JP5912365B2 - 高分子材料のめっき物 - Google Patents
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そこで、その代替技術として、高分子材料上に還元性高分子層を形成し、該還元性高分子層上にめっきを施す無電解めっき法が提案されている。
(1)高分子材料表面上に、厚さ20ないし200nmの複素環を有する高分子化合物層と該層に吸着された無電解めっきの触媒能力を有する金属塩とから構成されるめっき下地層が形成され、該めっき下地層上に無電解めっき法により金属めっき膜が形成された高分子材料のめっき物であって、
前記めっき下地層が、以下の(a)乃至(c)のいずれかの方法により形成されることを特徴とするめっき物。
(a)前記高分子材料を、(i)複素環を有する化合物と(ii)酸化剤として機能し且つ無電解めっきの触媒能力を有する金属塩とを含む水溶液に浸漬し、そして引き上げる工程を含む方法
(b)前記高分子材料を、前記複素環を有する化合物を含む水溶液に浸漬し、そして引き
上げた材料を、前記金属塩を含む水溶液に浸漬する工程を含む方法
(c)前記高分子材料を、前記金属塩を含む水溶液に浸漬し、そして引き上げた材料を、前記複素環を有する化合物を含む蒸気に接触する工程を含む方法、
(2)前記金属塩が、ハロゲン化物であることを特徴とする、前記(1)記載のめっき物、
(3)前記高分子化合物層に吸着される前記金属塩の塊の大きさは、150nm以下であり、且つ前記高分子化合物層に吸着される前記金属塩の単位面積当りの量が0.01ないし2μg/cm2である前記(1)又は(2)記載のめっき物、
に関するものである。
ここで、上記で使用した用語「金属塩の塊の大きさ」とは、めっき下地層表面に吸着した金属塩が凝集した塊であり、めっき下地層表面を走査型顕微鏡で観察し、金属塩の塊10個の大きさを実測して平均した値を意味する。
尚、塊の大きさとは、各塊の最も長くなる辺の長さと最も短くなる辺の長さを実測して平均した値を意味する。
また、複素環を有する高分子化合物層の厚さは、めっき下地層形成後の材料の断面を走査型顕微鏡で観察し、3箇所の平均膜厚を測定して平均した値を意味する。
程が材料表面上で行われることから、材料表面上に均一なめっき下地層が細部まで形成され、さらに、還元された金属塩はこの複素環を有する化合物の重合体の表面に吸着されて無電解めっきの触媒として作用するため、めっき膜も同様に均一かつ細部にまで形成される。
この際、形成される複素環を有する高分子化合物層の厚さを特定の範囲とすると、十分な量の還元された金属塩が該層の表面に吸着され、それにより、めっき膜も優れた外観で形成されることになるので、材料表面上に優れた平滑性及び密着性を有し、かつ、優れた金属めっきの外観が形成された高分子材料のめっき物の提供が可能となる。
また、本発明の高分子材料のめっき物の製造は、上述のように、酸化重合工程と、触媒付与工程を同時に行うことができることから、めっき下地層の製造工程を簡略化することができるため、生産効率に優れるものである。
さらに、めっき下地層の形成において、材料を、複素環を有する化合物及び金属塩を含む水溶液で処理した場合には、その後、水洗して直ぐに無電解めっき処理が可能であるため、2工程で金属めっき膜の形成を形成することができる。また、本発明の高分子材料のめっき物の製造は、工程数が少ないことから、薬液の持込みの可能性が低くなるため、特に繊維やウレタン等の溶液を含みやすい材料を用いる場合には有利である。さらに、再現性のあるめっき物を容易に得ることができ、めっき物の生産性に優れる。
また、低揮発性の有機溶剤を使用しないことから、高温の乾燥を必要としないため、耐熱性の劣る材料であっても使用することができるという利点も有する。
本発明は、
高分子材料表面上に、厚さ20ないし200nmの複素環を有する高分子化合物層と該層に吸着された無電解めっきの触媒能力を有する金属塩とから構成されるめっき下地層が形成され、該めっき下地層上に無電解めっき法により金属めっき膜が形成された高分子材料のめっき物であって、
前記めっき下地層が、以下の(a)乃至(c)のいずれかの方法により形成されることを特徴とするめっき物。
(a)前記高分子材料を、(i)複素環を有する化合物と(ii)酸化剤として機能し且つ無電解めっきの触媒能力を有する金属塩とを含む水溶液に浸漬し、そして引き上げる工程を含む方法
(b)前記高分子材料を、前記複素環を有する化合物を含む水溶液に浸漬し、そして引き上げた材料を、前記金属塩を含む水溶液に浸漬する工程を含む方法
(c)前記高分子材料を、前記金属塩を含む水溶液に浸漬し、そして引き上げた材料を、前記複素環を有する化合物を含む蒸気に接触する工程を含む方法
に関する。
高分子材料の形状は特に限定されないが、例えば、板状、フィルム状、フィラメント、
繊維等が挙げられる。また、高分子材料として、例えば、射出成形等により樹脂を成形した樹脂成形品等が挙げられる
前記材料表面を親水化処理する方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。前記親水化処理は、例えば、乾式処理でもよく、湿式処理でもよい。乾式処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理及びグロー放電処理などの放電処理;オゾン処理;UVオゾン処理;紫外線処理及び電子線処理などの電離活性線処理などが挙げられる。湿式処理としては、例えば、水、アセトンなどの溶媒を用いた超音波処理;アルカリ処理;アンカーコート処理などが挙げられる。これらの処理は、単独で行ってもよいし、2つ以上を組み合せて行ってもよい。
但し、材料として繊維を使用する場合の処理温度は、10℃〜130℃とするのが好ましい。
ラジウム等のパラジウム塩などが挙げられる。この中でも、ハロゲン化物が好ましく、特に塩化パラジウムが好ましい。
(a)前記高分子材料を、(i)複素環を有する化合物と(ii)酸化剤として機能し且つ無電解めっきの触媒能力を有する金属塩とを含む水溶液に浸漬し、そして引き上げる工程を含む方法
(b)前記高分子材料を、前記複素環を有する化合物を含む水溶液に浸漬し、そして引き上げた材料を、前記金属塩を含む水溶液に浸漬する工程を含む方法
(c)前記高分子材料を、前記金属塩を含む水溶液に浸漬し、そして引き上げた材料を、前記複素環を有する化合物を含む蒸気に接触する工程を含む方法
前記各方法は、当業者に既知である手段を利用して行うことができる。
また、材料を、前記複素環を有する化合物及び金属塩を含む水溶液に浸漬させる工程の処理温度は、10℃〜70℃、好ましくは、25℃〜60℃であり、処理時間は、0.1分〜120分、好ましくは20分〜60分である。
但し、材料として繊維を使用する場合の処理温度は、10℃〜130℃とするのが好ましい。
また、材料を、前記複素環を有する化合物を含む水溶液に浸漬させる工程の処理温度は、20℃〜50℃、好ましくは、25℃〜40℃であり、処理時間は、0.1分〜50分、好ましくは1分〜40分である。
また、材料を、前記金属塩を含む水溶液に浸漬させる工程における処理温度は、20℃〜50℃、好ましくは、25℃〜40℃であり、処理時間は、0.1分〜50分、好ましくは1分〜40分である。
但し、前記(b)の場合、材料として繊維を使用する場合の処理温度は、10℃〜130℃とするのが好ましい。
また、複素環を有する化合物を含む蒸気に接触させる工程における処理温度は、20℃〜50℃、好ましくは、常温であり、処理時間は、0.1分〜40分、好ましくは1分〜30分であり、処理圧力は、常圧若しくは減圧状態であってもよい。
但し、材料として繊維を使用する場合の処理温度は、10℃〜130℃とするのが好ま
しい。
上記のめっき下地層の形成方法においては、酸化重合工程と触媒付与工程が同時に行われるため、前記複素環を有する高分子化合物層の厚さは、該層に吸着される無電解めっきの触媒能力を有する金属塩の量や塊の大きさと正比例の関係にあり、例えば、前記層が厚くなると、これに吸着される金属塩の量や塊の大きさも増大し、前記層が薄くなると、これに吸着される金属塩の量や塊の大きさも減少することになる。
そして、複素環を有する高分子化合物層の厚さが、20nm未満の場合は、該層に吸着される金属塩の量が少なくなり、均一な金属めっき膜を形成するのが困難になり、200nmを超える場合は、該層に吸着される金属塩の量や塊の大きさが増大して、形成される金属めっき膜との良好な密着性を得るのが困難になるため好ましくない。
また、高分子化合物層に吸着される金属塩の塊の大きさを、150nm以下とし、且つ高分子化合物層に吸着される金属塩の単位面積当りの量を0.01ないし2μg/cm2とするのが好ましい。
金属塩の塊の大きさが150nmを超えると、金属塩の塊がめっき下地層表面から剥がれ易くなって、金属めっき膜の密着性を低下させ易くなる。
単位面積当りの金属塩の量が、0.01μg/cm2未満になると均一な金属めっき膜を形成するのが困難になり、2μg/cm2を超えると形成される金属めっき膜との良好な密着性を得るのが困難になるため好ましくない。
前記複素環を有する高分子化合物層の厚さ、該層に吸着される金属塩の塊の大きさ及び単位面積当りの金属塩の量は、めっき下地層を形成する際の、複素環を有する化合物の濃度、金属塩の濃度、酸化重合反応の温度、時間等を調節することにより制御することができる。
特に、金属塩の塊の大きさは、金属塩の濃度に比例し、単位面積当りの金属塩の量は、酸化重合反応の時間に比例する。
図1は、表面に塊の大きさが20nmの金属塩(パラジウム)が吸着しためっき下地層の表面の電子顕微鏡写真を示す。
該写真より金属塩(パラジウム)の塊が表面全体にまんべんなく均一に吸着しているのがわかる。
図2は、表面に塊の大きさが250nmの金属塩(パラジウム)が吸着しためっき下地層の表面の電子顕微鏡写真を示す。
該写真より金属塩(パラジウム)の塊が表面全体にまんべんなく均一に吸着しているものの、各塊は表面からかなり突き出すため、めっき下地層の表面には大きな凹凸が生じ、この表面上に金属めっき層が形成された際は、めっき下地層と金属めっき層間の優れた密着性を得難く、また、金属めっき層が剥がれ易くなるであろうことが予測できる。
めっき液としては、通常、無電解めっきに使用されるめっき液であれば、特に限定されない。すなわち、無電解めっきに使用できる金属としては、例えば、銅、金、銀、ニッケル、及びクロム等、全て適用することができるが、銅が好ましい。無電解めっき浴の具体例としては、具体的には、ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)製)等が挙げられる。
無電解めっきの処理温度は、20℃〜50℃、好ましくは30℃〜40℃であり、処理時間は10分〜40分、好ましくは15分〜30分である。
上記の処理により、優れた平滑性及び密着性を有し、かつ、優れた金属めっきの外観が形成された高分子材料のめっき物が提供される。
例えば、アラミド繊維の表面に金属めっき膜を形成した導電性繊維は、繰り返しの曲げや強い擦過が作用する場所でのシールド材として有用である。
<めっき前処理方法>
ピロールモノマー6.5mM、塩化パラジウム水溶液0.25mM、及び塩酸10mMをイオン交換水に加えて、この水溶液を混合した。そして、この混合液へABS樹脂(テクノ430、テクノポリマー(株)製)からなる基材を30℃で30分間浸漬し、その後、イオン交換水で洗浄し、乾燥させてめっき下地層を形成した。
<無電解めっき>
次に、前記めっき下地層を形成したABS樹脂からなる基材を、無電解めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)製)に35℃で20分間浸漬後、イオン交換水で洗浄した。これにより表面に0.3μmの膜厚の銅膜を形成した。
<めっき前処理方法>
ABS樹脂(テクノ430、テクノポリマー(株)製)からなる基材を、ピロールモノマー濃度20mMの水溶液に40℃で20分間浸漬し、イオン交換水で水洗後、乾燥させた。続いて、基材を1.1mM塩化パラジウム−10mM塩酸水溶液に40℃で20分間浸漬し、その後、イオン交換水で洗浄し、乾燥させてめっき下地層を形成した。
<無電解めっき>
次に、前記めっき下地層を形成したABS樹脂からなる基材を、無電解めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)製)に35℃で20分間浸漬後、イオン交換水で洗浄した。これにより表面に0.3μmの膜厚の銅膜を形成した。
<めっき前処理方法>
プラズマ処理にて親水化処理を施したABS樹脂(テクノ430、テクノポリマー(株)製)からなる基材を、塩化パラジウム水溶液1.1mM及び塩酸10mMを含む水溶液に30℃で30分間浸漬し、その後、イオン交換水で洗浄し、乾燥させた。続いて、ガラスデシケーター内にピロールモノマーのみを入れ、その容器に蓋をして40℃で10分間放置し、容器内でピロールモノマーを気化させた。そして、この容器内に前記基材を40℃、圧力0.1MPaで5分間放置してポリピロールの気相重合を行った。その後、イオン交換水で洗浄し、乾燥させてめっき下地層を形成した。
<無電解めっき>
次に、前記めっき下地層を形成したABS樹脂からなる基材を、無電解めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)製)に35℃で20分間浸漬し、その後、イオン交換水で洗浄した。これにより表面に0.3μmの膜厚の銅膜を形成した。
ABS樹脂からなる基材を、ピロールモノマー濃度40mMの水溶液に40℃で30分間浸漬したこと、及び基材を2.3mM塩化パラジウム−10mM塩酸水溶液に40℃で30分間浸漬したこと以外は実施例2と同様の操作を行い、めっき下地層を形成した。
その後、実施例1と同様の操作にて無電解めっきを行い、0.3μmの膜厚の銅膜を形成した。
基材を0.6mM塩化パラジウム−10mM塩酸水溶液に40℃で20分間浸漬したこと以外は実施例2と同様の操作を行い、めっき下地層を形成した。
その後、実施例1と同様の操作にて無電解めっきを行い、0.3μmの膜厚の銅膜を形成した。
基材を50μmの厚さのPETフィルム(コスモシャイン A4100、東洋紡績(株)製)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、めっき下地層を形成した。
その後、実施例1と同様の操作にて無電解めっきを行い、0.3μmの膜厚の銅膜を形成した。
基材をアラミド繊維 110dtex(デシテックス)(Kevlar 東レ・デュポン(株)製)に及び浸漬時の温度を50℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法でめっき下地層を形成し、その後、無電解めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)製)に35℃で40分間浸漬し、銅膜の形成を行った。この際の繊維の抵抗値は30Ω/mであった。
ピロールモノマーを3.3mM及び塩化パラジウム水溶液を0.01mMにしたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、めっき下地層を形成した。
次に、前記めっき下地層を形成したABS樹脂からなる基材を、無電解めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)製)に35℃で20分間浸漬したが、銅膜は形成されなかった。
塩化パラジウム水溶液を2mMにした以外は実施例1と同様の操作を行い、めっき下地層を形成した。
その後、実施例1と同様の操作にて無電解めっきを行い、0.3μmの膜厚の銅膜を形成した。
上記で製造した実施例1ないし7並びに比較例1及び2のめっき物において、各種の評価試験を行いその結果を表1に纏めた。
尚、評価試験項目及びその評価方法・評価基準は以下の通りである。
<高分子層厚>
めっき下地層形成後の基材の断面を走査型顕微鏡JSM−6700F(日本電子(株)製)で観察し、3箇所の平均膜厚を測定して平均した値を高分子層厚とした。
<Pd(パラジウム)径>
めっき下地層形成後の基材表面を走査型顕微鏡JSM−6700F(日本電子(株)製
)で観察し、金属塩の塊10個の大きさを実測して平均した値をPd(パラジウム)径とした。
尚、各塊の最も長くなる辺の長さと最も短くなる辺の長さを実測して平均した値を塊の大きさとした。
<Pd(パラジウム)量>
めっき下地層形成後の基材を、硝酸(1+9)でパラジウムを抽出した後、フレームレス原子吸光光度法にて定量した。
<めっき析出性>
目視にて無電解めっき後の表面状態の観察を実施した。評価基準は以下の通りとした。○:全面にめっきが析出している。
×:めっきが析出していない。
<めっき外観>
めっき被膜の状態を目視で観察して評価した。尚、評価基準は以下の通りとした。
○:全面にめっきが析出し、さらに均一性(平滑性)が高く、光沢がある。
△:全面にめっきが析出しているが、均一性が低く、光沢がない。
×:めっきが析出していない。
<テープ試験>
JIS H8504テープ試験方法に準じて、カッターで2mm角の条こんを100個した後にテープによる引き剥がし試験を実施した。
尚、評価基準は以下の通りとした。
○:剥離なし
×:剥離有り
尚、表1中において、ABSはアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体を意味し、PETはポリエチレンテレフタレート樹脂を意味し、下地層の形成方法におけるAないしCは、以下を意味する。
A:ピロールモノマー、塩化パラジウム、及び塩酸を含有する水溶液に基材を浸漬
B:ピロールモノマー含有の水溶液に基材を浸漬後、該基材を塩化パラジウム及び塩酸からなる水溶液に浸漬
C:塩化パラジウム及び塩酸からなる水溶液に基材を浸漬後、該基材に気化したピロールモノマーを接触
めっき下地層として、厚さ20ないし200nmの複素環を有する高分子化合物層と該層に吸着された無電解めっきの触媒能力を有する金属塩とから構成される層を採用する実施例1ないし7の高分子化合物材料のめっき物は、基材の種類(ABS樹脂基材、PETフィルム、アラミド繊維)及びめっき下地層の形成方法(AないしC)に関わらず、材料表面上に優れた平滑性及び密着性を有し、かつ、優れた外観の金属めっき膜(銅膜)が形
成されたのに対して、厚さ10nmの複素環を有する高分子化合物層が形成された比較例1の基材では、金属めっき膜(銅膜)が形成されず、また、厚さ250nmの複素環を有する高分子化合物層が形成された比較例2の基材では、金属めっき膜(銅膜)は形成されるものの、めっき外観において劣り、且つ金属めっき膜の密着性が不十分であった。
実施例7で得られためっき繊維について、JIS L1013化学繊維フィラメント系試験方法に準じて引張試験を実施した。めっき前の繊維の引張強度を100%として相対評価を行ったところ、得られためっき繊維は、めっき前の繊維に対して90%の強度を示し、大幅な強度低下は見られなかった。
続いて、従来の方法で得られためっき繊維の引張強度を測定した。
先ずは、以下の従来方法でめっき繊維を製造した。
(前処理)
アラミド繊維(110dtex)を塩基性繊維クリーニング−表面活性剤溶液に25℃で3分間浸漬し、イオン交換水で洗浄した。
(エッチング)
次に90%硫酸溶液に30℃で30秒間浸漬し、イオン交換水で洗浄した。
(触媒付与)
次に、前処理を行ったアラミド繊維をSn−Pd系コロイドを含む35%塩酸水溶液に30℃で3分間浸漬し、水洗した。
(活性化)
次に、98%硫酸溶液100mL/Lに40℃で3分間浸漬し、水洗した。
(無電解めっき)
次に、触媒付与を行ったアラミド繊維を無電解めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)製)に35℃で40分間浸漬し、銅膜の形成を行った。この際の繊維の抵抗値は30Ω/mであった。
続いて、上述の従来の方法で得られためっき繊維を、JIS L1013化学繊維フィラメント系試験方法に準じて引張試験を実施した。めっき前の繊維の引張強度を100%として相対評価を行ったところ、得られためっき繊維は、めっき前の繊維に対して40%の強度であり、大幅に強度低下していた。
Claims (3)
- 高分子材料の表面上に、厚さ20ないし200nmの複素環を有する高分子化合物層と該層に吸着された無電解めっきの触媒能力を有する金属塩とから構成されるめっき下地層が形成され、該めっき下地層上に無電解めっき法により金属めっき膜が形成された高分子材料のめっき物の製造方法であって、
前記めっき下地層を、以下の(a)乃至(c)のいずれかの方法により酸化状態となった複素環を有する化合物が高分子材料の表面上で重合することで、形成することを特徴とする製造方法。
(a)前記高分子材料を、(i)複素環を有する化合物と(ii)酸化剤として機能し且つ無電解めっきの触媒能力を有する金属塩とを含む水溶液に浸漬し、そして引き上げる工程を含む方法
(b)前記高分子材料を、複素環を有する化合物を含む水溶液に浸漬し、そして引き上げた材料を、前記金属塩を含む水溶液に浸漬する工程を含む方法
(c)前記高分子材料を、前記金属塩を含む水溶液に浸漬し、そして引き上げた材料を、複素環を有する化合物を含む蒸気に接触する工程を含む方法 - 前記金属塩が、ハロゲン化物であることを特徴とする、請求項1記載のめっき物の製造方法。
- 前記高分子化合物層に吸着される前記金属塩の塊の大きさは、150nm以下であり、且つ前記高分子化合物層に吸着される前記金属塩の単位面積当りの量が0.01ないし2μg/cm2である請求項1又は2記載のめっき物の製造方法。
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