JP2008053640A - Iii−v族窒化物層およびその製造方法 - Google Patents

Iii−v族窒化物層およびその製造方法 Download PDF

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篤 小林
Hideyoshi Horie
秀善 堀江
Hidetaka Amauchi
英隆 天内
Satoru Nagao
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Abstract

【課題】発光デバイス等に使用できる結晶性のよいInNおよびIn組成の大きなInGa1−xN層を提供することを目的とする。
【解決手段】 ZnO基板上に成長することで形成されたIII−V族窒化物層であって、前記III−V族窒化物層は、前記基板上に直接接して形成された第一層と、この第一層上に直接接して形成された第二層とを少なくとも有し、前記第一層が、InGa1−aN(但し、aは、0≦a≦0.16を満たす数である)であり、前記第二層が、InGa1−xN(但し、xは、0.5≦x≦1を満たす数である)であることを特徴とするIII−V族窒化物層。
【選択図】なし

Description

本発明は、III−V族窒化物層、特に発光デバイス等に使用できる結晶性のよいInGa1−xN層を含むIII−V族窒化物層に関する。
近年、InAlGa(1−x−y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表されるIII−V族窒化物半導体の研究開発が進み、これを用いた発光ダイオードやレーザダイオードなどの発光デバイスの発光効率が飛躍的に改善されてきている。
GaNをはじめとしてInAlGa(1−x−y)Nは六方晶系に属し、主にサファイア等の基板のc面上に、エピタキシャル成長して形成されてきた。GaN層上に活性層としてInGa(1−x)N(0<x≦1)混晶からなる量子井戸層を積層した構造では、青色・緑色LEDまたは次世代DVDレーザ用の層構成として使用または有望視されている。
III−V族窒化物半導体InAlGa(1−x−y)Nは、x、yにより格子定数、バンドギャップ等の特性が異なることから、種々のx、yについて良好な結晶性を有する薄膜成長方法が期待されている。例えば、InNおよびInGa1−xNでも比較的大きなxを有するInGaN系化合物半導体層は、超高周波電子デバイス、及び通信用長波長発光デバイス用の材料として有用性が期待されており、他の系と同様に良質の結晶薄膜が求められていた。
最近、サファイアに代わってGaN窒化物に格子定数が近く、GaN基板よりも安価で大口径の基板が作製されているZnO基板上へのIII−V族窒化物層の成長が試みられている。ZnO基板は、高温でIII−V族窒化物と容易に反応してしまうために、成長温度を低下できる成長方法としてパルスレーザ堆積法(PLD法:pulsed laser deposition)が提案されている。例えば、特許文献1(国際公開WO2005/006420号公報)には、ZnO基板上に、PLD法によりGaNまたはInGa1−xN(0≦x≦0.4)を成長したことが記載されている。また非特許文献1(Japanese
Journal of Applied Physics Vol.45, No.25,2006,L611-613頁)においてもPLD法によりInGa1−xN(x=0.44)を成長したことが記載されている。
しかし、In組成比の大きな(xの大きな)InGaNの成長の記載はない。また、非特許文献2(第65回応用物理学会学術講演会講演予稿集(2004年9月)2a−T−9)においても、ZnO基板上にInGa1−xN(x=0.245〜1.00)の成長を試みているが、In組成が高くなると成長初期段階で表面平坦性が悪くなることを報告しており、この理由として、In組成の増加に伴ってInGaNとZnOの面内格子不整合が大きくなり、最大で9%にも及ぶことが原因であると推定している。格子不整合に加え、Inは蒸気圧が高く、低温での良好な結晶成長が難しいということも知られている。
ところで、六方晶系のIII−V族窒化物半導体はc軸が分極軸である分極物質であるため自発分極を有する。さらにこれに重畳して、c面上の歪んだ量子井戸には圧電分極による強い内部電場が誘起されるため、電子と正孔が1つの量子井戸層内で空間的に分離される。すなわち、c面上に成長されたGaN層上のInGaN層などには、本質的に電子と正孔が発光再結合をする確率が低下する問題があった。また、発光波長が圧電分極によって長波長側に遷移し、発光波長の短波長化が困難である問題もあった。さらに素子を駆動する際には、注入電流に依存して発光波長が変化し、低注入注入時には短波長化し、高注入電流時には長波長化する現象が観察され、波長制御が困難である問題もあった。これらの現象は量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)として知られており、六方晶系III−V族窒化物半導体においてサファイア基板等のc面上に成長したGaNのc面上にInGaN等の歪量子井戸層をコヒーレント成長する限り、その影響を避けるのが難しく、応用上大きな問題となっている。
一方、GaNのa面およびm面は、無極性であるため、その上に形成したInGaN層には圧縮歪によって分極電界が生じない。従って、発光効率の低下や注入電流増加による波長シフトを招く量子閉じ込めシュタルク効果を避けることができると考えられている。
しかし、六方晶系III−V族窒化物結晶のa面やm面上のエピタキシャル成長は困難であり、貫通転位密度や積層欠陥密度が高く、高品質な六方晶系III−V族窒化物半導体積層構造を得ることはできなかった。例えば、非特許文献3(第66回応用物理学会学術講演会講演予稿集(2005年秋)11p−N−4)では、「無極性であるm面上に関しては、その成長が困難である」と記載した上で、c面を主面とするGaN基板をストライプ状に加工し、その側面のm面に結晶を成長させる等の特殊な方法を採用している。
さらに、非特許文献4{Appl. Phys. Lett., Vol.82, No.11(17 March 2003), 1793-1795頁}には、ZnOのm面(0−100)基板に、プラズマアシストMBE(molecular-beam
epitaxy)によりGaN層を成長させたことが記載されているが、形成された基板は、「スレート状」と記載されているとおり、表面の凹凸が激しく、単結晶の層は得られていない。
国際公開WO2005/006420号公報 Japanese Journal of Applied Physics, Vol.45,No.24,2006,L611-613頁 第65回応用物理学会学術講演会講演予稿集(2004年9月)2a−T−9 第66回応用物理学会学術講演会講演予稿集(2005年秋)11p−N−4 Appl. Phys. Lett., Vol.82, No.11(17 March 2003), 1793-1795頁
以上のように、高品質な結晶性を有するInNおよびIn組成の大きなInGaNの成長は難しく、特に発光デバイスに有用性が期待されるm面成長は非常に困難であった。
本発明は、発光デバイス等に使用できる結晶性のよいInNおよびIn組成の大きなInGa1−xN層を提供することを目的とする。さらに本発明は、発光デバイス用に好適な、QCSEを避けることができるm面が利用可能な高品質のInNおよびIn組成の大きなInGa1−xN層を提供することを目的とする。
さらに本発明の異なる態様は、高品質の結晶性を有する上記InN層およびInGaN層の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は以下の事項に関する。
1. ZnO基板上に成長することで形成されたIII−V族窒化物層であって、
前記III−V族窒化物層は、前記基板上に直接接して形成された第一層と、この第一層上に直接接して形成された第二層とを少なくとも有し、
前記第一層が、InGa1−aN(但し、aは、0≦a≦0.16を満たす数である)であり、
前記第二層が、InGa1−xN(但し、xは、0.5≦x≦1を満たす数である)であること
を特徴とするIII−V族窒化物層。
2. 前記基板と前記第一層との格子不整合ΔL1SSが、−1.9〜0%の範囲にあることを特徴とする上記1記載のIII−V族窒化物層。
(但し、 ΔL1SS=(L1−Ls)/Lsであり、Ls、L1は、それぞれZnO、及び第一層の格子定数を示し、その際、成長面内の格子定数に異方性がある場合は、ΔL1SSが最も小さい結晶軸方向の格子定数を採用する。)
3. abs(ΔL21S)>abs(ΔL2SS
の関係を満たすことを特徴とする上記2記載のIII−V族窒化物層。
(但し、ΔL21S=(L2−L1)/Ls
ΔL2SS=(L2−Ls)/Ls
であり、Ls、L1、L2は、それぞれZnO、第一層および第二層の格子定数を示し、その際、成長面内の格子定数に異方性がある場合は、ΔL1SSが最も小さい結晶軸方向の格子定数を採用する。abs( )は、( )内の値の絶対値を示す。)
4. 前記第一層がGaNであり、前記第二層がInNであることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のIII−V族窒化物層。
5. 前記第一層および第二層の成長面方位が{1−100}面であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のIII−V族窒化物層。
6. 前記ZnO基板が名目上のm面を主面として有し、この面に成長して形成されたことを特徴とする上記5記載のIII−V族窒化物層。
7. 厚みT(nm)が、
5nm≦T≦10000nm
を満足することを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のIII−V族窒化物層。
8. 上記1〜7のいずれかに記載のIII−V族窒化物層と、この層の上に形成されたその他の層を有することを特徴とする積層構造。
9. ZnO基板上に、III−V族窒化物層を形成する方法において、
(a)ZnO基板を用意する工程と、
(b)第一層としてInGa1−aN(但し、aは、0≦a≦0.16を満たす数である)層を前記基板上に成長させる工程と、
(c)前記第一層上に第二層としてInGa1−xN(但し、xは、0.5≦x≦1を満たす数である)層を成長させる工程と
を有するIII−V族窒化物層の製造方法。
10. 前記基板と前記第一層との格子不整合ΔL1SSが、−1.9〜0%の範囲にあることを特徴とする上記9記載の製造方法。
(但し、 ΔL1SS=(L1−Ls)/Lsであり、Ls、L1は、それぞれZnO、及び第一層の格子定数を示し、その際、成長面内の格子定数に異方性がある場合は、ΔL1SSが最も小さい結晶軸方向の格子定数を採用する。)
11. abs(ΔL21S)>abs(ΔL2SS
の関係を満たすことを特徴とする上記10記載の製造方法。
(但し、ΔL21S=(L2−L1)/Ls
ΔL2SS=(L2−Ls)/Ls
であり、Ls、L1、L2は、それぞれZnO、第一層および第二層の格子定数を示し、その際、成長面内の格子定数に異方性がある場合は、ΔL1SSが最も小さい結晶軸方向の格子定数を採用する。abs( )は、( )内の値の絶対値を示す。)
12. 前記第一層がGaNであり、前記第二層がInNであることを特徴とする上記11記載の製造方法。
13. 前記ZnO基板が名目上のm面を主面として有し、
前記第一層を、前記ZnO基板の名目上のm面上に、成長面方位を{1−100}面として成長させることを特徴とする上記9〜12のいずれかに記載の製造方法。
14. 前記第一層の基板界面の成長を室温〜500℃の成長温度で行い、
前記第二層を室温〜1000℃の成長温度で形成することを特徴とする上記9〜13のいずれかに記載の製造方法。
15. 前記第一層の成長速度が、10nm/時間より大きく、かつ500nm/時間未満の範囲から選ばれ、前記第二層の成長速度が、30nm〜5000nm/時間の範囲から選ばれることを特徴とする上記9〜14のいずれかに記載の製造方法。
16. 成長面に対して、III族元素を間欠的に供給することを特徴とする上記9〜15のいずれかに記載の製造方法。
17. 前記第一層および前記第二層を、パルスレーザ堆積法により成長させることを特徴とする上記9〜16のいずれかに記載の製造方法。
18. 上記9〜17のいずれかに記載の製造方法で形成したIII−V族窒化物層の上に、さらに、少なくとも格子整合する層を含むその他の層を、VPE法、CVD法、MBE法、スパッタ法、蒸着法およびこれらの2つ以上の方法の組み合わせからなる群より選ばれる成膜方法で成膜する工程を有する積層構造の製造方法。
本発明のIII−V族窒化物層は、ZnO基板上に形成された第一層と第二層とを有する。従来、第二層を構成するInGa1−xN(0.5≦x≦1)層は、直接ZnO基板上に成長させるのが難しかったが、第一層のInGa1−aN(0≦a≦0.16)層と組み合わせることで、高品質の結晶が得られる。
従って、本発明によれば、発光デバイス等に使用できる結晶性のよいInNおよびIn組成の大きなInGa1−xN層を提供することができる。さらに本発明の特定の態様によれば、発光デバイス用に好適な、QCSEを避けることができるm面が利用可能な高品質のInNおよびIn組成の大きなInGa1−xN層を提供することができる。
さらに本発明の異なる態様によれば、高品質の結晶性を有する上記InN層およびInGaN層の製造方法を提供することができる。
(面方位等の記号の説明)
まず、本明細書で使用する結晶の面方位および軸方向の表現方法について説明する。結晶の面方位や軸方向はミラー指数により記述される。六方晶系では、3つの指数を用いる表記法もあるが、ここでは一般的に用いられている4つの指数を用いる表記法を採用する。図1を用いて六方晶系のミラー指数について説明する。正六角形の平面内に3つ(a,a,a方向)、c軸とよばれる平面に垂直な方向に1つ(c方向)の指数で表される。a軸、a軸、a軸は互いに120°をなし長さが等しい。これらに直交するc軸はa軸群とは長さが等しくない。a軸、a軸、a軸のうち2つの軸だけで完全に正六角形の平面内の方位は指定できるが、対称性を保つためにもうひとつの軸を導入している。そのためこれらは互いに独立ではない。ひとつの平行面群は(ijkl(エル))と表記され、これは原点から数えて1枚目の面がa軸、a軸、a軸、c軸を切る点の原点からの距離がそれぞれa/i、a/j、a/k、c/l(エル)であることを表す。a、a、a軸は正六角形平面内に含まれる冗長な座標系であるから、i、j、kは互いに独立ではなく常にi+j+k=0が成り立つ。4つの指数のうちi、j、kについては回転対称性があるが、l(エル)は独立である。
本明細書において、面方位および結晶方位は、結晶学における一般的な表記方法に従って次のように表記する。
個別の面方位は丸い括弧( )で表現し、等価な面方位の集合を表すには波括弧{ }を用いる。等価な面方位というのは、その結晶系が許すすべての対称操作によって到達しうる面方位をいう。たとえば{1−100}は、(1−100)と等価なすべての面を集合的に表す表現であり、(1−100)をc軸を回転軸とした回転操作により到達する(10−10)、(01−10)、(−1100)、(−1010)、(0−110)を含む計6つの面を表現する。
結晶方位(結晶軸)は、それに垂直な面の指数と同じ指数の組により表現される。個別の結晶方位は角括弧[ ]で表され、等価な方位の集合は鍵括弧< >を用いる。
また、一般に使用されるように、{1−100}をm面と称することもあり、<1−100>をm軸と称することもある。六方晶系の代表的な面方位は、c面(0001)、a面(11−20)、m面(1−100)、r面(10−12)のように表される。
名目上のm面とは、基板の主面が結晶方位<1−100>に対して必ずしも完全に垂直でない場合を含む面であり、主面に対して垂直な軸は結晶方位<1−100>からのずれがあってもよい。そのずれの範囲は15°までが許容される。また、六方晶系の結晶構造をとる、たとえばGaN、サファイア、ZnO等においては、m面はその構成元素のアニオンとカチオンが同数存在する面であって、このために極性を有さない無極性面となっている。
(本発明の実施形態の説明)
前述の通り本発明のIII−V族窒化物層は、ZnO基板上に直接接して形成された第一層と、この第一層上に直接接して形成された第二層とを少なくとも有する。第一層の組成は、InGa1−aN(但し、aは、0≦a≦0.16を満たす数である)であり、第二層の組成は、InGa1−xN(但し、xは、0.5≦x≦1を満たす数である)である。
ZnOおよび代表的III−V族窒化物の格子定数を表に示す。
第一層の組成中のInの組成を示す「a」は、好ましくは次の条件を満たすように選択される。
(条件1)前記基板と前記第一層との格子不整合ΔL1SSが、−1.9〜0%、
好ましくは、ΔL1SSは、−1.9〜−1.0%である。
特に好ましくは、
abs(ΔL21S)>abs(ΔL2SS
を満たす。
ここで、
ΔL1SS=(L1−Ls)/Ls
ΔL21S=(L2−L1)/Ls
ΔL2SS=(L2−Ls)/Ls
ただし、Ls、L1、L2は、それぞれZnO、第一層および第二層の格子定数であり、abs( )は、絶対値を示す。
三元系混晶の格子定数はVegard則に従うとして求められ、第一層の格子定数L1と第二層の格子定数L2はそれぞれ、
L1=(InNの格子定数)a+(GaNの格子定数)(1−a)
L2=(InNの格子定数)x+(GaNの格子定数)(1−x)
として算出される。成長面内の格子定数に異方性がある場合は、ΔL1SSが最も小さい結晶軸方向の格子定数とする。
本発明において、第一層は、第二層の成長を容易にするために形成される。この意味では、第一層はバッファー層と言ってもよい。しかし、従来のバッファー層とは、層構造および機能が大きく異なっている。
通常サファイアなどの基板上にMOVPE法を用いてIII−V族窒化物層を成長する際には、本成長(例えばGaNをMOVPE法で基板温度900から1100℃程度でエピタキシャル成長させる)に先立ち、低温バッファー層を500〜600℃程度で形成する。500〜600℃程度の基板温度で20〜100nm程度堆積されるGaNまたはAlNのバッファー層は微小な多結晶構造を含む。この層の上に例えばGaNを成長させるために、1000℃程度に基板温度を上げると、固相成長により多結晶構造の一部が単結晶化し、結晶方位の配向が進む。このように構造が変化したバッファー層の上に、900から1100℃程度の高温で単結晶の窒化物層がエピタキシャル成長する。
これに対して本発明で成長させる第一層は、多結晶構造ではなく、成長初期から結晶方位がそろった単結晶である。第一層の成長工程では、基板と成長層の界面反応を抑制しつつ、成長初期から単結晶を成長させている。
さらに、従来のバッファー層は、格子整合を図るべく、通常はバッファー層の上に形成される層と基板との中間の格子定数を有する材料が選ばれ、特にバッファー層上面の格子定数と、その上に形成される層の格子定数との格子不整合がなるべく小さくなるように形成される。
しかしながら、本発明では、第一層は、基板と第二層との格子定数の差を縮小するために設けられているわけではない。第一層上に形成される第二層も成長初期から結晶方位がそろった単結晶であると考えられ、第一層と第二層の間の格子定数差は本発明では問題にはならない。
本発明では、前述のように、
abs(ΔL21S)>abs(ΔL2SS
を満たす方が好ましい。これは、L1<Ls<L2の関係にあることを示している。
本発明では、第一層が基板と第二層の中間の格子定数を取る必要がないので、第一層の組成に関して、aが小さいほど好ましい。これは、Inの組成が小さい方が相分離が起きにくく成長が容易であるからである。従って、aは、好ましくは、0.16以下(L1<Lsとなるa)であり、さらに好ましくは、0.07以下である。さらに、a=0、即ち第一層の組成がGaNであるときは、相分離が生ずることなく、成長も容易であるので最も好ましい。一般に格子不整合のある結晶同士の成長では、結合の弱い結晶側を圧縮歪とした方が結晶性は良好であり、引っ張り歪とした場合は結晶面に割れ等が生じ易い。本発明ではZnO基板側を圧縮歪(L1<Ls)とした方が好ましい。成長面の格子定数に異方性がある場合は、少なくとも一方向は上記の関係を満たすことが好ましく、従ってΔL1SSが最も小さい結晶軸方向の格子定数に対して abs(ΔL21S)>abs(ΔL2SS)を満たすことが好ましい。
第二層の組成に関して、xは、好ましくは、0.5以上であり、より好ましくは0.7以上、最も好ましくはx=1、即ちInNである場合である。xが大きいほど2元系に近く、相分離も起きにくく良好な結晶を得ることができ、特性的にもInNに近くなるため、高移動度化と長波長化が期待される。最も好ましくは、第一層がGaNであり、第二層がInNである場合である。
本発明の好ましい態様のように、敢えて格子定数の離れた層をバッファーとして使用するという思想は従来存在しなかったものであり、このような構成の層は従来存在しなかったものである。
第一層および第二層の結晶成長面は、c面であってもよいが、発光デバイス用として有用性が期待されるm面が好ましい。本発明により、InN等のIn組成の大きなInGaNの利用可能な面として、従来成長が困難であったm面が得られることは、非常に価値の高いことである。即ち、成長面がm面であるIII−V族窒化物層上に、活性層を備えた発光デバイス構造をエピタキシャル成長させることにより、転位密度が低く高品質の結晶性を備え、高い発光効率を有する発光ダイオードや半導体レーザが実現できる。さらに活性層が歪をもつ量子井戸である場合、m面に量子井戸を形成することにより量子閉じ込めシュタルク効果による発光確率の低下がないことに加え、優れた結晶品質により、従来のc面に形成された歪量子井戸では得られなかった優れた発光効率が得られ、注入電流増加による波長シフトの問題も低減される。
III−V族窒化物層の厚さは、好ましくは5nm以上10000nm以下、より好ましくは5nm以上2000nm以下、さらに好ましくは10nm以上1000nm以下である。従来の異種基板上の窒化物層においては、一般に成長膜厚を増加させるほど貫通転位密度が減少し良質な結晶が得られるが、成長膜厚を増加させることは、材料コストがかかり製造のスループットも制約を受けるという問題がある。
これに対して、本発明のIII−V族窒化物層は、1000nm以下の極めて薄い結晶膜であっても、高品質な窒化物結晶となっている。これは成長開始面(基板との界面)から極めて高い結晶性を有していることを意味する。従来の異種基板上に成長した窒化物層では、厚膜の場合では仮に良好な結晶性を示したとしても、成長開始面から例えば50nm(100nmでもよい)までの範囲の結晶性を見たとき、結晶性の良好なものはなかった。本発明では、第一層は、格子定数の異なる基板面からただちに単結晶の成長が開始している。
第一層の厚みは、1000nm未満が好ましく、より好ましくは500nm未満、さらに好ましくは300nm未満であり、特定の態様においては100nm未満であってもよい。また、通常3nm以上であり、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。
また、第一層および第二層は、後述するような条件にて製造されることが好ましい。
以上説明した本発明のIII−V族窒化物層は、種々の応用が可能であり、その上にデバイス構造を形成するために提供される基板としての形態、その上にデバイス構造が形成されたデバイスの一部としての形態、その層の一部にデバイス構造の少なくとも1部が形成されたデバイスの一部としての形態、およびその他の形態をとることができる。また、III−V族窒化物層の成長の際に使用されたZnO等の基板は、そのまま存在してもよいし、層成長後の適当な段階で除去されていてもよい。即ち、本発明のIII−V族窒化物層を備えた最終製品または中間製品が、成長の際に使用した基板を有していても、有していなくてもどちらでもよい。
次に、本発明の積層構造は、以上のIII−V族窒化物層の上に、この層とは異なる「その他の層」を有するものである。「その他の層」は、どのようなものであってもよく、材質としては、絶縁物を有しても、半導体部分を有しても、金属部分を有してもよい。形成方法は、ハイドライド気相成長(HVPE)法、有機金属気相成長(MOCVD)法、プラズマ化学気相堆積(CVD)法および熱CVD法等のCVD法、分子線エピタキシー(MBE)法、スパッタ法、蒸着法等の広く知られている成膜方法、そしてPLD法のいずれでもよい。形成される構造は、単層でも多層構造でもよく、また、いわゆる電子デバイスや発光デバイス等のデバイス構造となっていてもかまわない。
しかし、本発明の高品質III−V族窒化物層の機能を十分に発揮させるためには、直接に積層される層としては、本発明の層を下地として使用することで高品質化が可能な層が好ましい。特に、本発明の層に直接接している層の少なくとも一部は、格子整合する層であることが好ましい。例えば、異なる組成の、または異なる成長方法で形成されるIII−V族窒化物層が好ましく、InN、InGaN、AlN、GaN、AlGaN、AlInGaN等の結晶層が挙げられる。その際、成長方法としては、PLD法、VPE法、CVD法、MBE法、スパッタ法、蒸着法およびこれらの2つ以上の方法の組み合わせからなる群より選ばれる成膜方法で形成されていることが好ましい。
尚、発明のIII−V族窒化物層と、その上に積層されているその他の層は、主要組成または目的とする組成が同一であっても、製法が異なる場合には通常は膜質が異なる。即ち、2つの層の間で、含有される不純物量が異なっていたり、または2つの層の界面の不純物プロファイルから界面が確認できたりするので、通常は2つの異なる層として区別して認識できる。例えば本発明の好ましい実施形態では、発明のIII−V族窒化物層はPLD法により成長され、その他の層の成膜は、通常のMOCVD法等で成長される。GaN層の成膜を例にとると、MOCVD法では一般にNHとTMG(トリメチルガリウムGa(CH)等の有機金属を原料として、また水素ガスや窒素ガスをキャリアガスとして使用するため、その不純物としては、水素、炭素が必ず混入し、また、酸素も一般的に混入しがちである。これに対して、PLD法で成長する際には、窒素ガスを窒素源として窒素ラジカルを生成し、また、金属Ga等を原料とすれば、水素や炭素は原理的に低減が可能であって、その混入する不純物はMOCVD法で形成した膜と異なる不純物レベルとなる。従って、通常は、本発明のIII−V族窒化物層と「その他の層」は区別が可能なものである。
〔製造方法〕
次に、本発明のIII−V族窒化物層の製造方法を説明する。本発明の製造方法は、(a)ZnO基板を用意する工程、(b)第一層としてInGa1−aN(但し、aは、0≦a≦0.16を満たす数である)層を前記基板上に成長させる工程、(c)前記第一層上に第二層としてInGa1−xN(但し、xは、0.5≦x≦1を満たす数である)層を成長させる工程を有する。以下に説明する製造方法では、層の組成、層の厚みおよびその他の特性が、既述の範囲、特に好ましい範囲を満たすように、材料および条件が選ばれる。
(a)ZnO基板を用意する工程:
まず、ZnO基板を用意する。基板面方位はすでに説明したとおりである。基板として十分に平坦化された基板を用意するか、製造工程の一部として基板を平坦化することが好ましい。平坦化は、CMP(化学機械研磨)で行われるが、さらに800℃〜1600℃の高温でアニールすることも好ましい。具体的には、研磨された所定の面方位(例えばc面、m面)を主面とするZnO基板を800℃以上の温度に制御された高温度オーブン内において、ZnOの焼結体で周囲を箱状に囲んで加熱処理する。この場合において、ZnO基板はZnO焼結体により包囲されていればよく、また包囲する焼結体によって、ZnO基板を全て包み込むことは必須ではない。また、例えばZnO焼結体からなる坩堝を作成してそのなかにZnO基板を設置するようにしてもよい。ZnOを包囲する目的は、比較的蒸気圧の高いZnの逃散を抑制することであるため、ZnO焼結体以外に、Znを含む材料で包囲するようにしてもよい。Znを含む材料の例として、例えばZnO単結晶を用いてもよいし、Znの板を用いてもよい。この条件に基づいてZnO基板を加熱処理することにより、原子ステップが形成された原子層レベルで平坦ZnO基板が得られる。
(b)第一層の成長工程:
次に、第一層の基板界面での成長を500℃未満の成長温度で行う。500℃未満の温度で、基板上に成長することで、ZnOとInGa1−aNの界面反応が生じずに、界面反応層が形成されない。基板界面の成長温度を500℃以上とした場合は、良質な結晶が得られない場合が多い。基板界面を第一層の結晶で完全に覆った後は、成長温度を上昇させても良く、成長面において単結晶構造を保ちながら成長することが好ましい。これは、実施例で示すように、成長面のRHEED像を観察することによりモニターが可能である。
第一層の基板界面での成長温度は、さらに好ましくは450℃以下の温度であり、より好ましくは400℃以下である。また、実際のプロセスごとに許容される実用的な成長速度を勘案して、成長温度を決めることができるが、例えば室温(20℃〜30℃)以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは200℃以上の温度が選ばれる。
第一層の成長方法は、成長面において好ましくは単結晶構造を保ちながら成長を行うことが可能な方法であれば、特に限定はない。本発明の1形態では、成長面に対して、III族元素(In、Ga)を間欠的に供給し、V族元素(N)も供給することにより単結晶構造を保ちながら成長が生じていると推定される。原料が間欠的に基板へ供給されことにより、成長表面上に到達した原子のマイグレーションが促進され良質の結晶が成長すると推定される。また、V族元素に関しては、成長に関与できる活性種として、イオン状態のものまたはラジカル状態のものがあるが、特にラジカル状態の活性種の濃度が高くなるようにして、供給することが好ましい。本発明者は、ラジカル状態の活性種は、良質の結晶成長に効果があると推定している。
第一層の成長速度が速すぎる場合には、基板表面に到達した原子が十分にマイグレーションできない。特に低温成長の場合は、基板温度の熱エネルギーによってマイグレーションのための運動エネルギーを補うことができないため結晶品質が低下する。従って、第一層の成長速度としては、例えば500nm/時間未満が好ましい。さらに好ましくは、400nm/時間以下であり、最も好ましくは300nm/時間以下である。また、成長速度が遅すぎる場合には、不純物取り込みが多くなり、特に低温成長の場合は高温成長に比べて成長室中の不純物が吸着しやすいため、結晶品質が低下する。従って、第一層の成長速度は、例えば10nm/時間より大きいことが好ましく、さらに好ましくは30nm/時間以上である。
III族元素を間欠的に供給する際の周期に関する条件としては、供給と供給の間の休止期間が短すぎる場合には、基板表面到達した原子が十分にマイグレーションできないため結晶品質が低下する。また休止期間が長すぎる場合には、成長速度が低下するともに、長時間の成長中断が発生するため、成長膜中の不純物取り込みが多くなり結晶品質が低下する。従って、供給を休止している期間が0.001秒から10秒の範囲が好ましく、さらに0.005秒から1秒の範囲が好ましく、特に0.01秒〜0.5秒の範囲が好ましく、0.02秒〜0.1秒の範囲が最も好ましい。また、供給期間としては、上記の成長速度の範囲内となるように、例えば1×10−13秒〜10秒の範囲から適宜選ばれる。
III族元素を間欠的に供給するには、代表的にはターゲットに間欠的にエネルギーを与えて励起する方法が好ましい。代表的な方法として、PLD法が挙げられる。PLD法は、間欠的なパルスレーザ照射によって材料原子をプラズマ状に励起し基板へ供給するため、基板が低温であっても、基板表面でマイグレーションするために必要な運動力学的エネルギーを原子が有しており、低温成長に好適である。
間欠的な照射源としては、材料原子の励起を可能とするパルス状の粒子束であればレーザーに置き換えることが可能であり、電子、クラスターイオン、陽子、中性子を用いることが可能である。
使用されるターゲットとしては、III族元素の金属、窒化物が挙げられる。特にIII元素が1つのとき(a=0)のときは、ターゲットの組成変化もなく、非常に安定した成長が可能になる。
原料を間欠的に供給する他の成長方法として、III族原料とV族原料を交互にそれぞれ間欠的に供給するマイグレーションエンハンストエピタキシー(MEE)法やフローレートモジュレーション法を用いることも可能である。
低温での成長では、基板に到達した粒子のマイグレーションが十分ではなく、膜厚を増加させるに従い結晶性が悪化する傾向にある。従って良好な結晶構造とするためには、第一層の基板界面の成長厚みは、500nm未満が好ましく、より好ましくは300nm未満、さらに好ましくは200nm未満であり、特定の態様においては100nm未満であってもよい。また、通常3nm以上であり、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。
以下にPLD法について詳しく説明する。ここでは、例えば図2に示すようなPLD装置30を用いる場合を例にとって説明する。
PLD装置30は、内部に充満されたガスの圧力、および温度を一定に保つために、密閉空間を形成するチャンバ31を備えている。チャンバ31内には、ZnO基板11とターゲット32が対向して配置されている。ここで、ターゲット32となるのはガリウム金属、インジウム金属、GaN(単)結晶、InN(単)結晶、InGaN(単)結晶、GaN焼結体、InN焼結体、InGaN焼結体等であり、成長条件に応じて、ターゲット種の選択、およびシングル、あるいはマルチターゲット成膜の選択が適宜可能である。
またPLD装置30は、波長が248nmの高出力パルスレーザを出射するKrFエキシマレーザ33を備えている。KrFエキシマレーザ33から出射されたパルスレーザ光は、レンズ34により焦点位置がターゲット32近傍となるように調整され、チャンバ31の側面に設けられて窓31aを介してチャンバ31内に配置されたターゲット32表面に対して約30°の角度で入射する。
また、PLD装置30は、チャンバ31内へ窒素ガスを注入するためのガス供給部35と、その窒素ガスをラジカル化するラジカル源36とを備えている。窒素ラジカル源36は、ガス供給部35から排出された窒素ガスを、高周波を用いて一旦励起することにより窒素ラジカルとし、その窒素ラジカルをチャンバ31内に供給する。なおチャンバ31とガス供給部35との間には、窒素ラジカルガス分子とパルスレーザ光の波長との関係においてZnO基板11への吸着状態を制御するべく、ガスの濃度を制御するための調整弁36aが設けられている。
また、PLD装置30はチャンバ31内の圧力を制御するための圧力弁37とローターリーポンプ38とを備えている。チャンバ31内の圧力は、減圧下で成膜するPLD法のプロセスを考慮しつつ、ローターリーポンプ38により、例えば窒素雰囲気中において所定の圧力となるよう制御される。
また、PLD装置30は、パルスレーザ光が照射されている点を移動するために、ターゲット32を回転させる回転軸39を備えている。
以上のPLD装置30では、チャンバ31内に窒素ガスを充満させた状態で、ターゲット32を回転軸30を介して回転駆動させつつ、パルスレーザ光を断続的に照射する。このことにより、ターゲット32表面の温度を急激に上昇させ、Ga原子およびAl原子が含まれたアブレーションプラズマを発生させることができる。このアブレーションプラズマ中に含まれるGa原子およびAl原子は、窒素ガスとの衝突反応等を繰り返しながら状態を徐々に変化させてZnO基板11へ移動する。そして、ZnO基板11へ到達したGa原子、In原子およびAl原子を含む粒子は、そのままZnO基板11上の成長面(c面、m面等)に拡散し、格子整合性の最も安定な状態で膜形成することになる。
本発明では、基板と成長層の界面反応を抑制しつつ、成長初期から単結晶が成長するように、条件が選ばれることが好ましい。
(c)第二層の成長工程:
次に、上述のように成長した第一層の上に、第二層を成長させる。第二層の成長工程では、III−V族窒化物が成長する際に、成長面で活性種または粒子が十分にマイグレーションするようにして、エピタキシャル成長時の欠陥の発生を抑制するとともに、Inの再蒸発あるいは層分離を抑制する温度が必要である。
成長温度は、好ましくは室温〜1000℃、より好ましくは100〜800℃、特に好ましくは200〜600℃である。
第二層の成長速度は、例えば30〜5000nm/時間の範囲であり、好ましくは50〜3000nm/時間、さらに好ましくは70〜1000nm/時間である。
第二層の成長方法として、良好な結晶構造を有するように成長を行うことが可能な方法であれば、特に限定はないが、第一層の成長工程と同様に、成長面に対して、III族元素(In、Ga)を間欠的に供給し、V族元素(N)も供給する方法が好ましい。特に、V族元素に関しては、ラジカル状態の活性種の濃度が高くなるようにして、供給することが極めて好ましい。ここでも、V族元素はラジカル状態の活性種が、良質の結晶成長に効果があると推定される。
本発明の1態様では、このように第二層の成長工程においても、III族元素を間欠的に供給し、V族元素をラジカルを含む形態で供給することにより、第一層と第二層の格子不整合ΔL21Sがすでに述べたとおりの条件を満たしているにも拘わらず、良好な結晶が成長すると理解される。
III族元素を間欠的に供給する方法として、第一層の成長工程で説明したように、代表的な方法として、PLD法が挙げられる。PLD法の詳細は、第1サブ成長工程で説明したとおりである。
次に、本発明の積層構造、即ち、III−V族窒化物層とこの層の上に形成された「その他の層」を有する積層構造を製造するには、「その他の層」の材質に合わせて公知の方法により、III−V族窒化物層上に適宜形成すればよい。本発明のIII−V族窒化物層がPLD法で形成される場合においても、「その他の層」をPLD法で形成する必要はなく、例えば絶縁物、半導体、金属等の層の材質に合わせて、ハイドライド気相成長(HVPE)法、有機金属気相成長(MOCVD)法、プラズマ化学気相堆積(CVD)法および熱CVD法等のCVD法、分子線エピタキシー(MBE)法、スパッタ法、蒸着法等の広く知られている成膜方法を用いることができる。本発明の1実施形態では、VPE法、CVD法、MBE法、スパッタ法、蒸着法およびこれらの2つ以上の方法の組み合わせからなる群より選ばれる成膜方法が採用される。形成される構造は、単層でも多層構造でもよく、また、いわゆる電子デバイスや発光デバイス等のデバイス構造となっていてもかまわない。「その他の層」がデバイス構造またはデバイス構造の一部である場合にも、公知の方法によりデバイス構造を形成すればよい。
以下に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明する。
(参考例1)
(1−100)面を主面とするZnO基板を平坦化工程にて、1250℃で3時間半のアニール処理を行った。
ついで、平坦化処理した前述のZnO基板をPLD装置内に導入し、第一層のGaN層を成膜した。この工程では、ターゲット32は、Ga金属(純度99.99%)で構成した。ターゲット32は、ZnO基板における(1−100)面に対して平行になるよう配置した。窒素源としてRFラジカル源を400Wで用い、成長圧力は4.5×10−6Torrとした。
KrFエキシマレーザ33から出射するパルスレーザ光のパルス周波数を30Hz、1パルス当りの照射時間を20ns、ターゲット照射時点のレーザパワーは0.36W、
ZnO基板11の基板温度を室温とし、基板界面にGaN層を15nmの厚さまで成長させた。成長速度は、94nm/時間であった。基板界面のGaN層を成長後、ZnO基板11の基板温度を700℃まで上昇し、ターゲット照射時点のレーザパワーを0.51Wとしてさらに約100nmの厚さを成長した。成長速度は100nm/hであった。
この成長過程での、ZnO基板、基板界面のGaN層の成長後、および成長終了後のRHEED像を、図3A、図3Bおよび図3Cにそれぞれ示す。図3Bおよび図3CにおいてRHEED像が明瞭な2次元回折ストリークパターンを示していることから、GaN層が成長初期から極めて平坦な成長面を有する単結晶を保って成長していることが示される。
(実施例1)
参考例1と同様に、ZnO基板のm面上に第一層GaN層を厚み約100nm成長した。その後に、第一層成長に使用したPLD装置と同様の装置を用いて、第二層としてInN層を、第一層GaN層上に成膜した。ターゲットとしては、金属In(純度6ナイン以上)を用いて、窒素源としてRFラジカル源を320Wで用い、成長圧力は2×10−5Torrとした。KrFエキシマレーザ33から出射するパルスレーザ光のパルス周波数を10Hz、ターゲット照射時のレーザパワーを0.25Wとした。ZnO基板11の基板温度を500℃とした。そして、約200nmの膜厚まで成長させた。成長速度は約200nm/時間であった。
図4には、作成したZnO−GaN−InN構造のXRD2θ/ωスキャンを示す。c−InNのピークが31.4°に見られないことから、m−InNがm面のみの単一相にて、m−GaNおよびm−ZnOと結晶方位を揃えて成長していることが確認できる。
六方晶系のミラー指数を説明するための図である。 PLD装置の構成を示す図である。 参考例1で第一層の成長開始前のZnO基板表面のRHEED像である。 第一層の基板界面のGaN層成膜後の表面のRHEED像である。 第一層のGaN層成長後の表面のRHEED像である。 実施例1で形成したZnO−GaN−InN構造のXRD2θ/ωスキャンを示す図である。
符号の説明
30 PLD装置
31 チャンバ
31a 窓
32 ターゲット
33 KrFエキシマレーザ
34 レンズ
35 ガス供給部
36 窒素ラジカル源
36a 調整弁
37 圧力弁
38 ローターリーポンプ
39 回転軸

Claims (18)

  1. ZnO基板上に成長することで形成されたIII−V族窒化物層であって、
    前記III−V族窒化物層は、前記基板上に直接接して形成された第一層と、この第一層上に直接接して形成された第二層とを少なくとも有し、
    前記第一層が、InGa1−aN(但し、aは、0≦a≦0.16を満たす数である)であり、
    前記第二層が、InGa1−xN(但し、xは、0.5≦x≦1を満たす数である)であること
    を特徴とするIII−V族窒化物層。
  2. 前記基板と前記第一層との格子不整合ΔL1SSが、−1.9〜0%の範囲にあることを特徴とする請求項1記載のIII−V族窒化物層。
    (但し、 ΔL1SS=(L1−Ls)/Lsであり、Ls、L1は、それぞれZnO、及び第一層の格子定数を示し、その際、成長面内の格子定数に異方性がある場合は、ΔL1SSが最も小さい結晶軸方向の格子定数を採用する。)
  3. abs(ΔL21S)>abs(ΔL2SS
    の関係を満たすことを特徴とする請求項2記載のIII−V族窒化物層。
    (但し、ΔL21S=(L2−L1)/Ls
    ΔL2SS=(L2−Ls)/Ls
    であり、Ls、L1、L2は、それぞれZnO、第一層および第二層の格子定数を示し、その際、成長面内の格子定数に異方性がある場合は、ΔL1SSが最も小さい結晶軸方向の格子定数を採用する。abs( )は、( )内の値の絶対値を示す。)
  4. 前記第一層がGaNであり、前記第二層がInNであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のIII−V族窒化物層。
  5. 前記第一層および第二層の成長面方位が{1−100}面であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のIII−V族窒化物層。
  6. 前記ZnO基板が名目上のm面を主面として有し、この面に成長して形成されたことを特徴とする請求項5記載のIII−V族窒化物層。
  7. 厚みT(nm)が、
    5nm≦T≦10000nm
    を満足することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のIII−V族窒化物層。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のIII−V族窒化物層と、この層の上に形成されたその他の層を有することを特徴とする積層構造。
  9. ZnO基板上に、III−V族窒化物層を形成する方法において、
    (a)ZnO基板を用意する工程と、
    (b)第一層としてInGa1−aN(但し、aは、0≦a≦0.16を満たす数である)層を前記基板上に成長させる工程と、
    (c)前記第一層上に第二層としてInGa1−xN(但し、xは、0.5≦x≦1を満たす数である)層を成長させる工程と
    を有するIII−V族窒化物層の製造方法。
  10. 前記基板と前記第一層との格子不整合ΔL1SSが、−1.9〜0%の範囲にあることを特徴とする請求項9記載の製造方法。
    (但し、 ΔL1SS=(L1−Ls)/Lsであり、Ls、L1は、それぞれZnO、及び第一層の格子定数を示し、その際、成長面内の格子定数に異方性がある場合は、ΔL1SSが最も小さい結晶軸方向の格子定数を採用する。)
  11. abs(ΔL21S)>abs(ΔL2SS
    の関係を満たすことを特徴とする請求項10記載の製造方法。
    (但し、ΔL21S=(L2−L1)/Ls
    ΔL2SS=(L2−Ls)/Ls
    であり、Ls、L1、L2は、それぞれZnO、第一層および第二層の格子定数を示し、その際、成長面内の格子定数に異方性がある場合は、ΔL1SSが最も小さい結晶軸方向の格子定数を採用する。abs( )は、( )内の値の絶対値を示す。)
  12. 前記第一層がGaNであり、前記第二層がInNであることを特徴とする請求項11記載の製造方法。
  13. 前記ZnO基板が名目上のm面を主面として有し、
    前記第一層を、前記ZnO基板の名目上のm面上に、成長面方位を{1−100}面として成長させることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の製造方法。
  14. 前記第一層の基板界面の成長を室温〜500℃の成長温度で行い、
    前記第二層を室温〜1000℃の成長温度で形成することを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の製造方法。
  15. 前記第一層の成長速度が、10nm/時間より大きく、かつ500nm/時間未満の範囲から選ばれ、前記第二層の成長速度が、30nm〜5000nm/時間の範囲から選ばれることを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載の製造方法。
  16. 成長面に対して、III族元素を間欠的に供給することを特徴とする請求項9〜15のいずれかに記載の製造方法。
  17. 前記第一層および前記第二層を、パルスレーザ堆積法により成長させることを特徴とする請求項9〜16のいずれかに記載の製造方法。
  18. 請求項9〜17のいずれかに記載の製造方法で形成したIII−V族窒化物層の上に、さらに、少なくとも格子整合する層を含むその他の層を、VPE法、CVD法、MBE法、スパッタ法、蒸着法およびこれらの2つ以上の方法の組み合わせからなる群より選ばれる成膜方法で成膜する工程を有する積層構造の製造方法。
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