本発明の光学フィルムの製造方法は、膜厚が10〜40μmの範囲内であり、幅が1.4m以上である光学フィルムを溶液流延法によって製造する光学フィルムの製造方法であって、流延支持体より剥離したウェブを、MD方向に延伸倍率として1.01〜1.10倍の範囲内で予備延伸した後、さらにMD方向に本延伸する際に、前記光学フィルムのガラス転移温度をTg(℃)としたとき、前記予備延伸を(Tg−100)〜(Tg−20)℃の範囲内の温度で行い、前記本延伸を(Tg−10)〜(Tg+100)℃の範囲内の温度で行うことを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項7までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
当該予備延伸の延伸倍率が上記範囲内であれば、本延伸での樹脂の配向制御に影響を与えるほど強い樹脂の配向がなく、樹脂鎖も十分にほぐしやすい。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記本延伸を延伸倍率として1.15〜2.50倍の範囲内で行うことが、薄膜化の観点から好ましい。本発明に係る予備延伸によって樹脂鎖同士の絡み合い点が減少していることから、前記範囲のような高い延伸倍率で本延伸を行っても、低い延伸応力に保つことができ、搬送ローラーによる擦り傷や光学的なムラの発生を低減することができる。
さらに、前記予備延伸を、延伸開始時の残留溶媒量を20〜100質量%の範囲内で行い、前記本延伸を、延伸開始時の残留溶媒量を1〜30質量%の範囲内で行うこと、さらに、前記予備延伸を光学フィルムのガラス転移温度をTgとしたときに、(Tg−100)〜(Tg−20)℃の範囲内の温度で行い、前記本延伸を(Tg−10)〜(Tg+100)℃の範囲内で行うことが、延伸応力の急激な上昇を抑制し、かつフィルム中の樹脂の配向を高め、搬送ローラーによる擦り傷や光学的なムラの発生を低減でき、好ましい。
また、予備延伸時の残留溶媒量や延伸温度が上記範囲内であれば、本延伸での樹脂の配向制御に影響を与えるほど強い樹脂の配向がなく、樹脂鎖も十分にほぐしやすい。
さらに、予備延伸時の温度が上記範囲内であれば、溶媒の乾燥速度も速く、溶媒の揮発による発泡が起こる可能性も低く、特別な加熱装置も必要ないので生産適性が向上する。
前記予備延伸の延伸スパンは2m以下であることが好ましい。設備上は、延伸スパンはできるだけ小さいことが好ましいが、余り短いと配置が難しくなるため、0.2〜1.5mの範囲がより好ましい。ここで延伸スパンとは、フィルムがMD方向に延伸されている長さのことをいい、具体的にはフィルムがローラーに非接触で搬送されている長さ、すなわちローラー間距離をいう。また延伸にクリップテンター等を用いる場合は、当該クリップの間隔をいう。
前記本延伸の延伸スパンは2m以上であることが好ましい。これはフィルム幅に対して延伸スパンが短いと幅収縮に規制がかかるため、均一な延伸ができない懸念があるためである。
本発明の光学フィルムの製造方法は、薄膜化及び広幅化のために、前記MD方向に予備延伸し続いて本延伸した後に、TD方向に1.3〜3.0倍の範囲内で延伸することが、薄膜及び広幅の光学フィルムを得る観点から、好ましい。また、TD方向に延伸することで、フィルムのMD方向及びTD方向の弾性率が向上し、好ましい。
また、前記光学フィルムに用いる熱可塑性樹脂が、セルロースアシレート、アクリル樹脂及びセルロースアシレートとアクリル樹脂を混合した樹脂のいずれかから選択されることが、溶液流延法によって高品質な光学フィルムを得る観点から好ましい。さらに、本発明の効果は、熱可塑性樹脂がアクリル樹脂であるときに、より発現しやすいことから、アクリル樹脂フィルムへの適用に好適である。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
≪本発明の光学フィルムの製造方法の概要≫
本発明の光学フィルムの製造方法は、膜厚が10〜40μmの範囲内であり、幅が1.4m以上である光学フィルムを溶液流延法によって製造する光学フィルムの製造方法であって、流延支持体より剥離したウェブを、MD方向に1.01〜1.10倍の範囲内で予備延伸した後、さらにMD方向に本延伸する際に、前記光学フィルムのガラス転移温度をTg(℃)としたとき、前記予備延伸を(Tg−100)〜(Tg−20)℃の範囲内の温度で行い、前記本延伸を(Tg−10)〜(Tg+100)℃の範囲内の温度で行うことを特徴とし、かかる製造方法を採用することによって、MD方向への延伸時において、延伸応力の急激な上昇を抑制し、かつフィルム中の樹脂の配向を高めることで、搬送ローラーによる擦り傷の発生や光学的なムラの発生が低減された光学フィルムを提供するものである。
また、本発明の光学フィルムの製造方法は、膜厚が10〜40μmの範囲内であり、幅が1.4m以上である光学フィルムを溶液流延法によって製造する光学フィルムの製造方法であって、流延支持体より剥離したウェブを、MD方向に延伸倍率として1.01〜1.10倍の範囲内で予備延伸した後、さらにMD方向に本延伸する際に、前記予備延伸の延伸スパンが2m以下であり、前記本延伸の延伸スパンが2m以上であることを特徴とし、上記効果を有する光学フィルムを提供するものである。
以下、本発明の光学フィルムの製造方法によって製造された光学フィルムを、本願では「本発明の光学フィルム」という。
本発明でいう「予備延伸」とは、高倍率に延伸する「本延伸」前に行う、低倍率の延伸操作をいい、具体的には、MD方向に1.01〜1.10倍の範囲内で行う延伸をいう。
<光学フィルムの製造装置>
まず、本発明の光学フィルムの製造方法を実施するのに用いられる製造装置について説明する。
図1は、本発明の光学フィルムの製造方法を実施する製造装置の一例を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る光学フィルムの製造装置1は、流延装置101と、MD方向への予備延伸装置102とMD方向への本延伸装置103と、TD方向への延伸装置104と、乾燥装置105と、巻取装置106とを備え、流延装置101で形成された流延膜(ウェブ)3を、搬送しつつ、予備延伸装置102でMD方向に予備的な延伸し、本延伸装置103で同じくMD方向に高倍率の本延伸を行う。さらに必要に応じてTD方向への延伸装置104でTD方向に延伸して、乾燥装置105で乾燥(熱処理)し、巻取装置106で光学フィルムとして巻き取るようになっている。第1延伸装置102と第2延伸装置103との間に乾燥装置を配置してウェブ3を乾燥させるようにしてもよい。
ここで流延膜(ウェブ)とは、樹脂や添加剤等を溶解したドープを流延支持体上に流延、製膜し、剥離した状態のものをいう。
[流延装置]
流延装置101は、支持体としての、表面が鏡面仕上げされた金属製の無端ベルト(無端ベルトに代えて、表面が鏡面仕上げされた金属製の円筒ドラム等でもよい。)101aと、樹脂溶液(ドープ)2を無端ベルト101a上に流延するためのダイ101bと、無端ベルト101a上に流延されたドープ2から溶媒を除去するための加熱装置101cと、無端ベルト101a上で形成されたウェブ3を無端ベルト101aから剥離するための剥離ローラー4とを備える。無端ベルト101aは、駆動ローラー101a1と従動ローラー101a2とに巻き掛けられて、図中の矢印方向に走行可能とされている。剥離ローラー4は、無端ベルト101a上にドープ2が流延される側の端部に配置されている。流延装置101は、樹脂溶液(ドープ)2を無端ベルト101a上に流延する流延工程と、無端ベルト101a上で形成されたドープ2の流延膜(ウェブ)3を無端ベルト101aから剥離する剥離工程とを行うものである。
ダイ101bから無端ベルト101a上にドープ2が流延されると、ドープ2は無端ベルト101a上でゲル化して流延膜(ウェブ)3を形成する。無端ベルト101a上で形成されたウェブ3は剥離ローラー4によって無端ベルト101aから剥離される。ここで、無端ベルト101a上でのウェブ3の厚さは、巻取装置106で巻き取られた光学フィルムの厚さが所定の厚さとなるように、種々の値に変更可能である。なお、無端ベルト101a上でのウェブ3の厚さは、ドープ2の流延量や無端ベルト101aの走行速度等に応じて調整される。
加熱装置101cは、乾燥箱101c1と、乾燥箱101c1に配設された第1加熱風供給装置101dと、第2加熱風供給装置101eと、排気口101fとを備える。第1加熱風供給装置101d及び第2加熱風供給装置101eは、それぞれ、加熱風供給管101d1、101e1と、ヘッダー101d2、101e2とを備える。
第1加熱風供給装置101d側の無端ベルト101a上のウェブ3の温度及び第2加熱風供給装置101e側の無端ベルト101a上のウェブ3の温度は、それぞれ、溶媒の蒸発に要する時間に基いて決定される無端ベルト101aの走行速度、ドープ2中における微粒子の分散度合、生産性等を考慮して、例えば、−5℃〜70℃の範囲が好ましく、0℃〜60℃の範囲がより好ましい。
第1加熱風供給装置101d及び第2加熱風供給装置101eから供給される加熱風の風圧は、溶媒の蒸発の均一性、ドープ2中における微粒子の分散度合等を考慮して、例えば、50〜5000Paの範囲が好ましい。
第1加熱風供給装置101d及び第2加熱風供給装置101eは、一定温度の加熱風だけを供給してもよいし、無端ベルト101aの走行方向に沿って複数の温度の加熱風を段階的に供給してもよい。
図1に示した加熱装置101cは、ウェブ3を加熱風で加熱して溶媒を除去するものであるが、これに限らず、例えば、ウェブ3を赤外線ヒーターで加熱するもの、無端ベルト101aの裏面に加熱風を吹き付けてウェブ3を裏面から加熱するもの等でもよい。
無端ベルト101a上にドープ2を流延してから、無端ベルト101aからウェブ3を剥離するまでの時間は、製造された光学フィルムの厚さ、溶媒の種類等に応じて異なるが、無端ベルト101aからの良好な剥離性を考慮して、例えば、0.5〜5分の範囲が好ましい。
無端ベルト101aとしては、表面が鏡面仕上げされたものが好ましく、例えば、ステンレス鋼や鋳物で表面がメッキ仕上げされた金属製の無端ベルトが好ましく用いられる。無端ベルト101aの幅は、製造しようとする光学フィルムの大きさに応じて異なるが、例えば、1700mm〜2700mmの範囲が好ましい。そして、ドープ2を流延する幅は、無端ベルト101aの幅のうちの、例えば、80〜99%の範囲が好ましい。
[予備延伸装置]
予備延伸装置102は、乾燥風取入れ口102cと排出口102bとを有する外箱102aと、外箱102aの中に入れられた延伸装置102dとを備える。予備延伸装置102は、無端ベルト101aから剥離されたウェブ3をMD方向に延伸するものである。
延伸装置102dでは搬送ローラーに周速差をつけることで、ウェブ3をMD方向に延伸することが可能となっている。なお、乾燥風取入口102bと排出口102cとは、逆であってもよい。予備延伸装置102における溶媒除去手段としては加熱風を使用した場合を示しているが、溶媒除去手段としては特に限定はなく、このほかに、例えば赤外線ヒーターで加熱する手段等が挙げられる。
予備延伸装置102における乾燥は、一定の温度で乾燥してもよいし、3〜4段階の温度に分けて、数段階の温度に分けて乾燥してもよい。
MD方向の延伸については従来公知の方式、代表的には、ヒーター加熱方式とオーブン加熱方式、を用いることができる。
ヒーター加熱方式は、低速ローラー群と高速ローラー群の間に設置されたヒーターにより瞬時に延伸温度にまで昇温し、比較的短い延伸スパンで延伸するものである。
延伸に伴う幅収縮は延伸スパンが短いほど小さく抑えられるため、広幅フィルムを得るためには、低速ローラー群と高速ローラー群の間隔はできるだけ短いことが好ましい。
具体的には、延伸スパンが2m以下で搬送ローラーが設置されていることが好ましく、より好ましくは、0.2〜1.5mの範囲内である。設備上は、延伸スパンはできるだけ小さいことが好ましいが、余り短いと配置が難しくなるため、上記範囲内がより好ましい。ここで延伸スパンとは、フィルムがMD方向に延伸されている長さのことをいい、具体的にはフィルムがローラーに非接触で搬送されている長さ、すなわちローラー間距離をいう。
低速ローラー群では、フィルムの粘着や擦り傷が発生しない範囲でなるべく延伸温度に近い温度まで予熱しておくことが好ましい。
予備延伸装置102内は、フィルム通路の上下に配置されたノズルから吹き出された熱風の間をノズルに接触しないように、フィルムを浮かせながら非接触で搬送しつつ延伸するフローティングが好ましい。なお、予備延伸装置102の入り口より上流側、及び出口より下流側は、一般的にはフィルムを安定に搬送可能な抱き角でサクションローラーやガイドローラーにより保持搬送される。
ヒーター加熱方式は、幅収縮量を小さく抑えられ広幅フィルムの製膜に有利であること、及び比較的省スペースで設置できることなどの利点があり、オーブン加熱方式には、光学特性の均一性が高いこと、擦り傷や粘着故障が出にくいことなどの利点がある。MD延伸方式は使用する材料や必要な物性などを考慮して適宜選択される。
[本延伸装置]
本延伸装置103は、乾燥風取入れ口103cと排出口103bとを有する外箱103aと、外箱103aの中に入れられた延伸装置103dとを備える。本延伸装置103は、予備延伸装置102で延伸されたウェブ3を、MD方向にさらに高い延伸倍率で延伸する延伸工程を行うものである。延伸装置103dは、特に限定はなく、汎用性や操作の容易さの観点から、例えば、予備延伸装置と同様な搬送ローラーとして、低速ローラー群、高速ローラー群を具備して、当該ローラーに周速差をつけることで、ウェブ3をMD方向に延伸する装置でもよく、また、他の延伸装置としてクリップテンター、ピンテンター等が挙げられ、必要に応じて選択し使用することができる。本実施形態では、本延伸工程は、ある程度乾燥されたウェブ3を搬送ローラーに周速差をつけることで延伸する方法又はクリップテンターによって延伸する方法及び装置であることが好ましい。
本延伸装置103は、乾燥風取入れ口103cと排出口103bとを有する。これは逆であってもよい。本延伸装置103における溶媒除去手段としては加熱風を使用した場合を示しているが、溶媒除去手段としては特に限定はなく、このほかに、例えば赤外線ヒーターで加熱する手段等が挙げられる。
本延伸においても、予備延伸と同様にヒーター加熱方式とオーブン加熱方式を適宜選択して用いることが好ましいが、本延伸の延伸スパンは2m以上であることが好ましい。これはフィルム幅に対して延伸スパンが短いと幅収縮に規制がかかるため、均一な延伸ができない懸念があるためである。当該延伸スパンは2〜4mの範囲内であることが設備をコンパクトに設計する上で好ましく、より好ましくは2.5〜3.5mの範囲である。
本延伸装置103における乾燥条件は、この第2延伸装置103による延伸開始時のウェブ3の残留溶媒量に応じて好適温度が異なるが、乾燥時間、収縮ムラ、伸縮量の安定性等を考慮し、また、無理のない延伸を実現し、製造された光学フィルムのボイドのない良好な乾燥性や平面性や膜厚均一性の確保及び弾性率や光学特性の確保の観点から、一定の温度で乾燥してもよいし、3〜4段階の温度に分けて、数段階の温度に分けて乾燥してもよい。
[TD延伸装置]
TD延伸装置104は、乾燥風取入れ口104cと排出口104bとを有する外箱104aと、外箱104aの中に入れられたTD延伸装置104dとを備える。TD延伸装置104は、本延伸装置103で延伸されたウェブ3をTD方向に追加延伸する延伸工程を行うものである。TD延伸装置104dは、テンター延伸装置であることが好ましく、使用するテンターは、特に限定はなく、汎用性や操作の容易さの観点から、例えば、クリップテンター、ピンテンター等が挙げられ、必要に応じて選択し使用することが可能である。特に、クリップテンターを用いることが好ましい。
乾燥風取入れ口104cと排出口104bとは、逆であってもよい。TD延伸装置103における溶媒除去手段としては加熱風を使用した場合を示しているが、溶媒除去手段としては特に限定はなく、このほかに、例えば赤外線ヒーターで加熱する手段等が挙げられる。
TD延伸装置104における乾燥条件は、このTD延伸装置104による延伸開始時のウェブ3の残留溶媒量に応じて好適温度が異なるが、乾燥時間、収縮ムラ、伸縮量の安定性等を考慮し、また、無理のない延伸を実現し、製造された光学フィルムのボイドのない良好な乾燥性や平面性や膜厚均一性の確保及び弾性率や光学特性の確保の観点から、一定の温度で乾燥してもよいし、3〜4段階の温度に分けて、数段階の温度に分けて乾燥してもよい。
[乾燥装置]
乾燥装置105は、乾燥風取入れ口105cと排出口105bとを有する乾燥箱105aと、ウェブ3を搬送する上部の搬送ローラー105dと下部の搬送ローラー105eとを備える。乾燥装置105は、MD方向への予備延伸、本延伸及びTD方向に延伸されたウェブ3を乾燥する熱処理工程を行うものである。上部の搬送ローラー105dと下部の搬送ローラー105eとは上下一組で、複数組から構成されている。乾燥装置105に配設される搬送ローラーの数は、乾燥条件、乾燥方法、製造される光学フィルム8の長さ等により異なり適宜設定している。上部の搬送ローラー105dと下部の搬送ローラー105eとは駆動源によって回転駆動されない自由回転ローラーとなっている。また、乾燥装置105から巻取装置106までの間には、全て自由回転する搬送ローラーが用いられるわけではなく、通常、1本〜数本の搬送用駆動ローラー(駆動源によって回転駆動するローラー)の設置を必要とする。基本的に、搬送用駆動ローラーは、その駆動でウェブ3を搬送するのが目的であるので、ニップやサクション(エアーの吸引)等により、ウェブ3の搬送と、駆動ローラーの回転とを同期させる機構が付いている。
乾燥装置105では、加熱空気、赤外線等を単独で用いて乾燥してもよいし、加熱空気と赤外線とを併用して乾燥してもよい。簡便さの点から加熱空気を用いることが好ましい。なお、図1は加熱空気を使用した場合を示している。乾燥温度は、乾燥工程に入る時のウェブの残留溶媒量により、好適温度が異なるが、乾燥時間、収縮ムラ、伸縮量の安定性等を考慮し、例えば、30〜180℃の範囲で残留溶媒量により適宜選択して決めればよい。また、一定の温度で乾燥してもよいし、3〜4段階の温度に分けて、数段階の温度に分けて乾燥してもよい。
乾燥装置104での乾燥処理後のウェブ3の残留溶媒量は、この乾燥工程(熱処理工程)の負荷、保存時の寸法安定性や伸縮率等を考慮し、0.01〜0.5質量%の範囲が好ましい。なお、本実施形態では、流延装置101で形成されたウェブ3が乾燥装置105で徐々に溶媒が除去され、全残留溶媒量が例えば2質量%以下となったウェブ3を光学フィルム8という場合がある。
[巻取装置]
巻取装置106は、乾燥装置105で、所定の残留溶媒量となった光学フィルム8を必要量の長さに巻き芯にロール状に巻き取る。巻き取る際の温度は、巻き取り後の収縮によるスリキズ、巻き緩み等を防止するために室温まで冷却することが好ましい。使用する巻き取り機は、特に限定なく使用でき、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の巻き取り方法で巻き取ることができる。
<光学フィルムの製造方法>
図1に示したような光学フィルムの製造装置1によれば、樹脂溶液2を金属支持体101a上に流延する流延工程と、支持体101a上で形成されたウェブ3を支持体101aから剥離する剥離工程と、剥離したウェブ3をMD方向に予備延伸する予備延伸工程と、次いでMD方向に本延伸する本延伸工程と、さらに必要に応じてTD方向に延伸するTD延伸工程と、延伸したウェブ3を乾燥する熱処理工程と、乾燥したウェブ3を光学フィルムとして巻き取る巻取工程とを備える、溶液流延法による光学フィルムの製造方法が実施される。このような溶液流延法による光学フィルムの製造方法は、弾性率を高めることができる高分子量の樹脂を用いることができること、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイライン等の光学欠点の抑制等の観点から好ましい光学フィルムの製造方法である。
本実施形態においては、製造された光学フィルム8の薄膜での用途を考慮し、更に製造された光学フィルム8のカールや皺等を防止する観点から、膜厚が10〜40μmの範囲の光学フィルムを製造するものである。膜厚を上記範囲内に制御するには、ドープ流延時の流延量による延伸前の膜厚の設定、及び延伸倍率によって行うことが好ましい。
以下、前述した内容に加えて、さらに説明する。
[溶解工程]
溶解工程は、熱可塑性樹脂に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で、熱可塑性樹脂及びその他の添加剤を撹拌しながら溶解しドープを形成する工程、あるいは熱可塑性樹脂溶液に、場合によっては、その他の添加剤溶液を混合して主溶解液であるドープを形成する工程である。
熱可塑性樹脂の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、又は特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
ドープ中の熱可塑性樹脂は、計10〜45質量%の範囲であることが好ましい。溶解中又は後のドープに添加剤を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
濾過は捕集粒子径0.5〜5μmの範囲で、かつ濾水時間10〜25sec/100mlの範囲の濾材を用いることが好ましい。
この方法では、粒子分散時に残存する凝集物や主ドープ添加時発生する凝集物を、捕集粒子径0.5〜5μmの範囲で、かつ濾水時間10〜25sec/100mlの範囲の濾材を用いることで凝集物だけ除去できる。主ドープでは粒子の濃度も添加液に比べ十分に薄いため、濾過時に凝集物同士がくっついて急激な濾圧上昇することもない。
必要な場合は、後述するアクリル粒子仕込釜より濾過器で大きな凝集物を除去し、ストック釜へ送液する。その後、ストック釜より主ドープ溶解釜へアクリル粒子添加液を添加する。
その後主ドープは主濾過器にて濾過され、これに紫外線吸収剤添加液等がさらにインライン添加されてもよい。
多くの場合、主ドープには返材が10〜50質量%程度含まれることがある。返材には添加剤が含まれているため、その場合には返材の添加量に合わせて添加剤の添加量をコントロールすることが好ましい。
返材とは、光学フィルムを細かく粉砕した物で、光学フィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷等でスペックアウトした光学フィルム原反が使用される。
また、あらかじめ熱可塑性樹脂、場合によって添加剤を混練してペレット化したものも、好ましく用いることができる。
(ドープの溶媒)
本発明の光学フィルムを溶液流延法で製造する場合のドープを形成するのに有用な溶媒は、例えば有機溶媒である。そのような有機溶媒としては、例えば、熱可塑性樹脂、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン(メチレンクロライド)、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができ、メチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系での熱可塑性樹脂の溶解を促進する役割もある。
特に、メチレンクロライド、及び炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、熱可塑性樹脂と添加剤を、少なくとも計10〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
[流延工程]
再び図1を参照して説明する。流延工程は、ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイに送液し、無限に移送する無端の金属ベルト、例えばステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
(流延工程中の溶媒蒸発工程)
ウェブを支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が乾燥効率が良く好ましい。また、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを−5〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。より好ましくは40〜70℃の範囲内である。
面品質、透湿性、剥離性の観点から、0.5〜5分以内で該ウェブを支持体から剥離することが好ましい。
[剥離工程]
剥離工程は、金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。
金属支持体上の剥離位置における温度は好ましくは0〜40℃の範囲であり、更に好ましくは5〜30℃の範囲である。
無端ベルト101a上で形成されたウェブ3を無端ベルト101aから剥離するときのウェブ3の残留溶媒量(剥離時のウェブ3の残留溶媒量)は、無端ベルト101aからのウェブ3の剥離性、剥離後のウェブ3の搬送性、延伸時のテンターによる保持性、製造された光学フィルムの外観や光学特性等を考慮して、例えば、20〜100質量%の範囲が好ましく、35〜90質量%の範囲がより好ましく、45〜80質量%の範囲がさらに好ましい。
なお、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、前述した理由に加えて、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により20〜150質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損ね、剥離張力によるツレや縦スジが発生しやすいため、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。
ウェブの残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)}×100
ただし、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
また、無端ベルト101aからウェブ3を剥離するときにウェブ3に作用する張力(剥離張力)、及び、剥離後にウェブ3を搬送するときにウェブ3に作用する張力(搬送張力)に起因して、ウェブ3は、ウェブ3の搬送方向(MD方向)に延伸される。ここでの延伸を制御する観点から、前記剥離張力及び前記搬送張力は、例えば、20〜400N/mの範囲が好ましい。
金属支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、剥離の際に皺が入りやすい場合、200N/m以下の張力で剥離することが好ましく、更には、剥離できる最低張力〜175N/mの範囲、次いで、最低張力〜150N/mの範囲で剥離することが好ましいが、特に好ましくは最低張力〜100N/mの範囲で剥離することである。
本発明においては、該金属支持体上の剥離位置における温度を−5℃〜70℃の範囲とするのが好ましく、0〜60℃の範囲がより好ましく、15〜60℃の範囲とするのが最も好ましい。
[MD方向への予備延伸工程]
本発明に係る予備延伸は、MD方向に1.01〜1.10倍の範囲内で行うことが特徴である。この範囲であれば、本延伸での樹脂の配向制御に影響を与えるほど強い樹脂の配向がなく、樹脂鎖も十分にほぐしやすい。予備延伸で1.10倍を超える延伸を行うと、たしかに樹脂鎖はほぐれるが配向が不均一となりやすく、本延伸によって当該樹脂の配向の不均一性が拡大されやすくなるため、上記範囲内とすることが必要である。
予備第1の延伸工程におけるMD方向の延伸倍率は、式「予備延伸工程におけるMD方向の延伸倍率=予備延伸工程後のウェブの搬送速度/予備延伸工程前のウェブの搬送速度」で求められる。
本発明に係る予備延伸時のウェブの搬送速度は、10〜100m/分の範囲で行うことが好ましく、15〜100m/分の範囲で行うことが生産性や破断の点でより好ましい。中でも、熱可塑性樹脂の樹脂鎖の絡み合いを効果的にほぐす観点から、20〜80m/分の範囲で行うことが特に好ましい。
本発明では、流延支持体より剥離したウェブを予備延伸工程及び本延伸工程によってMD方向に延伸するときの、好ましい延伸倍率は前述のとおりであるが、予備延伸と本延伸のMD方向の延伸倍率の積の値は、1.5〜2.5倍の範囲内とすることが好ましい。前記範囲内での延伸を行うことにより、本発明の効果の発現と均一な延伸処理をする観点から好ましく、さらに当該積の値は、1.5〜2.0倍の範囲にすることが特に好ましい。
予備延伸時の温度は、光学フィルムのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg−100)〜(Tg−10)℃の範囲内の温度で行うことが好ましく、(Tg−100)〜(Tg−20)℃の範囲内の温度で行うことがより好ましい。延伸温度が前記範囲内であれば、本延伸での樹脂の配向制御に影響を与えるほど強い樹脂の配向がなく、樹脂鎖も十分にほぐしやすい。
なお、フィルムのガラス転移温度Tg(℃)は、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)とする。
また、ウェブ3を予備延伸装置102で延伸開始するときのウェブ3の残留溶媒量(予備延伸装置102による延伸開始時のウェブ3の残留溶媒量)は、本発明の効果を得るのに、前記式で表される残留溶媒量(質量%)が、20〜100質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは21〜80質量%の範囲内であり、特に好ましくは30〜80質量%の範囲である。
残留溶媒量が前記範囲内であれば、本延伸での樹脂の配向制御に影響を与えるほど強い樹脂の配向がなく、樹脂鎖も十分にほぐしやすい。
[MD方向への本延伸工程]
当該本延伸の延伸倍率としては、1.15〜2.50倍の範囲内で行うことが、薄膜化の観点から好ましい。本発明に係る予備延伸によって樹脂鎖同士の絡み合いが効果的にほぐされているため、前記範囲のような高い延伸倍率で本延伸を行っても、低い延伸応力に保つことができ、搬送ローラーによる擦り傷や光学的なムラの発生を低減することができる。
ここで、本延伸工程におけるMD方向の延伸倍率は、式「本延伸工程におけるMD方向の延伸倍率=本延伸工程後のウェブの搬送速度/本延伸工程前のウェブの搬送速度」で求められる。
本発明に係る本延伸時のウェブの搬送速度は、10〜100m/分の範囲で行うことが好ましく、15〜100m/分の範囲で行うことが生産性や破断の点でより好ましい。
また、当該本延伸時の残留溶媒量は、1〜30質量%の範囲内で行うことが、加熱時に発泡することもなく、所望の延伸倍率で延伸することができ、平面性や光学的な均一性の高い光学フィルムを得ることができる。当該残留溶媒量は好ましくは、3〜18質量%の範囲内である。
さらに、光学フィルムのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、当該本延伸を(Tg−10)〜(Tg+100)℃の範囲内で行うことが、延伸応力の急激な上昇を抑制し、かつフィルム中の樹脂の配向を高め、搬送ローラーによる擦り傷や光学的なムラの発生を低減でき、好ましい。好ましくは、Tg〜(Tg+80)℃の範囲である。
本延伸工程時の延伸応力は、1〜10MPaの範囲内であることが好ましく、さらに延伸応力が、2〜5MPaの範囲内であることが、擦り傷の発生を低下しながら、熱可塑性樹脂の均一な配向を促す観点から、特に好ましい。
上記延伸応力は、以下の方法によって測定することができる。
〈延伸応力の評価〉
テンシロン試験機(ORIENTEC社製、RTC−1225A)を用いて、以下のような測定を行う。
光学フィルムを120mm(MD:長手方向)×10mm(TD:幅手方向)で切り出し、試料を23±2℃、55±5%RHの環境下で、24時間放置した後、23℃・55%RHに保持した恒温槽の中でチャック長50mmで50mm/minの速度でフィルムをMD方向に引っ張り、そのときの引っ張り荷重を、フィルム断面積(すなわち、フィルム幅×膜厚)で割ることでMD方向の延伸応力が求められる。
[TD延伸工程]
本発明に好ましい実施態様としては、前記MD方向に予備延伸及び本延伸した後に、TD方向に1.3〜3.0倍の範囲内で延伸することが、光学フィルムの薄膜化及び広幅化のために好ましく、さらに光学フィルムのMD方向及びTD方向の弾性率を高める観点からも好ましい。より好ましくは、光学フィルムとしての弾性率等の物性を維持する観点から、1.5〜2.5倍の範囲内である。
ここで、TD方向の延伸倍率は、式「TD延伸工程におけるTD方向の延伸倍率=TD延伸工程後のウェブの幅/TD延伸工程前のウェブの幅」で求められる。なお、ウェブの幅は、C型JIS1級の鋼製スケールで測定した値である。
TD延伸工程において、テンター延伸装置を用いる場合は、テンターによるフィルムの保持位置を左右で独立に制御できる装置を用いることが好ましい。また、平面性を改善するため意図的に異なる温度を持つ区画を作ることも好ましい。また、異なる温度区画の間にそれぞれの区画が干渉を起こさないように、ニュートラルゾーンを設けることも好ましい。
なお、TD延伸工程において、延伸操作は多段階に分割して実施してもよい。また、二軸延伸する場合は、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。
TD延伸装置104にウェブが搬送される直前のウェブの残留溶媒量は、20質量%未満であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量%の範囲である。上記範囲内であれば、平面性や光学的な均一性を高めることができ、好ましい。
また、TD方向の延伸時の温度は、具体的には、光学フィルムのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、(Tg−10)〜(Tg+100)℃の範囲内で行うことが好ましく、(Tg−5)〜(Tg+100)℃の範囲内で行うことが好ましい。
TD方向の延伸工程において、雰囲気の幅方向の温度分布が少ないことが、フィルムの均一性を高める観点から好ましく、TD延伸工程での幅方向の温度分布は、±5℃以内が好ましく、±2℃以内がより好ましく、±1℃以内がさらに好ましい。
本発明に係るTD方向の延伸時のウェブの搬送速度は、15〜200m/分の範囲で行うことが好ましく、15〜180m/分の範囲で行うことが生産性や破断の点でより好ましい。
[熱処理工程]
熱処理工程は、延伸したウェブを乾燥装置内に複数配置したローラーに交互に通して搬送しつつ乾燥(熱処理)する工程である。
乾燥手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。余り急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ねやすい。高温による乾燥は残留溶媒量が10質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥はおおむね30〜250℃の範囲で行われることが好ましく、特に40〜160℃の範囲で乾燥させることが好ましい。
[巻取工程]
巻取工程は、ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってから光学フィルムとして巻取り機により巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.05質量%以下にすることにより寸法安定性の良好な本発明の光学フィルムを得ることができる。特に0.00〜0.05質量%の範囲で巻き取ることが好ましい。
巻取り方法は、一般に使用されている方法を用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使い分ければよい。
本発明の光学フィルムは、長尺フィルムであることが好ましく、具体的には、100m〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。また、フィルムの幅は1.4m以上であることが広幅の光学フィルムを得る上で必要であり、1.6〜3mであることが好ましく、1.8〜3mであることがより好ましい。
本発明の光学フィルムの膜厚は、薄膜の偏光板用保護フィルムとして使用する場合を考慮して10〜40μmの範囲であることが特徴であるが、15〜35μmであることがより好ましく、20〜35μmであることが特に好ましい。当該膜厚が上記範囲内であれば、薄膜化への要望に応えることができ、また光学フィルムとして要求される物性等を満たすことができる。
以上のような方法によって製造された光学フィルムは、低吸湿性で、透明度が高く、耐候性に優れた光学フィルムである。
≪光学フィルムを構成する材料≫
以下、本発明の光学フィルムに用いられる各種材料について説明する。
<熱可塑性樹脂>
本発明の光学フィルムは、熱可塑性樹脂を含有する。ここで、「熱可塑性樹脂」とは、ガラス転移温度又は融点まで加熱することによって軟らかくなり、目的の形に成形できる樹脂のことをいう。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、製造が容易であること、光学的に透明であることが好ましい要件として挙げられる。
本発明でいう透明とは、可視光の全光線透過率が60%以上であることをさし、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
上記の性質を有していれば特に限定はないが、例えば、セルロース(ジ、トリ)アセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースアシレート系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート系樹脂、ノルボルネン系樹脂、単環の環状オレフィン系樹脂、環状共役ジエン系樹脂、ビニル脂環式炭化水素系樹脂、及び、これらの水素化物等の環状ポリオレフィン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリ乳酸、セロファン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンイミド、ナイロン等のポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアリレート、熱可塑性エラストマー、シリコーン等を挙げることができる。中でも、セルロースアシレート系樹脂(以下、セルロースアシレートともいう。)やアクリル系樹脂(以下、アクリル樹脂ともいう。)、又はそれらの混合樹脂がフィルムの強度の向上、光学特性の調整ができるため、好ましい。
特に、アクリル樹脂は他の樹脂に比較して硬度がやや低いため、擦り傷が発生しやすいが、本発明の製造方法を採用することで、当該擦り傷の発生は大幅に改善される。
〔セルロースアシレート〕
本発明の光学フィルムは、セルロースアシレートを主成分として含有することが好ましく、偏光板保護フィルムや位相差フィルム用途の光学フィルムとして好適である。主成分とは、当該光学フィルム中のセルロースアシレートの含有比率が55質量%以上であることをいう。好ましくは70質量%以上である。
本発明に係るセルロースアシレートは、炭素原子数が2〜4の範囲内であるアシル基を有することが好ましい。炭素原子数が2〜4の範囲内であるアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、及びブタノイル基を挙げることができる。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離のヒドロキシ基を有している。セルロースアシレートは、これらのヒドロキシ基の一部又は全部をアシル基によりアシル化した重合体(ポリマー)である。アシル基総置換度は、グルコース単位一つあたり、2位、3位及び6位に位置するセルロースのヒドロキシ基の全てがアシル化している割合(100%のアシル化は置換度3)を意味する。
好ましいアシル基の例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブタノイル基、tert−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基(アシル基が炭素原子数2〜4である場合)である。
具体的なセルロースアシレートとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースアセテートプロピオネートベンゾエート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
これらの中でより好ましいセルロースアシレートは、セルロース(ジ、トリ)アセテート、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートであり、特に好ましいセルロースアシレートはセルロース(ジ、トリ)アセテート及びセルロースアセテートプロピオネートである。
セルローストリアセテートは、平均酢化度(結合酢酸量)54.0〜62.5%の範囲のものが好ましく用いられ、更に好ましいのは、平均酢化度が58.0〜62.5%の範囲のセルローストリアセテートである。
セルロースジアセテートは、平均酢化度(結合酢酸量)51.0%〜56.0%の範囲が好ましく用いられる。市販品としては、(株)ダイセル製のL20、L30、L40、L50、イーストマンケミカルジャパン(株)製のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60Sが挙げられる。
セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすものが好ましい。
式(I) 2.0≦X+Y≦2.95
式(II) 0≦X≦2.5
中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。
上記アシル基の置換度の測定方法は、ASTM−D817−96に準じて測定することができる。
セルロースアシレートの重量平均分子量Mwは、弾性率及び延伸応力を制御する観点から、80000〜300000の範囲内であることが好ましく、120000〜200000の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であると、溶液流延製膜時に延伸による弾性率の制御が行いやすく、フィルムの破延伸時の応力を制御しやすい。
セルロースアシレートの数平均分子量(Mn)は30000〜150000の範囲が、得られたセルロースアシレートフィルムの機械的強度が高く好ましい。さらに40000〜100000の数平均分子量のセルロースアシレートが好ましく用いられる。
セルロースアシレートの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の値は、1.4〜3.0の範囲であることが好ましい。
セルロースアシレートの重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
測定条件は以下のとおりである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=500〜1000000の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
本発明で用いられるセルロースアシレートの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースアシレートは適宜混合して、あるいは単独で使用することができる。
例えば、綿花リンター由来セルロースアシレート:木材パルプ(針葉樹)由来セルロースアシレート:木材パルプ(広葉樹)由来セルロースアシレートの比率が100:0:0、90:10:0、85:15:0、50:50:0、20:80:0、10:90:0、0:100:0、0:0:100、80:10:10、85:0:15、40:30:30で用いることができる。
本発明に係るセルロースアシレートは、公知の方法により製造することができる。一般的には、原料のセルロースと所定の有機酸(酢酸、プロピオン酸など)と酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸など)、触媒(硫酸など)と混合して、セルロースをエステル化し、セルロースのトリエステルができるまで反応を進める。トリエステルにおいてはグルコース単位の三個のヒドロキシ基は、有機酸のアシル酸で置換されている。同時に2種類の有機酸を使用すると、混合エステル型のセルロースアシレート、例えばセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートを作製することができる。次いで、セルロースのトリエステルを加水分解することで、所望のアシル置換度を有するセルロースアシレートを合成する。その後、濾過、沈殿、水洗、脱水、乾燥などの工程を経て、セルロースアシレートができあがる。
本発明に係るセルロースアシレートは、20mlの純水(電気伝導度0.1μS/cm以下、pH6.8)に1g投入し、25℃、1hr、窒素雰囲気下にて撹拌したときのpHが6〜7の範囲であり、電気伝導度が1〜100μS/cmの範囲であることが好ましい。
具体的には特開平10−45804号公報に記載の方法を参考にして合成することができる。
〔アクリル樹脂〕
本発明の光学フィルムは、アクリル樹脂を含有するフィルムであることが好ましい。本発明において、アクリル樹脂とはアクリル酸エステルあるいはメタアクリル酸エステルの重合体であって、ほかのモノマーとの共重合体も含まれる。
したがって、本発明に用いられるアクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。樹脂としては特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%の範囲内、及びこれと共重合可能なほかの単量体単位1〜50質量%の範囲内からなるものが好ましい。
共重合可能なほかの単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリロイルモルホリンやN,N−ジメチルアクリルアミドなどのアミド基を有するビニルモノマー、エステル部分に炭素数5〜22の脂環式炭化水素基を有するメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルや、アクリル酸、メタクリル酸等のα、β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα、β−不飽和ニトリルが挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上の単量体を併用して用いることができる。
また、本発明のアクリル樹脂としては、環構造を有してもよく、具体的には、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、N−置換マレイミド構造及び無水マレイン酸構造、ピラン環構造が挙げられる。
アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレートの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレートn−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソペンチルアクリレート、ネオペンチルアクリレート、t−ペンチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが挙げられる。
アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルメタクリレートの具体例としては、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、s−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、イソペンチルメタクリレート、ネオペンチルメタクリレート、t−ペンチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどが挙げられる。
好ましくは、イソプロピルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、t−ブチルメタクリレートなどが挙げられる。
アミド基を有するビニルモノマーの具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリロイルピロリジン、アクリロイルピペリジン、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、メタクリロイルモルホリン、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、メタクリロイルピロリジン、メタクリロイルピペリジン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、ビニルピロリドン等が挙げられる。好ましくは、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、ビニルピロリドンが挙げられる。
エステル部分に炭素数5〜22の脂環式炭化水素基を有するメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルの具体例としては、例えば、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸ノルボルニル、アクリル酸ノルボルニルメチル、アクリル酸シアノノルボルニル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ボルニル、アクリル酸メンチル、アクリル酸フェンチル、アクリル酸アダマンチル、アクリル酸ジメチルアダマンチル、アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イル、アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−4−メチル、アクリル酸シクロデシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸ノルボルニルメチル、メタクリル酸シアノノルボルニル、メタクリル酸フェニルノルボルニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸メンチル、メタクリル酸フェンチル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ジメチルアダマンチル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−4−メチル、メタクリル酸シクロデシル、メタクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。
好ましくは、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジメチルアダマンチルなどが挙げられる。
N−置換マレイミドとしては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−ブロモフェニル)フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−エチルフェニルマレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリメチルフェニル)マレイミド、N−(4−ベンジルフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリブロモフェニル)マレイミド等が挙げられる。
好ましくは、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどが挙げられる。
これらのモノマーは市販のものをそのまま使用することができる。
本発明に係るアクリル樹脂含有フィルムに用いられるアクリル樹脂は、フィルムとしての機械的強度、フィルムを生産する際の流動性の点から重量平均分子量(Mw)が100000〜1000000の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、300000〜500000の範囲内である。
本発明に係るアクリル樹脂の重量平均分子量は、前記ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより同様に測定することができる。
本発明におけるアクリル樹脂の製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いてもよい。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系及びアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。重合温度については、懸濁又は乳化重合では30〜100℃、塊状又は溶液重合では80〜160℃の範囲で実施しうる。得られた共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
本発明に係るアクリル樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88(以上、三菱レイヨン(株)製)、パラペットHR−S((株)クラレ製)等が挙げられる。アクリル樹脂は2種以上を併用することもできる。
〔アクリル樹脂及びセルロースアシレートを混合したフィルム〕
本発明の光学フィルムは、アクリル樹脂とセルロースアシレートとを混合して熱可塑樹脂として用いることも好ましい。混合する場合には、アクリル樹脂とセルロースアシレートの混合質量比が、アクリル樹脂:セルロースアシレート=95:5〜50:50の範囲が好ましく、90:10〜70:30の範囲であることが、延伸時の延伸応力を制御しやすく、熱可塑性樹脂の配向もしやすい。
アクリル樹脂は、前述のアクリル樹脂から適宜選択して使用することができる。セルロースアシレートとしては、前述のセルロースアシレートから適宜選択して使用することができ、中でもセルローストリアセテート又はセルロースアセテートプロピオネートを用いることが好ましい。
本発明の光学フィルムにおいては、アクリル樹脂とセルロースアシレートが相溶状態で含有されることが好ましい。光学フィルムとして必要とされる物性や品質を、異なる樹脂を相溶させることで相互に補うことができる。
アクリル樹脂とセルロースアシレートが相溶状態となっているかどうかは、例えば、ガラス転移温度Tgにより判断することが可能である。
例えば、両者の樹脂のガラス転移温度が異なる場合、両者の樹脂を混合したときは、各々の樹脂のガラス転移温度が存在するため混合物のガラス転移温度は二つ以上存在するが、両者の樹脂が相溶したときは、各々の樹脂固有のガラス転移温度が消失し、一つのガラス転移温度となって相溶した樹脂のガラス転移温度となる。
本発明の光学フィルムにおけるアクリル樹脂とセルロースアシレートの総質量は、光学フィルム全質量の55質量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは、70質量%以上である。
<添加剤>
添加剤として、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、劣化防止剤、剥離助剤、界面活性剤、染料、微粒子等の添加剤を含有することも好ましい。
特に、下記糖エステル又は下記重縮合エステルを含有することが好ましい。
〔糖エステル〕
本発明の光学フィルムは、セルロースアシレート以外の糖エステルを含有することが、延伸によって、熱可塑性樹脂を所望の方向にそろえて配向する効果が高く好ましい。特にMD方向への予備延伸による樹脂鎖の絡みを効果的にほぐす観点から使用することが好ましい。
本発明に用いられる糖エステルとしては、ピラノース環又はフラノース環の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基の全て若しくは一部をエステル化した糖エステルであることが好ましい。
本発明に用いられる糖エステルとは、フラノース環又はピラノース環の少なくともいずれかを含む化合物であり、単糖であっても、糖構造が2〜12個連結した多糖であってもよい。そして、糖エステルは、糖構造が有するOH基の少なくとも一つがエステル化された化合物が好ましい。本発明に用いられる糖エステルにおいては、平均エステル置換度が、4.0〜8.0の範囲内であることが好ましく、5.0〜7.5の範囲内であることがより好ましい。
本発明に適用可能な糖エステルとしては、特に制限はないが、下記一般式(A)で表される糖エステルを挙げることができる。
一般式(A)
(HO)m−G−(O−C(=O)−R2)n
上記一般式(A)において、Gは、単糖類又は二糖類の残基を表し、R2は、脂肪族基又は芳香族基を表し、mは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合しているヒドロキシ基の数の合計であり、nは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R2)基の数の合計であり、3≦m+n≦8であり、n≠0である。
一般式(A)で表される構造を有する糖エステルは、ヒドロキシ基の数(m)、−(O−C(=O)−R2)基の数(n)が固定された単一種の化合物として単離することは困難であり、式中のm、nの異なる成分が数種類混合された化合物となることが知られている。したがって、ヒドロキシ基の数(m)、−(O−C(=O)−R2)基の数(n)が各々変化した混合物としての性能が重要であり、本発明の光学フィルムの場合、平均エステル置換度が、5.0〜7.5の範囲内である糖エステルが好ましい。
上記一般式(A)において、Gは単糖類又は二糖類の残基を表す。単糖類の具体例としては、例えばアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソースなどが挙げられる。
以下に、一般式(A)で表される糖エステルの単糖類残基を有する化合物の具体例を示すが、本発明はこれら例示する化合物に限定されるものではない。
また、二糖類残基の具体例としては、例えば、トレハロース、スクロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、イソトレハロース等が挙げられる。
以下に、一般式(A)で表される糖エステルの二糖類残基を有する化合物の具体例を示すが、本発明はこれら例示する化合物に限定されるものではない。
一般式(A)において、R2は、脂肪族基又は芳香族基を表す。ここで、脂肪族基及び芳香族基は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい。
また、一般式(A)において、mは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合しているヒドロキシ基の数の合計であり、nは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R2)基の数の合計である。そして、3≦m+n≦8であることが必要であり、4≦m+n≦8であることが好ましい。また、n≠0である。なお、nが2以上である場合、−(O−C(=O)−R2)基は互いに同じでもよいし異なっていてもよい。
R2の定義における脂肪族基は、直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素数1〜25のものが好ましく、1〜20のものがより好ましく、2〜15のものが特に好ましい。脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、アミル、iso−アミル、tert−アミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビシクロオクチル、アダマンチル、n−デシル、tert−オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ジデシル等の各基が挙げられる。
また、R2の定義における芳香族基は、芳香族炭化水素基でもよいし、芳香族複素環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、炭素数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニル等の各環が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環が特に好ましい。芳香族複素環基としては、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子のうち少なくとも一つを含む環が好ましい。複素環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン等の各環が挙げられる。芳香族複素環基としては、ピリジン環、トリアジン環、キノリン環が特に好ましい。
次に、一般式(A)で表される糖エステルの好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの例示する化合物に限定されるものではない。
糖エステルは一つの分子中に二つ以上の異なった置換基を含有していても良く、芳香族置換基と脂肪族置換基を1分子内に含有、異なる二つ以上の芳香族置換基を1分子内に含有、異なる二つ以上の脂肪族置換基を1分子内に含有することができる。
また、2種類以上の糖エステルを混合して含有することも好ましい。芳香族置換基を含有する糖エステルと、脂肪族置換基を含有する糖エステルを同時に含有することも好ましい。
〈合成例:一般式(A)で表される糖エステルの合成例〉
以下に、本発明に好適に用いることのできる糖エステルの合成の一例を示す。
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖を34.2g(0.1モル)、無水安息香酸を180.8g(0.8モル)、ピリジンを379.7g(4.8モル)、それぞれ仕込み、撹拌下で窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。次に、コルベン内を4×102Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエンを1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液を300g添加し、50℃で30分間撹拌した後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水を100g添加し、常温で30分間水洗した後、トルエン層を分取し、減圧下(4×102Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、化合物A−1、A−2、A−3、A−4及びA−5の混合物を得た。得られた混合物をHPLC及びLC−MASSで解析したところ、A−1が7質量%、A−2が58質量%、A−3が23質量%、A−4が9質量%、A−5が3質量%で、糖エステルの平均エステル置換度が、6.57であった。なお、得られた混合物の一部をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%のA−1、A−2、A−3、A−4及びA−5を得た。
当該糖エステルの添加量は、熱可塑性樹脂に対して0.1〜20質量%の範囲で添加することが好ましく、1〜15質量%の範囲で添加することがより好ましい。
また本発明の光学フィルムは、下記エステル(重縮合エステル)を含有することが好ましい。
〔重縮合エステル〕
本発明の光学フィルムは、可塑剤の一つとして、糖エステル以外のエステルを用いることも好ましい。
本発明に適用可能な糖エステル以外のエステルとしては、特に制限はないが、下記一般式(1)で表される構造を有する重縮合エステルを用いることが好ましい。
当該重縮合エステルはその可塑的な効果から、本発明の光学フィルムにおいては、1〜20質量%の範囲で含有することが好ましく、2〜15質量%の範囲で含有することがより好ましい。
一般式(1)
B3−(G2−A)n−G2−B4
上記一般式(1)において、B3及びB4は、それぞれ独立に脂肪族又は芳香族モノカルボン酸残基、若しくはヒドロキシ基を表す。G2は、炭素数2〜12のアルキレングリコール残基、炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基を表す。Aは、炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表す。nは1以上の整数を表す。
本発明において、重縮合エステルは、ジカルボン酸とジオールを反応させて得られる繰り返し単位を含む重縮合エステルであり、Aは重縮合エステル中のカルボン酸残基を表し、G2はアルコール残基を表す。
重縮合エステルを構成するジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸又は脂環式ジカルボン酸であり、好ましくは芳香族ジカルボン酸である。ジカルボン酸は、1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。特に芳香族、脂肪族を混合させることが好ましい。
重縮合エステルを構成するジオールは、芳香族ジオール、脂肪族ジオール又は脂環式ジオールであり、好ましくは脂肪族ジオールであり、より好ましくは炭素数1〜4のジオールである。ジオールは、1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。
中でも、少なくとも芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、炭素数1〜8のジオールとを反応させて得られる繰り返し単位を含むことが好ましく、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸とを含むジカルボン酸と、炭素数1〜8のジオールとを反応させて得られる繰り返し単位を含むことがより好ましい。
重縮合エステルの分子の両末端は、封止されていても、封止されていなくてもよい。
一般式(1)のAを構成するアルキレンジカルボン酸の具体例としては、1,2−エタンジカルボン酸(コハク酸)、1,3−プロパンジカルボン酸(グルタル酸)、1,4−ブタンジカルボン酸(アジピン酸)、1,5−ペンタンジカルボン酸(ピメリン酸)、1,8−オクタンジカルボン酸(セバシン酸)などから誘導される2価の基が含まれる。Aを構成するアルケニレンジカルボン酸の具体例としては、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。Aを構成するアリールジカルボン酸の具体例としては、1,2−ベンゼンジカルボン酸(フタル酸)、1,3−ベンゼンジカルボン酸、1,4−ベンゼンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
Aは、1種類であっても、2種類以上が組み合わされてもよい。中でも、Aは、炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸と炭素原子数8〜12のアリールジカルボン酸との組み合わせが好ましい。
一般式(1)中のG2は、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基、炭素原子数6〜12のアリールグリコールから誘導される2価の基、又は炭素原子数4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基を表す。
G2における炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、及び1,12−オクタデカンジオール等から誘導される2価の基が含まれる。
G2における炭素原子数6〜12のアリールグリコールから誘導される2価の基の例には、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)などから誘導される2価の基が含まれる。Gにおける炭素原子数が4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、ジエチレングルコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどから誘導される2価の基が含まれる。
G2は、1種類であっても、2種類以上が組み合わされてもよい。中でも、G2は、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基が好ましく、2〜5がさらに好ましく、2〜4が最も好ましい。
一般式(1)におけるB3及びB4は、各々芳香環含有モノカルボン酸又は脂肪族モノカルボン酸から誘導される1価の基、若しくはヒドロキシ基である。
芳香環含有モノカルボン酸から誘導される1価の基における芳香環含有モノカルボン酸は、分子内に芳香環を含有するカルボン酸であり、芳香環がカルボキシ基と直接結合したものだけでなく、芳香環がアルキレン基などを介してカルボキシ基と結合したものも含む。芳香環含有モノカルボン酸から誘導される1価の基の例には、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、フェニル酢酸、3−フェニルプロピオン酸などから誘導される1価の基が含まれる。中でも安息香酸、パラトルイル酸が好ましい。
脂肪族モノカルボン酸から誘導される1価の基の例には、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸などから誘導される1価の基が含まれる。中でも、アルキル部分の炭素原子数が1〜3であるアルキルモノカルボン酸から誘導される1価の基が好ましく、アセチル基(酢酸から誘導される1価の基)がより好ましい。
本発明に用いられる重縮合エステルの重量平均分子量は、500〜3000の範囲であることが好ましく、600〜2000の範囲であることがより好ましい。重量平均分子量は前記ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
以下、一般式(1)で表される構造を有する重縮合エステルの具体例を示すが、これに限定されるものではない。
以下、上記説明した重縮合エステルの具体的な合成例について記載する。
〈重縮合エステルP1〉
エチレングリコール180g、無水フタル酸278g、アジピン酸91g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応のエチレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP1を得た。酸価0.20、数平均分子量450であった。
〈重縮合エステルP2〉
1,2−プロピレングリコール251g、無水フタル酸244g、アジピン酸103g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP2を得た。酸価0.10、数平均分子量450であった。
〈重縮合エステルP3〉
1,4−ブタンジオール330g、無水フタル酸244g、アジピン酸103g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,4−ブタンジオールを減圧留去することにより、重縮合エステルP3を得た。酸価0.50、数平均分子量2000であった。
〈重縮合エステルP4〉
1,2−プロピレングリコール251g、テレフタル酸354g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP4を得た。酸価0.10、数平均分子量400であった。
〈重縮合エステルP5〉
1,2−プロピレングリコール251g、テレフタル酸354g、p−トロイル酸680g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP5を得た。酸価0.30、数平均分子量400であった。
〈重縮合エステルP6〉
180gの1,2−プロピレングリコール、292gのアジピン酸、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中200℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP6を得た。酸価0.10、数平均分子量400であった。
〈重縮合エステルP7〉
180gの1,2−プロピレングリコール、無水フタル酸244g、アジピン酸103g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中200℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP7を得た。酸価0.10、数平均分子量320であった。
〈重縮合エステルP8〉
エチレングリコール251g、無水フタル酸244g、コハク酸120g、酢酸150g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中200℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応のエチレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP8を得た。酸価0.50、数平均分子量1200であった。
〔可塑剤〕
本発明の光学フィルムは、本発明の効果を得る上で必要に応じて他の可塑剤を含有することができる。
可塑剤は特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤及び多価アルコールエステル系可塑剤、エステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等から選択される。
そのうち、可塑剤を2種以上用いる場合は、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
(多価アルコールエステル)
本発明の光学フィルムにおいては、下記一般式(2)で表される多価アルコールエステルを含有することも好ましい。
一般式(2)
B1−G−B2
上記一般式(2)において、B1及びB2は、それぞれ独立に脂肪族又は芳香族モノカルボン酸残基を表す。Gは、炭素数が2〜12の直鎖又は分岐構造を有するアルキレングリコール残基を表す。
一般式(2)において、Gは、炭素原子数2〜12の直鎖又は分岐構造を有するアルキレングリコールから誘導される2価の基を表す。
Gにおける炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、及び1,12−オクタデカンジオール等から誘導される2価の基を挙げることができる。アルキレングリコールは2種類以上、混合して用いることも好ましく用いることができる。
一般式(2)において、B1及びB2は、それぞれ独立に芳香環含有モノカルボン酸又は脂肪族モノカルボン酸から誘導される1価の基である。
芳香環含有モノカルボン酸から誘導される1価の基における芳香環含有モノカルボン酸は、分子内に芳香環を含有するカルボン酸であり、芳香環がカルボキシ基と直接結合したものだけでなく、芳香環がアルキレン基などを介してカルボキシ基と結合したものも含む。芳香環含有モノカルボン酸から誘導される1価の基の例には、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、フェニル酢酸、3−フェニルプロピオン酸などから誘導される1価の基が含まれる。中でも安息香酸、パラトルイル酸が好ましい。
脂肪族モノカルボン酸から誘導される1価の基の例には、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸などから誘導される1価の基が含まれる。中でも、アルキル部分の炭素原子数が1〜10であるアルキルモノカルボン酸から誘導される1価の基が好ましく、アセチル基(酢酸から誘導される1価の基)がより好ましい。
以下に、本発明に適用可能な多価アルコールエステルの具体例を示すが、本発明はこれら例示する化合物に限定されるものではない。
本発明に用いられる一般式(2)で表される構造を有する多価アルコールエステルは、光学フィルムに対して0.5〜5質量%の範囲で含有することが好ましく、1〜3質量%の範囲で含有することがより好ましく、1〜2質量%の範囲で含有することが特に好ましい。
本発明に用いられる一般式(2)で表される構造を有する多価アルコールエステルは、従来公知の一般的な合成方法に従って合成することができる。
(リン酸エステル)
本発明の光学フィルムは、リン酸エステルを用いることができる。リン酸エステルとしては、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等が挙げることができる。
具体的なリン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
(グリコール酸のエステル類)
また、本発明においては、多価アルコールエステル類の1種として、グリコール酸のエステル類(グリコレート化合物)を用いることができる。
本発明に適用可能なグリコレート化合物としては、特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えば、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられ、好ましくはエチルフタリルエチルグリコレートである。
〔紫外線吸収剤〕
本発明の光学フィルムは、紫外線吸収剤を含有することが耐光性を向上する観点から好ましい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐光性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が、2〜30%の範囲であることが好ましく、より好ましくは4〜20%の範囲、更に好ましくは5〜10%の範囲である。
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤である。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン928等のチヌビン類があり、これらはいずれもBASFジャパン社製の市販品であり好ましく使用できる。この中ではハロゲンフリーのものが好ましい。
このほか、1,3,5−トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。
本発明の光学フィルムは、紫外線吸収剤を2種以上含有することが好ましい。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。また、紫外線吸収剤は、ハロゲン基を有していないことが好ましい。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースアシレート(セルロースアセテート)中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、光学フィルムの乾燥膜厚が10〜40μmの場合は、光学フィルムに対して0.5〜10質量%の範囲が好ましく、0.6〜4質量%の範囲が更に好ましい。
〔酸化防止剤〕
酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれる。高湿高温の状態に有機エレクトロルミネッセンス表示装置などが置かれた場合には、光学フィルムの劣化が起こる場合がある。
酸化防止剤は、例えば、光学中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等により光学が分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、本発明の光学フィルム中に含有させるのが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等を挙げることができる。
特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
これらの化合物の添加量は、光学に対して質量割合で1ppm〜1.0%の範囲が好ましく、10〜1000ppmの範囲が更に好ましい。
〔微粒子(マット剤)〕
本発明の光学フィルムは、表面の滑り性を高めるため、必要に応じて微粒子(マット剤)をさらに含有してもよい。
微粒子は、無機微粒子であっても有機微粒子であってもよい。無機微粒子の例には、二酸化ケイ素(シリカ)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムなどが含まれる。中でも、二酸化ケイ素や酸化ジルコニウムが好ましく、得られるフィルムのヘイズの増大を少なくするためには、より好ましくは二酸化ケイ素である。
二酸化ケイ素の微粒子の例には、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600、NAX50(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKE−P10、KE−P30、KE−P50、KE−P100(以上日本触媒(株)製)などが含まれる。中でも、アエロジルR972V、NAX50、シーホスターKE−P30などが、得られるフィルムの濁度を低く保ちつつ、摩擦係数を低減させるため特に好ましい。
微粒子の一次粒子径は、5〜50nmの範囲であることが好ましく、7〜20nmの範囲であることがより好ましい。一次粒子径が大きい方が、得られるフィルムの滑り性を高める効果は大きいが、透明性が低下しやすい。そのため、微粒子は、粒子径0.05〜0.3μmの範囲の二次凝集体として含有されていてもよい。微粒子の一次粒子又はその二次凝集体の大きさは、透過型電子顕微鏡にて倍率50〜200万倍で一次粒子又は二次凝集体を観察し、一次粒子又は二次凝集体100個の粒子径の平均値として求めることができる。
微粒子の含有量は、光学フィルムを形成する熱可塑性樹脂に対して0.05〜1.0質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜0.8質量%の範囲であることがより好ましい。
<光学フィルムの物性>
本発明の光学フィルムの透湿度は、40℃、90%RHで300〜1800g/m2・24hの範囲が好ましく、更に400〜1500g/m2・24hの範囲が好ましく、40〜1300g/m2・24hの範囲が特に好ましい。透湿度はJIS Z 0208に記載の方法に従い測定することができる。
本発明の光学フィルムの可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることが更に好ましい。
本発明の光学フィルムのヘイズは1%未満であることが好ましく0〜0.1%であることが特に好ましい。
<光学フィルムの用途>
本発明の光学フィルムは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の各種表示装置に用いられる機能フィルムであることが好ましい。具体的には、本発明の光学フィルムは、液晶表示装置用の偏光板保護フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、ハードコートフィルム、防眩フィルム、帯電防止フィルム、視野角拡大等の光学補償フィルムなどでありうる。典型的には、本発明の光学フィルムは、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムである。
〔偏光板保護フィルム〕
本発明の光学フィルムは、偏光子の少なくとも一方の面に貼合する偏光板保護フィルムとして用いることが好ましい。
偏光板保護フィルムのリターデーション値は、下記式で求められ、面内方向のリターデーション値Roは0〜100nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0〜50nmの範囲であり、厚さ方向のリターデーション値Rtは、−400〜400nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは−300〜300nmの範囲である。
式(i):Ro=(nx−ny)×d(nm)
式(ii):Rt={(nx+ny)/2−nz}×d(nm)
(式中、Roはフィルム内の面内リターデーション値を表し、Rtはフィルム内の厚さ方向のリターデーション値を表す。また、dは光学フィルムの厚さ(nm)を表し、nxはフィルムの面内の最大の屈折率を表し、遅相軸方向の屈折率ともいう。nyはフィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率を表し、nzは厚さ方向におけるフィルムの屈折率を表す。いずれも波長590nmにおける測定値である。)
上記リターデーション値は、例えばKOBRA−WIS/RT(王子計測機器(株))を用いて、23℃・55%RHの環境下で、波長が590nmで求めることができる。
〔光学補償フィルム〕
液晶ディスプレイは、異方性を持つ液晶材料や偏光板を使用するために正面から見た場合に良好な表示が得られても、斜めから見ると表示性能が低下するという視野角の問題がある。そのため、液晶ディスプレイの性能向上のためには視野角補償板が必要である。平均的な液晶セルの屈折率分布は、セルの厚さ方向で大きく、面内方向でより小さい。そのため、視野角補償板は、この異方性を相殺しなければならない。つまり、視野角補償板は、膜厚方向の屈折率が面内方向より小さな屈折率を有すること、いわゆる負の一軸性構造を有することが有効である。本発明の光学フィルムは、そのような機能を有する光学補償フィルムともなりうる。
本発明の光学フィルムをVAモードの液晶セルに使用する場合、セルの両側に1枚ずつ合計2枚の光学フィルムを使用してもよいし(2枚型)、セルの上下のいずれか一方の側にのみ光学フィルムを使用してもよい(1枚型)。
本発明の光学フィルムは、前記式で表される面内方向のリターデーション値Roが23℃・55%RHの環境下で、測定波長が590nmにおいて20〜150nmの範囲内であることが好ましく、30〜130nmの範囲内がさらに好ましい。厚さ方向のリターデーション値Rtは23℃・55%RHの環境下で、測定波長が590nmにおいて50〜350nmの範囲内であることが好ましく、100〜270nmの範囲内がさらに好ましい。
本発明の光学フィルムは、フィルム面内に遅相軸又は進相軸を有し、遅相軸又は進相軸と製膜方向の軸とのなす角度θ1は、−1°以上+1°以下であることが好ましく、−0.5°以上+0.5°以下であることがより好ましい。θ1は配向角として定義でき、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−WIS/RT(王子計測機器)を用いて行うことができる。θ1が上記関係を満たす光学フィルムは、それを含む液晶表示装置の表示画像の輝度を高め、光漏れを抑制又は防止し、カラー液晶表示装置においては忠実に色を再現させる。
<偏光板>
本発明の光学フィルムを用いる偏光板は、活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて偏光子の一方の面に、本発明の光学フィルムを貼り合わせることにより製造することが好ましい。
なお、偏光板を構成する偏光子の他方の面には、本発明の光学フィルムを用いてもよいし、他の光学フィルムを貼合することも好ましい。このような他の光学フィルムとしては、例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC5UX、KC4UX、KC8UCR3、KC4SR、KC4BR、KC4CR、KC4DR、KC4FR、KC4KR、KC8UY、KC6UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC2UA、KC4UA、KC6UAKC、KC4UAH、KC6UAH、以上コニカミノルタ(株)製、フジタックT40UZ、フジタックT60UZ、フジタックT80UZ、フジタックTD80UL、フジタックTD60UL、フジタックTD40UL、フジタックR02、フジタックR06、以上富士フイルム(株)製等)が好ましく用いられる。
〔偏光子〕
偏光板の主たる構成要素である偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムである。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
偏光子としては、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行った偏光子が用いられ得る。偏光子の膜厚は5〜30μmの範囲が好ましく、特に薄膜化の観点から10〜20μmの範囲であることが好ましい。
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、ケン化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。中でも、熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能及び耐久性能に優れているうえに、色ムラが少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
〔光硬化性接着剤〕
本発明の光学フィルムと偏光子との貼り合わせは、特に限定はないが、完全ケン化型のポリビニルアルコール系接着剤や、光硬化性接着剤などを用いて行うことができる。得られる接着剤層の弾性率が高く、偏光板の変形を抑制しやすい点などから、光硬化性接着剤を用いることが好ましい。
光硬化性接着剤の好ましい例としては、特開2011−028234号公報に開示されているような、(α)カチオン重合性化合物、(β)光カチオン重合開始剤、(γ)380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤、及び(δ)ナフタレン系光増感助剤の各成分を含有する光硬化性接着剤組成物が挙げられる。ただし、これ以外の光硬化性接着剤が用いられてもよい。
以下、光硬化性接着剤を用いた偏光板の製造方法の一例を説明する。偏光板は、(1)光学フィルムの偏光子を接着する面を易接着処理する前処理工程、(2)偏光子と光学フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、下記の光硬化性接着剤を塗布する接着剤塗布工程、(3)得られた接着剤層を介して偏光子と光学フィルムとを貼り合わせる貼合工程、及び(4)接着剤層を介して偏光子と光学フィルムとが貼り合わされた状態で接着剤層を硬化させる硬化工程、を含む製造方法によって製造することができる。(1)の前処理工程は、必要に応じて実施すればよい。
(前処理工程)
前処理工程では、光学フィルムの偏光子との接着面に易接着処理を行う。偏光子の両面にそれぞれ光学フィルムを接着させる場合は、それぞれの光学フィルムの偏光子との接着面に易接着処理を行う。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理等が挙げられる。
(接着剤塗布工程)
接着剤塗布工程では、偏光子と光学フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、上記光硬化性接着剤を塗布する。偏光子又は光学フィルムの表面に直接光硬化性接着剤を塗布する場合、その塗布方法に特別な限定はない。例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等、種々の塗工方式が利用できる。また、偏光子と光学フィルムの間に、光硬化性接着剤を流延させた後、ローラー等で加圧して均一に押し広げる方法も利用できる。
(貼合工程)
こうして光硬化性接着剤を塗布した後、貼合工程に供される。この貼合工程では、例えば、先の塗布工程で偏光子の表面に光硬化性接着剤を塗布した場合、そこに光学フィルムが重ね合わされる。先の塗布工程で光学フィルムの表面に光硬化性接着剤を塗布した場合は、そこに偏光子が重ね合わされる。また、偏光子と光学フィルムの間に光硬化性接着剤を流延させた場合は、その状態で偏光子と光学フィルムとが重ね合わされる。偏光子の両面に光学フィルムを接着する場合であって、両面とも光硬化性接着剤を用いる場合は、偏光子の両面にそれぞれ、光硬化性接着剤を介して光学フィルムが重ね合わされる。そして通常は、この状態で両面(偏光子の片面に光学フィルムを重ね合わせた場合は、偏光子側と光学フィルム側、また偏光子の両面に光学フィルムを重ね合わせた場合は、その両面の光学フィルム側)からローラー等で挟んで加圧することになる。ローラーの材質は、金属やゴム等を用いることが可能である。両面に配置されるローラーは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
(硬化工程)
硬化工程では、未硬化の光硬化性接着剤に活性エネルギー線を照射して、エポキシ化合物やオキセタン化合物を含む接着剤層を硬化させる。それにより、光硬化性接着剤を介して重ね合わせた偏光子と光学フィルムとを接着させる。偏光子の片面に光学フィルムを貼合する場合、活性エネルギー線は、偏光子側又は光学フィルム側のいずれから照射してもよい。また、偏光子の両面に光学フィルムを貼合する場合、偏光子の両面にそれぞれ光硬化性接着剤を介して光学フィルムを重ね合わせた状態で、いずれか一方の光学フィルム側から活性エネルギー線を照射し、両面の光硬化性接着剤を同時に硬化させるのが有利である。
活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線等を用いることができ、取扱いが容易で硬化速度も十分であることから、一般的には、電子線又は紫外線が好ましく用いられる。
電子線の照射条件は、前記接着剤を硬化しうる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5〜300kVの範囲内であり、さらに好ましくは10〜250kVの範囲内である。加速電圧が5kV未満の場合、電子線が接着剤まで届かず硬化不足となるおそれがあり、加速電圧が300kVを超えると、試料を通る浸透力が強すぎて電子線が跳ね返り、光学フィルムや偏光子にダメージを与えるおそれがある。照射線量としては、5〜100kGyの範囲内、さらに好ましくは10〜75kGyの範囲内である。照射線量が5kGy未満の場合は、接着剤が硬化不足となり、100kGyを超えると、光学フィルムや偏光子にダメージを与え、機械的強度の低下や黄変を生じ、所定の光学特性を得ることができない。
紫外線の照射条件は、前記接着剤を硬化しうる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。紫外線の照射量は積算光量で50〜1500mJ/cm2の範囲内であることが好ましく、100〜500mJ/cm2の範囲内であるのがさらに好ましい。
以上のようにして得られた偏光板において、接着剤層の厚さは、特に限定されないが、通常0.01〜10μmの範囲内であり、好ましくは0.5〜5μmの範囲内である。
<液晶表示装置>
本発明の光学フィルムが用いられる液晶表示装置は、前記本発明の光学フィルムを有する偏光板を具備することが好ましい。具体的には、液晶セルの少なくとも一方に配置された偏光板に、本発明の光学フィルムが含まれ、当該偏光板の液晶セル側のフィルムが、本発明の光学フィルムである。
本発明の液晶表示装置において、液晶セルの一方又は両方の面に、当該偏光板が粘着層を介して貼り合わされていることが好ましい。
本発明の液晶表示装置の表面側に用いられる偏光板保護フィルムには、防眩層あるいはクリアハードコート層のほか、反射防止層、帯電防止層、防汚層、バックコート層を有することが好ましい。
本発明の光学フィルムや偏光板は、STN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、OCBなどの各種駆動方式の液晶表示装置に用いることができる。特にVA(MVA、PVA)型液晶表示装置に用いられることが好ましい。特に、30型以上の大画面の液晶表示装置に用いられても、光漏れによる黒表示時の着色を低減し、正面コントラストなど視認性を高めうる。このように、本発明の液晶表示装置は種々の視認性に優れる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
実施例1
以下の方法にて、光学フィルムとして用いられるセルロースアシレートフィルムを作製した。
<光学フィルム101の作製>
〈インライン添加液の調製〉
10質量部のアエロジル972V(日本アエロジル社製、一次粒子の平均径16nm、見掛け比重90g/リットル)と、90質量部のメタノールとをディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散させて、微粒子分散液を得た。
得られた微粒子分散液に、88質量部のジクロロメタンを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合して、希釈した。得られた溶液をアドバンテック東洋社製ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1Nで濾過して、微粒子分散希釈液を得た。
15質量部のチヌビン928(BASFジャパン社製)と、100質量部のジクロロメタンとを密閉容器に投入し、加熱撹拌して完全に溶解させた後、濾過した。得られた溶液に、36質量部の前記微粒子分散希釈液を撹拌しながら加えて30分間さらに撹拌した後、6質量部のセルローストリアセテート(アセチル基置換度2.85、Mw=152000、Mn=90000、Mw/Mn=1.7)を撹拌しながら加えて60分間さらに撹拌した。得られた溶液を、日本精線(株)製ファインメットNFで濾過して、インライン添加液を得た。濾材は、公称濾過精度20μmのものを用いた。
〈ドープ1の調製〉
下記成分を密閉容器に投入し、加熱及び撹拌しながら完全に溶解させた。得られた溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24で濾過して、主ドープを得た。
(主ドープの組成)
セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社製、製品
名CAP482−20、アセチル基置換度0.26、プロピオニル基置換度
2.5、総アシル基置換度2.76、重量平均分子量Mw240000)
86質量部
多価アルコールエステル(一般式(2)で表される化合物):例示化合物
2−10 2質量部
糖エステル;BzSc(ベンジルスクロース:化3に記載の化合物a−
1〜a−4の混合物)、平均エステル置換度=5.5 7質量部
重縮合エステル:一般式(1)で表される構造を有する重縮合エステル
:P8 5質量部
ジクロロメタン 430質量部
メタノール 11質量部
100質量部の主ドープと、2.5質量部のインライン添加液とを、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分に混合して、ドープ1を得た。
得られたドープ1を、図1で示すベルト流延装置を用いてステンレスバンド支持体上に、ドープ温度35℃、幅1.6mの条件で均一に流延させた。ステンレスバンド支持体上で、得られたドープ膜中の溶剤を、残留溶剤量が100質量%になるまで蒸発させてウェブを得た後、ステンレスバンド支持体からウェブを剥離した。得られたウェブを、35℃でさらに乾燥させた。
その後、図1で示す予備延伸装置102によって、MD方向に80℃で1.02倍の延伸倍率で延伸した。その際の延伸開始時のウェブの残留溶媒量は30質量%であった。
次いで、図1で示す本延伸装置103によって、MD方向に160℃で1.60倍の延伸倍率で延伸した。その際の延伸開始時のウェブの残留溶媒量は12質量%であった。
次いで、図1で示すTD延伸装置104によってウェブをTD方向に1.60倍の延伸倍率で延伸した。その際の延伸開始時のウェブの残留溶媒量は8質量%であった。
その後、得られたフィルムを、乾燥装置内を多数のローラーで搬送させながら125℃で15分間乾燥させた後、1.8m幅にスリットし、幅方向両端部に、凸部の高さが10μmのエンボス部を形成し、幅1.8m、長さ4000m、膜厚30μmの長尺状の光学フィルム101を作製した。
なお、光学フィルムのガラス転移温度は、145℃であった。
<光学フィルム102〜114の作製>
光学フィルム101の作製において、表1に記載のように、MD方向の予備延伸時の延伸倍率、温度、残留溶媒量及び延伸スパン、さらにMD方向の本延伸時の延伸倍率、温度、残留溶媒量及び延伸スパンを変化させ、トータル延伸倍率及び膜厚を変化させた以外は同様にして、光学フィルム102〜114を作製した。
≪評価≫
〔延伸応力の測定〕
テンシロン試験機(ORIENTEC社製、RTC−1225A)を用いて、以下のような測定を行った。
光学フィルムを120mm(MD方向)×10mm(TD方向)で切り出し、試料を23±2℃、55±5%RHの環境下で、24時間放置した後、23℃・55%RHに保持した恒温槽の中でチャック長50mmで50mm/minの速度でフィルムをMD方向に引っ張り、そのときの引っ張り荷重を、フィルム断面積(すなわち、フィルム幅×膜厚)で割ることでMD方向の延伸応力が求めた。
〔擦り傷評価方法〕
黒い羅紗布を貼った、平らな評価台の上にMD方向に1mの短冊状にサンプリングしたフィルムを広げ、グリーンランプを斜めから照射して、フィルム表面の擦り傷を目視で観察して以下の評価基準で評価した。
◎:擦り傷が視認できない
○:弱い擦り傷が視認できるが性能上問題ない
△:擦り傷が視認できる
×:複数の擦り傷が視認できる
〔TD方向の光学ムラの評価方法〕
フィルムの光学的性質を評価するために、フィルムの厚さ方向のリターデーション値(Rt)及び面内リターデーション値(Ro)を、自動複屈折率計測定装置(KOBRA−WIS/RT、王子計測機器株式会社製)を用いて、温度23℃、相対湿度55%RHの環境下で、波長590nmで測定した。
フィルム両端部各50mmを除き、フィルムの幅手方向に、100mm間隔で測定を行った。面内リターデーションの幅手測定点の最大値と最小値の差をΔRoとして算出した。
〔総合評価〕
◎ :擦り傷の発生がなく光学ムラとしてΔRoが0.4nm以下である
○ :弱い擦り傷の発生があるか、又は光学ムラとしてΔRoが1.0n
m以下である
○△:弱い擦り傷の発生及び光学ムラとしてΔRoが4.0nm以下である
△ :擦り傷の発生が視認でき、光学ムラとしてΔRoが5.0nm以上である
× :複数の擦り傷が視認でき、光学ムラとしてΔRoが5.0nm以上である
光学フィルムとしては、○△の評価結果が実用上の限度内であり、○〜◎が光学フィルムとしてより優れていることを表す。
表1の結果より、本発明の光学フィルムNo.101〜112は、本発明に係る予備延伸を行うことにより、延伸応力が低く、擦り傷の発生や光学ムラの発生等も低く抑制できており、総合的に優れた光学フィルムであることが分かる。中でも、延伸倍率、温度、残留溶媒量及び延伸スパンが、各請求項に関連して好ましい範囲にある光学フィルム101〜106は、優れた特性を示した。
実施例2
<アクリル樹脂/セルロースアシレート混合光学フィルム201の作製>
下記の方法に従って、光学フィルムとして、アクリル樹脂/セルロースアシレートを混合含有する光学フィルム201を作製した。
(ドープ2の調製)
下記成分を密閉容器に投入し、加熱及び撹拌しながら完全に溶解させた。得られた溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24で濾過して、主ドープを得た。
(主ドープの調製)
アクリル樹脂:ダイヤナールBR85(三菱レイヨン社製、アクリル樹脂
Mw:280000) 90質量部
セルロースエステル(セルロースアセテートプロピオネート アシル基総
置換度2.75、アセチル基置換度0.19、プロピオニル基置換度2.5
6、Mw=200000) 10質量部
アクリル微粒子(C1) 2質量部
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 40質量部
〈アクリル微粒子(C1)の調製〉
内容積60リットルの還流冷却器付反応器に、イオン交換水38.2リットル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム111.6gを投入し、250rpmの回転数で撹拌しながら、窒素雰囲気下75℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態にした。過硫酸アンモニウム(APS)を0.36g投入し、5分間撹拌後にメチルメタクリレート(MMA)を1657g、n−ブチルアクリレート(BA)を21.6g、及びアリルメタクリレート(ALMA)の1.68gからなる単量体混合物を一括添加し、発熱ピークの検出後さらに20分間保持して最内硬質層の重合を完結させた。
次に、APSを3.48gを加え、5分間撹拌後にBAを8105g、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA:分子量200)を31.9g、及びALMAの264.0gからなる単量体混合物を120分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに120分間保持して、軟質層の重合を完結させた。
次に、APSを1.32g投入し、5分間撹拌後にMMAを2106g、BAを201.6gからなる単量体混合物を20分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに20分間保持して最外硬質層1の重合を完結した。
次いで、APSを1.32g投入し、5分後にMMAを3148g、BAを201.6g、及びn−OMの10.1gからなる単量体混合物を20分間かけて連続的に添加し、添加終了後にさらに20分間保持した。次いで95℃に昇温し60分間保持して、最外硬質層2の重合を完結させた。
このようにして得られた重合体ラテックスを少量採取し、吸光度法により平粒子径を求めたところ0.10μmであった。残りのラテックスを3質量%硫酸ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩析・凝固させ、次いで、脱水・洗浄を繰り返したのち乾燥し、3層構造のアクリル微粒子(C1)を得た。
100質量部の主ドープを、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分に混合して、ドープ2を得た。
得られたドープ2を、図1で示すベルト流延装置を用いてステンレスバンド支持体上に、ドープ温度35℃、幅1.6mの条件で均一に流延させた。ステンレスバンド支持体上で、得られたドープ膜中の溶剤を、残留溶剤量が100質量%になるまで蒸発させてウェブを得た後、ステンレスバンド支持体からウェブを剥離した。得られたウェブを、35℃でさらに乾燥させた。
その後、図1で示す予備延伸装置102によって、MD方向に80℃で1.05倍の延伸倍率で延伸した。その際の延伸開始時のウェブの残留溶媒量は30質量%であった。
次いで、図1で示す本延伸装置103によって、MD方向に160℃で1.60倍の延伸倍率で延伸した。その際の延伸開始時のウェブの残留溶媒量は12質量%であった。
次いで、図1で示すTD延伸装置104によってウェブをTD方向に1.60倍の延伸倍率で延伸した。その際の延伸開始時のウェブの残留溶媒量は8質量%であった。
その後、得られたフィルムを、乾燥装置内を多数のローラーで搬送させながら125℃で15分間乾燥させた後、1.8m幅にスリットし、幅方向両端部に、凸部の高さが10μmのエンボス部を形成し、幅1.8m、長さ4000m、膜厚30μmの長尺状のアクリル樹脂/セルロースアシレート混合フィルム201を作製した。
なお、上記アクリル樹脂/セルロースアシレート混合光学フィルムのTgは、120℃であった。
<アクリル樹脂/セルロースアシレート混合光学フィルム202〜213の作製>
アクリル樹脂/セルロースアシレート混合フィルム201の作製において、表2に記載のように、MD方向の予備延伸時の延伸倍率、温度、残留溶媒量及び延伸スパン、さらにMD方向の本延伸時の延伸倍率、温度、及び残留溶媒量を変化させ、トータル延伸倍率及び膜厚を変化させた以外は同様にして、アクリル樹脂/セルロースアシレート混合光学フィルム202〜213を作製した。
得られたアクリル樹脂/セルロースアシレート混合光学フィルム201〜213を用いて、実施例1と同様な評価を行い、結果を表2に示した。
表2の結果より、本発明の光学フィルムであるアクリル樹脂/セルロースアシレート混合光学フィルムNo.201〜211は、本発明に係る予備延伸を行うことにより、延伸応力が低く、擦り傷の発生や光学ムラの発生も低く抑制できており、総合的に優れた光学フィルムであることが分かる。
実施例3
<アクリル樹脂含有光学フィルム301の作製>
下記の方法に従って、アクリル樹脂を含有する光学フィルム301を作製した。
(微粒子分散希釈液の調製)
10質量部のアエロジル972V(日本アエロジル社製、一次平均粒子径:16nm、見掛け比重90g/L)と、90質量部のエタノールとをディゾルバーで30分間撹拌混合した後、高圧分散機であるマントンゴーリンを用いて分散させて、微粒子分散液を調製した。
得られた微粒子分散液に、88質量部のジクロロメタンを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合して、希釈した。得られた溶液をアドバンテック東洋社製ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1Nで濾過して、微粒子分散希釈液を得た。
(インライン添加液の調製)
紫外線吸収剤として15質量部のチヌビン928(BASFジャパン社製)と、100質量部のジクロロメタンとを密閉容器に投入し、加熱撹拌して完全に溶解させた後、濾過した。得られた溶液に、36質量部の前記微粒子分散希釈液を撹拌しながら加えて30分間さらに撹拌した後、6質量部のアクリル樹脂:ダイヤナールBR85((三菱レイヨン社製、Mw:280000)を撹拌しながら加えて60分間さらに撹拌した。得られた溶液を、日本精線(株)製ファインメットNFで濾過して、インライン添加液を得た。濾材は、公称濾過精度20μmのものを用いた。
(ドープ3の調製)
下記成分を密閉容器に投入し、加熱及び撹拌しながら完全に溶解させた。得られた溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24で濾過して、主ドープを得た。
〈主ドープの組成〉
アクリル樹脂:ダイヤナールBR85(三菱レイヨン社製、アクリル樹脂
Mw:280000) 100質量部
アクリル微粒子(C1) 2質量部
メチレンクロライド 360質量部
エタノール 15質量部
100質量部の主ドープと、2.5質量部のインライン添加液とを、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分に混合して、ドープ3を得た。
得られたドープ3を、図1で示すベルト流延装置を用いてステンレスバンド支持体上に、ドープ温度35℃、幅1.6mの条件で均一に流延させた。ステンレスバンド支持体上で、得られたドープ膜中の溶剤を、残留溶剤量が100質量%になるまで蒸発させてウェブを得た後、ステンレスバンド支持体からウェブを剥離した。得られたウェブを、35℃でさらに乾燥させた。
その後、図1で示す予備延伸装置102によって、MD方向に80℃で1.07倍の延伸倍率で延伸した。その際の延伸開始時のウェブの残留溶媒量は30質量%であった。
次いで、図1で示す本延伸装置103によって、MD方向に160℃で1.60倍の延伸倍率で延伸した。その際の延伸開始時のウェブの残留溶媒量は12質量%であった。
次いで、図1で示すTD延伸装置104によってウェブをTD方向に1.60倍の延伸倍率で延伸した。その際の延伸開始時のウェブの残留溶媒量は8質量%であった。
その後、得られたフィルムを、乾燥装置内を多数のローラーで搬送させながら125℃で15分間乾燥させた後、1.8m幅にスリットし、幅方向両端部に、凸部の高さが10μmのエンボス部を形成し、幅1.8m、長さ4000m、膜厚30μmの長尺状のアクリル樹脂含有光学フィルム301を作製した。
なお、上記アクリル樹脂含有光学フィルムのTgは、115℃であった。
<アクリル樹脂含有光学フィルム302〜312の作製>
アクリル樹脂含有光学フィルム301の作製において、表3に記載のように、MD方向の予備延伸時の延伸倍率、温度、残留溶媒量及び延伸スパン、さらにMD方向の本延伸時の延伸倍率及び残留溶媒量を変化させ、トータル延伸倍率及び膜厚を変化させた以外は同様にして、アクリル樹脂含有光学フィルム302〜312を作製した。
得られたアクリル樹脂含有光学フィルム301〜312を用いて、実施例1と同様な評価を行い、結果を表3に示した。
表3の結果より、本発明の光学フィルムであるアクリル樹脂含有光学フィルム301〜310は、本発明に係る予備延伸を行うことにより、延伸応力が低く、擦り傷の発生や光学ムラの発生も低く抑制できており、総合的に優れた光学フィルムであることが分かる。