粗さRa=0.4nm、光の散乱を示すヘイズが0.9%であった。膜厚は125μmであった。
次に、上記で得たフィルムを、特開平6−222213号公報に開示されている方法に従って、図3に示す周速の異なるローラR4およびローラR5に挟み込んでフィルムをロール形状に50m作製した。
図3において、ローラR1は送り出しローラ、R2、R3は駆動系を持たないニップローラ兼余熱ローラである。R4とR5はそれぞれに駆動系を有するローラであり、周速差を任意に制御できるローラである。
また、油圧によってR4、R5の間の圧力を制御できる構造になっている。R6は駆動系を有する巻取りローラであり、テンションコントローラで巻取り速度を制御している。R2からR5のローラには内部にヒータを内蔵し、ローラ表面に温度センサーが取り付けられており、温度センサーからの温度をそのヒータにフィードバックし、PID制御によって±1℃の精度で温度コントロールしている。
このフィルムの成形条件は、以下の通りである。
ローラR4、ローラR5の周速:2.8m/min、1.9m/min
ローラR4、ローラR5の表面温度:145℃
ローラR4、ローラR5に挟まれたフィルムに加わる力:2000kg
ローラR4、ローラR5のロール径:150mm
次に、得られたフィルムをテンターによって横一軸延伸を行い、延伸フィルムを得た。延伸条件は、以下の通りである。
延伸温度:160℃
延伸倍率:7%
フィルム送り出し速度:3m/min
50mの延伸フィルムを作製し、図4に示すようにフィルムの上側に5個の駆動ローラ、下側に5個の追随回転ローラを配置し、すなわち、5個のローラ対で、上記で得た延伸フィルムを挟んで、フィルム搬送速度:3m/minで搬送し、フィルム内に歪み変形を与えた。このときの、駆動モータのトルク負荷が500N・mとなる様に追随回転ローラの回転負荷を調整した。このようにして試料204を作製した。
なお、T2,T3フィルムのRo、Rtは、もともと貼ってあった偏光板のものと±10%以内の範囲で実質的に同一の値に調整した。
〈音速〉
本発明のセルロースフィルムの音速は、23℃90%RH環境に試験試料を1時間設置し、その後同環境を60℃に昇温させ1時間保持した後、同環境下SONIC SHEET TESTER(SST−110型、野村商事(株)製)を用いてフィルム製膜方向および幅手方向について測定した。
結果を表2に示す。
<偏光板および液晶表示装置の作製>
(アルカリケン化処理)
上記作製した保護フィルム101〜203は下記に記載するアルカリケン化処理した。
ケン化工程 2.5M−NaOH 50℃ 90秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
中和工 10質量部HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
ケン化処理後、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで80℃で乾燥。
〈偏光子の作製と貼り合わせ〉
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で6倍に製膜方向に延伸して偏光子を作った。
次に、ポリビニルアルコール系の接着剤を用いて、偏光子の透過軸とフィルムの面内遅相軸が平行になるように偏光子の片面に保護フィルム、反対面に光学異方性フィルムを表3に示す組み合わせになるように貼り合わせ偏光板を作製した。
<液晶表示装置の作製>
得られた偏光板はVA方式液晶セルとしてソニー(株)製32型液晶テレビ“BRAVIA”KDL−32J5000、IPS方式液晶セルとして松下電器産業(株)製ビエラ(TH−32LZ80)、TN方式液晶セルとして(株)アイ・オー・データ機器製液晶ディスプレイ(LCD−A176G)にあらかじめ貼合されていた偏光板を注意深く剥がし、もともと貼ってあった偏光板の透過軸にあわせ、光学異方性フィルム側を液晶セル側に粘着剤を介して貼り付け液晶表示装置を作製した。コーナームラについての評価結果を表3に示す。
<評価>
コーナームラは、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタセンシング(株)製)を使用し、フィルムの四隅の正面輝度を測定することによって評価した。
◎:コーナームラの発生なし
(四隅正面輝度平均;1.00〜1.05)
○:裸眼ではコーナームラ認識できない
(四隅正面輝度平均;1.06〜1.10)
△:コーナームラとして見えるが、使用にあたって支障はない
(四隅正面輝度平均;1.11〜1.20)
×:表示品質上問題がある
(四隅正面輝度平均;1.21以上)
表3に記載の通り、本発明では、コーナームラが改善される。