JPWO2006129754A1 - プラズマディスプレイパネルおよびプラズマディスプレイパネル装置 - Google Patents
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Abstract
Description
上記PDP装置は、画像表示を実行するパネル部と、入力画像信号に基づいてパネル部の駆動を実行する駆動部とからなる。この内、パネル部は、2枚のパネルが互いに間隔をあけて対向配置され、外周部で封止された構成を有している。
ところで、PDP装置に対しては、より一層の発光効率(放電効率)の向上が求められており、その一方策として、放電ガス中におけるXeの占める割合を上昇させる研究開発がなされている。例えば、放電ガスを100[%]Xeガスとする提案(特許文献1)や、放電ガスの全圧に対するXeガスの分圧比を10[%]〜100[%]とし、且つ、放電ガスの充填圧力を6×104[Pa]という超高圧とする提案(特許文献2)などがなされている。
そこで、本発明は、次のような特徴を採用する。
本発明に係るPDPは、一対の基板(第1の基板と第2の基板)が互いの間に空間をあけて対向配置され、一方の基板(第1の基板)における主面上に電極対と誘電体層と保護層とが順に積層され、当該保護層が空間を臨む状態におかれ、他方の基板(第2の基板)における主面上に保護層と対向する状態で蛍光体層が形成され、空間に放電ガスが充填されてなる構成を有するパネルであって、放電ガスは、プラズマ放電により蛍光体層を構成する蛍光体を励起する光を出射するガス成分を主成分ガスとし、当該主成分ガスに対してNeガスが添加された構成を有する。そして、本発明に係るPDPでは、放電ガス中において、主成分ガスが主たる比率で含有されているとともに、Neガスが、放電ガスの全圧に対して8[%]以下の分圧比で含有されていることを特徴とする。ここで、「Neガスの分圧比」とは、Neガスの分圧を放電ガスの全圧で除した値のことを指す。
また、本発明に係るPDP装置は、上記本発明に係るPDPと、当該PDPの電極対を構成する電極の各々に対して、入力された画像信号に基づき電圧パルスを印加する駆動部とを有することを特徴とする。
従って、本発明に係るPDPおよびPDP装置は、高い発光効率を維持しながら、駆動が長期にわたった場合にも安定した表示性能を維持することができるという優位性を有する。
上記本発明に係るPDPおよびPDP装置では、放電ガスの全圧(充填圧力)を1×104[Pa]以上5×104[Pa]以下に設定しておくことが望ましい。これは、放電ガスの全圧を1×104[Pa]よりも低く設定する場合には、従来のPDPよりも発光効率が低くなってしまい、また、5×104[Pa]よりも高く設定する場合には、上記特許文献2の技術と同様に、放電開始電圧が高くなり過ぎてしまうためである。特に、放電ガス中におけるXe分圧比が高い場合には顕著となり、Xe分圧比が高く且つ全圧も高い場合には、誘電体層の耐圧が大きな課題となる。また、放電ガスの全圧を、1.7×104[Pa]以上5×104[Pa]以下に設定しておくことがより望ましい。
さらに、上記本発明に係るPDPおよびPDP装置では、電極対を構成する2電極間の間の間隙(放電ギャップ)を40[μm]以上70[μm]以下とすることが、無効電力の低減および輝点発生頻度を低く抑えるという両観点から望ましい。即ち、放電ギャップが40[μm]よりも小さい場合には、無効電力が現実的な範囲を越えて大きくなり過ぎ、逆に70[μm]よりも大きい場合には、Xe分圧比が高い条件において、初期化期間で不所望の強放電(誤放電)が発生し、その後の維持期間において、本来点灯させたくない放電セルで発光してしまう(輝点が発生する)、という問題を生じるのに対し、本発明に係るPDPおよびPDP装置のように、放電ギャップを40[μm]以上70[μm]以下としておけば、無効電力の低減および輝点発生の抑制という両観点から望ましい。
また、所謂、井桁状の隔壁構造を採用する場合には、第2の基板における電極に並行する隔壁に対し、これに交差する方向に延設される補助隔壁の高さが、8[μm]以上15[μm)以下の範囲で低くなるようにすることが、輝点発生頻度の低減という観点からより望ましい。
10.パネル部
11.前面パネル
12.背面パネル
13.放電空間
20.表示駆動部
21.データドライバ
22.スキャンドライバ
23.サスティンドライバ
24.タイミング発生部
25.A/D変換器
26.走査数変換部
27.サブフィールド変換部
111、121.基板
112.表示電極対
113、122.誘電体層
114.保護層
123.隔壁
124.蛍光体層
Scn.スキャン電極
Sus.サスティン電極
Dat.データ電極
(実施の形態1)
1.パネル部10の構成
本発明の実施の形態1に係るPDP装置1の構成の内、パネル部10の構成について、図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1に係るパネル部10の構造を示す要部斜視図(一部断面図)である。
1−1.前面パネル11の構成
図1に示すように、パネル部10を構成する要素の内、前面パネル11は、前面基板111における背面パネル12と対向する側の面(図1では下面)に、スキャン電極Scnとサスティン電極Susからなる表示電極対112が、互いに平行に複数配設され、この表示電極対112を覆うように、誘電体層113および保護膜114が順に形成されている。
なお、前面基板111の表面において、隣り合う表示電極対112と表示電極対112との間には、隣り合う放電セルの光が互いに漏れ出るのを防止するためのブラックストライプが設けられた構成としてもよい。
背面パネル12は、背面基板121における前面パネル11と対向する側の面(図1では上面)に、表示電極対112と略直交する方向において、データ電極Datが複数配置されており、このデータ電極Datを覆うように、誘電体層122が形成されている。また、この誘電体層122上には、隣り合うデータ電極Dat間に主隔壁1231が立設され、さらに、この主隔壁1231と略直行する方向に補助隔壁1232が形成されている。本実施の形態に係るパネル部10では、これら主隔壁1231と補助隔壁1232との組み合わせを以って隔壁123が構成されている。なお、図面上では詳細に示していないが、z方向において、補助隔壁1232の上端は、主隔壁1231の上端よりも若干低く設定されている。
蛍光体層124R、124G、124Bの各々は、例えば、次に示すような各色蛍光体を単独で用いたり、あるいは、各々を混合した材料を用い形成されている。
YVO3:Eu
緑色(G)蛍光体;Zn2SiO4:Mn
(Y、Gd)BO3:Tb
BaAl12O19:Mn
青色(B)蛍光体:BaMgAl10O17:Eu
CaMgSi2O6:Eu
1−3.前面パネル11と背面パネル12との配置
図1に示すように、パネル部10は、前面パネル11と背面パネル12とが、背面パネル12に形成された隔壁123をギャップ材として間に挟み、且つ、表示電極対112とデータ電極Datとが略直交する方向に配され、この状態で各々の外周部どうしが封止されてなる構成を有している。この構成によって、上述のように、前面パネル11と背面パネル12との間には、各隔壁123によって仕切られた放電空間13が形成され、両パネル11、12が密閉容器を形成することになる。
2.PDP装置1の構成
上記パネル部10を備えるPDP装置1について、図2を用いて説明する。図2は、PDP装置1の構成を模式的に表したブロック図である。なお、図2では、パネル部10については電極Scn、Sus、Datの配列のみを示している。
タイミング発生部24は、水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vに基づいてタイミング信号を生成し、各ドライバ21〜23に信号を出力する。ここで、タイミング発生部24は、APL検出部28から入力されるAPL値に基づいて1フィールドを構成するサブフィールドの各々の初期化期間を全セル初期化期間であるか選択初期化期間であるかを決定し、1フィールド内での全セル初期化期間の適用回数を制御する。
サスティンドライバ23は、公知のドライバICを備えて構成されており、タイミング発生部24から送られてくるタイミング信号に基づいて、サスティン電極Sus(1)〜Sus(n)に駆動電圧を印加する。
次に、上記構成を有するPDP装置1の駆動方法について、図3を用いて説明する。図3は、フィールド内時分割階調表示方式(サブフィールド法)を用いてPDP装置1の駆動を実行する方法を示している。
図3に示すように、PDP装置1の駆動においては、一例として、256階調を表現するために1フィールドを8つのサブフィールドSF1〜SF8に分割し、それぞれのサブフィールドSF1〜SF8に初期化期間T1、書き込み期間T2、維持期間T3の3期間を設定し、サスティン電極Sus(1)〜Sus(n)に対して電圧パルス2001、スキャン電極Scn(1)〜Scn(n)に対して電圧パルス2002、データ電極Dat(1)〜Dat(m)に対して電圧パルス2003をそれぞれ印加する。
本実施の形態に係るPDP装置1では、パネル部10の放電空間13内に充填されている放電ガスがXe−Neガスであり、放電ガス中に占めるNeガスの割合(全圧に対するNe分圧の比)が5[%]に設定されている。逆にいえば、放電ガス中におけるXeガスの占める割合は、95[%]と高くなっている。このため、本実施の形態に係るPDP装置1では、上述のように、高い発光効率(放電効率)を有する。そして、本実施の形態に係るPDP装置1では、上記特許文献1の技術のごとく100[%]Xeとせずに、5[%]のNeガスを添加しており、尚且つ、放電ガスの全圧を上記特許文献2のような超高圧とはしていないので、放電開始電圧を低く維持することができる。
また、本実施の形態に係るパネル部10では、前面パネル11における保護層114を構成する材料としてMgOを用いている。保護層の構成材料としては、この他にもMgF2(弗化マグネシウム)なども用いられることがあるが、2次電子放出係数および耐スパッタリング性等の観点からMgOが最適である。よって、MgOを用いて保護層114を形成している本実施の形態に係るパネル部10では、駆動時における高い発光効率と保護層114のスパッタリングに対する耐性という観点から優位である。
さらに、本実施の形態では、放電ガス中におけるNeガスの占める割合を5%としたが、8[%]以下であればよい。ただし、全くNeガスが含まれていないような組成については、上記理由から避けなければならない。
上記パネル部10の構成をベースとして、放電ガスにおけるXeガスとNeガスとの構成比率を変えてみて、駆動時における放電に起因する保護層114のスパッタリングレートおよび放電開始電圧の変化について考察する。
図4には、放電ガス中におけるNeガスの含有比率(分圧比)と保護層114のスパッタリングレートとの関係を示す。図中には、計算値と実験値とを示している。なお、スパッタリングレートの計算は各イオンにおけるスパッタリング確率と、イオン密度およびイオンエネルギー分布とを考慮して行っている。
図4に示す結果より、Neガスの分圧比は、5[%]以下もしくは70[%]以上とする必要があることが分かる。ただし、放電ガス中におけるXeガスの含有比率が低い場合には、放電効率が低下するため、Neガスの分圧比を5[%]以下とすることにより、高効率と長寿命が両立されるPDP装置が実現できる。
次に、Neガスの分圧比と放電開始電圧との関係について、図5を用いて説明する。図5は、放電開始電圧のNeガス分圧比依存性を示す特性図である。なお、図5においては、Xeガスの分圧を2×104[Pa]で一定とし、これに対してNeガスを添加することによって分圧比を決定している。
図5に示すように、Neガスの分圧比が10[%]〜30[%]程度の範囲では、全圧が増加しているにもかかわらず、Neガスを添加しない場合に比べて、放電開始電圧が小さくなっている。また、放電開始電圧を低減する効果は、Neガスの分圧比が0.2[%]の場合でも得られており、微量の添加でも効果があることが分かる。これは、MgOからなる保護層114の2次電子放出係数がNeイオンの存在によって大きくなったためであると考えられる。
なお、図5では、放電ガス中にNeガスを含まない(Neガスの分圧比=0[%])については、そのデータをプロットしなかったが、上記特許文献1のように、放電ガス中にNeガスを含有しない場合には、放電開始電圧が上昇する。
(実施の形態2)
次に実施の形態2に係るPDP装置について、以下で説明する。
ここで、本実施の形態に係るPDP装置のパネル部においては、前面パネルにおける誘電体層の構成材料として、上記実施の形態1などの低融点ガラスなどに比べて誘電率が低い酸化シリコンを採用しているので、放電空間との電極容量を上記パネル部10と同一に揃えた場合には、その膜厚を1/2〜1/3と薄くすることが可能となっている。このため、本実施の形態に係るパネル部では、誘電体層の膜厚を上記パネル部10の誘電体層113の膜厚25[μm]に比べて5[μm]薄い20[μm]とすることができている。この誘電体層の薄肉化は、放電電圧の低減に寄与する。
以上の結果より、本実施の形態に係るパネル部の構成を採用する場合には、放電ガス中におけるNeガスの分圧比を8[%]以下に規定することで、高い発光効率と長寿命とを両立可能なPDP装置を実現できる。なお、本実施の形態においても、放電ガス中には、微量(例えば、0.2[%])であってもNeガスが添加されていることが前提となる。
なお、本実施の形態に係るPDP装置においても、放電ガスの全圧を1×104[Pa]〜5×104[Pa]の範囲で設定することが可能であり、また、表示電極対を構成する各電極Scn、SusをAgなどから形成することも可能である。これらの理由については、上記実施の形態1と同様である。表示電極対を構成する各電極Scn、Susの厚みについては、誘電体層の薄肉化を図っている観点から、絶縁破壊を防止するために薄くしておくことが望ましい。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係るPDP装置およびそのパネル部について説明する。
本実施の形態に係るPDP装置およびそのパネル部は、上記実施の形態2と略同一の構成を有する。本実施の形態に係るPDP装置およびそのパネル部が有する上記実施の形態2との相違点は、放電ガスの組成にある。具体的には、本実施の形態に係るパネル部では、放電ガスとしてXe−Ne−Arの3元系ガスが用いられている。そして、放電ガス中におけるNeガスおよびArガスの分圧比は、ともに5[%]に設定されている。なお、放電ガスの全圧は、上記実施の形態2と同様に、3.5×104[Pa]に設定されている。また、これ以外の構成については、上記実施の形態2に係るPDP装置と同様である。
従って、本実施の形態に係るPDP装置では、上記実施の形態1、2に係るPDP装置にも増して、高い発光効率と、保護層に対するスパッタリングの発生の抑制と、放電開始電圧の低減とを実現する上で優位性を有する。
図7に示すように、放電ガスがXe−Ne−Arの3元系の場合においても、Neガスの分圧比が略25[%]のときにスパッタリングレートが最大値をとる。このことから、保護層のスパッタリングレートは、放電ガス中のNeガスの分圧比に従っていることが分かる。即ち、図4と図7とを比べるとき、放電ガス中にArガスが5%含まれているか否かに関わらず、Neガスの分圧比が25[%]のポイントでスパッタリングレートの最大を有する。これより、保護層に対するスパッタリングは、放電ガス中におけるNeガスの含有比率により左右されていることが分かる。
(誘電体層の膜厚とスパッタリングレートとに関する考察)
次に、誘電体層の膜厚とスパッタリングレートとの関係に関し、図8を用い説明する。図8は、保護層におけるスパッタリングレートの誘電体層の膜厚に対する依存性に関する特性図である。
以上の結果より、PDP装置およびそのパネル部においては、放電ガスの全圧に対するNeガスの分圧比が8[%]以下という範囲を想定する場合、誘電体層の膜厚を20[μm]以下とすることが望ましい。ただし、放電ガスの全圧に対するNeガスの分圧比が5[%]の場合には、図8から明らかなように、誘電体層の膜厚を40[μm]以下の範囲としておけば、PDP装置およびそのパネル部の長寿命化および発光効率の向上の両方を図ることができる。例えば、低融点ガラスを含むペーストを塗布・焼成するという過程を経て形成される従来の一般的な誘電体層を備える場合にも、放電ガスの全圧に対するNeガスの分圧比を5[%]以下とすれば、保護層のスパッタリングレートを”30”未満とすることができ、PDP装置およびそのパネル部の長寿命化および発光効率の向上という両観点から望ましい。
(放電ガス中におけるNeガスの含有率と製造過程におけるエージング時間とに関する考察)
次に、放電ガス中におけるNeガスの含有率と製造過程におけるエージング時間とに関し、図9を用い説明する。本考察を行うのに際しては、図1および図2に示す構成と同様の構成を有するPDP装置を用いた。ただし、放電ガスとしてXe−Neの2元系混合ガスを用い、Xeガスの分圧を20[kPa](150[Torr])で一定とし、これに0[%]〜20[%]の範囲の分圧比となるようにNeガスを混合した。なお、エージング時間とは、放電開始電圧の初期変動が収まり、定常状態、例えば250[V]±5[V]の範囲内となるまでに要する時間である。
(放電間隙と輝点発生頻度とに関する考察)
次に、前面パネル11におけるスキャン電極Scnとサスティン電極Susとの間隙(放電ギャップ)と輝点発生頻度との関係について、図10を用い説明する。なお、本考察においては、図1および図2に示す構成のPDP装置を用いた。ただし、放電ガスとしてXe−Neの2元系混合ガスを採用し、Xeガスの分圧比を95[%]とし、Neガスの分圧比を5[%]とした。また、放電ガスの全圧を24[kPa]とし、前面パネル11の表示電極対112におけるスキャン電極Scnとサスティン電極Susとの間隙を30[μm]〜80[μm]の範囲で変化させて、その各々の装置についての輝点発生頻度を求めた。
従って、放電ギャップに関しては、無効電力の低減と、累積駆動時間が長期に及んだ場合の輝点発生の抑制との両観点から放電ギャップを、40[μm]以上70[μm]以下の範囲とすることが望ましい。
(隔壁123の高さと輝点発生頻度とに関する考察)
次に、隔壁123の高さと輝点発生頻度との関係について、図11を用い説明する。なお、本考察に際しては、表示電極対112を構成し、対をなすスキャン電極Scnとサスティン電極Susとのギャップ(放電ギャップ)よりも隔壁123の高さが高いことを前提としており、また、隔壁123において、主隔壁1231の方が補助隔壁1232よりも高いのが前提である。他の構成については、上記放電間隙と輝点発生頻度とに関する考察に係る場合と同様である。
図11に示すように、主隔壁1231と補助隔壁1232との段差が8[μm]である場合も15[μm]である場合も、隔壁123の高さ(主隔壁1231の高さ)の増加に伴い、輝点発生頻度が上昇している。また、全ての確認ポイントにおいて、段差が8[μm]の場合よりも段差が15[μm]の場合の方が、輝点発生頻度が小さくなっている。なお、主隔壁1231の高さが低いほど放電開始電圧が上昇する傾向が確認された。特に、主隔壁1231の高さが75[μm]よりも低くなると、放電開始電圧は急激に上昇する傾向にある。
(その他の事項)
上記実施の形態は、本発明の構成およびそこから奏される作用効果を説明するために一例として用いたものであって、本発明は、上記特徴とする部分以外の点において、これに限定を受けるものではない。例えば、放電ガスとして、上記実施の形態1、2では、Xe−Neの2元系の混合ガスを用い、また、上記実施の形態3では、Xe−Ne−Arの3元系の混合ガスを用いたが、これ以外にも、主成分ガスに対して上記範囲内でNeガスが添加されてなる放電ガスを採用することができる。例えば、放電ガスとしては、Kr−Ne、Kr−Ne−Ar、Xe−Ne−He、Xe−Ne−He−ArやKr−Ne−He−Arなどを採用することもできる。
R蛍光体;(Y、Gd)BO3:Eu
G蛍光体;(Y、Gd)BO3:TbとZn2SiO4:Mnとの混合物
B蛍光体;BaMg2Al14O24:Eu
また、上記実施の形態では、放電ガスの主成分ガスとして、XeガスやKrガスなどの放電により147[nm]や173[nm]の波長を有する紫外光を発するものを採用しているが、これについては、背面パネル12に設けられた蛍光体層124の構成材料に基づいて適宜の変更が可能である。
また、誘電体層の膜厚については、上記実施の形態1では25[μm]、上記実施の形態2、3では20[μm]にそれぞれ設定しているが、それ以外の値に設定してもよい。ただし、PDP装置の駆動時における放電電圧と絶縁破壊との関係を考慮して設定することが必要となる。
上記PDP装置は、画像表示を実行するパネル部と、入力画像信号に基づいてパネル部の駆動を実行する駆動部とからなる。この内、パネル部は、2枚のパネルが互いに間隔をあけて対向配置され、外周部で封止された構成を有している。
ところで、PDP装置に対しては、より一層の発光効率(放電効率)の向上が求められており、その一方策として、放電ガス中におけるXeの占める割合を上昇させる研究開発がなされている。例えば、放電ガスを100[%]Xeガスとする提案(特許文献1)や、放電ガスの全圧に対するXeガスの分圧比を10[%]〜100[%]とし、且つ、放電ガスの充填圧力を6×104[Pa]という超高圧とする提案(特許文献2)などがなされている。
そこで、本発明は、次のような特徴を採用する。
本発明に係るPDPは、一対の基板(第1の基板と第2の基板)が互いの間に空間をあけて対向配置され、一方の基板(第1の基板)における主面上に電極対と誘電体層と保護層とが順に積層され、当該保護層が空間を臨む状態におかれ、他方の基板(第2の基板)における主面上に保護層と対向する状態で蛍光体層が形成され、空間に放電ガスが充填されてなる構成を有するパネルであって、放電ガスは、プラズマ放電により蛍光体層を構成する蛍光体を励起する光を出射するガス成分を主成分ガスとし、当該主成分ガスに対してNeガスが添加された構成を有する。そして、本発明に係るPDPでは、放電ガス中において、主成分ガスが主たる比率で含有されているとともに、Neガスが、放電ガスの全圧に対して8[%]以下の分圧比で含有されていることを特徴とする。ここで、「Neガスの分圧比」とは、Neガスの分圧を放電ガスの全圧で除した値のことを指す。
また、本発明に係るPDP装置は、上記本発明に係るPDPと、当該PDPの電極対を構成する電極の各々に対して、入力された画像信号に基づき電圧パルスを印加する駆動部とを有することを特徴とする。
従って、本発明に係るPDPおよびPDP装置は、高い発光効率を維持しながら、駆動が長期にわたった場合にも安定した表示性能を維持することができるという優位性を有する。
上記本発明に係るPDPおよびPDP装置では、放電ガスの全圧(充填圧力)を1×104[Pa]以上5×104[Pa]以下に設定しておくことが望ましい。これは、放電ガスの全圧を1×104[Pa]よりも低く設定する場合には、従来のPDPよりも発光効率が低くなってしまい、また、5×104[Pa]よりも高く設定する場合には、上記特許文献2の技術と同様に、放電開始電圧が高くなり過ぎてしまうためである。特に、放電ガス中におけるXe分圧比が高い場合には顕著となり、Xe分圧比が高く且つ全圧も高い場合には、誘電体層の耐圧が大きな課題となる。また、放電ガスの全圧を、1.7×104[Pa]以上5×104[Pa]以下に設定しておくことがより望ましい。
また、本発明に係るPDPおよびPDP装置では、電極対を構成する各電極が金属材料からなるという構成を採用することが望ましい。これは、上述のように、本発明に係るPDPおよびPDP装置では高い発光効率の実現が可能であることから、表示電極対を構成する各電極の面積をできるだけ小さくすることができるためである。なお、従来のPDPでは、通常、表示電極対を構成する各電極を、ITO(Indium Tin Oxide)などからなる透明電極と、金属材料からなるバス電極とを積層した構成を採用していたが、上述のように本発明に係るPDPおよびPDP装置では、金属材料からなる電極だけで十分であり、透明電極などを必要としないために、そのために要する製造工数などを削減することができる。よって、本発明に係るPDPおよびPDP装置では、上記電極の構成を採用するときには低いコストという優位性も有する。
さらに、上記本発明に係るPDPおよびPDP装置では、電極対を構成する2電極間の間の間隙(放電ギャップ)を40[μm]以上70[μm]以下とすることが、無効電力の低減および輝点発生頻度を低く抑えるという両観点から望ましい。即ち、放電ギャップが40[μm]よりも小さい場合には、無効電力が現実的な範囲を越えて大きくなり過ぎ、逆に70[μm]よりも大きい場合には、Xe分圧比が高い条件において、初期化期間で不所望の強放電(誤放電)が発生し、その後の維持期間において、本来点灯させたくない放電セルで発光してしまう(輝点が発生する)、という問題を生じるのに対し、本発明に係るPDPおよびPDP装置のように、放電ギャップを40[μm]以上70[μm]以下としておけば、無効電力の低減および輝点発生の抑制という両観点から望ましい。
また、所謂、井桁状の隔壁構造を採用する場合には、第2の基板における電極に並行する隔壁に対し、これに交差する方向に延設される補助隔壁の高さが、8[μm]以上15[μm)以下の範囲で低くなるようにすることが、輝点発生頻度の低減という観点からより望ましい。
(実施の形態1)
1.パネル部10の構成
本発明の実施の形態1に係るPDP装置1の構成の内、パネル部10の構成について、図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1に係るパネル部10の構造を示す要部斜視図(一部断面図)である。
1−1.前面パネル11の構成
図1に示すように、パネル部10を構成する要素の内、前面パネル11は、前面基板111における背面パネル12と対向する側の面(図1では下面)に、スキャン電極Scnとサスティン電極Susからなる表示電極対112が、互いに平行に複数配設され、この表示電極対112を覆うように、誘電体層113および保護膜114が順に形成されている。
なお、前面基板111の表面において、隣り合う表示電極対112と表示電極対112との間には、隣り合う放電セルの光が互いに漏れ出るのを防止するためのブラックストライプが設けられた構成としてもよい。
背面パネル12は、背面基板121における前面パネル11と対向する側の面(図1では上面)に、表示電極対112と略直交する方向において、データ電極Datが複数配置されており、このデータ電極Datを覆うように、誘電体層122が形成されている。また、この誘電体層122上には、隣り合うデータ電極Dat間に主隔壁1231が立設され、さらに、この主隔壁1231と略直行する方向に補助隔壁1232が形成されている。本実施の形態に係るパネル部10では、これら主隔壁1231と補助隔壁1232との組み合わせを以って隔壁123が構成されている。なお、図面上では詳細に示していないが、z方向において、補助隔壁1232の上端は、主隔壁1231の上端よりも若干低く設定されている。
蛍光体層124R、124G、124Bの各々は、例えば、次に示すような各色蛍光体を単独で用いたり、あるいは、各々を混合した材料を用い形成されている。
YVO3:Eu
緑色(G)蛍光体;Zn2SiO4:Mn
(Y、Gd)BO3:Tb
BaAl12O19:Mn
青色(B)蛍光体:BaMgAl10O17:Eu
CaMgSi2O6:Eu
1−3.前面パネル11と背面パネル12との配置
図1に示すように、パネル部10は、前面パネル11と背面パネル12とが、背面パネル12に形成された隔壁123をギャップ材として間に挟み、且つ、表示電極対112とデータ電極Datとが略直交する方向に配され、この状態で各々の外周部どうしが封止されてなる構成を有している。この構成によって、上述のように、前面パネル11と背面パネル12との間には、各隔壁123によって仕切られた放電空間13が形成され、両パネル11、12が密閉容器を形成することになる。
2.PDP装置1の構成
上記パネル部10を備えるPDP装置1について、図2を用いて説明する。図2は、PDP装置1の構成を模式的に表したブロック図である。なお、図2では、パネル部10については電極Scn、Sus、Datの配列のみを示している。
タイミング発生部24は、水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vに基づいてタイミング信号を生成し、各ドライバ21〜23に信号を出力する。ここで、タイミング発生部24は、APL検出部28から入力されるAPL値に基づいて1フィールドを構成するサブフィールドの各々の初期化期間を全セル初期化期間であるか選択初期化期間であるかを決定し、1フィールド内での全セル初期化期間の適用回数を制御する。
サスティンドライバ23は、公知のドライバICを備えて構成されており、タイミング発生部24から送られてくるタイミング信号に基づいて、サスティン電極Sus(1)〜Sus(n)に駆動電圧を印加する。
次に、上記構成を有するPDP装置1の駆動方法について、図3を用いて説明する。図3は、フィールド内時分割階調表示方式(サブフィールド法)を用いてPDP装置1の駆動を実行する方法を示している。
図3に示すように、PDP装置1の駆動においては、一例として、256階調を表現するために1フィールドを8つのサブフィールドSF1〜SF8に分割し、それぞれのサブフィールドSF1〜SF8に初期化期間T1、書き込み期間T2、維持期間T3の3期間を設定し、サスティン電極Sus(1)〜Sus(n)に対して電圧パルス2001、スキャン電極Scn(1)〜Scn(n)に対して電圧パルス2002、データ電極Dat(1)〜Dat(m)に対して電圧パルス2003をそれぞれ印加する。
本実施の形態に係るPDP装置1では、パネル部10の放電空間13内に充填されている放電ガスがXe−Neガスであり、放電ガス中に占めるNeガスの割合(全圧に対するNe分圧の比)が5[%]に設定されている。逆にいえば、放電ガス中におけるXeガスの占める割合は、95[%]と高くなっている。このため、本実施の形態に係るPDP装置1では、上述のように、高い発光効率(放電効率)を有する。そして、本実施の形態に係るPDP装置1では、上記特許文献1の技術のごとく100[%]Xeとせずに、5[%]のNeガスを添加しており、尚且つ、放電ガスの全圧を上記特許文献2のような超高圧とはしていないので、放電開始電圧を低く維持することができる。
また、本実施の形態に係るパネル部10では、前面パネル11における保護層114を構成する材料としてMgOを用いている。保護層の構成材料としては、この他にもMgF2(弗化マグネシウム)なども用いられることがあるが、2次電子放出係数および耐スパッタリング性等の観点からMgOが最適である。よって、MgOを用いて保護層114を形成している本実施の形態に係るパネル部10では、駆動時における高い発光効率と保護層114のスパッタリングに対する耐性という観点から優位である。
さらに、本実施の形態では、放電ガス中におけるNeガスの占める割合を5%としたが、8[%]以下であればよい。ただし、全くNeガスが含まれていないような組成については、上記理由から避けなければならない。
上記パネル部10の構成をベースとして、放電ガスにおけるXeガスとNeガスとの構成比率を変えてみて、駆動時における放電に起因する保護層114のスパッタリングレートおよび放電開始電圧の変化について考察する。
図4には、放電ガス中におけるNeガスの含有比率(分圧比)と保護層114のスパッタリングレートとの関係を示す。図中には、計算値と実験値とを示している。なお、スパッタリングレートの計算は各イオンにおけるスパッタリング確率と、イオン密度およびイオンエネルギー分布とを考慮して行っている。
図4に示す結果より、Neガスの分圧比は、5[%]以下もしくは70[%]以上とする必要があることが分かる。ただし、放電ガス中におけるXeガスの含有比率が低い場合には、放電効率が低下するため、Neガスの分圧比を5[%]以下とすることにより、高効率と長寿命が両立されるPDP装置が実現できる。
次に、Neガスの分圧比と放電開始電圧との関係について、図5を用いて説明する。図5は、放電開始電圧のNeガス分圧比依存性を示す特性図である。なお、図5においては、Xeガスの分圧を2×104[Pa]で一定とし、これに対してNeガスを添加することによって分圧比を決定している。
図5に示すように、Neガスの分圧比が10[%]〜30[%]程度の範囲では、全圧が増加しているにもかかわらず、Neガスを添加しない場合に比べて、放電開始電圧が小さくなっている。また、放電開始電圧を低減する効果は、Neガスの分圧比が0.2[%]の場合でも得られており、微量の添加でも効果があることが分かる。これは、MgOからなる保護層114の2次電子放出係数がNeイオンの存在によって大きくなったためであると考えられる。
なお、図5では、放電ガス中にNeガスを含まない(Neガスの分圧比=0[%])については、そのデータをプロットしなかったが、上記特許文献1のように、放電ガス中にNeガスを含有しない場合には、放電開始電圧が上昇する。
(実施の形態2)
次に実施の形態2に係るPDP装置について、以下で説明する。
ここで、本実施の形態に係るPDP装置のパネル部においては、前面パネルにおける誘電体層の構成材料として、上記実施の形態1などの低融点ガラスなどに比べて誘電率が低い酸化シリコンを採用しているので、放電空間との電極容量を上記パネル部10と同一に揃えた場合には、その膜厚を1/2〜1/3と薄くすることが可能となっている。このため、本実施の形態に係るパネル部では、誘電体層の膜厚を上記パネル部10の誘電体層113の膜厚25[μm]に比べて5[μm]薄い20[μm]とすることができている。この誘電体層の薄肉化は、放電電圧の低減に寄与する。
以上の結果より、本実施の形態に係るパネル部の構成を採用する場合には、放電ガス中におけるNeガスの分圧比を8[%]以下に規定することで、高い発光効率と長寿命とを両立可能なPDP装置を実現できる。なお、本実施の形態においても、放電ガス中には、微量(例えば、0.2[%])であってもNeガスが添加されていることが前提となる。
なお、本実施の形態に係るPDP装置においても、放電ガスの全圧を1×104[Pa]〜5×104[Pa]の範囲で設定することが可能であり、また、表示電極対を構成する各電極Scn、SusをAgなどから形成することも可能である。これらの理由については、上記実施の形態1と同様である。表示電極対を構成する各電極Scn、Susの厚みについては、誘電体層の薄肉化を図っている観点から、絶縁破壊を防止するために薄くしておくことが望ましい。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係るPDP装置およびそのパネル部について説明する。
本実施の形態に係るPDP装置およびそのパネル部は、上記実施の形態2と略同一の構成を有する。本実施の形態に係るPDP装置およびそのパネル部が有する上記実施の形態2との相違点は、放電ガスの組成にある。具体的には、本実施の形態に係るパネル部では、放電ガスとしてXe−Ne−Arの3元系ガスが用いられている。そして、放電ガス中におけるNeガスおよびArガスの分圧比は、ともに5[%]に設定されている。なお、放電ガスの全圧は、上記実施の形態2と同様に、3.5×104[Pa]に設定されている。また、これ以外の構成については、上記実施の形態2に係るPDP装置と同様である。
従って、本実施の形態に係るPDP装置では、上記実施の形態1、2に係るPDP装置にも増して、高い発光効率と、保護層に対するスパッタリングの発生の抑制と、放電開始電圧の低減とを実現する上で優位性を有する。
図7に示すように、放電ガスがXe−Ne−Arの3元系の場合においても、Neガスの分圧比が略25[%]のときにスパッタリングレートが最大値をとる。このことから、保護層のスパッタリングレートは、放電ガス中のNeガスの分圧比に従っていることが分かる。即ち、図4と図7とを比べるとき、放電ガス中にArガスが5%含まれているか否かに関わらず、Neガスの分圧比が25[%]のポイントでスパッタリングレートの最大を有する。これより、保護層に対するスパッタリングは、放電ガス中におけるNeガスの含有比率により左右されていることが分かる。
(誘電体層の膜厚とスパッタリングレートとに関する考察)
次に、誘電体層の膜厚とスパッタリングレートとの関係に関し、図8を用い説明する。図8は、保護層におけるスパッタリングレートの誘電体層の膜厚に対する依存性に関する特性図である。
以上の結果より、PDP装置およびそのパネル部においては、放電ガスの全圧に対するNeガスの分圧比が8[%]以下という範囲を想定する場合、誘電体層の膜厚を20[μm]以下とすることが望ましい。ただし、放電ガスの全圧に対するNeガスの分圧比が5[%]の場合には、図8から明らかなように、誘電体層の膜厚を40[μm]以下の範囲としておけば、PDP装置およびそのパネル部の長寿命化および発光効率の向上の両方を図ることができる。例えば、低融点ガラスを含むペーストを塗布・焼成するという過程を経て形成される従来の一般的な誘電体層を備える場合にも、放電ガスの全圧に対するNeガスの分圧比を5[%]以下とすれば、保護層のスパッタリングレートを”30”未満とすることができ、PDP装置およびそのパネル部の長寿命化および発光効率の向上という両観点から望ましい。
(放電ガス中におけるNeガスの含有率と製造過程におけるエージング時間とに関する考察)
次に、放電ガス中におけるNeガスの含有率と製造過程におけるエージング時間とに関し、図9を用い説明する。本考察を行うのに際しては、図1および図2に示す構成と同様の構成を有するPDP装置を用いた。ただし、放電ガスとしてXe−Neの2元系混合ガスを用い、Xeガスの分圧を20[kPa](150[Torr])で一定とし、これに0[%]〜20[%]の範囲の分圧比となるようにNeガスを混合した。なお、エージング時間とは、放電開始電圧の初期変動が収まり、定常状態、例えば250[V]±5[V]の範囲内となるまでに要する時間である。
(放電間隙と輝点発生頻度とに関する考察)
次に、前面パネル11におけるスキャン電極Scnとサスティン電極Susとの間隙(放電ギャップ)と輝点発生頻度との関係について、図10を用い説明する。なお、本考察においては、図1および図2に示す構成のPDP装置を用いた。ただし、放電ガスとしてXe−Neの2元系混合ガスを採用し、Xeガスの分圧比を95[%]とし、Neガスの分圧比を5[%]とした。また、放電ガスの全圧を24[kPa]とし、前面パネル11の表示電極対112におけるスキャン電極Scnとサスティン電極Susとの間隙を30[μm]〜80[μm]の範囲で変化させて、その各々の装置についての輝点発生頻度を求めた。
従って、放電ギャップに関しては、無効電力の低減と、累積駆動時間が長期に及んだ場合の輝点発生の抑制との両観点から放電ギャップを、40[μm]以上70[μm]以下の範囲とすることが望ましい。
(隔壁123の高さと輝点発生頻度とに関する考察)
次に、隔壁123の高さと輝点発生頻度との関係について、図11を用い説明する。なお、本考察に際しては、表示電極対112を構成し、対をなすスキャン電極Scnとサスティン電極Susとのギャップ(放電ギャップ)よりも隔壁123の高さが高いことを前提としており、また、隔壁123において、主隔壁1231の方が補助隔壁1232よりも高いのが前提である。他の構成については、上記放電間隙と輝点発生頻度とに関する考察 に係る場合と同様である。
図11に示すように、主隔壁1231と補助隔壁1232との段差が8[μm]である場合も15[μm]である場合も、隔壁123の高さ(主隔壁1231の高さ)の増加に伴い、輝点発生頻度が上昇している。また、全ての確認ポイントにおいて、段差が8[μm]の場合よりも段差が15[μm]の場合の方が、輝点発生頻度が小さくなっている。なお、主隔壁1231の高さが低いほど放電開始電圧が上昇する傾向が確認された。特に、主隔壁1231の高さが75[μm]よりも低くなると、放電開始電圧は急激に上昇する傾向にある。
(その他の事項)
上記実施の形態は、本発明の構成およびそこから奏される作用効果を説明するために一例として用いたものであって、本発明は、上記特徴とする部分以外の点において、これに限定を受けるものではない。例えば、放電ガスとして、上記実施の形態1、2では、Xe−Neの2元系の混合ガスを用い、また、上記実施の形態3では、Xe−Ne−Arの3元系の混合ガスを用いたが、これ以外にも、主成分ガスに対して上記範囲内でNeガスが添加されてなる放電ガスを採用することができる。例えば、放電ガスとしては、Kr−Ne、Kr−Ne−Ar、Xe−Ne−He、Xe−Ne−He−ArやKr−Ne−He−Arなどを採用することもできる。
R蛍光体;(Y、Gd)BO3:Eu
G蛍光体;(Y、Gd)BO3:TbとZn2SiO4:Mnとの混合物
B蛍光体;BaMg2Al14O24:Eu
また、上記実施の形態では、放電ガスの主成分ガスとして、XeガスやKrガスなどの放電により147[nm]や173[nm]の波長を有する紫外光を発するものを採用しているが、これについては、背面パネル12に設けられた蛍光体層124の構成材料に基づいて適宜の変更が可能である。
また、誘電体層の膜厚については、上記実施の形態1では25[μm]、上記実施の形態2、3では20[μm]にそれぞれ設定しているが、それ以外の値に設定してもよい。ただし、PDP装置の駆動時における放電電圧と絶縁破壊との関係を考慮して設定することが必要となる。
10.パネル部
11.前面パネル
12.背面パネル
13.放電空間
20.表示駆動部
21.データドライバ
22.スキャンドライバ
23.サスティンドライバ
24.タイミング発生部
25.A/D変換器
26.走査数変換部
27.サブフィールド変換部
111、121.基板
112.表示電極対
113、122.誘電体層
114.保護層
123.隔壁
124.蛍光体層
Scn.スキャン電極
Sus.サスティン電極
Dat.データ電極
Claims (23)
- 第1の基板と第2の基板とが互いの間に空間をあけて対向配置され、前記第1の基板における主面上に電極対と誘電体層と保護層とが順に積層され、当該保護層が前記空間を臨む状態におかれ、前記第2の基板における主面上に前記保護層と対向する状態で蛍光体層が形成され、前記空間に放電ガスが充填されてなるプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記放電ガスは、プラズマ放電により前記蛍光体層の蛍光体を励起する光を出射するガス成分を主成分ガスとし、当該主成分ガスに対してネオンガスが添加された構成を有し、
前記放電ガス中において、前記主成分ガスは、主たる比率で含有されているとともに、前記ネオンガスは、全圧に対して8%以下の分圧比で含有されている。 - 請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記誘電体層の厚みは、20μm未満である。 - 請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記放電ガス中におけるネオンガスは、全圧に対して5%以下の分圧比で含有されている。 - 請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記放電ガス中におけるネオンガスは、全圧に対して0.2%以上の分圧比を下限値として含有されている。 - 請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記放電ガス中におけるネオンガスは、全圧に対して3%以上の分圧比を下限値として含有されている。 - 請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記放電ガス中には、アルゴンガスが含まれている。 - 請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記放電ガスの全圧は、1×104Pa以上5×104Pa以下である。 - 請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記放電ガスの全圧は、1.7×104Pa以上5×104Pa以下である。 - 請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記電極対を構成する各電極は、金属材料からなる。 - 請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記保護層は、酸化マグネシウムからなる。 - 請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記主成分ガスは、キセノンガスまたはクリプトンガスからなる。 - 請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記第1の基板の主面上における前記電極対は、互いの間の間隙が40μm以上70μm以下の配される2電極からなる。 - 請求項12に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記第2の基板における主面上には、前記電極対に対し立体交差する方向に、電極が形成され、当該電極を覆う状態に誘電体層が形成されるとともに、前記誘電体層の主面上であって、隣り合う前記電極どうしの間に、前記第1の基板に向けて隔壁が立設されており、
前記第2の基板における前記誘電体層の主面を基準とするときの前記隔壁の高さは、前記電極対を構成する2電極間の間隙よりも高い。 - 請求項13に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記第2の基板における前記誘電体層の主面を基準とするときの前記隔壁の高さは、75μm以上120μm以下である。 - 請求項14に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記第2の基板における前記誘電体層の主面上であって、前記第1の基板における隣り合う電極対どうしの間に相当する領域には、前記隔壁に交差する方向であって、且つ、前記第1の基板における前記保護層に向けて補助隔壁が立設されており、
前記第2の基板における前記誘電体層の主面を基準とするとき、前記隔壁の高さは、前記補助隔壁に高さに比べて高く設定されており、
前記隔壁の高さと前記補助隔壁の高さとの差異は、8μm以上15μm以下である。 - 第1の基板と第2の基板とが互いの間に空間をあけて対向配置され、前記第1の基板における主面上に電極対と誘電体層と保護層とが順に積層され、当該保護層が前記空間を臨む状態におかれ、前記第2の基板における主面上に前記保護層と対向する状態で蛍光体層が形成され、前記空間に放電ガスが充填されてなるパネル部と、
前記パネル部の電極対を構成する電極の各々に対して、入力された画像信号に基づき電圧パルスを印加する駆動部とを有するプラズマディスプレイパネル装置において、
前記放電ガスは、プラズマ放電により前記蛍光体層の蛍光体を励起する光を出射するガス成分を主成分ガスとし、当該主成分ガスに対してネオンガスが添加された構成を有し、
前記放電ガス中において、前記主成分ガスは、主たる比率で含有されているとともに、前記ネオンガスは、全圧に対して8%以下の分圧比で含有されている。 - 請求項16に記載のプラズマディスプレイパネル装置において、
前記誘電体層の厚みは、20μm未満である。 - 請求項16に記載のプラズマディスプレイパネル装置において、
前記放電ガス中におけるネオンガスは、全圧に対して5%以下の分圧比で含有されている。 - 請求項16に記載のプラズマディスプレイパネル装置において、
前記放電ガス中におけるネオンガスは、全圧に対して0.2%以上の分圧比を下限値として含有されている。 - 請求項16に記載のプラズマディスプレイパネル装置において、
前記放電ガス中におけるネオンガスは、全圧に対して3%以上の分圧比を下限値として含有されている。 - 請求項16に記載のプラズマディスプレイパネル装置において、
前記放電ガス中には、アルゴンガスが含まれている。 - 請求項16に記載のプラズマディスプレイパネル装置において、
前記放電ガスの全圧は、1×104Pa以上5×104Pa以下である。 - 請求項16に記載のプラズマディスプレイパネル装置において、
前記主成分ガスは、キセノンガスまたはクリプトンガスからなる。
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