JPS6239118B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、陶磁器、ガラス、ほうろう等のセラ
ミツクス製品の表面に、貴金属色の転写絵付を行
なうに好適な加熱転写紙に関するものである。

金色、銀色等の貴金属色の模様をセラミツクス
製品の表面に絵付するためのスライド式転写紙
は、例えば特公昭47−10775号公報に示される如
く公知である。この公報記載の転写紙は、金属酸
化物粉末を有機媒体と混合してペースト状とした
ものを台紙上に印刷し、その上に金、銀等の貴金
属粉末を付着させ、更にカバーコートを施したも
のである。

この転写紙を用いれば陶磁器やガラス器等の表
面に美しい貴金属色の模様を形成することができ
るが、この転写紙は貴金属粉を使用している為に
高価であり、特に最近の貴金属類の価格の急上昇
によつて、この種の転写紙を用いて絵付したセラ
ミツクス製品は、次第に商業ベースに乗り難くな
りつつある。この結果、絵付模様のデザインの際
にも、金、銀等の印刷面積を小さく押えることが
要求されることとなり、デザイン面にまで制約が
加えられる状況にある。

また、この転写紙は貴金属自体の発色を利用し
ているために、金色、銀色等に色彩が限定される
欠点があるほか、貴金属類の硬度は一般に小さい
ので、絵付された表面が傷付きやすい欠点もあ
り、貴金属を用いずに貴金属色あるいはその他の
金属色の絵付が可能な転写紙が求められていた。

更にまた、前記公報記載の転写紙はスライド式
転写紙であるために、転写作業は人手に依らざる
を得ず、自動化が可能な加熱転写紙と比較して絵
付のためのコストが高くなる欠点もある。そこ
で、貴金属色の絵付が可能な加熱転写紙が求めら
れていたが、従来これらの要求に応えうる加熱転
写紙は知られていなかつた。

本発明は上記した従来技術の欠点を解決するた
めになされたものである。即ち、本発明の第１の
目的は、貴金属を用いずに貴金属と外観が変るこ
とのない絵付が可能な、セラミツクス製品等のた
めの加熱転写紙を提供することである。本発明の
第２の目的は、金属色を呈する絵付模様の色調を
変化させることが可能なセラミツクス製品等のた
めの加熱転写紙を提供することである。本発明の
第３の目的は、転写面に傷が付きにくい貴金属色
の絵付が可能な加熱転写紙を提供することであ
る。そして、以上の諸目的を達成するためになさ
れた本発明の要旨とするところは、基材上に加熱
剥離剤から成る第１層と、有機バインダから成る
第２層と、金属酸化物のコーテイングが施された
雲母粉末から成る第３層と、窯業用絵画から成る
第４層と、接着剤から成る第５層とを順次形成し
たことを特徴とする加熱転写紙の構造に存する。

基材としては、紙のほか、ポリエチレン、ポリ
エステル等の合成樹脂フイルム、セロハンフイル
ム等を用いることができる。

第１層を形成する加熱剥離剤としては、ワツク
スの如き熱溶融性樹脂が用いられる。

第２層は、メタアクリル酸エステルの如き有機
バインダから成り、所望のパターンにスクリーン
印刷又はオフセツト印刷されたものである。この
第２層の印刷面が乾燥しない間に、第３層を形成
する雲母粉末が人手により、あるいは機械により
散布される。雲母粉末は第２層の印刷がなされた
部分のみに付着し、第２層が存在しない部分には
付着せずに取除かれる。この結果、第２層の印刷
パターン上のみに第３層が形成される。

第３層を形成する雲母粉末は、粒度が５〜150
μ程度の雲母の表面に、酸化チタンあるいは酸化
チタンと酸化鉄等の金属酸化物をコーテイングし
たものであり、貴金属色あるいはその他の金属光
沢を生ずる部分である。酸化チタンは約2.3の屈
折率を有し、これが屈折率が約1.5の雲母粒子の
表面をコーテイングしている。両者は共に透明材
料であり、入射光線は両者の境界面で反射、屈折
するとともに、白色光線のうち特定波長成分の選
択的反射と残光成分の透過が生じて白色光線の分
解が生じ、真珠のような深みのある金属色を呈す
る。また、酸化チタン層の厚みを変化させること
によつて光の干渉を生ぜしめ、各種の干渉色を得
ることができる。例えば酸化チタン層の光学的厚
さが約140mμの場合には反射光は銀色となり、
約210mμの場合には反射光は金色、透過光は紫
色となる。更に、チタン層が厚くなつて約270m
μになると反射光は赤色、透過光は緑色となり、
330mμに至ると反射光は青色、透過光は橙色を
呈する。このように反射光と透過光は補色関係と
なるので、後述する如く背景の色を白又は黒等に
変化させることによつても色調が変化する。

酸化チタンの上に更に酸化鉄、カーボンブラツ
ク等のコーテイングを行なうと、上述した酸化チ
タンによる干渉色に酸化鉄等の色が重さなり、更
に鮮やかな色調が得られる。このほか雲母の粒度
も色彩に影響し、小さいものは絹光沢、大きいも
のは金属光沢となる。

第４層は窯業用絵具から成り、低融点ガラスと
無機顔料とを含む。この窯業用絵具は転写されろ
相手製品に応じて調合することが好ましく、ガラ
スに対しては融点が530〜650℃のガラス用絵具、
陶磁器に対しては融点が780〜800℃の陶器用絵
具、ほうろうに対しては融点が780〜830℃のほう
ろう用絵具を用いるのが良い。顔料としては各種
の金属酸化物が使用されるが、この窯業用絵具自
体は市販されているので詳細な説明は省略する。

第５層は例えばセルロース系統の接着剤から成
り、転写の際に基材から剥離した第２層以上の層
を相手製品に接着する役目をする。この第５層と
第２層とは共に有機質であり、転写後の焼付の際
に焼化するものである。

本発明の転写紙を使用するには、相手製品を80
〜120℃に予熱した後、その表面にローラープレ
スまたは通常のプレスによつて押し付ける。加熱
剥離剤から成る第１層はほとんど瞬間的に溶解し
て第２層以上の部分が基材から剥離し、相手製品
の表面に接着する。これを焼付けると、第２層と
第５層とは焼化し、第４層の窯業用絵具が融解し
てセラミツクス製品の表面に融着すると同時に、
第３層の雲母粉末が融解した第４層の窯業用絵具
の表面に確実に保持され、強固な接着が行なわれ
る。このように、第４層はバインダーとして作用
することとなる。雲母粉末は、金粉、銀粉等に比
較すると接着性が悪いので、窯業用絵具との組合
せは強固な接着を得るために好適である。

次に本発明の実施例を示す。

実施例 １ ガラス用転写紙 基材としての台紙６の表面にワツクスを塗布し
て第１層１を形成し、その上面にメタアクリル酸
エステルを主成分とする有機バインダを所望のパ
ターンにスクリーン印刷して第２層２を形成し
た。その表面が粘着性を保つている間に、雲母粉
末を散布して第３層３を形成し、第２層の印刷パ
ターン以外の部分に付着した雲母粉末をブラシに
より除去した。ここで使用した雲母粉末は、粒度
が約40μの雲母粉末に、酸化チタンを光学的厚さ
が約210mμとなるようにコーテイングし、更に
その表面に酸化鉄をコーテイングした金色用のも
のである。次にブラウン色の顔料と、融点が550
℃のガラス粉末とを、メタアクリル酸エステル及
び石油系溶剤から成るスクリーンオイルでペース
ト状に混練してなるガラス用絵具を、150メツシ
ユのナイロン製スクリーンを用いて、第２層と同
一パターンとなるよう第３層の上に印刷して第４
層４を形成した。最後にセルロース系の接着剤を
同様にスクリーン印刷して第５層５を形成し、第
１図に示す構造の転写紙を得た。

これを第２図に示すように、約100℃に予熱し
た、ガラス板７の表面にローラ８を用いてプレス
した。プレス圧は約２Kg/cm²である。プレスと同
時に第１層が溶解して台紙６は剥離し、第２層よ
り上の部分がガラス板７の表面に接着して転写さ
れた。これを580℃で焼付けると第２層と第５層
は焼化し、ガラス板７の表面に赤みがかつた金色
の模様が絵付された。

この金色用の雲母粉末は前述の如く透過光が紫
色となるが、ブラウン色のガラス用絵具が背景に
あるのでこの透過光はほぼ完全に吸収され、表面
には全く出てこない。このため、本実施例の場合
の色調は鮮やかな金色を呈し、長年ガラスの印刷
に携つてきた者にも、金粉を使用した従来の転写
紙による絵付との識別は困難であつた。また、印
刷面を他のガラス板と擦り合せてみたが、傷は容
易には付かなかつた。

実施例 ２ 陶磁器用転写紙 台紙上にワツクスを塗布して第１層を形成し、
メタアクリル酸エステルから成る有機バインダを
スクリーン印刷して第２層を形成した。その表面
が乾燥する前に、粒度30μの雲母粉末を散布して
第３層を形成するとともに、第２層の印刷がなさ
れなかつた部分に付着した雲母粉末をブラシによ
り除去した。ここで使用した雲母粉末は、光学的
厚さが約140mμとなるよう酸化チタンがコーテ
イングされた銀色用のものである。次に白色顔料
と、融点が800℃のガラス粉末とをスクリーンオ
イルで練つた陶磁器用絵具をスクリーン印刷して
第４層を形成し、更にその上面にセルロース系の
接着剤をスクリーン印刷して第５層を形成した。

この転写紙を120℃に予熱した陶器製皿の表面
にプレスすると、第１層が溶融して第２層より上
方の部分が台紙から剥離して皿の表面に転写され
た。これを約800℃で焼成すると、第２層と第５
層は焼化し、皿の表面に鮮やかな銀色の模様が絵
付された。

陶磁器の場合にはガラスと異なり不透明である
から光線の透過がなく、しかも雲母粉末層の下側
に白色の陶磁器用絵具の層が存在するので、雲母
粉末層を透過した光線はすべて反射され、鮮やか
な銀色を呈する。

次に本発明の効果を列挙する。

本発明の転写紙は貴金属を使用せずに、貴金
属色の転写絵付が可能であり、しかもその色調
は貴金属を使用したものとほとんど変るところ
がない。従つて製作費が安価であり、また貴金
属よりも雲母の硬度は大きいから、転写面に傷
が付きにくい。

本発明の転写紙は加熱転写紙であるから、転
写作業の自動化が行ない易く、美しい貴金属色
の転写絵付を低コストで大量に行なうことがで
きる。

本発明の転写紙は第４層の窯業用絵具の色を
変えることにより、赤金、青金等の様々な色合
いを出すことができ、更に雲母粉末の粒度及び
金属酸化物のコーテイング厚さと種類を変化さ
せることにより、金、銀等の貴金属色のほか、
赤、青、緑等のメタリツク調の色彩を出すこと
もできる。

本発明の転写紙は、窯業用絵具から成る第４
層に隣接して雲母粉末の第３層が形成されてお
り、焼付によつて第４層が融解してその表面に
雲母粉末が確実に保持される。従つて、接着性
が悪い雲母粉末を強固にセラミツクス体の表面
に接着させることができ、しかも印刷面が盛上
つたいわゆる盛金状の貴金属模様が得られる。

本発明の転写紙は金属を使用していないの
で、酸、アルカリ、硫化水素等に対して安定で
あり、印刷面の変色は生じない。また毒性は全
く無く、食器に要求される溶出基準を完全にク
リアーすることができる。

以上に述べたとおり、本発明は従来技術の欠点
を完全に解消したものであり、当業界に寄与する
ところ大なるものがある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の転写紙の縦断面図であり、第
２図は加熱転写の状況を示す縦断面図である。 １…第１層、２…第２層、３…第３層、４…第
４層、５…第５層、６…台紙（基材）。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 基材上に、加熱剥離剤から成る第１層と、有
   機バインダから成る第２層と、金属酸化物のコー
   テイングが施された雲母粉末から成る第３層と、
   窯業用絵具から成る第４層と、接着剤から成る第
   ５層とを形成したことを特徴とする加熱転写紙。 ２ 雲母粉末にコーテイングされた金属酸化物が
   酸化チタンであることを特徴とする第１項記載の
   加熱転写紙。