JPWO2009063860A1 - 多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂およびその製造方法 - Google Patents

多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、多官能性で反応性に富み、各種変性原料として有用な、多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂、具体的には、(1)ナフタレン環中の2つのベンゼン環双方にメチル基を各1個有する構造である、1,5−ジメチルナフタレン、1,6−ジメチルナフタレン、2,6−ジメチルナフタレン、1,7−ジメチルナフタレン、1,8−ジメチルナフタレンおよび2,7−ジメチルナフタレンからなる群から選択される1種または2種以上のジメチルナフタレンと(2)ホルムアルデヒドを、水および酸性触媒の存在下に反応させて得られるジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂であって、かつ、前記ジメチルナフタレン中のナフタレン環に直結した6つの水素原子の内、前記反応によって置換された水素原子数の平均値が1.8〜3.5である多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂を提供する。

Description

本発明は、各種変性原料として有用な多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂およびその製造方法に関するものである。本発明の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、フェノールおよびナフトール等のフェノール類やポリオール類により変性させることにより、電気用絶縁材料、レジスト用樹脂、半導体用封止樹脂、プリント配線板用接着剤、電気機器・電子機器・産業機器等に搭載される電気用積層板およびプリプレグのマトリックス樹脂、ビルドアップ積層板材料、繊維強化プラスチック用樹脂、液晶表示パネルの封止用樹脂、塗料、各種コーティング剤、接着剤等の広範な用途に用いることができる。
キシレン等の単環の芳香族炭化水素とホルムアルデヒドを、硫酸等の酸触媒の存在下に反応させることにより、単環の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂が得られることは古くからよく知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、ジメチルナフタレン異性体混合物や、ジメチルナフタレン異性体混合物とメチルナフタレンとの混合物とホルムアルデヒドから、多環式芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂が得られることも知られている(例えば、特許文献1参照)。
近年、環境に対する意識の高まりから、リン系難燃化剤や臭素系難燃化剤を使用せずとも難燃性に富む材料が望まれ、その一貫から、原料となる樹脂への多環芳香族骨格の導入が行われているが、通常、ナフタレン等の多環芳香族化合物は石炭等のコークス類から得られるため、含硫黄化合物や含窒素化合物等の好ましくない不純物が混入しており、それを原料として用いて得られる樹脂にも、硫黄化合物や含窒素化合物の混入が避けられない。
また、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、そのままの形で使用されることもあるが、熱硬化性樹脂素材用途等、種々の用途に使用するためには、さらにフェノール類、カルボン酸類、ポリオール類等と変性反応を行うことが多く、そのためには多官能性の樹脂であることが好ましい。ここで、樹脂の多官能性を示す指標としては、樹脂の原料である芳香族炭化水素の芳香環に直結した水素原子の内、樹脂を製造する際の反応によって置換された水素原子数の平均値(芳香環1つあたりの置換水素原子数の平均値)を利用することができる。かかる平均の置換水素原子数は、得られた樹脂を1H−NMRで測定して、キシレン類を原料とした場合は1.8〜2.6ppm付近のメチルプロトンの積分値、6.9ppm付近の芳香環に直結したプロトンの積分値を利用して算出される数値であり、メチルナフタレン系化合物を原料とした場合は、2.3〜3.2ppm付近のメチルプロトンの積分値、6.8〜8.2ppm付近の芳香環に直結したプロトンの積分値を利用して算出される数値である。
しかしながら、ナフタレンおよびモノメチルナフタレンを原料とする場合には、通常の方法では多官能性のナフタレンホルムアルデヒド樹脂を得ることが困難であり、界面反応のような特殊な反応を行う必要があった(特許文献2および3参照)。また、ジメチルナフタレンを原料とする場合でも、多官能性の樹脂を得られない場合があることが判明した。
「高分子化」、井本稔監修、化学工業社、1966年2月出版 特開昭54−86593号公報 特開昭61−228013号公報 特開平11−92543号公報
本発明の目的は、多官能性で反応性に富み、好ましくは硫黄原子および窒素原子の樹脂中における含量がそれぞれ0.5ppm以下である多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討を行った結果、原料のナフタレン化合物として、ナフタレン環中の2つのベンゼン環双方にメチル基を各1個有するジメチルナフタレンを用い、これとホルムアルデヒドとを、水と酸性触媒の存在下に反応させて得られるジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂が、上記の目的を達成することを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、
[1](1)ナフタレン環中の2つのベンゼン環双方にメチル基を各1個有する構造である、1,5−ジメチルナフタレン、1,6−ジメチルナフタレン、2,6−ジメチルナフタレン、1,7−ジメチルナフタレン、1,8−ジメチルナフタレンおよび2,7−ジメチルナフタレンからなる群から選択される1種または2種以上のジメチルナフタレンと(2)ホルムアルデヒドを、水および酸性触媒の存在下に反応させて得られるジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂であって、かつ、前記ジメチルナフタレン中のナフタレン環に直結した6つの水素原子の内、前記反応によって置換された水素原子数の平均値が1.8〜3.5である多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂、
[2]前記成分(1)と(2)の使用割合[成分(1):成分(2)]が、モル比で1:1〜1:6である、上記[1]に記載の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂、
[3]酸性触媒が硫酸またはパラトルエンスルホン酸である、上記[1]または「2」に記載の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂、
[4]ホルムアルデヒド、水および硫酸からなる成分中の硫酸の濃度が20〜55質量%である、上記[3]に記載の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂、
[5]ホルムアルデヒド、水および酸性触媒からなる成分中のホルムアルデヒドの濃度が20〜40質量%である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂、
[6]ジメチルナフタレンとホルムアルデヒドとの反応において、さらに脂肪族アルコールを添加して反応させて得られる、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂、
[7]脂肪族アルコールが、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールである、上記[6]に記載の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂、
[8]ジメチルナフタレンに混入している不純物由来の硫黄原子および窒素原子の、樹脂中における含量がそれぞれ0.5ppm以下である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂、
[9]重量平均分子量(Mw)が200〜2000である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の多官能ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂、
[10]フェノール類と、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂とを反応させて得られる、フェノール類変性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂、
[11]重量平均分子量(Mw)が300〜6000である、上記[10]に記載のフェノール類変性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂、および
[12]1,3−ブタジエンとオルソキシレンまたはパラキシレンを強アルカリ触媒存在下で反応させる工程(A)、次いで環化させてテトラリン化合物を得る工程(B)および該テトラリン化合物を脱水素してナフタレン化合物を得る工程(C)を含む化学合成により、またはさらに工程(C)で得られたナフタレン化合物を異性化する工程(D)を含む化学合成により、1,5−ジメチルナフタレン、1,6−ジメチルナフタレン、2,6−ジメチルナフタレン、1,7−ジメチルナフタレン、1,8−ジメチルナフタレンおよび2,7−ジメチルナフタレンからなる群より選ばれる1種または2種以上のジメチルナフタレンを得る工程(I)と、前記工程(I)で得られたジメチルナフタレンと、ホルムアルデヒドとを、水および酸性触媒下に反応させる工程(II)を有することにより、前記ジメチルナフタレン中のナフタレン環に直結した6つの水素原子の内、前記反応によって置換された水素原子数の平均値が1.8〜3.5となる多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂の製造方法、
に関するものである。
本発明の新規なジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂は耐熱性に優れ、公知のナフタレンホルムアルデヒド樹脂を超える多官能性を有しており、反応性に富み、各種変性樹脂の原料として有用である。本発明によれば、硫黄原子および窒素原子の樹脂中における含量がそれぞれ0.5ppm以下のジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂を提供することもできる。
[多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂]
本発明の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、上記の通り、
(1)ナフタレン環中の2つのベンゼン環双方にメチル基を各1個有する構造である、1,5−ジメチルナフタレン、1,6−ジメチルナフタレン、2,6−ジメチルナフタレン、1,7−ジメチルナフタレン、1,8−ジメチルナフタレンおよび2,7−ジメチルナフタレンからなる群から選択される1種または2種以上のジメチルナフタレン(以下、ナフタレン化合物と称することがある。)と
(2)ホルムアルデヒドを、
水および酸性触媒の存在下に反応させて得られるジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂である。
(ナフタレン化合物)
本発明で原料として用いるナフタレン化合物は、オルソキシレンと1,3−ブタジエン、またはパラキシレンと1,3−ブタジエンを出発原料として化学合成して得られる、ナフタレン環中の2つのベンゼン環双方にメチル基を各1個有するジメチルナフタレンである。該ジメチルナフタレンとしては、具体的には、1,5−ジメチルナフタレン、1,6−ジメチルナフタレン、2,6−ジメチルナフタレン、1,7−ジメチルナフタレン、1,8−ジメチルナフタレンおよび2,7−ジメチルナフタレンであり、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、該ジメチルナフタレンには、1,5−ジエチルナフタレン、1,6−ジエチルナフタレン、2,6−ジエチルナフタレン、1,7−ジエチルナフタレン、1,8−ジエチルナフタレン、2,7−ジエチルナフタレン等が混入していてもよいが、前記ナフタレン化合物に対して、20質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
1,5−ジメチルナフタレン、1,6−ジメチルナフタレンおよび2,6−ジメチルナフタレンからなる群から選択される1種または2種以上のジメチルナフタレンは、オルソキシレンと1,3−ブタジエンを強アルカリ触媒の存在下で反応させてオルトトルイル−1−ペンテンを生成させ(工程A)、次いで環化させてテトラリン化合物を得(工程B)、該テトラリン化合物を脱水素してナフタレン化合物を得(工程C)、必要に応じて異性化させて構造異性体を得(工程D)、適宜、蒸留や晶析等により分離・精製することにより得ることができる。
また、1,7−ジメチルナフタレン、1,8−ジメチルナフタレンおよび2,7−ジメチルナフタレンからなる群から選択される1種または2種以上のジメチルナフタレンは、パラキシレンと1,3−ブタジエンを出発原料として、前記工程A〜Cおよび必要に応じて工程Dに準じて反応を行い、適宜、蒸留や晶析等により分離・精製することにより得ることができる。
前記工程A〜Dは、公知の方法、例えば特開2006−70000号公報に開示された方法を利用することができる。具体的な反応条件について、以下に説明する。
(工程A)
工程Aにおいては、ジメチルナフタレンの使用量は、1,3−ブタジエンに対して好ましくは5倍モル以上、より好ましくは8倍モル以上である。反応温度は、好ましくは約90〜200℃であり、より好ましくは100〜180℃である。反応圧力は、好ましくは0.01〜2MPaである。また、反応時間(滞留時間)は、通常、約0.1〜10時間である。
工程Aで使用する強アルカリ触媒としては、ナトリウムとカリウムの混合物が好ましい。工程Aでは、好ましくは水、アルコールまたはこれらの混合物を添加することによって反応混合液を急冷し、次いで、通常の有機化合物の公知の分離手段によって、目的とする生成物(アルケニル化物)を分離することができる。
(工程B)
工程Bの環化反応は、固体酸触媒の存在下に実施することが好ましい。固体酸触媒としては、例えばH型、Y型、ベータ型、L型、モルデナイト等の結晶性アルミノシリケートが挙げられる。これらの中でも、選択率の観点からは、シリカ/アルミナ比が1〜100のH型モルデナイトが好ましい。
環化反応の温度は、好ましくは約150〜250℃であり、より好ましくは170〜230℃である。反応圧力は、好ましくは約0.03〜0.5MPaである。なお、環化反応を気相状態で行うために希釈剤を用いることも可能である。該希釈剤としては、前記反応条件下で不活性であり、反応系を気相状態に保ち得るものであれば特に制限はなく、例えば、窒素、二酸化炭素、水素、アルゴン、ヘリウム等のガス状物;プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。水は、反応混合物から除去されることが好ましい。
(工程C)
テトラリン化合物の脱水素は触媒の存在下に実施することが好ましく、該触媒としては、例えば、活性炭またはアルミナを担体とした、白金触媒、パラジウム触媒、ニッケル触媒、銅触媒が挙げられ、これらの中でも、白金触媒が好ましく、活性炭を担体とした白金触媒がより好ましい。
脱水素反応の温度は、好ましくは約150〜350℃であり、より好ましくは200〜300℃である。反応圧力は、好ましくは約0.03〜0.5MPaである。
(工程D)
2,6−ジメチルナフタレン、2,7−ジメチルナフタレンが必要な場合は、それぞれ1,6−ジメチルナフタレン、1,7−ジメチルナフタレンを異性化する。本異性化反応では、触媒としてアルミナおよび/またはシリカを含む固体触媒を使用し、好ましくはアルミナに対するシリカのモル比が100以上の、実質的に水素型から成るモルデナイトを用い、液相にて異性化する方法が好ましい。また、反応温度は270℃以下であることが好ましい。
異性化反応後、1,7−ジメチルナフタレンの場合は、異性化後1,7−体と2,7−体の混合物になるが、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等の溶媒を利用して晶析を行うことにより、融点の高い2,7−ジメチルナフタレンのみ高純度で得られる。また、1,6−ジメチルナフタレンの場合は、異性化後1,6−体と2,6−体の混合物になるが、上記同様、飽和炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の溶媒を利用して晶析を行なうことにより、2,6−ジメチルナフタレンのみ高純度で得られる。
なお、晶析後の異性体の混合物を含む母液は、再度異性化工程に付すことが好ましい。
このようにキシレン類(オルソキシレン、パラキシレン)と1,3−ブタジエンを出発原料とし、前記工程A〜Cおよび必要に応じて工程Dを含む工程によって化学合成することにより得られたジメチルナフタレン類を用いてナフタレンホルムアルデヒド樹脂を製造することにより、多官能性で反応性に富み、かつ樹脂中における硫黄原子と窒素原子(いずれもジメチルナフタレンに混入した不純物由来である。)の含量がいずれも0.5ppm以下である、新規なジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂を得ることができる。
本発明で用いる原料のナフタレン化合物は、ナフタレン環中の2つのベンゼン環双方にメチル基を各1個有するジメチルナフタレンであることが重要である。本発明者らの詳細な検討により、無置換であるナフタレン;1−メチルナフタレン等のモノメチルナフタレン;ナフタレン環の片方のベンゼン環のみにメチル基が2つ置換されている1,2−ジメチルナフタレン、1,3−ジメチルナフタレン、1,4−ジメチルナフタレンおよび2,3−ジメチルナフタレンからなる群から選択される1種または2種以上のジメチルナフタレンを原料とした場合は、界面反応のような特殊な反応形式を採用しない限り、多官能性のナフタレンホルムアルデヒド樹脂が得られないことが判明した(例えば、本明細書の比較例1および2参照。)。また、メチル基が3つ以上置換したナフタレン化合物を用いた場合にも、ホルムアルデヒドとの反応点(ナフタレン環に直結した水素原子数)が少なくなり、多官能性のナフタレンホルムアルデヒド樹脂を得ることができなかった。
本発明のジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂が有している多官能性とは、ジメチルナフタレン中のナフタレン環に直結した6つの水素原子の内、ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂を製造する反応によって置換された水素原子数の平均値(以下、「ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂中のナフタレン環1つあたりの置換水素原子数の平均値」と換言することがある。)が1.8を超えていることである。
本発明のジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂中のナフタレン環1つあたりの置換水素原子数の平均値は1.8〜3.5、好ましくは2.0〜3.5、より好ましくは2.0〜3.3、さらに好ましくは2.5〜3.0である。該樹脂中のナフタレン環1つあたりの置換水素原子数の平均値が1.8未満であると第三成分との反応性に富んだ活性基(メチロール基やメトキシメチル基等)が少なくなり、第三成分との反応により得られる変性樹脂の取得量が少なくなるため、好ましくない。特に、該置換水素原子数の平均値が2.0以上であれば、第三成分との反応性が十分となり、好ましい。一方、該樹脂中のナフタレン環1つあたりの置換水素原子数の平均値が3.5を超えることは技術的に困難である。
本発明により得られるジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂は多官能性であるから、活性水素を有するフェノール類、カルボン酸類、ポリオール類等との高い反応性を有すると共に、取得量も多くなる。
(ホルムアルデヒド)
ホルムアルデヒドとしては、工業的に入手容易なホルマリン、パラホルムアルデヒドおよびトリオキサン等のホルムアルデヒドを発生する化合物等が例示できる。縮合反応させる際のジメチルナフタレンとホルムアルデヒドのモル比は1:1〜1:6、好ましくは1:1.5〜1:6、より好ましくは1:2〜1:6、さらに好ましくは1:2.5〜1:6、特に好ましくは1:2.5〜1:5である。ジメチルナフタレンとホルムアルデヒドのモル比を前記範囲とすることで、得られるジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂の樹脂収率を比較的高く維持でき、且つ未反応で残るホルムアルデヒドの量を少なくすることができる。
(ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂の製造方法)
ナフタレン化合物とホルムアルデヒドとの縮合反応は、水および酸性触媒の存在下に実施する。
酸性触媒としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸等が挙げられるが、一般的には硫酸が適当である。該酸性触媒の使用量としては、例えば、硫酸を使用する場合、ホルムアルデヒド、水および硫酸からなる成分中の硫酸の濃度が、好ましくは20〜55質量%、より好ましくは25〜40質量%になるように調整する。硫酸の濃度をこの範囲とすることで、適当な反応速度が得られ、さらに反応速度が大きいことに基づく樹脂の粘度が高くなることを防ぐことができる。一方、パラトルエンスルホン酸を使用する場合は、硫酸を使用する場合よりやや高い濃度、例えばホルムアルデヒド、水およびパラホルムアルデヒドからなる成分中のパラホルムアルデヒドの濃度を35〜60質量%に調整して使用することが好ましい。
また、原料成分中のホルムアルデヒド、水および硫酸からなる成分中のホルムアルデヒドの濃度は20〜40質量%が好ましい。ホルムアルデヒドの濃度を20〜40質量%とすることで、実用上好ましい反応速度が得られる。
ナフタレン化合物とホルムアルデヒドとの縮合反応は、通常、常圧で行われ、水の沸点である100℃で加熱して還流させながら行う。ただし、反応温度は常温〜100℃の範囲で適宜選択すればよく、また、反応圧力は0.001〜0.02MPa(ゲージ圧)程度、加圧してもよい。融点が100℃以上のジメチルナフタレンを原料とする場合には、その融点以上の反応温度とするために、0.01〜0.02MPa(ゲージ圧)程度、加圧して反応させることが好ましい。また、必要に応じて、縮合反応に不活性なエチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒を希釈溶媒として使用することもできる。
本縮合反応の反応時間は、通常、4〜10時間程度が好ましく、5〜8時間がより好ましい。かかる反応時間とすることで、目的の性状を有するジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂が経済的に、かつ工業的に有利に得られる。
また、本縮合反応は、必要に応じてメタノール、エタノール、イソプロパノール等の脂肪族低級アルコールを添加して加熱還流してもよい。脂肪族低級アルコールを添加して反応を行なうことにより、脂肪族低級アルコールがジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂の末端基として、すなわち繰り返し単位構造のナフタレン環に直結したメチロール基が部分的にアルコキシ基として取り込まれ、低分子量化して粘度を下げることが可能となる。
縮合反応後、必要に応じて、前記希釈溶媒を添加した後、静置することにより二相分離させ、油相である樹脂相と水相を分離した後、さらに水洗を行うことにより酸性触媒を完全に除去し、添加した希釈溶媒および未反応の原料ジメチルナフタレンを、蒸留等の一般的方法で除去することにより、目的の性状を有する多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂が得られる。
(多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂の特性値)
こうして得られる多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは200〜2000、より好ましくは300〜1800、さらに好ましくは300〜1700であり、分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.1〜3、より好ましくは1.1〜2.8である。また、多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂中の硫黄原子含量および窒素原子含量は、共に0.5ppm以下である。
また、このようにして得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、以下の様に、フェノール類等により変性させることが可能である。
[フェノール類変性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂]
フェノール類変性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、上記の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂に、フェノール類を添加し、酸性触媒の存在下で加熱して縮合反応させることにより得られる。
フェノール類としては、フェノール、クレゾール、4−t−ブチルフェノール、キシレノール、プロピオニルフェノール等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂とフェノール類との縮合反応は、通常常圧にて融点以上に加熱して還流させながら行うが、必要に応じて、加圧下で行うこともできる。さらに、必要に応じて、本縮合反応に不活性な溶媒を使用することもできる。該溶媒としては、例えばエチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;メチルイソブチルケトン等のケトン;ジオキサン、ジブチルエーテル等のエーテル;2−プロパノール等のアルコール;エチルプロピオネート等のカルボン酸エステル;酢酸等のカルボン酸等が挙げられる。該溶媒を使用する場合、その使用量は、ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂およびフェノール類の合計量に対して、1〜5倍質量であることが好ましい。
本縮合反応で使用する酸性触媒としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸等が挙げられる。該酸性触媒の使用量は、例えば、パラトルエンスルホン酸を使用する場合、ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂、フェノール類およびパラトルエンスルホン酸からなる成分中のパラトルエンスルホン酸の濃度として、好ましくは0.0001〜0.5質量%、より好ましくは0.01〜0.2質量%になるように調整する。パラトルエンスルホン酸の濃度を上記範囲とすることで、好ましい反応速度が得られ、反応の速度が大きいことに起因する樹脂粘度の増加を防ぐことができる。
反応時間に特に制限は無いが、通常、2〜6時間程度が好ましい。この反応時間であれば、フェノール類変性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂を経済的に、かつ工業的に有利に製造することができる。
縮合反応終了後、必要に応じて、希釈溶媒を添加した後、静置することにより二相に分離させ、油相である樹脂相と水相とを分離した後、樹脂相を水洗することにより触媒を完全に除去し、添加した希釈溶媒および未反応のフェノール類を、蒸留等の一般的方法で除去することにより、フェノール類変性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂が得られる。
(フェノール類変性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂の特性値)
こうして得られる多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは300〜6000、より好ましくは500〜1300、さらに好ましくは800〜1200であり、分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.1〜3、より好ましくは1.1〜2.5、さらに好ましくは1.1〜2である。また、フェノール類変性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂中の硫黄原子含量および窒素原子含量は、共に0.5ppm以下である。
フェノール類変性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂を、例えば電気用絶縁材料、レジスト用樹脂、半導体用封止樹脂、プリント配線板用接着剤、電気機器・電子機器・産業機器等に搭載される電気用積層板およびプリプレグのマトリックス樹脂、ビルドアップ積層板材料、繊維強化プラスチック用樹脂、液晶表示パネルの封止用樹脂、塗料、各種コーティング剤、接着剤等に用いることにより、難燃性および耐熱性等の性能を具備させることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
各例において、ナフタレン環1つあたりの置換水素原子数の平均値、分子量、窒素原子含量および硫黄原子含量の測定は、以下の通りに行った。
(ナフタレン環1つあたりの置換水素原子数の平均値)
1H−NMR装置:「JNM−AL400型(400MHz)」(JEOL社製)
溶媒:CDCl3(重クロロホルム)
内部標準物質:テトラメチルシラン
置換水素原子数の平均値の算出方法:上記溶媒に樹脂を溶解し、1H−NMR測定を行なった。2.3〜3.2ppm付近のジメチルナフタレン構造のメチルプロトンの積分値をメチルプロトン数である6とした時の、6.8〜8.2ppm付近のナフタレン環に直結したプロトンの積分値を算出し、その算出した値をジメチルナフタレン構造のナフタレン環に直結した水素原子数である6から引いた値を、ナフタレン環に直結した6つの水素原子の内、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂を製造する反応によって置換された水素原子数の平均値(ナフタレン環1つあたりの置換水素原子数の平均値)とした。
(分子量)
−ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定−
装置:Shodex GPC−101型(昭和電工(株)製)
カラム:LF−804×3
溶離液:THF 1ml/min
温度:40℃
(窒素原子含量)
装置:微量全窒素分析装置「TN−100型」(三菱化学(株)製)
測定方法:樹脂をキシレンに溶解した後、上記装置にて測定した。なお、検出下限は0.5ppmである。
(硫黄原子含量)
装置:イオンクロマトグラム「DX−500型」(DIONEX社製)
測定方法:樹脂をキシレンに溶解し、酸水素炎式硫黄原子(ハロゲン)定量装置(東科精機社製「TSN−L型」)で燃焼処理(過水水溶液に吸収)した後、上記装置で測定した。なお、検出下限は0.5ppmである。
<製造例1>1,5−ジメチルナフタレンの製造
工程A:オルソキシレン1000gと1,3−ブタジエン70gを、酸化ジルコニウム系触媒の存在下に150℃および常圧にて反応させ、反応終了後静置し、上層を取り出した。なお、前記酸価ジルコニウム系触媒は、次のようにして調製した。つまり、水酸化カリウム5gを含有する水溶液に酸化ジルコニウム粉末30gを加え、攪拌下50℃で1時間含浸し、次いで減圧下に70℃で水を留去し、115℃で一晩乾燥した後、さらに空気中にて500℃で焼成した。こうして得られた触媒10gを窒素雰囲気下に180℃で攪拌し、金属ナトリウム0.5gを加えた後、同温度で60分攪拌して調製した。
工程B:該上層を、シリカ/アルミナ比が15のH型モルデナイト触媒「HSZ−600HOA」(東ソー(株)製)の存在下に170℃および常圧にて反応させた。
工程C:引き続き、上記工程Bで得られた反応混合液を、1質量%白金/活性炭触媒にて280℃で反応させた。
こうして得られた反応混合液を冷却し、析出した結晶をろ過し、洗浄した後、乾燥させて1,5−ジメチルナフタレン(純度99.5%以上、硫黄原子含量および窒素原子含量は共に0.5ppm以下)を得た。
<製造例2>2,6−ジメチルナフタレンの製造
製造例1で得られた1,5−ジメチルナフタレンを、ゼオライト「390HUA」(東ソー社製)を用いて250℃にて異性化させることにより、2,6−ジメチルナフタレン(純度99.5%以上、硫黄原子含量および窒素原子含量は共に0.5ppm以下)を得た。
<実施例1>
ジムロート冷却管、温度計および撹拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積1Lのセパラブルフラスコに、製造例1で得られた1,5−ジメチルナフタレン(三菱ガス化学(株)製)109.2g(0.7mol)と40質量%ホルマリン水溶液(三菱ガス化学(株)製)210.0g(ホルムアルデヒドとして2.8mol)、98質量%硫酸(関東化学(株)製)92.6gを仕込み、窒素気流中、常圧下、100℃で還流させながら撹拌し、反応させた。7時間反応後、希釈溶媒としてエチルベンゼン180gを加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに中和・水洗を行った後、エチルベンゼンおよび未反応の1,5−ジメチルナフタレンを減圧下で留去することにより、常温で固形の1,5−ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂120gを得た。
得られた樹脂は、ナフタレン環1つあたりの置換水素原子数の平均値が2.6であった。また、GPC測定の結果、Mn:552、Mw:1121、Mw/Mn:2.03であった。さらに、硫黄原子含量および窒素原子含量は共に0.5ppm以下であった。反応条件および得られた樹脂の物性を表1に示す。
<実施例2〜5>
実施例1において、表1に記す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様に実験を行ない、それぞれ、常温で固形の1,5−ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂を得た。反応条件および得られた樹脂の物性を表1に示す。
Figure 2009063860
表1中の注釈については、以下のとおりである。
*1:ホルムアルデヒド
*2:ジメチルナフタレン
*3:ホルムアルデヒド、水および硫酸からなる成分中の硫酸の濃度
*4:仕込んだ1,5−ジメチルナフタレン基準とした、得られた樹脂の収率
<実施例6>
ジムロート冷却管、温度計および撹拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積1Lのセパラブルフラスコに、製造例2で得られた2,6−ジメチルナフタレン(三菱ガス化学(株)製)109.2g(0.7mol)と40質量%ホルマリン水溶液(三菱ガス化学(株)製)210.0g(ホルムアルデヒドとして2.8mol)、98質量%硫酸(関東化学(株)製)92.6gおよびエチルベンゼン240gを仕込み、窒素気流中、常圧下、100℃で還流させながら撹拌し、反応させた。7時間反応後、静置し、下相の水相を除去した。さらに中和・水洗を行った後、溶媒として用いたエチルベンゼンおよび未反応の2,6−ジメチルナフタレンを減圧下で留去することにより、常温では固形の2,6−ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂110gを得た。反応条件および得られた樹脂の物性を表2に示す。
<比較例1>
ジムロート冷却管、温度計、撹拌翼を備えた、底抜きが可能な1Lセパラブルフラスコに、1−メチルナフタレン(和光純薬(株)製、硫黄原子含量2200ppm、窒素原子含量3.9ppm)142.2g(1.0mol)と40質量%ホルマリン水溶液(三菱ガス化学(株)製)150.0g(ホルムアルデヒドとして2.0mol)、98質量%硫酸(関東化学(株)製)51.4gを仕込み、窒素気流中、常圧下、100℃で還流させながら撹拌し反応させた。5時間反応後、エチルベンゼン160gを加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに中和・水洗を行った後、希釈溶媒として用いたエチルベンゼンおよび未反応の1−メチルナフタレンを減圧下で留去することにより、常温では粘調な液体の1−メチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂150gを得た。反応条件および得られた樹脂の物性を表2に示す。
<実施例7>
実施例6において、2,6−ジメチルナフタレンの代わりに、製造例2で得られた1,5−ジメチルナフタレンを使用し、かつメタノールを添加したこと以外は、実施例1と同様に実験を行い、常温では粘調な液体の1,5−ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂100gを得た。反応条件および得られた樹脂の物性を表2に示す。
<比較例2>
実施例6において、2,6−ジメチルナフタレンの代わりに、1,4−ジメチルナフタレン(和光純薬(株)製、硫黄原子含量1700ppm、窒素原子含量3.1ppm)を使用したこと以外は、実施例1と同様に実験を行い、常温では粘調な液体の1,4−ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂85gを得た。反応条件および得られた樹脂の物性を表2に示す。
Figure 2009063860
表2中の注釈については、以下のとおりである。
*1:ホルムアルデヒド
*2:ジメチルナフタレン
*3:メチルナフタレン
*4:ホルムアルデヒド、水および硫酸からなる成分中の硫酸の濃度
*5:仕込んだジメチルナフタレンまたはメチルナフタレン基準とした、得られた樹脂の収率
<実施例8>
ジムロート冷却管、温度計および攪拌翼を設置した、内容積500mLの四つ口フラスコに、窒素気流下で、実施例1で得られた1,5−ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂90g、フェノール94.1gおよびパラトルエンスルホン酸0.36gを加え、185℃まで昇温し、4時間反応させた。エチルベンゼンを添加して希釈した後、中和および水洗を行い、溶媒および未反応のフェノールを減圧下に除去し、フェノール変性1,5−ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂130gを得た。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定の結果、Mn:678、Mw:1130、Mw/Mn:1.66であり、また、水酸基価は253mgKOH/gであった。反応条件および得られた樹脂の物性を表3に示す。
<比較例3>
実施例8において、実施例1で得られた1,5−ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂に代えて、比較例1で得られた1−メチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂を使用したこと以外は実施例8と同様に実験を行い、フェノール変性1−メチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂105gを得た。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定の結果、Mn:397、Mw:642、Mw/Mn:1.62であり、また、水酸基価は216mgKOH/gであった。反応条件および得られた樹脂の物性を表3に示す。
<実施例9>
実施例8において、実施例1で得られた1,5−ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂に代えて、実施例6で得られた2,6−ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂を使用したこと以外は実施例8と同様に実験を行い、フェノール変性2,6−ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂130gを得た。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定の結果、Mn:632、Mw:1045、Mw/Mn:1.65であり、また、水酸基価は262mgKOH/gであった。反応条件および得られた樹脂の物性を表3に示す。
<比較例4>
実施例8において、実施例1で得られた1,5−ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂に代えて、比較例2で得られた1,4−ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂を使用したこと以外は実施例8と同様に実験を行い、フェノール変性1,4−ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂95gを得た。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定の結果、Mn:357、Mw:532、Mw/Mn:1.49であり、また、水酸基価は191mgKOH/gであった。反応条件および得られた樹脂の物性を表3に示す。
Figure 2009063860
表3中の注釈については、以下の通りである。
*1:仕込んだ樹脂基準とした、得られたフェノール変性樹脂の収率
本発明の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、フェノールおよびナフトール等のフェノール類、ポリオール類およびカルボン酸類により変性させることにより、電気用絶縁材料、レジスト用樹脂、半導体用封止樹脂、プリント配線板用接着剤、電気機器・電子機器・産業機器等に搭載される電気用積層板およびプリプレグのマトリックス樹脂、ビルドアップ積層板材料、繊維強化プラスチック用樹脂、液晶表示パネルの封止用樹脂、塗料、各種コーティング剤、接着剤等の広範な用途に利用可能である。

Claims (12)

  1. (1)ナフタレン環中の2つのベンゼン環双方にメチル基を各1個有する構造である、1,5−ジメチルナフタレン、1,6−ジメチルナフタレン、2,6−ジメチルナフタレン、1,7−ジメチルナフタレン、1,8−ジメチルナフタレンおよび2,7−ジメチルナフタレンからなる群から選択される1種または2種以上のジメチルナフタレンと
    (2)ホルムアルデヒド
    を、水および酸性触媒の存在下に反応させて得られるジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂であって、かつ、前記ジメチルナフタレン中のナフタレン環に直結した6つの水素原子の内、前記反応によって置換された水素原子数の平均値が1.8〜3.5である多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂。
  2. 前記成分(1)と(2)の使用割合[成分(1):成分(2)]が、モル比で1:1〜1:6である、請求項1に記載の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂。
  3. 酸性触媒が硫酸またはパラトルエンスルホン酸である、請求項1または2に記載の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂。
  4. ホルムアルデヒド、水および硫酸からなる成分中の硫酸の濃度が20〜55質量%である、請求項3に記載の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂。
  5. ホルムアルデヒド、水および酸性触媒からなる成分中のホルムアルデヒドの濃度が20〜40質量%である、請求項1〜4のいずれかに記載の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂。
  6. ジメチルナフタレンとホルムアルデヒドとの反応において、さらに脂肪族アルコールを添加して反応させて得られる、請求項1〜5のいずれかに記載の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂。
  7. 脂肪族アルコールが、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールである、請求項6に記載の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂。
  8. ジメチルナフタレンに混入している不純物由来の硫黄原子および窒素原子の、樹脂中における含量がそれぞれ0.5ppm以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂。
  9. 重量平均分子量(Mw)が200〜2000である、請求項1〜8のいずれかに記載の多官能ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂。
  10. フェノール類と、請求項1〜9のいずれかに記載の多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂とを反応させて得られる、フェノール類変性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂。
  11. 重量平均分子量(Mw)が300〜6000である、請求項10に記載のフェノール類変性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂。
  12. 1,3−ブタジエンとオルソキシレンまたはパラキシレンを強アルカリ触媒存在下で反応させる工程(A)、次いで環化させてテトラリン化合物を得る工程(B)および該テトラリン化合物を脱水素してナフタレン化合物を得る工程(C)を含む化学合成により、またはさらに工程(C)で得られたナフタレン化合物を異性化する工程(D)を含む化学合成により、1,5−ジメチルナフタレン、1,6−ジメチルナフタレン、2,6−ジメチルナフタレン、1,7−ジメチルナフタレン、1,8−ジメチルナフタレンおよび2,7−ジメチルナフタレンからなる群より選ばれる1種または2種以上のジメチルナフタレンを得る工程(I)と、
    前記工程(I)で得られたジメチルナフタレンと、ホルムアルデヒドとを、水および酸性触媒下に反応させる工程(II)
    を有することにより、前記ジメチルナフタレン中のナフタレン環に直結した6つの水素原子の内、前記反応によって置換された水素原子数の平均値が1.8〜3.5となる多官能性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂の製造方法。
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