JPWO2006035553A1 - 外方の皮膜層を有し且つ釉生成用の釉薬原料と、焼成された釉を着色できる着色料とを封入してある球形カプセルおよびその利用 - Google Patents
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Abstract
カプセルの芯部を構成する内層と、内層を包被するシームレスな皮膜層からなる球形カプセルであるか、あるいはカプセルの芯部をなす最内層と、必要に応じて最内層の上に設けうる中間層と、最も外側に設けられた皮膜材物質から構成されるシームレスな皮膜層とを有する多層の複合構造の球形カプセルであって、該内層または最内層を形成する芯材物質、中間層を形成する材料物質および皮膜層を形成する皮膜材物質のうちの少くとも一つは、陶磁器の絵付けで用いる無機質着色料を配合され、しかも基本釉の生成用の釉薬原料が、釉を着色する着色料と別に、または共に一緒に、芯部の芯材物質、中間層を形成の材料物質および(または)皮膜層の形成用の材料物質の中に配合されてあるところの、シームレスな皮膜層をもつ球形カプセルが提供される。また、該球形カプセルを用いて、点描画風の装飾模様を有する陶磁器を製造する方法、ならびに陶磁器を含めて耐熱性基体の表面に装飾模様を作る装飾方法も提供される。
Description
本発明は、陶磁器およびその他の耐熱性基体の表面で焼成時に有色の装飾模様を作ることのできる用途を有して且つ外方の継目なし(シームレス)(seamless)の皮膜層をもつと共に釉生成用の釉薬原料と焼成時に釉を着色できる着色料を封入した2層または多層構造の球形カプセルである新規製品に関する。また、本発明は、そのような球形カプセルを使用することによって有色の装飾模様をもつ陶磁器を製造する方法ならびに陶磁器を含めて耐熱性基体の表面に装飾模様を作る装飾方法を包含する。
陶磁器製造にあたって、それの表面を被覆するガラス質薄膜層である釉(Glaze)を施すことは周知である。
釉は、釉薬とも、日本の陶磁器技術分野で言われている。釉は、陶磁器の表面に融着された釉層(Glaze coating)を意味するのが普通であるが、釉または釉薬とは、釉を焼成時に生成するのに使用できる釉薬原料(glaze−producing rawmaterials)を意味することもある(「Encyclopedia of Pottery and Porcelain」,1800〜1960,140〜141頁、E.Cameron著、Facts On File Publications社発行;および大西政太郎著「陶芸の釉薬」新版、2003頁10月10日、第3刷発行、理工学社)。
釉の種類は多種多様であるが、無色透明な基本釉(base glaze)の代表例には、石灰釉(limestone glaze)、ナトリウム長石釉(sodium feldspathic glaze)、カリウム長石釉(potassium feldspathic glaze)、灰釉(ash glaze)が知られる(「The Japanese Pottery Handbook」68頁、P.Simpsonら著;講談社インターナショナル社、1979年5月発行、および前記の「陶芸の釉薬」大西著、ならびに「工業大事典」第17巻、470〜473頁、平凡社、1962年5月発行)。
また、無機質着色料を無色の基本釉に配合して作られる有色の釉は周知である。そのような有色の釉に配合される無機質着色料としては、各種の金属物質または各種の金属化合物が使用できることが周知である(前記の「陶芸の釉薬」大西著、および前記の「工業大事典」第3巻、358〜360頁、「顔料」の項、平凡社、1960年2月発行)。
着色料を配合された釉の代表例には、着色料として酸化第二銅を含むトルコ青釉(Blue Turquoise glaze)、着色料として酸化第二鉄を含む黒天目釉(Black Tenmoku glaze)、着色料として酸化第二鉄を含む油滴天目釉(Oil spot Tenmoku glaze)、着色料として比較的多量の酸化第二鉄を含む銀油滴天目釉(Silver oilspot Tenmoku glaze)およびその他の多種多様な釉が周知である(前記の「陶芸の釉薬」新版、64〜278頁、大西著;および前記の「Encyclopedia of Pottery and Porcelain」1800〜1960、E.Cameron著、326頁、ならびに「A Guide To The Pottery and Porcelain of The Far East,in The Department of Ceramics and Ethnography」,British Musium.,1924年発行、20〜133頁、参照)。
釉層をもつ陶磁器の製造に当っては、陶土または磁土製の成形品、例えば皿状の成形品を作り、それを乾燥し、その後に素焼きし、得られた素焼き成形品(biscuit−fired body)に、釉生成用の釉薬原料の泥漿(含水スラリーまたはスリップ)を、浸し掛け、流し掛け、塗り掛け、吹き抜けする湿式法、あるいは、微粒状の釉薬原料をふりかける乾式法によって施釉し、次いで乾燥し、そのように乾燥された施釉ずみの素焼き成形品を窯に入れて窯の中で燃焼火炎および(または)高温の燃焼ガスによって、または電気的加熱によって施釉温度で焼成することが通常である。
さらに、陶磁器の表面に、有色の装飾模様を筆または印刷により画いて施着することが多い。素焼き素地に、下釉用の着色料で装飾模様を画き、さらにその上から低火度の透明釉の生成用の釉薬原料の泥漿を浸し掛けし、自然乾燥し、さらに1000℃以下の温度で焼成し、得られた焼成品の表面上に上絵具で装飾模様を画き、そして再び焼成することからなる方法によって、陶磁器に装飾模様を施すことは慣用的なことである。
陶磁器に装飾模様を画くのに用いられる上絵具として、各種の無機着色料を含む各種の絵具が周知である。例えば金液(gold luster liquor)(水金ともいう)(油溶性の金化合物を主成分とする油性製剤)が知られる「原色陶器大辞典」101〜102頁、114〜116頁、279〜280頁、昭和48年6月19日、3版発行、淡交社)。
さらに、陶磁器に装飾の絵付けをする新しい方法としては、着色料と釉薬もしくは釉薬の原材料と結着剤樹脂と帯電制御剤とから主としてなる微粒子(粒度は5〜30μ程度)から構成されたトナーを用いて、静電気潜像現像方式で転写シート上に画像を形成し、転写シート上の画像を陶磁器素焼き成形品の表面の所定位置に転写させ、次いで、その転写された画像を焼き付けることから成る、陶磁器の絵付け方法が提案された(特開平8−11496号公報)。
また、施釉された陶磁器素焼き成形品を焼成するに当って、窯変(yo−hen)という現象が起ることが知られる(前記の「原色陶器大辞典」986〜987頁、および前記の「陶芸の釉薬」278〜279頁)。窯変とは、焼成中に陶磁器の釉が炉内の雰囲気などの影響下で、予期されない色や斑紋などを生成することを指す。
窯変(yo−hen)(直訳的な英訳では“kiln−changes”という)は、釉が英語で言われる“hares−fur”effectを示すことを意味するものである(「Japanese Pottery Information Center」のホームページのインターネットウェブサイト「http://www.e−yakimono.net/guide/html/tenmoku.html」および「Tenmoku Kogo Intercense Box」のインターネットウェブサイト
「http://www.fareastasianart.com/stores/japanesepottery/items/27496/item27496」ならびにBRITISH MUSEUM発行の前記「A GUIDE TO THE POTTERY & PORCELAIN OF THE FAR EAST,IN THE DEPARTMENT OF CERAMICS AND ETHNOGRAPHY」の25〜27頁、参照)。窯変の現象が起る事由は未知なことが多い。窯変を起こすには、酸化鉄または酸化銅、その他の金属化合物を含む釉薬の使用、焼成窯の焼成温度の調整、窯内の酸化性雰囲気の調整、還元性雰囲気の調整、窯の冷却速度の調整などの多岐にわたる条件を巧く組み合わせて焼成を行うことが必要であると言われている。けれども、従来既知の釉薬の調合や、施釉法を利用するだけでは、窯変を釉に確実に作出する手段が未だ得られていない。
施釉された陶磁器表面に有色の装飾模様を作る装飾方法は、古来から種々な方法が用いられてきているが、従来用いられる装飾方法の多くは、かなり煩雑であって、時間をとる方法である。従来知られる装飾方法に比べて、施釉された陶磁器表面に有色の装飾模様を作るための、より簡便な新しい方法ないし手段を提供することが以前から要望されている。
なお、他方で、医薬品、化粧品、食品を継目なしの、所謂、シームレスの外方の皮膜層をもつ球形カプセル中に封入することが知られている。またそのように医薬品、化粧品、食品を封入するのに用いられて従来知られるシームレスの皮膜層付き球形カプセルは、中央の芯部層と、芯部層を包被する外方の固体状のシームレスな皮膜層とを有する2層構造の球形カプセル、もしくは中央の芯部層と、芯部層を包被する1枚のまたは複数枚の中間層と、中間層を最も外方から包被する固体状のシームレスな皮膜層とからなる少なくとも3層をもつ複合多層構造の球形カプセルでありうる(例えば、米国特許第4,695,466号(1987年9月22日刊行)、日本特許出願公告平3−33338号(1991年5月16日刊行)、日本特許出願公告平4−31732号(1992年5月27日刊行)、日本特許第2806564号(1998年7月24日刊行)、日本特許出願公開、特開2000−4844号(2000年1月11日公開)、日本特許出願公開、特開平11−79964号、その対応の米国特許第6,426,089号(2003年7月30日刊行)および日本特許第3313124号(2002年5月31日刊行)の各明細書、参照)。
例えば、直立の内方ノズル管と、これを同軸的に且つ同心的に包囲する直立の外方ノズル管とから成る2重管ノズルを使用し、製造されるべき2層構造の球形カプセルの芯部層として封入されるべき第1の液体状原料または固体粒子(芯材物質)を、内方ノズル管に封入して内方ノズルの下端ノズル孔から下向きに押出し、そして該カプセルの外方の皮膜層を形成するのに用いられて皮膜形成能のあるゲル化性物質を含む第2の液体状原料(皮膜材物質の原料を含む溶液)を、外方ノズル管の上部に入れ、そして内方ノズル管の外壁と外方ノズル管の内壁との間に形成されたチャネル中を通液させ、外方ノズルの下端ノズル孔から押出させ、このことによって第1の液体状原料または固体粒子が内層をなし且つ第2の液体状原料が外層をなす2層構造である1本の液流を作り、2重管ノズルのノズル孔の出口から出る該液流が先端の所で自然にくびれて丸い液面を次々に形成させ、そして落下する2層構造の丸い液滴を生成させ、そしてそれらの2層構造の液滴を、液滴の外層中の皮膜材物質の原料を化学的にゲル化できるゲル化剤の水溶液の液浴中に次々に滴下させ、該ゲル化剤水溶液中で前記の丸い液滴の外層をゲル化させ、これでゲル化された固体状物質よりなる皮膜層をもち且つその皮膜層内に内包された第1の液体状原料または固体粒子(芯材物質)よりなる内層をもつところの2層構造で継目なし(シームレス)の球形カプセルを形成させ、さらにそれら球形カプセルを回収することから成る、2層構造の球形カプセルを製造する方法が知られている(例えば、前記の日本特開2000−4844号公報および米国特許第4,695,466号明細書とその第3図、参照)。
また、2層構造の球形カプセルの皮膜層を形成する材料の原料としてアルギン酸ナトリウム塩あるいはその他のゲル化性物質を含む水溶液を使用することも知られる(前記の米国特許第6,426,089号明細書および日本特許第3313124号明細書、特にその2頁、参照)。
釉は、釉薬とも、日本の陶磁器技術分野で言われている。釉は、陶磁器の表面に融着された釉層(Glaze coating)を意味するのが普通であるが、釉または釉薬とは、釉を焼成時に生成するのに使用できる釉薬原料(glaze−producing rawmaterials)を意味することもある(「Encyclopedia of Pottery and Porcelain」,1800〜1960,140〜141頁、E.Cameron著、Facts On File Publications社発行;および大西政太郎著「陶芸の釉薬」新版、2003頁10月10日、第3刷発行、理工学社)。
釉の種類は多種多様であるが、無色透明な基本釉(base glaze)の代表例には、石灰釉(limestone glaze)、ナトリウム長石釉(sodium feldspathic glaze)、カリウム長石釉(potassium feldspathic glaze)、灰釉(ash glaze)が知られる(「The Japanese Pottery Handbook」68頁、P.Simpsonら著;講談社インターナショナル社、1979年5月発行、および前記の「陶芸の釉薬」大西著、ならびに「工業大事典」第17巻、470〜473頁、平凡社、1962年5月発行)。
また、無機質着色料を無色の基本釉に配合して作られる有色の釉は周知である。そのような有色の釉に配合される無機質着色料としては、各種の金属物質または各種の金属化合物が使用できることが周知である(前記の「陶芸の釉薬」大西著、および前記の「工業大事典」第3巻、358〜360頁、「顔料」の項、平凡社、1960年2月発行)。
着色料を配合された釉の代表例には、着色料として酸化第二銅を含むトルコ青釉(Blue Turquoise glaze)、着色料として酸化第二鉄を含む黒天目釉(Black Tenmoku glaze)、着色料として酸化第二鉄を含む油滴天目釉(Oil spot Tenmoku glaze)、着色料として比較的多量の酸化第二鉄を含む銀油滴天目釉(Silver oilspot Tenmoku glaze)およびその他の多種多様な釉が周知である(前記の「陶芸の釉薬」新版、64〜278頁、大西著;および前記の「Encyclopedia of Pottery and Porcelain」1800〜1960、E.Cameron著、326頁、ならびに「A Guide To The Pottery and Porcelain of The Far East,in The Department of Ceramics and Ethnography」,British Musium.,1924年発行、20〜133頁、参照)。
釉層をもつ陶磁器の製造に当っては、陶土または磁土製の成形品、例えば皿状の成形品を作り、それを乾燥し、その後に素焼きし、得られた素焼き成形品(biscuit−fired body)に、釉生成用の釉薬原料の泥漿(含水スラリーまたはスリップ)を、浸し掛け、流し掛け、塗り掛け、吹き抜けする湿式法、あるいは、微粒状の釉薬原料をふりかける乾式法によって施釉し、次いで乾燥し、そのように乾燥された施釉ずみの素焼き成形品を窯に入れて窯の中で燃焼火炎および(または)高温の燃焼ガスによって、または電気的加熱によって施釉温度で焼成することが通常である。
さらに、陶磁器の表面に、有色の装飾模様を筆または印刷により画いて施着することが多い。素焼き素地に、下釉用の着色料で装飾模様を画き、さらにその上から低火度の透明釉の生成用の釉薬原料の泥漿を浸し掛けし、自然乾燥し、さらに1000℃以下の温度で焼成し、得られた焼成品の表面上に上絵具で装飾模様を画き、そして再び焼成することからなる方法によって、陶磁器に装飾模様を施すことは慣用的なことである。
陶磁器に装飾模様を画くのに用いられる上絵具として、各種の無機着色料を含む各種の絵具が周知である。例えば金液(gold luster liquor)(水金ともいう)(油溶性の金化合物を主成分とする油性製剤)が知られる「原色陶器大辞典」101〜102頁、114〜116頁、279〜280頁、昭和48年6月19日、3版発行、淡交社)。
さらに、陶磁器に装飾の絵付けをする新しい方法としては、着色料と釉薬もしくは釉薬の原材料と結着剤樹脂と帯電制御剤とから主としてなる微粒子(粒度は5〜30μ程度)から構成されたトナーを用いて、静電気潜像現像方式で転写シート上に画像を形成し、転写シート上の画像を陶磁器素焼き成形品の表面の所定位置に転写させ、次いで、その転写された画像を焼き付けることから成る、陶磁器の絵付け方法が提案された(特開平8−11496号公報)。
また、施釉された陶磁器素焼き成形品を焼成するに当って、窯変(yo−hen)という現象が起ることが知られる(前記の「原色陶器大辞典」986〜987頁、および前記の「陶芸の釉薬」278〜279頁)。窯変とは、焼成中に陶磁器の釉が炉内の雰囲気などの影響下で、予期されない色や斑紋などを生成することを指す。
窯変(yo−hen)(直訳的な英訳では“kiln−changes”という)は、釉が英語で言われる“hares−fur”effectを示すことを意味するものである(「Japanese Pottery Information Center」のホームページのインターネットウェブサイト「http://www.e−yakimono.net/guide/html/tenmoku.html」および「Tenmoku Kogo Intercense Box」のインターネットウェブサイト
「http://www.fareastasianart.com/stores/japanesepottery/items/27496/item27496」ならびにBRITISH MUSEUM発行の前記「A GUIDE TO THE POTTERY & PORCELAIN OF THE FAR EAST,IN THE DEPARTMENT OF CERAMICS AND ETHNOGRAPHY」の25〜27頁、参照)。窯変の現象が起る事由は未知なことが多い。窯変を起こすには、酸化鉄または酸化銅、その他の金属化合物を含む釉薬の使用、焼成窯の焼成温度の調整、窯内の酸化性雰囲気の調整、還元性雰囲気の調整、窯の冷却速度の調整などの多岐にわたる条件を巧く組み合わせて焼成を行うことが必要であると言われている。けれども、従来既知の釉薬の調合や、施釉法を利用するだけでは、窯変を釉に確実に作出する手段が未だ得られていない。
施釉された陶磁器表面に有色の装飾模様を作る装飾方法は、古来から種々な方法が用いられてきているが、従来用いられる装飾方法の多くは、かなり煩雑であって、時間をとる方法である。従来知られる装飾方法に比べて、施釉された陶磁器表面に有色の装飾模様を作るための、より簡便な新しい方法ないし手段を提供することが以前から要望されている。
なお、他方で、医薬品、化粧品、食品を継目なしの、所謂、シームレスの外方の皮膜層をもつ球形カプセル中に封入することが知られている。またそのように医薬品、化粧品、食品を封入するのに用いられて従来知られるシームレスの皮膜層付き球形カプセルは、中央の芯部層と、芯部層を包被する外方の固体状のシームレスな皮膜層とを有する2層構造の球形カプセル、もしくは中央の芯部層と、芯部層を包被する1枚のまたは複数枚の中間層と、中間層を最も外方から包被する固体状のシームレスな皮膜層とからなる少なくとも3層をもつ複合多層構造の球形カプセルでありうる(例えば、米国特許第4,695,466号(1987年9月22日刊行)、日本特許出願公告平3−33338号(1991年5月16日刊行)、日本特許出願公告平4−31732号(1992年5月27日刊行)、日本特許第2806564号(1998年7月24日刊行)、日本特許出願公開、特開2000−4844号(2000年1月11日公開)、日本特許出願公開、特開平11−79964号、その対応の米国特許第6,426,089号(2003年7月30日刊行)および日本特許第3313124号(2002年5月31日刊行)の各明細書、参照)。
例えば、直立の内方ノズル管と、これを同軸的に且つ同心的に包囲する直立の外方ノズル管とから成る2重管ノズルを使用し、製造されるべき2層構造の球形カプセルの芯部層として封入されるべき第1の液体状原料または固体粒子(芯材物質)を、内方ノズル管に封入して内方ノズルの下端ノズル孔から下向きに押出し、そして該カプセルの外方の皮膜層を形成するのに用いられて皮膜形成能のあるゲル化性物質を含む第2の液体状原料(皮膜材物質の原料を含む溶液)を、外方ノズル管の上部に入れ、そして内方ノズル管の外壁と外方ノズル管の内壁との間に形成されたチャネル中を通液させ、外方ノズルの下端ノズル孔から押出させ、このことによって第1の液体状原料または固体粒子が内層をなし且つ第2の液体状原料が外層をなす2層構造である1本の液流を作り、2重管ノズルのノズル孔の出口から出る該液流が先端の所で自然にくびれて丸い液面を次々に形成させ、そして落下する2層構造の丸い液滴を生成させ、そしてそれらの2層構造の液滴を、液滴の外層中の皮膜材物質の原料を化学的にゲル化できるゲル化剤の水溶液の液浴中に次々に滴下させ、該ゲル化剤水溶液中で前記の丸い液滴の外層をゲル化させ、これでゲル化された固体状物質よりなる皮膜層をもち且つその皮膜層内に内包された第1の液体状原料または固体粒子(芯材物質)よりなる内層をもつところの2層構造で継目なし(シームレス)の球形カプセルを形成させ、さらにそれら球形カプセルを回収することから成る、2層構造の球形カプセルを製造する方法が知られている(例えば、前記の日本特開2000−4844号公報および米国特許第4,695,466号明細書とその第3図、参照)。
また、2層構造の球形カプセルの皮膜層を形成する材料の原料としてアルギン酸ナトリウム塩あるいはその他のゲル化性物質を含む水溶液を使用することも知られる(前記の米国特許第6,426,089号明細書および日本特許第3313124号明細書、特にその2頁、参照)。
陶磁器の焼成に当って、陶磁器表面上に様々な多色に着色した装飾模様をもつ釉層を形成できる簡便な方法は、未だ開発されていない。
また、陶磁器の製造に当って、従来知られた窯変を示す釉層をもつ陶磁器を簡便な手段で、しかも確実に製造できる手段は、陶磁器製造の分野で未だ開発されていない。
本発明の第1の目的は、陶磁器を含めて耐熱性基体の表面の上に、目にざん新で美しい単色または多色の装飾模様または装飾効果を、小島状斑点の形の有色な釉層の多数の組合わせにより生成できる性能をもつと共に、所望される場合には、美しい窯変を示す小島状斑点の形で生成される有色の釉層の多数の組合わせにより、美しい窯変を示す斑紋を地釉層に生成できる性能を有する球形カプセルであって、球形カプセルの囲りを継目無しに包囲する多孔質固体状のシームレスな皮膜層と、該皮膜層で包被された中央の芯部層と、所望に応じて設ける中間層とを有して、しかも該カプセルの内部には、無色の基本釉を生成できる釉薬原料の微粒子、および無色の基本釉を焼成時に着色できる無機質着色料を封入、含有している2層または多層の構造の球形カプセルを、新規な工業的製品として提供することにある。
本発明の第2の目的は、無色の基本釉を生成できる前記の釉薬原料の微粒子および前記の無機質着色料を封入、含有する前記の球形カプセルの複数個を用いながら、目にざん新で美しい単色または多色の装飾模様または装飾効果、もしくは窯変効果をもつ斑紋を表面に有する陶磁器を製造する新規な方法を提供することにある。
さらに、本発明の第3の目的は、前記した球形カプセルの複数個を用いて、陶磁器またはその他の耐熱性基体の表面上に有色の装飾模様または装飾効果を作り出すことから成る、新しい装飾方法を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、本明細書に示す後記の説明から明らかであろう。
本発明者らは、陶磁器の釉層に窯変を作出できる技術ならびに陶磁器の釉層の新しい上絵付け技術を開発するために、釉薬の新しい調合と新しい施釉法、ならびに釉と着色料との新しい配合について色々の研究を行った。それらの研究の一つの結果として、球形カプセルの囲りを継目なしに包囲するシームレスな皮膜層で包被される球形カプセルの中に、従来知られる無色で透明な基本釉(base glaze)を生成できる釉薬原料と、そのような基本釉を焼成時に着色できる既知の無機質着色料とをそれらの色々な組合わせの仕様で封入、含有させてなる球形カプセルを新しい工業的製品として製造することの着想を、本発明者らは得た。
この着想に基づいて、本発明者らは、下記の第1回の実験を行った。すなわち、この第1回の実験では、銀油滴天目釉を生成できる釉薬原料の微粉末状混合物の市販品を入手してから、この微粉末状混合物を水と60:40の重量比でよく混合して釉薬原料を含む泥漿(スラリーまたはスリップの形である)を作り、この泥漿をアルギン酸ナトリウムの5重量%を含むゾル状水溶液と1:1の重量比で混合してスラリー状混合物(a)を調製した。このスラリー状混合物(a)を、出口孔径1.44mmのノズル孔をもつ1本の直立ノズル管を通して下向きに押出した。押出された液流は、その下端で自然にくびれて次々に丸い液滴を形成した(例えば、前記の米国特許第4,695,446号明細書の添付図面の第4図、参照)。このように形成された丸い液滴をアルギン酸ナトリウムのゲル化剤として働く塩化カルシウムの2重量%を含む水溶液よりなる液浴中に室温で次々に滴下させた。この液浴中で約5分間保持すると、液浴に導入されたそれぞれの液滴について液滴の表面層にCaイオンが浸透し、アルギン酸ナトリウムと反応するのでそれぞれの液滴の表面では、アルギン酸カルシウムのゲル状硬化物を含む皮膜層が形成されることを認めた。その結果、ゲル状の表面皮膜層で包被された継目なしの球形カプセル粒子の多数が前記の液浴内で滴下された前記の丸い液滴の各々から形成された。このように形成された多数の球形カプセル粒子を前記の液浴から取出した。
それら球形カプセル微粒子の1個を中央でナイフにより切断すると、球形カプセル粒子の表面層は、アルギン酸Caのゲル状硬化物よりなる皮膜であるが、このゲル状物質の皮膜で包被された芯部層は前記のスラリー状混合物(a)の液体のままであることが観察された。このように取出された球形カプセル粒子を20℃の乾燥空気流中でカプセル粒子の芯部を含めて、粒子全体が固化するまで十分に乾燥させた。これによって、それぞれ約1.0mmの粒径をもつ乾燥した球形カプセル粒子の多数が収得できた(後記の実施例2、(a)、(i)の記載、参照)。
これら乾燥し固化した2層構造の球形カプセル粒子の各個では、それの表面のシームレスな皮膜層は、銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料の微粒子と、アルギン酸カルシウムの硬化物との固体状混合物から構成されており、しかも水分の蒸発で生じた多くの細孔を有する多孔質な構造をもつが、該表面皮膜層で包被された固体状の芯部層が酸化第二鉄を着色料として含む銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料とアルギン酸ナトリウム(有機結合剤として作用する物質)との固体状混合物よりなることが認められた。
他方、陶土製の素焼きタイル板に市販の乳白色釉の泥漿を浸し掛けし、自然乾燥した。このように施釉、乾燥されたタイル板表面に、前記で得られた乾燥、固化した2層構造の球形カプセル粒子(銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料の固体状混合物よりなる芯部層を有する球形カプセル)の数個を、スターチ糊で貼り付け、さらに自然乾燥させた。このように前記の球形カプセルを結着されたタイル板を、電気キルンに入れて徐々に加熱し、後記の実施例2、(b)に記載されると同様な要領で最高1235℃の焼成温度で酸化性雰囲気下に焼成した。このように焼成されたタイル板は、その板の全面に乳白釉の地釉層をもち、そして、その地釉層の上には、結着した球形カプセルの各個の熔解で生成された小島状斑点の形の釉層の複数が地釉層からやや隆起した状態で形成されたことが認められた。しかも、それらの小島状の斑点の形の釉層の各々の表面は、銀油滴天目釉の示す銀色の色相をもつことが認められて、顕微鏡下では鉄結晶の出現が観察できた。従って、このように得られた焼成タイル板では、乳白釉の地釉層の上に、銀油滴天目釉よりなる小島状斑点の組合わせで形成される銀色の装飾模様が作成されたことが認められた。
さらに下記の第2回の実験を本発明者は行った。すなわち、その第2回の実験では、第1回の実験で用いた銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料の市販品に代えて、トルコ青釉を生成できる釉薬原料の微粉末状混合物の市販品を入手し、この微粉末状混合物を水と60:40の重量比で混合して泥漿を作り、この泥漿に対してアルギン酸ナトリウムの5重量%水溶液(ゾル状)を後記の実施例3、(a)と同様に、1:1の重量比でよく混合して、スラリー状混合物(b)を調製した。このスラリー状混合物(b)を、前記の第1回の実験と同様にして、出口孔径1.44mmのノズル孔をもつ1本の直立ノズル管を通して下向きに押出した。ノズル孔から押出された液流は、その下端で自然にくびれて次々に丸い液滴を形成した。このように形成されて上記のスラリー状混合物(b)(トルコ青釉の生成用の釉薬原料を含む)よりなる丸い液滴を、塩化カルシウムの2重量%水溶液よりなる液浴中に次々に滴下し、液浴内に滴下された液滴を室温で約5分間保持した。このようにして、上記のスラリー状混合物(b)の丸い液滴から生成されたところの、ゲル状の物質よりなる表面皮膜層で包被された球形カプセル粒子の多数が前記の液浴内で形成された。液浴から取出された球形カプセル粒子を、前記の第1回の実験と同様にして粒子全体を乾燥により固化させた。このように得られた全体が固化した乾燥カプセル粒子を用いて、それ以降の各工程は、前記の第1回実験と全く同じ手順で行って実験を続けた。
その結果、最終的に得られた焼成タイル板は、乳白釉の地釉層をもち、そしてその地釉層の上には、用いた球形カプセルの各個の熔融で生成された小島状斑点の形の釉層の複数が形成されていた。それら小島状斑点の形の釉層の表面はトルコ青釉に特有の青緑色を呈しており、各斑点の釉層中に銅結晶が出現したことが観察された。こうして得た焼成タイル板では、乳白釉の地釉層の上に、トルコ青釉よりなる小島状斑点の組み合わせで形成される青緑色の装飾模様が作成されたことが認められた。
さらに行った第3回の実験では、例えば米国特許第4,695,466号明細書の添付図面の第1図に示された多層カプセル製造装置に設けられた二重管ノズルと同様な構造をもつ二重管ノズルを用意した。この二重管ノズルの内方ノズル管内には、陶磁器の上絵付け絵具として知られる金液の市販品を装入し、内方ノズル管のノズル孔から金液を下向きに押出した。また、同時に、前記の第2回実験で調製したスラリー状混合物(b)(トルコ青釉の生成用の釉薬原料とアルギン酸ナトリウム水溶液との混合物からなるスラリー)を、外方ノズル管内壁と内方ノズル管の外壁との間に形成された空室内に装入し、後記の実施例1、(a)に記載された同じ要領で、二重管ノズルの下方ノズル孔からスラリー状混合物(b)を下向きに押出した。後記の実施例1、(a)に記載されたと同様にして、前記の下方ノズル孔から押出された1本の液流は、その下端で自然にくびれて丸い液滴を次々に形成した(例えば、米国特許第4,695,466号の添付図面の第4図、参照)。このように形成された丸い液滴は、その内層が金液からなり、そしてその外層が前記のスラリー状混合物(b)よりなる2層構造を有した。
このような2層構造の丸い液滴を、塩化カルシウムの2重量%水溶液よりなる液浴中に次々に、実施例1、(a)と同様にして滴下した。その液浴内に液滴を5分間保持すると、各々の液滴から2層構造の球形カプセル粒子が形成された。これら2層構造の球形カプセルを液浴から取出して、前記の第1回実験と同様にして乾燥空気流の中で十分に乾燥して、球形カプセルの皮膜層を固化させた。得られた2層構造の球形カプセルの芯部層は前記の金液からなり、そしてその皮膜層は、継目なし(シームレス)であって、またトルコ青釉の生成用の釉薬原料とアルギン酸カルシウムの硬化物との固体状混合物からなり、しかも多孔質な構造をもつことが認められた。
このようにして得られた乾燥した2層構造の球形カプセルを用いて、それ以後の各工程は、前記の第1回実験と全く同じ手順で行って実験を続けた。その結果、最終的に得られた焼成タイル板は、乳白釉の地釉層の上に、用いた2重構造の球形カプセルの各個の熔融で生成された小島状の斑点の形の釉層の複数を有していた。それらの各々の小島状斑点の釉層の表面は、後記の実施例1、(b)に記載されると同様にして、同心的な2重円状の有色の縞模様を示し、それの外縁縞部が青色を呈し、また内方の縞部が紫色を帯びた金色を呈した。従って、得られた焼成タイル板では、乳白釉の地釉層の上に、前記の同心的な2重円の有色の縞模様をもつ小島状斑点が生成されており、それら斑点の組合せで形成された美しい装飾模様が作成されたことが認められた。
さらに行った第4回の実験では、例えば米国特許第4,695,466号の第1図に示された三重管ノズルと同様な構造をもつ三重管ノズルを用意した。そして、後記の実施例6、(a)、(i)、(ii)、(iii)に記載されると同じ手順で、3層構造の球形カプセルを製造し、また実施例6、(b)に記載されると同様にして、該3層構造の球形カプセルを用いて絵付け陶器皿を作製した。その結果、焼成された陶器皿では、乳白釉の地釉層の上に、赤色の外縁部分と黄色の内方部分とをもつほぼ同心的な2重円の縞模様をもつ小島状斑点の形の釉層の複数が該球形カプセルの各々の熔融により生成されており、そして焼成タイル板は前記の斑点の組合わせで構成された美しい装飾模様を表わすことが認められた。
前記のように、1本のノズル管を具えた球形カプセル製造装置を利用して、芯部層と皮膜層とのみを有する単純な2層構造で継目のない(シームレス)球形カプセルを製造する既知の技術、ならびに2重管ノズル、3重管ノズルまたは4重管ノズルを具えて利用する3層またはそれ以上の多層構造のシームレスの球形カプセルの製造装置を利用して、多層構造で継目のない球形カプセルを製造する既知の技術を応用し、またそれと共に、製造すべき球形カプセルに封入される基本釉の生成用の釉薬原料の色々な種類と、配合されるべき無機質着色料の色々な種類と、カプセル皮膜層の形成に用いる皮膜形成能のある物質の色々な種類とを各様な組合せで用いて、球形カプセルの作製を試みる一連の多数の実験を行った。これらの一連の実験の結果として、各種の基本釉の生成用の釉薬原料と、基本釉を着色できる各種の着色料とを封入してあり、そして芯部層と皮膜層とを有する2層構造で継目のない(シームレス)球形カプセル、もしくは芯部層と、芯部層を包被する1つまたは複数の中間層と、中間層を最も外方から包被する皮膜層とを有する多層構造で継目のない(シームレス)球形カプセルの各種各様な製品を製造することに成功した。
その結果、上記のような2層または多層構造の球形カプセルの内層の芯部を構成する芯材物質と、カプセルの最も外側に設けられる皮膜層を構成する皮膜材物質と、芯部の内層と該皮膜層との間に所望ならば設けることもできる単数または複数の中間層を形成する構成物質とのうちの少なくとも一つは、窯変を起す作用をもつ着色料として有効である金属物質・金属化合物を所望ならば任意に含有できると共に、しかも該内層の芯材物質と、中間層をなす構成材の物質と、皮膜層をなす皮膜材物質とのうちで少なくとも1つが基本釉の生成用の釉薬原料と釉の着色用の着色料とをそれぞれ別々に、もしくは該釉薬原料と、釉の着色用の着色料とを同時に一緒に含有するようにして、該釉薬原料と、釉を着色できる着色料とが封入された2層構造、3層構造またはそれ以上の多層構造のシームレスな球形カプセルを製造できることを、本発明者らは知見した。
前記のようにして製造された2層またはそれ以上の多層構造のカプセルは、これらカプセルの複数個を陶磁器の素焼き成形品の施釉品または未施釉品の表面に、適当な装飾模様を画くように好みの配置で点在して配列するように熱分解性有機質接着剤、例えばスターチ糊剤で貼り付け、その後に、それらカプセルを結着して有する素焼き成形品を窯内に入れて徐々に加熱し、そして1000℃以上の仕上げ焼成温度で酸化性雰囲気または還元性雰囲気下に焼成する場合に、各個のカプセルが熔解し、カプセル中の有機物質が焼失し、またカプセル内の釉薬原料と釉用の着色料とが一緒になって熔融して有色の釉層を生成するが、この釉層の生成に当ってカプセル中に含まれた物質成分が種々な化学的変化、物理的変化を受けることになること、またその結果、仕上げ焼成品の表面に美しい着色した小島状斑点の形態の釉層を作出できることが今回、知見された。上記の諸知見に基づいて、本発明は完成されたのである。
従って、第1の本発明においては球形カプセルの芯部をなす内層と、該芯部を外方から包被するシームレスな皮膜層とから構成された球形カプセルであるか、あるいは球形カプセルの芯部をなす最内層と、該球形カプセルを最も外方から包被するシームレスな皮膜層と、該芯部をなす最内層と該皮膜層との間に介在して設けてある単数または複数の中間層とから構成された多層の複合構造の球形カプセルであって、該皮膜層を形成する皮膜材物質は、皮膜形成能のある熱分解性有機物質からなるか、または該皮膜形成能のある熱分解性有機物質と後記の釉薬原料および(または)後記の着色料との固体状混合物からなるものであり、さらに該芯部を形成する芯材物質と、該皮膜層を形成する皮膜材物質と、該中間層を形成する材料物質とのうちの少くとも一つは、焼成時に透明な釉層を生成できる基本釉の生成用の釉薬原料を含有しており、また該芯部を形成する前記の芯材物質と、該皮膜材物質と、該中間層を形成する前記の材料物質とのうちの少くとも一つは、焼成時に生成される透明な釉を着色できる無機着色料を含有しており、しかも該芯材物質と、該皮膜材物質と、該中間層を形成する前記の材料物質とのうちの少くとも一つは、透明な釉を生成できる前記の基本釉の生成用の釉薬原料と一緒に焼成するときに、窯変効果を示す小点、斑点または斑紋状の模様を、生成される釉層に形成できる着色料として有効であることのできる金属物質および(または)金属化合物を含有するか、もしくは前記の金属物質または金属化合物は該芯部、中間層および皮膜層をそれぞれ形成する物質の何れにも全く含有されなくともよいものであり、しかも該芯材物質と、該中間層を形成する前記の材料物質との一方または両方は、熱分解性の有機質結合剤をさらに任意に含有できることを特徴とする、焼成された時に透明な釉層を生成できる透明な基本釉の生成用の釉薬原料と、透明な基本釉を着色できる着色料とを含有、封入する球形カプセルが提供される。
第1の本発明のカプセルは、球形カプセルの芯部をなす内層と、該内層を外方から包被するシームレスな皮膜層とから構成された継目なしの球形カプセルの形であることができる。また、第1の本発明の球形カプセルは、球形カプセルの芯部をなす最内層と、該芯部を包被する1つ、2つまたは3つの中間層と、中間層を最も外方から包被するシームレスな皮膜層とから構成された多層な複合構造で継目なしの球形カプセルの形であることもできる。
第1の本発明による継目なし(シームレス)の球形カプセルにおいて、カプセルの皮膜層を形成する皮膜材物質、またこれのための原料は、皮膜形成能のある熱分解性有機物質であり、好ましくは、ゼラチンのようなタンパク質、あるいはペクチン、メトキシペクチン、アルギン酸のような多糖類であるが、普通には、ゲル化剤で処理されるとゲル状にゲル化できる性質をもつ有機物質であることができる。またはそのようなゲル化性の有機物質を含むことができる。前記のタンパク質または多糖類の硬化物がカプセル皮膜層に含まれる主要成分であるか、もしくはそれだけでカプセル皮膜層を形成する。前記のタンパク質と多糖類は、それぞれ単独に、あるいは2種以上混合して使用できる。カプセル皮膜層は、その中に着色料を配合することもできる。
一般的には、前記の皮膜形成能のある有機物質は、米国特許第4,695,466号明細書に記載されるフィルム形成性物質(film−forming substance)や、日本特許第3313124号明細書2頁に示される皮膜剤物質を用いうる。アルギン酸ナトリウム水溶液を皮膜材物質の原料として用い、これを塩化カルシウム水溶液と接触させ、Caイオンと反応してイオン架橋することで生成されるアルギン酸カルシウムのゲル状硬化物を含む皮膜材原料物質から生成された固体状の皮膜層を球形カプセルに設けるのが好適である。
本発明の球形カプセルにおいて、カプセルの皮膜層を形成する前記の皮膜材物質中にある皮膜形成能のある熱分解性有機物質がアルギン酸カルシウムの硬化物、ペクチンまたはメトキシペクチンの硬化物、ゼラチン硬化物またはカゼイン硬化物のような多糖類またはタンパク質であり、しかも該皮膜層は多数の細孔を含有して多孔質の構造をもつ固体層で形成されてあることが好ましい。
本発明の球形カプセルの中央の芯部層を形成する芯材物質は、液状、半固体状または固体状でよい。この芯材物質は陶芸用の各種の着色料(着色剤の微粒子、あるいは油性または水性スラリー状にした着色剤微粒子の分散液の形である)だけから成ることもでき、または該着色料と他の成分との混合物であることができる。例えば、前記の金液(水金とも言われて、融剤を含むのが普通である)それだけで芯材物質を形成できる。芯材物質の中に、それの主要成分として、上記のゲル化できる皮膜形成性タンパク質または多糖類よりなる有機質結合剤を配合することもできる。また芯材物質の中に窯変を作出するのに有効であると従来知られる既知の着色料を配合することも可能である。
本発明の球形カプセルの芯部層と皮膜層との間には、所望ならば、単数または相重なる複数の中間層を介在するように設けることもできる。この中間層を形成する材料物質は、基本釉を焼成時に着色できる着色料と、基本釉の生成用の釉薬原料の微粒子と、熱分解性の有機質結合剤との固体状混合物から成るか、あるいは前記の着色料と有機質結合剤との固体状混合物から成ることができる。中間層を形成する材料物質のための原料を含む溶液中に前記のゲル化性のタンパク質または多糖類のような有機質結合剤を配合されてあることができる。また、例えば、中間層は金液の乾燥残渣生成物のみからなることができ、そしてその中には窯変を起し得る着色料として有効である金コロイド粒子、金イオンが含有されることができる。
本発明の球形カプセル中に設けられた芯部層、中間層および皮膜層のうちの何れかの一つの層を形成する構成材物質は、基本釉生成用の釉薬原料の微粒子を含有できる。その基本釉は既知の釉薬であることができる。その市販品の釉薬原料の微粉末または水性スラリー(漿液すなわちスリップ)を用いて、本発明の球形カプセルを作製することのできる。自作の釉薬原料であってもよい。各種の基本釉の生成用の釉薬原料の各種の市販品をそれぞれ単独に、または数種組合わせて調合して、球形カプセルの製造に際して使用できる。
本発明の球形カプセルで使用できるところの、透明な釉層を焼成時に生成できる基本釉の生成用の釉薬原料は、透明な石灰釉を生成するのに用いられる既知の釉薬原料であるか、あるいは透明なナトリウム長石釉または透明なカリウム長石釉を生成するのに用いられる既知の釉薬原料であるか、あるいは透明な灰釉を生成するのに用いられる既知の釉薬原料であることができる。
前記の透明な石灰釉を生成できる基本釉の生成用の釉薬原料は、カリ長石と石灰石と珪石とカオリンを含有する微粒子状の材料(i)から成るか、もしくはカリ長石と陶石と石灰石とカオリンとを含有する微粒子状の材料(ii)より成るか、もしくはカリ長石と石灰石と炭酸バリウムと珪石とカオリンとを含有する微粒子状の材料(iii)より成るものである。また、前記の透明なナトリウム長石釉を生成できる基本釉の生成用の釉薬原料は、ナトリウム長石と炭酸バリウムと石灰石と珪石と炭酸リチウムとを含有する微粒子状材料からなるものである。また、前記の透明なカリウム長石釉を生成できる基本釉の生成用の釉薬原料は、カリ長石と石灰石と珪石とカオリンとドロマイトと炭酸バリウムと酸化亜鉛とを含有する微粒子状の材料から成るものである。さらに、前記の透明な灰釉を生成できる基本釉の生成用の釉薬原料は、長石または陶石と木灰とを含有する微粒子状材料から成るものである。
前記の透明な石灰釉を形成できる釉薬原料の調合の代表例は、37〜40重量部のカリ長石微粉末と、15〜17重量部の石灰石微粉末と、34〜35重量部の珪石微粉末と10〜34重量部のカオリン・コロイド状粒子とを混合し、得られた混合物を微粉砕して得られた微粒子状の材料(i)であるか、もしくは16〜19重量部のカリ長石微粉末と67〜69重量部の陶石微粉末と16〜18重量部の石灰石微粉末と、4〜6重量部のカオリン・コロイド状粒子を混合し、得られた混合物を微粉砕して得られた微粒子状の材料(ii)であるか、もしくは39〜41重量部のカリ長石微粉末と9〜11重量部の石灰石微粉末と15重量部の炭酸バリウム微粉末と24〜26重量部の珪石微粉末と、を9〜11重量部のカオリン・コロイド状粒子とを混合し、得られた混合物を微粉砕して得られた微粒子状の材料(iii)である。
そしてまた、前記の透明なナトリウム長石釉で形成できる原料の調合の代表例は39〜41重量部のナトリウム長石微粉末と、17〜19重量部の炭酸バリウム微粉末と、10〜12重量部の石灰石微粉末と、26〜28重量部の珪石微粉末と4〜5重量部の炭酸リチウム(鉱化剤として作用するもの)とを混合し、その混合物を微粉末に粉砕して得られた微粒子状材料である(前記の大西著「陶芸の釉薬」新版、41〜230頁、参照)。
本発明の球形カプセルの芯部層、中間層および皮膜層のいずれか一つは、窯変を起す作用をもつことが従来知られる着色料、例えば金物質、銀物質、鉄物質、銅物質のような金属物質、あるいはこれら金属の酸化物または塩化物を所望ならば含有でき、また、そのような着色料とは別個に、またはそれに追加的に、基本釉を着色できる従来既知の各種の普通な着色料、例えば酸化第二鉄、四三酸化鉄、酸化銅、酸化コバルトのような金属酸化物、あるいは炭酸鉄、炭酸銅のような炭酸金属塩、酢酸銅のような酢酸金属塩、もしくは金塩、銀塩を含有できる。
従って、本発明の球形カプセル中に用いることのできるところの、基本釉の生成用の前記釉薬原料と一緒に焼成された時に、生成される釉層を、着色できる無機着色料は、酸化第二銅、酸化第二鉄(ベンガラ)、酸化クロム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化ウラニウム、酸化セリウム、酸化チタンまたは酸化ネオジウムであることもできる金属酸化物の形の既知の無機着色料であるか、金属炭酸塩の形の既知の無機着色料であるか、または金属のケイ酸塩、クロム酸塩の形の、もしくは金属の硫化物またはセレン化物の形の既知の無機着色料であるか、または生成される釉層の中に分散した状態で着色をできる金属金、金属銀、金属カドミウム、金属クロムまたは金属セレンの形の既知の無機着色料であることができる。
さらに、本発明の球形カプセルを構成する芯部層、中間層、皮膜層をそれぞれ形成する物質の何れかに任意に配合できるところの着色料であって、窯変効果を示す小点、斑点または斑紋状の模様を、生成される釉層に生成できる着色料として有効であることのできる前記に記載の金属物質または金属化合物は、陶磁器用の上絵具または下絵具で顔料として用いられる既知のテルペン油可溶性の金化合物、特に樹脂酸の金塩、金コロイド、銀、銀コロイド、酸化第二鉄(ベンガラ)、炭酸第二鉄、酸化第二銅または炭酸第二銅であるか、あるいはこれら物質の2種またはそれ以上から成るものであることができる。
また、前記の着色料は、後記の実施例4、(a)、(i)および(b)にあげられた各種の色をもつ顔料の市販品であることができる。
一般的には、カプセル中に配合された釉薬原料の総重量に基づいて、0.1重量%ないし20重量%の量の着色料を配合し、それによって釉層を着色できる。釉の種類によって、着色料の種類によって、また釉を着色しようと望む色相の種類によって、着色料の配合量を適当に調整することは、当業者の裁量によるところである(前記の大西著「陶芸の釉薬」新版、64〜70頁、参照)。例えば青磁釉は、着色料として1〜2重量%の量の酸化第二鉄で着色でき、黒天目釉または油滴天目釉は8〜10重量%の量の酸化第二鉄で着色でき、また銀油滴天目釉は、8〜13重量%の量の酸化第二鉄と、1〜3重量%の量の炭酸マンガン(着色補助剤)の配合で着色できる。
本発明の球形カプセルでは、カプセルにおける芯部の芯材物質中に、またはカプセルの中間層を形成する材料物質の中に任意に配合することもできる熱分解性の有機質結合剤は、前記した皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムの硬化物であるか、あるいは有機結合剤としてのアルギン酸ナトリウムであることができる。
本発明による芯部とシームレスな皮膜層をもつ球形カプセルの芯部をなす内層は、透明な基本釉、好ましくは石灰釉の生成用の釉薬原料と、この基本釉を着色できる少くとも1つの無機着色料と、有機結合剤、好ましくはアルギン酸ナトリウム、あるいは皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムの硬化物との固体状混合物から形成されており、しかも該カプセルの皮膜層は該基本釉の生成用の釉薬原料と該着色料と該皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムとの固体状混合物からなるか、もしくは前記の皮膜形成能のある熱分解性有機物質からなる多孔質構造の固体層で形成されてあることができる。
本発明の球形カプセルの好ましい第1の実施態様によると、多層な複合構造をもつ球形カプセルの芯部をなす最内層は、透明な基本釉、好ましくは石灰釉の生成用の釉薬原料と、該基本釉を着色できる少くとも1つの無機着色料と、皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムの硬化物との固体状混合物から形成されてあり、また該芯部を包被する1つのまたはそれ以上の中間層は、芯部に含有された無機着色料で発色される色とは異なる色を発色できる別種の無機着色料と、該基本釉の生成用の釉薬原料と、前記の皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムの硬化物との固体状混合物から形成されており、さらに該中間層を最も外方から包被する皮膜層は、該皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムの硬化物からなるか、もしくは該皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムと無機着色料との固体状混合物からなる多孔質構造の固体層で形成されているところの、多層な複合構造をもつ球形カプセルが提供される(後記の実施例2および実施例4〜実施例7、参照)。
なお、本発明においては、球形カプセルを構成する芯部層、中間層、皮膜層をそれぞれ形成する物質のうちで、釉薬原料を含有する層を形成する物質は、融剤を追加的に含有することもできる。
本発明の球形カプセルの好ましい第2の実施態様によると、球形カプセルの芯部をなす内層と、該内層を包被するシームレスな皮膜層とのみから構成された球形カプセルであり、しかも該芯部の芯材物質は、窯変効果をもつ小点、斑点または斑紋状の模様を、生成される釉層に形成できる無機着色料として有効であることのできる前記の金属物質および金属化合物でありうるテルペン油可溶性の金化合物および金コロイド状微粒子、ならびに融剤を含有する市販の金液で形成されているか、もしくは、該芯材物質は、金属化合物の形の無機着色料と透明な基本釉、好ましくは石灰釉の生成用の釉薬原料および(または)皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムの硬化物とを含む固体状または半固体状の混合物、もしくは追加的に少量の水も含む液状の混合物で形成されてあり、しかも該皮膜層を形成する皮膜材物質は、無機着色料、好ましくはトルコ青釉に含まれる着色料として知られる酸化第二銅と、透明な基本釉、好ましくはナトリウム長石釉の生成用の釉薬原料と、皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムの硬化物との固体状混合物からなり、しかも多孔質構造をもつ固体層であるところの球形カプセルが提供される。
本発明の球形カプセルでは、カプセルの全体の立体形態は完全な球形からやや変形されており、カプセル表面には局部的に小さいくびれ部または小さい突起部をもつことができるものであり、あるいは球形カプセルは全体としては長円球または涙滴形に近い形態を有することのできるものである。また皮膜層の構成材物質の分量は、カプセル1個の総重量に基いて5〜15重量%の範囲であることができる。
本発明の球形カプセルの平均粒径は0.1mmないし8mmの範囲、好ましくは0.5mm〜3mmの範囲であることができる。また所望ならば、その平均粒径は0.1mmより小さくすることもでき、また8mmより大きくすることができる。カプセルに配合された釉薬原料の分量は、カプセルの1個の総重量に基いて80〜95重量%の範囲であることができ、また着色料の分量は5〜15重量%の範囲であることができる。
次に、第1の本発明の球形カプセルを製造するための幾つかの方法を説明するが、この方法は前記の米国特許と日本特許に示されたシームレスの球形カプセルの製造方法に準ずるものである。
カプセルの芯部を形成する芯材物質が液体であり且つこれを固体状の皮膜層で包被する場合の2層構造の球形カプセルを製造する方法の概要を、以下に説明する。
添付図面の第3図に図解的に示された縦断面をもち斜視図で表される装置構造をもつ2重管ノズルを具えたカプセル製造装置を用意する。この装置の内方ノズル管(4)の上方からその内方ノズル管の内腔(7)中に、カプセルの芯部層を形成する芯材物質の液状原料を装入する。内方ノズル管(4)の先端部(5)を通って、内方ノズル管のノズル孔(6)からその芯材物質の液状原料を下向きに押出させる。
また、それと同時に、カプセル製造装置に設けた皮膜層の形成用の液状原料の供給室(1’)内にカプセル皮膜層を形成するべき皮膜材物質のゲル化性の液状原料を装填しておく。外方ノズル管(1)の内壁と内方ノズル管の外壁との間に形成された中間チャネル(8)を通して皮膜材物質の液状原料を押送する。なお、内方ノズル管のノズル孔(6)の開口位置は外方ノズル管のノズル孔(3)の開口位置よりも上下方向で高いところにあるように段差をつけるのがよい。外方ノズル管(1)の先細部(2)の先端で、外方ノズル管のノズル孔(3)の周壁と、内方ノズル管のノズル孔(6)の間に形成された環状スリットを通して、前記の皮膜材物質の液状原料を流出させると、内方ノズル管のノズル孔(6)から出た液よりなる液流の周囲を、上記の皮膜材物質の液状原料が皮膜の形で包囲して、内外2層の構造をもつ液流1本が外方ノズルのノズル孔のノズル孔(3)の出口に近い場所で形成される。そして、その内外2層の液流がやや流下すると、液流が自然に細くくびれて次々に液滴になる現象が起きる(米国特許第4,695,466号の第4図または日本特許第3313124号の第1図、参照)。その結果として、芯材物質の原料よりなる丸い内層(芯部)と、これを包被する上記の皮膜材物質の液状原料液の皮膜層とから構成された2層構造の丸い液滴の複数個が外方ノズル管(3)の出口から出た液流の先端の所で次々と形成される。
内方ノズル管のノズル孔(6)の孔径を例えば0.72mmに調整し且つ外方ノズル管のノズル孔(3)の孔径を例えば1.43mmに調整し、しかも芯材物質の液状原料流出度と前記の皮膜材物質の液状原料の流出速度とをそれぞれ適宜に加減する。こうすると、前記の2層構造の丸い液滴の1個あたりの、その2層構造の液滴の内層(芯材物質の液状原料よりなる層)の重量と、皮膜層(皮膜材物質の液体原料よりなる層)の重量との平均比率がほぼ一定に保持できながら、前記の2層構造の丸い液滴の多くが次々と継続的に形成される。これらの丸い液滴の直径と大きさは、各個ではそれぞれ多少、変動するけれどもほぼ同じである。
前記のように次々に形成された2層構造の複数の丸い液滴を、皮膜材物質の液状原料をゲル化できるゲル化剤の水溶液内に次々に滴下させる。滴下した液滴を前記のゲル化剤水溶液よりなる液浴内に約5〜10分間保持すると、各々の液滴の皮膜層に含まれた皮膜形成能のあるゲル化物質がゲル化し、そして硬化する。このようにして、丈夫な皮膜をもつ丸いカプセル状粒子の多数が前記の液浴内で形成される。
これら多数の丸いカプセル状粒子をゲル化剤水溶液の液浴から分離し、さらに室温で水洗する。その後に、水洗された丸いカプセル状粒子を乾燥空気流の中で乾燥する。カプセル状粒子の皮膜層が固化するまで十分に乾燥を行う(後記の実施例1、(a)参照)。
固化した皮膜層をもつ乾燥した丸いカプセル状粒子は、上記の条件では1.5mm〜2.0mmの範囲の直径を有し、内層(芯部層)と、これを包囲する皮膜層とからなる2層構造の球形カプセルである。この球形カプセルの部分断面図とカプセルの半分の外形を斜視図で表わす図解図は、後記の実施例1で得られたカプセルを、図示する第1図と同様である。この球形カプセルは内層すなわち芯部層(1)と皮膜層(2)とを有する。
次に、固体状芯材物質からなる芯部層と皮膜層を有する球形カプセルを製造する方法を概略的に説明する。先づ、固体状芯材物質よりなる球形微粒子を予め作製し、これを前記の第3図に図示した2重管ノズル付きカプセル製造装置の内方ノズル管に装入し、内方ノズル管のノズル孔から球形微粒子を次々に押出す(後記の実施例1、(a)、(i)〜(v)参照、ならびに米国特許第4,695,466号の第3図、参照)。それと同時に、外方ノズル管に皮膜材物質のゲル化性液状原料を装入し、流下させ、そして外方ノズル管のノズル孔(3)の出口の所から押出した皮膜材物質の液状原料により、内方ノズルのノズル孔(6)から次々に押出された固体状微粒子表面を被覆させる。このようにして、皮膜材物質の液状原料よりなる被覆層を設けられた固体微粒子を形成する。それ以降は、前述した液体状の芯材物質よりなる内層を有する球形カプセルの製造法の後半工程と同様に処理すると、固体状芯材物質よりなる芯部層と皮膜材物質よりなる固体状皮膜層とを有する2層構造の球形カプセルを製造できる。
なお、固体状の芯部層と皮膜層とを有する2層の球形カプセルは、前記した第1回の実験におけると同様にして、1本のノズル管を利用しても製造できる(後記の実施例2、(a)、(i)、参照)。
さらに、固体状芯材物質からなる芯部層と、中間層と、皮膜層とを有する多層構造カプセルを製造する方法を説明する。
先づ、固体状芯材物質よりなる球状微粒子を予め作製し、このような微粒子の全表面に、中間層を形成する材料物質の液状原料をスプレー法、ドブ漬け法またはその他の適当な被覆法で施着し、カプセル中間層を形成する構成材物質の原料よりなる表面被覆をもつ各々の微粒子を形成する。このように得た微粒子を乾燥し、そして乾燥された被覆層をもつ微粒子を製造する。次に、このような被覆層をもつ固体微粒子を第3図に示した2重管ノズル付きカプセル製造装置の内方ノズル管に装入し、それ以降の工程は、前記した固体状芯材物質よりなる芯部層をもつ球形カプセルの製造法と同様な要領で加工する。このようにすると、所望の多層構造の球形カプセルを製造できる(後記の実施例2、(a)参照)。
さらにまた、芯部層と中間層と皮膜層とをもつ多層構造カプセルを製造する方法を説明する。
すなわち、第3図に図示された二重管ノズル管付きカプセル製造装置において、内方ノズル管と外方ノズル管とからなる2重管ノズルに代えて、同軸的に設けられた内方ノズル管、中間ノズル管および外方ノズル管よりなる3重管ノズルを備えたカプセル製造装置を用意する(米国特許第4,695,466号の第1図ならびに本願の添付図面の第5図、参照)。内方ノズル管内(4)には、芯材物質の液状原料を装入し、中間ノズル管中には、ゲル化できる液状の中間層構成材物質を装入し、外方ノズル管(1)中には、皮膜材物質のゲル化性の液状原料を装入する。それ以降は、前記のカプセル製造法と同様な要領で実施すると、所望の多層構造の球形カプセルを製造できる。
第1の本発明の球形カプセルを用いて、装飾模様を有する陶磁器を製造するには、陶土製または磁土製の成形品の素焼き品の施釉した表面または未施釉の表面に、本発明の球形カプセルの複数個を点描画風の装飾模様を画きうる所望の好みの配置にて点在するように配列し、熱分解性の接着剤で貼り付ける。そのような接着剤は、スターチ糊が適する。球形カプセルを結着して有する施釉または未施釉の素焼き品は、その後に窯内に入れて徐々に加熱し、陶磁器の製造で使用される焼成条件下に仕上げ焼成する。市販の電気キルンも使用でき、使用した釉薬原料の種類、使用した着色料の種類、また着色料で発色させるべき色相の型に応じて酸化性雰囲気または還元性雰囲気下に、あるいはこれらの雰囲気の組合せの下に、1200〜1300℃の焼成温度で常法で焼成することができる。
従って、第2の本発明においては、前記に記載された第1の本発明の球形カプセルの多数個を、陶磁器の素焼き成形品の施釉表面または未施釉表面に、それらのカプセルで好みどおりの点描画風の装飾模様を画く位置に並べて点在するように配置させ、そして熱分解性有機質接着剤でそれらカプセルを該施釉または未施釉表面に結着させ、その後に、それらカプセルを結着している素焼き成形品を、徐々に加熱し、カプセルの中の釉薬原料を熔融して施釉のできる焼成温度で酸化性雰囲気または還元性雰囲気下に焼成するか、あるいは酸化性雰囲気下に次いで還元性雰囲気下で焼成し、その焼成中に前記の結着したカプセルを熔解させると共に、カプセル中の有機物質成分と該接着剤を焼散させ、得られた焼成品の表面上で前記カプセルの各個の熔解で生じた有色の小島状の釉層を形成し、それら有色の小島状釉層の組合わせで構成される有色の装飾模様を作出し、その後に、焼成品を徐冷し、さらに焼成品を室温にまで冷却することから成る、多数の有色の小島状釉層により、それら小島状釉層の組合わせで構成される装飾模様を施釉表面に有する陶磁器の製造方法が提供される。
焼成は陶磁器の製造で慣用される方法で行われる。焼成に当って、電気キルンを用いる場合に、酸化性雰囲気は高温の空気により作ることができる。また還元性雰囲気は、電気キルン中にガスバーナーを設け、ガス状炭化水素を含む燃料ガスの不完全燃焼が起る条件で酸素分が不足して且つ一酸化炭素などを含む燃焼ガスを発生させることにより作ることができる。
さらに、上記した陶土製または磁土製の成形品の素焼き素地の代りに、耐熱性の基体、例えば鉄、鉄合金製の基体、あるいは耐熱ガラス製の基体を用い、この耐熱性基体の表面に、第1の本発明の球形カプセルを好みの装飾模様を画く配列で接着し、さらに陶磁器の製造の場合と同じ要領で焼成することができる。このように焼成すると、耐熱性基体の表面上で、球形カプセルの各個の熔融で生成された多数の小島状斑点の形の有色の釉層を形成できる。そのように形成された前記の多数の有色の小島状釉層は、それらの組合わせにより、一種の装飾模様を作出できることが認められた。
従って、第3の本発明においては、第1の本発明で記載された球形カプセルの多数個を、それらカプセルに含まれる着色料の種類が相異なる組合わせで用意し、それらの各個のカプセルに含有された着色料が焼成後に発色する色彩を想定しながら、単一の色彩または相異なる色彩をもつ点描画風の絵模様を好み通りに画くことのできるカプセルの組合せになる仕様で、同一の種類のまたは相異なる種類の着色料を含有する種々の球形カプセルの複数個を選択し、そのように選択された種々の球形カプセルの複数個を、耐熱性基体の表面、特に、陶磁器の施釉表面または未施釉表面、もしくは耐熱性ガラス成形品の表面、エナメル被覆表面、鉄または鉄合金製の成形品の表面、銅または銅合金製の成形品の表面、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の成形品の表面、またはその他の耐熱性材料製の基体の表面の上に、それらカプセルにより点描画風の装飾模様を画く要領で並べて配置させ、しかもこのようにカプセルを並べる配置に当たっては、配置された複数個のカプセルの焼成後に各個のカプセルの熔解から生成されて基体表面に形成されるところの多数の有色の小島状釉層の示す各種の色彩が、それら小島状釉層の組合わせで構成される好みの点描画風の装飾的模様を画いて作出できるように配慮を行い、上記のように装飾模様を画くように配置された多数の前記カプセルを基体表面に熱分解性の有機質接着剤で結着させ、結着されたカプセルを表面に有する基体を、カプセル含有の釉薬原料を熔融させて施釉のできる焼成温度で酸化性雰囲気または還元性雰囲気下に焼成するか、あるいは酸化性雰囲気下に次いで還元性雰囲気で焼成し、前記の結着したカプセルを熔解させ、カプセル中の有機物質成分と該接着剤を焼散させ、得られた焼成品の表面上で該カプセルの各個の熔解で生じた有色の小島状釉層の多数を形成させ、そしてそれら多数の有色の小島状釉層の組合わせで構成される点描画風の装飾模様を焼成品表面に作出し、その後に焼成品を徐冷し、さらに該焼成品を室温に冷却することから成る、該基体表面上に生成された有色の小島状釉層の多数の組合わせで構成される有色の装飾模様を耐熱性基体の表面に作出する装飾方法が提供される。
第3の本発明の方法においても、その焼成工程は陶磁器の製造法で慣用される方法に準じて実施できる。
また、陶磁器の製造に当って、従来知られた窯変を示す釉層をもつ陶磁器を簡便な手段で、しかも確実に製造できる手段は、陶磁器製造の分野で未だ開発されていない。
本発明の第1の目的は、陶磁器を含めて耐熱性基体の表面の上に、目にざん新で美しい単色または多色の装飾模様または装飾効果を、小島状斑点の形の有色な釉層の多数の組合わせにより生成できる性能をもつと共に、所望される場合には、美しい窯変を示す小島状斑点の形で生成される有色の釉層の多数の組合わせにより、美しい窯変を示す斑紋を地釉層に生成できる性能を有する球形カプセルであって、球形カプセルの囲りを継目無しに包囲する多孔質固体状のシームレスな皮膜層と、該皮膜層で包被された中央の芯部層と、所望に応じて設ける中間層とを有して、しかも該カプセルの内部には、無色の基本釉を生成できる釉薬原料の微粒子、および無色の基本釉を焼成時に着色できる無機質着色料を封入、含有している2層または多層の構造の球形カプセルを、新規な工業的製品として提供することにある。
本発明の第2の目的は、無色の基本釉を生成できる前記の釉薬原料の微粒子および前記の無機質着色料を封入、含有する前記の球形カプセルの複数個を用いながら、目にざん新で美しい単色または多色の装飾模様または装飾効果、もしくは窯変効果をもつ斑紋を表面に有する陶磁器を製造する新規な方法を提供することにある。
さらに、本発明の第3の目的は、前記した球形カプセルの複数個を用いて、陶磁器またはその他の耐熱性基体の表面上に有色の装飾模様または装飾効果を作り出すことから成る、新しい装飾方法を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、本明細書に示す後記の説明から明らかであろう。
本発明者らは、陶磁器の釉層に窯変を作出できる技術ならびに陶磁器の釉層の新しい上絵付け技術を開発するために、釉薬の新しい調合と新しい施釉法、ならびに釉と着色料との新しい配合について色々の研究を行った。それらの研究の一つの結果として、球形カプセルの囲りを継目なしに包囲するシームレスな皮膜層で包被される球形カプセルの中に、従来知られる無色で透明な基本釉(base glaze)を生成できる釉薬原料と、そのような基本釉を焼成時に着色できる既知の無機質着色料とをそれらの色々な組合わせの仕様で封入、含有させてなる球形カプセルを新しい工業的製品として製造することの着想を、本発明者らは得た。
この着想に基づいて、本発明者らは、下記の第1回の実験を行った。すなわち、この第1回の実験では、銀油滴天目釉を生成できる釉薬原料の微粉末状混合物の市販品を入手してから、この微粉末状混合物を水と60:40の重量比でよく混合して釉薬原料を含む泥漿(スラリーまたはスリップの形である)を作り、この泥漿をアルギン酸ナトリウムの5重量%を含むゾル状水溶液と1:1の重量比で混合してスラリー状混合物(a)を調製した。このスラリー状混合物(a)を、出口孔径1.44mmのノズル孔をもつ1本の直立ノズル管を通して下向きに押出した。押出された液流は、その下端で自然にくびれて次々に丸い液滴を形成した(例えば、前記の米国特許第4,695,446号明細書の添付図面の第4図、参照)。このように形成された丸い液滴をアルギン酸ナトリウムのゲル化剤として働く塩化カルシウムの2重量%を含む水溶液よりなる液浴中に室温で次々に滴下させた。この液浴中で約5分間保持すると、液浴に導入されたそれぞれの液滴について液滴の表面層にCaイオンが浸透し、アルギン酸ナトリウムと反応するのでそれぞれの液滴の表面では、アルギン酸カルシウムのゲル状硬化物を含む皮膜層が形成されることを認めた。その結果、ゲル状の表面皮膜層で包被された継目なしの球形カプセル粒子の多数が前記の液浴内で滴下された前記の丸い液滴の各々から形成された。このように形成された多数の球形カプセル粒子を前記の液浴から取出した。
それら球形カプセル微粒子の1個を中央でナイフにより切断すると、球形カプセル粒子の表面層は、アルギン酸Caのゲル状硬化物よりなる皮膜であるが、このゲル状物質の皮膜で包被された芯部層は前記のスラリー状混合物(a)の液体のままであることが観察された。このように取出された球形カプセル粒子を20℃の乾燥空気流中でカプセル粒子の芯部を含めて、粒子全体が固化するまで十分に乾燥させた。これによって、それぞれ約1.0mmの粒径をもつ乾燥した球形カプセル粒子の多数が収得できた(後記の実施例2、(a)、(i)の記載、参照)。
これら乾燥し固化した2層構造の球形カプセル粒子の各個では、それの表面のシームレスな皮膜層は、銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料の微粒子と、アルギン酸カルシウムの硬化物との固体状混合物から構成されており、しかも水分の蒸発で生じた多くの細孔を有する多孔質な構造をもつが、該表面皮膜層で包被された固体状の芯部層が酸化第二鉄を着色料として含む銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料とアルギン酸ナトリウム(有機結合剤として作用する物質)との固体状混合物よりなることが認められた。
他方、陶土製の素焼きタイル板に市販の乳白色釉の泥漿を浸し掛けし、自然乾燥した。このように施釉、乾燥されたタイル板表面に、前記で得られた乾燥、固化した2層構造の球形カプセル粒子(銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料の固体状混合物よりなる芯部層を有する球形カプセル)の数個を、スターチ糊で貼り付け、さらに自然乾燥させた。このように前記の球形カプセルを結着されたタイル板を、電気キルンに入れて徐々に加熱し、後記の実施例2、(b)に記載されると同様な要領で最高1235℃の焼成温度で酸化性雰囲気下に焼成した。このように焼成されたタイル板は、その板の全面に乳白釉の地釉層をもち、そして、その地釉層の上には、結着した球形カプセルの各個の熔解で生成された小島状斑点の形の釉層の複数が地釉層からやや隆起した状態で形成されたことが認められた。しかも、それらの小島状の斑点の形の釉層の各々の表面は、銀油滴天目釉の示す銀色の色相をもつことが認められて、顕微鏡下では鉄結晶の出現が観察できた。従って、このように得られた焼成タイル板では、乳白釉の地釉層の上に、銀油滴天目釉よりなる小島状斑点の組合わせで形成される銀色の装飾模様が作成されたことが認められた。
さらに下記の第2回の実験を本発明者は行った。すなわち、その第2回の実験では、第1回の実験で用いた銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料の市販品に代えて、トルコ青釉を生成できる釉薬原料の微粉末状混合物の市販品を入手し、この微粉末状混合物を水と60:40の重量比で混合して泥漿を作り、この泥漿に対してアルギン酸ナトリウムの5重量%水溶液(ゾル状)を後記の実施例3、(a)と同様に、1:1の重量比でよく混合して、スラリー状混合物(b)を調製した。このスラリー状混合物(b)を、前記の第1回の実験と同様にして、出口孔径1.44mmのノズル孔をもつ1本の直立ノズル管を通して下向きに押出した。ノズル孔から押出された液流は、その下端で自然にくびれて次々に丸い液滴を形成した。このように形成されて上記のスラリー状混合物(b)(トルコ青釉の生成用の釉薬原料を含む)よりなる丸い液滴を、塩化カルシウムの2重量%水溶液よりなる液浴中に次々に滴下し、液浴内に滴下された液滴を室温で約5分間保持した。このようにして、上記のスラリー状混合物(b)の丸い液滴から生成されたところの、ゲル状の物質よりなる表面皮膜層で包被された球形カプセル粒子の多数が前記の液浴内で形成された。液浴から取出された球形カプセル粒子を、前記の第1回の実験と同様にして粒子全体を乾燥により固化させた。このように得られた全体が固化した乾燥カプセル粒子を用いて、それ以降の各工程は、前記の第1回実験と全く同じ手順で行って実験を続けた。
その結果、最終的に得られた焼成タイル板は、乳白釉の地釉層をもち、そしてその地釉層の上には、用いた球形カプセルの各個の熔融で生成された小島状斑点の形の釉層の複数が形成されていた。それら小島状斑点の形の釉層の表面はトルコ青釉に特有の青緑色を呈しており、各斑点の釉層中に銅結晶が出現したことが観察された。こうして得た焼成タイル板では、乳白釉の地釉層の上に、トルコ青釉よりなる小島状斑点の組み合わせで形成される青緑色の装飾模様が作成されたことが認められた。
さらに行った第3回の実験では、例えば米国特許第4,695,466号明細書の添付図面の第1図に示された多層カプセル製造装置に設けられた二重管ノズルと同様な構造をもつ二重管ノズルを用意した。この二重管ノズルの内方ノズル管内には、陶磁器の上絵付け絵具として知られる金液の市販品を装入し、内方ノズル管のノズル孔から金液を下向きに押出した。また、同時に、前記の第2回実験で調製したスラリー状混合物(b)(トルコ青釉の生成用の釉薬原料とアルギン酸ナトリウム水溶液との混合物からなるスラリー)を、外方ノズル管内壁と内方ノズル管の外壁との間に形成された空室内に装入し、後記の実施例1、(a)に記載された同じ要領で、二重管ノズルの下方ノズル孔からスラリー状混合物(b)を下向きに押出した。後記の実施例1、(a)に記載されたと同様にして、前記の下方ノズル孔から押出された1本の液流は、その下端で自然にくびれて丸い液滴を次々に形成した(例えば、米国特許第4,695,466号の添付図面の第4図、参照)。このように形成された丸い液滴は、その内層が金液からなり、そしてその外層が前記のスラリー状混合物(b)よりなる2層構造を有した。
このような2層構造の丸い液滴を、塩化カルシウムの2重量%水溶液よりなる液浴中に次々に、実施例1、(a)と同様にして滴下した。その液浴内に液滴を5分間保持すると、各々の液滴から2層構造の球形カプセル粒子が形成された。これら2層構造の球形カプセルを液浴から取出して、前記の第1回実験と同様にして乾燥空気流の中で十分に乾燥して、球形カプセルの皮膜層を固化させた。得られた2層構造の球形カプセルの芯部層は前記の金液からなり、そしてその皮膜層は、継目なし(シームレス)であって、またトルコ青釉の生成用の釉薬原料とアルギン酸カルシウムの硬化物との固体状混合物からなり、しかも多孔質な構造をもつことが認められた。
このようにして得られた乾燥した2層構造の球形カプセルを用いて、それ以後の各工程は、前記の第1回実験と全く同じ手順で行って実験を続けた。その結果、最終的に得られた焼成タイル板は、乳白釉の地釉層の上に、用いた2重構造の球形カプセルの各個の熔融で生成された小島状の斑点の形の釉層の複数を有していた。それらの各々の小島状斑点の釉層の表面は、後記の実施例1、(b)に記載されると同様にして、同心的な2重円状の有色の縞模様を示し、それの外縁縞部が青色を呈し、また内方の縞部が紫色を帯びた金色を呈した。従って、得られた焼成タイル板では、乳白釉の地釉層の上に、前記の同心的な2重円の有色の縞模様をもつ小島状斑点が生成されており、それら斑点の組合せで形成された美しい装飾模様が作成されたことが認められた。
さらに行った第4回の実験では、例えば米国特許第4,695,466号の第1図に示された三重管ノズルと同様な構造をもつ三重管ノズルを用意した。そして、後記の実施例6、(a)、(i)、(ii)、(iii)に記載されると同じ手順で、3層構造の球形カプセルを製造し、また実施例6、(b)に記載されると同様にして、該3層構造の球形カプセルを用いて絵付け陶器皿を作製した。その結果、焼成された陶器皿では、乳白釉の地釉層の上に、赤色の外縁部分と黄色の内方部分とをもつほぼ同心的な2重円の縞模様をもつ小島状斑点の形の釉層の複数が該球形カプセルの各々の熔融により生成されており、そして焼成タイル板は前記の斑点の組合わせで構成された美しい装飾模様を表わすことが認められた。
前記のように、1本のノズル管を具えた球形カプセル製造装置を利用して、芯部層と皮膜層とのみを有する単純な2層構造で継目のない(シームレス)球形カプセルを製造する既知の技術、ならびに2重管ノズル、3重管ノズルまたは4重管ノズルを具えて利用する3層またはそれ以上の多層構造のシームレスの球形カプセルの製造装置を利用して、多層構造で継目のない球形カプセルを製造する既知の技術を応用し、またそれと共に、製造すべき球形カプセルに封入される基本釉の生成用の釉薬原料の色々な種類と、配合されるべき無機質着色料の色々な種類と、カプセル皮膜層の形成に用いる皮膜形成能のある物質の色々な種類とを各様な組合せで用いて、球形カプセルの作製を試みる一連の多数の実験を行った。これらの一連の実験の結果として、各種の基本釉の生成用の釉薬原料と、基本釉を着色できる各種の着色料とを封入してあり、そして芯部層と皮膜層とを有する2層構造で継目のない(シームレス)球形カプセル、もしくは芯部層と、芯部層を包被する1つまたは複数の中間層と、中間層を最も外方から包被する皮膜層とを有する多層構造で継目のない(シームレス)球形カプセルの各種各様な製品を製造することに成功した。
その結果、上記のような2層または多層構造の球形カプセルの内層の芯部を構成する芯材物質と、カプセルの最も外側に設けられる皮膜層を構成する皮膜材物質と、芯部の内層と該皮膜層との間に所望ならば設けることもできる単数または複数の中間層を形成する構成物質とのうちの少なくとも一つは、窯変を起す作用をもつ着色料として有効である金属物質・金属化合物を所望ならば任意に含有できると共に、しかも該内層の芯材物質と、中間層をなす構成材の物質と、皮膜層をなす皮膜材物質とのうちで少なくとも1つが基本釉の生成用の釉薬原料と釉の着色用の着色料とをそれぞれ別々に、もしくは該釉薬原料と、釉の着色用の着色料とを同時に一緒に含有するようにして、該釉薬原料と、釉を着色できる着色料とが封入された2層構造、3層構造またはそれ以上の多層構造のシームレスな球形カプセルを製造できることを、本発明者らは知見した。
前記のようにして製造された2層またはそれ以上の多層構造のカプセルは、これらカプセルの複数個を陶磁器の素焼き成形品の施釉品または未施釉品の表面に、適当な装飾模様を画くように好みの配置で点在して配列するように熱分解性有機質接着剤、例えばスターチ糊剤で貼り付け、その後に、それらカプセルを結着して有する素焼き成形品を窯内に入れて徐々に加熱し、そして1000℃以上の仕上げ焼成温度で酸化性雰囲気または還元性雰囲気下に焼成する場合に、各個のカプセルが熔解し、カプセル中の有機物質が焼失し、またカプセル内の釉薬原料と釉用の着色料とが一緒になって熔融して有色の釉層を生成するが、この釉層の生成に当ってカプセル中に含まれた物質成分が種々な化学的変化、物理的変化を受けることになること、またその結果、仕上げ焼成品の表面に美しい着色した小島状斑点の形態の釉層を作出できることが今回、知見された。上記の諸知見に基づいて、本発明は完成されたのである。
従って、第1の本発明においては球形カプセルの芯部をなす内層と、該芯部を外方から包被するシームレスな皮膜層とから構成された球形カプセルであるか、あるいは球形カプセルの芯部をなす最内層と、該球形カプセルを最も外方から包被するシームレスな皮膜層と、該芯部をなす最内層と該皮膜層との間に介在して設けてある単数または複数の中間層とから構成された多層の複合構造の球形カプセルであって、該皮膜層を形成する皮膜材物質は、皮膜形成能のある熱分解性有機物質からなるか、または該皮膜形成能のある熱分解性有機物質と後記の釉薬原料および(または)後記の着色料との固体状混合物からなるものであり、さらに該芯部を形成する芯材物質と、該皮膜層を形成する皮膜材物質と、該中間層を形成する材料物質とのうちの少くとも一つは、焼成時に透明な釉層を生成できる基本釉の生成用の釉薬原料を含有しており、また該芯部を形成する前記の芯材物質と、該皮膜材物質と、該中間層を形成する前記の材料物質とのうちの少くとも一つは、焼成時に生成される透明な釉を着色できる無機着色料を含有しており、しかも該芯材物質と、該皮膜材物質と、該中間層を形成する前記の材料物質とのうちの少くとも一つは、透明な釉を生成できる前記の基本釉の生成用の釉薬原料と一緒に焼成するときに、窯変効果を示す小点、斑点または斑紋状の模様を、生成される釉層に形成できる着色料として有効であることのできる金属物質および(または)金属化合物を含有するか、もしくは前記の金属物質または金属化合物は該芯部、中間層および皮膜層をそれぞれ形成する物質の何れにも全く含有されなくともよいものであり、しかも該芯材物質と、該中間層を形成する前記の材料物質との一方または両方は、熱分解性の有機質結合剤をさらに任意に含有できることを特徴とする、焼成された時に透明な釉層を生成できる透明な基本釉の生成用の釉薬原料と、透明な基本釉を着色できる着色料とを含有、封入する球形カプセルが提供される。
第1の本発明のカプセルは、球形カプセルの芯部をなす内層と、該内層を外方から包被するシームレスな皮膜層とから構成された継目なしの球形カプセルの形であることができる。また、第1の本発明の球形カプセルは、球形カプセルの芯部をなす最内層と、該芯部を包被する1つ、2つまたは3つの中間層と、中間層を最も外方から包被するシームレスな皮膜層とから構成された多層な複合構造で継目なしの球形カプセルの形であることもできる。
第1の本発明による継目なし(シームレス)の球形カプセルにおいて、カプセルの皮膜層を形成する皮膜材物質、またこれのための原料は、皮膜形成能のある熱分解性有機物質であり、好ましくは、ゼラチンのようなタンパク質、あるいはペクチン、メトキシペクチン、アルギン酸のような多糖類であるが、普通には、ゲル化剤で処理されるとゲル状にゲル化できる性質をもつ有機物質であることができる。またはそのようなゲル化性の有機物質を含むことができる。前記のタンパク質または多糖類の硬化物がカプセル皮膜層に含まれる主要成分であるか、もしくはそれだけでカプセル皮膜層を形成する。前記のタンパク質と多糖類は、それぞれ単独に、あるいは2種以上混合して使用できる。カプセル皮膜層は、その中に着色料を配合することもできる。
一般的には、前記の皮膜形成能のある有機物質は、米国特許第4,695,466号明細書に記載されるフィルム形成性物質(film−forming substance)や、日本特許第3313124号明細書2頁に示される皮膜剤物質を用いうる。アルギン酸ナトリウム水溶液を皮膜材物質の原料として用い、これを塩化カルシウム水溶液と接触させ、Caイオンと反応してイオン架橋することで生成されるアルギン酸カルシウムのゲル状硬化物を含む皮膜材原料物質から生成された固体状の皮膜層を球形カプセルに設けるのが好適である。
本発明の球形カプセルにおいて、カプセルの皮膜層を形成する前記の皮膜材物質中にある皮膜形成能のある熱分解性有機物質がアルギン酸カルシウムの硬化物、ペクチンまたはメトキシペクチンの硬化物、ゼラチン硬化物またはカゼイン硬化物のような多糖類またはタンパク質であり、しかも該皮膜層は多数の細孔を含有して多孔質の構造をもつ固体層で形成されてあることが好ましい。
本発明の球形カプセルの中央の芯部層を形成する芯材物質は、液状、半固体状または固体状でよい。この芯材物質は陶芸用の各種の着色料(着色剤の微粒子、あるいは油性または水性スラリー状にした着色剤微粒子の分散液の形である)だけから成ることもでき、または該着色料と他の成分との混合物であることができる。例えば、前記の金液(水金とも言われて、融剤を含むのが普通である)それだけで芯材物質を形成できる。芯材物質の中に、それの主要成分として、上記のゲル化できる皮膜形成性タンパク質または多糖類よりなる有機質結合剤を配合することもできる。また芯材物質の中に窯変を作出するのに有効であると従来知られる既知の着色料を配合することも可能である。
本発明の球形カプセルの芯部層と皮膜層との間には、所望ならば、単数または相重なる複数の中間層を介在するように設けることもできる。この中間層を形成する材料物質は、基本釉を焼成時に着色できる着色料と、基本釉の生成用の釉薬原料の微粒子と、熱分解性の有機質結合剤との固体状混合物から成るか、あるいは前記の着色料と有機質結合剤との固体状混合物から成ることができる。中間層を形成する材料物質のための原料を含む溶液中に前記のゲル化性のタンパク質または多糖類のような有機質結合剤を配合されてあることができる。また、例えば、中間層は金液の乾燥残渣生成物のみからなることができ、そしてその中には窯変を起し得る着色料として有効である金コロイド粒子、金イオンが含有されることができる。
本発明の球形カプセル中に設けられた芯部層、中間層および皮膜層のうちの何れかの一つの層を形成する構成材物質は、基本釉生成用の釉薬原料の微粒子を含有できる。その基本釉は既知の釉薬であることができる。その市販品の釉薬原料の微粉末または水性スラリー(漿液すなわちスリップ)を用いて、本発明の球形カプセルを作製することのできる。自作の釉薬原料であってもよい。各種の基本釉の生成用の釉薬原料の各種の市販品をそれぞれ単独に、または数種組合わせて調合して、球形カプセルの製造に際して使用できる。
本発明の球形カプセルで使用できるところの、透明な釉層を焼成時に生成できる基本釉の生成用の釉薬原料は、透明な石灰釉を生成するのに用いられる既知の釉薬原料であるか、あるいは透明なナトリウム長石釉または透明なカリウム長石釉を生成するのに用いられる既知の釉薬原料であるか、あるいは透明な灰釉を生成するのに用いられる既知の釉薬原料であることができる。
前記の透明な石灰釉を生成できる基本釉の生成用の釉薬原料は、カリ長石と石灰石と珪石とカオリンを含有する微粒子状の材料(i)から成るか、もしくはカリ長石と陶石と石灰石とカオリンとを含有する微粒子状の材料(ii)より成るか、もしくはカリ長石と石灰石と炭酸バリウムと珪石とカオリンとを含有する微粒子状の材料(iii)より成るものである。また、前記の透明なナトリウム長石釉を生成できる基本釉の生成用の釉薬原料は、ナトリウム長石と炭酸バリウムと石灰石と珪石と炭酸リチウムとを含有する微粒子状材料からなるものである。また、前記の透明なカリウム長石釉を生成できる基本釉の生成用の釉薬原料は、カリ長石と石灰石と珪石とカオリンとドロマイトと炭酸バリウムと酸化亜鉛とを含有する微粒子状の材料から成るものである。さらに、前記の透明な灰釉を生成できる基本釉の生成用の釉薬原料は、長石または陶石と木灰とを含有する微粒子状材料から成るものである。
前記の透明な石灰釉を形成できる釉薬原料の調合の代表例は、37〜40重量部のカリ長石微粉末と、15〜17重量部の石灰石微粉末と、34〜35重量部の珪石微粉末と10〜34重量部のカオリン・コロイド状粒子とを混合し、得られた混合物を微粉砕して得られた微粒子状の材料(i)であるか、もしくは16〜19重量部のカリ長石微粉末と67〜69重量部の陶石微粉末と16〜18重量部の石灰石微粉末と、4〜6重量部のカオリン・コロイド状粒子を混合し、得られた混合物を微粉砕して得られた微粒子状の材料(ii)であるか、もしくは39〜41重量部のカリ長石微粉末と9〜11重量部の石灰石微粉末と15重量部の炭酸バリウム微粉末と24〜26重量部の珪石微粉末と、を9〜11重量部のカオリン・コロイド状粒子とを混合し、得られた混合物を微粉砕して得られた微粒子状の材料(iii)である。
そしてまた、前記の透明なナトリウム長石釉で形成できる原料の調合の代表例は39〜41重量部のナトリウム長石微粉末と、17〜19重量部の炭酸バリウム微粉末と、10〜12重量部の石灰石微粉末と、26〜28重量部の珪石微粉末と4〜5重量部の炭酸リチウム(鉱化剤として作用するもの)とを混合し、その混合物を微粉末に粉砕して得られた微粒子状材料である(前記の大西著「陶芸の釉薬」新版、41〜230頁、参照)。
本発明の球形カプセルの芯部層、中間層および皮膜層のいずれか一つは、窯変を起す作用をもつことが従来知られる着色料、例えば金物質、銀物質、鉄物質、銅物質のような金属物質、あるいはこれら金属の酸化物または塩化物を所望ならば含有でき、また、そのような着色料とは別個に、またはそれに追加的に、基本釉を着色できる従来既知の各種の普通な着色料、例えば酸化第二鉄、四三酸化鉄、酸化銅、酸化コバルトのような金属酸化物、あるいは炭酸鉄、炭酸銅のような炭酸金属塩、酢酸銅のような酢酸金属塩、もしくは金塩、銀塩を含有できる。
従って、本発明の球形カプセル中に用いることのできるところの、基本釉の生成用の前記釉薬原料と一緒に焼成された時に、生成される釉層を、着色できる無機着色料は、酸化第二銅、酸化第二鉄(ベンガラ)、酸化クロム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化ウラニウム、酸化セリウム、酸化チタンまたは酸化ネオジウムであることもできる金属酸化物の形の既知の無機着色料であるか、金属炭酸塩の形の既知の無機着色料であるか、または金属のケイ酸塩、クロム酸塩の形の、もしくは金属の硫化物またはセレン化物の形の既知の無機着色料であるか、または生成される釉層の中に分散した状態で着色をできる金属金、金属銀、金属カドミウム、金属クロムまたは金属セレンの形の既知の無機着色料であることができる。
さらに、本発明の球形カプセルを構成する芯部層、中間層、皮膜層をそれぞれ形成する物質の何れかに任意に配合できるところの着色料であって、窯変効果を示す小点、斑点または斑紋状の模様を、生成される釉層に生成できる着色料として有効であることのできる前記に記載の金属物質または金属化合物は、陶磁器用の上絵具または下絵具で顔料として用いられる既知のテルペン油可溶性の金化合物、特に樹脂酸の金塩、金コロイド、銀、銀コロイド、酸化第二鉄(ベンガラ)、炭酸第二鉄、酸化第二銅または炭酸第二銅であるか、あるいはこれら物質の2種またはそれ以上から成るものであることができる。
また、前記の着色料は、後記の実施例4、(a)、(i)および(b)にあげられた各種の色をもつ顔料の市販品であることができる。
一般的には、カプセル中に配合された釉薬原料の総重量に基づいて、0.1重量%ないし20重量%の量の着色料を配合し、それによって釉層を着色できる。釉の種類によって、着色料の種類によって、また釉を着色しようと望む色相の種類によって、着色料の配合量を適当に調整することは、当業者の裁量によるところである(前記の大西著「陶芸の釉薬」新版、64〜70頁、参照)。例えば青磁釉は、着色料として1〜2重量%の量の酸化第二鉄で着色でき、黒天目釉または油滴天目釉は8〜10重量%の量の酸化第二鉄で着色でき、また銀油滴天目釉は、8〜13重量%の量の酸化第二鉄と、1〜3重量%の量の炭酸マンガン(着色補助剤)の配合で着色できる。
本発明の球形カプセルでは、カプセルにおける芯部の芯材物質中に、またはカプセルの中間層を形成する材料物質の中に任意に配合することもできる熱分解性の有機質結合剤は、前記した皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムの硬化物であるか、あるいは有機結合剤としてのアルギン酸ナトリウムであることができる。
本発明による芯部とシームレスな皮膜層をもつ球形カプセルの芯部をなす内層は、透明な基本釉、好ましくは石灰釉の生成用の釉薬原料と、この基本釉を着色できる少くとも1つの無機着色料と、有機結合剤、好ましくはアルギン酸ナトリウム、あるいは皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムの硬化物との固体状混合物から形成されており、しかも該カプセルの皮膜層は該基本釉の生成用の釉薬原料と該着色料と該皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムとの固体状混合物からなるか、もしくは前記の皮膜形成能のある熱分解性有機物質からなる多孔質構造の固体層で形成されてあることができる。
本発明の球形カプセルの好ましい第1の実施態様によると、多層な複合構造をもつ球形カプセルの芯部をなす最内層は、透明な基本釉、好ましくは石灰釉の生成用の釉薬原料と、該基本釉を着色できる少くとも1つの無機着色料と、皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムの硬化物との固体状混合物から形成されてあり、また該芯部を包被する1つのまたはそれ以上の中間層は、芯部に含有された無機着色料で発色される色とは異なる色を発色できる別種の無機着色料と、該基本釉の生成用の釉薬原料と、前記の皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムの硬化物との固体状混合物から形成されており、さらに該中間層を最も外方から包被する皮膜層は、該皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムの硬化物からなるか、もしくは該皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムと無機着色料との固体状混合物からなる多孔質構造の固体層で形成されているところの、多層な複合構造をもつ球形カプセルが提供される(後記の実施例2および実施例4〜実施例7、参照)。
なお、本発明においては、球形カプセルを構成する芯部層、中間層、皮膜層をそれぞれ形成する物質のうちで、釉薬原料を含有する層を形成する物質は、融剤を追加的に含有することもできる。
本発明の球形カプセルの好ましい第2の実施態様によると、球形カプセルの芯部をなす内層と、該内層を包被するシームレスな皮膜層とのみから構成された球形カプセルであり、しかも該芯部の芯材物質は、窯変効果をもつ小点、斑点または斑紋状の模様を、生成される釉層に形成できる無機着色料として有効であることのできる前記の金属物質および金属化合物でありうるテルペン油可溶性の金化合物および金コロイド状微粒子、ならびに融剤を含有する市販の金液で形成されているか、もしくは、該芯材物質は、金属化合物の形の無機着色料と透明な基本釉、好ましくは石灰釉の生成用の釉薬原料および(または)皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムの硬化物とを含む固体状または半固体状の混合物、もしくは追加的に少量の水も含む液状の混合物で形成されてあり、しかも該皮膜層を形成する皮膜材物質は、無機着色料、好ましくはトルコ青釉に含まれる着色料として知られる酸化第二銅と、透明な基本釉、好ましくはナトリウム長石釉の生成用の釉薬原料と、皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムの硬化物との固体状混合物からなり、しかも多孔質構造をもつ固体層であるところの球形カプセルが提供される。
本発明の球形カプセルでは、カプセルの全体の立体形態は完全な球形からやや変形されており、カプセル表面には局部的に小さいくびれ部または小さい突起部をもつことができるものであり、あるいは球形カプセルは全体としては長円球または涙滴形に近い形態を有することのできるものである。また皮膜層の構成材物質の分量は、カプセル1個の総重量に基いて5〜15重量%の範囲であることができる。
本発明の球形カプセルの平均粒径は0.1mmないし8mmの範囲、好ましくは0.5mm〜3mmの範囲であることができる。また所望ならば、その平均粒径は0.1mmより小さくすることもでき、また8mmより大きくすることができる。カプセルに配合された釉薬原料の分量は、カプセルの1個の総重量に基いて80〜95重量%の範囲であることができ、また着色料の分量は5〜15重量%の範囲であることができる。
次に、第1の本発明の球形カプセルを製造するための幾つかの方法を説明するが、この方法は前記の米国特許と日本特許に示されたシームレスの球形カプセルの製造方法に準ずるものである。
カプセルの芯部を形成する芯材物質が液体であり且つこれを固体状の皮膜層で包被する場合の2層構造の球形カプセルを製造する方法の概要を、以下に説明する。
添付図面の第3図に図解的に示された縦断面をもち斜視図で表される装置構造をもつ2重管ノズルを具えたカプセル製造装置を用意する。この装置の内方ノズル管(4)の上方からその内方ノズル管の内腔(7)中に、カプセルの芯部層を形成する芯材物質の液状原料を装入する。内方ノズル管(4)の先端部(5)を通って、内方ノズル管のノズル孔(6)からその芯材物質の液状原料を下向きに押出させる。
また、それと同時に、カプセル製造装置に設けた皮膜層の形成用の液状原料の供給室(1’)内にカプセル皮膜層を形成するべき皮膜材物質のゲル化性の液状原料を装填しておく。外方ノズル管(1)の内壁と内方ノズル管の外壁との間に形成された中間チャネル(8)を通して皮膜材物質の液状原料を押送する。なお、内方ノズル管のノズル孔(6)の開口位置は外方ノズル管のノズル孔(3)の開口位置よりも上下方向で高いところにあるように段差をつけるのがよい。外方ノズル管(1)の先細部(2)の先端で、外方ノズル管のノズル孔(3)の周壁と、内方ノズル管のノズル孔(6)の間に形成された環状スリットを通して、前記の皮膜材物質の液状原料を流出させると、内方ノズル管のノズル孔(6)から出た液よりなる液流の周囲を、上記の皮膜材物質の液状原料が皮膜の形で包囲して、内外2層の構造をもつ液流1本が外方ノズルのノズル孔のノズル孔(3)の出口に近い場所で形成される。そして、その内外2層の液流がやや流下すると、液流が自然に細くくびれて次々に液滴になる現象が起きる(米国特許第4,695,466号の第4図または日本特許第3313124号の第1図、参照)。その結果として、芯材物質の原料よりなる丸い内層(芯部)と、これを包被する上記の皮膜材物質の液状原料液の皮膜層とから構成された2層構造の丸い液滴の複数個が外方ノズル管(3)の出口から出た液流の先端の所で次々と形成される。
内方ノズル管のノズル孔(6)の孔径を例えば0.72mmに調整し且つ外方ノズル管のノズル孔(3)の孔径を例えば1.43mmに調整し、しかも芯材物質の液状原料流出度と前記の皮膜材物質の液状原料の流出速度とをそれぞれ適宜に加減する。こうすると、前記の2層構造の丸い液滴の1個あたりの、その2層構造の液滴の内層(芯材物質の液状原料よりなる層)の重量と、皮膜層(皮膜材物質の液体原料よりなる層)の重量との平均比率がほぼ一定に保持できながら、前記の2層構造の丸い液滴の多くが次々と継続的に形成される。これらの丸い液滴の直径と大きさは、各個ではそれぞれ多少、変動するけれどもほぼ同じである。
前記のように次々に形成された2層構造の複数の丸い液滴を、皮膜材物質の液状原料をゲル化できるゲル化剤の水溶液内に次々に滴下させる。滴下した液滴を前記のゲル化剤水溶液よりなる液浴内に約5〜10分間保持すると、各々の液滴の皮膜層に含まれた皮膜形成能のあるゲル化物質がゲル化し、そして硬化する。このようにして、丈夫な皮膜をもつ丸いカプセル状粒子の多数が前記の液浴内で形成される。
これら多数の丸いカプセル状粒子をゲル化剤水溶液の液浴から分離し、さらに室温で水洗する。その後に、水洗された丸いカプセル状粒子を乾燥空気流の中で乾燥する。カプセル状粒子の皮膜層が固化するまで十分に乾燥を行う(後記の実施例1、(a)参照)。
固化した皮膜層をもつ乾燥した丸いカプセル状粒子は、上記の条件では1.5mm〜2.0mmの範囲の直径を有し、内層(芯部層)と、これを包囲する皮膜層とからなる2層構造の球形カプセルである。この球形カプセルの部分断面図とカプセルの半分の外形を斜視図で表わす図解図は、後記の実施例1で得られたカプセルを、図示する第1図と同様である。この球形カプセルは内層すなわち芯部層(1)と皮膜層(2)とを有する。
次に、固体状芯材物質からなる芯部層と皮膜層を有する球形カプセルを製造する方法を概略的に説明する。先づ、固体状芯材物質よりなる球形微粒子を予め作製し、これを前記の第3図に図示した2重管ノズル付きカプセル製造装置の内方ノズル管に装入し、内方ノズル管のノズル孔から球形微粒子を次々に押出す(後記の実施例1、(a)、(i)〜(v)参照、ならびに米国特許第4,695,466号の第3図、参照)。それと同時に、外方ノズル管に皮膜材物質のゲル化性液状原料を装入し、流下させ、そして外方ノズル管のノズル孔(3)の出口の所から押出した皮膜材物質の液状原料により、内方ノズルのノズル孔(6)から次々に押出された固体状微粒子表面を被覆させる。このようにして、皮膜材物質の液状原料よりなる被覆層を設けられた固体微粒子を形成する。それ以降は、前述した液体状の芯材物質よりなる内層を有する球形カプセルの製造法の後半工程と同様に処理すると、固体状芯材物質よりなる芯部層と皮膜材物質よりなる固体状皮膜層とを有する2層構造の球形カプセルを製造できる。
なお、固体状の芯部層と皮膜層とを有する2層の球形カプセルは、前記した第1回の実験におけると同様にして、1本のノズル管を利用しても製造できる(後記の実施例2、(a)、(i)、参照)。
さらに、固体状芯材物質からなる芯部層と、中間層と、皮膜層とを有する多層構造カプセルを製造する方法を説明する。
先づ、固体状芯材物質よりなる球状微粒子を予め作製し、このような微粒子の全表面に、中間層を形成する材料物質の液状原料をスプレー法、ドブ漬け法またはその他の適当な被覆法で施着し、カプセル中間層を形成する構成材物質の原料よりなる表面被覆をもつ各々の微粒子を形成する。このように得た微粒子を乾燥し、そして乾燥された被覆層をもつ微粒子を製造する。次に、このような被覆層をもつ固体微粒子を第3図に示した2重管ノズル付きカプセル製造装置の内方ノズル管に装入し、それ以降の工程は、前記した固体状芯材物質よりなる芯部層をもつ球形カプセルの製造法と同様な要領で加工する。このようにすると、所望の多層構造の球形カプセルを製造できる(後記の実施例2、(a)参照)。
さらにまた、芯部層と中間層と皮膜層とをもつ多層構造カプセルを製造する方法を説明する。
すなわち、第3図に図示された二重管ノズル管付きカプセル製造装置において、内方ノズル管と外方ノズル管とからなる2重管ノズルに代えて、同軸的に設けられた内方ノズル管、中間ノズル管および外方ノズル管よりなる3重管ノズルを備えたカプセル製造装置を用意する(米国特許第4,695,466号の第1図ならびに本願の添付図面の第5図、参照)。内方ノズル管内(4)には、芯材物質の液状原料を装入し、中間ノズル管中には、ゲル化できる液状の中間層構成材物質を装入し、外方ノズル管(1)中には、皮膜材物質のゲル化性の液状原料を装入する。それ以降は、前記のカプセル製造法と同様な要領で実施すると、所望の多層構造の球形カプセルを製造できる。
第1の本発明の球形カプセルを用いて、装飾模様を有する陶磁器を製造するには、陶土製または磁土製の成形品の素焼き品の施釉した表面または未施釉の表面に、本発明の球形カプセルの複数個を点描画風の装飾模様を画きうる所望の好みの配置にて点在するように配列し、熱分解性の接着剤で貼り付ける。そのような接着剤は、スターチ糊が適する。球形カプセルを結着して有する施釉または未施釉の素焼き品は、その後に窯内に入れて徐々に加熱し、陶磁器の製造で使用される焼成条件下に仕上げ焼成する。市販の電気キルンも使用でき、使用した釉薬原料の種類、使用した着色料の種類、また着色料で発色させるべき色相の型に応じて酸化性雰囲気または還元性雰囲気下に、あるいはこれらの雰囲気の組合せの下に、1200〜1300℃の焼成温度で常法で焼成することができる。
従って、第2の本発明においては、前記に記載された第1の本発明の球形カプセルの多数個を、陶磁器の素焼き成形品の施釉表面または未施釉表面に、それらのカプセルで好みどおりの点描画風の装飾模様を画く位置に並べて点在するように配置させ、そして熱分解性有機質接着剤でそれらカプセルを該施釉または未施釉表面に結着させ、その後に、それらカプセルを結着している素焼き成形品を、徐々に加熱し、カプセルの中の釉薬原料を熔融して施釉のできる焼成温度で酸化性雰囲気または還元性雰囲気下に焼成するか、あるいは酸化性雰囲気下に次いで還元性雰囲気下で焼成し、その焼成中に前記の結着したカプセルを熔解させると共に、カプセル中の有機物質成分と該接着剤を焼散させ、得られた焼成品の表面上で前記カプセルの各個の熔解で生じた有色の小島状の釉層を形成し、それら有色の小島状釉層の組合わせで構成される有色の装飾模様を作出し、その後に、焼成品を徐冷し、さらに焼成品を室温にまで冷却することから成る、多数の有色の小島状釉層により、それら小島状釉層の組合わせで構成される装飾模様を施釉表面に有する陶磁器の製造方法が提供される。
焼成は陶磁器の製造で慣用される方法で行われる。焼成に当って、電気キルンを用いる場合に、酸化性雰囲気は高温の空気により作ることができる。また還元性雰囲気は、電気キルン中にガスバーナーを設け、ガス状炭化水素を含む燃料ガスの不完全燃焼が起る条件で酸素分が不足して且つ一酸化炭素などを含む燃焼ガスを発生させることにより作ることができる。
さらに、上記した陶土製または磁土製の成形品の素焼き素地の代りに、耐熱性の基体、例えば鉄、鉄合金製の基体、あるいは耐熱ガラス製の基体を用い、この耐熱性基体の表面に、第1の本発明の球形カプセルを好みの装飾模様を画く配列で接着し、さらに陶磁器の製造の場合と同じ要領で焼成することができる。このように焼成すると、耐熱性基体の表面上で、球形カプセルの各個の熔融で生成された多数の小島状斑点の形の有色の釉層を形成できる。そのように形成された前記の多数の有色の小島状釉層は、それらの組合わせにより、一種の装飾模様を作出できることが認められた。
従って、第3の本発明においては、第1の本発明で記載された球形カプセルの多数個を、それらカプセルに含まれる着色料の種類が相異なる組合わせで用意し、それらの各個のカプセルに含有された着色料が焼成後に発色する色彩を想定しながら、単一の色彩または相異なる色彩をもつ点描画風の絵模様を好み通りに画くことのできるカプセルの組合せになる仕様で、同一の種類のまたは相異なる種類の着色料を含有する種々の球形カプセルの複数個を選択し、そのように選択された種々の球形カプセルの複数個を、耐熱性基体の表面、特に、陶磁器の施釉表面または未施釉表面、もしくは耐熱性ガラス成形品の表面、エナメル被覆表面、鉄または鉄合金製の成形品の表面、銅または銅合金製の成形品の表面、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の成形品の表面、またはその他の耐熱性材料製の基体の表面の上に、それらカプセルにより点描画風の装飾模様を画く要領で並べて配置させ、しかもこのようにカプセルを並べる配置に当たっては、配置された複数個のカプセルの焼成後に各個のカプセルの熔解から生成されて基体表面に形成されるところの多数の有色の小島状釉層の示す各種の色彩が、それら小島状釉層の組合わせで構成される好みの点描画風の装飾的模様を画いて作出できるように配慮を行い、上記のように装飾模様を画くように配置された多数の前記カプセルを基体表面に熱分解性の有機質接着剤で結着させ、結着されたカプセルを表面に有する基体を、カプセル含有の釉薬原料を熔融させて施釉のできる焼成温度で酸化性雰囲気または還元性雰囲気下に焼成するか、あるいは酸化性雰囲気下に次いで還元性雰囲気で焼成し、前記の結着したカプセルを熔解させ、カプセル中の有機物質成分と該接着剤を焼散させ、得られた焼成品の表面上で該カプセルの各個の熔解で生じた有色の小島状釉層の多数を形成させ、そしてそれら多数の有色の小島状釉層の組合わせで構成される点描画風の装飾模様を焼成品表面に作出し、その後に焼成品を徐冷し、さらに該焼成品を室温に冷却することから成る、該基体表面上に生成された有色の小島状釉層の多数の組合わせで構成される有色の装飾模様を耐熱性基体の表面に作出する装飾方法が提供される。
第3の本発明の方法においても、その焼成工程は陶磁器の製造法で慣用される方法に準じて実施できる。
第1図は、後記の実施例1で製造された球形カプセルの部分横断面図を示すと共に、該カプセルの半分の部分の外形を図解的に示す斜視図である
第2図は、後記の実施例2で製造された多層構造の球形カプセルの中央横断面の図解図である。
第3図は、本発明による球形カプセルの製造に利用できる2重管ノズルを備えたカプセル製造装置の部分縦断面図と装置の半分の部分の外形を図解的に示す斜視図である。
第4図は、後記の実施例4、(d)で陶土製丸皿の素焼き表面に、本発明の球形カプセルの複数個を、点描画風の山岳と雲とを含む風景を画くように結着した時の様子を写した図解図である。
第5図は、本発明の球形カプセルの製造に利用できる3重管ノズルを備えたカプセル製造装置の縦断面を示す図解図である。
第6図は、後記の実施例6で製造された本発明の球形カプセルの部分破断面とカプセル外形とを図解的に示す斜視図である。
第2図は、後記の実施例2で製造された多層構造の球形カプセルの中央横断面の図解図である。
第3図は、本発明による球形カプセルの製造に利用できる2重管ノズルを備えたカプセル製造装置の部分縦断面図と装置の半分の部分の外形を図解的に示す斜視図である。
第4図は、後記の実施例4、(d)で陶土製丸皿の素焼き表面に、本発明の球形カプセルの複数個を、点描画風の山岳と雲とを含む風景を画くように結着した時の様子を写した図解図である。
第5図は、本発明の球形カプセルの製造に利用できる3重管ノズルを備えたカプセル製造装置の縦断面を示す図解図である。
第6図は、後記の実施例6で製造された本発明の球形カプセルの部分破断面とカプセル外形とを図解的に示す斜視図である。
以下に、本発明を実施例を参照して具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(a) 陶磁器の上絵付け絵具用の着色料を含む金液よりなる芯部と、釉の着色用の着色料、釉薬原料および皮膜材物質の固体状混合物よりなる皮膜層とを有する球形カプセルの調製
陶磁器用絵付け上絵具として常用される市販の金液を用意した。この金液(水金ともいう)は着色料の主要成分としての油溶性金化合物および金コロイドを含有し、また融剤およびテレピン油を含有する粘稠な油状製剤であり、ノリタケ(株)製の商品名、金液N−9として市販される金液である。また、陶磁器用釉薬として知られたトルコ青釉層を形成できるトルコ青釉の生成用釉薬原料の泥漿(スリップ)の市販品((株)釉陶の市販品)(以下では、該泥漿を単にトルコ青釉の生成の釉薬原料の泥漿と言う)を用意した。このトルコ青釉の生成用の釉薬原料の泥漿(スリップ)は、着色料としての酸化第二銅の微粒子とナトリウム長石釉生成用の釉薬原料の微粒子と水とを含むスラリー状混合物であり、該混合物が約40重量%の水分を有するものである。
このトルコ青釉の生成用の釉薬原料の泥漿の1重量部を、アルギン酸ナトリウム(釉薬原料の微粒子成分に対する結合剤としても働くと共に、有機質皮膜材の原料としても働く)の5重量%水溶液(ゾル状)の1重量部と良く混合して、スラリー状の混合物Aを調製した。
添付図面の第3図に図解的にカプセル製造装置の中央縦断面と装置全体の半分の外形を示す斜視図解図で表される装置構造をもつところの、2重管ノズルを備えたカプセル製造装置を用意した。この装置に設けた横断面の円形な内方ノズル管(4)の上方からその内方ノズル管の内腔(7)中に、前記の金液を装入した。内方ノズル管(4)の先細部(5)を通って、内方ノズルのノズル孔(6)から金液を下向きに押出させた。
また、それと同時に、該カプセル製造装置に設けられた円筒状周壁(1”)をもつカプセル皮膜層の形成物質の液状原料用の供給室(1’)内に供給管(9)を経て前記のスラリー混合物A(すなわち、トルコ青釉の生成用の釉薬原料の泥漿とアルギン酸ナトリウム水溶液との1:1重量比のスラリー状混合物)を装填した。そして、横断面の円形な外方ノズル管(1)と内方ノズル管(4)との間に形成された中間チャネル(8)を通して該スラリー状混合物Aを下向きに押出した。外方ノズルの外方ノズル孔(3)の出口の位置は、内方ノズル管(4)のノズル孔(6)出口の下方に在るようにする。
外方ノズル管(1)の先細部(2)の先端付近で、外方ノズル管のノズル孔(3)をとり巻く周壁と、内方ノズル管のノズル孔(6)をとり巻く周壁との間に形成された環状スリットを通して、前記のスラリー状混合物Aを押出させた。このようにすると、内方ノズルのノズル孔(6)から出た金液の液流の側方表面を、上記のスラリー状混合物Aが皮膜の形で包囲するようになり、内外2層の構造の液流1本がノズル孔(3)出口の下方の所で形成された。しかもその液流が流下するにつれて、液流が自然に細くくびれて多くの丸い液滴になる現象が起きた。その結果として、金液よりなる丸い内層(芯層)と、内層を包囲、被覆する上記スラリー状混合物Aの皮膜層とから構成された2層構造の丸い液滴の各々が外方ノズル管のノズル孔(3)から押出された液流の先端の所で次々と形成された。
内方ノズル管のノズル孔(6)の孔径を0.72mmに調整し、また外方ノズル管のノズル孔(3)の孔径を1.43mmに調整し、しかも金液の押出速度と前記のスラリー状混合物Aの押出速度とをそれぞれ適宜に加減した。こうすると、前記の2層構造の丸い液滴の1個あたりに、その2層構造の液滴の内層(金液から形成される芯部)の重量と皮膜層(スラリー状混合物Aからなる層)の重量との平均比率がほぼ25:75であるところの、前記の2層構造の丸い液滴が継続的に形成された。これら形成された多数の丸い液滴の直径と大きさは各個の液滴についてそれぞれ多少とも変動するけれども、ほぼ同じであることが認められた。
前記のように継続的に形成された多くの2層構造の丸い液滴を、室温で塩化カルシウムの2.0重量%水溶液よりなる液浴の内に次々に滴下させた。滴下した各々の液滴を前記の塩化カルシウム水溶液の液浴内に5分間保持すると、各々の液滴の皮膜層に含まれたアルギン酸ナトリウムは皮膜層に浸透したカルシウムイオンと反応してカルシウムイオンで架橋され、ゲル状に硬化した。こうして金液層を包被する丈夫な皮膜層をもつ丸いカプセル状粒子の多数が形成された。
これら多数の丸いカプセル状粒子を塩化カルシウム水溶液液浴から分離し、さらに室温で水洗した。その後に、水洗された丸いカプセル状粒子をカプセル皮膜層が乾燥固体層になるまで20℃の乾燥空気流の中で乾燥した。
乾燥した丸いカプセル状粒子は、1.5mm〜2.0mmの範囲の直径を有し、また内層(芯部)と、これを包被する固体状の皮膜層とからなる球形構造のカプセルである。その各カプセルの内層は、釉層を着色できる着色料として作用する金コロイドおよびその他の金属化合物成分を含む金液からなり、しかもその皮膜層は、トルコ青釉の生成用の釉薬原料の微粒子と酸化第二銅(着色料)の微粒子とアルギン酸カルシウムのゲルの固化物との固体状混合物から成る。この皮膜層は、水分の蒸発で生じた細孔を含む多孔質の構造をもち、また、固体微粒子の形の分散相と、分散相を包囲して結合させる分散媒の形のアルギン酸カルシウムの硬化物とからなる分散体(dispersion)の形態のものであった。この球形カプセルの部分横断面とカプセル半分の部分の外形とを図解的に示す斜視図を第1図に示す。この第1図で、該球形カプセルは金液よりなる芯部(1)と、これを包被する皮膜層(2)とを有することが認められる。
(b) 地釉層の上に有色の装飾模様を有した陶器の製造
陶土製の素焼き皿品の素地表面に、黒天目釉を生成するのに使用される釉薬原料の泥漿(スリップ)の市販品を浸し掛け(dipping)し、そして自然に乾燥した。このように施釉された素焼き皿品の乾燥表面に、5弁の花の輪郭をもつ好みの点描画風の模様を画くような点線に沿う位置にて、実施例1、(a)で得た球形カプセルの乾燥品の約100個を配列させて、花模様を多数描写した。また、別に、上記の素焼き皿品の施釉面の別の場所において、円形の輪郭の中に、該球形カプセルの数十個を散在させて且つ円形の内の一部領域ではカプセルが密集した状態で配置した。なお、これらカプセルの配置に先立ち、カプセルを置く位置に、接着剤として市販のスプレー用スターチ糊を吹き付ける前処理を行っておいた。
その後、球形カプセルを前記の如く配置された素焼き皿品の施釉表面の上から、再び市販のスプレー用スターチ糊を有機質接着剤として吹きつけ、さらに自然乾燥して球形カプセルを素焼き皿品の施釉面に結着させた。このようにして前記の球形カプセルを結着して有する素焼き皿品を、電気キルン(日本電産シンポ(株)の製品)内に入れて徐々に加熱し、さらに最高1235℃の施釉温度にて、空気よりなる酸化性雰囲気下に焼成した。
その焼成された陶器皿の表面は、これに融着した黒天目釉の地釉層(base glaze coating)をもち、またこの地釉層の上に、前記の花弁の輪郭を画くように配列された球形カプセルの各個の熔融により生じた小島状斑点(spots)の形の釉層の各々が地釉層からやや隆起した形に生成された。しかもそれら多数の斑点の集まりの組合せで構成される全体の画像は、花弁の点描模様を画く風に生成されていた。さらに、上記の円形の輪郭の中に前記の如く配置された数十個の球形カプセルは、それらの球形カプセルの各個の熔融によりやや隆起した小島状の斑点(spots)の形態の釉層の各々を生成したが、それら小島状の斑点の若干数は、相互に連合した状態になり、サイズがやや大きいいくつかの斑紋(specks)の形態の釉層を形成していた。
球形カプセルの熔融により生じたやや隆起した前記の小島状の斑点の形の釉層の各個は、その上表面では、同心円状の2重円の着色の縞模様を示し、各個の斑点の外縁縞部が青緑色を呈し、また内方の縞部が紫色を帯びた金色を呈した。その内方縞部を顕微鏡下で見ると、金結晶が出現しており、またその外縁の縞部を顕微鏡下で見ると、銅結晶が出現していることが観察された。各個の球形カプセルの熔融により生じたやや隆起した小島状の斑点の釉層は、それら斑点を総体的に見ると、独特で微妙に美しい種々な色相をもつとともに、窯変効果も示す装飾模様を陶器皿の全面に融着した黒色の地釉の上に作り出していることが認められた。
(c) 窯変効果を示す装飾模様を有した陶土製タイル板の製造
黒天釉を生成するのに使用される釉薬原料の泥漿(スリップ)の市販品を陶土製の素焼きタイル板の素地表面に浸し掛けし、その後に該タイル板を自然乾燥した。その乾燥表面にスプレー用スターチ糊を吹きつけ、その上に実施例1、(a)で作った球形カプセルの多数を、装飾模様を画くように配置して結着した。
このようにカプセルを結着された素焼きタイル板を、電気キルン(日本電産シンポ(株)の製造)内に入れて、徐々に加熱し、空気よりなる酸化性雰囲気下に1000〜1200℃で焼成し、その後に最高1250℃の焼成温度にて、還元性雰囲気下に焼成した。その還元性雰囲気は、電気キルン中に設けたガスバーナーから出る燃料ガスの不完全燃焼によって作り出した。燃料ガスの不完全燃焼成分である一酸化炭素や炭化水素が、該カプセルに含まれた金属酸化物中の酸素と化学反応して、結果的に、酸素分の少ない金属酸化物、あるいは酸素分のない金属に転化される。
その焼成されたタイル板の表面は、これに融着した黒天目釉の地釉層をもち、またこの黒い地釉層の上には、各個のカプセルの熔融で生成されたところの窯変効果を示した小点(dots)を含み且つ青、紫、黄、赤の様々な色調を有した小島状の斑点と斑紋よりなる装飾模様が生成していることが認められた。
陶磁器用絵付け上絵具として常用される市販の金液を用意した。この金液(水金ともいう)は着色料の主要成分としての油溶性金化合物および金コロイドを含有し、また融剤およびテレピン油を含有する粘稠な油状製剤であり、ノリタケ(株)製の商品名、金液N−9として市販される金液である。また、陶磁器用釉薬として知られたトルコ青釉層を形成できるトルコ青釉の生成用釉薬原料の泥漿(スリップ)の市販品((株)釉陶の市販品)(以下では、該泥漿を単にトルコ青釉の生成の釉薬原料の泥漿と言う)を用意した。このトルコ青釉の生成用の釉薬原料の泥漿(スリップ)は、着色料としての酸化第二銅の微粒子とナトリウム長石釉生成用の釉薬原料の微粒子と水とを含むスラリー状混合物であり、該混合物が約40重量%の水分を有するものである。
このトルコ青釉の生成用の釉薬原料の泥漿の1重量部を、アルギン酸ナトリウム(釉薬原料の微粒子成分に対する結合剤としても働くと共に、有機質皮膜材の原料としても働く)の5重量%水溶液(ゾル状)の1重量部と良く混合して、スラリー状の混合物Aを調製した。
添付図面の第3図に図解的にカプセル製造装置の中央縦断面と装置全体の半分の外形を示す斜視図解図で表される装置構造をもつところの、2重管ノズルを備えたカプセル製造装置を用意した。この装置に設けた横断面の円形な内方ノズル管(4)の上方からその内方ノズル管の内腔(7)中に、前記の金液を装入した。内方ノズル管(4)の先細部(5)を通って、内方ノズルのノズル孔(6)から金液を下向きに押出させた。
また、それと同時に、該カプセル製造装置に設けられた円筒状周壁(1”)をもつカプセル皮膜層の形成物質の液状原料用の供給室(1’)内に供給管(9)を経て前記のスラリー混合物A(すなわち、トルコ青釉の生成用の釉薬原料の泥漿とアルギン酸ナトリウム水溶液との1:1重量比のスラリー状混合物)を装填した。そして、横断面の円形な外方ノズル管(1)と内方ノズル管(4)との間に形成された中間チャネル(8)を通して該スラリー状混合物Aを下向きに押出した。外方ノズルの外方ノズル孔(3)の出口の位置は、内方ノズル管(4)のノズル孔(6)出口の下方に在るようにする。
外方ノズル管(1)の先細部(2)の先端付近で、外方ノズル管のノズル孔(3)をとり巻く周壁と、内方ノズル管のノズル孔(6)をとり巻く周壁との間に形成された環状スリットを通して、前記のスラリー状混合物Aを押出させた。このようにすると、内方ノズルのノズル孔(6)から出た金液の液流の側方表面を、上記のスラリー状混合物Aが皮膜の形で包囲するようになり、内外2層の構造の液流1本がノズル孔(3)出口の下方の所で形成された。しかもその液流が流下するにつれて、液流が自然に細くくびれて多くの丸い液滴になる現象が起きた。その結果として、金液よりなる丸い内層(芯層)と、内層を包囲、被覆する上記スラリー状混合物Aの皮膜層とから構成された2層構造の丸い液滴の各々が外方ノズル管のノズル孔(3)から押出された液流の先端の所で次々と形成された。
内方ノズル管のノズル孔(6)の孔径を0.72mmに調整し、また外方ノズル管のノズル孔(3)の孔径を1.43mmに調整し、しかも金液の押出速度と前記のスラリー状混合物Aの押出速度とをそれぞれ適宜に加減した。こうすると、前記の2層構造の丸い液滴の1個あたりに、その2層構造の液滴の内層(金液から形成される芯部)の重量と皮膜層(スラリー状混合物Aからなる層)の重量との平均比率がほぼ25:75であるところの、前記の2層構造の丸い液滴が継続的に形成された。これら形成された多数の丸い液滴の直径と大きさは各個の液滴についてそれぞれ多少とも変動するけれども、ほぼ同じであることが認められた。
前記のように継続的に形成された多くの2層構造の丸い液滴を、室温で塩化カルシウムの2.0重量%水溶液よりなる液浴の内に次々に滴下させた。滴下した各々の液滴を前記の塩化カルシウム水溶液の液浴内に5分間保持すると、各々の液滴の皮膜層に含まれたアルギン酸ナトリウムは皮膜層に浸透したカルシウムイオンと反応してカルシウムイオンで架橋され、ゲル状に硬化した。こうして金液層を包被する丈夫な皮膜層をもつ丸いカプセル状粒子の多数が形成された。
これら多数の丸いカプセル状粒子を塩化カルシウム水溶液液浴から分離し、さらに室温で水洗した。その後に、水洗された丸いカプセル状粒子をカプセル皮膜層が乾燥固体層になるまで20℃の乾燥空気流の中で乾燥した。
乾燥した丸いカプセル状粒子は、1.5mm〜2.0mmの範囲の直径を有し、また内層(芯部)と、これを包被する固体状の皮膜層とからなる球形構造のカプセルである。その各カプセルの内層は、釉層を着色できる着色料として作用する金コロイドおよびその他の金属化合物成分を含む金液からなり、しかもその皮膜層は、トルコ青釉の生成用の釉薬原料の微粒子と酸化第二銅(着色料)の微粒子とアルギン酸カルシウムのゲルの固化物との固体状混合物から成る。この皮膜層は、水分の蒸発で生じた細孔を含む多孔質の構造をもち、また、固体微粒子の形の分散相と、分散相を包囲して結合させる分散媒の形のアルギン酸カルシウムの硬化物とからなる分散体(dispersion)の形態のものであった。この球形カプセルの部分横断面とカプセル半分の部分の外形とを図解的に示す斜視図を第1図に示す。この第1図で、該球形カプセルは金液よりなる芯部(1)と、これを包被する皮膜層(2)とを有することが認められる。
(b) 地釉層の上に有色の装飾模様を有した陶器の製造
陶土製の素焼き皿品の素地表面に、黒天目釉を生成するのに使用される釉薬原料の泥漿(スリップ)の市販品を浸し掛け(dipping)し、そして自然に乾燥した。このように施釉された素焼き皿品の乾燥表面に、5弁の花の輪郭をもつ好みの点描画風の模様を画くような点線に沿う位置にて、実施例1、(a)で得た球形カプセルの乾燥品の約100個を配列させて、花模様を多数描写した。また、別に、上記の素焼き皿品の施釉面の別の場所において、円形の輪郭の中に、該球形カプセルの数十個を散在させて且つ円形の内の一部領域ではカプセルが密集した状態で配置した。なお、これらカプセルの配置に先立ち、カプセルを置く位置に、接着剤として市販のスプレー用スターチ糊を吹き付ける前処理を行っておいた。
その後、球形カプセルを前記の如く配置された素焼き皿品の施釉表面の上から、再び市販のスプレー用スターチ糊を有機質接着剤として吹きつけ、さらに自然乾燥して球形カプセルを素焼き皿品の施釉面に結着させた。このようにして前記の球形カプセルを結着して有する素焼き皿品を、電気キルン(日本電産シンポ(株)の製品)内に入れて徐々に加熱し、さらに最高1235℃の施釉温度にて、空気よりなる酸化性雰囲気下に焼成した。
その焼成された陶器皿の表面は、これに融着した黒天目釉の地釉層(base glaze coating)をもち、またこの地釉層の上に、前記の花弁の輪郭を画くように配列された球形カプセルの各個の熔融により生じた小島状斑点(spots)の形の釉層の各々が地釉層からやや隆起した形に生成された。しかもそれら多数の斑点の集まりの組合せで構成される全体の画像は、花弁の点描模様を画く風に生成されていた。さらに、上記の円形の輪郭の中に前記の如く配置された数十個の球形カプセルは、それらの球形カプセルの各個の熔融によりやや隆起した小島状の斑点(spots)の形態の釉層の各々を生成したが、それら小島状の斑点の若干数は、相互に連合した状態になり、サイズがやや大きいいくつかの斑紋(specks)の形態の釉層を形成していた。
球形カプセルの熔融により生じたやや隆起した前記の小島状の斑点の形の釉層の各個は、その上表面では、同心円状の2重円の着色の縞模様を示し、各個の斑点の外縁縞部が青緑色を呈し、また内方の縞部が紫色を帯びた金色を呈した。その内方縞部を顕微鏡下で見ると、金結晶が出現しており、またその外縁の縞部を顕微鏡下で見ると、銅結晶が出現していることが観察された。各個の球形カプセルの熔融により生じたやや隆起した小島状の斑点の釉層は、それら斑点を総体的に見ると、独特で微妙に美しい種々な色相をもつとともに、窯変効果も示す装飾模様を陶器皿の全面に融着した黒色の地釉の上に作り出していることが認められた。
(c) 窯変効果を示す装飾模様を有した陶土製タイル板の製造
黒天釉を生成するのに使用される釉薬原料の泥漿(スリップ)の市販品を陶土製の素焼きタイル板の素地表面に浸し掛けし、その後に該タイル板を自然乾燥した。その乾燥表面にスプレー用スターチ糊を吹きつけ、その上に実施例1、(a)で作った球形カプセルの多数を、装飾模様を画くように配置して結着した。
このようにカプセルを結着された素焼きタイル板を、電気キルン(日本電産シンポ(株)の製造)内に入れて、徐々に加熱し、空気よりなる酸化性雰囲気下に1000〜1200℃で焼成し、その後に最高1250℃の焼成温度にて、還元性雰囲気下に焼成した。その還元性雰囲気は、電気キルン中に設けたガスバーナーから出る燃料ガスの不完全燃焼によって作り出した。燃料ガスの不完全燃焼成分である一酸化炭素や炭化水素が、該カプセルに含まれた金属酸化物中の酸素と化学反応して、結果的に、酸素分の少ない金属酸化物、あるいは酸素分のない金属に転化される。
その焼成されたタイル板の表面は、これに融着した黒天目釉の地釉層をもち、またこの黒い地釉層の上には、各個のカプセルの熔融で生成されたところの窯変効果を示した小点(dots)を含み且つ青、紫、黄、赤の様々な色調を有した小島状の斑点と斑紋よりなる装飾模様が生成していることが認められた。
(a) 石灰釉の生成用の釉薬原料、酸化第二鉄(着色料)および有機質結合剤としてのアルギン酸Naの固体状混合物よりなる芯部と、該釉薬原料と着色料とアルギン酸カルシウムよりなる固体状混合物で形成された第1の中間層と、金液乾燥残渣生成物よりなる第2の中間層と、アルギン酸カルシウムの硬化物の皮膜材よりなる固体状皮膜層とを有する多層な複合構造の球形カプセルの調製
(i) 銀油滴天目釉を生成できる釉薬原料の混合物であって、石灰釉の生成用の釉薬原料と酸化第二鉄(着色料)と酸化マンガン(着色補助剤)との混合物の泥漿市販品((株)釉陶の製品;以下では該泥漿を単に銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料の泥漿と言う)を用意した。この市販の泥漿(スリップ)は、基本の石灰釉の生成用の釉薬原料の微粒子と、この釉薬原料微粒子の総重量に基づいて12重量%の着色料としての酸化第二鉄の微粒子と2%の量の二酸化マンガン(着色補助剤)の微粒子と水とを含むスラリー状混合物であり、約40重量%の水分を有するものである。
この銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料の市販泥漿(スリップ)の1重量部を、アルギン酸ナトリウム(有機質結合剤として、また皮膜材物質の形成用の原料として働く)の5重量%水溶液(ゾル状)の1重量部と良く混合して、スラリー状の混合物Bを調製した。
このスラリー状混合物Bを、ノズル孔の出口径1.44mmの1本のノズル管を通して室温で塩化カルシウムの2.0重量%水溶液よりなる液浴中に滴下する。この液浴内において、それぞれの液滴から、アルギン酸カルシウムのゲル状の硬化物と該泥漿の固体成分の微粒子との混合物よりなる表面皮膜層をもち且つ該スラリー状混合物Bからなる芯部をもつ球形構造のカプセル粒子が多数、形成された。
これら球形構造のカプセル粒子を塩化カルシウム水溶液の液浴から分離して、水洗し、さらにその水洗したカプセル粒子を20℃の乾燥空気流の中で十分に乾燥した。この乾燥は、カプセル粒子の全体(芯部も含めて)が固化するまで行った。このように乾燥された丸いカプセル粒子は、それぞれ約1.0mmの粒径を有した。これらの乾燥したカプセル粒子の内部構造を見ると、各個のカプセル粒子は、石灰釉生成用の釉薬原料の固体微粒子と酸化第二鉄の微粒子と二酸化マンガンの微粒子とアルギン酸ナトリウム(有機結合剤)と数%の水との混合物(分散体の形態のもの)よりなるほぼ固体状の芯部と、アルギン酸カルシウムのゲルの固化物よりなる多孔質な固体状の皮膜層とから実質的に構成された。
(ii) このようにして得た前記の乾燥した丸いカプセル粒子の30重量部を、実施例、(a)で用いた金液の1重量部の中にドブ漬けして、カプセル粒子表面に金液を被覆した。金液よりなる表面被覆をもつ丸いカプセル粒子は、次に、これらを50℃の乾燥空気流の中で乾燥して粒子全体を固化させた。こうして得られた乾燥している丸いカプセル粒子の各個は、前記の分散体型の固体状混合物よりなる芯部(最内層)をもち、芯部を包被する中間層であってアルギン酸カルシウムの固化物と前記の釉薬泥漿の固体成分の微粒子との固体状混合物よりなる第1の中間層をもち、また第1の中間層を包被する金液の乾燥残渣生成物(着色料として作用する金コロイド粒子と金イオンおよび各種の成分を含有する)よりなる薄い皮膜層を有する計3層の複合構造をもつ球形カプセルの形のものである。
(iii) 実施例1に用いられて且つ第3図に示された装置構造をもつ2重管ノズル付きのカプセル製造装置と同様な構造のカプセル製造装置を用意した。但し、ここで用いた装置は、それの内方ノズル管(4)のノズル孔(6)の出口孔径が約1.2mmに調整され、また外方ノズル管(1)のノズル孔(3)の出口孔径が約1.5mmであるように調整した。
そのような構造のカプセル製造装置の内方ノズル(4)の内腔に前記の(ii)で得た乾燥した丸いカプセル粒子(すなわち、金液の乾燥残渣生成物よりなる薄い表面皮膜層を有する計3層構造の球形カプセル粒子)を装入し、さらに内方ノズルのノズル孔(6)を通してそれらカプセル粒子を次々に下向きに押出した。他方、それと同時に内方ノズルのノズル管(4)と外方ノズル管(1)との間に形成されたチャネル(8)を通して、カプセルの皮膜層形成用の原料であるアルギン酸ナトリウムの5重量%水溶液(ゾル)を押出させた。内方ノズル管のノズル孔の周壁と外方ノズル管のノズル孔の周壁との間に形成された環状スリットを通して、前記のアルギン酸ナトリウム水溶液(ゾル)が押出される。なお、前記の(ii)で得られた計3層の複合カプセルのがノズル孔(6)から押出されるカプセルの重量と、前記の環状スリットを通して押出されるアルギン酸ナトリウム水溶液の重量との比率がほぼ60:40になるように、アルギン酸ナトリウム水溶液の押出速度を調整した。
内方ノズル管(4)の出口孔から出た前記カプセル粒子の各々は、チャネル(8)下方の前記の環形スリットを通って押出されたアルギン酸ナトリウム水溶液により包囲されて、外方ノズル管のノズル孔(3)の出口の下方のところでアルギン酸ナトリウム水溶液の液流の内部に取り込まれた状態になり、そのままの状態で、該ノズル孔(3)から次々に出るようになった。こうして、前記の乾燥した丸いカプセル粒子上に該アルギン酸ナトリウム水溶液(ゾル)の皮膜層が形成されるに至った。その結果、前記の分散体型の固体状混合物からなる芯部(最内層)と、芯部を包被するアルギン酸カルシウムのゲルの固化物と釉薬の固体成分微粒子との混合物よりなる第1の中間層と、その上を包被する金液の乾燥残渣生成物(金コロイド粒子、等を含む)よりなる薄い第2の中間層と、しかもその上を包被する最も外の表面層として、アルギン酸ナトリウム水溶液(ゾル)よりなる皮膜層とから構成しているところの4層の複合構造の丸いカプセル粒子(全体としては液滴の形のもの)が外方ノズル管のノズル孔(3)の出口から押出された液流の先端の所で次々と形成されることになり、そして次々に落下した。
(iv) 上記のように落下した複合構造の丸いカプセル粒子(前記の液滴の形の)を、次々に室温で塩化カルシウムの2.0重量%水溶液の液浴内に滴下させた。
該液浴内において、落下した前記の複合構造の丸いカプセル粒子よりなる前記の液滴を塩化カルシウム水溶液液浴内に約5分間保持した。このようにすると、それらカプセル粒子よりなる液滴の皮膜層に含まれたアルギン酸ナトリウムは、皮膜層に浸透してきたカルシウムイオンと反応してゲルになり、これで生成したアルギン酸カルシウムがゲル状の硬化物に変化した。こうして、カプセル内容物を完全に包被する丈夫な皮膜層をもつ多層な複合構造の球形カプセル状粒子の多数が形成された。
次に、これら多数の複合構造の球形カプセル状粒子を塩化カルシウム水溶液液浴から分離し、さらに室温で水洗した。その後に、水洗された球形カプセル状粒子を20℃の乾燥空気流の中でその粒子の皮膜層が固体になるまで乾燥した。
(v) こうして得られた乾燥した多層な複合構造の球形カプセルは、各々が直径1.0mm〜1.5mmの範囲の直径を有した。また各々の球形カプセルは最内層(芯部)と、これを包被する2つの中間層と、最も外方から包被する皮膜層とからなる多層な複合構造の球形カプセルであって、その各々のカプセルの芯部すなわち最内層が前記の分散物型の固体状混合物からなり、しかも該芯部を最初に包被する第1の中間層がアルギン酸カルシウムの硬化物と釉薬原料の固体微粒子と着色料との固体状混合物からなり、この第1の中間層を包被する第2の中間薄層が金コロイドを含む金液乾燥残渣生成物よりなり且つ最も外方から包被する皮膜層がアルギン酸カルシウムの硬化物からなる多孔質の固体層であるところの複合した多層構造のカプセルであった。このような多層な複合構造カプセルの中央横断面を図解的に表す図面を第2図に示す。該カプセルは芯部(1)、第1の中間層(3)、第2の中間層(3’)よび皮膜層(2)を有するものであることが認められる。
(b) 地釉層の上に有色の装飾模様を有した陶器の製造
陶土製の素焼き皿品の素地表面に、黒天目釉を生成するのに使用される釉薬原料の泥漿(スリップ)の市販品を浸し掛け(dipping)し、そして自然乾燥した。このように施釉された素焼き皿品の施釉内面の乾燥表面に、5弁の花の輪郭をもつ好みの点描画風の模様を画くような点線に沿った位置にて、実施例2、(a)、(v)で得た球形カプセルの乾燥品の約100個を配列させ、これによって点描された花模様の多数を作った。また、別に、上記の素焼き皿品の施釉内面の別の場所において、円形の輪郭の中に、該球形カプセルの数十個を散在させて、且つその円形の内の一部領域ではカプセルが密集した状態で配置した。なお、カプセルを前記のように配置するに先立ち、カプセルの置かれる位置にスターチ糊を予じめ吹きつける前処理を行った。
その後再び、球形カプセルを前記の如く配置されて有した素焼き皿品の施釉内面の上から、市販のスプレー用スターチ糊を有機質接着剤として吹きつけ、さらに自然乾燥して球形カプセルを素焼き皿品の施釉内面に結着させた。このようにして前記の球形カプセルを結着して有する素焼き皿品を、電気キルン(日本電産シンポ(株)の製品)内に入れて、徐々に加熱して、そして最高1235℃の施釉温度にて、空気よりなる酸化性雰囲気下に焼成した。
その焼成された陶器皿の内面は、これに融着した黒天目釉の地釉層(base glaze coating)をもち、また、この地釉層の上に、前記の花弁の輪郭を画くように配列された球形カプセルの各個の熔融により生じた小島状斑点(spots)の形の釉層の各々が、地釉層からやや隆起した形に生成された。それら斑点の集まりの組合わせで構成される全体の画像は、花弁の模様を画く風に生成されていた。さらに、上記の円形の輪郭の中に前記の如く配置された数十個の球形カプセルは、それらの球形カプセルの各個の熔融を起こすことにより、やや隆起した小島状の斑点(spots)の形態の釉層をそれぞれ生成した。また、それら小島状の斑点の若干数は、相互に連合した状態になり、サイズがやや大きいいくつかの斑紋(specks)の形態の釉層を形成していた。
球形カプセルの熔融により生じたやや隆起した小島状の斑点の形の釉層の各個は、その上表面では、同心円状の2重円の着色した縞模様を示し、各個の斑点の外縁部が青色を呈し、また内方の縞部が紫色を帯びた銀色を呈した。その外方縞部を顕微鏡下で見ると、金結晶が出現しており、またその内方の縞部を顕微鏡下で見ると、鉄結晶が出現していることが観察された。各個の球形カプセルの熔融によりそれぞれ生じたやや隆起した小島状の斑点の形の釉層の組合わせで構成された全体の画像は、総体的に見ると、独特で微妙に美しい種々な色相をもつと共に窯変効果を示す装飾模様を、陶器皿の融着した黒天目釉の地釉層上で作り出していることが認められた。
(c) 窯変効果を示す装飾模様を有した陶土製タイル板の製造
黒天目釉を生成するのに使用される釉薬原料の泥漿(スリップ)の市販品を、陶土製の素焼きタイル板の素地表面に浸し掛けし、その後に該タイル板を自然乾燥した。その乾燥した表面にスプレー用スターチ糊を吹きつけ、さらにその上に、実施例2、(a)で作った球形カプセルの多数を装飾模様を画くように配置して結着させた。
このようにカプセルを結着された素焼きタイル板を、電気キルン(日本電産シンポ(株)の製品)内に入れて徐々に加熱し、そして1000〜1200℃で空気よりなる酸化性雰囲気下に焼成し、また実施例1、(c)と同様な仕方で還元性雰囲気下に1250℃の温度で焼成した。
その焼成されたタイル板の表面は、これに融着した黒天目釉の地釉層をもち、またこの黒い地釉層の上には、各個のカプセルの熔融で生成されたところの、窯変効果を示した小点(dots)を含み且つ黄、青、紫、赤の様々な色調を有した小島状の斑点と斑紋よりなる装飾模様が生成していることが認められた。
(i) 銀油滴天目釉を生成できる釉薬原料の混合物であって、石灰釉の生成用の釉薬原料と酸化第二鉄(着色料)と酸化マンガン(着色補助剤)との混合物の泥漿市販品((株)釉陶の製品;以下では該泥漿を単に銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料の泥漿と言う)を用意した。この市販の泥漿(スリップ)は、基本の石灰釉の生成用の釉薬原料の微粒子と、この釉薬原料微粒子の総重量に基づいて12重量%の着色料としての酸化第二鉄の微粒子と2%の量の二酸化マンガン(着色補助剤)の微粒子と水とを含むスラリー状混合物であり、約40重量%の水分を有するものである。
この銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料の市販泥漿(スリップ)の1重量部を、アルギン酸ナトリウム(有機質結合剤として、また皮膜材物質の形成用の原料として働く)の5重量%水溶液(ゾル状)の1重量部と良く混合して、スラリー状の混合物Bを調製した。
このスラリー状混合物Bを、ノズル孔の出口径1.44mmの1本のノズル管を通して室温で塩化カルシウムの2.0重量%水溶液よりなる液浴中に滴下する。この液浴内において、それぞれの液滴から、アルギン酸カルシウムのゲル状の硬化物と該泥漿の固体成分の微粒子との混合物よりなる表面皮膜層をもち且つ該スラリー状混合物Bからなる芯部をもつ球形構造のカプセル粒子が多数、形成された。
これら球形構造のカプセル粒子を塩化カルシウム水溶液の液浴から分離して、水洗し、さらにその水洗したカプセル粒子を20℃の乾燥空気流の中で十分に乾燥した。この乾燥は、カプセル粒子の全体(芯部も含めて)が固化するまで行った。このように乾燥された丸いカプセル粒子は、それぞれ約1.0mmの粒径を有した。これらの乾燥したカプセル粒子の内部構造を見ると、各個のカプセル粒子は、石灰釉生成用の釉薬原料の固体微粒子と酸化第二鉄の微粒子と二酸化マンガンの微粒子とアルギン酸ナトリウム(有機結合剤)と数%の水との混合物(分散体の形態のもの)よりなるほぼ固体状の芯部と、アルギン酸カルシウムのゲルの固化物よりなる多孔質な固体状の皮膜層とから実質的に構成された。
(ii) このようにして得た前記の乾燥した丸いカプセル粒子の30重量部を、実施例、(a)で用いた金液の1重量部の中にドブ漬けして、カプセル粒子表面に金液を被覆した。金液よりなる表面被覆をもつ丸いカプセル粒子は、次に、これらを50℃の乾燥空気流の中で乾燥して粒子全体を固化させた。こうして得られた乾燥している丸いカプセル粒子の各個は、前記の分散体型の固体状混合物よりなる芯部(最内層)をもち、芯部を包被する中間層であってアルギン酸カルシウムの固化物と前記の釉薬泥漿の固体成分の微粒子との固体状混合物よりなる第1の中間層をもち、また第1の中間層を包被する金液の乾燥残渣生成物(着色料として作用する金コロイド粒子と金イオンおよび各種の成分を含有する)よりなる薄い皮膜層を有する計3層の複合構造をもつ球形カプセルの形のものである。
(iii) 実施例1に用いられて且つ第3図に示された装置構造をもつ2重管ノズル付きのカプセル製造装置と同様な構造のカプセル製造装置を用意した。但し、ここで用いた装置は、それの内方ノズル管(4)のノズル孔(6)の出口孔径が約1.2mmに調整され、また外方ノズル管(1)のノズル孔(3)の出口孔径が約1.5mmであるように調整した。
そのような構造のカプセル製造装置の内方ノズル(4)の内腔に前記の(ii)で得た乾燥した丸いカプセル粒子(すなわち、金液の乾燥残渣生成物よりなる薄い表面皮膜層を有する計3層構造の球形カプセル粒子)を装入し、さらに内方ノズルのノズル孔(6)を通してそれらカプセル粒子を次々に下向きに押出した。他方、それと同時に内方ノズルのノズル管(4)と外方ノズル管(1)との間に形成されたチャネル(8)を通して、カプセルの皮膜層形成用の原料であるアルギン酸ナトリウムの5重量%水溶液(ゾル)を押出させた。内方ノズル管のノズル孔の周壁と外方ノズル管のノズル孔の周壁との間に形成された環状スリットを通して、前記のアルギン酸ナトリウム水溶液(ゾル)が押出される。なお、前記の(ii)で得られた計3層の複合カプセルのがノズル孔(6)から押出されるカプセルの重量と、前記の環状スリットを通して押出されるアルギン酸ナトリウム水溶液の重量との比率がほぼ60:40になるように、アルギン酸ナトリウム水溶液の押出速度を調整した。
内方ノズル管(4)の出口孔から出た前記カプセル粒子の各々は、チャネル(8)下方の前記の環形スリットを通って押出されたアルギン酸ナトリウム水溶液により包囲されて、外方ノズル管のノズル孔(3)の出口の下方のところでアルギン酸ナトリウム水溶液の液流の内部に取り込まれた状態になり、そのままの状態で、該ノズル孔(3)から次々に出るようになった。こうして、前記の乾燥した丸いカプセル粒子上に該アルギン酸ナトリウム水溶液(ゾル)の皮膜層が形成されるに至った。その結果、前記の分散体型の固体状混合物からなる芯部(最内層)と、芯部を包被するアルギン酸カルシウムのゲルの固化物と釉薬の固体成分微粒子との混合物よりなる第1の中間層と、その上を包被する金液の乾燥残渣生成物(金コロイド粒子、等を含む)よりなる薄い第2の中間層と、しかもその上を包被する最も外の表面層として、アルギン酸ナトリウム水溶液(ゾル)よりなる皮膜層とから構成しているところの4層の複合構造の丸いカプセル粒子(全体としては液滴の形のもの)が外方ノズル管のノズル孔(3)の出口から押出された液流の先端の所で次々と形成されることになり、そして次々に落下した。
(iv) 上記のように落下した複合構造の丸いカプセル粒子(前記の液滴の形の)を、次々に室温で塩化カルシウムの2.0重量%水溶液の液浴内に滴下させた。
該液浴内において、落下した前記の複合構造の丸いカプセル粒子よりなる前記の液滴を塩化カルシウム水溶液液浴内に約5分間保持した。このようにすると、それらカプセル粒子よりなる液滴の皮膜層に含まれたアルギン酸ナトリウムは、皮膜層に浸透してきたカルシウムイオンと反応してゲルになり、これで生成したアルギン酸カルシウムがゲル状の硬化物に変化した。こうして、カプセル内容物を完全に包被する丈夫な皮膜層をもつ多層な複合構造の球形カプセル状粒子の多数が形成された。
次に、これら多数の複合構造の球形カプセル状粒子を塩化カルシウム水溶液液浴から分離し、さらに室温で水洗した。その後に、水洗された球形カプセル状粒子を20℃の乾燥空気流の中でその粒子の皮膜層が固体になるまで乾燥した。
(v) こうして得られた乾燥した多層な複合構造の球形カプセルは、各々が直径1.0mm〜1.5mmの範囲の直径を有した。また各々の球形カプセルは最内層(芯部)と、これを包被する2つの中間層と、最も外方から包被する皮膜層とからなる多層な複合構造の球形カプセルであって、その各々のカプセルの芯部すなわち最内層が前記の分散物型の固体状混合物からなり、しかも該芯部を最初に包被する第1の中間層がアルギン酸カルシウムの硬化物と釉薬原料の固体微粒子と着色料との固体状混合物からなり、この第1の中間層を包被する第2の中間薄層が金コロイドを含む金液乾燥残渣生成物よりなり且つ最も外方から包被する皮膜層がアルギン酸カルシウムの硬化物からなる多孔質の固体層であるところの複合した多層構造のカプセルであった。このような多層な複合構造カプセルの中央横断面を図解的に表す図面を第2図に示す。該カプセルは芯部(1)、第1の中間層(3)、第2の中間層(3’)よび皮膜層(2)を有するものであることが認められる。
(b) 地釉層の上に有色の装飾模様を有した陶器の製造
陶土製の素焼き皿品の素地表面に、黒天目釉を生成するのに使用される釉薬原料の泥漿(スリップ)の市販品を浸し掛け(dipping)し、そして自然乾燥した。このように施釉された素焼き皿品の施釉内面の乾燥表面に、5弁の花の輪郭をもつ好みの点描画風の模様を画くような点線に沿った位置にて、実施例2、(a)、(v)で得た球形カプセルの乾燥品の約100個を配列させ、これによって点描された花模様の多数を作った。また、別に、上記の素焼き皿品の施釉内面の別の場所において、円形の輪郭の中に、該球形カプセルの数十個を散在させて、且つその円形の内の一部領域ではカプセルが密集した状態で配置した。なお、カプセルを前記のように配置するに先立ち、カプセルの置かれる位置にスターチ糊を予じめ吹きつける前処理を行った。
その後再び、球形カプセルを前記の如く配置されて有した素焼き皿品の施釉内面の上から、市販のスプレー用スターチ糊を有機質接着剤として吹きつけ、さらに自然乾燥して球形カプセルを素焼き皿品の施釉内面に結着させた。このようにして前記の球形カプセルを結着して有する素焼き皿品を、電気キルン(日本電産シンポ(株)の製品)内に入れて、徐々に加熱して、そして最高1235℃の施釉温度にて、空気よりなる酸化性雰囲気下に焼成した。
その焼成された陶器皿の内面は、これに融着した黒天目釉の地釉層(base glaze coating)をもち、また、この地釉層の上に、前記の花弁の輪郭を画くように配列された球形カプセルの各個の熔融により生じた小島状斑点(spots)の形の釉層の各々が、地釉層からやや隆起した形に生成された。それら斑点の集まりの組合わせで構成される全体の画像は、花弁の模様を画く風に生成されていた。さらに、上記の円形の輪郭の中に前記の如く配置された数十個の球形カプセルは、それらの球形カプセルの各個の熔融を起こすことにより、やや隆起した小島状の斑点(spots)の形態の釉層をそれぞれ生成した。また、それら小島状の斑点の若干数は、相互に連合した状態になり、サイズがやや大きいいくつかの斑紋(specks)の形態の釉層を形成していた。
球形カプセルの熔融により生じたやや隆起した小島状の斑点の形の釉層の各個は、その上表面では、同心円状の2重円の着色した縞模様を示し、各個の斑点の外縁部が青色を呈し、また内方の縞部が紫色を帯びた銀色を呈した。その外方縞部を顕微鏡下で見ると、金結晶が出現しており、またその内方の縞部を顕微鏡下で見ると、鉄結晶が出現していることが観察された。各個の球形カプセルの熔融によりそれぞれ生じたやや隆起した小島状の斑点の形の釉層の組合わせで構成された全体の画像は、総体的に見ると、独特で微妙に美しい種々な色相をもつと共に窯変効果を示す装飾模様を、陶器皿の融着した黒天目釉の地釉層上で作り出していることが認められた。
(c) 窯変効果を示す装飾模様を有した陶土製タイル板の製造
黒天目釉を生成するのに使用される釉薬原料の泥漿(スリップ)の市販品を、陶土製の素焼きタイル板の素地表面に浸し掛けし、その後に該タイル板を自然乾燥した。その乾燥した表面にスプレー用スターチ糊を吹きつけ、さらにその上に、実施例2、(a)で作った球形カプセルの多数を装飾模様を画くように配置して結着させた。
このようにカプセルを結着された素焼きタイル板を、電気キルン(日本電産シンポ(株)の製品)内に入れて徐々に加熱し、そして1000〜1200℃で空気よりなる酸化性雰囲気下に焼成し、また実施例1、(c)と同様な仕方で還元性雰囲気下に1250℃の温度で焼成した。
その焼成されたタイル板の表面は、これに融着した黒天目釉の地釉層をもち、またこの黒い地釉層の上には、各個のカプセルの熔融で生成されたところの、窯変効果を示した小点(dots)を含み且つ黄、青、紫、赤の様々な色調を有した小島状の斑点と斑紋よりなる装飾模様が生成していることが認められた。
(a) 実施例2、(a)、(i)で用いた銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料の泥漿(スリップ)の1重量部の代りに、実施例1、(a)で用いたトルコ青釉の生成用の釉薬原料の泥漿(スリップ)の1重量部を使用して、実施例2、(a)、(i)〜(iv)に記載されたカプセル製造法の手順に従って、多層な複合構造の球形カプセルの多数個を製造した。その(iv)工程での乾燥段階後に得られた複合構造の球形カプセルの芯部は、トルコ青釉の生成用のナトリウム長石釉の釉薬原料の微粒子と酸化第二銅の微粒子とアルギン酸ナトリウム(結合剤として働く)との固体状混合物から実質的に構成される。その球形カプセルの該芯部を包囲する第1の中間層はアルギン酸カルシウムの硬化物と、該釉薬原料の微粒子と酸化第二銅微粒子との固体状混合物から形成され、第2の中間層は金液の乾燥残渣生成物(金コロイド粒子と金イオン、等を含有する)より構成され、またこの第2の中間層を最も外方から包被する皮膜層は、アルギン酸カルシウムの硬化物よりなる多孔質構造の固体層で構成されるものであった。
得られた多層な複合構造の球形カプセルは1.0〜1.5mmの粒子を有した。
(b) 実施例2、(a)、(v)で得た複合構造の球形カプセルの代りに、上記の実施例3、(a)で得た複合構造の球形カプセルを使用すること以外は、実施例2、(b)に記載された方法と同じ要領にて、黒天目釉を地釉として施釉された陶器皿素焼き品の内面に前記の球形カプセルを結着させ、次いで同じ要領で焼成を行った。
得られた焼成した陶器皿の施釉面は、黒天目釉の地釉層をもち、その地釉層の上に、前記の花弁の輪郭を画くように配列された球形カプセルの各個の熔融により生じた小島状の斑点(spots)の形の釉層の各々が下地釉層からやや隆起した形に生成された。しかもそれら斑点状の釉層の集まり組み合せで構成される全体の画像は、花弁の模様を画く風に生成されていた。さらに、上記の実施例2、(b)に示されたように、陶器皿の施釉内面の一つの領域において、円形の輪郭の中に散在して、あるいは密集して配置された数十個の球形カプセルは、それらの球形カプセルの各個の熔融により、やや隆起した小島状の斑点(spots)の形態の釉層をそれぞれ生成したが、それら小島状の斑点の若干数は、相互に連合した状態になり、サイズの大きないくつかの斑紋(specks)の形態の釉層を形成していた。
球形カプセルの各個の熔融により生じたやや隆起した小島状の形の斑点の釉層の各個は、その上表面では、同心円状の2重円の着色した縞模様を示し、各個の斑点の内方の縞部が青緑色を呈し、また外縁の縞部が金色を呈した。その外縁縞部を顕微鏡下で見ると、金結晶が出現しており、またその内方の縞部を顕微鏡下で見ると、銅結晶が出現していることが観察された。各個の球形カプセルの熔融によりそれぞれ生じたやや隆起した小島状の斑点の形の釉層の組み合わせで構成される全体の画像は、総体的に見ると、独特で微妙に美しい種々な色相をもつと共に窯変効果を示す装飾模様を、陶器皿に融着した黒天目釉の黒い地釉層上で作り出していることが認められた。
得られた多層な複合構造の球形カプセルは1.0〜1.5mmの粒子を有した。
(b) 実施例2、(a)、(v)で得た複合構造の球形カプセルの代りに、上記の実施例3、(a)で得た複合構造の球形カプセルを使用すること以外は、実施例2、(b)に記載された方法と同じ要領にて、黒天目釉を地釉として施釉された陶器皿素焼き品の内面に前記の球形カプセルを結着させ、次いで同じ要領で焼成を行った。
得られた焼成した陶器皿の施釉面は、黒天目釉の地釉層をもち、その地釉層の上に、前記の花弁の輪郭を画くように配列された球形カプセルの各個の熔融により生じた小島状の斑点(spots)の形の釉層の各々が下地釉層からやや隆起した形に生成された。しかもそれら斑点状の釉層の集まり組み合せで構成される全体の画像は、花弁の模様を画く風に生成されていた。さらに、上記の実施例2、(b)に示されたように、陶器皿の施釉内面の一つの領域において、円形の輪郭の中に散在して、あるいは密集して配置された数十個の球形カプセルは、それらの球形カプセルの各個の熔融により、やや隆起した小島状の斑点(spots)の形態の釉層をそれぞれ生成したが、それら小島状の斑点の若干数は、相互に連合した状態になり、サイズの大きないくつかの斑紋(specks)の形態の釉層を形成していた。
球形カプセルの各個の熔融により生じたやや隆起した小島状の形の斑点の釉層の各個は、その上表面では、同心円状の2重円の着色した縞模様を示し、各個の斑点の内方の縞部が青緑色を呈し、また外縁の縞部が金色を呈した。その外縁縞部を顕微鏡下で見ると、金結晶が出現しており、またその内方の縞部を顕微鏡下で見ると、銅結晶が出現していることが観察された。各個の球形カプセルの熔融によりそれぞれ生じたやや隆起した小島状の斑点の形の釉層の組み合わせで構成される全体の画像は、総体的に見ると、独特で微妙に美しい種々な色相をもつと共に窯変効果を示す装飾模様を、陶器皿に融着した黒天目釉の黒い地釉層上で作り出していることが認められた。
(a) 陶磁器の上絵付け絵具用の着色料と無色の石灰釉の生成用の釉薬原料とアルギン酸ナトリウム(有機質結合剤)との固体状混合物よりなる芯部、およびアルギン酸カルシウムの皮膜材物質よりなる皮膜層を有する球形カプセルの調製
(i) 陶磁器の上絵付け絵具の顔料として知られる明色黄色顔料の市販品(日陶産業(株)の製品)を用意した。この市販の明色黄色顔料の主成分は、ジリコニウムシリケートZrSiO4とプラセオジウムシリケートPrSiO4との均質な混合物の微粉末よりなる。また、陶磁器用の基本釉として知られるほとんど無色で透明な石灰釉層を生成できる石灰釉の生成用の釉薬原料の泥漿(スリップ)の市販品((株)釉陶の製品)を用意した。ここで用意された石灰釉生成用の釉薬原料の市販品の泥漿(スリップ)は、カリ長石の微粒子、炭酸カルシウムの微粒子、ろう石(Al2O3・4SiO2・H2O)の微粒子、カオリンのコロイド状粒子、およびリチウム長石Li2O・Al2O3・8SiO2である融剤(フラックス)の微粒子よりなる微粉末状の混合物に水を加えて、さらに湿式微粉砕することにより得られた市販製品であり、約40重量%の水分を有した。
前記の市販の明色黄色顔料の微粉末と、前記の釉薬原料泥漿(石灰釉生成用の)とカルボキシメチルセルロース・ナトリウム塩(結合剤)の5重量%水溶液とを1:29:10の重量比で良く混合し、それによりスラリー状の混合物Eを調製した。
また、製造すべき球形カプセルの皮膜層を形成する皮膜材物質の原料として用いられるアルギン酸ナトリウムの5重量%水溶液(ゾル状の液体)を調製した。
さらに、前記の実施例1、(a)の工程で使用されて且つ第3図に図解的に示された装置構造を有する2重管ノズル付きのカプセル製造装置を用意した。但し、ここで用いる装置では、内方ノズル管(4)のノズル孔(6)の出口内径を0.77mmに調整し、また外方ノズル管(1)のノズル孔(3)の出口内径を1.94mmに調整してある。
(ii) 前記の2重管ノズル付きのカプセル製造装置の内方ノズル管(4)の上方から、その内方ノズル管の内腔(7)中に前記のスラリー状混合物Eを装入した。内方ノズル管(4)の先端部(5)を通って、内方ノズル管の内方ノズル孔(6)からスラリー状混合物Eを下向きに押出した。
また、それに先立ち、カプセル製造装置に設けてある、球形カプセル皮膜層の形成物質の液状原料用の供給室(1’)内に前記のアルギン酸ナトリウムの5重量%水溶液(ゾル状)を装填しておいた。外方ノズル管(1)と内方ノズル管との間に形成された中間チャネル(8)を通して該アルギン酸ナトリウム水溶液を押出したが、この押出しは、内方ノズル管(4)を通るスラリー状混合物Eの押出しと同時に行った。
外方ノズルの外方ノズル孔出口の位置は内方ノズル管のノズル孔出口の下方に在るようにしてあり、そして外方ノズル管(1)の先細部(2)の先端の所で、外方ノズル管のノズル孔(3)の周壁と内方ノズル管のノズル孔(6)との周壁との間に形成された環状スリットを通して、前記のアルギン酸ナトリウム水溶液を押出させた。こうすると、内方ノズル管のノズル孔(6)から出たスラリー状混合物Eよりなる液流の表面周囲を、上記のアルギン酸ナトリウム水溶液が皮膜の形で包囲して内外2層の液流1本がノズル孔出口の下方の所で形成した。しかもその液流がやや流下すると、自然にくびれて次々と液滴になる現象が実施例1、(a)の場合と同様に起きた。
その結果として、スラリー状混合物Eよりなる丸い内層と、これを包被する上記アルギン酸ナトリウム水溶液の皮膜層とから構成された2層構造の丸い液滴が外方ノズル管(1)のノズル孔(3)から押出された液流の先端で次々と形成された。前記のスラリー状混合物Eの押出速度とアルギン酸ナトリウム水溶液の押出速度とをそれぞれ適宜にコントロールした。こうすると、前記の2層構造の丸い液滴の1個あたりに、その2層構造の液滴の内層(スラリー状混合物Eよりなる)の重量と皮膜層(アルギン酸ナトリウム水溶液よりなる)の重量との平均比率がほぼ40:60であるところの、前記の2重構造の丸い液滴が次々と継続的に形成された。しかしながら、これらの丸い液滴の直径と、大きさは各個の液滴についてそれぞれ多少変動するけれども、ほぼ同じであることが認められた。
(iii) 前記のように次々に形成された2層構造の丸い液滴を、室温で塩化カルシウムの2.0重量%水溶液よりなる液浴内に次々に滴下させた。滴下した液滴を前記の塩化カルシウム水溶液の液浴内に約5分間保持すると、液滴の皮膜層におけるアルギン酸ナトリウムはカルシウムイオンと反応してイオン架橋によりゲル状に硬化した。こうして、スラリー状混合物Eの芯部を包被する丈夫な皮膜をもつ丸いカプセル状粒子の多数が形成された。
これら多数の丸いカプセル状粒子を塩化カルシウム水溶液の液浴から分離し、さらに室温で水洗した。その後に、水洗された丸いカプセル状粒子を、20℃の乾燥空気流の中でカプセル粒子の芯部のスラリー状混合物Eが固化されるまで、乾燥した。
このようにして得られた乾燥した丸いカプセル状粒子は、1.5mm〜2.0mmの範囲の直径を有し、また内層(芯部)と、これを包被する皮膜層とからなる球形構造のカプセルである。その各カプセルの内層は、陶芸用絵具の一種の黄色顔料と石灰釉生成用の釉薬顔料と前記の有機結合剤としてのアルギン酸ナトリウムとの固体状混合物からなり、カプセル皮膜層はアルギン酸カルシウムの硬化物よりなる多孔質の固体状物質よりなるものであった。このカプセルの横断面構造は、第1図に示される実施例1、(a)の球形カプセルのものと同様であり、カプセルは内層(1)と皮膜層(2)とを有する。これらの球形カプセルでは、皮膜層を通して芯部に含まれた黄色顔料の黄色が僅かにすけて見えた。
(b) 明色黄色顔料とは異なる色をもつ顔料と、石灰釉の生成用の釉薬原料とアルギン酸ナトリウムとの固体状混合物よりなる芯部、および皮膜材物質としてアルギン酸カルシウムの硬化物よりなる皮膜層を有する球形カプセルの調製
上記の実施例4、(a)、(i)の工程で用いられた前記の市販の明色黄色顔料(日陶産業(株)の製品)に代えて、市販のローズピンク色の顔料(ジルコニウムシリケート中に、カドミウム粒子を分散した分散物を主成分とする)、市販の緑青色顔料(ジルコニウムシリケートとバナジウムシリケートとの均質な混合物を主成分とする)、市販の紺青色顔料(コバルトアルミネート(Co)Al2O4と亜鉛アルミネート(Zn)Al2O4との均質な混合物を主成分とする)、市販のヒワ色顔料(ジルコニウム、バナジウムおよびプラセオジウムPrのシリケート複合物を主成分とする)、市販の緑色顔料(アルミニウムとクロムとの混成酸化物(Al,Cr)2O3を主成分とする)、市販のチョコレート色顔料(亜鉛、鉄およびクロムの混成酸化物(Zn,Fe)(Fe,Cr)2O4を主成分とする)、市販の金茶色顔料(亜鉛、鉄およびクロム含量が小さいもの)を主成分とする)、市販のピンク色顔料(化学組成CaO・SnO2・SiO2・CrO3をもつ物質を主成分とする)、市販のピーコック色顔料(クロム酸コバルトCoCr2O4を主成分とする)、市販の黒色原料(コバルト、鉄およびクロムの混成酸化物(Co,Fe)(Fe,Cr)2O4を主成分とする)、または市販の白色顔料(化学組成SnO2−SiO2−B2O3−Na2O−CaOをもつ物質を主成分とする)または別の市販の白色顔料(ジルコニウム・シリケートを主成分とする)、あるいはえんじ赤顔料(酸化マンガンまたはカドミウム赤色顔料を主成分とする)を使用して、上記の実施例4、(a)、(i)〜(iii)の工程を実施した。
このようにして、球形カプセルの芯部中にそれぞれ11種の色の顔料を配合しているので、それぞれ11色の色を発現できる11種の球形カプセルが製造できた。
(c) 多色の装飾模様を地釉層上に有する陶器の製造
市販の乳白色釉の生成用釉薬原料の泥漿(スリップ)を、陶土製の素焼き皿に浸し掛けし、その後に、自然乾燥した。このように乳白釉を施釉された素焼き皿の内面において、5弁の花の輪郭の中に、上記実施例4、(a)、(b)で得た各種の色を発色できる各種の球形カプセルを好みに応じた色の組み合わせで適当な個所に配列した。なお、それらカプセルの配列に先立ち、施釉面でカプセルの置かれる位置にスターチ糊を吹きつけて置いた。それら各種の球形カプセルの配列は、好みの点描画を画くような絵付け模様を作るように調整した。
その後に再び、球形カプセルを配置された素焼き皿品の施釉内面の上から、市販のスプレー用スターチのりを有機質接着剤として吹きつけて、球形カプセルを素焼き皿品の施釉内面に結着させた。このようにして前記の球形カプセルを結着して有する素焼き皿を、電気キルン(日本電産シンポ(株)の製品)内に入れて、徐々に加熱して最高1235℃の施釉温度にて、空気よりなる酸化性雰囲気下に焼成した。
その焼成された陶器皿の内面は、これに融着した乳白色の釉地の釉層をもち、またこの地釉層の上に、前記の花弁の輪郭を画くように配列された各種の球形カプセルの各個の熔融により生じたいろいろな色相をもつ小島状斑点の形の釉層の各々が生成され、しかも乳白色地釉層からやや隆起した小島の形態で生成された。しかもそれら斑点の集まりの組合せで構成された全体の画像が花弁の模様を画いて生成されていた。
その結果、焼き上がった陶器皿の表面には、乳白釉の地釉層上に多彩で色鮮やかな点描画的に画かれた花弁の絵付け模様が作出できた。
(d) 山岳と雲と樹を含む風景を点描画風に描写した装飾模様をトルコ青釉地釉層上に有する磁器皿の製造
(i) 磁土製の素焼き丸皿に実施例1、(a)で用いたトルコ青釉生成用の釉薬原料のスリップを浸し掛けして、自然乾燥した。このように施釉された皿の乾燥表面の皿内面の中央に、富士山を形ちどる輪郭の中に、実施例4、(b)で作ったえんじ赤顔料を含有した小型の球形カプセル(a)と、えんじ赤顔料を含有した大型の球形カプセル(a’)の多数を点描画の形で配列した。その富士山の下方にやや離れて、横に流れる一つの薄い雲層を画く輪郭の中に、実施例4、(b)で作ったピンク色顔料を含む球形カプセル(b)の多数を互いに近接した形で配列した。上記の雲層の下方に、また、横に流れる別の雲層を画く輪郭の中に、実施例4、(b)で作った白色顔料を含むカプセル(c)の多数を互いに近接した形で配列した。なお、それの下方には、緑色顔料を含む大型のカプセル(d)を波線に沿って配列させた。それらカプセルの配列される位置には、スターチ糊を予じめて吹き付けて置く前処理を行い、配列されたカプセルが皿表面に貼りつくように準備する前処理をした。皿表面にそれらカプセルの配列をした後に、皿を自然乾燥した。
そのように山岳と雲と樹を含む風景を点描画風に且つ抽象画的に画くように配列された各種の色のカプセルが結着された皿の正面における球形カプセルの配列の様子と外観の様子を図解的に描写する図解図を添付図面の第4図に示す。
(ii) 前記のようにして各種の色の顔料を含むそれぞれのカプセルを結着して有する素焼き丸皿を、電気キルンに入れて、実施例4、(c)に記載されたと同じ要領で焼成した。
上記のように焼成された丸皿の上面は、皿面の上方の領域がトルコ青釉の青色地釉層をもち、皿面の中央の頒域に夕焼けの富士山を点描画風に画くように配列されたカプセル(a)および(a’)の熔融で生じたえんじ赤色の釉層の集まりをもち、その皿面の下方の領域には、ピンク色の雲層を画くように配列されたカプセル(c)の熔融で生じた白色の釉層と、波線に沿って並べたカプセル(d)の熔融で生じた緑色の丸い釉層の列とを有するものである。得られた丸皿焼成品は、美しい風景を点描画風に画く各種の色の装飾模様を有して、美観を呈した。
(i) 陶磁器の上絵付け絵具の顔料として知られる明色黄色顔料の市販品(日陶産業(株)の製品)を用意した。この市販の明色黄色顔料の主成分は、ジリコニウムシリケートZrSiO4とプラセオジウムシリケートPrSiO4との均質な混合物の微粉末よりなる。また、陶磁器用の基本釉として知られるほとんど無色で透明な石灰釉層を生成できる石灰釉の生成用の釉薬原料の泥漿(スリップ)の市販品((株)釉陶の製品)を用意した。ここで用意された石灰釉生成用の釉薬原料の市販品の泥漿(スリップ)は、カリ長石の微粒子、炭酸カルシウムの微粒子、ろう石(Al2O3・4SiO2・H2O)の微粒子、カオリンのコロイド状粒子、およびリチウム長石Li2O・Al2O3・8SiO2である融剤(フラックス)の微粒子よりなる微粉末状の混合物に水を加えて、さらに湿式微粉砕することにより得られた市販製品であり、約40重量%の水分を有した。
前記の市販の明色黄色顔料の微粉末と、前記の釉薬原料泥漿(石灰釉生成用の)とカルボキシメチルセルロース・ナトリウム塩(結合剤)の5重量%水溶液とを1:29:10の重量比で良く混合し、それによりスラリー状の混合物Eを調製した。
また、製造すべき球形カプセルの皮膜層を形成する皮膜材物質の原料として用いられるアルギン酸ナトリウムの5重量%水溶液(ゾル状の液体)を調製した。
さらに、前記の実施例1、(a)の工程で使用されて且つ第3図に図解的に示された装置構造を有する2重管ノズル付きのカプセル製造装置を用意した。但し、ここで用いる装置では、内方ノズル管(4)のノズル孔(6)の出口内径を0.77mmに調整し、また外方ノズル管(1)のノズル孔(3)の出口内径を1.94mmに調整してある。
(ii) 前記の2重管ノズル付きのカプセル製造装置の内方ノズル管(4)の上方から、その内方ノズル管の内腔(7)中に前記のスラリー状混合物Eを装入した。内方ノズル管(4)の先端部(5)を通って、内方ノズル管の内方ノズル孔(6)からスラリー状混合物Eを下向きに押出した。
また、それに先立ち、カプセル製造装置に設けてある、球形カプセル皮膜層の形成物質の液状原料用の供給室(1’)内に前記のアルギン酸ナトリウムの5重量%水溶液(ゾル状)を装填しておいた。外方ノズル管(1)と内方ノズル管との間に形成された中間チャネル(8)を通して該アルギン酸ナトリウム水溶液を押出したが、この押出しは、内方ノズル管(4)を通るスラリー状混合物Eの押出しと同時に行った。
外方ノズルの外方ノズル孔出口の位置は内方ノズル管のノズル孔出口の下方に在るようにしてあり、そして外方ノズル管(1)の先細部(2)の先端の所で、外方ノズル管のノズル孔(3)の周壁と内方ノズル管のノズル孔(6)との周壁との間に形成された環状スリットを通して、前記のアルギン酸ナトリウム水溶液を押出させた。こうすると、内方ノズル管のノズル孔(6)から出たスラリー状混合物Eよりなる液流の表面周囲を、上記のアルギン酸ナトリウム水溶液が皮膜の形で包囲して内外2層の液流1本がノズル孔出口の下方の所で形成した。しかもその液流がやや流下すると、自然にくびれて次々と液滴になる現象が実施例1、(a)の場合と同様に起きた。
その結果として、スラリー状混合物Eよりなる丸い内層と、これを包被する上記アルギン酸ナトリウム水溶液の皮膜層とから構成された2層構造の丸い液滴が外方ノズル管(1)のノズル孔(3)から押出された液流の先端で次々と形成された。前記のスラリー状混合物Eの押出速度とアルギン酸ナトリウム水溶液の押出速度とをそれぞれ適宜にコントロールした。こうすると、前記の2層構造の丸い液滴の1個あたりに、その2層構造の液滴の内層(スラリー状混合物Eよりなる)の重量と皮膜層(アルギン酸ナトリウム水溶液よりなる)の重量との平均比率がほぼ40:60であるところの、前記の2重構造の丸い液滴が次々と継続的に形成された。しかしながら、これらの丸い液滴の直径と、大きさは各個の液滴についてそれぞれ多少変動するけれども、ほぼ同じであることが認められた。
(iii) 前記のように次々に形成された2層構造の丸い液滴を、室温で塩化カルシウムの2.0重量%水溶液よりなる液浴内に次々に滴下させた。滴下した液滴を前記の塩化カルシウム水溶液の液浴内に約5分間保持すると、液滴の皮膜層におけるアルギン酸ナトリウムはカルシウムイオンと反応してイオン架橋によりゲル状に硬化した。こうして、スラリー状混合物Eの芯部を包被する丈夫な皮膜をもつ丸いカプセル状粒子の多数が形成された。
これら多数の丸いカプセル状粒子を塩化カルシウム水溶液の液浴から分離し、さらに室温で水洗した。その後に、水洗された丸いカプセル状粒子を、20℃の乾燥空気流の中でカプセル粒子の芯部のスラリー状混合物Eが固化されるまで、乾燥した。
このようにして得られた乾燥した丸いカプセル状粒子は、1.5mm〜2.0mmの範囲の直径を有し、また内層(芯部)と、これを包被する皮膜層とからなる球形構造のカプセルである。その各カプセルの内層は、陶芸用絵具の一種の黄色顔料と石灰釉生成用の釉薬顔料と前記の有機結合剤としてのアルギン酸ナトリウムとの固体状混合物からなり、カプセル皮膜層はアルギン酸カルシウムの硬化物よりなる多孔質の固体状物質よりなるものであった。このカプセルの横断面構造は、第1図に示される実施例1、(a)の球形カプセルのものと同様であり、カプセルは内層(1)と皮膜層(2)とを有する。これらの球形カプセルでは、皮膜層を通して芯部に含まれた黄色顔料の黄色が僅かにすけて見えた。
(b) 明色黄色顔料とは異なる色をもつ顔料と、石灰釉の生成用の釉薬原料とアルギン酸ナトリウムとの固体状混合物よりなる芯部、および皮膜材物質としてアルギン酸カルシウムの硬化物よりなる皮膜層を有する球形カプセルの調製
上記の実施例4、(a)、(i)の工程で用いられた前記の市販の明色黄色顔料(日陶産業(株)の製品)に代えて、市販のローズピンク色の顔料(ジルコニウムシリケート中に、カドミウム粒子を分散した分散物を主成分とする)、市販の緑青色顔料(ジルコニウムシリケートとバナジウムシリケートとの均質な混合物を主成分とする)、市販の紺青色顔料(コバルトアルミネート(Co)Al2O4と亜鉛アルミネート(Zn)Al2O4との均質な混合物を主成分とする)、市販のヒワ色顔料(ジルコニウム、バナジウムおよびプラセオジウムPrのシリケート複合物を主成分とする)、市販の緑色顔料(アルミニウムとクロムとの混成酸化物(Al,Cr)2O3を主成分とする)、市販のチョコレート色顔料(亜鉛、鉄およびクロムの混成酸化物(Zn,Fe)(Fe,Cr)2O4を主成分とする)、市販の金茶色顔料(亜鉛、鉄およびクロム含量が小さいもの)を主成分とする)、市販のピンク色顔料(化学組成CaO・SnO2・SiO2・CrO3をもつ物質を主成分とする)、市販のピーコック色顔料(クロム酸コバルトCoCr2O4を主成分とする)、市販の黒色原料(コバルト、鉄およびクロムの混成酸化物(Co,Fe)(Fe,Cr)2O4を主成分とする)、または市販の白色顔料(化学組成SnO2−SiO2−B2O3−Na2O−CaOをもつ物質を主成分とする)または別の市販の白色顔料(ジルコニウム・シリケートを主成分とする)、あるいはえんじ赤顔料(酸化マンガンまたはカドミウム赤色顔料を主成分とする)を使用して、上記の実施例4、(a)、(i)〜(iii)の工程を実施した。
このようにして、球形カプセルの芯部中にそれぞれ11種の色の顔料を配合しているので、それぞれ11色の色を発現できる11種の球形カプセルが製造できた。
(c) 多色の装飾模様を地釉層上に有する陶器の製造
市販の乳白色釉の生成用釉薬原料の泥漿(スリップ)を、陶土製の素焼き皿に浸し掛けし、その後に、自然乾燥した。このように乳白釉を施釉された素焼き皿の内面において、5弁の花の輪郭の中に、上記実施例4、(a)、(b)で得た各種の色を発色できる各種の球形カプセルを好みに応じた色の組み合わせで適当な個所に配列した。なお、それらカプセルの配列に先立ち、施釉面でカプセルの置かれる位置にスターチ糊を吹きつけて置いた。それら各種の球形カプセルの配列は、好みの点描画を画くような絵付け模様を作るように調整した。
その後に再び、球形カプセルを配置された素焼き皿品の施釉内面の上から、市販のスプレー用スターチのりを有機質接着剤として吹きつけて、球形カプセルを素焼き皿品の施釉内面に結着させた。このようにして前記の球形カプセルを結着して有する素焼き皿を、電気キルン(日本電産シンポ(株)の製品)内に入れて、徐々に加熱して最高1235℃の施釉温度にて、空気よりなる酸化性雰囲気下に焼成した。
その焼成された陶器皿の内面は、これに融着した乳白色の釉地の釉層をもち、またこの地釉層の上に、前記の花弁の輪郭を画くように配列された各種の球形カプセルの各個の熔融により生じたいろいろな色相をもつ小島状斑点の形の釉層の各々が生成され、しかも乳白色地釉層からやや隆起した小島の形態で生成された。しかもそれら斑点の集まりの組合せで構成された全体の画像が花弁の模様を画いて生成されていた。
その結果、焼き上がった陶器皿の表面には、乳白釉の地釉層上に多彩で色鮮やかな点描画的に画かれた花弁の絵付け模様が作出できた。
(d) 山岳と雲と樹を含む風景を点描画風に描写した装飾模様をトルコ青釉地釉層上に有する磁器皿の製造
(i) 磁土製の素焼き丸皿に実施例1、(a)で用いたトルコ青釉生成用の釉薬原料のスリップを浸し掛けして、自然乾燥した。このように施釉された皿の乾燥表面の皿内面の中央に、富士山を形ちどる輪郭の中に、実施例4、(b)で作ったえんじ赤顔料を含有した小型の球形カプセル(a)と、えんじ赤顔料を含有した大型の球形カプセル(a’)の多数を点描画の形で配列した。その富士山の下方にやや離れて、横に流れる一つの薄い雲層を画く輪郭の中に、実施例4、(b)で作ったピンク色顔料を含む球形カプセル(b)の多数を互いに近接した形で配列した。上記の雲層の下方に、また、横に流れる別の雲層を画く輪郭の中に、実施例4、(b)で作った白色顔料を含むカプセル(c)の多数を互いに近接した形で配列した。なお、それの下方には、緑色顔料を含む大型のカプセル(d)を波線に沿って配列させた。それらカプセルの配列される位置には、スターチ糊を予じめて吹き付けて置く前処理を行い、配列されたカプセルが皿表面に貼りつくように準備する前処理をした。皿表面にそれらカプセルの配列をした後に、皿を自然乾燥した。
そのように山岳と雲と樹を含む風景を点描画風に且つ抽象画的に画くように配列された各種の色のカプセルが結着された皿の正面における球形カプセルの配列の様子と外観の様子を図解的に描写する図解図を添付図面の第4図に示す。
(ii) 前記のようにして各種の色の顔料を含むそれぞれのカプセルを結着して有する素焼き丸皿を、電気キルンに入れて、実施例4、(c)に記載されたと同じ要領で焼成した。
上記のように焼成された丸皿の上面は、皿面の上方の領域がトルコ青釉の青色地釉層をもち、皿面の中央の頒域に夕焼けの富士山を点描画風に画くように配列されたカプセル(a)および(a’)の熔融で生じたえんじ赤色の釉層の集まりをもち、その皿面の下方の領域には、ピンク色の雲層を画くように配列されたカプセル(c)の熔融で生じた白色の釉層と、波線に沿って並べたカプセル(d)の熔融で生じた緑色の丸い釉層の列とを有するものである。得られた丸皿焼成品は、美しい風景を点描画風に画く各種の色の装飾模様を有して、美観を呈した。
(a) 青色顔料、黄色顔料または赤色顔料を含む低火度フリット釉の微粉末とアルギン酸ナトリウムとの固体状混合物よりなるカプセル芯部を有し且つアルギン酸カルシウムの硬化物よりなる多孔質構造の固体状皮膜層を有する球形カプセルの調製
(i) ガラス工芸に用いられる、青色顔料を含む低火度フリット釉の市販される青色の微粉末(a)(三徳工業(株)の製品)と、黄色顔料を含む低火度フリット釉の市販される黄色の微粉末(b)(三徳工業(株)の製品)と、赤色顔料を含む低火度フリット釉の市販される赤色の微粉末(c)(三徳工業(株)の製品)とを用意した。
前記の各種の色をもつフリット釉の市販される青色の微粉末(a)、フリット釉の市販される黄色の微粉末(b)、およびフリット釉の市販される赤色の微粉末(c)のそれぞれを、アルギン酸ナトリウムの5重量%水溶液(ゾル状)と1:1の重量比で良く混合し、これによって、青色のスラリー状混合物Fと、黄色のスラリー状混合物Gと、青色のスラリー状混合物Hとを調製した。
さらに、前記の実施例1、(a)の工程で用いられて且つ第3図に図解的に示された装置構造を有する2重管ノズル付きのカプセル製造装置を用意した。但し、ここで用いる装置では、内方ノズル管(4)のノズル孔(6)の出口内径を0.80mmに調整し、また外方ノズル管(1)のノズル孔(3)の出口内径を2.10mmに調整してある。
(ii) 上記のカプセル製造装置の内方ノズル管(4)の内腔(7)中に、上記の3色のスラリー状混合物F、GまたはHを装入した。
また、該装置に設けたカプセル皮膜形成物質の液状原料のための供給室(1’)に、アルギン酸ナトリウムの5重量%水溶液(ゾル状)を装入した。
実施例4、(a)、(ii)に記載されたと同じ要領で有色のスラリー状混合物F、G、またはHを内方ノズル管(4)のノズル孔(6)から下向きに押出し、またアルギン酸ナトリウム水溶液を、外方ノズル管のノズル孔(3)と内方ノズル管のノズル孔(6)との間にある環状スリットを通して押出した。
実施例4、(a)、(ii)に記載されたと同じ要領で2重構造の丸い液滴が次々に形成された。形成されたそれら丸い液滴の内層(有色のスラリー状混合物F、GまたはHからなる内層)と、皮膜層(アルギン酸ナトリウム水溶液からなる外層)との間の平均的な重量比率がほぼ45:55であるように調整が行われた。
(iii) それらの丸い液滴を、実施例4、(a)、(iii)に記載と同じ要領で、塩化カルシウムの2.0重量%水溶液の液浴中に次々に滴下、導入した。
アルギン酸カルシウムのゲル状硬化物よりなる皮膜をもつ丸いカプセル粒子が多数形成されたので、これらのカプセル状粒子を塩化カルシウム水溶液の液浴から取出し、さらに室温で水洗した。水洗されたカプセル状粒子を20℃の乾燥空気流の中で十分に乾燥して、カプセルの全体が固化するまで乾燥した。これによって、乾燥した球形カプセルの多数が収得でき、これらカプセルは1.7mm〜2.4mmの範囲の直径を有した。
上記の諸工程で製造された球形カプセルは、青色のフリット釉微粉末(a)とアルギン酸ナトリウムとの固体状混合物F’からなる芯部を有して且つアルギン酸カルシウムの硬化物からなる多孔質構造の固体状皮膜層を有する球形カプセル(i)と、黄色のフリット釉微粉末(b)とアルギン酸ナトリウムとの固体状混合物G’からなる芯部を有してアルギン酸カルシウムの硬化物よりなる多孔質構造の固体状皮膜層を有する球形カプセル(ii)と、赤色のフリット釉微粉末(c)とアルギン酸ナトリウムとの固体状混合物H’からなる芯部を有して且つアルギン酸カルシウムの硬化物からなる多孔質構造の固体状皮膜層を有する球形カプセル(iii)との3種類である。
(b) 多色の装飾模様を表面に作成された耐熱ガラス成形品の製造
耐熱性のバリウムガラス製の円筒状ガラスコップの側面において、上記の実施例5、(a)で得た青色、黄色、赤色の球形カプセル(i),(ii),(iii)を、好みの色の組合せで用いて好みの模様を画くように配列させた。カプセルの配列に先立ち、カプセルが置かれる位置にスターチのりを吹きつけて置く前処理した。カプセル配列後は再び市販のスプレー用スターチのりを吹きつけ、乾燥してカプセルを接着させた。
それらカプセルを接着された上記のガラスコップを電気キルン内で徐々に加熱して最高850℃の温度で酸化性雰囲気下に焼成した。
焼成後に、該ガラススコップの側面を見ると、接着した球形カプセルの各個の溶着により生成された青色の小島状斑点と、黄色の小島状斑点と、赤色の小島状斑点とがガラス表面からやや隆起した状態で形成されていた。しかも、それぞれの小島状斑点は立体感を示し、それら斑点の組合せで作られる全体の画像を見ると、美しい装飾模様を作り出していることが認められた。
(i) ガラス工芸に用いられる、青色顔料を含む低火度フリット釉の市販される青色の微粉末(a)(三徳工業(株)の製品)と、黄色顔料を含む低火度フリット釉の市販される黄色の微粉末(b)(三徳工業(株)の製品)と、赤色顔料を含む低火度フリット釉の市販される赤色の微粉末(c)(三徳工業(株)の製品)とを用意した。
前記の各種の色をもつフリット釉の市販される青色の微粉末(a)、フリット釉の市販される黄色の微粉末(b)、およびフリット釉の市販される赤色の微粉末(c)のそれぞれを、アルギン酸ナトリウムの5重量%水溶液(ゾル状)と1:1の重量比で良く混合し、これによって、青色のスラリー状混合物Fと、黄色のスラリー状混合物Gと、青色のスラリー状混合物Hとを調製した。
さらに、前記の実施例1、(a)の工程で用いられて且つ第3図に図解的に示された装置構造を有する2重管ノズル付きのカプセル製造装置を用意した。但し、ここで用いる装置では、内方ノズル管(4)のノズル孔(6)の出口内径を0.80mmに調整し、また外方ノズル管(1)のノズル孔(3)の出口内径を2.10mmに調整してある。
(ii) 上記のカプセル製造装置の内方ノズル管(4)の内腔(7)中に、上記の3色のスラリー状混合物F、GまたはHを装入した。
また、該装置に設けたカプセル皮膜形成物質の液状原料のための供給室(1’)に、アルギン酸ナトリウムの5重量%水溶液(ゾル状)を装入した。
実施例4、(a)、(ii)に記載されたと同じ要領で有色のスラリー状混合物F、G、またはHを内方ノズル管(4)のノズル孔(6)から下向きに押出し、またアルギン酸ナトリウム水溶液を、外方ノズル管のノズル孔(3)と内方ノズル管のノズル孔(6)との間にある環状スリットを通して押出した。
実施例4、(a)、(ii)に記載されたと同じ要領で2重構造の丸い液滴が次々に形成された。形成されたそれら丸い液滴の内層(有色のスラリー状混合物F、GまたはHからなる内層)と、皮膜層(アルギン酸ナトリウム水溶液からなる外層)との間の平均的な重量比率がほぼ45:55であるように調整が行われた。
(iii) それらの丸い液滴を、実施例4、(a)、(iii)に記載と同じ要領で、塩化カルシウムの2.0重量%水溶液の液浴中に次々に滴下、導入した。
アルギン酸カルシウムのゲル状硬化物よりなる皮膜をもつ丸いカプセル粒子が多数形成されたので、これらのカプセル状粒子を塩化カルシウム水溶液の液浴から取出し、さらに室温で水洗した。水洗されたカプセル状粒子を20℃の乾燥空気流の中で十分に乾燥して、カプセルの全体が固化するまで乾燥した。これによって、乾燥した球形カプセルの多数が収得でき、これらカプセルは1.7mm〜2.4mmの範囲の直径を有した。
上記の諸工程で製造された球形カプセルは、青色のフリット釉微粉末(a)とアルギン酸ナトリウムとの固体状混合物F’からなる芯部を有して且つアルギン酸カルシウムの硬化物からなる多孔質構造の固体状皮膜層を有する球形カプセル(i)と、黄色のフリット釉微粉末(b)とアルギン酸ナトリウムとの固体状混合物G’からなる芯部を有してアルギン酸カルシウムの硬化物よりなる多孔質構造の固体状皮膜層を有する球形カプセル(ii)と、赤色のフリット釉微粉末(c)とアルギン酸ナトリウムとの固体状混合物H’からなる芯部を有して且つアルギン酸カルシウムの硬化物からなる多孔質構造の固体状皮膜層を有する球形カプセル(iii)との3種類である。
(b) 多色の装飾模様を表面に作成された耐熱ガラス成形品の製造
耐熱性のバリウムガラス製の円筒状ガラスコップの側面において、上記の実施例5、(a)で得た青色、黄色、赤色の球形カプセル(i),(ii),(iii)を、好みの色の組合せで用いて好みの模様を画くように配列させた。カプセルの配列に先立ち、カプセルが置かれる位置にスターチのりを吹きつけて置く前処理した。カプセル配列後は再び市販のスプレー用スターチのりを吹きつけ、乾燥してカプセルを接着させた。
それらカプセルを接着された上記のガラスコップを電気キルン内で徐々に加熱して最高850℃の温度で酸化性雰囲気下に焼成した。
焼成後に、該ガラススコップの側面を見ると、接着した球形カプセルの各個の溶着により生成された青色の小島状斑点と、黄色の小島状斑点と、赤色の小島状斑点とがガラス表面からやや隆起した状態で形成されていた。しかも、それぞれの小島状斑点は立体感を示し、それら斑点の組合せで作られる全体の画像を見ると、美しい装飾模様を作り出していることが認められた。
(a) 陶磁器絵付け下絵具用のカナリア黄色顔料と石灰釉生成用の釉薬原料とアルギン酸カルシウム(有機質結合剤として働く)との固体状混合物よりなる芯部と、下絵具用のえんじ赤色顔料と石灰釉生成用の釉薬原料とアルギン酸カルシウムとの混合物よりなる中間層と、有機質の皮膜材物質(アルギン酸カルシウムの硬化物で形成される)よりなる皮膜層とを有する多層な複合構造の球形カプセルの調製
(i) 陶磁器用の下絵具として知られるカナリア黄色顔料の微粉末市販品と、えんじ赤色顔料の微粉末市販品(いずれも日本電産シンポ(株)の製品)を用意した。また、実施例4、(a)、(i)で用いた石灰釉生成用の釉薬原料の泥漿(スリップ)の市販品((株)釉陶の製品)を用意した。この釉薬原料は約40重量%の水分を有したものである。
用意したカナリア黄色顔料(微粉末)と、石灰釉生成用の釉薬原料の泥漿(スリップ)と、アルギン酸ナトリウムの2重量%水溶液とを、1:9:5の重量比で良く混合して、スラリー状混合物Jを調製した。
また、用意したえんじ赤顔料(微粉末)と、石灰釉生成用の釉薬原料の泥漿(スリップ)と、アルギン酸ナトリウムの2重量%水溶液とを、3:7:20の重量比で良く混合して、スラリー状混合物Kを調製した。
また別に、添付図面の第5図に示された装置の縦断面の図解図で表される装置構造をもつ3重管ノズル付きのカプセル製造装置を用意した。この3重管ノズル付きカプセル製造装置は、実施例1〜4に用いて第3図に示された2重管ノズル付きのカプセル製造装置における外方ノズル(1)の回りに、横断面の円形な第3の外方ノズル(10)を同軸的に追加して設けてある以外は、第3図に示された装置と概ね同様な構造を有する。
(ii) 第5図に示された3重管ノズル付きのカプセル製造装置の内方ノズル管(4)の内腔(7)へ上記のスラリー状混合物J(黄色顔料を含む)を装入して、内方ノズル管(4)の先細部(5)を通して先端のノズル孔(6)から混合物Jを下向きに押出した。
また、内方ノズル管(4)を包囲して同心円的に設けられた中間ノズル管(1)と、内方ノズル管(4)との間に形成された液状原料のための供給室(1’)中に、供給管(9)を経て上記のスラリー状混合物Kを装入しておき、そして中間ノズル管(1)の先細部(2)と、内方ノズル管(4)との間に形成されたチャネル部(8)を経て、該混合物K(えんじ赤顔料を含む)を中間ノズル管(1)の先端のノズル孔(3)から下向きに押出した。
さらに、外方ノズル管(10)と中間ノズル管(1)との間に形成されたところの、液状の原料のための環形の供給室(13)の中に、供給管(15)を経てアルギン酸ナトリウム(カプセルの皮膜層形成用の皮膜材物質のための原料)の5重量%水溶液(ゾル状)を装入しておき、そして中間ノズル管(1)の先細部(2)と外方ノズル管(10)の先細部(11)との間に形成されたチャネル(14)を通って、アルギン酸ナトリウム5重量%水溶液を外方ノズル管先細部(11)の下端のノズル孔(12)から下向きに押出した。
このようにすると、ノズル孔(12)から押出された1本の液流は、横断面が円形の中央層と、これを包囲する横断面が環形の中間層と、中間層を包囲する外方層とをもち、同心円的な3層の断面構造を有した。この1本の液流の該中央層は、黄色顔料を含む上記のスラリー状混合物Jからなり、該中間層はえんじ赤顔料を含む上記のスラリー状混合物Kからなり、また該外方層は前記のアルギン酸ナトリウム水溶液からなる。
ノズル孔(12)から押出された上記の液流は、その下端で自然に細くくびれて次々に丸い3層構造の液滴を形成する。
内方ノズル管のノズル孔(6)の出口内径を0.72mmに調整し、中間ノズル管のノズル孔(3)の出口内径を1.94mmに調整し、外方ノズル管のノズル孔(12)の出口内径を3.0mmに調整し、しかも、前記のスラリー状混合物Jおよび混合物Kの流出速度とアルギン酸ナトリウム水溶液の流出速度をそれぞれに適宜にコントロールした。
こうすると、前記の3層構造の丸い液滴の1個あたりに、その3層構造の液滴の最内層(混合物Jよりなる)の重量と、中間層(混合物Kよりなる)の重量と、皮膜層(アルギン酸ナトリウム水溶液よりなる)の重量との平均比率がほぼ25:35:40であるところの前記の3層構造の丸い液滴が次々と連続的に形成された。これらの丸い液滴の直径と大きさは各個ではそれぞれ多少変動するけれども、ほぼ同じであることが認められた。
(iii) 前記のように次々に形成された3層構造の丸い液滴を室温で塩化カルシウムの2.0重量%水溶液内に次々に滴下させた。滴下した液滴を前記の塩化カルシウム水溶液内に約15分間保持すると、液滴の皮膜層のおけるアルギン酸ナトリウムは浸透してきたカルシウムイオンと反応してイオン架橋によりゲル状に硬化したので、丈夫な皮膜をもつ丸いカプセル状粒子の多数が形成された。また、液滴の最内層と中間層に含まれたアルギン酸ナトリウムの大部分も、最内層と中間層に浸透してきたCaイオンとの反応でアルギン酸カルシウムのゲル状物に変化した。
これら多数の丸いカプセル状粒子を塩化カルシウム水溶液から分離し、さらに室温で水洗した。その後に、水洗された丸いカプセル状粒子を20℃の乾燥空気流中で乾燥した。この乾燥は、各個のカプセル状粒子に含まれた付着水分が実質的に無くなって、カプセル状粒子の芯部を含めて、粒子全体が固体化するまで行った。
乾燥した丸いカプセル状粒子を、2.0〜2.5mmの範囲の直径を有し、また芯部と、これを包囲する中間層、またそれを包囲する皮膜層とからなる3層構造の球形カプセルである。その球形カプセルの芯部をなす最内層が石灰釉生成用の釉薬原料と下絵具のカナリア黄色の顔料と、アルギン酸カルシウムの硬化物との混合物である分散体(dispersion)の形態の固体状物質からなる。また、その中間層も石灰釉生成用の釉薬原料と下絵具のえんじ赤色顔料成分と、アルギン酸カルシウムの硬化物との混合物である分散体(dispersion)の形態の固体状物質からなり、そして皮膜層はアルギン酸カルシウムの硬化物からなる多孔質構造の固体層であった。
この3層構造の球形カプセルの外観を斜視図で表わす図解図を添付図面の第6図に示す。このカプセルの一部分の横断面が斜視図としても第6図に示される。各個のカプセルは芯部(1)と中間層(3)と皮膜層(2)とを有する。
(b) 上記(a)で製造された3層構造カプセルを用いての絵付け陶磁器の製造
陶土製の素焼き皿に市販の乳白釉用の釉薬原料のスリップを浸し掛けした。このように施釉した後に自然乾燥した。素焼き皿の施釉された内側表面の適当な個所に、3重丸の輪郭をもつ好みの点描画風の模様を画く配置で、実施例6、(a)で製造した球形カプセル(3層構造の球形カプセル乾燥品)を配列させた。そのようにカプセルを配列するに先立ち、カプセルが置かれる位置にスターチ糊を吹きつけて置く前処理をした。その後再び、そして市販のスプレー澱粉のりを吹き付け、乾燥してカプセルを素焼き皿の施釉面に結着した。このように球形カプセルを結着した素焼き皿施釉品を電気キルン(日本電産シンポ(株)製)内で徐々に加熱し、そして最高1235℃の施釉温度にて酸化性雰囲気下に焼成した。
その結果、焼き上がった陶器皿の内側表面は乳白釉の地釉層をもち、その地釉層の上に、内方部が黄色で外縁が赤色のほぼ同心円状の2重円の縞模様をもつ小島状の斑点の形の釉層を各々のカプセルから作出できた。その2重円(外径3mm)の縞模様をもつ小島状釉層よりなる点描画風の装飾模様で陶磁器を絵付けすることは、エッジングその他の絵付け技法ではまねできない独特の技法である。
(i) 陶磁器用の下絵具として知られるカナリア黄色顔料の微粉末市販品と、えんじ赤色顔料の微粉末市販品(いずれも日本電産シンポ(株)の製品)を用意した。また、実施例4、(a)、(i)で用いた石灰釉生成用の釉薬原料の泥漿(スリップ)の市販品((株)釉陶の製品)を用意した。この釉薬原料は約40重量%の水分を有したものである。
用意したカナリア黄色顔料(微粉末)と、石灰釉生成用の釉薬原料の泥漿(スリップ)と、アルギン酸ナトリウムの2重量%水溶液とを、1:9:5の重量比で良く混合して、スラリー状混合物Jを調製した。
また、用意したえんじ赤顔料(微粉末)と、石灰釉生成用の釉薬原料の泥漿(スリップ)と、アルギン酸ナトリウムの2重量%水溶液とを、3:7:20の重量比で良く混合して、スラリー状混合物Kを調製した。
また別に、添付図面の第5図に示された装置の縦断面の図解図で表される装置構造をもつ3重管ノズル付きのカプセル製造装置を用意した。この3重管ノズル付きカプセル製造装置は、実施例1〜4に用いて第3図に示された2重管ノズル付きのカプセル製造装置における外方ノズル(1)の回りに、横断面の円形な第3の外方ノズル(10)を同軸的に追加して設けてある以外は、第3図に示された装置と概ね同様な構造を有する。
(ii) 第5図に示された3重管ノズル付きのカプセル製造装置の内方ノズル管(4)の内腔(7)へ上記のスラリー状混合物J(黄色顔料を含む)を装入して、内方ノズル管(4)の先細部(5)を通して先端のノズル孔(6)から混合物Jを下向きに押出した。
また、内方ノズル管(4)を包囲して同心円的に設けられた中間ノズル管(1)と、内方ノズル管(4)との間に形成された液状原料のための供給室(1’)中に、供給管(9)を経て上記のスラリー状混合物Kを装入しておき、そして中間ノズル管(1)の先細部(2)と、内方ノズル管(4)との間に形成されたチャネル部(8)を経て、該混合物K(えんじ赤顔料を含む)を中間ノズル管(1)の先端のノズル孔(3)から下向きに押出した。
さらに、外方ノズル管(10)と中間ノズル管(1)との間に形成されたところの、液状の原料のための環形の供給室(13)の中に、供給管(15)を経てアルギン酸ナトリウム(カプセルの皮膜層形成用の皮膜材物質のための原料)の5重量%水溶液(ゾル状)を装入しておき、そして中間ノズル管(1)の先細部(2)と外方ノズル管(10)の先細部(11)との間に形成されたチャネル(14)を通って、アルギン酸ナトリウム5重量%水溶液を外方ノズル管先細部(11)の下端のノズル孔(12)から下向きに押出した。
このようにすると、ノズル孔(12)から押出された1本の液流は、横断面が円形の中央層と、これを包囲する横断面が環形の中間層と、中間層を包囲する外方層とをもち、同心円的な3層の断面構造を有した。この1本の液流の該中央層は、黄色顔料を含む上記のスラリー状混合物Jからなり、該中間層はえんじ赤顔料を含む上記のスラリー状混合物Kからなり、また該外方層は前記のアルギン酸ナトリウム水溶液からなる。
ノズル孔(12)から押出された上記の液流は、その下端で自然に細くくびれて次々に丸い3層構造の液滴を形成する。
内方ノズル管のノズル孔(6)の出口内径を0.72mmに調整し、中間ノズル管のノズル孔(3)の出口内径を1.94mmに調整し、外方ノズル管のノズル孔(12)の出口内径を3.0mmに調整し、しかも、前記のスラリー状混合物Jおよび混合物Kの流出速度とアルギン酸ナトリウム水溶液の流出速度をそれぞれに適宜にコントロールした。
こうすると、前記の3層構造の丸い液滴の1個あたりに、その3層構造の液滴の最内層(混合物Jよりなる)の重量と、中間層(混合物Kよりなる)の重量と、皮膜層(アルギン酸ナトリウム水溶液よりなる)の重量との平均比率がほぼ25:35:40であるところの前記の3層構造の丸い液滴が次々と連続的に形成された。これらの丸い液滴の直径と大きさは各個ではそれぞれ多少変動するけれども、ほぼ同じであることが認められた。
(iii) 前記のように次々に形成された3層構造の丸い液滴を室温で塩化カルシウムの2.0重量%水溶液内に次々に滴下させた。滴下した液滴を前記の塩化カルシウム水溶液内に約15分間保持すると、液滴の皮膜層のおけるアルギン酸ナトリウムは浸透してきたカルシウムイオンと反応してイオン架橋によりゲル状に硬化したので、丈夫な皮膜をもつ丸いカプセル状粒子の多数が形成された。また、液滴の最内層と中間層に含まれたアルギン酸ナトリウムの大部分も、最内層と中間層に浸透してきたCaイオンとの反応でアルギン酸カルシウムのゲル状物に変化した。
これら多数の丸いカプセル状粒子を塩化カルシウム水溶液から分離し、さらに室温で水洗した。その後に、水洗された丸いカプセル状粒子を20℃の乾燥空気流中で乾燥した。この乾燥は、各個のカプセル状粒子に含まれた付着水分が実質的に無くなって、カプセル状粒子の芯部を含めて、粒子全体が固体化するまで行った。
乾燥した丸いカプセル状粒子を、2.0〜2.5mmの範囲の直径を有し、また芯部と、これを包囲する中間層、またそれを包囲する皮膜層とからなる3層構造の球形カプセルである。その球形カプセルの芯部をなす最内層が石灰釉生成用の釉薬原料と下絵具のカナリア黄色の顔料と、アルギン酸カルシウムの硬化物との混合物である分散体(dispersion)の形態の固体状物質からなる。また、その中間層も石灰釉生成用の釉薬原料と下絵具のえんじ赤色顔料成分と、アルギン酸カルシウムの硬化物との混合物である分散体(dispersion)の形態の固体状物質からなり、そして皮膜層はアルギン酸カルシウムの硬化物からなる多孔質構造の固体層であった。
この3層構造の球形カプセルの外観を斜視図で表わす図解図を添付図面の第6図に示す。このカプセルの一部分の横断面が斜視図としても第6図に示される。各個のカプセルは芯部(1)と中間層(3)と皮膜層(2)とを有する。
(b) 上記(a)で製造された3層構造カプセルを用いての絵付け陶磁器の製造
陶土製の素焼き皿に市販の乳白釉用の釉薬原料のスリップを浸し掛けした。このように施釉した後に自然乾燥した。素焼き皿の施釉された内側表面の適当な個所に、3重丸の輪郭をもつ好みの点描画風の模様を画く配置で、実施例6、(a)で製造した球形カプセル(3層構造の球形カプセル乾燥品)を配列させた。そのようにカプセルを配列するに先立ち、カプセルが置かれる位置にスターチ糊を吹きつけて置く前処理をした。その後再び、そして市販のスプレー澱粉のりを吹き付け、乾燥してカプセルを素焼き皿の施釉面に結着した。このように球形カプセルを結着した素焼き皿施釉品を電気キルン(日本電産シンポ(株)製)内で徐々に加熱し、そして最高1235℃の施釉温度にて酸化性雰囲気下に焼成した。
その結果、焼き上がった陶器皿の内側表面は乳白釉の地釉層をもち、その地釉層の上に、内方部が黄色で外縁が赤色のほぼ同心円状の2重円の縞模様をもつ小島状の斑点の形の釉層を各々のカプセルから作出できた。その2重円(外径3mm)の縞模様をもつ小島状釉層よりなる点描画風の装飾模様で陶磁器を絵付けすることは、エッジングその他の絵付け技法ではまねできない独特の技法である。
(a) 石灰釉生成用の釉薬原料と酸化第二鉄(着色料)と酸化マンガン(着色補助剤)とアルギン酸カルシウム(結合剤)との固体状混合物よりなる芯部と、金液乾燥残渣固体生成物よりなる中間層と、アルギン酸カルシウムの硬化物よりなる多孔質な固体状皮膜層とを有する3層構造の球形カプセルの製造
(i) 実施例2、(a)、(i)で用いたものと同様な銀油滴天目釉を生成できる釉薬原料の泥漿(スリップ)の市販品((株)釉陶の製品)を用意した。この釉薬原料泥漿は、石灰釉生成用の釉薬原料の微粒子と、酸化第二鉄の微粒子と、酸化マンガンの微粒子と水とを含むスラリー状混合物である。この銀油滴天目釉生成用の釉薬原料の泥漿を、アルギン酸ナトリウムの10重量%水溶液と2:1の重量比で混合して、スラリー状混合物Mを調製した。
また、金液市販品として、実施例1で用いた商品名「金液N−9」の金液(ノリタケ(株)の製品)を用意し、これをテレピン油と1:1の重量比で混合して、油状の混合物Lを調製した。
また、アルギン酸ナトリウムの5重量%の水溶液中に、該水溶液の重量に基づいて0.1%の量の酸化コバルト微粉末、0.1%の量の酸化マンガン微粉末および0.05%の量の酸化ニッケル微粉末を混合して、懸濁液状の混合物Oを調製した。
別に、実施例6、(a)で用いたと同様な装置であり、第5図に図解された装置構造をもつ3重管ノズル付きのカプセル製造装置を用意した。但し、この場合には、内方ノズル管(4)のノズル孔(6)の出口内径を0.72mmに調整し、中間ノズル管(1)のノズル孔(3)の出口内径を1.94mmに調整し、外方ノズル管(10)のノズル孔(12)の出口内径を3.0mmに調整した。
(ii) 前記のスラリー状混合物M(銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料を含む)を内方ノズル管のノズル孔(6)から押出し、スラリー状混合物L(金液を含む)を前記の装置の中間ノズル管(1)のノズル孔(3)から押出し、また前記の混合物Oを、中間ノズル管のノズル孔(3)の周壁と外方ノズル管の先細部(11)内壁との間でノズル孔(12)近くに形成されたところの環状スリットを通して下向きに押出した。なお、それぞれの混合物M、L、Oの押出速度を相互に調整した。
実施例6、(a)、(ii)に記載されたと同じ方式にて、横断面が同心円状の3層構造の流液1本が外方ノズル孔(12)の下方の所で形成された。また、この液流はその下端で自然に細くくびれて3層構造の丸い液滴を次々と生成した。
こうすると、前記の3層構造の丸い液滴の1個あたりに、その3層構造の液滴の最内層(混合物M)の重量と、中間層(混合物L)の重量と皮膜層(アルギン酸ナトリウム水溶液を含む混合物O)の重量との平均比率がほぼ30:40:30であるところの前記の3層構造の丸い液滴が形成された。これらの丸い液滴の直径と大きさは各個ではそれぞれ多少変動するけれども、ほぼ同じであることが認められた。
(iii) 前記のように次々に形成された3層構造の丸い液滴を室温で塩化カルシウムの2.0重量%水溶液内に次々に滴下させた。滴下した液滴を前記の塩化カルシウム水溶液内に約15分間保持すると、液滴の皮膜層におけるアルギン酸ナトリウムはカルシウムイオンと反応してイオン架橋によりゲル状に硬化したので、丈夫な皮膜をもつ丸いカプセル状粒子の多数が形成された。また、粒子の最内層中のアルギン酸ナトリウムも大部分が侵透してきたカルシウムイオンと反応してゲル化した。
これら多数の丸いカプセル状粒子を塩化カルシウム水溶液から分離し、さらに室温で水洗した。その後に、水洗された丸いカプセル状粒子を20℃の乾燥空気流の中で乾燥した。これらのカプセル状粒子の各個中に含まれた付着水分のすべてを除去されるまで、すなわちカプセル状粒子の芯部を含めて、粒子全体が固化するまで乾燥を行った。
このように乾燥した丸いカプセル状粒子を、2.5〜3.0mmの範囲の直径を有し、また最内層と、これを包囲する中間層、またそれを包囲する皮膜層とからなる3層構造の球形カプセルである。
これら球形カプセルの各個は、銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料と着色料としての各種の金属化合物とアルギン酸カルシウム(結合剤として働く)との固体状混合物よりなる芯部と、金液の乾燥残渣固体生成物よりなる中間層と、コバルト、マンガン、ニッケルの各酸化物(鉄質表面への密着性増強剤として働くと共に、着色料としても働く)の微粒子を分散粒子として内部に含むアルギン酸カルシウムの硬化物よりなる多孔質構造の固体状皮膜層とを有する3層構造を示した。その球形カプセルの3層構造は、実施例6で作製されて第6図に示されたカプセルの3層構造と同様である。
(b) 上記の(a)で製造された3層構造の球形カプセルを用いての絵付け鉄製皿の製造
鉄製皿の表面の適当な個所に、好みの点描的な模様を作る配置で、実施例7、(a)で調製した3層構造の球形カプセル乾燥品を配列した。カプセルを配列するに先立ち、カプセルが置かれる位置にスプレー用スターチ糊を予じめ吹きつける前処理をした。そして自然乾燥し、再び上から市販のスプレーのりを吹きつけ、乾燥させ、カプセルを鉄皿に結着した。
その鉄皿を電気窯(日本電産シンポ(株)製)内で徐々に加熱して、そして最大温度1250℃で酸化性雰囲気下に焼成した。その結果、焼き上がった鉄製皿の表面には、銀色と金色を混交して呈する窯変効果を示す銀油滴天目釉の斑点と斑紋状の釉層が各個のカプセルの熔融で生成するので、有色の美しい装飾模様が作出できた。その窯変効果を示す模様は、鉄器表面上において、美しい独特、微妙な色相を呈し、その模様の中に明色の金結晶、鉄結晶が出現していたことが顕微鏡下に観察できた。
(i) 実施例2、(a)、(i)で用いたものと同様な銀油滴天目釉を生成できる釉薬原料の泥漿(スリップ)の市販品((株)釉陶の製品)を用意した。この釉薬原料泥漿は、石灰釉生成用の釉薬原料の微粒子と、酸化第二鉄の微粒子と、酸化マンガンの微粒子と水とを含むスラリー状混合物である。この銀油滴天目釉生成用の釉薬原料の泥漿を、アルギン酸ナトリウムの10重量%水溶液と2:1の重量比で混合して、スラリー状混合物Mを調製した。
また、金液市販品として、実施例1で用いた商品名「金液N−9」の金液(ノリタケ(株)の製品)を用意し、これをテレピン油と1:1の重量比で混合して、油状の混合物Lを調製した。
また、アルギン酸ナトリウムの5重量%の水溶液中に、該水溶液の重量に基づいて0.1%の量の酸化コバルト微粉末、0.1%の量の酸化マンガン微粉末および0.05%の量の酸化ニッケル微粉末を混合して、懸濁液状の混合物Oを調製した。
別に、実施例6、(a)で用いたと同様な装置であり、第5図に図解された装置構造をもつ3重管ノズル付きのカプセル製造装置を用意した。但し、この場合には、内方ノズル管(4)のノズル孔(6)の出口内径を0.72mmに調整し、中間ノズル管(1)のノズル孔(3)の出口内径を1.94mmに調整し、外方ノズル管(10)のノズル孔(12)の出口内径を3.0mmに調整した。
(ii) 前記のスラリー状混合物M(銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料を含む)を内方ノズル管のノズル孔(6)から押出し、スラリー状混合物L(金液を含む)を前記の装置の中間ノズル管(1)のノズル孔(3)から押出し、また前記の混合物Oを、中間ノズル管のノズル孔(3)の周壁と外方ノズル管の先細部(11)内壁との間でノズル孔(12)近くに形成されたところの環状スリットを通して下向きに押出した。なお、それぞれの混合物M、L、Oの押出速度を相互に調整した。
実施例6、(a)、(ii)に記載されたと同じ方式にて、横断面が同心円状の3層構造の流液1本が外方ノズル孔(12)の下方の所で形成された。また、この液流はその下端で自然に細くくびれて3層構造の丸い液滴を次々と生成した。
こうすると、前記の3層構造の丸い液滴の1個あたりに、その3層構造の液滴の最内層(混合物M)の重量と、中間層(混合物L)の重量と皮膜層(アルギン酸ナトリウム水溶液を含む混合物O)の重量との平均比率がほぼ30:40:30であるところの前記の3層構造の丸い液滴が形成された。これらの丸い液滴の直径と大きさは各個ではそれぞれ多少変動するけれども、ほぼ同じであることが認められた。
(iii) 前記のように次々に形成された3層構造の丸い液滴を室温で塩化カルシウムの2.0重量%水溶液内に次々に滴下させた。滴下した液滴を前記の塩化カルシウム水溶液内に約15分間保持すると、液滴の皮膜層におけるアルギン酸ナトリウムはカルシウムイオンと反応してイオン架橋によりゲル状に硬化したので、丈夫な皮膜をもつ丸いカプセル状粒子の多数が形成された。また、粒子の最内層中のアルギン酸ナトリウムも大部分が侵透してきたカルシウムイオンと反応してゲル化した。
これら多数の丸いカプセル状粒子を塩化カルシウム水溶液から分離し、さらに室温で水洗した。その後に、水洗された丸いカプセル状粒子を20℃の乾燥空気流の中で乾燥した。これらのカプセル状粒子の各個中に含まれた付着水分のすべてを除去されるまで、すなわちカプセル状粒子の芯部を含めて、粒子全体が固化するまで乾燥を行った。
このように乾燥した丸いカプセル状粒子を、2.5〜3.0mmの範囲の直径を有し、また最内層と、これを包囲する中間層、またそれを包囲する皮膜層とからなる3層構造の球形カプセルである。
これら球形カプセルの各個は、銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料と着色料としての各種の金属化合物とアルギン酸カルシウム(結合剤として働く)との固体状混合物よりなる芯部と、金液の乾燥残渣固体生成物よりなる中間層と、コバルト、マンガン、ニッケルの各酸化物(鉄質表面への密着性増強剤として働くと共に、着色料としても働く)の微粒子を分散粒子として内部に含むアルギン酸カルシウムの硬化物よりなる多孔質構造の固体状皮膜層とを有する3層構造を示した。その球形カプセルの3層構造は、実施例6で作製されて第6図に示されたカプセルの3層構造と同様である。
(b) 上記の(a)で製造された3層構造の球形カプセルを用いての絵付け鉄製皿の製造
鉄製皿の表面の適当な個所に、好みの点描的な模様を作る配置で、実施例7、(a)で調製した3層構造の球形カプセル乾燥品を配列した。カプセルを配列するに先立ち、カプセルが置かれる位置にスプレー用スターチ糊を予じめ吹きつける前処理をした。そして自然乾燥し、再び上から市販のスプレーのりを吹きつけ、乾燥させ、カプセルを鉄皿に結着した。
その鉄皿を電気窯(日本電産シンポ(株)製)内で徐々に加熱して、そして最大温度1250℃で酸化性雰囲気下に焼成した。その結果、焼き上がった鉄製皿の表面には、銀色と金色を混交して呈する窯変効果を示す銀油滴天目釉の斑点と斑紋状の釉層が各個のカプセルの熔融で生成するので、有色の美しい装飾模様が作出できた。その窯変効果を示す模様は、鉄器表面上において、美しい独特、微妙な色相を呈し、その模様の中に明色の金結晶、鉄結晶が出現していたことが顕微鏡下に観察できた。
本発明によって提供されて、基本釉生成用の釉薬原料と、釉の着色用の着色料とを封入されてある2層または多層の球形カプセルは、該カプセルの複数を陶磁器の素焼き品の施釉または未施釉表面の上に配列して、熱分解性接着剤により接着し、しかも接着されたカプセルを以って点描画風の装飾模様を画く要領で複数のカプセルの配列を行い、それらカプセルが配列して結着された陶磁器素焼き品を常法で焼成すると、各カプセルの熔融により生成された有色の小島状釉層の組合わせで構成される装飾模様を陶磁器焼成品上に作出できる。従って本発明による球形カプセルは、装飾模様をもつ陶磁器の製造に利用できる。また、陶磁器の代りに、別の耐熱性基体の表面に装飾模様を作るのにも、本発明のカプセルは利用できる。
Claims (19)
- 球形カプセルの芯部をなす内層と、該芯部を外方から包被するシームレスな皮膜層とから構成された球形カプセルであるか、あるいは球形カプセルの芯部をなす最内層と、該球形カプセルを最も外方から包被するシームレスな皮膜層と、該芯部をなす最内層と該皮膜層との間に介在して設けてある単数または複数の中間層とから構成された多層の複合構造の球形カプセルであって、該皮膜層を形成する皮膜材物質は、皮膜形成能のある熱分解性有機物質からなるか、または該皮膜形成能のある熱分解性有機物質と後記の釉薬原料および(または)後記の着色料との固体状混合物からなるものであり、さらに該芯部を形成する芯材物質と、該皮膜層を形成する皮膜材物質と、該中間層を形成する材料物質とのうちの少くとも一つは、焼成時に透明な釉層を生成できる基本釉の生成用の釉薬原料を含有しており、また該芯部を形成する前記の芯材物質と、該皮膜材物質と、該中間層を形成する前記の材料物質とのうちの少くとも一つは、焼成時に生成される透明な釉を着色できる無機着色料を含有しており、しかも該芯材物質と、該皮膜材物質と、該中間層を形成する前記の材料物質とのうちの少くとも一つは、透明な釉を生成できる前記の基本釉の生成用の釉薬原料と一緒に焼成するときに、窯変効果を示す小点、斑点または斑紋状の模様を、生成される釉層に形成できる着色料として有効であることのできる金属物質および(または)金属化合物を含有するか、もしくは前記の金属物質または金属化合物は該芯部、中間層および皮膜層をそれぞれ形成する物質の何れにも全く含有されなくともよいものであり、しかも該芯材物質と、該中間層を形成する前記の材料物質との一方または両方は、熱分解性の有機質結合剤をさらに任意に含有できることを特徴とする、焼成された時に透明な釉層を生成できる透明な基本釉の生成用の釉薬原料と、透明な基本釉を着色できる着色料とを含有、封入する球形カプセル。
- 球形カプセルの芯部をなす内層と、該内層を外方から包被するシームレスな皮膜層とから構成された球形カプセルの形である、請求の範囲1に記載の球形カプセル。
- 球形カプセルの芯部をなす最内層と、該芯部を包被する1つ、2つまたは3つの中間層と、中間層を最も外方から包被するシームレスな皮膜層とから構成された多層な複合構造の球形カプセルの形である、請求の範囲1に記載の球形カプセル。
- カプセルの皮膜層を形成する前記の皮膜材物質中にある皮膜形成能のある熱分解性有機物質がアルギン酸カルシウム硬化物、ペクチンまたはメトキシペクチン硬化物、ゼラチン硬化物またはカゼイン硬化物のような多糖類またはタンパク質であり、しかも該皮膜層は多数の細孔を含有して多孔質の構造をもつ固体層で形成されてある、請求の範囲1に記載の球形カプセル。
- 透明な釉層を焼成時に生成できる基本釉の生成用の釉薬原料は、透明な石灰釉を生成するのに用いられる既知の釉薬原料であるか、あるいは透明なナトリウム長石釉または透明なカリウム長石釉を生成するのに用いられる既知の釉薬原料であるか、あるいは透明な灰釉を生成するのに用いられる既知の釉薬原料である、請求の範囲1に記載の球形カプセル。
- 透明な石灰釉を生成できる基本釉の生成用の釉薬原料は、カリ長石と石灰石と珪石とカオリンを含有する微粒子状の材料(i)から成るか、もしくはカリ長石と陶石と石灰石とカオリンとを含有する微粒子状の材料(ii)より成るか、もしくはカリ長石と石灰石と炭酸バリウムと珪石とカオリンとを含有する微粒子状の材料(iii)より成るものである、請求の範囲5に記載の球形カプセル。
- 透明なナトリウム長石釉を生成できる基本釉の生成用の釉薬原料は、ナトリウム長石と炭酸バリウムと石灰石と珪石と炭酸リチウムとを含有する微粒子状材料からなるものである、請求の範囲5に記載の球形カプセル。
- 透明なカリウム長石釉を生成できる基本釉の生成用の釉薬原料は、カリ長石と石灰石と珪石とカオリンとドロマイトと炭酸バリウムと酸化亜鉛とを含有する微粒子状の材料から成るものである、請求の範囲5に記載のカプセル。
- 透明な灰釉を生成できる基本釉の生成用の釉薬原料は、長石または陶石と木灰とを含有する微粒子状材料から成るものである、請求の範囲5に記載の球形カプセル。
- 基本釉の生成用の前記釉薬原料と一緒に焼成された時に、生成される釉層を、着色できる無機着色料は、酸化第二銅、酸化第二鉄(ベンガラ)、酸化クロム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化ウラニウム、酸化セリウム、酸化チタンまたは酸化ネオジウムであることもできる金属酸化物の形の既知の無機着色料であるか、金属炭酸塩の形の既知の無機着色料であるか、または金属のケイ酸塩、アルミン酸塩、クロム酸塩の形、もしくは金属の硫化物またはセレン化物の形の既知の無機着色料であるか、または生成される釉層の中に分散した状態で着色をできる金属金、金属銀、金属カドミウム、金属クロムまたは金属セレンの形の既知の無機着色料である、請求の範囲1に記載の球形カプセル。
- 球形カプセルを構成する芯部層、中間層、皮膜層をそれぞれ形成する物質の何れかに任意に配合できるところの着色料であって、窯変効果を示す小点、斑点または斑紋状の模様を、生成される釉層に生成できる着色料として有効であることのできる請求の範囲1に記載の金属物質または金属化合物は、陶磁器用の上絵具または下絵具で顔料として用いられる既知のテルペン油可溶性の金化合物、特に樹脂酸の金塩、金コロイド、銀、銀コロイド、酸化第二鉄(ベンガラ)、炭酸第二鉄、酸化第二銅または炭酸第二銅であるか、あるいはこれら物質の2種またはそれ以上から成るものである、請求の範囲1に記載の球形カプセル。
- カプセルにおける芯部の芯材物質中に、またはカプセルの中間層を形成する材料物質の中に任意に配合することもできる熱分解性の有機質結合剤は、前記の皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムであるか、あるいは有機質結合剤としてアルギン酸ナトリウムである、請求の範囲1に記載の球形カプセル。
- 芯部と皮膜層とを有する球形カプセルの芯部をなす内層は、透明な基本釉、好ましくは石灰釉の生成用の釉薬原料と、この基本釉を着色できる少くとも1つの無機着色料と、有機質結合剤、好ましくはアルギン酸ナトリウムまたは皮膜形成能のある熱分解性の有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムとの固体状混合物から形成されており、しかも該カプセルの皮膜層は、該基本釉の生成用の釉薬原料と、該着色料と、前記の皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムとの固体状混合物からなるか、もしくは前記の皮膜形成能のある熱分解性有機物質からなる多孔質構造の固体層で形成されてある、請求の範囲1に記載の球形カプセル。
- 多層な複合構造をもつ球形カプセルの芯部をなす最内層は、透明な基本釉、好ましくは石灰釉の生成用の釉薬原料と、該基本釉を着色できる少くとも1つの無機着色料と、皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムとの固体状混合物から形成されてあり、また該芯部を包被する1つのまたはそれ以上の中間層は、芯部に含有された無機着色料で発色される色とは異なる色を発色できる別種の無機着色料と、該基本釉の生成用の釉薬原料と、前記の皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムとの固体状混合物から形成されており、さらに該中間層を最も外方から包被する皮膜層は、前記の皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムからなるか、もしくは前記の皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムと、無機着色料との固体状混合物からなる多孔質構造の固体層で形成されているところの、多層な複合構造をもつ球形カプセルである、請求の範囲1に記載の球形カプセル。
- 球形カプセルを構成する芯部層、中間層、皮膜層をそれぞれ形成する物質のうちで、釉薬原料を含有する層を形成の物質は、融剤を追加的に含有する、請求の範囲1に記載の球形カプセル。
- 球形カプセルの芯部をなす内層と、該内層を包被するシームレスな皮膜層とのみから構成された球形カプセルであり、しかも該芯部の芯材物質は、窯変効果をもつ小点、斑点または斑紋状の模様を、生成される釉層に形成できる無機着色料として有効であることのできる請求の範囲1に示す金属物質および金属化合物でありうるテルペン油可溶性の金化合物および金コロイド状微粒子、ならびに融剤を含有する市販の金液で形成されているか、もしくは、該芯材物質は、金属化合物の形の無機着色料と、透明な基本釉、好ましくは石灰釉の生成用の釉薬原料および(または)皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムとを含む固体状または半固体状の、もしくは含水の液状の混合物で形成されてあり、しかも該皮膜層を形成する皮膜材物質は、無機着色料、好ましくはトルコ青釉に含まれる着色料として知られる酸化第二銅と、透明な基本釉、好ましくはナトリウム長石釉の生成用の釉薬原料と、皮膜形成能のある熱分解性有機物質、好ましくはアルギン酸カルシウムとの固体状混合物からなり、しかも多孔質構造をもつ固体層である、請求の範囲1に記載の球形カプセル。
- 球形カプセルの全体の立体形態は完全な球形からやや変形されており、カプセル表面には局部的に小さいくびれ部または小さい突起部をもつことができるものであり、あるいは球形カプセルは全体としては長円球または涙滴形に近い形態を有するものである、請求の範囲1に記載の球形カプセル。
- 請求の範囲1に記載された球形カプセルの多数個を、陶磁器の素焼き成形品の施釉表面または未施釉表面に、それらのカプセルで好みどおりの点描画風の装飾模様を画く位置に並べて点在するように配置させ、そして熱分解性有機質接着剤でそれらカプセルを該施釉または未施釉表面に結着させ、その後に、それらカプセルを結着している素焼き成形品を、徐々に加熱し、カプセルの中の釉薬原料を熔融して施釉のできる焼成温度で酸化性雰囲気または還元性雰囲気下に焼成するか、あるいは酸化性雰囲気下に次いで還元性雰囲気下で焼成し、その焼成中に前記の結着したカプセルを熔解させると共に、カプセル中の有機物質成分と該接着剤を焼散させ、得られた焼成品の表面上で前記カプセルの各個の熔解で生じた有色の小島状の釉層を形成し、それら有色の小島状釉層の組合わせで構成される有色の装飾模様を作出し、その後に、焼成品を徐冷し、さらに焼成品を室温にまで冷却することから成る、多数の有色の小島状釉層により、それら小島状釉層の組合わせで構成される装飾模様を施釉表面に有する陶磁器の製造方法。
- 請求の範囲1に記載された球形カプセルの多数個を、それらカプセルに含まれる着色料の種類が相異なる組合わせで用意し、それらの各個のカプセルに含有された着色料が焼成後に発色する色彩を想定しながら、単一の色彩または相異なる色彩をもつ点描画風の絵模様を好み通りに画くことのできるカプセルの組合せになる仕様で、同一の種類のまたは相異なる種類の着色料を含有する種々の球形カプセルの複数個を選択し、そのように選択された種々の球形カプセルの複数個を、耐熱性の基体の表面、特に、陶磁器の施釉表面または未施釉表面、もしくは耐熱性ガラス成形品の表面、エナメル被覆表面、鉄または鉄合金製の成形品の表面、銅または銅合金製の成形品の表面、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の成形品の表面、またはその他の耐熱性材料製の基体の表面の上に、それらカプセルにより点描画風の装飾模様を画く要領で並べて配置させ、しかもこのようにカプセルを並べる配置に当たっては、配置された複数個のカプセルの焼成後に各個のカプセルの熔解から生成されて基体表面に形成されるところの多数の有色の小島状釉層の示す各種の色彩がそれら小島状釉層の組合わせで構成される好みの点描画風の装飾的模様を画いて作出できるように配慮を行い、上記のように装飾模様を画くように配置された多数の前記カプセルを基体表面に熱分解性の有機質接着剤で結着させ、結着されたカプセルを表面に有する基体を、カプセル含有の釉薬原料を熔融させて施釉のできる焼成温度で酸化性雰囲気または還元性雰囲気下に焼成するか、あるいは酸化性雰囲気下に次いで還元性雰囲気で焼成し、前記の結着したカプセルを熔解させ、カプセル中の有機物質成分と該接着剤を焼散させ、得られた焼成品の表面上で該カプセルの各個の熔解で生じた有色の小島状釉層の多数を形成させ、そしてそれら多数の有色の小島状釉層の組合わせで構成される点描画風の装飾模様を焼成品表面に作出し、その後に焼成品を徐冷し、さらに該焼成品を室温に冷却することから成る、該基体表面上に生成された有色の小島状釉層の多数の組合わせで構成される有色の装飾模様を耐熱性基体の表面に作出する装飾方法。
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2005
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