JPWO2009104466A1 - 電子写真感光体およびこれを備えた画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体およびこれを備えた画像形成装置 Download PDF

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Abstract

本発明は、導電性基体20と、導電性基体20を被覆する被覆層21と、を備えた電子写真感光体2に関する。被覆層21は、感光層22と、導電性基体20と感光層21との間に位置するアモルファス窒化シリコン含有層23と、を含んでなる。アモルファス窒化シリコン含有層23は、窒素原子数とシリコン原子数との合計に対する窒素原子数の比率が0.32以下である。好ましくは、前記比率は、0.31以下である。アモルファス窒化シリコン含有層23の厚みは、たとえば0.5μm以上15μm以下である。

Description

本発明は、感光層を含む被覆層により導電性基体を被覆してなる電子写真感光体に関するものである。本発明はさらに、前記電子写真感光体を備えた画像形成装置に関するものである。
電子写真感光体を備える画像形成装置では、駆動伝達機構により電子写真感光体を回転させるとともに、その回転周期に同期させて、帯電、露光、現像、転写、およびクリーニング等の動作を繰り返し行なうことにより記録媒体に画像が形成される。
このような画像形成装置に搭載される電子写真感光体としては、導電性基体上に電荷注入阻止層および光導電層を含んでなる被覆層を形成したものが知られている。電荷注入阻止層は、電子あるいは正孔が導電性基体から光導電層に注入されるのを抑制するためのものである。このような電荷注入阻止層は、たとえばアモルファスシリコン(a−Si)のようなSi系無機物材料を含んで構成されており、その導電型の調整は周期律表第13族元素あるいは周期律表第15族元素を含有させることにより行われる。
特公平06−016178号公報 特公平05−008420号公報 特公平06−054673号公報 特開平02−008858号公報 特開平02−083549号公報
近年において、電子写真感光体は、高画質化の要求に応えるべく、電荷注入阻止層を含む被覆層全体の厚みを小さくする傾向にある。しかしながら、電荷注入阻止層の厚みを小さくすると、耐電圧が低下し、画像品質が悪化する傾向にある。その一方で、電荷注入阻止層の耐電圧を向上させると、残留電位が大きくなり、この場合にも画像品質が悪化する傾向にある。
本発明は、高画質化を図るべく被覆層の厚みを小さくする場合でも、電子写真感光体における耐電圧特性および残留電位特性を良好に維持することが可能な電子写真感光体および画像形成装置を提供することを課題としている。
本発明に係る電子写真感光体は、導電性基体と、該導電性基体を被覆する被覆層とを備えている。前記被覆層は、感光層と、前記導電性基体と前記感光層との間に位置するアモルファス窒化シリコン含有層とを含んでなる。前記アモルファス窒化シリコン含有層における窒素原子数とシリコン原子数の合計に対する窒素原子数の比率は、0.32以下である。
本発明に係る画像形成装置は、上述の本発明に係る電子写真感光体を備えている。
本発明に係る電子写真感光体では、被覆層がアモルファス窒化シリコン含有層を備えている。また、このアモルファス窒化シリコン含有層は、窒素原子数とシリコン原子数の合計に対する窒素原子数の比率が0.32以下に設定されている。そのため、本電子写真感光体では、高画質化に対応すべく被覆層(たとえば電荷注入阻止層)の厚みを小さくする場合でも、アモルファス窒化シリコン含有層によって耐電圧特性を適切に維持しつつ残留電位の発生を抑制することができる。
一方、本発明に係る画像形成装置では、電子写真感光体として、被覆層における耐電圧特性が適切に維持されつつ残留電位の発生が抑制されたものが使用されている。そのため、本発明の画像形成装置では、画像欠陥の発生を抑制し、高品質な画像を形成することが可能となる。
本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。 本発明に係る電子写真感光体の断面図およびその要部を拡大して示した断面図である。 耐電圧の測定結果を示すグラフである。 残留電位の測定結果を示すグラフである。
符号の説明
1 画像形成装置
2 電子写真感光体
20 円筒状基体(導電性基体)
21 被覆層
22 (被覆層の)感光層
23 (被覆層の)アモルファス窒化シリコン含有層
24 (感光層の)電荷注入阻止層
25 (感光層の)光導電層
以下、本発明に係る画像形成装置および電子写真感光体について、添付図面を参照しつつ具体的に説明する。
図1に示した画像形成装置1は、画像形成方式としてカールソン法を採用したものである。画像形成装置1は、電子写真感光体2、帯電器10、露光器11、現像器12、転写器13、定着器14、クリーニング器15、および除電器16を備えている。
電子写真感光体2は、画像信号に基づいた静電潜像が形成されるものであり、図外の回転機構によって図1の矢印A方向に回転可能とされている。この電子写真感光体2の詳細については後述する。
帯電器10は、後述する電子写真感光体2の光導電層25(図2参照)の種類に応じて、電子写真感光体2の表面を一様に、正極性または負極性に帯電させるためのものである。この帯電器10は、電子写真感光体2を押圧するように密着して配置されており、たとえば金属ローラの表面を導電性ゴムおよびPVDF(ポリフッ化ビニリデン)によって被覆した構成とされる。帯電器10による電子写真感光体2の帯電圧は、たとえば絶対値において200V以上1000V以下とされる。
帯電器10としては、コロナ放電を発生させるためのコロントロンを用いることもできる。この場合の帯電器10は、たとえば電子写真感光体2の軸方向の延びるように張設された放電ワイヤを備えたものとされる。
露光器11は、電子写真感光体2に静電潜像を形成するためのものであり、特定波長(たとえば650nm以上780nm以下)の光を出射可能とされている。この露光器11によると、画像信号に応じて電子写真感光体2の表面に光を照射して光照射部分の電位を減衰させることにより、電位コントラストとしての静電潜像が形成される。露光器11としては、たとえば約680nmの波長の光を出射可能なLED素子を600dpiの密度で配列させたLEDヘッドを採用することができる。もちろん、露光器11としては、レーザ光を出射可能なものを使用することもできる。
LEDヘッド等の露光器11に代えて、レーザービームおよびポリゴンミラー等からなる光学系、あるいは、原稿からの反射光を通すレンズおよびミラー等からなる光学系を用いることにより、複写機の構成の画像形成装置とすることもできる。
現像器12は、電子写真感光体2の静電潜像を現像してトナー像を形成するためのものである。この現像器12は、現像剤(トナー)を磁気的に保持する磁気ローラ12A、電子写真感光体2との隙間を制御するためのコロと呼ばれる車輪(図示略)などを備えている。
現像剤は、電子写真感光体2の表面に形成されるトナー像を構成するものであり、現像器12において摩擦帯電させられるものである。現像剤としては、磁性キャリアと絶縁性トナーとから成る二成分系現像剤、あるいは磁性トナーから成る一成分系現像剤を使用することができる。
磁気ローラ12Aは、電子写真感光体2の表面に現像剤を搬送する役割を果すものである。
現像器12においては、摩擦帯電したトナーが磁気ローラ12Aによって一定の穂長に調整された磁気ブラシの形で電子写真感光体2の現像領域に搬送され、静電潜像との静電引力によりトナーが電子写真感光体2の表面に付着して可視化される。トナー像の帯電極性は、正規現像により画像形成が行われる場合には、電子写真感光体2の表面の帯電極性と逆極性とされ、反転現像により画像形成が行われる場合には、電子写真感光体2の表面の帯電極性と同極性とされる。
なお、現像器12は、乾式現像方式を採用しているが、液体現像剤を用いた湿式現像方式を採用してもよい。
転写器13は、電子写真感光体2と転写器13との間の転写領域に供給された記録媒体Pに、電子写真感光体2のトナー像を転写するためのものである。この転写器13は、転写用チャージャ13Aおよび分離用チャージヤ13Bを備えている。転写器13では、転写用チャージャ13Aにおいて記録媒体Pの背面(非記録面)がトナー像とは逆極性に帯電され、この帯電電荷とトナー像との静電引力によって、記録媒体P上にトナー像が転写される。転写器13ではさらに、トナー像の転写と同時的に、分離用チャージャ13Bにおいて記録媒体Pの背面が交流帯電させられ、記録媒体Pが電子写真感光体2の表面から速やかに分離させられる。
なお、転写器13としては、電子写真感光体2の回転に従動し、かつ電子写真感光体2とは微小間隙(通常、0.5mm以下)を介して配置された転写ローラを用いることも可能である。この場合の転写ローラは、たとえば直流電源により、電子写真感光体2上のトナー像を記録媒体P上に引きつけるような転写電圧を印加するように構成される。転写ローラを用いる場合には、分離用チャージャ13Bのような転写分離装置を省略することもできる。
定着器14は、記録媒体Pに転写されたトナー像を記録媒体Pに定着させるためのものであり、一対の定着ローラ14A,14Bを備えている。定着ローラ14A,14Bは、たとえば金属ローラ上にテフロン(登録商標)等で表面被覆したものとされている。この定着器14では、一対の定着ローラ14A,14Bの間に記録媒体Pを通過させることにより、熱あるいは圧力等によって記録媒体Pにトナー像を定着させることができる。
クリーニング器15は、電子写真感光体2の表面に残存するトナーを除去するためのものであり、クリーニングブレード15Aを備えている。
クリーニングブレード15Aは、電子写真感光体2の表面層26(図2参照)の表面から、残留トナーを掻きとる役割を果たすものである。クリーニングブレード15Aは、たとえばポリウレタン樹脂を主成分としたゴム材料からなる。本実施形態に係るクリーニングブレード15Aは、表面層26(図2参照)に接する先端部の厚みが1.0mm以上1.2mm以下とされている。本実施形態に係るクリーニングブレード15Aは、ブレード線圧が14gf/cm(一般的には5gf/cm以上30gf/cm以下)とされている。本実施形態に係るクリーニングブレード15Aは、硬度がJIS硬度で74度(好適範囲67度以上84度以下)とされている。
除電器16は、電子写真感光体2の表面電荷を除去するためのものである。この除電器16は、たとえばLED等の光源によって電子写真感光体2の表面全体を一様に光照射することにより、電子写真感光体2の表面電荷(残余の静電潜像)を除去するように構成されている。
図2に示したように、電子写真感光体2は、円筒状基体20および被覆層21を有している。
円筒状基体20は、電子写真感光体2の骨格をなすものであり、少なくとも表面に導電性を有するものとされている。円筒状基体20は、全体を導電性材料により形成してもよいし、絶縁性材料により形成した円筒体の表面に導電性膜を形成したものであってもよい。円筒状基体20のための導電性材料としては、たとえばAlあるいはSUS(ステンレス)、Zn、Cu、Fe、Ti、Ni、Cr、Ta、Sn、Au、およびAgなどの金属材料、それらの金属の合金材料を使用することができる。円筒状基体20のための絶縁材料としては、樹脂、ガラス、あるいはセラミックスなどを挙げることができる。導電性膜のための材料としては、先に例示した金属の他、ITO(Indium Tin Oxide)、SnOなどの透明導電性材料を挙げることができる。これらの透明導電性材料は、たとえば蒸着などの公知の手法により、絶縁性を有する円筒体の表面に被着させることができる。
ただし、円筒状基体20は、全体をAl合金材料(たとえばAl−Mn系合金、Al−Mg系合金、Al−Mg−Si系合金)により形成するのが好ましい。そうすれば、電子写真感光体2が軽量かつ低コストに製造可能となり、その上、後述するアモルファス窒化シリコン含有層23との密着性が高くなって信頼性が向上する。
このようなAl合金材料の円筒状基体20は、たとえば鋳造、均質化処理、熱間押出加工、および冷間抽伸加工し、必要に応じて軟化処理を行なうことにより形成することができる。
被覆層21は、感光層22およびアモルファス窒化シリコン含有層23を含んでいる。
感光層22は、電荷注入阻止層24、光導電層25および表面層26を備えたものである。感光層22の厚みは、10μm以上90μm以下に設定されるのが好ましい。感光層22の厚みを10μm以上90μm以下の範囲に設定すると、例えば長波長光吸収層を設けなくても記録画像に干渉縞が発生するのを適切に抑制できるのに加え、応力に起因する膜剥がれが発生するのを適切に抑制できる。
電荷注入阻止層24は、電子あるいは正孔が円筒状基体20から光導電層25に注入されるのを抑制するためのものであり、たとえば厚みが1μm以上10μm以下に形成されている。電荷注入阻止層24は、光導電層25の材料に応じて種々のものを用いることができる。たとえば光導電層25をa−Si系材料を用いて形成する場合であれば、電荷注入阻止層24にもa−Si系材料などの無機物材料を使用するのが好ましい。そうすることにより、後述するアモルファス窒化シリコン含有層23と光導電層25との密着性に優れた電子写真特性を得ることができる。
a−Si系の電荷注入阻止層24を設ける場合は、a−Si系光導電層25と比べて、より多くの周期律表第13族元素(以下、「第13族元素」と略す)あるいは周期律表第15族元素(以下、「第15族元素」と略す)を含有させて導電型を調整し、また多くの炭素(C)、窒素(N)、あるいは酸素(O)を含有させて高抵抗化するとよい。
電荷注入阻止層24は、全体を無機物として形成する場合には、たとえばグロー放電分解法、各種スパッタリング法、各種蒸着法、ECR法、光CVD法、触媒CVD法、あるいは反応性蒸着法など公知の成膜手法により形成することができる。
光導電層25は、露光器11によるレーザ光の照射によって電子が励起され、自由電子あるいは正孔などのキャリアを発生させるためのものであり、たとえば厚みが10μm以上80μm以下に形成されている。光導電層25は、たとえばa−Si系材料、a−Se、Se−Te、およびAsSeなどのアモルファスセレン系(a−Se系)材料、あるいはZnO、CdS、CdSeなどの周期律表第12族元素と周期律表第16族元素との化合物などにより形成されている。a−Si系材料としては、a−Si、a−SiC、a−SiN、a−SiO、a−SiGe、a−SiCN、a−SiNO、a−SiCOおよびa−SiCNOなどを使用することができる。特に、光導電層25をa−Siあるいはa−SiにC、N、Oなどの元素を加えたa−Si系の合金材料により形成した場合には、優れた電子写真特性(光感度特性、高速応答性、繰り返し安定性、耐熱性、あるいは耐久性など)が安定して得られるのに加え、表面層26をa−SiC(特にa−SiC:H)により形成する場合における表面層26との整合性が優れたものとなる。
光導電層25は、全体を無機物として形成する場合には、たとえばグロー放電分解法、各種スパッタリング法、各種蒸着法、ECR法、光CVD法、触媒CVD法、あるいは反応性蒸着法など公知の成膜手法により形成することができる。光導電層25の形成に当たっては、ダングリングボンド終端用に水素(H)あるいはハロゲン元素(F、Cl)を、膜中に1原子%以上40原子%以下含有させてもよい。また、光導電層25の形成に当たっては、各層の電気的特性(暗導電率あるいは光導電率など)および光学的バンドギャップなどについて所望の特性を得るために、第13族元素あるいは第15族元素を0.1ppm以上20000ppm以下含有させ、あるいはC、N、O等の元素の含有量を0.01ppm以上100ppm以下の範囲で調整すればよい。C、N、O等の元素については、層の厚み方向に濃度勾配が生じるように含有させてもよく、その場合には、層全体の平均含有量が上記範囲内にあればよい。
また、第13族元素および第15族元素としては、共有結合性に優れて半導体特性を敏感に変え得る点および優れた光感度が得られる点で、ホウ素(B)およびリン(P)を用いるのが望ましい。第13属元素および第15属元素をC、N、O等の元素とともに含有させる場合には、第13族元素は0.1ppm以上20000ppm以下であるのが好ましく、第15族元素は0.1ppm以上10000ppm以下であるのが好ましい。
光導電層25にC、N、O等の元素を含有させないか、あるいは微量(0.01ppm以上100ppm以下)含有させる場合は、第13族元素の含有量は0.01ppm以上200ppm以下、第15族元素の含有量は0.01ppm以上100ppm以下であるのが好ましい。これらの元素の含有率は層厚方向にわたって濃度勾配があってもよく、その場合には層全体の平均含有量が上記範囲内であればよい。
光導電層25をa−Si系材料により形成する場合には、μc−Si(微結晶シリコン)を含有させてもよく、その場合には、暗導電率および光導電率を高めることができるので、光導電層25の設計自由度が増すという利点がある。このようなμc−Siは、先に説明したのと同様の形成法を採用し、その成膜条件を変えることによって形成することができる。たとえばグロー放電分解法では、円筒状基体20の温度および高周波電力をa−Siの場合よりも高めに設定し、希釈ガスとしての水素流量を増すことによって形成できる。また、μc−Siを含む場合にも上記と同様の不純物元素を添加させてもよい。
光導電層25は、前述の無機物系材料を粒子化し、それを樹脂に分散させた形態であってもよい。また、光導電層25は、必ずしも無機物材料を含んでいる必要はなく、たとえば有機光導電物質を用いた光導電層として形成してもよい。有機光導電物質としては、たとえばポリ−N−ビニルカルバゾールに代表される光導電性ポリマー、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールのような低分子有機光導電性物質を用いることができ、また有機光導電性物質は各種染料や顔料を組み合わせて使用することもできる。
表面層26は、光導電層25の摩擦や磨耗を防ぐためのものである。この表面層26は、たとえばa−SiCなどのa−Si系材料に代表される無機物材料により、厚みが0.2μm以上1.5μm以下に形成されている。表面層26の厚みを0.2μm以上にすることで耐刷による画像キズおよび画像濃度ムラの発生を防止することが可能となり、表面層26の厚みを1.5μm以下にすることで初期特性(残留電位による画像不良等)を良好にすることが可能となる。表面層26の厚みは、好適には0.5μm以上1.0μm以下とされる。
このような表面層26は、a−SiCに水素を含有させたa−SiC:Hにより形成するのが好ましい。a−SiC:Hは、元素比率を組成式a−Si1−X:Hと表した場合、たとえばX値が0.55以上0.93未満とされる。X値を0.55以上0.93未満の範囲内にすることにより、表面層26として適切な硬度を得ることが可能となり、表面層26ひいては電子写真感光体2の耐久性を充分に確保することができるようになる。好適には、X値は0.6以上0.7以下とされる。表面層26をa−SiC:Hにより形成する場合におけるH含有量は、1原子%以上70原子%以下程度に設定するとよい。この範囲内では、Si−H結合がSi−C結合に比して少なくなり、表面層26の表面に光が照射されたときに生じた電荷のトラップを抑えることができ、残留電位を防止することができる点で好ましい。本発明者らの知見によれば、このH含有量を約45原子%以下とすると、より良好な結果が得られる。
このようなa−SiC:Hの表面層26は、光導電層25をa−Si系材料により形成する場合と同様に、たとえばグロー放電分解法、各種スパッタリング法、各種蒸着法、ECR法、光CVD法、触媒CVD法、あるいは反応性蒸着法など公知の成膜手法により形成することができる。
表面層26はまた、有機光導電物質を用いた層として光導電層25を形成する場合には、通常、有機材料により形成される。この場合の有機材料としては、硬化性樹脂を挙げることができる。硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、あるいはウレタン樹脂を使用することができる。
アモルファス窒化シリコン含有層23は、被覆層21における耐電圧特性を向上させるためのものであり、円筒状基体20と感光層22(電荷注入阻止層24)との間に形成されている。このアモルファス窒化シリコン含有層23は、アモルファス窒化シリコン(a−SiN)を含んでいる。アモルファス窒化シリコン含有層23における窒素原子数とシリコン原子数との合計に対する窒素原子数の比率(N/(Si+N))は、0.32以下とされる。このような範囲にシリコン原子と窒素原子の比率を設定することにより、被覆層21における耐電圧特性を適切に確保することができるとともに残留電位の発生を適切に抑制することができる。好適には、アモルファス窒化シリコン含有層23における窒素原子数とシリコン原子数との合計に対する窒素原子数の比率は、0.31以下とされる。
アモルファス窒化シリコン含有層23の厚みは、アモルファス窒化シリコン含有層23に求められる耐電圧特性を適切に維持しつつ残留電位の発生を抑制し、被覆層21の全体の厚みを低減する観点から、0.5μm以上15μm以下とされるのが好ましい。
アモルファス窒化シリコン含有層23はまた、第13族元素と、窒素以外の第15族元素とのノンドープ層であるのが好ましい。このような構成によると、残留電位の上昇を抑制することができる。
このようなアモルファス窒化シリコン含有層23は、光導電層25をa−Si系材料により形成する場合と同様に、たとえばグロー放電分解法、各種スパッタリング法、各種蒸着法、ECR法、光CVD法、触媒CVD法、あるいは反応性蒸着法など公知の成膜手法により形成することができる。
また、アモルファス窒化シリコン含有層23における窒素原子数とシリコン原子数との合計に対する窒素原子数の比率は、たとえばアモルファス窒化シリコン含有層23を形成するときの窒素含有ガスとシリコン含有ガスとの比率を適宜調整することにより選択することができる。アモルファス窒化シリコン含有層23の厚みは、たとえばアモルファス窒化シリコン含有層23を形成するときの成膜時間あるいは円筒状基体20の温度を適宜調整することにより選択することができる。
電子写真感光体2では、被覆層21がアモルファス窒化シリコン含有層23を備えている。また、このアモルファス窒化シリコン含有層23は、窒素原子数とシリコン原子数の合計に対する窒素原子数の比率が0.32以下に設定されている。そのため、電子写真感光体2では、高画質化に対応すべく被覆層21(たとえば光導電層25)の厚みを小さくする場合でも、アモルファス窒化シリコン含有層23によって耐電圧特性を適切に維持しつつ残留電位の発生を抑制することができる。
一方、画像形成装置1では、電子写真感光体2として、被覆層21における耐電圧特性が適切に維持されつつ残留電位の発生が抑制されたものが使用されている。そのため、画像形成装置1では、画像欠陥の発生を抑制し、高品質な画像を提供することが可能となる。
本実施例では、アモルファス窒化シリコン含有層における窒素原子数とシリコン原子数との合計に対する窒素原子数の比率(N/(Si+N))が、耐電圧および残留電位に与える影響を検討した。
(電子写真感光体の作成)
電子写真感光体は、下記表1に示した寸法を有するアルミニウム製の引き抜き管(円筒状基体)に対して、グロー放電分解装置を用いて、下記表2に示す条件で被覆層(アモルファス窒化シリコン含有層、電荷注入阻止層、光導電層、および表面層)を形成することにより作成した。なお、矩形波パルス電圧のON:OFFのduty比を70%:30%とし、表2の値はON時の値を示す。円筒状基体としては、外周面を鏡面加工して洗浄したものを使用した。アモルファス窒化シリコン含有層における窒素原子数とシリコン原子数との合計に対する窒素原子数の比率(N/(Si+N))は、耐圧保持層を形成するときの原料ガス組成において、表2の範囲でN2の流量を選択することにより調整した。
Figure 2009104466
Figure 2009104466
(耐電圧の検討)
耐電圧は、接触針耐圧法にて測定した。より具体的には、電極針を電子写真感光体の表面と接触させた状態で定電圧電源(「MODEL610C」;TREK製)を用いて感光体表面に電圧を印加し、絶縁破壊が生じた電圧を耐電圧とした。電極針としては先端径がφ1.4mmのものを用い、測定温度は23℃とした。耐電圧の評価結果については、表3および図3に示した。
Figure 2009104466
表3および図3から分かるように、円筒状基体と電荷注入阻止層との間にアモルファス窒化シリコン含有層を設けることにより耐電圧が向上した。とくに、アモルファス窒化シリコン含有層における窒素原子数とシリコン原子数との合計に対する窒素原子数の比率(N/(Si+N))を大きくすれば、耐電圧が大きくなる傾向にあった。
(残留電位の検討)
残留電位は、電子写真感光体を組み込んだ画像形成装置を用いて帯電・露光・除電のサイクルを1回行うとともに、そのサイクルにおける除電後に電位検査機(「PDT1000」;QEA製)を用いて計測される電圧値とした。帯電・露光・除電のサイクルにおいては、電子写真感光体の表面温度は23℃、回転速度は150mm/sec、帯電圧は350V、除電光量は3μJ/cmに設定した。残留電位の測定結果については、表4および図4に示した。
Figure 2009104466
表4および図4から分かるように、アモルファス窒化シリコン含有層における窒素原子数とシリコン原子数との合計に対する窒素原子数の比率(N/(Si+N))が0.32以下のときに残留電圧が充分に小さく実用上問題のない程度であった。とくに、比率(N/(Si+N))が0.31以下のときに残留電位が測定誤差範囲である10V以下であり、実質的に残留電位がないものと判断できる程度であった。このように、残留電位が実質的にないものとみなせる程度である場合、電子写真プロセスの設計をより容易に行うことができる。
以上の結果より、アモルファス窒化シリコン含有層を設けるとともに、窒素原子数とシリコン原子数の合計に対する窒素原子数の比率(N/(Si+N))を0.32以下とすることにより、耐電圧特性および残存電位特性が良好なものとなり、これらの特性は比率(N/(Si+N))を0.31以下とすることにより、さらに良好なものとなることが分かった。
本実施例では、アモルファス窒化シリコン含有層における厚みが、耐電圧および残留電位に与える影響を検討した。
(電子写真感光体の作成)
電子写真感光体は、基本的には実施例1と同様にして作成した。ただし、アモルファス窒化シリコン含有層の厚みは、アモルファス窒化シリコン含有層の成膜時間を調整することにより、表5および表6に示したように0.5μm以上18μm以下の範囲で調整した。それぞれの厚みのアモルファス窒化シリコン含有層を形成するときの原料ガスにおいては、窒素ガスの流量は450sccmで固定し、窒素原子数とシリコン原子数の合計に対する窒素原子数の比率(N/(Si+N))は0.20と0.31とに設定した。
(アモルファス窒化シリコン含有層の厚みの測定)
アモルファス窒化シリコン含有層の厚みは、光学式厚み計(商品名(型番):MC−850A、大塚電子株式会社製)にて測定した。アモルファス窒化シリコン含有層の厚みの測定結果については、表5および表6に示した。表5および表6においてアモルファス窒化シリコン含有層の厚みは、周方向に沿った任意の5点につきアモルファス窒化シリコン含有層の厚みを測定し、その5点の平均値として示した。
(耐電圧および残留電位の検討)
耐電圧および残留電位は、実施例1と同様にして測定した。耐電圧および残留電位の測定結果については、比率(N/(Si+N))が0.20のものを表5に示し、比率(N/(Si+N))が0.31のものを表6に示した。
Figure 2009104466
Figure 2009104466
表5および表6から分かるように、アモルファス窒化シリコン含有層の厚みが18μm以下の範囲では、耐電圧値および残留電位ともに、実用上問題のない程度であることが確認された。とくに、アモルファス窒化シリコン含有層の厚みが15μm以下の範囲では、残留電位が実質的にないものとみなせる程度であることが確認された。なお、本実施例では、膜厚が18μmのものまで確認を行ったが、画質あるいは成膜時間の観点から実際は15μm以下(特に10μm以下)に設定するのが好ましい。そして、このような範囲内であれば、本発明の範囲において比率(N/(Si+N))を変化させても、残留電位は実質的にないものとみなせる程度である。

Claims (6)

  1. 導電性基体と、該導電性基体を被覆する被覆層とを備える電子写真感光体であって、
    前記被覆層は、感光層と、前記導電性基体と前記感光層との間に位置するアモルファス窒化シリコン含有層とを含んでなり、
    前記アモルファス窒化シリコン含有層における窒素原子数とシリコン原子数との合計に対する窒素原子数の比率は、0.32以下であることを特徴とする、電子写真感光体。
  2. 前記比率は、0.31以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記アモルファス窒化シリコン含有層の厚みは、0.5μm以上15μm以下である、請求項1に記載の電子写真感光体。
  4. 前記アモルファス窒化シリコン含有層は、周期律表第13族元素と、窒素以外の周期律表第15族元素とのノンドープ層である、請求項1に記載の電子写真感光体。
  5. 前記感光層は、光導電層と、前記アモルファス窒化シリコン含有層と前記光導電層との間に位置する電荷注入阻止層と、を含んでなる、請求項1に記載の電子写真感光体。
  6. 請求項1に記載の電子写真感光体を備えることを特徴とする、画像形成装置。
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