JPWO2006083030A1 - 脂肪酸の製造方法および脂肪酸の塩結晶 - Google Patents
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Abstract
カプシノイドの構成成分である脂肪酸を効率良くかつ簡便に製造しうる、工業的に適した製造方法を提供すること。更に、脂肪酸の精製を容易に行うことができ、かつ製造した脂肪酸を安定に保存することができる、脂肪酸の塩結晶を提供すること。下記一般式(2):で表されるグリニア試薬を、銅触媒の存在下、−5℃〜10℃にて、下記一般式(3):で表されるハロカルボン酸エステルとのクロスカップリング反応に供し、下記一般式(4):で表されるカルボン酸エステルを生成する工程と、該カルボン酸エステルを加水分解する工程と、を有することを特徴とする、下記一般式(5):で表される脂肪酸の製造方法(式中、R、R1、R2、A、X、X’、m、nおよびpは、明細書中で定義した通りである)。
Description
本発明は、カプシノイド及びカプサイシン類の構成成分であるトランス−8−メチル−6−ノネン酸(trans−8−Methyl−6−nonenoic Acidまたは8−Methylnon−trans−6−enoic Acid)、8−メチルノナン酸(8−Methylnonanoic acid)或は7−メチルオクタン酸(7−Methyloctanoic acid)等の脂肪酸の新規合成法に関するものである。
トウガラシ(Capsicum annuum L.)の辛味成分であるカプサイシン((E)−N−[(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−メチル]−8−メチル−6−ノネンアミド)は、肥満抑制作用、エネルギー代謝亢進などの生理活性を有するが、辛味が非常に強いために使用量が限定され、食品添加物や医薬品としての用途を妨げていた。
近年、矢澤らは、タイ産の強辛味品種CH−19から選抜した無辛味果実を長年かけて固定化した無辛味品種トウガラシCH−19甘を開発し、報告した(S.Yazawa et al.,T.J.Japan Soc.Hort.Sci.1989,58,601−607.)。
CH−19甘は、辛味の無いカプシノイドを多量に含み、カプシノイドとしては、カプシエイト、ジヒドロカプシエイト、ノルジヒドロカプシエイトが知られており、以下の化学式を有する。
これらカプシノイドはカプサイシンと同様の生理活性を有していながら、辛味が無いために食品添加物や医薬品として利用できる可能性がある。しかし天然物から高純度カプシノイドを大量に得る抽出技術には限界があった。そこで、化学合成法により、安価に大量のカプシノイドを生産するには、その構成成分である脂肪酸を工業的に製造する必要がある。
カプシノイドの構成成分である脂肪酸は、辛味物質カプサイシン類の脂肪酸と同一であることから、その製造法が古くから検討されて来た。
これ等の方法を大まかに分類すると、1)トランス二重結合を持つ、トランス−8−メチル−6−ノネン酸の合成法と、2)飽和体である、8−メチルノナン酸や7−メチルオクタン酸の合成法とに分類できる。これらを更に分類すると、1−1)クライゼン転位反応等により立体選択的にトランス二重結合部分を構築した後に、増炭素反応によってトランス−8−メチル−6−ノネン酸を合成する方法、1−2)Wittig反応等によりまずシス−8−メチル−6−ノネン酸を合成して、これをトランス−8−メチル−6−ノネン酸に異性化する方法、2−1)シス或はトランスの8−メチル−6−ノネン酸を接触還元して飽和体の8−メチルノナン酸を合成する方法、及び2−2)炭素−炭素結合を形成することにより、8−メチルノナン酸を形成する方法に分類される。
1−1)の方法としては次の方法が知られている。(1)別途、立体選択的に合成した5−メチルヘキシ−trans−3−エン酸とグルタル酸モノメチルエステルとの電解合成によってトランス−8−メチル−6−ノネン酸を得る方法(高橋ら,薬学雑誌,96(2),137(1976).)。この方法は収率6%と実用性に乏しい。(2)2,3−ジクロロテトラヒドロピランと2−プロピルマグネシウムブロミドとの反応で得た3−クロロ−2−イソプロピルテトラヒドロピランをナトリウムで開環して(E)−6−メチル−4−ヘプテン−1−オールを得、これを3段階で増炭してトランス−8−メチル−6−ノネン酸を得る方法(I.Jezo,Chemicke Zvesti,29(5),714(1975).、D.J.Voaden et al.,J.Agric.Food Chem.,32,796(1984).)。この方法は煩雑でかつ多段階の操作を要する。(3)イソブチルアルデヒドとビニルマグネシウムブロミドから得た4−メチル−1−ペンテン−3−オールのクライゼン転移反応によって、6−メチルヘプト−trans−4−エン−1−オール或は(E)−エチル 6−メチル−4−ヘプテノエートを得、これから4段階を経てトランス−8−メチル−6−ノネン酸を得る方法(O.P.Vig et al.Indian Journal of Chemistry,17B,June,558(1979).、H.Kaga et al.,Tetrahedron,52(25),8451(1996).)。やはりこの方法も各段階での蒸留など、煩雑な多段階の操作を必要とする。
1−2)の方法としては次の方法が知られている。(1)ε−カプロラクトンから2段階でメチル 5−オキソ−ヘキサノエートを得る。これとイソブチルトリフェニルホスホニウムブロミドとのWittig反応或はイソブチルフェニルスルホンとのKocienski−Lythgo−Julia反応によってシスとトランスの混ざったメチル 8−メチル−6−ノネノエートを得て、3段階の異性化法によって、シス:トランス=5:95の8−メチル−6−ノネン酸メチルエステルを得る方法(P.M.Gannett et al.,J.Org.Chem.,53,1064(1988).)。この方法による異性化反応は30%と収率が低い。(2)6−ブロモヘキサン酸とトリフェニルホスフィンから得られる(6−カルボキシヘキシル)トリフェニルホスホニウムブロミドとイソブチルアルデヒドとのWittig反応により、シス体が主である8−メチル−6−ノネン酸を得、これにNaNO2とHNO3とを反応させてトランス体が主である8−メチル−6−ノネン酸を得る方法(H.Kaga et al.,J.Org.Chem.,54,3477(1989).)。この反応で大量に副生するトリフェニルホスフィンオキシドの除去は大変煩雑である。また、この異性化法で得られる脂肪酸はシス:トランス=1:8であり、異性体の純度は満足の行くものでは無い。(3)ε−カプロラクトンをDIBALで還元してラクトールにした後に、イソブチルトリフェニルホスホニウムブロミドとWittig反応を行い、シス体が主である1−ヒドロキシ−8−メチルノン−6−エンを得る。これにNaNO2とHNO3とを反応させて異性化させた後に、CrO3で酸化する方法(H.Kaga et al.,Biosci.Biotech.Biochem.,56(6),946(1992).)。この異性化条件も前掲論文と同じであり、得られるアルコールはシス:トランス=11:89で、満足のいく純度では無い。
2−1)の方法としては、1−2)の方法の途中で得られるシス体の二重結合を接触還元等で還元する方法が報告されている(J.Ackroyd et al.,J.Chem.Research,Synopses,344(1987).)。しかしながら、不飽和体の合成において種々の問題が存在するのは、上述の通りである。
2−2)の方法としては次の方法が知られている。(1)シクロヘキサノンから得られるメチル 6−ブロモヘキサノエートとイソブチルマグネシウムブロミドとを、銅触媒(Li2CuCl4)の存在下でグリニアカップリング反応に付し、メチル 8−メチルノナノエートを得る。これを加水分解して8−メチルノナン酸を得る方法(S.A.Hassarajani et al.,J.Chem.Research,Synopses,219(1993).)。この方法では1.5当量のグリニア試薬を用いるにもかかわらず、収率は66.6%と低く、更に、−78℃の低温反応条件が必要である。(2)ヘキサン−1,6−ジオールから得られる1−ブロモ−6−テトラヒドロピラニルオキシヘキサンとイソブチルマグネシウムブロミドとを銅触媒(Li2CuCl4)の存在下にグリニアカップリング反応に付して8−メチルノナノールを得、これを二クロム酸ピリジニウム(PDC)によって酸化し、8−メチルノナン酸を得る方法(S.A.Hassarajani et al.,Indian Journal of Chemistry,34B,May,429(1995).)。この方法でも1.5当量のグリニア試薬を用いているにもかかわらず、カップリングの収率は58%と低く、更にPDC酸化という後処理が煩雑な酸化反応が必要である。
一方、これ等の脂肪酸は常温で油状物質であるために、その精製は、もっぱら、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製又は/及び減圧蒸留により行なわれ、塩基との塩結晶に導いて精製した例は無い。
また、二重結合を持つ脂肪酸である8−メチル−6−ノネン酸のシス体とトランス体の分離に成功した例は無い。カプサイシンはカプシノイドと異なり結晶性であることから、カプサイシンに導いた後であれば、シス体脂肪酸由来の化合物は再結晶で除去できるとの報告がある(H.Kaga et al.,J.Org.Chem.,54,3477(1989).)。しかし、カプシノイドは油状であることから、最終製品において、結晶化で精製を行うことは出来ない。
近年、矢澤らは、タイ産の強辛味品種CH−19から選抜した無辛味果実を長年かけて固定化した無辛味品種トウガラシCH−19甘を開発し、報告した(S.Yazawa et al.,T.J.Japan Soc.Hort.Sci.1989,58,601−607.)。
CH−19甘は、辛味の無いカプシノイドを多量に含み、カプシノイドとしては、カプシエイト、ジヒドロカプシエイト、ノルジヒドロカプシエイトが知られており、以下の化学式を有する。
これらカプシノイドはカプサイシンと同様の生理活性を有していながら、辛味が無いために食品添加物や医薬品として利用できる可能性がある。しかし天然物から高純度カプシノイドを大量に得る抽出技術には限界があった。そこで、化学合成法により、安価に大量のカプシノイドを生産するには、その構成成分である脂肪酸を工業的に製造する必要がある。
カプシノイドの構成成分である脂肪酸は、辛味物質カプサイシン類の脂肪酸と同一であることから、その製造法が古くから検討されて来た。
これ等の方法を大まかに分類すると、1)トランス二重結合を持つ、トランス−8−メチル−6−ノネン酸の合成法と、2)飽和体である、8−メチルノナン酸や7−メチルオクタン酸の合成法とに分類できる。これらを更に分類すると、1−1)クライゼン転位反応等により立体選択的にトランス二重結合部分を構築した後に、増炭素反応によってトランス−8−メチル−6−ノネン酸を合成する方法、1−2)Wittig反応等によりまずシス−8−メチル−6−ノネン酸を合成して、これをトランス−8−メチル−6−ノネン酸に異性化する方法、2−1)シス或はトランスの8−メチル−6−ノネン酸を接触還元して飽和体の8−メチルノナン酸を合成する方法、及び2−2)炭素−炭素結合を形成することにより、8−メチルノナン酸を形成する方法に分類される。
1−1)の方法としては次の方法が知られている。(1)別途、立体選択的に合成した5−メチルヘキシ−trans−3−エン酸とグルタル酸モノメチルエステルとの電解合成によってトランス−8−メチル−6−ノネン酸を得る方法(高橋ら,薬学雑誌,96(2),137(1976).)。この方法は収率6%と実用性に乏しい。(2)2,3−ジクロロテトラヒドロピランと2−プロピルマグネシウムブロミドとの反応で得た3−クロロ−2−イソプロピルテトラヒドロピランをナトリウムで開環して(E)−6−メチル−4−ヘプテン−1−オールを得、これを3段階で増炭してトランス−8−メチル−6−ノネン酸を得る方法(I.Jezo,Chemicke Zvesti,29(5),714(1975).、D.J.Voaden et al.,J.Agric.Food Chem.,32,796(1984).)。この方法は煩雑でかつ多段階の操作を要する。(3)イソブチルアルデヒドとビニルマグネシウムブロミドから得た4−メチル−1−ペンテン−3−オールのクライゼン転移反応によって、6−メチルヘプト−trans−4−エン−1−オール或は(E)−エチル 6−メチル−4−ヘプテノエートを得、これから4段階を経てトランス−8−メチル−6−ノネン酸を得る方法(O.P.Vig et al.Indian Journal of Chemistry,17B,June,558(1979).、H.Kaga et al.,Tetrahedron,52(25),8451(1996).)。やはりこの方法も各段階での蒸留など、煩雑な多段階の操作を必要とする。
1−2)の方法としては次の方法が知られている。(1)ε−カプロラクトンから2段階でメチル 5−オキソ−ヘキサノエートを得る。これとイソブチルトリフェニルホスホニウムブロミドとのWittig反応或はイソブチルフェニルスルホンとのKocienski−Lythgo−Julia反応によってシスとトランスの混ざったメチル 8−メチル−6−ノネノエートを得て、3段階の異性化法によって、シス:トランス=5:95の8−メチル−6−ノネン酸メチルエステルを得る方法(P.M.Gannett et al.,J.Org.Chem.,53,1064(1988).)。この方法による異性化反応は30%と収率が低い。(2)6−ブロモヘキサン酸とトリフェニルホスフィンから得られる(6−カルボキシヘキシル)トリフェニルホスホニウムブロミドとイソブチルアルデヒドとのWittig反応により、シス体が主である8−メチル−6−ノネン酸を得、これにNaNO2とHNO3とを反応させてトランス体が主である8−メチル−6−ノネン酸を得る方法(H.Kaga et al.,J.Org.Chem.,54,3477(1989).)。この反応で大量に副生するトリフェニルホスフィンオキシドの除去は大変煩雑である。また、この異性化法で得られる脂肪酸はシス:トランス=1:8であり、異性体の純度は満足の行くものでは無い。(3)ε−カプロラクトンをDIBALで還元してラクトールにした後に、イソブチルトリフェニルホスホニウムブロミドとWittig反応を行い、シス体が主である1−ヒドロキシ−8−メチルノン−6−エンを得る。これにNaNO2とHNO3とを反応させて異性化させた後に、CrO3で酸化する方法(H.Kaga et al.,Biosci.Biotech.Biochem.,56(6),946(1992).)。この異性化条件も前掲論文と同じであり、得られるアルコールはシス:トランス=11:89で、満足のいく純度では無い。
2−1)の方法としては、1−2)の方法の途中で得られるシス体の二重結合を接触還元等で還元する方法が報告されている(J.Ackroyd et al.,J.Chem.Research,Synopses,344(1987).)。しかしながら、不飽和体の合成において種々の問題が存在するのは、上述の通りである。
2−2)の方法としては次の方法が知られている。(1)シクロヘキサノンから得られるメチル 6−ブロモヘキサノエートとイソブチルマグネシウムブロミドとを、銅触媒(Li2CuCl4)の存在下でグリニアカップリング反応に付し、メチル 8−メチルノナノエートを得る。これを加水分解して8−メチルノナン酸を得る方法(S.A.Hassarajani et al.,J.Chem.Research,Synopses,219(1993).)。この方法では1.5当量のグリニア試薬を用いるにもかかわらず、収率は66.6%と低く、更に、−78℃の低温反応条件が必要である。(2)ヘキサン−1,6−ジオールから得られる1−ブロモ−6−テトラヒドロピラニルオキシヘキサンとイソブチルマグネシウムブロミドとを銅触媒(Li2CuCl4)の存在下にグリニアカップリング反応に付して8−メチルノナノールを得、これを二クロム酸ピリジニウム(PDC)によって酸化し、8−メチルノナン酸を得る方法(S.A.Hassarajani et al.,Indian Journal of Chemistry,34B,May,429(1995).)。この方法でも1.5当量のグリニア試薬を用いているにもかかわらず、カップリングの収率は58%と低く、更にPDC酸化という後処理が煩雑な酸化反応が必要である。
一方、これ等の脂肪酸は常温で油状物質であるために、その精製は、もっぱら、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製又は/及び減圧蒸留により行なわれ、塩基との塩結晶に導いて精製した例は無い。
また、二重結合を持つ脂肪酸である8−メチル−6−ノネン酸のシス体とトランス体の分離に成功した例は無い。カプサイシンはカプシノイドと異なり結晶性であることから、カプサイシンに導いた後であれば、シス体脂肪酸由来の化合物は再結晶で除去できるとの報告がある(H.Kaga et al.,J.Org.Chem.,54,3477(1989).)。しかし、カプシノイドは油状であることから、最終製品において、結晶化で精製を行うことは出来ない。
本発明が解決しようとする課題は、カプシノイド及びカプサイシン類を工業的に製造するための中間体として有用な脂肪酸を、効率良く、高品質かつ簡便に製造しうる製造方法を提供することにある。また、カプシノイドは常温で油状物であるために、結晶化による精製が適用出来ない。従って、原料として高純度の脂肪酸が必要である。その高純度の脂肪酸を得るための手段として、脂肪酸の新規な塩結晶を見出し、これを利用して脂肪酸を精製する方法を確立することも本発明の課題である。
前述のように、カプシノイド及びカプサイシン類の構成成分である脂肪酸の合成法はいくつか知られているが、ほとんどの方法において、煩雑な操作を多段階にわたって行わなければならない。幾何異性体の変換を要する方法においては、満足のいく純度のトランス体幾何異性体が得られていない。
これ等の中では、銅触媒(Li2CuCl4)の存在下にグリニアカップリング反応を行う方法が簡便で優れている(上記2−2)−(1))。しかしながら、この方法にも、(1)グリニア試薬を1.5当量用いているにもかかわらずカップリング反応の単離収率が66.6%に過ぎない。(2)反応の際に−78℃の低温を必要とする。(3)メチル 6−ブロモヘキサノエートとイソブチルマグネシウムブロミドとの反応1例に限られ、本反応を他の基質の組み合わせで行えるか否か定かでない。(4)本反応を利用して二重結合のある脂肪酸の合成を行った例はなく、本反応の適用範囲が明確でない、等の問題、課題がある。また、このようなグリニア試薬の反応においては、反応基質がエステル基を有するために、グリニア試薬がこれと反応してケトンやアルコールを副生し、これが収率低下の原因となることが考えられる。
一方、t−ブチルマグネシウムクロリドと臭化オクチルとのクロスカップリング反応(グリニアカップリング反応)において、グリニア試薬を約1.1当量用い、4当量のNMP(N−メチルピロリジノンまたは1−メチル−2−ピロリドン)を共溶媒としてTHF溶液に加えて20℃で反応を行うと、副反応が抑制され、カップリング生成物が85%の収率で得られるとの報告がある(G.Cahiez et al.,Tetrahedron,56,2733(2000))。この文献の反応では、グリニア試薬がかさ高いt−ブチルマグネシウムクロリドであったり、カップリングする試薬をほぼ当量で反応させるなど、副反応が起こり難い反応条件が選ばれている。また、この文献の反応例では、グリニア試薬が全てアルキルマグネシウムクロリド(ほとんどがt−ブチルマグネシウムクロリド)を用いた例に限られており、上記のアルキルマグネシウムブロミドとメチル 6−ブロモヘキサノエートとの反応がこの文献の反応条件でうまく進行するかは不明であった。
そこで、本発明者らが、n−ブチルマグネシウムクロリドとエチル 6−ブロモヘキサノエートとを用いて本反応条件を忠実に追試したところ、目的物は得られたものの、収率は高々50%であり、やはり上記方法と同様に、工業的な製造方法としては最適の方法ではないことが明らかとなった。なお、本発明の反応に必要な分岐したハロゲン化アルキルは塩化物(例えば1−クロロ−3−メチルプロパンや1−クロロ−3−メチルブタン)よりも臭化物(例えば1−ブロモ−3−メチルプロパンや1−ブロモ−3−メチルブタン)の方がはるかに安価であり、アルキルマグネシウムブロミドを利用した方が工業的に有利である。
そこで、本発明者らは、カプシノイドの構成成分である脂肪酸の工業的に有利な、従来技術では達成し得なかった高収率の製造法を開発すべく、上記2つのクロスカップリング反応(グリニアカップリング反応)条件を参考にして、グリニア試薬の種類、当量、反応温度、添加剤等の諸条件について鋭意検討を行った。
その結果、(1)グリニア試薬として、1−ブロモ−2−メチルプロパン、1−ブロモ−3−メチルブタン、1−ブロモ−4−メチルペンタン、1−ブロモ−5−メチルヘキサン、trans−1−ブロモ−5−メチル−2−ヘキセン等から得られるアルキルまたはアルケニルマグネシウムハライドと、ハロカルボン酸エステルとして、6−ブロモ−n−ヘキサン酸エチルエステル、5−ブロモ−n−吉草酸エチルエステル、4−ブロモ−n−酪酸エチルエステル、3−ブロモプロピオン酸エチルエステル等とを種々の組み合わせで反応させ、目的の脂肪酸(エステル)を製造できること、(2)グリニア試薬の当量としては、好ましくは1〜3当量、より好ましくは1.2〜2.2当量、さらに好ましくは1.6〜1.9当量用いることにより、ハロカルボン酸エステルが未反応で残ることなく完全に反応させることが出来ること、(3)反応温度は、低温(上記文献のような−78℃等)では添加剤のNMPが固化して撹拌操作等に支障をきたし、高温(上記文献のように20℃以上)ではケトン、アルコール等の副生物が大量に生成するために、0℃付近(−5℃〜10℃)にコントロールすることが効果的であること、(4)銅触媒としては、Li2CuCl4以外にも、CuI、CuBr、CuCl等が有効であること、(5)仮に、ハロカルボン酸エステルが未反応で残る場合でも、ハロカルボン酸エステルとして、5−ブロモ−n−吉草酸エチルエステル或は4−ブロモ−n−酪酸エチルエステルを用いれば、これらはアルカリ加水分解によってラクトン或はヒドロキシカルボン酸に容易に変換され、除去が容易であること、等を見出し、高純度の目的脂肪酸を、通常、エステルとして95%以上の反応収率(脂肪酸として85%以上の単離収率)で得ることが出来る、工業化可能で、極めて優れた製造方法を確立することに成功した。
また、クロスカップリング反応(グリニアカップリング反応)以外の、銅触媒を用いる反応について鋭意検討を行った結果、クロスカップリング反応のブロモ脂肪酸エステルの替わりにアクリル酸エステルを用い、これに対して、上記グリニア試薬を共役付加反応させれば、目的とするカルボン酸エステルが得られることを新たに見出した。さらに、本反応においては、通常の共役付加反応の反応条件に加え、TMSCl(トリメチルクロロシラン)及びDMPU(1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2−(1H)−ピリミジン)を加えて反応を行うと高収率で目的物が得られることが判明した。グリニア試薬のアクリル酸エステルへの共役付加反応によって、カプシノイドの構成成分である脂肪酸の合成を試みた例は知られていない。
更にこのようにして得た脂肪酸を塩結晶とすることにより、簡便に目的脂肪酸を精製し、工業的に製造し得ることも見出した。すなわち、従来、カプシノイドの脂肪酸の塩結晶については全く知られていなかったが、本発明者らが、脂肪酸と塩基(金属、有機アミン、アンモニア等)との塩について鋭意検討を行った結果、(1)結晶性が良く、脂肪酸の結晶化による精製に有効で尚且つ保存にも有効と考えられる新規な塩結晶を多数見出し、(2)塩結晶の形成による不飽和脂肪酸(例えば、トランス−8−メチル−6−ノネン酸)の精製法(シス体との分割精製)を確立し、これらの発見が高純度の脂肪酸を得るための工業的精製方法として有効であることを明らかにした。
以上、カプシノイドの脂肪酸の製造法に関し、種々の新規知見を得て本発明を完成した。
以下に説明するように、本発明は、カプシノイドの脂肪酸の製造法として、銅触媒を用いるクロスカップリング法及び共役付加法に関する。また、脂肪酸の新規な塩結晶、それらを用いた脂肪酸の精製法に関する。
即ち、本発明は、下記の内容、すなわち、[1]から[20]に記載の脂肪酸の製造方法、[21]から[23]に記載の脂肪酸の新規な塩またはその結晶、[24]から[26]に記載の脂肪酸の精製方法、および[27]と[28]に記載のカプシノイドの製造方法を含むものである。
1.下記一般式(2):
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子またはC1−C6アルキル基であり、Aは、結合またはビニレン基であり、Xは、ハロゲン原子であり、mおよびnはそれぞれ、m+n=1〜5を満足するような0〜5の整数である)
で表されるグリニア試薬を、銅触媒の存在下、−5℃〜10℃にて、下記一般式(3):
(式中、Rは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基またはベンジル基であり、X’は、ハロゲン原子、メタンスルフォニルオキシ基、パラトルエンスルフォニルオキシ基またはトリフルオロメタンスルフォニルオキシ基であり、pは1から5の整数を表す)
で表されるハロカルボン酸エステルとのクロスカップリング反応に供し、下記一般式(4):
(式中、R、R1、R2、A、m、nおよびpは、上記で定義した通りである)
で表されるカルボン酸エステルを生成する工程と、
該カルボン酸エステルを加水分解する工程と、
を有することを特徴とする、下記一般式(5):
(式中、R1、R2、A、m、nおよびpは、上記で定義した通りである)
で表される脂肪酸の製造方法。
2.グリニア試薬が、下記一般式(1):
(式中、R1、R2、A、X、mおよびnは、上記で定義した通りである)
で表されるアルキルハライド又はアルケニルハライドから変換して得られるものである、上記1.記載の製造方法。
3.R1およびR2が共にメチル基であり、かつmが0である、上記1.または2.のいずれか記載の製造方法。
4.XおよびX’が臭素原子であり、Rがメチル基又はエチル基であり、かつ、Aが結合の場合m+n+p=4〜7であり、Aがビニレン基の場合m+n+p=2〜7である、上記1.から3.のいずれか記載の製造方法。
5.XおよびX’が臭素原子であり、Rがエチル基であり、Aが結合であり、m+n=1または2であり、かつp=4である、上記1.から4.のいずれか記載の製造方法。
6.一般式(5)で表される脂肪酸が、8−メチルノナン酸、トランス−8−メチル−6−ノネン酸または7−メチルオクタン酸である、上記1.から5.のいずれか記載の製造方法。
7.クロスカップリング反応に使用される銅触媒が、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、ジリチウムテトラクロロキュープレート(II)(Li2CuCl4)および臭化銅(I)・ジメチルスルフィドからなる群より選ばれるものである、上記1.から6.のいずれか記載の製造方法。
8.クロスカップリング反応に使用される溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2−(1H)−ピリミジン(DMPU)およびこれらの混合溶媒からなる群より選ばれるものである、上記1.から7.のいずれか記載の製造方法。
9.クロスカップリング反応がトリメチルクロロシラン(TMSCl)の共存下にて行われる、上記1.から8.のいずれか記載の製造方法。
10.下記一般式(2’):
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子またはC1−C6アルキル基であり、Aは、結合またはビニレン基であり、Xは、ハロゲン原子であり、m’およびn’はそれぞれ、m’+n’=1〜4を満足するような0〜4の整数である)
で表されるグリニア試薬を、銅触媒の存在下、下記一般式(6):
(式中、Rは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基またはベンジル基である)
で表されるアクリル酸エステルとの共役付加反応に供し、下記一般式(4’):
(式中、R、R1、R2、A、m’およびn’は、上記で定義した通りである)
で表されるカルボン酸エステルを生成する工程と、
該カルボン酸エステルを加水分解する工程と、
を有することを特徴とする、下記一般式(5’):
(式中、R1、R2、A、m’およびn’は、上記で定義した通りである)
で表される脂肪酸の製造方法。
11.グリニア試薬が、下記一般式(1’):
(式中、R1、R2、A、X、m’およびn’は、上記で定義した通りである)
で表されるアルキルハライド又はアルケニルハライドから変換して得られるものである、上記10.記載の製造方法。
12.R1およびR2が共にメチル基であり、かつm’が0である、上記10.または11.記載の製造方法。
13.Xが臭素原子であり、Rがメチル基又はエチル基であり、かつ、Aが結合の場合m’+n’=3または4であり、Aがビニレン基の場合m’+n’=1または2である、上記10.から12.のいずれか記載の製造方法。
14.一般式(5’)で表される脂肪酸が、8−メチルノナン酸、トランス−8−メチル−6−ノネン酸または7−メチルオクタン酸である、上記10.から13.のいずれか記載の製造方法。
15.共役付加反応に使用される銅触媒が、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、ジリチウムテトラクロロキュープレート(II)(Li2CuCl4)および臭化銅(I)・ジメチルスルフィドからなる群より選ばれるものである、上記10.から14.のいずれか記載の製造方法。
16.共役付加反応に使用される溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2−(1H)−ピリミジン(DMPU)およびこれらの混合溶媒からなる群より選ばれるものである、上記10.から15.のいずれか記載の製造方法。
17.共役付加反応がトリメチルクロロシラン(TMSCl)の共存下にて行われる、上記10.から16.のいずれか記載の製造方法。
18.共役付加反応の反応温度が−78℃から50℃の範囲内である、上記10.から17.のいずれか記載の製造方法。
19.反応により得られる脂肪酸と塩基との塩結晶を形成することによって不純物を除去する工程を更に有することを特徴とする、上記1.から18.のいずれか記載の製造方法。
20.脂肪酸と塩結晶を形成する塩基が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びバリウムからなる群より選ばれる金属、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、シクロヘキシルアミン、4−メトキシベンジルアミン、エタノールアミン、(S)又は(R)−フェニルグリシノール、(S)又は(R)−フェニルアラニノール、シス−2−アミノシクロヘキサノール、トランス−4−アミノシクロヘキサノール、(1S,2R)−シス−1−アミノ−2−インダノール、D、L又はDL−リジンおよびD、L又はDL−アルギニンからなる群より選ばれる有機アミン、或はアンモニアである、上記19.に記載の製造方法。
21.下記一般式(5):
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子またはC1−C6アルキル基であり、Aは、結合またはビニレン基であり、mおよびnはそれぞれ、m+n=1〜5を満足するような0〜5の整数であり、pは1から5の整数である)
で表される脂肪酸と塩基との塩またはその結晶。
22.R1およびR2がメチル基またはエチル基であり、かつ、Aが結合の場合m+n+p=4〜7であり、Aがビニレン基の場合m+n+p=2〜7である、上記21.記載の塩またはその結晶。
23.脂肪酸と塩を形成する塩基が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びバリウムからなる群より選ばれる金属、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、シクロヘキシルアミン、4−メトキシベンジルアミン、エタノールアミン、(S)又は(R)−フェニルグリシノール、(S)又は(R)−フェニルアラニノール、シス−2−アミノシクロヘキサノール、トランス−4−アミノシクロヘキサノール、(1S,2R)−シス−1−アミノ−2−インダノール、D、L又はDL−リジン、D、L又はDL−アルギニンからなる群より選ばれる有機アミン、或はアンモニアである、上記21.または22.のいずれか記載の塩またはその結晶。
24.下記一般式(5a):
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子またはC1−C6アルキル基であり、qは1から7の整数である)
で表される脂肪酸とそのシス異性体との混合物を、塩基と反応させて塩を形成し、形成した塩の結晶性または溶解度の違いに基づいて上記一般式(5a)で表される脂肪酸の塩をシス異性体の塩と分離する工程を有することを特徴とする、上記一般式(5a)で表される脂肪酸の精製方法。
25.R1およびR2が共にメチル基であり、かつ、q=3または4である、上記24.記載の精製方法。
26.脂肪酸と塩を形成する塩基が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びバリウムからなる群より選ばれる金属、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、シクロヘキシルアミン、4−メトキシベンジルアミン、エタノールアミン、(S)又は(R)−フェニルグリシノール、(S)又は(R)−フェニルアラニノール、シス−2−アミノシクロヘキサノール、トランス−4−アミノシクロヘキサノール、(1S,2R)−シス−1−アミノ−2−インダノール、D、L又はDL−リジン、D、L又はDL−アルギニンからなる群より選ばれる有機アミン、或はアンモニアである、上記24.または25.記載の精製方法。
27.上記1.から20.のいずれか記載の方法で得られる脂肪酸をリパーゼ存在下でバニリルアルコールと反応させる工程を有することを特徴とする、カプシノイドの製造方法。
28.上記21.から23.のいずれか記載の塩またはその結晶を酸性溶液に溶解し、有機溶媒で抽出し、得られる脂肪酸をリパーゼ存在下でバニリルアルコールと反応させる工程を有することを特徴とする、カプシノイドの製造方法。
また、本発明には、目的とする脂肪酸を合成するために用いられる新規臭化アルキル、臭化アルケニル並びにそれらの新規合成法も含まれる。新規合成法の例としては、5−メチルヘキサン酸をエステル化、還元、メシル化、ブロモ化することによって1−ブロモ−5−メチルヘキサンを合成する方法を挙げることができる。また、イソバレルアルデヒドとマロン酸とのKnoevenagel反応で得られるtrans−5−メチル−3−ヘキセン酸を同様に変換して1−ブロモ−5−メチル−2−ヘキセンを合成する方法も挙げることができる。
銅触媒の存在下での各種グリニア試薬とブロモ脂肪酸エステルとのクロスカップリング反応、又はアクリル酸エステルとの共役付加反応によって、カプシノイドの構成成分である脂肪酸を高収率かつ高純度で得ることが出来る。また、脂肪酸の塩結晶を利用することによって、該脂肪酸を精製すること、安定に保存すること等が可能となる。
前述のように、カプシノイド及びカプサイシン類の構成成分である脂肪酸の合成法はいくつか知られているが、ほとんどの方法において、煩雑な操作を多段階にわたって行わなければならない。幾何異性体の変換を要する方法においては、満足のいく純度のトランス体幾何異性体が得られていない。
これ等の中では、銅触媒(Li2CuCl4)の存在下にグリニアカップリング反応を行う方法が簡便で優れている(上記2−2)−(1))。しかしながら、この方法にも、(1)グリニア試薬を1.5当量用いているにもかかわらずカップリング反応の単離収率が66.6%に過ぎない。(2)反応の際に−78℃の低温を必要とする。(3)メチル 6−ブロモヘキサノエートとイソブチルマグネシウムブロミドとの反応1例に限られ、本反応を他の基質の組み合わせで行えるか否か定かでない。(4)本反応を利用して二重結合のある脂肪酸の合成を行った例はなく、本反応の適用範囲が明確でない、等の問題、課題がある。また、このようなグリニア試薬の反応においては、反応基質がエステル基を有するために、グリニア試薬がこれと反応してケトンやアルコールを副生し、これが収率低下の原因となることが考えられる。
一方、t−ブチルマグネシウムクロリドと臭化オクチルとのクロスカップリング反応(グリニアカップリング反応)において、グリニア試薬を約1.1当量用い、4当量のNMP(N−メチルピロリジノンまたは1−メチル−2−ピロリドン)を共溶媒としてTHF溶液に加えて20℃で反応を行うと、副反応が抑制され、カップリング生成物が85%の収率で得られるとの報告がある(G.Cahiez et al.,Tetrahedron,56,2733(2000))。この文献の反応では、グリニア試薬がかさ高いt−ブチルマグネシウムクロリドであったり、カップリングする試薬をほぼ当量で反応させるなど、副反応が起こり難い反応条件が選ばれている。また、この文献の反応例では、グリニア試薬が全てアルキルマグネシウムクロリド(ほとんどがt−ブチルマグネシウムクロリド)を用いた例に限られており、上記のアルキルマグネシウムブロミドとメチル 6−ブロモヘキサノエートとの反応がこの文献の反応条件でうまく進行するかは不明であった。
そこで、本発明者らが、n−ブチルマグネシウムクロリドとエチル 6−ブロモヘキサノエートとを用いて本反応条件を忠実に追試したところ、目的物は得られたものの、収率は高々50%であり、やはり上記方法と同様に、工業的な製造方法としては最適の方法ではないことが明らかとなった。なお、本発明の反応に必要な分岐したハロゲン化アルキルは塩化物(例えば1−クロロ−3−メチルプロパンや1−クロロ−3−メチルブタン)よりも臭化物(例えば1−ブロモ−3−メチルプロパンや1−ブロモ−3−メチルブタン)の方がはるかに安価であり、アルキルマグネシウムブロミドを利用した方が工業的に有利である。
そこで、本発明者らは、カプシノイドの構成成分である脂肪酸の工業的に有利な、従来技術では達成し得なかった高収率の製造法を開発すべく、上記2つのクロスカップリング反応(グリニアカップリング反応)条件を参考にして、グリニア試薬の種類、当量、反応温度、添加剤等の諸条件について鋭意検討を行った。
その結果、(1)グリニア試薬として、1−ブロモ−2−メチルプロパン、1−ブロモ−3−メチルブタン、1−ブロモ−4−メチルペンタン、1−ブロモ−5−メチルヘキサン、trans−1−ブロモ−5−メチル−2−ヘキセン等から得られるアルキルまたはアルケニルマグネシウムハライドと、ハロカルボン酸エステルとして、6−ブロモ−n−ヘキサン酸エチルエステル、5−ブロモ−n−吉草酸エチルエステル、4−ブロモ−n−酪酸エチルエステル、3−ブロモプロピオン酸エチルエステル等とを種々の組み合わせで反応させ、目的の脂肪酸(エステル)を製造できること、(2)グリニア試薬の当量としては、好ましくは1〜3当量、より好ましくは1.2〜2.2当量、さらに好ましくは1.6〜1.9当量用いることにより、ハロカルボン酸エステルが未反応で残ることなく完全に反応させることが出来ること、(3)反応温度は、低温(上記文献のような−78℃等)では添加剤のNMPが固化して撹拌操作等に支障をきたし、高温(上記文献のように20℃以上)ではケトン、アルコール等の副生物が大量に生成するために、0℃付近(−5℃〜10℃)にコントロールすることが効果的であること、(4)銅触媒としては、Li2CuCl4以外にも、CuI、CuBr、CuCl等が有効であること、(5)仮に、ハロカルボン酸エステルが未反応で残る場合でも、ハロカルボン酸エステルとして、5−ブロモ−n−吉草酸エチルエステル或は4−ブロモ−n−酪酸エチルエステルを用いれば、これらはアルカリ加水分解によってラクトン或はヒドロキシカルボン酸に容易に変換され、除去が容易であること、等を見出し、高純度の目的脂肪酸を、通常、エステルとして95%以上の反応収率(脂肪酸として85%以上の単離収率)で得ることが出来る、工業化可能で、極めて優れた製造方法を確立することに成功した。
また、クロスカップリング反応(グリニアカップリング反応)以外の、銅触媒を用いる反応について鋭意検討を行った結果、クロスカップリング反応のブロモ脂肪酸エステルの替わりにアクリル酸エステルを用い、これに対して、上記グリニア試薬を共役付加反応させれば、目的とするカルボン酸エステルが得られることを新たに見出した。さらに、本反応においては、通常の共役付加反応の反応条件に加え、TMSCl(トリメチルクロロシラン)及びDMPU(1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2−(1H)−ピリミジン)を加えて反応を行うと高収率で目的物が得られることが判明した。グリニア試薬のアクリル酸エステルへの共役付加反応によって、カプシノイドの構成成分である脂肪酸の合成を試みた例は知られていない。
更にこのようにして得た脂肪酸を塩結晶とすることにより、簡便に目的脂肪酸を精製し、工業的に製造し得ることも見出した。すなわち、従来、カプシノイドの脂肪酸の塩結晶については全く知られていなかったが、本発明者らが、脂肪酸と塩基(金属、有機アミン、アンモニア等)との塩について鋭意検討を行った結果、(1)結晶性が良く、脂肪酸の結晶化による精製に有効で尚且つ保存にも有効と考えられる新規な塩結晶を多数見出し、(2)塩結晶の形成による不飽和脂肪酸(例えば、トランス−8−メチル−6−ノネン酸)の精製法(シス体との分割精製)を確立し、これらの発見が高純度の脂肪酸を得るための工業的精製方法として有効であることを明らかにした。
以上、カプシノイドの脂肪酸の製造法に関し、種々の新規知見を得て本発明を完成した。
以下に説明するように、本発明は、カプシノイドの脂肪酸の製造法として、銅触媒を用いるクロスカップリング法及び共役付加法に関する。また、脂肪酸の新規な塩結晶、それらを用いた脂肪酸の精製法に関する。
即ち、本発明は、下記の内容、すなわち、[1]から[20]に記載の脂肪酸の製造方法、[21]から[23]に記載の脂肪酸の新規な塩またはその結晶、[24]から[26]に記載の脂肪酸の精製方法、および[27]と[28]に記載のカプシノイドの製造方法を含むものである。
1.下記一般式(2):
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子またはC1−C6アルキル基であり、Aは、結合またはビニレン基であり、Xは、ハロゲン原子であり、mおよびnはそれぞれ、m+n=1〜5を満足するような0〜5の整数である)
で表されるグリニア試薬を、銅触媒の存在下、−5℃〜10℃にて、下記一般式(3):
(式中、Rは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基またはベンジル基であり、X’は、ハロゲン原子、メタンスルフォニルオキシ基、パラトルエンスルフォニルオキシ基またはトリフルオロメタンスルフォニルオキシ基であり、pは1から5の整数を表す)
で表されるハロカルボン酸エステルとのクロスカップリング反応に供し、下記一般式(4):
(式中、R、R1、R2、A、m、nおよびpは、上記で定義した通りである)
で表されるカルボン酸エステルを生成する工程と、
該カルボン酸エステルを加水分解する工程と、
を有することを特徴とする、下記一般式(5):
(式中、R1、R2、A、m、nおよびpは、上記で定義した通りである)
で表される脂肪酸の製造方法。
2.グリニア試薬が、下記一般式(1):
(式中、R1、R2、A、X、mおよびnは、上記で定義した通りである)
で表されるアルキルハライド又はアルケニルハライドから変換して得られるものである、上記1.記載の製造方法。
3.R1およびR2が共にメチル基であり、かつmが0である、上記1.または2.のいずれか記載の製造方法。
4.XおよびX’が臭素原子であり、Rがメチル基又はエチル基であり、かつ、Aが結合の場合m+n+p=4〜7であり、Aがビニレン基の場合m+n+p=2〜7である、上記1.から3.のいずれか記載の製造方法。
5.XおよびX’が臭素原子であり、Rがエチル基であり、Aが結合であり、m+n=1または2であり、かつp=4である、上記1.から4.のいずれか記載の製造方法。
6.一般式(5)で表される脂肪酸が、8−メチルノナン酸、トランス−8−メチル−6−ノネン酸または7−メチルオクタン酸である、上記1.から5.のいずれか記載の製造方法。
7.クロスカップリング反応に使用される銅触媒が、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、ジリチウムテトラクロロキュープレート(II)(Li2CuCl4)および臭化銅(I)・ジメチルスルフィドからなる群より選ばれるものである、上記1.から6.のいずれか記載の製造方法。
8.クロスカップリング反応に使用される溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2−(1H)−ピリミジン(DMPU)およびこれらの混合溶媒からなる群より選ばれるものである、上記1.から7.のいずれか記載の製造方法。
9.クロスカップリング反応がトリメチルクロロシラン(TMSCl)の共存下にて行われる、上記1.から8.のいずれか記載の製造方法。
10.下記一般式(2’):
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子またはC1−C6アルキル基であり、Aは、結合またはビニレン基であり、Xは、ハロゲン原子であり、m’およびn’はそれぞれ、m’+n’=1〜4を満足するような0〜4の整数である)
で表されるグリニア試薬を、銅触媒の存在下、下記一般式(6):
(式中、Rは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基またはベンジル基である)
で表されるアクリル酸エステルとの共役付加反応に供し、下記一般式(4’):
(式中、R、R1、R2、A、m’およびn’は、上記で定義した通りである)
で表されるカルボン酸エステルを生成する工程と、
該カルボン酸エステルを加水分解する工程と、
を有することを特徴とする、下記一般式(5’):
(式中、R1、R2、A、m’およびn’は、上記で定義した通りである)
で表される脂肪酸の製造方法。
11.グリニア試薬が、下記一般式(1’):
(式中、R1、R2、A、X、m’およびn’は、上記で定義した通りである)
で表されるアルキルハライド又はアルケニルハライドから変換して得られるものである、上記10.記載の製造方法。
12.R1およびR2が共にメチル基であり、かつm’が0である、上記10.または11.記載の製造方法。
13.Xが臭素原子であり、Rがメチル基又はエチル基であり、かつ、Aが結合の場合m’+n’=3または4であり、Aがビニレン基の場合m’+n’=1または2である、上記10.から12.のいずれか記載の製造方法。
14.一般式(5’)で表される脂肪酸が、8−メチルノナン酸、トランス−8−メチル−6−ノネン酸または7−メチルオクタン酸である、上記10.から13.のいずれか記載の製造方法。
15.共役付加反応に使用される銅触媒が、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、ジリチウムテトラクロロキュープレート(II)(Li2CuCl4)および臭化銅(I)・ジメチルスルフィドからなる群より選ばれるものである、上記10.から14.のいずれか記載の製造方法。
16.共役付加反応に使用される溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2−(1H)−ピリミジン(DMPU)およびこれらの混合溶媒からなる群より選ばれるものである、上記10.から15.のいずれか記載の製造方法。
17.共役付加反応がトリメチルクロロシラン(TMSCl)の共存下にて行われる、上記10.から16.のいずれか記載の製造方法。
18.共役付加反応の反応温度が−78℃から50℃の範囲内である、上記10.から17.のいずれか記載の製造方法。
19.反応により得られる脂肪酸と塩基との塩結晶を形成することによって不純物を除去する工程を更に有することを特徴とする、上記1.から18.のいずれか記載の製造方法。
20.脂肪酸と塩結晶を形成する塩基が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びバリウムからなる群より選ばれる金属、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、シクロヘキシルアミン、4−メトキシベンジルアミン、エタノールアミン、(S)又は(R)−フェニルグリシノール、(S)又は(R)−フェニルアラニノール、シス−2−アミノシクロヘキサノール、トランス−4−アミノシクロヘキサノール、(1S,2R)−シス−1−アミノ−2−インダノール、D、L又はDL−リジンおよびD、L又はDL−アルギニンからなる群より選ばれる有機アミン、或はアンモニアである、上記19.に記載の製造方法。
21.下記一般式(5):
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子またはC1−C6アルキル基であり、Aは、結合またはビニレン基であり、mおよびnはそれぞれ、m+n=1〜5を満足するような0〜5の整数であり、pは1から5の整数である)
で表される脂肪酸と塩基との塩またはその結晶。
22.R1およびR2がメチル基またはエチル基であり、かつ、Aが結合の場合m+n+p=4〜7であり、Aがビニレン基の場合m+n+p=2〜7である、上記21.記載の塩またはその結晶。
23.脂肪酸と塩を形成する塩基が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びバリウムからなる群より選ばれる金属、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、シクロヘキシルアミン、4−メトキシベンジルアミン、エタノールアミン、(S)又は(R)−フェニルグリシノール、(S)又は(R)−フェニルアラニノール、シス−2−アミノシクロヘキサノール、トランス−4−アミノシクロヘキサノール、(1S,2R)−シス−1−アミノ−2−インダノール、D、L又はDL−リジン、D、L又はDL−アルギニンからなる群より選ばれる有機アミン、或はアンモニアである、上記21.または22.のいずれか記載の塩またはその結晶。
24.下記一般式(5a):
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子またはC1−C6アルキル基であり、qは1から7の整数である)
で表される脂肪酸とそのシス異性体との混合物を、塩基と反応させて塩を形成し、形成した塩の結晶性または溶解度の違いに基づいて上記一般式(5a)で表される脂肪酸の塩をシス異性体の塩と分離する工程を有することを特徴とする、上記一般式(5a)で表される脂肪酸の精製方法。
25.R1およびR2が共にメチル基であり、かつ、q=3または4である、上記24.記載の精製方法。
26.脂肪酸と塩を形成する塩基が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びバリウムからなる群より選ばれる金属、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、シクロヘキシルアミン、4−メトキシベンジルアミン、エタノールアミン、(S)又は(R)−フェニルグリシノール、(S)又は(R)−フェニルアラニノール、シス−2−アミノシクロヘキサノール、トランス−4−アミノシクロヘキサノール、(1S,2R)−シス−1−アミノ−2−インダノール、D、L又はDL−リジン、D、L又はDL−アルギニンからなる群より選ばれる有機アミン、或はアンモニアである、上記24.または25.記載の精製方法。
27.上記1.から20.のいずれか記載の方法で得られる脂肪酸をリパーゼ存在下でバニリルアルコールと反応させる工程を有することを特徴とする、カプシノイドの製造方法。
28.上記21.から23.のいずれか記載の塩またはその結晶を酸性溶液に溶解し、有機溶媒で抽出し、得られる脂肪酸をリパーゼ存在下でバニリルアルコールと反応させる工程を有することを特徴とする、カプシノイドの製造方法。
また、本発明には、目的とする脂肪酸を合成するために用いられる新規臭化アルキル、臭化アルケニル並びにそれらの新規合成法も含まれる。新規合成法の例としては、5−メチルヘキサン酸をエステル化、還元、メシル化、ブロモ化することによって1−ブロモ−5−メチルヘキサンを合成する方法を挙げることができる。また、イソバレルアルデヒドとマロン酸とのKnoevenagel反応で得られるtrans−5−メチル−3−ヘキセン酸を同様に変換して1−ブロモ−5−メチル−2−ヘキセンを合成する方法も挙げることができる。
銅触媒の存在下での各種グリニア試薬とブロモ脂肪酸エステルとのクロスカップリング反応、又はアクリル酸エステルとの共役付加反応によって、カプシノイドの構成成分である脂肪酸を高収率かつ高純度で得ることが出来る。また、脂肪酸の塩結晶を利用することによって、該脂肪酸を精製すること、安定に保存すること等が可能となる。
以下、本発明について実施の形態を説明する。
本発明を、一般式(2)又は(2’)で表されるグリニア試薬(以下、グリニア試薬(2)又は(2’)と略す)と、一般式(3)で表されるハロカルボン酸エステル(以下、ハロカルボン酸エステル(3)と略す)とのクロスカップリング反応、或は、一般式(6)で表されるアクリル酸エステル(以下、アクリル酸エステル(6)と略す)との共役付加反応による、一般式(5)又は(5’)で表される脂肪酸(以下、脂肪酸(5)又は(5’)と略す)の製造方法、当該脂肪酸の塩基(金属、有機アミン、アンモニア)との塩結晶、ならびに、その塩結晶を利用することによる当該脂肪酸の精製方法を中心に、以下に詳細に説明するが、これらを代表例として説明するものであり、本発明は以下に述べる内容に限定されるものでは無い。
まず、本発明における一般式の符号R、R1、R2、A、X、X’、m、m’n、n’、pおよびqの定義について説明する。
Rは、カルボキシル基の保護基であり、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基またはベンジル基であり、好ましくはメチル基またはエチル基である。
R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子またはC1−C6アルキル基である。C1−C6アルキル基とは、炭素数1乃至6の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。好ましくは、R1およびR2はメチル基またはエチル基であり、より好ましくは共にメチル基である。
Aは、結合またはビニレン基である。Aが結合の場合とは、例えば式(1)が、下記式(6)で表される場合を指し、
Aがビニレン基の場合とは、例えば式(1)が、下記式(7)又は(8)で表される場合を指す。
Xは、ハロゲン原子であり、X’はハロゲン原子、メタンスルフォニルオキシ基、パラトルエンスルフォニルオキシ基またはトリフルオロメタンスルフォニルオキシ基であり、ハロゲン原子とは、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、好ましくは臭素原子又は塩素原子であり、とりわけ好ましくは臭素原子である。
mおよびnはそれぞれ、m+n=1〜5を満足するような0〜5の整数である。pは、1から5の整数である。好ましくは、Aが結合の場合、m+n+pは4〜7であり、より好ましくはm+n=1または2かつp=4である。また、好ましくは、Aがビニレン基の場合、m+n+pは2〜7である。より好ましくは、mは0である。
m’およびn’はそれぞれ、m’+n’=1〜4を満足するような0〜4の整数である。好ましくは、Aが結合の場合、m’+n’は3または4であり、Aがビニレン基の場合、m’+n’は1または2である。より好ましくは、m’は0である。
qは、1から7の整数であり、好ましくは3または4であり、より好ましくは4である。
脂肪酸(5)又は(5’)の具体例としては、好ましくは、以下の表1および表2に記載の化合物が挙げられ、より好ましくは、8−メチルノナン酸、8−メチル−6−ノネン酸または7−メチルオクタン酸であり、更に好ましくは、ビニレン基の立体構造はトランス構造である。
次に、脂肪酸(5)又は(5’)の製造方法について説明する。
まず、一般式(1)または(1’)で表されるアルキルハライドまたはアルケニルハライド(以下、アルキルハライドまたはアルケニルハライド(1)又は(1’)と略す)を、グリニア試薬(2)または(2’)に変換する工程について説明する。
グリニア試薬(2)または(2’)の原料として用いるアルキルハライドまたはアルケニルハライド(1)または(1’)のほとんどは、安価な試薬として入手できるが、幾つかの化合物は、対応するカルボン酸やアルコールから数段階で合成することができる。例えば、1−ブロモ−5−メチルヘキサンは、5−メチルヘキサン酸をエステル化、還元、メシル化、ブロモ化することによって合成することができる。また、1−ブロモ−5−メチル−2−ヘキセンは、イソバレルアルデヒドとマロン酸とのKnoevenagel反応(H.Yamanaka et al.,Heterocycles,20(8),1541(1983))で得られるtrans−5−メチル−3−ヘキセン酸を同様に変換して合成することができる。
グリニア試薬(2)または(2’)は、アルキルハライドまたはアルケニルハライド(1)または(1’)とマグネシウムとを常法に従って反応させることによって調製することができる。
次に、グリニア試薬(2)とハロカルボン酸エステル(3)とのクロスカップリング反応により、一般式(4)で表されるカルボン酸エステル(以下、カルボン酸エステル(4)と略す)を生成する工程について説明する。
例えば、カルボン酸エステル(4)は、ハロカルボン酸エステル(3)と銅触媒とを溶解した溶液に、−5℃〜10℃にて、グリニア試薬(2)を加える(好ましくは滴下する)ことによって製造することが出来る。ハロカルボン酸エステル(3)は、公知の方法により、環状ケトンのBaeyer−Villiger酸化を経て数段階で合成することができるが、その製造方法はこれに限られるものではない。
銅触媒としては、塩化銅(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、ジリチウムテトラクロロキュープレート(II)(Li2CuCl4(CuCl2+2LiCl))、臭化銅(I)・ジメチルスルフィド(CuBr・Me2S)等を用いることが出来る。しかし、Li2CuCl4を用いた場合には、ハロカルボン酸エステル(3)においてハロゲン原子の交換反応が起こり、ハロゲン化アルキルとしては反応性の乏しいクロロカルボン酸エステルが生成して不純物として残存し、目的物の精製が困難になることがあるので、反応によってはCuBr等のI価の銅触媒を用いた方が良い。銅触媒は、グリニア試薬(2)とハロカルボン酸エステル(3)のエステル基との反応を十分抑制できる量を用いれば良く、例えば、ハロカルボン酸エステル(3)に対して0.5から20モル%、望ましくは1から10モル%、更に望ましくは1から5モル%の範囲で使用することが出来る。銅触媒の量が0.5モル%よりも少ないと、副生物(グリニア試薬(2)とハロカルボン酸エステル(3)のエステル基との反応によって生成するケトンやアルコール)の生成割合が高くなることがあり、20モル%よりも多いと、後処理の際、不溶物が析出して、分液操作等の操作性が悪くなることがある。
反応温度は、−20℃から15℃の範囲であり、好ましくは−5℃から10℃の範囲であり、更に好ましくは−3℃から5℃の範囲である。反応温度が−20℃よりも低いと、反応液の撹拌効率が悪くなり、15℃よりも高いと、副生物の生成割合が高くなる。なお、反応温度は、例えば、グリニア試薬の滴下速度を適宜調整すること等によって制御することが出来る。
また、反応時間は、グリニア試薬(2)およびハロカルボン酸エステル(3)の種類等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、グリニア試薬(2)の滴下終了後、15分〜3時間であり、好ましくは30分〜2時間である。
グリニア試薬(2)は、ハロカルボン酸エステル(3)が十分消失し、なおかつ副生物のケトンやアルコールの生成を十分抑えられる範囲の量で使用すれば良く、当業者であれば簡易な予備実験により必要量を知ることが出来るが、例えば、ハロカルボン酸エステル(3)に対して1から3当量、好ましくは1.2から2.2当量、より好ましくは1.6から1.9当量の範囲で使用することができる。グリニア試薬(2)の量が1当量よりも少ないと、グリニア試薬(2)に対して過剰のハロカルボン酸エステル(3)が未反応のまま反応系中に残存し、それによって後の目的の脂肪酸の精製が困難となる場合があり、3当量よりも多いと、グリニア試薬(2)がハロカルボン酸エステル(3)のエステル基と優先的に反応し、それによって副生物であるケトンおよびアルコールの生成割合が増大する場合がある。
クロスカップリング反応の溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル類、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2−(1H)−ピリミジン(DMPU)等を使用することができ、好ましくは、THF、NMP、DMPUおよびこれらの混合溶媒からなる群より選ばれるものである。さらに好ましくは、グリニア試薬(2)の調製が容易であるTHFと銅触媒を十分に溶解せしめるのに有効であるNMPとの混合溶媒が有利に使用され得る。使用する溶媒の量、および混合溶媒の混合比は、特に限定されるものではなく、グリニア試薬(2)およびハロカルボン酸エステル(3)の種類等に応じて適宜選択すればよい。なお、NMPを使用する場合、その量は、ハロカルボン酸エステル(3)に対して好ましくは1から10当量、より好ましくは3から5当量であればよい。NMPの量が1当量よりも少ないと、副生物の生成割合が高くなることがあり、10当量よりも多いと、反応収率が低下することがある。
クロスカップリング反応をきれいにかつ高収率で進行させるために、添加剤を反応系に加えてもよい。添加剤としては、トリメチルクロロシラン(TMSCl)等が挙げられる。TMSClは、特に、ハロカルボン酸エステル(3)として3−ブロモプロピオン酸エステルを用いる場合、収率を向上させるために有効である。TMSClの添加量は、好ましくはハロカルボン酸エステル(3)に対して0.5から4.0当量、より好ましくは1.0から2.0当量である。TMSClの添加量が0.5当量よりも少ないと、ハロカルボン酸エステル(3)の脱離反応等の副反応が進行することがある。
上記条件でクロスカップリング反応を行えば、反応の選択性は非常に高く、一般に90%以上の純度で目的物のカルボン酸エステル(4)を得ることが出来る。この段階でカルボン酸エステル(4)を減圧蒸留すれば純度を更に向上させることが出来る。
なお、クロスカップリング反応において、ハロカルボン酸エステル(3)としてブロモカルボン酸エステルを用いた場合には、反応が完結していないと、得られる脂肪酸(5)に、未反応のブロモカルボン酸エステルに由来するブロモカルボン酸が不純物として混入することがあり、あるいは、ブロモカルボン酸エステルを用いてさらに銅触媒としてLi2CuCl触媒を用いた場合には、得られる脂肪酸(5)に、ハロゲン原子の交換反応によって生成したクロロカルボン酸エステルに由来するクロロカルボン酸が不純物として混入することがある。目的の脂肪酸(5)をこれら副生物と分離するのは困難を伴う場合がある。しかしながら、たとえこのような不純物が反応混合物に混入した場合にも、5−ブロモ−n−吉草酸エチル等の、塩基で処理することにより6員環ラクトン或はヒドロキシカルボン酸を容易に形成する基質をハロカルボン酸エステル(3)として用いれば、カルボン酸エステル(4)生成後に塩基処理し、次いで抽出操作或は減圧蒸留することによって、塩基処理で生成した6員環ラクトン或はヒドロキシカルボン酸を容易に除去できるメリットがある。従って、本クロスカップリング反応は、5−ブロモ−n−吉草酸エステルを用いると更に有利である。
次に、グリニア試薬(2’)とアクリル酸エステル(6)との共役付加反応により、一般式(4’)で表されるカルボン酸エステル(以下、カルボン酸エステル(4’)と略す)を生成する工程について説明する。
例えば、カルボン酸エステル(4’)は、グリニア試薬(2’)と銅触媒とを溶解した溶液に、アクリル酸エステル(6)の溶液を加える(好ましくは滴下する)ことによって合成することが出来る。
銅触媒としては、塩化銅(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、ジリチウムテトラクロロキュープレート(II)(Li2CuCl4(CuCl2+2LiCl))、臭化銅(I)・ジメチルスルフィド(CuBr・Me2S)等を用いることが出来る。銅触媒は、共役付加反応を優先し、グリニア試薬(2’)とアクリル酸エステル(6)のエステル基との反応を十分抑制できる量を用いれば良く、例えば、グリニア試薬(2’)に対して0.5から10モル%、望ましくは1から5モル%の範囲で使用することが出来る。銅触媒の量が0.5モル%よりも少ないと、グリニア試薬(2’)とアクリル酸エステル(6)のエステル基との反応が優先することがあり、10モル%よりも多いと、後処理の際、不溶物が析出して、分液操作等の操作性が悪くなることがある。
反応温度は、好ましくは−90℃から50℃の範囲であり、より好ましくは−78℃から50℃の範囲であり、さらに好ましくは−78℃から10℃の範囲である。反応温度が−90℃よりも低いと、反応液の撹拌効率が悪くなり、50℃よりも高いと、副生物の生成割合が高くなる。
また、反応時間は、グリニア試薬(2’)およびアクリル酸エステル(6)の種類等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、アクリル酸エステル(6)の滴下終了後、室温に昇温して、0.5時間〜5時間であり、好ましくは1時間〜2時間である。
グリニア試薬(2’)は、アクリル酸エステル(6)が十分消失し、なおかつ副生物の生成を十分抑えられる範囲の量で使用すれば良く、例えば、アクリル酸エステル(6)に対して0.5から2.0当量、望ましくは0.8から1.3当量の範囲で使用することができる。グリニア試薬(2’)の量が0.5当量よりも少ないと、未反応のアクリル酸エステル(6)が反応系中に残存し、それによって後の目的の脂肪酸の精製が困難となる場合があり、2.0当量よりも多いと、グリニア試薬(2’)がアクリル酸エステル(6)のエステル基と優先的に反応し、それによって副生物であるケトンおよびアルコールの生成割合が増大する場合がある。
共役付加反応の溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル類、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2−(1H)−ピリミジン(DMPU)等を使用することができ、好ましくは、THF、NMP、DMPUおよびこれらの混合溶媒からなる群より選ばれるものである。さらに好ましくは、グリニア試薬(2’)の調製が容易であるTHFと銅触媒を十分に溶解せしめるのに有効であるDMPUとの混合溶媒が有利に使用され得る。使用する溶媒の量、および混合溶媒の混合比は、特に限定されるものではなく、グリニア試薬(2’)およびアクリル酸エステル(6)の種類等に応じて適宜選択すればよい。なお、DMPUを使用する場合、その量は、グリニア試薬(2’)に対して好ましくは0.5から4.0当量、より好ましくは1.0から2.0当量であればよい。DMPUの量が0.5当量よりも少ないと、副生物の生成割合が高くなることがあり、4.0当量よりも多いと、反応収率が低下したり、低温下における撹拌に支障をきたすことがある。
共役付加反応を高純度かつ高収率で進行させるために、添加剤を反応系に加えてもよい。添加剤としては、トリメチルクロロシラン(TMSCl)等が挙げられる。TMSClは、特に、アクリル酸エステル(6)の溶液中に共存させるのが有効である。TMSClの添加量は、好ましくはアクリル酸エステル(6)に対して0.5から4.0当量、より好ましくは1.0から2.0当量である。TMSClの添加量が0.5当量よりも少ないと、グリニア試薬(2’)とアクリル酸エステル(6)のエステル基との反応が優先することがある。
上記条件で共役付加反応を行えば、反応の選択性は非常に高く、一般に70%以上の純度で目的物のカルボン酸エステル(4’)を得ることが出来る。
次に、カルボン酸エステル(4)または(4’)を加水分解する工程について説明する。
このような加水分解は、公知の手段・条件によって行うことができ、例えば、酸(塩酸、硫酸など)を用いてもよく、またアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなど)を用いてもよいが、反応後に水溶液を有機溶剤で洗って不純物を除去することが出来るので、アルカリを用いて加水分解するのがより望ましい。アルカリは、カルボン酸エステル(4)または(4’)に対して1から5当量、好ましくは1.2から2.5当量用いることができる。溶媒としては、例えば、水とメタノール、エタノール、イソプロパノール、THF、アセトニトリルなどとの混合溶媒などが挙げられ、その使用量は、適宜設定することができ、例えば、カルボン酸エステル(4)または(4’)に対して10から20倍量(容量)である。加水分解処理の際の反応条件は、適宜設定することができ、例えば、0〜100℃で1〜24時間である。
次いで、例えば、加水分解後の水溶液を、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、ヘキサン等で洗浄した後に塩酸、硫酸、リン酸等で酸性とし、ヘキサン等で抽出して、不純物の大部分を除去することによって、目的の脂肪酸(5)又は(5’)を得ることが出来る。得られた脂肪酸(5)又は(5’)の精製方法としては、反応粗製物の純度により、各種塩基と塩結晶を形成させて再結晶する方法、減圧蒸留する方法、クロマトグラフィーで精製する方法或いはこれらを組み合わせた方法等を採用することができるが、操作の簡便性という点では後述する塩結晶を形成させて再結晶する方法が優れており、とりわけ、合成する化合物が不飽和結合を有する場合や、工業的スケールの製造時には好ましい。
次に、脂肪酸(5)の精製方法について説明する。
当該精製方法は、脂肪酸(5)と塩基との塩結晶を形成することによって不純物を除去する工程を有する。なお、該工程は、脂肪酸(5)の製造方法にも含まれ得る。
塩結晶の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、塩結晶は、脂肪酸(5)と塩基とを溶媒中で攪拌することによって形成され得る。
塩基としては、金属、有機アミン、アンモニア等を利用することが出来る。具体的には、金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム等、有機アミンとしては、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、シクロヘキシルアミン、4−メトキシベンジルアミン、エタノールアミン、(S)又は(R)−フェニルグリシノール、(S)又は(R)−フェニルアラニノール、シス−2−アミノシクロヘキサノール、トランス−4−アミノシクロヘキサノール、(1S,2R)−シス−1−アミノ−2−インダノール、D、LまたはDL−リジン、D、LまたはDL−アルギニン等が挙げられる。
脂肪酸(5)と反応させる塩基の量は、反応系中の全ての脂肪酸(5)が塩結晶を形成し得るような量であればよく、例えば、脂肪酸(5)に対して、好ましくは0.8〜1.2当量、より好ましくは0.9〜1.1当量である。塩基の量が0.8当量よりも少ないと、塩基に対して過剰の脂肪酸(5)が塩を形成できずに反応系中に残存し、それによって塩結晶の収率が低下することがあり、1.2当量よりも多いと、同様に塩の形成が阻害されることがある。ジアミンの場合、これらの半分の(当)量を用いれば良いのは言うまでも無い。
溶媒としては、それぞれの塩結晶を高収率・高純度で与え得るものを適宜選択すれば良く、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の酢酸エステル類、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、THF等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類、アセトン等のケトン類、クロロホルム等のハロゲン溶媒或はこれらの混合溶媒を利用することが出来る。使用する溶媒の量、および混合溶媒の混合比は、特に限定されるものではなく、脂肪酸(5)および塩基の種類等に応じて適宜選択すればよい。
塩結晶を形成する際の反応条件は、脂肪酸(5)、塩基、溶媒の種類、それらの組み合わせ等に応じて適宜選択すればよい。
上記のようにして脂肪酸(5)と塩基との塩結晶を形成することによって、次いで、必要に応じて再結晶することによって、脂肪酸(5)以外の反応副生物、例えばアルコールやケトンは容易に効率よく除去することが出来る。
次いで、得られた塩結晶を、酸性水溶液、例えば塩酸水溶液に加えた後に、ヘキサン等で抽出することによって、高純度の目的の脂肪酸(5)を再生することが出来る。
次いで、一般式(5a)で表される脂肪酸(一般式(5)において、A=ビニレン基、m=0およびn+p=q;以下、脂肪酸(5a)と略す)の精製方法について説明する。
当該精製方法は、不飽和脂肪酸の立体(幾何)異性体(シス−トランス異性体)の混合物を分離する工程、より詳細には、脂肪酸(5a)とそのシス異性体との混合物を、塩基と反応させて塩を形成し、形成した塩の結晶性または溶解度の違いに基づいて脂肪酸(5a)の塩をシス異性体の塩と分離する工程を有する。
なお、塩の形成についての詳細(方法、塩基、反応溶媒、反応条件等)は、上記脂肪酸(5)の精製方法における塩結晶の形成についての説明を参照することができる。
上記工程において、「形成した塩の結晶性または溶解度の違いに基づいて脂肪酸(5a)の塩をシス異性体の塩と分離する」とは、例えば、晶析、スラリー洗浄、再結晶化等によって塩を分離することをいう。
さらに、上記精製方法の具体例を以下に示す。
カプシノイド構成成分の脂肪酸の一つであるトランス−8−メチル−6−ノネン酸とそのシス異性体(シス−8−メチル−6−ノネン酸)との混合物は、蒸留やクロマトグラフィーでは分離することは不可能であるが、上記工程(塩基と塩を形成すること)によって容易に分離することができる。例えば、シス−2−アミノシクロヘキサノールを塩基として用いれば、12%程度のシス−8−メチル−6−ノネン酸を含有するトランス−8−メチル−6−ノネン酸を2、3回晶析することによって、トランス−8−メチル−6−ノネン酸を97%以上の純度で得ることが出来る。
次に、脂肪酸(5)と塩基との塩またはその結晶について説明する。
カプシノイド構成成分の脂肪酸の塩またはその結晶を調製する試みは今まで行われたことがなかったが、該塩またはその結晶の形成に適した塩基及び溶媒を選択することにより、当該脂肪酸(5)と塩基との塩またはその結晶を調製することが出来る。
なお、塩またはその結晶の形成についての詳細(方法、塩基、反応溶媒、反応条件等)は、上記脂肪酸(5)の精製方法における塩結晶の形成についての説明を参照することができる。
本発明においては、8−メチルノナン酸、8−メチル−6−ノネン酸または7−メチルオクタン酸と塩基との塩またはその結晶が好ましく、これら脂肪酸と、ナトリウム、カルシウム、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、シクロヘキシルアミン、4−メトキシベンジルアミン、エタノールアミン、(S)−フェニルグリシノール、(S)−フェニルアラニノール、シス−2−アミノシクロヘキサノール、トランス−4−アミノシクロヘキサノール、(1S,2R)−シス−1−アミノ−2−インダノール、L−リジン、L−アルギニンまたはアンモニアとの塩またはその結晶がより好ましい。
次に、脂肪酸(5)と塩基との塩またはその結晶を用いたカプシノイドの製造方法について説明する。
当該製造方法は、上記の脂肪酸(5)と塩基との塩またはその結晶を酸性溶液に溶解し、有機溶媒で抽出し、得られる脂肪酸(5)をリパーゼ存在下でバニリルアルコールと反応させる工程を有する。
酸性溶液としては、塩を溶解して塩を解離させ、脂肪酸(5)を遊離させるのに十分な酸性溶液であれば特に限定されるものではなく、例えば、塩酸溶液、クエン酸溶液、硫酸溶液等が挙げられ、好ましくは酸性水溶液、例えば、塩酸水溶液である。有機溶媒としては、得られる脂肪酸を十分に溶解することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、酢酸エチル、ジエチルエーテル等が挙げられる。このように脂肪酸(5)と塩基との塩またはその結晶を酸性溶液に溶解し、有機溶媒で抽出することによって、高純度の脂肪酸(5)を高収率で得ることができる。このようにして得た脂肪酸(5)を減圧蒸留すれば、更に純度が高く、有機溶剤を含まない状態で得ることができる。
なお、塩基との塩結晶を用いる精製工程は、反応で得られた脂肪酸の純度によって省略することもできる。
次いで、得られる脂肪酸(5)は、リパーゼ存在下でのバニリルアルコールとの反応に供される。該反応の反応条件(反応基質(脂肪酸(5)およびバニリルアルコール)およびリパーゼの使用量、溶媒の種類および使用量、反応温度、反応時間等)は、脂肪酸(5)の種類等に応じて適宜選択すればよく、例えば、K.Kobata et al.,Biosci.Biotechnol.Biochem.,66,319(2002)或いは特開2000−312598号公報に記載の条件を採用することができる。
当該カプシノイドの製造方法によって、高純度でかつ高品質のカプシノイド類を高収率で合成することが出来る。
以上述べたように、本発明の製造方法は、操作が簡便であり、既存の技術よりも短時間で高収率かつ高純度でカプシノイド構成成分の脂肪酸を工業生産できる点で、極めて有用である。
本発明を、一般式(2)又は(2’)で表されるグリニア試薬(以下、グリニア試薬(2)又は(2’)と略す)と、一般式(3)で表されるハロカルボン酸エステル(以下、ハロカルボン酸エステル(3)と略す)とのクロスカップリング反応、或は、一般式(6)で表されるアクリル酸エステル(以下、アクリル酸エステル(6)と略す)との共役付加反応による、一般式(5)又は(5’)で表される脂肪酸(以下、脂肪酸(5)又は(5’)と略す)の製造方法、当該脂肪酸の塩基(金属、有機アミン、アンモニア)との塩結晶、ならびに、その塩結晶を利用することによる当該脂肪酸の精製方法を中心に、以下に詳細に説明するが、これらを代表例として説明するものであり、本発明は以下に述べる内容に限定されるものでは無い。
まず、本発明における一般式の符号R、R1、R2、A、X、X’、m、m’n、n’、pおよびqの定義について説明する。
Rは、カルボキシル基の保護基であり、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基またはベンジル基であり、好ましくはメチル基またはエチル基である。
R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子またはC1−C6アルキル基である。C1−C6アルキル基とは、炭素数1乃至6の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。好ましくは、R1およびR2はメチル基またはエチル基であり、より好ましくは共にメチル基である。
Aは、結合またはビニレン基である。Aが結合の場合とは、例えば式(1)が、下記式(6)で表される場合を指し、
Aがビニレン基の場合とは、例えば式(1)が、下記式(7)又は(8)で表される場合を指す。
Xは、ハロゲン原子であり、X’はハロゲン原子、メタンスルフォニルオキシ基、パラトルエンスルフォニルオキシ基またはトリフルオロメタンスルフォニルオキシ基であり、ハロゲン原子とは、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、好ましくは臭素原子又は塩素原子であり、とりわけ好ましくは臭素原子である。
mおよびnはそれぞれ、m+n=1〜5を満足するような0〜5の整数である。pは、1から5の整数である。好ましくは、Aが結合の場合、m+n+pは4〜7であり、より好ましくはm+n=1または2かつp=4である。また、好ましくは、Aがビニレン基の場合、m+n+pは2〜7である。より好ましくは、mは0である。
m’およびn’はそれぞれ、m’+n’=1〜4を満足するような0〜4の整数である。好ましくは、Aが結合の場合、m’+n’は3または4であり、Aがビニレン基の場合、m’+n’は1または2である。より好ましくは、m’は0である。
qは、1から7の整数であり、好ましくは3または4であり、より好ましくは4である。
脂肪酸(5)又は(5’)の具体例としては、好ましくは、以下の表1および表2に記載の化合物が挙げられ、より好ましくは、8−メチルノナン酸、8−メチル−6−ノネン酸または7−メチルオクタン酸であり、更に好ましくは、ビニレン基の立体構造はトランス構造である。
まず、一般式(1)または(1’)で表されるアルキルハライドまたはアルケニルハライド(以下、アルキルハライドまたはアルケニルハライド(1)又は(1’)と略す)を、グリニア試薬(2)または(2’)に変換する工程について説明する。
グリニア試薬(2)または(2’)の原料として用いるアルキルハライドまたはアルケニルハライド(1)または(1’)のほとんどは、安価な試薬として入手できるが、幾つかの化合物は、対応するカルボン酸やアルコールから数段階で合成することができる。例えば、1−ブロモ−5−メチルヘキサンは、5−メチルヘキサン酸をエステル化、還元、メシル化、ブロモ化することによって合成することができる。また、1−ブロモ−5−メチル−2−ヘキセンは、イソバレルアルデヒドとマロン酸とのKnoevenagel反応(H.Yamanaka et al.,Heterocycles,20(8),1541(1983))で得られるtrans−5−メチル−3−ヘキセン酸を同様に変換して合成することができる。
グリニア試薬(2)または(2’)は、アルキルハライドまたはアルケニルハライド(1)または(1’)とマグネシウムとを常法に従って反応させることによって調製することができる。
次に、グリニア試薬(2)とハロカルボン酸エステル(3)とのクロスカップリング反応により、一般式(4)で表されるカルボン酸エステル(以下、カルボン酸エステル(4)と略す)を生成する工程について説明する。
例えば、カルボン酸エステル(4)は、ハロカルボン酸エステル(3)と銅触媒とを溶解した溶液に、−5℃〜10℃にて、グリニア試薬(2)を加える(好ましくは滴下する)ことによって製造することが出来る。ハロカルボン酸エステル(3)は、公知の方法により、環状ケトンのBaeyer−Villiger酸化を経て数段階で合成することができるが、その製造方法はこれに限られるものではない。
銅触媒としては、塩化銅(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、ジリチウムテトラクロロキュープレート(II)(Li2CuCl4(CuCl2+2LiCl))、臭化銅(I)・ジメチルスルフィド(CuBr・Me2S)等を用いることが出来る。しかし、Li2CuCl4を用いた場合には、ハロカルボン酸エステル(3)においてハロゲン原子の交換反応が起こり、ハロゲン化アルキルとしては反応性の乏しいクロロカルボン酸エステルが生成して不純物として残存し、目的物の精製が困難になることがあるので、反応によってはCuBr等のI価の銅触媒を用いた方が良い。銅触媒は、グリニア試薬(2)とハロカルボン酸エステル(3)のエステル基との反応を十分抑制できる量を用いれば良く、例えば、ハロカルボン酸エステル(3)に対して0.5から20モル%、望ましくは1から10モル%、更に望ましくは1から5モル%の範囲で使用することが出来る。銅触媒の量が0.5モル%よりも少ないと、副生物(グリニア試薬(2)とハロカルボン酸エステル(3)のエステル基との反応によって生成するケトンやアルコール)の生成割合が高くなることがあり、20モル%よりも多いと、後処理の際、不溶物が析出して、分液操作等の操作性が悪くなることがある。
反応温度は、−20℃から15℃の範囲であり、好ましくは−5℃から10℃の範囲であり、更に好ましくは−3℃から5℃の範囲である。反応温度が−20℃よりも低いと、反応液の撹拌効率が悪くなり、15℃よりも高いと、副生物の生成割合が高くなる。なお、反応温度は、例えば、グリニア試薬の滴下速度を適宜調整すること等によって制御することが出来る。
また、反応時間は、グリニア試薬(2)およびハロカルボン酸エステル(3)の種類等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、グリニア試薬(2)の滴下終了後、15分〜3時間であり、好ましくは30分〜2時間である。
グリニア試薬(2)は、ハロカルボン酸エステル(3)が十分消失し、なおかつ副生物のケトンやアルコールの生成を十分抑えられる範囲の量で使用すれば良く、当業者であれば簡易な予備実験により必要量を知ることが出来るが、例えば、ハロカルボン酸エステル(3)に対して1から3当量、好ましくは1.2から2.2当量、より好ましくは1.6から1.9当量の範囲で使用することができる。グリニア試薬(2)の量が1当量よりも少ないと、グリニア試薬(2)に対して過剰のハロカルボン酸エステル(3)が未反応のまま反応系中に残存し、それによって後の目的の脂肪酸の精製が困難となる場合があり、3当量よりも多いと、グリニア試薬(2)がハロカルボン酸エステル(3)のエステル基と優先的に反応し、それによって副生物であるケトンおよびアルコールの生成割合が増大する場合がある。
クロスカップリング反応の溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル類、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2−(1H)−ピリミジン(DMPU)等を使用することができ、好ましくは、THF、NMP、DMPUおよびこれらの混合溶媒からなる群より選ばれるものである。さらに好ましくは、グリニア試薬(2)の調製が容易であるTHFと銅触媒を十分に溶解せしめるのに有効であるNMPとの混合溶媒が有利に使用され得る。使用する溶媒の量、および混合溶媒の混合比は、特に限定されるものではなく、グリニア試薬(2)およびハロカルボン酸エステル(3)の種類等に応じて適宜選択すればよい。なお、NMPを使用する場合、その量は、ハロカルボン酸エステル(3)に対して好ましくは1から10当量、より好ましくは3から5当量であればよい。NMPの量が1当量よりも少ないと、副生物の生成割合が高くなることがあり、10当量よりも多いと、反応収率が低下することがある。
クロスカップリング反応をきれいにかつ高収率で進行させるために、添加剤を反応系に加えてもよい。添加剤としては、トリメチルクロロシラン(TMSCl)等が挙げられる。TMSClは、特に、ハロカルボン酸エステル(3)として3−ブロモプロピオン酸エステルを用いる場合、収率を向上させるために有効である。TMSClの添加量は、好ましくはハロカルボン酸エステル(3)に対して0.5から4.0当量、より好ましくは1.0から2.0当量である。TMSClの添加量が0.5当量よりも少ないと、ハロカルボン酸エステル(3)の脱離反応等の副反応が進行することがある。
上記条件でクロスカップリング反応を行えば、反応の選択性は非常に高く、一般に90%以上の純度で目的物のカルボン酸エステル(4)を得ることが出来る。この段階でカルボン酸エステル(4)を減圧蒸留すれば純度を更に向上させることが出来る。
なお、クロスカップリング反応において、ハロカルボン酸エステル(3)としてブロモカルボン酸エステルを用いた場合には、反応が完結していないと、得られる脂肪酸(5)に、未反応のブロモカルボン酸エステルに由来するブロモカルボン酸が不純物として混入することがあり、あるいは、ブロモカルボン酸エステルを用いてさらに銅触媒としてLi2CuCl触媒を用いた場合には、得られる脂肪酸(5)に、ハロゲン原子の交換反応によって生成したクロロカルボン酸エステルに由来するクロロカルボン酸が不純物として混入することがある。目的の脂肪酸(5)をこれら副生物と分離するのは困難を伴う場合がある。しかしながら、たとえこのような不純物が反応混合物に混入した場合にも、5−ブロモ−n−吉草酸エチル等の、塩基で処理することにより6員環ラクトン或はヒドロキシカルボン酸を容易に形成する基質をハロカルボン酸エステル(3)として用いれば、カルボン酸エステル(4)生成後に塩基処理し、次いで抽出操作或は減圧蒸留することによって、塩基処理で生成した6員環ラクトン或はヒドロキシカルボン酸を容易に除去できるメリットがある。従って、本クロスカップリング反応は、5−ブロモ−n−吉草酸エステルを用いると更に有利である。
次に、グリニア試薬(2’)とアクリル酸エステル(6)との共役付加反応により、一般式(4’)で表されるカルボン酸エステル(以下、カルボン酸エステル(4’)と略す)を生成する工程について説明する。
例えば、カルボン酸エステル(4’)は、グリニア試薬(2’)と銅触媒とを溶解した溶液に、アクリル酸エステル(6)の溶液を加える(好ましくは滴下する)ことによって合成することが出来る。
銅触媒としては、塩化銅(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、ジリチウムテトラクロロキュープレート(II)(Li2CuCl4(CuCl2+2LiCl))、臭化銅(I)・ジメチルスルフィド(CuBr・Me2S)等を用いることが出来る。銅触媒は、共役付加反応を優先し、グリニア試薬(2’)とアクリル酸エステル(6)のエステル基との反応を十分抑制できる量を用いれば良く、例えば、グリニア試薬(2’)に対して0.5から10モル%、望ましくは1から5モル%の範囲で使用することが出来る。銅触媒の量が0.5モル%よりも少ないと、グリニア試薬(2’)とアクリル酸エステル(6)のエステル基との反応が優先することがあり、10モル%よりも多いと、後処理の際、不溶物が析出して、分液操作等の操作性が悪くなることがある。
反応温度は、好ましくは−90℃から50℃の範囲であり、より好ましくは−78℃から50℃の範囲であり、さらに好ましくは−78℃から10℃の範囲である。反応温度が−90℃よりも低いと、反応液の撹拌効率が悪くなり、50℃よりも高いと、副生物の生成割合が高くなる。
また、反応時間は、グリニア試薬(2’)およびアクリル酸エステル(6)の種類等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、アクリル酸エステル(6)の滴下終了後、室温に昇温して、0.5時間〜5時間であり、好ましくは1時間〜2時間である。
グリニア試薬(2’)は、アクリル酸エステル(6)が十分消失し、なおかつ副生物の生成を十分抑えられる範囲の量で使用すれば良く、例えば、アクリル酸エステル(6)に対して0.5から2.0当量、望ましくは0.8から1.3当量の範囲で使用することができる。グリニア試薬(2’)の量が0.5当量よりも少ないと、未反応のアクリル酸エステル(6)が反応系中に残存し、それによって後の目的の脂肪酸の精製が困難となる場合があり、2.0当量よりも多いと、グリニア試薬(2’)がアクリル酸エステル(6)のエステル基と優先的に反応し、それによって副生物であるケトンおよびアルコールの生成割合が増大する場合がある。
共役付加反応の溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル類、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2−(1H)−ピリミジン(DMPU)等を使用することができ、好ましくは、THF、NMP、DMPUおよびこれらの混合溶媒からなる群より選ばれるものである。さらに好ましくは、グリニア試薬(2’)の調製が容易であるTHFと銅触媒を十分に溶解せしめるのに有効であるDMPUとの混合溶媒が有利に使用され得る。使用する溶媒の量、および混合溶媒の混合比は、特に限定されるものではなく、グリニア試薬(2’)およびアクリル酸エステル(6)の種類等に応じて適宜選択すればよい。なお、DMPUを使用する場合、その量は、グリニア試薬(2’)に対して好ましくは0.5から4.0当量、より好ましくは1.0から2.0当量であればよい。DMPUの量が0.5当量よりも少ないと、副生物の生成割合が高くなることがあり、4.0当量よりも多いと、反応収率が低下したり、低温下における撹拌に支障をきたすことがある。
共役付加反応を高純度かつ高収率で進行させるために、添加剤を反応系に加えてもよい。添加剤としては、トリメチルクロロシラン(TMSCl)等が挙げられる。TMSClは、特に、アクリル酸エステル(6)の溶液中に共存させるのが有効である。TMSClの添加量は、好ましくはアクリル酸エステル(6)に対して0.5から4.0当量、より好ましくは1.0から2.0当量である。TMSClの添加量が0.5当量よりも少ないと、グリニア試薬(2’)とアクリル酸エステル(6)のエステル基との反応が優先することがある。
上記条件で共役付加反応を行えば、反応の選択性は非常に高く、一般に70%以上の純度で目的物のカルボン酸エステル(4’)を得ることが出来る。
次に、カルボン酸エステル(4)または(4’)を加水分解する工程について説明する。
このような加水分解は、公知の手段・条件によって行うことができ、例えば、酸(塩酸、硫酸など)を用いてもよく、またアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなど)を用いてもよいが、反応後に水溶液を有機溶剤で洗って不純物を除去することが出来るので、アルカリを用いて加水分解するのがより望ましい。アルカリは、カルボン酸エステル(4)または(4’)に対して1から5当量、好ましくは1.2から2.5当量用いることができる。溶媒としては、例えば、水とメタノール、エタノール、イソプロパノール、THF、アセトニトリルなどとの混合溶媒などが挙げられ、その使用量は、適宜設定することができ、例えば、カルボン酸エステル(4)または(4’)に対して10から20倍量(容量)である。加水分解処理の際の反応条件は、適宜設定することができ、例えば、0〜100℃で1〜24時間である。
次いで、例えば、加水分解後の水溶液を、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、ヘキサン等で洗浄した後に塩酸、硫酸、リン酸等で酸性とし、ヘキサン等で抽出して、不純物の大部分を除去することによって、目的の脂肪酸(5)又は(5’)を得ることが出来る。得られた脂肪酸(5)又は(5’)の精製方法としては、反応粗製物の純度により、各種塩基と塩結晶を形成させて再結晶する方法、減圧蒸留する方法、クロマトグラフィーで精製する方法或いはこれらを組み合わせた方法等を採用することができるが、操作の簡便性という点では後述する塩結晶を形成させて再結晶する方法が優れており、とりわけ、合成する化合物が不飽和結合を有する場合や、工業的スケールの製造時には好ましい。
次に、脂肪酸(5)の精製方法について説明する。
当該精製方法は、脂肪酸(5)と塩基との塩結晶を形成することによって不純物を除去する工程を有する。なお、該工程は、脂肪酸(5)の製造方法にも含まれ得る。
塩結晶の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、塩結晶は、脂肪酸(5)と塩基とを溶媒中で攪拌することによって形成され得る。
塩基としては、金属、有機アミン、アンモニア等を利用することが出来る。具体的には、金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム等、有機アミンとしては、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、シクロヘキシルアミン、4−メトキシベンジルアミン、エタノールアミン、(S)又は(R)−フェニルグリシノール、(S)又は(R)−フェニルアラニノール、シス−2−アミノシクロヘキサノール、トランス−4−アミノシクロヘキサノール、(1S,2R)−シス−1−アミノ−2−インダノール、D、LまたはDL−リジン、D、LまたはDL−アルギニン等が挙げられる。
脂肪酸(5)と反応させる塩基の量は、反応系中の全ての脂肪酸(5)が塩結晶を形成し得るような量であればよく、例えば、脂肪酸(5)に対して、好ましくは0.8〜1.2当量、より好ましくは0.9〜1.1当量である。塩基の量が0.8当量よりも少ないと、塩基に対して過剰の脂肪酸(5)が塩を形成できずに反応系中に残存し、それによって塩結晶の収率が低下することがあり、1.2当量よりも多いと、同様に塩の形成が阻害されることがある。ジアミンの場合、これらの半分の(当)量を用いれば良いのは言うまでも無い。
溶媒としては、それぞれの塩結晶を高収率・高純度で与え得るものを適宜選択すれば良く、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の酢酸エステル類、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、THF等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類、アセトン等のケトン類、クロロホルム等のハロゲン溶媒或はこれらの混合溶媒を利用することが出来る。使用する溶媒の量、および混合溶媒の混合比は、特に限定されるものではなく、脂肪酸(5)および塩基の種類等に応じて適宜選択すればよい。
塩結晶を形成する際の反応条件は、脂肪酸(5)、塩基、溶媒の種類、それらの組み合わせ等に応じて適宜選択すればよい。
上記のようにして脂肪酸(5)と塩基との塩結晶を形成することによって、次いで、必要に応じて再結晶することによって、脂肪酸(5)以外の反応副生物、例えばアルコールやケトンは容易に効率よく除去することが出来る。
次いで、得られた塩結晶を、酸性水溶液、例えば塩酸水溶液に加えた後に、ヘキサン等で抽出することによって、高純度の目的の脂肪酸(5)を再生することが出来る。
次いで、一般式(5a)で表される脂肪酸(一般式(5)において、A=ビニレン基、m=0およびn+p=q;以下、脂肪酸(5a)と略す)の精製方法について説明する。
当該精製方法は、不飽和脂肪酸の立体(幾何)異性体(シス−トランス異性体)の混合物を分離する工程、より詳細には、脂肪酸(5a)とそのシス異性体との混合物を、塩基と反応させて塩を形成し、形成した塩の結晶性または溶解度の違いに基づいて脂肪酸(5a)の塩をシス異性体の塩と分離する工程を有する。
なお、塩の形成についての詳細(方法、塩基、反応溶媒、反応条件等)は、上記脂肪酸(5)の精製方法における塩結晶の形成についての説明を参照することができる。
上記工程において、「形成した塩の結晶性または溶解度の違いに基づいて脂肪酸(5a)の塩をシス異性体の塩と分離する」とは、例えば、晶析、スラリー洗浄、再結晶化等によって塩を分離することをいう。
さらに、上記精製方法の具体例を以下に示す。
カプシノイド構成成分の脂肪酸の一つであるトランス−8−メチル−6−ノネン酸とそのシス異性体(シス−8−メチル−6−ノネン酸)との混合物は、蒸留やクロマトグラフィーでは分離することは不可能であるが、上記工程(塩基と塩を形成すること)によって容易に分離することができる。例えば、シス−2−アミノシクロヘキサノールを塩基として用いれば、12%程度のシス−8−メチル−6−ノネン酸を含有するトランス−8−メチル−6−ノネン酸を2、3回晶析することによって、トランス−8−メチル−6−ノネン酸を97%以上の純度で得ることが出来る。
次に、脂肪酸(5)と塩基との塩またはその結晶について説明する。
カプシノイド構成成分の脂肪酸の塩またはその結晶を調製する試みは今まで行われたことがなかったが、該塩またはその結晶の形成に適した塩基及び溶媒を選択することにより、当該脂肪酸(5)と塩基との塩またはその結晶を調製することが出来る。
なお、塩またはその結晶の形成についての詳細(方法、塩基、反応溶媒、反応条件等)は、上記脂肪酸(5)の精製方法における塩結晶の形成についての説明を参照することができる。
本発明においては、8−メチルノナン酸、8−メチル−6−ノネン酸または7−メチルオクタン酸と塩基との塩またはその結晶が好ましく、これら脂肪酸と、ナトリウム、カルシウム、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、シクロヘキシルアミン、4−メトキシベンジルアミン、エタノールアミン、(S)−フェニルグリシノール、(S)−フェニルアラニノール、シス−2−アミノシクロヘキサノール、トランス−4−アミノシクロヘキサノール、(1S,2R)−シス−1−アミノ−2−インダノール、L−リジン、L−アルギニンまたはアンモニアとの塩またはその結晶がより好ましい。
次に、脂肪酸(5)と塩基との塩またはその結晶を用いたカプシノイドの製造方法について説明する。
当該製造方法は、上記の脂肪酸(5)と塩基との塩またはその結晶を酸性溶液に溶解し、有機溶媒で抽出し、得られる脂肪酸(5)をリパーゼ存在下でバニリルアルコールと反応させる工程を有する。
酸性溶液としては、塩を溶解して塩を解離させ、脂肪酸(5)を遊離させるのに十分な酸性溶液であれば特に限定されるものではなく、例えば、塩酸溶液、クエン酸溶液、硫酸溶液等が挙げられ、好ましくは酸性水溶液、例えば、塩酸水溶液である。有機溶媒としては、得られる脂肪酸を十分に溶解することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、酢酸エチル、ジエチルエーテル等が挙げられる。このように脂肪酸(5)と塩基との塩またはその結晶を酸性溶液に溶解し、有機溶媒で抽出することによって、高純度の脂肪酸(5)を高収率で得ることができる。このようにして得た脂肪酸(5)を減圧蒸留すれば、更に純度が高く、有機溶剤を含まない状態で得ることができる。
なお、塩基との塩結晶を用いる精製工程は、反応で得られた脂肪酸の純度によって省略することもできる。
次いで、得られる脂肪酸(5)は、リパーゼ存在下でのバニリルアルコールとの反応に供される。該反応の反応条件(反応基質(脂肪酸(5)およびバニリルアルコール)およびリパーゼの使用量、溶媒の種類および使用量、反応温度、反応時間等)は、脂肪酸(5)の種類等に応じて適宜選択すればよく、例えば、K.Kobata et al.,Biosci.Biotechnol.Biochem.,66,319(2002)或いは特開2000−312598号公報に記載の条件を採用することができる。
当該カプシノイドの製造方法によって、高純度でかつ高品質のカプシノイド類を高収率で合成することが出来る。
以上述べたように、本発明の製造方法は、操作が簡便であり、既存の技術よりも短時間で高収率かつ高純度でカプシノイド構成成分の脂肪酸を工業生産できる点で、極めて有用である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、合成された化合物の構造は核磁気共鳴スペクトル(Bruker AVANCE400(400MHz))によって同定した。融点はYanaco社製MP500Dを用いて測定した。GC−MSは、HEWLETT PACKARD社5890SERIESII、5972SERIES、7673CONTROLLERを用いて測定した。8−メチル−6−ノネン酸のトランス体とシス体との比は、YMC社の脂肪酸分析キット[YMC−PackFA&ラベル化試薬(2−ニトロフェニルヒドラジン)]を用いて決定した。
(実施例1)8−メチルノナン酸エチルエステルの合成(その1)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(5.11g、210mmol)をTHF(10ml)に懸濁させた。イソペンチルブロミド(28.9g、191mmol)のうち400mgを室温にて加え、発熱、発泡を確認した。THF(50ml)を加え、イソペンチルブロミドの残り全量のTHF(100ml)溶液を室温にて1時間かけてゆっくり滴下した後、さらに2時間撹拌した。この時緩やかな還流状態となった。反応溶液をTHFで洗いながら綿栓濾過し、イソペンチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(全体量200ml)を調製した。
アルゴン雰囲気下、塩化銅(I)(355mg、3.58mmol)をNMP(46ml、478mmol)に溶解させた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、5−ブロモ吉草酸エチルエステル(25.0g、119mmol)のTHF(35ml)溶液を10分かけて滴下した。続いて先に調製したイソペンチルマグネシウムブロミドのTHF溶液を0℃にて2時間かけてゆっくり滴下した。さらに同温度にて1時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(200ml)にて反応をクエンチし、n−ヘキサン(150ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)、続いて飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、薄黄色油状物質(25.4g)を得た。これを減圧蒸留し(2.9mmHg、82℃)、8−メチルノナン酸エチルエステルを20.2g(収率84%)、無色透明油状物質として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.860(d,6H,J=6.63Hz),1.13−1.33(m,11H),1.48−1.64(m,3H),2.28(t,2H,J=7.55Hz),4.12(q,2H,J=7.13Hz).
13C−NMR(CDCl3,δ):14.60,22.98,25.36,27.56,28.30,29.54,29.89,34.75,39.31,60.47,174.2
(実施例2)8−メチルノナン酸の合成(その1)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(473mg、19.5mmol)をTHF(2ml)に懸濁させた。イソペンチルブロミド(3.23g、21.4mmol)のうち100mgを室温にて加え、発熱、発泡を確認した。THF(1ml)を加え、イソペンチルブロミドの残り全量のTHF(10ml)溶液を室温にて15分かけてゆっくり滴下した後、さらに45分撹拌した。この時緩やかな還流状態となった。反応混合物をTHFで洗いながら滴下漏斗に移し、イソペンチルマグネシウムブロミドのTHF(20ml)溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、塩化銅(I)(40.0mg、0.404mmol)をNMP(5.2ml、54.1mmol)に溶解させた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、5−ブロモ吉草酸エチルエステル(2.80g、13.4mmol)のTHF(5ml)溶液を5分間かけて滴下した。さらに5分後、先に調製したイソペンチルマグネシウムブロミドのTHF(20ml)溶液を0℃にて25分かけてゆっくり滴下した。さらに同温度にて2時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(80ml)にて反応をクエンチし、n−ヘキサン(80ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)、続いて飽和食塩水(50ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、薄黄色油状物質(2.75g)を得た。1H−NMR測定により、未反応の5−ブロモ吉草酸エチルエステルが若干量残存していたことを確認した。
得られた粗生成物(2.75g)をエタノール(10ml)に溶解し、2MNaOH水溶液(10ml、20mmol)を室温にて加えた。60℃の油浴を用いて30分加熱撹拌した後、反応容器を室温に戻し、エタノールを減圧留去した。2M NaOH(30ml)を加え、t−ブチルメチルエーテル(30ml)にて2回洗浄した。水層を6M HCl水溶液(20ml)にて注意深く酸性にし、n−ヘキサン(30ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を水(20ml)、続いて飽和食塩水(20ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、薄黄色油状物質(2.07g)を得た。これをクーゲルロールにて減圧蒸留し(1.7mmHg、180℃)、8−メチルノナン酸を2.00g(2段階収率87%)、無色透明油状物質として得た。クロスカップリング反応時に若干量残存していた5−ブロモ吉草酸エチルエステルは加水分解工程にて淘汰されたことを1H−NMR測定により確認した。GC−MSにより純度を測定した所、99.0%であった。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.862(d,6H,J=6.64Hz),1.14−1.17(m,2H),1.26−1.35(m,6H),1.48−1.65(m,3H),2.35(t,2H,J=7.52Hz).
13C−NMR(CDCl3,δ):22.95,25.04,27.55,28.12,29.47,29.88,34.51,39.31,181.0
GC−MS:M=172.
(実施例3)8−メチルノナン酸の合成(その2)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(473mg、19.5mmol)をTHF(2ml)に懸濁させた。イソペンチルブロミド(3.23g、21.4mmol)のうち100mgを室温にて加え、発熱、発泡を確認した。THF(1ml)を加え、イソペンチルブロミドの残り全量のTHF(10ml)溶液を室温にて15分かけてゆっくり滴下した後、さらに45分撹拌した。この時緩やかな還流状態となった。反応混合物をTHFで洗いながら滴下漏斗に移し、イソペンチルマグネシウムブロミドのTHF(20ml)溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、ヨウ化銅(I)(76.3mg、0.402mmol)をNMP(5.2ml、54.1mmol)に溶解させた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、5−ブロモ吉草酸エチルエステル(2.80g、13.4mmol)のTHF(5ml)溶液を5分間かけて滴下した。さらに5分後、先に調製したイソペンチルマグネシウムブロミドのTHF(20ml)溶液を0℃にて25分かけてゆっくり滴下した。さらに同温度にて2時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(80ml)にて反応をクエンチし、n−ヘキサン(80ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)、続いて飽和食塩水(50ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、薄黄色油状物質(2.75g)を得た。1H−NMR測定により、未反応の5−ブロモ吉草酸エチルエステルが若干量残存していたことを確認した。
得られた粗生成物(2.75g)をエタノール(10ml)に溶解し、2M NaOH水溶液(10ml、20mmol)を室温にて加えた。60℃の油浴を用いて30分加熱撹拌した後、反応容器を室温に戻し、エタノールを減圧留去した。2M NaOH(20ml)を加え、t−ブチルメチルエーテル(30ml)にて2回洗浄した。水層を6M HCl水溶液(15ml)にて注意深く酸性にし、n−ヘキサン(30ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を水(20ml)、続いて飽和食塩水(20ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、薄黄色油状物質(2.06g)を得た。これをクーゲルロールにて減圧蒸留し(2.1mmHg、180℃)、8−メチルノナン酸を1.97g(2段階収率86%)、無色透明油状物質として得た。GC−MSにより純度を測定した所、99.4%であった。
(実施例4)8−メチルノナン酸の合成(その3)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(5.37g、221mmol)をTHF(10ml)に懸濁させた。イソペンチルブロミド(31.8g、211mmol)のうち200mgを室温にて加え、発熱、発泡を確認した。THF(100ml)を加え、イソペンチルブロミドの残り全量のTHF(70ml)溶液を室温にて1時間かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この時緩やかな還流状態となった。反応溶液をTHFで洗いながら綿栓濾過し、イソペンチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(全量200ml)を調製した。
アルゴン雰囲気下、CuCl2(385mg、2.87mmol)をNMP(36.8ml、383mmol)に溶解させた。THF(74ml)を加え、反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、LiCl(243mg、5.73mmol)を添加した。0℃にて15分撹拌後、5−ブロモ吉草酸エチルエステル(20.0g、95.7mmol)のTHF(5ml)溶液を5分間かけて滴下した。さらに5分後、先に調製したイソペンチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(全量200ml)のうち、145mlを0℃にて30分かけてゆっくり滴下した。さらに同温度にて1時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(150ml)にて反応をクエンチし、n−ヘキサン(150ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を5%重曹水(100ml)、続いて飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、薄黄色油状物質(20.9g)を得た。
得られた粗生成物(20.9g)をエタノール(100ml)に溶解し、2M NaOH水溶液(71.7ml、143mmol)を0℃(氷浴)にて加えた。氷浴を外し、60℃の油浴を用いて40分加熱撹拌した後、反応容器を室温に戻し、エタノールを減圧留去した。2M NaOH(100ml)を加え、ジエチルエーテル(150ml)にて2回洗浄した。水層を6M HCl水溶液(90ml)にて注意深く酸性にし、n−ヘキサン(150ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を水(100ml)、続いて飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、薄黄色油状物質(15.7g)を得た。これを減圧蒸留し(1.3mmHg、107℃)、8−メチルノナン酸を13.8g(2段階収率84%)、無色透明油状物質として得た。GC−MSにより純度を測定した所、99.3%であった。
(実施例5)8−メチルノナン酸の合成(その4)
温度計を備え付けた500mlの3口フラスコをアルゴン置換し、臭化銅(I)(481mg;3.36mmol)を加えた。室温にてNMP(43.1ml,449mmol)を加えて溶解させた後、反応容器を−20℃に冷却した。THF(10ml)を加えた後、6−ブロモ−n−ヘキサン酸エチルエステル(25.0g;112mmol)を滴下した(内温−8℃)。10分撹拌後、別途調製したイソブチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(160ml)を60分かけてゆっくりと滴下した。
滴下終了してから90分後、10%塩化アンモニウム水溶液(120ml)をゆっくり滴下してクエンチし、n−ヘキサン(120ml)で抽出した。n−へキサン層を10%塩化アンモニウム水溶液(100ml)、水(100ml)、飽和食塩水(50ml)にて洗浄した。n−ヘキサン層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して濾液を減圧濃縮し、8−メチルノナン酸エチルエステルの粗生成物24.2gを薄黄色油状物質として得た。GC−MSにより純度を測定した所、97.5%であった。
得られた8−メチルノナン酸エチルエステルのうち、22.2gを500mlナス型フラスコに入れ、エタノール(77ml)に溶解させて室温にて2M NaOH水溶液(77ml;154mmol)を5分かけて滴下した。滴下終了後、60℃の油浴を用いて90分加熱撹拌し、TLCにて原料の消失を確認した後、室温に冷却した。
エタノールを減圧濃縮した後、水(40ml)、t−ブチルメチルエーテル(80ml)を加えて分液操作を行った。水層に対してさらにt−ブチルメチルエーテル(80ml)で2回分層し、洗浄した。続いて水層に対して2M HCl水溶液(120ml)をゆっくり加えて酸性にした後、n−ヘキサン(80ml)にて抽出した。n−ヘキサン層を水(80ml)、水(40ml)、飽和食塩水(40ml)にて洗浄し、n−ヘキサン層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して濾液を減圧濃縮し、17.3gの8−メチルノナン酸を薄黄色油状物質として得た。このうち、15.3gに対して減圧蒸留を行い、12.7gの8−メチルノナン酸を薄黄色油状物質として得た。GC−MSにより純度を測定した所、99.9%以上であった。6−ブロモ−n−ヘキサン酸エチルエステルからの総収率81%。
(実施例6)8−メチルノナン酸エチルエステルの合成(その2)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(718mg、29.5mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。イソブチルブロミド(3.68g、26.8mmol)のうち200mgを室温にて加え、発熱、発泡を確認した。THF(9.5ml)を加え、イソブチルブロミドの残り全量のTHF(8ml)溶液を室温にて25分かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この時緩やかな還流状態となった。反応混合物をTHFで洗いながら滴下漏斗に移し、イソブチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(30ml)を調製した。
アルゴン雰囲気下、塩化銅(I)(40.0mg、0.404mmol)をNMP(5.2ml、54.1mmol)に溶解させた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、6−ブロモヘキサン酸エチルエステル(3.00g、13.5mmol)のTHF(5ml)溶液を5分間かけて滴下した。さらに10分後、先に調製したイソブチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(30ml)のうち24mlを0℃にて15分かけてゆっくり滴下した。さらに同温度にて80分撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(80ml)にて反応をクエンチし、n−ヘキサン(80ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を飽和塩化アンモニウム水溶液(40ml)、続いて飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、8−メチルノナン酸エチルエステル(2.62g、収率97%)を得た。
(実施例7)8−メチルノナン酸エチルエステルの合成(その3)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(718mg、29.5mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。イソブチルブロミド(3.68g、26.8mmol)のうち100mgを室温にて加え、発熱、発泡を確認した。THF(15ml)を加え、イソブチルブロミドの残り全量のTHF(5ml)溶液を室温にて20分かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この時緩やかな還流状態となった。反応混合物をTHFで洗いながら滴下漏斗に移し、イソブチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(25ml)を調製した。
アルゴン雰囲気下、ヨウ化銅(I)(76.7mg、0.403mmol)をNMP(5.2ml、54.1mmol)に溶解させた。THF(10ml)を加えた後、反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、6−ブロモヘキサン酸エチルエステル(3.00g、13.4mmol)のTHF(5ml)溶液を2分間かけて滴下した。続いて先に調製したイソブチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(25ml)のうち20mlを0℃にて20分かけてゆっくり滴下した。さらに同温度にて2.5時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(80ml)にて反応をクエンチし、n−ヘキサン(70ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を飽和塩化アンモニウム水溶液(40ml)、続いて飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、8−メチルノナン酸エチルエステル(2.66g、収率99%)を得た。
(実施例8)8−メチルノナン酸エチルエステルの合成(その4)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(718mg、29.5mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。イソブチルブロミド(3.68g、26.9mmol)のうち100mgを室温にて加え、発熱、発泡を確認した。THF(14.5ml)を加え、イソブチルブロミドの残り全量のTHF(5ml)溶液を室温にて30分かけてゆっくり滴下した後、さらに30分撹拌した。この時緩やかな還流状態となった。反応溶液をTHFで洗いながら綿栓濾過し、イソブチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(全量35ml)を調製した。
アルゴン雰囲気下、CuCl2(54.0mg、0.403mmol)をNMP(5.2ml、54.0mmol)に溶解させた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、LiCl(34.1mg、0.804mmol)を添加した。0℃にて5分撹拌後、6−ブロモヘキサン酸エチルエステル(3.00g、13.5mmol)のTHF(5ml)溶液を2分間かけて滴下した。10分後、先に調製したイソブチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(全量35ml)のうち、25mlを0℃にて30分かけてゆっくり滴下した。原料が消失しないので30分後、更に5mlを追加投入した。同温度にて1.5時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)にて反応をクエンチし、n−ヘキサン(50ml)にて2回抽出した。合わせたn−へキサン層を飽和塩化アンモニウム水溶液(30ml)、水(30ml)、飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、8−メチルノナン酸エチルエステル(2.65g、収率98%)を無色透明油状物質として得た。
(実施例9)8−メチルノナン酸の合成(その5)とリジン塩による精製
8−メチルノナン酸エチルエステル(2.00g、10.0mmol)をエタノール(7.5ml)に溶解し、2M NaOH水溶液(7.5ml、15.0mmol)を室温にて加えた。60℃の油浴を用いて30分加熱撹拌した後、反応容器を室温に戻し、エタノールを減圧留去した。2M NaOH(10ml)を加え、ジエチルエーテル(15ml)にて2回洗浄した。水層に2M HCl水溶液(25ml)を注意深く加えて酸性にし、n−ヘキサン(20ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を水(20ml)、続いて飽和食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、薄黄色油状物質(1.59g)を得た。得られた粗生成物を酢酸エチル(20ml)に溶解し、L−リジン・1水和物(1.82g、11.1mmol)を加えた。60℃の油浴を用いて30分加熱撹拌した後、反応容器を室温に戻し、反応液を濾過することにより、薄黄色のリジン塩を得た。得られた塩を10%クエン酸水溶液(20ml)に溶解し、n−ヘキサン(20ml)で2回抽出し、合わせたヘキサン層を水(20ml)、飽和食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、無色透明油状物質(1.53g)を得た。これを減圧蒸留し(1.3mmHg、110℃)、8−メチルノナン酸(1.40g、収率81%)を無色透明油状物質として得た。
(実施例10)8−メチルノナン酸の合成(その6)とシクロヘキシルアミン塩による精製
実施例1と同様の方法で合成した8−メチルノナン酸エチルエステル(5.00g)をエタノール(18.7ml)に溶解し、室温にて2M NaOH水溶液(18.7ml)をゆっくりと加えた。続いて60℃の油浴を用いて30分加熱撹拌した後、反応容器を室温に戻し、エタノールを減圧留去した。2M NaOH(20ml)、t−ブチルメチルエーテル(20ml)を加えて分液操作を行った。水層に対してさらにt−ブチルメチルエーテル(20ml)を加えて分層した。続いて水層に対して2M HCl水溶液(45ml)を注意深く加えて酸性にし、n−ヘキサン(20ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を水(20ml)、続いて飽和食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、8−メチルノナン酸を4.06g(粗収率94%)、薄黄色油状の粗生成物として得た。GCMS分析により、構造未決定の不純物X(0.52%)、Y(0.17%)、Z(0.08%)を含み、8−メチルノナン酸の純度は99.0%であった。
この粗生成物4.06gのうち、502mgをn−ヘプタン(2ml)に溶解させた。室温にてシクロヘキシルアミン(0.500ml)をゆっくり滴下し、同温にて30分間撹拌した。反応液を濾過して8−メチルノナン酸シクロヘキシルアミン塩(737mg)を得た。この塩に対して10%クエン酸水溶液(3ml)、n−ヘプタン(3ml)を加えて分液操作を行った。さらに水層からn−ヘプタン(3ml)で抽出し、合わせたn−ヘプタン層を飽和食塩水(3ml)にて洗浄した。n−ヘプタン層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して濾液を減圧濃縮し、8−メチルノナン酸を458.0mg(2段階収率86%)、無色透明油状物質として得た。GCMS分析を行うと、前記不純物X、Y、Zは検出限界以下であり、8−メチルノナン酸の純度は99.7%であった。
(実施例11)8−メチルノナン酸エチルエステルの合成(その5)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(267mg、11mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。1−ブロモ−4−メチルペンタン(1.65g、10mmol)のうち300mgを室温で加え、発熱、発泡を確認した。残りの1−ブロモ−4−メチルペンタンをTHF(15ml)に溶解した溶液を室温で30分かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となった。THFを更に10ml追加し、グリニア試薬を調製した。
アルゴン雰囲気下、CuCl2(134mg、1mmol)とLiCl(85mg、2mmol)とをNMP(2.57ml、26.7mmol)に溶解させ、これにTHF(5ml)を加えた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、4−ブロモ−n−酪酸エチルエステル(0.8ml、5.56mmol)のTHF(5ml)溶液を加えた。この溶液に先に調製したグリニア試薬を0℃で10分かけて滴下した。同温度で30分間、室温で1時間撹拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加え、n−ヘキサン(50ml)で2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を5%クエン酸水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮し、残渣をPTLC(分取薄層クロマトグラフィー)で精製して8−メチルノナン酸エチルエステル(1.03g、収率92.1%)を無色透明油状物質として得た。
(実施例12)7−メチルオクタン酸エチルエステルの合成(その1)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(267mg、11mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。イソブチルブロミド(1.37g、10mmol)のうち300mgを室温で加え、発熱、発泡を確認した。残りのイソブチルブロミドをTHF(15ml)に溶解した溶液を室温で30分かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となった。THFを更に10ml追加し、グリニア試薬を調製した。
アルゴン雰囲気下、CuCl2(134mg、1mmol)とLiCl(85mg、2mmol)とをNMP(1.92ml、20mmol)に溶解させ、これにTHF(5ml)を加えた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、5−ブロモ−n−吉草酸エチルエステル(0.8ml、5mmol)のTHF(5ml)溶液を加えた。この溶液に先に調製したグリニア試薬を0℃で10分かけて滴下した。同温度で30分間、室温で1時間撹拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加え、n−ヘキサン(50ml)で2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を5%クエン酸水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮し、残渣をPTLCで精製して7−メチルオクタン酸エチルエステル(1.03g、収率92.1%)を無色透明油状物質として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.86(d,6H,J=6.60Hz),1.13−1.22(m,2H),1.22−1.33(m,7H),1.48−1.58(m,1H),1.58−1.70(m,2H),2.28(t,2H,J=7.68Hz),4.12(q,2H,J=7.16Hz).
(実施例13)7−メチルオクタン酸エチルエステルの合成(その2)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(11.0g、452mmol)をTHF(10ml)に懸濁させた。イソブチルブロミド(59.0g、431mmol)のうち800mgを室温で加え、発熱、発泡を確認した。THF(100ml)を加えた後、残りのイソブチルブロミドをTHF(100ml)に溶解した溶液を室温で1時間かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となり、グリニア試薬を調製した。
アルゴン雰囲気下、CuCl(853mg、8.62mmol)をNMP(110ml、1145mmol)に溶解させた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、5−ブロモ−n−吉草酸エチルエステル(60.0g、287mmol)のTHF(40ml)溶液を加えた。この溶液に、先に調製したグリニア試薬を0℃で3.5時間かけて滴下した。グリニア試薬滴下途中、反応溶液中に塩が析出して撹拌効率が悪いため、THF(50ml)を加え、グリニア試薬滴下終了後、THF(50ml)を追加した。さらに同温度で1.5時間撹拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(400ml)を注意深く加え、n−ヘプタン(25oml)と分液操作を行った。水層からn−ヘプタン(300ml)で抽出し、合わせたn−ヘプタン層を飽和塩化アンモニウム水溶液(150ml)、水(150ml)、飽和食塩水(150ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮し、薄黄色油状物質(55.99g)を得た。このうち50.97gに対して減圧蒸留を行い(5.9mmHg、120〜130℃)、7−メチルオクタン酸エチルエステル(42.9g、収率88.2%)を無色透明油状物質として得た。
(実施例14)7−メチルオクタン酸の合成
上記実施例13と同様にして合成した7−メチルオクタン酸エチルエステル粗生成物(67.8g)をエタノール(200ml)に溶解し、2M NaOH水溶液(256ml)を室温にて加えた。60℃の油浴を用いて100分加熱撹拌した後、反応容器を室温に戻し、エタノールを減圧留去した。水(100ml)を加え、t−ブチルメチルエーテル(300ml)にて3回洗浄した。水層を2M HCl水溶液(300ml)にて注意深く酸性にし、n−ヘキサン(25oml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を水(200ml)、続いて飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、薄黄色油状物質(50.3g)を得た。これを減圧蒸留し、7−メチルオクタン酸を46.4g(2段階収率86%)、無色透明油状物質として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.875(d,6H,J=6.68Hz),1.13−1.23(m,2H),1.26−1.39(m,4H),1.46−1.59(m,1H),1.60−1.70(m,2H),2.36(t,2H,J=7.60Hz).
13C−NMR(CDCl3,δ):22.94,25.06,27.37,28.28,29.68,34.53,39.13,181.1
(実施例15)9−メチルデカン酸の合成
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(1.83g、75.3mmol)をTHF(5ml)に懸濁させた。イソペンチルブロミド(16.0g、71.7mmol)のうち500mgを室温で加え、発熱、発泡を確認した。THF(100ml)を加えた後、残りのイソペンチルブロミドをTHF(40ml)に溶解した溶液を室温で30分間かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となり、グリニア試薬を調製した。
アルゴン雰囲気下、CuCl(445mg、4.48mmol)をNMP(17.3ml、179mmol)に溶解させた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、5−ブロモヘキサン酸エチルエステル(10.0g、44.8mmol)のTHF(50ml)溶液を加えた。この溶液に、先に調製したグリニア試薬を0℃で30分間かけて滴下した。さらに同温度で2時間撹拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(100ml)を注意深く加え、次いでn−ヘキサン(50ml)を加えて分液操作を行った。水層からn−ヘキサン(50ml)で2回抽出し、合わせたn−ヘキサン層を飽和塩化アンモニウム水溶液(100ml)、水(100ml)、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮し、無色油状物質の9−メチルデカン酸エチルエステル(8.10g)を得た。
上記9−メチルデカン酸エチルエステル粗生成物(8.10g)をエタノール(50ml)に溶解し、2M NaOH水溶液(40ml)を室温にて加えた。反応液を室温で一夜撹拌した後、エタノールを減圧留去した。水(100ml)を加え、エチルエーテル(50ml)で3回洗浄した。水層を2M HCl水溶液(300ml)にて注意深く酸性にし、n−ヘキサン(100ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を水(50ml)、続いて飽和食塩水(50ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、無色油状物質を得た。これを減圧蒸留し(1〜3mmHg、102〜105℃)、9−メチルデカン酸を6.51g(2段階収率78%)、無色透明油状物質として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.86(d,6H,J=6.6Hz),1.12−1.20(m,2H),1.20−1.40(m,8H),1.50−1.58(m,1H),1.60−1.70(m,2H),2.35(t,2H,J=7.6Hz).
(実施例16)10−メチルウンデカン酸の合成
5−ブロモヘキサン酸エチルエステルの代わりに7−ブロモヘプタン酸エチルエステルを用いたこと以外は実施例15と同様にして、10−メチルウンデカン酸を、減圧蒸留(1〜3mmHg、125〜128℃)によって精製を行い、2段階収率81%で無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.86(d,6H,J=6.6Hz),1.10−1.20(m,2H),1.20−1.40(m,10H),1.48−1.60(m,1H),1.60−1.70(m,2H),2.35(t,2H,J=7.6Hz).
(実施例17)6−メチルオクタン酸の合成
イソペンチルブロミドの代わりに1−クロロ−2−メチルブタンを、5−ブロモヘキサン酸エチルエステルの代わりに4−ブロモブタン酸エチルエステルを用いたこと以外は実施例15と同様にして、6−メチルオクタン酸を、減圧蒸留(1〜3mmHg、83〜85℃)によって精製を行い、2段階収率83%で無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.86(d,3H,J=7.1Hz),0.86(d,3H,J=7.3Hz),1.08−1.20(m,2H),1.25−1.45(m,5H),1.60−1.70(m,2H),2.36(t,2H,J=7.5Hz).
(実施例18)7−メチルノナン酸の合成
イソペンチルブロミドの代わりに1−クロロ−2−メチルブタンを用いたこと以外は実施例15と同様にして、7−メチルノナン酸を、減圧蒸留(1〜3mmHg、92〜94℃)によって精製を行い、2段階収率90%で無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.86(m,6H),1.05−1.20(m,2H),1.22−1.42(m,7H),1.60−1.70(m,2H),2.36(t,2H,J=7.6Hz).
(実施例19)8−メチルデカン酸の合成
イソペンチルブロミドの代わりに1−クロロ−2−メチルブタンを、5−ブロモヘキサン酸エチルエステルの代わりに6−ブロモヘキサン酸エチルエステルを用いたこと以外は実施例15と同様にして、8−メチルデカン酸を、減圧蒸留(1〜3mmHg、102〜105℃)によって精製を行い、2段階収率87%で無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.86(m,6H),1.08−1.20(m,2H),1.20−1.45(m,9H),1.60−1.70(m,2H),2.35(t,2H,J=7.6Hz).
(実施例20)8−メチルノナン酸の合成(その7)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(9.97g、410mmol)をTHF(15ml)に懸濁させた。イソブチルブロミド(54.81g、400mmol)のうち2gを室温で加え、発熱、発泡を確認した。残りのイソブチルブロミドをTHF(200ml)に溶解した溶液を室温で1時間かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となった。THFを更に100ml追加し、グリニア試薬を調製した。
アルゴン雰囲気下、CuCl2(1.34g、10mmol)とLiCl(848mg、20mmol)とをNMP(57.7ml、600mmol)に溶解させ、これにTHF(250ml)を加えた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、6−ブロモヘキサン酸エチルエステル(37.0ml、200mmol)のTHF(50ml)溶液を加えた。この溶液に先に調製したグリニア試薬を0℃で30分かけて滴下した。同温度で30分間、室温で1時間撹拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(300ml)を加え、n−ヘキサン(200ml)で3回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を5%クエン酸水溶液(150ml)で2回、飽和食塩水(150ml)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(150ml)で2回、飽和食塩水(150ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮して8−メチルノナン酸エチルエステル(42.5g)を無色透明油状物質として得た。
上記エステルをエタノール(200ml)に溶解し、2M NaOH(200ml)を加えた。80℃の油浴を用いて1時間加熱撹拌した後、反応液を室温に戻し、エタノールを減圧留去した。反応液に水(150ml)を加え、ジエチルエーテル(150ml)で2回洗浄した。水層を6M HCl水溶液で酸性(pH2〜3)にし、n−ヘキサン(150ml)で3回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を水(150ml)と飽和食塩水(150ml)とで洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮することにより、8−メチルノナン酸(33.0g)を薄黄色油状物質として得た。
上記カルボン酸(8−メチルノナン酸)をジエチルエーテル(100ml)に溶解し、氷浴で冷却した。シクロヘキシルアミン(19.8g、200mmol)のジエチルエーテル(100ml)溶液を反応液に加え、反応液を室温に戻した後に2時間撹拌した。析出した結晶を濾過して集め、少量のジエチルエーテルで洗った。濾液を約50mlまで濃縮し、再び析出した結晶を濾過して集め、少量のジエチルエーテルで洗った。濾液は黄色に着色していた。この結晶を水(250ml)に懸濁させ、濃塩酸で懸濁液のpHを2〜3に調節した。分離した油状物をn−ヘキサン(150ml)で3回抽出し、有機層を5%クエン酸水溶液(150ml)と飽和食塩水(150ml)とで洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮して8−メチルノナン酸(32.0g)を無色油状物として得た。1H−NMRで微量の不純物が検出されたため、PTLCで精製した後に減圧蒸留(12mmHg、137〜142℃)して、8−メチルノナン酸(27.8g、80.5%)を無色油状物として得た。
(実施例21)trans−8−メチル−6−ノネン酸エチルエステルの合成(その1)
(1)trans−1−ブロモ−5−メチル−3−ヘキセンの合成
マロン酸(53.3g、513mmol)、イソバレルアルデヒド(50ml、466mmol)、トリエチルアミン(71.1ml、513mmol)を500mlのフラスコに加え、94℃の油浴を用いて8時間加熱撹拌した。反応液を室温に戻した後に、11%硫酸水(225ml)を加え、塩化メチレン(150ml)で3回抽出した。塩化メチレン層を水(100ml)で2回洗浄した後に無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮して、約58gのtrans−5−メチル−3−ヘキセン酸を油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.99(d,6H,J=6.8Hz),2.25−2.35(m,1H),3.06(d,2H,J=5.9Hz),5.45−5.52(m,1H),5.55−5.60(m,1H).
上記カルボン酸(trans−5−メチル−3−ヘキセン酸)をエタノール(200ml)に溶解し、濃硫酸(3ml)を加えた。反応液を100℃の油浴を用いて1時間30分加熱撹拌した。反応液を室温に戻した後に、室温で減圧濃縮した。残渣をジエチルエーテル(300ml)に溶解し、溶液を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)で3回、飽和食塩水(100ml)で1回洗浄した後に、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、ろ液を室温で減圧濃縮してエチル trans−5−メチル−3−ヘキセノエート(57.3g、78.8%)を油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.98(d,6H,J=6.8Hz),1.27(t,3H),2.25−2.32(m,1H),3.00(d,2H,J=5.9Hz),4.13(q,2H),5.45−5.57(m,2H).
水素化リチウムアルミニウム(LAH、13.93g、367mmol)をジエチルエーテル(200ml)に懸濁し、懸濁液を氷浴で0℃に保った。上記エステル(57.3g、367mmol)をジエチルエーテル(100ml)に溶解した溶液をゆっくり加えた。氷浴をはずし、反応液を室温で2時間撹拌した後に、再び氷浴で0℃に冷却し、7%の硫酸水素カリウム水溶液(550ml)をゆっくり加えた。反応液をジエチルエーテル(400ml)で2回抽出し、飽和食塩水(200ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を室温で減圧濃縮し、残渣を減圧蒸留(5〜10mmHg、65〜73℃)してtrans−5−メチル−3−ヘキセン−1−オール(37.9g、71.2%)を油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.98(d,6H,J=6.7Hz),1.48(s,1H),2.20−2.30(m,3H),3.62(t,2H,J=6.3Hz),5.30−5.37(m,1H),5.51−5.57(dd,1H).
上記アルコール(trans−5−メチル−3−ヘキセン−1−オール;9.63g、84.3mmol)を塩化メチレン(70ml)に溶解し、溶液を氷浴で0℃に保った。この溶液にトリエチルアミン(23.4ml、169mmol)とメタンスルホニルクロリド(9.8ml、127mmol)とを加えた後に、氷浴をはずし、室温で2時間撹拌した。反応液に水(100ml)を加え、塩化メチレン(50ml)で2回抽出した。有機層を、5%クエン酸水溶液(100ml)で2回、飽和食塩水(100ml)で1回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)で2回、飽和食塩水(100ml)で1回洗浄した後に、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮した。この残渣をアセトン(100ml)に溶解し、溶液を氷浴で0℃に保った。この溶液に臭化リチウム(29.0g、334mmol)を加え、氷浴をはずして、室温で2日間撹拌した。反応液に水(150ml)を加え、ジエチルエーテル(100ml)で3回抽出した。有機層を5%クエン酸水溶液(100ml)で2回、飽和食塩水(100ml)で1回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)で2回、飽和食塩水(100ml)で1回洗浄した後に、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を室温で減圧濃縮した。残渣をn−ヘキサンに溶解し、シリカゲル(200ml)を充填したカラムを通した。氷浴で冷却しながら減圧濃縮してn−ヘキサンを除去した後に減圧蒸留(99〜104℃、440mmHg)して、trans−1−ブロモ−5−メチル−3−ヘキセン(12.8g、85.8%)を油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.98(d,6H),2.20−2.30(m,1H),2.50−2.60(m,2H),3.36(t,2H,J=7.2Hz),5.30−5.40(m,1H),5.60−5.70(dd,1H).
(2)trans−8−メチル−6−ノネン酸エチルエステルの合成
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(267mg、11mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。(1)で得たtrans−1−ブロモ−5−メチル−3−ヘキセン(1.77g、10mmol)のうち200mgを室温で加え、発熱、発泡を確認した。残りのtrans−1−ブロモ−5−メチル−3−ヘキセンをTHF(15ml)に溶解した溶液を室温で30分かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となった。THFを更に10ml追加し、グリニア試薬を調製した。
アルゴン雰囲気下、ヨウ化銅(I)(190mg、1mmol)をNMP(1.92ml、20mmol)に溶解させ、これにTHF(10ml)とTMSCl(1.89ml、15mmol)を加えた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、3−ブロモプロピオン酸エチルエステル(905mg、5mmol)のTHF(5ml)溶液を加えた。先に調製したグリニア試薬を0℃で10分かけて滴下した。同温度で1.5時間撹拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加え、n−ヘキサン(50ml)で2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を5%クエン酸水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮し、残渣をPTLCで精製してtrans−8−メチル−6−ノネン酸エチルエステル(480mg、収率48%)を無色透明油状物質として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.95(d,6H,J=6.8Hz),1.25(t,3H),1.35−1.42(m,2H),1.60−1.68(m,2H),1.95−2.10(m,2H),2.18−2.25(m,1H),2.29(t,2H,J=7.4Hz),4.12(q,2H),5.28−5.42(m,2H).
(実施例22)8−メチルノナン酸エチルエステルの合成(その6)
(1)1−ブロモ−5−メチルヘキサンの合成
trans−5−メチル−3−ヘキセン酸の代わりに5−メチルヘキサン酸を用いたこと以外は実施例21(1)と同様にして、総収率69.7%で1−ブロモ−5−メチルヘキサンを得た(減圧蒸留;95〜100℃、380mmHg)。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.88(d,6H,J=6.6Hz),1.17−1.23(m,2H),1.40−1.50(m,2H),1.50−1.60(m,1H),1.80−1.90(m,2H),3.36(t,2H,J=6.8Hz).
(2)8−メチルノナン酸エチルエステルの合成
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(267mg、11mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。(1)で得た1−ブロモ−5−メチルヘキサン(1.79g、10mmol)のうち200mgを室温で加え、発熱、発泡を確認した。残りの1−ブロモ−5−メチルヘキサンをTHF(15ml)に溶解した溶液を室温で30分かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となった。THFを更に10ml追加し、グリニア試薬を調製した。
アルゴン雰囲気下、CuCl2(134mg、1mmol)とLiCl(85mg、2mmol)とをNMP(1.92ml、20mmol)に溶解させ、これにTHF(10ml)とTMSCl(1.89ml、15mmol)を加えた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、3−ブロモプロピオン酸エチルエステル(905mg、5mmol)のTHF(5ml)溶液を加えた。先に調製したグリニア試薬を0℃で10分かけて滴下した。同温度で30分間、室温で1時間撹拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加え、n−ヘキサン(50ml)で2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を5%クエン酸水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮し、残渣をPTLCで精製して8−メチルノナン酸エチルエステル(624mg、収率62%)を無色透明油状物質として得た。
(実施例23)trans−8−メチル−6−ノネン酸エチルエステルの合成(その2)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(267mg、11mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。実施例21(1)で得たtrans−1−ブロモ−5−メチル−3−ヘキセン(1.77g、10mmol)のうち300mgを室温で加え、発熱、発泡を確認した。残りのtrans−1−ブロモ−5−メチル−3−ヘキセンをTHF(15ml)に溶解した溶液を室温で30分かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となった。THFを更に10ml追加し、グリニア試薬を調製した。このグリニア試薬溶液をエタノール−ドライアイスバスで−78℃に冷却し、THF(10ml)、DMPU(1ml)及び臭化銅(I)・ジメチルスルフィド(CuBr・SMe2、103mg、0.5mmol)を加えた。
アルゴン雰囲気下、THF(5ml)にTMSCl(2ml、15.8mmol)とアクリル酸エチルエステル(1.0ml、9.5mmol)とを加えた溶液を調製した。この溶液を先に調製したグリニア試薬溶液にゆっくり滴下した。反応液の温度を−78℃から徐々に昇温し、室温で1時間撹拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加え、n−ヘキサン(50ml)で2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を5%クエン酸水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮し、残渣をPTLCで精製してtrans−8−メチル−6−ノネン酸エチルエステル(1.37g、収率73.2%)を無色透明油状物質として得た。
(実施例24)trans−8−メチル−6−ノネン酸の合成
実施例23と同様にして得たtrans−8−メチル−6−ノネン酸エチルエステル(約8.0g、40.3mmol)をエタノール(60ml)に溶解し、2M NaOH(40ml)を加えた。80℃の油浴を用いて1時間加熱撹拌した後、反応液を室温に戻し、エタノールを減圧留去した。反応液に水(100ml)を加え、ジエチルエーテル(50ml)で2回洗浄した。水層を6M HCl水溶液で酸性(pH2〜3)にし、n−ヘキサン(50ml)で3回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を水(50ml)と飽和食塩水(50ml)とで洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮することにより、trans−8−メチル−6−ノネン酸(5.95g)を薄黄色油状物質として得た。
上記カルボン酸(trans−8−メチル−6−ノネン酸)をジエチルエーテル(100ml)に溶解し、氷浴で冷却した。この溶液にL−リジン・1水和物(5.85g、40.0mmol)を加え、反応液を室温に戻した後に2時間撹拌した。析出した結晶を濾過して集め、少量のジエチルエーテルで洗った。濾液は黄色に着色していた。この結晶を水(100ml)に懸濁させ、濃塩酸で懸濁液のpHを2〜3に調節した。分離した油状物をn−ヘキサン(50ml)で3回抽出し、有機層を5%クエン酸水溶液(50ml)と飽和食塩水(50ml)とで洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮してtrans−8−メチル−6−ノネン酸(4.50g、65.5%)を無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.96(d,6H,J=6.8Hz),1.38−1.46(m,2H),1.60−1.70(m,2H),1.95−2.05(m,2H),2.18−2.38(m,1H),2.35(t,2H,J=7.4Hz),5.28−5.42(m,2H).
(実施例25)8−メチルノナン酸エチルエステルの合成(その7)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(267mg、11mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。実施例22(1)で得た1−ブロモ−5−メチルヘキサン(1.65g、10mmol)のうち300mgを室温で加え、発熱、発泡を確認した。残りの1−ブロモ−5−メチルヘキサンをTHF(15ml)に溶解した溶液を室温で30分かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となった。THFを更に10ml追加し、グリニア試薬を調製した。このグリニア試薬溶液をエタノール−ドライアイスバスで−78℃に冷却し、THF(10ml)、DMPU(1ml)及びCuBr・SMe2(103mg、0.5mmol)を加えた。
アルゴン雰囲気下、THF(5ml)にTMSCl(2ml、15.8mmol)とアクリル酸エチルエステル(1ml、9.5mmol)とを加えた溶液を調製した。この溶液を先に調製したグリニア試薬溶液にゆっくり滴下した。反応液の温度を−78℃から徐々に昇温し、室温で1時間撹拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加え、n−ヘキサン(50ml)で2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を5%クエン酸水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、ろ液を減圧濃縮し、残渣をPTLCで精製して8−メチルノナン酸エチルエステル(1.47g、収率77.3%)を無色透明油状物質として得た。
(実施例26)7−メチルオクタン酸エチルエステルの合成(その3)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(267mg、11mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。1−ブロモ−4−メチルペンタン(1.37g、10mmol)のうち300mgを室温で加え、発熱、発泡を確認した。残りの1−ブロモ−4−メチルペンタンをTHF(15ml)に溶解した溶液を室温で30分かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となった。THFを更に10ml追加し、グリニア試薬を調製した。このグリニア試薬溶液をエタノール−ドライアイスバスで−78℃に冷却し、THF(10ml)、DMPU(1ml)及びCuBr・SMe2(103mg、0.5mmol)を加えた。
アルゴン雰囲気下、THF(5ml)にTMSCl(2ml、15.8mmol)とアクリル酸エチルエステル(1ml、9.5mmol)とを加えた溶液を調製した。この溶液を先に調製したグリニア試薬溶液にゆっくり滴下した。反応液の温度を−78℃から徐々に昇温し、室温で1時間撹拌した後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加え、n−ヘキサン(50ml)で2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を5%クエン酸水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮し、残渣をPTLCで精製して7−メチルオクタン酸エチルエステル(1.35g、収率76.3%)を無色透明油状物質として得た。
(実施例27)8−メチルノナン酸・エチレンジアミン塩の調製
8−メチルノナン酸(500mg、2.9mmol)に、エチレンジアミン(87mg、1.45mmol)を加えて攪拌した。得られた溶液にn−ヘキサン(10ml)を滴下し、析出した結晶を濾取して、8−メチルノナン酸・エチレンジアミン塩(モル比2:1、562mg、2.78mmol、収率95.9%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.85−0.87(m,6H),1.12−1.20(m,2H),1.23−1.35(m,6H),1.48−1.54(m,1H),1.57−1.65(m,2H),2.28−2.32(t,2H),2.89(s,1H).
融点:53.1−53.8℃
(実施例28)8−メチルノナン酸・1,3−ジアミノプロパン塩の調製
エチレンジアミンの代わりに、1,3−ジアミノプロパン(108mg、1.45mmol)を用いたこと以外は、実施例27と同様にして、8−メチルノナン酸・1,3−ジアミノプロパン塩(モル比2:1、391mg、1.87mmol、収率64.5%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.85−0.87(m,6H),1.12−1.18(m,2H),1.24−1.34(m,6H),1.49−1.61(m,3H),1.88−1.96(m,1H),2.15−2.19(t,2H),2.88−3.02(t,2H).
融点:67.8−68.7℃
(実施例29)8−メチルノナン酸・1,3−ジアミノ−2−プロパノール塩の調製
エチレンジアミンの代わりに、1,3−ジアミノ−2−プロパノール(131mg、1.45mmol)を用い、溶媒にジエチルエーテルを用いたこと以外は、実施例27と同様にして、8−メチルノナン酸・1,3−ジアミノ−2−プロパノール塩(モル比2:1、528mg、2.43mmol、収率84.5%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.85−0.87(m,6H),1.13−1.18(m,2H),1.23−1.33(m,6H),1.47−1.58(m,3H),2.12−2.16(m,2H),2.78−2.88(m,1H),2.95−3.03(m,1H).
融点:55.4−56.0℃
(実施例30)8−メチルノナン酸・エタノールアミン塩の調製
8−メチルノナン酸(250mg、1.45mmol)に、エタノールアミン(89mg、1.45mmol)を加えて攪拌した後、得られた溶液にn−ヘキサン(10ml)を滴下し、析出した結晶を濾取して、8−メチルノナン酸・エタノールアミン塩(243mg、1.04mmol、収率71.7%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.85−0.88(m,6H),1.12−1.20(m,2H),1.24−1.36(m,6H),1.47−1.58(m,3H),2.15−2.19(t,2H),2.97−2.99(m,2H),3.74−3.76(m,2H).
融点:42.2−42.7℃
(実施例31)8−メチルノナン酸・L−リジン塩の調製
L−リジン・1水和物(424mg、2.90mmol)を水(1ml)に溶解した水溶液を8−メチルノナン酸(500mg、2.90mmol)に滴下した。次いで、この水溶液を減圧濃縮した。得られた残渣にイソプロパノール(20ml)を加え、析出した結晶を濾取して、8−メチルノナン酸・L−リジン塩(788mg、2.48mmol、収率85.5%)を得た。
1H−NMR(D2O,δ):0.77−0.83(m,6H),1.08−1.15(m,2H),1.20−1.29(m,6H),1.32−1.54(m,5H),1.62−1.72(m,2H),1.80−1.89(m,2H),2.07−2.15(m,2H),2.92−2.97(m,2H),3.65−3.71(m,1H).
融点:142.4−143.9℃
(実施例32)8−メチルノナン酸・L−アルギニン塩の調製
8−メチルノナン酸(500mg、2.90mmol)にL−アルギニン(505mg、2.90mmol)を加えて水(10ml)に溶解した後、溶液を減圧濃縮した。得られた残渣にジエチルエーテル(20ml)を加え、析出した結晶を濾取して、8−メチルノナン酸・L−アルギニン塩(614mg、1.77mmol、収率61.0%)を得た。
1H−NMR(D2O,δ):0.75−0.78(m,6H),1.04−1.11(m,2H),1.18−1.27(m,6H),1.42−1.47(m,3H),1.52−1.68(m,2H),1.78−1.83(m,2H),2.06−2.10(t,2H),3.14−3.18(t,2H),3.64−3.68(t,1H).
融点:96.4−97.0℃
(実施例33)8−メチルノナン酸・(S)−フェニルグリシノール塩の調製
エタノールアミンの代わりに(S)−フェニルグリシノール(199mg、1.45mmol)を用いたこと以外は、実施例30と同様にして、8−メチルノナン酸・(S)−フェニルグリシノール塩(412mg、1.42mmol、収率98.6%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.82−0.88(m,6H),1.13−1.19(m,2H),1.24−1.36(m,6H),1.48−1.64(m,3H),2.24−2.28(t,2H),3.61−3.67(m,1H),3.75−3.79(m,1H),4.11−4.15(m,1H),7.26−7.38(m,5H).
融点:64.7−65.3℃
(実施例34)8−メチルノナン酸・(S)−フェニルアラニノール塩の調製
エチレンジアミンの代わりに(S)−フェニルアラニノール(439mg、2.90mmol)を用いたこと以外は、実施例27と同様にして、8−メチルノナン酸・(S)−フェニルアラニノール塩(800mg、2.47mmol、収率85.2%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.84−0.86(m,6H),1.12−1.18(m,2H),1.25−1.38(m,6H),1.45−1.54(m,1H),1.56−1.64(m,2H),2.23−2.27(t,2H),2.65−2.70(m,1H),2.81−2.86(m,1H),3.20−3.28(m,1H),3.47−3.52(m,1H),3.69−3.73(m,1H),7.18−7.32(m,5H).
融点:58.2−58.9℃
(実施例35)8−メチルノナン酸・4−メトキシベンジルアミン塩の調製
エタノールアミンの代わりに4−メトキシベンジルアミン(199mg、1.45mmol)を用い、n−ヘキサンの代わりにジエチルエーテル(10ml)を用いたこと以外は、実施例30と同様にして、8−メチルノナン酸・4−メトキシベンジルアミン塩(280mg、0.91mmol、収率62.4%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.85−0.87(m,6H),1.11−1.18(m,2H),1.23−1.33(m,6H),1.47−1.58(m,3H),2.13−2.17(t,2H),3.80(s,3H),3.84(s,2H),6.84−6.88(m,2H),7.23−7.31(m,2H).
融点:50.7−51.4℃
(実施例36)8−メチルノナン酸・シクロヘキシルアミン塩の調製
8−メチルノナン酸(500mg、2.90mmol)にシクロヘキシルアミン(288mg、2.90mmol)を加えて攪拌し、結晶化させた。得られた結晶を50℃に加熱しながらn−ヘキサン(10ml)に溶解した後、減圧濃縮して液量を5mlとした。得られた濃縮液を、室温下、3時間静置して結晶化させることにより、8−メチルノナン酸・シクロヘキシルアミン塩(606mg、2.23mmol、収率76.9%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.81−0.85(m,6H),1.11−1.20(m,3H),1.24−1.35(m,10H),1.46−1.68(m,4H),1.73−1.81(m,2H),1.96−2.02(m,2H),2.15−2.19(t,2H),2.77−2.88(m,1H).
融点:70.1−70.6℃
(実施例37)8−メチルノナン酸・cis−2−アミノシクロヘキサノール塩の調製
エタノールアミンの代わりにcis−2−アミノシクロヘキサノール(167mg、1.45mmol)を用いたこと以外は、実施例30と同様にして、8−メチルノナン酸・cis−2−アミノシクロヘキサノール塩(378mg、1.32mmol、収率91.0%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.85−0.88(m,6H),1.13−1.18(m,2H),1.25−1.35(m,8H),1.37−1.43(m,1H),1.49−1.70(m,7H),1.79−1.88(m,1H),2.20−2.25(t,2H),2.98−3.03(m,1H),3.88−3.93(m,1H).
融点:94.0−94.5℃
(実施例38)8−メチルノナン酸・trans−4−アミノシクロヘキサノール塩の調製
8−メチルノナン酸(250mg、1.45mmol)にtrans−4−アミノシクロヘキサノール(167mg、1.45mmol)を加え、イソプロパノール(10ml)に溶解した。得られた溶液を減圧濃縮した。残渣にn−ヘキサン(10ml)を加え、析出した結晶を濾取して、8−メチルノナン酸・trans−4−アミノシクロヘキサノール塩(365mg、1.27mmol、収率87.6%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.85−0.87(m,6H),1.14−1.20(m,2H),1.22−1.39(m,10H),1.48−1.58(m,1H),1.60−1.67(m,2H),1.89−2.03(m,3H),2.28−2.34(m,2H),2.72−2.82(m,1H),3.58−3.67(m,1H).
融点:87.1−87.9℃
(実施例39)8−メチルノナン酸・(1S,2R)−cis−1−アミノ−2−インダノール塩の調製
エタノールアミンの代わりに(1S,2R)−cis−1−アミノ−2−インダノール(449mg、1.32mmol)を用いたこと以外は実施例30と同様にして、8−メチルノナン酸・(1S,2R)−cis−1−アミノ−2−インダノール塩(449mg、1.32mmol、収率96.6%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.85−0.88(m,6H),1.13−1.18(m,2H),1.24−1.33(m,7H),1.47−1.62(m,3H),2.21−2.25(t,2H),2.96−3.00(m,1H),3.10−3.16(m,1H),4.35−4.37(m,1H),4.51−4.53(m,1H),7.24−7.26(m,4H),7.30−7.35(m,1H).
融点:85.5−85.7℃
(実施例40)8−メチルノナン酸・アンモニウム塩の調製
8−メチルノナン酸(250mg、1.45mmol)に28%アンモニア水少量を加えて攪拌した。得られた反応物にジエチルエーテル(10ml)を加えて結晶を析出させ、この結晶を濾取した。さらに、濾液を減圧濃縮した後に再びジエチルエーテル(10ml)を加え、析出した結晶を濾取して、8−メチルノナン酸・アンモニウム塩(合計120mg、0.63mmol、収率43.7%)を得た。
1H−NMR(d−MeOH,δ):0.86−0.88(m,6H),1.15−1.22(m,2H),1.28−1.39(m,6H),1.48−1.64(m,3H),2.11−2.18(m,2H),3.30−3.31(s,1H).
融点:35.3−35.8℃
(実施例41)8−メチルノナン酸・ナトリウム塩の調製
8−メチルノナン酸(250mg、1.45mmol)に2N NaOH水溶液(0.73ml、1.45mmol)を加えた後、減圧濃縮して反応系内の水を除去した。得られた残渣にイソプロパノール(20ml)を加えて攪拌し、析出した結晶を濾取して8−メチルノナン酸・ナトリウム塩(171mg、0.88mmol、収率60.4%)を得た。
1H−NMR(D2O,δ):0.76−0.78(m,6H),1.04−1.15(m,2H),1.19−1.25(m,6H),1.40−1.52(m,3H),2.07−2.11(m,2H).
融点:179.3−180.0℃
(実施例42)8−メチルノナン酸・カルシウム塩の調製
8−メチルノナン酸(500mg、2.90mmol)をイソプロパノール(5ml)に溶解し、水酸化カルシウム(108mg、1.45mmol)を水(100ml)に溶解した水溶液を滴下した後、反応溶液を減圧濃縮した。得られた残渣に水(10ml)を加えて攪拌し、析出した結晶を濾取して8−メチルノナン酸・カルシウム塩(モル比2:1、533mg、収率95.5%)を得た。
1H−NMR(d−MeOH,δ):0.84−0.91(m,6H),1.14−1.24(m,2H),1.28−1.41(m,6H),1.50−1.66(m,3H),2.17−2.24(m,2H).
融点:112.3−112.8℃
(実施例43)リジン塩による8−メチル−6−ノネン酸の精製
非特許文献8に従って合成したtrans:cis=6:1の8−メチル−6−ノネン酸(9.18g、53.9mmol)は薄黄色に着色していた。さらに蒸留することによって得た油状物質(6.09g、35.8mmol、収率60%)は着色したままであった。
この薄黄色油状物質(6.09g、35.8mmol)をジエチルエーテル(20ml)に溶解させた後、L−リジン・1水和物(7.05g、43.0mmol)を0℃(氷浴)にて加えた。室温で2.5時間撹拌した後に析出した結晶を濾取し、薄黄色の8−メチル−6−ノネン酸・リジン塩(12.5g)を得た。この塩を10%クエン酸水溶液(90ml)に溶解し、n−ヘキサン(90ml)で2回抽出し、合わせたヘキサン層を水(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)で5回洗浄するとn−ヘキサン層が脱色され、水層が茶色になった。ヘキサン層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、無色透明油状物質の8−メチル−6−ノネン酸(5.73g、塩の脱着による収率94%)を得た。
(実施例44)シクロヘキシルアミン塩による8−メチル−6−ノネン酸のtrans体、cis体の分割(その1)
非特許文献8に従って合成したtrans:cis=6:1の8−メチル−6−ノネン酸(260mg、1.53mmol)をジエチルエーテル(1ml)に溶解させた後、シクロヘキシルアミン(0.175ml、1.53mmol)を加えた。30分間冷蔵庫(〜2℃)で静置すると結晶が析出し、室温に昇温して終夜撹拌した。13時間後、析出した結晶を濾取し、アミン塩を120mg得た。この塩を10%クエン酸水溶液(8ml)に溶解し、n−ヘキサン(8ml)で2回抽出し、合わせたヘキサン層を飽和食塩水(8ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、trans:cis=23:1の8−メチル−6−ノネン酸(87.8mg、収率34%)を無色透明油状物質として得た。
(実施例45)cis−2−アミノシクロヘキサノール塩による8−メチル−6−ノネン酸のtrans体、cis体の分割(その1、クロロホルム:n−ヘキサン=1:6)
非特許文献8に従って合成した8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=88:12、500mg、2.94mmol)をn−ヘキサン(30ml)に溶解し、クロロホルム(5ml)にcis−2−アミノシクロヘキサノール(288mg、2.50mmol)を溶解した溶液を室温で滴下した。滴下後30分間室温で攪拌し、析出した結晶を濾取した。得られた結晶にn−ヘキサン(20ml)を加え、10%クエン酸水溶液(10ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮して8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=21:1、279mg、1.64mmol)を得た。
得られた8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=21:1、279mg、1.64mmol)を再びn−ヘキサン(30ml)に溶解し、クロロホルム(3ml)にcis−2−アミノシクロヘキサノール(170mg、1.48mmol)を溶解した溶液を室温で滴下した。滴下後30分間室温で攪拌してから析出した結晶を濾取した。得られた結晶にn−ヘキサン(20ml)を加えて、10%クエン酸水溶液(10ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮してtrans−8−メチル−6−ノネン酸(195mg、1.15mmol、純度97.5%、収率44.1%)を得た。
(実施例46)cis−2−アミノシクロヘキサノール塩による8−メチル−6−ノネン酸のtrans体、cis体の分割(その2、クロロホルム:n−ヘキサン=1:5)
一回目の晶析において、8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=88:12、500mg、2.94mmol)をn−ヘキサン(25ml)に溶解したこと以外は、実施例37と同様にして二回晶析を行い、trans−8−メチル−6−ノネン酸(207mg、1.22mmol、純度97.6%、収率46.7%)を得た。
(実施例47)cis−2−アミノシクロヘキサノール塩による8−メチル−6−ノネン酸のtrans体、cis体の分割(その3、クロロホルム:n−ヘキサン=1:7)
8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=88:12、500mg、2.94mmol)をn−ヘキサン(21ml)に溶解し、クロロホルム(3ml)にcis−2−アミノシクロヘキサノール(288mg、2.50mmol)を溶解した溶液を室温で滴下した。滴下後30分間室温で攪拌し、析出した結晶を濾取した。得られた結晶にn−ヘキサン(20ml)を加え、10%クエン酸水溶液(10ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮して8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=15:1、324mg、1.90mmol)を得た。
得られた8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=15:1、324mg、1.90mmol)を再びn−ヘキサン(30ml)に溶解し、クロロホルム(3ml)にcis−2−アミノシクロヘキサノール(196mg、1.71mmol)を溶解した溶液を室温で滴下した。滴下後30分間室温で攪拌してから析出した結晶を濾取した。得られた結晶にn−ヘキサン(20ml)を加えて、10%クエン酸水溶液(10ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮してtrans−8−メチル−6−ノネン酸(242mg、1.42mmol、純度96.8%、収率54.4%)を得た。
(実施例48)cis−2−アミノシクロヘキサノール塩による8−メチル−6−ノネン酸のtrans体、cis体の分割(その4、クロロホルム:n−ヘキサン=1:3)
8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=88:12、800mg、4.70mmol)をクロロホルム(10ml)に溶解し、クロロホルム(5ml)にcis−2−アミノシクロヘキサノール(460mg、4.00mmol)を溶解した溶液を室温で滴下した。反応液を減圧濃縮し、残渣を再びクロロホルム(4ml)に溶解し、n−ヘキサン(12ml)を滴下した。反応液を室温で3日間攪拌し、析出した結晶を濾取した。得られた結晶にn−ヘキサン(10ml)を加え、10%クエン酸水溶液(8ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮して8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=29:1、408mg、2.40mmol)を得た。
得られた8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=29:1、408mg、2.40mmol)を再びクロロホルム(10ml)に溶解し、クロロホルム(5ml)にcis−2−アミノシクロヘキサノール(249mg、2.16mmol)を溶解した溶液を室温で滴下した。反応液を減圧濃縮し、残渣を再びクロロホルム(3ml)に溶解し、n−ヘキサン(12ml)を滴下した。反応液を室温で一夜攪拌し、析出した結晶を濾取した。得られた結晶にn−ヘキサン(15ml)を加えて、10%クエン酸水溶液(10ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮してtrans−8−メチル−6−ノネン酸(250mg、1.47mmol、純度98.8%、収率35.1%)を得た。
(実施例49)trans−4−アミノシクロヘキサノール塩による8−メチル−6−ノネン酸のtrans体、cis体の分割
8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=88:12、500mg、2.94mmol)をクロロホルム(10ml)に溶解し、イソプロパノール(3ml)にtrans−4−アミノシクロヘキサノール(271mg、2.35mmol)を溶解した溶液を室温で滴下した。反応液を減圧濃縮し、残渣にクロロホルム(20ml)を加えて結晶化させ、結晶を濾取した。得られた結晶にn−ヘキサン(30ml)を加え、10%クエン酸水溶液(20ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮して8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=20:1、247mg、1.45mmol)を得た。
得られた8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=20:1、247mg、1.45mmol)を再びクロロホルム(10ml)に溶解し、クロロホルム(5ml)にtrans−4−アミノシクロヘキサノール(142mg、1.23mmol)を溶解した溶液を室温で滴下し、析出した結晶を濾取した。得られた結晶にn−ヘキサン(15ml)を加えて、10%クエン酸水溶液(10ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮してtrans−8−メチル−6−ノネン酸(134mg、0.79mmol、純度95.4%、収率29.8%)を得た。
(実施例50)エチレンジアミン塩による8−メチル−6−ノネン酸のtrans体、cis体の分割
8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=88:12、250mg、1.47mmol)をn−ヘキサン(10ml)に溶解し、ジエチルエーテル(1ml)にエチレンジアミン(40mg、0.66mmol)を溶解した溶液を室温で滴下した。析出した結晶を濾取し、得られた結晶をイソプロパノール(1ml)に溶解し、n−ヘキサン(50ml)を加えて室温で一夜撹拌した。析出した結晶を濾取し、得られた結晶にn−ヘキサン(20ml)を加え、10%クエン酸水溶液(10ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮してtrans−8−メチル−6−ノネン酸(126mg、0.74mmol、純度95.4%、収率55.7%)を得た。
(実施例51)L−リジン塩による8−メチル−6−ノネン酸のtrans体、cis体の分割
8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=88:12、250mg、1.47mmol)にL−リジン・1水和物(183mg、1.25mmol)を加えて水(1ml)に溶解した。これにイソプロパノール(50ml)を滴下し、析出した結晶を濾取した。得られた結晶にメタノール(2ml)を加え室温で3日間静置した後に結晶を濾取した。得られた結晶にn−ヘキサン(20ml)を加え、10%クエン酸水溶液(10ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮してtrans−8−メチル−6−ノネン酸(62mg、0.36mmol、純度94.9%、収率27.5%)を得た。
(実施例52)シクロヘキシルアミン塩による8−メチル−6−ノネン酸のtrans体、cis体の分割(その2)
8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=88:12、250mg、1.47mmol)をn−ヘキサン(2ml)に溶解し、n−ヘキサン(1ml)にシクロヘキシルアミン(131mg、1.32mmol)を溶解した溶液を室温で加え、室温で3日間静置した。析出した結晶を濾取し、得られた結晶にn−ヘキサン(20ml)を加え、10%クエン酸水溶液(10ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮してtrans−8−メチル−6−ノネン酸(136mg、0.80mmol、純度93.8%、収率60.4%)を得た。
(実施例1)8−メチルノナン酸エチルエステルの合成(その1)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(5.11g、210mmol)をTHF(10ml)に懸濁させた。イソペンチルブロミド(28.9g、191mmol)のうち400mgを室温にて加え、発熱、発泡を確認した。THF(50ml)を加え、イソペンチルブロミドの残り全量のTHF(100ml)溶液を室温にて1時間かけてゆっくり滴下した後、さらに2時間撹拌した。この時緩やかな還流状態となった。反応溶液をTHFで洗いながら綿栓濾過し、イソペンチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(全体量200ml)を調製した。
アルゴン雰囲気下、塩化銅(I)(355mg、3.58mmol)をNMP(46ml、478mmol)に溶解させた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、5−ブロモ吉草酸エチルエステル(25.0g、119mmol)のTHF(35ml)溶液を10分かけて滴下した。続いて先に調製したイソペンチルマグネシウムブロミドのTHF溶液を0℃にて2時間かけてゆっくり滴下した。さらに同温度にて1時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(200ml)にて反応をクエンチし、n−ヘキサン(150ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)、続いて飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、薄黄色油状物質(25.4g)を得た。これを減圧蒸留し(2.9mmHg、82℃)、8−メチルノナン酸エチルエステルを20.2g(収率84%)、無色透明油状物質として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.860(d,6H,J=6.63Hz),1.13−1.33(m,11H),1.48−1.64(m,3H),2.28(t,2H,J=7.55Hz),4.12(q,2H,J=7.13Hz).
13C−NMR(CDCl3,δ):14.60,22.98,25.36,27.56,28.30,29.54,29.89,34.75,39.31,60.47,174.2
(実施例2)8−メチルノナン酸の合成(その1)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(473mg、19.5mmol)をTHF(2ml)に懸濁させた。イソペンチルブロミド(3.23g、21.4mmol)のうち100mgを室温にて加え、発熱、発泡を確認した。THF(1ml)を加え、イソペンチルブロミドの残り全量のTHF(10ml)溶液を室温にて15分かけてゆっくり滴下した後、さらに45分撹拌した。この時緩やかな還流状態となった。反応混合物をTHFで洗いながら滴下漏斗に移し、イソペンチルマグネシウムブロミドのTHF(20ml)溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、塩化銅(I)(40.0mg、0.404mmol)をNMP(5.2ml、54.1mmol)に溶解させた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、5−ブロモ吉草酸エチルエステル(2.80g、13.4mmol)のTHF(5ml)溶液を5分間かけて滴下した。さらに5分後、先に調製したイソペンチルマグネシウムブロミドのTHF(20ml)溶液を0℃にて25分かけてゆっくり滴下した。さらに同温度にて2時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(80ml)にて反応をクエンチし、n−ヘキサン(80ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)、続いて飽和食塩水(50ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、薄黄色油状物質(2.75g)を得た。1H−NMR測定により、未反応の5−ブロモ吉草酸エチルエステルが若干量残存していたことを確認した。
得られた粗生成物(2.75g)をエタノール(10ml)に溶解し、2MNaOH水溶液(10ml、20mmol)を室温にて加えた。60℃の油浴を用いて30分加熱撹拌した後、反応容器を室温に戻し、エタノールを減圧留去した。2M NaOH(30ml)を加え、t−ブチルメチルエーテル(30ml)にて2回洗浄した。水層を6M HCl水溶液(20ml)にて注意深く酸性にし、n−ヘキサン(30ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を水(20ml)、続いて飽和食塩水(20ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、薄黄色油状物質(2.07g)を得た。これをクーゲルロールにて減圧蒸留し(1.7mmHg、180℃)、8−メチルノナン酸を2.00g(2段階収率87%)、無色透明油状物質として得た。クロスカップリング反応時に若干量残存していた5−ブロモ吉草酸エチルエステルは加水分解工程にて淘汰されたことを1H−NMR測定により確認した。GC−MSにより純度を測定した所、99.0%であった。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.862(d,6H,J=6.64Hz),1.14−1.17(m,2H),1.26−1.35(m,6H),1.48−1.65(m,3H),2.35(t,2H,J=7.52Hz).
13C−NMR(CDCl3,δ):22.95,25.04,27.55,28.12,29.47,29.88,34.51,39.31,181.0
GC−MS:M=172.
(実施例3)8−メチルノナン酸の合成(その2)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(473mg、19.5mmol)をTHF(2ml)に懸濁させた。イソペンチルブロミド(3.23g、21.4mmol)のうち100mgを室温にて加え、発熱、発泡を確認した。THF(1ml)を加え、イソペンチルブロミドの残り全量のTHF(10ml)溶液を室温にて15分かけてゆっくり滴下した後、さらに45分撹拌した。この時緩やかな還流状態となった。反応混合物をTHFで洗いながら滴下漏斗に移し、イソペンチルマグネシウムブロミドのTHF(20ml)溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、ヨウ化銅(I)(76.3mg、0.402mmol)をNMP(5.2ml、54.1mmol)に溶解させた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、5−ブロモ吉草酸エチルエステル(2.80g、13.4mmol)のTHF(5ml)溶液を5分間かけて滴下した。さらに5分後、先に調製したイソペンチルマグネシウムブロミドのTHF(20ml)溶液を0℃にて25分かけてゆっくり滴下した。さらに同温度にて2時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(80ml)にて反応をクエンチし、n−ヘキサン(80ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)、続いて飽和食塩水(50ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、薄黄色油状物質(2.75g)を得た。1H−NMR測定により、未反応の5−ブロモ吉草酸エチルエステルが若干量残存していたことを確認した。
得られた粗生成物(2.75g)をエタノール(10ml)に溶解し、2M NaOH水溶液(10ml、20mmol)を室温にて加えた。60℃の油浴を用いて30分加熱撹拌した後、反応容器を室温に戻し、エタノールを減圧留去した。2M NaOH(20ml)を加え、t−ブチルメチルエーテル(30ml)にて2回洗浄した。水層を6M HCl水溶液(15ml)にて注意深く酸性にし、n−ヘキサン(30ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を水(20ml)、続いて飽和食塩水(20ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、薄黄色油状物質(2.06g)を得た。これをクーゲルロールにて減圧蒸留し(2.1mmHg、180℃)、8−メチルノナン酸を1.97g(2段階収率86%)、無色透明油状物質として得た。GC−MSにより純度を測定した所、99.4%であった。
(実施例4)8−メチルノナン酸の合成(その3)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(5.37g、221mmol)をTHF(10ml)に懸濁させた。イソペンチルブロミド(31.8g、211mmol)のうち200mgを室温にて加え、発熱、発泡を確認した。THF(100ml)を加え、イソペンチルブロミドの残り全量のTHF(70ml)溶液を室温にて1時間かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この時緩やかな還流状態となった。反応溶液をTHFで洗いながら綿栓濾過し、イソペンチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(全量200ml)を調製した。
アルゴン雰囲気下、CuCl2(385mg、2.87mmol)をNMP(36.8ml、383mmol)に溶解させた。THF(74ml)を加え、反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、LiCl(243mg、5.73mmol)を添加した。0℃にて15分撹拌後、5−ブロモ吉草酸エチルエステル(20.0g、95.7mmol)のTHF(5ml)溶液を5分間かけて滴下した。さらに5分後、先に調製したイソペンチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(全量200ml)のうち、145mlを0℃にて30分かけてゆっくり滴下した。さらに同温度にて1時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(150ml)にて反応をクエンチし、n−ヘキサン(150ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を5%重曹水(100ml)、続いて飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、薄黄色油状物質(20.9g)を得た。
得られた粗生成物(20.9g)をエタノール(100ml)に溶解し、2M NaOH水溶液(71.7ml、143mmol)を0℃(氷浴)にて加えた。氷浴を外し、60℃の油浴を用いて40分加熱撹拌した後、反応容器を室温に戻し、エタノールを減圧留去した。2M NaOH(100ml)を加え、ジエチルエーテル(150ml)にて2回洗浄した。水層を6M HCl水溶液(90ml)にて注意深く酸性にし、n−ヘキサン(150ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を水(100ml)、続いて飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、薄黄色油状物質(15.7g)を得た。これを減圧蒸留し(1.3mmHg、107℃)、8−メチルノナン酸を13.8g(2段階収率84%)、無色透明油状物質として得た。GC−MSにより純度を測定した所、99.3%であった。
(実施例5)8−メチルノナン酸の合成(その4)
温度計を備え付けた500mlの3口フラスコをアルゴン置換し、臭化銅(I)(481mg;3.36mmol)を加えた。室温にてNMP(43.1ml,449mmol)を加えて溶解させた後、反応容器を−20℃に冷却した。THF(10ml)を加えた後、6−ブロモ−n−ヘキサン酸エチルエステル(25.0g;112mmol)を滴下した(内温−8℃)。10分撹拌後、別途調製したイソブチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(160ml)を60分かけてゆっくりと滴下した。
滴下終了してから90分後、10%塩化アンモニウム水溶液(120ml)をゆっくり滴下してクエンチし、n−ヘキサン(120ml)で抽出した。n−へキサン層を10%塩化アンモニウム水溶液(100ml)、水(100ml)、飽和食塩水(50ml)にて洗浄した。n−ヘキサン層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して濾液を減圧濃縮し、8−メチルノナン酸エチルエステルの粗生成物24.2gを薄黄色油状物質として得た。GC−MSにより純度を測定した所、97.5%であった。
得られた8−メチルノナン酸エチルエステルのうち、22.2gを500mlナス型フラスコに入れ、エタノール(77ml)に溶解させて室温にて2M NaOH水溶液(77ml;154mmol)を5分かけて滴下した。滴下終了後、60℃の油浴を用いて90分加熱撹拌し、TLCにて原料の消失を確認した後、室温に冷却した。
エタノールを減圧濃縮した後、水(40ml)、t−ブチルメチルエーテル(80ml)を加えて分液操作を行った。水層に対してさらにt−ブチルメチルエーテル(80ml)で2回分層し、洗浄した。続いて水層に対して2M HCl水溶液(120ml)をゆっくり加えて酸性にした後、n−ヘキサン(80ml)にて抽出した。n−ヘキサン層を水(80ml)、水(40ml)、飽和食塩水(40ml)にて洗浄し、n−ヘキサン層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して濾液を減圧濃縮し、17.3gの8−メチルノナン酸を薄黄色油状物質として得た。このうち、15.3gに対して減圧蒸留を行い、12.7gの8−メチルノナン酸を薄黄色油状物質として得た。GC−MSにより純度を測定した所、99.9%以上であった。6−ブロモ−n−ヘキサン酸エチルエステルからの総収率81%。
(実施例6)8−メチルノナン酸エチルエステルの合成(その2)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(718mg、29.5mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。イソブチルブロミド(3.68g、26.8mmol)のうち200mgを室温にて加え、発熱、発泡を確認した。THF(9.5ml)を加え、イソブチルブロミドの残り全量のTHF(8ml)溶液を室温にて25分かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この時緩やかな還流状態となった。反応混合物をTHFで洗いながら滴下漏斗に移し、イソブチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(30ml)を調製した。
アルゴン雰囲気下、塩化銅(I)(40.0mg、0.404mmol)をNMP(5.2ml、54.1mmol)に溶解させた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、6−ブロモヘキサン酸エチルエステル(3.00g、13.5mmol)のTHF(5ml)溶液を5分間かけて滴下した。さらに10分後、先に調製したイソブチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(30ml)のうち24mlを0℃にて15分かけてゆっくり滴下した。さらに同温度にて80分撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(80ml)にて反応をクエンチし、n−ヘキサン(80ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を飽和塩化アンモニウム水溶液(40ml)、続いて飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、8−メチルノナン酸エチルエステル(2.62g、収率97%)を得た。
(実施例7)8−メチルノナン酸エチルエステルの合成(その3)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(718mg、29.5mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。イソブチルブロミド(3.68g、26.8mmol)のうち100mgを室温にて加え、発熱、発泡を確認した。THF(15ml)を加え、イソブチルブロミドの残り全量のTHF(5ml)溶液を室温にて20分かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この時緩やかな還流状態となった。反応混合物をTHFで洗いながら滴下漏斗に移し、イソブチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(25ml)を調製した。
アルゴン雰囲気下、ヨウ化銅(I)(76.7mg、0.403mmol)をNMP(5.2ml、54.1mmol)に溶解させた。THF(10ml)を加えた後、反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、6−ブロモヘキサン酸エチルエステル(3.00g、13.4mmol)のTHF(5ml)溶液を2分間かけて滴下した。続いて先に調製したイソブチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(25ml)のうち20mlを0℃にて20分かけてゆっくり滴下した。さらに同温度にて2.5時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(80ml)にて反応をクエンチし、n−ヘキサン(70ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を飽和塩化アンモニウム水溶液(40ml)、続いて飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、8−メチルノナン酸エチルエステル(2.66g、収率99%)を得た。
(実施例8)8−メチルノナン酸エチルエステルの合成(その4)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(718mg、29.5mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。イソブチルブロミド(3.68g、26.9mmol)のうち100mgを室温にて加え、発熱、発泡を確認した。THF(14.5ml)を加え、イソブチルブロミドの残り全量のTHF(5ml)溶液を室温にて30分かけてゆっくり滴下した後、さらに30分撹拌した。この時緩やかな還流状態となった。反応溶液をTHFで洗いながら綿栓濾過し、イソブチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(全量35ml)を調製した。
アルゴン雰囲気下、CuCl2(54.0mg、0.403mmol)をNMP(5.2ml、54.0mmol)に溶解させた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、LiCl(34.1mg、0.804mmol)を添加した。0℃にて5分撹拌後、6−ブロモヘキサン酸エチルエステル(3.00g、13.5mmol)のTHF(5ml)溶液を2分間かけて滴下した。10分後、先に調製したイソブチルマグネシウムブロミドのTHF溶液(全量35ml)のうち、25mlを0℃にて30分かけてゆっくり滴下した。原料が消失しないので30分後、更に5mlを追加投入した。同温度にて1.5時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)にて反応をクエンチし、n−ヘキサン(50ml)にて2回抽出した。合わせたn−へキサン層を飽和塩化アンモニウム水溶液(30ml)、水(30ml)、飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、8−メチルノナン酸エチルエステル(2.65g、収率98%)を無色透明油状物質として得た。
(実施例9)8−メチルノナン酸の合成(その5)とリジン塩による精製
8−メチルノナン酸エチルエステル(2.00g、10.0mmol)をエタノール(7.5ml)に溶解し、2M NaOH水溶液(7.5ml、15.0mmol)を室温にて加えた。60℃の油浴を用いて30分加熱撹拌した後、反応容器を室温に戻し、エタノールを減圧留去した。2M NaOH(10ml)を加え、ジエチルエーテル(15ml)にて2回洗浄した。水層に2M HCl水溶液(25ml)を注意深く加えて酸性にし、n−ヘキサン(20ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を水(20ml)、続いて飽和食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、薄黄色油状物質(1.59g)を得た。得られた粗生成物を酢酸エチル(20ml)に溶解し、L−リジン・1水和物(1.82g、11.1mmol)を加えた。60℃の油浴を用いて30分加熱撹拌した後、反応容器を室温に戻し、反応液を濾過することにより、薄黄色のリジン塩を得た。得られた塩を10%クエン酸水溶液(20ml)に溶解し、n−ヘキサン(20ml)で2回抽出し、合わせたヘキサン層を水(20ml)、飽和食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、無色透明油状物質(1.53g)を得た。これを減圧蒸留し(1.3mmHg、110℃)、8−メチルノナン酸(1.40g、収率81%)を無色透明油状物質として得た。
(実施例10)8−メチルノナン酸の合成(その6)とシクロヘキシルアミン塩による精製
実施例1と同様の方法で合成した8−メチルノナン酸エチルエステル(5.00g)をエタノール(18.7ml)に溶解し、室温にて2M NaOH水溶液(18.7ml)をゆっくりと加えた。続いて60℃の油浴を用いて30分加熱撹拌した後、反応容器を室温に戻し、エタノールを減圧留去した。2M NaOH(20ml)、t−ブチルメチルエーテル(20ml)を加えて分液操作を行った。水層に対してさらにt−ブチルメチルエーテル(20ml)を加えて分層した。続いて水層に対して2M HCl水溶液(45ml)を注意深く加えて酸性にし、n−ヘキサン(20ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を水(20ml)、続いて飽和食塩水(10ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、8−メチルノナン酸を4.06g(粗収率94%)、薄黄色油状の粗生成物として得た。GCMS分析により、構造未決定の不純物X(0.52%)、Y(0.17%)、Z(0.08%)を含み、8−メチルノナン酸の純度は99.0%であった。
この粗生成物4.06gのうち、502mgをn−ヘプタン(2ml)に溶解させた。室温にてシクロヘキシルアミン(0.500ml)をゆっくり滴下し、同温にて30分間撹拌した。反応液を濾過して8−メチルノナン酸シクロヘキシルアミン塩(737mg)を得た。この塩に対して10%クエン酸水溶液(3ml)、n−ヘプタン(3ml)を加えて分液操作を行った。さらに水層からn−ヘプタン(3ml)で抽出し、合わせたn−ヘプタン層を飽和食塩水(3ml)にて洗浄した。n−ヘプタン層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して濾液を減圧濃縮し、8−メチルノナン酸を458.0mg(2段階収率86%)、無色透明油状物質として得た。GCMS分析を行うと、前記不純物X、Y、Zは検出限界以下であり、8−メチルノナン酸の純度は99.7%であった。
(実施例11)8−メチルノナン酸エチルエステルの合成(その5)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(267mg、11mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。1−ブロモ−4−メチルペンタン(1.65g、10mmol)のうち300mgを室温で加え、発熱、発泡を確認した。残りの1−ブロモ−4−メチルペンタンをTHF(15ml)に溶解した溶液を室温で30分かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となった。THFを更に10ml追加し、グリニア試薬を調製した。
アルゴン雰囲気下、CuCl2(134mg、1mmol)とLiCl(85mg、2mmol)とをNMP(2.57ml、26.7mmol)に溶解させ、これにTHF(5ml)を加えた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、4−ブロモ−n−酪酸エチルエステル(0.8ml、5.56mmol)のTHF(5ml)溶液を加えた。この溶液に先に調製したグリニア試薬を0℃で10分かけて滴下した。同温度で30分間、室温で1時間撹拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加え、n−ヘキサン(50ml)で2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を5%クエン酸水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮し、残渣をPTLC(分取薄層クロマトグラフィー)で精製して8−メチルノナン酸エチルエステル(1.03g、収率92.1%)を無色透明油状物質として得た。
(実施例12)7−メチルオクタン酸エチルエステルの合成(その1)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(267mg、11mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。イソブチルブロミド(1.37g、10mmol)のうち300mgを室温で加え、発熱、発泡を確認した。残りのイソブチルブロミドをTHF(15ml)に溶解した溶液を室温で30分かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となった。THFを更に10ml追加し、グリニア試薬を調製した。
アルゴン雰囲気下、CuCl2(134mg、1mmol)とLiCl(85mg、2mmol)とをNMP(1.92ml、20mmol)に溶解させ、これにTHF(5ml)を加えた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、5−ブロモ−n−吉草酸エチルエステル(0.8ml、5mmol)のTHF(5ml)溶液を加えた。この溶液に先に調製したグリニア試薬を0℃で10分かけて滴下した。同温度で30分間、室温で1時間撹拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加え、n−ヘキサン(50ml)で2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を5%クエン酸水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮し、残渣をPTLCで精製して7−メチルオクタン酸エチルエステル(1.03g、収率92.1%)を無色透明油状物質として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.86(d,6H,J=6.60Hz),1.13−1.22(m,2H),1.22−1.33(m,7H),1.48−1.58(m,1H),1.58−1.70(m,2H),2.28(t,2H,J=7.68Hz),4.12(q,2H,J=7.16Hz).
(実施例13)7−メチルオクタン酸エチルエステルの合成(その2)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(11.0g、452mmol)をTHF(10ml)に懸濁させた。イソブチルブロミド(59.0g、431mmol)のうち800mgを室温で加え、発熱、発泡を確認した。THF(100ml)を加えた後、残りのイソブチルブロミドをTHF(100ml)に溶解した溶液を室温で1時間かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となり、グリニア試薬を調製した。
アルゴン雰囲気下、CuCl(853mg、8.62mmol)をNMP(110ml、1145mmol)に溶解させた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、5−ブロモ−n−吉草酸エチルエステル(60.0g、287mmol)のTHF(40ml)溶液を加えた。この溶液に、先に調製したグリニア試薬を0℃で3.5時間かけて滴下した。グリニア試薬滴下途中、反応溶液中に塩が析出して撹拌効率が悪いため、THF(50ml)を加え、グリニア試薬滴下終了後、THF(50ml)を追加した。さらに同温度で1.5時間撹拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(400ml)を注意深く加え、n−ヘプタン(25oml)と分液操作を行った。水層からn−ヘプタン(300ml)で抽出し、合わせたn−ヘプタン層を飽和塩化アンモニウム水溶液(150ml)、水(150ml)、飽和食塩水(150ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮し、薄黄色油状物質(55.99g)を得た。このうち50.97gに対して減圧蒸留を行い(5.9mmHg、120〜130℃)、7−メチルオクタン酸エチルエステル(42.9g、収率88.2%)を無色透明油状物質として得た。
(実施例14)7−メチルオクタン酸の合成
上記実施例13と同様にして合成した7−メチルオクタン酸エチルエステル粗生成物(67.8g)をエタノール(200ml)に溶解し、2M NaOH水溶液(256ml)を室温にて加えた。60℃の油浴を用いて100分加熱撹拌した後、反応容器を室温に戻し、エタノールを減圧留去した。水(100ml)を加え、t−ブチルメチルエーテル(300ml)にて3回洗浄した。水層を2M HCl水溶液(300ml)にて注意深く酸性にし、n−ヘキサン(25oml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を水(200ml)、続いて飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、薄黄色油状物質(50.3g)を得た。これを減圧蒸留し、7−メチルオクタン酸を46.4g(2段階収率86%)、無色透明油状物質として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.875(d,6H,J=6.68Hz),1.13−1.23(m,2H),1.26−1.39(m,4H),1.46−1.59(m,1H),1.60−1.70(m,2H),2.36(t,2H,J=7.60Hz).
13C−NMR(CDCl3,δ):22.94,25.06,27.37,28.28,29.68,34.53,39.13,181.1
(実施例15)9−メチルデカン酸の合成
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(1.83g、75.3mmol)をTHF(5ml)に懸濁させた。イソペンチルブロミド(16.0g、71.7mmol)のうち500mgを室温で加え、発熱、発泡を確認した。THF(100ml)を加えた後、残りのイソペンチルブロミドをTHF(40ml)に溶解した溶液を室温で30分間かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となり、グリニア試薬を調製した。
アルゴン雰囲気下、CuCl(445mg、4.48mmol)をNMP(17.3ml、179mmol)に溶解させた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、5−ブロモヘキサン酸エチルエステル(10.0g、44.8mmol)のTHF(50ml)溶液を加えた。この溶液に、先に調製したグリニア試薬を0℃で30分間かけて滴下した。さらに同温度で2時間撹拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(100ml)を注意深く加え、次いでn−ヘキサン(50ml)を加えて分液操作を行った。水層からn−ヘキサン(50ml)で2回抽出し、合わせたn−ヘキサン層を飽和塩化アンモニウム水溶液(100ml)、水(100ml)、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮し、無色油状物質の9−メチルデカン酸エチルエステル(8.10g)を得た。
上記9−メチルデカン酸エチルエステル粗生成物(8.10g)をエタノール(50ml)に溶解し、2M NaOH水溶液(40ml)を室温にて加えた。反応液を室温で一夜撹拌した後、エタノールを減圧留去した。水(100ml)を加え、エチルエーテル(50ml)で3回洗浄した。水層を2M HCl水溶液(300ml)にて注意深く酸性にし、n−ヘキサン(100ml)にて2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を水(50ml)、続いて飽和食塩水(50ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、無色油状物質を得た。これを減圧蒸留し(1〜3mmHg、102〜105℃)、9−メチルデカン酸を6.51g(2段階収率78%)、無色透明油状物質として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.86(d,6H,J=6.6Hz),1.12−1.20(m,2H),1.20−1.40(m,8H),1.50−1.58(m,1H),1.60−1.70(m,2H),2.35(t,2H,J=7.6Hz).
(実施例16)10−メチルウンデカン酸の合成
5−ブロモヘキサン酸エチルエステルの代わりに7−ブロモヘプタン酸エチルエステルを用いたこと以外は実施例15と同様にして、10−メチルウンデカン酸を、減圧蒸留(1〜3mmHg、125〜128℃)によって精製を行い、2段階収率81%で無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.86(d,6H,J=6.6Hz),1.10−1.20(m,2H),1.20−1.40(m,10H),1.48−1.60(m,1H),1.60−1.70(m,2H),2.35(t,2H,J=7.6Hz).
(実施例17)6−メチルオクタン酸の合成
イソペンチルブロミドの代わりに1−クロロ−2−メチルブタンを、5−ブロモヘキサン酸エチルエステルの代わりに4−ブロモブタン酸エチルエステルを用いたこと以外は実施例15と同様にして、6−メチルオクタン酸を、減圧蒸留(1〜3mmHg、83〜85℃)によって精製を行い、2段階収率83%で無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.86(d,3H,J=7.1Hz),0.86(d,3H,J=7.3Hz),1.08−1.20(m,2H),1.25−1.45(m,5H),1.60−1.70(m,2H),2.36(t,2H,J=7.5Hz).
(実施例18)7−メチルノナン酸の合成
イソペンチルブロミドの代わりに1−クロロ−2−メチルブタンを用いたこと以外は実施例15と同様にして、7−メチルノナン酸を、減圧蒸留(1〜3mmHg、92〜94℃)によって精製を行い、2段階収率90%で無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.86(m,6H),1.05−1.20(m,2H),1.22−1.42(m,7H),1.60−1.70(m,2H),2.36(t,2H,J=7.6Hz).
(実施例19)8−メチルデカン酸の合成
イソペンチルブロミドの代わりに1−クロロ−2−メチルブタンを、5−ブロモヘキサン酸エチルエステルの代わりに6−ブロモヘキサン酸エチルエステルを用いたこと以外は実施例15と同様にして、8−メチルデカン酸を、減圧蒸留(1〜3mmHg、102〜105℃)によって精製を行い、2段階収率87%で無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.86(m,6H),1.08−1.20(m,2H),1.20−1.45(m,9H),1.60−1.70(m,2H),2.35(t,2H,J=7.6Hz).
(実施例20)8−メチルノナン酸の合成(その7)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(9.97g、410mmol)をTHF(15ml)に懸濁させた。イソブチルブロミド(54.81g、400mmol)のうち2gを室温で加え、発熱、発泡を確認した。残りのイソブチルブロミドをTHF(200ml)に溶解した溶液を室温で1時間かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となった。THFを更に100ml追加し、グリニア試薬を調製した。
アルゴン雰囲気下、CuCl2(1.34g、10mmol)とLiCl(848mg、20mmol)とをNMP(57.7ml、600mmol)に溶解させ、これにTHF(250ml)を加えた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、6−ブロモヘキサン酸エチルエステル(37.0ml、200mmol)のTHF(50ml)溶液を加えた。この溶液に先に調製したグリニア試薬を0℃で30分かけて滴下した。同温度で30分間、室温で1時間撹拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(300ml)を加え、n−ヘキサン(200ml)で3回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を5%クエン酸水溶液(150ml)で2回、飽和食塩水(150ml)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(150ml)で2回、飽和食塩水(150ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮して8−メチルノナン酸エチルエステル(42.5g)を無色透明油状物質として得た。
上記エステルをエタノール(200ml)に溶解し、2M NaOH(200ml)を加えた。80℃の油浴を用いて1時間加熱撹拌した後、反応液を室温に戻し、エタノールを減圧留去した。反応液に水(150ml)を加え、ジエチルエーテル(150ml)で2回洗浄した。水層を6M HCl水溶液で酸性(pH2〜3)にし、n−ヘキサン(150ml)で3回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を水(150ml)と飽和食塩水(150ml)とで洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮することにより、8−メチルノナン酸(33.0g)を薄黄色油状物質として得た。
上記カルボン酸(8−メチルノナン酸)をジエチルエーテル(100ml)に溶解し、氷浴で冷却した。シクロヘキシルアミン(19.8g、200mmol)のジエチルエーテル(100ml)溶液を反応液に加え、反応液を室温に戻した後に2時間撹拌した。析出した結晶を濾過して集め、少量のジエチルエーテルで洗った。濾液を約50mlまで濃縮し、再び析出した結晶を濾過して集め、少量のジエチルエーテルで洗った。濾液は黄色に着色していた。この結晶を水(250ml)に懸濁させ、濃塩酸で懸濁液のpHを2〜3に調節した。分離した油状物をn−ヘキサン(150ml)で3回抽出し、有機層を5%クエン酸水溶液(150ml)と飽和食塩水(150ml)とで洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮して8−メチルノナン酸(32.0g)を無色油状物として得た。1H−NMRで微量の不純物が検出されたため、PTLCで精製した後に減圧蒸留(12mmHg、137〜142℃)して、8−メチルノナン酸(27.8g、80.5%)を無色油状物として得た。
(実施例21)trans−8−メチル−6−ノネン酸エチルエステルの合成(その1)
(1)trans−1−ブロモ−5−メチル−3−ヘキセンの合成
マロン酸(53.3g、513mmol)、イソバレルアルデヒド(50ml、466mmol)、トリエチルアミン(71.1ml、513mmol)を500mlのフラスコに加え、94℃の油浴を用いて8時間加熱撹拌した。反応液を室温に戻した後に、11%硫酸水(225ml)を加え、塩化メチレン(150ml)で3回抽出した。塩化メチレン層を水(100ml)で2回洗浄した後に無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮して、約58gのtrans−5−メチル−3−ヘキセン酸を油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.99(d,6H,J=6.8Hz),2.25−2.35(m,1H),3.06(d,2H,J=5.9Hz),5.45−5.52(m,1H),5.55−5.60(m,1H).
上記カルボン酸(trans−5−メチル−3−ヘキセン酸)をエタノール(200ml)に溶解し、濃硫酸(3ml)を加えた。反応液を100℃の油浴を用いて1時間30分加熱撹拌した。反応液を室温に戻した後に、室温で減圧濃縮した。残渣をジエチルエーテル(300ml)に溶解し、溶液を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)で3回、飽和食塩水(100ml)で1回洗浄した後に、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、ろ液を室温で減圧濃縮してエチル trans−5−メチル−3−ヘキセノエート(57.3g、78.8%)を油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.98(d,6H,J=6.8Hz),1.27(t,3H),2.25−2.32(m,1H),3.00(d,2H,J=5.9Hz),4.13(q,2H),5.45−5.57(m,2H).
水素化リチウムアルミニウム(LAH、13.93g、367mmol)をジエチルエーテル(200ml)に懸濁し、懸濁液を氷浴で0℃に保った。上記エステル(57.3g、367mmol)をジエチルエーテル(100ml)に溶解した溶液をゆっくり加えた。氷浴をはずし、反応液を室温で2時間撹拌した後に、再び氷浴で0℃に冷却し、7%の硫酸水素カリウム水溶液(550ml)をゆっくり加えた。反応液をジエチルエーテル(400ml)で2回抽出し、飽和食塩水(200ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を室温で減圧濃縮し、残渣を減圧蒸留(5〜10mmHg、65〜73℃)してtrans−5−メチル−3−ヘキセン−1−オール(37.9g、71.2%)を油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.98(d,6H,J=6.7Hz),1.48(s,1H),2.20−2.30(m,3H),3.62(t,2H,J=6.3Hz),5.30−5.37(m,1H),5.51−5.57(dd,1H).
上記アルコール(trans−5−メチル−3−ヘキセン−1−オール;9.63g、84.3mmol)を塩化メチレン(70ml)に溶解し、溶液を氷浴で0℃に保った。この溶液にトリエチルアミン(23.4ml、169mmol)とメタンスルホニルクロリド(9.8ml、127mmol)とを加えた後に、氷浴をはずし、室温で2時間撹拌した。反応液に水(100ml)を加え、塩化メチレン(50ml)で2回抽出した。有機層を、5%クエン酸水溶液(100ml)で2回、飽和食塩水(100ml)で1回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)で2回、飽和食塩水(100ml)で1回洗浄した後に、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮した。この残渣をアセトン(100ml)に溶解し、溶液を氷浴で0℃に保った。この溶液に臭化リチウム(29.0g、334mmol)を加え、氷浴をはずして、室温で2日間撹拌した。反応液に水(150ml)を加え、ジエチルエーテル(100ml)で3回抽出した。有機層を5%クエン酸水溶液(100ml)で2回、飽和食塩水(100ml)で1回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)で2回、飽和食塩水(100ml)で1回洗浄した後に、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を室温で減圧濃縮した。残渣をn−ヘキサンに溶解し、シリカゲル(200ml)を充填したカラムを通した。氷浴で冷却しながら減圧濃縮してn−ヘキサンを除去した後に減圧蒸留(99〜104℃、440mmHg)して、trans−1−ブロモ−5−メチル−3−ヘキセン(12.8g、85.8%)を油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.98(d,6H),2.20−2.30(m,1H),2.50−2.60(m,2H),3.36(t,2H,J=7.2Hz),5.30−5.40(m,1H),5.60−5.70(dd,1H).
(2)trans−8−メチル−6−ノネン酸エチルエステルの合成
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(267mg、11mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。(1)で得たtrans−1−ブロモ−5−メチル−3−ヘキセン(1.77g、10mmol)のうち200mgを室温で加え、発熱、発泡を確認した。残りのtrans−1−ブロモ−5−メチル−3−ヘキセンをTHF(15ml)に溶解した溶液を室温で30分かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となった。THFを更に10ml追加し、グリニア試薬を調製した。
アルゴン雰囲気下、ヨウ化銅(I)(190mg、1mmol)をNMP(1.92ml、20mmol)に溶解させ、これにTHF(10ml)とTMSCl(1.89ml、15mmol)を加えた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、3−ブロモプロピオン酸エチルエステル(905mg、5mmol)のTHF(5ml)溶液を加えた。先に調製したグリニア試薬を0℃で10分かけて滴下した。同温度で1.5時間撹拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加え、n−ヘキサン(50ml)で2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を5%クエン酸水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮し、残渣をPTLCで精製してtrans−8−メチル−6−ノネン酸エチルエステル(480mg、収率48%)を無色透明油状物質として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.95(d,6H,J=6.8Hz),1.25(t,3H),1.35−1.42(m,2H),1.60−1.68(m,2H),1.95−2.10(m,2H),2.18−2.25(m,1H),2.29(t,2H,J=7.4Hz),4.12(q,2H),5.28−5.42(m,2H).
(実施例22)8−メチルノナン酸エチルエステルの合成(その6)
(1)1−ブロモ−5−メチルヘキサンの合成
trans−5−メチル−3−ヘキセン酸の代わりに5−メチルヘキサン酸を用いたこと以外は実施例21(1)と同様にして、総収率69.7%で1−ブロモ−5−メチルヘキサンを得た(減圧蒸留;95〜100℃、380mmHg)。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.88(d,6H,J=6.6Hz),1.17−1.23(m,2H),1.40−1.50(m,2H),1.50−1.60(m,1H),1.80−1.90(m,2H),3.36(t,2H,J=6.8Hz).
(2)8−メチルノナン酸エチルエステルの合成
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(267mg、11mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。(1)で得た1−ブロモ−5−メチルヘキサン(1.79g、10mmol)のうち200mgを室温で加え、発熱、発泡を確認した。残りの1−ブロモ−5−メチルヘキサンをTHF(15ml)に溶解した溶液を室温で30分かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となった。THFを更に10ml追加し、グリニア試薬を調製した。
アルゴン雰囲気下、CuCl2(134mg、1mmol)とLiCl(85mg、2mmol)とをNMP(1.92ml、20mmol)に溶解させ、これにTHF(10ml)とTMSCl(1.89ml、15mmol)を加えた。反応容器を0℃(氷浴)に冷却し、3−ブロモプロピオン酸エチルエステル(905mg、5mmol)のTHF(5ml)溶液を加えた。先に調製したグリニア試薬を0℃で10分かけて滴下した。同温度で30分間、室温で1時間撹拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加え、n−ヘキサン(50ml)で2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を5%クエン酸水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮し、残渣をPTLCで精製して8−メチルノナン酸エチルエステル(624mg、収率62%)を無色透明油状物質として得た。
(実施例23)trans−8−メチル−6−ノネン酸エチルエステルの合成(その2)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(267mg、11mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。実施例21(1)で得たtrans−1−ブロモ−5−メチル−3−ヘキセン(1.77g、10mmol)のうち300mgを室温で加え、発熱、発泡を確認した。残りのtrans−1−ブロモ−5−メチル−3−ヘキセンをTHF(15ml)に溶解した溶液を室温で30分かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となった。THFを更に10ml追加し、グリニア試薬を調製した。このグリニア試薬溶液をエタノール−ドライアイスバスで−78℃に冷却し、THF(10ml)、DMPU(1ml)及び臭化銅(I)・ジメチルスルフィド(CuBr・SMe2、103mg、0.5mmol)を加えた。
アルゴン雰囲気下、THF(5ml)にTMSCl(2ml、15.8mmol)とアクリル酸エチルエステル(1.0ml、9.5mmol)とを加えた溶液を調製した。この溶液を先に調製したグリニア試薬溶液にゆっくり滴下した。反応液の温度を−78℃から徐々に昇温し、室温で1時間撹拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加え、n−ヘキサン(50ml)で2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を5%クエン酸水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮し、残渣をPTLCで精製してtrans−8−メチル−6−ノネン酸エチルエステル(1.37g、収率73.2%)を無色透明油状物質として得た。
(実施例24)trans−8−メチル−6−ノネン酸の合成
実施例23と同様にして得たtrans−8−メチル−6−ノネン酸エチルエステル(約8.0g、40.3mmol)をエタノール(60ml)に溶解し、2M NaOH(40ml)を加えた。80℃の油浴を用いて1時間加熱撹拌した後、反応液を室温に戻し、エタノールを減圧留去した。反応液に水(100ml)を加え、ジエチルエーテル(50ml)で2回洗浄した。水層を6M HCl水溶液で酸性(pH2〜3)にし、n−ヘキサン(50ml)で3回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を水(50ml)と飽和食塩水(50ml)とで洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮することにより、trans−8−メチル−6−ノネン酸(5.95g)を薄黄色油状物質として得た。
上記カルボン酸(trans−8−メチル−6−ノネン酸)をジエチルエーテル(100ml)に溶解し、氷浴で冷却した。この溶液にL−リジン・1水和物(5.85g、40.0mmol)を加え、反応液を室温に戻した後に2時間撹拌した。析出した結晶を濾過して集め、少量のジエチルエーテルで洗った。濾液は黄色に着色していた。この結晶を水(100ml)に懸濁させ、濃塩酸で懸濁液のpHを2〜3に調節した。分離した油状物をn−ヘキサン(50ml)で3回抽出し、有機層を5%クエン酸水溶液(50ml)と飽和食塩水(50ml)とで洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮してtrans−8−メチル−6−ノネン酸(4.50g、65.5%)を無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.96(d,6H,J=6.8Hz),1.38−1.46(m,2H),1.60−1.70(m,2H),1.95−2.05(m,2H),2.18−2.38(m,1H),2.35(t,2H,J=7.4Hz),5.28−5.42(m,2H).
(実施例25)8−メチルノナン酸エチルエステルの合成(その7)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(267mg、11mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。実施例22(1)で得た1−ブロモ−5−メチルヘキサン(1.65g、10mmol)のうち300mgを室温で加え、発熱、発泡を確認した。残りの1−ブロモ−5−メチルヘキサンをTHF(15ml)に溶解した溶液を室温で30分かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となった。THFを更に10ml追加し、グリニア試薬を調製した。このグリニア試薬溶液をエタノール−ドライアイスバスで−78℃に冷却し、THF(10ml)、DMPU(1ml)及びCuBr・SMe2(103mg、0.5mmol)を加えた。
アルゴン雰囲気下、THF(5ml)にTMSCl(2ml、15.8mmol)とアクリル酸エチルエステル(1ml、9.5mmol)とを加えた溶液を調製した。この溶液を先に調製したグリニア試薬溶液にゆっくり滴下した。反応液の温度を−78℃から徐々に昇温し、室温で1時間撹拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加え、n−ヘキサン(50ml)で2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を5%クエン酸水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、ろ液を減圧濃縮し、残渣をPTLCで精製して8−メチルノナン酸エチルエステル(1.47g、収率77.3%)を無色透明油状物質として得た。
(実施例26)7−メチルオクタン酸エチルエステルの合成(その3)
アルゴン雰囲気下、Mg切削片状(267mg、11mmol)をTHF(0.5ml)に懸濁させた。1−ブロモ−4−メチルペンタン(1.37g、10mmol)のうち300mgを室温で加え、発熱、発泡を確認した。残りの1−ブロモ−4−メチルペンタンをTHF(15ml)に溶解した溶液を室温で30分かけてゆっくり滴下した後、さらに1時間撹拌した。この間緩やかな還流状態となった。THFを更に10ml追加し、グリニア試薬を調製した。このグリニア試薬溶液をエタノール−ドライアイスバスで−78℃に冷却し、THF(10ml)、DMPU(1ml)及びCuBr・SMe2(103mg、0.5mmol)を加えた。
アルゴン雰囲気下、THF(5ml)にTMSCl(2ml、15.8mmol)とアクリル酸エチルエステル(1ml、9.5mmol)とを加えた溶液を調製した。この溶液を先に調製したグリニア試薬溶液にゆっくり滴下した。反応液の温度を−78℃から徐々に昇温し、室温で1時間撹拌した後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加え、n−ヘキサン(50ml)で2回抽出した。合わせたn−ヘキサン層を5%クエン酸水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮し、残渣をPTLCで精製して7−メチルオクタン酸エチルエステル(1.35g、収率76.3%)を無色透明油状物質として得た。
(実施例27)8−メチルノナン酸・エチレンジアミン塩の調製
8−メチルノナン酸(500mg、2.9mmol)に、エチレンジアミン(87mg、1.45mmol)を加えて攪拌した。得られた溶液にn−ヘキサン(10ml)を滴下し、析出した結晶を濾取して、8−メチルノナン酸・エチレンジアミン塩(モル比2:1、562mg、2.78mmol、収率95.9%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.85−0.87(m,6H),1.12−1.20(m,2H),1.23−1.35(m,6H),1.48−1.54(m,1H),1.57−1.65(m,2H),2.28−2.32(t,2H),2.89(s,1H).
融点:53.1−53.8℃
(実施例28)8−メチルノナン酸・1,3−ジアミノプロパン塩の調製
エチレンジアミンの代わりに、1,3−ジアミノプロパン(108mg、1.45mmol)を用いたこと以外は、実施例27と同様にして、8−メチルノナン酸・1,3−ジアミノプロパン塩(モル比2:1、391mg、1.87mmol、収率64.5%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.85−0.87(m,6H),1.12−1.18(m,2H),1.24−1.34(m,6H),1.49−1.61(m,3H),1.88−1.96(m,1H),2.15−2.19(t,2H),2.88−3.02(t,2H).
融点:67.8−68.7℃
(実施例29)8−メチルノナン酸・1,3−ジアミノ−2−プロパノール塩の調製
エチレンジアミンの代わりに、1,3−ジアミノ−2−プロパノール(131mg、1.45mmol)を用い、溶媒にジエチルエーテルを用いたこと以外は、実施例27と同様にして、8−メチルノナン酸・1,3−ジアミノ−2−プロパノール塩(モル比2:1、528mg、2.43mmol、収率84.5%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.85−0.87(m,6H),1.13−1.18(m,2H),1.23−1.33(m,6H),1.47−1.58(m,3H),2.12−2.16(m,2H),2.78−2.88(m,1H),2.95−3.03(m,1H).
融点:55.4−56.0℃
(実施例30)8−メチルノナン酸・エタノールアミン塩の調製
8−メチルノナン酸(250mg、1.45mmol)に、エタノールアミン(89mg、1.45mmol)を加えて攪拌した後、得られた溶液にn−ヘキサン(10ml)を滴下し、析出した結晶を濾取して、8−メチルノナン酸・エタノールアミン塩(243mg、1.04mmol、収率71.7%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.85−0.88(m,6H),1.12−1.20(m,2H),1.24−1.36(m,6H),1.47−1.58(m,3H),2.15−2.19(t,2H),2.97−2.99(m,2H),3.74−3.76(m,2H).
融点:42.2−42.7℃
(実施例31)8−メチルノナン酸・L−リジン塩の調製
L−リジン・1水和物(424mg、2.90mmol)を水(1ml)に溶解した水溶液を8−メチルノナン酸(500mg、2.90mmol)に滴下した。次いで、この水溶液を減圧濃縮した。得られた残渣にイソプロパノール(20ml)を加え、析出した結晶を濾取して、8−メチルノナン酸・L−リジン塩(788mg、2.48mmol、収率85.5%)を得た。
1H−NMR(D2O,δ):0.77−0.83(m,6H),1.08−1.15(m,2H),1.20−1.29(m,6H),1.32−1.54(m,5H),1.62−1.72(m,2H),1.80−1.89(m,2H),2.07−2.15(m,2H),2.92−2.97(m,2H),3.65−3.71(m,1H).
融点:142.4−143.9℃
(実施例32)8−メチルノナン酸・L−アルギニン塩の調製
8−メチルノナン酸(500mg、2.90mmol)にL−アルギニン(505mg、2.90mmol)を加えて水(10ml)に溶解した後、溶液を減圧濃縮した。得られた残渣にジエチルエーテル(20ml)を加え、析出した結晶を濾取して、8−メチルノナン酸・L−アルギニン塩(614mg、1.77mmol、収率61.0%)を得た。
1H−NMR(D2O,δ):0.75−0.78(m,6H),1.04−1.11(m,2H),1.18−1.27(m,6H),1.42−1.47(m,3H),1.52−1.68(m,2H),1.78−1.83(m,2H),2.06−2.10(t,2H),3.14−3.18(t,2H),3.64−3.68(t,1H).
融点:96.4−97.0℃
(実施例33)8−メチルノナン酸・(S)−フェニルグリシノール塩の調製
エタノールアミンの代わりに(S)−フェニルグリシノール(199mg、1.45mmol)を用いたこと以外は、実施例30と同様にして、8−メチルノナン酸・(S)−フェニルグリシノール塩(412mg、1.42mmol、収率98.6%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.82−0.88(m,6H),1.13−1.19(m,2H),1.24−1.36(m,6H),1.48−1.64(m,3H),2.24−2.28(t,2H),3.61−3.67(m,1H),3.75−3.79(m,1H),4.11−4.15(m,1H),7.26−7.38(m,5H).
融点:64.7−65.3℃
(実施例34)8−メチルノナン酸・(S)−フェニルアラニノール塩の調製
エチレンジアミンの代わりに(S)−フェニルアラニノール(439mg、2.90mmol)を用いたこと以外は、実施例27と同様にして、8−メチルノナン酸・(S)−フェニルアラニノール塩(800mg、2.47mmol、収率85.2%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.84−0.86(m,6H),1.12−1.18(m,2H),1.25−1.38(m,6H),1.45−1.54(m,1H),1.56−1.64(m,2H),2.23−2.27(t,2H),2.65−2.70(m,1H),2.81−2.86(m,1H),3.20−3.28(m,1H),3.47−3.52(m,1H),3.69−3.73(m,1H),7.18−7.32(m,5H).
融点:58.2−58.9℃
(実施例35)8−メチルノナン酸・4−メトキシベンジルアミン塩の調製
エタノールアミンの代わりに4−メトキシベンジルアミン(199mg、1.45mmol)を用い、n−ヘキサンの代わりにジエチルエーテル(10ml)を用いたこと以外は、実施例30と同様にして、8−メチルノナン酸・4−メトキシベンジルアミン塩(280mg、0.91mmol、収率62.4%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.85−0.87(m,6H),1.11−1.18(m,2H),1.23−1.33(m,6H),1.47−1.58(m,3H),2.13−2.17(t,2H),3.80(s,3H),3.84(s,2H),6.84−6.88(m,2H),7.23−7.31(m,2H).
融点:50.7−51.4℃
(実施例36)8−メチルノナン酸・シクロヘキシルアミン塩の調製
8−メチルノナン酸(500mg、2.90mmol)にシクロヘキシルアミン(288mg、2.90mmol)を加えて攪拌し、結晶化させた。得られた結晶を50℃に加熱しながらn−ヘキサン(10ml)に溶解した後、減圧濃縮して液量を5mlとした。得られた濃縮液を、室温下、3時間静置して結晶化させることにより、8−メチルノナン酸・シクロヘキシルアミン塩(606mg、2.23mmol、収率76.9%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.81−0.85(m,6H),1.11−1.20(m,3H),1.24−1.35(m,10H),1.46−1.68(m,4H),1.73−1.81(m,2H),1.96−2.02(m,2H),2.15−2.19(t,2H),2.77−2.88(m,1H).
融点:70.1−70.6℃
(実施例37)8−メチルノナン酸・cis−2−アミノシクロヘキサノール塩の調製
エタノールアミンの代わりにcis−2−アミノシクロヘキサノール(167mg、1.45mmol)を用いたこと以外は、実施例30と同様にして、8−メチルノナン酸・cis−2−アミノシクロヘキサノール塩(378mg、1.32mmol、収率91.0%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.85−0.88(m,6H),1.13−1.18(m,2H),1.25−1.35(m,8H),1.37−1.43(m,1H),1.49−1.70(m,7H),1.79−1.88(m,1H),2.20−2.25(t,2H),2.98−3.03(m,1H),3.88−3.93(m,1H).
融点:94.0−94.5℃
(実施例38)8−メチルノナン酸・trans−4−アミノシクロヘキサノール塩の調製
8−メチルノナン酸(250mg、1.45mmol)にtrans−4−アミノシクロヘキサノール(167mg、1.45mmol)を加え、イソプロパノール(10ml)に溶解した。得られた溶液を減圧濃縮した。残渣にn−ヘキサン(10ml)を加え、析出した結晶を濾取して、8−メチルノナン酸・trans−4−アミノシクロヘキサノール塩(365mg、1.27mmol、収率87.6%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.85−0.87(m,6H),1.14−1.20(m,2H),1.22−1.39(m,10H),1.48−1.58(m,1H),1.60−1.67(m,2H),1.89−2.03(m,3H),2.28−2.34(m,2H),2.72−2.82(m,1H),3.58−3.67(m,1H).
融点:87.1−87.9℃
(実施例39)8−メチルノナン酸・(1S,2R)−cis−1−アミノ−2−インダノール塩の調製
エタノールアミンの代わりに(1S,2R)−cis−1−アミノ−2−インダノール(449mg、1.32mmol)を用いたこと以外は実施例30と同様にして、8−メチルノナン酸・(1S,2R)−cis−1−アミノ−2−インダノール塩(449mg、1.32mmol、収率96.6%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δ):0.85−0.88(m,6H),1.13−1.18(m,2H),1.24−1.33(m,7H),1.47−1.62(m,3H),2.21−2.25(t,2H),2.96−3.00(m,1H),3.10−3.16(m,1H),4.35−4.37(m,1H),4.51−4.53(m,1H),7.24−7.26(m,4H),7.30−7.35(m,1H).
融点:85.5−85.7℃
(実施例40)8−メチルノナン酸・アンモニウム塩の調製
8−メチルノナン酸(250mg、1.45mmol)に28%アンモニア水少量を加えて攪拌した。得られた反応物にジエチルエーテル(10ml)を加えて結晶を析出させ、この結晶を濾取した。さらに、濾液を減圧濃縮した後に再びジエチルエーテル(10ml)を加え、析出した結晶を濾取して、8−メチルノナン酸・アンモニウム塩(合計120mg、0.63mmol、収率43.7%)を得た。
1H−NMR(d−MeOH,δ):0.86−0.88(m,6H),1.15−1.22(m,2H),1.28−1.39(m,6H),1.48−1.64(m,3H),2.11−2.18(m,2H),3.30−3.31(s,1H).
融点:35.3−35.8℃
(実施例41)8−メチルノナン酸・ナトリウム塩の調製
8−メチルノナン酸(250mg、1.45mmol)に2N NaOH水溶液(0.73ml、1.45mmol)を加えた後、減圧濃縮して反応系内の水を除去した。得られた残渣にイソプロパノール(20ml)を加えて攪拌し、析出した結晶を濾取して8−メチルノナン酸・ナトリウム塩(171mg、0.88mmol、収率60.4%)を得た。
1H−NMR(D2O,δ):0.76−0.78(m,6H),1.04−1.15(m,2H),1.19−1.25(m,6H),1.40−1.52(m,3H),2.07−2.11(m,2H).
融点:179.3−180.0℃
(実施例42)8−メチルノナン酸・カルシウム塩の調製
8−メチルノナン酸(500mg、2.90mmol)をイソプロパノール(5ml)に溶解し、水酸化カルシウム(108mg、1.45mmol)を水(100ml)に溶解した水溶液を滴下した後、反応溶液を減圧濃縮した。得られた残渣に水(10ml)を加えて攪拌し、析出した結晶を濾取して8−メチルノナン酸・カルシウム塩(モル比2:1、533mg、収率95.5%)を得た。
1H−NMR(d−MeOH,δ):0.84−0.91(m,6H),1.14−1.24(m,2H),1.28−1.41(m,6H),1.50−1.66(m,3H),2.17−2.24(m,2H).
融点:112.3−112.8℃
(実施例43)リジン塩による8−メチル−6−ノネン酸の精製
非特許文献8に従って合成したtrans:cis=6:1の8−メチル−6−ノネン酸(9.18g、53.9mmol)は薄黄色に着色していた。さらに蒸留することによって得た油状物質(6.09g、35.8mmol、収率60%)は着色したままであった。
この薄黄色油状物質(6.09g、35.8mmol)をジエチルエーテル(20ml)に溶解させた後、L−リジン・1水和物(7.05g、43.0mmol)を0℃(氷浴)にて加えた。室温で2.5時間撹拌した後に析出した結晶を濾取し、薄黄色の8−メチル−6−ノネン酸・リジン塩(12.5g)を得た。この塩を10%クエン酸水溶液(90ml)に溶解し、n−ヘキサン(90ml)で2回抽出し、合わせたヘキサン層を水(30ml)で2回、飽和食塩水(30ml)で5回洗浄するとn−ヘキサン層が脱色され、水層が茶色になった。ヘキサン層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、無色透明油状物質の8−メチル−6−ノネン酸(5.73g、塩の脱着による収率94%)を得た。
(実施例44)シクロヘキシルアミン塩による8−メチル−6−ノネン酸のtrans体、cis体の分割(その1)
非特許文献8に従って合成したtrans:cis=6:1の8−メチル−6−ノネン酸(260mg、1.53mmol)をジエチルエーテル(1ml)に溶解させた後、シクロヘキシルアミン(0.175ml、1.53mmol)を加えた。30分間冷蔵庫(〜2℃)で静置すると結晶が析出し、室温に昇温して終夜撹拌した。13時間後、析出した結晶を濾取し、アミン塩を120mg得た。この塩を10%クエン酸水溶液(8ml)に溶解し、n−ヘキサン(8ml)で2回抽出し、合わせたヘキサン層を飽和食塩水(8ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾過して減圧濃縮することにより、trans:cis=23:1の8−メチル−6−ノネン酸(87.8mg、収率34%)を無色透明油状物質として得た。
(実施例45)cis−2−アミノシクロヘキサノール塩による8−メチル−6−ノネン酸のtrans体、cis体の分割(その1、クロロホルム:n−ヘキサン=1:6)
非特許文献8に従って合成した8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=88:12、500mg、2.94mmol)をn−ヘキサン(30ml)に溶解し、クロロホルム(5ml)にcis−2−アミノシクロヘキサノール(288mg、2.50mmol)を溶解した溶液を室温で滴下した。滴下後30分間室温で攪拌し、析出した結晶を濾取した。得られた結晶にn−ヘキサン(20ml)を加え、10%クエン酸水溶液(10ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮して8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=21:1、279mg、1.64mmol)を得た。
得られた8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=21:1、279mg、1.64mmol)を再びn−ヘキサン(30ml)に溶解し、クロロホルム(3ml)にcis−2−アミノシクロヘキサノール(170mg、1.48mmol)を溶解した溶液を室温で滴下した。滴下後30分間室温で攪拌してから析出した結晶を濾取した。得られた結晶にn−ヘキサン(20ml)を加えて、10%クエン酸水溶液(10ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮してtrans−8−メチル−6−ノネン酸(195mg、1.15mmol、純度97.5%、収率44.1%)を得た。
(実施例46)cis−2−アミノシクロヘキサノール塩による8−メチル−6−ノネン酸のtrans体、cis体の分割(その2、クロロホルム:n−ヘキサン=1:5)
一回目の晶析において、8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=88:12、500mg、2.94mmol)をn−ヘキサン(25ml)に溶解したこと以外は、実施例37と同様にして二回晶析を行い、trans−8−メチル−6−ノネン酸(207mg、1.22mmol、純度97.6%、収率46.7%)を得た。
(実施例47)cis−2−アミノシクロヘキサノール塩による8−メチル−6−ノネン酸のtrans体、cis体の分割(その3、クロロホルム:n−ヘキサン=1:7)
8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=88:12、500mg、2.94mmol)をn−ヘキサン(21ml)に溶解し、クロロホルム(3ml)にcis−2−アミノシクロヘキサノール(288mg、2.50mmol)を溶解した溶液を室温で滴下した。滴下後30分間室温で攪拌し、析出した結晶を濾取した。得られた結晶にn−ヘキサン(20ml)を加え、10%クエン酸水溶液(10ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮して8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=15:1、324mg、1.90mmol)を得た。
得られた8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=15:1、324mg、1.90mmol)を再びn−ヘキサン(30ml)に溶解し、クロロホルム(3ml)にcis−2−アミノシクロヘキサノール(196mg、1.71mmol)を溶解した溶液を室温で滴下した。滴下後30分間室温で攪拌してから析出した結晶を濾取した。得られた結晶にn−ヘキサン(20ml)を加えて、10%クエン酸水溶液(10ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮してtrans−8−メチル−6−ノネン酸(242mg、1.42mmol、純度96.8%、収率54.4%)を得た。
(実施例48)cis−2−アミノシクロヘキサノール塩による8−メチル−6−ノネン酸のtrans体、cis体の分割(その4、クロロホルム:n−ヘキサン=1:3)
8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=88:12、800mg、4.70mmol)をクロロホルム(10ml)に溶解し、クロロホルム(5ml)にcis−2−アミノシクロヘキサノール(460mg、4.00mmol)を溶解した溶液を室温で滴下した。反応液を減圧濃縮し、残渣を再びクロロホルム(4ml)に溶解し、n−ヘキサン(12ml)を滴下した。反応液を室温で3日間攪拌し、析出した結晶を濾取した。得られた結晶にn−ヘキサン(10ml)を加え、10%クエン酸水溶液(8ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮して8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=29:1、408mg、2.40mmol)を得た。
得られた8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=29:1、408mg、2.40mmol)を再びクロロホルム(10ml)に溶解し、クロロホルム(5ml)にcis−2−アミノシクロヘキサノール(249mg、2.16mmol)を溶解した溶液を室温で滴下した。反応液を減圧濃縮し、残渣を再びクロロホルム(3ml)に溶解し、n−ヘキサン(12ml)を滴下した。反応液を室温で一夜攪拌し、析出した結晶を濾取した。得られた結晶にn−ヘキサン(15ml)を加えて、10%クエン酸水溶液(10ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮してtrans−8−メチル−6−ノネン酸(250mg、1.47mmol、純度98.8%、収率35.1%)を得た。
(実施例49)trans−4−アミノシクロヘキサノール塩による8−メチル−6−ノネン酸のtrans体、cis体の分割
8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=88:12、500mg、2.94mmol)をクロロホルム(10ml)に溶解し、イソプロパノール(3ml)にtrans−4−アミノシクロヘキサノール(271mg、2.35mmol)を溶解した溶液を室温で滴下した。反応液を減圧濃縮し、残渣にクロロホルム(20ml)を加えて結晶化させ、結晶を濾取した。得られた結晶にn−ヘキサン(30ml)を加え、10%クエン酸水溶液(20ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮して8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=20:1、247mg、1.45mmol)を得た。
得られた8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=20:1、247mg、1.45mmol)を再びクロロホルム(10ml)に溶解し、クロロホルム(5ml)にtrans−4−アミノシクロヘキサノール(142mg、1.23mmol)を溶解した溶液を室温で滴下し、析出した結晶を濾取した。得られた結晶にn−ヘキサン(15ml)を加えて、10%クエン酸水溶液(10ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮してtrans−8−メチル−6−ノネン酸(134mg、0.79mmol、純度95.4%、収率29.8%)を得た。
(実施例50)エチレンジアミン塩による8−メチル−6−ノネン酸のtrans体、cis体の分割
8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=88:12、250mg、1.47mmol)をn−ヘキサン(10ml)に溶解し、ジエチルエーテル(1ml)にエチレンジアミン(40mg、0.66mmol)を溶解した溶液を室温で滴下した。析出した結晶を濾取し、得られた結晶をイソプロパノール(1ml)に溶解し、n−ヘキサン(50ml)を加えて室温で一夜撹拌した。析出した結晶を濾取し、得られた結晶にn−ヘキサン(20ml)を加え、10%クエン酸水溶液(10ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮してtrans−8−メチル−6−ノネン酸(126mg、0.74mmol、純度95.4%、収率55.7%)を得た。
(実施例51)L−リジン塩による8−メチル−6−ノネン酸のtrans体、cis体の分割
8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=88:12、250mg、1.47mmol)にL−リジン・1水和物(183mg、1.25mmol)を加えて水(1ml)に溶解した。これにイソプロパノール(50ml)を滴下し、析出した結晶を濾取した。得られた結晶にメタノール(2ml)を加え室温で3日間静置した後に結晶を濾取した。得られた結晶にn−ヘキサン(20ml)を加え、10%クエン酸水溶液(10ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮してtrans−8−メチル−6−ノネン酸(62mg、0.36mmol、純度94.9%、収率27.5%)を得た。
(実施例52)シクロヘキシルアミン塩による8−メチル−6−ノネン酸のtrans体、cis体の分割(その2)
8−メチル−6−ノネン酸(異性体比trans:cis=88:12、250mg、1.47mmol)をn−ヘキサン(2ml)に溶解し、n−ヘキサン(1ml)にシクロヘキシルアミン(131mg、1.32mmol)を溶解した溶液を室温で加え、室温で3日間静置した。析出した結晶を濾取し、得られた結晶にn−ヘキサン(20ml)を加え、10%クエン酸水溶液(10ml)で3回、飽和食塩水(10ml)で1回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過して除き、濾液を減圧濃縮してtrans−8−メチル−6−ノネン酸(136mg、0.80mmol、純度93.8%、収率60.4%)を得た。
本発明は脂肪酸の製造方法を提供し、この製造方法によれば、カプシノイドの構成成分である脂肪酸を簡便にかつ高純度で大量生産することができる。また、本発明は脂肪酸の新規な塩結晶を提供し、この塩結晶を用いることによって、該脂肪酸の精製および安定保存が可能となる。従って、本発明によって、カプシノイドを工業的に有利に製造することが可能となる。
本出願は、日本で出願された特願2005−029853を基礎としており、それらの内容は本明細書に全て包含される。
本出願は、日本で出願された特願2005−029853を基礎としており、それらの内容は本明細書に全て包含される。
Claims (28)
- 下記一般式(2):
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子またはC1−C6アルキル基であり、Aは、結合またはビニレン基であり、Xは、ハロゲン原子であり、mおよびnはそれぞれ、m+n=1〜5を満足するような0〜5の整数である)
で表されるグリニア試薬を、銅触媒の存在下、−5℃〜10℃にて、下記一般式(3):
(式中、Rは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基またはベンジル基であり、X’は、ハロゲン原子、メタンスルフォニルオキシ基、パラトルエンスルフォニルオキシ基またはトリフルオロメタンスルフォニルオキシ基であり、pは1から5の整数を表す)
で表されるハロカルボン酸エステルとのクロスカップリング反応に供し、下記一般式(4):
(式中、R、R1、R2、A、m、nおよびpは、上記で定義した通りである)
で表されるカルボン酸エステルを生成する工程と、
該カルボン酸エステルを加水分解する工程と、
を有することを特徴とする、下記一般式(5):
(式中、R1、R2、A、m、nおよびpは、上記で定義した通りである)
で表される脂肪酸の製造方法。 - R1およびR2が共にメチル基であり、かつmが0である、請求項1又は2のいずれか記載の製造方法。
- XおよびX’が臭素原子であり、Rがメチル基又はエチル基であり、かつ、Aが結合の場合m+n+p=4〜7であり、Aがビニレン基の場合m+n+p=2〜7である、請求項1から3のいずれか記載の製造方法。
- XおよびX’が臭素原子であり、Rがエチル基であり、Aが結合であり、m+n=1または2であり、かつp=4である、請求項1から4のいずれか記載の製造方法。
- 一般式(5)で表される脂肪酸が、8−メチルノナン酸、トランス−8−メチル−6−ノネン酸または7−メチルオクタン酸である、請求項1から5のいずれか記載の製造方法。
- クロスカップリング反応に使用される銅触媒が、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、ジリチウムテトラクロロキュープレート(II)(Li2CuCl4)および臭化銅(I)・ジメチルスルフィドからなる群より選ばれるものである、請求項1から6のいずれか記載の製造方法。
- クロスカップリング反応に使用される溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2−(1H)−ピリミジン(DMPU)およびこれらの混合溶媒からなる群より選ばれるものである、請求項1から7のいずれか記載の製造方法。
- クロスカップリング反応がトリメチルクロロシラン(TMSCl)の共存下にて行われる、請求項1から8のいずれか記載の製造方法。
- 下記一般式(2’):
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子またはC1−C6アルキル基であり、Aは、結合またはビニレン基であり、Xは、ハロゲン原子であり、m’およびn’はそれぞれ、m’+n’=1〜4を満足するような0〜4の整数である)
で表されるグリニア試薬を、銅触媒の存在下、下記一般式(6):
(式中、Rは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基またはベンジル基である)
で表されるアクリル酸エステルとの共役付加反応に供し、下記一般式(4’):
(式中、R、R1、R2、A、m’およびn’は、上記で定義した通りである)
で表されるカルボン酸エステルを生成する工程と、
該カルボン酸エステルを加水分解する工程と、
を有することを特徴とする、下記一般式(5’):
(式中、R1、R2、A、m’およびn’は、上記で定義した通りである)
で表される脂肪酸の製造方法。 - R1およびR2が共にメチル基であり、かつm’が0である、請求項10または11記載の製造方法。
- Xが臭素原子であり、Rがメチル基又はエチル基であり、かつ、Aが結合の場合m’+n’=3または4であり、Aがビニレン基の場合m’+n’=1または2である、請求項10から12のいずれか記載の製造方法。
- 一般式(5’)で表される脂肪酸が、8−メチルノナン酸、トランス−8−メチル−6−ノネン酸または7−メチルオクタン酸である、請求項10から13のいずれか記載の製造方法。
- 共役付加反応に使用される銅触媒が、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、ジリチウムテトラクロロキュープレート(II)(Li2CuCl4)および臭化銅(I)・ジメチルスルフィドからなる群より選ばれるものである、請求項10から14のいずれか記載の製造方法。
- 共役付加反応に使用される溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2−(1H)−ピリミジン(DMPU)およびこれらの混合溶媒からなる群より選ばれるものである、請求項10から15のいずれか記載の製造方法。
- 共役付加反応がトリメチルクロロシラン(TMSCl)の共存下にて行われる、請求項10から16のいずれか記載の製造方法。
- 共役付加反応の反応温度が−78℃から50℃の範囲内である、請求項10から17のいずれか記載の製造方法。
- 反応により得られる脂肪酸と塩基との塩結晶を形成することによって不純物を除去する工程を更に有することを特徴とする、請求項1から18のいずれか記載の製造方法。
- 脂肪酸と塩結晶を形成する塩基が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びバリウムからなる群より選ばれる金属、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、シクロヘキシルアミン、4−メトキシベンジルアミン、エタノールアミン、(S)又は(R)−フェニルグリシノール、(S)又は(R)−フェニルアラニノール、シス−2−アミノシクロヘキサノール、トランス−4−アミノシクロヘキサノール、(1S,2R)−シス−1−アミノ−2−インダノール、D、L又はDL−リジンおよびD、L又はDL−アルギニンからなる群より選ばれる有機アミン、或はアンモニアである、請求項19に記載の製造方法。
- R1およびR2がメチル基またはエチル基であり、かつ、Aが結合の場合m+n+p=4〜7であり、Aがビニレン基の場合m+n+p=2〜7である、請求項21記載の塩またはその結晶。
- 脂肪酸と塩を形成する塩基が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びバリウムからなる群より選ばれる金属、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、シクロヘキシルアミン、4−メトキシベンジルアミン、エタノールアミン、(S)又は(R)−フェニルグリシノール、(S)又は(R)−フェニルアラニノール、シス−2−アミノシクロヘキサノール、トランス−4−アミノシクロヘキサノール、(1S,2R)−シス−1−アミノ−2−インダノール、D、L又はDL−リジン、D、L又はDL−アルギニンからなる群より選ばれる有機アミン、或はアンモニアである、請求項21または22のいずれか記載の塩またはその結晶。
- R1およびR2が共にメチル基であり、かつ、q=3または4である、請求項24記載の精製方法。
- 脂肪酸と塩を形成する塩基が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びバリウムからなる群より選ばれる金属、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、シクロヘキシルアミン、4−メトキシベンジルアミン、エタノールアミン、(S)又は(R)−フェニルグリシノール、(S)又は(R)−フェニルアラニノール、シス−2−アミノシクロヘキサノール、トランス−4−アミノシクロヘキサノール、(1S,2R)−シス−1−アミノ−2−インダノール、D、L又はDL−リジン、D、L又はDL−アルギニンからなる群より選ばれる有機アミン、或はアンモニアである、請求項24または25記載の精製方法。
- 請求項1から20のいずれか記載の方法で得られる脂肪酸をリパーゼ存在下でバニリルアルコールと反応させる工程を有することを特徴とする、カプシノイドの製造方法。
- 請求項21から23のいずれか記載の塩またはその結晶を酸性溶液に溶解し、有機溶媒で抽出し、得られる脂肪酸をリパーゼ存在下でバニリルアルコールと反応させる工程を有することを特徴とする、カプシノイドの製造方法。
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2006
- 2006-02-03 WO PCT/JP2006/302300 patent/WO2006083030A1/ja not_active Application Discontinuation
- 2006-02-03 JP JP2007501694A patent/JPWO2006083030A1/ja active Pending
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Publication number | Publication date |
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WO2006083030A1 (ja) | 2006-08-10 |
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