本発明は、レーザ光を投射して画像を表示する画像投射装置に関し、特に、画像投射装置の安全性向上技術に関する。
スクリーンに画像を投射するプロジェクタとスクリーンとの間の投射光路内に人間が進入して、投射側に顔を向けた場合、投射光が眼に刺激を与える危険性がある。このため、投射光路内の物体の有無を検出する検出部と、放射パワーを制御する制御部とを画像投射装置に設け、投射光路内に物体を検出した場合には、放射パワーを減少させることで危険性を防止する方式が提案されている。
例えば、特許文献1は、電磁放射線センサ、熱放射線センサ、焦電センサ、温度センサ等により投射領域を監視して、投射領域に物体が存在する場合、人間に対して無害化した動作モードに切り替える画像投射装置を開示している。
また、特許文献2は、投射された画像をカメラで監視して、人間が居る領域を抽出してその領域の画像をマスクする画像投射装置を開示されている。この装置では、投射領域のうちの人間が居ると判断された領域に対してのみ放射パワーを制限すればよいので、他の領域では画像を表示し続けることができる。
また、レーザ光を投射して画像を表示する画像投射装置(レーザプロジェクタとも称される)の開発が進められている。レーザ発光素子が出力するレーザ光は、ランプが出力する光よりも色純度が高いため、色再現性を向上させることができる。また、光学系を小型化できると共に消費電力も抑えることができるので、小型で省電力の画像投射装置を実現することができる。
レーザ光は細く絞った状態で走査させることができるので、ミラー素子等を用いてレーザ光を2次元走査させて画像を表示することができる。このようなスキャン方式のレーザプロジェクタでは、レーザ光の強度を変調させて画像の表示を行うため、液晶パネルやDMD(Digital Micromirror Device)などの2次元の画像表示デバイスを用いた通常のプロジェクタに比べさらに省電力であり、また、2次元画像デバイスを均一に照明する照明光学系が不要なので装置の小型化も実現できる。
このように、スキャン方式のレーザプロジェクタは、小型のモバイル機器にも搭載可能であり、大型ディスプレイの搭載が困難な携帯電話等でも大画面表示が楽しめるようにすることができる。
特許第2994469号公報 特開2004−254145号公報
従来の画像投射装置は、物体や人物を検出する機構として、別途検出用のセンサや画像監視用のカメラを備える必要があり、高価で小型化にも限界があった。
レーザプロジェクタ等のレーザ応用製品に対しては、安全基準で許容放射パワーが定められており、人の目に対して安全な範囲では十分な明るさが確保できないので、安全を確保しつつ放射パワーを上げる技術が求められる。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、小型化および低コスト化を実現すると共に、安全でかつ十分な明るさで表示可能な画像投射装置を提供することを目的とする。
本発明の画像投射装置は、レーザ光を出力する光源と、前記光源が出力した前記レーザ光を反射して投射するミラー部とを備え、前記投射したレーザ光の少なくとも一部により画像を表示する画像投射装置であって、前記画像投射装置は、前記レーザ光の投射方向から戻ってきた前記レーザ光の少なくとも一部を検出する検出部と、前記検出した光に基づいて画像表示可能領域を決定する演算部とを備え、前記ミラー部は、前記レーザ光の投射方向から戻ってきた前記レーザ光の少なくとも一部を前記検出部へ導くために反射することを特徴とする。
ある実施形態によれば、画像信号に応じて前記レーザ光を変調させるための変調信号を生成する変調部をさらに備え、前記光源は、前記変調信号に応じて変調した前記レーザ光を出力し、前記演算部は、前記検出した光の強度と前記変調信号とを比較して、前記画像表示可能領域を決定する。
ある実施形態によれば、前記変調部は、前記画像表示可能領域には前記画像信号に応じた画像を表示させるための変調信号を生成し、前記変調部は、前記画像表示可能領域以外の領域には、障害物を検出するための検出用レーザ光を投射するための変調信号を生成する。
ある実施形態によれば、前記演算部が前記画像表示可能領域以外の領域の少なくとも一部で画像表示が可能と判断した場合は、前記変調部は、画像表示が可能と判断された前記少なくとも一部の領域に前記画像信号に応じた画像を表示させるための変調信号を生成する。
ある実施形態によれば、前記検出用レーザ光はドットパターンで投射される。
ある実施形態によれば、前記ミラー部は、前記レーザ光を2次元に走査させて画像を表示し、前記演算部は、前記画像表示可能領域の決定処理を走査ライン毎に行ない、前記変調部は、前記決定処理の結果を、後に続く走査ラインに対応した前記レーザ光の変調に反映させる。
ある実施形態によれば、前記ミラー部は、前記レーザ光を2次元に走査させて画像を表示し、前記変調部は、1つ前の画像フレームの表示時に決定された画像表示可能領域に基づいて、画像フレームの最上端の走査ラインに対応した前記レーザ光を変調する。
ある実施形態によれば、前記レーザ光の最大放射パワーは、人間の目を前記レーザ光が走査したときに前記目に入射するエネルギーが安全基準の定める安全レベル内となる放射パワーである。
ある実施形態によれば、前記レーザ光の最大放射パワーは、人間の目を前記レーザ光が走査したときに前記目に入射するエネルギーが安全基準の定める安全レベル内となる放射パワーであり、前記ドットパターンで投射される前記検出用レーザ光の放射パワーは、画像表示用のレーザ光の放射パワー以上である。
ある実施形態によれば、前記画像投射装置の起動時には、画像を表示する前に前記光源は前記検出用レーザ光を投射する。
ある実施形態によれば、前記光源は、n原色(nは3以上の自然数)それぞれの色のレーザ光を出力し、前記光源は、前記検出用レーザ光として、前記それぞれの色のレーザ光を独立に出力する。
ある実施形態によれば、前記演算部は、前記光源を点灯させないブランク期間に前記検出部で検出された光の強度にさらに基づいて前記画像表示可能領域を決定する。
ある実施形態によれば、前記ブランク期間は水平ブランク期間である。
ある実施形態によれば、前記ブランク期間は垂直ブランク期間である。
ある実施形態によれば、前記演算部は、前記検出した光に基づいて、前記レーザ光が投射された被投射物と前記画像投射装置との間の距離を測定し、前記演算部は、前記距離に基づいて前記被投射物のうちの略平面の領域を検出し、前記略平面の領域を前記画像表示可能領域に決定する。
ある実施形態によれば、前記演算部は、前記距離に基づいて得られる前記被投射物に対応した面を複数のサブ領域に分割し、前記サブ領域毎に略平面であるか否か判定する。
ある実施形態によれば、前記演算部は、前記サブ領域内の仮想平面を算出し、前記仮想平面と前記被投射物との間の距離の分散の度合いが所定値以内である場合に、前記サブ領域を略平面であると判定する。
ある実施形態によれば、前記略平面と判定したサブ領域内の前記被投射物の位置情報を保持する記憶部をさらに備え、新たに測定した距離と前記位置情報との差が所定値以上である場合には、前記演算部は、前記差が所定値以上であるサブ領域を非平面領域と再判定し、前記光源は、前記差が所定値以上であるサブ領域への画像の表示を中断する。
ある実施形態によれば、前記演算部は、前記略平面と判定したサブ領域のうち同一平面上に位置するサブ領域を1つのグループに分類することで、前記略平面と判定したサブ領域を複数のグループに分け、最も面積が広いグループに属するサブ領域に画像を表示する。
ある実施形態によれば、前記略平面と判定したサブ領域内の前記被投射物の位置情報を保持する記憶部をさらに備え、前記位置情報は前記距離を新たに測定する毎に更新され、前記位置情報の示す位置が所定時間変化しない場合に限り、前記光源は、前記略平面と判定したサブ領域への画像の表示を開始する。
ある実施形態によれば、前記演算部は、前記距離に基づいて前記被投射物のプロファイルを算出し、前記プロファイルから所定の凹凸より小さい凹凸部分を除去する。
ある実施形態によれば、前記演算部は、前記距離に基づいて前記被投射物の曲率を算出し、前記光源は、前記曲率が所定の範囲内である領域への画像の表示を行わない。
ある実施形態によれば、前記演算部は、前記距離に基づいて前記被投射物のプロファイルを算出し、前記プロファイルから所定の凹凸より小さい凹凸部分を除去し、前記演算部は、前記プロファイルに基づいて前記被投射物の曲率を算出する。
ある実施形態によれば、前記被投射物表面の温度を測定する温度測定部をさらに備え、前記画像表示可能領域の温度が所定の範囲内である場合は、前記光源は、前記温度が所定の範囲内の領域への画像の表示を中断する。
ある実施形態によれば、前記温度測定部は、前記距離を測定するために出力するレーザ光の停止期間に、前記被投射物表面の温度を測定する。
本発明によれば、画像表示用のミラー部が画像表示可能領域検出のための機構を兼ねている。これにより部品数を減らして低コスト化を実現すると共に、装置の小型化を実現することができる。また、演算部は、人間が存在しないと判断した画像表示可能領域と、人間が存在すると判断したそれ以外の領域とを区別する。人間が存在すると判断した領域には画像を表示しないことで安全性を確保することができる。また、人間が存在しないと判断した画像表示可能領域には強い光で画像を表示することができるので、明るい画像表示を実現することができる。
また、ある実施形態によれば、画像を表示するためのレーザ光を用いて画像表示可能領域を検出する。画像表示用の構成要素に加えて、反射光強度を検出する検出部と演算部とを装置が備えるだけで画像表示可能領域の検出が可能となり、装置のさらなる低コスト化および小型化を実現することができる。本発明によれば、物体や人物を検出する機構として、別途検出用のセンサや画像監視用のカメラを装置が備える必要がないので、小型且つ安価で、安全に明るい画像表示が可能な画像投射装置を実現することができる。
また、ある実施形態によれば、画像表示可能領域およびそれ以外の領域の両方で、人間の検出動作を続ける。これにより、画像表示可能領域に人間が進入してきたときは、直ちにその進入領域への画像の表示を中断することができる。また、画像表示可能領域以外の領域から人間が検出されなくなったときは、その領域への画像の表示を再開することができる。
また、ある実施形態によれば、検出用レーザ光をドットパターンで投射する。これにより、人間の目に入射し得る光の量を少なくして安全を確保しながら、人間の検出動作を行うことができる。
また、ある実施形態によれば、画像表示可能領域の決定処理を走査ライン毎に行ない、その処理の結果を、後に続く走査ラインに対応したレーザ光の変調に反映させる。これにより、走査ライン毎に処理することにより最小限の処理時間で画像の表示と非表示とを切り替えることができる。また、その処理結果を後に続く走査ラインに反映させることにより、人間の目に入射し得る光の量をより少なくすることができる。
また、ある実施形態によれば、演算部は、光源を点灯させないブランク期間に検出部で検出された光の強度にさらに基づいて画像表示可能領域を決定する、レーザ光の反射光以外の光を検出しておくことにより、使用場所の明暗や投射領域内にある物体の状態などの様々な条件下で、的確に画像表示可能領域を決定することができる。
本発明の実施形態1による画像投射装置を示す図である。
本発明の実施形態1による走査方式を示す図である。
本発明の実施形態1による瞳とプロジェクタとの間の距離および投射領域を示す図である。
本発明の実施形態1による画像投射装置の信号処理手順を示す図である。
本発明の実施形態1による画像投射装置の動作を示すフローチャートである。
本発明の実施形態1による画像投射装置の演算処理を示すフローチャートである。
本発明の実施形態2による画像投射装置を示す図である。
本発明の実施形態2による赤外線レーザ光による距離測定処理の一例を示す図である。
本発明の実施形態2による平面度検出処理を示す図である。
本発明の実施形態2による平面度の算出結果の一例を示す図である。
本発明の実施形態2によるレーザ停止位置記憶部の記録内容を示す図である。
本発明の実施形態2による画像投射装置の動作を示すフローチャートである。
本発明の実施形態3による画像投射装置を示す図である。
本発明の実施形態3によるサブ領域を説明する図である。
本発明の実施形態3による平面判定計算を説明する図である。
本発明の実施形態3による平面判定計算を説明する図である。
本発明の実施形態3によるスクリーン領域記憶部の記録内容を示す図である。
本発明の実施形態3による画像投射時の距離測定動作を示す図である。
本発明の実施形態3による画像投射装置の動作を示すフローチャートである。
本発明の実施形態4による画像投射装置を示す図である。
本発明の実施形態4による画像投射装置の動作を示すフローチャートである。
本発明の実施形態4による画像投射装置の動作を示すフローチャートである。
符号の説明
1 光源
2 コリメートレンズ
3 ダイクロイックプリズム
4 投射レーザ光
5 ハーフミラー
6 ミラー部
7 開口部
8 集光レンズ
9 光検出器
10 画像信号
11 制御部
12 レーザ変調部
13 ミラー駆動部
14 検出アンプ
15 演算部
16 角度変位信号
20 スクリーン
21 レーザビームスポット軌跡
22 障害物
23 ランダムドット
24 周辺光
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。同様の構成要素には同様の参照符号を付し、同様の説明の繰り返しは省略する。
(実施形態1)
図1〜図6を参照して、本発明による画像投射装置の第1の実施形態を説明する。まず、図1を参照する。図1は、本実施形態の画像投射装置100を示す図である。映像投射装置100は、投射したレーザ光の少なくとも一部によりスクリーン等に画像を表示する。映像投射装置100では、画像表示用のレーザ光およびミラー部を、画像表示可能領域の検出動作にも用いる。これにより部品数を減らして低コスト化を実現すると共に、映像投射装置100の小型化を実現することができる。
画像投射装置100は、レーザ光10a〜10cを出力する光源1と、コリメートレンズ2と、ダイクロイックプリズム3と、ハーフミラー5と、レーザ光10a〜10cを反射して投射するミラー部6とを備える。光源1は、n原色(nは3以上の自然数)それぞれの色のレーザ光を出力する。この例では、光源1は、赤色レーザ光10aを出力する発光素子1aと、緑色レーザ光10bを出力する発光素子1bと、青色レーザ光10cを出力する発光素子1cとを備える。なお、光源1は4原色以上の多原色のレーザ光を出力してもよい。
画像投射装置100は、レーザ光10a〜10cを変調するレーザ変調部12と、ミラー部6を駆動するミラー駆動部13と、レーザ光の投射方向から戻ってきたレーザ光の少なくとも一部の強度を検出する光検出部9と、検出した強度に基づいて画像表示可能領域を決定する演算部15と、これらの構成要素を制御する制御部とをさらに備える。
次に、画像投射装置100の動作をより詳細に説明する。
光源1から出力されたレーザ光10a〜10c(RGBの3原色)は、それぞれのコリメートレンズ2によって絞り込まれ、ダイクロイックプリズム3で合成されて1本の投射レーザ光4となる。レーザ光4は、ハーフミラー5を経て、ミラー部(スキャンミラー)6に入射する。ミラー部6は、レーザ光4を2次元に走査させて画像を表示するレーザ光走査手段である。ミラー部6は、例えば2軸の回動ミラー素子であるが、1軸のミラー素子を2個使用してもよいし、回転ポリゴンミラー素子を用いてもよい。ミラー部6で反射したレーザ光4は、開口部7を通ってスクリーン20に投射される。
投射されたレーザ光4はスクリーン20等で反射され、その反射光は再びミラー部6に入射する。ミラー部6は、レーザ光4の投射方向から戻ってきたレーザ光4の少なくとも一部を光検出部9へ導くために反射する。反射されたレーザ光4は、ハーフミラー5で分岐されて集光レンズ8を通って光検出部9で検出される。
光検出用の光学系は、投射されるレーザ光4のスポット領域の反射光強度を計測するように設定される。
光検出部9は、例えばフォトダイオードであり、特に、アモルファスシリコンフォトダイオードを用いるのが好適である。アモルファスシリコンフォトダイオードは、単結晶シリコンダイオードと比べて、波長感度特性が人の視感度に近く、フィルター無しで使える可視光センサであり、PIN構造のため応答性に優れ、基板材料が安価で製造コストも安いという特徴を持つ。
表示される画像の画像信号10は外部から制御部11に入力される。レーザ変調部12は、画像信号に応じてレーザ光を変調させるための変調信号を生成する。光源1は、その変調信号に応じて変調したレーザ光を出力する。レーザ変調部12がレーザ光を変調するのに同期して、ミラー駆動部13はミラー部6を駆動する。
ミラー部6から出力された角度変位信号16は制御部11に戻され、これによりミラー部6はフィードバック制御されている。
ミラー部6によって走査されたレーザ光4は、スクリーン20上にレーザビームスポット軌跡21を描く。レーザ光の走査方式の例を図2を参照して説明する。
図2は、走査方式のレーザビームスポット軌跡21と、水平方向(H)および垂直方向(V)の駆動信号波形を示す。
図2(a)はリニアラスタ走査方式を示しており、水平方向および垂直方向ともにリニアな駆動信号波形を示す。ポリゴンミラー素子を使用する場合はこの走査方式を採用する。水平方向では駆動周波数が高いので、回動ミラーを光速でリニアに駆動するのは通常困難である。画面の右端から左端、また下から上へ戻る期間は、レーザ光を点灯せずにミラーだけが戻るブランク期間である。水平ブランク期間32および垂直ブランク期間33を点線で示している。
図2(b)は共振ラスタ走査方式を示しており、回動ミラーの共振動作でレーザ光は水平方向に走査される。共振駆動では、回動ミラーをリニアに駆動する場合に比べて比較的小さな力で大きな振幅が得られる。垂直方向は周波数が低いのでガルバノミラーをリニアに駆動することが可能である。
また、共振駆動ではミラーの動作がサイン波状になり、水平方向を片道走査しているので、水平ブランク期間が長くなり、レーザ光の点灯時間が半分になる。
図2(c)は、水平方向では往復走査をする共振ラスタ走査方式を示している。
往復走査をすれば、駆動周波数が半分でよいので駆動しやすい。また図2(b)に示す方式と比べて、レーザ光の点灯時間が倍になるので効率が良い。ただし、走査線が厳密には平行でないので垂直駆動信号波形をステップ状に補正して走査線を平行化する必要がある。
図1を参照して、光検出部9は受光したレーザ光に応じた反射光強度信号を生成する。反射光強度信号は、検出アンプ14で増幅されて演算部15に送られる。演算部15は、反射光強度信号が示す強度と、レーザ変調部12が生成した変調信号とを比較して、画像表示可能領域を決定する。なお、演算部15は、反射光強度信号が示す強度と、画像信号とを比較して、画像表示可能領域を決定してもよい。レーザ変調部12は、画像表示可能領域には画像信号に応じた画像を表示させるための変調信号を生成する。また、レーザ変調部12は、画像表示可能領域以外の領域には、障害物を検出するための検出用レーザ光を投射するための変調信号を生成する。画像表示可能領域の決定処理および検出用レーザ光の詳細は後述する。
画像投射装置100では、スキャン方式のレーザプロジェクタの構成に加えて、ハーフミラー5と集光レンズ8と光検出部9を備えるだけで障害物検出動作を実現しており、検出用の放射源を別途設けていない。また、光検出部9は、CCD等のような2次元センサアレイではなく、単一のセンサであるが、2次元走査するスキャンミラーによって投射領域を2次元的に検出することができる。このような構成により、極めて小型で安価な画像投射装置となっている。
次に、レーザ光の安全基準に沿った画像投射装置100の動作を説明する。レーザ光の最大放射パワーは、人間の目をレーザ光が走査したときに目に入射するエネルギーが安全基準の定める安全レベル内となる放射パワーに設定する。
まず、レーザ光の安全基準によって定められた放射パワーについて説明し、次に、より強いレーザ光を発する場合の考え方、およびその考え方によって放射可能となる放射パワーとプロジェクターの明るさについて説明する。
レーザ光の安全基準として「IEC60825−1基準」、日本では「JIS C6802 レーザ製品の放射安全基準」(以下JISと略称する)があり、レーザ製品のクラス分けと測定方法が定められている。
その中で、基本的に安全とされるクラス1の被ばく放射限界(以下AELと称する)は、JISの表1(不図示)に波長と露光時間別に定められており、可視光を発する製品については、JISの表2(不図示)にクラス2のAELとして定められている。
これによると、可視光のレーザ光に対しては瞬きなどの嫌悪動作によって目が保護されることを考慮し、その反応時間を0.25秒として、放出持続時間が0.25秒以上のときは1mW、0.25秒以下のときはクラス1のAELと同じ、となっている。即ち、レーザポインタのような連続波のレーザ光では放射出力は1mWに制限される。
これに対し、走査型のレーザ製品に対しては、JISの8.4クラス分けの規則の(f)繰返しパルスレーザおよび変調レーザの項にAELの決定の仕方が定められている。
これによると、次の3つの条件で最も厳しいものを用いて決定する。
1)パルス列内のどの単一パルスからの露光も、単一パルスに対するAEL(AELsingle)を超えてはならない。
2)放出持続時間Tのパルス列の平均パワーは、放出持続時間Tの単一パルスに対して、それぞれ表1〜4(不図示)に規定したAELに対応するパワーを超えてはならない。
3)パルス列内のパルスの平均パルスエネルギーは、単一パルスのAELに補正係数C5を乗じた値(AELtrain)を超えてはならない。
AELtrain=AELsingle×C5
C5=N^−0.25・・・(式1)
ここでNは0.25秒の間に瞳を走査する回数である。
スキャン方式のプロジェクタのように2次元に走査する場合、瞳をレーザ光が走査することによってNが大きくなり、3)の条件が通常最も厳しくなる。測定方法はJISの9.3測定光学系の項に定められている。
以下、図3を参照して、放射パワーの計算方法を説明する。図3は、瞳とプロジェクタとの間の距離および投射領域を示す側面図である。
走査型レーザ光の放射パワーの測定条件は、測定開口25の直径がφ7mm、測定距離rが100mmと定められている。測定開口25のφ7mmは、人の瞳径の最大値を想定したものである。定められた測定条件で計算される放射パワーは、走査条件によって様々に変化する。以下、次の走査条件での計算例を示す。各パラメータで、添え字のh、vはそれぞれ水平、垂直を表している。
走査条件:
表示解像度 XGA(Nh=1024、Nv=768 ピクセル)
フレームレート fv=60Hz
画角 θh=60°、θv=45°
オーバースキャン率(画角/走査全角)Kosh=Kosv=0.7
水平方向は往復走査 Kub=2(図2(c)の走査方式に相当)
水平走査周波数fhは、次のように表される。
fh=fv×Nv/Kosv/Kub=32.9kHz・・・(式2)
図3に示すように距離r=100mmの位置にあるD=φ7mmの瞳をレーザ光が横切る時間tは、次のように表される。
t=測定開口の視角/水平走査角速度
=(D/r)/(2×fh×θh/Kosh)・・・(式3)
=7.1E−7(sec)
0.25秒の間に瞳を走査する回数Nは、次のように表される。
N=(D/r)/(θv/Nv)*fv*0.25
=1020(回)
t=7.1E−7(sec)に対するAELsingle(単一パルスのAEL)は、JISの表1より、AELsingle=2.0E−7(J)となる。パルス列内の平均パルスエネルギーAELtrain(繰り返しパルスのAEL)は、(式1)から、
AELtrain=AELsingle×N^−0.25・・・(式4)
=2.0E−7×1020^−0.25
=3.54E−8(J)
となる(図3に示す3個の測定開口25のうちの左下に示す測定開口25の状態のとき)。
放射パワーPtrainは、
Ptrain=AELtrain/t・・・(式5)
=3.54E−8/7.1E−7*1000
=49.9(mW)
となる。
これより、プロジェクタのピーク放射パワーを50mW以下に抑えれば、100mmまで近づいて瞳に入射する放射エネルギー量が安全なレベルであり、100mm以上の距離ではレーザ光が分散することからより安全であり、100mm以下の距離では瞳を走査するレーザ光が網膜上の1点に合焦されず安全である。即ち、あらゆる条件において安全なレベルであると言える。
ここで、前述の条件1)の、単一パルスに対するAELから放射パワーを求めると、
Psingle=AELsingle/t・・・(式6)
=2.0E−7/7.1E−7
=281.7(mW)
となり、約5.6倍のパワーとなる。
これは、レーザ光が瞳を横切る回数を1回に制限した場合に相当する(図3に示す3個の測定開口25のうちの左上に示す測定開口25の状態)。
従って、後述する適切な処理を行うことによって、放射パワーは最大280mW程度まで上げられる。
同様に、回数Nに対してP(mW)は、
となり、プロジェクタとして必要なピークパワーに対応して、走査回数を選択すればよい。例えば、ピークパワーP=150mWとする場合は、走査回数を12回に制限すれば良い。
ピーク放射パワーが50mWのとき、プロジェクタの明るさは10ルーメン程度である。一般的なオフィスの明るさである400ルクスの部屋で視認可能である明るさ、例えば500ルクスを確保できる投射サイズは8インチ程度である。投射サイズを19インチとすると、画面の明るさは89ルクス程度となり、明るい部屋では視認できない。
それに対し、ピーク放射パワーが最大の280mWでは、プロジェクタの明るさは56ルーメンとなり、19インチで約500ルーメンとなる。つまり、上述のように、レーザ光が瞳を横切る回数に制限を加えるよう制御すれば、安全を確保しつつ、より大きなサイズに投射しても十分明るい画面が得られる。
測定距離を100mmから遠ざけると、tもNも小さくなるので、計算される放射パワーPtrainは大きくなる。t=1.78E−7(s)、N=255(回)のとき、測定距離約400mmでは、Ptrainが281.7mW(約280mW)となる(図3に示す3個の測定開口25のうちの右下に示す測定開口25の状態)。
つまり、放射パワーを280mWに上げた状態でも、400mm以上離れると瞳への入射エネルギーは安全なレベルとなるため、少なくとも100mmから400mmの範囲で上述の処理を行っていれば問題無いことになる。
次に、光検出部9の動作をより詳細に説明する。
図1に示すように、表面が均一なスクリーン20上に画像が投射されている状態では、光検出部9では表示画像に応じた反射光強度が検出される。しかし、レーザ光の投射領域内に人等の障害物22が存在すると、その領域の反射光が乱されるので、反射光強度と画像信号との相関が失われて所定レベルの信号が得られなくなる。このような領域を画像表示可能領域から除外して画像の表示を中断することにより、投射領域に人が居たとしても、目に対する障害を防止する。
画像表示を中断した領域においても反射光強度の検出を続行して、障害物の存在がなくなったと判断されれば画像の表示を再開する必要がある。しかし、周囲が暗い場合は十分な反射光が得られないので、表示を中断した領域を監視することはできない。画像投射装置100は、画像表示用の光源以外に検出用の光源を設けていないが、表示を中断した領域では検出用の表示パターンとしてランダムドットパターンを表示することによってその反射光を検出できる。ランダムドットパターンは、水玉模様に似たパターンである。
このような領域ではスクリーンを遮る障害物が存在しているので、画像を表示せず検出用のパターンを表示しても問題無い。また、ドットパターンで投射される検出用のレーザ光は短いパルス状の照射になるため、仮に目に入っても危険はない。
例えば、上述の走査条件で、1ピクセルを表示する時間tpは、
tp=Kosh/2fh/Nh・・・(式7)
=1.04E−8(s)
となり、瞳を横切る時間に比べても非常に短いので、最大放射パワーのレーザ光を照射しても安全であり、必要があれば画像表示時のピークパワーを超える放射パワーで照射しても問題ない。ドットを表示する密度と瞳直径から、0.25秒間に瞳に入るパルスの数を想定し、安全レベル内に抑えればよい。ドットパターンで投射される検出用レーザ光の放射パワーを、画像表示用のレーザ光の放射パワー以上とすることで、パルス発光でも、より多くの光を検出することができる。
また、フレームごとにドットの表示位置を変える(即ちランダムドット)ことにより、パルス照射の間隔を空けて表示しても、数フレーム表示する間により細かい領域の判定ができる。
さらに、光源1は、ランダムドットパターンを表示する検出用レーザ光として、3原色(RGB)のレーザ光を同時に発光して白色のドットを表示してもよいし、それぞれの色のレーザ光を独立に出力して、各色のドットを表示してもよい。どの色のレーザ光を照射した時の反射光強度かを判別すれば、単色の光検出部9を用いながら、投射領域の色の違いも判別できる。
ところで、携帯型のプロジェクタでは、据え置き型とは異なり、スクリーンに限らず様々な物体に向かって投射することが起こり得る。また、周囲が明るい状態で使用される場合も多く、蛍光灯や窓などの光の発生源が投射領域内に存在する可能性もあり、任意の周辺光に照らされた物体に照射した状態で検出された反射光強度から、投射領域内の物体の状態を判定する必要がある。
ある点から検出される反射光強度は、その点を照らす光強度とその点の反射率の積で決まるので、光検出部9で検出される反射光強度信号Sdは、照射するレーザ光の強度信号をSi、周辺光24(図1)の光強度をSamb、照射点の反射率をRとすると、
Sd=R×(Si+Samb)・・・(式8)
で表される。従って、強度信号Siと反射光強度信号Sdとを比較するだけでは、周辺光の影響によって障害物の存在が正確に判定できない可能性がある。
例えば、白いスクリーンの前に暗い色の物体が存在するにもかかわらず、物体周辺のみ外部から光が当たっており、物体からの反射光がスクリーンからの反射光と同等になってしまうような場合が考えられる。
そこで、R×Samb=Sb即ち、レーザ光を照射しない状態での投射点からの反射光強度を背景照度分布として計測し、
S=(Sd−Sb)/Si・・・(式9)
を求めれば、強度信号Sは、投射領域の反射率の分布に相当する信号となり、周辺光の影響を受けることなく投射領域内の物体の状態を認識することができる。
背景照度分布は、レーザ光走査のブランク期間に計測する。光源1を点灯させないブランク期間にミラー部6を走査時と同様に駆動し、ミラー部6に入射した光の強度を検出部9で検出することにより、背景照度分布を得ることができる。演算部15は、背景照度分布も用いて画像表示可能領域を決定する。
基本的には、垂直ブランク期間に背景照度分布を計測する。垂直方向のオーバースキャン率Kosv=0.7から、ブランク期間中の走査線数は、画像表示の走査線数768に対して、768×3/7=329ラインとなる。
図3に示したように、検出動作が必要な距離での人の頭部の大きさ(高さ250mm程度)は、投射領域の中で大きな部分を占めるので、背景照度検出にはそれほど高い解像度は必要なく、少なくとも人の頭部と背景が分離でき、さらに目の周辺部が識別できれば十分である。図3で、φ7mmの瞳と400mmの距離にある画面サイズ332mmとの比は332:7≒47:1なので、上記ブランク期間中の走査線数でも十分に目の周辺部は識別可能である。
ブランク期間中に計測した背景照度分布のデータは、一旦メモリに保存し、画像表示中の処理時に、対応する位置のデータを呼び出して使用する。画像表示中の検出動作と区別するため、ブランク期間中の検出をブランク検出と称する。
なお、水平ブランク期間に背景照度分布を計測してもよい。図2(b)に示す走査方式では、水平方向に片道走査するので、走査線毎に水平ブランク期間が表示期間と同じだけあるのでブランク検出に使用できる。この場合は、画像表示走査線と同数のブランク検出走査線数となる。
次に、図4を参照して、検出部9が検出した信号の処理手順をより詳細に説明する。
図4は、演算部15が実行する信号処理手順を説明する図である。
図4を参照して、均一なスクリーンの前に障害物33が存在しており、投射領域31中の背景照度分布32に影響を与えている。図4は、画像34を表示するための走査ライン35(i)上の画像輝度信号(レーザ変調信号)Si、対応する位置の背景照度信号(ブランク検出信号)Sb、その状態で光検出部9で検出される反射強度信号Sdをそれぞれ示している。
画像輝度信号Siには安全レベル36が存在し、領域A1は画像輝度信号Siの安全レベル以下の領域を表している。
安全レベル36とは、前述のJISの安全基準で定められた放射パワーであり、本実施形態では50mWである。放射パワーがこれより低い領域は無条件に表示可能であり、領域A1としてメモリに記憶しておく。
均一なスクリーンの領域では、画像輝度信号Siに対応した強度分布となる反射強度信号Sdが得られる。しかし、障害物33の存在する領域では、画像輝度信号Siとは対応しない強度分布となる反射強度信号Sdが得られる。なお、信号波形Sd1は、障害物33が存在しないときの波形である。ここで、
S=(Sd−Sb)/Si
を計算し、さらに信号Sの微分信号S’を所定の閾値でスライスすることにより信号Sが一定レベルで平坦な領域A2を抽出する。領域A2は、信号Siと信号Sdとがよく対応した領域であり、このことから、反射率が一定に近い領域であると言える。
そこで、A=A1+A2により得られる領域Aを画像表示可能領域と決定する。そして、次の走査ライン35(i+1)を表示する際、画像輝度信号Si+1が示すように、領域Aでは画像を表示し、それ以外の領域は検出モードとしてランダムドットパターンを表示する。Ldは、ランダムドットパターン表示時のピークレベルを表し、Lwは、白色表示用のレーザ光のピークレベルを表している。
通常、ある走査ラインで障害物があると判断された領域は、次の走査ラインタイミングでもやはり障害物が存在するので、この領域ではランダムドットパターンに対応する反射光は検出されず、引き続き障害物存在領域として判定される。時間が経過して障害物がなくなり、表示可能領域と同等の反射光が検出されれば、表示可能領域として画像の表示を再開する。
このように、演算部15は、画像表示可能領域の決定処理を走査ライン毎に行ない、レーザ変調部12は、決定処理の結果を、後に続く走査ラインに対応したレーザ光の変調に反映させる。また、決定処理を継続して行い、画像表示可能領域以外の領域の少なくとも一部で障害物が検出されなくなると、演算部15は、障害物が検出されなくなった領域への画像表示が可能と判断する。この場合、レーザ変調部12は、新たに画像表示が可能と判断された領域に画像信号に応じた画像を表示させるための変調信号を生成する。
走査ライン毎に決定処理を行うので、1フレーム毎に2次元データを処理するよりも最小限の処理時間で演算を行うことができる。上記の演算処理に要する遅延時間が水平ブランク期間内であれば、走査ライン(i)に於ける判定結果を走査ライン(i+1)に直ちに適用できる。従って、障害物として投射領域に人が存在し、目と走査ラインが重なったとしても、最悪でも瞳を1回走査するだけで、次の走査ラインでは画像表示用レーザ光が瞳を走査しない。通常は頭部の輪郭の上端に瞳が存在することはなく、走査ラインが瞳に到達する前に人が検出されるので、画像表示用レーザ光が瞳へ入射することはない。また、次のフレームの該当走査ラインにも処理結果を反映させるので、画像表示用レーザ光が瞳を再び走査することはない。瞳を1回走査する可能性は、真っ暗な画像から明るい画像に切り替わった瞬間に、表示を始めたレーザ光が瞳を通過する場合を想定している。それ以外の場合は、走査ラインが瞳に到達する前に検出モードに切り替わっているので、画像表示用レーザ光が瞳へ入射することはない。
この場合、白色表示用のレーザ光のピークパワーを280mWに設定することができる。
仮に、演算処理に要する遅延時間が長く、2回以上瞳を走査することを許容する場合は、その回数に応じ、表1に示したピークパワーを選択すればよい。
次に、図5を参照して、上述の動作をさらに説明する。図5は画像投射装置100の動作を示すフローチャートである。
画像投射装置100の起動直後、光源を点灯する前にまずミラー部6を駆動し(S1)、投射領域内の背景照度分布を計測して2次元データとしてメモリに保存する(S2)。その後、全面検出モードとして、画像を表示する前に光源1は検出用レーザ光をランダムドットパターンで投射して、反射光強度を検出しながらフレームの走査を開始する(S3)。これにより、起動時の人の目に対する安全を確保する。
最初のフレームのライン(1)は、検出モードで走査する(S4およびS5)。2フレーム目以降では、1つ前のフレームで判定した画像表示可能領域をメモリから呼び出す(S6)。レーザ変調部12は、1つ前の画像フレームの表示時に決定された画像表示可能領域に基づいて、画像フレームの最上端の走査ラインに対応したレーザ光を変調する。S5およびS6での設定に従ってライン(i)を走査し(S7〜S10)、反射光強度の検出をしながら演算処理(S11)を行ない、画像表示可能領域を更新して保存する(S12)。次のライン以降(ライン2〜Nv)では、前のラインで決定された画像表示可能領域で画像を表示し(S13〜S15)、それ以外の領域では検出モードのままとする(S16)。同時に演算処理(S17)を行ない、表示可能領域を更新して(S18)、次のラインを走査する。
1フレーム分の走査が終わったら、垂直ブランク期間に背景照度分布を検出して、背景照度分布のデータを更新する(S19)。フレーム走査(S3)へ戻り、画像再生動作がOFFになるまでこれらの動作を繰り返す(S20)。
これらの動作により、障害物のない均一なスクリーン部分に画像が順次表示されていく。
図6を参照して、演算処理(S11およびS17)をより詳細に説明する。図6は、演算処理の詳細を示すフローチャートである。
まず、画像輝度信号Siから安全レベル以下の領域A1を求める(S21)。
光検出部9は反射光強度信号Sdを生成し(S22)、それに対応する位置の背景照度信号Sbをメモリから呼び出し(S23)、S=(Sd−Sb)/Siを計算する(S24)。さらに信号Sの微分信号S’を計算して(S25)、微分信号S’を所定の閾値でスライスして領域A2を求める(S26)。
次に、A=A1+A2を計算して画像表示可能領域Aを決定して更新する(S27)。
上述したように画像投射装置100は、画像を表示するためのレーザ光を用いて画像表示可能領域を検出する。画像表示用の構成要素に加えて、反射光強度を検出する検出部9と演算部15とを装置が備えるだけで画像表示可能領域の検出が可能となる。物体や人物を検出する機構として、別途検出用のセンサや画像監視用のカメラを装置が備える必要がないので、小型且つ安価で、安全に明るい画像表示が可能な画像投射装置を実現することができる。また、人物等の障害物の範囲のみ画像の表示を中断することで人の目に対する安全を確保することができる。検出モードに切り替えた領域でも、ランダムドットパターンを表示して反射光の検出は続行するので、障害物の存在が無くなれば自動的に通常の画像表示モードに復帰可能である。
さらに、画像表示可能領域の決定処理を走査ライン毎に行ない、その結果を次の走査ラインに反映するので、最小限の処理時間でモードの切り替えができ、安全レベルを高めることができる。
また、演算部15が画像表示可能領域の決定処理を行う際、光源1を点灯させないブランク期間に検出部9で検出された輝度信号を用いることにより、使用場所の明暗や投射領域内にある物体の状態など、様々な条件下で的確な決定処理を行なうことができ、安全性をより高めることができる。
(実施形態2)
次に、図7〜図12を参照して、本発明による画像投射装置の第2の実施形態を説明する。図7は、本実施形態の画像投射装置200を示す図である。
画像投射装置200は、スクリーン20と画像投射装置200との間の距離を測定し、その測定値から人等の障害物を検出する。例えば、スクリーン20と画像投射装置200との間の距離および傾きを予め測定し、測定結果を記憶しておく。画像表示と並行して距離の測定も継続し、記憶された距離と新たに測定した距離との比較を行うことで、障害物の進入を検出することができる。なお、スクリーン20等の被投射物と画像投射装置200との間の距離とは、被投射物と画像投射装置200の任意の位置との間の距離であり、例えば、画像投射装置200のミラー部6と被投射物との間の距離である。
また、画像投射装置200がハンディタイプ等である場合は、画像投射装置200自身の位置や姿勢が頻繁に変更される可能がある。このような場合でも、画像投射装置200は、スクリーン領域を自動的に検出し直す。利用者自らがスクリーン20と画像投射装置200との間に障害物がない状態を確認した上で、スクリーン領域の再設定を行う必要が無いので、利用者の利便性を高めることができる。
図7を参照して、画像投射装置200は画像投射装置100(図1)と比較して構成要素の配置が若干異なっている。画像投射装置200は、光源の構成要素として赤外線レーザ光4aを出力する発光素子1dを備え、光学素子として反射部3a〜3cおよびハーフミラー5aを備える。
発光素子1a、1b、1cから出力されたレーザ光は、反射部3a、3b、3cを経てミラー部6(ビーム走査手段)によって2次元に走査されて、画像表示用レーザ光4としてスクリーン20に投射される。ミラー部6による2次元走査は、所定の投射方向(Z方向)を基準として、例えばY方向(Z方向に垂直な方向)に±22.5°、X方向(図8)に±30°の範囲で行われる。ミラー部6には角度センサ13aが設けられ、2軸の回動角をそれぞれ独立に検出しており、ミラー駆動部13により所定の投射角度に制御される。この際、スクリーン20は、Z方向に対して完全に垂直に設置されているとは限らず、画像投射装置200の設置の状況により所定の傾きを持っている場合もあり得る。ミラー部6としては、例えば、X方向とY方向に独立な回動軸を有する2軸の回動ミラー素子を用いるが、1軸のミラー素子を2枚使用してもよいし、回転ポリゴンミラー素子を用いてもよい。
演算部15は、距離算出部15aと、プロファイル記憶部15bと、LPF(ローパスフィルタ)15cと、システムコントローラ11とを備えている。画像信号はシステムコントローラ11に入力され、レーザ変調部12が画像表示用レーザ光4を変調するのに同期して、ミラー駆動部13がミラー部6を駆動することにより画像が表示される。
また、画像表示用レーザ光4とは別に、赤外線レーザ光4aが発光素子1dから放射される。赤外線レーザ光4aは非可視光なので、投射による画像表示品質の劣化は発生しない。赤外線レーザ光4aは、ハーフミラー5aを通過し、ミラー部6で反射してスクリーン20に投射される。スクリーン20で反射した赤外線レーザ光4aの一部は、ミラー部6およびハーフミラー5aで反射して検出部9に入射する。赤外線レーザ光4aはパルス変調されており、発光素子1dからの出射光と検出部9への入射光の位相差をカウントすることにより、赤外線レーザ光4aが反射した点と映像投射装置200との間の距離を算出する。位相差のカウントおよび距離の算出は、距離算出部15aが行う。赤外線レーザ光4aの走査により連続的に算出された距離を記録することで、赤外線レーザ光4aが反射した箇所の外形のプロファイルが取得できる。
演算部15は、距離算出部15aの他にも、プロファイル記憶部15bと、LPF(ローパスフィルタ)15cとを備えている。プロファイル記憶部15bは、算出された距離から被投射物のプロファイルを算出する。プロファイルは、角度センサ13aにより測定される2軸の回動角から特定できる赤外線レーザ光4aの投射方向と合わせてプロファイル記憶部15bに記録される。なお、赤外線レーザ光4aは、画像表示用レーザ光4とは光軸とずらしているのでスクリーン20に投射される範囲がわずかに異なるが、画像表示およびプロファイル取得は共通の領域(図7に示す領域S)で行われる。画像表示および距離測定は、走査時のうちのX+方向の走査時のみ行い、X−方向では行わない。このため赤外線レーザ光4aは常に画像表示用ビーム4に先行して走査している。画像表示用ビーム4の走査可能領域のうち、領域S以外の領域においては、画像表示用ビーム4の照射は常に停止されている。
システムコントローラ11は、距離に基づいて被投射物のうちの略平面の領域を検出し、その略平面の領域を画像表示可能領域に決定する。
システムコントローラ11は、記録されたプロファイルを元にプロファイルの曲率を投射位置毎に算出する。システムコントローラ11は、各演算処理を実行する演算部の一部としても機能する。プロファイルのうち、スクリーン20上で取得された部分はスクリーン20がほぼ平面に近いことから曲率は0に近くなり、人間の頭部の様に近似的に球に近い物体から取得された部分は所定の大きさの曲率を有する。これにより、ほぼ平面に近いスクリーンとそれ以外の判定を、所定の閾値を基準にすることにより自動的に行うことが可能となる。また、LPF(ローパスフィルタ)19は、プロファイルから、所定の大きさの凹凸よりも小さい凹凸部分を除去する。極端に小さな凹凸は曲率が極めて大きく検出されるが、LPF19にプロファイルを通すことにより、小さな凹凸の影響を除去し判定精度を高めている。
レーザ停止位置記憶部11aは、画像を表示するための光源1をONするかOFFするかを示すフラグを投射位置毎に記録するメモリである。システムコントローラ11は、算出された曲率が、所定の範囲(例えば人間の頭部に近い曲率の近傍の範囲)にあるかを判定する。範囲内にある場合には、その点における画像の表示をOFFにすることを示すフラグをレーザ停止位置記憶部11aに書き込み、範囲外の場合は表示をONすることを示すフラグを書き込む。同時に、システムコントローラ11は、レーザ停止位置記憶部11aに記録されたフラグを参照しながら、レーザ変調部12を制御して光源1のONとOFFを切り替える。このように、光源1は、曲率が所定の範囲内である領域への画像の表示を行わない。
図8は、赤外線レーザ光4aを用いた距離測定動作の一例を示す斜視図である。
距離測定用の赤外線レーザ光4aがスクリーン20上をX+方向に走査することでプロファイルを取得しつつ、Y方向の走査位置をY+方向からY−方向に順に変更している。画像投射装置200とスクリーン20との間に障害物22がある場合には、障害物22で赤外線レーザ光4aが反射するため、測定される距離が短くなり不連続なプロファイル41となる。
図9は、プロファイル41から被投射物の平面度を検出する処理の一例を示す。図9(a)は、平面度検出を行うプロファイルを示している。図9(b)は、平面度の算出方法を示している。
図9(a)を参照して、プロファイル41の領域Aおよび領域Cは、赤外線レーザ光4aがスクリーン20で反射したときに測定された距離を示す部分であり、これらの領域はほぼ直線で傾きを有しているので、画像投射装置200の基準の投射方向(Z方向)に対してスクリーン20が傾いていることを示している。プロファイル41の領域Bは、赤外線レーザ光4aが障害物22で反射したときに測定された距離を示す部分であり、領域Bは障害物22の外形に沿う曲線である。なお、プロファイル41を取得する過程で所定値(Lmin)より小さい距離が検出された場合、つまり画像投射装置200の極めて近傍に物体があることが検出された場合は、曲率の算出を待たずに直ちに画像表示用レーザ光4の照射を停止する。具体的にはレーザ停止位置記憶部11aの全ての位置の表示フラグを、一旦OFFを示すフラグにする。
走査範囲内における平面度の検出は、プロファイル41から曲率を算出し、曲率がほぼ0の箇所を検出することで行う。例えば領域Bにおけるプロファイル41の曲率は、障害物22が人間の頭部の場合、曲率半径が10〜20cm、曲率(曲率半径の逆数)が約0.05〜0.1/cmとなる。一方、スクリーン領域のプロファイルの曲率はほぼ0であることから、走査範囲のうちの平面部(つまりスクリーン20)を曲率で分別することができる。領域Bのプロファイル41上のポイント35a、35b、35cの距離測定結果から曲率を算出する方法を以下に説明する。
図9(b)を参照して、ミラー部6からポイント35aまでの距離をm1、ポイント35bまでの距離をm2、ポイント35cまでの距離をm3とする。各ポイントから曲率中心Oまでの距離である曲率半径Rと、曲率1/Rとは、ポイント35aとポイント35bとの間の距離a、ポイント35bとポイント35cと間の距離b、ポイント35aとポイント35cとの間の距離cを用いて(式10)で表される。
1/R=√((a+b+c)(b+c−a)(c+a−b)(a+b−c))/abc・・・(式10)
また、角度センサ13aにより取得される、ポイント35aとポイント35bとの間のスキャン角θ1と、ポイント35bとポイント35cとの間のスキャン角θ2を用いて、距離a、b、cは(式11)〜(式13)で計算できる。
a=√(m1^2+m2^2−2m1m2COSθ1)・・・(式11)
b=√(m2^2+m3^2−2m2m3COSθ2)・・・(式12)
c=√(m1^2+m3^2−2m1m3COS(θ1+θ2))・・・(式13)
ここで距離m1、m2、m3は、LPF15cを通したプロファイル41から抽出されており、極端に小さな凹凸やノイズの影響を除去されているので、所定の範囲の曲率を精度良く抽出することが可能である。また曲率の算出に用いるポイント数は3点に限る物ではなく、より多くの点数を用い最小自乗法を用いて算出してもよい。また隣接するポイントではなく離れている点同士を抽出して算出に用いてもよい。
図10は、平面度算出結果の一例を示す図である。
図10を参照して、領域Bでは障害物22の外形に応じた曲率が示され、領域AおよびCでの曲率はほぼ0になっている。所定の閾値Th(例えば0.02/cm)を設定することで、距離測定データのみから、平面部とそれ以外の部分とを判別することが可能となる。
図11は、レーザ停止位置記憶部11aの記録データを示す図である。
システムコントローラ11は、赤外線レーザ光4aの走査および曲率の算出が行われる毎に、レーザ停止位置記憶部11aの対応する位置にフラグを書き込む。図11では、模式的にフラグの内容をスクリーン20上での位置に対応させて表示している(ただし表示位置の数は実際より減らした簡易表示である)。表示フラグOFF点37が書き込まれた箇所は、曲率が閾値Thより大きく、画像表示をOFFする箇所であり、黒塗りで示している。また、それ以外の白塗りの部分(画像表示可能領域)は、画像表示をONするフラグが書き込まれている。赤外線レーザ光4aは、画像表示用レーザ光4に先行して走査しており、画像表示用レーザ光4が表示を行うのに先立って曲率の算出および評価を行うことができる。システムコントローラ11は、画像表示用レーザ光4がスクリーン20を走査する際に、レーザ停止位置記憶部11aの内容を参照して、フラグがONを示す場合のみ光源1をONにして画像の表示を行う。これにより画像表示用レーザ光4がスクリーン20以外の位置ではOFFにされるので、安全性の高い画像投射システムを提供できる。
図12は、平面度判定処理を示すフローチャートである。
画像投射装置200の電源が投入されると、レーザ停止位置記憶部11a内のフラグが全て表示OFFに設定される(S110)。次に、ミラー駆動部13がミラー部6を駆動して走査を開始する(S111)。システムコントローラ11は、以下のフローとは独立に画像表示用レーザ光4の制御を継続して行う。
次に、赤外線レーザ光4aによる走査を行ってプロファイル41を算出し、プロファイル記憶部15bに格納する(S112)。プロファイル41を算出する過程で、所定の距離Lminより小さい距離が検出された場合(S113)は、画像投射装置の極めて近傍に物体があると判断し、レーザ停止位置記憶部11aの全ての位置の表示フラグを、一旦、表示OFFに設定して画像表示用レーザ光4の照射を停止し(S114)、安全性を確保する。
次にプロファイル41から曲率を算出(S115)し、閾値Thより大きければ(S116)、レーザ停止位置記憶部11a内の対応する位置のフラグを表示OFF設定にする(S117)。また閾値Thより小さければ平面と判断し、レーザ停止位置記憶部11a内の対応する位置のフラグを表示ON設定にする(S118)。電源OFFの指示が無ければ(S119)、ステップS112の動作に戻る。
なお、プロファイル41を算出する過程で、所定の距離Lminより小さい距離が検出された場合に、画像表示用レーザ光4の照射を停止しているが、距離に応じた出力まで光源1の出力を絞る構成としてもよい。
以上の様に本実施形態によれば、プロファイル41の曲率から平面度を算出し、平面部のみに選択的に画像表示用レーザ光を投射できる。これにより、障害物、特に人間の頭部への投射を防止し、眼球へのレーザ投射が防止可能な安全性の高い画像投射装置を提供できる。また、距離測定結果のみに基づいて、平面部の検出をリアルタイムかつ自動で行うので、使用者の手を煩わせることが無い利便性の高い画像投射装置を、簡便な構成により低コストで提供できる。また、プロファイル41をLPF15cに通してから曲率の算出を行うので、極端に小さな凹凸やノイズの影響を除去し所定の範囲の曲率を精度良く抽出することができる。
(実施形態3)
図13は、本発明の実施形態3による画像投射装置300を示す図である。図14は、サブ領域(平面判定領域)を説明する斜視図、図15Aはサブ領域の平面判定計算の一例を説明する斜視図、図15Bはサブ領域の平面判定計算の別の一例を説明する斜視図である。
画像投射装置300では、画像表示を行う前に、画像投射装置300と被画像投射領域との間の距離および傾きを自動的に算出し、略平面である領域とその平面位置を抽出しておく。画像表示時には、測定された距離と抽出済の平面の距離とが一致しているか否かを判定することで障害物を検出する。また、システムコントローラ11は、距離に基づいて得られる被投射物に対応した面を複数のサブ領域45(図14)に分割し、サブ領域45毎に略平面であるか否か判定する。被画像投射領域のうちの略平面である領域の抽出は、被画像投射領域全体を小領域であるサブ領域45に分割し、サブ領域45毎にその箇所が略平面であるか判定することにより行う。
図13を参照して、演算部15が備える距離記憶部15dは、各投射位置毎に測定された距離を記録するメモリである。プロファイル記憶部15bに記録されたプロファイル41からLPF15cに通してノイズ成分を除去した上で、プロファイル41から各投射位置における距離を抽出して記録する。
図14を参照して、サブ領域45は、被画像投射領域全体を分割して設定される小領域である。サブ領域45の中の、全ての投射位置の距離測定が完了した段階で、システムコントローラ11はサブ領域45が略平面であるか判定を行い、平面と判定された場合はその平面を表す方程式の係数を平面情報記憶部11bに記録する。サブ領域45内の全ての距離測定データを用いて平面判定を行うのでより高精度な判定が可能である。システムコントローラ11は、略平面と判定されたサブ領域45に対してのみ画像表示用レーザ光4による画像表示を行うので、人間の頭部などの様に所定の曲率を有する障害物22への画像の投射を正確に防止することができ、安全性の高い画像投射装置を提供できる。
また、略平面であるサブ領域45のうち、スクリーン20上に直接投射している領域は全て略同一平面上に存在するはずなので、複数のサブ領域の中から同一平面上にある箇所を抽出することによりスクリーン20の位置を特定できる。スクリーン20上にあると特定されたサブ領域の位置はスクリーン領域記憶部11cに記録される。通常、略平面形状を有する障害物は人間の頭部である可能性は極めて低く、非平面形状に対してのみ画像投射しても安全上の問題は少ないが、スクリーン20を特定して選択的に画像投射することにより、安全性をさらに高めることが可能である。
次に、画像投射装置300の動作をより詳細に説明する。
まず、画像表示を行う前段階の、略平面であるサブ領域45を抽出する処理を説明する。
図14を参照して、赤外線レーザ光4aをスクリーン20上のX+方向に走査させて、プロファイル41を取得しつつ、Y方向の走査位置をY−方向に順に変更していく。この際、画像表示用レーザ光4の投射はOFFされている。被画像投射領域全体は、多数のサブ領域45に分けられている。ただし境界線は便宜上記載しているもので仮想的なラインである。各プロファイル41は、取得が完了した後にLPF15cを経由してノイズを除去され、サブ領域45内の各位置(角度センサ13aにより取得された水平投射角および垂直投射角)における距離に分解されて距離記憶部15dに記憶される。サブ領域45内の全ての位置における距離が取得されたら、システムコントローラ11は、各サブ領域45が平面であるか否かの判定を行う。
図15Aを参照して、サブ領域45内の平面判定ポイント50は、距離記憶部15d内に水平および垂直投射角と測定距離が記録されているポイントであり、プロファイル41に沿ってサブ領域45内全体に複数分布している。システムコントローラ11は、各平面判定ポイント50の水平および垂直投射角と測定距離に基づいて、各平面判定ポイント50のX、Y、Z座標を算出する。次に、システムコントローラ11は、最小自乗法を用いて、サブ領域45内の全ての平面判定ポイント50のX、Y、Z座標から、自乗平均が最小となる仮想平面(以下、最小自乗平面と称する)を算出する。最小自乗平面は以下の計算式により算出する。最小自乗平面を(式14)の様に表し、
z= αx + βy +γ ・・・(式14)
係数α、β、γを(式15)の行列式を解くことにより求める。
ここで、例えばΣXXは、全平面判定ポイント50のX座標の自乗の総和を示している。
図15Aに示す様に、サブ領域45が略平面であり、平面判定ポイント50がほぼサブ領域45上にある場合には、算出した最小自乗平面はサブ領域45にほぼ一致する。また、図15Bに示す場合では、最小自乗平面は平面51の様になり、一部の平面判定ポイント50と離れて算出される。
次に、算出した最小自乗平面に対し、各平面判定ポイント50から下ろした垂線52の長さの分散を算出する。この分散の度合い(分散値)が所定値以下の場合は、各平面判定ポイント50が最小自乗平面上にある、つまりサブ領域45が略平面であると判定する。図15Bの様に、垂線52の長さが大きい場合は分散値が所定値より大きくなり、サブ領域45は略平面ではないと判定することができる。これにより、距離の測定誤差が残留している場合にもその影響を少なくし、的確な平面判定が可能である。このように、システムコントローラ11は、最小自乗平面(仮想平面)と被投射物との間の距離の分散の度合いが所定値以内である場合に、そのサブ領域を略平面であると判定する。
このとき、サブ領域45の位置と傾きを表す方程式は(式14)により表されるので、これら平面の係数α、β、γを平面判定結果として平面情報記憶部11bに記録する。平面情報記憶部11bには、サブ領域45毎に個別に判定結果が記録され、サブ領域45が平面と判定された場合には、平面であることを示すフラグと係数α、β、γが記録され、平面でないと判定された場合には、平面でないことを示すフラグのみが記録される。
次に、スクリーン20の位置の選別方法を説明する。被画像投射領域内の全ての位置の平面判定を完了した段階で、平面であると判定されたサブ領域45を略同一平面上に位置するもの毎にグループ化する。例えば2つのサブ領域45が略同一平面上にあるかどうかは、平面情報記憶部11bに記録された各々の係数α、β、γが所定の誤差の範囲で同一であるかにより判定できる。グループが1つしかない場合、つまり平面であると判定されたサブ領域45が全て同一平面上にある場合は、それらのサブ領域45全てをスクリーン20であると判定し、その結果をスクリーン領域記憶部11cに記録する。スクリーン領域記憶部11cに記録されるのは、サブ領域45毎にその箇所がスクリーン20であるか否かを示すフラグである。もしもグループが複数ある場合、つまり、投射領域内に異なる位置または傾きを有する平面が複数ある場合は、どの平面がスクリーン20であるか判定する必要がある。例えば投射領域内に侵入した障害物22が平面部を有する場合に起こり得る。グループが複数ある場合の判定は、各々の平面の面積を比較し、最も面積の大きい平面を検出することにより行う。例えば各サブ領域45の面積を全て同一に設定してある場合は、各グループに属するサブ領域45の個数が最も多いグループを選定することで容易に検出できる。システムコントローラ11は、略平面と判定したサブ領域のうち同一平面上に位置するサブ領域を1つのグループに分類することで、略平面と判定したサブ領域を複数のグループに分ける。そして、最も面積が広いグループに属するサブ領域に画像を表示する。最も面積の大きい平面をスクリーンとして判定することにより、投射領域の中で最も面積の大きな平面部に画像を投影するので、画像の欠落部を最小限に抑えることが出来、品位の高い画像投射装置を提供できる。またスクリーン20を特定してスクリーン20にのみ画像を投射するので、人間の頭部等への投射を確実に防止することが出来る安全性の高い画像投射装置を提供できる。
図16Aは、スクリーン領域記憶部11cの記録が記録する情報の一例を示す図である。図16Bは、画像投射時の距離測定動作を示す図である。
図16Aを参照して、スクリーン領域55は、白抜きで示すサブ領域45の集合である。スクリーン領域55内のサブ領域45は全て平面と判定されたものであり、かつ同一平面上に位置している。非スクリーン領域56は、斜線で示すサブ領域45の集合である。非スクリーン領域56内のサブ領域45は非平面と判定されたものであるが、平面と判定されたが面積の小さい平面のグループに属するものでも有り得る。スクリーン領域記憶部11cの内容は画像表示を行う際に参照され、非スクリーン領域52で表示を停止するために用いられる。
上記では、スクリーン20の位置を特定する方法として、略同一平面上に位置するものをグループ化して特定する方法を説明したが、これに限定されない。
例えば、隣接するサブ領域45間が同一平面上にはないが、所定の誤差の範囲で連続的に接続されており、各々の平面の法線ベクトルの方向が所定の範囲内で一致しているサブ領域45をグループ化してもよい。これにより、例えばスクリーン20全体が僅かにたわんでいる様な場合にも、スクリーン20の位置の特定が可能となる。
次に、画像表示を行う処理を説明する。
システムコントローラ11は、スクリーン領域記憶部11cを参照して、レーザ光2による走査を行うサブ領域45がスクリーン領域55内であるか非スクリーン領域56内であるかを判定し、スクリーン領域55内である場合に限りレーザ光2を投射する。これにより常にスクリーン20に対してのみ画像を投射することができる。
一方、システムコントローラ11は、赤外線レーザ光4aによる距離測定も同時に実施し、スクリーン領域記憶部11cを参照して、赤外線レーザ光4aが走査するサブ領域45がスクリーン領域55内であるか非スクリーン領域56内であるかを判定する。
赤外線レーザ光4aが走査するサブ領域45がスクリーン領域55内である場合には、平面情報記憶部11bに記録されている平面情報に基づき、赤外線レーザ光4aがスクリーン20で反射しているか判定する。この時、スクリーン20で反射していないと判定された場合は、障害物が新たに侵入したと判定する。このように、新たに測定した距離と位置情報との差が所定値以上である場合には、システムコントローラ11は、その差が所定値以上であるサブ領域を非平面領域と再判定する。このとき、光源は、その差が所定値以上であるサブ領域への画像の表示を中断する。
図16Bを参照して、画像表示中に障害物60が新たに侵入してきた場合、赤外線レーザ光4aは本来反射すべきサブ領域61で反射せずに障害物60で反射する。このため、測定される距離はサブ領域61で反射される場合よりも短くなり、これにより、障害物60の侵入を検出できる。この場合、システムコントローラ11は、該当するサブ領域61を非平面領域と直ちに再判定し、平面情報記憶部11bおよびスクリーン領域記憶部11cの記憶内容を書き換える。赤外線レーザ光4aに続いて同領域を走査する画像表示用レーザ光4は、その領域には投射されず、新たに侵入した障害物60への画像投射を直ちに防止することが出来る。この様に、あらかじめ検出している平面情報に基づいて算出される距離の期待値と、実際に測定された距離とを比較して、判定処理を行っているので、平面度の算出を新たに行う時間を無くすることができ、高速な判定が可能な安全性の高い画像投射装置を提供できる。
また、赤外線レーザ光4aが走査するサブ領域45が非スクリーン領域56内である場合には、サブ領域45内を距離測定した後に略平面であるかを再評価し、さらにスクリーン領域55と同一平面上にあるかを評価する。スクリーン領域55と同一平面上にあると新たに評価されたサブ領域45の位置は、スクリーン領域記憶部11cに記録され、画像表示用レーザ光4による画像表示が行われる様になる。
図17は、画像投射装置300の動作を示すフローチャートである。
画像投射装置の電源が投入されると、まず、画像表示用レーザ光4の投射を停止した状態にする(S30)。次に、ミラー駆動部13がミラー部6を駆動して走査を開始するとともに。赤外線レーザ光4aの投射を開始する(S31)し、以下に示す被画像投射領域内の走査を継続的に実施する。赤外線レーザ光4aの反射光に基づいてプロファイル41が算出される。LPF15cを通ったプロファイル41を用いて、平面判定ポイント50毎に距離を抽出して距離記憶部15dに記録する(S32)。
次に、サブ領域45の内部の全ての平面判定ポイント50での距離測定を完了しているかを判定し(S33)、完了していない場合はステップS32の処理に戻り、完了しているサブ領域45がある場合は、サブ領域45内の平面判定ポイント50の座標から最小自乗平面の算出を行う(S34)。次に平面判定ポイント50から最小自乗平面に降ろした垂線の長さの分散の度合いを算出し、所定の値より低い場合にはサブ領域45が平面であると判断し、その平面(最小自乗平面)の方程式を平面情報記憶部11bに記録する(S35)。次に被画像投射領域内の全ての位置で平面判定処理を完了しているか判定し(S36)、完了していない場合はステップS32の処理に戻り、完了している場合にはスクリーン領域の判定を行い、判定結果をスクリーン領域記憶部11cに記録する(S37)。この時点から画像表示が開始され、スクリーン位置のみにレーザ光2が投射される様に光源1を制御する(S38)。光源1の制御はスクリーン領域記憶部11cの記憶内容を参照することにより行い、以下に説明する赤外線レーザ光4aの走査によるスクリーン領域記憶部11cの書き換えとは独立かつ平行に行われる。
なお、上記では、スクリーン領域の判定が完了した直後から画像表示を開始しているが、被画像投射領域全体の走査とスクリーン領域の判定を数回行い、スクリーン領域が変化しない場合に、画像表示のステップに進んでもよい。略平面と判定したサブ領域内の被投射物の位置情報は、距離を新たに測定する毎に更新されるが、その位置情報の示す位置が所定時間変化しない場合に限り、光源は、その略平面と判定したサブ領域への画像の表示を開始する。特に、携帯型の画像投射装置の様に、投射方向が高頻度で変動する場合には、投射方向が変化しているときは画像表示用レーザ光4の投射を停止する。投射方向が所定時間変化しない、つまり画像投射装置が動いていないことを確認してから画像表示用レーザ光4の投射を開始できるので安全性をより高めることが出来る。なお、被画像投射領域全体の走査時間は、例えば1/60秒に設定され、極めて短時間であるため、数回の走査を行っても画像表示が停止する時間は短く、画像品質への影響は少なく抑えることが出来る。
次に、画像表示が行われている間の処理を説明する。赤外線レーザ光4aによる距離測定を行う(S39)とともに、距離測定点の位置がスクリーン領域であるかを判定(S40)する。スクリーン領域でない場合には、非スクリーン領域に対応する処理であるS43に進む。スクリーン領域である場合には、測定された距離がスクリーン20の距離と一致しているか判定する(S41)。この判定は、平面情報記憶部11bから取り出したサブ領域45の平面の方程式と赤外線レーザ光4aの投射方向とから算出できるスクリーンまでの距離の期待値と、実際に測定された距離とを比較することにより判定できる。ここでスクリーン20から反射していると判定された場合には、S46の処理に進むが、スクリーン20から反射していないと判定された場合には、障害物22が被画像投射領域に進入したと判断し、サブ領域45をスクリーン領域55から除く様にスクリーン領域記憶部11cの記憶内容を修正する(S42)。これにより、この領域への画像表示用レーザ光4の投射を停止することが出来る。さらに非スクリーン領域に対応する処理を行う。
非スクリーン領域に対応する処理では、サブ領域45内の全ての平面判定ポイント50の距離測定を完了しているか否かを判定する(S43)。完了している場合には最小自乗平面の算出(S44)を行い、続いて、平面判定ポイント50から最小自乗平面に降ろした垂線の長さの分散の度合いを算出し、所定の値より低いかの平面判断を行う(S45)。さらに、被画像投射領域全体の距離測定が完了していれば(S46)、スクリーン領域決定処理を再度行い(S47)、スクリーン領域記憶部11cの記憶内容を最新のスクリーン位置に更新する。画像表示の終了の指示があるか判定し(S48)、無ければS39の処理に戻り、有れば動作を終了する。
以上の様に、本実施形態によれば、被画像投射領域を、サブ領域45に分割しその中の全ての距離データを用いて平面判定を行うので、より高精度な平面判定が可能な画像投射装置を提供できる。
またサブ領域内で測定された距離測定ポイントの座標データから最小自乗平面を算出し、分散値を用いて平面度を判定しているので、測定誤差を有する場合でも高精度な平面判定が可能な画像投射装置を提供できる。
また、あらかじめスクリーン領域の検出と平面情報の算出をしておき、距離の期待値と実測値とを比較して障害物の進入を検出するので、検出の際に平面度の再計算を行う必要が無く、高速な判定が可能で、安全性の高い画像投射装置を提供できる。
また、平面と判定されたサブ領域の中からスクリーン領域を抽出して、スクリーン領域にのみ画像を表示するので、さらに安全性の高い画像投射装置を提供できる。
また、スクリーン領域を抽出した後、スクリーン領域が変動しないことを確認してから画像の投射をする。これにより、画像投射装置自身が動いていない状態で画像の投射を開始できるので、さらに安全性の高い画像投射装置を提供できる。
(実施形態4)
図18は、本発明の実施形態4による画像投射装置400を示す図である。図19は、画像投射装置400の画像表示前の動作を示すフローチャートである。図20は、画像投射装置400の画像表示中の動作を示すフローチャートである。
図18を参照して、画像投射装置400は、温度測定部60を備える。温度測定部60は、例えばスクリーン5や、スクリーン5と画像投射装置との間に進入した人間が、温度や体温に応じて放射する赤外線を検出し、その温度を測定する温度センサである。
スクリーン5等から放射される赤外線の一部は、赤外線経路61に沿って、ミラー部6で反射されて、温度測定部60に入射する。ミラー部6が表示領域を走査しながら温度を測定することで、走査する領域の温度分布を取得することが出来る。これにより、平面と判定された領域でも、もしも人間の体温に近い温度範囲(例えば30〜40度の間)が検出されれば、その領域における画像の投射を停止することにより、顔や腕など人間の肌が露出している箇所へ誤投射する可能性をさらに低減でき、より安全性を高めた画像投射装置を提供できる。
また、温度測定部60が被投射物表面の温度を測定する時には、距離測定用の赤外線レーザ光4aの照射を停止する。赤外線レーザ光4aの出力を停止している期間に温度測定を行うことで、赤外線レーザ光4aの温度測定部60への漏れ込みを防止し、温度測定への影響を無くして温度測定精度を高めている。平面度の判定と温度の測定は、例えばミラー部6が投射領域全体を1回走査する毎に切り替えて実施し、2回走査した後に、平面度判定結果と温度測定結果を合わせてスクリーン領域を判定する。
図19を参照して、画像投射装置400の動作をより詳細に説明する。
ステップS30〜S36の処理は、図17を参照して説明した処理と同様であり、赤外線レーザ光4aを投射して、サブ領域内の平面度を算出する。ステップS36の処理において、画面全体の走査が完了した後、赤外線レーザ光4aをOFFにする(S50)。ミラー部6は、もう一度画面を描画する初期位置から走査を開始し、同時に温度測定部60が温度測定を行い、走査位置とその位置における温度をメモリ(図示せず)に格納する(S51)。各々のサブ領域中の温度測定が終わると(S52)、その平均温度を算出して(S53)、メモリ(図示せず)に格納する。画面全体の走査が完了すると(S54)、ステップS35の処理で平面と判定された領域のうち、平均温度が所定の温度範囲(例えば30〜40度)であるものを除去し、残りをスクリーン領域55として設定する(S37)。
図20を参照して、ステップS37の処理から続いて、画像の表示を開始する(S38)。以下、画像投射装置は、画像の投射をスクリーン領域55にのみに行いながら、並行して平面度の算出と温度の測定を1画像フレーム毎に切り替えて実施する。ステップS39〜S46の処理は図17を参照して説明した処理と同様である。ステップS46において、画面全体の走査が完了した後、赤外線レーザ光4aをOFFにする(S50)。ミラー部6はもう一度画面を描画する初期位置から走査を開始し、同時に温度測定部60が温度測定を行う。ステップS57〜S60の処理は、図18を参照して説明したステップS52〜S54、S37の処理と同様である。画像表示の終了の指示があるか判定し(S61)、無ければS39の処理に戻り、有れば動作を終了する。
以上の様に、画像投射装置400は、温度測定部60を備え、人間の体温に近い温度範囲(例えば30〜40度の間)が検出された領域に対して画像の投射を中断することにより、より安全性を高めることができる。
また、温度測定部60の温度測定時には、距離測定用の赤外線レーザ光4aの照射を停止することで、赤外線レーザ光4aによる温度測定への影響を無くし、温度測定部60の温度測定精度を高めることが可能である。
なお、上記の説明では、赤外線レーザ光4aの照射による平面度判定と温度測定とを、1画像フレームの走査毎に切り替えたが、これに限定されるものではなく、赤外線レーザ光4aの照射時には温度測定を行わない構成であればよい。例えば平面度の評価を複数回走査した後に、温度測定を1回行う構成としても良い。
本発明は、レーザ光を投射して画像を表示する画像投射装置の分野で特に有用であり、装置の小型化および低コスト化を実現すると共に、安全でかつ十分な明るさで表示可能な画像投射装置を提供することができる。
本発明は、レーザ光を投射して画像を表示する画像投射装置に関し、特に、画像投射装置の安全性向上技術に関する。
スクリーンに画像を投射するプロジェクタとスクリーンとの間の投射光路内に人間が進入して、投射側に顔を向けた場合、投射光が眼に刺激を与える危険性がある。このため、投射光路内の物体の有無を検出する検出部と、放射パワーを制御する制御部とを画像投射装置に設け、投射光路内に物体を検出した場合には、放射パワーを減少させることで危険性を防止する方式が提案されている。
例えば、特許文献1は、電磁放射線センサ、熱放射線センサ、焦電センサ、温度センサ等により投射領域を監視して、投射領域に物体が存在する場合、人間に対して無害化した動作モードに切り替える画像投射装置を開示している。
また、特許文献2は、投射された画像をカメラで監視して、人間が居る領域を抽出してその領域の画像をマスクする画像投射装置を開示されている。この装置では、投射領域のうちの人間が居ると判断された領域に対してのみ放射パワーを制限すればよいので、他の領域では画像を表示し続けることができる。
また、レーザ光を投射して画像を表示する画像投射装置(レーザプロジェクタとも称される)の開発が進められている。レーザ発光素子が出力するレーザ光は、ランプが出力する光よりも色純度が高いため、色再現性を向上させることができる。また、光学系を小型化できると共に消費電力も抑えることができるので、小型で省電力の画像投射装置を実現することができる。
レーザ光は細く絞った状態で走査させることができるので、ミラー素子等を用いてレーザ光を2次元走査させて画像を表示することができる。このようなスキャン方式のレーザプロジェクタでは、レーザ光の強度を変調させて画像の表示を行うため、液晶パネルやDMD(Digital Micromirror Device)などの2次元の画像表示デバイスを用いた通常のプロジェクタに比べさらに省電力であり、また、2次元画像デバイスを均一に照明する照明光学系が不要なので装置の小型化も実現できる。
このように、スキャン方式のレーザプロジェクタは、小型のモバイル機器にも搭載可能であり、大型ディスプレイの搭載が困難な携帯電話等でも大画面表示が楽しめるようにすることができる。
特許第2994469号公報
特開2004−254145号公報
従来の画像投射装置は、物体や人物を検出する機構として、別途検出用のセンサや画像監視用のカメラを備える必要があり、高価で小型化にも限界があった。
レーザプロジェクタ等のレーザ応用製品に対しては、安全基準で許容放射パワーが定められており、人の目に対して安全な範囲では十分な明るさが確保できないので、安全を確保しつつ放射パワーを上げる技術が求められる。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、小型化および低コスト化を実現すると共に、安全でかつ十分な明るさで表示可能な画像投射装置を提供することを目的とする。
本発明の画像投射装置は、レーザ光を出力する光源と、前記光源が出力した前記レーザ光を反射して投射するミラー部とを備え、前記投射したレーザ光の少なくとも一部により画像を表示する画像投射装置であって、前記画像投射装置は、前記レーザ光の投射方向から戻ってきた前記レーザ光の少なくとも一部を検出する検出部と、前記検出した光に基づいて画像表示可能領域を決定する演算部とを備え、前記ミラー部は、前記レーザ光の投射方向から戻ってきた前記レーザ光の少なくとも一部を前記検出部へ導くために反射することを特徴とする。
ある実施形態によれば、画像信号に応じて前記レーザ光を変調させるための変調信号を生成する変調部をさらに備え、前記光源は、前記変調信号に応じて変調した前記レーザ光を出力し、前記演算部は、前記検出した光の強度と前記変調信号とを比較して、前記画像表示可能領域を決定する。
ある実施形態によれば、前記変調部は、前記画像表示可能領域には前記画像信号に応じた画像を表示させるための変調信号を生成し、前記変調部は、前記画像表示可能領域以外の領域には、障害物を検出するための検出用レーザ光を投射するための変調信号を生成する。
ある実施形態によれば、前記演算部が前記画像表示可能領域以外の領域の少なくとも一部で画像表示が可能と判断した場合は、前記変調部は、画像表示が可能と判断された前記少なくとも一部の領域に前記画像信号に応じた画像を表示させるための変調信号を生成する。
ある実施形態によれば、前記検出用レーザ光はドットパターンで投射される。
ある実施形態によれば、前記ミラー部は、前記レーザ光を2次元に走査させて画像を表示し、前記演算部は、前記画像表示可能領域の決定処理を走査ライン毎に行ない、前記変調部は、前記決定処理の結果を、後に続く走査ラインに対応した前記レーザ光の変調に反映させる。
ある実施形態によれば、前記ミラー部は、前記レーザ光を2次元に走査させて画像を表示し、前記変調部は、1つ前の画像フレームの表示時に決定された画像表示可能領域に基づいて、画像フレームの最上端の走査ラインに対応した前記レーザ光を変調する。
ある実施形態によれば、前記レーザ光の最大放射パワーは、人間の目を前記レーザ光が走査したときに前記目に入射するエネルギーが安全基準の定める安全レベル内となる放射パワーである。
ある実施形態によれば、前記レーザ光の最大放射パワーは、人間の目を前記レーザ光が走査したときに前記目に入射するエネルギーが安全基準の定める安全レベル内となる放射パワーであり、前記ドットパターンで投射される前記検出用レーザ光の放射パワーは、画像表示用のレーザ光の放射パワー以上である。
ある実施形態によれば、前記画像投射装置の起動時には、画像を表示する前に前記光源は前記検出用レーザ光を投射する。
ある実施形態によれば、前記光源は、n原色(nは3以上の自然数)それぞれの色のレーザ光を出力し、前記光源は、前記検出用レーザ光として、前記それぞれの色のレーザ光を独立に出力する。
ある実施形態によれば、前記演算部は、前記光源を点灯させないブランク期間に前記検出部で検出された光の強度にさらに基づいて前記画像表示可能領域を決定する。
ある実施形態によれば、前記ブランク期間は水平ブランク期間である。
ある実施形態によれば、前記ブランク期間は垂直ブランク期間である。
ある実施形態によれば、前記演算部は、前記検出した光に基づいて、前記レーザ光が投射された被投射物と前記画像投射装置との間の距離を測定し、前記演算部は、前記距離に基づいて前記被投射物のうちの略平面の領域を検出し、前記略平面の領域を前記画像表示可能領域に決定する。
ある実施形態によれば、前記演算部は、前記距離に基づいて得られる前記被投射物に対応した面を複数のサブ領域に分割し、前記サブ領域毎に略平面であるか否か判定する。
ある実施形態によれば、前記演算部は、前記サブ領域内の仮想平面を算出し、前記仮想平面と前記被投射物との間の距離の分散の度合いが所定値以内である場合に、前記サブ領域を略平面であると判定する。
ある実施形態によれば、前記略平面と判定したサブ領域内の前記被投射物の位置情報を保持する記憶部をさらに備え、新たに測定した距離と前記位置情報との差が所定値以上である場合には、前記演算部は、前記差が所定値以上であるサブ領域を非平面領域と再判定し、前記光源は、前記差が所定値以上であるサブ領域への画像の表示を中断する。
ある実施形態によれば、前記演算部は、前記略平面と判定したサブ領域のうち同一平面上に位置するサブ領域を1つのグループに分類することで、前記略平面と判定したサブ領域を複数のグループに分け、最も面積が広いグループに属するサブ領域に画像を表示する。
ある実施形態によれば、前記略平面と判定したサブ領域内の前記被投射物の位置情報を保持する記憶部をさらに備え、前記位置情報は前記距離を新たに測定する毎に更新され、前記位置情報の示す位置が所定時間変化しない場合に限り、前記光源は、前記略平面と判定したサブ領域への画像の表示を開始する。
ある実施形態によれば、前記演算部は、前記距離に基づいて前記被投射物のプロファイルを算出し、前記プロファイルから所定の凹凸より小さい凹凸部分を除去する。
ある実施形態によれば、前記演算部は、前記距離に基づいて前記被投射物の曲率を算出し、前記光源は、前記曲率が所定の範囲内である領域への画像の表示を行わない。
ある実施形態によれば、前記演算部は、前記距離に基づいて前記被投射物のプロファイルを算出し、前記プロファイルから所定の凹凸より小さい凹凸部分を除去し、前記演算部は、前記プロファイルに基づいて前記被投射物の曲率を算出する。
ある実施形態によれば、前記被投射物表面の温度を測定する温度測定部をさらに備え、前記画像表示可能領域の温度が所定の範囲内である場合は、前記光源は、前記温度が所定の範囲内の領域への画像の表示を中断する。
ある実施形態によれば、前記温度測定部は、前記距離を測定するために出力するレーザ光の停止期間に、前記被投射物表面の温度を測定する。
本発明によれば、画像表示用のミラー部が画像表示可能領域検出のための機構を兼ねている。これにより部品数を減らして低コスト化を実現すると共に、装置の小型化を実現することができる。また、演算部は、人間が存在しないと判断した画像表示可能領域と、人間が存在すると判断したそれ以外の領域とを区別する。人間が存在すると判断した領域には画像を表示しないことで安全性を確保することができる。また、人間が存在しないと判断した画像表示可能領域には強い光で画像を表示することができるので、明るい画像表示を実現することができる。
また、ある実施形態によれば、画像を表示するためのレーザ光を用いて画像表示可能領域を検出する。画像表示用の構成要素に加えて、反射光強度を検出する検出部と演算部とを装置が備えるだけで画像表示可能領域の検出が可能となり、装置のさらなる低コスト化および小型化を実現することができる。本発明によれば、物体や人物を検出する機構として、別途検出用のセンサや画像監視用のカメラを装置が備える必要がないので、小型且つ安価で、安全に明るい画像表示が可能な画像投射装置を実現することができる。
また、ある実施形態によれば、画像表示可能領域およびそれ以外の領域の両方で、人間の検出動作を続ける。これにより、画像表示可能領域に人間が進入してきたときは、直ちにその進入領域への画像の表示を中断することができる。また、画像表示可能領域以外の領域から人間が検出されなくなったときは、その領域への画像の表示を再開することができる。
また、ある実施形態によれば、検出用レーザ光をドットパターンで投射する。これにより、人間の目に入射し得る光の量を少なくして安全を確保しながら、人間の検出動作を行うことができる。
また、ある実施形態によれば、画像表示可能領域の決定処理を走査ライン毎に行ない、その処理の結果を、後に続く走査ラインに対応したレーザ光の変調に反映させる。これにより、走査ライン毎に処理することにより最小限の処理時間で画像の表示と非表示とを切り替えることができる。また、その処理結果を後に続く走査ラインに反映させることにより、人間の目に入射し得る光の量をより少なくすることができる。
また、ある実施形態によれば、演算部は、光源を点灯させないブランク期間に検出部で検出された光の強度にさらに基づいて画像表示可能領域を決定する、レーザ光の反射光以外の光を検出しておくことにより、使用場所の明暗や投射領域内にある物体の状態などの様々な条件下で、的確に画像表示可能領域を決定することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。同様の構成要素には同様の参照符号を付し、同様の説明の繰り返しは省略する。
(実施形態1)
図1〜図6を参照して、本発明による画像投射装置の第1の実施形態を説明する。まず、図1を参照する。図1は、本実施形態の画像投射装置100を示す図である。映像投射装置100は、投射したレーザ光の少なくとも一部によりスクリーン等に画像を表示する。映像投射装置100では、画像表示用のレーザ光およびミラー部を、画像表示可能領域の検出動作にも用いる。これにより部品数を減らして低コスト化を実現すると共に、映像投射装置100の小型化を実現することができる。
画像投射装置100は、レーザ光10a〜10cを出力する光源1と、コリメートレンズ2と、ダイクロイックプリズム3と、ハーフミラー5と、レーザ光10a〜10cを反射して投射するミラー部6とを備える。光源1は、n原色(nは3以上の自然数)それぞれの色のレーザ光を出力する。この例では、光源1は、赤色レーザ光10aを出力する発光素子1aと、緑色レーザ光10bを出力する発光素子1bと、青色レーザ光10cを出力する発光素子1cとを備える。なお、光源1は4原色以上の多原色のレーザ光を出力してもよい。
画像投射装置100は、レーザ光10a〜10cを変調するレーザ変調部12と、ミラー部6を駆動するミラー駆動部13と、レーザ光の投射方向から戻ってきたレーザ光の少なくとも一部の強度を検出する光検出部9と、検出した強度に基づいて画像表示可能領域を決定する演算部15と、これらの構成要素を制御する制御部とをさらに備える。
次に、画像投射装置100の動作をより詳細に説明する。
光源1から出力されたレーザ光10a〜10c(RGBの3原色)は、それぞれのコリメートレンズ2によって絞り込まれ、ダイクロイックプリズム3で合成されて1本の投射レーザ光4となる。レーザ光4は、ハーフミラー5を経て、ミラー部(スキャンミラー)6に入射する。ミラー部6は、レーザ光4を2次元に走査させて画像を表示するレーザ光走査手段である。ミラー部6は、例えば2軸の回動ミラー素子であるが、1軸のミラー素子を2個使用してもよいし、回転ポリゴンミラー素子を用いてもよい。ミラー部6で反射したレーザ光4は、開口部7を通ってスクリーン20に投射される。
投射されたレーザ光4はスクリーン20等で反射され、その反射光は再びミラー部6に入射する。ミラー部6は、レーザ光4の投射方向から戻ってきたレーザ光4の少なくとも一部を光検出部9へ導くために反射する。反射されたレーザ光4は、ハーフミラー5で分岐されて集光レンズ8を通って光検出部9で検出される。
光検出用の光学系は、投射されるレーザ光4のスポット領域の反射光強度を計測するように設定される。
光検出部9は、例えばフォトダイオードであり、特に、アモルファスシリコンフォトダイオードを用いるのが好適である。アモルファスシリコンフォトダイオードは、単結晶シリコンダイオードと比べて、波長感度特性が人の視感度に近く、フィルター無しで使える可視光センサであり、PIN構造のため応答性に優れ、基板材料が安価で製造コストも安いという特徴を持つ。
表示される画像の画像信号10は外部から制御部11に入力される。レーザ変調部12は、画像信号に応じてレーザ光を変調させるための変調信号を生成する。光源1は、その変調信号に応じて変調したレーザ光を出力する。レーザ変調部12がレーザ光を変調するのに同期して、ミラー駆動部13はミラー部6を駆動する。
ミラー部6から出力された角度変位信号16は制御部11に戻され、これによりミラー部6はフィードバック制御されている。
ミラー部6によって走査されたレーザ光4は、スクリーン20上にレーザビームスポット軌跡21を描く。レーザ光の走査方式の例を図2を参照して説明する。
図2は、走査方式のレーザビームスポット軌跡21と、水平方向(H)および垂直方向(V)の駆動信号波形を示す。
図2(a)はリニアラスタ走査方式を示しており、水平方向および垂直方向ともにリニアな駆動信号波形を示す。ポリゴンミラー素子を使用する場合はこの走査方式を採用する。水平方向では駆動周波数が高いので、回動ミラーを光速でリニアに駆動するのは通常困難である。画面の右端から左端、また下から上へ戻る期間は、レーザ光を点灯せずにミラーだけが戻るブランク期間である。水平ブランク期間32および垂直ブランク期間33を点線で示している。
図2(b)は共振ラスタ走査方式を示しており、回動ミラーの共振動作でレーザ光は水平方向に走査される。共振駆動では、回動ミラーをリニアに駆動する場合に比べて比較的小さな力で大きな振幅が得られる。垂直方向は周波数が低いのでガルバノミラーをリニアに駆動することが可能である。
また、共振駆動ではミラーの動作がサイン波状になり、水平方向を片道走査しているので、水平ブランク期間が長くなり、レーザ光の点灯時間が半分になる。
図2(c)は、水平方向では往復走査をする共振ラスタ走査方式を示している。
往復走査をすれば、駆動周波数が半分でよいので駆動しやすい。また図2(b)に示す方式と比べて、レーザ光の点灯時間が倍になるので効率が良い。ただし、走査線が厳密には平行でないので垂直駆動信号波形をステップ状に補正して走査線を平行化する必要がある。
図1を参照して、光検出部9は受光したレーザ光に応じた反射光強度信号を生成する。反射光強度信号は、検出アンプ14で増幅されて演算部15に送られる。演算部15は、反射光強度信号が示す強度と、レーザ変調部12が生成した変調信号とを比較して、画像表示可能領域を決定する。なお、演算部15は、反射光強度信号が示す強度と、画像信号とを比較して、画像表示可能領域を決定してもよい。レーザ変調部12は、画像表示可能領域には画像信号に応じた画像を表示させるための変調信号を生成する。また、レーザ変調部12は、画像表示可能領域以外の領域には、障害物を検出するための検出用レーザ光を投射するための変調信号を生成する。画像表示可能領域の決定処理および検出用レーザ光の詳細は後述する。
画像投射装置100では、スキャン方式のレーザプロジェクタの構成に加えて、ハーフミラー5と集光レンズ8と光検出部9を備えるだけで障害物検出動作を実現しており、検出用の放射源を別途設けていない。また、光検出部9は、CCD等のような2次元センサアレイではなく、単一のセンサであるが、2次元走査するスキャンミラーによって投射領域を2次元的に検出することができる。このような構成により、極めて小型で安価な画像投射装置となっている。
次に、レーザ光の安全基準に沿った画像投射装置100の動作を説明する。レーザ光の最大放射パワーは、人間の目をレーザ光が走査したときに目に入射するエネルギーが安全基準の定める安全レベル内となる放射パワーに設定する。
まず、レーザ光の安全基準によって定められた放射パワーについて説明し、次に、より強いレーザ光を発する場合の考え方、およびその考え方によって放射可能となる放射パワーとプロジェクターの明るさについて説明する。
レーザ光の安全基準として「IEC60825−1基準」、日本では「JIS C6802 レーザ製品の放射安全基準」(以下JISと略称する)があり、レーザ製品のクラス分けと測定方法が定められている。
その中で、基本的に安全とされるクラス1の被ばく放射限界(以下AELと称する)は、JISの表1(不図示)に波長と露光時間別に定められており、可視光を発する製品については、JISの表2(不図示)にクラス2のAELとして定められている。
これによると、可視光のレーザ光に対しては瞬きなどの嫌悪動作によって目が保護されることを考慮し、その反応時間を0.25秒として、放出持続時間が0.25秒以上のときは1mW、0.25秒以下のときはクラス1のAELと同じ、となっている。即ち、レーザポインタのような連続波のレーザ光では放射出力は1mWに制限される。
これに対し、走査型のレーザ製品に対しては、JISの8.4クラス分けの規則の(f)繰返しパルスレーザおよび変調レーザの項にAELの決定の仕方が定められている。
これによると、次の3つの条件で最も厳しいものを用いて決定する。
1)パルス列内のどの単一パルスからの露光も、単一パルスに対するAEL(AELsingle)を超えてはならない。
2)放出持続時間Tのパルス列の平均パワーは、放出持続時間Tの単一パルスに対して、それぞれ表1〜4(不図示)に規定したAELに対応するパワーを超えてはならない。
3)パルス列内のパルスの平均パルスエネルギーは、単一パルスのAELに補正係数C5を乗じた値(AELtrain)を超えてはならない。
AELtrain=AELsingle×C5
C5=N^−0.25・・・(式1)
ここでNは0.25秒の間に瞳を走査する回数である。
スキャン方式のプロジェクタのように2次元に走査する場合、瞳をレーザ光が走査することによってNが大きくなり、3)の条件が通常最も厳しくなる。測定方法はJISの9.3測定光学系の項に定められている。
以下、図3を参照して、放射パワーの計算方法を説明する。図3は、瞳とプロジェクタとの間の距離および投射領域を示す側面図である。
走査型レーザ光の放射パワーの測定条件は、測定開口25の直径がφ7mm、測定距離rが100mmと定められている。測定開口25のφ7mmは、人の瞳径の最大値を想定したものである。定められた測定条件で計算される放射パワーは、走査条件によって様々に変化する。以下、次の走査条件での計算例を示す。各パラメータで、添え字のh、vはそれぞれ水平、垂直を表している。
走査条件:
表示解像度 XGA(Nh=1024、Nv=768 ピクセル)
フレームレート fv=60Hz
画角 θh=60°、θv=45°
オーバースキャン率(画角/走査全角) Kosh=Kosv=0.7
水平方向は往復走査 Kub=2 (図2(c)の走査方式に相当)
水平走査周波数fhは、次のように表される。
fh=fv×Nv/Kosv/Kub=32.9kHz・・・(式2)
図3に示すように距離r=100mmの位置にあるD=φ7mmの瞳をレーザ光が横切る時間tは、次のように表される。
t=測定開口の視角/水平走査角速度
=(D/r)/(2×fh×θh/Kosh)・・・(式3)
=7.1E−7(sec)
0.25秒の間に瞳を走査する回数Nは、次のように表される。
N=(D/r)/(θv/Nv)*fv*0.25
=1020(回)
t=7.1E−7(sec)に対するAELsingle(単一パルスのAEL)は、JISの表1より、AELsingle=2.0E−7(J)となる。パルス列内の平均パルスエネルギーAELtrain(繰り返しパルスのAEL)は、(式1)から、
AELtrain=AELsingle×N^−0.25・・・(式4)
=2.0E−7×1020^−0.25
=3.54E−8(J)
となる(図3に示す3個の測定開口25のうちの左下に示す測定開口25の状態のとき)。
放射パワーPtrainは、
Ptrain=AELtrain/t・・・(式5)
=3.54E−8/7.1E−7*1000
=49.9(mW)
となる。
これより、プロジェクタのピーク放射パワーを50mW以下に抑えれば、100mmまで近づいて瞳に入射する放射エネルギー量が安全なレベルであり、100mm以上の距離ではレーザ光が分散することからより安全であり、100mm以下の距離では瞳を走査するレーザ光が網膜上の1点に合焦されず安全である。即ち、あらゆる条件において安全なレベルであると言える。
ここで、前述の条件1)の、単一パルスに対するAELから放射パワーを求めると、
Psingle=AELsingle/t・・・(式6)
=2.0E−7/7.1E−7
=281.7(mW)
となり、約5.6倍のパワーとなる。
これは、レーザ光が瞳を横切る回数を1回に制限した場合に相当する(図3に示す3個の測定開口25のうちの左上に示す測定開口25の状態)。
従って、後述する適切な処理を行うことによって、放射パワーは最大280mW程度まで上げられる。
同様に、回数Nに対してP(mW)は、
となり、プロジェクタとして必要なピークパワーに対応して、走査回数を選択すればよい。例えば、ピークパワーP=150mWとする場合は、走査回数を12回に制限すれば良い。
ピーク放射パワーが50mWのとき、プロジェクタの明るさは10ルーメン程度である。一般的なオフィスの明るさである400ルクスの部屋で視認可能である明るさ、例えば500ルクスを確保できる投射サイズは8インチ程度である。投射サイズを19インチとすると、画面の明るさは89ルクス程度となり、明るい部屋では視認できない。
それに対し、ピーク放射パワーが最大の280mWでは、プロジェクタの明るさは56ルーメンとなり、19インチで約500ルーメンとなる。つまり、上述のように、レーザ光が瞳を横切る回数に制限を加えるよう制御すれば、安全を確保しつつ、より大きなサイズに投射しても十分明るい画面が得られる。
測定距離を100mmから遠ざけると、tもNも小さくなるので、計算される放射パワーPtrainは大きくなる。t=1.78E−7(s)、 N=255(回)のとき、測定距離約400mmでは、Ptrainが281.7mW(約280mW)となる(図3に示す3個の測定開口25のうちの右下に示す測定開口25の状態)。
つまり、放射パワーを280mWに上げた状態でも、400mm以上離れると瞳への入射エネルギーは安全なレベルとなるため、少なくとも100mmから400mmの範囲で上述の処理を行っていれば問題無いことになる。
次に、光検出部9の動作をより詳細に説明する。
図1に示すように、表面が均一なスクリーン20上に画像が投射されている状態では、光検出部9では表示画像に応じた反射光強度が検出される。しかし、レーザ光の投射領域内に人等の障害物22が存在すると、その領域の反射光が乱されるので、反射光強度と画像信号との相関が失われて所定レベルの信号が得られなくなる。このような領域を画像表示可能領域から除外して画像の表示を中断することにより、投射領域に人が居たとしても、目に対する障害を防止する。
画像表示を中断した領域においても反射光強度の検出を続行して、障害物の存在がなくなったと判断されれば画像の表示を再開する必要がある。しかし、周囲が暗い場合は十分な反射光が得られないので、表示を中断した領域を監視することはできない。画像投射装置100は、画像表示用の光源以外に検出用の光源を設けていないが、表示を中断した領域では検出用の表示パターンとしてランダムドットパターンを表示することによってその反射光を検出できる。ランダムドットパターンは、水玉模様に似たパターンである。
このような領域ではスクリーンを遮る障害物が存在しているので、画像を表示せず検出用のパターンを表示しても問題無い。また、ドットパターンで投射される検出用のレーザ光は短いパルス状の照射になるため、仮に目に入っても危険はない。
例えば、上述の走査条件で、1ピクセルを表示する時間tpは、
tp=Kosh/2fh/Nh・・・(式7)
=1.04E−8(s)
となり、瞳を横切る時間に比べても非常に短いので、最大放射パワーのレーザ光を照射しても安全であり、必要があれば画像表示時のピークパワーを超える放射パワーで照射しても問題ない。ドットを表示する密度と瞳直径から、0.25秒間に瞳に入るパルスの数を想定し、安全レベル内に抑えればよい。ドットパターンで投射される検出用レーザ光の放射パワーを、画像表示用のレーザ光の放射パワー以上とすることで、パルス発光でも、より多くの光を検出することができる。
また、フレームごとにドットの表示位置を変える(即ちランダムドット)ことにより、パルス照射の間隔を空けて表示しても、数フレーム表示する間により細かい領域の判定ができる。
さらに、光源1は、ランダムドットパターンを表示する検出用レーザ光として、3原色(RGB)のレーザ光を同時に発光して白色のドットを表示してもよいし、それぞれの色のレーザ光を独立に出力して、各色のドットを表示してもよい。どの色のレーザ光を照射した時の反射光強度かを判別すれば、単色の光検出部9を用いながら、投射領域の色の違いも判別できる。
ところで、携帯型のプロジェクタでは、据え置き型とは異なり、スクリーンに限らず様々な物体に向かって投射することが起こり得る。また、周囲が明るい状態で使用される場合も多く、蛍光灯や窓などの光の発生源が投射領域内に存在する可能性もあり、任意の周辺光に照らされた物体に照射した状態で検出された反射光強度から、投射領域内の物体の状態を判定する必要がある。
ある点から検出される反射光強度は、その点を照らす光強度とその点の反射率の積で決まるので、光検出部9で検出される反射光強度信号Sdは、照射するレーザ光の強度信号をSi、周辺光24(図1)の光強度をSamb、照射点の反射率をRとすると、
Sd=R×(Si+Samb)・・・(式8)
で表される。従って、強度信号Siと反射光強度信号Sdとを比較するだけでは、周辺光の影響によって障害物の存在が正確に判定できない可能性がある。
例えば、白いスクリーンの前に暗い色の物体が存在するにもかかわらず、物体周辺のみ外部から光が当たっており、物体からの反射光がスクリーンからの反射光と同等になってしまうような場合が考えられる。
そこで、R×Samb=Sb 即ち、レーザ光を照射しない状態での投射点からの反射光強度を背景照度分布として計測し、
S=(Sd−Sb)/Si・・・(式9)
を求めれば、強度信号Sは、投射領域の反射率の分布に相当する信号となり、周辺光の影響を受けることなく投射領域内の物体の状態を認識することができる。
背景照度分布は、レーザ光走査のブランク期間に計測する。光源1を点灯させないブランク期間にミラー部6を走査時と同様に駆動し、ミラー部6に入射した光の強度を検出部9で検出することにより、背景照度分布を得ることができる。演算部15は、背景照度分布も用いて画像表示可能領域を決定する。
基本的には、垂直ブランク期間に背景照度分布を計測する。垂直方向のオーバースキャン率Kosv=0.7から、ブランク期間中の走査線数は、画像表示の走査線数768に対して、768×3/7=329ラインとなる。
図3に示したように、検出動作が必要な距離での人の頭部の大きさ(高さ250mm程度)は、投射領域の中で大きな部分を占めるので、背景照度検出にはそれほど高い解像度は必要なく、少なくとも人の頭部と背景が分離でき、さらに目の周辺部が識別できれば十分である。図3で、φ7mmの瞳と400mmの距離にある画面サイズ332mmとの比は332:7≒47:1なので、上記ブランク期間中の走査線数でも十分に目の周辺部は識別可能である。
ブランク期間中に計測した背景照度分布のデータは、一旦メモリに保存し、画像表示中の処理時に、対応する位置のデータを呼び出して使用する。画像表示中の検出動作と区別するため、ブランク期間中の検出をブランク検出と称する。
なお、水平ブランク期間に背景照度分布を計測してもよい。図2(b)に示す走査方式では、水平方向に片道走査するので、走査線毎に水平ブランク期間が表示期間と同じだけあるのでブランク検出に使用できる。この場合は、画像表示走査線と同数のブランク検出走査線数となる。
次に、図4を参照して、検出部9が検出した信号の処理手順をより詳細に説明する。
図4は、演算部15が実行する信号処理手順を説明する図である。
図4を参照して、均一なスクリーンの前に障害物33が存在しており、投射領域31中の背景照度分布32に影響を与えている。図4は、画像34を表示するための走査ライン35(i)上の画像輝度信号(レーザ変調信号)Si、対応する位置の背景照度信号(ブランク検出信号)Sb、その状態で光検出部9で検出される反射強度信号Sdをそれぞれ示している。
画像輝度信号Siには安全レベル36が存在し、領域A1は画像輝度信号Siの安全レベル以下の領域を表している。
安全レベル36とは、前述のJISの安全基準で定められた放射パワーであり、本実施形態では50mWである。放射パワーがこれより低い領域は無条件に表示可能であり、領域A1としてメモリに記憶しておく。
均一なスクリーンの領域では、画像輝度信号Siに対応した強度分布となる反射強度信号Sdが得られる。しかし、障害物33の存在する領域では、画像輝度信号Siとは対応しない強度分布となる反射強度信号Sdが得られる。なお、信号波形Sd1は、障害物33が存在しないときの波形である。ここで、
S=(Sd−Sb)/Si
を計算し、さらに信号Sの微分信号S’を所定の閾値でスライスすることにより信号Sが一定レベルで平坦な領域A2を抽出する。領域A2は、信号Siと信号Sdとがよく対応した領域であり、このことから、反射率が一定に近い領域であると言える。
そこで、A=A1+A2により得られる領域Aを画像表示可能領域と決定する。そして、次の走査ライン35(i+1)を表示する際、画像輝度信号Si+1が示すように、領域Aでは画像を表示し、それ以外の領域は検出モードとしてランダムドットパターンを表示する。Ldは、ランダムドットパターン表示時のピークレベルを表し、Lwは、白色表示用のレーザ光のピークレベルを表している。
通常、ある走査ラインで障害物があると判断された領域は、次の走査ラインタイミングでもやはり障害物が存在するので、この領域ではランダムドットパターンに対応する反射光は検出されず、引き続き障害物存在領域として判定される。時間が経過して障害物がなくなり、表示可能領域と同等の反射光が検出されれば、表示可能領域として画像の表示を再開する。
このように、演算部15は、画像表示可能領域の決定処理を走査ライン毎に行ない、レーザ変調部12は、決定処理の結果を、後に続く走査ラインに対応したレーザ光の変調に反映させる。また、決定処理を継続して行い、画像表示可能領域以外の領域の少なくとも一部で障害物が検出されなくなると、演算部15は、障害物が検出されなくなった領域への画像表示が可能と判断する。この場合、レーザ変調部12は、新たに画像表示が可能と判断された領域に画像信号に応じた画像を表示させるための変調信号を生成する。
走査ライン毎に決定処理を行うので、1フレーム毎に2次元データを処理するよりも最小限の処理時間で演算を行うことができる。上記の演算処理に要する遅延時間が水平ブランク期間内であれば、走査ライン(i)に於ける判定結果を走査ライン(i+1)に直ちに適用できる。従って、障害物として投射領域に人が存在し、目と走査ラインが重なったとしても、最悪でも瞳を1回走査するだけで、次の走査ラインでは画像表示用レーザ光が瞳を走査しない。通常は頭部の輪郭の上端に瞳が存在することはなく、走査ラインが瞳に到達する前に人が検出されるので、画像表示用レーザ光が瞳へ入射することはない。また、次のフレームの該当走査ラインにも処理結果を反映させるので、画像表示用レーザ光が瞳を再び走査することはない。瞳を1回走査する可能性は、真っ暗な画像から明るい画像に切り替わった瞬間に、表示を始めたレーザ光が瞳を通過する場合を想定している。それ以外の場合は、走査ラインが瞳に到達する前に検出モードに切り替わっているので、画像表示用レーザ光が瞳へ入射することはない。
この場合、白色表示用のレーザ光のピークパワーを280mWに設定することができる。
仮に、演算処理に要する遅延時間が長く、2回以上瞳を走査することを許容する場合は、その回数に応じ、表1に示したピークパワーを選択すればよい。
次に、図5を参照して、上述の動作をさらに説明する。図5は画像投射装置100の動作を示すフローチャートである。
画像投射装置100の起動直後、光源を点灯する前にまずミラー部6を駆動し(S1)、投射領域内の背景照度分布を計測して2次元データとしてメモリに保存する(S2)。その後、全面検出モードとして、画像を表示する前に光源1は検出用レーザ光をランダムドットパターンで投射して、反射光強度を検出しながらフレームの走査を開始する(S3)。これにより、起動時の人の目に対する安全を確保する。
最初のフレームのライン(1)は、検出モードで走査する(S4およびS5)。2フレーム目以降では、1つ前のフレームで判定した画像表示可能領域をメモリから呼び出す(S6)。レーザ変調部12は、1つ前の画像フレームの表示時に決定された画像表示可能領域に基づいて、画像フレームの最上端の走査ラインに対応したレーザ光を変調する。S5およびS6での設定に従ってライン(i)を走査し(S7〜S10)、反射光強度の検出をしながら演算処理(S11)を行ない、画像表示可能領域を更新して保存する(S12)。次のライン以降(ライン2〜Nv)では、前のラインで決定された画像表示可能領域で画像を表示し(S13〜S15)、それ以外の領域では検出モードのままとする(S16)。同時に演算処理(S17)を行ない、表示可能領域を更新して(S18)、次のラインを走査する。
1フレーム分の走査が終わったら、垂直ブランク期間に背景照度分布を検出して、背景照度分布のデータを更新する(S19)。フレーム走査(S3)へ戻り、画像再生動作がOFFになるまでこれらの動作を繰り返す(S20)。
これらの動作により、障害物のない均一なスクリーン部分に画像が順次表示されていく。
図6を参照して、演算処理(S11およびS17)をより詳細に説明する。図6は、演算処理の詳細を示すフローチャートである。
まず、画像輝度信号Siから安全レベル以下の領域A1を求める(S21)。
光検出部9は反射光強度信号Sdを生成し(S22)、それに対応する位置の背景照度信号Sbをメモリから呼び出し(S23)、S=(Sd−Sb)/Siを計算する(S24)。さらに信号Sの微分信号S’を計算して(S25)、微分信号S’を所定の閾値でスライスして領域A2を求める(S26)。
次に、A=A1+A2を計算して画像表示可能領域Aを決定して更新する(S27)。
上述したように画像投射装置100は、画像を表示するためのレーザ光を用いて画像表示可能領域を検出する。画像表示用の構成要素に加えて、反射光強度を検出する検出部9と演算部15とを装置が備えるだけで画像表示可能領域の検出が可能となる。物体や人物を検出する機構として、別途検出用のセンサや画像監視用のカメラを装置が備える必要がないので、小型且つ安価で、安全に明るい画像表示が可能な画像投射装置を実現することができる。また、人物等の障害物の範囲のみ画像の表示を中断することで人の目に対する安全を確保することができる。検出モードに切り替えた領域でも、ランダムドットパターンを表示して反射光の検出は続行するので、障害物の存在が無くなれば自動的に通常の画像表示モードに復帰可能である。
さらに、画像表示可能領域の決定処理を走査ライン毎に行ない、その結果を次の走査ラインに反映するので、最小限の処理時間でモードの切り替えができ、安全レベルを高めることができる。
また、演算部15が画像表示可能領域の決定処理を行う際、光源1を点灯させないブランク期間に検出部9で検出された輝度信号を用いることにより、使用場所の明暗や投射領域内にある物体の状態など、様々な条件下で的確な決定処理を行なうことができ、安全性をより高めることができる。
(実施形態2)
次に、図7〜図12を参照して、本発明による画像投射装置の第2の実施形態を説明する。図7は、本実施形態の画像投射装置200を示す図である。
画像投射装置200は、スクリーン20と画像投射装置200との間の距離を測定し、その測定値から人等の障害物を検出する。例えば、スクリーン20と画像投射装置200との間の距離および傾きを予め測定し、測定結果を記憶しておく。画像表示と並行して距離の測定も継続し、記憶された距離と新たに測定した距離との比較を行うことで、障害物の進入を検出することができる。なお、スクリーン20等の被投射物と画像投射装置200との間の距離とは、被投射物と画像投射装置200の任意の位置との間の距離であり、例えば、画像投射装置200のミラー部6と被投射物との間の距離である。
また、画像投射装置200がハンディタイプ等である場合は、画像投射装置200自身の位置や姿勢が頻繁に変更される可能がある。このような場合でも、画像投射装置200は、スクリーン領域を自動的に検出し直す。利用者自らがスクリーン20と画像投射装置200との間に障害物がない状態を確認した上で、スクリーン領域の再設定を行う必要が無いので、利用者の利便性を高めることができる。
図7を参照して、画像投射装置200は画像投射装置100(図1)と比較して構成要素の配置が若干異なっている。画像投射装置200は、光源の構成要素として赤外線レーザ光4aを出力する発光素子1dを備え、光学素子として反射部3a〜3cおよびハーフミラー5aを備える。
発光素子1a、1b、1cから出力されたレーザ光は、反射部3a、3b、3cを経てミラー部6(ビーム走査手段)によって2次元に走査されて、画像表示用レーザ光4としてスクリーン20に投射される。ミラー部6による2次元走査は、所定の投射方向(Z方向)を基準として、例えばY方向(Z方向に垂直な方向)に±22.5°、X方向(図8)に±30°の範囲で行われる。ミラー部6には角度センサ13aが設けられ、2軸の回動角をそれぞれ独立に検出しており、ミラー駆動部13により所定の投射角度に制御される。この際、スクリーン20は、Z方向に対して完全に垂直に設置されているとは限らず、画像投射装置200の設置の状況により所定の傾きを持っている場合もあり得る。ミラー部6としては、例えば、X方向とY方向に独立な回動軸を有する2軸の回動ミラー素子を用いるが、1軸のミラー素子を2枚使用してもよいし、回転ポリゴンミラー素子を用いてもよい。
演算部15は、距離算出部15aと、プロファイル記憶部15bと、LPF(ローパスフィルタ)15cと、システムコントローラ11とを備えている。画像信号はシステムコントローラ11に入力され、レーザ変調部12が画像表示用レーザ光4を変調するのに同期して、ミラー駆動部13がミラー部6を駆動することにより画像が表示される。
また、画像表示用レーザ光4とは別に、赤外線レーザ光4aが発光素子1dから放射される。赤外線レーザ光4aは非可視光なので、投射による画像表示品質の劣化は発生しない。赤外線レーザ光4aは、ハーフミラー5aを通過し、ミラー部6で反射してスクリーン20に投射される。スクリーン20で反射した赤外線レーザ光4aの一部は、ミラー部6およびハーフミラー5aで反射して検出部9に入射する。赤外線レーザ光4aはパルス変調されており、発光素子1dからの出射光と検出部9への入射光の位相差をカウントすることにより、赤外線レーザ光4aが反射した点と映像投射装置200との間の距離を算出する。位相差のカウントおよび距離の算出は、距離算出部15aが行う。赤外線レーザ光4aの走査により連続的に算出された距離を記録することで、赤外線レーザ光4aが反射した箇所の外形のプロファイルが取得できる。
演算部15は、距離算出部15aの他にも、プロファイル記憶部15bと、LPF(ローパスフィルタ)15cとを備えている。プロファイル記憶部15bは、算出された距離から被投射物のプロファイルを算出する。プロファイルは、角度センサ13aにより測定される2軸の回動角から特定できる赤外線レーザ光4aの投射方向と合わせてプロファイル記憶部15bに記録される。なお、赤外線レーザ光4aは、画像表示用レーザ光4とは光軸とずらしているのでスクリーン20に投射される範囲がわずかに異なるが、画像表示およびプロファイル取得は共通の領域(図7に示す領域S)で行われる。画像表示および距離測定は、走査時のうちのX+方向の走査時のみ行い、X−方向では行わない。このため赤外線レーザ光4aは常に画像表示用ビーム4に先行して走査している。画像表示用ビーム4の走査可能領域のうち、領域S以外の領域においては、画像表示用ビーム4の照射は常に停止されている。
システムコントローラ11は、距離に基づいて被投射物のうちの略平面の領域を検出し、その略平面の領域を画像表示可能領域に決定する。
システムコントローラ11は、記録されたプロファイルを元にプロファイルの曲率を投射位置毎に算出する。システムコントローラ11は、各演算処理を実行する演算部の一部としても機能する。プロファイルのうち、スクリーン20上で取得された部分はスクリーン20がほぼ平面に近いことから曲率は0に近くなり、人間の頭部の様に近似的に球に近い物体から取得された部分は所定の大きさの曲率を有する。これにより、ほぼ平面に近いスクリーンとそれ以外の判定を、所定の閾値を基準にすることにより自動的に行うことが可能となる。また、LPF(ローパスフィルタ)19は、プロファイルから、所定の大きさの凹凸よりも小さい凹凸部分を除去する。極端に小さな凹凸は曲率が極めて大きく検出されるが、LPF19にプロファイルを通すことにより、小さな凹凸の影響を除去し判定精度を高めている。
レーザ停止位置記憶部11aは、画像を表示するための光源1をONするかOFFするかを示すフラグを投射位置毎に記録するメモリである。システムコントローラ11は、算出された曲率が、所定の範囲(例えば人間の頭部に近い曲率の近傍の範囲)にあるかを判定する。範囲内にある場合には、その点における画像の表示をOFFにすることを示すフラグをレーザ停止位置記憶部11aに書き込み、範囲外の場合は表示をONすることを示すフラグを書き込む。同時に、システムコントローラ11は、レーザ停止位置記憶部11aに記録されたフラグを参照しながら、レーザ変調部12を制御して光源1のONとOFFを切り替える。このように、光源1は、曲率が所定の範囲内である領域への画像の表示を行わない。
図8は、赤外線レーザ光4aを用いた距離測定動作の一例を示す斜視図である。
距離測定用の赤外線レーザ光4aがスクリーン20上をX+方向に走査することでプロファイルを取得しつつ、Y方向の走査位置をY+方向からY−方向に順に変更している。画像投射装置200とスクリーン20との間に障害物22がある場合には、障害物22で赤外線レーザ光4aが反射するため、測定される距離が短くなり不連続なプロファイル41となる。
図9は、プロファイル41から被投射物の平面度を検出する処理の一例を示す。図9(a)は、平面度検出を行うプロファイルを示している。図9(b)は、平面度の算出方法を示している。
図9(a)を参照して、プロファイル41の領域Aおよび領域Cは、赤外線レーザ光4aがスクリーン20で反射したときに測定された距離を示す部分であり、これらの領域はほぼ直線で傾きを有しているので、画像投射装置200の基準の投射方向(Z方向)に対してスクリーン20が傾いていることを示している。プロファイル41の領域Bは、赤外線レーザ光4aが障害物22で反射したときに測定された距離を示す部分であり、領域Bは障害物22の外形に沿う曲線である。なお、プロファイル41を取得する過程で所定値(Lmin)より小さい距離が検出された場合、つまり画像投射装置200の極めて近傍に物体があることが検出された場合は、曲率の算出を待たずに直ちに画像表示用レーザ光4の照射を停止する。具体的にはレーザ停止位置記憶部11aの全ての位置の表示フラグを、一旦OFFを示すフラグにする。
走査範囲内における平面度の検出は、プロファイル41から曲率を算出し、曲率がほぼ0の箇所を検出することで行う。例えば領域Bにおけるプロファイル41の曲率は、障害物22が人間の頭部の場合、曲率半径が10〜20cm、曲率(曲率半径の逆数)が約0.05〜0.1/cmとなる。一方、スクリーン領域のプロファイルの曲率はほぼ0であることから、走査範囲のうちの平面部(つまりスクリーン20)を曲率で分別することができる。領域Bのプロファイル41上のポイント35a、35b、35cの距離測定結果から曲率を算出する方法を以下に説明する。
図9(b)を参照して、ミラー部6からポイント35aまでの距離をm1、ポイント35bまでの距離をm2、ポイント35cまでの距離をm3とする。各ポイントから曲率中心Oまでの距離である曲率半径Rと、曲率1/Rとは、ポイント35aとポイント35bとの間の距離a、ポイント35bとポイント35cと間の距離b、ポイント35aとポイント35cとの間の距離cを用いて(式10)で表される。
1/R=√((a+b+c)(b+c−a)(c+a−b)(a+b−c))/abc ・・・(式10)
また、角度センサ13aにより取得される、ポイント35aとポイント35bとの間のスキャン角θ1と、ポイント35bとポイント35cとの間のスキャン角θ2を用いて、距離a、b、cは(式11)〜(式13)で計算できる。
a=√(m1^2+m2^2−2m1m2COSθ1) ・・・(式11)
b=√(m2^2+m3^2−2m2m3COSθ2) ・・・(式12)
c=√(m1^2+m3^2−2m1m3COS(θ1+θ2)) ・・・(式13)
ここで距離m1、m2、m3は、LPF15cを通したプロファイル41から抽出されており、極端に小さな凹凸やノイズの影響を除去されているので、所定の範囲の曲率を精度良く抽出することが可能である。また曲率の算出に用いるポイント数は3点に限る物ではなく、より多くの点数を用い最小自乗法を用いて算出してもよい。また隣接するポイントではなく離れている点同士を抽出して算出に用いてもよい。
図10は、平面度算出結果の一例を示す図である。
図10を参照して、領域Bでは障害物22の外形に応じた曲率が示され、領域AおよびCでの曲率はほぼ0になっている。所定の閾値Th(例えば0.02/cm)を設定することで、距離測定データのみから、平面部とそれ以外の部分とを判別することが可能となる。
図11は、レーザ停止位置記憶部11aの記録データを示す図である。
システムコントローラ11は、赤外線レーザ光4aの走査および曲率の算出が行われる毎に、レーザ停止位置記憶部11aの対応する位置にフラグを書き込む。図11では、模式的にフラグの内容をスクリーン20上での位置に対応させて表示している(ただし表示位置の数は実際より減らした簡易表示である)。 表示フラグOFF点37が書き込まれた箇所は、曲率が閾値Thより大きく、画像表示をOFFする箇所であり、黒塗りで示している。また、それ以外の白塗りの部分(画像表示可能領域)は、画像表示をONするフラグが書き込まれている。赤外線レーザ光4aは、画像表示用レーザ光4に先行して走査しており、画像表示用レーザ光4が表示を行うのに先立って曲率の算出および評価を行うことができる。システムコントローラ11は、画像表示用レーザ光4がスクリーン20を走査する際に、レーザ停止位置記憶部11aの内容を参照して、フラグがONを示す場合のみ光源1をONにして画像の表示を行う。これにより画像表示用レーザ光4がスクリーン20以外の位置ではOFFにされるので、安全性の高い画像投射システムを提供できる。
図12は、平面度判定処理を示すフローチャートである。
画像投射装置200の電源が投入されると、レーザ停止位置記憶部11a内のフラグが全て表示OFFに設定される(S110)。次に、ミラー駆動部13がミラー部6を駆動して走査を開始する(S111)。システムコントローラ11は、以下のフローとは独立に画像表示用レーザ光4の制御を継続して行う。
次に、赤外線レーザ光4aによる走査を行ってプロファイル41を算出し、プロファイル記憶部15bに格納する(S112)。プロファイル41を算出する過程で、所定の距離Lminより小さい距離が検出された場合(S113)は、画像投射装置の極めて近傍に物体があると判断し、レーザ停止位置記憶部11aの全ての位置の表示フラグを、一旦、表示OFFに設定して画像表示用レーザ光4の照射を停止し(S114)、安全性を確保する。
次にプロファイル41から曲率を算出(S115)し、閾値Thより大きければ(S116)、レーザ停止位置記憶部11a内の対応する位置のフラグを表示OFF設定にする(S117)。また閾値Thより小さければ平面と判断し、レーザ停止位置記憶部11a内の対応する位置のフラグを表示ON設定にする(S118)。電源OFFの指示が無ければ(S119)、ステップS112の動作に戻る。
なお、プロファイル41を算出する過程で、所定の距離Lminより小さい距離が検出された場合に、画像表示用レーザ光4の照射を停止しているが、距離に応じた出力まで光源1の出力を絞る構成としてもよい。
以上の様に本実施形態によれば、プロファイル41の曲率から平面度を算出し、平面部のみに選択的に画像表示用レーザ光を投射できる。これにより、障害物、特に人間の頭部への投射を防止し、眼球へのレーザ投射が防止可能な安全性の高い画像投射装置を提供できる。また、距離測定結果のみに基づいて、平面部の検出をリアルタイムかつ自動で行うので、使用者の手を煩わせることが無い利便性の高い画像投射装置を、簡便な構成により低コストで提供できる。また、プロファイル41をLPF15cに通してから曲率の算出を行うので、極端に小さな凹凸やノイズの影響を除去し所定の範囲の曲率を精度良く抽出することができる。
(実施形態3)
図13は、本発明の実施形態3による画像投射装置300を示す図である。図14は、サブ領域(平面判定領域)を説明する斜視図、図15Aはサブ領域の平面判定計算の一例を説明する斜視図、図15Bはサブ領域の平面判定計算の別の一例を説明する斜視図である。
画像投射装置300では、画像表示を行う前に、画像投射装置300と被画像投射領域との間の距離および傾きを自動的に算出し、略平面である領域とその平面位置を抽出しておく。画像表示時には、測定された距離と抽出済の平面の距離とが一致しているか否かを判定することで障害物を検出する。また、システムコントローラ11は、距離に基づいて得られる被投射物に対応した面を複数のサブ領域45(図14)に分割し、サブ領域45毎に略平面であるか否か判定する。被画像投射領域のうちの略平面である領域の抽出は、被画像投射領域全体を小領域であるサブ領域45に分割し、サブ領域45毎にその箇所が略平面であるか判定することにより行う。
図13を参照して、演算部15が備える距離記憶部15dは、各投射位置毎に測定された距離を記録するメモリである。プロファイル記憶部15bに記録されたプロファイル41からLPF15cに通してノイズ成分を除去した上で、プロファイル41から各投射位置における距離を抽出して記録する。
図14を参照して、サブ領域45は、被画像投射領域全体を分割して設定される小領域である。サブ領域45の中の、全ての投射位置の距離測定が完了した段階で、システムコントローラ11はサブ領域45が略平面であるか判定を行い、平面と判定された場合はその平面を表す方程式の係数を平面情報記憶部11bに記録する。サブ領域45内の全ての距離測定データを用いて平面判定を行うのでより高精度な判定が可能である。システムコントローラ11は、略平面と判定されたサブ領域45に対してのみ画像表示用レーザ光4による画像表示を行うので、人間の頭部などの様に所定の曲率を有する障害物22への画像の投射を正確に防止することができ、安全性の高い画像投射装置を提供できる。
また、略平面であるサブ領域45のうち、スクリーン20上に直接投射している領域は全て略同一平面上に存在するはずなので、複数のサブ領域の中から同一平面上にある箇所を抽出することによりスクリーン20の位置を特定できる。スクリーン20上にあると特定されたサブ領域の位置はスクリーン領域記憶部11cに記録される。通常、略平面形状を有する障害物は人間の頭部である可能性は極めて低く、非平面形状に対してのみ画像投射しても安全上の問題は少ないが、スクリーン20を特定して選択的に画像投射することにより、安全性をさらに高めることが可能である。
次に、画像投射装置300の動作をより詳細に説明する。
まず、画像表示を行う前段階の、略平面であるサブ領域45を抽出する処理を説明する。
図14を参照して、赤外線レーザ光4aをスクリーン20上のX+方向に走査させて、プロファイル41を取得しつつ、Y方向の走査位置をY−方向に順に変更していく。この際、画像表示用レーザ光4の投射はOFFされている。被画像投射領域全体は、多数のサブ領域45に分けられている。ただし境界線は便宜上記載しているもので仮想的なラインである。各プロファイル41は、取得が完了した後にLPF15cを経由してノイズを除去され、サブ領域45内の各位置(角度センサ13aにより取得された水平投射角および垂直投射角)における距離に分解されて距離記憶部15dに記憶される。サブ領域45内の全ての位置における距離が取得されたら、システムコントローラ11は、各サブ領域45が平面であるか否かの判定を行う。
図15Aを参照して、サブ領域45内の平面判定ポイント50は、距離記憶部15d内に水平および垂直投射角と測定距離が記録されているポイントであり、プロファイル41に沿ってサブ領域45内全体に複数分布している。システムコントローラ11は、各平面判定ポイント50の水平および垂直投射角と測定距離に基づいて、各平面判定ポイント50のX、Y、Z座標を算出する。次に、システムコントローラ11は、最小自乗法を用いて、サブ領域45内の全ての平面判定ポイント50のX、Y、Z座標から、自乗平均が最小となる仮想平面(以下、最小自乗平面と称する)を算出する。最小自乗平面は以下の計算式により算出する。最小自乗平面を(式14)の様に表し、
z= αx + βy +γ ・・・(式14)
係数α、β、γを(式15)の行列式を解くことにより求める。
ここで、例えばΣXXは、全平面判定ポイント50のX座標の自乗の総和を示している。
図15Aに示す様に、サブ領域45が略平面であり、平面判定ポイント50がほぼサブ領域45上にある場合には、算出した最小自乗平面はサブ領域45にほぼ一致する。また、図15Bに示す場合では、最小自乗平面は平面51の様になり、一部の平面判定ポイント50と離れて算出される。
次に、算出した最小自乗平面に対し、各平面判定ポイント50から下ろした垂線52の長さの分散を算出する。この分散の度合い(分散値)が所定値以下の場合は、各平面判定ポイント50が最小自乗平面上にある、つまりサブ領域45が略平面であると判定する。図15Bの様に、垂線52の長さが大きい場合は分散値が所定値より大きくなり、サブ領域45は略平面ではないと判定することができる。これにより、距離の測定誤差が残留している場合にもその影響を少なくし、的確な平面判定が可能である。このように、システムコントローラ11は、最小自乗平面(仮想平面)と被投射物との間の距離の分散の度合いが所定値以内である場合に、そのサブ領域を略平面であると判定する。
このとき、サブ領域45の位置と傾きを表す方程式は(式14)により表されるので、これら平面の係数α、β、γを平面判定結果として平面情報記憶部11bに記録する。平面情報記憶部11bには、サブ領域45毎に個別に判定結果が記録され、サブ領域45が平面と判定された場合には、平面であることを示すフラグと係数α、β、γが記録され、平面でないと判定された場合には、平面でないことを示すフラグのみが記録される。
次に、スクリーン20の位置の選別方法を説明する。被画像投射領域内の全ての位置の平面判定を完了した段階で、平面であると判定されたサブ領域45を略同一平面上に位置するもの毎にグループ化する。例えば2つのサブ領域45が略同一平面上にあるかどうかは、平面情報記憶部11bに記録された各々の係数α、β、γが所定の誤差の範囲で同一であるかにより判定できる。グループが1つしかない場合、つまり平面であると判定されたサブ領域45が全て同一平面上にある場合は、それらのサブ領域45全てをスクリーン20であると判定し、その結果をスクリーン領域記憶部11cに記録する。スクリーン領域記憶部11cに記録されるのは、サブ領域45毎にその箇所がスクリーン20であるか否かを示すフラグである。もしもグループが複数ある場合、つまり、投射領域内に異なる位置または傾きを有する平面が複数ある場合は、どの平面がスクリーン20であるか判定する必要がある。例えば投射領域内に侵入した障害物22が平面部を有する場合に起こり得る。グループが複数ある場合の判定は、各々の平面の面積を比較し、最も面積の大きい平面を検出することにより行う。例えば各サブ領域45の面積を全て同一に設定してある場合は、各グループに属するサブ領域45の個数が最も多いグループを選定することで容易に検出できる。システムコントローラ11は、略平面と判定したサブ領域のうち同一平面上に位置するサブ領域を1つのグループに分類することで、略平面と判定したサブ領域を複数のグループに分ける。そして、最も面積が広いグループに属するサブ領域に画像を表示する。最も面積の大きい平面をスクリーンとして判定することにより、投射領域の中で最も面積の大きな平面部に画像を投影するので、画像の欠落部を最小限に抑えることが出来、品位の高い画像投射装置を提供できる。またスクリーン20を特定してスクリーン20にのみ画像を投射するので、人間の頭部等への投射を確実に防止することが出来る安全性の高い画像投射装置を提供できる。
図16Aは、スクリーン領域記憶部11cの記録が記録する情報の一例を示す図である。図16Bは、画像投射時の距離測定動作を示す図である。
図16Aを参照して、スクリーン領域55は、白抜きで示すサブ領域45の集合である。スクリーン領域55内のサブ領域45は全て平面と判定されたものであり、かつ同一平面上に位置している。非スクリーン領域56は、斜線で示すサブ領域45の集合である。非スクリーン領域56内のサブ領域45は非平面と判定されたものであるが、平面と判定されたが面積の小さい平面のグループに属するものでも有り得る。スクリーン領域記憶部11cの内容は画像表示を行う際に参照され、非スクリーン領域52で表示を停止するために用いられる。
上記では、スクリーン20の位置を特定する方法として、略同一平面上に位置するものをグループ化して特定する方法を説明したが、これに限定されない。
例えば、隣接するサブ領域45間が同一平面上にはないが、所定の誤差の範囲で連続的に接続されており、各々の平面の法線ベクトルの方向が所定の範囲内で一致しているサブ領域45をグループ化してもよい。これにより、例えばスクリーン20全体が僅かにたわんでいる様な場合にも、スクリーン20の位置の特定が可能となる。
次に、画像表示を行う処理を説明する。
システムコントローラ11は、スクリーン領域記憶部11cを参照して、レーザ光2による走査を行うサブ領域45がスクリーン領域55内であるか非スクリーン領域56内であるかを判定し、スクリーン領域55内である場合に限りレーザ光2を投射する。これにより常にスクリーン20に対してのみ画像を投射することができる。
一方、システムコントローラ11は、赤外線レーザ光4aによる距離測定も同時に実施し、スクリーン領域記憶部11cを参照して、赤外線レーザ光4aが走査するサブ領域45がスクリーン領域55内であるか非スクリーン領域56内であるかを判定する。
赤外線レーザ光4aが走査するサブ領域45がスクリーン領域55内である場合には、平面情報記憶部11bに記録されている平面情報に基づき、赤外線レーザ光4aがスクリーン20で反射しているか判定する。この時、スクリーン20で反射していないと判定された場合は、障害物が新たに侵入したと判定する。このように、新たに測定した距離と位置情報との差が所定値以上である場合には、システムコントローラ11は、その差が所定値以上であるサブ領域を非平面領域と再判定する。このとき、光源は、その差が所定値以上であるサブ領域への画像の表示を中断する。
図16Bを参照して、画像表示中に障害物60が新たに侵入してきた場合、赤外線レーザ光4aは本来反射すべきサブ領域61で反射せずに障害物60で反射する。このため、測定される距離はサブ領域61で反射される場合よりも短くなり、これにより、障害物60の侵入を検出できる。この場合、システムコントローラ11は、該当するサブ領域61を非平面領域と直ちに再判定し、平面情報記憶部11bおよびスクリーン領域記憶部11cの記憶内容を書き換える。赤外線レーザ光4aに続いて同領域を走査する画像表示用レーザ光4は、その領域には投射されず、新たに侵入した障害物60への画像投射を直ちに防止することが出来る。この様に、あらかじめ検出している平面情報に基づいて算出される距離の期待値と、実際に測定された距離とを比較して、判定処理を行っているので、平面度の算出を新たに行う時間を無くすることができ、高速な判定が可能な安全性の高い画像投射装置を提供できる。
また、赤外線レーザ光4aが走査するサブ領域45が非スクリーン領域56内である場合には、サブ領域45内を距離測定した後に略平面であるかを再評価し、さらにスクリーン領域55と同一平面上にあるかを評価する。スクリーン領域55と同一平面上にあると新たに評価されたサブ領域45の位置は、スクリーン領域記憶部11cに記録され、画像表示用レーザ光4による画像表示が行われる様になる。
図17は、画像投射装置300の動作を示すフローチャートである。
画像投射装置の電源が投入されると、まず、画像表示用レーザ光4の投射を停止した状態にする(S30)。次に、ミラー駆動部13がミラー部6を駆動して走査を開始するとともに。赤外線レーザ光4aの投射を開始する(S31)し、以下に示す被画像投射領域内の走査を継続的に実施する。赤外線レーザ光4aの反射光に基づいてプロファイル41が算出される。LPF15cを通ったプロファイル41を用いて、平面判定ポイント50毎に距離を抽出して距離記憶部15dに記録する(S32)。
次に、サブ領域45の内部の全ての平面判定ポイント50での距離測定を完了しているかを判定し(S33)、完了していない場合はステップS32の処理に戻り、完了しているサブ領域45がある場合は、サブ領域45内の平面判定ポイント50の座標から最小自乗平面の算出を行う(S34)。次に平面判定ポイント50から最小自乗平面に降ろした垂線の長さの分散の度合いを算出し、所定の値より低い場合にはサブ領域45が平面であると判断し、その平面(最小自乗平面)の方程式を平面情報記憶部11bに記録する(S35)。次に被画像投射領域内の全ての位置で平面判定処理を完了しているか判定し(S36)、完了していない場合はステップS32の処理に戻り、完了している場合にはスクリーン領域の判定を行い、判定結果をスクリーン領域記憶部11cに記録する(S37)。この時点から画像表示が開始され、スクリーン位置のみにレーザ光2が投射される様に光源1を制御する(S38)。光源1の制御はスクリーン領域記憶部11cの記憶内容を参照することにより行い、以下に説明する赤外線レーザ光4aの走査によるスクリーン領域記憶部11cの書き換えとは独立かつ平行に行われる。
なお、上記では、スクリーン領域の判定が完了した直後から画像表示を開始しているが、被画像投射領域全体の走査とスクリーン領域の判定を数回行い、スクリーン領域が変化しない場合に、画像表示のステップに進んでもよい。略平面と判定したサブ領域内の被投射物の位置情報は、距離を新たに測定する毎に更新されるが、その位置情報の示す位置が所定時間変化しない場合に限り、光源は、その略平面と判定したサブ領域への画像の表示を開始する。特に、携帯型の画像投射装置の様に、投射方向が高頻度で変動する場合には、投射方向が変化しているときは画像表示用レーザ光4の投射を停止する。投射方向が所定時間変化しない、つまり画像投射装置が動いていないことを確認してから画像表示用レーザ光4の投射を開始できるので安全性をより高めることが出来る。なお、被画像投射領域全体の走査時間は、例えば1/60秒に設定され、極めて短時間であるため、数回の走査を行っても画像表示が停止する時間は短く、画像品質への影響は少なく抑えることが出来る。
次に、画像表示が行われている間の処理を説明する。赤外線レーザ光4aによる距離測定を行う(S39)とともに、距離測定点の位置がスクリーン領域であるかを判定(S40)する。スクリーン領域でない場合には、非スクリーン領域に対応する処理であるS43に進む。スクリーン領域である場合には、測定された距離がスクリーン20の距離と一致しているか判定する(S41)。この判定は、平面情報記憶部11bから取り出したサブ領域45の平面の方程式と赤外線レーザ光4aの投射方向とから算出できるスクリーンまでの距離の期待値と、実際に測定された距離とを比較することにより判定できる。ここでスクリーン20から反射していると判定された場合には、S46の処理に進むが、スクリーン20から反射していないと判定された場合には、障害物22が被画像投射領域に進入したと判断し、サブ領域45をスクリーン領域55から除く様にスクリーン領域記憶部11cの記憶内容を修正する(S42)。これにより、この領域への画像表示用レーザ光4の投射を停止することが出来る。さらに非スクリーン領域に対応する処理を行う。
非スクリーン領域に対応する処理では、サブ領域45内の全ての平面判定ポイント50の距離測定を完了しているか否かを判定する(S43)。完了している場合には最小自乗平面の算出(S44)を行い、続いて、平面判定ポイント50から最小自乗平面に降ろした垂線の長さの分散の度合いを算出し、所定の値より低いかの平面判断を行う(S45)。さらに、被画像投射領域全体の距離測定が完了していれば(S46)、スクリーン領域決定処理を再度行い(S47)、スクリーン領域記憶部11cの記憶内容を最新のスクリーン位置に更新する。画像表示の終了の指示があるか判定し(S48)、無ければS39の処理に戻り、有れば動作を終了する。
以上の様に、本実施形態によれば、被画像投射領域を、サブ領域45に分割しその中の全ての距離データを用いて平面判定を行うので、より高精度な平面判定が可能な画像投射装置を提供できる。
またサブ領域内で測定された距離測定ポイントの座標データから最小自乗平面を算出し、分散値を用いて平面度を判定しているので、測定誤差を有する場合でも高精度な平面判定が可能な画像投射装置を提供できる。
また、あらかじめスクリーン領域の検出と平面情報の算出をしておき、距離の期待値と実測値とを比較して障害物の進入を検出するので、検出の際に平面度の再計算を行う必要が無く、高速な判定が可能で、安全性の高い画像投射装置を提供できる。
また、平面と判定されたサブ領域の中からスクリーン領域を抽出して、スクリーン領域にのみ画像を表示するので、さらに安全性の高い画像投射装置を提供できる。
また、スクリーン領域を抽出した後、スクリーン領域が変動しないことを確認してから画像の投射をする。これにより、画像投射装置自身が動いていない状態で画像の投射を開始できるので、さらに安全性の高い画像投射装置を提供できる。
(実施形態4)
図18は、本発明の実施形態4による画像投射装置400を示す図である。図19は、画像投射装置400の画像表示前の動作を示すフローチャートである。図20は、画像投射装置400の画像表示中の動作を示すフローチャートである。
図18を参照して、画像投射装置400は、温度測定部60を備える。温度測定部60は、例えばスクリーン5や、スクリーン5と画像投射装置との間に進入した人間が、温度や体温に応じて放射する赤外線を検出し、その温度を測定する温度センサである。
スクリーン5等から放射される赤外線の一部は、赤外線経路61に沿って、ミラー部6で反射されて、温度測定部60に入射する。ミラー部6が表示領域を走査しながら温度を測定することで、走査する領域の温度分布を取得することが出来る。これにより、平面と判定された領域でも、もしも人間の体温に近い温度範囲(例えば30〜40度の間)が検出されれば、その領域における画像の投射を停止することにより、顔や腕など人間の肌が露出している箇所へ誤投射する可能性をさらに低減でき、より安全性を高めた画像投射装置を提供できる。
また、温度測定部60が被投射物表面の温度を測定する時には、距離測定用の赤外線レーザ光4aの照射を停止する。赤外線レーザ光4aの出力を停止している期間に温度測定を行うことで、赤外線レーザ光4aの温度測定部60への漏れ込みを防止し、温度測定への影響を無くして温度測定精度を高めている。平面度の判定と温度の測定は、例えばミラー部6が投射領域全体を1回走査する毎に切り替えて実施し、2回走査した後に、平面度判定結果と温度測定結果を合わせてスクリーン領域を判定する。
図19を参照して、画像投射装置400の動作をより詳細に説明する。
ステップS30〜S36の処理は、図17を参照して説明した処理と同様であり、赤外線レーザ光4aを投射して、サブ領域内の平面度を算出する。ステップS36の処理において、画面全体の走査が完了した後、赤外線レーザ光4aをOFFにする(S50)。ミラー部6は、もう一度画面を描画する初期位置から走査を開始し、同時に温度測定部60が温度測定を行い、走査位置とその位置における温度をメモリ(図示せず)に格納する(S51)。各々のサブ領域中の温度測定が終わると(S52)、その平均温度を算出して(S53)、メモリ(図示せず)に格納する。画面全体の走査が完了すると(S54)、ステップS35の処理で平面と判定された領域のうち、平均温度が所定の温度範囲(例えば30〜40度)であるものを除去し、残りをスクリーン領域55として設定する(S37)。
図20を参照して、ステップS37の処理から続いて、画像の表示を開始する(S38)。以下、画像投射装置は、画像の投射をスクリーン領域55にのみに行いながら、並行して平面度の算出と温度の測定を1画像フレーム毎に切り替えて実施する。ステップS39〜S46の処理は図17を参照して説明した処理と同様である。ステップS46において、画面全体の走査が完了した後、赤外線レーザ光4aをOFFにする(S50)。ミラー部6はもう一度画面を描画する初期位置から走査を開始し、同時に温度測定部60が温度測定を行う。ステップS57〜S60の処理は、図18を参照して説明したステップS52〜S54、S37の処理と同様である。画像表示の終了の指示があるか判定し(S61)、無ければS39の処理に戻り、有れば動作を終了する。
以上の様に、画像投射装置400は、温度測定部60を備え、人間の体温に近い温度範囲(例えば30〜40度の間)が検出された領域に対して画像の投射を中断することにより、より安全性を高めることができる。
また、温度測定部60の温度測定時には、距離測定用の赤外線レーザ光4aの照射を停止することで、赤外線レーザ光4aによる温度測定への影響を無くし、温度測定部60の温度測定精度を高めることが可能である。
なお、上記の説明では、赤外線レーザ光4aの照射による平面度判定と温度測定とを、1画像フレームの走査毎に切り替えたが、これに限定されるものではなく、赤外線レーザ光4aの照射時には温度測定を行わない構成であればよい。例えば平面度の評価を複数回走査した後に、温度測定を1回行う構成としても良い。
本発明は、レーザ光を投射して画像を表示する画像投射装置の分野で特に有用であり、装置の小型化および低コスト化を実現すると共に、安全でかつ十分な明るさで表示可能な画像投射装置を提供することができる。
本発明の実施形態1による画像投射装置を示す図である。
本発明の実施形態1による走査方式を示す図である。
本発明の実施形態1による瞳とプロジェクタとの間の距離および投射領域を示す図である。
本発明の実施形態1による画像投射装置の信号処理手順を示す図である。
本発明の実施形態1による画像投射装置の動作を示すフローチャートである。
本発明の実施形態1による画像投射装置の演算処理を示すフローチャートである。
本発明の実施形態2による画像投射装置を示す図である。
本発明の実施形態2による赤外線レーザ光による距離測定処理の一例を示す図である。
本発明の実施形態2による平面度検出処理を示す図である。
本発明の実施形態2による平面度の算出結果の一例を示す図である。
本発明の実施形態2によるレーザ停止位置記憶部の記録内容を示す図である。
本発明の実施形態2による画像投射装置の動作を示すフローチャートである。
本発明の実施形態3による画像投射装置を示す図である。
本発明の実施形態3によるサブ領域を説明する図である。
本発明の実施形態3による平面判定計算を説明する図である。
本発明の実施形態3による平面判定計算を説明する図である。
本発明の実施形態3によるスクリーン領域記憶部の記録内容を示す図である。
本発明の実施形態3による画像投射時の距離測定動作を示す図である。
本発明の実施形態3による画像投射装置の動作を示すフローチャートである。
本発明の実施形態4による画像投射装置を示す図である。
本発明の実施形態4による画像投射装置の動作を示すフローチャートである。
本発明の実施形態4による画像投射装置の動作を示すフローチャートである。
符号の説明
1 光源
2 コリメートレンズ
3 ダイクロイックプリズム
4 投射レーザ光
5 ハーフミラー
6 ミラー部
7 開口部
8 集光レンズ
9 光検出器
10 画像信号
11 制御部
12 レーザ変調部
13 ミラー駆動部
14 検出アンプ
15 演算部
16 角度変位信号
20 スクリーン
21 レーザビームスポット軌跡
22 障害物
23 ランダムドット
24 周辺光