JPWO2008078481A1 - 弾性境界波装置 - Google Patents

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Abstract

比較的簡単な構造で高次モードスプリアスを効果的に抑圧することが可能とされている弾性境界波装置を提供する。圧電体2と誘電体3との境界にIDT電極5が配置されており、圧電体2の上記境界と反対側の面に線熱膨張係数が圧電体2よりも小さい材料からなる低熱膨張率媒質層4が積層されており、前記圧電体2、誘電体3及び低熱膨張率媒質層4における弾性境界波伝搬方向における横波の音速が下記の式(1)を満たし、かつIDT電極5の波長をλとしたときに、誘電体における横波の音速/λが下記の式(2)を満たす、弾性境界波装置1。誘電体における横波の音速<圧電体におけるSH波の音速<低熱膨張率媒質層における横波の音速…式(1)弾性境界波の応答周波数<誘電体における横波の音速/λ<高次モードの応答周波数…式(2)

Description

本発明は、例えば共振子や帯域フィルタなどに用いられる弾性境界波装置に関し、より詳細には、圧電体と誘電体との境界を伝搬する弾性境界波を利用した弾性境界波装置に関する。
従来、携帯電話機の帯域フィルタなどにおいて、弾性表面波装置が広く用いられている。例えば、下記の特許文献1には、図14に略図的に断面構造を示す弾性表面波フィルタが開示されている。
図14に示す弾性表面波フィルタ501では、LiTaOからなる圧電体502上に、IDT電極503が形成されている。圧電体502のIDT電極503が形成されている面とは反対側の面である裏面にサファイア504が接合されている。圧電体502の厚みをT、利用する弾性表面波の波長をλとしたときに、圧電体の502の厚みと弾性表面波の波長λとの比T/λが10以上とされている。それによって、圧電体502とサファイア504との境界面でのバルク波(BAW)の反射によるスプリアスを低減することができるとされている。
近年、弾性表面波装置に代えて、圧電体と誘電体との境界を伝搬する弾性境界波を利用した弾性境界波装置が種々提案されている。弾性表面波装置では、圧電体表面に形成されたIDT電極を励振させるに際し、振動を妨げないための空隙を設ける必要あった。そのため、パッケージ構造が複雑かつ大型にならざるを得なかった。これに対して、弾性境界波装置では、圧電体と誘電体との境界を伝搬する弾性境界波を用いているため、空隙を設ける必要がない。従って、パッケージの簡略化及び小型化を図ることが可能となる。
他方、下記の特許文献2には、吸音媒質/SiO/IDT電極/LiNbOの積層構造を有する弾性境界波装置が開示されている。ここでは、吸音媒質の横波音速が、SiOの横波音速よりも遅くされている。吸音媒質は、エポキシ樹脂あるいはポーラスなSiOにより構成されている。上記吸音媒質を設けることにより、高次モードスプリアスが抑制されると述べられている。
また、下記の特許文献3には、多結晶ケイ素膜/多結晶酸化ケイ素膜/IDT/圧電単結晶基板からなる積層構造を有する弾性境界波装置が開示されている。ここでは、多結晶ケイ素膜を形成することにより、IDT電極で励振される弾性境界波が多結晶酸化ケイ素膜までの部分に閉じ込められている。また、多結晶ケイ素膜及び多結晶酸化ケイ素膜によりIDT電極が確実に保護されるとされている。
また、下記の特許文献4には、圧電体と誘電体との境界にIDT電極が配置されており、SH型の弾性境界波を利用した弾性境界波装置が開示されている。ここでは、誘電体を伝搬する遅い横波の音速及び圧電体を伝搬する遅い横波の音速よりもSH型境界波の音速を低くするようにIDT電極の厚みが決定されている。それによって、電気機械結合係数が大きく、伝搬損失及びパワーフロー角が小さく、周波数温度係数TCFが適度な範囲に調整され得る旨が記載されている。
特開2004−186868号公報 WO 2005/069486 A1 WO 98/52279 WO 2004/070946 A1
弾性境界波装置においても、利用する弾性境界波よりも高次のモードによるスプリアスを抑圧することが求められる。
特許文献1に記載のように、弾性表面波装置では、圧電体のIDT電極が形成されている側とは反対側の面にサファイアなどの他の固体を接合し、圧電体の厚みと表面波の波長との比を特定の範囲とすれば、高次モードのスプリアスを低減することが可能である。
特許文献1の段落(0036)〜(0042)には、42°YカットX伝搬のLiTaOの表面にIDT電極を形成し、裏面にR面カットのサファイア基板を積層した例が開示されている。この構成では、LiTaO基板の表面をSH成分が主体の第一漏洩表面波が伝搬する。特許文献1の段落(0034)によれば、このような構造では、LiTaOとサファイヤ基板との境界面でのBAWの反射によるスプリアスが生じるとの記載がある。
一方、本願発明者の知見によれば、この条件において生じるスプリアスはP波、SH波、SV波が結合して伝搬する高次伝搬モードと捉えることができる。このカット方位のLiTaOの伝搬方位に伝搬するSV波の音速は、3351m/sであり、SH波音速は、4227m/sである。一方、サファイアの横波音速は6463m/sである。LiTaOにおけるSH波の音速より、サファイアにおける横波音速のほうが高音速であるため、LiTaO基板の表面と、サファイアとLiTaOの界面との間にSH成分主体の高次モードスプリアス及びP+SV成分主体の高次モードスプリアスが発生する。なお、42°YカットX伝搬のLiTaO基板はSH波を強く励振するため、SH成分主体の高次モードスプリアスが強く発生する。
特許文献1では、LiTaO基板の厚みを厚くすることにより、高次モードによるスプリアスを減少させている。
しかしながら、特許文献1のLiTaO基板が薄い場合の図6の周波数特性とLiTaO基板の厚い場合の図10の周波数特性とを比較すると、確かに特許文献1の図6より、特許文献1の図10の場合のほうがスプリアスは抑制されているが、スプリアスの個数は増えている。すなわち、LiTaO基板の厚みを増やすことによりスプリアスとなる高次モードの励振強度は緩和され得るものの、多くの次数の高次モードが閉じ込められることになる。そのため、表面波装置のフィルタ特性は十分には改善されない。
他方、特許文献2では、SiO上に、横波音速がSiOの横波音速よりも遅い吸音媒質が形成されており、それによって高次モードを抑制することができるとされている。しかしながら、上記吸音媒質として用いられるエポキシ樹脂、ポリイミド、液晶ポリマーなどの樹脂材料の線熱膨張係数は大きい。そのため、弾性境界波伝搬のためのSiO/IDT/LiNbO構造の強度が十分でない場合には、吸音媒質の線熱膨張係数の影響により、弾性境界波装置の温度による伸縮が大きくなりがちであった。よって、弾性境界波装置の周波数温度係数TCFの絶対値が大きくなるという問題があった。
なお、特許文献3に記載の弾性境界波装置では、LiNbOなどからなる圧電単結晶基板に、熱膨張係数が小さいSiが貼り合わされているので、周波数温度係数TCFの絶対値を小さくすることができる。この場合、高音速の材料であるSiと、LiNbOとの間に、低音速の材料であるSiOを配置することにより、SiO領域に弾性境界波の主伝搬モードが閉じ込められる。
また、上記特許文献4に記載の弾性境界波装置では、電極として、SiOと同程度に軽いAlではなく、AuなどのAlよりも重い金属を用いた場合には、SiO全体ではなく、圧電基板側に弾性境界波の主モードの振動エネルギーが集中する。従って、弾性境界波の電気機械結合係数Kを大きくすることができる。
しかしながら、特許文献3に記載の弾性境界波装置のように高音速の媒質間に低音速の媒質を挟んだ構造では、低音速の媒質の厚みや膜質により音速が変化し、弾性境界波装置の周波数ばらつきが生じがちであった。したがって、低音速の媒質の厚みや膜質の緻密な品質管理が必要であった。
他方、低音速の媒質の厚みを厚くすることにより、弾性境界波の主モードのエネルギー分布への低音速媒質の厚みによるばらつきの影響を緩和することができる。しかしながら、低音速の媒質の厚みを大きくすると、高次モードスプリアスが生じることとなる。
特許文献2〜4に記載のように、従来の弾性境界波装置では、高次モードスプリアスの抑圧や電気機械結合係数の向上及び周波数温度係数TCFの絶対値を小さくする様々な試みがなされてきたが、表面波装置の場合とは異なり、弾性境界波装置では、高次モードスプリアスを十分に抑圧することは実現されていなかった。
本発明の目的は、上述した従来技術の状況に鑑み、比較的簡単な構造で高次モードによるスプリアスを、従来技術のように応答個数を大幅に増やすことなく、応答強度を効果的に抑制することがででき、良好なフィルタ特性や共振特性を得ることを可能とする弾性境界波装置を提供することにある。
本願第1の発明によれば、圧電体と、前記圧電体上に積層された誘電体と、前記圧電体と誘電体との界面に配置されたIDT電極と、前記圧電体の前記界面とは反対側の面に積層されており、前記圧電体よりも線熱膨張係数が小さい材料からなる低熱膨張率媒質層とを備え、前記圧電体と前記誘電体との境界を伝搬するSH型弾性境界波を利用しており、前記圧電体におけるSH波の音速が下記の式(1)を満たし、かつ前記IDT電極の波長をλとしたときに、前記SH型弾性境界波の応答周波数及び高次モードの応答周波数に対し、誘電体における横波の音速/λが下記の式(2)の範囲を満たしていることを特徴とする、弾性境界波装置。
誘電体における横波の音速<圧電体におけるSH波の音速<低熱膨張率媒質層における横波の音速…式(1)
弾性境界波の応答周波数<誘電体における横波の音速/λ<高次モードの応答周波数…式(2)
本願の第2の発明によれば、圧電体と、前記圧電体上に積層された誘電体と、前記圧電体と誘電体との界面に配置されたIDT電極と、前記圧電体の前記IDT電極が形成されている側の面と反対側の面に積層されており、前記圧電体よりも線熱膨張係数が小さい材料からなる低熱膨張率媒質層とを備え、前記圧電体と前記誘電体との境界を伝搬するストンリー型弾性境界波を利用しており、前記圧電体におけるSV波の音速が下記の式(3)を満たし、かつ前記IDT電極の波長をλとしたときに、前記ストンリー型弾性境界波の応答周波数及び高次モードの応答周波数に対して、誘電体における横波の音速/λが下記の式(4)を満たしていることを特徴とする、弾性境界波装置。
誘電体における横波の音速<圧電体におけるSV波の音速<低熱膨張率媒質層における横波の音速…式(3)
弾性境界波の応答周波数<誘電体における横波の音速/λ<高次モードの応答周波数…式(4)
なお、本発明(以下、第1,2の発明を総称して本発明ということとする。)において、「誘電体における横波」及び「低熱膨張率媒質層における横波」とは、誘電体及び低熱膨張率媒質が異方性を有しない場合の材料である場合には、S波である。他方、誘電体及び低熱膨張率媒質は、いずれも異方性を有する材料であってもよい。これらが異方性を有する材料である場合には、第1の発明では、「誘電体における横波」及び「低膨張率媒質層における横波」は、SH型の横波となる。また、第2の発明では、「誘電体における横波」及び「低熱膨張率媒質層における横波」は、SV型の横波となる。すなわち、本発明における「横波」とは、異方性を有しない材料における横波だけでなく、異方性を有する材料の場合のSH型の横波やSV型の横波をも含むものとする。
本発明では、好ましくは、上記圧電体の厚みは1λ以上、50λ以下とされる。なお、圧電体の厚みとは、圧電体と誘電体とを積層した積層方向の寸法をいうものとする。
利用する弾性境界波の振動のエネルギーは、圧電体と誘電体との境界から圧電体の深さ1λまでの範囲に主として分布している。従って、弾性境界波を伝搬させるには、圧電体の厚みは1λ以上とすることが望ましい。圧電体の厚み1λ未満では、弾性境界波のエネルギー分布が低熱膨張率媒質層に至り、圧電体と低膨張率媒質界面接合(接着)の状態や圧電体の厚みばらつきによる周波数ばらつきが大きくなるおそれがある。
弾性境界波装置全体の線熱膨張係数は、圧電体と誘電体と低熱膨張率媒質の厚みの比で決まる。圧電体の厚みが50λ以下の場合には、圧電体がさほど厚くないため、相対的に弾性境界波装置全体の線膨張係数を小さくすることができ、低熱膨張率媒質層を薄くすることができる。そのため、全体の厚みが小さく、温度特性が良好な弾性境界波装置を提供することができる。
好ましくは、誘電体の前記境界とは反対側の面に吸音層が設けられる。それによって、誘電体の境界と反対側の面に漏洩してきた高次モードスプリアスを吸音層により吸音し、高次モードスプリアスをより一層効果的に抑圧することができる。
また、好ましくは、誘電体の上記境界とは反対側の面に弾性波を散乱する構造が設けられる。この場合には、誘電体の上記境界とは反対側の面に漏洩してきた弾性波が散乱されるので、それによって、高次モードスプリアスをより効果的に抑圧することができる。この弾性波を散乱する構造については、誘電体の境界とは反対側の面を粗面にしたり、もしくは、該反対側の面に凹凸を形成したりした構造、または誘電体の上記境界とは反対の側の面に無機もしくは有機粒子を付着させた構造等の適宜の構造を用いることができる。
好ましくは、圧電体と低熱膨張率媒質層との間に吸音層が設けられ、その場合には、圧電体の境界とは反対側の面に漏洩してきた高次モードを該吸音層により吸収することができる。従って、高次モードスプリアスをより効果的に抑圧することができる。
本発明においては、好ましくは、上記圧電体及び誘電体は絶縁材料により形成されている。圧電体及び誘電体が絶縁材料により形成されている場合には、IDT電極による電気音響変換特性の劣化が生じ難い。そのため、弾性境界波共振子の場合には、共振特性や反共振抵抗の劣化が生じ難く弾性境界波フィルタの場合には損失の悪化が生じ難い。すなわち、圧電体及び誘電体はIDT電極に接する媒質である。この媒質が、Siなどの半導体材料の場合には、媒質を経由して電流が流れることになり、IDT電極の電気音響変換性能が劣化する。これに対して、上記圧電体及び誘電体が絶縁性材料からなる場合には、上記のようにIDT電気音響変換性能の劣化が生じ難い。好ましくは、IDT電極のおける異なる電位に接続される電極部分間の抵抗値は10kΩ以上であることがより一層望ましい。
(発明の効果)
第1の発明に係る弾性境界波装置では、圧電体の上記境界とは反対側の面に低熱膨張率媒質層が積層されており、圧電体、誘電体及び低熱膨張率媒質層のそれぞれにおいて、境界波伝搬方向におけるSH型の横波音速が上述した式(1)を満たす関係とされており、かつ誘電体における横波の音速/λが上記式(2)を満たしているため、高次モードによるスプリアスを効果的に低減することができる。この理由は、以下の通りであると考えられる。
すなわち、高次モードは、圧電体における横波の音速が誘電体における横波の音速よりも低く、かつ圧電体におけるSH波の音速が上記低熱膨張率媒質層の横波の音速よりも低い場合に発生し、それ以外の場合には、圧電体から周囲に漏洩することとなる。他方、弾性境界波の音速が、圧電体及び誘電体における横波よりも遅い場合には、弾性境界波は無損失で伝搬され得る。従って、上記式(1)、式(2)を満たしている場合には、弾性境界波が無損失で伝搬し、かつ高次モードを圧電体から周囲に漏洩させ、高次モードによるスプリアスを効果的に低減することができる。
同様に、第2の発明においても、圧電体、誘電体及び低熱膨張率媒質層の境界波伝搬方向におけるSV型の横波の音速の関係が、式(3)を満たし、かつ誘電体における横波の音速/λが式(4)を満たしているため、ストンリー型弾性境界波を利用し、かつ該ストンリー型弾性境界波の高次モードを効果的に抑圧することができる。
よって、第1,2の発明によれば、圧電体と誘電体とを積層し、圧電体の境界とは反対側の面に前記低熱膨張率媒質層を積層した比較的簡単な構造を用いて、高次モードによるスプリアスを効果的に抑圧することができ、良好な共振特性やフィルタ特性を得ることを可能とする弾性境界波装置を提供することができる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性境界波装置の模式的正面断面図である。 図2は、第1の実施形態の弾性境界波装置におけるSH型弾性境界波のエネルギー分布を模式的に示す図である。 図3は、スプリアスの原因となる高次モードのエネルギー分布を模式的に示す図である。 図4は、本発明の第2の実施形態に係る弾性境界波装置の模式的正面断面図である。 図5は、比較例として用意した弾性境界波装置の模式的正面断面図である。 図6は、図5に示した比較例の弾性境界波装置のインピーダンス特性を示す図である。 図7は、第2の実施形態の弾性境界波装置のインピーダンス特性を示す図である。 図8は、比較例及び第2の実施形態の弾性境界波装置におけるSH型境界波のエネルギー分布を模式的に示す図である。 図9は、比較例の弾性境界波装置における高次モードのエネルギー分布を示す図である。 図10は、比較例の弾性境界波装置における高次モードのエネルギー分布を示す図である。 図11は、第2の実施形態の弾性境界波装置における高次モードのエネルギー分布を示す図である。 図12は、第2の実施形態の弾性境界波装置における高次モードのエネルギー分布を示す図である。 図13は、第2の実施形態の弾性境界波装置の変形例を示す模式的正面断面図である。 図14は、従来の弾性表面波装置の一例を示す模式的正面断面図である。
符号の説明
1…弾性境界波装置
2…圧電体
3…誘電体
4…低熱膨張率媒質層
5…IDT電極
6…吸音層
7…吸音層
11…弾性境界波装置
以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態を説明することにより本発明を明らかにする。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性境界波装置の模式的正面断面図である。
弾性境界波装置1は、圧電体2と、圧電体2上に積層された誘電体3と、圧電体2の誘電体3と反対側の面に積層された低熱膨張率媒質層4と、圧電体2と誘電体3との境界に設けられたIDT電極5とを備える。本実施形態の弾性境界波装置1は、圧電体2と誘電体3との境界とを伝搬するSH型弾性境界波を利用した弾性境界波装置である。
上記圧電体2としては、LiTaO、LiNbOまたは水晶などの適宜の圧電単結晶を用いることができる。
上記誘電体3としては、SiOなどの適宜の無機誘電体材料や、適宜の有機誘電体材料を用いることができる。
低熱膨張率媒質層4は、線膨張係数が圧電体2よりも小さい材料からなる。このような材料としては、Si、サファイア、SiNなどを挙げることができる。
本実施形態の特徴は、弾性境界波伝搬方向における圧電体2におけるSH波の音速が下記の式(1)を満たしており、かつIDT電極5の波長をλとしたときに、誘電体における横波の音速/λと、弾性境界波の応答周波数と、弾性境界波高次モードの応答周波数との関係が下記の式(2)を満たしていることにある。
誘電体における横波の音速<圧電体におけるSH波の音速<低熱膨張率媒質層における横波の音速…式(1)
弾性境界波の応答周波数<誘電体における横波の音速/λ<高次モードの応答周波数…式(2)
なお、「誘電体における横波」及び「低熱膨張率媒質層における横波」とは、これらの材料が異方性を有しない場合は、S波であり、異方性を有する場合には、SH型の横波であり、「誘電体における横波の音速」及び「低熱膨張率媒質層における横波の音速」とは、上記S波及びSH型の横波の双方を含むものとする。
また、弾性境界波伝搬方向におけるSH波、SV波、S波、P波等の音速は、材料によって一意的に定まる値である。弾性境界波装置において圧電体、誘電体または低熱膨張率媒質層として用いる材料の音速の代表的な値を後述する表1に示す。
式(2)において、誘電体の横波音速/λ<高次モードの応答周波数である条件は、高次モードがカットオフされる条件であり、この条件を満たさない場合には、高次モードを抑圧することはできない。
また、本実施形態では、誘電体層3の圧電体2と誘電体3との境界とは反対側の面3aに凹凸が付与されている。この凹凸は、面3a側に伝搬してきた弾性境界波の高次モードを散乱させ、それによって、高次モードスプリアスの共振特性やフィルタ特性への影響をより一層小さくするために設けられている。
なお、高次モードを散乱するための構造については、上記凹凸の他、表面3aを粗面とする方法、表面3aに有機もしくは無機粒子を付着させた構造などの様々な構造を用いることができる。
本実施形態の弾性境界波装置1では、上記低熱膨張率媒質層4が設けられており、かつ前述した式(1)及び式(2)を満たしている高次モードによるスプリアスを小さくすることができる。
低熱膨張率媒質層4は、圧電体2の線膨張係数よりも小さい線膨張係数を有する。従って、弾性境界波装置1では、温度変化による変形が小さくなり、温度特性を改善することができる。このような線膨張係数が小さい材料は、圧電体の膨張を抑制し得るだけの固さを有することが求められる。そのため、低熱膨張率媒質層4を構成する材料としては、前述したSi、サファイアまたはSiNなどのように、SH型やストンリー型の横波の音速が速い材料を用いることが望ましい。
図2は、上記弾性境界波装置1の厚み方向位置を縦軸とした場合の弾性境界波のエネルギー分布を模式的に示す図である。図2の横軸は、右側にいくにつれて弾性境界波の振動エネルギーが高いことを示す。図2から明らかなように、利用するSH型の弾性境界波のエネルギー分布は、圧電体2と誘電体3との境界において最も大きくなり、境界から離れるに従って急激に減衰する。そして、弾性境界波のエネルギー分布は低熱膨張率媒質層4にはほとんど至っていない。よって、弾性境界波が圧電体2と誘電体3の境界を中心として良好に伝搬され得る。
他方、図3は、抑圧されるべき高次モードのエネルギー分布を模式的に示す図であり、矢印Aで示す高次モードA、矢印Bで示す高次モードBの双方が圧電体2以内において大きなエネルギー分布を有し、圧電体2内にほぼ閉じこもって伝搬することがわかる。このように高次モードA,Bが圧電体2内にほぼ閉じこもって伝搬する条件とは、高次モードの音速が、誘電体3における横波音速及び低熱膨張率媒質層4における横波音速よりも遅いことである。
特許文献1に記載のような弾性表面波装置では、IDT電極上に誘電体が存在せず、圧電体502の上面の空間の音速は無限大と近似される。従って、圧電体と圧電体上の空間との間の境界、すなわち圧電体表面にほぼ閉じこもって高次モードが伝搬することとなる。
これに対して、弾性境界波装置1では、IDT電極5上に誘電体3が配置されている。ここで、SH成分主体の弾性境界波装置の場合、圧電体2におけるSH波の音速と誘電体3における横波の音速とが、利用する弾性境界波よりも速ければ、弾性境界波は漏洩せずに無損失で伝搬することができる。一方、弾性境界波の音速よりも、圧電体2におけるSH波や縦波の音速が速いので、通常、圧電体2に閉じこもって圧電体2の横波と縦波が結合しながら主成分となって伝搬する高次モードは、弾性境界波よりも高音速となる。
そこで、本実施形態では、誘電体における横波の音速が、圧電体2におけるSH波の音速及び低熱膨張率媒質層4における横波音速よりも低速とされている。すなわち、式(1)の関係を満たすように圧電体2、誘電体3及び低熱膨張率媒質層4が構成されている。加えて、誘電体3における横波音速が、弾性境界波の音速と高次モードの音速との間とされているので、すなわち、式(2)を満たしているので、利用するSH型の弾性境界波が無損失で伝搬し、スプリアスとなる高次モードは、誘電体3側に漏洩する漏洩波として減衰させることが可能とされている。
よって、本実施形態によれば、上記高次モードによるスプリアスを小さくすることができ、良好な共振特性やフィルタ特性を得ることができる。
なお、弾性境界波には、SH成分とするSH型の弾性境界波と、P+SV成分を主体とするストンリー波、すなわちP+SV型弾性境界波が存在する。SH型弾性境界波やストンリー波は、それぞれ、SH成分のみあるいは、P+SV成分のみで伝搬することもあるが、異方性結晶であるLiTaOやLiNbOなどの圧電単結晶を圧電体として用いた場合には、圧電体の多くの基板方位において、P成分、SH成分及びSV成分の3成分が結合して伝搬するのが普通である。
例えば、圧電体2としてYカットX伝搬のLiTaOを、誘電体3としてSiOを、低熱膨張率媒質層として多結晶Siを、IDT電極5として十分な厚みのAu膜を用いて弾性境界波装置1を構成した場合を考えてみる。この場合には、SH型の弾性境界波が圧電体2と誘電体3との境界を伝搬することとなるが、垂直横波SV波の音速は3351m/秒であり、SiOにおける横波音速3757m/秒よりも低速である。従って、高次モードのSV波成分のエネルギーを誘電体3側に漏洩させ、高次モードを分散させることができる。しかしながら、主成分であるSH波の音速4227m/秒は、SiOにおける横波音速よりも高速であるため、高次モードのSH波成分のエネルギーが漏洩しずらくなり、十分に減衰させることは難しい。
SH型の弾性境界波が伝搬する条件では、SH成分を主体とする高次モードが強く励振される。従って、SH成分を主体とする高次モードを漏洩波として減衰させることが望ましい。よって、SH型の弾性境界波を用いた場合には、圧電体における横波をSH波とし、ストンリー型弾性境界波を用いた場合には上記横波をSV波とする必要がある。
従って、ストンリー型弾性境界波を用いた場合には、圧電体におけるSV波の音速が下記の式(3)を満たしており、IDT電極の波長をλとしたときに、ストンリー型弾性境界波の応答周波数と、該弾性境界波の高次モードの応答周波数と、誘電体における横波の音速とが下記の式(4)を満たす範囲とすることが必要である。
誘電体における横波の音速<圧電体におけるSV波の音速<低熱膨張率媒質層における横波の音速…式(3)
弾性境界波の応答周波数<誘電体における横波の音速/λ<高次モードの応答周波数…式(4)
なお、上記式(3)及び(4)における横波とは、誘電体及び低熱膨張率媒質層が異方性を有しない材料である場合にはS波であり、異方性を有する材料の場合には、SV波となる。すなわち、上記「横波」はS波である横波の他、異方性を有する材料である場合には、SV波をも含むものとする。
なお、好ましくは、上記誘電体3及び圧電体2はこの実施形態にように絶縁性材料からなることが好ましい。誘電体3及び圧電体2が半導体からなる場合には、IDT電極5からの電流がこれらに流れ、IDT電極5における電気音響変換性能が低下するおそれがある。これに対して、誘電体3及び圧電体2が絶縁性材料からなる場合には、IDT電極5における電気音響変換性能の劣化が生じ難い。従って、弾性境界波装置の電気的特性、例えば共振抵抗、もしくは反共振抵抗、あるいは挿入損失などの劣化が生じ難い。より好ましくは、上記IDT電極5の異なる電位に接続される電極間部分の抵抗値は10kΩ以上であることが望ましい。
図4は、本発明の第2の実施形態の弾性境界波装置11の模式的正面断面図であり、図5は、比較のために用意した比較例の弾性表面波装置21の模式的正面断面図である。
上記弾性境界波装置11,21について、具体的な実験例を説明しつつ、本実施形態の弾性境界波装置11の構造及び効果を明らかにする。
図4に示すように、弾性境界波装置11は、弾性境界波装置1と同様に、圧電体2と誘電体3と、圧電体2の誘電体3との境界波と反対側の面に積層された低熱膨張率媒質層4とを備える。そして、圧電体2と誘電体3との境界にはIDT電極5が形成されている。さらに、本実施形態では、誘電体3の上記境界とは反対側の面3a上に吸音層6が積層されている。
本実施形態においても、弾性境界波装置11は、前述した式(1)及び式(2)を満たすように構成されているため、弾性境界波の高次モードが誘電体3側に漏洩され、高次モードによるスプリアスが小さくされている。他方、利用するSH型またはストンリー型の弾性境界波は、ほぼ無損失で上記境界付近を伝搬するため、良好な共振特性やフィルタ特性を得ることが可能とされている。
加えて、本実施形態では、上記吸音層6が設けられているため、誘電体層3の表面3a側に伝搬してきた高次モードが吸音層6で吸収され、それによって、高次モードスプリアスをより小さくすることが可能とされている。上記吸音層6としては、高次モードを吸収し得る材料であれば特に限定されず、例えば合成樹脂などの適宜の有機材料、多孔質シリカ、多孔質アルミナ、多孔質酸化チタン、多孔質ガラス、多孔質マグネシア(MgO)、多孔質アルミニウムなどの多孔質無機材料を挙げることができる。上記合成樹脂としては、例えば、ポリイミド、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
また、吸音層6の厚みは、伝搬してきた高次モードを吸収し得る限り特に限定されないが、高次モードを確実に吸収するには、1.0λ以上の厚みとすることが望ましい。吸音層6の厚みが厚すぎると、弾性境界波装置11の厚みが厚くなりすぎ、好ましくない。従って、吸音層6の厚みは200μm以下とすることが好ましい。
次に、上記吸音層6を有する弾性境界波装置11において、高次モードが効果的に抑圧され得ることを具体的な実験例に基づき説明する。
以下の仕様で弾性境界波装置11を作成した。
圧電体2:15°YカットX伝搬のLiNbO、厚さ4λ
誘電体3:SiO、厚さ5λ、表面3aに凹凸を有する。
低熱膨張率媒質層4:多結晶Si、厚さ50λ
吸音層6:ポリイミド、厚さ3λ
IDT電極:Au、厚さ0.05λ、デュティー=0.6
比較のために、図5に示す弾性境界波装置21を作成した。弾性境界波装置21では、圧電体22と誘電体23との界面にIDT電極25が形成されている。もっとも、誘電体23の圧電体22と誘電体23との境界とは反対側の面23aに低熱膨張率媒質層24が積層されている。また、圧電体22の上記境界とは反対側の面22a上に吸音層26が積層されている。製造に際しては、圧電体上にIDT電極25を形成し、IDT電極を覆うように誘電体膜を形成した。しかる後、誘電体膜をCMPにより研磨し、研磨された誘電体層表面と低熱膨張率媒質層24の表面を活性化処理し、貼り合わせた。
比較例の弾性境界波21の仕様は以下の通りとした。
圧電体22:15°YカットX伝搬のLiNbO、厚さ125λ
圧電体22のIDT電極25が形成されている側とは反対側の面に凹凸を設けた。
誘電体23:SiO、厚さ4λ、
低熱膨張率媒質層24:多結晶Si、厚さ10λ
吸音層26:ポリイミド
IDT電極25:Au、厚さ0.05λ、デュティー=0.6
なお、上記実施形態の弾性境界波装置11及び比較例の弾性境界波装置21では、IDT電極5,25は、1ポート型弾性境界波共振子を構成するように形成した。
上記のようにして作成した実施形態の弾性境界波装置11のインピーダンス特性を図7に、比較例の弾性境界波装置21のインピーダンス特性を図6に示す。図6から明らかなように、比較例の弾性境界波装置では、高次モードによる大きなスプリアスが発生している。すなわち、比較例の弾性境界波装置21では、圧電体22の厚みが十分に厚く、かつ圧電体22の表面22aに凹凸を設け、さらに吸音層26を積層しているが、高次モードによるスプリアスはかなり大きいことがわかる。
これに対して、図7から明らかなように、実施形態の弾性境界波装置11では、高次モードによるスプリアスがほとんど現れていない。
図8は、実施形態や比較例の弾性境界波装置21におけるSH型境界波のエネルギー分布を示す模式図である。図8における縦軸は弾性境界波装置21の厚み方向位置を示し、0.0の部分が圧電体22と誘電体23との境界を示す。また、横軸はエネルギー(規格化された値)を示す。このエネルギーの規格化された値とは、最も大きなエネルギーを1.0として規格化した値である。
図8から明らかなように、IDT電極が設けられている圧電体22と誘電体23との境界部分に振動が集中していることがわかる。また、この部分において最も大きな変位が得られ、圧電体22と誘電体23とでエバネセントに振動が減衰しているので、非漏洩型、すなわち伝搬損失が0である振動モードであることがわかる。なお、図8において、U1は弾性境界波のP成分、U2はSH成分、U3はSV成分を示している。
図9及び図10は、上記比較例の弾性境界波装置21における高次モードスプリアスエネルギー分布を示す模式図である。図9及び図10においても、U1は高次モードのP成分、U2はSH成分、U3はSV成分をそれぞれ表している。高次モードの振動は、誘電体23に集中していることがわかる。また、誘電体層23内において最も大きな変位がみられ、圧電体22と低熱膨張率媒質層24とでは、エバネセントに減衰しており、非漏洩型の振動モードであることがわかる。従って、圧電体の厚みを125λと厚くしたとしても、また圧電体22の表面に凹凸を付与し、さらに吸音層26を形成したとしても、高次モードを減衰させることが困難であることがわかる。
他方、図11及び図12は、上記実施形態の弾性境界波装置における高次モードスプリアスのエネルギー分布を示すものである。なお、主モードであるSH型境界波のエネルギー分布は、比較例について示した図8と同一となる。
図11及び図12においても、U1は、P成分、U2は、SH成分、U3は、SV成分を示す。
図11及び図12から明らかなように、圧電体2には高次モードの振動が集中せず、誘電体3側に漏洩していることがわかる。従って、漏洩型の振動モードであることがわかる。そのため、上記実施形態では、誘電体3の上記境界とは反対側の面側に高次モードが漏洩し、しかも誘電体3の表面3aに凹凸が設けられているので、該高次モードが散乱され、さらに吸音層6により吸音されるため、高次モードによるスプリアスを効果的に抑圧することが可能とされている。
なお、下記の表1は、上記実施形態の弾性境界波装置11及び比較例の弾性境界波装置21を構成した各媒質の横波音速を示す。
Figure 2008078481
上記比較例の弾性境界波装置11では、誘電体であるSiOの横波音速、すなわちS波の音速3757m/秒よりも、周波数応答の周波数×λの値が大きくなると、高次モードスプリアスが発生している。また、上記実施形態の弾性境界波装置11では、LiNbOの遅い横波音速、すなわちSV波の音速である4031m/秒よりも、周波数応答の周波数×λの値が大きくなると、高次モードスプリアスがわずかであるが発生している。
このように、高次モードスプリアスの発生周波数は、IDT電極が発生している媒質の音速により制約される。従って、上記実施形態のように、圧電体2の横波音速よりも誘電体3の横波音速を遅くすることにより、高次モードスプリアスは誘電体3の音速よりも大きな周波数×λから生じるため、高次モードスプリアスを漏洩波とすることができる。なお、第2の実施形態の弾性境界波装置11では、SH型境界波を用いた例について示したが、第1の実施形態と同様に、ストンリー型の弾性境界波を用いてもよい。
上記のように、本発明の弾性境界波装置では、(必要に応じて設けられる吸音層)/誘電体層/IDT電極/圧電体/低熱膨張率媒質層の積層構造を用いることにより、すなわち比較的簡単な積層構造を用いることにより、高次モードによるスプリアスを効果的に抑圧することができ、かつ上記低熱膨張率媒質層の積層により温度変化による特性の変化も抑制することができる。従って、本発明の弾性境界波共振子を用いて発振回路を形成して場合には、異常発振の可能性を著しく小さくすることができる。また、本発明の弾性境界波装置を用いて帯域フィルタを構成した場合には、高次モードスプリアスによる影響が生じ難いため、良好なフィルタ特性を得ることができる。
なお、第1,2の実施形態では、圧電体2に低熱膨張率媒質層4が直接積層されていたが、図13に示すように、両者の間にさらに吸音層7を積層してもよい。吸音層7を配置した場合には、低熱膨張率媒質層4からの応力を圧電体2に伝えるために、吸音層7は薄くされることが望ましく、あるいは固い材料で構成されることが望ましい。従って、吸音層7としては、エポシキ樹脂のように、ヤング率が数GPa以下の樹脂材料により構成する場合には、その厚みは数λ以下とすることが望ましい。また、SOG(スピンオングラス)のように硬質な材料であって、SiOに比べて密度が低い材料により吸音層7を形成してもよい。さらに、吸音層7としては、圧電体2と低熱膨張率媒質層4との界面に金属を拡散させ、界面部の結晶構造を破壊した構造により形成されてもよい。
なお、上記圧電体2は、他の適宜の材料、例えば、ZnO、Ta、PZT、AlN、LiTaO、KNにより形成してもよい。また、上記誘電体3は、他の適宜の材料、例えば、Siガラス、SiO、SiC、Al、DLC、ZnO、Ta、PZT、AlN、LiTaO、KNにより形成してもよい。
また、低熱膨張率媒質層4を構成する材料についても、上述した多結晶Siに限らず、多結晶Si、SiC、Al、Al、サファイア、ダイアモンドライクカーボン(DLC)などの適宜の材料により形成され得る。
さらに、低熱膨張率媒質層4は、圧電体2に貼り付けられて接合されてもよく、低熱膨張率媒質層を構成する材料を、適宜の方法で成膜することにより形成してもよい。このような成膜法としては、スパッタ、CVD、蒸着、塗工法などを挙げることができる。
さらに、本発明の弾性境界波装置では、(必要に応じて設けられる吸音層)/誘電体/IDT電極/圧電体/低熱膨張率媒質層の積層構造のさらに外側に、保護層を形成してもよい。保護層の形成により、弾性境界波装置の強度を高めたり、腐食性ガスの浸入を防止したりすることができる。このような保護層を構成する材料としては、特に限定されず、ポリイミドやエポキシ樹脂などの合成樹脂、酸化チタン、窒化アルミニウムもしくは酸化アルミニウムなどの無機材料などの絶縁性材料を挙げることができる。また、上記保護層は、Au、AlまたはWなどの金属膜によりに形成されてもよい。
さらに本発明の弾性境界波装置は、上記保護層を設けたりして、または保護層を設けずに、他のパッケージに封入してもよい。

Claims (7)

  1. 圧電体と、
    前記圧電体上に積層された誘電体と、
    前記圧電体と誘電体との界面に配置されたIDT電極と、
    前記圧電体の前記界面とは反対側の面に積層されており、前記圧電体よりも線熱膨張係数が小さい材料からなる低熱膨張率媒質層とを備え、前記圧電体と前記誘電体との境界を伝搬するSH型弾性境界波を利用しており、
    前記圧電体におけるSH波の音速が下記の式(1)を満たし、かつ前記IDT電極の波長をλとしたときに、前記SH型弾性境界波の応答周波数及び高次モードの応答周波数に対し、誘電体における横波の音速/λが下記の式(2)の範囲を満たしていることを特徴とする、弾性境界波装置。
    誘電体における横波の音速<圧電体におけるSH波の音速<低熱膨張率媒質層における横波の音速…式(1)
    弾性境界波の応答周波数<誘電体における横波の音速/λ<高次モードの応答周波数…式(2)
  2. 圧電体と、
    前記圧電体上に積層された誘電体と、
    前記圧電体と誘電体との界面に配置されたIDT電極と、
    前記圧電体の前記IDT電極が形成されている側の面と反対側の面に積層されており、前記圧電体よりも線熱膨張係数が小さい材料からなる低熱膨張率媒質層とを備え、前記圧電体と前記誘電体との境界を伝搬するストンリー型弾性境界波を利用しており、
    前記圧電体におけるSV波の音速が下記の式(3)を満たし、かつ前記IDT電極の波長をλとしたときに、前記ストンリー型弾性境界波の応答周波数及び高次モードの応答周波数に対して、誘電体における横波の音速/λが下記の式(4)を満たしていることを特徴とする、弾性境界波装置。
    誘電体における横波の音速<圧電体におけるSV波の音速<低熱膨張率媒質層における横波の音速…式(3)
    弾性境界波の応答周波数<誘電体における横波の音速/λ<高次モードの応答周波数…式(4)
  3. 前記圧電体の厚みが1λ以上、50λ以下の範囲とされている請求項1または2に記載の弾性境界波装置。
  4. 前記誘電体層の前記境界とは反対側の面に、吸音層が積層されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性境界波装置。
  5. 前記誘電体の前記境界とは反対側の面に該反対側の面に伝搬してきた弾性波を散乱する構造が設けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性境界波装置。
  6. 前記圧電体と、前記低熱膨張率媒質層との間に設けられた吸音層をさらに備える、請求項1〜5にいずれか1項に記載の弾性境界波装置。
  7. 前記圧電体及び誘電体が絶縁材料により形成されていることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の弾性境界波装置。
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