JPWO2009136467A1 - 不揮発性記憶素子、不揮発性記憶装置、および不揮発性記憶素子へのデータ書込方法 - Google Patents

不揮発性記憶素子、不揮発性記憶装置、および不揮発性記憶素子へのデータ書込方法 Download PDF

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Abstract

第1電極(503)と第2電極(505)と、第1電極と第2電極との間に介在する抵抗変化層(504)とを備え、第1電極および第2電極間に与えられる正負両極性の電気的信号によって可逆的に第1電極および第2電極間の抵抗値が変化する不揮発性記憶素子であって、抵抗変化層は、酸素不足型のハフニウム酸化物を含み、第1電極および第2電極は、異なる元素から構成され、第1電極を構成する元素の標準電極電位V1と、第2電極を構成する元素の標準電極電位V2と、ハフニウムの標準電極電位V0との関係が、V1<V2かつV0<V2を満足する、不揮発性記憶素子。

Description

本発明は、不揮発性記憶素子に関し、特に、印加される電気的信号に応じて抵抗値が変化する抵抗変化型の不揮発性記憶素子、不揮発性記憶装置、および不揮発性記憶素子へのデータ書込方法に関する。
近年、デジタル技術の進展に伴い、携帯型情報機器および情報家電などの電子機器が、より一層高機能化している。そのため、不揮発性記憶素子の大容量化、書き込み電力の低減、書き込み/読み出し時間の高速化、および長寿命化の要求が高まっている。
こうした要求に対して、既存のフローティングゲートを用いたフラッシュメモリの微細化には限界があると言われている。そこで、最近、抵抗変化層を記憶部の材料として用いる新たな抵抗変化型の不揮発性記憶素子に注目が集まっている。
この抵抗変化型の不揮発性記憶素子は、基本的には図17に示したように、抵抗変化層1702を下部電極1701と上部電極1703でサンドイッチしたような非常に単純な構造で構成される。そして、この上下の電極間にある閾値以上の大きさの電圧を有する所定の電気的パルスを与えるだけで、抵抗が高抵抗もしくは低抵抗状態に変化する。そして、これらの異なる抵抗状態と数値を対応させ情報の記録を行うのである。抵抗変化型の不揮発性記憶素子はこのような構造上及び動作上の単純さから、さらなる微細化や低コスト化が可能であると期待されている。さらに、高抵抗と低抵抗の状態変化が100ns以下オーダーで起こる場合もある事から、高速動作という観点からも注目を集めており、種々の提案が成されている。
例えば、特許文献1に開示されているのは、上部電極と下部電極に電圧を印加する事で抵抗変化層1702内に金属イオンを出し入れして高抵抗と低抵抗状態を作り出し、情報を記録するタイプの抵抗変化型の不揮発性記憶素子である。また、特許文献2に開示されているような、抵抗変化層の結晶状態を電気パルスで変化させて抵抗状態を変化させるようなタイプの抵抗変化型メモリも知られている。
さらに、上記に加えて、抵抗変化層1702に金属酸化物を使った抵抗変化型の不揮発性記憶素子に関する提案も多くなされている。このような金属酸化物を使った抵抗変化型の不揮発性記憶素子は、抵抗変化層に用いる材料で大きく2種類に分類される。一つは、特許文献3等に開示されているペロブスカイト材料(Pr(1−x)CaXMnO(PCMO)、LaSrMnO(LSMO)、GdBaCo(GBCO)等)を抵抗変化層として用いた抵抗変化型の不揮発性記憶素子である。
もう一つは、2元系の遷移金属酸化物を用いた抵抗変化型の不揮発性記憶素子である。2元系の遷移金属酸化物は、上述のペロブスカイト材料と比較しても非常に単純な組成であるため、製造時の組成制御および成膜が比較的容易である。その上、半導体製造プロセスとの整合性も比較的良好であるという利点もあり、最近、特に精力的に研究がなされている。
例えば、特許文献4では、抵抗変化材料としてNiO、V、ZnO、Nb、TiO、WO、CoOが開示されている。また、特許文献5や非特許文献1〜3では、Ni、Nb、Ti、Zr、Hf、Co、Fe、Cu、Cr等の遷移金属の酸化物で、特に、酸素が化学量論的組成から不足した酸化物(以下、酸素不足型の酸化物と呼ぶ)を抵抗変化材料として使った抵抗変化素子が開示されている。
ここで酸素不足型の酸化物をもう少し説明する。例えば、Niの場合、化学量論的組成を有する酸化物として、NiOが知られている。このNiOでは、O原子とNi原子が同数含まれており、酸素含有率で表現すると50at%である。この酸素含有率50at%よりも酸素含有率が低くなった状態の酸化物を酸素不足型の酸化物と呼ぶ。なお、この例の場合、Niの酸化物であるので、酸素不足型のNi酸化物と表現できる。
さらに、特許文献6や非特許文献2には、チッ化チタンの表面を酸化してナノメートルオーダーのチタン酸化物(TiO)結晶膜を形成したような構造を抵抗変化層に使う例も開示されている。
また、抵抗変化の様式という点から見ると、上記の金属酸化物を使った不揮発性記憶素子は2種類に分類される。一つは、同一の極性の大きさの異なる電圧を有する電気パルスで抵抗変化をさせるユニポーラ型である(例えば+1Vと+2Vの電圧を印加して抵抗値を増減させる)。特許文献4や5に開示されている不揮発性素子がこれにあたる。もう一つは、極性の異なる電圧を有する電気パルスで抵抗変化を制御するバイポーラ型である(例えば+1Vと−1Vの電圧を印加して抵抗値を増減させる)。このような様式の不揮発性記憶素子は、特許文献3や6に開示されている。
さらに、抵抗変化層を挟んでいる上下の電極材料についても、例えば、特許文献5には、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)、Ir及びRuの酸化物、チタン(Ti)の窒化物、ポリシリコン等が開示されている。さらに、特許文献6には、Pt、Ir、オスミウム(Os)、Ru、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、Ti、コバルト(Co)、W等を電極材料に使用した不揮発性記憶素子が開示されている。また、特許文献7には、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、金(Au)、Ptが開示され、特許文献8には、Pt、Ir、Ru、Ir酸化物、Ru酸化物が開示されている。
特開2006−40946号公報 特開2004−349689号公報 米国特許第6473332号明細書 特開2004−363604号公報 特開2005−317976号公報 特開2007−180202号公報 特開2007−88349号公報 特開2006−324447号公報 I.G.Beaket al., Tech. Digest IEDM 2004,587頁 JapaneseJournal of Applied Physics Vol45, NO11, 2006, pp.L310-L312 A.Chenet al., Tech. Digest IEDM 2005,746頁
しかしながら、上下の電極材料の組み合わせに依存した抵抗変化現象の制御性等に関するデータについてはこれまで開示されていない。つまり、抵抗変化型の不揮発性記憶素子において、抵抗変化を実現しやすいと推察される電極の候補については、上述のように、特許文献5乃至8に開示がなされている。しかしながら、抵抗変化型の不揮発性記憶素子を組み込んだメモリ装置を製造した場合に、制御性良く抵抗変化を発生させるための好適な上下電極の材料の組み合わせについては開示されていない。
発明者らは、上下の電極に用いる好適な材料の組み合わせを考慮せずに、不揮発性記憶素子を作製し、その電気的特性を調べた。作製したのは基本構造が図17のような素子であり、抵抗変化層1702に酸素不足型のHf酸化物を用い、これをPtからなる下部電極1701と、同じくPtからなる上部電極1703でサンドイッチしたような上下対称な構造とした。ここで、抵抗変化層1702の酸素不足型のHf酸化物の酸素含有率は56.8at%とした(HfOと表現した時、xは1.31)。以下、この不揮発性素子を素子Aと呼ぶ。なお、素子の名称と電極材料の関係は、下記に示す実施の形態で説明する素子も全てまとめて表2に示した。
図14は素子Aに電気的パルスを加えた時の抵抗変化を示す。ここで、図14(a)及び(b)の横軸は下部電極1701と上部電極1703の間に加えた電気的なパルスの数であり、縦軸は抵抗値である。
まず、図14(a)は、下部電極1701と上部電極1703の間には、パルス幅が100nsecで、下部電極1701を基準として上部電極1703に+1.5Vと−1.2Vの電圧を有する電気的パルスを交互に印加した時の抵抗の測定結果である。この場合、+1.5Vの電圧の電気パルスを印加する事で抵抗値は500〜700Ω程度となり、−1.2Vの電圧の電気パルスを印加した場合は、140Ω程度と変化していた。すなわち、上部電極1703に下部電極1701よりも高い電圧の電気パルスを加えた時に高抵抗化する変化を示した。
次に、印加する電圧のバランスを変化させ、負の電圧を大きくした場合の結果が図14(b)である。この場合、下部電極1701を基準として上部電極1703に−1.5Vと+1.2Vの電圧の電気的パルスを印加した。すると、−1.5Vの電気パルスを印加した時に、高抵抗化し、抵抗値は900〜1200Ω程度となり、+1.2Vの電気パルスを印加した時に低抵抗化して、抵抗値は150Ω程度となっている。すなわち、上部電極1703に下部電極1701よりも高い電圧の電気パルスを加えた時に低抵抗化しており、図14(a)のを測定した時と、正反対の動作を示した。
上記の結果は、素子Aのような素子が、バイポーラ型の不揮発性記憶素子の動作としては非常に不適当である事を示している。バイポーラ型の不揮発性記憶素子は、印加する電気的パルスの電圧の大きさで抵抗変化を制御しているわけではなく、極性の異なる電圧を有する電気パルスで抵抗を制御する点に特徴がある。つまり、素子に印加する電圧の大きさが多少ばらついた場合や、製造時のばらつき等の要因によって抵抗変化を起こす閾値の電圧が多少ばらついても、抵抗変化の方向性(高抵抗から低抵抗、もしくは低抵抗から高抵抗への変化の方向性)は、ばらつかない点にバイポーラ型の素子の特徴がある。しかしながら上記の素子Aの場合は、上部電極に正の電圧を加えた時に抵抗値が増加する場合と、減少する場合が存在しており、電極に印加する電圧の極性によって抵抗値が一意に決まらないという課題がある。
上記のような、不揮発性記憶素子が印加電圧の極性に対して、2つのモードで抵抗変化する原因を調べるため、不揮発性記憶素子のどの部分が抵抗変化を起こしているかを調べた。この目的のために作製した素子が素子Bである。なお、今回はHfと同様のメカニズムで動作していると考えられている、酸化不足型のTa酸化物を用いた場合の結果を示す。図15に示したのは素子Bの断面の模式図である。この図のように、100nmの酸素不足型のTa酸化物層205の上下にPtで2つずつ、合計4つの電極201〜電極204を形成した。そして、電極202を基準にして電極201に100nsecのパルス幅で+2.0Vと−1.5Vの電圧を印加した。すると、+2.0Vの電圧の電気パルスを印加した時に高抵抗化し、−1.5Vの電圧の電気パルスを印加した時に低抵抗化した。このように電極201と電極202の抵抗を変化させた状態で4つの電極間の抵抗値を測定した。具体的には、電極201と電極202に+2.0Vを印加して電極201と電極202の間の抵抗を高抵抗化した状態で、電極201と電極203、電極201と電極204、電極202と電極203、電極202と電極204、電極203と電極204の間の抵抗値をそれぞれ測定した。次に、電極201と電極202に−1.5Vを印加して電極201と電極202の間の抵抗を低抵抗化した状態で、上述と同様に各電極間の抵抗値を測定した。
以上のような測定を10回ずつ繰り返し、各電極間の抵抗値をまとめると、表1に示すような結果が得られた。
Figure 2009136467
すなわち、電極201に関連した部分だけに抵抗値の変化が見られ、電極201が関与していない場所では、抵抗値がほとんど変化していないという結果が得られた。この事から、電極201と電極202の間に電圧を印加した時に抵抗の変化が起こっていたのは、電極201の近傍だけであった事が分かる。
以上の事より、酸素不足型のTa酸化物を抵抗変化層に用いた抵抗変化素子で抵抗変化が生じているのは酸素不足型のTa酸化物層の中でも電極に近い部分だけであるといえる。また、高抵抗化を起こす時に、高い電位となっている側の電極の近傍が抵抗変化を起こしていると考えられる(この場合、高抵抗化する時、電極202に対して電極201には高電位の電圧がかかっている)。
この現象は遷移金属の酸素不足型のHf酸化物を用いた場合であっても同様であると考える。なぜならば、Hf酸化膜を抵抗変化膜に使用した不揮発性記憶素子でもTaの場合と同様、電極に加えられた電界によって抵抗変化の現象が観測されるからである。
以上の結果を考慮すると、素子Aでは、上部電極1703と酸素不足型のHf酸化物層1702の界面近傍で抵抗変化を起こすモード(上部電極モード)と、下部電極1701と酸素不足型のHf酸化物層1702の界面近傍で抵抗変化を起こすモード(下部電極モード)の2つのモードで抵抗変化が起こっていたと考えられる。印加した電気パルスの極性と抵抗変化の方向性を考慮すると、図14(a)は、上部電極モードが支配的に動作している場合であり、図14(b)は下部電極モードが支配的に動作している時の抵抗変化特性であった事も分かる。ここで、下部電極を基準として、上部電極に負極性の電圧を加えたときに高抵抗化し、正極性の電圧を加えたときに低抵抗化するようなモードをAモードと定義し、下部電極を基準に上部電極に正極性の電圧を印加したときに高抵抗化し、負極正の電圧を加えたときに低抵抗化するようなモードをBモードと定義する(Aモードが下部電極モードに対応し、Bモードが上部電極モードに対応する。)。
以上の結果から、抵抗変化膜を金属電極で挟んだような構造を有し、電極に印加する電圧の極性によって抵抗値が一意に決まる、理想的なバイポーラ型不揮発性記憶素子を形成するためには、上下両方の電極近傍で抵抗変化が起こるような構造を取るべきではないと考えられる。
上記のような課題の他に、素子に繰り返し抵抗変化をさせた場合に、上部電極モードと下部電極モードの混ざりあいのような現象が、頻度は少ないが発生するという課題がある。
図16は、素子Aと同様の図17に示すような構造を有する別の素子の抵抗変化特性で
ある。すなわち、下部電極1701と上部電極1703を共にPtによって形成し、抵抗変化層1702として、酸素含有率62at%の酸素不足型のHf酸化物(HfOxと表現した時、xは1.6)を用いた不揮発性記憶素子である。また、測定時に加えた電気的パルスは、下部電極1701を基準として上部電極1703を+2.0Vと−1.1Vの電圧とし、パルスの幅は100nsecとした。この図を見ると、繰返し電気パルスを印加したときの素子の低抵抗状態の抵抗がばらついているのが分かる。
この現象は、上記のように、上部電極モードと下部電極モードの混ざり合いによって発生したと考えられる。つまり、加えた電気的パルスは、下部電極1701を基準として上部電極1703を+2.0Vと−1.1Vの電圧としているので、素子の抵抗は、理想的には上部電極側が高抵抗と低抵抗に変化を繰り返すはずであるが、この例では、下部電極側の抵抗も変化して素子の全抵抗が不安定に変化していると考えられる。言い換えれば、下部電極と酸素不足型のHf酸化物の界面の抵抗が意図せず大きく変化を起こしたため、図16のような抵抗変化幅のふらつきが発生したと考えられる。
以上のような抵抗変化幅のふらつきは、抵抗の大小によって情報を記憶する素子の特性としては、ふさわしくない。
上記目的を達成するために、本発明の不揮発性素子は、第1電極と第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する抵抗変化層とを備え、前記第1電極および前記第2電極間に与えられる正負両極性の電気的信号によって可逆的に前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値が変化する不揮発性記憶素子であって、前記抵抗変化層は、酸素不足型のハフニウム酸化物を含み、前記第1電極および前記第2電極は、異なる元素から構成され、前記第1電極を構成する元素の標準電極電位V1と、前記第2電極を構成する元素の標準電極電位V2と、ハフニウムの標準電極電位V0との関係が、V1<V2かつV0<V2を満足する。
また、ある好ましい実施形態においては、上記目的を達成するために、本発明の不揮発性素子は第1電極と第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する抵抗変化層とを備え、前記第1電極および前記第2電極間に与えられる正負両極性の電気的信号によって可逆的に前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値が変化する不揮発性記憶素子において、
前記抵抗変化層は、酸素不足型のハフニウム酸化物を含み、
前記第1電極および前記第2電極は、異なる元素から構成され、
前記第1電極を構成する元素の標準電極電位V1と、前記第2電極を構成する元素の標準電極電位V2と、ハフニウムの標準電極電位V0との関係が、V1≦V0<V2を満足することを特徴とする。
また、ある好ましい実施形態においては、前記第1電極は、Al、Ti、Hfからなる群から選択される事を特徴とし、前記第2電極はW、Cu、Ptからなる群から選択されてもよい。
また、ある好ましい実施形態においては、第1電極と第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する抵抗変化層とを備え、前記第1電極および前記第2電極間に与えられる電気的信号によって可逆的に前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値が変化する不揮発性記憶素子において、
前記抵抗変化層は、酸素不足型のハフニウム酸化物を含み、
前記第1電極および前記第2電極は、異なる元素から構成され、
前記第1電極を構成する元素の標準電極電位V1と、前記第2電極を構成する元素の標準電極電位V2と、ハフニウムの標準電極電位V0との関係が、V0<V1<V2を満足することを特徴とする。
またある好ましい実施形態においては前記第1電極は、Wからなり、前記第2電極はCu、Ptからなる群から選択される事を特徴とする。
また、ある好ましい実施形態においては、前記酸素不足型のハフニウム酸化物がHfO(0.9≦x≦1.6)の化学式で表されることを特徴とする。
また本発明の不揮発性記憶素子の駆動方法は、前記のいずれかに記載の不揮発性記憶素子の駆動方法であって、前記正負両極性の電気的信号は、前記第1電極を基準として前記第2電極側に与えられる振幅V+の正極性の電気的信号および振幅V−の負極性の電気的信号であり、V+とV−との関係が、V−<V+を満足し、前記正極性の電気的信号が与えられることによって前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値が増大し、前記負極性の電気信号が与えられることによって前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値が減少することを特徴とする不揮発性記憶素子の駆動方法である。
また、本発明の不揮発性記憶装置は、上記不揮発性記憶素子と、電気的パルス印加装置とを備え、前記電気的パルス印加装置は、正負両極性の電気的信号を前記不揮発性記憶素子に印加することで、前記不揮発性記憶素子の第1電極および第2電極間の抵抗値を可逆的に変化させるように構成されている。
また、本発明の不揮発性記憶素子へのデータ書込方法は、上記不揮発性記憶素子へのデータ書込方法であって、正負両極性の電気的信号を前記不揮発性記憶素子の前記第1電極および前記第2電極間に印加することで、前記不揮発性記憶素子の前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値を可逆的に変化させる。
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
本発明によれば、可逆的に安定した書き換え特性を有する不揮発性記憶素子並びにその不揮発性記憶素子を用いた不揮発性記憶装置が得られる。
図1は、本発明の実施の形態に係る不揮発性記憶素子構成を示す断面図である。 図2は、不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図3は、本発明の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図4は、本発明の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図5は、本発明の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図6は、本発明の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図7は、本発明の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図8は、本発明の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図9は、本発明の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図10は、Aモード、Bモードの抵抗変化の結果をまとめた図である。 図11は、想定される抵抗変化のメカニズムを示す図である。 図12は、想定される抵抗変化のメカニズムを示す図である。 図13は、作製したHf酸化物層の組成をラザフォード後方散乱法(RBS法)によって解析した結果を示す図である。 図14は、不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図15は、素子Bの断面の模式図である。 図16は、不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図17は、不揮発性記憶素子の基本構造を示す図である。
符号の説明
200 素子B
201,202,203,204 電極
205 Ta酸化物層
500 抵抗変化素子
501 単結晶シリコン基板
502 酸化物層
503,1501,1601 上部電極
504,1502,1602 Hf酸化物層
505,1503,1603 下部電極
506 素子領域
1504,1604 酸素イオン
1701 下部電極層
1702 抵抗変化膜
1703 上部電極
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付しその説明は省略する場合がある。
(実施の形態)
上述のように、酸素不足型のHf酸化物を使ったバイポーラ動作する抵抗変化型の不揮発性記憶素子では、上下のどちらかの電極近傍でのみ抵抗変化が起こりやすいような動作が望ましい。もし、抵抗変化現象が電極材料によって変化するならば、抵抗が変化しやすい電極材料と抵抗が変化しにくい電極材料で酸素不足型のHf酸化物を挟んだような構造を作れば良い。本実施の形態では、この点を検証した結果について説明する。
なお、この検証結果を説明する前に、酸素不足型のHf酸化物層の形成方法や、酸素含有率の好適な範囲を説明する。その後、抵抗変化の起こりやすさが電極材料に依存するかどうかの確認を行うため、Al、Ti、Ta、W、Cu、Ptからなる電極でHfOx層を挟んだ構造を形成し、電気パルスによる抵抗変化現象の様子を調べた結果について述べる。そして最後に、動作しやすい電極材料と動作しにくい電極材料で酸素不足型のHf酸化物を挟み込んだ構造の抵抗変化素子の抵抗変化の測定結果について述べる。
[スパッタリング時の酸素流量比とHf酸化物層の酸素含有率との関係]
まず、本実施の形態における酸素不足型のHf酸化物層の作製条件及び酸素含有率の解析結果について述べる。酸素不足型のHf酸化物層は、Hfターゲットを(アルゴン)ArとOガス雰囲気中でスパッタリングする、いわゆる、反応性スパッタリングで作製した。本実施の形態での具体的な酸素不足型のHf酸化物の作製方法は次の通りである。
まずスパッタリング装置内に基板を設置し、スパッタリング装置内を3×10−5Pa程度まで真空引きする。Hfをターゲットとして、パワーを300W、アルゴンガスと酸素ガスとをあわせた全ガス圧力を0.9Pa、基板の設定温度を30℃にし、スパッタリングを行った。ここでは、Arガスに対するOガスの流量比を2%から4.2%まで変化させた。まずは、組成を調べる事が目的であるため、基板としては、Si上にSiOを200nm堆積したものを用い、Hf酸化物層の膜厚は約50nmになるようにスパッタリング時間を調整した。このようにして作製したHf酸化物層の組成をラザフォード後方散乱法(RBS法)によって解析した結果を図13に示す。この図から、酸素流量比を2%から4.2%に変化させた場合、Hf酸化物層中の酸素含有率は約37.7at%(HfO0.6)から約69.4at%(HfO2.3)へと変化していることが分かる。以上の結果より、Hf酸化物層中の酸素含有率を酸素流量比によって制御可能である事と、Hfの化学量論的な酸化物であるHfO(HfO)の酸素含有率66.7at%よりも酸素が不足している、酸素不足型のHf酸化物から酸素が過剰に含有されていると思われるHf酸化物までが形成されている事が明らかとなった。
なお、本実施の形態では、Hf酸化物層の解析にラザフォード後方散乱法(RBS)を利用したが、オージェ電子分光法(AES)、蛍光X線分析法(XPS)、電子線マイクロアナリシス法(EPMA)等の機器分析手法も利用可能である。
[酸素不足型のHf酸化物層の抵抗変化特性]
以上のように作製した酸素不足型のHf酸化物のうち、どの程度の酸素含有率を有する酸素不足型のHf酸化物が抵抗変化を示すのかを調べた。ここで酸素不足型のHf酸化物層を挟む電極の材料として用いたのは、上下の電極ともにPtである。上下にPtを用いた場合は、上述のように、バイポーラ型の抵抗変化型の不揮発性素子としては不適当である。しかしながら、Ptは後述するように、抵抗変化を非常に示しやすい電極材料であり、ある酸素含有率を有する酸素不足型のHf酸化物が抵抗変化を示すか否かの判定を行うには最も好適な材料である。
以上のような理由から、図1のような不揮発性記憶素子500を形成した。すなわち、単結晶シリコン基板501上に、厚さ200nmの酸化物層502を熱酸化法により形成し、下部電極層503としての厚さ100nmのPt薄膜を、スパッタリング法により酸化物層502上に形成した。その後、Hfをターゲットとして、反応性スパッタリングによって酸素不足型のHf酸化物層504を形成した。本実施の形態で検討した範囲では、上記の分析試料と同様に、酸素ガスの流量比を、2%から4.2%まで変化させて不揮発性記憶素子を作製した。酸素不足型のHf酸化物層504の膜厚は30nmとした。
その後、酸素不足型のHf酸化物層504の上に、上部電極層505としての厚さ150nmのPt薄膜をスパッタ法により堆積した。
最後にフォトリソグラフィー工程とドライエッチング工程によって、素子領域506を形成した。なお、素子領域506は、直径が3μmの円形パターンである。
以上のように作製した不揮発性記憶素子の抵抗変化現象を測定した。その結果、図13のα点(酸素流量比約2.7%、酸素含有率約46.6at%)からβ点(酸素流量比約3.3%、酸素含有率約62at%)のHf酸化膜を使った不揮発性記憶素子では、高抵抗値が低抵抗値の4倍以上と良好であった。 図2(a)と(b)は、それぞれ、α点およびβ点の酸素含有率を有するHf酸化物層を使った不揮発性記憶素子についてのパルス印加回数に対する抵抗変化特性を測定した結果である。α点の測定時に加えた電圧は下部電極を基準にして上部電極に100nsのパルス幅で+3.5Vと−5V、β点の測定時に加えた電圧は下部電極を基準として上部電極に100nsのパルス幅で+1.0Vと−1.3Vである。またこれらは共にAモード動作であった。
図2(a)および図2(b)によれば、α点及びβ点の酸素含有率を有するHf酸化物層を使った素子では、共に、高抵抗値が低抵抗値の4倍以上と良好であることが判る。従って、酸素含有率が46.6〜62at%の組成範囲、即ち抵抗変化層をHfOと表記した場合におけるxの範囲が0.9≦x≦1.6の範囲がより適切な抵抗変化層の範囲であると言える(酸素含有率=46.6at%がx=0.9に、酸素含有率=62at%がx=1.6にそれぞれ対応)。なお、RBS法による組成分析では、酸素含有量の分析値は±5at%程度の精度である。従って、前記xの組成範囲もこの精度に起因する測定誤差を含んでおり、実際には、酸素含有率が42〜67at%の組成範囲までこの適切な組成範囲である可能性がある。
組成をHfOx(0.9≦x≦1.6)とし、電圧がV−<V+の関係を満たすように駆動(バイポーラ駆動)することで、高速に動作(100ns程度のパルス幅で駆動)することが可能となる。
[上下の電極材料を変化させた抵抗変化素子の抵抗変化]
次に、抵抗変化の起こりやすさが、電極材料に依存するかどうかの確認を行うため、Wからなる下部電極503とAl、Ti、Ta、W、Cu、Ptから成る上部電極505で酸素不足型のHf酸化物層504を挟んだ構造を作製し、電気パルスによる抵抗変化の様子を調べた結果について説明する。使用した酸素不足型のHf酸化物の酸素含有率は、好適な酸素含有率の範囲で上限に近い61at%(HfO1.56)とした。素子の形成方法は、Hf酸化物の成膜方法は上記とほぼ同じであるが、Al、Ti、Ta、W、Cu、PtはHf酸化物を形成後、一旦大気中に出し、別のスパッタ装置でスパッタリング法によって堆積した。
Figure 2009136467
作製した試料C〜Iと下部電極、上部電極の関係を表2に示す。
上記の試料C〜Iを所定の振幅でパルス幅100nsecの電気パルスを与えてBモードおよびAモードで抵抗変化させた。Bモード、Aモードどちらの場合においても、一部の抵抗変化しにくい場合を除き、高抵抗化させるための電圧の振幅が低抵抗化させるための電圧の振幅よりも大きくなった。
図3〜9にC〜Iの各試料に対して、Bモード、Aモードで正負の極性の電気パルスを交互に印加したときの抵抗変化素子の抵抗値の変化の様子を示す。それぞれの図において(a)はAモードでの、(b)はBモードでの測定結果を示す。
まず、図3(a)、(b)の上部電極にAlを用いた試料C、図4(a)、(b)の上部電極にTiを用いた試料D、図5(a)、(b)の上部電極にHfを用いた試料Eの結果を見ると、Aモードでは比較的安定して、1桁前後の変化幅で抵抗変化が生じているが、Bモードではほとんど抵抗変化しないあるいはまったく抵抗変化しないのが分かる。以上の結果から、上部電極が、Al、Ti、Hfで、下部電極がWの場合、上部電極側では抵抗変化が生じず、下部電極側でのみ抵抗変化が生じているといえる。
次に、図6(a)、(b)の上部電極にTaを用いた試料Fでは、Aモードでは比較的安定して、大きな幅で抵抗変化が生じているが、Bモードでは、最初わずかであるがBモードの抵抗変化が見られたがパルス数とともにその変化幅が減少していき、ほとんど抵抗変化を示さなくなった。以上の結果から、上部電極が、Taで、下部電極がWの場合、上部電極側では抵抗変化幅が小さく、繰り返しとともに抵抗変化が生じにくくなるが、下部電極側では安定した抵抗変化が生じているといえる。
図7(a)、(b)の上部電極にWを用いた試料Gでは、Bモード、Aモード共に比較的安定した抵抗変化が生じた。
次に、図8(a)、(b)の上部電極にCuを用いた試料H、図9(a)、(b)の上部電極にPtを用いた試料Iでは、Bモードでは比較的安定して、1桁前後の変化幅で抵抗変化が生じているが、Aモードではやや不安定で変化幅が小さな抵抗変化を示すのが分かる。以上の結果から、上部電極が、Cu、Ptで、下部電極がWの場合、上部電極側では比較的安定した抵抗変化が生じるが、下部電極側では不安定な抵抗変化が生じているといえる。
次に上記結果についての考察を行う。まず上部電極505の近傍での抵抗を起こさせる(Bモード)事を目的に、電圧を印加した図3〜図9の(b)の結果について考察する。これらの結果から分かることは、酸素不足型のHf酸化物を用いた不揮発性記憶素子では、抵抗変化現象が生じやすい(動作しやすい)材料と、生じにくい(動作しにくい)材料が存在すると言う事である。すなわち、少なくとも、Pt、Cu、Wを電極に用いた場合は抵抗変化が起こりやすくAl、Ti、Hfを電極に用いた場合、抵抗変化は起こりにくいのは明らかである。これらの材料は、本質的に抵抗変化が生じにくい性質を持っていると考えられる。
次に図3〜図6の結果について考察する。図3〜図6では上部電極が抵抗変化が起こりにくい材料(Al、Ti、Hf、Ta)で、下部電極が抵抗変化の起こりやすい材料(W)となっている。図3〜図6の(a)の結果は上部電極をAl、Ti、Hf、Taとした場合、抵抗変化現象が非常に安定して発生しているのが見て取れる。図3〜図6の(b)の結果を参照すると、Bモードではほとんど抵抗変化が起きていないといえる。これは、片側の電極近傍だけで抵抗変化を起こすバイポーラ動作する抵抗変化型の不揮発性記憶素子の理想的な動作を示しているといえる。なお、図3〜図6の(a)の例では動作する側の電極としてWを用いているが、これに限られるものではなく、Cuや、Ptなど、抵抗変化が起こりやすい電極を用いた場合にも同様の結果が期待される。
以上の事から、抵抗変化現象を起こしやすい電極と、抵抗変化現象を起こしにくい電極で抵抗変化膜を挟んだ構造を形成する事で、意図した片側の電極側で抵抗変化させることができるため、上部電極モード、下部電極モードとが混ざり合わない安定したバイポーラ動作を示す抵抗変化型の不揮発性記憶素子が作製可能である事が分かった。また、印加電圧と抵抗値の関係は、抵抗変化を起こしやすい電極に正の電圧の電気パルスを印加した時に、抵抗値が高くなり、負の電圧の電気パルスを印加した時に抵抗値が低くなるような動作を示した。
次に、抵抗変化自体の起こるメカニズムと、抵抗変化の起こりやすさの材料依存性について若干の考察を行う。図10(a)、(b)は、それぞれAモード、Bモードの抵抗変化の結果をまとめたものである。横軸は電極材料、縦軸には標準電極電位をプロットしてある。図中の○は抵抗変化が起こりやすかった事を意味し、△は変化の割合が小さいものの抵抗変化が起こった事を意味し、×は抵抗変化が起こらなかった事を意味する。図10(b)図を見ると、抵抗変化膜の構成元素であるHfよりも標準電極電位が高い材料では抵抗変化が起こっており、低い材料では抵抗変化が起こりにくくなっている事が分かる。そして、標準電極電位の差が大きいほど抵抗変化が起こりやすく、差が小さくなるにつれて、抵抗変化が起こりにくくなっているのが分かる。一般に標準電極電位は、酸化のされ易さの一つの指標であり、この値が大きければ酸化されにくく、小さければ酸化されやすい事を意味する。この事から酸化のされやすさが抵抗変化現象のメカニズムに大きな役割を果たしているのではないかと推測される。
以上の結果をもとに、抵抗変化のメカニズムを考える。まず、抵抗変化が起こり易い材料(標準電極電位が大きく酸化されにくい材料)によって上部電極が構成されている場合について、図11を使って説明する。図11(a)のように、下部電極1501と、酸素不足型のHf酸化物層1502と、Hfよりも酸化されにくい材料によって構成されている上部電極1503からなる抵抗変化素子に、下部電極1501に対して高い電圧を上部電極1503に印加した場合、酸素不足型のHf酸化物中の酸素原子がイオンとなって、電界によって移動し、上部電極1503の界面近傍に集まる。しかし、上部電極1503を構成する金属はHfに比べて酸化されにくいので、酸素イオン1504は酸素不足型のHf酸化物1502と上部電極1503の界面に滞留した状態になり、界面付近でHfと結合し、酸素濃度の高い酸素不足型のHf酸化物を形成する。この事によって素子は高抵抗化する。次に、図11(b)のように、下部電極1501に高い電圧を印加した場合、酸素原子は再び酸素イオンとなって、酸素不足型のHf酸化物1502の内部に戻ってゆく。これにより、低抵抗化が起っていると考えられる。
次に、Hfよりも酸化されやすい材料によって上部電極が構成されている場合について説明したのが図12である。図12のように下部電極1601と、酸素不足型のHf酸化物層1602と、Hfよりも酸化され易い材料によって構成されている上部電極1603からなる抵抗変化素子に、下部電極1601に対して高い電圧を上部電極1603に印加した場合、酸素不足型のHf酸化物中の酸素原子がイオンとなって電界によって移動し、上部電極1603の界面近傍に集まる。この場合、上部電極1603はHfよりも酸化されやすいので、酸素イオン1604は上部電極1603の内部に吸いとられて、上部電極1603を形成している材料と結合を起こす。この場合、図11とは異なり、酸素不足型のHf酸化物1602と上部電極1603の界面に高抵抗層が形成されず、さらに上部電極1603を構成する元素の数に対して酸素イオンの数は少ないために、抵抗値はほとんど上昇しない。逆に、図12(b)のように、下部電極1601に高い電圧を印加した場合、上部電極1603に吸い取られた酸素は、上部電極材との結合がより安定であるため、酸素不足型のHf酸化物1602の中には戻りにくく、抵抗値は大きくは変化しないと考えられる。
もし、図11及び12において、上部電極を構成する材料の酸化のされやすさがHfと同程度の場合、上記の2つの例の中間的な変化が生じ、微弱な抵抗変化が生じると考えられる。
以上の結果から分かるように、酸素不足型のHf酸化物を抵抗変化膜に使用した不揮発性記憶素子では、上部と下部で異なる標準電極電位の有する材料を用いれば良い。これにより、片側の電極近傍で優勢に抵抗変化が起こって、理想的なバイポーラ型の抵抗変化を実現できる。さらに、上部電極モードと下部電極モードの混ざり合いも起こらず、安定した抵抗変化動作が可能となる。より好適には、一方の電極材料には、Hfの標準電極電位よりも大きく、かつ差の大きな材料を用い、もう一方の電極材料には、Hfの標準電極電位よりも大きく差の小さな材料を用いれば良い。さらにより好適には、一方の電極材料には、Hfの標準電極電位よりも大きな材料も用い、もう一方の電極材料には、Hfの標準電極電位以下の材料を用いればよい。
また、上記のメカニズムからも明らかなように、抵抗変化を起こしやすい電極に正の電圧の電気パルスを印加した時に、抵抗値が高くなり、負の電圧の電気パルスを印加した時に抵抗値が低くなるような動作を示す。
なお、上述の不揮発性記憶素子は、抵抗変化膜が酸素不足型のHf酸化物で構成されているが、抵抗変化膜の全体が酸素不足型のHf酸化物で構成されている必要はない。主たる抵抗変化材料が酸素不足型のHf酸化物であればよい。すなわち、不揮発性記憶素子は、抵抗変化膜が酸素不足型のHf酸化物を含んでいればよい。ただし、この酸素不足型のHf酸化物が前記抵抗変化に寄与するのが好ましい。別の言い方をすれば、抵抗変化膜は、酸素不足型のHf酸化物の抵抗変化特性を損なわない程度に、不純物や他の物質を含んでいてもよい。参考までに文献および技術常識について以下説明する。
(抵抗変化素子に対してドーピングを行う技術常識)
1.国際公開2005/117021(出願人:UNITY)
文献1には、不揮発性プログラマブルメモリにおいて、ペロブスカイト構造の遷移金属酸化物を抵抗変化層として用いた例が記載されており(段落0165)、その段落0172には次の記載がある。
「更に、空孔(陰イオンにしろ、陽イオンにしろ)は、電荷トラップを形成するように機能することもできる。空孔によって生じる電荷の不均衡は、ドーパントの計画的追加を補うメカニズムと同じメカニズムによって補うことができる。したがって、酸素空孔1つあたりを2つのCr原子によって補うと、自由キャリアは生じないが、もし完全に補えるだけのCrが存在しない場合は、酸素空孔によって自由電子が生じる。」(特表2007-536680の段落0175)
すなわち、同文献に記載されているペロブスカイト構造は、本願発明のHf酸化物のような2元素からなる遷移金属酸化物とは異なるが、本願と同様に、酸素欠損(酸素空孔)のメカニズムを利用した遷移金属酸化物からなる抵抗変化材料が記載されている点で共通する。
同文献の段落0199には次の記載がある。
「具体的な1つの態様では、ドーピングによって抵抗率を変化させる。例えば、電気的パルスの印加は、抵抗率を高い値から低い値へと、または低い値から高い値へと可逆的に変化させるが、材料に対するドーピングは、このような高い値と低い値との差の大きさを加減することができる。」(特表2007-536680の段落0202)
すなわち、抵抗変化特性を有する遷移金属酸化物に対して、さらにドーピングを行うことにより、抵抗値の高い値と低い値の差の大きさを調整できることが記載されている。
また、同文献の段落0200及び段落0201には、次の記載がある。
「もう1つの態様では、ドーピングによって電荷トラップの量または大きさを変化させる、または電荷トラップの電子捕獲能力を加減することによって、メモリプラグのデータ保持能力を向上させる。すなわち、ドーピングは、メモリの動作中に電子がメモリプラグを通り抜けて電荷トラップを残留させる動きを促進すると考えられる。もう1つの態様では、ドーピングによって抵抗の温度感受性を更に低下させる。もう1つの態様では、ドーピングによって磁場依存性を低下させる。」(特表2007-536680の段落0203及び段落0204)
ここにも、抵抗変化特性を有する遷移金属酸化物に対して、さらにドーピングを行うことにより、基本的な抵抗変化特性とは異なる他の特性が改善されることが記載されている。
2.特表2002−537627(出願人:IBM)
文献2には、不揮発性メモリ等の半導体メモリにおいて、ペロブスカイトや関連化合物を抵抗変化層として用いた例が記載されている(段落0016、段落0017)。この関連化合物の具体例として、段落0027において「x=1、y=1、z=1と、指数xまたはyが0のいずれかにより定義される指数x、y、zの組み合わせは、BeO、MgO、BaO、CaO、...NiO、MnO、CoO、ZnOのような典型的物質を示す。或いは・・・(中略)・・・n=1で指数xまたはyが0のいずれかにより定義される指数x、y、zの組み合わせは、TiO、VO、MnO、GeO、PrO、SnOのような物質を示す。N=2のときは、Al、Ce、Nd、Ti、Sc、Laのような物質を示す。または、・・・(中略)・・・Nb、Ta等のような典型的物質を示す。」と記載されている。
すなわち、同文献には、ペロブスカイト構造だけでなく、本願発明と同様に2元素からなる遷移金属酸化物を用いた抵抗変化素子が記載されている。
また、同文献の段落0017には次の記載がある。
「マイクロ電子デバイスは、電極間に、化合物Ax、By、及び酸素Ozを含む物質から形成された、切り替え可能なオーミック抵抗のある領域が含まれるように設計することができる。領域のオーミック抵抗は、異なる電圧パルスを印加することによって、異なる状態間で反転スイッチングが可能である。異なる電圧パルスは対応する異なる状態につながる。物質のドーパント量が適切であれば、スイッチングが改良され、よってマイクロ電子デバイスを制御できるようになり信頼性が得られる。」
すなわち、本来の抵抗変化特性に対して、ドーピングを適切に行うことで、スイッチングが改良されることが記載されている。なお、ここでいう「化合物Ax、By、及び酸素Ozを含む物質」には上記段落0027の記載を参酌すれば、2元素からなる遷移金属酸化物を含むものである。この文献には、2元素からなる遷移金属酸化物を用いた抵抗変化素子において、ドーピングを適切に行うことで、スイッチングが改良されることが記載されていることになる。
3.特開2006−279042号公報(出願人:三星電子)
文献3には、電圧によって可逆的に互いに異なる二つの抵抗状態がスイッチングできる抵抗メモリ要素を含む不揮発性メモリが記載されており(段落0002)、さらに段落0026には次の記載がある。
「例えば、抵抗メモリ要素がMOxとして表示される際、金属MがNi、Co、ZnまたはCuである際、酸素原子Oの組成比を示すxは0.5乃至0.99の範囲を有する(0.5≦x≦0.99)。これとは異なり、前記金属MがHf、Zr、TiまたはCrである際、酸素原子Oの組成比を示すxは1.0乃至1.98範囲を有する(1.0≦x≦1.98)。そして前記金属MがFeである際、酸素原子Oの組成比を示すxは0.75乃至1.485の範囲を、前記金属MがNbである際、酸素原子Oの組成比を示すxは1.25乃至2.475の範囲を有する。」
すなわち、本願発明と同様に、酸素欠損を有する2元素からなる遷移金属酸化物を用いた抵抗変化素子が記載されている。
さらに段落0016には次の記載がある。
「前記遷移金属酸化物もリチウム、カルシウム、またはランタンのような不純物を含むことができる。」
すなわち、本願発明と同様の酸素欠損を有しかつ2元素からなる遷移金属酸化物を用いた抵抗変化素子に対して、不純物を混ぜる場合もあることを示している。
この文献3の記載についてさらに詳しく検討する。
上記記載によれば抵抗メモリ要素を構成する材料として、Feが含まれているが(X=1.33)、このFe(四酸化三鉄)は、理化学辞典(第四版、岩波書店 1987)の記載によれば下記の特長がある。
1)結晶構造 → 逆スピネル構造(ペロブスカイト構造とは異なる。)
2)比抵抗 → 4×10-3Ωcm(室温で半導体的であり、絶縁体とは言えない。)
金属鉄の比抵抗は9.71×10-6Ωcm。従って、Feの比抵抗は金属Feの1/400に相当する。
すなわち、文献3の記載と理化学辞典の記載によれば、それ自体が絶縁体でなく導電性を有する非ペロブスカイト構造の(2元素からなる)遷移金属酸化物が抵抗変化特性を有していることを示しており、これらの点は本願発明と共通する。
先に示した文献1には、ペロブスカイト構造の遷移金属酸化物を用いる例が記載されており、その点で本願発明と相違する。しかしながら文献2や文献3においては、非ペロブスカイト構造であり抵抗変化特性を示す導電性遷移金属酸化物においても、さらに不純物を添加して抵抗変化素子として用いることが開示されている。
4.特開2006−165553号公報(出願人:三星電子)
文献4には、不揮発性特性を有する相変化メモリに関する発明が記載されており(段落0003)、さらに段落0016には次の記載がある。
「以上のように記述された本発明の実施例で、前記相変化物質は、複数の抵抗状態を有する転移金属酸化物から形成されてもよい。例えば、前記相変化物質は、NiO、TiO、HfO、Nb、ZnO、WO及びCoO、またはGST(GeSbTe)、またはPCMO(PrCa1−xMnO)からなる群から選択された少なくとも何れか一つの物質から形成されてもよい。」
すなわち、本願発明、さらに文献2や文献3と同様に、2元素からなる遷移金属酸化物を用いた抵抗変化材料を利用して抵抗変化素子を形成することが記載されている。
さらに同文献の段落0026には次の記載がある。
「また、前記相変化物質層の相変化ナノ粒子の物性を調節するために準備されたナノ粒子に、窒素、シリコンなどをドーピング処理できる。」
すなわち、主たる材料である遷移金属酸化物に対して、ドーピングを行うことで特性の調節を行うことが記載されている。
上記のとおり文献1ないし文献4には、抵抗変化特性を有しかつ2元素からなる遷移金属酸化物、あるいは、酸素欠損を有しかつ抵抗変化特性を有する遷移金属酸化物に対して、その遷移金属酸化物のみで抵抗変化素子を構成する例と、それ以外に当該基本構成に対してドーピングを行う例が記載されている。
すなわち、主たる材料(遷移金属酸化物)により抵抗変化特性を有する抵抗変化素子に対して、調整、調節、改良等の目的でドーピングを行うことは技術常識であると言える。
(スパッタ法により意図しない不純物が混在する技術常識)
上述の説明においては、抵抗変化膜としてのHf酸化物膜の形成方法としてスパッタ法を記載している。スパッタ法を用いれば、意図しない不純物が混ざり込むことが技術常識であることを以下に説明する。
5.「SEMICONDUCTOR MATERIALS AND PROCESSTECHNOLOGY HANDBOOK」(McGUIRE 1988年発行)
文献5には、スパッタ法を用いると、基板やチャンバー壁などから、不要なガスが発生してしまうことが記載されている(第333ページ第25行〜第29行)。
6.「各種薄膜作成技術における諸問題及びトラブル対策 −総合技術資料集−」(経営開発センター出版部 昭和60年5月20日発行)
文献6には、残留不純物ガスや真空容器壁からのガス放出など、真空装置の汚染によって、作成される膜の膜質が低下することが記載されている(第324ページ右欄第1行〜第15行)。
7.「集積回路ハンドブック」(丸善株式会社 昭和43年11月25日発行)
文献7には、真空蒸着は必ずしも真空で行われるのではなく、市販の蒸着装置を用いれば、装置における色々な残留ガスにより、形成される薄膜に大きな影響を及ぼすことが記述されている(第151ページ第3行〜第152ページ第3行、第153ページ第1行〜第2行)。
以上の記載から、製造過程においてスパッタ法を用いれば、意図しない不純物が混ざり込むことは技術常識である。
上記引用にかかる本願出願時の技術常識を示す文献には、例えば、抵抗変化特性を有しかつ酸素欠損のある遷移金属酸化物により抵抗変化素子を構成する例と、さらに前記構成にドーピングを行うことにより他の材料を添加する例が併記されている。前者の例は実施例の発明と共通する例であり、かつ基本的な構成に相当する。そして後者の例が基本的な構成を利用した応用例に相当する。これはまさに基本構成に対して他の材料を添加することにより特性の調整等を行うことが遷移金属酸化物を用いた抵抗変化素子の技術分野において周知であることを示す。
また製造過程において意図しない不純物が混ざり込むことも周知である。
すなわち上記文献の記載を参酌すれば、抵抗変化層の主たる構成要素に対して何らかの他の物質を追加すること、結果として他の物質が混ざり込むことは、技術常識である。
以上に照らせば、本願発明の不揮発性記憶素子は、抵抗変化膜が酸素不足型のHf酸化物を含んでいればよいことが明らかである。
また、本発明の不揮発性記憶装置は、電気的パルス印加装置と、上述した酸素不足型のHf酸化物を使ったバイポーラ動作する抵抗変化型の不揮発性記憶素子とを備え、電気的パルス印加装置は、正負両極性の電気的信号を該不揮発性記憶素子に印加することで、該不揮発性記憶素子の第1電極および第2電極間の抵抗値を可逆的に変化させるように構成されている。すなわち電気的パルス印加装置は、第1電極を基準として第2電極に第1極性(例えば、正極性)の電気的パルスを印加することで第1電極および第2電極間の抵抗値を第1抵抗値とし(例えば、該不揮発性記憶素子を高抵抗状態とし)、第1電極を基準として第2電極に第2極性(例えば、負極性)の電気的パルスを印加することで第1電極および第2電極間の抵抗値を第2抵抗値とする(例えば、該不揮発性記憶素子を低抵抗状態とする)。
また、本発明の不揮発性記憶素子へのデータ書込方法は、上述した酸素不足型のHf酸化物を使ったバイポーラ動作する抵抗変化型の不揮発性記憶素子へのデータ書込方法であって、正負両極性の電気的信号を該不揮発性記憶素子の第1電極および第2電極間に印加することで、該不揮発性記憶素子の第1電極および第2電極間の抵抗値を可逆的に変化させる。すなわち、第1電極を基準として第2電極に第1極性(例えば、正極性)の電気的パルスを印加することで第1電極および第2電極間の抵抗値を第1抵抗値とし(例えば、該不揮発性記憶素子を高抵抗状態とし)、第1電極を基準として第2電極に第2極性(例えば、負極性)の電気的パルスを印加することで第1電極および第2電極間の抵抗値を第2抵抗値とする(例えば、該不揮発性記憶素子を低抵抗状態とする)。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
本発明の不揮発性記憶素子および不揮発性記憶装置は、高速動作が可能で、しかも安定した書き換え特性を有しており、デジタル家電、メモリカード、携帯型電話機、およびパーソナルコンピュータなどの種々の電子機器に用いられる不揮発性記憶素子等として有用である。
本発明は、不揮発性記憶素子に関し、特に、印加される電気的信号に応じて抵抗値が変化する抵抗変化型の不揮発性記憶素子、不揮発性記憶装置、および不揮発性記憶素子へのデータ書込方法に関する。
近年、デジタル技術の進展に伴い、携帯型情報機器および情報家電などの電子機器が、より一層高機能化している。そのため、不揮発性記憶素子の大容量化、書き込み電力の低減、書き込み/読み出し時間の高速化、および長寿命化の要求が高まっている。
こうした要求に対して、既存のフローティングゲートを用いたフラッシュメモリの微細化には限界があると言われている。そこで、最近、抵抗変化層を記憶部の材料として用いる新たな抵抗変化型の不揮発性記憶素子に注目が集まっている。
この抵抗変化型の不揮発性記憶素子は、基本的には図17に示したように、抵抗変化層1702を下部電極1701と上部電極1703でサンドイッチしたような非常に単純な構造で構成される。そして、この上下の電極間にある閾値以上の大きさの電圧を有する所定の電気的パルスを与えるだけで、抵抗が高抵抗もしくは低抵抗状態に変化する。そして、これらの異なる抵抗状態と数値を対応させ情報の記録を行うのである。抵抗変化型の不揮発性記憶素子はこのような構造上及び動作上の単純さから、さらなる微細化や低コスト化が可能であると期待されている。さらに、高抵抗と低抵抗の状態変化が100ns以下オーダーで起こる場合もある事から、高速動作という観点からも注目を集めており、種々の提案が成されている。
例えば、特許文献1に開示されているのは、上部電極と下部電極に電圧を印加する事で抵抗変化層1702内に金属イオンを出し入れして高抵抗と低抵抗状態を作り出し、情報を記録するタイプの抵抗変化型の不揮発性記憶素子である。また、特許文献2に開示されているような、抵抗変化層の結晶状態を電気パルスで変化させて抵抗状態を変化させるようなタイプの抵抗変化型メモリも知られている。
さらに、上記に加えて、抵抗変化層1702に金属酸化物を使った抵抗変化型の不揮発性記憶素子に関する提案も多くなされている。このような金属酸化物を使った抵抗変化型の不揮発性記憶素子は、抵抗変化層に用いる材料で大きく2種類に分類される。一つは、特許文献3等に開示されているペロブスカイト材料(Pr(1−x)CaXMnO(PCMO)、LaSrMnO(LSMO)、GdBaCo(GBCO)等)を抵抗変化層として用いた抵抗変化型の不揮発性記憶素子である。
もう一つは、2元系の遷移金属酸化物を用いた抵抗変化型の不揮発性記憶素子である。2元系の遷移金属酸化物は、上述のペロブスカイト材料と比較しても非常に単純な組成であるため、製造時の組成制御および成膜が比較的容易である。その上、半導体製造プロセスとの整合性も比較的良好であるという利点もあり、最近、特に精力的に研究がなされている。
例えば、特許文献4では、抵抗変化材料としてNiO、V、ZnO、Nb、TiO、WO、CoOが開示されている。また、特許文献5や非特許文献1〜3では、Ni、Nb、Ti、Zr、Hf、Co、Fe、Cu、Cr等の遷移金属の酸化物で、特に、酸素が化学量論的組成から不足した酸化物(以下、酸素不足型の酸化物と呼ぶ)を抵抗変化材料として使った抵抗変化素子が開示されている。
ここで酸素不足型の酸化物をもう少し説明する。例えば、Niの場合、化学量論的組成を有する酸化物として、NiOが知られている。このNiOでは、O原子とNi原子が同数含まれており、酸素含有率で表現すると50at%である。この酸素含有率50at%よりも酸素含有率が低くなった状態の酸化物を酸素不足型の酸化物と呼ぶ。なお、この例の場合、Niの酸化物であるので、酸素不足型のNi酸化物と表現できる。
さらに、特許文献6や非特許文献2には、チッ化チタンの表面を酸化してナノメートルオーダーのチタン酸化物(TiO)結晶膜を形成したような構造を抵抗変化層に使う例も開示されている。
また、抵抗変化の様式という点から見ると、上記の金属酸化物を使った不揮発性記憶素子は2種類に分類される。一つは、同一の極性の大きさの異なる電圧を有する電気パルスで抵抗変化をさせるユニポーラ型である(例えば+1Vと+2Vの電圧を印加して抵抗値を増減させる)。特許文献4や5に開示されている不揮発性素子がこれにあたる。もう一つは、極性の異なる電圧を有する電気パルスで抵抗変化を制御するバイポーラ型である(例えば+1Vと−1Vの電圧を印加して抵抗値を増減させる)。このような様式の不揮発性記憶素子は、特許文献3や6に開示されている。
さらに、抵抗変化層を挟んでいる上下の電極材料についても、例えば、特許文献5には、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)、Ir及びRuの酸化物、チタン(Ti)の窒化物、ポリシリコン等が開示されている。さらに、特許文献6には、Pt、Ir、オスミウム(Os)、Ru、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、Ti、コバルト(Co)、W等を電極材料に使用した不揮発性記憶素子が開示されている。また、特許文献7には、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、金(Au)、Ptが開示され、特許文献8には、Pt、Ir、Ru、Ir酸化物、Ru酸化物が開示されている。
特開2006−40946号公報 特開2004−349689号公報 米国特許第6473332号明細書 特開2004−363604号公報 特開2005−317976号公報 特開2007−180202号公報 特開2007−88349号公報 特開2006−324447号公報
I.G.Beak et al., Tech. Digest IEDM 2004,587頁 Japanese Journal of Applied Physics Vol45, NO11, 2006, pp.L310-L312 A.Chen et al., Tech. Digest IEDM 2005,746頁
しかしながら、上下の電極材料の組み合わせに依存した抵抗変化現象の制御性等に関するデータについてはこれまで開示されていない。つまり、抵抗変化型の不揮発性記憶素子において、抵抗変化を実現しやすいと推察される電極の候補については、上述のように、特許文献5乃至8に開示がなされている。しかしながら、抵抗変化型の不揮発性記憶素子を組み込んだメモリ装置を製造した場合に、制御性良く抵抗変化を発生させるための好適な上下電極の材料の組み合わせについては開示されていない。
発明者らは、上下の電極に用いる好適な材料の組み合わせを考慮せずに、不揮発性記憶素子を作製し、その電気的特性を調べた。作製したのは基本構造が図17のような素子であり、抵抗変化層1702に酸素不足型のHf酸化物を用い、これをPtからなる下部電極1701と、同じくPtからなる上部電極1703でサンドイッチしたような上下対称な構造とした。ここで、抵抗変化層1702の酸素不足型のHf酸化物の酸素含有率は56.8at%とした(HfOと表現した時、xは1.31)。以下、この不揮発性素子を素子Aと呼ぶ。なお、素子の名称と電極材料の関係は、下記に示す実施の形態で説明する素子も全てまとめて表2に示した。
図14は素子Aに電気的パルスを加えた時の抵抗変化を示す。ここで、図14(a)及び(b)の横軸は下部電極1701と上部電極1703の間に加えた電気的なパルスの数であり、縦軸は抵抗値である。
まず、図14(a)は、下部電極1701と上部電極1703の間には、パルス幅が100nsecで、下部電極1701を基準として上部電極1703に+1.5Vと−1.2Vの電圧を有する電気的パルスを交互に印加した時の抵抗の測定結果である。この場合、+1.5Vの電圧の電気パルスを印加する事で抵抗値は500〜700Ω程度となり、−1.2Vの電圧の電気パルスを印加した場合は、140Ω程度と変化していた。すなわち、上部電極1703に下部電極1701よりも高い電圧の電気パルスを加えた時に高抵抗化する変化を示した。
次に、印加する電圧のバランスを変化させ、負の電圧を大きくした場合の結果が図14(b)である。この場合、下部電極1701を基準として上部電極1703に−1.5Vと+1.2Vの電圧の電気的パルスを印加した。すると、−1.5Vの電気パルスを印加した時に、高抵抗化し、抵抗値は900〜1200Ω程度となり、+1.2Vの電気パルスを印加した時に低抵抗化して、抵抗値は150Ω程度となっている。すなわち、上部電極1703に下部電極1701よりも高い電圧の電気パルスを加えた時に低抵抗化しており、図14(a)のを測定した時と、正反対の動作を示した。
上記の結果は、素子Aのような素子が、バイポーラ型の不揮発性記憶素子の動作としては非常に不適当である事を示している。バイポーラ型の不揮発性記憶素子は、印加する電気的パルスの電圧の大きさで抵抗変化を制御しているわけではなく、極性の異なる電圧を有する電気パルスで抵抗を制御する点に特徴がある。つまり、素子に印加する電圧の大きさが多少ばらついた場合や、製造時のばらつき等の要因によって抵抗変化を起こす閾値の電圧が多少ばらついても、抵抗変化の方向性(高抵抗から低抵抗、もしくは低抵抗から高抵抗への変化の方向性)は、ばらつかない点にバイポーラ型の素子の特徴がある。しかしながら上記の素子Aの場合は、上部電極に正の電圧を加えた時に抵抗値が増加する場合と、減少する場合が存在しており、電極に印加する電圧の極性によって抵抗値が一意に決まらないという課題がある。
上記のような、不揮発性記憶素子が印加電圧の極性に対して、2つのモードで抵抗変化する原因を調べるため、不揮発性記憶素子のどの部分が抵抗変化を起こしているかを調べた。この目的のために作製した素子が素子Bである。なお、今回はHfと同様のメカニズムで動作していると考えられている、酸化不足型のTa酸化物を用いた場合の結果を示す。図15に示したのは素子Bの断面の模式図である。この図のように、100nmの酸素不足型のTa酸化物層205の上下にPtで2つずつ、合計4つの電極201〜電極204を形成した。そして、電極202を基準にして電極201に100nsecのパルス幅で+2.0Vと−1.5Vの電圧を印加した。すると、+2.0Vの電圧の電気パルスを印加した時に高抵抗化し、−1.5Vの電圧の電気パルスを印加した時に低抵抗化した。このように電極201と電極202の抵抗を変化させた状態で4つの電極間の抵抗値を測定した。具体的には、電極201と電極202に+2.0Vを印加して電極201と電極202の間の抵抗を高抵抗化した状態で、電極201と電極203、電極201と電極204、電極202と電極203、電極202と電極204、電極203と電極204の間の抵抗値をそれぞれ測定した。次に、電極201と電極202に−1.5Vを印加して電極201と電極202の間の抵抗を低抵抗化した状態で、上述と同様に各電極間の抵抗値を測定した。
以上のような測定を10回ずつ繰り返し、各電極間の抵抗値をまとめると、表1に示すような結果が得られた。
Figure 2009136467
すなわち、電極201に関連した部分だけに抵抗値の変化が見られ、電極201が関与していない場所では、抵抗値がほとんど変化していないという結果が得られた。この事から、電極201と電極202の間に電圧を印加した時に抵抗の変化が起こっていたのは、電極201の近傍だけであった事が分かる。
以上の事より、酸素不足型のTa酸化物を抵抗変化層に用いた抵抗変化素子で抵抗変化が生じているのは酸素不足型のTa酸化物層の中でも電極に近い部分だけであるといえる。また、高抵抗化を起こす時に、高い電位となっている側の電極の近傍が抵抗変化を起こしていると考えられる(この場合、高抵抗化する時、電極202に対して電極201には高電位の電圧がかかっている)。
この現象は遷移金属の酸素不足型のHf酸化物を用いた場合であっても同様であると考える。なぜならば、Hf酸化膜を抵抗変化膜に使用した不揮発性記憶素子でもTaの場合と同様、電極に加えられた電界によって抵抗変化の現象が観測されるからである。
以上の結果を考慮すると、素子Aでは、上部電極1703と酸素不足型のHf酸化物層1702の界面近傍で抵抗変化を起こすモード(上部電極モード)と、下部電極1701と酸素不足型のHf酸化物層1702の界面近傍で抵抗変化を起こすモード(下部電極モード)の2つのモードで抵抗変化が起こっていたと考えられる。印加した電気パルスの極性と抵抗変化の方向性を考慮すると、図14(a)は、上部電極モードが支配的に動作している場合であり、図14(b)は下部電極モードが支配的に動作している時の抵抗変化特性であった事も分かる。ここで、下部電極を基準として、上部電極に負極性の電圧を加えたときに高抵抗化し、正極性の電圧を加えたときに低抵抗化するようなモードをAモードと定義し、下部電極を基準に上部電極に正極性の電圧を印加したときに高抵抗化し、負極正の電圧を加えたときに低抵抗化するようなモードをBモードと定義する(Aモードが下部電極モードに対応し、Bモードが上部電極モードに対応する。)。
以上の結果から、抵抗変化膜を金属電極で挟んだような構造を有し、電極に印加する電圧の極性によって抵抗値が一意に決まる、理想的なバイポーラ型不揮発性記憶素子を形成するためには、上下両方の電極近傍で抵抗変化が起こるような構造を取るべきではないと考えられる。
上記のような課題の他に、素子に繰り返し抵抗変化をさせた場合に、上部電極モードと下部電極モードの混ざりあいのような現象が、頻度は少ないが発生するという課題がある。
図16は、素子Aと同様の図17に示すような構造を有する別の素子の抵抗変化特性で
ある。すなわち、下部電極1701と上部電極1703を共にPtによって形成し、抵抗変化層1702として、酸素含有率62at%の酸素不足型のHf酸化物(HfOxと表現した時、xは1.6)を用いた不揮発性記憶素子である。また、測定時に加えた電気的パルスは、下部電極1701を基準として上部電極1703を+2.0Vと−1.1Vの電圧とし、パルスの幅は100nsecとした。この図を見ると、繰返し電気パルスを印加したときの素子の低抵抗状態の抵抗がばらついているのが分かる。
この現象は、上記のように、上部電極モードと下部電極モードの混ざり合いによって発生したと考えられる。つまり、加えた電気的パルスは、下部電極1701を基準として上部電極1703を+2.0Vと−1.1Vの電圧としているので、素子の抵抗は、理想的には上部電極側が高抵抗と低抵抗に変化を繰り返すはずであるが、この例では、下部電極側の抵抗も変化して素子の全抵抗が不安定に変化していると考えられる。言い換えれば、下部電極と酸素不足型のHf酸化物の界面の抵抗が意図せず大きく変化を起こしたため、図16のような抵抗変化幅のふらつきが発生したと考えられる。
以上のような抵抗変化幅のふらつきは、抵抗の大小によって情報を記憶する素子の特性としては、ふさわしくない。
上記目的を達成するために、本発明の不揮発性素子は、第1電極と第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する抵抗変化層とを備え、前記第1電極および前記第2電極間に与えられる正負両極性の電気的信号によって可逆的に前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値が変化する不揮発性記憶素子であって、前記抵抗変化層は、酸素不足型のハフニウム酸化物を含み、前記第1電極および前記第2電極は、異なる元素から構成され、前記第1電極を構成する元素の標準電極電位V1と、前記第2電極を構成する元素の標準電極電位V2と、ハフニウムの標準電極電位V0との関係が、V1<V2かつV0<V2を満足する。
また、ある好ましい実施形態においては、上記目的を達成するために、本発明の不揮発性素子は第1電極と第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する抵抗変化層とを備え、前記第1電極および前記第2電極間に与えられる正負両極性の電気的信号によって可逆的に前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値が変化する不揮発性記憶素子において、
前記抵抗変化層は、酸素不足型のハフニウム酸化物を含み、
前記第1電極および前記第2電極は、異なる元素から構成され、
前記第1電極を構成する元素の標準電極電位V1と、前記第2電極を構成する元素の標準電極電位V2と、ハフニウムの標準電極電位V0との関係が、V1≦V0<V2を満足することを特徴とする。
また、ある好ましい実施形態においては、前記第1電極は、Al、Ti、Hfからなる群から選択される事を特徴とし、前記第2電極はW、Cu、Ptからなる群から選択されてもよい。
また、ある好ましい実施形態においては、第1電極と第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する抵抗変化層とを備え、前記第1電極および前記第2電極間に与えられる電気的信号によって可逆的に前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値が変化する不揮発性記憶素子において、
前記抵抗変化層は、酸素不足型のハフニウム酸化物を含み、
前記第1電極および前記第2電極は、異なる元素から構成され、
前記第1電極を構成する元素の標準電極電位V1と、前記第2電極を構成する元素の標準電極電位V2と、ハフニウムの標準電極電位V0との関係が、V0<V1<V2を満足することを特徴とする。
またある好ましい実施形態においては前記第1電極は、Wからなり、前記第2電極はCu、Ptからなる群から選択される事を特徴とする。
また、ある好ましい実施形態においては、前記酸素不足型のハフニウム酸化物がHfO(0.9≦x≦1.6)の化学式で表されることを特徴とする。
また本発明の不揮発性記憶素子の駆動方法は、前記のいずれかに記載の不揮発性記憶素子の駆動方法であって、前記正負両極性の電気的信号は、前記第1電極を基準として前記第2電極側に与えられる振幅V+の正極性の電気的信号および振幅V−の負極性の電気的信号であり、V+とV−との関係が、V−<V+を満足し、前記正極性の電気的信号が与えられることによって前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値が増大し、前記負極性の電気信号が与えられることによって前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値が減少することを特徴とする不揮発性記憶素子の駆動方法である。
また、本発明の不揮発性記憶装置は、上記不揮発性記憶素子と、電気的パルス印加装置とを備え、前記電気的パルス印加装置は、正負両極性の電気的信号を前記不揮発性記憶素子に印加することで、前記不揮発性記憶素子の第1電極および第2電極間の抵抗値を可逆的に変化させるように構成されている。
また、本発明の不揮発性記憶素子へのデータ書込方法は、上記不揮発性記憶素子へのデータ書込方法であって、正負両極性の電気的信号を前記不揮発性記憶素子の前記第1電極および前記第2電極間に印加することで、前記不揮発性記憶素子の前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値を可逆的に変化させる。
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
本発明によれば、可逆的に安定した書き換え特性を有する不揮発性記憶素子並びにその不揮発性記憶素子を用いた不揮発性記憶装置が得られる。
図1は、本発明の実施の形態に係る不揮発性記憶素子構成を示す断面図である。 図2は、不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図3は、本発明の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図4は、本発明の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図5は、本発明の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図6は、本発明の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図7は、本発明の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図8は、本発明の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図9は、本発明の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図10は、Aモード、Bモードの抵抗変化の結果をまとめた図である。 図11は、想定される抵抗変化のメカニズムを示す図である。 図12は、想定される抵抗変化のメカニズムを示す図である。 図13は、作製したHf酸化物層の組成をラザフォード後方散乱法(RBS法)によって解析した結果を示す図である。 図14は、不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図15は、素子Bの断面の模式図である。 図16は、不揮発性記憶素子の抵抗値と電気パルス印加回数との関係を示す図である。 図17は、不揮発性記憶素子の基本構造を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付しその説明は省略する場合がある。
(実施の形態)
上述のように、酸素不足型のHf酸化物を使ったバイポーラ動作する抵抗変化型の不揮発性記憶素子では、上下のどちらかの電極近傍でのみ抵抗変化が起こりやすいような動作が望ましい。もし、抵抗変化現象が電極材料によって変化するならば、抵抗が変化しやすい電極材料と抵抗が変化しにくい電極材料で酸素不足型のHf酸化物を挟んだような構造を作れば良い。本実施の形態では、この点を検証した結果について説明する。
なお、この検証結果を説明する前に、酸素不足型のHf酸化物層の形成方法や、酸素含有率の好適な範囲を説明する。その後、抵抗変化の起こりやすさが電極材料に依存するかどうかの確認を行うため、Al、Ti、Ta、W、Cu、Ptからなる電極でHfOx層を挟んだ構造を形成し、電気パルスによる抵抗変化現象の様子を調べた結果について述べる。そして最後に、動作しやすい電極材料と動作しにくい電極材料で酸素不足型のHf酸化物を挟み込んだ構造の抵抗変化素子の抵抗変化の測定結果について述べる。
[スパッタリング時の酸素流量比とHf酸化物層の酸素含有率との関係]
まず、本実施の形態における酸素不足型のHf酸化物層の作製条件及び酸素含有率の解析結果について述べる。酸素不足型のHf酸化物層は、Hfターゲットを(アルゴン)ArとOガス雰囲気中でスパッタリングする、いわゆる、反応性スパッタリングで作製した。本実施の形態での具体的な酸素不足型のHf酸化物の作製方法は次の通りである。
まずスパッタリング装置内に基板を設置し、スパッタリング装置内を3×10−5Pa程度まで真空引きする。Hfをターゲットとして、パワーを300W、アルゴンガスと酸素ガスとをあわせた全ガス圧力を0.9Pa、基板の設定温度を30℃にし、スパッタリングを行った。ここでは、Arガスに対するOガスの流量比を2%から4.2%まで変化させた。まずは、組成を調べる事が目的であるため、基板としては、Si上にSiOを200nm堆積したものを用い、Hf酸化物層の膜厚は約50nmになるようにスパッタリング時間を調整した。このようにして作製したHf酸化物層の組成をラザフォード後方散乱法(RBS法)によって解析した結果を図13に示す。この図から、酸素流量比を2%から4.2%に変化させた場合、Hf酸化物層中の酸素含有率は約37.7at%(HfO0.6)から約69.4at%(HfO2.3)へと変化していることが分かる。以上の結果より、Hf酸化物層中の酸素含有率を酸素流量比によって制御可能である事と、Hfの化学量論的な酸化物であるHfO(HfO)の酸素含有率66.7at%よりも酸素が不足している、酸素不足型のHf酸化物から酸素が過剰に含有されていると思われるHf酸化物までが形成されている事が明らかとなった。
なお、本実施の形態では、Hf酸化物層の解析にラザフォード後方散乱法(RBS)を利用したが、オージェ電子分光法(AES)、蛍光X線分析法(XPS)、電子線マイクロアナリシス法(EPMA)等の機器分析手法も利用可能である。
[酸素不足型のHf酸化物層の抵抗変化特性]
以上のように作製した酸素不足型のHf酸化物のうち、どの程度の酸素含有率を有する酸素不足型のHf酸化物が抵抗変化を示すのかを調べた。ここで酸素不足型のHf酸化物層を挟む電極の材料として用いたのは、上下の電極ともにPtである。上下にPtを用いた場合は、上述のように、バイポーラ型の抵抗変化型の不揮発性素子としては不適当である。しかしながら、Ptは後述するように、抵抗変化を非常に示しやすい電極材料であり、ある酸素含有率を有する酸素不足型のHf酸化物が抵抗変化を示すか否かの判定を行うには最も好適な材料である。
以上のような理由から、図1のような不揮発性記憶素子500を形成した。すなわち、単結晶シリコン基板501上に、厚さ200nmの酸化物層502を熱酸化法により形成し、下部電極層503としての厚さ100nmのPt薄膜を、スパッタリング法により酸化物層502上に形成した。その後、Hfをターゲットとして、反応性スパッタリングによって酸素不足型のHf酸化物層504を形成した。本実施の形態で検討した範囲では、上記の分析試料と同様に、酸素ガスの流量比を、2%から4.2%まで変化させて不揮発性記憶素子を作製した。酸素不足型のHf酸化物層504の膜厚は30nmとした。
その後、酸素不足型のHf酸化物層504の上に、上部電極層505としての厚さ150nmのPt薄膜をスパッタ法により堆積した。
最後にフォトリソグラフィー工程とドライエッチング工程によって、素子領域506を形成した。なお、素子領域506は、直径が3μmの円形パターンである。
以上のように作製した不揮発性記憶素子の抵抗変化現象を測定した。その結果、図13のα点(酸素流量比約2.7%、酸素含有率約46.6at%)からβ点(酸素流量比約3.3%、酸素含有率約62at%)のHf酸化膜を使った不揮発性記憶素子では、高抵抗値が低抵抗値の4倍以上と良好であった。 図2(a)と(b)は、それぞれ、α点およびβ点の酸素含有率を有するHf酸化物層を使った不揮発性記憶素子についてのパルス印加回数に対する抵抗変化特性を測定した結果である。α点の測定時に加えた電圧は下部電極を基準にして上部電極に100nsのパルス幅で+3.5Vと−5V、β点の測定時に加えた電圧は下部電極を基準として上部電極に100nsのパルス幅で+1.0Vと−1.3Vである。またこれらは共にAモード動作であった。
図2(a)および図2(b)によれば、α点及びβ点の酸素含有率を有するHf酸化物層を使った素子では、共に、高抵抗値が低抵抗値の4倍以上と良好であることが判る。従って、酸素含有率が46.6〜62at%の組成範囲、即ち抵抗変化層をHfOと表記した場合におけるxの範囲が0.9≦x≦1.6の範囲がより適切な抵抗変化層の範囲であると言える(酸素含有率=46.6at%がx=0.9に、酸素含有率=62at%がx=1.6にそれぞれ対応)。なお、RBS法による組成分析では、酸素含有量の分析値は±5at%程度の精度である。従って、前記xの組成範囲もこの精度に起因する測定誤差を含んでおり、実際には、酸素含有率が42〜67at%の組成範囲までこの適切な組成範囲である可能性がある。
組成をHfOx(0.9≦x≦1.6)とし、電圧がV−<V+の関係を満たすように駆動(バイポーラ駆動)することで、高速に動作(100ns程度のパルス幅で駆動)することが可能となる。
[上下の電極材料を変化させた抵抗変化素子の抵抗変化]
次に、抵抗変化の起こりやすさが、電極材料に依存するかどうかの確認を行うため、Wからなる下部電極503とAl、Ti、Ta、W、Cu、Ptから成る上部電極505で酸素不足型のHf酸化物層504を挟んだ構造を作製し、電気パルスによる抵抗変化の様子を調べた結果について説明する。使用した酸素不足型のHf酸化物の酸素含有率は、好適な酸素含有率の範囲で上限に近い61at%(HfO1.56)とした。素子の形成方法は、Hf酸化物の成膜方法は上記とほぼ同じであるが、Al、Ti、Ta、W、Cu、PtはHf酸化物を形成後、一旦大気中に出し、別のスパッタ装置でスパッタリング法によって堆積した。
Figure 2009136467
作製した試料C〜Iと下部電極、上部電極の関係を表2に示す。
上記の試料C〜Iを所定の振幅でパルス幅100nsecの電気パルスを与えてBモードおよびAモードで抵抗変化させた。Bモード、Aモードどちらの場合においても、一部の抵抗変化しにくい場合を除き、高抵抗化させるための電圧の振幅が低抵抗化させるための電圧の振幅よりも大きくなった。
図3〜9にC〜Iの各試料に対して、Bモード、Aモードで正負の極性の電気パルスを交互に印加したときの抵抗変化素子の抵抗値の変化の様子を示す。それぞれの図において(a)はAモードでの、(b)はBモードでの測定結果を示す。
まず、図3(a)、(b)の上部電極にAlを用いた試料C、図4(a)、(b)の上部電極にTiを用いた試料D、図5(a)、(b)の上部電極にHfを用いた試料Eの結果を見ると、Aモードでは比較的安定して、1桁前後の変化幅で抵抗変化が生じているが、Bモードではほとんど抵抗変化しないあるいはまったく抵抗変化しないのが分かる。以上の結果から、上部電極が、Al、Ti、Hfで、下部電極がWの場合、上部電極側では抵抗変化が生じず、下部電極側でのみ抵抗変化が生じているといえる。
次に、図6(a)、(b)の上部電極にTaを用いた試料Fでは、Aモードでは比較的安定して、大きな幅で抵抗変化が生じているが、Bモードでは、最初わずかであるがBモードの抵抗変化が見られたがパルス数とともにその変化幅が減少していき、ほとんど抵抗変化を示さなくなった。以上の結果から、上部電極が、Taで、下部電極がWの場合、上部電極側では抵抗変化幅が小さく、繰り返しとともに抵抗変化が生じにくくなるが、下部電極側では安定した抵抗変化が生じているといえる。
図7(a)、(b)の上部電極にWを用いた試料Gでは、Bモード、Aモード共に比較的安定した抵抗変化が生じた。
次に、図8(a)、(b)の上部電極にCuを用いた試料H、図9(a)、(b)の上部電極にPtを用いた試料Iでは、Bモードでは比較的安定して、1桁前後の変化幅で抵抗変化が生じているが、Aモードではやや不安定で変化幅が小さな抵抗変化を示すのが分かる。以上の結果から、上部電極が、Cu、Ptで、下部電極がWの場合、上部電極側では比較的安定した抵抗変化が生じるが、下部電極側では不安定な抵抗変化が生じているといえる。
次に上記結果についての考察を行う。まず上部電極505の近傍での抵抗を起こさせる(Bモード)事を目的に、電圧を印加した図3〜図9の(b)の結果について考察する。これらの結果から分かることは、酸素不足型のHf酸化物を用いた不揮発性記憶素子では、抵抗変化現象が生じやすい(動作しやすい)材料と、生じにくい(動作しにくい)材料が存在すると言う事である。すなわち、少なくとも、Pt、Cu、Wを電極に用いた場合は抵抗変化が起こりやすくAl、Ti、Hfを電極に用いた場合、抵抗変化は起こりにくいのは明らかである。これらの材料は、本質的に抵抗変化が生じにくい性質を持っていると考えられる。
次に図3〜図6の結果について考察する。図3〜図6では上部電極が抵抗変化が起こりにくい材料(Al、Ti、Hf、Ta)で、下部電極が抵抗変化の起こりやすい材料(W)となっている。図3〜図6の(a)の結果は上部電極をAl、Ti、Hf、Taとした場合、抵抗変化現象が非常に安定して発生しているのが見て取れる。図3〜図6の(b)の結果を参照すると、Bモードではほとんど抵抗変化が起きていないといえる。これは、片側の電極近傍だけで抵抗変化を起こすバイポーラ動作する抵抗変化型の不揮発性記憶素子の理想的な動作を示しているといえる。なお、図3〜図6の(a)の例では動作する側の電極としてWを用いているが、これに限られるものではなく、Cuや、Ptなど、抵抗変化が起こりやすい電極を用いた場合にも同様の結果が期待される。
以上の事から、抵抗変化現象を起こしやすい電極と、抵抗変化現象を起こしにくい電極で抵抗変化膜を挟んだ構造を形成する事で、意図した片側の電極側で抵抗変化させることができるため、上部電極モード、下部電極モードとが混ざり合わない安定したバイポーラ動作を示す抵抗変化型の不揮発性記憶素子が作製可能である事が分かった。また、印加電圧と抵抗値の関係は、抵抗変化を起こしやすい電極に正の電圧の電気パルスを印加した時に、抵抗値が高くなり、負の電圧の電気パルスを印加した時に抵抗値が低くなるような動作を示した。
次に、抵抗変化自体の起こるメカニズムと、抵抗変化の起こりやすさの材料依存性について若干の考察を行う。図10(a)、(b)は、それぞれAモード、Bモードの抵抗変化の結果をまとめたものである。横軸は電極材料、縦軸には標準電極電位をプロットしてある。図中の○は抵抗変化が起こりやすかった事を意味し、△は変化の割合が小さいものの抵抗変化が起こった事を意味し、×は抵抗変化が起こらなかった事を意味する。図10(b)図を見ると、抵抗変化膜の構成元素であるHfよりも標準電極電位が高い材料では抵抗変化が起こっており、低い材料では抵抗変化が起こりにくくなっている事が分かる。そして、標準電極電位の差が大きいほど抵抗変化が起こりやすく、差が小さくなるにつれて、抵抗変化が起こりにくくなっているのが分かる。一般に標準電極電位は、酸化のされ易さの一つの指標であり、この値が大きければ酸化されにくく、小さければ酸化されやすい事を意味する。この事から酸化のされやすさが抵抗変化現象のメカニズムに大きな役割を果たしているのではないかと推測される。
以上の結果をもとに、抵抗変化のメカニズムを考える。まず、抵抗変化が起こり易い材料(標準電極電位が大きく酸化されにくい材料)によって上部電極が構成されている場合について、図11を使って説明する。図11(a)のように、下部電極1501と、酸素不足型のHf酸化物層1502と、Hfよりも酸化されにくい材料によって構成されている上部電極1503からなる抵抗変化素子に、下部電極1501に対して高い電圧を上部電極1503に印加した場合、酸素不足型のHf酸化物中の酸素原子がイオンとなって、電界によって移動し、上部電極1503の界面近傍に集まる。しかし、上部電極1503を構成する金属はHfに比べて酸化されにくいので、酸素イオン1504は酸素不足型のHf酸化物1502と上部電極1503の界面に滞留した状態になり、界面付近でHfと結合し、酸素濃度の高い酸素不足型のHf酸化物を形成する。この事によって素子は高抵抗化する。次に、図11(b)のように、下部電極1501に高い電圧を印加した場合、酸素原子は再び酸素イオンとなって、酸素不足型のHf酸化物1502の内部に戻ってゆく。これにより、低抵抗化が起っていると考えられる。
次に、Hfよりも酸化されやすい材料によって上部電極が構成されている場合について説明したのが図12である。図12のように下部電極1601と、酸素不足型のHf酸化物層1602と、Hfよりも酸化され易い材料によって構成されている上部電極1603からなる抵抗変化素子に、下部電極1601に対して高い電圧を上部電極1603に印加した場合、酸素不足型のHf酸化物中の酸素原子がイオンとなって電界によって移動し、上部電極1603の界面近傍に集まる。この場合、上部電極1603はHfよりも酸化されやすいので、酸素イオン1604は上部電極1603の内部に吸いとられて、上部電極1603を形成している材料と結合を起こす。この場合、図11とは異なり、酸素不足型のHf酸化物1602と上部電極1603の界面に高抵抗層が形成されず、さらに上部電極1603を構成する元素の数に対して酸素イオンの数は少ないために、抵抗値はほとんど上昇しない。逆に、図12(b)のように、下部電極1601に高い電圧を印加した場合、上部電極1603に吸い取られた酸素は、上部電極材との結合がより安定であるため、酸素不足型のHf酸化物1602の中には戻りにくく、抵抗値は大きくは変化しないと考えられる。
もし、図11及び12において、上部電極を構成する材料の酸化のされやすさがHfと同程度の場合、上記の2つの例の中間的な変化が生じ、微弱な抵抗変化が生じると考えられる。
以上の結果から分かるように、酸素不足型のHf酸化物を抵抗変化膜に使用した不揮発性記憶素子では、上部と下部で異なる標準電極電位の有する材料を用いれば良い。これにより、片側の電極近傍で優勢に抵抗変化が起こって、理想的なバイポーラ型の抵抗変化を実現できる。さらに、上部電極モードと下部電極モードの混ざり合いも起こらず、安定した抵抗変化動作が可能となる。より好適には、一方の電極材料には、Hfの標準電極電位よりも大きく、かつ差の大きな材料を用い、もう一方の電極材料には、Hfの標準電極電位よりも大きく差の小さな材料を用いれば良い。さらにより好適には、一方の電極材料には、Hfの標準電極電位よりも大きな材料も用い、もう一方の電極材料には、Hfの標準電極電位以下の材料を用いればよい。
また、上記のメカニズムからも明らかなように、抵抗変化を起こしやすい電極に正の電圧の電気パルスを印加した時に、抵抗値が高くなり、負の電圧の電気パルスを印加した時に抵抗値が低くなるような動作を示す。
なお、上述の不揮発性記憶素子は、抵抗変化膜が酸素不足型のHf酸化物で構成されているが、抵抗変化膜の全体が酸素不足型のHf酸化物で構成されている必要はない。主たる抵抗変化材料が酸素不足型のHf酸化物であればよい。すなわち、不揮発性記憶素子は、抵抗変化膜が酸素不足型のHf酸化物を含んでいればよい。ただし、この酸素不足型のHf酸化物が前記抵抗変化に寄与するのが好ましい。別の言い方をすれば、抵抗変化膜は、酸素不足型のHf酸化物の抵抗変化特性を損なわない程度に、不純物や他の物質を含んでいてもよい。参考までに文献および技術常識について以下説明する。
(抵抗変化素子に対してドーピングを行う技術常識)
1.国際公開2005/117021(出願人:UNITY)
文献1には、不揮発性プログラマブルメモリにおいて、ペロブスカイト構造の遷移金属酸化物を抵抗変化層として用いた例が記載されており(段落0165)、その段落0172には次の記載がある。
「更に、空孔(陰イオンにしろ、陽イオンにしろ)は、電荷トラップを形成するように機能することもできる。空孔によって生じる電荷の不均衡は、ドーパントの計画的追加を補うメカニズムと同じメカニズムによって補うことができる。したがって、酸素空孔1つあたりを2つのCr原子によって補うと、自由キャリアは生じないが、もし完全に補えるだけのCrが存在しない場合は、酸素空孔によって自由電子が生じる。」(特表2007-536680の段落0175)
すなわち、同文献に記載されているペロブスカイト構造は、本願発明のHf酸化物のような2元素からなる遷移金属酸化物とは異なるが、本願と同様に、酸素欠損(酸素空孔)のメカニズムを利用した遷移金属酸化物からなる抵抗変化材料が記載されている点で共通する。
同文献の段落0199には次の記載がある。
「具体的な1つの態様では、ドーピングによって抵抗率を変化させる。例えば、電気的パルスの印加は、抵抗率を高い値から低い値へと、または低い値から高い値へと可逆的に変化させるが、材料に対するドーピングは、このような高い値と低い値との差の大きさを加減することができる。」(特表2007-536680の段落0202)
すなわち、抵抗変化特性を有する遷移金属酸化物に対して、さらにドーピングを行うことにより、抵抗値の高い値と低い値の差の大きさを調整できることが記載されている。
また、同文献の段落0200及び段落0201には、次の記載がある。
「もう1つの態様では、ドーピングによって電荷トラップの量または大きさを変化させる、または電荷トラップの電子捕獲能力を加減することによって、メモリプラグのデータ保持能力を向上させる。すなわち、ドーピングは、メモリの動作中に電子がメモリプラグを通り抜けて電荷トラップを残留させる動きを促進すると考えられる。もう1つの態様では、ドーピングによって抵抗の温度感受性を更に低下させる。もう1つの態様では、ドーピングによって磁場依存性を低下させる。」(特表2007-536680の段落0203及び段落0204)
ここにも、抵抗変化特性を有する遷移金属酸化物に対して、さらにドーピングを行うことにより、基本的な抵抗変化特性とは異なる他の特性が改善されることが記載されている。
2.特表2002−537627(出願人:IBM)
文献2には、不揮発性メモリ等の半導体メモリにおいて、ペロブスカイトや関連化合物を抵抗変化層として用いた例が記載されている(段落0016、段落0017)。この関連化合物の具体例として、段落0027において「x=1、y=1、z=1と、指数xまたはyが0のいずれかにより定義される指数x、y、zの組み合わせは、BeO、MgO、BaO、CaO、...NiO、MnO、CoO、ZnOのような典型的物質を示す。或いは・・・(中略)・・・n=1で指数xまたはyが0のいずれかにより定義される指数x、y、zの組み合わせは、TiO、VO、MnO、GeO、PrO、SnOのような物質を示す。N=2のときは、Al、Ce、Nd、Ti、Sc、Laのような物質を示す。または、・・・(中略)・・・Nb、Ta等のような典型的物質を示す。」と記載されている。
すなわち、同文献には、ペロブスカイト構造だけでなく、本願発明と同様に2元素からなる遷移金属酸化物を用いた抵抗変化素子が記載されている。
また、同文献の段落0017には次の記載がある。
「マイクロ電子デバイスは、電極間に、化合物Ax、By、及び酸素Ozを含む物質から形成された、切り替え可能なオーミック抵抗のある領域が含まれるように設計することができる。領域のオーミック抵抗は、異なる電圧パルスを印加することによって、異なる状態間で反転スイッチングが可能である。異なる電圧パルスは対応する異なる状態につながる。物質のドーパント量が適切であれば、スイッチングが改良され、よってマイクロ電子デバイスを制御できるようになり信頼性が得られる。」
すなわち、本来の抵抗変化特性に対して、ドーピングを適切に行うことで、スイッチングが改良されることが記載されている。なお、ここでいう「化合物Ax、By、及び酸素Ozを含む物質」には上記段落0027の記載を参酌すれば、2元素からなる遷移金属酸化物を含むものである。この文献には、2元素からなる遷移金属酸化物を用いた抵抗変化素子において、ドーピングを適切に行うことで、スイッチングが改良されることが記載されていることになる。
3.特開2006−279042号公報(出願人:三星電子)
文献3には、電圧によって可逆的に互いに異なる二つの抵抗状態がスイッチングできる抵抗メモリ要素を含む不揮発性メモリが記載されており(段落0002)、さらに段落0026には次の記載がある。
「例えば、抵抗メモリ要素がMOxとして表示される際、金属MがNi、Co、ZnまたはCuである際、酸素原子Oの組成比を示すxは0.5乃至0.99の範囲を有する(0.5≦x≦0.99)。これとは異なり、前記金属MがHf、Zr、TiまたはCrである際、酸素原子Oの組成比を示すxは1.0乃至1.98範囲を有する(1.0≦x≦1.98)。そして前記金属MがFeである際、酸素原子Oの組成比を示すxは0.75乃至1.485の範囲を、前記金属MがNbである際、酸素原子Oの組成比を示すxは1.25乃至2.475の範囲を有する。」
すなわち、本願発明と同様に、酸素欠損を有する2元素からなる遷移金属酸化物を用いた抵抗変化素子が記載されている。
さらに段落0016には次の記載がある。
「前記遷移金属酸化物もリチウム、カルシウム、またはランタンのような不純物を含むことができる。」
すなわち、本願発明と同様の酸素欠損を有しかつ2元素からなる遷移金属酸化物を用いた抵抗変化素子に対して、不純物を混ぜる場合もあることを示している。
この文献3の記載についてさらに詳しく検討する。
上記記載によれば抵抗メモリ要素を構成する材料として、Feが含まれているが(X=1.33)、このFe(四酸化三鉄)は、理化学辞典(第四版、岩波書店 1987)の記載によれば下記の特長がある。
1)結晶構造 → 逆スピネル構造(ペロブスカイト構造とは異なる。)
2)比抵抗 → 4×10-3Ωcm(室温で半導体的であり、絶縁体とは言えない。)
金属鉄の比抵抗は9.71×10-6Ωcm。従って、Feの比抵抗は金属Feの1/400に相当する。
すなわち、文献3の記載と理化学辞典の記載によれば、それ自体が絶縁体でなく導電性を有する非ペロブスカイト構造の(2元素からなる)遷移金属酸化物が抵抗変化特性を有していることを示しており、これらの点は本願発明と共通する。
先に示した文献1には、ペロブスカイト構造の遷移金属酸化物を用いる例が記載されており、その点で本願発明と相違する。しかしながら文献2や文献3においては、非ペロブスカイト構造であり抵抗変化特性を示す導電性遷移金属酸化物においても、さらに不純物を添加して抵抗変化素子として用いることが開示されている。
4.特開2006−165553号公報(出願人:三星電子)
文献4には、不揮発性特性を有する相変化メモリに関する発明が記載されており(段落0003)、さらに段落0016には次の記載がある。
「以上のように記述された本発明の実施例で、前記相変化物質は、複数の抵抗状態を有する転移金属酸化物から形成されてもよい。例えば、前記相変化物質は、NiO、TiO、HfO、Nb、ZnO、WO及びCoO、またはGST(GeSbTe)、またはPCMO(PrCa1−xMnO)からなる群から選択された少なくとも何れか一つの物質から形成されてもよい。」
すなわち、本願発明、さらに文献2や文献3と同様に、2元素からなる遷移金属酸化物を用いた抵抗変化材料を利用して抵抗変化素子を形成することが記載されている。
さらに同文献の段落0026には次の記載がある。
「また、前記相変化物質層の相変化ナノ粒子の物性を調節するために準備されたナノ粒子に、窒素、シリコンなどをドーピング処理できる。」
すなわち、主たる材料である遷移金属酸化物に対して、ドーピングを行うことで特性の調節を行うことが記載されている。
上記のとおり文献1ないし文献4には、抵抗変化特性を有しかつ2元素からなる遷移金属酸化物、あるいは、酸素欠損を有しかつ抵抗変化特性を有する遷移金属酸化物に対して、その遷移金属酸化物のみで抵抗変化素子を構成する例と、それ以外に当該基本構成に対してドーピングを行う例が記載されている。
すなわち、主たる材料(遷移金属酸化物)により抵抗変化特性を有する抵抗変化素子に対して、調整、調節、改良等の目的でドーピングを行うことは技術常識であると言える。
(スパッタ法により意図しない不純物が混在する技術常識)
上述の説明においては、抵抗変化膜としてのHf酸化物膜の形成方法としてスパッタ法を記載している。スパッタ法を用いれば、意図しない不純物が混ざり込むことが技術常識であることを以下に説明する。
5.「SEMICONDUCTOR MATERIALS AND PROCESS TECHNOLOGY HANDBOOK」(McGUIRE 1988年発行)
文献5には、スパッタ法を用いると、基板やチャンバー壁などから、不要なガスが発生してしまうことが記載されている(第333ページ第25行〜第29行)。
6.「各種薄膜作成技術における諸問題及びトラブル対策 −総合技術資料集−」(経営開発センター出版部 昭和60年5月20日発行)
文献6には、残留不純物ガスや真空容器壁からのガス放出など、真空装置の汚染によって、作成される膜の膜質が低下することが記載されている(第324ページ右欄第1行〜第15行)。
7.「集積回路ハンドブック」(丸善株式会社 昭和43年11月25日発行)
文献7には、真空蒸着は必ずしも真空で行われるのではなく、市販の蒸着装置を用いれば、装置における色々な残留ガスにより、形成される薄膜に大きな影響を及ぼすことが記述されている(第151ページ第3行〜第152ページ第3行、第153ページ第1行〜第2行)。
以上の記載から、製造過程においてスパッタ法を用いれば、意図しない不純物が混ざり込むことは技術常識である。
上記引用にかかる本願出願時の技術常識を示す文献には、例えば、抵抗変化特性を有しかつ酸素欠損のある遷移金属酸化物により抵抗変化素子を構成する例と、さらに前記構成にドーピングを行うことにより他の材料を添加する例が併記されている。前者の例は実施例の発明と共通する例であり、かつ基本的な構成に相当する。そして後者の例が基本的な構成を利用した応用例に相当する。これはまさに基本構成に対して他の材料を添加することにより特性の調整等を行うことが遷移金属酸化物を用いた抵抗変化素子の技術分野において周知であることを示す。
また製造過程において意図しない不純物が混ざり込むことも周知である。
すなわち上記文献の記載を参酌すれば、抵抗変化層の主たる構成要素に対して何らかの他の物質を追加すること、結果として他の物質が混ざり込むことは、技術常識である。
以上に照らせば、本願発明の不揮発性記憶素子は、抵抗変化膜が酸素不足型のHf酸化物を含んでいればよいことが明らかである。
また、本発明の不揮発性記憶装置は、電気的パルス印加装置と、上述した酸素不足型のHf酸化物を使ったバイポーラ動作する抵抗変化型の不揮発性記憶素子とを備え、電気的パルス印加装置は、正負両極性の電気的信号を該不揮発性記憶素子に印加することで、該不揮発性記憶素子の第1電極および第2電極間の抵抗値を可逆的に変化させるように構成されている。すなわち電気的パルス印加装置は、第1電極を基準として第2電極に第1極性(例えば、正極性)の電気的パルスを印加することで第1電極および第2電極間の抵抗値を第1抵抗値とし(例えば、該不揮発性記憶素子を高抵抗状態とし)、第1電極を基準として第2電極に第2極性(例えば、負極性)の電気的パルスを印加することで第1電極および第2電極間の抵抗値を第2抵抗値とする(例えば、該不揮発性記憶素子を低抵抗状態とする)。
また、本発明の不揮発性記憶素子へのデータ書込方法は、上述した酸素不足型のHf酸化物を使ったバイポーラ動作する抵抗変化型の不揮発性記憶素子へのデータ書込方法であって、正負両極性の電気的信号を該不揮発性記憶素子の第1電極および第2電極間に印加することで、該不揮発性記憶素子の第1電極および第2電極間の抵抗値を可逆的に変化させる。すなわち、第1電極を基準として第2電極に第1極性(例えば、正極性)の電気的パルスを印加することで第1電極および第2電極間の抵抗値を第1抵抗値とし(例えば、該不揮発性記憶素子を高抵抗状態とし)、第1電極を基準として第2電極に第2極性(例えば、負極性)の電気的パルスを印加することで第1電極および第2電極間の抵抗値を第2抵抗値とする(例えば、該不揮発性記憶素子を低抵抗状態とする)。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
本発明の不揮発性記憶素子および不揮発性記憶装置は、高速動作が可能で、しかも安定した書き換え特性を有しており、デジタル家電、メモリカード、携帯型電話機、およびパーソナルコンピュータなどの種々の電子機器に用いられる不揮発性記憶素子等として有用である。
200 素子B
201,202,203,204 電極
205 Ta酸化物層
500 抵抗変化素子
501 単結晶シリコン基板
502 酸化物層
503,1501,1601 上部電極
504,1502,1602 Hf酸化物層
505,1503,1603 下部電極
506 素子領域
1504,1604 酸素イオン
1701 下部電極層
1702 抵抗変化膜
1703 上部電極

Claims (9)

  1. 第1電極と第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する抵抗変化層とを備え、前記第1電極および前記第2電極間に与えられる正負両極性の電気的信号によって可逆的に前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値が変化する不揮発性記憶素子であって、
    前記抵抗変化層は、酸素不足型のハフニウム酸化物を含み、
    前記第1電極および前記第2電極は、異なる元素から構成され、
    前記第1電極を構成する元素の標準電極電位V1と、前記第2電極を構成する元素の標準電極電位V2と、ハフニウムの標準電極電位V0との関係が、V1<V2かつV0<V2を満足する、不揮発性記憶素子。
  2. 第1電極と第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する抵抗変化層とを備え、前記第1電極および前記第2電極間に与えられる正負両極性の電気的信号によって可逆的に前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値が変化する不揮発性記憶素子において、
    前記抵抗変化層は、酸素不足型のハフニウム酸化物を含み、
    前記第1電極および前記第2電極は、異なる元素から構成され、
    前記第1電極を構成する元素の標準電極電位V1と、前記第2電極を構成する元素の標準電極電位V2と、ハフニウムの標準電極電位V0との関係が、V1≦V0<V2を満足することを特徴とする不揮発性記憶素子。
  3. 前記第1電極は、Al、Ti、Hfからなる群から選択される事を特徴とし、前記第2電極はW、Cu、Ptからなる群から選択される事を特徴とする請求項2に記載の不揮発性記憶素子。
  4. 第1電極と第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する抵抗変化層とを備え、前記第1電極および前記第2電極間に与えられる正負両極性の電気的信号によって可逆的に前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値が変化する不揮発性記憶素子において、
    前記抵抗変化層は、酸素不足型のハフニウム酸化物を含み、
    前記第1電極および前記第2電極は、異なる元素から構成され、
    前記第1電極を構成する元素の標準電極電位V1と、前記第2電極を構成する元素の標準電極電位V2と、ハフニウムの標準電極電位V0との関係が、V0<V1<V2を満足することを特徴とする不揮発性記憶素子。
  5. 前記第1電極は、Wからなり、前記第2電極はCu、Ptからなる群から選択される事を特徴とする請求項4に記載の不揮発性記憶素子。
  6. 前記酸素不足型のハフニウム酸化物がHfO(0.9≦x≦1.6)の化学式で表されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の不揮発性記憶素子。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の不揮発性記憶素子の駆動方法であって、前記正負両極性の電気的信号は、前記第1電極を基準として前記第2電極側に与えられる振幅V+の正極性の電気的信号および振幅V−の負極性の電気的信号であり、V+とV−との関係が、V−<V+を満足し、前記正極性の電気的信号が与えられることによって前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値が増大し、前記負極性の電気信号が与えられることによって前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値が減少することを特徴とする不揮発性記憶素子の駆動方法。
  8. 第1電極と第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する抵抗変化層とを備え、前記第1電極および前記第2電極間に与えられる正負両極性の電気的信号によって可逆的に前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値が変化し、前記抵抗変化層は、酸素不足型のハフニウム酸化物を含み、前記第1電極および前記第2電極は、異なる元素から構成され、前記第1電極を構成する元素の標準電極電位V1と、前記第2電極を構成する元素の標準電極電位V2と、ハフニウムの標準電極電位V0との関係が、V1<V2かつV0<V2を満足する、不揮発性記憶素子と、
    電気的パルス印加装置とを備え、
    前記電気的パルス印加装置は、正負両極性の電気的信号を前記不揮発性記憶素子に印加することで、前記不揮発性記憶素子の第1電極および第2電極間の抵抗値を可逆的に変化させるように構成されている、不揮発性記憶装置。
  9. 第1電極と第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する抵抗変化層とを備え、前記第1電極および前記第2電極間に与えられる正負両極性の電気的信号によって可逆的に前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値が変化し、前記抵抗変化層は、酸素不足型のハフニウム酸化物を含み、前記第1電極および前記第2電極は、異なる元素から構成され、前記第1電極を構成する元素の標準電極電位V1と、前記第2電極を構成する元素の標準電極電位V2と、ハフニウムの標準電極電位V0との関係が、V1<V2かつV0<V2を満足する、不揮発性記憶素子へのデータ書込方法であって、
    正負両極性の電気的信号を前記不揮発性記憶素子の前記第1電極および前記第2電極間に印加することで、前記不揮発性記憶素子の前記第1電極および前記第2電極間の抵抗値を可逆的に変化させる、不揮発性記憶素子へのデータ書込方法。
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