JP2006024897A - 窒化物半導体基板及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 窒化物半導体と良好な格子整合性を有する元基板を利用して、結晶欠陥の少ない高品質な窒化物半導体基板を簡易な方法で製造すること。
【解決手段】 第1の窒化物半導体結晶202を格子定数がa軸方向に0.30nmから0.36nmまで、c軸方向に0.48nmから0.58nmまでの化合物半導体元基板201の(ABCD)[A、B、C、Dはそれぞれ独立に−4〜4の整数。]面上に成長させ、次いで元基板を除去し、第1の窒化物半導体結晶上に第2の窒化物半導体結晶204を成長させる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、半導体発光素子、半導体レーザー、電子デバイス等の半導体素子に好適に用いられ、結晶欠陥が少なく、かつ良質な結晶性を備えた窒化物半導体基板の製造方法及び該製造方法で製造される窒化物半導体基板に関する。
近年、半導体発光素子、半導体レーザー、電子デバイス等の半導体素子における光記録等の高密度化、高解像度化の要求が高まり、短波長である紫外光から青色光を発光することが可能な窒化物半導体が注目を浴びている。
窒化物半導体は、バルク結晶成長が困難であるため、従来は、窒化物半導体とは異種材料であり、十分な耐熱性や化学的安定性を有する出発基板(例えば比較的低コストであるサファイア基板)上に窒化物半導体と格子整合性の良い窒化物半導体や金属酸化物からなるバッファ層を形成させ、さらにその上にSiO2等のマスク層を形成させることにより、結晶欠陥の少ない窒化物半導体結晶を成長させる製造方法が用いられてきた。しかしこの方法では、サファイア等の出発基板から直接成長した領域と、パターニングした領域上へ窒化物半導体結晶が成長し、隣同士の結晶がぶつかり合う直上にそのパターニングした形状と同じような周期で結晶欠陥が発生してしまうという問題があった。
一方、最近では、結晶欠陥の少ない窒化物半導体を形成する別の方法として、格子定数が窒化物半導体と非常に近似する格子整合性のよい酸化亜鉛をバッファ層として用いる方法が試みられている。例えば、互いに熱膨張係数の異なる複数の層からなる基板の構成層としてIII−V族窒化物半導体と格子整合性のよい酸化亜鉛を採用し、該基板上に良質のIII−V族窒化物半導体を成長させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、MOCVD法やHVPE法などにより1000℃にも及ぶ高温下でこの方法を実施すると、アンモニアその他の原料ガスが酸化亜鉛元基板を浸食するという問題があった。
上記問題を解決するため、基板主上面、裏面及び側面を含む基板表面全体を酸化膜や窒化膜で予めコーティングしておくことが提案されている(特許文献2参照)。しかし、この方法を採用すると、コーティングした酸化膜や窒化膜を除去する工程を別途設けなければならないため、プロセスが複雑になるという問題があった。
一方、サファイア基板等の異種基板上に、スパッタリングで形成した酸化亜鉛からなるバッファ層を介してIII族窒化物半導体をエピタキシャル成長させることにより、良質の窒化物半導体を得る方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。この方法によれば、酸化亜鉛バッファ層によって、サファイア基板等の異種基板とIII族窒化物半導体の格子不整合による結晶欠陥をある程度緩和することができる。しかしながら、サファイア基板の格子定数が酸化亜鉛バッファ層にも影響し、酸化亜鉛の格子間隔が広がってしまうため、結果的に酸化亜鉛バッファ層を形成しても十分に結晶欠陥を減らすことができず、高品質な窒化物半導体基板が得られないという問題があった。
以上に加えて従来は、サファイアやSiCに代表されるように(0001)面上に窒化物半導体を成長していた。しかしながら、(0001)面上に窒化物半導体を成長させるのに適した条件を見つけるのは困難であり、しかも、窒化物半導体を成長させるための最適条件は非常に狭い領域内にあるため、成長時にその領域内に条件を制御しなければならないという問題もあった。
特開2003−119100号公報(請求項11〜23、[0015]〜[0023]) 特許2897821号公報(請求項1、[0006]) 特開2003−37069号公報(請求項1及び5、[0006]、[0010])
本発明は、上記問題を解消するためになされたものであり、本発明の目的は、窒化物半導体と良好な格子整合性を有する元基板を利用し、結晶欠陥の少ない高品質な窒化物半導体基板を簡易な方法で製造することにある。
さらに、本発明の別の目的は、高品質な窒化物半導体基板を提供することにある。
本発明の目的は、第1の窒化物半導体結晶を格子定数がa軸方向に0.30nmから0.36nmまで、c軸方向に0.48nmから0.58nmまでの化合物半導体元基板の(ABCD)[A、B、C、Dはそれぞれ独立に−4〜4の整数。]面上に成長させ、次いで前記元基板を除去し、第1の窒化物半導体結晶上に第2の窒化物半導体結晶を成長させる工程を有する窒化物半導体基板の製造方法により達成される。
本発明の製造方法は、第1の窒化物半導体結晶上及び/又は第2の窒化物半導体結晶上に第3の窒化物半導体結晶を成長させる工程をさらに有していてもよい。本発明の製造方法では、<KLMN>[K、L、M、Nはそれぞれ独立に−2〜2の整数]方向に傾斜角0〜10度で傾斜している前記化合物半導体元基板表面上に第1の窒化物半導体結晶を成長させることが好ましい。また、第1の窒化物半導体結晶を成長させる化合物半導体元基板の面が、a面、m面、r面、c面及びこれらのいずれかと等価な面からなる群から選ばれる面であることが好ましい。
本発明の製造方法では、第1の窒化物半導体結晶を前記化合物半導体元基板上に1000℃以下の温度で成長することが好ましい。また、第1の窒化物半導体結晶を前記元基板上に成長する際の温度に対して±50℃の温度で前記元基板を除去することが好ましい。本発明の製造方法では、第1の窒化物半導体結晶を成長させた装置と同じ装置内で前記元基板を除去することができる。また、窒化物半導体結晶を成長させるために用いる第1の窒化物半導体結晶の面は機械研磨により表出させることができる。窒化物半導体結晶は気相成長により成長させることが好ましい。
また、本発明のもう一つの目的は、上記の本発明の製造方法により製造された窒化物半導体基板により達成される。
窒化物半導体と格子整合性の良い、格子定数がa軸方向に0.30nmから0.36nmまで、c軸方向に0.48nmから0.58nmまでの化合物半導体元基板上に窒化物半導体を成長させる本発明の製造方法によれば、格子欠陥が非常に少ない良質な結晶性を有する窒化物半導体基板を簡便に効率よく得ることができる。また、本発明の製造方法によれば、所望の窒化物半導体を成長させるための核となる窒化物半導体を成長させた後、前記元基板を同じ成長温度で窒化物半導体の原料ガスと作用させることにより容易に除去することができるため、簡便な方法で、しかも歩留まり良く窒化物半導体基板を得ることができる。さらに、c面以外の任意の面を容易に製造することができる。
本発明の製造方法は、第1の窒化物半導体結晶を格子定数がa軸方向に0.30nmから0.36nmまで、c軸方向に0.48nmから0.58nmまでの化合物半導体元基板の(ABCD)[A、B、C、Dはそれぞれ独立に−4〜4の整数。]面上に成長させる工程(以下「下地層形成工程」という)、次いで化合物半導体元基板を除去する工程(以下「元基板除去工程」という)、第1の窒化物半導体結晶上に第2の窒化物半導体結晶を成長させる工程(以下「第2の窒化物半導体結晶形成工程」という)を有する。そこで、本発明で使用する材料、本発明で実施する工程、本発明により製造される窒化物半導体基板について、以下に順を追って詳細に説明する。ただし、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施態様の例であり、本発明はこれらの内容に特定されない。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
[窒化物半導体の製造方法]
(元基板)
本発明の製造方法で用いられる元基板は、格子定数がa軸方向に0.30nmから0.36nmまで、c軸方向に0.48nmから0.58nmまでの化合物半導体からなる基板である。本発明で用いられる前記元基板は、ウルツァイト構造を有し、a軸格子間隔が通常0.324nm(3.24Å)±10%の範囲、好ましくは0.324nm(3.24Å)±4%の範囲、さらに好ましくは0.324nm(3.24Å)±2%の範囲である。また、c軸格子間隔は通常0.520nm(5.20Å)±3%の範囲、好ましくは0.520nm(5.20Å)±2%の範囲、さらに好ましくは0.520nm(5.20Å)±1%の範囲である。これらは窒化物半導体の格子定数と近似しており、例えばGaNとの酸化亜鉛の格子不整合はa軸方向が1.9%、c軸方向が0.5%である。このため、元基板として酸化亜鉛を使用すれば、窒化物半導体とは異種物質である元基板と窒化物半導体との界面に発生する格子欠陥を大幅に抑制することができる。なお、例えば、サファイア基板等の異種基板上にバッファ層として酸化亜鉛層を形成した基板を用いた場合には、サファイア基板等との格子定数の違いの影響を受けて酸化亜鉛のバッファ層の引張歪が増大して格子間隔が大きくなってしまうため、その上に良好な結晶性を有する窒化物半導体を成長することができない場合がある。
本発明で用いられる元基板としては、酸化亜鉛元基板、窒化ガリウム元基板、窒化アルミニウム元基板、窒化インジウム元基板等の化合物半導体元基板が挙げられ、好ましくは酸化亜鉛元基板である。格子定数がa軸方向に0.30nmから0.36nmまで、c軸方向に0.48nmから0.58nmまでという条件を満たすものであれば特に限定されず、前記元基板は2族や6族の元素を含む混晶であってもよい。酸化亜鉛又はこれに2族や6族の元素を含む混晶としては、市販の酸化亜鉛基板、又は例えば2族の混晶としてMg、Cd、Hg等を1種類以上ZnOに混入させたものや、6族の混晶としてS、Se、Te等を同じように1種類以上ZnOに混入させた基板が挙げられる。あるいは、2族と6族の両方に混入させてもよい。
さらに、窒化物基板の場合は、GaN、AIN、InN及びその混晶(AIxGa1-xyIn1-yN[0≦x≦1,0≦y≦1]や、(AIxGa1-xyIn1-yNにAs、P、Sbを1種類以上混入させてもよい。
これらの基板は例えばSiやGe等の4族元素やCr,Mn、Fe、Co、Ni等の金属元素を混入させた、電気的には導電性や絶縁性を問わず、いずれの元基板も用いることができる。本発明の元基板としては、酸化亜鉛基板又はこれに2族及び/又は6族の元素を含む混晶が好ましい。
本発明の製造方法では、格子定数がa軸方向に0.30nmから0.36nmまで、c軸方向に0.48nmから0.58nmまでの化合物半導体元基板の特定の面を用いて、第1の窒化物半導体結晶を成長させる。ここでいう特定の面は、(ABCD)[A、B、C、Dはそれぞれ独立に−4〜4の整数。]に限定される。(0001)面のようにA=B=C=0となる面は、窒化物半導体のような六方晶系の構造ではIII族原子のみが並んでいるような表面を持つため、結晶成長条件を見つけることが困難である。また、成長の最適条件が非常に狭い領域内にあるため条件制御が難しいという難点もあり、(0001)面をエッチングする際にも制御性がなく、プロセスを行う上で不都合な面があった。一方、A=B=C=0でない場合は、このような問題が軽減されるため比較的簡易に良好な成長条件を見つけることができる。
化合物半導体元基板として酸化亜鉛元基板を使用する場合、第1の窒化物半導体結晶を成長させる酸化亜鉛元基板の面としては、表面に2種以上の原子が並ぶ面を選択することが好ましい。中でも、III族原子とV族原子の原子比が均等にある面を選択することが好ましい。また、A、B、C、Dはそれぞれ独立に−4〜4の整数であるが、A、B、C、Dはそれぞれ独立に−3〜3の整数であることが好ましく、それぞれ独立に−2〜2の整数であることがより好ましい。
具体的には、酸化亜鉛元基板の面として、(11−20)面[a面]、(1−100)面[m面]、(1−102)面[r面]、(10−11)面、(11−21)面、(11−22)面などを例示することができる。中でも、a面、m面、r面及びこれらのいずれかと等価な面からなる群から選ばれる面を用いることが好ましい。
第1の窒化物半導体結晶を成長させるときには、特定の方向に傾斜している格子定数がa軸方向に0.30nmから0.36nmまで、c軸方向に0.48nmから0.58nmまでの化合物半導体元基板表面を用いることも好ましい。具体的には、<KLMN>[K、L、M、Nはそれぞれ独立に−2〜2の整数]方向に傾斜角0〜10度で傾斜している前記元基板表面上に第1の窒化物半導体結晶を成長させることが好ましい。表面に傾斜を設けることは、表面に原子オーダーの段差を形成することを意味している。このような段差を有する表面に第1の窒化物半導体結晶を成長させると、結晶は段差の隅から規則正しく横方向に成長する(ステップフロー成長:Applied Surface Science, 159-160 (2000) 398)。これによって、本来縦方向に伝播する転移は横方向に折れ曲がることになり、転移が表面に伝播しなくなる。さらに(0001)面[c面]の場合は横方向にステップフロー成長させることによって、c軸方向の格子定数が近いことから欠陥の少ない結晶が成長できる。したがって、表面に傾斜を設けた前記元基板を用いることによって、より良質な結晶性を有する窒化物半導体結晶を形成しやすくなる。
傾斜の方向としては、例えばa面の場合は<1−100>方向や<0001>方向、m面の場合は<11−20>方向や<0001>方向、r面の場合は<11−20>方向や<―1102>方向などを例示することができる。ステップフロー成長の方向は、m軸方向になることが好ましい。
格子定数がa軸方向に0.30nmから0.36nmまで、c軸方向に0.48nmから0.58nmまでの化合物半導体元基板は、その上に第1の窒化物半導体結晶を形成できる程度の厚みを有していることが必要とされる。前記元基板の厚みは、10μm以上あることが適当であり、100μm以上あることが好ましく、250μm以上であることがより好ましく、400μm以上あることがさらに好ましい。前記元基板の厚みの上限は特に制限はないが、厚すぎると除去するのに時間を要するため、2000μm以下であることが好ましく、1500μm以下であることがより好ましく、1000μm以下であることがさらに好ましい。
(窒化物半導体)
本発明の製造方法で形成する窒化物半導体の種類は、窒素を含有する半導体であれば特に制限はない。窒化物半導体としては、例えば、GaN、AlN、InxGa1-xN(0≦x≦1)、GaxAl1-xN(0≦x≦1)などが挙げられる。窒化物半導体は、単結晶からなることが好ましく、六方晶又は立方晶であることがさらに好ましく、特に一般式(AlxGa1-x)yIn1-yN(0≦x≦1、0≦y≦1)で表わされる結晶からなることが最も好ましい。
本発明の製造方法では、少なくとも第1の窒化物半導体結晶と第2の窒化物半導体結晶を形成する。第1の窒化物半導体結晶と第2の窒化物半導体結晶は、同一組成になるように形成してもよいし、異なる組成になるように形成してもよい。好ましいのは、第1の窒化物半導体結晶と第2の窒化物半導体結晶を同一組成となるように形成する場合である。
また、本発明の製造方法では、第3の窒化物半導体結晶を形成してもよい。第3の窒化物半導体結晶も、第1の窒化物半導体結晶及び/又は第2の窒化物半導体結晶と同一組成になるように形成してもよいし、異なる組成になるように形成してもよい。好ましいのは、第1の窒化物半導体結晶及び第2の窒化物半導体結晶と同一組成になるように形成する場合である。
また、同様の観点から第nの窒化物半導体結晶(nは4以上)を形成することもできる。
(下地層形成工程)
本発明の製造方法では、窒化物半導体形成用ガスを導入することにより化合物半導体元基板の一方の面上に第1の窒化物半導体結晶をエピタキシャル成長させて、化合物半導体元基板及び第1の窒化物半導体結晶を有する下地層を形成する。
下地層形成工程における第1の窒化物半導体結晶の成長法は、特に限定されず、例えば、分子線成長法(MBE)、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD法)、ハイドライド気相成長法(HVPE)、好ましくはハイドライド気相成長法(HVPE)、PLD法(Pulsed Laser Deposition法)を用いて、化合物半導体元基板上に直接第1の窒化物半導体結晶を形成することができる。エピタキシャル成長法の条件は、各種の方法で用いられる条件を適宜選択して用いることができる。また、窒化物半導体形成用ガスとしては、例えば、塩化水素、フッ化水素、臭化水素、ヨウ化水素などのハロゲン化水素ガス、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ヒドラジン、メチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン等の有機窒素化合物を挙げることができる。特に、ハイドライド気相成長法(HVPE)を用いて窒化物半導体を成長させる場合、窒化物半導体のIII族原料は塩化水素と反応したIII族金属塩化物(例えば、GaClx、AlClx、InClx、但し、x=1〜3であり、xの値は生成温度による。)として供給し、窒素原料はアンモニアとして供給することが好ましい。
下地層形成工程において第1の窒化物半導体結晶を成長させる際の温度を決定するに際しては、(i)第1の窒化物半導体結晶が以後の工程で良質な第2の窒化物半導体結晶を成長させるための成長起点となること、(ii)窒化物半導体結晶の形成時に塩化水素、フッ化水素、臭化水素、ヨウ化水素などのハロゲン化水素ガスや、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ヒドラジン、メチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン等の窒素化合物ガスを1000℃以上の高温下で例えば酸化亜鉛元基板に供給すると酸化亜鉛元基板が昇華して消失してしまうこと、及び、(iii)このような昇華は酸化亜鉛元基板の表面又は側面のほんの一部分が、使用ガスの高温雰囲気に晒されるだけでも容易に起こり得ることを考慮することが好ましい。具体的には、第1の窒化物半導体結晶を成長させる際の温度の上限は1000℃未満とすることが好ましく、900℃未満とすることがより好ましく、850℃以下とすることがさらに好ましい。また下限は、500℃以上とすることが好ましく、650℃以上とすることがより好ましい。
第1の窒化物半導体結晶を成長させる際の温度を1000℃未満と比較的低温にし、かつその温度を維持した状態で、第1の窒化物半導体結晶を適度な膜厚まで成長させることにより、元基板が過度に昇華して消失することを防ぐことができる。また、その後に行う元基板除去工程や第2の窒化物半導体結晶形成工程の間に第1の窒化物半導体結晶が割れることがないため、格子欠陥の少ない良好な第2の窒化物半導体結晶を続けて形成することができる。
第1の窒化物半導体結晶は、元基板を除去した後に第2の窒化物半導体結晶を成長させるための基板としての役割を果たす。したがって、第1の窒化物半導体結晶は、元基板の除去条件や製造工程全般を通した温度変化に耐え、安定した状態を維持しうるものでなければならない。このため、第1の窒化物半導体結晶は、通常30〜500μm、好ましくは50〜200μmの厚みを有するように形成することが望ましい。
(元基板除去工程)
次に、本発明の製造方法では、前記窒化物半導体形成用ガスに含まれている反応性ガスと前記化合物半導体元基板とを反応させることにより、前記下地層から前記元基板を除去する元基板除去工程を行う。本明細書において「反応性ガス」とは、窒化物半導体形成用ガスに含まれているガスのうち、前記化合物半導体元基板と反応して該化合物半導体元基板を昇華させることができるガスをいう。
例えば酸化亜鉛元基板は、第1の窒化物半導体結晶の形成後、第1の窒化物半導体結晶の形成時に使用した窒化物半導体形成用ガスに含まれている反応性ガスと反応させることにより容易に除去することができる。下地層を構成する酸化亜鉛元基板と反応性ガスは激しく反応して酸化亜鉛元基板が昇華消失し、その結果、第1の窒化物半導体結晶のみが残存する。
元基板除去工程における反応を効率よく行うために、第1の窒化物半導体結晶を成長させた装置と同じ装置内で、下地層に反応性ガスを導入することが好ましい。具体的には、有機窒素化合物ガスを分圧で50%以下流すことが好ましく、20%以下流すことがより好ましく、10%以下流すことがさらに好ましい。
本発明の元基板除去工程によれば、従来のように窒化物半導体結晶の成長後に反応炉からいったん取り出して冷却した後、酸等によるエッチングや研磨、レーザー照射スライシング等の別の工程を行う必要がない(もっともこれらの除去方法を使用してもよい)。このため、本発明の製造方法を用いれば、下地層形成工程から連続して容易に元基板を除去することができる。また、割れやクラックの心配がない高質な窒化物半導体基板を、短時間で効率よく製造することができる。
元基板を除去するために使用される反応性ガスとしては、塩化水素、フッ化水素、臭化水素、ヨウ化水素などのハロゲン化水素ガスや、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ヒドラジン、メチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン等の窒素化合物ガスや、水素を挙げることができる。中でも塩化水素ガス及び/又はアンモニアガスを用いることが好ましく、低コスト及び安全上の観点からアンモニアガスを用いることがさらに好ましい。
元基板除去工程は、下地層形成工程における温度に近い温度で実施することが好ましい。元基板除去工程の温度と下地層形成工程の温度との差は100℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましく、0℃であることが特に好ましい。また、元基板除去工程の温度は500℃以上であることが好ましく、700℃以上であることがより好ましく、800℃以上であることがさらに好ましい。
(第2の窒化物半導体結晶形成工程)
本発明の製造方法は、前記第1の窒化物半導体結晶の上に第2の窒化物半導体結晶を形成する工程を有する。第2の窒化物半導体結晶は、第1の窒化物半導体結晶の一つの面上にのみ形成してもよいし、複数の面上に形成してもよい。また、第2の窒化物半導体結晶を成長させる前に、第2の窒化物半導体結晶を成長させるために用いる第1の窒化物半導体結晶の面を機械研磨により表出させておくことができる。機械研磨は、具体的にはラッピングをするなどの方法により行うことができる。このような機械研磨を行えば、周辺部に異常成長した結晶を容易に除去できるという利点がある。
この第2の窒化物半導体結晶形成工程は、化合物半導体元基板を除去しながら行ってもよいし、化合物半導体元基板を除去した後に行ってもよい。本明細書において「化合物半導体元基板を除去しながら」とは、化合物半導体元基板の除去を行うと共に、第2の窒化物半導体結晶のエピタキシャル成長を行うことを意味する。すなわち、第1の窒化物半導体結晶の化合物半導体元基板側と反対側の表面上に第2の窒化物半導体結晶をエピタキシャル成長させると共に、第1の窒化物半導体結晶の化合物半導体元基板側から元基板を除去することを意味する。
第2の窒化物半導体結晶の成長方法として、第1の窒化物半導体結晶と同様、各種の成長方法を用いることができるが、窒化物半導体結晶の高速成長が可能なHVPE法を用いることが好ましい。第2の窒化物半導体結晶は、化合物半導体元基板上に成長した格子欠陥の少ない良質な第1の窒化物半導体結晶上に成長し、かつ厚膜を形成するため、良好な結晶状態及び表面性が伝播されることにより、結晶中の格子欠陥は更に減少し、かつ高速成長を行っても極めて良好な結晶を形成することができる。結晶成長時の温度は、950℃以上が好ましく、1000℃以上がより好ましく、1050℃以上がさらに好ましい。また、第2の窒化物半導体結晶は、半導体素子形成のため厚膜に形成することが必要であり、その厚みは通常100μm以上、好ましくは400μm以上になるように形成することが望ましい。厚みの上限は特に制限されないが、例えば2mm以下、好ましくは1mm以下にすることができる。第2の窒化物半導体結晶の成長方向は第1の窒化物半導体結晶の成長方向と同じであっても異なっていてもよい。
(その他の工程1:第3の窒化物半導体結晶形成工程)
本発明の製造方法は、さらに第3の窒化物半導体結晶を形成する工程を有していてもよい。第3の窒化物半導体結晶形成工程は、基本的に第2の窒化物半導体結晶成長工程と同じ要領で実施することができる。第3の窒化物半導体結晶は、第1の窒化物半導体結晶の上に形成してもよいし、第2の窒化物半導体結晶の上に形成してもよい。また、第1及び第2の窒化物半導体結晶の上に形成してもよい。第3の窒化物半導体結晶の成長方向は、第1及び第2の窒化物半導体結晶の成長方向と同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、第1及び第2の窒化物半導体結晶の成長方向とほぼ直交する方向に第3の窒化物半導体結晶を成長させてもよい。
第3の窒化物半導体結晶の厚みは、通常100μm〜2mmであり、好ましくは200μm〜1mmである。第3の窒化物半導体結晶を成長させる場合は、第2の窒化物半導体結晶の膜厚を比較的薄くしておき、第3の窒化物半導体結晶を比較的厚くしてもよい。
また同様の観点から、本発明の製造方法は、第nの窒化物半導体結晶(nは4以上)を形成する工程を有していてもよい。
(その他の工程2:初期窒化物半導体結晶形成工程)
本発明の製造方法では、化合物半導体元基板の一方の面上に第1の窒化物半導体結晶をエピタキシャル成長させる前に、初期窒化物半導体結晶を形成する工程を実施してもよい。この初期窒化物半導体結晶形成工程を実施した場合は、化合物半導体元基板の上に形成された初期窒化物半導体結晶の上にさらに第1の窒化物半導体結晶を形成する。
例えば化合物半導体元基板として酸化亜鉛元基板を使用した場合、酸化亜鉛と窒化物半導体とは結晶格子間の間隔の差がa軸方向に1.6%、c軸方向に0.5%と近接しているが、完全に格子整合しているわけではない。このため、酸化亜鉛元基板と第1の窒化物半導体結晶との間に、例えばGaxIn1-xN(0.6≦x<1)やGaNyAs1-y(0.6≦y<1)からなる初期窒化物半導体結晶を挿入すれば、結晶格子間の間隔の差をより緩やかに変えて行くことができるため格子欠陥がより発生しにくくなる。挿入する初期窒化物半導体結晶は単一の原子組成を有する結晶であってもよいし、厚み方向で原子組成が段階的に変化するものであってもよい。原子組成が段階的に変化する初期窒化物半導体結晶を挿入する場合は、酸化亜鉛元基板側に酸化亜鉛の格子定数と近くなるような原子組成を採用し、第1の窒化物半導体結晶側に窒化物半導体の構成定数と近くなるような原子組成を採用することが好ましい。初期窒化物半導体結晶からなる層内における原子組成の変化は、厚み方向に一定の割合で変化するものであってもよいし、ステップ状に変化するものであってもよい。
初期窒化物半導体結晶形成工程における初期窒化物半導体結晶の成長は、下地層形成工程における第1の窒化物半導体結晶の成長方法とは異なる方法で行う。例えば、分子線エピタキシー法(MBE法)、有機金属気相成長法(MOCVD法)、PLD法(Pulsed Laser Deposition;J. Cryst. Growth,237/239(2002)1153)、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD法)、ハイドライド気相成長法(HVPE)を挙げることができる。好ましいのはMBE法とPLD法であり、特に好ましいのはMBE法である。
MBE法は、成長速度は遅いが、薄膜形成において単分子層レベルの精度で結晶成長を制御できるため、表面性に優れた層状の窒化物半導体結晶が得られる。また、MBE法は、比較的低温で結晶成長できるため、化合物半導体元基板は初期窒化物半導体結晶及び/又は第1の窒化物半導体結晶の形成時に使用されるガスによる作用を受けることなく安定な状態を維持しうる。このように良好な表面性と結晶性を有する初期窒化物半導体結晶を形成することにより、初期窒化物半導体結晶上に成長させる第1の窒化物半導体結晶の結晶状態や表面状態を良好なものとすることができ、さらにその上に第2の窒化物半導体結晶を成長させることにより、高品質な窒化物半導体基板が得られる。
一方、PLD法はさらに低温(例えば室温)でも成長させることができ、アンモニアガスを使用しないことから、酸化亜鉛のような反応性の高い基板を使用する場合には有利である。
初期窒化物半導体結晶形成工程において形成する初期窒化物半導体結晶の厚みは、第1の窒化物半導体結晶が安定して良質な結晶性や表面性を備えることができれば特に限定されない。MBE法の成長速度が1〜2μm/hと遅いことを考慮すれば、生産性の観点から、通常5.0μm以下、好ましくは1.0μm以下とする。
初期窒化物半導体結晶形成工程を実施した後に、下地層形成工程、元基板除去工程、第2の窒化物半導体結晶形成工程を行う場合、第2の窒化物半導体結晶は第1の窒化物半導体結晶の上に形成してもよいし、初期窒化物半導体結晶の上に形成してもよい。例えば、元基板を除去しながら、又は除去後に、第1の窒化物半導体結晶の元基板側とは反対側の面上に第2の窒化物半導体結晶をエピタキシャル成長させることができる。また、元基板を除去した後、元基板を除去した側から初期窒化物半導体結晶上に第2の窒化物半導体結晶を形成することもできる。
なお、本願において化合物半導体元基板、第1の窒化物半導体結晶、第2の窒化物半導体結晶の相互の位置関係を説明するときに「Aの面上にBを形成する」という表現を用いているが、この表現はAの面上に直接Bが形成されている場合と、Aの面上に初期窒化物半導体結晶が形成されておりさらに該初期窒化物半導体結晶の面上にBが形成されている場合の両方を含む意味で用いられている。
(その他の工程3:第1の窒化物半導体結晶の周辺部分除去工程)
本発明の製造方法では、第1の窒化物半導体結晶の成長後に、該第1の窒化物半導体結晶の周辺部分を除去する工程をさらに実施してもよい。
本発明の下地層形成工程を実施すると、第1の窒化物半導体結晶が化合物半導体元基板の一方の面上のみならず側面にも覆い被さるように成長する場合がある。このようにして形成された第1の窒化物半導体結晶の周辺部分は、元基板除去工程を経てもそのままの形状で維持される。このため、このような周辺部分を有する第1の窒化物半導体結晶に対して第2の窒化物半導体結晶を形成すると、好ましくない結晶成長が進行したり、望ましくない形状をした窒化物半導体基板が得られることがある。そこで、第2の窒化物半導体結晶を形成する前に、あらかじめ第1の窒化物半導体結晶の周辺部分を除去しておくことが好ましい。
第1の窒化物半導体結晶の周辺部分を除去する方法は特に制限しないが、ダイシング、スクライブ、ラッピング、その他研磨などの方法を挙げることができる。好ましいのはダイシングである。
(その他の工程4:異常成長した窒化物半導体結晶除去工程)
本発明の製造方法では、第2の窒化物半導体結晶を形成した後に、塩化水素ガスを流すことにより、周辺に異常成長した窒化物半導体結晶を除去する工程をさらに実施してもよい。
第2の窒化物半導体結晶を形成する際には、望ましくない箇所や意図しない部分に窒化物半導体結晶が成長することがある。このような窒化物半導体結晶を塩化水素ガスを流すことによって除去すれば、目的とする好ましい窒化物半導体基板を得ることができる。塩化水素ガスを流す量や時間は、異常成長した窒化物半導体結晶の量などに応じて適宜決定することができる。
その他、本発明の目的を逸脱しない範囲内で、本発明の製造方法では上記以外の工程をさらに実施することができる。
[窒化物半導体基板]
本発明の窒化物半導体基板は、上記の本発明の製造方法により製造された窒化物半導体基板である。本発明の窒化物半導体基板は、第1の窒化物半導体結晶と第2の化合物半導体結晶を含む基板である。第1の窒化物半導体結晶の厚みは、通常30〜500μmであり、好ましくは50〜200μmである。第1の窒化物半導体結晶の厚みが50〜200μmあれば、製造工程全般を通して安定した状態を維持することができる。また、第2の窒化物半導体結晶の厚みは、通常100μm〜2mmであり、好ましくは400〜1mmである。第2の窒化物半導体結晶の厚みが100μm〜2mmであれば、半導体素子として窒化物半導体基板を応用できる。
また、本発明の窒化物半導体基板は、第3の窒化物半導体結晶を有していてもよい。第3の窒化物半導体結晶は、第1の窒化物半導体結晶上に形成されていてもよいし、第2の窒化物半導体結晶上に形成されていてもよいし、第1及び第2の窒化物半導体結晶上に形成されていてもよい。各窒化物半導体結晶を層状に形成する場合は、第1、第2及び第3の窒化物半導体結晶の層の厚み方向が同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、第1及び第2の窒化物半導体結晶の層の厚み方向が、第3の窒化物半導体結晶の層の厚み方向とほぼ直交するように構成されていてもよい(図1(e)参照)。このような構成を採用すれば、例えばm面方向にファセットが形成されるように成長が進んでいるので、表面平坦性が向上し、その結晶は既に格子歪みが緩和された結晶であるため、その上に成長するとさらに結晶欠陥が少ない結晶が成長できるという利点がある。第3の窒化物半導体結晶の厚みは、通常100μm〜2mmであり、好ましくは200μm〜1mmである。本発明の窒化物半導体基板は、第3の窒化物半導体結晶と同様の観点から第nの窒化物半導体結晶(nは4以上)を有するものであってもよい。
さらに、本発明の窒化物半導体基板は、初期窒化物半導体結晶を有していてもよい。初期窒化物半導体結晶は、第1の窒化物半導体結晶と第2の化合物半導体結晶の間に形成されていてもよいし、第1の窒化物半導体結晶上に表面層として形成されていてもよい。初期窒化物半導体結晶の厚みは、通常0.1〜5.0μmであり、好ましくは0.3〜1.0μmである。初期窒化物半導体結晶の厚みが0.1〜5.0μmであれば、その上に成長させる第1及び第2の窒化物半導体結晶の表面性や結晶性をより良好なものとすることができる。
本発明の窒化物半導体基板は、そのまま使用してもよいし、さらに層を積層したり、物体に装着したりしたうえで使用してもよい。本発明の窒化物半導体基板は、結晶欠陥が少なく、かつ良質な結晶性を備えているため、例えば半導体発光素子、半導体レーザー、電子デバイス等の半導体素子として好適に用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(実施例1)
本実施例1を図1に基づいて説明する。
表面が(0001)からなる厚み500μmの酸化亜鉛元基板101を用意し、あらかじめ有機酸で洗浄することにより前処理した後、該酸化亜鉛元基板101をHVPE装置に設置し、850℃に昇温した後、GaとHClの反応生成物であるGaClとNH3ガス(以下原料ガスという)を同時に導入して約2時間エピタキシャル成長させることにより、第1のGaN層102を約60μm堆積させて下地層103を形成した。
次に、下地層103をそのままの温度に維持したまま、NH3ガスを分圧で10%程度流すことによって酸化亜鉛元基板101をNH3ガスと反応させて昇華消失させた。
その後いったん温度を下げて、酸化亜鉛元基板101が消失した下地層103をHVPE炉から取り出し、図1(c)に示すように周辺に回り込んだGaNの結晶をダイシングにより除去して平板状にし、再びHVPE炉に入れた。温度を1050℃に昇温し、残った第1のGaN層102上に原料ガスを導入して約8時間エピタキシャル成長させることにより、第2のGaN層104を約2mm形成させ、GaN結晶105を得た。
得られたGaN結晶は(11−20)面に相当する面が非常に平坦に成長されていた。その面上にHVPE炉で1050℃に昇温し、約4時間GaNを成長することによってさらに第3のGaN層106を約1mm形成させ窒化物半導体基板を得た。第3のGaN層106の表面は非常に平坦になっており、(0001)面に成長したときに比べて機械研磨の手間が大きく削減された。
(実施例2)
本実施例2を図2に基づいて説明する。
表面が(1−100)面からなる厚み500μmの酸化亜鉛元基板201を用意し、あらかじめ有機酸で洗浄することにより前処理した後、該酸化亜鉛元基板201をHVPE装置に設置し、850℃に昇温した後、原料ガスを導入して約2時間エピタキシャル成長させることにより、第1のGaN層202を約60μm堆積させて下地層203を形成した。
次に、下地層203をそのままの温度に維持したまま、NH3ガスを分圧で10%程度流すことによって酸化亜鉛元基板201をNH3ガスと反応させて昇華消失させた。
その後、温度を1050℃に昇温し、第1のGaN層202上に原料ガスを導入して約1時間エピタキシャル成長させることにより、第2のGaN層204を約500μm形成させ、窒化物半導体基板を得た。得られたGaNの表面モフォロジーは非常に良好で、透明な結晶が得られた。
(実施例3)
表面が(0001)面からなる酸化亜鉛基板の代わりに、表面が(0001)面から<1−100>方向に2度傾斜した基板を使用した以外は実施例1と同様の工程を実施してGaN結晶を得た。m軸方向へのステップフロー成長の効果で、表面モフォロジーはさらに改善された。
また、さらに(11−20)面から<1−100>方向へ傾斜した基板でも同じように表面モフォロジーの改善が見られた。
本発明の製造方法によれば、結晶欠陥が少なくて良質な結晶性を備えた窒化物半導体基板を、簡便に効率よく製造することができる。このため、本発明は工業的な利用性が高い。
また、本発明の製造方法で製造された窒化物半導体基板は、結晶欠陥が少なく、かつ良質な結晶性を備えているため、半導体発光素子、半導体レーザー、電子デバイス等の半導体素子に好適に用いることができる。
実施例1における製造工程の概略を示す概略説明図である。 実施例2における製造工程の概略を示す概略説明図である。
符号の説明
101 酸化亜鉛元基板
102 第1のGaN層(第1の窒化物半導体結晶)
103 下地層
104 第2のGaN層(第2の窒化物半導体結晶)
105 GaN結晶
106 第3のGaN層(第3の窒化物半導体結晶)
201 酸化亜鉛元基板
202 第1のGaN層(第1の窒化物半導体結晶)
203 下地層
204 第2のGaN層(第2の窒化物半導体結晶)

Claims (10)

  1. 格子定数がa軸方向に0.30nmから0.36nmまで、c軸方向に0.48nmから0.
    58nmまでの化合物半導体元基板上に第1の窒化物半導体結晶を成長させ、次いで前記元基板を除去し、第1の窒化物半導体結晶上に第2の窒化物半導体結晶を成長させる工程を有する窒化物半導体基板の製造方法において、
    第1の窒化物半導体結晶を前記元基板の(ABCD)[A、B、C、Dはそれぞれ独立に−4〜4の整数。]面上に成長させることを特徴とする窒化物半導体基板の製造方法。
  2. 第1の窒化物半導体結晶上及び/又は第2の窒化物半導体結晶上に第3の窒化物半導体結晶を成長させる工程をさらに有する請求項1に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
  3. <KLMN>[K、L、M、Nはそれぞれ独立に−2〜2の整数]方向に傾斜角0〜10度で傾斜している前記化合物半導体元基板表面上に第1の窒化物半導体結晶を成長させることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
  4. 第1の窒化物半導体結晶を成長させる前記化合物半導体元基板の面が、a面、m面、r面、c面及びこれらのいずれかと等価な面からなる群から選ばれる面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
  5. 第1の窒化物半導体結晶を前記化合物半導体元基板上に1000℃以下の温度で成長することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
  6. 第1の窒化物半導体結晶を前記化合物半導体元基板上に成長する際の温度に対して±50℃の温度で前記元基板を除去することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
  7. 第1の窒化物半導体結晶を成長させた装置と同じ装置内で前記化合物半導体元基板を除去することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
  8. さらに窒化物半導体結晶を成長させるために用いる第1の窒化物半導体結晶の面を機械研磨により表出させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
  9. 窒化物半導体結晶を気相成長により成長することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法により製造された窒化物半導体基板。
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Ko et al. Two-step epitaxial lateral overgrowth of GaN

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