JPWO2005049004A1 - 貼付剤 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ツロブテロールの優れた経皮吸収性を長時間に亘って継続し且つ皮膚刺激性が少なくて皮膚に長時間に亘って安定的に貼付し得る貼付剤を提供する。本発明の貼付剤は、支持体の片面に膏体層が設けられ、この膏体層は、溶解剤1〜30重量%、粘着剤40〜98重量%及びツロブテロールを含有し、上記溶解剤は、炭素数8〜30の炭素鎖中に分岐構造又は二重結合を有する脂肪族アルコールを含有すると共に、上記粘着剤は、アルキル基の炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートを70重量%以上含有する単量体を共重合させて得られる共重合体であることを特徴とする。

Description

本発明は、ツロブテロール経皮吸収製剤に関し、詳細には、ツロブテロールの経皮吸収性を長時間に亘って継続し且つ皮膚刺激性が少なくて皮膚に長時間に亘って安定的に貼付し得る貼付剤に関する。
ツロブテロールは、気管支平滑筋のβ受容体を選択的に刺激する気管支拡張薬として用いられており、詳細には、気道閉塞性障害を起こした場合の呼吸困難症状の軽減やその発作の原因となる気管支喘息、急性気管支炎、慢性気管支炎などの治療に幅広く用いられている。
ツロブテロールを投与する方法としては、錠剤化して経口により投与する方法と、貼付剤により皮膚を通して薬物を生体内に投与する方法とがあるが、近年、幼児に対する投与量を確保できること、血中における薬物濃度の急激な上昇に起因した副作用を回避することができること、薬効が持続して発作時の呼吸困難を効果的に予防することができるといった理由から、後者の貼付剤を用いる方法が注目されている。
一般に、薬物を貼付剤によって生体内に投与する場合、薬物は、貼付剤の膏体層中における薬物濃度と皮膚中における薬物濃度との濃度勾配によって貼付剤から皮膚に移行、吸収されることから、薬物が貼付剤の膏体層中に飽和溶解度に近い濃度で溶解されていればいるほど薬物の経皮吸収性は向上する。
貼付剤としては、薬物の一部が結晶として膏体層表面に析出している貼付剤と、薬物全量が膏体層中に溶解状態に含有されている貼付剤とに大別される。前者の貼付剤では、膏体層表面に析出した薬物が徐々に膏体層中に溶解している間は、膏体層中における薬物の飽和溶解度での経皮吸収性を維持することができる利点がり、このような貼付剤が特許文献1、2に提案されている。
しかしながら、貼付剤の保存環境によっては、膏体層表面に析出した薬物が膏体層中に溶解した後に再度、再結晶化するような場合があり、このような場合には、薬物の結晶サイズや結晶型が変化することがあり、薬物の経皮吸収性にバラツキが生じるといった問題がある。又、貼付剤の製造後に膏体層表面への薬物の析出が徐々に進行するような場合には、貼付剤の皮膚への貼付性が経時的に変化してしまうといった問題点が生じる。更に、膏体層表面に薬物が多量に再結晶化した場合には、貼付剤を皮膚に貼着した直後の薬物の経皮吸収速度が過度に高くなってしまって一定の経皮吸収速度を維持することができないといった懸念も考えられる。
一方、薬物全量が膏体層中に溶解状態に含有されている貼付剤の場合には、膏体層中の薬物が皮膚に吸収されるにしたがって膏体層中の薬物濃度が低下することから、薬物溶解度の低い膏体層であると、膏体層中の薬物濃度と皮膚中の薬物濃度との間における濃度勾配が短時間のうちに小さくなって、薬物の経皮吸収性を長時間に亘って継続することができないといった問題点が発生する。
そこで、特許文献3には、アルコール類などの溶解剤、アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体などからなる粘着剤及びツロブテロールからなる膏体層を貼付剤基材上に設けてなる貼付剤が提案されている。
しかしながら、膏体層中における薬物溶解度は温度に依存するため、薬物を高い飽和溶解度で膏体層中に溶解させても、季節や場所などの環境変化に伴って、膏体層中における薬物溶解度が大きく低下し、膏体層中に溶解させた薬物が結晶化して析出することがあった。このように、膏体層表面に薬物が析出すると、当初予定していた薬物の経皮吸収性を得ることができず、治療効果に悪影響をおよぼすことがあるといった問題点があった。
更に、膏体層中における溶解剤の濃度を高くし過ぎると、貼付剤を皮膚表面から剥離する際に糊残りが発生したり、逆に、貼付剤が皮膚表面から剥離し易くなるといった問題点が発生すると共に、薬物の初期経皮吸収速度が高くなり過ぎてしまって所望の経皮吸収速度を安定的に維持することができないといった問題点が発生した。
特許第3260765号公報 特許第2753800号公報 特開昭63−10716号公報
本発明は、ツロブテロールの優れた経皮吸収性を長時間に亘って継続し且つ皮膚刺激性が少なくて皮膚に長時間に亘って安定的に貼付し得る貼付剤を提供する。
本発明の貼付剤Aは、支持体Bの片面に膏体層Cが一体的に設けられ、この膏体層Cは、粘着剤100重量部、溶解剤1〜75重量部及びツロブテロールを含有し、上記溶解剤は、炭素数8〜30の炭素鎖中に分岐構造又は二重結合を有する脂肪族アルコールを含有すると共に、上記粘着剤は、アルキル基の炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートを70重量%以上含有する単量体を共重合させて得られる共重合体であることを特徴とする。
上記膏体層Cを構成する粘着剤は、アルキル基の炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートを70重量%以上含有する単量体を共重合させて得られた共重合体からなる。このようなアルキル基の炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、特に限定されず、例えば、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどが挙げられる。
そして、上記粘着剤としては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートと、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートとを含有する単量体を共重合させて得られる共重合体が、溶解剤と共になって、優れたツロブテロール放出性及び貼付性を膏体層に付与することができる点で好ましい。なお、本発明において、(メタ)アクリは、メタクリ及びアクリを意味する。
2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートと、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートとを含有する単量体中における、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの含有量は、少ないと、粘着剤の粘着力が低下することがある一方、多いと、粘着剤の弾性及び凝集力が低下して、貼付剤を皮膚から剥離した際に糊残りを生じることがあるので、70〜95重量%が好ましく、70.5〜95重量%がより好ましい。
同様の理由で、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートと、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートとを含有する単量体中における、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレート成分の含有量は、5〜30重量%が好ましく、5〜29.5重量%がより好ましい。
更に、上記粘着剤を構成する共重合体を得るための単量体には、ツロブテロールの放出性や安定性を損なわない範囲内において、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレートなどのアルキル基の炭素数が5以下であるアルキル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルピロリドン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルアクリレートなどの単量体を含有させてもよい。
又、貼付剤Aを皮膚から剥離した際における糊残り現象を防止するために、粘着剤を構成する共重合体を得るための単量体に多官能性単量体を含有させて、共重合体を架橋させてもよい。このような多官能性単量体としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸と、ヘキサメチレングリコールなどのポリメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどとを反応させて得られる、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
そして、粘着剤を構成する共重合体を得るための単量体中における多官能性単量体の含有量は、少ないと、多官能性単量体を含有させた効果が発現しないことがある一方、多いと、粘着剤がゲル化を生じ易くなるので、0.005〜0.5重量%が好ましい。
具体的には、粘着剤を構成する共重合体を得るための単量体中に多官能性単量体を含有する場合、粘着剤としては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートと、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートと、多官能性単量体とを含有する単量体を共重合させて得られる共重合体が好ましい。
そして、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートと、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートと、多官能性単量体とを含有する単量体中における、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの含有量は、少ないと、粘着剤の粘着力が低下することがある一方、多いと、粘着剤の弾性及び凝集力が低下して、貼付剤を皮膚から剥離した際に糊残りを生じることがあるので、70〜94.5重量%が好ましい。
又、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートと、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートと、多官能性単量体とを含有する単量体中における、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、少ないと、粘着剤の弾性及び凝集力が低下して、貼付剤を皮膚から剥離した際に糊残りを生じることがある一方、多いと、粘着剤の粘着力が低下することがあるので、5〜29.5重量%が好ましい。
更に、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートと、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートと、多官能性単量体とを含有する単量体中における、多官能性単量体成分の含有量は、少ないと、多官能性単量体を含有させた効果が発現しないことがある一方、多いと、粘着剤がゲル化を生じ易くなるので、0.005〜0.5重量%が好ましい。
又、粘着剤にはツロブテロールの安定性に悪影響を与えない範囲内において架橋剤が添加されてもよい。この架橋剤の添加によって粘着剤の凝集力が向上して糊残りの少ない貼着性に優れた貼付剤を得ることができる。このような架橋剤としては、エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド化合物などが挙げられる。
次に、上記粘着剤の製造方法を説明する。この粘着剤は、汎用の製造方法によって製造され、例えば、溶液重合法によって製造される。具体的には、所定量のアルキル基の炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレート及び重合開始剤、必要に応じて多官能性単量体及びその他の単量体並びに架橋剤を重合用溶媒と共に、攪拌装置及び気化溶媒の冷却還流装置を備えた反応器に供給し、例えば約80℃の温度に8〜40時間に亘って加熱して上記アルキル(メタ)アクリレートをラジカル重合反応させる。なお、アルキル(メタ)アクリレート、重合用溶媒及び重合開始剤は、反応器に一括して供給してもよいし或いは所定量づつ分割して供給してもよい。重合用溶媒としては、重合に汎用される溶媒が用いられ、例えば、酢酸エチルなどが挙げられる。そして、重合雰囲気は窒素ガス雰囲気が好ましい。
上記重合開始剤としては、従来から用いられていたものであれば、特に限定されず、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾビス系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド(LPO)、ジターシャルブチルパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤などが挙げられる。
上記膏体層Cの溶解剤を構成する脂肪族アルコールは、炭素数8〜30の炭素鎖中に分岐構造又は二重結合を有するものであれば、特に限定されず、例えば、エチルヘキサノール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコールなどの分岐構造を有する脂肪族アルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、エライデイルアルコールなどの二重結合を有する脂肪族アルコールなどが挙げられ、炭素数8〜30の炭素鎖中に分岐構造又は二重結合を有する第一級の脂肪族アルコールが好ましく、炭素数8〜30の炭素鎖中に分岐構造を有する第一級の脂肪族アルコールがより好ましく、2−オクチル−1−ドデカノールが特に好ましい。なお、脂肪族アルコールは単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
脂肪族アルコールにおける炭素鎖中の炭素数は、少ないと、脂肪族アルコールの揮発性が高くなる上に粘着剤を構成する共重合体との相溶性が低くなる一方、多いと、ツロブテロールの溶解性が低下し、ツロブテロールを膏体層中に必要な濃度で溶解させることができないので、8〜30に限定され、12〜24が好ましい。
そして、炭素数8〜30の炭素鎖中に分岐構造又は二重結合を有する脂肪族アルコールの膏体層C中における含有量は、少ないと、膏体層中へのツロブテロールの溶解性が低下する一方、多いと、貼付剤を皮膚表面から剥離する際に糊残りが発生したり、逆に、貼付剤が皮膚表面から剥離し易くなるといった問題点が発生する上に、薬物の初期経皮吸収速度が高くなり過ぎてしまって所望の経皮吸収速度を安定的に維持することができないので、粘着剤100重量部に対して1〜75重量部に限定され、1〜40重量部が好ましく、2〜40重量部がより好ましく、2〜30重量部が特に好ましい。
又、膏体層C中におけるツロブテロールの含有量は、薬効発現に必要とする経皮吸収速度が得られ且つ膏体層の貼付性を損なわなければ、特に限定されない。具体的には、膏体層中におけるツロブテロールの含有量は、少ないと、ツロブテロールの経皮吸収速度を所望速度に維持することができず、所望とするツロブテロールの血中濃度を得ることができないことがある一方、多いと、ツロブテロールが粘着剤に対する可塑化作用を有するために、膏体層の粘着力が強くなって貼付剤を皮膚表面から剥離する際に皮膚刺激性が生じ易くなったり、或いは、ツロブテロールの利用率が低下して非効率となって好ましくないので、粘着剤100重量部に対して0.5〜75重量部が好ましく、1〜25重量部がより好ましく、2〜11重量部が特に好ましい。
更に、上記膏体層C中に必要に応じて、可塑化剤、経皮吸収促進剤、安定化剤、充填剤などが添加されていてもよい。上記可塑化剤は、膏体層の貼付性を調節するために添加され、膏体層中におけるツロブテロールの拡散速度を向上させて皮膚へのツロブテロールの吸収量を向上させる効果を発揮するものもある。このような可塑化剤としては、例えば、流動パラフィン等の炭化水素;ミリスチン酸イソプロピル、モノラウリン酸グリセリン、セバシン酸ジエチル等の、脂肪酸と一価又は多価アルコールとのエステル;ラノリン、オリーブ油等の天然物由来の油脂などが挙げられる。
上記可塑化剤の膏体層C中における含有量は、少ないと、可塑化剤を膏体層中に添加した効果が発現しないことがある一方、多いと、ツロブテロールの膏体層への溶解性が低下したり或いは貼付剤の貼付性が低下することがあるので、1〜15重量%が好ましい。
又、上記経皮吸収促進剤は、皮膚に作用してツロブテロールの皮膚透過性を向上させるために添加され、角質層の構造を緩める作用を有するものや、角質層の水和を向上させるものなどが挙げられる。このような経皮吸収促進剤としては、ポリソルベート、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウロイルサルコシン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどの界面活性剤や、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールなどが挙げられる。
そして、上記経皮吸収促進剤の膏体層C中における含有量は、少ないと、経皮吸収促進剤を膏体層中に添加した効果が発現しないことがある一方、多いと、ツロブテロールの溶解性や安定性に悪影響を与えることがあるので、0.1〜10重量%が好ましい。
更に、上記安定化剤は、ツロブテロールやその他の成分の酸化・分解を抑えて貼付剤の経時変化を防止するために用いられる。このような安定化剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン、ソルビン酸等の酸化防止剤の他、シクロデキストリン、エチレンジアミン四酢酸などが挙げられる。
そして、上記安定化剤の膏体層C中における含有量は、少ないと、安定化剤を膏体層中に添加した効果が発現しないことがある一方、多いと、貼付剤の貼付性や皮膚刺激性に悪影響を与えることがあるので、0.05〜10重量%が好ましい。
又、上記充填剤は、膏体層Cの貼付性の調整や、ツロブテロールの放出性の調整のために添加される。このような充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、乳糖、結晶セルロース、無水ケイ酸などが挙げられる。
そして、上記充填剤の膏体層C中における含有量は、少ないと、充填剤を膏体層中に添加した効果が発現しないことがある一方、多いと、貼付剤の貼付性を却って低下させたり或いはツロブテロールの経皮吸収性や安定性に悪影響を与えることがあるので、1〜30重量%が好ましい。
次に、上記膏体層Cを一体的に設ける支持体Bとしては、柔軟であるが貼付剤に自己支持性を付与し且つ膏体層中のツロブテロールの損失を防止する役目を果たすものが使用される。このような支持体Bの素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどのポリエステル、酢酸セルロース、エチルセルロース、レーヨン、可塑化酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、アルミニウム、ポリビニルアルコール、SIS共重合体、SEBS共重合体、綿などが挙げられ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
そして、支持体Bの形態としては、特に限定されず、例えば、フィルム或いは発泡体シート、更には、不織布、織布、編布などの布が挙げられるが、単層或いは複数の素材を積層一体化させて用いることができる。特に、柔軟性と薬物損失防止の点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの柔軟な樹脂フィルムや不織布などと、ポリエチレンテレフタレートフィルムとを一体化させてなるラミネートフィルムが好ましい。なお、複数の素材を積層一体化させる方法としては、特に限定されず、接着剤による方法、熱融着による方法、バインダーによる方法などが挙げられる。
ラミネートフィルムにおけるポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みは、薄いと、不織布やその他の樹脂フィルムと積層一体化する場合に均一に接着されず、ポリエチレンテレフタレートフィルムにピンホールが発生したり或いは不織布や樹脂フィルムとの間で層間剥離が発生したりすることがある一方、厚いと、支持体が硬くなり過ぎて貼付剤が皮膚に沿って円滑に追従せず、違和感が生じ易くなるので、5〜200μmが好ましい。
又、ラミネートフィルムにおける不織布の目付は、小さいと、支持体のコシが不充分となって貼付剤の取り扱い性が低下することがある一方、大きいと、支持体が硬くなり過ぎて貼付剤が皮膚に沿って円滑に追従せず、違和感が生じ易くなるので、10〜300g/mが好ましい。
更に、膏体層Cを積層一体化させる支持体Bの表面には、支持体Bと膏体層Cとの一体性を向上させるために、コロナ処理、プラズマ放電処理を施したり或いはアンカーコート剤を塗布してもよい。
又、貼付剤Aの膏体層Cの表面に、使用するまでの間に膏体層Cを保護するために剥離紙を剥離可能に積層させておいてもよい。このような剥離紙としては、特に限定されないが、例えば、フィルムの一面をシリコン処理してなるものが挙げられる。このようなフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルムなどのポリ塩化ビニル系フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系フィルム、上質紙、グラシン紙などの紙、この紙とポリオレフィン系フィルムとのラミネートフィルム、紙にポリビニルアルコールを含浸させたもの、これらフィルムの表面にアルミ箔やアルミ蒸着層を一体的に設けたフィルムなどが挙げられる。なお、剥離紙の厚みは、通常、1mm以下が好ましく、30〜200μmがより好ましい。
次に、貼付剤Aの製造方法について説明する。この貼付剤Aの製造方法としては、特に限定されず、例えば、上述の要領で製造された溶解剤、粘着剤及びツロブテロールを酢酸エチル、ヘキサン、トルエンなどの有機溶媒に完全に溶解させて得られた溶液を支持体の一面に塗布して乾燥させて溶媒を除去し、膏体層を支持体の一面に積層一体化させて貼付剤を製造する方法、剥離紙の一面に、溶解剤、粘着剤及びツロブテロールを上記有機溶媒に完全に溶解させて得られた溶液を塗布し乾燥させて溶媒を除去して膏体層を形成した後、この膏体層上に支持体を積層一体化させることによって貼付剤を製造する方法が挙げられる。
この時、貼付剤Aの膏体層Cが10〜500μmとなるように調整することが好ましい。これは、薄いと、貼付剤の粘着性が低下することがある一方、厚いと、貼付剤の粘着力が強すぎて皮膚から剥がす際に痛みを感じることがあるからである。
本発明の貼付剤は、特定の溶解剤と粘着剤を組み合わせており、従来であれば溶解し得なかった濃度及び広い温度領域において安定的にツロブテロールを膏体層中に溶解させることができ、よって、ツロブテロールを所望の経皮吸収速度でもって効果的に皮膚に吸収させることができる。
又、本発明の貼付剤で用いられている溶解剤は、ツロブテロールを膏体層中に良好に溶解させるだけでなく、それ自身がツロブテロールを皮膚内に運ぶキャリアーとしての作用をも発揮する上に粘着剤を可塑化することから、ツロブテロールの粘着剤中における拡散速度を向上させると共にツロブテロールの皮膚への吸収速度を促進する作用を奏する。
従って、本発明の貼付剤によれば、膏体層中のツロブテロール濃度が比較的低い場合や、使用に伴って経時的に膏体層中のツロブテロール濃度が低下した場合にあっても、ツロブテロールの経皮吸収速度を長時間に亘って適正な状態に維持することができ、溶解系でありながら高い利用率を発揮し、その結果、ツロブテロールを膏体層中に高濃度に含有させる必要もないことから、ツロブテロールによる粘着剤の可塑化を防止して、膏体層の粘着力が必要以上に強くなるのを防止することができ、その結果、皮膚刺激性増大の虞れもない。
更に、本発明の貼付剤における溶解剤と粘着剤との組合せによれば、膏体層は皮膚に対して優れた貼付性を発揮する一方、皮膚に刺激を与えることなく貼付剤を皮膚から剥離することができる上に貼付剤を皮膚に再度、貼り直すことも可能であり、本発明の貼付剤は、所望の部位に確実に貼付することができ且つ使用後の皮膚からの剥離も円滑に行なうことができる。
[図1]図1は、本発明の貼付剤を示した垂直断面図である。
符号の説明
A 貼付剤
B 支持体
C 膏体層
(ツロブテロールの溶解剤に対する溶解性)
ツロブテロール50重量部又は150重量部を、2−オクチル−1−ドデカノール(コグニスジャパン社製 商品名「EUTANOL G」)、2−ヘキシル−1−デカノール(コグニスジャパン社製 商品名「EUTANOL G16N」)、イソステアリルアルコール(高級アルコール工業社製 商品名「イソステアリルアルコールEX」)、オレイルアルコール(高級アルコール工業社製 商品名「オレイルアルコールVP」)、セタノール(ヘキサデシルアルコール)(日本油脂社製 商品名「NAA−44」)、ミリスチン酸イソプロピル(日光ケミカルズ社製 商品名「IPM−100」)、オレイン酸デシル(コグニスジャパン社製 商品名「CETIOL V」)、中鎖脂肪酸トリグリセリド(日本油脂社製 商品名「パナセート800」)、ポリエチレングリコール(丸石製薬社製 商品名「日本薬局方マクロゴール400」)、プロピレングリコール(丸石製薬社製 商品名「日本薬局方プロピレングリコール」)及び流動パラフィン(山桂産業社製 商品名「流動パラフィン350番」)に全体の量が1000重量部となるように添加してツロブテロール溶液を作製した。このツロブテロール溶液を50℃で120分間に亘って保温した後に、20℃で24時間に亘って保温し、更に、4℃で24時間に亘って保温した。
そして、各温度条件での保温終了後ごとに、ツロブテロール溶液中にツロブテロールの結晶が析出しているか否かを目視にて観察して、結晶が析出している場合には×、結晶が析出していない場合には○とし、その結果を表1に示した。なお、ツロブテロールをセタノールに添加した場合において、50℃に保温した場合には、ツロブテロールはセタノールに完全に溶解していたが、20℃及び4℃に保温した場合には、セタノールが固化したためにツロブテロールの結晶の析出の有無は確認できなかった。
(エピネフリン、レボドパブチルエステル、フェナセチン及びフェニルアラニンの溶解剤に対する溶解性)
エピネフリン(和光純薬社製)、レボドパブチルエステル、フェナセチン(和光純薬社製)及びフェニルアラニン(和光純薬社製)50重量部又は150重量部をそれぞれ、上述の2−オクチル−1−ドデカノール、2−ヘキシル−1−デカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールに全体の量が1000重量部となるように添加して、薬物溶液を作製した。この薬物溶液の溶解性を、上述したツロブテロールの溶解剤に対する溶解性と同様の要領で測定し、その結果を表2〜5に示した。
なお、レボドパブチルエステルは、「J.Am.Chem.Soc.,75,5556−5560(1953)」に記載の方法で作製した。具体的には、レボドパ(三共化成工業社製)20.7gを無水1−ブタノール(和光純薬社製)360ミリリットルに懸濁させて氷冷下にて飽和させ、1時間攪拌した後に還流下にて加温した。
次に、上記反応溶液から残存する無水1−ブタノールを減圧除去して得られた残留物を精製水900ミリリットルに溶解させて水溶液を作製し、この水溶液にアンモニア水を加えて塩基性化させて静置し、レボドパブチルエステルの結晶を析出させた。この結晶を濾取してヘキサン及び酢酸エチルで洗浄した後、酢酸エチルを用いてレボドパブチルエステルを再結晶させた。得られたレボドパブチルエステルの構造をNMRを用いて確認した。
(チラミンの溶解剤に対する溶解性)
チラミン(東京化成工業社製)50重量部又は150重量部をそれぞれ、上述の2−オクチル−1−ドデカノール、ミリスチン酸イソプロピル、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールに全体の量が1000重量部となるように添加して、チラミン溶液を作製した。このチラミン溶液の溶解性を、上述したツロブテロールの溶解剤に対する溶解性と同様の要領で測定し、その結果を表6に示した。
上述した各薬物の溶解剤に対する溶解性の結果からも分かるように、2−オクチル−1−ドデカノール、2−ヘキシル−1−デカノール、イソステアリルアルコール及びオレイルアルコールは、4〜50℃の幅広い温度範囲内においてツロブテロールを安定的に溶解させることができた。
一方、エピネフリン、レボドパブチルエステル、フェナセチン、フェニルアラニン及びチラミンは、本発明の貼付剤で用いられている2−オクチル−1−ドデカノール、2−ヘキシル−1−デカノール、イソステアリルアルコール及びオレイルアルコールに対して安定的な溶解性を示すことはなく、4〜50℃の温度範囲の何れにおいても析出を生じた。
(粘着剤Aの作製)
ドデシルメタクリレート2286重量部、2−エチルヘキシルメタクリレート14256重量部、2−エチルヘキシルアクリレート1656重量部、ヘキサンジオールジメタクリレート2.3重量部及び酢酸エチル8500重量部を40リットル重合機に供給して窒素雰囲気下にて80℃に加熱した。
次に、ラウロイルパーオキサイド16重量部をシクロヘキサン1500重量部に溶解させてなる溶液を重合機内の反応液中に24時間かけて徐々に添加しながら重合させ、更に、酢酸エチルを反応液に加えて固形分濃度が35重量%である粘着剤溶液Aを作製した。
(粘着剤溶液Bの作製)
2−エチルヘキシルメタクリレート120重量部、エチルアクリレート60重量部、ビニルピロリドン20重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.04重量部及び酢酸エチル200重量部をセパラブルフラスコに供給して窒素雰囲気下にて80℃に加熱した。
次に、ラウロイルパーオキサイド1重量部をシクロヘキサン100重量部に溶解させてなる溶液をセパラブルフラスコ内の反応液中に32時間かけて徐々に添加しながら重合させ、更に、酢酸エチルを反応液に加えて固形分濃度が32重量%である粘着剤溶液Bを作製した。
(実施例1〜8、比較例1〜11)
膏体層中における粘着剤、溶解剤及び薬物の重量比が表7に示した通りとなるように、表7に示した種類の粘着剤溶液、溶解剤及び薬物を配合し、固形分濃度が25重量%となるように酢酸エチルを加えて均一に混合、希釈し、膏体溶液を得た。
しかる後、一面がシリコン処理されてなる厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにおけるシリコン処理面に上記膏体溶液を塗布した後、60℃で30分間に亘って乾燥させて酢酸エチル及びシクロヘキサンを除去し、ポリエチレンテレフタレートフィルムの一面に、表7に示した厚さを有する膏体層を形成した。次に、この膏体層上に厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる支持体を積層一体化させて貼付剤(I)を得た。
又、支持体としてポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムと目付40g/mのポリエステル繊維不織布とを積層一体化させてなる支持体を用い、この支持体をそのポリエチレンテレフタレートフィルムが膏体層側となるように上記膏体層上に積層一体化させた以外は貼付剤(I)と同様の要領で貼付剤(II)を得た。
得られた貼付剤のツロブテロール析出性、粘着性、皮膚刺激性、貼付性及び透過性を下記に示した要領にて測定し、その結果を表8に示した。
(ツロブテロール析出性)
製造された直後の貼付剤(I)から一辺が50mmの平面正方形状の試験片を2枚切り出し、アルミニウム箔で包んだ上でアルミニウム包材内に密封した後、25℃及び4℃の恒温槽に一枚づつ放置した。
そして、試験片を切り出した直後並びに恒温槽内に放置してから一カ月後及び三カ月後の膏体層表面を光学顕微鏡を用いて膏体層表面に結晶が析出しているか否かを観察し、結晶が析出していない場合を○、結晶が析出していた場合を×とした。なお、比較例3においては、セタノールとみられる結晶が析出していた。
(粘着性)
貼付剤(I)から縦50mm×横15mmの平面長方形状の試験片を切り出し、JIS Z0237に規定する粘着力試験に準拠して180°引き剥がし試験を3回行い、測定された粘着力の相加平均値を粘着性とした。
(皮膚刺激性)
貼付剤(II)から一辺が2cmの平面正方形状の試験片を6枚切り出し、これらの試験片を、バリカン及びシェーバーで予め処理したウサギの背部皮膚に24時間に亘って貼付した後に剥離し、剥離してから30分後、24時間後の皮膚の紅斑状態を目視観察し、下記基準により判断した。そして、各試験片の評価の相加平均値を皮膚刺激性とした。比較例11については、糊残りが激しかったために評価できなかった。
0・・・紅斑なし
1・・・非常に軽度の紅斑(やっと認められる程度)
2・・・明らかな紅斑
3・・・中等度乃至強い紅斑
4・・・深赤色の強い紅斑に軽い痂皮形成
(貼付性、糊残り)
上記皮膚刺激性試験において、ウサギの背部皮膚に貼付後、24時間経過した試験片において、皮膚表面から剥がれることなく貼着していた膏体層部分の面積における膏体層全体の面積に対する百分率を貼付性とした。
又、上記皮膚刺激性試験後の皮膚表面を目視観察し、下記基準に基づいて評価した。
○・・・糊残りが殆どない
△・・・試験片の四方外周縁部に対応する貼付部位に糊残りを生じていた。
×・・・試験片の貼付部位の全体に糊残りを生じていた。
××・・試験片の貼付部位の全体に凝集破壊が生じていた。
(透過性)
実施例1〜8及び比較例1〜8,10で作製した貼付剤(I)から直径2cmの平面円形状の試験片(貼付面積:3.14cm)を切り出す一方、37℃に保持されたFranzの拡散セルに、ヘアレスマウス(雄、8週齢)の背部摘出皮膚を固定し、この皮膚の上端部に試験片をその膏体層によって貼付した。なお、pH7.2に調整した生理食塩水をリセプター液とし、このリセプター液中に皮膚の下端部を浸漬した。
試験片を皮膚に貼付してから4,8,21及び24時間後に、皮膚下側のリセプター液を採取し、ツロブテロール濃度をHPLCを用いて測定した。なお、試験片を3枚用意し、各試験片毎に4,8,21及び24時間後におけるツロブテロール濃度を上記要領で測定した。そして、各経過時間毎に、ツロブテロール濃度とリセプター液量から求められるツロブテロール透過量を算出し、各試験片毎に算出されたツロブテロール透過量を経過時間毎に相加平均し、その値を累積皮膚透過量とした。なお、8,21及び24時間後におけるツロブテロール透過量を算出するにあたっては、それ以前にリセプター液を採取しているので、このリセプター液の採取量について補正を加えた。
更に、試験片を皮膚に貼付してから4時間経過までの第一経過時間、4時間を越えてから8時間経過までの第二経過時間、8時間を越えてから21時間経過までの第三経過時間及び21時間を越えてから24時間経過までの第四経過時間の各経過期間毎に、各経過時間内において増加したツロブテロール透過量を経過時間で除すことによってツロブテロールの平均吸収速度を算出した。実施例1,2,5,6では、第一経過時間〜第四経過時間において、ツロブテロールの吸収速度に大きな変化はみられず安定した経皮吸収性を示した。
Figure 2005049004
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本発明の貼付剤は、ツロブテロール経皮吸収製剤であって、詳細には、ツロブテロールの経皮吸収性を長時間に亘って継続し且つ皮膚刺激性が少なくて皮膚に長時間に亘って安定的に貼付し得るものである。
本発明は、ツロブテロール経皮吸収製剤に関し、詳細には、ツロブテロールの経皮吸収性を長時間に亘って継続し且つ皮膚刺激性が少なくて皮膚に長時間に亘って安定的に貼付し得る貼付剤に関する。
ツロブテロールは、気管支平滑筋のβ2 受容体を選択的に刺激する気管支拡張薬として用いられており、詳細には、気道閉塞性障害を起こした場合の呼吸困難症状の軽減やその発作の原因となる気管支喘息、急性気管支炎、慢性気管支炎などの治療に幅広く用いられている。
ツロブテロールを投与する方法としては、錠剤化して経口により投与する方法と、貼付剤により皮膚を通して薬物を生体内に投与する方法とがあるが、近年、幼児に対する投与量を確保できること、血中における薬物濃度の急激な上昇に起因した副作用を回避することができること、薬効が持続して発作時の呼吸困難を効果的に予防することができるといった理由から、後者の貼付剤を用いる方法が注目されている。
一般に、薬物を貼付剤によって生体内に投与する場合、薬物は、貼付剤の膏体層中における薬物濃度と皮膚中における薬物濃度との濃度勾配によって貼付剤から皮膚に移行、吸収されることから、薬物が貼付剤の膏体層中に飽和溶解度に近い濃度で溶解されていればいるほど薬物の経皮吸収性は向上する。
貼付剤としては、薬物の一部が結晶として膏体層表面に析出している貼付剤と、薬物全量が膏体層中に溶解状態に含有されている貼付剤とに大別される。前者の貼付剤では、膏体層表面に析出した薬物が徐々に膏体層中に溶解している間は、膏体層中における薬物の飽和溶解度での経皮吸収性を維持することができる利点があり、このような貼付剤が特許文献1、2に提案されている。
しかしながら、貼付剤の保存環境によっては、膏体層表面に析出した薬物が膏体層中に溶解した後に再度、再結晶化するような場合があり、このような場合には、薬物の結晶サイズや結晶型が変化することがあり、薬物の経皮吸収性にバラツキが生じるといった問題がある。又、貼付剤の製造後に膏体層表面への薬物の析出が徐々に進行するような場合には、貼付剤の皮膚への貼付性が経時的に変化してしまうといった問題点が生じる。更に、膏体層表面に薬物が多量に再結晶化した場合には、貼付剤を皮膚に貼着した直後の薬物の経皮吸収速度が過度に高くなってしまって一定の経皮吸収速度を維持することができないといった懸念も考えられる。
一方、薬物全量が膏体層中に溶解状態に含有されている貼付剤の場合には、膏体層中の薬物が皮膚に吸収されるにしたがって膏体層中の薬物濃度が低下することから、薬物溶解度の低い膏体層であると、膏体層中の薬物濃度と皮膚中の薬物濃度との間における濃度勾配が短時間のうちに小さくなって、薬物の経皮吸収性を長時間に亘って継続することができないといった問題点が発生する。
そこで、特許文献3には、アルコール類などの溶解剤、アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体などからなる粘着剤及びツロブテロールからなる膏体層を貼付剤基材上に設けてなる貼付剤が提案されている。
しかしながら、膏体層中における薬物溶解度は温度に依存するため、薬物を高い飽和溶解度で膏体層中に溶解させても、季節や場所などの環境変化に伴って、膏体層中における薬物溶解度が大きく低下し、膏体層中に溶解させた薬物が結晶化して析出することがあった。このように、膏体層表面に薬物が析出すると、当初予定していた薬物の経皮吸収性を得ることができず、治療効果に悪影響をおよぼすことがあるといった問題点があった。
更に、膏体層中における溶解剤の濃度を高くし過ぎると、貼付剤を皮膚表面から剥離する際に糊残りが発生したり、逆に、貼付剤が皮膚表面から剥離し易くなるといった問題点が発生すると共に、薬物の初期経皮吸収速度が高くなり過ぎてしまって所望の経皮吸収速度を安定的に維持することができないといった問題点が発生した。
特許第3260765号公報 特許第2753800号公報 特開昭63−10716号公報
本発明は、ツロブテロールの優れた経皮吸収性を長時間に亘って継続し且つ皮膚刺激性が少なくて皮膚に長時間に亘って安定的に貼付し得る貼付剤を提供する。
本発明の貼付剤Aは、支持体Bの片面に膏体層Cが一体的に設けられ、この膏体層Cは、粘着剤100重量部、溶解剤1〜75重量部及びツロブテロールを含有し、上記溶解剤は、炭素数8〜30の炭素鎖中に分岐構造を有する脂肪族アルコールからなると共に、上記粘着剤は、アルキル基の炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートを70重量%以上含有する単量体を共重合させて得られる共重合体であることを特徴とする。
上記膏体層Cを構成する粘着剤は、アルキル基の炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートを70重量%以上含有する単量体を共重合させて得られた共重合体からなる。このようなアルキル基の炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、特に限定されず、例えば、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどが挙げられる。
そして、上記粘着剤としては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートと、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートとを含有する単量体を共重合させて得られる共重合体が、溶解剤と共になって、優れたツロブテロール放出性及び貼付性を膏体層に付与することができる点で好ましい。なお、本発明において、(メタ)アクリは、メタクリ及びアクリを意味する。
2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートと、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートとを含有する単量体中における、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの含有量は、少ないと、粘着剤の粘着力が低下することがある一方、多いと、粘着剤の弾性及び凝集力が低下して、貼付剤を皮膚から剥離した際に糊残りを生じることがあるので、70〜95重量%が好ましく、70.5〜95重量%がより好ましい。
同様の理由で、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートと、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートとを含有する単量体中における、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレート成分の含有量は、5〜30重量%が好ましく、5〜29.5重量%がより好ましい。
更に、上記粘着剤を構成する共重合体を得るための単量体には、ツロブテロールの放出性や安定性を損なわない範囲内において、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレートなどのアルキル基の炭素数が5以下であるアルキル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルピロリドン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルアクリレートなどの単量体を含有させてもよい。
又、貼付剤Aを皮膚から剥離した際における糊残り現象を防止するために、粘着剤を構成する共重合体を得るための単量体に多官能性単量体を含有させて、共重合体を架橋させてもよい。このような多官能性単量体としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸と、ヘキサメチレングリコールなどのポリメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどとを反応させて得られる、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
そして、粘着剤を構成する共重合体を得るための単量体中における多官能性単量体の含有量は、少ないと、多官能性単量体を含有させた効果が発現しないことがある一方、多いと、粘着剤がゲル化を生じ易くなるので、0.005〜0.5重量%が好ましい。
具体的には、粘着剤を構成する共重合体を得るための単量体中に多官能性単量体を含有する場合、粘着剤としては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートと、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートと、多官能性単量体とを含有する単量体を共重合させて得られる共重合体が好ましい。
そして、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートと、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートと、多官能性単量体とを含有する単量体中における、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの含有量は、少ないと、粘着剤の粘着力が低下することがある一方、多いと、粘着剤の弾性及び凝集力が低下して、貼付剤を皮膚から剥離した際に糊残りを生じることがあるので、70〜94.5重量%が好ましい。
又、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートと、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートと、多官能性単量体とを含有する単量体中における、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、少ないと、粘着剤の弾性及び凝集力が低下して、貼付剤を皮膚から剥離した際に糊残りを生じることがある一方、多いと、粘着剤の粘着力が低下することがあるので、5〜29.5重量%が好ましい。
更に、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートと、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートと、多官能性単量体とを含有する単量体中における、多官能性単量体成分の含有量は、少ないと、多官能性単量体を含有させた効果が発現しないことがある一方、多いと、粘着剤がゲル化を生じ易くなるので、0.005〜0.5重量%が好ましい。
又、粘着剤にはツロブテロールの安定性に悪影響を与えない範囲内において架橋剤が添加されてもよい。この架橋剤の添加によって粘着剤の凝集力が向上して糊残りの少ない貼着性に優れた貼付剤を得ることができる。このような架橋剤としては、エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド化合物などが挙げられる。
次に、上記粘着剤の製造方法を説明する。この粘着剤は、汎用の製造方法によって製造され、例えば、溶液重合法によって製造される。具体的には、所定量のアルキル基の炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレート及び重合開始剤、必要に応じて多官能性単量体及びその他の単量体並びに架橋剤を重合用溶媒と共に、攪拌装置及び気化溶媒の冷却還流装置を備えた反応器に供給し、例えば約80℃の温度に8〜40時間に亘って加熱して上記アルキル(メタ)アクリレートをラジカル重合反応させる。なお、アルキル(メタ)アクリレート、重合用溶媒及び重合開始剤は、反応器に一括して供給してもよいし或いは所定量づつ分割して供給してもよい。重合用溶媒としては、重合に汎用される溶媒が用いられ、例えば、酢酸エチルなどが挙げられる。そして、重合雰囲気は窒素ガス雰囲気が好ましい。
上記重合開始剤としては、従来から用いられていたものであれば、特に限定されず、例えば、2,2' −アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1' −アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2' −アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾビス系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド(LPO)、ジターシャルブチルパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤などが挙げられる。
上記膏体層Cの溶解剤を構成する脂肪族アルコールは、炭素数8〜30の炭素鎖中に分岐構造を有するものであれば、特に限定されず、例えば、エチルヘキサノール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコールなどの分岐構造を有する脂肪族アルコールが挙げられ、炭素数8〜30の炭素鎖中に分岐構造を有する第一級の脂肪族アルコールが好ましく、2−オクチル−1−ドデカノールがより好ましい。なお、脂肪族アルコールは単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
脂肪族アルコールにおける炭素鎖中の炭素数は、少ないと、脂肪族アルコールの揮発性が高くなる上に粘着剤を構成する共重合体との相溶性が低くなる一方、多いと、ツロブテロールの溶解性が低下し、ツロブテロールを膏体層中に必要な濃度で溶解させることができないので、8〜30に限定され、12〜24が好ましい。
そして、炭素数8〜30の炭素鎖中に分岐構造を有する脂肪族アルコールの膏体層C中における含有量は、少ないと、膏体層中へのツロブテロールの溶解性が低下する一方、多いと、貼付剤を皮膚表面から剥離する際に糊残りが発生したり、逆に、貼付剤が皮膚表面から剥離し易くなるといった問題点が発生する上に、薬物の初期経皮吸収速度が高くなり過ぎてしまって所望の経皮吸収速度を安定的に維持することができないので、粘着剤100重量部に対して1〜75重量部に限定され、1〜40重量部が好ましく、2〜40重量部がより好ましく、2〜30重量部が特に好ましい。
又、膏体層C中におけるツロブテロールの含有量は、薬効発現に必要とする経皮吸収速度が得られ且つ膏体層の貼付性を損なわなければ、特に限定されない。具体的には、膏体層中におけるツロブテロールの含有量は、少ないと、ツロブテロールの経皮吸収速度を所望速度に維持することができず、所望とするツロブテロールの血中濃度を得ることができないことがある一方、多いと、ツロブテロールが粘着剤に対する可塑化作用を有するために、膏体層の粘着力が強くなって貼付剤を皮膚表面から剥離する際に皮膚刺激性が生じ易くなったり、或いは、ツロブテロールの利用率が低下して非効率となって好ましくないので、粘着剤100重量部に対して0.5〜75重量部が好ましく、1〜25重量部がより好ましく、2〜11重量部が特に好ましい。
更に、上記膏体層C中に必要に応じて、可塑化剤、経皮吸収促進剤、安定化剤、充填剤などが添加されていてもよい。上記可塑化剤は、膏体層の貼付性を調節するために添加され、膏体層中におけるツロブテロールの拡散速度を向上させて皮膚へのツロブテロールの吸収量を向上させる効果を発揮するものもある。このような可塑化剤としては、例えば、流動パラフィン等の炭化水素;ミリスチン酸イソプロピル、モノラウリン酸グリセリン、セバシン酸ジエチル等の、脂肪酸と一価又は多価アルコールとのエステル;ラノリン、オリーブ油等の天然物由来の油脂などが挙げられる。
上記可塑化剤の膏体層C中における含有量は、少ないと、可塑化剤を膏体層中に添加した効果が発現しないことがある一方、多いと、ツロブテロールの膏体層への溶解性が低下したり或いは貼付剤の貼付性が低下することがあるので、1〜15重量%が好ましい。
又、上記経皮吸収促進剤は、皮膚に作用してツロブテロールの皮膚透過性を向上させるために添加され、角質層の構造を緩める作用を有するものや、角質層の水和を向上させるものなどが挙げられる。このような経皮吸収促進剤としては、ポリソルベート、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウロイルサルコシン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどの界面活性剤や、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールなどが挙げられる。
そして、上記経皮吸収促進剤の膏体層C中における含有量は、少ないと、経皮吸収促進剤を膏体層中に添加した効果が発現しないことがある一方、多いと、ツロブテロールの溶解性や安定性に悪影響を与えることがあるので、0.1〜10重量%が好ましい。
更に、上記安定化剤は、ツロブテロールやその他の成分の酸化・分解を抑えて貼付剤の経時変化を防止するために用いられる。このような安定化剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン、ソルビン酸等の酸化防止剤の他、シクロデキストリン、エチレンジアミン四酢酸などが挙げられる。
そして、上記安定化剤の膏体層C中における含有量は、少ないと、安定化剤を膏体層中に添加した効果が発現しないことがある一方、多いと、貼付剤の貼付性や皮膚刺激性に悪影響を与えることがあるので、0.05〜10重量%が好ましい。
又、上記充填剤は、膏体層Cの貼付性の調整や、ツロブテロールの放出性の調整のために添加される。このような充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、乳糖、結晶セルロース、無水ケイ酸などが挙げられる。
そして、上記充填剤の膏体層C中における含有量は、少ないと、充填剤を膏体層中に添加した効果が発現しないことがある一方、多いと、貼付剤の貼付性を却って低下させたり或いはツロブテロールの経皮吸収性や安定性に悪影響を与えることがあるので、1〜30重量%が好ましい。
次に、上記膏体層Cを一体的に設ける支持体Bとしては、柔軟であるが貼付剤に自己支持性を付与し且つ膏体層中のツロブテロールの損失を防止する役目を果たすものが使用される。このような支持体Bの素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどのポリエステル、酢酸セルロース、エチルセルロース、レーヨン、可塑化酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、アルミニウム、ポリビニルアルコール、SIS共重合体、SEBS共重合体、綿などが挙げられ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
そして、支持体Bの形態としては、特に限定されず、例えば、フィルム或いは発泡体シート、更には、不織布、織布、編布などの布が挙げられるが、単層或いは複数の素材を積層一体化させて用いることができる。特に、柔軟性と薬物損失防止の点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの柔軟な樹脂フィルムや不織布などと、ポリエチレンテレフタレートフィルムとを一体化させてなるラミネートフィルムが好ましい。なお、複数の素材を積層一体化させる方法としては、特に限定されず、接着剤による方法、熱融着による方法、バインダーによる方法などが挙げられる。
ラミネートフィルムにおけるポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みは、薄いと、不織布やその他の樹脂フィルムと積層一体化する場合に均一に接着されず、ポリエチレンテレフタレートフィルムにピンホールが発生したり或いは不織布や樹脂フィルムとの間で層間剥離が発生したりすることがある一方、厚いと、支持体が硬くなり過ぎて貼付剤が皮膚に沿って円滑に追従せず、違和感が生じ易くなるので、5〜200μmが好ましい。
又、ラミネートフィルムにおける不織布の目付は、小さいと、支持体のコシが不充分となって貼付剤の取り扱い性が低下することがある一方、大きいと、支持体が硬くなり過ぎて貼付剤が皮膚に沿って円滑に追従せず、違和感が生じ易くなるので、10〜300g/m2 が好ましい。
更に、膏体層Cを積層一体化させる支持体Bの表面には、支持体Bと膏体層Cとの一体性を向上させるために、コロナ処理、プラズマ放電処理を施したり或いはアンカーコート剤を塗布してもよい。
又、貼付剤Aの膏体層Cの表面に、使用するまでの間に膏体層Cを保護するために剥離紙を剥離可能に積層させておいてもよい。このような剥離紙としては、特に限定されないが、例えば、フィルムの一面をシリコン処理してなるものが挙げられる。このようなフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルムなどのポリ塩化ビニル系フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系フィルム、上質紙、グラシン紙などの紙、この紙とポリオレフィン系フィルムとのラミネートフィルム、紙にポリビニルアルコールを含浸させたもの、これらフィルムの表面にアルミ箔やアルミ蒸着層を一体的に設けたフィルムなどが挙げられる。なお、剥離紙の厚みは、通常、1mm以下が好ましく、30〜200μmがより好ましい。
次に、貼付剤Aの製造方法について説明する。この貼付剤Aの製造方法としては、特に限定されず、例えば、上述の要領で製造された溶解剤、粘着剤及びツロブテロールを酢酸エチル、ヘキサン、トルエンなどの有機溶媒に完全に溶解させて得られた溶液を支持体の一面に塗布して乾燥させて溶媒を除去し、膏体層を支持体の一面に積層一体化させて貼付剤を製造する方法、剥離紙の一面に、溶解剤、粘着剤及びツロブテロールを上記有機溶媒に完全に溶解させて得られた溶液を塗布し乾燥させて溶媒を除去して膏体層を形成した後、この膏体層上に支持体を積層一体化させることによって貼付剤を製造する方法が挙げられる。
この時、貼付剤Aの膏体層Cが10〜500μmとなるように調整することが好ましい。これは、薄いと、貼付剤の粘着性が低下することがある一方、厚いと、貼付剤の粘着力が強すぎて皮膚から剥がす際に痛みを感じることがあるからである。
本発明の貼付剤は、特定の溶解剤と粘着剤を組み合わせており、従来であれば溶解し得なかった濃度及び広い温度領域において安定的にツロブテロールを膏体層中に溶解させることができ、よって、ツロブテロールを所望の経皮吸収速度でもって効果的に皮膚に吸収させることができる。
又、本発明の貼付剤で用いられている溶解剤は、ツロブテロールを膏体層中に良好に溶解させるだけでなく、それ自身がツロブテロールを皮膚内に運ぶキャリアーとしての作用をも発揮する上に粘着剤を可塑化することから、ツロブテロールの粘着剤中における拡散速度を向上させると共にツロブテロールの皮膚への吸収速度を促進する作用を奏する。
従って、本発明の貼付剤によれば、膏体層中のツロブテロール濃度が比較的低い場合や、使用に伴って経時的に膏体層中のツロブテロール濃度が低下した場合にあっても、ツロブテロールの経皮吸収速度を長時間に亘って適正な状態に維持することができ、溶解系でありながら高い利用率を発揮し、その結果、ツロブテロールを膏体層中に高濃度に含有させる必要もないことから、ツロブテロールによる粘着剤の可塑化を防止して、膏体層の粘着力が必要以上に強くなるのを防止することができ、その結果、皮膚刺激性増大の虞れもない。
更に、本発明の貼付剤における溶解剤と粘着剤との組合せによれば、膏体層は皮膚に対して優れた貼付性を発揮する一方、皮膚に刺激を与えることなく貼付剤を皮膚から剥離することができる上に貼付剤を皮膚に再度、貼り直すことも可能であり、本発明の貼付剤は、所望の部位に確実に貼付することができ且つ使用後の皮膚からの剥離も円滑に行なうことができる。
図1は、本発明の貼付剤を示した垂直断面図である。
符号の説明
A 貼付剤
B 支持体
C 膏体層
(ツロブテロールの溶解剤に対する溶解性)
ツロブテロール50重量部又は150重量部を、2−オクチル−1−ドデカノール(コグニスジャパン社製 商品名「EUTANOL G」)、2−ヘキシル−1−デカノール(コグニスジャパン社製 商品名「EUTANOL G16N」)、イソステアリルアルコール(高級アルコール工業社製 商品名「イソステアリルアルコールEX」)、オレイルアルコール(高級アルコール工業社製 商品名「オレイルアルコールVP」)、セタノール(ヘキサデシルアルコール)(日本油脂社製 商品名「NAA−44」)、ミリスチン酸イソプロピル(日光ケミカルズ社製 商品名「IPM−100」)、オレイン酸デシル(コグニスジャパン社製 商品名「CETIOL V」)、中鎖脂肪酸トリグリセリド(日本油脂社製 商品名「パナセート800」)、ポリエチレングリコール(丸石製薬社製 商品名「日本薬局方マクロゴール400」)、プロピレングリコール(丸石製薬社製 商品名「日本薬局方プロピレングリコール」)及び流動パラフィン(山桂産業社製 商品名「流動パラフィン350番」)に全体の量が1000重量部となるように添加してツロブテロール溶液を作製した。このツロブテロール溶液を50℃で120分間に亘って保温した後に、20℃で24時間に亘って保温し、更に、4℃で24時間に亘って保温した。
そして、各温度条件での保温終了後ごとに、ツロブテロール溶液中にツロブテロールの結晶が析出しているか否かを目視にて観察して、結晶が析出している場合には×、結晶が析出していない場合には○とし、その結果を表1に示した。なお、ツロブテロールをセタノールに添加した場合において、50℃に保温した場合には、ツロブテロールはセタノールに完全に溶解していたが、20℃及び4℃に保温した場合には、セタノールが固化したためにツロブテロールの結晶の析出の有無は確認できなかった。
(エピネフリン、レボドパブチルエステル、フェナセチン及びフェニルアラニンの溶解剤に対する溶解性)
エピネフリン(和光純薬社製)、レボドパブチルエステル、フェナセチン(和光純薬社製)及びフェニルアラニン(和光純薬社製)50重量部又は150重量部をそれぞれ、上述の2−オクチル−1−ドデカノール、2−ヘキシル−1−デカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールに全体の量が1000重量部となるように添加して、薬物溶液を作製した。この薬物溶液の溶解性を、上述したツロブテロールの溶解剤に対する溶解性と同様の要領で測定し、その結果を表2〜5に示した。
なお、レボドパブチルエステルは、「J.Am.Chem.Soc.,75,5556-5560(1953)」 に記載の方法で作製した。具体的には、レボドパ(三共化成工業社製)20.7gを無水1−ブタノール(和光純薬社製)360ミリリットルに懸濁させて氷冷下にて飽和させ、1時間攪拌した後に還流下にて加温した。
次に、上記反応溶液から残存する無水1−ブタノールを減圧除去して得られた残留物を精製水900ミリリットルに溶解させて水溶液を作製し、この水溶液にアンモニア水を加えて塩基性化させて静置し、レボドパブチルエステルの結晶を析出させた。この結晶を濾取してヘキサン及び酢酸エチルで洗浄した後、酢酸エチルを用いてレボドパブチルエステルを再結晶させた。得られたレボドパブチルエステルの構造をNMRを用いて確認した。
(チラミンの溶解剤に対する溶解性)
チラミン(東京化成工業社製)50重量部又は150重量部をそれぞれ、上述の2−オクチル−1−ドデカノール、ミリスチン酸イソプロピル、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールに全体の量が1000重量部となるように添加して、チラミン溶液を作製した。このチラミン溶液の溶解性を、上述したツロブテロールの溶解剤に対する溶解性と同様の要領で測定し、その結果を表6に示した。
上述した各薬物の溶解剤に対する溶解性の結果からも分かるように、2−オクチル−1−ドデカノール、2−ヘキシル−1−デカノール、イソステアリルアルコール及びオレイルアルコールは、4〜50℃の幅広い温度範囲内においてツロブテロールを安定的に溶解させることができた。
一方、エピネフリン、レボドパブチルエステル、フェナセチン、フェニルアラニン及びチラミンは、本発明の貼付剤で用いられている2−オクチル−1−ドデカノール、2−ヘキシル−1−デカノール及びイソステアリルアルコールに対して安定的な溶解性を示すことはなく、4〜50℃の温度範囲の何れにおいても析出を生じた。
(粘着剤Aの作製)
ドデシルメタクリレート2286重量部、2−エチルヘキシルメタクリレート14256重量部、2−エチルヘキシルアクリレート1656重量部、ヘキサンジオールジメタクリレート2.3重量部及び酢酸エチル8500重量部を40リットル重合機に供給して窒素雰囲気下にて80℃に加熱した。
次に、ラウロイルパーオキサイド16重量部をシクロヘキサン1500重量部に溶解させてなる溶液を重合機内の反応液中に24時間かけて徐々に添加しながら重合させ、更に、酢酸エチルを反応液に加えて固形分濃度が35重量%である粘着剤溶液Aを作製した。
(粘着剤溶液Bの作製)
2−エチルヘキシルメタクリレート120重量部、エチルアクリレート60重量部、ビニルピロリドン20重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.04重量部及び酢酸エチル200重量部をセパラブルフラスコに供給して窒素雰囲気下にて80℃に加熱した。
次に、ラウロイルパーオキサイド1重量部をシクロヘキサン100重量部に溶解させてなる溶液をセパラブルフラスコ内の反応液中に32時間かけて徐々に添加しながら重合させ、更に、酢酸エチルを反応液に加えて固形分濃度が32重量%である粘着剤溶液Bを作製した。
(実施例1〜、比較例1〜11)
膏体層中における粘着剤、溶解剤及び薬物の重量比が表7に示した通りとなるように、表7に示した種類の粘着剤溶液、溶解剤及び薬物を配合し、固形分濃度が25重量%となるように酢酸エチルを加えて均一に混合、希釈し、膏体溶液を得た。
しかる後、一面がシリコン処理されてなる厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにおけるシリコン処理面に上記膏体溶液を塗布した後、60℃で30分間に亘って乾燥させて酢酸エチル及びシクロヘキサンを除去し、ポリエチレンテレフタレートフィルムの一面に、表7に示した厚さを有する膏体層を形成した。次に、この膏体層上に厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる支持体を積層一体化させて貼付剤(I)を得た。
又、支持体としてポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムと目付40g/m2 のポリエステル繊維不織布とを積層一体化させてなる支持体を用い、この支持体をそのポリエチレンテレフタレートフィルムが膏体層側となるように上記膏体層上に積層一体化させた以外は貼付剤(I)と同様の要領で貼付剤(II) を得た。
得られた貼付剤のツロブテロール析出性、粘着性、皮膚刺激性、貼付性及び透過性を下記に示した要領にて測定し、その結果を表8に示した。
(ツロブテロール析出性)
製造された直後の貼付剤(I)から一辺が50mmの平面正方形状の試験片を2枚切り出し、アルミニウム箔で包んだ上でアルミニウム包材内に密封した後、25℃及び4℃の恒温槽に一枚づつ放置した。
そして、試験片を切り出した直後並びに恒温槽内に放置してから一カ月後及び三カ月後の膏体層表面を光学顕微鏡を用いて膏体層表面に結晶が析出しているか否かを観察し、結晶が析出していない場合を○、結晶が析出していた場合を×とした。なお、比較例3においては、セタノールとみられる結晶が析出していた。
(粘着性)
貼付剤(I)から縦50mm×横15mmの平面長方形状の試験片を切り出し、JIS Z0237に規定する粘着力試験に準拠して180°引き剥がし試験を3回行い、測定された粘着力の相加平均値を粘着性とした。
(皮膚刺激性)
貼付剤(II) から一辺が2cmの平面正方形状の試験片を6枚切り出し、これらの試験片を、バリカン及びシェーバーで予め処理したウサギの背部皮膚に24時間に亘って貼付した後に剥離し、剥離してから30分後、24時間後の皮膚の紅斑状態を目視観察し、下記基準により判断した。そして、各試験片の評価の相加平均値を皮膚刺激性とした。比較例11については、糊残りが激しかったために評価できなかった。
0・・・紅斑なし
1・・・非常に軽度の紅斑(やっと認められる程度)
2・・・明らかな紅斑
3・・・中等度乃至強い紅斑
4・・・深赤色の強い紅斑に軽い痂皮形成
(貼付性、糊残り)
上記皮膚刺激性試験において、ウサギの背部皮膚に貼付後、24時間経過した試験片において、皮膚表面から剥がれることなく貼着していた膏体層部分の面積における膏体層全体の面積に対する百分率を貼付性とした。
又、上記皮膚刺激性試験後の皮膚表面を目視観察し、下記基準に基づいて評価した。
○・・・糊残りが殆どない
△・・・試験片の四方外周縁部に対応する貼付部位に糊残りを生じていた。
×・・・試験片の貼付部位の全体に糊残りを生じていた。
××・・試験片の貼付部位の全体に凝集破壊が生じていた。
(透過性)
実施例1〜及び比較例1〜8,10で作製した貼付剤(I)から直径2cmの平面円形状の試験片(貼付面積:3.14cm2 )を切り出す一方、37℃に保持されたFranzの拡散セルに、ヘアレスマウス(雄、8週齢)の背部摘出皮膚を固定し、この皮膚の上端部に試験片をその膏体層によって貼付した。なお、pH7.2に調整した生理食塩水をリセプター液とし、このリセプター液中に皮膚の下端部を浸漬した。
試験片を皮膚に貼付してから4,8,21及び24時間後に、皮膚下側のリセプター液を採取し、ツロブテロール濃度をHPLCを用いて測定した。なお、試験片を3枚用意し、各試験片毎に4,8,21及び24時間後におけるツロブテロール濃度を上記要領で測定した。そして、各経過時間毎に、ツロブテロール濃度とリセプター液量から求められるツロブテロール透過量を算出し、各試験片毎に算出されたツロブテロール透過量を経過時間毎に相加平均し、その値を累積皮膚透過量とした。なお、8,21及び24時間後におけるツロブテロール透過量を算出するにあたっては、それ以前にリセプター液を採取しているので、このリセプター液の採取量について補正を加えた。
更に、試験片を皮膚に貼付してから4時間経過までの第一経過時間、4時間を越えてから8時間経過までの第二経過時間、8時間を越えてから21時間経過までの第三経過時間及び21時間を越えてから24時間経過までの第四経過時間の各経過期間毎に、各経過時間内において増加したツロブテロール透過量を経過時間で除すことによってツロブテロールの平均吸収速度を算出した。実施例1,では、第一経過時間〜第四経過時間において、ツロブテロールの吸収速度に大きな変化はみられず安定した経皮吸収性を示した。
Figure 2005049004
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本発明の貼付剤は、ツロブテロール経皮吸収製剤であって、詳細には、ツロブテロールの経皮吸収性を長時間に亘って継続し且つ皮膚刺激性が少なくて皮膚に長時間に亘って安定的に貼付し得るものである。

Claims (15)

  1. 支持体の片面に膏体層が設けられ、この膏体層は、粘着剤100重量部、溶解剤1〜75重量部及びツロブテロールを含有し、上記溶解剤は、炭素数8〜30の炭素鎖中に分岐構造又は二重結合を有する脂肪族アルコールを含有すると共に、上記粘着剤は、アルキル基の炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートを70重量%以上含有する単量体を共重合させて得られる共重合体であることを特徴とする貼付剤。
  2. 膏体層が、粘着剤100重量部、溶解剤1〜75重量部及びツロブテロール0.5〜75重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
  3. 膏体層が、粘着剤100重量部、溶解剤1〜75重量部及びツロブテロール1〜25重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
  4. 膏体層が、粘着剤100重量部、溶解剤1〜40重量部及びツロブテロール1〜25重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
  5. 膏体層が、粘着剤100重量部、溶解剤2〜40重量部及びツロブテロール2〜11重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
  6. 膏体層が、粘着剤100重量部、溶解剤2〜30重量部及びツロブテロール2〜11重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
  7. 溶解剤が、炭素数8〜30の炭素鎖中に分岐構造を有する脂肪族アルコールであることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
  8. 溶解剤が、炭素数が12〜24の炭素鎖中に分岐構造を有する脂肪族アルコールであることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
  9. 溶解剤が、炭素数12〜24の炭素鎖中に二重結合を有する脂肪族アルコールであることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
  10. 溶解剤がオクチルドデカノールであることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
  11. 粘着剤が、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートを70重量%以上含有する単量体を共重合させて得られる共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
  12. 粘着剤が、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートと、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートとを含有する単量体を共重合させて得られる共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
  13. 単量体中に2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートを70〜95重量%含有することを特徴とする請求項12に記載の貼付剤。
  14. 単量体中に、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレートを5〜30重量%含有することを特徴とする請求項12に記載の貼付剤。
  15. 単量体中に、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート70〜95重量%と、アルキル基が直鎖状で且つ炭素数が6〜20であるアルキル(メタ)アクリレート5〜30重量%とを含有することを特徴とする請求項12に記載の貼付剤。
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