JPWO2009072542A1 - 低照度で開花可能なトランスジェニック植物 - Google Patents
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Abstract
本発明は、低照度で開花する顕花植物を作製する方法を提供する。具体的には、本発明は、低照度環境で開花するトランスジェニック植物、その作製方法、その植物の開花方法などに関する。より具体的には、FT遺伝子を導入することにより、低照度環境(例えば、屋内)において開花するようにしたトランスジェニック植物、その作製方法、その植物の開花方法などに関する。
Description
本発明は、低照度環境で開花するトランスジェニック植物、その作製方法、その植物の開花方法などに関する。より具体的には、FT遺伝子を導入することにより、低照度環境(例えば、屋内)において開花するようにしたトランスジェニック植物、その作製方法、その植物の開花方法などに関する。
近年、アラビドプシスを中心に、多くの遺伝子が開花調節に係わっていることがよく知られている。この開花調節において、アラビドプシス由来のFT遺伝子と呼ばれる遺伝子が主要な役割を果たし、この遺伝子由来のFTタンパク質の発現レベルが上昇すると開花が促進されることが報告されている(WO99/53070, Trends in Plant Science (2006) 11 550-558)。FT遺伝子およびこれに対応するイネ遺伝子Hd3aは葉でタンパク質に合成され、そのタンパク質が茎頂に移動し、そこで花芽分化を誘導することが知られている(Science 2007 316: 1033-1036)。FT遺伝子を構成的に発現させた組換え植物を作製すると、その植物の開花が促進される(Trends in Plant Science (2006) 11 550-558:非特許文献1)。たとえば、FT遺伝子を過剰発現したキクは、キクが通常開花しないような長日条件下での組織培養でも開花する(園芸学研究(2007)巻6、別冊1、214:非特許文献2)。
また、多くの植物がFT遺伝子に対応する遺伝子を持つ。FT遺伝子の異種相同体がトマト、ポプラ(Populus trichocarpa)から得られていて、それらはそれぞれSFT、PtFTと名づけられている。また、同遺伝子がミカン(Citrus unshiu)などからも得られている。これらの遺伝子を植物で構成的に過剰発現させると、アラビドプシス、イネ、カラタチ(Poncitrus trifoliate)などの開花が促進された報告がある(Plant Cell Physiol. (2002) 43, 1095-1105, Transgenic Research (2005) 14, 703-712:非特許文献3)。また、通常では柑橘類をはじめ果樹などの樹木は発芽から開花までに数年要するが、FT遺伝子の組換えオレンジは半年から一年で開花した(Transgenic Research (2005) 14, 703-712:非特許文献4)。
したがって、FT遺伝子およびそれに対応する他の植物種由来の遺伝子の機能は、種を超えて、開花促進という機能を発揮できると考えられる。さらに、FT遺伝子およびそれに相当する他の植物の遺伝子(本明細書中でFT遺伝子と称する)を利用すると、世代交代が促進され、品種改良に要する時間が短縮されることが期待されている(特開2000-139250:特許文献1)。すなわち、FT遺伝子を導入した植物を十分な照度と温度のある条件で栽培するれば、遺伝子を導入していない植物よりも開花が早くなることが期待される。あるいは組織培養により植物を維持すれば、開花が促進され、植物は通常よりも早期に開花することも予想できる。この理由として、組織培養の場合では、炭素・エネルギー源として糖を通常添加してあるため、植物は十分な光合成を行わなくても生育するためであることが予想される。
一方、植物が成長し、開花するためには、日照はきわめて重要である。晴天時の野外の照度は10万ルクス程度である。ペチュニアなどを温室で栽培する際には1万ルクス程度の照度を与える。それに対し、通常の室内(オフィス、家庭)は500ルクス程度であり、この条件で開花する観賞用植物としては、セントポーリアぐらいしか知られていない。
開花した鉢(シクラメン、ガーベラなど)を室内に置き、鑑賞されていることから、室内でも花を楽しみたいという需要は存在する。この需要を満たすために、一般には温室などで開花をさせておいた植物が室内での観賞用に販売されている。室内であっても十分な光と適切な日長を植物に与えれば植物は開花する。開花に必要な、照度と一日あたりの明期の時間は植物種や品種によって異なる。一般には、たとえば、蛍光灯などの人工照明で1000ルクス程度の光を与えれば多くの植物は開花することができる。しかしながら、十分な光のない条件、すなわち通常の室内(たとえば、照度200から600ルクス程度、好ましくは500ルクス程度、より好ましくは300ルクス程度)に、高照度で開花するような通常の花木植物を栽培した場合は、開花に至らないこと、あるいは開花しても植物の成長が阻害される、黄化する、枯死することが普通である。これは、光は植物が光合成するためには必要で、光合成が植物の成育に必須であるためである。
すなわち、低照度で開花する植物が求められているにもかかわらず、光は植物が生長するためには必須のエネルギー源であるため、通常は野外で栽培される植物が室内のような低照度の条件で植物が生長して開花するかどうかは、不明なままである。
特許出願公開第2000-139250号
Trends in Plant Science (2006) 11 550-558
園芸学研究(2007)巻6、別冊1、214
Plant Cell Physiol. (2002) 43, 1095-1105, Transgenic Research (2005) 14, 703-712
Transgenic Research (2005) 14, 703-712
上記のような状況において、低照度環境で開花するトランスジェニック植物、その作製方法などが求められている。
本発明者らは、FT遺伝子を顕花植物に導入して種々の実験を行った結果、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下に示す、FT遺伝子を顕花植物に導入する工程を含む、低照度環境で開花する形質転換体顕花植物の作製方法、そのような形質を特徴とする顕花植物、およびそのような顕花植物を備えるキットなどに関する。
(1) FT遺伝子を顕花植物に導入する工程を含む、低照度環境で開花するように形質転換したトランスジェニック植物の作製方法。
(2) 上記FT遺伝子が高発現するように、FT遺伝子を顕花植物に導入する工程を含む、上記(1)に記載の方法。
(3) 上記FT遺伝子が構成的に過剰発現するように、FT遺伝子を顕花植物に導入する工程を含む、上記(2)に記載の方法。
(4) 上記FT遺伝子が、アラビドプシス由来のものである、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の方法。
(5) 上記FT遺伝子が、開花促進機能を保持した改変体である、上記(4)に記載の方法。
(6) 上記FT遺伝子の構成的な発現が植物ウイルス由来のプロモーターにより誘導される、上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の方法。
(7) 上記顕花植物が、ゴマノハグサ科のトレニア、ナス科のペチュニア、ナス科のニーレンベルギア、クマツヅラ科バーベナ、バラ科バラ、またはナデシコ科カーネーション、である、上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の方法。
(8) 上記低照度環境は、同種の植物であってFT遺伝子が導入されていない植物では開花しない照明条件の栽培環境である、上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の方法。
(9) 上記低照度環境が、50〜1000ルクスの照度である、上記(8)に記載の方法。
(10) 上記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の方法で作製されたトランスジェニック植物。
(11) FT遺伝子が導入された組換え顕花植物を、同種の植物であってFT遺伝子が導入されていない非組換え顕花植物の場合と比較して、より低照度な栽培条件下で栽培する工程を含む、低照度環境での植物開花方法。
(12) 上記低照度環境は、同種の植物であってFT遺伝子が導入されていない植物では開花しない照明条件の栽培環境である、上記(11)に記載の方法。
(13) 上記低照度環境が、50〜1000ルクスの栽培環境である、上記(12)に記載の方法。
(14) 上記形質転換体植物を栽培する条件が組織培養条件または土壌栽培である、上記(11)〜(13)のいずれか1項に記載の方法。
(14a) 上記植物が少なくとも開花時までに商品価値を下げる変化を有しない、上記(1)〜(14)のいずれか1項に記載の方法。
(14b) 上記商品価値を下げる変化が、葉の色および/もしくは花の色における変化、黄化、または枯死である、上記(1)〜(14)のいずれか1項に記載の方法。
(14c) 上記植物が通常よりも草丈が短い状態で開花可能である、上記(1)〜(14)のいずれか1項に記載の方法。
(15) 上記顕花植物が、ゴマノハグサ科のトレニア、ナス科のペチュニア、ナス科のニーレンベルギア、クマツヅラ科バーベナ、バラ科バラ、またはナデシコ科カーネーションである、上記(11)〜(14)に記載の方法により作製されたトランスジェニック植物。
(16) FT遺伝子が導入されている形質転換体顕花植物を含む、低照度環境で開花可能なトランスジェニック植物キット。
(17) 上記形質転換体植物が種子または開花前の苗木の状態の植物を備える、上記(16)に記載のキット。
(1) FT遺伝子を顕花植物に導入する工程を含む、低照度環境で開花するように形質転換したトランスジェニック植物の作製方法。
(2) 上記FT遺伝子が高発現するように、FT遺伝子を顕花植物に導入する工程を含む、上記(1)に記載の方法。
(3) 上記FT遺伝子が構成的に過剰発現するように、FT遺伝子を顕花植物に導入する工程を含む、上記(2)に記載の方法。
(4) 上記FT遺伝子が、アラビドプシス由来のものである、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の方法。
(5) 上記FT遺伝子が、開花促進機能を保持した改変体である、上記(4)に記載の方法。
(6) 上記FT遺伝子の構成的な発現が植物ウイルス由来のプロモーターにより誘導される、上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の方法。
(7) 上記顕花植物が、ゴマノハグサ科のトレニア、ナス科のペチュニア、ナス科のニーレンベルギア、クマツヅラ科バーベナ、バラ科バラ、またはナデシコ科カーネーション、である、上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の方法。
(8) 上記低照度環境は、同種の植物であってFT遺伝子が導入されていない植物では開花しない照明条件の栽培環境である、上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の方法。
(9) 上記低照度環境が、50〜1000ルクスの照度である、上記(8)に記載の方法。
(10) 上記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の方法で作製されたトランスジェニック植物。
(11) FT遺伝子が導入された組換え顕花植物を、同種の植物であってFT遺伝子が導入されていない非組換え顕花植物の場合と比較して、より低照度な栽培条件下で栽培する工程を含む、低照度環境での植物開花方法。
(12) 上記低照度環境は、同種の植物であってFT遺伝子が導入されていない植物では開花しない照明条件の栽培環境である、上記(11)に記載の方法。
(13) 上記低照度環境が、50〜1000ルクスの栽培環境である、上記(12)に記載の方法。
(14) 上記形質転換体植物を栽培する条件が組織培養条件または土壌栽培である、上記(11)〜(13)のいずれか1項に記載の方法。
(14a) 上記植物が少なくとも開花時までに商品価値を下げる変化を有しない、上記(1)〜(14)のいずれか1項に記載の方法。
(14b) 上記商品価値を下げる変化が、葉の色および/もしくは花の色における変化、黄化、または枯死である、上記(1)〜(14)のいずれか1項に記載の方法。
(14c) 上記植物が通常よりも草丈が短い状態で開花可能である、上記(1)〜(14)のいずれか1項に記載の方法。
(15) 上記顕花植物が、ゴマノハグサ科のトレニア、ナス科のペチュニア、ナス科のニーレンベルギア、クマツヅラ科バーベナ、バラ科バラ、またはナデシコ科カーネーションである、上記(11)〜(14)に記載の方法により作製されたトランスジェニック植物。
(16) FT遺伝子が導入されている形質転換体顕花植物を含む、低照度環境で開花可能なトランスジェニック植物キット。
(17) 上記形質転換体植物が種子または開花前の苗木の状態の植物を備える、上記(16)に記載のキット。
本発明によれば、通常は室内程度の低照度では開花不能な植物を、FT遺伝子を導入することにより、低照度環境においても開花させることができる。このような低照度で開花可能な植物は屋内での栽培が容易なため、栽培業者が栽培する場合はもとより、一般消費者が屋内で栽培する場合にも容易に開花させることができる。
また、FT遺伝子を構成的に発現させることにより、低照度環境において顕花植物を通常よりも短期間で開花させることも可能になる。
さらに、本発明の方法によれば、低照度環境で顕花植物を栽培・開花させることができるので、エネルギーの消費量を顕著に減ずることができるというメリットもある。
さらに、本発明の方法によれば、低照度環境で顕花植物を栽培・開花させることができるので、エネルギーの消費量を顕著に減ずることができるというメリットもある。
配列番号1:Arabidopsis thaliana FT遺伝子配列およびタンパク質配列
配列番号2:Arabidopsis thaliana FTタンパク質配列
配列番号3:プライマー
配列番号4:プライマー
配列番号2:Arabidopsis thaliana FTタンパク質配列
配列番号3:プライマー
配列番号4:プライマー
以下に、本発明で使用するFT遺伝子、それがコードするポリペプチド、FT遺伝子を発現させるためのベクター、形質転換体の作製、形質転換体の植物体への組織培養、栽培などについて詳細に説明する。
1.本発明のトランスジェニック植物及びその作製方法
1.1本発明で使用するFT遺伝子
まず、本発明は、FT遺伝子を顕花植物に導入する工程を含む、低照度環境で開花する形質転換体顕花植物の作製方法を提供する。この方法において、好ましくは、上記FT遺伝子は高発現するように顕花植物に導入される。さらに好ましくは、上記FT遺伝子は構成的に過剰発現するように顕花植物に導入される。
1.1本発明で使用するFT遺伝子
まず、本発明は、FT遺伝子を顕花植物に導入する工程を含む、低照度環境で開花する形質転換体顕花植物の作製方法を提供する。この方法において、好ましくは、上記FT遺伝子は高発現するように顕花植物に導入される。さらに好ましくは、上記FT遺伝子は構成的に過剰発現するように顕花植物に導入される。
本明細書中で使用される場合、「FT遺伝子」はアラビドプシス(シロイヌナズナ)由来のFTタンパク質(配列番号:2)をコードする遺伝子(配列番号:1、Genbank受託番号AB027504)に限定されず、FTタンパク質の開花促進活性を示す、FTと同じファミリーに属する異種相同蛋白質の遺伝子でもよい。FTと同じファミリーに属するタンパク質は多くの植物において見出されており、ファミリー内全体で高度に保存されている。FTと同じファミリーのタンパク質としては、シロイヌナズナのFTタンパク質、TSFタンパク質、MFTタンパク質、温州ミカンCiFTタンパク質、イネのHd3aタンパク質、RFT1タンパク質、AL662946タンパク質、AP003079タンパク質、AP002882タンパク質などが挙げられる。ここで、AL662946タンパク質、AP003079タンパク質およびAp002882タンパク質のナンバーはイネ由来ESTの登録ナンバーである。
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。本明細書中で使用される場合、用語「塩基配列」は、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」と交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびTと省略される)の配列として示される。また、「配列番号1の塩基配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメント」とは、配列番号1の各デオキシヌクレオチドA、G、Cおよび/またはTによって示される配列を含むポリヌクレオチドまたはその断片部分が意図される。
本発明に係るポリヌクレオチドは、RNA(例えば、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)で存在し得る。DNAは、二本鎖または一本鎖であり得る。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)であり得るか、またはそれは、非コード鎖(アンチセンス鎖としても知られる)であり得る。
本発明に係るポリヌクレオチドを取得するための供給源としては、特に限定されないが、FT遺伝子またはその異種相同体を含む生物材料であることが好ましい。本明細書中で使用される場合、用語「生物材料」は、生物学的サンプル(生物体から得られた組織サンプルまたは細胞サンプル)が意図される。下述する実施例においては、生物体としてペチュニア、トレニア、ニーレンベルギアを用いているが、これらに限定されない。
一実施形態において、本発明に係るポリヌクレオチドは、FTタンパク質活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列において1または複数個の塩基が欠失、挿入、置換、または付加された変異体であってもよい。変異体は、コードもしくは非コード領域、またはその両方において変異され得る。コード領域における変異は、保存的または非保存的なアミノ酸の欠失、挿入、置換および/または付加を生成し得る。本明細書中で使用される場合、配列番号:2のアミノ酸配列をコードする遺伝子、または当該アミノ酸配列において1もしくは複数個(例えば、1〜40個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個など)または1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列をコードする遺伝子もまた、「FT遺伝子」に包含される。
ポリペプチドのアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸が、このポリペプチドの構造または機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけではく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造または機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。
当業者は、周知技術を使用してポリペプチドのアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸を容易に改変させることができる。例えば、公知の点変異導入法に従えば、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の塩基を改変させることができる。また、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の部位に対応するプライマーを設計して欠失変異体または付加変異体を作製することができる。さらに、本明細書中に記載される方法を用いれば、作製した改変体が所望の活性を有するか否かを容易に決定し得る。
好ましい改変体は、保存性もしくは非保存性アミノ酸置換、欠失、または添加を有する。好ましくは、サイレント置換、添加、および欠失であり、特に好ましくは、保存性置換である。これらは、本発明に係るポリペプチド活性を変化させない。
代表的に保存性置換と見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleの中での1つのアミノ酸の別のアミノ酸への置換;ヒドロキシル残基SerおよびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGlnの間の置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基Phe、Tyrの間の置換である。
上記に詳細に示されるように、どのアミノ酸の変化が表現型的にサイレントでありそうか(すなわち、機能に対して有意に有害な効果を有しそうにないか)に関するさらなるガイダンスは、Bowie, J.U.ら「Deciphering the Message in Protein Sequences: Tolerance to Amino Acid Substitutions」,Science 247:1306-1310(1990)(本明細書中に参考として援用される)に見出され得る。
上記に挙げられる本発明に係るポリヌクレオチドを使用すれば、形質転換体または細胞においてFTタンパク質の機能を有するポリペプチドを合成することができる。
1.2 発現ベクター
本明細書において、FT遺伝子が高発現するように、FT遺伝子を顕花植物に導入する工程を含む方法が提供される。また、FT遺伝子が構成的に過剰発現するように、FT遺伝子を顕花植物に導入する工程を含む方法が提供される。
本明細書において、FT遺伝子が高発現するように、FT遺伝子を顕花植物に導入する工程を含む方法が提供される。また、FT遺伝子が構成的に過剰発現するように、FT遺伝子を顕花植物に導入する工程を含む方法が提供される。
本明細書中、「高発現」とは、発現可能に組み込まれた遺伝子が、本来よりも強く発現誘導を受ける場合、または細胞内でより長時間蓄積する場合を原因として、細胞当たりでより強く機能することをいう。この原因は上記に限定されない。「構成的に過剰発現する」とは、遺伝子発現などが外部刺激や生育条件などに依存せずにほぼ一定量に過剰発現することをいう。「発現可能に組み込まれた」遺伝子とは、導入された細胞内で発現可能であるようにベクターに組み込まれている遺伝子のことをいう。「(ベクターに)発現可能に組み込まれた遺伝子」は、該遺伝子の発現を制御する適切なプロモーターのような発現制御因子を、該ベクター中の該遺伝子の発現を制御可能な位置(例えば、該遺伝子の上流)に配置することなどによって実現され得る。
本明細書中で使用される場合、「植物で発現可能に組み込まれたFT遺伝子構築物」とは、公知の遺伝子導入法によって植物へ導入し得る形態(例えば、プラスミドベクター)にFT遺伝子が挿入された構築物をいい、FT遺伝子によってコードされるFTタンパク質を発現し得る構築物を意図する。植物に導入可能な形態であるFT遺伝子構築物としては、例えば、FTタンパク質のcDNAが挿入された組換え発現ベクターなどが挙げられる。組換え発現ベクターの作製方法としては、当業者に公知の方法により、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどを用いる方法が挙げられるが、特に限定されない。
ベクターの具体的な種類は特に限定されず、宿主細胞中で発現可能なベクターが適宜選択され得る。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実にFTタンパク質を発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これとFT遺伝子を各種プラスミド等に組み込んだベクターを発現ベクターとして用いればよい。
ベクターは、少なくとも1つの選択マーカーを含むことが好ましい。このようなマーカーとしては、植物細胞の培養についてはカナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子またはバスタ耐性遺伝子、ならびにE.coliおよび他の細菌における培養についてはテトラサイクリン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子またはカナマイシン耐性遺伝子、ブレオマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子等が挙げられる。これにより、上記抗生物質を含む培地中で 生育する植物体を選択することによって、形質転換された植物体および細菌を容易に選別することができる。
プラスミドの発現プロモーターは、構成的に発現誘導を行うものであっても、外部より制御可能な誘導型プロモーターであってもよい。本発明において使用される、構成的に発現誘導を行うプロモーターとしては、好ましくは、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(CaMV35S)、アクチンプロモーター、ノパリン合成酵素のプロモーター、タバコのPR1a遺伝子プロモーター、トマトのリブロース1,5−二リン酸カルボキシラーゼ・オキシダーゼ小サブユニットプロモーターなどを挙げることができる。この中でも、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター又はアクチンプロモーターをより好ましく用いることができる。上記各プロモーターを用いれば、得られる組換え発現ベクターでは、植物細胞内に導入されたときに任意の遺伝子を強く発現させることが可能となる。また、外部より制御可能なプロモーターとしては、メタロチオネインプロモーター、熱ショックプロモーターなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において、誘導型プロモーターは、DNA結合ドメインを特異的に結合すると、転写活性化ドメインの作用を受けて、その制御下にある構造遺伝子の転写を活性化する。本発明において、誘導型プロモーターは、上記DNA結合ドメインをコードするDNA配列として使用する配列に依存して適切なものが適宜選択され得る。例えば、DNA結合ドメインをコードするDNA配列としてマウスAhRのDNA結合ドメイン(アミノ酸1〜82)をコードするDNA配列を使用する場合には、大腸菌由来の6×XRE配列(6つのマウスXRE配列をタンデムに連結した配列)を使用することが好ましく、また、DNA結合ドメインをコードするDNA配列として大腸菌のリプレッサーLexAのDNA結合ドメインをコードするDNA配列を使用する場合には、8×LexA−46−P配列(カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターのオペレーター領域(転写開始点から46塩基上流)にLexA結合配列を8回繰り返したもの)を使用することが好ましい。
好ましい態様において、本発明のベクターは、さらに1つ以上の所望の遺伝子を含んでいてもよい。そのような遺伝子としては、例えば、薬剤耐性遺伝子(例えば、NPTII(ネオマイシンフォスフォトランスフェラーゼII)などが挙げられる。これらの遺伝子は、好ましくは、適切なプロモーター(例えば、ノパリンシンターゼプロモーター、Macプロモーター)の制御下に配置される。
本発明のベクターは、通常、それらを導入すべき宿主の種類などに依存した適切なプロモーターおよびターミネーター等の発現制御領域および複製起点等を含有する。例えば、遺伝子を植物細胞内で発現させるためには、(1)植物細胞内で機能可能なプロモーター、(2)遺伝子、および(3)植物細胞内で機能可能なターミネーターを機能可能な形で有するDNA分子(発現カセット)を作製し、植物細胞に導入する。このようなDNA分子は、プロモーターに加え、転写をさらに増強するためのDNA配列、例えば、エンハンサー配列を含んでいてもよい。用いられるプロモーターとしては、植物細胞内で機能するものであれば特に制限はないが、例えば、35S(Shcell,J.S.,1987,Science,237:1176−1183)、Nos(Schell,J.S.,1987,Science,237:1176−1183)、rbcS(Benefy,P.N.およびN−H.Chua,1989,Science,244:174−181)、PR1a(Ohshima,M.ら、1990、Plant Cell,2:95−106)、ADH(Benefy,P.N.およびN−H.Chua,1989,Science,244:174−181)、patatin(Benefy,P.N.およびN−H.Chua,1989,Science,244:174−181)、Cab(Benefy,P.N.およびN−H.Chua,1989,Science,244:174−181)、)、およびPAL(Lian,X.ら、1989、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:9284−9288)等が挙げられる。
ターミネーターは転写終結部位としての機能を有していれば特に限定されるものではなく、公知のものであってもよい。例えば、具体的には、ノパリン合成酵素遺伝子の転写終結領域(Nosターミネーター)、カリフラワーモザイクウイルス35Sの転写終結領域(CaMV35Sターミネーター)等を好ましく用いることができる。この中でもNosターミネーターをより好ましく用いることできる。
翻訳効率を高めるための塩基配列としては、例えばタバコモザイクウイルス由来のomega配列を挙げることができる。このomega配列をプロモーターの非翻訳領域(5’UTR)に配置させることによって、目的の遺伝子の翻訳効率を高めることができる。このように、上記形質転換ベクターには、その目的に応じてさまざまなDNAセグメントを含むことができる。
上記組換え発現ベクターの構築方法についても特に限定されるものではなく、適宜選択された母体となるベクターに、上記プロモーター、転写因子をコードする遺伝子、及び転写抑制転換ポリヌクレオチド、並びに必要に応じて上記他のDNAセグメントを所定の順序となるように導入すればよい。例えば、転写因子をコードする遺伝子と転写抑制転換ポリヌクレオチドとを連結してキメラ遺伝子を構築し、次に、このキメラ遺伝子とプロモーターと(必要に応じてターミネーター等)とを連結して発現カセットを構築し、これをベクターに導入することができる。
キメラ遺伝子の構築及び発現カセットの構築では、例えば、各DNAセグメントの切断部位を互いに相補的な突出末端としておき、ライゲーション酵素で反応さ せることで、当該DNAセグメントの順序を規定することが可能となる。なお、発現カセットにターミネーターが含まれる場合には、上流から、プロモーター、上記キメラ遺伝子、ターミネーターの順となっていればよい。また、組換え発現ベクターを構築するための試薬類、すなわち制限酵素やライゲーション酵素等の 種類についても特に限定されるものではなく、市販のものを適宜選択して用いればよい。
1.3 トランスジェニック植物の作製
本発明において、上記のように形質転換した顕花植物が提供される。
本発明において、上記のように形質転換した顕花植物が提供される。
本明細書中で使用される場合、用語「顕花植物」とは、花を咲かせる植物全般を指すが、好ましくは観賞用の園芸植物、より好ましくは観賞用の花卉植物を意味する。これは、被子植物であっても裸子植物であってもよい。
本明細書において、「トランスジェニック植物」とは、「形質転換した植物」と交換可能に使用される。
公知の遺伝子導入法としては、例えば、アグロバクテリウム法、バーティクルガン法、ウィルスベクター法、エレクトロポレーション法、ポリエチレングリコール法、マイクロインジェクション法、リポソーム法などが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、導入する植物の種類に応じて好ましい遺伝子導入法を選択し得る。
上記のようなベクターの構築は、公知の制限酵素等を用いて、常法に従って行い得る。例えば、アグロバクテリウムを用いる場合には、pBI121などのバイナリーベクターを、パーティクルガンを用いる場合には、pUC19などの大腸菌ベクターを用いることができる。さらに、当該ベクターで形質転換された植物細胞を、例えば、抗生物質耐性遺伝子などのマーカー遺伝子を用いて選抜し、適切な植物ホルモン等の条件を用いて再分化させ、目的の遺伝子で形質転換された植物体を得ることができる。
植物細胞へのベクターの導入は、当業者に周知の種々の方法を用いて行うことができる。例えば、アグロバクテリウム・ツメファシエンスやアグロバクテリウム・リゾゲネスを利用した間接導入法(Heiei,Y.ら、Plant J.,6,271−282,1994、Takaiwa,F.ら、Plant Sci.111,39−49,1995)や、エレクトロポレーション法(Tada,Y.ら、Theor.Appl.Genet,80,475,1990)、ポリエチレングリコール法(Datta,S.K.ら、Plant Mol Biol.,20,619−629,1992)、パーティクルガン法(Christou,P.ら、Plant J.2,275−281,1992、Fromm,M.E.,Bio/Technology,8,833−839,1990)などに代表される直接導入法を用いることが可能である。本発明において遺伝子導入を行う植物細胞としては、植物体に再生可能であれば特に制限がなく、例えば、懸濁培養細胞、カルス、プロトプラスト、葉の切片などを構成する細胞などが含まれる。
形質転換された植物細胞は、再生させることにより植物体を作出することができる。
Ueyamaら、Plant Biotechnology 23 19-24, 2006、Tamuraら、Plant Cell Reports, 21, 459-466, 2002、Aidaら、Biotechnology in Agriculture and Forestry, Vol 48,294- Transgenic Crops III (ed. By Y.P.S. Bajaj) Springer-Verlag Berlin Heidelberg 2001、Horshらの方法(Science. 1985;227:1229-1231)、間らの方法(Biotechnology in Agriculture and Forestry,Vol48, Transgenic Crops III, Springer-Verlag Berlin Heidelberg 2001)などの文献を参照のこと。
Ueyamaら、Plant Biotechnology 23 19-24, 2006、Tamuraら、Plant Cell Reports, 21, 459-466, 2002、Aidaら、Biotechnology in Agriculture and Forestry, Vol 48,294- Transgenic Crops III (ed. By Y.P.S. Bajaj) Springer-Verlag Berlin Heidelberg 2001、Horshらの方法(Science. 1985;227:1229-1231)、間らの方法(Biotechnology in Agriculture and Forestry,Vol48, Transgenic Crops III, Springer-Verlag Berlin Heidelberg 2001)などの文献を参照のこと。
本発明は、上記のような方法で作製したトランスジェニック植物を提供する。上記のような本発明の方法で形質転換するのに好ましい植物種としては、顕花植物種が挙げられる。さらに形質転換体の取得が可能な植物種であれば、なお好ましい。このような植物種としては、例えば、ペチュニア、トレニア、バーベナ、タバコ、バラ、キク、カーネーション、金魚草、シクラメン、ラン、ドルコギキョウ、フリージア、ガーベラ、グラジオラス、カスミソウ、カランコエ、ユリ、ペラルゴニウム、ゼラニウム、チューリップ、マリーゴールド、ニーレンベルギア、アサガオなどが挙げられる。例えば、Chandlerら、In Vitro Cellular and Developmental Biology Plant、41, 591-601, 2005、Tanakaら、Genetic engineering in floriculture, Plant Cell, Tissue and Organ Culture 80, 1-24, 2005を参照のこと。
本発明に係るトランスジェニック植物は、FT遺伝子を導入することにより、照射量が1000ルクス(好ましくは100ルクス以下のような屋内の低照度条件)を超えない栽培環境で開花できるようにしたトランスジェニック植物である。
本発明のベクターを植物体に導入および発現することにより、改変された植物体に加えて、その繁殖材料(例えば、種子、後代、切花、塊根、塊茎、果実、切穂など)から得た植物体もまた、本発明の技術的範囲に含まれる。
さらに、本発明にかかる植物体の生産方法では、上記遺伝子を植物体に導入するため、該植物体から、有性生殖又は無性生殖により単に含量が低減された子孫を得ることが可能となる。また、該植物体やその子孫から植物細胞や、種子、果実、株、カルス、塊茎、切穂、塊等の繁殖材料を得て、これらを基に該植物体を量産することも可能となる。したがって、本発明にかかる植物体の作製方法には、選抜後の植物体を繁殖させる繁殖工程(量産工程)が含まれていてもよい。
なお、本発明における植物体とは、成育した植物個体、植物細胞、植物組織、カルス、種子の少なくとも何れかが含まれる。つまり、本発明では、最終的に植物個体まで成育させることができる状態のものであれば、全て植物体と見なす。また、上記植物細胞には、種々の形態の植物細胞が含まれる。かかる植物細胞としては、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片等が含まれる。これらの植物細胞を増殖・分化させることにより植物体を得ることができる。なお、植物細胞からの植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて、従来公知の方法を用いて行なうことができる。したがって、本発明にかかる植物体の生産方法では、植物細胞から植物体を再生させる再生工程が含まれていてもよい。
2.本発明のトランスジェニック植物の開花方法
次に、本発明は、FT遺伝子が導入された組換え顕花植物を、同種の植物であってFT遺伝子が導入されていない非組換え顕花植物の場合と比較して、より低照度な栽培条件下で栽培する工程を含む、低照度環境での植物開花方法にも関する。
次に、本発明は、FT遺伝子が導入された組換え顕花植物を、同種の植物であってFT遺伝子が導入されていない非組換え顕花植物の場合と比較して、より低照度な栽培条件下で栽培する工程を含む、低照度環境での植物開花方法にも関する。
ここでいう、「低照度環境」とは、具体的には、同種の植物であってFT遺伝子が導入されていない植物では開花しない照明条件の栽培環境を意味する。例えば、開花するまでの全照明量として、同種の植物であってFT遺伝子が導入されていない非組換え顕花植物の場合と比較して、例えば、10〜70%少ない照明量、10〜50%少ない照明量、10〜40%少ない照明量、10〜30%少ない照明量などが例示される。ここで、「開花するまでの全照明量として、同種の植物であってFT遺伝子が導入されていない非組換え顕花植物の場合と比較して10%少ない照明量」とは、例えば、その非組換え顕花植物が開花するのに、平均、10,000ルクス(明期10時間)で10日間必要であった場合(10,000 x 10 x 10 = 1,000,000ルクス・時間)に対して、組換え体では9,000ルクス(明期10時間)で10日間の照明量(9,000 x 10 x 10 = 900,000ルクス・時間)で足りることを意味する。
より具体的には、本発明の好ましい態様によれば、通常屋外でしか開花しない観賞用顕花植物を、屋内のような暗い照明条件下でも開花させることができる。
そのような低照度環境は、植物の種類、導入するFT遺伝子の種類、使用するプロモータ、ベクターなどの種類、温度などの栽培条件などの種類によっても異なるが、一般的には、次のような条件である。
組織培養条件または通常の土壌栽培条件における日照条件としては、例えば、10〜35℃の温度において、50〜1000ルクスの明期10〜18時間、より好ましくは、100〜500ルクスの明期10〜18時間の栽培環境が挙げられる。
なお、好ましい栽培・照明条件は、個々の顕花植物によって異なるが、トレニア、ペチュナイ、二ーレンベルギアは長日植物であるため同様の条件を使用することが可能でありで、その条件は次のとおりである。
たとえば3g/l ゲランガム(Gellan Gum, 関東化学)、30g/l ショ糖、4.4g/l ビタミン入りムラシゲスクーグ基本培地(Murashige and Skoog Basal Medium containing vitamins, Duchefa Biochemie社)を含む培地を入れた容器中に植物体を入れ、1000ルクス程度(例えば100〜1200ルクス、好ましくは200〜1000ルクス)の照度(蛍光灯を使用、16時間明期8時間暗期)の下、約22度で栽培することにより組織培養を行うことができる。
また、一般的な園芸用の土壌に植物を植え、屋外で栽培することもできる。屋外の場合は最低気温が10から15度以上、最高気温が35度以下、日照時間が10から12時間以上あることがのぞましい。室内での栽培には、土壌よりも、人工的な培土である、エコパフ、ハイドロボール、スーパーソルなどが消費者には好まれる傾向があるが、園芸用の土壌であってもよい。本発明において「土壌栽培」とは、天然の土壌または人工的な土壌を用いた栽培を意味する。土壌栽培は、例えば、露地栽培、温室栽培、ビニールハウス栽培などの培養形態を含む。
本発明において使用される栽培条件は、上記に限定されるものではない。
3.低照度環境で開花可能なトランスジェニック植物キット
さらに、本発明は、FT遺伝子が導入されているトランスジェニック顕花植物を含む、低照度環境で開花可能なトランスジェニック植物キットをも提供する。このトランスジェニック植物キットは、上記トランスジェニック植物が種子または開花前の苗木の状態のものを含む。
さらに、本発明は、FT遺伝子が導入されているトランスジェニック顕花植物を含む、低照度環境で開花可能なトランスジェニック植物キットをも提供する。このトランスジェニック植物キットは、上記トランスジェニック植物が種子または開花前の苗木の状態のものを含む。
本発明に係る植物キットに適用する植物としては、観賞用の顕花植物が好ましい。本発明に用いられ得る顕花植物としては、形質転換技術が適用され得るものであれば何でもよく、当業者は、形質転換技術を容易に適用し得る観賞用顕花植物を容易に選択し得る。好ましくは、本発明の形質転換した顕花植物は、育種として安定な形質を子孫にわたって維持する植物である。
本発明に係るキットは、好ましくは、本発明の形質転換した顕花植物を栽培する場合の適切な条件を記載した説明書、栽培に使用する肥料などを備えることが好ましい。特に好ましい照度条件としては、屋内の照明で十分な程度の照度である。
本発明に係る植物キットを用いれば、一般消費者が自宅、オフィスなどで栽培し、低照度の環境下で容易に開花させることができる。
本明細書中に列挙した全ての文書は、本明細書中で参考として援用される。本発明は、特定の好ましい実施形態を参照して記載されているが、本発明の本質から逸脱することなく改変が可能であることが理解されるべきである。このような改変は、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
以下の実施例において、分子生物学的手法は特に断らない限り、WO96/25500あるいはMolecular Cloning(Sambrook et al. (1989) Cold Spring Harbour Laboratory Press)に記載されている方法に従った。
実施例1: 発現ベクターの構築
WO99/53070に記載されているFT遺伝子に基づき、2種のプライマー:
FT-F 5’-CCTCTAGAATGTCTATAAATATAAGAGACCC-3’(配列番号:3),
FT-R 5’-CTCTGAGCTAAAGTCTTCTTCCTCCGC- 3’(配列番号:4)
を合成した。長日条件で栽培したアラビプシスからmRNAを得、それを鋳型として、上記2種のプライマーを用いてRT-PCRにより、FT cDNAを合成した。RT-PCRは、KOD-Taq (東洋紡)を使用し、製造者が推奨する条件で行った。合成したcDNAをXbaI消化した。一方、p35S-GFP Plant Vector(CLONTECH)をBamHIとSacIで消化後、ブランティングキット(タカラバイオ)を用いて平滑末端化した後、セルフライゲーションを行った。得られたプラスミドをXbaIで消化後、上記のXbaI消化後のFT cDNA を挿入した。FT cDNA の開始コドンがp35S-GFP のカリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーターに近接した向きに挿入されたものを選択した。このプラスミドをHindIIIとEcoRIで消化したDNA断片のうちカリフラワーモザイクウィルス35SプロモーターとFT遺伝子とノパリンシンターゼターミネーターを含むDNA断片を、HindIIIとEcoRIで消化したpBinPlus(Trangenic Research, 1995, 4, 288-290)に導入した。得られたプラスミドをpSPB3137とした。pSPB3137において、FTcDNAはカリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーターに制御され、植物においては構成的に発現することが期待される。
WO99/53070に記載されているFT遺伝子に基づき、2種のプライマー:
FT-F 5’-CCTCTAGAATGTCTATAAATATAAGAGACCC-3’(配列番号:3),
FT-R 5’-CTCTGAGCTAAAGTCTTCTTCCTCCGC- 3’(配列番号:4)
を合成した。長日条件で栽培したアラビプシスからmRNAを得、それを鋳型として、上記2種のプライマーを用いてRT-PCRにより、FT cDNAを合成した。RT-PCRは、KOD-Taq (東洋紡)を使用し、製造者が推奨する条件で行った。合成したcDNAをXbaI消化した。一方、p35S-GFP Plant Vector(CLONTECH)をBamHIとSacIで消化後、ブランティングキット(タカラバイオ)を用いて平滑末端化した後、セルフライゲーションを行った。得られたプラスミドをXbaIで消化後、上記のXbaI消化後のFT cDNA を挿入した。FT cDNA の開始コドンがp35S-GFP のカリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーターに近接した向きに挿入されたものを選択した。このプラスミドをHindIIIとEcoRIで消化したDNA断片のうちカリフラワーモザイクウィルス35SプロモーターとFT遺伝子とノパリンシンターゼターミネーターを含むDNA断片を、HindIIIとEcoRIで消化したpBinPlus(Trangenic Research, 1995, 4, 288-290)に導入した。得られたプラスミドをpSPB3137とした。pSPB3137において、FTcDNAはカリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーターに制御され、植物においては構成的に発現することが期待される。
実施例2: 組換えペチュニアの作出と評価
形質転換の方法は、Horshらの方法(Science. 1985;227:1229-1231)に依った。すわなち、ペチュニア(Petunia hybrida)品種サフィニアパープルミニ(サントリーフラワーズ株式会社)に、葉片を用いるアグロバクテリウム法により、実施例1で構築したバイナリーベクターのT-DNA部分を導入した。形質転換細胞をカナマイシンで選抜した後、再分化させることにより、組換えペチュニアを取得した。組換えペチュニアの中には、照度5000ルクス(明期16時間、暗期8時間)、温度23度で、in vitroで栽培した際に、開花をする個体があったが、遺伝子を導入していないペチュニアや他の遺伝子を導入した組換えペチュニアは同じ条件では開花しなかった。
形質転換の方法は、Horshらの方法(Science. 1985;227:1229-1231)に依った。すわなち、ペチュニア(Petunia hybrida)品種サフィニアパープルミニ(サントリーフラワーズ株式会社)に、葉片を用いるアグロバクテリウム法により、実施例1で構築したバイナリーベクターのT-DNA部分を導入した。形質転換細胞をカナマイシンで選抜した後、再分化させることにより、組換えペチュニアを取得した。組換えペチュニアの中には、照度5000ルクス(明期16時間、暗期8時間)、温度23度で、in vitroで栽培した際に、開花をする個体があったが、遺伝子を導入していないペチュニアや他の遺伝子を導入した組換えペチュニアは同じ条件では開花しなかった。
FT遺伝子を導入した形質転換ペチュニアをBM1(ピートモス):赤玉土:パーライト=2:2:1の混合物を入れた直径10cmのビニールポットに植えて、閉鎖系温室で栽培した。各形質転換ペチュニアの葉からRNAを抽出し、RT-PCR法によりFT転写物の有無を調べ、FT遺伝子を転写している系統を選抜した。FT mRNAを検出するために使用したプライマーは実施例と同じである。FT mRNAが検出された系統から差し穂を4本づつ取り、BM1(ピートモス):赤玉土:パーライト=2:2:1の混合物に挿し芽を行った。閉鎖系温室で栽培を継続したところ、FTを導入した形質転換ペチュニアは25日から48日で開花したのに対し、導入していない非形質転換ペチュニアは64日から79日後に開花した。
以上の結果は、FT遺伝子の過剰発現により、ペチュニアの開花を組織培養条件でも通常の土壌栽培でも、促進できることを示している。
実施例3: 組換えトレニアの作出と評価
トレニアの形質転換の方法は、間らの方法(Biotechnology in Agriculture and Forestry,Vol48, Transgenic Crops III, Springer-Verlag Berlin Heidelberg 2001)に従った。すわなち、トレニア(Torenia hybrida)品種サマーウェーブブルー(サントリーフラワーズ株式会社)に、実施例1で構築したバイナリーベクターのT-DNA部分を導入した。形質転換細胞をカナマイシンで選抜した後、再分化させることにより、組換えトレニアを取得した。組換えトレニアの中には、照度5,000ルクス(明期16時間、暗期8時間)、温度23度で、in vitroで栽培した際に、開花をする個体があったが、遺伝子を導入していないトレニアや他の遺伝子を導入した組換えトレニアは同じ条件では開花しなかった。
トレニアの形質転換の方法は、間らの方法(Biotechnology in Agriculture and Forestry,Vol48, Transgenic Crops III, Springer-Verlag Berlin Heidelberg 2001)に従った。すわなち、トレニア(Torenia hybrida)品種サマーウェーブブルー(サントリーフラワーズ株式会社)に、実施例1で構築したバイナリーベクターのT-DNA部分を導入した。形質転換細胞をカナマイシンで選抜した後、再分化させることにより、組換えトレニアを取得した。組換えトレニアの中には、照度5,000ルクス(明期16時間、暗期8時間)、温度23度で、in vitroで栽培した際に、開花をする個体があったが、遺伝子を導入していないトレニアや他の遺伝子を導入した組換えトレニアは同じ条件では開花しなかった。
FT遺伝子を導入したトレニア40系統の葉からRNAを抽出し、RT-PCR法によりFT転写物の有無を調べ、FT遺伝子を転写している系統を選抜した。
形質転換トレニアをBM1:赤玉:パーライト=2:2:1の混合物に入れた直径10cmのビニールポットに植えた後、閉鎖系温室で栽培した。FTを導入した形質転換トレニアは鉢あげ後33日から48日で開花したのに対し、導入していないトレニアは60日から63日後に開花した。また、形質転換ペチュニアは節間が短縮し、草型がコンパクトになる傾向が観察された。
以上の結果は、FT遺伝子を構成的に発現させ、FTタンパク質を過剰発現させることにより、トレニアの開花を組織培養による栽培でも土壌栽培でも、促進できることを示している。
実施例4: 組換えトレニアの低照度での開花
形質転換トレニアおよび宿主トレニアの茎をパフカル(サントリー株式会社、WO2004/112461に記載)に挿し芽をした。これらを穴を開けた発泡スチロールに入れ、希釈した液肥(例えば、ビガーライフ(サントリーフラワーズ株式会社)の1000倍希釈物)を含む水に浮かべた。これらのトレニアを照度300ルクス(明期16時間、暗期8時間)、気温23度の条件で3ヶ月間栽培した。この条件では、宿主のトレニアは新しい葉が展開するなどの成長は観察されたものの、花芽は形成されず、開花には至らなかった。一方FT遺伝子を導入した組換えトレニアは、25日から60日目で花芽が形成され、52日目から70日目で開花した。この場合、葉や花の色や形態に異常は観察されなかったが、実施例3に記載したように節間が宿主に比べ短縮し、コンパクトな草型をしていて、開花した様子はとてもけなげで可愛かった。
形質転換トレニアおよび宿主トレニアの茎をパフカル(サントリー株式会社、WO2004/112461に記載)に挿し芽をした。これらを穴を開けた発泡スチロールに入れ、希釈した液肥(例えば、ビガーライフ(サントリーフラワーズ株式会社)の1000倍希釈物)を含む水に浮かべた。これらのトレニアを照度300ルクス(明期16時間、暗期8時間)、気温23度の条件で3ヶ月間栽培した。この条件では、宿主のトレニアは新しい葉が展開するなどの成長は観察されたものの、花芽は形成されず、開花には至らなかった。一方FT遺伝子を導入した組換えトレニアは、25日から60日目で花芽が形成され、52日目から70日目で開花した。この場合、葉や花の色や形態に異常は観察されなかったが、実施例3に記載したように節間が宿主に比べ短縮し、コンパクトな草型をしていて、開花した様子はとてもけなげで可愛かった。
光が十分に与えられ、かつ炭素源としてショ糖が供給されるin vitroの条件では、植物は開花することができるが、光が十分になく、炭素減も限定される室内では、開花できる植物は限定されている。開花を促進するためのシグナル(たとえば、FT遺伝子の過剰発現)が加えられたとしても、通常植物が開花するためには光合成を十分行えるための光が必要であると推察され、FT遺伝子を導入するだけでは、室内で開花することができるがどうかを予想することができない。実施例4においては、意外なことに組換えトレニアは低照度条件で開花に至り、かつ商業的にも魅力的な形態をしていた。
実施例5: 組換えニーレンベルギアの作出と評価
ニーレンベルギア品種フェアリーベルパティオブルー(サントリーフラワーズ株式会社)に対して、Ueyamaらの方法(Plant Biotechnology 23、19-24、2006)で、実施例1で構築したバイナリーベクターのT-DNA部分を導入し、組換えニーレンベルギアを取得した。宿主は、馴化から開花までに約2ヶ月を要したのに対し、組換えニーレンベルギアの中には、それよりも7日から10日程度早く開花にいたったものが数多く見られた。上記の結果は、FT遺伝子を構成的に発現させ、FTタンパク質を過剰発現させることにより、ニーレンベルギアの開花を、促進できることを示している。
ニーレンベルギア品種フェアリーベルパティオブルー(サントリーフラワーズ株式会社)に対して、Ueyamaらの方法(Plant Biotechnology 23、19-24、2006)で、実施例1で構築したバイナリーベクターのT-DNA部分を導入し、組換えニーレンベルギアを取得した。宿主は、馴化から開花までに約2ヶ月を要したのに対し、組換えニーレンベルギアの中には、それよりも7日から10日程度早く開花にいたったものが数多く見られた。上記の結果は、FT遺伝子を構成的に発現させ、FTタンパク質を過剰発現させることにより、ニーレンベルギアの開花を、促進できることを示している。
実施例6: FT導入遺伝子組換えトレニアのハイドロカルチャーによる評価
室内での植物栽培には、ハイドロカルチャー(底穴のない容器に水を溜めて植物を栽培する方法)がよく行われ、植物を栽培するために、土壌の代わりにハイドロボールが利用される。本実施例では、ハイドロボールとして、ネオコール(東洋電化工業株式会社の登録商標)をもちいた。発根したトレニア挿し芽を30mlのチューブに20ml程度入れたネオコールに移植し、栽培を開始した。ネオコールが乾燥するたびに、ビガーライフV(サントリーフラワーズ株式会社の登録商標)の2000倍希釈液を与えた。実施例4の日照条件では、FT遺伝子を導入したトレニアでは、1ヶ月から6週間で花芽が形成されたが、宿主トレニアでは花芽の形成は観察されなかった。これらの植物が生長した後、茎を長さ5cm程度にまで一旦切り戻した。その後栽培を継続したところ、1ヶ月程度で組換えトレニアは開花し、その後生長しながら花を咲かせ続けたが、宿主トレニアは全く開花しなかった。
室内での植物栽培には、ハイドロカルチャー(底穴のない容器に水を溜めて植物を栽培する方法)がよく行われ、植物を栽培するために、土壌の代わりにハイドロボールが利用される。本実施例では、ハイドロボールとして、ネオコール(東洋電化工業株式会社の登録商標)をもちいた。発根したトレニア挿し芽を30mlのチューブに20ml程度入れたネオコールに移植し、栽培を開始した。ネオコールが乾燥するたびに、ビガーライフV(サントリーフラワーズ株式会社の登録商標)の2000倍希釈液を与えた。実施例4の日照条件では、FT遺伝子を導入したトレニアでは、1ヶ月から6週間で花芽が形成されたが、宿主トレニアでは花芽の形成は観察されなかった。これらの植物が生長した後、茎を長さ5cm程度にまで一旦切り戻した。その後栽培を継続したところ、1ヶ月程度で組換えトレニアは開花し、その後生長しながら花を咲かせ続けたが、宿主トレニアは全く開花しなかった。
実施例7: バラへのFT遺伝子導入
pSPB3137を導入したアグロバクテリウムを用いてバラ品種ラバンデにFT遺伝子を導入した。バラの形質転換に関してはすでに多くの方法が報告されており(たとえばFiroozababy et al. Bio/Technology 12:883-888 (1994), US 5480789、US 5792927、EP 536 327 A1、US 20010007157 A1 )、これらの方法に従って形質転換を実施できる。
pSPB3137を導入したアグロバクテリウムを用いてバラ品種ラバンデにFT遺伝子を導入した。バラの形質転換に関してはすでに多くの方法が報告されており(たとえばFiroozababy et al. Bio/Technology 12:883-888 (1994), US 5480789、US 5792927、EP 536 327 A1、US 20010007157 A1 )、これらの方法に従って形質転換を実施できる。
具体的には、pSPB3137を導入したAgrobacterium tumefaciens Agl0株(Lazo et al. Bio/Technology 9: 963-967, 1991)の菌液中に、無菌苗の葉から誘導したバラのカルスを5分間浸し、滅菌濾紙で余分な菌液を拭き取った後、継代用培地に移植し、2日間暗所で共存培養した。
その後、カルベニシリンを400mg/l 加えたMS液体培地で洗浄し、継代用培地 にカナマイシン50mg/l とカルベニシリン200mg/lを加えた選抜・除菌用培地へ移植した。選抜培地上で生育阻害を受けず、正常に増殖する部分の移植と培養を繰り返し、カナマイシン耐性カルスを選抜した。
実施例8: カーネーションへのFT遺伝子導入
上述のプラスミドpSPB3137をAscIとPacIで消化して得られるFT遺伝子を含む断片を回収した。この断片を、AscIとPacIで消化したバイナリーベクターpCGP1988(WO2004-020637に記載)と連結し、得られたプラスミドをpSPB3432とした。このバイナリーベクターは植物の形質転換マーカーとして、SurB遺伝子を含む。
上述のプラスミドpSPB3137をAscIとPacIで消化して得られるFT遺伝子を含む断片を回収した。この断片を、AscIとPacIで消化したバイナリーベクターpCGP1988(WO2004-020637に記載)と連結し、得られたプラスミドをpSPB3432とした。このバイナリーベクターは植物の形質転換マーカーとして、SurB遺伝子を含む。
カーネーション品種ベガにpSPB3432を導入したAgrobacterium tumefaciens Agl0株を用いてFT遺伝子を導入した。カーネーションへの遺伝子導入方法については、PCT/AU94/00265、Bio/Technology 9, 864 - 868 (1991)などに記載されている。
本発明によれは開花を促進するFT遺伝子を導入することにより、室内で開花する植物を開発することができた。これは、屋内において花を開花させる事業、例えば室内栽培事業において有意義である。また、室内観賞用植物をより魅力的にすることにより消費者を惹きつけるため、室内観賞用植物のビジネスにおいても有用である。
Claims (17)
- FT遺伝子を顕花植物に導入する工程を含む、低照度環境で開花するように形質転換したトランスジェニック植物の作製方法。
- 前記FT遺伝子が高発現するように、FT遺伝子を顕花植物に導入する工程を含む、請求項1に記載の方法。
- 前記FT遺伝子が構成的に過剰発現するように、FT遺伝子を顕花植物に導入する工程を含む、請求項2に記載の方法。
- 前記FT遺伝子が、アラビドプシス由来のものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記FT遺伝子が、開花促進機能を保持した改変体である、請求項4に記載の方法。
- 前記FT遺伝子の構成的な発現が植物ウイルス由来のプロモーターにより誘導される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記顕花植物が、ゴマノハグサ科のトレニア、ナス科のペチュニア、ナス科のニーレンベルギア、クマツヅラ科バーベナ、バラ科バラ、またはナデシコ科カーネーションである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記低照度環境は、同種の植物であってFT遺伝子が導入されていない植物では開花しない照明条件の栽培環境である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 前記低照度環境が、50〜1000ルクスの照度である、請求項8に記載の方法。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法で作製されたトランスジェニック植物。
- FT遺伝子が導入された組換え顕花植物を、同種の植物であってFT遺伝子が導入されていない非組換え顕花植物の場合と比較して、より低照度な栽培条件下で栽培する工程を含む、低照度環境での植物開花方法。
- 前記低照度環境は、同種の植物であってFT遺伝子が導入されていない植物では開花しない照明条件の栽培環境である、請求項11に記載の方法。
- 前記低照度環境が、50〜1000ルクスの栽培環境である、請求項12に記載の方法。
- 前記形質転換体植物を栽培する条件が組織培養条件または土壌栽培である、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
- 前記顕花植物が、ゴマノハグサ科のトレニア、ナス科のペチュニア、ナス科のニーレンベルギア、クマツヅラ科バーベナ、バラ科バラ、またはナデシコ科カーネーションである、請求項11〜14に記載の方法を適用されたトランスジェニック植物。
- FT遺伝子が導入されているトランスジェニック顕花植物を含む、低照度環境で開花可能なトランスジェニック植物キット。
- 前記トランスジェニック植物が種子または開花前の苗木の状態の植物を備える、請求項16に記載のキット。
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