JPWO2006098199A1 - 高融点金属の分離回収方法 - Google Patents

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Abstract

反応容器6内に保持された溶融CaCl2液に原料供給管11からTiCl4のガスが供給され、CaCl2液中に溶解しているCaによりTiCl4が還元されて粒子状の金属Tiが生成する。反応容器6から下方に抜き出されたTi粒が混在した溶融CaCl2液は分離工程12へ送られ、加熱容器15内で加熱されてTi粒も溶融状態となり、比重差により溶融CaCl2液16が上層に、金属Ti17が下層に分離する。下層の金属Ti17は高融点金属排出口18から取り出され、凝固してインゴットとなる。上層の溶融CaCl2液16は、反応容器6から抜き出された溶融CaCl2液と共に電解工程13へ送られ、電気分解により生成したCaはCaCl2と共に反応容器6内へ戻される。この製造プロセスの分離工程12で本発明の分離回収方法が適用され、CaCl2含有溶融塩から優れた品質のTi又はTi合金が少ないエネルギーで効率よく分離回収される。

Description

本発明は、Ti等の高融点金属が混在した塩化カルシウム(CaCl)等の溶融塩を加熱溶解して高融点金属を分離、回収する方法に関する。
高融点金属、例えば金属チタンの工業的な製法としては、四塩化チタン(TiCl)をMgにより還元するクロール法が一般的である。この方法は、反応容器内に溶融Mgを充填し、その液面に上方からTiClの液体を供給して、溶融Mgの液面近傍でTiClをMgにより還元し、金属Tiとする方法で、高純度のスポンジ状のTiが得られる。
しかし、反応容器内の溶融Mgの液面近傍だけで反応が行われるため、TiClの供給速度が制限される。また、生成したTi粉が、溶融MgとTiとの粘着性により凝集し、溶融液が有する熱により焼結して粒成長するため、生成したTiの反応容器外への取り出しが難しく、製造を連続的に行うことが困難である。
この問題を解決するため、従来、多くの研究開発が行われてきた。例えば、特開2004−52037号公報には、酸化チタン(TiO)を、塩化カルシウム(CaCl)と酸化カルシウム(CaO)及び/又はカルシウム(Ca)からなる混合溶融塩中での電気分解により生成するCa及び1価カルシウムイオン(Ca)により還元する金属チタンの精錬方法が提案され、特表2002−517613号公報には、CaClのような溶融塩中での電気分解により金属化合物等(例えば、TiO)から酸素(O)を除去する方法が記載されている。
また、本発明者らは、原料としてTiClを含む金属塩化物を用い、これを、溶融CaClを含む溶融塩中に溶解したCaと反応させて前記溶融塩中にTi粒又はTi合金粒を生成させる方法を提案した。例えば、特開2005−133195号公報に記載されるように、TiClとCaとの還元反応で消費される溶融塩中のCaを経済的に補充するために、溶融CaClの電気分解により生成するCaを利用すると共に、このCaを循環使用する方法である。
これらいずれの方法においても、Tiの酸化物や塩化物が還元されてTiが生成するが、その際に還元反応を行わせる反応場として溶融塩が用いられるので、得られたTiは溶融塩中に固形物(粉状物、粒状物)として混在した状態になる。そのため、Tiが混在する溶融塩からTiを分離する操作(工程)が必要になる。
現在、金属Tiの工業的な製法として一般的に用いられているクロール法では、還元工程で得られたスポンジ状の金属Tiは未反応のMg及び副生物である塩化マグネシウム(MgCl)とが混在した状態になっているため、真空分離工程で加熱することにより未反応Mg及びMgClを蒸発除去し、高純度のスポンジ状金属Tiを分離回収している。この方法によれば、優れた品質の金属Tiが得られる。しかし、スポンジの微細構造の内部に入り込んでいるMgやMgClを蒸発させるために多量の熱エネルギーを要する。
また、前掲の特開2004−52037号公報で提案されている、酸化チタンを電解生成Ca及び1価カルシウムイオン(Ca)により還元する方法では、反応槽外に取り出した塩化カルシウム等の塩が付着したスポンジ状金属Tiを水洗・希塩酸洗浄することによりTiが分離回収される。特表2002−517613号公報に記載される方法でも、TiはCaClのような溶融塩に混在した状態で得られるので、適宜破砕した後、同様に、付着する溶融塩を水洗等により除去する操作が必要である。
その他の、TiClをCaにより還元する金属Tiの製造においても、最終的な分離回収工程では、粉状、粒状の金属Tiが混在する溶融CaCl液を反応容器外へ抜き取り、機械的な圧縮による絞り操作などによりTiを分離する方法が採られる。この場合も、分離後は水洗等により付着溶融塩が除去されることになる。
しかし、このような水洗処理は、作業自体は比較的単純であるが、湿式処理であるため多大な工数を要し、広いスペースが必要となる。また、水洗後の残留水分の除去が必ずしも容易ではなく、水分の除去が不十分であれば、得られるTiの酸素、水素の含有量が高くなる等、Tiの品質に悪影響が生じるおそれもある。また、生成したTiは、冷却後外気にふれるだけでも表面が酸化し、品質が悪化する。加えて、一旦水に溶解してTiと分離したCaClを水溶液の状態からCaの再利用のための電気分解に原料として使用できる溶融CaCl液の状態にするために、大きなエネルギーが必要となる。
本発明は、高融点金属が混在する溶融塩から優れた品質の高融点金属を分離回収する方法、特にTiClのCa還元により生成したTi又はTi合金が混在するCaCl含有溶融塩から優れた品質のTi又はTi合金を、少ないエネルギーで効率よく分離回収する方法の提供を目的としている。
この目的を達成するために、本発明者らは、Ca還元により生成した金属Tiと溶融CaCl及び残留する未反応Caが混在した混在物から前記金属Tiを分離回収するに際し、機械的な絞り操作及び水洗等の方法によらず、前記混在物を加熱し、Tiが溶解(溶融)する温度まで昇温して、混在物が全て液相で存在する状態でのTiの分離(液相分離)の可能性について実験を行い検討した。
これは、CaClの沸点(2008℃)がTiの融点(1680℃)よりも高く、一方、液相状態での比重は、CaClでは凡そ2であるのに対し、Tiでは4.5であって、前記混在物の温度をTiの融点以上に保持すれば、両者の液相分離が可能であるとの着想によるものである。
実験では、ほぼ等量の金属TiとCaClを水冷式の銅製坩堝に装入し、Tiの融点以上に加熱して全体を溶融した。その結果、両者が比重差に応じて明瞭に分離することが確認できた。
さらに、前記液相分離によるTiの回収と、従来のクロール法において採用されている真空分離によるTiの回収について、混在物の構成(即ち、「Ti、CaCl及び残留Ca」又は「Ti、MgCl及び未反応Mg」のそれぞれの混在比率)を実情に合わせて適正に想定し、回収に必要な熱エネルギー(電力換算)を試算した。その結果、要するエネルギーは後者(真空分離によるTi回収)を100とすると、前者(液相分離によるTi回収)では38で、液相分離によるTi回収によってエネルギーを著しく節減できることが判明した。
このように、真空分離によるTi回収で、より多量の熱エネルギーを必要とするのは、MgCl及び未反応Mgを蒸発分離させるための蒸発熱が必要であり、加えて、反応容器内の中心部まで蒸発分離を行うのに長時間を要するためで、液相分離によるTi回収ではCaClの沸点が高く、CaClの蒸発は起こらない。液相分離によるTi回収の大きな利点の一つはこの点にある。
また、本発明者らは、前述したTiとCaClの分離の際に、CaCl中に溶解しているCaが重要な役割を果たしていることを見出した。即ち、Tiが混在するCaClを加熱溶解してTiを液相分離する際に、Caが存在していない場合は、CaCl中にTiが溶け込み、微粒状になって混入する。しかし、Caが僅かでもCaCl中に溶解していれば、CaCl中へのTiの溶け込みが抑制され、Tiを分離した後のCaCl中のTi濃度は著しく低下する。
従って、Tiを液相分離する際にCaCl中にCaを溶解させておくことにより、Tiの回収率の低下を抑制することができる。さらに、本発明者らが提案したTiClのCa還元によるTi又はTi合金の製造方法ではCaClを媒体としてCaを循環使用するので、CaCl中にTiが混入すると、電解工程で問題が生じる可能性があるが、そのような危惧も払拭される。
本発明はこのような着想及び検討の結果に基づいてなされたものであり、その要旨は、下記の高融点金属の分離回収方法にある。
即ち、反応場としての高融点金属が混在する溶融塩を、不活性ガス雰囲気中で溶解し高融点金属を液相分離する高融点金属の分離回収方法である。
ここで、「高融点金属」としては、例えば、Ti、Zrを挙げることができる。
「混在する」とは、混ざった状態が均一相ではないことをいう。即ち、高融点金属が固相として溶融塩中に存在していることを意味する。なお、そのような状態にあるものを、ここでは「混在物」ともいう。
「反応場」とは、反応が進行する領域を意味する。この場合であれば、反応場として機能した、つまり、そこで何らかの反応が進行した前記の溶融塩を指す。
「溶解」とは、高融点金属が混在する溶融塩を加熱昇温して全体を液状とする操作を意味する。
また、「液相分離」とは、前述のとおり、混在物が液相で存在する状態での分離をいう。この場合は、高融点金属と溶融塩とがともに液相で、比重差により両者を上下に分離させることを意味する。
この高融点金属が混在した溶融塩は通常の溶融塩に高融点金属を単に混在させたものではなく、反応場として機能した、即ち任意のプロセスから抜き出された溶融塩である。なお、この溶融塩は、本発明の分離回収方法を適用する際、固化していて、外見上全体が固相状態を呈していてもよい。溶解の過程で溶融状態になるからである。
本発明の分離回収方法を実施するには、この高融点金属が混在する溶融塩を溶解する。即ち、高融点金属が混在する溶融塩を加熱昇温して全体を液状とする。その結果、高融点金属と反応場としての溶融塩は液相で分離する。即ち、比重差により通常は溶融塩が上層、高融点金属が下層となって分離する。
溶融塩としては、分離回収しようとする高融点金属の融点をM、溶融塩の沸点をBとした場合、B>Mの関係を満たす溶融塩であれば、融点Mの高融点金属を対象として使用することが可能といえる。但し、取り扱いの難易性、性状(特に、環境に対する有害性)、価格等の制約から、実際に使用できる溶融塩は比較的少ない種類に限定される。例えば、高融点金属としてTi(融点:1680℃)を対象とする場合であれば、CaCl(沸点:2008℃)、LaCl(同1710℃)、SnCl(同2040℃)、CaF(同2510℃)、BaF(同2137℃)等があげられる。
図1は本発明の高融点金属の分離回収方法を実施して高融点金属と溶融塩とが分離した状態を模式的に例示する図である。
図1において、高融点金属が混在する溶融塩を加熱容器1に装入し、加熱してこれを溶解し、両者をともに溶融状態とする。溶融状態の高融点金属と溶融塩は比重差により液相分離する。図示した例では、溶融塩2が上層に、高融点金属3は下層に分離しており、加熱容器1の底部に取り付けた高融点金属排出口4から高融点金属3を取り出し、回収することができる。一方、溶融塩2は加熱容器1の高さ方向の中間部付近に取り付けた溶融塩排出口5から取り出せる。
高融点金属排出口4や溶融塩排出口5の取り付け位置は、高融点金属と溶融塩の混在比率等を勘案して適宜定めればよい。前記排出口をそれぞれ複数箇所に設けた加熱容器を用い、上層、下層の液面のレベルに応じてそれら排出口を使い分ける方法を採用してもよい。高融点金属が混在する溶融塩の装入と、高融点金属3及び溶融塩2の取り出しを計画的に行えば、回収を半連続的又は連続的に実施することも可能である。
加熱容器としては、高温に耐え、装入物による溶出が起こらないものを使用する必要がある。例えば、高融点金属がTiで、溶融塩としてCaClを使用する場合等においては、水冷式の銅製容器が使用できる。
加熱溶解の手段としては、プラズマ溶解法、高周波誘導溶解法などが適用できる。
前記溶解を不活性ガス雰囲気中で行うのは、高温条件の下で、系内のいずれの物質も反応性が高まっていることから、高融点金属と酸素その他のガスとの反応や吸収を防ぐためである。なお、溶解時の不活性ガスの圧力について特に限定はしないが、通常は常圧(大気圧)として溶解する。
前記本発明の分離回収方法において、『溶融塩として、前記高融点金属を製造するに際して反応場として用いられ且つその反応により得られた高融点金属が混在する溶融塩を用いる』こととしてもよい(この実施の態様を実施形態1という)。
この実施形態1の方法は、溶融塩が、これに混在する高融点金属を製造するために反応場として用いた溶融塩であるという条件を構成要件として付加した方法である。
前記本発明の分離回収方法(実施形態1の方法を含む)において、『前記溶融塩の沸点が前記高融点金属の融点より高い』という条件を構成要件の一つとして明示し、これを付加してもよい(実施形態2)。
本発明の分離回収方法を実施して高融点金属を液相分離するためには、溶融塩の沸点が高融点金属の融点より高いということが前提条件となっているのであるが、この実施形態2の方法は、このことを明示した実施形態である。
前記本発明の分離回収方法(実施形態1、2の方法を含む)において、『CaClを含む溶融塩を用いる』こととしてもよい(実施形態3)。なお、「CaClを含む溶融塩」とは、溶融CaClのみ、又は、溶融CaClに、融点の低下、粘性等の調整のためにCaF等を加えた溶融塩である。
この実施形態3の方法を適用することにより、後述する高融点金属の化合物(例えば、TiCl)をCaにより還元して得られる高融点金属を分離回収する実施形態を採用する場合に、好適な反応場を構成することができる。
前記本発明の分離回収方法(実施形態1〜3の方法を指す)において、『溶融塩がCaを含み、反応により得られた高融点金属が前記溶融塩中のCaに前記高融点金属の化合物を反応させて得られたもの』としてもよい(実施形態4)。
高融点金属の化合物としては、例えば、TiClなどの高融点金属の塩化物が挙げられる。即ち、この実施形態4の方法は、溶融塩を、CaにTiClなどの高融点金属の塩化物を反応させて得られた高融点金属が混在する溶融塩として特定した方法である。
前記本発明の方法(実施形態4の方法)において、『高融点金属がTi又はTi合金であり、前記高融点金属の化合物がTiClを含む』こととしてもよい(実施形態5)。
この実施形態5の方法としては、例えば、後述する本発明の分離回収方法の適用例で具体的に示すように、CaにTiClを反応させて得られた金属Tiが混在する溶融塩を溶解して金属Tiを液相分離する形態が該当する。CaにTiClと他の金属塩化物を反応させると、当該他の金属塩化物も同時にCaにより還元されるので溶融塩にはTi合金が混在することとなり、Ti合金を分離回収することができる。
前記本発明の分離回収方法において、『高融点金属がTi又はTi合金であり、溶融塩がCaClを含み且つCaを含むもので、前記溶解を不活性ガス雰囲気中又は真空下で行う』ことが望ましい(実施形態6)。
CaCl含有溶融塩中に溶解しているCaは、Ti又はTi合金が混在する前記溶融塩を加熱して、溶融塩とこれら金属を液相分離する際に、Ti又はTi合金の溶融塩中への溶け込みを抑制し、Ti又はTi合金を分離した後の溶融塩中のTi濃度を著しく低下させる。検討結果の一例を挙げると、CaCl中に溶解Caが存在しない場合には、Tiが溶融塩中に0.5〜1質量%程度溶解したが、CaがCaCl中に1質量%含まれている場合は、溶融塩中のTi濃度は50ppmに低下した。
この実施形態6の方法を適用すれば、Ti又はTi合金の溶融塩中への溶け込みを1/100又はそれ以下に抑制することができる。この効果は、溶融塩中にCaが僅かでも溶解していれば認められるので、溶融塩中におけるCa濃度の下限は限定しない。また、Ca濃度がそのCaCl含有溶融塩における飽和濃度に近い濃度であっても効果があるので、上限も特に規定しない。強いて限定するとすれば、Ca濃度の上限はそのCaCl含有溶融塩における飽和濃度(CaClの場合、約1.5質量%)である。
前記のCaは、Ti又はTi合金が混在する溶融塩の溶解前に(つまり、溶解開始時よりも前の時点で)溶融塩中に含まれていればよい。換言すれば、Caとの反応により生成した当初の高融点金属が混在する溶融塩中には含まれておらず、溶解開始の直前にCaを添加しても、当初から含まれている場合と同等の効果が得られる。
本発明の分離回収方法では、前述したように、溶解を不活性ガス雰囲気中で行う。高融点金属と酸素その他のガスとの反応や吸収を防ぐためで、Ar等の不活性ガス雰囲気が一般的であるが、この実施形態6の場合のように、Ti又はTi合金が混在するCaCl含有溶融塩を溶解する際には、溶解を真空下で行ってもよい。ここでいう「真空」とは、低圧の状態をいい、真空度(真空の程度)は、Ti又はTi合金の酸化や他のガスとの反応等が防止できる程度に適宜設定すればよい。
この本発明の分離回収方法(実施形態6の方法)において、『溶融塩とTi又はTi合金の混在物の溶解前に、溶融塩中のCa濃度を0.1〜1.5質量%の範囲内に調整する』ことがより望ましい(実施形態7)。
溶融塩中のCa濃度が0.1質量%未満ではTi又はTi合金の溶融塩中への溶け込み抑制効果がやや低く、1.5質量%を超えると、操業条件の変動等によりCaが析出するおそれがあるからである。Ca濃度のより一層望ましい範囲は、0.3〜1.0質量%である。
前述のように、Caが僅かでも溶融塩中に溶解していれば、Ti又はTi合金の溶融塩中への溶け込み抑制効果が認められるが、溶解前に、溶融塩中のCa濃度を前記範囲内に調整するこの実施形態7の方法を適用すれば、前記CaCl中へのTiの溶け込みを効果的に抑制することができる。
前記実施形態6又は7の方法において、『溶融塩とTi又はTi合金の混在物の溶解前における溶融塩中のCa濃度が0.1質量%未満のときに、溶融塩中にCaを添加する』方法を採用するのがよい(実施形態8)。
この実施形態8の方法は、溶解前における溶融塩中のCa濃度を管理し、適正に調整する操業形態に該当する方法であるが、前記Tiの溶け込みを効果的に抑制してCaClとTi又はTi合金の分離を確実に行うことができる。
なお、Ca濃度の測定は水素発生法、中和滴定法等を用いることにより実施することも可能であるが、操業実績をもとに、物質収支等に基づいて間接的にCa濃度を管理してもよい。
前述の実施形態4〜8の方法は、本発明の分離回収方法において、特に、溶融塩がCaClを含み、高融点金属がTi又はTi合金である場合に、好適に実施できる方法である。即ち、CaCl中に溶解Caを存在させておくことにより、CaCl中へのTi又はTi合金の溶け込みを抑制して、液相分離後のCaCl中のTi濃度を著しく低下させ、Tiの回収率を高めることが可能となる。
さらに、CaClを媒体としてCaを循環使用するCa還元によるTi又はTi合金の製造においては、CaCl中へのTi又はTi合金の溶け込みが電解工程で問題となる可能性があるが、そのような懸念も排除することができる。
前記本発明の分離回収方法(実施形態1〜8のいずれかの方法)において、『反応により得られた高融点金属が混在する溶融塩の全部又は一部を、不活性ガス雰囲気中で溶解するまでの間、溶融状態で維持する』ことが望ましい(実施形態9)。
後に具体的に説明するが、この実施形態9の分離回収方法を適用することにより、固化した状態の高融点金属と溶融塩の混在物を溶解して全体を溶融状態にするために必要な熱エネルギーを節減することができる。前記溶融物の全部を溶融状態で維持するのが望ましいが、一部であってもその分の熱エネルギーが節減できる。
また、前記本発明の分離回収方法(実施形態4〜9のいずれかの方法)において、『高融点金属の化合物との反応後に残存するCaが含まれる溶融塩を不活性ガス雰囲気中で溶解する際に、前記Caを蒸発分離させる』ことが可能である(実施形態10)。
即ち、Ti又はTi合金を分離した後の溶融塩からCaを除去することが可能であり、高融点金属の化合物から分離した溶融塩を再利用する際には、望ましい方法である。但し、この場合、完全に除去されるのではなく、一部はCaCl中に残留するものと考えられる。
この実施形態10の分離回収方法も、後述する本発明の分離回収方法の適用例で具体的に説明するが、例えば、TiClをCaにより還元して金属Tiを製造する場合に、金属Tiの分離工程でこの方法を適用すれば、CaClを含む溶融塩の電気分解の際にその支障となるCaを除去することができので、望ましい。
図1は、本発明の高融点金属の分離回収方法を実施して高融点金属を溶融塩と分離した状態を模式的に例示する図である。
図2は、TiClのCa還元による金属Ti製造装置の構成例を示す図である。
以下に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図2はTiClのCa還元による金属Ti製造装置の構成例を示す図である。前記の実施形態6の分離回収方法を実施できる工程が組み込まれている。
図2において、反応容器6の天井部には、還元剤であるCaを供給する還元剤供給管7が設けられている。反応容器6の底部は、生成Ti粒の排出を促進するために下方に向かって漸次縮径されたテーパー形状になっており、その下端中心部には、生成されたTi粒を排出するTi排出管8が設けられている。
一方、反応容器6の内側には、円筒形状の分離壁9が、直胴部内面との間に所定の隙間をあけて配置されている。反応容器6の上部には、容器内のCaClを側方へ排出する溶融塩排出管10が設けられており、下部には、Ti原料であるTiClを供給する原料供給管11が、容器内中心部に達するように分離壁9を貫通して設けられている。
反応容器6内に、溶融塩として、Caが溶解した溶融CaCl液が保持される。その液面は、溶融塩排出管10より高く分離壁9の上端より低いレベルに設定される。分離壁9の内側では、溶融CaCl液の上に溶融Ca液が保持される。
この状態で、原料供給管11により、分離壁9より内側の溶融CaCl液にTiClのガスが供給される。これにより、分離壁9より内側で、溶融CaCl液中のCaによりTiClが還元され、その溶融CaCl液中に粒子状の金属Tiが生成する。なお、原料としてTiClガスと他の金属塩化物ガスとを混合して使用することにより、Ti合金を製造することが可能である。TiClガスも他の金属塩化物ガスも同時にCaにより還元されるため、Ti合金粒を製造することができるのである。
反応容器6内の分離壁9より内側の溶融CaCl液中に生成されたTi粒は、その液中を沈降して容器内の底部に堆積する。堆積Ti粒は、適宜Ti排出管8から溶融CaCl液と共に下方に抜き出され、分離工程12に送られる。なお、この場合、前記抜き出されるCaCl液には若干の未反応のCaが残存している。
分離壁9より内側での還元反応によりCaを消費された溶融CaCl液は、分離壁9の下方を経由して分離壁9の外側を上昇し、溶融塩排出管10から排出される。排出された溶融CaCl液は電解工程13へ送られる。
分離壁9より内側では、溶融CaCl液の上に保持された溶融Ca液から溶融CaCl液へCaが溶解し補充される。これと共に、分離壁9より内側の溶融CaCl液上へ、還元剤供給管7からCaが補充される。
一方、分離工程12では、溶融CaCl液と共に抜き出されたTi粒は加熱容器15に装入され、加熱されてTi粒も溶融状態となり、比重差により溶融CaCl液16が上層に、金属Ti17が下層に分離する。上層の溶融CaCl液16は溶融塩排出口19から取り出され、反応容器6から抜き出された溶融CaCl液と共に、電解工程13へ送られる。また、下層の金属Ti17は高融点金属排出口18から取り出され、凝固させてインゴットとする。
前記溶解時の温度は、1680〜1750℃の範囲が望ましい。Tiが溶融する温度が1680℃なので、この温度より低いとTi粒は溶融しない。また、1750℃を超える高温とするのは、加熱容器その他の設備の耐久性が損なわれ易く、加熱に要するエネルギーの面でも不利である。
電解工程13では、反応容器6及び分離工程12から導入された溶融CaCl液が電気分解によりCaとClガスに分離される。CaはCaClと共に反応容器6内へ戻される。反応容器6内ではCaが溶解したCaClを使用するので、CaとCaClとを分離する必要はない。
電解工程13で発生したClガスは、塩化工程14へ送られる。ここでは、TiOが塩化処理されることにより、TiClが製造される。また、炭素粉末(C)を併用することによって、副生する酸素がCOの形で排出される。製造されたTiClは、原料供給管11により反応容器6内に導入される。このようにして、CaClの循環により、還元剤であるCa及びClガスがサイクルされる。
即ち、この金属Ti製造プロセスは、金属Tiが混在する溶融塩を溶解して金属Tiを液相分離する実施形態6の分離回収方法が適用された例である。なお、この製造プロセスによれば、実質的にTiO及びCの補給だけで、金属Tiが連続的に製造される。
本発明の分離回収方法(実施形態1〜8のいずれかの方法)において、反応により得られた高融点金属が混在する溶融塩の全部又は一部を、不活性ガス雰囲気中で溶解するまでの間、溶融状態で維持することとするのが望ましい(実施形態9)。
前記図2に示した金属Ti製造プロセスを例にとると、この実施形態9を適用する場合、Ti排出管8から抜き出されたTi粒と溶融CaCl液との混在物を、分離工程12へ送り加熱容器15に装入するまでの間、溶融状態に維持する。即ち、溶融CaCl液にTi粒が混在した状態で加熱容器15に装入する。溶融CaCl液の一部が固化しても、再度溶融するためのエネルギーは必要であるが、分離回収の操作上は何ら差し支えない。この実施形態9の方法の適用により、前記混在物を加熱溶解して全体を溶融状態にするために必要な熱エネルギーを節減することができる。
実施形態10の方法は、本発明の分離回収方法(実施形態4〜9のいずれかの方法)において、高融点金属の化合物との反応後に残存するCaが含まれる溶融塩を不活性ガス雰囲気中で溶解する際に、前記Caを蒸発分離させる方法である。
例えば、図2に示した金属Ti製造プロセスでは、電解工程13で溶融CaCl液が電気分解によりCaとClガスに分離されるが、溶融CaCl液中に未反応のCaが残存していると、陽極近傍で、Caが電気分解で生成したClと反応してCaClに戻る逆反応が生じ、電流効率が低下する。この場合、この実施形態10の分離回収方法を適用すれば、溶融CaCl液中のCaが除去されるので、このような逆反応による電流効率の低下を抑制することができる。
この例のように、溶融塩がCaClのみで構成されている場合は、Caは845℃で溶解し、1420℃で蒸発するので、Ti排出管8から抜き出された溶融CaCl液とTi粒の混在物を溶解する過程でCaの多くは蒸発除去される。
本発明の高融点金属の分離回収方法によれば、例えば、クロール法で用いられている真空分離によるスポンジ状金属Ti回収に比べて非常に少ないエネルギーで金属Ti又はTi合金を回収することができる。作業の連続化、省力も可能であり、製造コストの低減に大きく寄与できる。また、Tiの品質に悪影響を及ぼす水分が混在するおそれがないので、得られるTiの品質が良好である。
従って、本発明の高融点金属の分離回収方法は、高融点金属、特にTi又はTi合金をTiClのCa還元により製造する際の分離回収方法として有効に利用することができる。

Claims (11)

  1. 反応場としての高融点金属が混在する溶融塩を、不活性ガス雰囲気中で溶解し高融点金属を液相分離することを特徴とする高融点金属の分離回収方法。
  2. 前記溶融塩が、前記高融点金属を製造するに際して反応場として用いられ且つその反応により得られた高融点金属が混在する溶融塩であることを特徴とする請求項1に記載の高融点金属の分離回収方法。
  3. 前記溶融塩の沸点が前記高融点金属の融点より高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の高融点金属の分離回収方法。
  4. 前記溶融塩がCaClを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高融点金属の分離回収方法。
  5. 前記溶融塩がCaを含み、反応により得られた高融点金属が前記溶融塩中のCaに前記高融点金属の化合物を反応させて得られたものであることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の高融点金属の分離回収方法。
  6. 高融点金属がTi又はTi合金であり、前記高融点金属の化合物がTiClを含むことを特徴とする請求項5に記載の高融点金属の分離回収方法。
  7. 高融点金属がTi又はTi合金であり、溶融塩がCaClを含み且つCaを含むもので、前記溶解を不活性ガス雰囲気中又は真空下で行うことを特徴とする請求項1に記載の高融点金属の分離回収方法。
  8. 前記溶融塩とTi又はTi合金の混在物の溶解前に、溶融塩中のCa濃度を0.1〜1.5質量%の範囲内に調整することを特徴とする請求項7に記載の高融点金属の分離回収方法。
  9. 前記溶融塩とTi又はTi合金の混在物の溶解前における溶融塩中のCa濃度が0.1質量%未満のときに、溶融塩中にCaを添加することを特徴とする請求項7又は8に記載の高融点金属の分離回収方法。
  10. 反応により得られた高融点金属が混在する溶融塩の全部又は一部を、不活性ガス雰囲気中で溶解するまでの間、溶融状態で維持することを特徴とする請求項2〜9のいずれかに記載の高融点金属の分離回収方法。
  11. 前記高融点金属の化合物との反応後に残存するCaが含まれる溶融塩を不活性ガス雰囲気中で溶解する際に、前記Caを蒸発分離させることを特徴とする請求項5〜10のいずれかに記載の高融点金属の分離回収方法。
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