JP2008266113A - Iii−v族窒化物層およびその製造方法 - Google Patents

Iii−v族窒化物層およびその製造方法 Download PDF

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洋 藤岡
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英隆 天内
Satoru Nagao
哲 長尾
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Abstract

【課題】発光素子等の半導体装置の特性向上が可能な高品質な結晶性を有する半極性面を成長面とする六方晶系のIII−V族窒化物層を提供する。
【解決手段】ZnO基板上に成長したIII−V族窒化物層であって、前記III−V族窒化物層の成長面が、c面となす角度が10°以上90°未満の半極性面であり、前記成長面を回折面として、この成長面に垂直かつc軸に平行な面と平行な方向から入射するX線に対して得られるX線回折強度の角度依存性の半値全幅をaで表したとき、a≦0.5°を満たすことを特徴とするIII−V族窒化物層。
【選択図】なし

Description

本発明は、III−V族窒化物層に関し、詳しくは発光デバイス等に使用できる結晶性のよいIII−V族窒化物層に関する。
近年、InAlGa(1−x−y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表されるIII−V族窒化物半導体の研究開発が進み、これを用いた発光ダイオードやレーザダイオードなどの発光デバイスの発光効率が飛躍的に改善されてきている。
GaNをはじめとしてInAlGa(1−x−y)Nは六方晶系に属し、主にサファイア等の基板のc面上に、エピタキシャル成長して形成されてきた。GaN層上に活性層としてInGa(1−x)N(0<x≦1)混晶からなる量子井戸層を積層した構造では、青色・緑色LEDまたは次世代DVDレーザ用の層構成として使用または有望視されているが、GaN層との格子定数の差により量子井戸層には圧縮歪がかかっている。
六方晶系のIII−V族窒化物半導体はc軸が分極軸である分極物質であるため自発分極を有する。さらにこれに重畳して、c面上の歪んだ量子井戸には圧電分極による強い内部電場が誘起されるため、電子と正孔が1つの量子井戸層内で空間的に分離される。すなわち、c面上に成長されたGaN層上のInGaN層などには、本質的に電子と正孔が発光再結合をする確率が低下する問題があった。また、発光波長が圧電分極によって長波長側に遷移し、発光波長の短波長化が困難である問題もあった。さらに素子を駆動する際には、注入電流に依存して発光波長が変化し、低注入電流時には短波長化し、高注入電流時には長波長化する現象が観察され、波長制御が困難である問題もあった。これらの現象は量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)として知られており、六方晶系III−V族窒化物半導体においてサファイア基板等のc面上に成長したGaNのc面上にInGaN等の歪量子井戸層をコヒーレント成長する限り、その影響を避けるのが難しく、応用上大きな問題となっている。
これに対して、GaNの無極性面の上に形成したInGaN層には圧縮歪による分極電界が生じない。従って、発光効率の低下や注入電流増加による波長シフトを招く量子閉じ込めシュタルク効果を避けることができると考えられている。さらに、極性面(即ちc面)より、極性が低下した(即ち面に垂直方向の分極がc面に比べて低減されている)半極性面では、極性の程度により圧縮歪による分極電界が減少し、それに対応して量子閉じ込めシュタルク効果が低減する。
無極性面では、a面およびm面のように、面内にGa原子とN原子が等しく含まれ、a面およびm面はいずれもc面に垂直である。半極性面では、面内にGa原子とN原子が等しくない数で両方の原子が含まれる。無極性面、半極性面の出現に関しては、Journal of Applied Physics 100, 023522 (2006)等の文献により報告されている。この文献のfigure
7には、図1に示すように、GaN上に成長したInGa1−xN(x=0.05(1)、0.10(2)、0.15(3)、0.20(4))について、成長面とc面のなす角度θを横軸にして、圧縮応力下における圧電分極を縦軸にした計算結果が示されている。即ち、分極が最も大きく現れるθ=0°は、極性面のc面であり、分極が0となるθ=90°は無極性面であることを表しており、a面およびm面が含まれる。また、θ=約45°でも分極が0となる無極性面が出現することが示されている。
このように、無極性面または半極性面を成長面とするIII−V族窒化物層が発光デバイスの性能の向上のために有効であることが理論的には理解されていた。しかし、従来の無極性面上のIII−V族窒化物層のエピタキシャル成長の試みでは、貫通転位密度や積層欠陥密度が高く、最近まで、高品質のIII−V族窒化物半導体積層構造を得ることはできなかった。
例えば、非特許文献1(第66回応用物理学会学術講演会講演予稿集(2005年秋)11p−N−4)では、「無極性であるm面上に関しては、その成長が困難である」と記載した上で、c面を主面とするGaN基板をストライプ状に加工し、その側面のm面に結晶を成長させる等の特殊な方法を採用している。
非特許文献2{Appl.
Phys. Lett., Vol.82, No.11(17 March 2003), 1793-1795頁}には、ZnOのm面(0−100)基板に、プラズマアシストMBE(molecular-beam
epitaxy)によりGaN層を成長させたことが記載されているが、形成された基板は、「スレート状」と記載されているとおり、表面の凹凸が激しく、単結晶の層は得られていない。
非特許文献3(Journal
of Crystal Growth 193 (1998) 127- 132頁)には、γ−LiAlO上にGaN(1−100)を成長させ、比較的良い結晶性が得られることが報告されている。しかし、Liは、半導体層中に容易に拡散して電気的特性に影響を与えるため、現実の発光デバイスを製造するためには、LiAlOを成長用の基板とすることはできない。
最近、m面上の成長に関しては、本発明者らにより非特許文献4(第53回応用物理学関係連合講演会講演予稿集(2006年春)22a−ZQ−8)に、1250℃でアニールして平坦化したm面(10−10)面を有するZnO基板上に、窒素源にRFラジカル源を使用し、Ga金属ターゲットをエキシマレーザで間欠的に励起するパルスレーザ堆積(PLD:pulsed laser deposition)により、GaNを成長させ、高品質のm面を有する結晶薄膜を作製したことが報告されている。
一方、半極性面上のIII−V族窒化物層の成長も非常に困難であり、良好な結晶性を有する結晶膜の成長は報告されていない。例えば、r面サファイア基板上にGaNを成長させようとしても、a面成長が混在したりするため、結晶性に優れたr面を有するGaNの結晶薄膜を製作するのは困難であった。成長手法として、MOCVD法やMBE法に限らず、PLD法によっても成長は困難であった。
第66回応用物理学会学術講演会講演予稿集(2005年秋)11p−N−4 Appl. Phys. Lett., Vol.82, No.11(17 March 2003), 1793-1795頁 Journal of Crystal Growth 193 (1998) 127- 132頁 第53回応用物理学関係連合講演会講演予稿集(2006年春)22a−ZQ−8
デバイス性能の観点では、上記のように無極性面を成長面とする薄膜結晶の方が理論的には優れているが、例えばデバイス形成時の加工処理工程等では、極性成分を有する半極性面結晶の方が容易と考えられる。従って、製造プロセスの自由度の確保等の観点では、半極性面を有する結晶性の良好な薄膜結晶も同様に重要である。
本発明は、発光素子等の半導体装置の特性向上が可能な高品質な結晶性を有する六方晶系のIII−V族窒化物層を提供することを目的とする。
特に、発光デバイス用に好適な、QCSEを低減できる半極性面が利用可能な高品質の六方晶系のIII−V族窒化物層を提供することを目的とする。
さらに本発明の異なる態様は、高品質の結晶性を有する半極性面の六方晶系III−V族窒化物層の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、ZnO基板上に成長したIII−V族窒化物層であって、
前記III−V族窒化物層の成長面が、c面となす角度が10°以上90°未満の半極性面であり、
前記成長面を回折面として、この成長面に垂直かつc軸に平行な面と平行な方向から入射するX線に対して得られるX線回折強度の角度依存性の半値全幅をaで表したとき、
≦0.5°
を満たすことを特徴とするIII−V族窒化物層に関する。
さらに本発明は、ZnO基板上にIII−V族窒化物層を形成する方法であって、
(a)表面粗さRaが3nm以下で、c面となす角度が10°以上90°未満の半極性面を主面として有するZnO基板を用意する工程と、
(b)前記基板の主面上に、前記III−V族窒化物層を少なくとも2段階で成長する工程であって、
(b−1)500℃未満の成長温度で、第一層を前記基板の主面に成長させる第1サブ成長工程、および
(b−2)400℃以上であってかつ第1サブ成長工程の成長温度より高温の成長温度で、前記第一層上に第二層を成長させる第2サブ成長工程
を含む成長工程と
を有するIII−V族窒化物層の製造方法に関する。
本発明によれば、発光素子等の半導体装置の特性向上が可能な高品質な結晶性を有する六方晶系のIII−V族窒化物層を提供することができる。特に、本発明の1態様によれば、発光デバイス用に好適な、QCSEを低減することができる半極性面が利用可能な高品質の六方晶系のIII−V族窒化物層を提供することができる。さらに本発明の異なる態様によれば、高品質の結晶性を有する六方晶系のIII−V族窒化物層の製造方法を提供することができる。
(面方位等の記号の説明)
まず、本明細書で使用する結晶の面方位および軸方向の表現方法について説明する。結晶の面方位や軸方向はミラー指数により記述される。六方晶系では、3つの指数を用いる表記法もあるが、ここでは一般的に用いられている4つの指数を用いる表記法を採用する。図2を用いて六方晶系のミラー指数について説明する。正六角形の平面内に3つ(a,a,a方向)、c軸とよばれる平面に垂直な方向に1つ(c方向)の指数で表される。a軸、a軸、a軸は互いに120°をなし長さが等しい。これらに直交するc軸はa軸群とは長さが等しくない。a軸、a軸、a軸のうち2つの軸だけで完全に正六角形の平面内の方位は指定できるが、対称性を保つためにもうひとつの軸を導入している。そのためこれらは互いに独立ではない。ひとつの平行面群は(ijkl(エル))と表記され、これは原点から数えて1枚目の面がa軸、a軸、a軸、c軸を切る点の原点からの距離がそれぞれa/i、a/j、a/k、c/l(エル)であることを表す。a、a、a軸は正六角形平面内に含まれる冗長な座標系であるから、i、j、kは互いに独立ではなく常にi+j+k=0が成り立つ。4つの指数のうちi、j、kについては回転対称性があるが、l(エル)は独立である。
本明細書において、面方位および結晶方位は、結晶学における一般的な表記方法に従って次のように表記する。
個別の面方位は丸い括弧( )で表現し、等価な面方位の集合を表すには波括弧{ }を用いる。等価な面方位というのは、その結晶系が許すすべての対称操作によって到達しうる面方位をいう。たとえば{1−100}は、(1−100)と等価なすべての面を集合的に表す表現であり、(1−100)をc軸を回転軸とした回転操作により到達する(10−10)、(01−10)、(−1100)、(−1010)、(0−110)を含む計6つの面を表現する。
結晶方位(結晶軸)は、それに垂直な面の指数と同じ指数の組により表現される。個別の結晶方位は角括弧[ ]で表され、等価な方位の集合は鍵括弧< >を用いる。
また、一般に使用されるように、{1−100}をm面と称することもあり、<1−100>をm軸と称することもある。六方晶系の代表的な面方位は、c面(0001)、a面(11−20)、m面(1−100)、r面(10−12)のように表される。
(X線回折の説明)
格子不整合のあるヘテロエピタキシャル成長により成長した窒化物結晶はモザイク性をもち、互いにわずかに結晶方位の異なるカラム状結晶粒が集合して膜を形成している。このモザイク性は原子レベルで観察される転位や点欠陥などの結晶欠陥の反映である。内部に転位の少ないカラム状結晶粒が、結晶粒界を介して結合しており、粒界には転位が存在する。一方モザイク性を巨視的に評価する手法としてX線回折法が広く使用されている。モザイク性をもつ結晶は、結晶中に少しずつ面方位の異なる領域が存在する。このような結晶は逆格子空間では、逆格子点が原点を中心とした球面方向に広がりをもつことになる。したがってX線回折によりこの球面方向の広がりを測定すれば、面方位の揺らぎの程度を評価することができる。
そのためには、入射X線と検出器の角度(2θ)を回折ピーク位置に固定して、試料結晶と入射X線の角度(ω)を回折条件付近でスキャンする。こうすることで、図3に示すように、逆格子空間で原点を中心とした球面状の逆格子点の広がりを、回折強度の分布として評価することができる。このような測定は、X線ロッキングカーブ(XRC)あるいは、ωモード(スキャン)測定とよばれ、測定された回折ピークの幅が面方位の揺らぎの程度を反映し、定量的な指標として半値全幅(半値幅)を用いる。こうして測定された半値全幅は、その値が小さい程試料結晶が高品質で結晶学的に優れた結晶であることを示す。
薄膜結晶のモザイク性は、成長方向との関わりで、チルトとよばれる結晶軸の成長方向の揺らぎと、ツイストとよばれる結晶成長方向を軸とした結晶の回転に分けられる。回折面と結晶の回転軸を適切に選ぶことにより、X線ロッキングカーブ測定でチルトとツイストを分離することが可能である。結晶構造または格子定数の異なる基板に窒化物層を形成するとき、必ずしもチルトとツイストの大きさは同程度の大きさとはならない。基板の種類や窒化物層の成長方法や成長条件によっては、チルトの大きさは極めて小さいが、ツイストの大きさは極めて大きい場合もある。このような窒化物層の発光特性や電気的特性は著しく悪く、このような窒化物層を利用して実用的な発光デバイスを作製することは困難である。窒化物層を発光デバイスに利用する場合、チルトとツイストのそれぞれが小さいことが望ましい。
X線ロッキングカーブ測定を用いたチルトとツイストの表現は、回折面とX線の入射方向を選ぶことにより複数の方法が可能である。
(本明細書で定義するa、a、b、b、bの説明)
、aは、成長面を回折面として、この成長面に垂直な面と平行な方向から入射するX線に対して得られるX線回折強度の角度依存性の半値全幅を表す。これは結晶のモザイク性のチルトを表現している。aは、成長面に垂直な面の中でも、c軸に平行な面に平行な方向からX線を入射して測定され、aは、成長面に垂直な面の中でも、c軸を成長面に投影した方位軸に対して垂直な面に平行な方向からX線を入射して測定される。即ち、aは、成長面のc軸と平行方向へのチルトを表し、aは、これと直角方向(c軸の成長面への投影線に対して垂直方向)へのチルトを表している。通常、チルトを表す指標として、aおよび/またはaを使用する。
具体的面については、次のようになる。
(1) 面方位{10−1n}、及び{20−2n}面について(m面を傾けた面を表す。)
:成長面と垂直となる{11−20}面と平行な方向から入射するX線に対する、成長面のX線回折強度の角度依存性の半値全幅
:成長面と垂直かつc軸[0001]を成長面に投影した線に対して垂直な面に平行な方向から入射するX線に対する、成長面のX線回折強度の角度依存性の半値全幅
(2) 面方位{11−2n}について(a面を傾けた面を表す。)
:成長面と垂直となる{10−10}面と平行な方向から入射するX線に対する、成長面のX線回折強度の角度依存性の半値全幅
: aは(1)と同様。
bは、成長面方位に対して垂直または傾斜している面のうちの少なくとも1つを回折面として、前記成長方向軸を回折面に投影した線に対して垂直な面に平行な方向から入射するX線に対して得られるX線回折強度の角度依存性の半値全幅を表す。
回折面が、成長面方位に対して垂直である場合には、bが純粋にツイストを表現することになるので、測定が可能であるばあいには、回折面として垂直な面を少なくとも1つ選択することが好ましい。垂直面の測定が困難である場合、および垂直な面に加えて複数の面についての測定を指標としたい場合には、回折面として成長面に対する傾斜面を選択してもよい。この場合、成長面に対する傾斜角が、30°以上となるように選択することが好ましく、特に35°以上となるように選択することが好ましい。
具体的面については、次のようになる。
(1) 面方位{10−1n}、及び{20−2n}面について(m面を傾けた面を表す。)
(回折面は垂直面):成長面と垂直となる{11−20}面を回折面とし、成長面と平行な方向から入射するX線に対する、回折面のX線回折強度の角度依存性の半値全幅
(回折面は傾斜面):
1)c面からの傾きθが55〜90°の場合:
成長面をc軸方向にのみ傾けて得られる{0001}面を回折面としたとき、成長面と垂直となる{11−20}面と垂直な{10−10}面と平行な方向から入射するX線に対する、回折面のX線回折強度の角度依存性の半値全幅
2)c面からの傾きθが10〜55°の場合:
成長面をc軸方向にのみ傾けて得られる{10−10}面を回折面としたとき、{0001}面と平行な方向から入射するX線に対する、回折面のX線回折強度の角度依存性の半値全幅。
(2) 面方位{11−2n}について(a面を傾けた面を表す。)
(回折面は垂直面):成長面と垂直となる{10−10}面を回折面としたとき、成長面と平行な方向から入射するX線に対する、回折面のX線回折強度の角度依存性の半値全幅
(回折面は傾斜面):
1)c面からの傾きθが55〜90°の場合:
成長面をc軸方向にのみ傾けて得られる{0001}面を回折面としたとき、成長面と垂直となる{10−10}面と垂直な{11−20}面と平行な方向から入射するX線に対する、回折面のX線回折強度の角度依存性の半値全幅
2)c面からの傾きθが10〜55°の場合:
成長面をc軸方向にのみ傾けて得られる{11−20}面を回折面としたとき、{0001}面と平行な方向から入射するX線に対する、回折面のX線回折強度の角度依存性の半値全幅
(本発明の実施形態の説明)
本発明のIII−V族窒化物層は、ZnO基板上に成長したIII−V族窒化物層であって、層の成長面が、c面となす角度が10°以上90°未満半極性面である。図1に示されるように、成長面とc面がなす角度が10°未満であるときは、未だ極性が強いために、10°以上であることが好ましく、さらに25.1°以上であることが好ましい。層の成長面としては、a面{11−20}面またはm面{10−10}面をc軸方向に傾斜させた面が好ましい。
本発明のIII−V族窒化物層の代表的成長面と、GaN結晶の場合にそれぞれの成長面がc面となす角度としては、次の面が挙げられる。
本発明のIII−V族窒化物層は、成長面を回折面として、この成長面に垂直かつc軸に平行な面と平行な方向から入射するX線に対して得られるX線回折強度の角度依存性の半値全幅をa、前記成長面に垂直かつc軸を成長面に投影した線に対して垂直な面に平行な方向から入射するX線に対して得られるX線回折強度の角度依存性の半値全幅をaで表したとき、
≦0.5°
を満たす。このとき、好ましくは、
≦1.0°
を同時に満たす。
については、さらに、
≦0.25°
を満たすことが好ましく、特に
≦0.15°
を満たすことが最も好ましい。
がこれらの条件を満たす場合に、aは、同時にa≦0.8°を満たすことが好ましく、さらにa≦0.7°を満たすことが好ましく、特にa≦0.5°も同時に満たしているときは、結晶性の特に良好な層であるの最も好ましい。
尚、a、aの値は、小さいほど結晶性がよいが、通常、
0.01≦a,a
である。
また、本発明では、好ましくはbに関して、
b≦1.0°
を満たす。成長面に対して垂直または傾斜している面は複数存在しうるが、少なくとも1つの面を回折面として測定したbが上記式を満たせばよい。特に、成長面に対して垂直な面を回折面として測定したbが、上記式を満たすことが好ましい。
特定の面に関してはすでに定義したように、成長面方位{10−1n}および{20−2n}面についてのb、および成長面方位{11−2n}についてのbが、上記の条件を満たすことが好ましい。
成長面方位{10−1n}、{20−2n}および{11−2n}面に関しては、すでに定義したbが、
≦1.0°
を満たすことも好ましい。
尚、b、b、bの値は、小さいほど結晶性がよいが、通常、
0.01≦b,b,b
である。
以上のように、III−V族窒化物層の形態によっては、a、a、b、b、bをすべて測定することが困難である場合があるが、上に挙げた条件式の少なくとも一つを満たす結晶は、モザイク性の小さい優れた結晶性を有する。
これらのIII−V族窒化物層上に、活性層を備えた発光デバイス構造をエピタキシャル成長させることにより、転位密度が低く高品質の結晶性を備え、高い発光効率を有する発光ダイオードや半導体レーザが実現できる。さらに活性層が歪をもつ量子井戸である場合、半極性面に量子井戸を形成することにより量子閉じ込めシュタルク効果による発光確率の低下が低減されることに加え、優れた結晶品質により、従来のc面に形成された歪量子井戸では得られなかった優れた発光効率が得られ、注入電流増加による波長シフトの問題も低減される。
このように半極性面を成長面とするIII族窒化物半導体層で、本発明で規定される所定の結晶性を有するものは、従来は存在しなかったものであり、より具体的には、後述する方法により初めて製造された新規な層である。
本発明のIII−V族窒化物層は、六方晶系を構成するようにIII−V族元素を含むが、好ましくはGaおよびNを構成元素として含み、さらに好ましくはInAlGa1−x―yN(但し、x、yは、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1を満たす数である。)で表されるIII−V族窒化物である。本発明の好ましい1形態では、GaN層が含まれる。GaN層の上は、格子整合する、または格子定数の近いGaN、InGaN、AlGaN、AlInGaN等の結晶を容易に成長することができる。即ち、本発明の好ましい形態では、III−V族窒化物層は、少なくとも2つの層を有しており、例えば第一層として、GaN層を形成し、その上に第二層として、GaN、InN、AlN、InGaN、AlGaN、AlInN、AlInGaNから選ばれるIII−V族窒化物層を成長することができる。しかしながら、前記第一層としてInN、AlN、InGaN、AlGaN、AlInN、AlInGaNから選ばれるIII−V族窒化物層を成長し、第一層上に第二層としてGaN、InN、AlN、InGaN、AlGaN、AlInN、AlInGaNから選ばれるIII−V族窒化物層を成長することも可能である。
III−V族窒化物層の厚さは、好ましくは5nm以上10000nm以下、より好ましくは5nm以上500nm以下、さらに好ましくは10nm以上300nm以下である。一般に異種基板上の窒化物結晶は、成長膜厚を増加させるほど貫通転位密度が減少し、X線ロッキングカーブの半値全幅が狭い良質な結晶が得られる。この現象のメカニズムは必ずしも明らかではないが、貫通転位の方向が膜厚とともに変化し、転位間の相互作用による消滅や転位ループの形成、転位の一部が結晶の端に到達することによるものと考えられている。しかしながら転位密度を減少させるために成長膜厚を増加させることは、材料コストがかかり製造のスループットも制約を受けるという問題がある。
本発明のIII−V族窒化物層は、300nm以下の極めて薄い結晶膜であっても、X線ロッキングカーブの半値全幅の狭い高品質な窒化物結晶となっている。これは成長開始面(基板との界面)から極めて高い結晶性を有していることを意味する。従来の異種基板上に成長した窒化物層では、厚膜の場合では仮に良好な結晶性を示したとしても、成長開始面から例えば50nm(100nmでもよい)までの範囲の結晶性を見たとき、結晶性の良好なものはなかった。これに対して、本発明では、成長開始面から例えば50nm(この基準距離は、30nmまたは100nm等でもよく、基準距離より薄いときはその膜厚まで)の範囲の結晶性をみても、本発明で規定される所定の結晶性の条件(a、a、b等)を満たす。このような層は、適切な条件を満たすZnO基板を使用することと、特定の成長方法を採用したことによって、もたらされていると考えられる。
本発明の好ましい形態において、III−V族窒化物層は、少なくとも2つの層を有しており、第一層は、500℃未満の成長温度で形成され、基板上に直接成長が開始されたのもである。第二層は、400℃以上であってかつ第一層の成長温度より高温の成長温度で、第一層上に形成された層である。さらに好ましくは、第一層が20〜450℃の成長温度で形成され、前記第二層が400〜1300℃の成長温度で形成される。好ましくは、第一層の厚みが、500nm未満となるように形成される。さらに好ましくは、第一層の厚みが、300nm未満となるように形成される。最も好ましくは、第一層の厚みが200nm未満となるように形成される。
また、本発明のIII−V族窒化物層は、その成長の際に、層の成長面に対して、III族元素が間欠的に供給され、V族元素がラジカルを含む形態で供給されて形成されることが好ましい。III族元素は、金属の形態としても、化合物の形態としても、供給することができる。成長方法として、パルスレーザ堆積法(PLD法)によって形成されることが好ましい。
V族元素(窒素元素)がラジカルを含む形態としては、UV励起、DC励起、ECR励起、RF励起等の方式によりプラズマ状に励起された窒素が挙げられ、装置としてはMBE法でも使用される公知のプラズマ発生装置を使用することができる。プラズマ励起により、励起種としては、分子状ラジカル、原子状ラジカルおよびイオン種が発生するが、本発明では、成長面に供給される窒素元素(励起種)が、分子状窒素ラジカルを含むことが好ましい。原子状ラジカルおよびイオン種は、III−V族窒化物層から、窒素の引き抜きを起こしやすい。無極性基板の場合は、成長面にIII族元素とV族元素が同数存在しているために、窒素引き抜きにより成長面で実効的にIII族が過剰になりやすく、Ga等のIII族元素のドロップレットが生成し易いことから結晶性が低下すると考えられる。一方、従来のc面III−V族窒化物層の場合には、MOCVD法によるC+面サファイア基板上の成長、あるいはPLD法によるC面ZnO基板上成長等において、一般的に成長層の表面モフォロジー、あるいは結晶性が良好であるGa極性面が成長面となるように成長を行うことが多く、この場合、成長面はGa等のIII族元素のみが表れ、成長面からの窒素の引き抜きの影響はほとんどない。このため、励起種が原子状ラジカルでも分子状ラジカルでも、結晶品質に対する影響はほとんどない。本発明の半極性面上の成長の場合は、無極性面と同様に成長面にはV族元素も存在することから、無極性面上の成長の場合と同様に、分子状ラジカルを主とすることで、結晶性の優れた薄膜が得られる。ただし、+の半極性面が成長面の場合、成長面とc面との角度が小さくなるに従い、上述の従来のc面III−V族窒化物層の場合に近づくことから、成長面に供給されるラジカル励起種が原子状か分子状かによる結晶品質への影響は小さくなる。
分子状ラジカルを主として成長面に供給する場合は、成長面に供給される窒素元素(励起種)に、分子状ラジカルが60%以上(N原子ベース)含まれることが好ましく、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上であり、多いほど好ましく、可能であれば100%が最も好ましい。実施例では、90%程度である。この条件は、前記の第一層成長および第二層成長のどちらにも効果がある。
イオン種は、好ましくはラジカル種の5%以下、より好ましくは1%以下、特に好ましくは0.1%以下である。イオン種を減少させるには、例えばRFプラズマ発生装置にイオントラップを設けることで減少させることができる。以下、上記のようにイオン種の構成割合が低く、ラジカル種が主となる窒素源をラジカル源と称する。
分子状窒素ラジカルの割合は、例えばJ.Vac.Sci.Technol.,B17(4),1999,pp.1654に従って、イオン種および原子状窒素ラジカルの流束の割合を見積もり、結晶に取り込まれるNの流束から差し引いて、その残りを分子状窒素ラジカルの割合として得ることができる。
分子状窒素ラジカルの割合は、RFプラズマ発生装置の構造および運転条件を変更することで変化し、例えば、プラズマを発生させる電圧(低電圧が好ましい)、電力(放電電圧は低く、電力が大きいことが好ましい)、電極構成、プラズマ発生装置中のガス圧力および流量、電子発生源、プラズマの閉じこめ様式(磁場、プラズマセルの形状)、ガス種、イオン除去機構、セル出口の口径(小径が好ましい)などの条件を、最適に変更することが好ましい。
また、前述の第一層成長において、成長面に対して供給されるV族元素とIII族元素の比(V/III比)を大きくすることも、高品質の結晶を得る点で効果がある。成長面においてIII族が過剰になると、Ga等のIII族元素のドロップレットが生成し易く結晶性が低下する。V/III比は、1より大きい条件で形成されることが好ましく、より好ましくはV/III比が2以上であり、5以上であることも非常に好ましい。V/III比は、実際の成長条件と同様のV族供給条件において、ストイキオメトリーを保ったまま成長出来る最大の成長速度をV族供給量、実際の成長条件での成長速度をIII族供給量とし、その比により求めることができる。
尚、製造方法に関係する事項については、後述する製造方法においても詳述する。
本発明のIII−V族窒化物層は半導体的電気特性を有することが好ましい。それにより本積層構造を発光デバイス等に応用する場合、当該積層構造の一部をデバイス構造構成上の要素として使用することができる。一般的に半導体的な電気伝導性とは、金属と絶縁体の中間の電気抵抗(電気伝導率として常温で10から10−10Ω−1・cm−1)を持ち、温度の上昇とともにその電気抵抗が下がることを意味する。これは良く知られているように、その材料が禁制帯に隔てられた伝導帯と価電子帯からなるバンド構造を有することを意味しており、意図的にドーパントとなる元素を混入させると、電子による電気伝導が支配的なn型材料、また正孔による電気伝導が支配的なp型材料等を形成できることも意味する。このため、III−V族窒化物層は、半導体的電気伝導性を有することが好ましく、また、この層の一部を各種半導体デバイス構造の要素として使用することも好ましい。
さらに、本発明のIII−V族窒化物層のバンド構造が直接遷移型のバンド構造である場合には、発光デバイスの活性層等の発光再結合を引き起こす部分にも使用することも可能である。
また、本発明のIII−V族窒化物層は、ZnO基板上に成長したものである。通常、ZnO基板の成長面は、成長させるIII族窒化物半導体層と同一の面方位を有する。III−V族窒化物層の面方位が本発明で規定される条件を満たすことを条件として、基板の主面が結晶方位軸に対して完全な垂直からずれていることも許容され、主面に対して垂直な軸は結晶方位から15°までの範囲、好ましくは5°までの範囲でずれていてもよい。
このZnO基板の表面は、表面粗さRaが3nm以下であり、好ましくは2nm以下、さらに好ましくは1.7nm以下である。Raは算術平均粗さのことを示し、算術平均値に対する偏差の絶対値の平均値である。平坦な基板表面を得る方法は基板面方位により異なるため、それぞれの場合に適切な方法を採用し、上記の表面粗さを満足するようにすることが好ましい。一般的には、まず機械研磨(化学機械研磨を含む)により十分に平坦化することが好ましい。
一般に、研磨されたZnO基板を、アニールすることが好ましい。面方位によっては、高温でアニールすることにより、テクスチャーが現れて、むしろ平面性が低下することがある。そのような面を使用する場合には、はじめから十分に平坦な基板を用意するか、あるいは上記の平坦性を損なわない範囲でアニールを行う。アニールは、表面の傷などを回復することができるので、必要により行うことができる。例えばr面は、高温でアニールしても、表面にテクスチャーが出にくいので、高温で、例えば1300℃を越える温度でアニールしてもよい。通常は1300℃以下が好ましい。平坦性が確保できる限り、アニールしなくてもよい。一方、高温でアニールすると、表面にテクスチャーが出やすい面方位を有するZnO基板の場合は、上記に平坦性が損なわれない範囲の温度でアニールを行う。表面の傷の回復の目的では、例えば1150℃以下の温度でアニールすることができる。アニールする場合は、一般に700℃以上、好ましくは800℃以上である。一般に、m面をc軸方向に傾けた半極性面ZnO基板は、アニールした方が好ましく、a面をc軸方向に傾けた半極性ZnO基板はアニールを行わないか、または平坦性が損なわれない範囲でアニールすることが好ましい。
以上説明した本発明のIII−V族窒化物層は、種々の応用が可能であり、その上にデバイス構造を形成するために提供される基板としての形態、その上にデバイス構造が形成されたデバイスの一部としての形態、その層の一部にデバイス構造の少なくとも1部が形成されたデバイスの一部としての形態、およびその他の形態をとることができる。また、III−V族窒化物層の成長の際に使用されたZnO等の基板は、そのまま存在してもよいし、層成長後の適当な段階で除去されていてもよい。即ち、本発明のIII−V族窒化物層を備えた最終製品または中間製品が、成長の際に使用した基板を有していても、有していなくてもどちらでもよい。
次に、本発明の積層構造は、以上のIII−V族窒化物層の上に、この層とは異なるその他の層を有するものである。その他の層は、どのようなものであってもよく、材質としては、絶縁物を有しても、半導体部分を有しても、金属部分を有してもよい。形成方法は、ハイドライド気相成長(HVPE)法、有機金属気相成長(MOCVD)法、プラズマ化学気相堆積(CVD)法および熱CVD法等のCVD法、分子線エピタキシー(MBE)法、スパッタ法、蒸着法等の広く知られている成膜方法、そしてPLD法のいずれでもよい。形成される構造は、単層でも多層構造でもよく、また、いわゆる電子デバイスや発光デバイス等のデバイス構造となっていてもかまわない。
しかし、本発明の高品質III−V族窒化物層の機能を十分に発揮させるためには、直接に積層される層としては、本発明の層を下地として使用することで高品質化が可能な層が好ましい。特に、本発明の層に直接接している層の少なくとも一部は、格子整合する層であることが好ましい。例えば、異なる組成の、または異なる成長方法で形成されるIII−V族窒化物層が好ましい。その際、成長方法としては、VPE法、CVD法、MBE法、スパッタ法、蒸着法およびこれらの2つ以上の方法の組み合わせからなる群より選ばれる成膜方法で形成されていることが好ましい。
尚、発明のIII−V族窒化物層と、その上に積層されているその他の層は、主要組成または目的とする組成が同一であっても、製法が異なる場合には通常は膜質が異なる。即ち、2つの層の間で、含有される不純物量が異なっていたり、または2つの層の界面の不純物プロファイルから界面が確認できたりするので、通常は2つの異なる層として区別して認識できる。例えば本発明の好ましい実施形態では、発明のIII−V族窒化物層はPLD法により成長され、その他の層の成膜は、通常のMOCVD法等で成長される。GaN層の成膜を例にとると、MOCVD法では一般にNHとTMG(トリメチルガリウムGa(CH)等の有機金属を原料として、また水素ガスや窒素ガスをキャリアガスとして使用するため、その不純物としては、水素、炭素が必ず混入し、また、酸素も一般的に混入しがちである。これに対して、PLD法で成長する際には、窒素ガスを窒素源として窒素ラジカルを生成し、また、金属Ga等を原料とすれば、水素や炭素は原理的に低減が可能であって、その混入する不純物はMOVPE法で形成した膜と異なる不純物レベルとなる。従って、通常は、本発明のIII−V族窒化物層と「その他の層」は区別が可能なものである。
〔製造方法〕
次に、本発明のIII−V族窒化物層の製造方法を説明する。この製造方法により、以上説明したIII−V族窒化物層を製造することができる。
本発明の製造方法は前記のとおり、ZnO基板上にIII−V族窒化物層を形成する方法であって、
(a)表面粗さRaが3nm以下で、c面となす角度が10°以上90°未満の半極性面を主面として有するZnO基板を用意する工程と、
(b)前記基板の主面上に、前記III−V族窒化物層を少なくとも2段階で成長する工程であって、
(b−1)500℃未満の成長温度で、第一層を前記基板の主面に成長させる第1サブ成長工程、および
(b−2)400℃以上であってかつ第1サブ成長工程の成長温度より高温の成長温度で、前記第一層上に第二層を成長させる第2サブ成長工程
を含む成長工程とを有する。
本発明の第1の工程は、ZnO基板を用意する工程である。ZnO基板の面方位は、すでに説明したようなIII−V族窒化物層の成長面の面方位と一致するように選ばれる。ただし、III−V族窒化物層の面方位が本発明で規定される条件を満たすことを条件として、基板の主面が結晶方位軸に対して完全な垂直からずれていることも許容され、主面に対して垂直な軸は結晶方位から15°までの範囲、好ましくは5°までの範囲でずれていてもよい。
また、ZnO基板として、表面粗さRaが3nm以下であり、好ましくは2nm以下、さらに好ましくは1.7nm以下であるものを用意する。ZnO基板表面は、最初に機械研磨(化学機械研磨を含む)されるが、このときにこの表面粗さの範囲内になるように、十分平坦化することが好ましい。この後、一般的には、研磨されたZnO基板を、アニールすることが好ましい。しかし、前述のとおり面方位によっては、高温アニールにより平面性が低下することがあるので、そのような面を使用する場合には、はじめから十分に平坦な基板を用意するか、あるいは上記の平坦性を損なわない範囲でアニールを行う。ZnO基板の性質に合わせて、適宜アニールを行ったり、行わなかったり選択することが好ましい。アニールする場合の温度は前述の通りである。
アニールの具体的方法としては、所定の面方位を主面とする研磨されたZnO基板を上記の所定の温度に制御された高温度オーブン内において、ZnOの焼結体で周囲を箱状に囲んで加熱処理する。この場合において、ZnO基板はZnO焼結体により包囲されていればよく、また包囲する焼結体によって、ZnO基板を全て包み込むことは必須ではない。また、例えばZnO焼結体からなる坩堝を作成してそのなかにZnO基板を設置するようにしてもよい。ZnOを包囲する目的は、比較的蒸気圧の高いZnの逃散を抑制することであるため、ZnO焼結体以外に、Znを含む材料で包囲するようにしてもよい。Znを含む材料の例として、例えばZnO単結晶を用いてもよいし、Znの板を用いてもよい。
次にIII−V族窒化物層の第一層を形成する。第一層を形成する(b−1)第1サブ成長工程では、500℃未満の成長温度で、成長面において好ましくは単結晶構造を保ちながら成長を行う。
500℃未満の温度で、基板上に成長することで、基板がZnOであっても、InAlGa(1−x−y)N等のIII−V族窒化物層との界面反応が生じずに、界面反応層が形成されない。成長温度を500℃以上とした場合は、良質な結晶が得られない場合が多い。
本発明における第1サブ成長工程において、第一層は、成長面において単結晶構造を保ちながら成長することが好ましい。これは、実施例で示すように、成長面のRHEED像を観察することによりモニターが可能である。
成長温度は、さらに好ましくは450℃以下、より好ましくは400℃以下である。また実際のプロセスごとに許容される実用的は成長速度を考慮し成長温度を決めることができるが、例えば10℃以上、室温(20℃〜30℃)以上の温度が選ばれる。従って、本発明の1実施形態においては20℃〜450℃の範囲から選ばれる。
第1サブ成長工程における第一層の成長方法は、500℃未満の温度で、成長面において単結晶構造を保ちながら成長を行うことが可能な方法であれば、特に限定はない。本発明の1形態では、成長面に対して、III族元素を間欠的に供給し、V族元素(N)も供給することにより単結晶構造を保ちながら成長が生じていると推定される。原料が間欠的に基板へ供給されことにより、成長表面上に到達した原子のマイグレーションが促進され良質の結晶が成長すると推定される。また、V族元素に関しては、成長に関与できる励起種として、イオン状態のものまたはラジカル状態のものがあるが、特にラジカル状態の励起種の濃度が高くなるようにして、供給することが好ましい。本発明者は、ラジカル状態の励起種は、良質の結晶成長に効果があると推定している。
成長面に供給される窒素元素(励起種)に、特に分子状窒素ラジカルが多く含まれるように条件が設定されることが好ましい。成長面に供給する窒素元素には、分子状ラジカルが60%以上(N原子ベース)含まれることが好ましく、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上であり、多いほど好ましく、可能であれば100%が最も好ましい。実施例では、90%程度である。
供給される窒素元素(励起種)のうち、イオン種は、好ましくはラジカル種の5%以下、より好ましくは1%以下、特に好ましくは0.1%以下である。
分子状窒素ラジカルの割合は、RFプラズマ発生装置の構造および運転条件を変更することで変化し、例えば、プラズマを発生させる電圧(低電圧が好ましい)、電力(放電電圧は低く、電力が大きいことが好ましい)、電極構成、プラズマ発生装置中のガス圧力および流量、電子発生源、プラズマの閉じこめ様式(磁場、プラズマセルの形状)、ガス種、イオン除去機構、セル出口の口径(小径が好ましい)などの条件を、最適に変更することが好ましい。
また、成長面に対して供給されるV族元素とIII族元素の比(V/III比)は、1より大きい条件で形成されることが好ましく、より好ましくはV/III比が2以上であり、5以上であることも非常に好ましい。
第一層の成長速度が速すぎる場合には、基板表面に到達した原子が十分にマイグレーションできない。特に低温成長の場合は、基板温度の熱エネルギーによってマイグレーションのための運動エネルギーを補うことができないため結晶品質が低下する。従って、第一層の成長速度としては、例えば300nm/時間未満が好ましい。さらに好ましくは、200nm/時間以下であり、最も好ましくは160nm/時間以下である。また、成長速度が遅すぎる場合には、不純物取り込みが多くなり、特に低温成長の場合は高温成長に比べて成長室中の不純物が吸着しやすいため、結晶品質が低下する。従って、第一層の成長速度は、例えば10nm/時間より大きいことが好ましく、さらに好ましくは30nm/時間以上である。
III族元素を間欠的に供給する際の周期に関する条件としては、供給と供給の間の休止期間が短すぎる場合には、基板表面到達した原子が十分にマイグレーションできないため結晶品質が低下する。また休止期間が長すぎる場合には、成長速度が低下するともに、長時間の成長中断が発生するため、成長膜中の不純物取り込みが多くなり結晶品質が低下する。従って、供給を休止している期間が0.001秒から10秒の範囲が好ましく、さらに0.005秒から1秒の範囲が好ましく、特に0.01秒〜0.5秒の範囲が好ましく、0.02秒〜0.1秒の範囲が最も好ましい。また、供給期間としては、上記の成長速度の範囲内となるように、例えば1×10−13秒〜10秒の範囲から適宜選ばれる。
原料を間欠的に供給する成長方法の代表的な方法として、PLD法が挙げられる。PLD法は、間欠的なパルスレーザ照射によって材料原子をプラズマ状に励起し基板へ供給するため、基板が低温であっても、基板表面でマイグレーションするために必要な運動力学的エネルギーを原子が有しており、低温成長に好適である。
使用されるターゲットとしては、III族元素の金属、窒化物が挙げられる。
間欠的な照射源としては、材料原子の励起を可能とするパルス状の粒子束であればレーザに置き換えることが可能であり、電子、クラスターイオン、陽子、中性子を用いることが可能である。
原料を間欠的に供給する他の成長方法として、III族原料とV族原料を交互にそれぞれ間欠的に供給するマイグレーションエンハンストエピタキシー(MEE)法やフローレートモジュレーション法を用いることも可能である。
PLD成長においては、III族元素は、化合物の形態でも供給できるが、特に金属の形態として供給することが好ましい。
低温での成長では、基板に到達した粒子のマイグレーションが十分ではなく、膜厚を増加させるに従い結晶性が悪化する傾向にある。従って良好な結晶構造とするためには、第一層の厚みは500nm未満(好ましくは300nm未満、特に好ましくは200nm未満)である。
以下にPLD法について詳しく説明する。ここでは、例えば図4に示すようなPLD装置30を用いて、基板としてZnO基板11上に、InAlGa(1−x−y)N層を形成する場合を例にとって説明する。
PLD装置30は、内部に充満されたガスの圧力、および温度を一定に保つために、密閉空間を形成するチャンバ31を備えている。チャンバ31内には、ZnO基板11とターゲット32が対向して配置されている。ここで、ターゲット32となるのはガリウム金属、インジウム金属、アルミ金属、AlGa合金、InGa合金、AlInGa合金、GaN単結晶、InN単結晶、AlN単結晶、GaInN単結晶、AlGaN単結晶、AlInGaN単結晶、GaN焼結体、InN焼結体、InGaN焼結体、AlGaN焼結体、AlInGaN焼結体であり、成長条件に応じて、ターゲット種の選択、およびシングル、あるいはマルチターゲット成膜の選択が適宜可能である。
またPLD装置30は、波長が248nmの高出力パルスレーザを出射するKrFエキシマレーザ33を備えている。KrFエキシマレーザ33から出射されたパルスレーザ光は、レンズ34により焦点位置がターゲット32近傍となるように調整され、チャンバ31の側面に設けられて窓31aを介してチャンバ31内に配置されたターゲット32表面に対して約30°の角度で入射する。
また、PLD装置30は、チャンバ31内へ窒素ガスを注入するためのガス供給部35と、その窒素ガスをラジカル化するラジカル源36とを備えている。窒素ラジカル源36は、ガス供給部35から排出された窒素ガスを、高周波を用いて一旦励起することにより窒素ラジカルとし、その窒素ラジカルをチャンバ31内に供給する。なおチャンバ31とガス供給部35との間には、窒素ラジカルガス分子とパルスレーザ光の波長との関係においてZnO基板11への吸着状態を制御するべく、ガスの濃度を制御するための調整弁36aが設けられている。
また、PLD装置30はチャンバ31内の圧力を制御するための圧力弁37とローターリーポンプ38とを備えている。チャンバ31内の圧力は、減圧下で成膜するPLD法のプロセスを考慮しつつ、ローターリーポンプ38により、例えば窒素雰囲気中において所定の圧力となるよう制御される。
また、PLD装置30は、パルスレーザ光が照射されている点を移動するために、ターゲット32を回転させる回転軸39を備えている。
以上のPLD装置30では、チャンバ31内に窒素ガスを充満させた状態で、ターゲット32を回転軸30を介して回転駆動させつつ、パルスレーザ光を断続的に照射する。このことにより、ターゲット32表面の温度を急激に上昇させ、Ga原子、In原子およびAl原子が含まれたアブレーションプラズマを発生させることができる。このアブレーションプラズマ中に含まれるGa原子、In原子およびAl原子は、窒素ガスとの衝突反応等を繰り返しながら状態を徐々に変化させてZnO基板11へ移動する。そして、ZnO基板11へ到達したGa原子、In原子およびAl原子を含む粒子は、そのままZnO基板11上の所定の成長面に拡散し、格子整合性の最も安定な状態で膜形成されることになる。
ところで、この第一層は、一見すると、従来のMOVPE法などで形成される低温バッファ層と類似しているが、層構造は大きく異なっている。通常サファイアなどの基板上にMOVPE法を用いてIII−V族窒化物層を成長する際、MOVPE法で行うGaNのエピタキシャル成長のための基板温度は900から1100℃程度であり、低温バッファ層は500〜600℃程度で形成される。500〜600℃程度の基板温度で20〜100nm程度堆積されるGaNまたはAlNのバッファ層は微小な多結晶構造からなる。この層の上に例えばGaNを成長させるために、1000℃程度に基板温度を上げると、固相成長により多結晶構造の一部が単結晶化し、結晶方位の配向が進む。このように構造が変化したバッファ層の上に、900から1100℃程度の高温で単結晶の窒化物層がエピタキシャル成長するのである。
これに対して本発明による第1サブ成長工程で成長する第一層は多結晶構造ではなく、基板と成長層の界面反応を抑制しつつ、成長初期から単結晶を成長していると推定される。
本発明者は、m面ZnO基板上の成長に関して、断面TEM観察から格子整合についての解析を行っている。そこで、(A)ZnO基板界面からGaN層中に18nm離れた点のGaN結晶、(B)ZnO基板界面近傍のGaN結晶、(C)ZnO基板界面近傍のZnO結晶、(D)ZnO基板界面からZnO基板中に約50nm離れた点のZnO結晶、のそれぞれのa軸方向の格子間隔を比較したところ、(B点の格子間隔)<(C点の格子間隔)<(A点の格子間隔)<(D点の格子間隔)の関係が得られた。通常、格子定数が異なる基板上の結晶成長では、基板上に成長される成長層の結晶が、基板の格子定数に整合するべく歪を受けるのが一般的であるが、上記の関係は、基板となるZnO結晶が、その成長界面付近において、成長されるGaN結晶の格子定数に合わせて縮んでいることを示している。さらに、ZnO基板界面近傍のGaN結晶とZnO結晶は、GaN結晶の格子定数よりもさらに小さくなっていることを示しており、極めて特異な界面結晶構造を有していることが明らかとなった。格子定数が異なる基板上のエピタキシャル成長機構としては、良く知られるようにFMモード(フランク−ファン・デル・メルウェ モード:基板上に成長される結晶が、1原子層ずつ広がって厚みを増す機構。基板上に成長される結晶の格子定数が、基板となる結晶の格子定数に近い場合に期待される機構)、VWモード(ボルマー−ウェーバー モード:基板上に成長される結晶が、三次元核形成をし、そのまま三次元成長する機構。基板上に成長される結晶の格子定数と、基板となる結晶の格子定数との差が大きい場合、もしくは両者の結晶層間の結合が弱い場合に期待される機構)、SKモード(ストランスキー−クラスタノフ モード:FMモードとVMモードの中間的な機構で、基板上に成長される結晶がFMモードで成長を開始後、成長層に蓄積される歪により規定されるある臨界膜厚を超えたところで三次元核形成をし、三次元成長に移行する機構)、の3つの成長モードが挙げられる。これらはいずれも、基板上に成長される結晶層側に歪が内在することで、基板との格子不整合性が調整されると理解されてきており、基板側の格子定数が変化することは全く知られていなかった。
これに対して本現象は、基板上に成長される結晶層側に対し、基材となるべき基板の格子定数が変化することで、基板と成長層の格子不整合性が調整されているものであって、従来知られていたエピタキシャル成長機構とはまったく異なる物理現象と捕らえることが可能である。このような単結晶成長機構が発現する理由ははっきりしていないが、基板上に成長される結晶層に比較して、基材となるべき基板の弾性的性質が、十分に「やわらかい」ことに起因している可能があると考えられる。
本発明に関わる半極性面上の成長に関しても、上記と同様の機構により結晶性の高い結晶膜が成長していることが推定される。これが、r面サファイア基板では、PLD成長法を採用しても良好な結晶薄膜の成長ができないのに対して、r面ZnO基板では同じ面方位を有するにも拘わらず可能になった理由であると考えられる
次に、第2サブ成長工程は、(b−2)400℃以上であってかつ第1サブ成長工程の成長温度より高温の成長温度で、前記第一層上に第二層を成長させる工程である。
第2サブ成長工程では、III−V族窒化物が成長する際に、成長面で活性種または粒子が十分なマイグレーションするようにして、エピタキシャル成長時の欠陥の発生を抑制する温度が必要である。
第2サブ成長工程の成長温度は、好ましくは400〜1300℃、より好ましくは550〜1200℃、特に好ましくは600〜850℃である。尚、400℃以上500℃未満の範囲は、第1サブ成長工程より高温の場合に許容される。
第二層の成長速度は、例えば30〜5000nm/時間の範囲であり、好ましくは50〜3000nm/時間、さらに好ましくは70〜1000nm/時間である。通常は、第一層の成長速度より速くすることが好ましい。尚、結晶のモザイク性のうちで、デバイス性能により影響を与えるツイストを大きく減少させるためには、第二層の成長速度は、好ましくは120〜5000nm/時間、より好ましくは150〜3000nm/時間、特に好ましくは200〜1000nm/時間である。
第2サブ成長工程の成長方法として、良好な結晶構造を有するように成長を行うことが可能な方法であれば、特に限定はないが、第1サブ成長工程と同様に、成長面に対して、III族元素を間欠的に供給し、V族元素をラジカルを含む形態で供給する方法が好ましい。特に、V族元素に関しては、ラジカル状態の励起種の濃度が高くなるようにして、供給することが極めて好ましい。第2サブ成長工程においても、V族元素はラジカル状態の励起種が、良質の結晶成長に効果があると推定される。特に分子状窒素ラジカル種の割合が多くなるように条件が設定されることが好ましい。成長面に供給する窒素元素に、分子状ラジカルが60%以上(N原子ベース)含まれることが好ましく、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上であり、多いほど好ましく、可能であれば100%が最も好ましい。実施例では、90%程度である。供給される窒素元素(励起種)のうち、イオン種は、好ましくはラジカル種の5%以下、より好ましくは1%以下、特に好ましくは0.1%以下である。
第2サブ成長工程の成長方法として、例えばMBE法、およびMOCVD法等を使用してもよいが、原料を間欠的に供給する成長方法の代表的な方法であるPLD法が好ましい。本発明の好ましい実施形態では、第一層がPLD法で成長されるので、第二層もPLD法で成長することで、層の連続性がよく、また同一チャンバで形成できるので汚染等の原因もなく、製造上も簡便で好ましい。PLD法の詳細は、第1サブ成長工程で説明したとおりである。
次に、本発明の積層構造、即ち、III−V族窒化物層とこの層の上に形成された「その他の層」を有する積層構造を製造するには、「その他の層」の材質に合わせて公知の方法により、III−V族窒化物層上に適宜形成すればよい。本発明のIII−V族窒化物層がPLD法で形成される場合においても、「その他の層」をPLD法で形成する必要はなく、例えば絶縁物、半導体、金属等の層の材質に合わせて、ハイドライドVPE法、MOCVD法、プラズマCVD法、熱CVD法等のCVD法、MBE法、スパッタ法、蒸着法等の広く知られている成膜方法を用いることができる。本発明の1実施形態では、VPE法、CVD法、MBE法、スパッタ法、蒸着法およびこれらの2つ以上の方法の組み合わせからなる群より選ばれる成膜方法が採用される。形成される構造は、単層でも多層構造でもよく、また、いわゆる電子デバイスや発光デバイス等のデバイス構造となっていてもかまわない。「その他の層」がデバイス構造またはデバイス構造の一部である場合にも、公知の方法によりデバイス構造を形成すればよい。
以下に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明する。
(参考例1)
r面を主面とするZnO基板の表面をCMP(化学機械研磨)処理した。この基板の原子間力顕微鏡像(AFM像)を図5に示す。このときの全視野中の表面粗さは次のとおりであり、基板表面に研磨痕が観察される。
Ra=0.450nm
RMS=0.60nm。
(参考例2)
参考例1と同様に処理した基板を1250℃で3.5時間アニールした。この基板の原子間力顕微鏡像(AFM像)を図6に示す。このときの全視野中の表面粗さは次のとおりであり、研磨痕が消失し原子ステップが観察される。
Ra=0.138nm
RMS=0.16nm。
(実施例1)
参考例1と同様のr面を主面として有するZnO基板11をPLD装置内に導入し、第1サブ成長工程として、第一層のGaN層を成膜した。ターゲット32は、Ga金属(純度99.99%)で構成した。ターゲット32は、ZnO基板11のa面に対して平行になるよう配置した。窒素源としてRFラジカル源を400Wで用い、成長圧力は4.5×10−6Torrとした。
KrFエキシマレーザ33から出射するパルスレーザ光のパルス周波数を15Hz、1パルス当りの照射時間を20ns、ターゲット照射時点のレーザパワーは0.14Wとした。またZnO基板11の基板温度を室温とし、26nmの厚さまで成長させた。成長速度は、130nm/時間であった。
つぎに、第2サブ成長工程として第二層のGaN層14を成膜した。ターゲット32は、Ga金属(純度99.99%)で構成した。ターゲット32は、ZnO基板11の表面に対して平行になるよう配置した。窒素源としてRFラジカル源を400Wで用い、成長圧力は6.0×10−6Torrとした。KrFエキシマレーザ33から出射するパルスレーザ光のパルス周波数を50Hz、ターゲット照射時のレーザパワーを0.50Wとした。またZnO基板11の基板温度を690℃とした。そして、約280nmの膜厚まで成長させた。成長速度は約280nm/時間であった。
得られたGaN層を試料として、X線ロッキングカーブ測定によって、結晶のモザイク性を評価した。成長条件を表2に、得られた膜の評価結果を表3に示す。
なお、表2の成長面方位に記載の+と−は、C+面側を表面とした状態から、所定の角度傾けて得られる面を+、C−面側を表面とした状態から、同じく所定の角度傾けて得られる面を−と表記している。同一の面指数基板の+面と−面は、左記基板の表裏の関係に当る。
(実施例2)
第1サブ成長工程として第一層のGaN層の成長圧力を6.0×10−6Torrとし、表2に示す成長条件を採用した他は、実施例1を繰り返した。得られた膜の評価結果を表3に示す。また、フォトルミネッセンス測定結果を図7に示す。
(実施例3)
参考例1と同様の処理後、1050℃で3.5時間アニール処理されたr面を主面として有するZnO基板11をPLD装置内に導入し、第1サブ成長工程として、第1サブ成長工程として第一層のGaN層の成長圧力を6.0×10−6Torrとし、表2に示す成長条件を採用した他は、実施例1を繰り返した。得られた膜の評価結果を表3に示す。
(実施例4)
参考例1と同様の処理後、1250℃で3.5時間アニール処理されたr面を主面として有するZnO基板11(参考例2と同様の処理)をPLD装置内に導入し、第1サブ成長工程として、第1サブ成長工程として第一層のGaN層の成長圧力を6.0×10−6Torrとし、表2に示す成長条件を採用した他は、実施例1を繰り返した。得られた膜の評価結果を表3に示す。
また、フォトルミネッセンス測定結果を図7に示す。図7では、アニール処理を行っていないr面ZnO基板上に成長した実施例2のGaN層と、アニール処理を行ったr面ZnO基板上に成長した実施例4のGaN層を退避して示した。ZnO基板のアニール処理により、積層欠陥起因と言われている3.29〜3.35eV付近のPL発光の発光強度が減少し、GaN結晶本来のバンド端発光(3.46eV)の発光強度が増加していることから、基板のアニールによる平坦化処理により、成長層の積層欠陥が抑制され、結晶の品質が向上したことがわかる。
(実施例5)
第1サブ成長工程として第一層のGaN層の成長圧力を6.0×10−6Torr、基板温度を330℃とし、表2に示す成長条件を採用した他は、実施例1を繰り返した。得られた膜の評価結果を表3に示す。
(実施例6〜12)
第1サブ成長工程として第一層のGaN層の成長圧力を6.0×10−6Torrとし、表2に示す面方位を主面として有するZnO基板11をPLD装置導入し、同じく表2に示す成長条件を採用した他は、実施例1を繰り返した。得られた膜の評価結果を表3に示す。
GaN上に成長したInGa1−xN(x=0.05(1)、0.10(2)、0.15(3)、0.20(4))について、成長面とc面のなす角度θを横軸にして、圧縮応力下における圧電分極を縦軸にした計算結果を示す図である。 六方晶系のミラー指数を説明するための図である。 X線ロッキングカーブ(XRC)の測定方法を説明するための図である。 PLD装置の構成を示す図である。 化学機械研磨したr面ZnO基板表面の原子間力顕微鏡像である。 1250℃3.5時間アニールしたr面ZnO基板表面の原子間力顕微鏡像である。 実施例2および実施例4で成長したGaN層のフォトルミネッセンス測定結果である。
符号の説明
10 積層
11 ZnO基板
12 III−V族窒化物層(GaN層)
13 GaN低温成膜層
14 GaN高温成膜層
30 PLD装置
31 チャンバ
31a 窓
32 ターゲット
33 KrFエキシマレーザ
34 レンズ
35 ガス供給部
36 窒素ラジカル源
36a 調整弁
37 圧力弁
38 ローターリーポンプ
39 回転軸

Claims (37)

  1. ZnO基板上に成長したIII−V族窒化物層であって、
    前記III−V族窒化物層の成長面が、c面となす角度が10°以上90°未満の半極性面であり、
    前記成長面を回折面として、この成長面に垂直かつc軸に平行な面と平行な方向から入射するX線に対して得られるX線回折強度の角度依存性の半値全幅をaで表したとき、
    ≦0.5°
    を満たすことを特徴とするIII−V族窒化物層。
  2. 前記成長面を回折面として、この成長面に垂直かつc軸を成長面に投影した線に対して垂直な面に平行な方向から入射するX線に対して得られるX線回折強度の角度依存性の半値全幅をaで表したとき、
    ≦1.0°
    を満たすことを特徴とする請求項1記載のIII−V族窒化物層。
  3. 成長面方位に対して垂直または傾斜している面のうちの少なくとも1つを回折面として、前記回折面が前記成長面に対して垂直な面である場合は、成長面に平行な方向から入射するX線に対して得られるX線回折強度の角度依存性の半値全幅bが、一方、前記回折面が前記成長面に対して傾斜している面である場合は、前記成長方位軸を回折面に投影した線に対して垂直な面に平行な方向から入射するX線に対して得られるX線回折強度の角度依存性の半値全幅bが、
    b≦1.0°
    を満たすことを特徴とする請求項1または2記載のIII−V族窒化物層。
  4. 前記成長面が、c面となす角度が25.1°以上の半極性面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のIII−V族窒化物層。
  5. 前記成長面が、a面またはm面をc軸方向に傾けた面であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のIII−V族窒化物層。
  6. 成長面方位が、{10−1n}面(ここで、nは1〜4の正の整数である。)、{20−2n}面(ここで、nは1または3である。)、および{11−2n}面(ここで、nは1〜5の正の整数である。)からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のIII−V族窒化物層。
  7. 厚みT(nm)が、
    5nm≦T≦10000nm
    を満足することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のIII−V族窒化物層。
  8. 厚みT(nm)が、さらに、
    5nm≦T≦500nm
    を満足することを特徴とする請求項7記載のIII−V族窒化物層。
  9. 前記成長面と同一の面方位を有するZnO基板上に成長して形成されたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のIII−V族窒化物層。
  10. 表面粗さRaが3nm以下の面を有するZnO基板上に成長して形成されたことを特徴とする請求項9記載のIII−V族窒化物層。
  11. 組成が、InAlGa(1−x−y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のIII−V族窒化物層。
  12. 500℃未満の成長温度で形成され、前記基板上に直接接して形成された第一層と、
    400℃以上であってかつ第一層の成長温度より高温の成長温度で、前記第一層上に形成された第二層と
    を少なくとも有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のIII−V族窒化物層。
  13. 前記第一層が20〜450℃の成長温度で形成され、前記第二層が400〜1300℃の成長温度で形成されたことを特徴とする請求項12記載のIII−V族窒化物層。
  14. 前記第一層がGaN層であることを特徴とする請求項12または13に記載のIII−V族窒化物層。
  15. 前記第一層の厚みが、500nm未満であることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載のIII−V族窒化物層。
  16. 層の成長面に対して、III族元素が間欠的に供給され、V族元素がラジカルを含む形態で供給されて形成されたことを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のIII−V族窒化物層。
  17. III族元素が金属の形態として供給されて形成されたことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のIII−V族窒化物層。
  18. パルスレーザ堆積法によって形成されたことを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載のIII−V族窒化物層。
  19. 請求項1〜18のいずれかに記載のIII−V族窒化物層と、この層の上に形成されたその他の層を有することを特徴とする積層構造。
  20. 前記その他の層が、前記III−V族窒化物層と格子定数が等しい層を含むことを特徴とする請求項19記載の積層構造。
  21. 前記その他の層が、VPE法、CVD法、MBE法、スパッタ法、蒸着法およびこれらの2つ以上の方法の組み合わせからなる群より選ばれる成膜方法で形成されたことを特徴とする請求項19または20記載の積層構造。
  22. ZnO基板上にIII−V族窒化物層を形成する方法であって、
    (a)表面粗さRaが3nm以下で、c面となす角度が10°以上90°未満の半極性面を主面として有するZnO基板を用意する工程と、
    (b)前記基板の主面上に、前記III−V族窒化物層を少なくとも2段階で成長する工程であって、
    (b−1)500℃未満の成長温度で、第一層を前記基板の主面に成長させる第1サブ成長工程、および
    (b−2)400℃以上であってかつ第1サブ成長工程の成長温度より高温の成長温度で、前記第一層上に第二層を成長させる第2サブ成長工程
    を含む成長工程と
    を有するIII−V族窒化物層の製造方法。
  23. 前記半極性面とc面とがなす角度が、25.1°以上であることを特徴とする請求項22記載の製造方法。
  24. 成長面方位が、{10−1n}面(ここで、nは1〜4の正の整数である。)、{20−2n}面(ここで、nは1または3である。)、および{11−2n}面(ここで、nは1〜5の正の整数である。)からなる群より選ばれることを特徴とする請求項22記載の方法。
  25. 前記第1サブ成長工程において、成長面において単結晶構造を保ちながら結晶成長させることを特徴とする請求項22〜24のいずれかに記載の製造方法。
  26. 前記第1サブ成長工程において、前記第一層を20〜450℃の成長温度で形成し、前記第2サブ成長工程において、前記第二層を400〜1300℃の成長温度で形成することを特徴とする請求項22〜25のいずれかに記載の製造方法。
  27. 前記第1サブ成長工程において、前記第一層がGaN層であることを特徴とする請求項22〜26のいずれかに記載の製造方法。
  28. 前記第1サブ成長工程における前記第一層の成長速度が、10nm/時間より大きく、かつ300nm/時間未満の範囲から選ばれ、前記第2サブ成長工程における前記第二層の成長速度が、30nm〜5000nm/時間の範囲から選ばれることを特徴とする請求項22〜27のいずれかに記載の製造方法。
  29. 前記第2サブ成長工程における前記第二層の成長速度が、120nm/時間〜5000nm/時間の範囲から選ばれることを特徴とする請求項28記載の製造方法。
  30. 前記第1サブ成長工程において、成長面に対して、III族元素が間欠的に供給され、V族元素がラジカルを含む形態で供給されることを特徴とする請求項22〜29のいずれかに記載の製造方法。
  31. 前記第1サブ成長工程において、間欠的に供給されるIII族元素の間隔時間が1m秒〜10秒の範囲から選ばれることを特徴とする請求項30記載の製造方法。
  32. さらに前記第2サブ成長工程において、成長面に対して、III族元素が間欠的に供給され、V族元素がラジカルを含む形態で供給されることを特徴とする請求項30または31記載の製造方法。
  33. 前記第1サブ成長工程において、パルスレーザ堆積法により前記第一層を成長することを特徴とする請求項22〜32のいずれかに記載の製造方法。
  34. III族元素を金属の形態で供給することを特徴とする請求項22〜33のいずれかに記載の製造方法。
  35. 前記第1サブ成長工程において、前記第一層の厚みが、500nm未満の範囲となるように成長することを特徴とする請求項22〜34のいずれかに記載の製造方法。
  36. 請求項1〜9のいずれかに記載のIII−V族窒化物層を形成するように条件が選ばれる請求項22〜35のいずれかに記載の製造方法。
  37. 請求項22〜36のいずれかに記載の製造方法で形成したIII−V族窒化物層の上に、さらに、少なくとも格子定数が等しい層を含むその他の層を、VPE法、CVD法、MBE法、スパッタ法、蒸着法およびこれらの2つ以上の方法の組み合わせからなる群より選ばれる成膜方法で成膜する工程を有する積層構造の製造方法。
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