JP2017184361A - モータ制御装置およびモータ制御方法 - Google Patents

モータ制御装置およびモータ制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】エイリアシングに起因した低周波折り返し雑音の発生を抑制してトルク精度を確保するとともに、角度誤差、電源電圧リプル等の環境変動に対する制御安定性を確保する。
【解決手段】インバータ(2)からモータ(1)に供給される3相交流電流の検出結果に基づいてフィードバック電流値を生成するに当たって、第1のサンプルタイミングによる第1の電流検出値と、第1のサンプルタイミングよりも短い第2のサンプルタイミングによる第2の電流検出値を生成する電流検出器(10)と、第1の電流検出値および第2の電流検出値のそれぞれをqd軸に座標変換する座標変換器(11)と、座標変換結果からフィードバック電流値を生成する検出電流処理器(13)とを備えて構成される。
【選択図】図5

Description

本発明は、永久磁石同期モータ、誘導モータ、リラクタンスモータなどの交流モータをインバータにより制御するモータ制御装置およびモータ制御方法に関する。
交流モータを制御する方法としては、交流モータに流れる電流値の検出結果を回転座標系上の2軸成分に変換して制御演算を行い、インバータからモータに印加する電圧を制御する従来技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
具体的には、この従来技術は、以下のような手順で、制御を行う。
・インバータの3相交流側に設けられた電流センサにより検出した電流値を、モータ回転子位置に同期した回転座標系上の2軸成分であるd軸成分電流(磁束成分電流)とq軸成分電流(トルク成分電流)に変換する。
・変換後のd軸成分電流、q軸成分電流が、トルク指令から演算したd軸電流指令、q軸電流指令に一致するように、インバータからモータに印加する電圧を制御する。
特開2011−83068号公報
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
このような制御を行う際に、3相電流は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと称す)等を用いて、検出周期に基づいてサンプリングされ、マイコンにより離散系の演算処理が行われている。マイコンは、電流制御1周期に電流を1回検出して、電流指令値との偏差に応じて、フィードバック制御を行う。ここで、サンプリング周期は、電流を正確に検出するために、検出信号の周期に対して1/2以下にする必要がある。
マイコンによる離散系の演算処理において、サンプリング周期が1/2より長くなると、実信号には存在しない低周波の折り返し雑音が発生する場合がある。以下では、この現象をエイリアシングと称す。また、電流検出の精度を高めるために制御周期を短くすると、マイコンの処理負荷が増大することになる。そこで、電流制御周期は、マイコンが演算する処理能力が上限を超えることがない値として、モータの運転状況に応じて設定される。
モータに流れる3相電流には、基本波周波数成分と、基本波周波数の5次成分、7次成分、11次成分、13次成分などの高周波成分が含まれている。例えば、モータの回転速度が高い状態では、3相電流に流れる電流リプルの周期が、電流を検出する処理周期に近づく。
このような状態では、電流検出のエイリアシングによって、トルク精度(すなわち、トルク指令に対する実トルクの偏差に相当)が劣化する問題がある。
電流検出の誤差によりトルク精度が劣化する問題を解決するためには、電流の基本波成分を高精度に抽出する必要がある。このための手法としては、電流制御1周期に電流検出を数回行う電流オーバーサンプル方式、あるいは、電流制御1周期において、前回周期で検出したタイミングと異なるように電流を検出するランダムサンプル方式がある。
先に述べたように、電流制御においては、検出電流値あるいは電圧指令値を座標変換により演算する方法が用いられる。座標変換器では、検出した3相電流値(Iu、Iv、Iw)と基準位相とから2軸成分電流(Id、Iq)を生成する。同様に、電圧指令値(Vd、Vq)と基準位相とから3相電圧指令(Vu、Vv、Vw)を生成している。多くの場合、2軸成分電流および、3相電圧指令は、電流制御周期に基づいた演算周期で処理されている。
一方、電流オーバーサンプル方式、あるいはランダムサンプル方式を用いて、座標変換により演算した場合、電流検出を行うタイミングが電流制御周期に対応していない。このため、座標変換に用いる角度が、2軸成分電流の生成(Iu、Iv、Iw→Id、Iq)と3相電圧指令の生成(Vd、Vq→Vu、Vv、Vw)とで異なる。
ここで、モータの回転子位置検出にレゾルバ等を用い、検出した角度が、実際の回転角からずれて、誤差が周期的に変化した場合を想定する。
これまでの電流制御周期に基づいた座標変換では、角度の誤差に対応して電流制御の比例項が角度誤差を打ち消すように動作する。その結果、周期的に変化する角度誤差に起因する積分項の変動分を補償し、制御性への影響を抑えることが可能となる。
一方、電流オーバーサンプル方式、あるいはランダムサンプル方式では、電流検出を行うタイミングが電流制御周期と異なるため、電流制御の比例項において角度誤差に起因する変動分の補償が困難となる。この影響で、モータの制御安定性が低下することがあり、結果的に、消費電流が増大してしまう等の問題があった。このような問題は、角度誤差に限らず、電源電圧リプル等の変動に対しても、同様に発生する。
また、角度誤差が重畳すると、電流センサで検出した相電流が正側や負側にオフセットする。そして、モータ回転子位置情報に同期したd軸成分電流およびq軸成分電流は、オフセット電流に起因した低次高調波成分電流を含んだ電流脈動が発生してしまう。
従来のオーバーサンプル方式では、エイリアシング対策のため、カットオフ周波数の低いローパスフィルタを通して高周波成分を除去する処理を行う。しかしながら、カットオフ周波数の低いローパスフィルタを用いると、低次高調波成分の位相ずれが大きくなり、制御性が悪化する問題がある。
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、演算処理負荷の増加を抑えた上で、エイリアシングに起因した低周波折り返し雑音の発生を抑制してトルク精度を確保するとともに、角度誤差、電源電圧リプル等の環境変動に対する制御安定性を確保することのできるモータ制御装置およびモータ制御方法を得ることを目的としている。
本発明に係るモータ制御装置は、直流/交流変換するインバータと、インバータの出力側に接続され、交流電圧が印加されることで駆動されるモータと、インバータの交流電流を検出する電流センサと、電流センサの出力信号に対して、異なる2つのサンプルタイミングで電流検出を行い、電流検出結果に基づいてフィードバック電流値を生成し、フィードバック電流値が電流指令値に一致するように、インバータを制御するコントローラとを備えたモータ制御装置であって、コントローラは、異なる2つのサンプルタイミングとして、第1のサンプルタイミングと、第1のサンプルタイミングよりも短い検出周期を有する第2のサンプルタイミングとがあらかじめ設定されており、第1のサンプルタイミングによる第1の電流検出値と、第2のサンプルタイミングによる第2の電流検出値を電流検出結果として順次出力する電流検出器と、3相として検出された第1の電流検出値を、第1のd軸電流値と第1のq軸電流値に座標変換し、3相として検出された第2の電流検出値を、第2のd軸電流値と第2のq軸電流値に座標変換する座標変換器と、第1のd軸電流と第2のd軸電流を用いてd軸フィードバック電流値を演算し、第1のq軸電流と第2のq軸電流を用いてq軸フィードバック電流値を演算することで、d軸およびq軸としてのフィードバック電流値を生成する検出電流処理器とを含んで構成されるものである。
また、本発明に係るモータ制御方法は、インバータからモータに供給される3相交流電流の検出結果に基づいて生成されるフィードバック電流値が、電流指令値に一致するように、インバータをスイッチング制御するモータ制御装置において実行されるモータ制御方法であって、3相交流電流の検出結果に対して、第1のサンプルタイミングを用いて、3相からなる第1の電流検出値を検出する第1ステップと、3相交流電流の検出結果に対して、第1のサンプルタイミングよりも短い検出周期として設定された第2のサンプルタイミングを用いて、3相からなる第2の電流検出値を検出する第2ステップと、第1ステップで検出された第1の電流検出値を、第1のd軸電流値および第1のq軸電流値に座標変換する第3ステップと、第1ステップで検出された第2の電流検出値を、第2のd軸電流値および第2のq軸電流値に座標変換する第4ステップと、第3ステップで検出された第1のd軸電流と、第4ステップで検出された第2のd軸電流を用いて、d軸フィードバック電流値を演算し、d軸に関するフィードバック電流値を生成する第5ステップと、第3ステップで検出された第1のq軸電流と、第4ステップで検出された第2のq軸電流を用いて、q軸フィードバック電流値を演算し、q軸に関するフィードバック電流値を生成する第6ステップとを有するものである。
本発明によれば、第1の演算周期により、回転子位置に同期した高調波成分を抽出するとともに、第1の演算周期よりも短い第2の演算周期により、基本波成分を抽出し、両成分からフィードバック電流値を生成できる簡易構成を備えている。この結果、演算処理負荷の増加を抑えた上で、エイリアシングに起因した低周波折り返し雑音の発生を抑制してトルク精度を確保するとともに、角度誤差、電源電圧リプル等の環境変動に対する制御安定性を確保することのできるモータ制御装置およびモータ制御方法を得ることができる。
本発明の実施の形態1によるモータ制御装置の構成を示したブロック図である。 本発明の実施の形態1に係るモータ制御装置における電流検出器のサンプリング処理を模式的に示した図である。 本発明の実施の形態1に係るモータ制御装置において、電流検出のタイミングを変更したときのモータに流れる電流の測定結果を示す説明図である。 本発明の実施の形態1に係るモータ制御装置におけるローパスフィルタの特性を示した図である。 本発明の実施の形態1に係るモータ制御装置において、3相電流検出から電圧指令出力までの、第1の演算周期で処理する範囲と、第2の演算周期で処理する範囲とを示したブロック図である。 本発明の実施の形態2に係るモータ制御装置における検出電流処理器の内部構成を示したブロック図である。 本発明の実施の形態3に係るモータ制御装置において、3相電流検出から電圧指令出力までの、第1の演算周期で処理する範囲と、第2の演算周期で処理する範囲とを示したブロック図である。 本発明の実施の形態3に係るモータ制御装置において、3相電流検出から電圧指令出力までの、第1の演算周期で処理する範囲と、第2の演算周期で処理する範囲とを示した、図7とは異なる構成を有するブロック図である。 本発明の実施の形態3に係るモータ制御装置における電流検出器のサンプリング処理を模式的に示した図である。
以下、本発明のモータ制御装置およびモータ制御方法の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるモータ制御装置の構成を示したブロック図である。本実施の形態1に係るモータ制御装置およびモータ制御方法は、電気自動車やハイブリッド自動車のモータだけではなく、他のあらゆる種類のモータを用いた駆動システムに対しても適用可能である。
図1において、モータ1は、直流/交流変換を行うインバータ2を用いて給電され、駆動される。インバータ2の交流側には、3相電流を検出する電流センサ3が設けられている。インバータ2の直流側には、直流電源4が接続されている。また、モータ1には、回転子位置検出器5が接続されている。
電流検出器10は、電流センサ3の出力信号を、異なる検出周期(第1のサンプルタイミングおよび第2のサンプルタイミング)で検出する。3相/dq軸座標変換器11は、入力信号として、回転子位置検出器5の出力信号および電流検出器10の出力信号を読み取る。
検出電流処理器13は、入力信号として、3相/dq軸座標変換器11の出力信号を読み取る。dq軸/3相座標変換器17は、入力信号として、d軸電流制御器14で演算したd軸電圧指令と、非干渉化項制御器16の出力値とを加算または減算した値を読み取る。同様に、dq軸/3相座標変換器17は、入力信号として、q軸電流制御器15で演算したq軸電圧指令値と、非干渉化項制御器16の出力値とを加算または減算した値を読み取る。
さらに、dq軸/3相座標変換器17は、入力信号として、回転子位置検出器5の出力信号に対して進角補正18を介して制御遅延が補正された後の信号を読み取る。なお、dq軸/3相座標変換器17は、進角補正18を介さずに、回転子位置検出器5の出力信号をそのまま読み取ることも可能である。以下の説明では、進角補正18を用いる場合について説明する。
PWM信号生成器19は、dq軸/3相座標変換器17の出力信号に基づいて、インバータ2を駆動するためのPWM信号を生成する。このような一連処理により、モータ1が制御される。
以下に、図1の各構成について、詳細に説明する。モータ1は、永久磁石同期モータ、誘導モータ、リラクタンスモータなどの、3相交流モータで構成される。永久磁石同期モータの回転子に用いる永久磁石は、ネオジム等の希土類磁石が使用される。なお、永久磁石は、サマリウムコバルト磁石、フェライト磁石など他の磁石でもよい。
インバータ2は、例えば、6個のパワースイッチング素子(例えば、Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT等)と、それらのパワースイッチング素子に並列に接続されたダイオードとを用いて構成される。インバータ2は、平滑コンデンサにより平滑化された直流電圧が供給されると、PWM信号生成器19からの出力信号に基づいて、直流電圧を交流電圧に変換して、交流モータであるモータ1を駆動する。
電流センサ3は、電力変換器であるインバータ2からモータ1に供給される3相交流電流を検出する。この電流センサ3は、少なくとも2相に設置されていればよく、電流検出器10は、残りの一相の電流を、3相の和がゼロであるとして演算により求めることが可能である。電流センサ3により検出され、電流検出器10により演算された3相電流は、3相/dq軸座標変換器11に入力される。
直流電源4は、鉛蓄電池、ニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池からなる。なお、直流電源4の出力電圧を昇降圧してインバータに供給するDC/DCコンバータをさらに接続する構成を採用することも可能である。
回転子位置検出器5としては、レゾルバ、エンコーダ、ホール素子などが用いられる。回転子位置検出器5は、モータ1の回転軸に連結され、回転子位置に基づいて回転角情報を生成し、3相/dq軸座標変換器11と進角補正18へ回転角情報を出力する。
電流検出器10は、電流センサ3から出力されるアナログ信号を異なる2つ以上の検出周期で取得し、デジタルデータに変換する。例えば、第1のサンプルタイミングは、キャリア周期とし、第2のサンプルタイミングは、キャリア周期の数分の1とする。好ましくは、第2のサンプルタイミングは、モータに流れる高周波成分電流(5次または7次)の1/2以下の周期とする。
3相/dq軸座標変換器11は、下式(1)に基づいて、各サンプルタイミングにおいて検出された3相電流を、モータ回転子位置に同期した回転座標系上の2軸成分であるd軸成分電流(磁束成分電流:Id)とq軸成分電流(トルク成分電流:Iq)に変換する。
Figure 2017184361
ここで、第1のサンプルタイミングで検出および処理が行われた電流値を、第1のd軸電流Id1および第1のq軸電流Iq1とする。また、第1のサンプルタイミングに対して演算周期(検出周期)が短い第2のサンプルタイミングで検出および処理が行われた電流値を、第2のd軸電流Id2および第2のq軸電流Iq2とする。
上式(1)に示す添え字xは、各サンプルタイミングを表している。具体的には、第1のサンプルタイミングに関して示すと、x=1として、
検出した3相電流:Iu1、Iv1、Iw1
角度:θ1
2軸成分電流:Id1、Iq1
となる。
検出電流処理器13は、第1のd軸電流Id1と第2のd軸電流Id2を用いてd軸電流Idを演算し、第1のq軸電流Iq1と第2のq軸電流Iq2を用いてq軸電流Iqを演算する。ここで、検出電流処理器13により演算されたd軸電流Idは、d軸フィードバック電流値に相当し、検出電流処理器13により演算されたq軸電流Iqは、q軸フィードバック電流値に相当する。
d電流制御器14およびq電流制御器15は、検出電流処理器13から出力される二軸電流値であるd軸電流Id、q軸電流Iqをフィードバック電流値として、トルク指令から演算されたd軸電流指令Idref、q軸電流指令Iqrefに一致させるように、PI制御(比例積分制御)を行い、d軸電圧指令Vdref、q軸電圧指令Vqrefを出力する。
非干渉化項制御器16は、d軸電流Idと、q軸電流Iqと、回転角周波数ωとを入力として、下式(2)の演算により、d軸補償電圧Vd_dcpl、q軸補償電圧Vq_dcplを求めて出力する。なお、非干渉化項制御器16に入力する電流値は、d軸電流指令Idrefと、q軸電流指令Iqrefを用いてもよい。
Figure 2017184361
なお、上式(2)における各記号は、以下の内容を意味している。
Ld:d軸インダクタンス
Lq:q軸インダクタンス
φ:永久磁石磁束
dq軸/3相座標変換器17は、d軸電流制御器14の出力値と非干渉化項制御器16の出力値とを加算または減算した値、およびq軸電流制御器15の出力値と非干渉化項制御器16の出力値とを加算または減算した値、のそれぞれを2軸電圧指令値として読み取る。さらに、dq軸/3相座標変換器17は、進角補正18からの回転角情報に基づいて、2軸電圧指令値を3相電圧指令値に変換し、PWM信号生成器19へ出力する。
進角補正18は、回転子位置検出器5で検出した角度に対して、電気角の取得遅れ、電圧指令の反映遅れを補償する。
PWM信号生成器19は、dq軸/3相座標変換器17からの3相電圧指令値を入力とし、インバータ2を駆動するためのPWM信号を生成する。
出力波形を生成する上で、各相の3相電圧指令と比較するキャリア信号の周波数は、できるだけ高いことが望ましい。しかしながら、インバータ2のパワースイッチング素子は、スイッチング損失が増加するため、使用するデバイスおよびモータの運転状況に応じて、キャリア周波数が設定される。
キャリア周波数とインバータ出力周波数の比(以下、周波数比と称す)が十分大きな場合(例えば、周波数比が数10倍以上の場合)では、キャリア周波数を固定させて出力周波数を変更する、非同期PWM方式を用いる。
なお、非同期PWMのキャリア周波数に関しては、平均キャリア周波数を一定としてキャリア周波数幅を不規則に変動させるランダムキャリアを設定する構成、あるいはインバータ出力周波数に応じてキャリア周波数を変更する構成、などを採用してもよい。
インバータ出力周波数が高くなる領域(例えば、周波数比が21以下)においては、スイッチング損失、およびマイコンが演算する処理負荷が増加するため、周波数比が小さい方が望ましい。しかしながら、周波数比が小さくなると、インバータ出力電圧に対して誤差が大きくなるため、インバータ出力電圧のパルス数と位置が正側および負側の半波でπ/2および3π/2に対して対称となるように、キャリア周波数を同期させる、同期PWM方式を用いる。
同期PWM方式は、インバータ出力電圧の周期中に含まれるパルス数を、キャリア周期の3の整数倍に設定することが多い。例えば、同期PWM方式は、同期9パルス、同期6パルス、同期3パルスなどを用いる。
図2は、本発明の実施の形態1に係るモータ制御装置における電流検出器10のサンプリング処理を模式的に示した図である。具体的には、この図2は、マイコン内のカウンタ等で作成されたキャリア波形と、第1のサンプルタイミングおよび第2のサンプルタイミングで電流を検出するタイミングを示している。
第1のサンプルタイミングは、キャリア波形の「谷―山―谷」を一周期として設定されており、電流検出器10は、キャリアの「谷」のタイミングと同期して電流を検出する。なお、第1のサンプルタイミングは、キャリア波形の「山−谷−山」を一周期として設定してもよく、この場合には、電流検出器10は、キャリアの「山」のタイミングと同期して電流を検出することとなる。
第2のサンプルタイミングは、第1のサンプルタイミングに対して検出周期を短く設定される。例えば、第2のサンプルタイミングを、キャリア周期の1/3倍とした場合には、電流検出器10は、図2に示す周期で電流を検出する。
図3は、本発明の実施の形態1に係るモータ制御装置において、電流検出のタイミングを変更したときのモータに流れる電流の測定結果を示す説明図である。図3の(a)から(c)に示す波形は、実電流波形(連続値)を3相/dq軸変換したd軸成分電流Id、およびq軸成分電流Iqを破線で示し、各サンプルタイミングで検出したd軸成分電流、およびq軸成分電流を実線で示している。
モータ1に流れる3相電流には、基本波周波数成分に加えて、5次、7次、11次、13次などの高調波も含まれる。このため、高調波成分に起因した電流脈動が発生する。
図3(a)は、例えば、モータ1の回転速度が低い状態に相当する、周波数比が18の場合の、実電流波形と第1のサンプルタイミングで検出した電流波形を示している。図3(a)に示すように、周波数比が比較的大きいと、第1のサンプルタイミングで検出した電流波形Id1、Iq1は、電流検出のエイリアシングの影響が小さく、実電流の平均値(基本波)と検出電流の平均値(基本波)は、概ね一致する。このため、トルク精度は、劣化なく、高精度なモータ駆動が可能である。
図3(b)は、例えば、モータ1の回転速度が高い状態に相当する、周波数比が6の場合の、実電流波形と第1のサンプルタイミングで検出した電流波形とを示している。図3(b)に示すように、周波数比が比較的小さいと、第1のサンプルタイミングで検出した電流波形Id1、Iq1は、電流検出のエイリアシングによって、高調波電流脈動の発生を招き、検出電流がオフセットする。その結果、実電流の平均値(基本波)と検出電流の平均値(基本波)にずれが生じ、トルク精度が劣化する。
図3(c)は、図3(b)と同じく周波数比6とした場合における、実電流波形と第2のサンプルタイミングで検出した電流波形Id2、Iq2とを示している。第2のサンプルタイミングでは、先の図2に示した周期で電流を検出後、ローパスフィルタを通して、高調波成分が除去されている。電流波形Id2、Iq2と実電流の平均値(基本波)は、概ね一致する。
このため、周波数比が比較的小さい運転状態では、第2のサンプルタイミングで検出した電流波形Id2、Iq2を用いることにより、トルク精度を劣化させることなく、高精度にモータ1を駆動することが可能となる。
図4は、本発明の実施の形態1に係るモータ制御装置におけるローパスフィルタのカットオフ周波数に対する振幅と位相の特性を示した図である。具体的には、この図4は、3種のカットオフ周波数に対して、各次数の振幅、位相関係の一例を示している。ここでは、サンプリング周波数を、インバータ出力周波数の18倍として、特性を算出した。
カットオフ周波数の小さいfcut1では、例えば、6次電流のような、高調波成分電流に対する減衰量が大きく、検出電流処理器13で処理した電流は、エイリアシングの発生が抑制される。
また、カットオフ周波数がfcut1よりも大きいfcut2およびfcut3では、高調波成分電流の減衰量が比較的小さく、検出電流処理器13に入力する電流は、高調波成分に起因した電流脈動が含まれている。すなわち、電流検出を行う周期が電流脈動に対して長い場合には、検出電流処理器13で処理した電流にエイリアシングが発生する。
従って、第2の演算周期で用いるローパスフィルタは、高調波成分電流を減衰するカットオフ周波数に設定する。
図5は、本発明の実施の形態1に係るモータ制御装置において、3相電流検出から電圧指令出力までの、第1の演算周期で処理する範囲と、第2の演算周期で処理する範囲とを示したブロック図である。具体的には、第1の演算周期と、第1の演算周期に比べ周期の短い第2の演算周期とを用いた制御処理を実行するブロック図を示している。
検出電流処理器13は、ハイパスフィルタ13aを有しており、第1のサンプルタイミングで検出された電流Id1、Iq1に対してハイパスフィルタ13aを用いたフィルタリング処理を施すことで、高調波成分である電流値として、交流成分HPF(Id1)、HPF(Iq1)を抽出する。なお、本実施の形態1では、ハイパスフィルタ13aとして、一次ハイパスフィルタを用いるが、バンドストップフィルタを用いた場合にも、同様の効果を得ることができる。
また、検出電流処理器13は、第2のサンプルタイミングで検出され、基本波成分として抽出された電流Id2、Iq2を取得する。そして、検出電流処理器13は、下式(3)に基づいて、d軸制御電流Idおよびq軸制御電流Iqを演算する。
Figure 2017184361
図5の構成により、検出電流処理器13は、実電流の平均値(基本波成分)と、回転子位置に同期した高調波成分を含んだ電流を、制御電流Id、Iqとして検出することが可能となる。この結果、エイリアシングに起因した低周波折り返し雑音の発生を抑制してトルク精度を確保するとともに、角度誤差、電源電圧リプル等の環境変動に対しても、安定した制御性能を実現することができる。
加えて、第2の演算周期で処理される範囲は、図5の下段の破線枠で囲まれた電流検出器10、3相/dq軸座標変換器11、およびローパスフィルタ12に限られている。このため、マイコンに必要とされる演算処理能力の増加を、最小限に抑えることが可能である。
以上のように、実施の形態1によれば、第1の演算周期により、回転子位置に同期した高調波成分を抽出するとともに、第1の演算周期よりも短い第2の演算周期により、基本波成分を抽出し、両成分から制御電流を生成できる簡単な構成を備えている。この結果、マイコンの処理能力を必要以上に増加させることなく、エイリアシングに起因した低周波折り返し雑音の発生を抑制してトルク精度を確保するとともに、角度誤差、電源電圧リプル等の環境変動に対して安定した制御性能を実現できる。
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2に係るモータ制御装置における検出電流処理器13の内部構成を示したブロック図である。検出電流処理器13は、第1の演算周期で演算されたId1、Iq1に対しては、ハイパスフィルタ13aを介して交流成分を抽出した後に、乗算器13bにより、あらかじめ設定した係数Kを乗じる。
ここで、係数Kは、回転数、トルク値、電圧に応じて変更することも可能である。係数Kを可変設定させることにより、モータの運転状態で異なる低次高調波成分を適切に補償することができる。
一方、第2の演算周期で演算された電流Id2、Iq2は、先の図5に示したローパスフィルタ12を介して、高調波成分が除去された基本波成分である。そこで、本実施の形態2における検出電流処理器13は、下式(4)に基づいて、制御電流Id、Iqを算出する。
Figure 2017184361
本実施の形態2における検出電流処理器13は、先の実施の形態1の場合と比較して、Id1、Iq1のハイパスフィルタ処理後の信号に対して、係数Kを乗じている点が異なっており、それ以外は、同じである。従って、先の実施の形態1にて説明したものと同じ構成、処理については、説明を省略する。
以上のように、実施の形態2によれば、先の実施の形態1に比べて、モータ運転状態に応じて低次高調波成分を確実に補償できる構成を備えている。この結果、先の実施の形態1と同様の効果を得ることができるとともに、レゾルバに角度誤差が重畳した場合にも、制御安定性をより向上させることができる。
実施の形態3.
図7は、本発明の実施の形態3に係るモータ制御装置において、3相電流検出から電圧指令出力までの、第1の演算周期で処理する範囲と、第2の演算周期で処理する範囲とを示したブロック図である。
先の実施の形態1における図5の構成と比較すると、本実施の形態3における図7の構成は、第2の演算周期がランダム周期であるとともに、ローパスフィルタ12を備えていない点が異なっている。
また、図8は、本発明の実施の形態3に係るモータ制御装置において、3相電流検出から電圧指令出力までの、第1の演算周期で処理する範囲と、第2の演算周期で処理する範囲とを示した、図7とは異なる構成を有するブロック図である。
先の実施の形態1における図5の構成と比較すると、本実施の形態3における図8の構成は、第2の演算周期がランダム周期である点が異なっている。従った、本実施の形態3における図7と図8の構成は、第2の演算周期がランダム周期である点では共通し、ローパスフィルタ12の有無のみが異なっている。
図9は、本発明の実施の形態3に係るモータ制御装置における電流検出器10のサンプリング処理を模式的に示した図である。本実施の形態3における第2のサンプルタイミングは、図9に示すように、第1の演算周期間に少なくとも1回、ランダムに設けられている。従って、電流検出器10は、このような第2のサンプルタイミングに従って、電流検出処理をランダム周期で行う。
ここで、第2のサンプルタイミングで検出され、3相/dq軸変換処理された電流値を、Id2、Iq2とする。3相/dq軸変換処理後の信号を、検出電流処理器13に直接入力する構成が図7に相当し、3相/dq軸変換処理後にローパスフィルタ12を通した信号を、検出電流処理器13に入力する構成が図8に相当する。
図7および図8の構成は、先の実施の形態1の構成と比較して、電流検出回数を抑えつつ、エイリアシングを抑制でき、処理負荷の増加を抑えることができる。
また、図7の構成は、第2演算周期のローパスフィルタが不要となるため、先の実施の形態1に対して、さらに、処理負荷の増加を抑えることができる。
一方、図8の構成は、図7の構成に対してローパスフィルタが付加されているため、エイリアシングのよる電流誤差をより低減することが可能となる。
本実施の形態3は、第2の演算周期をランダムとする点が、先の実施の形態1と異なっており、それ以外は、同じである。従って、先の実施の形態1にて説明したものと同じ構成、処理については、説明を省略する。
以上のように、実施の形態3によれば、第2の演算周期内で電流検出を行うタイミングをランダム化し、検出回数を抑制する構成を備えている。この結果、電流検出回数を抑えて、処理負荷の増加を抑えて上で、先の実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、第2の演算周期での処理において、ローパスフィルタをなくすことで、処理負荷の増加をさらに抑えることができる。
なお、上述した実施の形態1〜3において、電流検出器10〜PWM信号生成器19までの一連処理をコントローラにより実現することができる。また、ローパスフィルタ12、ハイパスフィルタ13aに関しては、単独のハードウェア構成を採用することもでき、また、コントローラ内で演算処理により実現することも可能である。
1 モータ、2 インバータ、3 電流センサ、4 直流電源、5 回転子位置検出器、10 電流検出器、11 3相/dq軸座標変換器、12 ローパスフィルタ、13 検出電流処理器、13a ハイパスフィルタ、13b 乗算器、14 d軸電流制御器、15 q軸電流制御器、16 非干渉化項制御器、17 dq軸/3相座標変換器、18 進角補正、19 PWM信号生成器。

Claims (9)

  1. 直流/交流変換するインバータと、
    前記インバータの出力側に接続され、交流電圧が印加されることで駆動されるモータと、
    前記インバータの交流電流を検出する電流センサと、
    前記電流センサの出力信号に対して、異なる2つのサンプルタイミングで電流検出を行い、電流検出結果に基づいてフィードバック電流値を生成し、前記フィードバック電流値が電流指令値に一致するように、前記インバータを制御するコントローラと
    を備えたモータ制御装置であって、
    前記コントローラは、
    前記異なる2つのサンプルタイミングとして、第1のサンプルタイミングと、前記第1のサンプルタイミングよりも短い検出周期を有する第2のサンプルタイミングとがあらかじめ設定されており、前記第1のサンプルタイミングによる第1の電流検出値と、前記第2のサンプルタイミングによる第2の電流検出値を前記電流検出結果として順次出力する電流検出器と、
    3相として検出された前記第1の電流検出値を、第1のd軸電流値と第1のq軸電流値に座標変換し、3相として検出された前記第2の電流検出値を、第2のd軸電流値と第2のq軸電流値に座標変換する座標変換器と、
    前記第1のd軸電流と前記第2のd軸電流を用いてd軸フィードバック電流値を演算し、前記第1のq軸電流と前記第2のq軸電流を用いてq軸フィードバック電流値を演算することで、d軸およびq軸としての前記フィードバック電流値を生成する検出電流処理器と
    を含んで構成されるモータ制御装置。
  2. 前記電流検出器で使用される前記第2のサンプルタイミングは、キャリア周期の1/2以下の値としてあらかじめ設定されている
    請求項1記載のモータ制御装置。
  3. 前記コントローラは、前記座標変換器により座標変換された前記第2のd軸電流値と前記第2のq軸電流値の低周波成分を通過させるフィルタリング処理を施すローパスフィルタをさらに含み、
    前記検出電流処理器は、前記ローパスフィルタにより前記フィルタリング処理が施された後の第2のd軸電流値および第2のq軸電流値を用いて前記フィードバック電流値を生成する
    請求項1または2に記載のモータ制御装置。
  4. 前記電流検出器は、前記第1のサンプルタイミングで規定される検出周期内において、前記第2のサンプルタイミングを少なくとも1回ランダムに選択して第2の電流検出値を出力する
    請求項1から3のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
  5. 前記コントローラは、前記座標変換器により座標変換された前記第1のd軸電流値と前記第1のq軸電流値の高周波成分を通過させるフィルタリング処理を施すハイパスフィルタをさらに含み、
    前記検出電流処理器は、前記ハイパスフィルタにより前記フィルタリング処理が施された後の第1のd軸電流値および第1のq軸電流値を用いて前記フィードバック電流値を生成する
    請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
  6. 前記検出電流処理器は、前記ハイパスフィルタにより前記フィルタリング処理が施された後の第1のd軸電流値および第1のq軸電流値に対して、あらかじめ設定された係数を乗じた値を用いて前記フィードバック電流値を生成する
    請求項5に記載のモータ制御装置。
  7. 前記検出電流処理器は、前記第1のd軸電流と前記第2のd軸電流を加算または減算することで前記d軸フィードバック電流値を演算し、前記第1のq軸電流と前記第2のq軸電流を加算または減算することで前記q軸フィードバック電流値を演算する
    請求項1から6のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
  8. 前記コントローラがPWM信号を用いて前記インバータを制御する際に、
    前記電流検出器で使用される前記第1のサンプルタイミングは、前記PWM信号を生成する演算周期に比べて長い値が設定されている
    請求項1から7のいずれかに1項に記載のモータ制御装置。
  9. インバータからモータに供給される3相交流電流の検出結果に基づいて生成されるフィードバック電流値が、電流指令値に一致するように、前記インバータをスイッチング制御するモータ制御装置において実行されるモータ制御方法であって、
    前記3相交流電流の検出結果に対して、第1のサンプルタイミングを用いて、3相からなる第1の電流検出値を検出する第1ステップと、
    前記3相交流電流の検出結果に対して、前記第1のサンプルタイミングよりも短い検出周期として設定された第2のサンプルタイミングを用いて、3相からなる第2の電流検出値を検出する第2ステップと、
    前記第1ステップで検出された前記第1の電流検出値を、第1のd軸電流値と第1のq軸電流値に座標変換する第3ステップと、
    前記第1ステップで検出された前記第2の電流検出値を、第2のd軸電流値と第2のq軸電流値に座標変換する第4ステップと、
    前記第3ステップで検出された前記第1のd軸電流と、前記第4ステップで検出された前記第2のd軸電流を用いて、d軸フィードバック電流値を演算し、d軸に関する前記フィードバック電流値を生成する第5ステップと、
    前記第3ステップで検出された前記第1のq軸電流と、前記第4ステップで検出された前記第2のq軸電流を用いて、q軸フィードバック電流値を演算し、q軸に関する前記フィードバック電流値を生成する第6ステップと
    を有するモータ制御方法。
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