JPWO2006088261A1 - InGaN層生成方法及び半導体素子 - Google Patents

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Abstract

窒化物半導体素子(10)は、表面が平坦化されたZnO基板(11)の表面上に、InGaN層(12)が形成されている。InGaN層12は、PLD装置により成膜する。すなわち、窒素雰囲気中でInGa金属に対してエキシマレーザを照射することにより、ZnO基板(11)上にInGaNを成膜する。ここで、InGaNの成膜時の温度は、420℃以下とする。420℃以下とすることによりInNとGaNとに相分離せず、結晶性のよいInGaNを製造することができる。

Description

本発明は、InGaNを生成するInGaN層生成方法及びInGaN層を有する半導体素子に関するものである。
本出願は、日本国において2005年2月21日に出願された日本特許出願番号2005−44391を基礎として優先権を主張するものであり、この出願は参照することにより、本出願に援用される。
InNのバンドギャップ0.6eV(赤外域)であり、GaNのバンドギャップは3.4eV(紫外域)であることから、窒化物半導体を発光素子として利用した場合、紫外域から赤外域までにわたる非常に広い帯域の波長の光を発光できると考えられる。
このような窒化物半導体を利用した受発光素子を実現するために、Inが高濃度で含まれている高品質なInGaN単結晶の作製に関する研究を進めている。
しかしながら、InGaNは、InNとGaNとの格子不整合が大きいため、高温で容易にInNとGaNとに相分離してしまう。そのため、MOCVDやMBE等の高温環境化でエピタキシャル成長を行う従来の成膜方法では、高品質なInGaN単結晶を作成することはできなかった。
Davydov V.Yu et al.,Phys.Stat.Solidi.(b),229(2002) E.S.Hellman et al.,MRS Internet J.Nitride Semicond.Res.1,16(1996)
本発明は、以上のような課題を解決し、結晶性のよいInGaNをエピタキシャル成長させることができるInGaN層生成方法、並びに、結晶性の良いInGaN層が基板上に形成された半導体素子を提供することを目的とする。
本発明に係るInGaN層生成方法は、InGaNを270℃以下の温度で基板上にエピタキシャル成長させることを特徴とする。
また、本発明に係る半導体素子は、基板と、270℃以下の温度でInGaNを上記基板上にエピタキシャル成長させて成膜されたInGaN層とを有することを特徴とする。
本発明に係るInGaN結晶は、270℃以下の温度でInGaNをエピタキシャル成長させて成膜された低温成膜層を有することを特徴とする。
本発明に係るInGaN層生成方法では、Inが高濃度に含まれているInGaN層を形成することができるとともに、そのInGaNの品質を高くすることができる。
また、本発明に係る半導体素子及びInGaN結晶は、Inが高濃度に含まれているInGaN層を有するとともに、そのInGaN層の品質が良い。
本発明の更に他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
図1は、窒化物半導体素子の模式的な断面図である。
図2は、窒化物半導体素子の製造手順を示すフローチャートである。
図3は、ZnOの焼結体でZnO基板を囲んだ状態を示す図である。
図4は、ZnO基板の0001面を原子間力顕微鏡で観察した図である。
図5は、PLD装置の構成を示す模式的な図である。
図6は、PLD法によりZnO基板の平坦化した面上にInGaNを成膜させた後の当該InGaNの表面を、RHEED法により観察した結果を示した図である。
図7は、PLD法によりZnO基板の平坦化した面上にInGaNを成膜させた後の当該InGaNの表面を、原子間力顕微鏡により観察した結果を示した図である。
図8は、X線の0002回折の測定の結果を示すグラフを示す図である。
図9は、フォトルミネッセンスの発光波長(フォトンエネルギ)に対するフォトルミネッセンスの検出強度を示す図である。
図10は、Inの組成割合を変えた場合のX線の0002回折の測定の結果を示すグラフを示す図である。
図11は、成長速度を変えてInGaNを蒸着する過程中に、RHEED法でリアルタイムにInGaNの状態変化を測定した結果を示す図である。
図12は、成長速度を変えて成膜したInGaNの表面を、原子間力顕微鏡により観察した結果を示した図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は、InGaN層を有する半導体素子及びその製造プロセスに適用される。
(半導体の構成)
本発明が適用された半導体素子製造プロセスでは、図1に示すような、ZnO基板11上にInGaN層12が形成された窒化物半導体素子10を製造する。
窒化物半導体素子10は、図1に示すように、ZnOからなるZnO基板11の(0001)面又は(000−1)面に対して、InGaNのc軸が垂直となるように配向されたInGaN層12を有する。このInGaN層12は、ZnO基板11上に270℃以下の低温でエピタキシャル成長して成膜されている。
このような構成の窒化物半導体素子10では、ZnOとInGaNとの格子定数が非常に近いため、InGaN層12の格子不整を非常に少なくさせることが可能となる。
(全体フロー)
つぎに、窒化物半導体素子10の製造プロセスについて説明をする。
窒化物半導体素子10は、図2に示すように、ZnO基板の平坦化する平坦化工程(S11)を行い、次に、InGaN層の低温成膜工程(S12)を行うことにより製造される。
(平坦化工程S11)
平坦化工程S11では、先ず、基板表面が(0001)面又は(000−1)面となるようにZnO基板11を切り出す。
続いて、平坦化工程S11では、切り出したZnO基板11の(0001)面又は(000−1)面を例えばダイヤモンドスラリーを使用して機械研磨する。この機械研磨では、使用するダイヤモンドスラリーの粒径を徐々に微細化してゆき、最後に粒径約0.5μmのダイヤモンドスラリーで鏡面研磨する。このとき、更にコロイダルシリカを用いて研磨することにより、表面粗さのrmsが10Å以下となるまで平坦化させてもよい。
続いて、平坦化工程S11では、この機械研磨されたZnO基板11を、800℃以上の温度に制御された高温オーブン内において、図3に示すようにZnOの焼結体で周囲を箱状に囲んで加熱処理する。かかる場合において、ZnO基板11をZnO焼結体により包囲していればよく、また包囲する焼結体によりZnO基板11全てを包み込むことは必須とはならない。また、例えばZnO焼結体からなる坩堝を作製してその中にZnO基板11を載置するようにしてもよい。また、ZnO焼結体からなる箱を作製してその中にZnO基板11を載置するようにしてもよい。
Znの蒸気圧は比較的高いため、基板材料として用いるZnO基板11を加熱処理するとこれが分解してしまうという問題点があったが、図3の如くZnO焼結体により包囲したZnO基板11を加熱することにより、いわばZnOの蒸気圧をかけた状態で加熱処理することができるため、ZnO基板11自体の分解を抑制することが可能となる。
これは、以下に説明する理由から導くことができる。即ち、Znの蒸気圧は比較的に高いため、周囲をZnO焼結体で包囲しない場合には、次の反応2ZnO=2Zn+Oに基づいてZnが効率よくZnO基板11から除去されることになる。これに対して、ZnO基板11の周囲をZnO焼結体で包囲することにより、かかるZnO焼結体からZnO基板周囲の気相中へZnが逃散する結果、かかる気相中におけるZn濃度が高くなる。このため、ZnO基板11中のZnが気相中へ逃散するいわゆる逃散能を低くすることができる結果、ZnO基板11自体の分解を抑制することできるためである。
ちなみに、ZnO基板11中のZnの気相中への逃散を抑えるためには、その周囲をZnO焼結体で包囲する以外に、Znを含む材料で包囲するようにしてもよい。Znを含む材料の例として、例えばZnO単結晶を用いてもよいし、Znの板を用いてもよい。かかる場合においても同様に、ZnO基板11自体の分解を抑制することできる。
図4(A)は、この1150℃で6.5時間加熱処理したZnO基板11の(0001)面を原子間力顕微鏡で観察した結果を示している。この図4(A)より、曲線状の原子ステップがZnO基板11の(0001)面上において形成されているのが分かる。図4(B)は、1150℃で3.5時間加熱処理したZnO基板11の(000−1)面を原子間力顕微鏡で観察した結果を示している。この図4(B)より、滑らかな直線状の原子ステップがZnO基板11の(000−1)面上において規則的に形成されているのが分かる。なお、各原子ステップの高さをこの原子間力顕微鏡を用いて測定した結果、約0.5nmであった。
即ち、上述の条件に基づいてZnO基板11を加熱処理することにより、原子ステップが形成されたZnO基板11を結晶成長用基板として適用することが可能となる。この原子ステップが観察されることは、基板表面を最も平坦な状態に仕上げることができ、良好なInGaN薄膜を形成させることが可能となる。またこの原子ステップは、InGaNのエピタキシャル成長における核となりうることから、更に良好な成膜環境を作り上げることも可能となる。
また、ZnO基板11は、導体であるため、当該ZnO自体を電極とすることができる。従って、サファイア基板等の絶縁基板とは異なり、InGaNの下部を電極とした半導体を製造することができ、製造時の工程を簡略化することができる。
(低温成膜工程S12)
つぎに、低温成膜工程S12では、平坦化工程S11によりZnO基板11の平坦化した面上に、パルスレーザ堆積法(以下、PLD法)により、InGaN層12をエピタキシャル成長させる。
このとき、InGaNの成長時の基板の温度を、270℃以下とする。
270℃以下の温度で成膜をすると、InNとGaNとに相分離する現象が発生せず、高品質なInGaNが成膜される。すなわち、270℃以下の温度で成膜をすることにより、InGaNが熱力学的に非平衡な温度で成膜される。InGaNが熱力学的に非平衡な温度で成膜できると、結晶性がよいInGaN層12を形成できるとともに、Inを高濃度に含ませたInGaN層12を形成することが可能となる。
つぎに、PLD法について説明をする。
PLD法は、図5に示すようなPLD装置30を用いてInGaN層12をZnO基板11上に堆積させる方法である。
PLD装置30は、内部に充填されたガスの圧力及び温度を一定に保つために密閉空間を形成するチャンバ31を備えている。チャンバ31内には、ZnO基板11とターゲット32とが対向して配置されている。ここで、ターゲット32となるのは、インジウム−ガリウム金属である。
また、PLD装置30は、波長が248nmの高出力のパルスレーザを出射するKrFエキシマレーザ33を備えている。KrFエキシマレーザ33から出射されたパルスレーザ光は、レンズ34により焦点位置がターゲット32の近傍となるようにスポット調整され、チャンバ31の側面に設けられた窓31aを介してチャンバ31内に配設されたターゲット32表面に対して約30°の角度で入射する。
また、PLD装置30は、チャンバ31内へ窒素ガスを注入するためのガス供給部35と、その窒素ガスをラジカル化するラジカル源36とを備えている。窒素ラジカル源35は、ガス供給部35から排出された窒素ガスを、高周波を用いて一旦励起することにより窒素ラジカルとし、その窒素ラジカルをチャンバ31内に供給する。なお、チャンバ31とガス供給部35との間には、窒素ラジカルガス分子とパルスレーザ光の波長との関係においてZnO基板11への吸着状態を制御すべく、ガスの濃度を制御するための調整弁36aが設けられている。
また、PLD装置30は、チャンバ31内の圧力を制御するための圧力弁37とロータリーポンプ38とを備えている。チャンバ31内の圧力は、減圧下で成膜するPLD法のプロセスを考慮しつつ、ロータリーポンプ38により例えば窒素雰囲気中において所定の圧力となるように制御される。
また、PLD装置30は、パルスレーザ光が照射されている点を移動するために、ターゲット32を回転させる回転軸39を備えている。
以上のPLD装置30では、チャンバ31内に窒素ガスを充満させた状態で、ターゲット32を回転軸39を介して回転駆動させつつ、パルスレーザ光を断続的に照射する。このことにより、ターゲット32表面の温度を急激に上昇させ、Ga原子が含まれたアブレーションプラズマを発生させることができる。このアブレーションプラズマ中に含まれるGa原子は、窒素ガスとの衝突反応等を繰り返しながら状態を徐々に変化させてZnO基板11へ移動する。そして、ZnO基板11へ到達したGa原子を含む粒子は、そのままZnO基板11上の(0001)面又は(000−1)面に拡散し、格子整合性の最も安定な状態で薄膜化されることになる。
このとき、ZnO基板11の温度は、270℃以下にする。
その結果、結晶性がよいInGaN層12を形成できるとともに、Inを高濃度に含ませたInGaN層12を形成することが可能となる。
なお、InGaN層の低温成膜工程S12でのInGaNのエピタキシャル成長の手法は、PLD法に限定されるものではなく、270℃以下で成膜できれば、例えば分子線エピタキシャル(MBE)法やスパッタリング法等、他の物理気相蒸着(PVD)法に基づいて作製してもよい。また、物理気相蒸着(PVD)法ではなく、例えばMOCVD法を利用した化学気相蒸着(CVD)法に基づいて作製してもよい。
また、ターゲット32となるのは、インジウム−ガリウム金属としているが、インジウム金属と、ガリウム金属をそれぞれターゲットとし、それぞれに同時にエキシマレーザビームを照射するようにしてもよい。
さらに、以上の実施の形態では、Ga原子を含む粒子をZnO基板11上の(0001)面又は(000−1)面に拡散させるようにしたが、InGaNに対する格子整合性基板であればZnO基板でなくてもよく、また、(0001)面又は(000−1)面以外の面に拡散させることもできる。
(具体的な製造条件、及び、評価結果)
低温成膜工程S12において、具体的には次のような条件でInGaN層12のエピタキシャル成長を行った。
低温成膜工程S12では、ターゲット32は、InGa金属(In:50%、Ga:50%)で構成した。ターゲット32は、ZnO基板11における(0001)面又は(000−1)面に対して平行となるように配置した。窒素源としてRFプラズマ・ラジカル窒素源を350Wで用い、成長圧力は2.0×10−5Torrとした。KrFエキシマレーザ33から出射するパルスレーザ光を、パルス周波数が5−20Hzとし、エネルギ密度を1〜3J/cmとした。
以上の条件により生成した窒化物半導体素子10のInGaN層12に対して、反射光速電子線回折(RHEED)による観察、原子間力顕微鏡による観察、X線回折測定を行った。なお、これらの観察及び測定は、PLD法によるエピタキシャル成長時のZnO基板11の温度を270℃、420℃、650℃に設定して製造したInGaN層12に対して行った。
図6(A)は基板温度を270℃として生成されたInGaN層12に対してRHEEDにより観察した結果得られた像であり、図6(B)は基板温度を420℃として生成されたInGaN層12に対してRHEEDにより観察した結果得られた像であり、図6(C)は基板温度を650℃として生成されたInGaN層12に対してRHEEDにより観察した結果得られた像である。なお、図6において、左側の図は、RHEED像の写真に基づく図面であり、右側の図はその模式図である。
図6(A),(B)のRHEED像に示すように、基板温度が270℃及び420℃の場合には、シャープな縞の形状(ストリーキーパターン)が観察され、InGaN層12が良質な結晶となっていることがわかる。これに対して、図6(C)のRHEED像に示すように、基板温度が650℃の場合には、シャープな縞の形状が得られず、InGaN層12が良質な結晶となっていないことがわかる。
図7(A)は基板温度を270℃として生成されたInGaN層12の原子間力顕微鏡の走査画像であり、図7(B)は基板温度を420℃として生成されたInGaN層12の原子間力顕微鏡の走査画像であり、図7(C)は基板温度を650℃として生成されたInGaN層12の原子間力顕微鏡の走査画像である。なお、図7において、左側の図は、原子間力顕微鏡の走査画像の写真に基づく図面であり、右側の図はその模式図である。
図7(A),(B)に示すように、基板温度が270℃及び420℃の場合には、帯状の原子ステップが形成されるステップアンドテラス構造が観察されている。ステップアンドテラス構造が観察されているということは、InGaNの原子層が一層一層に整然と積層されていることを意味する。また、基板温度が270℃の場合の表面粗さRMSは0.17nmであり、基板温度が420℃の場合の表面粗さRMSは0.28nmであり、いずれも非常に小さい。このように、原子間力顕微鏡の観察から、基板温度が420℃以下の場合には、InGaN層12が表面が滑らかで良質な結晶となっていることがわかる。
これに対して、図7(C)に示すように、基板温度が650℃の場合には、ステップアンドテラス構造が観察できず、420℃以下の場合と比べて表面も非常に荒れている。また、基板温度が650℃の場合の表面粗さRMSは8.22nmであり大きい。
図8は、X線の0002回折の測定の結果を示すグラフを示す図である。図8のグラフは、横軸が回転角度(2θ/ω)で、縦軸が検出値である。X線回折測定では、結晶の構造評価が可能である。測定対象物を回転させ、その回転角に対する回折したX線量を測定するとピーク波形が得られる。そのピーク波形が鋭ければ、より結晶性がよいと判断できる。
図8のAは基板温度を270℃として生成されたInGaN層12のX線の0002回折の測定の結果、Bは基板温度を420℃として生成されたInGaN層12のX線の0002回折の測定の結果、Aは基板温度を650℃として生成されたInGaN層12のX線の0002回折の測定の結果である。
図8のAに示すように、基板温度が270℃の場合には、In組成50%近傍の角度(2θ/ω=33degree)でピークを観察することができる。このように、X線の0002回折の測定の結果から、基板温度が270℃以下の場合には、InGaN層12が良質な結晶となっていることがわかる。
これに対して、図8に示すように、基板温度が420℃の場合には、In組成50%近傍の角度(2θ/ω=33degree)では、2つのピークを観察することができる。このため、X線の0002回折の測定の結果から、基板温度が420℃の場合には、InGaN層12があまり良質な結晶とはいえないことがわかる。
また、図8のCに示すように、基板温度が650℃の場合には、In組成50%近傍の角度(2θ/ω=33degree)でピークを全く観察することができない。このように、X線の0002回折の測定の結果から、基板温度が650℃の場合には、InGaN層12が全く良質な結晶となっていないことがわかる。
以上の図6、図7及び図8に示すように、本発明が適用された窒化物半導体の製造プロセスでは、InGaNをZnO基板11上に270℃以下の温度でエピタキシャル成長させることにより、品質の高いInGaNを成膜することができることがわかる。
(フォトルミネッセンスの結果)
さらに、以上のように製造した窒化物半導体素子10のInGaN層12に対して、フォトルミネッセンスの測定を行った。フォトルミネッセンスとは、光で励起された半導体中の電子がエネルギーを放ちながら元のエネルギー状態に戻るときに発する光である。なお、当該測定において、励起光にはHe−Cdレーザ(波長325nm)を用い、温度は300Kとした。また、InGaN層12の成膜時の温度は270℃とした。
図9は、フォトルミネッセンスの発光波長(フォトンエネルギ)に対するフォトルミネッセンスの検出強度を示すグラフである。
図9に示すように、In組成44%(X=0.44)及びIn組成51%(X=0.51)の場合で、明瞭なフォトルミネッセンスを検出することができた。なお、In組成44%(X=0.44)ではバンドギャップピークが2.01eVとなり、In組成51%(X=0.51)ではバンドギャップピークが1.72eVとなることがわかった。
以上のように、本発明が適用された窒化物半導体の製造プロセスでは、InGaNをZnO基板11上に270℃以下の温度でエピタキシャル成長させることにより、フォトルミネッセンス特性を有するInGaN層12を形成できるので、発光デバイスとして用いても充分な結晶性を有する半導体を製造できることがわかる。
(InとGaとの組成割合)
さらに、InとGaとの組成割合を変化させてInGaN層12を成膜した。InとGaとの組成割合は、例えば、PLD装置30内のターゲット12のIn金属とGa金属の割合を変化させればよい。
図10は、X線の0002回折の測定の結果を示すグラフを示す図である。図10のグラフは、横軸が回転角度(2θ/ω)で、縦軸が検出値である。なお、このときの基板温度は、270℃である。
図10のAはIn組成が32%の場合のInGaN層12のX線の0002回折の測定の結果、BはIn組成が51%の場合のInGaN層12のX線の0002回折の測定の結果、CはIn組成が59%の場合のInGaN層12のX線の0002回折の測定の結果、DはIn組成が67%の場合のInGaN層12のX線の0002回折の測定の結果、EはIn組成が100%の場合のInGaN層12のX線の0002回折の測定の結果を示している。
図10のA〜Eに示すように、InとGaの組成割合に関わらず、全ての組成で良質な結晶のInGaN層12が形成できることがわかる。
以上のように、本発明が適用された窒化物半導体の製造プロセスでは、InGaNをZnO基板11上に270℃以下の温度でエピタキシャル成長させることにより、結晶性がよいInGaN層12を形成できるとともに、Inを高濃度に含ませたInGaN層12を形成することが可能となる。
(成長レート)
また、InGaN層12の成長速度を変えた2種類の窒化物半導体素子10を製造するとともに、反射光速電子線回折(RHEED)法を用いてリアルタイムにInGaN層12の状態変化を測定した。なお、このときの基板温度は、270℃である。また、InGaN層12の成長速度は、KrFエキシマレーザ33の繰り返し周波数を変化させることにより制御することができる。
この結果を、図11及び図12に示す。
図11(A)は、1時間あたりの膜の成長速度を35nmで成膜した場合のRHEEDの検出量を示している。図11(A)は、初期段階の1時間あたりの膜の成長速度を10nmとし、その後に1時間あたりの成長速度を35nmとした場合のRHEEDの検出量を示している。
また、図12(A)は、1時間あたりの膜の成長速度を35nmで成膜した場合の最終的に生成されたInGaN層12の原子間力顕微鏡の走査画像であり、図12(B)は、初期段階の1時間あたりの膜の成長速度を10nmとし、その後に1時間あたりの成長速度を35nmとした場合の原子間力顕微鏡の走査画像である。
図11(A)に示すように、初期段階から35nm/時間の速度で成膜させた場合には、最初わずかに検出値に振動が見られるが、数十秒後にはその振動は消滅している。
一方、図11(B)に示すように、初期段階で10nm/時間の速度で成膜させた場合には、RHEEDの検出量の振動している。また、初期段階で10nm/時間の速度で成膜させた場合、以後、35nm/時間の速度に成膜速度を早くしても、振動は継続している。
ここで、RHEEDの検出量の振動の周期は、原子1つの層を示している。すなわち、RHEEDの検出量が膜の成長に応じて振動するということは、良質な結晶ができていることを意味する。
すなわち、ZnO基板11上にInGaN層12を成膜する場合、初期段階では10nm/時間程度あるいはそれ以下の速度で成膜を行うことにより、良質な結晶を得ることができる。ただし、初期段階を超えた後(例えば、図11(B)に示すように5原子層を超えた後)には、35nm/時間程度に成膜の速度を上げても、良質な結晶を得ることができる。
また、PLD装置30に、InGa金属に対して分子線を出射するクヌーセンセル(K−セル、エフューションセル等とも呼ばれる。)を設けて、一台の装置でMBE(分子線エピタキシャル)及びPLDを行うことができる複合装置を用いても良い。当該複合装置であれば、初期段階においてPLDにより低速(10nm/時間)でInGaNの成膜を行い、その後MBEにより高速(35nm/時間 以上)でInGaNの成膜を行うことができ、量産に適している。

Claims (9)

  1. InGaN層を生成するInGaN層生成方法において、InGaNを270℃以下の温度で基板上にエピタキシャル成長させることを特徴とするInGaN層生成方法。
  2. 上記基板は、InGaNに対する格子整合性基板であることを特徴とする請求の範囲第1項記載のInGaN層生成方法。
  3. 上記基板は、表面が平坦化されたZnO基板であることを特徴とする請求の範囲第1項記載のInGaN層生成方法。
  4. 窒素ガス雰囲気中にInGa金属を配置し、又は、窒素ガス雰囲気中にIn金属及びGa金属を配置し、これらにレーザ光を照射することにより、上記ZnO基板の表面にInGaNをエピタキシャル成長させることを特徴とする請求の範囲第3項記載のInGaN層生成方法。
  5. 基板と、270℃以下の温度でInGaNを上記基板上にエピタキシャル成長させて成膜されたInGaN層とを有することを特徴とする半導体素子。
  6. 上記基板はInGaNに対する格子整合性基板であることを特徴とする請求の範囲第5項記載の半導体素子。
  7. 上記基板は、表面が平坦化されたZnO基板であることを特徴とする請求の範囲第5項記載の半導体素子。
  8. 窒素ガス雰囲気中にInGa金属を配置し、又は、窒素ガス雰囲気中にIn金属及びGa金属を配置し、これらにレーザ光を照射することにより、上記ZnO基板の表面にInGaNを成膜することを特徴とする請求の範囲第7項記載の半導体素子。
  9. 270℃以下の温度でInGaNをエピタキシャル成長させて成膜された低温成膜層を有することを特徴とするInGaN結晶。
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