JPWO2009035165A1 - 歯科用重合性組成物およびそのキット - Google Patents

歯科用重合性組成物およびそのキット Download PDF

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Abstract

本発明は、2組成物タイプの常温重合型レジンにおいて、筆積み法、混和法による操作性、特に筆積み法による操作性が良好で気泡混入が少なく、色調、研磨性、硬化時及び硬化体の変色、機械的特性等に優れ、義歯床や人工歯の修復、歯冠用最終補綴物や橋義歯が完成するまでの間に使用される暫間補綴物等多目的に利用される歯科用重合性組成物を提供する。それぞれの粉体が特定の粒度特性、分子量特性を持つ三種類の(メタ)クリル酸エステルポリマー粉体を含む歯科用重合性組成物である。

Description

本発明は、歯科用重合性組成物に関する。更に詳しくは、多組成物タイプの常温重合型レジンにおいて、筆積み法、混和法による操作性、特に筆積み法による築盛性が良好で、すなわち粉液泥が垂れ難く、伸びが良く、筆離れが良く、さらに気泡の混入が少なく、色調、研磨性、機械的特性、耐変色性等に優れる義歯床、人工歯の修復や、歯冠用補綴物や橋義歯等が完成するまでの間暫時または暫間的に使用される補綴物、歯牙などの修復等多目的に利用される歯科用重合性組成物に関する。
(メタ)アクリル酸エステルポリマー粉末と(メタ)アクリル酸エステルモノマーの粉液混合型即時重合レジンは義歯床の修理や暫間用クラウンの作製、人工歯の修理、歯牙などの修復等に多用されている。近年、インプラント治療など長期間歯肉の回復を待って最終補綴物を装着する臨床が増え、色調、機械的強度、耐変色性が長期に渡って安定な暫間クラウン等が要望されるようになり、様々な製品が上市されている。この暫間クラウンを審美的に優れたものに仕上げるには主に技工用の筆を還元剤を含む(メタ)アクリル酸エステルで濡らし、その筆にラジカル発生剤を含む(メタ)アクリル酸エステルポリマー粉末を付着させて操作する筆積み法が多用されているが、クラウンを筆積み法で作製する場合、筆に採取した粉液泥が垂れ易いと築盛が困難となるので、クラウンの細かな形態を作製し辛くなり、逆に垂れがなさ過ぎると、筆で薄く延ばせず、マージン部分等の築盛に問題点が発生する。また、重合開始剤に着眼すれば、有機過酸化物と第三級芳香族環アミンを使用するため硬化時に黄変して審美性が悪くなったり、硬化体が口腔内で変色、着色して早期に審美性が損なわれる等の欠点がある。この問題を解決するため、ピリミジントリオン誘導体と有機金属化合物を含む粉材と、有機ハロゲン化合物と芳香族環三級アミンを含有する液材とを使用して筆済み操作性、気泡の混入や審美性を改良する方法が提案されている(特開平6−219919号公報参照)。また、硬化時の変色防止に特定のトリアゾール系化合物を添加する方法も提案されている(特公平5−78531参照)。
本発明の目的は、歯科用重合性組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は2或いは3組成物タイプ、特に、粉液タイプの常温重合型レジンにおいて、筆積み法、混和法による操作性、特に筆積み法による築盛性が良好すなわち粉液泥が垂れ難く、伸びが良く、筆離れが良く、さらに気泡の混入が少なく、色調、研磨性、機械的特性、耐変色性等に優れる義歯床、人工歯の修復や、歯冠用補綴物や橋義歯が完成するまでの間暫間的に使用される補綴物、歯牙などの修復等多目的に利用される歯科用重合性組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、
歯科用重合性組成物において、
重合性単量体(a)、
ラジカル発生剤(b)、
(メタ)アクリル酸エステルポリマ−粒子(def)より構成され、
前記(メタ)アクリル酸エステルポリマ−粒子(def)は、
65〜400μmの粒度分布、70〜120μmの範囲にあるメディアン径且つGPC法PMMA換算分子量(M)が50万〜115万の範囲にある粉体(d)と、65〜400μmの粒度分布、70〜120μmの範囲にあるメディアン径且つGPC法PMMA換算分子量(M)が115万を超え200万以下の範囲にある粉体(e)、
10〜65μmの粒度分布、20〜60μmの範囲にあるメディアン径且つGPC法PMMA換算分子量(M)が30万〜300万の範囲にある粉体(f)を主成分としてなる(メタ)アクリル酸エステルポリマ−粒子であり、
少なくとも、重合性単量体(a)とラジカル発生剤(b)はそれぞれ別個の組成物Iと組成物IIIに分けられており、
そしてこれらの混合物が硬化性であることを特徴とする歯科用重合性組成物によって達成される。
また、2組成物タイプの歯科用重合性組成物において、
組成物Iが
重合性単量体(a)、
ラジカル発生剤(b)を分解し得る還元剤(c)
を少なくとも含み、
組成物IIIが
(メタ)アクリル酸エステルポリマー粒子であり、粒径55〜150μm(55を越え、150μmまで)の範囲と20〜55μmの範囲にそれぞれ1つ以上のピークが存在する粒度分布を有し、且つ数平均分子量(Mn)においては、少なくとも3つのピークPd、Pe、Pfが存在し、Pdは5万〜20万(ここで20万は含まない)の範囲、Peは35万〜50万(ここで35万は含まない)の範囲、Pfは20万〜35万の範囲である(メタ)アクリル酸エステルポリマー粒子、
ラジカル発生剤(b)
を少なくとも含み、
そして組成物Iと組成物IIIの混合物が硬化性である歯科用重合性組成物であることも好ましい。
更に、前記(メタ)アクリル酸エステルポリマー粒子を100重量%とした場合において、
粒径65〜400μmの範囲のものが99〜70重量%であり、粒径1〜30μmの範囲のものが1〜30重量%であり、且つ、
数平均分子量(Mn)5万〜20万(ここで20万は含まない)の範囲のものが20〜75重量%であり、数平均分子量(Mn)40万〜55万の範囲のものが20〜75重量%であり、数平均分子量(Mn)20万〜40万の範囲のものが1〜30重量%
であることを特徴とする歯科用重合性組成物であることが好ましい。
本発明において、特に説明がない限り、化合物名や官能基名において「(メタ)アクリ・・・」とあるは、「アクリ・・・、及び/又は、メタクリ・・・」の意であり、好適なる数値範囲において「XX〜YY」(XX、YYはそれぞれ該当する数値)とあるは、「XX以上、及び/又は、YY以下」の意である。
先ず、組成物Iと組成物III(又はII)の性状について説明する。組成物Iは重合性単量体を含むので、通常は、液体形態であることが多い。場合によってはペースト状である。一方、組成物IIIは、多くの場合、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー粒子を含み、かつ、安定性が余り高くないラジカル発生剤を含むので、粉末等の固体形態であることが好ましい。そのようなことから、以下の説明では、組成物Iについては、液体形態の態様にて、組成物IIIについては、粉末形態の態様にて、専ら説明することにするが、本発明は、これらの態様になんら限定されるものではない。本発明は、組成物IとIIIを混合し、必要に応じて、レドックス重合等によって、当該混合物が硬化できる歯科用重合性組成物である。また、ラジカル発生剤が液体形態の場合には、例えば、(メタ)アクリル酸エステルポリマ−粒子(def)は、組成物I、IIIとは別個に組成物IIとし、組成物Iに組成物IIIのラジカル発生剤を添加したのち、組成物IIと混合するのが好適である。
組成物I中に含まれる重合性単量体(a)について説明する。重合性単量体(a)としては公知の重合性化合物が使用でき、(i)単官能重合性単量体、(ii)二官能重合性単量体、(iii)三官能重合性単量体、(iv)四官能以上の重合性単量体などが挙げられ、(メタ)アクリル酸エステル化合物が特に好ましい。下記に具体的に例示する。無論、2種類以上の化合物を同時に配合しても良い。
(i)単官能重合性単量体
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体が挙げられる。
また、公知の酸性基含有単官能重合性単量体も使用可能である。このような化合物しては、例えば、リン酸基含有重合性単量体、ピロリン酸基含有重合性単量体、チオリン酸基含有重合性単量体、カルボン酸基含有重合性単量体、スルホン酸基含有重合性単量体等を挙げることができる。ここで、酸性基含有重合性単量の添加量は重合性単量体(a)の20重量%以下、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。ここで、20重量%を超えると酸性基によって硬化体の耐水性や、組成物Iの保存安定性が低下する虞があるので好ましくない。
酸性基含有重合性単量体を例示すると、リン基含有重合性単量体として、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスフェート、(8−(メタ)アクリロイルオキシ)オクチル−3−ホスホノプロピネート等の重合性単量体を挙げることができる。
ピロリン酸基含有重合性単量体としては、例えばピロリン酸ジ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ピロリン酸ジ〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕、ピロリン酸ジ〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕、ピロリン酸ジ〔12−(メタ)アクリロイルオキシドデシル〕等の重合性単量体を挙げることができる。
チオリン酸基含有重合性単量体としては、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンチオホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンチオホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンチオホスフェート等の重合性単量体を挙げることができる。
カルボン酸基含有重合性単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシオクチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルオキシカルボニルフタル酸およびこれらの酸無水物、6−(メタ)アクリロイルアミノヘキシルカルボン酸、8−(メタ)アクリロイルアミノオクチルカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸等の重合性単量体を挙げることができる。
スルホン酸基含有重合性単量体としては、例えば2−(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、3−(メタ)アクリルアミドプロピルスルホン酸、4−(メタ)アクリルアミドブチルスルホン酸、10−(メタ)アクリルアミドデシルスルホン酸等の重合性単量体を挙げることができる。
(ii)二官能重合性単量体
芳香族系と脂肪族系に分けて示すことができる。
芳香族系重合性化合物として、例えば2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物とメチルベンゼンジイソシアネートや4,4,−ジフェニルメタンジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物とを付加して得られるウレタン系重合性単量体等が挙げられる。
また、脂肪族系化合物として、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどエチレングリコール系またはプロピレングリコール系ジ(メタ)アクリレート;またはエトキシ化シクロヘキサンジ(メタ)アクリレートのような環状、直鎖状、分岐状の脂肪族とエチレングリコールまたはプロピレングリコールとが結合したジ(メタ)アクリレート化合物;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン等の脂肪族系ジ(メタ)アクリレート化合物;あるいは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパンのような水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物とヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物とを付加して得られるウレタン系重合性単量体等が挙げられる。
(iii)三官能重合性単量体
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
(iv)四官能以上の重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート化合物;あるいは、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシナネートの間に脂肪族を有するジイソシアネート化合物、メチルベンゼンジイソシアネートや4,4,−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物と、水酸基を含有する二官能以上の(メタ)アクリレート化合物とを付加して得られるウレタン系重合性単量体;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、特公平7−80736号公報に記載されているポリエチレン性不飽和カルバモイルイソシアヌレート系化合物も使用できる。
重合性単量体(a)としては、上記化合物のうち、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の常圧での沸点が150℃以下、好ましくは120℃以下の化合物を主成分として用いると、重合硬化時の重合熱で未反応の重合性単量体が揮発して未重合層を形成しなくなるので好ましい。
また、重合速度の加速や硬化体の耐摩耗性、色ムラを抑制し審美性を向上させるために単官能性重合性単量体と二官能以上の重合性単量体を一緒に混合して使用することも可能である。その比率は重合性単量体の重合性能や未重合層の形成状態等から適宜選択すれば良いが、単官能重合性単量体対二官能以上の重合性単量体が99.5〜60対0.5〜40重量%、好ましくは98〜65対2〜35重量%、更に好ましくは95〜70対5〜30重量%にある。ここで、多官能重合性単量体が0.5重量%未満であると耐摩耗性の向上や重合速度の加速、色ムラの改善等が望めず、逆に40重量%を超えると硬化時に未重合層が残り易くなるため、アセトン等の溶剤を含ませたティッシュ等で拭き取らなくてはならない場合も生じて、操作性が煩雑になるので好ましくない。
ここで、単官能性重合性単量体の好ましい化合物は、メチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレ−ト、ブチル(メタ)アクリレ−ト以外に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート等のリン酸基含有重合性単量体;ピロリン酸ジ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ピロリン酸ジ〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕、ピロリン酸ジ〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕、ピロリン酸ジ〔12−(メタ)アクリロイルオキシドデシル〕等のピロリン酸基含有重合性単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンチオホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート等のチオリン酸基含有重合性単量体;(メタ)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシオクチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルオキシカルボニルフタル酸およびこれらの酸無水物等のカルボン酸基含有重合性単量体;2−(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、3−(メタ)アクリルアミドプロピルスルホン酸、4−(メタ)アクリルアミドブチルスルホン酸等のスルホン酸基含有重合性単量体が、好ましく使用される。
多官能重合性単量体の好ましい化合物としては、例えば2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基を持つ(メタ)アクリレート化合物とヘキサメチレンジソシアネート、メチルベンゼンジイソシアネート、4,4,−ジフェニルメタンジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物とを付加して得られるウレタン系重合性単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。なかでも、硬化体の耐水性が良いことからエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが好ましく使用される。
次にラジカル発生剤(b)を分解し得る還元剤(c)について述べる。(c)は主に2組成物タイプの歯科用重合性組成物の場合に、組成物Iに添加して使用される。(c)としては、有機系化合物、無機系化合物が限定されず使用できるが、硬化体の吸水率を抑え、耐着色性を向上させるために有機系化合物が好ましく使用できる。有機系化合物の種類は、後述するラジカル発生剤(b)を効率よく分解する芳香族系アミンが好ましく、なかでも窒素原子が直接芳香族環に結合した芳香族環第3級アミン例えばN−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ(ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン,N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ(ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン等;重合性基を有する脂肪族第3級アミン例えばN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等;第2級アミン例えばN,N−ジフェニルグリシン、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシンのアルカリ金属塩等が特に好ましく用いられる。また、これらの還元剤は2種類以上を一緒に配合してもよい。
組成物Iの保存安定性の向上や重合時の黄変化を抑止するために、組成物Iには重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤は組成物Iの保存安定性の向上や重合硬化時の変色、口腔内での硬化体の変色を抑制する効果があれば種類は限定されない。例えばヒンダ−ドフェノール系の重合禁止剤(j)例えば2,6−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン等が上記の効果を発現する上で好ましく使用できる。また、組成物Iの保管時の変色や硬化体の変色を抑制するために紫外線吸収剤を添加しても良い。紫外線吸収剤の種類は組成物Iの耐光性を向上する化合物であれば限定されるものではないが、組成物Iと硬化体の変色を同時に抑制するベンゾフェノン系紫外線吸収剤(h)例えば2,4−ジヒドロベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−2−ヒドロキシベンゾフェノン等が好ましい。(j)、(k)の添加量は後述する。
次に、(メタ)アクリル酸エステルポリマ−粒子(def)について説明する。前記(メタ)アクリル酸エステルポリマ−粒子(def)は、
65〜400μmの粒度分布、70〜120μmの範囲にあるメディアン径且つGPC法PMMA換算分子量(M)が50万〜115万の範囲にある粉体(d)、
65〜400μmの粒度分布、70〜120μmの範囲にあるメディアン径且つGPC法PMMA換算分子量(M)が115万を超え200万以下の範囲にある粉体(e)、
10〜65μmの粒度分布、20〜60μmの範囲にあるメディアン径且つGPC法PMMA換算分子量(M)が30万〜300万の範囲にある粉体(f)を主成分としてなる(メタ)アクリル酸エステルポリマ−粒子であり、特に限定されるわけではないが好適には組成物II、III中に含まれる。以下、この(メタ)アクリル酸エステルポリマー粒子を各成分(d、eおよびf)について説明する。(メタ)アクリル酸エステルポリマーとしては公知の化合物が使用できる。具体的には前記した如き(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体を懸濁重合、エマルジョン重合等で製造した単独重合体、共重合体、それらの混合物のポリマー粉体が使用できる。好ましいポリマーを例示すれば、(メタ)アクリル酸メチルポリマー、(メタ)アクリル酸エチルポリマー、(メタ)アクリル酸ブチルポリマー、(メタ)アクリル酸プロピルポリマー、(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸エチルの共重合体、(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体、(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸プロピルの共重合体、(メタ)アクリル酸メチルとスチレンの共重合体等を挙げることができる。なかでも、機械的特性が良好な硬化体を作製できる点から(メタ)アクリル酸メチルポリマー、(メタ)アクリル酸エチルポリマー、(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸エチルの共重合体を特に好ましい例として挙げることができる。更に、耐汚染性を向上するために、組成物Iとの馴染みが良く、本発明の操作性等の性能を発揮できれば、フッ素基含有(メタ)アクリル酸エステルポリマー、例えば、トリフロロエチル(メタ)アクリレートポリマー、パ−フロロオクチル(メタ)アクリレートポリマー、(メタ)アクリル酸メチルとトリフロロエチル(メタ)アクリレートの共重合体、(メタ)アクリル酸エチルとトリフロロエチル(メタ)アクリレートの共重合体等も使用できる。
また、本発明の歯科用重合性組成物の操作性、硬化性を損なわず、硬化体の耐摩耗性や機械的特性、耐着色性を向上させる範囲で、組成物II又はIIIに、単官能重合性単量体と多官能重合性単量体の共重合体の粉体等の架橋ポリマー粉体(j)、例えば、(メタ)アクリル酸メチルとトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの架橋性ポリマー粉体、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの架橋性ポリマー粉体を添加してもよい。添加量としては、上記(d、e、f)の合計に対して、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは3〜20重量%である。1重量%未満であると硬化体の耐摩耗性の向上が望めない虞があるので好ましくない。逆に50重量%を超えると、ポリマー粉体の組成物Iへの馴染みが悪くなって築盛が困難になるばかりか、ポリマーの架橋部に組成物Iが浸透し難いため、硬化体の組成物Iから形成されるマトリックス部分と架橋体部分が剥離し、耐摩耗性や機械的特性が低下する等の虞があるので好ましくない。また、架橋体を使用する場合、粒度分布やメディアン径も上記の範囲であれば良いが、分子量は、溶媒に溶解しないから後述する測定法等では測定困難なため特定できないので、架橋体の粉材膨潤度等を予め測定して分子量の目安にすることができる。
(メタ)アクリル酸エステルポリマー粉体の粒度特性としては、本発明の特性を発揮すれば特に制限ないが、先ず、(メタ)アクリル酸エステルポリマー粉体(dおよびe)について説明する。尚、ここで述べる粒度分布、メディアン径、モード径は島津レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2000Aを用い、測定範囲0.03〜700μmで、分散助剤にエタノールを使用した時の値である。また、エタノールを分散助剤とし長時間測定に供すると(メタ)アクリル酸エステルポリマーが溶解または膨潤する可能性があるので、これらの現象が発現しない時間で測定する必要がある。そこで、膨潤による粒度特性の変化を抑制するために水を分散助剤として使用することも可能である。水を使用する場合、ポリマー粉体の分散性を向上させるためにメタ燐酸ナトリウム等の分散剤を使用してもよい。本測定条件は、後述する(メタ)アクリル酸エステルポリマー粉体(f)についても同様である。
上記粉体(dおよびe)はいずれも65〜400μm、好ましくは70〜370μm、更に好ましくは75〜350μmの粒度分布およびメディアン径が70〜120μmの範囲にある。また粉体(d)はGPC法PMMA換算分子量(M)が50万〜115万、好ましくは70万〜110万、より好ましくは85万〜105万の範囲にある。粉体(e)はGPC法PMMA換算分子量(M)が115万を超え200万以下、好ましくは、125万〜180万、より好ましくは135万〜160万の範囲にある。上記粉体(f)の粒度分布幅は10〜65μm、好ましくは115〜60μm、更に好ましくは20〜55μmの範囲にある。
上記GPC法PMMA換算分子量(M)とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、ポリメチルメタクリレート(PMMA)にて較正して、換算した分子量である。そして、粉体(d)を例にすると、その換算分子量値(以下、単に分子量という)が50万〜115万の範囲に分布しているとは、当該分子量の範囲内にある分子量を有する分子が存在していることを意味する。粉体(d)および(e)は、好ましくは、GPC測定にて、トップピーク乃至はメインピークがそれぞれの当該分子量範囲内に存在する混合物として、或いは、主要重量比率がそれぞれ当該範囲に存在する混合物として用いられる。例えば、一番目に高いピーク(以下、1番ピークという、他も同様)が粉体(d)の分子量範囲に属し、2番ピークが粉体(e)の分子量範囲に属すること或いは、ピークの計数に代えて、GPC計測結果の積分値を粉体(d)、粉体(e)の分子量範囲およびそれ外の分子量範囲について積算し、その積算値が一番大きい範囲が粉体(d)の分子量範囲、2番目に大きい範囲が粉体(e)の分子量範囲になればよい。
次に、メディアン径について説明する。上記粉体(d)および(e)のメディアン径は70〜120μm、好ましくは73〜110μm、更に好ましくは77〜100μmにある。上記成分(f)のメディアン径は20〜60μm、好ましくは、22〜55μm、更に好ましくは25〜50μmにある。また、(d)、(e)のメディアン径と平均粒径の差が10μm以内、好ましくは5μm以内、更に好ましくは3μm以内にある。(f)のメディアン径と平均粒径の差が12μm以内、好ましくは7μm以内、更に好ましくは5μm以内にある。そして、(d)、(e)のモード径は、好ましくは73〜100μm、より好ましくは75〜95μm、更に好ましくは77〜90μmである。更に(f)のモード径は、好ましくは15〜65μm、より好ましくは25〜59μm、更に好ましくは25〜53μmである。(d)、(e)、(f)の粒度分布幅、メディアン径、メディアン径と平均粒径の差、モード径等粒度特性が下限を外れれば、粉液泥の粘度が操作中に上昇して操作性、特に筆積み法による築盛性が悪化し易くなるので好ましくない。また、上限を超えれば、組成物IIまたはIIIが組成物Iに溶解または膨潤し難くなり、粉液泥にざらつきが発生して操作性が悪化したり、気泡を巻き込む虞があるので好ましくない。ここで、レーザー回折式粒度分布測定装置を使用したメディアン径、平均粒径、モード径については島津製作所のホームページで検索可能である。
粉液泥の操作性、特に筆積み操作性を好ましいものにする要因は上記の粒度特性の他に、分子量も重要である。例えば、上記(d)、(e)、(f)の粒度特性が上記の範囲に入っていても、余りにも分子量が低いと組成物Iに非常に溶解し易くなるため、粉液泥の粘度が直ちに上昇し、操作性の悪化を招く虞があるので好ましくない。逆に分子量が余りにも高いと、組成物Iに非常に膨潤もしくは溶解し難くなるため、粉液泥に(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーの粒子が多量に残存し、築盛中にざらつきが残ったり、気泡を巻き込むので好ましくない。また、気泡混入による硬化体の機械的特性や審美性の低下を招く虞もあるので好ましくない。
そこで、次に、上記粉体(d)、(e)の分子量特性について更に詳細に説明する。尚(d)、(e)の分子量、分子量分布、トップピークの分子量は本発明の性能を発揮すれば限定されるものではないが、上記粉体(d)では数平均分子量(Mn)が5万〜25万の範囲にあり、上記粉体(e)では30万〜70万の範囲にあることが好ましい。ポリマー粉体の分子量、分子量分布の測定はGPCを使い、カラム(PLgel 10μ MIXED−B,Polymer laboratories 社)、カラム温度(常温)、移動層(テトラハイドロフラン)、PMMA換算で求めたデータを用いることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルポリマーは粉体(d)ではMnが好ましくは5万〜25万の範囲、より好ましくは7万〜20万、更に好ましくは9万〜18万の範囲に分布する。また、粉体(d)のMは前記の通り50万〜114万、好ましくは70万〜110万、より好ましくは85万〜105万の範囲にある。トップピークの分子量(Mp)は好ましくは70万〜115万、より好ましくは80万〜110万、更に好ましくは90万〜105万の範囲にある。(メタ)アクリル酸エステルポリマー粉体(e)はMnが好ましくは30〜70万、より好ましくは33万〜60万、更に好ましくは37万〜50万の範囲に分布する。粉体(e)はMが前述の通り115万を超え200万以下、より好ましくは125万〜180万、更に好ましくは135万〜160万の範囲に分布する。Mpは好ましくは116万〜170万、より好ましくは120万〜160万、更に好ましくは137万〜152万の範囲にある。
なお、粉体(d)および(e)のGPC法PMMA換算分子量や数平均分子量は、粉体(d)と(e)が混合物を形成しているものではそれぞれの成分が分布してある範囲内にて平均を算出するものである。
次に上記成分(f)の分子量について説明する。Mnは好ましくは5万〜70万、更に好ましくは12万〜55万、特に好ましくは27万〜40万の範囲にある。また、Mは、30万〜300万、好ましくは30万〜200万、更に好ましくは50万〜200万の範囲にある。また、Mpは、好ましくは30万〜300万、より好ましくは70万〜200万、更に好ましくは150万〜180万の範囲にある。
また、上記粉体(d),(e),(f)の分子量分布(M/Mn)は本発明の効果を発揮すれば特に限定されないが、上記粉体(d)のM/Mnは、好ましくは4.4〜12、更に好ましくは5〜10、特に好ましくは6〜7.5の範囲である。また、上記粉体(e)のM/Mnは、好ましくは2.2〜4.4、より好ましくは2.5〜4.2、更に好ましくは2.7〜4の範囲である。そして、上記成分(f)のM/Mnは好ましくは2.2〜4.4、より好ましくは2.5〜4.2、更に好ましくは2.7〜4である。これら3成分の分子量分布はいずれか1種類以上がこの範囲に入っていればよいが、好ましくは2種類、3種類全てがこの範囲であることが特に好ましい。
ここで、粉体(d)、(e)、(f)の分子量特性が上限をこえると、粉液泥にざらつきが発生して操作性を悪化するばかりか、内部気泡を巻き込むので好ましくない。下限を外れれば、粉液泥の粘度が操作中に上昇して操作性、特に筆積み法による粉液泥の刷毛離れが悪くなるので好ましくない。
本発明の特徴は前述したように特定の粒度特性と、特定の分子量特性を持った粉体(d)、(e)、(f)を一緒に使用することである。粉体(d)のみを使用すると組成物Iの馴染みが良すぎて垂れが発生し、筆積み法による築盛には好ましくない。また、粉体(e)のみを使用すると組成物Iへの馴染みが悪く、垂れは発生しないが伸びがなくなりこれも筆積み法による築盛には好ましくない。また、粉体(f)のみを使用すると粉液泥が継粉になり非常に築盛しづらくなるので好ましくない。粉体、(d)、(e)、(f)を少なくとも一緒に配合すると、驚くべきことに、各成分の欠点を相殺し組成物Iへの馴染みが良く、組成物Iで濡らした技工用の筆に組成物II又はIIIを採取し易くなり、築盛時に垂れ難く、しかも粉液泥の伸びや刷毛ばなれが非常に良好になる。更に気泡の混入も少ないため色調、機械的特性も良好になることが判明した。ここで、粉体(d)、(e)、(f)の混合比は本発明の操作等から適宜配合すればよいが、好ましくは、粉体(d)対(e)対(f)は5〜94対94〜5対0.5〜30重量%、好ましくは、20〜75対75〜20対1.5〜25重量%、更に好ましくは30〜57対57〜30対3〜20重量%である。また、必要に応じて前記(d)、(e)、(f)以外の(メタ)アクリル酸エステルポリマー粒子を、前記(d)、(e)、(f)成分を100重量%として、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下で含有していてもよい。ここで、粉体(d)、(e)、(f)の粒度特性、分子量特性が下限を外れると粉液泥の粘度が速やかに上昇し、築盛性の悪化を招き、上限を外れれば、粉体(d)、(e)、(f)が組成物Iに膨潤、溶解せずに残存し、伸びがなく、気泡を巻き込み易い粉液泥になるので築盛性が悪化するので好ましくない。 なお、粉体(d)、(e)、(f)の混合形態は、特に限定されるものではなく、
(1)粉体(d)、粉体(e)、粉体(f)がそれぞれ別個の組成物に含まれる形態、
(2)粉体(d)、(e)、(f)が混合されて一組成物が形成されている形態、
(3)前記(1)と(2)の中間の形態(一部別個、一部混合)、
等の態様が挙げられる。
また、硬化体の研磨性、耐摩耗性を向上させるために組成物II又はIIIに無機酸化物粒子(g)、ポリマーと無機酸化物の複合粒子(h)を単独または同時に添加しても良い。尚、(g)、(h)は2種類以上のものを配合しても良い。また、(g)、(h)の種類及び形状も限定されない。無機酸化物粒子(g)の種類としては、公知のものが限定されず使用できる。例えば、周期律第I、II、III、IV族、遷移金属原子を含有する酸化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、燐酸塩、珪酸塩、及びこれらの混合物、複合塩等が挙げられる。より詳しくは、二酸化珪素、ストロンチュウムガラス、ランタンガラス、バリュウムガラス、硼珪酸ガラス等のガラス粉体、石英粉体、酸化アルミニウム粉体、酸化チタン粉体、フッ化バリウム粉体、ジルコニウム酸化物粉体、スズ酸化物粉体、その他のセラミックス粉体等であり、ガラス繊維、金属ウイスカ等の繊維状化合物も必要に応じ使用可能である。無機酸化物粉体はそのまま組成物II又はIIIに配合しても良いが、機械的性能や耐摩耗性の良い硬化体を作製するために疎水化して使用することが好ましい。表面処理剤としては、公知のものが使用でき、例えば、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランシリルイソシアネート、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジオクチルジクロロシラン、ヘキサメチレンジシラザン等のシランカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、チタニウムカップリング剤、シリコーン系カップリング剤等を挙げることができる。表面処理方法としては、(A)ボールミル、V−ブレンダー、ヘンシェルミキサー等で無機酸化物粉体と表面処理剤を直接混合する方法(乾燥式法)、(B)表面処理剤とエタノール等の有機溶剤と水とが均一に混合した溶媒(B1)に無機酸化物粉体を混合した後、50℃〜150℃で数分間〜数時間熱処理し、加熱もしくは常温で乾燥する方法(湿式法)、(C)高温の無機酸化物粉体に表面処理剤をそのまま、または上記(B1)を直接噴霧する方法(スプレー法)等を挙げることができる。勿論、市販品が既に表面処理されているものはそのまま使用しても良いし、上記の方法等で更に表面処理を追加しても良い。無機酸化物粉体に対する表面処理剤の量は、無機酸化物粉体の比表面積等から最適値を決定すれば良いが、一般的には無機酸化物粉体に対して0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%であり、更に好ましくは0.1〜10重量%の範囲である。無機酸化物粉体の粒度分布は本発明の特性を発揮すれば制限ないが、好ましくは1〜100μm、更に好ましくは1〜50μm、より好ましくは1〜30μmの範囲である。また、メディアン径は好ましくは1〜40μm、更に好ましくは1〜10μm、より好ましくは1〜5μmの範囲である。粒度分布及びメディアン径が下限を外れると、硬化体の機械的特性や耐摩耗性の向上が望めないため好ましくない。また、上限を超えると、研磨時に光沢感のある表面が得られないばかりか、組成物II又はIII中の上記(メタ)アクリル酸エステルポリマー粒子(d,e,f)と無機酸化物粒子(g)が比重差から分層し、均一な粉体が得られない可能性があるので好ましくない。
ポリマーと無機酸化物の複合粒子(h)について説明する。まず、ポリマーの種類としては、特に限定されないが、上記で説明した重合性単量体(a)もしくはそのオリゴマーから誘導されたポリマーが好適に使用できる。勿論、ポリマーは単独重合体であっても、2種類以上の重合性単量体から誘導された共重合体であっても良い。また、複合体の機械的特性、ひいては本発明の歯科用重合性組成物の硬化体の機械的特性を向上させるために重合性基を2個以上有する多官能重合性単量体を含む重合性単量体もしくはそのオリゴマーから誘導されたポリマーが好ましい。更に、重合性基を3個以上有する多官能重合性単量体を含む重合性単量体から誘導されたポリマーを使用すると、複合体表面に反応性を持つ二重結合が残存し、硬化時に組成物I中の重合性単量体(a)と共重合する結果、複合粒子の脱落が抑制されるため長期的に耐摩耗性等の機械的特性が優れる硬化体が得られるので好ましく利用される。ここで、ポリマー中の重合性基を3個以上有する多官能重合性単量体から誘導されたポリマーの比率は本発明の性能を発揮すれば特に限定するものではないが、複合体を構成する全ポリマー(3個以上の重合性基を有する多官能重合性単量体から誘導されたポリマーも含む。)に対して、好ましくは20重量%以上、より好ましくは50重量%以上、更に好ましいは60重量%以上である。ここで、複合体を構成する全ポリマーに対して、20重量%未満であると複合体表面に反応性を持つ二重結合の量が少なくなり、重合時に組成物I中の重合性単量体(a)と共重合し難くなる結果、複合体粒子が脱落し、耐摩耗性等の機械的特性の低下を招くので好ましくない。
重合性基を3個以上有する重合性単量体の好ましい化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジメチロ―ルプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が好ましく、それと組み合わせる重合性単量体はジ((メタ)アクリロキシエチル)トリメチルヘキサメチレンジウレタンなどのウレタン系重合性単量体もしくは2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンなどの芳香族環とエーテル結合を有する(メタ)アクリレート系重合性単量体等が好ましい。また、加熱下で複合体を製造する場合、芳香族環、エーテル結合もしくはウレタン結合等のヘテロ原子等を有する重合性単量体を、全重合性単量体に対して、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、更に好ましく30重量%以下で使用すると、加熱重合して複合体を製造する時や後述する熱処理時に黄変し難く、着色の殆どない複合体粉体を製造することができる。好ましい重合性単量体の組み合わせ及び重量比は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及び/またはジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートと、ジ((メタ)アクリロキシエチル)トリメチルヘキサメチレンジウレタン及び/または2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンとの組合せで、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及び/またはジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートを、好ましくは40〜99重量%、より好ましくは50〜95重量%、更に好ましくは50〜90重量%含有する。
複合体に使用される無機酸化物としては、特に限定されず上述した無機酸化物粒子(g)やデグサ(株)もしくは日本アエロジル(株)製のAEROSIL(グレ−ド例示すと、50、70、130、200、200V、200CF、200FDA、300、300CF、380、R972、R972V、R972CF、R974、RX200、RY200、R202、R805、R809、R812、NAX50、RX200、RX300、TT600、K320D、R976、R976S、OX50、TT600、MOX80、MOX170、COK84、RM50)等の平均一次粒径が0.001〜1μmの微粒子無機酸化物(g1)を挙げることができる。勿論、2種類以上の無機酸化物粉体の混合物を使用して複合体を製造してもよい。尚、複合体に添加される無機酸化物粒子としては複合体粉体(h)を配合した硬化体の研磨性が良い等の理由から上記(g1)が好ましく用いられ、なかでもAEROSILがより好ましい。
複合体に使用される無機酸化物粉体はそのまま複合体の製造に供しても良いが、複合体の粉体を配合した硬化体の機械的特性を向上させるために無機酸化物粉体の表面を上述した方法で表面処理することが好ましい。また、上記のAEROSIL R972、R812等購入時に予め疎水化処理されている無機酸化物粉体(g1)を使用する場合は上記方法で再度表面処理してもよいが、あえて表面処理を施さなくても良い。
複合体中の無機酸化物粉体の含有率は本発明の機械的特性等を発揮すれば特に限定されないが、その含有率が余りに少なすぎると硬化体の機械的特性の向上が望めず、逆に多すぎると複合体の製造時の重合性単量体中に無機酸化物を練り込む工程で無機酸化物粉体が重合性単量体中に十分に分散せずムラが生じ、複合体の粉体を含有する硬化体の透明性や機械的特性が劣る原因になる虞があるので好ましくない。そのため、複合体中の無機酸化物粉体の比率は、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは30〜75重量%、更に好ましくは35〜60重量%である。
複合体の製造法は限定されるものではない。製造法を例示すると、重合性単量体(a)、無機酸化物(g)、後述するラジカル発生剤(b)を乳鉢、ロール、ニーダー、高粘度攪拌機等で機械的に混ぜ合わせペースト化し、塊状重合する方法を挙げることができる。ここで、(b)の添加率としては重合性単量体に対して好ましくは0.01〜5重量%、更に好ましくは0.1〜3重量%、より好ましくは0.1〜1重量%であり、金属板などの型板にペーストを入れ加熱圧縮成型機等で1〜50MPa程度に加圧して、80〜200℃、好ましくは100〜150℃で数分間〜数時間、好ましくは5分間〜1時間塊状重合して複合体を製造する方法を採用することができる。ここで、ラジカル発生剤が0.01重量%未満であると、複合体中に未反応の重合性単量体が多く残存するため、硬化体の機械的強度の低下を招き、5重量%を越えると複合体中に未反応のラジカル発生剤が多く残存するため、硬化体の吸水率が増えて耐着色性の低下を招く危険性があるので好ましくない。
勿論、複合体の製造に使用される重合性単量体もしくはそのオリゴマー自体が熱重合するものであれば、重合開始剤を含まない前駆体をそのまま加熱重合して製造してもよい。
製造された複合体が粉体であれば、そのままの状態もしくは分級して使用すれば良いし、塊状体であれば粉砕して粉体とすれば良い。粉砕方法としては、特に限定されないが、一般には、ボールミル、振動ミル、ジェットミル、ビーズミル等を使用して機械的に粉砕し、篩いや分級機等で所定の粒度を持つ粉体を採取する方法が好適に使用される。複合体粒子の粒度分布、メディアン径、その利点等は上記した無機酸化物(g)と同様である。
複合体粒子はこのまま組成物II又はIIIの成分として使用してもよいが、複合体粒子中に残存する重合開始剤などの安定性低下因子を失活させ、組成物II又はIIIの保存安定性を向上させることが好ましい。失活方法としては、特に限定されないが、操作が簡便である理由から、粉体を、好ましくは60〜250℃、より好ましくは80〜150℃で、好ましくは数十分間〜数十時間、より好ましくは5時間〜20時間熱処理する方法が好適に採用できる。熱処理は常圧、減圧、加圧下のいずれの方法で行ってもよい。また、粉体を黄変させ難くするために窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下や気流下で熱処理すると良い。また、硬化体からの複合体粒子の脱落を更に高めるため複合体粒子は上述した表面処理剤で表面処理したり、複合体を構成する重合性単量体が実質的に溶解し得る溶剤と共に処理して複合体表面に存在する未反応モノマーの一部あるいは全量を溶解・除去し、その表面に微細な凸凹を形成させてアンカー効果を付与したり、また複合体の粒子をグリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を含有する重合性単量体等と反応させても良い。
次にラジカル発生剤(b)について説明する。ラジカル発生剤(b)は、大まかに分類して、単独で分解してラジカルを発生する化合物(b−1)や、上述の還元剤(c)によって分解されてラジカルを発生する化合物(b−2)等が挙げられる。これは実用上の利便性に応じての分類であるので、使用条件等にて相対的に変化しうるものであり、又、有機系化合物、無機系化合物に限定されない。ここで、(b−1)のラジカル発生剤は単独で用いられることが多く、従って、ポリマー粒子も組成物IIとして別個に、ラジカル発生剤とは隔離して保存する方が好ましいので、3組成物タイプの歯科用重合性組成物として構成される。一方、(b−2)のラジカル発生剤は(b−1)に比較して安定であり、還元剤(c)と混合することによってラジカルを発生するため、別段、ポリマー粒子と共存して保存しても問題ないので、2組成物タイプの歯科用重合組成物として構成される。しかしながら、(b−1)および(b−2)はその組成物の構成方法はこれらに限定するものではない。
硬化体の耐水性を考慮すると有機系化合物が好ましい。また、有機系化合物のなかで有機過酸化物が好ましく、その種類に制限はないが、レドックス重合のラジカル発生効率を高める上で、80℃での分解半減期が好ましくは10時間以下、更に好ましくは7時間以下、より好ましくは5時間以下である。また、下限値については、好ましくは1時間以上、更に好ましくは2時間以上、より好ましくは3時間以上である。前記数値範囲の下限値を下回ると硬化時間が早くなりすぎて築盛操作中に硬化して技工操作に支障をきたし、上限値を上回ると硬化時間が遅延して暫間補綴物が完成するまでの時間が遅くなり、下限を下回ると硬化が早くなり過ぎて築盛操作中に粉液泥が固まる等操作性が悪化するため、何れも好ましくない。
具体的に好適な化合物を例示すると、(b−2)に該当するもので有機系化合物としては、アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;tert−ブチルパ−オキシイソブチレート、tert−ブチルネオデカネート、クメンパーオキシネオデカネート等のパーオキシエステル;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシドなどの過酸化スルホネート等を挙げることができ、ベンゾイルパーオキサイドが好適に使用できる。
一方、(b−1)に該当するもので無機系化合物としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、塩素酸カリウム、臭素酸カリウムおよび過リン酸カリウムなどが挙げられる。
また、(b−1)に該当するもので有機系化合物としては、トリエチルホウ素、トリプロピルホウ素、トリブチルホウ素、トリ−sec−ブチルホウ素、トリヘキシルホウ素およびこれらトリアルキルホウ素の部分酸化トリアルキルホウ素などの有機ホウ素化合物も挙げられる。トリアルキルホウ素としては、例えばトリエチルホウ素、トリプロピルホウ素、トリイソプロピルホウ素、トリブチルホウ素、トリ−sec−ブチルホウ(2)ホウ素、トリイソブチルホウ素、トリペンチルホウ素、トリヘキシルホウ素、トリヘプチルホウ素、トリオクチルホウ素、トリシクロペンチルホウ素、トリシクロヘキシルホウ素など、炭素数2〜8の直鎖状、分枝状またはシクロ環状のアルキル基を有するものを挙げることができる。前記の通り、アルキル基が3つとも同一であるものでもよいし、2つだけが同じものや3つとも異なるものであってもよく、その場合には、例えば、前述のトリアルキルホウ素が有しているようなアルキル基を適宜に組み合わせて用いればよい。
アルコキシアルキルホウ素としては、例えばブトキシジブチルホウ素などのようなモノアルコキシジアルキルホウ素を挙げることができる。この場合のようにアルコキシ基のアルキル部とアルキル基が同じである方が(原料の入手が容易)なので好ましいが、特に限定されるものではない。これ以外にも、ジアルコキシモノアルキルホウ素であってもよい。ジアルキルボランとしては、例えばブチルジシクロヘキシルボラン、ジイソアミルボランのようにアルキル基が2つとも同一であるものでもよいし、場合によっては異なっていてもよい。また、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナンなどのように、ホウ素原子が単環状構造乃至はビシクロ構造の架橋を形成しているものを挙げることができる。
部分酸化トリアルキルホウ素としては、例えば前記トリアルキルホウ素の部分酸化物などが例示できる。特に好ましくは、部分酸化トリブチルホウ素などを挙げることができる。部分酸化トリアルキルホウ素としては、トリアルキルホウ素1モルに対し好ましくは0.3〜0.9モル、より好ましくは0.4〜0.6モルの酸素を付加させたもの
が用いられる。
これらの有機ホウ素化合物の中ではトリブチルホウ素あるいは部分酸化トリブチルホウ素を用いると特に好結果が得られる。最も好ましい有機ホウ素化合物は部分酸化トリブチルホウ素である。なお、前記の通り、アルキル基が3つとも同一であるものでもよいし、2つだけが同じものや3つとも異なるものであってもよい。
また、ラジカル発生剤(b)、還元剤(c)にバルビツール酸、もしくはその誘導体を組み合わせた重合開始剤系を使用してもよい。
ここで述べた上記(b)の半減期は日本油脂(株)等から発行されているデータが参考になる。
これらは1種または2種以上一緒に使用することができる。
これらの中で、ラジカル発生剤(b)として最も好ましい化合物として、ベンゾイルパーオキサイド、部分酸化トリブチルホウ素が挙げられる。
本発明の歯科用組成物は、少なくとも、重合性単量体(a)とラジカル発生剤(b)はそれぞれ別個の組成物I、IIIに分けられていれば、上記で説明した組成物I、組成物II又はIIIの成分組成比は本発明の特性を発揮すれば特に限定されないが、組成物Iの保存安定性の向上や変色の抑制、2つまたは3つの組成物の粉液泥の操作性、硬化性、また形成された硬化体の機械的特性、耐摩耗性等を良好にするため、各々以下の組成が好ましい。
(i)2組成物タイプの歯科用重合性組成物において、
組成物Iの組成は、組成物Iの組成の合計100重量部(重合性単量体(a)+還元剤(c)、場合により、さらに+重合禁止剤(j)+紫外線吸収剤(k))に対して(a)は好ましくは90〜99.5重量部、更に好ましくは95〜98重量部、より好ましくは96〜98重量部にある。(c)は好ましくは0.5〜10重量部、更に好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは0.5〜3重量部にある。(j)は好ましくは0〜0.5重量部、更に好ましくは0.005〜0.3重量部、より好ましくは0.01〜0.1重量部にある。そして、(k)は好ましくは0〜5重量部、更に好ましくは0.05〜2.5重量部、より好ましくは0.5〜2重量部にある。組成物I組成において(j)、(k)を添加しなくても保存安定性や変色が臨床上許容されれば問題ないが、添加することで、保存安定性や変色が抑制されるため添加した方が好ましい。
組成物IIIの組成は、組成物IIIの組成((メタ)アクリル酸エステルポリマー粒子(d)、(e)、(f)+ラジカル発生剤(b)、場合により、さらに+無機酸化物粒子(g)及び/またはポリマーと無機酸化物の複合粒子(h))の合計100重量部に対して、上記の(メタ)アクリル酸エステルポリマー粒子(d)を好ましくは20〜75重量部、更に好ましくは25〜70重量部、より好ましくは30〜60重量部、(メタ)アクリル酸エステルポリマー粒子(e)を好ましくは20〜75重量部、更に好ましくは25〜70重量部、より好ましくは30〜60重量部、(メタ)アクリル酸エステルポリマー粒子(f)を好ましくは1〜30重量部、より好ましくは1〜25重量部、更に好ましくは1〜20重量部、ラジカル発生剤(b)を好ましくは0.05〜10重量部、更に好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部、無機酸化物粒子(g)及び/またはポリマーと無機酸化物の複合体粒子(h)を好ましくは0〜20重量部、更に好ましくは1〜15重量部、より好ましくは3〜10重量部で含有する。また、無機酸化物粒子(g)及び/またはポリマーと無機酸化物の複合粒子(h)を同時に含有する場合には(g)と(h)の合計100重量部に対して(g)は好ましくは1〜95重量部、更に好ましくは20〜80重量部、より好ましくは30〜70重量部の範囲にある。組成物I、組成物IIIの組成比が上記の範囲を外れた場合、築盛性を損なったり、硬化体の機械的特性が発揮されない可能性があるので好ましくない。
(ii)3組成物タイプの歯科用重合性組成物においては、
組成物Iの組成は、組成物Iの組成の合計100重量部(重合性単量体(a)、場合により、+重合禁止剤(j)+紫外線吸収剤(k))に対して(a)は好ましくは90〜100重量部、更に好ましくは95〜100重量部、より好ましくは96〜99.99重量部にある。(j)は好ましくは0〜0.5重量部、更に好ましくは0.005〜0.3重量部、より好ましくは0.01〜0.1重量部にある。そして、(k)は好ましくは0〜5重量部、更に好ましくは0〜2.5重量部、より好ましくは0〜2重量部にある。組成物I組成において(j)、(k)を添加しなくても保存安定性や変色が臨床上許容されれば問題ないが、添加することで、保存安定性や変色が抑制される場合は添加した方が好ましい。
組成物II又はIIIの組成は、組成物IIの組成((メタ)アクリル酸エステルポリマ−粒子(d)、(e)、(f)場合により、+無機酸化物粒子(g)及び/またはポリマ−と無機酸化物の複合粒子(h))の合計100重量部に対して、上記の(メタ)アクリル酸エステルポリマ−粒子(d)を好ましくは20〜75重量部、更に好ましくは25〜70重量部、より好ましくは30〜60重量部、(メタ)アクリル酸エステルポリマ−粒子(e)を好ましくは20〜75重量部、更に好ましくは25〜70重量部、より好ましくは30〜60重量部、(メタ)アクリル酸エステルポリマ−粒子(f)を好ましくは1〜30重量部、より好ましくは1〜25重量部、更に好ましくは1〜20重量部、無機酸化物粒子(g)及び/またはポリマ−と無機酸化物の複合体粒子(h)を好ましくは0〜20重量部、更に好ましくは1〜15重量部、より好ましくは3〜10重量部で含有する。また、無機酸化物粒子(g)及び/またはポリマ−と無機酸化物の複合粒子(h)を同時に含有する場合には(g)と(h)の合計100重量部に対して(g)は好ましくは1〜95重量部、更に好ましくは20〜80重量部、より好ましくは30〜70重量部の範囲にある。組成物I、組成物II又はIIIの組成比が上記の範囲を外れた場合、築盛性を損なったり、硬化体の機械的特性が発揮されない可能性があるので好ましくない。
組成物IIIの組成は、勿論、ラジカル発生剤(b)100%であってもよいが、場合によりラジカル発生剤の安定性を高めるために、安定剤などのその他の成分(非プロトン性溶媒、有機オリゴマーあるいは有機ポリマー等)を有していても良く、例えば、ラジカル発生剤(b)+非プロトン性溶媒+有機オリゴマーあるいは有機ポリマーを100重量部としたときラジカル発生剤(b)は好ましくは40〜100重量部、より好ましくは50〜80重量部、非プロトン性溶媒は好ましくは0〜60重量部、より好ましくは0〜50重量部、有機オリゴマーあるいは有機ポリマーは好ましくは0〜40重量部、より好ましくは0〜30重量部の範囲にある。
非プロトン性溶媒の具体例としては、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素;フルオロベンゼン、ジクロロエタン、いわゆるフロンなどのハロゲン系炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピルなどのエステルなどが挙げられる。これらの中ではアルカン、エーテル、ケトンおよびエステルが好ましく、とりわけアセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ヘキサン、ジイソプロピルエーテルが特に好ましい。これらの非プロトン性溶媒は単独で使用しても、2種類以上併用してもよい。
有機オリゴマーあるいは有機ポリマーとしては、例えば液状流動パラフィン、液状もしくは固体状低分子量ポリエチレン、固体状ワセリン、固体状ワックスおよびもしくは固体状の(メタ)アクリル酸アルキルの(共)重合体などを好ましいものとして挙げることができる。
ここで、筆積み法による組成物II又はIIIと組成物Iの比率は、筆に染み込ませる組成物Iの量を適宜調整して筆積みし易い組成で使用すれば良いが、一回の盛り付けが約0.01〜0.1gにするのが好ましい。混和法による組成物II又はIIIと組成物Iの比率も、暫間補綴物を作製する上で好ましい粘度になるように適宜調整すれば良い、好ましくは、例えば組成物II又はIII対組成物Iは1:1〜2:1重量比である。
また、組成物IIIを使用する場合は、予め組成物Iに添加して用いる。その際、組成物I対組成物IIIは1:0.01〜1:1重量比が好ましく、更に1:0.02〜1:0.5重量比が好ましい。
更に、組成物IIIには有機顔料、無機系顔料、骨材等を添加しても良い。
ここで、色ムラを低減させるために、(d),(e),(f),(g),(h)のいずれか一種類以上を顔料と機械的、化学的に融着、固着させることが好ましい。
本発明の組成物は、混合された際に、各成分について、前記組成比率であることにより、最適にその性能が発揮される。そのためには、組成物I、II、IIIそれぞれを1用量ずつに分封しておいてもよいし、さもなければ、各組成物の1用量が正確且つ容易に計量可能なように、計量匙や計量スポイトや筆等を添付して置いても良い。正確に計量混合されるならば、例えば、成分(def)の各成分等が複数の組成物に別れて分封されていてもよいが、計量匙や計量スポイト等を用いる場合には、不正確になる恐れがあったり、特に粉体同士の場合には、均一に混合することが煩雑であることがあり得るので、そのような複雑な分封は避ける方が好ましい。
以下に、本発明の内容を実施例で具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
使用した原材料を示す。
液材1(組成物I)
MMA:メチルメタクリレート
4−META:4−メタクリロキシエチルオキシカルボニルフタル酸無水物
1,6HX:1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート
AEIN:トリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート
DMPT:N,N−ジメチル−p−トルイジン
BHT:2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
MEHQ:p−メトキシフェノール
BZ:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
CN:2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール
粉材(組成物III、実施例9では組成物II)
α:メタアクリル酸メチルとメタアクリル酸エチルの共重合粉体(成分d)
粒度分布:22〜313μm、メディアン径:83.8μm、平均粒径:84.3μm、モード径:84.6μm; 数平均分子量:141,000、GPC法PMMA換算分子量:951,000、分子量分布:6.8、ピークトップ分子量:990,000
β:メタアクリル酸メチルとメタアクリル酸エチルの共重合粉体(成分e)
粒度分布:28〜382μm、メディアン径:85.1μm、平均粒径:85.4μm、モード径:84.6μm; 数平均分子量:424,000、GPC法PMMA換算分子量:1,490,000、分子量分布:3.5、ピークトップ分子量:1,440,000
γ:メタアクリル酸メチルとメタアクリル酸エチルの共重合粉体(成分f)
粒度分布:28〜65μm、メディアン径:47.7μm、平均粒径:50.0μm、モード径:46.3μm; 数平均分子量:348,000、GPC法PMMA換算分子量:1,620,000、分子量分布:5.9、ピークトップ分子量:1,560,000
ZMF:シリカ−ジルコニアフィラー、粉体特性は製造例1に記載
TU:無機酸化物粉体とポリマーとの複合体粉体、粉体特性は製造例2に記載
BPO:過酸化ベンゾイル
試験条件を以下に示す。
液材2(組成物III)
TBBO:トリブチルホウ素1モルに対し0.4モルの酸素を付加させた部分酸化トリアルキルホウ素液であるスーパーボンドキャタリスト(サンメディカル(株)製)であり、適用する際は、組成物I中のモノマー0.095gに対してTBBO0.0065gとなるように、使用直前に混合した。
筆積み性
(1)垂れ:テフロン(登録商標)の平板に筆積み法(以下、本法では、いずれも、液(組成物I):粉(組成物II)=約4:7の重量比率となるように調製した)で採取した約0.05gの粉液泥の玉(X)を置き、10秒後に再び採取した約0.05gの粉液泥の玉(Y)をXの上に置き、5秒静置した後のXとYの玉形状の変化より垂れの程度を調べた。
○:XとYの形状がそのまま維持している。
△:XとYの形状を維持しているがやや崩れる。
×:XとYの形状が山型に崩れている。
(2)伸び:テフロン(登録商標)の平板に筆積み法で採取した約0.05gの粉液泥の玉(X)を置き、なにも付けていない筆を用いてXを伸ばして調べた。
○::筆で伸ばしたXに切れがなく、非常に滑らかに延ばせる。
△:筆で伸ばしたXに切れがなく、滑らかに延ばせるが○ほどではない。
×:筆で伸ばしたXに切れが認められ、滑らかに延ばせない。
気泡
φ4mm、厚さ2mmの穴を開けたテフロン(登録商標)モールドの片側にセロファンを敷いたガラスを置き、テフロン(登録商標)とガラスをクリップで挟んだ。
モールドの穴に筆積み法で粉液泥を盛り、セロハンを敷いたガラスを置き、ガラス同士をクリップで挟んだ。透過光に透かしてみて、気泡の混入状態を調べた。
少:気泡が5個以下
多:気泡が6個以上
曲げ特性
ガラス板にセロファンを敷き、更にその上に2×30×2mmの穴の開いたテフロン(登録商標)モールドを置いて、3対2の粉液重量比で混和法に調整した泥を穴に流し込んだ。その上にセロハン、ガラス板を置きクリップでガラス板同士を挟んだ。加圧重合器(NO−1:松風(株)製)で5分間重合させた後、サンプルをモールドから取り出し、37℃の水中に24時間浸漬した。曲げ試験には島津製作所(株)製オートグラフAGS−2000Gを用い、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1.0mm/minで室温にて3点曲げ強度試験法により測定した。
重合硬化時の黄変化
φ4mm、厚さ2mmの穴を開けたテフロン(登録商標)モールドの片側にセロファンを敷いたガラスを置き、テフロン(登録商標)とガラスをクリップで挟んだ。モールドの穴に筆積み法で粉液泥を盛り、セロハンを敷いたガラスを置いた後、ガラス同士をクリップで挟んだ。加圧重合器(NO−1:松風(株)製)で5分間重合させた後、サンプルをモールドから取り出し、サンプルを白色板の上に置き、目視にて黄変の有無を調べた。
○:黄変なし
×:黄色変化、または茶褐色化
組成物Iの変色
組成物Iを透明ガラス瓶に採取して透過光にかざして観察した。
○:組成物Iが無色透明液体
×:組成物Iが有色透明液体
製造例1(シリカ/ジルコニアフィラの製造と表面処理:ZMFの製造
無機酸化物粉体として、以下の方法によりシリカ/ジルコニアフィラーを製造した。イソプロパノール(IPA)1.50Lにテトラエトキシシラン(TES)441g(2.12モル)、1.3重量%塩酸水溶液15g(HO/TESモル比=0.39、HCl/TESモル比=0.0025)を添加し均一化した後、室温下で2時間静置した(A1溶液の調製)。IPA0.38Lにテトラブトキシジルコニウム(TBZR)120g(0.31モル)を室温下添加して均一化した溶液を先に調製したA1溶液に添加して均一化した(B1溶液の調製)。セパラブルフラスコにIPA3.75L、25%アンモニア水1.5Lを添加して室温下、攪拌し均一溶液(C1溶液)とした後、IPA0.09LにTES7.5g(0.04モル)を溶解した溶液(D1溶液)を滴下ロートに入れ5分間で滴下した後、B1溶液を滴下ロートに入れて5時間掛けて滴下した。滴下終了後さらに室温で16時間攪拌を継続した後、攪拌を停止し、この溶液を減圧濾過して、白色の反応析出物を採取した。白色析出物を窒素雰囲気下80℃で減圧乾燥して溶媒を除去し、乾燥体191gを得た。この乾燥体をφ40mmのアルミナボールを10個入れた2Lのアルミナポットに入れ10時間解砕し、350℃で3時間、650℃で3時間焼成して白色のシリカー/ジルコニアフィラー152gを得た。このフィラー152gをエタノール0.30Lに懸濁し、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを7.2g、精製水1.4gを添加し、2時間環流した。溶媒をエバポレーターで除去した後、窒素雰囲気下で2時間/80℃で処理し、フィラーを表面処理した。表面処理化フィラーのメディアン径および粒度分布を測定したところ、メディアン径は11.0μm、粒度分布は1〜100μmであった。以下このフィラーをZMFと云う。
製造例2(無機酸化物粉体とポリマーとの複合体粉体の製造:TU
トリメチロールプロパントリメタクリレート/ジ(メタクリロキシエチル)トリメチルヘキサンジウレタン=70/30(重量%)50gにR972(日本アエロジル(株)製)50gをTest Mixing Roll(安田精機製作所(株)製)を使用して機械的に十分練り混んでペースト化した。このペーストに0.3gの過酸化ベンゾイルを更に煉り込んだ後、170mm×170mm×5mmの穴の開いた金型に入れ圧縮成型機(YSR−10:神藤金属工業(株)製)で20MPa加圧下、120℃で10分間重合した。重合体をハンマーで約1cm角に砕いた後、1Lの磁性ポット(φ25mmの磁性ボール30個、φ15mmの磁性ポット30個入り)に入れ、20時間粉砕した。100メッシュの篩いを通過した粉体を窒素気流下、140℃で8時間減圧熱処理し無機酸化物粉体とポリマーとの複合体粉(以下TUと云う)を得た。TUのメジアン径は23.0μm、粒度分布は1〜100μmであった。
実施例1〜9
表1の通り組成物I、組成物II又はIIIを調整して組み合わせ、操作性、変色、機械的特性を調べた。
比較例1〜2
表2の通り組成物I、組成物IIを調整して組み合わせ、操作性、変色、機械的特性を調べた。
比較例3〜11
表2の通り組成物Iと組成物IIとを組み合わせ変色を調べた。尚、比較例6においては曲げ試験片の作製が不可能であった。
Figure 2009035165
Figure 2009035165
発明の効果
本発明によれば、2組成物タイプの常温重合型レジンにおいて、筆積み法、混和法による操作性、特に筆積み法による築盛性が良好(粉液泥が垂れ難く、伸びが良く、筆離れが良い)で、気泡の混入が少なく、色調、研磨性、機械的特性、耐変色性等に優れる義歯床、人工歯の修復や、歯冠用補綴物、橋義歯が完成するまでの間暫間的に使用する補綴等多目的に利用される歯科用重合性組成物が提供される。

Claims (18)

  1. 歯科用重合性組成物において、
    重合性単量体(a)、
    ラジカル発生剤(b)、
    (メタ)アクリル酸エステルポリマ−粒子(def)より構成され、
    前記(メタ)アクリル酸エステルポリマ−粒子(def)は、
    65〜400μmの粒度分布、70〜120μmの範囲にあるメディアン径且つGPC法PMMA換算分子量(M)が50万〜115万の範囲にある粉体(d)、
    65〜400μmの粒度分布、70〜120μmの範囲にあるメディアン径且つGPC法PMMA換算分子量(M)が115万を超え200万以下の範囲にある粉体(e)、
    10〜65μmの粒度分布、20〜60μmの範囲にあるメディアン径且つGPC法PMMA換算分子量(M)が30万〜300万の範囲にある粉体(f)を主成分としてなる(メタ)アクリル酸エステルポリマ−粒子であり、
    少なくとも、重合性単量体(a)とラジカル発生剤(b)はそれぞれ別個の組成物I、IIIに分けられており、そしてこれらの混合物が硬化性であることを特徴とする歯科用重合性組成物。
  2. 前記(メタ)アクリル酸エステルポリマ−粒子(def)は、前記組成物IIIに含まれている請求項1記載の歯科用重合性組成物。
  3. 前記(メタ)アクリル酸エステルポリマ−粒子(def)は、組成物Iおよび組成物IIIとは別個の組成物IIとして分けられている請求項1に記載の歯科用重合性組成物。
  4. ラジカル発生剤(b)を分解し得る還元剤(c)が、前記組成物Iおよび/またはIIに含まれている請求項1〜3のいずれかに記載の歯科用重合性組成物。
  5. 上記粉体(f)のGPC法PMMA換算分子量(M)が30万〜200万の範囲にある請求項1〜4いずれかに記載の歯科用重合性組成物。
  6. 分子量分布(GPC法PMMA換算分子量(M)/数平均分子量(Mn))が、上記粉体(d)では4.4〜12、上記粉体(e)では2.2〜4.4、および/または、上記粉体(f)では2.2〜4.4である請求項1〜5いずれかに記載の歯科用重合性組成物。
  7. 組成物IIが無機酸化物粒子(g)及び/またはポリマ−と無機酸化物の複合体粒子(h)を更に含有する請求項1〜6のいずれかに記載の歯科用重合性組成物。
  8. 組成物IIが無機酸化物粒子(g)及び/またはポリマ−と無機酸化物の複合体粒子(h)を更に含有する請求項1〜7のいずれかに記載の歯科用重合性組成物。
  9. 上記成分(h)が三官能以上の多官能重合性単量体から誘導されたポリマ−(i)を含有する請求項8に記載の歯科用重合性組成物。
  10. 無機酸化物粒子(g)及び/またはポリマ−と無機酸化物の複合体粒子(h)の粒度分布が1〜100μm、メディアン径が1〜40μmの範囲にある請求項7または8に記載の歯科用重合性組成物。
  11. ラジカル発生剤(b)の80℃での分解半減期が10時間以下である請求項1〜10のいずれかに記載の歯科用重合性組成物。
  12. 組成物Iがヒンダ−ドフェノ−ル系化合物(j)である重合禁止剤をさらに含む請求項1〜11のいずれかに記載の歯科用重合性組成物。
  13. 組成物Iがベンゾフェノン系の紫外線吸収剤(k)をさらに含む請求項1〜12のいずれかに記載の歯科用重合性組成物。
  14. 組成物Iの組成の合計100重量部((a)+(c)+(j)+(k))に対して(a)が90〜99.5重量部であり、(c)が0.5〜10重量部、(j)が0〜0.5重量部、(k)が0〜5重量部であり、組成物IIの組成の合計100重量部((d)+(e)+(f)+(g)及び/または(h)+(b))に対して(d)20〜75重量部、(e)20〜75重量部、(f)1〜30重量部、(g)及び/または(h)1〜20重量部、(b)0.05〜10重量部である請求項1〜13のいずれかに記載の歯科用重合性組成物。
  15. 組成物Iの組成の合計100重量部((a)+(j)+(k))に対して(a)が90〜99.5重量部であり、(j)が0〜0.5重量部、(k)が0〜5重量部であり、組成物IIの組成の合計100重量部((d)+(e)+(f)+(g)及び/または(h))に対して(d)20〜75重量部、(e)20〜75重量部、(f)1〜30重量部、(g)及び/または(h)1〜20重量部であり、組成物IIIが(b)単独或いは(b)と反応しない有機溶剤で希釈されている請求項1〜14のいずれかに記載の歯科用重合性組成物。
  16. (メタ)アクリル酸エステルポリマ−粒子が、粒径55μmを超え〜150μm以下の範囲と20〜55μmの範囲のそれぞれに1つ以上のピークが存在する粒度分布を有し、且つ数平均分子量(Mn)に少なくとも3つのピークPd、Pe、Pfが存在し、Pdは5万〜20万未満の範囲、Peは35万を超え50万以下の範囲、Pfは20万〜35万の範囲である粉体混合物からなる請求項1〜15のいずれかに記載の歯科用重合性組成物。
  17. 前記(メタ)アクリル酸エステルポリマ−粒子を100重量%とした場合において、
    粒径65〜400μmの範囲のものが99〜70重量%であり、粒径1〜30μmの範囲のものが1〜30重量%であり、且つ、
    数平均分子量(Mn)5万〜20万(ここで20万は含まない)の範囲のものが20〜75重量%であり、数平均分子量(Mn)40万〜55万の範囲のものが20〜75重量%であり、数平均分子量(Mn)20万〜40万の範囲のものが1〜30重量%
    である請求項1〜16のいずれかに記載の歯科用重合性組成物。
  18. 請求項1〜17のいずれかに記載の歯科用重合性組成物の各組成物を所定の組成比率にて調合するための歯科用重合性組成物キット。
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