1.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、それを挟持する一対の偏光板と、バックライトと、を有する。
図1は、本発明に係る液晶表示装置の一実施形態の基本構成を示す模式図である。図1に示されるように、液晶表示装置10は、液晶セル20と、それを挟持する第一の偏光板40および第二の偏光板60と、バックライト80とを有する。
液晶セル20について
液晶セル20の表示方式の例には、TN(Twisted Nematic)方式、STN(Super Twisted Nematic)方式、HAN(Hybrid Alignment Nematic)方式、IPS(In Plane Switching)方式、VA(Vertical Alignment)方式、MVA(Multiple Vertical Alignment)方式、OCB(Optical Compensated Bend)方式などが含まれる。なかでも、コントラストが高いことなどから、好ましくはVA方式やMVA方式(垂直配向型液晶セル)などである。
液晶セル20は、アレイ基板100と、それと対向する対向基板200と、アレイ基板100と対向基板200との間に挟持された液晶層300とを有する。
アレイ基板100は、絶縁基板110と、その上に配置された薄膜トランジスタ(不図示)と、カラーフィルタ230と、画素電極(不図示)とを有する。対向基板200は、絶縁基板210を有する。対向電極は、絶縁基板210に設けられてもよいし、絶縁基板110に設けられてもよい。COA構造を有する液晶セルの具体例には、特開平10−206888号に記載のものが含まれる。
液晶層300は、特に制限されないが、好ましくはVA方式(垂直配向型)の液晶層であり、液晶分子31を含む。液晶層に含まれる液晶分子は、負または正の誘電率異方性を有する液晶分子である。
液晶セルの開口率を高めるためには、画素電極と対向電極がいずれも絶縁基板110上に配置され、かつ液晶分子が、正の誘電率異方性を有する液晶分子であることが好ましい。
負の誘電率異方性を有する液晶分子の例には、負の誘電率異方性を有するネマチック液晶分子が含まれる。負の誘電率異方性を有するネマチック液晶分子の例には、特開2004−204133号、特開2004−250668号、特開2005−047980号などに記載のものが含まれる。具体的には、負の誘電異方性を有し、Δn=0.0815、Δε=−4.5程度のネマチック液晶材料などが好ましく用いられる。
正の誘電率異方性を有する液晶分子の例には、正の誘電率異方性を有するネマチック液晶分子が含まれる。正の誘電率異方性を有するネマチック液晶分子の例には、TN型、IPS型液晶表示装置に使用される液晶材料を用いることができる。具体的には、正の誘電率異方性を有し、Δn=0.0815、Δε=4.5程度のネマチック液晶材料などが好ましく用いられる。
液晶層300は、液晶分子の配向不良を低減するために、必要に応じてTN方式の液晶セルに含まれるようなカイラル材を含んでいてもよい。
液晶層300の厚さは、特に制限されないが、前述の負または正の誘電率異方性を有するネマチック液晶材料を用いる場合、例えば3.5μm程度としうる。
液晶セル20は、マルチドメイン構造を有していてもよい。マルチドメイン構造とは、液晶セルの一画素を複数の領域に分割した構造をいう。マルチドメイン構造を有する液晶セルでは、各ドメイン間の境界領域の液晶分子の配向を調整できる。例えば、VA方式の液晶セルでは、白表示時には液晶分子が傾斜している。そのため、マルチドメイン構造を有しないVA方式の液晶セルでは、傾斜方向とその逆方向とでは、液晶分子の複屈折の大きさが異なるため、輝度や色調に差が生じやすい。これに対して、マルチドメイン構造を有するVA方式の液晶セルでは、輝度や色調の視野角特性が改善されるので好ましい。
具体的には、マルチドメイン構造を有する液晶セルは、各画素ごとに、液晶分子の初期配向状態が互いに異なる2以上の領域を有しうる。それにより、マルチドメイン構造を有する液晶セルは、液晶セルの全体として複屈折の偏りが少ないため、視野角に依存した輝度や色調の偏りが低減されうる。また、マルチドメイン構造を有する液晶セルは、各画素ごとに、電圧印加状態において、連続的に変化する液晶分子の配向方向が互いに異なる2以上の領域を有することによっても、同様の効果が得られる。全方向で均等な視野角を得るためには、各画素ごとの領域の分割数を多くすればよく、4分割以上あるいは8分割以上とすれば、全方向でほぼ均等な視野角が得られる。特に8分割された場合には、偏光板の吸収軸を任意の角度に設定できるので、好ましい。
液晶セル20は、表示装置の開口率を高める観点などから、FFS(Fringe Field Switching)駆動方式であることが好ましい。FFS駆動方式の液晶セルは、面状に設けられた共通電極と、当該共通電極とオーバーラップするように設けられたストライプ状の画素電極とを有する。そして、画素電極と対向電極との間に生じる電界だけでなく、画素電極と共通電極との間に生じる電界によっても液晶分子を駆動させる。FFS駆動方式のVA型液晶セルの具体例には、特開2009−301010号の段落0094〜0107に記載のものが含まれる。
図2および図3は、COA構造を有する液晶セルの好ましい構成の一例を示す模式図である。図2は、COA構造を有する液晶セルの積層断面図である。図3は、COA構造を有する液晶セルのアレイ基板100(図2参照)の上面図である。図2に示される積層断面図は、図3のXVI−XVI線断面図である。
図2に示されるように、液晶セル20は、アレイ基板100と、それと対向する対向基板200と、これらによって挟持された液晶層300とを有する。
図2および図3に示されるように、アレイ基板100は、絶縁基板110を基板として、共通電極270と、画素電極191a(画素電極)および画素電極191b(対向電極)と、が配置されている。画素電極191aと画素電極191bは、絶縁基板110上にストライプ状に、かつ交互に配置されている。共通電極270は、絶縁基板110上に面状に配置されている。そして、画素電極191aおよび画素電極191bと、共通電極270とがオーバーラップしている(図3参照)。
絶縁基板110は、透明基板であり、透明なガラスまたは樹脂で構成される。
図2に示されるように、アレイ基板100は、絶縁基板110と、薄膜トランジスタと、画素電極191aおよび画素電極191bとを有する。画素電極191aは、薄膜トランジスタのドレイン電極175aに接続している。同様に、画素電極191bは、薄膜トランジスタのドレイン電極175bに接続している(ただし、図2には示さず)。図3に示されるように、各画素電極に接続する薄膜トランジスタは、各画素の隅に配置される。
図2に示されるように、薄膜トランジスタは、ゲート電極124aと、ゲート絶縁膜140と、島状半導体154aと、第1および第2の島状オーミックコンタクト部材(163aおよび165a)と、ソース電極173aと、ドレイン電極175aとを有する。ソース電極(173a、173b)は、それぞれデータ信号を伝達するデータ線(171a、171b)と連結されている(図3参照)。
薄膜トランジスタは、下部保護膜180pで覆われており、下部保護膜180pの上には遮光部材220またはカラーフィルタ230が配置されている。遮光部材220またはカラーフィルタ230は、上部保護膜180qでさらに覆われており、上部保護膜180qの一部上に画素電極191aが配置されている。画素電極191aは、下部保護膜180pと上部保護膜180qに設けられたコンタクトホール185aを介してドレイン電極175aに接続している。さらに、上部保護膜180qと画素電極191aは、配向膜11で覆われている。符号225aは貫通孔であり、符号227は遮光部材220の開口部である。
対向基板200は、絶縁基板210と、配向膜21と、がこの順に積層されている。絶縁基板210は、前述の絶縁基板110と同様に、透明なガラスまたは樹脂で構成される。
液晶層300に含まれる液晶分子31は、好ましくは正の誘電異方性を有するネマチック液晶材料(p型ネマチック液晶材料)である。
このように構成された液晶セル20では、共通電極270に共通電圧を印加し、画素電極(191a、191b)に、互いに極性が異なるデータ電圧を印加すると、アレイ基板100または対向基板200の表面に対してほぼ水平の電場が生成される。これにより、電圧無印加時にアレイ基板100または対向基板200の表面に対して垂直配向していた液晶分子31は、電場に応答して、その長軸がアレイ基板100または対向基板200の表面に対して水平な方向に配向する。それにより液晶表示装置の表示画面に画像を表示することができる。
さらに、画素電極191aと画素電極191bとの間に生成される電場に加えて、画素電極191aと共通電極270との間または画素電極191bと共通電極270との間に生成される電場によっても、液晶分子31を配向させることができる(FFS駆動させることができる)。そのため、視野角を広くすることができ、透過率も高めることができる。
このように構成された液晶セル20は、ゲート線やデータ線などの配線が低減されるため、高い開口率を有する。液晶表示装置の開口率は、57%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。
第一の偏光板40は、液晶セル20の視認側の面に配置され(図1参照)、第一の偏光子42と、それを挟持する保護フィルム44(F1)および46(F2)とを有する。一方、第二の偏光板60は、液晶セル20のバックライト側に配置され、第二の偏光子62と、それを挟持する保護フィルム64(F3)および66(F4)とを有する。保護フィルム46(F2)は、必要に応じて省略されてもよい。
液晶セル20がVA方式である場合、保護フィルム46(F2)の面内遅相軸と、第一の偏光子42の吸収軸とが直交するように配置されている。同様に、保護フィルム64(F3)の面内遅相軸と、第二の偏光子62の吸収軸とが直交するように配置されている。
前述した通り、開口率が高い液晶表示装置は、透過光量が多いことから、従来は認識されなかった表示ムラなどが目立ちやすい。図4は、表示画面を黒表示させたときの表示ムラの様子の一例を示す模式図である。図4に示されるように、例えば、黒表示させたときの表示ムラは、表示画面の四隅に生じる白い部分(光漏れ)として確認されうる。このような、COA構造を有する液晶表示装置における表示ムラは、1)保護フィルムと偏光子との接着ムラと、2)COA構造などの非対称性の高い液晶セル構造と、に主に起因することが見出された。
1)の偏光子と貼り合わされる保護フィルムの表面は、偏光子との接着性を高めるために、通常、けん化処理、コロナ処理またはプラズマ処理等の表面処理が施される。しかしながら、保護フィルムを表面処理すると異物が発生し、その異物が接着剤を弾き、偏光子との接着不良を生じやすい。また、表面処理そのものにもムラが生じやすく、それにより保護フィルムの位相差ムラ、軸配向ムラも生じやすい。
2)のCOA構造を有する液晶セルでは、薄膜トランジスタとカラーフィルタとが一対の基板の一方に偏って配置されている。このように、COA構造を有する液晶セルは、非対称性の高い構造を有するため、偏光板の寸法変化しようとする力によって反りやすい。液晶セルの反りは、中央部がバックライト側に凸となるように生じる;具体的には、アレイ基板側が外周側となり、対向基板側が内周側となるように生じやすい。
そこで本発明では、表示ムラを低減するために、少なくとも保護フィルムF3を、表面処理を不要にする構成を有する保護フィルム;即ち、「透明ポリマー基材層と、ポリエーテルユニット、ポリエステルユニットまたはポリアクリルユニットを含む熱可塑性樹脂を含む樹脂層(特定の樹脂層)とを有する保護フィルム」(特定の樹脂層を有する保護フィルム)とする。さらに、偏光子の接着性をより高め、かつ液晶セルの反りを低減するために、少なくとも保護フィルムF3の特定の樹脂層と偏光子との間に、「光硬化性樹脂の硬化物を含む接着層」を配置する。
即ち、少なくとも保護フィルムF3;好ましくは保護フィルムF3とF2の両方;より好ましくは保護フィルムF2、F3およびF4の全てを「特定の樹脂層を有する保護フィルム」とし;かつ当該保護フィルムの特定の樹脂層と偏光子との間に「光硬化性樹脂の硬化物を含む接着層」を配置する。
以下、少なくとも保護フィルムF3に用いられる「特定の樹脂層を有する保護フィルム」について説明する。特定の樹脂層を有する保護フィルムは、透明ポリマー基材層と、特定の樹脂層とを有する。
透明ポリマー基材層について
透明ポリマー基材層は、熱可塑性樹脂を含む。透明ポリマー基材層に含まれる熱可塑性樹脂の例には、セルロースエステル、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、(メタ)アクリル樹脂(PMMA)などが含まれる。
機械的強度や破断強度を高める観点からは、ポリアミド(PA)、ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE、変性PPE、PPO)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、環状ポリオレフィン(COP)などの熱可塑性樹脂を用いることもできる。
耐熱性や耐久性を高める観点からは、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)などの熱可塑性樹脂を用いることもできる。
なかでも、セルロースエステル、環状ポリオレフィンまたは(メタ)アクリル樹脂が好ましく、透湿度が低いことから、環状ポリオレフィンまたは(メタ)アクリル樹脂がより好ましい。
セルロースエステル
セルロースエステルは、セルロースの水酸基を、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸でエステル化して得られる化合物である。
セルロースエステルに含まれるアシル基は、脂肪族アシル基または芳香族アシル基であり、好ましくは脂肪族アシル基である。脂肪族アシル基の例には、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブタノイル基、tert−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、シンナモイル基などが含まれ、好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert−ブタノイル基、オレオイル基、シンナモイル基である。芳香族アシル基の例には、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基などが含まれる。なかでも、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基などの炭素原子数2〜4の脂肪族アシル基が好ましく、アセチル基が特に好ましい。
セルロースエステルのアシル基置換度は、2.00〜2.75であることが好ましく、2.25〜2.50であることがさらに好ましい。セルロースエステルを含むフィルムが、適度な位相差を有し、かつ良好な透明性と波長分散性を有しうるからである。アシル基置換度は、セルロースをエステル化させる際の反応条件(時間、温度、試料濃度等)によって調整できる。
アシル基置換度とは、セルロースエステルを構成するセルロースの繰り返し単位であるグルコースの、2位、3位および6位のヒドロキシル基(水酸基)がエステル化されている割合の合計をいう。例えば、セルロースの2位、3位および6位のヒドロキシル基のすべてが、それぞれ100%エステル化された場合、アシル基置換度は最大の3となる。アシル基置換度の測定方法は、ASTM−D817−96に準じて測定することができる。
セルロースエステルは、セルロース(ジ、トリ)アセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、およびセルロースフタレートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なかでも、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどが好ましい。
セルロースエステルは、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとしたとき、下記式(I)および(II)を同時に満たすことが好ましい。
式(I) 1.5≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.5
セルロースエステルの分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1.5〜5.5であることが好ましく、2.0〜5.0であることがより好ましく、2.5〜5.0であることがさらに好ましく、3.0〜5.0であることが特に好ましい。
セルロースエステルを、20mlの純水(電気伝導度0.1μS/cm以下、pH6.8)に1g投入し、25℃、1hr、窒素雰囲気下にて攪拌して得られる溶液のpHが6〜7であり、電気伝導度が1〜100μS/cmであることが好ましい。
セルロースエステルは、公知の方法で合成することができる。具体的には、セルロースと、少なくとも酢酸またはその無水物を含む炭素数3以上の有機酸またはその無水物と、を触媒(硫酸など)の存在下でエステル化反応させてセルロースのトリエステル体を合成する。セルロースのトリエステル体では、そのグルコース単位に含まれる3つのヒドロキシル基(水酸基)の水素原子が、有機酸から誘導されるアシル基で置換されている。次いで、セルロースのトリエステル体を加水分解して、所望のアシル置換度を有するセルロースエステルを合成する。得られたセルロースエステルをろ過、沈殿、水洗、脱水および乾燥させて、セルロースエステルを得ることができる(特開平10−45804号に記載の方法を参照)。
原料となるセルロースの例には、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)およびケナフなどが含まれる。原料となるセルロースは、一種類だけであってもよいし、二種類以上の混合物であってもよい。
(メタ)アクリル樹脂
透明ポリマー基材層に含まれうる(メタ)アクリル樹脂は、メチルメタクリレートと、それと共重合可能な単量体との共重合体であることが好ましい。共重合体におけるメチルメタクリレート由来の構成単位の含有比率は50〜99質量%であることが好ましい。
共重合可能な他の単量体の例には、アルキル部分の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート;アルキル部分の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート;アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸;スチレン、α−メチルスチレン、核置換スチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル;無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物などが含まれる。共重合可能な単量体は、一種類であってもよいし、二種以上であってもよい。
なかでも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが好ましく、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレートがより好ましい。
(メタ)アクリル樹脂は、得られる透明ポリマー基材層の耐熱性と透明性を高め、かつ機械的強度を高める観点などから、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂であってもよい。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂の例には、特開2000−230016号、特開2001−151814号、特開2002−120326号、特開2002−254544号、特開2005−146084号などに記載のものが含まれる。
(メタ)アクリル樹脂の市販品の例には、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)などが含まれる。
環状ポリオレフィン
環状オレフィン樹脂の例には、ノルボルネン系樹脂、単環の環状オレフィン系樹脂、環状共役ジエン系樹脂、ビニル脂環式炭化水素系樹脂、およびこれらの水素化物などが含まれる。なかでも、成形しやすく、得られるフィルムの透明性が高いことから、ノルボルネン系樹脂が好ましい。
ノルボルネン系樹脂の例には、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、ノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体、またはそれらの水素化物、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、ノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体、またはそれらの水素化物などが含まれる。なかでも、成形しやすく、得られるフィルムの透明性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、共重合体またはそれらの水素化物が特に好ましい。
ノルボルネン構造を有する単量体の例には、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などが含まれる。ノルボルネン構造を有する単量体は、一種類であってもよいし、二種以上であってもよい。
環が有しうる置換基の例には、アルキル基、アルキレン基、極性基などが含まれる。置換基は、複数あってもよく、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。極性基の例には、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン基などが含まれる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体の例には、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体などが含まれる。
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体の例には、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエンなどが含まれる。なかでも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。これらの単量体は、一種類であっても、二種以上を組み合わせてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体または付加(共)重合体は、ノルボルネン構造を有する単量体を、公知の開環重合触媒または付加重合触媒の存在下で(共)重合させることによって得ることができる。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体または付加(共)重合体の水素添加物は、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体または付加(共)重合体の溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素添加触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合の好ましくは90%以上を水素添加することによって得ることができる。
ノルボルネン系樹脂のなかでも、繰り返し単位として、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造(X)と、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造(Y)とを有する樹脂が好ましい。そのようなノルボルネン系樹脂における繰り返し単位の含有量が、繰り返し単位全体に対して90質量%以上であり、かつXの含有割合とYの含有割合との質量比X:Yが100:0〜40:60であるものが好ましい。このようなノルボルネン系樹脂は、寸法変化が少なく、光学特性が均一な光学フィルム(位相差フィルム)を与えうる。
環状ポリオレフィンの分子量は、特に制限されないが、シクロヘキサン(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定される、ポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、通常、20,000〜150,000であり、好ましくは25,000〜100,000であり、より好ましくは30,000〜80,000である。重量平均分子量が上記範囲にある環状ポリオレフィンを含むフィルムは、機械的強度や成型加工性が良好である。
環状ポリオレフィンのガラス転移温度は、特に制限されないが、得られるフィルムの耐久性や延伸加工性を高める観点から、好ましくは130〜160℃であり、より好ましくは135〜150℃である。環状ポリオレフィンの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、緩和時間を少なくし、生産性を高める観点から、1.2〜3.5であり、好ましくは1.5〜3.0であり、さらに好ましくは1.8〜2.7である。緩和時間とは、得られるフィルムの光学特性を均一にしたり、位相差値を調整したりする目的で、延伸後のフィルムを固定した状態で加熱する緩和処理に要する時間をいう。
環状ポリオレフィンからなるフィルムの光弾性係数Cの絶対値は10×10−12Pa−1以下であることが好ましく、7×10−12Pa−1以下であることがより好ましく、4×10−12Pa−1以下であることがさらに好ましい。環状ポリオレフィンからなるフィルムの光弾性係数Cは、当該フィルムに加えた応力をσとし、そのときのフィルムの複屈折をΔnとしたとき、C=Δn/σで表される値である。
透明ポリマー基材層は、必要に応じてさらに添加剤を含んでもよい。そのような添加剤の例には、糖エステル化合物、ポリエステル化合物、ヒドロキシ基末端ポリエステル化合物などが含まれる。
糖エステル化合物
糖エステル化合物は、糖類のヒドロキシル基(水酸基)と、モノカルボン酸のカルボキシル基とをエステル化させて得られる化合物をいう。
糖エステル化合物を構成する糖類の例には、単糖類(monosaccharide)、二糖類(disaccharides)、および3〜6個の単糖類が結合したオリゴ糖類が含まれる。なかでも、炭素数6〜48の糖類が好ましく、単糖類および二糖類がより好ましい。
単糖類の例には、グルコース、果糖、アラビノース、マンノース、ソルビトールなどが含まれる。二糖類の例には、ショ糖、マルトースなどが含まれる。なかでも、原料が入手しやすいことから、グルコース、果糖、ショ糖が好ましく、ショ糖がさらに好ましい。
糖エステル化合物を構成するモノカルボン酸は、特に制限されず、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸または芳香族モノカルボン酸でありうる。フィルムのリターデーションを発現させ易くするためには、芳香族モノカルボン酸が好ましい。モノカルボン酸は、一種類でもよいし、二種以上の混合物であってもよい。例えば、脂肪族モノカルボン酸と芳香族モノカルボン酸とを組み合わせてもよい。
脂肪族モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸;ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等が含まれる。脂肪族モノカルボン酸は、アリール基などの置換基をさらに有してもよい。
脂環族モノカルボン酸の例には、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸が含まれる。
芳香族モノカルボン酸は、一以上のベンゼン環を有するモノカルボン酸であって、ベンゼン環はアルキル基またはアルコキシ基などの置換基をさらに有していてもよい。芳香族モノカルボン酸の例には、安息香酸、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−アニス酸、m−アニス酸、p−アニス酸、クレオソート酸、o−ホモサリチル酸、m−ホモサリチル酸、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸などが挙げられ、特に安息香酸が好ましい。
これらのモノカルボン酸は、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基などの置換基をさらに有していてもよい。
構成糖がショ糖である糖エステル化合物の平均エステル置換度(ショ糖に含まれる8つのヒドロキシル基のうちモノカルボン酸でエステル化される割合)は、1.0以上であり、好ましくは3.0〜8.0であり、より好ましくは3.5〜7.5である。
なかでも、下記一般式(1)で表され、平均置換度が3.5〜7.5である糖エステル化合物が好ましい。
式(1)のR1〜R8は、置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基、または置換もしくは無置換のアリールカルボニル基を表わす。R1〜R8は、互いに同じであっても、異なってもよい。
置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基は、炭素原子数2以上の置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基であることが好ましい。置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基の例には、メチルカルボニル基(アセチル基)が含まれる。アルキル基が有する置換基の例には、フェニル基などのアリール基が含まれる。
置換もしくは無置換のアリールカルボニル基は、炭素原子数7以上の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基であることが好ましい。アリールカルボニル基の例には、フェニルカルボニル基が含まれる。アリール基が有する置換基の例には、メチル基などのアルキル基やメトキシ基などのアルコキシル基が含まれる。
一般式(1)で示される化合物の具体例には、以下のものが含まれる。表1中のRは、一般式(1)におけるR
1〜R
8を表す。
糖エステル化合物の含有量は、光学フィルムの湿度の変動による位相差値の変動を抑制して、表示品位を安定化させるために、樹脂成分に対して0.5〜30質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることが特に好ましい。
ポリエステル化合物
ポリエステル化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(2)
式(2)中、Aは、炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸から誘導される2価の基または炭素原子数8〜14のアリールジカルボン酸から誘導される2価の基を表す。Gは、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基、炭素原子数6〜12のアリールグリコールから誘導される2価の基、または炭素原子数が4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基を表す。Bは、水素原子またはモノカルボン酸から誘導される1価の基を表す。nは、1以上の整数を表す。
Aの、炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸から誘導される2価の基の例には、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸などから誘導される2価の基が含まれる。Aにおける炭素原子数8〜14のアリールジカルボン酸から誘導される2価の基の例には、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸などから誘導される2価の基が含まれる。
Gの、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールペンタン)、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールヘプタン)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、および1,12-オクタデカンジオール等から誘導される2価の基が含まれる。
Gの、炭素原子数6〜12のアリールグリコールから誘導される2価の基の例には、1,2-ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3-ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)などから誘導される2価の基が含まれる。Gにおける炭素原子数が4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、ジエチレングルコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどから誘導される2価の基が含まれる。
Gは、炭素数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基であることが好ましい。ポリエステル系可塑剤の、セルロースエステルとの相溶性を高めるためである。
Bの、モノカルボン酸から誘導される1価の基の例には、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、およびアセトキシ安息香酸などの芳香族モノカルボン酸;酢酸、プロピオン酸、および酪酸などの脂肪族モノカルボン酸などから誘導される1価の基が含まれる。なかでも、Bは、芳香族モノカルボン酸から誘導される1価の基であることが好ましい。
ポリエステル化合物の数平均分子量は、300〜1500であることが好ましく、400〜1000であることがより好ましい。数平均分子量が300未満であるポリエステル系可塑剤は、光学フィルムから溶出しやすいことがある。
ポリエステル化合物の酸価は、それを含む光学フィルムと、ハードコート層などの他の機能層との密着性を高める観点などから、0.5mgKOH/g以下であることが好ましく、0.3mgKOH/g以下であることがより好ましい。ポリエステル化合物の酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシル基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数として定義される。ポリエステル系可塑剤の酸価は、JIS K0070に準拠して測定されうる。
ポリエステル化合物の水酸基価は、セルロースエステルとの相溶性を高める観点などから、25mgKOH/g以下であることが好ましく、15mgKOH/g以下であることがより好ましい。ポリエステル化合物の水酸基価は、試料1gを無水酢酸と反応させてアセチル化させたとき、未反応の酢酸を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数として定義される。ポリエステル化合物の水酸基価は、JIS K 0070(1992)に準拠して測定される。
式(2)で示されるポリエステル化合物の具体例を以下に示す。
一般式(2)で表されるポリエステル化合物と糖エステル化合物の含有質量比は、99:1〜1:99の範囲で調整されうる。一般式(2)で表されるポリエステル化合物と糖エステル化合物の合計含有量は、樹脂成分に対して1〜40質量%であることが好ましい。
透明ポリマー基材層は、正の複屈折を有するポリエステル化合物として、一般式(3)で表されるポリエステル化合物(ヒドロキシル基末端ポリエステル化合物)も含んでいてもよい。
式(3)中、Aは、炭素数6〜14のアリーレン基を表す。アリーレン基の例には、ナフタレン基またはビフェニレン基が好ましい。アリーレン基は、炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル機、アルコキシル基などの置換基をさらに有してもよい。Bは、炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基またはシクロアルキレン基を表す。nは1以上の自然数を表す。
式(3)で表されるポリエステル化合物は、環炭素数6〜16の芳香族ジカルボン酸と、炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレンジオールまたはシクロアルキレンジオールとを反応させて得られる化合物である。
炭素数6〜16の芳香族ジカルボン酸の例には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などが含まれ、好ましくは2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸である。
炭素数が2〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレンジオールの例には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが含まれ、好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールである。シクロアルキレンジオールの例には、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが含まれる。
式(3)で表されるポリエステル化合物の水酸基価は、100〜500mgKOH/gであることが好ましく、170〜400mgKOH/gであることがより好ましい。水酸基価が500mgKOH/g超であると、式(3)で表されるポリエステル化合物の疎水性が高まるため、低アセチル置換度のセルロースエステルとの相溶性が低下しやすい。一方、水酸基価が100mgKOH/g未満であると、式(3)で表されるポリエステル化合物同士の分子間相互作用(水素結合など)が強くなり、セルロースエステルとの相溶性が低下しやすい。水酸基価の測定は、日本工業規格 JIS K1557−1:2007に記載の無水酢酸法により行うことができる。
式(3)で表されるポリエステル化合物の数平均分子量(Mn)は、下記式から計算することができる。
Mn=(分子中の水酸基の数)×56110/(水酸基価)=2×56110/(水酸基価)
以下に、式(3)で表されるポリエステル化合物の具体例を示す。
式(3)で表されるポリエステル化合物の含有量は、樹脂成分に対して1質量%以上5質量%未満であることが好ましい。
その他添加剤
透明ポリマー基材層は、必要に応じて他の添加剤をさらに含有していてもよい。そのような添加剤の例には、リターデーション上昇剤、可塑剤、酸化防止剤、酸捕捉剤、光安定剤、紫外線吸収剤、光学異方性制御剤、マット剤、帯電防止剤、剥離剤などが含まれる。
リターデーション上昇剤は、二以上の芳香族環を有する芳香族化合物であることが好ましい。リターデーション上昇剤は、一種類であってもよいし、二種類以上の混合物であってもよい。
芳香族化合物に含まれる芳香環は、芳香族性炭化水素環または芳香族性ヘテロ環である。芳香族炭化水素環は、好ましくは6員環(ベンゼン環)である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であり、好ましくは5員環または6員環である。芳香族性ヘテロ環に含まれるヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子であり、好ましくは窒素原子である。
芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれ、好ましくは1,3,5−トリアジン環である。芳香族化合物の具体例には、特開2004−109410号、特開2003−344655号、特開2000−275434号、特開2000−111914号、特開平12−275434号などにも記載の化合物も含まれる。
リターデーション上昇剤の含有量は、透明ポリマー基材層に含まれる樹脂成分に対して0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜15質量%であることがより好ましく、0.1〜10質量%であることがさらに好ましい。
微粒子
透明ポリマー基材層は、滑り性を向上させるために、微粒子をさらに含んでもよい。微粒子は、無機微粒子であっても有機微粒子であってもよい。
無機微粒子の例には、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムなどが含まれる。有機微粒子の例には、シリコーン系樹脂微粒子、フッ素樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子などが含まれ、好ましくはシリコーン樹脂微粒子である。なかでも、透明ポリマー基材層のヘイズの増大を少なくするためには、珪素を含む微粒子が好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
二酸化珪素の微粒子の例には、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の市販品)が含まれる。なかでも、保護フィルムのヘイズを低く保ちつつ、摩擦係数を下げる効果が大きいことから、アエロジル200V、アエロジルR972Vが好ましい。酸化ジルコニウムの微粒子の例には、アエロジルR976およびR811(以上日本アエロジル(株)製の商品名)が含まれる。
微粒子の一次平均粒子径は、5〜400nmであることが好ましく、10〜300nmであることがより好ましい。
微粒子は、透明ポリマー基材層の少なくとも一方の面の動摩擦係数が0.2〜1.0となるように透明ポリマー基材層に含まれることが好ましい。微粒子の含有量は、透明ポリマー基材層に対して0.01〜1質量%であることが好ましく、0.05〜0.5質量%であることがより好ましい。
ただし、環状ポリオレフィンを含む透明ポリマー基材層は、微粒子を実質的に含まないことが好ましい。微粒子を実質的に含まないとは、微粒子を含まない環状ポリオレフィンフィルムのヘイズからの上昇巾が0.05%以下となる範囲の量の微粒子を含有する場合を含む。環状ポリオレフィンのなかでも脂環式ポリオレフィンは、有機微粒子や無機微粒子との親和性が低いため、微粒子を含む環状ポリオレフィンフィルムを延伸して得られるフィルムは、空隙が生じやすく、ヘイズが高いからである。
透明ポリマー基材層の物性
透明ポリマー基材層の厚みは、特に限定されないが、20〜200μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましく、20〜60μmであることがさらに好ましく、20〜40μmであることが特に好ましい。光学フィルムの厚みが大きすぎると、湿度によってリターデーションの変動が大きくなりやすい。一方、フィルムの厚みが小さすぎると、所望のリターデーションが得られにくい。
特定の樹脂層を有する保護フィルムが、VA方式の液晶セルの位相差フィルムとして用いられる場合、特定の樹脂層を有する保護フィルムに含まれる透明ポリマー基材層の、23℃、55%RHの環境下で、波長590nmにて測定されるリターデーションRoは、20〜100nmであることが好ましい。23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにて測定されるリターデーションRthは、70〜300nmであることが好ましい。光学フィルムのリターデーションR0およびRthは、通常、延伸条件により調整することができる。
面内方向のリターデーションR0および厚み方向のリターデーションRthは、それぞれ以下の式で表される。
式(I) R0=(nx−ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(nx:フィルム面内の遅相軸方向の屈折率、ny:フィルム面内において、遅相軸に対して直交する方向の屈折率、nz:厚み方向におけるフィルムの屈折率、d:フィルムの厚み(nm))
レターデーションR0およびRthは、例えば以下の方法によって求めることができる。
1)フィルムの平均屈折率を屈折計により測定する。
2)王子計測機器社製KOBRA−21ADHにより、フィルム法線方向からの波長590nmの光を入射させたときの面内方向のレターデーションR0を測定する。
3)王子計測機器社製KOBRA−21ADHにより、フィルム法線方向に対してθの角度(入射角(θ))から波長590nmの光を入射させたときのレターデーション値R(θ)を測定する。θは0°よりも大きく、好ましくは30°〜50°である。
4)測定されたR0およびR(θ)と、前述の平均屈折率と膜厚とから、王子計測機器社製KOBRA−21ADHにより、nx、nyおよびnzを算出し、Rthを算出する。レターデーションの測定は、23℃55%RH条件下で行うことができる。
透明ポリマー基材層は、フィルム面内に遅相軸または進相軸を有する。遅相軸の製膜方向とのなす角θ1(配向角)は、−5°以上+5°以下であることが好ましく、−1°以上+1°以下であることがより好ましく、−0.5°以上+0.5°以下であることがさらに好ましく、−0.1°以上+0.1°以下であることが特に好ましい。配向角θ1が上記範囲を満たしていると、光漏れを抑制できるため、表示画像の輝度を高めることができる。配向角θ1は、延伸条件によって調整されうる。
透明ポリマー基材層のリターデーションR0およびRth、および配向角θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて測定することができる。
透明ポリマー基材層の、JIS K−7136に準拠して測定される内部ヘイズは、0.05%以下であることが好ましく、0.03%以下であることがさらに好ましい。保護フィルムの、JIS Z 0208に準拠して測定される40℃、90%RHにおける透湿度は、10〜1200g/m2・24hであることが好ましい。透明ポリマー基材層の透湿度を低下させるためには、例えば透明ポリマー基材層に含まれる熱可塑性樹脂を、環状オレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂またはアシル基置換度が高いセルロースエステルとしたり、可塑剤などの添加剤を多く含有させたりすればよい。
透明ポリマー基材層の可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましい。本発明の光学フィルムの破断伸度は10〜80%であることが好ましい。
透明ポリマー基材層となるフィルムは、好ましくは溶液流延法または溶融流延法で製造されうる。以下、セルロースエステルを含むフィルムの製造方法について説明する。
A)溶液流延法
透明ポリマー基材層となるフィルムを溶液流延法で製造する方法は、A−1)少なくとも前述のセルロースエステルなどを溶剤に溶解させてドープを調製する工程(ドープ調製工程)、A−2)ドープを無端の金属支持体上に流延する工程(流延工程)、A−3)流延したドープから溶媒を蒸発させてウェブとする工程(溶媒蒸発工程)、A−4)ウェブを金属支持体から剥離する工程(剥離工程)、A−5)ウェブを乾燥後、延伸してフィルムを得る工程(乾燥および延伸工程)、A−6)得られたフィルムを巻取る工程(巻き取り工程)、を含む。
A−1)ドープ調製工程
溶解釜において、熱可塑性樹脂と、必要に応じて添加剤とを溶剤に溶解させてドープを調製する。ドープの調製に用いられる溶剤は、セルロースエステルなどの熱可塑性樹脂を溶解するものであれば、特に制限されない。そのような溶剤の例には、塩化メチレンなどの塩素系有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、乳酸エチル、乳酸、ジアセトンアルコールなどの非塩素系有機溶媒などが含まれ、好ましくは塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、乳酸エチルである。
ドープの調製に用いられる溶剤は、前述した以外の他の溶剤をさらに含有してもよい。そのような他の溶剤の例には、炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールが含まれる。炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールの例には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールなどが含まれ、沸点が比較的低く、乾燥しやすいことなどから、好ましくはエタノールである。
他の溶剤の含有量は、溶剤全体に対して1〜40質量%としうる。他の溶剤の含有割合を高めにすると、得られるウェブがゲル化しやすいため、金属支持体から剥離しやすい。一方、ドープ中の他の溶剤の含有割合を低めにすると、溶剤が非塩素系有機溶媒である場合に、熱可塑性樹脂を溶解させやすい。
溶剤として、メチレンクロライドと、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールとを含有するドープ中の熱可塑性樹脂の含有量は、10〜45質量%であることが好ましい。
熱可塑性樹脂の溶解は、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上かつ加圧下で行う方法、特開平9−95544号、特開平9−95557号または特開平9−95538号に記載された冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号に記載の高圧下で行う方法などであってよく、特に主溶媒の沸点以上かつ加圧下で行う方法が好ましい。
A−2)流延工程
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイに送液し、無端状の金属支持体(例えばステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等)上に、加圧ダイのスリットから流延させる。
ダイは、口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一に調整しやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイの例には、コートハンガーダイ、T−ダイなどが含まれる。金属ベルトの表面は、鏡面加工されていることが好ましい。
A−3)溶媒蒸発工程
ウェブ(ドープを金属支持体上に流延して得られるドープ膜)を金属支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる。ウェブの乾燥は、40〜100℃の雰囲気下で行うことが好ましい。ウェブを40〜100℃の雰囲気下で乾燥させるためには、40〜100℃の温風をウェブ上面に当てたり、赤外線などで加熱したりすることが好ましい。
溶媒を蒸発させる方法としては、ウェブの表面に風を当てる方法、ベルトの裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法などがあるが、乾燥効率が高いことから、ベルトの裏面から液体により伝熱させる方法が好ましい。
A−4)剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する。金属支持体上の剥離位置における温度は、好ましくは10〜40℃であり、さらに好ましくは11〜30℃である。
金属支持体上の剥離位置で剥離する際のウェブの残留溶媒量は、乾燥条件や金属支持体の長さなどにもよるが、50〜120質量%とすることが好ましい。残留溶媒量が多いウェブは、柔らか過ぎて平面性を損ないやすく、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易い。そのようなツレや縦スジを抑制できるように、剥離位置でのウェブの残留溶媒量が設定されうる。
ウェブの残留溶媒量は、下記式で定義される。
残留溶媒量(%)=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を意味する。
金属支持体からウェブを剥離する際の剥離張力は、通常、196〜245N/mであるが、剥離の際に皺が入り易い場合には190N/m以下とすることが好ましく、166.6N/m以下とすることがより好ましく、137.2N/m以下とすることがより好ましく、100N/m以下とすることがさらに好ましい。
金属支持体上の剥離位置におけるウェブの温度は、−50〜40℃であることが好ましく、10〜40℃であることがより好ましく、15〜30℃であることがさらに好ましい。
A−5)乾燥および延伸工程
金属支持体から剥離して得られたウェブを乾燥させた後、延伸する。ウェブの乾燥は、ウェブを、上下に配置した多数のロールにより搬送しながら乾燥させてもよいし、ウェブの両端部をクリップで固定して搬送しながら乾燥させてもよい。
ウェブの乾燥方法は、熱風、赤外線、加熱ロールおよびマイクロ波等で乾燥する方法であってよく、簡便であることから熱風で乾燥する方法が好ましい。ウェブの乾燥温度は、40〜250℃、好ましくは40〜160℃である。高温での乾燥は、ウェブの残留溶媒量が8質量%以下で行うことが好ましい。
ウェブの延伸により、所望のレターデーションを有する透明ポリマー基材層を得る。透明ポリマー基材層のレターデーションは、ウェブに掛かる張力の大きさを、少なくともウェブの搬送方向に対して垂直方向(幅方向)に調整することによって制御することができる。
ウェブの延伸は、少なくとも幅方向に延伸すればよく、一軸延伸であっても、二軸延伸であってもよい。また、ウェブの延伸は、幅方向またはドープの流延方向に対して斜め方向の延伸であってもよい。二軸延伸には、ドープの流延方向(縦方向)と幅方向(横方向)の両方に延伸することが含まれる。二軸延伸は、逐次二軸延伸であっても同時二軸延伸であってもよい。
逐次二軸延伸には、延伸方向の異なる延伸を順次行う方法や、同一方向の延伸を多段階に分けて行う方法などが含まれる。逐次二軸延伸の例には、以下のような延伸ステップが含まれる。
流延方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
幅手方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方の方向の張力を緩和して収縮させる態様も含まれる。同時二軸延伸する場合の延伸倍率は、幅手方向、流延方向ともにそれぞれ1.01〜1.5倍であることが好ましい。
ウェブの延伸方法は、特に制限されず、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法(ロール延伸法)、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を縦方向に向かって広げて縦方向に延伸したり、横方向に広げて横方向に延伸したり、縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法など(テンター延伸法)などが挙げられる。これらの延伸方法は、組み合わされてもよい。
テンター延伸開始時のウェブの残留溶媒量は、20〜100質量%であることが好ましい。また、テンター延伸後のウェブの残留溶媒量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
ウェブの延伸温度は、30〜160℃であることが好ましく、50〜150℃であることがより好ましく、70〜140℃であることがさらに好ましい。得られる透明ポリマー基材層の均一性を高めるためには、テンター延伸工程での雰囲気の幅手方向の温度分布が少ないことが好ましく、幅手方向の温度分布は±5℃以内が好ましく、±2℃以内がより好ましく、±1℃以内がより好ましい。
テンター延伸装置は、ウェブの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を、左右で独立に制御できるものが好ましい。また、テンター工程は、得られる透明ポリマー基材層の平面性を高めるために、異なる温度領域を有したり、異なる温度領域の間にニュートラルゾーンを有したりすることが好ましい。
A−6)巻き取り工程
ウェブを延伸して得られるフィルムを巻き取り機で巻き取る。巻き取られるフィルムの残留溶媒量は、好ましくは2質量%以下であり、寸法安定性を高めるためには、より好ましくは0.4質量%以下であり、さらに好ましくは0.10質量%以下である。
巻き取り方法は、特に制限されず、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等がある。
得られる透明ポリマー基材層は、長尺状フィルムであり、通常、長さが100m〜10000m程度である。また、透明ポリマー基材層の幅は1.3〜4mであることが好ましく、1.4〜2.5mであることがより好ましい。
B)溶融流延法
透明ポリマー基材層となるフィルムを溶融流延法で製造する方法は、B−1)溶融ペレットを製造する工程(ペレット化工程)、B−2)溶融ペレットを溶融混練した後、押し出す工程(溶融押出し工程)、B−3)溶融樹脂を冷却固化してウェブを得る工程(冷却固化工程)、B−4)ウェブを延伸する工程(延伸工程)、を含む。
B−1)ペレット化工程
透明ポリマー基材層となるフィルムを構成する熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物は、あらかじめ混練してペレット化しておくことが好ましい。ペレット化は、公知の方法で行うことができ、例えば前述の熱可塑性樹脂と、必要に応じて可塑剤などの添加剤とを含む樹脂組成物を、押出し機にて溶融混錬した後、ダイからストランド状に押し出す。ストランド状に押し出された溶融樹脂を、水冷または空冷した後、カッティングしてペレットを得ることができる。
ペレットの原材料は、分解を防止するために、押出し機に供給する前に乾燥しておくことが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂としてのセルロースエステルは吸湿しやすいため、70〜140℃で3時間以上乾燥させて、水分率を200ppm以下、好ましくは100ppm以下にしておくことが好ましい。
酸化防止剤と熱可塑性樹脂の混合は、固体同士で混合してもよいし;溶剤に溶解させた酸化防止剤を、熱可塑性樹脂に含浸させて混合してもよいし;酸化防止剤を、熱可塑性樹脂に噴霧して混合してもよい。真空ナウターミキサーなどが、原材料の乾燥と混合を同時に行うことができるので好ましい。また、押出し機のフィーダー部分やダイの出口部分の周辺の雰囲気は、ペレットの原材料の劣化を防止するためなどから、除湿した空気またはN2ガスなどの雰囲気とすることが好ましい。
押出し機では、樹脂の劣化(分子量の低下、着色およびゲルの生成など)が生じないように、低いせん断力または低い温度で混練することが好ましい。例えば、2軸押出し機で混練する場合、深溝タイプのスクリューを用いて、2つのスクリューの回転方向を同方向にすることが好ましい。均一に混錬するためには、2つのスクリュー形状が互いに噛み合うようにすることが好ましい。
熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物をペレット化せずに、溶融混練していない熱可塑性樹脂をそのまま原料として押出し機にて溶融混練して透明ポリマー基材層となるフィルムを製造してもよい。
B−2)溶融押出し工程
得られた溶融ペレットと、必要に応じて他の添加剤とを、ホッパーから押出し機に供給する。ペレットの供給は、ペレットの酸化分解を防止するためなどから、真空下、減圧下または不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。そして、押出し機にて、溶融ペレットと、必要に応じて他の添加剤と(フィルム材料)を溶融混練する。
押出し機内のフィルム材料の溶融温度は、フィルム材料の種類にもよるが、フィルムのガラス転移温度をTg℃としたときに、好ましくはTg℃〜(Tg+100)℃の範囲であり、より好ましくは(Tg+10)℃〜(Tg+90)℃の範囲である。押出し機でのフィルム材料の滞留時間は、5分以下とすることが好ましい。滞留時間は、スクリューの回転数や溝の深さ、シリンダの内径(D)に対するシリンダの長さ(L)の比であるL/Dなどによって調整することができる。
押出し機から押し出された溶融樹脂を、必要に応じてリーフディスクフィルタなどでろ過した後、スタチックミキサなどでさらに混合して、ダイからフィルム状に押し出す。ダイの出口部分における樹脂の溶融温度Tmは200〜300℃程度としうる。
ダイの内壁面に、傷や可塑剤の凝結物などの異物が付着すると、押し出される溶融樹脂の表面にスジ状の欠陥(ダイライン)が生じることがある。ダイラインなどの表面欠陥を低減するためには、押出し機からダイの先端までの内壁面には、樹脂の滞留部が付着しにくい構造にすること;例えば押出し機からダイの先端までの内壁面には、傷などがないことが好ましい。
押出機やダイなどの内壁面は、溶融樹脂が付着しにくくするために、表面粗さを小さくする、または表面エネルギーを低くする表面加工が施されていることが好ましい。そのような表面加工の例には、ハードクロムメッキやセラミック溶射した後、表面粗さ0.2S以下となるように研磨する加工が含まれる。
B−3)冷却固化工程
ダイから押し出された樹脂を、冷却ロールと弾性タッチロールとでニップして、フィルム状の溶融樹脂を所定の厚みにする。そして、フィルム状の溶融樹脂を、複数の冷却ロールで段階的に冷却して固化させる。
冷却ロールの表面温度Tr1は、得られるフィルムのガラス転移温度をTg(℃)としたとき、Tg(℃)以下としうる。複数の冷却ロールの表面温度は異なっていてもよい。弾性タッチロール側のフィルム表面温度Ttは、(Tr1−50)℃≦Tt≦(Tr1−5)℃としうる。
冷却ロールは、高剛性の金属ロールであり、内部に温度制御可能な媒体を流通できる構造を有する。冷却ロールの表面の材質は、ステンレス、アルミニウム、チタンなどでありうる。冷却ロールの表面には、樹脂を剥離しやすくしたりするためなどから、ハードクロムメッキ、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキ、セラミック溶射などの表面処理を施してもよい。冷却ロールの表面の粗さRaは、フィルムのヘイズを低く維持するために、0.1μm以下とすることが好ましく、0.05μm以下とすることがより好ましい。冷却ロールの大きさは、押し出されたフィルム状の溶融樹脂を冷却するのに十分な大きさであればよく、通常、冷却ロールの直径は100mm〜1m程度である。
弾性タッチロールは、特開平03−124425号、特開平08−224772号、特開平07−100960号、特開平10−272676号、国際公開第97/028950号、特開平11−235747号、特開2002−36332号、特開2005−172940号や特開2005−280217号に記載の、薄膜金属スリーブで被覆されたシリコンゴムロールなどが用いられる。
冷却ロールから固化したフィルム状の溶融樹脂を剥離ロールなどで剥離してウェブを得る。フィルム状の溶融樹脂を剥離する際は、得られるウェブの変形を防止するために、張力を調整することが好ましい。
B−4)延伸工程
得られたウェブを、延伸機にて延伸してフィルムを得る。延伸は、少なくとも一方向に延伸すればよく、ウェブの幅方向(TD方向)とウェブの搬送方向(MD方向)の両方に延伸することが好ましい。
ウェブの幅方向(TD方向)とウェブの搬送方向(MD方向)の両方に延伸する場合、ウェブの幅方向(TD方向)の延伸とウェブの搬送方向(MD方向)の延伸とは、逐次的に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
延伸倍率は、各方向に1.01〜3.0倍、好ましくは1.1〜2.0倍としうる。ウェブの幅方向(TD方向)とウェブの搬送方向(MD方向)の両方に延伸する場合、各方向に最終的に1.01〜3.0倍、好ましくは1.1〜2.0倍とすることが好ましい。
延伸温度は、Tg〜(Tg+50)℃で行うことが好ましい。延伸温度は、ウェブの幅方向(TD方向)または搬送方向(MD方向)に均一であることが好ましく、ウェブの延伸温度の幅方向または搬送方向のばらつきが±2℃以下であることが好ましく、±1℃以下であることがより好ましく、±0.5℃以下であることがさらに好ましい。
ウェブの延伸は、ロール延伸機やテンター延伸機などを用いることができる。例えば、保護フィルムを得る場合には、ウェブの幅方向(TD方向)に延伸することが好ましい。幅方向に延伸されたウェブは、幅方向に平行な面内遅相軸を有する。そのため、一般的に、ウェブの長手方向(MD方向)に平行な吸収軸を有する偏光子と、幅方向に平行な面内遅相軸を有する保護フィルムとをロールトゥロールで積層させれば、偏光子の吸収軸と保護フィルムの面内遅相軸とを直交させることができる。
延伸後に得られるフィルムのレターデーションを調整したり、寸法変化を少なくしたりするために、必要に応じて、延伸後に得られるフィルムを搬送方向(MD方向)または幅方向(TD方向)に収縮させてもよい。延伸後に得られるフィルムを搬送方向(MD方向)に収縮させるには、例えば幅方向に把持したクリップを解除して、搬送方向に弛緩させたり;隣り合うクリップの間隔を搬送方向に徐々に狭くして搬送方向に弛緩させたりすればよい。
C)共流延法
多層構造を有する透明ポリマー基材層は、好ましく共流延法で製造されうる。共流延法では、熱可塑性樹脂などを含む2種以上の複数のポリマー溶液を、平滑な支持体(バンドまたはドラム)上に流延する。共流延法は、流延方向に異なる位置に設けられた複数の流延口からポリマーを含む溶液をそれぞれ流延させながら逐次的に積層して多層のウェブとする方法(逐次積層共流延)であってもよいし;流延方向に同じ位置に設けられた複数の流延口からポリマー溶液を同時に流延して積層して多層のウェブとする方法(同時積層共流延)であってもよい。逐次積層共流延法の例には、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号に記載の方法がある。同時積層共流延の例には、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号に記載の方法などがある。
同時積層共流延法には、特開昭56−162617号に記載されるような、中心に高粘度のポリマー溶液を流通させ、その外周に低粘度のポリマー溶液を流通させて、円筒状に積層された2つのポリマー溶液を同時に押し出す方法なども含まれる。さらに、特開昭61−94724号、特開昭61−94725号に記載されるような、外周部分を流れるポリマー溶液の貧溶媒(具体的にはアルコール成分)の含有量を、が、中心部分を流れるポリマー溶液よりも多くすることも好ましい。
共流延において、金属支持体に接する層(内側の層)と金属支持体に接しない層(外側の層)のうち金属支持体に接しない層(外側の層)の厚さは、好ましくは全膜厚の1〜50%であり、より好ましくは2〜30%である。例えば、3層以上の共流延の場合は、外側の層は、金属支持体に接する層以外の層の合計膜厚を意味する。
共流延する複数のポリマー溶液として、添加剤(例えば負の複屈折を有する化合物、正の複屈折を有する化合物、可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤など)の濃度が異なるポリマー溶液を用いて、例えばスキン層/コア層/スキン層の積層構造を有するフィルムを得ることができる。
例えば、マット剤、可塑剤または紫外線吸収剤は、スキン層よりもコア層に多く含有させたり、コア層のみに含有させたりしてもよい。また、スキン層に、低揮発性の可塑剤または紫外線吸収剤を含有させ、コア層に、可塑性に優れた可塑剤または紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を含有させてもよい。また、剥離剤は、金属支持体側のスキン層のみに含有させてもよい。また、スキン層とコア層のTgは異なっていてもよく、スキン層のTgよりもコア層のTgを低くしてもよい。
また、金属支持体を冷却して溶液をゲル化させて剥離する場合には、貧溶媒であるアルコールを、コア層用のポリマー溶液よりもスキン層用のポリマー溶液に多く含有させてもよい。また、流延時のポリマー溶液の粘度も、スキン層用のポリマー溶液とコア層用のポリマー溶液とで異なってもよい。
特定の樹脂層について
特定の樹脂層は、前述の透明ポリマー基材層の表面に配置される。特定の樹脂層は、ポリエーテルユニット、ポリエステルユニットまたはポリアクリルユニットを含む熱可塑性樹脂を含む。
ポリエーテルユニットとは、オキシアルキレン基を繰り返し単位として含むユニットである。ポリエーテルユニットを含む熱可塑性樹脂の例には、ポリエーテル、後述するポリエーテルウレタンなどが含まれる。ポリエステルユニットとは、ジカルボン酸とジオールとの縮重合体からなるユニットである。ポリエステルユニットを含む熱可塑性樹脂の例には、ポリエステル、後述するポリエステルウレタンなどが含まれる。ポリアクリルユニットとは、(メタ)アクリル酸エステルの付加重合体からなるユニットである。ポリアクリルユニットを含む熱可塑性樹脂の例には、後述するポリアクリルウレタンなどが含まれる。
これらの熱可塑性樹脂は、一種類であっても、二種類以上の混合物であってもよい。なかでも、透明ポリマー基材層と偏光子との接着力を高めるためには、ウレタン樹脂が好ましい。
ウレタン樹脂は、通常、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる。ポリオールは、分子中にヒドロキシル基を2以上有する化合物であり、その具体例には、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどが含まれる。例えば、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる樹脂は、ポリエステルウレタンである。ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる樹脂は、ポリエーテルウレタン樹脂である。これらは一種類であってもよいし、二種類以上の混合物であってもよい。
ポリアクリルポリオールは、(メタ)アクリル酸エステルと、水酸基を有する単量体とを共重合させて得られる。(メタ)アクリル酸エステルの例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが含まれる。水酸基を有する単量体の例には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシペンチルなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;グリセリン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールの(メタ)アクリル酸モノエステル;N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどが含まれる。これらは、一種類であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
ポリアクリルポリオールは、(メタ)アクリル酸エステルと、水酸基を有する単量体と、他の単量体とを共重合させて得られるものであってもよい。他の単量体の例には、(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸、その無水物あるいはモノまたはジエステル類;(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;メチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化α,β−不飽和脂肪族単量体;スチレン、α−メチルスチレンなどのα,β−不飽和芳香族単量体などが含まれる。これらは、一種類であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
ポリエステルポリオールは、多塩基酸とポリオールとを反応させて得られる。多塩基酸の例には、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、酒石酸、アルキルコハク酸、リノレイン酸、マレイン酸、フマール酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;あるいはこれらの酸無水物、アルキルエステル、酸ハライドなどの反応性誘導体が含まれる。これらは、一種類であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
ポリエステルポリオールを構成するポリオールの例には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1−メチル−1,3−ブチレングリコール、2−メチル−1,3−ブチレングリコール、1−メチル−1,4−ペンチレングリコール、2−メチル−1,4−ペンチレングリコール、1,2−ジメチル−ネオペンチルグリコール、2,3−ジメチル−ネオペンチルグリコール、1−メチル−1,5−ペンチレングリコール、2−メチル−1,5−ペンチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンチレングリコール、1,2−ジメチルブチレングリコール、1,3−ジメチルブチレングリコール、2,3−ジメチルブチレングリコール、1,4−ジメチルブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFなどが含まれる。これらは、一種類であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
ポリエーテルポリオールは、多価アルコールに、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる。多価アルコールの例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが含まれる。アルキレンオキシドの例には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、テトラヒドロフランなどが含まれる。これらは、一種類であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
ポリイソシアネートの例には、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;
イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4′−シクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート;
トリレンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4′−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;
ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが含まれる。これらは、一種類であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
なかでも、カルボキシル基を有するウレタン樹脂が好ましい。カルボキシル基を有するウレタン樹脂を含む保護フィルムは、特に、高温・高湿下において偏光子との密着性が高いからである。
カルボキシル基を有するウレタン樹脂は、例えば、前述のポリオールとポリイソシアネートとに加えて、遊離カルボキシル基を有する鎖長剤をさらに共重合させて得られる。遊離カルボキシル基を有する鎖長剤の例には、ジヒドロキシカルボン酸、ジヒドロキシスクシン酸などが含まれる。ジヒドロキシカルボン酸の例には、ジメチロールアルカン酸(例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロールペンタン酸)などのジアルキロールアルカン酸が含まれる。これらは、一種類であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
ウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートとに加えて、さらに他のポリオールや鎖長剤をさらに反応させて得られるものであってもよい。他のポリオールの例には、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの水酸基数が3以上のポリオールが含まれる。他の鎖長剤の例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコールなどのグリコール類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、アミノエチルエタノールアミンなどの脂肪族ジアミン;イソホロンジアミン、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミンなどの脂環族ジアミン;キシリレンジアミン、トリレンジアミンなどの芳香族ジアミンが含まれる。
ウレタン樹脂の数平均分子量は、好ましくは5000〜600000であり、より好ましくは10000〜400000である。ウレタン樹脂の酸価は、好ましくは10以上であり、より好ましくは10〜50であり、さらに好ましくは20〜45である。酸価が上記範囲であるウレタン樹脂を含む樹脂層は、保護フィルムと偏光子との密着性を高めうる。
特定の樹脂層は、必要に応じて微粒子をさらに含んでいてもよい。微粒子を含む特定の樹脂層は、保護フィルムを巻き取るときに生じやすいブロッキングを抑制し得るからである。
特定の樹脂層に含まれる微粒子の例には、前述の透明ポリマー基材層に含まれうる微粒子(マット剤)と同様のものを用いることができる。微粒子は、透明ポリマー基材層と特定の樹脂層の少なくとも一方に含まれることが好ましく、特定の樹脂層に含まれることがより好ましい。
微粒子(固形分)の含有量は、ウレタン樹脂(固形分;架橋剤を含む場合は架橋剤をも含めた固形分)100重量部に対して、好ましくは0.3〜10重量部であり、より好ましくは0.6〜3重量部である。微粒子の含有量が0.3重量部未満であると、特定の樹脂層の表面に凹凸を十分に形成できないため、ブロッキング抑制効果が得られにくい。一方、微粒子の含有量が10重量部超であると、特定の樹脂層を有する保護フィルムのヘイズを高めやすい。
特定の樹脂層の厚みは、好ましくは0.1〜10μmであり、より好ましくは0.1〜5μmであり、さらに好ましくは0.2〜1.5μmである。特定の樹脂層の厚みが10μm超であると、特定の樹脂層に位相差が発現することがあり、0.1μm未満であると、偏光子と保護フィルムとの十分な接着性が得られにくい。
特定の樹脂層を有する保護フィルムは、必要に応じて他の機能層(接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)をさらに有していてもよい。
特定の樹脂層を有する保護フィルムは、液晶表示装置の偏光板保護フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、ハードコートフィルム、防眩フィルム、帯電防止フィルム、視野角拡大用の光学補償フィルムなどとして用いられる。
特定の樹脂層を有する保護フィルムの製造方法
特定の樹脂層を有する保護フィルムは、前述の透明ポリマー基材層上に、特定の樹脂層用組成物(単に「樹脂層用組成物」ともいう)を塗布した後、乾燥させて得ることができる。
樹脂層用組成物は、前述した樹脂を含み、必要に応じて微粒子、後述する架橋剤や添加剤などをさらに含んでもよい。
樹脂層用組成物に含まれる架橋剤は、組成物に含まれる樹脂がカルボキシル基を有するウレタン樹脂である場合には、カルボキシル基と反応し得る基を有するポリマーであることが好ましい。カルボキシル基と反応し得る基の例には、有機アミノ基、オキサゾリン基、エポキシ基、カルボジイミド基等が挙げられ、好ましくはオキサゾリン基である。オキサゾリン基を有する架橋剤は、ウレタン樹脂と混合されたときの室温でのポットライフが長く、かつ加熱によって架橋反応が進行しやすいからである。
カルボキシル基と反応し得る基を有するポリマーの例には、アクリル系ポリマー、スチレン・アクリル系ポリマー等が挙げられ、好ましくはアクリル系ポリマーである。アクリル系ポリマーは、それを含む特定の樹脂層と偏光子との密着性を高めうる。また、アクリル系ポリマーは、後述する水系の樹脂層用組成物中で良好に相溶し、ウレタン樹脂を良好に架橋反応し得る。
樹脂層用組成物に含まれる添加剤の例には、ブロッキング防止剤、分散安定剤、揺変剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、触媒、フィラー、滑剤、帯電防止剤、オルガノシラン化合物(エポキシ基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤などのシランカップリング剤)などが含まれる。
樹脂層用組成物は、水系であることが好ましい。樹脂層用組成物におけるウレタン樹脂の含有量は、樹脂層用組成物の粘度を、均一に塗布できるようにするためなどから、好ましくは1.5〜15重量%であり、より好ましくは2〜10重量%である。
樹脂層用組成物における架橋剤(固形分)の含有量は、ウレタン樹脂(固形分)100重量部に対して、好ましくは1〜30重量部であり、より好ましくは3〜20重量部である。架橋剤の含有量が1重量部未満であると、偏光子との十分な密着性が得られにくい。一方、架橋剤の含有量が30重量部超であると、特定の樹脂層に位相差が発現することがある。
樹脂層用組成物の塗布方法は、例えばバーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、スロットオリフィスコート法、カーテンコート法、ファウンテンコート法などでありうる。乾燥温度は、50℃以上、好ましくは90℃以上、さらに好ましくは110℃以上としうる。乾燥温度は、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。乾燥温度が上記範囲であると、得られる偏光板の耐色性(特に高温高湿下における耐色性)が高いからである。
その他の保護フィルム
特定の樹脂層を有する保護フィルム以外の保護フィルム(その他の保護フィルム)は、透明樹脂フィルムであれば特に制限されず、熱可塑性樹脂フィルムであることが好ましい。そのような熱可塑性樹脂フィルムの好ましい例には、セルロースエステルフィルムが含まれる。
セルロースエステルフィルムは、特に制限されず、前述のセルロースエステルを含むフィルムであってもよいし、市販のセルロースエステルフィルムであってもよい。市販品の例には、セルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UE、KC4UE、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)などが含まれる。
その他の保護フィルムの厚みは、特に制限されないが、10〜200μm程度とすることができ、好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは10〜70μmである。
偏光板は、前述の通り、偏光子と、その少なくとも一方の面に配置された保護フィルムとを含む。
偏光子(第一の偏光子42および第二の偏光子62)は、一定方向の偏波面の光のみを通過させる素子である。偏光子の代表的な例は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムであり、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものと、がある。
偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸した後、ヨウ素または二色性染料で染色して得られるフィルムであってもよいし、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素または二色性染料で染色した後、一軸延伸したフィルム(好ましくはさらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよい。偏光子の厚さは、5〜30μmであることが好ましく、10〜20μmであることがより好ましい。
ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール水溶液を製膜したものであってもよい。ポリビニルアルコール系フィルムは、偏光性能および耐久性能に優れ、色斑が少ないなどことから、エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましい。エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムの例には、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載されたエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、けん化度99.0〜99.99モル%のフィルムが含まれる。
二色性色素の例には、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素およびアントラキノン系色素などが含まれる。
偏光板は、偏光子と、前述の保護フィルム(F1〜F4)とを接着剤を介して貼り合わせて得ることができる。例えば、第二の偏光板60は、第二の偏光子62の一方の面に保護フィルムF3を、接着剤を介して貼り合わせ、かつ第二の偏光子62の他方の面に保護フィルムF4を、接着剤を介して貼り合わせるステップ、を経て得られる。
少なくとも前述の保護フィルムF3と偏光子との貼り合わせに用いられる接着剤は、光硬化性接着剤であることが好ましい。即ち、保護フィルムF3の特定の樹脂層と第二の偏光子62との間には、光硬化性接着剤からなる接着層が配置されていることが好ましい。光硬化性接着剤は、偏光子と保護フィルムF3との接着性を高めうる。さらに、光硬化性接着剤からなる接着層は、従来のポリビニルアルコール系接着剤よりも弾性率が高いことから、偏光子の寸法変化する力を液晶セルに伝えにくくし、液晶パネルを反りにくくしうる。
光硬化性接着剤について
光硬化性接着剤は、光硬化性化合物を含み、必要に応じて架橋剤や光重合開始剤、その他の添加剤などをさらに含んでよい。
光硬化性樹脂は、紫外線硬化性樹脂または電子線硬化性樹脂などでありうる。紫外線硬化性樹脂は、ラジカル重合性樹脂であっても、カチオン重合性樹脂であってもよい。紫外線硬化樹脂は、一種類であってもよいし、二種以上の混合物であってもよい。二種以上の混合物は、二種類以上のラジカル重合性樹脂の混合物であってもよいし、二種類以上のカチオン重合性樹脂の混合物であってもよいし、ラジカル重合性樹脂とカチオン重合性樹脂の混合物であってもよい。
ラジカル重合性樹脂の例には、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂などが含まれる。(メタ)アクリル樹脂は、前述と同様のものが用いられる。(メタ)アクリルアミド樹脂の例には、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(2,2−ジメトキシ−1−ヒドロキシエチル)−(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、p−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミドなどが含まれ、好ましくはN−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドである。
カチオン重合性樹脂の例には、エポキシ樹脂が含まれる。エポキシ樹脂は、二官能以上の芳香族エポキシ樹脂または脂肪族エポキシ樹脂でありうる。芳香族エポキシ樹脂の例には、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテルなどのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂などのノボラック型のエポキシ樹脂;それらの水素化物などが含まれる。脂肪族エポキシ樹脂の例には、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテルなどが含まれる。エポキシ樹脂は、モノマー、オリゴマー、ポリマーまたはそれらの混合物などでありうる。
これらのなかでも、取り扱いやすく、接着強度が高いことなどから、エポキシ樹脂が好ましい。
紫外線硬化性樹脂を含む光硬化性接着剤(紫外線硬化性接着剤)は、光重合開始剤をさらに含むことが好ましい。光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤または光カチオン重合開始剤でありうる。
光重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂100重量部あたり、通常、0.1〜10重量部程度であり、好ましくは0.5〜3重量部である。一方、電子線硬化性樹脂を含む光硬化性接着剤(電子線硬化性接着剤)は、必ずしも光重合開始剤を含まなくてもよい。
光硬化性接着剤は、必要に応じてさらに添加剤を含んでもよい。そのような添加剤の例には、電子線による硬化速度や感度を上げるための増感剤(例えばカルボニル化合物)、接着促進剤(例えばシランカップリング剤やエチレンオキシド)、保護フィルムの特定の樹脂層上でのぬれ性を高める添加剤、接着層の機械的強度や加工性などを向上させる添加剤(例えばアクリロキシ基化合物や炭化水素系天然樹脂または合成樹脂)、紫外線吸収剤、老化防止剤、染料、加工助剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、粘着付与剤、充填剤(金属化合物フィラー以外)、可塑剤、レベリング剤、発泡抑制剤、帯電防止割などが含まれる。
光硬化性接着剤から得られる接着層の厚みは、0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.01〜5μmである。接着層の厚みが0.01μm未満であると、十分な接着強度が得られにくく、接着層の厚みが10μm超であると、接着層の透明性が損なわれやすいだけでなく、発泡による浮きや剥がれが生じやすく、得られる偏光板の耐久性が十分でないことがある。
少なくとも保護フィルムF3を含む偏光板は、保護フィルムF3と偏光子とを、光硬化性接着剤を介して貼り合わせるステップ;貼り合わされた偏光子と保護フィルムF3を含む積層物に、活性エネルギー線(電子線、紫外線等)を照射して、光硬化性接着剤から得られる接着層を光硬化させるステップ、を経て得ることができる。
保護フィルムF3と偏光子とを、光硬化性接着剤を介して貼り合わせるステップでは、偏光子の保護フィルムF3を貼り合わせる面と保護フィルムF3の特定の樹脂層の表面の少なくとも一方に、光硬化性接着剤を塗布して、接着層を形成すればよい。前述した通り、少なくとも保護フィルムF3は、特定の樹脂層を有することが重要である。
光硬化性接着剤の塗布方式は、光硬化性接着剤の粘度や塗布厚みによって選択されうる。光硬化性接着剤の塗布方式の例には、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーターなどが含まれる。
偏光子と保護フィルムの特定の樹脂層との貼り合わせは、ロールラミネーターなどで行うことができる。
光硬化性接着剤を介して貼り合わされた偏光子と保護フィルムの積層物に、活性エネルギー線(電子線、紫外線等)を照射して、接着層を硬化させる。活性エネルギー線の照射は、任意の方向から行うことができ、保護フィルムの外側から照射することが好ましい。活性エネルギー線を偏光子側から照射すると、偏光子が活性エネルギー線によって劣化するおそれがある。
紫外線硬化性接着剤から得られる接着層を硬化させる場合、紫外線の照射量は、積算光量で100〜500mJ/cm2であることが好ましく、200〜400mJ/cm2であることがより好ましい。
電子線硬化性接着剤から得られる接着層を硬化させる場合、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5〜300kVであり、より好ましくは10〜250kVである。加速電圧が5kV未満であると、電子線が接着層の厚み方向に十分に照射できず、硬化不足となりやすい。一方、加速電圧が300kV超であると、電子線によって保護フィルムや偏光子にダメージを与えやすい。電子線の照射線量は、好ましくは5〜100kGyであり、より好ましくは10〜75kGyである。照射線量が5kGy未満であると接着層が硬化不足となりやすく、100kGy超であると、保護フィルムや偏光子にダメージを与え、機械的強度の低下や黄変を生じやすい。
電子線照射は、通常、不活性ガス雰囲気下で行うが、必要であれば大気中または酸素を少量含有する雰囲気下で行ってもよい。
偏光板をラインで連続的に製造する場合、ライン速度は、光硬化性接着剤の硬化時間にもよるが、好ましくは1〜500m/min、より好ましくは5〜300m/min、さらに好ましくは10〜100m/minとしうる。ライン速度が低すぎると生産性が低く、保護フィルムへのダメージが大きくなりやすい。一方、ライン速度が高すぎると、光硬化性接着剤の硬化が不十分となり、十分な接着性が得られにくい。
ポリビニルアルコール系接着剤について
その他の保護フィルムと偏光子との貼り合わせに用いられる接着剤は、特に制限されず、前述の光硬化性接着剤であってもよいし、ポリビニルアルコール系接着剤であってもよい。
ポリビニルアルコール系接着剤は、ポリビニルアルコール樹脂、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール樹脂などの樹脂を含み、必要に応じて架橋剤などをさらに含んでもよい。
ポリビニルアルコール系樹脂の例には、ポリ酢酸ビニルのケン化物またはその誘導体;酢酸ビニルと共重合成分との共重合体のケン化物;ポリビニルアルコールをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化またはリン酸エステル化した変性ポリビニルアルコールなどが含まれる。共重合成分の例には、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸およびそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン;(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体などが含まれる。これらの樹脂は、一種類であってもよいし、二種以上の混合物であってもよい。
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、接着性の点から、好ましくは100〜5000程度、さらに好ましくは1000〜4000である。平均ケン化度は、接着性の点から、好ましくは85〜100モル%程度、さらに好ましくは90〜100モル%である。
アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂とジケテンとを反応させて得られる。アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール樹脂は、酢酸等の溶媒中にポリビニルアルコール系樹脂を分散させて得られる分散溶液にジケテンを添加する方法;ジメチルホルムアミドまたはジオキサン等の溶媒にポリビニルアルコール系樹脂を溶解させて得られる溶液にジケテンを添加する方法;またはポリビニルアルコール系樹脂にジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法などで得られる。
アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂のアセトアセチル基変性度は、0.1モル%以上であり、好ましくは0.1〜40モル%程度であり、より好ましくは1〜20%であり、さらに好ましくは2〜7モル%である。アセトアセチル基変性度が0.1モル%未満であると、得られる接着層の耐水性が不十分となりやすく、アセトアセチル基変性度が40モル%超であると、耐水性を高める効果が十分でないことがある。アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂のアセトアセチル基変性度は、NMRにより測定することができる。
ポリビニルアルコール系接着剤に含まれる架橋剤の例には、ポリビニルアルコール系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物であってよく、その具体例には、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基を2個有するアルキレンジアミン類;トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等のイソシアネート類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジまたはトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミンなどのエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒドなどのモノアルデヒド類;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒドなどのジアルデヒド類;メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロール化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物などのアミノ−ホルムアルデヒド樹脂;ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の二価金属、または三価金属の塩およびその酸化物などが含まれる。なかでも、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂およびジアルデヒド類が好ましい。アミノ−ホルムアルデヒド樹脂は、好ましくはメチロール基を有する化合物であり;ジアルデヒド類は、好ましくはグリオキザールである。なかでも、メチロール基を有する化合物が好ましく、メチロールメラミンが特に好ましい。
ポリビニルアルコール系接着剤における架橋剤の含有量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して10〜60重量部程度であり、好ましくは20〜50重量部である。ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が上記範囲にある接着剤は、接着性が高いからである。架橋剤の含有量が60重量部超であると、架橋剤の反応が短時間で進行しやすく、接着剤をゲル化させやすいことから、ポットライフが短くなりやすい。
ポリビニルアルコール系接着剤は、必要に応じて金属化合物コロイドを含んでいてもよい。金属化合物コロイドは、金属化合物微粒子が分散媒中に分散しているものであり、安定性を有しうる。金属化合物コロイドを含むポリビニルアルコール系接着剤は、架橋剤の含有量が多くても、比較的安定である。
金属化合物コロイドの微粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜100nm、より好ましくは1〜50nmである。金属化合物コロイドの微粒子を接着層に均一に分散させうるため、接着性を確保しつつ、クニック欠陥(光抜け)を抑制しうる。
金属化合物コロイドを構成する金属化合物の例には、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物;ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、リン酸カルシウムなどの金属塩;セライト、タルク、クレイ、カオリンなどの鉱物が含まれる。なかでも、正電荷を有する金属化合物が好ましく、そのような金属化合物は、シリカ、アルミナ、チタニアなどがあり、好ましくはシリカ、アルミナである。
金属化合物コロイドは、分散媒に分散したコロイド溶液の状態で存在している。分散媒の例には、水、アルコール類が含まれる。コロイド溶液中の固形分濃度は、1〜50重量%程度であり、好ましくは1〜30重量%である。金属化合物コロイドは、安定剤として硝酸、塩酸、酢酸などの酸をさらに含有してもよい。
ポリビニルアルコール系接着剤における金属化合物コロイド(固形分)の含有量は、好ましくはポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して200重量部以下であり、好ましくは10〜200重量部であり、より好ましくは20〜175重量部であり、特に好ましくは30〜150重量部である。金属化合物コロイドの含有量が上記範囲であると、金属化合物コロイドの微粒子を接着層に均一に分散させうるため、接着性を確保しつつ、クニック欠陥(光抜け)を抑制しうる。
ポリビニルアルコール系接着剤は、必要に応じてシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などをさらに含んでよい。
ポリビニルアルコール系接着剤は、水溶液(水系樹脂溶液)であることが好ましい。ポリビニルアルコール系接着剤の樹脂濃度は、塗工性や保存安定性などを高める観点などから、好ましくは0.1〜15重量%であり、より好ましくは0.5〜10重量%である。樹脂溶液の粘度は、好ましくは1〜50mPa・sである。金属化合物コロイドを含むポリビニルアルコール系接着剤の粘度は、1〜20mPa・s程度としうる。樹脂溶液のpHは、好ましくは2〜6であり、より好ましくは2.5〜5であり、特に好ましくは3〜5であり、最も好ましくは3.5〜4.5である。金属化合物コロイドの表面電荷は、通常、pHによって調整されうる。金属化合物コロイドの表面電荷は、好ましくは正電荷である。正電荷を有することにより、クニック欠陥の発生をさらに抑制し得る。金属化合物コロイドの表面電荷は、例えばゼータ電位測定機でゼータ電位を測定することによって確認できる。
架橋剤および金属化合物コロイドを含むポリビニルアルコール系接着剤は、例えばポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤とを予め混合して適切な濃度に調整した溶液に、金属化合物コロイドを配合する方法や;ポリビニルアルコール系樹脂と金属化合物コロイドを混合した後、架橋剤を混合する方法などによって調製することができる。
ポリビニルアルコール系接着剤から得られる接着層の厚みは、好ましくは10〜300nmであり、より好ましくは10〜200nmであり、特に好ましくは20〜150nmである。接着層の厚みが上記範囲にあれば、十分な接着性が得られやすい。
その他の透明保護フィルムを含む偏光板は、その他の保護フィルムと偏光子とを、ポリビニルアルコール系接着剤を介して貼り合わせるステップ;貼り合わされた偏光子と保護フィルムの積層物を乾燥するステップ、を経て得ることができる。
ポリビニルアルコール系接着剤の塗布方法は、例えばロール法、噴霧法、浸漬法等でありうる。また、ポリビニルアルコール系接着剤が金属化合物コロイドを含む場合、ポリビニルアルコール系接着剤の塗布厚みは、乾燥後の厚みが金属化合物コロイドの平均粒子径よりも大きくなるようにする。乾燥温度は、5〜150℃、好ましくは30〜120℃としうる。乾燥時間は、120秒以上、好ましくは300秒以上としうる。
バックライト80は、公知の光源を導光板側面に配設したサイドライト(エッジライト)型面光源、または拡散板の下に公知の光源を配列させた直下型面光源などでありうる。公知の光源の例には、冷陰極管(CCFL)や熱陰極管(HCFL)、外部電極蛍光管(EEFL)、平面蛍光管(FFL)、発光ダイオード素子(LED)、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)が含まれる。
なかでも、液晶表示装置の消費電力を少なくできるなどの観点から、光源としてLEDを用いたバックライト(LEDバックライト)が好ましい。
LEDバックライトを有する液晶表示装置は、薄型であるため、液晶セル20およびその両側に配置された第一および第二の偏光板40および60と、LEDバックライト80との距離が極めて小さい。そのため、LEDバックライトの熱によって、液晶セルの反りが顕著に生じやすい。
本発明の液晶表示装置は、少なくとも保護フィルムF3として「特定の樹脂層を有する保護フィルム」を含む。特定の樹脂層を有する保護フィルムは、コロナ処理、プラズマ処理、けん化処理などの表面処理が施されていなくても、偏光子と良好に接着させることができる。それにより、表面処理に起因する保護フィルムと偏光子との接着ムラを低減することができる。さらに、本発明の液晶表示装置は、少なくとも保護フィルムF3と偏光子(第二の偏光子62)との間に「光硬化性接着剤から得られる接着層」を有する。それにより、偏光子と保護フィルムとの接着性をさらに高めつつ、液晶パネルの反りを低減することができる。
従って、液晶表示装置の表示ムラ;特に開口率が高い液晶表示装置、COA構造を有する液晶表示装置、およびLEDバックライトを有する液晶表示装置などで目立ちやすい表示ムラを抑制することができる。
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
1.材料の準備
1)透明ポリマー基材
アクリル系樹脂フィルム
LMMA:ラクトン化ポリメチルメタクリレートフィルム(ラクトン化率20%、UV吸収剤なし、波長590nmにおけるR0:0μm、Rth:0nm、厚み30μm)
ノルボルネン系樹脂フィルム
ZEONOR1:日本ゼオン社製、商品名:ZEONOR(UV吸収剤なし、波長590nmにおけるR0:70μm、Rth:250nm、厚み40μm)
ZEONOR2:日本ゼオン社製、商品名:ZEONOR(UV吸収剤なし、波長590nmにおけるR0:0μm、Rth:0nm、厚み40μm)
ZEONOR3:日本ゼオン社製、商品名:ZEONOR(UV吸収剤なし、波長590nmにおけるR0:52μm、Rth:125nm、厚み40μm)
セルロースエステルフィルム(セルローストリアセテートフィルム)
KC4CZ:コニカミノルタオプト社製、商品名:KC4CZ(UV吸収剤なし、波長590nmにおけるR0:0μm、Rth:0nm、厚み40μm)
KC4UA:コニカミノルタオプト社製、商品名:KC4UA(UV吸収剤あり、厚み40μm)
2)特定の樹脂層用組成物
(合成例2−1)
ポリエステルウレタン(第一工業製薬社製、商品名:スーパーフレックス210、固形分33%)16.8g、架橋剤(オキサゾリン含有ポリマー、日本触媒社製、商品名:エポクロスWS−700、固形分25%)4.2g、1重量%のアンモニア水2.0g、コロイダルシリカ(扶桑化学工業社製、商品名:クォートロンPL−3、固形分20重量%)0.42gおよび純水76.6gを混合し、樹脂層用組成物1を得た。
(合成例2−2)
ポリエステルウレタン(第一工業製薬社製、商品名:スーパーフレックス210、固形分33%)を、ポリエーテルウレタン(大日本インキ化学工業社製、商品名:ハイドランWLS202)に変更した以外は合成例1と同様にして、樹脂層用組成物2を得た。
(合成例2−3)
ポリエステルウレタン(第一工業製薬社製、商品名:スーパーフレックス210、固形分33%)17.0g、架橋剤(オキサゾリン含有ポリマー、日本触媒社製、商品名:エポクロスWS−700、固形分25%)4.2gおよび純水78.6gを混合し、樹脂層用組成物3を得た。
3)接着層用組成物
(合成例3−1)
N−ヒドロキシエチルアクリルアミド100重量部に、光重合開始剤(チバ・ジャパン社製、商品名:イルガキュア127)3重量部を配合して、接着層用組成物1を得た。
(合成例3−2)
水素化エポキシ樹脂(ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコートYX8000)10.0gに、光重合開始剤(ADEKA社製、商品名:SP−500)4.0gを配合して、接着剤組成物2を得た。
(合成例3−3)
アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂(平均重合度1200、ケン化度98.5モル%、アセトアセチル基変性度5モル%)100重量部と、メチロールメラミン20重量部とを、30℃において純水に溶解させて固形分濃度0.5%の水溶液を得た。それにより、接着層用組成物3を得た。
(実施例1)
偏光子の作製
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬して膨潤させた。得られたフィルムを、30℃の、0.3重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=0.5/8)のヨウ素溶液中で1分間染色させながら、延伸倍率3.5倍となるまで一定方向に延伸した。得られたフィルムを、65℃の、4重量%のホウ酸水溶液中に0.5分間浸漬させながら、前述の一定方向における総延伸倍率が6倍となるまで延伸した。延伸後、得られたフィルムを、70℃のオーブンで3分間乾燥させて、厚さ26μmの偏光子を得た。偏光子の含水率は13.5重量%であった。
第一の偏光板(視認側の偏光板)の作製
KC4UA(セルロースエステルフィルム)を準備した。KC4UA(セルロースエステルフィルム)を、60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬させた後、水洗および乾燥させて、保護フィルムF1として、けん化処理済みセルロースエステルフィルムを得た。
一方、透明ポリマー基材層として、ZEONOR1(ノルボルネン樹脂フィルム)を準備した。ZEONOR1(ノルボルネン樹脂フィルム)の片面に、コロナ放電処理を施した。コロナ放電における電子照射量は77W/m2/minとした。得られたフィルムのコロナ処理面に、樹脂層用組成物3をバーコーターにて乾燥後の厚みが0.3μmとなるように塗布した後、150℃で乾燥して、特定の樹脂層を形成した。これにより、透明ポリマー基材層と、特定の樹脂層とを有する保護フィルムF2を得た。
前述の偏光子の両面に、乾燥後の厚みが0.05μmとなるように接着剤組成物3を塗布した後、偏光子の一方の面に保護フィルムF2を、他方の面に保護フィルムF1を貼り合わせて積層物を得た。得られた積層物を、小型ラミネーターを用いて熱圧着した後、熱風乾燥機(70℃)にて5分間乾燥させて、第一の偏光板(視認側の偏光板)を得た。
第二の偏光板(バックライト側の偏光板)の作製
透明ポリマー基材層として、LMMA(ラクトン化ポリメチルメタクリレートフィルム)を準備した。LMMA(ラクトン化ポリメチルメタクリレートフィルム)の片面に、樹脂層用組成物1をバーコーターにて乾燥後の厚みが0.3μmになるように塗布した後、140℃で乾燥させて特定の樹脂層を形成した。これにより、透明ポリマー基材層と、特定の樹脂層とを有する保護フィルムF3を得た。同様にして、保護フィルムF4を得た。
さらに、保護フィルム3および4の特定の樹脂層上に、それぞれ接着層用組成物1をマイクログラビアコーター(グラビアロール:#300、回転速度140%/ライン速)にて、硬化後の厚みが5μmとなるように塗布して、接着剤付き保護フィルムF3およびF4を得た。
前述の偏光子の両面に、それぞれ接着剤付き保護フィルムF3とF4とを、ロール機にて貼り合わせた。その後、保護フィルムF3とF4のそれぞれに紫外線を照射して接着剤を硬化させた。ライン速度は20m/minとし、保護フィルムF3とF4に照射する紫外線の積算光量はそれぞれ200mJ/cm2とした。それにより、第二の偏光板(バックライト側の偏光板)を得た。
液晶表示装置の作製
図2および3に記載の液晶セル(特開2009−301010号の図16に記載の液晶セル)を準備した。この液晶セルは、薄膜トランジスタとカラーフィルタとが同一基板上に配置されたものである。得られた液晶セルの視認側の面に前述の第一の偏光板を貼り合わせ、バックライト側の面に前述の第二の偏光板を貼り合わせた。第一の偏光板は、偏光子の液晶セル側の面に保護フィルムF2が配置されるように貼り合わせ、第二の偏光板は、偏光子の液晶セル側の面に保護フィルムF3が配置されるように貼り合わせた。さらに、バックライトユニットとして、SONY製BRAVIA KDL−46HX800)のLEDバックライトユニットを用いた。それにより、開口率67%の液晶表示装置を得た。
(実施例2〜7)
表1に示されるように、保護フィルムF1〜F4の種類、表面処理の有無または種類、特定の樹脂層の有無または種類、あるいは接着剤の種類を変更した以外は実施例1と同様にして液晶表示装置を得た。
(比較例1〜7)
表1に示されるように、保護フィルムF1〜F4の種類、表面処理の有無または種類、特定の樹脂層の有無または種類、あるいは接着剤の種類を変更した以外は実施例1と同様にして液晶表示装置を得た。
実施例1〜7および比較例1〜7で得た液晶表示装置の構成を表1に示す。
液晶表示装置の表示ムラの評価
得られた液晶表示装置を23℃、55%RH環境下において24時間湿熱処理した。その後、バックライトを点灯させてから2時間経過した後、黒表示させたときの最大輝度と最小輝度を、輝度分布測定装置(コニカミノルタ社製、商品名「CA−1500」)を用いて測定した。最大輝度と最小輝度の測定は、以下のようにして行った。即ち、液晶パネルの表示画面を横4区画×縦4区画の合計16区画に分割した。そして、縦方向中央部2区画と横方向中央部の2区画の合計4区画の輝度のうち最も小さい輝度を最小輝度とし;全区画(16区画)のうち最も大きい輝度を最大輝度とした。
得られた最大輝度を、最小輝度で除して、黒輝度比を算出した。
黒輝度比=最大輝度/最小輝度
表示ムラの評価は、以下の基準に基づいて行った。
◎:1.50未満
○:1.50以上1.75未満
△:1.75以上2.00未満
×:2.00以上
一方、得られた液晶表示装置を、50℃90%RH環境下において24時間湿熱処理した。その後、前述と同様にして黒輝度比を測定し、表示ムラを評価した。
実施例1〜7の表示装置は、比較例1〜7の表示装置よりも、湿熱条件が変動する環境下においても、表示ムラが少なく、画像表示特性が良好であることが示される。
特に実施例7、比較例1および6の対比から、保護フィルムF3を、特定の樹脂層を有する(未処理の)保護フィルムとし、かつ光硬化性接着剤を用いて得られる実施例7の表示装置は、保護フィルムF3を、特定の樹脂層を有するコロナ処理済み保護フィルムとし、かつ水糊を用いて得られる比較例1および2の表示装置、ならびに保護フィルムF3を、特定の樹脂層を有しない(未処理の)保護フィルムとし、かつ水糊を用いて得られる比較例7の表示装置よりも表示ムラが抑制されることがわかる。
また実施例2と6との対比から、保護フィルムF2とF3の両方を、特定の樹脂層を有する保護フィルムとし、かつ光硬化性接着剤を用いて得られる実施例6の表示装置は、保護フィルムF3のみを特定の樹脂層を有する保護フィルムとし、かつ光硬化性接着剤を用いて得られる実施例2の表示装置よりも表示ムラが一層抑制されることがわかる。