JPWO2006008846A1 - 交流回転機の定数測定装置 - Google Patents

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Abstract

誘導電動機(1)の定数測定装置において、インバータ(2)は入力される電圧指令信号を単相交流電力に電力変換して誘導電動機(1)に給電し、電流検出器(3)は誘導電動機(1)に給電される単相交流電力の電流を検出する。装置コントローラ(4)は誘導電動機(1)に印加すべき交流電圧に対応する電圧指令信号を発生してインバータ(2)に出力する。装置コントローラ(4)は0.006Hz以上でかつ1.5Hz以下の範囲で選択された周波数を有する単相交流電力を誘導電動機(1)に給電するように電圧指令信号を発生してインバータ(2)を制御することにより、定数算出コントローラ(5)は誘導電動機(1)に給電された単相交流電力の電圧と電流の関係に基づいて誘導電動機(1)の電気的定数を計算する。

Description

本発明は、静止している交流回転機の電気的定数を測定するための交流回転機の定数測定装置に関する。
例えば、誘導電動機、誘導発電機、同期電動機、同期発電機などを含む交流回転機を駆動制御する制御装置においては、当該交流回転機の抵抗やインダクタンスの値などの電気的定数を得ることが必要となる。機械に接続されていない回転機は無負荷試験によりインダクタンスの値を測定することができるが、機械に接続されている回転機は無負荷試験ができず、従来から、無負荷試験を必要としない回転機の定数測定が要求されている。
従来技術に係る回転機の定数測定装置では、例えば、特許文献1の3頁に示されるように、停止した状態の誘導電動機の3相入力端子のうちの2つの端子間に、周波数f1を有する単相交流電圧を印加して、誘導電動機に流れる交流電流及び交流電圧を検出し、上記検出した交流電流及び交流電圧に基づいて、それらの基本波の振幅と位相とを計算し、上記計算されたそれらの関係から1次と2次の漏れインダクタンスの和と、1次と2次の巻線抵抗の和とを計算している。
また、例えば、特許文献2の4頁に開示されるように、単相交流励磁処理により正弦波変調信号を発生し、上記発生された正弦波変調信号をゲート回路を介してインバータに入力することによりインバータを動作させ、上記インバータにより電力変換された交流励磁電圧を用いて交流電動機を駆動して当該交流電動機に交流電流を流す。次いで、有効パワー分電流Iq及び無効パワー分電流Idの演算処理において、1次周波数指令を積分した交流励磁電圧ベクトルの回転位相をθとし、信号sinθと、信号−cosθと、U相の電動機電流iuに基づいて、有効パワー分電流Iq及び無効パワー分電流Idを演算する。さらに、1次と2次の合成抵抗と、1次と2次の合成漏れインダクタンスの演算処理において、有効パワー分電流Iqと無効パワー分電流Idの各演算値と、励磁電圧指令の大きさから、1次と2次の漏れインダクタンスの和と、1次と2次の巻線抵抗の和とを計算している。
さらに、例えば、特許文献3においては、1次角周波数指令とq軸電圧指令の各指令値をそれぞれ零とし、d軸電圧指令の指令値として交流信号を与えることを測定条件としている。この測定条件に従って測定を行うと、電動機巻線には3相交流電流が流れず、V相とW相の電流が同相となり、単相交流電流が流れるため、交流電動機は回転せずに停止状態を維持することができる。そして、交流電動機の回転が停止されているときに、交流電動機に流れるd軸電流成分を検出し、上記検出されたd軸電流成分の検出値を、d軸電圧指令値を基準とする三角関数によるフーリエ展開に従って分析し、この基本波成分のフーリエ係数とd軸電圧指令値に基づいて当該交流電動機の定数を計算している。
また、例えば、特許文献4においては、インバータを用いた誘導電動機の定数測定方法において、実際に運転するすべり周波数に近い2種類の周波数で拘束試験を行い、励磁インダクタンスを含む漏れリアクタンス及び2次抵抗を計算する方法が開示されている。この方法においては、誘導電動機の入力端子に運転時の周波数に近い2つの異なる角周波数ωa及びωbの単相交流電圧を印加して各角周波数ωa及びωbにおける電流に基づいて、電動機端子からみた直列インピーダンス成分である抵抗Ra及びRb並びにインダクタンスXa及びXbを測定している。
さらに、例えば、特許文献5において、巻線抵抗測定と拘束試験のみを用いて、ベクトル制御用誘導電動機の各定数を容易に測定できる誘導電動機の定数測定方法が開示されている。この定数測定方法は、漏れインダクタンスと2次抵抗との共通接続点に励磁インダクタンスが接続された拘束試験時の誘導電動機のT−1形等価回路の各定数を測定する方法である。この定数測定方法においては、巻線抵抗測定と、任意の異なった2つの周波数のうち第1の周波数にてまず拘束試験を行って合成インピーダンスの抵抗成分R及びリアクタンス成分Xを測定した後、次に第2の周波数にて再び拘束試験を行うことにより、合成インピーダンスの抵抗成分R’及びリアクタンス成分X’を測定し、これら抵抗成分及びリアクタンス成分を演算して誘導電動機の各定数を測定している。
またさらに、特許文献6においては、以下のステップを有する、誘導電動機の定数を算出する誘導電動機の定数測定方法が開示されている。
(a)誘導電動機に第1の周波数を有する所定電圧を印加し、上記第1の周波数を有する所定印加電圧に対応した誘導電動機電流の大きさ、及び上記第1の周波数を有する所定印加電圧との位相差を測定するステップ。
(b)上記誘導電動機に上記第1の周波数とは異なる第2の周波数を有する所定電圧を印加し、上記第2の周波数を有する所定印加電圧に対応した誘導電動機電流の大きさ、及び上記第2の周波数を有する所定印加電圧との位相差を測定するステップ。
(c)上記第1の周波数を有する所定印加電圧の大きさと、上記第1の周波数を有する所定印加電圧に対応した誘導電動機電流の大きさ及び上記第1の周波数を有する所定印加電圧との位相差と、上記第2の周波数を有する所定印加電圧の大きさと、上記第2の周波数を有する所定印加電圧に対応した誘導電動機電流の大きさ及び上記第2の周波数を有する所定印加電圧との位相差とを用いて誘導電動機の定数を算出するステップ。
この誘導電動機の定数測定方法においては、従来技術では周波数条件を変えて2度測定していたが、上記第1の周波数を有する所定電圧と上記第2の周波数を有する所定電圧とを重畳して同時に上記誘導電動機に印加することを特徴としており、これにより、上記の電圧印加ステップを1度の測定で完了することができる。
日本国特許第2759932号公報。 日本国特許第3284602号公報。 日本国特許第2929344号公報。 日本国特許第3052315号公報。 日本国特許出願公開平成6年153568号公報。 日本国特許出願公開2003年339198号公報。 Y. Murai et al., "Three-Phase Current-Waveform-Detection on PWM Inverters from DC Link Current-Steps", Proceedings of IPEC-Yokohama 1995, pp.271-275, Yokohama, Japan, April 1995. シチズン時計株式会社広報室,「「時の記念日」(6月10日)アンケート,ビジネスパーソンの「待ち時間」意識」,http://www.citizen.co.jp/info/news.html, http;//www.citizen.co.jp/release/03/0304dn/0305dn_t.htm, 2003年5月28日公開。
上述の交流回転機の定数測定装置においては、単相交流給電した場合の電圧と電流の関係に基づいて、交流回転機の定数を算出するが、単相交流給電される交流電力の周波数を設定する指針がなかった。また、単相交流給電の周期を設定する指針がなかった。その結果、回転機の定数測定精度を所定値以上に保持できないという問題点があった。さらに、測定精度の向上を図ると、定数測定の待ち時間が長くなるため、該装置のユーザが不快となる問題点があった。
また、インバータの電圧分解能、内部のデッドタイム電圧(ここで、「デッドタイム電圧」とは、スイッチングの休止時間であって、オンからオフまでの時間差であり、以下同様である。)、スイッチング素子のオン電圧に起因する電圧誤差によって定数精度が劣化する問題点もあった。さらに、1次と2次の巻線抵抗の和、もしくは、直列合成インピーダンス成分から定数へ換算する際に、何らかの方法で1次抵抗を別途測定しなければならないが、1次抵抗誤差によって他の定数の精度が劣化する問題があった。
本発明の目的は以上の問題点を解決し、従来技術に比較して高い測定精度で、交流回転機の電気的定数を測定することができ、しかもユーザが快適に操作できる交流回転機の定数測定装置を提供する。
本発明に係る交流回転機の定数測定装置は、交流回転機と、
入力される電圧指令信号を単相交流電力に電力変換して上記交流回転機に給電する電力変換手段と、
上記電力変換手段から上記交流回転機に給電される単相交流電力の電流を検出する電流検出手段と、
上記電力変換手段から上記交流回転機に印加すべき交流電圧に対応する電圧指令信号を発生して上記電力変換手段に出力する第1の制御手段と、
上記交流回転機に給電された単相交流電力の電圧と電流の関係に基づいて上記交流回転機の定数を計算する第2の制御手段とを備えた交流回転機の定数測定装置において、
上記第1の制御手段は、0.006Hzである下限周波数以上でかつ1.5Hzである上限周波数以下の範囲で選択された少なくとも1つの周波数を有する単相交流電力を、少なくとも1回上記交流回転機に給電するように電圧指令信号を発生して上記電力変換手段を制御することにより、上記第2の制御手段は上記交流回転機の電気的定数を計算することを特徴とする。
従って、本発明に係る交流回転機の定数測定装置によれば、上記交流回転機が負荷設備に接続されている場合でも、例えば、少なくとも定格容量1.5kWから280kWまでの交流回転機に対して、1次インダクタンスと2次抵抗と2次時定数などの交流回転機の電気的定数を従来技術に比較して高い精度で測定することができる。また、交流回転機の電気的定数を迅速に測定することができ、ユーザに対して待ち時間を意識させることなくきわめて短時間で快適に測定できる。
本発明の実施の形態1に係る誘導電動機の定数測定装置の構成を示すブロック図である。 図1の誘導電動機の定数測定装置により誘導電動機1の定数を測定するための誘導電動機の定数測定処理を示すフローチャートである。 図1の誘導電動機1の代わりに接続されるLR直列負荷回路を示す回路図である。 図3のLR直列負荷回路において電流iが電流指令信号i=cos(2πfLRt)に実質的に一致するように制御したときの各パラメータの波形図であって、図4(a)は信号cos(2πfLRt)及び信号−sin(2πfLRt)の波形図であり、図4(b)は電圧指令信号vの波形図であり、図4(c)は直交位相成分の振幅B1の波形図であり、図4(d)は同位相成分の振幅A1の波形図である。 実施の形態1において、交流誘導電動機1の代わりにLR直列負荷回路を接続して、図2の定数測定処理により抵抗成分及びインダクタンス成分を測定したときの実験結果であって、給電周期数に対する各成分の測定精度を示すグラフである。 図1の誘導電動機1の等価回路の回路図である。 図6の等価回路の近似等価回路の回路図である。 定格容量が3.7kWである誘導電動機を単相交流給電するときの抵抗成分ZRe及びリアクタンス成分ZImの周波数特性を示すグラフである。 定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機についての周波数f1MAX=Rr/(2πM)を示すグラフである。 定格容量が1.5kWから280kWまでの誘導電動機についての周波数f1MAX=Rr/(2πM)を示すグラフである。 図1のインバータ2の各クラスに対する定格容量及び外径寸法の一例を示す表である。 図1のインバータ2からの出力電圧Voutを説明するための電圧指令と三角波キャリアとの関係を示す波形図である。 定格容量3.7kWの誘導電動機と、定格容量11kWの誘導電動機と、定格容量22kWの誘導電動機とにおける、電圧指令信号vの直交位相成分の振幅B1を電圧分解能Cで除算した除算値の周波数特性を示すグラフである。 図2の定数測定処理においてインバータ2が単相交流給電する交流電力の周波数を図13の値で与えたときに、30秒間で何周期給電することが可能であるかを示す、定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機の定格容量に対する30秒間の給電周期数を示すグラフである。 図2の定数測定処理においてインバータ2が単相交流給電する交流電力の周波数を図13の値で与えたときに、30秒間で何周期給電することが可能であるかを示す、定格容量が1.5kWから280kWまでの誘導電動機の定格容量に対する30秒間の給電周期数を示すグラフである。 定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機の定格容量に対する周波数5(Ts+Tr)/(2πσTsTr)[Hz]の特性を示すグラフである。 図2の定数測定処理において、誘導電動機1に代えて図3のLR直列負荷を接続したときのインバータ2のキャリア周波数に対する同位相成分の正規化振幅A1(実験値)を示すグラフである。 図2の定数測定処理において、誘導電動機1に代えて図3のLR直列負荷を接続したときのインバータ2のキャリア周波数に対する直交位相成分の正規化振幅B1(実験値)を示すグラフである。 図2の定数測定処理において、誘導電動機1に代えて図3のLR直列負荷を接続したときの電流I2に対する正規化振幅A1,B1(実験値)を示すグラフである。 本発明の実施の形態6に係る誘導電動機の定数測定装置の構成を示すブロック図である。 図20の誘導電動機1の静止時のT型等価回路の回路図である。 図21のT型等価回路を、RX直列回路を用いて表したときの等価回路の回路図である。 図20の定数測定装置により誘導電動機1の定数を測定するための定数測定処理を示すフローチャートである。 定格容量が3.7kW、11kW及び22kWである誘導電動機におけるリアクタンス成分X,X0の正規化周波数fn特性を示すグラフである。 実施の形態6において、定格容量が3.7kWである誘導電動機におけるリアクタンス成分Xの測定誤差の正規化周波数fn特性を示すグラフである。 実施の形態6において、定格容量が3.7kW、11kW及び22kWである誘導電動機におけるリアクタンス成分Xの正規化周波数fn特性を示すグラフである。 実施の形態6において、定格容量が1.5kWから55kWまでである誘導電動機における定格容量に対する周波数1/(2πTr)の特性を示すグラフである。 実施の形態6における、抵抗成分Rの測定誤差Rerrとリアクタンス成分の測定誤差Xerrを示すグラフである。 本発明の実施の形態7に係る誘導電動機の定数測定処理を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態8に係る誘導電動機の定数測定装置の構成を示すブロック図である。 図30の定数測定装置により実行される誘導電動機の定数測定処理を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態9に係る誘導電動機の定数測定装置の構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態13に係る誘導電動機の定数測定装置における指令信号を示す図であって、図33(a)は電流指令信号iuが矩形波のときの電流指令信号iusq及びその基本波成分iubaseを示す波形図であり、図33(b)はそのときの電圧指令信号vusqを示す波形図である。 本発明の実施の形態14に係る誘導電動機の定数測定装置における指令及び信号を示す図であって、図34(a)は電流指令信号iucを示す波形図であり、図34(b)は信号Kc・cos(2πft)及び信号Kc・sin(2πft)を示す波形図であり、図34(c)は電圧指令信号vucを示す波形図である。 本発明の実施の形態15に係る誘導電動機の定数測定装置における指令信号を示す図であって、図35(a)は振幅変調された電流指令信号iuの波形図であり、図35(b)は振幅変調された電圧指令ivの波形図である。 本発明の実施の形態15に係る誘導電動機の定数測定装置における指令信号を示す図であって、図36(a)は周波数変調された電流指令信号iuの波形図であり、図36(b)は周波数変調された電圧指令ivの波形図である。 本発明の実施の形態16に係る同期電動機の定数測定装置の測定原理を示すための同期電動機の1相(U相)分の等価回路の回路図である。 図37の等価回路において同期電動機が停止中であるときの等価回路の回路図である。 本発明の実施の形態18に係る誘導電動機の定数測定装置における単相交流給電の状態を示す図であって、図39(a)は単相給電する電流振幅を示す波形図であり、図39(b)は単相給電中の誘導電動機1のU相電流iusを示す波形図である。 本発明の実施の形態18に係る誘導電動機の定数測定装置によって測定されたインダクタンスLs及び60Hzの電圧実効値の正規化電流振幅に対する特性を示すグラフである。 本発明の実施の形態19に係る誘導電動機の定数測定装置における単相交流給電の状態を示す図であって、図41(a)は単相給電する電流振幅を示す波形図であり、図41(b)は単相給電中の周波数を示す図であり、図41(c)は単相給電中の誘導電動機1のU相電流iusを示す波形図である。 本発明の実施の形態20に係る、給電開始時に電流が波高値になるように電流指令信号iuを与えたときの波形図であって、図42(a)はそのときの誘導電動機の3相電圧vu,vv,vwの波形図であり、図42(b)はそのときの誘導電動機の3相電流iu,iv,iwの波形図であり、図42(c)はそのときの誘導電動機の2次磁束φurを示す波形図である。 本発明の実施の形態20に係る、給電開始時において2次磁束φurが0になるように電流指令信号iuを与えたときの波形図であって、図43(a)はそのときの誘導電動機の3相電圧vu,vv,vwの波形図であり、図43(b)はそのときの誘導電動機の3相電流iu,iv,iwであり、図43(c)はそのときの誘導電動機の2次磁束φurを示す波形図である。
符号の説明
1…誘導電動機、
2,2A…インバータ、
3…電流検出器、
4,4A,4B,4C…装置コントローラ、
5,5A,5B,5C…定数算出コントローラ、
5m…内部メモリ、
8,8A,10…信号源、
11…減算器、
12…偏差増幅器、
13…符号反転器、
13a,13b…乗算器。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、同様の構成要素については同一の符号を付している。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る誘導電動機の定数測定装置の構成を示すブロック図である。図1において、交流回転機である3相誘導電動機1は電気的にインバータ2と接続されている。インバータ2は誘導電動機1に単相給電するために、U相、V相及びW相の3相のうちの1相を開放している。開放の方法として、インバータ2の1相分だけ上下アームを開放してもよいし、誘導電動機1の1相だけ結線を外してもよい。すなわち、インバータ2は、入力される直流信号である2つの電圧指令信号vu,vvに基づいて、誘導電動機1に回転磁界を発生せず、回転トルクが生じない状態になるように、単相給電状態となるような交流電圧を発生して誘導電動機1に印加する。また、電流検出器3はインバータ2から誘導電動機1に給電される1相の電流iuを検出して、検出された電流iuを示す電流信号を定数算出コントローラ5に出力するとともに、減算器11に出力する。電流検出器3は、図1に示すように、U相電流を直接検出する方法以外に、公知の技術である、インバータ2のDCリンク電流から電流iuを検出する方法(例えば、非特許文献1参照。)を用いてもよい。
装置コントローラ4は例えばディジタル計算機により構成され、上記誘導電動機1に対して印加すべき電圧vu,vvを演算してインバータ2に出力する。また、定数算出コントローラ5は内部メモリ5mを備えた、例えばディジタル計算機により構成され、インバータ2から誘導電動機1に単相給電したときの電圧指令信号vuと電流iuの関係から誘導電動機1の定数を算出し、算出した電動機定数のうち例えば漏れインダクタンスσLsを偏差増幅器12に出力する。ここで、装置コントローラ4は、スイッチ9と、2個の信号源8,10と、減算器11と、偏差増幅器12と、符号反転器13とを備えて構成される。信号源8は周波数f0の交流電圧指令信号vu0を発生して、発生された交流電圧指令信号vu0を電圧指令信号vuとしてスイッチ9の接点a側を介してインバータ2に出力するとともに、スイッチ9の接点a側及び、(−1)を乗算することにより符号反転を行う符号反転器13を介してインバータ2に電圧指令信号vvとして出力する。また、信号源10は電流指令信号iuを発生して、発生された電流指令信号iuを定数算出コントローラ5及び減算器11に出力する。減算器11は、入力される電流指令信号iuから、電流検出器3により検出された電流iuを減算して、その減算値である電流偏差Δiを示す電流偏差信号を偏差増幅器12に出力する。さらに、偏差増幅器12は、入力される電流偏差信号に対して定数算出コントローラ5により算出される漏れインダクタンスσLsを乗算するように増幅してその増幅後の電圧指令信号vu1を演算して、演算後の電圧指令信号vu1をスイッチ9の接点b側を介してインバータ2に出力するとともに、スイッチ9の接点b側及び符号反転器13を介してインバータ2に電圧指令信号vvとして出力する。
図2は図1の誘導電動機の定数測定装置により誘導電動機1の定数を測定するための誘導電動機の定数測定処理を示すフローチャートである。以下、図2を参照して、誘導電動機の定数測定処理について説明する。
図2において、まず、ステップS101において、単相交流の第1の給電を実行する。このとき、スイッチ9は接点a側に切り換えられて、誘導電動機1に印加すべき電圧vuとして周波数f0の交流指令vu0を選択する。ここで、周波数f0は、後述する単相交流の第2の給電(ステップS106)の周波数f1よりも高い周波数に設定される。また、電圧指令信号vuと、符号反転器13から出力される電圧指令信号vvがインバータ2に入力され、インバータ2は入力される2つの電圧指令信号vu,vvに従って、単相交流電圧を発生して誘導電動機1に出力する。次いで、ステップS102において、漏れインダクタンスを測定する。定数算出コントローラ5は、信号源8からの電圧指令信号vuの振幅V0と、信号源10からの電流指令信号iuの振幅I0とに基づいてこれらの比V0/I0を計算し、当該比V0/I0に基づいて、次式を用いて漏れインダクタンスlを計算する。
l=σLs÷2 (1)
σLs=V0÷(I0×2π・f0) (2)
ここで、σは漏れ係数であり、Lsは1次インダクタンスである。定数算出コントローラ5は、上記式(2)により計算された漏れインダクタンスσLsの値を示す信号を偏差増幅器12に出力する。このように、ステップS101及びS102では、周波数f0の交流給電を行う期間の電圧振幅と電流振幅の振幅比に基づいて、誘導電動機1の漏れインダクタンスlを計算する。すなわち、定数算出コントローラ5は、インバータ2が誘導電動機1に対して単相交流給電を行う期間のうち、最も高い周波数で交流給電を行う期間の電圧振幅と電流振幅の振幅比V0/I0に基づいて、誘導電動機1の漏れインダクタンスlを計算する。従って、上述のように、誘導電動機1の漏れインダクタンスlを計算することにより、誘導電動機1の電圧位相や電流位相といった位相情報を必要としないで、振幅情報のみで簡単に、漏れインダクタンスlを測定できるという特有の効果がある。
次いで、ステップS103において、単相直流の第1の給電を実行する。このとき、信号源10は電流指令信号iuとして直流信号I1を出力し、減算器11は電流指令信号iuと上記検出された電流iuとの電流偏差Δiを演算して、電流偏差Δiを示す信号を偏差増幅器12に出力する。これに応答して、偏差増幅器12は、次式に従って電圧指令信号vu1を演算して、スイッチ9の接点b側を介してインバータ2に出力するとともに、スイッチ9の接点b側及び符号反転器13を介してインバータ2に出力する。
vu1
=ωcc×σLs×{Δi+∫(ωcc÷N×Δi)dt} (3)
ここで、ωccは電流応答設定値であり、Nは任意の定数であり、tは時刻である。なお、式(3)の右辺の積分期間は所定のしきい値よりも十分に長い期間である。ここで、スイッチ9は接点b側に切り換えられ、偏差増幅器12から出力される電圧指令信号vu1を選択する。図1の装置コントローラ4とインバータ2と電流検出器3とにより形成されるループ制御回路により、誘導電動機1に供給される電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御され、インバータ2は交流電圧vu及びvvを誘導電動機1に出力する。このとき、定数算出コントローラ5は、電流指令信号iuの値及び電圧指令信号vuの値をそれぞれiuS103、vuS103として内部メモリ5mに記憶する。
次いで、ステップ104において、単相直流の第2の給電を実行する。このとき、信号源10は電流指令信号iuとして上記直流信号I1とは異なる直流信号I2を出力し、減算器11は電流指令信号iuと上記電流iuとの間の電流偏差Δiを演算して、電流偏差Δiを示す信号を偏差増幅器12に出力する。偏差増幅器12は、式(3)に従って電圧指令信号vu1を演算して出力する。このとき、スイッチ9は接点b側に切り換えられ、偏差増幅器12から出力される電圧指令信号vu1を選択する。図1の装置コントローラ4とインバータ2と電流検出器3とにより形成されるループ制御回路により、誘導電動機1に供給される電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御され、インバータ2は交流電圧vu及びvvを誘導電動機1に出力する。このとき、定数算出コントローラ5は、電流指令信号iuの値及び電圧指令信号vuの値をそれぞれiuS104、vuS104として内部メモリ5mに記憶する。
次いで、ステップS105において、1次抵抗Rsを測定する。すなわち、定数算出コントローラ5は、内部メモリ5mに格納した指令値iuS103,vuS103,iuS104,vuS104に基づいて、次式を用いて、1次抵抗Rsを計算する。
Rs
=(vuS103−vuS104)÷(iuS103−iuS104) (4)
以上説明したように、ステップS103及びステップS104において、インバータ2から誘導電動機1に給電される検出電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御され、装置コントローラ5は電圧指令信号vu及びvvをインバータ2に印加し、インバータ2はこの電圧指令信号vu及びvvに従って、電圧指令信号vu及びvvを誘導電動機1に印加する。この結果、誘導電動機1固有の電気的時定数ではなく、予め設定した電流応答設定値ωccに設定されるように、検出電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御される。これにより、誘導電動機1固有の電気的時定数にかかわらず、短時間でステップS103及びステップS104の単相直流給電を完了させることができる。また、誘導電動機1の定数測定を短時間で完了できるので、操作するユーザが待ち時間でイライラすることなく、快適に誘導電動機1の定数を測定することができる。
次いで、ステップS106において、単相交流の第2の給電を実行する。このとき、信号源10は電流指令信号iuとして周波数f1の交流信号iu1を出力し、減算器11は電流指令信号iuと上記電流iuとの間の電流偏差Δiを演算して、電流偏差Δiを示す信号を偏差増幅器12に出力する。偏差増幅器12は、式(3)に従って電圧指令信号vu1を演算して出力する。スイッチ9は接点b側に切り換えられ、偏差増幅器12から出力される電圧指令信号vu1を選択する。このとき、図1の装置コントローラ4とインバータ2と電流検出器3とにより形成されるループ制御回路により、誘導電動機1に供給される電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御されて、インバータ2は交流電圧vu及びvvを誘導電動機1に出力する。
さらに、ステップS107において、2次抵抗と相互インダクタンスを測定する。まず、ステップS107における測定原理について説明するために、誘導電動機1の代わりに、インダクタンスLと抵抗Rとが直列に接続されてなる図3のLR直列負荷回路を接続して、この抵抗RとインダクタンスLを求める手順について以下に説明する。
本実施の形態に係る誘導電動機の定数測定装置では、インバータ2と、電流検出器3と、装置コントローラ4とからループ制御回路において、装置コントローラ5の偏差増幅器12によって、誘導電動機1に給電される検出電流iuを所望の電流指令値iuに実質的に一致させるように制御することができる。ここで、誘導電動機1の代わりに、図3のLR直列負荷回路を接続すれば、同様に、LR直列負荷回路の電流iを電流指令信号iに実質的に一致させるように制御することができると考えられる。電流指令信号iを、振幅I[A]及び周波数fLR[Hz]を有する交流電流信号Icos(2πfLRt)で与える。ここで、インバータ2の電圧指令信号vとLR直列負荷回路の端子電圧v(図3参照。)とは実質的に一致するように制御されていると仮定する。このとき、交流電流指令信号iを基準にした、電圧指令信号vの同位相成分の振幅A1と直交位相成分の振幅B1とは、相互相関関数を用いた次式によって計算できる。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
ここで、Tは予め設定された積分期間である。電流指令信号iの振幅Iが既知であり、電流指令信号iを基準としたときの電圧指令信号vの同位相成分の振幅A1がわかれば、LR直列負荷回路の抵抗成分ZReを次式を用いて計算できる。
Re=A1÷I (7)
また、電流指令信号iを基準としたときの電圧の直交位相成分の振幅B1がわかれば、LR直列負荷回路のリアクタンス成分ZImが次式を用いて計算できる。
Im=B1÷I (8)
図4は図3のLR直列負荷回路において、積分期間Tが10秒間であるときに、電流iが電流指令信号i=cos(2πfLRt)に実質的に一致するように制御したときの各パラメータの波形図であって、図4(a)は信号cos(2πfLRt)及び信号−sin(2πfLRt)の波形図であり、図4(b)は電圧指令信号vの波形図であり、図4(c)は直交位相成分の振幅B1の波形図であり、図4(d)は同位相成分の振幅A1の波形図である。図4から明らかなように、電圧指令信号vの同位相成分と直交位相成分は、積分期間Tに到達したときの振幅A1,B1によって得られる。
式(5)及び式(6)において、積分期間T→∞とすれば、電圧指令信号vの同位相成分と直交位相成分をより高い精度で得ることができる。しかしながら、積分期間Tは、言い換えると、LR直列負荷回路の測定時間でもある。測定時間が長いと、誘導電動機の定数測定装置を使用するユーザの待ち時間が長くなる。ユーザが快適に使用するためには、積分期間はより短い方がよい。
図5は実施の形態1において、交流誘導電動機1の代わりにLR直列負荷回路を接続して、図2の定数測定処理のステップS107の方法を用いて抵抗成分及びインダクタンス成分を測定したときの実験結果であって、給電周期数に対する各成分の測定精度を示すグラフである。
図5の結果から明らかなように、抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を±12%以内に保つには、単相交流給電を2周期以上行う必要がある。また、抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を±10%以内に保つには、単相交流給電を3周期以上行う必要がある。さらに、抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を±5%以内に保つには、単相交流給電を5周期以上行う必要がある。従って、ステップS106における単相交流給電の給電周期数を2周期以上に設定すると、抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を±12%以内に保つことができる。また、ステップS106における単相交流給電の給電周期数を3周期以上に設定すると、抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を±10%以内に保つことができる。さらに、ステップS106における単相交流給電の給電周期数を5周期以上に設定すると、抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を±5%以内に保つことができる。以上の動作原理により、ステップS107では、式(5)乃至式(8)を用いて、誘導電動機1の抵抗成分とリアクタンス成分を測定できる。
図6は図1の誘導電動機1の等価回路の回路図であり、図7は図6の等価回路の近似等価回路の回路図である。図6において、誘導電動機1の等価回路は、漏れインダクタンスlと2次抵抗Rrとの直列回路に対して相互インダクタンスMが並列に接続され、当該並列回路に対して、漏れインダクタンスlと1次抵抗Rsとの直列回路が直列に接続されて構成される。ここで、誘導電動機1では、相互インダクタンスM≫漏れインダクタンスlが成り立つので、図6の等価回路は、図7の等価回路に近似できる。図7の等価回路のインピーダンスZ1は次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、ω1=2πf1であり、f1は電流指令信号iuの周波数である。上述したようにステップS107において、式(5)乃至式(8)を用いて、誘導電動機1のインピーダンスの抵抗成分ZReとリアクタンス成分ZImを測定する。それぞれ測定された抵抗成分ZRe及びリアクタンス成分ZIm並びに式(9)から次式の連立方程式が得られる。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
ここで、2次抵抗Rrと相互インダクタンスMの値は式(10)及び式(11)の連立方程式を解くことにより得られる。その解は次式で表される。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
このように、定数算出コントローラ5は、インバータ2が交流給電を行ううち、最も低い周波数で交流給電を行う期間において電流に対する電圧の同位相成分の大きさと、電流に対する電圧の直交位相成分の大きさを算出し、この算出値に基づいて上記誘導電動機1の2次抵抗と相互インダクタンスを算出する。この結果、1次抵抗Rsの値の測定が完了していれば、ステップS106の交流給電だけで、2次抵抗と相互インダクタンスを同時に測定できる。また、1次インダクタンスLs及び2次インダクタンスLrの値は漏れインダクタンスlと相互インダクタンスMの和で与えられる。このステップS107の処理が終了することにより、当該誘導電動機の定数測定処理が終了する。
ここで、ステップS106においてインバータ2が単相交流給電するときの周波数について以下に説明する。図7の等価回路において、単相交流給電される交流電力の周波数を非常に高く設定すると、相互インダクタンスMのインピーダンスは開放となり、当該等価回路のリアクタンス成分はゼロとなる。また、単相交流給電される交流電力の周波数を非常に低く設定すると、相互インダクタンスMのインピーダンスは短絡状態となり、当該等価回路のリアクタンス成分はゼロとなる。従って、ステップS106においてインバータ2が単相交流給電する周波数は高すぎても低すぎてもいけない。すなわち、インバータ2が単相交流給電する周波数を適切な周波数に設定する必要がある。
図7の等価回路における誘導電動機1のリアクタンス成分は式(11)で表されたインピーダンスZImである。ここで、式(11)で表されたインピーダンスZImの両辺を角周波数ω1で微分すると、次式を得る。
Figure 2006008846
ここで、dZIm/dω1=0のとき、インピーダンスZImは極大となり、そのとき、の角周波数ω1MAXは次式で表される。
ω1MAX=Rr÷M [rad/s] (15)
従って、インバータ2がステップS106において単相交流給電する周波数は、次式で表される周波数f1MAXに設定すればよい。
1MAX=Rr÷(2π・M) [Hz] (16)
図8は定格容量が3.7kWである誘導電動機を単相交流給電するときの抵抗成分ZRe及びリアクタンス成分ZImの周波数特性を示すグラフである。ここで、2次抵抗Rrは0.28[Ω]であり、1次抵抗Rsは0.35[Ω]であり、相互インダクタンスMは0.062[H]である。従って、周波数f1MAX=Rr/(2πM)は0.72[Hz]であり、図8のリアクタンス成分ZImも周波数0.72Hz近傍で極大となっている。
本実施の形態に係る誘導電動機の定数測定装置においては、誘導電動機1の2次抵抗Rrや相互インダクタンスMの値は、ステップS106の終了時点では未知の状態である。そこで、定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機1を対象に、上記式(16)の右辺の値について測定したところ、図9及び図10の結果を得た。ここで、図9は定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機1についての周波数f1MAX=Rr/(2πM)を示すグラフであり、図10は定格容量が1.5kWから280kWまでの誘導電動機1についての周波数f1MAX=Rr/(2πM)を示すグラフである。図9及び図10の結果から明らかなように、定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機1について、リアクタンス成分が極大になる周波数の帯域は0.2Hz以上で1.5Hz以下であることがわかる。
図11は図1のインバータ2の各クラスに対する定格容量及び外径寸法の一例を示す表である。インバータ2を、図11に示すように、外形寸法で各容量毎に各クラスに分類できる。
図9から、クラスAに属する定格容量1.5kWから2.2kWまでの誘導電動機1について、リアクタンス成分が極大になる周波数の帯域は1.2Hz以上で1.5Hz以下であることがわかる。従って、クラスAに属する定格容量1.5kWから2.2kWまでの誘導電動機1のリアクタンス成分ZImは、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数を1.2Hz以上で1.5Hz以下に設定することによって、より高い精度で測定できる。その結果、クラスAに属する定格容量1.5kWから2.2kWまでの誘導電動機1の相互インダクタンスMと2次抵抗Rrをより高い精度で測定できる。
また、同様に、クラスBに属する定格容量3.7kWから7.5kWまでの誘導電動機1のリアクタンス成分ZImは、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数を0.7Hz以上で1.2Hz以下に設定することによって、より高い精度で測定できることが、図9からわかる。その結果、クラスBに属する定格容量3.7kWから7.5kWまでの誘導電動機1の相互インダクタンスMと2次抵抗Rrをより高い精度で測定できる。
さらに、同様に、クラスCに属する定格容量11kWから18.5kWまでの誘導電動機1のリアクタンス成分ZImは、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数を0.4Hz以上で0.7Hz以下に設定することによって、より高い精度で測定できることが、図9からわかる。その結果、クラスCに属する定格容量11kWから18.5kWまでの誘導電動機1の相互インダクタンスMと2次抵抗Rrをより高い精度で測定できる。
またさらに、同様に、クラスDに属する定格容量22kWから37kWまでの誘導電動機1のリアクタンス成分ZImは、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数を0.3Hz以上で0.5Hz以下に設定することによって、より高い精度で測定できることが、図9からわかる。その結果、クラスDの定格容量22kWから37kWまでの誘導電動機1の相互インダクタンスMと2次抵抗Rrをより高い精度で測定できる。
また、同様に、クラスEに属する定格容量45kWから55kWまでの誘導電動機1のリアクタンス成分ZImは、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数を0.2Hz以上で0.3Hz以下に設定することによって、より高い精度で測定できることが、図9からわかる。その結果、クラスEに属する定格容量45kWから55kWまでの誘導電動機1の相互インダクタンスMと2次抵抗Rrをより高い精度で測定できる。
さらに、同様に、クラスFに属する定格容量55kW以上280kW以下の誘導電動機1のリアクタンス成分ZImは、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数を0.2Hz以下に設定することによって、より高い精度で測定できることが、図10からわかる。後述するように、インバータ2は、0.006Hz以上で電圧分解能を保つことが可能であるので、クラスFに属する定格容量55kW以上の誘導電動機1に対して、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数を0.006Hz以上で0.2Hz以下に設定することによって、より高い精度で測定できる。その結果、クラスFに属する定格容量55kW以上の誘導電動機1の相互インダクタンスMと2次抵抗Rrをより高い精度で測定できる。
以上説明したように、図9及び図10から明らかなように、誘導電動機1の定格容量が大きくなるにつれ、周波数f1MAXは小さくなることがわかる。定数を測定可能な誘導電動機1の定格容量を大容量まで確保するためには、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数をより小さくすることが望ましい。本実施の形態に係る誘導電動機の定数測定装置がより高い精度で定数を測定できる周波数の下限値について以下に説明する。ここで、当該周波数の下限値を決定する要因として「インバータ2の電圧分解能」と「交流電流指令信号iを基準にした電圧指令信号vの直交位相成分の振幅B1」が挙げられる。
まず、インバータ2の電圧分解能について以下に説明する。インバータ2が誘導電動機1に印加する直流電圧は、インバータ2に依存する電圧分解能の間隔毎に標本化されかつ量子化される。本実施の形態では、インバータ2の電圧指令信号vuと誘導電動機1の端子電圧vuは実質的に一致するように制御されていると仮定している。交流電流指令信号iを基準にした電圧指令信号vの同位相成分の振幅A1と直交位相成分の振幅B1とは、少なくともインバータ2の電圧分解能より大きい値に設定する必要がある。また、電圧指令信号vの直交位相成分の振幅B1は、誘導電動機1のリアクタンス成分と電流振幅の積である。誘導電動機1のリアクタンス成分は、図8から明らかなように、インバータ2が誘導電動機1に印加する電圧周波数の関数である。本実施の形態においては、インバータ2がディジタル処理を利用して三角波比較型パルス幅変調法(以下、パルス幅変調法をPWM変調法という。)を用いて交流電圧を出力する場合における、当該インバータ2の電圧分解能C[V]について説明する。インバータ2は、電圧指令信号vと三角波キャリアTrcの大小関係から交流電圧を出力する。
図12は図1のインバータ2からの出力電圧Voutを説明するための電圧指令信号vと三角波キャリアTrcとの関係を示す波形図である。インバータ2からの出力電圧Voutは、ディジタル処理のサンプリング周期毎に以下のように選択して出力される。ここで、三角波キャリアTrcの最大振幅をVdc[V]とする。
≧Trcのとき、Vout=Vdc[V] (17)
<Trcのとき、Vout=0[V] (18)
この選択出力処理を施せば、キャリア周期の半分の区間における平均電圧が電圧指令信号vに実質的に一致するように制御できる。PWM変調法で用いる三角波キャリアTrcのキャリア周期をT0[sec]とすると、キャリア周期T0の半分の期間はT0÷2[sec]である。上記ディジタル処理のサンプリング周期がD[sec]であったとき、電圧指令信号vと三角波キャリアTrcの比較処理を、キャリア周期T0の半分の期間中にT0÷(2×D)回実行する。以上から、電圧分解能C[V]は次式で表される。
C[V]
=Vdc[V]÷(T0÷(2×D)[回])
=(2×D×Vdc)÷T0[V] (19)
インバータ2の実用的な値であるキャリア周期T0=1ミリ秒及びサンプリング周期D=25ナノ秒である場合についても、電圧分解能C[V]を式(19)を用いて計算できる。例えば、3相200V商用電源からの交流電圧を整流することによりDCリンク電圧を得る場合、三角波キャリアTrcの最大振幅VdcはVdc=280[V]であり、電圧分解能C[V]は次式で計算できる。
C=2×(25×10−9)×280÷(10−3)=0.014[V](20)
次いで、交流電流指令信号iを基準にした電圧指令信号vの直交位相成分の振幅B1について説明する。低周波数帯域では、電流指令信号iを基準としたときの電圧の同位相成分の振幅A1は直交位相成分の振幅B1」に対して十分大きい。インバータ2が、上記電圧指令信号vの直交位相成分の振幅B1を出力するだけの電圧分解能Cを有していればよい。ここで、上記電圧振幅B1を電圧分解能Cで除算した値B1/Cについて以下に説明する。
図13は定格容量3.7kWの誘導電動機と、定格容量11kWの誘導電動機と、定格容量22kWの誘導電動機とにおける、電圧指令信号vの直交位相成分の振幅B1を電圧分解能Cで除算した除算値B1/Cの周波数特性を示すグラフである。ここで、電流指令信号iは定格励磁電流(無負荷電流)相当値に設定し、上記振幅B1を電流指令信号iの振幅Iと、周波数fに対応するリアクタンス成分との積で計算している。図13から明らかなように、誘導電動機1の定格容量に関係なく、周波数fと上記除算値B1/Cの関係は実質的にほぼ一致しており、周波数fが0.006[Hz]以上ならば、交流電流指令信号iを基準にした電圧指令信号vの直交位相成分の振幅B1はインバータ2の電圧分解能Cより大きくなることがわかる。
以上から明らかなように、定格容量が55kWを超える誘導電動機についても、ステップ107において単相交流給電される交流電力の周波数の下限値を0.006[Hz]以上に設定すれば、本実施の形態による誘導電動機の定数測定装置でその定数を測定することができる。言い換えると、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数fが0.006[Hz]以上に設定することによって、インバータ2が、該電圧指令信号vの直交位相成分の振幅B1を出力するだけの電圧分解能Cを有することができ、定格容量が55kWを超える誘導電動機1についても、より高い精度で定数を測定できる。
さらに、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数fの下限値を0.03[Hz]以上に設定すると、上記電圧振幅B1と上記電圧分解能Cの比を5倍以上に設定できるので、該電圧指令信号vの直交位相成分の分解能が向上し、定格容量が55kWを超える誘導電動機についても、より高い精度で定数を測定できる。さらに、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数fの下限値を0.06[Hz]以上に設定すると、上記電圧振幅B1と上記電圧分解能Cの比を10倍以上に設定できるので、該電圧指令信号vの直交位相成分の分解能が向上し、定格容量が55kWを超える誘導電動機1についてもよりさらに高い精度で定数を測定できる。
ところで、本発明者らが誘導電動機の定数測定装置についてユーザに対してヒアリングを行ったところ、定数測定の間、ユーザがイライラを感じさせない待ち時間は30秒以内とする意見が多い。また、非特許文献2によれば、パーソナルコンピュータを起動してそれが立ち上がるまでにイライラを感じる限界時間の回答割合は、待ち時間が1分であるとき38.3%であり、待ち時間が30秒であるとき34.5%で、待ち時間が1分以内の回答は7割を超える72.8%である。このように、一方は誘導電動機1の定数測定装置、もう一方はパーソナルコンピュータということで、対象の装置が異なるものの、本発明者らは、ユーザが装置を操作せずに待機する時間として、30秒以内であることが望ましいことを発見した。
本実施の形態に係る図2の誘導電動機の定数測定処理において、ステップS101及びS102では、後述するように高い周波数で単相交流給電を行うため、ステップS101及びS102での単相交流の給電と漏れインダクタンスの測定は数秒以内に完了する。また、ステップS103乃至S105において単相直流の給電と1次抵抗の測定も、以下の理由により数秒以内に完了する。すなわち、偏差増幅器12を含むインバータ2と電流検出器3と装置コントローラ4とから構成されるループ制御回路により、電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように、インバータ2は交流電圧vu及びvvを誘導電動機1に印加して電流制御できるためである。
一方、ステップS106及びS107の処理において、単相交流給電される交流電力の周波数を0.006Hz以上で1.5Hz以下に設定する。上述したように、ステップS107における抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を±10%以内に保つには、単相交流給電を3周期以上行う必要がある。また、抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を±5%以内に保つには、単相交流給電を5周期以上行う必要がある。このように、単相交流給電の周期を長く設定する程、抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度をより高くできる。一方、ステップS106において、インバータ2が単相交流電圧を給電している期間を長く設定すると、当該誘導電動機の定数測定装置を利用するユーザが定数測定の完了までの待ち時間も長くなる。
そこで、ステップ107でインバータ2が単相交流電圧を給電するときの周期の上限値について以下に説明する。図14は図2の定数測定処理においてインバータ2が単相交流給電する交流電力の周波数を図13の値で与えたときに、30秒間で何周期給電することが可能であるかを示す、定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機の定格容量に対する30秒間の給電周期数を示すグラフである。また、図15は図2の定数測定処理においてインバータ2が単相交流給電する交流電力の周波数を図13の値で与えたときに、30秒間で何周期給電することが可能であるかを示す、定格容量が1.5kWから280kWまでの誘導電動機の定格容量に対する30秒間の給電周期数を示すグラフである。
図14から明らかなように、例えば、定格容量が55kWである誘導電動機1においては、単相交流給電される交流電力の周波数は0.24Hzであるので、7.2周期給電したところで30秒が経過する。また、定格容量が2.2kWである誘導電動機1においては、単相交流給電される交流電力の周波数は1.35Hzであるので、40.4周期給電したところで30秒が経過する。上述したように、ステップS107における抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を±10%以内に保つには、単相交流給電を3周期以上行う必要がある。単相交流給電される交流電力の周波数を0.1Hz以上とすると測定精度を±10%以内に保ちつつ30秒以内に当該測定を終了することができる。
図2のステップS101からステップS105までの処理を数秒で完了できる。また、ステップS106とステップS107の処理において、抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を向上させるためには、ステップS106においてインバータ2が単相交流給電するときの周期をより長く設定したい。しかしながら、当該誘導電動機の定数測定装置をユーザが快適に操作するためには、上述のように、30秒以内に定数測定を完了させる必要があり、ステップS106においてインバータ2が誘導電動機1に単相交流給電する周期を、図14及び図15の結果から、最大でも45周期以下に設定する必要がある。
このように、ステップS106における単相交流給電の給電周期を45周期以下に設定することが、ステップS106及びS107に要する時間を30秒以内にするための必要条件である。その結果、本実施の形態に示した誘導電動機の定数測定装置が、30秒以内に定数測定を完了させるための必要条件は、インバータ2が、少なくとも1回、周波数0.1Hz以上1.5Hz以下かつ給電周期45周期以下の単相交流給電を行うことである。
次いで、ステップS101において単相交流給電される交流電力の周波数について以下に説明する。ラプラス演算子をsとするとき、図6に示した誘導電動機1の等価回路の伝達関数G(s)は次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、
Ts=Ls÷Rs (22)
Tr=Lr÷Tr (23)
である。
ここで、周波数の帯域が(Ts+Tr)÷(2πσTsTr)[Hz]より十分高い領域において、式(21)は後述する式(24)のように近似できる。式(24)のラプラス演算子sにj2πf0を代入すれば、上述した式(1)によって漏れインダクタンスlの測定を行うことができる。
ここで、(Ts+Tr)÷(2πσTsTr)[Hz]より十分高い周波数を、(Ts+Tr)÷(2πσTsTr)[Hz]の5倍と定義する。定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機を対象に周波数5×(Ts+Tr)÷(2πσTsTr)[Hz]について測定したところ、図16の結果を得た。すなわち、図16は定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機の定格容量に対する周波数5(Ts+Tr)/(2πσTsTr)[Hz]の特性を示すグラフである。
図16によれば、周波数5(Ts+Tr)/(2πσTsTr)は、定格容量2.2kWの誘導電動機において38Hzであり、45kWの誘導電動機において8.22Hzである。従って、ステップS101の単相交流給電される交流電力の周波数を40Hz以上に設定しておけば、定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機について次式の近似式が成り立つ。
Figure 2006008846
また、インバータ2が出力できる周波数の上限は、インバータ2のキャリア周波数である。以上のことから、インバータ2は、好ましくは、少なくとも1回、周波数40Hz以上でかつキャリア周波数以下の周波数範囲で選択された周波数で単相交流給電を行うことにより漏れインダクタンスlを測定する。この結果、漏れインダクタンスlの測定の条件となる式(24)で示した近似式が成立する。この単相交流給電を行うことにより、誘導電動機1を回転させることなく、漏れインダクタンスlをより高い精度で測定することができる。
実施の形態2.
上記実施の形態1では、ステップS106において単相交流の第2の給電を実行している。このとき、信号源10は電流指令信号iuとして周波数f1の交流信号iu1を出力していたが、直流成分と交流成分とを加算した次式で示す電流指令信号iuを信号源10から出力させても、上記式(5)及び式(6)の演算では直流成分は除去される。実施の形態2においては、信号源10は次式で示す直流成分と交流成分とを加算した電流指令信号iuを出力することを特徴としている。
iu=I2×{1+cos(2π・f1・t)} (25)
式(25)において、I2は定格電流に所定の係数(例えば、0から0.5までの間の所定値である。)を乗算した値とする。この電流I2を用いることにより、電流指令信号iuの符号は時刻tにかかわらず正となるので、デッドタイム誤差の影響を受けないという効果が得られる。
また、電流振幅をI2で与え、減算器11は、式(25)に示した電流指令信号iuと、電流検出器3により検出された電流iuとの電流偏差Δiを演算して、その電流偏差Δiを示す信号を偏差増幅器12に出力する。これに応答して、偏差増幅器12は式(3)を用いて演算した値を有する電圧指令信号vu1をインバータ2に出力する。インバータ2と電流検出器3と装置コントローラ4とから構成されるループ制御回路において、検出電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御されて、インバータ2は交流電圧vu及びvvを誘導電動機1に印加するので、周波数f1の値に係らず誘導電動機1の電流振幅を所定の値に設定できる。誘導電動機1の相互インダクタンスMは電流の振幅に依存して変化するが、電流振幅を所定の値に設定するように制御した結果、周波数f1の値に係らず、所定の電流振幅における相互インダクタンスMの値を測定することができる。
実施の形態3.
上記実施の形態1では、ステップS107において、式(12)及び式(13)を用いて、2次抵抗と相互インダクタンスを測定したが、ステップS102で漏れインダクタンスl及びσLsの測定が完了しているので、この値も利用して2次抵抗と相互インダクタンスを求めてもよい(以下、実施の形態3という。)。実施の形態3においては、実施の形態1と同様に、ステップS107では、式(5)、式(6)及び式(7)を用いて誘導電動機1の抵抗成分とリアクタンス成分を測定する。誘導電動機1の等価回路である図6において、当該等価回路のインピーダンスZ1は次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、ω1=2πf1であり、f1は電流指令信号iuの周波数である。上述したようにステップS107において、式(5)、式(6)及び式(7)を用いて誘導電動機1のインピーダンスの抵抗成分ZReとリアクタンス成分ZImを測定する。測定した抵抗成分ZReとリアクタンス成分ZIm及び式(26)から次式の連立方程式が得られる。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
ここで、2次抵抗Rrと相互インダクタンスMの値は、式(27)及び式(28)の連立方程式を解くことにより得られる。その解は次式で表される。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
M=Ls−l (31)
このように、定数算出コントローラ5は、インバータ2が交流給電を行う期間のうち、最も低い周波数で交流給電を行う期間において電流に対する電圧の同位相成分の大きさと、電流に対する電圧の直交位相成分の大きさを算出し、この算出値とステップS102において測定した漏れインダクタンスlとσLsに基づいて、誘導電動機1の2次抵抗と相互インダクタンスを算出する。この結果、漏れインダクタンスlとσLs及び1次抵抗Rsの測定が完了していれば、ステップS106の交流給電だけで、2次抵抗と相互インダクタンスを同時に測定できる効果に加え、漏れインダクタンス分を考慮したため、測定精度をさらに向上できるという効果がある。
実施の形態4.
上述の実施の形態に係るステップS107では、交流電流指令信号iを基準にした電圧指令信号vの同位相成分の振幅A1と直交位相成分の振幅B1とは、相互相関関数を用いた上記式(4)によって得ていたが、式(5)及び式(6)の代わりに次式を用いてもよい(以下、実施の形態4という。)。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
ここで、ΔA1は予め設定されたA1補正量であり、ΔB1は予め設定されたB1補正量である。
次いで、式(5)及び式(6)の代わりに、式(32)及び式(33)を用いる理由について以下に説明する。ステップS107における測定で、誘導電動機1の代わりに、インダクタンスLと抵抗Rとからなる図3のLR直列負荷回路を接続したときのインバータ2のキャリア周波数と、式(5)及び式(6)を用いて実験により得た振幅A1との関係を図17に示す。すなわち、図17は図2の定数測定処理において、誘導電動機1に代えて図3のLR直列負荷を接続したときのインバータ2のキャリア周波数に対する同位相成分の正規化振幅A1(実験値)を示すグラフである。ここで、ステップS106における電流指令信号iuは、実施の形態2で示した式(25)を用いて計算した。また、式(25)の単相交流給電される交流電力の周波数f1として2種類の周波数0.5Hz,1Hzを用いた。図17及び後述の図18において、●は0.5Hzの場合であり、○は1Hzの場合である。
図17の縦軸は同位相成分の振幅A1の理論値を基準とした正規化値であり、各キャリア周波数に対して実験したデータをプロットした。図17から明らかなように、理論値に対して測定された振幅A1の誤差は、キャリア周波数が高くなるほど大きくなることと、当該振幅A1の誤差は単相交流給電される交流電力の周波数により変化しないことがわかった。本実施の形態では、インバータ2のキャリア周波数を1000Hzに固定し、予め、同位相成分の振幅A1の補正量ΔA1の値を実験的に決定する。
図18は図2の定数測定処理において、誘導電動機1に代えて図3のLR直列負荷を接続したときのインバータ2のキャリア周波数に対する直交位相成分の正規化振幅B1(実験値)を示すグラフである。図18から明らかなように、理論値に対して測定された振幅B1の誤差は、キャリア周波数に対して若干減少するもののほとんど変化しないことと、当該振幅B1の誤差は単相交流給電される交流電力の周波数により変化しないことがわかった。従って、振幅B1についても、振幅A1と同様に予め振幅B1の補正量ΔB1の値を実験的に決定する。
以上説明したように、定数算出コントローラ5は、インバータ2が交流給電を行う期間のうち、最も低い周波数で交流給電を行う期間において、電流に対する電圧の同位相成分の振幅A1を算出し、この算出した振幅A1に対して予め設定していた所定の補正量ΔAを加算するとともに、電流に対する電圧の直交位相成分の振幅B1を算出し、この算出した振幅B1に対して予め設定していた所定の補正量ΔB1を加算する。この結果、インバータ2のキャリア周波数に起因する誤差を補正することができるので、電流に対する電圧の同位相成分の振幅A1と直交位相成分の振幅B1を、より高い精度で測定できる。従って、ステップS107における2次抵抗と相互インダクタンスの測定精度をさらに向上できる。
当該実施の形態において、上記補正量ΔA1,ΔB1を式(25)の電流I2の関数で表してもよい。これにより、電流振幅の設定を変更しても2次抵抗と相互インダクタンスの測定精度を向上させることができる。誘導電動機1の代わりに、インダクタンスLと抵抗Rとからなる図3のLR直列負荷回路を接続したときの上記電流I2と、式(5)及び式(6)を用いて実験により得た正規化振幅A1,B1との関係を図19に示す。すなわち、図19は図2の定数測定処理において、誘導電動機1に代えて図3のLR直列負荷を接続したときの電流I2に対する正規化振幅A1,B1(実験値)を示すグラフである。図19の縦軸は振幅A1の理論値を基準としたものであり、キャリア周波数を1000Hzに固定したときの各電流I2について実験したデータをプロットしたものである。
図17、図18及び19から明らかなように、理論値に対する測定した振幅A1,B1の誤差は、上記電流I2の関数であることと、その誤差は単相交流給電される交流電力の周波数に依存して変化しないことがわかった。従って、本実施の形態では、インバータ2のキャリア周波数を1000Hzに固定し、予め、振幅A1の補正量ΔA1の値を電流I2の関数として実験的に決定し、振幅B1についても同様に予め振幅B1の補正量ΔB1の値をI2の関数として実験的に決定する。これにより、電流振幅の設定を変更しても2次抵抗と相互インダクタンスの測定精度をさらに向上させることができるという効果がある。
実施の形態5.
上記実施の形態では、インバータ2は誘導電動機1に単相給電するために1相を開放したが、本発明はこれに限らず、誘導電動機1に回転磁界が生じなければよいので、例えば、1相を開放せずに、U相電圧指令信号vuとともに、次式でそれぞれ表されるV相電圧指令信号vv及びW相電圧指令信号vwをインバータ2に対して印加してもよい(以下、実施の形態5という。)。
vv=−vu÷2 (34)
vw=−vu÷2 (35)
上記式(34)及び式(35)で表された電圧指令信号vv,vwをインバータ2に対して与えることにより、誘導電動機1に単相給電を行うことができる。その結果、インバータ2から誘導電動機1へ接続している結線の1相を開放する作業を省略できる。
実施の形態6.
図20は本発明の実施の形態6に係る誘導電動機の定数測定装置の構成を示すブロック図である。図20において、交流回転機である誘導電動機1はインバータ2と接続されており、インバータ2は誘導電動機1に対して単相給電するために、U相、V相、W相の3相のうちの1相を開放している。ここで、開放方法は、インバータ2の1相分だけ上下アームを開放してもよいし、もしくは誘導電動機1の1相のみ結線を外してもよい。すなわち、インバータ2は、誘導電動機1に回転磁界を発生せず、回転トルクが生じないように、単相給電状態となるような交流電力を誘導電動機1に供給する。このことにより、誘導電動機1が負荷設備に接続されていて無負荷試験ができない場合でもその定数を測定できる。電流検出器3はインバータ2から誘導電動機1に流れる1相の電流iuを検出して、検出された電流iuを示す信号を減算器11に出力する。電流検出器3は、図1に示すように、U相電流を直接検出する方法以外に、公知の技術である、電力変換器のDCリンク電流から3相電流を検出する方法でもよい(例えば、非特許文献1参照。)。
装置コントローラ4Aは例えばディジタル計算機により構成され、具体的には、信号源10と、減算器11と、偏差増幅器12と、符号反転器13とを備えて構成され、誘導電動機1に印加すべき電圧指令信号vu,vvを演算して、電流指令vu,vvをインバータ2に出力する。また、定数算出コントローラ5Aは内部メモリ5mを有する例えばディジタル計算機により構成され、誘導電動機1に単相給電したときの電圧指令信号vuと電流指令信号iuの関係から、誘導電動機1の定数を算出して出力する。装置コントローラ4Aにおいて、信号源10は電流指令信号iuを発生して定数算出コントローラ5A及び減算器11に出力する。減算器11は、信号源10からの電流指令信号iuと、電流検出器3により検出された電流iuとの電流偏差Δiを演算して偏差増幅器12に出力する。さらに、偏差増幅器12は、入力される電流偏差Δiを所定の増幅定数で増幅して、増幅後の電圧指令信号vuを発生して、当該電圧指令信号vuをインバータ2及び定数算出コントローラ5Aに出力するとともに、入力信号を−1倍する符号反転器13を介してインバータ2に出力する。
図21は図20の誘導電動機1の静止時のT型等価回路の回路図である。図21において、誘導電動機1の等価回路は、漏れインダクタンスlと2次抵抗Rrとの直列回路に対して相互インダクタンスMが並列に接続され、当該並列回路に対して、漏れインダクタンスlと1次抵抗Rsとの直列回路が直列に接続されて構成される。本実施の形態においては、1次側と2次側の漏れインダクタンスは同一の値lと仮定し、この場合、1次インダクタンスと2次インダクタンスも同一の値Lと仮定する。
図22は図21のT型等価回路を、RX直列回路を用いて表したときの等価回路の回路図である。図22において、RX直列回路は、抵抗成分Rと、リアクタンス成分Xとの直列合成インピーダンスZを用いて表したものであり、この直列合成インピーダンスZは次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、ω=2πfであり、fは電流指令信号iuの周波数であり、ωは電流指令信号iuの角周波数であり、jは虚数単位である。上記式(36)より、抵抗成分R及びリアクタンス成分Xを求めると次式で表される。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
L=M+l (39)
ここで、Lは1次インダクタンスである。本実施の形態においては、1次インダクタンスLは2次インダクタンスLに等しいと仮定する。また、2次時定数Tr及び漏れ係数σは次式で表される。
Tr=L÷Rr (40)
σ=1−M÷L (41)
上記式(37)及び式(38)において、2種類の周波数f1,f2に対応したリアクタンス成分XをそれぞれX1,X2とすると次式を得る。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
ここで、ω1=2πf1及びω2=2πf2である。上記式(42)及び式(43)を、2次時定数Trと1次インダクタンスLを未知数とする連立方程式に書き換えると、2次時定数Trと1次インダクタンスLの値は次式の連立方程式を解くことにより得られる。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
すなわち、漏れ係数σと1次インダクタンスLの積である漏れインダクタンスσLが既知であるならば、直列合成インピーダンスZの抵抗成分Rを用いることなく、リアクタンス成分Xのみで2次時定数Trと1次インダクタンスLを計算することができる。なお、漏れインダクタンスσLの値は、上記実施の形態1のステップS102と同様の方法で測定してもよいし、設計値や概算値を利用してもよい。
ここで、2次時定数Trと1次インダクタンスLが求まれば、2次抵抗Rrは次式を用いて計算できる。
Rr=L÷Tr (46)
以上で示された方法により、定数算出コントローラ5Aは、2種類の周波数f1,f2に対応したリアクタンス成分X1,X2と漏れ係数σと1次インダクタンスLの積である漏れインダクタンスσLとの各値から、2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrを計算する。
図23は図20の定数測定装置により誘導電動機1の定数を測定するための定数測定処理を示すフローチャートである。上記リアクタンス成分X1,X2を測定し、誘導電動機1の定数を求める手順について図23を参照して以下に説明する。
図23のステップS201において、まず、漏れインダクタンスσLを測定し又は推定する。ここで、漏れインダクタンスσLを上述した方法も含め、どのような方法を用いて測定し又は推定してもよい。次いで、ステップS202において、周波数f1の交流給電を開始する。このとき、信号源10は電流指令信号iuとして、周波数f1の交流信号iu1を発生して減算器11及び定数算出コントローラ5Aに出力する。減算器11は信号源10からの電流指令信号iuと、電流検出器3により検出された電流iuとの電流偏差Δiを演算して、電流偏差Δiを示す信号を偏差増幅器12に出力する。これに応答して、偏差増幅器12は、次式に従って電圧指令信号vuを発生してインバータ2及び定数算出コントローラ5Aに出力するとともに、符号反転器13を介して電圧指令信号vv*としてインバータ2に出力する。
Figure 2006008846
ここで、ωccは電流応答設定値であり、Nは任意の定数であり、tは時刻を表す。また、電流偏差Δiは次式で表される。
Δi=iu−iu (48)
インバータ2と電流検出器3と装置コントローラ4Aとからなるループ制御回路において、電流検出器3で検出される誘導電動機1の電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御されて、インバータ2は交流電圧vu及びvvを誘導電動機1に印加する。
次いで、ステップS203において、定数算出コントローラ5Aは、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1を算出して測定する。この測定原理について以下に説明する。本実施の形態に係る誘導電動機の定数測定装置においては、装置コントローラ4Aの偏差増幅器12によって、誘導電動機1の電流iuを、電流指令で示す所望値iuに実質的に一致させるように制御できる。そこで、ステップS202において、電流指令信号iuとして、振幅I1及び周波数f1を用いて次式で表された交流信号iu1を発生して出力する。
iu1=I1cos(2πf1t) (49)
このとき、インバータ2の電圧指令信号vuと誘導電動機1の端子電圧vuをそれぞれ、vu1,vu1とする。インバータ2と電流検出器3と装置コントローラ4Aとからなるループ制御回路において、電圧指令信号vu1と誘導電動機1の端子電圧vu1が実質的に一致するように制御されたとき、交流信号iu1を基準とした電圧指令信号vu1の直交位相成分の振幅B1は、相互相関関数を用いた次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、T1は予め設定された積分時間である。上記式(50)において、上記積分時間T1を交流信号iu1の周期の整数倍に設定してもよい。
次いで、交流信号iu1の振幅I1が既知で、上記式(50)により交流信号iu1を基準としたときの電圧の直交位相成分B1を計算できることから、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1を次式により算出される。
X1=B1÷I1 (51)
ステップS204において周波数f1の交流給電を終了する。次いで、ステップS205において、ステップS202と同様の方法を用いて、周波数f2の交流給電を開始する。このとき、信号源10は電流指令信号iuとして、周波数f2の交流信号iu2を発生して減算器11及び定数算出コントローラ5Aに出力する。減算器11は信号源10からの電流指令信号iuと、誘導電動機1に供給されて電流検出器3により検出される電流iuとの電流偏差Δiを演算して、電流偏差Δiを示す信号を偏差増幅器12に出力する。これに応答して、偏差増幅器12は、式(47)を用いて電圧指令信号vuを発生してインバータ2に出力する。インバータ2と電流検出器3と装置コントローラ4Aとからなるループ制御回路において、誘導電動機1の電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御されて、インバータ2は交流電圧vu及びvvを発生して誘導電動機1に印加する。
ステップS206において、ステップS203の処理と同様に、定数算出コントローラ5Aは、上記周波数f1とは異なる周波数f2に対応したリアクタンス成分X2を算出して測定する。ステップS205において、電流指令信号iuとして、次式で表された、振幅I2及び周波数f2の交流信号iu2を発生して印加されたものとする。ここで、電流振幅I2は、上記電流指令信号iu1とiu2とで同じ値でも異なる値でもよい。
iu2=I2cos(2πf2t) (52)
このときのインバータ2の電圧指令信号vuと誘導電動機1の端子電圧vuをそれぞれvu2、vu2とする。電圧指令信号vu2と誘導電動機1の端子電圧vu2が実質的に一致するように制御されたとき、交流信号iu2を基準とした電圧指令信号vu2の直交位相成分の振幅B2は、相互相関関数を用いた次式で得られる。
Figure 2006008846
ここで、T2は予め設定された積分時間である。なお、式(53)において、上記積分時間T2を交流信号iu2の周期の整数倍に設定してもよい。
電流指令信号iu2の振幅I2が既知で、上記式(53)により電流指令信号iu2を基準としたときの電圧の直交位相成分B2を計算できることから、周波数f2に対応したリアクタンス成分X2は次式により算出される。
X2=B2÷I2 (54)
次いで、ステップS207において周波数f2の交流給電を終了する。さらに、ステップS208において、ステップS203とステップS206でそれぞれ測定された、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1と、周波数f2に対応したリアクタンス成分X2に基づいて、上記式(44)乃至式(46)を用いて、2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrとを算出する。ステップS208の処理が終了して当該誘導電動機の定数測定処理を終了する。なお、ステップS203及びステップS206において、電流指令信号(交流信号)iuを基準としたときの電圧の直交位相成分B1、B2を計算したが、本発明はこれに限らず、電流検出器3で検出された電流iuを基準としたときの電圧の直交位相成分を計算して、それらの値を振幅B1,B2としてもよい。
次いで、図23のステップS202及びステップS205において、インバータ2が給電するときの周波数について以下に説明する。まず、本実施の形態に係る誘導電動機の定数測定装置において、より高い精度で定数を測定可能な周波数の上限値について以下に説明する。
図23のステップS201において、漏れ係数σと1次インダクタンスLの積である漏れインダクタンスσLを測定し又は推定する。さらに、ステップS208において、上記式(44)及び式(45)を用いて誘導電動機1の2次時定数Trと1次インダクタンスLを計算するときに、ステップS201で測定される漏れインダクタンスσLの値が必要となる。しかしながら、上記漏れインダクタンスσLの値に誤差が含まれていると、たとえ上記リアクタンス成分X1,X2が正確に測定された場合でも、2次時定数Trと1次インダクタンスLの算出誤差が大きくなる。従って、リアクタンス成分Xが漏れインダクタンスσLの値に依存しない周波数帯域で測定する必要がある。
図24は定格容量が3.7kW、11kW及び22kWである誘導電動機1におけるリアクタンス成分X,X0の正規化周波数fn特性を示すグラフである。すなわち、図24では、上記式(38)のリアクタンス成分Xの計算式を用いて計算できるリアクタンス成分Xと、漏れ係数σを0とみなし漏れインダクタンスの影響を無視したときのリアクタンス成分X0との周波数特性をプロットしたものである。ここで、周波数fに対応した漏れインダクタンスの影響を無視したときのリアクタンス成分X0は、上記式(38)における漏れ係数σを0としたときの次式で表すことができる。
Figure 2006008846
ここで、ω=2πfであり、fは電流指令信号iuの周波数である。図24において、上記リアクタンス成分X,X0の大きさは、誘導電動機1の定格容量と周波数fに大きく依存するため、両軸とも以下の方法で正規化した。横軸の正規化周波数fnは、周波数f=1/(2πTr)[Hz]を1[p.u.]として正規化し、正規化周波数fnを対数スケールで表している。また、縦軸のリアクタンス成分Xと漏れインダクタンスの影響を無視したときのリアクタンス成分X0は、周波数f=1/(2πTr)[Hz]のときのリアクタンス成分Xの値を1[p.u.]として正規化した。
図24に示すように、誘導電動機1の定格容量に関係なく、正規化周波数fn=1[p.u.]=1/(2πTr)[Hz]近傍を境界として、この正規化周波数fn=1よりも高い周波数帯域では、リアクタンス成分Xと漏れインダクタンスの影響を無視したときのリアクタンス成分X0との間に差異が現れる。すなわち、漏れ係数σの値がリアクタンス成分Xに対して影響することを示している。従って、リアクタンス成分Xが漏れインダクタンスσLの値に依存しない周波数帯域は、おおよそ周波数f=1/(2πTr)[Hz]以下の周波数帯域であることがわかる。
また、図24から明らかなように、周波数f=1[p.u.]=1/(2πTr)[Hz]近傍がリアクタンス成分Xの極大となっている。周波数f=1/(2πTr)[Hz]近傍でリアクタンス成分Xが極大になることを、数式を用いて以下に説明する。リアクタンス成分Xは周波数f、すなわち角周波数ωの関数である。ここで、上記式(38)で表されたリアクタンス成分Xの算出式の両辺を角周波数ωで微分すると、次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、σωTr≪1としている。dX/dω=0のとき、リアクタンス成分Xは極大となり、そのときの角周波数ωmaxは次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、3σ≪1としている。上記角周波数ωmaxの周波数fmaxは次式で表される。
Figure 2006008846
以上から、周波数f=1/(2πTr)[Hz]近傍でリアクタンス成分Xが極大となることが数式を用いて示された。
また、電流指令信号iuを基準とした電圧指令信号vuの直交位相成分の振幅Bが大きい程、インバータ2に起因する電圧誤差の影響を受けにくくなる。従って、周波数fを、上記Bが極大となるような周波数に設定すると、より高い精度で定数を測定することができる。本実施の形態において、インバータ2が誘導電動機1に給電する周波数f1,f2にかかわらず、電流指令信号iuの振幅I1,I2を一定値Iとする場合、電流指令信号iuを基準とした電圧指令信号vuの直交位相成分の振幅Bは、電流指令信号iuの振幅Iと周波数fに対応して変化するリアクタンス成分Xとの積となる。従って、上記振幅Bが極大となる周波数は、リアクタンス成分Xが極大となる周波数と一致する。すなわち、周波数fは1/(2πTr)[Hz]近傍で上記振幅Bも極大となる。
図25は実施の形態6において、定格容量が3.7kWである誘導電動機1におけるリアクタンス成分Xの測定誤差の正規化周波数fn特性を示すグラフである。すなわち、図25は、周波数fに対応したリアクタンス成分Xの誤差を、図23のステップS201乃至S204の方法で測定したときの試験結果である。図25において、横軸の正規化周波数fnは、周波数f=1/(2πTr)[Hz]を1[p.u.]として正規化したものである。図25に示すように、周波数fが1/(2πTr)[Hz]より高い周波数帯域において、リアクタンス成分Xの測定精度が劣化することを発見した。このことからも、周波数fは1/(2πTr)[Hz]より低い周波数帯域に設定する方がよい。以上のことから、ステップS202及びステップS205において、インバータ2が誘導電動機1に給電するときの周波数の上限は、周波数f=1/(2πTr)[Hz]となる。
さらに、本実施の形態においても、より高い精度で定数を測定できる周波数の下限値については、実施の形態1と同様に考えることができ、三角波比較型PWM変調法を用いてディジタル処理する場合は、上記式(19)により定義した電圧分解能Cを用いて考察できる。上述の図13から明らかなように、誘導電動機1の定格容量に関係なく、周波数fと上記振幅Bの関係はほぼ一致し、周波数fが0.006[Hz]以上ならば、電流指令信号iuを基準とした電圧指令信号vuの直交位相成分の振幅Bはインバータ2の電圧分解能Cより大きくなることがわかる。ここで、定数測定精度をさらに向上させるには、上記除算値B/Cが大きくなるように周波数fの下限を決定すればよい。例えば、除算値B/Cを5に設定するならば周波数を0.03[Hz]以上に設定し、除算値B/Cを10以上に設定するならば周波数を0.06[Hz]以上に設定することが好ましい。
図26は実施の形態6において、定格容量が3.7kW、11kW及び22kWである誘導電動機1におけるリアクタンス成分Xの正規化周波数fn特性を示すグラフである。すなわち、図26においては、図5と同様に、定格容量が3.7kW、11kW及び22kWである誘導電動機1について、上記式(38)を用いて計算されるリアクタンス成分Xを正規化周波数fnに対してプロットしたものである。なお、図26において、図5と同様に、横軸の正規化周波数fnは、周波数f=1/(2πTr)[Hz]を1[p.u.]として正規化したものである。また、縦軸のリアクタンス成分Xは、周波数f=1/(2πTr)[Hz]のときのリアクタンス成分Xの値を1[p.u.]として正規化した正規化されたリアクタンス成分である。
図26に示すように、誘導電動機1の定格容量に関係なく、正規化周波数fn=0.2[p.u.]=0.2/(2πTr)[Hz]を境界として、この周波数より低い周波数帯域のリアクタンス成分Xは周波数fと比例関係となる。これは上記式(38)のリアクタンス成分Xの計算式において、周波数fすなわち角周波数ωが非常に低いことから、σωTr≪1であり、また、ωTr≪1であるため、上記式(38)のリアクタンス成分Xの計算式を次式で近似できるからである。
X≒ωL (59)
従って、上記式(59)の近似が成立する周波数帯域で、2種類の角周波数ω1,ω2に対応したリアクタンス成分X1,X2をそれぞれ測定すると、リアクタンス成分X1,X2において次式の近似が満たされる。
X1≒ω1・L (60)
X2≒ω2・L (61)
上記式(60)及び式(61)の近似が満たされると、上記式(44)における(ω2X1−ω1X2)の値が非常に小さくなり、ゼロに近づく。一方、上記式(44)における(ω2X1−ω1X2)の値を0に比較して十分に大きくするためには、周波数f1とf2を周波数0.2/(2πTr)[Hz]以上の周波数帯域に設定する。このようにすれば、(ω2X1−ω1X2)の値が0に比較して十分に大きくなり、2次時定数Trをより高い精度で測定できる。以上から、より高い精度で2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrを測定するためには、2次時定数Trの値に基づいてインバータ2が誘導電動機1に給電する周波数f1,f2を決定すればよいことがわかった。
しかしながら、本実施の形態で示した誘導電動機の定数測定装置においては、2次時定数Trを求めることが目的であるため、周波数f1の1回目の交流給電を実行するステップS102の段階では、2次時定数Trの値は未知である。そこで、定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機を対象に周波数1/(2πTr)の値を測定したところ、図27の結果を得た。図27は実施の形態6において、定格容量が1.5kWから55kWまでである誘導電動機1における定格容量に対する周波数1/(2πTr)の特性を示すグラフである。
図27から明らかなように、定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機について、1/(2πTr)の周波数帯域は、0.24Hz以上で1.5Hz以下であることがわかる。また、定格容量が1.5kWから45kWまでの誘導電動機について、1/(2πTr)の周波数帯域は、0.3Hz以上で1.5Hz以下であることがわかる。さらに、例えば、エレベータに用いられる誘導電動機1は、定格容量3kW以上が主流である。定格容量3kWの誘導電動機1の周波数1/(2πTr)は概ね1.2Hzである。さらに、定格容量が1.5kWから45kWまでの誘導電動機について、0.2/(2πTr)の周波数帯域は、0.06Hz以上で0.3Hz以下であることがわかる。
インバータ2の電圧分解能Cで決定される周波数fの下限が0.006Hzであることを考慮し、図23のステップS202において交流給電される交流電力の周波数f1と、ステップS205において交流給電される交流電力の周波数f2を、0.006Hz以上で1.5Hz以下の周波数範囲内に設定することにより、少なくとも定格容量1.5kWから55kWまでの誘導電動機1について、周波数f1,f2にそれぞれ対応したリアクタンス成分X1,X2をより高い精度で測定できる。その結果、少なくとも定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機1の2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrを、より高い精度で測定できるという特有の効果が得られる。
また、インバータ2の電圧分解能Cと電流指令信号iuを基準とした電圧指令信号vuの直交位相成分の振幅Bの比である除算値B/Cが10以上となる周波数fの下限は0.06Hzである。定格容量が45kWの誘導電動機1の0.2/(2πTr)も0.06Hzである。このことを考慮し、図23のステップS202において交流給電される交流電力の周波数f1と、ステップS205において交流給電される交流電力の周波数f2を、0.06Hz以上で1.5Hz以下の周波数範囲内に設定することにより、少なくとも定格容量1.5kWから45kWまでの誘導電動機1について、周波数f1,f2にそれぞれ対応したリアクタンス成分X1,X2をより高い精度で測定できる。その結果、少なくとも定格容量が1.5kWから45kWまでの誘導電動機1の2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrをより高い精度で測定できるという特有の効果が得られる。
ここで、周波数fを0.06Hz以上に設定すると、インバータ2の電圧分解能Cに起因する影響を取り除く効果が得られると同時に、定格容量が少なくとも1.5kWから45kWまでの誘導電動機1において、上記式(44)の(ω2X1−ω1X2)の値を1に比較して十分に大きくし、誤差を少なくする効果も得られる。
さらに、図23のステップS202において交流給電される交流電力の周波数f1と、ステップS205において単相交流給電される交流電力の周波数f2を、0.06Hz以上で1.2Hz以下の周波数範囲内に設定することにより、少なくともエレベータに用いられる誘導電動機1について周波数f1,f2にそれぞれ対応したリアクタンス成分X1,X2をより高い精度で測定できる。その結果、少なくともエレベータに用いられる誘導電動機1の2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrをより高い精度で測定できるという特有の効果が得られる。
以上から、インバータ2の電圧分解能Cに起因する影響と、誘導電動機1の漏れインダクタンスlに起因する影響を除くことを目的とし、インバータ2は、0.006Hz以上で1.5Hz以下の周波数範囲で交流電力を誘導電動機1に供給する。この交流電力の給電を少なくとも2種類の電力で行うことにより、誘導電動機1が負荷設備に接続されている場合でも、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trをより高い精度で測定することができる。
次いで、2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrを求めるときに、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1と周波数f2に対応したリアクタンス成分X2から求めることの利点を、インバータ2で発生する電圧誤差の点から以下に説明する。
電圧指令信号vuとインバータ2が誘導電動機1に印加する電圧vuとの間には、インバータ2の内部のデッドタイム電圧に起因する電圧誤差が発生する。また、インバータ2の内部の素子がオン状態のときに発生する電力損失により、オン電圧と称されるスイッチング素子での電圧降下が発生し、電圧誤差の原因となる。しかしながら、本実施の形態においては、上記の電圧誤差は直列合成インピーダンスZの抵抗成分Rのみに影響を及ぼし、リアクタンス成分Xには影響を及ぼさない。
図28は、実施の形態6において、定格容量が3.7kWの誘導電動機1の周波数0.18Hzに対応した直列合成インピーダンスZの抵抗成分Rとリアクタンス成分Xの測定誤差Rerr,Xerrを表したグラフである。ここで、リアクタンス成分Xを図23のステップS201乃至ステップS204の処理の方法を用いて測定した。インバータ2のデッドタイムに起因する電圧誤差とオン電圧に起因する電圧誤差に対して、電圧補正は行っていない。
抵抗成分Rは、図23のステップS203において、電流指令の交流信号iu1を基準とした電圧指令信号vu1の直交位相成分の振幅B1の測定と並行して、相互相関関数を用いた次式を用いて計算できる。
Figure 2006008846
ここで、Iは電流振幅値であり、v1は電圧指令である。また、T1は予め設定された積分期間であり、上記式(50)における積分期間T1と同様に設定される。さらに、図28において、縦軸の抵抗成分Rの測定誤差Rerrとリアクタンス成分Xの測定誤差Xerrは次式のように定義される。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
ここで、Rbaseは抵抗成分Rの理論値であり、Xbaseはリアクタンス成分Xの理論値である。また、Rmは抵抗成分Rの測定値であり、Xmはリアクタンス成分Xの測定値である。上記理論値Rbase、Xbaseは、既知である定格容量3.7kwの誘導電動機1の1次抵抗Rs、1次インダクタンスL、2次抵抗Rr、2次時定数Trの真値を上記式(37)及び式(38)に代入して計算された値である。図28から明らかなように、インバータ2の内部のデッドタイム電圧とスイッチング素子のオン電圧に起因する電圧誤差の影響は、抵抗成分Rには測定誤差として現れるが、リアクタンス成分Xには影響しないことがわかった。
従って、2種類の周波数に対応した誘導電動機1の等価回路の直列合成インピーダンスのリアクタンス成分Xを、2種類の周波数の単相交流電力を時分割で給電して計算することによって、インバータ2の内部のデッドタイム電圧とスイッチング素子のオン電圧に起因する誤差に影響されることなく、1次インダクタンスと2次抵抗と2次時定数をより高い精度で測定することができる。
また、本実施の形態において、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trを求めるプロセスにおいて、1次抵抗Rsの値が不要である。すなわち、1次抵抗Rsの測定を省略することができる。とって代わって、1次抵抗Rsを別途測定した場合でも、1次抵抗Rsの測定誤差が、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trの精度に影響を及ぼさないという効果が得られる。
以上から、定数算出コントローラ5Aは、少なくとも2種類の周波数に対応した誘導電動機1の等価回路の直列合成インピーダンスのリアクタンス成分Xを計算する。インバータ2の内部のデッドタイム電圧とスイッチング素子のオン電圧に起因する誤差は、誘導電動機1の等価回路の直列合成インピーダンスの抵抗成分Rに現れる。この計算を行うことにより、1次抵抗誤差と上記インバータ2の内部のデッドタイム電圧とスイッチング素子のオン電圧に起因する誤差に影響されることなく、誘導電動機1が負荷設備に接続されている場合でも、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trをより高い精度で測定することができる。
また、インバータ2が上記周波数範囲の交流電力を2回給電することによって、電流振幅I1とI2、周波数f1とf2の値を所望の値に設定でき、誘導電動機1が負荷設備に接続されている場合でも、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trをより高い精度で測定することができる。
実施の形態6の変形例.
上記の実施の形態6においては、2種類の周波数fに対応した誘導電動機1の等価回路の直列合成インピーダンスのリアクタンス成分Xから誘導電動機1の定数を計算したが、本発明はこれに限らず、3種類以上の周波数fに対応した誘導電動機1の等価回路の直列合成インピーダンスのリアクタンス成分Xから誘導電動機1の定数を計算してもよい(以下、実施の形態6の変形例という。)。
例えば、周波数f1,f2に対応したリアクタンス成分X1,X2以外に、周波数f1,f2とは異なる周波数f3に対応したリアクタンス成分X3を、上記リアクタンス成分X1,X2を測定した方法と同様に測定する。すなわち、周波数fとリアクタンス成分Xの組合せとして、3組(f1,X1),(f2,X2),(f3,X3)測定できる。これらの組合せのうち、任意の2組を用いて、上記式(44)乃至式(46)から、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trを算出し、その結果を1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trの測定値とする。
3種類の周波数に対応したリアクタンス成分を測定する場合は、(f1,X1)(f2,X2)(f3,X3)の3組のうち2組を選択する方法は3通りある。従って、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trの組を最大3組を測定することができ、得られた最大3個の定数L,Rr,Trに関して、各定数毎に平均値を計算し、上記計算された平均値を上記定数L,Rr,Trの測定値としてもよい。このように、上記測定された複数個の定数L,Rr,Trに関して、各定数毎に平均値を計算することにより、さらに定数の測定精度をさらに向上させることができる。
さらに、4種類以上の周波数に対応したリアクタンス成分を測定する場合も、3種類の周波数に対応したリアクタンス成分を計算した方法と同様の方法で、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trを計算できる。
実施の形態7.
上記実施の形態6では、図23のステップS202及びS205の2回交流の給電を実行し、ステップS203及びS206において、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1と、周波数f2に対応したリアクタンス成分X2とからそれぞれ計算していた。本発明はこれに限らず、周波数f1,f2の2種類の成分を重畳した電力を給電し、1回の交流給電で2個のリアクタンス成分X1,X2を以下のように計算してもよい(以下、実施の形態7という。)。
図20の信号源10は、電流指令信号iuとして周波数f1の交流信号と、周波数f2の交流信号を重畳してなる、次式で表される重畳交流信号iu3を発生して出力すると、周波数f1,f2の2種類の成分を重畳した交流電力をインバータ2によって誘導電動機1に給電することができる。
iu3
=I01cos(2πf1t)+I02cos(2πf2t) (65)
ここで、I01は周波数f1成分の電流振幅であり、I02は周波数f2成分の電流振幅である。
図29は本発明の実施の形態7に係る誘導電動機の定数測定処理を示すフローチャートである。実施の形態7に係る誘導電動機の定数測定処理について図29を参照して以下に説明する。
図29のステップS301において、図23のステップ201と同様に漏れインダクタンスσLを測定し又は推定する。次いで、ステップS302において、2種類の周波数f1,f2の成分を重畳した交流信号の給電を開始する。このとき、信号源10は電流指令信号iuとして、上記式(65)で表された重畳交流信号iu3を発生して減算器11及び定数算出コントローラ5Aに出力する。減算器11は、電流指令信号iu(=iu3)と、電流検出器3で検出された電流iuとの電流偏差Δiを演算し、演算された電流偏差Δiを示す信号を偏差増幅器12に出力する。これに応答して、偏差増幅器12は、上記式(47)を用いて電圧指令信号vuを演算して、電圧指令信号vuを発生してインバータ2に出力する。電流検出器3により検出される電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御されて、インバータ2は交流電圧vu及びvvを発生して誘導電動機1に印加する。
次いで、ステップS303において、定数算出コントローラ5Aは周波数f1に対応したリアクタンス成分X1を算出して測定する。また、ステップS304において、定数算出コントローラ5Aは周波数f2に対応したリアクタンス成分X2を算出して測定する。ここで、ステップS303及びS304においてリアクタンス成分X1,X2を測定するための測定原理について以下に説明する。
図29のステップS302において、上記式(65)を用いて計算された電流指令信号iu3を電流指令信号iuとして印加したときにおける、インバータ2の電圧指令信号vuと誘導電動機1の端子電圧vuをそれぞれvu3、vu3とする。電圧指令信号vu3と誘導電動機1の端子電圧vu3が実質的に一致するように制御されたとき、電流指令信号iu3を基準とした、電圧指令信号vu3の周波数f1に対応した直交位相成分の振幅B01は、相互相関関数を用いて次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、T01は予め設定された積分時間である。また、上記式(66)において、上記積分時間T01を周期1/f1の整数倍に設定してもよい。同様に、交流信号iu3を基準とした、電圧指令信号vu3の周波数f2に対応した直交位相成分の振幅B02は次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、T02は予め設定された積分時間である。なお、上記式(67)において、上記積分時間T02を周期1/f2の整数倍に設定してもよい。従って、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1と、周波数f1に対応したリアクタンス成分X2はそれぞれ次式により計算される。
X1=B01÷I01 (68)
X2=B02÷I02 (69)
図29のフローチャートに戻り、ステップS305において交流給電を終了する。そして、ステップS306において、ステップS303とS304において測定された、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1と、周波数f2に対応したリアクタンス成分X2とに基づいて、上記式(44)乃至式(46)を用いて、2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrとを計算する。当該ステップS306の処理を実行した後、当該誘導電動機の定数測定処理を終了する。
当該実施の形態7においても、実施の形態6と同様に、電流指令信号iuではなく、電流検出器3で検出される電流iuを基準としたときの電圧の直交位相成分を計算して、それらの振幅値をそれぞれB01、B02をしてもよい。
実施の形態7においては、交流の給電を少なくとも1回実施すれば良いので、実施の形態6と比較して短時間で誘導電動機1の定数を測定することができる。
以上より、インバータ2の電圧分解能に起因する影響と、誘導電動機1の漏れインダクタンスに起因する影響を除くことを目的とし、インバータ2は、少なくとも2つの種類の周波数成分を有する重畳交流電力を誘導電動機1に供給する。この重畳交流給電を行うことにより、インバータ2の電圧分解能Cで決定される周波数fの下限が0.006Hzであることを考慮し、図29のステップS302において重畳する電力の周波数f1とf2を、0.006Hz以上で1.5Hz以下の周波数範囲内に設定することにより、少なくとも定格容量1.5kWから55kWまでの誘導電動機1について、周波数f1,f2にそれぞれ対応したリアクタンス成分X1,X2をより高い精度で測定できる。その結果、少なくとも定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機1の2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrを、短時間でより高い精度で測定できる。
また、インバータ2の電圧分解能Cと電流指令信号iuを基準とした電圧指令信号vuの直交位相成分の振幅Bの比である除算値B/Cが10以上となる周波数fの下限が0.06Hzである。定格容量が45kWである誘導電動機の周波数0.2/(2πTr)も0.06Hzである。このことを考慮し、図29のステップS302において重畳する交流電力の周波数f1とf2を、0.06Hz以上で1.5Hz以下の周波数範囲内に設定することにより、少なくとも定格容量1.5kWから45kWまでの誘導電動機1について、周波数f1,f2にそれぞれ対応したリアクタンス成分X1,X2をより高い精度で測定できる。その結果、少なくとも定格容量が1.5kWから45kWまでの誘導電動機1の2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrを、短時間でより高い精度で測定できる。
またさらに、ステップ203で重畳する電力の周波数f1とf2を、0.06Hz以上で1.2Hz以下の範囲内にすることにより、少なくともエレベータに用いられる誘導電動機1について周波数f1,f2に対応したリアクタンス成分X1,X2をより高い精度で測定できる。その結果、少なくともエレベータに用いられる回転機の2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrを、短時間でより高い精度で測定できる。
さらに、2つの種類の0.006Hz以上で1.5Hz以下の周波数成分を有する交流電力を重畳し、少なくとも1回給電することによって、電流振幅I01とI02、周波数f1とf2の値を所望の値に設定でき、測定精度をさらに向上させることができる。
実施の形態8.
上記実施の形態6では、図23のステップS202及びステップS205において、信号源10から出力される電流指令信号iuに基づいて、誘導電動機1の電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御されて、インバータ2は対応した交流電力を誘導電動機1に給電する。本発明はこれに限らず、電流指令信号iuではなく、電圧指令信号vuに基づいて、インバータ2によって交流電力を誘導電動機1に給電し、電圧指令信号vuと電流検出器3で検出される電流iuとの関係から、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1と周波数f2に対応したリアクタンス成分X2を計算してもよい(以下、実施の形態8という。)。
図30は本発明の実施の形態8に係る誘導電動機の定数測定装置の構成を示すブロック図である。図30において、誘導電動機1とインバータ2と電流検出器3は、図20に示す実施の形態6に係る誘導電動機の定数測定装置のそれらと同様である。本実施の形態においても単相給電時の一例について以下に説明する。
装置コントローラ4Bは例えばディジタル計算機により構成され、信号源8Aと符号反転器13とを備えて構成される。装置コントローラ4Bにおいて、信号源8Aは電圧指令信号vuを発生してインバータ2と定数算出コントローラ5Bと符号反転器13とに出力する。符号反転器13は、入力される電流指令信号vuを−1倍することにより符号反転後の電流指令vvを演算してインバータ2に出力する。従って、装置コントローラ4Bは誘導電動機1へ印加すべき電圧vu及びvwを演算してインバータ2に出力する。また、定数算出コントローラ5Bは例えばディジタル計算機により構成され、誘導電動機1に単相給電したときの信号源8Aからの電圧指令信号vuと、電流検出器3で検出された電流iuとの関係から誘導電動機1の定数を算出して出力する。
図31は図30の定数測定装置により実行される誘導電動機の定数測定処理を示すフローチャートである。当該誘導電動機の定数測定処理について図31を参照して以下に説明する。
図31において、まず、ステップS401において図23のステップS201と同様に漏れインダクタンスσLを測定し又は推定する。次いで、ステップS402において、周波数f1の交流給電を開始する。このとき、信号源7は電圧指令信号vuとして周波数f1の交流信号vuaを発生して出力し、交流信号vuaに従って、インバータ2は交流電圧vu及びvvを誘導電動機1に印加する。そして、ステップS403において、ステップS402の交流給電により、電流検出器3で検出される誘導電動機1の電流iuaから、振幅Iaを測定する。さらに、ステップS404において、定数算出コントローラ5Bは周波数f1に対応したリアクタンス成分X1を算出して測定する。以下に、ステップS404においてリアクタンス成分X1を測定する測定原理について説明する。
図31のステップS402において、電圧指令信号vuとして、次式で表された振幅Va及び周波数f1を有する交流信号vuaを印加したと仮定する。
vua=Vacos(2πf1t) (70)
このときの誘導電動機1の電流をiuaとすると、電流iuaを基準とした電圧指令信号vuaの直交位相成分の振幅Baは、相互相関関数を用いた次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、Taは予め設定された積分時間である。上記式(71)において、上記積分時間Taを交流信号vuaの周期の整数倍に設定してもよい。上記電流iuaの振幅Iaを図31のステップS403において測定し、上記式(71)を用いて上記電流iuaを基準としたときの電圧の直交位相成Baを計算できることから、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1を次式を用いて計算できる。
X1=Ba÷Ia (72)
図31のフローチャートに戻り、ステップS405において周波数f1の交流給電を終了する。次いで、ステップS406において、ステップS402の処理と同様の方法を用いて、周波数f2の交流給電を実行する。このとき、信号源8Aは電圧指令信号vuとして周波数f2の交流信号vubを発生してインバータ2と符号反転器13と定数算出コントローラ5Bとに出力する。これに応答して、交流信号vubに従って、インバータ2は交流電圧vu及びvvを誘導電動機1に印加する。そして、ステップS407において、ステップS406の交流給電により、電流検出器3で検出される誘導電動機1の電流iubから、振幅Ibを測定する。さらに、ステップS408において、定数算出コントローラ5Bは、周波数f2に対応したリアクタンス成分X2を以下のように算出して測定する。ステップS406において、電圧指令信号vuとして、次式で表された、振幅Vb及び周波数f2を有する電圧指令信号vubを印加したと仮定する。
vub=Vbcos(2πf2t) (73)
このときの誘導電動機1の電流をiubとすると、電流iubを基準とした交流信号vubの直交位相成分の振幅Bbは、相互相関関数を用いた次式で得られる。
Figure 2006008846
ここで、Tbは予め設定された積分時間である。上記式(74)において、上記積分時間Tbを交流信号vubの周期の整数倍に設定してもよい。上記電流iubの振幅IbをステップS407で測定し、上記式(74)を用いて電流iubを基準としたときの電圧の直交位相成Bbを計算できることから、周波数f2に対応したリアクタンス成分X2を次式を用いて計算できる。
X2=Bb÷Ib (75)
図31のフローチャートに戻り、ステップS409において周波数f2の交流給電を終了する。次いで、ステップS410において、上記ステップS404及びステップS408においてそれぞれ測定された、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1と、周波数f2に対応したリアクタンス成分X2を用いて、上記式(44)乃至式(46)を用いて、2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrとを計算する。ステップ410の処理が終了した後、当該誘導電動機の定数測定処理を終了する。
実施の形態8においては、実施の形態6で必要な偏差増幅器12が不要となり、誘導電動機の定数測定装置の構成を簡単化できる。また、実施の形態6との相違点は、電流指令信号iuではなく、電圧指令信号vuに基づいて、実施の形態6で示した周波数範囲で、インバータ2によって誘導電動機1に給電する点であることから、実施の形態6と同様の作用効果も得られる。
実施の形態9.
上述の実施の形態6乃至8では、インバータ2は誘導電動機1に単相給電するために1相を開放したが、本発明はこれに限らず、誘導電動機1に回転磁界が発生しなければ良く、例えば、1相を開放せずに、U相電圧指令信号vuとともに、上記式(34)及び式(35)で表される、V相電圧指令信号vu、W相電圧指令信号vwを計算してインバータ2に印加してもよい(以下、実施の形態9という。)。
図32は本発明の実施の形態9に係る誘導電動機の定数測定装置の構成を示すブロック図である。図32に図示された実施の形態9に係る誘導電動機の定数測定装置は、図20に図示された実施の形態6に係る誘導電動機の定数測定装置に比較して、以下の点が異なる。
(1)装置コントローラ4Aに代わる装置コントローラ4Cにおいて、偏差増幅器12からの電圧指令信号vuを−1倍して電圧指令信号vvを演算してインバータ2に出力する符号反転器13の代えて、電流指令信号vuを−1/2倍して電流指令信号vvを演算してインバータ2に出力する乗算器13aと、電流指令信号vuを−1/2倍して電流指令信号vwを演算してインバータ2に出力する乗算器13bとを備えたこと。
(2)誘導電動機1とインバータ2との間を3相で結線したこと。
以上のように構成された実施の形態9においては、上記式(34)及び式(35)で表される、V相電圧指令信号vu、W相電圧指令信号vwを計算してインバータ2に印加することにより、誘導電動機1に単相給電を行うことができ、定数算出コントローラ5Cは電流指令信号iuと電圧指令信号vuとに基づいて誘導電動機1の電気的定数を計算する。その結果、インバータ2から誘導電動機1へ接続している結線の1相を開放する作業を省略できる。
実施の形態10.
上記実施の形態6において、図23のステップS202及びステップS205で設定する電流指令信号iuの振幅I1、I2に関する設定指針が示されていなかった。誘導電動機1の1次インダクタンスLの値は、電流振幅に依存して変化し、定格励磁電流(無負荷電流)の振幅における1次インダクタンスLの値を用いて、誘導電動機1をベクトル制御することが望ましいとされている。従って、定格励磁電流(無負荷電流)の振幅を上記振幅I1、I2の設定値としてもよい。例えば、定格励磁電流の振幅の概数値I0を、誘導電動機1の銘板から次式を用いて計算し、上記計算された定格励磁電流の振幅の概数値I0を上記振幅I1、I2の設定値としてもよい(以下、実施の形態10という。)。
Figure 2006008846
ただし、P100は誘導電動機1の定格容量(定格電力)であり、I100はその定格電流であり、V100はその定格電圧であり、F100はその定格周波数であり、N100はその定格回転数であり、Pmはその極対数である。これらの値は誘導電動機1の銘板に記載されている。また、上記式(76)において、H1、H2、H3、H4は予め決められた定数であって、様々な誘導電動機1の銘板から経験的に得られた値である。
以上のように構成された実施の形態10によれば、電流指令信号iuの振幅I1、I2を定格励磁電流の相当値に設定することにより、誘導電動機1をベクトル制御する際に最適な、定格励磁電流の振幅における1次インダクタンスLを測定することができる。また、上記式(76)を用いて電流指令信号iuの振幅I1、I2を計算することにより、定格励磁電流の振幅を推定できるという特有の効果を有する。
実施の形態11.
上記実施の形態10において、図23のステップS202及びステップS205において設定する電流指令信号iuの振幅I1、I2を定格励磁電流の振幅概数値とした。このとき、図21に図示された相互インダクタンスMに対応する励磁回路に、定格励磁電流が流れるように電流指令信号iuを設定すれば、さらに高い精度で1次インダクタンスを計算することができる。しかしながら、誘導電動機1の電流iuは、励磁回路と2次回路に分流し、電流指令信号iuの振幅I1、I2を同一の定格励磁電流I0に設定した場合、励磁回路に流れる電流の振幅はI0より小さくなる。また、励磁回路のインピーダンスは周波数fに依存して変化するため、図23のステップS202及びステップS205においてそれぞれ設定する周波数f1とf2に関係なく電流指令信号iuの振幅I1、I2を一定とすると、図23のステップS202及びステップS205において、励磁回路に流れる電流の振幅が異なるようになる。そこで、図23のステップS202及びステップS205で設定される電流指令信号iuの振幅Iを、次式の電流I00で与え、周波数fに依存して振幅Iを可変にしてもよい(以下、実施の形態11という。)。
Figure 2006008846
上記式(77)において、電流指令信号iuの振幅IをI00で与える理由を以下に説明する。図21に示す誘導電動機1の停止時のT型等価回路において、漏れインダクタンスlを無視したときに、誘導電動機1の電流iuの振幅をI0とし、周波数をfとした場合、励磁回路に流れる電流の振幅Imは次式で近似される。
Figure 2006008846
従って、上記式(77)で電流指令信号iuの振幅Iを与えると、励磁回路に流れる電流の振幅がI0となる。ただし、上記式(77)で電流指令信号iuの振幅Iを設定するためには、2次時定数Trの値が必要となる。しかしながら、本実施の形態に係る誘導電動機の定数測定装置においては、2次時定数Trを求めることが目的であるため、1回目の交流給電を実施する図23のステップS202の段階では、2次時定数Trの値は未知である。そこで、設計値や概算値を利用して2次時定数Trの概数値を得る。得られた2次時定数Trの概数値を用いて、周波数f1,f2を設定してもよい。従って、上記式(77)を用いて電流指令信号iuの振幅Iを決定することにより、定格励磁電流の振幅における1次インダクタンスLの測定精度をさらに向上できる。
実施の形態12.
上記実施の形態6では、図23のステップS202及びステップS205において、信号源10は電流指令信号(交流信号)iuを出力し、ここで、ステップS202では周波数f1の電流指令信号iuを出力し、ステップS205では周波数f2であって平均値0Aの電流指令信号iuを出力していた。本発明はこれに限らず、次式に示す直流成分と交流成分とを加算した電流指令信号iu1,iu2を出力するようにしてもよく、これにより、上記式(50)及び式(53)の演算では直流成分は除去される。従って、信号源10は、上記式(49)及び式(52)の代わりに、次式に示す直流成分と交流成分とを加算した信号を出力するようにしてもよい(以下、実施の形態12という。)。
iu1=I001{Kdc1+cos(2πf1t)} (79)
iu2=I002{Kdc2+cos(2πf2t)} (80)
ここで、I001とI002は交流電流成分の振幅であり、Kdc1とKdc2は任意の直流成分である。直流成分Kdc1及びKdc2を1以上に設定し、もしくは−1以下に設定すれば、電流指令信号iu1及びiu2の符号は時刻tにかかわらず常に同一となる。また、電流I001とI002は同一の値でも、実施の形態11に示した方法に基いて互いに異なる値に設定してもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、電流指令信号iu1及びiu2の符号が時刻tにかかわらず常に同一となるように設定した上で、信号源10が上記式(79)及び式(80)を用いて計算された電流指令信号iu1及びiu2を出力することにより、デッドタイム電圧に起因する電圧誤差の影響を受けないという特有の効果が得られる。
実施の形態13.
上記実施の形態6では、図23のステップS202及びステップS205において、信号源10は電流指令信号iuを出力し、ここで、ステップS202では周波数f1、ステップ205では周波数f2の正弦波交流信号を出力していた。本発明はこれに限らず、正弦波交流信号ではなく矩形波交流信号を出力するようにしても、出力する矩形波基本波成分の振幅と位相を特定できれば、上記実施の形態6と同様の方法で1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trを測定することができる。従って、電流指令信号iuを正弦波信号ではなく矩形波信号にしてもよい(以下、実施の形態13という。)。これは、矩形波が基本波成分と基本波成分の整数倍の周波数を有する正弦波の重ね合わせの信号波であり、基準となる正弦波信号が得られれば、上記式(50)及び式(53)の演算では基本波成分以外の高調波成分を除去することができるためである。
次いで、電流指令信号iuが矩形波信号のときの周波数fに対応したリアクタンス成分Xを測定する測定原理について以下に説明する。
図20の信号源10は電流指令信号iuとして、上記式(81)で表される振幅Isq及び周期1/fを有する矩形波信号iusqを減算器11及び定数算出コントローラ5Aに出力し、図20のインバータ2と電流検出器3と装置コントローラ4Aとからなるループ制御回路では、誘導電動機1の電流iusqが電流指令信号iusqに実質的に一致するように制御されている。ただし、上記式(81)は1周期分を表し、2周期目以降は上記式(81)を繰り返し用いて演算する。
Figure 2006008846
ここで、上記電流指令信号iusqの基本波成分iubaseは次式で与えられる。
Figure 2006008846
このとき、インバータ2への電圧指令信号vuと誘導電動機1の端子電圧vuをそれぞれvusq、vusqとする。電圧指令信号vusqと誘導電動機1の端子電圧vusqが実質的に一致するように制御されていると仮定すると、上記電流指令信号iusqの基本波成分iubaseを基準とした電圧指令信号vusqの周波数fに関する直交位相成分の振幅Bsqは、相互相関関数を用いた次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、Tsqは予め設定された積分時間である。上記式(83)において、積分時間Tsqを周期1/fの整数倍に設定してもよい。また、上記式(83)では、電圧指令信号vusqの周波数f成分以外の高調波成分は除去される。従って、周波数fに対応したリアクタンス成分Xを次式を用いて計算できる。
Figure 2006008846
図33は本発明の実施の形態13に係る誘導電動機の定数測定装置における指令信号を示す図であって、図33(a)は電流指令信号iuが矩形波のときの電流指令信号iusq及びその基本波成分iubaseを示す波形図であり、図33(b)はそのときの電圧指令信号vusqを示す波形図である。上述したように、電流指令信号iuが正弦波信号ではなく矩形波信号の場合でも、周波数fに対応するリアクタンス成分Xを計算できる。従って、リアクタンス成分Xを少なくとも2種類の周波数について測定することにより、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trを測定することができる。電流指令信号iuを矩形波信号で与えた場合でも、矩形波信号が基本波成分と基本波成分の整数倍の周波数を有する正弦波の重ね合わせの信号であることから、電流指令信号iuが正弦波信号であるときと同様の効果が得られる。
実施の形態14.
上述の各実施の形態においては、電流の正負が反転するタイミングで、インバータ2の内部のデッドタイム電圧とスイッチング素子のオン電圧に起因する電圧誤差の正負も反転し、電流ゼロクロス付近の電圧指令信号vuと誘導電動機1の端子電圧vuに誤差が生じる。上記の事情を鑑み、電流指令信号iuを基準とした電圧指令信号vuの直交位相成分の振幅Bを計算するとき(例えば、図23のステップS203の式(50)を用いて振幅Bを計算するとき)の設定積分区間から、電流ゼロクロス近傍を除外して、上記振幅Bを求める方法を用いてもよい(以下、実施の形態14という。)。次いで、以下に、本実施の形態の方法について説明する。
図20の信号源10が電流指令信号iuとして、次式で示される振幅Ic及び周波数fを有する交流電流信号iucを減算器11及び定数算出コントローラ5Aに出力し、インバータ2と電流検出器3と装置コントローラ4Aとからなるループ制御回路において、誘導電動機1の電流iucが電流指令信号iucに実質的に一致するように制御されていると仮定する。
iuc=Iccos(2πft) (85)
このときのインバータ2の電圧指令信号vuと誘導電動機1の端子電圧vuをそれぞれvuc、vucとする。電圧指令信号vucと誘導電動機1の端子電圧vucは実質的に一致するように制御されていると仮定する。ただし、交流信号iucを基準とした電圧指令信号vucの直交位相成分の振幅Bcを、相互相関関数を用いて求めるとき、電流指令信号iucが振幅Icの±K%以下となる電流ゼロクロス近傍期間を積分範囲から除外する。すなわち、次式の演算を実施する。
Figure 2006008846
ここで、係数Kcは次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、Tcは予め設定された積分時間で、除外する積分範囲Tc0も含む。また、Tc0は積分時間Tcのうち除外する積分範囲(|cos(2πft)|<K/100となる時間期間)であり、電流がゼロになる時刻の近傍である電流ゼロクロス近傍期間である。ここで、上記式(86)において、上記積分時間Tcを交流信号iucの周期の整数倍に設定してもよい。全積分区間Tcのうち、除外する積分範囲Tc0が占める割合を求めると、その割合はK=5%ならば3.2%であり、K=10%ならば6.4%となる。
また、予め補正係数Jcを設定して、上記式(86)の代わりに次式を用いて上記振幅Bcを計算してもよい。
Figure 2006008846
従って、上記式(86)又は式(88)によって計算される上記振幅Bcを用いて、周波数fに対応したリアクタンス成分Xを次式を用いて計算できる。
X=Bc÷Ic (89)
図34は本発明の実施の形態14に係る誘導電動機の定数測定装置における指令信号及び信号を示す図であって、図34(a)は電流指令信号iucを示す波形図であり、図34(b)は信号Kc・cos(2πft)及び信号Kc・sin(2πft)を示す波形図であり、図34(c)は電圧指令信号vucを示す波形図である。本実施の形態では、少なくとも2種類の周波数に対応するリアクタンス成分Xを計算することにより、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trを計算することができる。電流指令信号iuを基準とした電圧指令信号vuの直交位相成分の振幅Bを計算するときに、積分区間から電流ゼロクロス近傍を除外することにより、インバータ2の内部のデッドタイム電圧とスイッチング素子のオン電圧に起因する電圧誤差の正負反転によって生じる悪影響を除き、より高い精度で1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trを計算することができる。
実施の形態15.
上記実施の形態6では、電流指令信号iuを正弦波交流信号で与え、上記実施の形態13では、電流指令信号iuを矩形波交流信号で与えていた。本発明はこれに限らず、電流指令信号iu又は誘導電動機1の電流と電圧指令信号vuに関して、少なくとも2種類の周波数f1とf2に対応した電流と電圧を計算し、それらの振幅と位相差が計算できるならば、電流指令信号iu又は電圧指令信号vuに与える入力信号は、周波数と振幅のうちの少なくとも一方が規則的に時間に対応して変化するAM変調波又はFM変調波などの変調波波形であってもよい(以下、実施の形態15という。)。
図35は本発明の実施の形態15に係る誘導電動機の定数測定装置における指令信号を示す図であって、図35(a)は振幅変調された電流指令信号iuの波形図であり、図35(b)は振幅変調された電圧指令ivの波形図である。また、図36は本発明の実施の形態15に係る誘導電動機の定数測定装置における指令信号を示す図であって、図36(a)は周波数変調された電流指令信号iuの波形図であり、図36(b)は周波数変調された電圧指令ivの波形図である。本実施の形態の方法について以下に説明する。
図20の信号源10が電流指令信号iuとして、任意の波形を有する信号iudを出力し、誘導電動機1の電流iudが電流指令信号iudに実質的に一致するように制御されていると仮定する。このときのインバータ2の電圧指令信号vuと誘導電動機1の端子電圧vuをそれぞれvud、vudとする。電圧指令信号vudと誘導電動機1の端子電圧vudは実質的に一致するように制御されていると仮定する。本実施の形態において、上記実施の形態8のように、電圧指令信号vuに基づいて、インバータ2によって誘導電動機1に給電する方法を用いてもよい。
本実施の形態において、振幅1である正弦波の位相Δに対する、電流指令信号iudの周波数fd成分の振幅Ifdは次式で表される。次式において、電流指令信号iudの代わりに誘導電動機1の電流iudを用いてもよい。
Figure 2006008846
ここで、Tfdは予め設定される積分時間であり、Δは予め設定される位相である。このとき、振幅1である正弦波の位相Δの直交位相に対する、電圧指令信号vudの周波数fd成分の振幅Vfdは次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、Δは上記式(90)と同じ値に設定される。従って、周波数fdに対応したリアクタンス成分Xは次式で計算される。
X=Vfd÷Ifd (92)
以上説明したように、本実施の形態においては、0.006Hz以上で1.5Hz以下の周波数範囲で、少なくとも2種類の周波数に対応するリアクタンス成分Xを計算することにより、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trを計算することができる。従って、本実施の形態によれば、電流指令信号iu又は電圧指令信号vuに与える入力信号の自由度が大きくなるという効果がある。
実施の形態16
以上の実施の形態においては、誘導電動機1の定数を測定するための装置について説明しているが、本発明はこれに限らず、以下に示すように、同期電動機に適用することができる(以下、実施の形態16という。)。
図37は本発明の実施の形態16に係る同期電動機の定数測定装置の測定原理を示すための同期電動機の1相(U相)分の等価回路の回路図である。また、図38は図37の等価回路において同期電動機が停止中であるときの等価回路の回路図である。
図37において、同期電動機の1相(U相)分の等価回路は、電機子抵抗Raと、電機子インダクタンスLaと、U相誘起電圧esuの電圧源との直列回路で表される。ここで、U相誘起電圧euaは同期電動機の回転角速度に比例する。従って、同期電動機が停止しているとき、U相誘起電圧はゼロとなり、図37のU相誘起電圧esuの電圧源は短絡状態となる。図38は停止状態の同期電動機の等価回路を示したものであり、U相誘起電圧esuの電圧源は短絡状態となっている。図38を、実施の形態6に係る図3と比較すると、図38の等価回路は、図3の等価回路における抵抗Rを電機子抵抗Raに置き換え、インダクタンスLを電機子インダクタンスLaに置き換えたものと等しい。従って、上述の各実施の形態に係る定数測定装置を用いて、同期電動機の定数を測定することができる。
実施の形態17.
以上の実施の形態においては、定数算出コントローラ5,5A,5Bは電圧情報として、装置コントローラ4,4A,4Bからの電圧指令信号を用いていた。本発明はこれに限らず、誘導電動機1の端子電圧を測定する電圧検出器を設け、装置コントローラ4,4A,4Bからの電圧指令信号を用いる代わりに、電圧検出器からの出力信号を上記電圧情報として用いてもよい(以下、実施の形態17という。)。この場合において、上述と同様の作用効果を得ることができる。
実施の形態18
以上の実施の形態においては、インバータ2は少なくとも1回、周波数0.2Hz以上1.5Hz以下の単相交流の給電を行うことにより、1次インダクタンス(又は相互インダクタンス)と2次抵抗をより高い測定精度で測定することができる。上記各実施の形態では定格励磁電流が必要となるが、誘導電動機1の銘板に記載された定格値が誤差を有する場合、上記実施の形態10に係る銘板値に基づいた定格励磁電流算出方法も測定値において誤差を有することになる。本実施の形態では、少なくとも2通りの電流振幅で、周波数0.2Hz以上1.5Hz以下の単相交流の給電を行うことにより、正確な定格励磁電流と相互インダクタンスを測定する。
図39は本発明の実施の形態18に係る誘導電動機の定数測定装置における単相交流給電の状態を示す図であって、図39(a)は単相給電する電流振幅を示す波形図であり、図39(b)は単相給電中の誘導電動機1のU相電流iusを示す波形図である。なお、図39(a)の単相給電する電流振幅は、銘板値に基づいた定格励磁電流で正規化したものである。図39において、期間Taでは、電流振幅指令信号を第1の振幅である0.7[p.u.]で与え単相給電したときの1次インダクタンス(又は相互インダクタンス)と2次抵抗を上述の各実施の形態に係る方法に従って測定する。次いで、期間Tbにおいて、電流振幅指令信号を第2の振幅である1.3[p.u.]で与え単相給電したときの1次インダクタンス(又は相互インダクタンス)と2次抵抗を上述の各実施の形態に係る方法に従って測定する。
図40は本発明の実施の形態18に係る誘導電動機の定数測定装置によって測定されたインダクタンスLs及び60Hzの電圧実効値の正規化電流振幅に対する特性を示すグラフである。図40から明らかなように、インダクタンス値は電流振幅が大きくなるにつれ、磁気飽和により小さくなる。一方、定格周波数F100[Hz]で運転中の無負荷電圧V0[V]は、1次インダクタンスLsと電流振幅Iを用いた次式で表される。
V0=2π×F100×Ls×I (93)
図39のように測定された電流振幅と1次インダクタンス(又は相互インダクタンス)の関係を上記式(93)のLs,Iに代入すると、2個の無負荷電圧V0が得られる。定格周波数F100=60Hzとしたときの無負荷電圧実効値V0を図40において●でプロットした。例えば、誘導電動機1の定格電圧が200Vであれば、図40の関係から定格励磁電流は1.07[p.u.]で、そのときのインダクタンスは0.065[H]であることがわかる。図40の関係からインダクタンスを測定することは、次式を用いて定格励磁電流振幅I100及びインダクタンス値Ls0を計算することに対応する。
I100
=(I1×V100−I2×V100+I2×V1−I1×V2)
÷(V1−V2) (94)
Ls0
=(I100×L1−I2×L1−I100×L2+I1×L2)
÷(I1−I2) (95)
ここで、Ls1は第1の電流振幅I1に対する第1のインダクタンスであり、Ls2は第2の電流振幅I2に対する第2のインダクタンスである。また、V100は誘導電動機1の定格電圧であり、さらに、電流振幅I1,I2にそれぞれ対応する電圧V1,V2は次式で表される。
V1=2π×F100×Ls1×I1 (96)
V2=2π×F100×Ls2×I2 (97)
また、2個の電流振幅I1,I2に基づいて2次抵抗Rrを測定し、その2回の測定結果の2次抵抗RrがRr1,Rr2であった場合、同様の次式を用いて2次抵抗値Rr0を再計算してもよい。
Rr0
=(I100×Rr1−I2×Rr1−I100×Rr2+I1×Rr2)
÷(I1−I2) (98)
ここで、Rr1は第1の電流振幅I1に対する第1の2次抵抗であり、Rr2は第2の電流振幅I2に対する第2の2次抵抗である。
以上説明したように、本実施の形態に係る誘導電動機の定数測定装置によれば、インバータ2が周波数0.006Hz以上1.5Hz以下の周波数範囲で少なくとも2個の電流振幅で単相交流給電を行うので、電流とインダクタンスの関係を計算できる。これによって、定格励磁電流値が不正確であっても、所望の周波数運転時に所望の電圧となる励磁電流値を計算できる。また、磁気飽和によってインダクタンス値が変化する誘導電動機1に対しても、上記所望の周波数運転時に所望の電圧となる励磁電流に対応するインダクタンスを計算できる。
実施の形態19.
上記実施の形態18においては、インバータ2が周波数0.006Hz以上1.5Hz以下の周波数範囲で少なくとも2個の電流振幅で単相交流の給電を行い、電流とインダクタンスの関係を計算している。本発明はこれに限らず、インバータ2が、周波数0.006Hz以上1.5Hz以下の周波数範囲で、少なくとも2個の周波数で単相交流の給電を行い、この単相交流給電は少なくとも2個の電流振幅で実施し、電流とインダクタンスの関係を計算してもよい。
図41は本発明の実施の形態19に係る誘導電動機の定数測定装置における単相交流給電の状態を示す図であって、図41(a)は単相給電する電流振幅を示す波形図であり、図41(b)は単相給電中の周波数を示す図であり、図41(c)は単相給電中の誘導電動機1のU相電流iusを示す波形図である。なお、図41(a)に図示された単相給電する電流振幅は、銘板値に基づいた定格励磁電流で正規化した値である。
図41において、期間Taでは、電流振幅指令信号を第1の周波数である0.5Hzでかつ第1の振幅I1である0.7[p.u.]で与える。次いで、期間Tbでは、電流振幅指令信号を第1の周波数である0.5Hzでかつ第2の振幅I2である1.3[p.u.]で与える。そして、期間Tcでは、電流振幅指令信号を第2の周波数である1.0Hzでかつ第2の振幅I2である1.3[p.u.]で与える。さらに、期間Tdでは、電流振幅指令信号を第2の周波数である1.0Hzでかつ第1の振幅I1である0.7[p.u.]で与える。ここで、期間Taと期間Tdの測定により、上述の実施の形態10に係る定数測定方法を用いて、第1のインダクタンスLs1と第1の2次抵抗Rr1を測定する。また、期間Tbと期間Tcの測定により、上述の実施の形態10に係る定数測定方法を用いて、第2のインダクタンスLs2と第2の2次抵抗Rr2を測定する。
以上説明したように、本実施の形態によれば、互いに異なる電流振幅で測定した2組の測定値(Ls1,Rr1);(Ls2,Rr2)に基づいて、上記実施の形態18に係る定数測定方法と同様の方法を用いて、定格励磁電流値が不正確であっても、所望の周波数運転時に所望の電圧となる励磁電流値I100とインダクタンス値Ls100をより正確に計算できる。すなわち、第1の振幅I1、第2の振幅I2、第1のインダクタンス値Ls1、第2のインダクタンス値Ls2を、実施の形態18に係る上記式(93)及び式(94)に代入することにより、定格励磁電流振幅I100とインダクタンスLs100を計算できる。なお、図41の時刻3〜4秒、6〜7秒、8〜9秒のように、周波数又は振幅をランプ的に変更したが、ステップ的に変更しても同様の効果が得られる。
実施の形態20.
以上の実施の形態においては、給電開始時刻t=0[sec]に波高値となる電流指令信号iuを与えていた。しかしながら、誘導電動機1において、電流の時定数より磁束の時定数が大きいため、より高い精度で定数を求めるには、給電開始から磁束が定常状態に達した後の電圧指令信号vuを用いてリアクタンス成分Xを求めるのがよい。
図42は、本発明の実施の形態20に係る、給電開始時刻t=0[sec]に波高値となる0.255[Hz]の電流指令信号iuを与えたときの波形図であって、図42(a)はそのときの誘導電動機の3相電圧vu,vv,vwの波形図であり、図42(b)はそのときの誘導電動機の3相電流iu,iv,iwの波形図であり、図42(c)はそのときの誘導電動機の2次磁束φurを示す波形図である。図42は、図32の回路構成を用いて実施した結果を示す。図42において、給電開始直後の2次磁束φurは正弦波の形状、すなわち定常状態になっていない。磁束が定常状態に達してからリアクタンス成分Xの算出を実施してもよいが、給電開始から磁束が定常状態に達するまで、無駄時間となり、測定時間が長くなる問題がある。
そこで、本実施形態では、上記の問題点を解決するために、給電直後に2次磁束φurが定常状態になるような電流iuを誘導電動機1に供給するように、電流指令信号iuを次式で与える。
Figure 2006008846
ここで、tは給電開始時刻をt=0[sec]としたときの時刻であり、Iampは電流指令信号iuの電流振幅[A]であり、fは電流指令信号iuの周波数[Hz]であり、Trは2次時定数[sec]であり、kは任意の整数である。
以下に、式(99)で表された電流指令信号iuをインバータ2に与えることにより、給電直後に2次磁束φurが定常状態に安定化する理由について説明する。
給電開始直後に2次磁束φurを安定化させるには、給電開始時に2次磁束φurが0で、時間tに対して正弦波状に磁束が立ち上がるようにすればよい。そこで、給電開始時に2次磁束φurが0となるような、電流指令信号iuを求める。電流iuと2次磁束φurの関係式は次式で表される。
Figure 2006008846
従って、式(100)から明らかなように、給電開始直後に0となるような2次磁束φurは次式で表される。
φur=φampsin(2πft) (101)
ここで、φampは2次磁束の振幅である。2次磁束φurが式(101)となるような電流iuは式(100)と式(101)の関係により式(102)式となる。ここで、2πfTr≪1と仮定して、式(103)の近似式を用いた。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
従って、式(102)式に示した給電開始時刻t=0[sec]の位相が(2πfTr+kπ)[rad]となる電流iuが誘導電動機1に流れるように、電流指令信号iuをインバータ2に与えれば、給電開始直後に2次磁束φurが0となる。
図43は、本発明の実施の形態20に係る、給電開始時において2次磁束φurが0になるように0.255[Hz]の電流指令信号iuをインバータ2に与えたときの波形図であって、図43(a)はそのときの誘導電動機の3相電圧vu,vv,vwの波形図であり、図43(b)はそのときの誘導電動機の3相電流iu,iv,iwであり、図43(c)はそのときの誘導電動機の2次磁束φurを示す波形図である。図43は、図32の回路構成を用いて得られた結果を示している。式(99)で表された電流指令信号iuをインバータ2に与えることによって、2次磁束φurが給電開始直後から正弦波形状になることがわかる。
ただし、本実施の形態で示した交流回転機の定数測定装置においては、2次時定数Trを求めることが目的であるため、2次時定数Trの値は未知である。本実施の形態は、2次時定数Trの推定値を設計値や概算値を利用して実施する。以上のことから、電流指令信号iuを給電開始時に2次磁束が概ね0となるような式(99)で与えることにより、2次磁束φurが定常状態になるまでの整定時間が短縮され、給電開始直後の測定精度が向上し、リアクタンス成分Xを精度良く測定できる効果が得られる。
以上説明したように、本実施の形態に係る交流回転機の定数測定装置によれば、定常状態になるまでの整定時間を短縮し、給電開始直後の測定精度を向上させるために、インバータ2は、給電開始時に2次磁束が概ね0となるような正弦波電流を誘導電動機1に供給する。この電流を誘導電動機1に供給することにより、2次磁束が定常状態になるまでの整定時間を短縮することができ、給電開始直後の測定精度を向上させることができる。なお、図43は、1つの周波数を給電した場合を示したが、図41のように異なる周波数を連続して給電する場合でも同様の効果が得られる。
変形例.
以上の実施の形態においては、誘導電動機1及び同期機の定数を測定するための装置について説明しているが、本発明はこれに限らず、上述の各実施の形態に係る定数測定方法は、これらの機器の発電機の定数を測定する装置にも容易に適用することができ、従って、上述の各実施の形態に係る定数測定方法は、誘導電動機、同期電動機、誘導発電機、同期発電機などを含む交流回転機に広く適用することができる。
以上詳述したように、本発明に係る交流回転機の定数測定装置によれば、交流回転機が負荷設備に接続されている場合でも、例えば、少なくとも定格容量が1.5kWから280kWまでの交流回転機に対して、1次インダクタンスと2次抵抗と2次時定数などの交流回転機の電気的定数を従来技術に比較して高い精度で測定することができる。また、交流回転機の電気的定数を迅速に測定することができ、ユーザに対して待ち時間を意識させることなくきわめて短時間で快適に測定できる。
本発明は、静止している交流回転機の電気的定数を測定するための交流回転機の定数測定装置に関する。
例えば、誘導電動機、誘導発電機、同期電動機、同期発電機などを含む交流回転機を駆動制御する制御装置においては、当該交流回転機の抵抗やインダクタンスの値などの電気的定数を得ることが必要となる。機械に接続されていない回転機は無負荷試験によりインダクタンスの値を測定することができるが、機械に接続されている回転機は無負荷試験ができず、従来から、無負荷試験を必要としない回転機の定数測定が要求されている。
従来技術に係る回転機の定数測定装置では、例えば、特許文献1の3頁に示されるように、停止した状態の誘導電動機の3相入力端子のうちの2つの端子間に、周波数f1を有する単相交流電圧を印加して、誘導電動機に流れる交流電流及び交流電圧を検出し、上記検出した交流電流及び交流電圧に基づいて、それらの基本波の振幅と位相とを計算し、上記計算されたそれらの関係から1次と2次の漏れインダクタンスの和と、1次と2次の巻線抵抗の和とを計算している。
また、例えば、特許文献2の4頁に開示されるように、単相交流励磁処理により正弦波変調信号を発生し、上記発生された正弦波変調信号をゲート回路を介してインバータに入力することによりインバータを動作させ、上記インバータにより電力変換された交流励磁電圧を用いて交流電動機を駆動して当該交流電動機に交流電流を流す。次いで、有効パワー分電流Iq及び無効パワー分電流Idの演算処理において、1次周波数指令を積分した交流励磁電圧ベクトルの回転位相をθとし、信号sinθと、信号−cosθと、U相の電動機電流iuに基づいて、有効パワー分電流Iq及び無効パワー分電流Idを演算する。さらに、1次と2次の合成抵抗と、1次と2次の合成漏れインダクタンスの演算処理において、有効パワー分電流Iqと無効パワー分電流Idの各演算値と、励磁電圧指令の大きさから、1次と2次の漏れインダクタンスの和と、1次と2次の巻線抵抗の和とを計算している。
さらに、例えば、特許文献3においては、1次角周波数指令とq軸電圧指令の各指令値をそれぞれ零とし、d軸電圧指令の指令値として交流信号を与えることを測定条件としている。この測定条件に従って測定を行うと、電動機巻線には3相交流電流が流れず、V相とW相の電流が同相となり、単相交流電流が流れるため、交流電動機は回転せずに停止状態を維持することができる。そして、交流電動機の回転が停止されているときに、交流電動機に流れるd軸電流成分を検出し、上記検出されたd軸電流成分の検出値を、d軸電圧指令値を基準とする三角関数によるフーリエ展開に従って分析し、この基本波成分のフーリエ係数とd軸電圧指令値に基づいて当該交流電動機の定数を計算している。
また、例えば、特許文献4においては、インバータを用いた誘導電動機の定数測定方法において、実際に運転するすべり周波数に近い2種類の周波数で拘束試験を行い、励磁インダクタンスを含む漏れリアクタンス及び2次抵抗を計算する方法が開示されている。この方法においては、誘導電動機の入力端子に運転時の周波数に近い2つの異なる角周波数ωa及びωbの単相交流電圧を印加して各角周波数ωa及びωbにおける電流に基づいて、電動機端子からみた直列インピーダンス成分である抵抗Ra及びRb並びにインダクタンスXa及びXbを測定している。
さらに、例えば、特許文献5において、巻線抵抗測定と拘束試験のみを用いて、ベクトル制御用誘導電動機の各定数を容易に測定できる誘導電動機の定数測定方法が開示されている。この定数測定方法は、漏れインダクタンスと2次抵抗との共通接続点に励磁インダクタンスが接続された拘束試験時の誘導電動機のT−1形等価回路の各定数を測定する方法である。この定数測定方法においては、巻線抵抗測定と、任意の異なった2つの周波数のうち第1の周波数にてまず拘束試験を行って合成インピーダンスの抵抗成分R及びリアクタンス成分Xを測定した後、次に第2の周波数にて再び拘束試験を行うことにより、合成インピーダンスの抵抗成分R’及びリアクタンス成分X’を測定し、これら抵抗成分及びリアクタンス成分を演算して誘導電動機の各定数を測定している。
またさらに、特許文献6においては、以下のステップを有する、誘導電動機の定数を算出する誘導電動機の定数測定方法が開示されている。
(a)誘導電動機に第1の周波数を有する所定電圧を印加し、上記第1の周波数を有する所定印加電圧に対応した誘導電動機電流の大きさ、及び上記第1の周波数を有する所定印加電圧との位相差を測定するステップ。
(b)上記誘導電動機に上記第1の周波数とは異なる第2の周波数を有する所定電圧を印加し、上記第2の周波数を有する所定印加電圧に対応した誘導電動機電流の大きさ、及び上記第2の周波数を有する所定印加電圧との位相差を測定するステップ。
(c)上記第1の周波数を有する所定印加電圧の大きさと、上記第1の周波数を有する所定印加電圧に対応した誘導電動機電流の大きさ及び上記第1の周波数を有する所定印加電圧との位相差と、上記第2の周波数を有する所定印加電圧の大きさと、上記第2の周波数を有する所定印加電圧に対応した誘導電動機電流の大きさ及び上記第2の周波数を有する所定印加電圧との位相差とを用いて誘導電動機の定数を算出するステップ。
この誘導電動機の定数測定方法においては、従来技術では周波数条件を変えて2度測定していたが、上記第1の周波数を有する所定電圧と上記第2の周波数を有する所定電圧とを重畳して同時に上記誘導電動機に印加することを特徴としており、これにより、上記の電圧印加ステップを1度の測定で完了することができる。
日本国特許第2759932号公報。 日本国特許第3284602号公報。 日本国特許第2929344号公報。 日本国特許第3052315号公報。 日本国特許出願公開平成6年153568号公報。 日本国特許出願公開2003年339198号公報。 Y. Murai et al., "Three-Phase Current-Waveform-Detection on PWM Inverters from DC Link Current-Steps", Proceedings of IPEC-Yokohama 1995, pp.271-275, Yokohama, Japan, April 1995. シチズン時計株式会社広報室,「「時の記念日」(6月10日)アンケート,ビジネスパーソンの「待ち時間」意識」,http://www.citizen.co.jp/info/news.html, http;//www.citizen.co.jp/release/03/0304dn/0305dn_t.htm, 2003年5月28日公開。
上述の交流回転機の定数測定装置においては、単相交流給電した場合の電圧と電流の関係に基づいて、交流回転機の定数を算出するが、単相交流給電される交流電力の周波数を設定する指針がなかった。また、単相交流給電の周期を設定する指針がなかった。その結果、回転機の定数測定精度を所定値以上に保持できないという問題点があった。さらに、測定精度の向上を図ると、定数測定の待ち時間が長くなるため、該装置のユーザが不快となる問題点があった。
また、インバータの電圧分解能、内部のデッドタイム電圧(ここで、「デッドタイム電圧」とは、スイッチングの休止時間であって、オンからオフまでの時間差であり、以下同様である。)、スイッチング素子のオン電圧に起因する電圧誤差によって定数精度が劣化する問題点もあった。さらに、1次と2次の巻線抵抗の和、もしくは、直列合成インピーダンス成分から定数へ換算する際に、何らかの方法で1次抵抗を別途測定しなければならないが、1次抵抗誤差によって他の定数の精度が劣化する問題があった。
本発明の目的は以上の問題点を解決し、従来技術に比較して高い測定精度で、交流回転機の電気的定数を測定することができ、しかもユーザが快適に操作できる交流回転機の定数測定装置を提供する。
本発明に係る交流回転機の定数測定装置は、交流回転機と、
入力される電圧指令信号を単相交流電力に電力変換して上記交流回転機に給電する電力変換手段と、
上記電力変換手段から上記交流回転機に給電される単相交流電力の電流を検出する電流検出手段と、
上記電力変換手段から上記交流回転機に印加すべき交流電圧に対応する電圧指令信号を発生して上記電力変換手段に出力する第1の制御手段と、
上記交流回転機に給電された単相交流電力の電圧と電流の関係に基づいて上記交流回転機の定数を計算する第2の制御手段とを備えた交流回転機の定数測定装置において、
上記第1の制御手段は、0.006Hzである下限周波数以上でかつ1.5Hzである上限周波数以下の範囲で選択された少なくとも1つの周波数を有する単相交流電力を、少なくとも1回上記交流回転機に給電するように電圧指令信号を発生して上記電力変換手段を制御することにより、上記第2の制御手段は上記交流回転機の電気的定数を計算することを特徴とする。
従って、本発明に係る交流回転機の定数測定装置によれば、上記交流回転機が負荷設備に接続されている場合でも、例えば、少なくとも定格容量1.5kWから280kWまでの交流回転機に対して、1次インダクタンスと2次抵抗と2次時定数などの交流回転機の電気的定数を従来技術に比較して高い精度で測定することができる。また、交流回転機の電気的定数を迅速に測定することができ、ユーザに対して待ち時間を意識させることなくきわめて短時間で快適に測定できる。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、同様の構成要素については同一の符号を付している。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る誘導電動機の定数測定装置の構成を示すブロック図である。図1において、交流回転機である3相誘導電動機1は電気的にインバータ2と接続されている。インバータ2は誘導電動機1に単相給電するために、U相、V相及びW相の3相のうちの1相を開放している。開放の方法として、インバータ2の1相分だけ上下アームを開放してもよいし、誘導電動機1の1相だけ結線を外してもよい。すなわち、インバータ2は、入力される直流信号である2つの電圧指令信号vu,vvに基づいて、誘導電動機1に回転磁界を発生せず、回転トルクが生じない状態になるように、単相給電状態となるような交流電圧を発生して誘導電動機1に印加する。また、電流検出器3はインバータ2から誘導電動機1に給電される1相の電流iuを検出して、検出された電流iuを示す電流信号を定数算出コントローラ5に出力するとともに、減算器11に出力する。電流検出器3は、図1に示すように、U相電流を直接検出する方法以外に、公知の技術である、インバータ2のDCリンク電流から電流iuを検出する方法(例えば、非特許文献1参照。)を用いてもよい。
装置コントローラ4は例えばディジタル計算機により構成され、上記誘導電動機1に対して印加すべき電圧vu,vvを演算してインバータ2に出力する。また、定数算出コントローラ5は内部メモリ5mを備えた、例えばディジタル計算機により構成され、インバータ2から誘導電動機1に単相給電したときの電圧指令信号vuと電流iuの関係から誘導電動機1の定数を算出し、算出した電動機定数のうち例えば漏れインダクタンスσLsを偏差増幅器12に出力する。ここで、装置コントローラ4は、スイッチ9と、2個の信号源8,10と、減算器11と、偏差増幅器12と、符号反転器13とを備えて構成される。信号源8は周波数f0の交流電圧指令信号vu0を発生して、発生された交流電圧指令信号vu0を電圧指令信号vuとしてスイッチ9の接点a側を介してインバータ2に出力するとともに、スイッチ9の接点a側及び、(−1)を乗算することにより符号反転を行う符号反転器13を介してインバータ2に電圧指令信号vvとして出力する。また、信号源10は電流指令信号iuを発生して、発生された電流指令信号iuを定数算出コントローラ5及び減算器11に出力する。減算器11は、入力される電流指令信号iuから、電流検出器3により検出された電流iuを減算して、その減算値である電流偏差Δiを示す電流偏差信号を偏差増幅器12に出力する。さらに、偏差増幅器12は、入力される電流偏差信号に対して定数算出コントローラ5により算出される漏れインダクタンスσLsを乗算するように増幅してその増幅後の電圧指令信号vu1を演算して、演算後の電圧指令信号vu1をスイッチ9の接点b側を介してインバータ2に出力するとともに、スイッチ9の接点b側及び符号反転器13を介してインバータ2に電圧指令信号vvとして出力する。
図2は図1の誘導電動機の定数測定装置により誘導電動機1の定数を測定するための誘導電動機の定数測定処理を示すフローチャートである。以下、図2を参照して、誘導電動機の定数測定処理について説明する。
図2において、まず、ステップS101において、単相交流の第1の給電を実行する。このとき、スイッチ9は接点a側に切り換えられて、誘導電動機1に印加すべき電圧vuとして周波数f0の交流指令vu0を選択する。ここで、周波数f0は、後述する単相交流の第2の給電(ステップS106)の周波数f1よりも高い周波数に設定される。また、電圧指令信号vuと、符号反転器13から出力される電圧指令信号vvがインバータ2に入力され、インバータ2は入力される2つの電圧指令信号vu,vvに従って、単相交流電圧を発生して誘導電動機1に出力する。次いで、ステップS102において、漏れインダクタンスを測定する。定数算出コントローラ5は、信号源8からの電圧指令信号vuの振幅V0と、信号源10からの電流指令信号iuの振幅I0とに基づいてこれらの比V0/I0を計算し、当該比V0/I0に基づいて、次式を用いて漏れインダクタンスlを計算する。
l=σLs÷2 (1)
σLs=V0÷(I0×2π・f0) (2)
ここで、σは漏れ係数であり、Lsは1次インダクタンスである。定数算出コントローラ5は、上記式(2)により計算された漏れインダクタンスσLsの値を示す信号を偏差増幅器12に出力する。このように、ステップS101及びS102では、周波数f0の交流給電を行う期間の電圧振幅と電流振幅の振幅比に基づいて、誘導電動機1の漏れインダクタンスlを計算する。すなわち、定数算出コントローラ5は、インバータ2が誘導電動機1に対して単相交流給電を行う期間のうち、最も高い周波数で交流給電を行う期間の電圧振幅と電流振幅の振幅比V0/I0に基づいて、誘導電動機1の漏れインダクタンスlを計算する。従って、上述のように、誘導電動機1の漏れインダクタンスlを計算することにより、誘導電動機1の電圧位相や電流位相といった位相情報を必要としないで、振幅情報のみで簡単に、漏れインダクタンスlを測定できるという特有の効果がある。
次いで、ステップS103において、単相直流の第1の給電を実行する。このとき、信号源10は電流指令信号iuとして直流信号I1を出力し、減算器11は電流指令信号iuと上記検出された電流iuとの電流偏差Δiを演算して、電流偏差Δiを示す信号を偏差増幅器12に出力する。これに応答して、偏差増幅器12は、次式に従って電圧指令信号vu1を演算して、スイッチ9の接点b側を介してインバータ2に出力するとともに、スイッチ9の接点b側及び符号反転器13を介してインバータ2に出力する。
vu1
=ωcc×σLs×{Δi+∫(ωcc÷N×Δi)dt} (3)
ここで、ωccは電流応答設定値であり、Nは任意の定数であり、tは時刻である。なお、式(3)の右辺の積分期間は所定のしきい値よりも十分に長い期間である。ここで、スイッチ9は接点b側に切り換えられ、偏差増幅器12から出力される電圧指令信号vu1を選択する。図1の装置コントローラ4とインバータ2と電流検出器3とにより形成されるループ制御回路により、誘導電動機1に供給される電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御され、インバータ2は交流電圧vu及びvvを誘導電動機1に出力する。このとき、定数算出コントローラ5は、電流指令信号iuの値及び電圧指令信号vuの値をそれぞれiuS103、vuS103として内部メモリ5mに記憶する。
次いで、ステップ104において、単相直流の第2の給電を実行する。このとき、信号源10は電流指令信号iuとして上記直流信号I1とは異なる直流信号I2を出力し、減算器11は電流指令信号iuと上記電流iuとの間の電流偏差Δiを演算して、電流偏差Δiを示す信号を偏差増幅器12に出力する。偏差増幅器12は、式(3)に従って電圧指令信号vu1を演算して出力する。このとき、スイッチ9は接点b側に切り換えられ、偏差増幅器12から出力される電圧指令信号vu1を選択する。図1の装置コントローラ4とインバータ2と電流検出器3とにより形成されるループ制御回路により、誘導電動機1に供給される電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御され、インバータ2は交流電圧vu及びvvを誘導電動機1に出力する。このとき、定数算出コントローラ5は、電流指令信号iuの値及び電圧指令信号vuの値をそれぞれiuS104、vuS104として内部メモリ5mに記憶する。
次いで、ステップS105において、1次抵抗Rsを測定する。すなわち、定数算出コントローラ5は、内部メモリ5mに格納した指令値iuS103,vuS103,iuS104,vuS104に基づいて、次式を用いて、1次抵抗Rsを計算する。
Rs
=(vuS103−vuS104)÷(iuS103−iuS104) (4)
以上説明したように、ステップS103及びステップS104において、インバータ2から誘導電動機1に給電される検出電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御され、装置コントローラ5は電圧指令信号vu及びvvをインバータ2に印加し、インバータ2はこの電圧指令信号vu及びvvに従って、交流電圧vu及びvvを誘導電動機1に印加する。この結果、誘導電動機1固有の電気的時定数ではなく、予め設定した電流応答設定値ωccに設定されるように、検出電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御される。これにより、誘導電動機1固有の電気的時定数にかかわらず、短時間でステップS103及びステップS104の単相直流給電を完了させることができる。また、誘導電動機1の定数測定を短時間で完了できるので、操作するユーザが待ち時間でイライラすることなく、快適に誘導電動機1の定数を測定することができる。
次いで、ステップS106において、単相交流の第2の給電を実行する。このとき、信号源10は電流指令信号iuとして周波数f1の交流信号iu1を出力し、減算器11は電流指令信号iuと上記電流iuとの間の電流偏差Δiを演算して、電流偏差Δiを示す信号を偏差増幅器12に出力する。偏差増幅器12は、式(3)に従って電圧指令信号vu1を演算して出力する。スイッチ9は接点b側に切り換えられ、偏差増幅器12から出力される電圧指令信号vu1を選択する。このとき、図1の装置コントローラ4とインバータ2と電流検出器3とにより形成されるループ制御回路により、誘導電動機1に供給される電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御されて、インバータ2は交流電圧vu及びvvを誘導電動機1に出力する。
さらに、ステップS107において、2次抵抗と相互インダクタンスを測定する。まず、ステップS107における測定原理について説明するために、誘導電動機1の代わりに、インダクタンスLと抵抗Rとが直列に接続されてなる図3のLR直列負荷回路を接続して、この抵抗RとインダクタンスLを求める手順について以下に説明する。
本実施の形態に係る誘導電動機の定数測定装置では、インバータ2と、電流検出器3と、装置コントローラ4とからループ制御回路において、装置コントローラ5の偏差増幅器12によって、誘導電動機1に給電される検出電流iuを所望の電流指令信号iuに実質的に一致させるように制御することができる。ここで、誘導電動機1の代わりに、図3のLR直列負荷回路を接続すれば、同様に、LR直列負荷回路の電流iを電流指令信号iに実質的に一致させるように制御することができると考えられる。電流指令信号iを、振幅I[A]及び周波数fLR[Hz]を有する交流電流信号Icos(2πfLRt)で与える。ここで、インバータ2の電圧指令信号vとLR直列負荷回路の端子電圧v(図3参照。)とは実質的に一致するように制御されていると仮定する。このとき、交流電流指令信号iを基準にした、電圧指令信号vの同位相成分の振幅A1と直交位相成分の振幅B1とは、相互相関関数を用いた次式によって計算できる。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
ここで、Tは予め設定された積分期間である。電流指令信号iの振幅Iが既知であり、電流指令信号iを基準としたときの電圧指令信号vの同位相成分の振幅A1がわかれば、LR直列負荷回路の抵抗成分ZReを次式を用いて計算できる。
Re=A1÷I (7)
また、電流指令信号iを基準としたときの電圧の直交位相成分の振幅B1がわかれば、LR直列負荷回路のリアクタンス成分ZImが次式を用いて計算できる。
Im=B1÷I (8)
図4は図3のLR直列負荷回路において、積分期間Tが10秒間であるときに、電流iが電流指令信号i=cos(2πfLRt)に実質的に一致するように制御したときの各パラメータの波形図であって、図4(a)は信号cos(2πfLRt)及び信号−sin(2πfLRt)の波形図であり、図4(b)は電圧指令信号vの波形図であり、図4(c)は直交位相成分の振幅B1の波形図であり、図4(d)は同位相成分の振幅A1の波形図である。図4から明らかなように、電圧指令信号vの同位相成分と直交位相成分は、積分期間Tに到達したときの振幅A1,B1によって得られる。
式(5)及び式(6)において、積分期間T→∞とすれば、電圧指令信号vの同位相成分と直交位相成分をより高い精度で得ることができる。しかしながら、積分期間Tは、言い換えると、LR直列負荷回路の測定時間でもある。測定時間が長いと、誘導電動機の定数測定装置を使用するユーザの待ち時間が長くなる。ユーザが快適に使用するためには、積分期間はより短い方がよい。
図5は実施の形態1において、交流誘導電動機1の代わりにLR直列負荷回路を接続して、図2の定数測定処理のステップS107の方法を用いて抵抗成分及びインダクタンス成分を測定したときの実験結果であって、給電周期数に対する各成分の測定精度を示すグラフである。
図5の結果から明らかなように、抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を±12%以内に保つには、単相交流給電を2周期以上行う必要がある。また、抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を±10%以内に保つには、単相交流給電を3周期以上行う必要がある。さらに、抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を±5%以内に保つには、単相交流給電を5周期以上行う必要がある。従って、ステップS106における単相交流給電の給電周期数を2周期以上に設定すると、抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を±12%以内に保つことができる。また、ステップS106における単相交流給電の給電周期数を3周期以上に設定すると、抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を±10%以内に保つことができる。さらに、ステップS106における単相交流給電の給電周期数を5周期以上に設定すると、抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を±5%以内に保つことができる。以上の動作原理により、ステップS107では、式(5)乃至式(8)を用いて、誘導電動機1の抵抗成分とリアクタンス成分を測定できる。
図6は図1の誘導電動機1の等価回路の回路図であり、図7は図6の等価回路の近似等価回路の回路図である。図6において、誘導電動機1の等価回路は、漏れインダクタンスlと2次抵抗Rrとの直列回路に対して相互インダクタンスMが並列に接続され、当該並列回路に対して、漏れインダクタンスlと1次抵抗Rsとの直列回路が直列に接続されて構成される。ここで、誘導電動機1では、相互インダクタンスM≫漏れインダクタンスlが成り立つので、図6の等価回路は、図7の等価回路に近似できる。図7の等価回路のインピーダンスZ1は次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、ω1=2πf1であり、f1は電流指令信号iuの周波数である。上述したようにステップS107において、式(5)乃至式(8)を用いて、誘導電動機1のインピーダンスの抵抗成分ZReとリアクタンス成分ZImを測定する。それぞれ測定された抵抗成分ZRe及びリアクタンス成分ZIm並びに式(9)から次式の連立方程式が得られる。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
ここで、2次抵抗Rrと相互インダクタンスMの値は式(10)及び式(11)の連立方程式を解くことにより得られる。その解は次式で表される。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
このように、定数算出コントローラ5は、インバータ2が交流給電を行ううち、最も低い周波数で交流給電を行う期間において電流に対する電圧の同位相成分の大きさと、電流に対する電圧の直交位相成分の大きさを算出し、この算出値に基づいて上記誘導電動機1の2次抵抗と相互インダクタンスを算出する。この結果、1次抵抗Rsの値の測定が完了していれば、ステップS106の交流給電だけで、2次抵抗と相互インダクタンスを同時に測定できる。また、1次インダクタンスLs及び2次インダクタンスLrの値は漏れインダクタンスlと相互インダクタンスMの和で与えられる。このステップS107の処理が終了することにより、当該誘導電動機の定数測定処理が終了する。
ここで、ステップS106においてインバータ2が単相交流給電するときの周波数について以下に説明する。図7の等価回路において、単相交流給電される交流電力の周波数を非常に高く設定すると、相互インダクタンスMのインピーダンスは開放となり、当該等価回路のリアクタンス成分はゼロとなる。また、単相交流給電される交流電力の周波数を非常に低く設定すると、相互インダクタンスMのインピーダンスは短絡状態となり、当該等価回路のリアクタンス成分はゼロとなる。従って、ステップS106においてインバータ2が単相交流給電する周波数は高すぎても低すぎてもいけない。すなわち、インバータ2が単相交流給電する周波数を適切な周波数に設定する必要がある。
図7の等価回路における誘導電動機1のリアクタンス成分は式(11)で表されたインピーダンスZImである。ここで、式(11)で表されたインピーダンスZImの両辺を角周波数ω1で微分すると、次式を得る。
Figure 2006008846
ここで、dZIm/dω1=0のとき、インピーダンスZImは極大となり、そのとき、の角周波数ω1MAXは次式で表される。
ω1MAX=Rr÷M [rad/s] (15)
従って、インバータ2がステップS106において単相交流給電する周波数は、次式で表される周波数f1MAXに設定すればよい。
1MAX=Rr÷(2π・M) [Hz] (16)
図8は定格容量が3.7kWである誘導電動機を単相交流給電するときの抵抗成分ZRe及びリアクタンス成分ZImの周波数特性を示すグラフである。ここで、2次抵抗Rrは0.28[Ω]であり、1次抵抗Rsは0.35[Ω]であり、相互インダクタンスMは0.062[H]である。従って、周波数f1MAX=Rr/(2πM)は0.72[Hz]であり、図8のリアクタンス成分ZImも周波数0.72Hz近傍で極大となっている。
本実施の形態に係る誘導電動機の定数測定装置においては、誘導電動機1の2次抵抗Rrや相互インダクタンスMの値は、ステップS106の終了時点では未知の状態である。そこで、定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機1を対象に、上記式(16)の右辺の値について測定したところ、図9及び図10の結果を得た。ここで、図9は定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機1についての周波数f1MAX=Rr/(2πM)を示すグラフであり、図10は定格容量が1.5kWから280kWまでの誘導電動機1についての周波数f1MAX=Rr/(2πM)を示すグラフである。図9及び図10の結果から明らかなように、定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機1について、リアクタンス成分が極大になる周波数の帯域は0.2Hz以上で1.5Hz以下であることがわかる。
図11は図1のインバータ2の各クラスに対する定格容量及び外径寸法の一例を示す表である。インバータ2を、図11に示すように、外形寸法で各容量毎に各クラスに分類できる。
図9から、クラスAに属する定格容量1.5kWから2.2kWまでの誘導電動機1について、リアクタンス成分が極大になる周波数の帯域は1.2Hz以上で1.5Hz以下であることがわかる。従って、クラスAに属する定格容量1.5kWから2.2kWまでの誘導電動機1のリアクタンス成分ZImは、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数を1.2Hz以上で1.5Hz以下に設定することによって、より高い精度で測定できる。その結果、クラスAに属する定格容量1.5kWから2.2kWまでの誘導電動機1の相互インダクタンスMと2次抵抗Rrをより高い精度で測定できる。
また、同様に、クラスBに属する定格容量3.7kWから7.5kWまでの誘導電動機1のリアクタンス成分ZImは、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数を0.7Hz以上で1.2Hz以下に設定することによって、より高い精度で測定できることが、図9からわかる。その結果、クラスBに属する定格容量3.7kWから7.5kWまでの誘導電動機1の相互インダクタンスMと2次抵抗Rrをより高い精度で測定できる。
さらに、同様に、クラスCに属する定格容量11kWから18.5kWまでの誘導電動機1のリアクタンス成分ZImは、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数を0.4Hz以上で0.7Hz以下に設定することによって、より高い精度で測定できることが、図9からわかる。その結果、クラスCに属する定格容量11kWから18.5kWまでの誘導電動機1の相互インダクタンスMと2次抵抗Rrをより高い精度で測定できる。
またさらに、同様に、クラスDに属する定格容量22kWから37kWまでの誘導電動機1のリアクタンス成分ZImは、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数を0.3Hz以上で0.5Hz以下に設定することによって、より高い精度で測定できることが、図9からわかる。その結果、クラスDの定格容量22kWから37kWまでの誘導電動機1の相互インダクタンスMと2次抵抗Rrをより高い精度で測定できる。
また、同様に、クラスEに属する定格容量45kWから55kWまでの誘導電動機1のリアクタンス成分ZImは、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数を0.2Hz以上で0.3Hz以下に設定することによって、より高い精度で測定できることが、図9からわかる。その結果、クラスEに属する定格容量45kWから55kWまでの誘導電動機1の相互インダクタンスMと2次抵抗Rrをより高い精度で測定できる。
さらに、同様に、クラスFに属する定格容量55kW以上280kW以下の誘導電動機1のリアクタンス成分ZImは、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数を0.2Hz以下に設定することによって、より高い精度で測定できることが、図10からわかる。後述するように、インバータ2は、0.006Hz以上で電圧分解能を保つことが可能であるので、クラスFに属する定格容量55kW以上の誘導電動機1に対して、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数を0.006Hz以上で0.2Hz以下に設定することによって、より高い精度で測定できる。その結果、クラスFに属する定格容量55kW以上の誘導電動機1の相互インダクタンスMと2次抵抗Rrをより高い精度で測定できる。
以上説明したように、図9及び図10から明らかなように、誘導電動機1の定格容量が大きくなるにつれ、周波数f1MAXは小さくなることがわかる。定数を測定可能な誘導電動機1の定格容量を大容量まで確保するためには、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数をより小さくすることが望ましい。本実施の形態に係る誘導電動機の定数測定装置がより高い精度で定数を測定できる周波数の下限値について以下に説明する。ここで、当該周波数の下限値を決定する要因として「インバータ2の電圧分解能」と「交流電流指令信号iを基準にした電圧指令信号vの直交位相成分の振幅B1」が挙げられる。
まず、インバータ2の電圧分解能について以下に説明する。インバータ2が誘導電動機1に印加する直流電圧は、インバータ2に依存する電圧分解能の間隔毎に標本化されかつ量子化される。本実施の形態では、インバータ2の電圧指令信号vuと誘導電動機1の端子電圧vuは実質的に一致するように制御されていると仮定している。交流電流指令信号iを基準にした電圧指令信号vの同位相成分の振幅A1と直交位相成分の振幅B1とは、少なくともインバータ2の電圧分解能より大きい値に設定する必要がある。また、電圧指令信号vの直交位相成分の振幅B1は、誘導電動機1のリアクタンス成分と電流振幅の積である。誘導電動機1のリアクタンス成分は、図8から明らかなように、インバータ2が誘導電動機1に印加する電圧周波数の関数である。本実施の形態においては、インバータ2がディジタル処理を利用して三角波比較型パルス幅変調法(以下、パルス幅変調法をPWM変調法という。)を用いて交流電圧を出力する場合における、当該インバータ2の電圧分解能C[V]について説明する。インバータ2は、電圧指令信号vと三角波キャリアTrcの大小関係から交流電圧を出力する。
図12は図1のインバータ2からの出力電圧Voutを説明するための電圧指令信号vと三角波キャリアTrcとの関係を示す波形図である。インバータ2からの出力電圧Voutは、ディジタル処理のサンプリング周期毎に以下のように選択して出力される。ここで、三角波キャリアTrcの最大振幅をVdc[V]とする。
≧Trcのとき、Vout=Vdc[V] (17)
<Trcのとき、Vout=0[V] (18)
この選択出力処理を施せば、キャリア周期の半分の区間における平均電圧が電圧指令信号vに実質的に一致するように制御できる。PWM変調法で用いる三角波キャリアTrcのキャリア周期をT0[sec]とすると、キャリア周期T0の半分の期間はT0÷2[sec]である。上記ディジタル処理のサンプリング周期がD[sec]であったとき、電圧指令信号vと三角波キャリアTrcの比較処理を、キャリア周期T0の半分の期間中にT0÷(2×D)回実行する。以上から、電圧分解能C[V]は次式で表される。
C[V]
=Vdc[V]÷(T0÷(2×D)[回])
=(2×D×Vdc)÷T0[V] (19)
インバータ2の実用的な値であるキャリア周期T0=1ミリ秒及びサンプリング周期D=25ナノ秒である場合についても、電圧分解能C[V]を式(19)を用いて計算できる。例えば、3相200V商用電源からの交流電圧を整流することによりDCリンク電圧を得る場合、三角波キャリアTrcの最大振幅VdcはVdc=280[V]であり、電圧分解能C[V]は次式で計算できる。
C=2×(25×10−9)×280÷(10−3)=0.014[V](20)
次いで、交流電流指令信号iを基準にした電圧指令信号vの直交位相成分の振幅B1について説明する。低周波数帯域では、電流指令信号iを基準としたときの電圧の同位相成分の振幅A1は直交位相成分の振幅B1」に対して十分大きい。インバータ2が、上記電圧指令信号vの直交位相成分の振幅B1を出力するだけの電圧分解能Cを有していればよい。ここで、上記電圧振幅B1を電圧分解能Cで除算した値B1/Cについて以下に説明する。
図13は定格容量3.7kWの誘導電動機と、定格容量11kWの誘導電動機と、定格容量22kWの誘導電動機とにおける、電圧指令信号vの直交位相成分の振幅B1を電圧分解能Cで除算した除算値B1/Cの周波数特性を示すグラフである。ここで、電流指令信号iは定格励磁電流(無負荷電流)相当値に設定し、上記振幅B1を電流指令信号iの振幅Iと、周波数fに対応するリアクタンス成分との積で計算している。図13から明らかなように、誘導電動機1の定格容量に関係なく、周波数fと上記除算値B1/Cの関係は実質的にほぼ一致しており、周波数fが0.006[Hz]以上ならば、交流電流指令信号iを基準にした電圧指令信号vの直交位相成分の振幅B1はインバータ2の電圧分解能Cより大きくなることがわかる。
以上から明らかなように、定格容量が55kWを超える誘導電動機についても、ステップ107において単相交流給電される交流電力の周波数の下限値を0.006[Hz]以上に設定すれば、本実施の形態による誘導電動機の定数測定装置でその定数を測定することができる。言い換えると、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数fが0.006[Hz]以上に設定することによって、インバータ2が、該電圧指令信号vの直交位相成分の振幅B1を出力するだけの電圧分解能Cを有することができ、定格容量が55kWを超える誘導電動機1についても、より高い精度で定数を測定できる。
さらに、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数fの下限値を0.03[Hz]以上に設定すると、上記電圧振幅B1と上記電圧分解能Cの比を5倍以上に設定できるので、該電圧指令信号vの直交位相成分の分解能が向上し、定格容量が55kWを超える誘導電動機についても、より高い精度で定数を測定できる。さらに、ステップS106において単相交流給電される交流電力の周波数fの下限値を0.06[Hz]以上に設定すると、上記電圧振幅B1と上記電圧分解能Cの比を10倍以上に設定できるので、該電圧指令信号vの直交位相成分の分解能が向上し、定格容量が55kWを超える誘導電動機1についてもよりさらに高い精度で定数を測定できる。
ところで、本発明者らが誘導電動機の定数測定装置についてユーザに対してヒアリングを行ったところ、定数測定の間、ユーザがイライラを感じさせない待ち時間は30秒以内とする意見が多い。また、非特許文献2によれば、パーソナルコンピュータを起動してそれが立ち上がるまでにイライラを感じる限界時間の回答割合は、待ち時間が1分であるとき38.3%であり、待ち時間が30秒であるとき34.5%で、待ち時間が1分以内の回答は7割を超える72.8%である。このように、一方は誘導電動機1の定数測定装置、もう一方はパーソナルコンピュータということで、対象の装置が異なるものの、本発明者らは、ユーザが装置を操作せずに待機する時間として、30秒以内であることが望ましいことを発見した。
本実施の形態に係る図2の誘導電動機の定数測定処理において、ステップS101及びS102では、後述するように高い周波数で単相交流給電を行うため、ステップS101及びS102での単相交流の給電と漏れインダクタンスの測定は数秒以内に完了する。また、ステップS103乃至S105において単相直流の給電と1次抵抗の測定も、以下の理由により数秒以内に完了する。すなわち、偏差増幅器12を含むインバータ2と電流検出器3と装置コントローラ4とから構成されるループ制御回路により、電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように、インバータ2は交流電圧vu及びvvを誘導電動機1に印加して電流制御できるためである。
一方、ステップS106及びS107の処理において、単相交流給電される交流電力の周波数を0.006Hz以上で1.5Hz以下に設定する。上述したように、ステップS107における抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を±10%以内に保つには、単相交流給電を3周期以上行う必要がある。また、抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を±5%以内に保つには、単相交流給電を5周期以上行う必要がある。このように、単相交流給電の周期を長く設定する程、抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度をより高くできる。一方、ステップS106において、インバータ2が単相交流電圧を給電している期間を長く設定すると、当該誘導電動機の定数測定装置を利用するユーザが定数測定の完了までの待ち時間も長くなる。
そこで、ステップ107でインバータ2が単相交流電圧を給電するときの周期の上限値について以下に説明する。図14は図2の定数測定処理においてインバータ2が単相交流給電する交流電力の周波数を図13の値で与えたときに、30秒間で何周期給電することが可能であるかを示す、定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機の定格容量に対する30秒間の給電周期数を示すグラフである。また、図15は図2の定数測定処理においてインバータ2が単相交流給電する交流電力の周波数を図13の値で与えたときに、30秒間で何周期給電することが可能であるかを示す、定格容量が1.5kWから280kWまでの誘導電動機の定格容量に対する30秒間の給電周期数を示すグラフである。
図14から明らかなように、例えば、定格容量が55kWである誘導電動機1においては、単相交流給電される交流電力の周波数は0.24Hzであるので、7.2周期給電したところで30秒が経過する。また、定格容量が2.2kWである誘導電動機1においては、単相交流給電される交流電力の周波数は1.35Hzであるので、40.4周期給電したところで30秒が経過する。上述したように、ステップS107における抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を±10%以内に保つには、単相交流給電を3周期以上行う必要がある。単相交流給電される交流電力の周波数を0.1Hz以上とすると測定精度を±10%以内に保ちつつ30秒以内に当該測定を終了することができる。
図2のステップS101からステップS105までの処理を数秒で完了できる。また、ステップS106とステップS107の処理において、抵抗成分とリアクタンス成分の測定精度を向上させるためには、ステップS106においてインバータ2が単相交流給電するときの周期をより長く設定したい。しかしながら、当該誘導電動機の定数測定装置をユーザが快適に操作するためには、上述のように、30秒以内に定数測定を完了させる必要があり、ステップS106においてインバータ2が誘導電動機1に単相交流給電する周期を、図14及び図15の結果から、最大でも45周期以下に設定する必要がある。
このように、ステップS106における単相交流給電の給電周期を45周期以下に設定することが、ステップS106及びS107に要する時間を30秒以内にするための必要条件である。その結果、本実施の形態に示した誘導電動機の定数測定装置が、30秒以内に定数測定を完了させるための必要条件は、インバータ2が、少なくとも1回、周波数0.1Hz以上1.5Hz以下かつ給電周期45周期以下の単相交流給電を行うことである。
次いで、ステップS101において単相交流給電される交流電力の周波数について以下に説明する。ラプラス演算子をsとするとき、図6に示した誘導電動機1の等価回路の伝達関数G(s)は次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、
Ts=Ls÷Rs (22)
Tr=Lr÷r (23)
である。
ここで、周波数の帯域が(Ts+Tr)÷(2πσTsTr)[Hz]より十分高い領域において、式(21)は後述する式(24)のように近似できる。式(24)のラプラス演算子sにj2πf0を代入すれば、上述した式(1)によって漏れインダクタンスlの測定を行うことができる。
ここで、(Ts+Tr)÷(2πσTsTr)[Hz]より十分高い周波数を、(Ts+Tr)÷(2πσTsTr)[Hz]の5倍と定義する。定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機を対象に周波数5×(Ts+Tr)÷(2πσTsTr)[Hz]について測定したところ、図16の結果を得た。すなわち、図16は定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機の定格容量に対する周波数5(Ts+Tr)/(2πσTsTr)[Hz]の特性を示すグラフである。
図16によれば、周波数5(Ts+Tr)/(2πσTsTr)は、定格容量2.2kWの誘導電動機において38Hzであり、45kWの誘導電動機において8.22Hzである。従って、ステップS101の単相交流給電される交流電力の周波数を40Hz以上に設定しておけば、定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機について次式の近似式が成り立つ。
Figure 2006008846
また、インバータ2が出力できる周波数の上限は、インバータ2のキャリア周波数である。以上のことから、インバータ2は、好ましくは、少なくとも1回、周波数40Hz以上でかつキャリア周波数以下の周波数範囲で選択された周波数で単相交流給電を行うことにより漏れインダクタンスlを測定する。この結果、漏れインダクタンスlの測定の条件となる式(24)で示した近似式が成立する。この単相交流給電を行うことにより、誘導電動機1を回転させることなく、漏れインダクタンスlをより高い精度で測定することができる。
実施の形態2.
上記実施の形態1では、ステップS106において単相交流の第2の給電を実行している。このとき、信号源10は電流指令信号iuとして周波数f1の交流信号iu1を出力していたが、直流成分と交流成分とを加算した次式で示す電流指令信号iuを信号源10から出力させても、上記式(5)及び式(6)の演算では直流成分は除去される。実施の形態2においては、信号源10は次式で示す直流成分と交流成分とを加算した電流指令信号iuを出力することを特徴としている。
iu=I2×{1+cos(2π・f1・t)} (25)
式(25)において、I2は定格電流に所定の係数(例えば、0から0.5までの間の所定値である。)を乗算した値とする。この電流I2を用いることにより、電流指令信号iuの符号は時刻tにかかわらず正となるので、デッドタイム誤差の影響を受けないという効果が得られる。
また、電流振幅をI2で与え、減算器11は、式(25)に示した電流指令信号iuと、電流検出器3により検出された電流iuとの電流偏差Δiを演算して、その電流偏差Δiを示す信号を偏差増幅器12に出力する。これに応答して、偏差増幅器12は式(3)を用いて演算した値を有する電圧指令信号vu1をインバータ2に出力する。インバータ2と電流検出器3と装置コントローラ4とから構成されるループ制御回路において、検出電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御されて、インバータ2は交流電圧vu及びvvを誘導電動機1に印加するので、周波数f1の値に係らず誘導電動機1の電流振幅を所定の値に設定できる。誘導電動機1の相互インダクタンスMは電流の振幅に依存して変化するが、電流振幅を所定の値に設定するように制御した結果、周波数f1の値に係らず、所定の電流振幅における相互インダクタンスMの値を測定することができる。
実施の形態3.
上記実施の形態1では、ステップS107において、式(12)及び式(13)を用いて、2次抵抗と相互インダクタンスを測定したが、ステップS102で漏れインダクタンスl及びσLsの測定が完了しているので、この値も利用して2次抵抗と相互インダクタンスを求めてもよい(以下、実施の形態3という。)。実施の形態3においては、実施の形態1と同様に、ステップS107では、式(5)、式(6)及び式(7)を用いて誘導電動機1の抵抗成分とリアクタンス成分を測定する。誘導電動機1の等価回路である図6において、当該等価回路のインピーダンスZ1は次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、ω1=2πf1であり、f1は電流指令信号iuの周波数である。上述したようにステップS107において、式(5)、式(6)及び式(7)を用いて誘導電動機1のインピーダンスの抵抗成分ZReとリアクタンス成分ZImを測定する。測定した抵抗成分ZReとリアクタンス成分ZIm及び式(26)から次式の連立方程式が得られる。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
ここで、2次抵抗Rrと相互インダクタンスMの値は、式(27)及び式(28)の連立方程式を解くことにより得られる。その解は次式で表される。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
M=Ls−l (31)
このように、定数算出コントローラ5は、インバータ2が交流給電を行う期間のうち、最も低い周波数で交流給電を行う期間において電流に対する電圧の同位相成分の大きさと、電流に対する電圧の直交位相成分の大きさを算出し、この算出値とステップS102において測定した漏れインダクタンスlとσLsに基づいて、誘導電動機1の2次抵抗と相互インダクタンスを算出する。この結果、漏れインダクタンスlとσLs及び1次抵抗Rsの測定が完了していれば、ステップS106の交流給電だけで、2次抵抗と相互インダクタンスを同時に測定できる効果に加え、漏れインダクタンス分を考慮したため、測定精度をさらに向上できるという効果がある。
実施の形態4.
上述の実施の形態に係るステップS107では、交流電流指令信号iを基準にした電圧指令信号vの同位相成分の振幅A1と直交位相成分の振幅B1とは、相互相関関数を用いた上記式(4)によって得ていたが、式(5)及び式(6)の代わりに次式を用いてもよい(以下、実施の形態4という。)。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
ここで、ΔA1は予め設定されたA1補正量であり、ΔB1は予め設定されたB1補正量である。
次いで、式(5)及び式(6)の代わりに、式(32)及び式(33)を用いる理由について以下に説明する。ステップS107における測定で、誘導電動機1の代わりに、インダクタンスLと抵抗Rとからなる図3のLR直列負荷回路を接続したときのインバータ2のキャリア周波数と、式(5)及び式(6)を用いて実験により得た振幅A1との関係を図17に示す。すなわち、図17は図2の定数測定処理において、誘導電動機1に代えて図3のLR直列負荷を接続したときのインバータ2のキャリア周波数に対する同位相成分の正規化振幅A1(実験値)を示すグラフである。ここで、ステップS106における電流指令信号iuは、実施の形態2で示した式(25)を用いて計算した。また、式(25)の単相交流給電される交流電力の周波数f1として2種類の周波数0.5Hz,1Hzを用いた。図17及び後述の図18において、●は0.5Hzの場合であり、○は1Hzの場合である。
図17の縦軸は同位相成分の振幅A1の理論値を基準とした正規化値であり、各キャリア周波数に対して実験したデータをプロットした。図17から明らかなように、理論値に対して測定された振幅A1の誤差は、キャリア周波数が高くなるほど大きくなることと、当該振幅A1の誤差は単相交流給電される交流電力の周波数により変化しないことがわかった。本実施の形態では、インバータ2のキャリア周波数を1000Hzに固定し、予め、同位相成分の振幅A1の補正量ΔA1の値を実験的に決定する。
図18は図2の定数測定処理において、誘導電動機1に代えて図3のLR直列負荷を接続したときのインバータ2のキャリア周波数に対する直交位相成分の正規化振幅B1(実験値)を示すグラフである。図18から明らかなように、理論値に対して測定された振幅B1の誤差は、キャリア周波数に対して若干減少するもののほとんど変化しないことと、当該振幅B1の誤差は単相交流給電される交流電力の周波数により変化しないことがわかった。従って、振幅B1についても、振幅A1と同様に予め振幅B1の補正量ΔB1の値を実験的に決定する。
以上説明したように、定数算出コントローラ5は、インバータ2が交流給電を行う期間のうち、最も低い周波数で交流給電を行う期間において、電流に対する電圧の同位相成分の振幅A1を算出し、この算出した振幅A1に対して予め設定していた所定の補正量ΔAを加算するとともに、電流に対する電圧の直交位相成分の振幅B1を算出し、この算出した振幅B1に対して予め設定していた所定の補正量ΔB1を加算する。この結果、インバータ2のキャリア周波数に起因する誤差を補正することができるので、電流に対する電圧の同位相成分の振幅A1と直交位相成分の振幅B1を、より高い精度で測定できる。従って、ステップS107における2次抵抗と相互インダクタンスの測定精度をさらに向上できる。
当該実施の形態において、上記補正量ΔA1,ΔB1を式(25)の電流I2の関数で表してもよい。これにより、電流振幅の設定を変更しても2次抵抗と相互インダクタンスの測定精度を向上させることができる。誘導電動機1の代わりに、インダクタンスLと抵抗Rとからなる図3のLR直列負荷回路を接続したときの上記電流I2と、式(5)及び式(6)を用いて実験により得た正規化振幅A1,B1との関係を図19に示す。すなわち、図19は図2の定数測定処理において、誘導電動機1に代えて図3のLR直列負荷を接続したときの電流I2に対する正規化振幅A1,B1(実験値)を示すグラフである。図19の縦軸は振幅A1の理論値を基準としたものであり、キャリア周波数を1000Hzに固定したときの各電流I2について実験したデータをプロットしたものである。
図17、図18及び19から明らかなように、理論値に対する測定した振幅A1,B1の誤差は、上記電流I2の関数であることと、その誤差は単相交流給電される交流電力の周波数に依存して変化しないことがわかった。従って、本実施の形態では、インバータ2のキャリア周波数を1000Hzに固定し、予め、振幅A1の補正量ΔA1の値を電流I2の関数として実験的に決定し、振幅B1についても同様に予め振幅B1の補正量ΔB1の値をI2の関数として実験的に決定する。これにより、電流振幅の設定を変更しても2次抵抗と相互インダクタンスの測定精度をさらに向上させることができるという効果がある。
実施の形態5.
上記実施の形態では、インバータ2は誘導電動機1に単相給電するために1相を開放したが、本発明はこれに限らず、誘導電動機1に回転磁界が生じなければよいので、例えば、1相を開放せずに、U相電圧指令信号vuとともに、次式でそれぞれ表されるV相電圧指令信号vv及びW相電圧指令信号vwをインバータ2に対して印加してもよい(以下、実施の形態5という。)。
vv=−vu÷2 (34)
vw=−vu÷2 (35)
上記式(34)及び式(35)で表された電圧指令信号vv,vwをインバータ2に対して与えることにより、誘導電動機1に単相給電を行うことができる。その結果、インバータ2から誘導電動機1へ接続している結線の1相を開放する作業を省略できる。
実施の形態6.
図20は本発明の実施の形態6に係る誘導電動機の定数測定装置の構成を示すブロック図である。図20において、交流回転機である誘導電動機1はインバータ2と接続されており、インバータ2は誘導電動機1に対して単相給電するために、U相、V相、W相の3相のうちの1相を開放している。ここで、開放方法は、インバータ2の1相分だけ上下アームを開放してもよいし、もしくは誘導電動機1の1相のみ結線を外してもよい。すなわち、インバータ2は、誘導電動機1に回転磁界を発生せず、回転トルクが生じないように、単相給電状態となるような交流電力を誘導電動機1に供給する。このことにより、誘導電動機1が負荷設備に接続されていて無負荷試験ができない場合でもその定数を測定できる。電流検出器3はインバータ2から誘導電動機1に流れる1相の電流iuを検出して、検出された電流iuを示す信号を減算器11に出力する。電流検出器3は、図1に示すように、U相電流を直接検出する方法以外に、公知の技術である、電力変換器のDCリンク電流から3相電流を検出する方法でもよい(例えば、非特許文献1参照。)。
装置コントローラ4Aは例えばディジタル計算機により構成され、具体的には、信号源10と、減算器11と、偏差増幅器12と、符号反転器13とを備えて構成され、誘導電動機1に印加すべき電圧指令信号vu,vvを演算して、電流指令vu,vvをインバータ2に出力する。また、定数算出コントローラ5Aは内部メモリ5mを有する例えばディジタル計算機により構成され、誘導電動機1に単相給電したときの電圧指令信号vuと電流指令信号iuの関係から、誘導電動機1の定数を算出して出力する。装置コントローラ4Aにおいて、信号源10は電流指令信号iuを発生して定数算出コントローラ5A及び減算器11に出力する。減算器11は、信号源10からの電流指令信号iuと、電流検出器3により検出された電流iuとの電流偏差Δiを演算して偏差増幅器12に出力する。さらに、偏差増幅器12は、入力される電流偏差Δiを所定の増幅定数で増幅して、増幅後の電圧指令信号vuを発生して、当該電圧指令信号vuをインバータ2及び定数算出コントローラ5Aに出力するとともに、入力信号を−1倍する符号反転器13を介してインバータ2に出力する。
図21は図20の誘導電動機1の静止時のT型等価回路の回路図である。図21において、誘導電動機1の等価回路は、漏れインダクタンスlと2次抵抗Rrとの直列回路に対して相互インダクタンスMが並列に接続され、当該並列回路に対して、漏れインダクタンスlと1次抵抗Rsとの直列回路が直列に接続されて構成される。本実施の形態においては、1次側と2次側の漏れインダクタンスは同一の値lと仮定し、この場合、1次インダクタンスと2次インダクタンスも同一の値Lと仮定する。
図22は図21のT型等価回路を、RX直列回路を用いて表したときの等価回路の回路図である。図22において、RX直列回路は、抵抗成分Rと、リアクタンス成分Xとの直列合成インピーダンスZを用いて表したものであり、この直列合成インピーダンスZは次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、ω=2πfであり、fは電流指令信号iuの周波数であり、ωは電流指令信号iuの角周波数であり、jは虚数単位である。上記式(36)より、抵抗成分R及びリアクタンス成分Xを求めると次式で表される。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
L=M+l (39)
ここで、Lは1次インダクタンスである。本実施の形態においては、1次インダクタンスLは2次インダクタンスLに等しいと仮定する。また、2次時定数Tr及び漏れ係数σは次式で表される。
Tr=L÷Rr (40)
σ=1−M÷L (41)
上記式(37)及び式(38)において、2種類の周波数f1,f2に対応したリアクタンス成分XをそれぞれX1,X2とすると次式を得る。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
ここで、ω1=2πf1及びω2=2πf2である。上記式(42)及び式(43)を、2次時定数Trと1次インダクタンスLを未知数とする連立方程式に書き換えると、2次時定数Trと1次インダクタンスLの値は次式の連立方程式を解くことにより得られる。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
すなわち、漏れ係数σと1次インダクタンスLの積である漏れインダクタンスσLが既知であるならば、直列合成インピーダンスZの抵抗成分Rを用いることなく、リアクタンス成分Xのみで2次時定数Trと1次インダクタンスLを計算することができる。なお、漏れインダクタンスσLの値は、上記実施の形態1のステップS102と同様の方法で測定してもよいし、設計値や概算値を利用してもよい。
ここで、2次時定数Trと1次インダクタンスLが求まれば、2次抵抗Rrは次式を用いて計算できる。
Rr=L÷Tr (46)
以上で示された方法により、定数算出コントローラ5Aは、2種類の周波数f1,f2に対応したリアクタンス成分X1,X2と漏れ係数σと1次インダクタンスLの積である漏れインダクタンスσLとの各値から、2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrを計算する。
図23は図20の定数測定装置により誘導電動機1の定数を測定するための定数測定処理を示すフローチャートである。上記リアクタンス成分X1,X2を測定し、誘導電動機1の定数を求める手順について図23を参照して以下に説明する。
図23のステップS201において、まず、漏れインダクタンスσLを測定し又は推定する。ここで、漏れインダクタンスσLを上述した方法も含め、どのような方法を用いて測定し又は推定してもよい。次いで、ステップS202において、周波数f1の交流給電を開始する。このとき、信号源10は電流指令信号iuとして、周波数f1の交流信号iu1を発生して減算器11及び定数算出コントローラ5Aに出力する。減算器11は信号源10からの電流指令信号iuと、電流検出器3により検出された電流iuとの電流偏差Δiを演算して、電流偏差Δiを示す信号を偏差増幅器12に出力する。これに応答して、偏差増幅器12は、次式に従って電圧指令信号vuを発生してインバータ2及び定数算出コントローラ5Aに出力するとともに、符号反転器13を介して電圧指令信号vv*としてインバータ2に出力する。
Figure 2006008846
ここで、ωccは電流応答設定値であり、Nは任意の定数であり、tは時刻を表す。また、電流偏差Δiは次式で表される。
Δi=iu−iu (48)
インバータ2と電流検出器3と装置コントローラ4Aとからなるループ制御回路において、電流検出器3で検出される誘導電動機1の電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御されて、インバータ2は交流電圧vu及びvvを誘導電動機1に印加する。
次いで、ステップS203において、定数算出コントローラ5Aは、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1を算出して測定する。この測定原理について以下に説明する。本実施の形態に係る誘導電動機の定数測定装置においては、装置コントローラ4Aの偏差増幅器12によって、誘導電動機1の電流iuを、電流指令で示す所望値iuに実質的に一致させるように制御できる。そこで、ステップS202において、電流指令信号iuとして、振幅I1及び周波数f1を用いて次式で表された交流信号iu1を発生して出力する。
iu1=I1cos(2πf1t) (49)
このとき、インバータ2の電圧指令信号vuと誘導電動機1の端子電圧vuをそれぞれ、vu1,vu1とする。インバータ2と電流検出器3と装置コントローラ4Aとからなるループ制御回路において、電圧指令信号vu1と誘導電動機1の端子電圧vu1が実質的に一致するように制御されたとき、交流信号iu1を基準とした電圧指令信号vu1の直交位相成分の振幅B1は、相互相関関数を用いた次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、T1は予め設定された積分時間である。上記式(50)において、上記積分時間T1を交流信号iu1の周期の整数倍に設定してもよい。
次いで、交流信号iu1の振幅I1が既知で、上記式(50)により交流信号iu1を基準としたときの電圧の直交位相成分B1を計算できることから、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1を次式により算出される。
X1=B1÷I1 (51)
ステップS204において周波数f1の交流給電を終了する。次いで、ステップS205において、ステップS202と同様の方法を用いて、周波数f2の交流給電を開始する。このとき、信号源10は電流指令信号iuとして、周波数f2の交流信号iu2を発生して減算器11及び定数算出コントローラ5Aに出力する。減算器11は信号源10からの電流指令信号iuと、誘導電動機1に供給されて電流検出器3により検出される電流iuとの電流偏差Δiを演算して、電流偏差Δiを示す信号を偏差増幅器12に出力する。これに応答して、偏差増幅器12は、式(47)を用いて電圧指令信号vuを発生してインバータ2に出力する。インバータ2と電流検出器3と装置コントローラ4Aとからなるループ制御回路において、誘導電動機1の電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御されて、インバータ2は交流電圧vu及びvvを発生して誘導電動機1に印加する。
ステップS206において、ステップS203の処理と同様に、定数算出コントローラ5Aは、上記周波数f1とは異なる周波数f2に対応したリアクタンス成分X2を算出して測定する。ステップS205において、電流指令信号iuとして、次式で表された、振幅I2及び周波数f2の交流信号iu2を発生して印加されたものとする。ここで、電流振幅I2は、上記電流指令信号iu1とiu2とで同じ値でも異なる値でもよい。
iu2=I2cos(2πf2t) (52)
このときのインバータ2の電圧指令信号vuと誘導電動機1の端子電圧vuをそれぞれvu2、vu2とする。電圧指令信号vu2と誘導電動機1の端子電圧vu2が実質的に一致するように制御されたとき、交流信号iu2を基準とした電圧指令信号vu2の直交位相成分の振幅B2は、相互相関関数を用いた次式で得られる。
Figure 2006008846
ここで、T2は予め設定された積分時間である。なお、式(53)において、上記積分時間T2を交流信号iu2の周期の整数倍に設定してもよい。
電流指令信号iu2の振幅I2が既知で、上記式(53)により電流指令信号iu2を基準としたときの電圧の直交位相成分B2を計算できることから、周波数f2に対応したリアクタンス成分X2は次式により算出される。
X2=B2÷I2 (54)
次いで、ステップS207において周波数f2の交流給電を終了する。さらに、ステップS208において、ステップS203とステップS206でそれぞれ測定された、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1と、周波数f2に対応したリアクタンス成分X2に基づいて、上記式(44)乃至式(46)を用いて、2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrとを算出する。ステップS208の処理が終了して当該誘導電動機の定数測定処理を終了する。なお、ステップS203及びステップS206において、電流指令信号(交流信号)iuを基準としたときの電圧の直交位相成分B1、B2を計算したが、本発明はこれに限らず、電流検出器3で検出された電流iuを基準としたときの電圧の直交位相成分を計算して、それらの値を振幅B1,B2としてもよい。
次いで、図23のステップS202及びステップS205において、インバータ2が給電するときの周波数について以下に説明する。まず、本実施の形態に係る誘導電動機の定数測定装置において、より高い精度で定数を測定可能な周波数の上限値について以下に説明する。
図23のステップS201において、漏れ係数σと1次インダクタンスLの積である漏れインダクタンスσLを測定し又は推定する。さらに、ステップS208において、上記式(44)及び式(45)を用いて誘導電動機1の2次時定数Trと1次インダクタンスLを計算するときに、ステップS201で測定される漏れインダクタンスσLの値が必要となる。しかしながら、上記漏れインダクタンスσLの値に誤差が含まれていると、たとえ上記リアクタンス成分X1,X2が正確に測定された場合でも、2次時定数Trと1次インダクタンスLの算出誤差が大きくなる。従って、リアクタンス成分Xが漏れインダクタンスσLの値に依存しない周波数帯域で測定する必要がある。
図24は定格容量が3.7kW、11kW及び22kWである誘導電動機1におけるリアクタンス成分X,X0の正規化周波数fn特性を示すグラフである。すなわち、図24では、上記式(38)のリアクタンス成分Xの計算式を用いて計算できるリアクタンス成分Xと、漏れ係数σを0とみなし漏れインダクタンスの影響を無視したときのリアクタンス成分X0との周波数特性をプロットしたものである。ここで、周波数fに対応した漏れインダクタンスの影響を無視したときのリアクタンス成分X0は、上記式(38)における漏れ係数σを0としたときの次式で表すことができる。
Figure 2006008846
ここで、ω=2πfであり、fは電流指令信号iuの周波数である。図24において、上記リアクタンス成分X,X0の大きさは、誘導電動機1の定格容量と周波数fに大きく依存するため、両軸とも以下の方法で正規化した。横軸の正規化周波数fnは、周波数f=1/(2πTr)[Hz]を1[p.u.]として正規化し、正規化周波数fnを対数スケールで表している。また、縦軸のリアクタンス成分Xと漏れインダクタンスの影響を無視したときのリアクタンス成分X0は、周波数f=1/(2πTr)[Hz]のときのリアクタンス成分Xの値を1[p.u.]として正規化した。
図24に示すように、誘導電動機1の定格容量に関係なく、正規化周波数fn=1[p.u.]=1/(2πTr)[Hz]近傍を境界として、この正規化周波数fn=1よりも高い周波数帯域では、リアクタンス成分Xと漏れインダクタンスの影響を無視したときのリアクタンス成分X0との間に差異が現れる。すなわち、漏れ係数σの値がリアクタンス成分Xに対して影響することを示している。従って、リアクタンス成分Xが漏れインダクタンスσLの値に依存しない周波数帯域は、おおよそ周波数f=1/(2πTr)[Hz]以下の周波数帯域であることがわかる。
また、図24から明らかなように、周波数f=1[p.u.]=1/(2πTr)[Hz]近傍がリアクタンス成分Xの極大となっている。周波数f=1/(2πTr)[Hz]近傍でリアクタンス成分Xが極大になることを、数式を用いて以下に説明する。リアクタンス成分Xは周波数f、すなわち角周波数ωの関数である。ここで、上記式(38)で表されたリアクタンス成分Xの算出式の両辺を角周波数ωで微分すると、次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、σωTr≪1としている。dX/dω=0のとき、リアクタンス成分Xは極大となり、そのときの角周波数ωmaxは次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、3σ≪1としている。上記角周波数ωmaxの周波数fmaxは次式で表される。
Figure 2006008846
以上から、周波数f=1/(2πTr)[Hz]近傍でリアクタンス成分Xが極大となることが数式を用いて示された。
また、電流指令信号iuを基準とした電圧指令信号vuの直交位相成分の振幅Bが大きい程、インバータ2に起因する電圧誤差の影響を受けにくくなる。従って、周波数fを、上記Bが極大となるような周波数に設定すると、より高い精度で定数を測定することができる。本実施の形態において、インバータ2が誘導電動機1に給電する周波数f1,f2にかかわらず、電流指令信号iuの振幅I1,I2を一定値Iとする場合、電流指令信号iuを基準とした電圧指令信号vuの直交位相成分の振幅Bは、電流指令信号iuの振幅Iと周波数fに対応して変化するリアクタンス成分Xとの積となる。従って、上記振幅Bが極大となる周波数は、リアクタンス成分Xが極大となる周波数と一致する。すなわち、周波数fは1/(2πTr)[Hz]近傍で上記振幅Bも極大となる。
図25は実施の形態6において、定格容量が3.7kWである誘導電動機1におけるリアクタンス成分Xの測定誤差の正規化周波数fn特性を示すグラフである。すなわち、図25は、周波数fに対応したリアクタンス成分Xの誤差を、図23のステップS201乃至S204の方法で測定したときの試験結果である。図25において、横軸の正規化周波数fnは、周波数f=1/(2πTr)[Hz]を1[p.u.]として正規化したものである。図25に示すように、周波数fが1/(2πTr)[Hz]より高い周波数帯域において、リアクタンス成分Xの測定精度が劣化することを発見した。このことからも、周波数fは1/(2πTr)[Hz]より低い周波数帯域に設定する方がよい。以上のことから、ステップS202及びステップS205において、インバータ2が誘導電動機1に給電するときの周波数の上限は、周波数f=1/(2πTr)[Hz]となる。
さらに、本実施の形態においても、より高い精度で定数を測定できる周波数の下限値については、実施の形態1と同様に考えることができ、三角波比較型PWM変調法を用いてディジタル処理する場合は、上記式(19)により定義した電圧分解能Cを用いて考察できる。上述の図13から明らかなように、誘導電動機1の定格容量に関係なく、周波数fと上記振幅Bの関係はほぼ一致し、周波数fが0.006[Hz]以上ならば、電流指令信号iuを基準とした電圧指令信号vuの直交位相成分の振幅Bはインバータ2の電圧分解能Cより大きくなることがわかる。ここで、定数測定精度をさらに向上させるには、上記除算値B/Cが大きくなるように周波数fの下限を決定すればよい。例えば、除算値B/Cを5に設定するならば周波数を0.03[Hz]以上に設定し、除算値B/Cを10以上に設定するならば周波数を0.06[Hz]以上に設定することが好ましい。
図26は実施の形態6において、定格容量が3.7kW、11kW及び22kWである誘導電動機1におけるリアクタンス成分Xの正規化周波数fn特性を示すグラフである。すなわち、図26においては、図5と同様に、定格容量が3.7kW、11kW及び22kWである誘導電動機1について、上記式(38)を用いて計算されるリアクタンス成分Xを正規化周波数fnに対してプロットしたものである。なお、図26において、図5と同様に、横軸の正規化周波数fnは、周波数f=1/(2πTr)[Hz]を1[p.u.]として正規化したものである。また、縦軸のリアクタンス成分Xは、周波数f=1/(2πTr)[Hz]のときのリアクタンス成分Xの値を1[p.u.]として正規化した正規化されたリアクタンス成分である。
図26に示すように、誘導電動機1の定格容量に関係なく、正規化周波数fn=0.2[p.u.]=0.2/(2πTr)[Hz]を境界として、この周波数より低い周波数帯域のリアクタンス成分Xは周波数fと比例関係となる。これは上記式(38)のリアクタンス成分Xの計算式において、周波数fすなわち角周波数ωが非常に低いことから、σωTr≪1であり、また、ωTr≪1であるため、上記式(38)のリアクタンス成分Xの計算式を次式で近似できるからである。
X≒ωL (59)
従って、上記式(59)の近似が成立する周波数帯域で、2種類の角周波数ω1,ω2に対応したリアクタンス成分X1,X2をそれぞれ測定すると、リアクタンス成分X1,X2において次式の近似が満たされる。
X1≒ω1・L (60)
X2≒ω2・L (61)
上記式(60)及び式(61)の近似が満たされると、上記式(44)における(ω2X1−ω1X2)の値が非常に小さくなり、ゼロに近づく。一方、上記式(44)における(ω2X1−ω1X2)の値を0に比較して十分に大きくするためには、周波数f1とf2を周波数0.2/(2πTr)[Hz]以上の周波数帯域に設定する。このようにすれば、(ω2X1−ω1X2)の値が0に比較して十分に大きくなり、2次時定数Trをより高い精度で測定できる。以上から、より高い精度で2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrを測定するためには、2次時定数Trの値に基づいてインバータ2が誘導電動機1に給電する周波数f1,f2を決定すればよいことがわかった。
しかしながら、本実施の形態で示した誘導電動機の定数測定装置においては、2次時定数Trを求めることが目的であるため、周波数f1の1回目の交流給電を実行するステップS102の段階では、2次時定数Trの値は未知である。そこで、定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機を対象に周波数1/(2πTr)の値を測定したところ、図27の結果を得た。図27は実施の形態6において、定格容量が1.5kWから55kWまでである誘導電動機1における定格容量に対する周波数1/(2πTr)の特性を示すグラフである。
図27から明らかなように、定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機について、1/(2πTr)の周波数帯域は、0.24Hz以上で1.5Hz以下であることがわかる。また、定格容量が1.5kWから45kWまでの誘導電動機について、1/(2πTr)の周波数帯域は、0.3Hz以上で1.5Hz以下であることがわかる。さらに、例えば、エレベータに用いられる誘導電動機1は、定格容量3kW以上が主流である。定格容量3kWの誘導電動機1の周波数1/(2πTr)は概ね1.2Hzである。さらに、定格容量が1.5kWから45kWまでの誘導電動機について、0.2/(2πTr)の周波数帯域は、0.06Hz以上で0.3Hz以下であることがわかる。
インバータ2の電圧分解能Cで決定される周波数fの下限が0.006Hzであることを考慮し、図23のステップS202において交流給電される交流電力の周波数f1と、ステップS205において交流給電される交流電力の周波数f2を、0.006Hz以上で1.5Hz以下の周波数範囲内に設定することにより、少なくとも定格容量1.5kWから55kWまでの誘導電動機1について、周波数f1,f2にそれぞれ対応したリアクタンス成分X1,X2をより高い精度で測定できる。その結果、少なくとも定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機1の2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrを、より高い精度で測定できるという特有の効果が得られる。
また、インバータ2の電圧分解能Cと電流指令信号iuを基準とした電圧指令信号vuの直交位相成分の振幅Bの比である除算値B/Cが10以上となる周波数fの下限は0.06Hzである。定格容量が45kWの誘導電動機1の0.2/(2πTr)も0.06Hzである。このことを考慮し、図23のステップS202において交流給電される交流電力の周波数f1と、ステップS205において交流給電される交流電力の周波数f2を、0.06Hz以上で1.5Hz以下の周波数範囲内に設定することにより、少なくとも定格容量1.5kWから45kWまでの誘導電動機1について、周波数f1,f2にそれぞれ対応したリアクタンス成分X1,X2をより高い精度で測定できる。その結果、少なくとも定格容量が1.5kWから45kWまでの誘導電動機1の2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrをより高い精度で測定できるという特有の効果が得られる。
ここで、周波数fを0.06Hz以上に設定すると、インバータ2の電圧分解能Cに起因する影響を取り除く効果が得られると同時に、定格容量が少なくとも1.5kWから45kWまでの誘導電動機1において、上記式(44)の(ω2X1−ω1X2)の値を1に比較して十分に大きくし、誤差を少なくする効果も得られる。
さらに、図23のステップS202において交流給電される交流電力の周波数f1と、ステップS205において単相交流給電される交流電力の周波数f2を、0.06Hz以上で1.2Hz以下の周波数範囲内に設定することにより、少なくともエレベータに用いられる誘導電動機1について周波数f1,f2にそれぞれ対応したリアクタンス成分X1,X2をより高い精度で測定できる。その結果、少なくともエレベータに用いられる誘導電動機1の2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrをより高い精度で測定できるという特有の効果が得られる。
以上から、インバータ2の電圧分解能Cに起因する影響と、誘導電動機1の漏れインダクタンスlに起因する影響を除くことを目的とし、インバータ2は、0.006Hz以上で1.5Hz以下の周波数範囲で交流電力を誘導電動機1に供給する。この交流電力の給電を少なくとも2種類の電力で行うことにより、誘導電動機1が負荷設備に接続されている場合でも、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trをより高い精度で測定することができる。
次いで、2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrを求めるときに、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1と周波数f2に対応したリアクタンス成分X2から求めることの利点を、インバータ2で発生する電圧誤差の点から以下に説明する。
電圧指令信号vuとインバータ2が誘導電動機1に印加する電圧vuとの間には、インバータ2の内部のデッドタイム電圧に起因する電圧誤差が発生する。また、インバータ2の内部の素子がオン状態のときに発生する電力損失により、オン電圧と称されるスイッチング素子での電圧降下が発生し、電圧誤差の原因となる。しかしながら、本実施の形態においては、上記の電圧誤差は直列合成インピーダンスZの抵抗成分Rのみに影響を及ぼし、リアクタンス成分Xには影響を及ぼさない。
図28は、実施の形態6において、定格容量が3.7kWの誘導電動機1の周波数0.18Hzに対応した直列合成インピーダンスZの抵抗成分Rとリアクタンス成分Xの測定誤差Rerr,Xerrを表したグラフである。ここで、リアクタンス成分Xを図23のステップS201乃至ステップS204の処理の方法を用いて測定した。インバータ2のデッドタイムに起因する電圧誤差とオン電圧に起因する電圧誤差に対して、電圧補正は行っていない。
抵抗成分Rは、図23のステップS203において、電流指令の交流信号iu1を基準とした電圧指令信号vu1の直交位相成分の振幅B1の測定と並行して、相互相関関数を用いた次式を用いて計算できる。
Figure 2006008846
ここで、I1は交流信号iu の振幅であり、v1は電圧指令である。また、T1は予め設定された積分期間であり、上記式(50)における積分期間T1と同様に設定される。さらに、図28において、縦軸の抵抗成分Rの測定誤差Rerrとリアクタンス成分Xの測定誤差Xerrは次式のように定義される。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
ここで、Rbaseは抵抗成分Rの理論値であり、Xbaseはリアクタンス成分Xの理論値である。また、Rmは抵抗成分Rの測定値であり、Xmはリアクタンス成分Xの測定値である。上記理論値Rbase、Xbaseは、既知である定格容量3.7kwの誘導電動機1の1次抵抗Rs、1次インダクタンスL、2次抵抗Rr、2次時定数Trの真値を上記式(37)及び式(38)に代入して計算された値である。図28から明らかなように、インバータ2の内部のデッドタイム電圧とスイッチング素子のオン電圧に起因する電圧誤差の影響は、抵抗成分Rには測定誤差として現れるが、リアクタンス成分Xには影響しないことがわかった。
従って、2種類の周波数に対応した誘導電動機1の等価回路の直列合成インピーダンスのリアクタンス成分Xを、2種類の周波数の単相交流電力を時分割で給電して計算することによって、インバータ2の内部のデッドタイム電圧とスイッチング素子のオン電圧に起因する誤差に影響されることなく、1次インダクタンスと2次抵抗と2次時定数をより高い精度で測定することができる。
また、本実施の形態において、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trを求めるプロセスにおいて、1次抵抗Rsの値が不要である。すなわち、1次抵抗Rsの測定を省略することができる。とって代わって、1次抵抗Rsを別途測定した場合でも、1次抵抗Rsの測定誤差が、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trの精度に影響を及ぼさないという効果が得られる。
以上から、定数算出コントローラ5Aは、少なくとも2種類の周波数に対応した誘導電動機1の等価回路の直列合成インピーダンスのリアクタンス成分Xを計算する。インバータ2の内部のデッドタイム電圧とスイッチング素子のオン電圧に起因する誤差は、誘導電動機1の等価回路の直列合成インピーダンスの抵抗成分Rに現れる。この計算を行うことにより、1次抵抗誤差と上記インバータ2の内部のデッドタイム電圧とスイッチング素子のオン電圧に起因する誤差に影響されることなく、誘導電動機1が負荷設備に接続されている場合でも、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trをより高い精度で測定することができる。
また、インバータ2が上記周波数範囲の交流電力を2回給電することによって、電流振幅I1とI2、周波数f1とf2の値を所望の値に設定でき、誘導電動機1が負荷設備に接続されている場合でも、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trをより高い精度で測定することができる。
実施の形態6の変形例.
上記の実施の形態6においては、2種類の周波数fに対応した誘導電動機1の等価回路の直列合成インピーダンスのリアクタンス成分Xから誘導電動機1の定数を計算したが、本発明はこれに限らず、3種類以上の周波数fに対応した誘導電動機1の等価回路の直列合成インピーダンスのリアクタンス成分Xから誘導電動機1の定数を計算してもよい(以下、実施の形態6の変形例という。)。
例えば、周波数f1,f2に対応したリアクタンス成分X1,X2以外に、周波数f1,f2とは異なる周波数f3に対応したリアクタンス成分X3を、上記リアクタンス成分X1,X2を測定した方法と同様に測定する。すなわち、周波数fとリアクタンス成分Xの組合せとして、3組(f1,X1),(f2,X2),(f3,X3)測定できる。これらの組合せのうち、任意の2組を用いて、上記式(44)乃至式(46)から、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trを算出し、その結果を1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trの測定値とする。
3種類の周波数に対応したリアクタンス成分を測定する場合は、(f1,X1)(f2,X2)(f3,X3)の3組のうち2組を選択する方法は3通りある。従って、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trの組を最大3組を測定することができ、得られた最大3個の定数L,Rr,Trに関して、各定数毎に平均値を計算し、上記計算された平均値を上記定数L,Rr,Trの測定値としてもよい。このように、上記測定された複数個の定数L,Rr,Trに関して、各定数毎に平均値を計算することにより、さらに定数の測定精度をさらに向上させることができる。
さらに、4種類以上の周波数に対応したリアクタンス成分を測定する場合も、3種類の周波数に対応したリアクタンス成分を計算した方法と同様の方法で、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trを計算できる。
実施の形態7.
上記実施の形態6では、図23のステップS202及びS205の2回交流の給電を実行し、ステップS203及びS206において、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1と、周波数f2に対応したリアクタンス成分X2とからそれぞれ計算していた。本発明はこれに限らず、周波数f1,f2の2種類の成分を重畳した電力を給電し、1回の交流給電で2個のリアクタンス成分X1,X2を以下のように計算してもよい(以下、実施の形態7という。)。
図20の信号源10は、電流指令信号iuとして周波数f1の交流信号と、周波数f2の交流信号を重畳してなる、次式で表される重畳交流信号iu3を発生して出力すると、周波数f1,f2の2種類の成分を重畳した交流電力をインバータ2によって誘導電動機1に給電することができる。
iu3
=I01cos(2πf1t)+I02cos(2πf2t) (65)
ここで、I01は周波数f1成分の電流振幅であり、I02は周波数f2成分の電流振幅である。
図29は本発明の実施の形態7に係る誘導電動機の定数測定処理を示すフローチャートである。実施の形態7に係る誘導電動機の定数測定処理について図29を参照して以下に説明する。
図29のステップS301において、図23のステップ201と同様に漏れインダクタンスσLを測定し又は推定する。次いで、ステップS302において、2種類の周波数f1,f2の成分を重畳した交流信号の給電を開始する。このとき、信号源10は電流指令信号iuとして、上記式(65)で表された重畳交流信号iu3を発生して減算器11及び定数算出コントローラ5Aに出力する。減算器11は、電流指令信号iu(=iu3)と、電流検出器3で検出された電流iuとの電流偏差Δiを演算し、演算された電流偏差Δiを示す信号を偏差増幅器12に出力する。これに応答して、偏差増幅器12は、上記式(47)を用いて電圧指令信号vuを演算して、電圧指令信号vuを発生してインバータ2に出力する。電流検出器3により検出される電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御されて、インバータ2は交流電圧vu及びvvを発生して誘導電動機1に印加する。
次いで、ステップS303において、定数算出コントローラ5Aは周波数f1に対応したリアクタンス成分X1を算出して測定する。また、ステップS304において、定数算出コントローラ5Aは周波数f2に対応したリアクタンス成分X2を算出して測定する。ここで、ステップS303及びS304においてリアクタンス成分X1,X2を測定するための測定原理について以下に説明する。
図29のステップS302において、上記式(65)を用いて計算された電流指令信号iu3を電流指令信号iuとして印加したときにおける、インバータ2の電圧指令信号vuと誘導電動機1の端子電圧vuをそれぞれvu3、vu3とする。電圧指令信号vu3と誘導電動機1の端子電圧vu3が実質的に一致するように制御されたとき、電流指令信号iu3を基準とした、電圧指令信号vu3の周波数f1に対応した直交位相成分の振幅B01は、相互相関関数を用いて次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、T01は予め設定された積分時間である。また、上記式(66)において、上記積分時間T01を周期1/f1の整数倍に設定してもよい。同様に、交流信号iu3を基準とした、電圧指令信号vu3の周波数f2に対応した直交位相成分の振幅B02は次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、T02は予め設定された積分時間である。なお、上記式(67)において、上記積分時間T02を周期1/f2の整数倍に設定してもよい。従って、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1と、周波数f1に対応したリアクタンス成分X2はそれぞれ次式により計算される。
X1=B01÷I01 (68)
X2=B02÷I02 (69)
図29のフローチャートに戻り、ステップS305において交流給電を終了する。そして、ステップS306において、ステップS303とS304において測定された、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1と、周波数f2に対応したリアクタンス成分X2とに基づいて、上記式(44)乃至式(46)を用いて、2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrとを計算する。当該ステップS306の処理を実行した後、当該誘導電動機の定数測定処理を終了する。
当該実施の形態7においても、実施の形態6と同様に、電流指令信号iuではなく、電流検出器3で検出される電流iuを基準としたときの電圧の直交位相成分を計算して、それらの振幅値をそれぞれB01、B02してもよい。
実施の形態7においては、交流の給電を少なくとも1回実施すれば良いので、実施の形態6と比較して短時間で誘導電動機1の定数を測定することができる。
以上より、インバータ2の電圧分解能に起因する影響と、誘導電動機1の漏れインダクタンスに起因する影響を除くことを目的とし、インバータ2は、少なくとも2つの種類の周波数成分を有する重畳交流電力を誘導電動機1に供給する。この重畳交流給電を行うことにより、インバータ2の電圧分解能Cで決定される周波数fの下限が0.006Hzであることを考慮し、図29のステップS302において重畳する電力の周波数f1とf2を、0.006Hz以上で1.5Hz以下の周波数範囲内に設定することにより、少なくとも定格容量1.5kWから55kWまでの誘導電動機1について、周波数f1,f2にそれぞれ対応したリアクタンス成分X1,X2をより高い精度で測定できる。その結果、少なくとも定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機1の2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrを、短時間でより高い精度で測定できる。
また、インバータ2の電圧分解能Cと電流指令信号iuを基準とした電圧指令信号vuの直交位相成分の振幅Bの比である除算値B/Cが10以上となる周波数fの下限が0.06Hzである。定格容量が45kWである誘導電動機の周波数0.2/(2πTr)も0.06Hzである。このことを考慮し、図29のステップS302において重畳する交流電力の周波数f1とf2を、0.06Hz以上で1.5Hz以下の周波数範囲内に設定することにより、少なくとも定格容量1.5kWから45kWまでの誘導電動機1について、周波数f1,f2にそれぞれ対応したリアクタンス成分X1,X2をより高い精度で測定できる。その結果、少なくとも定格容量が1.5kWから45kWまでの誘導電動機1の2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrを、短時間でより高い精度で測定できる。
またさらに、ステップ203で重畳する電力の周波数f1とf2を、0.06Hz以上で1.2Hz以下の範囲内にすることにより、少なくともエレベータに用いられる誘導電動機1について周波数f1,f2に対応したリアクタンス成分X1,X2をより高い精度で測定できる。その結果、少なくともエレベータに用いられる回転機の2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrを、短時間でより高い精度で測定できる。
さらに、2つの種類の0.006Hz以上で1.5Hz以下の周波数成分を有する交流電力を重畳し、少なくとも1回給電することによって、電流振幅I01とI02、周波数f1とf2の値を所望の値に設定でき、測定精度をさらに向上させることができる。
実施の形態8.
上記実施の形態6では、図23のステップS202及びステップS205において、信号源10から出力される電流指令信号iuに基づいて、誘導電動機1の電流iuが電流指令信号iuに実質的に一致するように制御されて、インバータ2は対応した交流電力を誘導電動機1に給電する。本発明はこれに限らず、電流指令信号iuではなく、電圧指令信号vuに基づいて、インバータ2によって交流電力を誘導電動機1に給電し、電圧指令信号vuと電流検出器3で検出される電流iuとの関係から、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1と周波数f2に対応したリアクタンス成分X2を計算してもよい(以下、実施の形態8という。)。
図30は本発明の実施の形態8に係る誘導電動機の定数測定装置の構成を示すブロック図である。図30において、誘導電動機1とインバータ2と電流検出器3は、図20に示す実施の形態6に係る誘導電動機の定数測定装置のそれらと同様である。本実施の形態においても単相給電時の一例について以下に説明する。
装置コントローラ4Bは例えばディジタル計算機により構成され、信号源8Aと符号反転器13とを備えて構成される。装置コントローラ4Bにおいて、信号源8Aは電圧指令信号vuを発生してインバータ2と定数算出コントローラ5Bと符号反転器13とに出力する。符号反転器13は、入力される電流指令信号vuを−1倍することにより符号反転後の電圧指令信号vvを演算してインバータ2に出力する。従って、装置コントローラ4Bは誘導電動機1へ印加すべき電圧指令信号vu及びv を演算してインバータ2に出力する。また、定数算出コントローラ5Bは例えばディジタル計算機により構成され、誘導電動機1に単相給電したときの信号源8Aからの電圧指令信号vuと、電流検出器3で検出された電流iuとの関係から誘導電動機1の定数を算出して出力する。
図31は図30の定数測定装置により実行される誘導電動機の定数測定処理を示すフローチャートである。当該誘導電動機の定数測定処理について図31を参照して以下に説明する。
図31において、まず、ステップS401において図23のステップS201と同様に漏れインダクタンスσLを測定し又は推定する。次いで、ステップS402において、周波数f1の交流給電を開始する。このとき、信号源8aは電圧指令信号vuとして周波数f1の交流信号vuaを発生して出力し、交流信号vuaに従って、インバータ2は交流電圧vu及びvvを誘導電動機1に印加する。そして、ステップS403において、ステップS402の交流給電により、電流検出器3で検出される誘導電動機1の電流iuaから、振幅Iaを測定する。さらに、ステップS404において、定数算出コントローラ5Bは周波数f1に対応したリアクタンス成分X1を算出して測定する。以下に、ステップS404においてリアクタンス成分X1を測定する測定原理について説明する。
図31のステップS402において、電圧指令信号vuとして、次式で表された振幅Va及び周波数f1を有する交流信号vuaを印加したと仮定する。
vua=Vacos(2πf1t) (70)
このときの誘導電動機1の電流をiuaとすると、電流iuaを基準とした電圧指令信号vuaの直交位相成分の振幅Baは、相互相関関数を用いた次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、Taは予め設定された積分時間である。上記式(71)において、上記積分時間Taを交流信号vuaの周期の整数倍に設定してもよい。上記電流iuaの振幅Iaを図31のステップS403において測定し、上記式(71)を用いて上記電流iuaを基準としたときの電圧の直交位相成分の振幅Baを計算できることから、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1を次式を用いて計算できる。
X1=Ba÷Ia (72)
図31のフローチャートに戻り、ステップS405において周波数f1の交流給電を終了する。次いで、ステップS406において、ステップS402の処理と同様の方法を用いて、周波数f2の交流給電を実行する。このとき、信号源8Aは電圧指令信号vuとして周波数f2の交流信号vubを発生してインバータ2と符号反転器13と定数算出コントローラ5Bとに出力する。これに応答して、交流信号vubに従って、インバータ2は交流電圧vu及びvvを誘導電動機1に印加する。そして、ステップS407において、ステップS406の交流給電により、電流検出器3で検出される誘導電動機1の電流iubから、振幅Ibを測定する。さらに、ステップS408において、定数算出コントローラ5Bは、周波数f2に対応したリアクタンス成分X2を以下のように算出して測定する。ステップS406において、電圧指令信号vuとして、次式で表された、振幅Vb及び周波数f2を有する電圧指令信号vubを印加したと仮定する。
vub=Vbcos(2πf2t) (73)
このときの誘導電動機1の電流をiubとすると、電流iubを基準とした交流信号vubの直交位相成分の振幅Bbは、相互相関関数を用いた次式で得られる。
Figure 2006008846
ここで、Tbは予め設定された積分時間である。上記式(74)において、上記積分時間Tbを交流信号vubの周期の整数倍に設定してもよい。上記電流iubの振幅IbをステップS407で測定し、上記式(74)を用いて電流iubを基準としたときの電圧の直交位相成分の振幅Bbを計算できることから、周波数f2に対応したリアクタンス成分X2を次式を用いて計算できる。
X2=Bb÷Ib (75)
図31のフローチャートに戻り、ステップS409において周波数f2の交流給電を終了する。次いで、ステップS410において、上記ステップS404及びステップS408においてそれぞれ測定された、周波数f1に対応したリアクタンス成分X1と、周波数f2に対応したリアクタンス成分X2を用いて、上記式(44)乃至式(46)を用いて、2次時定数Trと1次インダクタンスLと2次抵抗Rrとを計算する。ステップ410の処理が終了した後、当該誘導電動機の定数測定処理を終了する。
実施の形態8においては、実施の形態6で必要な偏差増幅器12が不要となり、誘導電動機の定数測定装置の構成を簡単化できる。また、実施の形態6との相違点は、電流指令信号iuではなく、電圧指令信号vuに基づいて、実施の形態6で示した周波数範囲で、インバータ2によって誘導電動機1に給電する点であることから、実施の形態6と同様の作用効果も得られる。
実施の形態9.
上述の実施の形態6乃至8では、インバータ2は誘導電動機1に単相給電するために1相を開放したが、本発明はこれに限らず、誘導電動機1に回転磁界が発生しなければ良く、例えば、1相を開放せずに、U相電圧指令信号vuとともに、上記式(34)及び式(35)で表される、V相電圧指令信号v 、W相電圧指令信号vwを計算してインバータ2に印加してもよい(以下、実施の形態9という。)。
図32は本発明の実施の形態9に係る誘導電動機の定数測定装置の構成を示すブロック図である。図32に図示された実施の形態9に係る誘導電動機の定数測定装置は、図20に図示された実施の形態6に係る誘導電動機の定数測定装置に比較して、以下の点が異なる。
(1)装置コントローラ4Aに代わる装置コントローラ4Cにおいて、偏差増幅器12からの電圧指令信号vuを−1倍して電圧指令信号vvを演算してインバータ2に出力する符号反転器13の代えて、電指令信号vuを−1/2倍して電指令信号vvを演算してインバータ2に出力する乗算器13aと、電指令信号vuを−1/2倍して電指令信号vwを演算してインバータ2に出力する乗算器13bとを備えたこと。
(2)誘導電動機1とインバータ2との間を3相で結線したこと。
以上のように構成された実施の形態9においては、上記式(34)及び式(35)で表される、V相電圧指令信号v 、W相電圧指令信号vwを計算してインバータ2に印加することにより、誘導電動機1に単相給電を行うことができ、定数算出コントローラ5Cは電流指令信号iuと電圧指令信号vuとに基づいて誘導電動機1の電気的定数を計算する。その結果、インバータ2から誘導電動機1へ接続している結線の1相を開放する作業を省略できる。
実施の形態10.
上記実施の形態6において、図23のステップS202及びステップS205で設定する電流指令信号iuの振幅I1、I2に関する設定指針が示されていなかった。誘導電動機1の1次インダクタンスLの値は、電流振幅に依存して変化し、定格励磁電流(無負荷電流)の振幅における1次インダクタンスLの値を用いて、誘導電動機1をベクトル制御することが望ましいとされている。従って、定格励磁電流(無負荷電流)の振幅を上記振幅I1、I2の設定値としてもよい。例えば、定格励磁電流の振幅の概数値I0を、誘導電動機1の銘板から次式を用いて計算し、上記計算された定格励磁電流の振幅の概数値I0を上記振幅I1、I2の設定値としてもよい(以下、実施の形態10という。)。
Figure 2006008846
ただし、P100は誘導電動機1の定格容量(定格電力)であり、I100はその定格電流であり、V100はその定格電圧であり、F100はその定格周波数であり、N100はその定格回転数であり、Pmはその極対数である。これらの値は誘導電動機1の銘板に記載されている。また、上記式(76)において、H1、H2、H3、H4は予め決められた定数であって、様々な誘導電動機1の銘板から経験的に得られた値である。
以上のように構成された実施の形態10によれば、電流指令信号iuの振幅I1、I2を定格励磁電流の相当値に設定することにより、誘導電動機1をベクトル制御する際に最適な、定格励磁電流の振幅における1次インダクタンスLを測定することができる。また、上記式(76)を用いて電流指令信号iuの振幅I1、I2を計算することにより、定格励磁電流の振幅を推定できるという特有の効果を有する。
実施の形態11.
上記実施の形態10において、図23のステップS202及びステップS205において設定する電流指令信号iuの振幅I1、I2を定格励磁電流の振幅概数値とした。このとき、図21に図示された相互インダクタンスMに対応する励磁回路に、定格励磁電流が流れるように電流指令信号iuを設定すれば、さらに高い精度で1次インダクタンスを計算することができる。しかしながら、誘導電動機1の電流iuは、励磁回路と2次回路に分流し、電流指令信号iuの振幅I1、I2を同一の定格励磁電流I0に設定した場合、励磁回路に流れる電流の振幅はI0より小さくなる。また、励磁回路のインピーダンスは周波数fに依存して変化するため、図23のステップS202及びステップS205においてそれぞれ設定する周波数f1とf2に関係なく電流指令信号iuの振幅I1、I2を一定とすると、図23のステップS202及びステップS205において、励磁回路に流れる電流の振幅が異なるようになる。そこで、図23のステップS202及びステップS205で設定される電流指令信号iuの振幅Iを、次式の電流I00で与え、周波数fに依存して振幅Iを可変にしてもよい(以下、実施の形態11という。)。
Figure 2006008846
上記式(77)において、電流指令信号iuの振幅IをI00で与える理由を以下に説明する。図21に示す誘導電動機1の停止時のT型等価回路において、漏れインダクタンスlを無視したときに、誘導電動機1の電流iuの振幅をI0とし、周波数をfとした場合、励磁回路に流れる電流の振幅Imは次式で近似される。
Figure 2006008846
従って、上記式(77)で電流指令信号iuの振幅Iを与えると、励磁回路に流れる電流の振幅がI0となる。ただし、上記式(77)で電流指令信号iuの振幅Iを設定するためには、2次時定数Trの値が必要となる。しかしながら、本実施の形態に係る誘導電動機の定数測定装置においては、2次時定数Trを求めることが目的であるため、1回目の交流給電を実施する図23のステップS202の段階では、2次時定数Trの値は未知である。そこで、設計値や概算値を利用して2次時定数Trの概数値を得る。得られた2次時定数Trの概数値を用いて、周波数f1,f2を設定してもよい。従って、上記式(77)を用いて電流指令信号iuの振幅Iを決定することにより、定格励磁電流の振幅における1次インダクタンスLの測定精度をさらに向上できる。
実施の形態12.
上記実施の形態6では、図23のステップS202及びステップS205において、信号源10は電流指令信号(交流信号)iuを出力し、ここで、ステップS202では周波数f1の電流指令信号iuを出力し、ステップS205では周波数f2であって平均値0Aの電流指令信号iuを出力していた。本発明はこれに限らず、次式に示す直流成分と交流成分とを加算した電流指令信号iu1,iu2を出力するようにしてもよく、これにより、上記式(50)及び式(53)の演算では直流成分は除去される。従って、信号源10は、上記式(49)及び式(52)の代わりに、次式に示す直流成分と交流成分とを加算した信号を出力するようにしてもよい(以下、実施の形態12という。)。
iu1=I001{Kdc1+cos(2πf1t)} (79)
iu2=I002{Kdc2+cos(2πf2t)} (80)
ここで、I001とI002は交流電流成分の振幅であり、Kdc1とKdc2は任意の直流成分である。直流成分Kdc1及びKdc2を1以上に設定し、もしくは−1以下に設定すれば、電流指令信号iu1及びiu2の符号は時刻tにかかわらず常に同一となる。また、電流I001とI002は同一の値でも、実施の形態11に示した方法に基いて互いに異なる値に設定してもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、電流指令信号iu1及びiu2の符号が時刻tにかかわらず常に同一となるように設定した上で、信号源10が上記式(79)及び式(80)を用いて計算された電流指令信号iu1及びiu2を出力することにより、デッドタイム電圧に起因する電圧誤差の影響を受けないという特有の効果が得られる。
実施の形態13.
上記実施の形態6では、図23のステップS202及びステップS205において、信号源10は電流指令信号iuを出力し、ここで、ステップS202では周波数f1、ステップ205では周波数f2の正弦波交流信号を出力していた。本発明はこれに限らず、正弦波交流信号ではなく矩形波交流信号を出力するようにしても、出力する矩形波基本波成分の振幅と位相を特定できれば、上記実施の形態6と同様の方法で1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trを測定することができる。従って、電流指令信号iuを正弦波信号ではなく矩形波信号にしてもよい(以下、実施の形態13という。)。これは、矩形波が基本波成分と基本波成分の整数倍の周波数を有する正弦波の重ね合わせの信号波であり、基準となる正弦波信号が得られれば、上記式(50)及び式(53)の演算では基本波成分以外の高調波成分を除去することができるためである。
次いで、電流指令信号iuが矩形波信号のときの周波数fに対応したリアクタンス成分Xを測定する測定原理について以下に説明する。
図20の信号源10は電流指令信号iuとして、上記式(81)で表される振幅Isq及び周期1/fを有する矩形波信号iusqを減算器11及び定数算出コントローラ5Aに出力し、図20のインバータ2と電流検出器3と装置コントローラ4Aとからなるループ制御回路では、誘導電動機1の電流iusqが電流指令信号iusqに実質的に一致するように制御されている。ただし、上記式(81)は1周期分を表し、2周期目以降は上記式(81)を繰り返し用いて演算する。
Figure 2006008846
ここで、上記電流指令信号iusqの基本波成分iubaseは次式で与えられる。
Figure 2006008846
このとき、インバータ2への電圧指令信号vuと誘導電動機1の端子電圧vuをそれぞれvusq、vusqとする。電圧指令信号vusqと誘導電動機1の端子電圧vusqが実質的に一致するように制御されていると仮定すると、上記電流指令信号iusqの基本波成分iubaseを基準とした電圧指令信号vusqの周波数fに関する直交位相成分の振幅Bsqは、相互相関関数を用いた次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、Tsqは予め設定された積分時間である。上記式(83)において、積分時間Tsqを周期1/fの整数倍に設定してもよい。また、上記式(83)では、電圧指令信号vusqの周波数f成分以外の高調波成分は除去される。従って、周波数fに対応したリアクタンス成分Xを次式を用いて計算できる。
Figure 2006008846
図33は本発明の実施の形態13に係る誘導電動機の定数測定装置における指令信号を示す図であって、図33(a)は電流指令信号iuが矩形波のときの電流指令信号iusq及びその基本波成分iubaseを示す波形図であり、図33(b)はそのときの電圧指令信号vusqを示す波形図である。上述したように、電流指令信号iuが正弦波信号ではなく矩形波信号の場合でも、周波数fに対応するリアクタンス成分Xを計算できる。従って、リアクタンス成分Xを少なくとも2種類の周波数について測定することにより、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trを測定することができる。電流指令信号iuを矩形波信号で与えた場合でも、矩形波信号が基本波成分と基本波成分の整数倍の周波数を有する正弦波の重ね合わせの信号であることから、電流指令信号iuが正弦波信号であるときと同様の効果が得られる。
実施の形態14.
上述の各実施の形態においては、電流の正負が反転するタイミングで、インバータ2の内部のデッドタイム電圧とスイッチング素子のオン電圧に起因する電圧誤差の正負も反転し、電流ゼロクロス付近の電圧指令信号vuと誘導電動機1の端子電圧vuに誤差が生じる。上記の事情を鑑み、電流指令信号iuを基準とした電圧指令信号vuの直交位相成分の振幅Bを計算するとき(例えば、図23のステップS203の式(50)を用いて振幅Bを計算するとき)の設定積分区間から、電流ゼロクロス近傍を除外して、上記振幅Bを求める方法を用いてもよい(以下、実施の形態14という。)。次いで、以下に、本実施の形態の方法について説明する。
図20の信号源10が電流指令信号iuとして、次式で示される振幅Ic及び周波数fを有する交流電流信号iucを減算器11及び定数算出コントローラ5Aに出力し、インバータ2と電流検出器3と装置コントローラ4Aとからなるループ制御回路において、誘導電動機1の電流iucが電流指令信号iucに実質的に一致するように制御されていると仮定する。
iuc=Iccos(2πft) (85)
このときのインバータ2の電圧指令信号vuと誘導電動機1の端子電圧vuをそれぞれvuc、vucとする。電圧指令信号vucと誘導電動機1の端子電圧vucは実質的に一致するように制御されていると仮定する。ただし、交流信号iucを基準とした電圧指令信号vucの直交位相成分の振幅Bcを、相互相関関数を用いて求めるとき、電流指令信号iucが振幅Icの±K%以下となる電流ゼロクロス近傍期間を積分範囲から除外する。すなわち、次式の演算を実施する。
Figure 2006008846
ここで、係数Kcは次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、Tcは予め設定された積分時間で、除外する積分範囲Tc0も含む。また、Tc0は積分時間Tcのうち除外する積分範囲(|cos(2πft)|<K/100となる時間期間)であり、電流がゼロになる時刻の近傍である電流ゼロクロス近傍期間である。ここで、上記式(86)において、上記積分時間Tcを交流信号iucの周期の整数倍に設定してもよい。全積分区間Tcのうち、除外する積分範囲Tc0が占める割合を求めると、その割合はK=5%ならば3.2%であり、K=10%ならば6.4%となる。
また、予め補正係数Jcを設定して、上記式(86)の代わりに次式を用いて上記振幅Bcを計算してもよい。
Figure 2006008846
従って、上記式(86)又は式(88)によって計算される上記振幅Bcを用いて、周波数fに対応したリアクタンス成分Xを次式を用いて計算できる。
X=Bc÷Ic (89)
図34は本発明の実施の形態14に係る誘導電動機の定数測定装置における指令信号及び信号を示す図であって、図34(a)は電流指令信号iucを示す波形図であり、図34(b)は信号Kc・cos(2πft)及び信号Kc・sin(2πft)を示す波形図であり、図34(c)は電圧指令信号vucを示す波形図である。本実施の形態では、少なくとも2種類の周波数に対応するリアクタンス成分Xを計算することにより、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trを計算することができる。電流指令信号iuを基準とした電圧指令信号vuの直交位相成分の振幅Bを計算するときに、積分区間から電流ゼロクロス近傍を除外することにより、インバータ2の内部のデッドタイム電圧とスイッチング素子のオン電圧に起因する電圧誤差の正負反転によって生じる悪影響を除き、より高い精度で1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trを計算することができる。
実施の形態15.
上記実施の形態6では、電流指令信号iuを正弦波交流信号で与え、上記実施の形態13では、電流指令信号iuを矩形波交流信号で与えていた。本発明はこれに限らず、電流指令信号iu又は誘導電動機1の電流と電圧指令信号vuに関して、少なくとも2種類の周波数f1とf2に対応した電流と電圧を計算し、それらの振幅と位相差が計算できるならば、電流指令信号iu又は電圧指令信号vuに与える入力信号は、周波数と振幅のうちの少なくとも一方が規則的に時間に対応して変化するAM変調波又はFM変調波などの変調波波形であってもよい(以下、実施の形態15という。)。
図35は本発明の実施の形態15に係る誘導電動機の定数測定装置における指令信号を示す図であって、図35(a)は振幅変調された電流指令信号iuの波形図であり、図35(b)は振幅変調された電圧指令信号vu の波形図である。また、図36は本発明の実施の形態15に係る誘導電動機の定数測定装置における指令信号を示す図であって、図36(a)は周波数変調された電流指令信号iuの波形図であり、図36(b)は周波数変調された電圧指令信号vu の波形図である。本実施の形態の方法について以下に説明する。
図20の信号源10が電流指令信号iuとして、任意の波形を有する信号iudを出力し、誘導電動機1の電流iudが電流指令信号iudに実質的に一致するように制御されていると仮定する。このときのインバータ2の電圧指令信号vuと誘導電動機1の端子電圧vuをそれぞれvud、vudとする。電圧指令信号vudと誘導電動機1の端子電圧vudは実質的に一致するように制御されていると仮定する。本実施の形態において、上記実施の形態8のように、電圧指令信号vuに基づいて、インバータ2によって誘導電動機1に給電する方法を用いてもよい。
本実施の形態において、振幅1である正弦波の位相Δに対する、電流指令信号iudの周波数fd成分の振幅Ifdは次式で表される。次式において、電流指令信号iudの代わりに誘導電動機1の電流iudを用いてもよい。
Figure 2006008846
ここで、Tfdは予め設定される積分時間であり、Δは予め設定される位相である。このとき、振幅1である正弦波の位相Δの直交位相に対する、電圧指令信号vudの周波数fd成分の振幅Vfdは次式で表される。
Figure 2006008846
ここで、Δは上記式(90)と同じ値に設定される。従って、周波数fdに対応したリアクタンス成分Xは次式で計算される。
X=Vfd÷Ifd (92)
以上説明したように、本実施の形態においては、0.006Hz以上で1.5Hz以下の周波数範囲で、少なくとも2種類の周波数に対応するリアクタンス成分Xを計算することにより、1次インダクタンスLと2次抵抗Rrと2次時定数Trを計算することができる。従って、本実施の形態によれば、電流指令信号iu又は電圧指令信号vuに与える入力信号の自由度が大きくなるという効果がある。
実施の形態16
以上の実施の形態においては、誘導電動機1の定数を測定するための装置について説明しているが、本発明はこれに限らず、以下に示すように、同期電動機に適用することができる(以下、実施の形態16という。)。
図37は本発明の実施の形態16に係る同期電動機の定数測定装置の測定原理を示すための同期電動機の1相(U相)分の等価回路の回路図である。また、図38は図37の等価回路において同期電動機が停止中であるときの等価回路の回路図である。
図37において、同期電動機の1相(U相)分の等価回路は、電機子抵抗Raと、電機子インダクタンスLaと、U相誘起電圧esuの電圧源との直列回路で表される。ここで、U相誘起電圧euaは同期電動機の回転角速度に比例する。従って、同期電動機が停止しているとき、U相誘起電圧はゼロとなり、図37のU相誘起電圧esuの電圧源は短絡状態となる。図38は停止状態の同期電動機の等価回路を示したものであり、U相誘起電圧esuの電圧源は短絡状態となっている。図38を、実施の形態6に係る図3と比較すると、図38の等価回路は、図3の等価回路における抵抗Rを電機子抵抗Raに置き換え、インダクタンスLを電機子インダクタンスLaに置き換えたものと等しい。従って、上述の各実施の形態に係る定数測定装置を用いて、同期電動機の定数を測定することができる。
実施の形態17.
以上の実施の形態においては、定数算出コントローラ5,5A,5Bは電圧情報として、装置コントローラ4,4A,4Bからの電圧指令信号を用いていた。本発明はこれに限らず、誘導電動機1の端子電圧を測定する電圧検出器を設け、装置コントローラ4,4A,4Bからの電圧指令信号を用いる代わりに、電圧検出器からの出力信号を上記電圧情報として用いてもよい(以下、実施の形態17という。)。この場合において、上述と同様の作用効果を得ることができる。
実施の形態18
以上の実施の形態においては、インバータ2は少なくとも1回、周波数0.2Hz以上1.5Hz以下の単相交流の給電を行うことにより、1次インダクタンス(又は相互インダクタンス)と2次抵抗をより高い測定精度で測定することができる。上記各実施の形態では定格励磁電流が必要となるが、誘導電動機1の銘板に記載された定格値が誤差を有する場合、上記実施の形態10に係る銘板値に基づいた定格励磁電流算出方法も測定値において誤差を有することになる。本実施の形態では、少なくとも2通りの電流振幅で、周波数0.2Hz以上1.5Hz以下の単相交流の給電を行うことにより、正確な定格励磁電流と相互インダクタンスを測定する。
図39は本発明の実施の形態18に係る誘導電動機の定数測定装置における単相交流給電の状態を示す図であって、図39(a)は単相給電する電流振幅を示す波形図であり、図39(b)は単相給電中の誘導電動機1のU相電流iusを示す波形図である。なお、図39(a)の単相給電する電流振幅は、銘板値に基づいた定格励磁電流で正規化したものである。図39において、期間Taでは、電流振幅指令信号を第1の振幅である0.7[p.u.]で与え単相給電したときの1次インダクタンス(又は相互インダクタンス)と2次抵抗を上述の各実施の形態に係る方法に従って測定する。次いで、期間Tbにおいて、電流振幅指令信号を第2の振幅である1.3[p.u.]で与え単相給電したときの1次インダクタンス(又は相互インダクタンス)と2次抵抗を上述の各実施の形態に係る方法に従って測定する。
図40は本発明の実施の形態18に係る誘導電動機の定数測定装置によって測定されたインダクタンスLs及び60Hzの電圧実効値の正規化電流振幅に対する特性を示すグラフである。図40から明らかなように、インダクタンス値は電流振幅が大きくなるにつれ、磁気飽和により小さくなる。一方、定格周波数F100[Hz]で運転中の無負荷電圧V0[V]は、1次インダクタンスLsと電流振幅Iを用いた次式で表される。
V0=2π×F100×Ls×I (93)
図39のように測定された電流振幅と1次インダクタンス(又は相互インダクタンス)の関係を上記式(93)のLs,Iに代入すると、2個の無負荷電圧V0が得られる。定格周波数F100=60Hzとしたときの無負荷電圧実効値V0を図40において●でプロットした。例えば、誘導電動機1の定格電圧が200Vであれば、図40の関係から定格励磁電流は1.07[p.u.]で、そのときのインダクタンスは0.065[H]であることがわかる。図40の関係からインダクタンスを測定することは、次式を用いて定格励磁電流振幅I100及びインダクタンス値Ls0を計算することに対応する。
I100
=(I1×V100−I2×V100+I2×V1−I1×V2)
÷(V1−V2) (94)
Ls0
=(I100×L1−I2×L1−I100×L2+I1×L2)
÷(I1−I2) (95)
ここで、Ls1は第1の電流振幅I1に対する第1のインダクタンスであり、Ls2は第2の電流振幅I2に対する第2のインダクタンスである。また、V100は誘導電動機1の定格電圧であり、さらに、電流振幅I1,I2にそれぞれ対応する電圧V1,V2は次式で表される。
V1=2π×F100×Ls1×I1 (96)
V2=2π×F100×Ls2×I2 (97)
また、2個の電流振幅I1,I2に基づいて2次抵抗Rrを測定し、その2回の測定結果の2次抵抗RrがRr1,Rr2であった場合、同様の次式を用いて2次抵抗値Rr0を再計算してもよい。
Rr0
=(I100×Rr1−I2×Rr1−I100×Rr2+I1×Rr2)
÷(I1−I2) (98)
ここで、Rr1は第1の電流振幅I1に対する第1の2次抵抗であり、Rr2は第2の電流振幅I2に対する第2の2次抵抗である。
以上説明したように、本実施の形態に係る誘導電動機の定数測定装置によれば、インバータ2が周波数0.006Hz以上1.5Hz以下の周波数範囲で少なくとも2個の電流振幅で単相交流給電を行うので、電流とインダクタンスの関係を計算できる。これによって、定格励磁電流値が不正確であっても、所望の周波数運転時に所望の電圧となる励磁電流値を計算できる。また、磁気飽和によってインダクタンス値が変化する誘導電動機1に対しても、上記所望の周波数運転時に所望の電圧となる励磁電流に対応するインダクタンスを計算できる。
実施の形態19.
上記実施の形態18においては、インバータ2が周波数0.006Hz以上1.5Hz以下の周波数範囲で少なくとも2個の電流振幅で単相交流の給電を行い、電流とインダクタンスの関係を計算している。本発明はこれに限らず、インバータ2が、周波数0.006Hz以上1.5Hz以下の周波数範囲で、少なくとも2個の周波数で単相交流の給電を行い、この単相交流給電は少なくとも2個の電流振幅で実施し、電流とインダクタンスの関係を計算してもよい。
図41は本発明の実施の形態19に係る誘導電動機の定数測定装置における単相交流給電の状態を示す図であって、図41(a)は単相給電する電流振幅を示す波形図であり、図41(b)は単相給電中の周波数を示す図であり、図41(c)は単相給電中の誘導電動機1のU相電流iusを示す波形図である。なお、図41(a)に図示された単相給電する電流振幅は、銘板値に基づいた定格励磁電流で正規化した値である。
図41において、期間Taでは、電流振幅指令信号を第1の周波数である0.5Hzでかつ第1の振幅I1である0.7[p.u.]で与える。次いで、期間Tbでは、電流振幅指令信号を第1の周波数である0.5Hzでかつ第2の振幅I2である1.3[p.u.]で与える。そして、期間Tcでは、電流振幅指令信号を第2の周波数である1.0Hzでかつ第2の振幅I2である1.3[p.u.]で与える。さらに、期間Tdでは、電流振幅指令信号を第2の周波数である1.0Hzでかつ第1の振幅I1である0.7[p.u.]で与える。ここで、期間Taと期間Tdの測定により、上述の実施の形態10に係る定数測定方法を用いて、第1のインダクタンスLs1と第1の2次抵抗Rr1を測定する。また、期間Tbと期間Tcの測定により、上述の実施の形態10に係る定数測定方法を用いて、第2のインダクタンスLs2と第2の2次抵抗Rr2を測定する。
以上説明したように、本実施の形態によれば、互いに異なる電流振幅で測定した2組の測定値(Ls1,Rr1);(Ls2,Rr2)に基づいて、上記実施の形態18に係る定数測定方法と同様の方法を用いて、定格励磁電流値が不正確であっても、所望の周波数運転時に所望の電圧となる励磁電流値I100とインダクタンス値Ls100をより正確に計算できる。すなわち、第1の振幅I1、第2の振幅I2、第1のインダクタンス値Ls1、第2のインダクタンス値Ls2を、実施の形態18に係る上記式(93)及び式(94)に代入することにより、定格励磁電流振幅I100とインダクタンスLs100を計算できる。なお、図41の時刻3〜4秒、6〜7秒、8〜9秒のように、周波数又は振幅をランプ的に変更したが、ステップ的に変更しても同様の効果が得られる。
実施の形態20.
以上の実施の形態においては、給電開始時刻t=0[sec]に波高値となる電流指令信号iuを与えていた。しかしながら、誘導電動機1において、電流の時定数より磁束の時定数が大きいため、より高い精度で定数を求めるには、給電開始から磁束が定常状態に達した後の電圧指令信号vuを用いてリアクタンス成分Xを求めるのがよい。
図42は、本発明の実施の形態20に係る、給電開始時刻t=0[sec]に波高値となる0.255[Hz]の電流指令信号iuを与えたときの波形図であって、図42(a)はそのときの誘導電動機の3相電圧vu,vv,vwの波形図であり、図42(b)はそのときの誘導電動機の3相電流iu,iv,iwの波形図であり、図42(c)はそのときの誘導電動機の2次磁束φurを示す波形図である。図42は、図32の回路構成を用いて実施した結果を示す。図42において、給電開始直後の2次磁束φurは正弦波の形状、すなわち定常状態になっていない。磁束が定常状態に達してからリアクタンス成分Xの算出を実施してもよいが、給電開始から磁束が定常状態に達するまで、無駄時間となり、測定時間が長くなる問題がある。
そこで、本実施形態では、上記の問題点を解決するために、給電直後に2次磁束φurが定常状態になるような電流iuを誘導電動機1に供給するように、電流指令信号iuを次式で与える。
Figure 2006008846
ここで、tは給電開始時刻をt=0[sec]としたときの時刻であり、Iampは電流指令信号iuの電流振幅[A]であり、fは電流指令信号iuの周波数[Hz]であり、Trは2次時定数[sec]であり、kは任意の整数である。
以下に、式(99)で表された電流指令信号iuをインバータ2に与えることにより、給電直後に2次磁束φurが定常状態に安定化する理由について説明する。
給電開始直後に2次磁束φurを安定化させるには、給電開始時に2次磁束φurが0で、時間tに対して正弦波状に磁束が立ち上がるようにすればよい。そこで、給電開始時に2次磁束φurが0となるような、電流指令信号iuを求める。電流iuと2次磁束φurの関係式は次式で表される。
Figure 2006008846
従って、式(100)から明らかなように、給電開始直後に0となるような2次磁束φurは次式で表される。
φur=φampsin(2πft) (101)
ここで、φampは2次磁束の振幅である。2次磁束φurが式(101)となるような電流iuは式(100)と式(101)の関係により式(102)式となる。ここで、2πfTr≪1と仮定して、式(103)の近似式を用いた。
Figure 2006008846
Figure 2006008846
従って、式(102)式に示した給電開始時刻t=0[sec]の位相が(2πfTr+kπ)[rad]となる電流iuが誘導電動機1に流れるように、電流指令信号iuをインバータ2に与えれば、給電開始直後に2次磁束φurが0となる。
図43は、本発明の実施の形態20に係る、給電開始時において2次磁束φurが0になるように0.255[Hz]の電流指令信号iuをインバータ2に与えたときの波形図であって、図43(a)はそのときの誘導電動機の3相電圧vu,vv,vwの波形図であり、図43(b)はそのときの誘導電動機の3相電流iu,iv,iwであり、図43(c)はそのときの誘導電動機の2次磁束φurを示す波形図である。図43は、図32の回路構成を用いて得られた結果を示している。式(99)で表された電流指令信号iuをインバータ2に与えることによって、2次磁束φurが給電開始直後から正弦波形状になることがわかる。
ただし、本実施の形態で示した交流回転機の定数測定装置においては、2次時定数Trを求めることが目的であるため、2次時定数Trの値は未知である。本実施の形態は、2次時定数Trの推定値を設計値や概算値を利用して実施する。以上のことから、電流指令信号iuを給電開始時に2次磁束が概ね0となるような式(99)で与えることにより、2次磁束φurが定常状態になるまでの整定時間が短縮され、給電開始直後の測定精度が向上し、リアクタンス成分Xを精度良く測定できる効果が得られる。
以上説明したように、本実施の形態に係る交流回転機の定数測定装置によれば、定常状態になるまでの整定時間を短縮し、給電開始直後の測定精度を向上させるために、インバータ2は、給電開始時に2次磁束が概ね0となるような正弦波電流を誘導電動機1に供給する。この電流を誘導電動機1に供給することにより、2次磁束が定常状態になるまでの整定時間を短縮することができ、給電開始直後の測定精度を向上させることができる。なお、図43は、1つの周波数を給電した場合を示したが、図41のように異なる周波数を連続して給電する場合でも同様の効果が得られる。
変形例.
以上の実施の形態においては、誘導電動機1及び同期電動機の定数を測定するための装置について説明しているが、本発明はこれに限らず、上述の各実施の形態に係る定数測定方法は、これらの機器の発電機の定数を測定する装置にも容易に適用することができ、従って、上述の各実施の形態に係る定数測定方法は、誘導電動機、同期電動機、誘導発電機、同期発電機などを含む交流回転機に広く適用することができる。
以上詳述したように、本発明に係る交流回転機の定数測定装置によれば、交流回転機が負荷設備に接続されている場合でも、例えば、少なくとも定格容量が1.5kWから280kWまでの交流回転機に対して、1次インダクタンスと2次抵抗と2次時定数などの交流回転機の電気的定数を従来技術に比較して高い精度で測定することができる。また、交流回転機の電気的定数を迅速に測定することができ、ユーザに対して待ち時間を意識させることなくきわめて短時間で快適に測定できる。
本発明の実施の形態1に係る誘導電動機の定数測定装置の構成を示すブロック図である。 図1の誘導電動機の定数測定装置により誘導電動機1の定数を測定するための誘導電動機の定数測定処理を示すフローチャートである。 図1の誘導電動機1の代わりに接続されるLR直列負荷回路を示す回路図である。 図3のLR直列負荷回路において電流iが電流指令信号i=cos(2πfLRt)に実質的に一致するように制御したときの各パラメータの波形図であって、図4(a)は信号cos(2πfLRt)及び信号−sin(2πfLRt)の波形図であり、図4(b)は電圧指令信号vの波形図であり、図4(c)は直交位相成分の振幅B1の波形図であり、図4(d)は同位相成分の振幅A1の波形図である。 実施の形態1において、交流誘導電動機1の代わりにLR直列負荷回路を接続して、図2の定数測定処理により抵抗成分及びインダクタンス成分を測定したときの実験結果であって、給電周期数に対する各成分の測定精度を示すグラフである。 図1の誘導電動機1の等価回路の回路図である。 図6の等価回路の近似等価回路の回路図である。 定格容量が3.7kWである誘導電動機を単相交流給電するときの抵抗成分ZRe及びリアクタンス成分ZImの周波数特性を示すグラフである。 定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機についての周波数f1MAX=Rr/(2πM)を示すグラフである。 定格容量が1.5kWから280kWまでの誘導電動機についての周波数f1MAX=Rr/(2πM)を示すグラフである。 図1のインバータ2の各クラスに対する定格容量及び外径寸法の一例を示す表である。 図1のインバータ2からの出力電圧Voutを説明するための電圧指令と三角波キャリアとの関係を示す波形図である。 定格容量3.7kWの誘導電動機と、定格容量11kWの誘導電動機と、定格容量22kWの誘導電動機とにおける、電圧指令信号vの直交位相成分の振幅B1を電圧分解能Cで除算した除算値の周波数特性を示すグラフである。 図2の定数測定処理においてインバータ2が単相交流給電する交流電力の周波数を図13の値で与えたときに、30秒間で何周期給電することが可能であるかを示す、定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機の定格容量に対する30秒間の給電周期数を示すグラフである。 図2の定数測定処理においてインバータ2が単相交流給電する交流電力の周波数を図13の値で与えたときに、30秒間で何周期給電することが可能であるかを示す、定格容量が1.5kWから280kWまでの誘導電動機の定格容量に対する30秒間の給電周期数を示すグラフである。 定格容量が1.5kWから55kWまでの誘導電動機の定格容量に対する周波数5(Ts+Tr)/(2πσTsTr)[Hz]の特性を示すグラフである。 図2の定数測定処理において、誘導電動機1に代えて図3のLR直列負荷を接続したときのインバータ2のキャリア周波数に対する同位相成分の正規化振幅A1(実験値)を示すグラフである。 図2の定数測定処理において、誘導電動機1に代えて図3のLR直列負荷を接続したときのインバータ2のキャリア周波数に対する直交位相成分の正規化振幅B1(実験値)を示すグラフである。 図2の定数測定処理において、誘導電動機1に代えて図3のLR直列負荷を接続したときの電流I2に対する正規化振幅A1,B1(実験値)を示すグラフである。 本発明の実施の形態6に係る誘導電動機の定数測定装置の構成を示すブロック図である。 図20の誘導電動機1の静止時のT型等価回路の回路図である。 図21のT型等価回路を、RX直列回路を用いて表したときの等価回路の回路図である。 図20の定数測定装置により誘導電動機1の定数を測定するための定数測定処理を示すフローチャートである。 定格容量が3.7kW、11kW及び22kWである誘導電動機におけるリアクタンス成分X,X0の正規化周波数fn特性を示すグラフである。 実施の形態6において、定格容量が3.7kWである誘導電動機におけるリアクタンス成分Xの測定誤差の正規化周波数fn特性を示すグラフである。 実施の形態6において、定格容量が3.7kW、11kW及び22kWである誘導電動機におけるリアクタンス成分Xの正規化周波数fn特性を示すグラフである。 実施の形態6において、定格容量が1.5kWから55kWまでである誘導電動機における定格容量に対する周波数1/(2πTr)の特性を示すグラフである。 実施の形態6における、抵抗成分Rの測定誤差Rerrとリアクタンス成分の測定誤差Xerrを示すグラフである。 本発明の実施の形態7に係る誘導電動機の定数測定処理を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態8に係る誘導電動機の定数測定装置の構成を示すブロック図である。 図30の定数測定装置により実行される誘導電動機の定数測定処理を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態9に係る誘導電動機の定数測定装置の構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態13に係る誘導電動機の定数測定装置における指令信号を示す図であって、図33(a)は電流指令信号iuが矩形波のときの電流指令信号iusq及びその基本波成分iubaseを示す波形図であり、図33(b)はそのときの電圧指令信号vusqを示す波形図である。 本発明の実施の形態14に係る誘導電動機の定数測定装置における指令及び信号を示す図であって、図34(a)は電流指令信号iucを示す波形図であり、図34(b)は信号Kc・cos(2πft)及び信号Kc・sin(2πft)を示す波形図であり、図34(c)は電圧指令信号vucを示す波形図である。 本発明の実施の形態15に係る誘導電動機の定数測定装置における指令信号を示す図であって、図35(a)は振幅変調された電流指令信号iuの波形図であり、図35(b)は振幅変調された電圧指令信号vu の波形図である。 本発明の実施の形態15に係る誘導電動機の定数測定装置における指令信号を示す図であって、図36(a)は周波数変調された電流指令信号iuの波形図であり、図36(b)は周波数変調された電圧指令信号vu の波形図である。 本発明の実施の形態16に係る同期電動機の定数測定装置の測定原理を示すための同期電動機の1相(U相)分の等価回路の回路図である。 図37の等価回路において同期電動機が停止中であるときの等価回路の回路図である。 本発明の実施の形態18に係る誘導電動機の定数測定装置における単相交流給電の状態を示す図であって、図39(a)は単相給電する電流振幅を示す波形図であり、図39(b)は単相給電中の誘導電動機1のU相電流iusを示す波形図である。 本発明の実施の形態18に係る誘導電動機の定数測定装置によって測定されたインダクタンスLs及び60Hzの電圧実効値の正規化電流振幅に対する特性を示すグラフである。 本発明の実施の形態19に係る誘導電動機の定数測定装置における単相交流給電の状態を示す図であって、図41(a)は単相給電する電流振幅を示す波形図であり、図41(b)は単相給電中の周波数を示す図であり、図41(c)は単相給電中の誘導電動機1のU相電流iusを示す波形図である。 本発明の実施の形態20に係る、給電開始時に電流が波高値になるように電流指令信号iuを与えたときの波形図であって、図42(a)はそのときの誘導電動機の3相電圧vu,vv,vwの波形図であり、図42(b)はそのときの誘導電動機の3相電流iu,iv,iwの波形図であり、図42(c)はそのときの誘導電動機の2次磁束φurを示す波形図である。 本発明の実施の形態20に係る、給電開始時において2次磁束φurが0になるように電流指令信号iuを与えたときの波形図であって、図43(a)はそのときの誘導電動機の3相電圧vu,vv,vwの波形図であり、図43(b)はそのときの誘導電動機の3相電流iu,iv,iwであり、図43(c)はそのときの誘導電動機の2次磁束φurを示す波形図である。
符号の説明
1…誘導電動機、
2,2A…インバータ、
3…電流検出器、
4,4A,4B,4C…装置コントローラ、
5,5A,5B,5C…定数算出コントローラ、
5m…内部メモリ、
8,8A,10…信号源、
11…減算器、
12…偏差増幅器、
13…符号反転器、
13a,13b…乗算器。

Claims (16)

  1. 交流回転機と、
    入力される電圧指令信号を単相交流電力に電力変換して上記交流回転機に給電する電力変換手段と、
    上記電力変換手段から上記交流回転機に給電される単相交流電力の電流を検出する電流検出手段と、
    上記電力変換手段から上記交流回転機に印加すべき交流電圧に対応する電圧指令信号を発生して上記電力変換手段に出力する第1の制御手段と、
    上記交流回転機に給電された単相交流電力の電圧と電流の関係に基づいて上記交流回転機の定数を計算する第2の制御手段とを備えた交流回転機の定数測定装置において、
    上記第1の制御手段は、0.006Hzである下限周波数以上でかつ1.5Hzである上限周波数以下の範囲で選択された少なくとも1つの周波数を有する単相交流電力を、少なくとも1回上記交流回転機に給電するように電圧指令信号を発生して上記電力変換手段を制御することにより、上記第2の制御手段は上記交流回転機の電気的定数を計算することを特徴とする交流回転機の定数測定装置。
  2. 上記第1の制御手段は、2周期である下限周期数以上でかつ所定の上限周期数以下の周期数範囲で選択された期間で単相交流電力を上記交流回転機に給電するように電圧指令信号を発生して上記電力変換手段を制御することを特徴とする請求項1記載の交流回転機の定数測定装置。
  3. 上記下限周波数は0.06Hzであることを特徴とする請求項2記載の交流回転機の定数測定装置。
  4. 上記下限周波数は0.06Hzであり、上記上限周期数は45周期であることを特徴とする請求項2記載の交流回転機の定数測定装置。
  5. 上記下限周波数は0.1Hzであり、上記下限周期数は3周期であり、上記上限周期数は45周期であることを特徴とする請求項2記載の交流回転機の定数測定装置。
  6. 上記第1の制御手段は、40Hz以上でかつ上記電力変換手段のキャリア周波数以下の周波数範囲で選択された周波数を有する単相交流電力を上記交流回転機に給電するように電圧指令信号を発生して上記電力変換手段を制御することにより、上記第2の制御手段は上記交流回転機の漏れインダクタンスを計算することを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか1つに記載の交流回転機の定数測定装置。
  7. 上記第1の制御手段は、互いに異なる少なくとも2つの周波数の各単相交流電力を上記交流回転機に給電するように電圧指令信号を発生して上記電力変換手段を制御することにより、上記第2の制御手段は上記交流回転機の電気的定数を計算することを特徴とする請求項1記載の交流回転機の定数測定装置。
  8. 上記第1の制御手段は、互いに異なる少なくとも2つの電流振幅を有する各単相交流電力を上記交流回転機に給電するように電圧指令信号を発生して上記電力変換手段を制御することにより、上記第2の制御手段は上記交流回転機の電気的定数を計算することを特徴とする請求項1乃至7のうちのいずれか1つに記載の交流回転機の定数測定装置。
  9. 上記第1の制御手段は、互いに異なる少なくとも2つの周波数の各単相交流電力を時分割で上記交流回転機に給電するように電圧指令信号を発生して上記電力変換手段を制御することにより、上記第2の制御手段は上記交流回転機の電気的定数を計算することを特徴とする請求項7記載の交流回転機の定数測定装置。
  10. 上記第1の制御手段は、互いに異なる少なくとも2つの周波数の各単相交流電力を重畳して上記交流回転機に給電するように電圧指令信号を発生して上記電力変換手段を制御することにより、上記第2の制御手段は上記交流回転機の電気的定数を計算することを特徴とする請求項7記載の交流回転機の定数測定装置。
  11. 上記第2の制御手段は、上記互いに異なる少なくとも2つの周波数に対応する上記交流回転機の等価回路の直列合成インピーダンスのリアクタンス成分を計算し、上記計算された各直列合成インピーダンスのリアクタンス成分に基づいて上記交流回転機の電気的定数を計算することを特徴とする請求項7乃至10のうちのいずれか1つに記載の交流回転機の定数測定装置。
  12. 上記第2の制御手段は、上記電圧指令信号を基準としたときの、上記電流検出手段により検出される電流の直交位相成分の振幅比を上記少なくとも2つの周波数に対応して測定することにより、上記交流回転機の電気的定数を計算することを特徴とする請求項7乃至11のうちのいずれか1つに記載の交流回転機の定数測定装置。
  13. 上記電力変換手段は、上記入力される電圧指令信号を単相給電と等価な3相交流電力に電力変換して上記交流回転機に給電することを特徴とする請求項7乃至12のうちのいずれか1つに記載の交流回転機の定数測定装置
  14. 上記第1の制御手段は、発生される電流指令信号と、上記電流検出手段により検出された電流とに基づいて、上記電圧指令信号を発生して上記電力変換手段に出力し、
    上記電流指令信号は上記交流回転機の定格励磁電流値に設定されたことを特徴とする請求項7乃至13のうちのいずれか1つに記載の交流回転機の定数測定装置。
  15. 上記第2の制御手段は、上記電流指令信号を基準とした電圧指令信号の直交位相成分の振幅を、所定の設定積分期間から電流ゼロクロス近傍期間を除外してなる積分期間で上記電流指令信号の積分を行う積分演算式を用いて計算することにより、上記交流回転機の電気的定数を計算することを特徴とする請求項7乃至14のうちのいずれか1つに記載の交流回転機の定数測定装置。
  16. 上記第1の制御手段は、発生される電流指令信号と、上記電流検出手段により検出された電流とに基づいて、上記電圧指令信号を発生して上記電力変換手段に出力し、
    少なくとも給電開始時の上記電流指令信号は、0.006Hzである下限周波数以上でかつ1.5Hzである上限周波数以下の範囲で選択された1つの周波数fの正弦波であり、かつ、給電開始時刻t=0[sec]に0となる正弦波に対して、2次時定数Trと上記周波数fと任意の整数kに基づいて、上記給電開始時刻t=0[sec]のときの当該電流指令信号の位相は(2πfTr+kπ)[rad]に設定されたことを特徴とする請求項1記載の交流回転機の定数測定装置。
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