JP2007264287A - 光学フィルム、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

光学フィルム、偏光板および液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】液晶セルが正確に光学的に補償し、高いコントラストと黒表示時の視角方向に依存した色ずれが少なく、特にVA、IPSおよびOCBモード用の光学フィルム、その製造方法、及び該光学フィルムを用いた偏光板を提供すること。
【解決手段】フィルム長手方向の音速と、これと略直交方向の音速のうち、大きい方を小さい方で除した値が、1.2以上である光学フィルム。また、上記比の値が1.1以上であり、かつ、波長450nm、550nm、650nmにおける正面レターデーションReと、膜厚方向のレターデーションRthの比及び波長450nm、550nm、650nmの各Reの相互の比が特定範囲内である光学フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、光学フィルムおよびその製造方法、偏光板および液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、液晶セル及び偏光板を有する。前記偏光板は、一般的にセルロースアセテートからなる保護フィルム及び偏光膜を有し、例えば、ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光膜をヨウ素にて染色し、延伸を行い、その両面を保護フィルムにて積層して得られる。透過型液晶表示装置では、偏光板を液晶セルの両側に取り付け、さらには一枚以上の光学補償フィルムを配置することもある。反射型液晶表示装置では、通常、反射板、液晶セル、一枚以上の光学補償フィルム、偏光板の順に配置する。液晶セルは、液晶性分子、それを封入するための二枚の基板及び液晶性分子に電圧を加えるための電極層からなる。液晶セルは、液晶性分子の配向状態の違いで、ON、OFF表示を行い、透過及び反射型いずれにも適用できる、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、OCB(Optically Compensatory Bend)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)のような表示モードが提案されている。
このようなLCDの中でも、高い表示品位が必要な用途については、正の誘電率異方性を有するネマチック液晶分子を用い、薄膜トタンジスタにより駆動する90度ねじれネマチック型液晶表示装置(以下、TNモードという)が主に用いられている。しかしながら、TNモードは正面から見た場合には優れた表示特性を有するものの、斜め方向から見た場合にコントラストが低下し、階調表示で明るさが逆転する階調反転等が起こることにより表示特性が悪くなるという視野角特性を有しており、この改良が強く要望されている。
一方、IPS方式、OCB方式、およびVA方式といった広視野角の液晶方式は、近年の液晶テレビの需要増に伴い、そのシェアーを拡大している。各方式とも年々、表示品位を向上させてきているが、斜めから見た際に生じる色ずれの問題は解決されていない。
なお、従来、高分子配向フィルムの位相差板、特に1/4波長板として、0.6<Δn・d(450)/Δn・d(550)<0.97、1.01<Δn・d(650)/Δn・d(550)<1.35を満足させること(Δn・d(λ)は波長λnmにおける高分子配向フィルムの位相差)が、知られていた(特許文献1)。
また、近年の液晶テレビの普及、大画面化、バックライトの高輝度化に伴い、画面内のムラや光漏れが問題視されるようになった。特に、激しい気温・湿度変化にさらされると偏光板が寸法変化し、それに伴って画面の周辺に生じる周辺ムラは、改善が求められている。
特開2000−137116号公報
本発明の課題は、液晶セルが正確に光学的に補償し、高いコントラストと黒表示時の視角方向に依存した色ずれを改良する、特にVA、IPSおよびOCBモード用の光学フィルム、その製造方法、及び該光学フィルムを用いた偏光板を提供することである。
また本発明の課題は、コントラストが改善され、黒表示時の視角方向に依存した色ずれが改良され、さらに、激しい気温・湿度変化を受けても周辺ムラが発生しにくい、特にVA、IPSおよびOCBモードの液晶表示装置を提供することである。
本発明の目的を達成する手段は、以下の通りである。
1.フィルム長手方向の音速と、これと略直交方向の音速のうち、大きい方を小さい方で除した値が、1.2以上であることを特徴とする光学フィルム。
2.前述のフィルム長手の音速とこれと略直交方向の音速のうち、大きい方を小さい方で除した値が1.1以上であり、かつ、波長450nm、550nm、650nmにおける正面レターデーションReと、膜厚方向のレターデーションRthが下記式(I)〜(III)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
式(I):0.4<{ (Re(450)/Rth(450))/(Re(550)/Rth(550))}<0.95
かつ1.05<{(Re(650)/Rth(650))/(Re(550)/Rth(550))}<1.9
式(II):0.1<(Re(450)/Re(550))<0.95
式(III):1.03<(Re(650)/Re(550))<1.93
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーションRe(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーションRth(単位:nm)である。]
3.フィルムを延伸する延伸工程と収縮させる収縮工程とを含み、収縮速度が10乃至100%/分であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
4.上記3に記載の製造方法により作製したことを特徴とする上記1又は2に記載の光学フィルム。
5.波長550nmにおける正面レターデーションReが20〜100nmの範囲であり、かつ波長550nmにおける膜厚方向のレターデーションRthが100〜300nmの範囲であることを特徴とする上記1、2又は4のいずれかに記載の光学フィルム。
6.セルロースアシレートを用いたことを特徴とする上記1、2、4又は5のいずれかに記載の光学フィルム。
7.セルロースアシレートフィルムのグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度をDS2、3位の水酸基のアシル基による置換度をDS3、6位の水酸基のアシル基による置換度をDS6としたときに、下記式(IV)および(V)を満たすことを特徴とする上記6に記載の光学フィルム。
式(IV):2.0≦(DS2+DS3+DS6)≦3.0
式(V):DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.315
8.下記式(VI)および(VII)を満たすセルロースアシレートから実質的になることを特徴とする、上記6又は7に記載の光学フィルム。
(VI): 2.0 ≦ A+B ≦ 3.0
(VII): 0 < B
(式(VI)および(VII)において、Aは前記セルロースアシレートのグルコース 単位の水酸基のアセチル基による置換度であり、Bは、前記セルロースアシレートのグルコース単位の水酸基のプロピオニル基、ブチリル基またはベンゾイル基による置換度である。)
9.レターデーション発現剤を含有することを特徴とする上記1、2、または4〜8のいずれか1項に記載の光学フィルム。
10.偏光膜と、該偏光膜を挟持する一対の保護膜とを有する偏光板であって、前記保護膜の少なくとも一枚が上記1、2または4〜9のいずれか1項に記載の光学フィルムであることを特徴とする偏光板。
11.上記1〜2、または4〜9のいずれか1項に記載の光学フィルムまたは上記10に記載の偏光板を有することを特徴とする液晶表示装置。
12.上記10に記載の偏光板を用いたことを特徴とするIPS、OCB、またはVAモードの液晶表示装置。
13.上記10に記載の偏光板をバックライト側に用いたことを特徴とするVAモードの液晶表示装置。
なお、本明細書において、「45゜」、「平行」あるいは「直交」とは、厳密な角度±5゜未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との誤差は、4゜未満であることが好ましく、3゜未満であることがより好ましい。また、角度について、「+」は時計周り方向を意味し、「−」は反時計周り方向を意味するものとする。また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。また、「可視光領域」とは、380nm〜780nmのことをいう。さらに屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=550nmでの値である。
本明細書において「偏光板」とは、特に断らない限り、長尺の偏光板及び液晶装置に組み込まれる大きさに裁断された(本明細書において、「裁断」には「打ち抜き」及び「切り出し」等も含むものとする)偏光板の両者を含む意味で用いられる。また、本明細書では、「偏光膜」及び「偏光板」を区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する透明保護膜を有する積層体のことを意味するものとする。
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のリターデーションおよび厚さ方向のリターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフイルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフイルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレタデーションの値がセ゛ロとなる方向をもつフイルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレタデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフイルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレタデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の数式(1)及び数式(2)よりRthを算出することもできる。
Figure 2007264287

---数式(1)
上記数式(1)のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレタデーション値をあらわす。
数式(1)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
[数式(2)]
Rth=((nx+ny)/2 - nz) x d --- 数式(2)
測定されるフイルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフイルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx-nz)/(nx-ny)が更に算出される。
本発明は、本発明者らの鋭意検討の結果得られた知見に基づいて完成されたものであり、上述のセルロースアシレートフィルムを使用することで、特にVA方式や、IPS方式、OCB方式の黒状態の視角補償をほぼ全ての波長において可能にするものである。その結果、本発明の液晶表示装置は、黒表示時の斜め方向の光抜けが軽減され、視野角コントラストが著しく改善されている。また、本発明の液晶表示装置は、黒表示時の斜め方向の光抜けをほぼ全ての可視光波長領域で抑えることができるため、従来問題であった視野角に依存した黒表示時の色ずれが大きく改善されている。
さらに、本発明の偏光板を用いた液晶表示装置においては、激しい気温・湿度変化による周辺ムラの発生が抑制され、あらゆる環境条件で使用しても、優れた表示性能を維持することができる。
本発明は、入射光が法線方向とそれに対して傾いた斜め方向、例えば極角60度方向とで、レターデーションの波長分散が異なる光学特性をセルロースアシレートフィルムに持たせ、それを光学補償に積極的に用いることを特徴としている。本発明の範囲は、液晶層の表示モードによって限定されず、VAモード、IPSモード、ECBモード、TNモードおよびOCBモード等、いずれの表示モードの液晶層を有する液晶表示装置にも用いることができる。
以下に本発明の詳細を説明する。
本発明はフィルム長手方向の音速と、これと略直交方向の音速のうち、大きい方を小さい方で除した値が、1.1以上である光学フィルムに関する。なお、本明細書においては、フィルム媒質中の音の伝播速度を単に「フィルムの音速」と呼んでいる。
このような特性のフィルムを用いて作製した偏光板においては、液晶テレビ等に使用した場合において近年問題となっている周辺ムラを抑制することができる。
周辺ムラは、激しい気温・湿度変化にさらされると偏光板が寸法変化し、それに伴って画面の周辺に光漏れが生じる結果、画像コントラストの低下や色相の局部変化(色むら)となる現象である。周辺ムラの原因は、鋭意研究の結果、光漏れの度合いは偏光板の寸法変化に比例し、偏光板の寸法変化によって粘着剤、セル側の偏光板保護フィルムに応力が生じるためであることがわかっている。
本発明者らは、従来の偏光板の寸法変化が、偏光板の吸収軸方向よりも透過軸方向の方が大きいことを見出した。これは、偏光板中、偏光子として用いられるPVAの延伸方向と関連があり、延伸方向と平行である吸収軸方向では、延伸によりPVAの配向度が高くなって(密度増大)いるため、寸法変化に強いが、透過軸方向はPVAの配向とは直交方向であるので寸法変化に弱くなってしまうためである。
しかし、本発明のフィルムを偏光板の保護フィルムとして用いた場合、フィルムの音速が大きく(密度が高いことと同義)、寸法変化しにくいTD方向が、偏光板として寸法変化しやすい方向である透過軸方向と平行に貼合されることにより、偏光板透過軸方向の寸法変化も抑制することができ、光漏れを抑制することが出来る。
フィルム長手方向の音速と、これと略直交方向の音速のうち、大きい方を小さい方で除した値としてより好ましくは1.2以上であり、特には1.3以上であることが好ましい。
このとき、フィルムの幅方向であるTD方向の音速のほうが大きいことがより好ましい。
その理由は下記の通りである。すなわち、前述のように、偏光板を斜めから見たときの光漏れ抑制のためには、偏光子の透過軸とセルロースアシレートフィルムの面内の遅相軸を平行に配置する必要があり、連続的に製造されるロールフィルム状の偏光子の透過軸は、一般的に、ロールフィルムの幅方向に平行であるので、本発明のフィルムでは、TD方向に延伸し、MD方向に収縮させて、TD方向に遅相軸を持つ(TD方向の異方性が高い)フィルムを作製することが好ましい。
また、本発明のフィルムの音速は、1.4〜3.0km/秒であることが好ましく、1.5〜2.9km/秒であることがさらに好ましく、1.6〜2.8km/秒であることが特に好ましい。
ここで、音速とは音波伝搬速度のことであり、25℃、60%RHで十分調湿したフィルムを、同環境下で、音波計(例えば、野村商事製SST−110)を用い、フィルムのMD方向(製造時の長さ方向)、またはTD方向(製造時の幅方向)に沿った超音波パルスの縦波振動の伝搬速度を求めた。
TD方向に異方性が高いことは、フィルムはTD方向の配向度が高いことと同根である。一般に、配向度が高い方向では、フィルム内のポリマー密度も高くなり、音速の値が大きくなる。
(本発明の光学フィルムの製造方法)
本発明者らは鋭意検討の結果、フィルムを延伸する延伸工程と収縮させる収縮工程とを含むことを特徴とする製造方法により、上記好ましい光学物性を有する光学フィルムが得られることを見出した。
また、フィルムのTD方向の音速C(TD)とMD方向の音速C(MD)の比C(TD)/C(MD)の値が1.2以上であると、該フィルムを偏光板保護膜とした偏光板を用いた液晶表示装置においては、激しい気温・湿度変化による周辺ムラの発生が抑制され、あらゆる環境条件で使用しても、優れた表示性能を維持することができることを見出した。
本発明においては特にフィルムの搬送方向に延伸する延伸工程と、これと略直行する方向にフィルムを把持しながら収縮させる収縮工程とを含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法、あるいはフィルムの搬送方向に収縮させる収縮工程とこれと略直交する方向に延伸する延伸工程を含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法が好ましく用いられる。
まずフィルムの搬送方向に延伸する延伸工程と、フィルムの幅方向にフィルムを把持しながら収縮させる収縮工程とを用いる場合の光学フィルムの製造方法について説明する。
この場合、フィルムの搬送方向にフィルムを延伸することとなるが、フィルムの搬送方向に延伸する方法としては、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法が好ましく用いられる。また溶液流延法による製膜においては、ステンレスのバンドまたはドラム上に流延し、半乾燥状態となったフィルムを剥離する際、フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くする方法も好ましく用いられる。
フィルムの搬送方向と略直交する方向には、フィルムの両端をクリップやピンで固定するテンターと呼ばれる装置で把持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に狭めることでフィルムを延伸方向と略直交して収縮させることが出来る。
また、チェーン式、スクリュー式、パンタグラフ式、リニアモーター式等の、フィルムの搬送方向とこれに略直交する方向の二軸方向に動作するテンターによって把持し、搬送方向にクリップの間隔を徐々に広めることでフィルムを延伸しながら、テンターの巾を徐々に狭めることで直交方向には収縮することも出来る。
次にフィルムの搬送方向に収縮させる収縮工程とこれと略直交する方向に延伸する延伸工程を用いる場合の光学フィルムの製造方法について説明する。
この場合、フィルムの搬送方向にフィルムを収縮することとなるが、フィルムの搬送方向に収縮する方法としては、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に収縮する方法が好ましく用いられる。すなわち、搬送下流側のロールの周速を遅くし、この時フィルムがTg以上の温度となるように加熱することで、熱収縮を利用してフィルムを搬送方向に収縮することができる。
フィルムの搬送方向と略直交する方向には、フィルムの両端をクリップやピンで固定するテンターと呼ばれる装置で把持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることでフィルムを延伸方向と略直交して延伸させることが出来る。
また、チェーン式、スクリュー式、パンタグラフ式、リニアモーター式等の、フィルムの搬送方向と幅方向の二軸方向に動作するテンターによって把持し、フィルムの搬送方向と略直交する方向に延伸しながら搬送方向にはクリップの間隔を徐々に狭めることでフィルムを収縮させることが出来る。
前述で説明した、ロール周速差とテンターを利用した延伸工程と収縮工程は、逐次的に、延伸・収縮、あるいは収縮・延伸のいずれかの順で逐次的に行うことが出来る。
また前記で説明した、フィルムの搬送方向と幅方向の二軸方向に動作するテンターを用いた方法は、延伸工程と収縮工程の少なくとも一部が、同時に行われているということができる。
本発明者らの研究の結果、このような同時処理は、延伸・収縮のタイミング、倍率、速度を調整することで、ボーイングと呼ばれるフィルム面内での延伸・収縮の不均一を軽減しやすいという利点を持つことがわかった。
なお、上記のようなフィルムの長手方向またはこれと略直交する方向のいずれか一方を延伸し、同時にもう一方を収縮させ、同時にフィルムの膜厚を増加させる延伸工程を具体的に行う延伸装置として、市金工業社製FITZ機などを望ましく用いることができる。この装置に関しては特開2001−38802号公報に記載されている。
延伸工程における延伸率および収縮工程における収縮率としては目的とする正面レターデーションReおよび膜厚方向のレターデーションRthの値により、任意に適切な値を選択することができるが、延伸工程における延伸率が10%以上であり、かつ収縮工程における収縮率が5%以上とすることが好ましい。
なお、本発明でいう延伸率とは、延伸方向における延伸前のフィルムの長さに対する延伸後のフィルムの長さの延びた割合を意味し、収縮率とは、収縮方向における収縮前のフィルムの長さに対する収縮後のフィルムの収縮した長さの割合を意味する。
また延伸率としては10〜45%が好ましく、15〜35%が特に好ましい。一方、収縮率としては5〜40%が好ましく、10〜30%が特に好ましい。
さらに、収縮速度は10〜100%/分が好ましく、15〜95%/分が特に好ましい。収縮速度が遅い場合には、フィルム中延伸方向に配向しているポリマー主鎖も熱緩和してしまい光学性能を損ねること、また製造適正が悪いことから、10%/分以上で収縮させることが好ましく、収縮速度が速すぎるとフィルムの収縮が追いつかずフィルムにしわが生じてしまうので、100%/分以下で収縮させることが好ましい。このように、収縮速度を10〜100%/分の範囲にすることで、延伸方向の緩和やしわを生じることなく、延伸方向と直交な方向の緩和率を上げることができる。
また、上述の方法で作製すれば、延伸に対する緩和率を上げることができるので、より延伸方向の配向異方性が大きいフィルムを作製することができる。
また所望の光学物性を達成する上で、延伸および収縮工程を、処理時点でのフィルムのガラス転移点温度よりも25〜100℃高い温度で行うことが好ましい。
本発明の製造方法によって製造されるフィルムとしては下記式(A)を満たすことが好ましい。
(A):10≧|Rth(550)10%RH−Rth(550)60%RH
(ここでRth(550)10%RH、Rth(550)60%RHは、それぞれ25℃10%および60%RHにおけるRth(550)である)。
すなわち上式(A)は厚み方向レタデーションRth(λ)の25℃、60%RHで測定した値と25℃、10%RHで測定した値との差の絶対値が10nm以下であることが好ましいことを表す。
前記厚み方向レタデーションRthの25℃、60%RHで測定した値と25℃、10%RHで測定した値との差の絶対値としては5nm以下であることがさらに好ましい。
さらには上記延伸および収縮工程を延伸および収縮処理開始時点におけるフィルムのガラス転移点より30℃乃至90℃高い温度で行うことが好ましく、40℃乃至80℃高い温度で行うことがさらに好ましい。
なお本発明におけるガラス転移温度の測定は、セルロースアシレートフィルム試料(未延伸)5mm×30mmを、25℃、60%RHで2時間以上調湿した後に、動的粘弾性測定装置「バイブロン:DVA−225」{アイティー計測制御(株)製}を用いて、つかみ間距離20mm、昇温速度2℃/分、測定温度範囲30℃〜200℃、周波数1Hzで測定し、縦軸に対数軸で貯蔵弾性率、横軸に線形軸で温度(℃)をとった時に、貯蔵弾性率が固体領域からガラス転移領域へ移行する際に見受けられる、貯蔵弾性率の急激な減少を示す温度をガラス転移温度Tgとした。具体的には、得られたチャート上において、固体領域で直線1を引き、ガラス転移領域で直線2を引いたときの直線1と直線2の交点が、昇温時に貯蔵弾性率が急激に減少しフィルムが軟化し始める温度であり、ガラス転移領域に移行し始める温度であることから、ガラス転移温度Tg(動的粘弾性)とした。
また処理温度とは非接触赤外線温度計で測定したフィルム表面の温度である。
本発明は、溶液流延法によって製膜されたフィルムの乾燥途中において延伸する湿式延伸で実施することができる。また、フィルムの乾燥後に、連続的に延伸処理することも、一旦巻き取った後に、別途延伸処理を実施することもできる。また、実質的に溶剤を含まない溶融法によって製膜されたフィルムの延伸に適用することもできる。フィルムの延伸あるいは収縮は、1段で行っても良く、多段で行っても良い。多段で行う場合は各延伸倍率の積が、前述の好ましい範囲に入るようにすれば良い。
延伸速度は5%/分〜1000%/分であることが好ましく、10%/分〜500%/分であることが好ましい。延伸はヒートロールあるいは/および放射熱源(IRヒーター等)、温風により行うことが好ましい。
(セルロースアシレート)
セルロースアシレートの原料綿は、公知の原料を用いることができる(例えば、発明協会公開技法2001−1745参照)。また、セルロースアシレートの合成も公知の方法で行うことができる(例えば、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)参照)。セルロースアシレートの粘度平均重合度は200〜700が好ましく250〜500が更に好ましく250〜350が最も好ましい。また、本発明に使用するセルロースエステルの数平均分子量(Mn)は10000以上150000以下、重量平均分子量(Mw)は20000以上500000以下、Z平均分子量(Mz)は5000以上550000以下が好ましい。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.5〜5.0であることが好ましく、2.0〜4.5であることがさらに好ましく、3.0〜4.0であることが最も好ましい。
該セルロースアシレートフィルムのアシル基は、特に制限はないが、アセチル基、プロピオニル基またはブチリル基またはベンゾイル基を用いることが好ましい。全アシル基の置換度は2.0〜3.0が好ましく、2.2〜2.95がさらに好ましい。本明細書において、アシル基の置換度とは、ASTM D817に従って算出した値である。アシル基は、アセチル基であることが最も好ましく、アシル基がアセチル基であるセルロースアセテートを用いる場合には、酢化度が57.0〜62.5%であることが好ましく、58.0〜62.0%であることがさらに好ましい。酢化度がこの範囲にあると、流延時の搬送テンションによってReが所望の値より大きくなることもなく、面内ばらつきも少なく、温湿度によってレターデーション値の変化も少ない。
特に、セルロースアシレートフィルムのセルロースを構成するグルコース単位の水酸基を炭素原子数が2以上のアシル基で置換して得られ、グルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度をDS2、3位の水酸基のアシル基による置換度をDS3、6位の水酸基のアシル基による置換度をDS6としたときに、下記式(III)および(IV)を満たすと、所望のRe、Rthを出すことが容易となり、また温湿度によるRe値の変動がより小さいくなり好ましい。
(III):2.0≦(DS2+DS3+DS6)≦3.0
(IV):DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.315
より好ましい範囲は、
(III):2.2≦(DS2+DS3+DS6)≦2.9
(IV):DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.322
である。
あるいは特に、セルロースアシレートのグルコース単位の水酸基のアセチル基による置換度をA、プロピオニル基またはブチリル基またはベンゾイル基による置換度をBとした時、A、Bが式(V)および(VI)を満たすと、所望のRe、Rthを出すことが容易となり、また破断することなく高延伸倍率を実現することが容易となり好ましい。
(V): 2.0 ≦ A+B ≦ 3.0
(VI): 0 < B
より好ましい範囲は、
(V): 2.6 ≦ A+B ≦ 3.0
(VI): 0.5 ≦ B ≦ 1.5
である。
(セルロースアシレート以外のポリマー)
本発明の、フィルムを延伸する延伸工程と収縮させる収縮工程とを含むことを特徴とする製造方法により、好ましい光学物性を有するフィルムを得る方法は、セルロースアシレートに限定されず、光学フィルムとして使用可能なポリマー全般に適用可能で、セルロースアシレートと同様な効果が見込める。
これらの光学フィルムとして使用可能なポリマーとしては、例えばポリカーボネート共重合体や、環状オレフィン構造を有する重合体樹脂が挙げられる。
ポリカーボネート共重合体の例としては、下記式(A)で示される繰り返し単位および下記式(B)で示される繰り返し単位からなり、上記式(A)で表される繰り返し単位が全体の80〜30mol%を占めるポリカーボネート共重合体が挙げられる。
Figure 2007264287
上記式(A)において、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜6の炭化水素基から選ばれる。かかる炭素数1〜6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基が挙げられる。この中で、水素原子、メチル基が好ましい。
Xは下記式(X)であり、RおよびR10はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基である。ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基としては上記したものと同じものをあげることができる。
Figure 2007264287
Figure 2007264287
上記式(B)において、R11〜R18はそれぞれ独立に水素原子、ハロン原子及び炭素数1〜22の炭化水素基から選ばれる。かかる炭素数1〜22の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜9のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等のアリール基が挙げられる。この中で、水素原子、メチル基が好ましい。
Yは下記式群であり、R19〜R21、R23及びR24はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜22の炭化水素基から選ばれる少なくとも1種の基である。かかる炭化水素基については、上記したものと同じものを挙げることができる。R22及びR25はそれぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基から選ばれ、かかる炭化水素基としてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、ナフチレン基、ターフェニレン基が挙げられる。Ar〜Arとしてはフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基を挙げられる。
Figure 2007264287
上記ポリカーボネート共重合体としては、下記式(C)で示される繰り返し単位30〜60mol%、と、下記式(D)で示される繰り返し単位70〜40mol%とからなるポリカーボネート共重合体が好ましい。
Figure 2007264287
Figure 2007264287
さらに好ましくは上記式(C)で示される繰り返し単位45〜55mol%と上記式(D)で示される繰り返し単位55〜45mol%とからなるポリカーボネート共重合体である。
上記式(C)においてR26〜R27はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、取り扱い性の点から好ましくはメチル基である。
上記式(D)においてR28〜R29はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、経済性、フィルム特性等から水素原子が好ましい。
本発明における光学フィルムは、上記したフルオレン骨格を有するポリカーボネート共重合体を用いたものが好ましい。このフルオレン骨格を有するポリカーボネート共重合体としては、例えば上記式(A)で表わされる繰り返し単位と上記式(B)で表わされる繰り返し単位とからなる異なる組成比のポリカーボネート共重合体のブレンド体がよく、上記式(A)の含有率はポリカーボネート共重合体全体の80〜30mol%が好ましく、より好ましくは75〜35mol%であり、さらに好ましくは70〜40mol%である。
上記共重合体は、上記式(A)および(B)で表わされる繰り返し単位をそれぞれ2種類以上組み合わせたものでもよい。
ここで上記モル比は、光学フィルムを構成するポリカーボネートバルク全体で、例えば核磁気共鳴(NMR)装置により求めることができる。
上記したポリカーボネート共重合体は公知の方法によって製造し得る。ポリカーボネートはジヒドロキシ化合物とホスゲンとの重縮合による方法、溶融重縮合法等が好適に用いられる。
上記ポリカーボネート共重合体の極限粘度は0.3〜2.0dl/gであることが好ましい。0.3未満では脆くなり機械的強度が保てないといった問題があり、2.0を超えると溶液粘度が上がりすぎるため溶液製膜においてダイラインの発生等の問題や、重合終了時の精製が困難になるといった問題がある。
また本発明の光学フィルムは、前記ポリカーボネート共重合体と、その他の高分子化合物との組成物(ブレンド体)であってもよい。この場合、該高分子化合物としては、光学的に透明である必要があることから前記ポリカーボネート共重合体と相溶できるもの、または、各々の高分子の屈折率が略等しいことが好ましい。その他の高分子の具体例としては、ポリ(スチレン−コ−マレイン酸無水物)などが挙げられ、ポリカーボネート共重合体と高分子化合物との組成比は、ポリカーボネート共重合体80〜30質量%、高分子化合物体20〜70質量%、好ましくはポリカーボネート共重合体80〜40質量%、高分子化合物体20〜60質量%である。ブレンド体の場合も、上記ポリカーボネート共重合体の繰り返し単位はそれぞれ2種類以上組み合わせてもよい。またブレンド体の場合、相溶性ブレンドが好ましいが、完全に相溶しなくても成分間の屈折率を合わせれば成分間の光散乱を抑え、透明性を向上させることが可能である。なお、ブレンド体は、3種類以上の材料を組合わせてもよく、複数種類のポリカーボネート共重合体とその他の高分子化合物とを組合わせることができる。
ポリカーボネート共重合体の質量平均分子量は、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000である。その他の高分子化合物の質量平均分子量は、500〜100,000、好ましくは1,000〜50,000である。
環状オレフィン構造を有する重合体樹脂(以下、「環状ポリオレフィン系樹脂」あるいは「環状ポリオレフィン」ともいう)の例には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などがある。本発明に好ましい重合体は下記一般式(II)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体環状ポリオレフィン、および必要に応じて一般式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上を更に含んでなる付加(共)重合体環状ポリオレフィンである。また、一般式(III)で表される環状繰り返し単位を少なくとも1種含む付加(共)重合体(開環(共)重合体も含む)も好適に使用することができる。また、一般式(III)で表される繰り返し単位を少なくとも一種に、必要に応じて一般式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上を更に含んでなる付加(共)重合体環状ポリオレフィンも好ましく使用することができる。
Figure 2007264287
Figure 2007264287
Figure 2007264287
式中、mは0〜4の整数を表す。R1〜R6は水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基、X1〜X3およびY1〜Y3は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2)nCOOR11、−(CH2)nOCOR12、−(CH2)nNCO、−(CH2)nNO2、−(CH2)nCN、−(CH2)nCONR1314、−(CH2)nNR1314、−(CH2)nOZ、−(CH2)nW、またはX1とY1、X2とY2あるいはX3とY3から構成された(−CO)2O、(−CO)2NR15を示す。なお、R11,R12,R13,R14,R15は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基、WはSiR16 p3−p(R16は炭素数1〜10の炭化水素基、Dはハロゲン原子−OCOR17または−OR17、pは0〜3の整数を示す)、nは0〜10の整数を示す。R17はR16と同義である)。
1〜X3 、Y1 〜Y3の置換基に分極性の大きい官能基を導入することにより、光学フィルムの厚さ方向レターデーション(Rth)を大きくし、面内レターデーション(Re)の発現性を大きくすることが出来る。Re発現性の大きなフィルムは、製膜過程で延伸することによりRe値を大きくすることができる。
ノルボルネン系付加(共)重合体は、特開平10−7732号、特表2002−504184号、US2004229157A1号あるいはWO2004/070463A1号等の各公報に開示されているノルボルネン系多環状不飽和化合物同士を付加重合することによって得られる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多環状不飽和化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン;エチリデンノルボルネンのような非共役ジエン;アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの線状ジエン化合物とを付加重合することもできる。このノルボルネン系付加(共)重合体は、三井化学(株)よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)の異なる例えばAPL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)あるいはAPL6015T(Tg145℃)などのグレードがある。ポリプラスチック(株)よりTOPAS8007、同6013、同6015などのペレットが発売されている。更に、Ferrania社よりAppear3000が発売されている。
ノルボルネン系重合体水素化物は、特開平1−240517号、特開平7−196736号、特開昭60−26024号、特開昭62−19801号、特開2003‐159767号あるいは特開2004‐309979号等の各公報に開示されているように、多環状不飽和化合物を付加重合あるいはメタセシス開環重合したのち水素添加することにより作られる。本発明に用いるノルボルネン系重合体において、R5〜R6は水素原子又は−CH3 が好ましく、X3、及びY3 は水素原子、Cl、−COOCH3 が好ましく、その他の基は適宜選択される。このノルボルネン系樹脂は、JSR(株)からアートン(Arton)GあるいはアートンFという商品名で発売されており、また日本ゼオン(株)からゼオノア(Zeonor)ZF14、ZF16、ゼオネックス(Zeonex)250あるいはゼオネックス280という商品名で市販されており、これらを使用することができる。
(Reの制御方法 最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長であるレターデーション上昇剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムのReの絶対値を制御するには、溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長である化合物をレターデーション上昇剤として用いることが好ましい。このような化合物を用いることで、可視域のReの波長依存性を実質変化することなく絶対値を制御することが出来る。
「レターデーション上昇剤」とは、ある添加剤を含むセルロースアシレートフィルムの波長550nmで測定したReが、その添加剤を含まない以外は全く同様に作製したセルロースアシレートフィルムの波長550nmで測定したReよりも、20nm以上高い値(膜厚80μm換算時)となる「添加剤」を意味する。Reの上昇は、30nm以上であることが好ましく、40nm以上であることがさらに好ましく、60nm以上であることが最も好ましい。
レターデーション上昇剤の機能の観点では、棒状化合物が好ましく、少なくとも一つの芳香族環を有することが好ましく、少なくとも二つの芳香族環を有することがさらに好ましい。
棒状化合物は、直線的な分子構造を有することが好ましい。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析または分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト(例、WinMOPAC2000、富士通(株)製)を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることができる。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造の角度が140度以上であることを意味する。
棒状化合物は、液晶性を示すことが好ましい。棒状化合物は、加熱により液晶性を示す(サーモトロピック液晶性を有する)ことがさらに好ましい。液晶相は、ネマチック相またはスメクティック相が好ましい。
好ましい化合物としては、特開2004−4550号公報に記載されているが、これに限定されるものではない。溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。
棒状化合物は、文献記載の方法を参照して合成できる。文献としては、Mol.Cryst.Liq.Cryst.,53巻、229ページ(1979年)、同89巻、93ページ(1982年)、同145巻、111ページ(1987年)、同170巻、43ページ(1989年)、J.Am.Chem.Soc.,113巻、1349ページ(1991年)、同118巻、5346ページ(1996年)、同92巻、1582ページ(1970年)、J.Org.Chem.,40巻、420ページ(1975年)、Tetrahedron、48巻、16号、3437ページ(1992年)を挙げることができる。
該レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアシレートの量の0.1乃至30質量%であることが好ましく、0.5乃至20質量%であることがさらに好ましい。
(Rthの制御方法 最大吸収波長(λmax)が250nmより長波長であるレターデーション上昇剤)
所望のRthを発現するため、レターデーション上昇剤を用いることが好ましい。
ここでの「レターデーション上昇剤」とは、ある添加剤を含むセルロースアシレートフィルムの波長550nmで測定したRthが、その添加剤を含まない以外は全く同様に作製したセルロースアシレートフィルムの波長550nmで測定したRthよりも、20nm以上高い値(膜厚80μm換算時)となる「添加剤」を意味する。Rthの上昇は、30nm以上であることが好ましく、40nm以上であることがさらに好ましく、60nm以上であることが最も好ましい。
該レターデーション上昇剤は、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物が好ましい。レターデーション上昇剤は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.01乃至20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1乃至10質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.2乃至5質量部の範囲で使用することがさらに好ましく、0.5乃至2質量部の範囲で使用することが最も好ましい。二種類以上のレターデーション上昇剤を併用してもよい。
レターデーション上昇剤は、250乃至400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
Rthを制御するレターデーション上昇剤は、延伸により発現するReに影響しないことが好ましく、円盤状の化合物を用いることが好ましい。
円盤状の化合物としては、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含み、特に、芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましく、特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には、例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が好ましく用いられる。
芳香族化合物は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.01乃至20質量部の範囲で使用する。芳香族化合物は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.05乃至15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1乃至10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。二種類以上の化合物を併用してもよい。
(Rthの制御方法 光学異方性層による方法)
延伸により発現するReに影響することなくRthを制御する方法として、液晶層等による光学異方性層を塗設する方法が好ましく用いられる。
液晶層の具体例としては、ディスコティック液晶を、その円盤面と上述の光学フィルム面との角度が5度以内となるように配向させる方法(特開平10−312166号公報)、棒状液晶を、その長軸と上述の光学フィルム面との角度が5度以内となるように配向させる方法(特開2000−304932号公報)が挙げられる。
光学異方性層を有するセルロースアシレートフィルム(光学補償フィルムともいう)は、液晶表示装置、特にOCBモード、VAモードの液晶表示装置の視野角コントラストの拡大、及び視野角に依存した色ずれの軽減に寄与する。光学補償フィルムは、観察者側の偏光板と液晶セルとの間に配置しても、背面側の偏光板と液晶セルとの間に配置してもよいし、双方に配置してもよい。例えば、独立の部材として液晶表示装置内部に組み込むこともできるし、また、偏光膜を保護する保護膜に、光学特性を付与して透明フィルムとしても機能させて、偏光板の一部材として、液晶表示装置内部に組み込むこともできる。該セルロースアシレートフィルムと光学異方性層との間に、光学異方性層中の液晶性化合物の配向を制御する配向膜を有していてもよい。また、後述する光学特性を満たす限り、該セルロースアシレート及び光学異方性層はそれぞれ、2以上の層からなっていてもよい。光学異方性層についてさらに詳しく説明する。
[光学異方性層]
光学異方性層は、セルロースアシレートフィルムの表面に直接形成してもよいし、セルロースアシレートフィルム上に配向膜を形成し、該配向膜上に形成してもよい。また、別の基材に形成した液晶性化合物層を、粘着剤、接着剤等を用いて、セルロースアシレートフィルム上に転写することも可能である。
光学異方性層の形成に用いる液晶性化合物としては、棒状液晶性化合物及び円盤状液晶性化合物(以下、円盤状液晶性化合物を「ディスコティック液晶性化合物」という場合もある)が挙げられる。棒状液晶性化合物及びディスコティック液晶性化合物は、高分子液晶でも低分子液晶でもよい。また、最終的に光学異方性層に含まれる化合物は、もはや液晶性を示す必要はなく、例えば、光学異方性層の作製に低分子液晶性化合物を用いた場合、光学異方性層を形成される過程で、該化合物が架橋され液晶性を示さなくなった態様であってもよい。
(棒状液晶性化合物)
本発明に使用可能な棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。なお、棒状液晶性化合物には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性化合物を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも用いることができる。言い換えると、棒状液晶性化合物は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性化合物については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章及び第11章、及び液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
本発明に用いる棒状液晶性化合物の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性化合物は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、不飽和重合性基又はエポキシ基が好ましく、不飽和重合性基がさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基が最も好ましい。
(ディスコティック液晶性化合物)
ディスコティック液晶性化合物には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
前記ディスコティック液晶性化合物には、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基又は置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造の、液晶性を示す化合物も含まれる。分子又は分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。
上記した様に、液晶性化合物から光学異方性層を形成した場合、最終的に光学異方性層に含まれる化合物は、もはや液晶性を示す必要はない。例えば、低分子のディスコティック液晶性化合物が熱又は光で反応する基を有しており、熱又は光によって該基が反応して、重合又は架橋し、高分子量化することによって光学異方性層が形成される場合などは、光学異方性層中に含まれる化合物は、もはや液晶性を失っていてもよい。ディスコティック液晶性化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
ディスコティック液晶性化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入することが好ましい。
本発明において、前記光学異方性層中、前記棒状化合物又は前記円盤状化合物の分子は、配向状態に固定されている。液晶性化合物の分子対称軸の、前記光学フィルム側の界面における配向平均方向は、該光学フィルムの面内の遅相軸との交差角が略45度である。なお、本明細書において、「略45°」とは、45°±5°の範囲の角度をいい、好ましくは42〜48°であり、より好ましくは43〜47°である。
液晶性化合物の分子対称軸の配向平均方向は、一般に液晶性化合物もしくは配向膜の材料を選択することにより、又はラビング処理方法を選択することにより、調整することができる。
本発明では、例えば、OCB方式用の光学補償フィルムを作製する場合、光学異方性層形成用配向膜をラビング処理によって作製し、セルロースアシレートフィルムの遅相軸に対して45°の方向にラビング処理することで、液晶性化合物の分子対称軸の、少なくともセルロースアシレートフィルム界面における配向平均方向が、セルロースアシレートフィルムの遅相軸に対して45°である光学異方性層を形成することができる。
例えば、光学補償フィルムは、遅相軸が長手方向と直交する長尺状の本発明のセルロースアシレートフィルムを用いると連続的に作製できる。具体的には、長尺状の該セルロースアシレートフィルムの表面に連続的に配向膜形成用塗布液を塗布して膜を作製し、次に該膜の表面を連続的に長手方向に45°の方向にラビング処理して配向膜を作製し、次に作製した配向膜上に連続的に液晶性化合物を含有する光学異方性層形成用塗布液を塗布して、液晶性化合物の分子を配向させて、その状態に固定することで光学異方性層を作製して、長尺状の光学補償フィルムを連続的に作製することができる。長尺状に作製された光学補償フィルムは、液晶表示装置内に組み込まれる前に、所望の形状に裁断される。
また、液晶性化合物の表面側(空気側)の分子対称軸の配向平均方向について、空気界面側の液晶性化合物の分子対称軸の配向平均方向は、セルロースアシレートフィルムの遅相軸に対して略45°であるのが好ましく、42〜48°であるのがより好ましく、43〜47°であるのがさらに好ましい。空気界面側の液晶性化合物の分子対称軸の配向平均方向は、一般に、液晶性化合物又は液晶性化合物と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。液晶性化合物と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー及びポリマーなどを挙げることができる。分子対称軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶性化合物と添加剤との選択により調整できる。特に界面活性剤に関しては、上述の塗布液の表面張力制御と両立することが好ましい。
液晶性化合物と共に使用する可塑剤、界面活性剤及び重合性モノマーは、ディスコティック液晶性化合物と相溶性を有し、液晶性化合物の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。重合性モノマー(例、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基を有する化合物)が好ましい。上記化合物の添加量は、液晶性化合物に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が4以上のモノマーを混合して用いると、配向膜と光学異方性層間の密着性を高めることが出来る。
液晶性化合物としてディスコティック液晶性化合物を用いる場合には、ディスコティック液晶性化合物とある程度の相溶性を有し、ディスコティック液晶性化合物に傾斜角の変化を与えられるポリマーを用いるのが好ましい。
ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。ディスコティック液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、ディスコティック液晶性化合物に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
ディスコティック液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
本発明において、前記光学異方性層のRe(550)は0〜300nmであるのが好ましく、0〜200nmであるのがより好ましく、0〜100nmであるのがさらに好ましい。前記光学異方性層の膜厚方向のRth(550)については、20〜400nmであるのが好ましく、50〜200nmであるのがより好ましい。また、前記光学異方性層の厚さは、0.1〜20ミクロンであることが好ましく、0.5〜15ミクロンであることがさらに好ましく、1〜10ミクロンであることが最も好ましい。
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、前記の特定のセルロースアシレートと必要に応じて添加剤とを有機溶媒に溶解させた溶液を用いてフィルム化することにより得ることができる。
〔添加剤〕
本発明において前記セルロースアシレート溶液に用いることができる添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、レターデーション(光学異方性)発現剤、レターデーション(光学異方性)低下剤、波長分散調整剤、染料、微粒子、剥離促進剤、赤外吸収剤などを挙げることができる。本発明においては、レターデーション発現剤を用いるのが好ましい。また、可塑剤、紫外線吸収剤及び剥離促進剤の少なくとも1種以上を用いるのが好ましい。
それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収剤を混合して用いたり、同様に可塑剤を混合して用いたりすることができ、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系である。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
サリチル酸エステル系としては、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート等を挙げることができる。
これら例示した紫外線吸収剤の中でも、特に2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾールが特に好ましい。
紫外線吸収剤は、吸収波長の異なる複数の吸収剤を複合して用いることが、広い波長範囲で高い遮断効果を得ることができるので好ましい。液晶用紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。特に好ましい紫外線吸収剤は、先に上げたベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルに対する不用な着色が少ないことから、好ましい。
また、紫外線吸収剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載の化合物も用いることができる。
紫外線吸収剤の添加量は、セルロースアシレートに対し0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。添加量が0.001質量%以上であれば添加効果が十分に発揮されうるので好ましく、添加量が5質量%以下であればフィルム表面への紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制できるので好ましい。
また紫外線吸収剤は、セルロースアシレート溶解時に同時に添加してもよいし、溶解後のドープに添加してもよい。特にスタティックミキサ等を用い、流延直前にドープに紫外線吸収剤溶液を添加する形態が、分光吸収特性を容易に調整することができるので好ましい。
[劣化防止剤]
前記劣化防止剤は、セルローストリアセテート等が劣化、分解するのを防止することができる。劣化防止剤としては、ブチルアミン、ヒンダードアミン化合物(特開平8−325537号公報)、グアニジン化合物(特開平5−271471号公報)、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(特開平6−235819号公報)、ベンゾフェノン系UV吸収剤(特開平6−118233号公報)などの化合物がある。
[可塑剤]
可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステルであることが好ましい。リン酸エステル系可塑剤としては、例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等;カルボン酸エステル系可塑剤としては、例えばジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を挙げることができ、本発明に用いられる可塑剤はこれら例示の可塑剤から選ばれたものであることがより好ましい。さらに、前記可塑剤が、(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、グリセロールエステル類、ジグリセロールエステル類であることが好ましい。
[剥離促進剤]
剥離促進剤としては、クエン酸のエチルエステル類が例として挙げられる。
[赤外吸収剤]
さらに赤外吸収剤としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。
[添加時期等]
これらの添加剤を添加する時期は、ドープ作製工程において何れで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に、添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
また、セルロースアシレートフィルムが多層である場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば、特開2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。
これら添加剤の種類や添加量の選択によって、セルロースアシレートフィルムの動的粘弾性測定機「例えばバイブロン:DVA−225」{アイティー計測制御(株)製}}で測定するガラス転移点Tgを70〜150℃に、引張試験機「例えばストログラフ−R2」{(株)東洋精機製作所製}で測定する弾性率を1500〜4000MPaにすることが好ましい。より好ましくは、ガラス転移点Tgが80〜135℃、弾性率が1500〜3000MPaである。すなわち、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、偏光板加工や液晶表示装置組立ての工程適性の点で、ガラス転移点Tg、弾性率を上記の範囲とすることが好ましい。
さらに添加剤については、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)16頁以降に詳細に記載されているものを適宜用いることができる。
[レターデーション低下剤]
セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる場合に使用するレターデーション低下剤について説明する。
フィルム中のセルロースアシレートが、面内及び膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いて、光学的異方性を十分に低下させ、Re及びRthをゼロ又はゼロに近くにすることができる。このためには、光学的異方性を低下させる化合物はセルロースアシレートに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
(LogP値)
光学的異方性の低いセルロースアシレートフィルムを作製するにあたっては、上述のように、フィルム中のセルロースアシレートが面内及び膜厚方向に配向するのを抑制して光学異方性を低下させる化合物のうち、オクタノール−水分配係数(logP値)が0〜7である化合物が好ましい。化合物のlogP値が7以下であれば、セルロースアシレートとの相溶性が良好で、フィルムの白濁や粉吹きなどの不具合を生じにくいので好ましい。
また化合物のlogP値が0以上であれば、親水性が高くなりすぎることがなく、セルロースアシレートフィルムの耐水性を悪化させることがないので好ましい。logP値としてさらに好ましい範囲は1〜6であり、特に好ましい範囲は1.5〜5である。
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS Z−7260−107(2000)に記載のフラスコ振とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法又は経験的方法により見積もることも可能である。
計算方法としては、Crippen’s fragmentation法{“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,27巻、21頁(1987年)}、Viswanadhan’s fragmentation法{“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,29巻、163頁(1989年)}、Broto’s fragmentation法{“Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.”,19巻、71頁(1984年)}などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法{“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,27巻、21頁(1987年)}がより好ましい。
ある化合物のlogPの値が測定方法又は計算方法により異なる場合に、該化合物が上記の範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断することが好ましい。
(光学的異方性を低下する化合物の物性)
光学異方性を低下させる化合物は、芳香族基を含有してもよいし、含有しなくてもよい。また光学異方性を低下させる化合物は、分子量が150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることが好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であってもよいし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でもよい。
光学異方性を低下させる化合物は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、さらに好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。また光学異方性を低下させる化合物は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
光学異方性を低下させる化合物の添加量は、セルロースアシレートの0.01〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
光学異方性を低下させる化合物は、単独で用いても、2種以上の化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
光学異方性を低下させる化合物を添加する時期は、ドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
光学異方性を低下させる化合物は、少なくとも一方の側の表面から全膜厚の10%までの部分における該化合物の平均含有率が、該セルロースアシレートフィルムの中央部における該化合物の平均含有率の80〜99%であることが好ましい。光学異方性を低下させる化合物の存在量は、例えば、特開平8−57879号公報に記載の赤外吸収スペクトルを用いる方法などにより、表面及び中心部の化合物量を測定して求めることができる。
[染料]
また本発明では、色相調整のための染料を添加してもよい。染料の含有量は、セルロースアシレートに対する質量割合で10〜1000ppmが好ましく、50〜500ppmが更に好ましい。このように染料を含有させることにより、セルロースアシレートフィルムのライトパイピングが減少でき、黄色味を改良することができる。これらの化合物は、セルロースアシレート溶液の調製の際に、セルロースアシレートや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。またインライン添加する紫外線吸収剤液に添加してもよい。特開平5−34858号公報に記載の染料を用いることができる。
[マット剤微粒子]
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は、珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、且つ見掛け比重が70g/L以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見掛け比重は90〜200g/L以上が好ましく、100〜200g/L以上がさらに好ましい。見掛け比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
マット剤として二酸化珪素微粒子を用いる場合の、その使用量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.01〜0.3質量部とするのが好ましい。
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成するが、フィルム中では1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次粒子の平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下がさらに好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。該平均粒子径が1.5μm以下であればヘイズが強くなりすぎることがなく、また0.2μm以上であればきしみ防止効果が十分に発揮されるので好ましい。
微粒子の1次、2次粒子径は、フィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とする。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とする。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、「アエロジル」R972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600{以上、日本アエロジル(株)製}などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、「アエロジル」R976及びR811{以上、日本アエロジル(株)製}の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中で「アエロジル200V」、「アエロジルR972V」が、1次平均粒子径が20nm以下であり、且つ見掛け比重が70g/L以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
本発明において、2次平均粒子径の小さな粒子を含有するセルロースアシレートフィルムを得るためには、微粒子の分散液を調製する際いくつかの手法が考えられる。例えば、溶媒と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液を予め作製し、この微粒子分散液を、別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶媒に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行いこれを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明においては、これらの方法に限定されるものではないが、二酸化珪素微粒子を溶媒などと混合して分散するときの、二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。
分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2当たり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
使用される溶媒は、低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては、特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶媒を用いることが好ましい。
次に、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートが溶解される前記有機溶媒について記述する。
本発明においては、有機溶媒として、塩素系有機溶媒を主溶媒とする塩素系溶媒と、塩素系有機溶媒を含まない非塩素系溶媒とのいずれをも用いることができる。
〔塩素系溶媒〕
本発明において好ましく用いられるセルロースアシレートの溶液を作製するに際しては、主溶媒として塩素系有機溶媒が好ましく用いられる。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し、流延・製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは、その塩素系有機溶媒の種類は特に限定されない。これらの塩素系有機溶媒は、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。特にジクロロメタンが好ましい。また、塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することも特に問題ない。その場合ジクロロメタンは、有機溶媒全体量中少なくとも50質量%使用することが好ましい。
本発明で塩素系有機溶媒と併用される他の有機溶媒について以下に記す。
すなわち、好ましい他の有機溶媒としては、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、アルコール、炭化水素などから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン、エーテル及びアルコールは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトン及びエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶媒として用いることができ、例えばアルコール性水酸基のような他の官能基を同時に有していてもよい。2種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテート等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノン等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトール等が挙げられる。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノール等が挙げられる。
また塩素系有機溶媒と併用されるアルコールとしては、好ましくは、直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール及びシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレンが含まれる。
塩素系有機溶媒と他の有機溶媒との組合せ例としては、以下の組成を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール=80/10/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール=80/10/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン=80/10/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール=80/10/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール=75/8/5/5/7(質量部)
ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール=80/7/5/8(質量部)
ジクロロメタン/酢酸メチル/ブタノール=80/10/10(質量部)、
ジクロロメタン/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン=70/20/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール=50/20/20/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール=70/20/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール=60/20/10/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン=65/10/10/5/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール=70/10/10/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン=65/10/10/5/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール=65/20/10/5(質量部)、
ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール=65/20/10/5(質量部)。
〔非塩素系溶媒〕
次に、本発明において好ましく用いられるセルロースアシレートの溶液を作製するに際して、好ましく用いられる非塩素系有機溶媒について記載する。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し、流延・製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは、非塩素系有機溶媒は特に限定されない。本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン及び、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトン及びエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、例えばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ペンチルが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン及びアセチル酢酸メチルが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが挙げられる。
以上の、セルロースアシレートに用いられる非塩素系有機溶媒については、前述のいろいろな観点から選定されるが、好ましくは以下のとおりである。
すなわち、非塩素系溶媒としては、上記非塩素系有機溶媒を主溶媒とする混合溶媒が好ましく、互いに異なる3種類以上の溶媒の混合溶媒であって、第1の溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサンから選ばれる少なくとも1種又はそれらの混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数4〜7のケトン類又はアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒が炭素数1〜10のアルコール又は炭化水素、より好ましくは炭素数1〜8のアルコールから選ばれる混合溶媒である。なお第1の溶媒が、2種以上の溶媒の混合液である場合は、第2の溶媒がなくてもよい。第1の溶媒は、さらに好ましくは、酢酸メチル、アセトン、蟻酸メチル、蟻酸エチル又はこれらの混合物であり、第2の溶媒は、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチルが好ましく、これらの混合溶媒であってもよい。
第3の溶媒であるアルコールは、その炭化水素鎖が直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素鎖であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール及びシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、その炭化水素鎖の水素の一部又は全部がフッ素で置換されたフッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。
さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレンが含まれる。
これらの第3の溶媒であるアルコール及び炭化水素は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物で用いてもよく特に限定されない。第3の溶媒としては、好ましい具体的化合物は、アルコールとして、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びシクロヘキサノール、炭化水素として、シクロヘキサン、ヘキサンなどを挙げることができ、特に好ましくはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールである。
以上の3種類の混合溶媒の混合割合は、混合溶媒全体量中、第1の溶媒が20〜95質量%、第2の溶媒が2〜60質量%、そして第3の溶媒が2〜30質量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜50質量%、そして第3のアルコールが3〜25質量%含まれることが好ましい。また特に第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜30質量%、第3の溶媒がアルコールであって3〜15質量%含まれることが好ましい。
以上の本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、さらに詳細には発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.12−16に詳細に記載されている。
本発明の好ましい非塩素系有機溶媒の組合せは以下挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール=75/10/5/5/5(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール=75/10/5/5/5(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン=75/10/5/5/5(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール=81/8/7/4(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール=82/10/4/4(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール=80/10/4/6(質量部)、
酢酸メチル/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール=80/10/5/5(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール=75/8/5/5/7(質量部)、
酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール=80/7/5/8(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/ブタノール=85/10/5(質量部)、
酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/ブタノール=60/15/14/5/6(質量部)、
酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン=70/20/5/5(質量部)、
酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール=50/20/20/5/5(質量部)、
酢酸メチル/1、3−ジオキソラン/メタノール/エタノール=70/20/5/5(質量部)、
酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール=60/20/10/5/5(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン=65/10/10/5/5/5(質量部)、
ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール=50/20/20/5/5(質量部)、
ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン=65/10/10/5/5/5(質量部)、
アセトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール=65/20/10/5(質量部)、
アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール=65/20/10/5(質量部)、
アセトン/1,3−ジオキソラン/エタノール/ブタノール=65/20/10/5(質量部)、
1、3−ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール=55/20/10/5/5/5(質量部)
などをあげることができる。
更に、下記の方法で調整したセルロースアシレート溶液を用いることもできる。
酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール=81/8/7/4(質量部)でセルロースアシレート溶液を作製し、濾過・濃縮後に2質量部のブタノールを追加添加する方法、
酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール=84/10/4/2(質量部)でセルロースアシレート溶液を作製し、濾過・濃縮後に4質量部のブタノールを追加添加する方法、
酢酸メチル/アセトン/エタノール=84/10/6(質量部)でセルロースアシレート溶液を作製し、濾過・濃縮後に5質量部のブタノールを追加添加する方法。
本発明に用いるドープには、上記本発明の非塩素系有機溶媒以外に、ジクロロメタンを本発明の全有機溶媒量の10質量%以下含有させてもよい。
〔セルロースアシレート溶液特性〕
セルロースアシレートの溶液は、前記有機溶媒にセルロースアシレートを溶解させた溶液であり、その濃度は10〜30質量%の範囲であることが、製膜流延適性の点で好ましく、より好ましくは13〜27質量%であり、特に好ましくは15〜25質量%である。
セルロースアシレート溶液をこのような濃度範囲にする方法は、溶解する段階で所定の濃度になるようにしてもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に、後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液とした後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法でも本発明において好ましく用いられるセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題ない。
次に、本発明では、セルロースアシレート溶液を同一組成の有機溶媒で0.1〜5質量%にしたときの、希釈溶液中のセルロースアシレートの会合体分子量が15万〜1500万であることが、溶媒への溶解性の点で好ましい。会合分子量は18万〜900万であることがさらに好ましい。この会合分子量は、静的光散乱法で求めることができる。その際に、同時に求められる慣性半径は10〜200nmになるように溶解することが好ましい。さらに好ましい慣性半径は20〜200nmである。更にまた、第2ビリアル係数が−2×10-4〜+4×10-4となるように溶解することが好ましく、より好ましくは第2ビリアル係数が−2×10-4〜+2×10-4である。
ここで、本発明での会合分子量、さらに慣性半径及び第2ビリアル係数の定義について述べる。これらは下記方法に従って、静的光散乱法を用いて測定する。測定は装置の都合上希薄領域で測定するが、これらの測定値は本発明の高濃度域でのドープの挙動を反映するものである。
まず、セルロースアシレートをドープに使用する溶媒に溶かし、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%の溶液を調製する。なお秤量は、吸湿を防ぐため、セルロースアシレートは、120℃で2時間乾燥したものを用い、25℃、10%RHで行う。溶解方法は、ドープ溶解時に採用した方法(常温溶解法、冷却溶解法、高温溶解法)に従って実施する。続いてこれらの溶液、及び溶媒を0.2μmのテフロン製フィルターで濾過する。そして、濾過した溶液の静的光散乱を、光散乱測定装置“DLS−700”{大塚電子(株)製}を用い、25℃において30゜から140゜まで10゜間隔で測定する。得られたデータをBERRYプロット法にて解析する。なお、この解析に必要な屈折率は、アッベ屈折系で求めた溶媒の値を用い、屈折率の濃度勾配(dn/dc)は、示差屈折計“DRM−1021”{大塚電子(株)製}を用い、光散乱測定に用いた溶媒及び溶液を用いて測定する。
〔ドープの調製〕
次に、セルロースアシレートの流延・製膜用の溶液(ドープ)の調製について述べる。
セルロースアシレートの溶解方法は、特に限定されず、室温溶解法でもよく、また冷却溶解法又は高温溶解法、さらにはこれらの組み合わせで実施されてもよい。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、さらに特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号などの各公報にセルロースアシレート溶液の調製法として記載されている。
以上記載した、これらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、それが本発明の規定範囲であれば、本発明においてもこれらの技術を適宜適用できるものである。これらの詳細、特に非塩素系溶媒系については、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)22−25頁に詳細に記載されており、その方法に従って実施することができる。さらに本発明において好ましく用いられるセルロースアシレートのドープ溶液については、通常、溶液濃縮、濾過が実施されるが、これらについては同様に発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合には、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で行われる。
セルロースアシレート溶液は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率が以下に述べる範囲であることが、流延しやすく好ましい。これらの値は、試料溶液1mLをレオメーター“CLS 500”に、直径4cm/2°の“Steel Cone”(共にTA Instruments社製)を用いて測定する。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度n(Pa・s)及び−5℃の貯蔵弾性率G(Pa)を求める。なお試料溶液は、予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始する。
本発明では、40℃での粘度が1〜400Pa・sであり、15℃での動的貯蔵弾性率が500Pa以上であることが好ましく、より好ましくは40℃での粘度が10〜200Pa・sで、15℃での動的貯蔵弾性率が100〜100万であるのがよい。さらには、低温での動的貯蔵弾性率は大きいほど好ましく、例えば流延支持体が−5℃の場合は、動的貯蔵弾性率が−5℃で1万〜100万Paであることが好ましく、支持体が−50℃の場合は、−50℃での動的貯蔵弾性率が1万〜500万Paであることが好ましい。
本発明においては、前述の特定のセルロースアシレートを用いているので、高濃度のドープが得られるのが特徴であり、濃縮という手段に頼らずとも高濃度で、しかも安定性の優れたセルロースアシレート溶液が得られる。更に溶解し易くするために、低い濃度で溶解してから濃縮手段を用いて濃縮してもよい。濃縮の方法としては、特に限定するものはないが、例えば、低濃度溶液を筒体とその内部の周方向に回転する回転羽根外周の回転軌跡との間に導くとともに、溶液との間に温度差を与えて、溶媒を蒸発させながら高濃度溶液を得る方法(例えば、特開平4−259511号公報等)、加熱した低濃度溶液をノズルから容器内に吹き込み、溶液をノズルから容器内壁に当たるまでの間で溶媒をフラッシュ蒸発させるとともに、溶媒蒸気を容器から抜き出し、高濃度溶液を容器底から抜き出す方法(例えば、米国特許第2,541,012号、米国特許第2,858,229号、米国特許第4,414,341号、米国特許第4,504,355号各明細書等などに記載の方法)等で実施できる。
ドープ溶液は、流延に先だって金網やネルなどの適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物を濾過除去しておくのが好ましい。セルロースアシレート溶液の濾過には、絶対濾過精度が0.1〜100μmのフィルターを用いることが好ましく、さらには絶対濾過精度が0.5〜25μmであるフィルターを用いることが好ましい。フィルターの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、濾過圧力は1.6MPa以下が好ましく、より好ましくは1.2MPa以下、更には1.0MPa以下、特に0.2MPa以下で濾過することが好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知である材料を好ましく用いることができ、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。セルロースアシレート溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際に流延可能な範囲であればよく、通常10Pa・s〜2000Pa・sの範囲に調製されることが好ましく、30Pa・s〜1000Pa・sがより好ましく、40Pa・s〜500Pa・sが更に好ましい。なお、この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5〜+70℃であり、より好ましくは−5〜+55℃である。
〔製膜〕
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、前記セルロースアシレート溶液(ドープ)を用いて製膜を行うことにより得ることができる。製膜方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)から、エンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延し、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して、巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組合せはその目的により変わる。電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。以下に各製造工程について簡単に述べるが、これらに限定されるものではない。
ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを作製するに際しては、まず、調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)を、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が5〜40質量%となるように濃度を調整しておくことが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が30℃以下のドラム又はバンド上に流延する方法が好ましく採用され、特には金属支持体温度が−10〜20℃の範囲であることが好ましい。さらに本発明では、特開2000−301555号、特開2000−301558号、特開平07−032391号、特開平03−193316号、特開平05−086212号、特開昭62−037113号、特開平02−276607号、特開昭55−014201号、特開平02−111511号、及び特開平02−208650号の各公報に記載の方法を用いることができる。
[重層流延]
セルロースアシレート溶液は、金属支持体としての平滑なバンド上又はドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延してもよい。複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口から、セルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて、積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、及び特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってフィルム化することもでき、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、及び特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。さらに、特開昭56−162617号公報に記載の、高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高粘度及び低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出す、セルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。更にまた、特開昭61−94724号及び特開昭61−94725号の各公報に記載の、外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。あるいはまた2個の流延口を用い、第一の流延口により金属支持体上に形成したフィルムを剥離した後、そのフィルムの金属支持体面に接していた側に第二の流延を行うことでより、複数の層のフィルムを作製することもでき、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法を挙げることができる。流延するセルロースアシレート溶液は、同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく、特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるためには、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらにセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、粘着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには、高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押出すことが必要であり、その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くなりがちで固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。この解決法として、複数のセルロースアシレート溶液を、複数の流延口から相対的に少量ずつ流延することにより、高粘度の溶液を同時に金属支持体上に押出すことが可能になり、平面性も改善されて優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。
共流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。ここで、3層以上の共流延の場合には、金属支持体に接した層と空気側に接した層のトータル膜厚を外側の厚さとして定義する。共流延の場合、前記の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースアシレート溶液を共流延して、積層構造のセルロースアシレートフィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成のセルロースアシレートフィルムを作ることができる。例えば、マット剤は、スキン層に多く、又はスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多くいれることができ、コア層のみにいれてもよい。またコア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えばスキン層に低揮発性の可塑剤及び紫外線吸収剤の少なくともいずれかを含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、あるいは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。さらに剥離促進剤を金属支持体側のスキン層のみ含有させることも好ましい態様である。さらにまた、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、スキン層に貧溶媒であるアルコールをコア層より多く添加することも好ましい。スキン層とコア層のTgが異なっていてもよく、スキン層のTgよりコア層のTgが低いことが好ましい。またさらに流延時のセルロースアシレートを含む溶液の粘度も、スキン層とコア層で異なっていてもよく、スキン層の粘度がコア層の粘度よりも小さいことが好ましいが、コア層の粘度がスキン層の粘度より小さくてもよい。
[流延方法]
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるが、いずれも好ましく用いることができる。またここで挙げた方法以外にも、従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施することができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することにより、それぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムを製造するのに使用される、エンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。使用される加圧ダイは、金属支持体の上方に1基又は2基以上の設置でもよい。好ましくは1基又は2基である。2基以上設置する場合には、流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギヤアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるセルロースアシレート溶液の温度は−10〜55℃が好ましく、より好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべての溶液温度が同一でもよく、又は工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
[乾燥]
セルロースアシレートフィルムの製造に係わる、金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には、金属支持体(ドラム又はベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム又はベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム又はベルトを加熱し表面温度をコントロールする裏面液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度は、ドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。なお流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
上記の偏光板を斜めから見たときの光漏れの抑制のためには、偏光子の透過軸とセルロースアシレートフィルムの面内の遅相軸を平行に配置する必要がある。連続的に製造されるロールフィルム状の偏光子の透過軸は、一般的に、ロールフィルムの幅方向に平行であるので、前記ロールフィルム状の偏光子とロールフィルム状のセルロースアシレートフィルムからなる保護膜を連続的に貼り合せるためには、ロールフィルム状の保護膜の面内遅相軸は、フィルムの幅方向に平行であることが必要となる。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。また延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。前者の場合には残留溶媒を含んだ状態で延伸を行ってもよく、残留溶媒量が2〜30質量%で好ましく延伸することができる。
乾燥後得られる、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムの膜厚は、使用目的によって異なり、通常、5〜500μmの範囲であることが好ましく、更に20〜300μmの範囲が好ましく、特に30〜150μmの範囲が好ましい。また、光学用、特にVA液晶表示装置用としては、35〜110μmであることが好ましい。フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
以上のようにして得られた、セルロースアシレートフィルムの幅は0.5〜3mが好ましく、より好ましくは0.6〜2.5m、さらに好ましくは0.8〜2.2mである。長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
フィルムの幅方向のRe(590)値のばらつきは、±5nmであることが好ましく、±3nmであることが更に好ましい。また幅方向のRth(590)値のバラツキは±10nmが好ましく、±5nmであることが更に好ましい。また、長さ方向のRe値、及びRth値のバラツキも、幅方向のバラツキの範囲内であることが好ましい。
〔セルロースアシレートフィルムの光学特性〕
本発明のセルロースアシレートフィルムは偏光板の保護フィルムとして用いられ、特に、様々な液晶モードに対応した位相差フィルムとしても好ましく用いることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムを位相差フィルムとして用いる場合、セルロースアシレートフィルムの好ましい光学特性は液晶モードによって異なる。
OCBモード用としては、Reは10〜100のものが好ましく、20〜70のものがさらに好ましい。Rthは50〜300のものが好ましく100〜250のものがさらに好ましい。
また、TN用としてはReは0〜50のものが好ましく、2〜30のものがさらに好ましい。Rthは10〜200のものが好ましく30〜150のものがさらに好ましい。
また、IPS用としてはReは0〜5のものが好ましく、0〜2のものがさらに好ましい。Rthは−20〜20のものが好ましく−10〜10のものがさらに好ましい。
OCB用モード及びTN用モードでは前記レターデーション値を有するセルロースアシレートフィルム上に光学異方性層を塗布して光学補償フィルムとして使用できる。
なお、セルロースアシレートフィルムの複屈折率(Δn:nx−ny)は、0.00乃至〜0.002μmの範囲にあることが好ましい。また、支持体フィルムおよび対向フィルムの厚み方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、0.00乃至〜0.04の範囲にあることが好ましい。
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムの、フィルム面内の遅相軸角度のバラつきは、ロールフィルムの基準方向に対して−2゜〜+2゜の範囲にあることが好ましく、−1゜〜+1゜の範囲にあることがさらに好ましく、−0.5゜〜+0.5゜の範囲にあることが最も好ましい。ここで、基準方向とは、セルロースアシレートフィルムを縦延伸する場合にはロールフィルムの長手方向であり、横延伸する場合にはロールフィルムの幅方向である。
また、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、25℃、10%RHにおけるRe値と、25℃、80%RHにおけるRe値との差ΔRe(=Re10%−Re80%)が0〜10nmであり、25℃、10%RHにおけるRth値と、25℃、80%RHにおけるRth値との差ΔRth(=Rth10%−Rth80%)が0〜30nmであるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
さらに本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、25℃、80%RHにおける平衡含水率が3.2%以下であるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
含水率の測定法は、セルロースアシレートフィルム試料7mm×35mmを、水分測定器、試料乾燥装置{“CA−03”、“VA−05”、共に三菱化学(株)}を用いてカールフィッシャー法で測定する。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出する。
さらにまた、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、60℃、95%RH、24時間の透湿度(膜厚80μm換算)が、400g/m2・24hr以上1800g/m2・24hr以下であるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
透湿度は、セルロースアシレートフィルムの膜厚が厚ければ小さくなり、膜厚が薄ければ大きくなる。そこで、どのような膜厚のサンプルでも基準となる膜厚を設け換算する必要がある。本発明においては、基準となる膜厚を80μmとして、次の数式(13)に従って膜厚を換算した。
数式(13):80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができる。
弾性率の測定は、セルロースアシレートフィルム試料10mm×150mmを、25℃、60%RHで2時間以上調湿した後、引張り試験機「ストログラフ−R2」{(株)東洋精機製作所製}}で、チャック間距離100mm、温度25℃、延伸速度10mm/分で行った。
吸湿膨張係数の測定は、25℃、80%RH下に2時間以上放置したフィルムの寸法をピンゲージで測定した値L80%と、25℃、10%RH下に2時間以上放置したフィルムの寸法をピンゲージで測定した値L10%とから、次の数式(14)により求めた。
数式(14):(L80%−L10%)/(80%RH−10%RH)×106
また、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、そのヘイズが0.01〜2%の範囲であるのが好ましい。ここでヘイズは、以下のようにして測定できる。
ヘイズの測定は、セルロースアシレートフィルム試料40mm×80mmを、25℃、60%RHでヘイズメーター“HGM−2DP”{スガ試験機(株)製}でJIS K−6714に従って測定する。
さらに本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、80℃、90%RHの条件下に48時間静置した場合の質量変化が、0〜5質量%の範囲であるのが、好ましい。
またさらに、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、60℃、95%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化、及び90℃、5%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化が、いずれも0〜5%の範囲であるのが好ましい。
光弾性係数は、50×10-13cm2/dyne以下であるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
具体的な測定方法としては、セルロースアシレートフィルム試料10mm×100mmの、長軸方向に対して引っ張り応力をかけ、その際のレターデーションをエリプソメーター“M150”{日本分光(株)}で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾性係数を算出した。
[溶融製膜]
本発明の光学フィルムの製法は、溶融製膜であっても良い。原料となるポリマー、添加剤等の原料を加熱溶融させ、これを押出し射出成型によりフィルム化しても良いし、加熱した2枚のプレートに原料を挟み込み、プレス加工してフィルム化しても良い。
加熱溶融の温度は、原料ポリマーが共に均一に溶融する温度であれば特に制限されない。具体的には融点又は軟化点以上の温度に加熱する。均一なフィルムを得るためには、原料ポリマーの融点よりも高い温度、好ましくは融点よりも5〜40℃高い温度、特に好ましくは融点よりも8〜30℃高い温度に加熱して溶融させることが好ましい。
[配向膜]
光学補償フィルムは、本発明のセルロースアシレートフィルムと光学異方性層との間に配向膜を有していてもよい。また、光学異方性層を作製する際にのみ配向膜を使用し、配向膜上に光学異方性層を作製した後に、該光学異方性層のみを本発明のセルロースアシレートフィルム上に転写してもよい。
本発明において、前記配向膜は、架橋されたポリマーからなる層であるのが好ましい。配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーであっても、架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。上記配向膜は、官能基を有するポリマーあるいはポリマーに官能基を導入したものを、光、熱又はpH変化等により、ポリマー間で反応させて形成する;又は、反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてポリマー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、ポリマー間を架橋することにより形成する;ことができる。
架橋されたポリマーからなる配向膜は、通常、上記ポリマー又はポリマーと架橋剤との混合物を含む塗布液を、支持体上に塗布した後、加熱等を行うことにより形成することができる。
後述のラビング工程において、配向膜の発塵を抑制するために、架橋度を上げておくことが好ましい。前記塗布液中に添加する架橋剤の量(Mb)に対して、架橋後に残存している架橋剤の量(Ma)の比率(Ma/Mb)を1から引いた値(1−(Ma/Mb))を架橋度と定義した場合、架橋度は50%〜100%が好ましく、65%〜100%が更に好ましく、75%〜100%が最も好ましい。
本発明において、前記配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。勿論双方の機能を有するポリマーを使用することもできる。上記ポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリカーボネート等のポリマー及びシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーであり、さらにゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが好ましく、特にポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムへポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを直接塗設する場合、親水性の下塗り層を設けるか、もしくは、鹸化処理を施す方法が好ましく使用される。
上記ポリマーの中で、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールが好ましい。
ポリビニルアルコールとしては、例えば鹸化度70〜100%のものがあり、一般には鹸化度80〜100%のものが好ましく、鹸化度82〜98%のものがより好ましい。重合度としては、100〜3000の範囲のものが好ましい。
変性ポリビニルアルコールとしては、共重合変性したもの(変性基として、例えば、COONa、Si(OX)3、N(CH3)3・Cl、C919COO、SO3Na、C1225等が導入される)、連鎖移動により変性したもの(変性基として、例えば、COONa、SH、SC1225等が導入されている)、ブロック重合による変性をしたもの(変性基として、例えば、COOH、CONH2、COOR、C65等が導入される)等のポリビニルアルコールの変性物を挙げることができる。重合度としては、100〜3000の範囲が好ましい。これらの中で、鹸化度80〜100%の未変性もしくは変性ポリビニルアルコールが好ましく、より好ましくは鹸化度85〜95%の未変性ないしアルキルチオ変性ポリビニルアルコールである。
該ポリビニルアルコールには、セルロースアシレートフィルムと光学異方性層との密着性を付与するために、架橋・重合活性基を導入することが好ましく、その好ましい例としては、特開平8−338913号公報に詳しく記載されている。
配向膜にポリビニルアルコール等の親水性ポリマーを使用する場合、硬膜度の観点から、含水率を制御することが好ましく、0.4%〜2.5%であることが好ましく、0.6%〜1.6%であることが更に好ましい。含水率は、市販のカールフィッシャー法の水分率測定器で測定することができる。
なお、配向膜は、10ミクロン以下の膜厚であるのが好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムのRe(550)は、20〜100nmの範囲であり、かつRth(550)は100〜300nmの範囲であることが好ましい。
特にVA用液晶表示装置に光学補償フィルムとして用いる場合、液晶セルの片側に、1枚のみで補償する場合にはRe(550)が40〜100nmの範囲であり、かつRth(550)が160〜300nmの範囲であることが好ましく、Re(550)が45〜80nmであり、Rth(550)が170〜250nmであることがさらに好ましい。
一方、VA用液晶表示装置の光学補償フィルムとして液晶セルの両側に使用し、2枚で補償する場合には、Re(550)が20〜100nmの範囲であり、かつRth(550)が100〜200nmの範囲であることが好ましく、Re(550)が25〜80nmであり、Rth(550)が100〜150nmであることがさらに好ましい。
また本発明のセルロースアシレートフィルムは、下記式(I)〜(III)を満たすことが好ましい。
式(I):0.4<{ (Re(450)/Rth(450))/(Re(550)/Rth(550))}<0.95
かつ1.05<{(Re(650)/Rth(650))/(Re(550)/Rth(550))}<1.9
式(II):0.1<(Re(450)/Re(550))<0.95
式(III):1.03<(Re(650)/Re(550))<1.93
さらに好ましくは、
式(I):0.5<{ (Re(450)/Rth(450))/(Re(550)/R
th(550))}<0.9
かつ1.1<{(Re(650)/Rth(650))/(Re(550)/Rth(550))}<1.7
式(II):0.2<(Re(450)/Re(550))<0.9
式(III):1.1<(Re(650)/Re(550))<1.7
である。
[偏光板]
本発明では、偏光膜と該偏光膜を挟持する一対の保護膜とからなる偏光板であって、前記保護膜の少なくとも一枚が前記のセルロースアシレートフィルムを含む偏光板を提供するものである。例えば、ポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光膜をヨウ素にて染色し、延伸を行い、その両面を保護フィルムにて積層して得られる偏光板を用いることができる。該偏光板は液晶セルの外側に配置される。偏光膜と該偏光膜を挟持する一対の保護膜とからなる一対の偏光板を、液晶セルを挟持して配置させるのが好ましい。なお、液晶セル側に配置される保護膜は、本発明のセルロースアシレートフィルムまたは光学補償フィルムであるのが好ましい。
《接着剤》
偏光膜と保護膜との接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01〜10ミクロンが好ましく、0.05〜5ミクロンが特に好ましい。
《偏光膜と保護膜の一貫製造工程》
本発明に使用可能な偏光板は、偏光膜用フィルムを延伸後、収縮させ揮発分率を低下させる乾燥工程を有して製造され得るが、乾燥後もしくは乾燥中に少なくとも片面に保護膜を貼り合わせた後、後加熱工程を有することが好ましい。具体的な貼り付け方法として、フィルムの乾燥工程中、両端を保持した状態で接着剤を用いて偏光膜に保護膜を貼り付け、その後両端を耳きりする、もしくは乾燥後、両端保持部から偏光膜用フィルムを解除し、フィルム両端を耳きりした後、保護膜を貼り付けるなどの方法がある。耳きりの方法としては、刃物などのカッターで切る方法、レーザーを用いる方法など、一般的な技術を用いることができる。貼り合わせた後に、接着剤を乾燥させるため、及び偏光性能を良化させるために、加熱することが好ましい。加熱の条件としては、接着剤により異なるが、水系の場合は、30℃以上が好ましく、さらに好ましくは40℃〜100℃、さらに好ましくは50℃〜90℃である。これらの工程は一貫のラインで製造されることが、性能上及び生産効率上更に好ましい。
《偏光板の性能》
本発明の偏光板の光学的性質及び耐久性(短期、長期での保存性)は、市販のスーパーハイコントラスト品(例えば、株式会社サンリッツ社製HLC2−5618等)同等以上の性能を有することが好ましい。具体的には、可視光透過率が42.5%以上で、偏光度{(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}1/2≧0.9995(但し、Tpは平行透過率、Tcは直交透過率)であり、60℃、湿度90%RH雰囲気下に500時間及び80℃、ドライ雰囲気下に500時間放置した場合のその前後における光透過率の変化率が絶対値に基づいて3%以下、更には1%以下、偏光度の変化率は絶対値に基づいて1%以下、更には0.1%以下であることが好ましい。
〔セルロースアシレートフィルムの表面処理〕
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層及びバック層)との接着の向上を達成することができる。表面処理としては、例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)30−32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000keV下で20〜500kGyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500keV下で20〜300kGyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
[アルカリ鹸化処理]
アルカリ鹸化処理は、セルロースアシレートフィルムを鹸化液の槽に直接浸漬する方法、又は鹸化液をセルロースアシレートフィルムに塗布する方法により実施することが好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液をセルロースアシレートフィルムに対して塗布するために、濡れ性がよく、また鹸化液溶媒によってセルロースアシレートフィルム表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、5秒以上5分以下がさらに好ましく、20秒以上3分以下が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。
また、本発明に関する偏光板は、保護膜の上に光学異方性層を設けることが好ましい。
光学異方性層は、液晶性化合物、非液晶性化合物、無機化合物、有機/無機複合化合物等、材料は限定されない。液晶性化合物としては、重合性基を有する低分子化合物を配向させた後に光または熱による重合により配向を固定化するものや、液晶性高分子を加熱し配向させた後に冷却しガラス状態で配向固定化するものを使うことができる。液晶性化合物としては円盤状構造を有するもの、棒状構造を有するもの、光学的二軸性を示す構造を有するものを使うことができる。非液晶性化合物としては、ポリイミド、ポリエステル等の芳香族環を有する高分子を使うことができる。
光学異方性層の形成方法は、塗布、蒸着、スパッタリング等種々の手法を使用することができる。
偏光板の保護膜の上に光学異方性層を設ける場合、粘着層は偏光子側からさらに該光学異方性層の外側に設けられる。
さらに本発明に関する偏光板は、偏光板の少なくとも一方の側の保護膜の表面に、ハードコート層、防眩層又は反射防止層の少なくとも一層を設けられたものであるのが好ましい。すなわち、偏光板の液晶表示装置への使用時において、液晶セルと反対側に配置される保護膜には、反射防止層などの機能性膜を設けることが好ましく、かかる機能性膜としては、ハードコート層、防眩層又は反射防止層の少なくとも一層を設けるのが好ましい。なお、各層はそれぞれ別個の層として設ける必要はなく、例えば、反射防止層やハードコート層に防眩性の機能を持たせることにより、反射防止層及び防眩層の二層を設ける代わりに、防眩性反射防止層として機能させてもよい。
〔反射防止層〕
本発明では、偏光板の保護膜上に、少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層されてなる反射防止層、又は保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層が好適に設けられる。以下にそれらの好ましい例を記載する。なお前者の構成では、一般的に鏡面反射率は1%以上となり、Low Reflection(LR)フィルムと呼ばれる。後者の構成では、鏡面反射率0.5%以下を実現するものが可能となり、Anti Reflection(AR)フィルムと呼ばれる。
[LRフィルム]
偏光板の保護膜上に、光散乱層と低屈折率層を設けた反射防止層(LRフィルム)の好ましい例について述べる。
光散乱層には、マット粒子が分散されているのが好ましく、光散乱層のマット粒子以外の部分の素材の屈折率は1.50〜2.00の範囲にあることが好ましく、低屈折率層の屈折率は1.20〜1.49の範囲にあることが好ましい。本発明において光散乱層は、防眩性とハードコート性を兼ね備えており、一層でもよいし、複数層、例えば二層〜四層で構成されていてもよい。
反射防止層は、その表面凹凸形状として、中心線平均粗さRaが0.08〜0.40μm、10点平均粗さRzがRaの10倍以下、平均凹凸間距離Smが1〜100μm、凹凸最深部からの凸部高さの標準偏差が0.5μm以下、中心線を基準とした平均凹凸間距離Smの標準偏差が20μm以下、傾斜角0〜5゜の面が10%以上となるように設計することで、十分な防眩性と目視での均一なマット感が達成されるので好ましい。
また、CIEのタイプC標準光源下での反射光の色味がa*値が−2〜2、b*値が−3〜3、380nm〜780nmの範囲内での反射率の、最小値と最大値の比が0.5〜0.99であることで、反射光の色味がニュートラルとなるので好ましい。さらにC光源下での透過光のb*値を0〜3とすることで、表示装置に適用した際の白表示の黄色味が低減されるので好ましい。さらにまた、面光源上と反射防止層の間に120μm×40μmの格子を挿入して、フィルム上で輝度分布を測定した際の輝度分布の標準偏差が20以下であると、高精細パネルに本発明の偏光板を適用したときのギラツキが低減されるので好ましい。
本発明で用いることができる反射防止層は、その光学特性として、鏡面反射率2.5%以下、透過率90%以上、60゜光沢度70%以下とすることで、外光の反射を抑制でき、視認性が向上するため好ましい。特に鏡面反射率は1%以下がより好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。ヘイズ20%〜50%、内部ヘイズ/全ヘイズ値の比が0.3〜1、光散乱層までのヘイズ値から低屈折率層を形成後のヘイズ値の低下が15%以内、くし幅0.5mmにおける透過像鮮明度20%〜50%、垂直透過光/垂直から2゜傾斜方向の透過率比が1.5〜5.0とすることで、高精細LCDパネル上でのギラツキ防止、文字等のボケの低減が達成されるので好ましい。
(低屈折率層)
本発明で用いることができる低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.20〜1.49であり、更に好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。さらに、低屈折率層は下記数式(19)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(19):(m/4)λ×0.7<nLL<(m/4)λ×1.3
式中、mは正の奇数であり、nLは低屈折率層の屈折率であり、そして、dLは低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。
低屈折率層を形成する素材について以下に説明する。
低屈折率層は、低屈折率バインダーとして、含フッ素ポリマーを含むことが好ましい。
フッ素ポリマーとしては、動摩擦係数0.03〜0.20、水に対する接触角90〜120゜、純水の滑落角が70゜以下の、熱又は電離放射線により架橋する含フッ素ポリマーが好ましい。本発明に関する偏光板を画像表示装置に装着した時、市販の接着テープとの剥離力が低いほどシールやメモを貼り付けた後に剥がれ易くなり好ましく、引張試験機で測定した場合、該剥離力が500gf(4.9N)以下であることが好ましく、300gf(2.94N)以下であることがより好ましく、100gf(0.98N)以下であることが最も好ましい。また、微小硬度計で測定した表面硬度が高いほど傷がつき難く、該表面硬度は0.3GPa以上が好ましく、0.5GPa以上がより好ましい。
低屈折率層に用いられる含フッ素ポリマーとしては、ペルフルオロアルキル基含有シラン化合物{例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン}の加水分解物、脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。
含フッ素モノマーの具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類[例えば「ビスコート6FM」{大阪有機化学工業(株)製}や“M−2020”{ダイキン工業(株)製}等]、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはペルフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
架橋反応性付与のための構成単位としては、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように、分子内に予め自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー{例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等}の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶媒への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−t−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
上記のポリマーに対しては、特開平10−25388号及び特開平10−147739号各公報に記載のごとく、適宜硬化剤を併用してもよい。
(光散乱層)
光散乱層は、表面散乱及び内部散乱の少なくともいずれかによる光拡散性と、フィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに付与する目的で形成される。従って、ハードコート性を付与するためのバインダー、光拡散性を付与するためのマット粒子、及び必要に応じて高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを含んで形成される。また、このような光散乱層を設けることにより、該光散乱層が防眩層としても機能し、偏光板が防眩層を有することになる。
光散乱層の膜厚は、ハードコート性を付与する目的で、1〜10μmが好ましく、1.2〜6μmがより好ましい。光散乱層の膜厚が該下限値以上であれば、ハード性が不足するなどの問題が生じにくく、該上限値以下であれば、カールや脆性が悪化して加工適性が不足するなどの不都合が生じにくいので好ましい。
光散乱層のバインダーとしては、飽和炭化水素鎖又はポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。またバインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、且つ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。バインダーポリマーを高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むものを選択することもできる。
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート}、上記のエチレンオキシド変性体、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。これらのモノマーは2種以上併用してもよい。
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗布液を調製し、該塗布液を保護膜上に塗布後、電離放射線又は熱による重合反応により硬化して反射防止層を形成することができる。これらの光ラジカル開始剤等は公知のものを使用することができる。
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤又は熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤又は熱酸発生剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗布液を調製し、該塗布液を保護膜上に塗布後電離放射線又は熱による重合反応により硬化して反射防止層を形成することができる。
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりに、又はそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
光散乱層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きく、平均粒径が1〜10μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子が含有される。マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、架橋アクリルスチレン粒子、シリカ粒子が好ましい。マット粒子の形状は、球状あるいは不定形のいずれも使用できる。
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては、単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほどよい。例えば、平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
上記マット粒子は、形成された光散乱層のマット粒子量が好ましくは10〜1000mg/m2、より好ましくは100〜700mg/m2となるように光散乱層に含有される。
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
光散乱層には、層の屈折率を高めるために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
また逆に、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた光散乱層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
光散乱層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITOとSiO2等が挙げられる。TiO2及びZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーの添加量は、光散乱層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜75%である。
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
光散乱層のバインダー及び無機フィラーの混合物のバルクの屈折率は、1.50〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.51〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
光散乱層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、又はその両者を光散乱層形成用の塗布組成物中に含有する。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、本発明において好ましく用いられる反射防止層の塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることが目的である。
[ARフィルム]
次に保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層された反射防止層(ARフィルム)について述べる。
保護膜上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成からなる反射防止層は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>保護膜の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、保護膜と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、中屈折率ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層からなってもよく、例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等に記載の反射防止層が挙げられる。
さらに各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例えば、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止層のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。また、膜の表面強度は、JIS K−5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
(高屈折率層及び中屈折率層)
反射防止層の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物微粒子及びマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化膜からなる。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908号公報、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(特開2001−166104号公報等)、特定の分散剤併用(例えば、特開平11−153703号公報、米国特許第6210858号明細書、特開2002−277609号公報等)等挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
更に好ましい材料としては、ラジカル重合性及びカチオン重合性の少なくともいずれかの重合性基を2個以上有する多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有する有機金属化合物を含有する組成物、及びその部分縮合体を含有する組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が挙げられ、例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、1.70〜2.20であることが好ましい。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。また、厚さは5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
(低屈折率層)
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層してなる。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55であることが好ましい。より好ましくは1.30〜1.50である。
低屈折率層は、耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等からなる薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物は、フッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性又は重合性の官能基を含む化合物が好ましく、例えば、特開平9−222503号公報段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。
シリコーン化合物としては、ポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン[例えば、「サイラプレーン」{チッソ(株)製等}]、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋又は重合性基を有する、含フッ素ポリマー及びシロキサンポリマーの少なくともいずれかの架橋又は重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時に、又は塗布後に光照射や加熱することにより低屈折率層を形成することが好ましい。
またシランカップリング剤等の有機金属化合物と、特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを、触媒共存下に縮合反応で硬化するゾル/ゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物又はその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ(ペルフルオロアルキルエーテル)基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層は、上記以外の添加剤として、充填剤{例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820号公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等}、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されてもよい。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
(ハードコート層)
ハードコート層は、反射防止層を設けた保護膜に物理強度を付与するために、保護膜の表面に設ける。特に、保護膜と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。ハードコート層は、光及び/又は熱の硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性化合物における硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましい。また加水分解性官能基含有の有機金属化合物や有機アルコキシシリル化合物も好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒径0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は、用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の表面強度は、JIS K−5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。またJIS K−5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
(反射防止層の他の層)
さらに、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
(帯電防止層)
帯電防止層を設ける場合には、体積抵抗率が10-8(Ωcm-3)以下の導電性を付与することが好ましい。吸湿性物質や水溶性無機塩、ある種の界面活性剤、カチオンポリマー、アニオンポリマー、コロイダルシリカ等の使用により10-8(Ωcm-3)の体積抵抗率の付与は可能であるが、温湿度依存性が大きく、低湿では十分な導電性を確保できない問題がある。そのため、導電性層素材としては金属酸化物が好ましい。金属酸化物には着色しているものがあるが、これらの金属酸化物を導電性層素材として用いるとフィルム全体が着色してしまい好ましくない。着色のない金属酸化物を形成する金属として、Zn、Ti、Sn、Al、In、Si、Mg、Ba、Mo、W又はVをあげることができ、これらを主成分とした金属酸化物を用いることが好ましい。
上記金属酸化物の具体的な例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO3、WO3、V25等、又はこれらの複合酸化物がよく、特にZnO、TiO2及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加物、SnO2に対してはSb、Nb、ハロゲン元素等の添加、またTiO2に対してはNb、Ta等の添加が効果的である。
更にまた、特公昭59−6235号公報に記載の如く、他の結晶性金属粒子又は繊維状物(例えば酸化チタン)に上記の金属酸化物を付着させた素材を使用してもよい。なお体積抵抗値と表面抵抗値は別の物性値であり、単純に比較することはできないが、体積抵抗値で10-8(Ωcm-3)以下の導電性を確保するためには、該帯電防止層が概ね10-10(Ω/□)以下の表面抵抗値を有していればよく、更に好ましくは10-8(Ω/□)である。帯電防止層の表面抵抗値は帯電防止層を最表層としたときの値として測定されることが必要であり、積層フィルムを形成する途中の段階で測定することができる。
[液晶表示装置]
上記のセルロースアシレートフィルム、またはセルロースアシレートフィルムと偏光膜とを貼り合わせて得られた偏光板は、液晶表示装置、特に透過型液晶表示装置に有利に用いられる。
透過型液晶表示装置は、液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなる。偏光板は、偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる。液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
本発明の偏光板は、液晶セルの一方に一枚配置するか、あるいは液晶セルの両面に二枚配置する。
液晶セルは、VAモード、OCBモード、IPSモード、またはTNモードであることが好ましい。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
VAモードの液晶表示装置の場合、本発明の偏光板を1枚のみ使用する場合は、バックライト側に用いるのが好ましい。
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。
そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、さらに60乃至120゜にねじれ配向している。
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されない。
セルロースアシレートフィルムの製膜
(1)セルロースアシレート
原料のセルロースに、触媒として硫酸を添加し、さらにアシル置換基の原料となる無水カルボン酸を添加してアシル化反応を行い、その後、中和、ケン化熟成することによって調製した。この時、触媒量、無水カルボン酸の種類、量、中和剤の添加量、水添加量、反応温度、熟成温度を調整することで、アシル基の種類、置換度、嵩比重、重合度の異なるセルロースアシレートを調製した。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
上記のようにして調製したセルロースアシレートのうち、アセチル基置換度2.79、 DS6/(DS2+DS3+DS6)=0.322のセルロースアシレートを用い、以下のドープ調製を行った。
(2)ドープ調製
<1−1> セルロースアシレート溶液
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
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セルロースアシレート溶液
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セルロースアシレート 100.0質量部
トリフェニルフォスフェイト 8.0質量部
ビフェニルジフェニルフォスフェイト 4.0質量部
メチレンクロライド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
<1−2> マット剤分散液
次に上記方法で作製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液
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平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製 2.0質量部
メチレンクロライド 72.4質量部
メタノール 10.8質量部
セルロースアシレート溶液 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
<1−3> レターデーション発現剤溶液
次に上記方法で作製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して溶解し、レターデーション発現剤溶液Aを調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
レターデーション発現剤溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
レターデーション発現剤A (下記化合物) 20.0質量部
メチレンクロライド 58.3質量部
メタノール 8.7質量部
セルロースアシレート溶液 12.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
上記セルロースアシレート溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量部、更にセルロースアシレートフィルム中のレターデーション発現剤Aが5.1質量部となる量のレターデーション発現剤溶液を混合し、製膜用ドープを調製した。
(Rth発現剤)
Figure 2007264287
(流延)
上述のドープをガラス板流延装置を用いて流延した。給気温度70℃の温風で6分間乾燥し、ガラス板から剥ぎ取ったフィルムを枠に固定し、給気温度100℃の温風で10分間、給気温度140℃の温風で20分間乾燥し、膜厚108μmのセルロースアシレートフィルムを製造した。セルロースアシレートフィルムのガラス転移点温度は、140℃であった。
このフィルムを、2軸延伸試験装置((株)東洋精機製作所製)にて4辺を把持し、表1の条件で延伸および収縮工程を行った。共通条件として、延伸前に各例での指定給気温度で3分間の予備加熱を行い、非接触赤外線温度計で測定したフィルム表面の温度が、吸気温度±1℃以内であることを確認した。延伸後にクリップで把持したまま5分間、送風冷却を行った。表中のMDとはガラス板流延時の流延方向を指し、TDとはそれと直行する幅方向を指す。
<フィルムの音速>
得られたフィルムの音速を前記音波計SST−110により測定した。結果を表1に示す。本発明のフィルムは、音速比C(TD)/C(MD)が1.2以上であることがわかる。
<フィルムの波長450、550、650nmにおけるRe、Rth>
このフィルムの波長450、550、650nmにおけるRe、Rthを、先に述べた方法に従い、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)にて測定した。
結果を表1に示す。表1から本発明の製造方法で製造したセルロースアシレートフィルムの波長450、550、650nmにおけるRe、Rthの値は前記式(I)〜(II)の関係をいずれも満たしていることが分かる。
<フィルム面状>
得られたフィルムの面状を下記の方法と評価尺度で評価した。結果を表1に示す。本発明のフィルムは優れた面状であることがわかった。また、比較例4の収縮速度を速くして作製したフィルムは、フィルム全面にシワが生じ、偏光板保護フィルムとして好ましくない面状であった。
(フィルム面状評価)
20cm×20cmのフィルムをクロスニコル配置した2枚の偏光板の間にはさみ、点灯したライトボックスの上にのせ、暗室で評価した。
○ :ムラ、シワがなく、優れた面状である。
△ :ムラ、またはシワが認められるが、面積、強度ともわずかであり許容できるレベルである。
× :ムラ、またはシワが認められ、面積または、強度が大きく許容できないレベルである。
<偏光板の作製>
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。
実施例1〜2、比較例1〜3、および参考例で作製したセルロースアシレートフィルムをポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片側に貼り付けた。なお、ケン化処理は以下の条件で行った。
1.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.01モル/リットルの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。作製したセルロースアシレートフィルムを上記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、上記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。 最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
市販のセルローストリアシレートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付け、70℃で10分以上乾燥した。
偏光膜の透過軸と上記のように作製したセルロースアシレートフィルムの遅相軸とが平行になるように配置した。偏光膜の透過軸と市販のセルローストリアシレートフィルムの遅相軸とは直交するように配置した。
<液晶セルの作製>
液晶セルは、基板間のセルギャップを3.6μmとし、負の誘電率異方性を有する液晶材料(「MLC6608」、メルク社製)を基板間に滴下注入して封入し、基板間に液晶層を形成して作製した。液晶層のレターデーション(即ち、液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・d)を300nmとした。なお、液晶材料は垂直配向するように配向させた。
<VAパネルへの実装>
上記の垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置の上側偏光板(観察者側)には、市販品のスーパーハイコントラスト品(株式会社サンリッツ社製HLC2−5618)を用いた。下側偏光板(バックライト側)には実施例1〜2、比較例1〜4、参考例で作製したセルロースアシレートフィルムを備えた偏光板を、該セルロースアシレートフィルムが液晶セル側となるように設置した。上側偏光板および下側偏光板は粘着剤を介して液晶セルに貼りつけた。上側偏光板の透過軸が上下方向に、そして下側偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。
液晶セルに55Hzの矩形波電圧を印加した。白表示5V、黒表示0Vのノーマリーブラックモードとした。黒表示の方位角45度、極角60度方向視野角における黒表示透過率(%)及び、方位角45度極角60度と方位角180度極角60度との色ずれΔxを求めた。結果を表1に示す。また、透過率の比(白表示/黒表示)をコントラスト比として、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角(コントラスト比が10以上で黒側の階調反転のない極角範囲)を測定した。結果を表1に示す。作製した液晶表示装置を観察した結果、実施例1〜3、比較例3においては正面方向および視野角方向のいずれにおいても、ニュートラルな黒表示が実現できていた。
また、周辺ムラの評価を行ったところ、実施例1〜3においては、比較例よりも周辺ムラが抑制されていた。
参考例は周辺ムラにおいて、本発明よりやや劣るものであった。
視野角(コントラスト比が10以上で黒側の階調反転のない極角範囲)
○ 上下左右で極角80°以上
○△ 上下左右の内、3方向で極角80°以上
△ 上下左右の内、2方向で極角80°以上
× 上下左右の内、0〜1方向で極角80°以上
色ずれ(Δx)
○ 0.02未満
○△ 0.02〜0.04
△ 0.04〜0.06
× 0.06以上
周辺ムラ(高温条件と高温加湿条件で評価)
(高温条件)
強制条件として、偏光板を全面に貼合した20インチの大きさの液晶パネルを、高温条件(温度80度、湿度10%以下)に48時間保管後、10分以内にバックライト上に載せ、バックライトを点灯させた。
そのときに、周辺部分に見える光漏れの程度で評価を行った。
(高温加湿条件)
強制条件として、偏光板を全面に貼合した20インチの大きさの液晶パネルを、高温加湿条件(温度60度、湿度90%)に48時間保管後、25度60%の環境に24時間保管し、その後バックライト上に載せ、バックライトを点灯させた。
そのときに、周辺部分に見える光漏れの程度で評価を行った。
光漏れ度合いの評価は、高温条件、高温加湿条件ともに、下記である。
(周辺ムラの光漏れ評価)
○ 光漏れがほとんど観察できない
△ 光漏れは観察されるが、輝度・面積とも小さく許容できる
× 光漏れが観察され、輝度・面積が大きく許容できない
Figure 2007264287
表1において、実とは実施例を、比とは比較例を意味する。参とは参考例を意味する。参考例は、表記の収縮速度で幅を成行きにしたものである。Re、Rthは、それぞれRe(550)、Rth(550)を意味する。式(I)*1の値とは、{ (Re(450)/Rth(450))/(Re(550)/Rth(550))}の値であり、式(I)*2の値とは、{(Re(650)/Rth(650))/(Re(550)/Rth(550))}の値である。また、表中の「@550nm」とは「550nmにおける測定」を意味する簡易表現である。
次に、用いるセルロースアシレートの、グルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度DS2、3位の水酸基のアシル基による置換度DS3、6位の水酸基のアシル基による置換度DS6の関係を、表2の通りに調整した点以外は、すべて実施例2と同一の方法でセルロースアシレートフィルムを製造し、偏光板に加工し、VAパネルに実装して評価した。評価結果を表2に示す。実施例4においては正面方向および視野角方向のいずれにおいても、ニュートラルな黒表示が実現できていた。実施例5〜7においても色ずれは小さくニュートラルな黒表示が実現できていたが、湿度依存性と視野角の少なくとも何れかが実施例4に比べると劣っている。この結果は、セルロースアシレートフィルムのグルコース単位の水酸基のアシル基による置換度、(DS2+DS3+DS6)とDS6/(DS2+DS3+DS6)がこれらの性能を改善するのに重要であることを示している。
Figure 2007264287
表2において、実とは実施例を意味する。Re、Rthは、それぞれRe(550)、Rth(550)を意味する。式(I)*1の値とは、{ (Re(450)/Rth(450))/(Re(550)/Rth(550))}の値であり、式(I)*2の値とは、{(Re(650)/Rth(650))/(Re(550)/Rth(550))}の値である。表中の「@550nm」とは「550nmにおける測定」を意味する簡易表現である。
[実施例8]
<OCBパネルへの実装評価>
(アルカリ処理)
実施例1で作製したセルロースアシレートフィルムに、1.0Nの水酸化カリウム溶液(溶媒:水/イソプロピルアルコール/プロピレングリコール=69.2質量部/15質量部/15.8質量部)を10cc/m2塗布し、約40℃の状態で30秒間保持した後、アルカリ液を掻き取り、純水で水洗し、エアーナイフで水滴を削除した。その後、100℃で15秒間乾燥した。
アルカリ処理面の純水に対する接触角を測定したところ、42°であった。
(配向膜の形成)
該アルカリ処理面に、下記の組成の配向膜塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥し、
配向膜を形成した。
────────────────────────────────────
配向膜塗布液組成
────────────────────────────────────
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
クエン酸エステル(AS3、三協化学(株)製) 0.35質量部
────────────────────────────────────
Figure 2007264287
(ラビング処理)
配向膜を形成した透明支持体を速度20m/分で搬送し、長手方向に対して45°にラビング処理されるようにラビングロール(300mm直径)を設定し、650rpmで回転させて、透明支持体の配向膜設置表面にラビング処理を施した。ラビングロールと透明支持体の接触長は、18mmとなるように設定した。
(別の光学異方性層の形成)
102kgのメチルエチルケトンに、実施例1で使用の円盤状液晶性化合物41.01kg、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)4.06kg、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.35kg、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.35kg、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.45kgを溶解した。溶液に、フルオロ脂肪族基含有共重合体(メガファックF780 大日本インキ(株)製)0.1kggを加え、塗布液を調製した。塗布液を、#3.2のワイヤーバーを毎分391回転でフィルムの搬送方向と同じ方向に回転させて、20m/分で搬送されている透明支持体の配向膜面に連続的に塗布した。
室温から100℃に連続的に加温し、溶媒を乾燥させ、その後、130℃の乾燥ゾーンで円盤状光学異方性層の膜面風速が、2.5m/secとなるように、約90秒間加熱し、円盤状液晶性化合物を配向させた。次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、フィルムの表面温度が約100℃の状態で、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、放射照度600mWの紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させて、円盤状液晶性化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロール状の形態にした。このようにして、ロール状光学補償フィルム(KH−3)を作製した。
127℃の膜面温度で光学異方性層の粘度を測定したところ、695cp(695mPas)であった。粘度は、光学異方性層と同じ組成の液晶層(溶媒は除く)を加熱型のE型粘度計で測定した結果である。
作製したロール状光学補償フィルムKH−3の一部を切り取り、サンプルとして用いて、光学特性を測定した。波長546nmで測定した光学異方性層のReレターデーション値は38nmであった。また、光学異方性層中の円盤状液晶性化合物の円盤面と支持体面との角度(傾斜角)は、層の深さ方向で連続的に変化し、平均で28゜であった。さらに、サンプルから光学異方性層のみを剥離し、光学異方性層の分子対称軸の平均方向を測定したところ、光学補償フィルムの長手方向に対して、45°となっていた。
(偏光板の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、上記で作製したフィルム(KH−3)を偏光膜の片側に貼り付けた。偏光膜の透過軸と位相差板(KH−3)の遅相軸とは平行になるように配置した。
市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。このようにして偏光板を作製した。
(ベンド配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを4.7μmに設定した。セルギャップにΔnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。
作製したベンド配向セルを挟むように、前述の方法で作製した偏光板を二枚貼り付けた。偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する「別の」光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
液晶セルに55Hzの矩形波電圧を印加した。白表示2V、黒表示5Vのノーマリーホワイトモードとした。正面における透過率が最も小さくなる電圧すなわち黒電圧を印加し、作製した液晶表示装置を観察した結果、正面方向および視野角方向のいずれにおいても、ニュートラルな黒表示が実現できていた。また、周辺ムラも抑制されており、優れたものであった。
[実施例9〜10および比較例5〜8]
調製したセルロースアシレートのうち、アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.60、粘度平均重合度350のセルロースアシレートを用い、セルロースアシレート100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェート3質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置し、ドープ中の泡を除いた。
また、これとは別に、上記セルロースアシレート5質量部、TINUVIN 109(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)5質量部、TINUVIN 326(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)15質量部、AEROSIL R972V(日本アエロジル(株)製)0.5質量部を塩化メチレン94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。R972Vは、予め、上記エタノールに分散して添加した。
上記ドープ100質量部に対して前記紫外線吸収剤溶液を6質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した。
(流延)
こうして調製したドープを、実施例1に(流延)の項に前記した方法で流延し、膜厚108μmのセルロースアシレートフィルムを製造した。セルロースアシレートフィルムのガラス転移点温度は、140℃であった。このフィルムを、(流延)の項に前記したように2軸延伸試験装置にて4辺を把持し、表3の条件で延伸および収縮工程を行った。
こうして延伸・収縮工程を行ったフィルムを用い、実施例1に前述した<音速>、<フィルムの波長450、550、650nmにおけるRe、Rth>、<フィルム面状>、<偏光板の作製>と同じ方法で測定、および偏光板の作製を行った。さらに実施例1で前述した<液晶セルの作製>、<VAパネルへの実装>と同じ手順で実装評価を行った。この結果を表3に示す。
Figure 2007264287
[実施例11〜13]
次に、アセチル基(略号Ac)、プロピオニル基(略号Pr)、ブチリル基(略号Bt)、ベンゾイル基(略号Bz)の置換度を表4の値に変更した以外は実施例9と同様にしてセルロースアシレートフィルムを作製した。測定、実装評価の方法も実施例9と同じである。
Figure 2007264287
上記のようにプロピオニル基またはブチリル基またはベンゾイル基による置換度Bが0以上である本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、全ての置換基がアセチル基であるセルロースアシレートフィルムを用いた、実施1〜7と同等の視野角、色ずれ性能を、レターデーション発現剤を添加することなく実現できていることがわかる。また、周辺ムラも抑制できる。
本発明によれば、液晶セルが正確に光学的に補償し、高いコントラストと黒表示時の視角方向に依存した色ずれを改良する、特にVA、IPSおよびOCBモード用のセルロースアシレートフィルム、その製造方法、該セルロースアシレートフィルムを用いた偏光板が提供される。また本発明によれば、コントラストが改善され、黒表示時の視角方向に依存した色ずれが改良され、さらに、激しい気温・湿度変化を受けても周辺ムラが発生しにくい、特に特にVA、IPSおよびOCBモードの液晶表示装置が提供される。

Claims (13)

  1. フィルム長手方向の音速と、これと略直交方向の音速のうち、大きい方を小さい方で除した値が、1.2以上であることを特徴とする光学フィルム。
  2. 前述のフィルム長手の音速とこれと略直交方向の音速のうち、大きい方を小さい方で除した値が1.1以上であり、かつ、波長450nm、550nm、650nmにおける正面レターデーションReと、膜厚方向のレターデーションRthが下記式(I)〜(III)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
    式(I):0.4<{ (Re(450)/Rth(450))/(Re(550)/Rth(550))}<0.95
    かつ1.05<{(Re(650)/Rth(650))/(Re(550)/Rth(550))}<1.9
    式(II):0.1<(Re(450)/Re(550))<0.95
    式(III):1.03<(Re(650)/Re(550))<1.93
    [式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーションRe(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーションRth(単位:nm)である。]
  3. フィルムを延伸する延伸工程と収縮させる収縮工程とを含み、収縮速度が10乃至100%/分であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  4. 請求項3に記載の製造方法により作製したことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルム。
  5. 波長550nmにおける正面レターデーションReが20〜100nmの範囲であり、かつ波長550nmにおける膜厚方向のレターデーションRthが100〜300nmの範囲であることを特徴とする請求項1、2又は4のいずれかに記載の光学フィルム。
  6. セルロースアシレートを用いたことを特徴とする請求項1、2、4又は5のいずれかに記載の光学フィルム。
  7. セルロースアシレートフィルムのグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度をDS2、3位の水酸基のアシル基による置換度をDS3、6位の水酸基のアシル基による置換度をDS6としたときに、下記式(IV)および(V)を満たすことを特徴とする請求項6に記載の光学フィルム。
    式(IV):2.0≦(DS2+DS3+DS6)≦3.0
    式(V):DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.315
  8. 下記式(VI)および(VII)を満たすセルロースアシレートから実質的になることを特徴とする、請求項6又は7に記載の光学フィルム。
    (VI): 2.0 ≦ A+B ≦ 3.0
    (VII): 0 < B
    (式(VI)および(VII)において、Aは前記セルロースアシレートのグルコース単位の水酸基のアセチル基による置換度であり、Bは、前記セルロースアシレートのグルコース単位の水酸基のプロピオニル基、ブチリル基またはベンゾイル基による置換度である。)
  9. レターデーション発現剤を含有することを特徴とする請求項1、2、または4〜8のいずれか1項に記載の光学フィルム。
  10. 偏光膜と、該偏光膜を挟持する一対の保護膜とを有する偏光板であって、前記保護膜の少なくとも一枚が請求項1、2または4〜9のいずれか1項に記載の光学フィルムであることを特徴とする偏光板。
  11. 請求項1〜2、または4〜9のいずれか1項に記載の光学フィルムまたは請求項10に記載の偏光板を有することを特徴とする液晶表示装置。
  12. 請求項10に記載の偏光板を用いたことを特徴とするIPS、OCB、またはVAモードの液晶表示装置。
  13. 請求項10に記載の偏光板をバックライト側に用いたことを特徴とするVAモードの液晶表示装置。
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