JP3646598B2 - デジタルfmステレオ復調器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はFM音声放送受信機への利用を目的とする、デジタル信号処理に基づくFMステレオ復調器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、FM音声放送受信機においては主にアナログ回路構成によるスイッチング方式のFMステレオ復調器が多く使用されてきたが、近年のデジタル回路の集積度向上による小型化、デジタル放送受信回路との整合性等の観点から、これをデジタル回路構成とすることが有利となってきている。
【0003】
図17にJ.E.Haugh等による論文「A DSP-Based Stereo Decoder for Automotive Radio」,SAE Technical Paper Series, #900244, February 1990に示されるFMステレオ復調器をデジタル信号処理する場合の従来の構成を示す。図において1はAD変換器、2はデジタル信号処理プロセッサ(Digital Signal Processor。以下、DSPと称す。)、7は第1のデータ保持手段、8は第2のデータ保持手段、9は第1の低域フィルタ、10は第2の低域フィルタ、11は乗算手段、12はコサインルックアップテーブル、13はカウンタ、14は第3の低域フィルタ、101はDA変換器、102は第4の低域フィルタ、103は電圧制御発信器(以下VCOと記す)である。
【0004】
以上のように構成されたFMステレオ復調器において、AD変換器1はVCO103から与えられるタイミング情報に従い時間的に連続なアナログFMステレオ複合信号を離散標本化する。第1のデータ保持手段7および第2のデータ保持手段8は、AD変換器1より与えられるデータをカウンタ13の出力により与えられるそれぞれ別個の所定タイミングによって取り込むとともに次にデータを取り込むまでの間、この取り込まれたデータを出力する。
【0005】
第1の低域フィルタ9および第2の低域フィルタ10は、それぞれ第1のデータ保持手段7および第2のデータ保持手段8の出力から不要高周波成分を除去して各々LチャンネルおよびRチャンネルの音声信号を出力する。
【0006】
乗算手段11においては、離散標本化されたFMステレオ複合信号(この時点では、デジタル化されたステレオ複合信号である)に対しコサインルックアップテーブル12から与えられる余弦波(以下基準信号と記す)のデータとを乗算する。
【0007】
ここにコサインルックアップテーブル12から与えられる基準信号の周波数は、AD変換器1から出力されるFMステレオ複合信号に含まれるパイロット信号周波数19kHzとほぼ一致するため、乗算手段11の低域成分に含まれるパイロット信号と基準信号の位相差にほぼ比例する信号とが得られることとなる。
【0008】
乗算手段11の出力は第3の低域フィルタ14の出力であるパイロット信号と基準信号との位相差を表す信号として、DA変換器101でアナログ信号に変換される。DA変換器101出力は第4の低域フィルタ102によって高域歪み成分を除去された後、VCO103の制御信号となり、VCO103が出力する波形の発振周波数を制御する。
【0009】
ここで、VCO103の周波数変化はAD変換器1の標本化タイミングを制御することにより、標本化されるパイロット信号の位相を、コサインルックアップテーブル12から読み出される基準信号の位相と合致させるように作用する。この結果、基準信号の位相とパイロット信号との位相差に基づくフィードバック制御が行われることとなる。
【0010】
次に、数式を参照しながらステレオ復調動作につき詳細に説明する。
式(1)はステレオ複合信号を表現するものであり、第1項は主音声信号を、第2項は角周波数2ωの副搬送波により伝送される副音声信号、第3項はパイロット信号である。
【0011】
パイロット信号は副音声信号が搬送波抑圧変調方式により伝送されるため、副搬送波に対し位相同期した周波数1/2の連続波が多重されるものであり、副搬送波の再生および副音声信号の復調を容易とするものである。
【0012】
従来装置におけるステレオ復調は式(1)によって表されるステレオ複合信号から所定のタイミングの標本化データ列を作り出すことにより行うものであり、より詳細には、式(2)、(3)のデルタ関数列をステレオ複合信号に乗ずる操作として説明できる。なお、式(1)においてL(t)はLチャンネル信号、R(t)はRチャンネル信号、ωはパイロット信号の角周波数を表す。
【0013】
ここで、式(2)、(3)において T = π/(2・ω) とすることにより、式(1)の第2項の正弦関数は、式(2)および(3)のデルタ関数列が非零の場合に、それぞれ常に1および常に−1の値をとる。
【0014】
すなわち、この場合には、結果的に式(4)、(5)として表すことができる。ここに式(4)はLチャンネル音声成分のみのデータ列となり、式(5)はRチャンネル音声成分のみのデータ列となることから所望のステレオ復調動作が行われることが分かる。
【0015】
S(t) = [L(t) + R(t)] + [L(t) - R(t)] sin(2ωt) + Ap sin(ωt)・・式(1)
P(t) = Σδ(t - (2n + 1/2)T ) ・・式(2)
Q(t) = Σδ(t - (2n + 3/2)T ) ・・式(3)
X(t)P(t) = Σ2L(t - (2n + 1/2)T)δ(t - (2n + 1/2)T) ・・式(4)
X(t)Q(t) = Σ2R(t - (2n + 3/2)T)δ(t - (2n + 3/2)T) ・・式(5)
【0016】
なお式(4)、(5)では簡単のためパイロット信号を無視しているが、これはいずれの場合にも、パイロット信号による成分が大きさ Ap/√2 の正負交互に現れるデータとなり、当該パイロット信号を低域フィルタにより除去することによって音声信号への影響を無視できると考えられるためである。
【0017】
ここでは、例えば、VCO103の発振周波数を 152 kHz とし、AD変換器1の変換周波数を 152 kHz として、カウンタ13の計数動作をVCO103の出力波形の8周期分で一巡し、この一巡する1周期毎に1増加する0から7までの数値を割り当てて出力するものとし(すなわち、カウンタ13の出力波形の周期は、152KHz/8=19KHzであり、19KHzのパイロット信号の周期と一致する。)、コサインルックアップテーブル12にカウンタ13の出力0に対して位相角0°の余弦関数値を設定し、さらにカウンタ13の出力数値の増加に対応して位相角45°ずつ増加する余弦関数値を設定する。
【0018】
このとき、式(2)のデルタ関数列に相当するタイミングはカウンタ13の出力が1および5となる時点として与えられ、これに同期して第1のデータ保持手段7に取り込まれるデータからLチャンネル音声信号が復調される(式(4))。
【0019】
同様に、式(3)のデルタ関数列に相当するタイミングはカウンタ13の出力が3および7となる時点として与えられ、これに同期して第2のデータ保持手段8に取り込まれるデータからRチャンネル音声信号が復調される(式(5))。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
以上、説明したように、従来のデジタルFMステレオ復調器では、放送波に含まれるパイロット信号に対し受信信号処理を同期させるためのVCOもしくは電圧制御水晶発振器(以下VCXOと記す)をDSPの外部に備えるため、DSPの内部で生成されるパイロット信号と内部動作基準信号との位相差信号を一旦アナログ変換して、これに与える必要があり、構成が複雑化するとともに製造コストが上がるという問題があった。
【0021】
【課題を解決するための手段】
の発明に係わるデジタルFMステレオ復調器は、入力データを間引いて出力する間引き手段と、予め定められた発振周波数を有する基準信号を発生する基準信号発生手段と、該基準信号発生手段から出力される上記基準信号の位相と上記間引き手段の出力に含まれるパイロット信号の位相との位相差を検出する位相差検出手段と、上記位相差に応じて上記間引き手段におけるデータの間引きの間隔を制御する間引き間隔制御手段とを備える。
【0031】
【発明の実施の形態】
この発明における基本的な考え方としては、ステレオ複合信号に対する標本化のタイミングそのものを制御するのではなく、標本化されたステレオ複合信号に対して間引き、補間フィルタという手段を用いてステレオ復調に適したタイミングのデータを取り出す、もしくは作り出すという処理を行うものである。これによりDSPの外部にアナログ信号により制御されるVCO、VCXOを装備する必要を無くし、構成を簡素化するとともに製造コストの低減を可能とするものである。
【0032】
実施の形態1.
図1にこの発明の第1の実施の形態に係るデジタルFMステレオ復調器のブロック図であり、図において、1はAD変換器(図中、ADCと表記)、2はDSP、3はマスタクロック発振器(図中、MCLKと表記)、4は間引き手段(図中、間引きと表記)、5は第1の可変分周手段(図中、Counter N、N+1、N−1と表記)、6は第5の低域フィルタ(図中、LPFと表記)、7は第1のデータ保持手段(図中、Latchと表記)、8は第2のデータ保持手段(図中、Latchと表記)、9は第1の低域フィルタ(図中、LPFと表記)、10は第2の低域フィルタ(図中、LPFと表記)、11は乗算手段、12はコサインルックアップテーブル(図中、Cosine Lookup Tableと表記)、13はカウンタ(図中、Phase Counterと表記)、14は第3の低域フィルタ(図中、LPFと表記)、15は間引き増減周期設定手段(図中、M/増減設定と表記)、16は第2の可変分周手段(図中、Counter Mと表記)である。
【0033】
なお、以下の説明においては、基本的に、各機能を有するハードウェアについて説明するが、同様の各機能をソフトウェア、あるいはそれらの組み合わせたものによって構成することができる。
【0034】
このように構成されたデジタルFMステレオ復調器ではマスタクロック発振器3から与えられるタイミングに従いAD変換器1によってステレオ複合信号の標本化が行われる。このAD変換器1の出力は間引き手段4により、適当な標本データのみが選択され乗算手段11および第5の低域フィルタ6に対し出力される。
【0035】
ここで、間引き手段4における間引きの割合は、第1の可変分周手段5におけるマスタクロック信号の分周比によって決定され、間引き手段4の出力データに含まれるパイロット信号成分の1周期を形成する出力データの数とコサインルックアップテーブル12に設定される1周期分のデータ数がほぼ一致するよう選ばれる。
【0036】
また、コサインルックアップテーブル12のデータは第1の可変分周手段5の出力に応じ、間引き手段4からのデータ出力に同期して更新されるため、乗算手段11における乗算処理の結果、その低周波成分として間引き手段4の出力データに含まれるパイロット信号成分とコサインルックアップテーブル12の出力としての基準信号との位相差が検出される。
【0037】
乗算手段11の出力(すなわち、パイロット信号とコサインルックアップテーブルから出力される基準信号との位相差である位相差成分を含む位相差信号)は、第3の低域フィルタ14を通して間引き増減周期設定手段15に与えられる。
【0038】
間引き増減周期設定手段15では、入力される位相差信号(すなわち、位相誤差)に応じて、第1の可変分周手段5の分周比の周期的変更を増加方向とするか減少方向とするか(ここでは分周比を周期的に変更しているので、分周比の増減と同意)、およびその周期を決定する。この後、増加、減少方向の別を第1の可変分周手段5に、その周期を第2の可変分周手段16に与える。
【0039】
第2の可変分周手段16では、第1の可変分周手段5の出力、即ち、間引き手段4からのデータ出力数が所定分周数に達する毎に、第1の可変分周手段5に対し分周比変更の指示出力を与える。
【0040】
このように、間引き増減周期設定手段15は、第1および第2の可変分周手段5、16を操作して、間引きの間隔をパイロット信号と基準信号との位相差に応じて変更する手段を構成する。
【0041】
すなわち、間引き手段4出力に含まれるパイロット信号の位相が前記の基準信号に対し進む場合には、第1の可変分周手段5に於ける周期的分周比変更を増加方向として間引きの間隔を周期的に広げることによりパイロット信号の位相を遅らせるよう制御し、パイロット信号の位相が前記の基準信号に対し遅れる場合には、第1の可変分周手段5に於ける周期的分周比変更を減少方向として間引きの間隔を周期的に狭めることによりパイロット信号の位相を進ませるよう制御することで、間引き手段4出力としてパイロット信号にほぼ同期したステレオ複合信号のデータ列を作り出す。
【0042】
ここで、例えば間引き手段4出力のデータ速度を 152 kHz とし、コサインルックアップテーブル12を従来の装置において説明したのと同様にデータ数8とするとき、式(2)のデルタ関数列に相当するタイミングをカウンタ13の出力の内の1および5に対応させ、式(3)のデルタ関数列に相当するタイミングをカウンタ13の出力の内の3および7に対応させることができる。
【0043】
なお、ここで間引きの間隔(間引き間隔)をKとし、間引き処理のN回(通常の出力回数をN0)毎にデータ出力を得る場合を考えると、間引き手段4の出力の平均サンプル周期はK・Nに比例することになる。
【0044】
従って、間引き間隔をK−1とすることによって、上述の平均サンプル周期の(K・N−1)/(K・N)倍となり、AD変換の周波数をK・N/(K・N−1)に増加することと等価になる。
【0045】
逆に、間引き間隔をK+1とすることによって、上述の平均サンプル周期の(K・N+1)/(K・N)倍となり、AD変換の周波数をK・N/(K・N+1)に減少することと等価になる。
【0046】
一例として、AD変換の周波数を4.864MHzとし、間引き手段4の間引き間隔を32として、出力にパイロット信号(19KHz)の8倍の周波数である152KHzに同期したデータ列を得ようとする場合、データ出力の回数Nを31として、この周期における間引き間隔Kを31とすることによって、AD変換の周波数を約0.1%増加させたものと等価な出力を得ることができる。
【0047】
同様に、データ出力の回数Nを31とし、この周期における間引き間隔Kを33とすることにより、AD変換の周波数を約0.1%減少させたものと等価な出力を得ることができる。ここで、データの出力回数Nの値を適当に変化させることによっても、AD変換の周波数を増減させたものと等価な出力を得ることができるのは説明するまでもなく、データ出力の回数Nあるいは間引き間隔Kの少なくともいずれか一方を変化させることによってAD変換の周波数を変更するのと等価な出力を得ることができる。
【0048】
なお、ここでは通常の間引き間隔をKとして、これを周期的に間引き間隔をK+1、またはK−1とする方法を示したが、間引き間隔Kが変更された場合における出力データの間隔が一時的に変動するのを最小化するために有利である。また、さらにパイロット信号への同期のために上記の間引き間隔Kに対して、−1または+1よりも大きな間引き間隔の変更を行う(例えば、間引き間隔Kに対して−Lまたは+Lとするときに、このLが2以上の整数である場合等)、またはこれを組み合わせて適切な出力を得ることも可能である。
【0049】
以上に説明したように、第5の低域フィルタ6において、高周波域の不要成分を除去したのち、上記各タイミングに相当するデータを第1のデータ保持手段7、および第2のデータ保持手段8において取り込み、保持した後、第2の低域フィルタ9および第3の低域フィルタ10を通すことにより、Lチャンネル音声信号2L、およびがRチャンネル音声信号2Rが復調される。
【0050】
なお、本実施の形態においては、間引き間隔の変更によるデータ取り出しのタイミング調整によってステレオ複合信号データを放送波パイロット信号に同期させようとするものであり、AD変換器1から出力される元のデータ信号のタイミングを変更するものではないため、式(2)および式(3)に示した理想のタイミングからは少なくとも標本化周期の±1/2(半周期分)の誤差を生じることがある。
【0051】
この誤差は、具体的な数値例として挙げれば、標本化周波数を 4.864 MHz とした時、±103 ns となる。これは、ステレオ副搬送波 38kHz の位相(位相誤差)として約±1.41°に相当するものとなり、ステレオ分離度を約 70 dB に制約する。
【0052】
この誤差は、標本化周波数に反比例して大きくなるため、ステレオ分離度の向上など性能からは標本化周波数が十分高いことが望まれる。
【0053】
また、第3の低域フィルタ14の出力に現れる位相差の多くは、マスタクロック発振器3の周波数がパイロット周波数の倍数に対し誤差を持つことよる周波数誤差により発生するため、本実施の形態においては第2の可変分周手段16を備えて、上述したように周期的な位相調整による周波数補正を行うことが適当である。
【0054】
すなわち、このマスタクロック発振器3の周波数誤差がAD変換、あるいはその後の処理に影響を与えない程小さい場合には、第2の可変分周手段16を用いる必要はなく、第3の低域フィルタ14からの出力に所定のレベルを超える位相誤差が生じた場合について、第1の可変分周手段5の分周比を制御(分周比の増減)することによりステレオ復調を行っても良い。
【0055】
実施の形態2.
図2にこの発明の第2の実施の形態に係るデジタルFMステレオ復調器のブロック構成を示す。図において、1〜16までは実施の形態1において説明したものと同様であるのでその説明を省略する。40はサインルックアップテーブル(図中、Sine Lookup Tableと表記)、41は第2の乗算手段、42は低域フィルタ(図中、LPFと表記)、43は第3の乗算手段、44は加算手段である。
【0056】
なお、以下の説明においては、基本的に、各機能を有するハードウェアについて説明するが、同様の各機能をソフトウェア、あるいはそれらの組み合わせたものによって構成することができる。
【0057】
AD変換器1から第2の可変分周手段16までの動作は実施の形態1にて説明したと同様であるので説明を省略する。
【0058】
本実施の形態は、実施の形態1の構成および動作に加えて、サインルックアップテーブル40を設けて間引き手段4から出力される複合ステレオ信号に含まれるパイロット信号の振幅検出を行い、パイロット信号とその振幅や位相がほぼ等しい信号を作り出し、これを複合ステレオ信号から相殺する(あるいは引き去る)ものである。
【0059】
これにより、ステレオ復調音声信号に対するパイロット信号に起因する不要成分残留を低減して、第1および第2の低域フィルタ9、10に要求される性能を緩和するものである。
【0060】
図2の構成において、サインルックアップテーブル40はコサインルックアップテーブル12と同様に、カウンタ13の出力によって読み出し制御され、コサインルックアップテーブル12の出力である基準信号と同位相の正弦波を発生する。
【0061】
基準信号は先に説明のとおり、パイロット信号にほぼ同期した余弦波であり、パイロット信号とは90°位相の異なるものであるから、サインルックアップテーブル40からはパイロット信号にほぼ同期した正弦波信号が出力される。
【0062】
このため、第2の乗算手段41の出力にはその低周波成分として、パイロット信号振幅を表す信号(エンベロープ信号)が現れることとなる。よって、低域フィルタ42の出力によって複合ステレオ信号に含まれるパイロット信号の振幅が検出される。
【0063】
この検出されたパイロット信号の振幅に関する情報を、第3の乗算手段43においてサインルックアップテーブル40からの出力に乗ずることにより、複合ステレオ信号に含まれるパイロット信号とほぼ同じ信号を得ることができる。
【0064】
加算手段44においては、ステレオ複合信号から第3の乗算手段43の出力に基づいて生成されるパイロット信号とほぼ同様の信号を相殺するような演算を行う(または引き去る)ことによって、この出力に含まれるパイロット信号成分を低減させることができる。
【0065】
これにより、以降のステレオ復調他の信号処理におけるパイロット信号の影響を非常に大きく低減することができるため、音声出力用の第1および第2の低域フィルタ9、10の要求性能を緩和することができる。
【0066】
なお、以上の説明では、便宜上、サインルックアップテーブル40を備えるものとして説明したが、余弦波は正弦波の90°位相が遅れた信号であるため、コサインルックアップテーブル12を共用して、カウンタ13から余弦波データ選択のための出力に対して相対的に90°位相が進んだデータ選択を行うように構成することにより正弦波を出力させることができる。
【0067】
実施の形態3.
図3にこの発明の第3の実施の形態に係るデジタルFMステレオ復調器のブロック構成を示す。図において1〜3、6〜8、9〜14および16は、実施の形態1または2と同様であるので説明を省略する。17は係数変更周期設定手段(図中、M/増減設定と表記)、20は補間フィルタ(図中、補間fil.と表記)、21はフィルタ係数表(図中、係数Tableと表記)、22はフィルタ係数更新手段(図中、係数更新0,+1,−1と表記)、23はフィルタ動作制御手段(図中、filter opr. controlと表記)、24はクロック分周器(図中、counter Lと表記)である。
【0068】
なお、以下の説明においては、基本的に、各機能を有するハードウェアについて説明するが、同様の各機能をソフトウェア、あるいはそれらの組み合わせたものによって構成することができる。
【0069】
本実施の形態では、AD変換器1から入力される標本化データに対し補間フィルタ20を用いてその中間のタイミングを持つ新たなデータを作り出すものであり、この新たに作り出すデータのタイミングをパイロット信号と基準信号との位相差に基づき制御することでステレオ復調器を構成するものである。
【0070】
先ず補間フィルタ20の動作について説明する。
図4〜図7は、この補間フィルタ20の動作を説明するための説明図であり、図4においてA0〜A3は補間フィルタ20への入力データを(標本値)示す。またP0〜P7の8点(図中×印で示す)は補間フィルタ20にて出力可能な仮想補間出力データ(標本値)を示す。
【0071】
ここに用いられる補間フィルタ20は、基本的に3次の非巡回型フィルタ(非巡回型フィルタを、以下、FIRフィルタと記す)として構成されるものであり、仮想補間出力データP0〜P7の8点の内、どの1点を出力するかは、この8点について各4個のフィルタ係数のいずれを選択するかにより選ぶことができる。
【0072】
従って、仮想補間データP0〜P7の順に0〜7までのフィルタが割り当てられることになり(この0〜7をフィルタ組番号と称する)、以下の説明においては、フィルタ組番号0に対応する仮想補間出力データP0が出力され、フィルタ組番号1に対応する仮想補間出力データP1が出力され…(以下、順に)のように、フィルタ組番号7に対応してはP7が出力されるという構成を仮定する。
【0073】
ここでは簡単のため、補間フィルタ20を3次のFIRフィルタとし、フィルタ係数表21に8組のフィルタ係数を備えることで、入力サンプル間に8個の仮想データ点を設定し、その中の1点を生成し出力するものとするが、補間の精度を向上するためFIRフィルタの次数をより大きくすることも可能である。また生成データのパイロット信号に対する同期精度向上のため、フィルタ係数の組数を増して入力サンプル間の仮想データ点数を増すことも可能である。
【0074】
このようにすると、フィルタ組番号の選択を順次変更することで、補間フィルタ20の出力データの位相・周波数制御が可能である。例えば、図5に示すように、順次フィルタ組番号を増加させることにより入力サンプルデータに比べ位相が順次遅れてゆく、つまり周波数の低いデータを出力することができる(図5においても、図4と同様に、標本値A0〜A3は補間フィルタ20への入力データを示す。また標本値B0〜B2は補間フィルタ20からの出力データを示す。)。
【0075】
しかしながら、この補間フィルタ20による出力データの生成は、入力サンプル2点間におけるデータ補間を行うため、入力サンプル2点間における補関データの数が一律である構成において、入力データの標本化周波数よりも出力データの標本化周波数が低い場合(あるいは、入力データの標本化周波数に比べ出力データの周波数を下げようとする場合)、入力データに余剰が生じてしまう。
【0076】
このような場合においては、新たな入力データに対しこれに直接対応する出力データを生成しないようにすればよい。
【0077】
図6は、このような場合の入出力関係を示す(入力データによる補間データの生成を示すものであり、標本値A0〜A3を表示した部分が補間フィルタ20への入力、標本値C0〜C2を表示した部分が補間フィルタ20からの出力をそれぞれ表す)ものである。
【0078】
フィルタ組番号7により、図示しないA−1、A0、A1およびA2の入力に基づいて補間フィルタ20から生成される補間データの内のデータC0が出力された後、フィルタ組番号0が選択されるような場合には、新たなデータA3の入力に対応するような出力を生成せずに、次のデータA4(図示せず)に対応する新たなデータC1を生成する。
【0079】
逆に、上述のように入力サンプル2点間における補関データの数が一律である構成においては、入力データの標本化周波数よりも出力データの標本化周波数が高い場合(あるいは、入力データの標本化周波数に比べ出力データの周波数を上げようとする場合)、入力データに不足が生じてしまう。
【0080】
このような場合においては、同じ入力データに対応して2つの出力データを生成するようにすればよい。
【0081】
図7は、このような場合の入出力関係を示す(入力データによる補間データの生成を示すものであり、標本値A0〜A3を表示した部分が入力、標本値D0〜D3を表示した部分が出力をそれぞれ表す)ものである。
【0082】
フィルタ組番号0により、図示しないA−1、A0、A1およびA2の入力に基づいて補間フィルタ20から生成される補間データの内のデータD1が出力された後、フィルタ組番号2が選択されるような場合には、同一のデータ組に対応するような次の出力データD2を生成する。
【0083】
以上に説明したように、補間フィルタ20は、フィルタ係数表21から与えられる1組のフィルタ係数に基づいて、入力データと出力データとの過不足の関係に応じてタイミング調整(すなわち、生成されるべきデータ個数の調整)されたデータを乗算手段11および第5の低域フィルタ6に対し出力する。
【0084】
また、フィルタ動作制御手段23は、マスタクロック発振器3およびクロック分周器24から与えられるタイミング信号、およびフィルタ係数更新手段22から出力される係数組の選択の推移に従って、補間フィルタ20におけるフィルタ処理およびデータ出力の処理動作を制御するものであり、通常はクロック分周器24からの出力タイミングに同期して動作するAD変換器1よりAD変換されたデータ(標本化データ)の出力が発生するたびに補間フィルタ20の動作を行わせるように動作する。
【0085】
また、フィルタ動作制御手段23は、図6を参照して説明したように、フィルタ係数更新手段22からのフィルタ係数の選択が、新規の入力データに対する最近点(ここにいう最近点とは、図4に示したA3のデータに対してP7)のデータを与える係数から最遠点(ここにいう最遠点とは、図4に示したA3のデータに対してP0)のデータを与える係数に切り替わった際、この入力サンプルに対する出力を停止するよう動作する。
【0086】
更に、フィルタ動作制御手段23は、図7を参照して説明したように、フィルタ係数更新手段22からのフィルタ係数の選択が、新規の入力データに対し最遠点のデータを与える係数から最近点のデータを与える係数に切り替わった際、この入力サンプルに対し最遠点のデータおよび最近点のデータの2つのデータを出力するよう、補間フィルタ20を2回動作させるものである。
【0087】
同時に、フィルタ動作制御手段23は、補間フィルタ20からのデータ出力に同期してカウンタ13を動作させ、コサインルックアップテーブル12からの出力に基づいて基準信号を発生させるとともに、第2の可変分周手段16を動作させるように制御する。
【0088】
これにより、乗算手段11からの出力には、低周波成分として補間フィルタ20からの出力データに含まれるパイロット信号成分と基準信号との位相誤差が与えられる。
【0089】
この位相誤差は、第3の低域フィルタ14を通して係数変更周期設定手段17に与えられる。係数変更周期設定手段17では入力される位相誤差信号に応じて、フィルタ係数更新手段22のフィルタ係数選択の周期的変更を補間タイミングとして進み方向または遅れ方向のいずれとするか、およびその周期を決定する。この後、進み、遅れ方向の別をフィルタ係数更新手段22に、その周期を第2の可変分周手段16に与える。
【0090】
第2の可変分周手段16は、フィルタ動作制御手段23から補間フィルタ20に対し、処理実行を指示する出力、言い換えれば補間フィルタ20からのデータ出力に同期して計数を行い、この結果が係数変更周期設定手段17から与えられた所定分周数に達する毎にフィルタ係数更新手段22に対してフィルタ係数の選択または変更の指示出力を与える。
【0091】
こうして、補間フィルタ20出力に含まれるパイロット信号の位相が前記の基準信号に対し進む場合には、フィルタ係数更新手段22に於ける周期的フィルタ係数選択変更を遅れ方向としてパイロット信号の位相を遅らせるよう制御し、パイロット信号の位相が前記の基準信号に対し遅れる場合には、フィルタ係数更新手段22における周期的フィルタ係数選択変更を進み方向としてパイロット信号の位相を進ませるよう制御する。
【0092】
これにより、補間フィルタ20出力としてパイロット信号にほぼ同期したステレオ複合信号のデータ列を作り出すことが可能となる。
【0093】
一例として、AD変換周波数および補間フィルタ20出力の標本化周波数を概略152kHzとし、補間フィルタ20により入力データ間に作り出す仮想データ数を32とする。
【0094】
このとき、補間フィルタ20の係数を固定し補間フィルタ20への1つのデータ入力に対し1つのデータを出力することは、理想的には、実施の形態1において例示したAD変換周波数を4.864MHzとし、間引き間隔を32とする場合と等価となる(実際上、補間フィルタの精度的な限界、例えば演算語長の精度等に左右されるため、AD変換周波数は4.864MHzと全く同一とはならず、ある誤差範囲を有する)。
【0095】
またフィルタ係数を変更して補間フィルタ20出力の仮想データ点を1つ遅らせることは、理想的には、実施の形態1の例にて間引きの間隔を+1することに、仮想データ点を1つ進ませることは、実施の形態1の例にて間引きの間隔を−1することに、等価となる。
【0096】
補間フィルタ20からのN回のデータ出力が行われる毎に、フィルタ係数を変更して補間フィルタ20から出力される仮想データ点を1つ遅らせることにより、等価的にAD変換の周波数をK・N/(K・N−1)に増加することができる。
【0097】
逆に、補間フィルタ20からのN回のデータ出力が行われる毎に、フィルタ係数を変更して補間フィルタ20から出力される仮想データ点を1つ進ませることにより、等価的にAD変換の周波数をK・N/(K・N+1)に減少することができる。
【0098】
第5の低域フィルタ6、第1のデータ保持手段7、第2のデータ保持手段8、第2の低域フィルタ9および第3の低域フィルタ10の動作は実施の形態1において説明したものと同様であり、上述したような動作により、Lチャンネル音声信号2L、およびRチャンネル音声信号2Rが復調される。
【0099】
本実施の形態によれば、補間フィルタ20を用いて、等価的により高い標本化周波数のタイミングのデータを生成するように構成しているため、実施の形態1に比べても、AD変換器の標本化周波数をより低く抑えながら、十分なタイミング精度を有するデータを得ることが可能である。
【0100】
なお、以上の説明においては、補間フィルタ20における動作タイミングを、AD変換器1からの入力に従って行うものとして説明したが、単にこのように処理を行う場合の動作タイミングは、図8および図9のようになる。
【0101】
この場合、先に説明したように、フィルタ係数選択が新規の入力データに対する最近点のデータを与える係数から最遠点のデータを与える係数に切り替わった際の入力データに対する出力を停止するようにすること、およびフィルタ係数選択が新規の入力データに対する最遠点のデータを与える係数から最近点のデータを与える係数に切り替わった際の入力データに対する最遠点のデータと最近点のデータとの2つのデータを出力することのいずれの動作も実現可能とする必要上から動作タイミングが決定される。
【0102】
図8および図9では上から順に、補間フィルタ20へのデータ入力、フィルタ計算処理、データ出力処理の各タイミングの関係を示してある。
【0103】
図を参照すると明らかなように、図8に示すような場合においては出力の周期(出力周期)が2倍に広がる区間が生じ、図9に示すような場合においては出力周期が1周期よりも狭まる期間が生じうる。
【0104】
このような大幅な周期変動が生じる場合、これが音声信号の出力周期にまで影響すると最終的に得られる音声の品位を損なうこととなる。
【0105】
また、周期が狭まる場合、補間フィルタ20の動作を通常の出力周期の1/2以下の期間において行う必要があり、この場合には、補間フィルタ20の動作速度を高める必要が生じる。
【0106】
図10および図11では上から順に、補間フィルタ20へのデータ入力、フィルタ計算処理、データ出力処理、マスタークロックの各タイミングの関係を示してある。
【0107】
これに対し、図10および図11に示す関係においては、選択される補間フィルタ20のフィルタ組番号(図中[]内の番号で示す)に応じてフィルタ処理の開始タイミングを調節する場合について示すもので、具体的にはフィルタ計算開始のタイミングを、データ入力のタイミングから、マスタクロックの数として、フィルタ組番号+1だけ遅れさせる場合について示している。
【0108】
図において、マスタクロックはマスタクロック発振器3からフィルタ動作制御手段23に与えられるマスタクロック信号を示すものである。
【0109】
図から明らかなように、上記フィルタ処理の開始タイミング調節を、フィルタ動作制御手段23において、フィルタ係数更新手段22から出力されるフィルタ係数組の選択情報に基づいて計数してタイミング遅延を作り出すことにより、データ出力のタイミングを概略均等化できる。
【0110】
以上の説明においては、補間フィルタ20の入出力データの標本化周波数が同じであることを前提に説明したが、これらの標本化周波数をステレオ復調に適切な値に調整するために、倍率(間引きの比率)を固定した間引き処理を同時に行うことも可能である。
【0111】
これは、例えば、図5〜図7に示した各場合において、フィルタ組番号が偶数番データのみを出力する、すなわち図5におけるB0、B2・・を、図6におけるC0、C2・・を、図7におけるD0、D2・・を出力するようにして、補間フィルタ20におけるデータ補間動作と1/2間引き処理とを同時に行うようにする場合に相当する。
【0112】
実施の形態4.
図12に、この発明の第4の実施の形態に係るデジタルFMステレオ復調器のブロック構成を示す。
図における各ブロックは、実施の形態2および3において示したものと同様であり、その説明を省略する。なお、以下の説明においては、基本的に、各機能を有するハードウェアについて説明するが、同様の各機能をソフトウェア、あるいはそれらの組み合わせたものによって構成することができる。
【0113】
本実施の形態において、AD変換器1からフィルタ動作制御手段23までの動作は実施の形態3にて説明したと同様である。またサインルックアップテーブル40から加算手段44までの動作は実施の形態2にて説明したと同様である。
【0114】
本実施の形態においては、実施の形態3において述べた出力データの補間機能と、実施の形態2において述べたパイロット信号の相殺の機能とを併せ持つように構成したものであり、このようにすることにより実施の形態2および3に述べたそれぞれの動作をより精度良く実現することができる。
【0115】
実施の形態5.
図13にこの発明の第5の実施の形態に係るデジタルFMステレオ復調器のブロック構成を示す。
図において1〜3、7〜14、16、17、20〜24は実施の形態3において述べたものと同様であるので説明を省略する。30は第2の補間フィルタ(図中、補間fil.と表記)、31は第3の補間フィルタ(図中、補間fil.と表記)、32は第2のフィルタ係数表(図中、係数Tableと表記)、33は音声出力タイミングカウンタ(図中、Counter Kと表記)、34はタイミング照合手段(図中、Timing照合と表記)である。
【0116】
なお、以下の説明においては、基本的に、各機能を有するハードウェアについて説明するが、同様の各機能をソフトウェア、あるいはそれらの組み合わせたものによって構成することができる。
【0117】
本実施の形態において、AD変換器1からフィルタ動作制御手段23までの動作は実施の形態3において説明したものと同様である。
【0118】
本実施の形態は、実施の形態3に加えて、第1の低域フィルタ9および第2の低域フィルタ10の出力であるLチャンネル音声信号出力2LおよびRチャンネル音声信号出力2Rを第2の補間フィルタ30および第3の補間フィルタ31を用いて、マスタクロック発振器3からの出力を分周して得られる等間隔のタイミングを有する音声データに変換して出力するものである。
【0119】
図14〜図16は、第2の補間フィルタ30および第3の補間フィルタ31の動作を説明するための説明図である。
図14において、標本値B0〜B2は第2の補間フィルタ30もしくは第3の補間フィルタ31への入力データであり、標本値Q0〜Q3は第2の補間フィルタ30もしくは第3の補間フィルタ31からの出力データを示す。
【0120】
ここにおける第2の補間フィルタ30もしくは第3の補間フィルタ31は、基本的に3次のFIRフィルタとして構成されるものであり、入力データのタイミングを補間する複数の仮想データの内のいずれか1点を出力するように構成される。
【0121】
補間タイミングの選択は、第2のフィルタ係数表32に設定される複数組のフィルタ係数のいずれを選択するかによってなされる。この際、どのような補間タイミングを目標とする係数を選択するかは、基本的に任意に選択することができるものであるが、ここでは、図14に示すように、パイロット信号にほぼ同期した音声信号データのタイミングとマスタクロックに同期したほぼ等間隔のデータ出力タイミングとの間の時間差、例えば、図中のΔ1を計測し入力データに対しほぼこれに等しい補間タイミングを与えるものを選ぶ。
【0122】
そして、この時間差Δ1に応じてフィルタ係数の選択を順次変更することにより、出力データを等間隔のタイミングに揃えて出力することができる。ただし、入力データの標本化周波数と出力データの標本化周波数との間に差がある場合、入力データに過不足が生じることになるので注意を要する。
【0123】
図15は、相対的に出力の周波数が高い場合の入出力関係を示すものであり、図において、標本値C0、C1は第2の補間フィルタ30もしくは第3の補間フィルタ31への入力データであり、標本値R0〜R3は第2の補間フィルタ30もしくは第3の補間フィルタ31からの出力データを示す。
【0124】
図に示すように、標本値R1が出力されるタイミングに対しては時間差Δ3に基づきフィルタ選択してデータ出力する。しかしながら、次の標本値R2が出力されるまでの間に新たな入力データが無いため、同じ入力データの1組に対し時間差Δ4に基づく新たなフィルタ選択をして再びデータ出力を行うようにする。このようにすると入力データの不足が生じた場合にも適切な音声信号出力を得ることができる。
【0125】
図16は、相対的に出力の周波数が低い場合の入出力関係を示すものであり、図において、標本値D0〜D3は第2の補間フィルタ30もしくは第3の補間フィルタ31への入力データであり、標本値S0〜S3は第2の補間フィルタ30もしくは第3の補間フィルタ31からの出力データを示す。
【0126】
図に示すように、標本値S1の出力から次の標本値S2の出力までの間に2つの入力データが存在する場合、時間差Δ5に対応する標本値D0〜D3の入力データの1組に対してはデータ出力を行わず、次の時間差Δ6に基づきフィルタ選択をして新たな入力データの1組D1〜D4(図示せず)に対応してデータ出力を行うようにすれば、入力データの余剰が生じた場合においても適切な音声信号出力を得ることができる。
【0127】
以上説明したように、第2の補間フィルタ30もしくは第3の補間フィルタ31は、第2のフィルタ係数表32から与えられる1組のフィルタ係数に従ってタイミング調整されたデータを、Lチャンネル音声信号2LおよびRチャンネル音声信号2Rとして出力する。
【0128】
ここで、音声出力タイミングカウンタ33は、マスタクロック発振器3からの出力を分周することにより、等間隔の出力データタイミングをタイミング照合手段34に与える。
【0129】
タイミング照合手段34は上述の時間差Δ1〜Δ6のそれぞれ、またはいずれかを計測し、これに対応するフィルタ係数を選択するための信号を生成して第2のフィルタ係数表32に与える。
【0130】
図13の構成において、補間フィルタ20からの出力が、フィルタ動作制御手段23の動作により各データが取るべき仮想のタイミングに対応して出力され、同じタイミングでコサインルックアップテーブル12からの出力が更新されるものとして、第2および第3の補間フィルタ30、31に入力される信号のタイミングをコサインルックアップテーブル12のデータ選択信号から得るようにする。
【0131】
このようにすると、LチャンネルおよびRチャンネル音声信号をマスタクロック発振器3から生成可能な等間隔の信号に変換することができ、音声出力用DA変換器としてデルタシグマ方式1ビット型のようなデータ出力周期に対して周期の揃った所定数のクロックを与える必要があるものを使用することができる。
【0132】
1ビット型DA変換器は、比較的簡易な構成で音声信号用の高精度変換器を実現できる長所があるため、これを採用可能に構成することによって、アナログ信号出力部を含めたステレオ復調器が安価に実現できる。また、アナログ信号出力部を含めた集積回路化が容易となるという効果もある。
【0133】
なお、以上に述べた構成に対しても、実施の形態2および4に説明したパイロット信号を除去することが可能な構成を付加してもよい。
【0134】
また、以上の説明において、第5の低域フィルタ6は、例えば間引き手段4からの出力される標本化周波数を 152 kHz とした時、第1のデータ保持手段7および第2のデータ保持手段8において、これを 38 kHz に再標本化することにより音声帯域への折り返し歪みを発生する可能性のある周波数域、すなわち 61〜76 kHz の成分を十分に減衰させることを目的としている。
【0135】
従って、間引き手段4からの出力データにおける、61KHz〜76KHzの周波数域の成分が十分小さければ、第5の低域フィルタ6を省略することもできる。
【0136】
また、これまでの各実施の形態の説明において、ステレオ複合信号はAD変換器1により標本化され、これを入力とするものとしたが、同等の標本化周波数によって標本化された信号、例えば、デジタルFM復調器などのデジタル信号処理手段からの出力から与えられるものであっても良く、同様に適応することができるのは新たに説明するまでもない。
【0137】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0138】
準信号と入力される離散標本化されたステレオ複合信号に含まれるパイロット信号との間の位相差を検出するためにアナログ変換を行わなくとも良く、構成およびICによる構成が容易なデジタルFMステレオ復調器を実現することができる。
【0139】
ナログ変換を行わなくとも良く、構成およびICによる構成が容易で安価なデジタルFMステレオ復調器を実現することができる。
【0140】
引き処理のタイミング変化を滑らかなものとし、パイロット信号に対する信号処理の周波数の差が大きな場合においても安定した位相同期を確保できる。
【0141】
D変換の際における標本化周波数を低く抑えながら、十分なタイミング精度を有する補間データを得ることができる。
【0142】
D変換の際における標本化周波数を低く抑えながら、十分なタイミング精度を有する補間データを得ることができる。
【0143】
補間データのタイミング変化を滑らかに行うことができ、パイロット信号に対する信号処理の周波数差が大きい場合にも安定な位相同期を確保することができる。
【0144】
入力される離散標本化されたステレオ複合信号と補間データとの周波数が異なる場合にも対応が可能となる。
【0145】
音声出力の品質低下を防ぐことができると共に、補間データの生成において要求される動作速度の条件を緩和することができる。
【0146】
音声出力用DA変換器として構成が簡単で、安価な1ビット型のDA変換器を用いることが可能となる。
【0147】
ステレオ復調音声信号へのパイロット信号に起因する不要な信号成分の残留を低減し、音声信号出力の低域フィルタへの性能要求を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1に係るデジタルFMステレオ復調器のブロック図である。
【図2】 実施の形態2に係るデジタルFMステレオ復調器のブロック図である。
【図3】 実施の形態3に係るデジタルFMステレオ復調器のブロック図である。
【図4】 実施の形態3に係わる補間フィルタの入出力例を示す説明図である。
【図5】 実施の形態3に係わる補間フィルタの入出力例を示す説明図である。
【図6】 実施の形態3に係わる補間フィルタの入出力例を示す説明図である。
【図7】 実施の形態3に係わる補間フィルタの入出力例を示す説明図である。
【図8】 実施の形態3に係わる補間フィルタのデータ入出力タイミング例を示す説明図である。
【図9】 実施の形態3に係わる補間フィルタのデータ入出力タイミング例を示す説明図である。
【図10】 実施の形態3に係わる補間フィルタのデータ入出力タイミング例を示す説明図である。
【図11】 実施の形態3に係わる補間フィルタのデータ入出力タイミング例を示す説明図である。
【図12】 実施の形態4に係るデジタルFMステレオ復調器のブロック図である。
【図13】 実施の形態5に係るデジタルFMステレオ復調器のブロック図である。
【図14】 実施の形態5に係わる補間フィルタの入出力例を示す説明図である。
【図15】 実施の形態5に係わる補間フィルタの入出力例を示す説明図である。
【図16】 実施の形態5に係わる補間フィルタの入出力例を示す説明図である。
【図17】 従来のデジタルFMステレオ復調器のブロック図である。
【符号の説明】
1 AD変換器、2 DSP、3 マスタクロック発振器、4 間引き手段、5 第1の可変分周手段、6 第5の低域フィルタ、7 第1のデータ保持手段、8 第2のデータ保持手段、9 第1の低域フィルタ、10 第2の低域フィルタ、11 乗算手段、12 コサインルックアップテーブル、13 カウンタ、14 第3の低域フィルタ、15 間引き増減周期設定手段、16 第2の可変分周手段、17 係数変更周期設定手段、20 補間フィルタ、21 フィルタ係数表、22 フィルタ係数更新手段、23 フィルタ動作制御手段、24 クロック分周器、30 第2の補間フィルタ、31 第3の補間フィルタ、32第2のフィルタ係数表、33 音声出力タイミングカウンタ、34 タイミング照合手段、40 サインルックアップテーブル、41 第2の乗算手段、42低域フィルタ、43 第3の乗算手段、44 加算手段。

Claims (8)

  1. 入力データを間引いて出力する間引き手段と、
    予め定められた発振周波数を有する基準信号を発生する基準信号発生手段と、
    該基準信号発生手段から出力される上記基準信号の位相と上記間引き手段の出力に含まれるパイロット信号の位相との位相差を検出する位相差検出手段と、
    上記位相差に応じて上記間引き手段におけるデータの間引きの間隔を制御する間引き間隔制御手段とを備えるデジタルFMステレオ復調器。
  2. 上記間引き間隔制御手段は、
    入力されるクロックを分周する分周手段と、
    上記位相差に応じて上記分周手段の分周比を制御する手段とを備え、
    上記間引き手段は、上記分周手段の出力に応じて上記入力データを間引くように構成されてなる請求項1に記載のデジタルFMステレオ復調器。
  3. 上記間引き間隔制御手段は、
    上記パイロット信号の位相が上記基準信号の位相に対して進む場合には、上記間引き手段における間引きの間隔を広くし、
    上記パイロット信号の位相が上記基準信号の位相に対して遅れる場合には、上記間引き手段における間引きの間隔を狭くするように構成されてなる請求項1に記載のデジタルFMステレオ復調器。
  4. 入力データに基づいて補間データを生成する補間手段と、
    予め定められた発振周波数を有する基準信号を発生する基準信号発生手段と、
    該基準信号発生手段から出力される上記基準信号の位相と上記補間手段から出力されたデータに含まれるパイロット信号の位相との位相差を検出する位相差検出手段と、
    上記位相差に応じて、上記補間手段において補間データを生成するタイミングを制御するタイミング制御手段と、
    上記補間手段に設定され、上記補間データを生成するに際して使用する補間係数が、新たな入力データに対し最近点の補間データを与える補間係数から最遠点の補間データを与える補間係数に変更された際には、上記新たな入力データに対応する補間データの出力を行わず、上記新たな入力データに対し最遠点の補間データを与える補間係数から最近点の補間データを与える補間係数に変更された際には、上記新たな入力データに対し最遠点の補間データおよび最近点の補間データを出力するように上記補間手段を制御するフィルタ動作制御手段とを備えるデジタルFMステレオ復調器。
  5. 上記補間データを生成するに際して使用する補間係数を出力する係数出力手段を更に備え、
    上記タイミング制御手段は、上記位相差に応じて、上記係数出力手段から出力される補間係数を変更することにより、上記補間手段において上記補間データを生成するタイミングを制御するように構成されてなる請求項4に記載のデジタルFMステレオ復調器。
  6. 補間データが、仮想データ点のタイミングに対応して出力されるように制御する動作制御手段を備えることを特徴とする請求項4または5に記載のデジタルFMステレオ復調器。
  7. 上記補間手段から出力されたデータに対し、当該データを補間する第2の補間データを生成する第2の補間手段と、
    上記第2の補間手段に上記データが入力されたタイミングと、入力されるクロックとの時間差に応じて、上記第2の補間データが実質的に等時間間隔で出力されるように、上記第2の補間データを生成するに際して使用する第2の補間係数を出力する第2の補間係数出力手段とを更に備える請求項4ないしのいずれかに記載のデジタルFMステレオ復調器。
  8. 前記間引き手段または前記補間手段から出力されたデータに含まれるパイロット信号を実質的に除去するパイロット信号除去手段を更に含むことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のデジタルFMステレオ復調器。
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