以下、本発明に係る画像形成装置および電子写真感光体ついて、添付図面を参照しつつ具体的に説明する。
図1および図2に示した画像形成装置1は、画像形成方式としてカールソン法を採用したものであり、電子写真感光体2、回転機構3、帯電ローラ41、露光器42、現像器43、転写器44、定着器45、クリーニング器46、および除電器47を備えたものである。
図2に示したように、電子写真感光体2は、画像信号に基づいた静電潜像やトナー像が形成されるものであり、回転機構3によって図1の矢印A方向に回転可能とされている。図3に示したように、電子写真感光体2は、円筒状基体20の表面に、感光層21が形成されたものである。
円筒状基体20は、電子写真感光体2の骨格をなすとともに、その外周面上で静電潜像を担持するものである。円筒状基体20の軸方向の長さLは、使用が予定される記録紙などの記録媒体Pの最大のものの長さよりも若干長くされている。具体的には、円筒状基体20の軸方向の長さLは、たとえば記録媒体Pの両端から0.5cm以上5cm以下程度長くなるように設定されている。このため、感光層21は、記録媒体Pの最大長さに対応した潜像形成領域22と、この潜像形成領域22に隣接して両端部に設けられた非潜像形性領域23と、を有することとなる。すなわち、非潜像形成領域23とは、どのような画像サイズに対応した潜像を感光層21に形成するに当たっても、全く使用が予定されない感光層21の領域(潜像形成領域22の軸方向の外側)をいう。
円筒状基体20は、内径が相対的に大きいインロー部24,25、およびマーク26を有している。インロー部24は後述する回転機構3の駆動伝達フランジ30Eが嵌合される部分であり、インロー部25は後述する回転機構3の軸受フランジ31が嵌合される部分である。図示したインロー部24,25は、非潜像形成領域23に対応する部分に収まっているが、潜像形成領域22に対応する部分にまで及んでも構わない。
マーク26は、電子写真感光体2におけるインロー部24とインロー部25とを区別するためのものである。このマーク26は、インロー部24の内面に形成されている。マーク26は、目視確認可能なものであればよく、たとえばシールを貼着することにより、押圧などにより凹部を設けることにより、あるいは刃物などによりキズを付けることにより形成することができる。マーク26は、インロー部25に形成してもよく、また円筒状基体20の端面に形成してもよい。後述するように、感光層21におけるインロー部24側の端部22Aは、インロー部25側の端部22Bに比べて厚みが大きくされる。そのため、円筒状基体20にマーク26を設けることにより、感光層21の厚みが相対的に大きなインロー部24側の端部22Aを認識することが容易となる。その結果、電子写真感光体2を画像形成装置1に組み込むときに、電子写真感光体2の設置向きを誤ることを抑制することができる。
このような円筒状基体20は、少なくとも表面に導電性を有するものとされている。すなわち、円筒状基体20は、全体を導電性材料により形成してもよいし、絶縁性材料により形成した円筒体の表面に導電性膜を形成したものであってもよい。円筒状基体20のための導電性材料としては、たとえばAlあるいはSUS(ステンレス)、Zn、Cu、Fe、Ti、Ni、Cr、Ta、Sn、Au、およびAgなどの金属材料、それらの金属の合金材料を使用することができる。円筒状基体20のための絶縁材料としては、樹脂、ガラスあるいはセラミックなどを挙げることができる。導電性膜のための材料としては、先に例示した金属の他、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO2などの透明導電性材料を挙げることができる。これらの透明導電性材料は、たとえば蒸着などの公知の手法により、絶縁性を有する円筒体の表面に被着させることができる。ただし、円筒状基体20は、全体をAl合金材料により形成するのが好ましい。そうすれば、電子写真感光体2が軽量かつ低コストに製造可能となり、その上、後述する感光層21の電荷注入阻止層27や光導電層28をアモルファスシリコン系(a−Si系)材料により形成する場合に、それらの層27,28との密着性が高くなって信頼性が向上する。
感光層21は、電荷注入阻止層27、光導電層28、および表面層29を積層形成したものである。この感光層21は、潜像形成領域22において、後述する回転機構3の駆動伝達フランジ30E側の第1の端部22Aのほうが、後述する回転機構3の軸受フランジ31側の第2の端部22Bに比べて厚みが大きく、動的押し込み硬さが大きくなされている。
感光層21の第1の端部22Aでの動的押し込み硬さは、たとえば第2の端部22Bでの動的押し込み硬さの1.03倍以上1.25倍以下とされ、第1の端部22Aでの動的押し込み硬さと第2の端部22Bでの動的押し込み硬さの差は、25以上170以下とされる。
感光層21の動的押し込み硬さとは、動的押し込み法にて測定した値を言う。このような動的押し込み硬さは、電子写真感光体2を10mm×20mmのサイズに切り出した断片を、「動的押し込み−201」(SHIMADZU社製)を用いて測定することにより得ることができる。この装置を用いる場合、圧子として115°三角錐を用い、測定条件が押し込み深さ100nm、荷重レンジ19.6mN、負荷速度0.284393mN、保持時間5secに設定される。
電荷注入阻止層27は、円筒状基体20からの電子や正孔が光導電層28に注入されるのを抑制するためのものであり、光導電層28の材料に応じて種々のものを用いることができる。電荷注入阻止層27は、たとえば無機材料により形成されており、光導電層28にa−Si系材料を用いる場合であれば、電荷注入阻止層27のための無機材料としてa−Si系の材料のものを使用するのが好ましい。そうすることにより、円筒状基体20と光導電層28との密着性に優れた電子写真特性を得ることができる。
a−Si系の電荷注入阻止層27を設ける場合は、a−Si系光導電層28と比べて、より多くの周期律表第13族元素(以下、「第13族元素」と略す)や周期律表第15族元素(以下、「第15族元素」と略す)を含有させて導電型を調整し、また多くの硼素(B)、窒素(N)、あるいは酸素(O)を含有させて高抵抗化するとよい。
なお、電界注入阻止層27は、選択的なものであり、必ずしも必要なものではない。また、電荷注入阻止層27に代えて、長波長光吸収層を設けてもよい。この長波長光吸収層を設けると、露光時に入射した長波長光(波長が0.8μm以上の光をいう。)が円筒状基体20の表面で反射し、記録画像に干渉縞が発生することを抑制することが可能となる。
光導電層28は、露光器42によるレーザ光の照射によって電子が励起され、自由電子あるいは正孔などのキャリアを発生させるためのものであり、たとえばa−Si系材料、a−Se、Se−Te、およびAs2Se3などのアモルファスセレン系(a−Se系)材料、あるいはZnO、CdS、CdSeなどの周期律表第12族元素と第16族元素との化合物などにより形成されている。a−Si系材料としては、a−Si、a−SiC、a−SiN、a−SiO、a−SiGe、a−SiCN、a−SiNO、a−SiCOおよびa−SiCNOなどを使用することができる。特に、光導電層28をa−Siあるいはa−SiにC、N、Oなどの元素を加えたa−Si系の合金材料により形成した場合には、高い光感度特性、高速応答性、繰り返し安定性、耐熱性、および耐久性などの優れた電子写真特性が安定して得られるのに加え、表面層29をa−SiC:Hにより形成する場合における表面層29との整合性が優れたものとなる。なお、光導電層28は、前述の無機物系材料を粒子化し、それを樹脂に分散させた形態、あるいはOPC系光導電層として形成してもよい。
光導電層28は、全体を無機物として膜形成する場合には、たとえばグロー放電分解法、各種スパッタリング法、各種蒸着法、ECR法、光CVD法、触媒CVD法、あるいは反応性蒸着法など公知の成膜手法により形成することができる。光導電層28の成膜に当たっては、ダングリングボンド終端用に水素(H)やハロゲン元素(F、Cl)を、膜中に1原子%以上40原子%以下含有させてもよい。また、光導電層28の形成に当たっては、各層の暗導電率や光導電率などの電気的特性および光学的バンドギャップなどについて所望の特性を得るために、第13族元素や第15族元素を0.1ppm以上20000ppm以下含有させたり、C、N、O等の元素の含有量を0.01ppm以上100ppm以下の範囲で調整することにより、上記諸特性を調整する。
また、第13族元素および第15族元素としては、共有結合性に優れて半導体特性を敏感に変え得る点および優れた光感度が得られる点で、硼素(B)およびリン(P)を用いるのが望ましい。第13属元素および第15属元素をC、N、O等の元素とともに含有させる場合には、第13族元素は0.1ppm以上20000ppm以下であるのが好ましく、第15族元素は0.1ppm以上10000ppm以下であるのが好ましい。
光導電層28にC、N、O等の元素を含有させないか、あるいは微量(0.01ppm以上100ppm以下)含有させる場合は、第13族元素の含有量は0.01ppm以上200ppm以下、第15族元素の含有量は0.01ppm以上100ppm以下であるのが好ましい。これらの元素の含有率は層厚方向にわたって濃度勾配があってもよく、その場合には層全体の平均含有量が上記範囲内であればよい。
光導電層28をa−Si系材料により形成する場合には、μc−Si(微結晶シリコン)を含有させてもよく、その場合には、暗導電率および光導電率を高めることができるので、光導電層3の設計自由度が増すという利点がある。このようなμc−Siは、先に説明したのと同様の形成法を採用し、その成膜条件を変えることによって形成することができる。たとえばグロ−放電分解法では、円筒状基体20の温度および高周波電力をa−Siの場合よりも高めに設定し、希釈ガスとしての水素流量を増すことによって形成できる。また、μc−Siを含む場合にも上記と同様の不純物元素を添加させてもよい。
光導電層28の厚みは、使用する光導電性材料および所望の電子写真特性により適宜設定すればよいが、潜像形成領域22における駆動伝達フランジ30E側である第1の端部22Aでの厚みが、潜像形成領域22における軸受フランジ31側である第2の端部22Bでの厚みに比べて大きくされている。この光導電層28の厚みは、第2の端部22Bから第1の端部22A向かって漸次大きくなっている。光導電層28の厚みは、第2の端部22Bから第1の端部22Aに向って段階的に大きくなっていてもよい。
光導電層28における第2の端部22Bでの厚みに対する第1の端部22Aでの厚みの比は、たとえば1.03倍以上1.25倍以下に設定される。光導電層28は、a−Si系材料を用いて形成する場合には、第1の端部22Aでの厚みが5.15μm以上125μm以下、好適には、15.45μm以上100μm以下、第2の端部22Bでの厚みが5μm以上100μm以下、好適には15μm以上80μm以下に設定される。光導電層3における第1の端部22Aでの厚みと第2の端部22Bでの厚みとの厚みの差は、1.0μm以上7.5μm以下、好適には、3.5μm以上5.0μm以下とされる。
ここで、潜像形成領域22の第1の端部22Aとは、円筒状基体20の軸方向の長さをLとした場合、感光層21における円筒状基体20の軸方向の一方の端から0.1L以上0.25L以下である領域とし、潜像形成領域22の第2の端部22Bとは、感光層21における円筒状基体20の軸方向の一方の端から0.75L以上0.9L以下である領域とする。
潜像形成領域22における光導電層28の第1および第2の端部22A,22Bでの厚みとは、それぞれの端部22A,22Bの周方向に沿った任意の5点につき測定し、その5点の平均値をいう。ただし、厚みの測定においては、膜欠陥や膜破壊等が生じているといった特殊な部位は除くものとする。光導電層28の厚みは、光干渉法によって算出される。より具体的には、測定箇所に1000nm以上1100nm以下の光を入射させて透過率の曲線を描き、透過率の極大極小および表面層の屈折率から厚みを算出する(参考:薄膜材料測定・評価 発刊 (株)技術情報協会 P42〜46)。
このような光導電層28は、たとえば図4および図5に示したグロー放電分解装置5を用いて形成することができる。図示したグロー放電分解装置5は、円筒状の真空容器50の中央部に配置した基体支持体51に円筒状基体20を支持させ、グロー放電プラズマにより円筒状基体20にa−Si系膜を成膜するものである。このグロー放電分解装置5では、基体支持体51が接地されているとともに、真空容器50が高周波電源52に接続されており、真空容器50と基体支持体51(円筒状基体20)との間に高周波電力を印加できるようになされている。基体支持体51は、回転機構53によって回転可能とされており、その内部に配置されたヒータ54によって加熱されるようになっている。このグロー放電分解装置5にはさらに、複数(図面上は8個)のガス導入管55が基体支持体51(円筒状基体20)を囲むように配置されている。各ガス導入管55は、その軸方向に並ぶように複数のガス導入口56が設けられたものである。各ガス導入管55における複数のガス導入口56は、円筒状基体20に対面するように配置されており、複数のガス導入口56を介して導入された原料ガスが、円筒状基体20に向けて吹き出すように構成されている。
このグロー放電分解装置5を用いて円筒状基体20にa−Si系膜の成膜を行なうに当たっては、所定の流量やガス比に設定された原料ガスが、ガス導入管55からガス導入口56を介して円筒状基体20に向けて導入される。このとき、円筒状基体20は、基体支持体51とともに回転機構53によって回転させられている。そして、高周波電源52により真空容器50と基体支持体51(円筒状基体20)との間に高周波電力を印加し、これらの間にグロー放電によって原料ガスを分解することにより、所望の温度に設定した円筒状基体20上にa−Si系膜が成膜される。
このようなグロー放電分解装置5を用いる場合には、ガス導入管55における複数のガス導入口56の配置密度を漸次あるいは段階的に変化させることにより、光導電層28の厚みを、その軸方向において漸次あるいは段階的に変化させることができる。たとえば図6に示したように、ガス導入管55における光導電層28の第1の端部22Aを含む対応するX領域については、第2の端部22Bを含むY領域に比べて複数のガス導入口56の配置密度を大きくすることにより、第1の端部22Aで厚みを第2の端部22Bでの厚みよりも大きくすることができる。なお、Y領域に対するX領域の配置密度の比は、第1および第2の端部22A,22Bでの光導電層28の厚みやそれらの端部22A,22Bでの光導電層28の厚みの比に応じて設定すればよいが、たとえば1.06倍以上2.25倍以下に設定される。また、ガス導入管55における複数のガス導入口56の配置密度は、例えば図4に示すように、下方を密に構成するものには限られず、上方を密に構成してもよい。
また、ヒータ54によって円筒状基体20に対して軸方向に温度分布を持たせることにより、光導電層28の第1の端部22Aにおける厚みを第2の端部22Bにおける厚みよりも大きくすることもできる。より具体的には、円筒状基体20における第1の端部22Aに対応する部分の温度を、第2の端部22Bに対応する部分の温度よりも高くすることにより、第1の端部22Aにおける厚みを、第2の端部22Bにおける厚みよりも大きくすることができる。
図3に示した表面層29は、光導電層28の摩擦・磨耗を防ぐためのものであり、光導電層28の表面に積層形成されている。この表面層29は、たとえばa−SiCなどのa−Si系材料に代表される無機材料により、厚みが0.2μm以上1.5μm以下に形成されている。表面層29の厚みを0.2μm以上にすることで耐刷による画像キズおよび画像濃度ムラの発生を防止することが可能となり、表面層29の厚みを1.5μm以下にすることで初期特性(残留電位による画像不良等)を良好にすることが可能となる。表面層29の厚みは、好適には0.5μm以上1.0μm以下とされる。
表面層29は、駆動伝達フランジ30E側である第1の端部22Aでの厚みが、軸受フランジ31側である第2の端部22Bでの厚みに比べて大きくされている。表面層29の第2の端部22Bでの厚みに対する第1の端部22Aでの厚みの比は、たとえば1.03倍以上1.25倍以下に設定され、第1の端部22Aでの厚みと第2の端部22Bでの厚みの差は、0.03μm以上0.21μm以下、好適には、0.09μm以上0.14μm以下とされる。
表面層29の第1および第2の端部22A,22Bでの厚みは、光導電層28の厚みと同様に定義され、また同様の光干渉法により算出される。ただし、表面層29の厚みを測定する場合に用いる光の波長は、400nm以上700nm以下とされる。
表面層29は、駆動伝達フランジ30E側である第1の端部22Aでの動的押し込み硬さが、軸受フランジ31側である第2の端部22Bでの動的押し込み硬さに比べて大きくされている。表面層29の動的押し込み硬さは、第2の端部22Bから第1の端部22Aに向かって漸次高くし、あるいは第2の端部22Bから第1の端部22Aに向かって段階的に高くなっている。
このような表面層29は、a−SiCに水素を含有させたa−SiC:Hにより形成するのが好ましい。a−SiC:Hは、元素比率を組成式a−Si1−XCX:Hと表した場合、たとえばX値が0.55以上0.93未満とされる。X値を0.55以上にすることで表面層29として適切な硬度を得ることが可能となり、表面層29ひいては電子写真感光体2の耐久性を確保でき、X値を0.93未満にすることで同様に表面層29として適切な硬度を得ることができる。好適には、X値は0.6以上0.7以下とされる。表面層29をa−SiC:Hにより形成する場合におけるH含有量は、1原子%以上70原子%以下程度に設定するとよい。この範囲内では、Si−H結合がSi−C結合に比して少なくなり、表面層29の表面に光が照射されたときに生じた電荷のトラップを抑えることができ、残留電位を防止することができる点で好ましい。本発明者らの知見によれば、このH含有量を約45原子%以下とすると、より良好な結果が得られる。
このようなa−SiC:Hの表面層29は、光導電層28をa−Si系材料により形成する場合と同様に、図4および図5に示したグロー放電分解装置5を用いて形成することができる。この場合、表面層29の第1の端部22Aでの厚みを第2の端部22Bでの厚みよりも大きくする場合には、原料ガスとしてシランガス(SiH4)などのSi含有ガス、メタンガス(CH4)などのC含有ガス、必要に応じて、H2ガスなどの希釈ガスを用いるとともに、光導電層28を形成する場合と同様に図6に例示したガス導入管55を用いればよい。また、表面層29の第1の端部22Aでの厚みは、円筒状基体20における第1の端部22Aに対応する部分の温度を、第2の端部22Bに対応する部分の温度よりも高くすることにより、第2の端部22Bでの厚みよりも大きくすることもできる。
図6に示したガス導入管55を用いて第1の端部22Aでの厚みを第2の端部22Bでの厚みよりも大きくする場合には、たとえばCH4とSiH4とのガス比は、SiH4が1に対してCH4が10以上300以下に、H2ガスによる希釈率は0%以上50%以下に、成膜形成時のガス圧力は0.15Torr以上0.65Torr以下程度に、高周波電力は1本の円筒状基体20につき100W以上350W以下程度に、円筒状基体20の温度は200℃以上300℃以下に設定される。高周波電力は、たとえば周波数を13.56MHzとして、または13.56MHzの高周波を1kHzでパルス変調して印加される。
図7に示したように、光導電層28および表面層29を形成するためのガス導入管55としては、複数のガス導入口56が、一方の端部(円筒状基体20におけるインロー部24側)に向うほどの配置密度が徐々に密になるように配置されたものを使用することができる。
図2に示した画像形成装置1の回転機構3は、電子写真感光体2を回転させるためのものであり、回転駆動系30および軸受フランジ31を備えている。
回転駆動系30は、モータ30Aの回転動力を電子写真感光体2に伝達して電子写真感光体2を回転させるためのものである。この回転駆動系30は、モータ30Aの他に、駆動ギア30B,30C,30D、および駆動伝達フランジ30Eを含んでいる。
駆動ギア30B,30C,30Dは、大小のギアからなり、モータ30Aの回転力を駆動伝達フランジ30Eに伝達するためのものである。駆動ギア30B,30C,30Dを介しての電子写真感光体2の回転速度は、その表面での周速度において、たとえば320mm/secの一定速度とされる。
駆動伝達フランジ30Eは、駆動ギア30B,30C,30Dからの回転動力を電子写真感光体2に伝達するためのものである。この駆動伝達フランジ30Eは、円筒状基体20のインロー部24に嵌め込まれる嵌合部30Eaと、ギア30Dに噛み合うギア部30Ebと、を有している。嵌合部30Eaは、インロー部24の内径とほぼ一致する外径を有しており、円筒状基体20に対して回転不能に固定されている。
軸受フランジ31は、電子写真感光体2を回転可能に支持するためのものである。この軸受フランジ31は、円筒状基体20のインロー部25に対して、隙間6を介して(いわゆる「遊び」をもって)嵌め込まれている。
なお、回転駆動系30は、駆動ギア30B,30C,30Dを含むものに限られず、電子写真感光体2に所定の回転力を付与し得るものであれば他の構造を有するものでもよく、たとえば回転ベルト、ワイヤあるいはチェーンにより回転力を伝達する構成を採用してもよい。
図1に示した帯電ローラ41は、電子写真感光体2の表面を、電子写真感光体2の光導電層の種類に応じて正極性または負極性に一様に、200V以上1000V以下程度に帯電させるためのものである。この帯電ローラ41は、電子写真感光体2の押圧するように密着して配置されており、たとえば芯金の上に、導電性ゴムおよびPVDF(ポリフッ化ビニリデン)によって被覆したものとして構成されている。
露光器42は、電子写真感光体2に静電潜像を形成するためのものであり、特定波長(たとえば650nm以上780nm以下)の光を出射可能とされている。この露光器42によると、画像信号に応じて電子写真感光体2の表面に光を照射して光照射部分の電位を減衰させることにより、電位コントラストとしての静電潜像が形成される。露光器42としては、例えば約680nmの波長の光を出射可能なLED素子を600dpiの密度で配列させたLEDヘッドを採用することができる。
もちろん、露光器42としては、レーザ光を出射可能なものを使用することもできる。また、LEDヘッド等の露光器42に代えて、レーザービームやポリゴンミラー等からなる光学系や原稿からの反射光を通すレンズやミラー等からなる光学系を用いることにより、複写機の構成の画像形成装置とすることもできる。
現像器43は、電子写真感光体2の静電潜像を現像してトナー像を形成するためのものである。この現像器43は、現像剤(トナー)を磁気的に保持する磁気ローラ43A、電子写真感光体2との隙間(Gap)を制御するためのコロと呼ばれる車輪(図示略)などを備えている。
現像剤は、電子写真感光体2の表面に形成されるトナー像を構成するためのものであり、現像器43において摩擦帯電させられるものである。現像剤としては、磁性キャリアと絶縁性トナーとから成る二成分系現像剤、あるいは磁性トナーから成る一成分系現像剤を使用することができる。
磁気ローラ43Aは、電子写真感光体2の表面(現像領域)に現像剤を搬送する役割を果すものである。
現像器43においては、磁気ローラ43Aにより摩擦帯電したトナーが一定の穂長に調整された磁気ブラシの形で搬送され、電子写真感光体2の現像領域において、トナーが静電潜像との静電引力により感光体表面に付着して可視化される。トナー像の帯電極性は、正規現像により画像形成が行われる場合には、電子写真感光体2の表面の帯電極性と逆極性とされ、反転現像により画像形成が行われる場合には、電子写真感光体2の表面の帯電極性と同極性とされる。
なお、現像器43は、乾式現像方式を採用しているが、液体現像剤を用いた湿式現像方式を採用してもよい。
転写器44は、電子写真感光体2と転写器44との間の転写領域に供給された記録媒体Pに、電子写真感光体2のトナー像を転写するためのものである。この転写器44は、転写用チャージャ44Aおよび分離用チャージャ44Bを備えている。転写器44では、転写用チャージャ44Aにおいて記録媒体Pの背面(非記録面)がトナー像とは逆極性に帯電され、この帯電電荷とトナー像との静電引力によって、記録媒体P上にトナー像が転写される。転写器44ではさらに、トナー像の転写と同時的に、分離用チャージャ44Bにおいて記録媒体Pの背面が交流帯電させられ、記録媒体Pが電子写真感光体2の表面から速やかに分離させられる。
なお、転写器44としては、電子写真感光体2の回転に従動し、かつ電子写真感光体2とは微小間隙(通常、0.5mm以下)を介して配置された転写ローラを用いることも可能である。この場合の転写ローラは、たとえば直流電源により、電子写真感光体2上のトナー像を記録媒体P上に引きつけるような転写電圧を印加するように構成される。転写ローラを用いる場合には、分離用チャージャ44Bのような転写分離装置は省略される。
定着器45は、記録媒体Pに転写されたトナー像を記録媒体Pに定着させるためのものであり、一対の定着ローラ45A,45Bを備えている。定着ローラ45A,45Bは、たとえば金属ローラ上にテフロン(登録商標)等で表面被覆したものとされている。この定着器45では、一対の定着ローラ45A,45Bの間に記録媒体Pを通過させることにより、熱や圧力等によって記録媒体Pにトナー像を定着させることができる。
図1および図2に示したクリーニング器46は、電子写真感光体2の表面に残存するトナーを除去するためのものであり、クリーニングブレード46Aを備えている。
クリーニングブレード46Aは、電子写真感光体2の表面層29の表面から、残留トナーを掻きとる役割を果たすものである。このクリーニングブレード46Aは、その先端が電子写真感光体2の潜像形成領域22を押圧するように、バネ46B等の付勢手段を介してケース46Cに支持されている。クリーニングブレード46Aは、たとえばポリウレタン樹脂を主成分としたゴム材料からなり、表面層29に接する先端部の厚みが1.0mm以上1.2mm以下、ブレード線圧が14gf/cm(一般的には5gf/cm以上30gf/cm以下)、硬度がJIS硬度で74度(好適範囲67度以上84度以下)とされている。
除電器47は、電子写真感光体2の表面電荷を除去するためのものである。この除電器47は、たとえばLED等の光源によって電子写真感光体2の表面(表面層29)全体を一様に光照射することにより、電子写真感光体2の表面電荷(残余の静電潜像)を除去するように構成されている。
画像形成装置1において電子写真感光体2は、第1の端部22Aに対応するインロー部24で駆動伝達フランジ30Eが密接に固定されており、第2の端部22Bに対応するインロー部25で軸受フランジ31が隙間6を介して固定されている。そのため、感光層21の第1の端部22Aに対しては、第2の端部22Bに比べて大きな押圧力が作用する。その一方で、光導電層28および表面層29の厚み、ひいては感光層21の厚みは、第1の端部22Aのほうが第2の端部22Bよりも大きくされている。
その結果、クリーニングブレード46Aや帯電ローラ41などの電子写真感光体2を押圧する押圧部材と、電子写真感光体2との間に粉塵等の異物が咬み込まれてもクラックが発生し難いのに加え、仮にクラックが発生した場合であっても、感光層21(光導電層28および表面層29)での第1の端部22Aの厚みが第2の端部22Bの厚みよりも大きくされていることによって、第1の端部22Aにおいて発生したクラックが光導電層28や円筒状基体20にまで到達しにくくなる。これにより、光導電層28の損傷、光導電層28と表面層29との間の短絡、円筒状基体20への電荷のリークを抑制することができる。そのため、画像形成装置1では、感光層21(光導電層28)の機能破壊が生じにくく、画像欠陥が生じにくくなり、長期的な使用に耐えうるものとなる。
また、電子写真感光体2では、感光層21の第1の端部22Aにおける動的押し込み硬さが、第2の端部22Bにおける動的押し込み硬さに比べて大きくされている。そのため、感光層21では、クリーニングブレード46Aや帯電ローラ41などの押圧部材と、電子写真感光体2との間に異物が咬み込まれた場合であっても、感光層21の第1の端部22Aにおける硬さが高いために、感光層21の第1の端部22Aにクラックが発生しにくい。これにより、電子写真感光体2では、光導電層28に傷が付くことを抑制できるため、光導電層28の機能破壊を抑制することができる。したがって、電子写真感光体2を組み込んだ画像形成装置1では、画像欠陥がさらに生じにくく、長期的な使用に耐えうるものとなる。
本発明は、上述した実施の形態には限定されず、種々に設計変更可能である。たとえば、本発明は、押圧部材から電子写真感光体2における第1の端部22Aに作用する押圧力が、第2の端部22Bに作用する押圧力よりも大きな画像形成装置であれば適用することができる。たとえば、帯電ローラ41における軸方向の両端部のそれぞれの直上にバネが備え付けられおり、これらのバネの一方の押圧力が他方に比して強い場合が考えられる。このような場合においても、本発明を適用することにより、電子写真感光体2における第1の端部22Aでの感光層21、とくに光導電層28の機能破壊を抑制できる。
本実施形態では、光導電層28および表面層29の両方とも第1の端部22Aでの厚みが第2の端部22Bでの厚みに比べて大きくされているが、図8に示すように、光導電層28および表面層29のうちのいずれか一方のみ第1の端部22Aでの厚みが第2の端部22Bでの厚みに比べて大きくされていてもよい。なお、図8において、図8(a)は光導電層28のみ第1の端部22Aでの厚みが第2の端部22Bでの厚みに比べて大きい場合の図であり、図8(b)は表面層29のみ第1の端部22Aでの厚みが第2の端部22Bでの厚みに比べて大きい場合の図である。
また、図9に示したように、感光層21は、厚みが順次大きくなる場合に限らず、第1の端部22Aから第2の端部22Bに向って段階的に大きくなるように形成してもよい。このような感光層21は、光導電層および表面層のうちの少なくとも一方の厚みを第1の端部22Aから第2の端部22Bに向って段階的に大きくすることにより形成することができる。図9に示した例では、第1の端部22Aと第2の端部22Bとの間の段数が1つであるが、段数は2以上であってもよい。
また、図10に示したように、電子写真感光体7の感光層70の厚みを潜像形成領域71の第1の端部72と第2の端部73とで同様なものとする一方で、感光層70における第1の端部72の動的押し込み硬さを、第2の端部73の動的押し込み硬さに比べて大きくしてもよい。このとき、表面層74をa−SiCを主成分とする材料により形成する場合、第1の端部72における炭素含有量と第2の端部73における炭素含有量を調整することにより、感光層70における第1の端部72の動的押し込み硬さを、第2の端部73の動的押し込み硬さよりも大きくすることができる。たとえば、表面層74における第1の端部72におけるSi:Cの比率と、第2の端部73におけるSi:Cの比率とを比較したときに、Cの含有比率が20%以上70%以下の範囲において、第1の端部72のCの含有比率を、第2の端部73のCの含有比率よりも高くすればよい。
[実施例1]
本実施例では、電子写真感光体の表面層における両端部の厚みが画像特性に与える影響について検討した。
(電子写真感光体の作製)
電子写真感光体の作製に当たっては、まず円筒状基体として、アルミニウム合金から成る外径84mm、長さ360mmの引き抜き管の外周面を鏡面加工して洗浄したものを用意した。次いで、図4および図5に示すグロー放電分解装置5に円筒状基体20をセットして、図8に示すガス導入管55′を用い、表1に示す成膜条件により円筒状基体20の表面に電荷注入阻止層および光導電層を積層形成した後、図6に示すガス導入管55を用いて、表2に示す成膜条件により光導電層上に表面層を形成することにより、本発明の電子写真感光体A(以下、「感光体A」とする)とした。なお、表2には表面層の光導電層との界面側での成膜条件と、自由表面側での成膜条件を示している。
図6に示したガス導入管55は、複数のガス導入口56の形成密度が、X領域(円筒状基体20の駆動伝達フランジを固定するインロー部24側)において密になっており、Y領域(円筒状基体20の軸受フランジを固定するインロー部25側を含む領域)において疎になっているものである。
また、比較例として、図11に示すガス導入管55′のみを用い、表1および表2に示す成膜条件により電荷注入阻止層、光導電層および表面層を積層形成することにより、電子写真感光体B(以下、「感光体B」とする)を作製した。
図11に示すガス導入管55′は、複数のガス導入口56′の形成密度が駆動伝達フランジ側であるインロー部24側と軸受フランジ側であるインロー部25側とで実質的に均一となっているものである。
(表面層の厚みの測定)
表面層の厚みは、感光体A,Bの両端部(それぞれ電子写真感光体A,Bにおける軸方向の端から40mmの位置)において光学式厚み計(商品名(型番):MC−850A、大塚電子株式会社製)にて測定した。表面層の厚みの測定結果については、表3に示した。表3において表面層の厚みは、周方向に沿った任意の5点につき表面層の厚み測定し、その5点の平均値として示した。
表3から分かるように、感光体Aは駆動伝達側における表面層の厚みが軸受側に比べて大きくなっており、感光体Bは駆動伝達側および軸受側における表面層の厚みが同程度となっていた。
(画像特性の評価)
画像特性は、感光体A,Bを電子写真プリンタ(京セラミタ製:KM−6030)に搭載して30万枚の耐刷を行い、そのときの画像キズおよび画像濃度ムラの発生状況を目視により確認することにより評価した。耐刷実験においては、初期、5000枚、10000枚、50000枚、100000枚、300000枚のそれぞれの耐刷時において、画像キズおよび画像濃度ムラの発生状況を確認した。
画像キズと画像濃度ムラの発生状況の評価結果については、表4に示した。表4においては、画像キズまたは画像濃度ムラの発生が認められない場合を○印で、画像キズまたは画像濃度ムラの発生がわずかに認められるが、実用上支障のない程度の場合を△印で、実用上支障がある程度に画像キズまたは画像濃度ムラの発生が認められた場合を×印で表した。
表4から分かるように、表面層における軸受フランジ側の厚みに比べて駆動伝達フランジ側の厚みが大きな感光体Aによれば、画像キズおよび画像濃度ムラの発生は認められず、300000枚の耐刷時においても、良好な画像品質の記録画像が得られた。
一方、表面層における駆動伝達フランジ側と軸受フランジ側との厚みが同じである感光体Bでは、50,000枚程度の耐刷で一方の端部(駆動伝達フランジ側)にて画像キズが認められ、1000000枚以上の耐刷において、実用上支障がある程度の画像キズが確認された。
この結果から、電子写真感光体は、表面層における駆動伝達フランジ側の厚みが軸受フランジ側の厚みよりも大きいほうが、画像キズが発生しにくく、画像特性に優れていることがわかる。
[実施例2]
本実施例では、電子写真感光体の表面層における駆動伝達フランジ側の厚みと、軸受フランジ側の厚みの比が画像特性に与える影響について検討した。
(電子写真感光体の作製)
電子写真感光体C,D,E,Fは、実施例1と同様、図11に示すガス導入管55′を用い、表1に示す成膜条件により円筒状基体20の表面に電荷注入阻止層および光導電層を積層形成した後、図6に示すガス導入管55を用いて、表2に示す成膜条件により光導電層上に表面層を積層形成することにより作製した。
ただし、表面層を形成するガス導入管55としては、X領域(図6参照)におけるガス導入口の形成密度が異なるものを用い、表面層における駆動伝達フランジ側の厚みの異なる複数の電子写真感光体C,D,E,Fを作製した。
(表面層の厚みの測定)
表面層の厚みは、実施例1と同様の箇所において同様の手法により測定した。表面層の厚みの測定結果については、実施例1で測定した感光体A,Bとともに表5に示した。
(画像特性の評価)
画像特性は、実施例1と同様に300000枚の耐刷試験により評価した。画像特性の評価結果については、実施例1で測定した感光体A,Bとともに表5に示した。
表5から分かるように、表面層における駆動伝達フランジ側の厚みが軸受フランジ側の1.03倍以上1.25倍以下である感光体C,D,A,Eは、実用上支障のある画像キズや画像濃度ムラが発生しなかった。これらの感光体C,D,A,Eでは、表面層における駆動伝達フランジ側と軸受フランジ側との厚み差は、0.03μm以上0.21μm以下であった。
一方、表面層における駆動伝達フランジ側の厚みが軸受フランジ側の1.27倍である感光体Fは、初期画像にて軸方向濃度ムラが発生した。また、表面層における駆動伝達フランジ側の厚みと軸受フランジ側の厚みが同程度である感光体Bは、300000枚耐刷後の画像において、表面層の駆動伝達フランジ側に実用上支障がある程度の画像キズが発生した。
したがって、電子写真感光体における表面層は、駆動伝達フランジ側の厚みを軸受フランジ側の厚みに比べて1.03倍以上1.25倍以下の範囲で大きく設定し、表面層における駆動伝達フランジ側と軸受フランジ側との厚みの差を0.03μm以上0.21μm以下に設定するのが好ましい。
[実施例3]
本実施例では、電子写真感光体の光導電層における両端部の厚みが画像特性に与える影響について検討した。
(電子写真感光体の作製)
電子写真感光体G(以下、「感光体G」とする)は、実施例1と同様、図11に示すガス導入管55′を用い、表1に示す成膜条件により円筒状基体20の表面に電荷注入阻止層を形成し、図6に示すガス導入管55を用いて、表1に示す成膜条件により電荷注入阻止層上に光導電層を積層形成した後、再度ガス導入管55′を用い、表2に示す成膜条件により光導電層上に表面層を積層形成することにより作製した。
ガス導入管55としては、図6に示したガス導入口56の形成密度が、X領域(円筒状基体20の駆動伝達フランジ側であるインロー部24側)が密になっており、Y領域(円筒状基体20の軸受フランジ側であるインロー部25を含む領域)が疎になっているもの用いた。
また、比較例として、図11に示すガス導入管55′を用い、表1および表2に示す成膜条件により電荷注入阻止層、光導電層および表面層を積層形成することにより、電子写真感光体H(以下、「感光体H」とする)を作製した。図11に示すガス導入管55′は、ガス導入口56′の形成密度が円筒状基体20の駆動伝達フランジ側であるインロー部24側と軸受フランジ側であるインロー部25側で実質的に均一となっているものである。
(光導電層の厚みの測定)
光導電層の厚みは、感光体G,Hの両端部(それぞれ感光G,Hの軸方向の端から35mmの位置)において光学式厚み計(商品名(型番):MC−850A、大塚電子株式会社製)にて測定した。光導電層の厚みの測定結果については、表6に示した。表6において光導電層の厚みは、周方向に沿った任意の5点につき光導電層の厚みを測定し、その5点の平均値として示した。
(画像特性の評価)
画像特性は、実施例1と同様に300000枚の耐刷試験により評価した。画像特性の評価結果については、表7に示した。なお、表7における画像特性の評価基準は、実施例1の場合と同様である。
表7からわかるように、光導電層における軸受フランジ側の厚みに比べて駆動伝達フランジ側の厚みが大きな感光体Gによれば、画像キズおよび画像濃度ムラの発生は認められず、300000枚の耐刷時において、良好な画像品質の記録画像が得られた。
一方、光導電層における駆動伝達フランジ側と軸受フランジ側との厚みが同じである感光体Hでは、50,000枚程度の耐刷で駆動伝達フランジ側にて画像キズが認められ、1000000枚以上の耐刷において、実用上支障がある程度の画像キズが確認された。
この結果から、電子写真感光体は、光導電層における駆動伝達フランジ側の厚みが軸受側フランジ側の厚みよりも大きいほうが、画像キズが発生しにくく、画像特性に優れていることがわかる。
[実施例4]
本実施例では、電子写真感光体の光導電層における駆動伝達フランジ側の厚みと、軸受フランジ側の厚みの比が画像特性に与える影響について検討した。
(電子写真感光体の作製)
電子写真感光体I,J,K,Lは、実施例3と同様、図11に示すガス導入管55′を用い、表1に示す成膜条件により円筒状基体20の表面に電荷注入阻止層を形成し、図6に示すガス導入管55を用いて、表1に示す成膜条件により電荷注入阻止層上に光導電層を積層形成した後、再度ガス導入管55′を用い、表2に示す成膜条件により光導電層上に表面層を積層形成することにより作製した。ただし、ガス導入管としては、X領域(図6参照)におけるガス導入口の形成密度が異なるものを用い、光導電層における駆動伝達フランジ側の厚みの異なる複数の電子写真感光体I,J,K,Lを作製した。
(光導電層の厚みの測定)
光導電層の厚みは、実施例3と同様の箇所において同様の手法により測定した。光導電層の厚みの測定結果については、実施例3で測定した感光体G,Hとともに表8に示した。
(画像特性の評価)
画像特性は、実施例1と同様に300000枚の耐刷試験により評価した。画像特性の評価結果については、実施例3で測定した感光体G,Hとともに表8に示した。
表8から分かるように、光導電層における駆動伝達フランジ側の厚みが軸受フランジ側の1.03倍以上1.25倍以下である感光体I,G,J,Kは、実用上支障がる画像キズや画像濃度ムラが発生しなかった。これらの感光体I〜Kでは、光導電層における駆動伝達フランジ側と軸受フランジ側との厚み差が1.0μm以上7.5μm以下であった。
一方、光導電層における駆動伝達フランジ側の厚みが軸受フランジ側の1.27倍である感光体Lは、初期画像にて軸方向濃度ムラが発生した。また、光導電層における駆動伝達フランジ側の厚みと軸受フランジ側の厚みが同程度である感光体Hは、300000枚耐刷後の画像において、光導電層の駆動伝達フランジ側に実用上支障がある程度の画像キズが発生した。
したがって、電子写真感光体における光導電層は、駆動伝達フランジ側の厚みを軸受フランジ側の厚みに比べて1.03倍以上1.25倍以下の範囲で大きく設定し、光導電層における駆動伝達フランジ側と軸受フランジ側との厚みの差を1.0μm以上7.5μm以下に設定するのが好ましい。
[実施例5]
本実施例では、電子写真感光体の感光層における両端部の動的押し込み硬さが画像特性に与える影響について検討した。
(電子写真感光体の作製)
電子写真感光体M(以下、「感光体M」とする)は、実施例1と同様、図11に示すガス導入管55′を用い、表1に示す成膜条件により円筒状基体20の表面に電荷注入阻止層および光導電層を積層形成した後、図6に示すガス導入管55を用いて、表2に示す成膜条件により光導電層上に表面層を積層形成することにより作製した。
ガス導入管55としては、図6に示したガス導入口56の形成密度が、X領域(円筒状基体20の駆動伝達フランジ側であるインロー部24側)が密になっており、Y領域(円筒状基体20の軸受フランジ側であるインロー部25を含む領域)が疎になっているもの用いた。
また、比較例として、図11に示すガス導入管55′を用い、表1および表2に示す成膜条件により電荷注入阻止層、光導電層および表面層を積層形成することにより、電子写真感光体N(以下、「感光体N」とする)を作製した。図11に示すガス導入管55′は、ガス導入口56′の形成密度が円筒状基体20の駆動伝達フランジ側であるインロー部24側と軸受フランジ側であるインロー部25側で実質的に均一となっているものである。
(感光層の動的押し込み硬さの測定)
感光層の動的押し込み硬さは、感光体M,Nの両端部(それぞれ感光M,Nの軸方向の端から40mmの位置)において超微小硬さ計(商品名(型番):DUH−201、株式会社島津製作所製)にて測定した。感光層の動的押し込み硬さの測定結果については、表9に示した。表9において感光層の動的押し込み硬さは、周方向に沿った任意の5点につき光導電層の厚みを測定し、その5点の平均値として示した。
(画像特性の評価)
画像特性は、実施例1と同様に300000枚の耐刷試験により評価した。画像特性の評価結果については、表10に示した。なお、表10における画像特性の評価基準は、実施例1の場合と同様である。
表10からわかるように、感光層における軸受フランジ側の動的押し込み硬さに比べて駆動伝達フランジ側の動的押し込み硬さが大きな感光体Mによれば、画像キズおよび画像濃度ムラの発生は認められず、300000枚の耐刷時において、良好な画像品質の記録画像が得られた。
一方、感光層における駆動伝達フランジ側と軸受フランジ側との動的押し込み硬さが略同じである感光体Nでは、50000枚程度の耐刷で駆動伝達フランジ側にて画像キズが認められ、100000枚以上の耐刷において、実用上支障がある程度の画像キズが確認された。
この結果から、電子写真感光体は、感光層における駆動伝達フランジ側の動的押し込み硬さが軸受側フランジ側の動的押し込み硬さよりも大きいほうが、画像キズが発生しにくく、画像特性に優れていることがわかる。
[実施例6]
本実施例では、電子写真感光体の感光層における駆動伝達フランジ側の厚みと、軸受フランジ側の厚みの比が画像特性に与える影響について検討した。
(電子写真感光体の作製)
電子写真感光体O,P,Q,Rは、実施例5と同様、図11に示すガス導入管55′を用い、表1に示す成膜条件により円筒状基体20の表面に電荷注入阻止層および光導電層を積層形成した後、図6に示すガス導入管55を用いて、表2に示す成膜条件により光導電層上に表面層を積層形成することにより作製した。
ただし、表面層を形成するガス導入管55としては、X領域(図6参照)におけるガス導入口の形成密度が異なるものを用い、表面層における駆動伝達フランジ側の厚みの異なる複数の電子写真感光体O,P,Q,Rを作製した。
(感光層の動的押し込み硬さの測定)
感光層の動的押し込み硬さは、実施例5と同様の箇所において同様の手法により測定した。感光層の動的押し込み硬さの測定結果については、実施例5で測定した感光体M,Nとともに表11に示した。
(画像特性の評価)
画像特性は、実施例5と同様に300000枚の耐刷試験により評価した。画像特性の評価結果については、実施例5で測定した感光体M,Nとともに表11に示した。
表11から分かるように、感光層における駆動伝達フランジ側の動的押し込み硬さが軸受フランジ側の1.03倍以上1.25倍以下である感光体P,M,Q,Rは、画像キズや画像濃度ムラが発生しなかった。これらの感光体P,M,Q,Rでは、感光層における駆動伝達フランジ側と軸受フランジ側との動的押し込み硬さの差は、25以上170以下であった。
一方、感光層における駆動伝達フランジ側の動的押し込み硬さが軸受フランジ側の1.27倍である感光体Oは、初期画像にて軸方向濃度ムラが発生した。また、感光層における駆動伝達フランジ側の動的押し込み硬さと軸受フランジ側の動的押し込み硬さが略同一(1.01倍)である感光体Nは、300000枚耐刷後の画像において、駆動伝達フランジ側に実用上支障がある程度の画像キズが発生した。
したがって、電子写真感光体における感光層は、駆動伝達フランジ側の動的押し込み硬さを軸受フランジ側の動的押し込み硬さに比べて1.03倍以上1.25倍以下の範囲で大きく設定するのが好ましい。