JPWO2009133751A1 - 成形品のめっき物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
特に、筐体への電磁波シールド用のめっき、自動車部品等の装飾用めっきに関して好適に用いられる。
しかし、この方法では、無電解めっき処理により上記樹脂成形体上にめっき皮膜を形成させる前に、数工程の処理を必要とする。
即ち、前処理方法として、(1)エッチング処理において適度な粗化を得るため、及び親水性を向上(めっき皮膜の良好な密着性、外観が得られる)するための膨潤工程、樹脂成形体の表面の適度な粗化及び親水性の向上を達成するための(2)過マンガン酸塩を含有する水溶液で処理する第一エッチング処理、及び(3)無機酸、過塩素酸類及びペルオキソ酸類からなる群から選ばれた少なくとも一種の成分を含有する水溶液で処理する第二エッチング処理を必要とする。
そして、特許文献1の実施例において、上述の煩雑なエッチング処理等を行わない場合には、優れた密着性を有するめっき皮膜は形成されないことが明示されている。
(1)成形品の表面上に導電性高分子微粒子とバインダーを含む塗膜層が形成され、該塗膜層上に無電解めっき法により触媒金属の吸着を介して金属めっき膜が形成されためっき物であって、
前記バインダーは、前記導電性高分子微粒子1質量部に対して0.1ないし10質量部で存在し、前記塗膜層の厚さは0.5ないし100μmであり、前記塗膜層上に吸着される前記触媒金属の塊の大きさは、150nm以下であり、且つ前記塗膜層上に吸着される前記触媒金属の単位面積当りの量が0.1μg/cm2ないし3.0μg/cm2である、
めっき物、
(2)前記塗膜層の上側半分の中に前記導電性高分子微粒子のうち60%以上の粒子が存在し、且つ前記導電性高分子微粒子の平均粒径が10ないし100nmである前記(1)記載のめっき物、
(3)無電解めっき液から金属膜を化学めっきすることによるめっき物の製造方法であって、
A)成形品上に還元性高分子微粒子と該還元性高分子微粒子1質量部に対して0.1ないし10質量部のバインダーを含む塗料を塗布して厚さが0.5ないし100μmである塗膜層を形成する工程、
B)前記塗膜層上に触媒金属の吸着を介して無電解めっき法により金属めっき膜を形成する工程であって、前記塗膜層上に吸着される触媒金属の塊の大きさを、150nm以下とし、且つ前記塗膜層上に吸着される前記触媒金属の単位面積当りの量を0.1μg/cm2ないし3.0μg/cm2とする工程
からなる方法、
(4)前記還元性高分子微粒子として、導電性高分子微粒子を脱ドープ処理して還元性とした微粒子を用いる前記(3)記載の方法、
に関するものである。
ここで、上記で使用した用語「触媒金属の塊の大きさ」とは、塗膜層表面に析出した触媒金属が凝集した塊であり、塗膜層表面の走査型顕微鏡写真20μm×20μmの範囲に写っている、触媒金属の塊を大きいものから10個まで選択し、その塊の大きさを実測して平均した値を意味する。
尚、塊の大きさとは、各塊の最も長くなる辺の長さと最も短くなる辺の長さを実測して平均した値を意味する。
また、上記で使用した用語「塗膜層の厚さ」とは、成形品上の塗膜層の最も厚くなる点及び最も薄くなる点を含む5点を選択し、その厚さをマイクロメータで測定して平均した値を意味する。
本発明のめっき物における上記効果は、塗膜層を構成する高分子微粒子とバインダーとの質量比を一定範囲とすること、及び、無電解めっきを行う際に、塗膜層上に吸着させる触媒金属の塊の大きさを一定以下とし、且つ塗膜層の表面上に吸着される触媒金属の単位面積当りの量を特定の範囲とすることにより達成されるが、この理由に付いては、以下のように考えることができる。
その際、吸着されるパラジウムは基材に対する化学的な作用を有さないため、基材とパラジウム間の密着性は低いものであり、そのため形成されためっき膜は密着性の悪い粗悪なものになりやすいものの、基材とパラジウム間の密着性が低いことからパラジウムは基材全面に平均して吸着されやすく、そのためパラジウムの大きさが10nm以上となることは稀である。
そのため、塗膜層を構成する高分子微粒子とバインダーとの質量比を一定範囲として塗膜層表面に存在する還元性高分子微粒子の割合を一定範囲内に維持すること、及び、塗膜層上に吸着する触媒金属の塊の大きさを特定の大きさ以下(150nm以下:例えば、図2の走査型顕微鏡写真参照。)に制御することにより上記による密着性の低下が回避され、優れた密着性が奏されるものと考えられる。
上記に加え、塗膜層上に吸着する触媒金属の大きさを特定の範囲に制御したとしても、塗膜層上に吸着する触媒金属の単位面積当りの量が多くなり過ぎると、補助的に密着性に寄与していると考えられるバインダーと金属めっき膜間の密着性が減少し、これにより塗膜層と金属めっき膜間の総合的な密着性の低下が引き起こされることになる。
そのため、塗膜層の表面上に吸着される触媒金属の単位面積当りの量を特定の範囲とすることにより上記密着性の低下が回避され、優れた密着性の発現に寄与するものと考えられる。
尚、塗膜層上に吸着させる触媒金属の塊の大きさを特定の範囲とし、且つ塗膜層の表面上に吸着される触媒金属の単位面積当りの量を特定の範囲とすることは、処理に使用する触媒液の触媒金属の濃度、処理温度、処理時間を調整することにより容易に制御することができる。
また、塗膜層の表面近くにおいては還元性高分子微粒子の存在比が高くなるため、表面上における触媒金属の吸着量が増加することになるが、これにより、形成する金属めっき膜は、比較的薄い塗膜層においても露出部(ムラ)がない均一なものとすることができる。
また、塗膜層の上側半分中に高分子微粒子の存在比が高くなる、例えば、60%以上の粒子が上側半分中に存在する構造は、還元性高分子微粒子又は導電性高分子微粒子と有機ポリマー(バインダー)を含む塗料を基材上に塗布した後の乾燥温度と時間を工夫するだけで容易に達成することができる。
高分子微粒子(ポリピロール)はイオン化される、即ち、パラジウムによりドーピングされた状態となり、結果として導電性を発現する。
本発明のめっき物は、無電解めっき液から金属膜を化学めっきすることによるめっき物の製造方法であって、
A)成形品上に還元性高分子微粒子と該還元性高分子微粒子1質量部に対して0.1ないし10質量部のバインダーを含む塗料を塗布して厚さが0.5ないし100μmである塗膜層を形成する工程、
B)前記塗膜層上に触媒金属の吸着を介して無電解めっき法により金属めっき膜を形成する工程であって、前記塗膜層上に吸着される触媒金属の塊の大きさを、150nm以下とし、且つ前記塗膜層上に吸着される前記触媒金属の単位面積当りの量を0.1μg/cm2ないし3.0μg/cm2とする工程
からなる方法により製造することができる。
成形品のめっき物としては、例えば、筐体への電磁波シールド用のめっき、自動車部品等の装飾用めっき及び屋内装飾めっき等が挙げられる。
また、還元性高分子微粒子としては、0.005S/cm以下の導電率を有する高分子微粒子が好ましい。
還元性高分子微粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーから合成して使用する事ができるが、市販で入手できる還元性高分子微粒子を使用することもできる。
前記還元性高分子微粒子の平均粒径は、10ないし100nmであるものが好ましい。
前記樹脂のTgは、通常60℃以上であり、好ましくは70℃以上である。
尚、樹脂の混合物を使用する場合、前記カルボン酸基を有する有機ポリマーは、前記樹脂の中の少なくとも1種類がカルボン酸基を有していればよく、すべての樹脂がカルボン酸基を有する必要はない。
上記の存在量は、好ましくは、0.1ないし2.4mmol/gの範囲である。
上記溶媒としては、還元性高分子微粒子に損傷を与えず、還元性高分子微粒子を分散することができ、前記バインダーを溶解するものであれば特に限定されないが、基材となる成形品を大きく溶解するものは好ましくない。但し、成形品を大きく溶解する溶媒であっても、他の低溶解性の溶媒と混合することにより、溶解性を低下させて使用することが可能である。
使用する有機溶媒は、例えば、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、トルエン等の芳香族溶媒、メチルエチルケトン等のケトン類、シクロヘキサン等の環状飽和炭化水素類、n−オクタン等の鎖状飽和炭化水素類、メタノール、エタノール、n−オクタノール等の鎖状飽和アルコール類、安息香酸メチル等の芳香族エステル類、ジエチルエーテル等の脂肪族エーテル類及びこれらの混合物等が挙げられる。
尚、還元性高分子微粒子として、予め有機溶媒に分散された分散液を使用する場合は、分散液に使用されている有機溶媒を塗料の溶媒の一部又は全部として使用することができる。
上記塗料の塗布方法は、塗膜層を均一に形成し得る方法であれば特に限定されず、例えば、スプレー、スクリーン印刷機、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、インクジェット印刷機、オフセット印刷機、ディッピング、スピンコーター、ロールコーター等を用いて、印刷またはコーティングすることができるが、凹凸を有する成形品に塗布する場合は、スプレー及びディッピングが好ましい。
乾燥条件も特に限定されず、室温、又は加熱条件下で行うことができる。
基材としてTgが低い樹脂基材を用いる場合の乾燥温度は、使用する樹脂基材のTgより5ないし15℃低い温度で行うことが好ましい。
具体的な方法としては、例えば、30ないし60℃の低い温度で長時間かけて乾燥したり、30ないし60℃の低い温度から徐々に温度を上げて乾燥することにより達成することができる。
2段階以上の異なった温度で乾燥する場合は、例えば、有機溶媒としてトルエンを使用した場合、40℃で10分間乾燥後、60℃で10分間乾燥し、その後80℃で10分間乾燥することにより塗膜層の上側半分の中に微粒子のうち60%以上の粒子が存在する構成とすることができる。
塗膜層の厚さを薄くし過ぎると、塗膜層を均一に形成することが困難となる場合があるため、塗膜層の厚さは0.5μm以上とするのが好ましい。また、塗膜層の膜厚を厚くしても、例えば、100μmを超えても塗膜強度を維持することは可能であるものの、塗膜層を厚くし過ぎると、バインダーの種類や配合割合等によっては、塗膜強度が低下する場合があるため、塗膜層の厚さは100μm以下とするのが好ましい。
即ち、前記基材を塩化パラジウム等の触媒金属を付着させるための触媒液に浸漬した後、水洗等を行い、無電解めっき浴に浸漬することによりめっき物を得ることができる。
好ましい、具体的な触媒液としては、0.05%塩化パラジウム−0.005%塩酸水溶液(pH3)が挙げられる。
処理温度は、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃であり、処理時間は、0.1ないし20分、好ましくは、1ないし10分である。
上記の操作により、塗膜中の還元性高分子微粒子は、結果的に、導電性高分子微粒子となる。
吸着される触媒金属の塊の大きさが150nmを超える場合、触媒金属が基材表面から剥がれ易くなったり、凝集破壊を起こし易くなり、結果として、めっき膜の密着性の低下を引き起こす。
また、吸着される触媒金属の単位面積当りの量が0.1μg/cm2未満では、ムラのない均一な金属めっき膜が形成されず、3.0μg/cm2を越える場合は、金属めっき膜と塗膜層間における密着性の低下を引き起こす。
即ち、吸着される触媒金属の大きさは、主に、前記触媒液中の触媒金属の濃度により制御することができ、濃度を低くすると触媒金属は小さくなり、濃度を高くすると触媒金属は大きくなる傾向にある。
吸着される触媒金属の量は、主に、前記溶液との処理時間により制御することができ、処理時間を短くすると吸着される触媒金属の量が少なくなり、処理時間を長くすると吸着される触媒金属の量が多くなる傾向にある。
尚、処理温度は、主に、前記吸着の速度を制御するものであり、処理温度を低くすると触媒金属の吸着の速度が下がり、処理温度を高くすると吸着の速度が上がる傾向にあり、従って、処理温度の上昇は、吸着される触媒金属を大きくするよりは、吸着される触媒金属の量を多くすることに寄与する傾向にある。
めっき液としては、通常、無電解めっきに使用されるめっき液であれば、特に限定されない。
即ち、無電解めっきに使用できる金属、銅、金、銀、ニッケル等、全て適用することができるが、銅が好ましい。
無電解銅めっき浴の具体例としては、例えば、ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)等が挙げられる。
処理温度は、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃であり、処理時間は、1ないし30分、好ましくは、5ないし15分である。
得られためっき物は、室温又は加熱条件において、数時間以上、例えば、2時間以上養生するのが好ましいが、使用した基材がスチレン系樹脂基材のように低いTgを有するものの場合は、該Tgより5ないし15℃低い温度範囲において養生するのが好ましい。
この製造方法は、還元性高分子微粒子に代えて導電性高分子微粒子を用いて塗膜層を形成した後、該塗膜層に含まれる導電性高分子微粒子を脱ドープ処理して還元性高分子微粒子とし、その後、触媒金属の吸着を介して無電解めっき法により金属めっき膜を形成することにより達成される。
C)成形品上に導電性高分子微粒子と該導電性高分子微粒子1質量部に対して0.1ないし10質量部のバインダーを含む塗料を塗布して厚さが0.5ないし100μmである塗膜層を形成する工程、
D)前記塗膜層に含まれる導電性高分子微粒子を脱ドープ処理して還元性高分子微粒子とする工程、
E)前記塗膜層上に触媒金属の吸着を介して無電解めっき法により金属めっき膜を形成する工程であって、前記塗膜層上に吸着される触媒金属の塊の大きさを、150nm以下とし、且つ前記塗膜層上に吸着される前記触媒金属の単位面積当りの量を0.1μg/cm2ないし3.0μg/cm2とする工程
上記製造方法に使用する導電性高分子微粒子としては、導電性を有するπ−共役二重結合を有する高分子であれば特に限定されないが、例えば、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン及びそれらの各種誘導体が挙げられ、好ましくは、ポリピロールが挙げられる。
導電性高分子微粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーから合成して使用する事ができるが、市販で入手できる導電性高分子微粒子を使用することもできる。
前記還元性高分子微粒子の平均粒径は、10ないし100nmであるものが好ましい。
形成される塗膜層の厚さは、0.5μmないし100μmの範囲である。
塗膜層の厚さを薄くし過ぎると、塗膜層を均一に形成することが困難となる場合があるため、塗膜層の厚さは0.5μm以上とするのが好ましい。また、塗膜層の膜厚を厚くしても、例えば、100μmを超えても塗膜強度を維持することは可能であるものの、塗膜層を厚くし過ぎると、バインダーの種類や配合割合等によっては、塗膜強度が低下する場合があるため、塗膜層の厚さは100μm以下とするのが好ましい。
特に、導電性高分子微粒子を用いて形成された層は、短時間のアルカリ処理により脱ドープを達成することが可能である。
例えば、1M 水酸化ナトリウム水溶液中で、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃の温度で、1ないし30分間、好ましくは3ないし10分間処理される。
前記バインダーは、前記導電性高分子微粒子1質量部に対して0.1ないし10質量部で存在し、前記塗膜層の厚さは0.5ないし100μmであり、前記塗膜層上に吸着される前記触媒金属の塊の大きさは、150nm以下であり、且つ前記塗膜層上に吸着される前記触媒金属の単位面積当りの量が0.1μg/cm2ないし3.0μg/cm2である、
めっき物に関する。
本発明における「触媒金属の塊の大きさ」とは、塗膜層表面に析出した触媒金属が凝集した塊であり、塗膜層表面の走査型顕微鏡写真20μm×20μmの範囲に写っている、触媒金属の塊を大きいものから10個まで選択し、その塊の大きさを実測して平均した値を意味する。
尚、塊の大きさとは、各塊の最も長くなる辺の長さと最も短くなる辺の長さを実測して平均した値を意味する。また、本発明における「塗膜層の厚さ」とは、成形品上の塗膜層の最も厚くなる点及び最も薄くなる点を含む5点を選択し、その厚さをマイクロメータで測定して平均した値を意味する。
上記プライマー層の形成は、成形品の表面上にプライマー塗料を塗工して滑らかな塗工膜を形成させる方法や事前にプライマー塗料から形成された樹脂フィルムを成形品の表面上にラミネートする方法等が挙げられる。
上記プライマー塗料として、塗膜層の形成に使用されるバインダーと同じ化合物を使用する事ができる。
上記のように、塗膜層の形成に使用されるバインダーと同じ化合物をプライマー塗料として使用すると、プライマー層は塗膜層と一体化され、結果として高い密着性を奏するため好ましい。
還元性高分子微粒子は、有機溶媒と水とアニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤とを混合撹拌してなるO/W型の乳化液中に、π−共役二重結合を有するモノマーを添加し、該モノマーを酸化重合することにより製造することができる。
疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤の中でも、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム(疎水性末端4つ)、スルホコハク酸ジ−2−エチルオクチルナトリウム(疎水性末端4つ)および分岐鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(疎水性末端2つ)が好適に使用できる。
(a)アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、有機溶媒および水を混合攪拌し乳化液を調製する工程、
(b)π−共役二重結合を有するモノマーを乳化液中に分散させる工程、
(c)モノマーを酸化重合させる工程、
(d)有機相を分液しポリマー微粒子を回収する工程。
ポリマー微粒子は球形の微粒子となるが、その平均粒径は、10〜100nmとするのが好ましい。
上記のように平均粒径の小さな微粒子にすることで、微粒子の表面積が極めて大きくなり、同一質量の微粒子でも、より多くの触媒金属を吸着できるようになり、それにより塗膜層の薄膜化が可能となる。
得られたポリマー微粒子の導電率は0.01S/cm未満であり、好ましくは、0.005S/cm以下である。
使用する導電性高分子微粒子は、例えば、有機溶媒と水とアニオン系界面活性剤とを混合撹拌してなるO/W型の乳化液中に、π−共役二重結合を有するモノマーを添加し、該モノマーを酸化重合することにより製造することができる。
反応系中での酸化剤の量は、π−共役二重結合を有するモノマー1molに対して0.1mol以上、0.8mol以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.6molである。0.1mol未満ではモノマーの重合度が低下し、導電性高分子微粒子を分液回収することが困難になり、一方、0.8mol以上では凝集して導電性高分子微粒子の粒径が大きくなり、分散安定性が悪化する。
(a)アニオン系界面活性剤、有機溶媒および水を混合攪拌し乳化液を調製する工程、
(b)π−共役二重結合を有するモノマーを乳化液中に分散させる工程、
(c)モノマーを酸化重合しアニオン系界面活性剤にポリマー微粒子を接触吸着させる工程、
(d)有機相を分液し導電性高分子微粒子を回収する工程。
ポリマー微粒子は球形の微粒子となるが、その平均粒径は、10〜100nmとするのが好ましい。
上記のように平均粒径の小さな微粒子にすることで、微粒子の表面積が極めて大きくなり、同一質量の微粒子でも、脱ドープ処理して還元性とした際に、より多くの触媒金属を吸着できるようになり、それにより塗膜層の薄膜化が可能となる。
実施例1:めっき物の製造
アニオン性界面活性剤ペレックスOT−P(花王株式会社製)1.5mmol、トルエン50mL、イオン交換水100mLを加えて20℃に保持しつつ乳化するまで撹拌した。得られた乳化液にピロールモノマー21.2mmolを加え、1時間撹拌し、次いで過硫酸アンモニウム6mmolを加えて2時間重合反応を行った。反応終了後、有機相を回収し、イオン交換水で数回洗浄して、トルエンに分散した平均粒径50nmの導電性高分子微粒子を得た。ここで得られたトルエン分散液中の導電性ポリピロール微粒子の固形分は、約1.2%であったが、ここに、バインダーとしてアラスター700(荒川化学工業株式会社製、スチレンマレイン酸)を導電性ポリピロール微粒子1質量部に対して0.5質量部の配合比で加えて導電性ポリピロール塗料を得た。
得られた膜を40℃で10分間乾燥した後に、70℃で30分間乾燥して、塗膜が形成されたポリカーボネート樹脂を得た。
形成されたポリピロール塗膜の膜厚は、エレクトロニックマイクロメーターK402B(アンリツ株式会社製)を用いて測定した。
触媒処理条件として、200ppm塩化パラジウム−0.01M塩酸水溶液を用い、該溶液中に45℃で5分間浸漬して、塗膜層上に吸着された触媒金属の大きさを150nmとし、塗膜層上に吸着された触媒金属の量を3.0μg/cm2とした以外は、実施例1と同様の操作を行って、めっき物を得た。
バインダーであるアラスター700(荒川化学工業株式会社製、スチレンマレイン酸)を導電性ポリピロール1質量部に対して0.1質量部の配合比で加えて導電性ポリピロール塗料を得た以外は、実施例1と同様の操作を行って、めっき物を得た。
バインダーであるアラスター700(荒川化学工業株式会社製、スチレンマレイン酸)を導電性ポリピロール1質量部に対して10質量部の配合比で加えて導電性ポリピロール塗料を得た以外は、実施例1と同様の操作を行って、めっき物を得た。
塗膜層の厚みを0.5μmにした以外は、実施例1と同様の操作を行って、めっき物を得た。
塗膜層の厚みを100μmにした以外は、実施例1と同様の操作を行って、めっき物を得た。
塗料の塗布をスプレー塗布からディッピング塗工に代えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、めっき物を得た。
基材の材質をABSとし、バインダーとしてポリメント(登録商標)(株式会社日本触媒製、アクリルアミン)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、めっき物を得た。
基材の材質をPC/ABSとし、バインダーとしてソルバインMFK(日信化学工業株式会社製、塩化ビニル酢酸ビニル)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、めっき物を得た。
触媒処理条件として、20ppm塩化パラジウム−0.01M塩酸水溶液を用い、該溶液中に35℃で5分間浸漬して、塗膜層上に吸着された触媒金属の大きさを20nmとし、塗膜層上に吸着された触媒金属の量を0.05μg/cm2とした以外は、実施例1と同様の操作を行って、めっき物を得た。
触媒処理条件として、500ppm塩化パラジウム−0.1M塩酸水溶液を用い、該溶液中に50℃で5分間浸漬して、塗膜層上に吸着された触媒金属の大きさを200nmとした以外は、実施例1と同様の操作を行って、めっき物を得た。
触媒処理条件として、50ppm塩化パラジウム−0.01M塩酸水溶液を用い、該溶液中に35℃で20分間浸漬して、塗膜層上に吸着された触媒金属の量を4μg/cm2とした以外は、実施例1と同様の操作を行って、めっき物を得た。
バインダーであるアラスター700(荒川化学工業株式会社製、スチレンマレイン酸)を導電性ポリピロール1質量部に対して0.05質量部の配合比で加えて導電性ポリピロール塗料を得た以外は、実施例1と同様の操作を行って、めっき物を得た。
バインダーであるアラスター700(荒川化学工業株式会社製、スチレンマレイン酸)を導電性ポリピロール1質量部に対して15質量部の配合比で加えて導電性ポリピロール塗料を得た以外は、実施例1と同様の操作を行って、めっき物を得た。
塗膜層の厚みを0.3μmにした以外は、実施例1と同様の操作を行って、めっき物を得た。
塗膜層の厚みを110μmにした以外は、実施例1と同様の操作を行って、めっき物を得た。
上記で製造した実施例1ないし9及び比較例1ないし7のめっき物において、各種の評価試験を行いその結果を表1に纏めた。
尚、評価試験項目及びその評価方法・評価基準は以下の通りである。
・Pd(パラジウム)量
触媒処理後の試料を約3cm×4cmにカットし、硝酸(1+9)でパラジウムを抽出した後、フレームレス原子吸光光度法にて定量した。
・Pd(パラジウム)径
触媒処理後の資料を、走査型顕微鏡JSM−6700F(日本電子株式会社製)で観察し、パラジウム塊10個の平均粒径をパラジウム径とした。
・塗膜均一性
塗料を塗布した後の塗膜層を目視で評価した。尚、評価基準は以下の通りとした。
○:ムラ無く塗工されており、基材が露出されている部分が無い。
×:未塗工部があり、一部基材が露出している。
・めっき外観
めっき被膜の状態を目視で観察し、基材露出面積を測定した。
尚、評価基準は以下の通りとした。
○:完全に被覆され、ムラ無く析出。
△:完全に被覆されるが、一部ムラが発生。
×:基材露出部があり、完全には被覆されない。
・テープ試験
JIS H8504テープ試験方法に準じて、カッターで2mm角の条こんを100個した後にテープによる引き剥がし試験を実施した。
尚、評価基準は以下の通りとした。
○:剥離なし
×:剥離有り
・ピール強度
JIS C6471に準じて測定を実施した。
・剥離部
剥離面を目視で観察し、剥離がどの層の間で起きたかを同定した。
A:基材−塗膜層間
B:塗膜層−銅めっき膜間
C:塗膜強度の低下により、塗膜層中で破壊が生じ剥離した。
尚、表1中において、ABSはアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体を意味し、PCはポリカーボネート樹脂を意味し、ポリピロール:バインダー比は、ポリピロールとバインダーの質量比を表す。
Claims (4)
- 成形品の表面上に導電性高分子微粒子とバインダーを含む塗膜層が形成され、該塗膜層上に無電解めっき法により触媒金属の吸着を介して金属めっき膜が形成されためっき物であって、
前記バインダーは、前記導電性高分子微粒子1質量部に対して0.1ないし10質量部で存在し、前記塗膜層の厚さは0.5ないし100μmであり、前記塗膜層上に吸着される前記触媒金属の塊の大きさは、150nm以下であり、且つ前記塗膜層上に吸着される前記触媒金属の単位面積当りの量が0.1μg/cm2ないし3.0μg/cm2である、
めっき物。 - 前記塗膜層の上側半分の中に前記導電性高分子微粒子のうち60%以上の粒子が存在し、且つ前記導電性高分子微粒子の平均粒径が10ないし100nmである請求項1記載のめっき物。
- 無電解めっき液から金属膜を化学めっきすることによるめっき物の製造方法であって、
A)成形品上に還元性高分子微粒子と該還元性高分子微粒子1質量部に対して0.1ないし10質量部のバインダーを含む塗料を塗布して厚さが0.5ないし100μmである塗膜層を形成する工程、
B)前記塗膜層上に触媒金属の吸着を介して無電解めっき法により金属めっき膜を形成する工程であって、前記塗膜層上に吸着される触媒金属の塊の大きさを、150nm以下とし、且つ前記塗膜層上に吸着される前記触媒金属の単位面積当りの量を0.1μg/cm2ないし3.0μg/cm2とする工程
からなる方法。 - 前記還元性高分子微粒子として、導電性高分子微粒子を脱ドープ処理して還元性とした微粒子を用いる請求項3記載の方法。
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