JP2007264287A - 光学フィルム、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フィルム長手方向の音速と、これと略直交方向の音速のうち、大きい方を小さい方で除した値が、1.2以上である光学フィルム。また、上記比の値が1.1以上であり、かつ、波長450nm、550nm、650nmにおける正面レターデーションReと、膜厚方向のレターデーションRthの比及び波長450nm、550nm、650nmの各Reの相互の比が特定範囲内である光学フィルム。
【選択図】なし
Description
また、近年の液晶テレビの普及、大画面化、バックライトの高輝度化に伴い、画面内のムラや光漏れが問題視されるようになった。特に、激しい気温・湿度変化にさらされると偏光板が寸法変化し、それに伴って画面の周辺に生じる周辺ムラは、改善が求められている。
また本発明の課題は、コントラストが改善され、黒表示時の視角方向に依存した色ずれが改良され、さらに、激しい気温・湿度変化を受けても周辺ムラが発生しにくい、特にVA、IPSおよびOCBモードの液晶表示装置を提供することである。
1.フィルム長手方向の音速と、これと略直交方向の音速のうち、大きい方を小さい方で除した値が、1.2以上であることを特徴とする光学フィルム。
2.前述のフィルム長手の音速とこれと略直交方向の音速のうち、大きい方を小さい方で除した値が1.1以上であり、かつ、波長450nm、550nm、650nmにおける正面レターデーションReと、膜厚方向のレターデーションRthが下記式(I)〜(III)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
式(I):0.4<{ (Re(450)/Rth(450))/(Re(550)/Rth(550))}<0.95
かつ1.05<{(Re(650)/Rth(650))/(Re(550)/Rth(550))}<1.9
式(II):0.1<(Re(450)/Re(550))<0.95
式(III):1.03<(Re(650)/Re(550))<1.93
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーションRe(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーションRth(単位:nm)である。]
3.フィルムを延伸する延伸工程と収縮させる収縮工程とを含み、収縮速度が10乃至100%/分であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
4.上記3に記載の製造方法により作製したことを特徴とする上記1又は2に記載の光学フィルム。
5.波長550nmにおける正面レターデーションReが20〜100nmの範囲であり、かつ波長550nmにおける膜厚方向のレターデーションRthが100〜300nmの範囲であることを特徴とする上記1、2又は4のいずれかに記載の光学フィルム。
6.セルロースアシレートを用いたことを特徴とする上記1、2、4又は5のいずれかに記載の光学フィルム。
7.セルロースアシレートフィルムのグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度をDS2、3位の水酸基のアシル基による置換度をDS3、6位の水酸基のアシル基による置換度をDS6としたときに、下記式(IV)および(V)を満たすことを特徴とする上記6に記載の光学フィルム。
式(IV):2.0≦(DS2+DS3+DS6)≦3.0
式(V):DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.315
8.下記式(VI)および(VII)を満たすセルロースアシレートから実質的になることを特徴とする、上記6又は7に記載の光学フィルム。
(VI): 2.0 ≦ A+B ≦ 3.0
(VII): 0 < B
(式(VI)および(VII)において、Aは前記セルロースアシレートのグルコース 単位の水酸基のアセチル基による置換度であり、Bは、前記セルロースアシレートのグルコース単位の水酸基のプロピオニル基、ブチリル基またはベンゾイル基による置換度である。)
9.レターデーション発現剤を含有することを特徴とする上記1、2、または4〜8のいずれか1項に記載の光学フィルム。
10.偏光膜と、該偏光膜を挟持する一対の保護膜とを有する偏光板であって、前記保護膜の少なくとも一枚が上記1、2または4〜9のいずれか1項に記載の光学フィルムであることを特徴とする偏光板。
11.上記1〜2、または4〜9のいずれか1項に記載の光学フィルムまたは上記10に記載の偏光板を有することを特徴とする液晶表示装置。
12.上記10に記載の偏光板を用いたことを特徴とするIPS、OCB、またはVAモードの液晶表示装置。
13.上記10に記載の偏光板をバックライト側に用いたことを特徴とするVAモードの液晶表示装置。
測定されるフイルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフイルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフイルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレタデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の数式(1)及び数式(2)よりRthを算出することもできる。
数式(1)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
[数式(2)]
Rth=((nx+ny)/2 - nz) x d --- 数式(2)
さらに、本発明の偏光板を用いた液晶表示装置においては、激しい気温・湿度変化による周辺ムラの発生が抑制され、あらゆる環境条件で使用しても、優れた表示性能を維持することができる。
本発明はフィルム長手方向の音速と、これと略直交方向の音速のうち、大きい方を小さい方で除した値が、1.1以上である光学フィルムに関する。なお、本明細書においては、フィルム媒質中の音の伝播速度を単に「フィルムの音速」と呼んでいる。
このような特性のフィルムを用いて作製した偏光板においては、液晶テレビ等に使用した場合において近年問題となっている周辺ムラを抑制することができる。
周辺ムラは、激しい気温・湿度変化にさらされると偏光板が寸法変化し、それに伴って画面の周辺に光漏れが生じる結果、画像コントラストの低下や色相の局部変化(色むら)となる現象である。周辺ムラの原因は、鋭意研究の結果、光漏れの度合いは偏光板の寸法変化に比例し、偏光板の寸法変化によって粘着剤、セル側の偏光板保護フィルムに応力が生じるためであることがわかっている。
本発明者らは、従来の偏光板の寸法変化が、偏光板の吸収軸方向よりも透過軸方向の方が大きいことを見出した。これは、偏光板中、偏光子として用いられるPVAの延伸方向と関連があり、延伸方向と平行である吸収軸方向では、延伸によりPVAの配向度が高くなって(密度増大)いるため、寸法変化に強いが、透過軸方向はPVAの配向とは直交方向であるので寸法変化に弱くなってしまうためである。
しかし、本発明のフィルムを偏光板の保護フィルムとして用いた場合、フィルムの音速が大きく(密度が高いことと同義)、寸法変化しにくいTD方向が、偏光板として寸法変化しやすい方向である透過軸方向と平行に貼合されることにより、偏光板透過軸方向の寸法変化も抑制することができ、光漏れを抑制することが出来る。
その理由は下記の通りである。すなわち、前述のように、偏光板を斜めから見たときの光漏れ抑制のためには、偏光子の透過軸とセルロースアシレートフィルムの面内の遅相軸を平行に配置する必要があり、連続的に製造されるロールフィルム状の偏光子の透過軸は、一般的に、ロールフィルムの幅方向に平行であるので、本発明のフィルムでは、TD方向に延伸し、MD方向に収縮させて、TD方向に遅相軸を持つ(TD方向の異方性が高い)フィルムを作製することが好ましい。
また、本発明のフィルムの音速は、1.4〜3.0km/秒であることが好ましく、1.5〜2.9km/秒であることがさらに好ましく、1.6〜2.8km/秒であることが特に好ましい。
ここで、音速とは音波伝搬速度のことであり、25℃、60%RHで十分調湿したフィルムを、同環境下で、音波計(例えば、野村商事製SST−110)を用い、フィルムのMD方向(製造時の長さ方向)、またはTD方向(製造時の幅方向)に沿った超音波パルスの縦波振動の伝搬速度を求めた。
TD方向に異方性が高いことは、フィルムはTD方向の配向度が高いことと同根である。一般に、配向度が高い方向では、フィルム内のポリマー密度も高くなり、音速の値が大きくなる。
本発明者らは鋭意検討の結果、フィルムを延伸する延伸工程と収縮させる収縮工程とを含むことを特徴とする製造方法により、上記好ましい光学物性を有する光学フィルムが得られることを見出した。
また、フィルムのTD方向の音速C(TD)とMD方向の音速C(MD)の比C(TD)/C(MD)の値が1.2以上であると、該フィルムを偏光板保護膜とした偏光板を用いた液晶表示装置においては、激しい気温・湿度変化による周辺ムラの発生が抑制され、あらゆる環境条件で使用しても、優れた表示性能を維持することができることを見出した。
この場合、フィルムの搬送方向にフィルムを延伸することとなるが、フィルムの搬送方向に延伸する方法としては、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法が好ましく用いられる。また溶液流延法による製膜においては、ステンレスのバンドまたはドラム上に流延し、半乾燥状態となったフィルムを剥離する際、フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くする方法も好ましく用いられる。
フィルムの搬送方向と略直交する方向には、フィルムの両端をクリップやピンで固定するテンターと呼ばれる装置で把持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に狭めることでフィルムを延伸方向と略直交して収縮させることが出来る。
この場合、フィルムの搬送方向にフィルムを収縮することとなるが、フィルムの搬送方向に収縮する方法としては、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に収縮する方法が好ましく用いられる。すなわち、搬送下流側のロールの周速を遅くし、この時フィルムがTg以上の温度となるように加熱することで、熱収縮を利用してフィルムを搬送方向に収縮することができる。
フィルムの搬送方向と略直交する方向には、フィルムの両端をクリップやピンで固定するテンターと呼ばれる装置で把持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることでフィルムを延伸方向と略直交して延伸させることが出来る。
また、チェーン式、スクリュー式、パンタグラフ式、リニアモーター式等の、フィルムの搬送方向と幅方向の二軸方向に動作するテンターによって把持し、フィルムの搬送方向と略直交する方向に延伸しながら搬送方向にはクリップの間隔を徐々に狭めることでフィルムを収縮させることが出来る。
また前記で説明した、フィルムの搬送方向と幅方向の二軸方向に動作するテンターを用いた方法は、延伸工程と収縮工程の少なくとも一部が、同時に行われているということができる。
本発明者らの研究の結果、このような同時処理は、延伸・収縮のタイミング、倍率、速度を調整することで、ボーイングと呼ばれるフィルム面内での延伸・収縮の不均一を軽減しやすいという利点を持つことがわかった。
なお、本発明でいう延伸率とは、延伸方向における延伸前のフィルムの長さに対する延伸後のフィルムの長さの延びた割合を意味し、収縮率とは、収縮方向における収縮前のフィルムの長さに対する収縮後のフィルムの収縮した長さの割合を意味する。
また、上述の方法で作製すれば、延伸に対する緩和率を上げることができるので、より延伸方向の配向異方性が大きいフィルムを作製することができる。
(A):10≧|Rth(550)10%RH−Rth(550)60%RH|
(ここでRth(550)10%RH、Rth(550)60%RHは、それぞれ25℃10%および60%RHにおけるRth(550)である)。
前記厚み方向レタデーションRthの25℃、60%RHで測定した値と25℃、10%RHで測定した値との差の絶対値としては5nm以下であることがさらに好ましい。
延伸速度は5%/分〜1000%/分であることが好ましく、10%/分〜500%/分であることが好ましい。延伸はヒートロールあるいは/および放射熱源(IRヒーター等)、温風により行うことが好ましい。
セルロースアシレートの原料綿は、公知の原料を用いることができる(例えば、発明協会公開技法2001−1745参照)。また、セルロースアシレートの合成も公知の方法で行うことができる(例えば、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)参照)。セルロースアシレートの粘度平均重合度は200〜700が好ましく250〜500が更に好ましく250〜350が最も好ましい。また、本発明に使用するセルロースエステルの数平均分子量(Mn)は10000以上150000以下、重量平均分子量(Mw)は20000以上500000以下、Z平均分子量(Mz)は5000以上550000以下が好ましい。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.5〜5.0であることが好ましく、2.0〜4.5であることがさらに好ましく、3.0〜4.0であることが最も好ましい。
特に、セルロースアシレートフィルムのセルロースを構成するグルコース単位の水酸基を炭素原子数が2以上のアシル基で置換して得られ、グルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度をDS2、3位の水酸基のアシル基による置換度をDS3、6位の水酸基のアシル基による置換度をDS6としたときに、下記式(III)および(IV)を満たすと、所望のRe、Rthを出すことが容易となり、また温湿度によるRe値の変動がより小さいくなり好ましい。
(III):2.0≦(DS2+DS3+DS6)≦3.0
(IV):DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.315
より好ましい範囲は、
(III):2.2≦(DS2+DS3+DS6)≦2.9
(IV):DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.322
である。
(V): 2.0 ≦ A+B ≦ 3.0
(VI): 0 < B
より好ましい範囲は、
(V): 2.6 ≦ A+B ≦ 3.0
(VI): 0.5 ≦ B ≦ 1.5
である。
本発明の、フィルムを延伸する延伸工程と収縮させる収縮工程とを含むことを特徴とする製造方法により、好ましい光学物性を有するフィルムを得る方法は、セルロースアシレートに限定されず、光学フィルムとして使用可能なポリマー全般に適用可能で、セルロースアシレートと同様な効果が見込める。
これらの光学フィルムとして使用可能なポリマーとしては、例えばポリカーボネート共重合体や、環状オレフィン構造を有する重合体樹脂が挙げられる。
ポリカーボネート共重合体の質量平均分子量は、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000である。その他の高分子化合物の質量平均分子量は、500〜100,000、好ましくは1,000〜50,000である。
ノルボルネン系付加(共)重合体は、特開平10−7732号、特表2002−504184号、US2004229157A1号あるいはWO2004/070463A1号等の各公報に開示されているノルボルネン系多環状不飽和化合物同士を付加重合することによって得られる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多環状不飽和化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン;エチリデンノルボルネンのような非共役ジエン;アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの線状ジエン化合物とを付加重合することもできる。このノルボルネン系付加(共)重合体は、三井化学(株)よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)の異なる例えばAPL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)あるいはAPL6015T(Tg145℃)などのグレードがある。ポリプラスチック(株)よりTOPAS8007、同6013、同6015などのペレットが発売されている。更に、Ferrania社よりAppear3000が発売されている。
本発明のセルロースアシレートフィルムのReの絶対値を制御するには、溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長である化合物をレターデーション上昇剤として用いることが好ましい。このような化合物を用いることで、可視域のReの波長依存性を実質変化することなく絶対値を制御することが出来る。
「レターデーション上昇剤」とは、ある添加剤を含むセルロースアシレートフィルムの波長550nmで測定したReが、その添加剤を含まない以外は全く同様に作製したセルロースアシレートフィルムの波長550nmで測定したReよりも、20nm以上高い値(膜厚80μm換算時)となる「添加剤」を意味する。Reの上昇は、30nm以上であることが好ましく、40nm以上であることがさらに好ましく、60nm以上であることが最も好ましい。
レターデーション上昇剤の機能の観点では、棒状化合物が好ましく、少なくとも一つの芳香族環を有することが好ましく、少なくとも二つの芳香族環を有することがさらに好ましい。
好ましい化合物としては、特開2004−4550号公報に記載されているが、これに限定されるものではない。溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。
所望のRthを発現するため、レターデーション上昇剤を用いることが好ましい。
ここでの「レターデーション上昇剤」とは、ある添加剤を含むセルロースアシレートフィルムの波長550nmで測定したRthが、その添加剤を含まない以外は全く同様に作製したセルロースアシレートフィルムの波長550nmで測定したRthよりも、20nm以上高い値(膜厚80μm換算時)となる「添加剤」を意味する。Rthの上昇は、30nm以上であることが好ましく、40nm以上であることがさらに好ましく、60nm以上であることが最も好ましい。
レターデーション上昇剤は、250乃至400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
Rthを制御するレターデーション上昇剤は、延伸により発現するReに影響しないことが好ましく、円盤状の化合物を用いることが好ましい。
円盤状の化合物としては、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含み、特に、芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましく、特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には、例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が好ましく用いられる。
芳香族化合物は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.01乃至20質量部の範囲で使用する。芳香族化合物は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.05乃至15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1乃至10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。二種類以上の化合物を併用してもよい。
延伸により発現するReに影響することなくRthを制御する方法として、液晶層等による光学異方性層を塗設する方法が好ましく用いられる。
液晶層の具体例としては、ディスコティック液晶を、その円盤面と上述の光学フィルム面との角度が5度以内となるように配向させる方法(特開平10−312166号公報)、棒状液晶を、その長軸と上述の光学フィルム面との角度が5度以内となるように配向させる方法(特開2000−304932号公報)が挙げられる。
光学異方性層は、セルロースアシレートフィルムの表面に直接形成してもよいし、セルロースアシレートフィルム上に配向膜を形成し、該配向膜上に形成してもよい。また、別の基材に形成した液晶性化合物層を、粘着剤、接着剤等を用いて、セルロースアシレートフィルム上に転写することも可能である。
光学異方性層の形成に用いる液晶性化合物としては、棒状液晶性化合物及び円盤状液晶性化合物(以下、円盤状液晶性化合物を「ディスコティック液晶性化合物」という場合もある)が挙げられる。棒状液晶性化合物及びディスコティック液晶性化合物は、高分子液晶でも低分子液晶でもよい。また、最終的に光学異方性層に含まれる化合物は、もはや液晶性を示す必要はなく、例えば、光学異方性層の作製に低分子液晶性化合物を用いた場合、光学異方性層を形成される過程で、該化合物が架橋され液晶性を示さなくなった態様であってもよい。
本発明に使用可能な棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。なお、棒状液晶性化合物には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性化合物を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも用いることができる。言い換えると、棒状液晶性化合物は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性化合物については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章及び第11章、及び液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
棒状液晶性化合物は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、不飽和重合性基又はエポキシ基が好ましく、不飽和重合性基がさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基が最も好ましい。
ディスコティック液晶性化合物には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
本発明では、例えば、OCB方式用の光学補償フィルムを作製する場合、光学異方性層形成用配向膜をラビング処理によって作製し、セルロースアシレートフィルムの遅相軸に対して45°の方向にラビング処理することで、液晶性化合物の分子対称軸の、少なくともセルロースアシレートフィルム界面における配向平均方向が、セルロースアシレートフィルムの遅相軸に対して45°である光学異方性層を形成することができる。
例えば、光学補償フィルムは、遅相軸が長手方向と直交する長尺状の本発明のセルロースアシレートフィルムを用いると連続的に作製できる。具体的には、長尺状の該セルロースアシレートフィルムの表面に連続的に配向膜形成用塗布液を塗布して膜を作製し、次に該膜の表面を連続的に長手方向に45°の方向にラビング処理して配向膜を作製し、次に作製した配向膜上に連続的に液晶性化合物を含有する光学異方性層形成用塗布液を塗布して、液晶性化合物の分子を配向させて、その状態に固定することで光学異方性層を作製して、長尺状の光学補償フィルムを連続的に作製することができる。長尺状に作製された光学補償フィルムは、液晶表示装置内に組み込まれる前に、所望の形状に裁断される。
ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。ディスコティック液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、ディスコティック液晶性化合物に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
ディスコティック液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
本発明において前記セルロースアシレート溶液に用いることができる添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、レターデーション(光学異方性)発現剤、レターデーション(光学異方性)低下剤、波長分散調整剤、染料、微粒子、剥離促進剤、赤外吸収剤などを挙げることができる。本発明においては、レターデーション発現剤を用いるのが好ましい。また、可塑剤、紫外線吸収剤及び剥離促進剤の少なくとも1種以上を用いるのが好ましい。
紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系である。
前記劣化防止剤は、セルローストリアセテート等が劣化、分解するのを防止することができる。劣化防止剤としては、ブチルアミン、ヒンダードアミン化合物(特開平8−325537号公報)、グアニジン化合物(特開平5−271471号公報)、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(特開平6−235819号公報)、ベンゾフェノン系UV吸収剤(特開平6−118233号公報)などの化合物がある。
可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステルであることが好ましい。リン酸エステル系可塑剤としては、例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等;カルボン酸エステル系可塑剤としては、例えばジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を挙げることができ、本発明に用いられる可塑剤はこれら例示の可塑剤から選ばれたものであることがより好ましい。さらに、前記可塑剤が、(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、グリセロールエステル類、ジグリセロールエステル類であることが好ましい。
剥離促進剤としては、クエン酸のエチルエステル類が例として挙げられる。
[赤外吸収剤]
さらに赤外吸収剤としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。
これらの添加剤を添加する時期は、ドープ作製工程において何れで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に、添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる場合に使用するレターデーション低下剤について説明する。
フィルム中のセルロースアシレートが、面内及び膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いて、光学的異方性を十分に低下させ、Re及びRthをゼロ又はゼロに近くにすることができる。このためには、光学的異方性を低下させる化合物はセルロースアシレートに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
光学的異方性の低いセルロースアシレートフィルムを作製するにあたっては、上述のように、フィルム中のセルロースアシレートが面内及び膜厚方向に配向するのを抑制して光学異方性を低下させる化合物のうち、オクタノール−水分配係数(logP値)が0〜7である化合物が好ましい。化合物のlogP値が7以下であれば、セルロースアシレートとの相溶性が良好で、フィルムの白濁や粉吹きなどの不具合を生じにくいので好ましい。
また化合物のlogP値が0以上であれば、親水性が高くなりすぎることがなく、セルロースアシレートフィルムの耐水性を悪化させることがないので好ましい。logP値としてさらに好ましい範囲は1〜6であり、特に好ましい範囲は1.5〜5である。
光学異方性を低下させる化合物は、芳香族基を含有してもよいし、含有しなくてもよい。また光学異方性を低下させる化合物は、分子量が150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることが好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であってもよいし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でもよい。
また本発明では、色相調整のための染料を添加してもよい。染料の含有量は、セルロースアシレートに対する質量割合で10〜1000ppmが好ましく、50〜500ppmが更に好ましい。このように染料を含有させることにより、セルロースアシレートフィルムのライトパイピングが減少でき、黄色味を改良することができる。これらの化合物は、セルロースアシレート溶液の調製の際に、セルロースアシレートや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。またインライン添加する紫外線吸収剤液に添加してもよい。特開平5−34858号公報に記載の染料を用いることができる。
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は、珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2当たり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
本発明において好ましく用いられるセルロースアシレートの溶液を作製するに際しては、主溶媒として塩素系有機溶媒が好ましく用いられる。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し、流延・製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは、その塩素系有機溶媒の種類は特に限定されない。これらの塩素系有機溶媒は、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。特にジクロロメタンが好ましい。また、塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することも特に問題ない。その場合ジクロロメタンは、有機溶媒全体量中少なくとも50質量%使用することが好ましい。
すなわち、好ましい他の有機溶媒としては、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、アルコール、炭化水素などから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン、エーテル及びアルコールは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトン及びエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶媒として用いることができ、例えばアルコール性水酸基のような他の官能基を同時に有していてもよい。2種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテート等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノン等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトール等が挙げられる。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノール等が挙げられる。
ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール=80/10/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール=80/10/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン=80/10/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール=80/10/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール=75/8/5/5/7(質量部)
ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール=80/7/5/8(質量部)
ジクロロメタン/酢酸メチル/ブタノール=80/10/10(質量部)、
ジクロロメタン/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン=70/20/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール=50/20/20/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール=70/20/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール=60/20/10/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン=65/10/10/5/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール=70/10/10/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン=65/10/10/5/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール=65/20/10/5(質量部)、
ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール=65/20/10/5(質量部)。
次に、本発明において好ましく用いられるセルロースアシレートの溶液を作製するに際して、好ましく用いられる非塩素系有機溶媒について記載する。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し、流延・製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは、非塩素系有機溶媒は特に限定されない。本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン及び、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトン及びエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、例えばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ペンチルが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン及びアセチル酢酸メチルが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが挙げられる。
すなわち、非塩素系溶媒としては、上記非塩素系有機溶媒を主溶媒とする混合溶媒が好ましく、互いに異なる3種類以上の溶媒の混合溶媒であって、第1の溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサンから選ばれる少なくとも1種又はそれらの混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数4〜7のケトン類又はアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒が炭素数1〜10のアルコール又は炭化水素、より好ましくは炭素数1〜8のアルコールから選ばれる混合溶媒である。なお第1の溶媒が、2種以上の溶媒の混合液である場合は、第2の溶媒がなくてもよい。第1の溶媒は、さらに好ましくは、酢酸メチル、アセトン、蟻酸メチル、蟻酸エチル又はこれらの混合物であり、第2の溶媒は、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチルが好ましく、これらの混合溶媒であってもよい。
酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール=75/10/5/5/5(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール=75/10/5/5/5(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン=75/10/5/5/5(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール=81/8/7/4(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール=82/10/4/4(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール=80/10/4/6(質量部)、
酢酸メチル/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール=80/10/5/5(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール=75/8/5/5/7(質量部)、
酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール=80/7/5/8(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/ブタノール=85/10/5(質量部)、
酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/ブタノール=60/15/14/5/6(質量部)、
酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン=70/20/5/5(質量部)、
酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール=50/20/20/5/5(質量部)、
酢酸メチル/1、3−ジオキソラン/メタノール/エタノール=70/20/5/5(質量部)、
酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール=60/20/10/5/5(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン=65/10/10/5/5/5(質量部)、
ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン=65/10/10/5/5/5(質量部)、
アセトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール=65/20/10/5(質量部)、
アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール=65/20/10/5(質量部)、
アセトン/1,3−ジオキソラン/エタノール/ブタノール=65/20/10/5(質量部)、
1、3−ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール=55/20/10/5/5/5(質量部)
などをあげることができる。
酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール=81/8/7/4(質量部)でセルロースアシレート溶液を作製し、濾過・濃縮後に2質量部のブタノールを追加添加する方法、
酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール=84/10/4/2(質量部)でセルロースアシレート溶液を作製し、濾過・濃縮後に4質量部のブタノールを追加添加する方法、
酢酸メチル/アセトン/エタノール=84/10/6(質量部)でセルロースアシレート溶液を作製し、濾過・濃縮後に5質量部のブタノールを追加添加する方法。
セルロースアシレートの溶液は、前記有機溶媒にセルロースアシレートを溶解させた溶液であり、その濃度は10〜30質量%の範囲であることが、製膜流延適性の点で好ましく、より好ましくは13〜27質量%であり、特に好ましくは15〜25質量%である。
セルロースアシレート溶液をこのような濃度範囲にする方法は、溶解する段階で所定の濃度になるようにしてもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に、後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液とした後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法でも本発明において好ましく用いられるセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題ない。
次に、セルロースアシレートの流延・製膜用の溶液(ドープ)の調製について述べる。
セルロースアシレートの溶解方法は、特に限定されず、室温溶解法でもよく、また冷却溶解法又は高温溶解法、さらにはこれらの組み合わせで実施されてもよい。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、さらに特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号などの各公報にセルロースアシレート溶液の調製法として記載されている。
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、前記セルロースアシレート溶液(ドープ)を用いて製膜を行うことにより得ることができる。製膜方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)から、エンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延し、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して、巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組合せはその目的により変わる。電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。以下に各製造工程について簡単に述べるが、これらに限定されるものではない。
セルロースアシレート溶液は、金属支持体としての平滑なバンド上又はドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延してもよい。複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口から、セルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて、積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、及び特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってフィルム化することもでき、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、及び特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。さらに、特開昭56−162617号公報に記載の、高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高粘度及び低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出す、セルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。更にまた、特開昭61−94724号及び特開昭61−94725号の各公報に記載の、外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。あるいはまた2個の流延口を用い、第一の流延口により金属支持体上に形成したフィルムを剥離した後、そのフィルムの金属支持体面に接していた側に第二の流延を行うことでより、複数の層のフィルムを作製することもでき、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法を挙げることができる。流延するセルロースアシレート溶液は、同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく、特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるためには、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらにセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、粘着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるが、いずれも好ましく用いることができる。またここで挙げた方法以外にも、従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施することができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することにより、それぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。
セルロースアシレートフィルムの製造に係わる、金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には、金属支持体(ドラム又はベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム又はベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム又はベルトを加熱し表面温度をコントロールする裏面液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度は、ドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。なお流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
本発明のセルロースアシレートフィルムは偏光板の保護フィルムとして用いられ、特に、様々な液晶モードに対応した位相差フィルムとしても好ましく用いることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムを位相差フィルムとして用いる場合、セルロースアシレートフィルムの好ましい光学特性は液晶モードによって異なる。
OCBモード用としては、Reは10〜100のものが好ましく、20〜70のものがさらに好ましい。Rthは50〜300のものが好ましく100〜250のものがさらに好ましい。
また、TN用としてはReは0〜50のものが好ましく、2〜30のものがさらに好ましい。Rthは10〜200のものが好ましく30〜150のものがさらに好ましい。
また、IPS用としてはReは0〜5のものが好ましく、0〜2のものがさらに好ましい。Rthは−20〜20のものが好ましく−10〜10のものがさらに好ましい。
OCB用モード及びTN用モードでは前記レターデーション値を有するセルロースアシレートフィルム上に光学異方性層を塗布して光学補償フィルムとして使用できる。
含水率の測定法は、セルロースアシレートフィルム試料7mm×35mmを、水分測定器、試料乾燥装置{“CA−03”、“VA−05”、共に三菱化学(株)}を用いてカールフィッシャー法で測定する。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出する。
数式(13):80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm。
数式(14):(L80%−L10%)/(80%RH−10%RH)×106
ヘイズの測定は、セルロースアシレートフィルム試料40mm×80mmを、25℃、60%RHでヘイズメーター“HGM−2DP”{スガ試験機(株)製}でJIS K−6714に従って測定する。
具体的な測定方法としては、セルロースアシレートフィルム試料10mm×100mmの、長軸方向に対して引っ張り応力をかけ、その際のレターデーションをエリプソメーター“M150”{日本分光(株)}で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾性係数を算出した。
本発明の光学フィルムの製法は、溶融製膜であっても良い。原料となるポリマー、添加剤等の原料を加熱溶融させ、これを押出し射出成型によりフィルム化しても良いし、加熱した2枚のプレートに原料を挟み込み、プレス加工してフィルム化しても良い。
光学補償フィルムは、本発明のセルロースアシレートフィルムと光学異方性層との間に配向膜を有していてもよい。また、光学異方性層を作製する際にのみ配向膜を使用し、配向膜上に光学異方性層を作製した後に、該光学異方性層のみを本発明のセルロースアシレートフィルム上に転写してもよい。
本発明において、前記配向膜は、架橋されたポリマーからなる層であるのが好ましい。配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーであっても、架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。上記配向膜は、官能基を有するポリマーあるいはポリマーに官能基を導入したものを、光、熱又はpH変化等により、ポリマー間で反応させて形成する;又は、反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてポリマー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、ポリマー間を架橋することにより形成する;ことができる。
後述のラビング工程において、配向膜の発塵を抑制するために、架橋度を上げておくことが好ましい。前記塗布液中に添加する架橋剤の量(Mb)に対して、架橋後に残存している架橋剤の量(Ma)の比率(Ma/Mb)を1から引いた値(1−(Ma/Mb))を架橋度と定義した場合、架橋度は50%〜100%が好ましく、65%〜100%が更に好ましく、75%〜100%が最も好ましい。
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムへポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを直接塗設する場合、親水性の下塗り層を設けるか、もしくは、鹸化処理を施す方法が好ましく使用される。
ポリビニルアルコールとしては、例えば鹸化度70〜100%のものがあり、一般には鹸化度80〜100%のものが好ましく、鹸化度82〜98%のものがより好ましい。重合度としては、100〜3000の範囲のものが好ましい。
変性ポリビニルアルコールとしては、共重合変性したもの(変性基として、例えば、COONa、Si(OX)3、N(CH3)3・Cl、C9H19COO、SO3Na、C12H25等が導入される)、連鎖移動により変性したもの(変性基として、例えば、COONa、SH、SC12H25等が導入されている)、ブロック重合による変性をしたもの(変性基として、例えば、COOH、CONH2、COOR、C6H5等が導入される)等のポリビニルアルコールの変性物を挙げることができる。重合度としては、100〜3000の範囲が好ましい。これらの中で、鹸化度80〜100%の未変性もしくは変性ポリビニルアルコールが好ましく、より好ましくは鹸化度85〜95%の未変性ないしアルキルチオ変性ポリビニルアルコールである。
該ポリビニルアルコールには、セルロースアシレートフィルムと光学異方性層との密着性を付与するために、架橋・重合活性基を導入することが好ましく、その好ましい例としては、特開平8−338913号公報に詳しく記載されている。
配向膜にポリビニルアルコール等の親水性ポリマーを使用する場合、硬膜度の観点から、含水率を制御することが好ましく、0.4%〜2.5%であることが好ましく、0.6%〜1.6%であることが更に好ましい。含水率は、市販のカールフィッシャー法の水分率測定器で測定することができる。
なお、配向膜は、10ミクロン以下の膜厚であるのが好ましい。
特にVA用液晶表示装置に光学補償フィルムとして用いる場合、液晶セルの片側に、1枚のみで補償する場合にはRe(550)が40〜100nmの範囲であり、かつRth(550)が160〜300nmの範囲であることが好ましく、Re(550)が45〜80nmであり、Rth(550)が170〜250nmであることがさらに好ましい。
式(I):0.4<{ (Re(450)/Rth(450))/(Re(550)/Rth(550))}<0.95
かつ1.05<{(Re(650)/Rth(650))/(Re(550)/Rth(550))}<1.9
式(II):0.1<(Re(450)/Re(550))<0.95
式(III):1.03<(Re(650)/Re(550))<1.93
さらに好ましくは、
式(I):0.5<{ (Re(450)/Rth(450))/(Re(550)/R
th(550))}<0.9
かつ1.1<{(Re(650)/Rth(650))/(Re(550)/Rth(550))}<1.7
式(II):0.2<(Re(450)/Re(550))<0.9
式(III):1.1<(Re(650)/Re(550))<1.7
である。
本発明では、偏光膜と該偏光膜を挟持する一対の保護膜とからなる偏光板であって、前記保護膜の少なくとも一枚が前記のセルロースアシレートフィルムを含む偏光板を提供するものである。例えば、ポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光膜をヨウ素にて染色し、延伸を行い、その両面を保護フィルムにて積層して得られる偏光板を用いることができる。該偏光板は液晶セルの外側に配置される。偏光膜と該偏光膜を挟持する一対の保護膜とからなる一対の偏光板を、液晶セルを挟持して配置させるのが好ましい。なお、液晶セル側に配置される保護膜は、本発明のセルロースアシレートフィルムまたは光学補償フィルムであるのが好ましい。
偏光膜と保護膜との接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01〜10ミクロンが好ましく、0.05〜5ミクロンが特に好ましい。
本発明に使用可能な偏光板は、偏光膜用フィルムを延伸後、収縮させ揮発分率を低下させる乾燥工程を有して製造され得るが、乾燥後もしくは乾燥中に少なくとも片面に保護膜を貼り合わせた後、後加熱工程を有することが好ましい。具体的な貼り付け方法として、フィルムの乾燥工程中、両端を保持した状態で接着剤を用いて偏光膜に保護膜を貼り付け、その後両端を耳きりする、もしくは乾燥後、両端保持部から偏光膜用フィルムを解除し、フィルム両端を耳きりした後、保護膜を貼り付けるなどの方法がある。耳きりの方法としては、刃物などのカッターで切る方法、レーザーを用いる方法など、一般的な技術を用いることができる。貼り合わせた後に、接着剤を乾燥させるため、及び偏光性能を良化させるために、加熱することが好ましい。加熱の条件としては、接着剤により異なるが、水系の場合は、30℃以上が好ましく、さらに好ましくは40℃〜100℃、さらに好ましくは50℃〜90℃である。これらの工程は一貫のラインで製造されることが、性能上及び生産効率上更に好ましい。
本発明の偏光板の光学的性質及び耐久性(短期、長期での保存性)は、市販のスーパーハイコントラスト品(例えば、株式会社サンリッツ社製HLC2−5618等)同等以上の性能を有することが好ましい。具体的には、可視光透過率が42.5%以上で、偏光度{(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}1/2≧0.9995(但し、Tpは平行透過率、Tcは直交透過率)であり、60℃、湿度90%RH雰囲気下に500時間及び80℃、ドライ雰囲気下に500時間放置した場合のその前後における光透過率の変化率が絶対値に基づいて3%以下、更には1%以下、偏光度の変化率は絶対値に基づいて1%以下、更には0.1%以下であることが好ましい。
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層及びバック層)との接着の向上を達成することができる。表面処理としては、例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)30−32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000keV下で20〜500kGyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500keV下で20〜300kGyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
アルカリ鹸化処理は、セルロースアシレートフィルムを鹸化液の槽に直接浸漬する方法、又は鹸化液をセルロースアシレートフィルムに塗布する方法により実施することが好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液をセルロースアシレートフィルムに対して塗布するために、濡れ性がよく、また鹸化液溶媒によってセルロースアシレートフィルム表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、5秒以上5分以下がさらに好ましく、20秒以上3分以下が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。
光学異方性層は、液晶性化合物、非液晶性化合物、無機化合物、有機/無機複合化合物等、材料は限定されない。液晶性化合物としては、重合性基を有する低分子化合物を配向させた後に光または熱による重合により配向を固定化するものや、液晶性高分子を加熱し配向させた後に冷却しガラス状態で配向固定化するものを使うことができる。液晶性化合物としては円盤状構造を有するもの、棒状構造を有するもの、光学的二軸性を示す構造を有するものを使うことができる。非液晶性化合物としては、ポリイミド、ポリエステル等の芳香族環を有する高分子を使うことができる。
光学異方性層の形成方法は、塗布、蒸着、スパッタリング等種々の手法を使用することができる。
偏光板の保護膜の上に光学異方性層を設ける場合、粘着層は偏光子側からさらに該光学異方性層の外側に設けられる。
本発明では、偏光板の保護膜上に、少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層されてなる反射防止層、又は保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層が好適に設けられる。以下にそれらの好ましい例を記載する。なお前者の構成では、一般的に鏡面反射率は1%以上となり、Low Reflection(LR)フィルムと呼ばれる。後者の構成では、鏡面反射率0.5%以下を実現するものが可能となり、Anti Reflection(AR)フィルムと呼ばれる。
偏光板の保護膜上に、光散乱層と低屈折率層を設けた反射防止層(LRフィルム)の好ましい例について述べる。
光散乱層には、マット粒子が分散されているのが好ましく、光散乱層のマット粒子以外の部分の素材の屈折率は1.50〜2.00の範囲にあることが好ましく、低屈折率層の屈折率は1.20〜1.49の範囲にあることが好ましい。本発明において光散乱層は、防眩性とハードコート性を兼ね備えており、一層でもよいし、複数層、例えば二層〜四層で構成されていてもよい。
本発明で用いることができる低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.20〜1.49であり、更に好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。さらに、低屈折率層は下記数式(19)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(19):(m/4)λ×0.7<nLdL<(m/4)λ×1.3
式中、mは正の奇数であり、nLは低屈折率層の屈折率であり、そして、dLは低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。
低屈折率層は、低屈折率バインダーとして、含フッ素ポリマーを含むことが好ましい。
フッ素ポリマーとしては、動摩擦係数0.03〜0.20、水に対する接触角90〜120゜、純水の滑落角が70゜以下の、熱又は電離放射線により架橋する含フッ素ポリマーが好ましい。本発明に関する偏光板を画像表示装置に装着した時、市販の接着テープとの剥離力が低いほどシールやメモを貼り付けた後に剥がれ易くなり好ましく、引張試験機で測定した場合、該剥離力が500gf(4.9N)以下であることが好ましく、300gf(2.94N)以下であることがより好ましく、100gf(0.98N)以下であることが最も好ましい。また、微小硬度計で測定した表面硬度が高いほど傷がつき難く、該表面硬度は0.3GPa以上が好ましく、0.5GPa以上がより好ましい。
光散乱層は、表面散乱及び内部散乱の少なくともいずれかによる光拡散性と、フィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに付与する目的で形成される。従って、ハードコート性を付与するためのバインダー、光拡散性を付与するためのマット粒子、及び必要に応じて高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを含んで形成される。また、このような光散乱層を設けることにより、該光散乱層が防眩層としても機能し、偏光板が防眩層を有することになる。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
また逆に、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた光散乱層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
次に保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層された反射防止層(ARフィルム)について述べる。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>保護膜の屈折率>低屈折率層の屈折率
さらに各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例えば、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止層の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物微粒子及びマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化膜からなる。
更に好ましい材料としては、ラジカル重合性及びカチオン重合性の少なくともいずれかの重合性基を2個以上有する多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有する有機金属化合物を含有する組成物、及びその部分縮合体を含有する組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が挙げられ、例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層してなる。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55であることが好ましい。より好ましくは1.30〜1.50である。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物又はその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ(ペルフルオロアルキルエーテル)基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
ハードコート層は、反射防止層を設けた保護膜に物理強度を付与するために、保護膜の表面に設ける。特に、保護膜と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。ハードコート層は、光及び/又は熱の硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性化合物における硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましい。また加水分解性官能基含有の有機金属化合物や有機アルコキシシリル化合物も好ましい。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものが挙げられる。
さらに、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
帯電防止層を設ける場合には、体積抵抗率が10-8(Ωcm-3)以下の導電性を付与することが好ましい。吸湿性物質や水溶性無機塩、ある種の界面活性剤、カチオンポリマー、アニオンポリマー、コロイダルシリカ等の使用により10-8(Ωcm-3)の体積抵抗率の付与は可能であるが、温湿度依存性が大きく、低湿では十分な導電性を確保できない問題がある。そのため、導電性層素材としては金属酸化物が好ましい。金属酸化物には着色しているものがあるが、これらの金属酸化物を導電性層素材として用いるとフィルム全体が着色してしまい好ましくない。着色のない金属酸化物を形成する金属として、Zn、Ti、Sn、Al、In、Si、Mg、Ba、Mo、W又はVをあげることができ、これらを主成分とした金属酸化物を用いることが好ましい。
上記のセルロースアシレートフィルム、またはセルロースアシレートフィルムと偏光膜とを貼り合わせて得られた偏光板は、液晶表示装置、特に透過型液晶表示装置に有利に用いられる。
透過型液晶表示装置は、液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなる。偏光板は、偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる。液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
本発明の偏光板は、液晶セルの一方に一枚配置するか、あるいは液晶セルの両面に二枚配置する。
液晶セルは、VAモード、OCBモード、IPSモード、またはTNモードであることが好ましい。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
VAモードの液晶表示装置の場合、本発明の偏光板を1枚のみ使用する場合は、バックライト側に用いるのが好ましい。
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。
そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、さらに60乃至120゜にねじれ配向している。
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
(1)セルロースアシレート
原料のセルロースに、触媒として硫酸を添加し、さらにアシル置換基の原料となる無水カルボン酸を添加してアシル化反応を行い、その後、中和、ケン化熟成することによって調製した。この時、触媒量、無水カルボン酸の種類、量、中和剤の添加量、水添加量、反応温度、熟成温度を調整することで、アシル基の種類、置換度、嵩比重、重合度の異なるセルロースアシレートを調製した。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
上記のようにして調製したセルロースアシレートのうち、アセチル基置換度2.79、 DS6/(DS2+DS3+DS6)=0.322のセルロースアシレートを用い、以下のドープ調製を行った。
<1−1> セルロースアシレート溶液
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
セルロースアシレート溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート 100.0質量部
トリフェニルフォスフェイト 8.0質量部
ビフェニルジフェニルフォスフェイト 4.0質量部
メチレンクロライド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
次に上記方法で作製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
マット剤分散液
――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製 2.0質量部
メチレンクロライド 72.4質量部
メタノール 10.8質量部
セルロースアシレート溶液 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
次に上記方法で作製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して溶解し、レターデーション発現剤溶液Aを調製した。
レターデーション発現剤溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
レターデーション発現剤A (下記化合物) 20.0質量部
メチレンクロライド 58.3質量部
メタノール 8.7質量部
セルロースアシレート溶液 12.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(Rth発現剤)
上述のドープをガラス板流延装置を用いて流延した。給気温度70℃の温風で6分間乾燥し、ガラス板から剥ぎ取ったフィルムを枠に固定し、給気温度100℃の温風で10分間、給気温度140℃の温風で20分間乾燥し、膜厚108μmのセルロースアシレートフィルムを製造した。セルロースアシレートフィルムのガラス転移点温度は、140℃であった。
このフィルムを、2軸延伸試験装置((株)東洋精機製作所製)にて4辺を把持し、表1の条件で延伸および収縮工程を行った。共通条件として、延伸前に各例での指定給気温度で3分間の予備加熱を行い、非接触赤外線温度計で測定したフィルム表面の温度が、吸気温度±1℃以内であることを確認した。延伸後にクリップで把持したまま5分間、送風冷却を行った。表中のMDとはガラス板流延時の流延方向を指し、TDとはそれと直行する幅方向を指す。
得られたフィルムの音速を前記音波計SST−110により測定した。結果を表1に示す。本発明のフィルムは、音速比C(TD)/C(MD)が1.2以上であることがわかる。
このフィルムの波長450、550、650nmにおけるRe、Rthを、先に述べた方法に従い、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)にて測定した。
結果を表1に示す。表1から本発明の製造方法で製造したセルロースアシレートフィルムの波長450、550、650nmにおけるRe、Rthの値は前記式(I)〜(II)の関係をいずれも満たしていることが分かる。
得られたフィルムの面状を下記の方法と評価尺度で評価した。結果を表1に示す。本発明のフィルムは優れた面状であることがわかった。また、比較例4の収縮速度を速くして作製したフィルムは、フィルム全面にシワが生じ、偏光板保護フィルムとして好ましくない面状であった。
(フィルム面状評価)
20cm×20cmのフィルムをクロスニコル配置した2枚の偏光板の間にはさみ、点灯したライトボックスの上にのせ、暗室で評価した。
○ :ムラ、シワがなく、優れた面状である。
△ :ムラ、またはシワが認められるが、面積、強度ともわずかであり許容できるレベルである。
× :ムラ、またはシワが認められ、面積または、強度が大きく許容できないレベルである。
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。
実施例1〜2、比較例1〜3、および参考例で作製したセルロースアシレートフィルムをポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片側に貼り付けた。なお、ケン化処理は以下の条件で行った。
1.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.01モル/リットルの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。作製したセルロースアシレートフィルムを上記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、上記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。 最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
市販のセルローストリアシレートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付け、70℃で10分以上乾燥した。
偏光膜の透過軸と上記のように作製したセルロースアシレートフィルムの遅相軸とが平行になるように配置した。偏光膜の透過軸と市販のセルローストリアシレートフィルムの遅相軸とは直交するように配置した。
液晶セルは、基板間のセルギャップを3.6μmとし、負の誘電率異方性を有する液晶材料(「MLC6608」、メルク社製)を基板間に滴下注入して封入し、基板間に液晶層を形成して作製した。液晶層のレターデーション(即ち、液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・d)を300nmとした。なお、液晶材料は垂直配向するように配向させた。
上記の垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置の上側偏光板(観察者側)には、市販品のスーパーハイコントラスト品(株式会社サンリッツ社製HLC2−5618)を用いた。下側偏光板(バックライト側)には実施例1〜2、比較例1〜4、参考例で作製したセルロースアシレートフィルムを備えた偏光板を、該セルロースアシレートフィルムが液晶セル側となるように設置した。上側偏光板および下側偏光板は粘着剤を介して液晶セルに貼りつけた。上側偏光板の透過軸が上下方向に、そして下側偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。
液晶セルに55Hzの矩形波電圧を印加した。白表示5V、黒表示0Vのノーマリーブラックモードとした。黒表示の方位角45度、極角60度方向視野角における黒表示透過率(%)及び、方位角45度極角60度と方位角180度極角60度との色ずれΔxを求めた。結果を表1に示す。また、透過率の比(白表示/黒表示)をコントラスト比として、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角(コントラスト比が10以上で黒側の階調反転のない極角範囲)を測定した。結果を表1に示す。作製した液晶表示装置を観察した結果、実施例1〜3、比較例3においては正面方向および視野角方向のいずれにおいても、ニュートラルな黒表示が実現できていた。
また、周辺ムラの評価を行ったところ、実施例1〜3においては、比較例よりも周辺ムラが抑制されていた。
参考例は周辺ムラにおいて、本発明よりやや劣るものであった。
○ 上下左右で極角80°以上
○△ 上下左右の内、3方向で極角80°以上
△ 上下左右の内、2方向で極角80°以上
× 上下左右の内、0〜1方向で極角80°以上
色ずれ(Δx)
○ 0.02未満
○△ 0.02〜0.04
△ 0.04〜0.06
× 0.06以上
(高温条件)
強制条件として、偏光板を全面に貼合した20インチの大きさの液晶パネルを、高温条件(温度80度、湿度10%以下)に48時間保管後、10分以内にバックライト上に載せ、バックライトを点灯させた。
そのときに、周辺部分に見える光漏れの程度で評価を行った。
(高温加湿条件)
強制条件として、偏光板を全面に貼合した20インチの大きさの液晶パネルを、高温加湿条件(温度60度、湿度90%)に48時間保管後、25度60%の環境に24時間保管し、その後バックライト上に載せ、バックライトを点灯させた。
そのときに、周辺部分に見える光漏れの程度で評価を行った。
光漏れ度合いの評価は、高温条件、高温加湿条件ともに、下記である。
(周辺ムラの光漏れ評価)
○ 光漏れがほとんど観察できない
△ 光漏れは観察されるが、輝度・面積とも小さく許容できる
× 光漏れが観察され、輝度・面積が大きく許容できない
<OCBパネルへの実装評価>
(アルカリ処理)
実施例1で作製したセルロースアシレートフィルムに、1.0Nの水酸化カリウム溶液(溶媒:水/イソプロピルアルコール/プロピレングリコール=69.2質量部/15質量部/15.8質量部)を10cc/m2塗布し、約40℃の状態で30秒間保持した後、アルカリ液を掻き取り、純水で水洗し、エアーナイフで水滴を削除した。その後、100℃で15秒間乾燥した。
アルカリ処理面の純水に対する接触角を測定したところ、42°であった。
該アルカリ処理面に、下記の組成の配向膜塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥し、
配向膜を形成した。
配向膜塗布液組成
────────────────────────────────────
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
クエン酸エステル(AS3、三協化学(株)製) 0.35質量部
────────────────────────────────────
配向膜を形成した透明支持体を速度20m/分で搬送し、長手方向に対して45°にラビング処理されるようにラビングロール(300mm直径)を設定し、650rpmで回転させて、透明支持体の配向膜設置表面にラビング処理を施した。ラビングロールと透明支持体の接触長は、18mmとなるように設定した。
102kgのメチルエチルケトンに、実施例1で使用の円盤状液晶性化合物41.01kg、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)4.06kg、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.35kg、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.35kg、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.45kgを溶解した。溶液に、フルオロ脂肪族基含有共重合体(メガファックF780 大日本インキ(株)製)0.1kggを加え、塗布液を調製した。塗布液を、#3.2のワイヤーバーを毎分391回転でフィルムの搬送方向と同じ方向に回転させて、20m/分で搬送されている透明支持体の配向膜面に連続的に塗布した。
作製したロール状光学補償フィルムKH−3の一部を切り取り、サンプルとして用いて、光学特性を測定した。波長546nmで測定した光学異方性層のReレターデーション値は38nmであった。また、光学異方性層中の円盤状液晶性化合物の円盤面と支持体面との角度(傾斜角)は、層の深さ方向で連続的に変化し、平均で28゜であった。さらに、サンプルから光学異方性層のみを剥離し、光学異方性層の分子対称軸の平均方向を測定したところ、光学補償フィルムの長手方向に対して、45°となっていた。
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、上記で作製したフィルム(KH−3)を偏光膜の片側に貼り付けた。偏光膜の透過軸と位相差板(KH−3)の遅相軸とは平行になるように配置した。
市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。このようにして偏光板を作製した。
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを4.7μmに設定した。セルギャップにΔnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。
作製したベンド配向セルを挟むように、前述の方法で作製した偏光板を二枚貼り付けた。偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する「別の」光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
液晶セルに55Hzの矩形波電圧を印加した。白表示2V、黒表示5Vのノーマリーホワイトモードとした。正面における透過率が最も小さくなる電圧すなわち黒電圧を印加し、作製した液晶表示装置を観察した結果、正面方向および視野角方向のいずれにおいても、ニュートラルな黒表示が実現できていた。また、周辺ムラも抑制されており、優れたものであった。
調製したセルロースアシレートのうち、アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.60、粘度平均重合度350のセルロースアシレートを用い、セルロースアシレート100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェート3質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置し、ドープ中の泡を除いた。
(流延)
こうして調製したドープを、実施例1に(流延)の項に前記した方法で流延し、膜厚108μmのセルロースアシレートフィルムを製造した。セルロースアシレートフィルムのガラス転移点温度は、140℃であった。このフィルムを、(流延)の項に前記したように2軸延伸試験装置にて4辺を把持し、表3の条件で延伸および収縮工程を行った。
こうして延伸・収縮工程を行ったフィルムを用い、実施例1に前述した<音速>、<フィルムの波長450、550、650nmにおけるRe、Rth>、<フィルム面状>、<偏光板の作製>と同じ方法で測定、および偏光板の作製を行った。さらに実施例1で前述した<液晶セルの作製>、<VAパネルへの実装>と同じ手順で実装評価を行った。この結果を表3に示す。
次に、アセチル基(略号Ac)、プロピオニル基(略号Pr)、ブチリル基(略号Bt)、ベンゾイル基(略号Bz)の置換度を表4の値に変更した以外は実施例9と同様にしてセルロースアシレートフィルムを作製した。測定、実装評価の方法も実施例9と同じである。
Claims (13)
- フィルム長手方向の音速と、これと略直交方向の音速のうち、大きい方を小さい方で除した値が、1.2以上であることを特徴とする光学フィルム。
- 前述のフィルム長手の音速とこれと略直交方向の音速のうち、大きい方を小さい方で除した値が1.1以上であり、かつ、波長450nm、550nm、650nmにおける正面レターデーションReと、膜厚方向のレターデーションRthが下記式(I)〜(III)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
式(I):0.4<{ (Re(450)/Rth(450))/(Re(550)/Rth(550))}<0.95
かつ1.05<{(Re(650)/Rth(650))/(Re(550)/Rth(550))}<1.9
式(II):0.1<(Re(450)/Re(550))<0.95
式(III):1.03<(Re(650)/Re(550))<1.93
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーションRe(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーションRth(単位:nm)である。] - フィルムを延伸する延伸工程と収縮させる収縮工程とを含み、収縮速度が10乃至100%/分であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
- 請求項3に記載の製造方法により作製したことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルム。
- 波長550nmにおける正面レターデーションReが20〜100nmの範囲であり、かつ波長550nmにおける膜厚方向のレターデーションRthが100〜300nmの範囲であることを特徴とする請求項1、2又は4のいずれかに記載の光学フィルム。
- セルロースアシレートを用いたことを特徴とする請求項1、2、4又は5のいずれかに記載の光学フィルム。
- セルロースアシレートフィルムのグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度をDS2、3位の水酸基のアシル基による置換度をDS3、6位の水酸基のアシル基による置換度をDS6としたときに、下記式(IV)および(V)を満たすことを特徴とする請求項6に記載の光学フィルム。
式(IV):2.0≦(DS2+DS3+DS6)≦3.0
式(V):DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.315 - 下記式(VI)および(VII)を満たすセルロースアシレートから実質的になることを特徴とする、請求項6又は7に記載の光学フィルム。
(VI): 2.0 ≦ A+B ≦ 3.0
(VII): 0 < B
(式(VI)および(VII)において、Aは前記セルロースアシレートのグルコース単位の水酸基のアセチル基による置換度であり、Bは、前記セルロースアシレートのグルコース単位の水酸基のプロピオニル基、ブチリル基またはベンゾイル基による置換度である。) - レターデーション発現剤を含有することを特徴とする請求項1、2、または4〜8のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 偏光膜と、該偏光膜を挟持する一対の保護膜とを有する偏光板であって、前記保護膜の少なくとも一枚が請求項1、2または4〜9のいずれか1項に記載の光学フィルムであることを特徴とする偏光板。
- 請求項1〜2、または4〜9のいずれか1項に記載の光学フィルムまたは請求項10に記載の偏光板を有することを特徴とする液晶表示装置。
- 請求項10に記載の偏光板を用いたことを特徴とするIPS、OCB、またはVAモードの液晶表示装置。
- 請求項10に記載の偏光板をバックライト側に用いたことを特徴とするVAモードの液晶表示装置。
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