本発明は、ディジタル信号のサンプリング周波数を変換するサンプリング周波数変換装置に関する。
ディジタル放送をはじめとする通信分野や、音声処理、画像処理等の分野では、ディジタル信号を再サンプリングして周波数変換するサンプリングレートコンバージョン(サンプリング周波数変換)技術が基盤技術として重要となっている。
従来、こうしたサンプリング周波数変換を行うためのサンプリングレート変換装置(sampling rate convertor)やサンプリング周波数変換装置(sampling frequency convertor)と称されている変換装置として、特開平11-17498号公報、特開2003-324337号公報に開示されたものがある。
特開平11-17498号公報に開示されているサンプリングレート変換装置は、同公報の図1に示されているように、オーバーサンプリング部と変換フィルタ部、ローパスフィルタ及びダウンサンプリング部を有して構成され、L倍のアップサンプリングと1/M倍のダウンサンプリングにより、有理数比(L/M)でのサンプリング周波数変換を行って出力信号DOUTを生成するようになっている。
また、変換フィルタ部とローパスフィルタが、アップサンプリングとダウンサンプリングに際して生じるイメージイング(imaging)とエイリアシング(aliasing)成分を除去するためのインターポレーション/デシメーションフィルタとして機能している。
そして、特定のサンプリングレート毎に対応付けて、各フィルタのフィルタ係数が予め決められており、所望のサンプリングレートを指定すると、その予め決められているフィルタ係数に基づいて各フィルタのフィルタ特性が発揮され、イメージイング(imaging)成分とエイリアシング(aliasing)成分を低減した出力信号DOUT、すなわち、入力信号DINを復元し得る出力信号DOUTを生成するようにしている。
特開2003-324337号公報に開示されているサンプリング周波数変換装置は、
同公報の図1に示されているように、サンプリング周波数f1で離散化された入力信号データ列A(n)を入力し、時間的にシフトして出力するシフトレジスタと、該サンプリング周波数f1と周波数変換しようとする所望のサンプリング周波数f2とのサンプリング時刻における位相差を求める位相比較回路と、位相差に対応した係数でシフトレジスタの出力に補間処理を行う補間回路とを有して構成されている。
そして、補間回路が、上述の位相差に対応した所定の係数とシフトレジスタからシフトして出力される入力信号データ列A(n)の振幅値とを積和演算することにより、サンプリング周波数f2でのサンプリング時刻におけるデータ列、すなわち、サンプリング周波数f2に周波数変換したデータ列B(n)を生成している。
特開平11-17498号公報
特開2003-324337号公報
ところで、特開平11-17498号公報に開示されている従来のサンプリングレート変換装置は、上述したように各フィルタ3,4のフィルタ係数が特定のサンプリングレート毎に対応付けて予め決められているため、特定のサンプリングレート以外でのサンプリングレートで周波数変換をすることができないという課題がある。
例えば具体的事例として、放送局からの到来電波をディジタル放送受信機で受信し、フェージング等の影響により周波数変動を生じているベースバンド信号を再サンプリングして放送局側と同期した所望の規定周波数の復調信号を復調しようとする場合、従来のサンプリングレート変換装置では、特定のサンプリングレートに対してのみ周波数変換の機能を発揮し得るという制限があるため、放送局側と同期した所望の規定周波数の復調信号を復調等することができなくなるという課題があった。
また、このサンプリングレート変換装置は、時間分解能が細かくなるほど、必要とするフィルタ係数の数を多くしなければならないため、例えばフィルタ係数のデータを予め記憶しておくためのRAMやROM等の記憶手段の容量を大幅に増大させる必要がある。このため、いわゆる高分解能でサンプリング周波数変換を行おうとすると、装置構成の大型化等により実現が困難となるという問題がある。
特開2003-324337号公報に開示されているサンプリング周波数変換装置は、
入力信号データ列A(n)とサンプリング周波数変換後のデータ列B(n)との乖離(誤差)が大きくなるという課題があり、いわゆる高精度のサンプリング周波数変換が必要とされる技術分野、例えばディジタル放送受信機での復調処理や、ハイクオリティが要求される音声処理や画像処理等の技術分野に適用することが難しいという問題がある。
本発明はこうした従来の課題に鑑みてなされたものであり、例えば所望のサンプリングレートに応じて適応的にサンプリング周波数変換を行うことができ、また、所望の時間分解能でのサンプリング周波数変換を行うことができ、また、装置構成の大型化等を未然に防止することができる等、従来より機能の向上を図ったサンプリング周波数変換装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、ディジタル信号のサンプリング周波数を変換するサンプリング周波数変換装置であって、前記ディジタル信号をディジタルフィルタリングするディジタルフィルタと、目標周波数の信号と前記ディジタル信号とのサンプリング時刻間の位相差を検出する位相差検出手段と、前記位相差検出手段が検出した前記位相差に基づいて、
前記ディジタルフィルタのフィルタ係数を演算し、演算したフィルタ係数に基づいて前記目標周波数の信号のサンプリング時刻における前記ディジタルフィルタのフィルタ特性を設定するフィルタ係数演算手段とを備え、前記ディジタルフィルタが、前記設定されるフィルタ特性に基づいて前記ディジタル信号をディジタルフィルタリングすることによって、前記ディジタル信号を前記目標周波数に同期したサンプリング周波数のサンプル列から成る出力信号にサンプリング周波数変換することを特徴する。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のサンプリング周波数変換装置において、前記ディジタル信号をアップサンプリングして所定のローパスフィルタ特性に基づいてディジタルローパスフィルタリングを行うことで、前記ディジタル信号より高いサンプリング周波数の中間生成信号を生成して、前記ディジタルフィルタに供給するレート変換手段を更に備え、前記位相差検出手段は、前記中間生成信号と前記目標周波数の信号とのサンプリング時刻間の位相差を検出することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のサンプリング周波数変換装置において、前記フィルタ係数演算手段で演算される前記フィルタ係数の窓関数による重み付けを行うことにより、前記ディジタルフィルタのフィルタ特性を設定するためのフィルタ係数を演算する窓関数演算手段を更に備えることを特徴とする。
本発明の好適な実施形態に係るサンプリング周波数変換装置の構成を表したブロック図である。
図1に示したサンプリング周波数変換装置のサンプリング周波数変換過程を説明するための図である。
実施例1に係るサンプリング周波数変換装置の構成を表したブロック図である。
図3に示したサンプリング周波数変換装置のサンプリング周波数変換過程を説明するための図である。
実施例2に係るサンプリング周波数変換装置の構成を表したブロック図である。
本発明の好適な実施の形態について、図1及び図2を参照して説明する。
図1(a)(b)は、本実施形態のサンプリング周波数変換装置の2態様の各構成を表したブロック図、図2(a)(b)は、本サンプリング周波数変換装置におけるサンプリング周波数変換過程を説明するための図である。
図1(a)に示すサンプリング周波数変換装置1は、第1レート変換部2の他、位相差検出部3とフィルタ係数演算部4及びディジタルフィルタ5を備えた第2レート変換部6を有して構成されている。
第1レート変換部2が、サンプリング周波数fsの入力信号Xから整数a倍のサンプリング周波数faとなる中間生成信号Uを生成し、第2レート変換部6が、中間生成信号Uをローパスフィルタリングして所望のサンプリング周波数fbとなる出力信号Yを生成することにより、サンプリング周波数fsの入力信号Xをサンプリング周波数fbの出力信号Yへとサンプリング周波数変換する。
更に詳述すると、第1レート変換部2は、サンプリング周波数fsで離散化されたサンプル列である入力信号Xをクロック信号CKsに同期して入力し、入力信号Xの各サンプル間にa−1個ずつゼロ値サンプル(振幅0のサンプル)を挿入することで、入力信号Xのサンプリングレートを整数a倍に増加させたアップサンプリング信号(符号略)を内部で生成する。更に、そのアップサンプリング信号に混入することとなるイメージング成分が生じる高周波数帯域を阻止域、入力信号Xの信号成分が生じる低周波数帯域を通過域とする所定のローパスフィルタ特性に基づいて、アップサンプリング信号をローパスフィルタリングすることによって、イメージング成分を除去し、且つサンプリング周波数fsのa倍のサンプリング周波数faの中間生成信号Uを生成して出力する。
第2レート変換部6の位相差検出部3は、出力信号Yのサンプリング周波数fbと等しい周波数(以下「目的周波数」という。)fbに決められたクロック信号CKbと、第1レート変換部2がアップサンプリングの際に設定した中間生成信号Uのサンプリング周波数fa(すなわち、a×fs)を示すクロック信号CKaとを入力する。そして、これらのクロック信号CKa,CKbに基づいて、クロック信号CKbと入力信号Xと中間生成信号Uとの各々のサンプリング時刻tb,ts,taを検知し、更に、サンプリング時刻taを基準にしてサンプリング時刻taとtbの時間差(以下「位相差」という。)pを検出する。
これにより、位相差検出部3は、目的周波数fbと中間生成信号Uのサンプリング周波数faとの周波数差(fb−fa)を、サンプリング時刻ta,tbの位相差pとして検出することとなる。
すなわち、図2(a)に例示するように、例えば、サンプリング周期(1/fs)毎に隣接する入力信号Xのサンプルが、黒丸印(●)で示すX(0),X(1),…であり、整数a倍(例えば、3倍)にレート変換された中間生成信号Uの各サンプルが、黒丸印(●)で示すU(0),U(1),U(2),U(3),U(4),…であり、各サンプリング周期(1/fs)の開始時刻であるサンプリング時刻がtsであり、クロック信号CKbのサンプリング時刻がtb1,tb2,tb3,…であり、クロック信号CKaのサンプリング時刻がta1,ta2,ta3,…であった場合、位相差検出部3は、クロック信号CKa,CKbの各サンプリング時刻を逐一検知していく。そして、サンプリング時刻tb1を検知すると、そのサンプリング時刻tb1が属するサンプリング周期(1/fs)におけるサンプリング時刻tsと、サンプリング時刻tb1から最前に位置するサンプルU(1)のサンプリング時刻ta1を検出し、更に、サンプリング時刻tsを基準とするサンプリング時刻ts,tb1間の時間tsbとサンプリング時刻ts,ta1間の時間tsaとの差(tsb−tsa)を位相差pとして検出する。
また、位相差検出部3は、クロック信号CKbのサンプリング時刻tb2を検知した場合にも同様に、サンプリング時刻tb2,ts,ta2に基づいて位相差pを検出し、サンプリング時刻tb3を検知した場合にも同様に、サンプリング時刻tb3,ts,ta3に基づいて位相差pを検出し、以下同様の検出処理を繰り返す。
フィルタ係数演算部4は、検出された位相差pを次式(1)で表される演算式に導入して演算処理を行うことにより、n次(N−1次)のディジタルフィルタ5のフィルタ係数α0〜αN-1を導出し、ディジタルフィルタ5に供給してそのフィルタ係数αn(0≦n≦N−1)と中間生成信号Uのサンプル列との有限離散的たたみ込み演算処理を行わせることにより、クロック信号CKaのサンプリング時刻taに同期した新たなサンプル(以下「内挿サンプル」という)を生成させる。
ここで、上記式(1)中の係数pは上述の位相差である。係数mは、サンプリング周波数変換の分解能である。係数Nは、中間生成信号Uのサンプル列に対し巡回的な値をとるフィルタ係数αn(1≦n≦N−1)の個数である。係数H0とHk(1≦k≦N−1)は、
所望のディジタルフィルタの各周波数特性の周波数サンプル(スペクトル値)である。
更に、上記式(1)は、次のようにして決められている。
まず、サンプリング周波数変換装置1を設計等する際、ディジタルフィルタ5の周波数特性を所定のローパスフィルタ特性H(ejωT)とする。
すなわち、入力信号Xのサンプリング周波数fsを未知の変数、そのサンプリング周波数fsの逆数(1/fs)をサンプリング周期T、その角周波数をωs、第1レート変換部2の変換比aを所定値(例えば、2)と決め、角周波数(ωs/2)を境にして低周波数帯域側に生じる入力信号Xの信号成分を通過させる通過域(0≦│ω│<ωs/2)を有し、且つ角周波数(a−1/2)ωsを境にして高周波数帯域側が阻止域(a−1/2)ωs≦│ω│<mωs/2)となる標準のローパスフィルタ特性H(ejωT)を決めるのである。
しかる後、サンプリング周波数fsの整数a倍のサンプリング周波数faとなる中間生成信号Uに対して、ディジタルフィルタ5が位相差pを含めた高いサンプリング周波数でローパスフィルタリングを行うことを考慮して、周波数(0≦│ω│<mωs/2)の下でローパスフィルタ特性H(ejωT)を逆離散フーリエ変換(IDFT)することによってフィルタ係数αn(1≦n≦N−1)を演算するための演算式を作成し、その演算式を上記式(1)に決める。
そして、上記式(1)で表される演算処理を行うフィルタ係数演算部4を形成している。
ディジタルフィルタ5は、上記式(1)のフィルタ係数により所定の周波数特性(ローパスフィルタ特性)を発揮するn次のディジタルローパスフィルタで形成されており、クロック信号CKaに同期して中間生成信号Uを入力し、ローパスフィルタリングを行う。
つまり、ディジタルフィルタ5は、サンプリング時刻tbにおいてフィルタ係数演算部4で演算されたフィルタ係数αn(0≦n≦N−1)に従ってそのローパスフィルタ特性を可変し、中間生成信号Uのサンプル列とフィルタ係数αn(0≦n≦N−1)との有限離散的たたみ込み演算によってサンプリング時刻tbでの内挿サンプルを生成して出力する。
したがって、ディジタルフィルタ5は、図2(a)に示したサンプリング時刻tb1,tb2,tb3…等において検出された各位相差pに対応するかたちで、各サンプル時刻tb1,tb2,tb3…等の夫々の時刻での内挿サンプルを順に生成していき、図2(a)(b)に例示するように、サンプリング周波数fbに同期したサンプル列Y(0),Y(1),Y(2),Y(3),…等から成る出力信号Yを出力する。そして、サンプリング周波数fbの出力信号Yが出力されることとなるため、変換比(fb/fs)でのサンプリング周波数変換が実現される。
以上説明したように、図1(a)に示す本実施形態のサンプリング周波数変換装置1によれば、位相差検出部3とフィルタ係数演算部4、及び出力信号Yの内挿サンプルを生成するためのディジタルフィルタ5を有する第2レート変換器6において、目的周波数fbのクロック信号CKbと、入力周波数fsより高いサンプリング周波数faの中間生成信号Uとのサンプリング時刻ta,tmの位相差pを検出すると、所定のローパスフィルタ特性H(ejωT)の逆離散フーリエ変換に相当する上記演算式(1)にその位相差pを導入することで、ディジタルフィルタ5のフィルタ係数α0〜αN-1を演算するので、所望のサンプリングレートでのサンプリング周波数変換を自在に実現することができる。
すなわち、本実施形態のサンプリング周波数変換装置1は、予め決められた特定のサンプリングレートでのサンプリング周波数変換しかできないというものではなく、クロック信号CKbの目的周波数fbが任意の周波数に指定又は調整等されると、ディジタルフィルタ5のフィルタ係数α0〜αN-1を導出するための演算処理を行うことから、例えばユーザ等に対して任意のサンプリングレートを自在に指定させることができる。
また、具体的事例として、放送局からの到来電波をディジタル放送受信機で受信し、フェージング等の影響により周波数変動を生じているベースバンド信号を再サンプリングして放送局側と同期した所望の規定周波数の復調信号を復調するための復調回路に、本実施形態のサンプリング周波数変換装置1を用いることとすると、クロック信号CKbの目標周波数fbを規定周波数に合わせて、ベースバンド信号を入力信号Xとすることにより、規定周波数の復調信号(すなわち、出力信号)Yを生成することができる。
更に、本実施形態のサンプリング周波数変換装置1は、第2レート変換部6の前段に第1レート変換部1を有し、入力信号Xのサンプリングレートを増加させてディジタルフィルタリングを施すことで高いサンプリング周波数faの中間生成信号Uを生成するので、第2レート変換部6に設けられているディジタルフィルタ5の次数nを下げることができる。このため、ディジタルフィルタ5の構成を簡素化することができると共に、そのディジタルフィルタ5のフィルタ係数を演算するためのフィルタ係数演算部4の構成の簡素化や演算量の低減を図ることができる。
つまり、サンプリング周波数変換装置では一般に、レート変換に際して、イメージング成分やエイリアシングの除去及び発生の抑制を図るためにローパスフィルタリングが必要であり、そのローパスフィルタリングを行うディジタルローパスフィルタの構成の簡素化や演算量の低減化が極めて重要となっている。
かかる課題に対して、本実施形態では、第2レート変換部6の前段に第1レート変換部2を設けたことで、低周波数帯域に占める信号成分と高周波数帯域に占めるイメージング成分等の不要ノイズ成分とが広い周波数幅を介して分離された中間生成信号Uを生成することができるため、ディジタルフィルタ5のフィルタ特性は、中間生成信号Uの信号成分の占める低周波数帯域を通過域、イメージング成分等の占める高周波帯域を阻止域、上述の広い周波数幅を遷移域とするローパスフィルタ特性とすればよく、その遷移域でのしゃ断特性を急峻にする必要がなくなる。このため、ディジタルフィルタ5を高次のフィルタで形成する必要がなく、低次のフィルタで形成することが可能となり、ディジタルフィルタ5の構成の簡素化、及びフィルタ係数演算部4の構成の簡素化、演算量の低減等を実現することができる。
そして、ディジタルフィルタ5とフィルタ係数演算部4における演算等のための処理量を大幅に低減することが可能となるため、高速処理を行うのに好適であり、且つ又、設定可能なサンプリングレートを規定することとなるサンプリング時刻ta,tbの時間分解能の向上を図ることが可能なサンプリング周波数変換装置を提供することができる。
また、以上の説明では、第2レート変換部6を1個設けた基本的な構成のサンプリング周波数変換装置1について説明したが、図1(b)のブロック図に示すように、第2レート変換部6と同様の構成を有する複数個のレート変換部6(1),6(2),…,6(j)を並列に接続することで、いわゆるポリフェーズ構造のサンプリング周波数変換装置を構成してもよい。
つまり、各レート変換部6(1),6(2),…,6(j)に中間生成信号Uを並列入力し、更に各レート変換部6(1),6(2),…,6(j)内の位相差検出部に供給するクロック信号CKb1,CKb2,…,CKbjの夫々の目的周波数fb1,fb2,…,fbjを適宜異なった周波数にし、更に各レート変換部6(1),6(2),…,6(j)から出力される各出力信号Y1,Y2,…,Yjを回転子(commutator)7を通じて出力することで最終的な出力信号Youtを生成する構成とすることにより、ポリフェーズ構造のサンプリング周波数変換装置を構成することができる。
このように、ポリフェーズ構造とすると、図1(a)に示した第2レート変換部6を1個だけ設けて構成する場合よりも、各レート変換部6(1),6(2),…,6(j)は、低速での処理が可能となり且つ演算量等の低減化を図ることができる。
そして、一般にポリフェーズ構造とすると、上述のメリット(低速での処理、演算量等の低減化)を図ることができることが知られているが、本実施形態の第2レート変換部6と同様の構成を有する複数個のレート変換部6(1),6(2),…,6(j)によってポリフェーズ構造とすると、ポリフェーズ構造による上記メリットをより多く享受することが可能なサンプリング周波数変換装置を実現することができる。
なお、図1(a)(b)を参照して説明した2態様の各サンプリング周波数変換装置1は、IC、MSI、LSI等の半導体集積回路装置等を用いて、いわゆるハードウェア構造のディジタル回路で形成してもよいし、そのディジタル回路と等価な機能を発揮するコンピュータプログラムを作成し、そのコンピュータプログラムで示される処理工程に従って、ディジタルシグナルプロセッサ(DSP)やマイクロプロセッサ(MPU)等を実行させるようにしてもよい。
次に、上記実施形態に係るより具体的な実施例について、図3及び図4を参照して説明する。図3は、本実施例のサンプリング周波数変換装置の構成を表したブロック図であり、図1と同一又は相当する部分を同一符号で示している。図4は、本実施例のサンプリング周波数変換装置におけるサンプリング周波数変換過程を説明するための図である。
図3において、このサンプリング周波数変換装置1は、第1レート変換部2と第2レート変換部6を有し、所定のコンピュータプログラムを実行することで各変換部2,6の機能を発揮するディジタルシグナルプロセッサ(DSP)によって形成されている。
第1レート変換部2は、インターポレータ2aとインターポレーションフィルタ2bとを有して構成され、第2レート変換部6は、位相差検出部3とフィルタ係数演算部4及びディジタルフィルタ5を有して構成されている。
インターポレータ2aは、サンプリング周波数fsで離散化された入力信号Xと、サンプリング周波数fsを示すクロック信号CKsを入力し、外部指定される整数aの値に基づいて入力信号Xのサンプリングレートを整数a倍に増加させるアップサンプリングを行うことで、アップサンプリング信号Suを生成する。すなわち、図4(a)に例示するように、入力信号Xの各サンプル間に、a−1個(例えば、a=4であれば、3個)ずつゼロ値サンプルを挿入することで、アップサンプリング信号Suを生成する。
インターポレーションフィルタ2bは、アップサンプリングの結果、アップサンプリング信号Suに混入するイメージング成分を除去するためのディジタルローパスフィルタで形成されており、図4(b)に模式的に示すように、角周波数(ωs/2)を境にして低周波数帯域に生じる入力信号Xの信号成分を通過させる通過域と、角周波数(ωs/2)を中心とする狭周波数幅の遷移域と、該遷移域より高周波数帯域の阻止域とが決められたローパスフィルタ特性を有している。そして、かかるローパスフィルタ特性に基づいてアップサンプリング信号Suにローパスフィルタリングを施すことにより、阻止域に生じるイメージング成分を除去し、図4(c)に例示するようなサンプリングレートが整数a倍となる中間生成信号Uを生成して出力する。
また、インターポレーションフィルタ2bは、上記ローパスフィルタ特性を発揮させるべく一般に知られている方法で作成すればよい。こうして、インターポレーションフィルタ2bを作成すると、インターポレーションフィルタ2bは、サンプリング信号Suからイメージング成分を除去した中間生成信号Uを生成して出力する。
位相差検出部3は、目的周波数fbに決められたクロック信号CKbと、インターポレータ2aとインターポレーションフィルタ2bがアップサンプリングの際に設定した中間生成信号Uのサンプリング周波数fa(すなわち、a×fs)を示すクロック信号CKaとを入力する。そして、図2(a)に例示したように、これらのクロック信号CKa,CKbに基づいて、クロック信号CKaと入力信号Xと中間生成信号Uとの各々のサンプリング時刻ta,ts,tbを検知し、更に、サンプリング時刻taを基準にしてサンプリング時刻taとtbの時間差(位相差)pを検出する。
フィルタ係数演算部4は、検出された位相差pを次式(2)で表される演算式に導入して演算処理を行うことにより、クロック信号CKbのサンプリング時刻tbでの内挿サンプルを生成するためのn次のディジタルフィルタ5のフィルタ係数α0〜αN-1を導出し、その導出したフィルタ係数αn(0≦n≦N−1)によってディジタルフィルタ5のローパスフィルタ特性を更新設定する。
ここで、上記式(2)は、次のようにして決められている。まず、アップサンプリング信号Suに対するサンプリングレート変換となることを考慮して、ディジタルフィルタ5のローパスフィルタ特性Ha(ejωT)を次式(3)のように決める。
ここで、上記式(3)において、入力信号Xのサンプリング周波数fsを未知の変数、そのサンプリング周波数fsの逆数(1/fs)をサンプリング周期T、その角周波数をωs、角周波数(ωs/2)を境にして低周波数帯域側に生じる入力信号Xの信号成分を通過させる通過域(0≦│ω│<ωs/2)を有し、且つ角周波数(a−1/2)ωsを境にして高周波数帯域側が阻止域(a−1/2)ωs≦│ω│<aωs)となる標準のローパスフィルタ特性Ha(ejωT)に決める。
しかる後、サンプリング周波数fsの整数a倍のサンプリング周波数faのアップサンプリング信号Suに対して、インターポレーションフィルタ2bがローパスフィルタリングを行うことを考慮して、周波数(m×fs)の下でローパスフィルタ特性Hm(ejωT)を逆離散フーリエ変換(IDFT)することによって、m×N個のインパルスレスポンスhnを演算する。
より詳細には、上記式(3)で表したローパスフィルタ特性Hm(ejωT)の、ωk(k=0,1,2,…,mN−1)毎の周波数サンプルHk、すなわち、m×N個の周波数サンプルHkについて逆離散フーリエ変換(IDFT)することによって、m×N個のインパルスレスポンスh0〜hmN-1を演算する。
つまり、m×N個の周波数サンプルHkは、次式(4)の関係が成り立つことから、次式(5)で表されるように、周波数サンプルHkについて逆離散フーリエ変換することによって、m×N個のインパルスレスポンスhn(すなわち、h0〜hmN-1)を算出する。
そして、未知の位相差pを、0≦p<mで表される範囲内の変数とし、上記式(5)に示したインパルスレスポンスhn(すなわち、h0〜hmN-1)に位相差pを適用することで、ディジタルフィルタ5のフィルタ係数αn(すなわち、α0〜αN-1)を求めるのである。
つまり、αn=hm(n-N/2)+pの関係を上記式(5)に適用し、ディジタルフィルタ5のフィルタ係数αnを演算するための前記式(2)を決めている。
ディジタルフィルタ5は、サンプリング周波数faの逆数(1/fa)の時間を単位サンプル遅延(z-1)とするN−1個の遅延素子を備えたシフトレジスタ5aと、各遅延素子の入出力に対して、フィルタ係数演算部4で演算されたフィルタ係数α0〜αN-1を乗算する乗算器5bと、乗算器5bの出力を加算する加算器5cとを有するFIR形ディジタルフィルタで形成されている。そして、かかる構成により、図4(d)に示すフィルタ特性に基づいて中間生成信号Uをローパスフィルタリングすることにより、サンプリング時刻tbでの内挿サンプルを生成し、加算器5bから出力信号Yとして出力する。
以上説明したように、本実施例のサンプリング周波数変換器1によれば、前述した実施形態と同様に、フィルタ係数演算部4が、位相差pに基づいてディジタルフィルタ5のフィルタ係数αnを演算するので、予め決められたサンプリングレートでのサンプリング周波数変換しか行えないという問題を解消し、サンプリングレートを自由に指定して、所望のサンプリング周波数faの出力信号Yを生成することができる。
更に、インターポレータ2aとインターポレーションフィルタ2bにおいて、予め入力信号Xからサンプリングレートを整数a倍に増加させた中間生成信号Uを生成しておき、その中間生成信号Uに対して、第2レート変換部6のディジタルフィルタ5がディジタルフィルタリングを施すことで出力信号Yを生成するので、図4(d)に例示するように、a=2の場合には、ディジタルフィルタ5のフィルタ特性である通過域(0≦ω≦ωs/2)と阻止域(3ωs/2≦ω)との間の遷移領域を、帯域幅(ωs/2≦ω≦3ωs/2)に広げることができる。
このため、その遷移域での遮断特性を急峻にする必要がなくなることから、ディジタルフィルタ5を高次のフィルタとする必要がない。このことから、ディジタルフィルタ5のフィルタ長を大きくしなくともよく、別言すればフィルタ係数の数を低減することができるため、フィルタ係数演算部4における演算量を大幅に低減することが可能である。その結果、DSPにおける負荷の軽減、高速処理等を実現することができる。
なお、以上の説明では、第2レート変換部6を1個設けたサンプリング周波数変換装置1について説明したが、図1(b)に示したように、第2レート変換部6と同様の構成を有する複数個のレート変換部を並列に接続することで、いわゆるポリフェーズ構造のサンプリング周波数変換装置を構成してもよい。かかるポリフェーズ構造とすれば、ポリフェーズ構造によるメリットをより多く享受することが可能なサンプリング周波数変換装置を実現することができる。
次に、他の実施例について図5を参照して説明する。図5は、本実施例のサンプリング周波数変換装置の構成を表したブロック図であり、図1(a)と同一又は相当する部分を同一符号で示している。
図5において、このサンプリング周波数変換装置1は、位相差検出部3とフィルタ係数演算部4及びディジタルフィルタ5の他、窓関数演算部7を備えたレート変換部6で形成されており、図1(a)に示した第1レート変換部2を備えることなく、直接入力信号Xを入力して、レート変換した出力信号Yを生成して出力する。
位相差検出部3は、図1(a)に示した位相差検出部3と同様に、目的周波数fbのクロック信号CKbのサンプリング時刻tbと、サンプリング周波数fsの入力信号Xのサンプリング時刻tsを検知し、それらのサンプリング時刻ts,tbの差(tb−ts)を位相差pとして検出する。
すなわち、本実施例のサンプリング周波数変換装置1では、図1(a)に示した第1レート変換部2を備えていないことから、入力信号Xとクロック信号CKbのサンプリング時刻ts,tbとの差(tb−ts)を位相差pとして検出する。
フィルタ係数演算部4は、サンプリング時刻taに同期して位相差検出部3から供給される位相差pを次式(6)で表される演算式に導入して演算処理を行うことにより、n次のディジタルフィルタ5のフィルタ係数αnを導出するための、インパルスレスポンスβnを算出し、窓関数演算部7に供給する。
ここで、上記式(6)は、次のようにして決められている。 まず、次式(7)で表されるゼロ位相の理想フィルタのインパルスレスポンスgnの一部を、n次のディジタルフィルタ5のフィルタ係数として使用するものとする。
次に、上記式(7)において、ωc=ωs/(2m)に置き換えて上記式(7)を変形することにより、次式(8)で表される次数(mN−1)のディジタルフィルタ5のインパルスレスポンスhnを求める。
次に、上記式(8)に位相差pを適用することにより、次式(9)で表されるインパルスレスポンスβnを演算するための演算式を求め、該演算式を上記式(6)に決めている。
窓関数演算部7は、フィルタ係数演算部4で生成されたインパルスレスポンスβn(0≦n≦N−1)に対して、次式(10)で表されるハミング窓(hamming window)の窓関数Wnによる重み付け演算を行うことにより、ディジタルフィルタ5のフィルタ係数αn(0≦n≦N−1)を演算する。
これにより、窓関数演算部7は、上記式(6)に示したフィルタ係数演算部4で生成されるインパルスレスポンスβnに、上記式(10)に示した窓関数Wnを重み付けすることで、次式(11)で表されるフィルタ係数αnを生成し、ディジタルフィルタ5に供給する。
ディジタルフィルタ5は、n次(N−1次)のFIR形ディジタルフィルタで形成されており、サンプリング時刻tbに同期して窓関数演算部7から供給されるインパルスレスポンスαnと、入力信号Xのサンプル列とを有限離散的たたみ込み演算をすることにより、サンプリング時刻tbでの内挿サンプルを生成し、出力信号Yとして出力する。
以上に説明したように、本実施例のサンプリング周波数変換装置1によれば、フィルタ係数演算部4が、ゼロ位相の理想フィルタのインパルスレスポンスの一部であるhnに、位相差pを導入することで、インパルスレスポンスβnを演算し、窓関数演算部7が、インパルスレスポンスβnにハミング窓の窓関数Wnを重み付け演算することにより、ディジタルフィルタ5のインパルスレスポンスαnを演算する。そして、ディジタルフィルタ5が、インパルスレスポンスαnと入力信号Xのサンプル列との有限離散的たたみ込み演算を行うことにより、目的周波数fbのクロック信号CKbのサンプリング時刻tbに同期して、内挿サンプルを生成することにより、サンプリング周波数fsの入力信号Xをサンプリング周波数fbの出力信号Yにサンプリング周波数変換する。
このように、本実施例のサンプリング周波数変換装置1によれば、フィルタ係数演算部3と窓関数演算部7が、位相差pに基づいてディジタルフィルタ5のフィルタ係数αnを演算するので、予め決められたサンプリングレートでのサンプリング周波数変換しか行えないという問題を解消し、サンプリングレートを自由に指定して、所望のサンプリング周波数fbの出力信号Yを生成することができる。
なお、以上の説明では、窓関数演算部7において、上記式(10)で表されるハミング窓の窓関数Wnに基づいてインパルスレスポンスβn(0≦n≦N−1)に重み付けを行う場合について説明したが、他の窓関数、例えばハニング窓(hanning window)によって重み付けを行うようにしてもよい。
また、レート変換部6の前段に、図1(a)に示したのと同様に第1レート変換部2を設け、その第1レート変換部2でサンプリング周波数fsの入力信号Xを整数a倍のサンプリング周波数faの中間生成信号Uを生成して、その中間生成品号Uを入力信号としてレート変換部6に供給するようにしてもよい。そして、かかる構成とする場合には、図5に示した位相差検出部3は、中間生成信号Uのサンプリング時刻とクロック信号CKbのサンプリング時刻tbとから、位相差pを検出して、フィルタ係数演算部4と窓関数演算部7に供給すればよい。
また、レート変換部6を1個設けたサンプリング周波数変換装置1について説明したが、図1(b)に示したように、レート変換部6と同様の構成を有する複数個のレート変換部を並列に接続することで、いわゆるポリフェーズ構造のサンプリング周波数変換装置を構成してもよい。かかるポリフェーズ構造とすれば、ポリフェーズ構造によるメリットをより多く享受することが可能なサンプリング周波数変換装置を実現することができる。
【発明の名称】サンプリング周波数変換装置
【0001】
【技術分野】
[0001]
本発明は、ディジタル信号のサンプリング周波数を変換するサンプリング周波数変換装置に関する。
【背景技術】
[0002]
ディジタル放送をはじめとする通信分野や、音声処理、画像処理等の分野では、ディジタル信号を再サンプリングして周波数変換するサンプリングレートコンバージョン(サンプリング周波数変換)技術が基盤技術として重要となっている。
[0003]
従来、こうしたサンプリング周波数変換を行うためのサンプリングレート変換装置(sampling rate convertor)やサンプリング周波数変換装置(sampling frequency convertor)と称されている変換装置として、特開平11−17498号公報、特開2003−324337号公報に開示されたものがある。
[0004]
特開平11−17498号公報に開示されているサンプリングレート変換装置は、同公報の図1に示されているように、オーバーサンプリング部と変換フィルタ部、ローパスフィルタ及びダウンサンプリング部を有して構成され、L倍のアップサンプリングと1/M倍のダウンサンプリングにより、有理数比(L/M)でのサンプリング周波数変換を行って出力信号DOUTを生成するようになっている。
[0005]
また、変換フィルタ部とローパスフィルタが、アップサンプリングとダウンサンプリングに際して生じるイメージング(imaging)とエイリアシング(aliasing)成分を除去するためのインターポレーション/デシメーションフィルタとして機能している。
[0006]
そして、特定のサンプリングレート毎に対応付けて、各フィルタのフィルタ係数が予め決められており、所望のサンプリングレートを指定すると、その予め決められているフィルタ係数に基づいて各フィルタのフィルタ特性が発揮され、イメージング(imaging)成分とエイリアシング(aliasing)成分を低減した出力信号DOUT、すなわち、入力信号DINを復元し得る出力信号DOUTを生成するようにしている。
[0007]
特開2003−324337号公報に開示されているサンプリング周波数変換装置は、
【0003】
[0013]
特開2003−324337号公報に開示されているサンプリング周波数変換装置は、入力信号データ列A(n)とサンプリング周波数変換後のデータ列B(n)との乖離(誤差)が大きくなるという課題があり、いわゆる高精度のサンプリング周波数変換が必要とされる技術分野、例えばディジタル放送受信機での復調処理や、ハイクオリティが要求される音声処理や画像処理等の技術分野に適用することが難しいという問題がある。
[0014]
本発明はこうした従来の課題に鑑みてなされたものであり、例えば所望のサンプリングレートに応じて適応的にサンプリング周波数変換を行うことができ、また、所望の時間分解能でのサンプリング周波数変換を行うことができ、また、装置構成の大型化等を未然に防止することができる等、従来より機能の向上を図ったサンプリング周波数変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
[0015]
請求項1に記載の発明は、ディジタル信号のサンプリング周波数を変換するサンプリング周波数変換装置であって、前記ディジタル信号をディジタルフィルタリングするディジタルフィルタと、目的周波数の信号と前記ディジタル信号とのサンプリング時刻間の位相差を検出する位相差検出手段と、前記位相差検出手段が検出した前記位相差に基づいて、前記目的周波数の信号のサンプリング時刻における前記ディジタルフィルタのフィルタ係数を演算するフィルタ係数演算手段と、前記フィルタ係数演算手段で演算される前記フィルタ係数に、窓関数による重み付け演算を行うことにより、前記目的周波数の信号のサンプリング時刻における前記ディジタルフィルタのフィルタ特性を設定するためのフィルタ係数を演算する窓関数演算手段と、を備え、前記ディジタルフィルタが、前記窓関数演算手段で前記重み付け演算されたフィルタ係数により設定されるフィルタ特性に基づいて前記ディジタル信号をディジタルフィルタリングすることによって、前記ディジタル信号を前記目的周波数に同期したサンプリング周波数のサンプル列から成る出力信号にサンプリング周波数変換すること、を特徴とする。
[0016]
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のサンプリング周波数変換装置において、前記ディジタル信号をアップサンプリングして所定のローパスフィルタ特性に基づいてディジタルローパスフィルタリングを行うことで、前記ディジタル信号より高いサンプリング周波数の中間生成信号を生成して、前記ディジタルフィルタに供給するレート変換手段を更に備え、前記位相差検出手段は、前記中間生成信号と前記目的周波数の信号とのサンプリング時刻間の位相差を検出することを特徴とする。
【0004】
[0017]
更に、請求項1に記載のサンプリング周波数変換装置において、前記サンプリング周波数変換装置は、前記ディジタルフィルタと位相差検出手段とフィルタ係数演算手段及び窓関数演算手段と同等の構成を有するレート変換手段を複数備えたポリフェーズ構造であること、を特徴とする。
【図面の簡単な説明】
[0018]
[図1]本発明の好適な実施形態に係るサンプリング周波数変換装置の構成を表したブロック図である。
[図2]図1に示したサンプリング周波数変換装置のサンプリング周波数変換過程を説明するための図である。
[図3]実施例1に係るサンプリング周波数変換装置の構成を表したブロック図である。
[図4]図3に示したサンプリング周波数変換装置のサンプリング周波数変換過程を説明するための図である。
[図5]実施例2に係るサンプリング周波数変換装置の構成を表したブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
[0019]
本発明の好適な実施の形態について、図1及び図2を参照して説明する。
図1(a)(b)は、本実施形態のサンプリング周波数変換装置の2態様の各構成を表したブロック図、図2(a)(b)は、本サンプリング周波数変換装置におけるサンプリング周波数変換過程を説明するための図である。
[0020]
図1(a)に示すサンプリング周波数変換装置1は、第1レート変換部2の他、位相差検出部3とフィルタ係数演算部4及びディジタルフィルタ5を備えた第2レート変換部6を有して構成されている。
[0021]
第1レート変換部2が、サンプリング周波数fsの入力信号Xから整数a倍のサンプリング周波数faとなる中間生成信号Uを生成し、第2レート変換部6が、中間生成信号Uをローパスフィルタリングして所望のサンプリング周波数fbとなる出力信号Yを生成することにより、サンプリング周波数fsの入力信号Xをサンプリング周波数fbの出力信号Yへとサンプリング周波数変換する。
[0022]
更に詳述すると、第1レート変換部2は、サンプリング周波数fsで離散化されたサンプル列である入力信号Xをクロック信号CKsに同期して入力し、入力信号Xの各サン
【0008】
入することで、ディジタルフィルタ5のフィルタ係数α0〜αN−1を演算するので、所望のサンプリングレートでのサンプリング周波数変換を自在に実現することができる。
[0038]
すなわち、本実施形態のサンプリング周波数変換装置1は、予め決められた特定のサンプリングレートでのサンプリング周波数変換しかできないというものではなく、クロック信号CKbの目的周波数fbが任意の周波数に指定又は調整等されると、ディジタルフィルタ5のフィルタ係数α0〜αN−1を導出するための演算処理を行うことから、例えばユーザ等に対して任意のサンプリングレートを自在に指定させることができる。
[0039]
また、具体的事例として、放送局からの到来電波をディジタル放送受信機で受信し、フェージング等の影響により周波数変動を生じているベースバンド信号を再サンプリングして放送局側と同期した所望の規定周波数の復調信号を復調するための復調回路に、本実施形態のサンプリング周波数変換装置1を用いることとすると、クロック信号CKbの目的周波数fbを規定周波数に合わせて、ベースバンド信号を入力信号Xとすることにより、規定周波数の復調信号(すなわち、出力信号)Yを生成することができる。
[0040]
更に、本実施形態のサンプリング周波数変換装置1は、第2レート変換部6の前段に第1レート変換部1を有し、入力信号Xのサンプリングレートを増加させてディジタルフィルタリングを施すことで高いサンプリング周波数faの中間生成信号Uを生成するので、第2レート変換部6に設けられているディジタルフィルタ5の次数nを下げることができる。このため、ディジタルフィルタ5の構成を簡素化することができると共に、そのディジタルフィルタ5のフィルタ係数を演算するためのフィルタ係数演算部4の構成の簡素化や演算量の低減を図ることができる。
[0041]
つまり、サンプリング周波数変換装置では一般に、レート変換に除して、イメージング成分やエイリアシングの除去及び発生の抑制を図るためにローパスフィルタリングが必要であり、そのローパスフィルタリングを行うディジタルローパスフィルタの構成の簡素化や演算量の低減化が極めて重要となっている。
[0042]
かかる課題に対して、本実施形態では、第2レート変換部6の前段に第1レート変換部2を設けたことで、低周波数帯域に占める信号成分と高周波数帯域に占めるイメージング成分等の不要ノイズ成分とが広い周波数幅を介して分離された中間生成信号
本発明は、ディジタル信号のサンプリング周波数を変換するサンプリング周波数変換装置に関する。
ディジタル放送をはじめとする通信分野や、音声処理、画像処理等の分野では、ディジタル信号を再サンプリングして周波数変換するサンプリングレートコンバージョン(サンプリング周波数変換)技術が基盤技術として重要となっている。
従来、こうしたサンプリング周波数変換を行うためのサンプリングレート変換装置(sampling rate convertor)やサンプリング周波数変換装置(sampling frequency convertor)と称されている変換装置として、特開平11-17498号公報、特開2003-324337号公報に開示されたものがある。
特開平11-17498号公報に開示されているサンプリングレート変換装置は、同公報の図1に示されているように、オーバーサンプリング部と変換フィルタ部、ローパスフィルタ及びダウンサンプリング部を有して構成され、L倍のアップサンプリングと1/M倍のダウンサンプリングにより、有理数比(L/M)でのサンプリング周波数変換を行って出力信号DOUTを生成するようになっている。
また、変換フィルタ部とローパスフィルタが、アップサンプリングとダウンサンプリングに際して生じるイメージング(imaging)とエイリアシング(aliasing)成分を除去するためのインターポレーション/デシメーションフィルタとして機能している。
そして、特定のサンプリングレート毎に対応付けて、各フィルタのフィルタ係数が予め決められており、所望のサンプリングレートを指定すると、その予め決められているフィルタ係数に基づいて各フィルタのフィルタ特性が発揮され、イメージング(imaging)成分とエイリアシング(aliasing)成分を低減した出力信号DOUT、すなわち、入力信号DINを復元し得る出力信号DOUTを生成するようにしている。
特開2003-324337号公報に開示されているサンプリング周波数変換装置は、同公報の図1に示されているように、サンプリング周波数f1で離散化された入力信号データ列A(n)を入力し、時間的にシフトして出力するシフトレジスタと、該サンプリング周波数f1と周波数変換しようとする所望のサンプリング周波数f2とのサンプリング時刻における位相差を求める位相比較回路と、位相差に対応した係数でシフトレジスタの出力に補間処理を行う補間回路とを有して構成されている。
そして、補間回路が、上述の位相差に対応した所定の係数とシフトレジスタからシフトして出力される入力信号データ列A(n)の振幅値とを積和演算することにより、サンプリング周波数f2でのサンプリング時刻におけるデータ列、すなわち、サンプリング周波数f2に周波数変換したデータ列B(n)を生成している。
特開平11-17498号公報
特開2003-324337号公報
ところで、特開平11-17498号公報に開示されている従来のサンプリングレート変換装置は、上述したように各フィルタ3,4のフィルタ係数が特定のサンプリングレート毎に対応付けて予め決められているため、特定のサンプリングレート以外でのサンプリングレートで周波数変換をすることができないという課題がある。
例えば具体的事例として、放送局からの到来電波をディジタル放送受信機で受信し、フェージング等の影響により周波数変動を生じているベースバンド信号を再サンプリングして放送局側と同期した所望の規定周波数の復調信号を復調しようとする場合、従来のサンプリングレート変換装置では、特定のサンプリングレートに対してのみ周波数変換の機能を発揮し得るという制限があるため、放送局側と同期した所望の規定周波数の復調信号を復調等することができなくなるという課題があった。
また、このサンプリングレート変換装置は、時間分解能が細かくなるほど、必要とするフィルタ係数の数を多くしなければならないため、例えばフィルタ係数のデータを予め記憶しておくためのRAMやROM等の記憶手段の容量を大幅に増大させる必要がある。このため、いわゆる高分解能でサンプリング周波数変換を行おうとすると、装置構成の大型化等により実現が困難となるという問題がある。
特開2003-324337号公報に開示されているサンプリング周波数変換装置は、
入力信号データ列A(n)とサンプリング周波数変換後のデータ列B(n)との乖離(誤差)が大きくなるという課題があり、いわゆる高精度のサンプリング周波数変換が必要とされる技術分野、例えばディジタル放送受信機での復調処理や、ハイクオリティが要求される音声処理や画像処理等の技術分野に適用することが難しいという問題がある。
本発明はこうした従来の課題に鑑みてなされたものであり、例えば所望のサンプリングレートに応じて適応的にサンプリング周波数変換を行うことができ、また、所望の時間分解能でのサンプリング周波数変換を行うことができ、また、装置構成の大型化等を未然に防止することができる等、従来より機能の向上を図ったサンプリング周波数変換装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、ディジタル信号のサンプリング周波数を変換するサンプリング周波数変換装置であって、前記ディジタル信号をディジタルフィルタリングするディジタルフィルタと、目的周波数の信号と前記ディジタル信号とのサンプリング時刻間の位相差を検出する位相差検出手段と、前記位相差検出手段が検出した前記位相差に基づいて、前記目的周波数の信号のサンプリング時刻における前記ディジタルフィルタのフィルタ係数を演算するフィルタ係数演算手段と、前記フィルタ係数演算手段で演算される前記フィルタ係数に、窓関数による重み付け演算を行うことにより、前記目的周波数の信号のサンプリング時刻における前記ディジタルフィルタのフィルタ特性を設定するためのフィルタ係数を演算する窓関数演算手段と、を備え、前記ディジタルフィルタが、前記窓関数演算手段で前記重み付け演算されたフィルタ係数により設定されるフィルタ特性に基づいて前記ディジタル信号をディジタルフィルタリングすることによって、前記ディジタル信号を前記目的周波数に同期したサンプリング周波数のサンプル列から成る出力信号にサンプリング周波数変換すること、を特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のサンプリング周波数変換装置において、前記ディジタル信号をアップサンプリングして所定のローパスフィルタ特性に基づいてディジタルローパスフィルタリングを行うことで、前記ディジタル信号より高いサンプリング周波数の中間生成信号を生成して、前記ディジタルフィルタに供給するレート変換手段を更に備え、前記位相差検出手段は、前記中間生成信号と前記目的周波数の信号とのサンプリング時刻間の位相差を検出することを特徴とする。
更に、請求項1に記載のサンプリング周波数変換装置において、前記サンプリング周波数変換装置は、前記ディジタルフィルタと位相差検出手段とフィルタ係数演算手段及び窓関数演算手段と同等の構成を有するレート変換手段を複数備えたポリフェーズ構造であること、を特徴とする。
本発明の好適な実施の形態について、図1及び図2を参照して説明する。
図1(a)(b)は、本実施形態のサンプリング周波数変換装置の2態様の各構成を表したブロック図、図2(a)(b)は、本サンプリング周波数変換装置におけるサンプリング周波数変換過程を説明するための図である。
図1(a)に示すサンプリング周波数変換装置1は、第1レート変換部2の他、位相差検出部3とフィルタ係数演算部4及びディジタルフィルタ5を備えた第2レート変換部6を有して構成されている。
第1レート変換部2が、サンプリング周波数fsの入力信号Xから整数a倍のサンプリング周波数faとなる中間生成信号Uを生成し、第2レート変換部6が、中間生成信号Uをローパスフィルタリングして所望のサンプリング周波数fbとなる出力信号Yを生成することにより、サンプリング周波数fsの入力信号Xをサンプリング周波数fbの出力信号Yへとサンプリング周波数変換する。
更に詳述すると、第1レート変換部2は、サンプリング周波数fsで離散化されたサンプル列である入力信号Xをクロック信号CKsに同期して入力し、入力信号Xの各サンプル間にa−1個ずつゼロ値サンプル(振幅0のサンプル)を挿入することで、入力信号Xのサンプリングレートを整数a倍に増加させたアップサンプリング信号(符号略)を内部で生成する。更に、そのアップサンプリング信号に混入することとなるイメージング成分が生じる高周波数帯域を阻止域、入力信号Xの信号成分が生じる低周波数帯域を通過域とする所定のローパスフィルタ特性に基づいて、アップサンプリング信号をローパスフィルタリングすることによって、イメージング成分を除去し、且つサンプリング周波数fsのa倍のサンプリング周波数faの中間生成信号Uを生成して出力する。
第2レート変換部6の位相差検出部3は、出力信号Yのサンプリング周波数fbと等しい周波数(以下「目的周波数」という。)fbに決められたクロック信号CKbと、第1レート変換部2がアップサンプリングの際に設定した中間生成信号Uのサンプリング周波数fa(すなわち、a×fs)を示すクロック信号CKaとを入力する。そして、これらのクロック信号CKa,CKbに基づいて、クロック信号CKbと入力信号Xと中間生成信号Uとの各々のサンプリング時刻tb,ts,taを検知し、更に、サンプリング時刻taを基準にしてサンプリング時刻taとtbの時間差(以下「位相差」という。)pを検出する。
これにより、位相差検出部3は、目的周波数fbと中間生成信号Uのサンプリング周波数faとの周波数差(fb−fa)を、サンプリング時刻ta,tbの位相差pとして検出することとなる。
すなわち、図2(a)に例示するように、例えば、サンプリング周期(1/fs)毎に隣接する入力信号Xのサンプルが、黒丸印(●)で示すX(0),X(1),…であり、整数a倍(例えば、3倍)にレート変換された中間生成信号Uの各サンプルが、黒丸印(●)で示すU(0),U(1),U(2),U(3),U(4),…であり、各サンプリング周期(1/fs)の開始時刻であるサンプリング時刻がtsであり、クロック信号CKbのサンプリング時刻がtb1,tb2,tb3,…であり、クロック信号CKaのサンプリング時刻がta1,ta2,ta3,…であった場合、位相差検出部3は、クロック信号CKa,CKbの各サンプリング時刻を逐一検知していく。そして、サンプリング時刻tb1を検知すると、そのサンプリング時刻tb1が属するサンプリング周期(1/fs)におけるサンプリング時刻tsと、サンプリング時刻tb1から最前に位置するサンプルU(1)のサンプリング時刻ta1を検出し、更に、サンプリング時刻tsを基準とするサンプリング時刻ts,tb1間の時間tsbとサンプリング時刻ts,ta1間の時間tsaとの差(tsb−tsa)を位相差pとして検出する。
また、位相差検出部3は、クロック信号CKbのサンプリング時刻tb2を検知した場合にも同様に、サンプリング時刻tb2,ts,ta2に基づいて位相差pを検出し、サンプリング時刻tb3を検知した場合にも同様に、サンプリング時刻tb3,ts,ta3に基づいて位相差pを検出し、以下同様の検出処理を繰り返す。
フィルタ係数演算部4は、検出された位相差pを次式(1)で表される演算式に導入して演算処理を行うことにより、n次(N−1次)のディジタルフィルタ5のフィルタ係数α0〜αN-1を導出し、ディジタルフィルタ5に供給してそのフィルタ係数αn(0≦n≦N−1)と中間生成信号Uのサンプル列との有限離散的たたみ込み演算処理を行わせることにより、クロック信号CKaのサンプリング時刻taに同期した新たなサンプル(以下「内挿サンプル」という)を生成させる。
ここで、上記式(1)中の係数pは上述の位相差である。係数mは、サンプリング周波数変換の分解能である。係数Nは、中間生成信号Uのサンプル列に対し巡回的な値をとるフィルタ係数αn(1≦n≦N−1)の個数である。係数H0とHk(1≦k≦N−1)は、
所望のディジタルフィルタの各周波数特性の周波数サンプル(スペクトル値)である。
更に、上記式(1)は、次のようにして決められている。
まず、サンプリング周波数変換装置1を設計等する際、ディジタルフィルタ5の周波数特性を所定のローパスフィルタ特性H(ejωT)とする。
すなわち、入力信号Xのサンプリング周波数fsを未知の変数、そのサンプリング周波数fsの逆数(1/fs)をサンプリング周期T、その角周波数をωs、第1レート変換部2の変換比aを所定値(例えば、2)と決め、角周波数(ωs/2)を境にして低周波数帯域側に生じる入力信号Xの信号成分を通過させる通過域(0≦│ω│<ωs/2)を有し、且つ角周波数(a−1/2)ωsを境にして高周波数帯域側が阻止域(a−1/2)ωs≦│ω│<mωs/2)となる標準のローパスフィルタ特性H(ejωT)を決めるのである。
しかる後、サンプリング周波数fsの整数a倍のサンプリング周波数faとなる中間生成信号Uに対して、ディジタルフィルタ5が位相差pを含めた高いサンプリング周波数でローパスフィルタリングを行うことを考慮して、周波数(0≦│ω│<mωs/2)の下でローパスフィルタ特性H(ejωT)を逆離散フーリエ変換(IDFT)することによってフィルタ係数αn(1≦n≦N−1)を演算するための演算式を作成し、その演算式を上記式(1)に決める。
そして、上記式(1)で表される演算処理を行うフィルタ係数演算部4を形成している。
ディジタルフィルタ5は、上記式(1)のフィルタ係数により所定の周波数特性(ローパスフィルタ特性)を発揮するn次のディジタルローパスフィルタで形成されており、クロック信号CKaに同期して中間生成信号Uを入力し、ローパスフィルタリングを行う。
つまり、ディジタルフィルタ5は、サンプリング時刻tbにおいてフィルタ係数演算部4で演算されたフィルタ係数αn(0≦n≦N−1)に従ってそのローパスフィルタ特性を可変し、中間生成信号Uのサンプル列とフィルタ係数αn(0≦n≦N−1)との有限離散的たたみ込み演算によってサンプリング時刻tbでの内挿サンプルを生成して出力する。
したがって、ディジタルフィルタ5は、図2(a)に示したサンプリング時刻tb1,tb2,tb3…等において検出された各位相差pに対応するかたちで、各サンプル時刻tb1,tb2,tb3…等の夫々の時刻での内挿サンプルを順に生成していき、図2(a)(b)に例示するように、サンプリング周波数fbに同期したサンプル列Y(0),Y(1),Y(2),Y(3),…等から成る出力信号Yを出力する。そして、サンプリング周波数fbの出力信号Yが出力されることとなるため、変換比(fb/fs)でのサンプリング周波数変換が実現される。
以上説明したように、図1(a)に示す本実施形態のサンプリング周波数変換装置1によれば、位相差検出部3とフィルタ係数演算部4、及び出力信号Yの内挿サンプルを生成するためのディジタルフィルタ5を有する第2レート変換器6において、目的周波数fbのクロック信号CKbと、入力周波数fsより高いサンプリング周波数faの中間生成信号Uとのサンプリング時刻ta,tmの位相差pを検出すると、所定のローパスフィルタ特性H(ejωT)の逆離散フーリエ変換に相当する上記演算式(1)にその位相差pを導入することで、ディジタルフィルタ5のフィルタ係数α0〜αN-1を演算するので、所望のサンプリングレートでのサンプリング周波数変換を自在に実現することができる。
すなわち、本実施形態のサンプリング周波数変換装置1は、予め決められた特定のサンプリングレートでのサンプリング周波数変換しかできないというものではなく、クロック信号CKbの目的周波数fbが任意の周波数に指定又は調整等されると、ディジタルフィルタ5のフィルタ係数α0〜αN-1を導出するための演算処理を行うことから、例えばユーザ等に対して任意のサンプリングレートを自在に指定させることができる。
また、具体的事例として、放送局からの到来電波をディジタル放送受信機で受信し、フェージング等の影響により周波数変動を生じているベースバンド信号を再サンプリングして放送局側と同期した所望の規定周波数の復調信号を復調するための復調回路に、本実施形態のサンプリング周波数変換装置1を用いることとすると、クロック信号CKbの目的周波数fbを規定周波数に合わせて、ベースバンド信号を入力信号Xとすることにより、規定周波数の復調信号(すなわち、出力信号)Yを生成することができる。
更に、本実施形態のサンプリング周波数変換装置1は、第2レート変換部6の前段に第1レート変換部1を有し、入力信号Xのサンプリングレートを増加させてディジタルフィルタリングを施すことで高いサンプリング周波数faの中間生成信号Uを生成するので、第2レート変換部6に設けられているディジタルフィルタ5の次数nを下げることができる。このため、ディジタルフィルタ5の構成を簡素化することができると共に、そのディジタルフィルタ5のフィルタ係数を演算するためのフィルタ係数演算部4の構成の簡素化や演算量の低減を図ることができる。
つまり、サンプリング周波数変換装置では一般に、レート変換に際して、イメージング成分やエイリアシングの除去及び発生の抑制を図るためにローパスフィルタリングが必要であり、そのローパスフィルタリングを行うディジタルローパスフィルタの構成の簡素化や演算量の低減化が極めて重要となっている。
かかる課題に対して、本実施形態では、第2レート変換部6の前段に第1レート変換部2を設けたことで、低周波数帯域に占める信号成分と高周波数帯域に占めるイメージング成分等の不要ノイズ成分とが広い周波数幅を介して分離された中間生成信号Uを生成することができるため、ディジタルフィルタ5のフィルタ特性は、中間生成信号Uの信号成分の占める低周波数帯域を通過域、イメージング成分等の占める高周波帯域を阻止域、上述の広い周波数幅を遷移域とするローパスフィルタ特性とすればよく、その遷移域でのしゃ断特性を急峻にする必要がなくなる。このため、ディジタルフィルタ5を高次のフィルタで形成する必要がなく、低次のフィルタで形成することが可能となり、ディジタルフィルタ5の構成の簡素化、及びフィルタ係数演算部4の構成の簡素化、演算量の低減等を実現することができる。
そして、ディジタルフィルタ5とフィルタ係数演算部4における演算等のための処理量を大幅に低減することが可能となるため、高速処理を行うのに好適であり、且つ又、設定可能なサンプリングレートを規定することとなるサンプリング時刻ta,tbの時間分解能の向上を図ることが可能なサンプリング周波数変換装置を提供することができる。
また、以上の説明では、第2レート変換部6を1個設けた基本的な構成のサンプリング周波数変換装置1について説明したが、図1(b)のブロック図に示すように、第2レート変換部6と同様の構成を有する複数個のレート変換部6(1),6(2),…,6(j)を並列に接続することで、いわゆるポリフェーズ構造のサンプリング周波数変換装置を構成してもよい。
つまり、各レート変換部6(1),6(2),…,6(j)に中間生成信号Uを並列入力し、更に各レート変換部6(1),6(2),…,6(j)内の位相差検出部に供給するクロック信号CKb1,CKb2,…,CKbjの夫々の目的周波数fb1,fb2,…,fbjを適宜異なった周波数にし、更に各レート変換部6(1),6(2),…,6(j)から出力される各出力信号Y1,Y2,…,Yjを回転子(commutator)7を通じて出力することで最終的な出力信号Youtを生成する構成とすることにより、ポリフェーズ構造のサンプリング周波数変換装置を構成することができる。
このように、ポリフェーズ構造とすると、図1(a)に示した第2レート変換部6を1個だけ設けて構成する場合よりも、各レート変換部6(1),6(2),…,6(j)は、低速での処理が可能となり且つ演算量等の低減化を図ることができる。
そして、一般にポリフェーズ構造とすると、上述のメリット(低速での処理、演算量等の低減化)を図ることができることが知られているが、本実施形態の第2レート変換部6と同様の構成を有する複数個のレート変換部6(1),6(2),…,6(j)によってポリフェーズ構造とすると、ポリフェーズ構造による上記メリットをより多く享受することが可能なサンプリング周波数変換装置を実現することができる。
なお、図1(a)(b)を参照して説明した2態様の各サンプリング周波数変換装置1は、IC、MSI、LSI等の半導体集積回路装置等を用いて、いわゆるハードウェア構造のディジタル回路で形成してもよいし、そのディジタル回路と等価な機能を発揮するコンピュータプログラムを作成し、そのコンピュータプログラムで示される処理工程に従って、ディジタルシグナルプロセッサ(DSP)やマイクロプロセッサ(MPU)等を実行させるようにしてもよい。
次に、上記実施形態に係るより具体的な実施例について、図3及び図4を参照して説明する。図3は、本実施例のサンプリング周波数変換装置の構成を表したブロック図であり、図1と同一又は相当する部分を同一符号で示している。図4は、本実施例のサンプリング周波数変換装置におけるサンプリング周波数変換過程を説明するための図である。
図3において、このサンプリング周波数変換装置1は、第1レート変換部2と第2レート変換部6を有し、所定のコンピュータプログラムを実行することで各変換部2,6の機能を発揮するディジタルシグナルプロセッサ(DSP)によって形成されている。
第1レート変換部2は、インターポレータ2aとインターポレーションフィルタ2bとを有して構成され、第2レート変換部6は、位相差検出部3とフィルタ係数演算部4及びディジタルフィルタ5を有して構成されている。
インターポレータ2aは、サンプリング周波数fsで離散化された入力信号Xと、サンプリング周波数fsを示すクロック信号CKsを入力し、外部指定される整数aの値に基づいて入力信号Xのサンプリングレートを整数a倍に増加させるアップサンプリングを行うことで、アップサンプリング信号Suを生成する。すなわち、図4(a)に例示するように、入力信号Xの各サンプル間に、a−1個(例えば、a=4であれば、3個)ずつゼロ値サンプルを挿入することで、アップサンプリング信号Suを生成する。
インターポレーションフィルタ2bは、アップサンプリングの結果、アップサンプリング信号Suに混入するイメージング成分を除去するためのディジタルローパスフィルタで形成されており、図4(b)に模式的に示すように、角周波数(ωs/2)を境にして低周波数帯域に生じる入力信号Xの信号成分を通過させる通過域と、角周波数(ωs/2)を中心とする狭周波数幅の遷移域と、該遷移域より高周波数帯域の阻止域とが決められたローパスフィルタ特性を有している。そして、かかるローパスフィルタ特性に基づいてアップサンプリング信号Suにローパスフィルタリングを施すことにより、阻止域に生じるイメージング成分を除去し、図4(c)に例示するようなサンプリングレートが整数a倍となる中間生成信号Uを生成して出力する。
また、インターポレーションフィルタ2bは、上記ローパスフィルタ特性を発揮させるべく一般に知られている方法で作成すればよい。こうして、インターポレーションフィルタ2bを作成すると、インターポレーションフィルタ2bは、サンプリング信号Suからイメージング成分を除去した中間生成信号Uを生成して出力する。
位相差検出部3は、目的周波数fbに決められたクロック信号CKbと、インターポレータ2aとインターポレーションフィルタ2bがアップサンプリングの際に設定した中間生成信号Uのサンプリング周波数fa(すなわち、a×fs)を示すクロック信号CKaとを入力する。そして、図2(a)に例示したように、これらのクロック信号CKa,CKbに基づいて、クロック信号CKaと入力信号Xと中間生成信号Uとの各々のサンプリング時刻ta,ts,tbを検知し、更に、サンプリング時刻taを基準にしてサンプリング時刻taとtbの時間差(位相差)pを検出する。
フィルタ係数演算部4は、検出された位相差pを次式(2)で表される演算式に導入して演算処理を行うことにより、クロック信号CKbのサンプリング時刻tbでの内挿サンプルを生成するためのn次のディジタルフィルタ5のフィルタ係数α0〜αN-1を導出し、その導出したフィルタ係数αn(0≦n≦N−1)によってディジタルフィルタ5のローパスフィルタ特性を更新設定する。
ここで、上記式(2)は、次のようにして決められている。まず、アップサンプリング信号Suに対するサンプリングレート変換となることを考慮して、ディジタルフィルタ5のローパスフィルタ特性Ha(ejωT)を次式(3)のように決める。
ここで、上記式(3)において、入力信号Xのサンプリング周波数fsを未知の変数、そのサンプリング周波数fsの逆数(1/fs)をサンプリング周期T、その角周波数をωs、角周波数(ωs/2)を境にして低周波数帯域側に生じる入力信号Xの信号成分を通過させる通過域(0≦│ω│<ωs/2)を有し、且つ角周波数(a−1/2)ωsを境にして高周波数帯域側が阻止域(a−1/2)ωs≦│ω│<aωs)となる標準のローパスフィルタ特性Ha(ejωT)に決める。
しかる後、サンプリング周波数fsの整数a倍のサンプリング周波数faのアップサンプリング信号Suに対して、インターポレーションフィルタ2bがローパスフィルタリングを行うことを考慮して、周波数(m×fs)の下でローパスフィルタ特性Hm(ejωT)を逆離散フーリエ変換(IDFT)することによって、m×N個のインパルスレスポンスhnを演算する。
より詳細には、上記式(3)で表したローパスフィルタ特性Hm(ejωT)の、ωk(k=0,1,2,…,mN−1)毎の周波数サンプルHk、すなわち、m×N個の周波数サンプルHkについて逆離散フーリエ変換(IDFT)することによって、m×N個のインパルスレスポンスh0〜hmN-1を演算する。
つまり、m×N個の周波数サンプルHkは、次式(4)の関係が成り立つことから、次式(5)で表されるように、周波数サンプルHkについて逆離散フーリエ変換することによって、m×N個のインパルスレスポンスhn(すなわち、h0〜hmN-1)を算出する。
そして、未知の位相差pを、0≦p<mで表される範囲内の変数とし、上記式(5)に示したインパルスレスポンスhn(すなわち、h0〜hmN-1)に位相差pを適用することで、ディジタルフィルタ5のフィルタ係数αn(すなわち、α0〜αN-1)を求めるのである。
つまり、αn=hm(n-N/2)+pの関係を上記式(5)に適用し、ディジタルフィルタ5のフィルタ係数αnを演算するための前記式(2)を決めている。
ディジタルフィルタ5は、サンプリング周波数faの逆数(1/fa)の時間を単位サンプル遅延(z-1)とするN−1個の遅延素子を備えたシフトレジスタ5aと、各遅延素子の入出力に対して、フィルタ係数演算部4で演算されたフィルタ係数α0〜αN-1を乗算する乗算器5bと、乗算器5bの出力を加算する加算器5cとを有するFIR形ディジタルフィルタで形成されている。そして、かかる構成により、図4(d)に示すフィルタ特性に基づいて中間生成信号Uをローパスフィルタリングすることにより、サンプリング時刻tbでの内挿サンプルを生成し、加算器5bから出力信号Yとして出力する。
以上説明したように、本実施例のサンプリング周波数変換器1によれば、前述した実施形態と同様に、フィルタ係数演算部4が、位相差pに基づいてディジタルフィルタ5のフィルタ係数αnを演算するので、予め決められたサンプリングレートでのサンプリング周波数変換しか行えないという問題を解消し、サンプリングレートを自由に指定して、所望のサンプリング周波数faの出力信号Yを生成することができる。
更に、インターポレータ2aとインターポレーションフィルタ2bにおいて、予め入力信号Xからサンプリングレートを整数a倍に増加させた中間生成信号Uを生成しておき、その中間生成信号Uに対して、第2レート変換部6のディジタルフィルタ5がディジタルフィルタリングを施すことで出力信号Yを生成するので、図4(d)に例示するように、a=2の場合には、ディジタルフィルタ5のフィルタ特性である通過域(0≦ω≦ωs/2)と阻止域(3ωs/2≦ω)との間の遷移領域を、帯域幅(ωs/2≦ω≦3ωs/2)に広げることができる。
このため、その遷移域での遮断特性を急峻にする必要がなくなることから、ディジタルフィルタ5を高次のフィルタとする必要がない。このことから、ディジタルフィルタ5のフィルタ長を大きくしなくともよく、別言すればフィルタ係数の数を低減することができるため、フィルタ係数演算部4における演算量を大幅に低減することが可能である。その結果、DSPにおける負荷の軽減、高速処理等を実現することができる。
なお、以上の説明では、第2レート変換部6を1個設けたサンプリング周波数変換装置1について説明したが、図1(b)に示したように、第2レート変換部6と同様の構成を有する複数個のレート変換部を並列に接続することで、いわゆるポリフェーズ構造のサンプリング周波数変換装置を構成してもよい。かかるポリフェーズ構造とすれば、ポリフェーズ構造によるメリットをより多く享受することが可能なサンプリング周波数変換装置を実現することができる。
次に、他の実施例について図5を参照して説明する。図5は、本実施例のサンプリング周波数変換装置の構成を表したブロック図であり、図1(a)と同一又は相当する部分を同一符号で示している。
図5において、このサンプリング周波数変換装置1は、位相差検出部3とフィルタ係数演算部4及びディジタルフィルタ5の他、窓関数演算部7を備えたレート変換部6で形成されており、図1(a)に示した第1レート変換部2を備えることなく、直接入力信号Xを入力して、レート変換した出力信号Yを生成して出力する。
位相差検出部3は、図1(a)に示した位相差検出部3と同様に、目的周波数fbのクロック信号CKbのサンプリング時刻tbと、サンプリング周波数fsの入力信号Xのサンプリング時刻tsを検知し、それらのサンプリング時刻ts,tbの差(tb−ts)を位相差pとして検出する。
すなわち、本実施例のサンプリング周波数変換装置1では、図1(a)に示した第1レート変換部2を備えていないことから、入力信号Xとクロック信号CKbのサンプリング時刻ts,tbとの差(tb−ts)を位相差pとして検出する。
フィルタ係数演算部4は、サンプリング時刻taに同期して位相差検出部3から供給される位相差pを次式(6)で表される演算式に導入して演算処理を行うことにより、n次のディジタルフィルタ5のフィルタ係数αnを導出するための、インパルスレスポンスβnを算出し、窓関数演算部7に供給する。
ここで、上記式(6)は、次のようにして決められている。 まず、次式(7)で表されるゼロ位相の理想フィルタのインパルスレスポンスgnの一部を、n次のディジタルフィルタ5のフィルタ係数として使用するものとする。
次に、上記式(7)において、ωc=ωs/(2m)に置き換えて上記式(7)を変形することにより、次式(8)で表される次数(mN−1)のディジタルフィルタ5のインパルスレスポンスhnを求める。
次に、上記式(8)に位相差pを適用することにより、次式(9)で表されるインパルスレスポンスβnを演算するための演算式を求め、該演算式を上記式(6)に決めている。
窓関数演算部7は、フィルタ係数演算部4で生成されたインパルスレスポンスβn(0≦n≦N−1)に対して、次式(10)で表されるハミング窓(hamming window)の窓関数Wnによる重み付け演算を行うことにより、ディジタルフィルタ5のフィルタ係数αn(0≦n≦N−1)を演算する。
これにより、窓関数演算部7は、上記式(6)に示したフィルタ係数演算部4で生成されるインパルスレスポンスβnに、上記式(10)に示した窓関数Wnを重み付けすることで、次式(11)で表されるフィルタ係数αnを生成し、ディジタルフィルタ5に供給する。
ディジタルフィルタ5は、n次(N−1次)のFIR形ディジタルフィルタで形成されており、サンプリング時刻tbに同期して窓関数演算部7から供給されるインパルスレスポンスαnと、入力信号Xのサンプル列とを有限離散的たたみ込み演算をすることにより、サンプリング時刻tbでの内挿サンプルを生成し、出力信号Yとして出力する。
以上に説明したように、本実施例のサンプリング周波数変換装置1によれば、フィルタ係数演算部4が、ゼロ位相の理想フィルタのインパルスレスポンスの一部であるhnに、位相差pを導入することで、インパルスレスポンスβnを演算し、窓関数演算部7が、インパルスレスポンスβnにハミング窓の窓関数Wnを重み付け演算することにより、ディジタルフィルタ5のインパルスレスポンスαnを演算する。そして、ディジタルフィルタ5が、インパルスレスポンスαnと入力信号Xのサンプル列との有限離散的たたみ込み演算を行うことにより、目的周波数fbのクロック信号CKbのサンプリング時刻tbに同期して、内挿サンプルを生成することにより、サンプリング周波数fsの入力信号Xをサンプリング周波数fbの出力信号Yにサンプリング周波数変換する。
このように、本実施例のサンプリング周波数変換装置1によれば、フィルタ係数演算部3と窓関数演算部7が、位相差pに基づいてディジタルフィルタ5のフィルタ係数αnを演算するので、予め決められたサンプリングレートでのサンプリング周波数変換しか行えないという問題を解消し、サンプリングレートを自由に指定して、所望のサンプリング周波数fbの出力信号Yを生成することができる。
なお、以上の説明では、窓関数演算部7において、上記式(10)で表されるハミング窓の窓関数Wnに基づいてインパルスレスポンスβn(0≦n≦N−1)に重み付けを行う場合について説明したが、他の窓関数、例えばハニング窓(hanning window)によって重み付けを行うようにしてもよい。
また、レート変換部6の前段に、図1(a)に示したのと同様に第1レート変換部2を設け、その第1レート変換部2でサンプリング周波数fsの入力信号Xを整数a倍のサンプリング周波数faの中間生成信号Uを生成して、その中間生成品号Uを入力信号としてレート変換部6に供給するようにしてもよい。そして、かかる構成とする場合には、図5に示した位相差検出部3は、中間生成信号Uのサンプリング時刻とクロック信号CKbのサンプリング時刻tbとから、位相差pを検出して、フィルタ係数演算部4と窓関数演算部7に供給すればよい。
また、レート変換部6を1個設けたサンプリング周波数変換装置1について説明したが、図1(b)に示したように、レート変換部6と同様の構成を有する複数個のレート変換部を並列に接続することで、いわゆるポリフェーズ構造のサンプリング周波数変換装置を構成してもよい。かかるポリフェーズ構造とすれば、ポリフェーズ構造によるメリットをより多く享受することが可能なサンプリング周波数変換装置を実現することができる。
本発明の好適な実施形態に係るサンプリング周波数変換装置の構成を表したブロック図である。
図1に示したサンプリング周波数変換装置のサンプリング周波数変換過程を説明するための図である。
実施例1に係るサンプリング周波数変換装置の構成を表したブロック図である。
図3に示したサンプリング周波数変換装置のサンプリング周波数変換過程を説明するための図である。
実施例2に係るサンプリング周波数変換装置の構成を表したブロック図である。
符号の説明
3…位相差検出部
4…フィルタ係数演算部
5…ディジタルフィルタ
6…第2レート変換部
7…窓関数演算部